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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

【オリジナル展開でコロシアイ学園生活】大和田「なァにが希望の学園だ」 Chapter2

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  1. 1 : : 2014/05/12(月) 18:38:18
    前スレ
    【オリジナル展開でコロシアイ学園生活】桑田「へえ、ここが希望ヶ峰学園か」 Prologue&Chapter1
    http://www.ssnote.net/archives/14455

    今回はChapter2になります。
    現時点ではまだ途中までしか執筆できていないので前回よりは更新速度が落ちると思いますが、よろしければお付き合いください。
    また、タイトルで察しはつくかと思いますが、主人公は交代、この男になります。
    また、注意事項などは……ほぼ前回と同じになるかと思いますので前スレを参照でお願いします。
  2. 2 : : 2014/05/12(月) 18:40:20
    大和田(江ノ島が処刑されて、オレ達は全員そろってエレベーターに乗った。……その全員に腐川と江ノ島が含まれてねーってのが胸糞悪ィけどな。そんで、地上に戻ってからオレ達はまず、食堂に向かった。全員そろって、メシを喰うためだ。……考えてみりゃ朝から何も食ってねえんだ。全部終わってから、自分が腹減ってる事に気が付いたのはオレだけじゃなかったってこったな)

    山田「こんな状況でも……食事は、美味しく感じるのですな」

    朝日奈「……そう、だね。おなか、すいてるもんね」

    大和田(だがよ、明るく食事なんて気分には、どうしてもならねーよな)

    石丸「……」

    大和田(あの石丸でさえ、黙って食ってるしよ。いつもなら「それでは今後の行動についてだが」なんて仕切ってやがる癖に)

    舞園「……皆さん、これが食べ終わったら、どうします?」

    大和田(けど、暗い気分である事に変わりはねーだろうに、みんなを勇気づけようとしてる連中もいる)

    桑田「オレは……まだ、特に何も考えてねーけど」

    霧切「今までと同じように、校内の探索をして、出口を探すべきじゃないかしら。それが……全員で無事に脱出する事が亡くなった二人への、せめてもの鎮魂になると信じて」

    大和田(腐川と江ノ島への鎮魂、か。そう考えて前に進むしか……ねーんだよな)
  3. 3 : : 2014/05/12(月) 18:40:39
       CHAPTER 2
                週刊少年単車の友   (非)日常編
  4. 4 : : 2014/05/12(月) 19:14:20
    あ、これって原作でクロの人が主人公ってことですか?
  5. 5 : : 2014/05/13(火) 19:46:08
    >>4
    原則、そういう事になってますね。
    でもあくまで“原則”なので……。


    セレス「ですが、わたくし達は先ほどの『事件の捜査』という形で今までの行動可能な範囲は見落としなく探索しきってしまっているはずです」

    不二咲「それも、そうだよねぇ」

    山田「新しい手掛かりが見つかるとは、とても思えませんな」

    苗木「けど、希望を持って前に進まなくちゃ……。ボク達みんなで、ここから出るためにもだよ!」

    桑田「そーだ、苗木の言う通りだぜ! 今は空元気でもよ、明るくしていかなくちゃ心がもたねーって!」

    葉隠「実際、調べるとこも増えてっしな……」

    大和田「あァ? どーいう意味だ、そりゃ?」

    葉隠「何だ、大和田っち。気付かんかったんか? 戻ってくる途中、食堂の向かいにある暖簾のかかった部屋が解放されてるのを見たべ。たぶん探索範囲が広がってんじゃねーか?」

    霧切「ええ、そうだったわね。他にも開放されている場所があるかもしれないし、再度探索する必要があると思うわよ」

    大神「では、食事が終われば探索を開始するとしよう」

    十神「フン、俺はお前らと仲良しごっこをするつもりは毛頭ない。群れたければ好きにしろ、俺以外でだがな」

    大和田「あァん!? テメェ何勝手抜かしてやがんだ!」

    十神「何を言う。『みんなで仲良くやりましょう』という押し付けの方こそ、勝手なんじゃないのか?」

    石丸「だが、皆で団結して挑まねば全員で脱出する事が困難になってしまう! それに団体行動を乱すのはどのような場面でも好ましくないぞ!」
  6. 6 : : 2014/05/13(火) 19:46:36
    十神「皆で脱出、か。その必要がどこにある?」

    朝日奈「何、それ……何言ってんの?」

    十神「フン。……俺は先に行くぞ」

    苗木「あ、待ってよ十神クン……!」

    大神「待て。苗木よ、追ってどうするつもりだ」

    苗木「え、どうするって……説得しなきゃ!」

    霧切「あまり意味はないと思うわよ。彼の価値観を変えるのは相当な時間と根気があっても難しいでしょうし」

    桑田「ケッ、そもそもあんな奴ほっときゃいーんだって。ゲームだとかなんとか言いやがってよー。気分悪いったらねーぜ」

    大和田「まったくだ。とことんまでムカツクな、十神のヤロー」

    不二咲「でも、こんな状況なのにあんな風に自分を崩さずにいられるのは……凄いよねえ」

    苗木「さすがは“超高校級の御曹司”ってとこかな」

    セレス「以前お話する機会があったのですが、その際彼は自分の事を“超高校級の完璧”などと呼んでおりましたわ。ただの自信過剰じゃなければよいのですが」

    桑田「ただの自信過剰だろ。ついでにナルシストな」

    葉隠「リアルな話、自信過剰でナルシストって点では桑田っちも似たり寄ったりだと思うべ」

    桑田「は!? 何言ってんだ、オレのどこが自信過剰のナルシストなんだってーの!」

    セレス「全体的に……ですわね」

    舞園「改めた方がいいと思いますよ?」

    朝日奈「チャラいしね……」

    霧切「別にいいと思うけれど。桑田君がどう変わっても興味はないし」

    大神「野球選手という肩書で入学しているという事は、筋肉の量や質などは良いのかもしれんが……それを活かそうという気が感じられぬしな」

    大和田「ぎゃっはっは! 女子から総ツッコミ食らってやがる!」

    桑田「う、うるせー! 不二咲からは食らってねーって―の!」

    大和田「まァ、そーだな。おい不二咲、オメェはどう思うよ?」

    不二咲「え? えっとぉ……男の子って感じがして……いいと思うよぉ?」

    舞園「そこは同意ですね」

    朝日奈「ザ・男子って感じだよね」
  7. 7 : : 2014/05/14(水) 19:45:24
    不二咲「ぼ……私も、せめて桑田君とまではいかなくても、苗木君と張り合えるくらいには鍛えたいなぁ」

    大神「む? そういう事であれば、我がトレーニングに付き合うぞ」

    朝日奈「不二咲ちゃんも一緒に走ろうよ! 苗木くらいなら簡単に越えられるって!」

    苗木「ボクくらいならってちょっと酷くない!? いや、否定は出来ないけどさ」

    不二咲「あ、ありがとう……でも……」

    大和田(不二咲の奴、なんかこっちチラチラ見てねえか? 気のせいだよな?)

    朝日奈「大和田がどうかした?」

    不二咲「えっと……ううん、なんでも……ないんだ」

    大和田(オイオイ、何泣きそうになってんだ)

    朝日奈「大和田……アンタ、不二咲ちゃんに何かしたでしょ!」

    大和田「してねーよ!」

    朝日奈「じゃあなんで不二咲ちゃん泣いてるのさ!」

    不二咲「ち、違うんだぁ……大和田君は何も悪くないよ。悪いのは……強くなれない、私の方だから……」

    大神「もしや大和田、不二咲に強さを強要したのではあるまいな?」

    大和田「だからなんもしてねーっつってんだろ!」

    大和田(自分が真っ先に怪しまれる立場だってーのは分かってるけどよ……身に覚えのねえ事で疑われる筋合いはねーっての)

    石丸「大和田くんの風紀の乱れは僕としても一刻も早く正すべき課題だと思うが……今はしっかりと食事を摂り、探索のための体力を付けようではないか!」

    大和田「なァにが風紀の乱れだ……」

    桑田「メンドクセー事この上ねーよな」
  8. 8 : : 2014/05/14(水) 19:45:46
    霧切「風紀がどうとかはともかく、探索のために体力を付けるべきなのは当たってるわ。時間もあまり無駄にはしたくないし、食事をしながら今日は誰が誰と組むかを話し合いましょう」

    山田「ですが、十神白夜殿は一人で行ってしまわれましたぞ?」

    舞園「一人で行動するのが十神君だけなら問題ないんじゃないですか?」

    苗木「そうだね。一人じゃ何も起こしようがないし」

    石丸「さすがに複数人で行動している者を襲うような真似はしない、か」

    セレス「そうですわね。十神君は性格に難ありですが、頭は切れるようですし。メリットデメリットの判別は付けられるでしょう」

    苗木「デイトレードで稼いだりもしてるみたいだし、むしろそういう計算は得意なんじゃないかな?」

    葉隠「なら、一応安心は出来るって事でいいんか?」

    石丸「そうだな。ジェノサイダー翔がもし生きていたらと考えるよりは、十神くんの方が遥かに安全だろう!」

    桑田「オメー、さすがにそれは不謹慎すぎんだろ……」

    苗木「じゃあ一緒に行動する人だけど……山田クン、ボクと一緒に行かない?」

    山田「ほう、僕とですか。いいですぞ、ぶー子の魅力をばっちりお伝えいたしましょう!」

    苗木「あはは、うん。お手柔らかにね……」

    葉隠「桑田っちー! じゃあ俺と一緒に行くべー!」

    桑田「何で俺だよ! まあいいけどよ」

    葉隠「助かるべ! 裁判中の桑田っち見てたら頼りになりそうだったからな」

    霧切「それは認めるわ。意外と鋭い指摘も、それなりにあったもの」

    桑田「マジで?」

    霧切「ええ。依然としてあなたという人間に興味はないけれど」

    桑田「うっせー! オレもさほどオメーに興味はねーよ!」

    霧切「お互い様、ね。さて、それじゃあ私は……そうね。朝日奈さん、一緒に行かない?」

    朝日奈「私? いいけど……なんで?」

    霧切「この際だから、あまり話したことのない人と組もうと思った。それだけよ」

    朝日奈「うん、いいよ。私ももっとみんなと仲良くなりたいし!」

    石丸「ふむ、だいぶ決まってきたな。ならば舞園くん、僕と共に行かないかね?」

    舞園「私ですか?」

    石丸「ああ。君は努力を重ねた末にその地位を獲得したと聞いている。ならば素直に君の事を尊敬できるからな。共に励もうではないか!」

    舞園「ええ、構いませんよ」

    不二咲「じゃ、じゃあ私は……」

    大神「我と共に行こうではないか」

    不二咲「え?」

    大神「ふ、先ほど言っていただろう。鍛えたい、と。トレーニングに付き合うぞ」

    不二咲「で、でもぉ」

    セレス「……どうやらわたくし達が残ったようですわね」

    大和田「みてぇだな」

    セレス「仕方ありません。ペアを組みましょう」

    大和田「そーだな……」

    大和田(コイツと会話はずませるってどーやりゃいいんだ?)

    不二咲「……うん、わかったよ。じゃあよろしくねぇ、大神さん」

    大神「ああ」
  9. 9 : : 2014/05/15(木) 16:31:08
    あれ、不二咲の一人称って「ボク」じゃありませんでしたっけ?
  10. 10 : : 2014/05/15(木) 19:25:45
    >>9
    一人称を口に出す場面が少なくて(というかザッと確認したかぎり見つからなくて)判断が難しかったですが、唯一判断基準として機能したスクールモードのちーたんエンドを見る限り性別バレしてない間は「僕」ないし「ボク」、「ぼく」でない事はたぶん確かだと思います。
    ので、このシリーズでは性別バレするまで私で行きます。尤も、性別バレするまで生きてたらですが……。


    大和田(さて、メシを食い終ったのはいいけどよ)

    セレス「……」

    大和田「……」

    大和田(何話しゃいいんだ?)

    セレス「……ふう」

    大和田(食堂で解散した後、オレはセレスとの校内探索に移った。結果として分かったのは、葉隠の言っていた解放された場所は大浴場――脱衣所とサウナを含む――だったこと、それから学校エリア二階へのシャッターが開いている事。現段階じゃこの二つだ。そんで今、オレ達は二階への階段を登りきったトコだ)

    大和田「どーしたよ、ため息なんぞついて」

    セレス「いえ、あなたと共に行動していても、話すことがあまりにもありませんもの」

    大和田「まァな。そりゃ同感だぜ」

    セレス「ですが別行動、というわけにも参りませんし」

    大和田「そーだな……」

    セレス「はあ。こういう時、女性をエスコートするのが男性という物ではありませんか?」

    大和田「エスコートっつってもな。こんな気味の悪ィ学園の中だ。何の面白味もねェだろが」

    セレス「面白味ならあるかもしれませんわよ? この階層に」

    大和田「まァ、かもな。けどもしあったとして、オレにエスコートされて嬉しいか?」

    セレス「……別に何とも思いませんわね」

    大和田「へっ、オメェのそういうハッキリ物事言うトコは嫌いじゃねェけどな」

    セレス「あら。わたくしもあなたの事、嫌いじゃありませんわよ。好ましいとも思いませんけれど」

    大和田「オレもだ」

    セレス「……意外に気が合うのかもしれませんわね」

    大和田「互いに無関心、って意味でか?」

    セレス「無関心、というほどではありません。そうですね、Dランク程度には思っていますわ」

    大和田「あァ? 何だその、でぃーらんくってなァ」

    セレス「ああ、わたくし、周囲の人間をランク付けするクセがありまして。Dランクは平均レベルですわね」

    大和田「へぇ……あんまいい趣味とは言えねえな」

    セレス「かもしれませんわね。わたくしも失礼な事とは心得ておりますもの」

    大和田「けどその様子じゃ、正すつもりはねぇんだろ?」

    セレス「ええ。あなたも一般的に好ましくない事と思われているのを承知の上で、その暴走族という立場をやめるつもりはありませんでしょう? それと同じことです」

    大和田「同じ、か」

    大和田(たしかに、オレは今まで物をぶっ壊してばっかだった。その事は悪い事だ。言われるまでもねえ、わかってる。けど、オレには兄貴との“男同士の約束”があるんだ……いつかはチームを卒業する事になるんだろーが、その時までは引っ張っていく必要があるんだ……!)

    セレス「……大和田君? 聞いているのですか?」

    大和田「あ、あァ? ンだよ?」

    セレス「ですから、どこから探索するのか、と訊いているのです」

    大和田「あァ……そーだな。とりあえず手前から見て行きゃいいんじゃねーか?」

    セレス「では、そうしましょうか」
  11. 11 : : 2014/05/15(木) 19:26:18
    大和田(今回、新しく行けるようになった場所の探索の結果を軽くまとめるとこうだ。


    【寄宿舎エリア】

    ・大浴場
      脱衣所、浴場、サウナの三つのエリアに分かれてる。
    男連中とここで一緒にひとっ風呂浴びるのもいいかもな。

    【学校エリア2F】

    ・教室×2
      一階と大して変わらねェから特筆するとこはねェな。

    ・図書室
      辛気臭ェ場所だ。
      オレには合わねーな……たぶん用事でもなけりゃ、今後はいる事はねーだろ。
      十神が陣取ってるみてーだしな。
      ただ幾らか情報はあったな……そっちはあとで纏めるとすっか。

    ・プール

      更衣室前、男女分かれた更衣室、プールの計四つの部屋に分かれてるな。
      どーやら、更衣室に入るには電子生徒手帳でロックを解除する必要があるらしい。
      だから自分の性別の方にしか入れねェみてーだ。
      ま、女子更衣室なんぞに入っても仕方ねーし、別にいいんじゃねェか?


    んで、図書室で手に入った情報は……一つは、壊れたノートパソコンだな。どうやら不二咲に預けるって話になったみてーだし、こっちは別にいいだろ。問題は、無造作に置いてあった手紙の方だ。それによると何でも、“人類史上最大最悪の絶望的事件”とやらの影響で、希望ヶ峰学園は機能を停止しちまってたらしい。それも一年も前に、だ。いったいこりゃどうなってやがんだ……? ま、考えてても仕方ねーか。こういうのは十神や霧切、それから石丸みてーな頭良さそうな奴に任せた方がいいだろ。とにかくオレとセレスはその辺りの情報を手に、報告会に参加するため食堂に向かった)
  12. 12 : : 2014/05/15(木) 19:26:43
    石丸「遅いぞ、君たち!」

    セレス「あら、わたくし達が最後だったのですね」

    大和田「みてーだな」

    霧切「二人とも悪びれた様子が少しもないのはさすがね」

    山田「お二方とも、そういう性格ではありませんからな」

    葉隠「ま、ちゃんと来てる分十神っちよりマシだべ」

    大神「探索中、図書室で十神に会った際声はかけたのだが……」

    不二咲「聞いてくれる様子もなかったもんねぇ」

    苗木「けど、仕方ないよ……十神クンについては、付き合い方を模索していくしかないんじゃないかな……」

    桑田「無理にアイツに合わせる必要もねーだろ……向こうがちょっとでもこっちに合わせてくれようとしてくれんなら、こっちも歩み寄ろうと思うけどよー」

    朝日奈「そうかも……私も十神と上手くやっていく自信、ないし」

    舞園「けどやっぱり、このままの状態がいいとも思えません。いずれは十神君ともちゃんと話をする必要はあるんじゃないでしょうか」

    大和田「つってもなァ……。霧切も言ってたけどよ、アイツの価値観変えんのはまず無理だろ。どうしようもねーんじゃねェか?」

    霧切「無理とは言ってないわよ。難しい、とは言ったけれど」

    セレス「ですが、この場合はどちらも似たようなものではありませんか? 可能にする条件を整える事自体がまず無理、だと思いますけれど」

    桑田「だよなー。アイツと好んで絡もうなんて考える奴なんて、こん中にいねーだろ」

    苗木「……じゃあ、ボクがその役目を引き受けるよ」

    大和田「オゥ、そうか。んじゃあよろしく頼むぜ、苗木!」

    舞園「けど、苗木君だけで大丈夫でしょうか?」

    セレス「いえ、むしろ苗木君が一番この中で相応しい事は確かでしょう。彼はわたくし達全員を指して“愚民”などと呼んでいますし。苗木君が一番、彼のその言葉を受け入れているのではありませんか?」

    苗木「まあ、ボクはみんなとは違って“超高校級の幸運”……クジで選ばれただけの“普通”の高校生だからね。身の程を弁えてるのは事実だよ」

    石丸「では、十神くんの事は苗木くんに任せるとしよう!」

    不二咲「じゃあ、その問題はひとまず片付いたとして……新しく見つかった物を報告し合おっかぁ」

    大和田(結論から言うと、まァ全員結局は似たり寄ったりな事しか話せなかった。ただ唯一、石丸と舞園の報告にあった“寄宿舎エリアの倉庫”は気付かなかったけどな)
  13. 13 : : 2014/05/16(金) 19:32:03
    セレス「ふふ、良かったではないですか。これでまた、わたくし達の生活が豊かなものになりますわ」

    朝日奈「そーだね! プールもあったし!」

    大神「それだけでなく、更衣室には一通りのトレーニングができる機器もあったな。女である我は女子更衣室の方しか確認できていないが……」

    大和田「あァ。男子更衣室にも結構立派なトレーニング機器、あったぜ。あそこはオレもちっとぐれー使うかな……」

    朝日奈「じゃあ大和田も一緒に泳ぐ!?」

    大和田「誰が泳ぐか」

    朝日奈「もー、つれないなぁ」

    山田「立派な図書室もありましたが……漫画やラノベの類が無かった事は許せませんな!」

    桑田「あー、だよな! ちっとぐれー漫画も置いとけっての。その辺学校ってのはわかってねーよな!」

    石丸「何を言う! あの図書室には先人たちの偉大な知恵が揃った宝庫ではないか! 漫画など読むに値しないもの、無くて当然だ!」

    桑田「オメー、カタブツすぎんだろ……」
  14. 14 : : 2014/05/16(金) 19:32:42
    舞園「あ、あの……」

    セレス「どうかなさいましたか?」

    舞園「ここでの生活が豊かになる……のは、閉じ込められてる間の事を考えるといい事ではあるんですけど……。誰か、脱出に繋がる手掛かりは見つけられなかったんですか?」

    苗木「そ、それは……」

    葉隠「……」

    大神「……」

    大和田(誰も、何も言わなかった。いや、言えなかったんだろーな。それはつまり、誰も何も見つけられなかった、って事だ)

    霧切「……少しずつ、手掛かりは集まっていると思うわ」

    大和田(だが、そんな状況に光を差し込んだのは……霧切だった)

    舞園「本当ですか!?」

    霧切「ええ。今はまだ具体的なところまでは掴めていない上に、手掛かりに繋がりそうな情報を元に浮かんでいるいくつかの推論の取捨選択の段階だから、詳しい所まで話せるわけにではないけれど」

    石丸「確実に話せる情報だけで構わない! 教えてもらえないだろうか?」

    霧切「そうね……みんなは図書室に会った封筒の中身は見た?」

    苗木「あ、それってもしかして、希望ヶ峰学園閉鎖についての……?」

    霧切「ええ。あの手紙の内容によると、“人類史上最大最悪の絶望的事件”というものが少なくとも一年以上前に起こっているようだけど」

    石丸「たしかに、そのような文面だったな」

    大和田「けどよ、そんな大規模な事件なら当然騒がれてるはずだよな? にしちゃ、オレは聞いた事ねェぜ」

    桑田「オレも……初めて聞いたな」

    不二咲「私も……そんな事件の情報、実は見た事も聞いた事もないんだよねぇ」

    大神「であれば、一体どういう事なのだ?」

    霧切「パッと思いつく限りで、二通りの解釈が出来るわ」

    セレス「と、仰いますと?」
  15. 15 : : 2014/05/17(土) 15:25:33
    霧切「一つは、一年前から徐々に水面下で進行している事件という解釈よ。この場合、政府や場合によっては国連なんかの規模で事件の存在を一般には隠蔽しているとも取れるわ」

    山田「なるほど、でしたら我々が知らないのも無理はありませんなあ」

    セレス「いいえ、おかしいですわ」

    葉隠「へ? おかしいって、どうしてだ?」

    セレス「我々ならばいざ知らず……十神君も知らないようでしたから。たとえどんな規模で隠蔽された事件であったとしても、彼が知らないという事はあり得ないのではありませんか?」

    不二咲「たしかに、そうかも。十神財閥はかなり大きい組織だし……世界を裏から操る“真の支配者層”に含まれる、なんて言われたりするくらいだから、十神君が知らないっていうのは、考えにくいかなぁ」

    霧切「なら、この可能性はひとまず除外するとして。もう一つの解釈は、単純にここに書かれている事が全くの出鱈目……つまりフィクションだという解釈よ」

    苗木「身も蓋もないね……」

    葉隠「けどよ、リアルな話、それが一番現実的っつーか……そうであって欲しいというか」

    大神「だが、普通に考えれば完全に出鱈目と捉えられてもおかしくない情報だ。そんな物を置いておく意味はあるのか?」

    セレス「それに、あの封筒も手紙も、それなりに劣化しているようでしたし。わざわざこの“コロシアイ学園生活”の為だけに用意した小道具としては手が込みすぎのようにも思いますわね」
  16. 16 : : 2014/05/17(土) 15:26:19
    舞園「あの、それで……あの手紙が脱出の手がかりになるんですか?」

    霧切「なる、かもしれないわよ」

    山田「と、言いますと?」

    霧切「私が今挙げた二つの解釈は、『パッと思いつく限り』の解釈とはさっき言ったわね」

    石丸「うむ。……む? では熟考した上での解釈はどうなのだ?」

    霧切「……まだ、結論を出すには情報が足りないのよ」

    苗木「つまり、他に情報が集まれば脱出の手がかりになるかもしれないって事!?」

    舞園「でも、そんな手掛かりなんて……」

    霧切「ないとは言い切れない筈よ」

    舞園「どこにですか?」

    霧切「じゃあ訊くけれど、倉庫にあったものや図書室の本は隅から隅まで、全て調べきったと言えるのかしら?」

    大和田「図書室の本なんざ、オレは一冊も調べてねェな……倉庫についちゃ、存在に気付いてすらいなかったぜ」

    山田「僕は図書室の本は少し調べただけでしたな……それも創作の際に有用そうな専門書などを少々漁った程度ですが」

    苗木「倉庫の方は、山田クン結構漁ってたよね?」

    山田「はい……けどやっぱりコーラがなァァァァい! コーラはどこにあるんだァァァ!」

    大神「む? コーラが欲しいのか?」

    山田「ええ……この学園に閉じ込められてからというもの、一滴も飲めておりませんからな……」

    大神「ならば、あとで我の部屋に来るといい。以前にモノモノマシーンを回した際にコラコーラが出たのだが……我は炭酸飲料は飲まんのでな。持て余しておったところだ」

    山田「えッ! ホントにッ!?」

    大神「ああ。貰ってくれると助かる」

    山田「キターッ! 大神さくら殿のファインプレー! これは来ました!」

    朝日奈「急に山田のテンション上がったけど大丈夫なの!?」

    葉隠「あれはもう一種の中毒だべ……」

    霧切「……話を戻すけれど、今言ったようにまだ探索が不十分な場所もあるわ。そこに情報がないとも言い切れないじゃない」

    舞園「そう、ですね。なんだか焦ってしまって、すみませんでした」

    桑田「舞園ちゃん」

    舞園「……大丈夫ですよ。さっきの裁判後の桑田君の言葉、ちゃんと心に響いてますから」

    桑田「……そっか。ならいいんだけどよ」

    大和田(桑田と舞園の間になんかあったみてーだな。ま、なんでもいいけどよ)
  17. 17 : : 2014/05/18(日) 10:23:45
    石丸「それでは、他に報告する事や議題に上げたい事などはないかね?」

    葉隠「正直、『議題』っつー言葉を今はあんまし聞きたくねー気分だべ」

    山田「同感ですな。学級裁判を終えて、まだ一日も経っていないわけですし」

    不二咲「そういえば、一個だけ、いいかなぁ?」

    石丸「む、何だね?」

    不二咲「えっと、さっきちょっと確認したんだけど……捜査中には荒らされてた視聴覚室が綺麗になってたんだぁ」

    苗木「視聴覚室が?」

    大神「ああ、そうであったな。視聴覚室に入った際にモノクマが現れ、『事件の痕跡は責任を持って消す』などと言っていた。おそらく裁判中に掃除でもしたのであろう」

    不二咲「うん……だから、一応桑田君に部屋の確認だけしてきてもらえるかな?」

    桑田「腐川の死体……か」

    霧切「……直視するのが怖い?」

    桑田「いや、大丈夫だ。捜査の時、散々調べたからな。……じゃあ、行ってくる。ちょっと見てすぐ戻るぜ」

    大和田(そう言って桑田は食堂を後にした。それも束の間、すぐに戻ってきて……)
  18. 18 : : 2014/05/18(日) 10:24:15
    桑田「マジかよ……死体どころか、ちょっとだけ床についてた血痕なんかもゼンブ綺麗になってやがった」

    苗木「あの“残鉄剣”も綺麗になってたの?」

    桑田「いや、残鉄剣は死体と一緒に消えちまってたな。一応事件前にあれを仕舞ってた引き出しの中も見たけど、空になってたしよ」

    朝日奈「まあ、それは別にいい事なんじゃない? あの刀が残ってたら、見る度に憂鬱になりそうだし」

    桑田「そーだな……もう見たくねーよ、あの刀は」

    石丸「……提案なのだが、あのモノモノマシーンを回すこと自体は構わないとしても、少しでも凶器になりそうな物が出た場合、報告会の際に報告することを義務付けないか?」

    桑田「いや、そりゃ逆にマズいだろ。今回の裁判では、あの刀の存在を知ってる奴って点でも容疑者を絞り込む手掛かりになったんだし」

    霧切「推理の材料として機能する、という事ね」

    大和田「けどよ、そりゃ事件が起こるっつー前提の話だろ? 殺人がそもそも起きなけりゃ、あんな胸糞悪ィ裁判なんぞねーんだ。考慮する必要なんてあんのか?」

    セレス「起こらないに越したことはありませんが、だからと言って対策をしないのは愚策ですわよ。起こさせないための抑止力にもなりますし」

    石丸「そう、だな……」

    苗木「けど、石丸クンの言い分もわかるんだよね。じゃあさ、今回みたいに全員じゃなくて、誰か一人や二人くらいに何を引いたか伝えるっていうのはどうかな?」

    霧切「妥協案としてはその辺りかしらね。それなら少なくとも『出所不明の凶器』にはならないし」

    桑田「それならいいんじゃねーか?」

    石丸「うむ、感謝する!」
  19. 19 : : 2014/05/19(月) 18:13:38
    セレス「さて、話すべきことが他にないのでしたら、そろそろ夕食を頂きませんか? 今日はいろいろあって疲れましたし、早く食事を頂いて眠りたいですわ」

    山田「そうですな……正直、腹ペコですぞ」

    大和田「お、そうだ。おい、男連中に提案なんだけどよ、メシ食い終ったら一緒に風呂入んねーか? せっかく大浴場が解放されたんだしよ!」

    石丸「おお、いいことを言うじゃないか。裸の付き合いは対人関係を円滑に進める素晴らしい文化だ。僕は付き合うぞ!」

    桑田「むさっくるしいけど、まあたまにはいいんじゃねーか?」

    葉隠「そういうイベントなら俺は大歓迎だ! 危険もなさそうだしな」

    苗木「じゃあ、ボクも行こうかな。断る理由もないし、みんなとの絆を深める絶好の場だしね!」

    山田「えーと、これは男子全員強制参加の流れですかね……ではこの僕も行かざるを得ませんな」

    大和田「ま、男子全員っつっても、十神以外だけどな」

    不二咲「……いいなぁ」

    朝日奈「ん? 不二咲ちゃんもみんなでお風呂入りたいクチ? じゃあ女子もみんな集まってお風呂入ろっか!」

    不二咲「えっ!? い、いや、ダメだよぉ……私は……」

    大神「フム。そういえば探索の際も、我と共にプールの更衣室に入ろうとは決してしなかったな」

    舞園「人前で裸になったり、服を脱いだりする場に入る事が嫌なんですかね?」

    霧切「その辺りは人それぞれだし、仕方ないんじゃないかしら。私も気持ちはわかるもの」

    セレス「霧切さんも、人前で肌を晒すことが苦手なのですか?」

    霧切「肌を、というよりは……“手袋の下を”かしら」

    大神「そういえば、霧切はいつも手袋をしているな。外せと強要するつもりはないが、生活に支障はないのか?」

    霧切「ええ。日常生活に不便が無いよう、特注で作られている手袋だもの。心配には及ばないわ」

    舞園「そこまでするという事は、よっぽどの事情があるんですね……」

    霧切「……私の話は別にいいじゃない。それよりも、女子もみんなでお風呂に入るという話はどうするのかしら?」

    セレス「その場合、女子と男子のどちらが先にお風呂を頂くかという問題を先に解決すべきではないかと思いますが」

    大和田「あァ!? 先に話し出したのはオレらの方なんだ。ゼッテェ譲らねーぞ!」

    桑田「いやオレは別にこだわんねーけど」

    山田「大和田紋土殿は一番風呂にこだわるタイプのようですな」

    セレス「レディーファーストという言葉をご存知ありませんの?」

    大和田「ファストフードがどうしたってんだコラァ!」

    セレス「ご存知ないようですわね」
  20. 20 : : 2014/05/19(月) 18:14:57
    舞園「えっと、私は別にどちらでも構わないので……先に夕食の用意、してきますね」

    桑田「あ、じゃあオレも行くぜ。おいオメーら! 喧嘩の前に和食か洋食かだけ申告しろ!」

    大神「ならば我も行こう。風呂の順番にこだわりはないからな」

    山田「桑田怜恩殿もこだわりはないタイプで? いや僕も別にこだわりませんが」

    桑田「おう、別にどっちでもいーぜ。こだわってる連中に順番決めは任せりゃいいだろ」

    朝日奈「でも、私も一番風呂がいいよ! その方が気持ちいいしね、気分的にも!」

    苗木「へえ、朝日奈さんもこだわるタイプなんだ?」

    朝日奈「というより、私の場合は水泳とか陸上とかいろいろスポーツやってるからさ。一番を取れるならそれが何より“イチバン”なんだよ!」

    桑田「あーもう、その話は後だ後! さっさと申告しねーと晩飯作れねーだろーがよ!」

    大和田(ちッ、メンドクセー。それこそどっちでもいいっての。だがま、風呂はメシ食った後の話だからな……。さっさと申告を済ませたオレ達は、厨房に向かって行く舞園、桑田、大神の三人を除いた面子で風呂の順番について話し始めた)

    大和田「で、どーやって決めんだ? 言っとくが説得は無駄だぜ……」

    セレス「では公平に、じゃんけんでも致しますか?」

    石丸「なるほど! それならば恨みっこなしだな!」

    大和田「待てやコラァ! その女は“超高校級のギャンブラー”なんだろ? 運勝負は分が悪ィじゃねェか!」

    セレス「あら、そちらにも一人、いらっしゃるではありませんか。“超高校級の幸運”苗木誠君が」

    苗木「えっ、ボ、ボク!? いやいやいや、無理だって! だってボクの幸運ってクジで選ばれたってだけだよ!?」

    石丸「だがそれも相当な低確率の中から選出されたわけだから……低確率を当てる事に長けた才能とも解釈できるぞ!」

    不二咲「なら、『超高校級のギャンブラーに勝つ』っていう低確率を当てる事も無理じゃないんじゃないかなぁ」

    苗木「いやむ、無理だと思うけど」

    大和田「無理か無理じゃねェかはわかんねーけどな。それでもセレス、オメェに分がある事に違いはねーだろが!」

    セレス「わかりました。ではわたくしではなく……そうですわね。朝日奈さん。代表でじゃんけんに出てくださいます?」

    朝日奈「え、私?」

    セレス「彼女ならば、良くも悪くも“普通”の運をお持ちのはずです。それならば文句はありませんでしょう?」

    大和田「そーだな……まァそこが落としどころか。いいぜ、じゃあこっちは……オイ山田! オメェが出ろ!」

    山田「へ? 何で僕!?」

    葉隠「俺が出てもいいべ?」

    大和田「いや、オメェはねーよ。三割しか勝てねェんだろーが」

    葉隠「ヒデーぞ! もしかすっと、『三割の確率で完全勝利できる』方かもしんねーだろ!」

    霧切「もしかすると、という事は自分でも信じ切れていないんじゃない……」

    葉隠「むぐっ! ……それを言われるとツラいって」

    大和田「ってーワケだ。山田、頼むぜ!」

    山田「えーと、それこそ苗木誠殿に出ていただければいいのでは?」

    大和田「んな事できっかよ。あっちはセレスが出ねェっつってんだ。こっちに有利な奴出してどーするってんだ」

    苗木「いや、でもこれってそもそもさ」

    セレス「苗木君? どうかなさいまして?」

    苗木「い、いや、うん。な、何でもないよ……」

    山田「うぅ、責任と期待が……重いですぞ……」

    石丸「ハッハッハ! 安心したまえ、もし負けたとしても山田くんを恨む者はいまい!」

    大和田「あァ。けどな、これだけは覚えとけ……五分五分の勝負でも勝たなきゃならねェ時ってのはあるんだ」

    山田「ヒィィィィ、が、頑張りますゥゥゥゥゥ!」

    朝日奈「じゃあ山田が相手だね! 行くよ! じゃん、けん――」
  21. 21 : : 2014/05/19(月) 18:15:49
    大和田(結論から言おう。三回勝負で、山田は全敗した)

