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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

DANGAN・WORLD 最終章【世界】

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  1. 1 : : 2014/05/06(火) 23:52:41
    【DANGAN・WOULD】最終章です。  第一章、第二章、第三章、第四章、第五章、第六章、第七章、第八章、第九章、第十章、第十一章を見ていない方は  こちらからどうぞ ↓         


    第一章           

    http://www.ssnote.net/archives/3407           

    第ニ章           

    http://www.ssnote.net/archives/3664          

    第三章           

    http://www.ssnote.net/archives/3815           

    第四章          

    http://www.ssnote.net/archives/4645         

    第五章        

    http://www.ssnote.net/archives/5159        

    第六章       

    http://www.ssnote.net/archives/5694       

    第七章     

    http://www.ssnote.net/archives/6344      

    第八章     

    http://www.ssnote.net/archives/7218     

    第九章    

    http://www.ssnote.net/archives/7774    

    第十章   

    http://www.ssnote.net/archives/10063   

    第十一章  

    http://www.ssnote.net/archives/14207  






    人間性を捨て、神として君臨した、DANGAN・WOULDの創造者にして最悪の支配者【ゼウス】  



    同時に自分に足りなかった物を見つけ、能力を手に入れた苗木誠と、己に打ち勝ち、真の力を会得した日向創ッ!  



    そして、神の恐怖を目の当たりにした十神が予言した災厄の未来…… 



    果たして最後に残るのは、人か!?神か!?  





    燃え尽くす雑草魂作、【DANGAN・WOULD】遂に最終章! かつてない大白熱のラストをお楽しみに(* ̄∇ ̄)ノ 

  2. 2 : : 2014/05/07(水) 08:42:56
    ウィード❗️
    遂に最終章か!!頑張って‼︎
    期待♪
  3. 3 : : 2014/05/08(木) 01:44:45
    ついに最後かぁ…
    寂しいなぁ(´・ω・`)
  4. 4 : : 2014/05/08(木) 10:54:23
    感動のエンディングを期待してますよ!
  5. 5 : : 2014/05/08(木) 18:21:40
    頑張ってください!
    期待してます!
  6. 6 : : 2014/05/10(土) 11:24:29
    ついに最終章か…
    頑張ってください!!
    期待してます‼
  7. 7 : : 2014/05/14(水) 18:23:37
    >>2

    >>3

    >>4

    >>5

    >>6



    沢山のお期待、ありがたきお言葉ありがとうございます!
    長々と放置してすいません!


    それでは、最終章……起動開始です(* ̄∇ ̄)ノ
  8. 8 : : 2014/05/14(水) 20:42:26
    よっしゃぁぁぁぁぁ!
  9. 9 : : 2014/05/15(木) 15:56:57
    日向「はあああっ!!」



    空を裂く速度。それを乗せた白鉄の刃と人を離れた神の腕が神々しい火花を散らす!



    ゼウス【貴様……日向創だな?】

    ゼウス【その力……なるほど、己の闇を我がものとしたか】

    日向「ああ、俺は影と交わり一つになった」

    日向「今の俺は…神座出流でも、偽りの人格でもない!」

    日向「日向……創だあああっ!!」



    光を通さない漆黒の髪が燃え、そこには逆だった白銀の髪!



    ゼウス【なんだ!?急に力が……!】

    日向「まだまだぁ!!」



    両腕を使い刃を食い止めるゼウスに叩き込まれたのは首への回し蹴り!



    ゼウス【グッ!】



    急所への一撃に腕の筋肉が一瞬緩んだのを日向は見逃さない



    日向「隙あり!」

    ゼウス【!】

    日向「【プラチナ……ブレイク】ッ!!」



    それはもはやゼロ距離での痛恨の一撃!


    光を取り込み、巨大な大剣と化した白鉄の剣が無防備のゼウスに炸裂した



    ゼウス【ッ!!!】



    圧倒的な威力にゼウスの身体はガラスを突き破り、城の別塔へと落ちる



    日向「逃がすかっ!」



    今が最大のチャンスとみた日向は動きをやめず、風穴の開いた窓に自ら落ちていった



    苗木「日向くん!」

    フリート「俺達も追うぞ……!」

    苗木「大神さん、立てる?」

    大神「グフッ……ゲホッガフ!」

    アレス「無理はしないほうがいい、なんせあと少し食い込んでいたら死んでいたからな……」

    フリート「お前の力でなんとかならないのか?」

    アレス「……駄目だな、今やこの世界の権限は奴にある……俺には手は出せん」

    アレス「恐らく女神の涙もこの世界を奴に取られた以上、使用不可能になっているだろう……」

    フリート「……そうか」

    苗木「大神さん」

    苗木「大神さんはここにいて、必ず戻ってくるから!」

    大神「グッ……む、無理をするなよ……」

    苗木「……うん」




    フリート「それ以上喋るのは危険だ……行こう」

    アレス「行くぞっ!!」



  10. 10 : : 2014/05/16(金) 00:44:47
    日向、ほぼ無敵やん!
    その調子でゼウスボコボコにしてまえ‼︎‼︎
    期待♪
  11. 11 : : 2014/05/22(木) 02:57:49
    最後ですか…本当に本当に頑張ってください!!
    応援してます!!
  12. 12 : : 2014/06/02(月) 21:25:17
    >>10

    >>11


    長きにわたる応援ありがとうございます!
    それでは久々の………再起動です!
  13. 13 : : 2014/06/02(月) 22:19:57
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




    霧切「全ての命が皆殺しって……どういう事?」

    十神「………西園寺、お前も体感したはずだ」

    西園寺「………」

    十神「奴の能力は論外だ」



    十神「【創造】……ソレが奴、アダムの能力だ」


    霧切「創造……生み出す力?」



    十神「ああ、そうだ……」





    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





    十神『くっ……何だその力は……!?』


    『創造こそが全て……創造こそ原点……』

    『作られた者は創造主には勝てない……』


    十神『ッ!』



    身体が動かない中、十神は最後の力を振り絞りトリガーを引く



    『ドォンッ』



    鼻にツンとくる火薬の匂いと単調の銃声が撃ち出した翠の銃弾。


    それは、アダムの顔に一寸のブレなく炸裂した!


    ………しかし、



    『……無駄だと言ったはずだが?』

    十神『!?』



    撃ち出された弾丸はどこからともなく現れた鋼鉄の装甲に防がれる



    十神『馬鹿な……!』

    『コレが創造の力だ……』

    ジェノ『あっそ』

    『!』

    ジェノ『ゲラゲラゲラッ!!余所は禁物よ〜ん?』



    虚をつき、血塗られた鋭利な刃がアダムの首元を切り裂く


    切り口から大量の噴水が噴き出し、鮮血へ染まった身体が『ドシャ』と血の海へ崩れ落ちる



    ジェノ『あら〜ん?案外脆いのね〜』

    十神『違う!後ろだ馬鹿!』

    ジェノ『は?』



    瞬間、ジェノサイダー翔の右腕が飛んだ



    ジェノ『ッ!?』



    流石のジェノサイダーも驚きを隠せない



    『……ほう、大した俊敏さだな』



    ジェノ『はぁ……?なんでアンタ生きてんのよ?』

    『分身体を創ることも容易いことだ』

    十神『分身……だと?』



    『私に不可能はない……ソレが私の能力【ザ・メイク】(創造)なのだ』





    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





    十神「そして……俺達はなす術なく全滅した」

    ジェノ「まあくんの力が無かったらアタシら死んでましたし〜」

    霧切「……ザ・メイク」

    大和田「んだよそのフザケた能力は!?」



    西園寺「私達の相手……イヴは消滅の力だった」

    左右田「あぁ、それで俺らは即死だぜ」

    田中「瞬殺の異能だと……!?」

    江ノ島「なぁ〜んだっけ?確か【ジ・エンド】とかだったっけ?」

    ソニア「……エンド……終わり?」



    戦刃「ソレが……苗木くん達の所に……!」

    弐大「急いで後を追うんじゃあ!」

    舞園「治癒も万全です!」

    七海「日向くんも無事……かな?」



    霧切「考えても仕方ないわ」

    霧切「……じゃあ皆、行くわよ」


    「「おう!」」


  14. 14 : : 2014/06/02(月) 22:39:44
    再起動来たー!! キターー(・∀・)ーー!!
  15. 15 : : 2014/06/05(木) 14:32:56
    皆早く行くんや!
    期待♪
  16. 16 : : 2014/06/10(火) 21:53:15
    もう最終章ですか…
    寂しいですけど応援してます!
  17. 17 : : 2014/06/17(火) 23:39:48
    超期待!!!
  18. 18 : : 2014/06/18(水) 17:33:32
    期待ヽ(*´∀`)ノ
  19. 19 : : 2014/06/18(水) 23:54:32
    >>14

    最近ナメクジ並みの起動速度でスイマセンm(_ _;)m

    >>15

    ありがとうございます!

    >>16

    応援ありがとうございますっ!!
    最後の最後まで頑張ります(* ̄∇ ̄)ノ

    >>17

    >>18

    期待の言葉ありがとうございますっ!
  20. 20 : : 2014/06/19(木) 09:48:44
    『バゴオオオオンッ!!!』



    別塔の中に巨大な爆音が轟く!



    日向「ッ……!なんだよ!その能力は……!?」

    ゼウス【フフフ……】

    日向「くっ!プラチナブレイクっ!!」



    このままではヤバイと判断した日向は至近距離まで接近してきたゼウス目掛けて白鉄の刃を振り下ろした。



    ゼウス【ザ・メイク……(創造)】



    ゼウスの両手が黒く輝き、振り下ろされる剣先を回避しつつ、その手を床に押し付ける。



    ゼウス【『アヴァロンッ!!』(魔の神国)】

    日向「!?」



    突如、日向の足元一帯が黒く染まりだす。


    そしてその暗闇から這い出てきたのは赤黒く染まりし巨大な城!


    城は塔の天井を突き破り、禍々しい光を放つ。



    日向「ぐはっ!?」

    日向「何だこれ……!体が動かな……!?」



    下半身が城と同化している。


    これでは見動きが取れない!



    ゼウス【ジ・エンド……(消滅)】



    天井が壊れ、露わになった青空がドス黒く……漆黒の雲に支配されていく



    日向「何だっ!?」

    ゼウス【『ネメシスッ!!』(天罰)】



    手のひらを上から下に振り下ろすモーションを行った直後、空の一点が紅く輝き出す


    それは雲を貫き、塔……正確には日向目掛けて落ちてくる



    日向「隕石!?」



    そう、落ちてきたのは火炎を纏い、凄まじい速度で襲いかかってくる小隕石!


    落ちてくる物の正体を瞬時に見極めたものの、肝心の迎撃体制が取れない!



    日向「くそ!」

    ゼウス【消えろ……神の名のもとにっ!!】

    日向「!?」



    『ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!』




    隕石は一寸のブレなく城に直撃し、凄まじい轟音と共に巨大な城は粉々に崩落した。
  21. 21 : : 2014/06/19(木) 14:23:06
    ゼウス強すぎ!ヤバイ!
  22. 22 : : 2014/06/19(木) 14:25:37
    >>21


    強いですよね!

    一体どうやって倒すのか……!?
  23. 23 : : 2014/06/20(金) 11:57:35

    苗木「なんだ!?今の音……!」

    フリート「あの塔からだ!」

    アレス「遅かったか」



    日向が開けたであろう、塔の内部に続く大穴に一斉に飛び込む



    苗木「!? 日向くん!」

    ゼウス【遅かったな……】

    日向「……………」



    目に入ってきたのは、ゼウスの指す瓦礫の山から覗かせる日向の姿。



    フリート「これは……!」

    苗木「日向くん!」

    日向「…………………」



    瓦礫の山から引っ張り出すも返事はない。



    苗木「そんな……日向くん……」

    フリート「いや、大丈夫。まだ彼のデス・アラートは鳴っていない」

    苗木「え?」

    フリート「下がってて」



    苗木を一旦日向から遠ざけ、フリートは日向に向けて剣を向けた。



    苗木「なっ!」



    まさか……瀕死の人間にトドメをさすつもりか!?



    苗木「やめ…………!」



    苗木が制するよりも速く、フリートは剣を振り下ろした。



    フリート「『英雄剣』………」

    フリート「『大国主大神っ!!』」



    刀身が翡翠色に輝き、剣先が日向の身体に深々と突き刺さった



    苗木「!」


    『パアアアアアァァァァァァッ……』



    苗木「えっ?」



    突き刺さった傷口から出てきたのは、真っ赤な血ではなく真っ黒な霧状の液体。


    それは空気中に分散し、風に混じって消えた。



    苗木「今のは……」

    日向「う………」

    苗木「! 日向くん!」



    そばにいたフリートを押しのけ、我先と苗木は日向に駆け寄る


    息がある……さっきまで意識すら無かったのに



    フリート「驚かせてすまない」

    フリート「今のは体内の傷やウイルスを形にして体から排出する技なんだ」

    アレス「ようは回復能力か……」

    フリート「まぁ、体力の回復とまでは行かないけどな」



    「はは」と頭を掻きながらフリートは言う。



    苗木「あ、ありがとう!」

    フリート「礼を言われるようなことはしてないよ」


    優しい声で返答を済ます。


    そして、今度は殺気と気迫に満ちた鋭い眼光がゼウスを睨んだ



    ゼウス【フッ……余計な真似を……】

    苗木「許さない……!」

    苗木「今度は……僕らが相手だっ!」



    この世界最強を誇る神に向け、苗木はマルチ・ロッドを抜き放った
  24. 24 : : 2014/06/20(金) 23:43:28
    ゼウス反則やろ..........神て.....
    苗木頑張れ!

    期待♪
  25. 25 : : 2014/06/25(水) 19:32:43
    凄い...期待です!
  26. 26 : : 2014/06/26(木) 14:40:48
    苗木「色能力……!」

    苗木「【ホーリーランス】ッ!!」



    先程と同じく、ロッドの先端から放たれたのは全てを貫く光の槍!


    空気を裂き、その光は迷いなくゼウス目掛けて突き抜ける!



    ゼウス【無駄だ……】

    ゼウス【ザ・メイク……(創像)】



    手のひらから滲み出てきた重油のようなドロドロの液体が何かを形成していく……



    ゼウス【『アイギス』ッ!!(女神の盾)】



    重油ようなドロドロのそれは、銀と宝石に縁取られた巨大な盾を形成した!


    ………そして、




    『ガキイィィィンッ!!』



    銀の盾を前にし、光の槍が砕け散った



    ゼウス【フッ……残念だったな】

    ゼウス【いくら強化されようと神には勝てない……!】

    フリート「ソイツはどうかな?」

    ゼウス【!?】



    死角。


    そして、苗木の攻撃に気を取られていたゼウスは気づくはずもない。


    完全に背後をとった!



    フリート「英雄剣……奥義!」

    フリート「『天照大御神』ッ!!」

    ゼウス【間に合わ……】



    日輪の如くの光を放つ黄金の刃が、ゼウスの背後を渾身の力で斬りつける!



    ゼウス【ヌグッ!?】



    勢いに乗せられなすすべも無く、ゼウスの身体は勢い良く吹き飛ぶ!



    フリート「アレス!」

    アレス「心得た……」



    微小を浮かべるアレスの右腕が漆黒に燃え盛る


    熱い……遠くにいるコチラまで火傷するほどの熱量!



    アレス「影炎最終炎………」

    ゼウス【!】

    アレス「『終炎』ッ!!」



    鬼の形相を思わせる巨大な暗黒の紅炎。


    火力が更に倍加し、右手が小型の恒星と化すっ!!



    アレス「ヌオオオオオリヤァァァァァッ!!!」



    一撃。



    そして爆発……。



    否!ソレは惑星と惑星との衝突……



    正に……ビックバンッ!!




    『ボゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』



    塔の外壁を殆ど吹き飛ば……いや、焼き尽くし、破壊し尽くした!



    苗木「うわぁっ!?」

    日向「っ……!」

    フリート「コレが…アレスの実力……!」

    アレス「ハアアアアアア………」

    フリート「っ!?」



    アレスは頭上で両手を組んでいる。


    拳は絶えず燃え続け……燃え盛っている。


    つまり……まだ攻撃は終わっていない!



    フリート「やばい!みんな伏せろ!」

    アレス「ラスト・ソウルッ!!」



    両拳の間に形成されたのは、紅と漆黒を混ぜ合わせたような赤黒い太陽ッ!


    それを自慢の豪腕で地に伏せる神目掛けて叩きつける!!



    アレス「【テオ・プロミネンス】(王者の恒星)ッ!!!」


    『バゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』



    雷のような黒い火花と紅い火花が周囲一帯に轟き、放電。



    苗木「危なっ!」

    日向「マズイぞ……コッチまで巻き込まれる!」

    フリート「二人共俺の後ろに!」

    フリート「『英雄剣……』」

    フリート「『須佐之男命』ッ!!」



    刀身が紫に染まり、剣から噴き出した叢雲が三人を護るシールドと姿を変えた。



    フリート「くっ……!?なんて力だ!」



    コレがアレスの本気……



    フリート「お前がラスト・ソウルまで使うなんてな……」



    過去にも一度、アイツが禁断奥義を使った事があった……。



    フリート「確かあの日は……森で奇襲を受けた時だったけ………」


  27. 27 : : 2014/06/27(金) 17:13:35

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━







    『クク……剣聖さんも偉くひ弱になったものですな〜?』


    フリート『くっ!』

    ティアラ『はぁ……!はぁ……』

    アレス『ッ…ティアラがエネミーの毒に侵されていなければ…!』

    『トドメだぁっ!』

    『『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』』



    首領であろう男の声に猛者たちが一斉に畳み掛けるっ!



    フリート『!』

    アレス『フリート……ティアラを連れて逃げろ』

    フリート『何言ってんだ!お前一人置いていけないだろ!?』

    アレス『行けっ!』

    フリート『!』

    アレス『こんな屑ども……俺の敵ではない』

    フリート『……分かった』

    フリート『死ぬなよ!』

    アレス『クク……誰にモノを言っている』

    『あ!一人逃げたぞ!?』

    『逃がすか!追えっ!』

    アレス『させるかぁっ!!』

    『ごはぁっ!?』

    アレス『この先には……いかせんっ!』

    アレス『【ラスト・ソウル】ッ!!』

    『『カッ!!』』









    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━










    数十分後、俺達が戻ってきた時には『森』というモノは無かった。



    あったのは真新しい焼け野原。


    足元に転がっている人型の炭。


    そして……ただ立ち尽くすアレスの姿……。



    その技がどんなだったのかは直接には見ていない。


    だけどコレだけは分かる。



    あいつ……アレスは俺達を守る為に自ら禁技を使った。


    アレだけ使うことを拒んでいた禁断奥義を……




    コイツはこういう男なんだ。



    俺はあの時、改めてアレスという男を知った………。






  28. 28 : : 2014/06/27(金) 17:14:58
    >>24

    >>25


    コメントありがとうございます!
    これからも頑張ります!
  29. 29 : : 2014/06/28(土) 19:02:39
    アレス......いいやつやなぁ(泣)

    期待です♪
  30. 30 : : 2014/06/29(日) 13:36:55
    雑草魂さんの作品はどれもホンとに面白いです!!
    テスト期間中なのに読んでる私はなんなのでしょう?
    それは雑草魂さんの作品が面白すぎるからです!
    ダンガンワールドは全章Googleのお気に入りに追加させていただきました!
    これからも期待してます!
  31. 31 : : 2014/07/01(火) 07:33:09
    >>30


    うわああ!本当ですか!?
    ありがとうございますっ!!


    最後の最後まで一生懸命頑張りますので、これからも応援よろしくお願いします!
  32. 32 : : 2014/07/01(火) 18:33:22
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



    つまり、今のアイツは本気で俺達を……この呪われた世界を救おうとしている。



    ……やっぱり……いつまで経ってもあの時と変わらない。



    アレス……お前は俺の………




    「親友」だ。





    『ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!』



    攻撃の終止符とも言える爆音が轟く。


    塔……いや、俺達のいた「塔だった」物……。



    外壁は殆ど壊滅。


    内側は 業火によって耐えきれず、ドロドロの液体と化していた。



    アレス「ハァ……!ハァ……!」



    肩で大きく呼吸を繰り返すアレス。


    その周辺に生命の気配はなく、ただ原型を失った何かがブスブスと黒煙を吹き出していた……



    アレス「ウグッ……!?」



    呼吸の最中、口から大量の吐血を吐き、アレスの巨体が瓦礫の残骸に沈んだ。



    フリート「!? アレス!」



    我に返ったフリートは大急ぎでアレスの元へ脚を走らせた。



    【ラスト・ソウル】……。


    何度も言うがそれは使用者の一部を生贄とし、発動する禁断奥義。



    発声の制限、全筋肉の断裂、寿命の激変………。


    代償は発動する能力に比例するが、どれもとてつもない苦痛や痛みを伴う。



    この色、この感触……多分この塔は黒曜石で作られていたのだろう。


    それをここまで溶かし尽くし、焼き尽くす程の大技……何を贄としたのか想像もつかない。



    フリート「アレス……」



    全身は焼き焦げ、皮膚は燃え尽き、全身は重度の火傷に侵されていた。



    フリート「あの時と同じだな……」



    過去に禁断奥義を使った時も、アレスの身体は今の様に焼き焦げていた。



    恐らく……代償は【全身の皮膚】


    己の皮膚を燃やし、超絶的な火力を生んだ【テオ・プロミネンス】(王者の恒星)



    それだけの高い犠牲にアレスの身体が持つ筈が無い。


    虫の息のような呼吸でアレスは植物人間のように静かだった……。



    フリート「ありがとう……今すぐ回復能力を使える奴を見つけるからな」

    【ならば私がいい所を紹介してやろう……】

    フリート「ッ!?」

    苗木「なっ……!」



    絶望━━━━。


    その一言に相応しい光景だった。



    【フハハハハッ……偽りとは言え、流石は元D・W支配者……】

    ゼウス【やるではないか……】

    日向「コイツ……不死身か!?」



    アレだけの火力だぞ!?


    黒曜石を溶かし尽くすような業火だぞ!?


    それは太陽を正面から受けたと言っても過言ではない膨大な熱量!



    ゼウス【あぁ……流石に効いたよ】

    ゼウス【お陰でまた残機を一つ、失ってしまったがね……】

    フリート「! そうか……確かコイツにはもう二つの命が……!」

    ゼウス【もうアレスにあの技は撃てない……】

    ゼウス【そしてもうここに私の残機を減らせるような実力者はいないと見た……】


    ゼウス【フフッ……さぁ、第二ラウンドと行こうか!】



    アレスは戦闘不能……。


    日向君は心身ともに限界が来ている…


    強化されているとはいえ、苗木君の力では奴に敵わないのは確認済み……。


    そして……俺も今の能力で大分身体にガタが来てる……



    マズイ……マズイぞ……ッ!




    ゼウス【人間の割には良くやった……】

    ゼウス【楽しませてもらった褒美にウヌらには最高の制裁を与えてやろう……!】


  33. 33 : : 2014/07/06(日) 08:48:19
    そんなんありかよ!
  34. 34 : : 2014/07/07(月) 00:30:39
    ゼウス【さぁ……フィナーレと行こうか……!】



    差し向けられた神の右手に濃度の濃い、黒霧が渦巻く………。



    ゼウス【ジ・エンド………】

    フリート「ッ…」

    『『ドゴオオオオオンッ!!』』



    死を覚悟した直後、フリート達の後ろの壁が崩壊した



    フリート「っ!?」

    ゼウス【!】

    大和田「苗木ぃ!無事か!?」

    七海「日向くん…!」

    霧切「苗木くん!」

    苗木「霧切さん……みんな!」

    ゼウス【ほう…?あの二原帝や四原王が敗れたか……】


    田中「何だ……新手か!?」

    左右田「て、てかそこに倒れてるのってアレス!?」

    九頭龍「全然状況が把握できないぞ!てかその金髪誰だよ!?」

    フリート「細かい話は後でする、だから今は協力してほしい……!」

    田中「フン…邪気は感じぬ、その言葉に偽りは無いようだな……」

    石丸「よし!我らジ・ホープの力、見せてやろうではないか!」

    ゼウス【雑魚が……邪魔をするなぁっ!】



    一時標的を変更。


    右手に集束した黒霧は苗木達を無視し、霧切達に襲いかかる!



    左右田「なんだ!?」

    ソニア「ま、真っ黒な霧?」

    霧切「気をつけて!何かくるわ…!」

    ゼウス【ザ・メイク……(創造)】

    ゼウス【プリズンッ!!(牢獄)】



    黒霧は一同を覆い隠し、突如眩い光を発した!



    『『カッ』』




    苗木「うっ…!?」

    フリート「くっ!」



    暫くすると光が止み、一同がいた場所には黒い水晶玉が転がっていた……



    苗木「っ!?」

    フリート「これは……!!」

    日向「お前……一体何をした……?」

    ゼウス【見ての通り閉じ込めてやったのさ……】

    ゼウス【その水晶にな】

    苗木「なに!?」



    慌てて散らばる水晶に駆け寄る!



    苗木「!?」

    霧切(なに……これ!……)

    左右田(だ、だ・し・て・く・れ〜〜〜!!)

    苗木「みんな…!」



    光に照らされ、うつったのは水晶の中に閉じ込められた皆の姿。



    ゼウス【無理に壊さないほうが良い……その水晶玉が割れたら最後、中のものを皆死ぬ】

    フリート「卑怯者め!」

    苗木「?……あれ……」



    17,18,19,………


    やっぱり……数が合わない。


    短い時間内とは言え来てくれた仲間の顔くらいすぐに覚える筈だ。



    だけど……おかしい。


    もし全員が水晶になったとしたなら……



    苗木「三つ足りない……?」

    『ザシュッ!!』



    その疑問と肉を裂くような音は同時だった。



    ゼウス【…ッ!?】



    ゼウスの脇を斬り深く裂いたのは、鮮血に染まるナイフ。


    頭部には超重量のある豪快な打撃がゼウスの頭を壮大にぶっ飛ばした!



