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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品はオリジナルキャラクターを含みます。

【オリジナル展開でコロシアイ学園生活】セレス「この学園にある物は希望なのでしょうか?」 Chapter3

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  1. 1 : : 2015/01/17(土) 22:42:10
    前々スレ
    【オリジナル展開でコロシアイ学園生活】桑田「へえ、ここが希望ヶ峰学園か」 Prologue&Chapter1
    http://www.ssnote.net/archives/14455

    前スレ
    【オリジナル展開でコロシアイ学園生活】大和田「なァにが希望の学園だ」 Chapter2
    http://www.ssnote.net/archives/16611


    の続き、今回よりChapter3になります!
    主役はスレタイ通り。
    ……え? 何故「オリジナルキャラクターを含む」にチェックが入っているかって?
    まあ、念のためです。“念のため”。

    今回はまだ書きためがほとんど出来ていないので、早めに立てるだけ立てたという形です。
    少ししたら冒頭部分を投下します。
  2. 2 : : 2015/01/17(土) 23:14:04
    ――カチャ、カチャカチャ

    ???「んしょ……と」

    ――ブゥゥ……ン

    ???「これで……どうかな?」

    ――ピピッ!

    ???「……やった! これで、これなら……!」

    ――ピッ

    不二咲「これで……きっと!」


       CHAPTER 3
        新世紀金貨伝説再び!
          賭博女王よ大地を騙せ!   (非)日常編
  3. 3 : : 2015/01/18(日) 00:45:08
    期待!
  4. 4 : : 2015/01/18(日) 03:40:21
    セレス(二度目の学級裁判から一夜が明け……)

    朝日奈「随分……減っちゃったね……」

    苗木「うん……」

    セレス(朝食に集まったのは八名のみ……最初は十五名いた事を思えば、たしかに少し減ったようにも感じます)

    舞園「でも、十神君が来ないのはいつもの事ですし、大和田君も……あの状況なので分かりますけど……」

    セレス(大和田君。彼はあの学級裁判の後、完全に生気を失っておりました。立って歩いているのが不思議なくらいでしたし、当分部屋から出て来れずとも不思議はありませんね)

    桑田「不二咲……アイツが来てねえのはなんでだ?」

    山田「彼女……いえ、彼の性格上、来ないというのは考えにくいのですが……」

    大神「もしや……性別の事で我らに“嘘”をついていたことを気に病み、顔を合わせずらいのやもしれんな」

    霧切「それはあるかもしれないわね……」

    セレス「別に気にしませんのに」

    山田「ですな……いえ、むしろ、だがそれがいい、という奴ですな!」

    桑田「いや、その境地には至れねえわ……」

    舞園「でも、それなら不二咲君とはちゃんとお話すればまた来てくれるでしょうか」

    苗木「そう思うよ。問題は大和田クンの方なんだよね……」

    朝日奈「ちょっと……かける言葉が分からないかな……」

    大和田「親友を失っただけでなく、あやつ本人がその親友を追い詰め、死に追いやったと責任を感じているのであろうな……」

    霧切「大和田君については、時間をかけてケアしていくしかないでしょうね……」
  5. 5 : : 2015/01/18(日) 03:41:19
    山田「ではやはりさしあたっては不二咲千尋殿となんとか会話する機会を作る、という方向ですかな?」

    不二咲「僕の話?」

    山田「ぬお!?」

    大神「不二咲……お主、大丈夫なのか?」

    不二咲「え? 何の事ぉ?」

    セレス「貴方が姿を見せない物ですから、昨日明らかになった性別の事で気に病んでいるのではないか、と話していたところです」

    不二咲「ああ、そっかあ。でも、それは大丈夫だよ! ちょっと寝坊しちゃっただけなんだぁ」

    舞園「寝坊……そうですよね。やっぱりあんなことがあった後だと、よく眠れませんよね……」

    不二咲「あ、えっと……それもあるんだけど、それだけじゃなくて……」

    苗木「それだけじゃない……って?」

    不二咲「んっと……ちょっと見せたいものがあるんだ。“脱衣所”に来てくれるかなぁ?」

    霧切「脱衣所……なるほどね」

    大神「なるほどとは、何の事だ?」

    霧切「別に。ただ……不二咲君は“気が付いている”という事に感心しただけよ」

    朝日奈「気が付いて……?」

    セレス(ふむ。何のことでしょうか?)

    桑田「つかよ……オメーらツッコまねえからオレがツッコむぞ。おい不二咲、オメーは結局その格好でいいのかよ!?」

    セレス「……言われてみれば、男性だと発覚したのに衣服はそのままですわね」

    不二咲「やっぱり……変、かな?」

    山田「可愛いのでいいと思いますぞ」

    セレス「こういう人もいますからちゃんと男性の格好をした方がよろしいかと」

    山田「そんな殺生な!」

    不二咲「でも、服が無いんだよねぇ……」

    大神「ならば我が繕ってやろう。幸い、女子の部屋に配られた裁縫セットがある。倉庫には布もあったからサイズさえ分かれば用意は可能だ」

    不二咲「えっ、でも悪いよ……!」

    大神「何、構わん。我も不慣れという訳ではない」

    桑田「大神って裁縫とかするんだな……ちょっと意外だぜ」

    大神「山籠もり中に破れた部分は自分で縫い合わせる必要があったからな。自然と慣れるものだ」

    桑田「あ、なんか納得したわ」

    苗木「えっと、とにかくその話は後にしてさ……今はとにかく、不二咲クンの言う“見せたい物”っていうのを確認しに行かない?」

    舞園「そうですね。では脱衣所でしたっけ。行ってみましょう」
  6. 6 : : 2015/01/18(日) 03:41:50
    セレス(脱衣所へやってきましたが……)

    朝日奈「それで、見せたい物って?」

    不二咲「うん……これなんだ」

    桑田「コレって……図書室にあったパソコンか?」

    霧切「不二咲君が修復してたんだったわね。終わったの?」

    不二咲「うん、修復自体は終わったんだけど……」

    桑田「マジか!? っと、いけねえ。監視カメラがあるからあんまり騒いでバレるのはマズいよな」

    霧切「いえ、その心配はないわ」

    桑田「なんでだよ?」

    不二咲「えっとね、ここって他の場所と違って監視カメラが無いんだぁ」

    セレス(言われて周囲を見渡してみると、なるほどたしかにこの空間には監視カメラはありませんわね)

    舞園「裸になる場所ですし、そういう配慮はしている、って事でしょうか?」

    桑田「んな配慮するぐらいならこっから出して欲しいっての……」

    山田「それを言っちゃあお仕舞いですな」

    大神「ところでそのパソコンはネットには繋がらないのか? もし繋がるのであれば助けを呼ぶことも出来ると思うが」

    不二咲「もちろん試そうとはしてみたけど……そもそも無線でも有線でも繋がってないから無理かなぁ」

    苗木「それじゃあさ、中のデータはどうだったの? 何か情報はあった?」

    不二咲「それが……厳重にプロテクトがかけられてて、まだそれを解除するところまで行けてないんだ……」

    霧切「そう……。じゃあ引き続き不二咲君にはそのパソコンの中のデータを解析してもらう作業をお願いしていいかしら?」

    不二咲「ううん、実は見せたい物っていうのは、パソコンの自体も勿論そうなんだけど、それだけじゃなくて……」

    セレス(そう言って不二咲君はパソコンを操作し始めましたが……何をやっているのでしょう? ……しばらくの間、不二咲君がパソコンを弄るカチャカチャという音が空間を支配していましたが、やがて……)
  7. 7 : : 2015/01/18(日) 03:42:12
    不二咲?『こんにちは!』

    桑田「あ? 不二咲、何くぐもった声出してんだ?」

    不二咲「あ、いや、僕じゃなくて……」

    セレス(不二咲君は慌てて、パソコンの画面をみんなに見えるように移動し……って、あら?)

    セレス「不二咲君の顔、ですか?」

    不二咲「この子はアルターエゴっていって……このPCの中に組み込んだ人工知能なんだ」

    アルターエゴ『よろしくね、みんな!』

    霧切「人工知能……アルターエゴ。別人格、ね」

    セレス「なるほど。差し詰め、最初の学級裁判の時に出た話題から名前の着想を得た、といったところでしょうか」

    桑田「その話すんなよ……気が滅入るだろ……」

    不二咲「さすがにここの設備だけじゃ音声認識の機能までは付けられなくて、キーボード入力でしか意思の疎通が出来ないんだけど……でも、この子にデータの解凍をお願いしてるから、もうしばらく時間があればきっとデータの解析も終わるよ!」

    霧切「そうね。人力で解凍するより遥かにリスクは低いでしょうし、じゃあ彼に任せるわ」

    苗木「うん、ボクも異論はないよ」

    不二咲「ありがとう!」

    アルターエゴ『……うん! みんなの役に立てるよう、頑張るよ!』

    セレス「キーボード入力のみ、というのが少しレスポンスが遅れますわね」

    朝日奈「うーん、でも仕方ないんじゃないかな……」

    苗木「機能を付けられないんじゃね……」

    霧切「いえ、可能性はあるわよ」

    朝日奈「え?」

    霧切「昨日は疲れてしまっていたから調べていなかったけれど、裁判が終わった以上、また新しい階や部屋が解放されている可能性が高いわ。そこに行けばなにか使えるものがあるかもしれないわよ」

    不二咲「あ……そっかぁ!」

    セレス「ではこれから探索に向かいましょうか?」

    不二咲「あ、ちょっと待って!」

    山田「まだ何かおありで?」

    不二咲「えっとね……実は、このアルターエゴは、一番サンプルとして分かりやすい僕の人格を主に使ったんだけど……」

    桑田「ま、そうでもなけりゃ自分を使うってのはいくらなんでもナルシストが過ぎるよな」

    不二咲「でも、みんなのデータもそれなりに入れてるから……こういう事も出来るんだ」

    セレス(そう言って不二咲君はまたもパソコンを操作し、そして)

    桑田「な……!」

    苗木「こ、これって……!」
  8. 8 : : 2015/01/18(日) 03:42:35
    石丸アルターエゴ『やあ、諸君! 元気そうで何よりだ!』

    セレス「これは……いったいどういう事ですの?」

    山田「どうしてまた、石丸清多夏殿を?」

    不二咲「うん、これを使って大和田君を励ませないかなって思ってさ」

    霧切「なるほどね……少し危険な気もするけれど、今のまま大和田君を放っておくのもいずれ何かが起こりそうだし、賭けに出てみてもいいかもしれないわ」

    桑田「じゃあ……大和田呼んでくるか?」

    霧切「ええ、お願いするわ、桑田君」

    舞園「あんまり刺激しないようにお願いしますね」

    桑田「分かってるよ、いくら相手が大和田でもあの状態じゃな……ま、ちゃんと連れてくっから、待ってろ!」
  9. 9 : : 2015/01/18(日) 03:43:04
    セレス(そのまま桑田君は駆け出して行ってしまいました。ですがすぐに……)

    桑田「よ、とりあえず大和田は素直に出て来たぜ」

    朝日奈「よかっ……た……って、どうしたの!?」

    大神「大和田よ……大丈夫なのか……?」

    大和田「…………」

    セレス(頬がこけ、目の下にはクマができていて、彼自慢の髪も整っていない……まるで“別人”のようになってしまっていますわね)

    苗木「大和田クン……ちゃんと寝てるのかな?」

    不二咲「うう……でも、でも! 大和田君! これ見てよ!」

    セレス(不二咲君が大和田君に画面を見せましたわね)

    大和田「…………! な、に……!?」

    石丸アルターエゴ『ふむ、話は全て聞いているが……僕の、石丸清多夏のためにそのような姿になるまで思い悩んでくれたのだな』

    大和田「なんだ、こりゃあ……兄弟はあの時、たしかに死んだはずだろ……!?」

    不二咲「それはね……」

    セレス(不二咲君が大和田君に、“これ”について包み隠さず全てを、正しく説明したようですわね。まあ実は生きていたなどとチープな嘘をつくよりはよっぽどマシというものでしょうか)

    大和田「そういう……事か。じゃあ兄弟が生き返ったとか……そういう話じゃ、ねえんだな」

    桑田「……そうだな。死んだ奴は、生き返らねえよ。いくらなんでもな」

    大和田「……だよな」

    苗木「大和田クン……」

    大和田「なあ不二咲。こいつは……このアルターエゴって奴はよ。兄弟とおんなじように考えて、喋るんだな……?」

    不二咲「う、うん。完全にってわけじゃないけど……少なくとも、僕から見た石丸君と同じような考え方をするようにプログラムはしたよ」

    大和田「そうか……」

    石丸アルターエゴ『僕は本物の石丸清多夏ではない。だが不二咲君が組み込んでくれた僕の思考パターンは君にこういうべきだと告げている。……大和田君、いや兄弟! 君はその腕っぷしと誇りで、生き残っている者たちを引っ張っていける力がある! 仮にも集団のトップに立っていたのだ、君ならば出来る!』

    大和田「だが、だがよ……」

    石丸アルターエゴ『それに……前回の裁判の事も聞いている。その時、違和感を覚えた場面があったのだ』

    大和田「違和感……?」

    石丸アルターエゴ『ああ。不二咲君の入力してくれたデータによれば、石丸清多夏はこう言ったそうだな』


    石丸「トイレに立ち寄ったのは……万力を洗うため、だよ。ははは……あんな状況で僕はすぐさま保身に走ってしまったのだ。その時点で僕は汚い人間だよ」


    大和田「ああ……確かに……言ってたよ」

    石丸アルターエゴ『だが、石丸清多夏の思考パターンが僕のそれと同一であるならば……そのような事は無いと思うのだ』

    大和田「どういう意味だ? あの状況で嘘つく必要なんざ……」

    石丸アルターエゴ『僕もそれが分からないのだ。だが、僕が僕の思考パターンを信じるならば……石丸清多夏がトイレに立ち寄り、万力を洗った理由は……何度思考を繰り返しても、“君から預かっている物を汚したままにはしておきたくなかったから”という結論に至るのだ』

    大和田「……!」

    苗木「そっか……あの時の石丸クンはきっと……大和田クンに“自分は汚い人間なんだ”って事を強調するためにあえてそういう言い方をしたんじゃないかな」

    桑田「そうすりゃ、大和田がちっとでも落ち込まずに済む、とでも思ったって事か」

    霧切「いかにも、そういうところで不器用そうな彼らしいと言えるわね」

    石丸アルターエゴ『なるほどな……そういう事なのかもしれない』

    セレス「プログラムである以上、嘘を言う事は無いでしょうし……おそらくこちらが正しい解釈、なのでしょうね」
  10. 10 : : 2015/01/18(日) 03:45:44
    大和田「アイツは……石丸……清多夏……オレの兄弟は……!」

    山田「むむ? 何やら……大和田紋土殿の様子が……?」

    大和田「大和田……紋土だァ?」

    山田「え、何か変な事言いましたかな……?」

    大和田「オオオ……オオオォォォォォォッ!」

    苗木「ななな、何!?」

    大和田「ッラァ!」

    舞園「元気が出たみたいですし、大和田紋土大復活、といったところ、ですかね?」

    大和田「大和田紋土だァ!?」

    桑田「なんでそこにいちいち反応すんだよ!?」

    大和田「兄弟を失っちまった今……オメェらの風紀を正すのは誰だ?」

    霧切「何か……雲行きが怪しいのだけれど」

    桑田「別にそういうのはいらねえんだけど」

    大和田「要らなくねえ! オレだろうが!」

    苗木「ちょ、ちょっと、大和田クン……?」

    大和田?「オレは大和田じゃねえ! 今の俺は……“兄弟”の遺志を継いだオレは!」

    桑田「オレは……何だよ?」
  11. 11 : : 2015/01/18(日) 03:46:25
    大和田?「……大和田と石丸で」

    大和丸「大和丸(ヤマトマル)ってトコだな」

    山田「大和田紋土殿が大和丸紋土殿に……?」

    大和丸「違え! オレは……ダイアモンド大和丸だ!」

    朝日奈「プロレスラーみたいになってるよ!?」
  12. 12 : : 2015/01/18(日) 21:04:09
    名前が崩壊した…www
  13. 13 : : 2015/01/19(月) 22:20:15
    霧切「貴方、石丸君の魂が自分に乗り移ったとか言い出すつもりじゃないでしょうね?」

    大和丸「ハッ、あり得ねえ。オレだってそこまで馬鹿じゃねえ。死んだ人間は死んだ人間、さっき桑田も言った通り、生き返ったりしねえ。ましてや、魂なんざオカルトじみたもん、存在するわけがねえ」