    大和田「オメェ……一勝も出来ないって弱すぎんだろ」

    山田「せ、せめて一勝くらい出来ると思ったのですが」

    苗木「やっぱり、こうなると思ったんだ……」

    石丸「む? どういう事かね?」

    苗木「だってさ、セレスさん自体が勝負に出なかったとしても、例えばセレスさんが心の中で『朝日奈さんが全勝する』方に賭けてたとしたら……」

    不二咲「朝日奈さんが全勝する確率は跳ね上がる……って事ぉ?」

    霧切「それって、もはや才能というより運命を捻じ曲げるような異能力に近いと思うのだけど」

    セレス「いえ、大方合ってはいますが、詳細には違いますわ。わたくしは『朝日奈さんが全勝する』事に賭けたのではなく、先ほどの“朝日奈さんの言葉”に賭けたのです」

    朝日奈「私の言葉?」

    セレス「ええ。あなた、先ほどこんなことを仰っておりましたわね?」


    朝日奈「でも、私も一番風呂がいいよ! その方が気持ちいいしね、気分的にも!」

    苗木「へえ、朝日奈さんもこだわるタイプなんだ?」

    朝日奈「というより、私の場合は水泳とか陸上とかいろいろスポーツやってるからさ。一番を取れるならそれが何より“イチバン”なんだよ!」


    セレス「わたくしはその朝日奈さんの“イチバン”への……いえ、“勝利する事”への執着に賭けたのです。真に勝ちたいと思っている者に、勝利の女神は微笑むものですわ。百パーセントではありませんけれどね」

    大和田「ちッ、クソが……全部計算尽くってわけかよ」

    石丸「だが、彼女の真意に気が付けなかったのは僕らの方だ……負けは負けと認めるほかあるまい……!」

    朝日奈「ま、つまりは私の実力勝利って事だね!」

    山田「ぐぬぬ、同人界で成功するのにも運という要素は必要不可欠……にもかかわらず完全敗北してしまうとは、この山田一二三、一生クラスの不覚……!」

    桑田「お、どーやら決まってたみてーだな。見た感じ女子の勝ちか?」

    セレス「ええ。朝日奈さんがじゃんけんで三連勝してくださったおかげですわ」

    朝日奈「えへへー、ぶい!」

    大神「ふむ、朝日奈よ、よくやったな」

    舞園「ですけどお風呂の前に、晩御飯ですよ!」

    大和田(クッソー、悔しいけど仕方ねェ。飯食って女子連中が上がるのを待つか……)

    石丸「それでは、頂くとしよう!」
  22. 22 : : 2014/05/19(月) 18:16:39
    大和田「行っちまったな……」

    大和田(飯が終わり、女子が食堂から出て行き。オレら男子は食堂で集まって上がってくるのを待つ事になった)

    石丸「大和田くん! あまりそう恨みがましい視線を向けるものじゃない!」

    桑田「そーだぜ。それにこれから“お楽しみ”が待ってんだからさあ!」

    山田「と、言いますと?」

    桑田「せっかく女子が風呂入ってんだ……こりゃ覗くっきゃねーだろ!」

    葉隠「おー、桑田っち、それナイスアイディアだべ!」

    大和田「ケッ、アホらしい。オレはそういうのはパスだ」

    石丸「というより、それは人としてやってはいけない事だろう!」

    桑田「ゲ、そういやイインチョもいたんだったか……ヤベーよ、マジヤベーよ……どう説得すりゃいいんだ、これ?」

    山田「……石丸清多夏殿」

    石丸「何だね!?」

    山田「これもそう、勉強、勉強なのですよ」

    石丸「……何だと?」

    山田「実際の女性の体の造形を知る、という事。これも“学ぶ”という事なのではありませんかな?」

    石丸「な、何だとッ!? それは……ぐ、うぬぬ」

    山田「特に、僕は同人作家! 描くためには未知を知る必要がある! というわけで桑田怜恩殿、僕の興味は二次元オンリーですが後学の為お供いたしますぞ」

    桑田「その興味は二次元オンリーですがってのが言い訳にしか聞こえねーんだけど、まあいいや。山田も男って事だもんな! そりゃ行くよなあ!」

    苗木「……桑田クン」

    桑田「あんだよ? 苗木もカテー事言うんじゃねえだろうな?」

    苗木「いや、実は謝らなきゃいけないことがあるんだ」

    桑田「何だよ……そりゃ今言わなきゃいけねー事か?」

    苗木「うん、実はね。ボクがモノモノマシーンで引いた物……風呂桶って言ったけどさ」

    桑田「そういやんな事も言ってたな……」

    苗木「あれ、風呂桶の形してはいるけど、“男のロマン”ってアイテムなんだよね」

    桑田「男の……ロマン?」

    苗木「そうなんだ。ボクは持ってるんだよ、男のロマンを!」

    桑田「……へえ、苗木。オメーも話せるじゃねーか! じゃあ行こうぜ、男のロマンを見つけによ!」

    葉隠「おう、赤信号、みんなで渡れば怖くないってな!」

    石丸「ぐ、ぐうう……僕は……この場を見逃してしまっていいのか……!?」

    大和田「なあ、オメェら」

    桑田「あんだよ!? 来ねーなら来ねーで別にいいんだぜ?」

    大和田「気付いてねーみてェだけどよ。そこにいる不二咲も一部始終聞いてんぜ……」

    桑田「……え?」

    不二咲「あ、あはは……」

    葉隠「するってーと、これは……」

    桑田「てか、なんでオメーここに居るんだよ!?」

    不二咲「え、あ、えっと……それは……」

    山田「そういえば先ほども……人前で肌を見せるのには抵抗が、という話になっておりましたしなあ」

    大和田「後で一人で入るつもりなんじゃねーか?」

    不二咲「え、えっと……う、うん、そうなんだぁ! だから……」

    石丸「不二咲くんもここで待機していた、というわけだな」

    苗木「けど、これはさすがに、決行するのはマズいよね……」

    葉隠「つーか、不二咲っち……」

    不二咲「な、何……?」

    葉隠「頼む! この事は女子連中にはぜってー言わんでくれ! こんなことがもしオーガの耳に入ったら、俺ら肉団子じゃ済まないべ!」

    不二咲「あ、う、うん。安心してよ……言わないからぁ」

    桑田「ほ、ホントだよな? マジに頼むぜ……」

    大和田(こうして、アホ共のアホらしい計画は見事、実行前に失敗に終わったのだった、ってか。あー、アホらし)
  23. 23 : : 2014/05/20(火) 19:07:58
    山田「ふむ、ここが大浴場ですか」

    苗木「ここがって……探索の時にも一度来てるじゃない」

    山田「それはそうなのですが、やはりこう、実際入浴するとなると気分が違うものですよ、気分が」

    石丸「うむ! それはその通りだ!」

    大和田(女子連中が風呂を上がったという報告を聞いたオレ達は、すぐさま大浴場へと足を踏み入れた)

    桑田「いやー、でもこう、デケー風呂っていいよな! なんかテンション上がるっつーかさ!」

    大和田「おう、それは分かるぜ! オレも銭湯とか好きだからな!」

    石丸「おお、いいじゃないか、銭湯! だが、大和田くん……その髪型で銭湯への入場は許可されていたのか……?」

    大和田「まァな。その辺はいろいろあんだよ」

    大和田(チームに実家が銭湯の奴がいるから、なんて言ったら石丸の奴反則だとか何とか言いそうだしな)
  24. 24 : : 2014/05/20(火) 19:08:32
    苗木「とにかくさ、まずは体洗っちゃおうよ」

    石丸「うむ、洗う前に湯船につかるのはマナー違反だからな! しっかりと体を洗ってからじっくりと浸かろうではないか!」

    桑田「メンドクセー……軽ーく洗ってから浸かりゃいいじゃん」

    石丸「ダメだ! それでは湯船に雑菌がたまってしまうだろう! それでは意味がないじゃないか!」

    大和田「つか、今日は特にちゃんと洗ってから浸かった方がいいだろ……」

    葉隠「へ? 何でだ?」

    苗木「殺人事件の捜査で……血とかも結構、触ったりしてるだろうしね……」

    桑田「……おう、ちゃんと洗ってから浸かるわ」

    山田「その方が、いいでしょうな……」

    大和田(多少湿っぽい空気になっちまったが、それでも何とか桑田辺りが空気を盛り上げようと明るいトークを広げつつ、オレ達はしっかりと体を洗った。この日一日の、いろんな意味での……おそらく、『江ノ島を死に追いやった責任』みてーなものを含んだ“汚れ”を落とすってのもあったのかもしんねェな)

    苗木「さて……じゃあそろそろ、浸かろうか」

    石丸「待ちたまえ、苗木くん! 湯船にタオルはマナー違反だぞ!」

    桑田「オメーはマナーマナーうっせーんだよ! ……けどま、男らしくねーのは確かだぜ、苗木ィ!」

    苗木「えっ!?」

    山田「そうですな、腰の物を外してから入るべきですぞ?」

    苗木「ちょちょちょっと、え、そういう流れなの!?」

    葉隠「はぁー、いー湯だべ……」

    大和田「あァ、まったくだ……」

    石丸「こら、待ちたまえ苗木くん!」

    桑田「おっしゃ、捕まえたぜ!」

    山田「桑田怜恩殿、グッジョブ!」

    苗木「うわっ、く、桑田クン!?」

    大和田(アイツらうるせーな)

    山田「それではタオルをばばっと!」

    苗木「うぅ……ここまでする必要あるの?」

    石丸「ハッハッハ、うむ、これでようやく真の意味での裸の付き合いができるな! それでは我々も湯船に浸かるとしよう!」

    桑田「だな……って大和田……」

    大和田「あン? んだよ?」
  25. 25 : : 2014/05/20(火) 19:09:13
    桑田「オメー、リーゼントといたら超ロン毛なのな……」

    山田「まあ、あの長さですからな……そもそもの髪の量も多くなければ不可能でしょうし、予測は出来て然るべきでしたが」

    葉隠「あー、たしかに大和田っち、リーゼントのイメージしかねーもんな。といたとこなんか想像しようって気にもならんかったべ」

    苗木「え、誰!? ってか、何!?」

    山田「えーと、僕がモノモノマシーンを引いた時に『赤の着ぐるみ』というのが出たのですが……それの黒いバージョンですかね?」

    葉隠「ちげーって、俺だっての! 葉隠康比呂だ!」

    石丸「む、むう……君も大和田くんに負けず劣らず……いや、明らかに大和田くん以上の髪の量だな……」

    葉隠「まあ、たしかに人前で髪型崩したことはほとんどねーけどよ」

    苗木「ほとんどって事は、何度かはあるって事?」

    葉隠「まーな。さすがに今回みてーに、複数人で風呂入ったりしたら見られっしよ」

    山田「桑田怜恩殿の髪も寝ておりますしな」

    桑田「ま、そりゃ風呂だしな。山田だって一本ヅノのみてーな髪型じゃなくなってんじゃねーか」

    山田「そりゃあ、風呂ですからなあ」

    大和田「苗木もアンテナ立ってねえしな……」

    苗木「アンテナって……あれはただくせ毛なだけだよ」

    葉隠「そんな中でも、石丸っちは安定の髪型だべ」

    石丸「む、僕か?」

    桑田「石丸はしゃーねえだろ。変になりようねーし」

    山田「普段よく見るクラスメイトの変な髪型もまた、修学旅行や合宿などのお風呂の醍醐味だと思うのですがな」

    大和田「オレもリーゼントにゃ誇り持っちゃいるけどよ、さすがに今は風呂だしな……山田の意見に同意しといてやるよ」

    石丸「ふむ、そういうものなのか? たしかに、君達の髪型が普段と違っていて新鮮な気持ちではあるが……」

    桑田「だろ? そーいうモンなんだよ。オメーもちっとぐれー融通効かせろって!」

    石丸「いや、融通を聞かせるというのは妥協するという事だ! 僕は秩序を保つことに妥協などできない! だからこそ、髪型ひとつとっても学生としてあるべき形を保たねばならないのだ!」

    大和田「おい桑田ァ……変なスイッチ入れんじゃねーよ。せっかくいい気分で風呂入ってんだからよ」

    桑田「コイツのスイッチってどこにあんだよ……わかんねーよ……」
  26. 26 : : 2014/05/20(火) 19:09:42
    苗木「え、えっとさ。でもホントに気持ちいいお風呂だよね!」

    石丸「ああ、そうだな。肉体的なものだけでなく、精神的な疲れも癒される気がするぞ」

    葉隠「この風呂に入れるってーのを考えると、ここでの生活も存外悪くねー気がしてくんな」

    山田「出たい事に変わりはありませんがな……」

    葉隠「それを言うなって……」

    石丸「……さて、それでは僕はそろそろサウナに向かうとしよう。君達はどうする?」

    桑田「あー、オレはパスだわ。なんかこの気分のまま、今日は寝てーっつーか……実はそろそろ眠くなってきてんだよな」

    苗木「桑田クン、頑張ってたもんね」

    桑田「オレはオレの疑い晴らすのに必死だっただけだって。頑張りたくて頑張ったわけじゃ、ねえよ」

    山田「まあ、殺人事件の捜査なんて、進んで頑張りたい類のものではありませんからな」

    葉隠「俺だって、もう勘弁してほしいって思うかんな」

    大和田「オイオイ、辛気くせェ話はその辺でやめとけ。気が滅入るだけだぜ」

    石丸「そうだな……」

    苗木「けど僕も桑田クンと似たような感じなんだよね。桑田クン程活躍できなかったとはいえ、疲れちゃったし。ボクもそろそろ寝たいかな」

    山田「僕も、この後大神さくら殿にコーラを頂く約束がありますからな……夜時間前に尋ねておきたいですぞ」

    葉隠「俺は……サウナはちょっと苦手だべ。昔痛い目見たかんな……」

    苗木「サウナで痛い目って……」

    葉隠「機会があったら話してやるべ」

    石丸「となると、大和田くん、君はどうだね?」

    大和田「あァ? サウナか? いいぜ、付き合ってやんよ」

    石丸「ほう、意外と話せるではないか。では軽くサウナで語り明かそうではないか!」

    苗木「語り『明かし』てる時点で軽くはない気がするんだけど……」

    大和田「メンドクセェ……」

    桑田「んじゃ、オレらは上がってんぜー」

    苗木「うん、また明日ね、二人とも」

    山田「それではお先に失礼いたしますぞ、石丸清多夏殿、大和田紋土殿」

    葉隠「リアルな話、サウナの中で長時間我慢比べとかすんじゃねーぞ? 後が大変なことになるからな」

    大和田「わーってるよ。オメェらも気ィ付けて戻れよ」

    石丸「ああ、ほどほどにしておくさ!」

    大和田(そう言って、四人は先に脱衣所へと戻って行った)

    大和田「んじゃ、オレらはサウナに移動すっか?」

    石丸「ああ、そうだな!」

    大和田(その後、石丸はサウナの中で政治の事やら経済の事やら、まどろっこしい事ばっかを延々と語り続けた。興味ねーっての。それがあんまりにウザかったから、しばらくテキトーに相手をしてから、テキトーなタイミングでサウナを後にした。石丸の奴は、オレがサウナを出てからもしばらくサウナに入っていたようだ。アイツ、サウナ好きなのか?)
  27. 27 : : 2014/05/21(水) 19:02:44
    大和田「っくあー、うめえ!」

    大和田(風呂を出て着替えた後、まだ夜時間前だという事に気付いたオレは食堂へ向かった。何人かの女子連中が駄弁ってたようで、適当な挨拶をして厨房へ行く。さすがにビールは無かったが、牛乳があったからコップに移し、一気に飲む! サイコーだな、オイ)

    朝日奈「あ、大和田もお風呂の後は牛乳飲むんだ!」

    大和田(そうしていると、いつの間にか厨房に入ってきていた朝日奈がそんな事を言って来た)

    大和田「ん、あァ、そーだな。嫌いじゃねーぜ。オレらが成人してたら、ビールとかもあったのかもしんねーけどな……」

    朝日奈「ビールかあ、ビールねえ。大和田はビールって好きなの?」

    大和田「あァ? まあ好きだぜ。つーか、オメェは未成年の飲酒がどうとか小うるさく言わねえんだな」

    朝日奈「えへへ、私もたまに、お父さんにちょっとお酒は飲まされたりしてたからね」

    大和田「はァん。じゃあオメェもいけるクチか?」

    朝日奈「いやー、それが弱くてさぁ。ちょっと口に入れただけでもう駄目なんだよねえ」

    大和田「へェ。まー体質はしゃーねえよな」

    朝日奈「うん、ちょっと残念だけどね」

    大和田「ま、でもさすがにここにゃねーみてェだ。関係ないっちゃないだろ。それにもしあっても、石丸の奴がうるせーだろうしな」

    朝日奈「あー、だろうね……」
  28. 28 : : 2014/05/21(水) 19:03:22
    大和田「つか、おい朝日奈。オメェ何しに来たんだ? オレと雑談しに来たわけでもねーんだろ?」

    朝日奈「あ、そうだったそうだった。えっと……あ、あったあった」

    大和田「あン? そりゃ……コーラか?」

    朝日奈「うん、さくらちゃんが出てきてから冷蔵庫で冷やしてたのを失念してたらしくて。私はそのお使いだよ」

    大和田「なるほどな。てか、山田の奴まだコーラ飲めてなかったのか」

    朝日奈「みたいだね」

    大和田「ったく、まァこれからモノモノマシーンっつったか? あのガチャガチャでコーラが出たら渡す相手は決まったな……」

    朝日奈「あはは、たしかにそーかも。じゃ、私そろそろ行くね! さくらちゃん、待ってるだろうし」

    大和田「待ってるのはたぶん山田の方だろーけどな……つか、おい走んな朝日奈! コーラがヤベェ事になんだろが!」

    朝日奈「あ、っとと、そうだよね。えへへ、ありがと。そんじゃ、また明日ね!」

    大和田(そんな一幕もありつつ、オレが食堂を後にした瞬間)


    モノクマ『ただいま、夜時間になりました。間もなく、食堂はドアをロックされますので――』


    大和田「……ようやく、そんな時間かよ」

    大和田(アナウンスを聞き、部屋に戻り。ベッドに横になって、まぶたを落とし……そして、長い一日に終止符が打たれた)
  29. 29 : : 2014/05/22(木) 19:20:56
    そろそろ減速すると思います。
    桑田を主人公として動かしやすすぎた反動が……


    大和田(チャイムの音で目が覚めた。体全体がだるい。あんまし寝た気がしない。チャイムの音は……やまない)

    大和田「ったく、こんな朝っぱらから誰だっつーんだ?」

    大和田(呟いてから、今が朝なのか、それともまだ夜時間の明けていない時間なのかも分からない事に気付く。まァ夜時間がってこたないだろーけどな。例のルールもあるしよ)

    大和田「ちッ、しゃーねえ。出るか」

    大和田(だるさを訴え続ける体を無理矢理動かし、ドアを開ける。すると、そこにいたのは……)

    石丸「大和田くん! 遅いじゃないか! みんな心配しているのだぞ!」

    大和田「はァ? 心配? なんのこった」

    石丸「とうに朝になっているのに、君が一向に食堂に現れないからに決まっているだろう!」

    大和田「あァ……もう明けてたのか。わり、今まで寝てたわ」

    石丸「何だと!? き、君という奴は……少しは反省したまえ!」

    大和田「ちなみに、朝のアナウンスからどんくれー経ってんだ?」

    石丸「およそ、五分程度だろうか」

    大和田「んだよ、たった五分じゃねーか」

    石丸「“たった”五分ではない! 五分“も”だ!」

    大和田「オメェ、昨日ちっとは融通効かせろって言われたばっかだろーが」

    石丸「だから僕は妥協することなどできないと言ったはずだ……っと、こうしてはいられない。大和田くんの無事も確認できたことだし、早く食堂に戻らねば。大和田くん、君もちゃんと来たまえよ!」

    大和田「あァ、ちっとしたら行くぜ」

    大和田(そう言って石丸は食堂へと足早に戻って行った。さて、リーゼントキメっか)
  30. 30 : : 2014/05/23(金) 20:08:58
    苗木「あ、大和田クン! ずいぶん遅かったね?」

    大和田「オウ、石丸の奴が来るまで寝ててよ。まァ、まだ眠いんだけどな……」

    石丸「それは根性が足りないからだ!」

    大和田「……あんだと?」

    石丸「根性があれば朝だってしっかりと起きられるはずだ! 無論、規則正しい生活を送っている事は大前提だがな!」

    大和田「はン。規則なんぞに縛られるのは願い下げだぜ」

    セレス「でしたら、校則に縛られずに動いてみてはいかがでしょう?」

    朝日奈「ちょっと! そんなことしたら……江ノ島ちゃんみたいに……!」

    葉隠「うぅ……朝から嫌な事思い出させんなって……」

    苗木「だけど、忘れるのはもっとしちゃいけない事だと思うよ」

    霧切「そうね。彼女たちの死をどう受け止めるかは本人次第だけれど……悼むにしろ、黒幕への敵対心の糧にするにしろ、彼女たちが“生きていた”という事、そして“黒幕に殺された”という事を忘れてしまうのは、死んでいった彼女らへの冒涜だと思うわ」

    舞園「……そう、ですよね。あれを忘れてしまったら、またコロシアイを起こす人が現れるかもしれませんし」

    大和田(“あれ”……江ノ島の処刑。無慈悲で、無残で、理不尽な処刑。思い出しただけでも吐き気がする。そこでオレは、自分の目を覚ました時からの体のだるさの正体が、“人の死”に触れすぎた事によるものだと気付いた)

    大和田「……ちッ」

    大和田(人が死ぬと、どうしても……“兄貴”の事を思い出しちまっていけねーな)

    桑田「記憶にとどめておくってのは大事かもしんねーけど、胸の内に仕舞っといてもいいんじゃねーの? あんま思い出しすぎても、なんつーか、気が滅入っちまうしよ」
  31. 31 : : 2014/05/23(金) 20:09:35
    山田「それでは暗い話題はこのくらいにして、朝食を頂きましょう!」

    大和田「オメェは逆に明るすぎねーか?」

    大神「おそらく、昨日我が渡したコーラの影響だろうな」

    朝日奈「あー、ものすごい勢いで飲んでたよね」

    山田「ええ。山田はエネルギー充填完了! これでしばらくは敵機撃墜に励めますぞ!」

    石丸「うむ、頼もしい限りだ!」

    桑田「いや敵機って何だよ!」

    霧切「……モノクマとか?」

    山田「うぐっ、それは勘弁してほしいですな……」

    不二咲「でも、元気があるのはいい事だと思うよぉ」

    舞園「そうですね。ふさぎ込んでしまうよりは、よっぽどいい状況です」

    桑田「さて、そんじゃあメシ作るかー」

    舞園「そうですね」

    大神「うむ、では厨房へ向かうとしよう」

    苗木「なんというか、すっかり三人とも料理当番だよね」

    セレス「これは、夜時間のルールの罰ゲームを桑田君の分は変えるべきかもしれませんわね」

    山田「たしかに、桑田怜恩殿に関しては機能していないようですからなあ」

    霧切「そうね、少しでも不安要素は減らしておきたいし、いいアイディアじゃないかしら?」
  32. 32 : : 2014/05/25(日) 15:10:07
    苗木「でも、どうやって決めるの?」

    大和田「どうせだ、とびっきりおもしれーのにしようぜ」

    山田「では一日女装など如何でしょう?」

    不二咲「っ、そう、だよねぇ。普通は、嫌だよね……」

    石丸「ふむ、その程度ならば風紀を乱さない程度であれば、別に構わないだろう」

    朝日奈「石丸のお墨付きも出たし、じゃあ決まりだね!」

    葉隠「桑田っちの女装か。見てみたいような、見たくないような……」

    大和田(桑田に着せる衣装の話で盛り上がっている間に、メシの準備が出来たらしく、厨房から三人が戻ってきた)

    舞園「何だか随分盛り上がってますけど、何の話をしてたんですか?」

    セレス「ええ、桑田君のルールの変更についてですわ」

    桑田「何だよ、オレのルールって?」

    苗木「ホラ、今みたいにさ、桑田クンって食事の準備いつもやってくれてるでしょ?」

    石丸「だから夜時間のルールを破った際の罰則が、君に限っては機能していないのではないか、という話になってな」

    大神「なるほど、別の罰則を用意したというわけか」

    桑田「それ、オレのいないトコでやんのかよ……」

    舞園「で、何に決まったんですか?」

    桑田「なんか聞くのこえーんだけど」

    大和田「女装だ」

    桑田「……はい?」

    大和田「だから、ルール破ったらオメェは女装だ」

    桑田「ま、マジかよ……」

    セレス「ええ。一切の容赦もなく、無慈悲に女装していただきます」

    桑田「ち、ちなみに衣装って……」

    朝日奈「安心してよ、ちゃんと用意するからさ!」

    舞園「ふふ、楽しみにしてますね」

    桑田「ちょ、いや、ゼッテー破んねえ! ゼーッタイ、ルール破んねえからオレ!」

    大和田(場に和やかな笑いが生まれる。そのおかげで一時的にでも全員、“昨日のコト”を意識の外に置いた食事が出来た。それがいい事なのか悪い事なのか、オレには判別できねーけどな)
  33. 33 : : 2014/05/25(日) 15:42:04
    桑田・・本編やってからこれ見るとなんか目に暑いものが・・
  34. 34 : : 2014/05/26(月) 19:18:11
    >>33
    スクールモード現象ですか……。


    石丸「さて、朝食も頂いたところで。今日の探索の組み合わせだが……」

    苗木「あ、ボクは十神クンのとこに行くね。そういう約束だったし」

    石丸「ああ、そうだったな。では、苗木くんと十神くんを除いたメンバーで各自チームを作ってくれたまえ!」

    セレス「では今日は、そうですわね……舞園さん、ご一緒しませんか?」

    舞園「ええ、いいですよ。よろしくお願いしますね」

    大神「では我は、そうだな。山田、行くぞ」

    山田「へ? 今まで以上に何で僕!?」

    大神「以前からお主には運動が必要だと思っていたのだ」

    朝日奈「あ、じゃあ一緒に泳ごうよ! ほら、水泳って、ダイエットにもいいって聞くし!」

    大神「ふむ、いいアイディアだな。では三人でプールに行くとしよう」

    山田「え、拒否権なし?」

    葉隠「いーじゃねえか、山田っち! プールで泳ぐのもなかなか楽しそうじゃねえか」

    大神「何なら、お主も来るか? 葉隠よ」

    葉隠「おっ、俺も行っていいんか?」

    朝日奈「もちろんだよ! 人数は多い方が楽しいしね!」

    葉隠「んじゃ、俺もご相伴にあずかるべ」

    桑田「何だよ、みんなでプール? んじゃあオレも行っていい?」

    朝日奈「もちろんだよ!」

    霧切「ふう、決まるのが早いわね。じゃあ石丸君、行きましょう」

    石丸「む、僕か?」

    霧切「ええ、ちょっと見てもらいたいものがあるのよ」

    石丸「ふむ、僕は別に構わないぞ!」

    大和田「で、まァた俺が残んのか。別にいいけどよ」

    不二咲「それじゃあよろしくねぇ、大和田君!」

    大和田「お、おう」

    大和田(何だァ? やたらと嬉しそうにみえるが……気のせい、だよな。たぶん)
  35. 35 : : 2014/05/26(月) 20:06:14
    拒否権なんか聞いちゃくれない♪
  36. 36 : : 2014/05/27(火) 20:53:24
    不二咲「え、えっと、大和田君……」

    大和田「どーした?」

    不二咲「んっと……ええと……な、何でもないんだぁ」

    大和田「そ、そーか」

    不二咲「……」

    大和田「……」

    大和田(不二咲との探索が始まって三十分ほどが過ぎた。けど不二咲はずっとこの様子だ。何だコレ。オレが悪いのか? オレから話振った方がいいのか?)

    大和田「あー……なァ不二咲」

    不二咲「な、何?」

    大和田「オメェそういや、前に『鍛えたい』って言ってたな。ありゃ、なんでなんだ?」

    不二咲「え!? あ、えっと……」

    大和田「そりゃ、大神みてェな最強を目指してるだとか、そこまで行かなくても朝日奈みてェなスポーツ選手目指してるってならわかるけどよ。オメェはプログラマーなんだろ? だったら別に必要ねーんじゃねえか?」

    不二咲「それは……でも……」

    大和田(やべえ、なんか泣きそうになってやがる!)

    大和田「いや、別に言いにくい事なら無理して言わなくていいけどよ」

    不二咲「か、変わりたくて……」

    大和田「変わる?」

    不二咲「うん。強く、なりたくて」

    大和田「へえ……ま、理由までは聞かねェでおくけどよ。オレで協力出来る事ならすんぜ」

    不二咲「え、ホントに?」

    大和田「あァ。正直、オレもこの状況じゃ役に立つ場面なんざ力仕事ぐれーだからな……ちっとでも他にやれることがあんならやりてーしよ」

    不二咲「うん、ありがとう……! 今は無理だけど、覚悟が決まったら、お願いするよぉ!」

    大和田「おう……?」

    大和田(覚悟? 変わる事に対しての覚悟、か? よくわかんねーけど、まァいいか)
  37. 37 : : 2014/05/28(水) 18:58:00
    今更だけど石丸と兄弟にならなかったのはなにか理由があるんですか?
  38. 38 : : 2014/05/28(水) 18:58:43
    あ、勝負してないか
  39. 39 : : 2014/05/28(水) 19:42:52
    >>37 >>38
    そうですね、“まだ”サウナに入っただけです。


    不二咲「なんか、三十分も無駄にしちゃってゴメンねぇ?」

    大和田「別に構わねーよ。やりたい事があるわけでもねえし。いや、単車があんなら“爆走”りてェけどな」

    不二咲「そっか、大和田君って暴走族だもんねぇ。それも超高校級の」

    大和田「おう、まァな。“暮威慈畏大亜紋土”二代目総長だ」

    不二咲「ん、っと、二代目?」

    大和田「ああ、初代総長はオレの兄貴だ。大亜っつーんだけどな」

    不二咲「へえ、でも国内最大級の暴走族なんだよね? そんなチームを作っちゃうなんて、お兄さん凄い人なんだね」

    大和田「ああ……兄貴はスゲー奴だったよ。オレの方がスゲーけどな」

    大和田(そうだ、オレは兄貴よりスゲー。そうじゃなきゃいけねえんだ)

    不二咲「そうなんだぁ……やっぱり大和田君は凄いんだね」

    大和田「……あァ。あたりめーだろ!」

    不二咲「えへへ、じゃあ探索行こっか!」

    大和田「おう、どこ行くよ?」

    不二咲「図書館は……あんまり大和田君、好きじゃないかな?」

    大和田「まァ、そーだな……漫画でもありゃ良かったんだけどよ」

    不二咲「そっかあ。じゃあ……」

    大和田「軽くトレーニングするくらいなら今でも出来るんじゃねえか? ほら、プールの更衣室に機材は揃ってたろ」

    不二咲「あ、でも……」

    大和田「あ? ああ、そうか。女子じゃ男子更衣室に入れねェ、か」

    不二咲「え、あ、うん、そうだねぇ」
  40. 40 : : 2014/06/16(月) 09:24:09
    個人的には
    桑 不 大和 苗 石 には死んで欲しくないな
  41. 41 : : 2014/06/16(月) 09:24:56
    個人的には
    桑 不 大和 苗 石 には死んで欲しくない
  42. 42 : : 2014/06/16(月) 20:37:42
    >>40
    既に生き残り面子については決まっているので、どうなるかはお楽しみですねー。


    大和田「あー、じゃあ男子の誰かに電子生徒手帳借りて入るか? それならいけんだろ。オレが女子更衣室に入るワケにも行かねェしな」

    モノクマ「うぷぷぷ……聞いちゃったよ!」

    大和田「うお! 出やがったなこンのクマ野郎……!」

    不二咲「ホントに神出鬼没だねぇ」

    モノクマ「ボクは……このプリチーな二つの耳で……しかと聞いてしまいましたぞ!」

    大和田「何をだよ……」

    モノクマ「まさか大和田クンが、か弱い子を更衣室に連れ込んで、あんなことやこんなことをしようとしていたなんて……」

    大和田「あんなことやこんなことって何だよ!」

    モノクマ「そりゃあ、文面を察してくださいよ。行間を読んでくださいよ。決まってるじゃありませんか……」

    大和田「な、何にだよ」
  43. 43 : : 2014/06/16(月) 20:38:21
    モノクマ「ランニングや筋トレに決まってるじゃありませんか!」

    大和田「健全じゃねェか!」

    モノクマ「まあ、理由はどうあれ異性の更衣室に入ろうなんて破廉恥なマネは許しませんよ!」

    大和田「別に校則にンな事書いてねえだろうが」

    モノクマ「むむ……では追加しましょう。それなら文句はありませんね?」

    大和田「ちッ……しゃーねェな」

    モノクマ「それじゃあ、追加しとくので確認してね!」

    大和田(それだけ言ってモノクマは姿を消した。間もなく……)

    不二咲「あ、校則……追加されたねぇ」

    大和田「マジだな……他人への電子生徒手帳の貸与禁止、か」

    不二咲「うん、そうみたい」

    大和田「こりゃしゃあねーな。オメェのトレーニングに付き合うにしても、あそこの機器使えねェのはちと面倒だぜ」

    不二咲「……」

    大和田「あん? どうした」

    不二咲「う、うん。いずれ話すよ……」

    大和田「よくわかんねーけど、言いにくい事なら言う必要はねェんじゃねーか。誰にだってそういう事の一つや二つあるだろ」

    大和田(オレにだって……兄貴の事とか、あるしよ)

    不二咲「そっか。……ねえ、大和田君にもあるの?」

    大和田「……無い奴の方が少ねェだろ。ピンキリだろーけどな」

    不二咲「そうなんだぁ……」
  44. 44 : : 2014/07/12(土) 01:34:55
    大和田「ま、それはともかくよ。更衣室には入れねェみてーだし、どうするよ?」