    ゼウス【ヌグッ!?】


    不意打ちによる二つの攻撃に堪らず神の巨体が膝をついた



    苗木「!」

    ゼウス【馬鹿な……!あの網の目のように広げた黒霧をかわしたのか!?】


    「かわさなくても……風でかき消せる…」

    「私様をナメないで下さい。死にたいのですか?」

    日向「お、お前らは……!」



    「さぁて、色々な恨みこみで絶望させてやろうか……」

    「それが私達の才能だからね……!」















    江ノ島 戦刃
    「「絶望シスターズ……絶望執行っ!!」」






  35. 35 : : 2014/07/07(月) 12:31:52
    超高校級のギャルにして絶望……江ノ島盾子。


    そして、超高校級の軍人にして絶望……戦刃むくろ。



    二人の参戦により空気は明らかに変わった。



    ……いける、いけるかもしれない!



    二人ならこの状況を打破出来るかもし………






    江ノ島「何絶望の後にシスターズとか付け足してんだよ!ぶっ飛ばすぞ残姉!」

    戦刃「いいじゃん!いいじゃん!絶望執行だと語呂悪いもん…!」

    ゼウス【……………】


    フリート「な、仲間割れか……?」

    苗木「あ、ははは………」








    出来ないかもしれない……。



  36. 36 : : 2014/07/08(火) 16:05:04

    江ノ島「あ〜もう頭にきた!」



    メイスを振りかざし、ゼウス目掛けて走り出す!



    苗木「江ノ島さん危ないよ!」

    ゼウス【フッ……確かお前は第二階層でアダムに殺られた奴だったか?】

    ゼウス【二分の一で即死を齎す能力……確かに聴こえは恐ろしいが!】

    江ノ島「!」



    横から頭部めがけてスイングされたメイスを超人的な跳躍力で交わす!



    ゼウス【当たらなければ意味はあるまい!】

    ゼウス【ジ・エンド……!】



    右手が黒く染まり、またもやあの異様な黒霧が辺りに充満した!



    ゼウス【ファングッ!!(魔狼の鋼牙)】



    黒霧から突き出てきたのは巨大な顎と化した右腕。


    触れもすれば瞬時に獲物を喰い殺すようなその牙は真っ直ぐ江ノ島へと喰らいかかる!



    江ノ島「っと!」



    メイスを横向きに持ち替え、口の中に持ち手を突っこむことで攻撃を防ぐ



    江ノ島「……あっぶな…」

    ゼウス【フフフ……大した動きだが、いつまで持つかな?】



    強靭な顎と牙は深々と棒に食い込み、徐々に亀裂が走る


    メキメキメキメキ…………!



    江ノ島「あ〜あんたもしかしてコレが私の色具とか思っちゃってる?」

    ゼウス【何…?】

    江ノ島「気づいたんだよね〜ほら、私様の能力ってさ、二分の一とは言え即死とかチート過ぎない?」

    江ノ島「それで気づいちゃったって訳、この色具の真の力に!」



    『『コオオオオオオオオオオオ……』』


    ゼウス【!?】



    江ノ島の話が終わると不意にメイスが黒く溶け出した。


    そしてそれは黒いスライムの様にうねり、蠢き、姿を変えていく………



    フリート「!?」

    ゼウス【何だ…!?その色━━━━



    『ザンッ!!』



    清々しいほどの断ち切り音……。


    血を吹き出し、宙を舞っているのは白き異形の腕。



    ゼウス【ヌグッ!?】

    ゼウス【グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア】



    猛烈な激痛と一撃に、ゼウスは苦痛の咆哮をあげる。



    江ノ島「これが……私様の本当の色具……」



    それは限りなく黒に類似した紫の両鎌……。


    そして白銀の刃に伝う、神の鮮血。



    江ノ島「魂を刈り取る死神の鎌……【ヘルズ・デスサイズ】なのです!」

    ゼウス【ぐうう……!】




    フリート「あれは……!」

    アレス「『神具』……」




  37. 37 : : 2014/07/08(火) 20:57:15
    フリート「アレス!大丈夫なのか!?」

    アレス「こ、こんな状況で………大人しく……寝てられるか………」

    アレス「それ……より、あの江ノ島とやらが持つ武具……あれは間違いない………神具だ……」

    苗木「神具?」


    アレス「俺が……創り上げた………この世に……二つしか存在しない………最強の武具……」

    アレス「その性能は通常の色具の性能を遥かに凌駕する……」

    アレス「まさか何万と存在する色具の中で、あの色具を当てるとは……」


    江ノ島「しゃあ!行くぞ残姉!」

    戦刃「うん……」



    互いに武器を構え、二人は再び左右から走り出す!



    ゼウス【ッ…!笑わせるな!】

    ゼウス【人間風情が神に逆らおうなど……武力をわきまえよ!】

    ゼウス【ザ・メイク……】

    ゼウス【リバイブッ!(復元)】



    左腕から放たれた黒い粘液が斬られた傷口に浴びせられる。


    そして……



    ゼウス【ふぅ……】



    粘液は徐々に形取り、遂にそれは斬られた筈の右腕へと変化した。



    江ノ島「!」

    戦刃「再生した…!?」


    アレス「いや、正確には創ったのだ……奴本体を叩かぬ限り……戦いは終わらん……!」





  38. 38 : : 2014/07/10(木) 17:35:23
    かなりテンションあがりました!
    これからも期待です!
  39. 39 : : 2014/07/15(火) 21:01:58
    絶望シスターズかっこいいです!

    頑張って!
  40. 40 : : 2014/07/23(水) 17:10:35
    ウィード!
    雑草さんのせいで
    夏休みの宿題が出来ない!
    だから早く完結させて!!
  41. 41 : : 2014/07/29(火) 01:09:05
    >>38

    >>39


    ありがとうございまーすっ!
    応援ありがとです!


    >>40


    ウィードっ!

    ご愛読ありがとうございます…!大変感謝です!
    なんとしても頑張って書き終えますね!


  42. 42 : : 2014/07/29(火) 01:09:17
    ゼウス【小癪な真似をしおってッ!!】

    ゼウス【ジ・エン……ヌグっ!?】



    右腕を床に押しつける直前、ゼウスの体を強烈な突風が容赦なく殴りかかる!



    ゼウス【ッ…!】

    戦刃「……させない」

    戦刃「色能力……『鉄刃旋風ッ!』」



    両腕を豪快に薙ぎ払い、出現したのは鉄の刃を含んだ常人程の大きさを誇る竜巻!



    ゼウス【ヌゥっ!?】



    風がゼウスを包み、鉄の刃が凄まじい速度で止むことなく体を切り刻んでいく。



    ゼウス【…!………ッ!!】

    戦刃「トドメ……!」



    ゼウスへと踏み出す足は前へと飛ばず、何故か後ろへ地を踏みけった。


    飛び出す寸前、戦刃はあることに気づいたのだ。



    戦刃「左手が……!」



    いつの間にかゼウスの左手が床に張り付いている……全く気付かなかった。



    ゼウス【フフフ……消すことだけが私の能力と過信するなよ……!】

    ゼウス【ザ・メイクッ!!】

    ゼウス【『パルテノンッ!!』(神々の柱)】



    『ドドドドドドドドドドトドドッ!!』



    またしても床が鈍く輝き、床ぞこから大量の柱が突き出す。



    戦刃「しまった……!囲まれた!」



    柱は体から一メートル範囲で戦刃の体を囲む尽くしていた。


    上から脱出を試むも柱が長すぎて到底届かない…!



    戦刃「ッ…!」

    ゼウス【壊そうとしても無駄だ……その柱は絶対に砕けないし、折れもしない……】

    ゼウス【ツァッ!!】



    強引に竜巻を吹き飛ばし、ゼウスは次のモーションに移る



    ゼウス【ジ・エンド……!】

    ?「………させないよ」



    またこのパターンか……いい加減イライラする!


    後ろからの不意打ち……そんな真似が何度も神に通じるとでも………



    ゼウス【思ったか!?愚か者めがぁっ!!】



    差し向ける右手を体と同時に回転。

    そして遠心力を加算し、声のする後方へ握った右拳をうち放った!



    ゼウス【ハアアアッ!!】

    『ガキィィィンッ!!』



    金属音が鳴り響き、ゼウスの右腕が何かを吹き飛ばした。



    ?「かはっ……!」



    新手か……?逆光のせいで顔が見えん……。


    だとしてもおかしい……何故こうも簡単に網の目のように張った私の能力を……



    ゼウス【っ……何!?】

    ゼウス【わ、私の右腕が……】



    ドス黒い……白く神々しいオーラを放っていた異形の腕が黒くドス黒く染まっている。



    苗木「あっ!」



    欠けていたのは三人だった……。


    一人は江ノ島さん……もう一人は戦刃さん………。


    もう一人いた………!能力に干渉せず無効化できる人が!



    ?「【ダーク・バイト】(闇の侵食)……」

    ?「これで君の腕は使い物にならないし、能力も使えない……」

    ?「はは、バレちゃったけど不意打ち大成功だったみたいだね…!」

    ゼウス【ヌッ……グウウウウ……!!】



    相手の色具、能力を封じ相手の戦力を無効化する能力者。



    ゼウス【狛枝……凪斗…!】

    狛枝「はは、神様に名を呼んでもらえるなんて光栄だなぁ!」



    そう言って笑顔で歩み寄る狛枝。


    ……そして!



    狛枝「……と言うとでも思った?反吐が出るよっ!!」



    笑顔のフェイクで完全に虚をついた狛枝の右膝蹴りが炸裂っ!



    ゼウス【ッ!?……ガは……!】

    狛枝「さぁ、堕ちてもらうよ……偽りの神様?」


  43. 43 : : 2014/08/01(金) 22:26:20
    ゼウス【ヌグ……!】



    なんだこの蹴りは……!


    これがガキの放つ攻撃か……!?



    狛枝「ほら……いくよっ!」

    ゼウス【ッ!】


    江ノ島「ったく、何馬鹿やってんのよ」

    戦刃「あっ盾子ちゃん……」


    『ヒュン』


    戦刃「うわぁっ!?」



    何の忠告も無しに江ノ島のデスサイズが頭上で風切り音を奏でる



    戦刃「あ、危ないよ盾子ちゃん!走らなかったら今頃死ん━━━━」

    戦刃「……あれ?」



    今、頭の上を過ったんだよね?


    あれ?私の周りには確か頑丈な柱があったんじゃ………



    『ズズゥゥン……』



    その思考が浮かんだ直後、重みのある音と同時に目の前の柱が地へと沈んだ。



    超硬度を誇り、どんな攻撃も防ぐと言われた神の柱が……



    江ノ島「いかに硬くても、それを構成する繊維そのものを切断し無力化する………」

    江ノ島「それが私様の色能力なのよ、覚えとけ残姉」

    戦刃「お、おぉぉぉ……!」

    江ノ島「てか、あの希望厨無事だったわけぇ?あんな奴と共闘とかそれこそ反吐が出るんですけど〜」

    戦刃「あっ苗木くん、コレ……」



    そう言って投げ渡されたのは水色の液体が入った手のひらサイズの二本の小瓶。



    苗木「これって……」

    アレス「天の雫か!?」

    フリート「確か…究極の回復アイテム……」

    戦刃「ここに来る途中拾ったの、二人分しかないけど……使って」

    苗木「ありがとう!助かるよ!」

    江ノ島「礼言ってる暇あんならとっとと回復してとっとと加勢しなさいよ、斬られたいの?」

    苗木「うん。…そうだけど……」



    二人分……誰に飲ませたら………。



    フリート「俺はいい、苗木くんと日向くん……二人で飲んでくれ」

    苗木「だ、だけど……!」

    アレス「今、この状況を打破できる可能性を持つ者……それは貴様らだけだ……」

    アレス「貴様ら達にこそ……それを飲む資格がある……!」

    苗木「…………」

    日向「………わかった」

    日向「まだお前の事信用した訳じゃないけど……俺達も仲間をこのまま見殺しには出来ない!」

    日向「苗木……」

    苗木「日向くん……」



    言われるがままに二人は小瓶を飲み干した。


    ………のだが………。



    日向「げぇっ!?まっず!」

    苗木「く、腐ったミルクみたいな味だね……」

    アレス「それは使用者が最も嫌いな味になるよう設定してある……」

    アレス「………だが」



    『ポオオオオォォォォ……』



    日向「!?」

    日向「なんだ!?体が光って……!」

    苗木「それだけじゃない……力が漲ってくる……!」

    アレス「使用者に絶対的な回復力も治癒力をもたらす!」




    狛枝「うぐっ!?」

    ゼウス【ッ……消滅が使えなくとも、まだ左手が残っている!】

    ゼウス【先ほどと同じ原理で右腕を創れば……!】



    『『カッ!!』』



    ゼウス【何!?】

    日向「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

    苗木「うあああああああああああああああああああああああっ!!!」



    熱い!……心臓が燃えてるみたいに………!!


    さっきもこんな熱さを感じた……だけどこれはもっと熱い!



    アレス「行け……ジ・ホープ…!」

    ゼウス【また貴様らか………失せろっ!!】

    ゼウス【ザ・メイク………】

    ゼウス【プリズンッ!!】



    左手から噴き出した見覚えのある黒霧っ!


    霧切達を封じ込めたあの技だ。



    戦刃「苗木くん!」

    江ノ島「あーあ、終わったね〜」



    日向「色……能力……」

    日向「『プラチナ・ブレイクッ!!』」



    『ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!』



    それは黒霧を上回る白鉄の光っ!


    光の刃は山のような霧を断ち裂き、掻き消す!



    ゼウス【な……!?】

    日向「知らなかったのか?」

    日向「俺の能力は……能力を無効化する能力だぜ」

    江ノ島「あれあれ〜?もしかして知らなかったの〜?」



    ゼウス【ッ……ガキ共がぁぁぁ………!!】


  44. 44 : : 2014/08/02(土) 08:49:28
    流れ的にもう少しで終わりやん!
    Σ(・□・;)
    まだ終わらないでくれ〜
  45. 45 : : 2014/08/07(木) 12:13:31
    >>44

    そんな言葉が欲しかったです…!!
    ありがとうございます!


    最後まで頑張り尽くしますね!
  46. 46 : : 2014/08/07(木) 15:39:26
    うわ~!もうすぐ終わっちゃうよ~
    一日で全部読んでたら親に怒られちゃったよ~
    だけど頑張ってください!ウィード!
  47. 47 : : 2014/08/08(金) 00:00:48
    やっと追い付きました。
    かなり素晴らしい神SSですね。感動しました!
    この先も頑張って下さい。応援してます。
    最終章。無理をせずにゆっくり更新
    して下さい。
    途中参加で長々とすみませんでした。
    ラストスパート応援しています!

    ウィード!
  48. 48 : : 2014/08/08(金) 00:14:09
    >>46

    ありがとうございます…!
    ウィード!


    >>47

    ウィードっ!
    応援……ありがとうございます…!!
  49. 49 : : 2014/08/08(金) 00:14:19
    苗木「色……能力!」

    苗木「『ホーリー・ランスッ』!!」

    ゼウス【クッ…!?】



    自分を貫かんと襲いかかる光の槍を身をそらすことで危機一髪回避。



    ゼウス【おのれぇ……人間の分際でぇぇぇっ!!!】



    屈辱と怒りの怒号唸りあげるゼウス。


    そして同時に残った左腕……正式には左手の指から大量の鎖を射出した!



    苗木「!?」



    鎖は生き物のように動作し、あっという間に苗木の四肢を絞め上げた。



    苗木「し、しまっ……!」

    ゼウス【フハハハハハハハッ!!『咎人の鎖』……如何なる力をもってしてもソレを破壊することは不可━━━━



    『ザンッ』



    江ノ島「ふぅ〜ん……破壊することは……何だっけ?」

    ゼウス【なっ……!?】

    江ノ島「絶望的よね〜!こんな力があるなんて!」

    江ノ島「何人をも晩餐せし死神の能力……」

    江ノ島「『ヘルズ・スラッシュ』(命殺の波動)」



    軽く薙ぎ払っただけの鎌は鈍く光り、三日月を思わせる黒き真空波を放つ!



    ゼウス【ッ!?】

    ゼウス【ザ・メイク……!】



    一瞬戸惑ったものの瞬時な反応でゼウスも迎撃の体制に入る!



    ゼウス【『アイギスッ』!!】



    先ほど苗木の能力を打ち破った、絶対なる女神の盾。



    『ガキイイイイィィィィッ!!!!』



    同じく高い金属音と多量の火花を散らし、女神の盾は死神の刃を受け止める!



    ゼウス【ヌ……グウゥゥッ………!】



    砕けないだと……!?


    防いだ全てを砕き、灰となり地へと返す女神の盾の効果が発動しない……!?


    まだ何かあるのか……?


    いや、そんな筈は……!



    ゼウス【ッ!】

    江ノ島「ようやく、動きが止まったね〜?」

    戦刃「今度こそ……当てるよ!」

    狛枝「頼んだよ、苗木くん」

    苗木「うん!」



    「「「色……能力ッ!!」」」



    戦刃「『グレイ・スピアッ!!』」



    風が集束し生まれた、強風を唸る風の槍……そして!



    戦刃「苗木くん!」



    それを撃ち投げ、先陣を切る苗木に譲渡!



    苗木「戦刃さんの……加速の力…!」



    風の鎧を纏い、苗木の速度が音速へと変わる……。



    日向「コイツも受けとれっ!」

    日向「『プラチナ・ブレイクッ!!』」



    白き光を受け、苗木の体が白く輝く!


    そして……体を光のベールが優しく包み込む……。



    苗木「日向くんの……能力無効の力……!」

    江ノ島「コイツももらっときな!」



    鎌をもう一振りし、黒き刃は苗木のロッドへと譲渡された。



    ロッドが一瞬黒く発光し、どす黒いオーラが迸る!



    苗木「江ノ島さんの……絶対の破壊力……!!」

    苗木「これで……終わらせるっ!!」

    ゼウス【ヌッ……グゥゥゥゥッ!!】



    クソッ……刃を防いでるせいで見動きが取れん……!



    ゼウス【お、オノレェェェェッ!!!】

    苗木「色……能力っ!!」



    当たってくれ!


    これで終わってくれっ!!



    苗木「みんなの力……この一撃にその全てを………!!」

    苗木「真・色能力ッ!!」

    ゼウス【何ぃっ!?】

    苗木「『グングニルッ!!』(英雄の神槍)」



    ロッドが黄金に……神々しく、雷を爆発させるっ!!



    防ぐな……当たれぇぇぇぇっ!!!



    放たれた一閃の光。



    その光に誰もが叫んだ。



    誰もが全てを懸けた。



    ゼウス【グアッ……!?】



    絶対強度の盾が砕け散る。


    ゼウス【ぐっ……ヌゥゥゥゥ……!!!】

    ゼウス【抑えきれな……!】




    その瞬間。


    世界から音が消えた。



    ゼウスが何を言っているのか分からないが……笑っているのか……?



    でもコレだけは確かだ………。


    苗木の放った光の槍は……ゼウスの盾を……神を貫いた。




    そして……世界は…………神々しくて……一生忘れられないような………美しい光に包まれた………。




  50. 50 : : 2014/08/10(日) 07:22:16
    雑草さん、ウィードです!
    とうとう終わりがすぐそこまで...
    終わって欲しくないのに...
    最後まで頑張って!
  51. 51 : : 2014/08/13(水) 11:41:28

    光が止み、各々の視界に写ったのは一直線に外へ突き抜けた豪快なライン。


    その穴から覗く青空は爽快で……美しくて……雲一点のない快晴だった。



    苗木「……はぁ……!はぁ………!」



    思わず感想に浸ってしまったが、体に力が入らない。


    ヨダレが思わず出てしまいそうな激しく荒い呼吸。


    丸一日……いや、三日間飲まず食わずでマラソンしたような感覚が体を襲う。



    苗木「……はぁ!……ま、まだ……!ここで倒れたら………!」


    無理にでも立ち上がってやる……まだゼウスは生きてるかもしれない。


    立ち上がって足の骨が折れても、砕けても、立ち上がらなくてはならない!



    苗木「ああああああああああっ!!!」

    「もう良いよ、苗木……」



    一か八か全身に力を入れようと身構えた途端、優しくて澄んだ声がそれを阻んだ。



    苗木「……日向……くん?」

    日向「もう休んでろ、全部…終わったからさ」

    苗木「え……」



    視線を微笑む日向から離すと、仲間達がいた。


    江ノ島さん達だけじゃない、あの忌々しい水晶になった者達もが苗木の前で勢揃いしている。



    霧切「お疲れ様……苗木くん」

    大和田「全く、大した野朗だぜ」

    澪田「誠ちゃん!チョーカッコ良かったっすよ!」



    霧のように優しく降りかかる仲間のエール……。


    それがどれほどの価値があるのか言うまでもなかった。


    長かった……本当に……



    九頭龍「おいおい、何泣いてんだ〜?」

    苗木「ご、ごめん…!」

    「「あははははっ!!」」





    フリート「………終わったな」

    アレス「……あぁ……」

    フリート「どうした?嬉しくないのか?」

    アレス「…………」





    狛枝「ほら、日向くんも!」

    日向「は、はぁ!?何がだよ」

    七海「苗木くんにお疲れ様くらい言ったほうがいい……と思うよ?」

    日向「んなこといってもなぁ……」



    こっ恥ずかしいのか、頭を掻きむしりながら日向はゆっくりと苗木に歩み寄る。



    霧切「……?」ピクッ

    舞園「霧切さん?どうかしました?」

    霧切「いえ……何でも無いわ」



    何……今の?


    殺気…?いや、そんな筈は……。



    日向「苗木…」

    苗木「い、いいよ!日向くん!そんな無理しなくても……!」

    日向「いや……言わせてくれ】

    苗木「う、うん……?」



    ……ん?何だろう、今の違和感…。



    日向「苗木……」















    日向【死ね……】

    『ドシュッ』




  52. 52 : : 2014/08/13(水) 12:17:39
    ええええええええええええええゑ!?日向君!?何やってんのおおぉぉぉ!?
  53. 53 : : 2014/08/13(水) 23:09:29
    日向……?どうしたの……?
  54. 54 : : 2014/08/14(木) 12:14:20
    あぁー、カムクラモードっすか?
  55. 55 : : 2014/08/14(木) 14:11:27

    血………。


    体を貫いた真っ赤な血が、刃を伝って足元に血溜まりを作る……。



    アレス「グフッ…!?ゴホッガハッ……!!」

    苗木「アレスッ!?」

    日向【チッ……】

    大和田「日向テメェ!!」

    九頭龍「何しやがんだよ!?」

    七海「まさかモード・カムクラ!?……でも日向くんが持ってるのはプラチナ・ブレイカーだし……!」

    フリート「アレス!おい!しっかりしろ!」



    血が止まらない…!


    ただでさえ重症を負っているのに…!



    日向【フフ……クククッ………】

    苗木「日向……くん?」

    日向【アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!】



    その合成音声のような擬声は日向では無い……日向と誰かが同時に喋っているような、


    この声……まさか………!



    日向【私が死んだかと思ったのか?平和な奴らだな!】



    そんな………!



    フリート「ゼウスッ!?」

    舞園「えっ!?」

    豚神「何だと…!?」

    日向【我が能力の一つ、『ユニゾン』……自身の魂を対象に縛り付け、憑依できる】

    日向【まぁ……一度しか使えないのが難点だがな?】

    苗木「くっ…!」

    日向【おっと、良いのか?大切な仲間の体を傷つけるのか?】

    日向【まぁ……私が憑依したのは「コイツでかなあってコイツでは無い」がな?】

    苗木「……?」

    七海「ま、まさか……」



    日向【一度体感してみたかった……】

    日向【コイツに眠る最強の力を……!!】


    日向【モード………カムクラッ!!】



    『『ズオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ……』』



    周囲から黒い、ドス黒い煙が充満する……


    それはゼウスの身体に纏い、その身体を埋め尽くす…!



    日向【ハァっ!!】



    煙が爆散し、辺りに爆風が飛び散る!



    苗木「くっ……!」

    フリート「うぐっ!」



    日向【ハァ………】



    長髪……。



    紅の眼光……。



    そして、紫色に靡く紫髪………。



    七海「う……あ……」



    最悪だ……。


    アバター最強の人間と……最強の神が……混ざり合いソレは生まれた……。



    日向【モード・カムクラ……フォルム・ゼウスッ!!】




    戦いは……死をかけた戦いは………。


    悪夢となって再び蘇った……。




  56. 56 : : 2014/08/19(火) 09:48:30
    神座【ハァ〜〜〜ッ】

    神座【素晴らしい……これがこの者の持つ真の力か……!】

    神座【フハハハハハハハッ!!!素晴らしい……素晴らしいぞこの力はぁぁぁっ!!】

    アレス「なんて事だ……」

    苗木「日向くんが……」

    七海「ううん、髪の色が違うけど……あれはカムクラの人格。今の状態じゃ私達の声は届かないよ……」

    フリート「それに時間もあまり残って無いみたいだ」



    『ブシッ』


    ホースが破れるような音を聴覚が捉えたかと思うと 神座の額から真っ赤な血が流れ出ていた。



    神座【……?なんだ、コレは……】

    フリート「やっぱり……いくら力が強大でも肝心の器は生身の人間。このままでは日向くんの体は10分もしない内に崩壊するぞ!」

    苗木「えっ!?」

    舞園「そんな…!」

    神座【ほぅ……ならばその時はまた別の誰かに移るとするか】

    苗木「ッ!このやろう!」



    堪忍袋の緒が切れ、爆発を起こした爆弾の如く、苗木は駆け出す!