    山田「ではおお……いえ、ダイアモンド大和丸殿のその変貌ぶりは……?」

    苗木「受け入れるの、その名前!?」

    大和丸「決まってんだろ……オレの! 課題だ!」

    舞園「か、課題……ですか?」

    大和丸「いいかテメェら、よく聞け! これからはオレが兄弟に代わってここの風紀を取り締まってやんよ……もし乱す奴がいたらマジでグチャッと潰す!」

    セレス「大和田君自身が風紀の乱れのような気も致しますが」

    大和丸「ダイアモンド大和丸だっつってんだろ!」

    セレス「……はあ」

    セレス(余計に騒がしくなりましたわね……)
  14. 14 : : 2015/01/19(月) 22:24:03
    ダイアモンド大和丸…ちょっとツボ
  15. 15 : : 2015/01/21(水) 16:09:19
    やばい大和丸ニヤニヤしてしまう
  16. 16 : : 2015/01/21(水) 20:23:04
    霧切「さて、それじゃあそろそろ未探索エリアの探索を始めましょう」

    セレス(パソコンは脱衣所に隠しておく、という事で話が決まり、食堂に戻ってくるなり霧切さんがそう切り出しました)

    セレス「解放されていそうなのは学校エリアの三階でしょうか。この寄宿舎エリアの二階への階段のシャッターは閉まったままでしたし」

    舞園「他にも、学校エリア一階にまだ鍵のかかった扉がありましたから、そこも調査しておくべきですかね?」

    朝日奈「じゃあ組み分けはどうする?」

    不二咲「十神君を除いて十人だから……二人ずつがいいのかなぁ」

    セレス「それですとたしかに綺麗五グループに分かれられますが……苗木君はいつも通り十神君の所へ行くのでは?」

    霧切「いえ、今回は私達のグループに入ってもらいましょう」

    大和丸「いいのか? アイツを一人にしとくと何しでかすかわかんねえぞ」

    大神「前にも話にあったが……一人では殺人など起こしようがあるまい。今は見張りよりも新たな情報の共有の方が重要だという事であろう」

    大和丸「なるほどな……」

    苗木「じゃあ今日はボクもここでチームに入ればいいんだね」

    霧切「ええ、お願いするわ。……けれど、別に二人ずつにこだわる必要はないんじゃないかしら。別に三人以上でもいいと思うわよ」
  17. 17 : : 2015/01/21(水) 20:23:20
    大和丸「なるほどな。んじゃあ不二咲、それと大神。オレはオメェらと組むぜ。いいな?」

    大神「む? 我は構わんが……」

    不二咲「どういう組み合わせなの?」

    大和丸「何、昨日は不二咲に漢気見せてもらったからよ……探索がてらトレーニングに付き合ってやろうと思ってな。大神も安心してトレーニングに付き合ってくれそうだしよ」

    大神「なるほどな。そういう事ならば断る理由は無い。いいであろう」

    不二咲「お……じゃなかった、大和丸君、大神さん……ありがとう……!」

    セレス(大和田君がすっかり大和丸君で定着しつつありますわね)

    苗木「それじゃあ……今まであんまり話した事無かったし、朝日奈さん、一緒に行かない?」

    朝日奈「私? うん、いいよ。そういえばたしかに苗木と話した事ってあんまりないかもだし」

    舞園「普段十神君をお任せしてしまっていますからね」

    山田「残るは僕と桑田怜恩殿……それとセレスティア・ルーデンベルク殿、霧切響子殿、舞園さやか殿で五名ですかね?」

    舞園「じゃあ男女で分かれるのがいいですかね?」

    霧切「そうね、異論はないわ」

    セレス「まあ、いいでしょう」

    桑田「んじゃ、オレは山田とか。別にいいぜ」

    山田「ではよろしくお願いしますぞ、桑田怜恩殿!」

    セレス(さて、それでは行動に移ると致しましょう)
  18. 18 : : 2015/01/21(水) 20:23:49
    舞園「そういえば……」

    セレス(食堂を出て少し歩き始めたところで、舞園さんが話を切り出しました)

    霧切「何?」

    舞園「モノクマがばら撒いた“動機”ですけど、朝日奈さんと桑田君の分は結局どうなったんでしょう?」

    セレス「そういえば、見つかっていないままですわね。昨日の学級裁判で話題に上げなかったという事は十神君も発見していないのでしょうし」

    モノクマ「安心して!」

    舞園「きゃあ!?」

    霧切「どこでも出てくるのね……」

    モノクマ「うぷぷぷ、いい驚きっぷりだねえ。ドッキリ番組とかで慣れちゃってると思ってたよ」

    舞園「出たことありませんし……」

    セレス「あら、そうなのですか」

    モノクマ「ま、そんな事より。朝日奈さんと桑田クンのファイルは既に本人の部屋に配備済みです。ま、一回使った“動機”を使いまわすのも面白くないしね!」

    舞園「面白い面白くないの問題じゃないと思うんですけど」

    モノクマ「オマエラの感覚はどうでもいいんだよ。ここではそういう問題なの。というわけで、伝える事も伝えたんで、まったねー!」

    セレス「……行ってしまいましたわね」

    霧切「一応有用な情報、かしらね。あとで報告する際に桑田君と朝日奈さんには確認してもらいましょう」

    セレス「そうですわね。それが妥当なところでしょう」
  19. 19 : : 2015/01/21(水) 20:24:17
    舞園「……ところで」

    セレス「まだ何かおありで?」

    舞園「そのファイルですけど、霧切さんの物は“だいぶ特殊だった”といったような話でしたよね? 訊いちゃいけないのかもしれないですけど、やっぱり気になって……」

    セレス(たしかに……あの場で発見していた霧切さん以外の全員はファイルの、少なくとも外見だけは全員見せていました。が、霧切さんの物だけは外観すら見せられておりません)

    霧切「そうね……。前にも言ったけれど、私のファイルはみんなとはずいぶん事情が違うみたいだったわ。それは昨日の捜査中に見たファイルの中身を確認して、確信になったのだけれど……」

    セレス「……けれど?」

    霧切「何度も言うようだけど、私自身“納得がいっていない”のよ」

    舞園「それってどういう意味なんですか?」

    セレス「何度かそのフレーズをお使いになられていますが……自身の事のはずですわよね?」

    霧切「……そうね。ちょっと待っていて頂戴」

    舞園「え? あの、霧切さん……?」

    セレス(霧切さんはそのまま自室へ入って行き……しばらくして、例のファイルの装丁をした……けれど、他の誰の物よりも厚みのある冊子を持って戻ってきました)

    霧切「これを舞園さんに渡しておくわ」

    舞園「え、私……ですか?」

    霧切「ええ。必要になったら使って頂戴」

    舞園「それって……どういう時ですか?」

    霧切「自分でも分かっているわ。自分の事をあまり話さない現状が、決していい物ではない、という事くらい」

    セレス(たしかにわたくし達は霧切さんの才能さえまだ知りませんし)

    舞園「でも、それなら話せば……」

    霧切「話せない“事情”があるのよ」

    セレス「事情……とは?」

    霧切「それについてはまだ話すべき時じゃないわ。……けれど、その事で私へのみんなの疑惑が最高潮に達した時に……舞園さんにそれを持ち出してきて欲しいのよ」

    セレス「なるほど。自分が出すよりも、預けていた他人が取り出した方が信憑性は高まる、ですか」

    霧切「そういう事ね。それに今日というタイミングなら、偽造の声も上がらないでしょうし」

    舞園「確かに、偽造するような時間もありませんでしたしね」
  20. 20 : : 2015/01/21(水) 20:24:45
    霧切「ただ、預けはするけれど、中は見ないようにして頂戴」

    舞園「分かりました。でも、もし本当に疑惑が高まってしまうようなら、私も中を把握しておいた方が口裏を合わせやすくていいと思うんですが……?」

    霧切「問題ないわ。発見した時に苗木君も中を確認しているもの」

    舞園「苗木君が?」

    霧切「ええ。ファイル探索の発表の場の彼の発言、あれは中を見ていたからこその物よ」

    セレス(たしかに、妙にかばうような口調だとは思いましたが、そういう事でしたか)

    舞園「けど、それがどうして私が中を把握していなくていい理由になるんですか?」

    霧切「“ファイルの中身を知っている人物”と“ファイルを持っている人物”が別々にいる事……これが重要なのよ。みんなの事を信じていないわけじゃないけど、万が一という事もあり得るし」

    セレス「そうですわね。以前にも言いましたけど、万が一が起こらないと信じる事は、万が一が起こった時のために対策を施してはいけない事にはなりませんし。いい判断だと思いますわよ」

    舞園「つまり……苗木君か私に万が一の事が起こっても、どちらか一人が無事なら、って事ですね」

    霧切「ええ。……まあ、貴女にとっては貴女に万が一が起こるなんて考えたくもない可能性でしょうけど」

    舞園「いえ、でもここにいる限り起こり得る事ですから……」

    セレス「…………」

    霧切「……そう、いろいろと覚悟は出来てるみたいね」

    舞園「というより、せざるを得ませんから」

    セレス「思っていたより、強いんですのね」

    舞園「そうでしょうか? いえ、そうかもしれません。桑田君のあの言葉が無ければ、私も“殺人を犯してでも外に出たい”と思ってしまっていたかもしれませんし」

    セレス「全く、意外な事だらけですわね。貴女にそんな風な変化を遂げさせることが出来るような人には見えませんもの」

    舞園「本当にそうですよね」

    霧切「とにかく、舞園さん。そのファイルを預かった事は誰にも言わないで頂戴ね。勿論中身を知っている苗木君にも、よ」

    舞園「ええ、わかりました」

    霧切「ありがとう。それじゃあそろそろ、ちゃんと探索しましょうか。それとセレスさん、この後の報告会が終わったら私の部屋に来てくれるかしら?」

    セレス「別に構いませんが、何かご用でも?」

    霧切「ええ。舞園さんにファイルを預けた事を知っているのは当事者である私と舞園さんを除けば貴女だけだもの。貴方には“中身を見る”という方法じゃなくて、私の方から口頭で中に書かれていた事について簡単に説明させてもらうわ」

    舞園「え、ずるいですよ!」

    霧切「そう言わないで頂戴。これは所謂口止め料みたいな物だし」

    舞園「うー……」

    セレス「ふふ、まあいいでしょう。では後ほど伺いますわね」

    霧切「ええ」
  21. 21 : : 2015/01/23(金) 21:07:56
    セレス(さて。そんなこんなで今回の探索で新たに解放されていた部屋を見て回った雑感を纏めてみましょう。


    【学校エリア一階】

    ・保健室
      さまざまな医薬品や医療用器具、輸血パックの他ベッドもありました。
    たしかに保健室にはベッドがあるというイメージはありますが……。
      そもそも校則で個室以外での就寝は禁止なのです。
      ここで眠る事はないでしょうね。


    【学校エリア三階】

    ・教室×2
      3-A教室と3-B教室ですわね。
      一階、二階と同じで特には何もありませんでした。

    ・娯楽室
      正直、学園という事であまりこういったものは期待はしていませんでした。
      ですので用意されていた時は柄にもなく内心小躍りしてしまいましたわ。
      ゲームに付き合ってくれそうな方があまりいらっしゃらないのが少し残念ですが。

    ・美術室
      妙な内装の部屋でした。
      いえ、この学園全体がそもそも内装は変なのですが……。
    仁王像などは異様としか言えませんわね。
      ですが何かを作るという際にはここを使用する事になるのでしょうか。
      あまりそういう状況は想像できませんが。

    ・美術倉庫
      美術室から繋がっている部屋ですわね。
      彫刻や絵画に必要な道具の一式がそろっているようですわ。
      ですがこういったものの扱いに長けている人はいるのでしょうか?
      もしいるとすれば……殺人に使われるかもしれませんわ。
      気を付けませんと。

    ・物理室
      何やら巨大な機械が作動していました。
      現れたモノクマの言うところでは“空気清浄機”だそうですが……。
      あんなに巨大にする必要はあるのでしょうか?
      モノクマの言う事も怪しいものです。

    ・物理準備室
      こちらも美術倉庫同様、何やらガラクタの保管されている部屋のようですわ。
      いえ、見る人が見れば宝の山なのかもしれませんが。
      わたくしにとっては特に興味も御座いませんし、ただのガラクタですわね。


    ……と、こんな具合でしょうか)

    舞園「新しく解放された部屋はこのくらいですかね……」

    霧切「どうやらそうみたいね。一通りの探索は終わったし、戻りましょうか」

    セレス「ええ、そうですわね」
  22. 22 : : 2015/01/23(金) 21:08:17
    大和丸「遅えぞテメェら! 時間厳守を守りやがれコラァ!」

    不二咲「や、大和丸君、厳守と守るで言葉がかぶってるよぉ……」

    山田「指摘はそこですかな!?」

    桑田「大和田がマジにイインチョみてーになってっからおっかねえぜ」

    舞園「ですけど、ゆっくり探索しすぎましたかね? すみません」

    霧切「別にいいじゃない」

    セレス「マイペースを崩さないというのも大切な事ですわよ?」

    朝日奈「反省の色が見えるの、舞園ちゃんだけだし!」

    セレス「そんな事より、早い所報告会を済ませてしまいません?」

    大和丸「そんな事だとォ!?」

    桑田「だー、話が面倒になるだけじゃねえか! さっさと報告しようぜ!?」

    霧切「その意見には賛成ね」

    大神「では我らから報告しよう……」

    セレス(大神さん、不二咲君、お……いえ、大和丸君のチームの報告が終わり、桑田君、山田君のチームの報告が終わり……しかし両チームとも、わたくし達が知っている以上の情報は特に得られなかったようですわね)
  23. 23 : : 2015/01/23(金) 21:08:50
    大和丸「んじゃあ次は苗木、オメェと朝日奈んとこはどうだったんだ?」

    苗木「あ、えっと、それなんだけどさ……」

    朝日奈「あれは難しい……よね」

    大和丸「あァ? なんか見つけたのか?」

    苗木「うん、ボクと朝日奈さんが美術倉庫に入った時……一枚の写真を見つけたんだ」

    セレス「写真、ですか?」

    朝日奈「うん。私も見たよ。……すぐにモノクマに取り上げられちゃったんだけどさ」

    大神「どのような写真だったのだ?」

    苗木「……場所は学校の、教室だった」

    不二咲「教室? それって、この学園のかなぁ?」

    苗木「それは分からないけど……でも、そこには石丸クン、腐川さん、葉隠クンの三人が写っていたんだ。たぶん葉隠クンが腐川さんを占おうとして、占い代をふっかけて……それを見咎めた石丸クンが注意している、みたいな構図だったよ」

    大和丸「何だとォ!?」

    霧切「……確認するけれど、ここに来てからその三人の写真を撮った、という人はいる?」

    セレス(誰一人として……名乗りを上げる人はいないようですわね)

    大和丸「だがよ、江ノ島が撮ったって可能性はあんじゃねえのか?」

    舞園「もしそうだとしても、カメラが無いですけどね……」

    朝日奈「“アレ”は関係ないだろうしね……」

    セレス「アレとは?」

    苗木「その話はひとまず後回しにしてさ、この写真についてもう一つ、伝えなくちゃいけない事があるんだ」

    桑田「そりゃ、何のこった?」

    苗木「実は……さっき教室って言ったけどさ。その教室には、“窓に鉄板が取り付けられていなかった”んだ」

    大和丸「なッ……!?」

    不二咲「この学園の窓は全部鉄板が取り付けられてるから……ここで撮られた物じゃない、って事ぉ?」

    舞園「三人は以前から知り合いで……その際に撮った物、という事でしょうか?」

    大神「そのようには見えなかったが……」

    セレス「念のために確認しておきますけれど、この中で他に、以前から面識のあった者同士という間柄の人はいますか?」

    舞園「一応、苗木君とは同じ中学でしたけど」

    苗木「同じクラスになった事はおろか、一言もしゃべった事無かったけどね」

    桑田「そういやそんな事も言ってたな」

    霧切「他にはいない?」

    セレス「……いないようですわね」

    大和丸「とにかくよ……あいつらが昔からの知り合いじゃなかったんだとすりゃ、だ。実はまだ生きていて、この学園の外で仲良くやってるって可能性もあるって事か?」

    霧切「いえ……残念だけれど、石丸君はともかく、捜査の際に腐川さんと葉隠君の死亡は確認しているわ。間違いなく……生きてはいないはずよ」

    山田「では、合成写真という可能性しか残りませんな」

    朝日奈「それってつまり、モノクマが私達を困惑させるために用意した偽物って事?」

    山田「それしか考えられませんな。モノクマの事ですし、そのくらいの事はやってもおかしくないでしょう」

    苗木「そっか、その可能性があったか……」

    霧切「その写真が合成にしろそうじゃないにしろ、まだ判断材料は圧倒的に足りていないわ。保留にしておくのがいいんじゃないかしら」

    不二咲「そうだねぇ……。せめて写真自体が手元に残ってればまだいろいろ調べられたんだろうけど」
  24. 24 : : 2015/01/23(金) 21:09:11
    舞園「ですが、無い物ねだりをしていても仕方ありません。それより朝日奈さん、さっき言っていた“アレ”っていうのは?」

    朝日奈「あ、うん。物理室でこんなものを見つけたんだ」

    セレス(そう言って朝日奈さんがとりだした物は……)

