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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

【オリジナル展開でコロシアイ学園生活】桑田「へえ、ここが希望ヶ峰学園か」 Prologue&Chapter1

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  1. 1 : : 2014/04/11(金) 02:23:11
    キーンコーンカーンコーン……

    モノクマ「えー、マイクテス、マイクテス。校内放送、校内放送……」

    モノクマ「今回は、1のキャラクターを使って完全オリジナル展開のコロシアイ学園生活をお送りするSSです。なので、グロ要素が原作程度にはあるかもしれません。完全って言っても台詞とかは一部流用したり、ボクの計画の大まかな所は同じだけどね。」

    モノクマ「うぷぷ、まだ二回目の投稿なのにもの凄い長編だよ……絶望的に頭悪いよねえ……!」

    モノクマ「一応、書きためは一章終了まであるよ! ちょっとずつ投下していくね!」

    モノクマ「それでは、絶望を皆様にお届けいたしましょう……うぷぷぷぷ……!」
  2. 2 : : 2014/04/11(金) 02:24:15
    桑田(私立希望ヶ峰学園……超高校級と呼ばれる高校生を集めた政府公認の超特権的学園。入学資格は現役の高校生である事と学園からスカウトされる事、だっけ? でも重要なのはそこじゃねえよな。なんと言っても、卒業すれば人生において成功間違いなし、なんて言われてるって事が一番大事だ!)

    桑田「これでオレも成功を約束されるってわけね。……おっしゃあ、テンション上がってきた! これはオレの栄光への第一歩ってわけだな!」

    桑田(オレ自身の未来に高らかに宣言して、希望ヶ峰学園への第一歩を踏み出す。――けど)

    桑田「あ、あぁ?」

    桑田(ぐにゃりと。オレの視界が歪む。オイオイ、マジかよ……何だよ、コレ。まさか、オレ……死……?)
  3. 3 : : 2014/04/11(金) 02:25:40
    ――――――
    ――――
    ――

    桑田「――っつ、あぁ? どこだ、ここ」

    桑田(目を覚ますと、そこは一つの部屋。DVDなんかが見られるデッキが大量に並んでいて……)

    桑田「何だ? 視聴覚室……か?」

    桑田(わからねえ。なんでこんなトコで寝てたんだ? たしか希望ヶ峰学園に入ろうとして……一歩目を踏み出したと思ったら、急に視界が歪んで……)

    桑田「眩暈がして倒れたオレを誰かが学園内に運んでくれた、ってコトでいいの? けどどうせ運ぶなら保健室とかにして欲しかったっての」

    桑田(ま、ボヤいてても仕方ねえか。とりあえず他に誰かいないか探してみるかな)



    桑田(視聴覚室を出ると、あちこち妙なカラーリングが施された廊下に出た)

    桑田「何だこりゃ。気味悪ぃな。ここ、ホントに希望ヶ峰学園なの?」

    桑田(テキトーにブラブラと廊下を歩いてみる。すると、一つだけ開いているドアが目に付いた。あれは……)

    桑田「玄関ホールに繋がってんのか?」

    桑田(何の気なしに覗いてみると……そこには、何人かの濃い面子が顔を突き合わせて何やら話し込んでいた)
  4. 4 : : 2014/04/11(金) 02:27:13
    ???「あ、また人が来た! ねーねー、アンタも新入生だったりする系?」

    ???「俺の占いによると、どうやら今度の登場人物の才能は超高校級のチャラ男だべ!」

    ???「はいはい、誰もアンタの占いなんてアテにしてないって」

    桑田「えーと、オメーら誰だ?」

    江ノ島「ちょ、酷くない? さすがにアタシは知ってんでしょ。江ノ島盾子、超高校級のギャルでーす」

    桑田「あー、たしかに、ちょっと雑誌と印象ちげーけど言われてみりゃ江ノ島ちゃんだわ」

    江ノ島「ちょ、さすがに傷付くんですけど……。雑誌のカバーショットとかは盛ってるだけだって! 画像編集ソフトとか使ってさ!」

    桑田「……ふーん、そういうモンなのか?」

    桑田(超高校級の才能があっても編集とかいるって事か? モデルの世界も大変みてーだな)

    朝日奈「私は朝日奈葵っす! 超高校級のスイマーだよ! ヨロシク! えっと……」

    桑田「あ、オレは桑田怜恩だ! ヨロシクな!」

    朝日奈「うん、桑田だね! えっと、レオンってどんな字?」

    桑田「あー、ちっと難しいんだよな。あとで実際に書いてやるよ」

    朝日奈「うん、ありがとね!」

    桑田(朝日奈かあ。なんかこう、イイよなあ。うん、いいじゃんいいじゃん、オレの薔薇色の学園生活始まったって感じすんじゃん!)

    葉隠「桑田っちか。俺は葉隠康比呂だ。超高校級の占い師なんて呼ばれてんべ」

    桑田「占い師ねえ? どんくらい当たるん?」

    葉隠「どんな事でも三割の確率でピタリと当たるべ!」

    桑田「うっわ、ビミョー」

    葉隠「ビミョーとか言うな! どんな事でも、ピタリと当たるんだぞ!? どんだけスゲーかわかんねーのか?」

    桑田「つっても三割だろ? それならオレの打率の方がスゲーっての」

    葉隠「あ? 打率?」

    朝日奈「あ! ってことはひょっとして超高校級の野球選手?」

    桑田「あー、まあそうだな」

    桑田(ヤベー、マジヤベーよ。つい打率とか言っちまった)

    朝日奈「じゃあスポーツマン同士仲良くやろー」

    桑田「お? おう、そだな!」

    桑田(あー、でも結果オーライかも)
  5. 5 : : 2014/04/11(金) 02:28:32
    桑田(そうこうしている内に徐々に人が集まってきた。

    超高校級の風紀委員、石丸清多夏。
    コイツはなんかウザそう。

    超高校級の格闘家、大神さくら。
    逆らったらヤバそう。

    超高校級の暴走族、大和田紋土。
    逆らったらヤバそうパートツー。

    超高校級の文学少女、腐川冬子。
    なんか地味な奴。

    超高校級のギャンブラー、セレスティア・ルーデンベルク。
    カワイイけど胡散臭そう。

    超高校級のプログラマー、不二咲千尋。
    カワイイとは思うけどオレの趣味じゃねーな。

    超高校級の御曹司、十神白夜。
    エラソーで腹立つけど実際エラい奴らしいから仕方ねーけど腹立つのに変わりなし。

    超高校級の同人作家、山田一二三。
    ブーデーのオタク。

    超高校級の幸運、苗木誠。
    いわゆる草食系男子ってヤツ?

    超高校級の……なんだかわかんねえ、霧切響子。
    クールな美人って感じではあるけど、やっぱオレの趣味じゃねえな。

    で、何よりもやっぱり一番の目玉は

    超高校級のアイドル、舞園さやか!
    決めたぜ、オレは舞園ちゃん狙いだ!)

    舞園「えっと、苗木君……」

    苗木「何、舞園さん?」

    桑田(あ? 苗木の奴、舞園ちゃんと親しげに話し始めやがったぞ……?)

    舞園「やっぱり、そうです! あの、苗木君ってもしかして……」

    桑田(激しく気になる! 苗木が何だってんだよ、舞園ちゃん!)
  6. 6 : : 2014/04/11(金) 02:29:26
    ???『あー、あー。あー、あー。マイクテス、マイクテス』

    桑田(そんな時だった。“その放送”が急にモニターから流れ出したのは。その声は場違いなほどに明るくて、ノーテンキで……だからこそ、オレは無性に恐怖を感じちまった)

    ???『それでは新入生の皆さんは体育館にお集まりください!』

    桑田(そこでふいに、放送は途切れた)

    十神「今のは……何だ?」

    セレス「入学式開始のお知らせ、ではありませんの?」

    葉隠「そのためにモニター使うってのは、さすがは希望ヶ峰学園だべ!」

    桑田(そんな会話をしながら、何人かの面子は先に体育館へと向かっちまった。オレ? オレは舞園ちゃんが残るみたいだったから残ることにした)

    大和田「素直に行って大丈夫なのかよ。今の放送あからさまに怪しかっただろ」

    大神「だが、向かわん事には何も始まらぬ。罠であることを覚悟してでも進まねばならんのだろうな」

    霧切「ええ、そうね。罠でもそうでなくても、情報が手に入るならば飛び込むべきよ」

    苗木「でもさ、もしそれで危険な目にあったりしたら……?」

    江ノ島「そん時ゃそん時っしょ! 少なくとも今のマジありえない事態からは抜け出せんじゃね?」

    舞園「余計に悪くなる事もあるかもしれませんけど……」

    桑田(ヤベー、オレそこまで深く考えてねーよ……。話に入れねー)
  7. 7 : : 2014/04/11(金) 02:31:28
    桑田(それから少しの間話合った結果、結局体育館には向かうことになった。そして全員が体育館に入った直後)

    ???「おーい、全員集まった? それじゃあそろそろ始めよっか!」

    桑田(さっきの放送のときと同じ、場違いなほど明るいノーテンキな声が体育館に響き渡った。そこで現れたのは……)

    モノクマ「ボクはモノクマ! オマエラの、この学園の学園長なのだ!」

    桑田「あ? ヌイグルミが……喋った?」

    モノクマ「ぬいぐるみじゃないよ!」

    十神「そんなことはわかっている。大方スピーカー付きのラジコンか何かだろう」

    不二咲「うん、そうだよね……機械なのは間違いないと思うよぉ」

    山田「ですが、ラジコンだとしてもかなり高度な技術が使われているのではないですかな?」

    セレス「バカげた造形をしていますが……あれだけのものとなると、製作するのに費用も随分とかかっていそうですわね」

    モノクマ「オマエラ、何勝手に納得してんの! ボクはラジコンでもないよ、モノクマだよ! 学園長だって言ってるでしょ!」

    石丸「そうだぞ! この際、ラジコンでもヌイグルミでもなんでもいいが、学園長であるというのならば敬わなければならない! それが学生としての在るべき姿だろう!」

    腐川「う、敬う必要なんてないわよ。顔も見せないような奴なんか」

    江ノ島「つーかマジあり得なくね? これ何なの?」
  8. 8 : : 2014/04/11(金) 02:32:47
    モノクマ「……オホン、それでは入学式を始めたいと思います。オマエラ、おはようございます」

    石丸「おはようございます!」

    桑田「挨拶すんのかよ、あんな怪しい奴に……」

    桑田(風紀委員って言ってたから予想はしてたけど、コイツやっぱイインチョタイプだわ)

    モノクマ「えー、オマエラは次世代を担う希望として、希望ヶ峰学園に入学を果たしたわけですが……」

    桑田(そこからしばらくは、良くある長ったらしいだけでつまんねえ、眠くなる話が続く……と、オレは祈るようにして考えてた。けど、甘かったみてーだ)

    モノクマ「そんな希望を保護するために、オマエラにはこの学園内のみで共同生活してもらいます!」

    大和田「な、学園内のみだと……!?」

    セレス「そんな、困りますわ……」

    桑田「お、オイ、ふざけんのも大概にしろよ! そんなジョークはいらねーんだって!」

    モノクマ「ジョークじゃないよ! ちなみに、その共同生活の期限ですが……無期限です!」

    十神「無期限、だと? おい、どういう意味だ」

    モノクマ「無期限は無期限だよ。漢字で書けないんすか? 期限が無いって書いて無期限。そのままの意味だよ?」

    苗木「いや、そんな言葉の意味を訊いてるんじゃないよ! なんで無期限の共同生活なんてしなきゃならないんだ!」

    モノクマ「何言ってんのさ、オマエラは自分たちで望んだから、この学園にいるんでしょ? だったら当然、この無期限の共同生活も受け入れてるハズだよね?」

    大和田「バカな事言ってんじゃねー! ンな事知ってたら来なかったっつーんだよ!」

    山田「当たり前ですな! 僕だってこの中でのうのうと暮らしてられるほど暇じゃないんですぞ!」

    江ノ島「あ、アタシだって雑誌の仕事とかあるっつーの!」

    腐川「あ、あたし達をここから出しなさいよ……!」

    モノクマ「あらら、意外だねえ。まさかこんなに非難轟々とはこのボクにも予想が付かなかったよ」

    桑田「テキトーな事言ってんじゃねー!」
  9. 9 : : 2014/04/11(金) 02:33:34
    葉隠「……なあ、これいつまで続くん?」

    モノクマ「は? だから無期限だって言ってるでしょ!」

    葉隠「いや、そういう冗談はもういいんだっての。十分ビックリしたからよ、そろそろネタバラシにすんべ?」

    大神「ネタばらしとは、どういう事だ?」

    葉隠「だってよ、これって希望ヶ峰学園が仕組んだドッキリイベントだろ? 入学式にこんなイベント仕込むなんて、希望ヶ峰学園はさすがだべ! あっはっは!」

    桑田「何よ、そういう事なの? んじゃあすぐ出られるって事か?」

    モノクマ「出られるわけないでしょ!」

    舞園「え、えっと、そういう設定のイベント……って事ですよね?」

    霧切「……だと、いいのだけれど」

    モノクマ「はあ、駄目だコイツら。話聞いてくれない……。さすがのボクも自信失っちゃうレベルだよ……。現代っ子って怖いね、何事も疑うクセが付いちゃっててさ。もっと純粋な心で信用するって事も覚えて欲しいものです」

    江ノ島「え、えっと、な、何言ってんだっての! もうなんでもいいからさっさと出せって!」

    モノクマ「……ま、ぶっちゃけないわけじゃないけどね。出る方法」

    葉隠「お? 今度はどんな設定持ち出してくるんだ? ちょっと楽しみだべ!」

    朝日奈「はあ、この状況を楽しみだとか言えるあんたの頭の構造が知りたいよ」

    モノクマ「もうね、めんどくさいからざっくり言っちゃうけど、仲間の誰かを殺した生徒はこの学園から出て行ってもらう事になります。名付けて卒業システム! 学校っぽくてイカす名前でしょ?」

    腐川「は? こ、殺す……?」

    苗木「ふ、ふざけるのもいい加減にしろよ! 何だよ殺すって!」

    石丸「第一、それは卒業というよりも退学に近いのではないかね!」

    大和田「そこは問題じゃねーっての」
  10. 10 : : 2014/04/11(金) 02:34:30
    不二咲「む、無理だよ……人を殺すなんて……」

    山田「というか、そんな事をしなくても脱出口を探し出せば済む話ですがな!」

    葉隠「なーるほど! つまりこれは新入生に仕掛けた脱出ゲームイベントってわけか!」

    桑田「オメー、ホント気楽な性格だな。ある意味羨ましいっつーか」

    モノクマ「もうこれ以上オマエラの相手してても話は堂々巡りになりそうなので……これを渡しておきます!」

    桑田(言ってモノクマはオレたちに一つずつ、板型の機械を渡してきた)

    モノクマ「それは電子化された生徒手帳、その名も電子生徒手帳です。この学園生活には必需品なのでなくさないように! 耐久性、耐水性等々様々な衝撃に強いし、壊れる事はほぼないだろうから、そこだけはちゃんと気を付けろよ!」

    葉隠「へー、なかなかカッコいいデザインしてんべ?」

    モノクマ「うんうん、気に入ってくれたようで何よりです。その生徒手帳は起動時に自分の本名が表示されるようになっているので、確認しといてね。あと、校則とかオマエラの簡単なプロフィールなんかもみられるようになってるよ!」

    セレス「!」

    桑田(モノクマが電子生徒手帳の機能について説明を始めて間もなく、セレスがいち早く確認を始めた。オレたちもそれに続くようにして電子生徒手帳を起動する)

                     桑田 怜恩

    桑田「たしかに、オレの名前が表示されるみてーだな」

    桑田(続いて校則を確認する。うわ、マジでコロシアイとか書いてやがる)

    苗木「ホントに……ボク達にこんなことをさせるつもりなのか……」

    霧切「落ち着いて。誰も行動を起こさなければいい。たったそれだけの事よ」

    舞園「そう、ですよね……」

    桑田(校則を見て「マジかよ」と思ったのはオレだけじゃなかったらしい。その事実に安心もするけど、やっぱそれだけ信じちまってる奴がいるって事だよな。これって、危なくねーか?)
  11. 11 : : 2014/04/11(金) 02:35:58
    十神「フン。面白くなってきたじゃないか。この緊張感は久々だぞ」

    大和田「あん? ゲーム感覚かよ」

    十神「感覚も何も、ゲームだろう? まあ、勝ち上がるのは俺だろうがな……お前達も精々俺を楽しませるんだな」

    桑田(あー、あいつやっぱ腹立つ奴だわ。んな事より、今度はこの通信簿っての見てみるか……ん? お、おいおい、これってまさか!)

    セレス「あの、モノクマさん?」

    モノクマ「はいな、何でしょう?」

    セレス「この通信簿を見る限り、わたくし達女子の分まで胸囲が表示されているようなのですが」

    朝日奈「え!? ちょっと、何それ!?」

    大神「少なくとも男子の電子生徒手帳からは女子の胸囲は確認できないようにすることは不可能なのか?」

    モノクマ「あー……それもそうだね。うん、それは尤もな意見なので採用します!」

    桑田(な、セレスの奴、いらねえ事言いやがって……!)

    モノクマ「はい、アップデート終了だよ! 男子諸君は残念だったね!」

    桑田(クソ、まあいいか。舞園ちゃんのだけは把握できたしな!)

    モノクマ「他にはもう何もないね? はい、それじゃあこれで卒業式を終了します! オマエラ、後は適当に寄宿舎エリアに帰るように!」

    石丸「寄宿舎……この校則にある、終身が可能な個室のある場所だな」

    モノクマ「はい。学校エリア一階にある赤い扉から正面に進めば寄宿舎エリアです。それも確認しておくようにね!」

    桑田(それだけ言って、モノクマはどこかへ去って行った。……これがオレ達が巻き込まれた、“日常”の終わり。そして、“非日常”の、“コロシアイ学園生活”の始まりだった)

            プロローグ  完
  12. 12 : : 2014/04/11(金) 02:36:14
    生き残りメンバー

    桑田怜恩 江ノ島盾子 朝日奈葵 葉隠康比呂 石丸清多夏
    大神さくら 大和田紋土 腐川冬子 セレスティア・ルーデンベルク 不二咲千尋
    十神白夜 山田一二三 苗木誠 霧切響子 舞園さやか
  13. 13 : : 2014/04/11(金) 02:37:23
    モノクマ「うぷぷ、今日はここまでだよ……! ここからが本番だけどね! それじゃ、まったねー!」
  14. 14 : : 2014/04/11(金) 21:37:16
       CHAPTER 1
              ナゲキル   (非)日常編


    桑田(あのあと、オレたちは重い空気を引きずって全員で寄宿舎エリアにやってきた。寄宿舎エリアに入ってすぐの位置にあった食堂に集まって話し合った結果、何人かのグループに分かれて学園内の探索をすることになった。十神のヤローや霧切なんかは単独行動になったけどな。オレは舞園ちゃん、苗木、それから江ノ島ちゃんと一緒に行動することになった)

    苗木「それにしても、コロシアイなんてバカげたことホントにやらせるつもりなのかな」

    桑田「それはねー……と信じたいよな」

    舞園「そう、ですよね。コロシアイなんて、私も嫌ですから」

    江ノ島「け、けどさ……もし、万が一だよ? ホントに誰かを殺さないと外に出られないんだとしたら」

    苗木「やめてよ、江ノ島さん! 冗談でもそんな事、言うべきじゃないよ。みんな参ってるんだからさ。思っても、言葉には出さないべきだ」

    江ノ島「そ、そうだよね。マジゴメン! ちょっとネガティブ入っちゃったみたい」

    舞園「……早く、外に出たいですね」

    桑田「そうだなあ。俺も青空の下にさっさと出てえよ」

    苗木「あはは、やっぱり野球やりたいの?」

    桑田「ちげーよ! 野球なんてどーでもいーの!」

    江ノ島「ハァ? アンタ、超高校級の野球選手でしょ? だったら野球やるんじゃないの?」

    桑田「まあ、巷ではそう呼ばれてっけどよー。オレって、ぜんっぜん野球なんて好きじゃないんだよね」

    舞園「そうなんですか?」

    桑田「才能があるからっつってもよ。その道にしか進まないなんて、そんなの才能に縛られてるのと一緒じゃん? オレはそんなの嫌だね。自分の道くらい自分で見つけてやる!」

    苗木「へえ、そういうの、なんだかカッコいいね」

    舞園「思ったより、いろいろ考えてるんですね。少しだけ、見直しちゃいました」

    桑田「お、ホントに? 惚れちゃった?」

    舞園「いえ、そこまでは」

    桑田「ちぇー、まだまだか」

    江ノ島「ちなみに、桑田が言う自分で見つける自分の道って、どんなのなワケ?」

    桑田「そんなの決まってんじゃん! ミュージシャンだよ、ミュージシャン!」

    舞園「ミュージシャン、ですか……?」

    桑田「おう! だからさ舞園ちゃん、今度オレに歌とか教えてくれよ。超高校級のアイドルの特訓なら幾らでも受けられちゃうぜ!」

    苗木「ミュージシャンかあ。歌とか楽器とかできるの?」

    桑田「楽器は……一応ギターならちょっとだけな。あと、これでも一応音楽の成績はそこそこいいんだぜ?」
  15. 15 : : 2014/04/11(金) 21:38:21
    江ノ島「本気で目指すならそこそこじゃダメっしょ」

    舞園「ハッキリ言ってなめてますよね」

    桑田「なめてねーって。オレはなまじ野球についちゃ才能があったから自分では経験ねーけどよ、この世界だっていろいろ厳しいんだ。どんだけ練習しても芽が出ねーって奴も、山ほど見て来たしな。正直言うとさ、オレ、努力とか嫌いなんだよね。でも、ミュージシャンになりたいってのは本気なんだよ。本気で何かになりたいって思ったの、初めてなんだよ!」

    舞園「はあ、わかりました。じゃあ少しだけなら練習に付き合ってあげますよ」

    桑田「マジで!? サンキュー、舞園ちゃん!」

    江ノ島「なんかさっきから桑田の株が爆上がりじゃない?」

    苗木「うん、なんというか、見た目ほど軽くないみたいだね。それに悪い人でもなさそうだし」

    舞園「そうですね。正直、意外でした」

    桑田「なんだよ、オレってそんな第一印象悪かったの?」

    江ノ島「チャラいからね」

    苗木「チャラかったからさ」

    舞園「チャラいだけの人だと思ってました」

    桑田「う、うっせー! チャラ男バカにすんじゃねーって!」
  16. 16 : : 2014/04/11(金) 21:38:43
    桑田(そんな感じで、和やかな会話を弾ませつつ、軽く行ける場所を巡った。その結果わかったのは、現段階じゃ行ける場所と行けない場所があるってことだな。今行ける範囲について軽く説明すると……。


    【学校エリア】

    ・教室×2
      窓が鉄板で塞がれてるほかは特に何もなし。

    ・視聴覚室
      オレが最初に目を覚ました部屋。
    目新しいものはなし。

    ・購買部
      いろんなものがゴチャゴチャ置かれてる。
    あとガチャガチャが置いてあった。
    けど、財布もねーから遊べねえな。

    ・玄関ホール
      自己紹介したとこだ。
      玄関ホールっつーけど出入り口は分厚い鉄の塊に塞がれてるっぽい。
      ここから出るのは無理そーだな。
      あと、監視カメラについてるのは……まさか銃、か?

    ・体育館
      あのモノクマとかいう奴が出てきたとこだ。
      それなりに広いから運動は出来そうだな。
      ……野球はやんねーぞ。

    【寄宿舎エリア】

    ・食堂
      それなりに広くて、テーブルや椅子も結構ある。
      厨房にも通じてるから、料理も出来るな。
      いや、オレはやったことねーけど。

    ・ランドリー
      洗濯機がメッチャある。
      あと洗濯物も結構吊ってあるな。
      ついでに自販機もあるから待ち時間に飲めるな。

    ・トラッシュルーム
      ゴミ処理の施設みてーだ。
      けど、シャッターが閉まってて焼却炉とかには近づけねえな。

    ・十五人分の個室
    全員で十五人だから当然っちゃ当然だな。


    で、行けない範囲については学校エリアの扉が二つ、二階に通じるっぽい階段の前にあるシャッターが一つ、それぞれ鍵がかかってて行けねえ。寄宿舎エリアには扉が一つ、二階に通じるっぽい階段の前にあるシャッターが一つ、鍵がかかってて行けねえな。ついでに、なんか妙なテープが張り巡らされてて入れねーっぽい空間ももう一つある。見た感じ、風呂か?

    とりあえずオレたちの探索の成果はこんなもんだった。あとは食堂に集まって成果を報告するだけだな)
  17. 17 : : 2014/04/12(土) 21:26:27
    石丸「おお、定刻通りだな。いや、少し早いか? 何にせよ素早い行動、嬉しく思うぞ! ハッハッハ!」

    苗木「石丸クン? 随分早いね」

    舞園「まだ集まる予定の時間まで十分くらいありますけど」

    石丸「僕はこの学園の秩序を護るという使命があるからな! 規則正しい行動を皆に示す義務があるのだよ!」

    桑田「そういうのいらねーって、もうちょっと気楽に行こうぜー?」

    石丸「む、桑田くん! キミの風紀も乱れているぞ! 染髪している時点で問題外だと言うのに、更にその上だらしなく髭まで伸ばして……ちゃんと剃りたまえ!」

    桑田「ヤだよ! ここまで伸ばすのにどんだけかかったと思ってんだって!」

    苗木「あはは……はあ、うまくやっていけるのかなあ」

    舞園「それはわかりませんけど……でも少なくとも私は、苗木君のおかげで勇気を貰えてるんですよ?」

    苗木「え? 舞園さん、が?」

    舞園「はい! だって苗木君って……」

    桑田(お? そういや最初の自己紹介ん時もなんか舞園ちゃん、言いかけてたよな。今がそれ聞けるチャンスか?)

    石丸「聞いているのかね桑田くん!」

    桑田(無視無視……あっちの方が大事だっての)

    舞園「根黒六中ですよね?」

    苗木「え、う、うん。そうだけど……え、もしかして、覚えてるの?」

    舞園「もちろんですよ! 三年間も同じ学校に通ってたんですから。まあ、クラスは同じになった事ありませんでしたけど」

    桑田(ははーん、なるほど。苗木と舞園ちゃんは中学が一緒だったのか。だから親しくしてた、と。それだけならオレにもまだチャンスはあるって事だよな!)

