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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

【安価】真宮寺「これは……」夜長「……コープスパーティー?」【chapter:05】

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  1. 1 : : 2018/09/01(土) 00:00:10

     (※毎度お馴染みの誤字・脱字の量でございますがお許しを…※) 

    (※この作品は『コープスパーティー』とのコラボ作品となります。基本はコープスのストーリーに沿ってますが、オリジナル展開も予定しています※)

    (※なお、今回はホラー・エロ・グロ、CP要素がもりもりあります※) 

    (※chapter事に視点が変わります、さらに同じchapter内でも視点が変わるので見辛いかもしれません※) 

    (※また死ぬキャラクターが多数でるので、推しのキャラが退場しても許しください※) 



    ・登場人物 

    ニューダンガンロンパV3 メンバー
    (希望ヶ峰学園の制服を着てるイメージをしております)


    ・舞台設定 

    育成計画+α 『希望が峰学園79期生』設定 
    というより紅鮭の方が近いかも…… 


    ・前説

    それはある日の夕暮れのこと。
    怪談話をしていく最中、才因組のクラスメイトたちはあるおまじないをすることに…

    …それが、禁じられた『呪いの類い』であることを知らずに……



    (※基本は安価は選択制オンリーですが、秒数安価もあるかも知れません※) 

    (※では、今回もスタートします。完 全 に 二番煎じです、先に作成した方申し訳ありません……(汗)※) 

    (※今回は進行上、期待などのコメントにお返事致しません。
    この場でお礼申し上げます※) 

    (※鈍行列車や徒歩よりも遅い進行ですが、生暖かい目線…もとい保護者の目線で見守ってやってください※)

    (※なお『 pixiv 』でも追っかけでかつ、別視点で進行しております。そちらもどうぞご覧下さい※)
    リンク先
    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8648065
  2. 2 : : 2018/09/01(土) 00:01:26



    ――それぞれが痛みを抱えながらも脱出すべく、ただ真実の先を求めておった。

    瞼を閉じれば雷鳴響く豪雨が聞こえてくる。それは、――戻ってきたとしても完全に『 件の校舎と縁を切れた 』訳じゃないのであろう。

    ――その原因は分かっておる。

    ウチらがおる巨大な霊磁場……『 天神小学校 』について、複雑に絡み合ったであろう糸がゆっくりとゆっくりとほどけるように解決をしておるからじゃ。
    じゃが、それは仮初め過ぎん。
    もっと奥深く根深い所まで解決せんとウチらが脱出出来たとしても他のクラスメイトは閉じ込められたままなのじゃ…から。

    白銀とアンジーそして、ハルマキ、入間とキーボ――お主らを喪った痛みを力に変えて…ウチらは新たな道を突き進しかないぞ。


    普段と変わらぬ見慣れた教室に静けさが不気味にウチらを嘲笑っておるように思える。壁に掛けられた時計の表示は既に23時を示しておることから随分と時が経過したのじゃろう。寄宿舎に戻らぬウチらを寮母たちは心配しておるやも知れぬ――が、今はそれ所じゃないのじゃ。

    目の前の亡霊が心配そうにウチを見据える。その瞳は揺らいでおった。あの時のような『 正気を失った姿 』とはかけ離れておるのは――目の前の少女の亡霊本来の姿とも思えたのじゃ。
    亡霊の少女な祈るように組まれた手をくっと無意識じゃろうが力を込めておった。

    ……一歩後ろにおる王馬と百田が静かにウチの反応を見守る。

    『――本当に、いいんですね?』

    再度、確認の意味を込めた言葉にウチは頷く。王馬が僅かに声を掛ける。「本当に大丈夫?」と。
    じゃが、ウチは無言で答える。コレがウチの決意じゃから…揺らぐことは目の前の彼女に失礼じゃろうて。

    背後で百田が「 マジかよ… 」と呟いたのを最後に瞬間、ウチは――――


  3. 3 : : 2018/09/01(土) 00:01:52

    【 chapter:00 】『 獄原ゴン太 』side



    ??『んーよくみると』

    ……誰かの声がする、ね。
    ここは……何処なんだろう……と少しだけ歩いては見たんだけど出口という場所にたどり着かない。どうしてなんだろうって思ってたら、背後から聞き覚えの無い声がしたんだ!
    ……この場所がどこなのか…分かるかな?と思って期待を込めて振り返ったんだけど…

    ??『 デクノボウににてるな、オマエ 』

    と目の前に仁王立ちしていたのは――――長い黒髪の小学生くらいの女の子だったんだ。
    女の子は灰色の瞳を僕に真っ直ぐに向けていて…目を逸らす事が出来なかったんだよ。
    体の自由が奪われていく感覚に直感的に怖いと思っちゃうんだ。それでも、僕は聞かずにはいられなかったんだ…

    獄原「…えっと、その…ここは…どこなのか、分かるかな?」

    ??『オマエたちが喜んで来た場所ダロ?…その場所を忘れるなんてとんだ痴呆物ダネ』

    ――――ニヤリ、その笑顔が怖い。普段から王馬君が笑うようなイタズラっ子のような笑顔とは違った…何かを考えてるような笑みに身震いが止まらなかったよ。

    ??『オツムまでデクノボウに似てるね!…よし、きーめーたっ!』

    獄原「え?」

    赤いワンピースの裾がひらっと舞ったんだ。一人で完結しちゃった女の子は一気に僕との距離を詰めて微笑んだ。

    ??『オマエが、今回のデクノボウの代わりになってよ!!……その方が』

    愉しいカラネ!!――と女の子がゲラゲラと笑った瞬間、僕は――――――自由を奪われたんだ。

    それと、同時に僕は――――みんなの『 敵 』になっちやったんだ。


    ……ごめんね。みんな。

    僕のせいで――




    …ふらつく体は左手に持った凶器を握って離さない。
    ハンマーには――皆を苦しめた跡が嫌な色を残してこびりついていたんだ。

    もう、こんな姿じゃあ…戻ることなんて。


    獄原「…出来ないよォ…」



  4. 4 : : 2018/09/02(日) 04:48:23

    【 chapter:05 】『 最原終一 』side



    最原「うっ……」

    いつの間にか意識さえ奪われたらしい。
    真っ白な視界はようやく色を取り戻したんだ。
    …どうやら壁に寄りかかっているのが背中に当たる無機質な感触で分かる。

    最原「…(あれから…どうなったんだ?)」

    現状を整理する為の頭が回らない。…まだ寝惚け眼なんだろうか?

    冷静になるためには少しだけ時間が掛かってしまうらしい。一呼吸をした後にゆっくりと視点をずらして見ると――若干の違和感を覚えた。…景色が違う気がするな。そう思えたのは何故だか分からないけどなんとなく――そう感じたんだ。

    今までの行為は一体なんだったのか?と思う傍らで雨の音に再び違和感を覚えんだよ。…雷雨が収まったらしく、輪郭をハッキリとさせていく視界に入る外の風景はどこか違う気がするな。

    『 愛すべき者の許へと行きなさい 』

    そう言われた途端に意識が薄れていくまでは覚えていた…けれど、激しく痛みと熱さを感じた体には異変は何にも感じる事なく寧ろ健康そのもの――だ。
    立ち上がると…肌寒さに身震いをしてしまうほどの冷気?がどこからか流れているみたいだ。

    最原「(…あれからなにが起きたのか分からない――けど、ここは慎重に調べないとダメな気がする)」

    どれくらいの時間が経過したのか分からないけれど。こうしていても解決はしない。皆と合流する為に出来ることをしないと…ぐっと握りしめた拳をそのままに僕は立ち上がるんだ。


    最原「(ここは…2階なのか?)」

    3度と周囲を睨むように眺める。この頃には意識がハッキリとしていたし、気絶したのが良いキッカケになったのか頭がスッキリとしていたんだ。

    背後に見えるのは『 保健室 』と書かれたプレート。どうやら気絶する前にいた場所とは大きく違うらしい。誰が僕をここに運んだのか―――?
    恐らく『 あの人 』だろう思うけれど。――『 冴之木七星 』だろう。どのような力が働いてこの場所に来たのかがさっぱりだけどね。

    最原「(考えてもキリがない。茶柱さんや星くんは勿論だけど…真宮寺くんと合流しないとね)」

    頭を振って、進行方向左側の先の廊下を眺めた―――ここから降りて行けるだろう『 別校舎 』に居るのであればそっちに行くべきだ。ならば、進む先は決まっている。

    最原「(1階に―――)」

    と、その時だった。

    ??『 …だめ、早く… 』

    最原「…え?」

    背後から懐かしい声がしたんだ。ついさっきまで聴いたような声につい振り向き反応してしまう。
    だけど―――背後には誰もいない。…は?

    最原「…??誰だっ!」

    その声はか細くて一瞬。でも僕を引き留めるには十分過ぎたんだ。だって、また耳元で。

    ??『 アンタしか…頼れないんだ。…かえ――あ…ま…をたす… 』

    特徴的な口調。誰かなんて何となくだけど分かった。
    でも姿を見せない声の主に戸惑いと驚きが隠せない僕はその場で叫んだんだ。

    最原「…え?その声ってまさかっ!?」

    ??『 こっち…はやく… 』

    視界の隅に長い髪の毛が見えた気がして誘導されるままにその先にと進んで行ったんだ…

  5. 5 : : 2018/09/02(日) 04:48:48

    最原「(うわ…酷い…)」

    時間が経過したせいなのか『 アンジーさんの死体? 』がある壁際には…人体内に詰まっていたのかと疑問に思うぐらいの赤黒いものが散乱していた。きっと無意識に僕らが踏んだのか上履きで擦れた物が生々しい。あまりにもリアルすぎるそれに顔をしかめてしまう。

    …アンジーさん…ここで…何をされたんだよ…

    最原「助けられなくてごめん…」

    そうとしか言えない自分がもどかしくてもどかしくて苦しかった。後悔の波に苛まれて…いつまでもここにいる訳にはいかない。

    ―――そう不意に思い僕はその場を後にするんだ。

    最原「…?なんか景色が違う?」

    歩く度に抱く違和感はだんだんと膨らむ。何かが違う。
    …でも――それがなんなのかが分からない。景色は茶柱さん達と歩いた時と何ら変わらないのに。どうしてだろう?

    ??『…こっち…やはく…して…じゃないと…あ…つが…』

    最原「っ!!…階段に行けば良いのか?」

    ??『アンタに…しか……から…』

    耳に残る声。誰なのかを咎める前に途切れてしまうか細すぎる声。不穏な場所でも安心する声…不思議だ。

    最原「上の階に行けばいいんだな。わかった」

    目の前に見える階段を見据える。…この先に何があるのか、それとも不思議な声…もとい春川さんの声は単なる罠なのか。
    そんなことはどうでもいい。いまは…

    最原「(行くしかないだろう…)」

    ギリギリと軋む木の板を踏み抜かないようにして階段を目指すんだ。

    ギシ…ギシ…

    階段は予想以上に暗い。こんなだっけ?違和感が拭えない。でもスマホの明かりは要らないだろう。…正直頻繁に使いたくない。慎重に階段を進めば大丈夫な範囲だ。そう。問題は無いはずだ。
    丁度踊り場に出た時だった。上から何かが…僕の目の前、足元に転がる。まるで…あえて僕に向けて投げ落としたように。

    最原「なんだよ…って…これはっ!!」

    ――赤松さんのスマートフォン、だ。
    ピアノの五線譜がプリントされた手帳型のケース。キーホルダーがト音記号なのは…彼女以外に知らない。
    なんで…こんな所にあるんだよ…これを拾えってことか??
    春川さんなんだろう?と言いたい言葉を飲んだ。
    …着信音がしたからだ。

    最原「月の光…赤松さんらしいな…これは…誰からなんだ…」

    手に取って着信画面を見る…と寮母さんからだった。恐らくは帰ってこないのを気にしてだろうけど――これ僕が事情を話したら勘違いしないよな…と震える手で応答のボタンを押す。

    最原「…もしもし…」

    『 あ!!やっと繋がった…赤松さん!!どこにいるんですか!?外泊届けもないのにどうしたんですか…今までこんなこと無かったのに…どうして… 』

    矢継ぎ早に紡がれる女子寮の寮母さんの声は怒りと心配が混ざっていて、少し涙声だ。こればかりには返事が出来なくなってしまう。

    最原「あ、えっとそれは…」

  6. 6 : : 2018/09/02(日) 05:02:24

    最原「えっとそれは…」

    『…なんで?やっと出たのに…雑音しか聞こえないわ…何が起きてるの!?79期生の誰とも連絡取れなくて…やっと、届いたと思ったのよっ!…それなのに』

    最原「…え?」

    寮母さんの声は聞こえている…なのに僕の声は届いていない?
    何故?――いや違う。ここは現実とはかけ離れた場所だとアンジーさんが言っていたじゃないか!!
    時間を示せないことからそれは推察可能だ。となると当然電波が来るはずがない。

    ――じゃあ、この声は…

    『 タ ス ケ テ ク レ 』

    耳元に突如として、寮母さんとは違う異質な声が聞こえた。
    思わず驚き固まってしまう。

    『 タ ス ケ テ ク レ 』

    『 タ ス ケ テ ク レ 』

    『 タ ス ケ テ ク レ 』

    『 タ ス ケ テ ク レ 』

    最原「…なんなんだっ!!」

    息を飲む暇もなく矢継ぎ早に流れる言葉に思わず叫び返してしまう。柄にもなく声というものはちゃんと出てくれるらしい。
    得体の知れない恐怖心でスマホを落としそうになるけれど何とか落とさずに済んだ。耳元から離したスマホからひたすら同じ声が不気味に響いて居たんだ。

    『 タ ス ケ テ ク レ 』

    『 タ ス ケ テ ク レ 』

    『 タ ス ケ テ ク レ 』

    『 タ ス ケ テ ク レ 』

    『 タ ス ケ テ ク レ 』

    最原「っ?!」

    耳に残りそうで顔をしかめる…と通話ボタンを切った…というか電源から切っていたらしい。気がつくと真っ黒な画面が映るだけだったんだ。

    最原「…何が起きてるんだよ…っ!」

    やり場のない感情を伴いながら僕はそれを握りしめた。



    【 赤松のスマートフォン 】を入手しました…
    説明:(赤松が常日頃から使用しているスマートフォンです。淡いピンクのケースが彼女らしさを出してますね。…ですが、どうしてこんな場所にあるのでしょうか…?)



  7. 7 : : 2018/09/02(日) 05:18:18
    赤松さんのスマホを手にささくれ立った手すりをなぞりなんとか3階に来た。…暗い。
    数歩先さえ見えないだろうその暗がりに顔をしかめ、流石にスマホの画面を付ける…ポッと足元だけ明るくなるけれど返ってそれが恐怖感を抱く。
    …歩く度に五月蝿いほど響く足元。

    不気味だと思いながらも進まないと…と歩みを進める。3階は確か『 トイレ 』しかなかった気がする…とある程度歩いた瞬間だった。

    ??『あのね、春川さん。私ね、やっと見つけたんだよ?』

    ??『…は?何をこんな場所で見つけるっていうの?』

    ―――この声は。

    最原「…赤松さんと…春川さん?」

    1歩と声のする方向へと度に二人の会話が聞こえる…ということは、2人はこの先で休んでいるのか?だったら…いやでもおかしい。だって――

    最原「(アンジーさんの話だと…赤松さん達は違う『 次元 』に居るって…)」

    そうだ、でも声がする。すごく近い。今まで聞いた声よりもハッキリとわかる。…とすればこの先にいるんだな。

    最原「赤松さん…っ」

    僕は躊躇いもなくその場所――『 男子トイレ 』の扉を動かす…


    ぴちゃん…ぴちゃん……


    予想以上に暗い。…だけど人がいる気配なんて微塵も感じられない。僕が聞いた声は一体…疑問が駆け巡る中で、調べることにしたんだ…




    question、>>8番さん。最原調査『 男子トイレ 』
    (選択肢で進行します)


    1、調べるならまずは…(洗面台周辺調べます)

    2、奥の個室調べるか…(個室調べます)


  8. 8 : : 2018/09/02(日) 10:03:19
    1で
  9. 9 : : 2018/09/02(日) 19:26:47
    あ、これ原作と同じパターンだったらもしかして・・・。
  10. 10 : : 2018/09/08(土) 18:08:06
    お願い死なないでー
  11. 11 : : 2018/09/09(日) 21:25:34
    むしろ死亡パターンは片っ端から見たい(ゲス顔
  12. 12 : : 2018/09/10(月) 02:26:35

    …ピチャン、ピチャン…

    静まり返った『 男子トイレ 』…会話なんてこの場所からあったのかと疑問を抱きながらも手探りで周囲を探す…

    最原「(鏡が…ひび割れているな…)」

    劣化具合を比べる訳じゃない、しかし、それでも――違う。仄かに抱いた違和感が正解へと導く。

    最原「(僕は…きっと飛ばされたんだ。『 異なった次元 』に――星くんが経験したように…あの人、『 冴之木七星 』の手によって)」

    ならば…だとすれば。

    最原「…茶柱さんと星くん、それに――真宮寺くんとは」

    がたっ!!

    最原「――っ?!」

    言葉を遮って、大きな音が響く。
    …誰かいるのか?――こんな暗い場所にだぞ??
    いるわけない、そう思いたいけれど、僕のものじゃない声が続けざまに響く。

    ??『あのね、最近の最原くんってさ可愛いって思う所あるんだよね』

    ??『…は?なにいってるのさ、赤松…』

    最原「っ!!」

    声。いつもとかわらない口調で聞こえるのは手前から三番目…奥にある個室からだろう。
    …ってか話題が僕かよ!

    赤松?『わたしのYシャツのぼたんが取れかかってたのを東条さんに直して貰ったんだけどさ。その時――近くにいた最原くんが東条さんの事、ママは流石だねって言ったのに気がついてないんだもん』

    春川?『…無意識?…あのさぁ、そんなの通常運転じゃん』

    近くで聞けば聞くほど、おかしく感じる。会話してるであろう声が―――1人の声から発せられているのだから。しかもその声色は間違うことはない、赤松さんだ。

    会話の内容は、さて置いてだ。

    最原「…赤松、さん…?」

    恐る恐る声を掛ける。

    …しばらく待って見たのだけど、反応はしなかった。ピタリと止まる静寂に武者震いをしてしまう。
    再度辺りを見ようと頼りないスマホのライトが個室を照らす――その扉の色は赤い。真っ赤だ。

    最原「なにが、あったんだよ…ここで…」

    滴る音、それは個室の扉の隙間から落ちる赤い液体だった。…床も赤かったんだ。
    それを踏んだ足跡が一番奥の扉へと続いていた。その扉が僅かにドンッと揺れる。

    嫌な予感が過ぎる…これはっ。

    最原「あかまつ、さん!!」




    question、>>13番さん。個室の調査
    (秒数安価です)


    …結果は次の更新で発表します…
    大きな分岐点ですよ…
    (どちらのルートになっても一応エンディングまでは進みます)

  13. 13 : : 2018/09/10(月) 05:05:35
    結果は後出しかぁ…怖い……
  14. 14 : : 2018/09/10(月) 18:45:40
    あれ、選択じゃないんだ
  15. 15 : : 2018/09/14(金) 04:05:40

    (遅らせながらも、結果発表です
    前回の安価、>>12の答えですね。

    奇数、成功
    偶数、バットエンドその1
    ゾロ目、赤松死亡したままエンディング

    でした!!…秒にしたのは一刻も争う場面だからです!
    さて、続きますよ…)



    ドンッ、ドンドンッ…

    最原「赤松さん?!」

    扉の前に立ち止まり激しく音を立てる扉に触れる…ぐっ、立て付けが何故か悪くてやっと、扉を開いた…ら。

    真っ先に入った司会は…赤く染った上履きと見覚えのある―――ハイソックス…だけど赤黒いシミが点々と元の色を汚していたんだ。その…宙に浮いた足、そしてゆっくりと視線を上げ、る…と。


    最原「赤松さん!?」


    ―――赤松さんが首を吊って宙に浮いていたんだ。

    その光景に戸惑う、ど、どうすればいいんだと…パニックになりつつある僕は咄嗟に彼女の脚を触る…って。

    最原「(…あたたかい…?)」

    温もりを持った脚から手を話した瞬間、彼女の足が僅かに動く…って事は!!

    最原「赤松さん!!」

    赤松「…グァァ…ヒュー…ヒュ」

    生きてる。僕の目線からだと赤松さんの表情が暗くて見えない、でも僅かに息を…呼吸をしている。

    最原「だったら…っ!!」

    まずは気道の確保からだ。…赤松さんの僅かな呼吸で冷静さを取り戻した僕は天井から吊るされた縄を見据える…この位置からだと背を伸ばせば何とか…届きそうな位置だな。だったら。

    最原「(緊急事態だから、許してくれるよな…?)」

    彼女の腰をもって抱き抱える…ピンと張られた縄が緩み、首を痛々しい位縛っていた縄が緩む…この隙に…コイツで…って。

    赤松「…カハッ、…ハァ……」

    最原「(この体勢だと…縄が解けな…)」

    抱き抱えると両手が使えない――当たり前のことをどうして分からなくなってしまったんだ。…しばらくこの体勢も辛い…でも早く縄を解かなければ赤松さんに負担がかかる。考えられる最善手…それは…

    最原「(…肩車、か…)」

    ひねり出した答えに思わず苦笑いしてしまう。

    最原「…ゴメン、赤松さん…」

    苦肉の策だし、何より救命行動に入るだろう。本来は何か台のようなものを使って解けば言いけれどその『 台 』のようなものなんてこの廃校にあるのだろうか?

    となると自ずとその答えが出てしまった。…恥じらいは捨てろ、そう誰かに言われた気がして僕は彼女を肩車した。

    最原「(…ゔ…女性は軽いとか、百田くんが話してたけど…おも)」

    いやいや、違う。重さに耐えきれずにバランスを崩すのはもってのほかだ。慎重に中腰の姿勢から立ち上がると、縄はだいぶ緩み、拍子に赤松さんの頭ががくんと垂れた。…勢いがあったから冷や汗が過ぎったけれど僅かに呼吸する音がしたから大丈夫だろう。しばらくは大人しくして欲しい。

    最原「…両手は空いたから行けるだろう…」

    ポケットの中を探す…と『 ペーパーカッター 』を出した。時間は掛かるけれどこれを使えばきつく締まった縄を解くことも切ることも可能だろう。

    最原「行ける、な…」

    手探りで縄を持つ左手。そこ近くにペーパーカッターの刃を宛てがう…鋸のようなようにザクザク…と切っていく。
    …しかし、ナイフとは違って切れ味が悪い。切れている様子など感触でもわからないから…諦め、それをポケットにしまう…切れないなら、手で解いてしまおう――そう思って縄の結び目を解こうと力をいれ、ると…

    最原「かった…い…っ」

    余程強く締めたのか解ける様子などなかった…これでは時間ばかりかかってしまって僕が支えきれなくなっちゃう気がした。ヤバい…何としても…解かないと…

    最原「赤松さん、頑張って」

    赤松「…カヒュ…ヒュ……」

  16. 16 : : 2018/09/20(木) 03:25:42

    か細い彼女の息遣い。何とかしないと…と気持ちが焦る。
    手汗がじんわりと紐を濡らしているのが嫌でもわかってしまう。

    最原「赤、まつ…さん、直ぐに解く…からな…」

    赤松「ゴホッ…ヒュー…」

    僕の声はちゃんと聞こえているのだろうか?咳き込みか細い息遣いが不安になるが、いまはそれ所じゃない。

    最原「(…うっ…何とか…解けそう、だなっ)」

    しばらく格闘する事どれくらいの時間が経過したかなんて分からない。でも、シュル…と縄が完全に解かれた拍子に僕は盛大にバランスを崩した。

    最原「わあっ!!」

    間抜けな声とともに頭を盛大に床にぶつけてしまって、そのままフェードアウトしてしまう…


    *****


    『 赤松楓 』side


    …う、ぅう…ここは…えっと…

    いつの間にか気を失ってたんだね。…ゆっくりとぶつけたのかな?腰が少し痛くて擦りながら上体を起こすよ。

    赤松「…(ここはどこ…かなり狭いみたいだけど…)」

    私は何をしてたのかな?
    ぶつけたのかな?腰以外は痛みはないんだけど、ここは…トイレ??
    個室の中にいるみたいなんだけど――どうしてここに居るのかが思い出せない。

    …と。

    ふにょん。と硬いような柔らかい感触に触れた。…??
    なんなんだろう。腰をさすってた手とは違う手の感触…僅かに生暖かさを感じて…そこに視線を…這わしたんだ。

    ――そしたらね。よく見知った人が倒れてて、その人の1部分に触れてて…思考が停止してしまう。

    赤松「さ、最原…くん!?」

    え?ど、どうして…彼が?ここにいるはずないって、『 生存者はこの次元には居ない 』って…あの人が話してたよね?
    しかも―――意識を失ってるみたいで、長いまつ毛が前髪から見える…中性的で素敵―――じゃないよ!?

    とりあえず、起こさないとっ!!
    私は咄嗟に触っていた最原くんの1部から手を離して彼の頬をペシペシ軽く叩く…とぐもった声を上げて最原くんの眉間にシワがよる…ああ、可愛い…じゃなくて!

    赤松「最原くん?…しっかりして!!」

    最原「…ゔっ…あ、あかま…つさ…?」

    薄く開いた瞼が次第にその奥の瞳を大きく見せる。
    あ、良かった!!無事みたいだね。

    赤松「大丈夫?」

    最原「…あ、赤松ひゃん!?」


    私の姿に驚いたのか完全に起きた最原くんの声は上擦ってたなぁ…飛び退くように起き上がって私から距離を少し置いた、と言っても…ここは個室の中だから離れたようで離れてないんだけどね。
  17. 17 : : 2018/09/20(木) 03:26:06

    最原「よ、良かった…」

    赤松「…?」

    私の名前を呼んだ最原くんは安堵の息を吐いていた。
    どうかしたのかな?…というか私がここにいる理由知ってるのかな?疑問がふつりふつりと湧き上がって気が付けば、声を掛けていたんだ。

    赤松「あのさっ、最原くんはどうしてここにっ?」

    最原「…そ、それは、こっちが聞きたいよ…どうして赤松さんは『 首吊り 』をこの場所でしていたんだよ!」

    …??
    私が…『 首吊り 』――していた?って…?
    最原くんの突拍子のない話に目が点になっちゃうよ。嘘でも――私が自分からそんな事する訳ないよ!