    十神「待て!苗木!」

    苗木「真・色能力っ!!」

    霧切「え?」

    戦刃「あの一瞬であの技を習得したの……!?」

    苗木「『グングニルッ!!』」



    螺旋を描く黄金のランス。


    一寸のブレもなくソレは神座目掛けて突き抜ける!



    大和田「正気かお前!?」

    舞園「中身は敵でも相手は日向君なんですよ!?」

    苗木「それなら平気だよ。この能力は悪そのものを貫く力……」

    苗木「だから希望である日向くんにダメージは当たらない!」

    神座【なるほど……考えたな】

    神座【ならばコチラも新たな能力を試させてもらおうか……!】

    アレス「新たな……能力だと」

    神座【冥土の土産に見るがいい!】



    色具を一旦鞘に収めると、ゼウスと化した日向は胸の前で両手を合わせ、集中を始めた。



    神座【ハアアアアアアアアァァァァァ…………!】



    合わさった両手に黒と白のオーラが混ざり合う。



    神座【我が消滅の力と創造の力……この2つが合わさると何が生まれると思う……?】

    苗木「?」

    神座【答えはッ!】



    叫び、合わせていた両腕を振り払った途端、辺りに強烈な重力が発生した!



    苗木「っ!?」

    アレス「がハッ!」

    フリート「こ、これは……!」

    霧切「体が……動かな……!」

    神座【創滅……。】

    苗木「………!?」

    神座【宇宙誕生の原理は習ったか?】

    神座【宇宙とは惑星と惑星の衝突で生まれた……言わば創られたモノと創られたモノが生んだ消滅!】

    江ノ島「あー……ごっめん、何言ってるか全然わからん」


    神座【こういう事だッ!!】



    ゼウスの遥か頭上に巨大な黒い渦が立ち込める。



    霧切「あれは……まさか……!」

    神座【重力が生んだ結晶……特とその身で受けるがいい……!】



    神座【『ゼロ・メイク』(創滅)……ッ!!】

    神座【ブラックホールッ!!(超重力波)っ!!】

  57. 57 : : 2014/08/24(日) 16:00:44
    当初の力……『ザ・メイク』(創造)は相手を捕縛する物体を生み出す能力……。


    耐久性度が高いが、捕縛する以外に能力を発揮しない為、主に時間稼ぎやチャンスを創る為に使用する。



    第二の力……『ジ・エンド』(消滅)……。対象を消し去る、消滅させる為の物体を生み出す能力。


    威力は絶対だが当たっても外れても何かに着弾した時点で効果を発揮する為、耐久力は皆無である。



    オマケにこの二つの能力は発動時に時間がかかる……そのロスの所為で何度コケにされたか………



    だからゼウスは考えた。

    何をすれば、どうすればその欠点を無くせるのか……。


    最強の肉体を持った今、それは不可能では無い。


    そして生まれた……二つが交わり……究極の混沌なる力が……



    耐久性に優れ、絶対の威力を誇る無敵の能力が……!




    神座【『ゼロ・メイク』(創滅)……】

    神座【ブラック・ホールッ!!(超重力波)】



    ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!



    苗木「す、吸い込まれる……!」

    霧切「こんな能力……どうやって対処すれば……」

    神座【フハハハハハハハハハハハッ!!!消えろ……消えろォォォォッ!!!】

    七海「本体を倒そうにも日向くんを攻撃なんて……!」

    弐大「ぬおおおおおおおおおおっ!!!」

    苗木「!」

    神座【ほぉ……この重力波の中を動けるとはな……】

    弐大「ラスト・ソウル『フルメタル』……自身の血液に含まれる鉄分を消費し、己を鋼鉄の肉体に変化させる……」

    弐大「どうじゃあ!この身体なら重すぎて重力も全く効かんわぁ!」



    ゆっくりながらも、その脚は確実に神座……ゼウスの元へと近づく。



    弐大「ヌッ……グウウウウウウッ!!?」

    神座【まぁ、確かに私の重力はお前に通じないようだが……何時まで持つかな?】

    弐大「ガフゥッ!?」



    吐血。


    それも普通の量ではない。明らかに異常を意味する量の吐血。



    九頭龍「弐大……!」

    神座【自身の血液に含まれる鉄分を使っているんだろう?だったらそれも時間の問題だな……フフフッ】

    弐大「ッ……ウオオオオオオオッ!!!」ダダダッ

    神座【ッ!?何……!?】



    歩くならまだしもこの重力波を走るだと!?


    何故だ……そんな筈は……!この身体は最強の肉体を誇る筈だ!



    (いつまでも調子に乗ってんじゃねええええええええっ!!!)



    神座【!!】

    (…俺の体から……出ていけ!)



    日向創……!?馬鹿な、意識は完全に閉じ込めたはず!



    神座【ッ……つくづく感に障るクソガキだ……!】

    神座【ならばいっそのことお前の人格を塗りつぶして……】

    神座【ハッ!?】

    弐大「オオオオオオオオオオオッ!!」

    神座【しまった!日向に気が取られて……!】

    弐大「目を覚ませええっ!!日向あああああっ!!!」



    弱りきっていても尚、その姿勢は一寸の隙もない。


    腰の回転、遠心力、それら全てを加算した右ストレート……


    さらに空圧を限界まで纏った巨大な豪腕が、神座の顔面にクリティカルヒットッ!!



    神座【あぐっ……ごハァッ!?……】



    大砲をゼロ距離で放ったかのような衝撃と爆発が鳴り響き、日向の身体が直角のラインを描き、地面に叩き込まれる!


    そして……それをはずみに重力波が消えたことを、一同は決して見逃さなかった。



    苗木「今だっ!」

    「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」」



  58. 58 : : 2014/08/25(月) 00:15:45
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





    日向(くそっ!……なんなんだよ、この真っ暗なところは!)

    神座(……何度も言いますが貴方の意思の中です。何度言えば分かるんですか?)

    日向(そういうことじゃない!どうすればこの空間から出られるかって話だ!)

    日向(というかお前もフワフワ浮いてないで手伝えって!てかなんで浮いてんだよ!?)

    神座(奪った能力の一つ、『アップダウン』(空中遊戯)です。これはなかなか面白い……)

    日向(はぁ……あのなぁ……)

    【ガキ共……調子に乗りおって……】

    日向(!?)



    上も下も分からない暗い空間に突如亀裂が走る。



    日向(なんだ!?)

    神座(………………)



    ビシッ……ビシシシシシッ


    バリィンッ!



    【…だがそれもここまで……今この場でその人格を塗りつぶしてくれる……!】

    日向(ゼウ……!?……いや、違う。お前は……)

    神座(みすぼらしい……元の姿に戻ってしまったご様子ですね)



    二人の目の前に現れたのは、あの神々しい姿がスッカリ掻き消えた一人の若者だった……。


    そう、当初の姿……グレイスである。



    グレイス【意志の中侵入するにはそれ相応のエネルギーを浪費するのでな……これが限界と言うわけだ……】

    グレイス【だが、神座……お前が私にその力を提供してくれれば、ゼウスとしての降臨も可能なんだがなぁ?】

    神座(………………)

    日向(…プラチナ・ブレイカーッ!)



    目の前に手を突き出す。


    すると空間が揺らめき、日向の目の前に白き刃が現れた。



    日向(……原理は神座と戦ったときと一緒か………)



    特にペナルティや制限はない。


    普通に……いつもどおりの自分で戦える……。



    日向(ただ、唯一違うのは……モードが使えないんだよな)



    モード・カムクラが使えない。


    それは現戦力において かなり痛い縛りだ……。



    なんせ日向は素の力でグレイスと戦ったことが無い。


    相手がいかに大きな力を持ってるのかはひと目で分かるが、肝心の自分の力量が未知数過ぎである……。



    日向(神座は参加する気無いみたいだしなぁ……)

    日向(さて、どうするかな……)



    珍しく落ち着いていた。


    もう見飽きたって言うと誤解を招きそうだけど……慣れてしまった。


    強い敵。強力な能力。圧倒的な戦力差。


    そんなものを何度も見てきてると自然と免疫が出来ていたようだ。



    日向(とりあえず最初は様子を見……)



    そう身構えた瞬間、右頬が風を感じたと思うとグレイスの身体が後方へと吹き飛んだ。



    日向(!?)

    グレイス(……ッ!!)



    瞬時に体制を変え、後方へ足を引きずりながらも何とか着地する。



    神座(……………)

    日向(かむ……くら?)



    正直意外だった。


    一番戦いにツマラナイだの何だの言って参加しないと思ってたのに……。



    神座(……勘違いはしないでください。ただこの方なら少しはマシな戦闘が出来ると思っただけです)

    神座(それに……貴方に死なれると色々と私にデメリットが多すぎますので……)

    日向(……あぁ……いくぞ!)




  59. 59 : : 2014/08/27(水) 01:43:09


    グレイス(くっ……ジ・エンド……!)

    グレイス(『ネメシスッ』!!)



    暗闇の一点が強く光り、それは落ちてきた。


    日向を一撃で瀕死に追い込んだ……あの紅き流星である!



    日向(だけど……今なら対応できる……)

    日向(色能力……プラチナ・ブレイクッ!!)



    避けず、逃げず、怯まず……日向はありったけの力で白き斬撃を打ち放った!



    『ズドオオオォォォォォォォォォ!!』



    双方の力が衝突し、辺り一面に爆風の嵐が吹き荒れる!



    日向(や、やった…!)

    グレイス(チッ……やはり力が……)

    神座(今のは当初に持っていた能力……どうやら能力までもが劣化しているようですね)

    神座(だったら……)スッ

    日向(げっ!?)



    クロム・ブレイカーを上に刺し向けるこの構え……まさか……。



    グレイス(何を訳のわからん真似を……消え失せろ!)

    グレイス(ジ・エンド……!)

    グレイス(『ネメシス・エンド』ッ!!)



    天罰の終点。


    その意味の如く、上空から烈火に燃え上がる大量の流星群が降り注ぐっ!!



    日向(!?…なんて数だ!)

    神座(心配には及びません…)

    神座(…………『ソウル・レイド』)



    オオオオォォォォォォォォォォォ………



    グレイス(何……!?)



    流星が消えて……いや、奴の剣に吸い込まれていく……!?


    まさか……コレが奴の能力だというのか……!?



    日向(相変わらずチートみたいな力だよなぁ……)



    思わず苦笑いが出てしまう。


    やはりそれだけ、神座という戦力は大きすぎた。



    神座(残念ながら……消えるのは貴方です…)

    神座(ネメシス・エンド……)



    『ドドドドドドドドドドドドドドドっ!!!!!!』



    刃がグレイスに差し向けられた次の瞬間、日向達に襲いかかった流星群がグレイスへと標的を変えた。



    グレイス(何ぃッ!?)



    能力を我がものとするのか!?


    そんなデタラメな能力が……!



    神座(……消えなさい……ツマラナク……無価値に………)

    グレイス(馬鹿な……こんな筈ではアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!)



    『ドドドドドドドドドドドドドドドトドドドドドドドドドドドドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!』



    無限ループに近い程の爆発と爆音が巻き起こる。


    元から何も無いこの空間ではそれがどれほどの規模を誇るのか分からない……。


    だけどコレが……この攻撃が勝利の決め手になったことには変わりはなかった。



  60. 60 : : 2014/08/29(金) 02:57:45
    神座【アグッ!?】ドクンッ

    苗木「!」

    大和田「なんだ…!?」

    神座【ガフッ……ゲホッ!ゴホッ……!】



    突如発作を起こしたように胸を鷲掴むゼウス。



    神座【この痛み…まさか私の分身が……!?】

    (そのとおりだっ!!)

    苗木「! この声……」

    七海「日向君!?」

    (ウオオオオオオオオッ!!!)

    神座【がっ……!?ぐあああああああああっ!!!】



    『ビシッビシビシビシビシ………!』


    体内からの一声を合図にゼウスの体に亀裂が走り、その裂け目から神々しい光が溢れ出す!



    神座【マズイッ……!縛り付けた魂の融合が……!】

    十神「なるほど…そういうことか」

    苗木「え?」

    十神「奴のユニゾンとかいう能力、どうやら接着剤と同じ原理のようだ」

    九頭龍「せ、接着剤ぃ?」

    澪田「なんでそこで接着剤がでてくるんすか?」

    十神「チッ……霧切、コイツ等でも分かるように説明してやれ」

    霧切「ようはあの能力には時間が必要って意味」


    霧切「例えばどんな接着剤だってくっつけて直ぐに触れば簡単にとれてしまうでしょう?」

    霧切「それこそ瞬間接着剤にだってそれは不可能よ」

    辺古山「そうか、つまり奴の魂はまだ日向と完全に融合しきっていない…!」

    大和田「そこを叩けばアイツと日向を分離させられるってことか!」

    霧切「そういう意味ね……」

    狛枝「だったらその決め手はやはり彼だね」

    苗木「え、ボク?」


    大和田「お前の能力だけが頼りなんだぜ?苗木!」

    江ノ島「私様がやってもいいけど〜……そうすると日向の体二つになっちゃうし」

    戦刃「頑張って苗木くん…!」

    苗木「みんな……」



    神座【ヌッ……ウウウウウウウ……!】

    苗木「!」



    最後の力を振り絞り、全身に亀裂が刻まれながらもゼウスが立ち上がった。



    神座【ハァ……ッハァ……ッ!!】



    とはいえゼウスにはもはや最初のようなカリスマ性や神聖さは殆ど失われていた……


    残っているのは今にも崩れ落ちそうなヒビだらけの身体ただ1つ。



    神座【…俺は……負けられない……!たとえこの身が滅ぼうとも……!】



    もはや執念。それだけで奴は立っている。


    命を捨ててもなお叶えたい執念……何が彼をそこまで奮い立たせるのか……



    神座【滅べ……!】

    神座【『ラスト・メイク』ッ!!(禁断の創造)】

    フリート「ラスト・メイク……!?俺達のラスト・ソウルと同じ能力か!」

    アレス「気をつけろ……コイツは……ヤバいぞ……!」

    神座【ハアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!】



    瞬間、世界が暗転した。



    苗木「!?」



    辺りには光り輝く無数の星……巨大な幾多の惑星……そして……燃え盛る太陽。



    霧切「まさかここは……」

    アレス「ありえん!宇宙空間を作ったというのか!?」

    神座【世界原初の創造物によって滅べ!!】

    神座【『ジェネシス・エンド』ッ!!(終演の銀河)】




  61. 61 : : 2014/09/01(月) 10:45:16

    流星群、ブラックホール、ビッグバン……



    世界最強の火力を持つ自然界の頂点が、ゼウスの掛け声と同時に全方向から降り注ぐ!



    狛枝「マズイね……この量は僕の力では対処しきれないよ……」

    十神「出来なくてもやるしかないだろうっ!愚民共!全方向同時にありったけの力をぶつけろ!」

    苗木「真・色能力……!!」


    苗木「グングニルッ!!」


    「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」」



    苗木を先陣に各々の能力が炸裂!一同の周囲を爆撃と爆風が覆い尽くす



    『ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!』



    苗木「ッ…!?」

    大和田「なんつー能力だよ!押し返しれるぞ!」

    弐大「ふんばれ……踏ん張るんじゃああああああっ!!!」

    神座【フフフフッ…無駄な足掻きを………ゴフッ!?】



    ッ……マズイな、もう時間切れか……


    ややコチラの戦力が落ちるが……やむを得ん……



    神座【融合……解禁……!】



    『ボシュッ!』



    ボロボロの日向の身体から黒いガスのようなものが噴出、


    ガスが尽きたかと思うと、ヒビ割れた身体が元に戻り、日向創は崩れ落ちれるようにその場に倒れた……。



    苗木「!?日向君が…!」

    霧切「殺気を感じない……融合が解けたようね」

    九頭龍「だけどどうすんだ!?この状況じゃアイツの元まで行けねえぞ!」



    迎撃しても迎撃しても攻撃が絶えず降り注ぐ……


    とてもじゃないが耐えきれないし、正直一同の体力はとうに限界を超えていた。



    苗木「ッ……こんなところで……!!」

    「……俺に任せておけ………」

    苗木「え?」

    「二度目の禁忌……クククっ俺の身体が持つか……楽しみだな……」



    舞園「熱っ!」

    戦刃「何……?この熱気……」

    フリート「アレス……まさかお前……!」

    アレス「命一つ……どうってことは無い……俺は……それだけの事をしてきたからな………」

    アレス「ハアアアアアッ………!!」

    フリート「やめろアレス!それ以上身体を傷つけたら……!!」



    フリートの声など、もはや彼に聞こえてはいなかった。


    既に彼は……ブレーキの壊れた機関車……。



    走り出したが最後、彼はもう止まらない。



    アレス「クククっ……精々巻き添えを食らわぬよう気をつけるんだな……」

    アレス「【ラスト・ソウル】……!」



    アレスの皮膚が燃え盛り、その火炎は上空に巨大な恒星を創成する!



    フリート「アレスッ!ヤメろおおおおぉっ!!」

    アレス「『テオ・プロミネンスッ!!』(王者の恒星)」




    『ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!』

  62. 62 : : 2014/09/02(火) 12:47:29
    宇宙創世をもたらした偉大なる力……ビッグバン。


    偽りの宇宙が繰りだすビックバンなど、本家には足元にも及ばず……火炎放射器とライターを比べるほどに圧倒的だった。



    そして二度目の禁断奥義が生んだ大爆発。


    その力は生み出された空間その物を燃やし尽くし、偽られた宇宙は……業火とともに灰燼へと帰した……。



    アレス「ハァッ…!ハァッ…!」

    大和田「な、なんつー威力だよ……」

    霧切「攻撃を防いだだけで無く、能力そのものを迎撃なんて……」

    アレス「ク……ククっ………二度目の……禁忌…………やはり負担が重すぎ……た………か……」



    苦痛に歪む偽りの微笑を浮かべ、紅蓮の王者は……静かに地へと崩れ落ちた。



    フリート「アレスッ!!」



    くそ……当然だ……!


    苗木くんや日向くん、俺やグレイスと激闘に続く激闘……


    そして先程のゼウスからの不意打ち……二度の禁断奥義の使用……!



    ろくに回復も無しにそんな無茶を働けばどうなるか……俺にだってわかる!



    フリート「おい、アレス!しっかり……」

    フリート「うっ!?」



    そこに横たわっていたのは全身が焼け溶け、人としての原型を殆ど失った……長き友の姿。



    アレスの代償は己の皮膚……それを一度目に失った彼が二度目に失ったもの、ソレは……



    フリート「全身の……肉体……」

    アレス「ぐっ………」

    フリート「アレス!?」

    アレス「ッ……全員……無事か………?」

    フリート「あぁ!お前のお陰でな!」

    アレス「く……クククッ……そ……うか………」

    苗木「舞園さん、早く治癒を!」

    舞園「は、はい!」

    フリート「安心しろアレス……今すぐ治癒して、助けてや……」



    『ビーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ』



    その場違いなほど無感情なブザー音は……僕らを……その場全てを………一瞬にして凍りつかせた。



    フリート「……え…」


    『ユーザー名 : アレス
    BREAK・OVERッ!!』



    苗木「な……!」

    舞園「そ、そんな……」

    アレス「クク……ここまでか……」

    アレス「せめてお前と……もう一戦……交えたかったの……だがな………」



    嘘だろ……


    これもバクか何か……だろ………?



    頼むから……嘘だって言ってくれよ!



    アレス「この世界を……頼むんだぞ………ジ・ホープ………!」

    アレス「クク……ククク………」


    アレス「フハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」



    『バシュッ』



    苗木「!」

    霧切「くっ…」

    フリート「あ……あぁ………!」



    ティアラの時と何も変わらない……



    彼の身体は……プログラムで作られたガラスのように……砕けて散って………空中へと………消失した………。




    フリート「う………ぐっ……!」



    俺が……強ければ……


    俺がもっと………強ければ……こんなことには………!



    フリート「っ……アレ……ス………!」




    フリート「アレスーーーーーーーーーーーーっ!!!」



  63. 63 : : 2014/09/03(水) 13:12:47

    大和田「ッ……チクショウ……!」

    苗木「…………」

    霧切「彼には……大きな借りが出来てしまったわね……」

    フリート「アレス……」



    日向「うっ……うぅ……」



    「「っ!!」」

    七海「 日向くん……!!」

    苗木「良かった…日向くんは無事だったんだね」

    日向「俺は……?それはどういう……」

    日向「…………………」

    日向「いや、いい……。残念だったな……」



    このメンバーを一通り見渡し、日向は悟ったのだろう


    だから、多くは語らなかった……


    残念だった。この言葉が彼に出せる、彼なりの唯一の弔いの言葉であることは一同はとうに理解していた。



    七海「良かった……日向くん、無事で……本当に……」

    日向「「帰ってくる」って……約束したからな」

    七海「……うん…!」

    霧切「そういえば……ゼウスが見当たらないわ」

    大和田「言われてみれば……」

    田中「フッ……我らの猛威を見て臆したか」

    左右田「アレスの攻撃で宇宙と共に消えたんじゃねえのか?」


    フリート「いや、少なくとも、奴のデス・アラートはなっていない……」

    フリート「気をつけろ……まだ何処かに……」


    【その通り、正解だ!】



    「「!!」」


    大和田「チッあのヤロウ……やっぱり生きて……!」

    日向「いや、だけどあの姿は……」



    瓦礫の影から現れたゼウスと思われる人物に、神の面影は無かった。


    そこにいたのは、黒き衣を纏い逆だった銀の短髪の20後半程の男性……



    日向「グレイス……」

    舞園「え?グレイス……?あの方は?ゼウスは?」

    苗木「そっか、舞園さん達はアイツを知らないんだよね」

    日向「アイツの名はグレイス。ゼウスになる前の姿で、このDANGAN・WORLDの創造者だ」

    十神「なるほど……要はアイツを倒せば、俺達は晴れてこの忌々しい世界からログアウト出来るというわけか……」



    グレイス【まぁ……そういうことだな】

    グレイス【だが、まさかあの宇宙空間から脱出するとはな……】

    グレイス【アレス、まさかこれほどまでに力をつけていたとは……計算外だった】

    グレイス【まぁ……死んでしまっては元も子もないがな!】

    フリート「ッ…!貴様ぁっ!!」



    自分から生まれた怒りが剣を抜き放ち、地を蹴り上げ、気づけばグレイスに猛進していた


    苗木「フリートさん!」

    フリート「ハアアアアアアアッ!!!」

    グレイス【……クククッ】








    『ザンッ!!』






  64. 64 : : 2014/09/04(木) 12:56:14
    期待
  65. 65 : : 2014/09/04(木) 23:14:20
    >>64

    ひっさびさの期待のお言葉、大変ありがとうございますっ!!
    おかげでやる気が湧いてきました!


    それでは、再起動ですっ!
  66. 66 : : 2014/09/04(木) 23:14:37
    一撃。たった一撃だった。



    怒心に狂ったフリートが振り下ろした 同じく怒涛の斬撃。



    その一撃は迷うことなくグレイスを斬り裂き、彼の左腕を……簡易に、容易に切断した。



    居場所を無くした左腕は残された鮮血だけを拠り所に、腕は……音もなく地へと堕落した



    フリート「……どういうつもりだ、何故何も反撃をしてこなかった?」



    腕の切断を完全に見届けると、フリートは疑心に満ちた目でグレイスを睨む。



    何故なら、アレほどまで圧倒的な力を持った腕を失った彼が最初に起こした言動は……何もかも見通しているような、不気味な微笑だったからである。



    グレイス【避ける必要が無かった……と言えば嘘になるが、そうだな】

    グレイス【左腕はもう必要ない……と言っておこうか】

    フリート「?」

    グレイス【先ほどの能力、ラスト・メイクはザ・メイクの最終奥義……】

    グレイス【その代償は能力の永久枯渇。もう俺に創造の力は無い……ということだ】

    フリート「……いいのか?自らの弱点を明かしているようなことを言って……」

    グレイス【あぁ、構わんよ?】

    グレイス【俺の勝ちは……もう確定したからな……】オオオオオオオ……

    フリート「! 何だ、奴の周りに紅い波動が……?」

    西園寺「……!」ハッ

    西園寺「やばい!逃げて!」

    フリート「え?」

    グレイス【もう遅い!!】



    グレイス【エンド・ウェイブ!!(終焉の波動)】



    振り払われた右手の軌道を追うように、グレイスの腰のあたりから赤黒い波動が放射する!



    フリート「っ!?これは……!!」

    グレイス【一か八かの賭けだった……使えない左手を切断してくれて感謝するぞ?】

    フリート「くっ……うあああああああああああああああああっ!!!」



    波動がフリートに絡みつき、フリートの身体が徐々に黒く染まっていく



    苗木「フリートさん!?」

    十神「西園寺、あれはなんだ?」

    西園寺「……江ノ島姉も左右田兄も見たでしょ?アタシがアイツに消された時のこと」

    左右田「あ、あぁ…」

    江ノ島「まぁ。絶望的に印象的だったし?」

    西園寺「あの波動は、触れた者すべてを消滅させる能力……」

    田中「最初に言っていた瞬殺の異能の事か!」

    日向「じゃあフリートは……!」

    フリート「くっ…!う、うおおおおおおおお!!」



    『ズバァッ!』



    苗木「!」

    グレイス【!?】



    フリートはまだ侵食しきっていない上半身下を切断。



    そして、漆黒に染まった下半身は音もなく腐敗し、砕け散った



    舞園「自分で体を斬って……!?」

    フリート「はああっ!!」



    落下する上半身を左手を脚の代わりとして地面に着地。



    そしてすぐさまフリートは左腕の筋肉と右手に握る大剣で跳躍、



    グレイス【ほぉ、流石は英雄……不意打ち程度では死なぬか】

    フリート「貴様だけは……絶対に殺すッ!!」



    グレイスの真上を数メートル超えたとこでフリートは体制を変え、露わとなった頭部目掛けて大剣を振りかざす!



