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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

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ハンジ「モブリットを口説こう!!」ニファ「分隊長よしきた!!」~ハンジの恋愛方程式~

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  1. 1 : : 2014/06/10(火) 18:00:22
    ハンジ「モブリットを口説こう!!」ニファ「分隊長よしきた!!」~ハンジの恋愛方程式~

    モブリット「分隊長が最近変だ」ニファ「あらやだ元から変じゃないですか」
    http://www.ssnote.net/archives/18192
    こちらのハンジ視点versionです

    題名通りです(///∇///)
    ハンジさんの恋、成就なるか!!
    恋の方程式成立なるか!?

    よろしくお願いいたしますm(__)m
  2. 2 : : 2014/06/10(火) 18:01:05
    モブリット「分隊長、食事が進んでいないようですが…」

    そりゃそうだ、君にじっと見られていて、食事が進むはずがない

    そんな私の心の言葉を知るよしもない彼は、心配そうに私の顔を覗き込む

    顔が、近い…

    そうされると余計に食事が喉を通らなくなるよ…

    そう、私は彼に恋をしていた
  3. 3 : : 2014/06/10(火) 18:01:40
    私は結局食事もそこそこ、部屋にとじ込もってしまった

    最近どうもまずい

    今まで必死に巨人と戦い、巨人の研究に没頭してきた私だったけど、30を過ぎた辺りから、急に人肌という物が恋しくなってきた

    頭の中を反芻してみると、浮かんでくるのはいつも当然の様に私の側にいた、彼の事だった

    それに気が付いた時から、私の行動に変化が生じた
  4. 4 : : 2014/06/10(火) 18:02:18
    女はもともと、子を成すと言う本能的な物があるらしく、30を過ぎた私に、急にその本能が目覚めたのかなんなのか…

    こういうことは、物理的、数値的に説明できない事をわかってはいる

    だが、生まれながらの理系である私は、常に、私の心情の変化を、なんらかの数式に当てはめてみようとしてしまう

    結果、答えの出ない難解な恋愛方程式に、日夜頭を抱える結果となっていた
  5. 7 : : 2014/06/10(火) 18:11:54
    ハンジ「うーん…私に今一番大切な事は何…?よく考えろ、ハンジ・ゾエ。こんな事にうつつを抜かしてる暇なんかないんだ…」

    私は机に突っ伏しながら、独りごちた

    そうだ、目の前に迫る巨人の脅威…可及的速やかに解決しなきゃいけないのはそっちなのに…

    私の心がその事実を隅に追いやろうとしていた
  6. 8 : : 2014/06/10(火) 18:12:17
    モブリットの事をいつから意識していたのか、定かではない

    ふとした瞬間だった気がするし、ずっと意識していた気もする

    長く一緒にいるから、自分の心の変化に自分自身気がついていなかっただけかもしれない

    目を閉じると浮かぶ彼の顔

    …ああ、駄目だ

    気がおかしくなりそうだ

    私はまた、頭を抱えた
  7. 9 : : 2014/06/10(火) 18:31:22
    ハンジ「うわーん…どうしたらいいんだ…私は調査兵団の分隊長、私の行動いかんで、沢山の兵の命運が決まると言っても過言じゃないのに…でも…」

    私は机に置いてあった機密書類に、何となく落書きをしながら一人呟いた

    ハンジ「うわぁぁ…いつの間にか、モブリットの名前書いちゃってるよ…エルヴィンに渡す書類に…き、消えるかな…」

    私は意識せぬままに書いた落書きを見て、また頭を抱えた…
  8. 10 : : 2014/06/10(火) 18:39:38
    このまま部屋にとじ込もっていてもらちがあかない…

    そう思った私は、意を決して外に出ることにした

    大袈裟に思えるかもしれない

    でもね、もし部屋の外に誰かいたら…

    明らかに真っ赤な顔の怪しい私を見とがめるだろう

    もし、部屋の外にモブリットがいたら…

    そうでなくても赤い顔が…タコのようになるのは明らか

    部下である彼に、そんな顔を見られたくはなかった

    夜風にあたろう、そうすれば顔の赤みは落ち着くはず

    ついでに心も落ち着いてくれたら、いいんだけどね…
  9. 14 : : 2014/06/10(火) 20:26:40
    そっと扉を開けて、隙間から廊下を覗く

    よっしゃ、誰もいない
    今のうちに外に出よう

    私は廊下を抜き足差し足忍び足で、慎重に歩く

    怪しいことこの上ないのはわかってる
    でも、この顔を誰にも見られたくはない

    奇行種なんて言われている私にだって、上司の威厳とやらは多少は必要だからね

    そう思った矢先ー

  10. 15 : : 2014/06/10(火) 20:34:27
    ガチャっ…

    今目の前にある扉が開いた

    ハンジ「げっ!!」
    私は思わず声をあげた

    部屋から出てきたのは、私の直属の部下であるニファだった

    ニファ「あら、ハンジさん!!お出かけですか?」

    ニファはにっこり笑顔を私に向けた

    おかっぱ頭に小柄な体、大きな目

    誰が見ても可愛くて、愛嬌のある彼女は、調査兵団でもとても人気があった

    ハンジ「あ、ああ。少し外にね…」
    私も彼女の様に笑おうとして、ひきつった顔をしてしまった
  11. 16 : : 2014/06/10(火) 20:39:17
    ニファ「ハンジさん、何だか最近様子が変な気がするんですけど…」

    ニファが心配そうに、私を見た

    私はあわてて首を左右に振る

    ハンジ「いやいや、いつも変だからさ、私は…ははは!!」
    取り繕う様に、高笑いをした

    ニファ「…やっぱり、変ですよ」
    ニファが探るような視線を、私に向けた
  12. 17 : : 2014/06/10(火) 20:44:30
    ニファに根掘り葉掘り聞かれながら、それを核心には触れないようにのらりくらりとかわしているうちに、外に出た

    外にある運動場…そこには先客がいた

    ペトラとオルオ、そして…
    にこやかな表情を浮かべているモブリットだった

    私はそれを確認した瞬間、兵舎に回れ右をした

  13. 18 : : 2014/06/10(火) 20:49:06
    ニファ「あれ、分隊長!?」

    踵を返して元来た道を戻る私に、ニファが慌てて声を掛ける

    ハンジ「やっぱり部屋に戻りたくなった」

    ニファ「ええ!?どうしたんですか!?」
    ニファは私の後を追ってきた

    ハンジ「…ごめん、ニファ。今日は一人にしてくれないかな…」

    私はニファに頭を下げると、制止するニファを後目に、部屋に急いで戻った


  14. 19 : : 2014/06/10(火) 20:54:25
    部屋に戻った私は、ベッドに突っ伏した

    ハンジ「あーだめだ、末期だ…顔を見るのすら辛くなってきた…」

    私は枕を抱きながら、小さく呟いた

    楽しそうに話す彼とペトラ達

    そんな些細な事にすら、嫉妬をしている、という自分自身が信じられなかった

    ハンジ「…もう、副官を…変えてもらった方が…いいのかな…」

    私はため息をついた
  15. 20 : : 2014/06/10(火) 20:59:13
    業務にまで支障をきたしそうな私の心

    どうすれば落ち着くのか…

    頭の中で、思い付く限りの方程式を使って解いてみるが、答えなど出るはずがなかった

    その時、コンコンと部屋の扉がノックされた

    ハンジ「…」

    私は息を殺す

    モブリット「分隊長、いらっしゃいますか?」

    やっぱりだ…
    今は無理だ、顔を見れない

    私は居留守を使うことにした
  16. 25 : : 2014/06/11(水) 15:14:21
    多分何か用事があって、わざわざ来てくれたんだろうな

    私に勇気がないばかりに、モブリットに迷惑をかけてる

    本当に情けない…年甲斐もなく恋患いだなんて

    しかも相手は自分の部下

    もっと若い時に恋愛をしておくべきだったのかもしれない

    こういう時にどうしたらいいか、全くわからない

    誰かに相談しようにも、いつも何でも相談に乗ってくれていたその相手こそがモブリットだ…

    八方塞がり

    私は布団にくるまった

    寝て、朝起きたらきっといつも通り…

    目を閉じると浮かぶ、彼の優しい笑顔

    ハンジ「…っ」
    何故か目から水が出てきた

    何でだよ…私はどうなっちゃうんだ…

    感情の波に押されるまま、私は訳もわからず流す涙で、枕を濡らした
  17. 26 : : 2014/06/11(水) 16:36:06
    ハンジ「…う~ん」
    いつの間にか朝になっていた

    顔も洗わず寝てしまっていた…

    服もそのまんま…

    ベッドから下りて、服を着替えようとタンスに歩み寄った時、コンコンと扉がノックされた

    モブリット「分隊長、おはようございます」

    現在午前七時半

    いつもきっちりこの時間に部屋に呼びにくるモブリット

    ハンジ「…あ、あー!!ちょっと、まだ支度ができてないんだ」

    私は慌てて返事をした

    まだ顔も洗ってない…そんな顔を見せるのは嫌だ…

    モブリット「…では、外でお待ちしていますから、ごゆっくりどうぞ」

    ハンジ「うん、ごめんね、ちょっと待ってね」

    私は慌てて洗面室に駆け込んだ

  18. 27 : : 2014/06/11(水) 18:58:51
    モブリットを外で待たせている、その事実が否が応にも私を焦らせる

    顔を洗い、何とか髪を撫で付けて、いざ外へ…

    ハンジ「おはようモブリット、待たせたね」
    私は扉の外で待っていたモブリットに、出来る限り爽やか…に見える様に笑顔を作って挨拶をした

    彼は一瞬目を見開いたが、すぐにいつもの笑顔になる

    モブリット「おはようございます、分隊長。ところで…眼鏡は?」

    ハッ!!忘れてた…

    そうか、それでモブリットは一瞬驚いた感じになったのか

    ハンジ「わ、忘れてた…待ってて…」

    眼鏡を忘れるだなんて前代未聞…
    変だと思われただろうな

    私は部屋に逆戻りし、眼鏡をかけた


  19. 28 : : 2014/06/11(水) 19:51:21
    眼鏡を掛けて洗面室へ

    鏡に映る顔は、案の定赤くそまっていた

    ああ、こんな顔見せたくない…

    でももうこれ以上は待たせられない

    私ははぁ、とため息一つついて、彼が待つ部屋の外に出た

    ハンジ「いやあごめんね、まだ寝ぼけてたみたいだよ」
    私はにへら、と笑いを浮かべながらそう言った

    モブリットはいつもと変わらぬ様子で、優しい笑顔を見せていた

    モブリット「昨夜はよく、眠れましたか?分隊長」

    顔と同じ様に優しい声色のその言葉に、私はまた胸がどきっと高鳴ったのがわかった

    ハンジ「あ、ああ、うん。寝過ぎなくらい寝ちゃったよ」

    モブリット「そうですか、それは良かった」
    そう言いながら微笑むモブリットを見て、私は…

    やっぱりその顔を直視出来なくて、顔を背けた
  20. 30 : : 2014/06/11(水) 20:34:22
    ハンジ「いただきまーす」
    私はトレイにのっているパンを一口かじった