    不二咲「んっと、じゃあお散歩でもしよっか」

    大和田「散歩か。散歩なあ」

    不二咲「えっと、嫌だった……?」

    大和田「別に嫌じゃねェよ。ただ“暮威慈畏大亜紋土”二代目総長のこの大和田紋土がのほほんと散歩なんざ、今まで考えたことも無かったからな……」

    不二咲「えへへ、そっかぁ。でも、たまにはのんびりするのもいいものだよ?」

    大和田「ま、そうかもな……」

    大和田(実際、こんなトコにいたんじゃ“爆走”る事もできねーし……焦っちまうと江ノ島みてェな末路が待ってるだけだ。コイツの言う通り、今はのんびりするしかねえ、か)
  45. 45 : : 2014/07/12(土) 01:35:33
    大和田(それからあとは不二咲とひたすらのんびり、あちこちを歩き回った。新しい発見? ンなもんはねェよ)

    石丸「では、定例報告会を開催しようと思う!」

    セレス「と申されましても、新しい発見など果たして誰かあったのですか?」

    苗木「うーん、ボクは十神クンと図書室で話したり本読んだりしてたくらいだから……」

    大神「気になる事ならばあったぞ」

    セレス「あら、何ですか?」

    大神「セレスも知っているはずだ。探索中、突然校則が追加された事についてな」

    セレス「ああ、そういえばそんな事もありましたわね」

    霧切「他人への電子生徒手帳の貸与禁止、だったわね?」

    葉隠「それに何の意味があるんだ?」

    大和田「あァ、そいつならオレと不二咲が説明できんぜ。なあ、不二咲?」

    不二咲「う、うん。大和田君が私のトレーニングを手伝ってくれるって話になったんだけど……」

    大和田「オレは女子更衣室にゃ入れねえし、不二咲は男子更衣室に入れねえだろ? だから誰かに借りて入ればいいって事になったんだが」

    霧切「そこにモノクマが現れて、校則を追加された……そういう事ね」

    大和田「あァ」

    朝日奈「でもちょっとは安心できるかも」

    大神「そうだな。少々探索の幅が狭くなったことは残念だが」

    山田「それで、他の発見は誰か何かありましたかな?」

    舞園「私は特には」

    山田「僕も……泳いでただけですからな」

    石丸「う、うぅむ」

    セレス「石丸君は浮かない顔ですわね?」

    石丸「いや……あれは僕の中でも、どう判断すべきかまだ悩んでいるのだ」
  46. 46 : : 2014/07/12(土) 16:37:02
    霧切「別にすぐに答えを出さなければいけない類の物でもないわ」

    石丸「それは、そうかもしれないが……」

    苗木「何かあったの?」

    石丸「実は……皆は1-A教室は見ただろうか?」

    苗木「あ、うん。この学園で最初にボクが目を覚ましたのもそこだったはず……」

    桑田「つか、教室がどうかしたん?」

    石丸「ほとんど消えかけていたのだが……たしかに、“日直:石丸”という文字があったのだ」

    不二咲「えっ!? それって……!」

    霧切「判断するにはまだ早いわよ。実際、“石丸”という苗字はありふれたものよ。同姓の別人であってもおかしくはないわ」

    石丸「彼女に心当たりはあるかと訊かれたが……生憎、僕には何も思い当たることが無くてな」

    葉隠「リアルな話、モノクマの悪戯かもしんねーし、気にするような事でもねーべ?」

    朝日奈「う、うん。そうだよね!」

    石丸「そう、だな。だが、何か思い出す事があれば必ず報告しよう」

    霧切「ええ、お願いするわ」
  47. 47 : : 2014/07/12(土) 16:37:33
    大神「それで、他に誰か報告することはないのか?」

    石丸「僕達からは以上、のはずだ」

    山田「では、特に今日は他には何も無さげですな……」

    石丸「ふむ、悩んでばかりいても仕方ないか。では、夕食を頂くとしよう!」

    舞園「そうですね、明日に向けて栄養つけなきゃいけませんし」

    桑田「あ、その前に苗木、今十神のヤローはどうしてんだ?」

    山田「そういえば、見かけませんな」

    苗木「あ、それが……まだ図書室なんだよね」

    霧切「彼はスタンドプレイのスタンスを徹底するようね」

    石丸「だが、勉学に励む姿勢は見習わねばならんな!」

    セレス「彼の行っている“勉学”は殺人トリックについてだと思われますが、それでもですか?」

    石丸「む、ぐぐ……如何なるものであっても、勉学は……いやしかし……!」

    大和田「何でもいいけどよ、そろそろ食おうぜ」

    桑田「そうだな、せっかくの食事が冷める前に食っちまおうぜ」
  48. 48 : : 2014/07/12(土) 16:37:59
    大和田(晩飯を食って、適当に駄弁って。そうこうしてる内にそろそろ風呂に入ろうという話になった)

    大和田「昨日は女子連中が先に入ったからな。今日はオレらが先に風呂貰うぜ」

    朝日奈「んー、まあ仕方ないかあ」

    大神「ローテーションにしておけば無暗な争いも起こらぬであろうしな」

    セレス「ふう、仕方ありませんわね」

    大和田「おう、反対意見はねェみてーだな。じゃあ行くぞ!」

    苗木「あはは、強制参加なんだね……」

    葉隠「ま、これも交流の一つって事でいいんじゃねーか?」

    石丸「うむ、そうだとも! では各自着替えを持って脱衣所に来たまえ!」

    大和田(石丸の奴の仕切りたがりはウゼエが、別に一々言うほどの事でもねえ。ってわけで、オレは部屋に戻って着替えを取り、風呂に向かった。食堂を出る時、朝日奈が不二咲に「今日は一緒に入ろう」みてーな事言ってたが、これを機に朝日奈や大神にもトレーニング頼めれば上々ってトコだろ)
  49. 49 : : 2014/07/12(土) 18:30:18
    期待です!
  50. 50 : : 2014/07/12(土) 23:52:30
    約1ヶ月ぶりの更新!
    おもしろいです!
  51. 51 : : 2014/07/13(日) 15:51:09
    >>49
    >>50

    ありがとうございます!
    更新が空いた分、ちょっと多めに進めます。





    葉隠「いやー、それにしてもいい湯だべ」

    苗木「ホント、気持ちいいよね。一日の疲れが取れるって感じで」

    山田「ここに閉じ込められてから体力と共に精神力もガリガリ削られてますからな。まあ、原稿の〆切前程じゃないですが」

    桑田「〆切ねえ、そんなにキツいもんなのか?」

    山田「生死の境をさまようほどにはキツいですぞ」

    桑田「ゼッテー話盛ってるだろ、それ……」

    石丸「だが、体力や精神力が削られる、というのはその通りだな。唯一の救いは良識的な行動を心がける者が多数を占めているという現在の状況だ。その分、十神君の問題を早めに解決したいところではあるが……」

    苗木「はは、そこは何とか、頑張ってみるよ」

    石丸「うむ、任せてしまってすまないな」

    大和田「つーか、あんな目に合うリスク背負ってまで誰かを殺そうなんて奴、いるワケねえだろ。失敗したらどうなるか、自分の目で見ちまってんだからよ」

    石丸「そう、だな。うむ、その通りだ! 殺人など起こるわけがない!」

    苗木「そうだよ! 起きるわけないし、起こさせやしない! ボク達一人一人がそう意識してればきっと、みんなで一緒に脱出できる!」

    山田「そうですな。そう信じる事が大切なのですぞ」

    葉隠「ちゅーか、そう信じたいべ……そうじゃなきゃこんな状況、やってけねえしな」

    大和田「ま、オレもそいつにゃ概ね同意だ。悪い方にばっか考えんのはあんまし良くねえ」

    大和田(楽観的過ぎる、だの理想論もいいとこだ、だの。んなこたオレ達も分かっていた。だがたとえそうであっても、その場にいる全員がそう口にすることで心の深いトコが少しずつ前を向こうとしだす)

    石丸「さて!」

    大和田「あん? どうしたよ」

    石丸「いや何、少々湯に浸かりすぎたかと思ってな。僕はサウナに向かうとしよう。みんなはどうするかね?」

    桑田「あー、そういやそうだな。んじゃあオレはあがるかな」

    山田「そうですな、僕もそろそろ眠りたいですし」

    葉隠「だな。さっさと寝ちまえばその分妙なコトが起こる確率も減るべ」

    苗木「ボクもそろそろあがろうかな……けど、今日はこの後女子が入るんだし、あまり長時間占拠しないようにね?」

    石丸「む、そうだったな」

    大和田「んじゃあ今日もオレが残るぜ。適当な頃合い見計らって出りゃいいだろ」

    石丸「そうだな。では今日もよろしく頼むぞ、大和田君!」

    大和田「おう」

    苗木「はは、じゃあ二人とも、ほどほどにね……」

    大和田(苗木のその言葉を皮切りに、オレと石丸以外の連中は浴場を後にした。そして残るオレ達はというと)

    石丸「では、行くとしよう!」

    大和田「あァ」

    大和田(サウナへ直行。だが、残るっつったのは失敗だったか? また興味もねえ政治やら経済の話に終始するんじゃねえだろうな……と、思ってたんだが)
  52. 52 : : 2014/07/13(日) 15:51:38
    石丸「ところで、大和田君」

    大和田(サウナに入るなり、石丸はそう切り出した)

    大和田「あんだよ?」

    石丸「君は、この学園生活の中において最も疑わしい人物は誰だと思うかね?」

    大和田「あァ? 疑わしいってな、どういう事だ? 殺し合いが起こってねえ以上、誰かを怪しむ必要なんぞいねえだろ」

    石丸「ふむ、たしかにそうだ。では言い方を変えよう。君は今生存しているメンバーの中で、“最も信用が置けないと思っている人物”は誰かね?」

    大和田「ハァ?」

    大和田(意味が分からねえ)

    大和田「まあ、そりゃあ……やっぱ十神だな。つーか誰に訊いても同じ答えが返ってくるんじゃねえのか? そりゃ十神に訊けば答えは違うだろうけどよ」

    大和田(「ついでに腐川に訊いても違う答えが帰って来ただろうな」……と言いかけたが、それだけは押しとどめることが出来た)

    石丸「ふむ、たしかに、そうか……では、十神君の次に信用のおけない人物は誰かね?」

    大和田「あん? そりゃあ……」

    大和田(……誰だ? 自分の事を話そうとしない霧切か? 胡散臭い言動のセレスか? それとも……いや、待て)

    大和田「てか、何なんだよ? 信用のおけない人物っつーのは。んな事聞いてどうするつもりだ」

    石丸「あ、ああ……すまない。僕も、不躾な質問だという事は心得ている。だが、どうしても……不安なのだ」

    大和田「不安だァ?」

    大和田(そりゃ、こんなコロシアイなんて非現実的な事を強要されてる状況だ。不安になる気持ちは分からねえでもねーが……それが何でこんな質問をする事になる?)

    石丸「ああ。僕は……“僕が疑われているのではないか”と、不安で仕方がないのだ」

    大和田「は? 何でオメェを疑う必要があるんだ。正直言やあ、オメーは煙たがられることはあっても信用だけはされるタイプの奴だろ」

    石丸「煙たがら……!? い、いや、今はそこはいい。だが……ついさっきの事だ。君も覚えているだろう。1-A教室の黒板の件だ」

    大和田「あァ……なるほどな」

    大和田(つまりこいつは、名前が刻まれている事を知られたために自分が怪しまれているんじゃねーか、とそう考えちまったわけか)

    大和田「ま、心配する必要はねェだろ。ここの連中はんな事気にしてオメェへの態度変えないどころか、そこまで結び付けて考えねえくらいには馬鹿だと思うぜ。十神のヤローなら鬼の首を取ったように責めてくるんだろうけどな」

    石丸「そ、そうか……」

    大和田「ま、それほど気にする事じゃねえだろ」

    石丸「う、うむ……。ありがとう、少し、気が楽になったよ」

    大和田「そうか? それならいいんだけどよ」

    石丸「ああ! 大和田君と話せてよかった。では今後ともよろしく頼む!」

    大和田「ああ、よろしくな……」

    大和田(その後、オレ達は少しだけ適当な話をしてサウナを出た)
  53. 53 : : 2014/07/13(日) 15:52:12
    朝日奈「あ、やっと出てきた! もう、遅いよ二人とも!」

    大和田(着替えて、食堂に顔を出すと女子連中が待ちわびたとばかりの表情でこっちを向いた。その直後の朝日奈の開口一番の台詞が、これだ)

    大和田「ちっ、仕方ねえだろ、真面目な話してたんだからよ」

    朝日奈「え? 真面目な話って?」

    大和田「別におおっぴらに話すような内容じゃねえよ」

    石丸「うむ、男同士の話に割って入るなど、無粋だぞ!」

    大和田「お、オメェ意外に話せんじゃねえか」

    石丸「ハッハッハ、当然だろう!」

    霧切「暑苦しい話はもういいわ。それより、お風呂はもう空いたって事でいいのかしら?」

    大和田「ああ、オレ達で最後だ」

    セレス「それでしたら、わたくし達もお風呂を頂きましょう」

    大神「そうだな。今日一日の疲れを取るとしよう」

    舞園「じゃあ、私達は行きますね」

    石丸「ああ、行ってくるといい!」

    大和田「んじゃ、オレは牛乳でも飲むかな……」

    石丸「うむ、風呂上りといえば牛乳だな!」

    霧切「ふう、別にどうしようと勝手だけれど、あまり遅くまで起きていないようにするのよ」

    大和田「わぁってるよ」

    大和田(それだけ言って、オレと石丸は厨房へと向かった)
  54. 54 : : 2014/07/13(日) 15:52:45
    大和田「あン?」

    石丸「む?」

    大和田(厨房で牛乳を一気に飲み干し、すぐに食堂に戻ったオレ達だったが……)

    石丸「どうしたのかね、不二咲君。てっきり君も彼女らと一緒に浴場へ向かったと思っていたが」

    不二咲「あ……えっと……」

    大和田「そういや、誰かと風呂入んのは苦手、なんだったか?」

    石丸「おお、そういえばそのような事も言っていたな」

    不二咲「う、うん……そうなんだぁ」

    石丸「だが、いろいろと難儀だな。今のところは何とかなっているが、それでは今後困る事も出てくるのではないかね?」

    大和田「ま、あんま強要すんのも良くねえだろ。事情だってあるんだろーしな」

    石丸「ふむ、それも尤もだ。すまなかったな、不二咲君!」

    不二咲「う、ううん……! いいんだ」

    石丸「だがくれぐれも、何か困ったことがあったらすぐに誰かに言いたまえよ。何かがあってからでは遅いのだ」

    不二咲「うん、ありがとう!」

    大和田(何かがあってからでは遅い……この学園で起こる“何か”。考えるまでもねえ。だが嫌な想像は極力考えないようにしねえとな)

    石丸「では、僕はそろそろ部屋に戻るが……二人はどうするかね?」

    大和田「あん? そうだな。じゃあオレはここに残るぜ。不二咲一人残しとくのもマズいだろうしな」

    石丸「それもそうか。大和田君ならば不審者が来ても撃退は出来るだろう、安心だな!」

    大和田「ま、そういうこった」

    不二咲「あ、えっと……私の事は気にしなくても……」

    大和田「遠慮なんざいらねえっての」

    石丸「では、僕は戻るぞ。それでは、グッナイだ!」

    大和田「グッナ……? ああ、おやすみだな」

    不二咲「うん、おやすみぃ」

    大和田(オレ達の返事を聞き、満足したように頷いた石丸は食堂から出て行ってしまった。あとに残ったのは勿論オレと不二咲の二人なわけで)

    大和田「……」

    不二咲「……」

    大和田(……沈黙。それだけがこの空間を支配した。なんか話題、あったか?)

    不二咲「あ、あの……大和田君!」

    大和田「あ? んだよ?」

    不二咲「えっと……う、うぅ……」

    大和田(何かを言いたそうな表情だ。だが当然ながら、そんな顔をしたからっつってその何かが伝わるわけじゃねえ。……そのまま、数秒程時が流れ)

    葉隠「お? 大和田っちに不二咲っちじゃねえか」

    不二咲「あ、葉隠君……こんばんはぁ」

    大和田「喉でも乾いたか?」

    葉隠「おう、こんばんはってな。いや喉が渇いたっちゅーか、小腹がすいたんで夜食作りに来たんだっての」

    大和田「あ? オメェ、料理なんか出来たのか?」

    葉隠「失礼だべ! 俺だって食パンをオーブンに入れるくらい出来るって!」

    大和田「トーストかよ……」

    葉隠「大和田っちはトーストは嫌いなんか?」

    大和田「いや、嫌いじゃねェよ。特段好きでもねーけどな。つか、大好物をトーストだとか答える奴ぁ見たことねえ」

    葉隠「ま、そりゃそうか……」

    大和田(頷きながらそう言って、葉隠は厨房へと向かった)

    不二咲「あ、あはは……葉隠君って、面白い人だよねぇ……」

    大和田「まァ、そーだな……」

    大和田(何考えてんのかわかんねえ、とも言うだろうがな。そんな言葉を内心に仕舞い、さて何の話をしたもんかと考え出したところで)

    葉隠「ぎゃあああああああ!?」

    大和田(急に葉隠の叫び声がした!)

    大和田「な、何だァ!?」

    不二咲「何か、あったのかなぁ?」

    大和田(何か……この学園で起こる、“何か”。いや、あるわけがねえ。第一厨房にはさっき、オレと石丸が牛乳を飲みに入ったばっかじゃねえか。それから葉隠が入るまで誰も入ってねえし、オレ達が入った時には何もなかったはずだ。だから……“何か”なんて、あるハズねえんだ。……そう自分に言い聞かせながら、オレと不二咲は厨房へ足を踏み入れた)
  55. 55 : : 2014/07/13(日) 19:52:38
    まさかの展開!?
    期待です!!
  56. 56 : : 2014/07/14(月) 00:42:08
    >>55
    ありがとうございます!


    とりあえずこんなの作ってみました。
    http://www.ssnote.net/groups/567


    今回はこれだけ置いときます。
  57. 57 : : 2014/07/14(月) 02:36:30
    は、葉隠に何が!?
  58. 58 : : 2014/07/14(月) 06:57:42
    おぉ!?
    また事件か?!
  59. 59 : : 2014/07/14(月) 22:14:54
    葉隠「お、大和田っち! 不二咲っち! 大変なものを見つけちまったんだべ!」

    大和田(厨房に入ると、そこには大騒ぎしている葉隠と……あァ?)

    不二咲「何も、無いみたいだけど……」

    大和田(そうだ。不二咲の言う通り、別に変った光景は何もなかった。いつも通りの厨房そのものだ。強いて違うところを挙げるなら、ゴミ箱に空になった牛乳瓶が入ってるくれーだが……)

    葉隠「よ、よく見ろって! ほら、そこだって!」

    大和田(そう言って葉隠が指差したのは……ゴミ箱だった)

    大和田「……牛乳瓶しか入ってねえぞ」

    葉隠「それが問題なんだべ!」

    大和田「……はァ?」

    葉隠「その牛乳瓶、さっきまでたしかに冷蔵庫に入ってたはずだ! 俺は知ってるんだからな!」

    大和田「まァ、そーだな」

    大和田(実際、冷蔵庫から取り出して飲んだ。それは事実だ)

    葉隠「それがいきなり空になってゴミ箱に入ってんだぞ!? これは陰謀だべ! キャトルミューティレーションだべ!」

    大和田「あァ? きゃ、きゃと……? テメェ、まさか猫派ってんじゃねーだろうな!?」

    不二咲「お、大和田君。キャットじゃなくてキャトルミューティレーションだよ」

    葉隠「UFOが牛乳瓶の中身だけ持って行ったんだ! それも瓶二つ分も! その証拠を隠滅するために……わざわざゴミ箱に瓶を捨てて……俺はどうすりゃいいんだって!」

    大和田「……知るか」

    大和田(アホらしすぎて説明する気にもなれねえが……放っておくのも面倒だしな)

    大和田「つーか、その牛乳飲んだのはオレと石丸だ。UFOなんぞいるわけねえだろ」

    葉隠「ヒッ!? つ、つつつまり……大和田っちは地球外生命体なんか!?」

    大和田「だぁっ! なんでそうなる!」

    大和田(それからオレと不二咲で混乱する――まあ混乱の仕方が意味不明だが――葉隠を何とか説得し、どうにか落ち着かせたところでオレと不二咲は食堂に戻った。……葉隠? トースト作って部屋に持って帰ったぞ)
  60. 60 : : 2014/07/15(火) 20:35:12
    葉隠なにやっとんねんwwww
  61. 61 : : 2014/07/16(水) 20:19:11
    朝日奈「もー、不二咲ちゃん!」

    大神「朝日奈よ、そう責め立てるものではないぞ」

    不二咲「あ、朝日奈さん……」

    大和田(葉隠が出て行って暫く、オレと不二咲の二人で何を話したもんかとだらだらしていたところに、女連中が食堂へ戻ってきた)

    朝日奈「けどさー、やっぱりみんなで一緒にお風呂入りたいじゃん、男子みたいにさ」

    大和田「こっちも全員じゃねえぞ、十神のヤローが来ねえしな。ま、アイツがニコニコして“お風呂ご一緒します”なんて言ってくるのも気持ち悪ィだけだけどよ」

    朝日奈「それは……そうかもしんないけど。っていうか大和田!? 何でいるの!?」

    大和田「チッ、居ちゃ悪いかよ」

    不二咲「あ、えっとね……私が一人だと危ないかもしれないからって事で居てくれただけで……」

    大和田「ま、不二咲も女子連中が戻って来たんならオレといるより安心できんだろ。同性同士だしな。そんじゃ、オレも部屋戻るぜ」

    不二咲「あ……」

    大和田(まただ。また不二咲は何か言いたげな表情をこっちに向ける。何なんだ、一体? 不二咲はオレに何を伝えたがってんだ?)
  62. 62 : : 2014/07/16(水) 20:19:19
    モノクマ『ただいま、夜時間になりました――』

    大和田(不二咲達と別れ、部屋に戻り。ベッドで横になりながらこれからオレはどうすればいいのか、なんてガラにも無い事を考え込んでいると、忌々しい声のアナウンスが流れた)

    モノクマ『ではではいい夢を、おやすみなさい……』

    大和田(おやすみなさい、なんて言うが、どうにも眠れねえ。……昨日までは、さすがにいろいろあって疲れて寝ちまってたが、本来オレは夜型だからな)

    大和田「……クソッ」

    大和田(こんなわけのわからねえ状況が続いてんだ。無心で寝転がるなんて事が出来るわけもなく……いろんな事が脳裏をよぎる。例えば、腐川と江ノ島の事……。例えば、生き残ってる連中の事……。例えば、チームの奴らの事……。例えば、兄貴の事……)

    大和田「ちッ」

    大和田(ヤメだヤメだ。気が滅入るだけだぜ。暗い考え事はやめにして、オレはただひたすらにバイクと犬の事について考える事にした。そうしている間に……睡魔がやって来て……)
  63. 63 : : 2014/07/16(水) 20:19:38
    モノクマ『オマエラ! 朝です、七時になりました。起床時間ですよー!』

    大和田(アナウンスの音で意識が覚醒する。そこでオレは、あのあとどうにか寝られたという事を実感した)

    モノクマ『さあて、今日も張り切っていきましょう!』

    大和田(モノクマのそんな変わり映えのしない〆の言葉を聞き、リーゼントをキメようとしたところで……)

    モノクマ『あ、それから。生徒諸君に大事なお知らせがあります。準備を終えたら食堂に集合するように!』

    大和田「……大事なお知らせだァ?」

    大和田(ちッ、嫌な予感しかしねえ。だが行くしかねェんだよな。ケッ、胸糞悪ィぜ)
  64. 64 : : 2014/08/04(月) 16:42:49
    期待です!
  65. 65 : : 2014/08/04(月) 20:40:48
    期待あげ
  66. 66 : : 2014/08/05(火) 00:31:59
    >>64
    >>65
    ありがとうございます!


    苗木「あ、大和田クン! おはよう!」

    石丸「おはようだ! 今日は早かったな。安心したぞ!」

    大和田(食堂に入ると、四人が既に集まっていた。その中の一人には……)

    十神「……」

    大和田(久しぶりに見る十神の姿もあった。だがこっちを見ようともしない辺り、ムカツク野郎だって事に変わりはねえな)

    大和田「あァ、おはようさん」

    葉隠「お、おう、大和田っち」

    大和田(挨拶を返したオレに、集まっていた最後の一人、葉隠はぎこちない笑顔でそう言った)

    大和田「オメェ、まさかまだ昨日の意味不明な話信じてるんじゃねえだろうな」

    葉隠「い、いや……そう簡単に捨てきれんって……」

    苗木「昨日の話? 何の事?」

    大和田「あァ、実はな……」

    大和田(オレは昨夜の厨房での話を苗木に話した)

    苗木「あ、あはは……葉隠クンってなんというか……独創的な人だよね」

    石丸「う、うむ。頭ごなしに否定はしないが……少々頭は弱いようだな!」

    葉隠「オメーら寄ってたかってヒデェべ!」

    十神「フン、実に低能に相応しい、馬鹿馬鹿しい会話だな」

    大和田「あァん? テメェ、久しぶりに口開いたと思ったらそれか?」

    十神「何か間違った事を言ったか? ほら、どうした。俺はどこを間違った? 言ってみろ」

    大和田「て、テメェ……!」

    石丸「やめたまえ!」

    苗木「そうだよ、こんな争いしてたら……また……!」

    大和田(また、の後は苗木は言わなかった。けど、何を言いたかったのかくらいはオレにも理解できる)

    大和田「……ケッ」

    十神「……フン、結局何もしないならば最初から黙ってじっとしていろ」

    石丸「十神君! キミもそういう言い方はやめたまえ! 無駄に争いの火種を撒くだけだ!」
  67. 67 : : 2014/08/25(月) 01:19:21
    すごく面白いです!期待してます!
  68. 68 : : 2014/09/07(日) 15:38:34
    期待あげ
  69. 69 : : 2014/11/05(水) 18:17:19
    なかなか筆が進まずすみません、ちょっとだけ更新です!


    大和田(朝っぱらから殺伐とした空気が食堂に流れる。……徐々に、他の奴らも集まり出しては来たがこの空気に呑まれちまってるのか、挨拶だけ口にして以降、黙り込んじまっている。そして……)

    セレス「おはようございます、皆さん。今日も清々しい朝ですわね」

    大和田(この空気の中堂々とそう言い放ったセレスが、食堂にやって来た最後の生徒だった)

    セレス「山田君、紅茶を」

    山田「は、はい、ただいまァ!」

    朝日奈「あーあ、山田もすっかりセレスちゃんに使われちゃってるね」

    苗木「はは、そうだね……」

    大和田(一連の流れで、少し和やかな空気が生まれた。……こうやって自分にとって好ましい場を作るってのも、セレスが“超高校級のギャンブラー”たる所以なのか?)
  70. 70 : : 2014/11/05(水) 18:18:26
    大和田(山田が紅茶を持って来て、セレスがそれを飲み始める頃には既に以前までのような感覚に戻りつつあった。まァ、十神だけは誰も寄せ付けねェと言わんばかりのオーラ出してたがな)

    霧切「ところで、モノクマはまだなの?」

    大和田(霧切がそう切り出したのは、オレ達が朝食を終えた直後だ)

    十神「全く、集まれと言うから来てやったのに、呼びつけた張本人がいないとはな。来ないのならば俺は図書室に戻るぞ」

    モノクマ「ああん、まさか十神クンがそんなにボクを求めて来るなんて……でもボクは十神クンの想いに応える事は出来ないんだ。だって十神クンは人間で、ボクはクマだから。というわけでゴメンね!」

    十神「その不愉快な妄想をやめろ」

    桑田「きゅ、急に出てきやがった……!」

    大神「モノクマが神出鬼没なのはいつもの事だ。それより、我らを集めて一体どうしようというのだ?」

    モノクマ「うん? 大した事はしないよ。さっきもアナウンスした通り、今日はホントにお知らせをするだけなんだ」

    霧切「何を知らせようというの?」
  71. 71 : : 2014/11/05(水) 18:18:54
    モノクマ「えー、学級裁判を終えたオマエラに、ボクは様々な部屋を開放致しました」

    葉隠「そんな事はもう全員知ってんべ」

    モノクマ「はい、全員思い思いに新しい世界を堪能しているようですが……諸事情により今日一日、いくつかの部屋を施錠することになりました」

    セレス「施錠、ですか?」

    石丸「つまり入れない部屋がある、ということか」

    モノクマ「うん、そうなんだ。ちなみに施錠するのは学校エリア一階の、二階へ繋がる階段のシャッター、体育館に繋がる扉、視聴覚室、1-A教室、1-B教室となります」

    桑田「それって学校エリアの方の大半じゃねーか!」

    セレス「ですが、それは校則と矛盾致しませんか?」

    モノクマ「へ?」

    苗木「どういう事、セレスさん?」

    セレス「校則を思い出してください」


       第四条

         希望ヶ峰学園について調べるのは自由です。
         特に行動に制限は課せられません。


    セレス「わざわざ“施錠する”というのはわたくしたちの行動に制限を課すという事になるのではありませんか?」

    霧切「……無駄よ」

    セレス「と、仰いますと?」

    霧切「施錠云々は置いておいても、現状で既に鍵のかかった場所がいくつかあるわ。保健室や、寄宿舎エリア二階へのシャッター、学校エリア三階へのシャッター……。この時点で行動に制限は課せられていると言って過言じゃないのよ。だからこの校則については、“特に行動に制限は課せられません。が、それは行動可能範囲内に限ります”という解釈が妥当なんじゃないかしら」

    セレス「なるほど、言われてみればその通りですわね」

    大和田(……オレにゃこいつらが何言ってんのかサッパリわからねェが、どうやら話はついたようだ)

    モノクマ「じゃ、とにかくそういう事だから。今日一日我慢してね!」
  72. 72 : : 2014/11/05(水) 18:19:58
    石丸「待ちたまえ!」

    モノクマ「ん? どうかしたの、石丸クン?」

    石丸「僕は施錠に反対だ!」

    モノクマ「反対って言われても……」

    舞園「というか、何故反対なんですか?」

    石丸「何故? 何故だと!? そんな物決まっているではないか!」

    大和田(何がだ……?)