    赤松「私がいくら魔姫ちゃん…春川さんが殺されてしまって、絶望して『 自分から死ぬ 』なんてする訳が、」

    ハッとなって首元を撫でる…と僅かにヒリヒリと痛みが走る…え??本当に私は――

    最原「やっぱりそうなんだね。春川さんは既に…」

    赤松「最原くん?」

    確信めいた言葉に首を傾げる。
    どうして、知ってるの??
    私の言葉に彼は静かに頷くとそのままの口調で話してくれたんだ。

    最原「僕が赤松さんと逢うまでの経緯を話すよ」

    赤松「…わかったよ」

    最原くんの瞳は有無を言わせない力があって嫌と私が答えても答えるよという意思が垣間見えたんだ。

    最原「僕は恐らくだけど『 赤松さんとは違う次元 』にいたんだと思う。そこで茶柱さんと星くん、それに真宮寺くんと再会したんだ…」

    茶柱さんハーレムしかも最原くんと同じ場所に居たなんて…羨ましい…ゴホン、違うね。今はそんな話をしてる余裕はないよね。

    赤松「うん…それで?」

    最原「でも、途中ではぐれちゃって『 とある亡霊 』によってこの場所に来たんだ…そしたら」

    赤松「…そしたら私が『 首を吊って 』居たんだね」

    答えに静かに頷いて、申し訳なさそうに目尻を下げたんだ。

    最原「アンジーさんと『 違う次元から来た 』星くんの話、それとみんなが残した書き置きから察するに『 誰が誰と同じ次元に居るのか 』が大体把握出来たんだよ。だから…赤松さんと同じ場所に居るのが『 春川さん 』だって事も何となく分かってたんだ。」

  18. 18 : : 2018/09/20(木) 03:26:28

    赤松「…アンジーさんが?」

    最原「言いにくい事なんだけど、僕ら全員でここから出ることは出来ないんだ。だって…」

    息をのむ。…分かってる。最原くんの言いたい事、私だって分かってる。顔を伏せた彼の悲痛な表情は何も…言えなくなっちゃうよ。

    最原「アンジーさん、入間さん、キーボくん…それに春川さんもだよね」

    赤松「…」

    最原「この『 天神小学校で死んでしまった 』んだ」

    …。

    この場所に来てどれくらいの時間が経過したんだろうね。
    分からない。でも突きつけられた『 真実 』はあまりにも残酷で、何も言えなかったんだ。

    赤松「…春川さんがどこに居るか知りたいよね…春川さんはね…」

    私は無理やり微笑んでトイレから出る…とやっぱりだ。ここは『 男子トイレ 』だね。最原くんが暗い顔で着いてくる。私が居た場所の丁度隣。真っ赤に染まった扉をゆっくりと開く…そう。ここに、彼女が居るんだよ…と目配せして、最原くんに見てもらう。

    私が見つけた時と同じような感触の扉が開いて…もう息絶えたままの魔姫ちゃんがそこに、そのままに凭れていて。
    最原くんが…「 春川さん、どうしてっ 」と呟いたのが聞こえた。

    赤松「…私も知りたいよ。どうしてこうなっちゃったの?…って」

    私だって知りたいよ。でもね、これが現実なんだよ?
    半目で虚ろに濁った瞳は何ももう語らない。ずっと見てるのが辛くて、背けちゃう。

    赤松「…ちょっとした口喧嘩みたいな事だったの。私の我儘でさ…春川さんと別れちゃって――次に逢った時にはもう、この状態だったんだ…」

    最原「赤松さん…」

    赤松「私がね、何がなんでも一緒に行動すれば…良かったのかな?…私が、『 どっかいって!! 』っていわな…ければ、良かったのかな…?」

    視界が滲む、嫌だ。あの時の行動を思い出しちゃうとどうしても自分自身の言葉の軽さに腹が立ってきちゃう。
    ついさっきまで、魔姫ちゃん、って呼んで恥ずかしそうに「 別に… 」ってそっぽ向いた彼女はもう――居なくて。

    亡骸だけが、遺されてて…

    最原「…こんな狭い場所で…広い所に移してあげよう。これじゃあ、あんまりにも…淋しいよな、春川さん」

    赤松「うん…そうだね…」

  19. 19 : : 2018/09/20(木) 03:26:50

    最原くんの手によって瞼が閉じられた春川さんは下に行く階段近くの廊下に移したんだ。口に詰められたガーゼを取って、最原くんが上着をその生々しい傷の腹に掛ける。

    ――勿論彼が持っていた物を違うポケットに閉まってからだけどね。所々に乾いた血が付いていて拭き取りたいけど…落ちなかった。「 ゴメン 」と呟いた最原くんがゆっくりと立ち上がる…

    最原「こんな場所に置いてきぼりにしてゴメン…」

    赤松「魔姫ちゃん…ごめんね…」

    涙で滲んで、魔姫ちゃんの輪郭がボヤけてしまう。泣いたってこれが現実なのにどうしても受け取れない自分がいたんだよ。

    最原「…必ず、みんなで脱出するからね」

    赤松「…魔姫ちゃん、待ってて…ね」

    答えてはくれない、そう分かってるはずなのにどうしても語りかけちゃう…と魔姫ちゃんの髪の毛からスルりとシュシュが床に落ちたんだ。それをおもむろに拾う。
    …普段から付けていたシュシュ。
    孤児院の子供たちが高校生のお祝いにと買ってくれた品らしくて、それを嬉しそうに話してた彼女を思い出しちゃう。

    最原「…行こうか、赤松さん」

    赤松「…うん。行ってくるね。魔姫ちゃん」

    シュシュを腕に通して私は最原くんの後に続いて階段を降りていくことにしたんだ。


    ??『頼んだよ…最原、楓のこと…』



    ▼ 【 春川のシュシュ 】を入手しました… ▼

    説明:(春川の遺品です。普段から髪留めとして利用してた真っ赤な大きめのシュシュです。孤児院のみんなが春川の高校生入学祝いにとプレゼントした既製品です)



    最原「…来た時よりも暗さは緩和されてるみたいだな…」

    赤松「そうなんだね…」

    下の階に辿り着いて最原くんが開口一番に呟いたんだ。
    私は最初からこの場所だから比較出来ないから、よく分からないけどさ。

    赤松「春川さんと大体調べたから、最原くんが来た事で変化があるといいんだ、け…」

    あれ?体に力は入らない…??
    言葉の後半で上手く喋れない。

    最原「あかまつ、さ…?――っ!!」

    最原くんの声が遠い…私耳はいい方なのに、どうして??
    心配する最原くんに…ゆっくりとモヤが掛かる…
    手を伸ばしたつもりが上手くいかなくてそのまま、崩れ落ちるように…意識も分断…されちゃった……


  20. 20 : : 2018/09/20(木) 03:47:03



    『 天海蘭太郎 』side


    熱い。さっき真宮寺君からやられた肩のキズがじくじくと痛いっす…走りながらだと余計に痛くて熱い。
    ですが――逃げないと、俺は良いからっ、せめて…引っ張ってる茶柱さんだけでもっ、真宮寺君の目が届かない場所にっ。

    茶柱「あま、み、…さん!!な、何があったんですか!!何がおきたんですか!!」

    状況が飲み込めてないんすね…そりゃそうか。
    トイレから出たら阿鼻叫喚に近い状態だったんですから…

    天海「…今は黙って逃げるんっすよ!」

    どこに逃げるだよ!白銀さんみたいな自分でツッコミを思わず入れてしまいますけど…心に留めて置くっすよ。

    茶柱「…わ、分かりました…」

    俺の言葉が切羽詰まっているのと真宮寺君の表情を見てしまったんでしょうね、恐らくは怯えたように相槌を打ってるだろう茶柱さんの手を強く引っ張るっすよ。

    背後に確実に迫る足音。星くんは…俺を庇ってああしてくれたんっす。…だから今度は…

    天海「…俺の番っすから…」

    茶柱「…はい?」

    何としても、彼女だけはっ、ここから出して上げたいっすから…もし、もし俺がダメになったとしても。

    天海「(茶柱さんだけは、俺の命に変えても…守るっすからね…)」

    本人に告げぬ想いを隠して、俺は…打開策を見つけるために逃げるっすよ…真宮寺君から。


  21. 21 : : 2018/10/18(木) 04:29:00
    (大変遅れて申し訳ないです、細々と更新再開します)


    『 夢野秘密子 』side


    夢野「しかし、何度もいったり来たりしておるとどこの次元におるのか皆目検討がつかぬのぅ」

    目を覚ましたら、また寂れた校舎じゃった。
    今度はひとりらしく良からぬ気配が漂っておったし…調べるのが怖くなってしもうて、飛び出すように別の校舎と繋がる廊下に飛び出しておった。

    ウチはささくれだった手すりを見つめたのち、空を眺める。
    先程より暗闇が増したようなそんな気配に顔を顰めるのじゃ。

    夢野「(どうやら、百田達のおった次元とは違うのじゃろう…詳しくはウチにも分からぬが)」

    皆は無事なのか?気を失う前、ゴン太のあの姿。……ウチらの知るゴン太はもうそこには居らんのじゃな。
    ――そう、思わざる得ない。もう、早う帰りたい。
    怠け癖がチラチラと出てきそうになるのをぐっと堪える。

    夢野「…行くぞ」

    決意新たにウチは、歩き出すのじゃ。



    夢野「……一段と空気が重い、ぅう……」

    扉の先、そこは何往復したのかさえ忘れてしまうぐらい見慣れた廊下じゃった。決して希望ヶ峰学園の校舎では無く
    暗い先があまり見えぬ廊下じゃ。

    夢野「(転子ぉ…会いたい……)」

    転子が居ったら、そう思うと涙がじわじわと出てきそうになる。あの笑顔をウチに見せてくれんかのぅ…普段鬱陶しく思っておる癖にこうした場で浮かぶのはいつも友達の笑顔じゃ。

    夢野「(…アンジーや東条、王馬の事も心配じゃ…あやつらはあれからどうなってしもうたのか。予想もつかぬ)」

    見知らぬ亡霊に導かれたウチは最初にいたであろう、クラスメイト達の顔を浮かべる。あ、そうじゃったな、王馬に帽子を取られたまんまじゃ。
    ……ふっと癖で触ってしまった頭の違和感にハッとさせらせる。
    王馬……無事でいるのじゃぞ?…お主の不運は案外この場で発揮しそうな気がしておるからのぅ。


    ―『 ワタシ達は悪くないの、全部先生が悪いんだよ…… 』―

    夢野「っ!?」

    そんな時、視界を横切るのは赤が目立つ亡霊じゃった…突然その女児は傍らに居た死体の頬を撫でて呟いた。

    ―『 ……先生が悪いの。みんなこうしたのだってね…… 』―

    ウチを射抜くように目が合う。年齢の割には落ち着いた物言い、そしてその瞳はどこか悲しそうにウチを見据える。

    夢野「…先生、じゃと……?」

    ウチの物言いにコクリと頷く。そやつはそのまま、死体から離れる……とそのままウチを取っ喰らう訳でもなく、廊下の奥へと姿を消してしまった。

    夢野「(あの霊…なんとなくじゃが、悪い霊ではない気がするのじゃ……もしや、あやつも……被害者なのかのぅ)」

    …あまり深くは考えない方が良いじゃろう。アドバイスとして受け取るしか、無かろう。……とりあえず今は

    夢野「校舎の配置からして『 1のA 』がある方の校舎じゃろう。そこに向かえば情報があるやもしれぬ」

    コクコクと頷いたウチはスマホを片手に、廊下を歩き出すのじゃ……

  22. 22 : : 2018/10/23(火) 02:03:13

    ……どこか見覚えのある廊下をとぼとぼと進むのじゃ。
    うぅ…怖い、1人で行動したのは今が初めてじゃからだろう。最初は王馬と東条がおって、次にアンジーとも再会したが、ウチが意識を失い別の空間に飛ばされてしもうて。
    そこには星や百田、入間にキーボがおった。

    ――じゃから実質、1人は初めてなのじゃ。

    夢野「(…誰か居らぬのか……)」

    共に飛ばされたであろう百田に星は何処へいったのじゃろうか……?ウチの息遣いと明かりには乏しいスマホのLED。そして、強まる雨音。軋む床の音がどこまでも響いている気がして、身震いをしておった。

    最早何往復しておるせいか大体の構造を理解してしまった気がしておった。
    ……ブルブルと震える体は気がつくと目的地『 1のA 』前へと何事も無く来ていたのじゃ。

    夢野「痕跡が残っておれば良いのじゃが……」

    ぽつり。ウチの言葉には答えるものは――皆無じゃった。
    ゆっくりと扉を一瞥したウチは扉を思いっきり横へとスライドさせるのじゃ


    question、>>23番さん。夢野調査『 1のA 』
    (全て選択したのち進行します)


    1、メモが残されておるやもしれぬ
    (教卓を調べます)

    2、アッチの扉から入るかの
    (教室南側の扉から調べます)

    3、戸棚の奥が入れそうなのじゃ
    (戸棚の奥にある個室へはいります)


  23. 23 : : 2018/10/24(水) 04:56:58
  24. 24 : : 2018/10/28(日) 18:17:54

    夢野「(…机、か。そうじゃのぅ。王馬が書き込んでおっし、他のあやつらも何かしら書いておるやもしれぬ)」

    ぱっと目に付いたのは机じゃった。相変わらず今にも朽ちそうな教卓に近づくと思ったよりもたくさんの文字が書き込まれておった。――しかもどれもよく見知った文字と名前が端々に出ておる。
    最初に目に付くのは忌々しい王馬が書いた文字じゃった。ああ、これは覚えておるぞ。
    確か東条を探してここを出る時に書いたのじゃったな…

    ――『 東条ちゃんへ、 
    東条ちゃんがなっかなか戻ってこないから暇なんだよねー……だから、夢野ちゃんと一緒に東条ちゃんを探しがてら色んな所を調べちゃうね!…これはホントだよー 』――

    文字を撫でると隣に書いてあるのは短い文。王馬のとは違い状況をしっかりと伝えつつ自身の状態を告げる――文字の主通りの明るさがそこにあったのじゃ。

    ――『あのね、 私と春川さん一緒だよ。……王馬君夢野さん、東条さんと逢えるといいね! 赤松より』――

    夢野「赤松……か、恐らく王馬の文字を見てから書いたのじゃろう。ハルマキと共におったということは…」

    ハルマキ――春川。
    ウチの目の前に現れた姿は霊体じゃった。ならば……あやつはもうこの世には居らぬという事で、赤松は…もしや。

    夢野「(いや、何も考えぬぞ。悪い方向に考えた所で何一つ状況は好転はせんじゃろう)」

    そして、その傍らには再び王馬の文字。走り書きしておるのか普段の丸っこい文字じゃないのに少し笑ってしまう。

    ――『東条ちゃんと夢野ちゃんへ
    ママは見つからないし、夢野ちゃんともはぐれちゃったからヒントでもあげようかと思って。ま、ここに色々書いているから察することが出来るとは思うけど「 物質は次元を越えても平気 」みたいだね。
    ま、頑張って死なない程度にアンジーちゃんと行動してるからオレのことは心配してもダメだよ?』――

    夢野「んぁ……」

    ウチが居らんようになってから……んぁ、違う。ウチの記憶が曖昧な頃に出会ったアンジーと行動を共にしておったか、意外じゃのう…あやつはアンジーとは反りが合わな無さそうな雰囲気を互いに出しておったのにのぅ。

    んあ?

    待つのじゃ。…王馬たちは今、どこにおるのじゃ??
    他には、と机の落書きを血眼になって探すが……何も書いてはおらんかった。つまり……

    夢野「この空間が誰がおるのかはさっぱりじゃが…」

    王馬とアンジー、赤松、それ以外の生存しておるのかさっぱりな輩のいずれかの次元、という事じゃろう。
    ならば、

    夢野「ここを調べ切ったら、出会うことを優先に探索するのが吉、じゃな!」


    question、>>25番さん。夢野調査『 1のA 』
    (全て選択したのち進行します)


    1、★ 調査済み

    2、アッチの扉から入るかの
    (教室南側の扉から調べます)

    3、戸棚の奥が入れそうなのじゃ
    (戸棚の奥にある個室へはいります)

  25. 25 : : 2018/10/28(日) 20:58:09
    3で
  26. 26 : : 2018/11/03(土) 04:55:41

    空元気。そう言ってしまえばおしまいなのじゃが言わないと――心が今にも折れそうじゃった。1人という恐怖がウチの体をひっきりなしに食ってかかっておる。

    夢野「んあ。次はあそこじゃな。ウチが違う次元へと移動した後に入れるようになったのじゃな」

    最初……もう随分前の事に思えるのじゃが、王馬と共に確認し『 開かない 』と決め打った扉の閂は外され扉が僅かに開いておった。ならば、その先に誰かおるやもしれぬ。なんとなくじゃが気配を感じておったからの。

    夢野「(少なくとも王馬達ではないのは分かるのじゃが…)」

    無意識に王馬が結ってくれたスカーフの端を掴む。僅かじゃが、王馬の温もりを感じられた気がして元気が出る。
    ああ、王馬に逢いたいぞ。

    ――なんて、ふっと沸き立つ感情に顔を顰める。お主に頼らなくともウチはやらねば。

    扉をゆっくりと開く……中は狭いのじゃな。それと――

    夢野「(そう易々とは見つからないかの…生きておるものは)」

    目の前に広がるは2体の白骨死体。まるで恋人が手を繋いで寄り添うように壁に寄りかかる姿は――まるで追いかけるように散ってしまった、キーボと入間を連想させるのじゃ。

    夢野「…あヤツらは本当に追うように死んだのじゃな」

    言葉にして理解してしまう。入間を追いかけたキーボ。そのキーボが恐らく入間を庇って壊……死んでしまった。ならばその光景を目にした入間はどう思ったのか。

    ――考えても答えは出ることはないじゃろ。入間にキーボは霊的な力を持っておらぬ。幽霊としてウチたちの前に現れる、なんて事出来ない気がしておったから。あれが本当に最後じゃったのじゃ。あヤツらの。

    夢野「…んあ?奥に何かあるのかのぅ」

    恐らくは準備教室みたいな空間なのじゃろう。あまり広くない空間で異質に輝く物を捉えた。
    ――何かの装置かの?……近づくと誰かが使ったのか、埃が積もってる箇所とそうではない箇所があったのじゃから。

    夢野「(レバーみたいなやつかの?……動かせそうな余裕がある気がするのは気のせいかの)」

    レバーを倒す動作をしてみた。が、ピクリともせぬ。なんなのじゃぁああ!と叫びたい気持ちを抑え、フットある所に視線がいく。……レバーと台座の近くに……鍵を入れる場所があるのじゃ。ということは――

    夢野「(ここに何かを差し込めば動くということかの??)」

    確証は無いのじゃがなんとなくピピンと来た勘がそう答えを出しておった。

    情報:(【 何かの装置 】を発見しました。まだ動かせる余裕があるようですね)

  27. 27 : : 2018/11/03(土) 04:56:17

    個室からはそれ以上の情報という情報は得られそうに無いのじゃ。キョロキョロと見回したが使えそうなものは無いに等しい。……強いていえば死体の脇に転がる名札を回収して、縁のある者に返すぐらいじゃろうが……いまは血濡れの名札など持ちたくはない。きっしょいからの!

    夢野「(あと調べるとするならば向こう側か)」

    視線を奥に向ける――どこか特徴的に隔てられた亀裂の走る床の線にはどこか見覚えがあるが……いま、誰がおる次元かも分からぬ状況。ゆくためには1回教室を出る他無かろう。
    ウチは仕方なしと教室を出てまた、違う扉から向かう。

    夢野「(……何もなさそうじゃな)」

    進んでは見たけれど、何も無い気がする教室。
    張り紙があるけれど文字は書かれておらず、読むことは出来ないじゃろ。――炙り出しとかすれば出るのじゃったら書いたやつは相当な奴じゃぞ?

    とぼとぼと教室を出て廊下に戻る。さて、次はどこへ行くべきな……わわっ!!

    どうやらちゃんと床を見ながら進まなかったせいじゃろう。丁度つま先ぐらいの床の穴に足を突っ込んで、つまづいてしまったのじゃからな!!

    夢野「―――ったぁ!……いったいのじゃぁっ」

    ドテン と大きな音を立て、躓いたウチは転んでしまう。床に手を着いた瞬間、グギッといやらしい音が聞こえた気がして慌てて手首を見る……と。木片が掌に刺さっておった。じんわりと痛みかやってくるのを見ると案外見た目以上の状態ではないのであろう。

    ……少しだけほっとしたウチは、それを抜いて廊下の中心に立ってみた。無意識に廊下を北の方に進んでたらしく、進むべき道は2手に別れておった。

    夢野「んぁ?どちらに移行可能?」

    キョロキョロをウチは北……階段がある方と右――教室が連なる場所を見比べておったが、何時までもそうしてはおれぬ。
    ウチはゆっくりと進むことにしたぞ。


    question、>>28番さん。夢野行き先安価
    (どちらでも進行します)


    1、階段をのぼるかの?
    (三階に行く階段を進ます)

    2、同じ階から調べるぞ?
    (2階調査続行する)

  28. 28 : : 2018/11/03(土) 09:48:03
    2で
  29. 29 : : 2018/11/05(月) 03:40:42

    夢野「んあ、こっちじゃ…」

    何かに引き寄せられるようにウチの足取りは右を向いた。百田たちが居った次元は廊下が繋がっておった。もしやという希望と期待を持って歩かんとするのじゃぞ!

    てくてくと歩く道は何処と無くあの時を思い出す。初めて王馬と共に東条を探しに飛び出した廊下。スカーフをこうして巻かれ、手を繋いで進んだ道。そして――

    夢野「(ウチが幽霊の声に惑わされ、自滅しようとした床の先……)」

    今でも断末魔が耳にこびりつく。痛い痛いと叫ぶ声一つ一つ傾けるだけでも、あの時と同様にウチの身体は自由が効かなくなるじゃろう…
    気を引き締めねば。ひとりだからこそ、色んな者の想いを抱えておるからこそ動ける。
    と、足元に茶色い紙が何処と無くふわりと落ちたのじゃ。

    夢野「んあ?」

    本のページのような切れ端。拾い上げると国語の授業でしか見ないような古い字体で文字が書かれておった。

    夢野「『 東西南北
    天球360度を時計版のように12に分け、「 北 」を「 子 」とし十二支それぞれを右回りに当てはめ表した。
    十二支の順番は「 子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥 」時計の数字に順番に当てはめ、12を北と考えれば判り易いだろう。
    例えば古方位で東の場合は卯、東南の場合は辰となる。 』……ってなんじゃこれは??」

    よく分からぬ。とりあえず何かのヒントまたはここにやって来た人物の遺品なのかの?
    持っていても意味は無い気がするのじゃが…と、その時じゃった。ふわり、と背後に気配を感じ、振り向くと…そこにおったのは……

    夢野「んあ?白銀かの……?」

    白銀つむぎ、おそらく霊体じゃろうから。本人なのじゃろう。彼女がふわりとゴン太に向けるような笑みを浮かべながら呟いた。

    白銀『よかった……やっと見つけた。夢野さんを』

    心の底から絞り出された声。それはうちの涙腺を壊すには容易いほど柔らかな声色じゃった。

    夢野「じ、じろがねぇぇええっ!!」

    白銀『あっ、夢野さん…そんなにわたしと再会するのが嬉しかったの?』

    撫でられてる感覚はあるのじゃが、幽霊じゃからだろうか
    その指先はスカーフに埋もれてしまうのじゃ。

  30. 30 : : 2018/11/05(月) 03:41:12

    夢野「ぅうう……っ!!」

    白銀『こらこら、まだ感動の再会じゃないんだけどなぁ…地味に「 あの部屋 」飛び出すの大変だったんだから…』

    夢野「……ぐすっ、…んあ?」

    白銀の物言いにハッと顔を上げる。困ったような白銀は「 こっちの話だよ、気にしないで 」と呟いた。

    白銀『抜け出したのがバレてないと良いんだけどね……あ、ごめんごめん。話が逸れちゃったね』

    夢野「いや、構わないのじゃ。…して、白銀がどうしてここにおるのじゃ?」

    涙を拭いながら白銀を見つめる。こくりと頷いてから、

    白銀『地味に、時間がないの。だから…手短に伝えるよ』

    夢野「んあ?」

    白銀が表情を引き締める。たんたんと言葉を紡ぐ。

    白銀『夢野さんをここに戻したのはわたしだよ。…ゴン太君から離したの。勿論、百田君や星君もね。
    だから、この次元は「 王馬君 」がどこかに居るはずなんだ。あとは百田君か星君のどちらか、がね』

    夢野「なんじゃと……っ!!」

    それはなんという展開じゃ!?つ、つまりこの次元は王馬やアンジーがおるということじゃな!?
    ウチの驚きを見た白銀は、喜ぶのは早いよと言わんばかりに語気を正す。

    白銀『うん。だから、まずは王馬君と合流して欲しいの。今の彼は多分……地味に…あ、違うね。かなり危険な状態だから…』

    夢野「そ、それは本当かの!?」

    ウチが居らぬ間に何が起きたというのか!?事情を知ってそうな白銀に問い詰めるぞ。
    ……が白銀は黙って首を横に振った。

    白銀『王馬君も心配だけど、百田君も心配なんだ。百田君、毒に侵されてる…からなんとか手を打たないと死んじゃう、これ以上犠牲を増やしちゃダメだよ』

    ハルマキと同様の事を告げられる。もし、ここに居るのが星では無くて百田ならば対策をせねばならぬ、という事かの?