    モブリットがその様子を心配そうに見ている

    見られていると、どうも恥ずかしい

    けど、食べなきゃ…心配かけてしまう

    私は大きく口を開けて、むりやりパンにかじりついた

    ハンジ「おいひい…ウグッ…」

    何の水気も取っていない私の喉に、パンの大きな塊がつまった

    モブリット「…ぶ、分隊長?!慌てすぎです!!水、水!」

    モブリットが私の口に、水が入ったコップを押し当て傾ける

    それと同時に、背中をドンドンと叩いてくれる

    そうして、やっと喉がパンから解放された時…

    モブリット「はあ、良かった…パンを喉に詰まらせて窒息死…なんて笑われますよ…分隊長」
    モブリットは困ったような表情を見せた

    ハンジ「あ、危なかった…ありがとう、モブリット…君は命の恩人だよ」
    私はふぅ、と大きく息をした

    モブリットは兵服の内ポケットから、白いハンカチを取り出して、私の目に浮かんだ涙を拭く

    モブリット「いえ、命が助かって良かったです」
    そう言って微笑む彼の表情に、また私の胸が疼いた
  21. 32 : : 2014/06/12(木) 17:23:14
    朝食を何とか平らげて、モブリットを伴って今日の任務につく

    モブリット「分隊長、昨夜ペトラ達が機材のリストを作成してくれましたよ。目を通していて下さい」

    ハンジ「あ、ありがとう…うわあ、助かるなあ」
    私は書類を受け取って中を確認しながら頷いた

    昨日の夜に来てくれたのは、この書類を渡すためだったんだろうな…

    そう思うと、居留守を使った事に後悔の念を覚えた

    仕事にまで影響されてはいけない
    何とかしなきゃなあ…

    そう思い、ちらりと隣を歩くモブリットの顔を盗み見る

    いつもと変わらぬ穏やかな表情

    モブリット「分隊長?」

    気がつくと、モブリットがこっちを見ていた

    盗み見たつもりが、思いきり見つめてしまっていた…

    ハンジ「あ、いやあいい天気だねえ!!」
    私は慌てて視線を反らして言葉を発した

    モブリット「今日は駐屯兵団の工兵部に行きますよ。天気の良い時に外出は嬉しいですね」

    もう一度モブリットの顔を見る…彼は柔らかい微笑みを浮かべていた

    私はその顔を見ただけで、何だかとてもほっとした
  22. 33 : : 2014/06/12(木) 23:19:42
    駐屯兵団本部に向かうべく、兵舎の外に出た

    天気もよく、風がふわりと心地いい

    隣には優しげな表情のモブリットがいる

    考えてみれば、いつも側に、この笑顔を湛えたモブリットがいてくれた

    それを当たり前の様に甘受していたけれど、いざ意識すると、背中が無図痒い

    それに…
    その優しい微笑みは、私だけに向けられているわけではない

    モブリットは誰にでも優しいから

    その微笑みを向けられる相手に、嫉妬に似た感情すら覚える今日この頃

    前はそんな事なかったのに…

    ハンジ「はぁ…」
    私は、天気とは正反対などんよりとした感情を、ため息にかえて吐き出した


  23. 34 : : 2014/06/12(木) 23:45:10
    駐屯兵団の工兵部との打ち合わせはスムーズに済んだ

    材料のリストを纏めてくれていたし、私がざっと書いた図面は、モブリットが丁寧に書き起こし、完成予想図まで書いてくれていたから

    モブリットは涼しい顔をして、仕事が早くて丁寧

    私の至らない穴を、知らぬ間にいつも埋めてくれていた

    私には勿体ない、出来た副官だ

    私はモブリット無しでは今や何も出来そうに無いけど、彼は…

    私の下でなくても重宝されるだろう

    あの優しげな微笑みは、私が上司だから向けられている

    何となくそう思ってしまい、とてつもなく悲しくなった

    はぁ…これは本当にやばいよね

    末期症状だ…恋の、病のね
  24. 36 : : 2014/06/13(金) 10:14:39
    話し合いが終わったら、昼が過ぎていた
    お腹がすいたなぁと思ったら、モブリットがそれを察してくれたのか、お昼を食べに誘ってくれた

    しかもおごってくれるという・・・

    なんだか、これって・・・で、で、デートみたい

    いや、違うんだけど・・・でも

    そう思うと顔がまた熱を帯びてきたのがわかった

    私はなんだか年甲斐のない乙女の様
    どこぞの恋愛小説でありそうな、そんなパターン

    そんな気持ちになんてなるはずないだろ、と一蹴していた自分が懐かしい・・・

    はぁ、とまた本日何回目かのため息をつくと、モブリットが少し不安げな表情で私を見たのがわかった

    心配かけてる・・・だめだ

    ぶんぶんと首を振って、また笑顔を作る

    ハンジ「モブリット、あれ食べよ」

    私は目の前の屋台を指さした
  25. 37 : : 2014/06/13(金) 10:39:13
    公園の白いベンチで、モブリットのおごりのフィッシュアンドチップス(魚と芋を油で揚げたもの)をぱくつく

    とてもおいしい、私はこれが大好物だ

    しかも今日は外で、隣にはモブリットがいる
    だから、いつもより数倍はおいしい気がした

    幸せな一時
    これがずっと続けばいいのに・・・私は本当にそう思った

    ほんの少しの間だけ、巨人の事を忘れても・・・ばちは当たらない、かな

    いや、やっぱり忘れてはいけない

    私が今生きていられるのは、たくさんの犠牲があってこそだ

    その事を一時だって忘れるわけにはいかない

    私が助けられなかった命、守ってあげられなかった部下や、友人の命

    私はそれを全部背負って戦わなければならない

    恋に、うつつを抜かしている暇なんてない、そんな資格はない

    それなのに、この隣にいる彼を愛おしく思うこの気持ちを、抑えきれない

    どうすればいいだろう・・・
    私には、わからなかった
  26. 38 : : 2014/06/13(金) 11:08:17
    兵舎に戻ると、今度はたくさんの事務処理が待っていた

    私は黙々と書類に目を通す

    こうして仕事がある時は、気分を紛らわすことができる

    モブリットはたまにコーヒーをいれてくれたりしながら、てきぱきとサポートしてくれていた

    本当にありがたい存在だ

    二時間ほどそんな状況が続いていた

    そんな時だった

    こんこんと扉がノックされる

    ハンジ「どうぞ、開いてるよ」
    私がそう言うと、扉を開けて入ってきたのは

    ニファ「ハンジさん、おふろいきませんかー!って、お仕事中でしたか!」

    元気印のニファだった
    おふろセットを抱えて、にこにこしていた

    ハンジ「ああ、書類の処理がね、あと少しで終わりそうなんだけど」

    モブリット「分隊長、どうぞニファとゆっくりしてきてください。あとは私がやっておきますので」
    モブリットはそう言うと、にっこり笑った

    ニファ「副長さすが!ハンジさんいきましょいきましょ!」

    ハンジ「ちょ、ちょっとニファ・・・」
    ニファは有無言わさず私の腕を取って立ち上がらせた

    モブリット「おふろセットは洗面室にあるよ、着替えもお忘れなく」

    ニファ「はーい!副長はハンジさんの裸でも妄想しつつ書類処理頑張ってくださーい!」

    モブリット「・・・ぶっ」

    ハンジ「に、ニファ!」

    私は半無理やりニファに風呂場に連行されたのであった



  27. 42 : : 2014/06/14(土) 10:04:24
    ニファ「うふふ~ハンジさん~ふわふわ~!」

    ハンジ「ニ、ニファ、くっつきすぎだよ…!?」

    ニファに背中を流してもらってすっきりした後、湯船に二人で浸かっていた

    ニファは私の後ろから腕を回してくっついていた

    手は勿論…私の申し訳程度の胸にジャストフィットさせていた…

    ニファ「これが楽しみで一緒にお風呂に入ってるんですから~。ハンジさんの胸がこんなに柔らかいって知ってるのは私だけ!!私の特権なんですから~ウフフ」

    ハンジ「物好きだねぇ…君って」
    私はため息まじりにそう言った

    ニファ「物好きなんかじゃありませんよ!?ハンジさんは最高ですから!!」

    ニファは私の前に体を躍らせて、手を握った

    ハンジ「はは、ありがと、ニファ」

    ニファ「…でも、最近ハンジさんが元気がないのが気になってます…何が原因ですか?」

    ニファの唐突な言葉に、体がびくっと反応した

  28. 43 : : 2014/06/14(土) 10:15:23
    ハンジ「いや、いつもと変わらず、元気だよ?」

    ニファ「はい、うそ~!!早く話して下さい!!」

    ハンジ「…ニファ…」
    ニファの半ば強引なその尋問に、私はたじたじだった

    結局…心に貯めていた思いを、ニファに打ち明けてみたのだった


    ニファ「なるほど…私にではなく、副長に気持ちが傾いたという事ですね…私は失恋です…ぐすん」
    話終えた後、ニファは項垂れた

    ハンジ「ちょっと…ニファ…?」

    ニファ「…冗談ですよ。でもハンジさんには珍しいですね…いつも特攻するようなタイプなのに、こんなに尻込みしてるなんて…まるで乙女の様」
    ニファはにやりと笑った

    ハンジ「乙女…さすがにそれはないけどさ…」

    ニファ「さっさと誘惑して既成事実作って、責任取ってね♪でいいと思うんですけどね~ウフフ」

    ハンジ「ニファ…遊んでるだろ…君…」

    ニファ「あ、ばれちゃいましたか!!てへへ」

    ハンジ「ニファぁぁ!!」

    ニファ「わ、ハンジさんこわっ…冗談ですよ。でも…半分本気かな」
    ニファはそう言って不敵な笑みを浮かべた
  29. 44 : : 2014/06/14(土) 10:25:50
    ハンジ「半分本気…」

    ニファ「はい、私から見れば、副長だって満更ではないと思ってます。ただお互い立場がね…ですから、いろいろそういったしがらみを一旦捨てて、向き合ってみたらいかがでしょうか」

    ハンジ「しがらみを一旦捨ててって、どうやって?」

    私の問いにニファは…
    ニファ「要するに、デートをしましょうよ!!一日だけ全て、背負っている物を忘れて…それくらいバチ当たりませんよ!!」
    そう、熱く語った

    ハンジ「誘うの?パワハラになるよ…私が誘ったら断れないじゃないか?」

    ニファ「そんな事気にしてるなんて、らしくないですよ!!デートして、気持ちを伝えましょう!!副長を口説き落とすんです!!作戦は考えます!!やりましょう!!」

    ニファは私の背中をどん、と叩いた

    ハンジ「…そ、そうだね。このままでは拉致があかない、白黒はっきりつけるのもいいかも」

    ニファ「それでこそ、我らが分隊長!!」

    ハンジ「よし、モブリットを口説こう!!」

    ニファ「分隊長よしきた!!協力します!!」

    風呂の湯船で顔を赤くしながら、私たちは握りこぶしを天高く突き上げたのだった
  30. 47 : : 2014/06/14(土) 16:28:03
    ニファ「じゃあ、今日必ず誘って下さいね?で、明日は勤務終わりに私とデート…いや買い物に行きましょう。可愛い服を買いに」

    ニファは私を部屋まで送り届け、扉の前でひそひそ声でそう言った

    ハンジ「あ、ああ…誘ってみるよ。明後日が休暇だから」

    ニファ「はい、大丈夫ですよ!!作戦通り、頑張って下さいね!!」

    ハンジ「わ、わかった。努力してみるよ」

    ニファ「ご武運を!!」
    ニファはばしっと敬礼をし、踵を返した

    ニファの後ろ姿を見送って、ふぅと息をついた

    そして、そっと部屋の扉を開けた
  31. 49 : : 2014/06/15(日) 10:08:07
    部屋の中には、明かりが灯っていた

    モブリットはソファで座ったまま、目をつぶっていた…寝てる?