    石丸「僕らは学生なのだ! 学生であるからには勉学に励む義務がある! そして僕らがその義務に励むために教室という空間は必要不可欠なのだ! 教室の施錠反対!」

    モノクマ「はあ、あのね石丸クン」

    石丸「む、な、何かね」

    モノクマ「日曜日だと思えばいいよ」

    石丸「に、日曜日だと!?」

    モノクマ「そう、日曜日。日曜日なら学校には行かないでしょ?」

    石丸「そうか、なるほど! では今日は自室での自習にとどめておくとしよう!」

    朝日奈「それで納得しちゃうんだ……!?」

    モノクマ「他にはもう何もないね? ……うん、じゃあそういう事で、今日はさっき言った部屋以外の空間で生活してくださいね!」

    大和田(いつものように去って行くモノクマを気に留める奴はいない。それよりも気にすべきことが出来たからな)

    舞園「えっと……どうしましょう」

    霧切「大半の部屋が施錠される以上、マトモな探索は出来そうにないわね。ちょっと癪だけれど、今日はモノクマが言っていた“日曜日”という事にして、それぞれ好きに過ごせばいいんじゃないかしら」

    セレス「各々が好きなように過ごしているのはいつもの事だと思いますけれどね。律儀に毎日探索をしている人がどれほどいるんでしょう?」

    桑田「ま、新しい部屋が解放されたらそりゃ探索もすっけどよ」
  73. 73 : : 2014/12/30(火) 23:54:28
    朝日奈「うーん、プールにも行けないし、どうしようかなあ」

    十神「チッ、図書室にも入れないのか」

    苗木「あ、十神クン!? どこ行くの?」

    大和田(見ると、既に十神は食堂から出ようと歩き出しているところだった)

    十神「……なぜわざわざ教えてやる必要がある」

    苗木「それは……」

    十神「どこでどう過ごそうと俺の勝手のはずだ。そうだろう?」

    霧切「ええ、そうね。私も貴方がどこで何をしていようと興味はないわ。ただ“どこにいるのか”を誰にも把握されていないと、もし万が一のことがあった場合貴方のアリバイを立証する術が皆無になるけれど」

    十神「……チッ。自室に戻るだけだ」

    大和田(それだけ吐き捨てるように言って、十神は食堂を後にした)

    桑田「あーあ、相変わらず感じ悪ぃな。苗木、アイツずっとあんな感じなわけ?」

    苗木「うん、完全に無視されないだけ今回はマシだったけどね」

    不二咲「十神君は、私達の事……完全にいない物として扱ってるって事ぉ……?」

    セレス「それは少々違うと思いますわ」

    山田「どういう事ですかな?」

    セレス「彼にとってこのコロシアイ学園生活は、自分が勝利するための舞台としか考えていないのでしょう。よってわたくし達の存在は彼にとって、単なる“ターゲットの選択肢”。選択肢に一々気を払うような性格ではないのでしょうね」

    葉隠「うひぃい、俺は選ばんでくれって! 選ぶなら俺じゃない別の誰かにして欲しいべ!」

    朝日奈「葉隠って清々しいくらいクズだよね……」

    舞園「けど、セレスさん……よく平然と、“ターゲットの選択肢”なんて言えますね……。その中には自分も入っているのに」

    セレス「ええ、わたくしも負けるつもりはありませんもの。“超高校級の御曹司”として勝ち続けて来た十神君が、本当に仕掛けてくるのかどうかはともかくとして、“超高校級のギャンブラー”として勝ち続けてきたわたくしを超える実力の持ち主なのかもいずれは試してみたいと思っておりますし」

    大神「もしやセレスよ。お主も十神と同じようにこの状況をゲームだなどと断じているわけではあるまいな?」

    セレス「ご安心ください。わたくしはそのような馬鹿げた思考はしておりませんの」

    大神「ならば良いが……」
  74. 74 : : 2014/12/30(火) 23:56:10
    葉隠「ちゅーかそんな事より、オメーらは今日これからどうするつもりなんだ? 実際、いきなり休みとか言われてもやる事ねーべ」

    石丸「やはり仲間たちとの交友により絆を深める事が重要なのではないだろうか」

    苗木「ボクもそれに賛成だよ。団結するためにも信頼し合わないといけないし」

    霧切「信頼、ね……。まあ、いいわ。じゃあみんなで何かする、って事でいいのかしら」

    大神「ふむ、団体競技という事か?」

    大和田「いいんじゃねェか? オレも群れんのは嫌いじゃねえぜ」

    石丸「ふむ、では何をするかだが」

    舞園「みんなで楽しむという事なら、誰かに極端に分のある者は除外して考えるべきですよね」

    朝日奈「うーん、そう言ってもプールもダメ、体育館もダメ、だからね……」

    苗木「みんなで何か出来そうな空間っていうと、この食堂くらいしかないんじゃないかな」

    葉隠「けどよ、ここじゃやれることも限られてんべ?」

    山田「ではパーティーなど如何でしょう?」

    苗木「あ、いいね! みんなで準備からやってさ!」

    セレス「ええ、山田君にしてはいい考えではないでしょうか。皆さんと純粋に楽しめるはずですわ」

    朝日奈「じゃあ私、ドーナツ作るよ!」

    舞園「あ、私も手伝いますよ」

    朝日奈「ホントに? ありがとう!」

    大神「ではドーナツに限らず、我ら女性陣全員で食事の用意をする、という事で良いか?」

    朝日奈「あ、それいいね!」

    セレス「わたくしもですか?」

    舞園「そうですね。セレスさんも一緒にやりましょうよ!」

    セレス「嫌です」

    霧切「きっぱり言い切るわね」

    セレス「だって、料理なんてわたくしのキャラではありませんもの」

    桑田「キャラとか、気にすんだ……この状況で……」

    朝日奈「そんなこと言わずにさ、一緒にやろうよ! 好きな物作っていいからさ!」

    セレス「……はあ、致し方ありません。分かりました」

    朝日奈「やった!」
  75. 75 : : 2014/12/30(火) 23:56:44
    舞園「ではパーティー料理は私と朝日奈さん、大神さん、セレスさん、霧切さん、不二咲さんの六人で作る、という事でいいでしょうか?」

    不二咲「えっ……」

    霧切「不二咲さん? どうかした?」

    不二咲「あ、いや……えっと……な、なんでもないよぉ」

    大和田(相変わらず不二咲はたまに挙動不審になる。ま、何かしら原因はあるんだろーけどな。言いたくなったら向こうから言って来るだろ)

    石丸「ふむ、では料理は女性陣に任せるとして……我々はどうしようか?」

    桑田「食堂の飾り付けでもやらねー?」

    葉隠「お、そいつはいいな。俺もやんべ」

    山田「では僕もご一緒致しましょう!」

    石丸「では男子で全員で飾り付けか?」

    苗木「うーん、ちょっと人数多すぎないかな」

    大和田「苗木、オメェは別の仕事あんだろーが」

    苗木「え?」

    大和田「十神のヤローの見張りっつー仕事だよ」

    苗木「え、今日もやるの!?」

    石丸「ふむ、実際彼も誘えるならば誘いたいところだからな。苗木君。頼めるかね?」

    苗木「う、うーん……。素直に首を縦に振ってくれるとは思えないんだけど」

    葉隠「まあ、無理に誘う事はねーっての」

    山田「ですな。声だけはかけておくべきかと思いますぞ。あとから“パーティーがあったなんて聞いていないぞ!”などと言われても厄介ですし」

    苗木「はあ……分かったよ……。じゃあ行ってくるね」

    石丸「うむ、頼んだぞ!」
  76. 76 : : 2014/12/30(火) 23:57:19
    大和田「さて、と。んで、飾りつけだよな」

    桑田「だな。倉庫とか購買探しゃあなんかあんだろ」

    葉隠「どっちから行くべ?」

    山田「倉庫と購買部を手分けして探せばいいのでは?」

    石丸「ふむ、なるほどな。では山田君の案を採用するとしよう!」

    桑田「五人っつーことは……三人と二人に分かれるって事んなるよな」

    葉隠「だな。俺は倉庫か購買かはどっちでもいいけどよ、三人の方に行きてーべ」

    山田「僕は……購買の方に行かせてもらいますぞ。以前セレスティア・ルーデンベルク殿に茶葉の捜索を命じられたことがあります故、ある程度把握できておりますからな」

    桑田「そういや、やらされてたな……んじゃあオレもそっち行くわ。一緒に探索したしな」

    大和田(セレスの奴か。まあ、あの女ならそんくれーの事はやりそうだな)

    石丸「桑田君もセレス君の命令かね……?」

    桑田「ちげーよ! 普通に購買調べようとしてた時にやってやがったから、ついでだよついで!」

    葉隠「んじゃ、俺もそっち入るかな……」

    石丸「ふむ、了解だ。では購買の探索に山田君、桑田君、葉隠君の三名だな。となると、倉庫の探索は大和田君と僕の二名で行おう。よろしく頼むぞ!」

    大和田「あァ、よろしくな……」

    大和田(こうして適当にメンバー分けを終えたオレ達はそれぞれの目的地へ足を運んだ)
  77. 77 : : 2014/12/31(水) 16:34:47
    大晦日スペシャル的なノリで投下していきます!
  78. 78 : : 2014/12/31(水) 16:35:18
    大和田(倉庫に入った俺達は、適当に飾り付けに使えそうな物を探し始めた)

    石丸「それにしても、ここは埃っぽいな。ちゃんと掃除はしているのか?」

    大和田(そんな中で、石丸がオレに向かって話しかけてくる。ま、探す手を止めちゃいねーけどな)

    大和田「してねーんじゃねーか? つーか誰かがどっかしら掃除なんぞしてるとこ、見たことねーぞ」

    石丸「な、何だとッ!? いかん、これはいかん……由々しき事態だ!」

    大和田「あァ? 何がだよ」

    石丸「我らが学び舎を清掃する事は、己の心を清める事だ! 掃除当番にはしっかり掃除をしてもらわねば!」

    大和田「なァにが学び舎だ、監禁されてる建物ってだけじゃねーか。んなとこ、誰が好き好んで掃除するってんだよ。それに掃除当番っつってもあれだろ? トラッシュルームのシャッター開けられるだけじゃねえか」

    石丸「そういう問題ではない! キミには“己の心を清める”という精神が欠如しているのだ! 学生として、学生のあるべき姿を目指したまえ!」

    大和田「やなこった、んな堅っ苦しいのなんざ願い下げだっての」

    石丸「なんだとッ!?」

    大和田「んな事よりさっさと使えそうなモン探そうぜ」

    石丸「そんな事だと……ッ!?」

    大和田(いつも思うけどよ、石丸の奴、リアクションが無駄にデケェんだよな。今回も大仰な身振りで……って)

    大和田「おい、オメェ……!」

    石丸「何か……ねぶっ!?」

    大和田「ぬぉあ!?」
  79. 79 : : 2014/12/31(水) 16:35:40
    大和田(何が起こったか、っつーと……)

    石丸「く、ゲホ、ゲホ!」

    大和田「ケホッ……! 気を付けろよ、ったく」

    大和田(石丸の“大仰な身振り”が後ろの棚を叩き……勢いで棚が揺れて仕舞ってあった物がこっちに倒れてきた、って寸法だ)

    石丸「む、済まない……」

    大和田「ったく……お?」

    石丸「む、どうかしたかね?」

    大和田「へへ、崩れて来たモンの中にモノクマメダルがあったぜ」

    石丸「メダルか。何か飾り使えるものが出てくるかもしれないが……回しに行くかね?」

    大和田「そーだな……」

    大和田(モノクマメダルを握り締めて考える。回しに行くのは別に構わねーし、それ以外使い道がねえメダルだからいずれ回しに行くのはちげえねえが……)

    大和田「それよりまずは風呂だな。今ので埃が体中に降りかかってヤベェ事んなってっしよ」

    石丸「フム、それもそうだな。ついでに着替えと洗濯もしたいところだが……」

    大和田「確かにな、オレも学ラン洗いてー」

    石丸「では一度自室に戻り着替えを持って、大浴場に集合と行くか?」

    大和田「だな。オレとしちゃあ先に学ラン綺麗にしてえとこだが。ランドリーの洗濯機に入れっぱなしにして風呂行くのも嫌だしな。風呂あがったらランドリー行くぞ」

    石丸「ああ、了解だ」
  80. 80 : : 2014/12/31(水) 16:35:58
    大和田(大浴場の脱衣所に来たはいいが、そこにはまだ石丸の姿は無かった。仕方なしに待ってると……)

    石丸「む、キミに先を越されていたか」

    大和田(すぐに石丸は姿を現した)

    大和田「先を越すも何もねーだろ、この距離でよ」

    石丸「そ、それもそうだな」

    大和田「んじゃあ入るか」

    石丸「ああ……」
  81. 81 : : 2014/12/31(水) 16:36:31
    大和田(大浴場に入り、体を洗い、湯船に浸かり……一息ついたのはいいが、さっきからどうにも石丸の表情が辛気臭えな)

    大和田「石丸、さっきからどうした?」

    石丸「う、む……それなのだがな」

    大和田「あァ」

    石丸「やはり僕は納得できない!」

    大和田「納得? 何の話だよ」

    石丸「君の考え方の話だ! ここが希望ヶ峰学園であるにせよ無いにせよ、僕らが学生である事に変わりはないはずだろう。ならばやはり勉学に打ち込んで然るべきなのだ!」

    大和田(うげ、その話かよ)

    石丸「だが、君はきっといくら言っても聞かないのだろう」

    大和田「よく分かってんじゃねえか」

    石丸「そこでだ! 僕と勝負をしようじゃないか!」

    大和田「……勝負だと?」

    石丸「そうだ。男同士の勝負だ! そこでもしも君が勝ったならば僕はもはや何も言うまい。だが、僕が勝った暁には、君にも僕の言う事を聞いてもらう!」

    大和田「オレにメリットが一つもねえように聞こえるぜ」

    石丸「逃げるのかね?」

    大和田「……何だと?」

    石丸「僕に負けるのが分かっていて、勝負を恐れるのだな?」

    大和田「ハッ、冗談じゃねえ。ただの優等生君にオレが負けるわけねえだろーが!」

    石丸「ならば度胸の問題か? 根性の問題か? ともあれ君にはそう言ったものまで欠如しているのだな! 粋がって見せたところで、君は結局何もできないからこそそのような格好で強がって見せているだけなのだろう!」

    大和田「じょ……上等だコラァ! そこまで言われて引き下がれる男じゃねえぞオレは! テメェ、あとで吠え面かいても知らねえからな……!」

    石丸「ほう、一丁前にプライドだけはあるようだな。だが、所詮君程度では僕にはかなわないという事を、君はすぐに思い知る事になるだろう!」

    大和田「今のうちに言ってろ!」
  82. 82 : : 2014/12/31(水) 16:36:54
    石丸「では勝負の方法だが……」

    大和田「喧嘩なら負けねえぜ?」

    石丸「だろうな。僕もそのような野蛮な行為に走るつもりは毛頭ない。だが、だからと言って学問の分野では僕に有利に働きすぎるだろう」

    大和田「……チッ、オベンキョーなんざオレだって願い下げだぜ」

    石丸「そこでだ。両者平等に挑める勝負があるではないか」

    大和田「あァ? なんのこった」

    石丸「サウナだよ! サウナで我慢比べと行こうではないか」

    大和田「おーおー、いいぜ。優等生君じゃあすぐに泣きを見る事になるだろーがな」

    石丸「精神的な修練を怠り珍走などにかまけている君に耐えられるとは、到底思えんがね」

    大和田「っしゃあ、んじゃあ早速行くぞ!」

    石丸「いいだろう!」

    大和田(こうして、オレは石丸とサウナに入った……)
  83. 83 : : 2014/12/31(水) 16:37:13
    「……!」

    大和田(なんだ? 何か、聞こえるが……)

    「……る。……だ!」

    大和田(誰かが……誰かを……呼んで……?)

    桑田「石丸! 大和田!」

    大和田「うおっ!?」

    石丸「なな、何だ!?」

    桑田「ふー、安心したぜ。二人とも意識が戻ってよ」

    葉隠「いやあ、一件落着だな。もしかして死んじまってんじゃねーかと心配したべ」

    山田「まあ、僕ら三人で発見したところで、死体発見アナウンスも無かったわけですし。その時点で生きてる可能性は高かったわけですがな」

    大和田「ちょちょ、待て。何がなんだってんだ?」

    大和田(慌てて周囲を見回すと……ここは、脱衣所か?)

    桑田「それを訊きたいのはこっちの方だって……二人ともサウナで倒れてたんだ。何があったんだよ?」

    石丸「そうだ。確か僕は大和田君とサウナに入って……それで……」

    大和田(ああ、だんだん思い出してきたぞ……たしか……)

    石丸「……そう、だったな。大和田君!」

    大和田「何だ?」
  84. 84 : : 2014/12/31(水) 16:37:29
    石丸「僕は君の事を誤解していたようだ! 謝らねばならないな!」

    大和田「オレの方こそ。オメェを単なる頭の固い奴だとばかり思ってたが、なかなか男として筋の通った奴じゃねえか。見直したぜ」

    石丸「ハッハッハ! 筋の通った、と言えば君の方こそそうじゃないか! 君には君なりの事情というものがあるのだという事を思い知らされたよ」

    大和田「オレもオメェの事情、苦労ってのにちゃんと触れられて良かったって思うぜ」

    葉隠「なな、何がどうなってんだべ?」

    山田「急に意気投合してますがな……」

    桑田「マジにサウナで何があったん?」

    石丸「それは……」

    大和田「オイオイオイオイ、オメェら、男同士の結束に理由を尋ねるなんざ、無粋だぜ?」

    石丸「む、さすがだな、いい事を言うではないか、兄弟!」

    大和田「おっ、兄弟か、いいなそれ。じゃあオレらは今日から兄弟分だ!」

    石丸「うむ、気に入ってもらえて嬉しいぞ!」

    桑田「なんつーか……意気投合ってレベルじゃねーんだけど……」

    石丸「さて、では僕らは洗濯に行こうではないか」

    大和田「だな」

    大和田(オレの返事を皮切りに、オレと石丸、いや兄弟は笑い合いながら大浴場を後にし、ランドリーへ向かった)
  85. 85 : : 2014/12/31(水) 16:37:45
    大和田「さて、っと」

    大和田(洗濯の間、兄弟とオレは雑談に華を咲かせ……終わったところで一度部屋に戻って、準備を整えてから再度集合、と決めた)

    大和田「準備っつっても、洗った学ラン干したり程度だしな。そろそろ行くか」

    大和田(そう呟いて部屋を出ると……)

    大和田「っと」

    石丸「む、大和田君、ナイスタイミングじゃないか」

    大和田「だな」

    石丸「やはり男同士の濃厚な友情は以心伝心なのだな!」

    大和田「ま、そういうこったな!」

    石丸「それでは再び飾り付けに使えそうな物の探索を……」

    大和田「の前によ、モノモノマシーン……つったか? アレ回しに行こうぜ」

    石丸「ああ、そうだったな。たしか購買部だったな? では行くとするか」
  86. 86 : : 2014/12/31(水) 16:38:02
    大和田「んじゃ、回すぞ」

    石丸「うむ、何が出るか楽しみだな」

    大和田「だな、ガチャガチャってのはそこも楽しむ様に出来てっからな……っと、出たぞ。これは……何だ?」

    石丸「ふむ、万力のようだな」

    大和田「万力? なんか強そうな名前じゃねえか」

    石丸「まあ、そうだな。硬い物を加工する時に使う工具だ」

    大和田「硬い物、なあ。つっても何に使うのかイマイチピンと来ねえ。兄弟は使い道知ってんだよな? なら預けとくわ」

    石丸「む、そうか。では君が必要になった際には返却するとしよう!」

    大和田「ああ、頼む」

    大和田(まあ使う時が来るかっつーのは謎だけどな……)
  87. 87 : : 2014/12/31(水) 16:38:34
    大和田(それからオレらはもう一度倉庫に戻って飾り付けに使えそうな道具を探し……)

    石丸「ふむ、だいたいこんな所だろうか」

    大和田「だな、折り紙に各種ペン類にモールに……探せば結構あるもんだな」

    石丸「うむ、ではこれを持って食堂に向かおう!」

    大和田「おう!」


    桑田「おーっし、だいたいこんなもんだな!」

    大和田(オレらが飾りを持って食堂に向かっていたところで風呂上りの桑田たちと合流し、五人で飾り付けを行った)

    石丸「うむ、限られた資材で施したにしてはなかなかいい出来栄えだと思うぞ!」

    山田「にしても、葉隠康比呂殿がこれほどに達筆だったとは思いもしませんでしたぞ」

    葉隠「そうか?」

    大和田「ああ、文字はほとんど任せちまったな……」

    桑田「誰にでも長所ってなあるもんなんだな」

    葉隠「はっはっは、そう褒めんなって!」

    石丸「いや……今のは“短所しかないと思っていた”という意味だと思うのだが……」

    大和田「言ってやんな、兄弟」

    大和田(幸い、本人には聞こえてなかったみてえだけどな)

    石丸「ともあれ、だ。あとは女性陣の料理の完成を待つだけだろうか?」

    山田「いえ、その前に苗木誠殿を呼びに行った方がいいのでは?」

    葉隠「十神っちんとこ行ったんだよな」

    石丸「フム、では僕が呼びに行くとしよう」

    大和田「おう、分かった。オレも行った方がいいか?」

    石丸「いや、呼びに行くだけだ。一人いれば十分だろう」

    大和田「分かった、んじゃあ任せんぜ」

    石丸「ああ、任せてくれたまえ!」

    大和田(そう言うなり、石丸は部屋を駆け出して行った)
  88. 88 : : 2014/12/31(水) 16:39:05
    桑田「んじゃ、あっちは石丸に任せるとして……オレらはどーするよ?」

    山田「特段する事もありませんからな」

    大和田「だな」

    葉隠「んじゃあ俺がオメェらを占ってやんべ」

    桑田「オメーの占いは金取んだろうが! 却下だ却下!」

    大和田(と、桑田がツッコんだところで……)

    朝日奈「あっ、何これ、凄い! あんた達がやったの?」

    山田「これはこれは、朝日奈葵殿」

    桑田「まーな。オレらに加えて石丸も合わせた五人でやったんだよ。苗木は十神見させてたけどな」

    葉隠「今石丸っちが苗木っち呼びに行ってるって感じだな」

    霧切「なるほどね。最悪男子は何もしてないんじゃないかと思っていたけれど、案外やるものね」

    舞園「ええ、本当に」

    大和田(厨房からゾロゾロ出て来たな……)

    大和田「そっちこそ、準備は出来たのか?」

    大神「ああ、あとは運ぶだけだ」

    大和田(そう言って料理を持って出てきた大神に少し遅れたタイミングで、苗木を連れた兄弟が戻ってきた)

    石丸「む、女性陣が出てきているな」

    大和田「おっ、戻ったか兄弟」

    苗木「は? 兄弟って……?」

    朝日奈「……何?」

    桑田「なんか知んねえけど、この短時間で通じ合うとこがあったみてーだ」

    山田「内容までは知りませんがな……」

    セレス「……まあ、仲が悪いよりはよろしいのでは?」

    石丸「うむ、その通りだ!」
  89. 89 : : 2014/12/31(水) 16:39:24
    不二咲「ところで……苗木君は十神君を呼びに行ってたんだよね? どう、だったのかな」

    苗木「ああ、一応パーティーする、とは伝えたんだけど……」

    舞園「やっぱり、来そうにありませんか?」

    苗木「うん、興味無さそうにしてたよ」

    大神「であれば仕方あるまい。無理に誘えば余計に不和を招く要因になりかねんであろう」

    桑田「ま、そういう事だな」

    朝日奈「それじゃあ料理も運び終わったし、始めますか!」

    葉隠「おー、どれも美味そうだな!」

    大和田(たしかにどれも単品では美味そうだが……ステーキにからあげ、焼き魚やら煮魚、サラダに野菜炒めにとカオスなとりあわせになってやがる)

    セレス「では皆さん、冷めないうちに皆さん、召し上がりませんか?」

    石丸「うむ、そうだな! では頂くとしよう!」

    桑田「おっしゃあ、待ってたぜ! もう腹ペコペコだかんな!」

    大和田(よし、オレも食うか)
  90. 90 : : 2014/12/31(水) 16:39:51
    桑田「くー、うめえ!」

    山田「ですな、今日は奮発された感じですかな?」

    舞園「そうですね、せっかくパーティという事なので、食材はあるだけ糸目を付けない方向で行こう、と霧切さんが提案しまして」

    苗木「え、霧切さんが? 意外だな」

    霧切「あら、どういう意味かしら」

    苗木「いや、どういう意味っていうか……はは」

    大和田(みんな思い思いに食べたり会話したりしてんな。まあオレも食ってんだけどよ)

    石丸「はっはっは、どうだ兄弟、楽しんでいるかね!?」

    大和田「ああ、どれ食ってもうめえんだよな」

    石丸「うむ、たまにはこういうのもいい物だ」

    大和田「ま、オレらも誰かと会話しに行かねえか? 友好を深める、のが目的なんだろ?」

    石丸「さすがだな! 僕もその意見に賛成しよう!」

    大和田「そんじゃあ……」

    大和田(誰んとこ行くか、と言いかけたところで)

    朝日奈「大和田に石丸、食べてるー?」

    大和田「っと、朝日奈……に大神もか。おう、食ってんぜ」

    石丸「どれもおいしい物だと感心していたところだ!」

    朝日奈「だよね、だよね! やっぱりさくらちゃん、料理上手だよねえ」

    石丸「ほほう、大神君が作ったのかね?」

    大神「ある程度はな。料理をした事が無い、という者に多少教えたりもしていたが……途中からは各々が好きな物を作り始めた。我が関与していたのは最初の内の料理と、いくつかの料理だけだ」

    大和田「なるほどなあ」

    朝日奈「でも、ちょくちょくみんなの料理も確認したりしてたんだよ。凄いよね!」

    石丸「うむ、実にいい気配りだと思うぞ!」

    大和田(そうこう話していると……)

    大和田「あん?」

    大和田(ある事に気付いた)

    石丸「どうかしたかね?」

    大和田「ああ、いや……悪ィ、ちっと離れる」

    石丸「ふむ? まあいいだろう、分かった」
  91. 91 : : 2014/12/31(水) 16:40:17
    大和田「よ」

    セレス「あら、大和田君ですか。どうかなさいまして?」

    大和田「どうかなさいまして、じゃねえよ。何飲んでんだ?」

    セレス「見て分かりませんの?」

    大和田「……ワインに見えるが」

    セレス「分かっているではありませんか」

    大和田「いやいや、マジにワインなのか?」

    セレス「ええ、そのようですわ。なかなか上質のようですわよ。貴方もお飲みになりまして?」

    大和田「ああ、ちっと貰おうかな」

    セレス「あら、話せますわね。では」

    大和田(言って、適当なグラスにワインを注ぎ、セレスはオレにそれを寄越した)

    セレス「どうぞ」

    大和田「おう、サンキュ」

    大和田(……うん、こりゃワインだな。ブドウジュースってわけじゃねえようだ)

    セレス「なかなかに美味しいでしょう?」

    大和田「だな」

    大和田(まあ、質とかはサッパリ分からんが美味いモンは美味い。いくら兄弟とはいえ、石丸を連れてこなかったのは正解だったかな)

    セレス「それにしても、ワインがいただけるとは思いませんでしたわ」

    大和田「どこにあったんだ? もしかしてモノモノマシーンか?」

    セレス「いいえ。厨房に御座いましたの。ひっそりと」

    大和田「へェ、以外とあるもんなんだな。他のアルコールはなんかあったか?」

    セレス「料理酒が御座いましたわ」

    大和田「いや、そうじゃなくてよ……」

    セレス「うふふ、冗談です。そうですわね、ウィスキーや日本酒、焼酎……カクテル類やビールなんかも御座いましたわね」

    大和田「マジか! 後でどこにあったか教えてくんねえ?」

    セレス「ええ、構いませんわ。ですが、大和田君なら安心でしょうが、あまりこういった事にうるさそうな人にはくれぐれも言わないようお願いしますわ」

    大和田「わぁってるよ、オレもとやかく言われんのは嫌だしな」

    大和田(ねえと思ってたが、あるんだな、酒)
  92. 92 : : 2014/12/31(水) 16:40:33
    大和田(酒も飲んで気分がよくなってきたところで)

    舞園「せっかくですから、私、歌います!」

    桑田「お、いいな! オレも舞園ちゃんの歌聴きてえ!」

    大和田(みんなも盛り上がってるみてえだし、オレもあっち行ってみっか)

    大和田「舞園が歌うって? ならオレも聴いとこうかな」

    石丸「む、兄弟も来たのだな……って、どうしたのだ? 少々顔が赤いぞ?」

    大和田「ああ? まあこんだけ騒出でりゃ暑くもなってくんだろ」

    石丸「ふむ、そういう事ならばいいが……あまり無理はしてくれるなよ?」

    大和田「ああ、わあってるよ」

    大和田(適当な言葉でかわせちまった。もうちっと考えようぜ、兄弟……)
  93. 93 : : 2014/12/31(水) 16:40:49
    モノクマ『オマエラ! 朝です、七時になりました。起床時間ですよ!』

    大和田(ん……朝……?)

    大和田「ああ、そうだ」

    大和田(昨日あのあと、舞園が歌いだして……それで、せっかくだからっつってみんなそれぞれいろいろ芸やり始めたんだったな)

    大和田「最後の最後まで騒いでたが……」

    大和田(ま、夜時間になったところで、変わらず食堂は施錠されるって事で解散になったんだったな)

    大和田「あー……久々にアルコール飲んだからか? ちっとだりぃな」

    大和田(そんな事をぼやきつつモノクマの放送をバックに食堂に行く準備をしていると)

    モノクマ『あ、そうそう。今日もボクから連絡する事があります。皆さん食堂に集まってくださいね!』

    大和田(と、放送のいつもの〆あとに付け足しがあった)

    大和田「どうせ“もう施錠してたドアは解放した”って事を伝えるだけだろ……一日だけ施錠するっつってたしな」

    大和田(それ以外特に思いつかねえ。……ま、行ってみりゃ分かる事か。気は進まねえけどよ)
  94. 94 : : 2014/12/31(水) 16:41:20
    霧切「来たわね」

    舞園「おはようございます」

    大和田「ああ、おはようさん……って、兄弟はまだなのか」

    大和田(食堂に入ると、いたのは霧切と舞園の二人だけだった)

    舞園「えっと、石丸君……ですよね。石丸君なら……」

    霧切「さっきまでいたけれど、教室の鍵が開いているかだけ確かめてくる、と言って飛び出して行ったわ。まだほとんどみんな集まっていないし、問題は無いと思ったから止めなかったけれど」

    大和田「なるほどな」

    大和田(さっきの放送を聞いて思うところは皆同じ、ってわけか)

    苗木「おはよ……あれ、三人だけ?」

    桑田「石丸がいねーのは珍しいな」

    大神「石丸とて遅れる事はあるだろう」

    大和田(なんかゾロゾロ来やがったな。ま、適当にモノクマを待つか)
  95. 95 : : 2014/12/31(水) 16:41:52
    大和田(数分待つと全員揃った。そして全員が来たところで……)

    モノクマ「やあやあ皆さん、わざわざ集まってくれてありがとね!」

    桑田「うっせー! オメーが呼ばねえでも毎朝全員食堂には来るっつーの!」

    モノクマ「うぷぷ、それはどうかな? そこで無愛想な顔してる十神クン辺りは来ないと思うけど」

    十神「……フン、さっさと用件を言え」

    モノクマ「全くもう、つれないなあ。ま、いいか。じゃあ言っちゃうね。えー、ボクからオマエラへの用件は二つあります。……ぶっちゃけ本質的な意味では一つなんだけどね。でも分けて話した方が、オマエラにとっても分かりやすいでしょ? ボクってばそういうところで気が効くクマだから」

    石丸「どうでもいいが、二つの要件とはいったい何のことかね?」

    モノクマ「そうそう。まず一つ目は……さっそく確認に行っちゃった石丸クンはもう知ってると思うけど、昨日施錠した場所を、今日からまた解放致しました。それが一つ目ね」

    霧切「そう、解放されていたのね」

    大和田(全員が揃い、石丸が戻ってきたところでモノクマが現れた。だから石丸以外は確証は無かったわけだが……やっぱ開いてたのか)

    石丸「ああ、皆に報告しようと思っていたのだがな。まあどの道こうして分かった事だ、いいとしようではないか」
  96. 96 : : 2014/12/31(水) 16:42:14
    十神「どの道そんな物は確認すればすぐに分かる事だ。それで、もう一つの用件は何だ?」

    モノクマ「もう、十神クンてばせっかちだなあ。ま、いいか。ではでは発表します。オマエラには“この学園の中のみでの共同生活”を行ってもらっているわけですが……ボクとしても何の刺激も無い毎日を提供するのはいささか気が引けるわけでして」

    葉隠「何が言いてーんだ?」

    モノクマ「要するに、ボクからみんなに“刺激”をプレゼントしに来たんだ」

    霧切「刺激?」

    モノクマ「うぷぷ……題して! お宝探しゲーム!」

    セレス「お宝……探しですか?」

    モノクマ「そうそう。昨日施錠した場所に、ボクはオマエラの人数分の“ある物”を隠したんだ。それを探してもらおう、ってわけ!」

    桑田「ある物って何だよ?」

    モノクマ「それはね……オマエラの“個人情報”だよ!」

    大和田「個人情報だぁ?」

    山田「そう聞くといい気はしないのですが」

    苗木「でも個人情報って言ってもさ、ピンキリじゃない? どういう情報か次第だと思うけど」

    モノクマ「にょっほっほ! それぞれどんな情報を用意されているのかもお楽しみの一つという事ですな……!」

    十神「全く、馬鹿馬鹿しいな。宝などともったいぶるから何かと思えば」

    モノクマ「何言ってるのさ、人っていうのはただいるだけで価値を産むことだってあるんだよ。そんな人間の情報だっていうんだから、それはそれは尊い宝でしょ?」

    十神「少なくとも俺にとっては興味はないな。他者から与えられた情報など所詮はうわべだけのものだ。使える人間か否かは俺自身の目で見れば済む話だ」

    モノクマ「この共同生活が始まって以来、ほとんど他人に一切目を向けてない十神クンが言っても説得力ないよねえ」

    十神「黙れ……!」

    モノクマ「ま、そういうワケだからさ。みんな、頑張って探してちょーだいね!」

    大和田(そう言ってモノクマはいつも通りどこへともなく消えて行った。そしてしばし訪れる……沈黙)
  97. 97 : : 2014/12/31(水) 16:42:56
    舞園「それで……これから、どうしますか?」

    朝日奈「どう、って言われても……」

    大和田「その個人情報、とかってのを探すっきゃねえだろ。知られたくねえ情報が隠されてるかも知んねえならよ……」

    不二咲「そう、だね……。自分のを探せばいい、んじゃないかなあ?」

    霧切「……個人情報、ね」

    苗木「霧切さん、どうかした?」

    霧切「いえ、何でもないわ。けど注意が必要ね。例えば自分の情報を他の人が先に発見してしまった場合、そこに発見者の琴線に触れる情報があった時……殺人の“動機”になり得るかもしれない。いえ、むしろなるんじゃないかしら。ならない物をモノクマがわざわざ用意したりはしないでしょうし」

    大和田(誰かの琴線に触れるかもしれない“個人情報”。そりゃあ、たとえば……“誰かを殺した”過去、とかか? ……兄貴)

    石丸「なるほどな……。ではこうしよう! たとえ他の人物の個人情報とやらを発見しても、決して内容を確認はしない、という取り決めを行うのだ! そうすれば自分の情報のみを把握できるからな!」

    十神「フン、そんな口約束、何の意味もあるまい」

    セレス「あら、それはどうでしょうか」

    十神「何?」

    セレス「たしかに、単なる口約束に過ぎないかもしれませんが、それでも約束事が無いよりは遥かにマシですわよ。精神的な負担も軽減されますし」

    石丸「うむ、そういう事だ!」

    十神「お前らは馬鹿なのか? せっかく向こうが利用価値のある物を提示しているんだ、それを利用せずに本人に渡してしまうと?」

    霧切「貴方がどうかは知らないけれど、少なくとも私達は事件を起こさない方向で動いているの。だから本人に渡してしまうのが最も安全かつ最善手になるのよ」

    十神「ちっ」

    霧切「もしその“利用価値のある物”とやらを利用するつもりなら気を付けるのね、十神君。それを利用しようとしているのは貴方だけ。真っ先に疑われて然るべきは他でもない貴方という事になるのだから」

    十神「……フン、くだらん」

    大和田(負け惜しみのようにそれだけ言って、十神は食堂を後にした)
  98. 98 : : 2014/12/31(水) 16:43:16
    霧切「ふう。とりあえず彼には釘を刺しておいたけれど……みんなも早い内に探した方がいいかもしれないわ」

    大神「そうだな。では早速探しに行くか?」

    セレス「いえ、先にグループ分けを致しましょう。こんな時だからこそ、これまで通り複数人で動くべきですわ」

    山田「そうですな、個人で動くようにしてしまうと、それこそ誰かが他の人物の情報とやらを手に入れても分からない、という事になってしまいますし」

    苗木「えっと、てことはボクはやっぱり十神クンを追った方がいいのかな?」

    霧切「いえ、今の十神君を追うのはやめておくべきでしょうね。少し気が立っているみたいだし」

    苗木「そっか。じゃあ霧切さん、一緒に行く?」

    霧切「私は構わないけれど。何故?」

    苗木「んー、ちょっと気になる事があるから、かな」

    霧切「……いいわ、じゃあ一緒に行きましょう」

    桑田「んじゃあオレは舞園ちゃん、一緒に行かねえ?」

    舞園「いいですよ」

    桑田「っしゃあ! なんか舞園ちゃんと一緒に行動すんの、久しぶりな気がすんぜ!」

    大和田「じゃあオレは……」

    石丸「僕と行こうではないか!」

    大和田「だな、よろしく頼むぜ、兄弟」

    石丸「ああ、任せたまえ!」

    大神「ふむ、この様子では二人ずつのグループに分かれそうだな。では不二咲よ、我と共に行かぬか? 今日も軽いトレーニングに付き合うぞ」

    不二咲「あ、うん……いいよ。ありがとう」

    大神「何、構わぬ」

    朝日奈「うーん、じゃあセレスちゃん、私と行く?」

    セレス「そうですわね……構いませんよ」

    葉隠「んじゃ、あと残ってんのは俺と山田っちだなよろしく頼むべ」

    山田「ええ、よろしくお願い致しますぞ!」

    石丸「グループ分けは終わったようだな。では早速探索に行こうではないか!」
  99. 99 : : 2014/12/31(水) 16:43:39
    大和田「で、どこ行くよ?」

    大和田(探索が開始して間もなく、学校エリアに入ったところでそう尋ねた)

    石丸「そうだな。たしか施錠されていたのは学校エリアの二階の全ての部屋と体育館……それと学校エリア一階の視聴覚室と教室だったな」

    大和田「だな。そこに個人情報とやらが隠されてるってわけか」

    石丸「だろうな」

    大和田(正直、オレとしちゃあオレ自身の“個人情報”を探したい思いが募るんだが……出来るだけそれは押しとどめる)