    ふと先程から気になってる事をぶつけてみることにしたのじゃ。

    夢野「なあ、白銀よ。ここが王馬が居るのならば、もう1人おるじゃろ?……アンジーはどうしたのじゃ?」

    そう。アンジーの事だ。アンジーの名前が出てこない。ウチが違う場所に行ったならば、恐らく王馬と行動を共にしたはずじゃが…なぜじゃ?
    疑問に白銀は、視線をズラした。――んあ?何かあったのか??

    少しの沈黙を経て、白銀が呟いた。

    白銀『2階、保健室がある向こう側に行けば分かるよ。アンジーさんは…』

    言葉を濁す。な、何があったのじゃ!?
    ウチの居らぬ間に何があったのじゃ!!

    驚き戸惑うウチに対して白銀は悲しそうに笑う。

    白銀『とりあえず保健室向かって。そこに行けば夢野さんなら分かるはずだから…』

    保健室?…そこで何かしら起きた、という事か??
    首を傾げるウチに白銀は微笑む。

    白銀『大丈夫。夢野さんならきっとみんなを助けられるから早く行って』

    ぽん、と背後に回った白銀が背中を推す…んあっと振り向くと白銀の姿は無く、暗い廊下が続くのみじゃった。

    夢野「……白銀…」

    ウチは白銀の言う通りに『 保健室 』へと進む事にしたのじゃ。



    ▼ 【 方位学の紙切れ 】を入手しました… ▼

    情報:(夢野が徐に拾った紙切れです。昔の邦楽について記されており、何かのヒントとも見受けられます)




    question、>>31番さん。夢野『 保健室 』調査
    (ある選択肢で進行します)


    1、ベットが気になるのう
    (ベッドを調べます)

    2、掲示物じゃな
    (壁に貼られた掲示物を調べます)

    3、棚が空いておる…?
    (戸棚が開いた棚を調べます)

    4、ロウソク?はて王馬はここに置いたのか?
    (移動された蝋燭を調べます)

    5、何か落ちておるぞ?
    (床を調べます)

  31. 31 : : 2018/11/05(月) 19:03:45
    5で
  32. 32 : : 2019/01/03(木) 02:39:22
    (大変お久しぶりです、遅れまして申し訳ないです
    明けましておめでとうございます。大分進行します)


    白銀の発言に戸惑いながらも歩みは捗るのは希望があるからじゃろうか?王馬が少なくともこの場所に居る…ウチはひとりではない――そんな気持ちが早々と『 保健室 』へと足を運ばせておったのじゃが…

    夢野「(…な、なにが起きたのじゃっ!?)」

    『 保健室 』のある側の廊下…の床。赤く黒ずんでいて刷れたような跡が向こう側へと伸びておったのじゃ。『 保健室 』の扉はぶち破れており、ガラスの破片にこびりつくのは銀色の髪の毛…え?な、なにが。

    銀色の髪の毛と言えば、アンジーの癖のある髪を連想してしまうぞ…いや、まさかのう…先程の白銀の発言を思い出して、嫌な予感しか出来ぬ。
    うっぷ…僅かに匂う生臭さに嘔吐きそうになるのじゃが堪え白銀の言うままに『 保健室 』へと足を踏入れる…のじゃ。

    夢野「お、お邪魔します、のじゃ…」

    じゃり、じゃりと上履きがガラスの破片を踏みながら入る室内はどうも薄暗い。『 保健室 』はどうも怖いものがあるのは恐らく怪談話でよく話題になるからじゃろうか…と、視線の先。転がるものにふと視線が向かう。それは…かなり古い人形、それと包帯のようなものが転がっておった。

    夢野「文化人形…というものにデザインがにておるような…」

    てくてくとまず人形の側へと寄る。取ってみると一瞬嫌な気配がしたがそれっきりじゃった。…はてなんじゃったのかのう?
    さておき、手に収まるサイズの人形は一昔の幼女が持っていそうなやや時代遅れのデザインを施されておったのじゃ。

    夢野「これをどうしようとしたのじゃ??
    …それに――…おっそう、じゃ…仕方ないが持っておくかの」

    誰かの落とし物であるならば拾わないというのはあまりにも無粋じゃしな。ウチらの時代より遥か昔にこの場所に迷い混んだ者の持ち物だとすれば――亡き者のなっておるやもしれぬが。

    夢野「それと、これも持っておこうかの」

    人形の傍らに転がっている包帯のようなものを拾い上げるのじゃ。…衛生的に使えるかどうかは置くとして、何かに使えるかもしれぬ。

    あとは…と見渡す瞬間、ベットの隅に嫌な気配を察してウチは気が付くと廊下へと踵を返しておったのじゃ。


    ▼ 【 文化人形? 】を入手しました… ▼

    情報:(古いデザインの文化人形です。投げ捨てられたように床に置かれたそれはいったいなにが起きたというのでしょうか…夢野にはわからないままです)


    ▼ 【 包帯? 】を入手しました… ▼

    情報:(人形の傍らに転がっていたよく見るサイズの包帯のようなものです。少し黄ばんでいるので衛生面では如何なのもかと疑いたくなりますが、長さが思ったよりあるので使えそうです)
  33. 33 : : 2019/01/03(木) 02:39:43

    やはり廊下を飛び出した所で何ひとつとして状況は変わっては居らぬ…ということはこの次元で起きてしまったのじゃろうな。床のシミそれに生臭い匂い。
    気になるのじゃが、どうも気が乗らん。白銀の話じゃと
    『 保健室 』にアンジーの証拠がある、と話しておったが…アンジーの痕跡はなかったからのう。
    白銀が嘘を吐いておる様子にも見えなかったし…

    夢野「(先に王馬に聞けば分かるやもしれぬ)」

    白銀のもうひとつの話を思い出す。――王馬が危ない、そう話しておった。
    それならば、アヤツの無事を確認してからアンジーの事を聞けばいいやもしれぬ。

    …そう簡単に答えてくれる保証なんて無いのじゃが。

    夢野「(アヤツはいったいどこに…)」

    とりあえず下の階からしらみ潰しに探すべきじゃろ。…ウチの記憶が正しければこの次元は広くは無いはずじゃから…

    夢野「決まったのならば、善は急げじゃな」

    思ったよりも声に力が入っておらぬがまだウチは平気じゃ。グッと拳を握りしめて下の階へと歩を進めるぞ。


    夢野「(…)」

    静寂が辛い。ゲームとかアニメの世界ならばBGMが何処からともなく聴こえるじゃろうが、実際の世界は…無音に等しい。ウチが呼吸する音、歩き動くことによって発生する音、外の雷雨の音――それ以外は聞こえぬ。
    いや語弊があるじゃろう、強いて言えば幽霊の叫びがこだまするぐらいかの。

    気が付くと『 玄関 』前の廊下まで足を忍ばせておった。
    …と、床に転々と赤いものが刷れたような後が『 玄関 』とは反対側の廊下…ウチが最初に逃げまとった廊下へと続いておったのじゃ。

    夢野「(…なんじゃ?)」

    まだ完全に乾いてはおらぬようで上履きでなぞると線が伸びる…赤いもの。これは――――

    夢野「(誰かの…血液じゃろうな…)」

    という事はこの先に『 誰か 』がいる――なぜかそう思えてその跡を辿るように廊下を進みだすのじゃ…

    血のような跡を辿る。…段々と量が多くなっておること、それに飛び散る箇所が広がっている事を考えるとかなりの怪我をしておるやもしれぬ――それこそ白銀の発言通り、王馬の可能性…も――

    …んあ?あれは――っ!!


    夢野「――――!!」


  34. 34 : : 2019/01/03(木) 02:40:05

    視線の先、捉えたのは人影。壁際に倒れておるその姿は見覚えしかなかった。そう、それは――

    夢野「お、王馬っ!!!」

    ピクリともしない、王馬の姿じゃったのだから。

    慌てて駆け寄る。王馬の傍らに座り込み状態を見る…と頭部から血が流れておった。ど、どうしよ…っ。
    意識が無いようで軽く揺さぶっても起きる気配がない。――お、王馬?!

    夢野「王馬っ!!王馬っ!!」

    ま、まさか、しし、死んでしまったのか!?
    そんなのは…嫌じゃぁぁあああ!!
    もう、クラスメイトが目の前で死んでいくのは見ていられぬっ。
    じゃから、しっかりせい!!

    夢野「お主がこんな場所で簡単に死ぬではないっ…うっ、お、おうまぁあぁ」

    王馬「……うっ」

    夢野「――っ!?お、王馬っ」

    小さな呻き声。それを聞き逃すハズは、ない。王馬はまだ生きておるっ!!ピクッと瞼が動くのを見てほっと胸を撫で下ろすのじゃ。

    ああ、よかった…

    夢野「王馬、しっかりせい!!…なにがあったのじゃ??」

    王馬「…ぅっ…っ…いたっ……そ、の声は…ゆ、め…のちゃん??」

    うっすらと瞼を開き薄目でウチを見上げる。おおよかった!安堵すると同時に王馬は一気に目が覚めたのかぎょっと目を大きく開いたのじゃ。その姿を見てしもうたら…!!

    夢野「王馬っ!!」

    王馬「――っ!!」

    安堵のあまり上体を引き寄せて抱き締める。王馬が小さく呻こうが気にせずに力一杯抱き締める。――暖かい。ちゃんと生きてる。そう思うと自然と涙が溢れて言葉に詰まってしまうぞ。

    夢野「んぁああっ!!よかった、王馬ぁ、…生きてるのじゃ…ウチ、倒れたお主を見てもしやと…うっ」

    王馬「…ちょ、夢野ちゃ」

    夢野「お主までも失ったらウチはもう…えぐっ、うわぁぁあああん」

    王馬「…」

    とんとん、と背を叩かれても構わずに感情が爆発してしまって涙がボロボロと溢れ落ちるのじゃ。そんな姿を見かねてか、王馬はため息混じりにウチの背をなでなでしてくれた…

  35. 35 : : 2019/01/03(木) 02:40:26

    王馬「――ねぇ、もう済んだ?」

    暫くして王馬が小さく呟いたんじゃ。
    そこでウチは我に返ってバッと王馬を突き飛ばした。うげっとわざとらしく距離を置く。んぁあああっ!?う、ウチはななな何をしたのじゃっ!?


    夢野「んあっ!!」

    王馬「…感動の再会のシーンが台無しじゃん。そんな面しちゃってさ」

    ウチが羞恥で真っ赤な顔をしているにも関わらず、王馬は飄々としておった。――それこそ普段と同じように、じゃが。

    夢野「そ、そんな面とはお主にいわれたくないのじゃ!!」

    王馬「…ってぇ、傷に響くから大声やめてよね」

    怪我した所を押さえて嫌そうに呟く。
    ――ああそうじゃった、王馬は怪我をしておったのじゃと一気に冷静になる。

    夢野「そうじゃった、お主…その怪我どうしたのじゃ!?そ、それに、なにが起きたのじゃ!?…アンジーは何故一緒に行動しておらぬのか!?」

    王馬「あー…矢継ぎ早に聞かないでよ…頭に響くから。かなりこれでも痛いんだよ?」

    ってか夢野ちゃんこそどうしてここに…?、と不思議そうに首を傾げてる王馬じゃったが、それよりも前にすべき事があるじゃろ!
    そ、その怪我、心臓に悪いからウチの魔法で治す事は…出来ないが、手当てぐらいしてもよかろう?

    夢野「す、すまぬ…と、とりあえずじゃ!!お主の怪我をなんとかせねばならぬっ!」

    王馬「――それ夢野ちゃんが言うんだ…まあ、良いけどさ。それからひとつひとつ答えるよ」

    ――勿論夢野ちゃんが持ってある情報と引き換えね、と付け足して。

    ウチは答える代わりに王馬の怪我を魔法で取り出したハンカチで拭う。傷口がグロテスクで、且つたんこぶみたいに腫れてるのを見ると殴られた――のか?

    王馬「――っぅ!」

    夢野「んあぁ、い、痛かったかの…?」

    無意識に力が入りすぎておったのじゃろう。顔をしかめた王馬が呻く度に加減しては、傷口の周りを拭う。
    それでも王馬はされるがままにじっと耐えておった。相当痛いんじゃなかろうか?しかし、それを素直に言ってくれる相手じゃないからウチも黙ったままになってしまうが…

    夢野「(…包帯があれば止血できるかもしれぬ)」

    王馬の額付近の怪我、血はまだ止まっておらぬようでハンカチが直ぐに鮮血に濡れて行く。――出血多量でヤバイ気もする…止血もかねて何かあれば…とポケットをまさぐると先程手にした『 包帯 』に触れる。あ、そうじゃな。

    夢野「王馬、少しじっとしておれよ…」

    王馬「…さっきからじっとしてるけどね」

    減らず口は相変わらず、じゃな。
    まあよい。
    『 包帯 』を取り出すと止血がわりにハンカチで怪我の箇所を押さえたまま、額に巻き付けたのじゃ。



    ▼ 【 包帯? 】を使用しました… ▼



  36. 36 : : 2019/01/03(木) 02:40:46

    王馬「終わった?」

    王馬の声がすごく近くに聞こえ、手元が狂うに狂ってしまったがなんとか巻けた…のか?
    以前、転子が手慣れた手付きでテーピングを巻いてるのを思い出しながら、少しキツく巻いたがずり落ちたりせんじゃろうか…?と不安ながら王馬から離れる。

    夢野「んあ!…大丈夫かの。ウチの魔法じゃ!」

    王馬「…魔法じゃないけどね」

    んあ!!それは言うでないぞ!
    無言の抗議の視線を送るが王馬には届かんじゃろう…はぁとため息混じりに肩の荷が降りた。――つかれたのぅ。

    王馬「――とりあえず……ありがとね、夢野ちゃん」

    夢野「うむ、問題ないぞ!」

    素直に言われるとどうも調子が狂ってしまうが…まあよい、これで本題にいけるのじゃから。
    額の怪我の上に巻かれた包帯をなぞりながら王馬が鋭い瞳をウチに向ける。

    王馬「――オレから話を振るのも悪いけど夢野ちゃんが居なくなった後の事、それと夢野ちゃんのその後の話を互いに共有すべきだよね」

    夢野「んあ…そうじゃな。」

    王馬は声色を落として冷静な声で提案する。ウチから話すべきじゃろうか?…とモゴモゴしておると王馬がぽつりぽつりと話してくれたのじゃ。

    王馬「…じゃあ、先にオレから話すね。
    …夢野ちゃんの最後の記憶から追って話すよ。――ここから先は嘘は言わないから信じてね?
    …こんな場面でオレは嘘つくほどバカじゃないから」

    夢野「んあ。わ、わかったぞ…」


    要約すると、気を失ったウチを王馬とアンジーが共に死んだ白銀の元に連れていこうとしたらしい。が…ウチは白銀の面をした『 別人(話からするに冴之木七星じゃろう) 』によって別次元に飛ばされた…そこら辺の話は確かにウチの記憶にも重なる事あるから嘘じゃなかろう。

    王馬とアンジーは白銀の助言や冴之木七星の言葉によって、ここに牛耳る幽霊の除霊を試みたらしい。が……失敗し、アンジーは…死んでしまった、と。
    ついでに王馬も操られてるゴン太と出会ってしまって、殴られた…と。

    夢野「そ、そんな事が…」

    入間やキーボがゴン太の手によって殺されていく様を見ておったから驚き禁じ得ぬ。それからどれぐらい経過したのかは王馬もさっぱりらしい。気を失ってるなら当たり前じゃ…っ。

    王馬「――次、夢野ちゃんの話を聞かせて」

    夢野「うむ…そ、そうじゃな――」

    コクンと頷くとウチはそれからの事、そして王馬に遭遇するまでの経緯をかいつまんで話すことにしたのじゃ…
    百田たちと遭遇したこと、入間とキーボの事。そして、百田の体が毒で侵されること――と、それまで真剣に聞いておった王馬が口を挟んだ。

    王馬「ねぇ、それって百田ちゃんもヤバイってことじゃないの?だったら…面倒臭いけど探さないと…死ぬよ」

    夢野「死ぬよ…って」

    王馬の冷めた口調。それに鳥肌がじわりと逆立つ。そうじゃった、よくよく考えてみれば――百田も早く逢わないと…ど、毒が…しかし、それを解毒するのは――とどもってると王馬が更に言葉を重ねる。

    王馬「どこにいるか分からないんだよね?白銀ちゃんの話だとさ」

    だったらこうして井戸端会議してる場合じゃないよね!!
    と怪我の割にはひょいっとその場で立ち上がる。…別に井戸端会議をしておったワケじゃなかろうて…

    夢野「まあ、よい。お主が動けるのならば…急ぎ百田を見つけなければの」

  37. 37 : : 2019/01/03(木) 02:41:12

    王馬「夢野ちゃんは一通り見たの?…ここに帰ってきてからさ」

    夢野「んあ!…そ、それは…ちゃんとは調べておらぬ」

    帰りたくて戻ってきたワケじゃないのじゃが…その問いかけに答える余力はなく、階段を上るウチは俯くだけじゃった。

    王馬「まあ、百田ちゃんにしろ星ちゃんにしろ会えると心強いよね!…特に星ちゃんだったらの話、だけど」

    夢野「そうじゃな…」

    ギシ、ギシ、と階段を上る足取りが重い。空気がどんよりと重いからじゃ。少しウチの先を進む王馬には悪いのじゃが、頭が痛くなってくる…んぁー…

    王馬「百田ちゃんが動けるなら『 1のA 』にいる可能性あるよね。動けなかったら――その面見てると言わないでおくよ!…優しさだね!オレってやっさしぃー!!」

    酷い怪我なくせしてどうして動けるんじゃ??
    全く、無理しすぎなじゃ…バレバレじゃぞ…お主にしてはの――?

    ??『…て、…』

    夢野「(いま、声が?)」

    階段を丁度上り上がった時、ふと声がした。――懐かしいような、聞き覚えのある声色。誰かは分からぬのじゃが、分かることがあった。

    夢野「――王馬。この階に…誰かおる」

    王馬「へぇ?そっか。だったら手っ取り早いね!にししっ」

    ウチの小言が漏れておったのかわからぬが腕を頭の後ろに組み、意地悪をする前のような子供の笑顔を浮かべておった。ウチの言葉を信じてくれる…というのか?

    王馬「だったら奥から行こうか」

    夢野「うむ…」

    ウチらは予定を変更して廊下をそのまま進む、と…直ぐにその人影が見えた。それは。

    夢野「――っ!!」

    王馬「あちゃー…って、夢野ちゃん!!」

    ウチが通った時には居なかったはずの…百田じゃったからの。
    どたばたと急ぎ向かう。壁際にもたれ掛かるその姿はピクリともせぬ。ヤバイもしかして――と足音にも気付かぬ状態じゃから危険じゃ!!
    百田の側へと駆け寄る。王馬も同じく走りはせんじゃったが遅れて百田の側へと寄ったのじゃ。

    夢野「百田っ!!百田!!…しっかりするのじゃ!」

    額には汗が浮き出て、吐息が辛そうに聞こえる…意識はあるのか無いのかとても危険な状態じゃった。
    ど、毒が体内に回っておるのか…っ!!…いや、しかし、ウチはお主を救う手立てなどな…っ

    王馬「――ねぇ、夢野ちゃん。試したいことあるんだよね」

    夢野「んあ!?このタイミングでふざけたこ」

    王馬「ちょっとどいて」

    とん、と王馬に押され尻餅をつく。戸惑うウチのなにも説明も無しに王馬がポケットの中から小瓶を取り出したのじゃ…え?それはなんじゃ??

    王馬「…アンジーちゃんの置き土産。
    ――もしこれが『 解毒薬 』ならこれを使えば百田ちゃんは助かると思う。でも――『 劇薬 』ならオレは百田ちゃんを殺すことになる」

    夢野「おぅ…ま?」

    静かに小瓶を開ける。どこかでみたような光景、しかしそれは思い出す事が出来ぬ。そう、思い出しちゃいけない――と誰かが告げておった。
    王馬はリスキーだよね、と笑うと百田の口元にそれを付けて、中身を無理やり流し込んだのじゃ!!

    百田「…」

  38. 38 : : 2019/01/03(木) 02:56:17

    カラン、と瓶が転がる音でハッとなる。
    百田は無意識ながらもそれを口にしたようで喉仏が僅かに上下する。
    ああ、よかった…と安堵の息を吐いたウチは王馬の方へと向く。

    夢野「お、お主…ワケもわからぬものを、百田に飲ませよって…それが『 解毒薬 』ではなければ――んあ」

    王馬「…ん?どうかしたの。鳩が豆鉄砲食べ過ぎちゃったような面しちゃってさ?」

    夢野「その鳩逆に強いな!!
    ――って、違うのじゃ!いや、まあ……少し思う所があっての…」

    そうじゃ、ハルマキが話しておったじゃないか…「 誰かが解毒薬を持っている 」と。しかもその相手は分からないと。じゃったらもしかすると王馬が持っていたモノが『 解毒薬 』なのかもしれぬ。――そうであって欲しいがの…

    王馬「思う所?…まあいいや。とりあえず百田ちゃんに何かしらの反応があるまで待機だね。今のオレだと百田ちゃん担ぐ力ありありだけどね!」

    夢野「嘘じゃろ…。か弱いウチにもそんな力持っとらんがな…マナ切れじゃ…し、少し色々ありすぎたからの…休みたいのじゃ」

    百田の息はさっきより落ち着いているようにも思える。――良かったのじゃ、ハルマキよ。百田は大丈夫そうじゃぞ…

    王馬「――夢野ち、…?」

    急に力が抜けたせいか、何故じゃろう…ウチの瞼が重くなって……

  39. 39 : : 2019/01/03(木) 03:12:44

    『 ???? 』side



    ここは、どこだろう?
    今まで何を…してたんだろう?

    夢をみていたようなそうじゃないような、気がする。
    悪い夢、そう。嫌な夢。
    とても大事な友達が――私の前で死んでて、それから誰も居ないなか一人でさ迷ってたような…酷い夢。

    ??「…ここは…どこだろう?」

    思った事を口にしてしまう。保健室、かな?
    分からない。輪郭が淡いからこれも夢かもしれない――それなら私は夢の夢をみてるのかな?

    ??『――ねえ』

    背後から声をかけられた…え?だれ?
    私を呼ぶのはだれ?

    ??『聞いてくれる?私の話になるんだけどさ』

    うん。聞くよ!!
    その声は大事な友達の声、でも振り返っても――誰も居ない。何故か分からないけど悲しくて泣きたくなる気持ちが止めどなく溢れる。でも、聞かなくちゃ、そう思ってその場で頷くんだ。

    ??『本当は死にたくなかった。アンタはどう思ってるのか分からないけど私は死ぬんだ。折角名前で喚び合ってたのにね――最後の最後だったけど』

    え?死ぬ?なんで?だって声してるよね??
    戸惑うけど納得しちゃう自分がいてただ声に耳を傾けちゃう。

    ??『もっと仲良くなりたかったよ…アンタみたいなのと話すの楽しかったから。…ごめん』

    なんで謝るの。…悪いことしたワケじゃないのに…

    ??『アイツを頼むね。』

    アイツ、って誰だろう?分かるような分からないようなモヤモヤした気持ちがせめぎあっちゃう。どうして?

    ??『――さよなら。知り合えて良かった。アンタが真実を知ったとしても私はアンタを恨んでない。恨むはず無いんだ…それだけは知っておいてほしい』

    ――真実?って。隠し事を私にしてるなら話してよ!!
    ねぇ!!いきなりばいばいは分からないよ…

    ??『ごめん、――時間だ。これ以上干渉できないみたいだね。守れなくてごめん』

    その声はすうっ、と薄くなっていって…それにともなって私の意識もぼやけはじめて――

  40. 40 : : 2019/01/03(木) 03:43:56

    『 夢野秘密子 』side



    ??「――おーい、夢…?」


    夢野「んあ?王馬かの」

    王馬「あ、起きた。おそよう夢野ちゃん!」

    んあ?…気がつくとウチは寝入ってしまったようじゃ…
    よほど疲れておったのか?『 天神小学校 』に来てからというものウチは何度も気を失っておると言うのに。寝る子は育つ、というし成長期かもしれぬな!カーッカッカッ!!

    夢野「んぁ…夢オチじゃったら良かったが…そんな生ぬるい事じゃなかったの…はぁ」

    王馬「ビックリしたんだからね?――急に寝息立てるんだからさ!!――ね、百田ちゃん!」

    王馬が視線を向ける先には――先ほどよりか血色の良いような百田が呻いておった。おお!目を覚ましたのか!!
    良かったのじゃ!

    百田「…ビックリもなにもだがオレもさっき目覚ましたばっかだ。…まだ本調子、じゃねーが…大分楽になった」

    普段より語気の弱い百田じゃが、良かった。ウチが眠ってる間に復活したのじゃな!!
    ウチの嬉しそうな面を見て少しだけムッとした王馬がそっぽを向きつつ呟いた。

    王馬「…ギャンブルに勝ったのはオレなんだけどねー」

    百田「それはわりぃって、さっき話したじゃねーか。
    ともかく、だ王馬…助かった」

    素直に感謝の言葉を言う百田に「 げ、気持ち悪ー 」と減らず口で返す王馬。…ここが『 天神小学校 』じゃなければウチとて笑う場面じゃが…

    夢野「百田が無事なのが何よりじゃ…」

    百田「おう!心配かけたな、夢野」

    ニコニコと本調子ではないじゃろうか百田に微笑まれると心に来るものが…はっきり言うが百田はウチ基準イケメンじゃないからの。心が動いたのは…違うわ!気の迷いじゃ!!