    フリート「グレイス!かつての恨み……今ここで晴らさせてもらう!」



    大剣の重みと重力が合わさったフリートは隕石の如くの怒涛の速度で急降下!



    (奴は能力を発動させたばかり……!)


    (アレス、ティアラ……俺に力を入れてかしてくれぇッ!!)



    フリート「英雄剣……韋駄天ッ!!」



    急速な速度は更に加速!


    もう眼では捉えられない、とうに音速は超えていた!



    (これで……終わりだぁっ!!)





    そして、その一秒……いや、その直後。


    荒廃と荒れ果てた城に、耳を斬り裂くような金属音が木霊した……。



  67. 67 : : 2014/09/15(月) 15:05:42
    とてもおもしろいです
    応援してます
  68. 68 : : 2014/09/17(水) 17:40:36
    期待です!
  69. 69 : : 2014/12/19(金) 18:32:40
    期待してます
  70. 70 : : 2014/12/24(水) 00:20:48
    >>67

    >>68

    >>69


    くぅぅ……!
    こんなナメクジSSへのご期待、本当に有難うございます!


    もう二ヶ月近くも放置してたんですね……これは酷い( ̄  ̄;)
  71. 71 : : 2014/12/24(水) 00:21:05

    フリート「な……に……!?」



    振り下ろした神速の刀身の先に、グレイスの首は無い。


    虹色に眩く巨大な盾が、両者との間合いを遮断し、その刀身を受け止めていたから……



    ?『コー………コー………』



    フルフェイスの兜から不気味な呼吸音を漏らすソレは、言うなれば「虹色の戦士」。


    全身を無駄なく包む虹の鎧は、シルヴィアの纏っていた中世代の鎧とは違う。


    世界が最初に生み出した防具、甲冑である。



    フリート「原神!?」

    グレイス【ほぅ、知っているのか】

    苗木「原神……?」

    フリート「アレスから聞いたんだ。その絶大な力故に、永遠凍結を宣告された禁断の戦士の名を…………」



    フリート「青の王、赤の王が所属するのが『四原王』」

    フリート「その上に立つのが、白銀の帝王、黄金の帝王の居ずる『二原帝』……」

    フリート「そして、更にその上に立つ存在がいる………」

    フリート「それが……全てを司る色、虹を操る『原神』。」

    グレイス【虹の神……マスティア、これこそが私の奥の手さ】

    マスティア『……プログラムの完全な起動を確認。』

    マスティア『マスターグレイスの名の下に、敵勢力の死滅開始する。』ググッ

    フリート「っ!?」



    なんて力だ!?押し返される………!



    マスティア『敵ステータス/下半身損失/バイタル瀕死状態。』

    マスティア『使用能力は自身の速度を加速させる物と断定。』

    マスティア『よって、速力を強化する能力『速の天使(ラファエル)』発動。』



    唯一フルフェイスの兜から覗かせる眼光が光った瞬間、フリートの視界からマスティアが消えた。



    フリート「なっ…!?」

    マスティア『背後への奇襲成功。バックスタブでのダメージ倍率を計測。』

    苗木「い、いつの間に後ろに……!」

    舞園「逃げてください!」



    だが今のフリートに、その行動は不可能に近い。
    下半身を犠牲に舞い上がり、下降する為だけに使った加速の能力。


    回避などという行動は、この言動には存在していなかった。



    フリート「くっそぉ……!」

    マスティア『一撃必殺のチャンスと断定。攻撃力を強化する能力『攻の天使(ガブリエル)』を発動。』



    能力名と思わしき名称をコールすると、右手に握られる大剣の刀身が紅く発光。


    それから感じられるのは熱。それもただの熱ではない。

    アレスほどの火力では無いものの、それから放たれる高温は、見るものに強烈印象を刻ませた。



    マスティア『………『天喰の刃』。』



    『ザンッ!!』



    フリート右首から左脇腹に迸るは、紅く燃える業火の一閃。



    フリート「かはっ……!?」



    底知れない力はアレスから聞いていた……マスティアの能力『大天使』のことも。


    (まさか……これほどまでの力とは……!)




    『ビーーーーーーーーーッ!!!』





    『ユーザー名 : フリート
    BREAK・OVERッ!!』



    フリート「…ッ!…」

    グレイス【クククッ……友の仇を討てなくて残念だったな】

    マスティア『……………』

    苗木「ふ、フリートさん!」

    フリート「どうやら……ここまでのようだな…………」

    フリート「役に立てなくて……スマない……」

    フリート「……アレス、ティアラ……御免な………」




    『バシュッ!!』




    苗木「……!!」

    日向「そんな……!」

    グレイス【クククッ……英雄、そして元支配者も退場……】

    グレイス【奥の手を使わせた事には敬意を評してやろう】





    グレイス【さぁ、次はどんな抗いを見せてくれるのかな?ジ・ホープよ】


  72. 72 : : 2015/01/02(金) 21:36:45
    苗木「う……ウアアアアアアアアァァァァァァァァァァッ!!?」



    絶する沈黙を最初に破ったのは、苗木だった。

    己の色具を握りしめ、怒りと憎悪を混ぜ合わせたような表情で、グレイスへと感情の矛先を向ける。



    十神「よせ苗木!無謀な切り込みはやめろ!」

    苗木「オオオオオオオオオオオオオォォォォッ!!!」



    十神の怒声に、聞く耳は持たない。
    吹っ切れた怒りと恐怖が、苗木から平常心を奪い去っていた。



    グレイス【おぉ、怖い怖い……マスティア】

    マスティア『イエス。マスター。』



    グレイスにロッドを振り下ろす瞬間、苗木の頭部に、疾風の刃が振りかかる。



    苗木「ッ…!?」



    それはマスティアが持つ巨大な薙刀。
    グレイスの後方で待機していたのが、いつの間にか苗木の目と鼻の先に現れたのだ。



    苗木「くっ…!」



    間一髪身を伏せ、刃をかわす。
    ゾンッ!と不気味な風か頭部を掠めた。



    マスティア『攻撃の不発を確認。角度を47.3度修正。再度攻撃を開始する。』



    けれども虹の神の猛攻は止まらない。
    むしろ先ほどよりも、より正確な刃が苗木の急所という急所へと襲いかかる。



    苗木「っ……くっ!……くそ!」



    我武者羅に刃を避け続けるものの長くは持たない。


    脚、腹、腕と、鋭い剣線は徐々に首筋へと狙いを定めてくる。




    マズい…このままじゃ……!




    マスティア『…………急所への命中率99.2%。必中まで0.08%。よって右角度を3ミリ修正。風向き良好。』

    マスティア『再度命中率を計測……。』

    苗木「真・色能力……!」

    苗木「英雄の神槍(グングニル)ッ!!」



    怒りと恐怖が生んだ光の槍。

    標的の体を貫かんと槍投げの如く打ち放たれたソレは、マスティアの心の蔵へと迸る。



    マスティア『………計測完了。命中率………100.0%。』



    カッ、と眼光が発光と同時に、マスティアも地を蹴り上げる。


    まるで視野を邪魔する害虫を弾くように光の槍を盾で受け流し、そのまま苗木の首元へと猛進。



    苗木「なっ……!?」

    霧切「いけない!」

    大和田「苗木避けろぉ!」

    マスティア『目標確保。天喰の刃……発動。』



    それは手負いとはいえ、フリートに反撃のチャンスさえ与えなかった紅の刃。


    その様は、意思を持つ剣。

    背後への一撃の主導権を獲得した薙刀は、容赦無く、そしてあまりにも呆気なく、目の前の対象を切り裂いた。



    『ドシャッ』



    生肉に似た音が響く。それも血で滴った新鮮な肉の。


    胸に走る傷口からは濁流の如く血が溢れ出す。
    大の字で倒れた身体が、みるみると血で支配される。



    マスティア『…………対象の手応えを確認。殲滅完了』


    『ビーーーーーーーーーーッ!!』



    終わりを告げるブザー。

    その音で一同が我に帰るのは……そう長くはかからなかった。



    舞園「い、……いやああああぁぁぁぁ!!」

    大和田「ま、……マジかよ……」

    霧切「い、いえ……待って!」

    苗木「…………あれ……僕は確かに……」

    大和田「な、苗木!?無事だったのか!」

    左右田「け、けどよ……確かにアラーム
    が…」

    苗木「一体……何が……」

    『ユーザー名 : ハジメ
    BREAK・OVER!!!』



    苗木「…………え……?」

    日向「がっハ……!」

    七海「ひ、日向………くん?」






    「日向くーーーーーーーーんッ!!!」



  73. 73 : : 2015/01/04(日) 15:22:30
    日向「…くっ……がはっ……!」

    グレイス【ほぉ、あの一瞬で仲間を庇ったか………大したものだな】

    苗木「日向くん!なんで、なんで君が……!」

    日向「苗木……歯、食いしばれ……!!」



    ボグッ。


    鈍い音と右頬に強烈な鈍痛が走った。



    苗木「あぐっ!!」

    グレイス【!?】

    日向「ちったぁ……目、覚めたかよ……」

    苗木「ひ、日向くん……」

    日向「いい加減にしろよ苗木!!感情に飲み込まれるなっ!!いつまで子供みたいに暴れまわってんだよ!!」

    苗木「…!」

    日向「俺達は仲間だ……一人一人支え合っていくもんだろ……これは、お前だけの戦いじゃねえんだ……!」

    苗木「…………ごめん……」

    日向「くそっ……俺もここで退場か……」



    故障寸前のテレビが映し出す映像のように日向の身体がザビついていく。



    七海「日向……くん?」

    日向「悪い七海……約束、守れなかったぜ」

    七海「い、嫌だよ……ね?嘘、だよね?またすぐに会えるよね!?」

    日向「………ザ……また………ザザザ…ナ…」



    『バリィィンッ!!』



    苗木「あ……あぁ…!」

    グレイス【ククククッ……くだらん戯言をほざきおって……】

    グレイス【では……そろそろフィナーレを迎えようか】

    グレイス【マスティア!】

    マスティア『イエス。マスター。』



    踏みしめる岩盤を砕く脚力でマスティアが戦闘の続行を開始した。



    苗木「くっ!?………え?」



    が、その目が捉えたのは苗木ではない。

    プログラムの『苗木誠を一度倒した』と認識されたデータが、苗木を戦力外と判断したからだ。



    そして当然、次のターゲットは強制的に絞られる。



    江ノ島「私たちって訳ね」

    狛枝「御託言ってる暇はないみたいだね……やるよ?」

    戦刃「だね」

    霧切「私たちも行くわよ!」

    十神「足を引っ張るなよ愚民共」

    舞園「サポートは任せてください!」

    西園寺「七海姉……辛いのはわかるけど」

    七海「……うん………そうだね……」



    「「うおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!」」



    グレイス【ククククッ……無駄な足掻きを……】

    グレイス【………ん?】

    苗木「…………」

    グレイス【何の真似だ?私の前に立ちふさがるとは……】

    グレイス【貴様はもう用済みだ、何処へでも消えろ】

    苗木「……日向くんは……言ったんだ」

    グレイス【ア?】

    苗木「僕らは一人じゃない……支え合って…互いを助け合えと……!」

    グレイス【それが何だ?現に貴様は仲間と助け合えなかった。日向創も無駄死にだな】

    苗木「……それは違うっ!」

    苗木「確かに日向くんはいない……だけど!」

    苗木「僕の思いとなって……一つに生き続ける!!」



    グレイス【!……それはプラチナ・ブレイカー……なるほど、消えずに残ったか】

    グレイス【つまり二刀流……。面白い……力を失ったとは言え、甜めてると痛い目に合うぞ小僧……!】

    苗木「行くぞ!」




  74. 74 : : 2015/01/11(日) 23:30:00
    読み返して気づいたけど、苗木の杖ってなんかあるの?ていうか桑田と葉隠とか生き返ったなら早く来いよ笑
  75. 75 : : 2015/01/12(月) 23:33:03
    >>74

    覚えていてくれてありがとうございます!
    自分で考えた設定を覚えていてもらえるのは何より嬉しいです!


    はい!もちろん意味はありますよ!
    あとのお楽しみと言う奴です!
  76. 76 : : 2015/01/13(火) 08:49:22


    マスティア『殲滅……開始。』



    常人の倍以上のサイズを誇る、圧倒的な巨体。

    その柱のようの腕から振るわれる三メートルはあろう鋭利な薙刀は正に死を司る撃そのもの!



    大和田「おおぉ!?」

    戦刃「私よりも速い……!」

    十神「怯むな愚民が!散開し、全方位攻撃を仕掛けるんだ!」



    十神の放つ怒声のままに、一同は分散。

    各々が自分の攻撃角度を見定めるとすぐさまに猛攻を叩き込んでいく……しかし!



    九頭竜「ッ!?硬え……!」

    弐大「この硬さ……ワシ以上か!」



    禁断奥義により鋼の化身と化した弐大が叫ぶ。



    戦刃「白銀の帝王……シルヴィアと同じだね」

    霧切「もしそうなら勝機はあるわ……七海さん、もう一度あの技を!」

    七海「わかった…!」



    マスティアが周囲に気を取られている僅かな隙をつき、素早い身のこなしで股下へと潜り込む。


    相手が此方に気づいていないことを確認すると、七海はステッキを構えた。



    七海「色能力……ハードアウト!」



    絶対硬度を誇ったシルヴィアの鎧を無力化した『硬さ』と言う概念を奪う能力。


    それを槍投げのごとく振り上げ、右膝の僅かな関節部に渾身の力で突き刺す。



    ドシュッ!



    水しぶきに似た疾風感のある音が吹き出し、杖がマスティアの体内へと深く食い込む!



    大和田「よし!」

    舞園「やった!」



    マスティアがその感覚に気づく頃には、杖は十分すぎる程に刺さりきっていた。

    当然、そう簡単に抜けるハズが無い。



    霧切「これで敵の守備力は無効化したわ!」

    大和田「おし!」

    弐大「行くぞぉ!」



    右腕に残された力の全てを注ぎ、弐大猫丸が砲弾の如く敵領地へと突撃する!


    万が一避けられた、受け止められた場合の事も把握し、左からは大和田と九頭竜。右からは大神と戦刃。

    そして背後からは辺古山と江ノ島が同タイミングで飛びかかる。



    マスティア『………右脚部にダメージの発生を確認。直ちに損害率を計算……』



    一斉に襲い来る敵に対し、マスティアは冷静沈着に傷の深さの計算を開始。


    つまり防御、迎撃と言った行動は一切取っていない。
    例え取ったとしても、ソレは明らかに遅すぎる!



    まさに……絶好のチャンスである!



    弐大「ぬおおおおぉぉっ!!」

    弐大「色能力……鋼鉄拳(アイアン・フィスト)ッ!!」



    身体を覆う全ての鉄を、右腕に集中させる。


    自身の体格よりも遥かに巨大なソレは、文字通りの鉄拳!

    最大の鈍器と化した右ストレートが、一寸の狂いも無く目標の胸元へと直撃した!



    大和田「この勢いで畳み込むぞ!」

    九頭竜「あたりまえだ!」

    マスティア『………損害率の計算を確認。』

    霧切「!」



    最高火力の鈍器を正面から受けた。

    いくら最強と呼ばれる者だとしても、何らかの反応はみせる……霧切はそう踏んでいた。


    けれど敵は未だ動かない。弐大猫丸の一撃を、蚊ほどにも感じていないのだ!



    霧切「ダメ!みんな攻撃を中止して!」

    大神「何…?」

    戦刃「え?」



    刀を振り上げる最中、唯一霧切と一番近い位置にいた大神と戦刃が飛ばされた激昂に反応。


    間一髪の差で互いの武器を引き、マスティアを踏み台に後方へと飛んだ。



    その直後、マスティアが身構えた。



    マスティア『損害率……0。敵対反応を複数確認。直ちに殲滅を開始する。』



    キキキキキキキキキキキキキ………



    マスティアの声に一歩遅れ、大神と戦刃を抜いた者達の顔面を半透明の照準が遮る。



    大和田「なに…!」

    辺古山「これは…!」



    マスティア『全弾全中(オール・オブ・バレット)……発動。』

  77. 77 : : 2015/02/01(日) 16:02:03
    期待です!
  78. 78 : : 2015/02/02(月) 23:02:07
    やっと…追いついた…
    期待ですっ!!
    神ssとはこれのことか…
  79. 79 : : 2015/02/04(水) 09:02:22
    >>77

    期待の言葉、ありがとうございます!



    >>78

    神SSだなんて……光栄の極みです!
    期待ありがとうございます!
  80. 80 : : 2015/02/10(火) 11:42:28

    九頭龍「全方位攻撃!?」

    弐大「マズイ!全員下がれぇ!!」

    グレイス【……もう、遅い!】

    マスティア『………射撃開始。』




    ズギュンッ



    鈍く鋭い……そんな言いようのない奇怪音を放つ一閃が全ての標準を撃ち抜いた。



    それは九頭龍も感づいていた……全方位への同時射撃。


    一人につき一本の極細の紅線が、一同の脳を一寸の狂い無しに撃ち抜いたのだ。



    当然、それによりデスアラートが鳴り響いたのは……言うまでもなかった……。




    苗木「!!」

    グレイス【……ククっ】

    マスティア『殲滅……完了。』


    九頭龍「かっ……!」

    大和田「嘘……だろ……?」

    辺古山「くっ……ぼっちゃん……」

    江ノ島「うっわぁ……たった一撃でリタイアとか……」

    江ノ島「本当……絶望て……き『バシュッ!!』



    『バシュッ!』

    『バシュッ!』

    『バシュッ!』




    戦刃「……え……?」



    グレイス【フフッ……フハハハ……………!】

    グレイス【フハハハハッ!!良いぞ!想像以上の働きだマスティアァ!】

    苗木「…………」

    七海「え……っ……?」

    舞園「そんな、ことって……」

    霧切「っ……」

    グレイス【フフ……神具ヘルズ・デスサイズ、大したことは無かったな】

    グレイス【まぁ、念には念だ。私の権限を持って削除しておいてやろう】




    絶望と失望感に堕落した苗木たちを通り過ぎ、江ノ島という所持者から離れた大鎌を拾い上げる。



    グレイス【我が権限により命令する。神具の一角、ヘルズ・デスサイズをデリートせよ!】

    『IDを承認。デリートを実行します』



    バリィィィンッ!!



    耳を引き裂くような雑音が鳴り響き、万物切断の大鎌が粉々に砕け散った。



    グレイス【……さて】



    グレイスは戦意喪失した者達を見渡し、再び微笑んだ。



    グレイス【フフ……やはり人が神に勝とうなど、ありえない】



    不気味すぎるほどに静まった空間に、グレイスの足音だけが響き渡る。



    グレイス【お前も、終わりだな】

    苗木「……………」



    返事は無い。

    絶望すぎる瞬間は、全ての思考を掻き消した。虚無と喪失感だけが、苗木の脳内に残留し続けていたのだから






    『誰も死なせはしない!』






    何をやっているんだ……ボクは………





    十神「立て苗木!まだ終わってないぞ!」






    結局誰も………誰も…………





    霧切「苗木くん、動いて!」






    僕は………仲間を………命を…………






    舞園「しっかりしてください!」





    聞こえない……もう、何もかも………



    グレイス【……さらばだ、儚き光よ!】





    【ズシュッ!!】





    胸から刀剣が伸びる。


    先端からは僕の血が滴って……


    あぁ、……背中から刺された……のか?





    『ビーーーーーーーーーーーーッ!!!!!』




    ………聞こえた。





    『ユーザー名 : マコト
    BREAK・OVERッ!!』






    ……僕の……死が…………。




  81. 81 : : 2015/02/10(火) 17:48:18
    マコトーーーーーーー!ああ嘘だろ?マジかよ…
  82. 82 : : 2015/02/10(火) 22:53:22
    な、苗木ッ!!!
    後で生き返る可能性に期待!
  83. 83 : : 2015/02/11(水) 18:58:06
    意識が遠のく……



    舞園「……!!…!!」



    誰かの叫び声……舞園さん?

    霧切さんは……俯いてて良くわからない……

    膝を落としたのは……戦刃さん?





    ゴメン……


    守れなかった………





    『バシュッ!!!』





    グレイス【……ク、ククク………アヒャヒャヒャ……!】

    グレイス【アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ!!!!】

    グレイス【素晴らしい……最高!コレが……コレが光の消え失せる瞬間!何という快楽だ!フハハハハハハハハッ!!!】


    「………………」


    グレイス【ハハ……えらく静かだなぁ、もう誰も来ないのか?】

    十神「………」

    霧切「………」

    七海「………」

    グレイス【ククククッ……!笑いが止まらないな、アハハハハハハハッ!!】



    コレが現実だった。

    如何に力を持ってても……上には上がいた。



    「神になど勝てない」。
    それが一同を心を完膚無きまでに打ち碎かれた。



    グレイス【く、クククククク……!さて、お前たちもアイツの元へ送ってやろう】

    霧切「……」

    十神「……オイ、霧切……」

    霧切「何……?」

    十神「……この状況、万事休す……で正しいよな?」

    霧切「らしくないわね……貴方がそんな台詞を言うなんて」

    十神「……勘違いするな……言葉の意味を、尋ねただけだ」

    グレイス【クッ、ククククク……まずは斬殺……次は射殺……まだまだ浮かぶなぁ!】



    忍び寄る悪魔。忍び寄る悪夢。

    それが一歩歩むごとに、距離が縮むごとに……命が削られていく。


    這い寄る混沌が…確実に残る光を掻き消さんと……近づいてくる。



    大神「……震えている……?我が?」



    手が、静止しない。脚も生まれたての子鹿のようにガクつく。



    七海「バッドエンド……なのかな」

    霧切「…………」

    グレイス【決めたぞ、最初は撲殺だ】



    グレイスは右腕を振り上げ、何らかの能力を発動させた。


    右腕にドス黒い炎が発火。
    ただの拳ではない、死の拳だ。



    霧切「……ここまで……なの!?」

    グレイス【まず、一人………!】



    突如、グレイスの声が中断した。

    それに違和感を覚えるのは言うまでもなく、一同の注意がグレイスへと注がれる。



    グレイス【……まて、アイツらは何処だ?】

    十神「…………?」

    霧切「アイツ……?」



    「色能力……」



    辺りがどよめく瞬間、どこからともなく声が聞こえた。



    霧切「!?」

    舞園「この……声は……」

    グレイス「チッ……どこから……」



    咄嗟に周囲を睨むも何もいない。
    静寂に舞う土煙、荒れ果てた塔の残骸。


    生物など一匹たりとも………



    グレイス「!……まさか」

    グレイス「上か「風刃っ!!」



    上空への反応と同時。

    上を向くと同タイミングに、グレイスのいた場所に巨大な竜巻が渦巻いた!



    グレイス「ッ!?」

    「………何、やってるの?」

    霧切「!」

    「……なんで、諦めてるの?なんで、誰も立ち上がらないの?」



    竜巻の中に揺らぐ人影。

    それは竜巻が消えると同時に姿を現した。



    戦刃「……戦おうよ、私情に流されて……地を見つめてる場合じゃないでしょ!!」

    舞園「…戦刃……さん?」

    グレイス【ッ…!無駄な足掻きを…!】

    「………それは違うね」



    ゴッ!