    大和田「けどよ、どこに誰のがあるかわかんねえしな……」

    石丸「とりあえず教室を探してみないか?」

    大和田「ま、手近なとこからって事か……いいぜ」

    大和田(俺の返答を受けるや否や1-B教室のドアに手をかける兄弟。そして開くと……)

    苗木「あ、大和田クンに石丸クン」

    霧切「貴方達も来たのね」

    石丸「む、キミ達もここを探索していたか」

    霧切「ええ、教室は一つ一つの机の中まで確認しないといけないから、時間がかかると踏んだのよ。なら先に教室から潰した方がいいでしょう?」

    大和田「なるほどな……」

    大和田(言われてみりゃ、その教室も四ヶ所あるわけだから結構大変かもな)

    石丸「それで、見つかったかね?」

    霧切「いえ、まだ探し始めたところだもの」

    石丸「む、そうかね」

    大和田「あー、どうするよ、兄弟? ここはこいつらに任せて他行くか?」

    石丸「ふむ、どうだろう、僕らもここを手伝った方がいいだろうか?」

    苗木「それよりは隣の1-A教室の方に行ってもらった方がいいかも。あんまり大人数で一ヶ所を調べても仕方ないしさ。それにここもそんなに広いわけじゃないし」

    大和田「それもそうか」

    石丸「では僕らは隣の教室に向かうとしよう」

    大和田「おっし、行こうぜ!」

    石丸「ああ!」

    大和田(というわけで、苗木と霧切をこの場に残し、オレ達は隣の教室へと足を運んだ)
  100. 100 : : 2014/12/31(水) 16:44:00
    大和田「さて、じゃあ探すか」

    石丸「だな……む?」

    大和田「どうした?」

    石丸「何やら見覚えのないファイルが机の中に入っているが……もしやこれがモノクマの言う“個人情報”ではないのかね?」

    大和田「お、マジか?」

    大和田(そう言って兄弟が机の中からファイルを取り出すと……)

    モノクマ「イグザクトリィ! ザッツライ! その通りでございます!」

    大和田(突然モノクマが姿を現した)

    石丸「なるほど、ではやはりこれがそうなのだな!」

    モノクマ「いやあ、こんなにすぐに見つかっちゃうとはね……教室なんて後回しにするだろう、って裏をかきすぎちゃったかな?」

    大和田「どうでもいいけどよ、そいつは誰の情報なんだ、兄弟?」

    モノクマ「スルーですかっ!?」

    石丸「フム……お、ここに“大和田”と書かれているぞ。キミの物ではないのかね?」

    大和田「何だと、そりゃマジか?」

    石丸「ああ、ここを見てみたまえ」

    大和田「おお、ホントだな! でかしたぞ兄弟!」

    モノクマ「ぐすん、もういいよ……とりあえず、そんな感じのファイルがあちこちにあるんで……頑張って他も探してね」

    大和田(そう言ってモノクマは姿を消した)

    石丸「ではこのファイルは君に渡しておこう。中を確認するかね?」

    大和田「そうだな、さっそく確認させてもらうか」

    大和田(言って、ファイルの中身を確認する。正直、兄貴の事が書かれてる、って程度に覚悟は出来ている。そうならそうで、コイツを処分するなりなんなりすりゃあいい話だ。と、思っていたのだが)

    大和田「……はあ?」

    石丸「素っ頓狂な声をあげて、どうしたかね?」

    大和田「いや、こりゃあ……」

    大和田(そこにはたった一文。これだけ書かれていた)
  101. 101 : : 2014/12/31(水) 16:44:14
    『大和田紋土は、暴走族なりたての頃、髪の量が足りずにリーゼントのカツラを被ってバイクに跨っていた』
  102. 102 : : 2014/12/31(水) 16:44:36
    石丸「微妙な表情だが……どんなことが書かれているのか、逆に気になるではないか!」

    大和田「いや、なんつーか、たしかに知られたくねえことではあるんだけどな。でもよ、覚悟してたほどの事ではねえっつーか……。まあともあれ微妙な内容ってこった」

    石丸「ふむ、そうか。ともあれ兄弟はどこか焦っていた様子だったからな! 安心できてよかったんじゃないかね?」

    大和田「ま、そうだな。……けどよ、兄弟は全く焦った様子ねえな?」

    石丸「当たり前だ。僕は清廉潔白だからな。知られて困るような経歴など、あいにく持ち合わせていないのだよ!」

    大和田「なるほどな、オメェらしいぜ」

    石丸「それより、他の人の情報もまだあるやもしれんな。探してみないか?」

    大和田「そうだな……よし、探すとすっか」
  103. 103 : : 2014/12/31(水) 16:44:54
    大和田(結論から言うと、オレ達は今日はオレの分のファイルしか発見できないまま食堂に舞い戻る事になった)

    石丸「さて、もうそろそろみんなが戻ってくる頃だな」

    大和田「時間的にそんくれーだろうな」

    石丸「皆はどれだけ発見できただろうな?」

    大和田「さあな。全員分集まってりゃ言う事はねえんだが、さすがにそう上手くはいかねえだろ」

    石丸「確かに全員分は厳しいだろうな……」

    大和田(そうこう話していると)

    桑田「お、戻ってたか」

    舞園「お疲れ様です、大和田君、石丸君」

    石丸「ああ、君たちもお疲れ様だ! 何か進展はあったかね?」

    桑田「こっちは山田って書かれたファイルを見つけただけだったな。視聴覚室にあったぜ」

    石丸「フム、山田君のものか」

    舞園「そっちはどうだったんですか?」

    大和田「オレのを見つけただけだ」

    桑田「マジか。なあ、どんなことが書かれてるんだ? こっちが見つけたのは山田のだけだしよ、中身までは見てねえんだ」

    大和田「あー、少なくともオレのは、知られたくねえ事に変わりはねえがしょっぱい事だったな。内容まではさすがに言わねえぞ」

    桑田「ふーん、じゃあ安心は出来んのか?」

    舞園「それはどうでしょう、苗木君も言っていたようにピンキリでしょうし……ひょっとすると重い事が書かれている人もいるのかもしれません。油断はできませんよ」

    石丸「なるほどな、その可能性は考慮していなかった。僕も気を引き締めるとしよう」

    大和田(そんな感じで全員集まり、見つかったファイルを本人に渡したりして……結局今日の成果はこんな感じだった)
  104. 104 : : 2014/12/31(水) 16:45:06
    ・大和田のファイル
    ・山田のファイル
    ・舞園のファイル
    ・大神のファイル
    ・セレスのファイル
    ・苗木のファイル
    ・十神のファイル
    ・霧切のファイル
  105. 105 : : 2014/12/31(水) 16:45:30
    石丸「発見できたのはこの八つだけか。ファイルはそれぞれ本人に渡ったな?」

    セレス「のようですわね」

    大和田(ちなみに報告によると、オレとセレス、それから霧切のファイルの三つだけ本人が所属するグループが発見し、他は別グループによる発見、だったそうだ)

    山田「うーん……中身を確認しましたが……正直微妙な内容でしたな」

    大和田「やっぱ山田もか。オレもそうなんだよな」

    セレス「わたくしにとっては死活問題な内容が書かれておりましたが……まあこれはあとで処分すると致しましょう」

    舞園「セレスさんは大きな事が書かれていたんでしょうか……私は別に大したことではなかったんですけど」

    大神「我は……どちらかと言えばセレスの物に近いのやもしれんな」

    苗木「ボクは大したことじゃない、かな、うん……いやボクにとっては大問題なんだけどさ」

    大和田「霧切、オメェはどうだったよ?」

    霧切「私は……」

    大和田(それだけ言って口を閉じる霧切。……なんだあ?)

    苗木「……霧切さんのは、たぶんだいぶ特殊だったんだと思う。すっごく分かりにくい所にあったしさ。だから今はまだ伝えられない……だよね、霧切さん」

    霧切「そうね。私自身納得がいかないところもあるし。確証を持てるようになったら伝えるわ」

    大和田(……? どういう意味だ、そりゃ?)

    朝日奈「よく分からないけど、とりあえず霧切ちゃんも結構重い事が書かれてたんだね! よく分かったよ!」

    桑田「分かったのか分かってねえのか、それどっちだよ……!?」
  106. 106 : : 2014/12/31(水) 16:45:51
    石丸「あと見つかっていないファイルは桑田君、葉隠君、朝日奈君、不二咲君、それに僕の物で五つだな。数としてはいい傾向ではないか?」

    苗木「うーん、どうかな。こういうのって後に残ったものほど見つかりにくい物だしね」

    不二咲「ゲームとかでもそうだよねぇ。厄介なものが後に残ったりすることはよくあるし」

    朝日奈「まあ、その辺は追々見つけて行くとしてさ……それよりこの十神のファイル、どうする?」

    石丸「どう、と言われてもな。本人に渡しに行くほかないのではないか?」

    桑田「別に十神のは馬鹿正直に渡しに行かなくていいんじゃねーの? こっちで管理してりゃあよ」

    朝日奈「うん、私も桑田の意見に賛成かも……。アイツにこれ渡しても頭に乗らせるだけだと思うし……」

    石丸「だが、“見つけた物は本人に渡そう”と取り決めたではないか。そこに例外を作ってしまうのは如何なものかと思うのだが……」

    大和田「いや、悪いな。幾ら兄弟の意見でも、オレはそいつには乗れねえ。桑田の意見の方に賛成だぜ」

    石丸「む……そうかね?」

    葉隠「これも必要な措置ってやつだっての!」

    霧切「彼に対しての抑止力を備えておくのは悪い事では無いと思うわ」

    セレス「まあ、抑止力が必要な関係自体がそもそも問題があるのですがね」

    石丸「……仕方がない、か。分かった。では誰が管理するかだが」

    大和田「大神でいいだろ」

    大神「我か?」

    苗木「確かに、大神さんなら安心して管理を任せられるね」

    舞園「それに十神君が嗅ぎつけたとしても、大神さんならやすやすと手出しは出来ないでしょうし……いいと思いますよ」

    大神「……分かった。では我が預かろう」

    石丸「では今日の報告は以上でいいか?」
  107. 107 : : 2014/12/31(水) 16:46:08
    不二咲「あ、待って。一個提案があるんだけど……」

    大和田「ん、何だ?」

    不二咲「夜時間は出歩かない、って取り決め、しばらく無くさない……?」

    葉隠「そりゃまた、なんでだべ?」

    不二咲「夜時間にも探したいな、って思って……」

    朝日奈「それは……私もちょっと思うかな……」

    石丸「ふむ、みんなはどうだろう?」

    霧切「そうね……なら“情報が見つかっていない人のみ”情報が発見されるまでの間夜時間の出歩きを許可する、という形式はどうかしら?」

    セレス「それならいいかもしれませんわね。もし事件が起こっても容疑者は限られますし」

    石丸「なるほどな。分かった、では情報が見つかった者は本日は解散としよう。まだ見つかっていない者は残って探索続行、でいいか?」

    不二咲「うん、ありがとう……!」

    葉隠「んじゃ、俺も残るかな」

    桑田「オレもだな」

    朝日奈「じゃあ私も! 十神に先に取られたらどうなるかわかんないし!」

    苗木「うん、じゃあ五人とも、頑張ってね。ボクらは部屋に戻るよ」

    石丸「ああ、ゆっくり休んでくれたまえ!」

    大和田(その石丸の言葉通り、既に情報が見つかったオレ達は適当に挨拶を交わし、自室に戻り……そしてこの日は眠りに就いた)
  108. 108 : : 2014/12/31(水) 16:46:28
    大和田(チャイムの音で意識が覚醒する。どうやら朝になったらしい)

    モノクマ『オマエラ! 朝です、七時です。起床時間ですよー!』

    大和田(やっぱりな)

    モノクマ『今日も張り切って』

    大和田(と思っていたが、いつものお決まりの文句はそこで途切れた。……なんだ、モニターか放送機器の不調か? ……と、ここまではオレも楽観視していた。だが)

    モノクマ『死体が発見されました!』

    大和田「……は?」

    モノクマ『一定の自由時間の後、学級裁判を開きます!』

    大和田(待て待て、どういう事だ? ……死体? 今の放送じゃたしかにそう言ってたよな。学級裁判だって? またあんなことが起こるのか? また……事件が起こったってのか?)
  109. 109 : : 2014/12/31(水) 16:46:46
    大和田「クソがッ!」

    大和田(やり場のない怒りが込み上げてくるが、毒づいてても仕方ねえ。大急ぎでオレは部屋を出た。すると……)

    舞園「大和田君! 大和田君もさっきの放送を?」

    大和田「ああ、聞いた。死体……って言ってたよな。どこだ?」

    舞園「分かりません、けど探しましょう!」

    大和田「そうだな……」

    桑田「いや、その必要はねえよ」

    大和田「うお、桑田!?」

    桑田「オレも発見者の一人でな、みんなを呼びに来たんだよ……」

    舞園「そうでしたか……」

    大和田「じゃあ全員叩き起こした方がいいな、よし、ちっと待ってろ」

    大和田(言って、全員が個室前の廊下に集まるまで他の連中を呼び続け……)

    十神「どうやら集まったようだな」

    大和田(コイツも個室に居たのはまあ、幸か不幸かってトコだな)

    苗木「いないのは……昨晩情報探しに残った面子だけ、か……」

    桑田「そういう事だ。その面子は……向こうにいるぜ」

    大和田(まさか、兄弟じゃねえ……よな?)

    大和田「っし、行くぞ! 桑田、案内しろ!」

    大和田(鼓動が早くなるのを必死に押さえつけようと声を張り上げる)

    桑田「お、おう。じゃあついて来てくれ」
  110. 110 : : 2014/12/31(水) 16:47:03
    大和田(桑田に案内されたのは二階の図書室だった)

    桑田「この奥……書庫になってんだけどよ。そこが現場だ……」

    大和田(緊張の面持ちで桑田は「開けるぞ」と言って扉を開く。……そこで目に飛び込んできた物は)

    舞園「……っ!」

    苗木「これ、は……」

    大和田(血だまり。そして)

    不二咲「み、みんな……!」

    朝日奈「来た、んだね」

    大和田(そして)

    石丸「きょ、兄弟……兄弟……ッ!」

    大和田(“超高校級の占い師”葉隠康比呂の変わり果てた姿だった)
  111. 111 : : 2014/12/31(水) 16:48:44
    ------------------------------

    大晦日スペシャルここまで
  112. 112 : : 2014/12/31(水) 18:29:24
    ダベが...このダベ案外クズしてねぇのに...
    それと>>84の苗木が桑田を霊媒してるような←
  113. 113 : : 2014/12/31(水) 18:29:56
    >>83のもだ
  114. 114 : : 2014/12/31(水) 18:37:11
    うわホントだ、修正しときます。
  115. 115 : : 2015/01/17(土) 20:30:47
    裁判終了まで書きため終わったので投下していきます。
  116. 116 : : 2015/01/17(土) 20:31:49
       CHAPTER 2
              週刊少年単車の友   非日常編
  117. 117 : : 2015/01/17(土) 20:32:21
    大和田(血だまりの中、倒れている葉隠の姿に視線を集める一同だったが……)

    モノクマ「いやあ、起きましたね。起きちゃいましたね! うぷぷ……!」

    苗木「モノクマ!」

    石丸「起きちゃいましたね、ではないだろう!」

    桑田「そうだ! オメーが余計なコトしなけりゃ、こんな事起きなかっただろうによ……!」

    モノクマ「あらら、ボクは歓迎されてないムードなんすか?」

    セレス「好き好んで歓迎したくはありませんわね」

    モノクマ「しょぼーん……じゃあ分かりましたよ、ボクは一足お先に帰らせていただきますよ……」

    霧切「どうでもいいけれど、モノクマファイルは置いて行って貰えるかしら。どうせそれを配りに来たんでしょう?」

    モノクマ「ちゃっかりしててやんなっちゃうなあ、もう。分かったよ、渡すよ! それでいいんでしょ! けどちゃんと捜査しろよな!」

    大和田(そう言ってモノクマはモノクマファイルを投げつけるようにして寄越し、どこへともなく走り去って行った)

    桑田「またあんな事しなくちゃなんねえのかよ……!」

    セレス「学級裁判、ですわね」

    十神「お前らの中にこのゲームに参加する意欲のある者がまだいたとは驚きだが……まあいい。どの道勝つのはこの俺だという事を証明してやろう。さっさと捜査を始めるぞ」

    大和田「ああん? テメェ、何余裕ぶっこいてやがんだ! 人が死んでんだぞ!?」

    十神「死んでいるから捜査を始めると言っているんだろう。そんな事も分からんのか、お前のポンコツ頭は」

    大和田「ポンコツだとォ!?」

    苗木「わー、わー! 落ち着いて、とりあえず落ち着いて!」

    霧切「大和田君、たしかに十神君の態度は咎められて然るべきだけれど、今は落ち着いて。この事件の犯人を突き止めないと、糾弾するどころではなくなってしまうわ」

    大和田「……ちっ」

    十神「フン、そういう事だ。では話を進めるが……今回も前回と同じようにこの現場に見張りを立てるぞ。大神と大和田、お前ら二人で異論はないな?」

    大和田(コイツに指図されんのは腹が立つが……それがオレのポジションだからな。仕方ねえか……)
  118. 118 : : 2015/01/17(土) 20:33:59
    大和田「ああ、わか――」

    霧切「いえ、賛成できないわ」

    大和田「はあ? 何言ってんだ霧切」

    十神「何故賛成できない。理由を述べろ」

    霧切「その前に一つ訊きたい事があるのだけれど……死体を発見したのは桑田君、不二咲さん、石丸君、朝日奈さんの四人。これで間違いないのよね?」

    朝日奈「うん、そうだけど……」

    霧切「どういう順で発見したのか、教えてもらえる?」

    朝日奈「えっと……最初に見つけたのは私。それで大声で叫んだら……すぐに桑田が来たんだ」

    桑田「オレはそん時丁度、2-B教室の探索してたからな。すぐに駆けつけられたってわけだ」

    不二咲「それからちょっとして私と石丸君が一緒に来たんだよね……」

    石丸「うむ、そうだったな」

    霧切「なるほどね、ならやっぱり賛成できないわ」

    十神「どういう事だ」

    霧切「犯人はこの四人の中の誰かに絞られている可能性が非常に高いわ。ならいっそ、この四人にこの場の見張りを任せるっていうのはどう?」

    山田「はい!? 正気ですかな、霧切響子殿!?」

    霧切「彼らだって身の潔白を証明するために捜査が必要よ。だから現場への立ち入りを禁止するわけにはいかない。けれど、その中に紛れている犯人に証拠を隠滅されても困る。それなら、全員を現場でひとまとめにして、相互監視状態を作るのは決して悪い話じゃないと思うのだけれど」

    苗木「なるほど……現場に残すことで、現場だけを徹底的に捜査する面子を作るっていうのも悪くないと思う。特に桑田クンは前回の裁判でも目を見張る活躍だったし」

    桑田「まーな……って待て待て待て、オレまた疑われてんのかよ!?」

    セレス「つくづく、“有力容疑者”の仲間入りがお好きな方ですわね」

    桑田「好きでなってるわけじゃねーっての!」

    霧切「ともあれ、私の提案はこうだけれど、異論は?」

    大和田(無言による肯定が場を支配する。……ん? 待てよ、って事はオレも捜査すんのか?)

    霧切「どうやら無いみたいね。じゃあそういう事で四人とも、お願いね」

    桑田「ったく、しゃーねえな。代わりにあとで誰か、ここ以外の捜査の結果教えてくれよ?」

    舞園「ええ、約束します」

    石丸「そういう事ならば……いいだろう」

    大和田(そう言って兄弟はちらりとオレを見る。“捜査は任せた”って事か? へっ、兄弟にそう目で語られちゃあ、やらねえわけにはいかねえか)

    大神「それでは……我も捜査へ向かうとしよう」

    大和田(大神のその言葉で、大神本人と十神、舞園、セレス、苗木、山田が思い思いの場所へと散っていった。さってと、じゃあオレも始めるとすっかな)
  119. 119 : : 2015/01/17(土) 20:34:16

                 ――捜査 開始――
  120. 120 : : 2015/01/17(土) 20:35:06
    桑田「さて、んじゃあモノクマファイルでも確認すっか」

    大和田(桑田の呟きに、そういえばまだ確認していなかったと気付く。一応オレも確認しとくか。えーと?


    被害者は“超高校級の占い師”葉隠康比呂。
    死亡時刻は午前五時~午前七時の間。
    死体周辺に広がる血液は、
    腹部に刺さったガラス状の物の破片による流血とみられる。



    ってこんだけかよ!?)

    石丸「モノクマファイルの内容は短いな……」

    不二咲「そうだね……必要な情報、っていうよりホントに基礎的な状況だけ書きました、って感じがする」

    大和田(たしかにな……ま、一応覚えちゃおくか)


        コトダマ
         【モノクマファイル弐】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:被害者は“超高校級の占い師”葉隠康比呂。
           死亡時刻は午前五時~午前七時の間。
           死体周辺に広がる血液は、
           腹部に刺さったガラス状の物の破片による流血とみられる。
  121. 121 : : 2015/01/17(土) 20:36:23
    桑田「でも実際、捜査に使えそうな情報って死因くらいだよな。」

    霧切「いえ、死亡時刻も使えるわ。貴方達が有力な容疑者とは言ったけれど、他の人が犯人の可能性はゼロじゃないもの。みんなのアリバイを尋ねる上で重要な情報よ」

    朝日奈「と言っても、午前五時から午前七時、なんて分かり切ってる情報だし……」

    霧切「分かり切っている情報……?」

    大和田(ん? どういう事だ?)

    大和田「待てよ、死亡時刻が分かりきった話ってな、どういう意味だ?」

    石丸「ああ……そうか。そういえば我々以外は知らない情報だったな。昨日みんなと別れた後、午前二時ごろまで探索を続けたのだ。その結果成果は一つも挙げられず……だから少し仮眠を取ってから早朝に再び集合し、探索を続行しようという流れになったのだ」

    不二咲「午前二時から三時間寝て、午前五時に集合して……その時は葉隠君、ちゃんといたんだぁ。そこからみんなで手分けして探索を再開したから……」

    朝日奈「その後、モノクマの朝の放送が流れるタイミングで私が死体を発見するまで、誰も葉隠と会ってないなら午前五時から午前七時っていうのは、私達にとっては“分かり切ってる情報”だったんだよね」

    霧切「そうだったの……」

    大和田(一応、これも覚えといた方がいいか?)


        コトダマ
         【葉隠の死亡時刻】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:ファイル探索のメンバーがに午前五時頃に集合した際には生きていた。
           また、朝日奈が死体を発見したタイミングは
           朝のモノクマの放送中だったため、午前七時と断定できる。
  122. 122 : : 2015/01/17(土) 20:36:45
    大和田「てことは何か、モノクマの野郎、調べればすぐわかるような事だけはしっかり書きやがったって事か?」

    桑田「ま、オレらに話聞けばすぐ断定できる情報だわな」

    不二咲「それでも、時間の短縮にはなるけどねぇ」

    大和田「ったく……」

    霧切「一応確認しておくけれど、貴方達の中にこの午前五時から午前七時の間に葉隠君と会った、或いは見た、という人はいるかしら?」

    桑田「真面目にこん中に犯人がいるんじゃない限り、いねーだろ。もし見かけてたら言うだろうしよ」

    霧切「……そうね、愚問だったわ」

    大和田「ところでよ、桑田。オメェは朝日奈が死体発見したタイミングで2-B教室にいたんだよな?」

    桑田「おう、そうだぜ」

    大和田「じゃあ兄弟と不二咲はどこにいたんだ? 遅れたとはいえ駆けつけられたって事は一応近くにいたんだろ?」

    朝日奈「うん。遅れたって言ってもほんの数秒だったし、それは確かだと思うけど……」

    不二咲「私は2-A教室にいたんだぁ……けど走るスピードも桑田君程早くないから……」

    霧切「まあ体力の差はどうしようもないわね。石丸君は?」

    石丸「僕はプールにいたぞ。プールから伸びる廊下と2-A教室に至る廊下の、ちょうど交差点で僕と不二咲君が合流したのだ」

    大和田「なるほどな」


        コトダマ
         【死体発見時の容疑者の居場所】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:朝日奈は第一発見者のため書庫。
           桑田は2-B教室。
           不二咲は2-A教室。
           石丸はプール。
  123. 123 : : 2015/01/17(土) 20:38:42
    霧切「それにしても、上手く二階でバラけてたわね」

    朝日奈「うん……それは私もちょっとびっくりかも。別に二階を探索しよう、なんて示し合せてたわけでもないし」

    大和田「つまり偶然って事か……」

    大和田(ま、そこは別に疑う必要はねえか)

    桑田「ところでよ……」

    霧切「何かしら?」

    桑田「前回の事件は死体を移動させて現場を偽装されてたわけだけど、今回は血だまりまで出来てるし、現場はここで間違いねえ、って事でいいんだよな?」

    不二咲「そうだね……もしここが現場じゃないなら、私達がここを見張ってても仕方ないだろうし……」

    霧切「それは考えなくていいと思うわ。血だまりがある、というのもその根拠だけれど、もっと言えば午前五時から午前七時までの間の二時間の間に死体の移動と血だまりの用意、その両方を行うのは難しいでしょうし」

    大和田「それに、用意できるような血なんてどこにもねえはずだろ」

    桑田「そっか、そうだよな。じゃあ現場はここって事でいいんだな」

    石丸「なるほどな」

    朝日奈「それはちょっと安心だね!」

    大和田(これも一応覚えとくか)


        コトダマ
         【現場は書庫】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:書庫に血だまりがあり、また現場を偽装する時間も無いため、
           現場は書庫で間違いないだろう。
  124. 124 : : 2015/01/17(土) 20:39:21
    石丸「他に話せる事は何かあっただろうか?」

    朝日奈「うーん、思いつかないなあ。訊かれたら答えられることはあるかもしれないけど」

    不二咲「そうだねぇ……。何かあったら何でも訊いてよ!」

    大和田「いや……今んとこは特に思いつかねえな」

    霧切「捜査を進めて気になる事が出来たら何か尋ねさせてもらうかもしれないわ」

    桑田「そっか、分かったぜ」

    大和田「さてと、そんじゃあこの部屋、調べっか……」

    大和田(いつまでも話聞くだけってわけにもいかねえし、な)

    霧切「そうね、そうしましょう」

    大和田(そう言って霧切は葉隠の死体に近付く。この女、死体相手だってのによく物怖じしねえもんだ)

    大和田「霧切、どうだ? 何か分かったか?」

    霧切「そうね……。一つ、あったわ。けれどこれって……もしかして……」

    大和田(何やらぶつぶつと呟き始める霧切。何だってんだ?)

    桑田「何がわかったんだよ?」

    霧切「……そうね、まずはその話から片付けましょう。葉隠君の後頭部に打撃痕と思われるものが見つかったわ」

    石丸「打撃痕……だと?」

    霧切「ええ。何か、鈍器のような物で殴られたような痕があるの。尤も、殴られたわけじゃなくて自分でどこかでぶつけただけの可能性もゼロじゃないけれど……」

    不二咲「霧切さんはそれの何が気になってるのぉ? 普通に重要な発見だと思うんだけど」

    霧切「……私が気にしているのは、“この情報がモノクマファイルに載っていなかった”理由よ」

    石丸「うむ、たしかにそれは不自然だな……。モノクマファイルは、モノクマが殺人事件の捜査に慣れていない素人である僕らのために、フェアに捜査を進めるために用意した物だったはずだ。意図的に死因足りえる情報を隠匿するというのは……」

    大和田「事件には関係ない傷の可能性が高い、って事か?」

    霧切「いえ、この傷、出来てからそんなに時間が経っているようには見えないわ。おそらく事件の際に出来た物と見て間違いないと思うわよ」

    桑田「つーことは……なんで載ってねーんだ?」

    霧切「一応、予測はあるのだけれど……おそらく事件とは関係のない事よ。今は必要ないでしょう。それよりも、“後頭部に打撃痕がある”という事実、これは覚えておいた方がいいでしょうね」

    大和田(モノクマファイルに記述のない打撃痕、か。気になるのは確かだしな)


        コトダマ
         【後頭部の打撃痕】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:葉隠の後頭部に打撃痕があった。
           モノクマファイルにはこれについて記述はない。
  125. 125 : : 2015/01/17(土) 20:39:47
    霧切「それともう一つ。これはモノクマファイルにも記述のある事なのだけれど、葉隠君の腹部に刺さっているガラス状のもの……綺麗に周囲を映すわね。ガラスというより鏡よ、これ」

    朝日奈「そうなんだ。……まあ “うつぶせの状態”で見つけたからモノクマファイルを見るまで刺さってるって事も知らなかったけど。ここまで血が出るんだもん、そりゃ何か刺さってても不思議はないよね」

    霧切「この鏡の破片についても出所を調査すべきでしょうね」

    大和田「それは……オレに言ってんだよな」

    石丸「僕らはこの部屋を動けないからな。そういう事になるだろう」

    大和田(ま、それも調べるとすっか)


        コトダマ
         【鏡の破片】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:うつぶせの状態の葉隠の腹部に刺さっていた。
           破片と言ってもそれなりの大きさがある。
           出所は不明。
  126. 126 : : 2015/01/17(土) 20:40:14
    霧切「ここはこんなものかしら……一応訊いてみるけど、大和田君は何か気付いた事とかあるかしら?」

    大和田「一応ってオメェ……まあいいけどよ。そうだな……」

    大和田(言われて現場をよく観察してみる。すると)

    大和田「……ん?」

    朝日奈「何か見つけたの!?」

    大和田「いや、別に大したことじゃねえと思うんだけどよ」

    霧切「とりあえず言ってみてくれるかしら? 判断はそれからよ」

    大和田「ああ……この血だまりだが、ちっと妙じゃねえか?」

    石丸「血だまりが妙、とはどういう意味かね?」

    大和田「だってよ、ダンボールとか電気スタンドとかには血が広がってるトコに置いてあんのに、そこらに積んでる本だけには血が届いてねえだろ? こんだけ本だらけの部屋なのに本は全部無事ってのはちっと変だと思ってな。まあ偶然っちゃ偶然なのかもしんねえけどよ」

    朝日奈「言われてみれば、ホントだよ!」

    不二咲「偶然……で片づけていいのかはちょっと微妙かなぁ」

    霧切「そうね。少しこれについても考えてみた方がいいかもしれないわ。大和田君、お手柄かもしれないわよ」

    大和田「そうか? なら良かったぜ」


        コトダマ
         【血の広がり方】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:葉隠から広がる血だまりは、
           電気スタンドやダンボールのような物は汚しているが、
           沢山ある本は一切汚していなかった。
  127. 127 : : 2015/01/17(土) 20:40:32
    霧切「それじゃあ、私はそろそろ別の所の捜査に行くわ。朝日奈さん達も、この部屋にまだ見落としもあるかもしれないし、見張りだけじゃなくてここの捜査も引き続きお願いするわね」

    朝日奈「うん、分かったよ!」

    石丸「では、そっちも頑張ってくれたまえ!」

    不二咲「こっちはこっちで、頑張ってみるよ……!」

    桑田「ま、オレも今回はオメーらに任せるわ。じゃ、行って来いよな!」

    大和田(これはあれか、ここから出て別の場所の捜査をする、って流れなのか? まあここにずっといても仕方ねえし、それにゃ異論はねえが……オレに殺人事件の捜査なんざ、マトモにこなせるとは思えねえんだよな)

    霧切「……大和田君、あまり気負う必要はないわ。貴方は貴方の指針で捜査をすればいいから」

    大和田(そんなオレの困惑を見透かしたように霧切が声をかけてくる)

    大和田「オレの……指針」

    大和田(指針……目標。どこを目指すか。少し考えて……考えるまでも無い事に気が付いた)

    大和田「そうか、そうだな……おう、サンキューな、霧切。おかげでやるべきことが見つかった気がするぜ」

    霧切「そう、じゃあそれを見失わないように頑張って頂戴」

    大和田(霧切の言葉に一つ頷く。……オレには小難しい事はわかんねえ。だが、単純なオレの感情くらいはさすがに分かる。オレは容疑をかけられてる四人の中に入っちまってる兄弟を、兄弟の容疑を晴らす事だけを考えて捜査をすればいい)

    大和田「じゃ、行って来るぜ。……またあとでな」

    大和田(待ってろ、兄弟。オレがオメェの無実の証拠、掴んでやるからよ)
  128. 128 : : 2015/01/17(土) 20:41:14
    大和田「で、だ」

    大和田(意気込んで図書室を出てきたのはいいが、どこを捜査すりゃいいんだ? とりあえずこれまでの情報を見てみると……えーと、まずは鏡の破片の出所を調べるんだな。で、葉隠の死因が後頭部の打撃痕、ってのだとするとこれを作った凶器が存在するはずだ。これも探さねえとか。あとは……あー、分かんねえ。とりあえずこの二つを調べてみっか。まず先に何とかなりやすそうな鏡の破片の出所探ってみっか。鏡があるっつったらやっぱトイレか? まずは行ってみるしかねえな)
  129. 129 : : 2015/01/17(土) 20:41:35
    大和田(トイレっつっても三ヶ所ある。まずは近場の学校エリア二階の男子トイレに来たわけだが……)

    大和田「さっそくビンゴかよ」

    大和田(二階男子トイレの鏡の一つが割られていた。こりゃあここの破片を使ったとみて間違いねえだろうな……と、そこへ)

    苗木「うわっ、何これ!?」

    大和田「おう、苗木か」

    苗木「えっと、もしかして……この鏡、大和田クンが……?」

    大和田「ちげーよ!」

    苗木「え、じゃあ何でこんなことになってるの!?」

    大和田「オメェ、モノクマファイル見てねえのか?」

    苗木「え? えっと……あれ、葉隠クンの腹部にガラス状の物……? あ、ひょっとしてこれが?」

    大和田「そういう事だろうな。さっき霧切が死体を調べた時、ガラスじゃなくて鏡だっつってたからよ」

    苗木「なるほど……」

    大和田(ともあれ、見つかったのは見つかったって事で、覚えとくか。兄弟が犯人じゃねえ、って証拠にはならなそうだけどな)


        コトダマ
         【鏡の破片】の情報を更新しました。

        内容:うつぶせの状態の葉隠の腹部に刺さっていた。
           破片と言ってもそれなりの大きさがある。
           学校エリア二階の男子トイレの鏡が割られていたことから、
           出所はここだと思われる。
  130. 130 : : 2015/01/17(土) 20:41:54
    大和田「つーかよ、苗木。調べに来たんじゃねえなら苗木は何しに来たんだ?」

    苗木「え、何って……ちょっと用を足しに」

    大和田「ああ……ったく、さっさと済ませて捜査に戻れよ?」

    苗木「うん、分かってるよ」

    大和田「じゃーな、オレは別んとこ行くぜ」

    苗木「うん、そっちも頑張ってね!」

    大和田「ああ。オメェもな」
  131. 131 : : 2015/01/17(土) 20:42:17
    大和田(にしても、さっそく捜査の手がかりが立ち消えたな。これからどうするか……)

    舞園「あれ、大和田君じゃないですか。どうしたんですか、そんなところで?」

    大和田「ん、ああ。舞園か。いや、どこを調べたもんかとな……」

    舞園「なるほど、そうでしたか。けどたしかにそうですよね、今回の事件、どこを探せばいいのかイマイチ分かりませんし……せいぜい、凶器の正体を探ったり、トラッシュルームが使われてないかを調べる程度の事しか思いつきません」

    大和田「ああ、なるほど、トラッシュルームがあったか……」

    大和田(トラッシュルームはあとで見に行くとして、問題は凶器だな)

    舞園「凶器は確かモノクマファイルによると、ガラスの破片、でしたよね?」

    大和田「は? 何言って……ああ、そうか。あの場にいたのはオレらだけだったから知らねえのも無理ねえか」

    舞園「何の話ですか?」

    大和田「まずな、ガラスじゃなくてアレ、鏡だぞ。そこの男子トイレの鏡が割られてたから、それだろーな」

    舞園「そうだったんですか!? 知りませんでした……」

    大和田「ま、男子トイレだからな。無理ねえだろ。それとな、モノクマファイルには書かれてねえけどよ。霧切が調べたとこによると、葉隠の後頭部に打撃痕があったんだと。そっちが死因の可能性もあんぜ」

    舞園「打撃痕……という事はそれを作った物があるかもしれない、って事ですよね」

    大和田「そういう事だな」

    舞園「情報いろいろありがとうございます。じゃあ私もその線で調べてみますね!」

    大和田「おう、分かった」

    大和田(舞園は行っちまったな。それじゃあ鈍器のような物、だったか。探してみっか……)

    苗木「こっ、これって!?」

    大和田「うお!?」

    大和田(突然、トイレの中から苗木の叫び声。なんかあったのか!?)
  132. 132 : : 2015/01/17(土) 20:42:33
    大和田「どうした、苗木!?」

    苗木「お、大和田クン! まだいたんだね!」

    大和田「まァな。それよりさっきの叫び、ありゃなんだ?」

    苗木「これ、ここ見てよ!」

    大和田(苗木が指差した位置には鏡の破片が散らばっている)

    大和田「葉隠に刺すために割った鏡の破片だろ? 分かりきった事じゃねえか」

    苗木「違うよ、そうじゃなくてさ。この鏡の破片、その一つに……」

    大和田「言って、一つの破片を苗木は取り上げた」

    大和田「なんだよ?」

    苗木「よく見てよ、これ」

    大和田「あん……? なッ、こ、こりゃあ……!」

    大和田(端っこの方に、ごくわずかにだが、こりゃあ……)

    苗木「血痕が付着してる……よね?」

    大和田「だな……」

    大和田(鏡の破片に着いた血……何か意味があるのか?)