    王馬「さて、と話を戻すよ。百田ちゃんにはオレから大体話したよ。…嫌だったけどね」

    百田「嫌々ながらにしては事細かくきいてたじゃねーか…」

    夢野「お主ららしいな…」

    恐らくは話の折り合いがついたからウチを起こしたのじゃろうな。大分話し合ったのかもしれぬ。
    そう言うところは何だかんだで話が合う二人なのじゃが、仲が良いのか?と言われれば悪い方じゃ。言葉に当てはめてると悪友、といえるじゃろうな。

    百田「ってもよ、次はどこを調べるんだ?――王馬、テメーの話によるとあらかた調べたんだろ」

    王馬「オレが気を失ってから大分時間が経過したからいちから調べるのが常套手段だけど、出来れば最小限にしたいんだよね」

    夢野「効率、ってことかの」

    頷く王馬。そりゃそうじゃろう…最原のような重箱の隅の隅まで調べ尽くすタイプではないウチらじゃからな…

    百田「とりあえず、近場から調べるのが一番だろ」

    王馬「ここだと距離的に…そうだね『 2のA 』の方が近いからそこからだろうね」

    決まり!とウチらは百田を交えて行動を再開するのじゃ…



    情報:(【 百田解斗 】と合流しました…)





    (大変お待たせしました、安価です)


    question、>>41番さん~>>45番さんまで
    (視点安価)

    夢野・王馬・百田 のうち一名お選びください


  41. 41 : : 2019/01/04(金) 01:05:09
    おぉ、復活してる!
    百田
  42. 42 : : 2019/01/04(金) 22:05:14
    百田で
  43. 43 : : 2019/01/15(火) 20:51:05
    王馬
  44. 44 : : 2019/01/15(火) 22:31:12
    王馬
  45. 45 : : 2019/01/15(火) 22:45:09
    王馬

  46. 46 : : 2019/01/16(水) 23:52:52
    百田復活良かった。百田。
  47. 47 : : 2019/01/28(月) 13:55:32
    王馬も百田も生きててよかった…
    続き楽しみです!
  48. 48 : : 2019/02/02(土) 02:21:14
    (お待たせしました。王馬視点で進行致します
    >>46番さん。ご希望に添えなくて申し訳ないです。支部では百田視点になりますのでご了承願います)



    『 王馬小吉 』 side


    いざ行動しようか!
    と張り切ったオレ以外の二人の前を歩いてく。
    と、緊張感皆無の夢野ちゃんが欠伸をする。よくこんな危機的状況で欠伸出来るね!
    …最初の頃はビクビクしてたとは思えない図々しさに肩の力が抜けた気がしたよ
    。慣れだと思うけど何だかそれはそれでつまらないってかさ、守れねーじゃん?

    王馬「(まぁ、それが夢野ちゃんの長所なのかもだけど逞しいよね)」

    ――この状況で他者に気遣う配慮ができるかなんて分からないけどね。オレだって手負い…っちゃあ手負いだしさ。

    百田「――にしてもオレが最初にいた場所…ああ、あそこも一応は『 天神小学校 』でいいのか?よりもボロボロっつーかよ、廃墟感が否めねーよなぁ…」

    夢野「んぁーそうじゃのう…確かに百田達のおった場所は比較的校舎の形を保っていた気がするがの」

    王馬「百田ちゃんのいた場所については分からないけどさ。その意見に珍しく同意してあげるよ!
    ここにずっといるオレから見てもそう思うし」

    百田「王馬、テメー一言余計だっつーの!」

    王馬「オレが素直に頷くわけないじゃんー!」

    確かに時間が経過したとか、胡散臭い地震のせいで若干地形が変わってる気がするようなしないような雰囲気だけど、教室の場所自体は変わってないみたいだね!

    すぐに目的地の『 2のA 』に着いたんだよね。
    夢野ちゃんが顔をしかめ、ブツブツ独り言をいってるけど「 一人で調べたんじゃぞ…? 」ってのが聞こえたから、もしかするとオレらにとって有益な情報は得られないかもな。
    あったとすれば夢野ちゃん、なにかしら言うだろうし――私生活以外がずぼらそうなキミが見落としてる可能性もあるけどさ!

    王馬「夢野ちゃんが見落としてる可能性もあるだろうし、入るよ」

    夢野「な、なんじゃとぉー!ウチはちゃーんとやる時はやるのじゃぞ?」

    王馬「はいはい…」

    夢野「返事は一回じゃぞ!…っと石丸が言っておったからの!!」

    王馬「石丸ちゃんの話は置いとくとして、すぐに影響うけるのよくないよ?」

    夢野「んあー!お主のために助言したというのになんなのじゃ!!」

    ぷんすか、怒ってる。面白いったらありゃしねーよ。
    だから夢野ちゃん弄りは止められないね。ってかこんな場面でオレとは正反対なタイプの人間の話はやめようね?

    百田「雑談はそこまでにしろよな。…入るなら――さっさと入っちまおうぜ…な?」

    少しだけ歯切れの悪い百田ちゃんにもちょっかいを出そうとしたけど、眉間にコレでもかって皺を寄せた姿を見てからかう気が失せた。どんだけこの先を警戒してんだよ…

    王馬「ちぇ…わかったってば!長居してもいいんだけどね!百田ちゃん、長居したいよーってツラしてるし」

    百田「いいから、開けろ。王馬」

    はいはいわかったってば!にらまなくてもいいだろ…?
    返事代わりの溜め息を吐いてから、半開きになったままの木製の扉を強引に開ける…力を込めたせいだね、頭に痛みが走ったけど気にしない。今はそれどころじゃないし。オレに構ってる暇よりも一刻も早くここから脱出したくない――ってコレは流石に嘘だけど。

    夢野「…ウチが入ったときと何ら変わらぬな」

    オレの脇をすり抜けて第一歩を踏み出した夢野ちゃんが見渡す。土地勘があるのは夢野ちゃんとオレだし…オレの記憶よりかなり廃墟感が増した教室の端には――白骨した死体があるから時間が経過した証とも言える、か。
    チラチラと見渡しつつ夢野ちゃんの後に続くと百田ちゃんのか細い声が聞こえる。

    百田「そ、そうなのか…だったら、さ、さっと調べちまおうじゃねーか。お、思ったよりも…大分、暗いしな、な!」

    夢野「――なんじゃ?百田よ。…お主ビビっておるのか?」

    …あ、そっか。百田ちゃんはビビリだったんだっけ??
    ガタブル震えてるのはなかなか面白いんじゃない――からかいがいがありそー…

    王馬「にしし、そんなにビビってる百田ちゃんの背後に――」

    百田「こ、こんな場所で冗、談はや、やめろよぉおおお」

    あらら、ビクビクしちゃって。
    オレの言葉を信じて恐る恐る振り返ってる姿。
    面白いったらありゃしない。勿論百田ちゃんの背後には誰も居ない。居たとすれば――幽霊ぐらいだろうけどさ。

    夢野「――お主ら、調べないと進まんじゃろ?」

    あーあ、夢野ちゃんにまで起こられちゃったじゃないか…って、あれ?――誰かいる?

  49. 49 : : 2019/02/02(土) 02:21:50

    王馬「――ねぇ、キミは誰?」

    視線鋭く問いかける。オレの声色が変わったことで気がついたのか視野の隅に見える二人が息を飲んだ音が妙に響くね。

    ??『…私はしがない幽霊ですよ…といっても私の正体を知っている方がいるようですが』

    部屋が暗いせいで人物が特定できない。だけど声でわかる。…白銀ちゃんだ。だけどさ何処と無く違うと話し方で察しちゃうオレをよそにある人物が一歩、一歩と向こう側にいる人物に近付いてく――夢野ちゃん?

    夢野「お主はっ!!
    まだ白銀の身体を操っておるのか!――『 冴之木七星 』よ!」

    …さえのき、なほ…夢野ちゃんが話していた人物だね。白銀ちゃんの身体( 死体 )を無理矢理動かしてるとか現実じゃあり得ないファンタジーな話だけどね。
    でもオレはその光景を知ってる。他ならぬアンジーちゃんと実際に目の当たりにしたのだからさ。

    百田「テメーが、白銀を…っ」

    白銀(七星)『理解が早いようて安心しました。…その様子だと』

    百田ちゃんが詰め寄っていく。こんな時はビビらずに行動に移す所…つまんねーの。もっと狼狽えるとかすればいいのにさ!
    さて、と。話が脱線したから戻そっか。百田ちゃんはずんずんと白銀ちゃ…違うね。――冴之木七星に向かってる。

    夢野「百田!」

    百田「夢野、わかってるよ。中身はちげーみたいだが外身は白銀だからな。手荒なマネはしねーよ…オレが確かめてーのは…冴之木七星、ったか。テメーがどうしてオレらの前に現れたんだ、って事だ」

    百田ちゃんにしては鋭い指摘だ。そうだ。オレとアンジーちゃんは少なくとも冴之木七星の言葉を鵜呑みにした状態で起こした行動――それの結果がアンジーちゃんの死だった。言わばアンジーちゃんを直接的とは言わないけど殺した犯人でもある、って見方もあるからね。

    ――それこそ故意にその『 人形による懺悔のやり方 』を間違えたともね。

    少なくとも好意的に見ていないオレたちに冴之木七星は薄ら笑いを浮かべて答えたんだ。

    白銀(七星)『あの子供達の霊……ひとりずつでも、全員を安息に弔う事で彼らの捕らわれた魂が形成しているこの多重閉鎖空間は、存在を保つ事が出来なくなる筈です』

    幽霊だからか同じ事をたんたんと告げるんだね。
    でも鵜呑みにした結果がオレらには一番つまらない展開を招いた。それについてはどう答えるつもりなのか?
    すっと目を細め問い詰めるようにでと一筋縄じゃいかないのは話し方で分かるからこちらも淡々と答える。

    王馬「――それをやった結果がアンジーちゃんの死だったんだけど、それについてはどう答えるつもりなの」

    白銀(七星)『イレギュラーが起きたんです。…本来は貴方達を襲うはずだった相手がその『 人形 』の持ち主だった、殺人犯だったんです』

    王馬「は?」

    理解が及ばない。それは夢野ちゃんや百田ちゃんも同じだ。だってオレたちを襲ったのは――ゴン太だ。

    百田「本来はってことは、ゴン太は望んでオレたちを襲った訳じゃねーってことか?」

    白銀(七星)『そうです。…なぜ貴方達のクラスメイトがその役を担っているのかは分かりませんが、本来貴方達が静めるべき相手はその殺人犯です』

    その為に、と続ける。
    オレたちの言葉を遮る形でさ。

    白銀(七星)『順序はさておいて。早急にする事は殺人犯の霊を静めること。その『 文化人形 』が殺人犯にとっての拠り所。それを殺人犯の許へ届けることが出来れば…あるいは…』

    夢野「ホントじゃろうな!?ホントに行動に移せば良いのじゃな!!」

    夢野ちゃんの悲痛な声。信じられないのも無理はない。
    冴之木七星のせいでアンジーちゃんを見殺しにしたようなもんだし。だからこそ確認の意味で問いただしちゃうよね。

    答えの代わりに、フッと冴之木七星が揺らいだ。
    オレたちはただただそれを見ることしか出来ない。

    白銀(七星)『お友達の死は…あなたのせい。それだけは変わらない事実』

    あははは…と口を歪ませて高笑いをする。白銀ちゃんが普段好きなものに向けた笑顔とは程遠い、そして――気持ち悪い。普段の白銀ちゃんの事少し胡散臭さを感じてるけどそんなレベルじゃなくて、生理的に無理ってヤツだ。

    白銀(七星)『その夢野さんが手にしてる人形――その声に傾けてみては?…今度こそ、有益なヒントをくれるといいですけどねぇ!!』

    百田「――っぅ、テメーっ!?」

    百田ちゃんの拳が白銀ちゃんの身体に触れる瞬間、ケタケタと狂い笑いしながら呟いた冴之木七星はスっと消えちゃった。…夢野ちゃんは目を大きく開いたかと思えば俯いてだんまりだ。あーあ。そんな顔しないでよ?アジになっちゃうよ??
  50. 50 : : 2019/02/02(土) 02:22:19

    百田「…ちっ、あのヤロー…白銀の身体を使いやがって」

    拳が空気しか捕えられなかったからかやり場のない怒りを怒号で蹴散らしてるようにしか思えなかったね。はぁ、熱血系はこれだから嫌なんだよ…

    夢野「…あやつの言葉を信じて良いものなのか?」

    王馬「――さあね。冴之木七星の言葉にはどうも嘘が含まれてる気がしてならないけど…今は――っう」

    夢野「…王馬っ?」

    百田「王馬、大丈夫か?!」

    ちっ、こんな時に頭痛かよ…ゴン太のヤツ、手加減なしにオレを殴りやがって。
    あまりの痛さに身体が震える。やば、これ立ってるのも辛いかもしれねーけど、今は動くのが先だ。呆然と立つ2人に対して笑顔を取り繕う。


    王馬「にしし、嘘だよー」

    百田「…」

    夢野「…」

    無言はやめろよ…なんだーとか安心しろっての。
    はぁ、調子狂うな…

    王馬「無理はしてないよ?ホントだってば!!」

    夢野「…顔色が悪いぞ?」

    王馬「それは元からだって!!オレってさ、ビビりじゃん?冴之木七星がやってきたせいでビビっただけだってば!」

    百田「嘘つくな…ほら、背中貸してやっから」

    王馬「……は?オレ重病人扱いしてんの?大丈夫だってば!」

    百田ちゃんがオレに背を向ける。なんだよそれ…うぜー。
    嫌そうな顔をしているオレだったけど、本音を言うと立ってるのも辛いぐらいに頭が痛くて仕方な…なんて言うワケないじゃん!!

    夢野「…王馬、休むか?」

    ウチは疲れたからのー休みたいのじゃー…と棒読みで言うもんだから笑っちゃう。嘘が下手すぎるんだけど。

    百田「借りは返すってもんだ。王馬に助けてもらったしな、素直になれよ」

    あーはいはい。そんな視線で見るなって!

    王馬「『 保健室 』に行くってば。あーもーわかったよ」

    やれやれとわざとらしく溜め息を吐いたオレは百田ちゃんせに乗っかった。…こういうの嫌なんだけどさ…

    夢野「――とりあえず『 保健室 』に行くかの。少し休んでからでもいいじゃろ。最原達もきっと行動しておるじゃろう」

    百田「ああ終一のことだ、調べねーわけねぇよ」

    王馬「にしし、うつつを抜かしてるかもよー?」

    夢野「お主は黙っておれ!!…痛むのじゃろ?少しは休むと良いのじゃ」

    いらぬお節介をされたオレは百田ちゃんの背負われたまま
    その場を離れる事になったんだよね。
    あーあ、だっさ。オレ。
    …そしてうざっ。簡単に甘えすぎなんだっての!

  51. 51 : : 2019/02/02(土) 02:22:45

    王馬「…ってかさ、百田ちゃん復活したてでしょ?なにその元気。体力バカなの?」

    『 2のA 』から離れたオレたち。オレを気遣ってなのかさっぱりだけど歩みは慎重だ。小走りでもいいけどね!…あそこまでの体力はないか…

    百田「うっせーな。王馬テメー本調子じゃねぇ癖に減らず口は相変わらずかよ」

    夢野「黙っても嫌じゃがの」

    夢野ちゃんはオレが結んだスカーフの端を触ってる。あ、そう言えば夢野ちゃんの帽子…どこ行ったんだろ。恐らくは、ゴン太に連れ去られた道中にあるかアンジーちゃんの死体の近くだろうけど。…オレかアンジーちゃんの血が付いてて被る気にはならないだろうけど、返さなきゃね。

    王馬「話してないと暇だからさっ…て階段降りて1階の廊下を真っ直ぐ進んで向こう側の階段から『 保健室 』に行けるよね」

    話してないと意識はが飛びそう…そのぐらいヤバい。
    …いや?やばくないけどさ。元気もりもりだよ?
    じわと嫌な汗かきまくってるけど気にするかよ。

    夢野「じゃな…しかしこの人形、物騒じゃのう…」

    スカーフを持つのを止めた夢野ちゃんはポケットから取り出した『 文化人形 』を眺めてる。普段より視点が高い分、夢野ちゃんが更にチビに見える。

    百田「そそ、その人形が喋ったとかマジかよ…」

    王馬「ホントだってば!!それを聞いてオレとアンジーちゃんは『 保健室 』に行ったんだよ?嘘つくとでも」

    夢野「お主の言うことは信じられんのじゃが…な」

    夢野ちゃんまで疑うとかやめてくんない?
    と、喋ってると1階に辿り着いたんだ。…と。その時。
    『 文化人形 』がカタカタと震えだしたかと思えば――

    ??『 しく……しく… 』

    夢野・百田・王馬「「「!?」」」

    突然の事で夢野ちゃんが手にしてる『 文化人形 』を床に落とす。だけど、『 文化人形 』は震えたまま、続きをポツリポツリと呟いていったんだ。
    ――あの時と同じで。

    人形『 アカい…扉カラ… 』

    百田「――うっ、こ、これって……ひぃいいっ」

    夢野「百田は黙っておれ!!」

    ビビる百田ちゃんが武者震いをする。オレを落としたら多々じゃおかないんだけど。

    人形『 牛へ…六 酉へ…拾参 』

    それだけ呟くと『 文化人形 』はピタッと震えるのを止めたんだ。夢野ちゃんと顔が合う。キョトンとしてるのが滑稽すぎるんだけど、これは――

    王馬「…何かあるのかもしれないね。『 赤い扉 』って…確か」

    百田「…劣化具合がどうか分からねーが、記憶が正しければこの奥に『 用務員室 』の扉が赤かったような気がするが…」

    夢野「うむ。…そこにいくぞ!」

    夢野ちゃんが床に落ちた『 文化人形 』を拾い上げ目的地である廊下の先へと進むことにしたよ。

  52. 52 : : 2019/02/02(土) 02:24:18

    『 用務員室 』――そうだここだ。オレたちは結局冴之木七星の言葉を鵜呑みにする形でやってきた。
    筋書き通りは嫌なんだけど、ここは素直に行動するしか無いね。

    百田「不気味なソイツ――『 文化人形 』を信じるとすればここの近くに『 何か 』があんだよな?」

    夢野「うむ。そうじゃが…人形は続けざまに何か言っておったの」

    王馬「覚えてるよ。…確か」

    百田「『 牛へ…六 酉へ…拾参 』だったか。何のコトだ?――って言いてぇが何となく分かった」

    いつも美味しいどころをとる百田ちゃんらしい。それにこの手の問題は百田ちゃんならすぐ分かるだろうってのも分かってた。才能が故に――ってやつだろうけど。

    王馬「オレの言葉奪うなよ!…方角、でしょ?」

    夢野「…んあ?そうなのか?」

    夢野ちゃんは首を傾げたまま。ああ、そうだろうと思ってたから気にしないけど答えは百田ちゃんに言って貰おうかな。

    王馬「相変わらずバカだね、夢野ちゃん」

    夢野「な、なんじゃとぉー!お主、いつもよりウチが優しくしてるのに甘えて何て事を言うんじゃ!」

    相変わらずからか以外のある子だよね。つまんなくないよ!夢野ちゃん。キーって怒ってる。きぃーって。
    それを宥める百田ちゃん。案外俺たちいいトリオ…いやそれだけは認めたくないけどさ!

    百田「落ち着け、夢野。王馬説明したいのかしたくないのかわからねぇからオレがはなす――」

    王馬「牛、酉って…十二支でしょ?十二支を別の何かに当てはめると――時計や方角になるよね。どっちにでも当てはめても結果は同じだけど、十二支の始まりの子を北に当てはめるとあらら不思議。方向がわかるよね!」

    百田「ってことは、牛――南だな、に6歩。それから酉――西に13歩進んだ――ここだ。壁際になるんだが…って」

    夢野「…んあ?ここだけ床と壁の隙間が不自然に開いておるの」

    話ながらオレたちは進んだ。途中で流石に夢野ちゃんも理解したのが百田ちゃんよりも先に目的地について、それから…

    夢野「何かあるということじゃな!?――早速てを伸ばしてみるかの…っと」

    夢野ちゃんがしゃがんで隙間の先へと腕を伸ばす。しばらくして「 んあ!何かあったぞ… 」と、取り出したもの…それは。


    ――『 赤黒いものがこびりついた 麻袋』のようなものだったんだ――
  53. 53 : : 2019/02/02(土) 02:50:05

    夢野「んぁぁああああっ!!?な、なんじゃこれはぁぁあっ」

    百田「な、なんだよ、これ…給食袋みてーなサイズだがよ…」

    夢野ちゃんが放り投げ、それをキャッチするオレ。
    感触がゴロゴロする…って不気味だよね。口がぎゅっとしまったそれは簡単に開かせない意思をも感じちゃう。――ってことは。

    王馬「…ヤバいものが入ってたりして…これ妙に変な臭いするし、それに…」

    見回すと、袋のしたの方に名札が付けられてる。

    王馬「『 天神小学校 3の5 よしざわ りょう』…」

    夢野「んぁ、それは…この『 天神小学校 』の生徒の名前ならば…」

    夢野ちゃんが震える。百田ちゃんが身震いする。…ここはオレか。…硬い口をほどいて…中身を…のぞく…と…

    王馬「うそ、だろ…」

    背筋が冷える。…そしてアンジーちゃんの死体を思い出してしまって言葉を失う。これは、偽物じゃない。本物だ…

    夢野「な、なにがあったのじゃ!王馬!」

    百田「そうだぞ!王馬」

    黙ってるのが珍しいんだろ。二人が興味本位で聞いてるのを疎ましく思う。これは見せたらダメだと――特に夢野ちゃんが見ちゃあの時のように狂うかもしれない。わかっていながらも夢野ちゃんにずいっと渡す。

    夢野「…んぁっ!!――こ、こ、これ、はっ…に、人間の、し、しし…」

    一気に青ざめた夢野ちゃんが百田ちゃんにも見せる。百田ちゃんの背筋に一筋の汗が垂れたのを見逃さなかった。

    百田「動物の部位より小さい、確実に――人間の…舌、だな…」

    夢野「…はぁっ、はぁ…」

    王馬「――夢野ちゃん?」

    夢野ちゃんが荒い息遣いに心配になる。あの時みたいにどうしようもなるんじゃないかとは、とハラハラするオレを背に口を縛ってそれをオレに渡す。
    ――は?オレが持つのかよ…

    夢野「だ、大丈夫じゃ。これは…この小学校の生徒の…物じゃ…恐らくは…ウチが見た『 保健室 』の幽霊の…一部じゃろう…」

    百田「う、うそだろ…おい…」

    言葉が無くなるのも無理はなかった。
    …これは――遺体の一部なんだからね。


    人形『 しく…しく… 』

    人形『 カエシテ…カエシテ… 』


    ――しんと静まり返った場に『 文化人形 』の声だけが響いてたんだ。



    ▼ 【 男児の遺体の一部 】を入手しました… ▼
    説明:(文化人形に導かれて見つけた赤黒い染みだらけの袋です。給食袋のサイズの麻袋で、名札が取り付けられています。中身は人間の子供の舌の一部です…)

  54. 54 : : 2019/02/10(日) 22:31:45
    これは夢野ちゃんが篠崎ポジなのか
  55. 55 : : 2019/02/10(日) 22:35:48
    動物の舌の大きさを覚えていてなおかつ、人間の舌の大きさは動物のものより小さいということを知ってる百田すげ
  56. 56 : : 2019/02/24(日) 19:11:05
    凄い面白い
  57. 57 : : 2019/03/05(火) 01:34:25

    (百田は雑学や知識について 意 外 と多いイメージで進めてます。(言われてみれば知りすぎじゃね?感があるようなないような…)
    各キャラクターポジションの元ネタに関してはノーコメントです。うぷぷぷ…)



    さて、遺体の一部を持ってるのはオレだって嫌だから早めに手放せるものなら手放したいところ。っても急ぎ足で進めるような頑丈さがこの建物にあるのか?――と言われたらないでしょ。

    王馬「…んでこれをどこに持ってくんだっけ?」

    夢野「んあ!?ま、まさか、お主記憶まで枯れてしもうたか?!
    …それともアレか!!ウチの言葉無視したのじゃな!?」

    ぷんすーって漫画のような怒り方をしなくてもいいじゃん…あざとく見えるよ?…本人はそうとは考えてないだろうけどさ。
    そんなオレと夢野ちゃんのやり取りにやれやれと百田ちゃんのため息が聞こえるけど気にしないよ!

    百田「『 保健室にいる幽霊 』…だとよ。王馬、テメー人の話聞かねぇ嘘は冗談でもやめとけ。夢野が怒ってんだろうが」

    諭す言い方はやっぱり気に食わない。からかいのつもりで話してるからこそ百田ちゃんにバレる。
    ……なんでか分かんないけど、オレの嘘を見抜く時が多いから話したくないんだけどね。
    基本的に百田ちゃんとね?

    王馬「分かってるってば、その『 よしざわりょう 』って子が『 保健室 』に居るとは限らないんじゃないの?」

    夢野「んあ…た、確かにそうじゃが…」

    夢野ちゃんのおつむはそこまで考えてなかったみたい。そのアジ顔から察するにそうだと思ってたけどね。どもった夢野ちゃんに百田ちゃんがフォローしかない言葉を掛けてくよ。

    百田「夢野が見たってた時から時間が過ぎてんだ。それも有り得るかもしれねーが王馬の怪我も心配だからよ。どちらにせよ行くしかねぇだろ?『 保健室 』に」

    あーあ…言葉とかでフォローするとすーぐ感情的面から引っかかる女の子って多いよね。
    百田ちゃんが陰で人気あるのも何だか分かっちゃうオレ自身腹立つけど。…もやもやしてんのはフォローされてんのが夢野ちゃんだからじゃないと思うけどさ――まじでそう思いてーよ。

    王馬「あーはいはい。それがいいだろうね」

    ……ほら、こうして気がつけば百田ちゃんが指示出しちゃってるし。
    気に食わないんだよね。
    あ、これはホントだよ?