    そっと歩み寄り、顔を近づけると、すぅすぅと規則正しい寝息が聞こえてきた

    男性にしては柔らかそうな頬に、思わず触れたくなったが、止めた

    隣にそっと腰を下ろしてみた

    いつも触れようと思えば触れられるほど、近くにいるのに、触れられなかった

    見た目ほどに近くない、自分と彼との距離

    こうして隣にいるだけで、心が落ち着く…だけど、それだけじゃない

    何か感情の渦が、心の中から溢れ出て来そうな、そんな気もした

    また少し寂しくなりかけた
    私はぶんぶんと首を振る

    ニファも言ってたじゃないか、私らしくないって

    私は大きく息を吸い込んで、ゆっくりと吐き出した
  32. 50 : : 2014/06/15(日) 10:16:04
    おもむろに、彼の頬に手を伸ばし、そして…

    びろーん…力一杯指でひっぱった

    ハンジ「…ぷ、ぷ…」
    そのひょうきんな顔に、思わず吹き出した

    その時
    びくっと体を震わせて、モブリットが目を開けた

    モブリット「…ぶ、ぶんひゃいちょう!?何が起こったのかとおもふぇば…」

    ハンジ「おはよう、モブリット。ほっぺた柔らかそうで、ついつい…」

    私はくいくい、とモブリットの両頬をひっぱった

    モブリット「…いひゃいです…ひゃなして下さい!」

    ハンジ「何て言ってるのかわかんない…ふふふ」

    私はそう言って、彼の頬を解放した
  33. 51 : : 2014/06/15(日) 10:21:09
    モブリット「ああ、うたた寝していたらいきなり酷い目にあった…」
    モブリットは頬をさすりながら、恨めしげな目を私に向けた

    ハンジ「ごめん、ついつい…どこまでのびるかなってね」

    私はにひひ、と笑った

    モブリットはしばらく私をじっと見ていたが、やがてふぅと息を吐いた

    モブリット「…まあ、いいです。分隊長が楽しそうな様子を見られて何より」

    モブリットはそう言って、微笑んだ

    そうか…モブリットにも心配かけてたんだよね
    私の様子が変だから

    ハンジ「…うん、楽しいよ」
    私も笑顔になった
  34. 52 : : 2014/06/15(日) 10:33:38
    私は隣に座るモブリットの方に、体を向けた

    そして、ニファが言ってた作戦を実行に移す…どきどき

    思いきってモブリットの手を、ぎゅっと握ると、彼は目を見開いた

    ハンジ「あのさ、モブリット…お願いが、あるんだけど…」
    私は殊更ゆっくり発言した

    モブリット「な、何ですか、分隊長?」
    モブリットは少し顔を赤くしている様に見えた

    ハンジ「明後日、休暇だよね?」

    モブリット「はい、そうですね」

    ハンジ「…一緒に…出掛けない?たまには…どう、かな?」

    モブリットは驚いた様な表情を浮かべていたが、やがて笑顔になった

    モブリット「はい、是非そうしましょう。折角の休みですから、のんびり出来るところに行きたいですね」

    ハンジ「うん」

    モブリット「行き先は…考えておきますね、っと…何処か行きたい場所とか、やりたいこと…とかありますか?」

    ハンジ「…ううん、任せるよ。のんびり出来るところでいいよ」
    私は、なんだか急に恥ずかしくなって、握っていた彼の手を、そっと離して引っ込めた

    モブリット「了解いたしました、分隊長」
    モブリットはそう言って、引っ込めた私の手の上に、自分の手をぽんと乗せた

  35. 55 : : 2014/06/15(日) 16:35:04
    モブリットをデートに誘う事に成功した!!

    驚いてはいたけど、嫌がるような素振りは全く見せず、行き先も考えてくれるって言ってた

    私はうきうき気分のまま、夕食を彼と共にし、そのまま部屋に戻った

    明日は任務終わりにニファと買い物
    何か服を買うって言ってた

    ニファと出掛けるのも楽しみだ

    モブリットは、何処に連れていってくれるんだろう

    そういえば、まともなデート一つしたことがなかったなあ

    私はどきどきしながら、眠りについた
  36. 59 : : 2014/06/16(月) 16:39:04
    翌日、通常通り任務をこなした

    明日はデートだ
    そう、デート

    まともにそんな事をしたことがなかった私にとって、まさに未知の世界
    正直巨人よりもわからない

    楽しみでもあり、不安でもある
    私は人にも言われるが、少々・・・いやかなりか、変わっているらしい

    だから、変な事をやらかさないかが不安なんだ

    とはいえ、そう言うのを気にするのも私らしくないと、どこぞのおかっぱちゃんに言われそうだし、細かい事は気にせず、状況に身をまかせて楽しんでみようかなと思っている

    デートの前に、今日は今から夕食を食べがてら、町に買い物だ

    ニファが何度も、「忘れないでくださいね?!」と言いに来ていた

    モブリットに「今日は私分隊長とデートなんです♪邪魔しないでくださいね、副長」
    なんてちゃっかり言うのも忘れずに・・・

    なんだかんだで、世話焼きでかわいいニファ

    彼女の明るさに何度も救われてきているし、心が和む

    今日は存分に、ニファとのデートを楽しもう、そう思っていた
  37. 60 : : 2014/06/16(月) 16:58:13
    ニファ「うわあああああ、ハンジさんかわいいよおおおおお」
    ニファが私の姿を見て鼻息を荒くしていた

    ハンジ「服は可愛いけど、私に似合うわけないだろ、こんなの」
    私は眉をひそめた

    ここはトロスト区の商店街にある、洋品店
    ニファがいつも服を買いに来ている店だという

    店内にはピンクやスカイブルーやレモンイエローなどの派手な色の服から、少し大人びた物まで雑多な品ぞろえだった

    ニファ「いえいえ、とっても似合ってますって!もう最高」

    ハンジ「最高なわけないじゃないか・・・スカートだなんて、しかも、ワンピースだよ?」

    ニファ「何言ってるんですかぁぁ、こんなにきれいな足を出さなくて、誰が足を!出せるんですか!全員足出し禁止になっちゃいますよ」

    ハンジ「自慢じゃないけど、子どもの頃からスカートなんてはいた事ないんだ、だから無理」
    私は首をぶんぶんと振った

    ニファ「似合ってますって・・・本当はこのうすピンクの桜の様なワンピースがいいんですけど・・・」
    ニファはピンクのフリルたっぷりのワンピースを手に持って、口を尖らせた

    ハンジ「いやだよ、ピンクだなんて、しかもふりふりだなんて、無理無理!」

    ニファ「だから妥協して空色なんですよ!」

    ハンジ「色が問題じゃなくって・・・足を出すのがダメだって・・・」

    ニファ「そのワンピース、空色から薄い紫のグラデーションで綺麗ですよ!もう決定。それで決定」

    ハンジ「ニファ、君言葉わかるよね?足を出すのがだめなんだ、だ・め・な・ん・だ」

    ニファ「足がきれいだからだ・す・ん・で・す。はい、店員さんこれお願いしまーす!」

    ハンジ「ニファ!聞いてないし、あああもう・・・」

    結局強引になし崩し的に・・・
    何故か空色と紫の綺麗な色のワンピースを、買わされた・・のだった


  38. 61 : : 2014/06/16(月) 17:08:06
    夕食を公園で一緒につつきながら、先ほどの買い物について反芻していた

    ハンジ「ニファ・・・こんなの明日着て行ったら、モブリットに変に思われちゃうじゃないか・・・」
    私はなんだかさっきの試着で5キロはやせたんじゃないか、と思うほどげっそりしていた

    ニファ「何言ってるんですか、ハンジさん。変に思われるために買ったんですよ」

    ハンジ「だ、だ、だめじゃないか!!」

    ニファ「駄目じゃないですよ。ハンジさんの女らしい所を全面的に押し出すっていう作戦だったじゃないですか?昨日だって上目使いで誘って成功したんでしょう?」

    ハンジ「ま、まあ・・・そうだけどさ・・・、でも急にこんなの着て行ったら、びっくりされちゃうよ」
    私はその場面を想像しただけで、顔が赤くなった

    ニファ「びっくりして押し倒されちゃったりしてね!あはは大変大変」

    ハンジ「ちょっとニファ?!」

    ニファ「うふふ冗談ですよ・・・たぶん」

    ハンジ「多分て!」

    ニファ「ハンジさんがとっても可愛い!モブリットさんにあげるのが惜しくなってきた・・・」
    ニファは私の頭を撫でながらそう言うと、悲しげに目を伏せた

    ハンジ「ニ、ニファ・・・」
    私はニファのそんな切なげな表情に、胸を打たれた

    ニファ「そんな私の切なーい気持ちに免じて、明日はその服を着て、どうぞ押し倒されてきてくださいね!」
    ニファは顔をあげ、にかっと笑うとそう言った

    ハンジ「ニ、ニファ・・・君また私で遊んでるだろ?!」

    ニファ「だってハンジさんがかわいいんですもん」
    ニファはにやにや笑いをやめなかった

    ハンジ「まあ、でもせっかくニファが選んでくれたんだし、一応着て行ってみるよ」

    ニファ「あ、やっぱり押し倒されたいですもんね?ハンジさん」

    ハンジ「違うわ!そんな理由じゃないってば!」

    ニファ「ああ、ハンジさんおもしろーい」
    そう言ってお腹を抱えて笑うニファを見て、私は完全に翻弄されているなあと感じた


  39. 66 : : 2014/06/17(火) 09:21:03
    それから兵舎に戻り、また新たに作戦を話し合い、明日のデートのためにと何故かまた風呂に入らされ・・・

    念入りに洗わなきゃ・・・と言われながらセクハラを受け、体中ぴかぴかにしてもらって、部屋に戻った

    明日かあ・・・
    ニファが、しわになるからとハンガーにかけておいてくれた空色のワンピースをちらりと見てため息をつく

    ハンジ「本当に、あれ、着ていくの・・・?私」

    洋品店の試着室で鏡に映る自分の姿
    思い出すだけで、顔が赤くなるのがわかる

    こんな物を着て行って、モブリットはどう思うだろう

    今まで女性だか男性だかわからないような格好ばかりしてきたのに、急にね・・・

    そこまで考えてドツボにはまりそうになった気がした私は、ふうと息を吐いた

    ハンジ「いや、いろいろ考えていても仕方がない。うん、寝よう!」
    そう言葉を発して、布団にもぐりこんだ

    明日は楽しい一日になるといいな、そう思いながら、目を閉じ睡魔が忍び寄ってくるのを待った
  40. 67 : : 2014/06/17(火) 10:20:30
    翌朝―

    ハンジ「ううーん・・・はっ!!!」
    慌てて飛び起きた…時計を確認、午後7時15分!