        コトダマ
         【散らばった鏡の破片】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:二階男子トイレに散らばっていた鏡の破片の一つに、
           極わずかに血痕が付着していた。
  133. 133 : : 2015/01/17(土) 20:42:53
    苗木「これ、どういう意味だと思う?」

    大和田「オレが分かるかよ。けど無関係ってこたねえんじゃねえか?」

    苗木「だよね……」

    大和田「ま、とりあえずここから出ようぜ」

    苗木「それもそうだね」
  134. 134 : : 2015/01/17(土) 20:43:15
    大和田「で、だ」

    大和田(凶器っぽいモン探しに行くべきか、トラッシュルームに行くべきか……いや、鈍器のような物、だったよな? ならすぐそこの更衣室に何か使われた形跡のあるトレーニング機器がねえか探すのも手だな)

    苗木「どうしたの? 急に黙っちゃって」

    大和田「いや……とりあえずよ、オレはそこのプールの更衣室の方、捜査してみるわ。オメェはどうするよ?」

    苗木「うーん、ボクは……みんなにいろいろ話を聞いて回ってみようかな。でも大和田クンはなんで更衣室なんかに?」

    大和田「ああ、それは……」

    大和田(舞園にしたように苗木にも説明する)

    苗木「なるほど、そうだったんだ……。現場は四人が調べてくれると思ってたから残らなくていいって思ったけど、失敗だったかな」

    大和田「おう、そうだ苗木。これから他の連中んとこ行くんだろ? だったらこの話もついでに伝えといてくれや。さっきそこで舞園には会ったから伝えたが、他の奴らは知らねえはずだしよ」

    苗木「うん、分かったよ! じゃあ大和田クンも捜査頑張ってね!」

    大和田「ああ、オレが出来る事は限られてるだろうけどな」

    大和田(苗木は……行っちまったな。さて、じゃあオレも行くか)
  135. 135 : : 2015/01/17(土) 20:43:51
    大和田(で、そのまま更衣室に来てみたはいいが)

    大和田「綺麗なもんだな……」

    大和田(正直言って、前に来た時と何か変わりがあるようには思えねえ)

    大和田「ま、トレーニング機器使うのはオレと……せいぜい桑田くらいだろうしな」

    大和田(つっても桑田が使うかは怪しいとこだが)

    大和田「あー、でも兄弟も使うのか? 使ってても不思議はねえか」

    大和田(“精神の修練”とかなんとか言って肉体的な修練積んでる姿が目に浮かぶぜ……。ま、んな事言ってても始まんねえな。ちょっといろいろ見てみっか)

    大和田「持ち運びできそうな鈍器っつったら……やっぱ一番はダンベルか?」

    大和田(と思ったが、ダンベルの数はちゃんと揃ってるな……)

    大和田「ま、そんな分かりやすいモンは使わねえか。じゃあ次は……」

    大和田(そう思っていろいろと調べてみたが結局、ここには何かが持ち出された形跡は無かった)

    大和田「ちッ、不発かよ……」

    大和田(……いや、待てよ? 少なくとも“男子更衣室の物は使われていない”……これ、兄弟が犯人じゃねえ、って証拠になるかもしんねえな。全くの不発じゃねえんじゃねえか?)

    大和田「覚えとくと使えるかもな……」


        コトダマ
         【凶器の捜索結果】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:<男子更衣室> 怪しい物は無し
  136. 136 : : 2015/01/17(土) 20:50:25
    大和田(そういや……)

    大和田「兄弟は死体発見前にはプールにいたんだったな。そっちも一応見とくか」

    大和田(何もないだろうが、プールへの扉を開く。そして飛び込んできた光景は……)

    大和田「ま、やっぱなんもねえわな」

    大和田(プールに張られた水が揺らめいているだけで、ここには特に何もなさそうだ)

    大和田「んじゃ、出るとすっか……」
  137. 137 : : 2015/01/17(土) 20:50:42
    大和田(プールから出たオレは、舞園の助言もあってトラッシュルームへとやって来た)

    大和田「お」

    山田「おや、大和田紋土殿もここが怪しいと踏んだようですな?」

    大和田「怪しいっつーか、証拠隠滅すんならやっぱここだしな……」

    山田「ですな。しかし……一つ問題がありまして」

    大和田「問題って何だよ?」

    山田「掃除当番が分からないのです……」

    大和田「あー、掃除当番じゃねえとシャッターが開けられねえ、ってのは前の裁判の時にちらっと聞いた気はすんな」

    山田「大和田紋土殿、掃除当番だったりしません?」

    大和田「いや、オレじゃねえな……ついでに誰が掃除当番ってのも知らねえ」

    山田「そうですか……ううむ、全員に掃除当番かどうか訪ねて回るのは少々時間がかかりますし……これは諦めるしかありませんかな」

    大和田「捜査のついでに掃除当番がいたら、って感じだな……」

    山田「ですな」

    大和田(そう結論付けてトラッシュルームから出ようとすると……)

    舞園「あ、大和田君と山田君も来てたんですね」

    大和田(舞園がやって来た)

    山田「舞園さやか殿ではありませんか。まあ、来ていたというか、掃除当番が分からず捜査も出来ないので別の場所へ行こうとしていたところで……」

    舞園「あ、トラッシュルームのカギなら持ってますよ」

    山田「何ですと!?」

    大和田「舞園が掃除当番だったのか」

    舞園「あ、いえ。私ではありません」

    山田「へ?」

    舞園「私も掃除当番がわからなかったのでいろんな人に訊いてみたんです。そしたら現場の見張りをしていた石丸君が掃除当番で……失念していた、とか言ってましたね」

    大和田「なるほどな、兄弟らしいぜ」

    大和田(けど掃除当番は兄弟か。不利にならなきゃいいが……)


        コトダマ
         【掃除当番】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:掃除当番としてトラッシュルームのカギを所持していたのは、
           石丸清多夏だった。
  138. 138 : : 2015/01/17(土) 20:51:02
    山田「ともあれ、これでトラッシュルームを調べられますな」

    舞園「はい。では開けますね……」

    大和田(舞園がカギを開け、トラッシュルームのシャッターが開く)

    舞園「うーん、一番気になるのは……やっぱり焼却炉ですよね」

    山田「そうですな。ですがここ数時間の間で何かが焼かれたという事は無さそうですぞ?」

    舞園「死亡時刻は午前五時~午前七時ですからね……ならトラッシュルームは使われていないんでしょうか?」

    山田「まあ、さすがに犯人もトラッシュルームは使いにくいんじゃないですかね?」

    大和田「使われてたら、そん時の掃除当番が“自分が犯人だ”って言ってるようなもんだしな……」

    大和田(けど使われてねえ、って事は……兄弟はやっぱ無実って事でいいんじゃねえか? いや、さすがにそう決めつけるにはまだ早計か)

    舞園「うーん、焼却炉以外の場所も特に証拠になりそうな物は何もありませんね……」

    大和田(空振りばっかだな、オレ。まあトラッシュルームが使われてねえ、ってのは覚えるだけ覚えとくか)


        コトダマ
         【トラッシュルームの様子】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:トラッシュルームは使われた形跡が無かった。
           ここで証拠を隠滅したという事は無いようだ。


        コトダマ
         【凶器の捜索結果】の情報を更新しました。

        内容:<男子更衣室> 怪しい物は無し
           <トラッシュルーム>怪しい物は無し
  139. 139 : : 2015/01/17(土) 20:57:26
    山田「ふむ、トラッシュルームが使われていないという事は……」

    大和田「事は、何だよ?」

    山田「別のところで証拠を処分している可能性もありますな」

    大和田「言われてみりゃそうだな。けどよ、どこで処分するってんだ?」

    舞園「他に証拠を処分できるような場所なんてありましたっけ?」

    山田「いえ、それは思いつきませんが……せいぜい、分かりにくい所に隠す、程度なら幾らでも出来るのではないかと」

    舞園「なるほど……」

    大和田「たしかに、倉庫とか購買の奥の方に隠されてたら見落とす可能性あるしな……」

    舞園「うーん、分かりました。じゃあ私は倉庫や購買部の方で証拠がないか探してみます」

    大和田「ああ、分かった」

    山田「ふむ、舞園さやか殿がそちらへ行かれるのでしたら……僕は体育館の方にでも行ってみましょうかね?」

    大和田(体育館か。たしかに鈍器として使えそうなモン、準備室とか行きゃありそうだな)

    大和田「おう、じゃあそっちも任せんぜ」

    舞園「大和田君はどうしますか?」

    大和田「そうだな……」

    大和田(不二咲がいたっつー2-A教室とか桑田がいたっつー2-B教室も気になるが……他の連中の捜査はどのくらい進んでるんだ? ひょっとすると誰かが何か突破口を見つけてるかもしんねえな……よし!)

    大和田「どこを探しゃいいかとかオレにはよく分かんねえからな。あちこち見て回りながら他の連中の話聞いて回ってみるわ」

    山田「ふむ、了解しましたぞ」

    舞園「ではお二人も頑張ってくださいね。もうあまり時間もないでしょうし」

    大和田「そうだな」

    大和田(大した証拠は手元にねえが……大丈夫か? ちっと不安になって来たが、今さら止められねえ。とりあえずはどっかに誰かいねえか行ってみるか)
  140. 140 : : 2015/01/17(土) 20:57:50
    大和田(まずはここから近場の……倉庫、は舞園が行くんだったな。じゃあ食堂見に行ってみるか)

    霧切「あら、大和田君」

    大和田「おう、霧切か。オメェもここ調べに来たのか?」

    霧切「そうね。厨房なら殺人に使えそうな鈍器の類もあると思ったのだけれど……何も怪しい物はなかったわ。そっちは凶器になりそうな物、見つかった?」

    大和田「いいや、何も。あちこち探してんだが、鈍器に使えそうなモンが持ち出されたような形跡はどこにも無かったぜ」

    霧切「そう……この凶器について、なかなか厄介な問題かもしれないわね」

    大和田「だな。一応今舞園が倉庫とか購買とかに埋もれてねえか調べに行ったが、そこにあるんだとすりゃあ見つかるかは微妙だしな……」

    霧切「そうなのね。一応期待はしておくけれど……難しい所かしら」

    大和田(しかし厨房にもねえか……)


        コトダマ
         【凶器の捜索結果】の情報を更新しました。

        内容:<男子更衣室> 怪しい物は無し
           <トラッシュルーム>怪しい物は無し
           <厨房>怪しい物は無し
  141. 141 : : 2015/01/17(土) 20:58:22
    大和田「で、霧切はこれからどうするんだ?」

    霧切「そうね。正直言って、直接犯人に繋がる手掛かりが少なすぎるのが現状よ」

    大和田「オレの方も似たり寄ったりだ」

    霧切「そこで思ったのよ。事件の捜査自体は学校エリアの二階に絞った方がいいんじゃないかしら? 捜査範囲を寄宿舎エリア、学校エリアにまで広げているから何も得られないんじゃないかしら」

    大和田「そいつは一理あるかもな……」

    大和田(死体を発見した四人の中にクロがいるんだとすりゃあ、全員直前までいたのは学校エリア二階だ。それなら二階で証拠を処分する方法なりを考えただろうしな……)

    霧切「だから私はこれから学校エリアの二階の方に行こうと思うわ。貴方はどうするの?」

    大和田「オレも暫くしたら行くぜ。けどもうちっといろんな奴の話も聞きてえからな」

    霧切「そう、分かったわ。じゃあお互い頑張りましょう」

    大和田「おう」

    大和田(なんつーか、アイツ、頼りになるのはいいんだが……場馴れしすぎてねえか?)
  142. 142 : : 2015/01/17(土) 20:58:51
    十神「ちっ、お前か」

    大和田「オレで悪かったな……」

    大和田(霧切と別れた後、オレは視聴覚室へやって来た。そこにいたのが十神。嫌な奴と顔合せちまったな)

    十神「まあいい。お前に一つ面白い情報をやるとしよう」

    大和田「面白い情報だぁ?」

    十神「今ここを探索していたら……こんな物を見つけたぞ」

    大和田(そう言って十神が差し出してきた物は……例のファイルじゃねえか! しかも)

    大和田「“葉隠”……だと!?」

    大和田(そう、そこには葉隠の名前が刻銘に記されていた)

    十神「そういう事だ。それで肝心の中身だが……」

    大和田「オイ待てやコラァ!」

    十神「……何だ? まさか以前から発見していた葉隠のファイルを、今このタイミングで俺が持ち出してきただけだとでも言いたいのか?」

    大和田「ちげえよ! 他人のファイルは中を見ねえって約束だったはずだろーが!」

    十神「フン、何を言い出すかと思えば。いいか、お前の言っている“他人”は既に“死人”なんだぞ。今更物を言う口も無い相手に気を使う必要がどこにある」

    大和田「死人にゃ死人の尊厳ってモンがあんだろ!?」

    十神「何が死人の尊厳だ。死体というのはもう既に人ではない。生物ですらない。ただの“物”だ。尊厳などという物は無い。あるのは生きている者の勝手なエゴだけだ」

    大和田「何がエコだ、リサイクルでもしようってのか!?」
  143. 143 : : 2015/01/17(土) 20:59:16
    十神「ちっ、馬鹿に付き合うのは面倒だが……まあいい、もう少しだけ付き合ってやる。いいか大和田、よく聞け。お前がどういう価値観でいようが勝手だが、これは命を賭けた殺人ゲームなんだ。そこに疑う余地は一切ない。そして殺人が起こった以上、ルールに則り捜査をし、犯人を突き止める事が最重要なんだよ。そうでなければ俺達の方が死ぬことになるんだからな」

    大和田「ゲームだとか何だとかは認めてねえが……クロを突き止めねえと、ってのは、癪だがその通りだな」

    十神「である以上、俺達は可能な限りの捜査をしなければならない。もしこのファイルの中に重要な情報が書かれていたなら、お前のその無意味な意地が他の連中を危険にさらすことになるんだぞ。それでもいいのか?」

    大和田(他の奴を危険に巻き込む……。“チームを守る”事を主軸に動くオレが、ここの仲間全員を危険に晒すような真似は……出来ねえし、しちゃいけねえ、よな)

    大和田「……ちっ」

    十神「フン、分かったようだな。では中身の話に戻るぞ。見てみろ」

    大和田(正直この野郎にはムカつくが、見ねえわけにもいかず、ちらりと視線を送る。するとそこに書かれていたのは……)


    『葉隠康比呂は占いの才能を使ってかなりあくどく儲けていた。中には詐欺まがいの商法を用いる事すらあった』
  144. 144 : : 2015/01/17(土) 20:59:36
    大和田「な……!」

    十神「どうだ、大和田。これをどう思う?」

    大和田「いや……どうっつーか、詐欺まがいってのでビビりはしたけどよ。これがどうしたってんだよ?」

    十神「これが動機になった可能性があるなら……お前は誰を犯人だと考える? そう訊いているんだ」

    大和田「これが……動機?」

    十神「そうだ。動機が無ければこのゲームをゲームと割り切っていないお前らが殺人を犯すことはあるまい?」

    大和田(そうだ、すっかり忘れていた。動機。この事件の動機。そこからでもクロを絞り込めるってのに、その存在をすっかり忘れていた。だが)

    大和田「これが動機になるっつってもな……んなの、全員じゃねえのか?」

    十神「……何?」

    大和田「ここに来てから、オレらの知らねえところでアイツに占いを頼んだ奴がいたかもしれねえ。そん時に“詐欺まがいの商法”ってのを取られてたかもしんねえ、って考えたんなら、全員が容疑者だろーが」

    十神「ちっ、忌々しいが一理あるな」

    大和田(だが……そうなると結局葉隠のファイルは有力な情報にはならなかったみてえだな。悪い、葉隠)


        コトダマ
         【葉隠のファイル】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:視聴覚室にて十神が発見。内容は、
           『葉隠康比呂は占いの才能を使ってかなりあくどく儲けていた。
           中には詐欺まがいの商法を用いる事すらあった』
  145. 145 : : 2015/01/17(土) 20:59:56
    大和田「しかしそうなると動機についても詳しく調べなきゃいけねえのか……ちっ、こんがらがってきそうだな」

    十神「フン、お前程度の頭で全てを理解しろとは要求するつもりはないが……」

    大和田「が、なんだよ?」

    十神「……いや、これ以上は裁判で話すとしよう。お前がクロだという可能性もゼロではないわけだからな」

    大和田「言っとくが、そりゃオメェにも言えることだからな」

    十神「当たり前だ。そうでなくてはこのゲームはつまらなくなるだけだ」

    大和田(ちっ、結局コイツの価値観には一切賛同できねえ。けどそういや……結局他の連中のファイルって見つかったのか? その辺確認しに行ってみるか)
  146. 146 : : 2015/01/17(土) 21:06:28
    霧切「あら、よく会うわね」

    大和田「霧切?」

    大和田(オレが学校エリア二階に到着するのと、霧切がプールから出てきたのはほとんど同時だった)

    霧切「あれから何か分かったかしら?」

    大和田「分かったっつーより……調べる事が増えた感じだな」

    霧切「どういう事? 詳しく話してくれるかしら」

    大和田「詳しくっつってもな。単純な話だ。今回の事件の“動機”がまだ分かってねえって事に今さら気づいたってだけでよ」

    霧切「なるほどね……。おそらくモノクマが配備したファイル、アレが動機になっていると考えて間違いないでしょうけど」

    大和田「だよな……そんで今、現場の連中にファイルが見つかったのかどうか確認に行こうと思って来たんだよ」

    霧切「そういえばまだその話を訊いていなかったわね。けれど、今一つ発見したわよ」

    大和田「マジか!?」

    霧切「ええ、更衣室を抜けた先の、プールにあるロッカーの裏に落ちていたわ」

    大和田「んなとこにあったのか……で、誰のだ?」

    霧切「石丸君のものね」

    大和田「マジか!?」

    大和田(葉隠の物が判断が付かなかった以上、兄弟のファイルが大した内容じゃねえなら兄弟の容疑は晴れるんじゃねえか?)

    霧切「さすがに捜査中だし、動かすのはマズいもの。その場に置いたままにしてあるけれど……確認するかしら?」

    大和田「そうだな……」

    大和田(さっきプールに来た時はちらっと見ただけだったからな。見落としたんだろう。ちっ、大事なトコ見えてなかったな)

    霧切「じゃあプールの方に来て頂戴」

    大和田(そう言って霧切は再びドアの向こうへと姿を消した。うし、じゃあオレも行ってみっか)
  147. 147 : : 2015/01/17(土) 21:07:53
    大和田(プールへ入ると、既に霧切は件のロッカーの前にいた)

    大和田「このロッカーの裏だったよな」

    霧切「ええ……というか、見れば分かるでしょう」

    大和田「ん? ……うお、マジだ」

    大和田(ファイルはロッカーの裏に完全に隠れきっているわけではなく、端の方が正面からでも見えていた)

    霧切「こんな時だから内容も見させてもらったけれど……」

    大和田「ああ、そうだな。それについちゃ……仕方ねえと思うぜ」

    霧切「あら、貴方は責めてくると思っていたわ」

    大和田「ま、オレもさっき葉隠のファイルの中身、見ちまったしな」

    霧切「葉隠君の? あったの?」

    大和田「ああ、十神のヤローが視聴覚室で見つけたっつってな。オレも確認したぜ」

    霧切「そうだったの……中身はどうだったの?」

    大和田「あー、それは……自分の目で見た方がいいんじゃねえか。十神は視聴覚室に置いたままにしてるみたいだしよ。オメェだってオレの事完全に信用してるわけじゃねえだろ?」

    霧切「それもそうね……。分かったわ、視聴覚室ね。あとで確認に行くわ」

    大和田「それよりこのファイルだな」

    大和田(心の中で兄弟に謝りながら、ファイルの中を確認する。すると……)


    『石丸清多夏は、ここに書くことが無いくらいに真面目一辺倒なつまらない半生を送ってきた』
  148. 148 : : 2015/01/17(土) 21:08:42
    霧切「どう?」

    大和田「どうも何も……兄弟らしいな」

    霧切「そうね。とても石丸君らしいわ。動機にもならなそうだし」

    大和田(そう言いながら、霧切は何やら思案顔になっている。ま、これはこいつの癖みたいなもんって気もするし、意味があるのかは知らねえけどな)

    大和田「これで見つかってないのはあとは桑田と朝日奈、それと不二咲の三人だな」

    霧切「見つかっているかもしれないから、それを今から確認しに行く、でいいわね」

    大和田「だな」

    大和田(ともあれ、このファイルの中身は一応覚えとくか。少なくとも兄弟のファイルは動機になるようなシロモンじゃねえ、って証明になるしよ)


        コトダマ
         【石丸のファイル】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:プールのロッカーの裏に隠れきっていない状態の物を発見。
           内容は、
           『石丸清多夏は、ここに書くことが無いくらいに
            真面目一辺倒なつまらない半生を送ってきた』


    霧切「じゃあ、行きましょうか」

    大和田「ああ」
  149. 149 : : 2015/01/17(土) 21:10:25
    桑田「あれ? オメーらどうした? 調べ残しか?」

    朝日奈「というか、何か分かった? こっちも一応現場はいろいろ探してるけど、あれから特に発見も無かったし」

    大和田「いや、あんまり進んでる気はしねえな……」

    石丸「我々も最大限やっているが……凶器として使えそうな物も、この部屋では探しようがないからな」

    不二咲「何か報告できる事があれば良かったんだけど……ごめんねぇ」

    霧切「別に不二咲さんが謝る事じゃないわ。それより、質問があるんだけど」

    大和田「オメェら、結局例のモノクマが仕掛けた個人情報のファイルは見つかったのか?」

    霧切「午前五時から午前七時の間に発見できたかどうか、って事ね」

    桑田「ああ、その話か。そんならオレはまだだぜ」

    不二咲「私もまだ……」

    朝日奈「私も、まだだよ!」

    石丸「僕も見つけていないな」

    霧切「……そう」

    大和田「ん、いや兄弟。兄弟の分はさっき見つけたぜ」

    石丸「何だと!?」

    大和田「プールのロッカーの裏だ。裁判終わってからでも取りに行きゃいいんじゃねえか?」

    石丸「そう、だな。今はここから動くこともできないし、そうさせてもらおう」

    大和田(しかし、探索中には誰もファイルを見つけてなかったのか。一応それも覚えとくとすっかな)


        コトダマ
         【深夜探索組の証言】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:深夜に探索していた五人が午前五時に再集合してから、
           午前七時に死体が発見されるまでの間には、
           誰もファイルを発見できていなかった。
  150. 150 : : 2015/01/17(土) 21:10:45
    霧切「もう一つ質問、いいかしら」

    朝日奈「ん? いいよ! ただでさえ捜査の役に立ててないし。協力できる事は何でも言って!」

    霧切「ええ。四人とも、捜査開始から今まで徹底的にここの捜査をしていた。間違いないわね?」

    不二咲「うん……! 必死にいろいろ探してはいたよ!」

    桑田「ま、なんも見つかんねえけどな、新しい事実とか証拠とかはよ」

    霧切「それはつまり、“この部屋では個人情報のファイルは見つかっていない”という事でいいのね?」

    桑田「……! そういやそうだ! 見つけてねえ!」

    朝日奈「うん、無かったけど……それがどうかしたの?」

    桑田「いやどうしたって……よく考えてみろよ。ここに死体があったんなら、ここに二人でいる時にファイル発見して、それが原因で葉隠が殺されたって事になるんじゃねーの? でも無いってのはやっぱおかしいぜ! どーよ、オレの名推理!」

    霧切「……本当に、冴えてるけど抜けてるわね」

    桑田「抜けてるって何だよ抜けてるって!」

    霧切「事前にファイルを発見していて、探索中に……そうね。ここに葉隠君のファイルを見つけた、とでも言って葉隠君を呼び出し、殺害したって可能性もあるわよ」

    桑田「あ……」

    不二咲「うーん、たしかにあるけど……その場合って“計画的犯行”って事になるよねぇ?」

    大和田「たしかにな」

    不二咲「二時間にも満たない時間でそんな準備、出来るのかなぁ」

    霧切「そうね……正確には、二時間じゃないわけだけど。実は午前二時までの間に発見していて、みんなが仮眠を取っている三時間の間に準備を進めたかもしれないわ」

    石丸「なるほどな……。可能性はいくらでも追える、という事か」

    霧切「そうね。でも、どうにもしっくり来ないのよ」

    大和田「難しいな……」

    大和田(オレにはそんな事全く思いつかねえ。霧切は勿論だけどよ、桑田も結構やるよな。オレもこんくれえいろいろ気が付けたらいいんだが……せめて出てきた情報だけは忘れねえようにしておくか)


        コトダマ
         【現場の捜査結果】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:見張りの四人が現場を捜査していた際、
           モノクマの仕掛けたファイルが発見される事は無かった。
  151. 151 : : 2015/01/17(土) 21:11:02
    桑田「ちなみに石丸のファイルの中身ってどうだったんだ?」

    大和田「ああん? テメェ、まさか兄弟を疑ってんじゃねえだろうな!?」

    桑田「いや、疑ってるとか疑ってねえとかじゃなくてよ、こんな時だから情報は欲しいに決まってんだろ!」

    霧切「……確かに中身を見てしまったのは石丸君に謝らないといけないけれど。大した内容じゃなかった、という事は言っておくわ」

    石丸「いや……それは仕方がないだろう」

    大和田「すまねえな、兄弟」

    霧切「それじゃあ、私はそろそろ行くわ。大和田君も他に気になる場所があるなら捜査しておくべきじゃないかしら?」

    大和田「お、おう。そうだな……」

    大和田(他に気になる場所っつーと……やっぱ2-A教室と2-B教室か。そっちの捜査行ってみるとすっかな)
  152. 152 : : 2015/01/17(土) 21:11:18
    大和田(図書室を出たオレは、先に2-B教室へ向かう事にした。中に入ると……)

    セレス「あら、大和田君」

    大和田「セレスか。オメェもここ調べてたのか?」

    セレス「ええ。捜査開始からずっと」

    大和田「ずっとここだけ調べてたのか!?」

    セレス「わたくし、あまり自分で動き回るキャラではありませんので」

    大和田「おいおい……」

    大和田(笑みを顔に貼り付けて言うが、コイツ正気か……?)

    セレス「“キャラなんて気にしてる場合じゃない”とでも言いたげですわね?」

    大和田「分かってんじゃねえか」

    セレス「うふふ、ですが捜査を開始して以降のこの部屋については、わたくしは完璧に把握しているという事ですわよ」

    大和田「そう言われっと……無駄じゃねえ気はするけどよ。なんかあったか?」

    セレス「いいえ、何も」

    大和田「まるっきり無駄じゃねえか!」

    セレス「どうやらこの部屋は事件とは一切関係ないようですわね」

    大和田(一応オレも自分の手で部屋を軽く調べてみたが……こりゃ本格的に何もねえな)


        コトダマ
         【凶器の捜索結果】の情報を更新しました。

        内容:<男子更衣室> 怪しい物は無し
           <トラッシュルーム>怪しい物は無し
           <厨房>怪しい物は無し
           <2-B教室>怪しい物は無し
  153. 153 : : 2015/01/17(土) 21:11:30
    大和田「ここにも何もねえのか……」

    セレス「ふむ、“も”ということは捜査の状況はあまり芳しくないようですわね」

    大和田「ま、そういうこったな。もうあんまし時間もねえだろうけどよ、オメェももうちっといろんなとこ捜査した方がいいと思うぜ」

    セレス「そうかもしれませんわね。しませんけど」

    大和田「しねえのかよ……」

    大和田(どこまでマイペースな女なんだ、セレスは。まあ今はセレスになんか言ってても始まんねえし、別のとこ行くか。次は2-A教室だな)
  154. 154 : : 2015/01/17(土) 21:11:47
    大神「む、大和田か」

    大和田「大神もいたのか」

    大神「ああ。我にはあまり難しい事は分からぬ。故に捜査もあまり進んでおらんが……大和田はどうだのだ?」

    大和田「オレも似たり寄ったりだな。霧切辺りが何とかなる情報掴んでくれてんのを祈るしかねえ」

    大神「そうか。……ところで大和田よ。捜査をしていて一つ違和感を抱いたのだが、大和田は気が付かなかったか?」

    大和田「違和感? そりゃどんな違和感だ?」

    大神「うむ、我は細かな捜査は向かんと思い、解放されている部屋などを全体的に見て回っていたのだが」

    大和田「そうだな、オレも結構あちこち回ったぜ」

    大神「ならば大和田も感じなかったか? この事件、妙に“証拠が少なすぎる”と」

    大和田「ああ、それならたしかに思ったな。どこ探しても空振りばっかでよ」

    大和田(まあ男子トイレとかはあったがな)

    大神「もし計画性のある事件ならば、多くの部屋から犯行に使う道具を調達出来たであろう。そう考えるならば……突発的な犯行なのやもしれん」

    大和田「突発的な犯行、か」

    大神「ああ、それならば使われている部屋や施設が異様なほど少ないという事にも説明がつく。尤も、絶対にそうだとは言い切れんがな」

    大和田(なるほどな……。けどそうなるとさっきの霧切の話とは矛盾するんだよな。突発的な犯行だとするなら、現場付近に誰かのファイルがねえとおかしい……だったか。一応これも覚えといた方がいいだろうな)


        コトダマ
         【大神の推理】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:犯行にしっかりとした準備を費やした痕跡が極端に少ない事から、
           突発的な犯行である可能性が高いと思われる。
           しかし犯行の動機となるであろうファイルは、
           現場付近には存在しなかった。
  155. 155 : : 2015/01/17(土) 21:12:05
    大和田「ところでよ、大神。この部屋ではなんか見つかったか?」

    大神「いや、まだ我も来たばかりだ。ろくに調べられてはおらぬ」

    大和田「そうか。んじゃあ調べるとすっかな……」

    大神「そうだな」

    大和田(大神と二人、教室の探索をする。だが……)

    大和田「目ぼしいモンは特にねえな」

    大和田(探索の手を止めはせずに、呟く)

    大神「そうだな、普通の教室にもあるような物ばかりだ。苗木から聞いたが、鈍器のようなものが凶器らしいな。それならば椅子や机でも当てはまるだろうが……凶器として使うには大きすぎる」

    大和田「それを凶器に使えると思うのもオメェぐらいだろ……」


        コトダマ
         【凶器の捜索結果】の情報を更新しました。

        内容:<男子更衣室> 怪しい物は無し
           <トラッシュルーム>怪しい物は無し
           <厨房>怪しい物は無し
           <2-B教室>怪しい物は無し
           <2-A教室>怪しい物は無し
  156. 156 : : 2015/01/17(土) 21:12:26
    大神「だがここも関係ないとなると、やはり先ほどの“突発的犯行の可能性”の話、信憑性はあるのではないかと思えてしまうな」

    大和田「かもしんねえけど……まだ何とも言えねえな」

    大神「ああ。無論他の者の捜査の結果次第、ではあるからな」

    大和田(言って、探索を切り上げようとしたその時)

    大和田「ん?」

    大神「どうした?」

    大和田「いや……なんかあの机の裏に……」

    大和田(少し離れた位置にある机の裏にテープのようなものがくっついているのに気が付いた)

    大神「何か貼り付いているようだな」

    大和田「ちょっと見てみるか……ん!? これ……例のファイルじゃねえか!」

    大神「何だと! 誰の物だ?」

    大和田「これは……不二咲のファイルだな」

    大神「不二咲か。気にはなるが……中は見ない方がいい、のであったな」

    大和田「いや、事件はもう起こっちまってるんだ。見ねえわけにはいかねえんだよ……」

    大和田(既に葉隠と兄弟の分も見ちまってる。不二咲のだけを見ない理由はないんだ。すまねえ、不二咲。見させてもらうぜ……)