    後頭部への重たい打撃。
    鋭い鈍痛が脳を刺激し、たまらずグレイスが膝をつく。



    グレイス【ヌグっ!?】

    狛枝「……希望はね、こういう絶望下に置かれて初めて輝くんだよ」

    狛枝「薄汚い光……?どんな美しい宝石も、最初は汚い原石さ」

    狛枝「お前に、光を潰させはしない」

    グレイス【この……!!】

    狛枝「不意打ち、今度は成功したみたいだね」

    戦刃「……みんな、立って!悲しいのは同じ!辛いのも一緒だよ!」



    左右田「うぅ……」

    田中「そう…だな」

    ソニア「えぇ、こんなところで……」

    大神「折れるわけにはいかぬ!」




    「「希望は……前に進むのだから!!」」

    グレイス【…くだらん!】

    マスティア『………………』



  84. 84 : : 2015/02/11(水) 20:17:10
    今回は戦刃が残念じゃない!期しかない!
  85. 85 : : 2015/02/11(水) 23:05:19
    ↑「待」がないなんて、嘘だろ…
  86. 86 : : 2015/02/13(金) 09:24:53
    >>84

    期待ありがとうございますです!!
  87. 87 : : 2015/02/13(金) 09:25:01
    戦刃「負けないで……絶対、勝とうよ!」

    豚神「…あぁ」

    田中「こんなところで………」

    澪田「負けられねぇっすよ!」

    グレイス【……フン、そう来なくてはな】

    グレイス【マスティアッ!!】

    マスティア『イエス。マスター。』



    権利者の呼び声に答え、虹の原神が一同に立ちふさがる。



    グレイス【クク……では、軽い余興でも初めようか】

    十神「余興……だと?」

    グレイス【なに、難しい話ではない。ただの勝ち抜き戦だ】



    パチンッ。


    グレイスが指を鳴らすと、巨大なスクリーンが上空に展開された。




    『残りメンバー』

    ・戦刃

    ・狛枝

    ・舞園

    ・大神

    ・霧切

    ・十神

    ・豚神

    ・ジェノサイダー翔

    ・田中

    ・ソニア

    ・左右田

    ・澪田

    ・石丸

    ・セレス

    ・七海




    霧切「これは……」

    舞園「ここにいる人達の……名前?」

    豚神「……なんの真似だ?」

    グレイス【ククク、これだけの大人数だ。最期に名前くらいは覚えておいてやろうと思ってな?】

    田中「……余裕だな、堕神よ」

    ソニア「勝ち抜き戦、確かそう言いましたわよね?」

    グレイス【あぁ。お前たちは束になろうと構わんが、コチラはルール通りに一人ずつだ】

    グレイス【無論、私はこの戦いに手を出さない。マスティアが殺られぬ限りはな?】

    石丸「……それなら!」

    戦刃「……いや、ダメだよ。あれの強さは異常すぎる」



    挑もうとした石丸を制し、戦刃は残るメンバーに視線を飛ばす。



    戦刃「闇雲に挑んでもダメ、的確に慎重に……けれど、やばいと思ったらすぐに引き下がって」

    霧切「……わかったわ」

    田中「ヒットアンドアウェイだな?心得た!」

    グレイス【さぁ……始めようかぁ!!】




  88. 88 : : 2015/02/18(水) 01:37:30
    ゴポッ………ゴポポ………





    苗木『うっ……』





    寒い。

    今まで感じたことの無い寒さが、心が凍りつくような寒さが、苗木の意思を強引に覚醒させた。





    苗木『ここ……は……?』





    暗い……一寸の光すら射し込まぬ暗黒の世界。


    身体は「重さ」という概念が存在しなかったのように軽い。無重力状態だった。





    苗木『僕は……一体……』





    その直後、鋭い電撃が脳に迸るのを感じた。苗木もそれに意思疎通が如く、反射的に胸に手を当てた。





    苗木『……そうだ』




    グレイス【さらばだ……醜い光よッ!!】




    苗木『僕は……』




    『ズシュッ』




    苗木『………死んだのか』





    己の死因が目覚めると、急に身体が重く、何かに引っ張られるように沈み始めた。





    苗木『……なんだ?』





    黒い手。無数の黒い手。暗く深い底から触手のように湧き上がる漆黒の腕。


    それが苗木の身体を拘束し、底へ底へと引っ張っていたのだ。





    苗木『…!?なんだ、コレ……!身体が……!』




    必死に足掻くも無意味。むしろどんどん奥底へ近づいていく。




    【……負ケロ】

    苗木『ッ!?』




    黒い手が喋りかけてくる。
    重く、背後から忍び寄ってくるような奇怪な声で。




    【負ケロ……終ワレ……諦メロ…………】

    苗木『何だ……!?頭に声が……!!』

    【死の運命には逆らえない………消失しろ………砕け散れ………消え失せろ】

    苗木『うるさい…!黙れ、黙れ!』

    【終ワレ……死ヲ受ケ入レロ………闇二飲マレヨ…………堕落セヨ………】

    苗木『うるさ……い……!』

    【終ワレ……諦メロ………消エロ………】

    苗木『や……めろ…………うぅ……!』




    沈めば沈むほど意識が、自我が保てなくなってくる。


    虚無。

    喪失。

    虚空。





    そんな言葉が似合うであろう感情が、心底からこみ上げた。





    【サァ……死ヘ旅立テ………】

    苗木『………………』





    これが……僕の終末……?エンディング……?



    僕は……一体何をしてきたんだ……?何かを、成し遂げれたのか……?





    終ワレ





    あぁ……もう、どうでもいいや………





    折レロ





    もう……どうだって…………





    堕チロ





    ズズ……ズズズッ…………



    足先から、黒く染まっていく……本当の終わり……





    ダメだ……光が………消えて……………









    【ヨウコソ………堕落ノ世界へ…………】

    【ククッ……クヒヒ………】



    【クヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!】





  89. 89 : : 2015/02/28(土) 13:12:40
    期待!
    新着ssみたら全シリーズ並んでてビビった
  90. 90 : : 2015/03/03(火) 02:18:16
    >>89

    き、きっとアレですよ!
    バクです!バグって怖いですよねぇ( ̄  ̄)
  91. 91 : : 2015/03/03(火) 02:18:23






    戦刃「あぅっ!!」

    霧切「戦刃さん!」

    マスティア『………追撃開始。』




    『ズドドドドドドドドドドッ!!!!』



    振るわれる薙刀。そして追い打ちをかけるように雨の如く迫りくる弾幕。


    明らかに希望が劣勢!



    十神「ぐぅ!!」

    田中「おのれ……!」



    やはり最初から無理のある試合だった。
    いくら数がいようと、殆どが瀕死状態に等しい。


    そんな状態でラスボスに勝とうなど、甘すぎたのだ。



    グレイス【フハハハハハハハハハハハッ!!!やはり世界は神にひれ伏すのだぁ!!】

    大神「ぐぅぅ!」

    グレイス【残る戦力は……】



    神の睨む先は黒髪の少女。



    戦刃「!」

    グレイス【殺れ、マスティアァァッ!!】

    マスティア『イエス。マスター。』



    全身で力を込めるモーションを表すと虹の装甲を突き破り、赤黒い翼が展開する!



    マスティア『……断罪の翼。起動。』



    赤黒い翼に答えるように、薙刀も赤黒い炎で燃え盛る。


    不気味に揺らめく炎は正に地獄の業火!



    マスティア『死刑……執行。』



    ドンッ。


    大砲を思い絵がせる爆音と共に業速の速さでマスティアが距離を詰める!



    戦刃「う……!?」

    霧切「いけない!」

    狛枝「くぅ!」



    しかし間一髪のその刹那、狛枝の突き出したダークイーターがそれを妨害。


    両者を遮断するように引かれたそれに、マスティアの薙刀は強引に地へと受け流された。



    マスティア『……………』



    攻撃の不発を見つめると、再び虹の武士は後方へとバックする。


    マスティアに二度目は無い。
    一度目を外したなら二度目は確実にそのミスを補ってくる筈。



    つまり今のは奇跡。

    何億分の確率が生んだ大奇跡。



    狛枝「ハァ…!ハァ…!い、戦刃さん……大丈夫かな……?」



    激しい長期戦で過呼吸を起こしたのか、狛枝の顔は恐ろしく青ざめていた。



    戦刃「う、うん…私は平気……だけど」

    狛枝「ハ、ハハ……これは劣勢すぎるね……」



    今この場に立っているのは、前衛に戦刃と狛枝。


    後衛には倒れ伏せる仲間たち。
    もう後は無い。



    田中「くっ……この俺様がここまで追い詰められようとはな……」

    大神「ぬうう……!」

    グレイス【フフフ……どうした?もう終わりか?】

    戦刃「ッ…ハアァァァァっ!!!」



    右手のダガーを強く握りしめ、戦刃が特攻する。


    が、それはすぐにマスティアに防がれ、またしても地べたに叩き付けられる。



    戦刃「がはっ……!!」

    七海「戦刃さん!」


    十神「クソッ!こんな時に………」

    霧切「…彼……が……いてくれたら」














    ━━━━━━━━━━━苗木くん……!



  92. 92 : : 2015/03/06(金) 22:38:58
    苗木「…………」

    【ククク……】




    ズズズ……ズズズズ………




    黒く、染まる。
    腕も、脚も、全てが…………




    ズズ……ズズズズズ……………




    【クククッ……】




    そして……心も……………














    【………ウッ!】

    苗木「……?」




    突然、侵食が止まった。

    目には見えない。
    既に五感の全ては闇の中だから、よって今の黒手の声も苗木には聞こえていない。



    けれど、沈んでいくような絶望感が……治まった。そんな気がしたのだ。





    【何ダ……コノ光八……】



    今まさに全身を染めようとした瞬間、苗木の胸の辺りで、眩い光が闇の侵食を阻害している。




    【ヌ……ヌゥゥゥッ!!】

    ジュバァッ!!




    何か嫌な予感がした黒腕の片割れが光を握り潰す。


    が、その直後に蒸発音が鳴り響く。

    握り潰したはずの黒腕が粉々に消散したのだ。




    【ギ………ギャアアアアアアァァァァッ!!??】



    光は強さを増し、触れた黒腕を次々と消し去っていく。




    【何ダ……何ナンダ、コノ光ハァァァァ!!!】

    「クククッ……悪いが、この少年はまだ死なせるわけにはいかん」

    【ッ!?】

    「苗木は……殺らせない!」

    【バ、馬鹿ナ……!?オマエ達八!!】

    「英雄剣……天照大御神ッ!!」




    ズドオオオオォォォォォォォッ!!!!




    【ガアァァァァァァァ!!!??】

    苗木「…………うっ……」




    光の一閃が黒腕を射貫くと、苗木を縛っていた闇が消える。




    「さぁ立つんだ!君は、まだ終わるべきじゃない」

    苗木「その……声………」

    「終わるな苗木……立て!」

    苗木「ダメだよ……もう、僕はみんなを守れない」

    苗木「……僕は負けた……もう、死ぬしか……」

    日向「馬鹿野郎っ!」

    苗木「!!」




    怒声。
    そして視野が真っ白に染まり変わった。




    苗木「ここって……」

    「あぐっ!?」

    苗木「!」

    グレイス【フハハハハッ!!さっきまでの威勢はどうしたのかね?】

    戦刃「くっ……!」

    苗木「戦刃さん!?」



    バチィッ!!



    苗木「痛っ!」



    とっさに戦刃の元へ駆けつけようとした直後、見えない透明の壁が、電撃のようか痛覚と共に苗木を弾き返す。



    苗木「なんだ、これ……」

    日向「今のお前じゃ、皆のところにいけない」

    苗木「!……ひ、日向くん……」

    フリート「ここは生と死の境界線、俺達の姿は彼らには見えていない」

    アレス「当然、グレイスにもな」

    苗木「フリートさんに、アレスまで……」

    日向「苗木、このままだと俺達同様……お前は死ぬ」

    苗木「……え?」




    「このまま」……?




    フリート「君はまだ完全に死んではいない。現実では仮死状態に陥っているんだ」

    アレス「だが、放っておけばもちろん死ぬ。俺のようにな?」

    フリート「けど、復活のチャンスはまだある!」

    日向「苗木……お前が最後の希望なんだ」

    苗木「………うっ……」



    その言葉の意味は何よりも重たかった。

    ズッシリとのしかかるプレッシャーが、何倍にも膨れ上がっていくように。


    差し出された腕に、苗木も微弱な態度で腕を差し出す………が。



    日向「……いや、ダメだ」



    バシッ、不意に腕を弾かれた。
    拒絶されたのだ。



    苗木「………え?」

    日向「苗木、お前には………この世界を救える資格が無い」




    鋭く、冷ややかな眼差しが……苗木を突き刺した。

  93. 93 : : 2015/03/07(土) 18:45:28
    苗木「…資格……?」

    日向「そんな弱々しい姿じゃ、誰も守れずにまた死ぬだけだ」

    苗木「うっ……!?」



    正論……それは正しすぎた。



    苗木「……………」

    日向「苗木」



    名を呼ばれ顔を上げた直後、目の前に一本の棒が突き刺さる。


    それは虹色に光る棍……苗木の色具、マルチ・ロッド。



    日向「苗木……俺と戦え」

    苗木「え!?」

    日向「今のお前には資格がない、だから……今この場で俺に証明してみろ!!」



    日向も己の刃、プラチナ・ブレイカーを抜き放つ。



    日向「さぁ、戦え苗木!」

    苗木「む、無茶だよそんなの!」

    苗木「だ、大体!僕なんかじゃ日向くんな勝てるわけ……!!」



    刹那、刃が右頬の空気を刺し貫く。

    頬に薄い切り傷がゆっくりと浮かび上がると、生暖かい鮮血が頬を伝った。



    日向「だったら俺が……今この場でお前を殺す」

    苗木「…!」



    殺気。

    今の日向の目には仲間は映っていない。
    明らかな敵視。

    躊躇なく刃を振るう敵意が湧き出ている。



    苗木「日向……くん…」

    日向「行くぞっ!」

    苗木「うわっ!?」



    ブォンッ!と不気味な風切り音を鳴らしながら剣筋が頭をよぎる。


    頭を下げていなければ確実に首が体とおさらばしていた。
    そう思うと体にゾッと悪寒が走る。



    日向「まだまだぁ!!」

    苗木「うっ!」



    その後も日向の猛進は止まらない。一筋一筋が全身全霊。
    手加減なんて気持ちはこれっぽっちも感じなかった。



    日向「情けないな苗木!ゼウスやグレイスに挑んだ時の力はどうした!」

    苗木「無理だよ!いくらなんでも日向くんと戦えなんて!」

    日向「それが馬鹿野朗って言ってんだ!」



    持ち手を組み換え、剣の柄が苗木の顎を強く打撃。



    苗木「がっ…!」



    脳震盪。

    顎による衝撃が脳を刺激し、足腰が急激に脱力する。



    苗木「ぐっ!?」



    ガクンっと崩れ落ちたのを日向は見逃さない。
    素早く苗木に乗りかかり、鋭い剣先を首筋に突きつけた。



    苗木「っ!」

    日向「………情けないな、苗木」

    日向「そんなんだから、誰も守れないんだ」

    日向「このままじゃ、みんな死ぬな?」

    苗木「くっ…!」

    日向「希望が聞いて呆れるぜ……仲間を守るとか言っていた奴が足手まといになるなんてな」

    苗木「………れ……」

    日向「世界も滅び、仲間もみんな死に、迎えるのはデッドエンド………」

    日向「全部、お前のせいだ」

    苗木「……っ!黙れぇ!!」

    日向「!」



    突然の腹部への痛み。
    それが苗木による蹴りと気づくのに少しばかり遅れる。



    苗木「色能力……【ホーリーランス】ッ!!」



    カッ、鋭い光が迸る。

    ロッドから撃ち出された光の槍が日向の腹部へゼロ距離で直撃したのだ。



    日向「!」



    すぐさま日向の身体を薙ぎ払い、苗木は後方へと大きく下がる。



    苗木「はぁ……はぁ………!」

    日向「……なんで本気で来ない?」

    苗木「!?」

    日向「なんでホーリーランスなんだ?今のお前には真・色能力があるだろ?」



    だとしても、だとしても直撃したはずだ。ゼロ距離で当てたはず。



    日向「……けど、ようやくやる気になってくれたな」

    苗木「なっ……」



    空気が……変わった?



    日向「モード……神座!!」



    髪が逆立ち、燃え盛る銀髪へと染め上がる!



    苗木「それはっ………!?…」

    日向「行くぞ……苗木!!」


  94. 94 : : 2015/04/29(水) 12:33:06
    最期のチャンス、最後の光、最後の希望……。


    それを託すのなら、託されるに相応しい覚悟が必要不可欠!



    日向(頼むぜ苗木……文字通り、お前が最期の希望なんだぜ?)


    日向「うおおおぉぉぉぉぉっ!!!」

    苗木「っ!」



    無駄のない洗練された一太刀、苗木はそれを身をそらすことで紙一重に回避!


    反撃の好機と思われた一瞬だが、あえて苗木の脚はバックステップをとった。



    日向「ッ…いい加減にしろよ苗木!なんで戦わないんだ!」

    苗木「それはこっちの台詞だよ日向くん!なんで、君と戦わないといけないんだよ!」

    日向「言っただろ、お前には資格がない。覚悟がないお前にはな」

    苗木「さっきから資格資格って……どうして僕なんだよ!僕なんか皆の足手まといでしか……!」

    日向「そのくらい……自分で考えろ!」



    言い捨てると同時に踏みけり、必中の間合いでプラチナ・ブレイカーが輝きを放つ!



    日向「プラチナ……ブレイクッ!!」



    放たれた鋭き一閃。
    極限まで圧縮され、真空波の如く走るソレは音速をはるかに上回る!



    苗木「っ……ぁぁああああ!!」



    苗木に音速を超えるなどというポテンシャルは持ち合わせていない。

    当然、苗木がとったのは「回避」ではなく「撃退」!



    苗木「ホーリー・ランスッ!!」



    『カッ!!』



    白銀の刃と黄金の槍が打ち消し合い、閃光の如く輝きを撒き散らした!


    だがそれは同時に双方の視界を潰す結果に終わり、迎撃にいま一歩遅れた苗木は光をもろに受ける。



    苗木「あぐっ!?」



    カーンッと目玉の後ろを釘で打たれたような鋭利な激痛が走り抜ける。

    目を開こうとすれば余計に痛みは酷くなり、大粒の涙がボロボロと零れ落ちた。



    苗木「くっ……まずい!」

    日向「はああぁぁぁ!」



    闇の中、迫りくる声に危機感を察し、強引に目を見開くが既に遅い。



    日向「プラチナ……ブレイクっ!!」



    ゼロ距離の直撃ッ!

    白銀の刃が体に触れた途端、発光すると同時に強烈な大爆発が炸裂する!!



    苗木「うああああああァァァァァッ!!!?」



    衝撃により苗木の体は後方へ大きく吹っ飛び、あの電撃の流れる見えない壁に勢いよく叩きつけられた。



    苗木「かはっ…!!」



    背中から導電して体にスパークが走る。

    麻痺するほどではないが、それでも苗木から自由を奪うには十分すぎる力だ。



    苗木「ぐっ……くく………!」

    日向「……所詮、この程度か」

    苗木「ッ!」



    アレス「拍子抜けだな。仲間一人に本気を出す覚悟すら無いとは…」

    フリート「そうじゃないさ」

    アレス「何?」

    フリート「本人も言っていたけど、苗木くんの真・色能力である『グングニル』は、対象の邪心そのものを撃ち抜く技だ」

    フリート「今の日向くんは操られてるわけでも、闇に落ちたわけでもない。撃ったところでダメージはゼロさ」

    アレス「!……では、初めに言っていたあの言葉は?」

    フリート「おそらく、日向くんはもう気づいている」









    ━━━━━━光の中に眠る、更なる輝きを。







    苗木「はぁ…!はぁ………!」

    日向「もう終わりか?もう立てないのか?」

    苗木「くっ!」

    日向「……苗木、お前は…何を守りたいんだ?」

    苗木「……え?」



    日向は刃を下ろし、語りかけるように苗木に問いた。



    苗木「何をって……仲間を……」

    日向「違うな」

    苗木「え……!?」

    日向「全然ダメだな苗木……そんなんじゃあ、絶対に何も守れないな」

    苗木「何…言ってんだよ、仲間を守るために僕たちは戦ってたんじゃ……!」

    日向「それが違うって言ってんだ!」



    『カッ!!』



    怒号に続き、二度目の白銀の刃が炸裂!



    苗木「がはっ……!!」

    日向「考えろ!お前が今、何を守るべきなのかを!」



    何を……守る?


    そんなの、仲間に決まってるじゃないか……。



    苗木「……ハァ……!ハァ………!」



    何を守る……仲間?……違う?

    守る…?護る……?

    何を……?何のために……?



    苗木(一体、どういうことなんだよ……日向くん)







  95. 95 : : 2015/04/29(水) 20:25:11
    久しぶりに期待です!!!!!
  96. 96 : : 2015/05/07(木) 22:11:13
    苗木にはまだ目覚めていない能力がありそうですね(* ゚∀゚)
  97. 97 : : 2015/05/14(木) 16:07:34
    >>95

    ありがとうございますです!

    >>96

    そうかもしれませんね!(震え)
  98. 98 : : 2015/05/14(木) 16:07:41
    戦刃「ッ!、灰塵の刃(グレー・スピア)ッ!!!」



    灰色に染められた、風の弾丸。

    しかし確実に射止めたかと思われた弾頭も、虹の神の前には容易に掻き消される。



    マスティア『損害率計算……損害率、0%』

    戦刃「くっ…!」

    狛枝「マズいね…このままだと本当に全滅……かもね」

    舞園「……苗木くん……!」





    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━






    日向「オオオォォォォッ!!!」



    『ズバババァッ!!』



    苗木「ぐあぁっ!」



    接近された一瞬もの間に、何連撃も白い斬撃が刻みこまれる!



    苗木「っ……がはっ!」

    日向「答えを出してみろ苗木!お前だけの……お前だけが出しえる答えを!」



    わからない……日向くんは、何を言っているんだ?


    さっきの問いに、ボクだけの答えを?
    どういう意味だよ……日向くん……



    アレス「なん……だと?苗木にそんな秘密が!?」

    フリート「あぁ、おそらく日向くんはそれに気づいている上で、苗木くんの戦意を煽っているんだ」

    アレス「………なるほどな」



    だが、苗木がそれに気づくのはかなりの低確率だぞ?


    日向にはそれを確率を当てる手段があるとでも言うのか……?



    日向「ようやく俺の攻撃に対して、「回避」から「迎撃」になってきたな……!」

    苗木「このままじゃジリ貧……だからね!訳もわからず殺される訳には……いかないよ!」



    言い切ると同時に苗木はロッドを長く持ち、突き刺すイメージで日向に反撃を報いる。



    日向「くっ…!」


    (攻撃も、本格的になってきたな……下準備はこれくらいでいいだろう)

    苗木「はあぁっ!!」



    『カッ!!』



    日向「!」

    フリート「!」

    苗木「聖騎士の槍(ホーリーランス)っ!!」

    日向「チッ…!」



    咄嗟に我に返り、日向は直前のところで眼前に迫った光の槍をかわす。



    ズドオオォォォォンッ!!!




    苗木「くそ、今のは当たると思ったのに……!」

    日向「い、今の光は……」

    フリート「見たか?アレス……」

    アレス「あぁ、技の特性である輝きに紛れて判別し難くはあったが……」

    日向(今、確実に苗木自身が光っていた……まさか無意識にコツを掴みつつあるってことかよ!)



    日向「上等だ苗木!それでこそ、この世界を背負う者の器だぁ!!」ダンッ

    苗木「!?さっきよりも速……」

    日向「行くぞ苗木、俺もそれに全身全霊で答える!」



    日向「プラチナ……スレイブッ!!」

    苗木「え!?」



    今まで縦に振るうことで威力を取得していた能力、プラチナ・ブレイク。


    それは幾多の戦いの中で何度も見てきた。
    だから反応できた。だから迎撃できた。



    けれど……この技は違う、日向くんは進化したのだ。

    蓄積されてきた経験値を糧に、新たな技を編み出したのだ!



    長く、鋭く、太刀のように変化したブレイカーを日向は地面へと突き刺す。



    日向「行くぜ……神座(デュアル)と融合して生まれた、とっておきの技だ!!」



    新たな力に怯む苗木を余所に、刃の突き刺さった地面から、白い火の玉のようなものがいくつも浮かび上がる。



    苗木「アレは……?」

    フリート「ま、まさか……」

    日向「余計な会話は無しだ!みんな、俺に力をかしてくれ!」



    ぼんやりと漂う火の玉にそう命じると、それぞれが形を変え、人の形を形成し始めた。



    『力を貸せ……か、随分と上から目線じゃねえか日向!あぁ?』

    『うぷぷ……まぁまぁ、そう言わずに……何だか面白そうな展開じゃん?』

    『理由は分かった……お前の意思に従ってやんよ日向』



    苗木「そ、そんな……!?」

    大和田『久しぶりだなぁ苗木、いや……数十分ぶりかぁ?』

    江ノ島『苦戦してますね〜苗木くん、泣いちゃいます?ここで泣いちゃいます?』

    九頭龍『漢なら覚悟を決めろや苗木!答えを出せねえ奴に、どうこうする権利は無えんだぞ!』

    苗木「大和田くん……江ノ島さんに……九頭龍くんまで!?」



  99. 99 : : 2015/05/26(火) 06:45:29
    やばい、一気に見てたら夜明けてた…
    すごいこのss好きです!頑張って下さい!
  100. 100 : : 2015/08/04(火) 19:11:54
    期待
  101. 101 : : 2015/08/06(木) 13:51:09
    期待です!!! やっと追い付いたよ・・・
    これはゼウスSSですね!!!頑張れ!!!(ゝω・´★)
  102. 102 : : 2015/08/06(木) 15:06:24
    >>99

    >>100

    >>101


    沢山のコメント、本当にありがとうございますっ!!
    時期的に忙しい為、やはり上手く更新できませんが、精一杯頑張らせて頂きます!
  103. 103 : : 2015/08/06(木) 15:06:34
    アレス「死者を蘇生させた!?苗木の能力と同じ類か?」

    フリート「いや、よく見てくれ。身体が透けている……実態じゃない」

    苗木「日向君……それは?」

    日向「俺が生み出した新能力、『プラチナ・スレイブ』。一時的に死者を蘇生させることが出来る……俺の新技だ」

    苗木「そんなことが……」

    九頭龍「まぁそう言うわけだ。別に本当に蘇った訳じゃねえってことだな」

    大和田「けど、今はそれが問題じゃねえな」

    江ノ島「これで4対1。うぷぷ……絶望的だねぇ!」

    日向「苗木、お前は俺に対しては刃を向けられるようになった。けど他の皆にはどうだ?同じように刃を向けられるか?」

    苗木「そ、それは……!」



    日向に対しては戦意を煽られ、それが弾みで攻撃を行えた……しかしこの状況は違った。

    一時的とは言え、死んだ仲間との再会。
    それが苗木の心を大幅に揺るがす。



    日向「行くぞ!」

    大和田「仲間といえど、手加減しねえからな苗木ぃ!」

    九頭龍「じゃねえと俺たちと同じ道を辿るぜ!」

    江ノ島「あ、てか私様武器無いんだった。まっ……全っ然問題ないですけどねぇ!」

    苗木「くっ……!」







    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━







    戦刃「はあぁっ!!」

    グレイス【マスティア】

    マスティア『YES。マスター。』



    バキャッ



    戦刃「がはっ!!」

    マスティア『側面の腹部への攻撃を確認。クリティカル率……44.7%。』

    田中「オオオォォォォォォッ!!」

    田中「色能力……ガイア・ブレイクッ!!」



    ガンッ!とマスティアの踏み場が下から凄まじいい力で爆散。

    噴き出した熱線がマスティアを包み込み、周囲に熱気が立ち込める。



    田中「はぁ……はぁ……!」

    マスティア『損壊率……34%。熱への耐性スキルにより、0%へと還元。』

    田中「なっ……!?属性への耐性も持ち合わせているだと!?」



    熱風を掻き分け、余裕の素振りで出てくるマスティア。多少黒ずんではいるものの、そこにダメージと思われる形跡は残ってはいなかった。



    グレイス【ほぅ……まだそんな余力が残っていたのか】

    霧切「悪いけど、こちらにはヒーラーがいるのよ」

    舞園「そう簡単には……終わりません……!」

    霧切(………と言っても、そろそろ限界ね)



    既に息は乱れていた。
    このまま使い続ければ、先に舞園が倒れてしまう。



    霧切「だからこそ……貴方達に賭けるわ!!」

    「はいっ!」

    グレイス【何っ……?】



    霧切の目線を追った先には、城を覆い隠すように空に立ち込める黒雲。

    その中央に、一つの影が見えた。



    ソニア「ドンッ!とかましますよ!これが私のとっておきです!!」



    ソニアの激昂に黒雲が共鳴。
    今にも溢れ出しそうなスパークが上空で不穏な電流音を轟かす!