    ハンジ「うわあああ、もうこんな時間!7時半には呼びに来ちゃうよ、早く用意しなきゃ」

    早く起きようと思っていたのに、完全に寝過ごした
    大事な日だというのに!

    後悔してる暇はない

    着なれないワンピースを着る作業に取り掛からなければ!

    私はぽいぽいと寝間着を脱ぎながら、ハンガーにかかっているワンピースに手を伸ばした

    そしてまた躊躇する

    ハンジ「これ、本当に着なきゃだめ・・・?」

    思わずそうつぶやいたが、躊躇している時間すら惜しい、意を決してワンピースに袖を通した

    ワンピースは当然のことながら、脚がすーすーする

    スカートをめくると、下着だ
    これも当然

    まだ許せるのは、スカートの丈がそこまで短くないという事
    ひざ下だ、一応

    一周くるっと回ってみると、スカートがふわりと空気を含んで膨らんだ

    これを着て外に出るという事実に戦々恐々としたが、ニファの気持ちを汲んで・・・ここは頑張ってみる事にした

    ってーー!髪の毛ぼさぼさ!

    と思った時

    扉がノックされた
    モブリットが呼びに来たんだ

    でも、この髪のままじゃ会いたくない
    彼に謝って、髪を整えるべく大急ぎで洗面所に駆け込むのだった

  41. 68 : : 2014/06/17(火) 12:03:01
    洗面所で髪をとかし、いつもの様にハーフアップに・・・と思ったところで、ニファの言葉を思い出す

    ニファ「ハンジさん、いいですか?明日はアップにせずに、髪を下ろしてください。そしてこの髪留め・・・プレゼントしますから、これを着けてくださいね」

    そうだった・・・私は机の上に置いたままの、きらきらした髪留めを取に戻り、それをこめかみのあたりに留めた

    長い前髪が落ちてこない様に・・・

    一悶着あったが、何とか様になってきたかな・・・と思ったけど、やっぱりこっぱずかしい
    様になんてなるはずがないじゃないか

    とりあえず、あまり長い時間待たせるのもダメだし、もうさっさと恥ずかしい思いをしてしまおう

    私はそう思い立って、部屋を出た

    そして、誰にも見つからない速度で・・・はむりだけど、とにかくダッシュで兵舎の外に出た
  42. 69 : : 2014/06/17(火) 12:05:33
    建物を出て、モブリットを探す

    建物の影からひょいと顔を覗かせると、5メートルほど先に彼の姿を発見した

    ハンジ「おはよう、モブリット」
    私は顔だけ出してそう挨拶をした

    モブリットは・・・馬を引いていた
    しまった、馬で遠出するのか・・・

    どうするのこの格好・・・やってしまった

    モブリット「おはようございます、分隊長」
    モブリットは笑顔でそう言った

    私は身体を建物の影に隠したまま、彼に話しかける
    ハンジ「あ、今日は馬でどこかに行くんだ」

    モブリット「はい、少し遠出をしようかと・・・分隊長も馬の支度を」
    モブリットはそう言って私の馬がいる厩を指さした

    ど、どうしよう
    完全に場違いな格好しちゃってるし・・・このまま帰って着替えてきた方が、いいよね

    でも、そうでなくても待たせてるのに・・・

    ハンジ「あ、うん・・・」
    私は仕方なく、場違いな服装の自分を彼の前にさらけ出した

    モブリットは、目を大きく見開いて、何度も瞬きをして私を見た

    モブリット「分隊長・・・」
    驚いて何を言えばいいかわからなかったのか、モブリットはそうつぶやくように言った

    ハンジ「ご、ごめん!この格好では馬に乗れないよね。着替えてくるよ」
    私はなんだかいたたまれなくなって、そう言葉を発して踵を返そうとした

    次の瞬間
    モブリットの手が、私の手をぎゅっと握った

    彼は、いろんな感情が顔に出たような、複雑な面持ちを見せていた





  43. 72 : : 2014/06/17(火) 14:24:39
    モブリットは、私の手を握ったまま、しばし顔を白黒させていた…必死に何かを、絞り出そうとしている様に見えた

    私はどうする事も出来ず、ただとにかくこの格好が恥ずかしくて仕方がなくて…

    穴があったら入りたいとはまさに今の状況にぴったり当てはまった

    すると、モブリットがふぅと肩で息をした
    モブリット「そのままで、いいですよ、分隊長」

    そう言って、私の腰を両手でぐっと掴むと、私の身体を宙に浮かせた

    スカートがフワリと膨らんだ

    ハンジ「え、え?」
    私は馬の上に、横向きに座さられた

    モブリット「さ、行きましょうか」
    彼は涼しげな表情で、何事もなかったかの様にそう言った

    ハンジ「え、え?待ってモブリット、これはどういう・・・」
    私は予想外の彼の対応に、しどろもどろに言葉を発した

    モブリット「スカートなんですから、またがれないでしょう?だから横に座って頂いただけです」
    何が不満なんですか、と言いたげに、首を傾げるモブリット

    ハンジ「いや、そうなんだけど、君は・・・どうするの?」
    私の当然とも言える問い掛けに、モブリットは…

    モブリット「どうするって・・・」
    彼はあぶみに足をかけて、ひらりと馬にまたがった…私の、後ろに

    ハンジ「ふ、二人乗り・・・」

    モブリット「分隊長、危ないですから、しっかりつかまっていてくださいね」
    モブリットの手が、私の手を自分の腰にエスコートする

    私は今まで経験した事のない体位で、馬に乗ることになった

    彼の腰にしっかり、自分の腕を回して…

    怖くは無い…ただただ、恥ずかしかった
  44. 76 : : 2014/06/17(火) 15:44:11
    馬はゆっくり門に向かって歩を進めた

    恥ずかしいから早く駆けて欲しかったけど、さすがに兵舎内でそれは出来ない

    門にいた門番の兵士が、モブリットに何か紙を握らせた

    兵士「副長に言付けです。お気を付けて」
    兵士の珍しそうな視線を浴びて、私はたてがみに顔を埋めたくなる程の恥ずかしさに、辛うじて耐えた

    モブリット「言付け?何だろう…ありがとう」

    ハンジ「い、行ってきます」
    私は門兵に、小さな声でそう言った

    門を出て、先程握らされた紙を広げたモブリットは、突然呻くような声をあげた

    モブリット「…全く…」
    こめかみを指で抑えて、何かに耐えるような素振りのモブリット

    ハンジ「言付けって何だったの?」
    私はその内容が気になって、後ろを振り向いた

    モブリット「…大したことではありませんよ」
    モブリットのひきつった笑顔が、言付けの内容から引き出されたものなんだろうな

    何だったのか本気で気になったけど、今はそれよりもこの状態に早く慣れるのが先決

    モブリットの愛馬は少しずつスピードを上げて、目的地に向かって駆けた

    …そういえば、何処に行くんだろうな

  45. 78 : : 2014/06/17(火) 18:33:43
    ヤバイ。
    (うちも素敵なハンジもどきになろう!)
    期待ですよっ!!
  46. 80 : : 2014/06/17(火) 20:52:34
    馬に二人で乗るのは、最初こそ身動き一つ出来ない程に緊張したけど、しばらくしたら慣れた

    心地よい風が頬を撫でる

    恥ずかしさで火照った頬を冷やすのにもうってつけだ

    モブリット「分隊長、大丈夫ですか?」
    私が一言も話さないからだろう、心配そうな声が後ろからかかった

    私は後ろを振り向く
    ハンジ「大丈夫だよ、慣れた」
    そう言って、笑みを浮かべた

    モブリット「それなら、良かったです」
    モブリットは優しげな何時もの笑顔でそう言った

    私の背中を支えるように回されているモブリットの腕は、何だかとても力強い様に感じた

  47. 82 : : 2014/06/17(火) 21:17:40
    しばらく馬で進んだところで、モブリットは馬を止めた

    モブリット「休憩しましょうか。朝食もまだでしたよね?」
    モブリットはそう言いながら馬を降り、私に手を差し伸べた

    ハンジ「うん、お腹すいちゃった!!」
    私はそう言いながら、彼の手を握り、馬から地面に飛び降りた

    その拍子で、スカートがフワリとまくれあがった

    ハンジ「うわわ、やってしまった…」
    普段着なれていないワンピースだということを、ついうっかり忘れていた

    完全に下着が丸見えになったはず
    私は慌ててスカートを押さえた

    モブリット「分隊長…はしたないですよ」
    モブリットは呆れたような表情で、そう言った

    仕方がないじゃない、慣れてないんだから…
    そう文句でも言いたくなったが、やめた

    その代わり、にやりと笑みを浮かべる
    ハンジ「モブリット、見たな~?」
    私は人差し指で彼を指差しながら、言った

    モブリットは、ふん、と鼻を鳴らして
    モブリット「分隊長の下着の色は、薄いピンクでした」
    …と言い放った

    ハンジ「うわあ、見るなよ、エッチ!!」
    私はそれを聞いて、また恥ずかしくなった

    モブリット「見せないで下さいよ、そんなもの」
    モブリットは眉をひそめていた

    ハンジ「そんなものって、ひっどいなぁ!!」
    いじわるなモブリットの言葉に、私は頬を膨らませた
  48. 83 : : 2014/06/18(水) 11:37:31
    モブリット「分隊長、はいどうぞ。あ、先に水でのどを潤してくださいね。また窒息されてはたまりませんから」
    モブリットは私に水とパンを手渡してくれた

    ハンジ「朝食のパン、持ってきたんだね。うん、いつも通りの味だ」

    私は木陰に腰を下ろして、言われた通りに水を飲んでから、パンをかじった
    モブリットは馬に人参をあげていた

    ハンジ「あれ、モブリットはパン食べないの?」
    私の問いに、彼は頷く

    モブリット「はい、俺は朝つまみぐいしましたので」

    ハンジ「え、つまみぐい?」
    私が聞き返すと、モブリットは首を振った

    モブリット「まあ、朝早起きして食べましたからね・・・分隊長は起きれなかったんでしょう?」
    モブリットは私の隣に腰を下ろして、水を口に含んだ

    ハンジ「う、うん・・・ちゃんと早く寝たつもりだったんだけどね。なかなか寝付けなくて」

    モブリット「それは、遠足前に眠れない子どもの様な感じですね、きっと」
    モブリットはそう言って微笑んだ

    ハンジ「む・・・子ども扱いされた。立派な大人なのに」
    私は口を尖らせた

    モブリット「立派な大人・・・そうですね、まあ、かわいい大人という事にしておきましょうか」
    モブリットがさらっとそんな発言をした

    ハンジ「かわいいって・・・」
    私はまた、恥ずかしくなった

  49. 84 : : 2014/06/18(水) 11:59:17
    それから、また馬に乗せてもらって目的地へ向かって進む
    横のりも板についてきた・・・んだけど、なんだか物足りない