    江ノ島「……はぁ」

    大和田「おい石丸。オメェ何騒いでんだ?」

    不二咲「廊下まで声が聞こえてたよぉ?」

    石丸「む、大和田くんに不二咲くん……それと山田くんか。そうだ、大和田くん! キミも風紀が乱れすぎだ! 少しは高校生としての自覚を持った格好をしたまえ!」

    山田「ええ、今しがた探索から戻って参りましたぞ!」

    大和田「あんだ、廊下まで響いてた声はそういう事かよ。どーせ桑田とか江ノ島にも同じような事言ってたんだろ?」

    桑田「そーなんだよ。あのイインチョ、マジでうっぜえよなー」

    石丸「う、ウザいとは何だね、ウザいとは! 僕は君たちの為を思ってだな!」

    大和田「あー、まあオレは気にしねえけどな。今までさんざん言われ慣れてるっつーの」

    石丸「少しは聞きたまえ!」
  18. 18 : : 2014/04/12(土) 21:28:00
    江ノ島「それよりさ、山田と大和田が一緒って、なんかイメージわかないんだけど……」

    大和田「コイツがついてくるっつったからな。まぁ断る理由もねーしよ」

    山田「まあ、普段の僕でしたら大和田紋土殿のようなタイプは避けるかもしれませんが……この状況ですからね。彼なら何かあった際に頼りになると思っただけですぞ」

    大和田「オレは盾かよ……まぁどんな形でも頼られんのは悪い気しねえけどよ」

    不二咲「でも、大和田くんはホントに頼りになるよねぇ。私も大和田くんくらい強くなれたらなあ」

    大和田「別に強くなくてもいいんじゃねーか? オメェは女なんだからよ」

    不二咲「……ううん、ダメなんだ。強く、なりたいんだ」

    大和田「そうかい。ま、大神とか朝日奈ならトレーニングにでも付き合ってくれるんじゃねえか?」

    朝日奈「ん、呼んだ?」

    桑田「うお、タイミング良すぎんだろ……!」

    大神「ふむ、どうやら我らの話をしていたのは事実のようだな」

    桑田(その後もテキトーに駄弁ってる間に、霧切以外の全員が揃った。だけど時間になっちまったから、到着を待たずに探索の成果を報告し合う事になったはいいが……結局、オレが知ってる以上の事はせいぜい、「厨房の食材は自動で追加される」ってくらいのモンだ。それもセレスがモノクマに聞いた話らしいがな)

    石丸「フム、とりあえず衣食住に不自由はなさそうだな」

    腐川「あ、安心してどうすんのよ。ここに永住する気……?」

    十神「フン、永住するつもりでなくとも、少なくとも餓死の心配はないということだろう。なら喜ばしいじゃないか。せいぜい体力をつけてこのゲームを盛り上げてくれよ?」

    江ノ島「は? ゲームって何さ!」

    十神「ゲームだろう。誰が誰を殺すかなんてわかった物じゃなからな。脱出のために人殺しを目論んでいる人間がこの中に存在しないなど、何故言い切れる」

    セレス「そうですわね。断言は出来ませんわ。しかし、常に気を張って疑い続けるなど、神経をすり減らすだけです」

    朝日奈「ていうか! 誰も殺しなんてしないよ!」

    石丸「当たり前だ! 殺人など、風紀以前に倫理上あり得ないだろう!」
  19. 19 : : 2014/04/12(土) 21:29:55
    十神「だがこの学園内においては『殺人はしてはいけない事』などという倫理観は機能しない。そのくらい、幾ら愚かでも理解できるだろう」

    舞園「脱出の手段も、今の所見つかってませんしね……」

    葉隠「マジで誰か殺そうなんてヤツ、いるわけねーべ。果報は寝て待てっつーだろ? 要は寝ながらドッキリイベントの終了を待ちゃいいんだって」

    桑田「オメー、まだそんな事言ってんのかよ……」

    苗木「でも、葉隠クンみたいに多少楽観視してる方が、この状況はいいかもしれないね」

    朝日奈「たしかに、全員があんな風に考えられたら殺人なんて起こらないんだろうけどさ」

    大神「難しいであろうな……」

    苗木「だよね……」

    葉隠「あ? まさかとは思うけどよ、あんな信憑性のない言葉信じて誰か殺そうなんてヤツは……いねーよな?」

    セレス「信憑性ならあるではないですか」

    葉隠「へ?」

    セレス「探索の結果、この学園が『出口のない密閉された建物』であることが事実である、と判明したのですから。それは黒幕はわたくし達を閉じ込めておくつもりだ、という事も疑いようのない事実として判明したに他ならないのではありませんか?」

    不二咲「う、うぅ……そう、だよね……」

    江ノ島「でもだからと言ってさ、出たかったら殺せっつーのもマジとか、さすがにそこまでは話飛躍しすぎじゃね?」

    セレス「ええ、そうですわね。ですけど、それを踏まえた上でその話を信じる人がいるかいないか、は全くの別問題じゃありませんこと?」

    江ノ島「そ、それはそうだけど……信じるヤツなんていねーって! そういう事にしとかないと、いろいろヤバいっしょ!」

    十神「フン、他人を信じたければ勝手に信じて殺されていろ。俺も、このゲームを勝ち上がるために警戒すべき人間は早めに把握しておきたいからな」

    大和田「あん? オメェ、まさかとは思うがマジで殺そうなんて考えてねえだろーな?」

    十神「だからさっきから言っているじゃないか。これはそういうゲームなのだとな」

    大和田「テメェ……ふん縛られてえのか!?」

    桑田「ソイツ縛るんならオレも協力すんぜ……危なそーだしな」

    十神「ほう、やれるものなら是非やってもらいたいものだな。愚民如きにこの俺を縛れるなどとは思えんが」

    大和田「あァ!? グミが何だってんだコラァ!」
  20. 20 : : 2014/04/12(土) 21:31:42
    十神「ちッ、バカと話すのは疲れるな」

    桑田「誰がバカだコラァ!」

    十神「お前には言っていない! ……フン、俺はもう戻らせてもらうぞ。まともに会話が成立する人間はどうやら限られているようだしな」

    石丸「ま、待ちたまえ十神くん! ……君達も言いすぎだ! 少しは反省したまえ!」

    大和田「うっせえよ、反省する必要なんざねーだろ」

    桑田「そーだそーだ! 反省すべきはアイツの方じゃねえか!」

    大神「だが、お主らも頭に血が上りすぎだ。少し冷静になるべきだぞ」

    霧切「そうね。十神君の態度が気に食わないのは分かるけれど、少し落ち着きなさい」

    苗木「え、霧切さん!? いつからいたの!?」

    桑田(苗木の言葉につられて全員が注目した先には、報告会に今までいなかったはずの霧切の姿があった。どこからともなく現れやがって、何となく気味が悪ぃぜ)

    霧切「大和田君が十神君をふん縛る、なんて言いだしたあたりからかしら」

    朝日奈「口論の最初からって事!?」

    腐川「こ、口論にもなってなかったわよ……十神君は相手にしてないみたいだったし」

    石丸「そんな事はこの際どうでもいい! 霧切くん、キミは遅刻者なのだぞ! もう少し申し訳なさそうな態度をとるべきではないのかね!」

    桑田「いや、そこもどうでもいいっての!」

    山田「霧切響子殿……いったい今までどちらに?」

    霧切「学園内の探索をしていたに決まってるじゃない」

    朝日奈「その割には遅かったよね……調べるの、苦手とか?」

    苗木「だったら単独行動なんてせずに誰かと一緒に行けばよかったのに」

    霧切「別に、苦手というわけじゃないわ。むしろ……。いえ、確証の無いことを話しても仕方ないわね」

    桑田(確証の無い? 自分のコトだよな? ますますワケわかんねえぜ)

    霧切「それより私の成果を見せておくわ」

    セレス「見せる? 聞かせるではなく、ですか?」

    不二咲「何かを見つけたってことぉ?」

    霧切「ええ。……これよ」

    桑田(そう言って霧切が出したのは何枚かの紙……見た感じ、この学園の見取り図か?)

    石丸「待ちたまえ、こんなもの、どこにあったのかね?」

    霧切「別にどこだっていいじゃない」

    石丸「良くはないぞ! 激しく気になるじゃないか!」

    桑田「んな事より、これがどうかしたんか?」

    霧切「一階の分しか見つからなかったけれど……この見取り図を見る限り、この学園は構造上はほぼ希望ヶ峰学園と一致しているみたいよ」

    舞園「ほぼ、ですか?」
  21. 21 : : 2014/04/13(日) 21:47:16
    霧切「ええ。妙な改築は入っているみたいよ」

    苗木「まあ、そうだろうね。教室の壁紙とか、教室っぽくなかったし」

    大和田「けっ、黒幕のヤローは相当な悪趣味みてーだな。あんな毒々しい壁紙選びやがって」

    江ノ島「……で、それがどーしたっての?」

    霧切「私たちがいるこの場所が希望ヶ峰学園であるにせよ、希望ヶ峰学園を模した建築物であるにせよ、黒幕には莫大な資金があると見てまず間違いないわ」

    セレス「……なるほど。つまりそれだけ強大な相手というわけですわね」

    苗木「そんな黒幕に……ホントに勝てるのかな?」

    セレス「あら、勝つ必要なんてありますの?」

    苗木「え?」

    セレス「モノクマ、でしたか。あの妙なロボットは言っていたではないですか。ここから出たければ誰かを殺さなければならない……つまり出ようとしなければ、この学園内のみという限られた空間の中のみで、という但し書き付きではありますが自由に過ごすことが出来るのですよ? 現に、ここで一生の共同生活を送ってもらう、とモノクマは言っていたではありませんか」

    不二咲「そ、それって……ここで過ごすことを受け入れろってことぉ……?」

    腐川「そ、そんな事出来るわけないじゃない……!」

    セレス「外へ出たい、なんて思ってしまえば人を殺すことになりますわよ?」

    葉隠「俺は殺すのも殺されるのも勘弁だべ」

    セレス「あなたには言っていません。……生き残るのは強いものでも賢いものでもなく、変化を遂げられるものなのです。地球の歴史を見てもそうでしょう? 変化を遂げ、環境に適応できない生物は自然淘汰により滅んでゆく……わたくし達もこの環境に適応すべきなのですわ」

    苗木「け、けどさ。それが黒幕に打ち勝たなくていい理由にはなってないよ!」

    セレス「ええ、そうですわね。わたくしが言っているのは『黒幕と戦う』などというリスクをわざわざ負わずとも、ここで生きていく事は出来るという事ですから。黒幕を倒すことにメリットが生じるならば、わたくしも微力ながらお手伝いいたしますわよ」

    桑田「でもよ、そう簡単に割り切れるもんじゃねーって」

    腐川「そ、そもそも、いつ誰が殺しに来るかわからない場所に適応なんて、出来るわけないでしょ!」

    霧切「なら、いい方法があるわよ」

    舞園「いい方法、ですか?」

    霧切「ええ。校則にあった夜時間のルールは覚えているわね?」
  22. 22 : : 2014/04/13(日) 21:48:57
    朝日奈「たしか、個室以外での故意の就寝は禁止、ってやつだったよね?」

    大神「夜時間そのものは、午後十時から午前七時までの間……であったな」

    舞園「その間は立ち入り禁止区域もあるとのことでしたが……」

    霧切「ええ、そこに一つ、ルールを追加しましょう」

    大和田「追加だぁ? ンな事勝手に出来んのか?」

    霧切「もちろん校則の追加は無理よ。ただ、私達の間で定めるルールなら自由に作れるはずでしょう? だって禁止されていないもの」

    セレス「口約束、というわけですわね」

    山田「それで、その内容とは?」

    霧切「夜時間の出歩きは禁止、よ。だって一番殺人が起きそうな時間帯でしょう?」

    朝日奈「たしかに、それなら安心は出来そうだけど……夜時間になった時に個室の外にいた場合は?」

    セレス「なら、二十分ほど猶予を付けますか?」

    大神「それならばどこにいても、戻る準備をしてから個室に帰るくらいの時間には十分ありそうだな」

    霧切「どうかしら? 口約束でも、何もないよりはマシだと思うのだけど」

    セレス「そうですわね……霧切さん、あなたは先ほどこう言いましたわね? 『自分たちの間でルールを定める事は禁止されていない』と」

    霧切「ええ、言ったわよ。校則に書かれていないのだから間違っていないでしょう」

    セレス「ええ。その発言の真偽を問おうというわけではありませんから。わたくしが言いたいのは、わたくし達の間で定めたルールに対する罰則を定める事も、禁止されていないのでは、という事です」

    石丸「うむ……僕としては皆の良心を信じたいが、罰則があれば更なる安心の材料にはなる、か」

    不二咲「法律も、刑罰が無ければ守らない人も大勢出るだろうし……うん、いいんじゃないかな」

    葉隠「でも、あんましキッツイのは勘弁してほしいべ……」

    山田「そう、ですな……」

    セレス「何をおっしゃってますの? キツくなければ罰則の意味がないじゃありませんか」

    大神「そうだな。軽い罰で済むならば破る者も出るであろう」

    朝日奈「罰を受けるのが嫌なら、出なければいいんだもんね!」

    桑田「で、その罰則ってのはどうすんだよ?」

    セレス「そうですわね……翌朝から一日、語尾に『だニャン』を付ける……などいかがでしょう」

    山田「ヒィィ、三次元でそれは勘弁してほしいですぞー!?」

    桑田「つーか女子ならまだしも、野郎のだニャンなんて語尾、聞いてる方も罰ゲームじゃねえか!」
  23. 23 : : 2014/04/13(日) 21:50:10
    舞園「苗木君ならアリですね」

    江ノ島「あー、わかる。チョーアリだわそれ」

    霧切「どっちかというと彼は子犬な気がするけれど……まあ、でもアリかなしかで言えばアリね」

    苗木「な、ちょっと酷い言い草だね!?」

    大和田「つーか、なんでニャンなんだコラァ!」

    桑田「おう、大和田も言ってやれって!」

    大和田「せめて『だワン』にしやがれ!」

    桑田「そーだそーだ! ……ってそれは違えよ、動物は問題じゃねえんだよ!」

    セレス「……まあ、たしかに『だニャン』にしろ『だワン』にしろ、大和田君辺りが言うと笑いをこらえるのが大変そうですわね。ならば苗木君を除く男子に課す罰則は、一日料理当番など如何でしょうか」

    桑田「まあ、だニャンよりは遥かにマシだな……」

    山田「ですが、料理が致命的に下手な設定の場合はどうしましょう? ホラ、よくいるではないですか。料理を作ったつもりが毒物や魔物を錬成してしまう……そんなキャラ」

    腐川「そ、そんなのマンガの中だけよ……」

    セレス「まあ、経験がなくとも簡単に作れてそこそこの味を保証できる料理など幾らでもあるでしょう。料理の出来る人に教えてもらうなりなんなりしてくださいな」

    大和田「ったく、しゃーねえな。それで手ぇ打ってやるよ」

    苗木「ちょ、ちょっと待ってよ! ボク以外ってボクはどうなるの!?」

    舞園「もちろん、『だニャン』ですよ?」

    苗木「そんな……!」

    霧切「それが嫌なら、夜間に外出しなければいいだけじゃない」

    苗木「そ、そうなんだけどさ」

    江ノ島「別にワザと夜間に外出してみんなに披露してくれてもいいんだけど?」

    苗木「し、しないよそんな事!」

    桑田「苗木のヤロー、妙にモテてやがるな……クソッ!」
  24. 24 : : 2014/04/13(日) 21:50:45
    桑田(苗木への追及は明日するとして……その後、セレスが『水が出なくなる前にシャワーを浴びてきます』と言って出て行ったのを皮切りに、解散の流れとなった。食堂に残っているのはあとはオレと江ノ島ちゃんだけだ)

    江ノ島「で、アンタは帰んないの?」

    桑田「オメーこそどうなんだよ? シャワー浴びてえんじゃねえの?」

    江ノ島「……もしかしてだけどさ、桑田、アンタやらしいこと想像してない?」

    桑田「は!? してねーよ!」

    江ノ島「アハハ、だよねー。桑田は舞園だもんね」

    桑田「え、なんでバレてんの!?」

    江ノ島「いや、気付かない方がどうかしてるっしょ」

    桑田「マジかよ……超絶ハズいんだけど」

    江ノ島「ま、頑張んなよ。芽があるかは知んないけどさ」

    桑田「あるよあるある! あるに決まってんだろーが!」

    江ノ島「そう信じたければ好きにすれば? さて、アタシもシャワー浴びて寝よっかな。じゃね、桑田!」

    桑田(そう言って江ノ島も食堂を後にして、残ったのがオレ一人になったところで……)

    モノクマ『ただいま、夜時間になりました――』

    桑田(モニターを通してモノクマが夜時間になった事を伝えてきた。つか、このタイミングで流れるって事は江ノ島ちゃん、シャワー浴びれてねえんじゃ? 残念すぎんだろ……)

    モノクマ『間もなく、食堂はドアをロックされるので、立ち入り禁止となります』

    桑田「うお、ヤベ! 立ち入り禁止区域ってここかよ!」

    モノクマ『ではではいい夢を、おやすみなさい……』

    桑田(そんなモノクマの締めの文句を聞き流しながら、オレは個室へ戻った。それから何をしたかって? 寝たに決まってんだろ。お世辞にも寝心地がいいとは言えねえけどな)
  25. 25 : : 2014/04/14(月) 21:15:41
    モノクマ『オマエラ! 朝です、七時です。起床時間ですよー!』

    桑田(朝七時。モノクマのうるせえ放送で目が覚めた。チクショウ、あんま寝た気がしねえ。それもこれも全部この状況のせいだ!)

    桑田「つっても怒りのやり場もねえしな……しゃーねえ、昨日入れなかったしシャワーでも浴びとくか」

    桑田(と、シャワールームのドアに目を向けた時、一枚の張り紙に気が付いた)

    桑田「えーと、何々……シャワールームのドアは女子の部屋のみ鍵がかかる、ねえ? まあ野郎の風呂覗くようなヤツなんていないだろうしな。それから……男子には工具セット、女子には裁縫セットを配布? 何に使うってんだよ……日曜大工でもしろっての? 言っとくけど、ぜってー凶器になんかしてやんねえからな。殺すつもりもないけどよ」

    桑田(独り言のように、っつーか実際独り言だけど呟いてから、張り紙を剥がして丸めてゴミ箱に捨てる。別にいらねえしな、あんなの。んじゃ、改めてシャワー浴びっかな)
  26. 26 : : 2014/04/14(月) 21:16:22
    桑田(シャワーを浴びていると、急にチャイムが鳴った)

    桑田「んだよ、今出られねえっての……」

    桑田(無視することにした。……けど何度も鳴らしやがって、うるせえな。誰だよ!)

    桑田「だー、もうわかったよ、出りゃいいんだろ、出りゃ!」

    桑田(急いで体を拭いて最低限のものを着て、ドアを開けるとそこにいたのは……)

    石丸「遅いぞ、桑田くん! 今まで何をしていたのかね!」

    桑田「んだよ、石丸かよ。何してたって、昨日の夜シャワー浴びれなかったから今浴びてたんだよ。んなすぐ出られるわけねえだろ?」

    石丸「む、そうだったのか。それは失礼したな。体を清潔に保つことも大切だからな、ハッハッハ! 君にもそういう意識がある事が分かって、僕も嬉しいぞ!」

    桑田「なんでオメーが喜ぶんだよ、気持ち悪ぃな……で、何の用だよ?」

    石丸「ああ、そうだったな。実は昨夜、僕は考えたのだよ。皆の結束をより強めるためにはどうすればいいか、とな」

    桑田「へえ。そんで?」

    石丸「うむ、そして出した結論は、皆で朝食を共にするという物だ。これから毎朝、モノクマのアナウンス後に食堂に集合してな。というわけで、キミも朝食会に出席したまえ!」

    桑田「まあ、別に拒否る理由はねーな。別にいいぜ」

    石丸「うむ、快諾感謝する! それでは僕は他のメンバーに声をかけてくるとしよう。準備が済んだらすぐ来てくれたまえよ!」

    桑田「おう、わかった」

    桑田(これってつまり、朝から舞園ちゃんと毎日会えるって事だよな? 石丸もたまにはいい事思いつくじゃん! ってことで、ちゃんと服を着て髪とか髭の手入れをしてから食堂に向かった。すると……)
  27. 27 : : 2014/04/14(月) 21:17:02
    苗木「あ、桑田クン。おはよー」

    桑田「おう、おはようさん。苗木だけか?」

    苗木「うん、みたいだね」

    桑田「ふーん、そっか」

    桑田(って待てよ? これってチャンスなんじゃねえか?)

    桑田「なあ、苗木。ちっといいか?」

    苗木「うん? 何、桑田クン」

    桑田「ぶっちゃけて訊くけどさ、苗木と舞園ちゃんってどういう関係なわけ?」

    苗木「ああ、中学の時の同級生なんだ。まあ、中学の時は一度も話したことなかったけどね」

    桑田「じゃあ付き合ってるとかじゃねえんだな?」

    苗木「そんな、ボクが舞園さんと付き合えるわけないじゃん! だってボクなんて、普通中の普通だよ? 釣り合わないって、さすがに」

    桑田「そう、なんか? まあいいや、付き合ってねえんだな? ふーん、そっかそっか。よっしゃあ!」

    苗木「えっと……あ、ひょっとして桑田クン、舞園さんの事?」

    桑田「ん、ああ……まあな」

    苗木「なるほど……たしかに野球選手とアイドルってよく結婚したりあるしね」

    桑田「だよな、アナウンサーとかタレントとかさ。……やっぱ野球は続けよっかなー」

    苗木「その方がいいと思うよ? ボクなんかとは違って、ちゃんと才能があるんだしさ。才能に頼り切らないって宣言はカッコよかったけどね」

    桑田「へへ、まーな。てか、『ボクなんかとは違って』ってどういう意味だ? オメーも才能があったから希望ヶ峰が迂遠にスカウトされたんじゃねーの?」

    苗木「ボクの場合は……ちょっと違うんだよね」

    桑田「あ? そういや、超高校級の幸運、だっけ。どういう意味なんだ?」
  28. 28 : : 2014/04/14(月) 21:17:59
    苗木「うん、実はさ、全国の平均的な高校生の中から毎年一名、クジで選出された人物を“超高校級の幸運”としてスカウトするってシステムがあるみたいで」

    桑田「つーことは、オメーはクジで選ばれただけ、って事か」

    苗木「うん、そういう事だよ。それ以外はホント、むしろ不運に近いんじゃないかな、ボク」

    桑田「ってーと?」

    苗木「だってホラ、昨日の話思い出してよ。ボクだけ罰則が『だニャン』のままなんだよ!?」

    桑田「あー、そういやそうだったな」

    桑田(でもあの流れだぞ? 不運とも言い切れねえだろ……)

    苗木「それにボクの部屋だけシャワールームのドアの建付けが悪いみたいだし」

    桑田「は? ドアの建付け?」


    苗木「うん、そうなんだ。最初は鍵がかかってるのかと思ったけど、男子の部屋のシャワールームにはそもそも鍵なんて付いてないしね」

    桑田「あー、そうだったな。オレの部屋にもそんな事書かれた張り紙、あったわ」

    苗木「うん、それにそもそもホントに幸運ならこんな事に巻き込まれたりなんてしないだろうし」

    桑田「あー、だよな。でもそれ言うならオレら全員不運じゃねえか」

    苗木「あはは、だよね……」

    桑田(そんな何気ない話をしていると、徐々にメンバーが集まりだし……)

    石丸「うむ、全員そろったようだな!」

    桑田(十分もすれば十五人全員が食堂に集まった)

    十神「チッ、うるさい男だ。静かに過ごすことも許されんのか」

    大和田「珍しく気が合うな……石丸がうるせーのはオレも同感だぜ」

    十神「やめろ、お前と同じ意見などと、虫唾が走る……と言いたいが、そこは誰もが感じるところか」

    セレス「ところで、食事の用意などはどうするのですか?」

    十神「なんだ、この俺を呼びつけておいて食事の用意が済んでいないというのか? チッ、どれだけ俺を不快にすれば気が済むんだ……!」
  29. 29 : : 2014/04/14(月) 21:19:02
    舞園「なら、みんなでちゃちゃっと作っちゃいましょうか」

    石丸「うむ、食事会の前の料理会というわけだな。より皆の結束が深まる、いいアイディアだ!」

    桑田「けどよ、十五人も厨房に入りきらねえんじゃ?」

    セレス「山田君のような巨体の人間もいることですしね」

    山田「まあ、否定はしませんが……」

    葉隠「誰か、料理が得意なヤツとかいねーんか?」

    腐川「ちょ、“超高校級の料理人”でもいれば良かったんでしょうけど。生憎いないものね」

    セレス「ないものねだりをしても仕方ありません。普通レベルでも構いませんので、どなたかいらっしゃいませんの?」

    舞園「あ、じゃあ私が。一応、料理番組の出演依頼もありますから」

    大和田「テレビに出せる料理って事は、まあ悪い事にはならなそーだな……」

    朝日奈「けど、舞園ちゃん一人に任せるわけにもいかないんじゃない? 十五人分だしさ」

    苗木「そういう朝日奈さんはどうなの?」

    朝日奈「えへへ、ドーナツなら作れるんだけどね……」
  30. 30 : : 2014/04/14(月) 21:19:18
    大神「ならば我がやろう。山籠もりの際は食糧調達から調理まで己でこなす必要があったからな」

    桑田「なんつーか……朝からワイルドなモン出さねえよな?」

    石丸「ふむ、朝の定番と言えば白米に味噌汁、それから漬物があれば十分だ。だがそこに焼き魚がプラスされれば贅沢な食事と言えるだろう。大神くんならば得意そうだぞ!」

    セレス「それは聞き捨てなりませんわね。朝から和食など論外です。洋食に決まっているではありませんか」

    石丸「何だと!? キミも日本人だろう、ならば朝食は和食が一番いいに決まっているではないか!」

    セレス「お忘れですか? わたくしの名前はセレスティア・ルーデンベルク……フランス貴族の父とドイツ人音楽家の母を持っておりますのよ?」

    石丸「い、いい加減自分を偽るのはやめたまえ! 日本人なのだろう!?」

    桑田「あー、もうオメーら朝から喧嘩してんじゃねえよ! 和食と洋食両方用意すりゃ解決だろーが! 舞園ちゃん、それから大神、オレも手伝うわ。二種類用意すんの大変だろうしな」

    舞園「え、いいんですか?」

    苗木「ていうか桑田クン、料理できるの?」

    桑田「別に出来るってワケじゃねえけどよ、昨日セレスも言ってたろ。教えてもらいながらやればタブンできるって」

    江ノ島「へー、まあ挑戦するのは悪い事じゃないんじゃない?」

    石丸「む、むう。すまないな、桑田くん」

    桑田「いーって。じゃあちっと迷惑かけるかもだけどよろしく頼むぜ」

    大神「ああ、我も特別得手としているわけではないからな。迷惑をかけるかもしれぬ」

    舞園「いえ、後々の負担を考えると有り難いですよ! じゃあ行きましょうか」

    桑田「あ、待った待った、その前に和食と洋食がそれぞれ何人分なのか訊いとかねえと!」

    大神「む、それもそうだな」

    石丸「では皆、それぞれ申告するように!」

    大和田「何でオメーがそんな仕切ってんだよ……」
  31. 31 : : 2014/04/15(火) 22:42:16
    桑田(最初こそ石丸とセレスの衝突でどうなるかと思ったが、何とか収まって以降は和やかに朝食会は進んだ。料理の方も、舞園ちゃんが丁寧に教えてくれて役得だったぜ! 食事が終わってからは今後の事についてみんなで相談した。まあ、結局は昨日と変わらず校内の探索……つまりは自由行動って事になったけどな)