    グレイス【雷雲……?なるほど。先程からの執拗な攻撃は、コレへの時間稼ぎか………】

    ソニア「お喰らいなさい!これが私のラスト・ソウルッ!!」

    ソニア「【LIGHTNING・TEMPEST】(白雷の一閃)ッ!!」



    『ドオオォォォォォォォォンッ!!!』


    黒雲に大穴が開き、凄まじき鋭き一閃が放出された!

    空気をも居抜き、耳鳴りを引き起こす雷撃音が一同に襲いかかる!!



    七海「痛っ!」

    戦刃「み、耳が…!?」

    狛枝「あ、あはは……圧巻だね。流石は王女……ってところなのかな?」

    豚神「これほどの威力ならば……」



    グレイス【チッ。先ほどの爆発で足場が崩れて動けぬか………マスティア!】

    マスティア『YES。マスター。』

    マスティア『危険度A。予想損壊率72.6%。雷属性の攻撃と判定。防御します。』



    左手に持つ盾が輝きを発し、マスティアの背中から神々しい翼が展開する。



    マスティア『絶対防御能力……『ミカエル』展開。』

    グレイス【ククっ……残念だったな。能力発動時のマスティアの属性耐性は……100%だ!】

    ソニア「貴方にあたっていれば……ですけどね?」

    グレイス【?】

    ソニア「あとは頼みました!大神さんっ!!」



    マスティアの目と鼻の先まで迫っていた雷撃は急激に直角に折れ、右方向へと転換した。



    グレイス【なに…!?】

    大神「託されたぞ、ソニアよ!」



    音速に等しい閃光の速度を追った先は、右腕に雷撃を受け止めた大神の姿。



    グレイス【エンチャントか!?】

    大神「舞園のおかげでもう一度だけ放つことができるようになった……礼を言うぞ!」



    右腕の筋肉がハチきれんばかりに膨れ上がり、鬼の如く屈強な豪腕と化す!






    大神「【鬼牙・業砕拳】ッ!!!」





  104. 104 : : 2015/08/07(金) 21:32:37
    期待
  105. 105 : : 2015/08/14(金) 08:37:50
    期待
  106. 106 : : 2015/08/25(火) 19:27:54




    大和田「おおおおぉぉぉぉぉっ!!!」



    ドンッ!!



    苗木「くっ……!」



    大斧の腹を盾にした重いタックルに、小柄な身体が後方へと大きく吹っ飛ぶ。



    大和田「どうした!そんな防御じゃ一撃でお陀仏になっちまうぞ!?」



    苗木は重力に逆らうことなく背面から落ちる身体を強引に捻り上げる。

    そのまま受け身の体制へ持ち替え、ダメージを最小限に留まらせた。



    苗木「っ…!危な……」

    九頭龍「へぇ、器用な真似するんだな」

    苗木「!?」



    声の元へ振り向いた刹那、鋭い光が視界を遮る。

    それが何かを判断する前に、苗木の身体が飛んだ。
    直後。先程いた場所を銅色の刃が貫く。
    耳にフォンっと不気味な風切り音が横切り、背筋に悪寒が迸る。



    苗木「はぁ……!はぁ……!」

    九頭龍「よく避けたな。けど……」

    江ノ島「流石に三度目は……無理っしょ?」

    苗木「!?」



    声を耳が捉える刹那、頭部に強烈な打撃が炸裂した!



    苗木「がはっ!?」



    脳に、鐘が鳴ったような衝撃が轟く。
    あまりの不意の一撃に身体が上手く機能しない。



    江ノ島「それ、もういっちょ!」



    江ノ島は かかと落としから瞬時に体制を切り替え、無防備な背中目掛けて強烈な回し蹴りを叩き込んだ。


    脳による衝撃でグラついていた重心はいとも簡単に崩れ、苗木は紙くずの如く吹っ飛ばされた。



    苗木「がはっ!!」


    日向「どうした苗木!いくら4対1と言っても、そいつらは3人は本来の半分程度の力しか出せないんだぞ!?」



    アレス「半分?なるほど……制限付きの蘇生というわけか」

    フリート「けど、それでも手も足も出ないってことは………」




    苗木「ぐっ……はぁ…!はぁ……!」

    フリート(やっぱり……日向くんとの戦い同様。苗木くんは、相手に慣れないと戦意を起こすことはできない)

    アレス(ましてや別れたはずの仲間と再会だ。奴のことだ。おそらく迷っているんだろう……)







    【僕は………何を……護りたいんだ………?】





    その言葉が、幾度となく頭に流れてくる。





    仲間……?でもそうすると世界が………。


    じゃあ、世界を護る……?けど、それだと死んだ仲間は?今ピンチな仲間たちは……?






    苗木「くそっ……くっそぉぉぉ!!!」

    日向「…………………」




    (………神座から引き継いだ能力……読心の眼。まさか、こんなに鮮明に聞こえてくるなんてな………)





    お前の気持ちは痛いくらいにわかる……。

    けど、それを決めるのも、乗り越えられるのも、お前だけなんだ!!





    大和田「オラァ!どんどん行くぜ苗木ッ!!」

    九頭龍「死ぬ気でかかってこい!!」

    江ノ島「私らはもう死んでるけどね〜♪あひゃひゃひゃひゃ!!」

    苗木「くっ……!?」




    これが……最後の助言だ。




    日向「苗木ィィィィッ!!」

    苗木「!?……日向くん?」

    日向「難しい事は全て省け!!お前の……お前だけの答えを!!出してみせろ!!!」

    苗木「!!」






    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━






    ナエギ【君は……何を護りたいんだ?】


    ナエギ【……仲間?】


    苗木「……違う」


    ナエギ【じゃあ……世界?】


    苗木「……それも違う」


    ナエギ【【じゃあ……キミは……オマエは………何を護ると言うんだっ!?】】


    苗木「そんなの…………簡単だよ」





    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━






    苗木「僕が……僕が護りたいのはッ!!!」



    『カッ!』




    大和田「うお!?」

    江ノ島「ちょっ……何これ、眩し……!」



    フリート・アレス「「ッ!!」」







    日向「………遂にたどり着いたんだな、苗木!」






  107. 107 : : 2015/08/26(水) 15:12:20

    ━━━━━━━同時刻。





    大神「【鬼牙・業砕拳】ッ!!」

    グレイス【チッ……小癪な真似を…!マスティア!!】

    マスティア『………………。』



    グレイスが激昂を飛ばす。
    しかし、マスティアは盾を構えたまま微動だにせずにいた。



    グレイス【ッ…!こんな時に……!!】

    霧切「…?」

    大神「ハアァァァァァァッ!!!」

    グレイス【くっ…!?こうなれば……!!】



    グレイスは残る右手を地面に貼り付け、コールした。



    グレイス【エンド・ウォール(終末の砦)ッ!!】



    ブンッ、と右掌から放出されたのは無数の影。

    影は地面を伝い、大神とグレイスの間合いに何重もの壁を精製した。



    大神「今更こんな子供騙し……効かぬっ!!!」



    大神はあらん限りの力で拳を撃ち放つ!

    鬼腕による破壊力と、轟雷による貫通性。2つの威力が交わった一撃は立ち塞がる壁を一瞬にして突破した!!



    グレイス【なっ…!?】

    大神「おおおおぉぉぉぉぉっ!!!」



    『ズドオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!』



    瞬間、鼓膜をぶち破る衝撃波と轟音が全方位に波動となって響き渡った。

    雷撃を纏し拳は、正確にグレイスの身体を捉えていた。そして雷神の鉄拳がこれでもかと抉りこんでいた!!




    グレイス【ガアアアァァァァァァァァッ!!?】

    舞園「す、凄い……!」

    豚神「これが、大神のラスト・ソウルか……!」



    鉄槌に続く、雷撃の追加攻撃。

    マスティアと違い、属性に対する抵抗力に特化していないグレイスに雷の刃が容赦なく突き刺さる!




    大神「ヌウウウウウゥゥゥゥッ!!!」

    グレイス【ガアァッ!!?くっ…!こ、こんなところでェ……!!!】

    グレイス【マスティアァァァァァ!!いつまで休んでいる気だァァァ!?】

    マスティア『……。………処理errorの修復を確認。……権限……者の命令を認証…。イエス。マ……スター。』



    兜の隙間から鋭い眼光が漏れ出したと思うと、突然スイッチが入ったようにマスティアが動きだす。

    しかし、その動きは先ほどまでと比べ
    ると明らかに鈍い。心なしか全体の言動をもがぎこちなかった。



    グレイス【クソッ!…】



    霧切「やっぱり…!人間ではなく、プログラムである以上……あんな俊敏な動きを処理し続けられる筈が無いんだわ」

    七海「ゲームで言うところのFPSの低下ってところ?」

    霧切「ええ、しかも一度ソニアさんの技を対処してる最中に、次の命令を出されたから対応が追いついていない!」





    (チッ……!勘の鋭い小娘が……これまでの戦いを通して、マスティアの弱点に気づいたか!)





    グレイス【やむを得ん!マスティアッ!ラスト・ソウルの使用を許可するッ!!】

    マスティア『Y…ES。マスター。』

    大神「何っ!?」

    戦刃「この状況で…!?」



    マスティア『ラスト・ソウ……ルのセキュリティロ……ックを解除。【災禍の剣】発動……。』



    コールし、マスティアは両手の盾と槍を手放す。
    そして自身の心臓に当たる部位に、両腕を突き刺した。



    「「「ッ!?」」」



    予想のしなかった事態に、一同の目が大きく見開く。



    マスティア『オ……オオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!』



    霧切「こ、言葉を……!?」

    グレイス【さぁ………抜き放て!絶命の刃をッ!!】



    マスティア『オオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!』



  108. 108 : : 2015/08/29(土) 23:16:57


    大量の臓物と血をぶち撒け、胸から引き抜かれたのは……漆黒に染まった剣。

    刀身には奇怪な触手のような物がへばりつき、そこから滲み出る液体が静かに滴っている。



    石丸「な……なんだと言うんだ……!?」

    舞園「気持ち悪い……」

    セレス「しかも……酷い臭いですわね……」



    その異剣を引き抜いたと同時に、マスティアの胸には風穴が開き、流水のごとく血が流れ出していた。


    それが何なのかは分からない。だが今までの経験と知識が、決して予断してはならないものだと認識する。



    大神「ハァっ!!」



    大神はめり込ませていた拳を捻り、手の甲でグレイスを突っ飛ばす。



    グレイス「ガはッ……!」



    ダメージには十分な手応えがあった。

    トドメを刺すまでには至らなかったが、あのまま拳を入れていれば、あの禍々しい刃に隙を突かれかねない。


    判断した大神は、まだ雷撃の加護が残った右拳をマスティアへと切り替えた!



    大神「ハアアァァァッ!!!」



    『ズドオオォォォォォォォォッ!!!』



    今度は直撃だった。
    的を射抜くが如く。雷撃の拳はマスティアの腹部へと炸裂した。


    多少効果は半減しているかもしれないが、それでも残った雷電はマスティアの身体を容赦なく突き刺す!



    マスティア『………ゥ……ゴブッ……!?』



    効いている。あの得体の知れない剣を使われる前に、仕留めることが出来る!



    大神「ヌウウゥゥアアァァァァ!!!」



    残る力と雷撃を全て集中させた一手は、轟雷が鳴り響くと共に、マスティアの装甲を粉壊した!!



    マスティア『ギギッ…ガッ……………ギャァッ!!』



    鉄がひん曲がる音がハッキリと聞こえ、兜の隙間から機械油のような液体が大量に噴き出す。



    霧切「やっ……」

    左右田「やった!!」



    マスティア『ピー……ガガッ……ギ……ッ………!!?Error━━Error━━━━修復……損害………Error━━Error…………!!━━━━破損率……100%……ErrorError━━━不可………!』



    『ビーーーーーーーーーーッ!!!』


    『ユーザー名:マスティア
    BreakOVERッ!!』



    デス・アラートが、鳴り響く。

    身体の節々から機械油と電流を漏出させる虹の神マスティアは……そのまま地響きと共に地へと崩れ落ち、粉々に砕け散った。



    左右田「や…やったぜ!あの化物を倒しちまった!!」

    豚神「これで……残るは瀕死のグレイスのみ……か」




    だが同時に、雷撃の加護は消散。
    大神の鬼と化した右腕も、そのまま膨れ上がった風船の如く破裂した。



    大神「あグァッ……!?」

    戦刃「お、大神さん!」

    舞園「す、すぐに治癒を……!」

    大神「来るな…ッ!!」



    残る左手で大神は駆けつける仲間を制す。



    舞園「で、ですけど……その怪我では…!」

    「問題ない……我は……大丈夫だ……」



    引き千切られたような傷痕を残す右腕は、決して痩せ我慢できるような物ではないと人目でわかる。



    大神「それよりも……あの黒い剣を破壊、しなくては…!」

    霧切「剣……?」



    苦痛に縛られた眼光を追った先にあったのは、先ほどマスティアによって引き抜かれた、あの血みどろの異剣だった。



    大神「何か…嫌な予感がする……!一刻も早くその剣を、破壊しなくては……!」

    豚神「落ち着け。まずは治療が先だ……仮にあの剣が危険な代物だったとして、誰がそれを扱うと言うんだ?」

    戦刃「……そう……だね。あの機械人形も居ないし、彼も殆ど瀕………ッ!?」

    豚神「…どうした?奴がどうかし━━━━




    【クッ……クククッ………誰が扱うか……だと?】




    豚神「っ!……何!?」

    セレス「あれほどの攻撃を受けて……まだ……!」

    グレイス【クッ……カカカカッ………!!流石に、死ぬかと思ったぞ………愚民共め………!!】



    身体は流血と埃でボロボロに傷つき、少しでも押せば倒せてしまいそうなのは見るからに明らかだった。



    なんという執念だろうか……。


    幾度となく血と戦意を交えてきた。

    が、この男には……単純な悪が掲げる安っぽい理想では無く、まるでそれを生涯の全てを犠牲にしてでも果たさなくてはならない……そんな気迫を感じられた。



    グレイス【ガフッ……!?はぁ…!はぁ…!れ、礼に一つ、良い事を教えてやろう……】

    グレイス【虹の神マスティアは、真実を覆うための、言わばプロト・コードだ……】

    豚神「プロト・コード……だと?」

    グレイス【そして、その真のコードネームは………!】









    ━━━━━━━災禍の剣……マスティアだ。





  109. 109 : : 2015/08/31(月) 10:45:29

    戦刃「災禍の剣…マスティア……」

    十神「フンッ、仮にそれが真の姿だったとして……その身体で何が出来ると言うんだ?」



    十神の言葉も最もだ。

    マスティアのお気土産である、黒剣を奪われたのはかなりの痛手はあるが、今のグレイスにソレを扱えるほどの力があるとは到底思えない。



    グレイス【クッ……クククッ……そうだな、確かにこの怪我では、一振りするのが関の山だろうな……】

    霧切「だったら、大人しく降伏してくれないかしら?貴方だって、死にたくは無いのでしょう?」

    グレイス【……死にたくない……?】



    突然、グレイスの顔から皮肉めいた微笑みが消える。



    グレイス【……今更、死に対して恐怖を抱くとでも……?】

    石丸「ッ……!な、なんだ?」

    戦刃「誰か、はやく大神さんを!なにか来るよ!」

    弐大「ならばそれが起きる前に止めるまでじゃあ!!」



    戦刃の制止をすり抜け、鉄塊と化した巨体がグレイスに突撃する。



    戦刃「ッ……ダメ!待って弐大くん!」

    弐大「おおおおぉぉ!!!」



    ドンッ!と鈍く派手な音が聞こえた。



    グレイス【ガフッ……!?】



    鉄の硬度に速度を加算した、言わば高所から振り落とした鉄球同然の一撃をモロに受けたグレイスの身体が豪快に吹き飛ぶ。



    グレイス【ウッ………グフッ!】

    弐大「全く、往生際が悪い奴じゃな……」

    霧切「大神さんの予測通り、やはりあの剣には何かあるみたいね……」



    渾身の突進を受けてなお、グレイスの手からあの異剣が離れていない。

    マスティアの真の姿があの剣とするのならば、大神が打ち破ったのは「中身の抜けた器」……という事なのだろう。


    もしそうなら、剣を引き抜いた後のマスティアの異変にも納得がいく。

    戦力を減らしてまで手に入れたあの剣、大神が言っていたように、霧切もその剣に警戒心を抱いた。



    霧切「弐大くん、そのまま彼から剣を回収してくれないかしら?」

    弐大「……うむ、そうじゃな。ワシも何か嫌な予感がしてならんからのう」



    そう言ってまだダメージが残っているであろう、倒れ伏せたグレイスから剣を取ろうと手を伸ばす。



    弐大「!?」



    がしかし、剣に触れる一歩手前で弐大の手が止まった。



    霧切「弐大……くん?どうかしたのかしら?」

    弐大「つ、剣が……腕と同化しておる!」



    驚くべき事に、刀身にへばりついていた君の悪い触手が、グレイスの右腕を飲み込んでいたのだ。

    咄嗟に引き剥がそうと試みるが、体内にまで侵食しているのか、弐大の腕力を持ってしてもビクともしない。



    グレイス【クッ……ククククッ……】

    弐大「こやつ……まだ意識が……!」

    グレイス【……死が怖いなら………死が嬉しいと思うほどの悪夢をくれてやる………】

    グレイス【私は死を恐れん……!例えこの身が塵に還ろうともなッ!!】



    バッと上半身を起こしたグレイスの目は、白目と呼ばれる範囲が真っ黒に染まり、瞳は真紅に染まっていた。



    【私ノ理想を……実現出来ルノナラ……私ノ持ツ全テヲ犠牲ニシヨウッ!!】

    【サァ……私ヲ堕トセ!!災禍ノ剣ヨッ!!】



    叫び、剣を掲げると、触手が全身を飲み込み、別の個体を形成していく。




    【オ……オオォォォ………オオオオオオオオオオオオオォオォオォォォォォオオッ!!!!!】




    弐大「こ、これは……!」




    【ァ…アアアアアァァァ………!!】




    ジェノ「オイオイ……これは洒落になんねぇだろ……」




    圧巻。その言葉に尽きた。

    肌は真っ黒に染まり果て、身体の至るところにはギョロリと蠢く「瞳」のような何かが浮き出ている。




    【ウヒ……ウヒヒヒヒヒ……ヒヒヒヒヒヒッ…!】




    「堕とせ」。彼はそう言っていた。
    自らを神と称する者が……闇へと墜ちたのだ。





    ━━━━━━━【堕神】。

    そんな言葉が脳裏を過った。







    【アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ!!!】








  110. 110 : : 2015/09/01(火) 14:10:18

    アレス「チッ!あの神モドキが……とうとう己自身をも捨てたか……」

    アレス「おいっ、苗木の転生準備はまだ終わらないのか!?」

    フリート「あと少しだ!あと少しでイン
    ストールが終わる……!」



    フリートの身体を伝い、苗木の身体にプログラムのようなものが流れ込んでいく。



    苗木「…………………」



    (……はやく、はやく終わってくれ……!)



    日向「苗木」

    苗木「!…日向くん」

    日向「焦るな。焦っても時間は待ってくれないぜ?」

    苗木「あっ、うん……ごめん…」

    日向「謝んなよ」



    そう言って日向はフッと息を漏らす。

    苗木は拳を握り、じっと眺めるように自分の手を見つめていた。



    日向「…やっぱり止めておくか?」

    苗木「ははっ…大丈夫だよ。僕はもう……答えを出したから」

    日向「……そうか」

    フリート「よし、終わったよ!」



    ポォッと身体がぼんやりと輝き、次第に身体が粒子と化していく。



    苗木「みんな、色々と……ありがとう!」

    日向「バーロー、礼は全てが終わってからだ」

    アレス「クククッ……そうだな、せいぜい無様な姿を見せぬことだ」

    苗木「…うん!」



    最初の時とは違う。
    仲間の声援に、苗木は力強く答えた。







    『━━━━プログラムの正確な動作を確認。転生を開始します。』





    機械の音声が聞こえたのを最後に、苗木身体は光の粒子となって消散した。


























    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━












    【ハァァァァァァァァッ……!!】



    堕神は、不敵な笑みでゆっくりと吐息を吐き出した。

    足元に散らばる、無数の血を眺めながら………。





    石丸「ぁ……うっ………」

    田中「な……なんて………馬鹿げた…力だ………」

    霧切「……桁が、違いすぎる……!」




    【希望ハ……シツコイ存在ダ……。奇跡ハ起コル……何度デモナッ!!】

    戦刃「ッ!?あああああああああっ!!」




    亡き左手の付け根から生えた、禍々しい食手に拘束された戦刃が悲痛をあげる。




    舞園「も、もう……やめて………!」




    『バギッ!!メギギギギギッ………!!』




    関節が外れ、骨が砕ける音が聞こえた。




    戦刃「ウあああああああああああああああああああああああああッ!!!!」

    舞園「もうやめてぇぇぇぇぇぇッ!!」

    【ウヒ……ウヒヒヒヒ……アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ!サァ……終焉ヲ迎エル時ダ……希望共ォォオォォォォォォォオォォオォッ!!!】


    【アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ!!!!!】




    『メギギギギギギギギギギギギッ!!!!』





    戦刃「ッ!?……がはぁッ!!」


    (……ッ…もう、意識が………)

    (………苗木………く……………)



    (………………………………)



    (………………………)



    (…………………)



    (……………)


































    ━━━━━━━━━━━ドックン








  111. 111 : : 2015/09/02(水) 08:08:12




    【………ッ!?】



    戦刃の肉体にトドメを刺そうと刹那、聴覚が奇妙な音を捉えた。



    戦刃(………?……)

    【……何ダ、今ノ音ハ………?】



    途端、まるで玩具に飽きた子供のように、グレイスは拘束していた戦刃を放り投げる。



    ドクンッ・・・ドクンッ・・・・



    【ッ……マタダ……マタ、聞コエタ……】

    霧切「私にも…聞こえた………」

    セレス「こ、これは……」




    ドクンッ、ドクンッ・・・!




    戦刃「……心臓の、鼓動……?」




    静まった場に、堂々と木霊する鼓動。
    次第に音と心拍数が上がり、一同の視線が上に向けられた。



    【…光………?】



    音の根源を追った先には、空に満ちる、何万もの光の粒子が収束していた。

    一つ一つが、まるで宝石のごとく神々しい光を放ち、さながら星空を思い描かせる。





    ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!






    …………君は、答えを出した。




    ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!



    ……………ならば、あとは進め。自分の、信じるがままに!




    ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!




    満面の星空に、亀裂が走る。

    【……ッ!?】





    さぁ、行け……!そして、自分の答えを守り通してみせろ!

    ………苗木マコト。いや…………
















    ━━━━━━━『英雄』ッ!!


    苗木「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」




    『ガシャアァンッ!!』




    空がガラスのように砕け散る!
    そして、そこから光を纏った……ラスト・ホープが姿を現す!!



    【ナ……ナニィィィィィィィッ!?】



    霧切「苗木……くん…!?」

    十神「苗木……!」

    戦刃「こんな……ことが……!」



    一同が驚きに釘付けにされる中、グレイスはそれ以上に大きく動揺していた。



    【ア……アリエンッ!!死者ガ……闇二飲マレタ筈ノ人間ガ…生キ返エルナド………!】

    苗木「………………」

    【……ッ!何故答エンッ!!神ノ命令ガ聞ケ………ッ!?】



    激昂を飛ばすグレイスは一つ、目の前に佇む青年に対して、奇妙な違和感を見出した。



    【コノ……データは、苗木マコトノモノデハ無イ……!】

    【コレハ……マサカ…!】



    金色の髪……そして、感じたことのある、この不愉快なオーラ………!