    夢野「やけに王馬やる気ない返事じゃな…」

    普段からこうして蔑ろにされてるオレの繊細を兼ね備えたミラクルプリチーおセンチなハートを…夢野ちゃんには生まれ変わったとしても分からないだろうね。

    百田「――って事で行くからな。王馬。その『 遺品 』をしっかり持っとけよ?」

    王馬「は?オレが何かの拍子で無くしちゃうだろ?
    …って言いたい口ぶりだね。百田ちゃん」

    百田「この状況下で流石にテメーはやらないと思うがな。それだけ大事なモンなんだ。預けたならしっかり持っとけよ」

    王馬「しつこいなぁ…分かってるよ!もう!」

    こうも言われちゃうと逆にポイ捨てしたくなるよね!
    …ポイ捨てしたら嘘でも笑い事で済まされない感あるから流石にやんねーての!
    『 遺体の入った袋 』を嫌々ながらぎゅっと掴む。ああぁぁっ!感触気持ち悪っ!!
    …これが『 よしざわりょう 』って子の一部だとか思えば思うほど気色悪過ぎなんだけど。げげっ。

    夢野「お主だからこそ釘を刺さねば何をしでかすか分からんじゃろうて…」

    …おーい、そこ。
    ボソッて言ってるつもりだけどちゃんと聞こえてるからね?

  58. 58 : : 2019/03/05(火) 01:35:34

    終始雰囲気に似合わない日常会話だらけだったけど、気が紛れたのもあって、気がつけば2階『 保健室 』前に来てた。
    夢野ちゃんがガタガタ震えてるのは向こう側――3階に行く途中の廊下に無残に転がってるであろうアンジーちゃんの遺体の気配を感じ取ってるのかもしれないね。
    それか…この先にオレの持つ『 遺品 』の持ち主が居るかどうかの緊張感。
    それとこの先に何が起こるのかを不安に思ってるのかもね。とにかく不安だらけだね!!チビっちゃいそうだよ!

    百田「夢野大丈夫か?無理ならオレと王馬で行くが…」

    は?オレ行くの決定かよ!?
    なんだよ変な時だけレディ?ファースト(夢野ちゃんてレディじゃないか)居る居ないにしろ、ここに行くのは決定事項になったんだからノーとは言えないハズじゃない??

    夢野「…んあ…だ、だだ、大丈夫じゃ、ただ緊張しておるだけじゃ…開けるぞ」

    夢野ちゃんがザクザクとガラスを踏み砕く音と共に百田ちゃんと背負われてるオレも入る。
    ん…やや薄暗さがある『 保健室 』はやっぱり血の匂いが漂ってる。
    ――多分アンジーちゃんの血の匂いだろうけど。

    夢野「…うむ。やはりおる。気配が感じ取れるのじゃ」

    百田ちゃんの袖を掴み、合図をする。…でも居る言われても…姿がないよね?入れば死角であるベットの仕切り以外は見渡せるし。…ん?まさか。

    百田「…あ、あの…ベっベッ、ッドかっ?!」

    やっぱり見栄張ってたのがバレバレ。百田ちゃんは『 幽霊 』っていうモノに耐性があるわけないもんね!!

    あの怪談してる時もビビって終始泣いてたし、そのあとの地震もビビって子鹿みたいになってた…――ってあれ?そうだったけ?
    それよりも今は、ここに来る前の記憶よりも目の前のことだ。

    王馬「百田ちゃんこそビビってんのバレバレなんだけど…頼りないね!!つまらなくないよ!
    って、冗談は置いといてビビリの2人の代わりにおれが渡して行こっか?
    ――『 コレ 』ごと返せばいいの?」

    夢野「…た、多分じゃぞ?」

    曖昧な返事をされてもなぁ…不確定要素だらけだからそうとしか言えないんだろうけど、百田ちゃんにおぶって貰うことももう無いでしょ。背中をトントンと叩いてから自ら降りる。まあ、話してるせいかな?さっきよりは頭痛も和らいだし。歩けないことも無い。
    宙に浮いてるような変な感覚するけど大丈夫だろう。

    王馬「じゃあ、行くね。とりあえず何かあったら助けに来てよ」

    百田「んなモン当たり前だ!」

    夢野「もちろんじゃ!!」

    はぁ、嘘ついてんのにそんな時だけ頷くのかよ…つまんねーの。ため息をわざと吐いて2人の肩を軽く叩く。

    王馬「いい…なんかあれば逃げろよな?
    ただでさえ展開が読めないし『 幽れ…よしざわりょう 』だったけ?が『 コイツ 』を渡した所でどう出るのかも分からないしね」

    夢野「だ、大丈夫か…王馬っ」

    王馬「どうだろうねーにしし」

    百田ちゃんがバツの悪い顔してるのおもしろーっ!!
    不安げな夢野ちゃん達に背を向けて、オレはベットの近くへと歩を進める…

  59. 59 : : 2019/03/05(火) 01:36:02

    不安げな2人に見送られて、いつもの歩幅の2分の1かつゆっくりとした足取りでパーテーションの陰に隠れたふたつ並ぶベッドが見えてくる。
    …ああ、いるな。

    相変わらずベッドの端で体育座りをして虚空を見てる瞳の色は濁ってる。「 目が合うと危険だと 」言ってたのもあってまともにその姿を見てなかったけど、見れば見る程痛々しくも見えなくもない…これは同情ものかもね、こんな姿を見ちゃったら人情味溢れた百田ちゃんや騙されやすさナンバーワンの夢野ちゃんは心を奪われちゃうだろうね。

    王馬「(ふたりに任せられっかよ)」

    あんな心許ない2人だ。オレが一緒になった事感謝してよね?
    …あっと脱線しすぎたね。
    つい語りたくなっちゃうけど性分だから許してよ。

    幽霊こと『 よしざわりょう 』に近づくべくベットの縁に手をかけて片足からをベットに乗っかり――そして対峙する。今度こそ目を合わせる。
    …虚ろな瞳が俺を捉えてモゴモゴと舌足らずに言葉を発する。そして、同時に体育座りの体勢から組まれた手を離し、オレの方へと伸ばしていく。
    声にならない声が『 保健室 』に響く。そして、揺れる。
    けど、ここで怯むオレじゃない。冷静に手首から下げてるものの感触を確かめながら声をかけるのさ。

    王馬「キミは…『 よしざわりょう 』君、で正しいのかな。オレ達はキミの名前知ってるよ…あ、これはホントだからね?」

    ビクン、と体が震えた。
    僅かにも瞳に色が付いたようなそんな印象があったね。それは、アンジーちゃんを闇雲に痛めつけてた狂気は無かった。
    …これなら行けるかも。ギャンブルの大穴に金銭を託すドキドキ感に似た感情が支配してきちゃう。
    まだ、期待は出来ないけどさ。
    手首にぶら下がる麻袋ごと目の前に差し出す。それを見た幽霊『 よしざわりょう 』はそれの端を掴み手に取ったよ。と同時に麻袋は青い炎に包まれて『 よしざわりょう 』の身体に吸い込まれちゃった。…まるでしばらく出会ってない飼い主と感動の再会をしたペットみたいにね。
    …ん?例えが分からない?まだまだだね。そんなんじゃ、読み手の能力不足だよ!



    ▼ 【 男児の遺体の一部 】を渡しました… ▼



    王馬「これはキミのでしょ…?
    オレの大事なクラスメートをいたぶったことは許せないよ。いたぶった以上の事をしてるけどね」

    …一呼吸。話が通じそうな雰囲気になってきたから矢継ぎ早に言葉を続ける。一気に言わないとオレだって嫌気がさしてんだ。言わせろよ?

    王馬「何があったのか中身を見ればなんとなく察しちゃうけど――正直知りたくもないね。
    あくまでもオレとキミとでは取り巻く状況違うし。感情的になるのも大人気ないからこれ以上追求はしないけど、さ。
    …これだけは言わせてよ。アンジーちゃんを殺した事は許さないから、被害者面してたとしても少なくともオマエらは『 加害者 』なんだからさ」

    幽霊『 …ぽふ、の…ふぃ…ふぁ… 』

    漸く言葉らしきものが聞こえる。あのおぞましさMAXな声色と違って大人しそうなか細い声が再度言葉を発するよ。

    よしざわりょう『 ぼくの…舌… 』

    ゆっくりと視線を上げてオレと目が合う。その瞳は虚ろではなくて明確な『 意識 』があるようにも見えるね。

    よしざわりょう『 おにぃちゃん…ごめんなさい…でも…ありがとう… 』

    王馬「…」

    …これでアンジーちゃんが救われるワケが無い。アンジーちゃんを殺したうちの一人は目の前の幽霊だ――だけど見殺しにしたのはオレだ。それは分かってるつもりだよ。

    でも、背後ですすり泣く夢野ちゃんの声に思わず俯く。なんだよ、嘘でもつければ良かったのに…そんな余裕が無くなってる自分自身に腹が立つ。くそっ…くそっ!!
    厚みのないベッドに拳をぶつける。
    やり場のない怒りと悲しみが込み上げてきて悲しそうにオレを見てる幽霊が言葉を呟こうと口を開いた時だった。


    ガタガタ…ガタガタ…

    ガタガタガタガタ…っ!! ガコンっ!!


    王馬「――っ!!」

    百田「なっ――っ!?また…地震かっ!?」


  60. 60 : : 2019/03/05(火) 01:37:08

    『 最原終一 』side



    …ガタガタガタガタガタガタ…

    …ガタガタ…

    カタっ…


    最原「…(やっと静まったか…今までで1番揺れたな…何かあったのかもしれない)」

    気を失った赤松さんを『 保健室 』に休ませ、1人で行動を始めたから揺れ始めた地震が一際大きくなったのは階段降りてからすぐだった。
    あまりにも酷く大きな揺れに立っていられなくて僕はその場でしゃがんで凌ぐしかなくて、天井に吊るされた蛍光灯や腐ってささくれ立っている木片や梁が今にも落ちるんじゃないか?と不安に思っていたが、落ちたりはしなかった。――強いていえば落ちたのは埃や木くずばっかりで当たっても痛くはないしな。

    最原「(にしても、やっぱり僕の推理は正しい…かもしれない)」

    立ち上がった先。あるはずのものが――ない。茶柱さんに担がれて突入した『 別校舎 』への入口が壁になっていたんだ。これでは別れた茶柱さん達を探す手立ては皆無に等しい。『 別次元 』に来たのだから。

    最原「最悪だ…な…」

    赤松さんに逢えたことを除けば状況は悪いとしか言えない。茶柱さんや星くんのような強さはない。だからこそ、危機に陥ったら手負いの赤松さんもいるし『 死 』のリスクが高い。高すぎる。
    …赤松さんが悪いわけじゃない。ただ僕らは予想以上にこの空間に滞在してる、という事実がたまらなく恐ろしい。このままだと、赤松さんみたいに…『 得体の知れない者達 』に心を侵されるのでは?

    最原「(…いや。考えても無駄だ。打破する手立てを見出さないとだ。きっと百田くんや王馬くん、天海くんなら活路を見出してる可能性もある。僕もヒントを早くみつ)」

    ??『 こっち…こっちだよ… 』

    思考を巡らせてると背後から声がした。…誰だっ!
    振り返ると赤いワンピースが印象に残る少女がじっと僕を見つめ手招きしている。…どういうことだ?

    最原「…?」

    ついてこいと言わんばかりに少女がくるりと僕に背を向け暗い廊下の中に紛れてしまった…

    最原「…どういうことだ?ついてこい、ってことなのか?」

    幽霊に導かれるだなんてあまりしたくないけど、それがヒントに繋がるなら進む他ないよな…

    最原「(どうしようか…赤松さんの様子も心配だしな…)」

    …地震が長いのもあって目を覚ましてるかもしれない。目が覚めて1人になってると分かると赤松さんがまたおかしくなるかもしれない。

    どうすれば…好奇心と不安がせめぎ合う中で僕は――




    question、>>61番さん。
    最原行動安価『 幽霊のあとを… 』

    ついて行きますか?

    それとも赤松さんの元に戻りますか?


    どちらかお選びください
    (どちらとも進行に支障はありません)

  61. 61 : : 2019/03/05(火) 18:38:14
    ついていく
  62. 62 : : 2019/03/08(金) 23:36:07
    これはダメな気がする 
  63. 63 : : 2019/03/27(水) 18:27:43
    続きが気になる...
  64. 64 : : 2019/03/27(水) 18:28:27
    続きが気になる...
  65. 65 : : 2019/04/03(水) 02:04:28

    最原「(ついて行こう。もしかしたら新しい情報を教えてくれるかもしれないしな)」

    いい幽霊だと祈って、ついて行くことにした。


    最原「(…暗いな)」

    それが第1印象だった。
    何故なのかと言われれば、蛍光灯の明かりは愚か窓から覗く色は鈍色だからだろう。しかも鈍色とは言っても黒に近い…月明かりは分厚い雲と鬱蒼と生い茂る森林とでさらに暗いと印象付く。

    最原「(それに…染み付いた匂いが強い)」

    血液の乾いた色が飛び散り床や壁に赤黒いシミを色濃く残しているし――何よりどれぐらい放置されたのか分からない死体の独特な匂いが充満してる。長時間は居られないな。
    足元に転がる白い物体…骨だろうか?それを不躾にも跨ぎ突き当たりまで進む。…悪気はないんだ、許してくれよ!

    構造自体は変わらないみたいだな。
    と、右側の奥がキラリと光る。何かあるのだろうか?

    最原「(…幽霊の姿はあれから見当たらないしこっちの方で合ってるのか分からない。だけどここまで来たんだ。進むしかないだろうな)」

    ゴクリと喉を鳴らし軋む床を踏み鳴らし光の元へと歩を進める。


    最原「(…確か子この先は、『 用務員室 』だったか?)」

    赤い扉の印象に残る『 用務員室 』だったはずと記憶をまさぐる。そこになにかあるのだろう。近づく度に光が形を作り…手に取る頃にはそれがなんだったのか、理解出来た。

    最原「コレって…春川さんのだ…」

    どうして『 春川さんのスマホ 』がこんなところに落ちているんだ?
    だって彼女はもう――死んでいるのに。まるで見付けてくれと言ってるかのごとくそれは置かれてた。しかも落としたのか何らかの衝撃で画面が割れている…

    最原「壊れてないと良いんだけど…人のを勝手に操作するのはしたくないけど…」

    もし使えるのなら、春川さんに返そう。それが良いと思う。壊れていても同様だ。だけど、この中に「脱出のヒント」が隠されてるのなら――話は別になるけれど。

    最原「ごめん。春川さん」

    電源を入れる。と、そこには書きかけのメール画面が出ていて、宛先は――赤松さんだ。
    恐らく赤松さんの話から、仲違いした後に春川さんはきっと赤松さんを思って書こうとしたのか…それとも…メール文をスクロールしてざっと目を通す。やっぱりそうだ。春川さんのぶっきらぼうでも優しさのある文面がつらつらと並んでてほっとした瞬間だった。

    それは書き込んだとされるだろう最後の文だった。

    『 こ ろ し て や る 』

    赤黒い文字で春川さんの謝罪をぶったぎって書き込まれていた。

    最原「――え?」

    な、なんなんだよ…これ。
    春川さんがやったのか?それとも――別の誰かがそうやったのか?

    と、とにかくこれを赤松さんに見せるのは不味い。事実を教えてしまって、またあんなことをされたら今度は僕の力で何とかできる自信がない。

    これは見せないでおこう。

    …隙を見つけて三階に行くときにでも春川さんにこっそり返そう。そう思ってポケットに『 春川さんのスマホ 』を入れた。



    ▼ 【 春川のスマートフォン 】を入手しました… ▼

    説明:(春川が普段から愛用しているスマートフォンです。彼女らしくシンプルな透明カバーがしてあり、唯一付いてるキーホルダーは宇宙柄をイメージした水晶がついており、孤児院の子供からのお土産のようです。)




    『 春川さんのスマホ 』を手にしたことで赤松さんのことが心配になる。今頃目を覚ましていたら僕が居なくなってる――だなんて僕だったらビックリして行動しかねない。
    …よくよく考えたら突飛もない行動をしてしまった、と後悔する。しかも僕と会う前にしていた行動。本人の無意識だったとはいえあまりにも危険だ。

    最原「…(赤松さんのところに戻ろう)」

    出来るだけ急ぐ形で僕は赤松さんのもとへと戻ることにしたんだ。

  66. 66 : : 2019/04/03(水) 02:04:59

    『 赤松楓 』side


    …何をしていたんだっけ…?

    体が重だるい。ゆっくりと起き上がると――ここは『 保健室 』…なのかな?
    ぼやける視界が段々と輪郭をはっきりさせる。音楽の表現であるようなモヤモヤとした不協和音がひとつの音で和音になるような感覚。

    ひんやりと肌を――首元がひりひりと痛い…夢じゃない。
    うぅ…それになんだか寒い。
    起き上がり、乾いた声を、いるであろう人の名前をゆっくりとつむぐんだ。

    赤松「…さい、はらくん…?」


    私が倒れる前、確かに最原くんがいたはずだよね…でも呼び掛けても帰ってくることはないってことは――夢だったの??

    赤松「そんな…嘘」

    ぶるりと体が震えちゃう。誰もいない『 保健室 』。
    それに、ここで私は…

    赤松「――っう!!」

    フラッシュバック。黒い靄が襲ったことを思い出して思わずベッドから跳ね起きる。な、何でこんな場所でいるんだろう。最原くんが私を介抱してくれたんだと思うけど、その本人がいない。

    最原くんの性格上、いてもたっても居られなかったかもしれない。でも…そばにいて欲しかったよ。

    私が首を吊っていた…ならさ…側にいてよ。

    わがままなのは嫌でもわかってる。
    そうわかってるけど――

    嫌だ。怖い。

    赤松「いや、いやだよ…っ!」

    私はがむしゃらに『 保健室 』を飛び出したんだ。


    赤松「っぁ、はぁ、はぁ…」

    派手な音を立てて扉を開けたせいもあって転がるようにバランスを崩しちゃう…あ、倒れ、

    ??「あ、あかまつさ」

    ぼふっ、と柔らかいような固いような物に当たって転ぶことはなかったんだけど、小さく呻いた何かは私の勢いに支えきれなかったのかな?…その場で尻餅をついちゃったみたい。

    赤松「ああ…大丈夫だった…?」

    間抜けな声しか出なかったけど、視線の先にいる尻餅をついた相手――最原くんに手を伸ばす。
    最原くんはビックリした様子で私を見るもんだからこっちも目があって、ドキドキと心の鼓動が高まる…ああかっこいいな、中性的で心が安らぐフェイスというか…って、違う違うよ!!
    軽く頭を振って彼の腕を引っ張った。

    最原「いてて…赤松さん。目が醒めたんだね。よかった…」

    立ち上がった最原くんはお尻についた埃を軽く払いながらも安堵の溜め息を吐いたんだ。
    むぅ。よかったじゃないよ…思わずふくれる頬につい言葉が増えちゃう。

    赤松「よかったじゃないよ!…今までどこにいたの!?」

    最原「へぇ!?…あ、ごめ」

    赤松「ゴメンは無しだよ。
    最原くんの事だから調べてたんだと思うけど、やっぱり女の子を放置するのはダメだよ!」

    私の正論にビクッと肩が震える。ああもう!!
    わかってるなら…

    赤松「…側にいてよ…」

    最原「…?」

    そっぽを向いて呟く。最原くんにはきっと聞こえないはず。そのぐらいの音量で…ね?




    ▼ 【 最原終一 】と合流しました… ▼



  67. 67 : : 2019/04/03(水) 02:05:23

    最原「赤松さん、大丈夫?」

    私の機嫌を窺ってる様子の彼にニコッと微笑む。
    …うん。大丈夫。最原くんが居てくれるなら何とかなりそうな気がして。百人力ってやつかな?

    赤松「…とにかく、もう私は大丈夫だからさ。」

    最原「そう…ならいいんだ。無理だったら僕だけでも調べることはできるから休んでも良いと思うぞ?」

    んもう!気遣ってくれているのは有り難いんだけどじっとしてるのは…魔姫ちゃんの事を考えちゃいそうで心が暗くなっちゃうから動いていたいんだ。そういいかけた口が止まる。

    ??『…だっ……』

    ??『…じゃ……!』

    …どこからか声が聞こえる。二人の会話…かな?誰だろう?
    もっと聞き取ろうと耳を澄ましてみる…と、下の階からかな?会話してるみたい。

    最原「――赤松さん?」

    赤松「あのね。声がするんだ」

    私のひそめた声に最原くんが耳を澄ませる…けど暫くして首を傾げたままだったからわからないみたい。痺れを切らしたのかな、分からないけど声のトーンを落とした彼が私を見る。

    最原「才能の差、かな。僕には聞こえないや。どこから聞こえる?」

    赤松「うん、それは――」

    私が下を指差してそれから言い直す。

    赤松「多分、多分だけど下の階だと思うんだ。しかも、二人の声がするからもしかすると下に誰かいるのかも」

    私の声に首を傾げ「それはないよ」と反論したんだ。――え?

    最原「僕はさっき下の階調べてたんだ。僕のいた場所との違いを知りたかったのもあってさ。でも人がいる気配は無かったけど、もしかすると『 違う次元 』でなにかがあったのかもしれないな。下に行こうか」

    そっか。確かに私以外の生きてる人は居ないって言ってたから…そういうことだってあるんだよね。そっか。
    納得してる間に最原くんの話通り誰かの会話はぱったり聞こえなくなっちゃった。――もしかして、幻聴ってことなのかな…ううんそれは無いと思う。自分に言い聞かせて意見を飲む。

    赤松「うん。そうだね…いってみたいと思うんだ。あのね、何度も言うけど私は大丈夫だから行こう」

    コクり、頷いた最原くんと私は階段を降りることにしたんだ。


    赤松「(暗くなってる…)」

    最初、私と魔姫ちゃんとで調査したときよりも随分暗い。気を付けないと足を踏み外しそうになっちゃう…ただでさえ腕を怪我してるのにこれ以上足手まといにはなりたくないからさ。
    最原くんが照らしてくれるスマホの灯りが頼りで壁づたいに歩く…玄関の前に大きな亀裂があるから進むべき道が限られてて、白骨化した遺体を跨ぐ形で突き当たりへと差し掛かった時だったんだ…暗がりの先から、呻き声が聞こえて…

    赤松「最原くん。この先に誰か、いる…かも」

    と、最原くんの袖を引っ張り指差す。そこは…

    最原「『 5のA 』…?」

    最原くんの呟きに頷く。確かにここから聞こえたんだ。誰かのうめく声がさ…

    赤松「ここは調べたの?」

    私の問いかけに首を横に振った…最原くんなら調べると思ったけど、私のことが心配になって切り上げたのかな?そう思うと申し訳なく思っちゃう。そうだったら…ごめんね。

    最原「調べてないよ。赤松さんを置いたまま行動するのは危険だと思ってちゃんと調べてなかったんだ。それで…ここに誰かいる、って」

    赤松「呻き声が聞こえたからもしかしたら…いるのかもって。入ってみようよ」

    気のせいならいいんだけど、と付け加えると最原くんは「赤松さんがそこまで言うなら…」と数歩歩いて『 5のA 』の教室の扉をスライドさせる…と、真っ暗だった教室の隅に動く物が見えて咄嗟に最原くんがスマホを照らす…とそこ居たのは。

    赤松「と、東条さん…っ??」

    そう、傷だらけで倒れてる東条さんだったんだ。

  68. 68 : : 2019/04/03(水) 02:06:31

    最原「東条さん!!…しっかりして!」

    慌てて東条さんの側へと駆け出すんだ。…近くで見ればわかるけどお腹に刺された後が痛々しくて…片手の手袋が無くなっていてその素肌には無数の切り傷が見える。僅かに瞼が動いているから意識がないだけ、なのかな…傷に障らない程度に揺すっているとゆっくりと瞳が開いたんだ…

    赤松「東条さん!!」

    東条「…その、声は…赤松さん、ね…?」

    焦点の合わない瞳が私を捉える。その瞳が段々とピントがあっていくようでゆっくりと眼球を動かして周囲の状況を確認していったよ。

    赤松「そうだよ!あとね、最原くんもいるよ」

    最原「東条さん、その怪我どうしたんだよ!」

    最原くんの声に反応してゆっくりと上体を起こしていく…呻く声を耳にするたび、お腹の切り傷から赤いのが制服を濡らしてる…すごい出欠量に、魔姫ちゃんを連想しちゃって直視出来なかった。

    東条「…ええ…見た目ほどの痛みはないわ…」

    微笑む表情には血の気が無いようにも見えちゃう。本当に大丈夫なの、かな…不安になる私を見かねた東条さんが再び声を発したんだ。

    東条「俊敏な、動きをしなければ…大丈夫よ…出血も見た目ほど流れてないわ」

    倒れていた床を手袋をしている方で指差す…た、確かに床は血で汚れた形跡は無いけど…さ…

    最原「東条さん。何があったのか…聞いても大丈夫?」

    東条「ええ、大丈夫よ。…傷に障るからゆっくり、順を追って話すわね…」

    静かに頷いた私たちに東条さんはゆっくりと話してくれたんだ。
    王馬くんと夢野さんと最初いたんだけど、夢野さんが動けなくて王馬くんに一緒に見てもらった所で一人で行動してたら、幽霊に捕まってしまって怪我をして床から落ちてしまって気を失った事。それから目を覚ましたら、私たちがいたんだと。

    一通り聞いた最原くん逆に自分が持ってる情報をできる限り簡単に説明していったんだ。勿論、わたしのこれまでの行動も踏まえてだけどさ。

    東条「そうだったのね…色々と残念なことが…整理が付かない…けれどそういった、空間ということで…合っているかしら?」

    赤松「うん。どんなことが起きても不思議じゃない、その通りだよ、だって…ま、春川さんは…わたしの目の前で…うっ…」

    思い出す度、涙が溢れてくる。悔しくて、なにも出来なかった自分に腹が立って。
    それをなだめるように私を見つめる眼差しは優しい。

    東条「そうね。でも、起きてしまったことを…悔いてはだめよ。赤松さんは生きてるもの…他のみんなのためにも脱出しましょう」

    最原「東条さん…」

    東条「足手まといになるかもしれないけれど…一緒に行動をしても、良いかしら?…」

    東条さんの提案に私たちは即頷いた。

    赤松「問題ないよ!むしろ助かるぐらいだよ!」

    最原「赤松さんの言う通りだよ。怪我が辛かったりしたら直ぐに相談して欲しい。いかにも無理しそだから…」

    私たちの意見に普段通りの口調で頷いてから

    東条「…ふふ、それは依頼かしら?」

    と、冗談っぽく笑ってみせたんだ。



    ▼ 【 東条斬美 】が合流しました… ▼




    question
    >>69番さん~>>73番さんまで、視点安価。

    最原、赤松、東条 の3名のうち誰視点で進行したいかお選びください。

  69. 69 : : 2019/04/03(水) 12:54:07
    最原
  70. 70 : : 2019/04/03(水) 23:44:35
    東条ちゃん!
  71. 71 : : 2019/04/04(木) 08:38:09
    東条さん!
  72. 72 : : 2019/04/04(木) 14:38:14
    最原くんで!
  73. 73 : : 2019/04/05(金) 17:53:28
    しゅーいちで!
  74. 74 : : 2019/04/09(火) 10:00:20

    (ご協力ありがとうございました。最原進行になります)


    『 最原終一 』side


    東条さんがそこまで言うなら無理強いは出来ない。…でもそれを決めるのは僕らじゃない。
    東条さん本人だ。僕らが止めても同行するのは彼女の性格からしてわかっていた。だからこそ頷くことにしたんだ。

    多分百田くんなら無理にでも止めるだろうけどさ。

    最原「(とにかくこれまで以上に慎重に行かないとだな)」

    精神的に参っているだろう赤松さんに怪我の具合が芳しくないように見える東条さん。それをカバーできるほど僕は出来た人間じゃない。だからこそ更に気を引き締めないと、だな。

    東条「ここで固まっていてもなにも始まらないわ…話を聞くと赤松さんの方が詳しいみたいだから聞くわね。
    調べていない場所、あるのかしら…?」

    赤松「あ…そうだよね。一番詳しいってなると私になるよね。…えっと、大体は魔…春川さんと一緒に調べたりしたんだけど」

    赤松さんが言い淀む。何があったのだろうか?と視線を送り、あのねと息を吸った。

    赤松「『 赤い扉 』のある所…調べてないかも…って思ってさ」

    最原「『 赤い扉 』?…ってことは」

    春川さんのスマホを手に入れた場所近くにあったな。それに僕の居たであろう次元でもあった気がする。やはり次元は異なっているが構造は同じってことの裏付けにもなる。届きそうで届かない…そんな空間に僕らは居るんだなと改めて思い直す。

    東条「『 赤い扉 』気になるわね。…気になるところは調べましょう」

    僕らは頷き、『 5のA 』を出ることにしたんだ。


    東条「暗いわね…」

    廊下に出てみるとさっきより心なしか暗く感じられる。蛍光灯が破損してガラスが床に散らばってるせいかもしれない。ってか今更だけど逆に電気付いていた方がホラーなんじゃないか…?