    石丸「それではまた後ほど、食堂に集合して成果を発表し合おうではないか!」

    十神「……フン。俺は先に行かせてもらうぞ」

    腐川「あ、と、十神君! あたしも一緒に行くわ……!」

    十神「チッ、付いてくるのは構わんが静かにしていろ」

    桑田「アイツら、デキてんのか……?」

    山田「だとしても、腐川冬子殿が一方的に、な気がしますがな」

    霧切「けれど、常に複数人で行動するのを心がける、というのはアリかもしれないわね。その方が防犯対策にもなるでしょうし」

    葉隠「け、けどよ、あのモノクマとかいう奴の言葉を鵜呑みにしちまってる奴と組んじまって……そんで、そいつが殺しにかかって来たら、どうすんべ?」

    霧切「それはないわ。校則をよく見て頂戴。例の、六番目の項目よ」

    朝日奈「あ、そっか。人に知られてはならないって事は、誰と誰が組んで行動してるかをみんなが把握してれば!」

    霧切「ええ。犯人は丸分かり。卒業できない、という事よ」

    葉隠「なるほど、なら安心だべ!」

    苗木「じゃあ、みんな誰と組むか決めよっか」

    石丸「だが僕たちは奇数人だ。二人組では一人余ってしまう……」

    霧切「だから複数人、よ。三人組でも四人組でも、好きにするといいんじゃないかしら」

    朝日奈「じゃあさくらちゃん、私と組もっ!」

    大神「ああ、構わぬぞ」

    朝日奈「舞園ちゃんに江ノ島ちゃんも一緒にどう?」

    江ノ島「アタシは別に行ってもいいよ」

    朝日奈「ホントに!? じゃあ舞園ちゃんは?」

    舞園「んー、そうですね……いえ、先に行っていて下さい。私は洗い物してから行きます」

    朝日奈「別にそのくらいなら手伝うよ?」

    桑田「あー、いや、オレが手伝うわ。さっき作る時、舞園ちゃんには迷惑だいぶかけちまったしな」

    舞園「そんな、別にいいですよ!」

    桑田「いや、でも誰かが手伝うなり待つなりしねえと、舞園ちゃん一人が残っちまうしな」

    舞園「それもそうですけど……はあ、わかりました。じゃあよろしくお願いしますね、桑田君」

    桑田(よっしゃあ、これで舞園ちゃんとペアだぜ!)
  32. 32 : : 2014/04/15(火) 22:42:35
    不二咲「じゃあ私は……大和田君、いいかな?」

    大和田「お、おう。いいぜ」

    石丸「待ちたまえ大和田くん、僕もそこに入れてもらうぞ! キミの風紀の乱れは僕が正さねばならないからな!」

    大和田「チッ、来るのは別に構わねえが、オメェの話に耳貸すかは別だぜ……」

    桑田(そんな具合にグループが徐々に作られていき、みんなが出発したところで……)

    舞園「それじゃあ、洗い物、始めちゃいましょうか」

    桑田「だな。さっさと済ませて探索出かけようぜ」

    舞園「そうですね。探索もちゃんとしないと石丸君に怒られちゃいそうですし」

    桑田「あー、だよなー。うし、じゃあ遅れねえようにしないとな!」
  33. 33 : : 2014/04/16(水) 21:24:39
    ちょっとタイトル変えましたが、再開します。
  34. 34 : : 2014/04/16(水) 21:25:05
    桑田(洗い物を済ませた後……寄宿舎エリアにはほぼ何もないだろう、という事で学校エリアに向かう事にしてテキトーに捜査を開始した。つっても、学校エリアの方も望み薄だけどな)

    舞園「じゃあ、どこから見ます?」

    桑田「そーだなあ。つっても、なんかありそうなのって購買くらいじゃねー? 他はみんなも探索し尽くしてるっしょ」

    舞園「そうですね、わかりました。それじゃあ購買部に行きましょうか」

    桑田(購買に行くと、セレスと山田がいた)

    セレス「あら、桑田君に舞園さんではありませんか。お二人もこちらへ?」

    舞園「ええ、ここは物が溢れてますからね」

    桑田「未発見の何かがあるかもしんねーって思ってな」

    山田「なるほど。では僕らとは少し違うようですな」

    舞園「と、言いますと?」

    セレス「わたくし達、探し物をしておりますの。よければ手伝っていただけますか?」

    桑田「そりゃ構わねえけど。何探してんだ?」

    セレス「茶葉です。それも良質な」

    舞園「茶葉、ですか?」

    山田「ええ……厨房にあるものではセレスティア・ルーデンベルク殿の口には合わなかったようでして」

    桑田「ふーん、セレスが飲むって事は紅茶か?」

    セレス「もちろんです。嗜好品であることは理解していますが……それでも探さない内から妥協など出来ませんわ」

    山田「と、こういう具合でして」

    舞園「どうします、桑田君?」

    桑田「あー、別にいいんじゃねえの? どーせここの探索すんなら、ついでに茶葉探すくらい」

    舞園「それもそうですね。じゃあ一緒に探しましょうか」

    山田「助かりますぞ、桑田怜恩殿、舞園さやか殿!」
  35. 35 : : 2014/04/16(水) 21:26:06
    桑田(舞園ちゃんと山田の二人と購買部の中を探索した。セレスは指示するばっかで動かねえのな……)

    舞園「……茶葉、ありませんね」

    桑田「コーヒー豆なら出てきたけどな」

    山田「僕としましてはスクリーントーンを発見できたので満足ですがね!」

    舞園「というか、ラインナップが妙に偏ってますよね、ここ」

    セレス「そうですわね……西洋甲冑があるのですから、紅茶の茶葉くらいあるかと思いましたのに。残念ですわ」

    桑田「まー、まだ入れねートコにあるかもしんねえし、そう気を落とすなよ」

    山田「そうですな……」

    桑田「って何でオメーまでガッカリしてんだよ。満足したんじゃなかったのか?」

    山田「いえ、大事なものがここにもないな、と……厨房も探したのですが見つかりませんでしたし」

    舞園「大事なもの、ですか?」

    セレス「少し、気になりますわね。いったい何の事ですか?」

    山田「そんなもの、決まっているではないですか! コーラですよ、コーラ!」

    桑田「はあ? コーラ? いや、そりゃたまに飲むとうめーけどよ」

    山田「たまに、ですと……? コーラは僕にとっては命の水! なくてはならんのです! あ、あと油芋も!」

    セレス「しょうもないですわね」

    山田「しょうもないですとッ!?」

    舞園「じゃあそろそろ行きましょうか、桑田君」

    桑田「そだなー、とりあえず購買にはめぼしいモンなさげだし」

    セレス「……いえ、少々お待ちください」

    桑田「あん? 何だよ?」

    セレス「見つからなかったとはいえ、せっかく探してくださったのです。一つ情報を提供させていただきますわ。お二人はそこのガチャガチャを回されたことはありまして?」

    舞園「いえ、ありませんけど……回そうにも、お金がありませんし」

    桑田「オレもだ。ケータイと一緒に財布とかも消えてんだよな」
  36. 36 : : 2014/04/16(水) 21:26:30
    セレス「でしたら、朗報ですわ。実は先ほど拾ったモノクマの柄のメダルで試してみた結果、見事に回りまして」

    桑田「へえ?」

    セレス「回したと同時に現れたモノクマ曰く、どうやらメダルの方がモノクマメダル、ガチャガチャの方がモノモノマシーンというそうですわ。モノクマメダルは校内のいたるところに隠されているそうなので、見つけたら回してみるのもいいかもしれませんわね。きっと、ここでの生活をより豊かにしてくれる品が出てくる事でしょう」

    舞園「なるほど。じゃあ見かけたらやってみますね」

    桑田「サンキューな、セレス。……ちなみに、何が出たんだ?」

    セレス「……山田君、出してください」

    山田「……わかりました。こちらですぞ」

    動くこけし「ヴヴヴヴヴヴヴ」

    舞園「……」

    桑田「……」

    山田「……」

    セレス「……」

    桑田「なあ、オイ」

    セレス「……きっと、ここでの生活をより豊かにしてくれる品が出てくる事でしょう」

    桑田「どこがだよ! いらねえよこんなモン!」

    セレス「わたくしもいりませんわ。ですので山田君に差し上げたのです」

    山田「いやいや、僕もいらないのですが」

    舞園「行きましょうか、桑田君」

    桑田「そ、そーだな。じゃ、またあとでな!」

    山田「く、桑田怜恩殿! 貰ってくだされー!」

    桑田「いらねーつってんだろ!」
  37. 37 : : 2014/04/17(木) 22:07:40
    桑田(山田の追撃をかわしつつ、オレたちは購買を後にした)

    桑田「次、どうする? 舞園ちゃんはどっか行きたいとこある?」

    舞園「そうですね……じゃあ、あの約束、果たさせてもらいましょうか」

    桑田「約束って……ひょっとして!」

    舞園「はい、ちょっとだけ音楽の練習、付き合いますよ」

    桑田「おー、サンキュー、舞園ちゃん!」

    舞園「じゃあ個室に行きましょうか。あそこは防音もしっかりしてるみたいですし」

    桑田「え、個室?」

    舞園「ええ。……襲ったりしないで下さいよ?」

    桑田「し、しねーって!」

    舞園「ふふ、そうですよね。人となりはそれなりに分かってるつもりですし。桑田君はそういう事をする人じゃないってわかってますよ」

    桑田「で、でもよ、あー、じゃあオレの部屋、来るか?」

    舞園「ええ、わかりました。お邪魔しますね」

    桑田(何だよ何だよ、やっぱこれって脈アリなんじゃねーの?)

    舞園「じゃあ寄宿舎エリアに行きましょうか」

    桑田「だな!」

    桑田(意気揚々と寄宿舎エリアに戻ると、焦った表情の腐川がうろついていた)

    腐川「あ、ああアンタ達! 白夜様……知らない?」

    桑田「いや知らねーけど……てか白夜様だぁ?」

    舞園「今朝までは“十神君”って呼んでませんでした?」

    腐川「う、うるさいわねッ! 白夜様は、白夜様でしょうが!」

    桑田「まあ、オメーがそう呼びてえなら好きにすりゃいいと思うけどよ」

    腐川「アンタがツッコミ出したんじゃない……ま、まあいいわ。白夜様の居場所を知らないなら用もないし」

    舞園「というか、一緒だったんじゃないんですか?」

    腐川「と、途中まではそうだったんだけど。花を摘んでる間にいなくなっちゃったのよ」

    桑田「あー、まあ先に行っちまったんだろうなあ」

    舞園「十神君は他の人の事を気に掛ける風じゃありませんからね……」

    腐川「そ、それは偏見よ!」

    桑田「は? 偏見って……なんでそんな事がわかんの?」

    腐川「だって、びゃ、白夜様はあたしの事……気に掛けてくれたもの」

    舞園「そうなんですか?」

    腐川「ええ、そうよ。『臭うから風呂に入れ』って……あたしの事、心配してくれたのよ!」

    桑田「あ、あー……」

    舞園「えっと、それは……まあ、そうですね」

    桑田(ぜってー臭いが不快だとか思っただけだろ、十神の奴)
  38. 38 : : 2014/04/17(木) 22:08:12
    腐川「はッ! そ、そういう事なのね。今の間にシャワーを浴びて来いって、そういう事なのねッ!?」

    桑田「いや、知らねーけど」

    腐川「こうしちゃいられないわ! 早く部屋に戻らないと……アハ、アハハ……」

    桑田「えっと、腐川の奴、大丈夫なのか?」

    舞園「さ、さあ、どうなんでしょう。でもシャワーを浴びる事自体は悪い事じゃないので」

    桑田「ま、そーだよな……」

    舞園「気を取り直して、桑田君の個室、行きましょうか」

    桑田「そ、そだな! じゃあ行くか!」

    桑田(腐川の事は極力気にしないようにして、オレは舞園ちゃんを連れて部屋に戻った。そこから始まった歌の特訓が、思ってた以上にハードだったから気にしないようにもなにも、実際はすぐに忘れちまったけどな。でも舞園ちゃんの苦労を身近に感じられたって意味じゃそのハードな特訓も、ちっとは嬉しかったりなんかして。そんなこんなで四時間くらいぶっ続けで、舞園ちゃんの指導の下歌い続けた)

    舞園「……ふう、今日はこのくらいにしときましょうか」

    桑田「ハァ、ハァ……あー、舞園ちゃんすげえのな……オレ、こんなに歌ったの初めてじゃねえかってくらいだぜ。てか、声枯れてねえ? 大丈夫か?」

    舞園「そうですね、ちょっと枯れてるかもしれません。辛いようなら、まだちょっと早いですけど食堂、行きます?」

    桑田「そーだな、水飲みてえし」

    舞園「じゃあ行きましょうか」

    桑田(そう言って舞園ちゃんはにっこりと笑った。あー、チョクショウ。営業スマイルだろーけど、やっぱカワイイなあ)
  39. 39 : : 2014/04/18(金) 22:04:13
    苗木「あれ、舞園さんに桑田クン。随分早いね?」

    舞園「あ、苗木君に霧切さん。お二人は今戻ったんですか?」

    霧切「いえ、ちょっと休憩中なだけよ。少ししたらまたすぐ探索に戻るわ」

    桑田「そうなんか? つかそんなに探索する場所、あったっけ?」

    苗木「うん、霧切さんってホントに細かいとこによく気が付いて凄いよ……っていうか桑田クン、どうしたの!? すっごい声枯れてるけど」

    桑田「あー、わり。ちょっと先に水飲ませてくれ……」

    舞園「はい、入れてきましたよ」

    桑田「お、サンキュ、舞園ちゃん。……っくはあ、うめえ! 水ってこんなウマかったっけ? 生き返ったぜ」

    霧切「あなた達、何してたの? 舞園さんは普通だけれど、桑田君がそこまで声を枯らすなんて」

    桑田「え、マジ? そんな枯れてた? ちっと歌の稽古付けてもらってただけなんだけどなあ」

    苗木「ちょっとって……どのくらい?」

    舞園「四時間くらいですかね?」

    苗木「四時間って……え、四時間!? そんなに!?」

    霧切「……一応、自由時間という事になっているのだから何をしようと否定はしないけれど。節度は持った方がいいわ。身を滅ぼすことになるわよ。桑田君は身に染みてるでしょうけど」

    桑田「悪ぃな、なんか楽しくなって来ちまってよ。ホラ、ランナーズハイっての?」

    舞園「でも歌い始めに比べれば多少はマシになったんですよ、そのおかげで」

    苗木「そんなにヒドかったの?」

    舞園「酷くはありませんでしたが良くもありませんでした」

    霧切「普通、という事ね。普通は苗木君の専売特許だと思っていたのだけど」

    苗木「そ、そんな、霧切さん」

    桑田「安心しろ、苗木はオレよりよっぽどフツーだぜ」

    苗木「いや、そういう事じゃないんだけど」

    桑田「あー、てかやっぱ、まだ喉本調子じゃねーな。もうちっと水飲んでくるわ」

    霧切「ええ、その方がいいと思うわ」

    舞園「汲んできましょうか?」

    桑田「や、直接厨房で何杯か飲んだ方がはえーし、いいって。じゃ、ちょっと行ってくる」

    桑田(そう言ってオレは厨房へ入った。てか何度見てもこの厨房、食材溢れすぎだろ。野菜とか山盛りだしよ。むしろどうやって消費すんだ? この量)
  40. 40 : : 2014/04/18(金) 22:05:32
    桑田「えーと、水、水っと……」

    桑田(コップに水を汲み、すぐさま飲む。喉が潤うぜ……)

    桑田「……あん?」

    桑田(ふと足元を見ると、何か光る物が落ちていた。拾い上げてみるとそれは……)

    桑田「何だ? コインか?」

    モノクマ「はい、それは“モノクマメダル”というものです!」

    桑田「うぉぁ!? も、モノクマ!? テメー、いきなり出てきてんじゃねえよ!」

    モノクマ「うぷぷ、いいねー、ナイスリアクションだよ。苗木クンのリアクションを超えたかもね!」

    桑田「うるせえよ、何の用だよ! てかさっさとこっから出しやがれ!」

    モノクマ「うるさいなあ、だからここから出たいなら殺しちゃえばいーじゃん。まあでも今はそれは置いといて、ボクの用事はそのモノクマメダルについて説明する事だよ」

    桑田「あー、それならセレスから聞いてるっての。購買部のナントカマシーンってガチャガチャ回せるんだろ?」

    モノクマ「基本的にはそうですね」

    桑田「あん? 何だよ基本的にって」

    モノクマ「他にも用途はあるって事だけど?」

    桑田「そりゃわかるっての。具体的には何に使うんだよ」

    モノクマ「そりゃあ、イベントギャラリーとかムービーとかBGM、アートワークギャラリーを開放したりだね」

    桑田「はぁ? ワケわかんねえこと言ってんじゃねえぞ!」

    モノクマ「ま、そうだね。だってキミには関係ないもんね! にょっほっほ!」

    桑田(それだけ言ってモノクマはどこへともなく消えて行った)

    桑田「ったく、何だったんだよ、アイツは。ま、気にしてもしゃーねえか。あんま舞園ちゃん待たすのも悪いし、そろそろ戻っかな」

    桑田(あとでガチャガチャもやってみっか、なんて考えつつ厨房を後にした。すると……)

    桑田「あれ、舞園ちゃんは?」

    桑田(食堂には何故か、苗木の姿しか見当たらなかった)

    苗木「あはは、なんか霧切さんと話したい、とかでさ。今日はこれからあの二人で組むみたい。ボクも置いてかれちゃったんだよね」

    桑田「なんだよ、ったくしゃーねえなあ。じゃあ苗木はこれからオレと組むってわけ?」

    苗木「うん、そうしてもらえると有り難いかな、なんて」

    桑田「別にオレはいーぜ。どーせ一人でいてもヒマだしな」

    苗木「ありがとね、桑田クン。……けど、これからどうしよっか」

    桑田「そーだなあ、特にすることもねーし……あ、いや待てよ、一個だけあったな」

    苗木「ん、何?」

    桑田「いや、さっき厨房でコレ拾ってよ」

    苗木「あ、モノクマメダルだね」

    桑田「何だよ、苗木も知ってんの?」
  41. 41 : : 2014/04/18(金) 22:06:13
    苗木「うん、昨日拾ってさ。モノモノマシーンも一回だけ、回したよ」

    桑田「何が出てきたんだよ?」

    苗木「えっと、それが……」

    桑田「あん?」

    苗木「……お」

    桑田「お?」

    苗木「おt……桶、そう桶だよ。風呂桶……」

    桑田「風呂桶ぇ? なんだよ、その妙なラインナップは。セレスも妙なモン引き当ててたしよ」

    苗木「妙なものって?」

    桑田「電動で動くこけし」

    苗木「へえ、変わってるね? 何に使うんだろ、マッサージ機とかかな?」

    桑田「オメー……いや、まあいいや。そういう使い方もアリだろーしな」

    苗木「え、違うの?」

    桑田「ま、何でもいいけどよ、せっかくだし回しに行かねえ?」

    苗木「うん、いいよ。じゃあ購買だね」

    桑田「だな」

    桑田(というわけで、オレは再び、今度は苗木を引き連れて購買にやってきた。すると、そこには……)
  42. 42 : : 2014/04/19(土) 20:52:19
    江ノ島「あれ? 苗木に桑田? なんでアンタらが一緒なの?」

    苗木「あれ、江ノ島さん?」

    桑田「オメーこそなんで一人なんだよ?」

    江ノ島「いやさー、朝日奈とか大神とはぐれちゃって」

    苗木「そうなの? まあたしかに、あの二人についてくのはキツそうだけど」

    江ノ島「や、体力的な問題なら大丈夫なんだけど……ってアタシの話はいいじゃん。そっちはどうなのよ?」

    桑田「あー、さっき食堂で苗木・霧切ペアと舞園ちゃん・オレペアの間でペア交代する感じになったんだよ」

    江ノ島「ふーん、残念だったね、桑田」

    桑田「うっせー! オメーに言われたかねーよ!」

    江ノ島「でもま、昨日よりは絶望感なかったんじゃない?」

    桑田「だろ? だろ?」

    江ノ島「でもアタシとしては苗木と霧切のペアもちょっと気になるっていうか……アンタらはどうだったわけ?」

    苗木「どうって、いや別に普通に探索してただけだけど」

    江ノ島「ホントに?」

    苗木「いやホントも何も。霧切さんについてくのはちょっと大変かなって思ったくらい、かな?」

    江ノ島「……ふーん」

    苗木「江ノ島さんが何疑ってるのかはよくわからないけど……とりあえずさ、桑田クン。早くやってみようよ」

    江ノ島「やるって、何を?」

    桑田「ん、ああ。さっきモノクマメダル拾ってな。ガチャガチャやりに来たんだよ」

    江ノ島「へえ、何が当たるかアタシも見て行っていい?」

    桑田「別にいいぜ。よし、コイツだな。ここにメダル入れるのか……よいしょっと」

    苗木「何が出るか、ボクも楽しみだよ。種類もかなりあるみたいだし」

    桑田「へえ、そうなのか? ……よっと、出てきたな。へへ、ガチャガチャのカプセル開ける時って妙にドキドキするよな」

    苗木「あ、わかるかも。どんな景品が入ってるか楽しみだよね」

    桑田「だよな! じゃあ開けるぜ……」

    桑田(緊張しつつ、カプセルを開ける。すると中から出てきたのは……)
  43. 43 : : 2014/04/19(土) 20:53:29
    苗木「えっ、刀!?」

    江ノ島「マジで? チョーカッコいーじゃん!」

    桑田「えーと、ざん、てつ、けん? っていうらしいぜ」

    苗木「ざんてつけん……って、え、斬鉄剣!?」

    桑田「おう、ざんてつけん、って書いてるぜ」

    桑田(残鉄剣……鉄を斬ることが出来ず、生き物も斬れない……何の役にも立たない刀? イラネー……いや、よく斬れる刀でもいらねえけどよ)

    桑田「ゴミアイテムしか出ねえのか? このガチャガチャ……」

    江ノ島「刀をゴミとか言うなって! 結構威力もあんだからね?」

    苗木「それに斬鉄剣だよ? さすがにゴミっていうのはどうかと思うけど……あ、扱いには気を付けてよね?」

    桑田「いや、気を付けるも何もねえだろ、これ。だって残鉄剣だぜ?」

    苗木「いや、斬鉄剣だよね? 立派な危険物だと思うんだけど」

    桑田「いやいやこれ、ただのなまくらだろ?」

    苗木「ざ、斬鉄剣をなまくらって……桑田クン、キミホントにただの超高校級の野球選手なの?」

    桑田「どーいう意味だよ、それ」

    苗木「いや、実は超高校級の鍛冶職人みたいな才能もあったりしないのかなって」

    江ノ島「あ、そんならアタシにも一本刀打ってもらおっかな」

    桑田「何に使うつもりだよオメーは!? てか家事って何だよ? まあ料理なら今朝舞園ちゃんに教えてもらったけどよ」

    苗木「そうじゃなくって……はあ、まあいいや。とにかく、ホントにそれ、扱いには気を付けてよね」

    桑田「まあ、いーけどな」

    桑田(何だ、苗木の奴? ミョーにビビってんな。ま、そんなに言うなら部屋に仕舞っとくか。たしか机の引き出しが空いてただろ)

    苗木「それで、えっと、これからどうする?」

    桑田「そーだなあ、ってオメーなんでちっと離れてんの?」

    苗木「え、いや、あはは、やっぱりちょっと怖いっていうか」

    桑田「あーもうわかったよ! 先に片付けてくりゃいいんだろ? 個室行くぞ!」

    苗木「あ、うん。ありがとね」

    江ノ島「じゃ、アタシは朝日奈と大神探してくるね。向こうも心配してるかもだし」

    苗木「うん、わかった。じゃあまたあとでね」

    桑田(あー、なんか今日、購買とオレの個室往復してばっかじゃねえ? なんて考えつつ、江ノ島ちゃんと別れて個室に『残鉄剣』を仕舞いに戻る。部屋の外で待たせんのも悪いから苗木を部屋に上げ、その日は時間までテキトーに駄弁って、時間になったら食堂に行き……結果、昨日とさして変わらない状況を報告し合うだけし合って、晩飯を食った後、今日は時間もあったからシャワーを浴びて、それからすぐに寝ちまう事にした)
  44. 44 : : 2014/04/20(日) 23:54:20
    モノクマ『オマエラ! 朝です。七時になりました。起床時間ですよー! さあて、今日も張り切って行きましょう!』

    桑田(閉じ込められてから三日目の朝。気分のいい目覚めなワケはもちろんねえ。つか毎朝毎晩、あのアナウンス流すのか? アイツの声聞きたくねーんだけど)

    桑田「ま、しゃーねえか。たしか朝食会は毎朝やるとか言ってたな。メンドクセーけど行くかあ」

    桑田(昨日と同じように身なりを整えて、食堂へ向かう。すると……)

    石丸「遅いぞ、桑田くん!」

    十神「まったく、この俺を待たせるとはいい度胸だな?」

    桑田「うお、もう結構揃ってんじゃん」

    桑田(あと来てねえのは苗木と江ノ島ちゃん、それに腐川とセレスか)

    舞園「でも他の人はともかく、苗木君や腐川さんはちょっと心配じゃありませんか?」

    石丸「そうだな……あまり遅刻をしそうなタイプとは思えんが」

    大和田「寝坊とかじゃねえのか? 誰だってそんくらいあんだろ」

    大神「そうだな。特に今の我らの置かれた状況はかなり特殊だ。ストレスも溜まっておるだろうしな」

    葉隠「そーだなあ。ストレスっちゅーんは実際、バカに出来んべ。健康にも害が出るもんからな」

    朝日奈「あれ、葉隠ってそんなマトモな事言えるんだ?」

    葉隠「それはヒデーぞ、朝日奈っち!?」

    朝日奈「あはは、ゴメンゴメン」

    苗木「おはよ……みんな朝から元気だね?」

    石丸「む、苗木くん! 遅いじゃないか、みんな心配していたのだぞ!?」

    苗木「ゴメンゴメン、ちょっと寝坊しちゃって」

    大和田「な、だから言っただろ?」

    江ノ島「遅れてゴメーン! ちょっとメイクのノリが悪くてさあ!」

    石丸「江ノ島くんもだ! 遅いじゃないか!」

    江ノ島「え、朝からそういうノリなの? チョーめんどくさいんですけど」

    桑田(それから五分くらいが経過して、ようやくセレスがやってきた)

    セレス「おはようございます、皆さん。今日も爽やかな朝ですわね」

    山田「あのー、こんな密閉空間で爽やかも何もないと思うのですが……」

    霧切「けど、無理にでも爽やかだと思っていた方が空気は明るくなるんじゃない?」

    石丸「うむ、霧切くんの言う通りだ! 爽やかな朝だな、ハッハッハ!」

    桑田「オメーは極端すぎんだよ!」
  45. 45 : : 2014/04/20(日) 23:55:09
    不二咲「え、えっと、これであと一人……だよねぇ?」