    そうなってくると、どうしても跨りたくなるのが乙女ってもんだ
    ハンジ「ねえ、モブリット」
    私はニファに教えられたとおり、何かをねだるときの甘え声でそう言った

    モブリット「な、なんですか?」
    モブリットは明らかに動揺した

    ハンジ「あのさ・・・我慢できない・・・」

    モブリット「はぁ?なんですか突然、トイレですか?」

    ハンジ「違うんだ。その・・・跨りたいというか・・・」
    私はもじもじしながらそう言った

    モブリット「ま、跨りたい?」
    モブリットの顔をちらりとうかがうと、何故か赤面していた

    私はそこではっと気が付いた
    ハンジ「違う、そういう意味じゃない!我慢できないし跨りたいんだけど・・・」

    モブリット「そういう意味ってなんですか?!事故ってしまいそうですから、おとなしく黙っててくださいよ」
    モブリットはぶんぶんと首を振った・・・ああこれは本当に落馬しそうだ
    馬に騎手の動揺は伝わるからね

    ハンジ「違うんだ本当に、馬に、跨りたいんであって・・・」

    モブリット「駄目です!そんな格好で馬にまたがるのは却下です!」
    すごい剣幕で怒られて、馬にまたがるチャンスを失った・・・
  50. 85 : : 2014/06/18(水) 13:27:13
    仕方なしにそのまま横のりで、大人しくしおらしく乗せてもらっていると、やがて自然の色が濃くなってきた

    山合いに向かっている様だ

    ハンジ「ねえねえモブリット」
    私はそう問いかけた

    モブリット「・・・はい、何ですか」
    まだ怒っているのか、明らかに不機嫌そうな声色の返事が返ってきた

    ハンジ「どこに向かってるんだい?」

    モブリット「・・・もうすぐ着きますよ」
    モブリットはそう言うと、ふうと息を吐いた

    その息は私の頬にちょうどかかる・・・だから少々くすぐったい

    私が少し身じろぎをすると、モブリットが彼の腰にまわされた私の手の上に、自分の手を重ねた

    モブリット「しっかり、つかまっていて下さいね」

    ハンジ「・・・馬には乗り慣れているから、平気だよ。君は心配性だね」
    私は、耳朶の熱さをまぎらわす様に、首を振った

    モブリットはまた、ふうと息をついた
    モブリット「それは・・・あなたに何かがあったら、俺のせいなんですから、当然です」

    君の息がかかるのがくすぐったくて恥ずかしいんだと言うのは、とてもじゃないけど無理だった
  51. 86 : : 2014/06/18(水) 14:42:28
    山合の盆地の様な場所で、モブリットは馬を止めた

    モブリット「分隊長、お疲れ様でした。到着しましたよ」

    モブリットの声に、私は視線を前に向け、絶句した

    見たことの無い風景が、目の前にあった

    モブリットの手を借りて馬から降りるなり、私は駆け出した

    ハンジ「何ここ!凄い!!凄く綺麗!!どうなってるの!?」
    私は興奮を押さえきれずに叫んだ

    湖の縁に行くと、湖の底に白い泥…の様なものがたまっているのがわかった

    この白い泥…と、透明度の高い水に、空の青や山の緑がうつりこんで、こんなに美しいブルーを作り出しているのか

    自然は偉大だと感じる瞬間だ

    馬を繋いでいるモブリットを呼んで、私は、手で水を掬ってみたり、白い泥をさわってみたりした
  52. 87 : : 2014/06/18(水) 16:05:19
    白い泥を綺麗な水で洗い落として、私は立ち上がった

    モブリットが何時もの様に、後ろに控えてくれているのを、背中で感じる

    ハンジ「ねえ、モブリット」
    私がくるっと振り向くと…モブリットは目を大きく見開いた

    モブリット「はい、何でしょうか」

    ハンジ「…まだ、怒ってる?」
    私は首を傾げながら、そう問い掛けた

    モブリット「…いえ、怒ってなどいませんよ…最初から」

    ハンジ「ふぅん…不機嫌そうに見えたけどなあ…」
    私は顎に手をやりながら言った

    モブリットは首を振る
    モブリット「いえ、怒っていません。強いて言うならば、自分に腹が立ったと言いますか…」

    ハンジ「モブリットはさ…いつも悪くないよ。余計な事を言ったり、しでかしたりするのは、私!」
    私はそう言って、彼の肩をぽんと叩いた
  53. 88 : : 2014/06/18(水) 16:53:03
    湖の周りを少し散策しているうちに、私のお腹が音を出した

    ハンジ「うわ、はしたないって怒られちゃうよ!!」
    私はそううそぶいて、お腹を押さえた

    モブリット「そんな事で怒りませんよ。俺はどんなに短気なんですか」

    ハンジ「だって…モブリットはお母さんみたいだもん。やれ歯を磨いたか、やれ風呂で頭を綺麗に洗ったか、服はちゃんと畳みなさい、部屋を片付けなさい…とかさあ…」

    私の言葉に、モブリットは盛大にため息をついた

    モブリット「…全て、大人としてやって頂きたい、基本的な項目だと思いますが…」

    ハンジ「モブリットお母さん」

    私はモブリットの背中をつんつんつついて、そう呼んだ

    モブリット「…貴女の様な子を産んだ覚えはありません。俺の子ならもっときちんとしているはずですし」

    ハンジ「突っ込みどころが違うと思うんだけど…あははは」
    モブリットの言葉に、私はお腹を抱えて笑った

    モブリット「あなたはもう少し生活態度をですね…」
    そこまで言ったモブリットの口を、手で押さえる

    ハンジ「お母さん、お腹すいた!!」
    そう言った私に、モブリットは

    モブリット「…はいはい」
    肩を竦めて、馬の繋いである場所に向かって歩き始めた
  54. 90 : : 2014/06/18(水) 20:06:46
    モブリットは最高のお母さんだ

    間違いない、きっと、いや必ずいい嫁になる!!

    こんなに美味しそうな弁当を、しれっと準備してくるだなんて

    ハンジ「…嫁に来てくれないかな」
    はっ!!心の中で呟いた筈の声が外に漏れた!!

    モブリットをちらっと確認すると、飲み物を入れていて聞こえなかった様だった

    危ない危ない

    モブリット「朝作ったんですよ。お口に合うかどうかは分かりませんが」

    そんなことを言うモブリット…そんなの、口を合わせるに決まってるじゃないか!!

    ハンジ「肉まである!!凄い!!美味しそう!!」
    串に差してある肉…奮発してくれたんだな…上手そうだ…

    モブリット「さ、どうぞ召し上がって下さい」

    ハンジ「うん、うん!!いっただきまーす!!」
    早速串肉に手を伸ばした

  55. 91 : : 2014/06/18(水) 20:16:46
    ハンジ「お母さん」
    私は肉を頬張りながら言葉を発した

    モブリット「…口の中にものを入れて話さない…っと、何です、分隊長」

    モブリットはそう言うと、ハムサンドを口に入れた

    ハンジ「お母さん、肉食べないの?」
    モブリットは先程から、肉を食べていなかった

    モブリット「お母さん…いや、俺は朝つまみ食いしましたので、それは分隊長の分ですよ」

    ハンジ「お母さんも一緒に食べようよ!!ほら、あ~ん」
    私は串肉をモブリットに差し出した

    モブリットは、後ずさりながら首を振る
    モブリット「いや、食べるなら自分で食べますから…」

    ハンジ「お母さん遠慮しない、ほらほらあ~んしなさい、あ~ん」

    モブリット「分隊長、俺で遊ばないで下さいよ!!」
    そう言いながらもあ~んしてしまうのが、うちの副長の可愛いところなんだよね…ふふっ
  56. 92 : : 2014/06/18(水) 22:44:21
    モブリットお手製のお弁当で、お腹がぱんぱんになった
    大満足だ

    モブリットは鼻唄混じりに後片付けをしていた

    何だかかわいい
    言葉に出せば叱られそうだけど

    少し眠たいけど、モブリットが腹ごなしに綺麗な場所に連れていってくれる、というので、着いていく事にした

    モブリットは本当にお母さんみたいだ

    でも…やっぱりちょっと違う

    一緒に過ごしていると、とても安心感があるけど、胸が高鳴ったり、顔が赤くなったりもする

    彼の一挙手一投足に、いちいち心臓がおかしい動きをする気がする

    私はやっぱり、モブリットが好きだ

    お母さん、としてではなく、異性として

    お母さんなんて言わないで、ちゃんと気持ちを伝えなきゃ…

    ニファとも約束したんだしね

    私はそんな事を思いながら、思いきって彼の腕に自分の腕を絡めて、散策に出た

  57. 95 : : 2014/06/19(木) 09:29:13
    湖の周りにはたくさんの植物が群生していた

    色とりどりの花、石灰質でおおわれた白い倒木
    緑や赤の葉をつけた低木

    そのどれもが自然に、だが芸術的に絡まり合い、美しい風景を描き出していた

    その中でもひときわ目を引くのは、濃いピンクの花だった
    湖の淵から少し離れた位置に、一面・・・といっていいほど広い範囲で、その小さな花は咲いていた

    綺麗な花弁は裾にひだをつくり、まるでレースのフリルの様だ

    そう、ちょうどニファが最初に私にすすめたピンクのフリルスカート・・・あれに似ている

    ハンジ「モブリット・・・綺麗な花。しかもたっくさん」
    私は、彼の腕に絡めていない方の手を伸ばして、ピンクの花を指さした

    モブリット「綺麗でしょう?あれをお見せしたかったんですよ」

    不思議なまでに青い湖と、美しく艶やかな小さなピンクの花

    これほど見事なコントラストはないといえるほど、幻想的な情景

    ハンジ「凄いね、うん、綺麗だ」

    私は彼の腕から自分の腕を解いて、その花の群れの中に駆けだした
  58. 96 : : 2014/06/19(木) 09:47:29
    背の低い茎に、ちいさなピンクの花をたくさんつけているそのかわいい植物に、なるべく触れない様にそっと、自然にできた花畑に足を踏み入れた

    ゆっくりしゃがんで花と視線を合わせると、その花がお辞儀をしているように見えて・・・
    とてもかわいらしかった

    私にも花を愛でるという気持ちが残っていたんだ
    ちょっと意外で、新鮮だった


    戦いに明け暮れる私に、何かを問いかける様なこのかわいい小さな花たち

    私はこの小さな、だが凛とした美しいこの花に背中を押される様に立ち上がった

    振り返ると、少し離れた所に、いつも通りの優しげな表情のモブリットがいる

    この小さなピンクの花と、こんな私に付き合ってくれたニファの思いが、私に勇気を与えてくれる

    ハンジ「モブリット」
    私は彼をじっと見据えて、彼の名を呼んだ

    モブリット「はい、何でしょう」
    いつも通りの受け答えをするモブリットに、私は微笑みを返す

    そして・・・


    ハンジ「私は、君が好きだ」

    よどみなく、はっきりと、そう言った

  59. 97 : : 2014/06/19(木) 10:36:34
    モブリットは、驚きもせず、笑いもせず、ただ先ほど見せていた優しげな表情だけを隠して、私を見つめた
    もしかして、聞こえなかったのかな、それか、気を悪くした?