    セレス「あら、カメラですわね」

    桑田「なんかのアニメキャラがプリントされてるみてーだな?」

    山田「“なんかのアニメキャラ”……? “なんかのアニメキャラ”扱いですと!?」

    大和丸「お、そういや山田はこういうの、詳しそうだよな。知ってんのか?」

    山田「知ってるも何も! これは僕がこよなく愛する“外道天使☆もちもちプリンセスぶー子”ですぞ!」

    桑田「げどう……何だって?」

    山田「外道天使☆もちもちプリンセスぶー子です。“もちプリ”などと略されますな」

    セレス「略称などどうでもいいのですが」

    山田「というかコレ、僕のじゃないですか!」

    朝日奈「へ!?」

    山田「詳しい所は省きますが……これはこの世にたった一つしかないレアグッズなのです。この学園にも持って来ていたのですが……閉じ込められた初日に携帯や財布などと一緒に紛失してしまっていたのです」

    苗木「なんでそんな物が物理室に……?」

    山田「いやいや、それはこっちが聞きたいですがな……」

    セレス「もしや山田君、貴方が黒幕なのですか?」

    山田「なんで!?」

    セレス「黒幕ならば自由に解放されていないエリアにも出入りできるでしょう。それならば貴方の所有物が、これまで解放されていなかった物理室にあった事も頷けますわ」

    霧切「その可能性は低いと思うけれど。もし仮に山田君が黒幕なら、わざわざ私達の行動範囲に山田君の持ち物を置いておく意味がないわ。怪しまれるだけよ。それに私達全員の荷物を黒幕が回収しているのだとすれば、どれをどのタイミングでどこに置いておくかなんて思いのままじゃない」

    舞園「それもそうですね……」

    苗木「とにかくさ、ボクらからの報告は以上だよ。他はだいたい似た様な探索結果だったからさ」
  25. 25 : : 2015/01/23(金) 21:09:30
    大和丸「なるほどな……んじゃあ最後はそこの三人だな」

    舞園「と言われましても、私達も皆さんと似たり寄ったりなんですよね」

    セレス「娯楽室はわたくしも使わせてもらうと思いますわ。よろしければどなたか、一緒に何か致します?」

    山田「そんな気分にはあんまりなれそうにありませんな……」

    霧切「あとは、そうね。探索中にモノクマに聞いたのだけれど」

    朝日奈「何を?」

    霧切「朝日奈さん、貴女と桑田君の“個人情報”のファイルの事よ。同じ動機で殺人が続くの物つまらない、なんて理由であなた達の個室にモノクマが再配置したそうよ。確認してきてもらえるかしら?」

    桑田「マジかよ!?」

    朝日奈「再配置の理由が物騒だけど……うん、とにかく見に行ってみるよ」

    セレス(二人が席を立ち、部屋へ戻り……そしてすぐに食堂へ戻って参りました)

    桑田「マジにあったわ」

    朝日奈「内容は大したことじゃなかったんだけどね」

    桑田「オレも別に変な事は書かれてなかったわ」

    霧切「そう。……それでも念のために、保管はしっかりとしておいて頂戴。処分するなら処分するで構わないけれど」

    桑田「ま、そうだな。何がどう転ぶかなんてわかんねえしよ」

    大和丸「……ああ。しっかり頼むぜ」

    セレス(石丸君の殺人の動機……それは一見して動機になりそうもないファイルの内容からでした。その経緯でも思い出したのでしょうか)

    苗木「さて、報告はこれで全部かな?」

    霧切「ええ、私達からはこのくらいよ」

    舞園「それじゃあ、晩御飯にしましょうか」

    桑田「お、そうだな。んじゃあ作るか」

    大神「ああ。では厨房へ向かうとするか」
  26. 26 : : 2015/01/23(金) 21:10:36
    セレス(十神君を除いた生存メンバー全員での夕食を摂り終え、各自解散となったわけですが……わたくしは霧切さんに呼ばれておりましたね)

    セレス「行きますか」

    セレス(霧切さんの部屋のチャイムを鳴らすと……)

    霧切「開いてるわ」

    セレス(と、すぐに返答が返ってきました。見ると、なるほどたしかに、読んで字のごとく、そのままの意味で微妙にドアが“開いて”いるようですわね)

    セレス「少し不用心に過ぎませんか?」

    セレス(ドアノブをひねる事も無く霧切さんの部屋に入りますと、ベッドに腰掛ける霧切さんの姿が映りました)

    霧切「別にいいじゃない。私を殺しに来るような人がいるとしても、無力化できる自信はあるし」

    セレス「あら、それはまあ。ですが勢い余って相手を殺さないようにお気を付け下さい」

    霧切「ええ、勿論よ」

    セレス「……それで、お話、お聞かせ願えますか?」

    霧切「もちろんよ。そのために呼んだわけだし」

    セレス(そして霧切さんは、わたくしに話を始めました……)
  27. 27 : : 2015/01/23(金) 21:10:59
    セレス(霧切さんの話を聞き終えたところで、モノクマの夜時間を告げる放送を聞き、わたくしは部屋に戻って参りました)

    セレス「……さて」

    セレス(“霧切さんの話”を加味した上で、ここに閉じ込められてから毎晩の“日課”を始めるとしましょうか)

    セレス「まず」

    セレス(大きなところで、わたくし――正確にはわたくし“達”ですが、ここでは便宜上、“わたくし”に限定しましょう――には二つの選択肢が提示されています)

    セレス「それが……」

    セレス(殺すか、殺さないか。これも正確には“殺される”という選択肢も含みますが、そのような展開は御免です。殺されないための対策はするとして、ここでは無視していいでしょう)

    セレス「次に」

    セレス(殺した場合のメリットデメリット、殺さない場合のメリットデメリットについて考えましょう)

    セレス「まず前者は……」

    セレス(モノクマが最初から提示している条件。即ち、ここからの卒業……平たく言ってしまえば“脱出の権利”。これはわたくしにとっても魅力的で、大きなメリットです。わたくし自身の夢、“人生のノルマ”を達成するためにはここからの脱出は必要不可欠な要素)

    セレス「なら」

    セレス(普通に考えて、これだけでも実行に移る価値がある、と言えるでしょう)

    セレス「他にも」

    セレス(モノクマがいつまた前回のような妙な“動機”をバラ撒かないとも知れません。それがわたくしにとって致命的な物になる可能性もある以上、早めの実行こそ望ましい、と言えるでしょう)

    セレス「しかし……」

    セレス(同時にデメリットも勿論存在します。それが“学級裁判”の存在。この場で全員を騙し抜く必要がある……これが通常の、いえ、少し特異な環境であったとしても、ギャンブルの場であるならば自信を持って勝ち抜けると断言したでしょうが……)

    セレス「厄介なのは」

    セレス(この場には“超高校級”の人間が揃っている、という事ですわ。わたくしの常識の範疇を超えた方向から犯人が特定される可能性も無きにしも非ずです)

    セレス「それに」

    セレス(先ほどの“霧切さんの話”。それを考えれば、実行を起こす場合、圧倒的に不利になる可能性が非常に高いでしょう。ただでさえ、桑田君やおお……いえ、大和丸君のようなダークホースもいたわけですし)

    セレス「しかも」

    セレス(犯行がバレてしまった場合は確実な死が待っている。これは大きなデメリット、ですわね)

    セレス「では」

    セレス(殺さない場合のメリットは、と考えた場合。まず、殺されないよう細心の注意を払っていれば、病気や事故でも起こらない限りは死の危険は老衰まで存在しないという事になります)

    セレス「他にも」

    セレス(この学園から出る、という事以外は比較的自由に過ごすことが出来ます。ネックなのは“出たい”という事ですが……これについては今は考えないようにしておきましょう)

    セレス「……さらに」

    セレス(このまま生き残る事が出来れば、いつか黒幕と対峙する機会が得られるかもしれません。もしそこで黒幕を打ち倒す事が出来れば……どうなるでしょう?)

    セレス「そもそもが」

    セレス(希望ヶ峰学園の利用、或いは希望ヶ峰学園を模した建築物の建造……さらにはふざけた外見ではありますが、それなりに高性能に見える“モノクマ”の設計、開発。それだけにとどまらず、食料や生活必需品、消耗品の類の運搬。これだけ大規模な事をやってのけるためには、莫大な資金が必要になるはず)

    セレス「という事は」

    セレス(黒幕を倒した場合、そのままその資金を丸ごといただいてしまう事も可能かもしれません)

    セレス「ならばやはり」

    セレス(時期を待ち、黒幕を倒す……それがわたくしにとって、現状で一番大きな利益をもたらす選択のように思えます。黒幕を倒した場合、おそらくここからの脱出も叶う事でしょうし)

    セレス「最後に」

    セレス(デメリットについても触れましょう……と、思考を続けたところで)
  28. 28 : : 2015/01/23(金) 21:11:39
    モノクマ「あー、もう! なんなのさ!」

    セレス「あら、いつも通りの展開ですわね」

    モノクマ「オマエがいつも通りだからだろ!」

    セレス(そう。いつもこのくらいのタイミングでモノクマの介入があるのです)

    セレス「別にいいではありませんか」

    モノクマ「良くない! 全然良くないよ! もっとハッキリ喋れっての!」

    セレス(そう。接続語や接頭語などだけ口にだし、残りの“考え事”を全て頭の中だけで済ませてしまっているため、監視カメラ越しにわたくし達の会話などの音声も拾っている黒幕としては非常にモヤモヤしているのでしょう)

    セレス「まあ、わざとですけど」

    モノクマ「わざとかよ! 性格悪いなオマエ!」

    セレス「それはお互い様ではありませんか?」

    モノクマ「ボク程優しいクマはいないよ!」

    セレス「優しいならばそもそも監禁してコロシアイなど要求しないと思うのですが」

    モノクマ「むぐぅ、痛いとこ突くなあ」

    セレス(誰もが言うと思いますが)

    セレス「さて、いつも通りそろそろ寝る事に致しますわ。さっさと出て行ってくださいな」

    モノクマ「全く、しょうがないな……あ、そうそう」

    セレス「……まだ何か?」

    モノクマ「セレスさん、霧切さんから“ファイル”についての話聞いたよね?」

    セレス「ええ、つい先ほど。それが何か?」

    モノクマ「いやいや……別に何ってほどじゃないけどさ。気を付けた方がいいと思ってね」

    セレス「何に対してでしょう?」

    モノクマ「うぷぷ……だってオマエ、本心じゃここから出たくて出たくて仕方ないはずだよね?」

    セレス「……!」

    セレス(やはり、黒幕はわたくし達の事を“調べ尽くしている”……そこに間違いは無いようですわね)

    モノクマ「だったら、殺す時には霧切さんには気を付けるべきだと思ってさ。さてさて、“超高校級のギャンブラー”は上手く彼女を欺けるかな? ワクワクしてきちゃったよ!」

    セレス(それだけ言ってモノクマは姿を消しました。……ですが、黒幕にとって、一つ大きな誤算があります。それは……)

    セレス「…………」

    セレス(わたくしの目下の行動指針、それが先ほどの思考の通り、“時期を待ち、黒幕を倒す”という方向に向いている事……それを内心で確認しながら、表面上、焦ったような表情を作り、黙り込んでしばしうつむいているのでした)
  29. 29 : : 2015/01/26(月) 00:24:22
    セレス「皆様、御機嫌よう」

    セレス(朝になり、身支度を整え食堂にやって来たわたくしを、他の全員が出迎えてくださいました)

    大和丸「御機嫌よう、じゃねえだろーが! 今何時だと思ってやがる!?」

    セレス「さあ。わたくし、そこまで時間は気にしませんの」

    桑田「大和丸もそういうタイプじゃなかったっけか?」

    舞園「今朝は大和丸君、一番乗りでしたよ? 尤も、朝食を用意していた桑田君と大神さんと私を除いて、ですけど」

    山田「ほほう、どうやらダイアモンド大和丸殿は本当に風紀を正すという正義に目覚められたようですな」

    朝日奈「ねえ、山田。大和丸をフルネームで呼ぶのやめて欲しいな……」

    山田「はて、何故ですかな?」

    朝日奈「いやいや、だって明らかにダイアモンドが浮いてるじゃん!」

    大和丸「あんだとォ!?」

    大神「そう言うな、朝日奈よ。我はかなり気に入っているぞ」

    不二咲「そういう名前の人、いっぱい見てそうだもんね……」

    霧切「別にダイアモンドでもルビーでもトパーズでもなんでもいいけれど、そろそろ朝食を頂きましょう」

    桑田「そうだな。……実はよ、今日はもう朝食出来てんだよな」

    苗木「そういえばさっき、用意してたって言ってたね。でも和食とか洋食とかは訊かなくていいの?」

    大神「案ずるな。実は昨夜我ら三人で話し合い、決めたメニューがあるのだ」

    大和丸「ほう?」

    舞園「あ、私! 発案は私ですよ!」

    山田「舞園さやか殿考案の新メニューですか。少々楽しみですな」

    桑田「へへ、聞いて驚け、見ても驚け! これが舞園ちゃん考案の新メニュー!」

    セレス(そう言って桑田君厨房に引っ込み……“何か”を運んでまいりました。いえ、何かは分かるのですが、なんと表現していいのか分からないのです)

    大和丸「……一応聞く。何だそりゃ」

    舞園「じゃじゃーん! “ごはんトースト”です!」

    苗木「ご……ごはんトースト……?」

    大神「うむ、米を食パンに乗せ、オーブンで焼いたのだ」

    朝日奈「えっと……それだけ?」

    桑田「馬鹿にすんじゃねーって! それだけなわけねーだろ!」

    不二咲「……だ、だよね!」

    桑田「食パンにはちゃんとバター塗ってあるし、ご飯は塩ごはんにしてるっての!」

    山田「大して変わりませんがな!?」

    セレス(……わたくしも少々勘弁してほしいですわね。しかし避難轟々の中、一人“ごはんトースト”とやらに手を伸ばす人物がいました。それは……)

    霧切「あら、案外いけるわね」

    苗木「え!?」

    大和丸「ま、マジかよ……」

    セレス(……霧切さんですわ。というか本当においしいのでしょうか?)
  30. 30 : : 2015/01/26(月) 00:24:40
    セレス(結論から言いまして、可もなく不可もなくでしたわ。どちらか片方に絞れと言われますと……不可ですわね)

    山田「ぐぬう、口の中が賛否両論ですぞ……」

    不二咲「あはは、それ言い得て妙だね……」

    セレス(結局普通に食べていたのは霧切さん以外では作った本人である三人、合計して四人だけでしたわね)

    桑田「うーん、これなら和洋の喧嘩も起こらねえと思ったんだけどなー」

    大和丸「口ん中で喧嘩してやがんだよ! 和と洋が!」

    舞園「また違うメニューを考えないといけませんね……」

    大神「そうだな」

    苗木「というか、なんでまた急にこんなの考えたの?」

    桑田「いや、楽しげな食事作れたら、多少はみんなの気分も盛り上がるかな、ってよ」

    大和丸「そりゃご立派な考えだが、その前に旨いモン作れよ……」

    苗木「うん、味に普通さは結構重要だよ」

    セレス「高級さでも構いませんが」

    朝日奈「でも高級な物って高いだけで美味しいとはあんまり思えないんだよね」

    山田「むしろ拙者は、安いジャンクフードの方が好きでござるな」

    大和丸「それは分からなくもねえぜ。口に合わねえんだよな」

    舞園「食べ慣れていない、というのもあるのかもしれませんね」

    苗木「ああ、うん。そうかも」

    桑田「まあ飯の話はまたしとくとして、それよりそろそろ今日の行動について決めねえか?」

    舞園「あ、その前に一ついいですか?」

    大和丸「ああ? 何だ?」

    舞園「その、事件は起こらないに越したことはないんですけど……絶対に起こらないとも言い切れませんし、もし起こってしまった時のために提案したい事があるんです」

    霧切「それって、何のことかしら」

    舞園「これまで、捜査の度にトラッシュルームを開ける掃除当番が誰なのかを調べる手間が必要だったじゃないですか。だからその手間を短縮するためにも、掃除当番の表のようなものを作りませんか?」

    桑田「なるほどな、それを全員が一つずつ持ってりゃ、誰が当番なのかすぐ分かるって事だな……」

    大神「いいと思うぞ。尤も舞園本人の言っていた通り、起こらぬに越したことはないがな」

    不二咲「それでも、対策出来る事はしておくべきだし、異論はないかな」

    苗木「じゃあサクッと作っちゃおうか」

    大和丸「つーか、掃除当番ってどういう基準で決められてんだ?」

    山田「掃除当番になった人が適当に声をかけた相手が次の掃除当番です」

    セレス「適当すぎやしませんか?」

    霧切「道理で当番が回ってこないはずだわ……。じゃあこの際だし、しっかり決めちゃいましょう」

    不二咲「あ、でも十神君はどうするのぉ?」

    大和丸「言ったとこで真面目にこなすとは思えねえ。つーか殺人のトリックにでも使われる可能性大だしな。省いとこうぜ」

    セレス「仕方ありませんわね」
  31. 31 : : 2015/01/26(月) 00:24:59
    セレス(結果、当番は本日を起点として次のような順になりました。