    苗木「そうだね……来てないのは腐川さんかな?」

    十神「フン、大方シャワーでも浴びてるんじゃないか? 昨日風呂に入れと散々言い聞かせたからな」

    桑田「でも昨日、昼くらいに会った時シャワー浴びるって言ってたような……」

    舞園「ええ、そうでしたね。それは私も聞いてます」

    十神「たしかに、言われてみれば昨晩の報告会の時はだいぶ臭いはマシだったな」

    大神「では、いったいあいつはどうしたというのだ?」

    朝日奈「やっぱり臭いの事言われるのが嫌で……それでまたシャワー浴びてるだけ、とか?」

    山田「だと、いいのですが……」

    セレス「万が一、という事もあり得ますわね」

    江ノ島「万が一って?」

    セレス「お忘れですか? 例の校則ですわ」


        第六条

          仲間の誰かを殺したクロは“卒業”となりますが、
          自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。


    苗木「まさか……!?」

    山田「いやいやいや、あり得ませんぞ、そんな事!」

    十神「だが、あいつは見た目や性格からして力も腕力も体術も、レベルとしては下から数えた方が早いだろう。さらに言えば“超高校級の文学少女”なんていかにもインドアな才能じゃないか。標的に選ばれても仕方あるまい?」

    江ノ島「ちょっと、やめろって! んな事あるわけないじゃん!」

    朝日奈「そーだよ、殺人なんて起こるわけないって!」

    桑田(殺人。朝日奈がその言葉を口に出した途端、嫌な予感がグジュグジュと音を立てて全身を駆け巡った。チクショウ、何だよコレ。んなわけねえのによ……)

    石丸「さ、さすがに……様子を見に行った方がいいのではないかね?」

    大和田「そう、だな……その方が安心すんだろ」

    舞園「け、けど、みんなで押しかけて迷惑じゃないですかね?」

    十神「別に構わんだろう、腐川がどう思うかなんてな。今は非常時なんだ。それに、もし無事だったとしたらこの俺を待たせているんだぞ。その程度の事で購えると思うのか?」

    霧切「十神君の高慢な態度は今に始まった事じゃないけれど……非常時だというのは事実ね。様子を見に行ってみるのには賛成よ」
  46. 46 : : 2014/04/20(日) 23:55:36
    セレス「では行ってらっしゃいませ」

    桑田「は? オメーは来ねえのかよ?」

    セレス「わたくしはお茶でも頂いておりますわ。山田君、淹れて下さる?」

    山田「へ? また僕?」

    セレス「はい。淹れてきてくださいな」

    石丸「では僕らは向かうとしよう!」

    山田「僕が淹れるのは確定なのですか!?」

    桑田(こけし押しつけられたり紅茶淹れさせられたり、山田も災難だとは思うけど、今は気にしてる余裕は正直ない。あんま接点なかったけど、腐川もしばらく一緒に過ごした仲間だしな……殺されてるかも、なんて考えたくもねえ。……けど)

    石丸「行けばきっと……腐川くんの無事も確かめられるハズだ……!」

    桑田(石丸の、その自分に言い聞かせるような言葉が……逆に、オレの不安感を助長した)

    桑田「よ、よっしゃ、じゃあ、行こうぜ!」

    桑田(だからだろーな。オレのその叫びが、妙に裏返った声になっちまったのは)
  47. 47 : : 2014/04/22(火) 00:27:27
    桑田(結局、セレスと山田だけを食堂に置いて、オレたちは腐川の部屋を取り囲むように集まっていた)

    朝日奈「じゃ、じゃあ、押すね?」

    桑田(言って、朝日奈は腐川の部屋のインターホンを押した。……けど、待っても何の反応もない)

    舞園「だ、大丈夫……ですよね?」

    桑田「あ、当たり前だろ! まだインターホン押して、一分も経ってねえしよ。昨日の朝はオレだって、石丸がインターホン押してすぐ出なかったしな!」

    石丸「そ、そうだったな! 昨日の桑田くんのように、シャワーを浴びていたから着替えているのかもしれない!」

    大神「たしかにそれならばそれなりの時間を要するだろうが……」

    桑田(腐川が部屋から出てこない。その事実は、その場にいる全員の心に薄暗い影を落とすには十分だったらしい。それから朝日奈は何度かインターホンを押したが、出てくる気配は一向にない。そして)

    十神「チッ、おい腐川、いないのか?」

    桑田(痺れを切らした十神が、部屋のドアを直接叩き始めた。けどそれでもやっぱり腐川は出てこない)

    霧切「……マズいわね。ドアを開けて中を確認した方がいいんじゃない?」

    江ノ島「そ、そうかも。その方が……直接的で安心できるっていうか」

    朝日奈「じゃあ、男子はちょっとあっち行ってて」

    苗木「そうだね、さすがに、ホントに着替えとかしてたら……マズいもんね」

    石丸「では男子諸君、少し離れるぞ!」

    大和田「オメェに言われるまでもねえっての」

    桑田(周囲の女性陣は見えるけど、腐川の部屋の中は見えない、そのくらいの位置にオレ達は移動した。すると……)

    霧切「あら?」

    十神「どうした」

    霧切「鍵がかかってるわ」

    十神「何だと?」

    桑田(霧切の言葉を聞いた十神は再び腐川の部屋へと近付く。そしてドアノブをひねったようだったが……)

    十神「チッ、どうやら本当らしいな」

    舞園「という事は、部屋の中にいるのか外出してるのかもわかりませんね」

    石丸「仕方あるまい、では全員で校内の捜索をしよう!」

    葉隠「いや、その必要もねーって」

    十神「一応訊いておいてやる。何故だ?」

    葉隠「だってよ、俺が腐川っちの居場所を占えば済む話だろ? なら無暗に探し回る必要なんてねーべ」

    十神「くだらん。さっさと探しに行くぞ」

    大神「だが、手掛かりがないのは事実だ。不確かなものでも、今はすがってみる方がよいのではないか?」
  48. 48 : : 2014/04/22(火) 00:28:31
    苗木「ちなみに葉隠クン、その占いって当たるの?」

    葉隠「おいおい、俺は“超高校級の占い師”だぞ?」

    苗木「そっか、じゃあ……」

    葉隠「どんな事でも三割の確率でピタリと当たる!」

    朝日奈「七割の確率でそこにはいないって事じゃん」

    葉隠「別にどう捉えてくれてもいいべ。占いなんてのは所詮、聞く側がどう捉えるかっつーのが重要なもんだしよ」

    桑田「そーいうのはいいからよ、さっさと占ってみてくれっての」

    葉隠「よっしゃ、じゃあ行くぞ……」

    桑田(全員が緊張の面持ちで……いや十神なんかは別にそうでもねえか。とにかく、葉隠に注視した)

    葉隠「見えたべ! どーやら……“桑田っちの部屋にはいない”みたいだべ!」

    十神「何を当たり前の事を。誰かの個室にいるわけがあるまい」

    桑田「で、でも待てって……それって、七割の確率で“オレの部屋にいる”んじゃ……」

    桑田(全員の顔がオレを向く。いや、まさかな……てか、腐川がオレに用事があるなんて思えねえし。てか、なんでオレの部屋なんだよ?)

    十神「訊くが、桑田。お前、今朝部屋を出る時に鍵はかけたか?」

    桑田「あ、当たり前……だろ……」

    桑田(マズい。かけた記憶がねー。ドクドクと心臓が跳ねる。イヤな跳ね方だ。たぶん野球で負けそうになってもこんな跳ね方はしねーんじゃねえか、ってくらいにな)

    霧切「その様子だと、記憶は曖昧みたいね。いいわ、確かめてみた方が早そうね」

    桑田(そう言って霧切はオレの部屋へ向かい……ドアノブに手をかけた)

    霧切「……開いてるわね」

    桑田「ま、マジかよ……」

    桑田(ゆっくりと、霧切の手がドアノブを回す。そして、ドアを開けたところで……霧切の動きは、止まった)

    桑田「お、おい、どうしたんだよ?」

    霧切「……血が苦手な人は、見ない方がいいわ」

    桑田(終わった。何がかはわからない。平和な日常が、か? いや、そんなモンはここに閉じ込められた時点でとっくに終わっちまってる。……じゃあ、何が? 一つ言える事は。霧切のその言葉は、少なくともオレ達の中の、心のゆとり的なものを完全に壊すには十分な威力だったってことだ)

    桑田「ど、どーいう意味だよ!」

    桑田(自分の部屋の前に駆ける。霧切は奥へと一歩後ずさり、オレが部屋の中を覗ける場所をあけた。そしてオレの目に映ったものは……。…………。映った、モノは……。










    オレの部屋の中央で倒れこんだ、腹に刀が刺さっている腐川の姿、だった)
  49. 49 : : 2014/04/23(水) 00:59:19
       CHAPTER 1
              ナゲキル   非日常編
  50. 50 : : 2014/04/23(水) 01:00:22
    モノクマ『ぴんぽんぱんぽーん。死体が発見されました! えー、生徒諸君は体育館にお集まりください。急げ、急げ! 駆け足、駆け足!』

    桑田(オレの言葉にもなってねー叫び声を聞いた、その場にいた全員がこちらへ向かってきて、ほぼ全員が腐川の死体を見たんじゃないか、というところでそんな放送が流れた。勿論取り乱してはいたけど、放送なんかを気に掛けることが出来た分、まだオレの頭は大丈夫だったのかもな。この死体がもし舞園ちゃんだったら、と思うと……いや、考えたくもねー)

    セレス「皆さん、今の放送はいったい……?」

    山田「肢体が発見された、とか。艶めかしいんですかね?」

    大和田「ミョーなボケかましてる場合じゃねえだろ! 死体だよ死体! 死んでるんだよ、腐川が!」

    山田「……はい?」

    セレス「今、何と仰いました?」

    大和田「だぁから、腐川が死んでるんだっつってんだろが!」

    セレス「……いいですわ。確認したい事や追求したい事は山ほどありますが、それよりも今の放送で体育館に集合するように、と指示がありましたわよ。向かった方がよろしいのでは?」

    苗木「そんな、何言ってんのさ! 仲間の一人が死んでるんだよ!? なんで体育館なんかに行かなきゃいけないんだ!」

    霧切「苗木君、落ち着いて。気持ちは分かるけれど、今は素直に従った方が得策よ。私達が捕らわれの身であることに変わりはないもの。これ以上立場を悪くするのは愚策よ」

    苗木「けど!」

    十神「お前が行かない、という事のリスクがお前だけにかかるのなら俺は止めはせん。だがな、ここにいる全員にリスクを負わせる可能性もゼロじゃないんだ。その事を考えろ、この愚民が」

    苗木「わ、わかったよ。けど、なんでこんな……」

    葉隠「ちょ、ちょちょちょ、待ってくれって、え? これ、マジなん? マジで死んでるんか?」

    霧切「そうね、急げとは言われたけれど生死を確かめるくらいの事は、しておいてもいいかもしれないわね」

    桑田(そう言って霧切は、腐川に……腐川だったものに近寄り、漫画とかドラマで見るような、脈をとったりだとか心音の確認だとかを始めた)

    山田「うそ、死体に触れるの!?」

    朝日奈「ちょちょ、霧切ちゃん!?」

    桑田「オレには……マネできねー……な」

    桑田(死体を見るのなんざ初めてなんだ。オレも元気よくいきてえとは思うけど、山田や朝日奈みたいに声を張り上げるのは、今はちっと無理そうだ)
  51. 51 : : 2014/04/23(水) 01:02:05
    江ノ島「……で、どーなの?」

    霧切「死んでるわね、間違いなく」

    十神「念のために俺も確認しておこう。お前が犯人だとも限らんからな、霧切」

    霧切「ええ、構わないわよ。私としても、可能性を潰してくれるなら有り難いわ」

    桑田(そのやり取りのあと、十神によるチェックでも……やはり、腐川は死んでいるという結論になった)

    セレス「ではここでこうしていても仕方ありませんし、体育館へ向かいましょうか」

    江ノ島「そう、だね……あーもう、なんであんなクマの言いなりになんなきゃいけないのさ! ムカツク!」

    大和田「そりゃたぶん大なり小なり全員思ってる事だろーけどな」

    桑田(ぞろぞろと。全員が体育館へと歩いて行く。だけどオレには、一つどうしても気がかりなことがあった。そのせいで、動こうって気が、どうしても起きなかったんだ)

    舞園「桑田君、どうしたんですか?」

    桑田「あ、ああ……舞園ちゃん。いや、その、なんつーか。こえーんだよ」

    舞園「そんなの、私もそうですよ。人が死んでて……怖くないわけ、ありません」

    桑田「それは、そうなんだけどよ。でもそれだけじゃねーっつーか」

    舞園「それだけじゃない、ですか?」

    桑田「あ、ああ。ホラ、腐川の死体があった場所って、オレの部屋だろ? だから……」

    舞園「これから先も住むのが怖い、ですか?」

    桑田「そ、そうだな。それもある。けど、オレが真っ先に疑われるってのが分かりきってるってのが、実は一番こえー」

    舞園「でも、別に疑われたとしても、そんなの一瞬の事なんじゃないですか? だって、殺人を犯したクロは“卒業”なんですから」

    桑田「そ、そっか。犯人はここから出ていく事になるんだから……」

    舞園「はい、すぐに疑いは晴れるはずです。だって桑田君が殺してなければ、桑田君はこの学園に残る事になるはずですよね?」

    桑田「そう、だよな! おう、そう考えりゃ、だいぶ気は楽になったぜ……ありがとな、舞園ちゃん」

    舞園「いえ、いいんですよ。それより早く行かないと、遅れちゃいますよ!」

    桑田「おう、じゃあ行こうぜ……!」

    舞園「はい!」

    桑田(オレは舞園ちゃんと一緒に走って、学校エリア一階のトイレの前あたりで他のみんなに追いついた。合流した時点でもう体育館は目と鼻の先だ。先導していた大神が扉を開け、全員が体育館へと足を踏み入れた。……すると)

    モノクマ「みんな遅いよ! 急げって言ったでしょ!? ……でも全員揃ってるのは感心だね。逃げ出すような人がいなかったみたいで、先生は感動しています」
  52. 52 : : 2014/04/23(水) 01:03:28
    セレス「ここで逃げても仕方ありませんもの。それで、仲間の死体を放っておかせてまでわたくしたちを体育館なんかに集めた理由をお聞かせ願えますか?」

    モノクマ「はい。実は……」

    十神「待て。その前に俺から確認したいことがある」

    モノクマ「はにゃ?」

    十神「仲間の誰かを殺したクロは“卒業”できる……つまりこの学園からの脱出が許されるんだったな? これは校則に書いてあった事だ。という事は、腐川を殺した犯人はここから出られるのか?」

    モノクマ「うぷぷ、甘い、甘いよそれは。砂糖をまぶした金平糖をチョコレートフォンデュで食べるより甘いよ!」

    朝日奈「それ美味しいの!?」

    桑田「そこは関係ねーだろ!」

    モノクマ「というかですね、その説明をしようと思ってボクはオマエラを呼んだんですけど。十神クンのせっかちさが、時間に追われる現代人を映し出す鏡のようで滑稽ですな!」

    十神「何……!」

    モノクマ「それでは説明しましょう……」

    桑田(それからモノクマの始めた説明によると、どうやら生徒内で殺人が起きた場合、捜査のための一定の自由時間が与えられ、その後、学級裁判とかいうモンが開かれるから、そこで議論して犯人を見つけ出せってコトらしい。正しいクロを指摘出来ればクロをおしおきし、残った人物で共同生活の再開。間違った人物を指摘した場合は残ったシロ全員がおしおきされて、共同生活は強制終了……それがモノクマが語った、この“コロシアイ学園生活”の追加ルールだった。けどよ)

    桑田「と、ところで……さっきから連呼してるおしおき、ってのは何のことだよ?」

    モノクマ「ん? ああ、簡単に行っちゃえば処刑だよね」

    桑田「は? しょ、処刑……!?」

    不二咲「処刑って……何の事ぉ?」

    モノクマ「処刑は処刑だよ。ショ・ケ・イ! 電気椅子でビリビリ! 毒ガスでモクモク! ハリケーンなんちゃらで体がバラったりってヤツだよ!」

    山田「な、な、な……なんですとォーッ!?」

    葉隠「ま、待てって……リアルな話、腐川っちが死んじまった時点でオメーらのドッキリは事故ってんだって! もうそんな設定いいからよ、さっさとここから出してくれって!」

    モノクマ「ドッキリって、キミまだそんな事言ってんの? はあ、もうなんでこんなに残念な奴が多いんだよ。おかげで計画もだいぶ狂っちゃってるしさあ」
  53. 53 : : 2014/04/23(水) 23:19:18
    霧切「計画? 何の話かしら?」

    モノクマ「あ、いやいや。これはこっちの話。ま、それはさておき、さっきも言った通りオマエラにはこれから捜査してもらい、腐川さんを殺したクロを突きとめてもらうワケですが……」

    大和田「待ちやがれこンのクマ野郎!」

    桑田(言葉を遮って、大和田はそんな叫びをあげつつモノクマに肉迫する。そして掴みあげたかと思うと……)

    大和田「なァにが捜査だ! テメェ、ブッ転がされてえのか!? ンなもんいいからとっととこっからオレらを出しゃあがれ!」

    モノクマ「う、うわーッ! 学園長への暴力は、校則違反だよーッ!」

    大和田「うるせえ! 校則違反だとォ? それが何だってんだ!」

    桑田(……と。そのタイミングで、急にモノクマは黙り込んだ。それと同時に、モノクマから妙な音が鳴りだした)

    大和田「あァ? 何急に変な機械音出してやがんだ! 何か言いやがれこのォ!」

    霧切「……! 危ない、投げて!」

    大和田「あ?」

    霧切「いいから早く!」

    大和田「お、おう」

    桑田(霧切の強い語調に気圧されたのか、大和田は掴みあげたモノクマを、虚空へ向かって放り投げた。……瞬間)

    大和田「なッ……!?」

    朝日奈「え、う、ウソ……」

    山田「ば、ば、ば……」

    苗木「爆発……した?」

    桑田(爆音に、熱風。そして飛び散る金属片。間違いなく、さっきまで大和田が掴んでいたモノクマは、爆発していた。もし霧切が投げろ、なんて言わなけりゃ今頃大和田は……)

    不二咲「で、でもぉ……モノクマが爆発したって事は、私達にコロシアイなんて強要する存在もいなくなった、って事……だよねぇ?」

    石丸「そ、そうだ、そのはずだ! あとは脱出口を探すだけだな!」

    モノクマ「いやだからオマエラ甘いって言ってるでしょ」

    山田「ヒギャアアアアア! モノクマの幽霊がああああああ!」

    葉隠「はあ!? ゆゆゆゆ、幽霊!? そんな非現実的なオカルトじみたもん、俺は信じねーぞ! 誰か助けて!」

    桑田「オメーは信じてるのか信じてねえのかどっちなんだっつの!」

    十神「だいたい、ロボットに幽霊も何もあるか。大方スペアがあったというところだろう」

    葉隠「なんだ、それならいいべ」

    桑田「立ち直りはえーなオイ!?」
  54. 54 : : 2014/04/23(水) 23:20:04
    大和田「テメェ……幽霊でもスペアでもなんでもいいけどよォ」

    葉隠「いやだから幽霊はイカンって……」

    桑田「だからそれこそどーでもいいだろっての!」

    大和田「さっきのマジにオレを殺そうとしやがったな!?」

    モノクマ「当たり前じゃん。マジに殺そうとしたもん。オマエが校則違反したのが悪いんでしょ? それに、タイミング的に見せしめ役にも丁度いいかな、なーんて思ったんだけど……霧切さんのせいで回避されちゃった。まあいいや。とにかく、校則違反に関してはさっきみたいなグレートな体罰を適用しちゃうよ。それが嫌なら大人しくコロシアイすること、いいね!?」

    桑田「大人しく、ってのはまあ百歩譲って受け入れるとしてもコロシアイなんぞ誰がするかっての!」

    モノクマ「でも、実際起きてるよね?」

    霧切「そうね。そこは、否定しても仕方がないわ……。それで? さっきあなたは何を言いかけたの?」

    モノクマ「ああ、そうそう。どこかのモロコシヘッドのせいで忘れるとこだったよ」

    大和田「ンだとコラァ!」

    モノクマ「うぷぷ、誰が大和田クンの事って言ったかな? まあ大和田クンの事なんですけどね!」

    十神「おい、さっさと本題に入れ……!」

    モノクマ「うん、そうだね。えーと、いきなり『さあ捜査しろ』なんて言われても、殺人事件の捜査なんてしたことのない素人ばかりであろうオマエラのために、こんなものを用意しました。名付けて、『ザ・モノクマファイル』ぅ!」

    桑田(そう言ったモノクマは、オレ達に赤いファイルを手渡してきた)

    モノクマ「それには死体の状況なんかをある程度まとめてあるからね。捜査の足しにでもしてチョーダイな。それじゃ、またあとで、学級裁判場でお会いしましょう!」

    桑田(そんな言葉だけを残し、モノクマはまたどこへともなく消え去った。まったく、マジに何だっつーんだよ、アイツは)
  55. 55 : : 2014/04/23(水) 23:21:30
    大和田「ちッ、胸糞悪ぃヤローだぜ」

    苗木「モノクマの悪口ならボクも山ほど言いたいけどさ……でも今は、早く捜査に移った方がいいんじゃないかな。時間も限られてるようだしさ」

    桑田「そう、だよな。犯人を見つけねえと……オレら全員が、処刑されちまうんだもんな」

    セレス「あら? 『オレら全員』ですか?」

    桑田「だってそうだろ? 間違った奴を指名しちまったら、こ、殺されるんだろーがよ」

    セレス「いえ、貴方は事情が別なのでは、と思いまして」

    苗木「え、それってどういう……?」

    セレス「先ほど配られたモノクマファイルにも書いてある事実ですが……わざわざ読むまでもない程に明らかな事実があるではありませんか」

    十神「そうか、そういう事か。セレス、お前が指摘したいのはこの事だろう? 『死体の発見現場は桑田の個室である』……というな」

    セレス「ええ、まさしく」

    朝日奈「え、じゃあ、それって……犯人は」

    大和田「桑田ァ……オメェか!?」

    桑田「ち、ちげーって! んなわけねーだろ!」

    桑田(クソ、さっき疑われるかも、なんて考えちゃいたけどよ……実際疑いの目を向けられると、ロクな言葉が出てこねー)

    霧切「桑田君が犯人かどうかなんて、まだわからないわよ。捜査を始めてすらいないんだもの」

    山田「ですが、一番怪しいのは桑田怜恩殿に違いないのでは?」

    霧切「いいえ、それは正確じゃないわね」

    セレス「どういう事です?」

    霧切「忘れたの? ……いえ、違うわね。あの時セレスさんと山田君はいなかったから、仕方ないのかもしれないけれど。桑田君の部屋の鍵はかかっていなかったのよ」

    山田「へ? 鍵がかかって、いなかった?」

    桑田「あ、ああ……どうも、出る時にかけ忘れちまったみたいでよ」

    大神「だが、それがどうしたのだ?」

    不二咲「んっと、たぶん……桑田君よりも後に食堂に来た、苗木君、江ノ島さん、セレスさんなら桑田君の部屋に死体を置くことは可能だった……って事じゃないかなぁ」
  56. 56 : : 2014/04/23(水) 23:22:44
    江ノ島「はァ? アタシまで疑われんの!?」

    苗木「ボクも容疑者……なんだね」

    セレス「……ふぅ、わたくしも、ですか」

    石丸「これを機に遅刻癖を無くすべきだ!」

    桑田「オメーはどこを論点にしてえんだよ!」

    霧切「とにかく、桑田君が有力な容疑者の一人であることまでは否定しないけれど、さっき不二咲さんが挙げた三人も同じくらいに疑わしいって事を忘れないようにして頂戴」

    大和田「あァ……わぁったよ」

    葉隠「じゃあ、そろそろ行くか?」

    霧切「いいえ、待って頂戴。もう一つ大事な事を先に決めさせて」

    舞園「大事な事、ですか?」

    霧切「ええ。現場の見張り役よ」

    桑田「そっか、誰かが見張ってねーと犯人に証拠隠滅されちまうかもしんねーしな」

    大和田「だったら、オレがやってやるよ……頭使うのは苦手だしな」

    朝日奈「じゃあ、これで見張り役も決まったし、捜査開始だね!」

    十神「いや待て、コイツ一人で見張りをさせるわけにはいかん」

    大和田「何でだよ? 現場が個室なら、一人いりゃ見張りの目は行き届くだろ」

    十神「桑田、苗木、江ノ島、セレス……この四人は有力な容疑者だ。それは認めよう。だが、有力ではないにせよ、ここにいる俺達全員が容疑者だという事を忘れてもらっては困る」

    大和田「何が言いてえ?」

    十神「つまり、お前が犯人であるという可能性もゼロではない、という事だ」

    大和田「あんだとォ!?」

    霧切「十神君の言う通りね。何らかのトリックを使って、食堂にいながら死体を桑田君の部屋へ運んだ……その可能性もあるわ。大和田君を特別疑っているわけじゃないけれど、見張りが一人というのはやっぱり不都合があるわね」

    大神「ならば、我がもう一人の見張りに立とう」

    山田「むむむ、大和田紋土殿と大神さくら殿ですか……この武闘派二人が見張りでしたら安心ですな」

    葉隠「証拠隠滅しようなんて考え抱く奴は、そうそういなさそうだべ」

    桑田「じゃあ、今度こそもう何もねえよな?」

    霧切「ええ、そうね。ただ念のために大和田君、大神さん。先に現場へ行ってちょうだい」

    大和田「そーだな……オレらが行く前に証拠隠滅されちゃたまったもんじゃねえし」

    大神「では、向かうとしよう」

    桑田(そう言って、二人はオレ達に背を向け、体育館を後にした)

    十神「それでは、そろそろ始めるとするか。腐川殺しの捜査をな」

    桑田(その十神の宣言の元、各々体育館を後にした。残ったのは……オレと苗木と、舞園ちゃん。この三人のみだ)
  57. 57 : : 2014/04/23(水) 23:23:06


                 ――捜査 開始――

  58. 58 : : 2014/04/25(金) 04:52:10
    苗木「みんな、行っちゃったね」

    舞園「そう、ですね」

    桑田「オレらもさっさと行かねえと、マズいよな?」

    苗木「そうだね。ボクにも容疑がかかっちゃってるわけだし……疑いを晴らさないと、みんな処刑されちゃう!」

    桑田「オレだってそーだよ……つか、オレの方がオメーより状況悪いと思うぜ?」

    苗木「だよね……。でも、ゴメン。やっぱり、完全に信じるのは……」

    桑田「だろーな。ま、今はそれでいいぜ。オレはオレの疑いを晴らすだけだ。オメーみてえに、な」

    舞園「でもとりあえず、まずはさっき配られたモノクマファイルを見てみませんか?」

    桑田「そういや、まだ見てねえな」

    苗木「何か有益な情報もあるかもしれない。先に読んでおこうか」

    桑田「だな」

    桑田(えーと、何々……。


    被害者は桑田怜恩の個室で発見された。
    腹部に刀が刺さっており、それ以外にも幅五ミリにも満たない刺し傷が体のあちらこちらに散見される。
    また、被害者は異様に長い舌を露出させた状態で死んでいた。


    ……か)


        コトダマ
         【モノクマファイル壱】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:上記参照
  59. 59 : : 2014/04/25(金) 04:52:37
    桑田「てか、情報少ねーな。何が死体の状況をまとめた、だっての」

    苗木「ある程度、とは言ってたけど……ホントに情報少ないね」

    舞園「亡くなった時間どころか、被害者の名前すら明記されてませんよ」

    桑田「まあ、被害者の名前ぐれーは分かりきってるけどよ」

    苗木「でもそのくらい、書いてくれても良かったのにね……。不備だらけじゃないか、このファイル」

    桑田(それもそうだよな……。なんか理由でもあんのか? 一応覚えとくか。役に立つかはわかんねえけど)


        コトダマ
         【モノクマファイルの不備?】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:モノクマファイルには死亡時刻どころか
    被害者名すら明記されていなかった。
  60. 60 : : 2014/04/25(金) 04:53:12
    桑田「さて、そんでこれからどーするよ?」

    苗木「とりあえず、現場の捜査からした方がいいんじゃない? ボクと桑田クンは……入れてもらえるか怪しいけど」

    舞園「でも行く必要はあると思いますよ。行ってみてダメなら、私が代表して調べてきた内容をお二人に伝えさせてもらいますし」

    桑田「そーだな……。その場合、舞園ちゃんにツラい役目押し付ける事になっちまうけど」

    苗木「ホントにいいの、舞園さん?」

    舞園「ええ、任せてください!」

    桑田(舞園ちゃん、張り切ってんな。……よし、オレも負けてらんねえな!)