    大神「仕方ない、か。だがあとで不二咲には謝らねばならんな」

    大和田(大神の言葉を聞きながらファイルを開く)

    大和田「それはそうだけど……よ……な、何だとッ!?」

    大神「どうした、大和田? どんなことが書かれていたのだ?」

    大和田「い、いや、だが、こりゃあ……。自分の目で、見てみろ」

    大和田(大神にファイルを渡すと……)

    大神「ば、馬鹿な……そんな……馬鹿なアアアアアア!」

    大和田「だが……ここに書かれてる以上は……」

    大神「ぬ、ううう……」

    大和田(ファイルに書かれていた内容。それは……)


    『不二咲千尋は、女性の格好をして生きてきた男である』


        コトダマ
         【不二咲のファイル】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:2-A教室の机の裏にテープで貼り付けられていた物を発見。
           内容は、
           『不二咲千尋は、女性の格好をして生きてきた男である』
  157. 157 : : 2015/01/17(土) 21:12:42
    大和田(大神と2-A教室で分かれたオレは、不二咲に真偽を確かめるべきかどうするか迷いつつも、図書室に向かおうとしたが……)

    キーンコーンカーンコーン……。

    モノクマ『ようやく始まった本格的なコロシアイに、ボクはもうワクワクが止まりません。小さくプリティなボクのボディの心臓のドキドキが止まりません。これはどうすれば収まるんでしょう? そうだ、裁判を開こう! というわけで、そろそろ始めちゃいまーす。オマエラは学校エリア一階にある、赤い扉へお入りくださーい』

    大和田「ちっ……」

    大和田(仕方ねえ、これについちゃ裁判で訊くしかねえか。図書室へ向かうのは諦めてオレは一階へと降り、赤い扉へ入る。だが……)

    舞園「大和田君、早いですね」

    大和田「なんだ、まだ舞園だけか」

    舞園「はい。……それと、すみません」

    大和田「ああ? 何がだ?」

    舞園「結局、購買部と倉庫では何も発見できなかったんです」

    大和田「そうか……まあしゃーねえな」

    大和田(そこにも何も無し、か。誰かが凶器を見つけてるといいんだけどな)


        コトダマ
         【凶器の捜索結果】の情報を更新しました。

        内容:<男子更衣室> 怪しい物は無し
           <トラッシュルーム>怪しい物は無し
           <厨房>怪しい物は無し
           <2-B教室>怪しい物は無し
           <2-A教室>怪しい物は無し
           <倉庫>怪しい物は無し
           <購買部>怪しい物は無し
  158. 158 : : 2015/01/17(土) 21:13:29
    大和田(しばらくの間流れる沈黙。だが全員徐々に集まり出し……そして数分後、全員がこの場に到着した)

    桑田「クソッ、もうここには来たくなかったぜ……」

    朝日奈「たぶんみんなそう思ってるよ……」

    苗木「だけど……ここでずっと立ち止まってるわけにはいかないんだよね」

    霧切「そうね。……乗り込みましょう。エレベーターに」

    大和田(全員がエレベーターに乗り込む。すると前回と同じようにエレベーターはオレ達を地下へと運び出した)

    桑田「……この閉塞感、慣れねえよな」

    セレス「まあ、まだ二回目ですし」

    石丸「三回目以降があるかのような口ぶりはやめたまえ!」

    大和田(各々、口調はピリピリしているように感じる。この空気がそう思わせているだけ……じゃねえんだろうな、やっぱ。それ以降は誰一人として口を開くことは無く……「チン」という、エレベーターが目的の階に到着したことを知らせる音が響くと同時に、エレベーターのドアが開く)

    モノクマ「にょっほほ! ようこそいらっしゃいました! 学級裁判場へ!」

    不二咲「な、なんか……内装が変わってない?」

    モノクマ「うん、いいところに気が付いたねえ。ボクとしては、みんなを楽しませるための努力だけは惜しまないつもりでいるんだ。毎回同じ部屋に通されたんじゃ、つまんないでしょ?」

    十神「内装などどうでもいい」

    モノクマ「そんなっ!」

    山田「正直……気にしてる余裕などありませんしな」

    大和田(全くだ。だがそれを言い出した不二咲は……余裕でもあるのか? まさか不二咲がクロ? いや……それはあのファイルを見つけちまって気にしすぎてるだけなのか? わからねえ、オレには分からねえことだらけだ。だが……とうとう始まっちまう。命がけの謎解き……命がけの言い訳……命がけの信頼……命がけの爆走……命がけの、学級裁判……!)
  159. 159 : : 2015/01/17(土) 21:14:19
      弁 論 準 備


    『起こってしまった第二の殺人。果たして葉隠康比呂を死に至らしめた凶器の正体とは? そして、殺害に至った動機とは、いったい――?』



    誇斗堕魔≪コトダマ≫

    【モノクマファイル弐】
    被害者は“超高校級の占い師”葉隠康比呂。
    死亡時刻は午前五時~午前七時の間。
    死体周辺に広がる血液は、
    腹部に刺さったガラス状の物の破片による流血とみられる。

    【葉隠の死亡時刻】
    ファイル探索のメンバーがに午前五時頃に集合した際には生きていた。
    また、朝日奈が死体を発見したタイミングは
    朝のモノクマの放送中だったため、午前七時と断定できる。

    【死体発見時の容疑者の居場所】
    朝日奈は第一発見者のため書庫。
    桑田は2-B教室。
    不二咲は2-A教室。
    石丸はプール。

    【現場は書庫】
    書庫に血だまりがあり、また現場を偽装する時間も無いため、
    現場は書庫で間違いないだろう。

    【後頭部の打撃痕】
    葉隠の後頭部に打撃痕があった。
    モノクマファイルにはこれについて記述はない。

    【鏡の破片】
    うつぶせの状態の葉隠の腹部に刺さっていた。
    破片と言ってもそれなりの大きさがある。
    学校エリア二階の男子トイレの鏡が割られていたことから、
    出所はここだと思われる。

    【血の広がり方】
    葉隠から広がる血だまりは、
    電気スタンドやダンボールのような物は汚しているが、
    沢山ある本は一切汚していなかった。

    【散らばった鏡の破片】
    二階男子トイレに散らばっていた鏡の破片の一つに、
    極わずかに血痕が付着していた。

    【凶器の捜索結果】
    <男子更衣室> 怪しい物は無し
    <トラッシュルーム>怪しい物は無し
    <厨房>怪しい物は無し
    <2-B教室>怪しい物は無し
    <2-A教室>怪しい物は無し
    <倉庫>怪しい物は無し
    <購買部>怪しい物は無し

    【掃除当番】
    掃除当番としてトラッシュルームのカギを所持していたのは、
    石丸清多夏だった。

    【トラッシュルームの様子】
    トラッシュルームは使われた形跡が無かった。
    ここで証拠を隠滅したという事は無いようだ。

    【葉隠のファイル】
    視聴覚室にて十神が発見。内容は、
    『葉隠康比呂は占いの才能を使ってかなりあくどく儲けていた。
    中には詐欺まがいの商法を用いる事すらあった』

    【石丸のファイル】
    プールのロッカーの裏に隠れきっていない状態の物を発見。
    内容は、
    『石丸清多夏は、ここに書くことが無いくらいに
    真面目一辺倒なつまらない半生を送ってきた』

    【深夜探索組の証言】
    深夜に探索していた五人が午前五時に再集合してから、
    午前七時に死体が発見されるまでの間には、
    誰もファイルを発見できていなかった。

    【現場の捜査結果】
    見張りの四人が現場を捜査していた際、
    モノクマの仕掛けたファイルが発見される事は無かった。

    【大神の推理】
    犯行にしっかりとした準備を費やした痕跡が極端に少ない事から、
    突発的な犯行である可能性が高いと思われる。
    しかし犯行の動機となるであろうファイルは、
    現場付近には存在しなかった。

    【不二咲のファイル】
    2-A教室の机の裏にテープで貼り付けられていた物を発見。
    内容は、
    『不二咲千尋は、女性の格好をして生きてきた男である』
  160. 160 : : 2015/01/17(土) 22:08:52
    モノクマ「まずは、学級裁判の簡単な説明から始めましょう! 学級裁判の結果は、オマエラの投票により決定されます。正しいクロを指摘出来れば、クロだけがおしおき。だけど、もし間違った人物を、クロとした場合は……クロ以外の全員がおしおきされ、みんなを欺いたクロだけが、晴れて卒業となりまーす!」

    十神「さて、お前ら。前回で要領は掴んでいるはずだな? さっさと議論を始めるぞ」

    モノクマ「十神クン、やる気満々ですな!」

    十神「うるさい、黙っていろ」

    モノクマ「そいつぁ残念……」

    桑田「つってもよ……誰か犯人につながるような証拠、見つけたのか?」

    朝日奈「私達は現場から離れられなかったから、あんまり捜査の状況分かってないんだよね」

    セレス「では手始めに、分かっている事を纏めてみませんか?」

    山田「ふむ、基本的な事を確認するという事ですな」

    桑田「いいと思うぜ。んじゃあそっから始めっか」
  161. 161 : : 2015/01/17(土) 22:09:49
           ― 議論  開始 ―


    ≪コトダマ≫
    【モノクマファイル弐】
    【鏡の破片】
    【後頭部の打撃痕】
    【葉隠の死亡時刻】


    桑田「まず最初に分かり切ってる事だけどよ」

    桑田「殺されたのは≪葉隠≫だ」

    石丸「殺害時刻は……」

    石丸「≪午前五時から午前七時の間≫だったな」

    朝日奈「うん、間違いないよ!」

    十神「≪モノクマファイルにもそう書いてある≫」

    十神「疑う必要はないだろうな」

    セレス「同じくモノクマファイルを見た限りですと」

    セレス「≪凶器はガラス状の物≫のようですわね」

    舞園「基礎的な情報となるとこのくらいでしょうか?」


    大和田(あの発言……このくらいの間違いならオレにも分かるな)
  162. 162 : : 2015/01/17(土) 22:10:05
    桑田「まず最初に分かり切ってる事だけどよ」

    桑田「殺されたのは≪葉隠≫だ」

    石丸「殺害時刻は……」

    石丸「≪午前五時から午前七時の間≫だったな」

    朝日奈「うん、間違いないよ!」

    十神「≪モノクマファイルにもそう書いてある≫」

    十神「疑う必要はないだろうな」

    セレス「同じくモノクマファイルを見た限りですと」

    セレス「≪凶器はガラス状の物で腹部を刺された事≫のようですわね」


    ノ 三【後頭部の打撃痕】

    大和田「フザけた事抜かしてんじゃねえ!」
  163. 163 : : 2015/01/17(土) 22:10:25
    セレス「……何の話でしょう」

    大和田「オメェ、苗木から話聞いてねえのか?」

    苗木「あ、ゴメン……セレスさんとは捜査中会えなくてさ」

    大和田「ちっ、んだよ、そういう事か」

    セレス「それで……その口ぶりですと、死因は違う、という事でしょうか?」

    大和田「ああ。霧切が調べたとこによれば、後頭部に打撃痕があったんだとよ」

    霧切「モノクマファイルに記述が無かった理由についてはこの際無視するとして、たぶんこっちが本当の死因だと思うわ」

    セレス「まあ。初耳ですわ」

    大和田(そりゃ……ずっと2-B教室にいたんじゃそうなっても不思議はねえだろ)

    舞園「ところで……皆さん、凶器になりそうなものは見つかりましたか? 私はダメだったんですけど」

    大和田(凶器の正体か……それが未だに謎なんだよな)
  164. 164 : : 2015/01/17(土) 22:10:50
           ― 議論  開始 ―


    ≪コトダマ≫
    【凶器の捜索結果】
    【散らばった鏡の破片】
    【現場の捜査結果】
    【血の広がり方】


    桑田「少なくとも≪現場にゃ無かった≫ぜ。なあ?」

    不二咲「う、うん。何も見つからなかったよ」

    石丸「使えそうな物は≪電気スタンド≫くらいだったが……

    石丸「あんなもので殴ってはスタンドの方も壊れてしまうだろう」

    石丸「そのような痕跡も無かった事だしな」

    朝日奈「≪本≫も使われた様子は無かったし……」

    朝日奈「現場以外の場所にあるんじゃないかな」

    大神「我は苗木の話を聞いてすぐに」

    大神「女子更衣室の≪トレーニング機器≫を調べた」

    大神「だが持ち出された形跡は特に無かったぞ」

    朝日奈「てことは」

    朝日奈「≪男子更衣室≫の物が使われてるとしたら、犯人は男子に絞れるね!」


    大和田(あの発言……残念だがそのまま通してやるわけにはいかねえな)
  165. 165 : : 2015/01/17(土) 22:11:04
    桑田「少なくとも≪現場にゃ無かった≫ぜ。なあ?」

    不二咲「う、うん。何も見つからなかったよ」

    石丸「使えそうな物は≪電気スタンド≫くらいだったが……

    石丸「あんなもので殴ってはスタンドの方も壊れてしまうだろう」

    石丸「そのような痕跡も無かった事だしな」

    朝日奈「≪本≫も使われた様子は無かったし……」

    朝日奈「現場以外の場所にあるんじゃないかな」

    大神「我は苗木の話を聞いてすぐに」

    大神「女子更衣室の≪トレーニング機器≫を調べた」

    大神「だが持ち出された形跡は特に無かったぞ」

    朝日奈「てことは」

    朝日奈「≪男子更衣室≫の物が使われてるとしたら、犯人は男子に絞れるね!」


    ノ 三【凶器の捜索結果】

    大和田「フザけた事抜かしてんじゃねえ!」
  166. 166 : : 2015/01/17(土) 22:11:23
    朝日奈「え?」

    大和田「残念だがそうはいかねえんだよ。男子更衣室ならオレが捜査済みだ。何も怪しい痕跡は無かったぜ」

    朝日奈「うーん、そっかあ。これで犯人を絞り込めると思ったんだけどな」

    苗木「まあ、まだ始まったばかりだし、これからだよ朝日奈さん」

    朝日奈「そうだよね……」

    山田「ですがそうなると……結局凶器は何なんでしょう?」

    大和田「そりゃあ……」

    舞園「……」

    大神「……」

    苗木「……」

    霧切「どうやら、それについて議論するのはまだ早いみたいね。少し別の視点から事件を見てみましょう」

    桑田「別の視点ってな、何だ?」

    霧切「そうね……簡単に考えて、議論の対象になり得る物は凶器についてを除くと、大きく分けて二つあるわ」

    石丸「二つもあるのか?」

    霧切「ええ。一つはこの事件の“動機”についてよ」

    不二咲「それって、例のファイルの事……かなぁ?」

    霧切「ええ、おそらく絡んでいると思うわ」

    苗木「じゃあ次は動機について議論してみようか」

    霧切「待って頂戴、まだ“二つ目”について話していないわ」

    苗木「あ、ゴメン……」

    十神「議論の対象になる物だったな。何のことだ?」

    霧切「決まってるじゃない。さっきセレスさんも言った“葉隠君の腹部に刺さっていた物”についてよ」

    朝日奈「あ、アレの事だね!」

    苗木「たしかに、そっちの方が結論が出るのは早そうだし、そっちから片付けようか」
  167. 167 : : 2015/01/17(土) 22:11:52
           ― 議論  開始 ―


    ≪コトダマ≫
    【モノクマファイル弐】
    【鏡の破片】
    【散らばった鏡の破片】
    【現場は書庫】


    大神「たしか……」

    大神「≪ガラス状の物の破片≫であったな」

    十神「それが葉隠の≪腹部≫に刺さっていた」

    十神「それに何か問題でもあるのか?」

    石丸「特段話し合う必要があるようには思えないが……」

    セレス「葉隠君の事ですしどうせ」

    セレス「倒れた際に≪偶然落ちていた破片に刺さった≫のではないでしょうか?」

    山田「となるとあの現場にあった物で考えると……」

    山田「≪電気スタンドの電球≫あたりが濃厚でしょうかね?」

    大神「もしそうならば」

    大神「電気スタンドを凶器にしたのやもしれんな」

    大神「あれで殴った際、先ほど石丸が言ったように≪電気スタンドが壊れた≫、という事は考えられんか?」

    セレス「あら、問題が片付いてしまいましたわね」


    大和田(そうか、あの話を知ってる奴は限られてるんだったか……正してやんねえとな)
  168. 168 : : 2015/01/17(土) 22:12:11
    大神「たしか……」

    大神「≪ガラス状の物の破片≫であったな」

    十神「それが葉隠の≪腹部≫に刺さっていた」

    十神「それに何か問題でもあるのか?」

    石丸「特段話し合う必要があるようには思えないが……」

    セレス「葉隠君の事ですしどうせ」

    セレス「倒れた際に≪偶然落ちていた破片に刺さった≫のではないでしょうか?」

    山田「となるとあの現場にあった物で考えると……」

    山田「≪電気スタンドの電球≫あたりが濃厚でしょうかね?」


    ノ 三【鏡の破片】

    大和田「フザけた事抜かしてんじゃねえ!」
  169. 169 : : 2015/01/17(土) 22:13:00
    山田「な、なな、何か間違った事を言ってしまいましたかな!?」

    大和田「そもそもな、ありゃガラスじゃなくて鏡なんだよ」

    山田「……へ?」

    霧切「間違いないわよ。私が確かめたもの」

    セレス「そうだったのですか……」

    苗木「ついでに、大和田クン。どこの鏡だったのかもボクらは知ってるよね」

    大和田「ああ」

    霧切「そうなの? それは初耳だけれど」

    大和田「そういや言ってなかったな……悪ィ。二階の男子トイレだ。あそこの鏡が割られてたんだよ」

    桑田「へ!?」

    霧切「男子トイレ……」

    セレス「先ほどの朝日奈さんではありませんが……男子トイレが使用されていたという事は、クロは男子、という事になるのではありませんか?」

    十神「そういう訳にはいかないな。これが先ほど話に出た更衣室であるならば、電子生徒手帳の貸与禁止という校則のおかげで男子は女子更衣室に、女子は男子更衣室にそれぞれ入れない。よって性別で絞り込むことが可能だったが……トイレは話が変わってくる。何せ“進入禁止”という校則が無いからな。むしろ女子が男子トイレの鏡の破片を使う事で偽装した、とも考えられるんじゃないのか?」

    桑田「その可能性は無いわけじゃねえけどよ……それってつまり結局は振り出しじゃねえか」

    舞園「いえ、刺さっていた物の正体の情報はみんなで共有できました。少しずつ前進している……と考えたいです」

    桑田「舞園ちゃんが言うなら前進してるんだな、うん」

    苗木「変わり身早いね……」

    不二咲「けど、“刺さっていた物は鏡だった”。“鏡の出所は男子トイレだった”……。これで何が変わるのぉ?」

    霧切「私はそもそも、“刺さっていた物の正体”を議題に挙げたわけじゃないわ」

    苗木「えっ!?」

    大和田「おいおい、オメェが言い出したんだろォが。今更何言ってんだ?」

    霧切「確かに刺さっていた鏡についての議論をすべきだとは言ったわ。でも“ガラス状の物の正体”を知る事が重要だ、なんて言った覚えはないわよ」

    朝日奈「えっと……どういう意味?」

    霧切「つまり、“何が刺さっていたのか”ではなく、“なぜ刺さっていたのか”、それが重要だと思うの」

    舞園「なぜ、というと?」

    桑田「霧切が言いたい事、分かったぜ。つまり致命傷が後頭部の打撲痕なら、鏡の破片なんか刺す必要ないわけだよ。なのに今回のクロは刺した。その意味、って事だな?」

    霧切「ええ、そういう事よ」

    苗木「刺さっていた、意味……」

    石丸「話し合って分かる事だろうか?」

    霧切「やってみなくちゃ分からないわよ」

    大和田(意味か。そういやそんなモン一切考えてなかったな。手持ちの情報になんかあったか……?)
  170. 170 : : 2015/01/17(土) 22:14:38
          ― 議論  開始 ―


    ≪コトダマ≫
    【後頭部の打撃痕】
    【散らばった鏡の破片】
    【血の広がり方】
    【葉隠の死亡時刻】


    桑田「つってもな」

    桑田「イインチョの言う通り、議論して分かるようなもんじゃねえと思うぜ?」

    不二咲「ヒントになりそうなのは……」

    不二咲「≪刺さっていたのが腹部≫って事と」

    不二咲「≪刺さっていた物は鏡≫って事と」

    不二咲「≪鏡の出所は二階の男子トイレ≫って事」

    不二咲「くらいだよねぇ?」

    石丸「たったそれだけか……」

    十神「さっきも言っただろう」

    十神「≪男子トイレである事は推理には繋がらん≫」

    十神「除外しておけ」

    山田「グフフ……」

    山田「拙者の灰色の脳細胞はしかと解答をこの手に掴んだ!」

    舞園「本当ですか!?」

    山田「勿論ですとも。ズバリ……」

    山田「≪クロはヤンデレの可能性が高い≫のでは!?」

    十神「黙っていろ」

    山田「その程度の言葉では≪僕の創作への情熱は止められないッ≫!」

    セレス「正直どうでもいいですし、お好きになさってくださいな」

    山田「ぐっ、それが一番堪える……」


    大和田(山田の暴走は放っておくとして……とうとうあの野郎に拳を叩き込むチャンスが来たな……!)
  171. 171 : : 2015/01/17(土) 22:15:06
    桑田「つってもな」

    桑田「イインチョの言う通り、議論して分かるようなもんじゃねえと思うぜ?」

    不二咲「ヒントになりそうなのは……」

    不二咲「≪刺さっていたのが腹部≫って事と」

    不二咲「≪刺さっていた物は鏡≫って事と」

    不二咲「≪鏡の出所は二階の男子トイレ≫って事」

    不二咲「くらいだよねぇ?」

    石丸「たったそれだけか……」

    十神「さっきも言っただろう」

    十神「≪男子トイレである事は推理には繋がらん≫」


    ノ 三【散らばった鏡の破片】

    大和田「フザけた事抜かしてんじゃねえ!」
  172. 172 : : 2015/01/17(土) 22:15:28
    十神「……それは俺に言っているのか?」

    大和田「ああそうだよ、オメェに言ってんだ、十神!」

    十神「フン、お前如きがこの俺に意見するとはいい度胸だな?」

    石丸「大和田君の度胸は大したものだ! それは僕が認めよう!」

    桑田「今はんな事どーでもいーんだって!」

    大和田「さっき二階の男子トイレの鏡が割られてたっつったが……そうなると当然、二階の男子トイレの床には鏡が散乱してる。そんぐれー分かるよな?」

    十神「掃除をしたのなら話は別だがな」

    大和田「あいにく、掃除はされてなかったよ。散らばったままだった。だがよ、苗木が見つけたんだが……その散らばった破片の中に、ちょっとだけ血が付いてるモンが混じってたんだ」

    十神「何?」

    苗木「うん、ホントに少しだけだったけどね」

    十神「何故それを先に言わん……!」

    苗木「事件に関係ないとは言い切れないけど……どのタイミングで言えばいいのかまだよく分からなくてさ」

    十神「ちっ、これだから愚民は」

    大和田「とにかくだ。コイツがその霧切の言う、“なぜ刺さっていたのか”ってのに繋がるかもしんねえな。オレにゃ思いつかねえけどよ」

    霧切「……本当に?」

    大和田「ああ?」

    霧切「本当に思いつかないの?」

    大和田(霧切の奴、オレなんかに何期待してやがんだ? まあ、考えちゃみるけどよ。とりあえず刺さってた理由の前に、“なんで血が付いてたのか”についてだな。そうなると……)
  173. 173 : : 2015/01/17(土) 22:15:43
     誰かが男子トイレで怪我をした
      別の物についていた血が移った
      >苗木が踏んで足を怪我した


    大和田「おい苗木、オメェ実は自分が踏んで怪我した時に付いたとかじゃねえだろうな?」

    苗木「ち、違うよ! それならそう言うって!」

    十神「フン、もしそれが正解だったならとんだ無駄だったな」

    大和田(これじゃねえか。ちっ、考えるのは慣れてねえんだよ……)
  174. 174 : : 2015/01/17(土) 22:16:00
     >誰かが男子トイレで怪我をした
       別の物についていた血が移った
        苗木が踏んで足を怪我した


    大和田「誰かが男子トイレで怪我して付いた、とかはねえか?」

    霧切「ないでしょうね。もしそうなら自分が付けたと名乗り出ているはずだわ」

    朝日奈「というか、もしそうならそこで話終わっちゃうじゃん!」

    大和田(これじゃねえか。ちっ、考えるのは慣れてねえんだよ……)
  175. 175 : : 2015/01/17(土) 22:16:16
      誰かが男子トイレで怪我をした
       >別の物についていた血が移った
         苗木が踏んで足を怪我した

    大和田「そういう事か!」

    朝日奈「え、分かったの!?」

    山田「正直見当もつかないのですが……」

    大和田「何かの拍子に、“血が付いた別の物”から鏡に血が移ったんじゃねえか?」

    桑田「血が付いた……別の物? それって何だよ?」

    大和田「決まってんだろ……凶器だよ、凶器!」

    石丸「何……ッ!?」

    大神「つまり……犯人は犯行後に凶器を持ったまま男子トイレに入り、血の付いた凶器で鏡を割って破片を入手し、葉隠に刺しに戻った……という事か?」

    苗木「けど、なんでそんな事したんだろう……よっぽど葉隠クンに恨みがあったのかな」

    舞園「ふと思ったんですが……そうじゃないんじゃないでしょうか」

    大神「どういう事だ?」

    舞園「大まかには大神さんの話で合ってると思いますが……凶器を持ったまま男子トイレに入って、“誤って”凶器で鏡を割ってしまったのでは?」

    山田「そうなると、どうなるので?」

    舞園「誤って割ってしまい、その際に偶然血痕が鏡に付着したんだとすれば……見えてきませんか? クロが“なぜ葉隠君に鏡の破片を刺したのか”、その理由が」

    大和田(クロが鏡を葉隠に刺した理由……? そんなとこまで分かったのか!? オレはそこまで考えてなかったぞ……ちっと考えてみっか)
  176. 176 : : 2015/01/17(土) 22:16:42
           ― 閃き アナグラム ―



     ょ
           つ
     み
       こ
         ぬ
          め
      ら
      う
        い

    し○○○○ん○○
  177. 177 : : 2015/01/17(土) 22:16:54
    しょうこいんめつ


    大和田「これだな!」
  178. 178 : : 2015/01/17(土) 22:17:19
    不二咲「大和田君は分かったの……? どういう事?」

    大和田「つまりだな、“証拠隠滅”のために刺したんじゃねえか、って事だ」

    舞園「はい、そういう事です」

    桑田「どういう事だよ、詳しく教えてくれ!」

    大和田「要するにだな、一見関係ねえ場所に鏡の破片が散らばってて、しかもそいつに血が付いてたら……“クロがそこで何かをした”って事がバレるだろ? けど血が付いた部分だけ持ち出して被害者に刺せば、その刺さった鏡の破片に血が付いてるのは“当たり前の事”になる。つまりクロは“鏡に血が付いていて当然の状況”を作り出すために刺した。そういう事にならねえか?」

    不二咲「たしかに……! それなら納得だよぉ!」

    苗木「けど、刺したら刺したで“なぜ刺したのか”って議論になるのは目に見えてたはずだよね? 実際なったわけだし」

    桑田「そうだよな。クロからすりゃ、むしろ後頭部の打撲痕の事がモノクマファイルに書かれてない、って事態の方がイレギュラーだっただろうしよ。それを考慮したら死因を破片で偽装する、なんて不可能だろ。なんで死体に刺したのか、って議論になるってことぐらい分かったはずだ」

    大和田「まあそうだな。でもよ、もし苗木が見つけた、ちょっとだけ血が付いてた鏡の破片が存在しなかったなら、どうなってたよ?」

    桑田「は? そんなの……。…………」

    舞園「たぶん、刺した理由まではたどり着けなかったんじゃないでしょうか」

    霧切「本当に少量の血痕の付着という話だし、クロも見落としたのかもしれないわね。それに助けられた、という感じかしら」

    大和田(よし、結構進んだんじゃ……)

    十神「それで?」

    大和田「……ああ?」

    十神「大和田の今の話が事実だとして……それがどうした?」

    大和田「どうしたって……鏡の破片が刺さってた理由が分かったんだろーが」

    十神「お前はどこまで馬鹿なんだ。そんな事は分かっている。俺が言っているのは、“それがわかったからどうしたのか”という事だ」

    大和田「そりゃ、オメェ……」

    セレス「……クロに繋がる手掛かりがあったとは思えませんわね」

    石丸「犯人が凶器を持って男子トイレに入り何かをした、もしくはしようとした……。その“何か”がわからなければ意味はない、か」

    霧切「たとえそうだとしても、疑問を一つずつ解消していけばきっと答えは見えてくるはずよ」

    大神「たしかに、少なくともこれで“クロは犯行後に男子トイレに立ち寄った”という事が明らかになったわけだからな。全くの無駄ではないだろう」

    大和田「だ、だよな……」

    大和田(他の事を解決していけば何のために立ち寄ったのかが分かる……か?)

    霧切「じゃあ次の議題に移りましょう」

    山田「たしか、動機……でしたな?」

    苗木「そうだね。それこそ誰かが見つけてるかもしれないし、話合ってみよう」
  179. 179 : : 2015/01/17(土) 22:17:59
          ― 議論  開始 ―


    ≪コトダマ≫
    【葉隠のファイル】
    【石丸のファイル】
    【不二咲のファイル】


    不二咲「動機になりそうな物っていったら」

    不二咲「やっぱり≪例のファイル≫しかないよねぇ」

    霧切「他の人も犯人の可能性はあるけれど」

    霧切「ひとまずは朝日奈さん、石丸君、桑田君、不二咲さんの四人について考えてみましょう」

    朝日奈「と言っても」

    朝日奈「私達は≪ファイルを見つけてない≫んだよね」

    石丸「たしか」

    石丸「僕の物は≪捜査中に発見された≫のだったな?」

    十神「≪葉隠の物も見つけたぞ≫」

    十神「それは俺と大和田が確認している」

    霧切「私は両方確認済みね」

    霧切「葉隠君の物はともかく」

    霧切「≪石丸君のファイルは動機としては弱そうだった≫わ」

    桑田「結局≪その二つしか見つかってねえのか≫」

    桑田「これじゃあクロは絞りにくいな……」


    大和田(いや……あの発言、そうじゃねえのを俺は知ってるはずだ!)
  180. 180 : : 2015/01/17(土) 22:18:16
    不二咲「動機になりそうな物っていったら」

    不二咲「やっぱり≪例のファイル≫しかないよねぇ」

    霧切「他の人も犯人の可能性はあるけれど」

    霧切「ひとまずは朝日奈さん、石丸君、桑田君、不二咲さんの四人について考えてみましょう」

    朝日奈「と言っても」

    朝日奈「私達は≪ファイルを見つけてない≫んだよね」

    石丸「たしか」

    石丸「僕の物は≪捜査中に発見された≫のだったな?」

    十神「≪葉隠の物も見つけたぞ≫」

    十神「それは俺と大和田が確認している」

    霧切「私は両方確認済みね」

    霧切「葉隠君の物はともかく」

    霧切「≪石丸君のファイルは動機としては弱そうだった≫わ」

    桑田「結局≪その二つしか見つかってねえのか≫」


    ノ 三【不二咲のファイル】

    大和田「フザけた事抜かしてんじゃねえ!」
  181. 181 : : 2015/01/17(土) 22:18:41
    桑田「は!? オレ!? ……いや、待てよ。って事は他の奴のファイルも見つけたのか?」

    大和田「ああ。……だよな、大神」

    大神「……そうであったな」

    十神「おい、お前ら、何故さっさとそういう重要な情報を言わないんだ」

    大和田「うるせえな、黙って聞いてろ」

    霧切「喧嘩してる場合じゃないわ。それで、結局誰のファイルを見つけたの?」

    大和田「それは……」

    朝日奈「それは?」

    大和田「……不二咲、オメェのだ」

    不二咲「え……私?」

    大神「そして、すまぬ。こんな時であった故、中を見てしまった」

    大和田「オレも確認した。……すまねえ」

    不二咲「う、ううん……いいんだ。殺人事件の捜査なんだもん……仕方ないよ」

    桑田「それで、なんて書いてたんだ?」

    大和田「……」

    大神「……」

    十神「さっさと言え!」

    大和田(言って……いいのか? 不二咲にとっちゃこれはたぶん、“絶対に隠しておきたい事”だ。それを……オレの口から言っちまっていいのか?)
  182. 182 : : 2015/01/17(土) 22:18:56
    大神「……不二咲よ。おそらく大和田も我と同じ気持ちなのだろう」

    不二咲「えっと、それって?」

    大神「我らの口から言うべき事では無い、と。そう思うのだ。不二咲自身に心当たりはないか? もしあるなら……お主の口から話すべき事だろう」

    大和田「すまねえな。裁判前に時間がありゃ、オメェに確認取れたんだけどよ。すぐ放送が鳴っちまったんだ」

    不二咲「いいんだ。……でも、心当たりって、もしかして」

    大神「やはり、あるのか」

    大和田「そりゃあるだろうよ。けど不二咲の心当たりと内容が一致してるとも限らねえ。オレだって想像してたよりしょぼかったしな」

    大神「そういう事もあるのか……」

    霧切「……ねえ、ちょっと提案なんだけど。大和田君と不二咲さん、二人で一度席を外して確認を取ってみたら? このままじゃ議論が停滞するだけだわ」

    モノクマ「うーん、本来ならダメ、と言いたいところですが……これ以上停滞するのも嫌だしね。うん、二人だけなら許可するよ」

    霧切「……だそうよ」

    大和田「分かった。……じゃあ不二咲、ちっとついて来い」

    不二咲「う、うん」
  183. 183 : : 2015/01/17(土) 22:19:12
    大和田(オレと不二咲の二人だけ、エレベーターに乗り込んで一階へと戻ってきた)

    不二咲「それで……中身はなんて書いてあったの?」

    大和田「それは……」

    大和田(言いにくいな、やっぱ)

    不二咲「正直に言ってくれていいから……」

    大和田「お、おう。その、なんだ。オメェが……実は男だ、って」

    不二咲「……そっかぁ。やっぱり、それだったんだね」

    大和田「てことは、オメェ……!」

    不二咲「うん、本当なんだ」

    大和田(考えてみれば……女子連中と一緒に風呂に入ろうとしなかったり、頑なに女子更衣室に入るのを拒んだり、そう思わせる場面はいくつもあった)