    私が少し不安になったその時

    モブリット「分隊長」
    彼はそう言って、泣き笑いの様な表情を浮かべた

    ハンジ「私は君が好きだよ」
    もう一度、確かめる様にそう言った

    モブリットは、今にも泣きだしそうな顔をしていた

    でも、次の瞬間その顔がくしゃっと笑顔になる
    モブリット「ありがとう、ございます」

    その笑顔はとても・・・可愛らしくて、どうしようもないほど愛しさがこみ上げてきた

    ハンジ「我慢・・・できない」
    ぼそっと呟いて、花畑を汚さぬよう、でも極力急いで彼の元へ駆ける

    花畑を出た瞬間、ツーステップの助走で思い切りジャンプする

    驚き身構える彼を後目に、私は・・・

    満面の笑みを浮かべて、彼の身体に飛び込んだ
  60. 98 : : 2014/06/19(木) 10:45:34
    彼の腕は私の身体をしっかりと抱きとめ・・・

    モブリット「うわっ・・・!」
    ・・・ると思ったんだけど、それは叶わず・・・二人で絡まり合って、地面に倒れた

    勢いつけすぎちゃったかな・・・
    ちょっと失敗したかもと思いながらも、口をついて出たのは

    ハンジ「ちょっと・・・ちゃんと受け止めてよね」
    そんな憎まれ口だった

    モブリットは眉をひそめる
    モブリット「そんなの、受け止められるはずないじゃないですか・・・あんなに助走をつけてダイブしてくるなんて・・・」

    ハンジ「ちょっと、ジャンプしただけだよ」

    モブリット「あなた、自分の身体能力を舐めてるでしょう?」

    ハンジ「手加減したもん・・・ああ、雰囲気が台無しだよ、君のせいで」
    わたしはため息をついた

    モブリット「雰囲気をぶち壊したのはご自分じゃないですか・・・」

    ハンジ「違うよ、君がしっかり受け止めなかったのが悪いんだ」
    私は口を尖らせた

    モブリットははあとため息をついた
    モブリット「・・・はいはい、俺が悪うございました」

    憮然とした表情でそういうモブリットの、柔らかそうな頬をつんつんとつつく

    ハンジ「すねてる、すねてる・・・ふふ」
    私はそう言いながら、微笑みを浮かべた
  61. 99 : : 2014/06/19(木) 11:09:47
    モブリット「とりあえず・・・退いていただけませんか?重たいんで」
    モブリットは頬をつつかれながらそう言った

    そう、私はずっとモブリットを下敷きにしていた

    ハンジ「いやだね。私を受け止めなかった、バツだよ。退かない」
    私はいたずらっぽい笑みを浮かべて言った

    モブリット「・・・すみませんでした、もう少し勢いがなくて、もう少し軽かったら受け止められたと思うのですが・・・」

    ハンジ「違う、そうじゃない」
    私は首を振った

    モブリット「・・・俺の鍛え方が足りずに、あなたに恥をかかせてすみませんでした」

    ハンジ「それも、違う」
    私はもう一度、首を振った

    モブリット「・・・なんですか・・・?」
    怪訝そうな表情のモブリットに、私は真摯な眼差しを向ける

    ハンジ「返事を聞いてない・・・私を受け止めるのか、受け止めないのか、その返事をもらってないよ」
    私の言葉にモブリットは、はっとした表情を見せた

    モブリット「・・・そうでしたね」

    ハンジ「そうでしたよ」
    私が頷くと、モブリットは私を押しのける様に身体を起こした

    ちょうど、モブリットの足の上に、私が跨っている格好になる
    モブリットの手が、私の頬にかかる髪を後ろに解かす

    限りなく近い、彼との距離に急に気恥ずかしさを感じて、心臓が早鐘を打った
  62. 100 : : 2014/06/19(木) 11:30:04
    モブリットは、ふぅと息をついて、静かに話始めた

    モブリット「あなたの様子が最近、変わっているのに気が付いて・・・正直不安でした」
    私の髪を優しく手で解かしながら、モブリットは俯いた

    独特の低い、少し鼻にかかるような声が、私の耳をくすぐる

    ハンジ「うん」
    私は彼の手の動きに、身動き一つとれなかった・・・辛うじて、一言だけ発することができた

    モブリット「俺が何かやらかしたのかと、ずっとそう思っていたんです」

    ハンジ「うん・・・ごめんね」
    私のその言葉に、モブリットは顔をあげて、首を振る

    モブリット「いいえ、謝るのは自分の方です・・・よく考えれば、わかる事、だったんですから」

    モブリットの手が、髪の毛から、私の頬に移動する
    その感覚に、背中がジンと震えた気がした

    ハンジ「わかりやすかった?」

    モブリット「・・・後から考えれば、そうですね。あの時は、まったく思い至りませんでしたが」

    ハンジ「きっと、近すぎて、わからなかったんだよ」
    私はそう言って、モブリットに微笑みかけた

    モブリット「確かに、そうですね、近すぎて・・・わからなかった」

    頬を撫でるモブリットの手は、とても暖かかった
  63. 101 : : 2014/06/20(金) 07:44:26
    モブリット「俺は…あなたが好きです」
    モブリットの真剣な表情から繰り出された言葉

    それは真っ直ぐ、まるで放たれた弓矢の様に、私の心に刺さった

    その刺さった場所から、疼くように、甘い痛み…の様な物を感じた

    ハンジ「…ふぅん、どんな風に?お母さんの立場として?」
    私は甘く疼く胸を押さえながら、それに気が付かれない様に、意地悪な物の言い方をした

    モブリット「…どんな風に?そう…ですね」
    私の意地悪なんかには慣れている彼は、涼しげな表情で、しばし考える様な素振りを見せた

    そして次の瞬間
    私の身体を、彼は半ば強引に、抱き寄せた

    彼の胸に顔を埋めて、大きく息を吸う
    ハンジ「お母さんの…匂い」
    そう、何となく落ち着く匂いがした

    モブリット「違います、俺は男ですから…因みにお父さんと言うのも、無しです」
    頭上から掛かる、不満そうな彼の声に、私は思わず笑みを浮かべた

    ハンジ「だって…卵焼きの匂いがするもん…だから」
    顔を上げて彼を見ると、何とも複雑そうな表情をしていた

    男にこんな事を思うのは失礼なのかもしれないけど…
    そんな彼が、凄く可愛らしく見えた

    暖かい、彼の両手が私の頬を包み込む

    モブリット「もう、お母さんでいいです」

    そう言って、モブリットは優しいキスをくれた
  64. 102 : : 2014/06/20(金) 08:32:35
    モブリットがくれた、お母さんの様な優しいキス

    限りなく近くにいたのに、何故か遠かったその距離が、0になった瞬間

    でもそれは、軽く触れ合わせただけで、離れてしまった

    ハンジ「…お母さんはさ、キスはしてくれるもんね」
    私はもっとその唇に触れていたくて、ついついそんな事を口走った

    モブリット「そう、ですか」
    モブリットはそう言うと、私の眼鏡を外した

    ハンジ「眼鏡をとられたよ…お母さんに」
    私は、眼鏡を外した理由を一瞬考えて、胸が高鳴った

    でも、しつこくお母さんと呼ぶのは…
    照れ隠し以外の何物でも無い

    モブリット「お母さんにキスをされて、こんなに顔が赤くなるものですかね」
    モブリットの手が、私の頬を撫でる
    モブリットも意地悪だ…そんな事、わざわざ言わなくてもいいじゃないか…

    ハンジ「なるよ、多分…んっ」
    私が、その意地悪に対抗しようと口を開いたその瞬間

    モブリットは私の唇を奪う

    強引に押し付けられて、こじ開け中に入ってくる

    お母さんがやらないようなキスに、私の身体は…完全に力が抜けた
  65. 103 : : 2014/06/20(金) 09:18:03
    ハンジ「…お母さんは、エッチだ」
    唇が離された後、熱い息を吐きながら、私は呟くように言った

    顔は、限界まで赤く染まっていると思う

    モブリット「俺は、お母さんではありませんし」
    モブリットは困った様に首をかしげた
    その手は私の頬を優しく撫でている

    ハンジ「…お母さん…」
    私はまた、少し反抗してみた

    するとモブリットは、ムッとしたように顔をしかめた

    モブリット「…まだ言うんですか。そうですか」

    モブリットの普段は見せない鋭い視線に、私はたじろいだ

    ハンジ「冗談…モブリットはお母さんじゃない、うん!!」

    モブリット「わかって頂けたら、いいんです」
    モブリットはふん、と鼻を鳴らした

    ハンジ「モブリット、何だか怖いなあ…」
    彼の男の部分をはっきりと感じて…そう言葉を発した

    モブリット「優しいですよ、お母さんみたいに」
    モブリットはそう言って、微笑んだ

    ハンジ「お母さんじゃないんだろ?言ってる事がおかしいよ…あはは」
    突然の態度の変わり様に、私は何だか楽しくなって、そしてどことなく安心して…

    彼の胸に顔を埋めて、笑った
    でもその匂いは…すでにお母さん、の匂いには感じなくなっていた
  66. 104 : : 2014/06/20(金) 10:21:17
    しばらくそのまま、彼の胸に顔を埋めてじっとしていた

    今はこのままでいたい

    モブリットは私の気持ちを汲んだのか

    彼の腕が私の背中に回されて…
    ぐっと力を込めて、抱き締めてくれた

    やがて、彼の声が、私の耳に届いた
    モブリット「ハンジさん…」

    最近めっきり呼んでくれなかった、名前

    何時の頃からか、分隊長としか呼んでくれなくなって、何となく寂しかった記憶が…今の一言で、全てかき消えた様に感じた

    ハンジ「…なんだい、モブリット?」
    私は、顔を彼の胸に触れさせたまま、気だるげな声で返事をした

    モブリット「ワンピース、よくお似合いですよ」
    そうだ…モブリットは私のワンピースに対して、一切感想を言わなかった

    似合わないから言わないんじゃないかと、勘ぐっていたんだよね

    ハンジ「ありがとう…お世辞」
    私はついつい、そんな言い方をしてしまった
    素直になれない、だって恥ずかしいから

    モブリット「お世辞…ではないですよ。何度も見惚れていたんです、本当は」

    モブリットのその言葉に、私の顔がまた熱をもった

    ハンジ「そう…下着も見たしね」
    私は赤い顔を上げて、にやりと笑った

    モブリット「見せたんじゃないですか、あれは…俺はワンピースの中身に見惚れていたわけではありません」

    ハンジ「ちょっと嬉しかったくせに…お母さんエッチだからね」

    モブリットは私の言葉に、眉をひそめた

    モブリット「あなたの下着が見えたくらいで、喜ぶ様な年齢ではありませんよ…それと」

    モブリットはそこまで言って、こほん、と咳払いをした

    ハンジ「それと?」

    モブリット「…次お母さん、と呼んだら、ワンピースの中身、確認させていただきます。ええ、俺はエッチですから」

    ハンジ「下着が見たいの?おかあさ…」

    モブリット「ん!?何か言いましたかね?」

    ハンジ「何にも言ってませーん…ふふふ」
    私はそう言って、モブリットの頬にキスを落とした
  67. 109 : : 2014/06/20(金) 13:37:05
    二人きりで過ごすうららかな昼下がり