    桑田「じゃあ行くか、現場、オレの部屋に!」

    苗木「うん、行ってみよう!」
  61. 61 : : 2014/04/25(金) 20:42:31
    桑田(オレの部屋の前に到着すると、そこには朝日奈が立っていた)

    桑田「オメー、入らねえの? つか、こんなとこで何やってんだよ」

    朝日奈「あ、桑田に、苗木! それと、舞園ちゃんも?」

    舞園「はい、それがどうかしましたか?」

    朝日奈「え、えっと。……今一番怪しい二人と一緒なんだよ? その、怖く、ないの?」

    舞園「怖いわけないじゃないですか。私は二人を信用してますから」

    朝日奈「信用……」

    桑田(信用、信用か。なんか舞園ちゃんにそんな風に言われると、ちょっとハズいな)

    苗木「そ、それで、朝日奈さんは結局、何してるの?」

    桑田(この反応、たぶん苗木もオレと一緒だな。ま、そりゃそっか。あの舞園ちゃんにこんな風に言われりゃ、なあ)

    朝日奈「一応、有力な容疑者の四人は部屋に入れないようにした方がいいのかな、とか思って……それで部屋の前で見張りしてたんだけど……」

    桑田「アホか。オメーがここで見張りしてたら中で見張りしてる二人の意味がねーだろがよ?」

    朝日奈「それは、そうなんだけどさ……ちょっとでも、さくらちゃんの負担を減らしたいっていうか」

    苗木「じゃあやっぱり、ボクらはダメ?」

    朝日奈「そ、それは……うーん」

    桑田「どーしたんだよ?」

    朝日奈「今の、舞園ちゃんの言葉が、さ。……たぶん、さくらちゃんが疑われる立場になってたとしたら、私は、たぶん……ううん、絶対! 今の舞園ちゃんみたいに、さくらちゃんを信じた、と思うんだよね」

    桑田「それで?」

    朝日奈「うん、決めたよ! 舞園ちゃんにそこまで信用されてる二人なら、たぶん大丈夫だよね! 私も、完全には無理だけど、二人を信じてみようと思う! それから江ノ島ちゃんも、セレスちゃんも!」

    桑田「全員信じるっての?」

    朝日奈「うん、だって全員を疑うより、その方が気は楽だもんね!」

    苗木「うん、そうだよね。それに……ボクらの中の誰かじゃない。モノクマがやったって可能性だってあるんだ!」

    朝日奈「そうだよね! やっぱそうだよね! うん、じゃあ二人とも、通っていいよ! てか、私もう行くね!」

    桑田「え? 行くって、どこに?」

    朝日奈「どこかだよ! 証拠のありそうなところ! それじゃね!」

    桑田(朝日奈の奴……走って行っちまいやがった……。あ、でも石丸につかまってる。ってアイツ声でけえよ! ここまで『廊下は走るんじゃない!』って声聞こえてきてるっての!)
  62. 62 : : 2014/04/25(金) 20:42:52
    桑田「……とにかく、これで現場に入れるんだよな?」

    舞園「ええ、そうみたいですね」

    桑田「舞園ちゃんのおかげだぜ……マジ、サンキューな!」

    苗木「ボクからも感謝するよ。ホントにありがとね、舞園さん」

    舞園「いえ、そんな……私は何もしてませんよ」

    苗木「いや、そんな謙遜しないでよ……舞園さんがいなかったら、ボクら現場に入れなかったかもしれないんだし」

    桑田「じゃあそんな舞園ちゃんの業績を無駄にしないためにも……入るか、そろそろ」

    苗木「そう、だね」

    舞園「わかりました。……開けてください」

    桑田「おう」

    桑田(苗木も舞園ちゃんも、また死体を見る覚悟は出来たみてーだ。それを確認したオレは、個室のドアを開けた)
  63. 63 : : 2014/04/25(金) 20:43:18
    桑田(個室の中には、見張り役の大和田と大神、それから捜査しているらしい霧切の三人の姿があった。……あともちろん、腐川の死体も、だけどな)

    大和田「おう、オメーらか」

    大神「先ほどは桑田も苗木も、有力な容疑者などと言われていたが……我は大和田と同じく、頭を使うことを得手とはしていないからな。頭から疑ってはおらぬ」

    大和田「けど、誰もが犯人の可能性がある、っつーのは十神のヤローが言ってた通りだからよ……もし、オメェらの誰かが犯人で、証拠隠滅しようなんて考えるようならマジで完璧に、グチャッと殺す! ……いいな?」

    桑田「安心しろっての。そもそもオレは犯人じゃねえよ」

    大和田「だと、いいけどよ」

    苗木「とりあえず、捜査しよっか」

    舞園「まずはやっぱり死体……はちょっと怖いので後回しにして、部屋の様子から調べましょうか」

    苗木「うん、わかった。そうしよっか」

    桑田「つっても……」

    桑田(オレは部屋を見渡す。……腐川の死体があって、何人もの人間がいる事以外は、パッと見オレが今朝部屋を出た時と大して変わらねーな、こりゃ)


        コトダマ
         【個室の変化】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:桑田の個室は朝、桑田が部屋を出る直前と比べても
           死体がある事以外に変わった点は特に見当たらなかった。
  64. 64 : : 2014/04/25(金) 20:43:36
    霧切「……妙ね」

    桑田「は? 妙って何がだよ?」

    霧切「この部屋、綺麗すぎるわ」

    苗木「え、そうかな?」

    舞園「掃除しているようには見えないんですけど……」

    桑田「う……わ、わぁったよ! この件が片付いたら 部屋掃除すりゃいいんだろ!」

    霧切「別に部屋の清掃状況について言ってるわけじゃないわ。……この部屋をあちこち見て回ったけれど、どこにも争った跡が無かったのよ」

    桑田「争った跡が、ない?」

    苗木「それってつまり……えっと、どういう事?」

    舞園「抵抗する間もなく、腐川さんは殺された……そういう事ですか?」

    霧切「……死体を調べてみればいいんじゃないかしら?」


        コトダマ
         【霧切の証言】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:桑田の部屋には争った形跡は一切なかった。
  65. 65 : : 2014/04/27(日) 09:55:05
    舞園「死体を、ですか……」

    苗木「それは、やっぱりまだ踏ん切りがつかないって言うか……」

    桑田(けど、他に調べる事っつっても……)

    大和田「そういやぁよ」

    舞園「何でしょう?」

    大和田「いや、ちっと気になってたんだけどよ。あの女の腹に刺さってる刀……ありゃ一体なんだ?」

    霧切「そういえば、それは私も気になるわね。犯人はあんなもの、どこから調達したのかしら?」

    桑田「ああ、それならたぶんオレの部屋からだぜ」

    大神「部屋に刀があったのか?」

    桑田「いや、実は昨日、霧切や舞園ちゃんと別れた後だな。苗木と購買のガチャガチャ回しに行ってよ。そん時に出た景品なんだ。証人なら苗木と……あと、たまたま購買にいた江ノ島ちゃんだな」

    苗木「あ、うん。それはボクも見てたよ。斬鉄剣、だよね? ちゃんと保管しといてって言ったんだけど」

    大和田「つかどっちも有力容疑者じゃねえか……まあいいけどよ」

    霧切「けど、あのガチャガチャにそんな危険物が入ってたなんて……」

    桑田「いや待てって。危険物じゃねーよ、別に」

    霧切「けれど、刀なんでしょう?」

    桑田「でも残鉄剣だぜ?」

    苗木「だから斬鉄剣だよね? だからこそ危ないと思うんだけど」

    桑田「あー……なんかさ、苗木、オメー昨日から変な勘違いしてねー?」

    苗木「勘違い……?」

    桑田「ちっと待ってろ、説明文も一緒に保管してたはずだ……お、あったあった。これだ」

    苗木「えっと……え、残鉄剣? 鉄どころか……生物も斬れないって!?」

    桑田「な? 別になーんも危険じゃねえだろ?」

    苗木「ほ、ホントだね……これは昨日桑田クンがゴミって言ったのもわかるかも……」


        コトダマ
         【残鉄剣】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:腐川の腹部に刺さっていた刀で、
    桑田がモノモノマシーンで引き当てた物。
    その斬れ味は鉄どころか生物も斬れないなまくら。
  66. 66 : : 2014/04/27(日) 09:56:04
    桑田「他には特に何もねー、よな?」

    大和田「あァ、オレが気になったのはそんくれーだな……」

    大神「そういえば、女子の部屋には裁縫セットと人体急所マップが配布されていたが、男子の部屋には工具セットが配布されているのだったな? 桑田の部屋の物は使用された形跡はないのか?」

    桑田「あ、そういやそうだな。たしかあちこちに刺し傷があるんだっけ? それにドライバーとか使われてるかもな……」

    桑田(オレは言われるまま、自分の部屋の工具セットを確認した)

    桑田「いや、別に使われてねーな。これは関係ないんじゃねーの?」

    大神「む、そうか。ならばよいのだが」
  67. 67 : : 2014/04/27(日) 09:56:19
    霧切「……どうやら、苗木君も舞園さんもまだ踏ん切りがついてないみたいだし、私から一つ質問させてもらうわ」

    桑田「あん? 何だよ?」

    霧切「おそらく今回の学級裁判、どこかで必ず、桑田君、苗木君、江ノ島さん、セレスさん。『この四人の中の誰が犯人か』が議論の焦点になるはずよ」

    苗木「確定なんだね……」

    霧切「そこは仕方ないわ。私としては他の可能性も吟味したいけれど、みんながみんなそう考えはしないでしょうし。けど、だからこそ確かめておきたいのよ。あなたたちのアリバイをね」

    桑田「アリバイっつってもよー。何時ごろのアリバイだよ? モノクマファイルには具体的に書かれてなかったぜ」

    霧切「ええ。だから昨日、最後に腐川さんがみんなの前に姿を現した報告会の解散後から朝食会に来るまでの間、というかなり幅の広い時間のアリバイになってしまうのだけど」

    桑田「広いっつってもそんなん、シャワー浴びてから寝た以外にねえんだけどな。つか、他の連中も同じじゃね?」

    苗木「うん、そうだね。ボクもだいたい似たような感じだよ。ただ、上手く寝付けなくてさ。それで今朝は寝坊して遅れちゃったんだけど」

    桑田「まあ、だいたいそんなんだよな。夜時間の出歩き禁止ルールもあったしよ」

    舞園「いえ、ですが昨日の報告会が解散になったのは夜の七時くらいでしたから、夜時間までは三時間ほど猶予がありましたよ」

    大和田「でもよ、夜時間の出歩き禁止ってルールは所詮、オレらの間の口約束だろ? 校則破ったらヤベーのはさっき身に染みたけどよ……アレに比べりゃ、はるかにマシな罰則しかねーじゃねえか」

    霧切「そうね。出歩きがバレても、殺すだけのメリットがあるとなれば話は別、じゃないかしら?」


        コトダマ
         【有力容疑者たちのアリバイ】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:桑田 報告会解散後はシャワーを浴びて寝た
           苗木 報告会解散後は部屋で眠った。
              だが中々寝つけずにいたために今朝は寝坊した。
  68. 68 : : 2014/04/27(日) 09:56:43
    大神「だが、そうなると果たして腐川を殺すことにメリットのある人物がいるのか、という事になるが」

    舞園「そんな人、いたんですかね……?」

    霧切「所謂動機ね。それも確かに不明だわ」

    苗木「今朝、たしか十神クンが『腐川さんは標的として選ばれやすそうだ』とは言ってたけど……」


        コトダマ
         【腐川殺しの動機】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:犯人が腐川を殺害相手に選んだ動機は現在の所不明。
           “超高校級の文学少女”というインドアな才能のため、
           標的に選びやすかったというだけなのだろうか?
  69. 69 : : 2014/04/28(月) 18:54:41
    長い舌が露出?そんな状態で“腐川”を殺す?そんなことができるやつって・・1人しか思いつかないけど多分違いますね
  70. 70 : : 2014/04/28(月) 18:55:31
    訂正です、そんな状態の腐川・・ですね
  71. 71 : : 2014/04/28(月) 21:28:22
    >>69
    その一人は果たして正解なのか不正解なのか、いろいろ推理してみてください!
    ……なんて言えるほど大した謎を用意できてる気は一切しませんww


    霧切「何にせよ、今の所聞きたい事はこのくらいね。……さて、そろそろ踏ん切りは付いたかしら?」

    舞園「う、うーん……」

    苗木「それは……」

    桑田「でも、やんなきゃなんねーんだよな。だったら……やるしかねーんだよな。クソ、分かったよ。やってやる……!」

    苗木「桑田クン……」

    桑田(オレは腐川の死体に近付いた。何というか、刀が刺さってる人間を間近で見るなんて体験はもちろんこれが初めてだ。正直、すっげーこええ。けど、調べるしか、ねーんだよな)

    桑田「でも、死体を調べるって、どーやんだ?」

    霧切「まずは気になる所を調べてみればいいんじゃない?」

    桑田「そ、そーだな。気になる所っつったら……」

    桑田(やっぱ、腹だよな。刀、刺さってんもんな。というわけでよく見てみると)

    桑田「……あん?」

    苗木「どうしたの?」

    桑田「いや、よく見りゃよ、血が少ねえんだよな」

    舞園「血が?」

    桑田「おう、だってこんだけ思いっきり刺さってんだからもっとこう、ドバっと出ててもおかしくねえと思うんだけどな」

    霧切「もうちょっと頭のいい表現は出来ないのかしら」

    桑田「う、うるせえな、ほっとけっての!」

    桑田(たしかに服なんかにも血が付いちゃいるが……どっちかっつーと他の刺し傷の方が血の跡が多いように見える。傷跡の量の問題か?)


        コトダマ
         【腹部の刺し傷】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:刀が刺さっている腹部からの出血が少ないように見えた。
           他の刺し傷からの出血と相対的に見た結果だろうか?
  72. 72 : : 2014/04/28(月) 21:28:44
    桑田「他には、そーだな……やっぱ全身の刺し傷ってのも気になるか」

    桑田(というわけで、刺し傷をよく見てみる。かなりあちこちに傷があるみてーだな)

    桑田「……あん?」

    舞園「また何か見つけたんですか?」

    桑田「いや、これは……」

    桑田(何か所か、刺し傷の位置がメチャクチャちけーところがある。なんか意味あんのか、これ? 一応舞園ちゃん達にも伝えとくか)


        コトダマ
         【全身の刺し傷】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:全身に散見される刺し傷。
           何か所か、やたらと近い場所に刺し傷があるようだ。
  73. 73 : : 2014/04/28(月) 21:29:32
    桑田「……こんなもんかな」

    霧切「いえ、まだよ」

    桑田「は?」

    霧切「まだ調べきれていないわ」

    桑田「どーいう事だよ?」

    舞園「だいぶいろいろと見つけてくれたと思いますけど」

    霧切「……死体の、手の指よ」

    桑田「指だぁ?」

    桑田(言われた通り、腐川の指を眺める。けど)

    桑田「何もねーぞ?」

    桑田(別に汚れてもいねえし、何か書かれてるわけでもねえ)

    苗木「……あ!」

    桑田「どーした?」

    苗木「いや、ホラ、これ!」

    桑田「どれどれ……んん? 何だコレ」

    桑田(苗木の指した場所を見てみると、腐川の手の爪の間に何かが挟まっていた。でもよ、これって)

    桑田「ゴミとかじゃねえの? 垢とかさ」

    苗木「そ、そうなのかな」

    霧切「いいえ、苗木君。それが正解よ」

    舞園「けど、何なんですかこれ?」

    霧切「それは……人の皮膚よ」

    苗木「ひ、皮膚!?」

    霧切「ええ、おそらく犯人と揉み合いにあった時にでも、相手の体の一部を引っ掻いたんでしょうね。その時に挟まった物だと思うわ」

    舞園「あ、よくドラマとかでもそういうの、ありますね! こんな場所じゃなければ、DNA鑑定なんかで一発なんでしょうけど……」

    霧切「さすがにそこまでは無理ね。知識も機材も、何もないもの。それとも誰か持ってるかしら?」

    桑田「持ってるわけねーだろ」

    霧切「そうよね。でも、これでわかったでしょう?」

    舞園「え、わかったって、何のことですか?」

    大和田「すまねーが、オレにゃサッパリだ」

    大神「我もだ。特別怠ったというわけではないが……もう少し、座学にも精を出すべきであったな」

    桑田「いや、ちっと考えりゃさすがに分かんだろ……さっき霧切が言ってたじゃねーか。 『この部屋には争った形跡が一つもない』んだよ」

    苗木「あ、てことは!」

    舞園「桑田君の個室は、現場じゃない……?」

    霧切「ええ、そういう事になるわ」

    桑田(オイオイ、これって実は……かなり強力な手札なんじゃねえの?)

        コトダマ
         【霧切の証言】の情報を更新しました。

        内容:桑田の部屋には争った形跡は一切なかった。
           だが、腐川の手の指の爪には皮膚が挟まっていたことから
           腐川と犯人はもみ合った可能性が高い。
           つまり、桑田の個室は現場ではないのかもしれない。
  74. 74 : : 2014/04/28(月) 21:29:54
    桑田「今度こそ、これでこの部屋で集まりそうな情報は終わりか?」

    苗木「うん、だろうね」

    舞園「結構いろいろわかりましたね」

    桑田「まあ、でもまだ何にも見えてこねーけどな」

    舞園「そうですね……どれをどう考えればいいのか、いまだによくわかりません」

    苗木「それはボクも同じだよ……殺人事件の捜査なんてした事ないんだから、当然だろうけどさ」

    舞園「……あの」

    桑田「ん? どーした、舞園ちゃん」

    舞園「これから、私達も手分けして捜査しませんか?」

    苗木「え?」

    舞園「三人で一ヶ所を調べれば確かに精度は上がるのかもしれませんけど……」

    桑田「今は雑でも、ちょっとでも多くの情報が欲しい、か」

    舞園「ええ。……ダメ、ですかね?」

    桑田「いや、いいと思うぜ。苗木はどうだ?」

    苗木「うん。そういう事ならボクも異論はないよ」

    舞園「それじゃあ、私、先に行きますね!」

    苗木「ボクも行こうかな。調べたい事はいくつかあるし。それじゃあ桑田クン、それに霧切さんに大神さんに大和田クンも、またあとで」

    霧切「私も、この場所は調べ尽くしたでしょうし……そろそろ別の場所の捜査に行くわ。桑田君も頑張ってね」

    桑田「お、おう。なんか珍しーな、オメーがそんな風に言うの」

    霧切「別にいいじゃない。私はあなたが今回の事件の犯人だって可能性は低いと思ってるし」

    桑田「そーなの? いや、そりゃ有り難いけどさ」

    霧切「けどこの話は学級裁判でしましょう。今は少しでも時間が惜しいもの。それじゃあ」

    桑田(結局、部屋に残ったのはオレと見張り組だけか。……けど、どこ調べっかな。えーと……そうだ。苗木のは把握してっけど、江ノ島ちゃんとセレスのアリバイも聞いとくかな。ま、無いって言われんだろーけど念のためだ、念のため。あ、でもそんなら他になんか見たり聞いたりしてる奴もいるかもしんねーな。いろんな奴の証言も聞いて回るか。で、調べる場所っつーと……やっぱトラッシュルームとかか? 証拠隠滅されてるかもしんねーしな。あとは、現場の特定だな……難しそうだけどよ。他は一応、入れそうなら腐川の部屋も見といていいかもな。とりあえずはこんなもんか? そんじゃあとりあえず、トラッシュルームから見に行くかな……)
  75. 75 : : 2014/04/29(火) 15:56:14
    ガラス玉あったりして・・
  76. 76 : : 2014/05/02(金) 21:06:36
    桑田(トラッシュルームにやってきた。するとそこには山田と石丸に朝日奈がいた。てか、これって)

    桑田「どーいう組み合わせだよ?」

    石丸「ああ、桑田くんか。いや何、ひょっとすると犯人がここで証拠隠滅しているかもしれないと思ってな」

    桑田「ふーん、考える事は一緒か」

    朝日奈「じゃあ、桑田もここの捜査に?」

    桑田「ま、そーいう事だな」

    山田「でしたら、ちょうどいいタイミングでしたな。今、このシャッターを開けようとしていたところですぞ」

    桑田「開けようとって……開くのか、それ?」

    石丸「当然だろう! 開かなければゴミの処理ができないからな!」

    桑田「そりゃそうか。けどどうやって開けるんだ? 鍵かかってるんじゃなかったっけ?」

    朝日奈「あ、それはね……!」

    山田「この僕が鍵を所持しているのですよ」

    石丸「うむ。昨日の報告会の後、僕の前にモノクマが現れてな。このままだとゴミの処理をする人間がいなくて学園中がゴミだらけになってしまう、と相談を受けたのだ。なので掃除当番を決めて欲しい、とな」

    桑田「ふーん、それが山田と何の関係があるわけ?」

    山田「たまたま通りがかった僕が掃除当番に立候補した、というわけですよ」

    石丸「うむ、彼の自主性に僕は感動したぞ!」

    朝日奈「で、掃除当番の山田がモノクマからトラッシュルームの鍵を受け取った、って事みたい」

    桑田「なーるほどな。つまり掃除当番は自由にトラッシュルームに出入りできるって事だな……?」

    桑田(一応、覚えとくか)


        コトダマ
         【掃除当番】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:掃除当番になると、トラッシュルームの
           シャッターの鍵を預けられる。
           現在の掃除当番は山田らしい。
  77. 77 : : 2014/05/02(金) 21:07:57
    山田「では、開けますぞ」

    桑田(山田の手によりトラッシュルームのシャッターが開いた。奥には焼却炉をはじめとした、ゴミ処理施設として申し分ない設備が整っている。さて、どこから調べるか……やっぱ一番怪しいのは焼却炉だよな?)

    石丸「む、桑田くん、待ちたまえ!」

    桑田(焼却炉に近付くオレを、石丸が止める)

    石丸「あん? どうしたよ?」

    石丸「僕は別に……ハナから君が犯人だと疑い、決めつけるつもりはない……ないが、キミを一人で捜査させるわけにはいかない!」

    桑田「疑ってんじゃねーか、結局……まあ別にやましい事もねーしいいけどよ。そんなに言うならオメーが見張ってれば?」

    石丸「うむ、そうさせてもらおう!」

    桑田(石丸の監視の元、オレは捜査を始めた。……けど、焼却炉にも、隣にある緑色の箱の中にも、これといって証拠になりそうなものは無かった)

    桑田「ちぇー、ここはハズレかよ」

    朝日奈「うーん、ここなら証拠の処分も出来ると思ったんだけどなあ」

    桑田「つか、マジにここで証拠の処分がされてりゃ、今度は山田が最有力容疑者になってたわけだけどな」

    山田「あははは……って何ですとッ!?」

    桑田「だって考えてもみろって。ここ開けられんのはオメーだけなんだぜ? それなのにここで証拠の処分しててみろ。んなもん、掃除当番が犯人ですって言ってるようなモンじゃねーか」

    山田「そ、そうですな……ホント、処分されてなくてよかったですぞ……」

    石丸「だが、それでは山田くんは犯人候補から除外してよいのか?」

    桑田「そういうわけでもねーだろ。犯人はここを使ってねーってだけだ」

    山田「え、やっぱり僕も疑われてるの!?」

    桑田「ま、他の奴と同じぐれーにはな。オメーが犯人だっつってるわけじゃねえけどよ」

    石丸「なるほど、可能性の話、というわけだな」
  78. 78 : : 2014/05/02(金) 21:08:12
    朝日奈「桑田も……結構いろいろ考えてるんだね」

    桑田「まーな。つーか考えざるを得ねーっつーか。オレはオレで自分の疑い晴らさなきゃだしよ」

    山田「桑田怜恩殿も大変なようですな……まあだからと言って完全には」

    桑田「信用できねー、だろ? わぁってるよ、散々言われてんだ」

    朝日奈「でも有力な容疑者は四人だからね。そりゃあ、桑田だけだったりしたら私も疑ってかかっちゃったかもしれないけど……まだ人数がいるぶん余裕持って接すことができる、っていうか」

    石丸「まあ、何にせよ結論はこの後の議論で出すべきだろう。今は議論のための材料を集めようではないか」

    桑田「そーだな。んじゃ、そろそろ出るか。山田、シャッターちゃんと閉めとけよ。オレらが出てった後に証拠隠滅とかされちゃたまんねーしな」

    山田「そうですな。分かりましたぞ……むむ?」

    桑田(オレ達がシャッターの外に出て、山田がシャッターを下ろした時。山田が何かに気が付いたようだった)

    石丸「どうかしたのかね?」

    山田「いえ、開ける時は気が付かなかったのですが……シャッターの前にこのようなものが落ちておりましたぞ」

    朝日奈「何それ……ハサミ?」

    桑田「どー見てもハサミだけどよ、妙なデザインだな。誰んだ?」

    石丸「ふむ、少なくとも僕の物ではないな」

    朝日奈「私も違うけど」

    山田「僕もこのようなデザインの物は持ち合わせておりませんな」

    桑田「勿論オレのでもねーから……前に誰かが落としたんか?」

    山田「ここにいる誰の物でもないとなると、そうでしょうな」

    石丸「ふむ、ではとりあえず風紀委員として、僕が預かっておこう。後ほど、皆に確認を取る事にする」

    桑田「おう、頼むわ」


        コトダマ
         【奇妙なハサミ】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:トラッシュルームのシャッターの前に落ちていた。
           特徴的なデザインで、少なくとも
           桑田、石丸、朝日奈、山田の物ではない事が判明。
           現在は石丸が所持。
  79. 79 : : 2014/05/02(金) 21:08:40
    朝日奈「じゃあ私は別の所の捜査、行って来るね!」

    桑田「あ、ちっと待ってくれ。最後にオメーらに一個訊いていいか?」

    朝日奈「ん、何?」

    桑田「オメーら、最後に腐川の姿見たのっていつだ?」

    朝日奈「んっと、私はたぶん昨日の報告会の時……のはずだけど」

    山田「僕もそうですな。解散後は会っておりませんぞ」

    石丸「僕もだな。解散後、食堂に現れたモノクマと話していたから……おそらく彼女は既に部屋に戻っていたのではないか?」


    桑田「ん、そっか。サンキュな」

    石丸「いや何、いいのだ。これも重要な事だろうからな……」

    朝日奈「じゃ、今度こそ私、別のとこに行くね!」

    桑田「おう、じゃあオレも別んとこ行くか」

    桑田(次は……じゃあ腐川の部屋が開いてるかどうか、確認しに行ってみっか)
  80. 80 : : 2014/05/03(土) 00:07:00
    え、なんでそこにハサミがあるのかな?
    いやほんとマジで。
  81. 81 : : 2014/05/03(土) 10:31:38
    >>80
    さて、なんででしょう……。


    桑田(腐川の部屋の前に着いた。まあ、「着いた」っつっても大した距離じゃねーけどな)

    桑田「鍵は……お? 開いてんな。さっきは閉まってたけど、モノクマが開けたんか?」

    桑田(ま、どーでもいいか。開いてんなら、入らせてもらうだけだ)

    苗木「あれ、桑田クン」

    桑田「お? 何だ苗木もここに来てたのか」

    葉隠「桑田っちまで来ちまったべ……」

    桑田「なんでオメーはそんなガッカリしてんだよ」

    葉隠「だってよ、苗木っちと桑田っちは今最もアツい容疑者だろ? そりゃこういう顔にもなるっての」

    苗木「あはは、葉隠クン、さっきからずっとこうなんだよね」

    桑田「ま、別にいーけどよ」

    桑田(腐川の部屋の中は、なんつーか紙に溢れてるって感じだな。ゲンコーヨーシって奴? そういうのが散乱してて、作家ってなだいたいこんな部屋なんかと思わせられる。こりゃ、なんかあるとしても見つけるのは苦労しそうだな)

    苗木「それが全然……ちょっとでも何かあればいいと思ったんだけど」

    桑田「ふーん、そっか」

    苗木「桑田クンは? 何か目星でもある?」

    桑田「目星ねえ。んー、とりあえず、アレ見てみてえな。裁縫セット。ほら、全身の刺し傷ってのに使われてるかもしんねえだろ?」

    苗木「あ、そっか。それなら工具セットが入ってたのと同じ引き出しに仕舞われてるのかな」

    桑田「どーだろーな。とりあえず開けてみっか……」

    桑田(机の引き出しを開けると、そこには裁縫セットと、人体急所マップってヤツが入っていた)

    苗木「これが……」

    桑田(苗木がその二つを手に取る。すると)

    桑田「ん? おい苗木」

    苗木「何、桑田クン?」

    桑田「裁縫セットの下にこんなモンがあったぞ」

    苗木「何それ、ハサミ? 裁縫セットに入ってた裁ちバサミとかかな?」

    桑田(これはさっきオレが見た“アレ”と同じデザインだ。裁縫セットの中に入ってる物だったのか……?)