    赤松「足元大丈夫?スマホ付けよっか?」

    なんて赤松さんが声を掛けるのでハッとなって思い出した。赤松さんのスマホを返してないじゃんか!ここで返すべきなんだろうけど…何故か返しちゃいけないと思って黙って自分のスマホを取り出す。

    東条「気が利くわね。最原くんありがとう、助かるわ」

    僕の挙動に気がついてるのか無いのか分からないけど東条さんがお礼を言う。それを聞いた赤松さんがポケットを叩きながら「もう…こういうときは早いんだから」とぶつぶつ言ってるが気にしない…事にする。


    『 赤い扉 』はすぐ見つかった。ある程度行動したこともあって構造を把握しているのもあるんだろう。僕らは扉の前に立ち塞がる。

    赤松「…向こう側からテレビのノイズかな?が聞こえるね」

    耳を寄せなくとも聴こえる音はノイズ音。誰かがいる気配もない。

    最原「そうだな…(そういえば謎のDVDがあった…それを再生出来るならしたいけど…)」

    東条「開くかしら?…開けるわよ」

    東条さんが取っ手に触れると…糸も容易く扉が開いた…

    最原「鍵とかいるのかと思ってたけど、開いたね」

    東条「そうね。意外だわ…とにかく入りましょう」


    赤松「…?」

    僕らがぞろぞろと部屋の先へと足を運ぶ。
    赤松さんが扉の前で首を傾げていたのが不思議に思ったけれど直ぐに頭を振って僕らに続いて入ってきたんだ。




    question、>>75番さん。『 赤い扉 』調査安価
    (とある選択肢で進行します)

    1 戸棚周辺を調べよう
    (戸棚並びに近くにあるものを調べます)

    2 襖があるな…
    (部屋の奥、襖を調べます)

    3 音の正体はあれか?
    (部屋の隅に置かれたテレビを調べます)



  75. 75 : : 2019/04/09(火) 17:04:30
    1でお願いします
  76. 76 : : 2019/04/09(火) 18:55:52

    部屋に入る。畳が四畳半、土間に当たる部分が一畳ちょっと…かな?あまり広くは無い部屋だ。
    こじんまりとした空間にひときわ目立つのは奥に佇むテレビだ。
    その奥に置いてあるテレビの砂嵐から漏れでる光と心許ない照明器具がある為か廊下よりも若干明るい。スマホのライトは要らないだろうと消し、周囲を見渡す。

    若干鼻につく臭いに顔をしかめるが、赤松さんは気にならないらしくストーブの方へと歩み寄っていた。東条さんも顔をしかめているのを見ると相当気になる臭いだ…と目配せしてると東条さんが話を切り出したんだ。

    東条「…この生活感ある部屋は恐らく『 用務員室 』でしょう。近年はなくなりつつある部屋でしょうけれど、この空間の時代は良くある構造だわ」

    赤松「あ!知ってるよ。確か…学校に宿直する人のための部屋だよね。防犯を兼ねて…って希望ヶ峰学園だと見ない部屋だけどさ、小学校にあったよね!」

    2人の会話を片耳に入れつつ、戸棚のある方を見る。どれも経年劣化の後が目立つ。近場によって、なにか無いかと探し始める、といち早く僕の行動に気がついた東条さんも同様に調査をしてくれるのは助かる。彼女が動く度に傷口に障らないのかと不安に思うんだけどそこは黙るしかない。

    赤松「ストーブもあるね…うわっ中が真っ黒だね」

    豪快に開けたのか、けほけほと埃に噎せた赤松さんが目を閉じて右手を軽く振っているのを尻目に東条さんも戸棚を調べてくれている。警戒してるのはきっと押し潰された経験だろうか。無理しなくてもと思いつつもこれまた口が挟めない。

    東条「戸棚には近づきたくないのだけれど…ここは大丈夫そうね。食器がおかれているぐらいだわ。特に目立つものは無さそうよ」

    最原「ああ、ありがとう。こっちも…底の開いた夜間と水垢が溜まってるぐらいは特に見当たらないな」

    あとは…と壁掛けのカレンダーと止まった壁掛けの時計をみる。日付は恐らく事件のあった月で止まり、黒く塗りつぶされているのは経過した日だろうと思うことにした。

    赤松「…何もなさそうだね。つぎ調べよっか!」

    赤松さんの明るい声がして僕らは調べるのを切り上げることにしたんだ。



    question、>>76番さん。『 赤い扉 』調査安価
    (とある選択肢で進行します)

    1 ★調査済み

    2 襖があるな…
    (部屋の奥、襖を調べます)

    3 音の正体はあれか?
    (部屋の隅に置かれたテレビを調べます)




  77. 77 : : 2019/04/09(火) 19:41:54
    3で
  78. 78 : : 2019/04/10(水) 10:14:35

    赤松「あのさ、テレビ…気になるよね」

    さっきからノイズが凄い。音に敏感な赤松さんだからこそ気になるものがあるのかもしれない、そう思って確かに…と頷く。

    東条「そうね。なにかあるのかもしれないわ…それこそ怪談話にあるようなテレビから手が出るとか――怖がらせてしまったかしら?」

    平然と言わないで欲しい…この場でまさか冗談が出るとは思わなかった。

    最原「手が出たら怖いよ…じゃなくてそれだけじゃなくて何かあるかもしれない。見てみようか」

    そうね、と頷く東条さんが一歩踏み出した時だったんだ。ふっと電球が切れた。

    赤松「わっ!!」

    テレビは切れてないらしく、思ったよりは暗くならなかったけどいきなりはやめてくれ…と振り替えるとスイッチがあったので何回かカチカチとつけたり消したりする…と明かりがついた。ただ配線が悪いだけか、と胸を撫で下ろす傍らで何でこんな場所で電気が通ってんだ?という問いかけはやめようと思う。

    最原「じゃあ気を取り直して調べようか…」

    近づく。どうやら古いテレビのようでチャンネルを回すタイプのテレビだ。時代背景を感じつつ、足元にDVDプレイヤーががあるのに気がつく。DVDプレイヤー単体でも再生が出来るやつだ。でもバッテリー切れなのか電源を入れてもつかない。
    しかも、ノイズの走るテレビとは繋がっていないためテレビとも反映できない。

    最原「(持ってるものを再生出来たらいいんだけどこれじゃあ無理だな…)」

    誰の持ち物かも分からないから、安易に弄くり回すのも気が引ける。
    これが既に亡くなった人の持ち物であるなら別だけどさ。

    東条「…赤松さん?襖見てどうかしたのかしら?」

    赤松「…ああ、なんでもないよっ…で、あれ?さっきあそこに紙切れなんてあった?」

    赤松さんが指さす方向、確かに何かのメモのようなものが床にちらばっていた。…まるで見てくれと言わんばかりのそれに視線が向かい東条さんが手に取る。

    東条「これは…記事かしら?読むわね」

    東条さんの言葉に僕らは顔を見合わせ、頷いた。

  79. 79 : : 2019/04/10(水) 10:14:57

    東条「『 ■ 猟奇実話ルポ
    ・現在する呪われた学校の過去を追った!2
    鬼碑忌コウ』」

    あ、これは多分僕の持ってるDVDの人の続きかもしれない。…そう思い無意識にポケットにあるDVDを握りしめていたんだ。
    いいわね、と呼吸を置いて東条さんがゆっくりと読み始めた…

    東条「『 天神小学校校長・柳堀隆峰(たかみね)に寵愛されていた…その息子ヨシカズ。
    校内では教師として教鞭をふるい、生来快活な性質であったが、突然発症した原因不明の脳障害から、少しずつ自我を失い始める 』」

    恐らく長い文章が書かれているのだろう。東条さんは一呼吸置いてゆっくりと読むから聞きやすいな…と思い背後を向くと赤松さんも同様で青白い顔をしているけど真剣に聞いていたんだ。

    東条「『 解り易く表現するならその症状は「 精神の子供返り 」とでも言おうか、亡き母親から幼少時に貰った、小さな文化人形を常に持ち歩くようになり、授業中に突然号泣を始め講義を投げ出すような奇行もしばしば。 』」

    東条「『 「 事件 」の起こる数ヶ月前には既に、相手からの言葉を理解する事は出来ても自ら言葉を発し意志を伝えることは困難な状態になっていたようだ。
    児童4名連続誘拐殺害犯・柳堀ヨシカズの口から誘拐から殺害に至るまでの具体的な経緯は語られる事は、ついになかった。 』」

    東条「『 私は、犯人逮捕時にすんでの所で救出された女児児童「 篠崎サチコ 」さん(当時7歳)のその後を追ってみた。
    新聞を賑わせた犯人逮捕時の写真では赤いワンピースの印象的だったこの女児は、現場で同い年の子供たちが次々と惨殺されるのを目撃してしまった、不幸なる生存者だ。 』」

    赤い…ワンピース??
    何度か見たようなそうじゃないような感覚。
    生きてるならこの場所にいるはずのない少女…なぜ面影を見るのか?謎が深まるばかりの僕に東条さんは淡々と続ける。

    東条「『 心の闇を掘り起こすようで酷であろうとは承知していたが、真実を追う為だ。計算すれば、既に成人して十年以上も経ってるはずだ。
    …現在の彼女からなら犯行時のリアルな証言を聞き出せると踏んだのだ… 』」

  80. 80 : : 2019/05/10(金) 22:51:08
    楽しみにしています。
  81. 81 : : 2019/07/15(月) 01:57:28
    (お久しぶりです。そして投稿怠ったこと、この場で失礼いたしました。安価まで一気に進みます)


    『 王馬小吉 』side


    百田「ちぃ――?ん?と、と…止まったか?」

    激しい揺れがやっと収まって暫く無音が続いた。

    …それを破ったのはパーテーション越しから顔を覗かせた百田ちゃん。ビクビクした声色に同調するように夢野ちゃんが百田ちゃんの背中からおどろおどろしくオレを見てんだけど…ってうっわスゲーアジ顔してんじゃん!

    夢野「…おーまぁ…?ぶ、無事か?」

    なんて言われたちゃったらさ今までの緊張の糸がプツリと切れて逆に笑いがこみ上げてくる。
    ホント、百田ちゃんも今にも泣きそうな顔で見てんじゃねーよっ。女々しいたらありゃしないね!!

    王馬「ちょっとー!2人とも変な顔でオレのこと見ないでよー!!…笑っちゃ…ぶ、くくくっ」

    夢野「な、なんじゃぁああっ!ウチが心配してるのにお主という奴はぁぁんぁああ!!」

    百田「お、おい、夢野、いたっ、オレの背中叩くなっ!!」

    百田ちゃんが夢野ちゃんの一打一打にビクビク肩を震わせて反応してる姿にもう笑いころげそうになるからやめろって!

    王馬「あーもー!ちょっと、話が脱線するからさやめてよね!その乳繰りあうのはっ」

    夢野「ちっ、乳繰りあうとはなんじゃ!お主はウチというすぱぁーぷりちぃな美少女が心配してるのじゃぞ!そのような――」

    百田「ちょ、夢野っ!あたたたっ」


    …さて、と。会話を無視して視線を逸らしベットの先を見る。さっきまでいたハズの幽霊の姿は既になく、中身の無くなった名前入りの麻袋が無造作に置かれてる。ああ、全てが現実でフィクションじゃないんだと否が応でも分かっちゃうよね。

    相変わらず波のように押し寄せる頭の痛みは夢だと言い難いよ。

    とりあえずひとり。幽霊の気持ちを宥めることに成功はしたけどさ…これで終わり、というワケじゃないのは誰だって分かる。
    同じようなことを少なくとも2回やらないといけないみたいじゃん?
    もしふたりとも諌めたとして、そこから残るのは――この元凶である『 殺人犯 』となる人物に『 文化人形 』を渡す事も必要になるんだろうね。
    そもそも『 殺人犯 』の手掛かりがほぼないこの状況で渡せるかどうかも怪しいけど。

    王馬「(仮定として全てをこなしたとしても、その後どうなるのかが見えない。みんなと合流出来るのかも怪しいし)」

    元よりオレとアンジーちゃんを騙した当人からの情報だ。にわかに信じ難い部分もなきにしもあら
    ず、だしね。
    ――ってさ…考えてたらキリがない。こうして立ち止まってる時間がもったいないよね。
    オレも含めみんながどんどんヤバい状況に陥ってるぐらいはわかる。

    王馬「…で次はどうするのさ?」

    口論してるであろう百田ちゃん達を横目にベットから降りる。相変わらず百田ちゃんは真っ青で震えてるし、夢野ちゃんも鼻血出してる時点で良好とはいかないだろう。

    百田「ああ、そうだな…まず前提としてだが今起きた事を何度かしないといけねーだろ?
    だがよ『 文化人形 』…でいいのか?ソイツはアレから全く反応しねーしな…」

    百田ちゃんのきっかけで夢野ちゃんが徐に『 文化人形 』を取り出す。
    さっき突然喋りだした人形は、くたっと夢野ちゃんの手の中で力なく四肢を伸ばしてる。…しゃべる気配なんて全く無くて――ただ古びた人形としてそこに居る。

    動くかな?人形のほっぺをつつきながら夢野ちゃんと百田ちゃんを交互に見る。

    王馬「じぁさ『 文化人形 』がしゃべるまで校舎をひたすら歩きまくるとかはどう?…それとも色々と吐くまで痛め付けちゃう?」

    夢野「んあ!王馬それは流石に祟られるぞ!
    ん。じゃが…闇雲に歩くというのも…」

    夢野ちゃんが何か言いたげでオレと百田ちゃんを見る。…ああそうか。オレらの事を気にしてるんだね。いっちょ前に気遣ってんのかなんなのか。

    オレは問題ないけどビビりの百田ちゃんはどうだろうね~?
  82. 82 : : 2019/07/15(月) 01:57:57
    百田「んなっ!こんな場面でび、びびってられっかよ!!…オレは大丈夫だ。病み上がりっちゃー病み上がりだがよ。段々もとの調子になってきたからな」

    にかっと笑う。…人柄の良さが滲み出てるねーと悪態つきたいけど、ふたりの視線がオレに留まってる所を見ると冗談が吐けなくなる。…オレの専売特許取るなよー!と言いたい視線だけ返しておく。
    察しの悪い方だから気がつかないか。

    王馬「オレもノープログラムだけど?
    まあ、手当たり次第歩くってよりはしらみ潰し気味っていった方が正解だよねー!
    一階から順を追って歩いてみたら?」

    夢野「お主がそこまで言うなら…一階から再度歩いてみて『 文化人形 』が喋るかどうかを調べるかの…」

    百田「王馬、辛かったらまたおぶってやるからな。痩せ我慢するなら遠慮なく言えよ」

    …はいはい。分かりましたよー。べー。

    実家のような安心感!…とは正反対の一階はさっきよりも埃っぽい。きっと地震のせいだろうね。埃もそうだけどこの空気に混じってるものはそれ以外にも有るだろうね。

    例えば――白骨化して粉となったものとか、ね。
    いやー我ながらこわーい想像しちゃうのは不味い流れかもしれない。

    王馬「さっき喋った場所だけど…無反応だよね!」

    夢野「そう簡単にはことは起こらんじゃろ。
    んあー…こやつが直ぐ喋ればこのような思いをせずとも済むのじゃがな」

    百田「来た途端に喋られても困るってんだよ!…ってかさっきよりも一段と冷え込んでねーか?」

    確かに!百田ちゃんの言う通り、暖か過ぎるね!
    そういう百田ちゃんはさ時期にしてはややの厚手のセーター着てるし、夢野ちゃんに至ってはセーターの上から冬用のブレザーまで羽織ってる。中でも一番薄着のオレからすればふたりの格好は暑すぎて汗かいちゃうよ!

    ま、冗談はさておいて。

    百田「んで次は玄関――昇降口だろ?」

    夢野「んあ。そうじゃな。
    それから向こうの廊下、更にその先の教室等も1度入らねばならぬのじゃろう?
    …んあー!考える度にめんどいのぅ…」

    やれやれ…って言いたいのはオレなんだけどー!
    早めに喋らないと持ちそうにないぐらい体がヤバい…気がする。気がするってだけで案外平気かもしれないけどね!
    頭の痛さで忘れかけてた右手首もあの地震の後から痛みだしたってことは捻挫かそれにに近い状態だろうし、その箇所が足じゃないとはいえ正直だらだらと無駄な歩きしたくはないよー。

    百田「…王馬?大丈夫か?」

    意識がぼーとしてるとでも思われたんだろうね。
    珍しく先頭を歩く百田ちゃんが振り返りオレを心配そうに見てる。あー見るんじゃねーよ、と言いたい気持ちを押さえて営業スマイルを浮かべる。
    騙しやすい人はこれが結構効くんだよねー!!

    ……。…。


    王馬「たはー!なんでこうなるのさ」

    眼下には心配そうに人形を握りしめオレを見る夢野ちゃんが…とても腹立たしい。見るなってば!

    お察しのいい人なら分かると思うけど、百田ちゃんの背にまた乗っかってるの。
    …見た目以上に無理はしてないし。そんなに重病人に見えるだなんてとんだ心配症だよね。
    まあ一番心配しそうなゴン太や赤松ちゃん――じゃないからそれがある意味で救いかもしれないけどさ。

    百田「ったく、オメーが無理してんのってすぐ分かるんだよ。
    それによ…さっきからぽけーとしてんの王馬らしくねーしな」

    と言って昇降口を夢野ちゃんに開けてもらうように目配せしてる。
    ここで散々な目にあったというのに大層逞しくなっちゃった彼女はもう躊躇いもなく扉をあける…そのときだったんだ。


    ??『 しく……しく… 』


    百田・夢野・王馬「「「!!!」」」



  83. 83 : : 2019/07/15(月) 01:58:25

    夢野ちゃんが片手に持つ人形がカタカタと震え無機質な声をあげる。それに立ち止まり耳を傾ける事に集中する。



    人形『 歩ケル…裂ケ目…カラ 』



    人形『 …酉ヘ…1…子へ…10 』


    ――それだけ告げたらお役目御免よろしく人形は黙っちゃったね。あーあつまらないね!

    百田「い、いきなり喋るなよっ!
    はぁ、はぁ…そこに何があるんだよ」

    ビビりすぎたのか震える声で百田ちゃんが人形に向かって問いかける。当たり前だけど答えてはくれないよね。

    夢野「心臓に悪いのぅ。…こやつが言うことが正しければ――また…う、寒気がしてきおった」

    王馬「幽霊の一部だろうね。ま、それ以外だったなら――人形燃やしちゃう?」

    確かポケットの中には入間ちゃん印の蝋燭とマッチがあるはずだしね。火力は心許ないけど人形一体ぐらいなら軽くも燃えると思うよ?

    百田「よ、よせ。王馬、一応は大事なヒントだろ?」

    夢野「んぁああ、燃やしたら祟りが…」

    王馬「たはー。そんな目で見ないでよ!嘘だよ」

    これが最原ちゃんや真宮寺ちゃんだったらもっと咎められただろな…なんて暢気に考えてると夢野ちゃんがふっと呟いた。


    夢野「んあ?…『 歩ける裂け目 』とは…なんなのじゃ?メタい気がしてならぬのじゃが…」

    あー確かに。『 歩ける裂け目 』ってなんなんだ。歩けるって事は…床だろうけど。

    百田「手当たり次第に行くっきゃねーのか?」

    王馬「…それはそれで無駄足感あるんじゃない?少なくとも『 保健室 』から『 昇降口 』までには無かったと思うからあるとすれば」

    百田「オレが最初いた地点か、この廊下の先、あるいは『 保健室 』より先だろうが…」

    夢野「この次元にあるとするならば『 別校舎 』も視野にいれねばならぬじゃろう」

    しらみ潰しならそうなるか。
    『 文化人形 』がいくらなんでも漠然過ぎるヒントをくれたから候補を絞るのに難しくなった。
    こうして考えると広いな…でも夢野ちゃんが居るからあそこの先だけは気軽に勧められないよね。

    王馬「あのさ…提案があるんだけどさ。
    『 保健室 』の先は行きたくないんだよねー」

    百田「どうしてだ?」

    すかさず百田ちゃんが鋭い声色で聞いてくる。きっと理由を察してるかもだけど、アジ顔をしてる夢野ちゃんのために答えておくか。

    王馬「最初に話しておくけど、これはオレの優しさだからね。
    あそこの先で…アンジーちゃんの遺体があるんだからさ。百田ちゃんやオレはともかくとして、夢野ちゃんが直視でもしたら…ね?」

    夢野「…そうか」

    何か反論でもするのかと思って身構えてたけど、一言だけで終わっちゃった。俯いてる所を見ると多分近付くだけでも残滓を見ちゃうかもしれないぐらいそういったものを感じ取れやすくなってるんだろうね。

    夢野ちゃんにオレとアンジーちゃんがどうなったのかを話した時に『 アンジーちゃんの遺体のありか 』までは話さなかったし、時間が経過したとはいえあの状態は誰でもキツい。優しさとはいったけど――見たくも通りたくもないし。

    夢野「ここに来て王馬の話が嘘だとは思えん。信じるぞ。
    んあー百田よ、そこは最後にしても良いか?」

    百田「夢野が嫌だって言うならオレは構わねーよ。
    んで、どうすっか?1階の廊下の奥を行くのも…見る限り暗すぎてオレとしては行きたくねー」

    夢野「それと『 別校舎 』も後回しじゃ。
    …あそこから嫌な気配がプンプンしておるんじゃ。ウチがその場の霊達の感情に呑み込まれるやもしれぬ」

    心頼りないけどある意味夢野ちゃんが頼りな部分がある。その彼女が『 場に呑まれる 』と言うなら行かない方がマシだ。あん時みたいに勝手な行動されてはぐれるのが一番危険だからね。
    逆に…百田ちゃんは恐らくそういった類いを感じずに地雷平気で踏み抜きそうだしさ。

    ここは素直に消去法に従うべきだね。

    王馬「おっけ。
    つまらない展開けど方向性が決まったね。『 1のA 』側に行くしかないじゃん」

    百田「おう!決まりだ。
    イマイチどんなもんかさっぱりだが『 歩ける裂け目 』って奴をみつけねーとな。そこからだ、話はよ」

  84. 84 : : 2019/07/15(月) 01:58:46

    百田「ってもよ。んなトントン拍子に事が進むとも思わねーんだが…」

    階段の軋む音とどこかから水が滴る音についうたた寝しかかった時に空気を読まない百田ちゃんの声が響く。

    夢野「じゃが、それでトントコトコトコ…と話が進めば良いのじゃ。こうしてる間にも転子たちのことが心配じゃし…気を抜けばウチも危ういしの」

    王馬「ま、意外とみんなしぶといし抗ってると思うケドー?
    実はさ…直接的に貢献してんのはオレらだけだったら笑っちゃうけどね!」

    夢野「んあ!なんじゃと?!
    如何にも活躍しそうな最原の行方が分からん状態じゃからそうとも言えるかもしれぬが流石にそれはないと信じてもよいじゃろ。それにな、王馬よお主だけが…――んぁ?」

    踊り場付近に一番乗りした夢野ちゃんの言葉が止まる。どうかしたの?

