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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

【安価】真宮寺「これは……」夜長「……コープスパーティー?」【chapter:06】

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  1. 1 : : 2019/10/01(火) 01:36:42

    (※毎度お馴染みの誤字・脱字の量でございますがお許しを…※)

    (※この作品は『コープスパーティー』とのコラボ作品となります。基本はコープスのストーリーに沿ってますが、オリジナル展開も予定しています※)

    (※なお、今回はホラー・エロ・グロ、CP要素がもりもりあります※)

    (※chapter事に視点が変わります、さらに同じchapter内でも視点が変わるので見辛いかもしれません※)

    (※また死ぬキャラクターが多数でるので、推しのキャラが退場しても許しください※)



    ・登場人物

    ニューダンガンロンパV3 メンバー
    (希望ヶ峰学園の制服を着てるイメージをしております)


    ・舞台設定

    育成計画+α 『希望が峰学園79期生』設定
    というより紅鮭の方が近いかも……


    ・前説

    それはある日の夕暮れのこと。
    怪談話をしていく最中、才因組のクラスメイトたちはあるおまじないをすることに…

    …それが、禁じられた『呪いの類い』であることを知らずに……



    (※基本は安価は選択制オンリーですが、秒数安価もあるかも知れません※)

    (※では、今回もスタートします。完 全 に 二番煎じです、先に作成した方申し訳ありません……(汗)※)

    (※今回は進行上、期待などのコメントにお返事致しません。
    この場でお礼申し上げます※)

    (※鈍行列車や徒歩よりも遅い進行ですが、生暖かい目線…もとい保護者の目線で見守ってやってください※)

    (※なお『 pixiv 』でも追っかけでかつ、別視点で進行しております。そちらもどうぞご覧下さい※)
    リンク先
    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8648065
    2
  2. 2 : : 2019/10/01(火) 01:38:24



    僕達は何ができただろう。
    目の前の悲劇を知っても尚、対峙しないといけないのか。
    本当は…そんなこと知りたくもなかった。知らないままでいたかったんだと思う。

    その方が楽だった。

    でも、起きてしまった。

    真宮寺君の抱える闇、アンジーさんの心の迷い。
    ――それらが歪に僕らをこの場所へと導いたんだ。

    気が付けば良かったのか?
    いいや、違う。それでは答えじゃない。起きてしまったことを無かったことには出来ない。

    話のすり替え。本来のストーリーとの変異…理由を付けるなら、それが大元だったんだと白銀さんは消える前に僕らに告げたんだ。
    …消えそうな白銀さんはゆっくりと瞳を伏せる。

    ごめんね、と。

    ――1歩間違えればわたしも2人のようになっていたと思うから彼らを悪者だと思わないであげて――

    そう呟いて、最後は任せたからね。
    …と僕らの背中を押したんだ。
    冴之木七星の力の余波で黒化しかけてた彼女の悲しげな声。

    きっと忘れない。忘れるもんか。

    ゴン太くんと共にゆっくりとその姿は薄れていく。
    僕らを助ける形で彼女は完全に姿を消したんだ…

    最原「――いこう」

    頷くクラスメイト達。
    僕にはみんながついてくれている。

    そう思うと――不思議と怖いとは思わなかった。


  3. 3 : : 2019/10/01(火) 02:39:07
    【 chapter:06 】 『 夢野秘密子 』side


    直ぐに現実に戻りたい。
    温かい食事に楽しい日常。それがどれほどウチらにとって『 幸せ 』じゃったのか。

    体験したことのない痛みに意識を失いたくなるが、それを許さぬと言わんばかりに痛みが波のように押し寄せては消える。2度と体験しがたいモノがそこには――あったのじゃ。

    悲鳴さえも全てを聞きたいと『 真犯人 』であるアヤツが瞳孔開き行為に酔いしれておる。

    夢野「いやっ、んぁっ…や、やめっ――」

    ざくり、と不愉快極まりない音が響く。やめて、やめてと手を伸ばしても『 アヤツ 』は捉えられない。むしろすり抜ける。

    サチコ『アハハはっ!? ナカナカ逝カナイネ…?』

    ざくり、ぐしゃり。
    涙と何かで濡れて真っ赤に見せる視界で段々と霞んでいく。だが音だけは鮮明に聞こえ、『 アヤツ 』の不気味な声がケタケタトと嗤い狂っておった。

    夢野「こ、や…んっ!?」

    ウチの声は届かぬ。それはそうじゃ。だって…実際は――

    サチコ『…ハヤク …逝ッチャエバいいノニ…』

    夢野「んっ…ぁああっ!?」



    ぐちょ、ぐちょ…ずぶっ…

    なにかがずるりとぬけた。

    なにがおきたのか…りかいできなくて、もうどうでもよくて…もう…

    サチコ『…アはっ!?…アソウだ!…ケタケタ』

    夢野「!?」


    サチコ『…ほウら。…お口ヲ開ケてゴラん?』

    ざく、ざく…ぐちょ…するっ…

    うわぁ、くちのなかにつめたいのとあついのと…くさいのが…ながれこんで…く、る…?


    サチコ『……ツレテイカナイト…』

    おとにのいず…が、はしる…。
    ?やっと、やっと…しねる、の…か?



    とおのくおとのさいご、うちはきいた。
    きこえた。




    さちこが…『 おかあさん 』とつぶやいておったから。

  4. 4 : : 2019/10/01(火) 02:40:05

    『 茶柱転子 』side

    天海「…俺の番っすから…」

    茶柱「…はい?」

    肩の出血を必死に押さえながら天海さんはうわ言を呟いてました。…星さんのようにまさか転子を庇って真宮寺さんから逃がすんじゃないのでしょうかと一瞬嫌な予感が過りましたが、それをとがめる余裕は全くなく間抜けな声しか出ませんでした。

    天海「…っく、このまま『 玄関 』まで向かうっ
    すよ。本館に、向かえば逃げる、場所が増えますから、ふた手に別れるっす。…手負いの俺が引き付けるんで逃げてっ…」

    茶柱「!?…そ、それじゃあ、天海さんはどうなるんですか!?…て、転子を助けっ…なんて!」

    やっぱりです!!こんな場面で転子をっ転子を助けるおつもりでっ!そ、そんな事転子はされたって喜ぶ訳がないじゃないですか!

    転子が反論をしようとした時。…『 玄関 』前にたどり着いてしまいました。…背後を見て走るのをやめた天海さんは転子の方を向きます。
    その視線は真剣でした。…両手を転子の肩に触れます。驚きと発言する言葉を察してしまい、普段ならばすぐに投げるなですが…できませんでした。

    天海「――いいっすか。ひとりでも多く生かすためっす。ここで茶柱さんが俺より先に死ぬのは俺嫌っすから」

    茶柱「…天海さん」

    いいですか、と続けます。

    天海「俺は『 超高校級の冒険家 』…っすよ?この程度の怪我なんてざらにしてるっす。だから、大丈夫。そう易々と死ねないっす。
    それに今こうしている間にも真宮寺君は距離を詰めるでしょうから、行きましょう。茶柱さん」


    茶柱「あ、あまっ」

    肩から両手を離した天海さんは返事など聞かない様子で扉に向かいます。…そして扉を開こうとしたのですが――

    天海「…ヤバいな。扉、開かないっすよ!
    …俺たちを確実に殺そうと考えてるんすね――真宮寺君」


    真宮寺「…そうだヨ?」

    茶柱「ひゃぁああ!!」

    気が付けば、転子たちのすぐ近くにまで迫っていた真宮寺さんは今にも転子たちを襲おうと持っている刀を向けます。…こ、こうなったら…唾を飲み込み対峙しようと睨みを効かせると――また手を引かれ、入ってきた方の廊下とは逆の方へと走ります。

    えっ?えっ…

    ただ逃げることしか出来ない転子たちを嘲笑うかのように真宮寺さんはあとをゆっくりと追います。

  5. 5 : : 2019/10/01(火) 03:05:36

    再び逃げます。走る、走る…今何処に向かって走ってるのか、場所は何処にいるのか全く分かりません。なんど階段上がったのかさえよく分からないほど走ります。

    流石に息が持たなくなって足元がもつれ始めた頃だったでしょうか。…星さんが刺され、逃げ始めた『 女子トイレ 』前の廊下に戻ってきていたんです。

    倒れた星さんを挟んで真宮寺さんとも鉢合わせになってしまって。引き返すにも体力の限界が近かったと思います。そのぐらい…走っていました。


    天海「はあっ、はぁっ…」

    茶柱「はぁ…真宮寺、さん…」

    真宮寺「…随分としぶとく逃げるよネ。それほどここから出たいってことなんだろうけど…もう『 天神小学校 』に来た時点でそれは、不可能に等しいんのサ」

    赤く濡れた刀身を天海さんの前に向けます。
    天海さんは首を横に振って答えます。

    天海「出たいっすよ。…脱出したいに決まってる。それは俺たちは生きたいからだ。
    人の生き死にを真宮寺君に委ねたくないっすよ」

    スッと目を細めた真宮寺さんはクックックッ…と口元を抑え滑稽だと言わんばかりに嗤います。

    真宮寺「委ねる?…どうせ皆死んでしまうのに?死んでしまうから僕が介錯を買って出てるんだヨ。それにここなら『 お姉さん 』のお友達がたくさんで来そうだしネ。僕にとっては一石二鳥だったんだヨ」

    あまりにも身勝手な理由。エゴ…そんな事をしても以前話していらっしゃった『 亡くなったお姉さん 』は喜ばれるのでしょうか?
    いいえ。違うハズです。

    茶柱「貴方は身勝手です!!『 お姉さん 』の為だって言っても結局は人を殺すのが好きなだけですよ!それこそエゴです!万死に値しますよ!」

    最低です。クラスメイトとして打ち解けた、までは言いませんがお話はとても興味深くて面白かったのに。心の底では最低な人間だったんですね!
    転子が今更睨んでもどうにもなりませんが一生軽蔑します。


    …脱出したとしても口を聞くことはないでしょう。逆にここで死んでも同じですが。

    真宮寺「クックックッ…どうとでもいって構わないサ。もうすぐキミたちを『 お姉さん 』の元に遅れるんだから…サァ!!」

    真宮寺さんが一気に距離を詰めて転子はぎゅっと瞼を閉じてしまい――






    question、>>6番さん。

    イベント:天海、茶柱の危機

    (秒数安価、結果は後程)

  6. 6 : : 2019/10/01(火) 07:20:13
    2人とも生きて…!
  7. 7 : : 2019/10/02(水) 01:25:02
    んあー!!がんばれー!!
  8. 8 : : 2019/10/15(火) 03:20:57

    (お待たせしました結果発表です!

    成功:10の位が1、3または1の位が7
    失敗:ゾロ目
    小成功:上記以外

    …?さて、小成功とは、なんのことでしょうかね…? 今回は成功したので進行します!)



    ドン!!

    …?
    何かが倒れた音がして瞼を恐る恐る開くと倒れたのは真宮寺さん。そして真宮寺さんを倒したのは誰なのでしょうか?と思っていると天海さんが震える声でその名を呟いたんです。

    天海「…ほ、星君…っ!!」

    茶柱「っ!?」

    星さんが真宮寺さんの足を引っ掛けたみたいです…と言いますか星さんが虫の息っ…た、助けなっ!!

    真宮寺「…そんなに刺したのにまだ姉さんの元に行けないなんてネ…可哀想に…」

    刀を支えにして体勢を立て直す真宮寺さんはまだまだ余裕があるみたいですね…。その足元に倒れる星さんを蹴飛ばします。
    蹴飛ばした勢いで壁際まで力なく転がって行きました…星さんはそれでも真宮寺さんを止めようと身体を引きづって転子達の側へと這ってでも向かいます。
    や、やめてっ…そこまでしなくてもいいですからっ!だから…っ!

    天海「な、なんてことをしてるんすか!」

    茶柱「ああ…星さんっ!」


    その様に転子たちは思わず真宮寺さんを睨みつけます。けど、真宮寺さんは気にもとめずに星さんの方向を見下すように刃先を向けます。

    真宮寺「クックックッ…そこまで足掻くのかい?足掻いたところで苦しむだけなのにサ…いいよもう楽にしてあげるから…」

    力なく星さんは転子の方をみて、いえ睨んでます。
    まるで逃げろと言わんばかりの眼力。で、ですがその状態で逃げるんて転子には出来ないですよぉ…っ!
    星さんの迫力に転子は天海さんの裾を引っ張ります。どうしたらっ

    茶柱「…あまみさ」

    天海「――そうっすね。最初からこうすればよかった」

    独り言を呟いて、転子を振り切るように1歩、1歩と真宮寺さんの方にと進みます。
    真宮寺さんは星さんとの間合いを詰めているせいで気がついてません。1度だけ転子の方を向いて困ったような表情をします。

    茶柱「――え?天海さ」

    天海「茶柱さん。どうか無事に脱出するんですよ。…それと他のみんなを任せるっすよ」

    何をするつもりなんですか!?何をっ!!
    そんな顔で言わないでくださいよ!!
    転子の言いたい言葉を遮るように背を向けます。そして、そのまま…

    天海「真宮寺君。もう辞めるっすよ。俺たちはそんなキミをもうみたくないんです。
    だから、俺は…俺はっ!」

    タッタッタッ…ダッ!!

    真宮寺「天ま――」


    ドン!!!


    ヒュぅぅぅぅ…ガッシャン!!

    茶柱「…え…?」


  9. 9 : : 2019/10/15(火) 03:21:20

    茶柱「…え…」

    何が起きたのか分からなかったんです。
    その場にへなへなと座り込んでしまって。

    目の前に居たはずの天海さんと真宮寺さんの姿は無かったんです。だって、だって今っ!!

    茶柱「落ちた…2人が…」

    真宮寺さんに体当たりして、真宮寺さん諸共…そこの穴に落ちてしまったんです。

    茶柱「…なんでっ、どうしてっ…」

    涙が溢れてその場でうずくまってしまいます。大きな音が聞こえてその後何も音はしてなくて、それってつまりは…。

    星「…っく、ちゃ…ばし…ら…っ」

    茶柱「!!ほ、星さん!?」

    顔を上げれば星さんが転子の方を見てました。涙を拭い立ち上がって彼の元へと行きます。

    茶柱「星さん!!無理しないでくださいっ!今っ助け」

    星「…いい…お、れは…もう、すぐ…で死ぬ…だろう…から…きに、するな…」

    茶柱「だ、ダメですっ!そのような弱音吐かないでください!!」

    転子が星さんの腕を掴もうとしたのを振り払います。睨んでいきも絶え絶えに必死に言葉を紡いでいきます。

    星「い、いか…ちゃ、ば…しら…。お前さ、ん…だけでも…逃げろ……それ、を、俺と…あま、みは…のぞん…でんだ…その、想い…だけ、は…っゴホッ…ゲホッ」

    茶柱「星さん!!」

    星「…お、もい…だけ…は…たて、てやって…くれ…ない…か?」

    そんな風に言わないでくださいっ!!なんでっ転子が大嫌いな男死なんかに助けられなきゃいけないんですか!!なんでっ、なんで――っ。

    星「…わる…いな…おま、えさん…だけに…つらいおもいを…させちま…って…よ」

    茶柱「…グスッ…ひっく、そんなのって…」

    星「ゆめの…たち…をたのん、だぜ…」

    ニコって微笑まないでくださいっ!!なんでっ死の間際にそんなことを言えちゃうんですか!
    星さんそんな人じゃないのに…って言うのはいけませんね。

    茶柱「…星、さん…?」

    星「…」

    茶柱「星さん!?星さん!!」

    星さんの身体を揺すっても反応はなくて、半開きの瞳は生気を失っていました。…それは言わなくてもわかってしまうのに起きると期待して、ただ気を失っているだけだと自分に言い聞かせて、呼びかけます。

    一向に星さんは反応してくれませんでした。

    そんな事わかっているのに拒否している手が震えて視界が大きく滲み、星さんの頬にポタリ、ポタリと…粒が落ちていきます。

  10. 10 : : 2019/10/15(火) 03:21:35

    …どのぐらいそうしていたのか定かではありません。しばらくだったかも知れませんし、実はものの数分だったかも知れません。

    星さんをそのままにしておくのはあまりにも酷いと思って、瞼を閉じて壁にもたれかけます。
    …目を閉じてるとお人形さんみたいでキュートですね、なんて場に合わない事を浮かんで、立ち上がります。


    茶柱「…転子だけになっちゃいましたね…あはは」

    茶柱「みなさん、いなくなっちゃって…」

    転子の乾いた笑い声だけが空間に響きます。

    茶柱「…みんなずるいですよ…転子が生き残ったって、脱出出来ないかもしれないんですよ?」

    誰1人答えるものはいません。分かっていますが、言葉にしないと辛かったんです。例え嫌いな男死たちとはいえ…クラスメイトだったんですから。

    茶柱「…わかってますよ。ここで泣いていたって何も変わりません。生き残っていらっしゃる夢野さん達と合流して、脱出しますね」

    元気が転子の取り柄――以前夢野さんに言われた言葉を思い出しました。こんな時だからこそ、ですよね。

    茶柱「星さん。本当は星さんも連れていきたいのですが…この状況では厳しそうです。申し訳ないですが待っていて下さいませんか?
    きっと転子が脱出の方法見つけて…そのお姿だけでも連れて帰りますから」

    動かない星さんに語りかけ、その場を離れます。
    何処へ向かうかは決めてませんけど、とりあえず『 玄関 』に向かわないとですね。
    向かって…それからどうするかは決めましょう。

    茶柱「『 玄関の鍵 』は真宮寺さんが多分持っていらっしゃるのでしょうから…この下の階にも進まないと行けないですね。行かなきや…」

    フラフラした足取りで階段を下りて、『 玄関 』のある場所目指して進むことにしました。


  11. 11 : : 2019/10/15(火) 03:21:55

    ギシ…ギシ…

    床の軋む音に1人だという恐怖に身がすくみます。今まで転子が1人で行動した事って殆どなかったんだな、と今更ながら思ってしまいます。
    心做しか暗いので最原さんが持っていた『 懐中電灯 』でてらしながら階段を下りきり、天海さん達が落ちた先…に辿り着きました。

    …むせ返るような血の匂いがして、ああ無事ではない事、僅かに照らす明かりにも反応を示さない事で2人は無事ではない――つまりは亡くなってしまったのではと嫌な考えが浮かんでしまいます。違う!とかぶりを振って、僅かな希望を抱いて慎重に進みます。


    茶柱「――っ!!」

    血まみれの中に足が見えました。それは天海さんの足。そしてその足は本来曲がる方向とは違う方向に曲がっていて…折れているのだとこの位置でもわかってしまう程でした。

    懐中電灯でその足をなぞるように上…胴体の方へと向けます。
    …背中には日本刀が刺さり、うつ伏せで転子の方向からでは後頭部しか見えませんが、床には夥しい量の血の海が流れていて、肩の傷以外から流れたものでは無いと察しがつきます。

    茶柱「…天海さん!!」

    懐中電灯を投げ飛ばしそうになりましたが、慌ててキャッチして傍によります…生ぬるい血の感触を無視して座り込みます。近くに寄って天海さんがヒューヒューと息しているのを聞いてホッと胸を撫で下ろします。

    茶柱「ああ…良かったです」

    生きてる。そう分かっただけでも涙が零れそうになります。天海さんの頬を触り、温もりを感じられるだけで嬉しくて…

    天海「…う、……」

    茶柱「!!」

    ゆっくりと天海さんの開いた瞳が転子を捉えようとしますが焦点が合わず、視線は転子の斜め上を見ていました。

    茶柱「そうですよ!天海さん!」

    天海「だれか…いる、んですね…。良かった…」

    どうやら転子の声は聞こえてないみたいです。落下した衝撃で耳も血が流れている様子で焦点も会わぬ瞳で、ゆっくりと手を上げて…それを無意識に掴みます。

    天海「…あっ…たかい…っす…ね」

    茶柱「天海さんっ!」

    ゆっくりと瞼を閉じて握った手を握り返します。

    天海「どな…たか、わから…ないっすけど…茶柱…さんに伝えて…くれませんか?」

    茶柱「あま、みさん?」

    天海「真宮寺…くん、は…まだ…生きて、るっす…だから…一刻も早く…ここから…逃げ、て…」

    もう何を言っても聞こえないし声をかけてる相手が転子だとは分かってない。ですが、それでも自分より転子の事を心配するなんて…男死の癖に生意気ですね。

    茶柱「真宮寺さんが…生きてるんですね…分かりました…」

    真宮寺さんの姿が見えなかったので察しは着いていました。それにその背中の日本刀はきっと…真宮寺さんが…落ちたその後に刺したのでしょう。そのぐらい推理じゃなくても分かります。

    天海「…もうし、わけないっす…あなたに…頼み事…してしまって…本当は…俺がまもら、ないと…なのに…もう、この身体では…厳しいっすから…」

    茶柱「いいえ、もう十分転子の為にしてくれてるじゃないですか」

    視界が歪む。いや、さっきと同じ…もうすぐ天海さんもまた…いなくなっちゃうんですか?
    そんなの…張合いが無くなるじゃないですか!!
    言いたい言葉が全部嗚咽に飲まれてしまいます。

    天海「…おれ…茶柱さん…のこと、大事に…思って…たから…守りたかった…す…最後まで…」

    茶柱「そんなのっ、そんなのここで言わないでください!!」

    転子の声は届きません。ですが、それでも言いたかった…。

    天海「どう…か、茶柱さんの…こと…たの…み、ますよ…」

  12. 12 : : 2019/10/15(火) 03:22:33

    にっこり微笑んで…天海さんは、握っていた手の力が段々弱くなるのを感じてました。ですが、転子はそれでも力いっぱい握り返してました。

    天海「…おれ…茶…さんの…え…おが…いちばん…す……。」

    スルッと転子の手から離れた天海さんの手を再度握り返そうとしましたが…何度もすり抜けて力なく地に落ちていきます。

    茶柱「…天海さん?」

    天海「…」

    茶柱「なんで、なんでさっきまで、転子と話していたのに…どうしてっ!!」

    転子の声に反応はしません。みなさんどうして…どうしてこうなってしまったのでしょう…。


    茶柱「もう、いや…っ…」

    …ポチャン…。


    茶柱「…?」

    何かが沈む音にハッと顔を上げます。
    …よくよく音の方向を見ると、天海さんの首近くに何かが光ってます。

    …これは?

    血まみれですが手に取ってみると鍵のようなもので見覚えのあるものでした。

    茶柱「『 玄関の鍵 』…」

    天海さんの最期のヒント…ということでしょうか?それとも…そこまでして転子の事を…

    茶柱「…こんな男死なんかに…こんな思いを抱くだなんて、転子も甘くなりましたね」

    何だか笑えてきちゃいました。男死嫌いな癖に何故か男死ばかりに振り回されてる自分に。

    茶柱「…言われなくてもわかってますよ。本当にあなた方に振り回されっぱなしですね。癪にさわっちゃいますね!」

    もう温もりが抜けようとしている彼の頬を撫でます。こんな事、今回だけですよ!!

    茶柱「…本当にずるいですよ。天海…蘭太郎さんは…」

    そして、ゆっくりと冷たくなっていく頬に――。




    ▼ 【 玄関の鍵 】を入手しました… ▼
    説明:(別館の玄関の鍵です。血塗れになっていますが使えるようです。真宮寺が落としたのか、それとも天海が取ったのか…定かではありませんが、これでほかの校舎へと行く事が出来そうです)



    静かにその場を去り『 玄関 』へと向かいます。…そして懐中電灯で『 玄関 』の扉を照らしながら背後にいるであろう人物へと声を掛けます。

    茶柱「…真宮寺さん。待ち構えていたんですね」

    真宮寺「おや…分かっていたのかい?気配消していたのに…流石としか言えないヨ…茶柱さん」

    転子が振り向けば、恐らく予備の刀を持った真宮寺さんが転子を殺さんとするでしょう。

    茶柱「散々人を殺しておいて楽しいですか?」

    振り向きもせずに問いかけます。

    真宮寺「それはどういう意味で聞いてるのかな…?」

    茶柱「――いえ。深い意味はありませんよ。ただ聞きたかっただけです」

    振り返る。…そこにはやはり転子の思った通りの真宮寺さんの姿があって、目をギラつかせていたんです。

    真宮寺「逃げることはおしまいにしないとネ…そろそろ僕も体力の限界近いからサ」

    茶柱「そうですね。終わりにしましょう」

    転子はゆっくりと息を吸って…構えます。その隙を見てか音もなく真宮寺さんが転子に向かってその刃を向けようと走り出して―――






    question、>>13番さん。

    イベント:茶柱の危機

    (選択肢、どれかお選びください)


    ・右に避ける
    ・左に避ける
    ・避けない

  13. 13 : : 2019/10/15(火) 23:36:54
    希望は右へ進むんだ!!
  14. 14 : : 2019/10/16(水) 20:39:43
    ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙天海ぃぃいい星ぃぃいいいいやぁああああア゙ア゙ア゙ア゙ア゙
  15. 15 : : 2019/10/19(土) 01:08:01

    (選んだ結果だけお知らせします。
    今回は小成功です。成功は成功ですので現段階では失敗ではありません。現段階では、ね…)



    刃先を鋭く睨み、寸で右に避けてかわします。
    勢い余った真宮寺さんの刀は『 玄関 』の扉近くの壁に深く刺さっていました。

    真宮寺「…全く、茶柱さんは往生際が悪い…でもその方が『 姉さん 』のお友達としては合格かもしれないネ」

    茶柱「…っ!」

    避けるタイミングが少し遅かったのでしょう。頬が僅かに避けてしまったようで遅れて痛みが…っ!頬の傷の具合を確かめたいのですがそのような暇はありませんね…。
    けれど、刀が抜けない様子で真宮寺さんは苛立たしくそこから抜こうとしてます。

    …今です!!転子は握りしめた鍵を鍵穴に刺して、一気に回して扉を開け放ちます。

    茶柱「…っく!」

    真宮寺「!!」

    空いた扉の隙間を縫うように身体をくねらせ渡り廊下を全速力で走ります。先程から走っているので息も絶え絶えですが、何とか足が回転してくれてる。このまま距離を離せばっ!

    向こう側の扉に体当たりして強引に本館に入ります…そこで振り返ると驚く真宮寺さんが立ち止まり、転子を睨んでいる姿がありました。そして、後を追いかけようと刀を壁から引き抜いたんです。
    ヤバいっ!に、逃げなきゃ…っ!!

    茶柱「はぁっ!はぁっ…にげっ、なんと、してでも…生き残らなきゃ…っ!」

    転子はそのまま近くの階段から上段へと駆け上がります…この校舎なら隠れる場所も少なからずあるはずです!!

    茶柱「(それに、どなたかと合流出来ればっ!!)」

    祈る思いで転子は走ります…



    ▼【 玄関の鍵 】を使用しました… ▼



  16. 16 : : 2019/10/19(土) 01:08:23

    『 王馬小吉 』side


    どれぐらい経過したんだろうね。
    管乃雪(かんのゆき)に促されて、おでこを合わせたかと思えば夢野ちゃんはそのまま微動だにしなかったんだ。

    その姿をオレたちは見守ることしか出来なくて歯がゆい思いをしていたんだけどさ。
    急に管乃雪が距離を置いたんだ。そして…同時に夢野ちゃんが倒れかけて、近くにいたオレが着てるセーターの裾を握りしめて荒い呼吸を繰り返したんだよ!

    夢野「んぁっ!!…はぁ、ヒューッ…ヒュー…っ!!!」

    王馬「ゆ、夢野ちゃん!?」

    百田「おい夢野っ!」

    夢野「…いやっ、やめてくれっっ!!」

    オレたちの声は届かない。頭を激しく横に振って、その場にへなへなと座り込む。何が起きたんだよっ。何をしたんだよ!
    元気で妙に肝が座った彼女がここまでになるなんんて余程何かをしたんだとは思うけどさ。

    あまりにも夢野ちゃんの取り乱し方がおかしく、思わず握りしめた手を袖から離して対面にしゃがんでから背中をさする。さすっていると分かったんだけどかなり震えてる。
    …本当に何があったんだよ。


    百田「おい、テメー。夢野に何をしやがったんだよ!!」

    百田ちゃんの怒号が雷と共に落ちる。管乃雪は黙ったまま俯いているけど視線は夢野ちゃんに向かっていた。

    雪「…」

    百田「おい、なにかい――」

    夢野「…はぁっ、…もも、た…。雪は悪く、ないのじゃ…願ったのは…ウチじゃっ…こうな、る…ことは予測で、きんかったが…」

    王馬「…夢野ちゃん?」

    代わりにと答えたのは…やや落ちついたけどまだ荒い呼吸をしている夢野ちゃんだった。
    オレの胸に両手を当ててゆっくりと顔を上げる。

    そんなダイターンなことしちゃってさぁ相当オレのことが好きなんだね!夢野ちゃん!たはーオレを選んじゃうなんてなかなかピュアな性格してんじゃん?

    夢野「…王馬…なにかよからぬ…事考えておろう…?」

    王馬「え?何も考えてないけど、ただアジの開き食べたくなったな〜程度だよ?」

    なんて小声で聞かれたらすっとんきょんな声で返すしかないじゃんかー!…いたっ、そこ抓らないでよ!地味に痛いよ。

    …っと本題ね。

    百田「夢野、おお無事だったんだな!どっか痛んだりしねーか?
    ってかよ、雪は悪くないだと?そんなん夢野を見れば悪いことされたんじゃねーかよ!
    やっぱりコイツを1発殴らねーと気がすまねぇが…」

    はぁ、全く血気お盛んだこと。…幽霊に殴るなんて行為通じるとは微塵も思えないけど、好きにやらせた方が吉、かな。

    夢野「…雪は悪くないのじゃ…」

    雪「…いまのが、あのときの…出来事です…」

    夢野ちゃんの声に被さるように管乃雪の言葉が落ちる。『 あのときの出来事 』?何を夢野ちゃんは見たんだよ――と視線を向けると夢野ちゃんは頷いてやや青白い顔をしたまま答えた。

    夢野「コヤツらを殺めた…犯人…が分かったのじゃ…。んあー…この『 文化人形 』の声じゃ届かぬのも当たり前…」

    王馬「当たり前?」

    こくり、夢野ちゃんは頷いて、

    夢野「犯人は…この『 文化人形 』の持ち主では無い…それは…んぐっ」

    一呼吸。

    夢野「――もう1人の…4人目の…そうじゃ…ここまでの情報で名前が判明しておる…」

    夢野「『 篠崎サチコ 』…赤いワンピースの女子じゃ…」


  17. 17 : : 2019/10/19(土) 01:08:43

    王馬・百田「「…は?」」

    間が開く。何故夢野ちゃんがそれを知り得たのか、その答えは真実と捉えちゃっていいのか。疑問が一挙に押し寄せるがそれを夢野ちゃんが首を振って答える。

    夢野「見てきた…んぁ違う。体験してきたのじゃ…追体験、とやらになるかの。管乃雪…雪が殺されていく様を…ウチは雪を通じて…見てきたのじゃ」

    は?それじゃあ…夢野ちゃんは臨死体験でもしたということかよ。胡散臭すぎ。でも夢野ちゃんが言うなら、それに管乃雪が俯き頷くだけに留まるって事はそうなんだろう。

    王馬「冗談抜きで事実として捉えるよ。
    ――嘘じゃないよね?」

    夢野「うむ。…そうじゃ。雪と同じ様にウチは…アヤツに片目をっく…」

    頷く夢野ちゃんは右目を抑える。右目は確かに管乃雪が失った片目と同じだ。

    百田「信じるぜ。…だがよ、『 文化人形 』の持ち主、ヨシカズって奴が主犯なんじゃねーのか?…4人目ってのはよ、確か…管乃雪達と同世代じゃねーか。ソイツに犯行が可能なのか?」

    百田ちゃんの疑問も最もだ。小学生が同い年並びにしたの学年の子を殺すなんて行為易々とできる訳が…ないよね。

    夢野「…ヨシカズは協力者じゃ。…雪が殺されていく様を部屋の隅で震えみておった…し、百田の疑問もそうじゃな、何度も何度も断ち切り鋏を使い執拗に刺して…時間をかけて殺しておったから…」

    寝耳に水過ぎるよね。正気の沙汰じゃない。
    だけど…ありえない事じゃないよね。超高校級の才能を持つ暗殺者のハルマキちゃんだって、小学生の頃から暗殺行為をしていたとか情報が来ていた気がするし。

    百田「な、なんだよそれ…そんなん体験してきたのかよ…っ」

    百田の問に頷く。…「大丈夫じゃ」とつぶやく唇は震えていたけど。

    夢野「そのようなことされたなら、誰とて半狂乱になるのは当たり前じゃ…辛かったであろう…雪よ…」

    雪「…それでも…わたしたちのしたことは…ゆるされないものです…」

    僅かに反応し、申し訳なさそうにオレたちを見る視線は控えめだ。


    百田「だったらよ!それが事実なんだろ?オレらができる事っーのはよ…」

    夢野「伝えねば…このことをっ、最原たちに…」

    夢野ちゃんの目に力が宿る。肩の肩を掴みながら立ち上がり、雪の前に立つ。

    雪「…」

    夢野「…雪よ。お願いをしても良いか?」

  18. 18 : : 2019/10/19(土) 01:09:20

    夢野ちゃんの言いたいこと、それは明白だった。

    夢野「…最原たちが危ないのじゃ。このことを知らせねばならぬし――そして解決せねば、皆が脱出する事が出来ぬのじゃろ?」

    ならば、と呼吸を置く。

    夢野「もう一度、ウチを…連れて行ってくれぬか?…『 天神小学校 』へと」

    雪「…」

    夢野「お主らも今度こそ成仏させるのじゃ。だからっ!!」

    今までに見たことの無い夢野ちゃんの叫びに近い言葉。普段ふにゃふにゃしているイメージとはかけ離れていて…驚くぐらいにね。

    管乃雪は夢野ちゃんの言葉に目を丸くする。が、少しの間を置いて…今度はオレらを見た。まるでオレたちにも言い聞かせるように淡々と…答えたんだ。

    雪「…あまり…おすすめ…できません…」

    雪「…あなた達や…ほかの人達の働きかけ…で、今…あの空間は…大きくみだれ…始めているんです。
    今度もどったら…もし理性が残っていたとしても…わたしの力では、もう…あなた達を…この場所に、連れ戻すことは…出来ないと思います」

    管乃雪の言いたいことは…恐らくは、3人だけでも逃がせられたのだからこれ以上は関わるな、と言いたいんだろうね。

    王馬「…それは本当?」

    雪「…はい…」

    管乃雪の言う通りに今この場所から逃げる事も可能、って事だ。
    『 天神小学校 』に戻らないならば…帰れば日常が送れるって事。


    夢野「それでも!…ウチは助けたいのじゃ…もう誰も失いたくないし…それにっ、ウチが助かって他の皆と会えなくなるのは――1番嫌じゃ!」

    百田「そうだ!オレだって気持ちは同じだ。オレだけ助かるだなんて――嫌だしな!」

    …2人かかってやる気になってやんの。
    …ふう。ここまで来たら…どうするかな…。

    王馬「(体育会系のノリに近いものを感じるけどさ…)」

    百田「…王馬テメーまさか…」


    あーはいはい、言えばいいんでしょ??

    分かったってばっ!!


    王馬「オレはね―――」





    question、>>19番さん。

    イベント:王馬の本音

    (選択肢、どちらかお選び下さい)


    ・そんなん面倒臭いし行くわけないじゃん!

    ・しょうがないからついって行ってあげるよ


  19. 19 : : 2019/10/20(日) 06:44:34
    しょうがないからついって行ってあげるよ
  20. 20 : : 2019/10/21(月) 01:50:12

    聞かれちゃったから一呼吸置いて答える。

    王馬「軟弱な百田ちゃんや妙に肝が座ってる夢野ちゃんの事はさておき、中途半端で物事ほっぽり投げるの嫌いなんだよねー…だからさ」

    王馬「しょうがないからついって行ってあげるよ」

    やれやれ。この2人だけに任せっきりなのも癪に障るしね。立ち上がって頭の後ろで腕を組む。

    百田「おう、お前が素直に言うと気味悪ぃな…」

    夢野「確かにそうじゃのう…」

    2人にそう言われるとなんだか無性に腹が立つ。オレをなんだと思ってんの?
    嘘付かないこんなピュアっピュアなつぶらな瞳してんのにどうして疑い深くなっちゃってんのさー!…怒るよ?

    王馬「疑ってるなら行かないよ。
    オレ1人だけらくしちゃうよーそれでと良いの?居ないといないで寂しいと思うけど…?」

    夢野「あーもー、そのような顔せんでいいわ!」

    王馬「…じゃあ決まりだね!
    …でどうするのさ?」

    視線を真っ直ぐ管乃雪に向ける。彼女は困ったようにそれでいて胸元で指を組み答えたんだよ。

    雪「…本当に、いいんですね?」

    即頷く夢野ちゃんの肩を小突く。

    王馬「…本当に夢野ちゃんは大丈夫なの…?」

    夢野「…何あったらお主が助けてくれるのじゃろ?」

    …なんて不敵な笑みで言われるとなんだか無性にイラつく。甘えんなよ!と言いたいけどきっと夢野ちゃんなりのジョークだろう。
    そう信じておくよ。

    雪「では…ついてきてください。いいですね…」

    そこで管乃雪はオレたちから初めて背を向けた。
    一歩一歩と黒く爛れた腕のある方へと踵を返していく。やっぱりそうなるのか…と思う反面、気を失うことはないという事実に安堵する。
    流石に何度も何度も衝撃で気を失うだなんて嫌だしね。

    百田「マジかよ…」

    隣でビビり始めた百田ちゃんの悲鳴に近い声がした。確かに言いたくなるかも…と思いながらも、準備してから言えばよかったとちょっとだけ後悔した。

    ――そして

    夢野「…い、いくぞ…」

    生唾を飲み込んだ夢野ちゃんを先頭にしてオレたちは管乃雪の後を追いかけたのさ…

  21. 21 : : 2019/10/21(月) 01:50:31

    ぱちくり。
    結構歩いたと思ったら段々黒い視界が開けてきた。…そして開けた先は勿論『 天神小学校 』の教室だ。

    夢野「…っ!!」

    王馬「ありゃー懐かしいようなそうじゃないような」

    百田「…つ、着いたのか?!」

    戸惑いつつも背後を見る。そこは…雷鳴と豪雨でカタカタと震えてる窓しか無かった。完全に帰路は絶たれたワケだね。今までどこを歩いて来たのはかはサッパリだけどね。

    夢野「先程とは空間の作りが変わっておるな」

    周囲を見回した夢野ちゃんの言葉に頷く。
    確かにここは『 天神小学校 』だろう。
    だけど廊下に向かうべく扉はひとつしかないし何より教卓に書いたメッセージが全てなかったかのように消えていたんだ。

    百田「…どういう事だ?」

    キョロキョロと見回す。いつの間にか管乃雪の姿もない。どこに消えたんだと思っていると黒板に何かが張り付いていた…ん。なんだこれ?

    王馬「…メモ?かな…あ、百田ちゃんアレ取ってよ」

    百田「お、おう?わかった…」

    俺の身長でギリ届かないから仕方なく百田ちゃんに頼んで取ってもらう。…と百田ちゃんがそれを握ったまま固まった。なんだよ、変なもんでも書いてあったのかよ?

    王馬「あー百田ちゃんいかがわしいものだからオレに見せないのかなーみせろよー」

    ぴょんぴょんして百田ちゃんにウザったくアピールすると夢野ちゃんもノコノコやってきた。

    夢野「なにか見つけたのか…?」

    首を傾げるオレと夢野ちゃんに対して、百田ちゃんが答えた。

    百田「コレ…真宮寺の…文字だよな…」

    言われるがままに差し出されたそれは…確かに真宮寺ちゃんの文字だ。でもなんでこれがココに?

    王馬「…しかも【 冴之木七星 】とかの単語出てるしね…詳しく読んでみる?」

    夢野「そうじゃな…その方がよかろう。真宮寺は恐らく何かをしっていたやもしれぬ…アンジーも話しておったのじゃろう?」

    夢野ちゃんの言葉に頷く。確かにアンジーちゃんは『 原因は自分だ 』とは言っていたし何より『 相談したのは真宮寺ちゃん 』だとも言っていた。おまじないを事前に知らずに行うような輩じゃない…なら、恐らく真宮寺ちゃんはこうなることを知っていた可能性が高い。

    ――ってか絶対知っててやっていたんじゃないかな。

    百田「…これの続きかもしれねーしな」

    傍らから出したのはミリタリー柄の手帳。

    百田「王馬、言わなくて悪かったな。書いてある事嘘だと信じたかったんだがよ…」

    王馬「なるほどね。その続きなら…もしかすると『 本当の方法 』がそこに書かれてた可能性があるんだね」

    夢野「よいか…読むぞ…」

    いつの間にかメモは夢野ちゃんの手に渡っていたらしく、夢野ちゃんが小さな口を開けて読み始めた。

  22. 22 : : 2019/10/21(月) 01:50:50

    夢野「『 【 サチコさんのおまじない 】を記したサイトの主である【 冴之木七星 】との接触に失敗した。彼女はどうやら先日から行方不明との事。普段から馴染みにしていたというクラスメイトの同業者が話してくれた。と、同時に【 冴之木七星 】に【 サチコさんのおまじない 】大元である【 しあわせのサチコさん 】の情報を与えたのは自分だという。

    つまりは正確な【 しあわせのサチコさん 】のおまじない方法が知れるという事だ。
    しかし正しくない方法でおまじない行うと…【 天神小学校 】という【 異界 】とも言える場所に巻き込まれるらしい。

    その他の話も聞けたのだが、やはり【 しあわせのサチコさん 】関連の話が大変興味深いので、後日アポイントを取って聞くことにした。

    これで、上手く行けば【 夜長さんの願い 】も遠からずそして【 姉さん 】の願いも叶えられるだろう 』
    …とここまでのようじゃのう。」

    と差し出したメモを百田ちゃんに渡す。百田ちゃんはそれを閉まっておくかとノートに挟んだ。



    ▼ 【 真宮寺のメモ① 】を入手しました… ▼

    説明:(百田が持っていた手帳の続きです。しかし元々挟まっていたページの続きと言うよりかはその前の話のメモのようです)



    王馬「…うーん。大した情報ではなさそうだね」

    核心部分が全く見えないね。ってかこの時点で判明したらそれはそれでつまらないけど。

    百田「だよな。肝心な所のページが抜けちまってんだからよ。ただ、『 アンジーの願い 』ってなんだ?」

    …ん?何か違和感がある。
    夢野ちゃんの格好だ。何かが物足りない…アレなんだろ?

    夢野「んあー分からぬ。ウチから見ればアンジーが悩んでいる様子は無かったからの…王馬の言う通りアンジーが原因の一旦を担っておると言っていたならばその事情も後ほどかかれておるやも――と王馬聞いておるのか?」

    王馬「あのさ…夢野ちゃん。髪留め無いけど…どうかしたの?」

    無意識に口に出してハッとなった。そうだ!
    さっきから何かが足りないと思っていたんだ。それは、髪留めが無くなってる事だ。

    夢野「んあ!?そのようなことは無いはずしゃ…さっき『 保健室 』まではあった…ぞ…っ!確か脱いで身体を拭いた時に外し付けたはずじゃ…んあ、ない!ない!ど、どど、どうしよっ!?」

    百田「ゆ、夢野どうしたんだよ!?」

    急に慌てふためく夢野ちゃんに、オロオロする百田ちゃん。なんだよ2人してそんなにオロオロしたいならオレもするけ、

    夢野「大事な『 髪留め 』の中に挟んでおったのじゃ!な、無くしてはならぬとアンジーが話しておったじゃろう?だから…『 髪留め 』の中の仕掛けに仕舞っておったのじゃ!
    う、ウチの『 おまじないの切れ端 』!!そ、そ、それがないなんて…っ」

    今までの肝の座りようが嘘のみたく泣き出しそうに歪む表情。それを慰めようにも難しい。
    ぽんとなにか思いついたのか百田ちゃんが明るい声で夢野ちゃんに話し掛けた。

    百田「『 保健室 』まであったんだろ?それなら『 保健室 』に行けば問題な」

    ??「それは、むずかしいと思います」

    王馬・夢野・百田「「「!!!」」」

  23. 23 : : 2019/10/21(月) 01:51:08

    百田ちゃんの言葉に被さるように聞こえたのは…管乃雪の声だった。彼女の腕には像のようなものが大事そうに抱かれていたんだよね。

    王馬「難しいって?」

    雪「ごぞんじ…だとおもいますが…皆さんの協力があって、空間がひとつになっているんです…だから…いままでいたあの空間で…無くしたものは…見つからないかも…しれません」

    夢野「そ、そんなぁ…」

    グスリと鼻を啜る夢野ちゃんに管乃雪は申し訳なさそうに続ける。

    雪「もしかしたら…あなたたちの…お友だちが…持っているかもしれませんが…分かりません…今のわたしは…お友たちの…方の近くには…いけないんです…あの子が、つきまとっているから」

    百田「だとよ、夢野まだ希望は捨てんな。きっと終一達がもってるはずだ、アイツなら何でも見つけられっからよ」

    夢野「そう、じゃな…きっとどこかにあるはずじゃ…な」

    泣き出しそうな夢野ちゃんを慰める百田ちゃんの傍らで気になる単語を拾い上げる。

    王馬「あの子って…『 篠崎サチコ 』であってる?」

    こくりと頷く。名前も口にしたくないらしい。ならそこから先、追求しなくてもいいでしょ。

    雪「…その…これ…しゅういちさん…たちが…必要に…なると思います…もし、出会えたら…渡してください」

    王馬「そういう事情なら仕方ないから受け取っておくね…『 コレ 』ってなに?」

    腕に抱かれているものを受け取る。…ずっしりとした重みがあって落としたらバラバラになりそうだね。そこら辺のバカみたく落とさないけどさ。

    雪「…『 大理石の彫像 』です…もうひとつ…『 赤子の石像 』も見つけたなら…渡してあげてください…」

    百田「お、おう…なんだか物騒な名前してっけど本当に必要になるのか?」

    雪「…はい…だから…!」

    管乃雪が身体を震わせた。そして早々に言葉を続ける。

    雪「わたしたち…3人は…準備出来てます…そしてその影響で…空間が歪んでいます…気をつけてください…
    あと…『 犯人の懺悔 』が必要です…それを引き出すには…あの子の浄化が必要になります…」

    雪「だけど…心が侵され始めてます…つぎ会ったときは…あなたがたの味方が…できません…だからっ…逃げっ」

    王馬「――!」

    百田「きえ、た…だと」

    夢野「…雪よ…」

    管乃雪は消え、オレたちだけが取り残される。
    手元には『 大理石の彫像 』が残る形になったんだ。



    ▼ 【 大理石の彫像 】を入手しました… ▼

    説明:(管乃雪から貰った悪魔のような形状をした彫像です。最原たちが必要としているらしいのですが…どういう事なのでしょうか?)