        コトダマ
         【奇妙なハサミ】の情報を更新しました。

        内容:トラッシュルームのシャッターの前に落ちていた。
           特徴的なデザインで、少なくとも
           桑田、石丸、朝日奈、山田の物ではない事が判明。
           現在は石丸が所持。
           また、腐川の部屋の裁縫セットの下からも
           同一のデザインのハサミが発見された。
           その正体は裁縫セットに入っていた
           裁ちバサミなのだろうか?
  82. 82 : : 2014/05/03(土) 10:32:11
    苗木「うーん、裁縫セットにも人体急所マップにも、怪しい所はなさそうだよ。ハサミだけ外に出てたのはナゾだけど」

    葉隠「オメーら……そのハサミで俺を殺そうなんて考えてねーだろうな……?」

    桑田「アホか。考えるわけねーだろ」

    苗木「葉隠クン、すっかり疑心暗鬼になってるみたいだね」

    桑田「みてーだな。まあ仕方ねえのかもしんねえけど」

    苗木「じゃあボクはそろそろ行こうかな。ここの捜査ばかりしてるわけにも行かないし」

    桑田「オレはどうすっかな……」

    葉隠「頼むから出てってくれって!」

    桑田「わぁったよ、ったくしゃーねえな。じゃあ一個だけ質問に答えろ」

    葉隠「質問? 何だってんだよ?」

    桑田「オメー、最後に腐川の姿見たの、いつだ?」

    葉隠「生きてる状態でか?」

    桑田「あたりめーだろ! 死体を最後にいつ見たのかなんて訊いてどーすんだ」

    葉隠「リアルな話……わからねーべ」

    桑田「はぁ?」

    葉隠「実際、昨日の報告会ん時に会った腐川っちが実は幽霊で、あの時点で死んでた……なんて可能性も否定しきれんし……」

    桑田「否定しきれよ、そこは! ……まーいいや。報告会ん時だな。わかった」

    桑田(これ以上何訊いても無駄だろうし、葉隠を部屋に置いたまま、オレは別の場所の捜査に向かうことにした)
  83. 83 : : 2014/05/03(土) 10:33:49
    桑田「つってもなー、他に具体的に調べてーとこってねえんだよな……。ま、本物の現場探しつついろんな奴の話でも聞くか」

    桑田(でもみんなどこ調べてんだ……?)

    桑田「とりあえず近場のランドリーでも見に行くか」

    桑田(そんな軽い気持ちでランドリーのドアを開けた。すると……)

    モノクマ「もう、オマエの残念さにはほとほと呆れるよ!」

    江ノ島「ご、ごめんね、じ……」

    桑田「江ノ島ちゃん? モノクマなんかと何やってんだ?」

    江ノ島「……! く、桑田!?」

    モノクマ「はあ、もうホント残念だね。残念すぎるよ……。ボクは帰るからね。江ノ島さんもちゃんとやるように!」

    桑田(なんだぁ? モノクマの奴、もう帰っちまった)

    江ノ島「え、えっと、ほら、アタシってあんまり物覚えのいい方じゃないっていうかさ。だからもう一回学級裁判の説明聞いてたんだよね」

    桑田「はぁん。それで残念だとか言われてたのか」

    桑田(そういやオレも初日の夜に思ったけどな)


        コトダマ
         【江ノ島とモノクマの会話】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:江ノ島とモノクマがランドリーで会話していた。
           江ノ島曰く、
           「学級裁判の説明をもう一度受けていた」らしい。
           そのせいでモノクマに「残念」と言われていた。
  84. 84 : : 2014/05/03(土) 10:34:06
    江ノ島「んで? 桑田は何しに来たのさ?」

    桑田「や、調べたいとこは調べきったからな……関係なさそうなところも回ってるんだよ。っと、そーだ。江ノ島ちゃんに訊きたい事あったんだ」

    江ノ島「訊きたい事? 何々? スリーサイズとかなら秘密だけど」

    桑田「アホ! この状況でんな事訊くかよ!」

    江ノ島「この状況じゃなけりゃ訊くんだ……」

    桑田「そ、それは……ともかく置いといてだ! 昨日の報告会解散後から今朝の朝食会に出るまでの間のアリバイって、なんかあるか?」

    江ノ島「はぁ? 広すぎない?」

    桑田「仕方ねーだろ、モノクマファイルに殺害時刻書いてねえんだからよ。腐川を最後に見たのって報告会ん時だろ?」

    江ノ島「ああ、そーかもね……」

    桑田「ってわけで、その時間のアリバイがあったら教えてくんねえ? まあまだセレスにゃ訊いてねえけど、オレも苗木も、寝てたしな。マトモなアリバイが返ってくるとは思ってねーけど」

    江ノ島「ま、そーだろうね。アタシもシャワー浴びて寝て、起きてメイクして……ってくらいだし」

    桑田「だよなあ。やっぱこの方面から犯人の割り出しとか無理だよなあ」


        コトダマ
         【有力容疑者たちのアリバイ】の情報を更新しました。

        内容:桑田 報告会解散後はシャワーを浴びて寝た
           苗木 報告会解散後は部屋で眠った。
              だが中々寝つけずにいたために今朝は寝坊した。
           江ノ島 報告会解散後はシャワーを浴びて寝た。
               起きてからはメイクをしていた。
  85. 85 : : 2014/05/03(土) 10:34:25
    桑田(一応覚えてはおくけど、無駄情報っぽいな)

    桑田「ところで江ノ島ちゃん、なんでランドリーで話してたんだ?」

    江ノ島「え? 何でって?」

    桑田「いや、別に深い意味はねーけどよ」

    江ノ島「んー、アタシとしても別に……深い意味はないけど」

    桑田「そか。うーん、見た感じここも怪しいとこはなさげだな。じゃあ別の場所行くかあ。江ノ島ちゃんもしっかり捜査しろよー? オレはオレの無実の証明で手一杯だろーしな」

    江ノ島「……うん、そうだね」

    桑田「そんじゃ、またあとでな」
  86. 86 : : 2014/05/04(日) 11:25:27
    桑田(さて、次はどこ行くか。一応食堂も見とくか?)

    桑田「ってオメーら何やってんだ?」

    セレス「あら、見て分かりませんの?」

    十神「見て分からないのであれば、愚民以下……プランクトンにも等しいな」

    桑田「オメーはもうちっとマトモな対応できねーのかって。……オレにはセレスが紅茶、十神がコーヒー飲んでるように見えるぜ」

    十神「何だ、合ってるじゃないか」

    セレス「わたくしたち、休憩中ですの」

    桑田「はぁ? 休憩だ?」

    セレス「ええ。尤も、わたくしは捜査開始からずっとですけれどね」

    桑田「おいセレス、オメー立場分かってんのかよ?」

    セレス「有力容疑者の一人、でしたわね。分かってはいますが、わたくしを犯人だなどと愚かしい指摘をする人がいるとは思えませんもの」

    桑田「ってーと?」

    セレス「だって、わたくしには犯行は不可能ですもの」

    桑田「そりゃ、どーいう意味だよ」

    セレス「たしかに、桑田君が部屋を出てから桑田君の部屋に死体を置く、程度の事であれば、本当は死んでも嫌ですけれど無理矢理服に血が付くことにさえ目を瞑れば、そこは不可能ではない事は認めましょう。ですが、殺人を犯す時間的余裕はわたくしにはありませんでしたから」

    桑田「ってーと……アリバイがあるってのか!?」
  87. 87 : : 2014/05/04(日) 11:25:52
    セレス「ええ。実は、昨日の報告会の後……夜時間になるまでわたくしは山田君と共にいたのです。紅茶を淹れてもらっていたので」

    十神「その事は今朝のやり取りを思い出しても確かなはずだぞ」

    桑田「今朝のやり取りっつーと……」


    セレス「わたくしはお茶でも頂いておりますわ。山田君、淹れて下さる?」

    山田「へ? “また”僕?」


    桑田「そーか、そういや山田の奴、『また』とか言ってやがったな!」

    十神「ああ。だからセレスの、昨日の夜時間までの間のアリバイはこれで認めてやっていいはずだ」

    桑田「なるほどな……」


        コトダマ
         【有力容疑者たちのアリバイ】の情報を更新しました。

        内容:桑田 報告会解散後はシャワーを浴びて寝た
           苗木 報告会解散後は部屋で眠った。
              だが中々寝つけずにいたために今朝は寝坊した。
           江ノ島 報告会解散後はシャワーを浴びて寝た。
               起きてからはメイクをしていた。
           セレス 報告会後は夜時間まで山田と共にいた。
  88. 88 : : 2014/05/04(日) 11:26:38
    桑田「けどよ、じゃあ夜時間になってからはどうなんだ?」

    セレス「そこには二つ、理由がありますわね」

    桑田「二つ?」

    セレス「ええ。一つは、わたくしが提案したこととはいえ語尾を『だニャン』にするなど絶対に嫌だという事ですわ。夜時間の出歩きになってしまいますもの」

    桑田「け、けどよ。それなら誰にも見つからずに殺せれば……」

    十神「そこで二つ目の理由というわけだ」

    桑田「何でオメーが出てくんだよ」

    十神「その二つ目の理由を俺がもたらしたからだよ」

    桑田「ん? どーいう意味だ?」

    十神「俺はな、夜時間前だが報告会の後に“腐川”と会っているんだよ」

    桑田「な、マジか!?」

    十神「ああ。本当だ。そこで“あいつ”の話を聞いた後……俺は厳命した。さっさとシャワーを浴びて寝ろとな」

    桑田「ふーん……で?」

    十神「で、も何もそれで終わりだ。“あいつ”はどういう訳か俺にはやたらと従順だったからな。すぐに“シャワーを浴びて”寝たはずだ。まだ夜時間まで余裕があったからな」

    桑田「いやいや、それでも無視する時ゃ無視すんだろ……」

    十神「お前の物差しですべてを考えようとするな。“あいつ”には“あいつ”のものさしがあるんだよ。随分と特殊なものさしだったようだがな」


        コトダマ
         【十神の証言】を電子生徒手帳に記録しました。

        内容:十神は昨日の報告会の後、腐川と会っていたらしい。
           別れ際にシャワーを浴びて寝ろ、と厳命したことから
           特殊な考え方のものさしを持っていた彼女は
           間違いなく部屋に戻りシャワーを浴びて寝たらしい?
  89. 89 : : 2014/05/04(日) 11:27:49
    桑田「ちなみに十神、腐川とした話って何の事だよ?」

    十神「……フン。興味深い話ではあったが、今となっては何の意味も持たん。それに“腐川”の相当深い部分についての相談だったからな。話すわけが無かろう」

    桑田(コイツ……。十神は十神なりに、腐川の事考えてんだな……)

    セレス「とにかく、わたくしは犯人ではあり得ませんわ。そもそもあんな凶器、見たことありませんもの」

    十神「そういえば、刀が刺さっていたのだったな。あれの出所も調べるべきか」

    桑田「ああ、いやそれなら調べるまでもねーぜ。オレの部屋にあったもんだからな」

    十神「何? つまりお前は凶器を部屋に隠し持っていたという事か?」

    桑田「ちげーよ! 購買にガチャガチャあったろ? あれの景品で出てきたんだよ。説明文には鉄どころか生物も斬れねえ、って書いてたぜ」

    十神「フン、なんだ、ただのなまくらか」

    桑田「ああ、どーやらそうみてーだな。ぶっちゃけゴミだと思うけど、捨てるっつーのもなんか気が引けてよ」

    セレス「ですが、これでわたくしは犯人ではありえない事の裏付けになりましたわ。そもそも桑田君が刀を所持していた事自体、知りませんでしたもの」

    十神「その刀をお前が所持していたことを知っているのは、お前以外には誰かいるのか?」

    桑田「ああ、いるぜ。苗木と江ノ島ちゃんだ」

    十神「何? セレスを除いた有力容疑者の全員じゃないか」

    桑田「そうなんだよな……」


        コトダマ
         【残鉄剣】の情報を更新しました。

           内容:腐川の腹部に刺さっていた刀で、
           桑田がモノモノマシーンで引き当てた物。
           その斬れ味は鉄どころか生物も斬れないなまくら。
           その存在を知っているのは桑田と苗木と江ノ島のみ。
  90. 90 : : 2014/05/04(日) 11:28:04
    十神「チッ、つまらんな。容疑者が絞れ過ぎていて、ゲームとしてつまらなすぎる」

    桑田「オメーまだんな事言ってんのかよ?」

    十神「その話はどうせ、堂々巡りになるだけだ。これ以上続けるよりもお前はお前の捜査をすべきだろう」

    セレス「そうですわね。容疑を完全に晴らしたいのでしたら、相応の捜査をすべきですわ」

    桑田「はあ、気楽に言ってくれるぜ……」

    桑田(のんきに休憩を続けるセレスと十神を尻目に、オレは食堂を後にした)
  91. 91 : : 2014/05/04(日) 11:29:02
    キーンコーンカーンコーン……。

    モノクマ『えー、ボクも待ち疲れたんで、そろそろ始めちゃいますか。泣いても喚いても、チャンスは一度きり! 生死を分ける学級裁判を! それでは生徒の皆さんは、学校エリア一階にある赤い扉にお入りください!』

    桑田「……おいおい、もしかしてもう捜査終わりかよ」

    桑田(現場の特定も出来てねえし、不二咲の話もまだ聞けてねえってのに。不二咲が重要な情報持ってたり、してねえよな? クソ、不安だ……)

    桑田「けど逃げるわけにゃいかねえよな。ピッチャーがビビってちゃ、勝てる試合も勝てねえよなあ……!」

    桑田(証拠も揃ってるって気はほとんどしねえ。オレの容疑を晴らすだけなら、何とかなるかもしんねーけど。不安に胸が押しつぶされそうになりながらオレは、赤い扉を開けた)

    苗木「桑田クン!」

    十神「遅いぞ、お前で最後だ」

    舞園「その、どうでしたか? 何か見つかりました?」

    桑田「あー、見つかったような、見つかってないような」

    葉隠「やめるべ、そういう曖昧なんは……」

    桑田(赤い扉の向こうは、狭い正方形の部屋にモニターと監視カメラが付いているだけだった。いや、“だけ”じゃねえな。正面にエレベーターが付いている。これで上の階に行けたりすんのか?)

    モノクマ「えー、どうやら全員集まったようですね。それでは、そのエレベーターにお乗りください。オマエラを学級裁判場に連れて行ってくれるよ。うぷぷぷ……じゃ、ボクは一足先に行って、待ってよーっと」

    桑田(モノクマが言いたい事だけ言って消えちまうのはいつもの事だけど、やっぱ腹立つぜ)

    大和田「じゃァ、乗り込むか」

    不二咲「うん……そうだね」

    石丸「それでは行くぞ!」

    桑田(そうしてオレを含んだ全員がエレベーターに乗り込むと、扉が閉じ……ゆっくりと下降を始めた。なんだよ、上の階じゃなくて地下に行くのか?)

    苗木「何と言うか……緊張、するね」

    霧切「その緊張感を切らさないようにした方がいいわよ。ここから先は、本当に命がかかっているようだし」

    朝日奈「そう、なんだよね……」

    桑田(重い沈黙。それ以降、誰も口を開こうとはしなかった。……何分くらい経ったんだ? いや、ひょっとすると何秒だったのかもしれねーな。随分長い時間、エレベーターが下降していた気がするが、それにも終わりは来る。唐突に、「チン」という軽い音と共にエレベーターの振動が止まった。そして、扉が開く)

    苗木「な、何これ……?」

    モノクマ「にょほほ、ようこそ、“学級裁判場”へ!」

    桑田(そこは悪趣味にカラフルな内装の円形の空間だった。その中央には、まるで裁判場の被告人席を円形につなげたような席が置かれている)

    大和田「ちッ、胸糞悪ぃ空間だぜ」

    モノクマ「うぷぷ、カッコいいでしょ? カッコいいでしょ? まあボクのサイコでポップなセンスを褒め称えたい気持ちは分かるけど……時間も推してるからね。オマエラ、自分の名前の書かれた席に着いちゃってくださーい」

    桑田(こんな奴に従うなんて正直、嫌だ。だけどここで反発しても無意味な事はわかっている。モノクマの言う通り、席に着いた。そしてここから始まる……。命がけの謎解き……命がけの言い訳……命がけの信頼……命がけの投球……命がけの、学級裁判……!)
  92. 92 : : 2014/05/04(日) 11:31:42
      弁 論 準 備


    『とうとう起こってしまったコロシアイ。その最初の犠牲になったのは超高校級の文学少女、腐川冬子だった……。彼女はいったい何故、殺されたのか? “卒業”だけが理由なのだろうか? そして、彼女を殺した真犯人、クロとは――?』




     言球≪コトダマ≫

     【モノクマファイル壱】
     被害者は桑田怜恩の個室で発見された。
     腹部に刀が刺さっており、
     それ以外にも幅五ミリにも満たない
     刺し傷が体のあちらこちらに散見される。
     また、被害者は異様に長い舌を
     露出させた状態で死んでいた。

     【モノクマファイルの不備?】
     モノクマファイルには死亡時刻どころか
     被害者名すら明記されていなかった。

     【個室の変化】
     桑田の個室は朝、桑田が部屋を出る直前と比べても
     死体がある事以外に変わった点は特に見当たらなかった。

     【霧切の証言】
     桑田の部屋には争った形跡は一切なかった。
     だが、腐川の手の指の爪には皮膚が挟まっていたことから
     腐川と犯人はもみ合った可能性が高い。
     つまり、桑田の個室は現場ではないのかもしれない。

     【残鉄剣】
     腐川の腹部に刺さっていた刀で、
     桑田がモノモノマシーンで引き当てた物。
     その斬れ味は鉄どころか生物も斬れないなまくら。
     その存在を知っているのは桑田と苗木と江ノ島のみ。

     【有力容疑者たちのアリバイ】
     桑田 報告会解散後はシャワーを浴びて寝た
     苗木 報告会解散後は部屋で眠った。
        だが中々寝つけずにいたために今朝は寝坊した。
     江ノ島 報告会解散後はシャワーを浴びて寝た。
         起きてからはメイクをしていた。
     セレス 報告会後は夜時間まで山田と共にいた。

     【腐川殺しの動機】
     犯人が腐川を殺害相手に選んだ動機は現在の所不明。
     “超高校級の文学少女”というインドアな才能のため、
     標的に選びやすかったというだけなのだろうか?

     【腹部の刺し傷】
     刀が刺さっている腹部からの出血が少ないように見えた。
     他の刺し傷からの出血と相対的に見た結果だろうか?

     【全身の刺し傷】
     全身に散見される刺し傷。
     何か所か、やたらと近い場所に刺し傷があるようだ。

     【掃除当番】
     掃除当番になると、トラッシュルームの
     シャッターの鍵を預けられる。
     現在の掃除当番は山田らしい。

     【奇妙なハサミ】
     トラッシュルームのシャッターの前に落ちていた。
     特徴的なデザインで、少なくとも
     桑田、石丸、朝日奈、山田の物ではない事が判明。
     現在は石丸が所持。
     また、腐川の部屋の裁縫セットの下からも
     同一のデザインのハサミが発見された。
     その正体は裁縫セットに入っていた
     裁ちバサミなのだろうか?

     【江ノ島とモノクマの会話】
     江ノ島とモノクマがランドリーで会話していた。
     江ノ島曰く、
     「学級裁判の説明をもう一度受けていた」らしい。
     そのせいでモノクマに「残念」と言われていた。

     【十神の証言】
     十神は昨日の報告会の後、腐川と会っていたらしい。
     別れ際にシャワーを浴びて寝ろ、と厳命したことから
     特殊な考え方のものさしを持っていた彼女は
     間違いなく部屋に戻りシャワーを浴びて寝たらしい?
  93. 93 : : 2014/05/04(日) 14:59:42
    ついに裁判始まりましたか!
    楽しみです!
  94. 94 : : 2014/05/04(日) 23:23:03
    なんで残鉄剣が刺さってたんだろうね
  95. 95 : : 2014/05/05(月) 10:40:46
    モノクマ「まずは、学級裁判の簡単な説明から始めましょう! 学級裁判の結果は、オマエラの投票により決定されます。正しいクロを指摘出来れば、クロだけがおしおき。だけど、もし間違った人物を、クロとした場合は……クロ以外の全員がおしおきされ、みんなを欺いたクロだけが、晴れて卒業となりまーす!」

    桑田「とりあえず確認だけどよ……この中に犯人がいるってのは、マジなんだな?」

    モノクマ「はい、マジです」

    大和田「マジ、なのかよ」

    大神「今、そこを争点にしても仕方あるまい」

    セレス「では、あれは何なのです?」

    桑田(セレスが指を差した方向には……まるで遺影のようにして飾られた、血の色でバツ印を付けられた腐川の写真があった)

    モノクマ「死んだからって仲間外れにするのはかわいそうでしょ? どこかのかわいそうだクンより、かわいそうでしょ?」

    桑田「誰だよ……」

    苗木「じゃあ、あれは? ボク達は十五人なのに、十六人分の席があるみたいなんだけど」

    モノクマ「……深い意味はないよ。最大十六人収容可能な裁判場ってだけ。てか、一々細かいとこにばっか突っ込んでないで、さっさと議論を開始しろーッ!」

    葉隠「けどよ、何を話せばいいんだ?」

    石丸「ではみんな、目を閉じよう! 犯人は挙手したまえ!」

    桑田「オメー、それマジで誰か挙げると思ってんじゃねーだろうな?」

    霧切「少しずつ真実を明らかにしていくしかないんじゃないかしら。たとえば、凶器の特定とか……ね」

    桑田(凶器、凶器か。たしかにその説明もしとかねーとな)
  96. 96 : : 2014/05/05(月) 10:41:08
           ― 議論  開始 ―


    ≪コトダマ≫
    【モノクマファイル壱】
    【掃除当番】
    【残鉄剣】


    葉隠「凶器って……そんなんわかりきってんべ」

    霧切「それはどうかしら?」

    江ノ島「どうかしらも何も……あれしかねーだろ!」

    江ノ島「腐川のおなかに刺さってた刀!」

    江ノ島「どう見ても≪あれが凶器≫だったじゃん!」

    石丸「うむ、どう見ても≪刺さっていた≫からな」

    石丸「間違いない、あれが凶器だ!」


    桑田(あいつのあの発言……そうじゃねーんだよな。あの証拠をぶつけてみるか)
  97. 97 : : 2014/05/05(月) 10:41:26
    葉隠「凶器って……そんなんわかりきってんべ」

    霧切「それはどうかしら?」

    江ノ島「どうかしらも何も……あれしかねーだろ!」

    江ノ島「腐川のおなかに刺さってた刀!」

    江ノ島「どう見ても≪あれが凶器≫だったじゃん!」


    ノ 三【残鉄剣】

    桑田「このアホォ!」
  98. 98 : : 2014/05/05(月) 10:42:06
    江ノ島「な……アホって何さ、アホって!」

    桑田「アホだからアホっつったんだよ! だってあの刀は凶器じゃねーかんな!」

    石丸「何だとッ!?」

    葉隠「いやいや桑田っち、そりゃねーべ。だってどう見たって……」

    桑田「いーか? あの刀はな、オレが購買のガチャガチャで引き当てた“残鉄剣”っつーなまくら刀だぞ?」

    山田「またつまらぬものを斬ってしまった……って奴ですな。ってどこがなまくらなんですかァー!?」

    苗木「いや、違うんだ。ボクも最初、名前を聞いたときはそうだと思ったんだけど」

    桑田「この刀の説明にはしっかり書いてあんだよ。鉄どころか生物も斬れねえ、ってな!」

    江ノ島「ハァ!? 何それ、なまくらじゃん!」

    桑田「だから最初からそう言ってんだろ……」

    十神「だが待て。お前、今こう言ったな? 『鉄どころか生物も斬れない』……」

    桑田「あん? 言ったけど、それがどーかしたか?」

    十神「ならば、まだあの刀が凶器の可能性は残っているな」

    大和田「はァ?」

    葉隠「十神っち、何が言いてーんだ?」

    朝日奈「もっとわかるように言ってよ!」

    十神「おい、ここは幼稚園か何かなのか?」
  99. 99 : : 2014/05/05(月) 10:42:58
    石丸「だが、キミはもっとハッキリと話すべきだと僕も思うぞ!」