    夢野「んあ!!こ、これは…」

    とてとてと覚束無い足取りで踊り場のある一点へと歩を進める。夢野ちゃんの行動に百田ちゃんが一気に駆け上がる…ってオレが背に乗ってるから振動がダイレクトに来るんだけど!!

    夢野ちゃんが見つめ指差した場所。そこにあるのは結構大きな亀裂。これが…『 歩く裂け目 』なのか?…と床とオレらを見比べ縋るような瞳をオレに向ける。

    夢野「こ、これが件の『 歩ける裂け目 』ならば上を歩くことができるのじゃろ?
    そのう…とても言いにくいのじゃが…誰が試した方がいいのじゃろうか?」

    百田「夢野の持つ『 文化人形 』が言う『 歩ける裂け目 』なら問題ねーがよ」

    王馬「違ったならかなり面白ーい展開になるよね!その考えつまらなくないよ!!
    …オレは踏みたくないけどね。あ、これはホントだよ」

    なかなかスリルのあること言うじゃん!流石夢野ちゃん。そのビビり顔普段なら確実に写真撮ってる。夢野ちゃんを筆頭にクラスメイトのからかいがいのネタフォルダがまた一枚増えちゃうね!

    夢野「んあぁ!!そ、そうじゃな。
    …も、勿論踏まぬぞ!フラグじゃなく踏まぬからな。カーッカッカ!」

    …たはーなんやかんやで踏みたかったんだろうな…どこぞのリアクション芸人みたいな態度しちゃってさ。
    この隙間から見える底が見えないから逆に踏む気満々になって貰っても困るし。あのさぁ…落ちたらどうするんだよ。

    王馬「さて、『 歩ける裂け目 』としてここからスタートすると次は確か『 酉ヘ1子へ10 』だったよね」

    百田「って事は…夢野の位置から西側に1歩、更に北に10歩って事だな」

    西側に1歩オレらがちょうど立ってる位置だ。そこから北に10歩…って事は階段を上がり切ったぐらいだろうね。そこら辺に違和感を感じたら『 なにか 』があるワケでさ。

    百田「うっし、行ってみるか」

    夢野「んあ!お主らま、まてっ」

    ズンドコ進む百田ちゃんの後を慌てて追いかける夢野ちゃん。…あ今、床踏んでるの気がついてないね。って事は『 歩ける裂け目 』はそれで正解みたい。フラグ回収出来たじゃん。

    やっぱりキミはなかなかつまらなくない人材だよねー!


    百田「…9、10…っとあ?丁度行き止まりじゃねーか」

    数えながらたどり着いた先は崩れた床の前。いかにもなにか探せばありそうな空間が広がってる。
    キョロキョロと見渡す百田ちゃんのごわついた毛先が頬を掠めるから痒くなる。手入れちゃんとしてんの?

    王馬「…ちょ、百田ちゃん!急に変な行動しないでよ!」

    百田「ああ悪ぃ」

    夢野「待ていと何度も言っておるじゃろう…んあ?百田の足元になにか落ちておらぬか?」

    やっとどんくさい夢野ちゃんが追いついた。と、どうやら『 なにかしら 』はあるみたいで夢野ちゃんがとてとてと百田ちゃんの足元に手を伸ばす…と。それはどこかで見たような『 鍵やネジのようなもの 』だった。

    夢野「…?なんじゃこれ、これが…『 なにか 』なのかの?」




    ▼ 【 鍵のようなもの 】を入手しました… ▼

    説明:(どこかで見たような金色の鍵のようなものです。鍵と構造がやや違いどちらかと言えばオルゴール等に付けて捻れそうな物です。
    これがヒントなのでしょうか…?)




  85. 85 : : 2019/07/15(月) 01:59:02

    『 どこかで見た 』それは、直ぐに思い出した。

    王馬「これ、多分アソコの鍵だと思うよ。百田ちゃん、ちょっと降ろして」

    百田「あ?王馬ちょ、いきなりうごっ…わぁああっあぶねーよっ!」

    百田ちゃんから強引に降りて、軽く立ちくらみみたいな症状に陥る。けどそんなことを気にしないで夢野ちゃんの手のひらに収まる『 鍵らしきもの 』を半ば奪う形で取ると眺める――やっぱりだ。なら行き先は決まったも同然で足取りは目的地へと歩みだしていた。

    夢野「んあ!お、王馬ちょ、どこにっ!」

    百田「!オメーらどこにっ」

    背後に二人の存在を感じながらも『 1のA 』の扉を強引に開いて室内へと進み、その先にある部屋へと行く。そして、奥にある以前動かした『 装置 』の前で止まる。

    そして、『 鍵 』と『 装置の下の方にある穴 』を見比べ…頷く、ビンゴ!これだ!

    百田「ったく、王馬!急に行くなよって…あ?これなんだよ」

    夢野「…レバーがあると言うことは何処かに通じるからくりかの?」

    慌てて付いてきた二人がオレと装置を交互に見てる。百田ちゃん、夢野ちゃんは装置自体目にしてないみたいだから、使い道に悩み抜いたとしてもここに辿り着くことは難しかったのかもしれないね。

    王馬「まあね。多分そんなところじゃない?
    ――アンジーちゃんと動かした時に違和感あったんだよね…まだこれ動かせるんじゃないかってさ」

    まあ、最初動かした時は言わなかったけど。
    屈んで装置の穴に鍵を入れ捻る――「 カチャリ 」と施錠の音が狭いこの部屋に響く。

    王馬「百田ちゃん、レバー動かしてみてくれる?」

    百田「…おう。分かった」

    場所を百田ちゃんと代わり、レバーを両手で持ち更に押す…と。
    キイキイとなにかが回転する音が響いて振動が僅かに足元を揺らした。

    夢野「んあ!!…な、なんじゃ?」

    百田「な、なんだ!?」

    レバーが推測通り動いて驚く二人。オレはそれが収まるのを黙って待っていた。


    ――ガラガラガラ…ガッシャン!!――


    王馬「やっぱりね。
    これはあくまで可能性の話しちゃうけどさ」

    一息。仕掛けらしきものが静まり返ってから答える。信じがたいけど『 文化人形 』はヒントを与えていたんだよ。

    王馬「この仕掛けで通れるようになった場所、その先に『 幽霊の遺体の一部 』があるってことだよ」

    息を飲む2人に告げる。その場所は検討ついてる。夢野ちゃんたちの話から、この『 次元 』ない部屋がある。それは…


    王馬「それは…『 水練場 』だよ」




    ▼ 【 鍵のようなもの 】を使用しました… ▼



  86. 86 : : 2019/07/15(月) 01:59:26

    百田「『 水練場 』だと?」

    王馬「そうだよ」

    頷く。オレにとってはあるかどうかさだかじゃない部屋だけど、他の『 次元 』にあるなら本来この『 次元 』にもあるはずだ。
    …恐らくそこに隠されてる物、正確には『 幽霊の痛いの一部 』があったからこそこうして幾重にも目的地を隠したんだろう。

    ここまで考えれば筋が通るよね?

    王馬「ホントは夢野ちゃんがいち早く気がついてほしかったのになー」

    横目で夢野ちゃんの小鼻をつつく。正論をオレから言われちゃったらそりゃー返す言葉ないよね?

    夢野「ヴッ…それを言われると確かにそうじゃな…無いものとして見ておった」

    俯いてる彼女を見ると更に苛めたくなるけどそれはやめておこっと。百田ちゃんがレバーから手を離してオレの方見てるしさ。

    百田「ってか王馬、いつからその事に気がついたんだよ?」

    王馬「んー。それは内緒だよ!
    …ってことでその『 水練場 』とやらに行こっか!場所は多分同じだろうから夢野ちゃんに案内頼もっかな」

    夢野「んあ。確かウチの記憶があってるならば一階で丁度このした辺りじゃ。検討が着いておるならば急いで向かうとするかの?」

    そうだね、と頷いてオレたちはその場から離れた。


    ***


    王馬「たはー如何にも 何かありそー って感じがひしひし伝わるねー!」

    オレの読み通りだった。夢野ちゃんの案内で来た場所――それはさっきまでは壁だったはずの一階西階段側。どんな仕組みでここが開けたのかはさっぱりだけど目の前に広がるのは良くあるアルミで出来てそうな扉。

    百田「にしても何でもありなんだな…この空間はよ」

    夢野「ウチと星が入った際は鍵は掛かっておらんかった。…入るか?」

    夢野ちゃんが『 文化人形 』をグッと握りしめる。その手は僅かに震え、表情も固い。

    王馬「(きっとオレに話してない『 何か 』が起きた場所なのかもね。星ちゃんの話が聞けたなら真相は分かっただろうけど深追いはしないでおくのが正解だと思うし)」

    百田「い、行くに決まってんだろっ…『 水練場 』…って表示はねーけどよ…この先なんだろ?」

    王馬「はいはーい。こんな場面で妙にビビんないで欲しいんだけど…どちらにせよ開けるからね?」

    やれやれ。どいつもこいつも思い出したようにビビってんじゃないの。行くしかないんだから覚悟は早々に決め打ててのっ。
    扉に近づき、ドアノブに触れる…鍵は掛かってなさそうだし問題なく入れるね。捻り、中へと先に進んだ。


    ― ピチョン、ピチョン ―

    薄暗い、そして埃っぽいね。
    『 水練場 』じゃなくて『 更衣室 』らしい。視界の左側にはボロボロになったロッカーが倒れているし右側にはシャワーが並んでる。シャワーのノズルから水が滴る音を聞くに使えるかどうかも怪しいって感じがする。

    夢野「…うっ」

    百田「――夢野?」

    背後を振り向けば青ざめた顔をした夢野ちゃんが鼻を抑え俯いてた。…乗っ取られた時の事が過るけど百田ちゃんの袖を掴み首を振った。

    夢野「だ、大丈夫…じゃ。じゃが、この先には行けそうにない…このまま真っ直ぐ進めば『 水練場 』なはずじゃ。済まぬが頼んでもよいか?」

    百田「夢野…」

    この先には行けない、つまりはこれ以上進めば夢野ちゃんが荒ぶっちゃうってことか。
    なら、行くのは…

    王馬「オレは百田ちゃんと調べるの嫌じゃないけど、かといってさ夢野ちゃんを一人にしておいておくのは不味いと思うけどなー」

    百田「だな…だがよ、ここで待機させるのもツラいんじゃねーか?」

    百田ちゃんが心配そうに夢野ちゃんの表情を見る。それでも頑として大丈夫と譫言のように呟く夢野ちゃんの抑えてる手の隙間からだらだらと鼻血が流れてる。

    夢野「ウチはここにいる分なら鼻血程度で問題ないと思うから…例のものが見つけ回収終わるまでおるぞ」

    無理しちゃって…はあ、だから乗っ取られちゃうんじゃないの?と言いたい口を抑える…と百田ちゃんが唐突に視線を向けた。なんだよ。

    百田「手負いのテメーをこの先に行かせるのも悪い気がしてたんだ。ちょっくら行ってくるからよ…王馬、夢野頼んでもいいか?」

    王馬「は?何でオレが――」

    百田ちゃんは無言で袖を掴む夢野ちゃんの手をどける。戸惑う俺をすり抜けてそのまま奥へと突っ切ってしまった。
  87. 87 : : 2019/07/15(月) 02:00:20

    【 『 王馬小吉・夢野秘密子 』と別れました 】


    『 百田解斗 』side


    王馬のヤツに夢野を任せるのは癪に触る部分があるが今の状況ならああする他ねーだろう。
    さっさと調べて戻るのが先決だ。一番動けるだろうオレが行くのが定石ってもんだ。

    アイツらに強引に別れ、入り口と同じような構造の扉の先へ踏み出した。

    百田「うっ…外か」

    目の前に広がんのはプールサイドだ。そりゃ『 水練場 』だから当たり前の光景なんだが雨風が少し強い。しかもフェンスの先は何処までも杉の木々が鬱蒼に生い茂り視界がやや悪くなってやがる。
    臭いもキツい。…長年掃除されてねーんだろう木々と同系色に満たされた汚水に浮かぶのは朽ち果てた木材だけじゃねー。人間も浮いてやがるように見える。

    百田「直視しない方が…いいだろうな」

    プールサイドは朽ちて歩きにくい訳じゃねーから汚水を被りながら進むってことは無さそうだ。ならとフェンス伝いに行けば問題はねぇな。

    百田「うっし、早く済ませちまおう」

    オレは調べつつ、例の『 幽霊の遺体の一部 』とやらを探し出すことに重点を置くことにした。







    question>>88番さん、百田の調査【水練場】
    (ある選択肢で進行します)


    1、良くプール調べるか
    (プール内を見ます)

    2、フェンスにポスターが何枚かあるな…
    (フェンスにかかるポスターを見ます)

    3、ん?何か奥にあるな?
    (プールサイド奥にある小屋を調べます)

    4、一度アイツらの様子みてみるか?
    (夢野、王馬のいる『 更衣室 』に戻ります)

  88. 88 : : 2019/07/15(月) 06:24:06
    2でお願いします!
  89. 89 : : 2019/07/15(月) 20:23:03

    強引な手法を取っちまったがこの状況で最初に調べっとするなら何からやるか。見回したは見回したが…コツってのがわかんねーしな…

    もしアイツ、終一なら…と考える。
    アイツはどんな状況下でも冷静に調べる所を見極めてるだろうしな…っなると目の前にある情報、つまるところはポスターだ。
    何枚かフェンスに貼られてんだから一つぐらいは有益な事があるかも知れねー。

    スマホを取り出すにもこの雨だ、防水加工してねーオレのは頼りにならないだろう。僅かな外の灯りを頼りにするためにフェンスを掴みながら進む。雨に濡れる気持ち悪さで上履きがグショグショになりつつあるがなんとかポスターの元へと辿り着いた。

    百田「(…見た目は古そうだが文字はしっかり読み取れるな)」

    『 プールサイドは 走らない 』…などよくある注意書きだな。オレらが通う学園の注意書きは癖があるんだがな、小学校なら当たり前の表示だな。何枚かは泳ぎ方が書かれた紙に注意書きの数々が劣化し剥がれ床に落ちていた。

    百田「お、向こうにもあるな…行ってみっか」

    入ったときには分かんなかったが奥の方にもポスターみたいなのがある。そこに何かあるかも知れねーとソコまで進む。

    百田「…ちぃ。何人もこんな場所に閉じ込められてんのかよ!」

    そこにあった紙はここに閉じ込められた奴らのメッセージだった。――そこに大した情報はねぇ。
    だがどの文も友達や先輩後輩、家族や恋人に逢いたいと綴られた文字面といったモンばっかだ。

    …死体があるってことはそれだけ閉じ込められた人間がいるワケでその数分だけ人間関係もあるだろう。
    やるせねぇ。

    唇を噛み締める。これ以上は被害を出さねーよ。終わらせてオレらはここから脱出すんだ。じゃねーと報われねぇ。…死んだアイツらのためにもな。
    そもそも気丈に振る舞ってる夢野たちも大分参っちまってる様に見える。
    特に王馬は普段のウゼェ冗談の切れ味が悪ぃ所を見ると猶予は無ぇとも思うしな。

    百田「王馬、夢野のためにも急がねーとやべーよな…」

    決意を新たにプールサイドを更に進んでいく…




    question>>90番さん、百田の調査【水練場】
    (ある選択肢で進行します)


    1、良くプール調べるか
    (プール内を見ます)

    2、★調査済み

    3、ん?何か奥にあるな?
    (プールサイド奥にある小屋を調べます)

    4、一度アイツらの様子みてみるか?
    (夢野、王馬のいる『 更衣室 』に戻ります)

  90. 90 : : 2019/07/16(火) 17:35:44
    4で。
    様子が気になる。
  91. 91 : : 2019/07/18(木) 02:40:48
    (V3×コープス用ぺーじ)

    百田「王馬たち大丈夫なのか…?」

    ふっと雨に打たれワックスで整えてる髪の毛がだれちまう。それを拭いながら『 更衣室 』の扉を見つめんだ。

    強引にこっちまで来たは良いけどよ、よくよく考えればやベーんじゃねぇか?
    王馬のヤロー口調は普段と変わらねーが歯切れが悪ぃ。からかいがいのある夢野に対してちょっかいを出す頻度が少なく感じたしな。まるで…

    百田「敢えてそーしてんのか…?」

    ああ、しゃらくせーな。さっきから疑問符ばっかりだ。考えるのは性に合わねぇから、こうなったら行動あるのみだな!
    うっし、そうと決まれば戻ってみっか!

    プールサイドを慎重に歩きながら『 更衣室 』へと踵を返したんだ。


    百田「おーい…大丈夫か?」

    ガチャリと半身だけ『 更衣室 』に入る。…まだ見付けるモン見つけてねーしな。ぐしょりと水分を含んだ上履きが気持ち悪ぃ音を立てて、それを合図に返事が来た。

    夢野「んあ?…百田よ。思ったよりも随分とはやいのぅ。…なにか見つけたのか?」

    ひょっこりと顔を出したのは夢野だった。鼻血は既に止まってんのか鼻回りが赤いままだが、普段と何ら変わらねぇみたいだな。よかったぜ!

    百田「あ、いや。まだ見つけてねー。…ちょっと心配になって戻っただけだ」

    王馬「へービビって引き返したのかと思ったよ!なんだぁ、つまんないの!」

    ロッカーの方からひょっこりと顔出したのは王馬だ。王馬なりに調査してたってことか。軽く頭の後ろで腕組みするとにやにやと腹の立つ笑みを浮かべてんな…ってか、今後そん顔で急に出てくるな!…今でも少しビビったんだよ!

    百田「オレが出てくるときおめーらすごく調子悪かっただろ。だから倒れてたりしねーかと思ってみに来たんだが…その様子じゃ何でもなさそうだな!」

    夢野「もちろんじゃ!お主が早く『 ブツ 』見つけるまで倒れる訳イカンじゃろうて」

    王馬「そうだよ!…急いで見つけないとオレたち百田ちゃん置いていっちゃうかもよ?」

    こんな状況下でも冗談を言うのかよ…っ!
    お、置いてくのだけは御免だ。オメーたちがいるから怖いの我慢してんのあんだぞ。

    百田「んな!?…やや、やめろよぉ!
    …わ、分かったよ。直ぐ見つけて来っからちゃんと待ってろよ」

    ちっ、心配が損したぜ…まあ無事ならそれで構わねーしオレも早く合流しねぇとならねーしな。行くか。とプールサイドへ戻ろうとした瞬間、

    王馬「自分から進んだんだから成果見つけてきてよ!…嫌な予感がしてるんだし早めにね」

    百田「ああ」

    返事も中途半端に再びプールサイドの調査、続行すっぞ。







    question>>92番さん、百田の調査【水練場】
    (ある選択肢で進行します)



    1、良くプール調べるか
    (プール内を見ます)

    2、★調査済み

    3、ん?何か奥にあるな?
    (プールサイド奥にある小屋を調べます)

    4、★調査済み


  92. 92 : : 2019/07/18(木) 07:56:23
    では3で。
    小屋にはなにがあるのか……
  93. 93 : : 2019/07/19(金) 22:37:51

    百田「…?さっきよりも雨が強くなったか」

    王馬たちと別れた後プールサイドにまた来たんだが、どうも雨足が強くなっている気がしたんだ。「 これ以上調べるな 」と拒絶しやがってんのか?

    百田「考えるのはヤメだ。とにかくなにか無いか調べねーとだな!」

    雨に空の色はやや暗い。視界はいいってワケじゃねーが…なにか無いかと見渡した。と、向こう側に小屋みてーかのがあるな。恐らくは水圧等を調整してる部屋かも知れねー。行ってみっか。

    フェンス伝いに歩く。プールサイドといっても崩壊が激しくてコンクリートが剥き出しの部分や崩落してる所もあんだな。一周は出来ねーからプールサイドを半周遠回りして小屋の前に辿り着く。
    小屋はコンクリートで出来てんな。窓があるが昔ながらの磨りガラスだから中は見えねぇ。透けてるとしても真っ暗だろうから見えることはねーだろうな。

    百田「やはりな…」

    小屋の近くのフェンスには『 水圧調整室 』と書かれた木札がぶら下がってやがる。…と近くのポスターには「 バルブはキチンと閉めてください 」との旨がか書かれてる。ん?

    百田「プールサイドにはなにかあったワケじゃねーからあるとすればこの部屋の奥か…」

    ブルブルっと身体が震えちまう。いや単にさみーだけだ、こ、怖くなんか無ぇよ!!

    百田「…いってみっか」

    目の前にあるアルミサッシのドアノブを掴み…捻ったが、ドアノブはびくともしねー。

    百田「はぁ?!…鍵かかってんのか?」

    ガチャガチャ…何度も試してみたが――やっぱりダメだ。よくよく見ると鍵穴があるようだが…ここまでにこの部屋の鍵を見つけてねーしな…。

    百田「これは困ったな。しゃーねーな。とりあえずアイツらに相談すっかな…」

    ため息混じりに頭を掻く。すっかりワックスが取れた髪先からポタポタと雫が垂れてやがる。戻りたくはねーが仕方ねぇ。そういい聞かせ、扉を背にした瞬間。

    …カチャリ

    百田「…っう!!な、なんだよっ!?」

    触ってもねーのに解錠音が雨音に混ざった。…は?どういうこった?

    戸惑いながらも振り返りドアノブに触ろうとした時だった。


    ??「――っ……んっ!!??」


    誰かの声がプールサイドに響いたんだ…それは何処かで聞いたことのあるような無いようなそんな声。誰だと気になったが…

    百田「…こっちの先も気になるしな…様子見した方がいいんじゃねーのか?」

    プールサイドから死角のこの位置だ。空耳かも知れねーしよ…。


    困ったオレは―――






    question、>>94番さん。様子を…
    (選択肢をお選びください)


    1、見に行かない

    2、見に行く
  94. 94 : : 2019/07/22(月) 14:59:21
    お、再開してて嬉しい! 2で。
  95. 95 : : 2019/07/25(木) 20:10:12
    コープスパーティーもV3も大好きでめちゃくちゃ面白いです!応援してます!
  96. 96 : : 2019/07/26(金) 23:21:03

    気になったオレは…手を止めた。別に怖いワケじゃねー。ただ、嫌な予感がしたんだ。「あん時」みてーによ、仲間同士で取り返しのつかねぇ事になっちまったら――って何だ?
    …今の言葉は…ここに来る前の話、いやそれとも別の何処かで同じような事が起きたのか?

    …いや今は考えるのはやめっか。難しい事はオレには合わねーし。ってよりは…

    百田「一度戻ってみっか」

    プールサイドに戻るべくオレは踵を返す。
    雨が目にはいるぐれーの雨。急に雨足強まったせいかどんどん濡れちまう。顔をしかめやっとこのことでプールサイドに戻ると…ずぶ濡れの王馬が向こう岸に見えた。

    百田「っ!!王馬、テメーどうして出てきやがったんだよ!」

    叫ぶ。だが、王馬は濁ったプールの水を見てるせいか表情が見えねー。雨のせいでオレの声が届いたどうか怪しい。…なら。

    百田「いくっきゃねーな…」

    プールサイドの不安定な床を蹴り跳ねる水を気にすることなく王馬の元へと走る、走った。

  97. 97 : : 2019/07/26(金) 23:32:00


    (すこし時は遡り…)

    『王馬小吉』side

    百田ちゃんが勝手に部屋から出ていったかと思えば、直ぐ戻ってきたのは滑稽だったけどそれからというものなっかなか戻ってこない。

    王馬「(何かみつけたのか?…百田ちゃんはバカだと思うけどヤマ勘でとんとん拍子に物事進んでくタイプだしなー)」

    夢野ちゃんは壊れたシャワーの近くに座ってる所だし、この部屋もあらかた調べたけど特に良いものがあったワケじゃないしね。…全く早く帰りたいね。

    王馬「夢野ちゃん~暇だからしりとりしない?」

    その場で声をかける。百田ちゃんが去ってから夢野ちゃんはその場に座り込んで鼻を押さえてたハズだ。場違いな事を言ってしまえば夢野ちゃんなら即ツッコミしてくれるだろう。そう、思ってたんだ。だけどさ…

    夢野「…」

    王馬「夢野ちゃんー?」

    いくら待っても返事はない。図太くなった彼女の事だ、寝てるのかな…と最後に調べたロッカーから顔を出して再度声をかける。
    まーったく、面倒臭がりなのにこういうときだけ構ってちゃんになるのはなかなかつまらなくないよ!

    王馬「ゆーめーのーちゃーん?」

    夢野「…」

    あーやっぱり。さっきの所にしゃがんでる。微動だにしないから寝てるのか…はぁ全く人騒がせなん

    夢野「…える…」


    王馬「――は?」

    距離があって聞き取れない。寝言?
    こんな状況に呑気だね…その性格、ある意味羨ましいんだけど。

    王馬「こんな時に寝ちゃうのは…流石にな」

    夢野「いかねば。アヤツが呼んで、おる」

    今度ははっきりと聞こえた。
    すると夢野ちゃんはいきなり立ち上がった。戸惑うオレをよそにスタスタと扉の方、百田ちゃんが調べてるプールサイドに向かって歩き出しちゃった。

    王馬「は?ゆ、夢野ちゃん?!」

    すれ違い様に制服の袖を掴んだ…けど、夢野ちゃんはそれを振り払って進もうとした。ヤバイっ。
    …脳裏にちらつくのはアンジーちゃんと会う直前からの事。嫌な予感がする。何処かに消えてしまいそうな――そんな予感がね。

    王馬「夢野ちゃん!!待って!」

    もう一度今度はしっかりと腕を掴む。だけど、夢野ちゃんは立ち止まったかと思えば器用に制服のブレザーを脱いでそのまま扉を開いて飛び出しちゃったんだ。

    王馬「…っ!ちっ」

    制服を放り投げてその後を追いかける。
    閉じかけの扉を押し退け外に出る…と同時に、雨が視界を遮る。こんなに降ってたのかよっ!

    なんとか視界が確保できたと同時に夢野ちゃんがプールの飛び込み台に足をかけて緑色に濁る水面を見つめてた。ま、まさか…っ!