    私たちは手を繋いで、何処に行く宛もなく、ただ湖の周りを歩いた

    こうして二人でいられるなら、他には何もいらない
    そう思えるほどに、大切で貴重な一時

    ハンジ「ねえ、モブリット」
    私は彼の名を呼んだ

    モブリット「何でしょうか、ハンジさん」
    また、ハンジさんと呼んでくれた
    私はとても、幸せな気分になった

    だから

    ハンジ「私はね…今凄く、幸せなんだ」
    そう言って、微笑んだ

    モブリット「…俺も…同じですよ」
    彼の顔は、真っ赤に染まっていた

    ハンジ「これが、永遠に続けばいいのに…」
    私は立ち止まり、俯いた

    突然、言い様のない不安が襲ってきた

    そんな私の心の中を察したのだろうか

    モブリットは、私の手をぎゅっと強く握り直した

    モブリット「俺が…あなたを全力で守りますから」
    真摯な彼の声

    ハンジ「私は、君を全力で守るよ」

    私は彼の手をぎゅっと握りなおす

    モブリット「二人で…生きましょう」

    ハンジ「うん、必ずだ」
    二人の視線が交差する

    モブリットの瞳は優しげで、だがその奥には確かに力強い光りが見えた

    私は彼に、顔を近づける
    鼻先と鼻先が触れ合う程の距離で、しばしためらった後

    彼が教えてくれた、お母さんがやらないキスを、私から…

    強く密着させて、このまま一つになればいいのにと、思いながら…

    柔らかくて少しざらついた様な、甘い感触を、彼の中から探し出す

  68. 110 : : 2014/06/20(金) 14:03:43
    今こうして大切な物を確かに手に入れたけど

    それは頭の中のどんな数式にも、方程式にも当てはまらない、奇跡の様な出来事

    私の恋愛方程式は・・・勇気

    この一言が答えだ

    そう、数値では決して表すことのできない、恋の方程式

    彼に出会えた奇跡

    彼と共に過ごせた日々

    彼に振り向いて貰いたくて振り絞った私の恋愛方程式 =勇気

    私はこれからもずっと、どんな事にも立ち向かう勇気を、忘れない

    そう言えば・・・勇気ってなんでも夢をかなえる、万能細胞みたいだ

    勇気があれば、なんでも乗り越えられる、なんでも挑戦できる

    なんて、科学者然としてかっこつけてみるけど

    結局は・・・

    私はただ単純に、モブリットが好きだという事だ

    勇気という名の万能細胞の欠片を携えて

    私は常に前を向き、走り続ける
    愛しい彼と共に

    ―完―
  69. 111 : : 2014/06/20(金) 14:04:08
    あと少し、おまけが続きますので、お付き合いいただけましたらうれしいです♪
  70. 112 : : 2014/06/20(金) 14:42:58
    兵舎に帰還したのは、日にちを跨いだくらいの時間だった

    馬で門をくぐり抜け様とした時、声が掛かる

    ニファ「お帰りなさい!!ハンジさん、モブリットさん!!」
    なんと、門当番をしていたのは、ニファだった

    彼女はにやにやと笑みを浮かべながら、私たちに交互に視線を向けた

    モブリット「…門当番は、新兵の仕事なはずだが…ニファ?」

    ニファ「ええ、今日だけ代わってあげたんですよ…ふふ」
    ニファは不敵な笑みを浮かべた

    ハンジ「ニファ、ご苦労様。笑い方が怖いよ…?」

    私の問いに、ニファはにやりと笑う
    ニファ「…ふふふ、こんな時間に帰還と言うことは…副長、ちゃんとしたんですね?」

    モブリット「な、何を言ってるんだ!?ニファ!そんな事は一切…」
    モブリットが突然慌て出した

    ニファ「あらら、私は確かに、副長宛に伝言をお渡ししたはずですが…」

    モブリット「伝言…は、見たよ。却下したけどね」

    伝言…そう言えば、朝出立時に何か、紙を受け取ってた
    モブリットは凄く顔を歪ませてた気がする

    ハンジ「ニファだったんだ、あの紙の差出人。ところで、伝言ってなに?」

    モブリット「ハンジさん、お気になさらず!!さあ帰りましょう!!」

    モブリットは慌てて馬を走らそうとしたが、いつの間にか、ニファが手綱を握っていて、それは叶わなかった

  71. 113 : : 2014/06/20(金) 15:08:17
    ニファ「ダメですよ、指示書通りにしてないなら、門は通しません」
    ニファは馬の手綱を握ったまま、真剣な眼差しをモブリットに向けた

    ハンジ「指示書…だったの?モブリット」

    私の問いに、モブリットは何故か顔を真っ赤に染めた

    モブリット「…ええ、でもあり得ないんで、気になさらず」

    ニファ「本物ですよ、副長…幹部が指示書を守らないなんて…処分が下るでしょうね」
    ニファはにやりと笑った

    モブリット「ニファ…君ね…」

    ハンジ「とりあえず、その指示書、見せて」

    モブリット「いや、その…」

    ハンジ「早く」
    私が急かすと、モブリットはため息をついて、胸ポケットから紙を取り出した

    それを半ば奪うように受け取り、目を通し…

    ハンジ「何これ!ど、どういうことだよ!?」
    思わず絶叫した
  72. 114 : : 2014/06/20(金) 15:14:38
    モブリット「…だから言ったのに…」
    モブリットは肩を落とした

    ハンジ「内容が…作戦指示書 モブリット・バーナー副長は、ハンジ・ゾエ分隊長に対して、愛のレッスンone・two・threeを決行すること。滞りなく終えるまで、兵舎への帰還は禁ずる…調査兵団団長 エルヴィン・スミス…って!」

    ニファ「エルヴィン団長にちゃんとサイン貰っちゃいました♪結構ノリノリでしたよ♪と言うわけで、済ませてないならいってらっしゃい♪」
    ニファは嬉しそうに微笑んだ

    ハンジ「…紛れもなく本物の、エルヴィンのサインだ…何て事だ…」
    私は頭を抱えた

    モブリット「…実は済ませたんだ、ああ、そうだった…ねえ、分隊長」
    モブリットが、私を肘でつつきながらそう言った

    ハンジ「そ、そうそう、モブリットが突然欲情しちゃってさあ!!」
    私はうまい具合に口裏を合わせた…のに

    モブリット「違います、分隊長が我慢が出来ないって…」
    なんだって!?

    ハンジ「それは馬に跨がりたかっただけだろ!?」

    それを大人しく聞いていたニファは、
    ニファ「…済ませてませんよね?副長?」
    モブリットに、探るような視線を向けた

    ハンジ「だめだ、ばれてる!!」

    モブリット「あなたのせいですよ、分隊長!!」

    ニファ「痴話喧嘩は止めてくださいね?さて、じゃあもう言い訳は聞きませんから、いってらっしゃい」

    ニファは手綱をひいて、兵舎の外に馬ごと私たちを追いやった
  73. 115 : : 2014/06/20(金) 15:26:38
    モブリット「ニファ…頼む、見逃してくれ…明日は朝から仕事が山積みなんだ…」

    モブリットは馬から降りて、ニファに深く頭を下げた

    私も馬からヒラリと降りた…案の定、スカートがふわりとまくれあがる

    下着が丸出しになる

    何度も繰り返す、同じ過ち

    それを見たニファが、私を指差しながら、モブリットを叱責する

    ニファ「副長!あんなにガードが緩い、緩すぎるハンジさんを、どうして押し倒さないんですか?!下着をちらつかせて、挑発されているのに、何も感じないだなんて、男の風上にも置けませんよ!!」

    ハンジ「いや、わざとじゃないよ…挑発もしてない…」
    私は小さな声で反論したが、ニファは意に介さなかった

    モブリット「今日はいろんな意味で疲れていて…頼む…」
    モブリットは、項垂れた

    ニファ「ええっ!?信じられない!!今から風呂いきましょ!?副長にはついてないんですよ、きっと大事なものが!!確認しなきゃ…大事なハンジさんをあげられません!!さあ、さあ!!」

    ニファはモブリットの手をつかんで無理矢理、引きずるように、兵舎に連れていった

    残された私は…
    ハンジ「…ふ、ふふふ…あはははは!!」
    楽しくなって、お腹を抱えて笑いながら、厩に馬を休ませに行った
  74. 116 : : 2014/06/20(金) 15:38:13
    部屋に戻り、ワンピースのまま、ベッドにダイブする

    ハンジ「はあ~疲れた…最後が一番…疲れた…ふふ」
    エルヴィンのサイン入り指示書をポイっと床に放り投げて、目を閉じた

    ニファに叱られているモブリット、可愛かったなあ…

    ハンジ「…ふふふ」
    私は思い出し笑いをした

    すると、部屋の扉の向こうがにわかに騒がしくなる

    ニファ「副長うるさい!!つべこべ言わない!」

    そんな声とともに、ノックもなく扉が開き、誰かが中に転げる様に入ってきた…と思ったら、扉がしまった

    外からガチャリ…と音がした

    部屋に入ってきたのは、勿論

    モブリット「…分隊長、すみません」
    今にも泣きそうな顔の、モブリットだった
  75. 117 : : 2014/06/20(金) 16:07:07
    ハンジ「鍵をかけられちゃったね。ニファに確認してもらったの?その…ついてるかどうか…ぷぷぷ」