    情報:(【 夢野の髪留め 】が無くなりました…)



  24. 24 : : 2019/10/21(月) 01:51:46

    王馬「管乃雪ちゃん?の話だと…『 空間がひとつになっている 』だっけ」

    百田「そうだな…って事はよ、終一と会えるかもしれねーって事だよな!!」

    王馬「そうなるね。みんな元気だといいけど…音沙汰無い人も居るからさ…って夢野ちゃん聞いてる?」

    さっきから俯いただけの夢野ちゃんの顔色を伺う。オレとしてはかなーり甘ちゃんな対応してるんだけどね。

    夢野「んあっ!?だ、だ、大丈夫じゃぞ!?ウチは『 髪留め 』が無いぐらいでヘコんだりせんぞ??」

    …いや、その姿かなり凹んでるでしょ?
    無理やり元気を出してるけどさ…

    王馬「無理ばっかしてると空間に飲まれるんじゃないの?…オレと最初に行動してる時みたいにさ。
    まあ、仕方ないから『 髪留め 』探しながら行動すればいいでしょ?」

    百田「そうだな!夢野気落ちすんじゃねーぞ?見つかるまで探してやっからよ」

    夢野「うぐっ…そのようなこと…言われると…涙がでるわっ!」

    ちょびっと顔を赤くした夢野ちゃんは普段通りで安心したかもね。

    王馬「先ずは最原ちゃん達と会わないとね。向こうがどのぐらいの人連れてんのかわかんないし、『 大理石の彫像 』とやらを渡さないと行けないんだよね。その時にでも聞けばいいんじゃない?『 髪留め 』の事もさ」

    百田「だな」

    夢野「うむ、そうじゃな…ならばいくぞ」

    オレたちはこうして廊下へと歩み始めたんだよ。









    question、>>25番さん~>>29番さんまで

    イベント:視点安価


    王馬、百田、夢野 の内1名お選びください


  25. 25 : : 2019/10/21(月) 07:19:22
    百田君で…!
  26. 26 : : 2019/10/22(火) 20:26:33
    百田!
  27. 27 : : 2019/10/22(火) 20:28:09
    前の選択肢、上のやつだったら絶対BADだったよね・・・
  28. 28 : : 2019/10/24(木) 01:20:33
    百田
  29. 29 : : 2019/10/30(水) 23:39:06
    百田くんで!
  30. 30 : : 2019/11/06(水) 18:16:51

    (圧倒的百田氏…っがんばります。前回の安価はどちらを選んでも進行はします。
    …進行『は』します)


    『 百田解斗 』side


    廊下に出たのは良いが…ん?なんだこりゃ。
    オレたちがさっきまでいた『 次元 』とは違った雰囲気がしてんだ。――してんだじゃねぇな。かなり違う。
    空気もどこか重い気がするが…これは流石に気のせいじゃねーだろうよ。

    王馬「たはー。だいぶ変わっちゃってんじゃないのコレ」

    オレよりも一足先に廊下に踏み出した王馬が振り返る。夢野もオレの後ろからひょっこリ顔出した。

    夢野「んあ。雪が話しておったからの…『 空間がひとつになっている 』とな」

    「その影響が色濃く出ておるのだろうな」と眉間にしわ寄せた夢野は一段と表情を暗くする――『 髪留め 』の事だろうな。こんな様じゃ…見つけるのは難しいかもしれねーが…

    百田「大丈夫だ。きっと終一たちと合流してからゆっくり探せば問題ねーだろよ」

    夢野「…百田…すまぬな」

    しょぼくれた頭をぽんぽんと軽く撫でる。
    ぜってー見つけてやるからな。

    王馬「ゆっくりとは行かないと思うけどねー」

    百田「っ!王馬テメー!」

    ったく、『 天神小学校 』に来てから何やかんやと協力的になってるとか思ってたが…王馬はどこいっても王馬だった。

    夢野「…王馬の言う通りじゃ。
    それに時間はある様でないのは事実。『 融合したて 』のこの空間はいつ崩れてもおかしくないのじゃぞ」

    王馬「ま、『 なんとかなる前に 』見つかれば問題ないでしょ?
    とりあえず、1階から見てまわる?それともこの階から調べるの?」

    「話してても埒がないしね」と続けた王馬の意見もごもっととだ。左右を見回して唸る。
    そうだな…

    百田「下にいってみっか。行き違いになっちまったら…そん時はそん時だかよ」

    夢野「ならば急ぎつつ行くかの」

    怪我してんのに何故かケロッとした王馬を筆頭に階段を下りる。…所々床が抜けて居るが、抜けてない箇所は頑丈だな。ギシギシという音もしねー。ああ、そこだけは安心するってかよ…

    王馬「…これも管乃雪達の力なのかな。電気が点いてる」

    廊下は普通の学校よろしく蛍光灯がチカチカと付いていたんだ。…どこから電気引いてんだ…と考えるとゾッとすっが、気にしないでおかねーとな。…電気のお陰でだいぶ歩きやすくなってるしよ。

    夢野「…んあ、この階も明るいのじゃ…」

    1階も同様で、蛍光灯の独特な音が響いていた。
    キョロキョロと辺りを見回す…とすぐ側にあったハズの『 水練場 』への扉がねぇ。

    王馬「『 プールサイド 』に行けなくなってるね…ま、あったとしても行く事も無いんじゃん?」

    ヤレヤレといった面で答える。…何も無ければいいんだがよ。もし、行くことになっちまったら…いや、考えるのはヤメだ。頭を振って進むぞと声を掛け、その場から離れた。

  31. 31 : : 2019/11/06(水) 18:17:14

    『 最原終一 』side


    ??「…君。聞いているの?」

    最原「ぅうあああっ!?あ、えっと…ゴメン…」

    唐突に呼ばれて顔を上げる。
    上げた先には仏頂面の同じ才能をもつ『 霧切響子 』さんがいる。

    どうやら話の最中に寝てしまったらしい。
    昨日の「 ゲレゲレと呼ばれた猫探し 」の疲れがまだ残っていたみたいだ。軽く身体を伸ばし、霧切さんの言葉を待ってみる。

    霧切「はぁ…いいわ。話の続きをしましょう。
    あなたの情報が頼りな部分があるの。だからこうして話を聞いているのだけど」

    ああ、思い出した。「 ゲレゲレ 」の飼い主の従姉妹が今朝惨殺されたとかで霧切さんが調べているんだったな。警察もお手上げだとかで霧切家に依頼が来たとかだったと思う。
    同じ才能を持っている僕に手のひらを淡々と明かす彼女に少々警戒しつつも答える。

    最原「そうだったね…昨日の話からすればいいんだっけ?」

    「そうよ」とだけ答えた彼女がこちらを再度見る。…もしかして僕を疑ってるのか?とか思いながらも瞳を閉じ、昨日の事を思い出していく…

    最原「えっと、昨日は確か――」



    *****



    最原「(…うっ…)」

    身体が酷く重いな。
    さっきのは…夢、か?…確か『 おまじない 』をする数日前の話だった気がするが…どうして今、それを見たのだろうか?

    最原「(…現実逃避…とかかな…)」

    と結論付けた所で意識がはっきりして状態を起こす…と先程より明るい、眩しい。どうやら、電気が付いたのだろう。顔を顰めつつ周囲の状態を見る。

    最原「(…東条さんと…赤松さん)」

    2人は畳に伏せていた。どちらも意識はまだ戻ってないらしく、ピクリとも動かない。
    とりあえず2人を…起こさないとだな。2人の近くに行く為に、立ち上がろうとして手首をつく…と痛みが走った。

    最原「――っ?!」

    身に覚えのない痛み。どこから引き起こされたのかと記憶を辿る…

    最原「(確か鬼碑忌さんのルポを読んで…すぐに地震が起きたんだったな。
    その最中、怪我をしたのかもしれない…転倒した時に打ちどころが悪かったんだろう。利き手じゃないから大事には至らないだろうけど)」

    軽くほかの箇所も確認する、左手首以外は何事も無さそうだ。左手を使わなければ問題は無い。

    それよりもだ。今は2人を起こすのが先だろう。

    最原「赤松さんっ!…東条さん!」

    赤松「…うっ、ん…」

    東条「…うっ…」

    暫く2人を揺すって起こす。さほど時はかからず2人は目を覚ました。

    赤松「…明るい、ね…、何が起きたんだろう…」

    顔を顰めながら呟く。僕もさっぱりだ。横に頭を振っていると傍らにいた東条さんが呟いた。

    東条「いい方向に変わっている事を祈るしかないわね…」

    赤松「そう、だね」

    受け身に近い僕らは頷くことしか出来ずにいた…その時。

    僕の背後にある…ブラウン管のテレビがチカチカと点滅した。

  32. 32 : : 2019/11/06(水) 18:17:34

    最原・赤松・東条「「「!!」」」

    点滅したのち、ハッキリとそれは再生された。
    これは?振り返りテレビの方を向いた。

    ??『凄い!凄い!!何なんですかコレ!?』

    ??『落ち着くんだ!…落ち着いてしっかり撮ってくれ』

    長身の男性が映る。着物姿の男性は見た事ある、鬼碑忌コウさんだ。写ってない方がこの画像を撮っているのだろう。足音と共に『 天神小学校 』の校舎が映し出されていた。

    最原「…(コレって…まさか)」

    咄嗟に持ち物を探った。
    …やっぱりだ。DVDが無くなっている。

    恐らく流されている映像は、僕が持っていたDVDのようだ。…だけどどうやってそれがテレビに映っているのかは分からない。傍らに再生機材があるが、その手のことはさっぱりだからな…入間さんならあっという間に解説とかしそうだけど、入間さんは…もう…

    鬼碑忌『此処で目にしたものは、ひとつ残らず記録するんだ』

    ??『はぃ!』

    考えている間にも映像は流されていく。

    鬼碑忌さんはカメラの視界に入らないようにしているのか着物の裾が画面の端でチラついていた。

    鬼碑忌『いいぞ…成功だ。…絶対にこれで獲れる。これで…この映像で!
    世のオカルトジャンルがひっくり返るぞ!
    ――よし、ここで【 猟奇実話ルポ 】第3回目を牡蠣始めよう…肌で体感している生のワードが、今なら書ける!…よし!』

    意気揚々と呟く鬼碑忌さん。…彼はきっと作家としてもうひと咲きしたかったのかもしれない。だからこうして記録を残した。けれど。

    最原「(当の本人は居ない…ってことは…)」

    赤松「ねぇ、コレって…実際にこの人達が来たってことだよね…でも私達会ってはいないよね?…違う『 次元 』にいる可能性があるのかもしれないけど――」

    東条「…とりあえず見てみましょう」

    赤松さんの不安を取り払うように東条さんが落ち着いた声色で諭す…としばらくすると音声とともに、落書きがドアップで出てくる。

    ??『凄い…なんだこりゃ…至る所に落書きがある…彫ったような跡やペンに書きなぐってる…
    ええと…「 死に…たく…な…い 」って!!おおっ。凄い!』

    撮っている人物…恐らくは鬼碑忌さんの助手なのだろう。物好きなのだろうか、いちいち興奮しては映像があちらこちらを映すのだから、画面酔いしそうになる。

    鬼碑忌『気を付けるんだ、この学校については、まぁデータが少ない。あまり触れない方がいい』

    ??『いやいや!
    こんなオイシイ画、取らずにどうするんっすか!!』


    東条「…随分と物好きなのね」

    東条さんが呆れた口調で答えるのは珍しい。
    少し驚いた。

    と場面はコロコロと変わる。…編集でもしているのか?だとすれば長い時間いた事になるぞ?
    …と、カメラの声が不安そうに呟いた。

    ??『でも…あの子…置いてきちゃってよかったんすか?』

    …『 あの子 』?
    誰だろう。いや、大体は想像つく。2人の音声しかいない映像だ。恐らくは…

    ??『七星ちゃんっすよ。きっと怒りますよ?ほら除け者にされたーって』

    鬼碑忌『はっはっ。その時はその時だよ。
    …それに』

    画面に映る鬼碑忌さんの表情が引き締まる。

    鬼碑忌『今回は事情が違う。あの子を危険な目には遭わせられないよ』

  33. 33 : : 2019/11/06(水) 18:18:39

    最原「…危険、か…」

    赤松「どうしたの?最原くん」

    キョトンとした赤松さんがこちらを見る。あ、ええとだな…と話していると、画面の悲鳴に引き戻された。

    ??『っ!!…こ、これ…本物っすか?!』

    鬼碑忌『の、ようだな』


    赤松「きゃっ!!…こ、コレ」

    画面に大きく映るそれは、僕らと同じぐらいの年代の死体だった。少し映ったけどカメラはそこから逸らし青ざめた鬼碑忌さんがいた。

    ??『…これって…まさか、この制服って…取材の時に出た、行方不明のある学校のですよ!!
    じ、実は…行方不明の子達の何人かはこの場所で朽ち果ててるんじゃないですか!?
    な、なんて所に来ちゃったんだよっ!』

    鬼碑忌『そ、そうだな…これ以上は…辞めておかないとダメだな…【 さかうち 】をして帰ろう』

    カメラの声に頷いて彼は袖の中から紙切れ…『 おまじないの切れ端 』と思われるものを取り出す

    ??『は、はやく!やり方を教えてください!』

    慌てふためくカメラの声はそのブレ具合からも推察出来る。

    鬼碑忌『そうだな、やり方を教えてなかったな…やり方はだな――』

    ??『ヒィぃぃぃぃっ!!』

    鬼碑忌『?どうしたんだ、たぐち君?』

    初めてここでカメラを持っている人の名前が分かる。「たぐち」と呼ばれた彼がしゃがんだ拍子にカメラ本体が床に落ちる。黒いズボンが見えるから恐らくその人物がたぐちさんなのだろう。

    たぐち『いや…子供の声が…っく、聴こえるんですっ!!…いやだぁああっ』

    鬼碑忌『私には聞こえない。どんな声なんだ!!男児か女児か?…とにかく落ち着きたま』

    鬼碑忌が落ち着かせようと彼の前に立ち塞がった瞬間、たぐちさんが叫び声を上げて、走る様が見えた。…その姿を唖然として見る鬼碑忌さんの姿が見える。

    鬼碑忌『…ああ!待ってくれ!!たぐち、くん!!1人になってはダメだ!!…っく、行ってしまったか…』

    しばらくして、カメラを拾い鬼碑忌さんが呟く。

    鬼碑忌『残量も少ないな…とりあえず、ここまでにして彼を…たぐち君と合流しないと…いけないな』

    と。そこで映像は切れてしまった。


    …あとは真っ暗な画面が続いている…という事はこの映像はここまでなのだろう。
    なんとか電源を切り、呟く。

    最原「…終わりか」

    赤松「その、なんだろうね…『 さかうち 』って」

    東条「…そうね…。恐らくは『 脱出方法 』のことでしょうけど…このような終わり方をしているし、途中で途切れていた事を考えれば続きあるかもしれないわね」

    東条さんの言う通りかもしれない。途中で話題に上がった『 さかうち 』というワード。それを知りえれば僕らは『 脱出 』出来るのかもしれない。ただ…。

    最原「…みんなと会うのが先になるね」

    赤松「そうだね!!…きっと王馬くん達や百田くん、茶柱さん達に会わなきゃだよ」

    最原「そうだね。とにかくこの続きとみんなと合流しよう」

    機材を持っていけば…見つかったその場で見ることが出来るのだけど、…コンセントがすごい量だ。持つだけで両手が塞がりそうだ。

    東条「…再生する時少し面倒だけどここに戻った方がいいかもしれないわね」

    赤松「流石に私も持てないから…そうだね」

    2人が苦笑いしてブラウン管を見る。若しかすると近場にあったりして…と僅かな希望を抱きつつ、そしてみんな無事でいて欲しい。そう願いつつ僕らは『 用務員室 』から出た時だった。


    ??「!!お、シューイチじゃねーか!!」






    question、>>34番さん~>>38番さんまで

    イベント:視点安価


    最原、東条、赤松 の内1名お選びください
  34. 34 : : 2019/11/06(水) 20:31:11
    東条さん
  35. 35 : : 2019/11/10(日) 13:51:28
    東条
  36. 36 : : 2019/11/10(日) 22:28:28
    東条
  37. 37 : : 2019/11/13(水) 02:35:34
    東条ちゃん!
  38. 38 : : 2019/11/17(日) 20:33:09
    東条

  39. 39 : : 2019/11/18(月) 18:40:41
    サンズ
  40. 40 : : 2020/02/03(月) 21:57:26

    (お久しぶりです。遅れました事、この場でお詫び致します)


    『 百田解斗 』side


    百田「…にしても行ける所が更に狭まったような印象を受けるんだがよ」

    夢野「そうじゃな…こちら側では『保健室』側には行けそうにない。結果的にこの道を通るしか選択肢はなかったからのぅ」

    『 玄関 』辺りで『 保健室 』や『 トイレ 』に繋がる廊下は分断されてたんだぜ。
    仕方なく、管乃雪たちに『 遺体の一部 』を渡した廊下を道なりに進んでんだが…明るいからか、今までの不気味さはねーが…違う恐怖感がピリピリと鳥肌立つハメになっちまったな。

    王馬「まーこの先になんにも無かったら無駄足になるけどねー!」

    夢野「そ、そんなこと言うでないぞ!王馬っ!」

    確かに王馬の言う通りだ。この先に進めねぇ…となるとオレらじゃどうにも出来ねぇってことになる。と、なると終一たちが頼りにならざるえねーってかよ。

    百田「(終一たちの方もどん詰まってたら…あまり喜べねぇのが本音だな)」

    夢野がずんずんと進み、『 用務員室 』の方へと進む…とその足がピタリと止まったんだ。
    お?どうした?と王馬と視線を合わせ夢野を追いかけっと―――

    『 用務員室 』から、ゾロゾロと出てきた終一たちだった。
    まだオレらには気ぃ付いてねーが、2人と顔を見合わせ大きくその場で手を振りながら大声をあげる。

    百田「!!お、シューイチじゃねーか!!」


    最原「へぇっ?!――その声って…っ!も、百田くん!?」

    王馬「東条ちゃん、赤松ちゃんもおひさー」

    声に反応した終一がやっとオレたちの方を捉えた。終一の近くには東条と赤松もいてオレたちは『 用務員室 』まで急いで向かったが――直接合流とは行かず、あと少しってことで廊下が朽ちて分断されてやがった。クソっ!
    分断されている場所近くまで行ってハイタッチとか出来ねーが各々再会を喜び合った。

    夢野「おお、お主ら…っ!」

    東条「夢野さん、王馬君無事だったのね。あれからだいぶ経過したから心配していたのよ…。
    百田君も会えてよかったわ」

    赤松「よかった…っ!!
    みんな…元気そうだねっ…とは言えなさそうだけど、さっ」

    赤松の言う通り、心身諸共大丈夫とは言い難てーよな。
    オレらは王馬の頭部の包帯に夢野の血の気のない顔だしよ。よくよく見ると赤松はブレザー羽織って見ずれーが片腕が血で染っているし、東条も腹部が赤黒い。

    きっと終一たちも色々あったんだろうなと思ってっと地響きがして足元がふらつく。
    それは些細な揺れだったが、収まったところで王馬が口を開いた。

    百田「…っ!!チィ…こんな時に水を差すってのかよ。
    終一、実は言うとな感動の再会に浸る時間はねーんだ」

    最原「あ、うん、そうだね…確かに。
    とりあえず情報の共有は軽くでもしておいた方がいいだろうな」

    終一の提案に頷く。それに王馬が続く。

    王馬「最原ちゃん達の事だから…大体の情報は得ていると思うし手短に言うけど、ここに居る人間以外はほぼ全滅って考えていいかもね」

    赤松「――っ!そ、そんなっ…それはっ」

    突きつけた王馬の言葉に王馬以外が息を飲んじまう。…なんだってそんな事を先にいいやがんだよ!んな馬鹿な事があってたまるかよ!!――それが事実だったら…っクソっ。

    百田「お、おいっ!王馬テメーっ」

    夢野「…いや、厳密には違うぞ」

    王馬の言葉に反論せずただ俯いた夢野が呟く。それに東条も頷いた。

    東条「夢野さんの言う通りよ。その考えは早計だと思うわ。
    私達が遭遇出来てない天海君、それに別れてから所在が不明な星君と茶柱さんが居るもの」

    最原「そうだよ。僕たちは真宮寺くんやゴン太くんだって会ったんだ…会った後、どうなったか分からないけど…死体を見た訳じゃない。
    だからこそ王馬くんの発言はあまり真実味がないと思う」

    そこに頷く終一たちの様子に安心した王馬が頭の後ろに手を組んで答えた。

    王馬「…ふうん。成程ね。
    オレ達と再会したことで最原ちゃん達は『 誰が死んだのか 』を大体理解したってことだね。
    なら話は早い――じゃあ『 誰が死んだのか 』と『 互いの状態 』をすっ飛ばして話続けよっか!」

  41. 41 : : 2020/02/03(月) 21:57:44

    百田「王馬っ!!」

    あまりにもハッキリとした物言いに睨んじまうが、その視線さえ全く気にしねぇまま溜息だけ返されちまった。

    王馬「最初に、オレ達と最原ちゃん達がこうして再会出来た理由ね。結論から先に言うと『 ここを取り巻く元凶をある程度解消させたから 』なんだよねー。
    まあ、ある程度ってワケだから『 天神小学校 』に閉じ込められちゃってるんだけどさ!
    …あ、これは嘘じゃないから、ここの2人に問い詰めても意味ないよ」

    僅かに終一の目が鋭く光る。…王馬の言葉に何か考えを巡らせてんのか?すっかり王馬の独壇場になりつつあるこの場に手を挙げて質問するのは東条だ。

    東条「ひとついいかしら?」

    王馬「いいよー!だけどオレ喋りすぎてゴン太にやられた頭の傷が痛むから続きは百田ちゃんか夢野ちゃんが答えてよー」

    赤松「え…?王馬くんのそ、その頭の包帯の原因って――ゴン太くんなの?」

    うわ、ここで話をわざと広げやがったな王馬のヤロー…なんでまともに話さねーんだ。呆れるオレと夢野を無視して壁際にもたれかかってやがる。
    「わかる範囲でオレが答えっか?」と夢野に問いかけたら首を横に振って「いやウチが1番理解しておるから答えるのはうちの仕事じゃ」と1歩前に出た。

    夢野「王馬の言う通り今は個々の状態を説明はせぬぞ。じゃから怪我の事については一旦置いてよいか?…実は言うとな、事情を話す手間が少し惜しいのじゃ。
    ――それで良いならウチが答えようぞ」

    その言い方に向こうハッとした3人は頷き、東条が先程の問いかけの先を紡いだんだ。

    東条「夢野さん達が『 ここを取り巻く原因をある程度解消した 』というのは事実なのね。
    だったらそれはどうやって行ったのかしら?」

    終一も聞きたがっていたのか、じっと答えを待ってるかに見えた。
    問われた夢野はうむと一呼吸置いてから一気に答えた。

    夢野「『 取り巻く原因を解消 』うんぬんはそのままの意味じゃぞ。発言者が王馬だとしても嘘偽りもないから心配するでない。
    『 天神小学校 』を形成してると言って過言じゃない『 ある事件の被害者の霊 』を成仏寸前までにウチらは手を尽くしたのでな。しかし成仏出来んかった…それはの『 大元の原因 』が解消されぬからという訳でそれを解消するには…えぇーとどう答えたら最原達がすんなりとわかるかのー…?」

    王馬「はぁー。相変わらず答え方が下手過ぎでびっくりしちゃうよ!
    …つまりね、夢野ちゃんのまわりくどい説明を端折るとオレたちは『 大元の原因 』を解消してからじゃないと脱出は出来ないってこと。
    その『 大元の原因 』とやらは最原ちゃんたちが探索をちゃんとしてるならお察しな事案だと思うけどね」

    言葉尻が急にオドオドしだした夢野の説明に横から続けやがった。…なんだよ、全部話せるならオメーの口から言えよ、と睨んだがあの野郎明後日の方向向いて舌をべーって出してやがる。

    最原「王馬くん達が言いたい事はこの場所に関わる事件でもある『 児童連続監禁・殺害事件 』と紐づいてるんだね。
    そして―――『 解消できなかった理由 』それは」

    終一の瞳が鋭くオレらを射抜く。んで一呼吸置いて、

    最原「さしずめ『 4人目の被害者 』とされる人物が実は『 真犯人 』。この空間の背景にあるのは『 児童連続監禁・殺害事件 』だったなら『 3人の被害者の怨念 』で『 天神小学校 』は形成されたと考えられる。
    …超常現象過ぎて信じられないけどさ。

    王馬くんたちはその事実を知ったからこそこの空間を形成する『 3人の被害者 』達を成仏した。
    だけどその時は『 真犯人 』の存在が分からなかったんだろう。
    恐らく『 真犯人 』が『 偽犯人 』を仕立て上げることで事実を隠したんだろうね。だからこ王馬くん達は『 3人の被害者 』を成仏寸前まで導く事しか出来なかった。

    だがある程度成仏が成功した。脱出、解放とは行かないけれど『 閉鎖的多重空間 』が解消されて、僕達は『 同じ次元 』に存在出来た――そんな所かな?」

  42. 42 : : 2020/02/03(月) 21:58:02

    『 答え 』を既に知り得たのか分からねぇがズバリと核心をついたその言葉に夢野が目を丸くした。

    …流石オレの助手だぜ。僅かな情報でオレらの行動が分かっちまうんだからな!!

    王馬「たはー。さっすが超高校級の探偵を名乗ってるだけあるよね!」

    ニコニコと煽るような笑みを浮かべてんじゃねーよ!凄惨な現場を『 被害者 』から直に見せられた夢野は驚いていた。た、確かにオレらと行動を共にしたワケじゃねーのによ…よく解ったモンだよな。

    東条「実は、大体推理しなくても察することが出来たのよ。貴方達の情報と――私達が観た情報を擦り合わせばね」

    夢野「んあ?その…なんじゃ?東条たちが観た情報とは何かあるのかのぅ」

    夢野の問い掛けに赤松が小さく「あっ…!」と声を出した。な、なんだ?

    赤松「あのね、私たちがさっきまでいた『 用務員室 』の中にパソコンとかの機材があって…誰かが記録を残していたみたいなの。確か名前は『 鬼碑引 コウ 』さんって人で…その人もここの事件を調べる為、実際に『 天神小学校 』に来たみたいなんだ。どうやらその人はここから出られる『 さかうち 』っていうのを知っているらしくて」

    「だから」と続ける。

    赤松「その人が生きていれば、直接『 さかうち 』の方法を教えて貰ってさ…もしその…亡くなっていたら記録がまだ何処かにあるみたいだからそれを見つければ――多分ここから出られると思うんだ」

    百田「おお!!順調に事は進んでるっー事じゃねぇか!」

    最原「うん。こうして出会えたってことは、きっと安否不明のみんなとも再会が出来るかもしれないって事だよな。
    なら、僕達がすべき事っていうのは3つだね」

    夢野「すべき事は『 真犯人を成仏させる 』と『 【 さかうち 】の方法を知る 』と『 みんなと合流 』じゃな」

    百田「だな。優先順位はどれも同じぐれーだからよぉ探しながらだよな…全部都合よくまとめて一気に解決すりゃー良いんだがよ…」

    夢野が指折り、今後の目標をまとめる。オレらは頷いて応じる。順序に優位性なんかは無ぇ。どれも大事な目標だからよ。

    百田「うっし!なら善は急げだな!」

    最原「そうだね。王馬くん達に聞きたい事があるけど、それよりここから『 脱出 』するのを優先すべきだと思う」

    赤松「…だったらこの先進めそうだから何か発見があるといいな。もし無かったらこの嬉しさが何処かに吹っ飛んじゃうぐらい悲しくなっちゃうしさ」

    百田「おうよ。―――あ、そうだ。コイツ渡せって言われてたんだ…終一受け取れよっ、と…っらぁああっ!!」

    最原「え?あ、うん…ってわわっ!ちょ、まっ、待って!!」

    東条「それなら私に任せて頂戴――っ?…これは、一体何かしら?」

    言い終わる前に雪から受け取った『 大理石の彫像 』を終一めがけて投げたが…受け取ったのは東条だった。それを見つめ首を傾げる終一たちに続けて答える。

    王馬「オレ達が成仏寸前にした『 被害者のリーダー格 』から渋々貰ったものだよ。
    なんでも最原ちゃん達が喉が手ぇ〜が出る程欲しくなるって言ってたからね。遅めの誕生日プレゼントって事で大事にしてよ!!
    ――じゃオレ達は向こう側調べてみるからまた合流するまで精々犬死しないよーにしてよね〜」

    王馬の冗談交じりの言葉に苦笑を浮かべて返す終一達を後目にオレらはその場を引き返したんだ。




    ▼ 【 大理石の彫像 】を最原達に渡しました… ▼



  43. 43 : : 2020/02/03(月) 21:58:21

    『 東条斬美 』side


    王馬君達と再会できた私達は最低限の情報を交換して別れたの。

    確かに王馬君の頭部に巻かれた包帯の怪我に、夢野さんの顔色が最初出会った頃よりも酷く蒼白な事、そして疲労が溜まっているせいか声色に普段の覇気か感じられなくなっている百田君が心配になってしまう…のだけれど理由を一々聞いた所で互いの気持ちが癒される訳では無いから聞かなかった事が正解だったと思うわ。

    赤松「…でも良かった…崩落した床を挟んでだけど王馬くん、百田くん、夢野さんと再会できてさ」

    東条「そうね。私達だけ生存していただけでは…とてもじゃないけど心中穏やかじゃなくなるわ」

    『 用務員室 』から真っ直ぐ伸びる細い廊下。確かに『 多重閉鎖空間 』が解消された弊害なのかもしれないけれど、人一人分の幅しかないこの廊下はどうも気味悪いものを感じてしまうわ…上手く言えないのだけれど、とても嫌な予感がする…漠然すぎる嫌な予感。第六感は信じないタチなのだけれど――

    東条「(杞憂ね…神経質になりすぎているのかもしれないわね)」


    最原「『 次元がひとつになった 』からだね。ほらあそこに扉がある」

    廊下を歩ききった先、最原君が指し示したのは――扉だったの。扉がどうかしたのかしら?と首を傾げる私に赤松さんが驚いていたわ。

    赤松「えっと…あの扉がもしかして『 別館 』に行くための扉ってことでいいのかな?」

    最原「そうだと思う。東条さんは分からないと思うけど元々赤松さんのいた次元には無かったんだ。その扉があるって事は多分この先に――茶柱さん達がいるかもしれない。
    僕が茶柱さんと別れた場所は『 別校舎 』だったし」

    そうだったのね…だったらそっちに行くのが先だと思うわ。

    東条「それなら、『 別校舎 』から調べましょう。この校舎は王馬君達が調べているのだから二手に別れるのは有効な手立ての筈よ」

    赤松「見つかるといいね…みんな…」

    赤松さんの言葉に黙って頷いた私と最原君は足取りそのままに扉へと歩いて行ったわ…


    最原「うわっ、肌寒いな…」

    赤松「風も吹いてきたみたいだね」

    扉は簡単に開いて、外に面した渡り廊下を進むわ。ひさしがあって吹き込んでくる雨風をある程度防げるけれど…雨足が強いせいで廊下の至る所で水溜まりができていたのよ。

    東条「今更だけれどここから出るとこは難しそうね…」

    赤松「あはは…視界もいいとは言えないからね」

    外は林が覆っていてあまり好んで行きたくないわね。冗談を少しだけ呟いて廊下を進み…『 別校舎 』の扉を開いて行くわ…

    最原「良かった、鍵はかかってないみたいだね」

    最原君が安堵した様子で中へと入るのを見届けた私と赤松さんも続いて入ることにしたのよ。

  44. 44 : : 2020/02/03(月) 21:58:43

    『 茶柱転子 』side


    茶柱「きぇぁぁあああっ!!」

    な、何度目の地震なのでしょうか…その場でしゃがんでしまって耐え忍んでいますけど、やはり1人では心細くなってしまいます。

    茶柱「先程から…なんだか構造が変わったような気がします。どこも行けなくなっていますし」

    地震が収まってキョロキョロ見回します。
    うう…なんで先程から不気味さが増しているんでしょう。切れた頬が痛みますし―――ん?

    茶柱「あ、あれ?…髪の毛がなくなってませんかっ?」

    切れた頬のあたりの髪の毛をフッと触れてみようにも…毛先しか当たらない感覚――はい???
    ま、まさかっ。先程の真宮寺さんので髪の毛が切れてしまったのでしょうか!?
    鏡を持ち合わせて無いのでハッキリと言えないのですが…バッサリ肩あたりで切られているみたいです。

    茶柱「あああ…あの男死めっ!!星さんや天海さんだけではなく転子の髪の毛までっ!!」

    あの時の光景が脳裏に浮かびます。正気とも思えない真宮寺さんの行動。でもそれがあの男死の本来の姿だとしたら…許せない。
    ただでさえこんな状況なのにさらに被害を出そうとしている彼の事がとても許せません。

    茶柱「先程は逃げてしまいましたが…やはり転子には逃げるの文字はないです!ガツンと1発しないと…煮えくり返ったこの感情は止まらないですよ!!」

    その場で立ち上がり、グッと拳を握りしめます。
    あの狂人男死の凶行を止めなくちゃ行けません!
    じゃないと、じゃないとっ。

    茶柱「夢野さん達が心配です。転子の近くに真宮寺さんを留めておくことが出来れば…きっと」

    夢野さんを助ける事に繋がるハズですし!
    決まったから善は急げです。今まで来た道を引き返してしまいましょう…

    茶柱「(天海さんや星さんが居る…向こうの校舎に戻るのはとても気が引けますけど…)」

    ??『…良カッタネ…逃ゲラレテ…デモ――』

    と、来た道を引き返そうとした時でした。背後から声がしたんです。その声は――

    茶柱「――え?」

  45. 45 : : 2020/02/03(月) 21:59:17

    question、>>46番さん
    東条side:『別館、玄関』調査安価
    (ある選択肢で進行します)

    1、下駄箱の中になにかあるわ…
    (下駄箱周辺を調べます)

    2、あれは…蝋燭かしら?
    (『 入間の蝋燭 』を調べます)

    3、右側に扉が見えるわね
    (入口から入った方向の右側に進みます)

    4、左側にも行けそうだけれど
    (入口から入った方向の左側に進みます)

  46. 46 : : 2020/02/04(火) 15:01:21
    待ってましたー!
    一番でお願いします
  47. 47 : : 2020/02/04(火) 23:01:46

    『 東条斬美 』side


    …肌寒いわ。
    足元をすきま風が吹いているのでしょう。身震いする赤松さんに埃っぽさもありくしゃみをした最原君。だけど蛍光灯の明かりが所々ついているお陰かしら、視界は悪くないわね。
    どこから電気が来ているのかについてはひとまず置いて起きましょう。その問いかけに答えを持ち合わせている私達ではないものね。

    東条「最原君、最初に来た時から違和感があるのなら教えて頂戴」

    最原君が下駄箱近くにいる私を素通りして扉の傷を撫でたわ。
    そしてその傷の隙間から何か…糸かしら?のようなものを手に取りつつ答えたのよ。

    最原「そうだな…先ずはこの扉。僕らが最初来た時こんなものはなかったんだ。そもそも鍵穴は血のようなものが擦っているし、刺さった鍵自体も血塗れだしね。血がはっきりと指紋を残してくれているから指紋キットがあればこの指紋の持ち主も分かるけど――それはひとまず置いておくよ。
    それとこの傷、鈍器のような物で殴った跡じゃない。これは日本刀や西洋の剣みたいなある程度刃渡りがあるもので付けられたんだと思う。
    僕らが知る限り言いにくいんだけど、ゴン太くんや追い掛けられた幽霊達は刃渡りのある刃物は持っていなかった。なら考えられるのは1つ」

    最原くんはそこで言葉を閉ざしてしまうわ。赤松さんが恐る恐るその先を呟くの。

    赤松「ま、まさか…さっき話に挙がった『 真犯人 』とか…かな?」

    最原「――だとまだ良いんだけどね。多分…生きている人間でゴン太くんみたいに操られている人物か」

    言いにくそうに視線を逸らしたの。その時、彼が持つ糸のようなものがきらりと輝いて…それがなんなのかが何となく察してしまったわ。

    東条「(髪の毛…ね…)」

    壁際にいる赤松さんの位置では分からないけれど、それは茶柱さんの髪の色をしていたのよ。

    最原「自らここの中で犠牲者を増やそうとしている第三者…のどちらかだろう」

    赤松「そ、そんな…」

    赤松さんが震えるわ。要するに『 真犯人 』だけじゃなくて『 殺人犯 』もいるかもしれないということだもの。
    最原君が私たちの方を向き直して髪の毛を手放した。そして周囲を見ながら再度声をかけてくるのよ。

    最原「どちらにせよ、この場所を徘徊しているかもしれない。慎重にならないといけないな」

    東条「そうね。赤松さんの背後の壁もよく見れば傷があるから…ここで何かしらは起きたのでしょうね…追われた方が無事に逃げた事を願うことしか出来ないでしょうけど」

    赤松「そ、そうだね」

    赤松さんは力強く頷くと私の背後にある下駄箱を見始めたの。
    あら…何かあるのかしら?と首を傾げ、彼女に声をかけようとしたら紙のようなものを手にしていたわ。

    最原「…それは?」

    赤松「分からないけどさっきからチラチラ見えて気になったから手に取ってみたんだ…誰かの走り書きみたい」

    パサっと折りたたまれた紙を広げるとそこにはただ一文だけ書いてあったの。

    赤松「『 あの子たちの黒化に気をつけて 』…ってなんだろう?」

    最原「誰かへのメッセージだと思うけど、この内容が僕らに向けられたものとは思えないな」

    東条「複数形なのが少し気になるのだけれど…元に戻しておきましょう。もしかしたら他の人のメモかもしれないわ」

    赤松さんが持っていた紙を最原君が受け取り、透かしてみたりしていたけれど少しして赤松さんに返したわ。

    最原「別に特殊な技法が隠されている訳じゃないから、心にとどめる程度でいいと思うよ」

    赤松「そっか。じゃあ同じ場所に戻しておくね」

    下駄箱の方に向き直して紙をあった場所に置いたわ。






    赤松「…でも、黒化ってなんだろうね…?」

    赤松さんの疑問に私達は答えられなかったわ。




    question、>>48番さん
    東条side:『別館、玄関』調査安価
    (ある選択肢で進行します)

    1、★調査済み

    2、あれは…蝋燭かしら?
    (『 入間の蝋燭 』を調べます)

    3、右側に扉が見えるわね
    (入口から入った方向の右側に進みます)

    4、左側にも行けそうだけれど
    (入口から入った方向の左側に進みます)

  48. 48 : : 2020/02/05(水) 22:11:18
    3番で!
  49. 49 : : 2020/02/08(土) 13:52:01
    転子が1人で心配すぎる
  50. 50 : : 2020/02/09(日) 06:51:24

    少しだけ沈黙が場を支配するのだけれど、最原君が周りを気にしながらも呟いたの。

    最原「現状、見回したけど調べるのは多くはなさそうだ。ここは茶柱さん達を探すのを先にしてから詳しく見た方がいいと思う」

    赤松「うん。茶柱さん達と合流してからでも調査は出来ると思うんだ」

    赤松さんの返事に私も黙って頷くわ…下駄箱から離れ、廊下の先を見ると右側からなら別の場所へ行けそうだものね。

    東条「別の場所に移動するにも…左側は瓦礫に埋もれている様子で怪我をしている私たちでは登って向こう側に行く事は難しいわ」

    赤松「ええっ、そうなの??
    ――うわ左側瓦礫で塞がれてるじゃん。怪我してなくても乗り越えるのは…厳しいものあるよ…」

    赤松さんも私のそばまで来てその様を見ると最原君が小声で「僕も無理だってば…」と愚痴を零していたのだけれど、聞かなかった事にするわ。

    赤松「だったら進むのは右側しかないって事だよね?」

    瓦礫で埋もれた左側と違って右側は遮蔽物はなく廊下が続いているみたいね。最原君も同様に私達の近くまで来て、続いているであろう暗い廊下の先を睨んでいたのよ。

    東条「とにかく進んでみましょう」

    私の提案に頷く2人と共に廊下の先へと歩み出したわ…


    最原「すぐ近くに居ると助かるんだけど…」

    最原君が先頭にその後を私と赤松さんが並んで行く。…暗いのはどうしてかしらと首を傾げたと同時に…血腥い臭いが鼻を付いたのよ。

    最原「…くっ、これは…――っ?!」

    最原君が呟いたと同時だったわ。
    蛍光灯がチカチカなって…明かりがついた。

    赤松「きゃ!?な、なに?…これっ?」

    暗かった廊下が一気に明るくなって足元を気にした私達は咄嗟に異変に気付き―――足元に血溜まりが広がっていた。そして、一足先に視線を上げたのでしょう最原君が震える声で…呟いたの。

    最原「…嘘…だ、ろ…」

    赤松「さい、はら…く――っ!?」

    東条「…」

    赤松さんがいち早く最原君の異変に気が付き視線を上げで…固まったわ。私も釣られるように赤松さんから視線を前へと向けた。

    そこに居たのは…

    血溜まりの中心で倒れている…『 天海君 』の姿だったのよ…

  51. 51 : : 2020/02/09(日) 06:51:54

    『 茶柱転子 』side


    茶柱「――え?」

    振り返るとそこに居たのは…小学3、4年生ぐらいでしょうか?赤いワンピースの女の子でした。

    女の子は転子の戸惑った声にも動じずにその純粋無垢な可愛らしい瞳を真っ直ぐ転子だけを見ていました。

    ま、迷子でしょうか?…で、ですが…この学校には生存者はクラスメイトの男死ぐらいしか見てません。…はて?
    首を傾げた転子の真似をするかのように女の子も首を傾げます――あら可愛いですね!

    …あ違いましたね。転子同様に知り合いを探しているのかも知れません。それならばと転子が女の子の視線に合わせようと膝を曲げた時だったんです。

    ??『 逃げてください!!
    …目の前にいる人物は茶柱さんの味方じゃないんです、敵なんだ!!
    今すぐソイツから離れてください! 』

    懐かしさがある声がどこからかしたんです。心配しているような――そんな鋭い声が。

    茶柱「――っ!?誰でっ」

    誰だろうと膝を伸ばした時、女の子の表情が歪んで…濁った瞳で睨んだんです。あまりの変貌に間抜けな声しか出せない中で女の子が口角を上げてゲラゲラ笑いかけます。

    茶柱「え?」

    ??『 良カったネェ…死ンでも助けてクレるオ友達がイてネぇ… 』

    戸惑っている転子を楽しそうに眺めながら女の子は続けます。

    ??『 デモ…逃げナイと…お姉サン…助からないカモねぇ…キャハハハっ 』

    茶柱「逃げないとって…どういう意味で――!!」

    女の子の背後。迫ってくる事に気が付かなかったんです。だって音もなく近づいてきたから。
    それはよく知った人物で…眉唾モノで聞いていた星さんの話を信じたくなかったのに…信じざる得なくなったと言いますか。

    茶柱「ゴン…太…さ…」

    獄原「…」

    虚ろな瞳が転子を捉えてました。片手には血塗れの斧。…きっと入間さんとキーボさんを殺めた血が染み付いているのでしょうか。

    ??『 逃げナイと…オ前も死んだヤツらト同じにナっちゃうよォ! 』

    茶柱「嘘ですよね――ご、ゴン太さん…」

    どんっっ!!バキバキィィっ!!

    返事は床に叩きつけた斧の音がして、女の子の不気味な笑い声と混ざり恐怖感が増してきちゃいますっ。

    茶柱「どうして――目を覚ましてっ、ゴン太さん!」

    掠れた転子の声にジリジリと距離を詰めてくるゴン太さんの姿に本能的に動けなくなってしまい思わず固く目を閉じかけた時でした。

    ??『 おツムまで筋肉かよ!このっ脳筋女ぁ!!
    逃げろって言ってんのが理解出来ねぇのかよ!! 』

    ふあっと聞きなれた声がしたかと思えば転子の胸元を『 何かの力 』で強く押されたんです。い、一体なにが――?

    茶柱「…??」

    目の前に『 何か 』がいる気配がしてます…ですが転子には見えてなくて…女の子の笑い声が止まって、その視線は転子を捉えていなかったんです。だけど『 声 』だけは届きます。

    ??『 あの雑巾ワカメん所戻れ!!いいなっ!何度でも言うけど戻れ。
    したらダサい原達がシコって居やがるからそいつらを頼れ!!良いな!? 』

    茶柱「…ぞ、雑巾ワカメってもしかして天海さんの所、ですか?」

    震える声で答えるとまた『 何か 』に腕を掴まれまれて、そして『 声 』が…聞こえてきました。

    ??『 大丈夫です。ゴン太クンの事はボクと入間さんに任せてください!
    茶柱さんは…最原クン達の所へ、さ急いで 』

    茶柱「え、あ、あなた、たち…は…っ?」

    クイッと引っ張られる感覚が強くなって…そしてその力は転子を階段の方へと向けていったんです。
    弾かれたように強い力で押され…転子はそのまま為す術もなく階段側に押し出されちゃったんです。

    茶柱「…い、今のは――」

    階段を下りる転子の声にはいつまで経っても返事は来ませんでした。

  52. 52 : : 2020/02/09(日) 06:52:29
    question、>>53番さん。
    東条side:『別館、西側廊下』調査安価
    (ある選択肢で進行します)

    1、トイレがあるわ
    (トイレ周辺を調べます)

    2、天海君…
    (『 天海の死体 』を調べます)

    3、アレってっ!?
    (『 天海の死体 』傍に落ちた物を調べます)

    4壁にたくさんのポスターが貼ってあるわね
    (壁にはられたポスターを調べます)

  53. 53 : : 2020/02/09(日) 07:43:38
    2番でお願い致します…
  54. 54 : : 2020/02/24(月) 02:10:40

    『 東条斬美 』side


    赤松「なんで…何が起こったの…?」

    震える声でマジマジと見つめる赤松さん。最原君がしゃがみ、閉じられた瞼をじっと睨むように見ていたの。

    最原「…天海くん」

    夥しい血の量。人体にこれ程流す血があるのかしら?と思うぐらいの量の中心に倒れた彼は誰が見ても生気は見られないわ。
    だけれど血溜まりを何人か踏んだのね?上履きの跡が廊下中に転々と残っていて…その足跡は私達が入ってきた方の廊下へと続いていたのだから、誰かが通ったということかしら?