    十神「チッ、少しくらい考えろ。あの刀はどう使われていた?」

    苗木「そうかわかったぞ! あの刀は腐川さんの死体に“刺さって”いたんだ!」

    霧切「そうね。“斬られて”いるわけじゃないわ。つまり……」

    セレス「斬れないからと言って凶器でないとは言い切れない……そういう事ですわね」

    桑田「ぐおお、マジかよっ!?」

    江ノ島「アハハ、アホは桑田の方だったみたいじゃん? マジウケル!」

    山田「ではやはり、凶器はあの刀で間違いなさそうですな」

    霧切「別に私は、あれが凶器だと断定していいとは言ってないわよ」

    大和田「あァ? オメェもかよ……もっとわかるように言えっつんだ」

    霧切「桑田君、あなたはもう一つ、あれが凶器だと断定できない証拠を提示できるはずよ」

    桑田「へ? オレがか?」

    舞園「そういえば、死体を調べている時……桑田君、何か言っていませんでしたか?」

    桑田(オレが何か言ってた? それって……)


    ノ 三【腹部の刺し傷】

    桑田「これか!」
  100. 100 : : 2014/05/05(月) 10:43:14
    桑田「そーか、そーだよ! あの傷は明らかに変だったって!」

    セレス「変、と申しますと?」

    桑田「いやよ、刀で刺したにしちゃ、出血が少なかったように思ってさあ」

    江ノ島「それがどーしたっての?」

    桑田「いや、今思ったんだけどな。あの刀、ひょっとして死んでからある程度経って刺されたモンじゃねーのか?」

    苗木「たしかに、そう考えれば出欠の量が少なかったことにも説明はつくね」

    不二咲「ということは……やっぱり、あの刀は凶器じゃないってことぉ?」

    桑田「おう、そーなるな」

    桑田(ここであの刀が凶器で確定しちまったらオレの立場が余計危なくなるしな)

    江ノ島「で、でも……それも可能性の話だろ!?」

    霧切「江ノ島さん。どうしてそんなにあの刀を凶器にしたいのかしら?」

    江ノ島「い、いや凶器にしたいわけじゃないけどさ……だって、あれが凶器じゃなかったら何が凶器だっていうのさ」

    桑田(本当の凶器か……。なんか凶器になりそうなモン、あったっけ?)
  101. 101 : : 2014/05/05(月) 10:43:37
           ― 議論  開始 ―


    ≪コトダマ≫
    【奇妙なハサミ】
    【残鉄剣】
    【霧切の証言】


    江ノ島「やっぱ凶器は刀でしょ!」

    朝日奈「他に≪桑田の部屋に怪しい物はなかった≫しね……」

    大神「では桑田の部屋以外で凶器になりそうなものを見つけた者はいないのか?」

    大和田「オレは捜査中、≪現場から動けなかった≫からな……」

    大和田「オイ、誰か何か見つけてねえのか!?」

    石丸「≪僕は何も見つけていない≫な」

    不二咲「私も……」

    不二咲「≪凶器になりそうなものは見つけてない≫よぉ」


    桑田(ん? そういえばたしか、アイツが“持って”なかったっけ?)
  102. 102 : : 2014/05/06(火) 00:50:11
    石丸が・・・をね・・面白いですよ!!
  103. 103 : : 2014/05/06(火) 12:15:13
    >>102
    さすがに分かりやすいですかww


    江ノ島「やっぱ凶器は刀でしょ!」

    朝日奈「他に≪桑田の部屋に怪しい物はなかった≫しね……」

    大神「では桑田の部屋以外で凶器になりそうなものを見つけた者はいないのか?」

    大和田「オレは捜査中、≪現場から動けなかった≫からな……」

    大和田「オイ、誰か何か見つけてねえのか!?」

    石丸「≪僕は何も見つけていない≫な」


    ノ 三【奇妙なハサミ】

    桑田「このアホォ!」
  104. 104 : : 2014/05/06(火) 12:15:43
    石丸「なッ……桑田くん、言うに事欠いて、この僕をアホだと!?」

    桑田「いや、今度こそ、何の反論も出せねーくれえ、アホだろ!」

    石丸「ぐぬぬ、では言ってみたまえ! 僕のどこがアホだというのかね!?」

    桑田「言うっつーかよ、オメー持ってんじゃねえか。凶器になりそうなモンをよ!」

    石丸「僕が……持っている?」

    桑田「ほら、トラッシュルームのシャッターの前で山田が拾った!」

    山田「ああ、あのハサミですか。え、まさかあれが凶器……?」

    桑田「その可能性はあるだろ。つーか、あのハサミが事件に関与してる可能性はたけーと思うぜ」

    朝日奈「え、なんで?」

    桑田(ハサミが事件に関与してる可能性を示すのは……)


    ノ 三【全身の刺し傷】

    桑田「これか!」
  105. 105 : : 2014/05/06(火) 12:16:28
    桑田「腐川の死体なんだけどよ、全身に刺し傷があったのは見てるよな?」

    不二咲「う、うん……嫌でも、目に着いちゃうよねぇ」

    大和田「けど、それがどーしたっつーんだ?」

    桑田「あの刺し傷さ、全身にまんべんなくあったっぽいけど……いくつか、すっげえ近くに二つ刺し傷のあるポイントがあったんだよな」

    葉隠「二つ? それってつまり……ど、どういう事だべ?」

    山田「僕には桑田怜恩殿が言いたい事がわかりましたぞ! 全身の刺し傷を作ったのがもしハサミであるなら、二つの近い位置の刺し傷に説明が付く、というわけですな?」

    桑田「おう。だってハサミならそういう傷、作れんもんな!?」

    苗木「たしかに、そうだね。けど……」

    石丸「だが、今は腐川くんを死に至らしめた凶器について話していたのだ! 全身の傷を作ったというのがこのハサミだという話が事実だとしても、事件に関与しているというだけでこれが凶器という話にはならないはずだぞ!」

    桑田(いや……違う。ハサミが凶器ってのはいい線行ってるハズなんだ。ならそれを証明してやる!)
  106. 106 : : 2014/05/06(火) 12:17:03
           ― 議論  開始 ―


    ≪コトダマ≫
    【モノクマファイル壱】
    【有力容疑者たちのアリバイ】
    【モノクマファイルの不備?】


    石丸「致命傷は≪腹部の刺し傷≫だったはずだ!」

    石丸「ならばこのハサミは凶器ではないはずだ!」

    江ノ島「そーだよね。やっぱそうなると凶器は刀なんだって」

    江ノ島「あの刀でも≪腐川を刺せた≫のは間違いないんだし!」

    不二咲「で、でもぉ……」

    不二咲「≪検討する価値はある≫んじゃないかなぁ」

    葉隠「もー≪俺にはわからんべ≫ー!」


    桑田(アイツ、まんまとモノクマの罠にハマってやがるな……。ちゃんと訂正しといてやるか)
  107. 107 : : 2014/05/06(火) 12:17:33
    石丸「致命傷は≪腹部の刺し傷≫だったはずだ!」


    ノ 三【モノクマファイル壱】

    桑田「このアホォ!」
  108. 108 : : 2014/05/06(火) 12:17:58
    桑田「おい石丸、オメーちゃんとモノクマファイルは見たんか?」

    石丸「勿論だ!」

    桑田「なら当然知ってんよな? モノクマファイルにゃ“腐川の致命傷は書いてねー”んだよ!」

    石丸「何だとッ!?」

    セレス「……たしかに、明言はしておりませんわね」

    苗木「それって……本当の致命傷は、全身の刺し傷の方かもしれない、ってこと?」

    霧切「実際、そうなんじゃないかしら? あの刀が、あの部屋で生前の腐川さんに刺されたとはどうしても思えないもの」

    江ノ島「は!? 何で思えないわけ!?」

    十神「フン、そんな物、あの部屋を見た人間なら誰もが分かる事のはずだ」

    大和田「オレと大神はあの部屋をずっと見張ってたけどよ……」

    大神「特に、そのような事を証明する証拠が見つかったとは思えなかったが」

    朝日奈「ホントにそんな証明できるの?」

    葉隠「いーや、俺にはわかったぞ!」

    山田「ほほう、葉隠康比呂殿、ではお教え願えますかな?」

    桑田(葉隠の奴、何に気付いたんだ……? ロクでもねー事じゃないといいけどな)
  109. 109 : : 2014/05/06(火) 12:18:05
    凄いです!
  110. 110 : : 2014/05/06(火) 12:19:19
    あれ、なんか二回送信された……

    >>109
    ありがとうございます!


           ― 議論  開始 ―


    ≪コトダマ≫
    【腹部の刺し傷】
    【全身の刺し傷】
    【個室の変化】


    葉隠「事件は≪個室で起きてるんじゃない≫……」

    葉隠「≪会議室で起きてる≫んだべ!」

    葉隠「霧切っちの言いてー事は、そういう事なんだろ!?」

    大和田「オイ、誰かあのアホを止めろ」

    朝日奈「そもそも、≪会議室なんてない≫じゃない!」

    葉隠「え? てことは……」

    葉隠「やっぱ≪あそこが現場で間違いない≫べ」

    葉隠「≪あの部屋に怪しい所もなかった≫しな!」


    桑田(葉隠の奴、言ってることが二転三転しすぎだろ……。しゃーねえ、一本に纏めてやるか)
  111. 111 : : 2014/05/07(水) 19:08:57
    あれ、二回送信されてなかった……何だったのか……。


    葉隠「事件は≪個室で起きてるんじゃない≫……」

    葉隠「≪会議室で起きてる≫んだべ!」

    葉隠「霧切っちの言いてー事は、そういう事なんだろ!?」

    大和田「オイ、誰かあのアホを止めろ」

    朝日奈「そもそも、≪会議室なんてない≫じゃない!」

    葉隠「え? てことは……」

    葉隠「やっぱ≪あそこが現場で間違いない≫べ」

    葉隠「≪あの部屋に怪しい所もなかった≫しな!」


    ノ 三【個室の変化】

    桑田「このアホォ!」
  112. 112 : : 2014/05/07(水) 19:09:25
    葉隠「桑田っち、それ決め台詞にすんのはどうかと思うべ」

    桑田「うっせ! 他に言葉が出ねーんだよ!」

    十神「お前は少し語彙力を身に付けろ。お前の方がアホに見えるぞ」

    舞園「そうですね。作詞を自分でやる必要はありませんが、だからと言って出来ないよりは出来る方がいいに決まってますし」

    桑田「ま、舞園ちゃんまで!?」

    苗木「あ、あはは……えっと、それで桑田クン。葉隠クンの言葉に突っ込んだ理由って、何かな?」

    桑田「お、そうそう。そこが大事なんじゃねーか。オメーら、あの部屋の状況をよく思い出してみろ」

    朝日奈「思い出せって言われても……」

    葉隠「何度思い返してもなんもおかしいとこなんてねーって!」

    桑田「そーだな。でもそこがオカシイんだ」

    葉隠「はぁ? おかしくねーことがおかしいって……どーいう事だべ?」

    霧切「“死体のあったあの部屋”には本来、あって然るべきものがないのよ」

    桑田(あって然るべきもの……それは……)
  113. 113 : : 2014/05/07(水) 19:09:56
     >空気
       血痕
        死体


    桑田「そうだ、空気が無かったんだ!」

    山田「なるほどなるほど、つまりはあの部屋での呼吸は不可能であったと」

    大和田「テメェ何言ってんだ? もしマジに空気が無かったらオレら死んでるだろ……」

    葉隠「つ、つまり大和田っち達は……ゆゆゆ幽霊!? 勘弁してくれってー!」

    桑田(クソ、これじゃなかったみたいだ……。よく考えろ、死体があった以上、無いとおかしい物がなかったって事だ)
  114. 114 : : 2014/05/07(水) 19:10:12
     空気
      血痕
      >死体


    桑田「した……」

    霧切「死体が無かった、なんてボケは必要ないわよ」

    朝日奈「死体ならちゃんとあったもんね!」

    大神「もし死体が消失していれば、常に見張りをしていた我らが気が付いているはずだ」

    桑田(クソ、これじゃなかったみたいだ……。よく考えろ、死体があった以上、無いとおかしい物がなかったって事だ)
  115. 115 : : 2014/05/07(水) 19:10:42
     空気
     >血痕
       死体

    桑田「そうか、わかったぜ!」

    桑田「“血痕”だよ! あの部屋で腐川が刺されたってなら、もっと血が床に広がってるはずだよなあ!」

    葉隠「そんなもん、雑巾か何かで拭いただけかもしんねーべ」

    十神「だとすると、血の付いたタオルなりハンカチなり雑巾なりが見つかっているはずだな。おい、どうなんだ。誰か見つけていないのか?」

    朝日奈「……」

    不二咲「……」

    江ノ島「……」

    十神「誰も見つけていないようだな。ならば……」

    葉隠「いーや、見つかってなくても問題ねーべ!」

    苗木「え、どうしてそう思うの?」

    葉隠「おいおい、オメーらしっかりしてくれって……」

    桑田(葉隠の奴、今度は何言うつもりだ? しっかり見極めねーとな)
  116. 116 : : 2014/05/07(水) 19:11:23
           ― 議論  開始 ―


    ≪コトダマ≫
    【腐川殺しの動機】
    【掃除当番】
    【残鉄剣】


    葉隠「オメーら今までどこで生活してたんだっての!」

    葉隠「オレらが泊まってる寄宿舎エリアには」

    葉隠「トラッシュルームがあったろ?」

    朝日奈「あ、そっか!」

    朝日奈「≪あそこで処分≫しちゃえばいいんだ!」

    山田「あの奥には≪焼却炉もありました≫からなあ」

    石丸「なるほど!」

    石丸「≪焼却処分してしまえば証拠は残らない≫のだな!」

    江ノ島「ならやっぱり現場は」

    江ノ島「≪桑田の個室で決定じゃん!≫」


    桑田(アイツら……捜査の時の事覚えてねーとかじゃねえよな?)
  117. 117 : : 2014/05/07(水) 19:18:28
    他はともかくゆーとーせいどうしたww

    それと桑田のロンパ台詞「このアホォ!」じゃなくて安直ですが「それは違ぇよアポ!」に変えてみては?
  118. 118 : : 2014/05/08(木) 19:53:31
    >>117
    石丸君は思い込みが激しくて見当外れな発言をするイメージ……。
    桑田の決め台詞(?)についてはこのままで行きますよー、考えてる事もちょっとあるので。


    葉隠「オメーら今までどこで生活してたんだっての!」

    葉隠「オレらが泊まってる寄宿舎エリアには」

    葉隠「トラッシュルームがあったろ?」

    朝日奈「あ、そっか!」

    朝日奈「≪あそこで処分≫しちゃえばいいんだ!」


    ノ 三【掃除当番】

    桑田「このアホォ!」
  119. 119 : : 2014/05/08(木) 19:53:56
    朝日奈「な、何? 何か間違った事言った……?」

    桑田「朝日奈、オメーもトラッシュルームの捜査の時一緒にいたろーが」

    朝日奈「うん、いたけど……」

    石丸「立派な焼却炉があったからな。処分は簡単だったと思うぞ」

    山田「僕がシャッターの鍵を開けましたからな。よーく覚えて……あっ」

    桑田「山田は気付いたみてーだな。そうなんだよ、あのトラッシュルームのシャッターは掃除当番じゃねーと開けらんねーんだ」

    葉隠「てことは……つまり……山田っちが犯人って事か!?」

    山田「ちちち違いますぞ!」

    江ノ島「その焦り方が怪しいっつーか……」

    桑田「いや、山田が犯人の可能性は低いって」

    大和田「たしかに、トラッシュルームで処分したって証拠があるんなら話は別だろーけどな……」

    石丸「それは……見つからなかったな」

    朝日奈「だからトラッシュルームで証拠隠滅はされてない、って話になってたもんね」

    桑田「けど、それだけじゃねーんだ。山田が犯人じゃねーって証拠があるからな」

    山田「ほ、本当ですか!?」

    桑田「ああ、その証拠ってのは……」


    ノ 三【残鉄剣】

    桑田「これか!」
  120. 120 : : 2014/05/08(木) 19:54:38
    桑田「あの“残鉄剣”だよ。あれはもともとオレのモンだってのはさっき言ったよな?」

    不二咲「うん……購買部のガチャガチャで出たんだよねぇ」

    大神「それがどうかしたのか?」

    桑田「オレはあれを、部屋にある机の引き出しに仕舞ってたんだよ。工具箱が入ってない引き出しを選んでな。つまり、元から刀が部屋にあるって事を知ってる奴じゃなきゃ、わざわざ探して使おうなんて思わねーはずだろ?」

    十神「捜査の時にそいつから聞いたが、あの刀があの部屋にある事を知っていたのは部屋の主であり、刀の所有者である桑田。それから桑田が刀を手に入れるのをその場で見ていた苗木と江ノ島。この三人だけだそうだな」

    セレス「ちなみに苗木君と江ノ島さんに訊いておきますが、その事を事件前に誰かに話したことはありまして?」

    苗木「いや、ボクはないけど」

    江ノ島「アタシも……話してないかも……」

    十神「ならば、犯人はお前ら三人の内の誰かということになるんじゃないのか?」

    葉隠「そーいや……そうだったな……。朝食会に遅れてきたのも、そこにセレスっちを合わせた四人だったしよ。セレスっちを抜いてその三人が容疑者だとしても、違和感はねーってか……完全にそうとしか思えねーべ」

    桑田「つまり、山田が犯人ってのは考えにくいんだよ!」

    山田「あのー、それは有り難いのですが……桑田怜恩殿、自分で自分の首絞めてません?」

    桑田「そ、それは……これからだよ! これからなんとかすりゃいいんだよ!」
  121. 121 : : 2014/05/08(木) 19:55:54
    舞園「というか、もう何とか出来てませんか?」

    苗木「え? それって……」

    葉隠「桑田っちが犯人から除外できるかもしんねー、ってことか?」

    朝日奈「うーん……ダメだ、よくわかんないよ……!」

    セレス「……ふう。山田君。混乱している方も大勢いらっしゃるようです。ここで軽くこれまでの流れをおさらいしてくださいませんか?」

    山田「え? 僕?」

    セレス「他に山田という苗字の方はいらっしゃらないと思うのですが」

    山田「そ、そうですな……わかりました、では不詳この僕、山田一二三がその役目を務めさせていただきましょう」

    石丸「ああ、お願いするぞ!」

    山田「えーと、まず最初に議論したのは凶器について、でしたな。結論から言ってしまえばあの刀は凶器ではない、という事になりました。その理由はいくつかありましたが……ざっくり言ってしまえば、“あの刀で斬る事は不可能”“腹部の傷は死後にできた物の可能性が高い”“致命傷は全身の刺し傷の方”……そして、“真の凶器がハサミの可能性”でしたな」

    石丸「うむ、そのハサミならば今、僕の手元にあるぞ!」

    山田「更に、“血痕が床になかった”ことからあの部屋で生前の腐川冬子殿に刀が刺されたことはありえない……と、こういう流れだったと記憶しておりますぞ。ついでに言えば、血痕を拭いたとしても、拭く物を処分する方法はトラッシュルーム以外になく、掃除当番である僕は刀の存在を知らなかったわけですからやはり血痕を処分したというのも考えにくい、と」

    セレス「まあ、及第点ですわね」

    山田「は、有難き幸せに存じますぞ!」

    桑田(山田の奴……調教されてねーか……?)

    苗木「えっと、その話を元に考えてみると……見えて来るね。桑田クンを犯人候補から除外していい理由……」

    桑田「え、マジで?」

    苗木「え、き、気付いてないの……?」

    舞園「鋭いのかそうじゃないのか……桑田君が良くわからなくなってきました」

    桑田「ぐ、う、うぅ……」

    苗木「えっと、じゃあボクから言っちゃうけど……桑田クンの部屋が現場じゃない可能性が出てきた、って事だよ。だって考えてもみてよ! あそこが殺人現場じゃなかったら死体を個室まで移動させたって事になるけどさ……わざわざ自分の部屋に移動させるなんて、そんなの自分が犯人ですって言ってるようなものじゃないか!」

    葉隠「ちょ、ちょっと待ってくれ。現場が桑田っちの部屋じゃなかったって……さっき俺が似たようなこと言った覚えがあんべ!」

    霧切「ええ、そうね。会議室がどうとか余計な事を言わなければ、正解でよかったんじゃないかしら」

    葉隠「マジか!?」

    江ノ島「けど、それが桑田が犯人候補から外れるって事にはならないじゃん!」

    桑田「は? 何でだよ……」

    江ノ島「つまり、こーいう事!」

    桑田(江ノ島ちゃん、さっきからなんかミョーに突っかかってくんな。ま、江ノ島ちゃんも疑われてる立場だから焦ってんのかな? でもとりあえず、今はここを論破しねーとな)
  122. 122 : : 2014/05/08(木) 19:56:49
           ― 議論  開始 ―


    ≪コトダマ≫
    【モノクマファイルの不備?】
    【十神の証言】
    【残鉄剣】
    【霧切の証言】
    【有力容疑者たちのアリバイ】


    江ノ島「そもそも死体を移動させたって」

    江ノ島「それが間違ってるって事もあるし!」

    苗木「でも、他に血痕が無い事の≪説明ができる≫の?」

    江ノ島「そんなの簡単だって!」

    江ノ島「殺害現場が部屋じゃなくて」

    江ノ島「≪シャワールーム≫だったとしたら?」

    セレス「なるほど、≪血痕は洗い流せますわね≫」

    江ノ島「だろ!?」

    苗木「もしその話が事実なら……」

    苗木「腐川さんが死んだのは≪夜時間前≫って事になるね」

    江ノ島「時間なんて今はどーだっていいじゃん!」

    江ノ島「だって他に」

    江ノ島「≪桑田の部屋が現場じゃないって証拠なんてないっしょ!?≫」


    桑田(証拠か……あれをぶつければ、オレの容疑は晴れる、か?)
  123. 123 : : 2014/05/09(金) 20:48:00
    江ノ島「そもそも死体を移動させたって」

    江ノ島「それが間違ってるって事もあるし!」

    苗木「でも、他に血痕が無い事の≪説明ができる≫の?」

    江ノ島「そんなの簡単だって!」

    江ノ島「殺害現場が部屋じゃなくて」

    江ノ島「≪シャワールーム≫だったとしたら?」

    セレス「なるほど、≪血痕は洗い流せますわね≫」

    江ノ島「だろ!?」

    苗木「もしその話が事実なら……」

    苗木「腐川さんが死んだのは≪夜時間前≫って事になるね」

    江ノ島「時間なんて今はどーだっていいじゃん!」

    江ノ島「だって他に」

    江ノ島「≪桑田の部屋が現場じゃないって証拠なんてないっしょ!?≫」


    ノ 三【霧切の証言】

    桑田「このアホォ!」
  124. 124 : : 2014/05/09(金) 20:48:50
    江ノ島「は? 何かあるっての?」

    桑田「オレの部屋を捜査してた時に霧切が教えてくれたんだよ。あの部屋には争った痕跡なんか一つもなかったらしいぜ」

    江ノ島「そんなの、抵抗する間もなく殺されたのかもしんねーじゃん!」

    霧切「いえ、それはあり得ないのよ。だって、腐川さんの手の指の爪の間に、犯人の物と思われる皮膚が挟まっていたもの。これは抵抗した跡で間違いないはずよ」

    江ノ島「な、何さそれ!」

    大神「では、殺害現場は桑田の部屋ではなかったという事か?」

    大和田「ってコトは、オレらは見当違いのトコを見張ってたってのかよ……!?」

    江ノ島「でも、それじゃあ本当の現場はどこだっての?」

    不二咲「ひょっとして……あそこかなぁ?」

    桑田「不二咲、なんか知ってんのか!?」

    不二咲「う、うん……実は、捜査って言ってもどこを調べたらいいかわからなくて。それであちこち見て回ってたんだけど……」

    山田「どこか現場の候補になりそうな場所でも?」

    不二咲「学校エリアの方の、視聴覚室が……荒らされてたんだぁ」

    朝日奈「え、視聴覚室?」

    十神「チッ、それでは気付かんわけだ」

    霧切「ちなみに、その事は私も確認しているわ。事実として考えてもらって結構よ」

    舞園「私も視聴覚室は見ましたけど……ちょっと散らかってるな、くらいにしか思いませんでしたね」
  125. 125 : : 2014/05/09(金) 20:50:05
    霧切「ところで石丸君」

    石丸「む、何だろうか?」

    霧切「私が視聴覚室に行った時……こんな物を見つけたのだけど」

    苗木「あっ!」

    大和田「何だァ? ハサミか?」

    石丸「な、何故霧切くんがそれを持っているのだ!?」

    霧切「その反応、どうやら石丸君が持っているっていうトラッシュルームにあったハサミと同じもののようね」

    石丸「あ、ああ。ちなみに……僕が預かっているのは、これだ」

    大神「どう見ても、同じデザインだな……」

    苗木「ちょ、ちょっと待ってよ! それって裁ちばさみじゃなかったの!?」

    舞園「裁ちばさみ、ですか?」

    苗木「だってボクもそれと同じデザインのハサミを捜査中に見てるんだ! あれは、たしか……」

    桑田「腐川の部屋にあった裁縫セットの下、だな。オレも一緒に見てるぜ」

    霧切「そう、そんな所にもあったのね……」


        コトダマ
         【奇妙なハサミ】の情報を更新しました。

         内容:トラッシュルームのシャッターの前に落ちていた。
            特徴的なデザインで、少なくとも
            桑田、石丸、朝日奈、山田の物ではない事が判明。
            現在は石丸が所持。
            また、腐川の部屋の裁縫セットの下からも
            同一のデザインのハサミが発見された。
            その正体は裁縫セットに入っていた
            裁ちバサミなのだろうか?
            さらに、同一のデザインのハサミを
            霧切が視聴覚室で発見していた。
            その際、視聴覚室は荒らされていたらしい。
  126. 126 : : 2014/05/09(金) 20:50:40
    霧切「ともかく、これでハッキリしたんじゃない? 少なくとも、現場候補になる場所がもう一ヶ所あるってことがね」