    桑田→大和丸→苗木→霧切→セレス→不二咲→大神→山田→朝日奈→舞園

    わたくしは“五日目”ですわね。掃除当番などと、わたくしのイメージからは遠くかけ離れているのですが……憂鬱ですわね)

    桑田「今日はオレか……メンドクセーけどしゃーねえな」

    朝日奈「いずれやるんだからね」

    不二咲「それじゃあ当番はこのローテーションかな?」

    大和丸「だな」

    桑田「ん? って事は……舞園ちゃんから鍵受け取れんのか。そう考えるとこの順序も悪くねえかもなー……!」

    朝日奈「ホント、ブレないね……」

    セレス「では当番も決まった事ですし、今日の行動について、でしたわね?」

    大和丸「おう。とりあえず苗木、オメェは十神んとこ行って来い」

    苗木「う、うん……。たぶん図書室だろうし、行ってくるよ」

    セレス(となると、去って行った苗木君を除き……九名でグループ分けになるみたいですわね)

    不二咲「三人ずつの三グループに分かれるのがいいのかなぁ?」

    霧切「別にこだわる必要はないと思うけれどね」

    桑田「けどま、オレは舞園ちゃんと大神の二人と一緒に行動してえな。さっきのごはんトーストは不評だったからよ、また新メニュー考えてえし」

    舞園「そうですね、いいですよ」

    大神「ああ、付き合おう」

    セレス「わたくしは娯楽室を試してみようかと思うのですが……どなたかご一緒致しませんか?」

    山田「僕は遠慮を……」

    セレス「あ、山田君はお茶汲みという重要な役がありますので、確定で来てもらいます」

    山田「なんで!?」

    朝日奈「あ、じゃあ私行こうかな! 何か楽しそうだし」

    大和丸「オレはパスだ。遊んでる場合でもねえしな……」

    不二咲「僕もやめとくよぉ……」

    霧切「それじゃあ大和丸君と不二咲君は私と探索、でいいかしら?」

    大和丸「ああ、別にいいぜ」

    不二咲「うん、よろしくね!」

    舞園「結局三人ずつの三グループに落ち着きましたね」

    朝日奈「別に悪い事じゃないし、いいんじゃない?」

    舞園「ええ、そうですね」

    桑田「そんじゃ、ひとまず解散って感じか?」

    霧切「ええ。またあとで」
  32. 32 : : 2015/01/27(火) 15:40:51
    大和丸って名前がジワジワ来るw
    続き、期待してます!
  33. 33 : : 2015/01/27(火) 19:09:39
    予想以上に大和丸がウケてるようで何よりです。
    ダイアモンド大和丸君、パクっていいのよ?

    ◆◆◆

    セレス(山田君、朝日奈さんの二人を連れて娯楽室へとやって参りました)

    朝日奈「それにしてもいろいろあるよね、ここ」

    山田「ダーツにビリヤードにルーレット、オセロ……その他もろもろ揃っておりますな」

    セレス「ふむ、チェスや麻雀などもありますわね。ですが三人ではチェスやオセロは出来ませんし……麻雀も出来てサンマですわね」

    朝日奈「お魚?」

    山田「いえ、違いますぞ。魚の秋刀魚ではなく、三人打ちの麻雀の事を“三麻”と呼ぶのです」

    朝日奈「へえ、詳しいね?」

    山田「フッフーン、それほどでもありますぞ!」

    セレス「山田君の事ですし、どうせ漫画の知識だと思いますが」

    山田「バレてるしっ!?」

    セレス「まあ、どういう媒体からの物であれ、知っているということは無知よりは遥かにマシですけれどね」

    朝日奈「それで? その……ハマチだかマグロだかをするの?」

    山田「ですからサンマですぞ……」

    セレス「そうですわね。おそらく、そもそも朝日奈さんには麻雀は向かないかと。ダーツなどの方が楽しめるかもしれませんわね」

    朝日奈「あ、ダーツなら分かるよ! 的当てゲームだよね!」

    セレス「……まあ、厳密にはいろいろと違うのですが、最初はそういう認識でもいいでしょう。やってみますか?」

    朝日奈「うーん、それもいいんだけどさ、私あれやってみたいんだよね」

    セレス「あれ……とは?」

    朝日奈「ホラ、アレ!」

    セレス(そう言って朝日奈さんが指を差した方向にある物は……)

    山田「ふむ、ビリヤードですか」

    朝日奈「そう、それ! いやー、名前が出て来なくて焦っちゃったよ」

    山田「あるあるですな。『もうちょっとで思い出せそうなのに思い出せない! あの言葉何だっけ!』って現象」

    朝日奈「うんうん! あれってすごくイライラするよね!」

    山田「そして全く関係ない時にふっと思い出す」

    朝日奈「そう! そうなんだよ! その時に思い出させてよ、って感じだよね!」

    セレス(何やら盛り上がってますわね)

    セレス「それで、やりますか?」

    朝日奈「あ、うん。でもルールとかもあんまり知らないから、教えて欲しいな」

    セレス「ええ、構いませんわよ」

    山田「僕も実際にやった事もありませんしな。器具の名称もキューくらいしか分かりませんし、この機会にいろいろご教授いただきたいですぞ!」
  34. 34 : : 2015/01/27(火) 19:10:46
    セレス「いいでしょう、ではそうですね。朝日奈さんもキューくらいは分かりますよね?」

    朝日奈「うん、ビリヤードの球を突いて弾く棒の事だよね。あ、球も何か特別な言い方とかするの?」

    セレス「いえ、それは普通に球でもボールでも好きに呼べばいいですわよ」

    山田「ふむふむ、どちらでもよい、と。ではあちらの棒は何に使うのでしょう?」

    セレス「もう一つの棒? ……ああ、あれはメカニカルブリッジですわね。レストとも言いますわ。どうしてもプレイしていると、届かなくて突けない位置に球が行ってしまう事があります。そんな時にキューを乗せて、球を突きやすいように補助する道具ですわ」

    山田「なるほど、そのようなものがあるのですな」

    朝日奈「でもさ、それってなんか卑怯くさくない?」

    セレス「ズルでもイカサマでも何でもありませんわ。ルールという定義上、認められた器具ですし。じゃんじゃん使って構いませんわよ。……尤も、届くのに使う、というのはいただけませんが」

    朝日奈「ふーん……あれ、これ何? これもビリヤードに使うの? シールみたいだけど」

    セレス「ああ、それはスポットシールですわね」

    朝日奈「スポットシール?」

    山田「何ですかな、それは?」

    セレス「ビリヤードで球の形状を整える際に、三角やダイヤの形をした木製の道具を見たことはありませんか?」

    山田「ああ、ありますな」

    セレス「あれはラックというのですが、ラックを使わずに球の位置を固定するためのシールなのです。球の初期配置の事もラックといいますわよ」

    山田「ほうほう、なるほど。やはりいろいろ用語もあるものですな。勉強になりますぞ」

    朝日奈「山田って勉強とか好きなんだ?」

    山田「そうですな、嫌いではないですぞ。“知らない事を知る”というのは創作の深みに直に影響しますからな。本来であれば、希望ヶ峰学園で各々の得意分野についていろいろ尋ねたりと勉強させてもらおうと思っていたのですが……」

    セレス「このような状況では、さすがにそれは叶いませんね。なんだかんだと言っても、警戒している人もいるでしょうし」

    山田「そう、ですな……」

    朝日奈「けど、私は別に構わないよ? まあ教えられることもあんまりないけどさ」

    山田「いえ、スポ根ものも一定の需要はありますし、勉強できる事は多いのです。よければ教えて欲しいですな」

    朝日奈「うん、いいよ。じゃあ今度また一緒に泳ごっか!」

    山田「うう、百聞は一見にしかず、と言いますが……たしかに実演はそれ以上の情報量でしょうしな。分からなくはないのですが……やはり運動は苦手ですなあ」

    朝日奈「大丈夫だよ、山田も全く泳げないってわけじゃないんだしさ!」

    山田「それはそうですが……」

    セレス「ついでにわたくしも、こういった手合いのゲームについてでしたら幾らでも教えられますわよ。尤も、初心者を脱したら“賭け”に昇華させていただきますが」

    山田「搾り取られそうッ!?」
  35. 35 : : 2015/01/27(火) 19:11:13
    セレス(そんなこんなでしばらくの間、ビリヤードのルールなどを教えながらゲームを楽しむことが出来ました)

    朝日奈「いやー、やってみると結構難しいね、これ」

    セレス「最初はキューの構え方などに慣れないのは仕方のない事です。ですがこういう物は得てして、慣れれば覚えるのはあっという間ですわよ」

    朝日奈「そういうものかあ」

    山田「ところで……」

    セレス「何でしょう?」

    山田「僕も普通に楽しんでましたが、セレスティア・ルーデンベルク殿……僕の事はお茶汲みで呼んでらっしゃいましたな……果たせてませんがよろしいので?」

    セレス(……そうえばそうでしたわ)

    セレス「よろしくありませんわね。さっさと用意なさい」

    山田「え!? 今!?」

    朝日奈「言わなきゃいいのに……」

    山田「そうでしたな」

    セレス「さっさとしろこの豚がァ!」

    山田「ぶひぃぃぃぃぃ! すみません! すぐに!」

    朝日奈「え、どこ行くの!? 山田!?」

    セレス「おそらく厨房でしょう。ここには機材もありませんから」

    朝日奈「あはは……山田も難儀してるね……」

    セレス「まあ、それが彼の立ち位置という事ですし。問題ありませんわ」

    朝日奈「えっと、うん。本人同士がいいなら、オッケーって事にしとくね」

    セレス「ええ、そうしておいてくださいませ」
  36. 36 : : 2015/01/27(火) 19:11:32
    セレス(しばらくすると、山田君が紅茶を人数分淹れて持って参りました)

    セレス「ご苦労様です」

    朝日奈「あ、私の分も淹れて来てくれたんだ。ありがと!」

    山田「いえ、それが僕の務めですから」

    セレス(キメ顔になるのが鬱陶しいですわね)

    セレス「ともあれ、頂きましょうか」

    山田「ええ、どうぞ」

    セレス(そうして三人でティータイムを楽しんでいると……ふと、ある事を思い出してしまいました)

    セレス「そういえば、今日はまだでしたわね。昨日と一昨日も、なんだかんだで出来ませんでしたし」

    朝日奈「ん? 何の話?」

    セレス「モノモノマシーンですわ。その日の運試しに、と思いまして、一日一度回すのをここ最近の日課にしておりましたの」

    朝日奈「へえ……でもそんなにモノクマメダル持ってるの?」

    セレス「ええ、いずれ皆さんでギャンブルをする際、レートに使えると思いまして。枚数はそれなりに確保しておりますわ」

    山田「さすがですな。……毟り取られそうで怖いですが」

    セレス「ふふ」

    朝日奈「その笑みがホントに怖いよ!」

    山田「と、とにかく。出た景品は誰かに伝える、という約束事でしたし、であれば今から三人で行ってみますか?」

    朝日奈「そうだね。実は私もさっき一枚見つけたから回したかったんだよね」

    セレス「あら、どこにありましたの?」

    朝日奈「え? いやー、それは……秘密かな!」

    セレス(誰の目にも明らかなほど、目が泳いでいるのですが……)

    セレス「まあ、いいでしょう。では行ってみましょうか。山田君、後片付けはお願い致しますね」

    山田「ラジャー! とはいえ、何を引くのか気になりますし。それだけ見てから片付けますぞ」

    朝日奈「うん、いいんじゃないかな」

    山田「ではでは、レッツゴー!」

    朝日奈「自分が回すわけでもないのに、テンション高いね!?」
  37. 37 : : 2015/01/27(火) 19:11:52
    山田「そして我々は人跡未踏の地、“購買”へと降り立ったのである!」

    セレス「人跡未踏じゃありませんし、降り立ったというわけでもなく、普通に入っただけなのですが」

    山田「ですがこういう表現をすると、気分盛り上がりません?」

    朝日奈「ワケわかんないだけだって」

    セレス「山田君の珍妙な言動は今に始まった物ではありませんし、律儀に反応せずとも良かったかもしれませんわね」

    山田「放置はやめて!」

    朝日奈「それじゃあ、さっそく回そっか、セレスちゃん!」

    セレス「そうですわね。お先にどうぞ、朝日奈さん」

    朝日奈「うん!」

    セレス(朝日奈さんがメダルをモノモノマシーンに入れ、回し……カプセルが出て参りました)

    山田「さてさて、中身は何でしょうかね?」

    朝日奈「開けてみるね……!」

    セレス(躊躇なくカプセルを開く朝日奈さん。さて、何が入っているのでしょうか)

    朝日奈「んっと……武神のお守りかあ」

    山田「鹿島大明神、と書かれておりますな。たしか武芸を司る神のはずですぞ。タケミカヅチと言った方が伝わりやすいかと思いますが」

    朝日奈「詳しいね!?」

    山田「神話は原初のファンタジーですからな。知っておくと創作に便利ですぞ?」

    朝日奈「ふーん……でもそういう事なら、さくらちゃんにでもあげようかな」

    山田「ええ、喜ばれる事でしょう」

    セレス「では、次はわたくしですわね」

    朝日奈「うん! 何が出るかな……」

    セレス(わたくしもメダルを一枚投入し、マシーンを回し……)

    セレス「では、開けますわよ」

    山田「やはりガチャガチャは浪漫ですな……何が出るか、毎回ドキドキします」

    セレス「あら」

    朝日奈「何? 何が出たの?」

    セレス「イン・ビトロ・ローズですわね。悪くないセンスですわ。部屋にでも飾っておきましょう」

    山田「試験管の中に一輪の薔薇ですか。たしかに、悪くない景品ですな。……というか、当たり外れの差が大きすぎません?」

    セレス「だからこそ運試しになるのですわ」

    山田「そういうものですか」

    セレス「さて、それではそろそろ食堂へでも戻りましょうか。山田君はしっかり、お茶の後片付けをお願いしますね」

    山田「分かっておりますとも」
  38. 38 : : 2015/01/27(火) 19:12:18
    セレス(食堂に戻り、適当に朝日奈さんと雑談――山田君も厨房での片付けが終わってから参加しましたが――をしていると、桑田君、舞園さん、大神さんの三人が戻って参りました)

    桑田「お、戻ってたんだな」

    セレス「ええ。なかなかに有意義な時間でしたわ」

    朝日奈「うん、結構楽しかったよ、ビリヤード!」

    舞園「そういえばありましたね、娯楽室にビリヤード」

    山田「セレスティア・ルーデンベルク殿にルールを教わりながらでしたがね」

    桑田「ふーん……まあ楽しかったんなら何よりだな。オレらはオレらで結構話し合い、楽しかったしよ」

    大神「そうだな。それほど食についての話が好きという訳でもないのだが……昨晩も今日も、盛り上がってしまった」

    セレス「おそらく、このような状況だからでしょうね。命のやり取りを要求された空間だからこそ、生命維持に必須の“食事”という物が心の癒しになっているのでしょう」

    舞園「そういう考え方も出来ますね。けどそれなら、いっそみんなでずっとご飯の話でもしていれば平和な毎日になりますかね?」

    セレス「それを良しとしない者もいる、というのが難しい所ですが」

    山田「十神白夜殿の事ですな……」

    桑田「アイツの事は……苗木に何とかしてもらうしかねえんじゃねえか?」

    苗木「えっと、呼んだ?」

    桑田「うお、苗木!?」

    大神「十神はどうしたのだ?」

    苗木「あ、うん。部屋に戻っちゃったからさ。さすがに部屋の仲間では入れてくれないし」

    朝日奈「そっか……」

    舞園「やっぱり十神君の事も、早い段階でどうにかしたいですね」

    大神「不安要素は出来るだけ取り除いておきたいからな」

    朝日奈「うーん、でも十神と上手くやっていける気はあんまりしないんだよね」

    苗木「ちょっとずつ、彼が心を開いてくれるのを待つしかないんじゃないかな、やっぱり」

    桑田「それで手遅れにならねーように、苗木が見張ってるってわけだしな……」

    苗木「うん。あらかじめ十神クンには“ボクが十神クンと一緒にいる事はみんなも知ってる”って事、伝えてあるからね。ボクが殺される心配もあまりないし」

    セレス(そのように十神君について話をしていると……)

    大和丸「だから、譲れねえっつってんだろーが!」

    苗木「な、何!?」

    桑田「大和丸の声……だよな?」

    大神「行ってみるぞ……!」

    セレス「……ふう、致し方ありませんわね」

    山田「え、セレスティア・ルーデンベルク殿も行かれるので?」

    セレス「ええ」

    セレス(今の叫びは、彼にしては頑張った方だと思いますが……どことなく“そういう香り”を感じましたので、わたくしも向かった方がいいでしょう)
  39. 39 : : 2015/01/27(火) 19:12:43
    セレス(声のした場所……即ち、脱衣所に食堂にいた全員が集まると、そこでは言い合いをしている大和丸君と霧切さん、それを諌めようと右往左往している不二咲君、といったような風に見える構図が成り立っておりました)