    東条「(どちらにせよ情報が少なすぎるわ。最原君の検死結果を待ってみましょう)」

    最原君が天海君の遺体を見ていく。身体も血塗れだからでしょうね、直接触るのは好ましくないと思った彼は右手を顎に当てながらブツブツ呟き始めたの。
    この状態の彼を邪魔する訳には行かないわ。私は震え固まってる赤松さんの肩を掴んで壁際まで誘導して彼を静かに待つわ。

    最原「詳しい事までは分からないんだけど、肩の怪我、多分入口にあった刃物と同じもので切られたんだな。けどこの傷でここまでの血は流れないはずだ。
    致命傷は――恐らく背中の刺傷。足が変な方向に曲がってるのも気になるな……もしかして…どこからか…落ちた、のか?」

    赤松「――っ!辞めて!最原くん!!
    もう、やめてよ…っ」

    暫く黙っていた赤松さんの声に私と最原君がビクリと肩を震わせたわ。あまりにも大きな声だったから。
    悲鳴に近い赤松さんの瞳には今にも溢れそうな涙が浮かんでいたのよ。

    最原「あ、ゴメン…つい」

    東条「赤松さん…」

    戸惑いの声で謝る彼に対して赤松さんは大きく息を吸って静かに答えたの。

    赤松「あ、ごめんね…なんだかこの状態で放っておくの可哀想で、つい…それにまじまじ見るのも…失礼だと思うんだ」

    直視出来ないのでしょうね、彼女は視線をずらして申し訳なさそうに呟く。確かにと頷くけれど少し困った表情で私たちを見たわ。

    最原「そうしたいけど…身体から出た血があまりにも多いし、春川さんの時みたいに時間がある程度経過していかないと――」

    赤松「…そう、だよ…ね…」

    言い終わる前に赤松さんが悲しそうに微笑む。私もそうしたいのはやまやまなのだけれど…

    赤松「ごめんね…つい…」

    そのまま青白い表情で押し黙ったわ。
    最原君が困ったようにその場から立ち上がって…私達の方を再度向き直すわ。

    最原「せめて…手を合わせておこうか」

    東条「そうね。赤松さん、大丈夫かしら?」

    赤松「あ、うん…」

    天海君の前に3人並び手を合わせたわ。
    そして暫く過ぎてから再度見回して…

    最原「…天海くんには申し訳ないけれど他の所も調べなきゃ…だよな…」




    question、>>55番さん。
    東条side:『別館、西側廊下』調査安価
    (ある選択肢で進行します)

    1、トイレがあるわ
    (トイレ周辺を調べます)

    2、★調査済み

    3、アレってっ!?
    (『 天海の死体 』傍に落ちた物を調べます)

    4壁にたくさんのポスターが貼ってあるわね
    (壁にはられたポスターを調べます)

  55. 55 : : 2020/02/24(月) 02:57:54
    3番で!
  56. 56 : : 2020/02/28(金) 03:54:40

    赤松「あのさ、天海くんの足元近くにあるのって何だろ?」

    最原くんが呟いた後だったの。赤松さんが指を差した方向…そうね天海君の足元からさほど離れてない距離に『 何か 』が落ちていたのよ。

    東条「何かしら?調べてみるわね」

    最原君ばかりに負担をかけては悪いわ。率先して指し示した方に近づいて、『 それ 』が一体何なのかを確かめることにしたのよ。

    東条「(…これは――っ!?)」

    最原「東条さん、なんだったのかな」

    少しして最原君が不思議そうに首を傾げながら尋ねて来るまでその場で固まってしまったの。
    軽く頭を振って彼らの方向を向き直して、言うか躊躇ったのだけれど最原君の何か察してしまったのか鋭い瞳につい答えてしまったわ。

    東条「…そうね。とても言い難いのだけれど、これは恐らく『 茶柱さんの髪の束 』だわ」

    最原「っ!?」

    赤松「えっ!?」

    2人が驚くのは至極真っ当な反応。…髪の毛の束が無造作に落ちていたのだから。この長さだと恐らく首の辺りからバッサリと切られた…という感じがあるわね。

    東条「この髪の色に特徴的な結び目と髪留めからして間違いないわ」

    赤松「ねぇ、まって…茶柱さんの髪の束なら――茶柱さんも…もしかして」

    赤松さんが震える声でキョロキョロと辺りを見回して、最原君もあまりいい表情はしてないわ。

    最原「赤松さんまだ断定は出来ないぞ。だって僕達はこの校舎に来たばかりだよ。
    それに教室や廊下を隅々まで調べてないし、万が一そうならば…『 遺体 』がどこかにあるはずだ」

    東条「最原君の言う通りよ。
    こうして茶柱さんの痕跡があるのだからもしかすると何処かに逃げて隠れている可能性もあるわ」

    赤松「そうだけど…嫌な予感がするんだ。
    もしかしたらって…思っちゃってさ」

    最原君のフォローに私も続ける。
    そうよ。『 髪の毛の束 』が落ちているだけ。
    きっと『 玄関 』にあった『 髪の毛 』も――

    最原「と、とにかく立ち止まって最悪な事態を想像するよりも違う場所も調べるべきだと思う」

    東条「そうね、この先もどうやら続いているみたいだわ。茶柱さんを探す為に一通り調べた方がいいわ」

    最原君がショックを受ける赤松さんの背に手を触れてその場を離れようとした時だったのよ…

    私達が入ってきた方向から誰かが走って来たのよ。その人物の視線が私と丁度あって立ち止まった。あ、貴方は…っ!

    ??「――っ!?」

    東条「!?」

  57. 57 : : 2020/02/28(金) 03:54:59

    最原「どうかしたの、東条さん?」

    戸惑う最原君が首を傾げていると――

    ??「本当、に…話していた通りだ…皆さん、ちゃんと…居たんですね。…ああ…良かったぁ…」

    今にも泣き崩れそうな声は普段のハキハキした声とは打って変わって弱々しい。声色から気が付いたのでしょうね赤松さんが驚いて振り返ってその名を呼んだわ。

    赤松「――茶柱さん!!」

    茶柱「赤松さんと東条さん、それに…最原さん。お元気そう…とは言い難いですけど会えて良かったです」

    最原「茶柱さん。良かったよ…あの時以来だけどさ」

    最原君は茶柱さんと行動を共にしていたからかしら?彼女の方向に体を向けると、とても申し訳なさそうに答えるわ。

    茶柱「そ、そうですよ!!最原さん、急に居なくなってしまうものだから…本当に困ったんです。
    最原さんと別れてから色々ありましたから――」

    茶柱さんの視線が天海君を見る。

    少し天海君の姿を見てから茶柱さんはぽつりぽつりと話し始めたの。
    最原君と別れてから『 何 』が起きたのか――を。

    茶柱「最原さんと別れてから、転子は1人で行動していたんです。それから天海さんと星さんに再会して3人でこの校舎を調べていたんです。
    ですが…」

    視線が中を彷徨う。その先を答えることに躊躇いがあるのか少しだけ押し黙って瞳を伏せてから一言だけ答えたわ。

    茶柱「とにかく着いてきて欲しいです。見てもらった方が実際に分かると思いますから…」

    申し訳なさそうに彼女が無理に微笑んだの。そして、私達を誘導するかのようにその場を後にしたわ。


    『 玄関 』側とは反対の廊下の先は上に行く為の階段だったの。道中に『 赤い蝋燭 』が置いてあってそれを見た最原君が「入間さんのかな…」と呟いた以降、みんな無言で階段を上り2階の廊下に出た時だったわ。

    そこには――

    赤松「…星、くん!?」

    東条「星君!!」

    階段上がる最中から噎せ返るような血の匂いがしたから…薄々嫌な予感がしていたのだけれど、廊下に出て真っ先に目に入ったのは壁際にもたれかかった無惨な彼の姿だったのよ。

    ど、どうして?…一体何が起きたというの?

    最原「!!茶柱さんっ!何があったんだよ!!」

    茶柱「…そ、それは――」

    最原君の咎めるような声色に肩を震わせた茶柱さんが星君の遺体の側へと歩み寄ってから答えたの。

    茶柱「転子を逃がす為に――おふたりは…星さんと天海さんはっ…」

  58. 58 : : 2020/02/28(金) 03:55:17

    茶柱「あの男死に…『 真宮寺 』さんの手によって…無惨な姿になってしまったんです」

    最原・赤松・東条「「「っ!?」」」

    …信じられないわ。
    こんな姿になってしまった原因が真宮寺君だなんて――嘘だと言いたい言葉をぐっと堪えていたら赤松さんが驚き固まった表情で糾弾したのよ。

    赤松「そんな!!真宮寺君はそんな事するとは思えな」

    茶柱「こ、殺したんです!!真宮寺さんがっ!!
    『 操られている様子ではなく、自らの意思で 』2人をっ…殺したんです」

    赤松さんの言葉に反論している茶柱さんの目元が真っ赤に晴れていることに今気がつくわ。
    茶柱さんの拳が震え、今にも泣き出しそうな表情で更に答えたの。

    茶柱「転子がトイレに入っている間でした。
    その時の状況は分かりませんけれど、星さんが天海さんを庇って大怪我したみたいで…天海さんは転子を引っ張ってこの場から逃げたんです」

    彼女の言葉をじっと聞いている私たちにゆっくりと続きを話していくわ。

    茶柱「あの男死は、そのまま転子達を追いかけてきました。そして、再びこの場所に辿り着いた時に星さんが…足止めしてくださったんです。その隙に…あそこにある場所から天海さんが真宮寺さんにタックルして共に落ちたんです」

    指し示した方向、丁度『 女子トイレ 』と書かれた札の扉の少し下辺りに大きく床が崩れた箇所へと視線を向ける。
    そのまま視線を廊下全体見回すと至る所に血の跡に刃物のような切り傷がところ構わずあったから茶柱さんの言葉に嘘偽りは全く感じられなかったの。

    茶柱「星さんは…その後に息を引き取りました。「生きてる皆を頼む」と言って。
    何も出来なかった転子はそのまま下の階にと戻ります。そしてここの丁度真下に当たる空間が天海さんが倒れてる場所になるんです」

    赤松「そんな…」

    茶柱「どうしてこうなってしまったんでしょうか…?先程まで普段と何ら変わらない生活をしていた筈なのにどこで間違えてしまったのですか


    茶柱さんはそれ以降何も言わずに星君を見ていたわ。私達も彼女に倣って星君の側へと行き、黙って両手を合わせることにしたの。



    最原「――ごめん。星くん、助けられくて。
    僕がずっと同じ『 次元 』に居たなら別の道があったのかもしれない」

    静かに星君に向かって話しかけるわ。
    私はどうしようもない気持ちに押し黙ってしまうと赤松さんがふっと彼の足元を見て…『 何か 』わ徐に拾ったの。

    赤松「星君も一緒だよ。行動出来ないけどさ…これ代わりに持っていくね」

    手にしたのは彼が普段から身につけたている『 足枷 』だったの。何かのはずみで取れてしまったのね。『 足枷 』の先に付いた重りのような物はどこかで外れているらしく足輪の様になってしまっていたのよ。



    ▼ 【 星の足枷 】を入手しました… ▼

    説明:(普段から足首につけていた銀色の足枷です。先端に付いた重りのような物は見当たらず足輪の部分しかありません。
    星が冒した罪と向き合うために付けていたものでしょうか)



  59. 59 : : 2020/02/28(金) 03:55:36

    東条「…一先ず、茶柱さんと再会出来たのだから一旦王馬君達と合流した場所に戻った方がいいのかしら?
    それともこのままこの校舎を調べた方がいいのかしら?」

    押し黙った空気を変えるべく提案をしてみる。そっかと納得したふたりとは裏腹に茶柱さんは困惑の表情をしていたから、最原君が大雑把に説明していくわ。

    最原「ああ、そうだ茶柱さん。
    実際にその現場にいた訳じゃないから僕らも詳しくは分からないんだけど、どうやら王馬くん達が『 多重閉鎖空間 』を解消してくれたみたいなんだ。
    だからこうして本来違う『 次元 』にいた僕らと茶柱さんが再会できた訳で…」

    茶柱「へ?ちょっと待ってください!
    最原さんは転子と別れた後に『 違う次元 』へと飛ばされていたのですか?
    そこで…赤松さんと東条さんに再会した、と」

    赤松「うん。そうだよ。
    最原くんがいなかったら私どうなっていたか…とにかくその話は追ってするね。この場所でゆっくりは話したくないから…さ」

    茶柱「あ、はい…そうですね。分かりました」

    茶柱さんが疑問符だらけでしょうけど納得はしてくれたみたいね。その様子を見ながら私は提案の結果を待つわ。すると先に最原君が唸ってから「そうだな」と呟いたの。

    最原「確かに、この校舎を調べ続けてもいいけど天海くんと星くんの状態を報告したい気持ちもある。それに茶柱さんの話から今の状態の真宮寺くんに遭遇すること自体危険だ。王馬くん達に忠告しておいて不利益にはならないだろう。
    元々僕らがここに来たのも茶柱さん達の行方調べる目的があったんだ。茶柱さんと合流できたことでクラスメイト全員の生死も把握したワケだから、それらの情報を共有するのは大事だと思う」

    赤松「うん。私もそう思う。
    真宮寺くんの話からするとここまでの道のりで真宮寺くんとは私達会ってないんだ。もしかすると王馬くん達の方へと繋がる抜け道があって王馬くんたちのいる方向へ向かった可能性も否定出来ないもんね。
    その状態で真宮寺くんと鉢合わせに…ってなったら王馬くん達とはいえ今の怪我だと危険かも」

    2人がそう言うなら戻るべきでしょうね。王馬君達の怪我を思い出すに真宮寺君の不意打ちに反応できない可能性あるわ。比較的大丈夫そうな百田君に夢野さんがいたとしても、星君と天海君の凄惨な状態から見るに忠告は必要ね。

    茶柱「ええとよく分かりませんが…転子は皆さんの後をついて行きますのでどうするかはおまかせします」

    最原「じゃあ、一旦戻ろうか。…戻ってみて同時に会えるとは限らないけどさ」

    赤松「居なかったら居なかったらでその時考えようよ。ほら最悪みんなで書いてた『 教卓のメモ 』みたいに何処かに大きく箇条書きすればいいと思うし」

    東条「そうね。茶柱さん、目的の場所に行くまでに茶柱さんと会うまで私達がどう行動していたのかを話しながら行きましょう」

    茶柱「はい。わかりました!」

    こうして私達は『 用務員室 』へと踵を返すことにしたのよ。



    情報:(【 茶柱転子 】と合流しました…)



  60. 60 : : 2020/02/28(金) 03:55:54

    東条「そこから私と合流してそのまま今向かう『 用務員室 』で『 鬼碑忌さんの録画 』したものを見て廊下に出たら向こう側に王馬君と百田君、夢野さんが丁度来たところだったのよ」

    茶柱「そ、そんな事があったんですね…」

    『 用務員室 』前の細長い廊下を歩きながら今までの行動の説明をしていくわ。茶柱さんは眉間にシワを寄せながらも相槌を打っていたのよ。

    最原「ああ、まさか…生存している人が僕ら4人と王馬くん達3人、それと真宮寺くんに無事なら…ゴン太くんだけなんて」

    指折り数える最原君の表情も厳しくて暗い表情をしていたわ。『 さかうちほう 』と呼ばれる手段があるらしいのだけれど…その方法を使ったとしても『 脱出 』元の場所へ帰ることは厳しそうな雰囲気になった、とも話していたものね。

    赤松「あ、もうすぐつくよ…あ!王馬くん!良かった、丁度いたっ!」

    1番先頭にいた赤松さんが駆け寄るように『 用務員室 』前の開けた廊下へと進む。私達も続けてくると不貞腐れた王馬君と驚いた百田君、夢野さんが丁度いたのよ。

    百田「お、丁度良かったぜ…って茶柱か!?茶柱と合流できたのか!」

    夢野「転子っ!!良かったのじゃ!」

    茶柱「夢野さん!…ご無事で何よりです…良かったぁぁ、ってその頭そこの男死のす、スカーフではありませんか!?な、なな、何がどうなってそのようなことにっ」

    夢野「んあ!?こ、こ、これはのう…色々あったのじゃ…話すと長くなるが―――」

    夢野さんと茶柱さんが喜びあっている手前で真剣な表情で最原君が話し始めた。

    最原「うん。茶柱さんと合流はしたよ。だけど…」

    王馬「茶柱ちゃん以外は見つからなかった、或いは――死んじゃってた、とか?」

    ハッキリとした物言いに場の空気が凍ってしまうわ。…それに頷いたのは茶柱さんで、実際に話したのは最原君だったわ。

    最原「天海君と星君の遺体を向こうの校舎で見つけたんだ。その事で情報共有したいのがあって僕らは戻ってきたんだ」

    王馬「ふぅん。で、それってなに?」

    最原「ああ、それは…真宮寺くんの事だ。彼は天海くんと星くんを殺した当人なんだよ。だからもし、王馬くん達の所にいたら危ないと思ってここに来たんだよ」

    百田「はぁ!?真宮寺がか?…んな嘘だろっ?!」

    百田君の反論に対して茶柱さんが「いえ事実なんです」と消え入りそうな声で呟いたわ。

    茶柱「真宮寺さんが…転子の目の前で星さんを殺したんです、天海さんも…殺された現場を目撃した訳ではありませんが真宮寺さんを止める為に…とっとにかく、夢野さん!お気を付けてください!!」

    夢野「んぁっ!!て、転子よ…」

    王馬「茶柱ちゃんが居なくても夢野ちゃんは大丈夫だと思うけどねー」

    百田「コラっ!王馬テメーっ」

    王馬「だって事実じゃん。現にこうしてオレらと最原ちゃん達と再開できてんのはオレらがいたからでしょ?」

    夢野「確かにそれはそうなのかもしれぬが…っ」

    王馬君の正論に思わず百田君は黙ってしまう。向こう3人の反応に困っていると最原君が再び声をかけるわ。

    最原「ちょっと、話が脱線しかけてるから戻すよ。僕らの話しは『 茶柱さんと合流出来た事 』と『 真宮寺くんの事 』の2つなんだけど…百田君、さっき「 丁度良かった 」って話してたけどどうかしたの?」

  61. 61 : : 2020/02/28(金) 03:56:09

    百田「ああ…そうだ。
    オレらも終一達に頼みてー事あってここで待ってたんだ」

    頭を掻いた百田君が申し訳なさそうに視線を明後日の方向に向けた。その物言いに赤松さんが首が傾げるわ。

    赤松「頼みたい事って…何かな?」

    夢野「ウチらの廊下は2階から先が進めなくなっておったのじゃ…よくよく見ると『 仕掛けを動かせば廊下が出てくる 』ようになっておってのぉ…その仕掛けがこっち側にあるように思えなくてな、最原達の方にあるのではないかとと思いここに居たのじゃ」

    夢野さんが状況を話してくれたわ。『 仕掛け 』…って何かしら?

    百田「『 レバーのような装置 』があるはずなんだが、オレたちが行ける場所全て調べたんだがな…見つからねー。
    実は終一達が行ける場所の方が広いのかもって王馬と夢野と話してたんだ」

    赤松「向こうの校舎にあったりするのかな?」

    王馬「いやそれは無いと思うよ。同じ校舎内だと思うけどね。このままじゃ奥にある教室を調べられなさそうだから最原ちゃん達に頼もーかなって」

    進めないのは厳しいわね…それなら次調べるのは校舎の2階になるわね。
    確か別の校舎向かう途中の廊下に階段があったわ。『 用務員室 』にはそれらしきものは見当たらなかったし何より廊下には無かったのだからあるとすれば2階より上かもしれないわ。

    東条「そうね…だったら私たちで調べてみるわね。もしかするとあるかもしれないわ。こちらの校舎はまだ調べてないもの」

    王馬「ないと困るんだって!それこそ夢野ちゃんや百田ちゃんに『 人間のハシゴ 』になってもらわなくちゃいけなくな」

    百田「んなもん出来っかよ!」

    百田君の鋭いツッコミに思わず笑いそうになってしまうけれど気を引き締めないとね。

    赤松「なら早速調べてみるね。その…見つからなかったらごめんね」

    王馬「何度言わせるつもりだよ!なかったら八方塞がりなんだからね!こっちはさ」

    茶柱「はいはい、男死の言葉はどうでもいいとして夢野さんが進められないというのなら転子しっかり見つけてきますんで!その行けない場所近くで待っていてくださいね」

    夢野「んあ頼むぞ…では転子の言う通りあそこで待つとするかの」

    王馬君達と軽く別れ、今度は2階を調べることにしたのよ。

  62. 62 : : 2020/02/28(金) 03:56:32

    赤松「うわぁ…大分構造が違ってるね」

    2階に辿り着いて赤松さんが驚きの声を上げたのよ。私はこちら側の2階に来たこと無かったからよく分からないのだけれど最原君も「これが融合の結果なのか…?」と首を傾げていたわ。

    茶柱「だれも…居なくなってますね…」

    東条「どうかしたのかしら?茶柱さん」

    茶柱さんの声に思わず声をかけてしまうの。なんだか悲しそうな表情をしていてつい、ね…

    茶柱「最原さん達と合流する前に転子この場所でゴン太さんにあったんです…それと『 赤いワンピースを着た女の子 』に。ゴン太さんは、転子を見ても無反応で思わず固まってしまったら――助けてくださった方がいて…」

    最原「助けてくださった方?」

    最原君の声に茶柱さんは続けて答えるわ。

    茶柱「ええ。姿は見ていないので断定できませんけど恐らくは入間さんとキーボさんだと思います。お2人が「 逃げて、別校舎にいる最原さん達と合流しろ 」と転子を逃がしてくださったんですけど…あれからどうなったのかと思って」

    赤松「そうだったんだ…誰かいる気配は感じられないけどそんなことがあったんだね」

    茶柱「はい…」

    茶柱さんが言う『 赤いワンピースを着た女の子 』というのは『 4人目の被害者 』とされた実行犯、『 篠崎サチコ 』のことでしょうね。
    きっと王馬君達が色々したお陰で茶柱さんの前に姿を表したのでしょうね。

    東条「『 赤い服の女の子 』は恐らく今私たちが最終的に成仏…でいいのかしら?しようとしている相手だわ。王馬君達が詳しくは話してくれなかったのだけれど恐らく彼女がいるせいで脱出出来ないとも話していたわね」

    茶柱「そうなんですか…ならばゴン太さんが心配です…まるであやつり人形のように扱われていたので…」

    赤松「ゴン太くんと再開したら今度こそ救わなきゃだね。きっとゴン太くん本人も辛いはずだよ…クラスメイトのみんなを攻撃してるんだもん」

    赤松さんの言葉に頷く。ゴン太君はとても優しい性格をしているからきっと良心は酷く気づ付いているはずよ…これ以上犠牲を増やしてはいけないのだから助けなきゃいけないわ。

    東条「そのためにも今は『 装置 』を探しましょう」

    頷いて私達は廊下の先へと進むわ…


    最原「…あれか?…ってなんだそのそばにあるのは…っ」

    『 装置のようなもの 』はすぐ見つかったわ。場所は――壁が真っ赤に染まって誰かが壁にぶつかってバラバラになった臓器の近くだったの。
    最早原型を留めては居なくて近場に転がる真っ黒に爛れた頭部らしきものもあるわ。

    赤松「――っ!?」

    茶柱「…酷いですね…」

    誰かは判別不可能なその死体を避けながら『 装置 』の側へと行くわ。
    年代物なのか所々錆びているけれどレバーの部分は不思議と綺麗ね。

    茶柱「…ホコリを被ってはいますけど…何とか動きそうですね。動かしてみます」

    茶柱さんがレバーを持ち、力を込めて押し倒したわ。すると――


    ガコン、ガラガラガラガラ…


    ガチャン!!!


  63. 63 : : 2020/02/28(金) 03:56:49

    どこかで何か仕掛けが作動する音がしたのよ。
    そして大きな音がしたかと思えばそれ以降何も音はしなくなったの。

    茶柱「これで…どうにか…進めるようになりましたかね?」

    最原「どうだろう?進めたことを祈るしかないけど」

    赤松「で、じゃあ…戻った方がいいのかな?」

    しばらくして赤松さんが提案をするわ。その意見に最原君がどうしようと首を傾げていると、茶柱さんが「あっ!」と声を荒らげたのよ。

    東条「茶柱さん?」

    茶柱「ああ、感動の再会にすっかり忘れていました…夢野さんに『 コレ 』渡しそびれてしまいました…」

    ポケットから出てきたのは『 夢野さんの髪留め 』だったの。どこで見つけたの?と赤松さんが声をかけたら茶柱さんは、申し訳なさそうに答えた。

    茶柱「『 保健室 』です…ベッドのシーツに紛れて置いてあって、きっと大事になさっているものでしょうから探しているでしょうに…」

    最原「ああ…確かに茶柱さん見つけてたよね」

    赤松「大丈夫だよ。次会った時に返せば問題ないと思うよ!」

    茶柱「そ、そうですよね。直接渡せるといいのですけど…」

    茶柱さんはそう呟いてポケットの中に大事そうにしまい直す…手が止まったわ。『 髪留め 』の代わりに出てきたのは…『 SDカード 』かしら?

    茶柱「あれ?こんなもの転子拾った覚えないのですが…なんなのでしょうか?」

    首を傾げて『 SDカード 』を見る茶柱さんをよそに最原君が突然呟いたのよ。

    最原「それ…もしかしたら…『 鬼碑忌コウさんのデータ 』かもしれない。1度『 用務員室 』に戻って確認してみようか」

    茶柱「へ?先程皆さんが話されていた…ええと『 コレ 』がそろ記録媒体とでも言うんですか??」

    茶柱さんが戸惑うのをよそに最原君は『 それ 』をひったくってじっくりと見直してからもう一度声を掛けたのよ。

    最原「とにかく『 用務員室 』でこの『 SDカード 』の内容見てみよう」

    赤松「えっと…そうだね…でいいのかな?」

    急すぎる展開に茶柱さんは目を白黒させていたわ…



    ▼ 【 謎のSDカード 】を入手しました… ▼
    説明:(いつの間にか茶柱のポケットの中にあったものです。青色の2GBのタイプのものでタイトルには何も書かれていません。最原は『鬼碑忌コウの物だ』と思っているようですが…)


  64. 64 : : 2020/02/28(金) 03:57:11
    question>>65番さん。
    東条side:『本校舎1階、用務員室』調査安価
    (ある選択肢で進行します)


    1、襖から異様な匂いがするわ…
    (襖を調べます)

    2、戸棚でも調べ直しましょうか?
    (戸棚周辺を調べます)

    3、テレビを見ましょう
    (テレビ付近を調べます)

    4、カレンダーが気になるわ
    (カレンダーを調べます)
  65. 65 : : 2020/02/28(金) 07:33:14
    1番で!
  66. 66 : : 2020/03/05(木) 03:54:58

    東条「入るわね…」

    合図とともに『 用務員室 』へと踏み入れるわ。
    …先程より臭いがキツイわ…腐敗臭というのか嗅いだことの無いような臭いに思わず茶柱さんは顔を顰めたの。

    茶柱「ここに先程までいたんですか?!」

    鼻を抑えながら戸惑う彼女に私達も首を傾げた。

    最原「いや…さっきまではこんなに強くなかったんだ。すぐ側に――『 放置されて腐敗途中の死体 』があるのかもしれないぞ」

    茶柱「はぁ!?し、死体って―――あ、いえ…そ、そうですよねっ。ここで亡くなった方は放置される訳ですからあるのかもしれませんけど」

    東条「そうね。死体の事は置いておきましょう。とにかく先程手にしたこの『 SDカード 』をあのパソコンに入れてみましょう」

    最原「じゃあ行こうか」

    互いに頷きあって私達は畳へと進んだのだけれど…どうも襖の方から異様な臭いがしているのが気になってふっと足を止めてしまうわ。

    茶柱「…ここから臭いが強い気がします…」

    最原「ああ、確かに。最初来た時から開かなかったから調べられてないんだけど気になるな」

    私の様子に同意した足を止めた、みんなは首を傾げるわ――ただ、ひとりを除いてなのだけれど。

    東条「開けてみたいのがあるわ…開けてみましょうか?」

    私の問いかけに2人が戸惑いつつも「やってみるか」と眉間にシワを寄せていた時だったわ。
    …いち早くテレビの側へと着いた赤松さんが声を掛けたのよ。

    赤松「…そんな事より、最原くんがもってる『 SDカード 』の内容見ようよ?」

    茶柱「赤松さ――」

    赤松「襖さっき開かなかったんだよね。無理に調べる必要ってあるのかな…?」

    茶柱さんがキョロキョロと私と赤松さんの方向を見たわ。確かに赤松さんの言葉の通りだけれど…最原君とも顔を見合せ困っていると、赤松さんは抑揚のない声で声を掛けたのよ。

    赤松「いいから、内容先見てからにしようよ」

    最原「あ、赤松さん」

    何かしら?彼女の言い方に少し刺があるわ。茶柱さんは「どうします?」とこちらを向いて指示を仰ぐ形をとっているわ…

    東条「ええ、そうね。最原君、ここは後で調べましょうか」

    最原「ああ…」

    曖昧な返事をした最原君はそのまま赤松さんの元へと進むわ。私達もその後を続くのだけれど…

    東条「(再会してから赤松さんの様子が変な時があるわ…嫌な予感がするのだけれど杞憂であって欲しいわね…)」

    私達は部屋を調べることなくテレビの方へと向かっていったわ。

  67. 67 : : 2020/03/05(木) 03:55:14

    赤松「早く見よっか」

    赤松さんに促されるまま最原君がパソコンに『 SDカード 』を入れて操作をするわ…少しして動画データが見つかったから互いの顔を見合わせて、生唾を飲み込んだ最原君が再生ボタンをおしたの。

    画面は真っ暗…というよりガサゴソ雑音が入っているからカバンやどこかに入れているのでしょうね。暫く人の息遣いが続いたかと思えば…声が途切れ途切れに聞こえ、次第にちゃんとした音声へとなっていったのよ。

    ??『一人になってはいけない 一人になってはいけない…』

    赤松「っ!?この声って――さっきの人のだよ!」

    最原「うん。やはり続きだったんだね…」

    最原君達が頷く。ひとりなんとも言えない表情をする茶柱さんに耳打ちをしないとね。

    東条「私達が探していたものの続きらしいわ。『 ここから脱出する方法 』がこの動画に記録されているかもしれないのよ。
    『 鬼碑忌コウ 』さんという方の記録だわ」

    茶柱「そ、そうなのですね…」

    戸惑いつつも頷く茶柱さんをよそに動画は音を紡いでいくわ。

    鬼碑忌『死んではいけない。絶望してはいけない。
    これを見ているあなたに、ここから脱出する『 さかうちほう 』の方法を残しておく』

    最原・赤松・東条「「「!!」」」

    鬼碑忌『【 サチコのおまじない 】を正順法と同じく、【 人数にサチコを加えた回数分ちぎった型代の切れ端同士をくっつける 】…っ!!』

    怯えた声で紡がれた言葉、最後に何かが動く音がして…それは一定のリズムを繰り返していたのよ。

    鬼碑忌『…し、しなければよかった…来なければ良かった…っ
    …き、君があんなことに…っ』

    ??『…ぜんせぃ……っ』

    どこかからか第三者の声がするわ。鬼碑忌さんの今にも泣き崩れそうな声色とは違い、怒気を孕んでいる女性の声。最原君がピクっと反応し呟いた。

    最原「この声…は、まさ」

    ??『せんせぇえうえっ!!!!』

    ドンドンドンドンドンっ!!

    鬼碑忌『や、やめろ…やめてく、な――』

    ??『ぜんぜぇえうぇぇ!!!』

    鬼碑忌さんの怯えた声、そして次第に大きくなる第三者の声。それはしばらく続いたかと思えば――っ!

    急に画面が明るくなって、そこに映ったのは…私達と同世代と思われる焦点が全くあっていない女子生徒だったのよ。

    ??『ぜんぜぇぇええええ!!』

    鬼碑忌『やめ!!やめるんだ、な―――』

    ブツン、とそこで途切れた動画。思わず息を飲む私達は驚き固まってしまうわ。

  68. 68 : : 2020/03/05(木) 03:55:31

    茶柱「――ひぅっ!!、ななな、今のはっ」

    思わず目をぎゅっと閉じて防御の体勢を取っている茶柱さんの背を擦りながら最原君の方を見るわ。

    最原「驚くばかりの内容だぞ。
    まず…【 サチコさんのおまじない 】の方法自体が間違えていたんだ。正順法…つまり鬼碑忌コウさんの話から察するに本来数えるべき数は『 人数分+サチコの1回 』。
    本当は僕達の場合『 17回 』で無ければいけなかった」

    東条「真宮寺君の話だと『 失敗した場合は…サチコに連れていかれる 』と話していたものね。成功なら『 サチコさんの霊が素通りする 』と」

    この場所に来てから段々と来る前までの記憶が戻りつつあった私達は頷き、確認するように顔を見合せるわ。

    赤松「そう、だね。だから失敗したんだね…
    私も思い出してきたんだけど…真宮寺くん言ってたよ。『 サチコさんのおまじない 』する方法は『 人数分、サチコさんお願いします 』って―――」

    震える声で赤松さんが答える。
    そう。彼女の言う通り、真宮寺君は『 おまじない 』をする前に話していたわ。『 人数分 』だからね、と。
    本来の方法を知らず彼が間違えたのか…それとも故意なのか、今は考えても無駄なのだろうけれど…『 天神小学校 』に来てからの彼の行動を鑑みるに恐く…後者だと思うわ。

    東条「(民俗学に精通する彼が方法を誤るなんて有り得ないわ…だったら…敢えて、ワザととしか思えないわ)」

    茶柱「…転子達は『 来るべきして来た 』って訳ですね…だとしたら、転子達を襲ったのも――」

    信じたくないのだけれど、それが真実なのね…
    どうして私達を巻き込んだのかの真意についてはさっぱり分からずじまいなのだけれど…

    と最原君が軽く咳をしてから再度真っ暗になった動画の画面を睨みながら呟いたのよ。

    最原「それに…撮られたのはこの部屋だ。鬼碑忌さんは恐く隠れていた、だからこそ音しか最初出なかったんだ」

    東条「そうね。最後に一瞬見えた画像を思い出すと…この部屋に似た構造していたわ」

    角度からして恐く――



    ▼ 【 謎のSDカード 】を使用しました… ▼



  69. 69 : : 2020/03/05(木) 03:55:45




    question>>70番さん。
    東条side:『本校舎1階、用務員室』調査安価
    (ある選択肢で進行します)


    1、襖から異様な匂いがするわ…
    (襖を調べます)

    2、戸棚でも調べ直しましょうか?
    (戸棚周辺を調べます)

    3、テレビを見ましょう
    (テレビ付近を調べます)

    4、カレンダーが気になるわ
    (カレンダーを調べます)


  70. 70 : : 2020/03/05(木) 13:11:26
    1でお願いします…
  71. 71 : : 2020/04/03(金) 02:07:04

    私達が睨む方向は同じだったわ。
    そうね…襖よ。

    最原「ここだよな…」

    重々しく呟いた彼は私達と顔を見合せ、生唾を飲み込むと慎重な足取りで襖付近へと行くわ。

    東条「あの映像通りなら恐くこの先に『 何か痕跡 』があるはずよ…そして」

    茶柱「この臭いの大元も分かるわけですよね」

    赤松「とっ、とにかく見て見ない事には始まらないから開けてみようよ!」

    赤松さんの声に頷いた最原君が襖の戸に手をかけ、ゆっくりと動かしていく…とそこにあったのは…

    茶柱「―――ひっ!!」

    真っ先に視界に入った茶柱さんが1歩後ずさったの。その理由は明白で私達もすぐに理解したわ。

    東条「これは…」

    男女と予測できる死体がが折り重なってたのよ。1部分骨が露出していて肉や臓器がうっすらと見えていて。どれぐらい経過したのか分からぬほどの状態だったわ。

    最原「うっ…これは、酷い」

    顔を顰めて視線を落とし、男女の様子を確認した最原君がつぶやく。

    最原「この制服見たな…背格好に僅かに残された髪飾りと髪の毛から僕の前に現れた『 冴之木七星 』本人の遺体だと思う。
    そしてもう1人の和服を来た男性の方が『 鬼碑忌コウ 』さんだ、この着物は雑誌で見た事あるから間違いない筈だよ。
    こんな所で――だとしたら本人に直接聞く事は難しいだろうね…」

    渋い顔で私達の方を見たわ。そうね…彼がアンジーさんや白銀さんみたいに霊体で現れたらきっと分かると思うのだけれど、流石にそれはなさそうな気がするわ。

    赤松「…ねぇ、奥…僅かに光が差し込んでるよ」

    最原「――あ、ホントだ」

    茶柱「赤松さん、よく分かりましたね!」

    赤松さんが急に呟いて指さした場所、それは彼らの死体の奥…僅かに光が差していたの。
    次の瞬間、赤松さんが何食わぬ顔で死体の隙間を縫ってその奥の空間へと躊躇いなく進んで行ったわ。

    最原「まって、赤松さ」

    茶柱「えっ、あ、行ってしまいました…どうしますか?」

    東条「最原君、茶柱さん。私達も進んでみましょう。――さっきから気になっていたのだけれど、今の状態の赤松さん一人にしておけないわ」

    最原君と茶柱さんは頷き、一呼吸置くと死体を避けつつ奥へと進むわ。私もその後を続いて行くとある程度拓けた場所にたどり着いたのよ。どうやら光は随分上の部分から差し込んでるみたいでそこへ繋がる長い梯子のような物が見えるわ。

    赤松「…?ここ、何でだろう…見覚えあるような…ハシゴ?」

    最原「あ、赤松さん勝手に進むと危ないよっ!!うわっちょ、ぱ、パンツがっ!!」

    先に赤松さんと合流した最原君が戸惑い真っ赤な顔で梯子らしきものを登る彼女を直視していたわ…この場合はどう言えば問題ないのかしら…?と茶柱さんと顔を見合せながらも彼らの側へと向かうわ。

    東条「最原君…」

    茶柱「だだ、だ、だっ!!なんて事してるんでか!!ケダモノじゃないですか!!」

    茶柱さんが顔を真っ赤にして咎めている視線は軽蔑でもなんでもなくてその様に怖気付いた最原君は視線を泳がせながらも弁解したわ。

    最原「いや、別に赤松さんのパンツの色がピンクだったなんて見てな」

    茶柱「ケダモノ!!」

    最原「うわっちょ、ちゃば」

    問答無用ですと茶柱さんがその場で投げ飛ばしたの。盛大に吹っ飛んだせいで周囲に埃が舞って少し咳き込む彼をゴミ虫を見るような視線で睨んでいたわ。
    …あれだけ熱心な視線で見ていたら色も分かるでしょうね。

    騒動している内に赤松さんの姿が光の先へと消えたから投げ飛ばされ腰をさする彼に向かって問いかけるわ。

    東条「この梯子、構造上複数人の体重には耐えられなさそうよ。1人ずつ行くべきね。次私が行きましょうか?」

    茶柱「東条さん!?」

    意外な提案に驚く茶柱さんを他所に彼は更に頬を真っ赤にしてたじろぐわ。なかなか面白い光景に笑みが出そうになるけれどあくまでも普段何ら変わらぬ表情して、ね。

    最原「へ!?あ、いや。ぼ、僕が行くよ…」

    茶柱「あ、当たり前です!!さっさと赤松さんの後に続いてください!!」

    茶柱さんの声にビクッと肩を震わせた最原君は慌てて体勢を建て直してそのまま梯子を登って行ったのよ。

  72. 72 : : 2020/04/03(金) 02:07:25

    茶柱「…うっ、眩しいですね…」

    最原君、私そして最後に茶柱さんが登ってきた所で周囲を見るわ。ここは…『 男子トイレ 』かしら?と、先に来ていた赤松さんが壁際に背を任せて震えていたの。

    赤松「ここ、ここで…魔姫ちゃ…春川さんが…っ!!」

    事情を知る最原君はとてもバツの悪そうな表情で視線を逸らしていたわ。私や茶柱さんは全く状況が把握出来てないから首を傾げるしか出来ないのだけれど…これは…と最原君に無言の視線を送り説明を求めるわ。

    最原「…この場所…って認識でいいのかな。この僕達が丁度出てきたトイレの個室の中で春川さんが亡くなっていたんだ…ほらよく見ると血が個室の壁一面に散らばっているだろ」

    茶柱「――あ、え、それじゃぁ…」

    赤松「やっぱり私がっ!!私のせいでっ!!
    私が最後まで一緒に居なかったからっ!一方的に…言い合いになって別れたから…そのことを怒ってるんだよ…う、うぅぅ…っ」

    赤松さんがその場でしゃがみ泣き崩れたの。そうよね…赤松さんを責める人は誰一人としてここには居ないのだけれど、私達が思う以上に辛いものがある筈よ…それこそ茶柱さんと合流した時の彼女と同じに。

    私は赤松さんの元へと歩み寄ろうとした瞬間だったの。最原君がポケットから…2台のスマートフォンを取り出したのは…

    茶柱「――最原、さん?」

    どちらも見覚えがあるわ。
    ひとつは『 赤松さんのスマートフォン 』だわ。そしてもうひとつは――亡くなった春川さんのものだったの。

    泣き崩れる赤松さんの傍に寄って肩を叩くわ。気が付いて顔を上げた彼女に見せたのは――『 春川さんのスマートフォン 』だったのよ。

    最原「赤松さんは悪くないよ。キミのせいでもましてや自殺でもないと思う。
    ――だってコレを見て」

    嗚咽混じりに赤松さんが向けられた画面にかじりつき、その文字をゆっくり読んでいったわ…

    赤松「『 楓へ

    さっきは1人で勝手に行動してゴメン。
    普段から1人で行動する事に慣れていたからあんたも平気だとタカ括ってた。私がいない間にすごく酷い目に遭遇してたのに助ける事出来なかったことも謝らせて。


    そもそも、あんたの事をこうして呼ぶなんて考えもしなかった。…それだけじゃないよ。
    あんたがずっと私の事を心配していてくれた事、面と向かっては言えないけど感謝してるんだ。

    またあんたが許してくれるなら、私はあんたとまた行動したいんだ…あんたとがいい。
    1階の玄関前で待ってる――楓が来るまで待ってるから。

    それに2人で探した方が…最原や百田達にもきっと再会できると思う。バラバラになっていい事なんてひとつもないしさ。
    だから、待ってる。あんたにこんな辛気臭い場所似合わないよ。

    早くここから出ようね。


    …あんたの……楓の事が心配なんだ…だから、 』」

    途中で終わっているみたいだけれど春川さんが赤松さんに向けた、不器用だけど優しさの溢れる文字に私と茶柱さんも思わず涙が出そうになったの。
    …いいえ茶柱さんは静かに鼻をすする音をしていたから…もしかしたら…と、静まり返った空間に、最原君の酷く優しい声色が降ってきたわ。

    最原「コレでも…春川さんが、赤松さんの事を恨んでるとでも思う?
    ――僕は…思えないよ…思いたくないよ。
    そもそも自殺するような人じゃないよ、春川さんはそんな弱い人じゃない筈さ」

    赤松「…そ、んな…っ!
    …魔姫ちゃん…?!…っうううっ!!」

    最原君がそのままに『 春川さんのスマホ 』を渡すわ。それを大事そうに抱いた赤松さんはその場で号泣したの…

  73. 73 : : 2020/04/03(金) 02:07:45

    茶柱「赤松さん…」

    赤松「みんな――ゴメンね。
    …取り乱しちゃってさ…」

    申し訳なさそうに赤松さんの背中を黙ってさすっていた茶柱さんの声に顔を上げて答えたのはそれから暫くしてだったわ。

    東条「問題ないわ。辛かったでしょうね…」

    目元を真っ赤にした赤松さんが目を細め、うんとだけ頷いたの。
    最原君は『 赤松さんのスマートフォン 』を渡すか迷っていたけれどそのままポケットにしまったわ…何故かしら?と戸惑う私に彼は声を出さずに口元を僅かに動かして「後で話す」とだけ呟いてから、赤松さんに向かって語りかけるわ。

    最原「春川さんはきっと今でも赤松さんが脱出する事を願っているはずだ。だってこうして春川さんは文字を遺してくれたんだからさ」

    赤松「うん。そうだよね…頑張らなきゃ、だよね」

    『 春川さんのスマートフォン 』を胸元で大事そう抱く赤松さんは微笑んで立ち上がったわ。

    茶柱「そうです!!その意気です!!
    気が滅入ってしまったままではいい事なんてないんですから!」

    そう鼓舞している茶柱さんの笑顔が痛々しく感じてしまうのは気の所為にしておくべきね。そう。みんな気持ちの面での限界は近い筈よ…だからこそ猶予なんてものは無いのかもしれないわね。

    最原「じゃあ、進もう。この先にまた何かあるかもしれないしさ」

    最原君の一言で頷く私達。
    そこで先程得た情報をおさらいしとかないといけないわ。

    東条「先程の記録から『 さかうちほう 』が分かったわ。確か…『 人数に+1…サチコさんを加えた数 』だったわね」

    茶柱「必要なものは『 おまじないの切れ端 』ですね。皆さんお持ちですか?」

    茶柱さんの問いかけに全員で探すわ…最原君と赤松さんは生徒手帳に挟んでいて、茶柱さんは手帳型のスマートフォンに挟んで、私は普段持ち歩いている黒革の手帳のポケットにあったわ。

    最原「とりあえず僕達はあるからあとは百田君達になるね」

    茶柱「流石に夢野さんたちが無くすとは思えませんし問題ないと思いたいですけど――」

    東条「そうね。それを確かめる為にもどこかで落ち合うことも必要よ」

    赤松「うん。じゃあ…行こっか」

    赤松さんが廊下へ出て、それに続こうとした私と茶柱さんをを最原君がとめるわ。

    最原「ちょっと…話しておきたくて」

    茶柱「げっ!?何用ですか?」

    東条「最原君、この場で長時間赤松さんを1人にするのはとても危険よ?
    彼女、先に出たのに中々私達が来ないとなると不安になるわ。肝心の聞かれたくない部分を話している時に戻ってくる可能性もあるわ。
    それだけじゃないわ。場合によっては悪い方向に気持ちがいきかねないわよ。
    もし、最原君が赤松さんに聞かれたくない話なら、隙を見て1人ずつ話すべきだと思うのだけれど…どうかしら?」

    私の言葉に最原君はハッとなって「そうだな…確かに」と答えたわ。

    東条「私は後でいいわ…赤松さんと廊下調べるわね」

    それだけ言うと私は廊下に先に出ることにしたのよ。

  74. 74 : : 2020/04/03(金) 02:08:06

    赤松「あ、向こう側と繋がってたんだね、この廊下…」

    廊下に出て最初の一言は赤松さんの声だったわ。
    私が出てきた事で赤松さんが更に説明をしてくれたわ。

    赤松「あ、そっか…東条さんは知らないんだもんね。
    あのね『 次元がひとつになる前 』はこの場所壁だったんだ…向こう側に行けたら良いけど…難しそうだよね」

    そうだったのね。
    確かに『 男子トイレ 』からでて右側に続く廊下は途中で床が崩れているのだけれど、どうやらその先には『 資料室 』と書かれた札がぶら下がっている事から元々は…とも言えるわ。

    東条「そうだわ。できる限り見てみましょうか」

    赤松「あうん。あ、あれ最原君達は――?」

    なかなか出てこない最原君と茶柱さんを呼ぼう『 男子トイレ 』へと戻ろうとする彼女をとめるわ。

    東条「赤松さんには悪いからって話してはなかったのだけれど、『 男子トイレ 』を調べてみるわと話していたわね」

    赤松「ああ…そっか、何か変わっているかもしれないんだもんね。私は調べたくないから…そうしてくれると――って戸棚なんてあったかな?」

    話半ばに赤松さんはフラフラと床が途絶えている箇所へと足を運んだわ。私はこの場所に来たのは初めてだからついていくことしか出来ないのだけれども。

    東条「赤松さん?」

    赤松「…うん。戸棚見てみて…中に何かあるよ…?『 SDカード 』かな?」

    私が追いつくと彼女は戸棚を開けて奥にある『 SDカード 』に手を伸ばしていたところだったのよ。青い色をしているけれど2GBのものね…先程と似たような感じを受けるけれど。

    赤松「何か続きがあるのかな?さっき見た映像にはその先なんてなさそうだったけど…一応持っておくね」

    掌に乗せて眺めていたけれど、ポケットにしまったの。私が持っておきましょうか?と問い掛けたのだけれど、彼女は「大丈夫」と返したわ。

    東条「そうね。先程の映像には居ない『 たぐち 』さんという方が撮ったのかもしれないけれど…彼が鬼碑忌さんから離れた時にカメラを手放していたから別の人物かもしれないわね」

    赤松「そっか!『 たぐち 』さんって方はいるかもしれないんだもんね」

    と会話していたら『 男子トイレ 』から最原君と茶柱さんが出てきたわ…どうやら「例の話」は終わった様子ね。
    直ぐに私達の姿を見つけて合流するわ。

    茶柱「あ、お待たせしました!!」

    最原「ゴメン…」

    赤松さんに向けて謝る最原君の腕を隠れて小突く。と赤松さんが首を傾げたけれど直ぐに茶柱さんの方を向いて聞いたのよ。

    赤松「『 男子トイレ 』調べてくれてたんだよね?その…何か見つかったりしたの?」

    茶柱「へ!?ああ…その…」

    返答に迷い目を泳がせている茶柱さんに対して、最原君がフォローに入るわ。

    最原「――いやめぼしい物とかはなかったかな。赤松さんは?」

    赤松「あ、あのね。コレ『 SDカード 』があったんだ…」

    さっきしまった『 SDカード 』を取り出して見せる。最原君も首を傾げていたけれども「後で見れたら見ようか」と答えた時だったのよ…


    ??「んあ!!お主らはっ」




    ▼ 【 SDカード 】を入手しました… ▼
    説明:(青色のどこにでもあるような2GB容量のメモリーカードです。何故こんな場所に置いたのか誰が置いたのか分かりません)


  75. 75 : : 2020/04/19(日) 00:08:19

    (時は遡り…)

    『 百田解斗 』side

    再会した終一達の背に手を振る。
    と同時にやるせなさが込み上げてきやがった。

    百田「まじかよ…」

    そう呟けねー自分自身が情けなかった。茶柱は気丈に振舞っていやがったが、腫れた目元を見ればどれほど辛かったのかと実感できちまうんだからよ。

    夢野「転子…」

    王馬「はいはい、辛気臭いったらありゃないね。2人共やること分かってんのさ?」

    しゅんと項垂れたオレと夢野に対して王馬の鋭い視線とは裏腹に呑気すぎる声が聞こえた。

    王馬「わかってると思うけどここでうだうだするんだったら1人で行くけど、どうすんのさ」

    今にでも2階へと行こうとしている王馬の背中に向かって呟く。クヨクヨしても埒が明かねぇしな。夢野もトテトテとその後をついてった。

    百田「――んな事は、分かってる」

    オレたちはその場から離れたんだ。


    言葉少なく、廊下を進む。互いに何かしら思うこともあんだろうな。

    百田「(ちぃ…この状況を何とかしねーとならないっつーのに気まずいったりゃありゃしねぇ)」

    と、夢野が急に『 玄関前の廊下 』で立ち止まったんだ。な、なんだ?