    江ノ島「荒らされてたってだけじゃん! そこで“戦闘”があったなんて証拠、ねーだろ!」

    十神「待て。お前今何と言った?」

    江ノ島「だ、だから荒らされてたからって視聴覚室で“戦闘”があったって事にはならねーっしょ!?」

    十神「なるほどな。つまりお前は知っていたという事になる。あのハサミが“被害者”の物であるという事をな」

    桑田(え? そりゃどういう意味だ?)
  127. 127 : : 2014/05/09(金) 20:51:27
           ― 議論  開始 ―


    ≪コトダマ≫
    【有力容疑者たちのアリバイ】
    【腐川殺しの動機】
    【十神の証言】
    【奇妙なハサミ】
    【モノクマファイル壱】


    江ノ島「な、なんでそーなんの?」

    十神「戦闘という言葉が出てくるという事は」

    十神「≪被害者が戦闘能力に富んでいた≫事を」

    十神「知っていたという事になるだろう?」

    十神「≪実際そうだったからな≫」

    大神「待て、我ならばまだしも」

    大神「≪腐川に戦闘能力があった≫とは思えん」

    山田「腐川冬子殿は≪バリバリのインドア≫だったはずですぞ」

    葉隠「十神っちでも≪記憶違い≫する事があるんだな!」


    桑田(アイツ、言ってることが“今朝と違わねー”か?)
  128. 128 : : 2014/05/09(金) 21:40:30
    十神、失言と見せかけて~の・・ってパターンかな?
  129. 129 : : 2014/05/10(土) 12:41:03
    江ノ島「な、なんでそーなんの?」

    十神「戦闘という言葉が出てくるという事は」

    十神「≪被害者が戦闘能力に富んでいた≫事を」

    十神「知っていたという事になるだろう?」

    十神「≪実際そうだったからな≫」


    ノ 三【腐川殺しの動機】

    桑田「このアホォ!」
  130. 130 : : 2014/05/10(土) 12:41:55
    桑田「おい十神、オメー言ってることが今朝と違うだろ!」

    十神「何の事だ?」

    桑田「オメーは今朝、こんな事言ってただろーが!」


    十神「だが、あいつは見た目や性格からして力も腕力も体術も、レベルとしては下から数えた方が早いだろう。さらに言えば“超高校級の文学少女”なんていかにもインドアな才能じゃないか。標的に選ばれても仕方あるまい?」


    桑田「それにこの発言が無かったとしても、腐川に戦闘能力がねー事くらい、どう考えてもわかんだろーが!」

    十神「フン、俺はその発言を訂正する気はないぞ。もちろん、“被害者”に戦闘能力があったという発言についてもな」

    葉隠「はぁ? 何言ってんだ?」

    霧切「……ねえ、十神君。さっきから気になっていたのだけど」

    十神「何だ?」

    霧切「あなた、さっきから腐川さんの事を“被害者”としか表現していないわね。何か理由があるの? 彼女の名前を呼ばない理由が」

    十神「……ならば被害者の事を名前で呼んでやろうか? そうすればお前達の疑問も一気に氷解するだろうしな」

    苗木「どういう事? 腐川さんを名前で呼ぶだけで疑問が消えるって」

    十神「違うな」

    苗木「え、違うって……何が?」

    十神「……そうだな。ただ教えてやるのもつまらん。言う前に一つテストをしてやろう」

    大和田「あァ? テストだぁ? んなまどろっこしいモンいらねーってんだ! さっさと言や済む話だろーが!」

    石丸「何を言うか! 学校生活において小テスト、定期テストは重要なイベントだろう!」

    舞園「小テストでも定期テストでもないと思いますけど……」

    十神「お前ら、モノクマファイルはちゃんと見たんだろうな?」

    苗木「見たけど……」

    セレス「先ほども一度、話題になりましたものね」

    十神「ならばその時、何か違和感を覚えなかったか?」

    桑田(モノクマファイルを見た時の違和感? それって……)


    ノ 三【モノクマファイルの不備?】

    桑田「これか!」
  131. 131 : : 2014/05/10(土) 12:43:17
    桑田「もしかしてアレの事言ってんのか? モノクマファイルがすっげー曖昧に書かれてたっつー」

    舞園「そうでしたね。モノクマファイルには死亡時刻や凶器、殺害現場、致命傷、その上名前まで、何一つ具体的には書かれていませんでした」

    大和田「モノクマがサボっただけじゃねーのか?」

    モノクマ「違うよ! ボクはサボったりしないよ!」

    霧切「それはつまり、書いていない事には書いていないなりの“理由”があるという事ね?」

    モノクマ「ド、ドキィ!」

    十神「だろうな。実際、俺は被害者の名前が書かれていない理由に見当がついている」

    江ノ島「その見当って何の事……?」

    十神「それはトボけているのか? それとも具体的なところまでは知らなかったという事か?」

    朝日奈「もー、いい加減教えてよ! 腐川ちゃんの名前を十神が呼んだら疑問が解決するんでしょ?」

    山田「ならば早く言ってくださいませんかねえ」

    十神「だから違うと言っているだろう。俺が呼ぶのは“腐川”の名前ではなく“被害者”の名前だ」

    葉隠「いやいや、だからその被害者が腐川っちだべ?」

    十神「たしかに、体は腐川の物かもしれないな。だが、あいつの死体の状況……舌が異常に長く突き出ていたな」

    苗木「そうだったね。どういう状況になったらああなるのかイマイチわからないけど」

    十神「あれはな、腐川の中の“別人格”が顔を出した時の兆候の一つだ」

    大神「別人格だと……!?」

    朝日奈「それって二重人格って事!?」

    不二咲「別人格……かぁ」
  132. 132 : : 2014/05/10(土) 12:46:02
    十神「そうだ。俺は昨日、腐川自身からその事について相談を受けていた。だから知ってるんだよ。あいつのもう一つの人格の名前もな」

    不二咲「それって、何なのぉ……?」

    十神「お前達も名前くらいは聞いたことがあるだろう? 今巷を騒がせている連続殺人鬼、“ジェノサイダー翔”の名前くらいはな」

    葉隠「じぇ、ジェノサイダー翔って……あの数千人も人を殺してるって噂の!?」

    江ノ島「いや、幾らなんでもそれは誇張でしょ。多くても数十人とかじゃね?」

    霧切「それでも異常な数には違いないけれどね」

    朝日奈「ちょちょ、ちょっと待ってよ! じゃあ十神は、腐川ちゃんがジェノサイダーだったって言うの!?」

    十神「ああ、そうだ。実際あいつからそう相談を受けている。人格が交代するところまで見せられたからな。信じるほかあるまい」

    桑田(そういや、たしかに……)


    十神「俺はな、夜時間前だが報告会の後に“腐川”と会っているんだよ」

    桑田「な、マジか!?」

    十神「ああ。本当だ。そこで“あいつ”の話を聞いた後……俺は厳命した。さっさとシャワーを浴びて寝ろとな」


    桑田(捜査中、十神の話を聞いた時も、途中で腐川の呼称が“あいつ”になってたっけな。クソ、んなもん気付くかっての!)

    十神「これでわかっただろう。“被害者”、つまり“ジェノサイダー翔”には確かに戦闘能力があった。そして“ジェノサイダー翔”が殺しの際に凶器として使っている物がハサミである事も踏まえると……」

    霧切「江ノ島さんが怪しく見えてくる。そういう事ね」

    江ノ島「な、な……」

    苗木「怪しい人物を指名するまでもなく……江ノ島さんが最有力容疑者、って事になるね」

    江ノ島「何、言って……」

    舞園「江ノ島さん、なんですか……?」

    江ノ島「いや、ちょ、待てって……」

    不二咲「けど、江ノ島さんって“超高校級のギャル”だよねぇ? 殺人鬼と戦闘したとして、なら……死体で発見されるのは“江ノ島さんの方”になるんじゃないかなぁ」

    江ノ島「そ、そーだよ! アタシが殺人鬼なんかに勝てるわけないじゃん!」

    大神「だが、武術の世界でもラッキーヒットは存在する。不意の一撃を食らわせた後、動きが鈍ったところをと考えれば……」

    石丸「不可能ではない、か」

    江ノ島「けど……!」

    桑田「ならよ、一回今回の事件を最初から振り返ってみよーぜ。それでもやっぱ反論があるってなら……言ってくれよ」
  133. 133 : : 2014/05/10(土) 12:47:04
           ― クライマックス 推理 ―


    桑田「振り返ると言っても、分からねー事だらけではあるから分かってる事だけを纏めるぜ」

       ACT 1

    桑田「まずは昨日の報告会の後からだ。今回の事件で有力容疑者として挙げられた人物は四人。オレと苗木と江ノ島ちゃん、それからセレス。それから被害者である腐川だな。有力容疑者の中で、夜時間前のアリバイがあるのはセレスだけ。山田に紅茶淹れてもらってたって話だったな? 腐川の最後の目撃情報は十神と話してた、ってヤツのはずだ。けど腐川はそこで、おそらくジェノサイダー翔として夜時間前に十神と別れた」

       ACT 2

    桑田「で、曖昧なのはこっからだ。腐川が結局いつ死んだのか……オレらはまだ知らねーしな。けど確かなのは、視聴覚室で犯人とジェノサイダーの戦闘があったって事だな。こっからはオレの推測だけどたぶん、その戦闘の際にハサミを一つ、ジェノサイダーもハサミを奪った犯人も気付かない内に、どっちかが落としちまったんだ。それが霧切の拾ったハサミって事だろ」

    ACT 3

    桑田「その後、犯人が死体をどうしたのかはわからねー。そのまま視聴覚室に置いてたのか、どっか別のトコに移動させたのか。けど確かなのはその時点で死体はオレの部屋にはなかったって事だ。それはともかくとして、ハサミがトラッシュルームにも落ちてたってことはたぶん、証拠隠滅しようとハサミを持って来てたんだろうな。この捜査の間だけで三本も見つかってるってことは、もっとあったんじゃねーか? たぶんだから、一本トラッシュルームで落としたことに気付けなかったんだろうな。ただ、トラッシュルームのシャッターは閉まってっからたぶんトラッシュルームでの処分は諦めたんじゃねーかと思うけどよ」

    ACT 4

    桑田「結局証拠をどう処分したのかはわかんねーって事で翌朝……つまり今朝の話に移るぜ。たぶん犯人は、オレが部屋を出たところでもたまたま目撃したんだろーな。それでオレが部屋に鍵をかけ忘れてる事に気が付いた。それで、使えると思った犯人はオレの部屋に死体を移動させ、刀を腹に差すことで偽装工作をしたんだ……あたかも、オレが部屋で腐川を殺したように見せかけるためにな。けど、刀の存在はオレと苗木と江ノ島ちゃんの三人しか知らない……。この事に犯人はこの時点で気付いてなかったのかもな。それか、気付いてたけどオレに罪をかぶせられると確信でもしてたか。何にせよ、一連の偽装工作を終えた犯人は何食わぬ顔で朝食会に現れたんだ」

       ACT 5

    桑田「でも犯人は、裁判中にボロを出した。あの安全にインドアな才能を持つはずの腐川を指して“戦闘をした”なんて表現を使っちまったんだ。それはつまり、被害者が“超高校級の文学少女”腐川冬子ではなく、戦闘慣れした……言うなれば“超高校級の殺人鬼”ジェノサイダー翔であることを知っていたという事になる!」

    桑田「つまり! オメーが犯人なんだ、江ノ島盾子!」

           ― COMPLETE! ―
  134. 134 : : 2014/05/10(土) 12:47:18
    桑田「どーだ? なんか反論あるか?」

    江ノ島「反論あるかって訊かれても……そんな穴だらけな纏め、どっから反論すりゃいいか迷うくらいなんですけど」

    桑田「ですよねー……」

    十神「だが、筋が通っているかいないかで言えば最低限は通っているな」

    霧切「一考の価値はある。そう思えるけれど」

    桑田「だ、だよな、だよな!?」

    舞園「ええ、桑田君にしては頑張ったんじゃないでしょうか」

    桑田「オ、オレにしてはなんだ……」

    江ノ島「ちょっと! 本気でそんなので犯人決める気!?」

    十神「決めるとは言っていない。参考にする価値はあると言ってるんだ」

    江ノ島「待ってよ! アタシはそんなん認めないからね! アタシが犯人だ、なんて証拠も何一つないじゃん!」

    桑田(江ノ島ちゃんが犯人だ、って証拠か。そりゃたしかにねー。ねーけど……より疑惑を深める証拠なら、あるんだよ……!)
  135. 135 : : 2014/05/10(土) 22:21:47
    狛「とうとうクライマックスかな?
    クロの希望とシロ達の希望、どっちが勝つのかな?
    さぁ、ボクにもっと希望を見せてよ・・」

    「「「「黙らっしゃい」」」」
  136. 136 : : 2014/05/11(日) 14:46:13
           ― マシンガントークバトル 開始! ―


    江ノ島「証拠がないじゃん!」 江ノ島「アタシじゃない!」

    江ノ島「このオシャレ(笑)髭!」

    江ノ島「違う違う違う違ァう!」 江ノ島「チョーありえないんですけど!」

    江ノ島「マジ最悪!」



    江ノ島「≪アタシが犯人だって根拠すら薄いじゃん!≫」


    ノ 三【江ノ島とモノクマの会話】

    桑田「これで証明してやるってーの!」
  137. 137 : : 2014/05/11(日) 14:46:43
    桑田「たしかに、確実な証拠はねーよ……」

    江ノ島「でしょ!?」

    桑田「けどな、江ノ島ちゃん。オメーの疑惑を深める証拠なら、まだあんだよ……」

    江ノ島「は、ハァ!? 何それ!」

    桑田「捜査中にオメー、モノクマと何か話してたよな?」

    十神「何だと? 聞いてないぞ、そんな話は!」

    江ノ島「だ、だからあれは、学級裁判のルールが曖昧だったから……確認してただけで」

    霧切「こう言ってるけど、どうなのモノクマ?」

    モノクマ「えーと、ボクとしては公平な立場から話をする必要があるわけでして……けど、江ノ島さんのプライベートな部分も守る必要があると判断せざるを得ません。なので最低限の事しか言えませんが……」

    十神「御託はいい! さっさと答えろ!」

    モノクマ「はい。捜査中に江ノ島さんとボクが会話をしていたことは事実ですが、学級裁判についての再説明などは行っておりません」

    江ノ島「なっ……」

    葉隠「な、ならよ、一体何を話してたってんだ?」

    モノクマ「そいつはちょっと教えられませんなあ。“プライベート”な部分なので!」

    山田「でしたら江ノ島盾子殿? あなたの方からお話願えませんかね……?」

    セレス「ここで話せないと仰られますと、内容までは分かりかねますが疑惑を深めるには十分な材料になりますわね」

    江ノ島「そ、それは……!」

    十神「ウソをついていた時点で立場が悪い事くらいは理解しているよな、江ノ島?」

    江ノ島「それ、は……。…………」

    大神「何も、言えぬようであるな」

    大和田「じゃあ、マジなのかよ……」

    桑田(沈黙。静寂。誰も何も一言も、しばらく言葉を発することをしなかった。或いは、江ノ島ちゃんの言葉を待っていたのかもしれない。けど……)
  138. 138 : : 2014/05/11(日) 14:47:16
    モノクマ「えーと、この沈黙は……議論の結論が出た、と判断していいみたいですね」

    桑田「は? ちょ、ちょっと待てよ」

    モノクマ「それではオマエラ、クロだと思う人物を、お手元のスイッチで投票してください」

    苗木「待てよモノクマ! まだ江ノ島さんの反論を聞いて……」

    モノクマ「投票の結果、正解なのか、不正解なのか……さぁ、どうなんだぁ!?」

    桑田(有無を言わせず、モノクマが投票タイムを宣言した。クソ、後味悪ぃけど……押さなきゃいけねーんだよな……)


         VOTE

    【江ノ島】【江ノ島】【江ノ島】

        GUILTY!
  139. 139 : : 2014/05/11(日) 14:48:00
    モノクマ「ひゃっほーう! だいせいかーい! 腐川冬子……いやいや、ジェノサイダー翔殺しのクロは江ノ島盾子さんだったのでしたー!」

    不二咲「じゃあ、ホントのホントに……江ノ島さんが犯人だったのぉ?」

    江ノ島「……そーだよ。アタシが犯人。これで満足?」

    苗木「そんな……満足なんてするわけないじゃないか!」

    霧切「一つだけ聞かせて頂戴。何故あなたは腐川さん……ジェノサイダー翔を殺したの?」

    十神「そうだな。殺しの動機の類は一切なかったはずだ。お前は俺のように現状をゲームと割り切ってはいなかったようだしな」

    セレス「割り切っていたとしても、普通殺人なんてそう簡単に行えるものではありませんけれど」

    朝日奈「ホントに、外に出るってだけの理由だったの……? 殺したからって、出られるなんて保証も無かったのに!」

    江ノ島「理由……理由ね。理由なんかにどんな意味があんの?」

    舞園「え……?」

    江ノ島「ま、いいや。理由があれば納得するって言うなら、ちょっとだけ教えたげる。アイツはね……アタシの“名前”を呼んだのよ」

    霧切「名前……?」

    江ノ島「そ、名前」

    大神「それで、どうしたのだ?」

    江ノ島「どうもしないよ。ただ、それだけ」

    石丸「馬鹿なッ!? 名前を呼ばれただけで殺したというのか!?」

    江ノ島「ま、そーいうことになるね。でもアタシにとってはそれだけで、殺す理由としては十分だったっていうか」

    桑田「けど、オメーの名前なんてここにいるほぼ全員が呼んでるじゃねーか。けどソイツらは殺されちゃいねー。生きてるぜ?」

    江ノ島「そーだね」

    山田「それはいったいどういう事なんですかねえ?」

    江ノ島「どーいう事だと思う? 言っとくけど、これ以上はアタシは言うつもりはないよ。勝手に想像すれば?」

    葉隠「勝手に想像って……も、もしかして……ここにこうして生きてるって思い込んでる俺らは実は既に死んでて……なんてオチじゃねーだろーな!?」

    江ノ島「……はぁ。ま、好きに想像すればいいんじゃない?」

    葉隠「やめてくれって、そんなオカルトは!」

    モノクマ「えーと……」

    苗木「な、何だよ……?」

    モノクマ「どうやら江ノ島さんは“これ以上言う事はない”そうなので、そろそろ始めちゃいますか」

    大和田「始めるって、何をだよ?」

    モノクマ「もちろん、最初に言ってあるでしょ? おしおきだよ、おしおき!」

    不二咲「おしおきって……処刑ってことぉ……!?」

    桑田「ちょ、ちょっと待てって! マジにそんな事すんのかよ!?」

    モノクマ「マジにやるよ! だってみんな待ってるんだからね!」

    霧切「みんな……?」

    モノクマ「それでは、“超高校級のギャル”である江ノ島盾子さんのために、スペシャルなおしおきを用意しました! それは張り切って行きましょう! おしおきたーいむー!」
  140. 140 : : 2014/05/11(日) 14:49:38
    閉じられていた扉の奥……そこからチェーンの付いた首輪が江ノ島をめがけて、飛ぶ。
    その首輪はがっちりと江ノ島の首に固定され、扉の奥へと引きずられていく。
    その先に待っていたのは……華やかな、まるでファッションショーの会場のような空間、だった。


               サウザンド☆ファッションショー

            “超高校級のギャル”江ノ島盾子  処刑執行


    江ノ島はステージの中央に設えられた棒のようなものに固定された。
    だがすぐにその姿は、ステージ上部から降りてきたカーテンによって隠される。
    数秒後、カーテンが上がると棒に固定されたままではあるものの、完全に今までとは違う服装をした江ノ島が姿を現した。
    と同時に、上部に設置されたモニターに、【1】と表示される。
    江ノ島が固定されている棒が、まるでファッションショーのような軌道で動く。
    ステージの周囲にいるモノクマ達――観客のつもりだろうか――の大歓声が響き渡る。
    ステージの中央に戻ると、また上からカーテンが降り。
    そして数秒後、また違う服装の江ノ島が姿を現し、モニターの表記は【2】へと変わる。
    棒もまた、着替えが終わると同時に先ほどと同じような軌道で動く……。
    幾度も幾度も、それが繰り返され、モニターの数字はとうとう【999】まで伸びた。
    江ノ島は心底疲弊した表情のまま、しかし棒は今までと同じ軌道で動く。
    既に観客たちも飽きているのだろうか。【50】を超えた辺りからブーイングの嵐がやむことはない。
    江ノ島がステージの中央に戻る。
    次はいよいよ千着目だ。
    今までと同じようにカーテンが降りる。
    しかし、今までもかなりの速さだったと思うが、今回はそれよりもさらに速くカーテンが持ち上がり、姿を現したのは……。
    江ノ島が今までいた位置に鎮座する、モノクマをかたどったアイアンメイデン。
    モニターに映る【1000】の表示。
    ゆっくりとアイアンメイデンが開くと、串刺しにされ完全に絶命した江ノ島の姿が見えてくる。
    開いたままのアイアンメイデンは、先ほどまでと同じ軌道動く。
    観客たちの歓声は、今までのどの服装のときよりも、大きく響き渡った――。
  141. 141 : : 2014/05/12(月) 18:02:58
    これってオリジナルですよね?普通に思い浮かべてしまった・・
  142. 142 : : 2014/05/12(月) 18:22:24
    >>141
    “こっちの”江ノ島については原作にも無い上にビジュアルファンブックや1・2Reloadの設定資料集にもおしおき案載ってませんからオリジナルですよー。
    原作の雰囲気を重視しつつ練ってみました。


    モノクマ「ひゃっほーう! エクストリィームゥ!」

    大和田「な、何なんだよ、ありゃあ……!」

    セレス「アイアンメイデン……。鉄の処女などと和訳されますわね。ヨーロッパで使われていたとされる拷問具のはずですが」

    モノクマ「そうですね。今回使用したものはこちらで用意したものなので……“グングニル・メイデン”とでも名付けようかな!」

    葉隠「名前なんてどーでもいいって! 江ノ島っちは……ホントに死んじまったんか?」

    モノクマ「いやいや、どー見ても死んでるでしょ! トリックも何も通用しないくらい、死んでるでしょ!」

    葉隠「てことは……実際、この状況って……マジだったってことか!?」

    十神「チッ、今更理解したのか」

    葉隠「冗談じゃねーって! 今すぐここから出してくれえー!」

    大神「騒いでもどうにもならぬ。……騒ぎたくなる気持ちはわかるがな」

    朝日奈「そう、だよね……。だって江ノ島ちゃん、さっきまでたしかに生きてたんだもんね……」

    石丸「そんな江ノ島くんが……あんな風に殺されて……ッ!」

    桑田(ショックじゃないわけがなかった。死んだのが江ノ島ちゃんだからってわけじゃない。たぶん、十神のヤローだったとしても、ショックを受けただろう。なんせ、人が死ぬ瞬間なんてものを見たのはこれが初めてだったんだからな)

    モノクマ「うぷぷぷ。いやあ、いいねえ、オマエラのその顔! 絶望に沈みきったいい表情だよ! ボクが見たかったのはそういう顔なんだよ……」

    霧切「ねえ、そんな事はどうでもいいから、一つ教えてもらえる?」

    モノクマ「んー? いいよ、今のボクはさいっこーに絶望的で、気分がいいからね! よほどの事じゃなければ答えてあげる!」

    霧切「あなた、おしおきを始める前にこんなことを言ったわね?」


    モノクマ「もちろん、最初に言ってあるでしょ? おしおきだよ、おしおき!」

    不二咲「おしおきって……処刑ってことぉ……!?」

    桑田「ちょ、ちょっと待てって! マジにそんな事すんのかよ!?」

    モノクマ「マジにやるよ! だって“みんな”待ってるんだからね!」


    霧切「あなたの言う『おしおきを待ってるみんな』って誰の事かしら? 少なくとも私達は待ってなんていなかったわよ……」

    モノクマ「おっとそいつは……言えねえや……勘弁勘弁!」

    桑田(霧切の追及から逃げるようにして、モノクマはどこへともなく去って行った)

    苗木「……これから、どうする?」

    セレス「どうもこうもありませんわ。上へ戻って、再び共同生活を始める……それ以外にないでしょう」

    山田「そう、ですな……」

    桑田(みんなは暗い表情をしながらも……モノクマが言うところの“絶望に沈んだ表情”をしながらも、なんとか前に進もうとしている。オレだってそうだ。前に進まなきゃ……)
  143. 143 : : 2014/05/12(月) 18:22:47
    桑田「ん?」

    桑田(ふと見ると、舞園ちゃんが怯えきっている姿が目に映る)

    桑田「舞園ちゃん……大丈夫か?」

    舞園「はい、大丈夫……なわけないじゃないですか」

    桑田「だ、だよな。オレだって、相当堪えてんぜ、これ」

    舞園「私達は……いつになったらここから出られるんですか?」

    桑田「それは、わかんねーけど」

    舞園「私は、いつになったらまたテレビに出られるんですか? 忘れられないようにするためには、みんなの記憶から消えないようにするには……みんなの前に立ち続けるしかないのに!」

    桑田「お、落ち着けって! そんな風に考えたら舞園ちゃん、江ノ島ちゃんみたいに……!」

    舞園「わかってます。わかってますけど……このままここで生活していて、黒幕の気まぐれで私達がああならないって保証は……どこにあるんですか?」

    桑田「そ、それ、は……」

    桑田(どんな言葉を使っても、舞園ちゃんの心には響かない。悔しいけど、それがわかっちまってオレは……いや、違う)

    桑田「大丈夫だ、大丈夫だ舞園ちゃん」

    舞園「何が、大丈夫だっていうんですか?」

    桑田「これは舞園ちゃんのファンの一人として言わせてもらうぜ。舞園ちゃんが暫くテレビに出なかったからなんだ! 新曲出せねーからってなんだ! そんなんで舞園ちゃんの今までの曲が消えるわけでも、今までやってきたことが消えるわけでもねーだろ!? だったらファンは待つ! どんだけかかったって、舞園ちゃんの声が、舞園ちゃんの歌が、舞園ちゃんが! 好きな限り、ゼッテー待つ!」

    舞園「桑田……君」

    桑田「だからさ、ちょっとくらい希望的観測って奴? 楽観的になってもいいんじゃね? まーさすがに葉隠レベルだとマズいだろーけどな」

    舞園「そう、ですよね……。そうですね! ありがとうございます……なんだか、ちょっと楽になりました」

    桑田(なんとか説得できてよかったぜ。安心したところで舞園ちゃんの、たぶんこれは営業スマイルなんかじゃなく本当の笑顔が見えて……オレは、明日からも全力投球できそうだって、柄にもなくそんな風に思っちまったんだ)
  144. 144 : : 2014/05/12(月) 18:23:43
      CHAPTER 1
              ナゲキル   完


    生き残りメンバー

    桑田怜恩 朝日奈葵 葉隠康比呂 石丸清多夏 大神さくら
    大和田紋土 セレスティア・ルーデンベルク 不二咲千尋
    十神白夜 山田一二三 苗木誠 霧切響子 舞園さやか



    To be Continued
  145. 145 : : 2014/05/12(月) 18:39:08
    というわけで、Chapter1が終了しました!
    Chapter2は次スレを立てましたので、よろしければそちらもお付き合いくださいませ。

    【次スレ】
    http://www.ssnote.net/archives/16611
  146. 146 : : 2015/07/27(月) 18:02:32
    オリジナルで面白かったです!

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mokeyann

もけやん

@mokeyann

この作品はシリーズ作品です

オリジナル展開でコロシアイ学園生活 シリーズ

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