    大和田「……何故とかは訊かねえでおくが、戻ってみんなの前で言えるか?」

    不二咲「言わないと、進まないんだもんね。それにいつかは言わないといけない事だと思ってたし……頑張ってみるよ……!」

    大和田(コイツは……つええな。みんなの前で、こんなでけえ秘密を打ち明けられるってのはオレには無い強さだ)

    大和田「オメェは……間違いなく“男”だよ。オレが断言する」

    不二咲「う、うん……今そういう話をしてたんだよね……?」

    大和田「いや、そういう意味じゃなくてだな」

    不二咲「え?」

    大和田「……ま、いいだろ。そろそろ戻るぞ」

    不二咲「う、うん」
  184. 184 : : 2015/01/17(土) 22:19:43
    大和田(裁判場に戻り、互いに元の席につく)

    霧切「それで、どうだったの?」

    不二咲「うん……思ってた通りの内容だったよ」

    大神「そう、か……ならばあれは真実だったのだな」

    不二咲「そうなんだ……ゴメンね、黙ってて……」

    大神「いや、そうならば更衣室の機器を使ったトレーニングを拒んだ理由も頷ける。むしろ納得してしまったくらいだが……」

    朝日奈「それってどんな内容だったの?」

    大神「……言えるか、不二咲」

    不二咲「うん……! えっとね、その」

    大和田(全員の視線が不二咲に注がれる)

    大和田「……」

    大和田(オレは……見守るしか出来ねえ)

    不二咲「私は……ううん。“僕”は本当は男なんだ!」

    苗木「……えっ!?」

    石丸「バカなッ!?」

    舞園「男……って、その、男性、という事ですか?」

    セレス「他に何か意味がありますか?」

    桑田「ま、マジかよ……!?」

    山田「男の娘ですとォォォォォォ!?」

    大和田「ああ、らしいぜ。大神と確認したファイルの中身とも一致してる。間違いねえよ」

    十神「だが……ファイルの中身が隠したい物であればあるほど、殺人の動機としては相応しい物になるな」

    朝日奈「ちょっと、十神! 何言ってんの!?」

    十神「つまりこれほど大きな秘密を抱えていた不二咲こそ、この事件のクロに最も近い存在だ、と言っているんだ」

    大和田(それはオレも最初はそう思った。だが……本当にそうなのか? みんなの前で秘密を話せるような強い男が、本当に殺人なんて犯せるのか? その辺をもっと慎重に考える必要があるな)
  185. 185 : : 2015/01/17(土) 22:20:11
          ― 議論  開始 ―


    ≪コトダマ≫
    【現場は書庫】
    【不二咲のファイル】
    【石丸のファイル】
    【葉隠のファイル】
    【深夜探索組の証言】


    十神「四人中他の二人のファイルが≪発見されていない≫以上」

    十神「動機になりそうな物は他にない」

    十神「つまり」

    十神「不二咲が現状最も怪しいという事になる」

    十神「何か間違った事を言っているか?」

    桑田「その態度が気に入らねえ」

    セレス「ですが」

    セレス「≪否定できる根拠もありません≫し」

    セレス「一考の価値はあるかもしれませんわね」


    大和田(考えろ……これでいいのか?)
  186. 186 : : 2015/01/17(土) 22:20:26
    十神「四人中他の二人のファイルが≪発見されていない≫以上」

    十神「動機になりそうな物は他にない」

    十神「つまり」

    十神「不二咲が現状最も怪しいという事になる」

    十神「何か間違った事を言っているか?」

    桑田「その態度が気に入らねえ」

    セレス「ですが」

    セレス「≪否定できる根拠もありません≫し」


    ノ 三【現場は書庫】

    大和田「フザけた事抜かしてんじゃねえ!」
  187. 187 : : 2015/01/17(土) 22:21:43
    セレス「ふむ、何か根拠がおありで?」

    大和田「そもそも現場は書庫なんだ。だったら動機になるファイルも書庫に無きゃおかしいだろ。不二咲のファイルを見つけたのは書庫じゃねえぜ」

    十神「では大和田。その書庫でファイルを一つでも発見できたのか?」

    大和田「そ、それは……」

    大和田(現場でファイルが見つかったかどうか。それを示す証拠は……)


    【現場の捜査結果】

    大和田「こいつか!」
  188. 188 : : 2015/01/17(土) 22:22:10
    十神「どうなんだ?」

    大和田「……無かった、って話だ。現場を見張りしてた連中が四人がかりで探して無かったっつってたな」

    朝日奈「うん、それは確かだよ!」

    霧切「……ちなみに、不二咲、君のファイルが見つかった場所は?」

    大神「2-A教室だが」

    霧切「そう。なら大和田君、残念だけれどやっぱりそれだけの根拠では十神君の論を破るだけの根拠にはならないわ」

    大和田「はあ? なんでだよ」

    霧切「思い出して。貴方もその理由、知っているはずよ」

    大和田(オレが……知ってる? それって……)


    【死体発見時の容疑者の居場所】

    大和田「こいつか!」
  189. 189 : : 2015/01/17(土) 22:22:28
    大和田「そうか……そうだったな」

    舞園「何がですか?」

    大和田「不二咲は死体発見前まで……ファイルを発見したのと同じ、“2-A教室”にいたんだ……」

    十神「それではお前の言う通り、もともと書庫にファイルがあったのだとしても、現場から持ち去り隠すことは容易だったはずだな」

    大和田「そう、なるな……」

    不二咲「……」

    苗木「ねえ不二咲さ……クン。何か反論は無いの?」

    不二咲「う、うう……反論って言われても……」

    大和田(不二咲の話……ここはしっかり聞かねえとな)
  190. 190 : : 2015/01/17(土) 22:22:43
          ― 議論  開始 ―


    ≪コトダマ≫
    【トラッシュルームの様子】
    【掃除当番】
    【葉隠の死亡時刻】
    【深夜探索組の証言】


    霧切「ゆっくりでいいわ」

    霧切「まずは不二咲君の死体発見までの足取りを教えて頂戴」

    不二咲「えっと……たぶん」

    不二咲「事件があった範囲の時間なら」

    不二咲「ずっと≪2-A教室にいたよ≫」

    不二咲「≪三十分くらいの事≫だし、間違いないと思う!」


    大和田(こんだけか……って、なんかおかしくねえか?)
  191. 191 : : 2015/01/17(土) 22:23:30
    霧切「ゆっくりでいいわ」

    霧切「まずは不二咲君の死体発見までの足取りを教えて頂戴」

    不二咲「えっと……たぶん」

    不二咲「事件があった範囲の時間なら」

    不二咲「ずっと≪2-A教室にいたよ≫」

    不二咲「≪三十分くらいの事≫だし、間違いないと思う!」


    ノ 三【葉隠の死亡時刻】

    大和田「フザけた事抜かしてんじゃねえ!」
  192. 192 : : 2015/01/17(土) 22:24:46
    不二咲「えっ……!?」

    大和田「不二咲、何言ってんだオメェ?」

    不二咲「何が……?」

    大和田「葉隠の死亡時刻は午前五時から午前七時の間……つまり“二時間”あるんだよ。三十分じゃねえ。なんか勘違いしてねえか?」

    不二咲「あ……!」

    十神「フン、隠そうとする辺りがますます怪しいな。これは……」

    不二咲「ごめんなさい! 自分の中だけで完結しちゃってて……そのままになってた事があるんだ……」

    舞園「何のことでしょう?」

    不二咲「実は……まだみんなに性別の事を打ち明ける前だったから言えずにいたんだけど……2-A教室に入る前、僕は“二階の男子トイレに入ってる”んだ」

    石丸「何! それは本当かね!?」

    不二咲「うん。その時は鏡も割れてなかったから、事件もまだ起こってないって思い込んでたんだ」

    十神「だからそういう事は早く言えと言ってるんだ!」

    桑田「今回はその理由はちゃんと言ってたろ……」

    大和田「てことは……犯行時刻はだいたい午前六時半から午前七時になるわけか」

    不二咲「うん、ごめんね」

    十神「だが不二咲が真実を言っているとも限らんぞ」

    大和田「ああ!?」

    十神「不二咲がクロならば、当然嘘をつくだろう? 全てを鵜呑みにしていては話が進まんぞ」

    霧切「十神君はどうしても不二咲君を犯人にしたいみたいだけれど。……まあいいわ。どの道それも踏まえて、話を続けましょう。たとえ嘘だとしても少しずつ話を聞いて、おかしなところを見つけていけばいいだけよ」

    大和田(不二咲の話が嘘にしろ事実にしろ……この話は重要だ、って事か。まだ不二咲にはいろいろ話してもらう必要があるみてえだな)
  193. 193 : : 2015/01/17(土) 22:25:04
          ― 議論  開始 ―


    ≪コトダマ≫
    【葉隠のファイル】
    【凶器の捜索結果】
    【石丸のファイル】
    【血の広がり方】
    【大神の推理】


    不二咲「話って言われても……」

    不二咲「何を話せばいいのぉ?」

    不二咲「さっきも言ったけど僕は≪ずっと2-A教室にいた≫から」

    不二咲「他に話せる事もないんだけど」

    不二咲「あ、勿論、≪トイレに行った後≫の事だよ!」

    霧切「そうね。じゃあ」

    霧切「トイレに入った時の事を話してもらえる?」

    不二咲「うーん、≪あの時は何も変わったところは無かった≫よ」

    不二咲「鏡も割れてなかったし……」

    苗木「じゃあ、トイレに入る前は?」

    不二咲「≪プール≫にいたよ! たぶん石丸君とは入れ違いだったのかな」

    石丸「うむ、会っていないからな」

    朝日奈「なんかこの話続けても先に進まない気がするよ」

    朝日奈「私としては≪葉隠のファイルも怪しい≫と思うんだよね!」


    大和田(不二咲の言ってる事が本当なのか嘘なのか……そんなモン、オレに分かるわけねえだろ……)
  194. 194 : : 2015/01/17(土) 22:25:22
    不二咲「話って言われても……」

    不二咲「何を話せばいいのぉ?」

    不二咲「さっきも言ったけど僕は≪ずっと2-A教室にいた≫から」

    不二咲「他に話せる事もないんだけど」

    不二咲「あ、勿論、≪トイレに行った後≫の事だよ!」

    霧切「そうね。じゃあ」

    霧切「トイレに入った時の事を話してもらえる?」

    不二咲「うーん、≪あの時は何も変わったところは無かった≫よ」

    不二咲「鏡も割れてなかったし……」

    苗木「じゃあ、トイレに入る前は?」

    不二咲「≪プール≫にいたよ! たぶん石丸君とは入れ違いだったのかな」

    石丸「うむ、会っていないからな」

    朝日奈「なんかこの話続けても先に進まない気がするよ」

    朝日奈「私としては≪葉隠のファイルも怪しい≫と思うんだよね!」


    ノ 三【葉隠のファイル】

    大和田「フザけた事抜かしてんじゃねえ!」
  195. 195 : : 2015/01/17(土) 22:25:41
    朝日奈「葉隠のファイルは関係ないって言うの?」

    大和田「ああ、不二咲の話が正しいかどうかはともかく、葉隠のファイルは事件には関係ねえ。それだけは分かったぜ」

    朝日奈「なんでそう言い切れるの?」

    大和田「だってよ、葉隠のファイルは視聴覚室で見つかってるんだ。ちと三十分で隠すには遠すぎんだろ」

    朝日奈「視聴覚室かあ……」

    霧切「そうね……これが大和田君や大神さんなら可能だったかもしれないけれど、不二咲君では体力的にも無理があると思うわ」

    大和田(内容だけ見りゃ一番怪しかったけどな……アイツのファイル)

    不二咲「でも……って事はやっぱり、僕が一番怪しい事に変わりはない、って事ぉ?」

    桑田「そうなっちまう、な……」

    十神「フン、お粗末な結果だ」

    山田「え、もう結論出した気になってらっしゃる!?」

    霧切「私もまだ結論を出すには早いと思うわ。議論していない事もまだ残っているわけだし」

    十神「……何?」

    霧切「不二咲君の話で議論を進めるのはこれ以上は無理みたいだし、そろそろ次の議題に移りましょうか」

    石丸「次の議題とは、何かね?」

    霧切「あら、石丸君。貴方も知っているはずだけれど。あの場にいたわけだし」

    大和田「あの場……?」

    霧切「大和田君もいた、というか貴方が言い出した事のはずでしょう。しっかりして頂戴」

    大和田(オレが言い出した事だあ……?)


    【血の広がり方】

    大和田「こいつか!」
  196. 196 : : 2015/01/17(土) 22:25:56
    大和田「そういや……あったな」

    霧切「思い出したようね」

    山田「何のことですかな?」

    大和田「いや、書庫には結構血が広がってたけどよ。本には一冊も血が届いてなかったんだよ」

    十神「だからどうした?」

    霧切「偶然で片付けるには、本の量が多すぎる空間じゃないかしら?」

    苗木「けど、どういう意味があるのかな?」

    不二咲「もし故意的に本に血が届かないようにしたなら、クロにはそうしなければいけない理由があった……って事になるよねぇ」

    桑田「理由か……。あー、サッパリわかんねえ!」

    舞園「前回の勢いはどうしたんですか……と思いましたけど、今回は桑田君はほとんど捜査出来てませんしね」

    霧切「もっと単純に考えてみたらいいんじゃないかしら」

    大和田「単純に、だあ?」

    大和田(どういう意味だ……?)
  197. 197 : : 2015/01/17(土) 22:26:14
          ― 議論  開始 ―


    ≪コトダマ≫
    【大神の推理】
    【深夜探索組の証言】
    【石丸のファイル】
    【掃除当番】


    霧切「本を血で≪汚してはいけない理由があった≫……」

    霧切「そう考えるんじゃなく」

    霧切「本を血で≪汚したくなかった≫と考えるならどうかしら?」

    桑田「はあ? なんでだよ」

    十神「あそこにあったのはいずれも≪貴重な資料ばかり≫だったからな」

    十神「そう考える奴がいてもおかしくはないだろう」

    朝日奈「十神ならそう考えるって事?」

    朝日奈「それなら≪十神が怪しい≫よ!」

    十神「どう考えようとお前の勝手だが……」

    十神「俺は既にあそこにある資料の情報量程度なら暗記済みだ」

    十神「今更≪本を保護する理由は無い≫」

    石丸「というよりもだな!」

    石丸「書物というのは偉大なる先人の知恵!」

    石丸「守ろうとするのは≪我々人類の義務≫だろう!」

    苗木「そう力説する≪石丸クンも怪しい≫よね……」


    大和田(……! あの発言、何とかしねえといけねえな)
  198. 198 : : 2015/01/17(土) 22:26:29
    霧切「本を血で≪汚してはいけない理由があった≫……」

    霧切「そう考えるんじゃなく」

    霧切「本を血で≪汚したくなかった≫と考えるならどうかしら?」

    桑田「はあ? なんでだよ」

    十神「あそこにあったのはいずれも≪貴重な資料ばかり≫だったからな」

    十神「そう考える奴がいてもおかしくはないだろう」

    朝日奈「十神ならそう考えるって事?」

    朝日奈「それなら≪十神が怪しい≫よ!」

    十神「どう考えようとお前の勝手だが……」

    十神「俺は既にあそこにある資料の情報量程度なら暗記済みだ」

    十神「今更≪本を保護する理由は無い≫」

    石丸「というよりもだな!」

    石丸「書物というのは偉大なる先人の知恵!」

    石丸「守ろうとするのは≪我々人類の義務≫だろう!」

    苗木「そう力説する≪石丸クンも怪しい≫よね……」


    ノ 三【石丸のファイル】

    大和田「フザけた事抜かしてんじゃねえ!」
  199. 199 : : 2015/01/17(土) 22:28:26
    苗木「え……!」

    大和田「いいか? 兄弟にはそもそも動機になるようなモンがねえんだ」

    石丸「む……」

    苗木「えっと、それってどういう?」

    大和田「兄弟のファイルには“殺人の動機”になるような事は一切書かれてなかった。なあ、霧切? オメェもそう思っただろ」

    霧切「……たしかに、あの内容だけを見るとそうね」

    桑田「ちなみになんて書いてたんだ?」

    大和田「それは……」

    石丸「……僕は構わない。言ってくれたまえ」

    大和田「ああ……分かったよ」

    大和田(オレはみんなに、兄弟のファイルに書かれていた事を伝えた)

    桑田「そりゃまあ、なんつーか……らしいな」

    十神「確認するが、霧切。偽りではないな?」

    霧切「ええ、合ってるわ」

    苗木「そっか、それじゃあ石丸クンは容疑から外していいかな」

    大和田「そういうこった。なんせ葉隠のファイルは関係ねえ、って事で落ち着いたからな」

    大神「葉隠のファイルが関係ないのであれば、当人のファイルが関係ない者は容疑者から除外される……か」
  200. 200 : : 2015/01/17(土) 22:28:42
    霧切「待って」

    大和田「……ああ?」

    霧切「石丸君を容疑者から除外するのは早計よ」

    大和田「何だと!?」

    霧切「……気になる事があるのよ」

    山田「それはいったい?」

    霧切「……石丸君。貴方、たしか死体発見前までプールにいたと証言していたわね?」

    石丸「あ、ああ。間違いない」

    不二咲「僕と合流した時もそっちの方向から来たし……間違いないんじゃないかなぁ」

    霧切「どのくらいの時間プールに居たの?」

    石丸「およそ十分ほどだったと思うが……」

    霧切「つまり、プールに入ってすぐに朝日奈さんの声を聞いて飛び出した、という訳ではないのね?」

    石丸「ああ、さすがにそのような事は無かったぞ。……だがそれが一体どうしたのかね?」

    霧切「やっぱり……石丸君は容疑者からは外せないわね」

    大和田「なッ、て、テメェ霧切、どういうこった!」

    霧切「思い出して頂戴、大和田君。石丸君のファイルは“どういう状態”で発見されたのかを」

    大和田「発見された……状況だあ?」

    大和田(そりゃたしか……)


    【石丸のファイル】

    大和田「こいつか!」
  201. 201 : : 2015/01/17(土) 22:29:02
    大和田「……ぐっ!」

    大和田(プールのロッカーの裏に……“隠れきっていない状態”の物を発見……!)

    霧切「気付いたみたいね。そう、あの状態の物を、十分間探し続けて見つけられないという事は果たしてあるのかしら?」

    大和田「待てよ! 兄弟はファイルを見つけて、その直後に朝日奈の声を聞いて、ファイルをその場に残して駆けつけたのかもしんねえだろォが!」

    霧切「その仮定に対する解答……それも貴方は持っているはず」

    大和田「……」


    【深夜探索組の証言】

    大和田「こいつか!」
  202. 202 : : 2015/01/17(土) 22:29:16
    朝日奈「私達は……誰も見つけていない……」

    不二咲「石丸君も見つけてないって……言ってたもんね」

    桑田「い、石丸……どうなんだよ?」

    石丸「……」

    大和田「待て! まだだコラァ!」

    苗木「え、な、何!?」

    大和田(そうだ……あの二つの証拠がある。あれが最後の……砦だ)


    【掃除当番】

    大和田「こいつか!」
  203. 203 : : 2015/01/17(土) 22:29:28
    大和田「いいか、兄弟は掃除当番だったんだ」

    朝日奈「それが?」

    大和田「掃除当番だったって事は、“トラッシュルームで証拠の処分が出来た”はずだろ」

    大神「トラッシュルームは使われていたのか?」

    大和田(その答え、オレは知ってる!)


    【トラッシュルームの様子】

    大和田「こいつか!」
  204. 204 : : 2015/01/17(土) 22:29:48
    大和田「いいや、使われてねえ。綺麗なモンだったぜ。その事は山田と舞園も知ってる。なあ、そうだろ?」

    山田「ええ……確かに。焼却炉含め、どの設備も使用はされておりませんでしたぞ」

    舞園「それは私も認めますけど……」

    桑田「でもよ、さっき“遠すぎるから”って理由で視聴覚室の葉隠君のファイルが関係していない、って事になったばっかじゃねーか。それよりもっと遠いトラッシュルームが使われていないのは当たり前じゃねえの?」

    大和田「そいつは結果的にそうなったってだけだろ? クロはどのタイミングで死体が発見されるかなんて予測できなかったはずだ。なら、掃除当番がクロならトラッシュルームで証拠を処分する事も考えておかしくねえだろ」

    舞園「……今、思った事があるんですが」

    霧切「何かしら?」

    舞園「私が捜査中に石丸君にトラッシュルームの鍵を借りた時、石丸君は“失念していた”と言ったんです」

    石丸「……」

    大和田「それが……何だってんだよ?」

    舞園「あの時は、“自分が持っていては捜査が出来ない”という意味で言ったんだと思っていましたけど……本当は、“トラッシュルームで証拠を処分する選択肢もあった”という意味で言っていたのでは……?」

    大和田「な……!」

    霧切「……大和田君。貴方にも何となく分かって来たんじゃないかしら。この事件の真相が」

    大和田(クソ、何かねえか? 何か……否定材料は……! 必死に捜査を思い出す。捜査前を思い出す。記憶を探る。何か……何か……!)

    大和田「……ッ!」

    大和田(オレハ……“ナニカ”ヲ……ワスレテイタ……?)

    霧切「最初から石丸君には違和感を覚えていたわ。貴方、死体が発見されてから大和田君の事を“兄弟”と呼んだのは、死体が発見されて私達が合流した直後の一度だけだったわよね」

    石丸「……」

    霧切「貴方のような人だもの。罪悪感を抑えきる事は出来なかった……これはその表れじゃないかしら?」

    大和田(クソ……!)
  205. 205 : : 2015/01/17(土) 22:30:07
          ― 議論  開始 ―


    ≪コトダマ≫
    【モノクマファイル弐】
    【後頭部の打撃痕】
    【葉隠の死亡時刻】
    【鏡の破片】
    【大神の推理】


    朝日奈「たしかにそう言われると怪しい気もするけど……」

    朝日奈「石丸に≪人を殺せるとは思えない≫よ」

    苗木「≪凶器だって未だに不明≫なんだしさ」

    苗木「結論を出すのは早いんじゃないかな」

    桑田「つってもなあ」

    桑田「現状じゃ不二咲か石丸の≪二択≫だろ?」

    大神「どちらもクロではなさそうというばかりでは」

    大神「話が進まぬのも事実だな」

    十神「それともここで」

    十神「≪ファイル発見済みの者≫にまで容疑を広げるか?」

    山田「更に話がこじれる未来しか見えませんぞ……」


    大和田(…………)
  206. 206 : : 2015/01/17(土) 22:30:18
    朝日奈「たしかにそう言われると怪しい気もするけど……」

    朝日奈「石丸に≪人を殺せるとは思えない≫よ」

    苗木「≪凶器だって未だに不明≫なんだしさ」


    ノ 三【大神の推理】

    大和田「……クソがッ!」
  207. 207 : : 2015/01/17(土) 22:30:42
    苗木「お、大和田クン……? どうしたの?」

    大和田「大神の話によると……」

    大神「む? 我か?」

    大和田「犯行に準備がしっかりされてるとは思えねえから……突発的な犯行の可能性が高い……だったよな」

    大神「ああ、そのような考えを話したな。だが、それがどうしたのだ?」

    大和田「だったらよ……学校エリア二階で凶器が見つからなかった以上……“クロがまだ持ってる”んじゃねえのか……?」

    不二咲「あ……!」

    朝日奈「その可能性はあるかも! むしろ捜査して出てこなかったんなら、そうとしか思えないよ!」

    大和田「なあ兄弟! 身体検査させてくれ……それで容疑は晴れるんだからよ……」

    石丸「……ぐっ、うう」

    大和田「……分かった。じゃあこれから事件を纏めてみるからよ……せめてなんか、反論してくれ。いいな……?」

    石丸「……」
  208. 208 : : 2015/01/17(土) 22:30:56
           ― クライマックス 推理 ―


       ACT 1

    大和田「この事件はモノクマが宝探しだとか抜かしながらオレ達の“個人情報”をあちこちに隠したところから始まった。全員あちこちで探し回ったよな。けど探索が終わって集合した時、大半は見つかってたが、五人分だけ未発見だった。その五人ってのが……朝日奈、桑田、不二咲、そして兄弟と……被害者の葉隠だ。オレ達ファイル発見組と未発見組はそこで別れたんだ」

       ACT 2

    大和田「分かれたのが夜時間ちょっと前くらいだったから……午後十時頃だな。そんぐれーの時間から未発見組は各々ファイル探しに散ったんだろう。そのまま結局何の成果も挙げられず、午前二時まで……つまり四時間ほど探したって話だったな。そこで未発見組の五人は再集合して、一回寝てから五時にまた集まろう、と約束をした」

       ACT 3

    大和田「午前五時ごろになって、約束通り五人ともやって来た。その時はまだ葉隠も生きてたんだ。五人は集合した事を確認して、再びファイル探索に動き出した。それぞれしばらくは普通に校内を歩き回ってたんだろう。その探索の過程で、だいたい六時半ごろに不二咲がプールを出てトイレに立ち寄った。この時はまだ、不二咲も事件が起こるなんて思ってもみなかっただろうぜ……。ま、それはさておきトイレで用を済ませた不二咲はそのまま2-A教室に向かったんだったな」

       ACT 4

    大和田「事件はここからだ。葉隠のファイルをダシにして呼びだした、って事は無いだろうからきっと、書庫にクロのファイルがあったんだ。それをクロと……たまたま葉隠が一緒に発見しちまったとかなんだろうぜ。何らかの拍子に中を葉隠が見ちまって……そこで何が起こったのかは分からねえが、とにかくクロは葉隠を鈍器のようなもので殴ったんだ」

       ACT 5

    大和田「その後クロは葉隠を殴った凶器を持ったままトイレに入った。そこで何をしようとしていたのかは知らねえが、クロは誤って鏡を凶器で割っちまう。そん時に鏡に血が付いちまったんだ。クロは慌てて血の付いた鏡の破片を処理しようと考えた。その結果が、葉隠に刺しちまうことで血の跡を気にならないようにしようって結論だった。クロは葉隠を移動させたのか、それとも本の方を移動させたのか、ともあれ本に血が届かないよう計算して……葉隠に鏡の破片を刺した。それからクロはプールに向かい、事件のきっかけになったファイルを隠したんだ。誤算は、隠し方が杜撰だったことと、血の付いた鏡の破片がまだ残っていた事……そして、凶器を隠す時間も無い内に死体が発見されちまった事」


    大和田「これは……オメェがクロだって仮定の上で成り立つ話だ。なあ、どうなんだ? 反論してくれよ……兄弟ッ!」

           ― COMPLETE! ―
  209. 209 : : 2015/01/17(土) 22:33:11
    石丸「…………僕には」

    大和田「……ああ!」

    大和田(“動機が無い”“人を殺すなんて出来ない”“疑いの目を向けられる道理が無い”……どれだ?)

    石丸「僕には、もう……キミを兄弟と呼ぶ資格も、呼ばれる資格も……無いんだ」

    大和田「なッ……!」

    石丸「はは。この僕の制服は結構頑丈に出来ていてね。その分“厚み”もあるのだ。だから……ここまで気付かれなかったのだろうな」

    大和田(そう言って兄弟が内ポケットから取り出した物は……)

    大和田「やっぱり、それか……!」

    石丸「やはり、という事は途中から気付いていたのだな」

    大和田(オレが兄弟に預けていた、万力。おそらく“必要になったら返却しよう”という兄弟自身の言葉通り、いつでもオレに渡せるよう持ち続けていたんだろう)

    霧切「それが凶器……だったのね」

    石丸「ああ。そうだ」

    大和田(認め……ちまうのか……!)

    モノクマ「えーと、議論の結論が出たようですね。それではオマエラ、お手元のスイッチで投票してくださーい」

    大和田(ぐ……クソ。兄弟自身が認めちまった以上……兄弟に投票しねえと、兄弟は……怒るだろう、よ……!)


         VOTE

    【石丸】【石丸】【石丸】

        GUILTY!
  210. 210 : : 2015/01/17(土) 22:33:26
    モノクマ「はいっ! またまた大正解! 葉隠康比呂クンを殺した犯人は、なんとクソ真面目一辺倒の石丸清多夏クンだったのです!」

    大和田(クソ……クソ!)

    大和田「なあ、なんでだよ! オメェのファイルは動機になるようなもんじゃなかったろ! なんでだ!?」

    石丸「それは……」
  211. 211 : : 2015/01/17(土) 22:33:46
                  ― 回想 ―


    石丸(僕が書庫に探索に向かった時……そこには既に葉隠君がいたのだ)

    葉隠「あ、い、石丸っち……」

    石丸「葉隠君か。どうかしたのかね?」

    葉隠「ああ、いやその……悪い! ここ調べてたらよ、石丸っちのファイルが出てきて……でも取り落としちまってよ。そのまま開いて……中、見ちまったべ」

    石丸「ああ、そんな事か。別に構わないぞ。僕は見られて困るような経歴は持ち合わせていないからな」

    葉隠「まあ、内容もそんなもんだったべ。ほれ」

    石丸「む、感謝する」

    石丸(葉隠君からファイルを受け取り、中身を確認している時……彼はこんなことを言い出したのだ)

    葉隠「けどよ、そんな生き方ばっかじゃ疲れんべ? つーわけでよ、石丸っち、せっかくだし、オメーの将来もそれを貫けてるかどうか、占ってやろうか?」

    石丸「いや……君の占いは高額だろう。聞いているぞ、一回につき十万円も取るそうじゃないか」

    葉隠「じゃあよ、今回は特別にタダで占ってやるって。けど石丸っちが将来出世したら是非、贔屓にして欲しいべ」

    石丸「む、政治を占いに頼るというのはいただけないと思うが……せっかくだ。そこまで言うなら占ってもらうとするか」

    石丸(思えば……この判断が間違いだったのだ)

    葉隠「よし来た! 三割の確率でピタリと未来を的中させてやるって! ……むむ、見えた!」

    石丸「どうだったのだ?」

    葉隠「石丸っちは将来的に犯罪に手を染めてロクな死に方しないと出たべ!」

    石丸「何……!?」

    石丸(我が耳を疑った。そのような未来など……絶対に認めたくは無かったのだ。だが、葉隠君の話はそれだけにとどまらなかった)

    葉隠「こりゃきっとアレだな、“汚職”とかそういう話じゃねえか?」

    石丸(“汚職”……葉隠君はそう言ったのだ。僕の祖父、石丸寅之助が最終的に手に染めた、僕の最も憎むべき物。それに僕が手を染める、と彼は確かにそう言ったのだ)

    石丸「……ッ!」

    葉隠「ま、汚職だろうがなんだろうが政治に関係するような事なら、つまりはここから出られるって話だし悪い事じゃねえよな!」

    石丸(そこから先は……よく覚えていない。気が付いた時には、目の前に葉隠君が倒れていて……手には万力を持っていた)
  212. 212 : : 2015/01/17(土) 22:34:04
    石丸「トイレに立ち寄ったのは……万力を洗うため、だよ。ははは……あんな状況で僕はすぐさま保身に走ってしまったのだ。その時点で僕は汚い人間だよ」

    苗木「石丸君……」

    石丸「皮肉な話だ。“犯罪に手を染める”という占い結果は葉隠君自身の殺害という形で、そして“ロクな死に方をしない”という占い結果はこの後に来る“処刑”で……ピタリと的中されてしまったのだからな」

    大和田(オレには……もはや何も言えなかった。何も聞こえなかった。何も分からなかった。何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も何も、シリタクナカッタ)

    モノクマ「はい、それでは本人もお望みのようですし、そろそろいっちゃいますか」

    苗木「行くって……」

    朝日奈「まさか……!?」

    モノクマ「わっくわくどっきどきの、オシオキタイム!」

    大和田「兄弟……兄弟ィィィィィィィィィッ!」

    石丸「……すまないッ」
  213. 213 : : 2015/01/17(土) 22:34:19
    子供の落書きのような国会議事堂の書き割りをバックに、一つの箱を抱えるように持つ石丸清多夏。
    体勢はそのまま固定されているようで、微動だにしない。

    注文の多い世論

         “超高校級の風紀委員”石丸清多夏  処刑執行


    箱から一枚の紙が飛び出す。そこには政治への要望が書かれている。箱からはどんどん要望があふれ出てくる。しかし石丸は動かない。いや、固定されているため動けないのだが……。
    そのためか、その内要望に不満が混じるようになり、徐々に不満の割合が増えてゆく。遂には要望は全て不満に変わり……不満は罰へと変わった。
    石丸の周囲をモノクマの集団が取り囲み、石をぶつける、棒で殴る、そして蹴り倒す。
    倒れはしたが、石丸は姿勢を固定されたままで動けない。モノクマの集団に担ぎあげられ、運ばれる。運ばれた先は、檻の中。
    鉄製の檻の中で拘束を解かれ、自由に動けるようになった石丸。だが硬い鉄格子から出る事は叶わない。……次第に、違和感に気が付く。
    熱い。足元が熱い。
    鉄製の檻の床、その下には火が付けられている!
    フライパンやホットプレートのように熱された檻の中で……石丸清多夏は、こんがりと焼きあげられたのだった。
  214. 214 : : 2015/01/17(土) 22:34:47
    モノクマ「うんうん、こんなものだね」

    不二咲「う、うう……」

    桑田「クソッ、胸糞悪い……!」

    朝日奈「いつまで……こんな事続けるの……!?」

    モノクマ「別に続ける必要はないんだよ? オマエラが外の世界の事を忘れて、ここでの一生を受け入れれば済む話だしさ!」

    舞園「そんなの、無理に決まってるじゃないですか!」

    大和田(その後もモノクマに対する抗議やら何やら続いたみてーだが……オレにはもうどうだって良かった。オレの意識はだんだん薄れて行って……それ以降はもう何も、聞こえなかった。……見えなかった)
  215. 215 : : 2015/01/17(土) 22:35:03
       CHAPTER 2
              週刊少年単車の友   完


    生き残りメンバー

    桑田怜恩 朝日奈葵 大神さくら
    大和田紋土 セレスティア・ルーデンベルク 不二咲千尋
    十神白夜 山田一二三 苗木誠 霧切響子 舞園さやか
  216. 216 : : 2015/01/17(土) 22:43:29
    はい、というわけでこれにてChapter2終了となります!
    次からChapter3が開始されますので、そちらも良ければお付き合いくださいませ!


    【次スレ】
    http://www.ssnote.net/archives/30423
  217. 217 : : 2015/07/27(月) 22:29:52
    原作と逆の展開でしたね!面白かったです!
  218. 218 : : 2016/08/30(火) 16:44:42
    生き残りが被害者に、
    被害者がクロに、
    クロが主人公に……
    すごいですね……
  219. 219 : : 2022/12/15(木) 21:43:26
    義兄弟だった石丸を失った事で、大和田が別の意味で闇堕ちしそうになっている……。

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mokeyann

もけやん

@mokeyann

この作品はシリーズ作品です

オリジナル展開でコロシアイ学園生活 シリーズ

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