    夢野「…白銀かの?この気配は…」

    戸惑いつつも首を傾げ真っ直ぐに『 玄関 』を見ていた。気配が微塵も感じらんねーオレらは「は?」となっていたんだよ。

    王馬「――夢野ちゃん?」

    声を先にかけた王馬が肩に手を伸ばそうとした時夢野がすり抜けて勝手に『 玄関 』の扉を開いてその先へと姿を消しやがったんだ。お、おいっ!!この状況下で単独行動はなしだぜっ!!

    百田「っ、追いかけんぞ!王馬」

    王馬「分かってるってば!」

    『 玄関 』扉の閉まり掛かったのを強引に開いてオレらもその後を追ったんだ。


    百田「夢野!何勝手に行動してんだ」

    扉は勢いよく開いたせいで音にビクリと肩を震わせた夢野が振り返る…その手元には『 桃色と紫色の手帳らしきもの 』が握られてたんだ。

    王馬「はぁーなんで急にここに来たのさ…」

    王馬が減らず口を零しつつ夢野の傍へと行く。オレも同様について行くと俯いた夢野がぽつりと呟いたんだ。

    夢野「…ほれ、これ間に挟まっておったぞ。恐らく真宮寺のメモじゃろうて」

    手帳の間から紙切れをオレに渡す。ん確かに字体は真宮寺のだが…

    百田「読んでみるか?」

    夢野はコクンと頷き、王馬も興味ありげな視線を俺に寄越す。色々書かれてやがるなと思いつつ、続きを読んだんだ。

    百田「『今日【 丹羽亜衣子 】との接触をした。どうやら【 冴之木七星 】は友人と共にその【 異界 】とも言える霊磁場に足を踏み入れたのではとの事だった。

    サイトで方法を残しているが所詮ネットだ。嘘が混じっているとみて間違いないと思ったので後日友人を巻き込み試しに【 サチコさんのおまじない 】を実行する事にした。

    【 正しい方法 】はこの手の中にある。それをひとつでも欠くことが出来れば成功…と言っても過言ではないだろう。
    サイトに書かれた手順で巻き込む事にする。期限は○○日だ。
    ――その日が楽しみだ』
    …って完全な手記やら日記になってんな」

    それを『 真宮寺の手帳 』に挟み直す。
    独白もとい日記に様なものについ見るの辞めちまうか、とも思うが何故かそれは出来ない…そんな気がしちまってたんだ。

    真宮寺本人に問い質す材料にもなりかねぇしな。


    夢野はうむとだけ反応すると今度は手にしてた『 手帳 』を掲げたんだ。



    ▼ 【 真宮寺のメモ② 】を入手しました… ▼

    説明:(独白にも思えるメモの続きとも言える代物です。まだ続きがあるようです)



    夢野「真宮寺のメモを揃えれば何か手がかりでもと思ったのじゃが…これを見よ。これは…『 冴之木七星 』の手帳じゃよ」

    王馬「ふぅん…って、白銀ちゃんの身体を操ったりしてる人と真宮寺ちゃんのメモにもある名前とと同じじゃん!」

    王馬が目を丸くする。夢野は頷き、中に入っている紙をペラペラと捲っていく。

    夢野「恐らくな。軽く…読むと心霊的な事についてのレポートらしいのじゃ。全部揃っている訳じゃ無いがこれを見てほしいのじゃ」

    と夢野がとあるページで手を止めた。それは…


    【 霊場調査ファイル××K県「天神小学校」 】
    の文字だったんだ。

  76. 76 : : 2020/04/19(日) 00:08:38

    夢野がそのページをオレと王馬に見せた。
    そして、今度は王馬が読んでいった。

    王馬「なになに…
    『 ・実地調査方法:入手、(要二名以上)
    ・帰還方法:入手、情報を更に収集し、退路の補充を行う必要あり。

    現地で篠崎家の調査を進めるだけで強い霊障を受けた。
    体の右半分が麻痺、左鼓膜に異常、姿写真にオーブ・影響有。
    数週間に渡る頭重感、吐気、下血。

    危険なので今回、天神小学校の実地調査には先生は同行させない方がいいかもしれない。
    …先生、今日も持ち込みダメだったようだ。この出版社で何度目だろうか。こんなに面白い作品なのに。
    尖りすぎていて、わかって貰えないのか…先生が背中を丸めてしまって可哀想だ。

    しかし、今の猟奇事件ルポの記事の連載は絶対に化けると思う。私も、できることは何があっても協力する 』

    …だいぶこの冴之木七星って人は先生とやらにご執心っぽい文だけどさ、これって」

    夢野「んぁ。恐く最原たちが話しておったろ『 さかうち 』とやらを。それが乗っておるやもしれぬ。
    真宮寺の答えが先かどうかは分からぬがの」

    王馬が言いかけた言葉を夢野が答えた。そうか、この続きに何かあるって事だよな?
    ってかよ、そいつの続きを探すってもどこにあるんだ?

    夢野「場所は分かる。…白銀が教えてくれたからの」

    百田「はぁ!?し、白銀がか?」

    幽霊になっちまった白銀がオレらの知らぬ内に夢野だけにヒントを与えてるつー事かよ!?
    な、なんだそれはよ…

    夢野「今の白銀は…『 冴之木七星 』のせいでほぼ消えかかっておるのじゃ。じゃから今ウチの傍へに居るがお主らには分からぬじゃろう。若しかするとかろうじで声が聞こえるかもしれぬが…」

    う、なんだそりゃっ!!と、鳥肌が込み上げてきやがった。今声を出したら情けねぇ蚊の鳴くような声になりそうだからつい口を噤んでたら王馬に小突かれニヤニヤされた。
    くそー!テメーは怖くねーのかよぉぉおっ。

    王馬「で、それで続きが分かるんだね。それ探しに行くのが手じゃない?」

    夢野が頷き視線を背後へと向ける。恐らくそこに白銀が居るってことになるんだよな…と思っていると頷いた夢野が再度オレらの方を見たんだ。

    夢野「――…うむ、うむ。そうか。
    次は…2階にあるようじゃな。行くぞ」

    有無を言わせぬ夢野の強い視線に従うことしか出来なかったんだ。



    ▼ 【 冴之木七星の手記① 】を入手しました… ▼

    説明:(彼女の髪飾りと同じマークが施された紫と桃色の手帳です。真宮寺の手帳同様にリングタイプで彼女が普段から調べあげた調査記録が事細やかに記載されています)



  77. 77 : : 2020/04/19(日) 00:08:58

    夢野を先頭に迷うことなく『 1のA 』前の廊下にやってきたんだ。そこに落ちていたのは『 冴之木七星の手記 』の続きだったんだ。

    夢野が拾い、その続きを読む。

    夢野「『 期末試験があったので、久し振りに学校へ出ていた間に先生が私を置いて、現地…天神小学校へと行ってしまった。

    まだ情報が少ない状態で、危険すぎるとあれほど言ったのに。
    きっと先生の助手、田久地さんがそそのかしたのだ。
    …単純だが効力のある帰還方法は、先生に伝えてあるけれど、やはり心配だ。

    ブログの更新も完了。
    友人のさやかを巻き込んでしまうので気が引けるが、これより私も実地調査を開始する』
    ――んぁ?何じゃろ…この赤黒いものは…」

    夢野が紙の端にこびりつく赤黒いものを撫でる。とうに乾いているせいで何かが判別できねーが安易に触っていいものか?と疑問に思うがな。

    王馬「その『 冴之木七星 』は友人と共にここに来たんだね。それにしても、彼女は冷静だよね。文章内だと比較的冷静味を感じさせるけどさ…本心はここに在らずって感じだったかもよ」

    百田「は?なんだそりゃ?」

    王馬の突拍子もない言葉に困惑するがニヤニヤ笑って嫌がったアイツは何も答えてはくれなかった。

    夢野「…次は…下の階じゃな」

    そうこうしている内に夢野は歩み出しちまう。まるで誘われているようなその歩き方に疑問を抱きながらもオレらはついて行くことしか出来なかったんだ。



    ▼ 【 冴之木七星の手記② 】を入手しました… ▼

    説明:(彼女の遺した手帳の続きです。どうやら彼女は友人と共に天神小学校へと来たみたいですが…)



    百田「あった、な。――しかも今度は『 真宮寺のメモ 』もあんぞ」

    1階、『 玄関 』からさほど離れていない場所に落ちていたんだ。1枚は『 冴之木七星 』のてもう1枚が『 真宮寺 』のだ。
    オレが拾って先に『 冴之木七星の手記 』の文字を読む。

    百田「『 篠崎サチコのおまじない
    【 正順法 】・【 逆打ち法 】メモ 』
    ――ってコレは」

    思わず顔を上げる。今度こそ――知れるって事だ。夢野と王馬が期待の眼差しでそれを読んだ、そう…読んだんだ。


    百田「―――…っ嘘…だろ…」

    夢野「コレは…」

    王馬「ふうん」

    読み終えたオレ達は言葉を失った。
    あまりにもそれは…



    ▼ 【 冴之木七星の手記③ 】を入手しました… ▼

    説明:(彼女の遺した手帳の続きです。逆打ち法とは一体…)



  78. 78 : : 2020/04/19(日) 00:09:13

    百田「…気を取り直して、こっちも読むか?」

    もう1枚を掲げて青白い表情をした夢野と王馬に声をかける。2人は頷いて文字を待ってたんだ。

    百田「…。
    『 【 姉さん 】に会いたい。何故死んでしまったのか。どうすれば再び笑顔の【 姉さん 】に会えるのか。幾度となく調べた。

    ある日、夜長さんが僕の所にやってきた。
    彼女は言った【 皆がどんどん死んでいく夢 】 を視たんだと。そんなのは正夢になって欲しくない…そう訴えた彼女の願いと僕の目的が同じに見えたんだ。

    ちょうどその頃知った【 サチコさんのおまじない 】を利用出来る。そう思い夜長さんに真実の部分をぼかしつつ協力するに頼んだ。

    ――敢えて【 失敗 】することで双方の願いを叶えられる。
    これから夜長さんと僕の願いを叶えにいく。

    あそこで皆を殺せば一緒にずっと居られて夜長さんの願いも糸も容易く叶えてあげれる。

    それに【 姉さんの遺灰 】を持っているのだ。だから【 姉さん 】とも直に会えるだろう。楽しみだ。

    もしもの時の為に【 丹羽亜衣子 】から聞いた本当の手順も記載しておく。最悪【 姉さん 】を持ってる僕だけでも逃げれるように…方法は―…』

    ――ってコッチにも書いてあるな…正しい方法がよ」

    夢野「そんな…真宮寺は全てわかった上で自分のエゴの為にウチらを…巻き込んだのか!!」

    王馬「みたいだね。っても気味悪くて鳥肌モノだけどさ…つまり真宮寺ちゃんは確信犯だった訳だ」

    王馬が呆れ気味に答え、その後に「アンジーちゃんは嘘ついてなかっただね…」と独り言を呟いてたがよ。

    百田「嘘だろ…っ。結末を知ってて巻き込んだって事かよ!!全滅を狙ってたんだな…あのヤローだけは」

    拳を思わず壁にぶつけちまう。なんで、なんでだよっ。んな事してもテメェの姉は帰ってくることなんぞ無ぇって分かるだろうが!!!

    くそっくそっ…っ!!

    夢野「真宮寺の本音はそこじゃったのだろうな。姉に会いたい。その想いだけが凶行に至らせたのじゃな…」

    俯く夢野がボソリと呟く。

    夢野「――それは…酷いよ。
    …あまりにも…残酷過ぎるよ…わたし…だって――だからこそ…っ」

    百田「?」

    一瞬、口調が…白銀らしくなったのに驚いて夢野を見る。声を掛けようとしたら、夢野がハッと目を大きく開いて…叫んだ。

    夢野「――次は、『 理科室 』にあるようじゃぞ」



    ▼ 【 真宮寺のメモ③ 】を入手しました… ▼

    説明:(彼の行動理由がはっきりと書かれているそのメモの最後には正しい方法が書かれていました)


  79. 79 : : 2020/04/19(日) 00:09:44


    (久々の安価です!!大変遅くなりました!!)

    question、>>80番さん。
    百田side:『理科室』調査安価
    (ある選択肢で進行します)


    1、洗面台があるな
    (洗面台周辺を調べます)

    2、布に被った「何か」があんだが…
    (窓際に佇む布を調べます)

    3、戸棚からカタカタ音がするんだがよ
    (戸棚周辺を調べます)

    4、相変わらず夥しい血があるよな
    (廊下側の窓に飛び散る血を調べます)

    5、テーブルの下になにか落ちてないか?
    (教室奥、実験台下のテーブルを調べます)


  80. 80 : : 2020/04/19(日) 00:20:49
    2でお願いします!
  81. 81 : : 2020/04/19(日) 01:42:49
    (安価早い!!驚きの速さ!!
    ありがとうございます!)


    唐突に言われちまったモンだから王馬もオレも驚いちまった。叫んだ夢野自身も驚き固まってたんだから叫ぶつもりはなかったのかもな。

    王馬「突然叫ぶから寿命が1秒縮まっちゃうよ、どうしてくれるのさ!!」

    夢野「ん、んぁ?!そ、そんな勢いで叫んだわけじゃないのじゃっ!!」

    ムキーと怒るその姿は日常のそれだ。
    ――っと感慨深く見てるんじゃねーな。ゴホンとわざとらしく咳をしてからあのなぁ…と今にも言い争いそうな2人を制す。

    百田「夢野がそう言うなら『 理科室 』行くべきだろ。喧嘩する暇なんぞないんだろ?」

    夢野「んあ!!そ、そうじゃな…」

    王馬「えーこれからが夢野ちゃんいじりが楽しくなるところなのになー…ちぇ」

    口を尖らせる王馬にゲンコツでも喰らわせようかと思い上げた拳を止める。あ、つい忘れちまうが王馬の奴は怪我してんだったな。下手に行動移したらアウトだろ。

    百田「とにかくだ、確か『 理科室 』っーのはよ…2階になかったか?こうも構造変わっちまってると何かと不便だろうが…」

    拳を解いて腕組みをする。オレが最初いた校舎の『 理科室の位置 』を思い出すに、終一達のいる側にあったと思うが…

    夢野「いや、今はこちら側でも行けるじゃろう。恐らく先程進めんかった先に教室が見えたからの。その場所付近にあるやもしれぬ、白銀も『 理科室 』と言っておったからあるじゃろう」

    王馬「なるほどね。だったら善は急げ!――じゃない?そろそろ進めるようになってるといいけどさ」

    百田「そうだな。行くか」


    2階に来たオレ達は真っ直ぐ廊下を突き進んだ。
    終一が『 仕掛け 』を動かしてくれたお陰で突き当りの廊下が進めるようになってたが…装置が動く音なんぞ聴こえてたか?と僅かに疑問に思っちまった。

    と、ある程度その出来た廊下を歩いていた時だったんだ。オレらが通るのを待ってたかの用に教室側の窓に絵の具のような真っ赤な跡が跳ねるかの如く走ったんだ。

    夢野「んあぁ!!」

    王馬・百田「「!!」」

    絵の具のような真っ赤な跡…臭いが漏れてそれは絵の具なんぞ生易しいモノじゃない事が嫌でも分かっちまう、つい顔を見合せその教室の表示を見たんだ…それは。


    百田「『 理科室 』かよ…」


    オレらが探していた『 理科室 』だったのさ。

    夢野「こ、ここ、に入らねばならぬのか?」

    当然躊躇いがちになっちまう。廊下を渡りきって、『 理科室 』前へと佇むオレは生唾を飲み込む。

    百田「…真宮寺かもしれねーしな…」

    終一達の話だと、真宮寺は刃物を持っている。武器らしきものを持たぬオレらがもし遭遇したら逃げる他方法がない。もしかしたらこの先にいるやもしれねぇ、そう思うと身体が震えてきちまう。

    王馬「お宝が見つかるか邪が出るか…いこっか!」

    ひとり呑気な王馬がわざとらしく「おっ邪魔しまーーーす」と扉をスライドさせやがったんだ!!
    お、おいっ!!

  82. 82 : : 2020/04/19(日) 01:43:05

    百田「うわっ、王馬急に開くなよ…ってアレ?静かだな…誰もいねぇぞ?」

    王馬が思いっきりスライドさせた扉の先…『 理科室 』の中は比較的綺麗だった。…その窓の異常さを除いては、だが。

    警戒心強めで慎重に足を踏み入れる…どこにでもありそうな『 理科室 』だな、んあれは?
    少し気になったものがあって側へと進む。…気がつくと王馬と夢野もいた。

    王馬「…なんだろうね、この白い布」

    夢野「…こうして置いてあると覗きたくなる気持ちがウズウズと――」

    百田「だよな…ゴクリ」

    窓側に『 さもわざとらしく被った白い布 』に興味が湧いちまう。なにか被っている様子で…つい捲りたくなっちまう。

    王馬「――試しにめくっちゃう?」

    百田「いや、やめとこうぜ…っ、物騒なモンでも出たらどうするんだよっ」

    夢野「案外いいものやもしれぬぞ?」

    なんてコソコソ話している内に王馬が「せーの」っとそれを大体的に捲っちまったんだ!!

    百田「お、おいっ、なにしやが――っ!!」

    夢野「んぁああああっ!!」

    視線が『 捲られたモノ 』を捉えた。そ、そこに居たのは――は?ご、ゴン太だ…

    王馬「…ゴン太?」

    体育座りしたゴン太だったんだ。気を失ってんのか、微動だにしねぇ。
    揺すって起こそうとしてもだ。パッと見外傷は無い様に見えるが――

    王馬「…目を覚ましたとしても今のゴン太が正常かどうか判断つかないよ」

    いつの間にか1歩下がった王馬が声をかける。た、確かにと思う傍ら無事でいて欲しいとも思っちまってなんとも言えねぇ気持ちが押し寄せる。

    夢野「じゃ、じゃが…このまま放っておくのか?」

    ソワソワと視線を泳がせる夢野が呟く。そ、そうだぞ、た、確かにゴン太が無害なのかと言われちゃ何も言い返せねーがよ…放っておくのは無理な話だぜ?

    王馬「取り敢えず目的のものを探し出してからでもいいんじゃない?いくら気を失っているとはいえ揺さぶっても反応がないのはおかしいしね。
    ゴン太の事だから不貞寝してたりしてね!」

    夢野「んあ!!ゴン太が不貞寝などする訳なかろう!
    …じゃが王馬の言うことも一理あるじゃろうて。目を覚ました時の事を考えると――この教室内上手く逃げれないやもしれぬしの…」

    百田「…」

    ゴン太が操られていた時のことを思い出しちまう。容赦なく入間やキーボ、それに王馬でさえ見境なく攻撃したんだもんな…くそっ、だがよ…っ。

    百田「(実際こんな姿で眠っているのを見ちまうとどうしても…っ)」

    下唇を噛む。どうしてこうも無力なんだよっ!

    百田「…ちっ…」

    王馬「まだ見なきゃいけない場所あるし、全て終わってから考えればいいんじゃない?」

    と王馬が珍しくフォローする。そ、そうだな…と無理に納得させてその場を離れる事にしたんだ。

  83. 83 : : 2020/04/19(日) 01:43:26

    question、>>84番さん。
    百田side:『理科室』調査安価
    (ある選択肢で進行します)


    1、洗面台があるな
    (洗面台周辺を調べます)

    2、調査済み★

    3、戸棚からカタカタ音がするんだがよ
    (戸棚周辺を調べます)

    4、相変わらず夥しい血があるよな
    (廊下側の窓に飛び散る血を調べます)

    5、テーブルの下になにか落ちてないか?
    (教室奥、実験台下のテーブルを調べます)

  84. 84 : : 2020/04/19(日) 02:00:50
  85. 85 : : 2020/04/19(日) 02:34:06

    一向に起きないゴンタを背にして次に目が止まったのは、廊下側の窓だ。血飛沫が一直線上に飛び散っていた。

    百田「…一体何があったんだ…?」

    教室内を見回すにも死体があるとかじゃねぇしな。そもそもゴン太が眠ってるだけだしよ。そのゴン太の身体には血が着いてるがそれは本人のじゃ無さそうだしな。他に考えられるものが一向になく戸惑いさえあるんだ。

    王馬「誰かが…ペンキとか塗ったんじゃないの?それこそ――ゴン太が血糊をばさーっとしたとか」

    未だ疑惑の視線を向けている王馬の言葉にどうだかなとだけ答える。テメーさっき「不貞寝してたりしてね!」とは話してたがよ、そこまで器用な奴だとは思えねーんだよな…

    夢野「…血糊ならば良いが…実際の血じゃろう…なんとなくじゃがそう思うのじゃ…」

    弱々しく答えた夢野は血飛沫の近くまで歩いていた。そしてその近くに落ちていたものを徐に――拾ったんだ。

    夢野「んぁ…コレは…刀かの?」

    この位置でも分かったんだが…刀だな。鈍く光るそいつは所々に血を付けてやがる。夢野が拾った足元付近に血が着いてるから恐くこの窓の血飛沫か「 刀で何かを切りつけた 」――って所だろうな。

    王馬「たはーかなり物騒なものが出てくるじゃん。この教室はさ。にしてもそんなもの振り回すなんて夢野ちゃんゴーカイだねー」

    夢野「ふ、振り回してはおらぬぞ!!第一まじ…ゴホンウチの魔法で使う剣より重いから振り回さないわ!!」

    夢野の返しにとてもつまらなさそうにへーと棒読み口調で返してる王馬を見るとなんだか気が抜けちまう…はぁ、ここいらで気を引き締めねーとならねぇってのになんでこうなるんだかな…

    百田「テメーら真面目に調べろよ」

    夢野「んあ!!百田に言われんでもウチはきちんと調べておったわ!」

    頬を膨らませて抗議する夢野の頬をつつく王馬の姿に呆れちまう。あのなぁ…

    溜息を吐いてると王馬がニヤリと口角を上げた。

    王馬「根詰めてるといざって時にチビっちゃうでしょ?」

    百田「んな事はねぇーだろ」

    王馬「えー意外とあるかもじゃんかー。
    だからオレが和み役買ってるんじゃん」

    夢野「…本気か?」

    夢野のジト目が王馬を射抜く。それに対し王馬は平然と手を軽くヒラヒラさせた。

    王馬「流石に呑気に話し過ぎてない?さくっと探すもの探そうよ」

    テメーが引っ掻き回したんだろうが…なんて言い返すのも億劫で今度は違う所を見ることにしたんだ。
  86. 86 : : 2020/04/19(日) 02:34:20

    question、>>87番さん。
    百田side:『理科室』調査安価
    (ある選択肢で進行します)


    1、洗面台があるな
    (洗面台周辺を調べます)

    2、調査済み★

    3、戸棚からカタカタ音がするんだがよ
    (戸棚周辺を調べます)

    4、調査済み★

    5、テーブルの下になにか落ちてないか?
    (教室奥、実験台下のテーブルを調べます)

  87. 87 : : 2020/04/19(日) 22:08:15
    3でお願いします!
  88. 88 : : 2020/04/21(火) 01:43:19

    百田「(ってもよ――…ん?)」

    視線を巡らす…途中でカタカタと震える耳障りな音が聞こえてきやがったんだな。音の方向を向くと震えてんのは戸棚だ。

    なんだっ。急にびっくりさせんなよっ!!

    王馬「たはー百田ちゃん、この期に及んでビビってんのー?」

    百田「んな!?んな事はねーよっ!!」

    無意識に言葉にしちまったみてーだな…
    王馬を睨み取り繕ったが、気味悪ぃ笑顔を浮かべてやがるから妙に腹立つな。睨み返したが王馬のヤローは何処吹く風、そっぽ向いているし。

    王馬「その割にはかなりビビってる様が滑稽だよね、にししっ」

    百田「っ!!…違うからな!!」

    『 天神小学校 』にいた時間が長かったからだな。多少のことには耐性ついたつもりかと思ったんだがよ、流石に不意打ちはねーぜ…

    と、ともかくだ。王馬のせいで逸れちまったがよ…戸棚を調べねーとダメな気がする。王馬は相変わらずオレの方をニタニタ見やがってるし夢野は刀をどうスっかで迷ってる様子だ。

    百田「(ここはボスのオレがやるっきゃねーのかよ…)」

    少なくともチラチラたまに戸棚の方へと見ていたが、ガラス戸がカタカタ酷く揺れたまんまだしよ。…よし、ここは一気にやれば問題ねーだろう。決意するとあーだこーだ話しかけてる王馬を無視し戸棚の前に向かった。

    百田「(…ち、近くで見ると怖さが…やめようかな…っ!!王馬が見てる手前やらないとだよな…)」

    キョロキョロと辺りを必要以上に見回しちまう。
    深呼吸をして、戸棚に手を触れ一気に開く――と。


    百田「ぎゃぁぉあああああっ!?」

    その中には、あ、あ、あっ、あったんだ…
    『 誰かの手首 』がな。

    夢野「んあ?百田よどうかしたのじゃ――っ!?な、な、ななんじゃこれはっ!!」

    王馬「うわー…手作り感満載の手首だねーしかも血糊までご丁寧に再現されてんじゃん」

    驚き尻餅したオレのすぐ側に夢野と王馬が来たんだ。夢野は口元に手を当てて震える声色で断言してたんだ。

    夢野「さ、流石にこれは生身…じゃろうて」

    百田「な、な、な、生身ぃ!?」

    上擦った声になっちまった…情けねぇなと思っている最中で王馬がまじまじ『 ソイツ 』を見てやがった…こちとら凝視できねーってのによォ。

    王馬「――まだ血が流れてるから切られたてかもね。誰のか分からないけど『 左手 』かな?
    ってかなんでこんな所に放置したのかさっぱりだけど」

    夢野「んあ!!な、なんじゃと…」

    夢野もおっかなびっくりで見続けられるのはある意味スゲーと思うがよ、んな冷静にぶんせきしてんじゃねーよぉ…

    王馬「―――他の戸棚にも『 1部 』あったりしてね」

    な、ななにを物騒な事いってんだって、王馬は軽い足取りで他の戸棚を容赦なく開いていった…んだ。


    夢野「ど、どうかの?」

    暫くして夢野が恐る恐る最後の戸棚を開いた王馬に問い掛けた。王馬は残念そうに首を横に振って「残念だったね、なんにもないよ」とだけ返したんだ。

    百田「う、こ、こここ、これ、どうすんだよ…?」

    何とか体勢を立て直し、『 手首 』から視線を外して呟く。夢野は「うむ…」と唸ったまま固まったから王馬の方にも視線で訴える。

    王馬「誰のかも分からないし、ボロいこの校舎で手首だけ持っているのってある意味狂気だから流石にいらないかなー」

    百田「そ、そうだよな」

    想像したらかなりこぇぇえよ!!
    オレは夢野に頼みそっと戸棚の中身は見なかった事にしたんだ。

  89. 89 : : 2020/04/21(火) 01:43:34

    question、>>90番さん。
    百田side:『理科室』調査安価
    (ある選択肢で進行します)


    1、洗面台があるな
    (洗面台周辺を調べます)

    2、調査済み★

    3、調査済み★

    4、調査済み★

    5、テーブルの下になにか落ちてないか?
    (教室奥、実験台下のテーブルを調べます)
  90. 90 : : 2020/04/21(火) 09:32:30
    このトリオ可愛い。
    5で!
  91. 91 : : 2020/04/22(水) 01:24:59

    王馬「―…さて、次はどうすんのさ?このままじゃ白銀ちゃんの言葉が嘘になっちゃうよ?」

    めぼしいものが無さ過ぎんのかダルそうに腕組みした王馬が呟く。
    た、確かにそうだが…こうなったらゴン太を強引でも起こした方が良いんじゃねーのかと思っちまって、未だ眠るゴン太を見ちまう。

    百田「(しかしなんでオレらが騒いでんのにこうもゴン太は起きねぇんだ…?)」

    ま、まさか死んでるとかはねぇ…よな?
    嫌な予感が全身を巡っちまう。んな事はない、断じてねぇよと自分自身に言い聞かせてないとどうしようもない気持ちが言葉として出ちまいそうだ。

    と、腕組みしたまんまの王馬が不意に教室の奥側へと歩いていく。
    なんか見つけたのか?とその後を追っかけると実験台の足元に紙切れが…落ちてたたんだ。

    ご丁寧に…2枚ある。王馬が2枚とも拾った所で遅れて気が付いた夢野も来たんだよ。

    夢野「…これかの?」

    王馬「そうみたいだよ。1枚は字体から『 真宮寺ちゃんのメモ 』でもう一つが『 冴之木七星の手記 』の続きみたい」

    どっちから読む?なんて口角を上げて言うもんだから全く気味わりぃったりゃありゃしねーよ。

    王馬「ま、『 真宮寺ちゃんのメモ 』は喜んで触れるぐらい清々しい真っ赤だけど」

    百田「…そうだなって、誰が喜んで触れるかよっ!その禍々しい赤色によ!」

    王馬が摘んだままにぽいと寄越されたそれはほぼ真っ赤になったメモだ。唯一橋の部分が汚れてねーから出来るだけ触れないように手帳に挟んだ。



    ▼ 【 真宮寺のメモ④ 】を入手しました… ▼

    説明:(真宮寺のメモの続きの様ですが、一部が強引に破られています。しかも真っ赤な液体によって文字がほぼ読み取れません…一体何があったのでしょうか?)



    夢野「――して、本題の『 それ 』じゃの」

    夢野が奪うようにかっさらったそれの文字を読む。

    夢野「『 先生……ごめんなさい。
    私の読みが甘過ぎました。
    此処は今までに看破した来たような、簡単な霊磁場ではありませんでした。一刻も早くここから脱出しないと、本当に危険です。
    「逆打ち」で…に……っ…に…、…殺され……が…複雑に……て…て――… 』
    んあ?読み取れぬな…こちらも」

    途中からこっちも赤黒い液体が文字にかかっちまってるのか読むのは難しそうだな…と夢野が裏のページを見て呟いたんだ。

    夢野「『 先生…会いたい…。会いたい…よう。
    頭…撫でて…欲しいよう… 』
    はて?なんじゃこれは…?」

    王馬「『 冴之木七星 』が『 先生 』って読んでる存在って何だろうね。文字から察するに彼女が尊敬…或いは恋愛感情でも持っていたのかもだけどさ」

    フッと王馬が呟いた時だったんだ。背後から…ガタリと扉が開く音がしたのはな。

  92. 92 : : 2020/04/22(水) 01:25:19

    百田「――っ?!」

    物音に振り返る。が、誰もそこには居なかったんだ。

    夢野「なんじゃ?どうかしたのか」

    王馬「うわーここに来て怖がりが再発しちゃった…とか?」

    な、なんだ?と王馬と夢野がオレを見る――は?テメーらには聞こえてなかったのか?
    ま、まさか気のせいか…?

    百田「んなワケねーよっ!!も、物音がした気がしたんだよ」

    上擦る声に王馬がケタケタと笑ってやがる、くそっ。夢野は首を傾げたが『 冴之木七星の手記 』を丁重にしまってそれをポケットにしまったんだ。



    ▼ 【 冴之木七星の手記④ 】を入手しました… ▼

    説明:(どうやら続きのらしく、慌てた文字で記されていることから急ぎながら書いたものだと思われますが大半の部分が赤黒いもので覆われ読めなくなっています)



    王馬「じゃあ…もうここには用はないって事でしょ?」

    夢野「んあ。そうじゃな…」

    問いかけに頷いた夢野が振り返った瞬間、夢野の髪の毛がふわりと揺れたんだ。
    と同時に夢野の身体が目の前から消えた。いや、消えたんじゃねー。

    突き飛ばされたんだ。『 ソイツ 』に。
    目で追った夢野は廊下側の壁に飛ばされちまった衝撃で気を失っているのか微動だにしなかったんだ。遠目で悪ぃが怪我はしてないみたいだ。

    ??「――やっと見つけたヨ。随分探したんだ…『 ソレ 』かえしてくれないかな?」

    声にギョッとした。驚き固まるオレに対してあくまで冷静な声色で王馬が咎めた。

    王馬「いつの間にいたのさ…『 真宮寺ちゃん 』」

    刀をオレらに向けて眼光が鋭く光る『 真宮寺 』の姿だったんだ。

    真宮寺「いつの間に…ああついさっきサ。偶然この教室に入ったら君たちが居たからこうして近づいたんだヨ」

    片手で握られた刀は真っ直ぐオレと王馬の間に向けられたていたんだ…その刀はさっき夢野が見つけたものと同じ奴だ。

    王馬「偶然?にしてもさ、冗談は顔だけにしてよね。なんでオレらに物騒な代物向けてんのさ」

    酷く冷めた口調は普段のおちゃらけた王馬とは違ってた。変貌と刀を向けられた状態なのに声が出ねーオレとは違って冷静に物事を見てるようにも見えた。…それが気味わりぃなんて思っちまったがよ。

    真宮寺「クックックッ…その様子だと『 僕の持ち物 』見たんでしょ?
    ――ならキミみたいに嘘つく必要性ないと思うしネ」

    目が笑っていたが本気だ。嫌な気配が教室を囲ってる気がする。王馬を横目で見たが無表情で見ているこっちが気が狂いそうになっちまうからどうすっかと視線を巡らせ、生唾を飲み込んだ。

    百田「っ…テメー本気で天海と星を――っ」

    真宮寺「そうだヨ。なんだ知っていたんだネ。
    これも全て『 姉さん 』の為サ。女性だけを殺めようとしたのに2人とも茶柱さんを庇ったからだヨ?――仕方なくそうしてあげたんだ」

    ニヤリ。真宮寺の顕になっている口元が歪む。

    百田「な、なんだよっ!!てめーっ!」

    拳を作り睨むがオレの声には全く動じてねぇ。飄々としてる様は怒りが込み上げてくっぞ。

    真宮寺「百田君が怒った所で『 ここ 』からは『 出られない 』…いや『 出させない 』ヨ。
    大人しく『 死んでくれない 』かい?」

    百田「っく、真宮寺っ!!」

    真宮寺「――その方が楽に『 逝ける 』筈だからネ!!」

    ニヤリといやらしい笑みを浮かべた真宮寺が天にあげた刀を振り下ろ――

  93. 93 : : 2020/04/22(水) 01:25:45


    question、>>94番さん。

    イベント:真宮寺との再会

    (秒数安価、結果は後程)
  94. 94 : : 2020/04/22(水) 08:47:41
    面白い作品をありがとうございます!
  95. 95 : : 2020/08/13(木) 02:40:38

    大変長らくお待たせしまって申し訳ありません。
    他ジャンルに移行していた為、そちらの話題ばかりしておりましてこちらの更新を放置してました。
    コロナ禍の影響で予定が狂いに狂ったのもありますが…笑


    (今回は、とある理由により結果を公開します。
    ※理由は後ほど分かります…)

    ・安価結果:
    大成功…10の位が0、1
    成功…1の位が1、3、7
    小成功…ゾロ目
    失敗…上記以外 でした。

    (なお、大成功、成功、小成功の意味も後ほど分かります)

    では続きをどうぞ…

  96. 96 : : 2020/08/13(木) 02:41:03

    百田「(くそっ、このままで終われるかよっ!!)」

    全てがスローモーションに見える。咄嗟に王馬を押して退かしたが、王馬の予想以上に軽い身体は吹っ飛んだのち尻餅をついてた。視界の隅で捉えつつ刃先を睨む今にもこっちに向かうのが明白だ
    ――だがよ、星と対戦した時のボールよりかは早くねぇ!!

    その逆だ、滅茶苦茶遅いんだよっ!!

    ギリギリを攻め、寸で避ける。風が切る音を震わせる刀は勢いのままに床材を貫きやがる。少しでも触れていたら…と思うと全身から冷や汗がじわりと濡らしていく。

    が、んな事は関係ねぇ。
    真宮寺を睨みありったけの声で叫ぶ。

    百田「そう易々と殺されてたまるかっよ!!」

    真宮寺「クックック…土壇場のなんとやらネ。流石だよ百田君」

    床に深く刺さった刀を抜こうとした時『 違和感 』に気がついたんだ。

    百田「(は…?)」

    何食わぬ顔をしてるが…どうして――『 左手 』がねぇんだ?
    なんで袖口が真っ火に濡れて…床に滴ってんだよ!?

    百田「(ま、まさか――)」

    王馬「ああもう痛いってば!
    あのさ超ひ弱なオレを百田ちゃんの馬鹿力でゴリ押ししないでよ」

    王馬がわざとらしく叫んだところで我に返った。

    王馬「痛すぎて…骨折れちゃいそう…ウェアアアンヴ(ジュル)ヤェャァァァ↑アイィヤエ↑ヤゥィゥ」

    百田「あ、あのなぁ!?
    こ、こんな時にでも冗談かよっ!!」

    場違い過ぎる王馬の嘘泣きに思わず突っ込んじまう。あのな…と言ってる手前で真宮寺が再び床から抜いた刀をオレの方へとむけやがる。

    ちょっ!ま、待てってば!?

    真宮寺「クックック…まぁ…ここまで色々あったけど終わりサァ!」

    クソっ!!この位置だと机が多くて今みてーに避けることが出来なさそうだ…ば、万事休す――と思った時だった。

    ??『 もう…やめて…やめてよ!! 』

    百田「!?」

    オレと真宮寺の背後にモヤが急に現れたんだ。う、いい!?ここ、この状況下でや、や、やめろよぉっ!?

    ビビるオレをよそに真宮寺の行動が止まった。
    そして王馬がその隙に足蹴りを刀の柄に向かってしやがったんだ!
    ――よし、やったか?

    真宮寺「くっ…!!」

    王馬「あーあ。よそ見するからだよー」

    と答えた王馬の手にはいつの間にか刀が握られていた。手癖が悪いと言うか手際が良いって言うか…まあ半ば呆れに近い感想を抱いちまうがよってんな事よりも目の前のことに集中しねぇといけねー。

    っと、モヤが次第に人間の形を捉えてやがった。
    モヤにドキマギしちまうが、不思議と死の危険を前に怖いとかは無かった。

    百田「お、お前は――」

    段々と姿が輪郭がハッキリして行く中でつい言葉をこぼしかけちまう。
    テメーは…

  97. 97 : : 2020/08/13(木) 02:41:30

    モヤは…アンジーだった。

    夜長『是清、アンジーはこんな結末望んでない!
    神は言いました…これ以上人を殺めたとしても是清のお姉さんは是清の元には戻らない、と』

    アンジーは静かにオレらを守るように立ち塞がり、真宮寺に向けて呟く。その声はあまりにも悲痛そのものでオレらは自ずと黙ってしまう。

    真宮寺「ああ…夜長さんこそ僕の手で『 姉さん 』の元に連れて行ってあげたかったのに…サ。見るも無惨な姿になってしまうだなんてネ」

    そんなアンジーの言葉が耳に全く入らねぇのか真宮寺は蹴られた右手をマジマジ見ながら淡々と答えやがる。

    百田「(――っ!?どこまでも狂ってやがる!!)」

    狂気にすっかり飲まれた真宮寺は「自分が1番正しい」と信じて疑ってないと自信溢れたようにも感じる物言いに腹が立っちまうが…
    オレと王馬はその光景を見守ることしか出来ねぇ

    ――何故か、な。

    夜長『どうして?ねえ、どうしてそこまでこだわるの?アンジーには分からないよ…』

    首を振り、ただじっと真宮寺の答えを待っているアンジーに対して視線はそのままに真宮寺は黙っちまいやがった。

    それでも尚、アンジーは静かに瞳を伏せて続ける。

    夜長『…っ。確かにアンジーは望んだよ。【皆とずっと一緒に居たい】って。でもでもこんなかたちになるならアンジーは是清に言わなかった』

    百田「アンジー…」

    夜長『是清。それに…もう是清は――』

    真宮寺「それこそ死人に口なしって言うよねぇ?…外野は黙ってなよ」

    夜長『是清!!ダメ!――やらせないっ!』

    真宮寺がそれでもなおオレらの方へと腕を伸ばす…それを必死に両腕を広げ、阻止しようにも夜長は、死者だ。それは空気を掴むかのように無意味で、片手でオレの首元を捉えかけた時だった…

    ??『―――っ、もう、こ、れ、い、以上は…っ!!』

    今度は真宮寺の背後から聞こえた声に全ての行動が止まる。そして、鈍い音が…教室に響いたんだ。



    …血飛沫が舞った。アンジーを飛び越えてオレと王馬の前に飛び散る。…誰の血なのかなんて直ぐに理解出来た。

    それは――紛れもなくスローモーションで床に落ちていく真宮寺のもんだった。


    百田「――なっ?!」

    王馬「お前…っ」

    第三者の介入に驚くオレらを他所に肩を上下に動かすそいつの身体からは『 黒いモヤ 』みたいなものが僅かに出ていた。

    ??『ごめんなさい…』

    そう答えるのは、ゴン太だ。
    目を覚まし、まともにも思えるその姿はゴツン、といつの間にか手にしてた血濡れのハンマーを落とし、その場で泣き崩れた。

    真宮寺は逆にピクリともしねぇ。余程強い力で頭部を殴られたのが分かるのと素人が見てもわかるぐらい酷い出血量が床を汚していたんだ。

    夜長『――ゴン太…みんな…ごめんね…』

    アンジーの悲しそうな声で我に返る。全てを悟っているとしか思えない口調に察しのいい王馬が珍しく真顔でそいつに向かって呟いた。

    王馬「…ゴン太。今までのことは覚えてるの?」

    獄原「うっ…うっ…っ!!」

    嗚咽混じりに泣くその姿に声をかけずらい。それなのに王馬はアンジーに「ちょっとどいて」とハッキリ言うとアンジーの前、真宮寺とゴン太の間にズカズカと行くとその泣き崩れたゴン太の胸ぐらを掴む。
    あまりにも展開が早く、止める事が出来なかった。

    王馬「おいっ!!
    泣いてるばかりだとなんにも分からないんだ。自分がした事覚えてんだろうが!――なんで!!なんで今更正気に戻ったんだよっ!
    もっと早く――早くにお前が戻ってたらっ」

    百田「――おいっ!王馬そのぐらいにしとけっ」

    普段と立場が逆転したことに驚きつつも王馬を止めようと腕を伸ばしかけたが…それを止めたのはアンジーだったんだ。

    夜長『…ダメ。近付いたら…ゴン太はもう――』

    百田「王馬は良くてオレはダメなのかよっ!!なんで――」

    夜長『ゴン太は…もう…っ』

  98. 98 : : 2020/08/13(木) 02:41:49

    獄原「ううっ…ごめん…ごめんなさい…っ」

    王馬「――なんでっ、こうなるんだよっ!!
    どうして…っ」

    今にもゴン太を殴ろうとしている様を見守ることしか出来ねぇのが腹立たしく、唇を思いっきし噛み締める。…どのぐらいそうしていたのだろう。時間とともにゴン太から溢れる『 黒いモヤ 』の量が増えている事、それの一部が王馬を取り込もうとしていることに双方が気が付いてないわけが無いだろう。

    それなのに王馬は怒号を響かせていた。

    王馬「それ以上、謝るな…謝るだけ、無駄になるだろ!!」

    獄原「うん…ひぐっ…そ、そうだけど…でも…もう…僕は…」

    いつの間にか王馬も涙ぐんでいた。それが本心からなのかどうか全くわからねぇ。
    だが――本心だと信じたかった。

    夜長『…ゴン太。分かってるよね?』

    獄原「――うん」

    アンジーの静かな声色に頷く。その顔は涙でぐちゃぐちゃで見ていられねー。
    と同時に王馬が胸倉を離した。そして涙に濡れた顔を無造作に袖で拭うと夢野の方を向いてボソリと呟く。

    王馬「…手遅れなんだろ。もう」

    手遅れ?――なんの事だよ?
    ひとりつい首をかしげるが…話題についていけねぇ中、アンジーが静かに…そう静かにゴン太の方へと進み、その頭を撫でる。

    獄原「…もっとみんなと過ごしたかったよ。でも…それは無理なんだ…僕は…もう…」

    夜長『ゴン太。もういいよ。
    休もう…神様はここには居ないのかもしれない。でもでもーアンジーは思うのです…神様はきっとどこかで見守っていると…』

    アンジーが優しく呟くと…ゴン太の姿が少しずつ透けていく…はぁ??ゴン太はもう既に死んじまってたって事なのかよっ!!