    霧切「あら、みんな来たのね」

    大和丸「じょ、じょーとーだァ! 都合がいいぜ!」

    舞園「と、とにかく、何があったのか教えていただけますか?」

    不二咲「えっと……ここの所、お風呂に入れてなかったでしょ? だから、今日は男子と女子のどっちが先に入るかで揉めちゃってて……」

    セレス(……なるほど)

    朝日奈「どうしよう、思ってた以上にしょうもなかったよ!」

    セレス「そういう建前はいいですわ」

    大神「む? 建前とはどういう意味だ?」

    セレス「大和丸君からは本気で“言い争っている”という語調を感じません。どうせ、そういう建前の叫び声を使って、モノクマに訝しまれないようわたくし達をこの場に呼んだ、という事でしょう?」

    霧切「……ふう、さすがセレスさんね。その通りよ」

    大和丸「ちっ、だからオレにゃそういうのは向かねえって言ったんだよ」

    不二咲「やっぱりわざとらしかったかなぁ?」

    山田「なるほど……それは分かりましたが、では用件はいったい?」

    大和丸「それは……不二咲から話すべきだろうな」

    不二咲「う、うん。えっとね、物理室と物理準備室にあった物をいろいろ使って、アルターエゴに音声認識機能を追加できたんだ。だからそれをみんなに伝えておこうと思って」

    霧切「ただ、アルターエゴの作業がまだ終わったわけではないわ。無暗に話しかけるのは作業を一時中断する事にもなるし、時間を取るばかりだから謹んで頂戴」

    山田「分かりましたぞ……」

    舞園「それに、アルターエゴ目的でここに入り浸っていては黒幕に彼の存在を感付かれてしまう事にも繋がるかもしれませんしね」

    霧切「そうね。その事からも、やっぱりアルターエゴへの接触は極力控えて。いいわね?」

    大和丸「わーってるよ。兄弟はオレのハートに生きてんだ。頼るまでもねえ」

    霧切「そう。それならいいけれど。他のみんなも十分気を付けて頂戴ね。それじゃあ……」

    舞園「食堂に戻りますか?」

    霧切「いえ、お風呂の順番を決めましょう」

    苗木「え!? フリだったんだよね?」

    霧切「そうだけれど、実際に順番を決めておかないと結局無意味じゃない」

    朝日奈「それもそっか」

    大和丸「そんじゃ、男子からでいいよな」

    朝日奈「おっと、またじゃんけんかな?」

    苗木「いや、それ前回と同じ結果になる気がするんだけど」

    桑田「ま、どっちでもいいけどよ。オレらは先食堂戻ってんぞ?」

    舞園「そうですね。晩御飯の準備もしないといけませんし」

    大神「それでは我らは一足先に出ておこう」

    セレス(そう宣言し、桑田君達三人は脱衣所から出て行きました)

    大和丸「言っとくが、今回はマジに譲るつもりねえぜ。不二咲もようやく、みんなで風呂に入れるようになったんだしな」

    不二咲「大和丸君……」

    山田「そういえばそうですな」

    朝日奈「うーん、それを持ち出されると……まあ仕方ないか」

    セレス「ふう、分かりましたわ。それでよしとしておきましょう」

    霧切「……あっさり決まってしまったわね」

    苗木「まあ紛糾するよりはよっぽどいいんじゃない?」

    霧切「それもそうね」

    セレス「それでは戻りましょうか」
  40. 40 : : 2015/01/27(火) 19:13:21
    セレス(わたくし達が食堂に戻ってきた気配を察してか、桑田君が厨房から出てきました)

    桑田「ん、戻ってくんのはええな。まだ準備終わってねえぞ?」

    大和丸「おう、男子が先に決まったぜ。晩飯終わったらオメェも風呂の準備しとけよ、桑田」

    桑田「りょーかいっと」

    セレス(それだけ確認して桑田君は厨房へと戻って行きましたわね)

    大和丸「で、これからメシできるまでどうすんよ?」

    苗木「適当に雑談でもしておけばいいんじゃないかな?」

    朝日奈「んー……けど話題も特にないんだよねえ」

    セレス「では一つ、ゲームでも如何ですか?」

    苗木「ゲーム? どんなの?」

    セレス「内容はとてもシンプルですわ。今、わたくしの服の内ポケットには“ある物”が入っています。それが何なのかを皆さんで当ててください。夕食が出来上がるまでの間に皆さんが特定できなかった場合はわたくしの勝ち、特定できた場合は皆さんの勝ちです」

    山田「いやいや、ノーヒントはきついんですが!?」

    セレス「そうですわね。では、一人につき一つだけ、質問を許可します。それについてわたくしは、必ず正しい返事をする事を約束いたしましょう。最終的には解答をお見せ致しますので、嘘かどうかはその時点で確認可能としておけば安心でしょうか」

    霧切「一人につき一つ、ね。面白そうじゃない、私は乗ったわ」

    大和丸「ま、暇だしな。何か賭けようって話でもねえんだろ? だったら付き合ってやんよ」

    苗木「うん、ボクも参加するよ」

    朝日奈「私も賛成かな」

    山田「話題が無いのも事実ですしな。いいですぞ」

    不二咲「うーん、僕も参加するけど……その前に一つルールを確認していいかな?」

    セレス「何でしょう?」

    不二咲「質問は一人につき一つまで、って事だけど、回答は何回まで、って制限が無いって事でいいのかな?」

    セレス「ええ、その認識で構いませんわ。他に何もなければ開始しましょうか」

    大和丸「つってもな……どう質問したもんか悩むぜ」
  41. 41 : : 2015/01/27(火) 19:14:53
    苗木「……じゃあまずはボクから」

    セレス「どうぞ」

    苗木「セレスさんの服の内ポケットって事だったけど、そのポケットはどのくらいのサイズの物まで入るの?」

    セレス「あら、最初の質問としてはなかなかいいところを突きますわね。文庫本がぴったり入る程度のサイズです」

    苗木「思ってたより大きいんだね……」

    セレス「まあ文庫本を入れるわけではありませんけれど」

    山田「ギャンブルのイカサマにでも使ってそうな気がひしひしとしますぞ……」

    セレス「何を仰います、山田君」

    山田「え」

    セレス「使わないわけがないでしょう」

    山田「ですよねえ……」

    セレス「さて、ポケットの使い道については別にいいでしょう。今の所質問は苗木君からの一つのみです。さて、次は誰が質問致しますか?」

    大和丸「じゃあオレだ」

    セレス「はい、どうぞ」

    大和丸「それは普段オレらも使うモンか?」

    セレス「ふむ、難しい質問ですわね。確実に、とは参りませんがおそらく、この場にいる皆さんも一度は使用した事のある物だと思いますわよ」

    大和丸「なるほどな。日常的に使うモンではねえって事か」

    セレス「それは二つ目の質問扱いになってしまうので返答は出来ませんわね」

    大和丸「あ? ああ、別にいいぜ、独り言と変わんねえしよ」

    朝日奈「うーん、文庫本サイズで、全員一回は使った事のある物かあ……」

    不二咲「ん? あれ」

    山田「どうかしましたかな?」

    霧切「気になる事があるなら質問してみるといいわよ」

    不二咲「う、うん。じゃあ次は僕が質問するね」

    セレス「はい」

    不二咲「セレスさんの内ポケットは文庫本サイズ“まで”入るって事だったけど、今ポケットに入っている物も文庫本サイズの大きさがあるの?」

    セレス「なるほど。それについては“NO”ですね。文庫本サイズよりも小さいですわ」

    朝日奈「なるほど、文庫本サイズじゃなくて“文庫本サイズ以下”なんだね」

    山田「むむう、絞れてきたようでまだまだ情報が足りていませんな」

    朝日奈「あ! そうだ! じゃあ次私!」

    セレス「ええ、分かりましたわ」

    朝日奈「それはギャンブルに使う道具?」

    セレス「……ふむ」

    大和丸「これがYESなら相当絞られそうだな」

    セレス「そうですわね……わたくしにとっては“YES”なのですが、皆さんもそう捉えているのかは分かりませんわ。おそらくそう捉えている人は少ないのではないでしょうか」

    大和丸「はあ? 余計わかんねえな……」
  42. 42 : : 2015/01/27(火) 19:15:11
    霧切「……現状を纏めてみましょう。セレスさんの内ポケットは文庫本サイズまで収容可能。でも今ポケットに入れている物は文庫本サイズより小さい。また、私達も一度は使った事のある可能性が高い物で、ギャンブルに使うかどうかは人それぞれ。そういう事になるわね」

    山田「うーん、難しいですな……。残りの質問可能な人間は霧切響子殿と僕だけですし、残り二回の質問でどうこうなる物でしょうか」

    霧切「……そうね。私はもう少し質問の内容を考えさせてもらうわ」

    苗木「うーん、一回試しに回答してみていいかな?」

    セレス「ええ、構いませんわよ」

    苗木「じゃあ言うよ。トランプ?」

    セレス「いいえ、違いますわ」

    不二咲「さすがにそんなに簡単じゃないかあ」

    大和丸「たしかに、トランプはギャンブルにも使うけどな……」

    朝日奈「賭け無しで普通に遊ぶことも多いって意味では条件も満たしてるんだけどね」

    山田「む、一つ質問を思いつきましたぞ」

    セレス「ふむ、仰ってみてくださいな」

    山田「セレスティア・ルーデンベルク殿はそれを使って実際にギャンブルをした事がある、という解釈で間違っておりませんかな?」

    セレス「それは間違っていますわ。残念ながら、まだこれをギャンブルに使った事はございませんの」

    山田「……あれ?」

    大和丸「何だあ? ギャンブルに使う物なのに、“超高校級のギャンブラー”のオメェが使ったことねえのかよ」

    セレス「ふふ、残る質問は霧切さんの一回のみです。どうなさいますか?」

    霧切「……ふう、決め手になるかは分からないけれど、仕方ないわ。これを質問しましょう」

    苗木「何かいい質問があるの?」

    セレス「楽しみですわね。どうぞ?」

    霧切「……それの形状は?」

    大和丸「お!」

    山田「たしかに、それが分かれば答えにグッと近付く気がしますな!」

    セレス「なるほど、さすがは霧切さんですね。ではお答えしましょう。円柱です」

    朝日奈「え、円柱?」

    山田「円柱形でギャンブルに使う物って何ですかな……?」

    大和丸「オレらも使った事あるって事は、少なくとも“知らねえ物じゃねえ”んだよな。……駄目だ、サッパリ分からねえ!」

    霧切「ギャンブルに使うかは人それぞれ、という事は……“使い方にバリエーションがある”物……って事になると思うのだけれど」

    苗木「うーん……」
  43. 43 : : 2015/01/27(火) 19:16:40
    というわけで、唐突にクイズでもしかけてみましょう。
    ズバリ答えは何でしょう!
    解答は次の更新で!
  44. 44 : : 2015/01/27(火) 21:07:00
    なんだろう…マッチとか爪楊枝とかしか思いつかない…
  45. 45 : : 2015/01/27(火) 21:10:58
    コインじゃない?
  46. 46 : : 2015/01/29(木) 00:24:49
    >>45
    惜しい!

    ◆◆◆

    朝日奈「……ああ! 分かったかも!」

    大和丸「マジか!?」

    山田「何ですかな?」

    セレス「ふむ、ではお答えください」

    朝日奈「ズバリ! “モノクマメダル”!」

    苗木「え?」

    セレス「あら、正解が出てしまいましたね」

    大和丸「はあ!?」

    霧切「メダル……言われてみれば、たしかに円柱と言えなくもないわね……とても平べったいけれど」

    大和丸「オレも使った事あんな……」

    不二咲「けど、ギャンブルに使うっていうのは?」

    朝日奈「今日セレスちゃんがこんな事言ってたんだ」


    セレス「そういえば、今日はまだでしたわね。昨日と一昨日も、なんだかんだで出来ませんでしたし」

    朝日奈「ん? 何の話?」

    セレス「モノモノマシーンですわ。その日の運試しに、と思いまして、一日一度回すのをここ最近の日課にしておりましたの」

    朝日奈「へえ……でもそんなにモノクマメダル持ってるの?」

    セレス「ええ、いずれ皆さんでギャンブルをする際、レートに使えると思いまして。枚数はそれなりに確保しておりますわ」


    霧切「なるほどね。“メダルとして使用した事はあっても、ギャンブルのチップとして使用した事はまだない”……そういう意味だったの」

    セレス「その通りですわ。どうです? 今度メダルを賭けて何かゲームでも」

    苗木「いや……遠慮しとくよ。すっからかんになる未来しか見えないし……」


    セレス(そうしてゲームを終え、和気藹々と話をしているところで夕食の準備が終わり、皆さんで食事を頂き……食後の時間)

    大和丸「よーし、テメェら風呂行くぞー」

    桑田「おう、じゃあ準備してくるわ」

    山田「脱衣所に集合ですな!」

    不二咲「すぐ行くねぇ」

    苗木「じゃあボクも準備に戻ろうかな」

    セレス(そう言って男子の皆さんが食堂から出て行った……と思ったのですが、すぐに桑田君が戻って参りました)

    舞園「桑田君? どうしました?」

    桑田「いや、一つ言い忘れてた事あってな。男子には風呂ん中で言えばいいけど、女子には今の内に言っとくわ。今日の掃除当番オレだし、風呂上がったらゴミ纏めて捨てに行くからよ。オレらが風呂入ってる間にでも女子のゴミひとまとめにしといてくれると助かる」

    霧切「ああ、そうだったわね」

    舞園「というか、今までそんな風に処理してましたっけ?」

    セレス「むしろ今までの当番が随分と適当だったのでは、と思いますが」

    大神「これからは正していけばいい話だ。桑田よ、話は承知したぞ」

    朝日奈「それじゃあ一回部屋に戻ってゴミを纏めてから、もっかい食堂に集合って感じでいいかな?」

    霧切「いいと思うわよ。じゃあ一度部屋に戻るわね」

    桑田「おう。そんじゃあ今度こそ風呂行ってくるわ」

    舞園「はい、分かりました」

    セレス(ふう、面倒ですが仕方ありませんわね。行くとしましょうか)
  47. 47 : : 2015/01/29(木) 00:25:05
    セレス(自室のゴミを纏めてゴミ袋に入れ、持って出たところで……)

    舞園「あ、セレスさん。ゴミはこちらにお願いします」

    セレス「あら、舞園さんは随分と大きなゴミ袋ですわね?」

    舞園「ち、違いますよ! 女子全員のゴミをこの袋の中に一纏めにしておけば回収も便利かと思いまして」

    セレス「ああ、なるほど」

    セレス(そういう事ならば、このゴミ袋も舞園さんの持つ大きなゴミ袋に入れておきましょう)

    舞園「はい、っと。これで全員分ですね」

    セレス「そうなのですか。ではこれはどうしますか?」

    舞園「私が預かっておきますよ。あとで桑田君に渡せばいい話ですし」

    セレス「ふむ、まあいいでしょう」

    舞園「では、そういう事で」

    セレス(私の言葉を受け、舞園さんは自分の部屋にゴミ袋を置きに戻り……と言っても置くだけですし、すぐに出てきましたわね)

    セレス「では食堂に戻りましょうか」

    舞園「はい」
  48. 48 : : 2015/01/29(木) 00:25:22
    大神「さて、しばし時間が空いてしまったな。誰か、何か話す事でもあるか?」

    舞園「うーん、私は特にないですかね」

    朝日奈「私も……あ、そうだ」

    霧切「何かあったの?」

    朝日奈「いや、あったっていうか……さくらちゃん」

    大神「我か?」

    朝日奈「うん、これ。さっきモノモノマシーンで出てきたんだ。さくらちゃんにあげるね!」

    大神「む? ……こ、これは! このような貴重な物を貰ってしまっても良いのか?」

    舞園「何ですか、それ?」

    朝日奈「武神のお守り、だって。えーっと、山田にいろいろ教えてもらったけど、詳しい事は忘れちゃったんだよね」

    セレス「たしかタケミカヅチがどうとか言っていましたわね」

    霧切「ふうん、まあたしかに大神さんにはピッタリじゃないかしら」

    大神「大切にしよう。感謝するぞ、朝日奈よ」

    朝日奈「たまたまモノモノマシーンで出てきただけだから、そんなに喜ばれると思ってなかったけど……うん、嬉しいよ!」

    舞園「……こうやって皆さんで友情を育んでいければ、きっとみんなで脱出できますよね?」

    霧切「そうね。そう信じたいところだわ」
  49. 49 : : 2015/01/29(木) 00:25:34
    セレス(女子五人で和やかに談笑していると、男子がお風呂から上がって参りました)