    私は思わず吹き出した

    モブリットははぁとため息をつく

    モブリット「してもらうはずがないですよ…根掘り葉掘り聞かれただけです」

    ハンジ「…で、部屋に押し込まれたんだね」
    私はベッドでうつ伏せで寝そべりながら、顔だけはモブリットの方に向けていた

    モブリット「はい、すみません…分隊長、一晩泊めて下さい」

    モブリットはそう言って頭を下げた

    ハンジ「…いいよ、おいで?」
    私は仰向けになって、両手を広げた

    モブリット「いえ、自分ソファで寝ますから!!」
    首を振るモブリット

    ハンジ「…誘ってるのにのってこない…やっぱりついてないのか…」
    私はそう言いながら、モブリットに怪訝そうな目を向けた

    モブリット「…つ、ついてますよ!!」
    モブリットはそう言うと、仰向けに寝ている私に、覆い被さった

    ぎゅっと抱き締められると、身体がまるでパズルのように、ピッタリくっついた

    モブリット「…俺は、今日初めてあなたと気持ちを共有する事ができたばかりなんです…だから、急ぎたくなかったんです…」

    モブリットは、私を抱き締めながら、耳元で言葉を紡いだ

    ハンジ「うん」

    モブリット「こういうことは、順を追って…ですね…」

    ハンジ「…うん、でもさ、モブリット」

    モブリット「はい」

    私はそう、気がついていた

    ニファについていないと疑われたその部分が、にわかに固くなって、熱を帯びている事に

    ハンジ「…私は、いいよ?むしろ、抱いて欲しいな…」

    私の言葉に、モブリットは口をぱくぱくと、金魚のように動かした

    けど、やがて…

    モブリットが得意な?お母さんがやらないキスを皮切りに

    彼の手は私の身体の隅々を、丁寧にくまなく調べ尽くす

    そして、本当の意味で、私とモブリットの距離は、0になった


  76. 118 : : 2014/06/20(金) 17:24:25
    目を開けると、カーテンの隙間から光が差していた

    ハンジ「う~ん、もう朝か…」
    時間は…七時前

    私は何時もこれくらいに起きるけど…

    隣で気持ち良さそうに寝息を立てているモブリットは、いつもはもっと早く起きているだろう

    起こそうかな、と思ったけど、どうせ外から鍵が掛かってて出られないし、本当に疲れていた様だから、休ませてあげたかった

    事が済むなり、私を抱き枕にしながら、疲れました…と、言って眠りについたモブリット

    初夜…にしては、最中はともかく、事後はよろしくなかった…もう少し話をしたかったし、甘えたかった、けど…

    多分モブリットは、起きるなり平謝りだろうな、と何となく想像がついて、ふふ、と笑った

  77. 119 : : 2014/06/20(金) 22:13:20
    たまにはモブリットより早く起きて、身なりを整えてみるのも面白いかもしれない

    私はそう思って、そっとベッドから降りて、昨日脱ぎ散らかしたままの服を拾い集める

    下着にシャツ、そしてスラックスを着て、後はベルトを付けて、ジャケットを羽織るだけ

    顔も洗って髪の毛もセットして、準備万端

    ベッドに戻ると、まだすやすやと寝ているモブリット

    彼が副官になって幾月年…今日初めて勝った!!かもしれない!!
    うふふ

    ベッドに腰を掛けて、よしよし、と彼の頭を撫でる

    すると、うっすら目をあけた

    モブリット「う…ん…ハンジさん?」

    ハンジ「おはよう、モブリット」
    私は笑顔でそう言った
  78. 120 : : 2014/06/20(金) 23:22:56
    モブリット「…あ、もうこんな時間でしたか…久々に寝過ごしてしまった…」
    モブリットはベッドの上で上半身を起こした

    まだ、ぼんやりしているようだ

    ハンジ「疲れてたしね、モブリット」
    私はよしよし、と頭を撫でながらそう言った

    モブリット「はっ!!分隊長すみません…昨夜は、いつの間にか寝てしまって…」

    ほらね、謝った…読み通り!!
    全く怒ってないけど、少し意地悪をしてみる

    ハンジ「折角初めての夜だったのに…さっさと寝ちゃってさ…寂しかったな」
    私は口を尖らせた

    モブリット「ああ、本当にすみません、最低です、やるだけやって、寝てしまうなんて…」
    モブリットは額を手で押さえて、項垂れた

    ハンジ「…いいよ、その代わり、次の時は、先に寝たら駄目だよ?」
    私はそう言って、モブリットの頬をつんつんとつついた

    モブリット「…許していただけますか?」
    モブリットは顔を上げて、心配そうに私を見た

    私は至極深刻そうな顔をしていた…勿論演技だけど

    ハンジ「…いいよ、許すよ」
    そう言うと、モブリットは破顔一笑した

    モブリット「ハンジさん…愛しています」
    モブリットは、そう言って私を抱き締めた

    ハンジ「私もだけど…もう7時半になるよ?素っ裸で仕事するの?」
    私はにやりと笑った

    モブリット「はっ!!俺としたことが…と言いますか、分隊長が準備出来てる!!今日は雪が降るかもしれない…」

    ハンジ「たまにはやるんだよ私だって。偉い?」

    私が胸を張ってそう言うと、モブリットは眉をひそめた

    モブリット「やればできるなら、毎日しっかりやって下さいよ!?」

    ハンジ「うーん、気が向いたらね~」

    モブリット「ああ、全くやる気はなさそうだ…」

    ハンジ「…お母さんがいるから、やらなくていいだろ?…あっ!!」

    モブリット「お母さん…と呼びましたね」

    モブリットはぼそっと呟いて、いきなり私をベッドに押し倒した

    手際よく、私が折角早起きして身につけた兵服を…脱がしていく

    ハンジ「待った!!折角着たのに脱がさないでよ!?」

    モブリット「分隊長、一緒に遅刻しましょう…それに、お母さんと言ったらこうする、と約束したじゃないですか」

    ハンジ「いや、そうだけどさあ、ついうっかり…って、モブリット!!ちょっと…!」


    結局朝から元気なモブリットに、最後まで付き合わされたのだった…
  79. 121 : : 2014/06/20(金) 23:52:15
    食堂にて

    ニファ「へえ!!一緒に遅刻しましょうだなんて、副長言いますねえ…見直しましたよ!!朝っぱらから欲情して一発ぶちかますとは!!」
    ニファは殊更大きな声で言った

    ハンジ「ニファ、声が大きい!!」

    モブリット「…ほら、ニファに言ったらこうなるに決まってるじゃないですか…」
    モブリットは頭を抱えた

    少し遅めの朝食を食べている所で、ニファに捕まったのだった

    ニファ「でも副長、ちゃんと午前は休暇届け出してたんですよ、偉い?」

    モブリット「…ああ、よく気が利くね。ありがとう、ニファ」
    モブリットは頭を下げた

    ハンジ「ほんと、助かったよ…折角着た服をさ、勝手に欲情して脱がされてさ…とばっちりで遅刻する所だったよ」

    ニファ「ハンジさん、嬉しいくせに~」

    ハンジ「そ、そんな事ないよ!!」

    モブリット「喜んでいたよ」

    ニファ「やっぱり、ハンジさんもエッチなんだぁ~うふふ!」
    ニファの声は、食堂に響き渡った

    ハンジ「ニファったら…」

    ニファ「でも…お二人がちゃんと結ばれて、良かったです」
    ニファはそう言って、ひまわりが咲くような笑顔を見せた

    ハンジ「ニファ、ありがとう。大好きだよ」
    私はニファの体を、ぎゅっと抱き締めた

  80. 122 : : 2014/06/20(金) 23:53:46

    私とモブリットをくっつけてくれた、可愛らしいおかっぱキューピッドに

    私の心からの愛情を、これからも注ぎ続けよう

    ありがとう、ニファ


    ―おまけ 完―
  81. 123 : : 2014/06/21(土) 08:35:20
    えがったのー♪
    こんなに素晴らしくこっちがニヤニヤのニファ気分になったのはじめてです!
  82. 124 : : 2014/06/21(土) 08:49:07
    執筆お疲れ様でした!
    ハンジさんは可愛いはモブさんは可愛いはで終始ニヤニヤしっぱなしでした。
    そしてやはりニファの仕事っぷりが……wええ子やなぁ……。

    あ、あとモブりんを誘うときは「お母さん」といえばいいんですね?!

    二人とも末長くお幸せに!

    88さん、素敵なお話をありがとうございました!両サイド見れたことにより2倍楽しませていただきました。
  83. 125 : : 2014/06/21(土) 08:49:32
    >ハンジもどきさん☆
    えがったの~♪
    ニヤニヤしていただけて、本望であります!!ハンジもどき分隊長!!(^-^ゞ
    また可愛らしいハンジさんを書きますんで、よろしくお願いいたします♪(///∇///)
  84. 126 : : 2014/06/21(土) 09:01:31
    >キミドリさん☆
    読んで頂きありがとうございます♪
    ニヤニヤ顔|д・)覗きたいですw
    ニファの弾けっぷりと、真っ直ぐなハンジさんへの愛を感じて頂けて嬉しいです(^o^)v
    そうそう、お母さんて呼んだら押し倒し(以下自粛)てくれますよw
    コメントありがとうございました!!(^-^ゞ
  85. 127 : : 2014/06/21(土) 22:19:57
    執筆、お疲れ様でした!
    モブリットの男性としてのリードに、胸がときめきました♪
    ハンジさん視点だと、ハンジさんの女の子っぽさが凄くアピールされていてとても可愛らしかったです!
    ニファのキューピッドっぷりが…もう、流石やこの子wって感じでしたw
    ニファがいればモブハン夫婦も安泰ですね♪素晴らしいssをありがとうございます!
  86. 128 : : 2014/06/21(土) 23:36:04
    ハンジが元気なかった理由がまさかのアレだったとはw
    モブハンはいい夫婦になりますね これは

    おまけでニファについても触れられていて、抜け目ないなと思いました!

    よ~し明日からは別視点読むぞえ
  87. 129 : : 2014/06/22(日) 07:15:03
    >ダーリン☆
    読んで頂き、ありがとうございます♪
    モブリットは出来る男です!!いろんな意味で!!
    ハンジさんの恋煩いを書いてみたいなあと思ったら、ニファの武勇伝みたいになりましたw
    モブハンは結婚や!!
  88. 130 : : 2014/06/22(日) 07:17:13
    >ヒザカックンさん☆
    まさかのアレだったのですw
    もしやただの欲求不満だったのか…げふん
    いい夫婦にしかならないですよ、ええ!!
    ニファは書いていて楽しかったですw

    別視点も楽しんで頂けたら嬉しい(///∇///)
  89. 131 : : 2014/06/22(日) 07:19:11
    ニファが凄く可愛いです!!
    キューピッドです!モブハンのキューピッドです(笑)モブリットも相変わらずの可愛い格好いいで本当に師匠のモブハンは最高です!!
    次も期待してます!!!頑張ってください!
    素敵な作品を読ませて貰ってありがとうございます!!
  90. 132 : : 2014/06/22(日) 07:53:38
    >EreAni師匠☆☆
    師匠~抱擁ぎゅっ!!
    読んで頂きありがとうございます♪
    ニファいいかんじですか!?うふふ嬉しい(///∇///)
    モブハン、まだまだ懲りずに書くので、応援してください♪(///∇///)
    師匠~ありがとう(*^^*)
  91. 133 : : 2014/06/29(日) 20:54:21

    うわあああぁぁぁ!!!

    恋するハンジさんが可愛すぎて自分の部屋の床でスマホ握りしめながら悶絶しています!

    姉さんのモブハンもっと見たいです!
  92. 134 : : 2014/06/29(日) 21:40:35
    >妹姫☆
    読んでくれてありがとう♪
    悶絶してくれて本望です♪
    またモブハン、書きますね(///∇///)
    その時はよろしくお願いいたします♪
  93. 135 : : 2014/08/28(木) 13:49:51
    少し読むと最後まで読みたくなる貴方の作品が大好きです。
    お疲れ様でした
  94. 136 : : 2014/08/28(木) 14:16:04
    >じけいさん☆
    ありがとうございます(*^^*)
    ほんっとうに嬉しいです(T▽T)
    また遊びに来て下さい♪(*´ω`*)

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fransowa

88&EreAni☆

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