    王馬「…はぁ、一人だけさっぱりって感じだね、流石脳筋って感じだよねー?」

    百田「はぁ!?なんでお前っ」

    夜長『もう、アンジーとゴン太には時間がないから…話すよ』

    百田「…っお。おう…」

    言葉を遮ってアンジーが鋭い視線を向けてくる。その圧に言いたい言葉が全て引っ込んじまった。

    夜長『…秘密子の事、頼むのだー…秘密子もゴン太みたいになる可能性があるから』

    百田「お、おう…(ゴン太みたいってなんだ?)」

    相変わらず飲み込めねぇが、飲み込む他無いだろ。王馬は何となくわかってたみたいだが。落ち着いたら聞くのも手かもしれねぇな。

    夜長『あと、この上の階に…いる。
    その人の持ち物を揃えたら行けると思うのだー。残すのは最初に小吉達がいた教室に残されてるみたい。
    上にいるのはとても…強い気配…小吉なら誰かきっとわかると思うのです…と神は言いました』

    王馬「なるほどね…情報ありがとうね」

    夜長『それとね…もう、アンジーは助ける事出来ないみたい。あと――【あの子】も…介入出来ないぐらいに乱れてるからっ…ゴメンなのだー』

    百田「――『あの子』?って誰だよ」

    遠回しに言われても誰だかわからねぇよ。目に見えない存在がオレらの手助けをしてるってことか?だとしたら…思い浮かぶのは被害者の霊たちだがよ…?

    王馬「…だろうね、分かったよ。アンジーちゃん、ゴン太を連れてってやってね」

    夜長『うん…頑張って…みんなでここから出るのだー…』

    それだけ答えるとアンジーはそのままゴン太ごと…その場から姿を消しまったんだ。

    残されたのは――気を失った夢野に倒れてピクリともしない真宮寺、そして呆然とこの光景を見ていたオレと…事情を把握してる真顔の王馬だけだった。

  99. 99 : : 2020/08/13(木) 03:01:56

    王馬「さて、情報は得しサクッと行こうよ」

    先程とは打って変わってケロッとした表情の王馬が場違いな程明るい声で刀を振り回す…っておいっ今掠ったぞ…っ!?

    百田「どこに――ってか、真宮寺はそのままにしておくのかよ」

    夢野はまだ起きる気配がないから担いでいくのは確実だろう。だがよ…コイツは――

    王馬「百田ちゃんが連れていきたいなら連れてけば?
    でもオレはオススメはしないよ。夢野ちゃんみたいにバカ正直に直ぐ間違いだとか反省したり、考え改めるような輩じゃないし――それに」

    とそこで言葉を区切り、刀をポイッと窓際に放り投げた…おいおい刃物をぞんざいに扱うなよ…と言いたい所だったが、注意した所で行動を改める奴じゃねぇからやめた。

    百田「それにってなんだよ」

    王馬「おつむな弱い脳筋風を装ってる百田ちゃんには分からないだろうけどねー」

    カチンと来る物言いについ売り言葉に買い言葉で反応しちまう。だが、王馬はヒラヒラと手を振って喧嘩は買いませんよ、と言わんばかりの視線だけを送るもんだから腹が立つ。

    百田「っ!?なんだよ、勿体ぶるんじゃねぇよ!」

    王馬「ってかいつまでこんな辛気臭い部屋にいるのさ。折角アンジーちゃんがヒントくれたって言うのにそれを台無しにする百田ちゃんじゃないでしょ?…ほら、早く行こうよ」

    食い気味に言われるとそうだな…と納得しそうになるが…流石にこの状況、放置したままってのはどうかと思うぜ?
    真宮寺は確かにオレらを襲ったりしてるがよ…やっぱりこうして倒れてるとどうしても助けたくなるのが常ってもんだからよ…

    百田「…真宮寺、悪ぃな。見捨てる――だなんてしたくねぇが…後で殴らせろよ」

    とだけ声をかけて、既に夢野ちゃんを担いで教室を出ようとしている王馬の背中を追った。





















    馬鹿だねぇ。お人好しにも程があると思うヨ…?

    夜長さんに王馬君は気がついていたみたいだけどサ…

    もう、助かる道なんて今更見つけても遅いんだよね…だから「救いの手」を差し伸べたってのに…

    アア…

    もう、いいや…姉さんの許に行けるなら…それで構わないヨ…


    …ふっ、クックックッ…

    せいぜい足掻くんだね…





  100. 100 : : 2020/08/14(金) 09:09:11
    待ってましたー!!
  101. 101 : : 2020/08/20(木) 04:27:11
    続き気になってた!期待
  102. 102 : : 2020/08/23(日) 03:17:07

    「――っ(クソっ……っなんでこうなっちまったんだ…)」

    横抱きした夢野を担ぎ先に『 理科室 』を出る王馬に続いてオレも出る、と「おそいー」と間延びした声色でオレを睨む王馬がいた。
    いつの間かあいつは既に抜けて所々穴の空いた床を避けながら『 1のA 』側の廊下に進んでいやがったんだ。

    ――ったくよぉ、相変わらずタフなのか痩せ我慢して自分の状態に嘘ついて無理やり動かしてんのかさっぱりだが……これ以上負担をかけたくはねぇーな……とか思っていると王馬がとてもつまらさなそうに溜め息を吐いた。
    んだよ、いつまでもこっちに来ないことに腹を立ててるテイを見せつけてやがんのかよ。

    置いてきぼりを味わいたくなく、つい「わりぃな」と一言だけ返し王馬の元へと行こうとした時背後で「ピシャリ」と扉が閉まる音がし、ししやがった!

    百田「――っう!?ななな、なんだよっ?!」

    い、今更脅かし要素なんていらねーっての!!
    ビクビクしながら振り返ると同時に扉側から走る赤の一線が跳ねた…っ!?

    なな、これってまさか――っ

    百田「おいっ」

    その赤がなんなのか?と答えを出す前、閉まった扉に手をかけ…開こうとした……がよ、

    王馬「……百田ちゃ」

    百田「開かない、あかなくなっちまってる…」

    訝しげに問う王馬の声の上に被さったオレの震えた声。
    鍵がかかってる様子なんざないのにどうしてかまるで「空間に固定されているような」…そんな印象を受けちまった。
    さっきまでは問題なく入れたのによ、何がどうなっていやがるんだ?

    百田「……真宮寺の野郎がそうしたのか?」

    王馬「それは違うんじゃない?だって、意識はあるようには思えなかったでしょ。それは1番近くにいた百田ちゃんなら分かるだろ」

    百田「――そ、そうだよなぁ…っでも!!こ、これってよ……」

    王馬に再度問いかけるように視線を向けた。…が王馬は無言で首を横に振ってから静かに呟いた。

    王馬「あんなことをした真宮寺ちゃん味方でもするつもり?――そんな事しても無駄でしょ。
    『 鍵が掛かった 』ならそれ以上詮索するのは無理だと思うよ。
    そもそもオレらはオレらでやることがあるのにそれほっぽ置いて無理矢理でもそこに戻るつもりなの?」

    百田「いや、そんな事は――……っく、けどよ……」

    真宮寺だとしてもオレの大事なクラスメイトのひとりだ。
    それを見捨てるだなんて出来るワケがねーだろうよ。

    ……そんな訴えに似たオレに王馬が「行くよ」とだけ答えた。これ以上は何を言っても無駄だと思ったのかもしれねぇ。

    ……って事は真宮寺の事を放置する、見捨てるなんぞ――

    王馬「勝手にウジウジ悩むならオレはアンジーちゃんのヒントの場所に行くけどねー」


    百田「お、おいっ、待てっ……行く行くからよっ!」

    最後に話していた『 アンジーのヒント 』――そいつが今の希望だろう。それを逃す訳にも行かず、今度こそオレはその場を後にした……

    百田「(……真宮寺っ)」

    そう僅かに口から零れた言葉に王馬はもう反応はしなかった。
  103. 103 : : 2020/08/23(日) 03:19:43

    『 アンジーのヒント 』の場所――それは一発で判明した。
    王馬が最初にいた場所……それはオレと王馬達が合流した場所じゃなくて、もっと前の―――そう。
    『 1のA 』だ。…偶然にも『 理科室 』からさほど離れてない場所にあるもんだから難なく入った所で夢野が呻き、目を覚ましたんだ。

    夢野「……ん。――――んあ?」

    王馬「あ、おはよう夢野ちゃん!!調子はすこぶる元気そうだね!!」

    夢野「……」

    間近で王馬のすこぶる元気(を装う風)な声色に夢野がピタリと固まる。お、おお…だ、大丈夫なのか?
    思わず声を掛けようとして伸ばした指先が夢野のこうにならない声で遮られちまった。

    夢野「………んーーーーー!?!?!?」

    王馬「あーそんなバタバタしなくてもいいじゃん!!漬物石より遥かに重いのにちゃんと担いでるオレの気持ちにもなってよ!」

    状況に混乱しまくってパニックになってる夢野に対し王馬はイタズラっ子特有の悪巧みをしてる面構えをしながらもバタバタする夢野を諸共せず降ろした。

    真っ赤になり「んぁぁああっ」と叫ぶ夢野を後目に王馬は何事もなかったかの如く、腕を軽く振って周りをキョロキョロと見回してやがる。

    ……しばらくそうしてたかと思えば不意に夢野を押しのけて、その背後の机の上に置かれた『 紙切れ 』をつまんだ。

    百田「なんだ?そりゃ」

    王馬「―――『 冴之木七星の手記 』の続きだろうね……パッと見、真っ白だけど」

    表裏にしながらつまらなさそうにそれを眺める……その様に少し落ち着いたのかゼェゼェ息を荒らげつつ、夢野が王馬の手にしていた紙をひったくる。

    王馬「ぎゃーーーっ!ダイターーん!」

    夢野「……うっさいわ!!
    そもそもウチが気を失ってる間に何をしおったんじゃお主らは――って、んあ。ゴホン。
    それよりも、何やらすごく嫌な気がするのじゃ……ほれ…よく見ておれ……文字が浮かんできたじゃろ」

    夢野がそう早口で言うと紙を見せてきた。……ん?よくよく見るとうっすらと文字らしい字体が現れてそれはハッキリと赤黒く色付いていく。
    その文字を自然と読んじまう。……まるで『 読まなきゃならねぇ 』――そんな気がしちまってよ。
  104. 104 : : 2020/08/23(日) 03:19:47

    『 アンジーのヒント 』の場所――それは一発で判明した。
    王馬が最初にいた場所……それはオレと王馬達が合流した場所じゃなくて、もっと前の―――そう。
    『 1のA 』だ。…偶然にも『 理科室 』からさほど離れてない場所にあるもんだから難なく入った所で夢野が呻き、目を覚ましたんだ。

    夢野「……ん。――――んあ?」

    王馬「あ、おはよう夢野ちゃん!!調子はすこぶる元気そうだね!!」

    夢野「……」

    間近で王馬のすこぶる元気(を装う風)な声色に夢野がピタリと固まる。お、おお…だ、大丈夫なのか?
    思わず声を掛けようとして伸ばした指先が夢野のこうにならない声で遮られちまった。

    夢野「………んーーーーー!?!?!?」

    王馬「あーそんなバタバタしなくてもいいじゃん!!漬物石より遥かに重いのにちゃんと担いでるオレの気持ちにもなってよ!」

    状況に混乱しまくってパニックになってる夢野に対し王馬はイタズラっ子特有の悪巧みをしてる面構えをしながらもバタバタする夢野を諸共せず降ろした。

    真っ赤になり「んぁぁああっ」と叫ぶ夢野を後目に王馬は何事もなかったかの如く、腕を軽く振って周りをキョロキョロと見回してやがる。

    ……しばらくそうしてたかと思えば不意に夢野を押しのけて、その背後の机の上に置かれた『 紙切れ 』をつまんだ。

    百田「なんだ?そりゃ」

    王馬「―――『 冴之木七星の手記 』の続きだろうね……パッと見、真っ白だけど」

    表裏にしながらつまらなさそうにそれを眺める……その様に少し落ち着いたのかゼェゼェ息を荒らげつつ、夢野が王馬の手にしていた紙をひったくる。

    王馬「ぎゃーーーっ!ダイターーん!」

    夢野「……うっさいわ!!
    そもそもウチが気を失ってる間に何をしおったんじゃお主らは――って、んあ。ゴホン。
    それよりも、何やらすごく嫌な気がするのじゃ……ほれ…よく見ておれ……文字が浮かんできたじゃろ」

    夢野がそう早口で言うと紙を見せてきた。……ん?よくよく見るとうっすらと文字らしい字体が現れてそれはハッキリと赤黒く色付いていく。
    その文字を自然と読んじまう。……まるで『 読まなきゃならねぇ 』――そんな気がしちまってよ。

    読み終わると続きが更に浮き出る。王馬がやれやれとつまらなさそうに文字を読んだ。

    王馬「『 あいたかった。だきしめてあげる。 』」

    ――ガタン。

    何処かで何かが落ちる音がした。…その些細な音にさえ敏感になるオレらは自ずと文字に集中しちまう。

    百田「う…ゴクッ…
    『 わたしの…からだ、もうまっくろ 』
    ん?これで……終わりか?」

    ひょ、拍子抜けだな、ガハハハハ……

    肩透かしと言わんばかりに夢野を見ると青ざめた表情でカタカタと震えていた。な、なっなななっ!!
    言葉を失う夢野に王馬がその紙を奪い取り夢野を観ずにその紙をヒラヒラさせた。

    王馬「これで最後っぽいね。……って事はさ」

    夢野「……『 アイツ 』が居る。上に……ハッキリ感じるのじゃ――行くぞ」

    夢野の顔色は悪い。だが…その提案にああ、としか答えることしか出来ねぇオレと王馬は押し黙った。



    ▼ 【 冴之木七星の手記⑤~ 】を入手しました… ▼

    説明:(最早幼児が書いたような文字で記されたそれはマトモな状態とは言い難い代物です。ノートの厚みからこれが最後のようです……という事は―――)


  105. 105 : : 2020/11/11(水) 17:02:54
    更新楽しみに待ってます!
  106. 106 : : 2020/11/14(土) 10:18:15
    あとどのくらいで完結ですか?
  107. 107 : : 2020/12/31(木) 03:21:56

    (>>106番さん、コープスのストーリーに沿っているのであと少し……と言いたいところですけど多分まだまだかかりそうです。ごめんなさい)

    こんな不定期更新にも関わらず楽しみにいていただけるだなんて作者冥利につきます!!
    ぼちぼち再開しますがまた長い目と生暖かい目で閲覧していただけたら幸いです。

    今更ながらダンガンロンパ並びコープスパーティー10周年おめでとうございました!!

  108. 108 : : 2020/12/31(木) 03:22:50

    上の階……って事は三階か?

    ひとり震える夢野に対しフォローが出来ずじまいでどうすりゃいいんだと迷いに迷っちまう。
    だが夢野当人が首を僅かに横に振って俺の心配を振り払いやがる。

    夢野「上手くいけば……白銀も解放出来るじゃろうな。あやつはきっと冴之木七星にぞんざいに扱われておるじゃろうから…」

    百田「白銀か……」

    何度も助けてくれたアイツが解放されれば力強い味方になるだろうとも言う夢野に対しなんて声を掛ければいいのか皆目検討もつかねぇせいで白銀の名前を口にしていた。

    王馬「ま、行けば分かるでしょ。
    時間は残されてはないんだろうからサクッと行くに限るしさ」

    百田「だよな。
    ……だが、心の準備だけはしていいか?」

    心の準備。相手は完全に死者だ。
    今までは何事もなく対応してたがよくよく考えるとこの世ならざるもの――そいつらに対しよく平然と対応してたな……と今更ながら思っちまった。

    今の今まで考えないようにしてたが、実際に考えるとやっぱり怖ぇよ!!

    そんなオレの心情に対してコイツらは、「そんな暇ねぇよ」と無言の視線で返事しやがって少しだけ腹が立った。
    いや王馬達の無言の圧があるぐらいなら逆に何とかなるんじゃね?と思わなくもないんだがよ。

    百田「――分かってる。じょ、冗談だからな!ハッハッハっ……」

    王馬「さっすがぁ!!どんな状況でも冷静な百田ちゃん!その顔からダラダラ流れる汗が羨ましいね!
    オレも心地よい汗かきたいなーー」


    なんて冗談をこんな最中でもかます王馬を睨ながらオレらは教室を出て、『 理科室 』前を通り階段へと向かう……

    夢野「本当に……これでよいのじゃろうか」

    ぽつり。階段を慎重に行く夢野の言葉にオレたちは返す言葉はなかった。


    三階はすこぶる冷えてやがる。クーラーをガンガン使った教室より寒い……ってか真冬に近い温度にも体感は感じるな。
    武者震いしたオレに対し眉間に皺を寄せた夢野がただ一点を凝視している――その視線の先、は。

    王馬「『 資料室 』……だね。そこに――居るんだね」

    夢野「……うむ。白銀の気配と混ざって別の――何かがおる……」

    わなわな震える夢野が目を固く閉じ答える。
    その肩に触れる。

    百田「夢野大丈夫か?」

    王馬「大丈夫じゃなくても行くしかないでしょ?
    ほら行くよ」

    王馬に引っ張られるかたちでオレたちはその先へと進んでいった。

    百田「――っ!!」

    そして、入るや否や。
    あまりにも凄惨な現場に声を失う。

    中央部に倒れているのは――白銀だ。ここ来てからさほど時間が過ぎてない筈なのに、頬から蛆虫のようなものがチラつき、そして投げ出された四肢の先は生前の肉付きが嘘のように細くなっていたんだ。

    独特な匂いが充満する中、白銀のその先に……『 ヤツ 』はいた。

    夢野「――っ!!!お、お主がっ!」

    夢野の慟哭が教室中に響く。王馬も流石に苦虫を噛み潰したよう面構えをしたが直ぐに無表情になった。

    『 ヤツ 』―――『 冴之木七星 』は振り返り、夢野の声に驚くこと無く淡々と言葉を吐いていった。
  109. 109 : : 2020/12/31(木) 03:23:18

    七星『あら。ごきげんよう。貴女は――夢野さん、でしたね。それとお友達に再会できたのですね』

    白銀の死体を一瞬見たかと思えば、夢野に視線を戻した。

    王馬「まあね。キミのお陰でね」

    一触即発状態の夢野を制しながら王馬が一歩先へと進む。やれやれとこの場に合わない呑気な声を出してる割に目が笑ってない。そりゃそうだ……こいつのせいで嘘を掴まされたんだから当たり前だろう。内心ははらわた煮えくり返ってるに違いねぇ。

    七星『それはよかったです。
    ……それであなた達の目的は?どうしてわたしの所にきたのですか?』

    それが皮肉だと分かっているのかどうだか分からねぇが動じずにケロッとしている様がまた腹が立つ。なんなんだよ!こいつはっ!?

    王馬「『 目的 』?そんなの分かってるでしょ?」

    百田「お、おいっ……王馬っ」

    王馬「百田ちゃんちょっと黙ってて」

    今にも噛みつきそうな勢いを生み出す肩を慌てて掴みかけるがするりと躱され、鋭く逆に言われちまう。

    七星『あらあら、仲違いはここではいけませんよ?』

    くすくすとその様を見る。さも楽しそうに。
    その様にムカついて手が出そうになる瞬間、

    夢野「お主は嘘つきじゃ。ここにいる王馬よりもな」

    夢野が静かに答える。「嘘つき」のフレーズにぴくりと反応するのを確認して続けた。

    夢野「お主の手帳じゃ。
    道中に落ちておったからの拾い、内容を見させてもらったぞ。

    『 篠崎サチコのおまじない
    【 正順法 】・【 逆打ち法 】メモ
    死逢わせのサチコさん 【 正順法 】
    スペルトリガー『 サチコさんお願いします 』を参加人数にサチコひとり分を加えた回数唱え、専用の型代を引きちぎる。
    (型代は篠崎家廃屋から、サルベージしたオリジナルでなくともデジタルを介した複製品でも効用はあるようだ)
    成功すると霊は素通りし、特に何も起きないが失敗すると霊媒素質のある者にサチコの霊が降り、その場にいた者全員が呪いに侵され、そのまま霊場に連れて行かれる。

    【 逆打ち法 】サチコの霊を怒らせた場合の対処法
    正順法をそのまま逆に行えば可能 』」

    王馬「これはつまり冴之木七星、キミは『 方法を知っていた 』。
    そして……真宮寺ちゃんも正しい方法を知っていたんでしょ?でも――」

    百田「真宮寺もテメーの『 あえて失敗させたんだ 』そうだよな?」

    七星『……』

    そうだ。わざとそうしたんだろ?
    冴之木七星の目的なんぞ知りたくもなかったがよ……テメーは、テメーはよォ。

    七星『……ふっ。何を今更』

    急に吐き捨てたかのように見下しやがった。
    そして身体から滲み始めるは黒いモヤ――ゴン太の時と同じだ。

    七星『アンタたちが好んでやったんだろ!?
    悪いのは引っかかるあんたたちだよ!!』

    夢野「――っ!!」

    あまりにも凄みのある剣幕に夢野がビクっと方をふるわせる。最早現実じゃねー感じさえしちまうよ……くそっ。

    王馬「確かにね。嘘に惑わされる方が悪いよ。
    好んでやったのは真宮寺ちゃんの方。だけどさ……それに騙されたアンジーちゃんまで愚弄するんだへー」

    王馬の目が鋭く光る。それをも気にせず、冴之木七星は続ける。

    七星『せンせィの為に!!それのどこが悪い!!
    あんたたちだって同じだろう!』

    夢野「……お主の言う『 先生 』とはこやつの事じゃろう。お主は覚えておらぬのか。
    んあ、そのぐらい侵されておったのじゃな」

    『 冴之木七星の手帳 』から一枚の紙を差し出す。フラフラと覚束ぬ足取りでそれを見ようとする冴之木七星に夢野は静かに呟く。

    夢野「お主はもう……大事な人を大事にしたい人をその手で……殺めてしもうたのじゃな」

    七星『――っ!?え……ナンデ……なぁに?これ……』

    それを強引にひったくった冴之木七星の手が止まる。その代わりに黒いモヤがどかっとその身体から湧き出やがった。

    夢野「お主は――もう手遅れなのじゃ」

    七星『なんでなんでなんでなんでぇ……え?いやっ、せんせ、せんせぃーーーーーっ!!!!』

    冴之木七星の絶叫が空間中に響く。思い出したのか、それとも消し去りてぇのか分からないが段々と黒いモヤが身体を覆って―――視界が一気に黒一色になっちまったんだ。

  110. 110 : : 2020/12/31(木) 03:23:43

    百田「な、なんだよ……なにがっ、ゴホッ」

    やっと視界が開けたと同時に咳き込む。黒いモヤを吸い込んじまったんじゃないかと内心ヒヤヒヤするがそれよりも夢野と王馬だ。それに白銀の遺体のこともある。
    状況を把握しようと手を伸ばす、と何かに触れた。

    百田「う、うひぁぁっ!!」

    驚いて尻もちをついちまう。と、ケタケタ腹立たしい笑い方をした王馬の声がしたから少しほっとしちまった。

    王馬「ちょっと、何勝手に驚いてんのさ」

    夢野「んあー……大丈夫かの?」

    ふたりに手を伸ばされ何とか立ち上がる、と白銀の腹部に『 なにかの像 』があったもんだからそれに触れて尻もちついたんだな、と独りでに納得した。

    百田「悪ぃな……っと『 冴之木七星 』はどうなったんだ?」

    夢野「……それは――」


    ??『地味に彼女は消滅したと思うよ?多分だけど……』

    王馬・百田「「!?」」

    夢野がキョロキョロと教室内を不安そうに見ている最中だった。懐かしい、聞き慣れた声が不意に聴こえて王馬と共に顔を見合わせた。

    夢野「し、白銀……なのか?」

    夢野がキョロキョロと姿を探すにもそれらしきものが見えてねーみたいで戸惑っていたが、合ってるのか白銀は「ごめんね」と謝った。

    白銀『あははは。流石にそろそろ力を使い果たしちゃったみたいでさ、声しか届かないみたい。
    これぞ神の声になった気分だね』

    夢野「白銀ぇ……お主っ」

    夢野が今にも泣きそうなツラをしてる。それを知ってか知らぬか幼子を宥める声色で答えた。

    白銀『夢野さん、泣くのは早いと思うよ。まだやることあるよね?ないとは言わせないよ。
    ――そこにあるヤツを最原くん達に渡さなきゃ』

    百田「お、これか……?」

    立ちすくむ夢野の代わりにオレがそれを持つ……うげぇ、なんかぬめぬめしてっぞ??

    表面が若干ヌルヌルしているそいつは赤子を模した像だった。こいつが……終一たちが「探してる」って奴なのか?

    王馬と顔を見合せるが「オレは持つの嫌だからね」とキッパリ断られてしまった。ぐぬぬ、なんつーやつだ。

    夢野「白銀よ……ウチらはお主を助けることが出来んかった」

    白銀『大丈夫だ、問題ない。
    それこそ夢野さんたちのせいじゃないよ。
    これは初期配置の運に負けたってことで気にしてないし――それにしても酷い有様だよね。B級ホラーでもこんな姿ってないってば』

    何がおかしいのかさっぱりわかんねぇんだがずっと白銀は笑ってやがった。気味悪ぃ!!

    百田「し、白銀?」

    白銀『あーごめんごめん。つい滑稽すぎてツボにはいっちゃったよ。こんな呆気なさは某100日ワニを思い出しちゃってさ――って呑気に話してる場合じゃないよ』

    早口に色々言うもんだからつい引いちまうが、白銀はゴホンとわざとらしく咳をすると声色を少し変えて話し始めた。

    白銀『さっきも言ったけど、冴之木七星はもう消滅したと思っていいと思うよ。
    かと言って現状何か変かあるのか?と言われたらぐうの音もないけどね。
    これで最原君たちの手助けが出来ると思うから早く彼らと合流した方がいいと思う』

    百田「合流ってもなぁ……そんな易々と会えるかどうか厳しい気もするが」

    白銀『いいから、ね?とりあえず今廊下試しに出てみたらどうかな?かな?』

    急に白銀の口調が焦る。どうかしたのか?と首を傾げたオレだったが夢野が「……そう、じゃな」と頷きその場を離れようとしたからオレと王馬も続いて出るとこにしたんだ。



    ▼ 【 赤子の像 】を入手しました… ▼

    説明:(赤子を模した石像のようなものです。
    表面が何故かヌメついてます)




    廊下に出た時だった。先に廊下へと出てた夢野が驚きの声を上げたんだ。

    夢野「んあ!!お主らはっ」

  111. 111 : : 2020/12/31(木) 03:24:02

    そのまさかだった。
    向こう側に見えたのは終一たちだったんだ。

    白銀が気配を察したのかどうかは定かじゃねーが、互いに驚いちまった。

    最原「みんな……っ!」

    王馬「相変わらず主人公ぽいことしてんじゃん!元気そうでなによりだね!」

    合流出来そうで出来ない亀裂のせいでまた向かい合わせになっちまうんだが、それでもまた会えた事に感謝しちまうぜ。

    茶柱「夢野さんこそケダモノに囲まれてますけど大丈夫ですか?転子は心配です……」

    夢野「んあ、大丈夫じゃぞ。転子」

    それはよかったとオレらを睨みながら言わないでくれよ……と突っ込みたいがそれどころじゃねー。なんか新しく得るものがあったのかどうか聞かねーとならねぇな。王馬と頷いてから「オレらから手短に話すわ」と先程手にした『 赤子の像 』を見せつつこれまでの経緯を話した。

    赤松「そんな……ことが……」

    赤松の目元が真っ赤に腫れ上がってることが気になるがそれはきっと終一がフォローしたに違いないと敢えて何も言わずに頷いた。

    王馬「だから、生きてるのはここにいるメンバーで全員ってコト。
    真宮寺ちゃんもゴン太もダメだったんだからさ。ま主犯格の真宮寺ちゃんがのうのうと生きてても許せるのかって言われたら別問題だけどねー」

    両手を顔近くに上げてお手上げのポーズをとる。その様に茶柱がいかにも不服そうな顔をしてるのみるとどうも居心地がわりぃな。

    最原「あ、そうだ僕らも見つけたんだ『 逆打ち法 』をね。それを使えば元の場所に帰ることが出来る――んだね」

    終一の言う通りだ。色々やってきたが今、合流出来たなら『 逆打ち法 』をこなせば帰れるんだ。んなら早く合流しねーとな!

    夢野「そうも上手くいかぬようなのじゃ……先に言ったが『 冴之木七星のメモ 』を見直しとったらこの文がかきこまれておったのじゃ。
    恐らくはまだ冴之木七星がマトモだった頃に書いたのじゃろう」

    夢野が続けても良いかとアイコンタクトを送る。もちろんだと頷き続きを促した。

    夢野「『 先生……ごめんなさい。
    私の読みが甘すぎました。
    ここは今までに看破してきたような簡単な霊磁場ではありませんでした。
    一刻も早くここから脱出しないと、本当に危険です。

    「逆打ち」で簡単に戻れると思ったのに、惨殺された幼い魂が磁場に複雑に絡まっていてこのままでは使えません。

    逆打ちを使うには、まずこの子達の怨念を何とか除霊して包囲している霊磁場のゲートを解かなければ……

    このままの状態で使うと、逆に危険です。何が起こるか分かりません。 』
    ――このことからやはり優先すべきは……」

    東条「『 子供たちを成仏させる 』という事ね。
    その為には主犯格である、サチコの懺悔が必要になるわ」

    東条の言葉に頷く。
    ならまた手分けして行動すべきだろうな。
    っても手分けすることもないのかもしれねぇが。

    とりあえず――

  112. 112 : : 2020/12/31(木) 21:45:58
    お待ちしておりました、更新お疲れ様です!!
    また新年を明けましても最後まで楽しみにお待ちしております!
  113. 113 : : 2020/12/31(木) 21:48:09
    更新待ってましたー!
    完結まで応援し続けます!

    あと良いお年を〜
  114. 114 : : 2021/01/01(金) 20:46:51
    最近この作品を見かけた人なんですが、面白過ぎて一気に読ませていただきました。これからも応援します!いいお年を~
  115. 115 : : 2021/01/14(木) 03:30:34

    『 東条斬美 』side


    百田「――うっし!!
    それなら……この『 ぬめぬめしてる像 』を渡すからなっ!」

    先程同様に百田君が思いっきり『 手にしてたもの 』を投げてきたわ。思ったよりも高さが出たけれど重量の影響のせいね、弧を描き最原君は何とか受け取るとこが出来たの。

    そのさまに対しとてもつまらなさそうに眺めた王馬君を一瞥したけれども――全く気にしてないわね。
    ……彼らしいと言えば彼らしいのだけれど。

    最原君は持ち方を迷っているのか色んな箇所を触れていたわ。時折「うわぁっ!?……な、なんだよこれ」と独り言を呟いてはなんとも言えない表情をしつつ、困惑気味に百田君を見てお礼をしていた。

    王馬「相変わらずだけど何処で使うかまではさっぱりのまんまだからねー。
    ――使い所を探すのは最原ちゃんたちに任せたよ!」

    ヘラヘラして答える彼に「ほんとどこで使うんでしょうね…?」と困った表情で茶柱さんの独り言も零れているのに同意しかないのだけれど、欲しい時に無いよりかはマシだと思うわ…と言いたい気持ちを堪えて今度は彼女の方をチラリと視線を這わす。

    視線に気がついたらしい茶柱さんはハッと思い出したのね、ポケットから『 夢野さんの髪留め 』を取り出し、出来るだけ彼女が取りやすいようにとギリギリまで歩を進めたわ。

    茶柱「あ、そうでした。
    ……夢野さん!!これを―――」

    大切なものと知っているからでしょう、彼らみたく投げることをせずにそれを渡す。呼ばれた夢野さんは戸惑いながらも手を必死に伸ばして受けとったわ。

    ……互いに手を伸ばして大丈夫な距離感なら先程の石像、彫像でいいのかしら?も同様に手渡し出来たのでは?と思わなくもないのだけれどここで追求するのは野暮というものでしょう。
    その光景を黙って見守ることにしたのよ。

    受け取った『 髪留め 』を見るなり、花が開くような明るい表情になった彼女を見るとホッとしてしまう。良かったわね、と夢野さんに向かって微笑むと『 髪留め 』の表面を軽く撫でて大事そうに胸に当てて抱きしめ――カチャカチャと分解したかと思えば、隙間から白いものが見えたのがわかったわ。
    大事なものを隠していたのでしょうね。それを見つけたなり「よかった…」と安堵していたの。

    夢野「んあ!?こ、これをどこでっ!」

    夢野さんの返答に慌てて身振り手振りを交えて説明したわ。

    茶柱「大分前の話になるのですけど『 保健室のベッド 』で見つけたんです。
    以前それを大切になさってると聞いたものですから絶対に渡さないと!いけないと思っていたのですが……」

    生憎先程はお会いしたことで精一杯になってしまって、渡すタイミングを逃してしまったんですけど…と続けたわ。

    百田「おお!!それ茶柱が見つけてたんだな!
    良かったな。夢野」

    夢野さんの頭を撫でながら百田君が「ありがとな」と茶柱さんに向かってお礼を述べたわ。

    茶柱「ななな、男死に言われるのはとても癪に触りますね!」

    百田「ヒェッ!!茶柱目がこえーぞ……」

    王馬「いやー持ってたなら早く言ってよね?
    夢野ちゃんビービー泣いて大変だったんだから!」

    夢野「ビービー泣いては……おらぬぞ?」

    赤松「……疑問形なんだね……」

    赤松さんの苦笑いの口調が普段と変わらないのに安心した私は改めて彼らに向かって声をかけるわ。

    東条「他に渡すものとかあるのかしら?ないのであればそろそろ手分けして行動した方がいいわ」

    最原「――確かにそうだね。行動の大まかな目標は掴めたようなものだから次こそは合流も含めて動けたらいいけど」

    百田「だな。っても最後までこの形になるかもしれねーがとりあえずオレたちはまだ行けそうな場所がないか行ってみるぜ。
    ―――じゃあな、終一!!」

    私の発言でお開きになって、そうそうに彼らと別れたわ。…茶柱さんがとても名残惜しそうに夢野さんの背中を見ていたけれど黙っておくことにしたわ。



    ▼ 【 赤子の像 】を受け取りました… ▼



    ▼ 【 夢野の髪留め 】を渡しました… ▼



  116. 116 : : 2021/01/14(木) 03:31:05

    最原「――さて。
    僕たちは行ける場所を探さなきゃならないんだけど」

    彼らを見送った後『 ぬるぬるした像 』の持ち方に未だ迷いがあるみたいでちょこちょこ変えながらも口を開いたわ。

    赤松「そうだよね…でも、行けそうな場所ってあるのかな?」

    うーんと右手を顎に当てて悩む赤松さんに私も少しお手上げねと答える中、一人だけ思い当たる節があるのか恐る恐る呟いたのよ。

    茶柱「『 2階 』はどうでしょうか?」

    赤松「『 2階 』って確か『 レバー動かした所 』でいいのかな?」

    ええ、と頷いてから続けたわ。

    茶柱「先程は言われた通りに『 レバーのようなもの 』目掛けて進んでいましたが、その途中に『 分かれ道?別れた廊下 』ようなものがあった気がするんです。
    それにまだ奥に行けそうな――そんな気がして」

    最原「――確かに。『 2階 』は詳しくは見ていない。
    だったらそこから調べよう。
    そこに何も無かったら、茶柱さんには悪いけど『 旧校舎 』でいいのかな?そっちもいま一度詳しく見てみたい」

    茶柱「えっ、…むこう、にですか……」

    茶柱さんが戸惑うのも無理はないわ。僅かに震える彼女の背に手を触れ、撫でると小さく「仕方ないですもんね、転子は大丈夫ですから」と私を見て答えたわ。

    赤松「それなら来た道を引き返して、ってなるのかな?ここから『 2階 』に直行出来たらいいんだけど、こっち側からは確か降りられないんだよね?」

    赤松さんの提案にそうね、と頷く。
    となると、また『 あの梯子 』を経由しなければならないから――

    東条「降りる順番は最原君が最後でいいわよね?」

    最原「ええっ、あ、なんで――」

    意図を読みかねてる彼に対して普段と何ら変わらぬ口調で茶柱さんが睨みつけたの。

    茶柱「また赤松さんのぱっ、パンツを見るつもりなんですか?とんだケダモノですね!!」

    赤松「ええっ!!最原くん…私のパンツ……みた―――の……?」

    最原「ああっ、それは、流石にしないよっ!!
    そういうことなら僕が最後で問題ないよっ」

    衝撃発言に驚いて顔を真っ赤にした赤松さんに対し最原君が慌てて弁明している様は王馬君では無いけれど中々面白かったわ。



    ******



    最原「――意外にも降りるまで時間がかかったな……
    ゴメン、待たせたね」

    『 用務員 』の前で待っているとやっと彼が扉から顔を覗かせた。少し時間が掛かったのは手にしている『 例の像 』を持ちながらだったからでしょうね。

    仁王立ちする茶柱さんを宥めつつも確かめたわ。

    東条「確かこの先の細い廊下を進めば『 2階 』に繋がる階段に行けるはずよね」

    赤松「うん。そうだったはずだよ。この先は確か――」

    茶柱「1人ずつしか行けないぐらい細い廊下でしたね」

    『 彫像 』をもつ私と最原君が最初に行くべきかしらと互いに視線を合わせていると赤松さんがスマホ片手にそれならと呟いたの。

    赤松「それなら私が先に行こうか?……ほらもし急に暗くなっても咄嗟に明かりが出せるのかって言われたら難しいからさ」

    茶柱「そ、それなら転子の方が――」

    言いたげな茶柱さんを制して、赤松さんが続けた。

    赤松「茶柱さんは1番後ろにいて欲しいな。
    もし追われることになったら…1番動けるのは茶柱さんだろうし……って向こう側から来たら最原くんたちを引っ張って引き返してくれると助かるかな」

    急に言われるとびっくりして頷く他ならないわ。どの順番でも問題ないのだけれど……と言いたい口を寸で抑えて「いいわそうしましょう」と同意したの。

    最原「そう、だね。赤松さんの言う通りかもしれない。今は落ち着いているかもしれないけど何が起きても不思議じゃないからその順番で行こうか」

    赤松さんが最原君の言葉に頷いて「決まったなら行くしかないよね!」と細い廊下へと歩みを進めたわ……

  117. 117 : : 2021/01/14(木) 03:32:11

    あけましておめでとうございます。
    今年もよろしくお願いいたします。

    コメントありがとうございます。(お返事コメはしませんと書いてる手前書き込んでしまっているのはアレなのですが…)

    今年中に決着つけたいとおもいます!!




    (ここで少し今まで引っ張ってきた隠し安価の結果を発表します。
    ※お気づきの方は気がついていたかと思われますが…)


    実は展開によって『 夢野の髪留め 』を渡す渡さないの分岐がありました。
    END分岐にも関わるもので、『 赤子の像 』を渡すイベントまでの安価の1部結果に加減式で得点を入れてました。

    今回は正規ルートでの進行です。

    (気分がのったら別ルートを別の場所で公開するかも?…今の所未定です。
    希望が多ければ――書くかもしれません)


    ※ちなみに
    分岐にあたるポイント数、並びに各安価結果の配点はここでは伏せますが、茶柱がギリギリセーフでした…

    夢野が超えた時(★4)
    茶柱が超えた時(EX★2)
    両方なら自動的に(★4)エンド

    という内容でした!!!
    回避おめでとうございます。



    それでは引き続きお楽しみください。





    accident!!>>118番さん~>>120番さんまで
    該当者の秒数の平均値での安価。
    (結果で展開が大きく変わります。…答えは伏せたまま進行します)



  118. 118 : : 2021/01/15(金) 20:40:50
    お待ちしておりました!!引き続きお待ちしております!
  119. 119 : : 2021/01/18(月) 02:42:24
    つい先日支部で見つけて最新まで追ってきました。すごい面白いです、続きを楽しみにしております!
  120. 120 : : 2021/01/20(水) 18:16:32
    待ってました!このシリーズ大好きです!完結して欲しいですけど、完結したら寂しくなってしまいます。うーん、複雑(´・ω・`;)
  121. 121 : : 2021/01/20(水) 20:56:02
    今年中に完結ですか!
    完結はとても楽しみですが、寂しい気持ちもありますね… とりあえず続きが楽しみです!

    あと、今後未回収のバッドエンドを書く予定はあったりしますか?
    そこそこ未回収のものがあったので、見れたら嬉しいな〜と…
  122. 122 : : 2021/01/31(日) 02:48:46

    赤松さんの指示の通りに並ぶとスマホ片手に彼女が先頭に私が続く。すごく薄暗くて進むのもあまり気が進まないのだけれども赤松さんの歩みは迷いはなくて不思議に思うわ。後ろに居るであろう最原君にアイコンタクトを送りたいのだけれどこの狭廊下で振り返ることは難しいわね。

    東条「(……杞憂であればいいのだけれど)」

    彼女の背を見ながら思う――と、制服のスカートの裾がふわりと僅かに靡いたのよ。

    どこからか風が吹いているのでしょうね。これ以上スカートが広がらないように軽く抑えては居るけれどあまり強い風では無さそうね。床が朽ち果てて軋む音がこだまのように聞こえるぐらいだからすきま風があるのも分からなくはないわ。

    でも一応何があるといけないのだから前にいる赤松さんの髪の毛が風で揺れ動いているのを見て風向に注意する。
    これは……下の方、かしら?

    赤松「あ、あともう少しで出れそうだよ!」

    茶柱「意外と長く感じました……やっと広い所にでられるんですね」

    赤松さんの明るい声に茶柱さんの安堵する声が聞こえた時だったの。
    ……ガコン、って足元から音がしたのが―――

    赤松「―――え?」

    それは赤松さんと私の足元付近から聞こえた音に遅れて反応した赤松さんの驚き固まった声。
    ――すごく嫌な予感がして彼女の背中に思いっきり体当たりをしたわ。

    東条「っ!!ごめんなさい、赤松さんっ!」

    赤松「わっ、キャッ!!!」

    思ったより吹っ飛ばされるかたちで一足先に開けた場所に身を投げ出された彼女が驚きこちらを見ると同時に、

  123. 123 : : 2021/01/31(日) 02:49:44

    『 茶柱転子 』side

    ……何が起きたのか分かりませんでした。
    赤松さんの姿が急に遠くなったかと思えば、風が思いっ切り吹き込み髪の毛が揺さぶられていきます。
    すると今度は最原さんの「東条さん!!!」と鋭い声。転子には何が何だかサッパリでその場で立ち止まってしまった最原さんの背中を肘でつつきました。

    茶柱「最原さん?」

    最原「……な、なんで……」

    赤松「――え?」

    どうやら転子だけ状況が分からないみたいです。驚き固まる二人の声に戸惑うのは転子の方で。

    茶柱「どうしたんで……す…っ!?」

    最原さんがその場にしゃがんだ事で『 何が起きたのか 』をようやく理解したんです。
    そう、拓けた視線の先にあったもの――それは。

    茶柱「東条……さん……?」

    赤松さんと最原さんを隔てて人一人分は開いた床の底の方に東条さんが……東条さんの胸に鈍く光る……え?これはっ!

    な、な何が―――

    最原「東条さん!!!」

    最原さんの呼ぶ声に、赤松さんが腰が砕けてしまったのでしょうか?ハイハイ歩きで床の穴付近までいってスマホのライトを申し訳やさそうに照らしで最原さん同様に名前を呼んだんです。

    ぴくり、とその手が動きます。床の底は無数の鈍色に光る針のようなものがこちら側に突き出していました。東条さんの体はその針に何ヶ所か貫かれてしまっていて、そ、その、夥しい量の血が飛び散っているのが分かるんです。

    東条「……よ、よかった、わ……」

    ライトに照らされた血まみれの顔は針に貫かれてないようでうっすらと瞳が転子たちの方へと向きました。

    赤松「東条さん!どうしてっ!!」

    ポタリ、ポタリと赤松さんから涙がこぼれていきそれは針に吸い込まれるように落ちていきました。

    最原「なんでっ」

    俯き直視出来ない最原さんは悔しそうに言葉を吐き捨て、転子もまた言葉を失ってしまっていたんです。

    東条「……みんな、が…無事なら……いい、わ――」

    そう言って微笑みます。東条さんらしくなく乱れた髪の毛からちらりと片目だけ細めていますけど口からは血が流れてました。
    その光景を呆然と見てしまう転子たち。

    ああ、そうです、早くっ早くっ助けなきゃ!!

    茶柱「――ああ、いま、いま助けますからね!!」

    最原さんを押し退けて何とか東条さんを助けなきゃと思い腕を伸ばそうとしたのを止めたのは最原さんでした。

    最原「無理だ……この落差だと助けることなん、て――出来ない」

    茶柱「っ!!なんでそう決めつけるんですか!!
    ――助けなきゃ、東条さんが、東条さんがっ」

    無理やり腕を振りほどこうとしましたが、何故かびくりとも動かせなくてだんだん苛立ちが込み上げてしまって叫んでしまいます。
    その声に赤松さんが「あっ、あっ……」と絶望的な表情をしていて、そのさまをただ狼狽えていて。

    東条「いい……の、よ…しかた、ないわ……」

    茶柱「東条さん!!」

    口を開く度に血が段々広がってしまって、星さんや天海さんの最期を思い出してしまって自然と視界がふやけてしまいますっ!

    東条「ごめ、んな……さいね…いっ、しょには……いけなさ、そう…」

    そう言うと激しく咳き込みヒューヒューと変な呼吸の音が響きます。そんな……いや、嫌です!!

    最原「……」

    最原さんは転子の腕を掴んだまま話さずにそのまま黙って聞いてます。それは赤松さんも同じでした。

    茶柱「――っ!!」

    最原さんの言う通り、床のそこはだいぶ深いのでしょう。この廃校舎にハシゴやロープが転がっている……なんて事はないということは調べ歩いた転子たちは知ってます。
    だからこそ、今の転子たちに出来ることはなくて――

    東条「…もう、だれも……うしなって……は、だめ、よ…。
    さい、はら……く、あと……まか……せ…た――」

    最原「――東条さん!!!」

    下唇を噛み締めてこらえます。転子たちのその姿を見て申し訳なさそうに微笑んだままの東条さんは震えながらも腕をこちらへと伸ばします。

    けど――それが届くことはありませんでした。

    途中まで上がった腕は力なく針に刺さります。深く、深く、ぐさり―――

    微笑んだままこちらを見た瞳は段々色を失って力なく刺さる身体が自身の重みでずるずると不愉快な音立てて行く姿に視線を逸らしてしまいます。

    つい先程まで、転子たちとお怪我はしていましたが話していたのに……たった一瞬の出来事でこうもなってしまうだなんて。

    最原「くそっ、なんでだよ!!――どうしてつ!!!」

    俯き吐き捨てるように怒鳴った最原さんのその手には『 東条さんのカチューシャ 』だけが残されていました……
  124. 124 : : 2021/01/31(日) 02:50:28

    ▼【 東条のカチューシャ 】を入手しました…▼

    説明:(彼女が普段愛用する黒いリボンの着いたカチューシャです。リボンの箇所は取り外し可能で日によって変えていたようです)




    茶柱「……」

    つい黙ってしまう転子たち。転子の鼻をすする音だけが静まり返った廊下に響いてました。

    最原「――行こう」

    腕をようやく解放してくれた最原さんが転子たちを見て静かに呟きます。

    進むしかないんだ、と納得させるように続けていますが、この床から進めないのならどうすればいいのでしょうか?