    桑田「上がったぜー。ゴミはどうしてる?」

    舞園「あ、私が預かってます。……皆さん、先に入っていて下さい。あとから行きます」

    霧切「分かったわ」

    大神「任せてしまってすまぬな」

    朝日奈「それじゃあ先行ってるね!」

    セレス「お待ちしておりますわ、舞園さん」

    霧切「じゃあ行きましょうか」
  50. 50 : : 2015/01/29(木) 00:27:57
    朝日奈「いやー、やっぱりここのお風呂は広くていいよねー」

    霧切「……もう泳がないでよ?」

    朝日奈「あはは、分かってるって」

    大神「大浴場が解放された初日は朝日奈を抑えるのに苦労したからな」

    セレス「あの時は大変でしたわね」

    セレス(入るなり湯船で泳ごうとなさっていましたからね……)

    霧切「それじゃあ、体を洗ってしまいましょう」

    セレス「そういえば霧切さん、お風呂でも手袋を外されませんが、その下も洗った方がよいのでは?」

    霧切「前にも言ったけれど、人前では外したくないのよ。……自室では洗っているから問題ないわ」

    セレス「そうですか。ならばよろしいのですが」

    舞園「すみません、遅れまして」

    朝日奈「あ、舞園ちゃん来たね!」

    セレス(袋を渡すだけにしては少し時間がかかったように思いますが……そのような事を気にしつつも体を洗い終え、皆さんで湯船に浸かる事になりました)

    セレス「それで、舞園さん。渡すだけにしては少々時間がかかったように思うのですが、何かあったのですか?」

    舞園「ああ、実は桑田君とトラッシュルームまで一緒に行っていたもので」

    セレス「ふむ。渡すだけ渡してしまえばよろしかったのでは?」

    舞園「それもそうなんですが……やっぱりホラ、男子に完全に任せてしまうのはどうかと思いまして」

    霧切「一理あるわね」

    朝日奈「男子が当番の時は女子の誰かがゴミ捨てについて行く、って決まりを作った方が安心かも?」

    大神「では我が請け負おう」

    舞園「そんな、毎回大神さんに、というのはさすがに悪いですよ!」

    朝日奈「そうだよ! これもローテーション組んでおいた方がいいんじゃないかな」

    大神「ふむ、そうか……」

    霧切「ローテーション、というより……前日に決めておけばいい話だと思うわ。明日は大和丸君の当番だし、今の内に話し合っておきましょう」

    大神「まず舞園は除外していいだろう。今日任せたことになるのだからな」

    舞園「え、いいんですか?」

    霧切「ええ、私も異論はないわ」

    セレス「とすると、残りの四人から決めるわけですか」

    朝日奈「うーん、これで時間取るのもなんだしね。私が行くよ」

    霧切「分かったわ、じゃあお任せするわね、朝日奈さん」

    大神「大和丸はなんだかんだと言って分別の付いている男だ。問題は無いであろうしな」

    セレス「ではお任せしますね、朝日奈さん」

    朝日奈「うん、任せてよ! ……って言ってもゴミ捨てに行くだけなんだけどね」

    セレス(その後は他愛のない話を交わしながら……適度に体が温まったところでお風呂からあがり、自室へと戻りました。そして例の“日課”を済ませ……眠りに就いたのです)
  51. 51 : : 2015/01/29(木) 20:22:43
    セレス「皆さん、御機嫌よう」

    大和丸「まァたオメェが最後かセレスゥ!」

    セレス(朝。いつも通りに食堂へと足を運ぶなり、大和丸君の不条理な怒声を浴びせられました)

    セレス「最後ではありませんわ。十神君が来ておりません」

    大和丸「アイツが来ねえのは分かり切ってんだろうが……」

    苗木「というか、朝のモノクマアナウンスが流れてから三十分くらい経ってるよね、いつも……」

    セレス「わたくし、そもそもそれを信じていませんの」

    苗木「それって?」

    セレス「夜時間を告げるモノクマアナウンスは毎日聞いておりますが……朝になった事を告げるモノクマアナウンスなど聞いたことがありませんもの。都市伝説の類だと思っているのですが」

    朝日奈「え、アナウンス聞いてないの!?」

    桑田「よく寝れるな、そんなによ……」

    大和丸「そういやたしかに……前回の死体発見アナウンスの時も、寝てたのを叩き起こした覚えあるな……」

    モノクマ「ホントに、彼女のマイペースさにはボクもうんざりですよ」

    苗木「うわぁッ!?」

    大神「モノクマ……!?」

    舞園「何しに来たんですか!」

    モノクマ「うん、ちょっとお話があってね」

    朝日奈「話って……何さ」

    モノクマ「いやいや、まだ話すわけにはいかないよ。だって十神クンがいないしね! 誰かサクッと呼んできてよ」

    大和丸「また放送すりゃいい話じゃねえか」

    モノクマ「ボクもそうしたいのは山々だけどね。十神クンが孤立してばっかじゃこっちとしても面白くないし。オマエラに呼びに行かせた方が輪が広がっていいでしょ?」

    桑田「しゃーねえな……じゃあ苗木」

    モノクマ「おっと、苗木クンは今回は無しね! 他の誰かが行ってちょーだい!」

    苗木「な、なんで?」

    モノクマ「だって十神クンと関わってるの、ほぼ苗木クンだけじゃない。それじゃ呼びに行かせる意味ないしね」

    霧切「どういう風の吹き回しか分からないけれど……」

    朝日奈「じゃあ誰が呼びに行くの?」

    桑田「オレは嫌だぜ」

    大和丸「オレもだ」

    朝日奈「私もパスね」

    モノクマ「ありゃりゃ、嫌われちゃってるなあ。じゃあこっちで選んじゃうよ。それじゃあ……セレスさん、行ってらっしゃい!」

    セレス「嫌ですわ」

    モノクマ「はう! そんなきっぱり断らなくてもいいじゃない……!」

    セレス「だって嫌なものは嫌ですもの。お使いだなんて、わたくしのキャラではありませんわ。むしろわたくしは“使う方”です」

    モノクマ「むむう、けどこれは学園長命令なのだ! ほら、さっさと行くの!」

    霧切「……癪だけれど、従った方がいいわよ、セレスさん。校則に“学園長命令は絶対遵守”なんて追加されたら面倒なだけだし」

    セレス「……仕方ありませんわね」

    セレス(面倒ですけど、呼びに行きましょう)
  52. 52 : : 2015/01/29(木) 20:22:59
    セレス(十神君の部屋のチャイムを押すと、すぐに扉が開きました)

    十神「……セレス? 苗木じゃないのか」

    セレス「あら、存外彼の事はお気に入りなのですね」

    十神「黙れ、そういう事じゃない。最近散々付きまとって来るからな。あいつだろうと予想していただけだ」

    セレス「では予想が外れて残念でした、といったところでしょうか」

    十神「ちっ、お前は俺をからかいにでも来たのか?」

    セレス「いいえ、貴方を呼びに参りましたの」

    十神「呼ぶ? 俺を? どこに、何の目的でだ」

    セレス「食堂にですわ。モノクマが貴方を呼んで来いと言って聞かなかったのです」

    十神「モノクマがだと?」

    セレス「ええ。何やら話があるとか。全員揃ってから何かを言うそうです」

    十神「フ、なるほどな。大方例の動機でも発表しに来たんだろう。或いは前回のように、動機を配る準備でも知らせに来たのか……」

    セレス「そんなところでしょうね。それで、来て下さりますわよね?」

    十神「ああ、いいだろう」
  53. 53 : : 2015/01/29(木) 20:23:18
    モノクマ「お、ちゃんと十神クン連れて来てくれたね!」

    セレス「貴方が連れて来いと言ったのでしょう」

    十神「それで、わざわざ呼びつけて、何の話だ?」

    モノクマ「うん、やっぱりオマエラにはちゃんとこっちから“動機”を与えてあげないと殺し合ってくれそうにないみたいだからさ……再び用意してみました!」

    朝日奈「またあんな事起こすつもりなの!?」

    モノクマ「当然だよ! という訳で……」

    不二咲「う、うぅ……今度は、何……?」

    モノクマ「今後、殺人が起きてクロが卒業した場合……景品として、“何でも好きな物”をプレゼントするよ!」

    セレス「……!」

    セレス(なるほど、わたくしの心を動かしに来た、といったところでしょうか。ですけど、これは裏を返せば黒幕には“莫大な資産”があるという想像の裏付けにもなりますわね)

    桑田「なんでも……欲しいもの……?」

    モノクマ「あ、勿論“気になるあのコのハート”とかそういうのはナシね! お金で買える物に限るよ!」

    霧切「随分太っ腹じゃない。けど、そんな物で殺人が起きるわけないじゃない」

    十神「そうだな。欲しいものがあれば自分で買う。わざわざお前如きに頼るまでもない」

    セレス「そうですね。わたくしもギャンブルで数十億は稼いでいますし。別に必要ないですわ」

    桑田「そ、そうだよな……そんなモンより、仲間の命の方が大事だって話だしな! ちょっと心揺れちまったけど!」

    舞園「正直ですね……」

    大和丸「ま、そういうこった。そんな動機で殺人が起こるほど、生き残ったオレらの絆はヤワじゃねえって話だよ」

    モノクマ「そんなあ……!」

    大神「諦めよ。それで我らをどうこうできるなどとは思わぬことだ」

    モノクマ「うーん、結構いいアイディアだと思ったんだけどなあ。あ、この場合の物はお金そのものも含んでいいからね?」

    山田「別にお金を含んだからってどうにもなりませんがな」

    モノクマ「残念だよ……じゃあまた何か新しい動機考えないとなあ。……あ、そうそう。でも一応、今回のこのお話も失効はしてないからね? 卒業できたクロにはちゃんとプレゼントしますからね! それじゃあまったねー!」

    セレス(未練がましくそれだけいい残し、モノクマはどこかへと行ってしまいました。尤も、未練がましいのは口調だけで、この場ではああ言ったわたくしが行動に移すと考えているのでしょうけれど。甘いですわね)

    霧切「けど、物で釣ろうなんて考えに至る辺り、黒幕は早くもネタ切れかしらね」

    苗木「それならいいんだけど……」

    十神「フン、いつにもましてくだらん茶番だったな。俺はもう行くぞ」

    苗木「ねえ、十神クン。十神クンもたまにはみんなで朝御飯……」

    十神「寝言は寝て言え、とはよく言ったものだな。俺は不参加だ」

    苗木「あ、ちょっと!」

    桑田「別にいいじゃねえか。いらねえならいらねえでよ」

    大和丸「つか、そういやアイツ、飯はいつもどうしてんだ? 朝飯も晩飯も食堂には来ねえけどよ」

    苗木「ああ、それは倉庫から適当に見繕って食べてるみたいだよ」

    大和丸「……はあん」

    舞園「ともかく、朝御飯にしましょう! ね!」

    霧切「そうね。じゃあ頂きましょう」
  54. 54 : : 2015/01/29(木) 20:23:47
    大和丸「ふー、やっぱこういうのだよな」

    山田「ですなあ、普通の朝食が美味しかったですぞ」

    舞園「うーん、もっと独創的な物を作ってみたいんですけどね」

    苗木「独創的は……ちょっとやめて欲しいかな……」

    大和丸「さて、そんじゃあ今日もグループ分けすっか」

    苗木「あ、じゃあボクは十神クンの所へ行くね」

    桑田「おう、何もねえとは思うけどよ、気を付けろよ? あつが気にするとは思えねえけど、新しい動機も提示されたのは気になるっちゃ気になるしな」

    苗木「うん、みんなも……たぶん大丈夫だろうけど。十分気を付けてね。またモノクマが何か仕掛けてこないとも限らないしさ」

    舞園「では今日のメンバーを決めましょうか」

    桑田「んじゃあ……」

    セレス「桑田君、今日は娯楽室で一緒に遊びませんか?」

    桑田「は? なんでオレ?」

    セレス「“超高校級の野球選手”ということはコントロールはよろしい方かと思いまして。一緒にダーツでも、と思いましたの」

    桑田「ダーツか……いいじゃんいいじゃん、なんかクールでオレのイメージにピッタリって感じ?」

    朝日奈「ピッタリ当てはまらない感じだね」

    桑田「何だよそれ!?」

    セレス「他にどなたかいらっしゃいますか?」

    不二咲「うーん、じゃあ僕も行こうかな」

    セレス「不二咲君ですか。構いませんよ」

    朝日奈「私は……昨日約束したしね。山田、プール行くよ!」

    山田「へ!? ホントに行くんですかな!?」

    朝日奈「嘘は言わないよ。という訳で山田はプール決定ね!」

    山田「まあ、いいでしょう……」

    大和丸「プールか……オレも行くかな。つってもトレーニング機器の方使うだけだけどよ」

    朝日奈「えー、どうせ来るなら大和丸も泳ごうよ」

    大和丸「気が向いたらそっちにも行ってやんよ」

    朝日奈「うんうん、そう来なくっちゃね!」

    霧切「それじゃあ舞園さんと大神さんは私と一緒に探索でいいかしら?」

    大神「我は構わんぞ」

    舞園「はい、私も問題はありません」

    大和丸「今日も三グループだな。とりあえず解散だ。それぞれ適当に戻ってこいよ」

    セレス(大和丸君のその号令でわたくし達以外の六名は行ってしまいました)
  55. 55 : : 2015/01/29(木) 20:24:07
    桑田「そんじゃ、オレ達も行くか」

    セレス「いえ、少しお待ちください」

    不二咲「何かあるのぉ?」

    セレス「ええ、娯楽室へ向かう前に購買部へ寄って行きましょう。先にモノモノマシーンを回しておきますわ」

    桑田「ん、いいぜ」

    不二咲「そういえば僕も一枚メダル持ってるし、ついでに回そうかな」

    桑田「オレは……メダルはあるけど別にいいや。いい思い出ねーしな」

    セレス「ふむ。あれから桑田君は一度も回しておられないので?」

    桑田「ああ。回してねえ。なんつーか、避けちまってるんだな」

    不二咲「で、でも、結構面白いものも出てくるんだよ?」

    桑田「たとえばどんなのだ?」

    不二咲「……だ、ダンブルウィードとか」

    セレス「……いらない物筆頭ではないですか」

    不二咲「だ、だよね……僕も出て来た時いらないな、って思っちゃった」

    桑田「何だよ、そのだんぶる何とかってのは?」

    セレス「西部劇などでよく後ろで転がってる丸い草の塊みたいなアレですわ」

    桑田「ああ、理解したぜ。たしかにいらねえわ……」

    セレス「毎回危険物が出るという訳でもありませんし、試してみては?」

    桑田「ん……」

    セレス「ずっと避け続ける、という訳にも行かないでしょうし」

    セレス(まあ避け続けようと思えば避け続けられる物ではありますけど)

    桑田「それもそだな……分かった、じゃあオレも回してみるわ」

    不二咲「じゃあ桑田君からどうぞ!」

    桑田「ん、サンキュ。何が出るかな……」

    セレス(そう呟きながら桑田君は出てきたカプセルを開き……)

    桑田「……何だこれ」

    不二咲「懐中電灯……のストラップかな?」

    桑田「スモールライト……マッチ箱サイズの懐中電灯ってだけみてーだ」

    不二咲「え、えっと……持ち歩いてれば、使う時が来る……かも?」

    セレス「懐中電灯といえば欲しい時に限って手元にない物ですし、便利グッズといえば便利グッズだと思いますわよ」

    桑田「そ、そうだな……。まあ一応持っとくか」

    セレス「ではお次は不二咲君、どうぞ」

    不二咲「う、うん。じゃあ回してみるね。……えいっ」

    セレス(不二咲君は何を引き当てたんでしょうか?)