    苗木「………………」

    【ジーク・フリート……!?】



    そっくりだった。

    まるでフリートの意思が、苗木と同化したような、プログラムや容姿まで、何もかもが似ていたのだ。



    【マサカ……奴ノ、バックアップデーター!?己ノ命綱ヲ、他人ノ為ニ受ケ渡シタノカ!?】

    七海「バックアップデータ……?」




    苗木「みんな、待たせちゃって……ごめん」

    苗木「でも僕は……もう、誰も!死なせないから!!」



  112. 112 : : 2015/09/22(火) 14:43:53

    【………誰一人シナセナイ……ダト?オ前一人デカ?ウヒッ……ウヒヒヒッ!!ウヒャヒャヒャヒャッ!!笑ワセテクレルナ小僧!!】

    苗木「いや……嘘でも、冗談でも無いよ」

    【ホゥ………ソウカ。ナラバッ!】

    戦刃「!?」



    グレイスは足下に倒れ伏す戦刃の首を鷲掴んだ。



    戦刃「がはっ……!!」



    そしてそのまま頭上高く掲げ、渾身の力で握り締める。



    舞園「戦刃さん!!」

    戦刃「うっ……!」

    【ナラバ、コノ女ヲ護ッテ見セロッ!コンナ小娘ノ首ヲ砕クコトナド、造作モ………!】

    苗木「言っただろ?嘘でも、冗談でもないって……」

    【ッ!?】



    気づけば、苗木は背後をとっていた。
    その両腕には戦刃の身体が抱えられている。



    【ナン……ダトッ!?】

    豚神「は、早い……!」

    戦刃(凄い…私にも見えなかった…!気づけば、苗木くんの腕の中に……!)

    戦刃「!」



    ふと、身体中に走る痛みが和らいだ気がした。いや、明らかに進行形で和らいでいる。



    戦刃「こ、これは……治癒…?」

    苗木「ごめん戦刃さん、付け焼き刃みたいなものだけど……少しは楽になったかな?」

    戦刃(付け焼き刃って……これ、確実に上位級の回復能力だよ!?……しかも、この感覚……舞園さんの治癒と似てる…?)

    【ッ……!タッタ一度ノ偶然デ、図二乗ルナヨ小僧ッ!!】



    左腕の異形の腕が何本もの触手に枝分かれし、両手の塞がった苗木に降り注ぐ!



    田中「いかん!」

    戦刃「苗木くん……!」

    苗木「……………」



    「………相手が一人だけだと、思ったのかよ?」



    【ナッ!?】



    触手が直撃する寸前、白い一線が迸ったかと思うと、左腕の肘から下が切断される!



    【ッ!?………今ノ…ハ………!】

    七海「まさか………!」

    「【俺達】が、最後の砦なんだ……!」




    「こんなところで………!」

    日向「負けられるかよぉぉぉッ!!!」



    ゴゥッ!!と突如巨大な火柱が立ち上り、その中から赤眼を輝かせる日向ハジメが歩み出る!



    七海「ひ、日向くん…!」

    【日向…ハジメッ!?イヤ、違ウ……!コノデータハ………!】



    立ち昇る炎が爆散する直前、一瞬炎が人型となった瞬間を、グレイスは見逃さなかった。



    【アレス………ッ!!】



    炎は、アレスの姿を象っていた。

    そして、それは苗木同様に、己のバックアップデータを受け渡したと言う事。



    【キ、貴様ラァ………!!】



    苗木「やっぱり……来たんだね。日向くん」

    日向「あぁ、お前一人じゃ不安だしな」

    苗木「そ、そっか……」

    日向「さぁ、行くぜ苗木。お前の答出した答えで……こんな戦い、終わらせてやろうぜ!」

    苗木「ああ!」

    【虫ケラ共ガ……!!今、誰ノ前二立ッテイルノカ……ワカッテイルノカ!!】



    禍々しいオーラを纏い、堕神が想像を絶する速度で襲いかかる!



    日向「苗木!」

    苗木「うん!」



    だが、二人は動じない。
    まるでそれがわかっていたかのように、息のあった連携でソレを回避した。



    【ッ…!?】

    苗木「すぅぅぅぅぅぅぅぅ……」



    地面に両腕をめり込ませた体制でいる堕神の背後を取ると、苗木は大きく息を吸い込んだ。



    弐大「ま、まさか……!」

    【ソノ技ハ……!!】

    日向「ぶちかませ苗木、お前の力を!」

    苗木「『エメラルド・ブレス』ッ!!!」



    口から解き放たれた翡翠の火炎が、堕神の身体を包み込む!



    【ガアァァァァァァァッ!?】

    弐大「アレは……セリオスの技!?」

    苗木「………………」


  113. 113 : : 2015/11/08(日) 09:00:49
    まだかなまだかなwktk
  114. 114 : : 2015/11/29(日) 08:46:50
    期待です!
  115. 115 : : 2015/12/02(水) 10:29:43
    >>113

    >>114


    いつも応援、本当にありがとうございますっ!
    少しばかり再起動させていただきます!
  116. 116 : : 2015/12/02(水) 10:29:52
    苗木から放たれた、翡翠の火炎。
    美しくも荒々しいソレは、墮神の身体を容赦なく灼き尽くす!


    【ヌッ……グウゥゥゥ……!!】

    弐大「ど、どういうことじゃ!?何故、苗木がセリオスの技を……!」

    「セリオス、だけじゃないんだぜ?」

    弐大「うぉ!?」



    声に振り返ると、今しがた苗木と一緒にいたはずの日向が、余裕そうに腕組みをしていた。



    弐大「いつの間に……ワシの背後に……!」

    日向「まぁ、それはおいおい説明するさ。それよりも………」

    日向「江ノ島、大和田、九頭龍……死んでいった俺達の仲間は、まだ完全に死んではいない」

    弐大「!」

    十神「なんだと!?」

    霧切「それは、どういう意味かしら?」



    霧切は何とか冷静さを保っているが、その顔には僅かに動揺の色が伺える。



    日向「【バックアップデーター】。どうやらこの世界は、作られたアバターの初期データを複製し、密かに保管しているらしいんだ」

    七海「じゃあ、そのデータを手に入れれば……」

    【ヌアアアアァァァァァァッ!!!】

    七海「!?」



    雄叫びが轟いたかと思うと、焼き尽くされていたはずの堕神が、その火炎を掻き消しているところだった。



    苗木「やっぱり、そう簡単には倒してくれない……か。5000度以上はあったと思うんだけど」

    【クソガキガァ……貴様ノ言動ハ、イツモ私ノ逆燐ヲ撫デテクルッ!!ソノ場シノギノ『モノマネ』デ、モウ勝ッタツモリカァ!!】



    堕神が激昂し、右腕を勢い良く頭上へ振り上げる。
    すると、生まれた遠心力か何かの力で、右腕がズリュリと大きく伸びたのだ。



    【死ネ……【ゴウトゥヘル】ッ!!】



    ドンッ!
    凄まじい勢いで射出された、まさにアンカーのような右腕が急激な速度で襲いかかる。



    苗木「!」



    驚きはするが、苗木は動じない。
    空中にいくつもの線を描き、それは魔法陣となって銀色の輝きを放つ!



    戦刃「あ、あれは!」

    苗木「聖なる銀に裁かれよ……」

    霧切「まさか……!」




    シルヴィア「アルティメット・ノヴァッ!!」
    苗木「アルティメット・ノヴァッ!!」



    『ドオオォォンッ!!』

    陣から放たれたのは、銀色に輝く閃光!それは迫りくる右腕を掻き消し、堕神本体をも吹き飛ばす!



    【ガアアアァァァァァァッ!?バ、馬鹿ナ……コノ能力ハ………!】

    戦刃「銀の帝王……シルヴィアの能力!?」

    【ッ……何ダ、一体何ガ起コッテイル!?複数ノプログラムヲ併用スルナド……!】

    苗木「プログラムなんかじゃない!」

    【ッ!?】

    苗木「みんなから……託されたんだ!力も、思いも、その命も……。お前がプログラムなんて軽々しくと呼べるほど、これは安くない!」



    拳を硬く握りしめ、苗木は走り出す!
    しかし、それはマルチ・ロッドを背中に納めた、素手での状態でだ。



    十神「馬鹿、色具を使え苗木!」

    日向「大丈夫だ、苗木は負けないさ」

    【ッ……ドコマデモドコマデモ……癇ニ障ル糞ガキダァァッ!!】



    焼き尽くされた右腕を早急に復元し、堕神の禍々しい眼がつり上がる。



    苗木「いくよ、大和田くん!」



    苗木の右拳が、熱く煮えたぎる!



    苗木「『ファイナル・インパクト』ッ!!」
    大和田「『ファイナル・インパクト』ッ!!」



    苗木の右拳と堕神の出した拳が触れた直後、強烈な爆発が巻き起こる!



    【ゴハァッ!?】

    豚神「大和田のラストソウルまで……!?」



    代償により絶大な威力を発揮する禁断奥義……。
    しかし、苗木に発動後特有の、苦しむ様子は見られない。



    【ゴフッ……!ダ、代償無シデ、ラストソウルヲ使ウダト……!?ナンナンダ……ナンナンダソノ能力ハァッ!!】

    苗木「……【『揺るぎない希望(ジ・ホープ)』】……」

    【ナニ…?】

    苗木「この力は……お前には一生かかっても手に入れないものだっ!!」

    【ッ!!黙レェッ!!】



    吠え上がり、堕神が両手に黒いエネルギー弾を生成する。



    黒雷ノ剣(ブラック・テンペスト)ッ!!】



    二つの黒球が合わさり、その中央から黒い雷をまとった一閃が放たれる!



    苗木「ソニアさん!」

    ソニア「えっ……あ、はい!」

    苗木「少し借りるよ、君の力!」

    ソニア「え?」

    苗木「『ライトニング・テンペスト』ッ!!」



    『カッ!!』

    鋭い閃光が輝く、
    苗木の重ね合わせた掌から、金色の雷が放出された!



    【ナンダト……!?】

    ソニア「わ、わたくしのラストソウルまで!?」

    十神「一体、何が……」

  117. 117 : : 2016/02/14(日) 11:41:03
    期待しています!!!
  118. 118 : : 2016/02/21(日) 16:18:00
    期待です
  119. 119 : : 2016/02/21(日) 23:03:44
    ファイト!
  120. 120 : : 2016/02/22(月) 03:00:43
    お、おおぉ……まだこんなにも応援してくれる方がいたのですね……正に感謝の極みです!


    どうにか近日中には再起動できるよう努力しますので、よろしくお願いしますです!
  121. 121 : : 2016/02/22(月) 23:09:45
    雑草魂さんのペースでいいので頑張ってください!期待してます!
  122. 122 : : 2016/02/23(火) 01:16:44
    日向「あれが、苗木のラスト・ソウルだ」

    十神「なにっ…?」



    皆に渦巻く疑問を取り払ったのは、日向だった。



    日向「死者を蘇生し、蘇生した分だけ自身を強化する……それが苗木の色能力、【エデン・ザ・フェイス】……」

    日向「そして、あれは他者の能力を「借りる」ことで一度だけ己の技とする苗木のラスト・ソウル、【ジ・ホープ】。その借りて得た力は、例えラスト・ソウルでもノーリスクで放つ事が可能になる」

    十神「なんだと!?」

    七海「でも、なんでその力が今になって……」

    日向「その強大過ぎる能力が、苗木誠という小さな器の中に収まらなかったのさ」

    日向「けど、そのブランクはフリードの意思(プログラム)を受け継ぐことで解消された……言わば、今の苗木は己の力を限界にまで引き出せるってことだ!」

    苗木「おおおおおぉぉぉっ!!」

    【ッ……!!】



    徐々に押し返されてくる黒雷に、堕神の顔にもとうとう困惑の表情が浮かび上がる。



    (フルパワーで、放っているはずだッ!……例え、あのガキの技がオリジナルに相当するものだったとしても……その何十倍にも匹敵する威力なんだぞ………!?)

    苗木「はああぁぁぁぁぁぁっ!!」



    バチィッ!!

    周囲に鋭い轟音が弾け飛ぶ。
    苗木の雷光と、それに飲まれた黒雷が合わさり、一筋の雷撃となって堕神の身体を射抜いた!



    【カッ………ゴハァッ…!!】

    (ソレが何故……こうも容易く押し負ける……!?)



    災禍の剣、マスティアの【ラストソウル】……それは他者の身体をベースとして文字通り災厄の力を生み出す能力。


    当然、ベースは使用者に限定され、その人物が持っていた能力や個性は力を代償に全て上書きされる………。

    故に、今の堕神……もといグレイスには自動治癒を含む全ての回復手段が枯渇してると言っても過言ではなかった。



    【ハァ……ハァ………!】

    苗木「……今の攻撃は、流石に聞いたみたいだね」

    【ッ!?】

    苗木「己を倒せる一番の敵は、己自身のみ……前に、大神さんが教えてくれたんだ」

    【クッ……!ダカラ今ノ攻撃ヲ避ケズ二、ワザト押シ返シタト言ウノカ……!?】

    苗木「……そうだ」



    この時点で、堕神は己の劣勢さを徐々に感じとっていた。

    手札の殆ど使い果たし、奥の手の力でさえ、希望という名の力に圧倒される……勝利の軍配は、確実に光へと傾いていた。



    【…………………】



    だが、



    【…………………】




    彼は、




    【……………マレ……】





    敗北(それ)を受け入れようとはしなかった。





    【黙レェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!!!!!】

    苗木「ッ!?」

    十神「なんだ……!?」

    日向「くっ……!」



    けたたましい怒号が聴覚に激しく襲いかかる。

    力んだ影響で堕神の傷口が痛々しく広がる……しかし、彼にはそんなものを気にする素振りすら見えない。



    【負ケラレナインダヨ……私ハ!ココデ!負ケルワケニハイカナイノダァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!】



    無造作に、乱暴に、堕神が両腕を岩盤に叩き落とし、巨大な衝撃波を発生させる。



    弐大「ぬおおぉぉ!?」

    霧切「全方位攻撃……!?誰か、防御系の色能力を使える人は?」

    田中「くっ……お、俺の能力ならば、岩盤を、防壁に……できる…!」グググッ

    ソニア「ダメです!今動いたらまた……!」

    舞園「回復を行うにも、危険はすぐそばまで……どうすれば」

    七海「だったら……私が、この地面をヘコませて回避させ……うっ!?」ズキッ



    日向「下がってろ七海、俺がやる」

    七海「ひ、日向くん…?」

    霧切「無理よ、貴方の能力は攻撃系……たとえ迎撃できても、一人じゃ確実に被害が出るわ!」

    日向「じゃあ……『二人』なら問題無いよな?」

    霧切「えっ……?」



    日向「……さぁ、ようやくお披露目するターンだ。頼んだぜ!」



    白く眩く剣を、頭上高く掲げ、日向はその名を叫ぶ。






    日向「ラスト・ソウル………【デュアル・ブレイク】ッ!!」





    『カッ!!』



  123. 123 : : 2016/03/16(水) 01:27:20
    掲げたプラチナブレイカーが、その名に恥じない、神々しい光を放つ!



    田中「うお…っ!?」

    ソニア「ま、眩し……!」



    まるで太陽を間近で見つめているような、強烈な閃光が迸る。



    日向「さぁ……行くぜ、もう一人の俺!」

    七海「えっ……!?」



    鋭い閃光の最中、激高を飛ばす日向の声に七海が引きつけられる。

    〝もう一人の俺〟
    そんなことを言われて、驚かないわけがなかった。



    七海「日向くん、まさか……自分の影を!?」



    強い光に潤む瞳を拭い、七海は強引に両の眼で日向の姿を捉えた。

    強い白銀の閃光……その光から生まれた日向の影の顔と思われる部位に、ギラッ!と真紅の瞳が開眼したのを七海は見逃さなかった。



    七海「!?」



    『ズズズッ……ズズズッ………』



    影が、徐々に日向の動きに逆らうかのようにゆっくりと不気味に揺らめき始める。

    そして、それは影ではなく……一人のプレイヤーとして、完全なる人型へと具現化した。



    「はぁ………」



    禍々しい吐息を吐き捨て、一人のプレイヤーが日向の脇に立ち並ぶ…。


    燃えるように紅い、紅色の赤眼。
    闇から生まれたかのような、漆黒の長髪……。



    七海「神座……出流!?でも日向くん、それは……!」

    神座「ご心配なく。いつぞやの劣化版とは違いますので、暴走したりしませんよ……」



    そう、神座は気怠そうに七海を横目で流し捨て、己の目の前に黒鉄色のブレイカーを顕現させる。



    神座「……まぁ、ざっと74%と言ったところですかね」

    日向「仕方ないだろ、ぶっつけ本番だったんだからさ!というか今はそれどころじゃないんだよ!」

    神座「わかっていますよ……ツマラナイ」

    日向「じゃあ説明は要らないよな、行くぜ!」



    日向が叫び、プラチナブレイカーを構えると同時に、神座もまた己のクロムブレイカーの切っ先を前方に差し向ける。



    日向「色……能力っ!!」
    神座「Colors・Ability……」



    白と黒、二枚の刃が所有者の声に応じ、強く輝く!



    日向「プラチナ・ブレイクッ!!」
    神座「Chrome・Break……!」



    『ズドオオォォォォォォォォォォオォォォォォォォォォォォォォォオォォォォォォォォッ!!!!』



    黒鉄と白銀……双方の色が込められた究極的な光が、押し寄せる衝撃波に直撃するっ!!



    七海「っ!?」

    十神「な、なんだ……一体何が起こっている……!」

    ソニア「十神さん、眼鏡に亀裂が……外せばきっと見えますよ!」

    十神「それこそ何も見えないだろう、俺の視力を侮るな!」

    霧切「……二人共黙って、どのみちこの光じゃ目が眩むだけよ……!」

    七海「日向くん……」



    次第に光が止み、霧切たちの視界に再び戦場の光景が浮かび上がる。


    そして、驚愕した。
    全くの無傷で立ち並ぶ日向と、同じくらいの背丈の黒髪の青年……。

    巨大な衝撃波の痕跡と思われる、分厚い岩盤を抉った跡……それは霧切たちを取り囲むように逸れていたのだ。



    田中「なんという……威力だ…!」

    七海「これが、日向くんの禁断奥義……!」

    日向「凄えだろ、だから七海たちは安全な場所で避難していてくれ……あとは俺達が全部引き受けるからよ!」



    そうだけ言い捨て、日向は敵の元へと駆け出す。

    神座もまた一つ溜息を吐き捨て、日向の後を気怠そうに追う。



    七海「あっ………」

    霧切「悔しいけれど、私たちは足を引っ張るだけよ……」

    七海「で、でも……」

    戦刃「大丈夫……。きっと苗木くんと一緒に戻ってくるよ」

    十神「あの二人の気持ちを無駄にしたくないのなら……俺たちは邪魔をしないほうが良いはずだ」

    七海「!……うん、そうだよね……」



    七海は押し上がる気持ちを押さえ込んで、小さくなった日向の背を見つめ……ポツリと呟いた。










    「……頑張れ………」っと。






  124. 124 : : 2016/03/17(木) 20:43:56





    神座「………いいんですか?彼女に伝えなくて」



    周囲には聞こえない声で、神座は静かに耳打つ。



    日向「…皆の不安を煽るだけだからな………」

    神座「……まぁ、貴方がどうしようと興味はありませんが……くれぐれも忘れないように」

    神座「貴方の禁断奥義は、言わば二人分の力を発揮するもの……そして、その代償は使用者の〟生命力〝……。使い続ければ、貴方は死にますよ?」

    日向「……要は使い続けなければいいんだろ?なんとかなるって」

    神座「はぁ……。まぁ本来の7割程度しか力は出せませんが、それなりには援護できるかと……即座にケリをつけますよ」

    日向「あぁ、頼りにしてるぜ!」



    互いに無言で頷き、二人はブレイカーを抜刀した。





    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





    【ハァ…!ハァ………ッ!】

    苗木「……今ので、かなり力を消費したみたいだね」



    先ほどの衝撃波をゼロ距離で受けはしたが、苗木は咄嗟に能力を発動することでこれを九割九分カットしていた。

    が、その攻撃は無意味だとわかっていても、堕神はその戦意を収める様子が無い。



    苗木「……諦めろ、もうお前に……勝ち目は無いよ」

    【……諦メロ……ダト?】



























    『………結局は君の技術など、豚の餌にも足り得なかったと言う事さ。』



    【ッ………!?】ドクンッ

    苗木「だから…【黙レエエエェェェェェェェェッ!!!】

    苗木「ッ!?」

    【貴様二……貴様如キに、私ノ何ガ分カルッ!?全テノ苦痛ヲ味ワッテ生キテキタ私ノ……何ガ分カルトイウノダッ!!】

    苗木「…一体、何の話を……」

    「伏せろ苗木!」

    苗木「!」



    背後からかけられる激昂に、苗木は素早く身を伏せる。

    その行動に、迷いや躊躇する様子は無い。

    信頼しているから。
    その声の主を信頼しているからこそ……苗木は一切の迷いを見せなかった。


    そして予測は当たる。
    苗木が身を伏せた直後、墮神目掛けて白と黒の斬撃の雨が降り注ぐ!



    『ズバババババババババババババババババババババババババハッ!!』



    【ッ!……ヌゥ………ッ!?】



    激しい斬撃の嵐に、堕神は後方へとバックステップをする。



    日向「苗木、大丈夫か?」

    苗木「うん、ボクは平気……って神座出流!?」

    神座「………その話は最後に。今は目の前の敵が最優先です」

    日向「今は仲間だ、警戒する必要はない」

    苗木「そっか……心強いよ!」



    苗木は再び、背中に預けていたマルチ・ロッドを抜き放つ。



    苗木「グレイスはもうかなり疲労している……チャンスは今しかない!」

    日向「……だな!」

    神座「まぁ……私はあくまでサポートですので、指示があれば動いてあげますよ」



    そこから言葉は要らない。
    互いにアイコンタクトを確認し、一斉に足場を踏みける!





    「「「行くぞっ!!」」」



  125. 125 : : 2016/03/25(金) 05:20:35



    【ッ……】





    ━━━━━負けられない……。





    【ココデ……負ケルワケニハ イカナイノダァ!】



    瀕死の身体に鞭を打ち、堕神は迫りくる三強に正面から猛進する!


    その眼差しに、その覚悟に偽りは微塵も感じられない。
    堕神の、グレイスの、全身全霊をかけた最後の足掻きだ!



    日向「なっ……この戦況で正面から!?」

    神座「真っ向勝負ですか……本来そんな時間はありませんが、今だけは都合が良い……」



    チラリ、と神座は横目で後方へ視線を送る。

    視線を送った先、堕神と対峙する二人から大きく後方へと離れたその位置に、色具であるマルチロッドを胸の前で構え、目を閉じる苗木の姿を捉える。



    神座「とにかく、今は彼の時間稼ぎが最優先です……」



    敵に悟られぬように、神座は小さく日向に耳打つ。

    三人同時で強襲する際、苗木だけが後方へと下がったのは、他ならない苗木自身の意思によるものだ。





    日向『秘策?』

    苗木『……ボクがアイツに勝つと断言したのは、単に相手が消耗しているから……ってわけじゃないんだ』



    堕神に突撃する最中、苗木は両脇の二人に小さく呟いた。



    苗木『フリートから意志を引き継ぐとき、聞いたんだ。この色具に封印された、禁じられた光を…』

    日向『…禁じられた……光……?』

    苗木『多分それが、奴を倒す切り札になるはず……』

    神座『……なるほど、要はそれが完全なる力を発揮するまでの時間を稼げと?』

    苗木『……無茶言ってるのは分かってるけど……これを成し得るのは二人しかいないんだ』



    真剣な表情で応える苗木に日向は、僅かに唇を緩めた。



    日向『なら、あの時の言葉……もう一度言えるか?』

    苗木『……もちろん』



    苗木『ボクが護るのは……この世界でも、仲間でもない……』












    苗木『ボクが護るのは……全てだ!』

    日向『そうだ苗木。お前が護るのは仲間とか世界とか……そういうキザったものじゃない……!』



    日向『単純に、お前が護りたいもの全て。それだけだっ!!』

    日向『神座、そういうことだ!全部護るから……全力で時間を稼ぐぞ!』

    神座『ハァ……。相変わらず無茶苦茶な言い分ですね……思わず頭痛を患ってしまいそうですよ……』










    神座『……ですが、その案は最高にオモシロイ……!』





    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





    神座「……少なくとも、私が存在し続けられる時間は貴方の体力に依存します。過度な戦闘は避け、回避を優先するように」

    日向「わかった!」

    【何ヲ……ゴチャゴチャト喋ッテイルッ!!】



    一瞬、自分から注意の逸れた日向目掛け、堕神はドス黒いオーラを纏った拳を放つ!


    しかし、それは神座の鋭い斬撃により見事に弾き返された。



    【チッ…!】

    神座「…生憎、貴方の相手は私です……」

    神座(……あまり長い間は足止めできませんよ、苗木マコト……)





    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━





    苗木「Advanced・ID……CODE『G』『E』『E』『K』『F』『L』『E』『E』『T』…………」




    ━━━━━━━━『認証コードを確認。IDへのアクセスを承認しました。』ブォンッ



    苗木がそう呟くと、目の前に半透明のディスプレイが表示される。



    苗木(……!…これがフリートの言っていた……)



    驚きはするが、苗木はすぐさま落ち着いて再びディスプレイに単語を投げかける。



    苗木「………FINAL・CODE……『A』『R』『E』『S』………』



    重ねていく謎の暗号に応えるように、目の前のディスプレイの内容も更新されているようだった。



    ━━━━━『最重要プログラムへの接触を確認………。』




    ━━━━━━『セキュリティの解除コードを確認……………。』




    ━━━━『セキュリティ解除………。プログラムへのアクセスを承認しました……………。』



    その音声が流れると、半透明のディスプレイが、赤く染まり変わる。



    苗木(……赤色………これを解除すれば………)



    ディスプレイに投げ続けた無数の単語……それは苗木がプログラムを引き継ぐ際に、フリートから事前に教えられたものだ。



    フリート『……君のそのロッド。それはただの杖なんかじゃない………奴の注意が逸れたら、今伝えた暗号をもう一度詠唱するんだ………』


    苗木(……それが、禁じられた光を解き放つ………か)



    正直、確証はない。

    『禁じられた光』という名しか聞かされていない以上、その未知の力が何なのかは検討もつかない。



    苗木(…でも……賭けるしかない……この可能性に………!)