    茶柱「……そう、ですけど――」

    赤松「私だけこちら側に行けたけど――この距離だと飛び越えるのも難しそうだよね……」

    赤松さんが申し訳なさそうに視線を右往左往してますけどその通りでどうすればいいのでしょうかと最原さんの方をみます。

    風が吹いたんです。それが転子と最原さんの髪の毛を揺らしたかと思えば―――

    ……ガコン!!ガラガラガラガラ……っ

    先程まで開いていた床がゆっくりと閉じていくじゃありませんか!!
    まるで「人を飲み込んで満足した」といった感じでしょうか?
    東条さんは床のそこに飲まれて……そして何事となかったかのように床が元通りになったんです。

    赤松「――東条さっ……!!」

    茶柱「……うそ、です、よね……」

    元通りになった床を無言で叩く最原さん。いくら叩いてもビクともしないんです。本当に何事も無かったかのようにただ床があるだけで……

    赤松「え、うそ……」

    言葉を失う転子たち。この先を行かないと進むことは出来ないよ、と言わんばかりの道を行く気なんて更々なくて、ましてやこの下には東条さんが―――っ!

    最原「……ここしか通る場所はないのかもしれない」

    苦虫を噛み潰したように歪んだ表情で床を睨みつける最原さんが立ち上がって……床に一歩踏みました。
    片足だけ乗っけてますが、びくりともしない床。
    躊躇っていましたが――

    最原「東条さん。ごめん」

    そう言うと慎重に赤松さんの居る廊下までその上を歩いていきました。……けど床が落ちる訳でもなくてすんなりと行けたワケで、転子も「ごめんなさい」と最原さん同様に床を渡りきりました……

    赤松「東条さんが背中を押してくれてなければ私がああなっていたのかもしれない。
    それって私がまた、また悪いんじゃない……の?」

    茶柱「赤松さん……」

    合流するや否や震えて答えた彼女に対して最原さんが答えました。

    最原「それは違うぞ。赤松さんは悪くないよ。
    恐らく東条さんは彼女が思う最善の行動をとった結果なんだと思う。僕が同じ立場だったら同様の行動をする。
    だから……気にするのはやめよう」

    赤松「最原くん……ごめんね、ありがとう」

    赤松さんのお姿を見るととても見ていられなくて転子は袖で涙を拭って頭を小さく横に振った。

    茶柱「赤松さん、最原さん。
    今は進みましょう。きっとここでくよくよしてしまっては東条さんが身を呈して守ってくださったことに意味がなくなります」

    最原「そうだね。今はこの『 二体の像 』を使う場所を探さないとダメだ」

    赤松「うん……東条さん、そのままにしてしまってごめんね。後で絶対に楽な場所に運んであげるからさ、だから……」

    待ってて、と床に向けて静かに言うと転子たちは二階へと向かいました……
  125. 125 : : 2021/08/15(日) 04:04:07

    二階は一階と違って生ぬるい感じがしました。その血もち悪さに顔を顰めながらも先程行かなかった方の廊下へと進んで突き当たりに『 それ 』はありました。

    最原「これはなんだろう?『 何かを置くための台 』かな?」

    赤松「うん。くぼみがあるから多分そうだよ!
    あ、あのさっ王馬くん達から貰った――『 ふたつの像 』を置いてみない?」

    赤松さんの提案に頷いて最原さんの持つ『 彫刻っぽい像 』に『 ぬるぬるした像 』をそれぞれ乗せてみたんです。それは予めハマるようにカチッと収まって動かなくなりました。
    動かないことを確認した最原さんが赤松さんと転子の方を横目で見ました。

    最原「これで、いいのか?」

    赤松「うん。よく分からないけど使い道と言えばこうなのかなって」

    赤松さんと交互に顔を見合わせた転子はつい挙動不審になってしまいます。
    何か起こるのでしょうか?

    しばらくそのまま戸惑っていたらば地響きがして――『 壁になっていた場所 』が崩れて奥に行けるようになったんです!!
    崩れたというよりはからくり屋敷の扉が無くなってしまった――そんな感じで。

    最原「っ!?もう何でもアリなんだな……」

    パラパラと床に落ちる壁の破片を避けつつその新たに行けるようになった場所の先をちらりと見ながら、答えると赤松さんが震えた声でその先を指さしてました。




    ▼【 赤子の象 】を使用しました… ▼


    ▼【 大理石の彫像 】も使用しました…▼




    赤松「……ねぇ。この先ってもしかして――」

    茶柱「赤松さん?どうかしましたか?」

    赤松さんの言動に戸惑っていると首を横に振った彼女が青冷めた表情をして答えたんですよ。

    赤松「『 保健室 』ってそういえば見つけてなかったよね……まさかこの先に『 保健室 』があるんじゃないかって思ってさ」

    『 保健室 』。
    ああそうか。そうですね。言われると納得してしまいます。
    確かに……赤松さんの言う通りで夢野さんたちの話だと『 保健室 』のほの字も出ていませんし。

    それを考えるに有り得るかもしれません。
    だ、だとすれば――

    最原「ああ、確かに……百田くんたちの話から『 保健室 』ってワード聞いてないな」

    茶柱「校舎の雰囲気も構造も大幅変わったとしても『 ない部屋はない 』ということですよね?
    だとしたらこの先は……」

    赤松さんがこれまで辿った道を転子は口頭でしか知りません。逆も然りですし。
    無理に辛い記憶を掘り起こすなんて事したくないです。
    だったら。

    転子は一呼吸おいて震え俯く赤松さんの両肩に優しく手を乗せてからできるだけ普段と変わらない声で語りかけます。

    茶柱「赤松さん。恐らくはその通りなんだと思います。
    もしお辛い記憶がフラッシュバックされるようでしたら転子だけでも行きますがどうしますか?」

    最原「え、ええっ?!ちゃ茶柱さん、それはそれで危ないんじゃ」

    茶柱「そこの男死は黙っていてください!!」

    最原「うわっ!!」

    睨みを効かせて黙らせます。この場で口を挟むのはご法度ですよ!!!
    だから男死は……ああもう!違います!!話が逸れてしまいます。
    かぶりを振って再び赤松さんの方を向きます。

    茶柱「――どうしますか?転子は赤松さんの気持ちを尊重したいと思います」

    赤松「ちゃ、茶柱さん――わ、私は」

    僅かに行くよと口が動いた気がしました。
    それを確かめたくて再度確認を取ります。

    茶柱「そうですか。本当に良いんですね」

    コクリと頷くのを横目に最原さんの方に向かって声を上げます。

    茶柱「最原さん。行きましょう」

    最原「あ、ああ……分かったよ」

    転子の勢いに気圧されているのでしょうか、曖昧な返事にかなり……若干苛立ちが芽生えますけど気にしないことにしましょうか。

    意を決して廊下の先へと進みますよ。

  126. 126 : : 2021/08/15(日) 04:04:33

    暗い。いいえ。厳密には窓から差し込む僅かな月明かりが廊下の床を照らしていて真っ暗ではありません。ですが……

    最原「くっ、空気が澱んでるな」

    茶柱「いった……っ」

    今までに感じたことの無い澱んだ重い空気にずっと耳鳴りが続いているかのような甲高い音が頭の中で響いていて気持ち悪くなっちゃいます。ちゃんと立っているのか?と疑問符浮かべたくなってしまうような――そんな居心地の悪い浮遊感さえ感じてしまい壁伝いに歩かないと進むことも出来ないんです。

    そのぐらい酷くて辛い。
    顔を顰めて何とか廊下の先を見据えてはいますが、長時間は居られなくてどうしようか困り果てた時でした。赤松さんがフラフラとした足取りで無言で進んで行くんです。

    茶柱「あ、あかまつさ――」

    赤松「ふたりは待ってて。なんでか分からないけど進めそうな気がしてるんだ。
    すごく怖いけど――頑張るね」

    最原「赤松さん……ゴメン」

    その鼻から一筋の血が流れているにも関わらず微笑んだ彼女はそのまま振り返らずに……恐らく『 保健室 』であろう扉を開いてその姿を消してしまったんです。

    茶柱「はぁ、はぁっ……本当に平気なんでしょうか?」

    最原「分からない。……けど、今はその言葉を信じるしかないよ」

    何とか耳鳴りの最中会話を続けます。話してないとどうにかなってしまいしまいそうで。最原さんも同様みたいでその表情は歪んでます。
    きっと転子も似たような感じなのでしょうね。

    どのぐらいそうしていたのでしょうか。雷鳴が一際大きくなった時、赤松さんが勢いよく扉からその姿を見せて青ざめた表情で駆け寄ってきました。

    最原「赤松さんだいじょ」

    赤松「逃げて!!」

    鋭く言われたその言葉がきっかけだったのか分かりませんが急に身体が軽くなって耳鳴りもいつの間にか薄れていったんです。
    弾かれたかのように転子達は先程までいた『 台座 』のようなものかあった場所まで慌てて引き返します。

    茶柱「はあっ、はあっ……っ!」

    最原「はあっ、ぜえっ……」

    赤松「……はあっ、……っ」

    息も絶え絶えに転がるようにその場でたどり着き、その場所で息を整えます。
    ……追っては来ないみたいですね。

    大きく深呼吸した後に赤松さんの方へと視線を向けます。赤松さんは青ざめた表情でその手にしたものを床に起きます――ノートですかね?『 Diary 』と手書きで書かれた表題に下の方に『 篠崎ヨシヱ 』と書かれていました。

    最原「赤松、さん…っく、そ、それは――?」

    まだ息が整ってない最原さんが額に流れた汗を拭いながら問いかけます。それに赤松さんが静かに答えました。

    赤松「うん……『 私を襲った霊 』だと思うその人と小さな子供の幽霊が沢山いたんだ。……多分――多分だけどその『 私を襲った霊 』の持ち物だと思うんだ。
    ――持ち出しちゃったけどさ」

    大事なことが書いてある、そんな気がして……と続けた赤松さんが「開いてみて」と最原さんに促します。

    最原「ああ…分かったよ。ええっと――」

    最原さんがしゃがんでページを一つづつめくります。最初こそは『 保健室の先生 』としての日常が書き込まれていて微笑ましいぐらいでした。
    例えば「○○くんの乳歯が体育の授業の途中で抜けたから泣きながら保健室に来た時は宥めるの大変だったけど、最後に笑ってくれたのが嬉しかった」とか「逆上がりが出来ずに鉄棒で豆が潰れちゃった子の手当をした」みたいな些細な事が。
    ――でも、その中で目立つ分に捲る手が止まりました。それは……

    最原「『 今日はサチコの7才の誕生日 』――って」

    茶柱「サチコって……この天神小学校の黒幕とも言える人ですよね?」

    赤松「うん。そうだと思うよ。
    現に――『 私を襲った霊 』……正しくはヨシヱさんでいいと思う、その人はサチコのお母さんでもあったみたいなの」

    それって――どういうことでしょうか?
    戸惑う転子をよそに最原さんが続きを読みます。

    最原「『 放課後、一緒に夕食を食べに行く事に決めてある。プレゼントの猫のぬいぐるみ。喜んでくれるかな 』
    ここまでは……何事もないけど」

    その先……文字が少しずつ歪んだり滲んだりしています。何かあった、ということなんだと思うのですが…

  127. 127 : : 2021/08/15(日) 04:05:06
    『 百田解斗 』side

    百田「だな。っても最後までこの形になるかもしれねーがとりあえずオレたちはまだ行けそうな場所がないか行ってみるぜ。
    ―――じゃあな、終一!!」

    終一たちに向けて手を振り、別れた。振り返ることなく前に進み、『 資料室 』を横切り階段を一段下りた時だったんだ。
    軽い音と共に
    『 何か 』がオレらの横をすり抜けて踊り場で止まった。

    夢野「んあ?なんじゃ――これは……スクラップかの?」

    真っ先に『 そいつ 』を拾い上げ、パラパラとめくった夢野がふとあるページで手を止めたんだ。

    王馬「なになに?どうかしたの」

    夢野「こ、これは……っ!!」

    夢野の肩が僅かに震える。なんだ?どうかしたのか?

    王馬「――え?、は?」

    今度は王馬が固まる。なな、なんだよっ何かどうなってんのかぐらい言えよっ!!

    夢野「……誰かが、コチラにくる…来るのじゃ……」

    震えた声色で視線だけを寄越すのが不思議で首を傾げてっと怒号と共に足音がだんだんと聞こえてきたんだ。

    ??『……まて!!待ちなさい!!』

    三階側から現れたのは――女性だ。20代後半に見える短髪の長身のその人は慌てて階段を下りていく。……オレたちには目もくれずだ。

    百田「(何が起こってんだよ?)」

    戸惑うオレにいつの間にか袖を掴んでた夢野が静かにこちらを見てやがる。口元が必死に何か言葉を出そうとして出せないのか震えていたんだ。

    百田「ゆ、ゆ――っ!?」

    どうかしたのかと言葉を出そうにでねぇ。か、金縛りにあったみてーに指ひとつ動かない身体に驚く。は?な、なんなんだこりゃ。

    女性のあとに続くのは初老の男だった。ソイツは女性に追いつくと踊り場――ちょうどオレたちの真横で取っ組み合いの口論を繰り広げていく。

    ??『いけません!離してください!!』

    ??『ま、待たんかっ―――っ!?』

    怒号が一際大きく、そしてその腕が大きく女性の胸元に当たって……よろけた女性が階段から転げ落ちたんだ!!

    女性は当たり所が悪かったのか、ピクリとも動かねぇ……ってか、首がねじれてあらぬ方向を向き白目を向いたまま頭から流れている血の量で目を背けたくなるのにどうしてかそこばかりしか視線が行かねぇ。

    ――その光景に驚き固まる男が、震える声で呟いてやがった。

    ??『………あ、ああ……【 篠崎君 】、あああ……そ、そんなつもりじゃ――――す、すまなあ、あ、あ、たって、立ってください――――あ、ああああっ!?』

    ひとり狼狽えるその人物の言葉が止まったんだ。それは……そう、『 篠崎君 』と呼ばれた人物の足元にいた――

    百田「(アイツは――サチコ、なのか?)」

    サチコ、だったんだ。サチコは事切れた篠崎君と呼ばれた女性を呆然と見て呟いた。

    サチコ『……お母さん……?』

    やっと捻り出したであろう言葉に男が反応した。

    ??『……サチコ君……見たんだね……』

    夢野「――っ!!いかん!!逃げるのじゃ!!」

    サチコ『!?』

    何故か夢野の声に反応し、声のする方にやっと顔を上げたサチコが弾けたようにその場から逃げ出すと男も追いかけて行きやがって。

    ―――しばらくして、ゼェゼェと息を荒らげた男だけが戻ってきたかと思えば……篠崎君を「私は悪くない」「悪いのはこいつらなんだ…」「隠さないと……あそこに…あそこならば……」とブツブツ言いながら引きづってやがったんだ。
  128. 128 : : 2021/08/15(日) 04:05:29
    姿が見えなくなると同時に、身体の自由が聞くようになってそれでもその場から動けずにいるオレに対して静かに夢野が言葉を零した。


    夢野「――この事じゃったんだな……」

    百田「は?どういうことだよっ!」

    独り言に過剰に反応しちまったせいか、夢野がビクンと驚き肩をふ震わせた。それを尻目に王馬が夢野から『 スクラップ帳 』のような物をオレの目の前に広げた。

    王馬「――これだよ。恐らくね」

    百田「『 【 天神新聞 】
    街の名医、惜しまれる事故死・天神小学校に起こった悲劇 』――ってあ、なんだよ」

    夢野「いま、その光景をまざまざと見たのじゃよ……そして、その写真を見ればやっと根幹が見えてきた――そう思わんか?」

    夢野に言われるがまま記事を読んでいく。

    超自然学による心身治療を学び西洋医学とは違った視点で患者の心の治療をしていた、町の開業医『 篠崎ヨシヱ(27) 』が小学校の階段から落下し、即死だった事と娘の『 篠崎サチコ(7) 』の行方が不明であることが記されていたんだ。しかも記事は――児童誘拐・殺害事件よりも遡ること30年前となっていた。

    王馬「そんな気の抜けた面構えで読まないでくれる?……おつむとお察しがわるーい百田ちゃんなら分かるんじゃない?これがどんな意味を持つのか、を」

    王馬の鋭い視線に息を飲んじまう。

    思考が止まりそうになるのを寸で切り替え、考える。
    菅野雪たちが巻き込まれた事件よりも前にサチコが行方知れずになっちまった事。そしてサチコの姿が変わらない事。

    それってつまり――

    考えたくねぇし信じらわんねーが、あるひとつの結論に至っちまった。

    百田「サチコが既に死んでるって事だよな……母親が死んだその日か数日後か分からねぇがよ。
    そんでお、怨霊化したサチコが雪たちを殺した――と」

    夢野「……そうじゃろうな。この切り抜きを作ったのは恐らく鬼碑忌コウじゃろうな……まあそこは良い。
    ならばウチらが行うのは……サチコを鎮めることつまりは――」

    王馬「『 サチコの遺体 』がある場所を見つけないと行けないってことだよね。
    たはーーー骨が折れちゃうね。今更調べ尽くしたであろうこの校舎にあるかどうかさえ分からないのにね」

    お手上げ、といった状態でため息を吐く王馬に対して夢野がぼそり呟く。

    夢野「いや、ひとつ……1箇所だけウチらが見ておらぬ場所があるじゃろう。それは最原達も同様な筈じゃよ」

    ゴクリと生唾を飲み込み続きを口にする。

    夢野「かつてあったとされる――『 防空壕跡 』つまりはこの校舎の地下じゃよ」

    恐らく全ての答えはそこにあるのじゃろうて、ってな。

    百田「地下ってもよ……どうやって行くんだ?」

    結論がハッキリした所で目的地へと行く手段がねぇ。
    首を傾げてると夢野が王馬から『 スクラップ帳 』をひったくった。

    夢野「地下と言うぐらいじゃからな1階の御札が貼られまくっていた扉から行けると思うのじゃが……とにかく今居る階を調べきってからそこへ向かうとするかの。もしやこの先から行けるやもしれぬし」

    そんな単純にコトが進むのは怖いがそんな気が少しばかしするのじゃ、とも続けた夢野は行くぞと残った階段を下り始める。

    王馬「いやートントン拍子ってのも怖いけどねー。
    でも今はその方がありがたいかもね」

    なんてニヤニヤこっちを見やがる王馬に苛立ちを覚えつつも夢野の後を追った。

  129. 129 : : 2021/11/14(日) 03:43:47

    百田「ってもよぉ、調べてねーところってのはよ、この先しかねぇんじゃないか」

    頭を掻きながら唸っちまう。夢野は相変わらず眉間にしわ寄せてるし、王馬も王馬で顔色が悪ぃ……ああくそっ。

    王馬「……なんなのこれ?」

    百田「?どうした王馬」

    不意に王馬がしゃがみ徐に何かを拾ったみたいだ。数歩先の夢野が引き返し王馬の手にしたものをマジマジ見てたんだ。

    夢野「んあ?紙かの……なにかの切れ端か?」

    王馬「そうみたい――どうやら『 鬼碑忌コウ 』のメモに近いかも。読むよ」

    それに無言で頷くオレら。
    もう既に大体の事情は把握してるが、読まずにはいられなかったんだぜ。
    『 鬼碑忌コウ 』ってことは終一たちが目にしたという記事の続きかもしれねぇしな。

    王馬「『 ■ 猟奇実話ルポ ■
    実在する呪われた学校の過去を追った!
    4 鬼碑忌コウ
    ひとりになってはいけない
    ひとりになってはいけない
    ここにきたのは我々が1番ではなかったらしい。既に何人かの先達がいた。

    皆一緒に死ぬか、この校舎に喰われていた。
    喰われる……という表現を使うのには理由がある。

    この学校を包んでいる巨大な呪い【 それ 】に深く心が蝕まれてしまう――すなわち心の隙を作る事は自殺行為に等しい。
    深い絶望や孤独感に心をつかまれると、あっという間に呪いに心が侵食されてしまうのだ。

    結果――肉体は壊死をはじめ、魂は消し炭のように真っ黒になり――我々はこれを黒化と呼ぶが、この校舎に吸収されその一部にされてしまう。

    例外として肉体は蝕まれずに激しい思念のみが残留し、焼き付いたりすることもある様が、ほとんどの場合、魂はその場に固定され成仏もせずにそこに留まり続ける事になる。

    こうしてこの学校は犠牲者を喰らい……どんどん膨張を続けているようだ。――ゾッとする!
    この霊場の接触方法……【 サチコのおまじない 】を現世で世間に公開していたらこの被害がさらに拡大する所だった。

    この第四回も、次回の第五回も【 読者 】は……私と同じく監禁された犠牲者という事になってしまった。
    しかしせめて生き残るための参考になればと思う。‪
    読者の貴方に希望を残せたらと願ってやまならないのだ。
    第五回も楽しみにしていてほしい。

    助手の田久地君はどこかへ消えてしまった。ひとりになった私はもう帰る事ができなくなってしまった。
    だが、私は書き続ける。
    使命だからだ。
    何が起こっても、命ある限り。手が動く限り書き続ける。 』

    ――はぁ。あんまり重要そうな事が書かれてはないかーあー残念」

    「どんな事が起こっても、ねえ……」と意味深に呟く王馬の気持ちが何となく分かっちまって無性に腹が立っちまう。

    夢野「……コヤツはどんな気持ちじゃったんじゃろうな。死んだ時の事――」

    王馬「夢野ちゃん。考えない方がいいと思うけど。
    それに――この先まだ行けるみたいだからそっち調べない?」

    しゅんと項垂れた夢野の背中を軽く叩いた王馬が指差した。確かに廊下が続いてんな。もうこの他に行く場所がねーし今は進むことだけを考えた方がいいしな。

  130. 130 : : 2021/11/14(日) 03:47:06

    王馬「あららー百田ちゃんビビってんの?」

    百田「うるせー。そんなことでビビるわけねーだろうが!」

    夢野「んあ。百田声震えとるぞ」

    声色を心配してんのかそれともからかって突っ込んでんのか分からねーが、頭を振って「行くぞ」と声を掛けた。二人はそれに頷いて先いくオレの後を慎重に着いて渡りきった。


    夢野「!!」

    渡りきったその先の廊下。曲がり角を曲がってすぐだった。夢野の表情が強ばった。

    百田「……夢野?」

    夢野「――おるのか?……この先に『 何か 』がおる」

    青ざめた表情でんな事言われちまうとどっと気味悪さと冷や汗が出ちまう。そんなことを露知らずか、王馬が眉間にしわ寄せて一言だけ呟いた。

    王馬「……ふぅん」

    夢野「気を付けて進むとするかの」

    息を飲み、頷く。
    何があんだって言うんだ!
    いや、何が起きてもお、驚かねーからな!!

    顔を見合せ目配せしてから廊下を少しづつ歩くと――教室の扉が見えた。廊下の先は床が抜け落ちてるせいでこれ以上は進む事は出来なさそうだな。

    百田「――鍵はかかってねぇな。なら入るしかねーよな……」

    王馬「にししっ。何が待ってんのかはお楽しみってことだね!」

    夢野「行くぞ」

    夢野が扉を開いてオレたちがそれに続く。
    ――ん?教室みたいだが……何かめぼしいものがあるかと言われたら無さそうだな。

    だが、教室には隣の教室に繋がる扉が見える。
    もう進むことしか選択肢はねぇし……

    百田「なんだか誘われてるようで気が進まねーけどよ。行くしかないのか……」

    夢野「仕方なかろう。もう調べ尽くしとるとも言えるのじゃからな」

    なんて会話を挟みつつ隣の教室へと進んだんだが――

    百田「なんじゃこの教室!?」

    夢野「なんじゃ!?」

    王馬「魔法陣……か?」

    教室は教室なんだが机や椅子、教卓に至る代物は置いてねぇが代わりに床にデカデカと白のチョークみたいな代物で魔法陣みたいなもんが描かれてたんだ。

    百田「気味わりぃったりゃありやしねーな」

    夢野「確かにのぅ……それにしても前に真宮寺がこのサイズのを描いてたのを思い出したぞ。王馬、お主もその時一緒におったじゃろ?
    確か――囲って歌を歌ったような」

    王馬「は?そんなの知らないんだけど」

    夢野「んあ!?そんなことは無かろう!!ウチはその時アンジーの事を―――ってアンジーがどうして出てくるのじゃ?」

    唐突に戸惑って首を傾げた夢野にこっちが呆気に取られちまう。何を言ってんだ……という王馬の鋭い視線に耐えかねて夢野がポツリと呟いたんだ。

    夢野「んぁぁあっ、今はそんなことを話してる時間はないはずじゃったな。お主らそこの扉から恐らく廊下へと出られるじゃろう。
    ウチはここをもう少し見てから出るから先に行ってくれぬか?」

    百田「お、おう……分かった」

    王馬「ひとりで大丈夫なの?さっきから頭おかしいキャラになっちゃってるけど」

    王馬の挑発的な言葉に普段なら反発する夢野が首を振って「先にいけ」と言いたげな表情をするもんだから渋々従うしか無かったんだ。

  131. 131 : : 2021/11/14(日) 03:47:53

    夢野の言われた通りの扉から廊下へと行こうとした瞬間。王馬が無言で夢野の腕を引っ張った。

    夢野「……」

    引っ張っられても先程の饒舌な夢野の姿はなく無言で虚ろな瞳で床を見ていたもんだから驚いた。重い置物のみてーにびくりともしないのにも驚いちまうがよ。

    百田「ゆ、夢野っ!?」

    夢野「……」

    呼び掛けにも微塵も反応しねーその姿に戸惑いしかねぇ。だが王馬は手馴れた様子で強引にその場から動かそうとしてたんだ。

    王馬「はぁ!?……動かねーし。ねぇ、百田ちゃんボーとしてないでさ、手伝ってよ」

    百田「ん?あ、ああ。分かった……」

    テコでも動かねー夢野を二人がかりでなんとか扉まで動かしてようやく廊下へと出れた時には全身に汗かいちまったくらい重労働だった。

    百田「ぜぇ……ぜぇっ。一体何が起きて――」

    王馬「百田ちゃん。あそこ」

    王馬が指差す方――そこに居たのは初老の男。さっき、『 篠崎君 』と呼んで居た校長だった。
    ソイツがこちらを見ることなく壁に吸い込まれて消えた、吸い込まれたってよりかは……

    夢野「……焼却炉……」

    百田「ゆ、夢野っ!!」

    僅かに開いた口から零れた言葉に驚いて向いた。夢野は先程よりかは血色が良くなったのかゆっくりと呟いた。

    夢野「……その先、恐らく目的地に繋がっておるのじゃろう。きっと終わりは近い」

    王馬「そーいうことだから腹括って行くっきゃないね!」

    さっきとは打って変わってケロッと表情を明るくして言うもんだから拍子抜けしちまう。なんだよそりゃ。

    夢野「……今更怖気付いたか?」

    百田「ち、ちがっ」

    王馬「まーまー。変な所でおかしくなる夢野ちゃんよかマシでしょ?」

    夢野「おっ、王馬っ!!」

    茶化すのは相変わらずでなんだか安心する自分がいたが、そうじゃねーな。
    真っ赤に頬を染めた夢野が鋭い視線を向き直す。

    夢野「……いいか、ここに入ったら引き返せぬかもしれぬ、それでも行くか?」

    百田「たりめーだろ」

    王馬「当たり前じゃん。今更何言ってんのさ」

    決意表明見たくなっちまったが頷いたオレらは校長の消えた所――焼却炉へと踏み出してそれからその先へ進んだんだ。
  132. 132 : : 2021/11/18(木) 01:42:33

    『 茶柱転子 』side

    最原さんがページを捲ってそれを転子と赤松さんとで交互に口にします。

    茶柱「『 一日の仕事を終え、三階の資料室で書類の整理をしていた所に校長先生が訪ねてきた。
    しばらく話をした後に、先生は突然後ろから近付いて私の体を捉え、恐ろしい力で押さえつけて私の衣服の釦をはずし、辱めようとした。

    いつも悩みを聞いてくれる優しかった校長先生と同じ方とは思えないとても恐ろしい顔だった。私は驚いてしまって、自分に何が起こったのか分からなかった 』
    ……なっ、なんなんですか!!これっ!酷くないですか!やはり男死は幾つになってもケダモノですよ!万死に値します!」

    ってなんですかこの内容はっ!!これではヨシヱさんがあまりにも不憫過ぎて……辛いですっ!

    最原「あはは……。もうこれは過去のことだし当事者達はみんなこの場所にいるんだから多分死んでると思うよ」

    茶柱「それとこれとは話が別ですよ!!
    続きっ、続きを読みましょう」

    赤松さんが慌てて頷くと続きを読み上げました。

    赤松「えっとね――『 私は身体を曲げ、必死で逃れた。資料室から出たが先生は追いかけてきた。階段を下りて踊り場をまわった私を先生は後ろから強く押した。
    目の前に、一階の床が迫ってきたと思ったら、体が動かなくなった。だらしなく床に這ったまま、私はどうやら死んだらしい 』
    ……え。死んだ……?」

    死んだ、ということは文字など普通なら書き込むこと出来ませんよね?なのにどうして『 これ 』は存在しているのでしょうか?
    戸惑って顔を見合せてしまいますがその先を読み続けます。

    赤松「『 頭から血が沢山出た。後で拭くのが大変だ。みっともない。
    でも目の前で大事な声が聞こえて私は我に返った。
    サチコが見ていたのだ。私を迎えに来たのだろう。
    先生がサチコに近付いて行く。
    何をする気なんだろうか。やめて下さいと叫んだが、私は死んでいて声が出なかった。

    サチコは小さい体で逃げたが先生はすぐに追いついた。そして私の目の前で

    クビヲシメテコロシヤガッタ

    なんと酷い人だろう。 』
    っ!!コレは酷いよ……」

    言葉を失ってしまいます。
    そんなことがあっただなんて。感傷に浸る間はありませんね。まだページはまだ続いているみたいですし――第一それを読まないと進まない気がして気付けば読んでしまっていたんです。

    茶柱「『 先生は私の服の乱れを直し、サチコの身体を地下室に運んで埋めてしまった。私のことはただの事故として、サチコは遺体を隠して行方不明扱いにしてしまうつもりなのだ。 』
    ……自らの罪を無かったことにするだなんて最低最悪の男死ですね」

    最低。こんなことをされたら恨んでしまうのもなんかわかる気がしますよ。
    最原さんが無言でページを捲ります。その表情はなんとも言えなかったですけど。

    最原「続きがまだ読めそうだ。
    『 ※昭和二十八(一九五三)年 七月○×日
    案の定だった。校長先生は私の死んだ理由を不注意の事故と押し通して、サチコのことは何も言わなかった。
    優しかったほかの先生や子供達が泣いてくれている。
    私はとても悲しくなった 』」

    最原「『 ※昭和二十八(一九五三)年 七月○△日
    保健室の私の机に知らない人が座っている。
    私の代わりの保険医だろうか、でも子供達は誰も来ない。
    きっと人気がないのだ。

    ば か 』」

  133. 133 : : 2021/11/18(木) 01:42:56

    最原「『 ※昭和二十八(一九五三)年 七月〇☆日
    だんだん理性を失っているのがわかる
    私がどんどん消えてゆく 私でない黒い意識が私の中に入って来ている
    いやだ 』」

    茶柱「……そもそもこの日付っておかしいないですか!?
    だって転子たちが巻き込まれた『 天神小学校 』を中心とした事件よりはるか以前のお話になってしまいますよ?!」

    赤松「そうだよね……。
    どうしてその時亡くなったサチコが『 児童誘拐殺人事件 』の唯一の生存者になるんだろう?」

    日付を見れば謎は深まるばかりでした。サチコはいつ『 亡くなった 』のかが分からない。母親であるヨシヱさんと同じ日に亡くなったのであればありえない話になってしまいますし。

    それは最原さんも首を傾げてました。最原さんは探偵ですから推理して欲しいところですけどこればかりは分からなくて。
    ――とにかく読んだ方が分かるかもしれません。

    段々ノートの隅から染み渡り固まった血らしきもののせいでちゃんと隅々まで読むことが出来ませんが、なんとか読み取れそうな部分だけ拾って読みました。
    日にちの間隔がバラバラですが、どの日にも『 寂しい。寂しい 』『 サチコに会いたい。子供達に会いたい 』『 許せない 』『 殺してやる 』の文言が連ねられているだけでした。

    最原「張り付いちゃってるから問題なさそうなページまで進むけど――って日付がかなり先になってるよ。えっと……」

    驚くのも無理がありません。ペラリとめくった先の日付が約二十年後になってました。

    最原「『 ※昭和四十八(一九七三)年 七月×○日

    サッちゃんはわたシの自慢
    私のために何でもシてくれる
    寂しいわたシのために、いっぱいヒトをコロシてくれる
    こドモをいっぱい送ってくれる
    みんなだいスき 』」

    綺麗な文字が乱れて読みにくくなってしまってますね。……そして血のような赤い液体で書かれたそれに鳥肌が立ってしまいます。

    最原「『 ※昭和四十八(一九七三)年 七月×□日
    やめさせなければならない
    私はこんなことでよろこばない
    さちこやめなさい 』」

    捲る度に変わる字体。それか恐ろしくて生唾を飲み込みます。けれど捲る手だけは止まらなくて……

    赤松「『 ※昭和四十八(一九七三)年 七月×☆日

    あいつの一族はゆるさない
    末代まで祟ってやる
    あいつらの脳に直接、観念を焼き付けてやる 』」

    ペラり。

    赤松「『 ※昭和四十八(一九七三)年 七月×▽日
    なんということだろう
    二十年も前に私と一緒に死んだサチコは今、生身の体で存在している
    子供達を殺めて魂を私の元へ送るなんて、そんなことでは私は喜ばない
    サチコ此処へ来て

    わたしとはなしをして 』」

    理性的な文字に混じる狂気。そして『 サチコな生身の体で存在している 』の文字がどうしても気になりますが、まだ続きが読めそうでそのまま捲り読みます。

    茶柱「『 ※昭和四十八(一九七三)年 七月〇●日
    サチコは六人もあ辞めてしまった
    しかも神隠しと呼ばれるほど完全に足跡も消している
    あの子に一人で子供をさらって来て殺害するなんて事はできない
    あの男を使って誘拐させているようだ

    サチコやめて 』」

    ――はて?『 あの男 』とは一体誰のことなのでしょうか……静かに首を傾げましたけど思い浮かぶのは正気ではなかったゴン太さんと真宮寺さんの姿だけでした。

    茶柱「『 ※昭和四十八(一九七三)年 七月〇■日
    私のためにと思っていたさっちゃんはもういない

    ころしたいからころしてる
    いつのまにかそうなった
    いきてるひとってはらがたつものね
    私たちはころされたのに
    ひとをころすやつってゆるせない

    絶対殺してやる
    だからころすんだ
    ゆるさない 』」

  134. 134 : : 2021/11/18(木) 01:43:16

    紙のめくる音だけが気持ち悪いぐらい響いていて背筋がひんやりしてしまいます。空気が重いから、とでもいえるのでしょうか?
    ――乱れた文字が同様に呪いの言葉を書き殴っては埋まっていました。そして日付が飛び飛びになったある日……に手が止まりました。

    茶柱「『 ※昭和五十(一九七五)年 十一月十八日
    がっこうがはいこうになった
    こうちょうがとびおりた ざまぁみろ

    みなさんでおウタをうたいましょう
    たのしいうたがいいですね
    ざまぁみろ きたないしにかただ 』」

    茶柱「『 ※昭和五十(一九七五)年 十一月二十三日

    サッちゃんが がっこうのなかをあるいてる
    だれもいなくなった がっこうのなかを
    おもしろがって はいってくるやつをころすんだ

    あのこもわたしといっしょ のどがかわいて
    しかたないんだね 』

    ……こ、この先は読めなさそうですね……乱れすぎてて」

    最原「……」

    赤松「……」

    あまりの内容に言葉を失うのは仕方ありません。
    しばらくノートを見てましたが徐に最原さんがポツリと言葉をこぼします。

    最原「――サチコの犯行動機がわかった。母親が寂しくないように子供を中心に殺してここに留めさせておいたんだ。だけど」

    赤松「……そうしているうちにサチコは勿論――お母さんも心が壊れてただ『 生きてる人を恨む気持ち 』だけが強く残って見境なく殺していた、って事なんだよね?」

    茶柱「そう、ですね」

    そうだとしたら大元の原因がなかったらおふたりは今も何事もなく生きていたのでしょう。だからこそそれだけ強い気持ちに支配されていたのでしょうね。
    だとしても――。

    最原「これを信じるなら、『 校長先生 』の存在が鍵になりそうだ。『 校長室 』に行けば何かしら得られるかもしれない」

    茶柱「でしたら『 校長室 』ってここじゃない校舎の方にありましたよね?
    次はそこに行くということになりそうですね」

    赤松「それなら行こう。きっと王馬くんたちも何かしら情報をえてるかもしれないしさ」

    頷いてその場を離れようとした時でした。『 保健室 』の前に『 黒猫のぬいぐるみ 』がことりとどこからか落ちてきたんです。

    最原「……これは?なんだろう」

    最原さんが徐に拾って確かめます。綿が目元から出ていますが可愛らしいデザインで年頃の少女が持っていそうな――そんな造形で、って……

    赤松「あのさ、コレってもしかして篠崎ヨシヱさんがサチコにプレゼントした贈り物だったりしないかな?」

    最原「――!!そうかもしれないぞ。
    持っておいた方がいいかもしれない……というかもしかしてヨシヱさんが僕らに向けてわざと置いたのかもしれないな」

    茶柱「……ヨシヱさん……」



    ▼ 【 黒猫のぬいぐるみ 】を入手しました… ▼
    説明:(保健室前に置かれていた年代を感じさせるぬいぐるみです。目元やしっぽから綿が出てしまっています。
    篠崎ヨシヱが娘のサチコの誕生日に贈ったもののようです)



  135. 135 : : 2021/11/18(木) 01:44:07

    赤松「それなら下の階から向こうの校舎に向かうんだね」

    最原「そうなるね」

    頷いて『 篠崎ヨシヱの日記 』を閉じて周りを見回して階段の方へと進むので転子もそれに続いて階段を下りたんです。

    そこから渡り廊下を経由してもうひとつの校舎へと向かったその外の渡り廊下に出るタイミングで『 何か 』が降ってきたんですよ!!

    ――断末魔と飛び散る音と共に。

    茶柱・最原・赤松「「「っ!!?」」」

    驚き固まる転子たちをよそに地面に落ちた『 何か 』は光となって霧散してしまいます。……けれどその数秒後にはまた『 それ 』が断末魔を上げて上――向こう側の校舎の屋上から落ちてきました。

    赤松「っ!?な、何が起きてるの……?」

    茶柱「さっきまで、なかったで――っぎゃあっ!!」

    断末魔と衝突音に耳を塞ぎながらも何とか声を荒らげてしまいます。

    最原「……あれはもしかして『 校長先生 』なのか?」

    茶柱「はぁ!?なんですか!だったら、なんで急に現れたりしたんですか!!」

    最原さんの言葉に耳を疑ってしまいます。確かに『 何か 』は人のようなものですし、初老の男性に見えますけどこうも都合よく現れるものなんですか?!

    最原「それはこっちが聞きたいぐらいだよ!」

    つい断末魔が凄まじいものだから大声になってしまうのですけど――って落ちた近くに光るものが見えますね。なんでしょうか?

    赤松「ねぇ、アレってなんだろう?」

    赤松さんも気が付いたみたいで指を差して最原さんにアピールします。目を凝らして見ると『 鍵 』のようなものでしょうか?

    茶柱「気になりますね。転子が取ってきますね」

    最原「わ、わかった。無理しないでね」

    最原さんの言葉に頷いて『 鍵らしきもの 』の近くまで行きます……ってぎゃああああっ!!
    近場で見れば見るほど気味が悪すぎで吐き気が込み上げてしまいそうです……直視しない方が良いでしょうね。『 校長先生 』らしき人物か落ちて霧散した拍子に拾い上げてふたりの元へと戻ります。

    赤松「茶柱さん大丈夫だった……?」

    茶柱「ええ!ご心配ありがとうございます。大丈夫でしたよ!
    それで『 コレ 』が落ちていたものなのですが――『 鍵 』ですね。どこのでしょうか?」

    瓢箪のようなキーホルダーがされているそれは今まで手にした鍵の類いとは少し違う形状をしている気がしますが……

    最原「普通に考えて『 校長室の鍵 』かもしれないな。貰っておこう」

    赤松「あ、うん。そうだね」

    最原さんにそれを渡して何度も何度も落下する『 校長先生 』を直視しないようにそそくさと外の渡り廊下を渡りきりました。



    ▼【 校長室の鍵 】を入手しました… ▼

    説明:(何度も何度も落ちる校長の傍にあった鍵です。瓢箪のようなキーホルダーに小さな鈴がつけてあります)


    古い校舎へと入ると『 あの時 』のことを思い出してしまってどうも気持ちが滅入ってしまいます。
    そのままに放置された天海さんのご遺体を通り過ぎて目的地の三階の『 校長室 』へと向かいます。

    茶柱「(……天海さん、星さん……)」

    最原「ここ、だな――やっぱりそうだ。ここの鍵みたいだね。鍵かかってるみたいだから開けるよ」

    赤松「うん……」

    その言葉に頷いて、鍵を開けました。
    ……開いた扉の先には何が待っているのでしょうか……?



    ▼【 校長の鍵 】を使用しました…▼



  136. 136 : : 2021/11/18(木) 01:44:26
    >>137番さん。久々の安価タイムです

    茶柱side:『校長室』調査安価
    (ある選択肢で進行します)

    1、な、なんなのでしょうか……?
    (全体を見渡す)

    2、机の中に何かありそうですが――
    (校長室の机を調べます)

    3、戸棚を見てみましょうか?
    (戸棚を調べます)
  137. 137 : : 2021/11/23(火) 10:25:52
    3で!
  138. 138 : : 2021/11/26(金) 02:10:21
    ―――カチャリ。

    無機質な鍵の回る音にただ黙ってしまいます。
    顔を見合わせてドアノブに手を触れてその先へと踏み出したんです……

    赤松「うっ……なんだろうすごい臭いがする」

    開口一番、赤松さんが顔を顰めます。その言葉の通りで異様な埃臭さに生臭さが加わって、それ以上別の異臭が鼻に着いて気持ち悪くなってしまいますよ!

    茶柱「こ、これは――」

    少し暗くて何とかわかる程度のよくある『 校長室 』だと思いますが――最原さんがスマホのライトを当てて周囲を照らします。ああ、そうでした。転子最原さんの懐中電灯を持っていましたね。

    茶柱「そこの男死!転子が照らしますよ!」

    最原「ああ、ありがとう……ってそれ僕のだよね?!」

    赤松「えっ!?そうなのっ?」

    なんてやり取りをしつつ今度は転子が照らします。
    ……かなりボロボロになっているせいで足を踏み外しそうになりますけど、慎重に進みます。

    最原「……あ、これ」

    転子の数歩先を行く最原さんの行動が止まりました。な、何があったのでしょうか?

    最原「茶柱さん。戸棚、照らしてくれる?」

    茶柱「あ、はい!――っ!?こ、コレって」

    赤松「……おふだ?」

    指さした方向に懐中電灯を向けると戸棚一面に貼られたお札のようなものが気色悪く佇んでました。

    最原「開けられないか調べてみるよ。そのまま照らしてて」

    頷きその姿勢で赤松さんと共にその場で待ちます。
    ガチャガチャと何とか開こうと頑張ってましたが――しばらくしてくるりとこちらに向き直しました。

    最原「……開かない。でも――戸棚の奥になにか文字がある、まって……え?」

    赤松「――最原くん?」

    また戸棚に退治して調べていた途中で言葉を失った最原さんに対し赤松さんが心配そうな表情で呼びかけます。それに肩を震わせて「ああ」とだけ言葉を零しました。

    最原「いや、別に大したことはない……ないと思うよ。ただ……」

    赤松「ただ?」

    最原「言葉の意味を成してない言葉の羅列が並んでたんだ。例えば――『 入る 反対! 反対! 反対! 』みたいな、ね」

    茶柱「ど、どういうことでしょう……?」

    言葉に首を横に振った最原さんは腕組みをしてこちらを向いたんです。

    最原「校長先生が鍵を握っていた、というか校長先生が殺した、とも言えそうだけど殺した相手――篠崎ヨシヱに篠崎サチコが怖かった……とか有り得そうだ。
    にわかに信じられないけど、殺人犯の陥りやすい心理でもあるしさ」

    赤松「ああ!サスペンスとかでそういう描写見たことあるかも!……それなら、ずっと落ち続けていることも『 殺したことへの後悔 』の表れだったのかもしれないね」

    茶柱「……」

    二人の会話にふと、ふっと別のことを考えてしまいます。

    殺したことへの後悔。
    真宮寺さんは抱いていたのでしょうか……?
    あの様子だと微塵も感じられなかったのですけど。
    抱いてたとしても、許すことは出来ません。

    赤松「――茶柱さん?大丈夫?」

    茶柱「っ!!あ、はいっ!転子は常に元気ですよ!!」

    急な呼び掛けに変な返しをしてしまった気もしますが次は別の箇所を調べるみたいですね。
    えっと次は――




    >>139番さん。

    茶柱side:『校長室』調査安価
    (ある選択肢で進行します)

    1、な、なんなのでしょうか……?
    (全体を見渡す)

    2、机の中に何かありそうですが――
    (校長室の机を調べます)

    3、調査済み★
  139. 139 : : 2021/11/26(金) 08:19:22
    1でお願いします!
  140. 140 : : 2021/11/27(土) 03:26:31
    最原「にしても異様な部屋だな……いくら劣化してくちたとしてもここまでになるとは到底思えない」

    顔を上げたと同時に呟かれた言葉に周りを改めて見てしまいます。悔しいですが頷く他ありませんでした。

    赤松「壁一面には夥しい数のお札が貼り付いてるもんね」

    臭いも去ることながら、色んな色で書かれた文字のお札が乱雑に貼られていたんです。元の壁の色が分からないぐらいに。

    最原「戸棚と同じ大きさのお札……どこから集めてきたのか分からないけど相当気が滅入っていたんだと思うよ」

    赤松「それなら最初からやらなければいいのに」

    赤松さんの言葉通りです!!ほんとそれですよ!