    不二咲「えっと……ええ!?」

    桑田「じゅ、じゅじゅじゅ、銃!?」

    セレス「落ち着いてください。モデルガンか何かなのでは?」

    不二咲「え、えっと……説明文によると黄金銃、だって。部品が足りなくて発射機構が上手く作動しない、だって」

    セレス「つまり壊れている、という事ですわね」

    桑田「でもよ、不二咲はそういうの強そうだし……直せちまったりするんじゃねえのか?」

    不二咲「ううん、僕はあくまでプログラマーだからね……PCはいろいろ触るから、その周辺機器の構築くらいは出来ても、僕が出来るのはそこまでだよ。銃の機構とかは全く知らないし、無理だよ」

    桑田「ふーん……」

    セレス「まあ、どの道例の残鉄剣と同じようなガッカリアイテム、という事ですわね」

    桑田「思い出させんなよ……」

    セレス「ふふ、ごめんなさいませ」

    不二咲「それより、次はセレスさんだよ! 何が出るのかな?」

    セレス「そうですわね。今日一日の運試し、やってみましょうか」

    桑田「カプセル出て来たな。さて、こっからだ」

    セレス「……薔薇の鞭ですわね」

    不二咲「む、鞭!?」

    桑田「そんなもんまで入ってんのか……」

    セレス「困りましたわ、ダブってしまいましたわね」

    桑田「しかも二回目かよ!」

    セレス「いりますか?」

    桑田「いや、いらねえけど」

    不二咲「僕も別に……」

    セレス「そうですか。なら保管するだけしておきましょう」

    桑田「ああ。それでいいと思うぜ」

    セレス「さて、それではそろそろ娯楽室に向かいましょうか」

    不二咲「うん!」
  56. 56 : : 2015/01/29(木) 20:24:25
    桑田「で、ダーツって話だったよな」

    セレス「ええ。ですが先に確認しておきます。ルールはご存知ですか?」

    桑田「ん? 真ん中に矢を当てりゃいいんだろ? 余裕余裕!」

    セレス「たしかにボードの中心……即ち“ブル”に当てる事が出来れば高得点である事に違いは無いのですが……それがすべてではありません」

    不二咲「というと?」

    セレス「ダーツと一口に言いましても、ゲームの種類はいくつかある、という事ですわ。トランプでも、ポーカーやブラックジャックなど様々な種類の遊び方があるでしょう? それと同じ事です」

    桑田「ふーん、例えばどんなのがあるんだ?」

    セレス「そうですわね。二つほど紹介しましょう。まず一番分かりやすい物は“カウントアップ”ですわ」

    不二咲「カウントアップ……そのままの意味で捉えるなら、得点を加算する、って感じかな?」

    セレス「まさにその通りです。一投ごとの得点をどんどん加算していって、八ラウンドの合計点を競い合うゲームです」

    桑田「八ラウンドって事は八回投げれるのか?」

    セレス「いえ、一ラウンドにつき三投ですので、合計二十四回、ダーツを投げる事になります」

    桑田「二十四回か。まあ回数は余裕だな」

    セレス「野球選手という話ですし、それはそうでしょうね」

    不二咲「けど、凄くシンプルなルールだねぇ」

    セレス「そうですわね。一般に“ダーツ”と言われて思い浮かべられるのはこういった方式のゲームだと思いますし」

    桑田「じゃあ他のはどういうゲームになるんだ? もう一個紹介するって言ったよな」

    セレス「ええ。わたくしとしては桑田君と、その“もう一つのゲーム”の方で勝負してみたいと思いましたの」

    桑田「へえ、気になるな……教えてくれよ」
  57. 57 : : 2015/01/29(木) 20:24:43
    セレス「はい。俗に“ゼロワン”と呼ばれるゲームです」

    不二咲「ゼロワン……0と1? プログラムみたいだね」

    セレス「たしかに0と1、という意味ではありますが、おそらく不二咲君が思っているのとは随分と違いますわよ。この場合の“ゼロワン(01)”とは下二桁を指しているのです」

    不二咲「下二桁?」

    桑田「何の下二桁だ?」

    セレス「最初の持ち点の事ですわ。基本的には“501点”とされていますが、この下二桁以外は自由に変えてOKです」

    不二咲「じゃあ10101点、とかでも?」

    セレス「別に構いませんが、結構つらいと思いますわよ?」

    桑田「つか、持ち点って何に使うんだ? やり取りでもすんのか?」

    セレス「いえ、違います。先ほどのカウントアップのルールは覚えていますわね?」

    不二咲「普通に得点を加算していくんだよね?」

    セレス「ええ。このゲームはその逆……つまり、得点を減算していき、最終的に最も速く持ち点をゼロにした者が勝ち、というゲームなのですわ」

    桑田「なるほどな。けどなんでそれが、わざわざオレを指名しての勝負になるんだよ?」

    セレス「その理由であり、かつこのゲームの面白い所は、その勝利条件にあるのです」

    不二咲「勝利条件? ただゼロにするだけじゃダメって事?」

    セレス「いえ、これまたその逆ですわね。“ただゼロにしなければならない”……つまり、ゼロを下回った得点になってはいけないのです」

    不二咲「ピッタリゼロにする必要があるって事だね」

    セレス「その通りです。もし特典がゼロを下回った場合、まだそのラウンド中に自分が投げる矢が残っていても――このゲームもカウントアップと同じく一ラウンド三投です――強制的に次のプレイヤーに交代、持ち点はラウンド開始時の状態に巻き戻る事になります」

    桑田「つまりそれだけコントロール力が試されるって事か……よし、やってやろうじゃん!」

    セレス「他にも細かいルールはいろいろありますが、それはやりながら説明していきましょう。不二咲君も参加なさいますか?」

    不二咲「ううん、とりあえず僕は観戦してるよ。見てみないと分からない事も多そうだし」

    セレス「そうですか、分かりましたわ。ではもしやりたくなったなら次ゲーム、声をおかけください」

    不二咲「うん!」

    セレス「さて、それでは桑田君。ひとまずダーツの投げ方の練習などなさいますか?」

    桑田「いや、いらねーぜ。オレならぶっつけ本番でも余裕っしょ!」

    不二咲「うわあ、今フラグが見えたよ」

    セレス「そうですか。……では先行と後攻、お好きな方を選択くださいませ」

    桑田「ん、とりあえず様子見させてもらうわ。って事で後攻な」

    不二咲「え?」

    桑田「ん、なんか問題あったか?」

    不二咲「いや――」

    セレス「ふふ、では早速ゲームを始めましょう」
  58. 58 : : 2015/01/29(木) 20:24:58
    桑田「ウソだろ!? すっげえあっさり負けたんだけど!」

    不二咲「そりゃそうだよ……」

    セレス「不二咲君は気付いてらしたようですけどね」

    不二咲「いや、でもそれが無くてもセレスさんは経験者なんだし、普通に考えて素人が勝てるわけないよねぇ」

    セレス「それに桑田君のコントロール力も思った程ではありませんでしたわね」

    桑田「待てよ、気付くだのなんだの、何の話だ? あとコントロール悪かったのはボールと感覚が違ったからだ! オレのコントロール力の問題じゃねえよ!」

    セレス「ですから練習をなさるか訊いたではありませんか。……まあ、いいでしょう。“不二咲君が気付いていた事”について、でしたわね。普通に考えればすぐに分かる事なのですが」

    桑田「ぐ。……な、何だよ?」

    セレス「先ほどわたくしは、このゲームの勝利条件について言いましたわね?」

    桑田「ああ。持ち点を先にゼロにした方が勝ち、だろ? それは覚えてるぜ」

    セレス「そうです。“先に”ゼロにした方が勝ち……それはつまり、どう考えても先行の方が有利、という事です」

    桑田「……ああ! なるほど!」

    不二咲「迷わず後攻選択した時はビックリしたよ……」

    桑田「よっしゃ、じゃあ今度は先攻で挑むぜ、セレス! もう一勝負だ!」

    セレス「構いませんわよ」

    不二咲「ところで僕はてっきり、セレスさんは“賭け”を申し込んでくるかと思ってたんだけど……しないんだね?」

    セレス「ええ、そちらが賭けにする事を提示してくるならば勿論応じますが……どうせならば強くなっていただいてから賭けにした方が楽しいではありませんか」

    桑田「そ、そういう意図なのな……」

    セレス「では、始めましょうか。ああ、不二咲君はどうしますか?」

    不二咲「うーん、今回も観戦するよ。次ゲームから入るね」

    セレス「分かりましたわ」

    桑田「よっし、今度こそ勝つ!」
  59. 59 : : 2015/01/29(木) 20:25:14
    桑田「なんで勝てねえんだ!?」

    セレス「なんと言いますか……想像以上に、下手ですわね」

    桑田「ぐは!?」

    不二咲「じゃあ僕も入っていい?」

    セレス「ええ、どうぞ。桑田君もまだやりますわよね?」

    桑田「当たり前だろ!? このまま終われっか!」
  60. 60 : : 2015/01/29(木) 20:25:27
    桑田「なんで不二咲にも勝てねえんだよ!?」

    不二咲「うーん……これは思ってた以上に……桑田君が下手だね」

    セレス「ええ、わたくしも、もう少しゲームになるかと思っていたのですが」

    桑田「くそ、ゼッテーいずれ勝つからな……!」

    セレス「ええ、楽しみにしていますわ」

    セレス(その後も暫くダーツで遊び……夕食を頂き。お風呂に入り、そして“日課”をこなし……この日も眠りに就きました。……そうそう、翌日の掃除当番、苗木君に付くのはわたくしになった、という事は覚えておかねばなりませんね)
  61. 61 : : 2015/01/29(木) 20:25:46
    セレス「皆さん、御機嫌よう」

    大和丸「セーレースゥ!」

    大神「大和丸よ。いちいちセレスの遅れについて言及する必要はないと思うぞ」

    山田「ですなあ。もうすっかりそういうリズムで慣れてしまっていますし」

    大和丸「そういう訳に行くか! オレの中の“風紀委員(兄弟)”が許さねえんだよ!」

    霧切「本当、難儀な性格になったわね……」

    苗木「ところで、朝日奈さんもまだなんだけど……」

    大神「ああ、それならば我が話を聞いている。何やら体調が悪いそうでな。今日は自室で休むとの事だ」

    苗木「そうなんだ。風邪かな? 早く良くなるといいけど」

    大神「保健室から薬は持って帰ったとの事だ。心配ではあるが、今日はゆっくりさせておこう。このところいろいろあったからな。疲れもたまっているのであろう」

    セレス「そうですわね……こういう時、保健室が解放されていて良かったと思いますわ」

    セレス(それから少し雑談を交わし、朝食を頂き……そしていつも通りに今日のグループ分けに話が至りました)

    苗木「あ、じゃあボクはもう行くね」

    大和丸「おう」

    霧切「じゃあ今日はどうしましょうか」

    桑田「セレス! 今日は昨日のリベンジだ! いいよな?」

    セレス「ええ、受けて立ちますわ」

    舞園「何だか楽しそうな話してますね。私もご一緒していいですか?」

    セレス「ええ、どうぞ」

    桑田「よっしゃあ! じゃあ舞園ちゃんにいいとこ見せるぜ!」

    大和丸「ったく、桑田は相変わらずだな……」

    霧切「そうね。けれどあっちはあれでいいでしょう。私は……そうね。山田君、一緒に行きましょう」

    山田「ふむ? 構いませんが、これまたなぜに?」

    霧切「別に理由は無いわ」

    山田「そ、そうですか……まあ、いいでしょう」

    大和丸「するってーと、オレは不二咲と大神だな。よろしく頼むぜ」

    大神「ああ、こちらこそよろしく頼もう」

    不二咲「うん! 頑張るよ!」

    セレス「では参りましょうか」

    桑田「ああ」

    舞園「行きましょうか」
  62. 62 : : 2015/01/29(木) 20:26:19
    セレス(さて、娯楽室にやって参りましたわ)

    桑田「そういや今さらだけどよ、セレス。今日はモノモノマシーンは良かったのか?」

    セレス「ああ、その事ですか。今日は気分が乗らないので、やめておく事に致しましたの」

    桑田「ふーん……別にいいけどな」

    セレス(メダルのストックが切れたなどとは口が裂けても言えませんわ)

    桑田「さて、そんじゃあ……」

    セレス(そう桑田君が口を開いたところで、急に大きな音を立てて娯楽室の扉が勢いよく開きました)

    苗木「ああ! セレスさんがいた!」

    桑田「うお!? 苗木かよ。どうしたんだ?」

    苗木「桑田君に、舞園さんも。実はさ、いつもは図書室にいる十神君の姿が見当たらないんだ!」

    桑田「はあ? 部屋にでもいるんじゃねえの?」

    苗木「ボクもそう思って部屋にも行ってみたんだけど反応が無くて……」

    セレス「居留守……という事はないでしょうね。先日、モノクマの指示でわたくしが尋ねた際もすぐに出て参りましたし」

    舞園「じゃあ別の所にいるんじゃないでしょうか?」

    苗木「そう思ってあちこち探したんだけど……」

    桑田「いねえ、って事か」

    苗木「うん。みんなも探すの手伝ってくれないかな?」

    桑田「んー、まあいいだろ。緊急っぽいしな」

    セレス「そうですわね。好ましい態度の方ではありませんが、ここで放置して“もしもの事”があったらと思うとそれはそれで後味が悪いですし」

    舞園「ええ。探しましょうか」

    苗木「うん、よろしくね。ボクは他のみんなにも十神クン探しの手伝いを呼びかけてくるよ!」

    舞園「分かりました。では私達は十神君のいそうなところ、探してみますね」

    苗木「ありがとう! それじゃあボクは行くね!」

    舞園「さて、苗木君も行っちゃいましたし……どこから探しましょうか?」

    桑田「つってもな、十神の行きそうなトコなんて見当もつかねえし……」

    セレス「手当たり次第、でしょうか」

    舞園「じゃあとりあえず手近なところ……美術室から見に行ってみましょう」

    セレス「そうですわね。では行ってみましょう」

    桑田「あ、ここには誰も残らなくていいのか? もしオレらが出てってからここに十神が来たら、完全に行き違いになっちまうだろ」

    セレス「それならそれでいいでしょう。わたくし達は十神君の無事さえ確認できればそれでいいはずなのですから。少なくとも“生きて行動可能である”という状況さえ分かればあとはどうにでもなりますわ」

    舞園「それもそうですね……」

    桑田「なるほどな。んじゃあ行くか」
  63. 63 : : 2015/01/29(木) 20:26:35
    セレス(美術室にやって来た、のはいいんですが……)

    舞園「コレってさっそく見つけちゃった、って事でいいんでしょうか?」

    セレス「分かりませんわね……」

    桑田「おい十神! オメーだろ!? 返事ぐれーしろって!」

    「…………」

    セレス「無反応、ですわね」

    セレス(美術倉庫へ至る扉……これが内側から鍵をかけられていて、開くことが出来ません。おまけに幾ら呼びかけても無反応、となりますと……)

    舞園「本当に誰かいるんですかね?」

    桑田「そりゃ、いるだろ。だってこの部屋は内側からしか鍵をかけられねえハズだしな。中に誰もいねえなら開かねえって事はないはずだぜ」

    舞園「ですよね……」

    セレス「ともかく、この事を他の方々にも報告すべきかもしれませんわね。報告に行っている間に開いているなら、それはそれでいいですし」

    桑田「だな。じゃあ行くか」
  64. 64 : : 2015/01/29(木) 20:26:51
    桑田「お、いたいた。霧切と山田も一緒か」

    苗木「あ、桑田君! それにセレスさんに舞園さんも。見つかった?」

    霧切「話は聞いたわ。十神君の姿が見えないそうだけれど」

    山田「彼の性格からして姿を消したのも、我々の反応を見るため、とかそんな事のような気はしますが……」

    セレス「一応、怪しい場所は見つけましたわ」

    舞園「美術倉庫のドアに鍵がかかっていたんです。あそこは内側からしか鍵をかけられませんし、中に誰かがいるのは確実だと思うんですけど……」

    セレス「いくら呼びかけても反応がありませんの。十神君が立てこもってでもいるのでは、と思いまして報告に参った次第ですわ」

    霧切「立てこもる……そうだとしても意図がわからないわね」

    山田「一度確認に行ってみますかな?」

    霧切「そうね。苗木君はどうするかしら?」

    苗木「うーん、大和丸君と大神さんと不二咲君にまだ伝えられてないけど……一応行ってみようかな。朝日奈さんは体調不良って事だから変に心配かけない方がいいかな?」

    霧切「そうね、朝日奈さんについては異論はないわ。それじゃあ美術室に行ってみましょう」
  65. 65 : : 2015/01/29(木) 20:27:15
    霧切「本当に鍵がかかってるわね」

    山田「ですな。何かがつっかえている、という訳ではなく……この手ごたえはたしかに鍵がかかっておりますぞ」

    霧切「苗木君、貴方はあちこち探してたのよね? その時点でここは鍵がかかっていたのかしら」

    苗木「あ、ゴメン。三階に上がってすぐ入った娯楽室にセレスさん達がいたから……こっちには来てないんだ。だから分からない」

    霧切「そう……何にしても、大和丸君達なら返事をしない意味もないわ。可能性としては十神君か、或いは……」

    桑田「他に可能性ある奴なんているのか?」

    霧切「いるじゃない。モノクマよ」

    舞園「……ああ」

    セレス「ともあれ苗木君。大和丸君達をここへ呼んできてもらえませんか? そこで少し皆さんで考えた方がよろしいかと思いますわ」

    苗木「う、うん。分かったよ。じゃあ行ってくるね」

    霧切「まあ、呼んだところで十神君をここから出す方法をあまり思いつかないのだけれど」

    セレス「そうですわね。わたくしも何とかなるとは思っていません」

    舞園「え、じゃあなんで呼びに行かせたんですか?」

    セレス「決まっているでありませんか。立てこもっているのが大和丸君達であるという可能性を潰すためですわ」

    桑田「ああ……限りなくゼロに近い、じゃダメだしな」

    セレス(……ゼロワンの事を仰っているわけではありませんよね、おそらく)