  126. 126 : : 2016/05/10(火) 22:30:45
    追いついた〜。
    あともう少しでラストですかね?楽しみ…。応援しています!頑張ってください!
  127. 127 : : 2016/06/12(日) 17:44:29
    がんばれ―応援&期待






     
         
  128. 128 : : 2016/07/20(水) 00:40:55
    >>126

    >>127


    幾度となく、応援や期待のコメント、本当にありがとうございます!

    なんとかエンディングまで行けるようがんばります!
  129. 129 : : 2016/07/20(水) 00:41:05



    苗木が赤いディスプレイを表示させたのと同刻、一つの戦況が劣勢に傾こうとしていた。



    日向「おおおおぉぉぉぉぉっ!!」

    【無駄ダァッ!!】



    日向はありったけの力を込めて斬撃を放つーーーが、それは禍々しい怨腕によって軽々と弾かれる。

    そして引き換えとして、腹部に目掛けて強烈なブローを送り返された。



    日向「ごはッ……!?」



    神座に回避に専念するよう、念を押された意味が、今ハッキリと理解できた気がする。

    たった一撃……たった一撃で意識が遠退く、視界に靄がかかる、残る気力が、根こそぎ持っていかれる……何十倍にも強化した身体を持ってしても、気絶しないよう堪えるのさえ至難の業だった。



    【クククッ…疑問ダッタ、神座出流。アレハ、オマエノデュアル……ナラバ、オマエガ堕チレバ、奴モ消エルノデハナイカ……?】

    神座「チッ……感づきましたか……!」



    すかさず、両者の間に飛び入ろうと試みる……しかしそれは、堕神の振り上げた右脚によって阻まれる。



    神座「グッ……やはり力が……!」

    【フハハハハハハハハッ!! 愚カナ、コンナ子供騙シデ、私ト並ベルトデモ過信シタカァ!?】

    日向「……っ! アアァァァァァァァァァァァッ!!」



    ブツッ。



    日向が叫んだ瞬間、生々しい、肉を裂くような音が鼓膜に這いずる。



    【ナ、ナンダトッ……!?】



    思わず、堕神が日向から距離を取る。

    その目が捉えていたのは、日向自身ではなく、彼の口元から流れる、真新しい流血だった。



    【自ラ舌ヲ、噛ミチギッタノカ……!?】



    身体の部位の中で、最も神経が敏感な舌を噛み切ることで、日向は飛びかけた神経を強引に引き戻したのだ。



    日向「フゥーッ! フゥーッ!!」



    血濡れた歯を食いしばり、血走った眼光で堕神を睨む。

    血と涙に埋もれたその目は、堕神の身体に、鋭い悪寒を走らせた。



    【貴様、正気カッ!? 一歩間違エレバ、潰レルノハ貴様ダッタンダゾ!?】

    日向「フゥーッ……! そえ…ぁ……おぅ、ぃぁ……!」



    舌に致命傷を負った直後で、日向の発声器官はほとんど機能せず、口元から無情にも血が溢れ出るだけだった。



    神座(………「それがどうした」……ですか。……全く、とんでもない無茶をしでかしてくれます……ですが)

    神座「一瞬でも奴から注意を反らしてくれたのは、賞賛に値しますっ……!!」



    日向の異質な言動に釘付けとなっていた堕神の背後で、神座が笑む。

    気づき、振り向こうとする堕神よりも素早く、機敏に、神座はそのガラ空きになった背中。
    そこにいくつも浮き出る無数の瞳の一つに、漆黒のクロム・ブレイカーを渾身の力で突き刺した。



    グチッ……ブチャッ!



    刃に貫かれた瞳が大きく見開き、緑色の血をぶちまけると同時に、不気味な絶叫を上げた。

    その壮絶な絶叫は、堕神……グレイスのものではない。
    また別の、全く異なる他者の声である。



    神座(……やはり、これか)

    【ッ! クダラン真似ヲオォォォォオッ!!】

    神座「全てを奪え……ソウル・レイドッ!!」



    堕神が振り落とそうとするよりも速く、神座は能力の名をコールする。

    そして、突き刺さったクロム・ブレイカーを中心にドス黒い波動が二人を飲み込んだ。



    【ヌオッ!?】

    神座「……っ」



    頃合いを見計らい、神座はブレイカーを引き抜き、再び間合いを広げる。



    【ハァ……! ハァッ……! 貴様ァ、何ヲシタァァァ!!!】

    日向「……か、か……ぅ…らぁ……!」

    神座「無理に話すと失血で死にますよ……黙って聞いてください」

    日向「……?…」

    神座「………見つけましたよ」



















    ーーー堕神の突破口を……!










  130. 130 : : 2016/08/06(土) 20:05:32

    日向「…!?」



    「なんだって!?」と、言わんばかりに日向の目が見開く。



    【突破口……? ヒヒッ…アヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ!! 何ダソレハ、弱点トデモ言ウツモリカ!?】

    神座【えぇ……貴方の全身に浮き出ている、不気味な眼……。てっきり飾りが何かだと思っていましたが……どうやら全く違ったようですね】

    【ッ…...!?】



    確信を得たかのような口振りで、淡々と語を発する神座に、墜神の表情から余裕の笑みが消える。



    日向「……ど、……ぅいうことだ…神座……」

    神座「……こういうことですよ」



    言うと、神座は両の掌を自分の顔前で重ね合わせ、それを墮神へと向ける。



    神座「……【LIGHTNING・TEMPEST(白雷の一閃)ッ!!】



    一瞬、眩い光が発したと認識した直後、鋭く研ぎ澄まされた、文字通り純白の一閃が、レールガンの如く轟音を唸らせながら迸る!



    【!】

    日向「そ、その技は!」

    苗木(ソニアさんの、禁断奥義!? な、なんで神座くんが......!?)

    神座「...この技の威力は、オリジナルとほぼ同等。なれど、貴方の【黒雷】であれば容易に相殺可能ですよ?」

    【ッ...! ーーーー......クッ!!】



    神座の言うとおり、その雷撃は先程苗木が放ったものに比べれば、遥かに劣っていた。

    速度は一級品だが、規模、威力のスケールは低い。

    相殺......いやむしろ押し返せてしまうくらいの雷撃だ。


    だが、驚くべきことに、堕神はーーーー何故かそれを回避した。



    苗木(!!)

    日向「!?」

    神座「......やはり」



    予想外の行動に驚く一同の中、神座が不敵に微笑む。



    神座「つまり、私の能力を受けた眼球は、ソニア・ネヴァーマインドのデータだった訳ですか」

    日向「データって……っ、まさか!」

    神座「えぇ、先程あなた方が言っていた、『バックアップデータ』の事です」

    【チッ……!】



    神座の推測は、確信を突いていた。

    同時に、それを正解と言わんばかりに、堕神が大きく舌を鳴らす。


    つまり堕神は、今の雷撃に対し、避けなかったのではなく、「避けざるを得なかった」のだ。

    その源となるソニアのデータを、神座に奪われたが故に!



    日向「…ってことは、死んだみんなののバックアップデータ……もあの眼に…!?」



    深く噛み切った舌の激痛が和らいできたのか、次第に日向の口調も安定し始める。



    神座「それはまだ分かりません。私が手に入れたのはソニア・ネバーマインドの…つまり、「生存」しているアバターのデータ……死者のデータの確認はまだしていませんからね」

    神座「……ですが、これで勝機が見えました。彼の無限等しい能力のバリエーションは、プレイヤーのバックアップデータに依存している……残り僅かな時間の、ありったけをぶつけますよ!」

    日向「おうっ!」





    ーーー一方、同時刻。



    『ーーERROR。入力されたCODEは不適切です』

    苗木「っ……! くそっ!」



    このメッセージを聞くのは、これで何度目になる!!

    苗木マコトの頬に、焦燥が混ざった冷や汗が冷たく伝う……。

    もう何十とCODEを打ち込んでいる……しかし、最後の赤いディスプレイがそれを拒む。



    苗木「これさえ突破すれば、あと少しなのに……!」



    赤いディスプレイが求めるCODEを、苗木は知らない、いや、知りきれなかったのだ。

    状況の深刻さもあり、苗木がフリードから聞いたCODEは、そこで打ち切ってしまった。



    苗木「っ……何だ、思いつく限りの言葉を試したのに……何でなんだよ!」
  131. 131 : : 2016/08/06(土) 20:08:23


    追伸

    いつの間にか閲覧数が9800を超えていたことに、鳥肌が止まりません……ww

    数多くの読者様、本当にありがとうございます!
  132. 132 : : 2016/08/07(日) 09:37:15
    面白すぎる!バトルが熱すぎる!!期待です!!
  133. 133 : : 2016/08/07(日) 22:06:09
    >>132

    ありがとうございます!
    最後まで応援よろしくです!
  134. 134 : : 2016/09/12(月) 13:20:37
    期待してます
  135. 135 : : 2016/09/12(月) 15:33:19
    期待です頑張ってください
  136. 136 : : 2016/10/20(木) 19:17:53
    >>134

    >>135


    毎度ながら、コメント、本当にありがとうございます!

    あともう少しで終わるので、どうぞ気長に待っててください!
  137. 137 : : 2016/10/20(木) 19:18:36
    『EIYUU』、『FRIID』、『ARES』、『HOPE』……。
     
     
     試せるモノ、思い浮かぶモノ……。
    今まで生きてきた中で、耳に聞いた、口にした言葉、記憶に刻まれた言葉は全て試した。
     
    だが、赤いディスプレイの前には、ソレらの全てが否定された。
     
     

    苗木「……ッ、くそぉっ!」
     
     
     
    あと一歩、だがその一歩が深い……!



    苗木「何が、一体何が正解だと言うんですか……フリードさん…!」
     
    『ドゴオォォォォッ!!』
     
    苗木「!」
     


    反射的に轟音の方へと振り返る。
    そこには、激しい爆風とともに中を舞う、日向の姿だった。



    苗木「ひ、日向くん!」

    日向「っ……!」



    自由の聞かぬ空中で、なんとか体制を持ち直し、受け身を取る日向。

    が、その顔に余裕はない。
    まるで痛々しい生傷を刻まれたボロボロの身体が、それを証明しているかのように。



    【ハァッ…ハァッ……! ハ、ハハハハハハッ!! ドウシタ? 明ラカニ動キガ鈍ッテイルナァ!?】

    日向「くっ……そぉ!」



    その原因が単なる疲労でも、多数の傷のせいでも、さきほどの舌の傷が痛むからでもないのは、日向自身が一番理解していた。


    長期間に及ぶ、ラスト・ソウルの使用。
    自身の生命力を消費する『デュアル・ブレイク』の影響で、日向の気力は既に限界に達していたのだ。



    日向「はぁっ…! はぁっ……! 苗木、そろそろこっちも限界だ! 奥の手はまだなのか!?」

    苗木「っ…そ、それは」

    神座「………」



    日向と苗木を余所に、神座の表情は険しかった。



    神座「……そろそろ、時間切れですね」



    徐々に、身体の感覚が薄れていくのを感じる。使用者である日向の生命力が、もうじき底を尽いてしまうからだ。

    このまま無理に戦えば、本体である日向が先に戦闘不能になってしまう。

    それこそ、確実な敗北を意味する。
    そう考えた神座は……何かが弾けるように駆けた。



    堕神目掛け、ありったけの力を込めて!

    だがその一瞬の動きを、堕神もまた見逃さなかった。



    【愚カナ……今更単騎デ突ッ込ンデキテ、何ニナルッ!!】

    日向「!? 神座……? 何をするつもりだ、よせ!」

    神座「………」



    日向の呼びかけは届かない。

    神座はただ一点に焦点を合わせ、無言でクロム・ブレイカーを抜き放つ。



    【クッ、クハハハハハハハッ!! 決死ノ覚悟ト言ウワケカッ! 面白イッ!!】



    堕神もまた、迫りくる標的に狙いを定め、拳を握りしめる。



    神座「ハァ……。まさか、こんな形で使うことになるとは……ツマラナイ展開ですね」



    ポツリ、誰にも聞こえない声量でそう呟く。
    そして神座は、静かに『その名』をコールした。



    神座「……『Last・Soul』」
  138. 138 : : 2016/11/13(日) 20:49:33
    アクセルワールド知らないけどすごく面白いです!!
    期待してます!!
  139. 140 : : 2017/03/09(木) 22:20:37
    >>138

    ありがとうございます、反吐が出る程のスローペースですが応援よろしくお願いします!
  140. 141 : : 2017/03/09(木) 22:21:03

    日向「!」

    【ッ!?】


    その言葉は、その場にいる全員に衝撃を与えた。

    もはや堕神というイレギュラーを除けば、現プレイヤー最強と言ってしまっても過言ではない、神座出流。


    最強のプレイヤーが放つ、禁断奥義。

    そう考えるだけで、張り詰めた緊張感が全身を支配する。



    【来イ、神座出流ッ!】



    堕神の表情に、もう余裕は無い。

    ただ、ただただ己の全身全霊を込めて、目の前の最大の攻撃に対して、硬く両拳を握りしめる!


    神座もまた、その紅眼を見開き、己の最大にして最強の技を発動する!



    神座「全てを限界のその先へ……Infinity・World(完全無欠の大世界)ッ!」

    【ッ!?】



    瞬間、目の前がいや、空間全体が漆黒の霧に包まれた。

    だが、堕神が目の色を変えたのは、その程度のことではない。

    上か下か、右か左か、方向感覚を阻害される闇の空間に浮かぶ、血のように真っ赤な二つの瞳。

    それが四へ、八へ、十六へ……凄まじい速度で増殖を繰り返していた。



    【ッ……コレハッ……!?】



    奇妙なその現象に、動揺が溢れる。
    そして気づけば、数百にも及ぶ紅い瞳は、一瞬にして堕神の周囲を包囲していた。



    【ッ……幻覚ノ類イカ…!? ソレトモ…】

    「えぇ、その通り。全て本物ですよ」

    【ッ!?】


    耳が声を捉えるや否や、堕神の全身に強烈な一撃が叩き込まれた。



    【ゴハァッ!?】



    あまりの一瞬の出来事に、たまらず右膝が崩れ落ちる。

    一撃、そう感じた痛みは、正確には九十四撃。
    つまり今の一瞬で、神座は九十四回もの攻撃を同時に繰り出したのだ!

    しかも、どれも急所を的確に狙った、殺傷力に長けた一撃である。



    【アリエナイ……、如何二素早ク攻撃ヲ放トウト、全テヲ同時二ナド……!】



    疑問なのはそれだけではない。
    放たれた攻撃、それはどれも同系統の武器ではないのだ。

    腹部には斬撃、頭部には打撃、四肢の関節部には槍で刺されたような鋭利な傷跡……。

    まるで複数の敵に与えられたかのような、あまりにも人知の領域を超えた動きなのは、言うまでもなかった。



    【アリエン…! 何カ仕掛ケガアルハ…】



    これまで、幾度も奇跡的な能力を体感してきた。
    この能力も、必ず何処かに穴があるはず。蓄積されたあらゆる知識を掘り出し、意識を研ぎ澄ます。

    が、それはまたしても四方からの多量の一撃に阻害される。



    【グッ……ガハァ!?】



    再び全身に、複数の武器による傷跡が刻まれた。

    このままではマズい……そう頭が命令をするも、身体が動作に転じる前に、雨のように降り注ぐ猛撃がそれを阻む!



    【ッ……マズハ、コノ闇ヲドウニカセネバナァッ!】

    【色能力……『旋風刃』ッ!】



    それは、戦刃むくろのデータを利用した風の能力。

    霧を払うのならば風。
    その判断は、極めて的確な答えだった。


    ……だがそれは、能力が無事に発動した時だ。



    【ッ!?】


    トリガーをコールするも、能力が発動しない。


    不発……そう考えたが、違う。
    そして違和感に気づくと同時に、堕神は深く自分の愚かさに気づいたのだ。


    最悪の予想を浮かべながら、自らの身体に目をやる。



    【ッ!?】



    悪い予想は当たっていた。
    バックアップの器としての役割を果たしていた眼球が、全て破壊されていたのだ。


    執拗に急所を狙い続けていたのは、勝負を速く片付ける為ではなく、堕神を守り徹させる為。

    そして無防備になった背中を、気づかれぬよう裏で仕留めていたのだ!



    【ッ……グゥ……!】

    神座(……これ以上の維持は、日向ハジメに影響を及ぼしかねませんね……)



    【Infinity・World】……完全無欠の大世界は、プレイヤーから奪った能力一つ一つを、自身として置き換える能力である。


    槍に優れた能力、剣に優れた能力、あるいは弓に優れた能力……。

    その一級品の才能一つ一つが擬人化することで、文字通り【完全】なる才能を持つ者だけが集う空間が完成するのだ。

    しかし「奪った能力」のみを個人として置き換え、おまけに強い能力でなければ擬態したところで雑魚に等しい。


    これは、『ソウル・レイド』。
    「他者の能力を奪う能力」という規格外な能力を持つ神座出流だからこそ、成し得る芸当であるといえた。


    代償は「貯蔵してきた能力のロスト」。
    しかしその程度のリスクでは、神座には一切の気を引かせない。

    彼は、今、ここで、全てを出し尽くすのだから!



  141. 142 : : 2017/03/09(木) 22:21:11
    神座(……日向ハジメ及び、残る者への道導となるのが私の努め……ならばっ!)



    目的は果たした。
    なればあとは、後者の為に道を刻み続けるのみ!



    神座「……禁断奥義、解除っ!」



    神座は能力を解除した。
    黒い霧が消散し、無数の分身も消失する。



    【ヌッ!?】

    神座「そこッ!」



    視界がクリアになったその一瞬をつき、神座の一閃が飛ぶ。



    【…ッ、ォォオオオッ!!】



    が、腐っても神。
    例え地に這いつくばる身となろうとも、彼は神である。



    【ガアァァァァッ!!】



    力の支えとなった源を失おうとも、堕神の戦意は飛ばない。
    むしろその怒りを糧としたように左の剛腕を撃ち放った!
  142. 143 : : 2017/07/24(月) 22:04:37
    続きまだですか?
  143. 144 : : 2017/08/01(火) 22:05:24

    >>143

    長らくお待たせしまい、申し訳ありません。
    エンディングまで、あと少しです!
  144. 145 : : 2017/08/01(火) 22:07:41

    ゴッ。


    生肉を鈍器で殴りつけたような、鈍く不気味な怪音。
    崩落した天井目掛けて放散される、真っ赤な血飛沫。



    神座「ガッ……! ハッ!?」



    突き出したクロムブレイカーの切っ先が、堕神の喉元を裂くよりも速く。
    堕神の撃ち放った剛腕が、神座の腹部を貫いた。

    それだけではない。
    背中から突き出た血濡れの拳には、紅い肉の塊のような物が握られている。


    ドクンッ、ドクンッ、と力強く脈打つその肉塊が何なのか、想像に難くなかった。



    神座「ッ……腕のリーチの長さに、後れを取ったわけですか……ゴフッ!?」



    血によって汚濁した唾液が、嗚咽と共に吐き出される。



    日向「か、神座!」

    【クッ、ククククク……クハハハハハハッ!! 消エ失セロッ、デュアル!!】



    グシャアッ!!

    堕神は鷲掴んだその肉塊を、あっさりと握り潰した。
    野球グローブと大差ない大きさの手から、貯蔵されていた血液が激流の如く溢れ出す。



    神座「ゴファッ!?」

    日向「か、神座ぁ!!」



    ……ッ、もう……声すら出せませんか。

    ……全く、嫌になりますね。



    ……こんな、醜い死にざまを晒す羽目になろうとは!!



    【ヌッ!?】



    糸の切れた人形のように、神座の身体から力が抜け落ちた。

    間違いなく死んだ。……なのに、何故だ?



    【何故コノ男ハ、嗤ッテイルノダ!?】



    瞬間、神座の身体から焼き付けるような閃光が放たれる。



    【ッ……コノ輝キ……マサカッ!?】



    ラストソウル……【Infinity・World(完全無欠の大世界)】を発動した際、
    神座は一つだけ、たった一つだけ、「ある能力」を潰さずに奪取していた。

    全ては、後から続く最後の希望……日向と苗木の為だけに!



    自身の生命力を他者へと譲渡する、舞園サヤカの禁断奥義。
    ーー【天使の加護(エンジェル・スフィア)】を!!



    『ドゴオオオオオオオオオオオオッ!!!』



    そして全ての余力を使い果たした神座の肉体は、轟音を唸らせながら爆ぜた。



    日向「くっ……神座、お前……!」



    肌身に感じる。
    爆発が巻き起こる寸前に、神座から放たれた閃光が傷を癒してゆくのを。

    疲弊した体力が、損傷した肉体が、まるで時間戻しのように蘇っていく。



    苗木「……神、座……」



    それは比較的無傷に近い苗木でさえ感じ取れるほどの、強力な治癒。

    だが、そこのあるのは感謝ではない。
    ……怒涛の如く溢れ出す、戦意のみッ! 



    【グッ……アイツ、初メカラコレガ狙イダッタト、言ウ訳カッ……!】



    神座の命を賭した、最後の一撃。
    しかし堕神にダメージは、無い。

    だが、その最後の灯火は……



    日向「馬鹿野郎……」

    【ッ!?】

    日向「馬っっっ鹿野郎おぉぉッ!!」



    残る者達への、最大の糧となった!



    【グゥッ!?】



    堕神の身体に、稲妻の如く斬撃が迸る。



    日向「苗木ィ! 何をモタモタしてるんだァ!!」

    苗木「ひ、日向君……!」

    日向「何度も言っているだろッ! 難しいことは、考えるな!」

    日向「お前らしく、馬鹿で素直で壮大に! 思ったことをそのまま実行するんだよバーロー!!」

    苗木「!!!」

    【クッ……ククク! イクラ体力ガ戻ッタトハ言エ、神座ガ居ナケレバ、アマリニ無力!】

    【イイ加減二スルノハ、貴様等ノ方ダ希望共ォォォォッ!!】

    日向「おおおおぉぉぉぉぉッ!!!」





    苗木「ボクらしく……馬鹿で、素直で、壮大に……」

    『ーー入力時間。残り30秒』



    苗木「そうだ……何を迷っていたんだ」

    『ーー入力時間。残り20秒』




    苗木「世界を救うのは、希望じゃない……」

    『ーー入力時間。残り10秒』






    苗木「希望を背負った……ボク達、全員なんだッ!!」



    『カッ!!』



    【ッ!? ナンダッ……!?】

    日向「ったく、遅すぎるぜ苗木っ!」



    『ーー最重要CODE。『NAEGI・MAKOTO』を確認』



    苗木「うん。ごめんね日向君!」



    『ーー希望武装。【ミーラクルム】の使用を許可します』





    ……苗木の色具、【マルチロッド】が眩い光に包まれた。

    ……ロッド。棍と思われていた色具が、新たな形へと再構築される。

    ……無駄な装飾の無い、純粋な一本の剣へと。





    【希望武装……ダト?】

    苗木「フリードさん。貴方の意志……確かに受け取りました」

    【ッ……!】

    苗木「日向君、下がってて」

    日向「……信じて、いいんだな?」

    苗木「うんっ……全ての連鎖を今! ここで! 断ち切るから!!」





    ーー究極の希望、解禁。


  145. 146 : : 2017/08/01(火) 23:06:58

    ようやく書きたかった所まで進みました……(切実)

    エンディングまであと少し。
    相変わらずのスロー更新ですが、皆様の応援あっての今です!


    最後まで応援よろしくお願いします!
  146. 147 : : 2019/05/06(月) 09:25:21
    >>146
    と言いつつ
    もうすぐ2年経ちそうなのですが
    それは
  147. 148 : : 2019/08/18(日) 10:55:17
    とても面白いです!頑張って下さい!
  148. 149 : : 2019/10/15(火) 01:38:43
    長かった…
  149. 150 : : 2020/10/27(火) 10:18:03
    http://www.ssnote.net/users/homo
    ↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️

    http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
    ↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
    ⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️

    ⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
    10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
    みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
    今回は誠にすみませんでした。


    13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
    >>12
    みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
    現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました

    私自身の謝罪を忘れていました。すいません

    改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
    今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
    あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
    SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
    本当に今回はすみませんでした。




    ⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️

    http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi

    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️

    56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ごめんなさい。


    58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ずっとここ見てました。
    怖くて怖くてたまらないんです。


    61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
    お願いです、やめてください。


    65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    元はといえば私の責任なんです。
    お願いです、許してください


    67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    アカウントは消します。サブ垢もです。
    もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
    どうかお許しください…


    68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    これは嘘じゃないです。
    本当にお願いします…



    79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ホントにやめてください…お願いします…


    85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    それに関しては本当に申し訳ありません。
    若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
    お願いですから今回だけはお慈悲をください


    89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    もう二度としませんから…
    お願いです、許してください…

    5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
    ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
    本当に申し訳ございませんでした。
    元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
    私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
    今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。

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