    茶柱「本当に男死はどうしようもない生き物ですよ」

    最原「全部の人がそうとは限らないからね……」

    憤慨する転子をよそにボソリと腹立つ言葉を呟いた最原さんを人睨みして周りを再度照らします。

    茶柱「こうしてみると在り来りな『 校長室 』の構造ですね。ただストーブが時代を感じさせるような造形ですが」

    革を使ったどこにでもありそうな二人がけソファーに茶色系のローテーブルその近くには他の教室でも目にした薪ストーブ。それと先程最原さんがお調べした戸棚が三つあって、その近くには校長先生がよく使う引き出しが何ヶ所かある机。

    目につく代物はその程度で、あとはおかしいぐらいに貼られたお札。それに気色悪さを抱いてしまいますがそれどころでは無いですね。

    赤松「……調べられそうな箇所、あと残されてるのって」

    少しだけ風景を見ていた転子たちでしたが沈黙を破るように赤松さんの声がしました。





    >>141番さん。

    茶柱side:『校長室』調査安価
    (ある選択肢で進行します)

    1、調査済み★

    2、机の中に何かありそうですが――
    (校長室の机を調べます)

    3、調査済み★

    4、ソファーとテーブル付近が気になりますね
    (ソファーとローテーブルを調べます)
  141. 141 : : 2021/11/27(土) 03:33:12
    2で
  142. 142 : : 2021/11/28(日) 04:07:40
    赤松「そこの机かな……?」

    指差す方向にある机ですね。そこだけ朽ちることなく転子たちの学園と同様な新品さを感じてしまって逆に不気味です。

    最原「そうだな……見てみよう。多分そこに何かあると思う」

    含みのある言葉に驚きます。ヤマカンとか言わないでくださいよ!とツッコミしたくなるのですが真剣な眼差しに何も言えませんでした。

    最原さんの後に続いて校長先生の机へと向かいます。場所が壁際近くにある為ひと一人ぐらいしか入れないスペースだったので、転子と赤松さんは机を挟むかたちで最原さんと対面します。

    最原「鍵とかは掛かってないな――ん?一番下の引き出しだけ開きにくっっわぁぁあっ!?」

    何度か強引に引っ張ったのでしょうか?開いたタイミングで最原さんが尻もちをつきました。何たるひ弱!

    赤松「さ、最原くん、大丈――な、なにコレ……っ」

    慌てて近くへと駆け寄った赤松さんが最原さんの背中を摩っていましたが言葉途中で途切れてしまいます。
    ――なにか見つけたのでしょうか?この立ち位置では『 何は言っているのかが分からない 』んですよ。

    茶柱「赤松さん、どうかしましたか?」

    赤松さんが驚いた表情で『 それ 』を机の上に慎重に置いたんです……え?これは――小さな麻袋、でしょうか?お箸セットを入れるぐらいの大きさですね。
    ……でも、ただの『 小さな麻袋 』ではなくて。

    茶柱「この赤いのって血、ですか?それにこの臭いってこの部屋に充満している元凶??」

    赤松「……多分そうなるのかな?中身を――見た方がいいよね?」

    茶柱「そ、それはそうですね……」

    ふたりで頷いてその小さな麻袋の紐に触れようとした手が最原さんに制止されてしまいます。

    最原「中身、僕が見るよ。多分見ていて気分のいいものじゃないと思うから」

    赤松さんは下がってて、と制し『 小さな麻袋 』の口を持って慎重にそして転子たちに見せないようにして中身を見たようですね……

    最原「――やっぱり。そうなるよな……」

    覚悟をしていたのでしょうか?苦虫を噛み潰したような表情で『 それ 』の口を縛ってから机へと置いてしまいました。

    赤松「やっぱりって……?」

    最原「……」

    赤松さんの言葉に無反応で『 小さな麻袋 』の紐を掴んだまま制止している最原さんの顔色は長い前髪に隠されて何も分かりませんでした。

    茶柱「――男死?」

    こちらの呼び掛けにも無反応で固まったままで驚きます。全く何が起きるんですか!?

    赤松「最原くん!……ねぇ最原くんってば!!」

    異変に赤松さんが最原さんの身体を激しく譲って何度も名前を呼び続けましたが、それも反応なくて。

    茶柱「いい加減になにか仰らないと極めますよ!!」

    と身構えた時、びくんと肩が震え、はっと顔を上げました。ああ、しそんじてしまいましたね。

    最原「ゴメン……頭に流れ込んだんだ。それでわかったよ。いや、そんなものなくても多方推察は出来ていたけれど」

    赤松「最原くん?」

    最原「……これは『 サチコの舌 』だよ。校長先生が死しても尚サチコが存在している、という恐怖心から死体から切り取られたんだ」

    茶柱「っ!?」

    驚く転子たちをよそに続けます。

    最原「これは、サチコに返すべきだと思う。
    ……きっと探してるはず」

    最原さんが紐を持ち直します。



    ▼ 【 サチコの舌 】を入手しました… ▼

    説明:(血濡れの麻袋に入れられたかつてサチコの舌です。どうやらサチコの死後、切り取られたらしく周りに付着する血液は別の人物のものの様です)



    赤松「……そうだね、ってあれここ見てよ!」

    赤松さんが唐突に壁のある箇所を指さします。そこには黒い空間が空いていて少しだけ肌寒い空気が足元を撫でるように通り過ぎていきます。

    茶柱「えっとちょっと見て見ますね……っと梯子がありますよ!!下の階へと繋がっているみたいですが――どうしますか?」

    しゃがんでそこへと進むと肌寒さに思わず武者震いしてしまいますが、覗いてみます。言葉通りに木製の梯子がずっと下へとつづいていたんです。

    最原「……ここ以外調べられそうな箇所はないと思う。だから行こう」

    赤松「うん。そうだね……」

    茶柱「分かりました!!だったら転子からおりますね。おり切ったら声掛けますんでそれまでここで待っていてください!」

    一番近場にいる転子から降りることにしたんです。
  143. 143 : : 2021/12/11(土) 01:42:05

    ……どこまで続いているのかさえ分からない長い梯子を踏み外さぬよう慎重に降りていきます。

    茶柱「よいしょっ……と。ココは―――?」

    長く続いた終わりは薄暗い洞窟のような場所でした。
    僅かに電気が通っているのでしょうか?ジリジリと蛍光灯の明かりと音に顔を顰めていると赤松さん達が降りてきました。

    赤松「……こ、ここは?」

    赤松さんの戸惑う声に転子は首を静かに横に振ります。何階なのかも分かりません……とひとり鋭い視線で洞窟の先を見据えていた最原さんがぽつりと言葉を零したんです。

    最原「――まさか」

    茶柱「?」

    首を傾げる転子達をよそに恐らく……と続けます。

    最原「学校の……地下、か?」

    赤松「え!?それって――あ、まってあそこの扉見覚えがあるよ!」

    赤松さんが指差す方向にあったのは、木造の扉で何度か転子達も目にしたような……はて?どこで見たんでしたっけ?
    最原さんが目を大きく開いて扉へと向かうものですから慌てて転子たちもついて行きます。
    扉の前に立った時、赤松さんが「あっ」と声を上げました。

    赤松「あのさ、もしかして……
    一階にあった『 お札とかが沢山貼られていた扉 』じゃないかな?
    ――って事は……この先にあるのって」

    最原「『 子供たちの殺害現場 』に『 サチコの遺体 』がある場所に行けると思う。
    その部屋が何処にあるのか分からないけどさ」

    赤松さんの言葉に頷きます。

    茶柱「でしたら、進むしかないですね!
    もし部屋があったら虱潰しで調べたらいいのではないでしょうか?」

    最原「そうだね。もしかしたらこの先で百田くん達とも再会出来るかもしれないし今はこの先に行こうか」

    と扉とは真逆の方向へと少し進んだところで立ち止まってしまいました。

    何故なら……

    赤松「!!!なっ、なんなの……っ」

    茶柱「キェェエエエツ!!!
    こ、ここ、これって……」

    最原「―――なんだよ、人の頭だらけじゃないか!!!」

    長机の上に乱雑に積み重ねられて置かれた数え切れないほどのひ、人の頭があったんですから。
    その生気のない瞳が転子たちをじっと捉えている気がして気色悪すぎます!!
    しかも酷い異臭に腐り具合の異なったそれを直視することなんて出来なくてつい顰めてしまいましま。

    茶柱「これは……」

    最原「多分僕たちと同様に来てしまった犠牲者なんだと思う。
    それにしても――悪趣味すぎる。
    と、とにかく進むしかないよ」

    茶柱「そうですね……本当に気持ち悪いですね」

    赤松「うん……」

    自然と顔を見合わせて出来るだけ人の頭を視界に入れないよう、先へと行きます。

    あまり広いとは言えない洞窟に得体の知れない気持ち悪さが場を支配してました。もし、もしひとりでこの道を進まなければならない状況だったらチビっていたかもしれません。
    ぴちゃん、ぴちゃんとどこからか水滴が落ちる音さえもこの場の恐怖感を煽るだけの存在と化していたのですから。

    と、ある程度歩いた所で壁に何か貼られているのに気が付きました。顔を見合わせその側へと向かうとそれは誰かに宛てたメモのようなものだったんです。

    赤松「『 シホへ
    負けない強さを…… 何があっても、なにを見ても心をしっかりと強く持つのよ。
    【黒化】の侵入を許さなければ……運命に勝てわ。 』
    ――こんな場所にまで迷い込んでこうして文字を遺しているんだね……きっとこれを書いた人は――」

    茶柱「赤松さん……」

    赤松さんが読み上げ、撫で悲しそうな表情をしています。思わず声をかけてしまいましたが、こちらを向いて静かに微笑み返してくれました。

    赤松「ううん、大丈夫。
    先に行かなきゃ、だよね!」

    そんな姿が痛ましく思ってしまうのはきっとこの場所のせいなのでしょうね。
    ……ただ『 黒化 』の二文字がすごく気になりますけど。
  144. 144 : : 2021/12/11(土) 01:43:00

    とその時でした。誰かが向かい側から走ってきたんです!!
    転子たちより少し歳上な雰囲気のその人は怯えきった表情で転子たちの前で立ち止まりました。
    ……はて?ど、どこかで見たような気もしないような……?

    ??「うわぁっっ!?……はぁ、はぁ……って、君たちは……?」

    息も絶え絶えにその男性は驚いていました。
    それもこちらに逆に驚いた様子でしたね。

    赤松「私たちは……『 おまじない 』をしてしまってここに来たんです。えっとあなたは――?」

    急に聞いてきたので驚きつつも赤松さんが答えた瞬間でした。その人の表情が強ばって固まります。
    ――?

    ??「!!!!!!っ!!っ、き、キミは―――ひぃいいいっ!?く、くるなぁァァァァァっ!」

    赤松「きゃっ!?
    ……え?えっ?」

    叫ぶだけ叫ぶと転子達が歩いてきた方へと走り去ってしまったんです!!

    な、何事ですか!!!
    女性の顔を見てそんな反応するだなんて……やっぱり歳重ねたとしても男死は万死に値します!!

    茶柱「本当失礼な男死でしたね!全く」

    最原「――な、なんだったんだ……あの人……」

    最原さんも戸惑っていましたが、はっと何かを思い出したのでしょうか?

    最原「あの人、まさか……鬼碑忌コウと一緒に居た、助手か……?」

    首を傾げて呟いたところで転子も思い出しました。
    その人で間違いないと思いますよ!

    赤松「……」

    茶柱「あ、赤松さん。気にしない方がいいですよ!
    きっと男死だから赤松さんの美貌に驚いてしまっただけですよ!」

    最原「すごく怯えていたような……って!そんな目で見ないで!」

    全くデリカシーのデの字もない男死ですね!
    はぁ、先が思いやられてしまいますよ。

    ああ、早く夢野さんに会いたいです……

    赤松「うん。そうだよね、茶柱さんの言う通りだと信じたいな。あははは……」

    茶柱「赤松さん……」

    その笑みはやっぱりどことなく悲しそうで胸が痛みます。ああ、この時いい言葉が見つかれば良いのですが……

    最原「と、とにかくこの先に行こうか。さっきの出来事はきっとあの人の思い違いかもしれないし、もしかしたら気が狂いかけていたのかもしれない」

    赤松「うん。最原くん、ありがとう」

    少しだけしこりの残った状況ですが今はそれを気にするほど余裕と時間は無いですしね。
    ならば進みましょうか。

    ……どこからか滴り落ちる水の音に奥から僅かに吹き込む風に身震いしながらも奥へ奥へと歩いていました。けれど部屋らしい部屋がなくただひたすらに進んでいるだけでした。

    最原「だいぶ歩いた気がするよ」

    赤松「そうだね……一本道だから迷わないからいいんだけどね」

    茶柱「部屋らしいものもなさそうですしそろそろ何かしらあれば良いのですけど―――ってあれ?行き止まりでしょうか?」

    二人の会話に頷きつつも周りを注意深く見ても景色が変わることなくてしばらく無言で歩いていました。が、ついに行き止まりまで来てしまったようで。

    赤松「……あ。って事は……無駄足とかだったりするのかな……」

    残念そうに突き当たりの壁を撫でるその姿に落胆の文字が見えてしまいます。
    そうですよね……見落としとかしていたのでしょうか?
    首を傾げ赤松さんの元へと歩み寄った所で最原さんが指を差しました。
    指した方向に見えたのは―――部屋、でしょうか?

    最原「そう思うのは早計かもしれない。この部屋に入ってみようか」

    赤松「ああ、うん。わかった」

    頷いて先に行く最原さんの後をついて行きました。

    入るや否やで鼻を突くような異臭が酷く長時間居たくないです。それに部屋自体が暗くて懐中電灯で照らさないと何があるのか分かりません。

    最原「……うっ、な、何だこの臭い……今までで一際キツイぞ」

    茶柱「き、気分が悪くなりそうです」

    臭いに吐き気が込み上げ思わず口元を抑えますが鼻腔にこびりついたその臭いに思わず嘔吐いてしまいます。

    赤松「調べた方がいいのかな?」

    遠慮がちにこちらを見て聞いてくる赤松さんに対して最原さんは眉間に皺を寄せながらも頷いてました。

    最原「ああ、そうだね……あまり気乗りはしないけど何かしらあるかもしれない」
  145. 145 : : 2021/12/11(土) 01:48:01


    >>146番さん。
    茶柱side:『????』調査安価
    (ある選択肢を選ぶと進行します)

    1、とにかく全体を見るべきだろう
    (全体を照らし調べます)

    2、机か……?
    (中央部に置かれている机を調べます)

    3、棚があるな
    (部屋の端にある棚を調べます)

    4、何かが吊るされているのか
    (吊るされているものを調べます)

    5、バケツが妙に多いな
    (沢山置かれたバケツを調べます)
  146. 146 : : 2021/12/12(日) 23:46:09
    1でお願いします!
  147. 147 : : 2021/12/13(月) 02:58:22

    やっぱり最初は全体像を見た方がいいかもしれませんね!
    最原さんも同じことを思ったのでしょうか、目が合いました。
    転子がもっている懐中電灯で全体を照らしたんです―――が。

    赤松「な、なに……ここっ……」

    茶柱「ひぇっ……」

    言葉を失う光景があったんです。
    一言で言うならば、『 拷問部屋 』と言ったらいいのでしょうか?至る所にそれらしいものが並んでいたんです。

    最原「異臭の理由がわかったよ……ここで何人もの人が命を落としたんだろうね」

    床や壁に走る無数の赤い液体が跳ねていました。それは変色しているのもあれば、まだ付着してホヤホヤな赤色もあって。

    茶柱「あまり長時間見たくありませんね……」

    そう視線を逸らそうにも床に置いてある銀色のバケツからは『 かつて人だったものの一部 』と言える部位が血溜まりに浮かんでいたり、赤黒いものが床に無造作に転がってたりしているんです。

    ただ部屋の中心にある机の上が綺麗になっているのが逆に不気味と言いますか……

    赤松「これだけのものがあるなんて―――」

    足元に注意しながらも当たりを見回します。
    それに目立つものと言えば奥にあるクローゼットのようなものでしょうか?それとその隣に吊るされた手錠のようなものも気になってしまいますね。

    最原「でも、僕たちの目当てのものがある訳じゃないな」

    赤松「う、うん……」

    転子は全体に向けていた懐中電灯の明かりの位置を下げ、戸惑いの表情をしてしまいます。

    茶柱「最原さん、どこから調べますか?」

    最原「うんだ――そうだな……」




    >>148番さん。
    茶柱side:『????』調査安価
    (ある選択肢を選ぶと進行します)

    1、★調査済み

    2、机か……?
    (中央部に置かれている机を調べます)

    3、棚があるな
    (部屋の端にある棚を調べます)

    4、何かが吊るされているのか
    (吊るされているものを調べます)

    5、バケツが妙に多いな
    (沢山置かれたバケツを調べます)
  148. 148 : : 2021/12/13(月) 13:29:29
    4で!
  149. 149 : : 2021/12/14(火) 02:08:21

    そう腕組みをして呟く最原さんの言葉が途切れました。……と言いますかいつまでこの部屋にいるのでしょうか?もう気持ち悪くて戻してしまいそうなぐらい辛いのですが!!

    最原「……ちょっと茶柱さん、懐中電灯返して」

    茶柱「は?はいっ?な、なんですかっいきなり」

    最原「いいから」

    突然手を伸ばして寄越せだと?
    いやこれは元々最原さんの持ち物ですけどいきなり言われると握りしめちゃって最原さんの方にライトが当たっちゃ――――え?

    赤松「……え、あ、これは」

    ライトが向けられた先にあったのは――天井から吊るされた鎖のようなものに繋がれた人の手足だったんです。それはひとつだけではなくてざっと視界に入るだけでも十個は超えてました。

    茶柱「な、な、ななぁ!?ここ、これっ」

    懐中電灯を握りしめた手が震えてそれに伴ったて明かりがぶれていましたがそれらはしっかりと捉えていましたよ!

    最原「あんまり見ない方がいいと思ったから返してって言ったのに……まあいいか。
    多分これは本物の人間の一部でしかもそれぞれ別の人のだろう」

    苦虫を噛み潰したような表情で答えました。……た、確かに言われてみれば手首や腕の太さが違いますしなんなら肌の色から違います。

    茶柱「……な、なんのために――」

    最原「それはこっちが聞きたいよ。でも、これらが何かヒントを持ってるのかと言われれば違う気がする」

    極力視界に入らないように顔を背けていた転子と赤松さんを他所に冷静な声色で続けます。

    最原「他にも何かありそうだな……」

    はぁ。この男死はなんでこんなにも落ち着いてるんですかね!!
    ――才能が故に場数を踏んでいるからでしょうか?
    だとしたらめちゃくちゃ嫌ですね……






    >>150番さん。
    茶柱side:『????』調査安価
    (ある選択肢を選ぶと進行します)

    1、調査済み★

    2、机か……?
    (中央部に置かれている机を調べます)

    3、棚があるな
    (部屋の端にある棚を調べます)

    4、調査済み★

    5、バケツが妙に多いな
    (沢山置かれたバケツを調べます)


  150. 150 : : 2021/12/14(火) 13:46:54
    5で
  151. 151 : : 2021/12/15(水) 03:14:14

    相変わらず気色具悪くなるぐらい凝視するその姿に鳥肌と拒絶感が芽生えて後ずさりしてしまいそ――

    赤松「あっ、茶柱さん、危な」

    茶柱「――どうかしたのですか?赤ま」

    バシャン!!

    転子の言葉が途切れて足元近くにあったバケツのひとつをこぼしてしまいました。……おそらく中身が跳ねたことで生ぬるい感触が片足にじんわりと濡れてしまいました!!
    うわぁああっ、き、気持ち悪いですよ!!

    茶柱「きぇええっっうっ!?な、な、なっ、こ、これって……なんですかぁ!?」

    中身がすっかり空になったのかコロコロと床を転がる銀色のバケツに床にこぼれる赤色の液体――って事は

    赤松「大丈夫?!」

    驚いた赤松さんがしゃがんでポケットの中からハンカチを取り出して転子の足にかかったそれを拭いてくれますが赤黒いシミと臭いがその液体の正体を物語ってました。

    最原「すごい音がしたけどどうしたの?」

    その現場を見てなかったのでしょう。驚いてこちらを向いた男死を軽く睨みつつも赤松さんに悪いからと足元を見てしまいます。

    赤松「あのね、そこにあるバケツに茶柱さんが足引っかかっちゃって中身をこぼしちゃったんだ」

    最原「え!?大丈夫なの?」

    赤松さんの言葉に慌ててこちらを見ますがもう遅いですよ?
    というかずっと拭いていただしまってましたね……

    茶柱「あ、赤松さん。わざわざありがとうございます。
    ですが転子は平気ですからそこまでしないでくださいっ。
    とてもキレイなハンカチが汚れてしまいますよ!!」

    赤松「ううん、それは気にしないで。それよりも大丈夫?足にかなり跳ねちゃってるよ?」

    気遣ってくださるのはありがたいのですが……赤松3だって少し足にはねちゃってるじゃないですか!?
    何とか制して拭いていただくのを止めさせたところで空気を微塵も読まぬ男死がバケツの中身の正体を口にしてしまうんです!!

    最原「まさか……全部血液か?」

    茶柱「――極めますよ!!」

    最原「え?へ?急に何でよ!?
    ――あ、あのちょっとま」

    茶柱「言語道断!!」

    きぇぇぇぇー!!



    赤松「あ、えっと……その――茶柱さん?
    少しやり過ぎてる気がするんだけど……」

    茶柱「家全くそんなことはないと思いますね!
    そもそもデリカシーも察することも出来ぬ人ですから致し方ありません!
    あ、そうです赤松さん、他に気になる箇所ありますか?」

    軽く一本背負い風のワザをしただけですからね?
    大丈夫です。そのぐらいで音を上げる人でもないでしょうから。いえ、逆にここまで言わせないと考え改めたりしないかもしれませんよ?






    >>152番さん。
    茶柱side:『????』調査安価
    (ある選択肢を選ぶと進行します)

    1、調査済み★

    2、机か……?
    (中央部に置かれている机を調べます)

    3、棚があるな
    (部屋の端にある棚を調べます)

    4、調査済み★

    5、調査済み★



  152. 152 : : 2021/12/15(水) 17:28:00
    2で
  153. 153 : : 2021/12/17(金) 01:46:57

    赤松「あはは……最原くん大丈夫?」

    最原「平気だよ。ありがとう。
    もう何回目か数えるのも億劫になるぐらい事ある毎に投げ飛ばさてさ、流石に受身をとるタイミングが掴めるというかなんというか」

    茶柱「まったく、デリカシーと空気を読んで下さればこんなことしませんって」

    悪態ついて睨むけれどあの男死は恐らく気にもとめないのでしょうね。

    赤松「茶柱さん」

    茶柱「うぅ……あ、謝りませ――」

    赤松「……」

    赤松さんの無言の圧に仕方なく謝るしか選択肢はなさそうです。その様に男死は苦笑いしてましたが。

    謝るべく男死の方へと向かおうと歩き出したところで一際気になるものが二ヶ所視界に止まりました。
    机、それと奥の方に人ひとりが隠れられそうな戸棚。

    茶柱「……」

    赤松「茶柱さん?どうかしたの」

    立ち止まっていた事が気になったのでしょう。声を掛けられてはっと我に返りました。
    最原さんは既に立ち上がって肩についた土埃を払ってました。

    茶柱「あ、いえ。この机にあと奥の方にある大きい戸棚……でしょうか?そこがとても気になってしまったんです」

    机の端を撫でるように指先で触れます。若干ささくれ立っているのでしょうか、チクチクしてしまって直ぐに指を引っ込めました。
    よくよく見ると木製の机の至る所には血のようなシミが点々としてますし何より鉄製の筒を半分にしたようなものが五ヶ所大小ありますし、何より中央部には見慣れないトゲトゲがそり立ってますね。

    最原「机?――机ってよりかこれは拷問台だとおもうけど」

    赤松「拷問台?」

    近づき机を転子同様眺めた最原さんは右手を顎に当てがって呟きます。はて?『 ごうもんだい 』とはなんなのでしょうか?

    最原「……そう。簡単に言えば尋問する時に用いられるんだけどこの手のタイプはいちばんオーソドックスっぽいな。
    この上で人を寝かせてそこの針の部分でじわじわといたぶるんだ」

    茶柱「ひぇぇ……そ、そんなものが――」

    ゴクリと生唾を飲み込んでしまいます。先程話してましたが、ここは『 拷問部屋 』とやらに近いものなのかもしれませんね。とても考えたくないのですけど。

    赤松「……」

    赤松さんも表情が暗くなったのでもしかしたら転子と同じ気持ちなのかもしれませんね。
    そうですよね……この夥しい血の量と体の一部、それにこびりついた異質な臭い――なんでここまでして人をここに留めさせておきたいのでしょうか?
    全く理解できませんね。

    最原「それ以外は特に気になるのは無さそうだね。ならあと残ったのは大きな棚だろうけど――」

    赤松「ああ、私が近いから見てくるよ!
    ――って簡単に開いたけど……中身は綺麗そのものだよ。ほら赤いシミとかないし」

    言葉を遮った赤松さんが豪快に扉を開けましたがその言葉通りで綺麗でそのもので逆に不気味過ぎます。
    大きさで表すならば人ひとりぐらいなら……頑張ればふたりまでなら入れそうな感があります。

    最原「逆に不気味だな」

    頷いた時でした。
    ガタン、と背後で物音がしたのは。

  154. 154 : : 2021/12/17(金) 01:48:09

    赤松「――!!誰かの足音が近付いてる!」

    一番耳のいい赤松さんの鋭い声に転子たちは息を飲みます。こんな時に……っ!?

    最原「と、とにかく何処かに隠れた方がよさそうだな……っても戸棚には流石に入れないし」

    と周りを見回していると段々足音、いえダバダバと走る音が聞こえてきます。
    や、やばいですよっ!!

    ――ん?隠れられそうな場所って……

    茶柱「皆さん!!この机の下にひとまず隠れましょう!」

    赤松「えぇっ!?バレたりするんじゃ――」

    茶柱「その時は転子がネオ合気道で何とかします!!最原さんも早く」

    半ば強引に二人を机の下に押し込んで転子も懐中電灯の明かりを消して隠れます……懐中電灯を消せば真っ暗に等しいこの部屋ですから大丈夫なはずと祈るように目をぎゅっと閉じると足音の主、それから何かを引きづる音と共に『 誰か 』が入ってきたようです。

    ??「―――ヒィィィィィ!!!!
    はぁ、はぁっ……ひぃ、ヒィィィっ!」

    先程の無礼な方でしようか?その人が息も絶え絶えに奥の方戸棚へと入ったのでしょう、バタンと盛大に扉の閉まる音に目が開いてしまいます。

    開くと怯え息を潜めたままの赤松さんの背が見えこちらも緊張して口元に両手を当ててその時が過ぎるのをひたすらに待ちました。

    引きづる音を立たせたその人が声にならない声を出しながら机付近を歩いているようで男物の大きなくつ、それから―――え?

    赤松「――――!?」

    最原「……赤松さん!」

    赤松さんが驚くのも無理はありません。引きづったもの、それが……それが――春川さんだったのですから。
    声が出そうになるのを最原さんが両手で口を抑えたのでしょうか曇った声色で必死にこらえてました。

    茶柱「(なんてことをするんですか!?)」

    やり場の無い感情に目を固く閉じたいのですが何故か身体はそれを許してはくれないみたいで金縛りにあったかのように事切れた春川さんの瞳孔開いたその瞳を凝視することしか出来なくて。

    赤松「……!!んんっ……!」

    最原「……っく!?」

    その体から何処と無く血が流れてその血が転子たちに届こうかした時、急にバタンっ!!と扉が開く音がしたかと思えば声にならない叫びながら先程の方がずりずりと春川さんと共に引きづられて部屋から出ていった、のでしょうか?
    ……しばらくそのままじっとしてましたが、弾き出されたように赤松さんがその場からででいったんです!!

    赤松「助けなきゃ……これ以上、魔姫ちゃんを傷付けさせないんだ!」

    最原「――赤松さん!!」

    茶柱「赤松さん!!」

    こちらの声も虚しく血の跡を追いかけるように走って部屋の外へと出ていってしまって、不覚にも最原さんと顔を見合せてしまいます。

    最原「追いかけよう。……嫌な予感が、する」

    茶柱「はい、当たり前ですよ!」

    懐中電灯を再びスイッチを入れて転子たちはその部屋から飛び出したら―――

    最原「……!行き止まりだったのが、先に行けるようになってる、だと」

    茶柱「最原さん!!理由は後で考えましょう!
    今は赤松さんを追いかけないとっ!
    ……この血の跡を追えば何とかなりそうですよ」

    頷いたタイミングでその後を追いかけるように走り出しました。



    情報:(『 赤松楓 』と別れました…)





    accident!!>>155番さん。
    茶柱side:イベント『赤松を追いかけろ』
    該当者の秒数の安価。

    (結果で展開が大きく変わります。
    ―――さあどうなるのでしょうか?)
  155. 155 : : 2021/12/18(土) 21:39:58
    ドキドキ…
  156. 156 : : 2021/12/26(日) 03:01:12

    伸びた廊下の先、転子たちは先に進んでしまった赤松さんを追いかけるべく血の跡をただひたすらに追いかけます。

    ……でも―――

    茶柱「――っ!?な、ない?」

    最原「血の跡が……はぁ、はぁ……忽然と消えて……はぁ、る?」

    道の途中で途切れてしまっていたんです。いえ、確かに道は一本道のようですけれども――

    最原「と、とにかく……はぁ、あっちに……しか、道が、ないみたいだからっ……」

    茶柱「そちらの方へ行きましょう」

    もしかしたらそちら側に進んだのかもしれませんし。
    ちょっと走っただけでかなり息の上がる最原さんを尻目に指さした方へと再び走り出します。

    最原「あ、え?ちょっ、ちょっと!!」

    そんな情けない声を無視しつつ進んだ先には……

  157. 157 : : 2021/12/26(日) 03:01:43

    『 百田解斗 』side

    百田「……うっ……っ、ん?
    ここは――どこだ?」

    ゆっくりと身体を起こして周囲を見回す。暗い、暗すぎて微かに見えるのは無数に倒れる『 人のようなもの 』だった。と同時に今まででも一番どきつい臭いに自然と嘔吐きそうになるのを堪えるしかなかったんだ。

    床?もとい土の感触に奇妙な違和感を抱いちまうが、今はそれどころじゃねー。
    夢野に王馬が居ないかと暗がりの中何とか手探りで見直した。
    ――目を凝らしてたらモゾモゾと動くシルエットが見えた。
    ん?アイツは、

    百田「王馬か?!」

    王馬「……その声は、百田ちゃん?」

    やっぱり王馬だな。オレ同様にゆっくりと起き上がると間延びした欠伸をしてたから、スマホのライトをオンにしてその間抜けヅラに当てた。

    王馬「うわっ!!眩しいっ!!ライト当てんなよっ」

    わざとらしく反応するその様は問題なさそうだ――っとあとは夢野だが……

    百田「夢野は?オレの近くにはいないんだがよ」

    王馬「んー……ちょっとまってて。そのまま照らしてて、探してみる」

    やけに素直にこちらの言葉に答えたな。意外過ぎて逆に変な返事をしちまいそうになったが、寸で堪え言われるがままに王馬の足元中心に照らしてく。

    王馬「たはー無数の死体があるね。もしかしてここにドボンしたとか有り得たりして。だって鈍臭いし」

    百田「おいっ、王馬ぶ、不気味なこと言ってんじゃ――っておおっ!!結構ここ深くねーか?」

    けたけた笑いながら下の方を見ていたからよ思わず王馬の隣へと進んだ。
    ……た、確かに王馬の言う通りで、臭いの元凶とも言える無数の死体が泥のような液体の中に浮き沈みしてやがる。さっきの『 人のようなもの 』の正体がこれだったと思うと気分が悪くなっちまうぜ。

    百田「いや、考えたくねぇ。ここまで来て失いたくねぇよ……」

    首を横に振ってただ底のないそれを呆然と見てるしかなくてよ。

    王馬「あらら、腑抜けた顔で辛気臭い言葉口にしてんじゃん。なかなかつまらなくないね」

    百田「っ!!てめーこんな状況でもんな事言ってんじゃ」

    夢野「……んあ?……はてここは、どこじゃ?」

    言葉途中に背後から舌足らずな声がした。
    ああ、夢野だと分かるまでさほど時間はかからなかった。

    王馬「にししっ、なんつー気の抜けたアジの顔してんじゃん!」

    スマホのライトを夢野の声がした方へ照らすより前に王馬が夢野の元へと歩み出してやがった。
    夢野はキョロキョロと当たりを見回して真っ青な顔色で口を咄嗟に抑えていた。

    夢野「ゔっ……なんじゃ、ここは……っ!?」

    王馬「うわっ!?酷い顔っ!」

    大袈裟に仰け反った反動で足元に倒れてた死体の骨の一部がコロン、と底なし沼の方へと転がっていった。
    お、おい、お前な……

    夢野「ここはあまり長居……したくない」

    僅かに零した言葉に頷く。確かにその通りで好んで何時間も滞在はしたくねーよ。

    王馬「たはー流石にこんな辛気臭くて静かすぎる場所はオレには似合わないしさー。って向こう側から外に出られるみたいだよ。行こっか!」

    呑気にわざとらしく言ってるがまさにその通りでここから一刻も早く出たい、そう思って部屋を出ることにしたんだ。

    部屋を出ると薄暗いがスマホのライトは必要なさそうで、ライトモードを切ると改めて見回す。
    土と埃の臭いがこの場所に頻繁に人が通るわけじゃなさそうだな。

    百田「うわっ――て、ここはどこだ?」

    王馬「はぁー……そのセリフ何回言うつもりなの?」

    在ありきたりの発言を何度も口にしてるせいか、とても呆れられたけどよ気にしねぇ。そもそもオレらは『 焼却炉 』の先へ進んだ辺りから記憶が曖昧だからそこから落ちたんだと思うんだが……

    夢野「『 地下室 』じゃろうな」

    百田「『 地下室 』?ってことはよ、オレらはかなりの高さから落ちたってことか?」

    オレの問いかけに僅かに頷く。
    まさか『 焼却炉 』からこんな所にたどり着くとは想像してなかったが――

    ??「っ!!夢野さん?!」

  158. 158 : : 2021/12/26(日) 03:02:58

    覚えのある声色に振り返ったその先。走ってきたのは茶柱と終一だ。
    だが、その後には先程までいたはずの赤松に東条の姿はねー。ど、どうなってやがんだ!?

    王馬「あ!最原ちゃんと茶柱ちゃんじゃん!!」

    最原「はぁ、はぁ……っ!やっと、合りゅ……出来た……」

    息も絶え絶えの終一をよそに顔色ひとつ変えないままの茶柱が夢野に抱きやがった!!

    茶柱「ゆ、ゆめのざぁぁああんっ!!!!」

    夢野「んあっ!?て、転子っ!?」

    感極まってその状態で泣いてやがる。いや、再会出来たのは嬉しいんだがよ――

    王馬「最原ちゃん。なんでそんなに慌ててんの?
    それに赤松ちゃんに東条ちゃんは?どうしたのさ?」

    ゼェゼェ息を整えてる終一に向かって声をかける。それにうんと頷いて絞り出すように答えた。

    最原「東条さん、は……もういない、よ……。
    その事に、ついては……はぁ――ごほっ、息整えたら
    、詳しく話すよ……っ。
    赤松さんは――」

    茶柱「赤松さんは、ひぐっ……先程まで一緒に行動してました……うっ、でも春川さんのご遺体を引きづった人を――追いかけてしまって……その後を追いかけたら……夢野さん達とこうしてお会いした、んですよ」

    終一の言葉を引き継ぐように嗚咽の間に茶柱が続けた。
    東条が居ないって、どいうことだよ!?
    まさか――死んだ、とかいわねーよな?

    夢野「……そうか。東条はもう居ないのじゃな。
    ……死んだということかの」

    茶柱の頭をゆっくり撫でながら静かに言葉をこぼすその意味を理解できないオレたちじゃねぇ。拒絶の意味を込めて横に頭を振るが終一の表情はあまりにも暗かった。

    最原「……ゴメン。どうする事も出来なかったんだ」

    百田「終一……」

    思い浮かぶのは入間とキーボの最期だ。どんな状況でそうなったのか把握しきれないが、悲痛な表情を見るだけででかかる言葉が途切れちまう。

    王馬「――あのさ、しんみりしてる所悪いけどこのままウジウジしてんの?」

    いつの間にか黙っていた王馬の目が座っていた。正論でそれに反論する余裕も無かった。

    王馬「とりあえず赤松ちゃんと合流するのが先だろうね。オレたちはこっちの部屋から来たけど赤松ちゃんはおろかそれらしい人はみてないよ。……あコレはホントだよ。
    それと最原ちゃんたちが通ってきた道には居なかったんだろ。
    ――だったら進む先はアッチってことになるんじゃない?」

    指さす方向。終一たちがやってきた方向とは別に見える道だな。

    夢野「そうじゃな……合流できたのじゃ。一刻も早くこの場から何とかするのが筋じゃろうて。赤松ももしやその先にいるやもしれぬしの」

    茶柱「うっ、うっ、逞しくなられて……転子とても嬉しいです!」

    夢野「んぁぁあっ!!転子そろそろ離れんか!?」

    わーぎゃー騒ぐ夢野たちを視界の隅に入れつつ、終一の方を向き直す。

    百田「……大丈夫だ。赤松はきっと見つかる」

    最原「ありがとう……百田くん。もうこれ以上、誰かを失うなんてことはしたくないんだ。
    だから――行こう」

    終一の声に頷いてオレたちはその先へと進む。




    情報:(『 最原終一 』『 茶柱転子 』と再会、合流しました…)


  159. 159 : : 2021/12/26(日) 03:03:18

    一方通行とも言える道を無言で歩いてくと、開けた場所に出た。

    最原「……ここにもいないか」

    小さく呟いた終一をちらりと見た……その時だった。

    目の前に淡い青白い光が人の形をかたどったんだ!

    百田「う、うわぁあああっ!?な、なんだよっ!!」

    思わず驚いちまったが、それは紛れもなく――

    夢野「――『 管乃雪 』かの?」

    夢野が口にした人物、管乃雪が僅かに頷きそれから夢野の方をじっと見てやがった。

    管乃雪『 夢野さん…… 』

    僅かに開く口は憂いを帯びてるかのようで夢野だけをただ心配そうに見つめてた。な、なんだ?!

    管乃雪『 夢野さん……あなたは急げば間に合いますが――【 黒化 】が始まっています……負けないでください 』

    夢野「――っ」

    管乃雪の発言に顔色を変え生唾を飲み込んでた。それを王馬は怪訝そうにみつめ、茶柱はソワソワと管乃雪と夢野を交互に見ていた。

    管乃雪は続ける。今度はオレらを見渡して。

    管乃雪『 この奥に、【 あの子 】がいます。
    あなた達が帰ることが出来るかどうかは――【 あの子 】にかかっています。
    さあ、いそいで 』

    『 あの子 』――それは恐らく『 篠崎サチコ 』って事か。なら、ここは夢野の言う通り、『 地下室 』で間違いねーって事だよな……

    って、違う。この先が一番奥ってことはよ。

    最原「ねぇ、キミ。帰るといっても赤松さんが――また見つからないんだ」

    最原が一番の懸念材料である赤松のことを口にする。それを聞いた管乃雪は眉間にシワを寄せた。

    管乃雪『 あのひとは――今、真実を……見せられて、試練と戦っています 』

    それはどういうことなのか。意味がイマイチ把握しきれねーが……少し沈黙したかと思えばこちらを向いて

    管乃雪『 もし、彼女が試練に打ち勝ったなら、【 あの子 】、【 サチコ 】を浄化する事も――可能でしょう。だから 』

    管乃雪『 だから、その時の準備をあなた達がするんです 』

    ハッキリと告げられたその言葉に納得せざる得なかった。この先へ進め、ってことかよ。

    王馬「ふぅん。なら善は急げって言うしサクッと行こうよー」

    最原「お、王馬くん……」

    王馬の言葉に管乃雪は頷いて逆に終一か困ったようにその名前を呼ぶ。

    夢野「――行くのじゃ」

    茶柱「……そう、ですね」

    見据える先。
    管乃雪がその姿を見送り、オレたちは言われるがままに奥へと進んでいった。

    管乃雪『 逆打ちは……【 サチコの心 】にアクセスする手段にもなります……使い所を考えて――― 』

    最後にそう、呟いた気がして思わず振り返ったがそこにはもう何も居なかったんだ。

  160. 160 : : 2021/12/26(日) 03:03:43

    『 赤松楓 』side

    魔姫ちゃんの後を追いかけていたはずなのにいつの間にか道に迷ったみたいで、最原くんたちの姿も見当たらなかった。
    ……ううん。私が勝手に先へと走った罰なのかもしれないね。

    不安になる気持ちをグッと抑えてそれでも引き返す気も更々ない。気分はモーツァルトのピアノ協奏曲27番を弾いているときに似てるきがしてる。
    ……実際はもっと暗い気持ちなのかもしれいけどさ。

    赤松「魔姫ちゃん、どこに行ったの……」

    帰ってくる声はなくて。それでも必死に呼びかける。

    赤松「これ以上は……辛い思いさせないから……だたら」

    私の歩く音だけが一定に響く。それがとても怖くて、でもそれでも進むしか選択肢がない気がして。

    赤松「……ノイズの音がする……?」

    段々とハッキリ耳に取られていくテレビのノイズの音。耳を済ませつつ奥まで進むと――テレビ台に乗ったビデオカメラのようなものが置かれてて。

    何故かそれが気になって……近づいていくと……ノイズが――

    赤松「……?」



  161. 161 : : 2021/12/26(日) 03:04:28
    (>>154の安価の結果については内緒になります。ご了承ください)




    accident!!
    >>162番さん~>>166番さんまで。
    (成功すれば最後の安価となります。
    年内までにラストまで行けるかどうかは
    ――皆さん次第に委ねられました)


    該当者の秒数安価の平均値での結果。
    ――さて、どうなるのでしょうか?
  162. 162 : : 2021/12/26(日) 17:11:22
    頑張れー!
  163. 163 : : 2021/12/29(水) 00:12:20
    あぁ…頑張って…!
  164. 164 : : 2021/12/31(金) 16:16:57
    頑張れ!
  165. 165 : : 2022/01/02(日) 01:19:18
    一年以上続いてるのは素直に凄いと思うわ(^ω^)

  166. 166 : : 2022/01/02(日) 20:14:25
    お願いします!
  167. 167 : : 2022/01/05(水) 03:48:29

    (あけましておめでとうございます)
    (残念ながら年内完結を目処に進行しておりましたが、完結出来ずに申し訳ありません)

    (並びに安価ご協力の旨、重ねてお礼申し上げます。
    結果は後ほど公開したいと思います。それではどうぞ)





    『 最原終一 』side

    夢野さんと僕が先頭に言われるがままに廊下の先へと向かう。恐らく最奥部に当たる場所なのだろう。
    一歩一歩踏み出すと今までいた廊下の心許ない明かりが消えていって足元さえ見えにくい。
    咄嗟に茶柱さんが僕の懐中電灯で足元を照らしているお陰で転ばずに済んでるけど、何時になったら返してくれるんだろうか?

    『 拷問部屋 』と推測された部屋と同等―――いやそれよりか幾分土埃と湿っぽい臭いがましていっていた。

    王馬くんでさえも無言で突き進む途中にぴちゃん、と水のようなものか滴る音と、夢野さんのすぐ後ろを歩いてる茶柱さんが小さく悲鳴を上げたんだ。

    最原「えっ、何?!」

    王馬「あれれー?茶柱ちゃん実はかなりビビりだったりするのー?」

    百田「お、王馬。こ、こ、こんな時に何言っているんだ―――ぎゃああああっ!!なななんだこれはっ」

    ふたりのそんな会話を横に今度は百田くんもかなり怯えた声色でこっちがびっくりしてる。

    なんだよもう……懐中電灯の明かりが足元から離れたタイミングで気付いていない僕らが照らされた方向を改めて見直したら、

    最原「これは――」

    夢野「んあ!?」

    言葉が無くなる。
    壁際。転がる木製の椅子とロープの軋む音がミシミシして耳障りだ。
    大柄の男が首吊りしてぶら下がっていた。
    それは――先程見た人物でもあったけど。

    最原「さっき見たぞ……彼が春川さんの遺体を引きづってたんだ」

    茶柱「なんでこんな所に――」

    お化けや幽霊が現れているこの場所だから有り得なくはない、だけど……

    王馬「あのさ、ずっと見ててどうすんのさ。早く行こうよーもう歩き疲れたし」

    その声で我に返った僕たちはそのまま奥へと進んでいく……


    懐中電灯の明かりでさえ届かない程、暗くなってちゃんと歩けているか不安になるぐらいだ。

    夢野「――っ!!頭が……痛い……っう」

    茶柱「ゆ、夢野さん大丈夫ですか!?」

    夢野「――いる。ヤツが……おる……」

    百田「や、ヤツって――」

    突然夢野さんの苦しそうな声に慌てる茶柱さんに僕らも驚く。そのせいで懐中電灯の明かりがブレて全然違う方へと照らされているせいで真っ暗に塗り潰された視界が眉間へと皺が寄ってしまう。

    と同時に息苦しくなって息が荒くなっていった。
    それは僕だけじゃないみたいで呼吸音が聞こえてくるレベルだった。

    最原「……はぁ、はぁ……?」

    しばらくして――どこからか、何かを掘り返す音が響いている。
    そこにハッとした茶柱さんが懐中電灯を当てた瞬間、部屋の蛍光灯がチカチカ点滅したのち――姿を現したんだ。いや、正確には違う。
    目の前にあったのが、見えたのが。

    最原「――キミが」

    夢野「……っ!?」

    ???『ダカラ――クるナといっタのに!!!』

    床に掘られた穴からみえる身体―――『 篠崎サチコ 』の死体と僕らを取り囲むように立つ『 管乃雪 』に『 吉沢遼 』、『 辻時子 』の三人だった。

  168. 168 : : 2022/01/05(水) 03:48:58

    『 赤松楓 』side

    何故か食い入るように吸い寄せられるようにそこへと近付いちゃう。すると、まるで私を最初から待っていたかのように――ノイズが途切れて、画面が……再生されたんだ。

    ??『僕は田久地将五。……鬼碑忌コウ先生の助手であり、カメラマンだ』

    赤松「あ!さっきの人だ!……たぐちさんだったんだね」

    つい相槌というか独り言を呟いてしまったところでノイズが一瞬走って田久地さんが再び映った。

    田久地『先生とはぐれてしまったが……僕は約束通り、何があっても取り続けようと思う。
    最後までとり続けようと思う。
    この事実を【やめて!!!あんたはっ】――っ!?
    な、何があったんだ!!』

    田久地さんの言葉の途中で入る悲鳴に近い声、それは……

    赤松「……ま、魔姫ちゃん……?」

    田久地『――この声はっ、上の階だなっ!?
    ……っ!

    ……はぁ、はぁ、……っ!』

    その後に続く声が悲痛なもの過ぎて耳を塞ぎたくなってしまう。でも、何故か観なきゃいけない、そんな気がして食い入るようにテレビを凝視すると――『 男子トイレ 』の近くまで田久地さんが走って向かっていったんだ。

    田久地『……この先か、……何が起きてるんだ?
    ――隠れて撮れるだろうか??』

    言葉尻がだんだん弱くなっているのは多分隠し撮りしたいからかな?画面が一際ブレた後に映されたのは『 男子トイレ 』の先だ。

    大柄な男の人が見える。さっき魔姫ちゃんを引きずっていた人で、その奥に見えたのは――


    春川『正気に戻りな!!あんたはマトモじゃない!!!』

    春川『だからお願いっ!!頼むよ!』


    春川『―――【楓】!!』


    赤松「―――え?」


    ……魔姫ちゃんが持っている筈のサバイバルナイフを固く握りしめた私、だったんだ。

  169. 169 : : 2022/01/05(水) 03:49:18

    『 最原終一 』side

    夢野「――っ!!」

    サチコの死体の上にその姿を現した霊体のサチコによって場の空気が凍るように冷たくなるのにつられて指一本動かすことすらままならないほどに身体が硬直する。

    百田「か、かなし、ばりか?!」

    かろうじで動くのは口と瞼だけで百田くんの声が背後からすることによってみんなその場で同様な反応が起きているのだろう。

    それを好機かとサチコが不意に裁ち鋏を持ち直して徐に向かう先は――茶柱さんの方なのか?