    霧切「それでも、やっぱりモノクマが施錠した可能性も捨てきれないのよね」

    セレス「それならばそれで、ここに見張りを立てた上で再び十神君の探索を続ければいい話だと思いますわよ?」

    舞園「それもそうですね。別に探索を打ち切る必要はありませんか」

    山田「というより、モノクマに尋ねれば早いのでは?」

    セレス「モノクマに尋ねて返答を得たところで、それが事実であると真に受ける事は出来ませんし。それならば不要な情報を得る必要はないでしょう?」

    桑田「たしかにな。アイツが何言ったとこで信用すんのは無理だぜ」

    苗木「みんな、連れて来たよ!」

    大和丸「ここに十神のヤローが閉じこもってるって?」

    大神「どういう状況なのだ?」

    不二咲「返事も無いって聞いたけど……」

    霧切「来たわね。という事は……やっぱり“十神君が立てこもっている”、もしくは“モノクマが施錠した”のどちらかという事が確定したわね」

    不二咲「あ、僕達が来るまでは僕達が中にいる可能性も考えてたって事だね」

    桑田「ま、ほぼ無いと思ってたけどな」

    大和丸「まあ十神のヤローにしろモノクマにしろ、こっから引きずり出せばいいんだよな?」

    霧切「モノクマだとすると、施錠しているだけで別の場所で出現する事は出来ると思うけれどね」
  66. 66 : : 2015/01/29(木) 20:27:34
    大和丸「まあどっちにしろ、このドアをぶっ壊しちまえば話ははえーって事だろ? だったらどいてな」

    モノクマ「あらら、風紀の取り締まりに目覚めた大和丸(笑)クンはドアの破壊とか良しとしちゃうんだ?」

    大和丸「テメェ、モノクマ! 出やがったな!」

    セレス「鍵を開けてでも下さるんですか?」

    モノクマ「んー? ボクがそんな事すると思う?」

    霧切「まあ、しないでしょうね」

    モノクマ「ががーん! 自分で言っといて何だけど、信用のなさにショック……!」

    大和丸「第一なあ。ぶっ壊すしかねえんなら、ぶっ壊す! それがオレの“風紀(ルール)”だ!」

    モノクマ「ありゃりゃ、こりゃ話聞いてくれそうにないね。んじゃ、仕方ないし校則に追加しとくね……!」

    大和丸「ああん!? 何をだ……って、消えちまいやがった」

    不二咲「あ……“鍵のかかったドアの破壊を禁止します”だって。今追加されたみたいだね」

    大和丸「ちッ……これじゃぶっ壊すことも出来ねえな」

    霧切「けど、そんな校則を追加してまでこの奥に私達を入れたくなかったんだとすると、黒幕が奥で何かをやっている可能性が出て来たわね」

    大神「それはこの中に黒幕がいる、という事か?」

    舞園「いえ、何かしているにしても、モノクマさんを操作してやっているんじゃないでしょうか」

    苗木「なるほど、その可能性はあるね……。でも、そうだとすると十神クンは?」

    霧切「分からないわ。念のため、ここには見張りを立ててみんなで捜索してみましょう」
  67. 67 : : 2015/01/29(木) 20:27:56
    セレス(結局……皆さんでの捜索もむなしく、この日は十神君を発見する事が出来ませんでした。まあわたくしは見張り組でしたけれど)

    大和丸「ちッ……十神のヤロー、どこに居やがんだ?」

    霧切「こうなってくると、やっぱり美術倉庫が怪しいわね……」

    舞園「モノクマさんと十神君が結託している、という可能性もありますしね」

    桑田「たしかに、十神の性格を考えりゃ、利用できるモンは何でも利用しそうだし。ありそうな話だよな」

    大神「だが、悪い事には悪い事が重なる物だな。十神の失踪と美術倉庫の施錠の件を完全な別件だと考えた場合、朝日奈の事も含め三つも今日一日で重なったことになる。皆も十分に気を付けるのだぞ」

    苗木「そうだね。体調不良については全員について言える事だ。無理はしすぎないようにね」

    舞園「はい、そうですね!」
  68. 68 : : 2015/01/29(木) 20:28:20
    セレス(話はそこで一度区切り、夕食を頂き……そして、お風呂の時間)

    セレス「今日は四人だけ……ですか」

    セレス(湯船に浸かり、ぽつりとつぶやいてしまいました)

    大神「そうだな……明日には朝日奈の体調も良くなっているといいが」

    霧切「そればっかりは、彼女の体力を信じるしかないわね」

    舞園「まあ、朝日奈さんならすぐに元気な顔を見せてくれると思いますけどね」

    大神「そうだな」

    舞園「あ、そういえば明日の掃除当番は誰でしたっけ? 朝日奈さんはいませんけど、男子なら付く人を決めておかないといけませんよね」

    霧切「明日は私よ。だからその必要はないわ」

    舞園「そうでしたか。なら安心ですね」

    セレス「今日はわたくしが苗木君に付くのでしたね……まあ彼なら何かをするという事もあまり考えられませんし、いいですけれど」

    舞園「というか、そういえば今日はまだゴミの回収してませんでしたね」

    セレス「そうですね。……そろそろ上がりましょうか。苗木君にゴミの収集について言いに行った方がよろしいでしょうし」

    大神「というより……今思った事があるのだが」

    舞園「なんでしょう?」

    大神「そもそもの当番自体を、男女一人ずつの二人組で組んだ方がよいのではないか? 鍵をどちらが所持するか、という問題も出ては来るが、その方が防犯にもなろう」

    霧切「そうね。一巡してから提案してみましょう」

    セレス「そうですわね」

    大神「では、上がるとするか」
  69. 69 : : 2015/01/29(木) 20:28:37
    セレス(お風呂から上がり、苗木君の部屋のチャイムを押しました)

    苗木「はい……あれ、セレスさん? どうしたの?」

    セレス「いえ、今日は苗木君が掃除当番でしたわよね? ゴミの収集はどうなっているのかと思いまして」

    苗木「ああ、そっか。そうだったね。今からやるよ……」

    セレス「ではお手伝い致しますわ」

    苗木「え?」

    セレス「どうなさいました?」

    苗木「いや、セレスさんが自分からそんな風に言って来るのって、なんというか意外だったからさ」

    セレス「殺人の機会をうかがっているのでは、などと警戒してしまいましたか?」

    苗木「え、い、いや、そういう訳じゃないけど……!」

    セレス「ふふ、ご安心ください。他の女性陣もわたくしが苗木君についてゴミ収集する事はご存知ですわ。そんな状況で殺人を犯すほど、わたくしも馬鹿ではありませんわよ」

    苗木「そ、そうなんだ……」

    セレス「それでは参りましょうか」
  70. 70 : : 2015/01/29(木) 20:28:53
    苗木「よし、これであとは二人分だね」

    セレス「朝日奈さんと十神君ですか……朝日奈さんはともかく、十神君の分はどうなさいますか?」

    苗木「うーん、今日は仕方ないんじゃないかな。それに部屋にいたとしても、あんまりゴミが出てるとも思えないし」

    セレス「それもそうですわね。では朝日奈さんのゴミを収集してからトラッシュルームへ向かいましょうか」

    苗木「うん。じゃあインターフォン、押すね」

    セレス「ええ」

    セレス(と、苗木君がチャイムを鳴らしましたが……)

    苗木「……出ないね」

    セレス「体調不良という事でしたし、眠ってしまっているのかもしれませんわね」

    苗木「うーん、だとすると……見つかった場合は十神君の分もだけど、朝日奈さんの分も明日纏めて収集してもらった方がいいかな?」

    セレス「そうですね。というよりむしろ、そうするしかないでしょう」

    苗木「じゃあトラッシュルームに行こうか」

    セレス「ええ、分かりましたわ」

    セレス(その後はトラッシュルームでゴミを処理し、苗木君と共に霧切さんの部屋を訪れ鍵を渡し、苗木君と別れ……部屋で“日課”をこなしたところで、眠りに就きました)
  71. 71 : : 2015/01/29(木) 20:29:14
    セレス「皆さん、御機嫌よう」

    大和丸「セレスが来たな……」

    セレス「あら、今日はとやかく言ってきませんのね?」

    不二咲「朝日奈さんと霧切さんもまだなんだぁ」

    セレス「言われてみれば、姿が見えませんわね。まあ、朝日奈さんは体調不良が継続しているのかもしれませんけれど」

    大神「先ほど部屋を尋ねてみたが、反応が無かったからな。まだ眠っているのであろう」

    苗木「でも、霧切さんも反応が無かったんだよね」

    セレス「ふむ? 霧切さんの様子も確認に行かれたので?」

    大和丸「オメェと違って、毎朝ちゃんと来るからな……そりゃ来なけりゃ様子も見に行くだろ」

    セレス「そうですか」

    苗木「と言っても、霧切さんの場合は、朝からどこか調べに行ってるって可能性もあるんだけどね」

    舞園「たしかに、一番探索に精力的ですしね」

    セレス「どちらにせよ、探しに行くべきでしょう。もし十神君が何かを企んでいるのだとすれば、一人で行動させるのは危険ですし」

    大神「たしかにな……」

    桑田「じゃ、手分けして探すか?」

    不二咲「そうだね……でもどう分かれよっか?」

    大和丸「オレは三階に行くぜ。やっぱ十神のヤローも気になるからな」

    桑田「あ、じゃあオレもそっち行くわ」

    大神「では我もそちらに入るとしよう」

    山田「僕は一階を捜索してみようかと思いますぞ」

    不二咲「あ、僕も行くよ」

    苗木「じゃあ……舞園さんも一階の方に入ってもらえる? 残ったボクとセレスさんの二人で二回を調べるって事で」

    舞園「分かりました」

    セレス「まあ、いいでしょう。では行きましょうか」

    大和丸「おう。霧切にしろ十神にしろ、見つけたらちゃんと知らせろよ」

    山田「ええ、お任せあれ!」

    セレス(さて。霧切さんはともかく、十神君は昨日一日かけて探して見つからなかったのですし、簡単に見つかると思えませんが……まあ、なるようになりますか)
  72. 72 : : 2015/01/29(木) 20:29:30
    苗木「さてと、それじゃあ手前から見て行こうか」

    セレス「となりますとプールですわね。ですが、霧切さんなら女子更衣室、十神君なら男子更衣室の可能性もありますし、そちらもしっかり捜索するべきでしょうか」

    苗木「まあ、人が隠れる場所は少なそうだけどね」

    セレス「それもそうですか。では、ひとまずプールで落ちあいましょう」

    苗木「うん」

    セレス(さて、更衣室は……特に何も変わった様子はありませんわね。先ほど苗木君も言っていましたが、隠れるスペースもありませんし)

    セレス「早々にここは打ち切っていいかもしれませんわね」

    セレス(そう呟き、プールへの扉に手をかけたところで……)

    苗木「な、何これ!?」

    セレス(苗木君? プールからですわね。何かあったのでしょうか? 急ぎ扉を開き……そして目に飛び込んできた物。それは真っ赤なプール。ですがその赤は血の赤ではなく、薔薇。真っ赤な薔薇が万遍なく浮かんでいるだけの、赤いプール。ですが……)

    セレス「これは……!」

    セレス(プールの中央。そこには……仰向けでこそありますが、薔薇に囲まれるようにして浮かんでいる……霧切さんの姿がありました)
  73. 73 : : 2015/01/29(木) 20:29:49
    苗木「霧切さん、霧切さん!」

    セレス(ひとまず霧切さんをプールから引き揚げ、呼びかけますが……意識が無いようですわね)

    セレス「苗木君、ひとまず他の皆さんを呼んできてくださいませんか? わたくしはここで霧切さんを看ています」

    苗木「わ、分かったよ……!」

    セレス(そう言って苗木君が駆け出そうとした、その瞬間)


    モノクマ『死体が発見されました!』


    苗木「……は?」

    モノクマ『一定の自由時間の後、学級裁判を開きます!』

    セレス「死体……? ここ以外でも何かあったという事でしょうか」

    苗木「と、とにかく行ってみよう、セレスさん!」

    セレス「いえ、ここで無抵抗の霧切さんを放置するのは危険でしょう。わたくしはここに残りますわ。苗木君は先ほどの放送についての確認と、皆さんへの霧切さんについての報告をお願いします」

    苗木「わ、分かった!」
  74. 74 : : 2015/01/29(木) 20:30:05
    セレス(そして今度こそ、苗木君は駆けだして行きました。その直後)

    舞園「ここですか!?」

    山田「死体が発見されたと放送がありましたが」

    不二咲「どこ……!?」

    セレス(先ほどの放送を聞いて駆け付けた一回捜索組がアナウンスを聞いて飛び出してきたのでしょう。“ここではありません”……そう言いかけた、その時)


    モノクマ『死体が発見されました! 一定の自由時間の後、学級裁判を開きます!』


    山田「……は?」

    セレス「何故……二回目が……?」

    舞園「……も、もしかして。セレスさん、その……霧切さんは……?」

    セレス「……!」

    セレス(油断……していました。アナウンスが流れなかったのが、わたくしの油断……。そうです。“流れるはずが無かった”のです。アナウンスが流れるのは“三人以上”の発見者がいる場合のみ。わたくしと苗木君の“二人だけ”では、アナウンスは……流れない)

    不二咲「そ、それじゃあ……さっきのと合わせて……死体は二つ、って事ぉ……!?」

    山田「で、ですが……では一回目のアナウンスは、一体誰が……?」

    舞園「そ、そうですよ! ここじゃないって事は、三階で見つかったんでしょうか?」

    不二咲「行ってみようよ!」

    セレス「……そうですわね」

    セレス(ここに死体を放置して行くのは気が引けますが……行って確認するしかないでしょう)
  75. 75 : : 2015/01/29(木) 20:30:19
    苗木「み、みんな!? さっきの放送は……!? それにセレスさんも来たけど、大丈夫なの!?」

    セレス「さっきの放送は……おそらく、霧切さん、ですわ」

    苗木「き、霧切さんが!? でもアナウンスは流れなかったじゃないか……!」

    セレス「それはわたくし達が二人だったから、でしょう。三人以上という条件を満たしていなかった……」

    苗木「そ、そんな……じゃああの時、既に霧切さんは……」

    舞園「ところで苗木君はどうしてこんなところに?」

    苗木「あ、そうなんだ! みんなを呼びに行こうとして……いろいろあって大変なんだよ! 来て!」

    山田「あ、ちょっと! 苗木誠殿!?」

    セレス「仕方ありません、追いましょう」

    セレス(苗木君を追って辿り着いた先は……)

    舞園「美術室、ですか?」

    舞園「あ、美術倉庫のドアが開いていますよ!」

    大和丸「おう、オメェらも来たのか……見ての通り、だ」

    不二咲「見ての通りって?」

    十神「クソッ、何がどうなっている! この縄をほどけ!」

    桑田「うるせー、誰がほどくか!」

    セレス「その声は十神君? やはりここにいたのですか?」

    セレス(部屋の中を確認すると、その光景は……


    赤。ですがこれは決して薔薇の赤ではなく、そう。血の……赤。全身を斬りつけられ、見た目にも完全に絶命している、朝日奈さん。しかしそれだけではなく……服をその血に染めた、縛られた十神君。彼の姿もまた、この場にあったのです)
  76. 76 : : 2015/01/29(木) 22:35:22
    3章では二人殺される…伝統ですなあwww
    朝比奈はそろそろだと思ったが霧切さんか…
  77. 77 : : 2015/01/29(木) 22:36:39
    霧切さぁぁぁあん!!
    死んでもぉた!
  78. 78 : : 2015/02/04(水) 20:35:34
    なんか、全部が・・・卒業メンバーが死亡しているな。
  79. 79 : : 2015/02/05(木) 12:57:21
    何だと…更新停止だと…
    くっこれが絶望か…
  80. 80 : : 2015/02/05(木) 21:54:10
    >>76
    そうですね、一章、二章もそうですが、伝統的な物はそれなりに引き継いでます。

    >>76
    >>77
    (フラグ立てまくった気がしてました)

    >>78
    言われてみれば毎章死んでました……。

    >>79
    一応復活はしましたが、こちらは裁判終了まで書きため終わってから投下します。ので、もうしばしお待ちください……。
  81. 81 : : 2015/03/25(水) 19:06:05
    面白いです!期待大!
  82. 82 : : 2015/04/02(木) 09:37:30
    何度か読み直してるけど苗木くらいしか怪しいのがいないなぁ
  83. 83 : : 2015/07/27(月) 22:30:11
    期待
  84. 84 : : 2015/08/26(水) 02:02:39
    まだかな
  85. 85 : : 2016/01/17(日) 14:53:11
    そろそろ一年か…
  86. 86 : : 2016/05/19(木) 18:02:19
    待ってる
  87. 87 : : 2016/08/05(金) 23:08:09
    続き待ってます!
  88. 88 : : 2016/08/13(土) 11:47:32
    きたい
  89. 89 : : 2016/10/07(金) 08:15:58
    続き期待
  90. 90 : : 2017/02/19(日) 19:51:31
    2年経ったし失踪したか
  91. 91 : : 2019/09/24(火) 20:43:49
    はい令和

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mokeyann

もけやん

@mokeyann

この作品はシリーズ作品です

オリジナル展開でコロシアイ学園生活 シリーズ

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