    茶柱「――っ!!な、なにを……っう!!」

    夢野「っ転子!!!」

    百田「茶柱ぁ!!お、おいテメー何してんだよ!!!」

    驚き固まる声に助けなきゃと思う気持ちとは裏腹に一向に動かせぬ身体。ザクりと音が気持ち悪いぐらい響いでその音と共に茶柱さんの呻く声が響く。

    最原「ちゃ、茶柱さん!!――何がっ」

    振り向くのも目線しか向けられず、青白い顔で固まる夢野さんしか見えない……カラン、と懐中電灯が転がって行くのが見える。

    茶柱「――っう!!や、やめてくだ、さっ……いたぃ!!」

    王馬「……っ!!最原ちゃん、目の前っ!!」

    王馬くんの声にハッと目の前へと視線を戻すと――そこに佇むのはサチコ……なのか?
    白いワンピースに身を包み体育座りして床だけを凝視する少女で。

    夢野「――っ!!最原ぁ!!
    説得じゃ!!……その目の前に居るのもサチコじゃ!」

    茶柱「さい、原さん!……て、んこはっいたい!大っ、丈夫ですからっ!
    ――は、早くっ!!」

    おそらく痛みに顔を顰めながらも叫ぶ茶柱さん、それに夢野さんの焦りの交じった声に生唾を飲み込み、改めて対峙する――

  170. 170 : : 2022/01/05(水) 03:49:42

    『 赤松楓 』side

    春川『しっかり気を持て!楓っ!
    あんなのに騙されて操られてるだなんてあんたらしくないよ!』

    なんどもなんども必死に叫ぶその姿は普段見ることは無い。でも私はそんな姿にお構い無しで、無言でナイフを魔姫ちゃんに向けていた。
    お腹を既に刺されているのか片手で抑えたまま、私だけを睨んでる。普段なら私が負けるはずの光景に驚きと戸惑いだけが色濃くのこっていたんだ。

    赤松「(ありえない。なんでこんなことに……)」

    私が個室の奥に座り込んでいる魔姫ちゃんに馬乗りになって『 怪我のせいで動かせない左手 』を使って叫ぶ春川さん首元にガーゼを何重にも巻いてく。
    反抗することはなくただされるがままのその姿に驚くけれどきっと何らかの力が働いて動くことが出来なかったのかもしれない。

    ガーゼを壁の一部に引っ掛けて弛むことなくグッと締まる音と同時に魔姫ちゃんの今までに聞いたことの無いゼェゼェ、ヒューヒューと喉のなる音。目尻から涙がポロリと落ちるその姿はあまりにも痛ましくて。それをさせているのが私だと言う事実が受け入れることが出来なかった。

    春川『ぐっ、ヒューっ……か……えで……やめ――っ!!……っ!か、え……っ!!』

    僅かにこぼれ落ちるその言葉を聞き入れることなく私は機械のようにお腹目掛けて何度も何度もサバイバルで突き刺していく。口からゴホッと大量の血が吐き出されてそれが制服を汚したとしてもお構い無しだった。

    赤松「いや……やめて……そんなことしたらっ」

    私の目尻に涙が溢れこぼれ落ちていくけど、それでも尚画面から目をそらすことが出来なくてさ。
    画面に両手をつけて違うと頭を横に振ったところで何も変わらない事実がそこには映されていた。

    春川『……ヴっ?!……ヴっーヴっ!』

    口にガーゼの残りだと思う切れ端を無理やり突っ込まされて更に目を開いてる。その目にはじわりと涙が浮かんでるけれども、僅かに頭を振って唸る彼女の勢いが段々と薄れで――そして、唸る声が小さくなって目の開きはおろかその色も光すら失われて……最後には力なく手がだらりと床に落ちていった。

    ……永遠にも思えるほど長くて、辛い光景だった。

    田久地『うわっ!!
    ――な、なんだんだ!同じ制服の……ひとが殺しをしてっ!!
    ……っ!に、逃げないと!!』

    言葉と同時に画面がブレる。慌てふためく足音と荒い呼吸。廊下で立ち止まったかと思えば、振り返ったらしくてそこ画面が映し出されたのは――

    サバイバルナイフを握りしめ、小首を傾げてはいるけれど焦点が合わない瞳で画面を見てる私だった。

    それに酷く驚いたのか尋常でない叫び声でその場から逃げる田久地さん。

    ――画面はそこで途切れ終わってしまっていた。


    赤松「――……そんな……」

    言葉が出ない。その場に力なくへたりこんで座っちゃう。この服の血が、抱きしめた時についたんじゃなくて……殺している時の返り血だった、なんて。

    赤松「うそ、そんな……っ」

  171. 171 : : 2022/01/08(土) 05:01:55

    『 最原終一 』side

    最原「キミが返して欲しいのはこれだろ!!」

    半ば叫ぶように体育座りする白いワンピースに身を包む篠崎サチコへと差し出す――最初に『 サチコの舌 』の入った袋だ。
    それはまるで持ち主へと吸収されるように吸い込まれサチコへの目の前にと辿り着き、淡い光と共に消えた。

    サチコ『お母サン……』

    瞳に僅かに光が芽生えた。だけれどこちらを向くわけでもなくうわ言のように母親を呼んでいた。

    最原「(まだか、それなら)」

    今の持っているのもので関係のあるのはひとつだけだ―――
    そう『 アレ 』しかない。
    それを篠崎サチコの前にと見せつける。

    最原「こんなことをしてらキミのお母さんが悲しむだけだ。
    ――思い出すんだ、お母さんはこんなことを望んでたのか!」

    見せたのは『 黒猫のぬいぐるみ 』。
    渡そうとしたのに渡せなかったその品。
    今なら届くかもしれない。願うようにそれを見せると……ようやくこちらを向き、ぬいぐるみを受け取った。

    茶柱「……っ!?」

    ――と同時に茶柱さんを攻撃していたはずの篠崎サチコがふわっと姿を消し、鋏が落ちる音だけが響いていたんだ。




    ▼ 【 サチコの舌 】を渡しました… ▼


    ▼ 【 黒猫のぬいぐるみ 】を渡しました… ▼



    サチコ『……お母サン……
    ドコニイルノ?
    ――ココハ、ドコ?』

    サチコ『ガァァアアアアア!!
    アアァ……アアアァァァァアッ!!!』

    年相応の声色でキョロキョロと受け取った『 黒猫のぬいぐるみ 』を大事そうに抱えた篠崎サチコの背後で重なるように叫ぶのは、先程まで僕たちの前に現れたもう一人のサチコだ。
    自身と強調するように叫ぶその声は耳を塞ぎ――っていつの間にか身体が動ける?!

    最原「これで……いいのか?」

    夢野「いいも悪いもなかろう!!
    早く、早く『 逆打ち 』をやるのじゃ!」

    揺れが収まってきた。動くなら今のうちだろう。
    でも、赤松さんが、彼女がまだ――

    百田「ってもよぉ!赤松が、いねーままやるのかよっ!?」

    王馬「やるしかないだろ?
    だって、今居ないんじゃ頭数に入れた所でどうなるのって話だしさ!
    茶柱ちゃんは、動けそうなの?」

    茶柱「……男死に心配される、はぁ、筋合いはあり、ませんよっ!」

    右太ももを抑えながらも叫ぶように息を荒らげた。
    時間が無い、赤松さんゴメン―――っ!

    ??「――みんな!!」

    目を固く閉じた瞬間、聞きなれた声に誰もがその方向へと顔を上げた。赤松さんだった。

    最原「赤松さん!!」

    赤松「遅くなっちゃって、……ごめんね。
    私は――大丈夫。
    これから、はぁ、何をするの?……何をしたら、いいのかな?」

    じっとこちらの光景を見て状況を把握したのかもしれない。先程までの気が滅入っていた姿とは違って、普段そのものの彼女にホッとしてる自分がいた。

    夢野「『 逆打ち 』じゃ!!
    篠崎サチコの説得が何とかなった今、やることはひとつしかなかろう!」

    赤松「……うん、それなら――」

    ゼェゼェと息を切らせてこちらを見ていた彼女が真っ先に篠崎サチコの遺体の傍へと向かっていくのを見切りに僕らも囲うように遺体の傍へと歩いてく。

    百田「『 おまじない 』の本来回数を唱えればいいんだろ、回数は」

    王馬「7回?」

    夢野「この期に及んでなに嘘つくのじゃ!!
    言わなくともわかっておろう?……『 おまじない切れ端 』をみな出すのじゃ!」

    切れ端。それをみんな大事にしていた場所から取り出すと――その切れ端の辺と辺を合わせた。

    最原「(……人型だった筈なのに。原型もない……みんな)」

    僕たちしか残ってはないという事実が重くのしかかる。
    だけど――

    夢野「……よいな。では唱えるぞ!」

    合わせたタイミングで、『 サチコさんおねがいします 』と口に出す―――

  172. 172 : : 2022/01/08(土) 05:03:59

    最原「『 サチコさんおねがいします 』!!!」

    数え終わった、よな……?
    口にした回数はあっているはず。

    あっていたのだろうか?緊張しているみんなの顔を無意識に見ていたら、揺れが収まったらしい。安堵の息を吐く。ああ、終わったんだ……

    最原「終わった、のかな?」

    百田「そ、そりゃ、こんなことまでしてんだからよ!お終わらないなんて事ないだろうよ」

    夢野「――じゃな。って、転子平気かの!!!」

    茶柱「あ、はい、な、何とか……っ!!」

    会話をしてるさなか、唐突に辺りが真っ暗に塗りつぶされた。な、なんだよ!!
    ……暗すぎて何も見えないな――と気づけば僕一人だけになっていた。

    最原「あ、れ……みんなっ!どこだ!!」

    見回すにも黒い視界にどちらを向いているのかさえ分からない。だけれど腕を必死に伸ばして何とか掴もうとした時、急に視界が……開けた。

    最原「――っ!!……こ、こは……?」

    場所は……『 地下室 』ではなさそうで、ボロボロな床と机が散らばっているから……どこかの教室なのかもしれない。

    って、違う!みんなは、どうなったんだ!!

    最原「……居ない?」

    倒れていたのは僕ひとりのようで立ち上がる。
    みんなを探さなきゃ、と教室を出ようとした、したんだけど――

    ??『ニガサナイ』

    最原「――っ!!」

    出入口の扉へと手をかけた瞬間、背後から氷のような冷たい声がした。それは篠崎サチコとは違う別の声で、でも女の子の声だ。聞き覚えのあるような、そうじゃないような声色をしている。
    でも振り返ってはいけない、そんなきがしていたけれど身体が言うことをきかなくて振り返ってしまう。

    最原「……っ、き、キミは――」

    ??「誰かが、数える回数を間違えた。
    だから、こうなったんだよ。

    アハハはっ――もうニゲラレナイ、ニガサナイ」

    目の前に赤い一閃が激しく飛び散る。
    女の子がなにを言っているのか分からなくて分からなくて理解しようとしたけど……遅れて走る痛みに耐えられなくて、考えを放棄せざる得なかった。

    最原「なん、で……っ」

    目の前が真っ赤に染まる。染まる。
    尋常でない痛みで立っているのもやっとだ。
    真っ赤なのは自分の血。そして切られたんだ。
    ――『 彼女 』に。

    最原「……どうし、て……」

    こちらの問いかけに応じることなく、こちらを仕留めにかかろうと何処で手に入れたのか分からない『 刀のような物 』で無抵抗な僕に襲いかかっていく。

    最原「……ど、う……して……
    なんで、サチ、コ……じゃ、ない…んだ、よ……」

    何度も何度も切り刻まれ、その間に声を出すけど止まる気配がない。

    ――何を、間違えたんだ?
    みんなはどうなったんだ?
    戸惑いだけが残る僕は、何もわからぬままただ切り刻まれていった……










    【 WRONG END(★7) 】:『第二のサチコ』

    結果の一部を発表します。
    秒数安価の平均値が、01~32の場合がこのエンドでした。
    ※このチャプターで初WRONG ENDおめでとうございます。
    ここまですり抜けるとは思いませんでした。







    >>170から再開します。
    accident!!秒数安価、>>173番さん。
    ――今度はどうなるのでしょうか?



  173. 173 : : 2022/01/08(土) 08:50:59
    次こそは!
  174. 174 : : 2022/01/12(水) 03:03:13

    『 最原終一 』side

    最原「返して欲しいのは―――」

    言葉が止まる。……?なんだっけ?
    ――何を返せばいいんだ?!

    百田「しゅ、終一っ!?どうしたんだ!!」

    言葉を止めたせいか、ものすごく心配そうな声色を上げた百田くんの方を向いて叫びたい。
    ……何を渡せばいいんだ!?
    ――って。

    こうしてもたついていると茶柱さんが危ないと分かっているのに分からない。

    なんでだ!?

    最原「あっ、えっと――」

    夢野「最原!この期に及んで何ふざけておるのじゃ!?」

    王馬「さすがにその冗談は笑えないんだけど」

    その通りだ。だけど手が震える。
    それに言葉が上手く出せない。身体が酷く重くて指ひとつ動かすことが出来ない。

    その間にも茶柱さんの悲鳴に何度も突き刺される音に目を固く閉じるしかできない。

    ――どのくらいそうしていただろうか。
    随分長い時間が過ぎた気がした。けれどそれは唐突に終わった。

    茶柱「――っ!!」

    茶柱さんが息を飲む音で我に返った……と同時に金縛りが解けたんだ。

    最原「茶柱さんっ?!ごめ」

    挨拶のように謝ってしまうのは悪い癖だよ――唐突に赤松さんに言われたその言葉が浮かんだ。このタイミングで何思い出してるんだよ……

    ??『――ヴがぁあああっ!!!!』

    え?

    何が起きたか全く分からなかった。
    僕らの背後、いや茶柱さんの目の前に居たのは――赤松さんだった。焦点の合わない瞳、口からヨダレがひとすじ流れて獣のような声を上げていたんだ。

    その利き手には篠崎サチコが手にしていた鋏と同じだ。それを一突き、心臓に深々と刺した。

    茶柱「……っ!……あか、まつ……さ」

    刺されたままヒューヒュー鳴る呼吸音の狭間に名前を呼んだ。それなのに一向に元に戻る気配はなくて、深々刺した鋏を躊躇いもなく抜いた。

    夢野「てんこぉっ!!」

    夢野さんの絶叫近い悲鳴に正気を失った赤松さんが今度は夢野さん目掛けて鋏を容赦なく突き刺さした。
    丁度それは両目を何度も突き刺し、茶柱さんのと夢野さんの混ざりあった血しぶきが宙を舞うのをただ見るしか無かった。

    百田「赤松!!しっかりしろっ!!」

    その怒号でさえ……もう届かない。
    目の痛みに座り込み泣き叫ぶ夢野さんの声に口から血を吐いて床に倒れる茶柱さんを見てるしかなくて。

    王馬「ちっ……おまえっ!」

    呆然と立つ僕をよそに王馬くんが珍しく余裕のない表情で赤松さんの手を掴んで止め、百田くんは倒れた茶柱さんの止血をしながら睨んでいる。

    赤松「ヴガァアアっ!!!あぁぁあぁあぁぁぁあぁぁぁあぁあぁぁぁあぁぁあぁぁぁあぁぁあぁっ!?」

    普段の彼女とは全く異なった姿。尋常でない力が働いているのか王馬くんの腕が震えていてその頬からは冷汗が伝う。
    その拮抗も長くは続かなかった。その王馬くんごと振り払い、壁に向かって投げ飛ばされたんだ。それから飛ばされた王馬くんの頭を掴み、力づくで近場の机の角に何度も何度も打ち付ける。

    王馬「……っく!!、あか、まっ……」

    最原「王馬くん!!!」

    ――もう何が何だか理解出来ていない。

    気がつけば、茶柱さんはピクリとも動かないし、夢野さんも両目を抑えたまま倒れていた。声は聞こえない。
    ……王馬くんも必死に抵抗していたのだけれど、次第に赤松さんの両腕を掴んだ指先が力なく床へと落ちていった。

    残されたのは百田くんと僕だけで――

    動かなくなった王馬くんをゴミを捨てるかのようにポイッと投げ捨てる。力なくその身体は床に落ちて夥しい血が床に染みを作っている。

    今度は百田くんへと向いた。
    僕は動けなかった。ただ赤松さんを止めようと走っていった彼が飛ばされて血が沢山流れてしまっている光景だけをまざまざ見せつけられて。

    まさに阿鼻叫喚、地獄絵図だ。

    最原「――なにが、どうしてっ?なんでだよ!!
    赤松さん!!!」

    赤松?「最原くん。
    どうして?なんでだろう。
    本当に……なんでだろうねぇ……?」

    最原「は?えっ、赤松、さん?」

    唐突に普段と変わらぬトーンでこぼれた言葉に驚いてしまう。正気に戻ったわけでは無さそうだが……
    彼女はその場で鋏をザクりと自身の腹部を何度も刺した。

    目の前で倒れていく彼女をただ呆然と見ていることしか出来なかった……

    サチコ『アーア。死んじゃった、死んじゃったねぇ??アハハハハッ!!!』

    背後で気持ち悪い程の高笑いを聞いた後、僕もまた意識を失った……




    【 WRONG END(★6) 】:『皆殺し』

    >>161の安価結果をすべて公開します
    秒数安価の平均値が、34~59の場合がこのエンドでした。
    また成功時の結果が平均値が5の倍数&ゾロ目となります。
    よって再開します。

    >>171からです。それでは最後までお楽しみください。
  175. 175 : : 2022/01/12(水) 03:46:55

    最原「『 サチコさんおねがいします 』!!」

    ……六回。今いる人数とサチコを含めた回数唱えると同時に揺れがピタリと止まった。
    ――いけた、のか?

    最原「……とまった、のか?」

    赤松「はぁ、はぁ……って茶柱さん!どうしたのその怪我っ!止血しないとダメだよね、えっと……」

    夢野「ウチのスカーフがある、それを使うとよいじゃろ」

    隣にいたせいなのか、茶柱さんの怪我に気がついたらしくて慌てて太ももの方を見ていた赤松さんが夢野さんのどこからか出てきたスカーフを受け取って、太ももの付け根から結び縛った。
    ……あれ?腕の怪我はどうなったんだろうか?
    気になる点が多いがそれを聞くのは難しいかもしれない。

    茶柱「……あ、ありがとうございます」

    何度も甲斐甲斐しくお辞儀するその様で若干の扱いの違いに顔をしかめるがきっときがついてないだろう。

    王馬「ありゃりゃ、あっけなかったね」

    百田「――でもよ、これからどうすんだ?」

    気づくと篠崎サチコの遺体とその姿が消え静まり返る空間。不気味さも相まって驚きと戸惑いの表情で周囲を見回す。と、目の前に両手を組んだ状態でこちらを見つめる管乃雪に――他のふたりは遠慮がちに一歩引いた場所から見守っている。

    彼らは……今度こそ解放されたのだろうか?

    夢野「お主は、雪か!?」

    真っ先に管乃雪へと声を掛ける。先程とは違って意思があるように見えた。その声に頷くと真っ直ぐと射抜くような視線でハッキリと答えた。

    管乃雪『みなさん、今です。
    【 天神小学校 】を包囲している霊磁場のゲートが開いています。
    閉じてしまう前に……いそいで、校舎の外に出て、【 おまじない 】をおこなってください』

    ひと呼吸置いて、続けた。

    管乃雪『ゲートが閉じてしまったら……また、この【 多重閉鎖空間 】は元に戻ってしまうでしょう』

    夢野「待つのじゃ!!
    ――お主らは解放されない、ということなのか?!」

    夢野さんが思わず叫ぶ。
    この場所の元凶が取り払われた今なら、彼らもまた開放されるべきなんじゃないのか?

    しかし管乃雪は黙って横に頭を振った。

    管乃雪『わたしたちは、ここの霊磁場に捕られた存在です。
    ……サチコが解放されたとしてもわたしたちは成仏が出来ないようです。
    今、ほんの少しだけ……自由になっていますが、すぐに引き戻されてまたこの空間を形成する事になるでしょう』

    百田「んな事ってアリかよ!!」

    その声に驚いたのか目を丸くした子供の霊たちに慌てて「わりぃ」と頭を下げた。その横で王馬くんは眉間に皺を寄せたままじっと言葉の続きを待っているようだった。

    管乃雪『この学校はすでに【 第二のサチコ 】を生み出そうとしてま――っ!!


    ハヤク、いきなさい

    ――――外へっ!!』

    目を固く閉じて震える手で出口の方へ指さしたかと思えば、叫び声と共に苦しみ出して姿が変わっていく……それは、最初に出会った頃の姿へと。
    でも違うのは青白い身体がだんだん赤に染まっていくその姿だ。
    まるで今まで対峙していた篠崎サチコを彷彿とさせるかのような姿に。

    その管乃雪に共鳴するかのように揺れ始めたかと思えばガタガタと強い揺れへと変わっていった。

    最原「―――うわぁぁあっ!」

    百田「な、なんだよ、いきなりっ」

    夢野「雪よ、まさか――お主がなり変わろうとしてるのか!!」

    もうこちらこ呼び掛けに反応できないらしく頭を抱え
    蹲った。だけど指さした先は出口の方で、僕らを逃がそうとしていることは察することが出来たんだ。

    王馬「なにぼさっとしてんのさ!
    早く『 脱出 』しないといけないんじゃないの!」

    いつの間にかいち早く出入口まで進んでた王馬くんの叱咤する声に我に返って僕らは来た道を引き返す――

  176. 176 : : 2022/01/12(水) 03:47:28

    赤松「茶柱さんは私が支えるから、早く校舎から出なきゃ!!」

    茶柱「赤松さん……」

    王馬「ここから何とか校舎に出る道わかる人はいるの?いたらその人が後ろに行ってよ!」

    百田「ちげーだろ!こんな時に嘘つくな。
    終一分かるか?分かるなら先導してくれねーか?」

    最原「自信はないけど……わかった。僕らが来た道を引き返えせば校舎の1階に出れると思う!
    そこから古い校舎の方に走ってそこの外に行けば管乃雪さんの話していた外に出れるハズだ」

    怪我人がいるし、空間全体の揺れで全力疾走は出来ないが来た道を引き返していく。
    さっきは打ち付けられて通れなかった一階の校舎へと繋がる扉が開いていなければ八方塞がりだけど今はそんなことを気にする余裕はない。

    ゼェゼェとみんなのあらい息遣いだけが妙に響いていた。しばらくそうして進むと、僕らが最初に来た場所の近く――そうあの扉の前までやってきたんだ。

    茶柱「はぁっ、戻ってきましたね……」

    赤松「この扉が開けば、校舎には戻れると思うけど――」

    王馬「なるほどね。鍵はかかってないみたいだから体当たりでもすれば強引に行けるんじゃないの?」

    百田「テメー珍しくまともなこと言ってるじゃねーか!……って睨むなよ、王馬」

    夢野「ならば赤松と転子以外のウチらで体当たりをすれば良いのじゃろ?」

    夢野さんの提案に頷く僕らは、赤松さんの掛け声で扉に体当たりをしたんだ。扉ごと外れて、予想通り一階の廊下に出てこれた。
    今まで暗さに目が慣れていたせいで眩しいけれど。

    百田「ここか!!ここからなら廊下が繋がってればあの渡り廊下に出られるって事だな。急ごうぜ!」

    その言葉に顔を見合せ頷き、急いで目指すべき場所へと歩を進めていく。


    茶柱「――ここですね!」

    最原「はぁ、はぁ……やっと外に出られるのか」

    『 用務員室 』の前の廊下を突っ切るように進んで、やっと目指す場所一歩手前の扉へとたどり着いた時点で音程のおかしいチャイムの音が響く。
    ガサッガサっ……と放送のスピーカーのノイズの音にもう時間がないんだと改めて理解した。

    百田「扉は……開くな。このままいくぞ」

    百田くんが扉を開く。雨が思いの外、降っているのか扉の隙間から入ってくるがそんなことを気にする余裕はない。僕らは渡り廊下へと進む。

    ザーザー降りしきる雨をものともせず。渡り廊下の中央で、『 おまじないの切れ端 』を再び合わせる。

    最原「――今度こそ。帰るぞ」

    その声にみんなが頷く。そうだ。帰るんだ。
    帰ったあとの事が考えられないけれど。

    きっと――今度こそ。戻れるはずだ。

    最原「(――みんな……)」

    目を固く閉じて祈るように『 逆打ち 』をしたんだ。

  177. 177 : : 2022/01/14(金) 03:18:44

    最原「……う」

    いつの間にか気を失っていたらしい。ゆっくりと上体を起こす――とさっきまで共に行動していたみんなと、見慣れた教室に一気に覚醒する。

    最原「戻って……これた、のか?」

    キョロキョロと見回せば見回すほどそうだ。普段僕らの通う学園の校舎そのもので。
    ただ違うとすれば……『 おまじない 』をした時刻からかなり時が経過しているぐらいか。

    百田「――ごほっ……って……ん?
    ここってまさかっ!!」

    呆然と時計の針が12時を指し示しているのを見ていると百田くんの張りのある声で我に返った。そうだ、みんなを起こさないと、だよな。

    百田「なぁ、終一っ!
    これってよ、マジで戻ってこれたんだな――って王馬たちもいる。とりあえず起こそうぜ!」

    最原「あ、うん。そうだね」

    目が合って慌てて頷く。近場に倒れている、赤松さんと茶柱さんを起こして百田くんは王馬くんと夢野さんの身体を揺すって起こした。

    赤松「……ここって……」

    茶柱「転子たちの教室ですよね……っ」

    赤松「ああ、大丈夫っ!?」

    みんながみんな同様の反応を示していて、戸惑っているけど茶柱さんの太ももの生々しい怪我に赤松さんの腕の怪我を見ていると到底夢だった、なんて言えない。

    夢野「……雪、感謝するぞ」

    ボソリと呟かれた言葉にただ僕らは顔を見合わせてた。

    百田「外は雨か……」

    赤松「そういえば雨の予報だったもんね」

    暫く呆然としていたけれど、窓際でそう呟く二人を背に顔色の悪い王馬くんがニヤニヤ笑ってる。

    王馬「白昼夢だったりしてねー」

    夢野「んなわけなかろう!!」

    王馬「たはー。そうだったら良かったけどね。
    ……オレたち以外のみんなは居ないかー」

    ボソリと呟いた後半の言葉に生唾を飲み込んでしまう。
    そうだ、みんなは……

    夢野「ウチらしか『 おまじない 』をしておらぬから……」

    言葉の先を言っていいのか迷って視線を逸らした。
    その先の言葉を察する事が出来ないほど愚かではない。
    居ない、ということは。そういうことだろう。

    茶柱「行方不明、扱いになるのでしょうか?」

    百田「……くそっ!くそっ……結局オレらしか出られなかったって事だろ!
    なんでっ、くそぉっ」

    苦虫を噛み潰したように表情を歪める。
    その通りだ。僕らは結局何も出来なかったんだ……

    夢野「……本当に戻れたのか不安じゃが、先ずは家に帰るべきじゃなかろうか?
    ずっとこの教室におっても意味はなかろうて」

    沈黙を破ったのは夢野さんだ。神妙な面持ちで呟いた言葉に頷くことしかできない僕が歯痒いけれど。

    赤松「そう、だね……明日になって考えよ。明日は学園が休みだから正しくは明後日になるんだと思うけどさ」

    王馬「そうそう!滅茶苦茶眠いしさ。考えるのは後にしないとね!」

    ふぁああと欠伸と伸びをしている王馬くんをよそに茶柱さんが太ももを抑えながら呟いた。

    茶柱「今からは難しいですが……怪我の治療もしないとですよね。みなさん、一度診てもらった方がいいかもしれません。
    ――特にそこの男死は」

    王馬「えーなになにー?どこを診てもらうって?」

    夢野「お主なぁ……」

    最後だけ強調して睨みながら言うものだから、威勢だけは相変わらず変化なくて安心した。
    ……等の指摘された側もだけどさ。

    最原「そうだね。
    少なくとも王馬くんと茶柱さん赤松さんは救急車案件だと思うけど……ここから呼ぶのはなんだか気が引けるし、状況をどう話せばいいのか分からないよ」

    赤松「わ、私も?……大丈夫だよ……?ほら私は明日に個人的に行くから気にしないで」

    百田「んな事言ってらんねーだろうが!
    今は問題ねぇかもしれないけどよ、破傷風にでもなったら危険だぞ」

    茶柱「そ、そうですね……致し方ありませんが病院にすぐにでも行くべきですよ」

    王馬「まー考えてても何も始まらないし、呼ぶなら呼べば?」

    確かにそうだよな……
    このまま話していても埒が明かない。意を決して110番を押そうかとスマホのボタンに手を触れた瞬間だった。

    ――教室の扉がガラガラと開いたんだ。

  178. 178 : : 2022/01/14(金) 03:19:07

    ――明後日にでも話そう。

    ……それが叶ったのは『 事件 』からおおよそ一ヶ月過ぎた頃だった。

    『 天神小学校 』から脱出した僕らが再会出来るまでそれぐらい時間が過ぎたという訳で。
    百田くんや僕、それに夢野さんはあまり怪我という怪我をしてなかったから(してても数日で完治する程度だったし)、宣言通りに登校が出来た。だけど残りの三人……特に王馬くんがなかなか学園に来られる状況ではなかった。

    あの日、あの後で教室の扉を開いたのは罪木さんと雪染先生だった。なんで二学年も上の人が来たのか当時わからなかったけど寮母さんを筆頭に探してくれていたらしい。そして王馬くんが退院した段階でお礼がてら話を聞くと結構な人数で僕らを探していたのだと聞いて更に驚いたぐらいだ。
    ……かなリおおごとになってしまって校長先生にこっぴどく怒られるとは思わなかったけど。

    ボロボロな姿の僕らに対し血相を変えて応急処置を始めとする手配をしてくれたんだ。
    意識はみんなあったけど救急車で運ばれて病院で処置を受けたんだけど案の定、王馬くんと茶柱さんは入院、赤松さんは通院しなければならなくなったんだ。

    王馬くんが運ばれてる途中で意識失ったとかで相当危険な状態だったらしい。
    ……それを聞いたが王馬くんが退院した日だったけど。

    学園に登校できる僕たちを中心にあの日何があったのか色々な場所で聞かれたけれど、結局は『 怪奇現象にあった 』としかいえなかった。
    または『 神隠し 』としか、ね。
    それこそうまく説明が出来なかった。そもそと事情を話したとしてちゃんと理解してくれる人も少ないだろうし。

    学園の中でも好奇の目で見られていたけど、この学園自体が特殊だからかすぐに忘れられた、といった感じだった。――要するに他人への関心のある人が少ないとも言えちゃうけどな。

    だからこそ今日改めて放課後になって席を囲っている。やっと話ができる状況になった訳だからね。

    百田「嘘みたいだな……本当に『 あんな事 』あったのかって疑いたくなっちまうよ」

    開口一番、百田くんのその言葉に同意しかない。
    ――でも現実なんだ。だって、

    赤松「でも、実際にあったことなんだよ。だって私たち以外は『 元々存在していなかったこと 』にされてるんだもん」

    そう。脱出出来た僕ら以外のみんなが『 元々存在していない 』ということにされていたから。
    信じ難いけど、僕らしか彼らのことを知らない。その事実が未だに信じられないのが本音だ。

    王馬「たはー。実は凄ーく長い夢見てたりして」

    頬杖ついてニタニタ笑うその前髪の隙間からみえる包帯が未だに痛々しい。夢の一言では片付けられないことを物語ってる。

    茶柱「何を言うんですかっ!
    転子たちの痛みや悲しみが夢だなんて信じたくありません!!」

    そう答える茶柱さんの髪は首元で切り揃えられている。なんだか見慣れなくて変な気分だ。それに太ももの縫い跡を隠すべくスラックスを履いていることも合わさって見慣れない。
    本当に変な気分だよ。

    夢野「んあーそうじゃな……あれは夢じゃったらどんなに良い事か」

    そう呟く夢野さんの視線は校庭に向けられて、釣られるように見ると体育会系の才能をもつ生徒数人が各々運動をしている。

  179. 179 : : 2022/01/14(金) 03:19:37

    最原「……」

    つい重くなってしまう空気。つい一ヶ月前までは何事もない日常だったのにこんなにもガラリと変わってしまうのか―――そう思う度に胸が苦しくなる。

    王馬「今更後悔だとかありえなく無い?
    起きちゃった事は受け止めるべきなんじゃないのさ」

    百田「そりゃそうだが……」

    とにかく、と王馬くんがさもつまらなさそうに視線を僕らから逸らす。

    王馬「こうやって話しても意味は無いよ。
    井戸端会議もいいところじゃん」

    欠伸を噛み殺して、席を立つ。
    もうこれ以上の会話は無駄だと言わんばかりに。

    茶柱「ちょ、ちょっと待ってくださ――」

    王馬「オレたちが出来るのは『 居なくなったみんなを忘れないこと 』なんじゃないの?
    ――ほら『 忘れられたら本当の意味で死ぬ 』ってどこぞのひとがいってたじゃん」

    夢野「そう、じゃな……」

    百田「忘れないってか。そうだよな。それしかねーよな」

    王馬「オレらだってどうなってたか分からかったんだしさ。ほらもういい時間だから帰ろうよー」

    最原「あ、ちょっとっ」

    我慢ならなかったのか、そのまま止まることなく教室を飛び出していってしまう。
    話しても無駄、なのはわかるけどもさ……

    百田「あいつの言う通りだよな。オレらにできることは『 みんなを忘れない事 』なのかもしれねー」

    お開きの空気になってみんな自然と席を立った。
    また明日、と誰かが呟いた気がした。

    赤松「……明日、明日もみんなの顔が見たいから絶対に学園、来てよね!」

    夢野「当たり前じゃ。引きこもっている暇なぞなかろうて」

    茶柱「ですよね!!」

    女子の会話を小耳に挟みつつ、百田くんに声をかける。

    最原「あはは、お開きって雰囲気だね。それじゃ解散しようか」

    百田「ああ、そうだな……って日直今日オレと王馬だったわ!
    っ!?あいつ逃げやがったなっ!!」

    途中で表情を変えて「王馬っ!」と怒鳴りながら廊下へと飛び出して行ったその背を眺めた……と、いつの間にか会話を終えた赤松さんがこちらを見ていた。

    赤松「ねぇ、後で話があるんだ。時間大丈夫?」

    最原「え?ああ……別に大丈夫だけどどうしたの?」

    少し翳りがあって淋しく微笑むその姿に嫌な予感が芽ばえる。けれど予感をよそに夢野さんたちが「またの」と教室を去るその背に大きく手を振って見送る赤松さんの姿は普段と何ら分からなかった。

    赤松「あ、二人とも明日ね。バイバイ!」

  180. 180 : : 2022/01/14(金) 03:19:57

    残されたのは僕と赤松さんだけで、西日が差し込み眩しい。
    さっきまでみんなで会話していたことすら忘れるぐらい静かだ。

    赤松さんが改めてこちらを向き直した。
    その表情はやっぱり暗い。

    赤松「……最原くんには話すべきだって思ったんだ」

    最原「え――唐突にどうしたの?」

    視線を少しだけ逸らした彼女に驚いてしまうけど、その瞳が僅かに揺らいでいる事と真剣な声色につい佇まいを正した。
    すぅ……と深呼吸したかと思えば言葉をにした。

    赤松「魔姫ちゃん――春川さんの事。話さなきゃって思ったんだ」

    最原「春川さん?」

    そうと頷いてから続けるねとこちらを真っ直ぐ射抜く視線に少しだけ居心地の悪さを抱いてしまう。

    赤松「『私が殺したの』。記憶にはないけど、この手で魔姫ちゃんを殺めたんだよ」

    最原「ええっ!?」

    嘘だと思いたいのにそう思わせない、そんな意思さえ感じるその姿に言及は出来ず、ただその続きの言葉を待ってしまう。

    赤松「未だに信じられないけどさ……正気じゃなかったんだと思う。操られてたのかもしれない。
    ――でも、殺した。それが真実だよ」

    息を飲む音が妙に響いてしまう。聞こえているんじゃないかって思う程に。

    赤松「あのね。魔姫ちゃんを追いかけた先にあった部屋でその事実を知ったの。田久地さんって人が撮った映像だったから紛れもない事実だった。

    私は―――」

  181. 181 : : 2022/01/14(金) 03:20:22

    『 赤松楓 』side

    赤松「うそ、そんな……っ」

    耐え難い真実がそこには映されていた。
    私が……どうして……

    赤松「なんでっ!」

    魔姫ちゃんは何ひとつ悪いことしてないじゃない!
    私の方が……悪いのに。ヒステリックになって、正気を失った私が……っ!!

    赤松「私、なん……か……」

    魔姫ちゃんの代わりになればよかったのに。


    そう思えば思う度、黒い暗い気持ちに包まれる。
    もう、いいや……どうでも。

    そう思い始めてた時だった。
    ――スマホが鳴ったんだ。

    赤松「……?」

    電波は当然ない、なのに新着でメッセージが画面に出る。読まなきゃいけない――そう思って震える手でその中身を読む。

    赤松「『 まけないで あんたはわるくない 』」

    平仮名で書かれた文字。送り主は――だれか分からない。文字化けしちゃってる。戸惑ってつい首を傾げちゃう。

    赤松「私は悪くない?……え?こんなことをしても悪くない訳ないよ……」

    言葉に答えるように、また着信音が響く。

    赤松「『 わたしは、すくなくともそう おもってる 』――っ!!そんなことない!!

    なんで、なんでそう答えるの!!!」

    また平仮名。文字化けした送り主が魔姫ちゃんだって事、何となく理解できる。でも――

    『 なまえ よび、うれしかった 』

    赤松「っ!!……うぅっ、な、んでっ」

    枯れたと思った涙が溢れでちゃう。
    メッセージは止まらない。平仮名で短い文が何度も何度も届く。

    『 のこった みんなと ここからでないと 』

    『 いま げんきょうと あいつらがたたかってる 』

    『 あんたが いないと でられない 』

    『 わたしは へいき ろくなしにかた しないとおもってた から 』

    赤松「いやだっ、なんでっ……酷いことしたのに、気遣ってくれるの……?」

    『 あんたがわらってないと いやだ 』

    『 さいはらたちが こまってる 』

    『 いきな はやく 』

    赤松「うぅうっ……うっ……ひっく……なんでよ……なんでっ」

    そこまで酷いことをした人を思いやる事が出来るの?

    「つぎ」

    『 まけるな ばにのまれるな 』

    『 わたしのしる あんたは つよいよ。 よわくない 』

    『 だから。だから―― 』

    文字が止まる。画面に涙がポタりポタりと濡れてしまう。

    赤松「……ま、きちゃ」

    ??『今、行動しないとあんた一生後悔するでしょ?
    最原たちと一緒に脱出しないと、呪い殺すよ』

    赤松「――っ!!」

    背後で聞こえ、両肩に僅かな重みではっと顔を上げる。だけど、声の主は……魔姫ちゃんの姿は私には見えない。見えないけど私の側にいる、そんな気がして。

    赤松「……いいの?、私が脱出しても……」

    ??『――早く行きなよ。
    最後にあんたと話せてよかった』

    肩の重みがすうっと消える。ああ、行かないでよ……

    赤松「魔姫ちゃん、いいの?私はいいの?」

    ぎゅっとスマホを握りしめる。
    そうだ、いつまでもくよくよしてるのは私らしくない。事実は受け止めないといけない。でも今は――

    赤松「ここから出なきゃ」

    すくっと立ち上がった。
    そうだ来た道を引き返さなきゃ。
    負けるもんか。例え残酷な事実があったとしても、いま立ち止まるなんて私らしくない!

    赤松「ごめんね。魔姫ちゃん。そしてありがとう。
    ――行くね」

    走って最原くんたちのいる場所へと向かっていくその背中に優しく触れる手。それと共に聞こえた空耳。
    頷いて涙を乱暴に拭いてその場を去った。

    ??『……百田を、頼むよ。楓』

  182. 182 : : 2022/01/14(金) 03:20:47

    『 最原終一 』side

    赤松さんの独白をただ黙って聞いていた。
    そんなことがあっただなんて。管乃雪が口にしていた『試練』というのがこの事だとは思いもしなかった。

    最原「赤松さん――」

    いつの間にか俯いていた赤松さんの肩が震える。
    どうすればいいのか戸惑って名前しか呼べない不甲斐なさがあったけれど、顔を上げた彼女の目には今にも溢れだしそうな涙が浮かんでいた。

    赤松「ねぇ?こんな事があっても『みんなが元々存在しなかった』だなんて信じられない。
    魔姫ちゃんだってそうだし、天海くんや入間さんたちだって生きてたよね!?」

    最原「……うん。彼らはいたんだ。クラスメイトだったんだ」

    赤松「もう、会えないだなんて嘘だよね?
    『あの日』まで一緒にいたのに、なんでこうなっちゃったんだろう……っ!」

    溢れた涙を乱暴に拭うその様に込み上げて来るものがある。

    最原「――赤松、さん……」

    赤松「なんで、なんでよ……っ!」

    西日が眩しい。
    彼らはいたんだ。忘れるもんか。

    赤松「ごめん、ごめんね……魔姫ちゃんっ!!」






    【 chapter:06 】TRUE END



    生存者:06 名 
    『最原終一』、『赤松楓』、『茶柱転子』、 
    『夢野秘密子』、『王馬小吉』 、『百田解斗』















    『 ???? 』side

    廊下側の教室の扉近くの壁に背もたれ、赤松の独白を黙って聞いていた。
    近くでは同様に暗い表情でもらい泣きしている友人がいて。
    もう1人も神妙な面持ちで黙ってそれを聞いていた。

    「……いくぞ」

    「……はい」

    これ以上は邪魔しては無粋だと、珍しく空気を読んだ彼女が友人へと声をかけ静かにその場を去った……

    「……これ以上は、させない。あやつが……動こうとしておる。それを何とか回避させねば」

    「……そう、ですね」

    彼女の言葉に、渋々頷く友人。
    また、『何か』が起ころうとしていた―――――


  183. 183 : : 2022/01/14(金) 04:43:30

    (ここまで約4年もの間、閲覧していただきまして
    ありがとうございました!!)
    (これにて『安価】真宮寺「これは……」夜長「……コープスパーティー?」』シリーズ完結となります)
    (またpixiv版の投稿が残ってありますので最後までお楽しみくださいませ)


    ※pixiv版、chapter06part08から最終話までとあるアンケートを実施しますので御協力の旨、お願いします。


    尚、ssnote内での活動はこれにて終了させて頂きますのでご理解ください。






    (以下バットエンドリストとなります) 

    【 WRONG END 】リスト 


    (★1)『 怠惰の結果 』 

    内容:>>19の選択安価「そんなん面倒臭いし行くわけないじゃん!」を選択すると発生。
    王馬のみ現実世界に戻ってきたが幾度と待てど誰一人戻ることはなく、後にDICEのメンバーを引っさげて天神小学校へと向かうが時すでに遅しで皆無惨な姿になっていた。


    (★2)『 逃れられぬ死 』 

    内容:>>117の秒数安価の平均値(小数点切り捨て)にて
    01~32の場合に発生
    赤松と東条が唐突に落とされた先は虫や死体が混ざるプール。岸へと上がろうとした瞬間に足を捕まれそのまま二人とも溺死する。それを見ていた残りの二人もまた背中を押されて溺れ死ぬ。


    (★3)『 オトモダチ 』 

    内容:>>93の秒数安価にて20、24~26、28~30、32、34、36、38~40、42、45、46、48~50、52~54、56、58~59の場合に発生。
    真宮寺に殺害された王馬と百田。一人目を覚まし、何とかその場から逃げる夢野であったが死体につまづき転んだタイミングで獄原の手によって撲殺されてしまう。


    (★4)『 そして誰もいなくなる 』 

    内容:>>111の時点で夢野の黒化ポイントが6以上の場合に発生。(黒化イベント対象安価、>>5>>12>>18>>24>>33>>64>>79>>93)
    大事なものを無くしたショックで夢野が黒化しきってしまい、茶柱もつられて黒化してまった。
    何とか振り切り最奥へとたどり着いた一行かみたのは
    今まで死んで行った仲間たちの遺体でありそれを見てみな発狂し、二度と正気に戻ることは無かった。

    (★5)『 死体蹴り 』 

    内容:>>154の秒数安価にて32~59の奇数とゾロ目の場合に発生
    赤松に追いつくと、春川の死体を居もしない犯人だと勘違いした赤松が狂ったようにその死体を損壊している様に止めに入った茶柱が殺害された後、逃げ惑う最原の前に現れたサチコと管乃雪たちの手によって殺される。


    (★6)『 皆殺し 』

    内容:>>161の秒数安価の平均値(小数点切り捨て)にて34~59になった場合発生
    サチコに渡すものを忘れてしまい、かつ金縛りにあう最原の目の前で正気を失った赤松が一人ずつ皆殺しにしてしまい、最後残された最原は絶望した後黒化して死亡してしまう。


    (★7)『 第2のサチコ 』

    内容:>>161の秒数安価の平均値(小数点切り捨て)にて01~32になった場合に発生
    おまじないの回数をみんながそれぞれ間違えたことによって、意識を失った最原が操られた赤松の手によって切り刻まれ死亡する。




    【 EXTRA END 】

    (★1)『 もう一度あの日を 』
    内容:>>154の秒数安価にて00~31の偶数とゾロ目の場合に発生。
    サチコと対峙した時に茶柱と百田が死亡。脱出することには成功し、目を覚まし学園へと向かうと何故か再びおまじないをすることになってしまった。
    記憶を保持した最原と夢野が拒む中、結局また天神小学校へと誘われるのであった。


    (★2)『 もう助からない 』

    内容:>>06の秒数安価のゾロ目、また>>13の選択安価「左に避ける」、>>111の時点で茶柱のみ黒化ポイントが4以上の場合に発生。(黒化イベント対象安価、>>5>>12>>18>>24>>33>>64>>79>>93)
    茶柱が殺された状態で(進行度関係なく)脱出すると現実世界戻ってきた最原たちが一日ごとに行方不明になる事件が発生し、原因が茶柱にあると考えた夢野が茶柱の学生寮に向かうと向こうで死んだはずの茶柱が手招きして夢野のまた行方不明になってしまう。

  184. 184 : : 2022/01/14(金) 09:03:55
    ついに完結!面白いお話を本当にありがとうございました! pixiv版も楽しみです
  185. 185 : : 2022/01/15(土) 09:53:58
    完結までお疲れ様でした!自分の選択がどういった運命を辿るのか分からなかったので更新される度にドキドキしながら読んでました。 pixiv版も楽しみにしてます。

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著者情報
bashikosama

飛んで火にいるばし子さん

@bashikosama

この作品はシリーズ作品です

【V3×コープス】真宮寺「これは…」 夜長「天神小学校…?」 シリーズ

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