    王馬「――っ!!夢野ちゃん!!」

    叫ぶ。それでも反応をしない夢野ちゃんはふらふらとした足取りでそのまま…


    ――ドボン――


    プールに落ちた。
    っ!何をしてんだよっ!
    足場が悪いのなんて気にならない。

    今は、今はっ!

    王馬「夢野ちゃん!」

    夢野ちゃんが飛び込んだ飛び込み台に両手をつく。濁ってる水面は夢野ちゃんの姿をどんどん呑み込んでいって泡が見えるしプールの底はそれほど深くはないハズだよね。…百田ちゃんがいない今、このまま放っておくべきじゃない。

    溺死なんて冗談はやめてほしい。せめて、脱出できる可能性が出てきた今時点で仲間が欠けるなんて死んでも嫌だね。

    …上履きを脱いで靴下も脱ぐ。道具も濡れないように使われなくなって埃だらけの排水の溝にまとめておく。

    王馬「…たはーここまでするんだからもとの場所に帰ったら――」

    オレの好きなプァンタ1ダース奢ってよね!!



    ――ドボン――





    question、>>98番さん。

    プールイベント:夢野の救出


    (秒数安価、結果は後程)

    さあ、彼女は助かるのでしょうか?
    それとも…

  98. 98 : : 2019/07/27(土) 00:31:48
    はわわ……
    どうにでもなれ!!
  99. 99 : : 2019/07/29(月) 20:49:25
    久々の修羅場!これは続きが気になる
  100. 100 : : 2019/08/01(木) 01:32:54

    濁った水が視界を奪う。それでもなんとか目を開けてなんとか色味と障害物が判断出来そうだね。
    泳ぎが得意な朝日奈ちゃんなら問題ないのかもしれないけど予想以上に水が濁ってそして重いんだ。
    泥のように…ってそれだけじゃないと思うけどさ。

    王馬「(くそっ…どこだよっ)」

    気持ち悪い臭いと色で直ぐ見つかるとタカをくくっていた。だけど…

    ゴボッ…ゴボッ…

    右左と見回してもあるのは藻と枝と死体だ。3流スプラッター映画の妙にリアルな質感を思い出しちゃうね!!
    こんな気持ち悪い場所早々におさらばしたいんだけどー!…叫びたいし呟いたら当然水が口に入る…それはとーぜん嫌だから黙る。
    ってか、底無し沼みたくどんどん身体が沈むのどう考えてもおかしいでしょ!元は小学校のプールなんだからこんなに深いと溺れて大変じゃんか!

    それに夢野ちゃんも見当たらねーし。
    いったいどこまで潜れば見つかるんだよ!

    王馬「(どこだよ…っ)」

    さらに潜る。底についてもおかしくないのに手が底に届かない。沈んでる感覚はしてるから見かけ以上に深いってことか。にしてもさー!

    王馬「(…!!)」

    いた!あの姿って…もしかして

    王馬「(夢野ちゃ!)」

    見覚えのあるタイツの色が見えた。腕を伸ばす…あと少しで届きそう、届けっ!

    王馬「…っ!(掴んだっ)」

    足を掴んだ。そして引き上げようとした時、身体が急に重くなった。は?

    王馬「(な、なんだよっ急にっ)」

    夢野ちゃんの足を構わず引っ張りつつ、周囲を見渡すとどうやら藻が足元に絡んで居るみたい。だけどなりふり構ってられない。助けないとだ。
    プァンタのために!

    王馬「――うっ」

    引っ張る。なんとかなんとか引き上げたけど、途中で重さが一気になくなる。それ、は夢野ちゃんの足でもなんでもなかったんだ。

    王馬「はあっ!?」

    『 それ 』に驚いたオレは思わず口を開く。

    それは確かに夢野ちゃんだった。そう、服装も背格好も髪の毛も夢野ちゃんそのもの。だけどさ…
    『 それ 』は決定的に違った。足だけ質感を残した…『 白骨化した何か 』だったんだから。

    王馬「…な、…ぐっ!?」

    口にいっぱい何かが入る。吐き出そうにしても水のなか、出せば出すほどもがくはめになる。思わず『 それ 』を手放して浮上することを試みたけれど…時既に遅し、藻が身体全体に巻き付いて動けないっ!!

    王馬「ごほっ、げほっ、…ちっ…っ!」

    こんな所で死んでたまるかよっ!必死に藻をほどこうともがいてしまう。

    ――それは、余計に酸素を使っちゃう事にも気が付かずに。

    王馬「い、意識が…やべー」


    酸素不足のせいで意識も奪われる。ヤバイ、冷静に戻った所でもうその頃には……


    王馬「ゆ、めの…ちゃ」



    …ゴボッ


    …ゴボゴボッ

  101. 101 : : 2019/08/01(木) 01:33:38

    『 百田解斗 』side


    百田「王馬っ!!どこだ!」

    王馬が立っていた場所まで急いで戻ってきたが、王馬のヤツの姿が見えねぇ。
    ま、幻かっ!?

    んなわけね、ねー!!どうせ驚かせにわざと出てきたに違いねー…あそこに戻ってみっか。そう決意し慌てて『 更衣室 』へと進む…が、王馬たちはいねー。変わりにあったのは夢野の上着だけだった。

    百田「はぁ!?何処に行ったんだよ!アイツらっ…さっきみたのは幻じゃねーのかっ?!」

    踵を返す。まさか、水面にも潜ったのか!?
    んなバカをやるようなヤツだとは思っちゃいねーがまさかな…『 プールサイド 』に戻ると、緑色の水面に泡が見えた。まさか。

    百田「王馬のヤツ、こん中に入ったんじゃねーよな…」

    呟いた言葉に震えた。夢野の姿が無いってことは恐らくは夢野の後を追って入ったのかも知れねー…と足元を見ると王馬の持ちもんがあった。それで確証を得た。

    …だとしたら、いつ飛び込んだんだ?
    大分潜ってねーか?

    不安が過っちまう。溺れてんじゃねーか?
    だとしたらマズい。ただでさえ王馬は手負いだ。水の中で傷口開いちまったらそれこそ死に直結すんだろうよ。

    …ゴクリ。なら。やるしかねー。
    王馬が入ったならオレだって行ける。生唾を飲み込み飛び込み台に手をつく。

    百田「助けてやるからなっ!」

    と、飛び込もうとした瞬間だった。何かが、浮かんだ。

    百田「…っ!!」

    それは見慣れた髪の色、服装。背を向いているがあれは…ゆ、夢野だ。力無くプールの中央に浮かぶ姿は――生きてる感じを微塵も感じさせねー。

    マジかよ…んなの認めねー。
    首を振って頬をつねる…痛い。夢じゃねーのかよ。さっきまで笑ってたヤツが…どうして…

    百田「夢野、チクショーっ!!」

    拳を飛び込み台に叩く。何があったんだよっ!!
    王馬もまさかっ!

    百田「王馬っ!!王馬!」

    何度も叫ぶが返事はない。王馬だけでも助けねーとな…折れそうな心を奮い立たせ、水面を眺めた瞬間だった。


    …ドボンっ…!


    目の前に広がる緑の世界に『 何者かに押された 』ってことに気がついた。

    百田「っ!ぐぼっ、がはっ!!」

    急に入ったもんだから肺にいっぱい水が入っちまってロクに泳げずにもがいちまう。
    このままじゃダメだとわかっているのにどんどん身体は重くなるわ意識は白くなるわで、どうすることも出来なかった…


    最期にみたのは、緑の中に浮かぶ無数の死体だった…






    【 WRONG END(★3) 】:誰かに誘われて 





    (まず結果、一部開示いたします、
    秒数が十の位、3、4…失敗です)


    >>97番から再スタート

    question、>>102番さん。
    (秒数安価です。
    ※しかし、>>98番さんの秒数と同様になった場合、成功と見なし進行します)


    ・再安価:プールイベント、夢野の救出

  102. 102 : : 2019/08/01(木) 10:28:17
    助かれ~~~
  103. 103 : : 2019/08/01(木) 14:50:12
    怖くて投稿できなかったww
    この先期待!
  104. 104 : : 2019/08/21(水) 00:51:20

    (お待たせいたしました。
    >>102番さん、おめでとうございます。進行します)

    ・プールイベント:【夢野の救出 結果】

    →秒数が十の位が0、1、2…成功
    →秒数が十の位が3、4…失敗(WRONG END(★3))
    →秒数が十の位が5、またはゾロ目…失敗WRONG END(★4)




    濁った水が思ったよりも生ぬるくて気持ち悪い。そして妙な生臭さが更に害を与えてくる。
    それでも何とかして夢野ちゃんの姿を探すべく気合いで奥底へと沈む。…ってかどんだけ沈むの早いんだよっ!

    王馬「(くそっ…同じ位置から潜ったんだ。きっとすぐに見つかるハズ)」

    右、左何度も見ながら進む。濁った色のプールは予想以上の視界の悪さに顔を顰める。
    藻をかき分け誰のかも分からぬ腕を払い、そこへと向かう。
    ようやく底に当たる部分に辿り着いたらしい。プール底のラインが見える。

    王馬「(ゆめのっ…ちゃ…どこ)」

    朝日奈ちゃんみたいに水泳自体が得意じゃないオレにとっては本音を吐くとだいぶキツい。だけどそれ以上に危険なのは夢野ちゃんだ。段々息が苦しくなっていく中で周辺を探す…と。

    王馬「(あの服…夢野ちゃんのだ!)」

    ふわっと視界を覆うのは見慣れた茶色のセーター。更にスカートの色も彼女のだ。
    …よかった。
    ホッとする反面、急いでプールから出ないと不味い。夢野ちゃん本人は意識は無くて四肢を力なく水の流れに任せている状態だ。…くそっ。

    王馬「(今…っ。待ってろよっ)」

    夢野ちゃんの腕を掴み、浮上する。1人なら難なく出来る行為でももう一人分の体重があるからかなかなか上がることが出来ない。

    王馬「…ごぼっ…!」

    くそっ、息も限界に近い。せめて夢野ちゃんだけでも――

    ??「…まっ!」

    …誰かの声がする。…誰かなんて分かりきってる。百田ちゃんだ。恐らく水面が近いんだろう。必死に夢野ちゃんを上に押しのける。

    王馬「…ぐっ」

    勢いづいたのか、夢野ちゃんの体は藻を絡ませながらも何とか上に行った、よしこれでっ…!

  105. 105 : : 2019/08/21(水) 00:51:43

    ??「ゆ…の!?…い、…やる!!…っぅ!!」

    声と共に夢野ちゃんが引っ張られてく。
    あ、良かった…夢野ちゃんは何とかなりそー… たはー油断してたら急に身体が重くなって…

    沈みかけそうになる身体、体力が削がれてるせいもあるかもしれないけどコレはちょっとまず…っ!?

    急な浮遊感に驚き上を見る、すると百田ちゃんの腕がオレの身体をしっかり掴んでそのまま…何とかプールの水面に顔出すことが出来た。

    王馬「ごほっ!!…げほっ…っ!!」

    百田「王馬!無事かっ!!」

    咳き込むオレに対して百田ちゃんが必死に声掛けてやんの。…見ればわかるでしょ?と言いたいけど今はこの気味悪い水から距離をおきたいね。何度も声かける百田ちゃんを無視して壁伝いにプールのハシゴまで泳ぐ。

    百田「王馬っ!!」

    王馬「…オレは見ての通り大丈夫だよ。それよりもそのアジの開きは大丈夫なの?」

    髪の毛と服がぐっしょり濡れてて気持ち悪い。プールサイドに出て百田ちゃんと飛び込み台の上に寝かせてる夢野ちゃんの側へと行く。

    百田「アジの開きってなぁ…いい今は夢野だ。
    見ての通りだけどよ息してねーんだ。ほっぺ叩いても微動だにしねー…早急に人工呼吸と心臓マッサージしねーと不味い」

    王馬「そう」

    夢野ちゃんの顔色は真っ青。雨に打たれてるせいもあって唇は紫色に近い。百田ちゃんの言う通りなのかもしれないね。
    …はぁやれやれ。ため息を吐いて百田ちゃんの方を向いた。

    王馬「ちょっとここで応急処置するのもだめでしょ。雨に濡れちゃうしさ。
    まだマシな『 更衣室 』に行かない?こうなった事情は夢野ちゃんが意識取り戻してからになるけどね。あ、これはホントだよ」

    百田「あ、ああわかった」

    百田ちゃんの返事を聞く前に夢野ちゃんを横抱きしたオレはそのまま『 更衣室 』へと戻った。

    夢野ちゃんをシャワー近くの比較的壊れてなさそうなベンチに横たえる。…相変わらず息してない。ソワソワする百田ちゃんに対して横目で見ながら答える。

    王馬「夢野ちゃんは何とかするから百田ちゃんは調べるの続けてて」

    百田「んな!?王馬テメーこんな時にっ」

    すぐに顔に出る百田ちゃんから視線をずらし夢野ちゃんの頬をぺちぺち叩く。無反応のままだ。

    王馬「いいから。何か見つけたんでしょ?…もしもの事もあるしそっちはそっちでやること済ませてよ」

    百田「っ!!な、なんだよそのいいか――」

    はぁ。感情的にならないでよ。どう言えばいいのさ。ムスッとすると百田ちゃんはさらに怒るだろうしなー…

    王馬「…当たり前だけど、夢野ちゃんは死なせないから。――絶対にね」

    夢野ちゃんの胸に両手を当てる。うわー予想以上に胸ないね!!…ってそれどころじゃなくて、罪木ちゃんが手とり足取りで教えてくれたことを思い出しながら思いっきり押す。…確か5、6回すれば良かったんだっけ?

    百田「お、おぅ…王馬がそこまで言うなら…でも何かあったらすぐ言えよ!!」

    オレが行動に移したことで覚悟を察してくれちゃったのか百田ちゃんは小走りで踵を返して出てく。

    バタン、と扉が閉まる音で夢野ちゃんの反応を見るけど…微動だにしない。瞼は固く閉ざされ、唇の色も回復しない…くそっ。
    こうなったらヤケだ。

    一か八か。
    ゴクリと生唾を飲み込むオレは彼女に視線を向け…――

  106. 106 : : 2019/08/21(水) 00:52:21

    『 百田解斗 』side

    プールサイドを走る。王馬の声色に怖気付いた訳じゃねーけど、夢野はきっとなんとかなる。そう信じることしかできねぇ。
    あいつの言う通り、代わりに早く目的を果たして2人の元に戻んねぇとな。

    運がいい事に雨はさっきまでのザーザー降ってない小雨になって来たから視界が悪いってワケじゃない。それでも滑りやすくなっちまってる足元に注意を払ってさっきの『 水圧調整室 』って書かれた扉のドアノブを捻り入る。

    百田「(うげっ…ま、真っ暗だ…っ)」

    カチカチと歯がなっちまうのは寒さからだ。ぜってーそうだ!!…暗いのがこ、怖いわけじゃねー!
    …っとスマホのライトで周囲を照らしながら慎重に調べていく。…『 水圧調整室 』と書かれてるからか太いパイプが至る所を走ってやがんな…っと、あれは…なんだ?

    百田「な、なんだ…バルブか…」

    赤い色をしたハンドルがあった。近くの札には『 排水弁 』と書かれてんな…って事は。

    百田「(これを回して水を抜けって事か?)」

    水の中に何かあったのかもしれねー。確かにそれなら抜くのが合理的だが…ん、待てよ。
    もし、オレがさっき引き返さずにここを先に見つけてたら…どうなっちまってたんだ?

    百田「王馬たちに気が付かず、コレを回してたら…っく!考えるのはヤメだ…とにかく回すしかねーだろうが」

    かぶりを振って、目の前のことに集中する。これを回す。開く方に矢印が書かれてっるみてーだからよ。その指示に従ってバルブを両手で回した。

    百田「はぁっ!?くっそ…っぐ、コレっ!」

    手応えが無さすぎねぇか!?固ってーな!
    歯を食いしばり力任せに捻った…がビンの蓋が開かないぐらい硬いバルブはウンともスンともいわねー。段々気が立って来たからよ、最終手段――足で蹴り込む。

    ガッ、ガッっ!!

    ガコッ!!

    百田「…お?」

    何回か蹴り込みを入れたら手応えがあった。すかさずバルブを思いっきり回す。…最初こそ固かったが1度動くと金属の擦れる特有の音を鈍く響かせ、何とか回った。…と同時に水の流れる音と振動が部屋を揺らす。何とかなったみてーだな。

    百田「水が抜けたら、そこに何があんだって言うんだよ」

    呟いたが答える相手なんぞいるハズもねぇ。排水の音が静かになったのを区切りに『 水圧調整室 』から出ることにしたんだ。


    百田「(おびただしい数だな)」

    プールサイドに戻ったら水はちゃんと抜けてたんだ。底が見えたプールの中は片手では数えらんねー程の死体が転がっていた。
    この状況だ。色んな要因はあったんだろうな。『 天神小学校 』にどれだけの数が迷い込んじまって帰れぬ人と化したのか。そして、

    百田「(…こんだけの死体がいるんだ、フツーはニュースなんかで騒ぐだろうがオレらは知らなかった)」

    前々から疑問なってた事について考えを巡らす。
    どう考えたってここの死体は現実の世界だと「 行方不明 」扱いのハズだ。当然だが現実の世界には帰れてねーんだからよ。
    だとしてもよ何故そいつらの事が報道されねーのか?

    百田「(考えてみればみる程、不思議だ。
    確かにここの時間の流れがおかしいってもだ。
    最近亡くなったであろうヤツもいるが、ボロボロな状態で死んだヤツなんてどう考えたってココ最近じゃねぇだろうしな。
    ならどうしてだ?)」

    …居なくなった事が分からない?または知らない?

    まさか。
    ここで死んだヤツらは…『 もともと居なかった 』事になってるのか?

    だとすれば合点がいく。そもそも「 居なかった 」なら「 行方不明 」になることもねぇ。当然「 存在すらしてねー存在 」だから、そもそも警察に捜索願届けを出すこともない。

    歯を食いしばる。オオゴトになるハズの事象が問題になってねー。ならその考えしか当てはまらない。

    まさか、…んなのってっ!そんなのってよ…!

    百田「(くそっ!それってアリかよ…っ!)」

    唇を噛み締め、オレは天を仰ぐしことか出来なかった。


    百田「くそっ」

    吐き捨てた言葉と共にプールへと視線を落とす。…何とか底に降りられそうだな。…先に王馬たちと合流してもいいが、生死をさ迷ったばかりの夢野には負担が大きいんじゃねえか?夢野が目を覚ましてたらの話だが。いや、夢野は目を覚ます。王馬が付いてんだ、なんとかするって言ったんだ。信じねーなんて生ぬりぃことすっかよ。

    百田「(行ける所まで調べっか)」


    オレは頷くと近くにあった梯子からプール内へと降りた。
  107. 107 : : 2019/08/21(水) 00:57:33

    question、>>108番さん、百田の行動安価
    【水を抜いたプール内】
    (ある選選択肢で進行します)

    1、お?向こう岸に行けそうだな
    (今まで行けなかったプールサイドを調べます)

    2、なんだ、滑るな…
    (プール内全体を調べます)

    3、ん排水口の奥光ってねぇか?
    (排水口の奥を調べます)

    4、取水口からポタポタ水が滴ってるな
    (取水口周辺を調べます)
  108. 108 : : 2019/08/21(水) 01:39:10
    そのままバルブ捻ってたらバットエンドだよなぁ。
    1で。
  109. 109 : : 2019/08/21(水) 02:04:47

    百田「よっと!」

    底はしばらく水を抜いてないせいなのかぬるぬるすんな。…こんな水のなかに夢野たちは居たのかと思うと身震いする。ってか、すげーのは夢野を追いかけて入ってた王馬だ。オレだったら躊躇うな…少なからずだがよ。

    百田「(そうだ。ここからならあそこの離島みたくなっちまってる所に行けるな。あそこの梯子を行けば問題ねぇだろうし)」

    ぴちゃぴちゃ…と無駄に水分を含んだ上履きが雨の音と共に耳にこびりつく。自分から出てる音なのにどうも気色悪く感じんのは空模様もあんだろ。色と気分ってのは相乗効果あんだろうな…と死体や流木を避けながら目的の場所へと辿り着いた。…プールサイドに出てくっと床の割れ目になんか挟まってるな、紙か?

    近づいてそれを抜き取る。…古い紙だが文字は滲んだりしてない。赤い文字でつらつらと書かれてる文章を意識してねぇのに読んじまう。

    百田「『 給水用のハンドルはプールに投げ込んだしこれで給水口の奥に押し込んだアレも、誰にも取られないだろう。 』
    『 僕の仲間を殺したあのガキめ永遠に探し回れ、手前の身体の一部を…! 』
    これ書いたヤツ、何てヤツなんだ!…ってコレはもしかしなくても…」

    無性に腹立っちまって紙を無意識にぐしゃりとする。
    視線は『 水練場 』近くにある給水口。このメモを書いたヤツが誰だか分からねーが『 身体の一部 』ってことはオレらが探してる…『 幽霊の遺体の一部 』の可能性がある――いや高けぇだろ。

    百田「…給水口、か。」

    その紙をぐちゃと丸め、その辺にぽいっと捨てる。…さっきのを書いたヤツが『 殺人犯 』ならどうしようもねークソ野郎だ。もし違ったとしても遺体の一部を隠すなんて正気の沙汰じゃねぇし。

    百田「…もっと調べてみっか」

    周囲を見渡し再びプールへと降りてく事にした。







    question、>>110番さん、百田の行動安価 
    【水を抜いたプール内】 
    (ある選選択肢で進行します) 

    1、★調査済み 

    2、なんだ、滑るな… 
    (プール内全体を調べます) 

    3、ん排水口の奥光ってねぇか? 
    (排水口の奥を調べます) 

    4、取水口からポタポタ水が滴ってるな 
    (取水口周辺を調べます) 
  110. 110 : : 2019/08/21(水) 09:42:48
    支部の更新お疲れ様です
    3で
  111. 111 : : 2019/09/18(水) 02:40:15
    ぴちゃん。…うわ気持ち悪ぃ。上履き履き替えたくなっちまうな。

    ドブから臭うあの匂いがして思わず袖で鼻と口元を多い、ふっと目に付いたのは…排水口。何が反射して光ってんな。ありゃ何だ?

    百田「(行ってみっか)」

    ピチャン、ピチャンと雨の音と歩く音以外聞こえる音はない。それが返って不気味さを孕む。肌寒く身震いしつつもプールのど真ん中に一つだけ大きくある排水口の傍に着いた。

    百田「(…う、死体がつまっ…)」

    しゃがんで排水口を覗く。大きさは人2、3人は入れんだろ結構大きな排水口だ。
    そこには折り重ねるように人の足や手首、頭部さえ見える。あまり直視したくねーがそのひとつの腕に引っかかってる物がある。結構大きいな。
    手を伸ばせば届きそうだか…触るのは気分が良くねぇ。だがよ、やらなきゃならねー事だってある。意を決して手を伸ばす――うっし、取れたな。

    手元に手繰り寄せる。それは少し錆びてるが、バルブ…なのか?
    こんなもんどこで使うんだ?

    百田「…今まで使える部屋なんてねーしな…どーすっかな…とりあえず、当てはまりそうな場所をしらみ潰しに調べるしかねぇ」



    ▼ 【 錆びたハンドル 】を入手しました… ▼
    説明:(排水口にあったバルブのようなものです。真ん中が空いていて人の腕が入るサイズで錆びているのか剥がれていて触ると手に錆が付きます)



    さっきの紙の文字の事もある。『 給水口 』は…何かを嵌められそうな所はねぇ…なら。

    百田「(さっきいった『 水圧調整室 』が妥当だな)」

    とりあえずプールサイドへと戻りその足で『 水圧調整室 』に向かった。


    ガチャ…

    百田「うわー…さみぃな。それに暗いしな」

    さっきより肌寒く感じんのは雨に打たれすぎたんか定かじゃねーが、寒い。
    部屋全体を見回して…っと暗すぎるからスマホで照らしながらなにかハマりそうな箇所を探す。

    しばらく見ていたら…っと窓側の奥。あるな。
    そこに進み、窪みを覗き見る。…近くに書かれた札には『 給水バルブ 』の文字がある。…って事はこれって。

    百田「(『 給水用のバルブ 』って事か。これを捻れば水がプールに満たされるワケだがどうだろな)」

    『 錆びたハンドル 』を窪みに付け、試しに捻ってみっと…『 排水バルブ 』より簡単に捻れた。



    ▼ 【 錆びたハンドル 】を使用しました… ▼



    百田「(…手応えがねぇーが外見てみるか)」

    ハンドルは差しっぱなしでそこから出ることにした。

    百田「…?水が出てる様子はねーが…」

    外に出ると給水口から水は出なかった。どこかが壊れてんのかチョロチョロとしかでて終わったらしく給水口下のプールには水たまりがあるだけだった。その水溜りの中央、なにか落ちてる。

    百田「…まさかっ」

    足元に跳ねる水をものともせず、そこへと向かった。

  112. 112 : : 2019/09/18(水) 02:40:45

    百田「はぁ、はぁ…」

    この雨の中、全速力で走っちまったのもあってあまり長い距離じゃねーのに息切れがっ…ボスらしくねぇな。鍛えないとだ。

    百田「…くっ。コレって――」

    ある程度息を整え、水溜まりに沈む『 それ 』を目視する。さっきの『 よしざわ りょう 』のと同じ麻袋…ってか給食着を入れるぐらいか少し大きいから体操着でも入れてたのだろう。水に浸かってるせいか袋に染み付いた血が流れてるって事は。

    百田「…2人目の『 遺体の1部 』があんだろな…」

    唯一水溜まりに浸かってない持ち手の部分を掴み持ち上げる。…水を吸っているせいなのかさっぱりだが重てぇ。中身が問題のないものだったなら確認して絞ったりするが――気が乗らない。

    百田「『 天神小学校1の6 つじ ときこ 』…か」

    慎重に持って名前を読む。…1年か。ならまだ学校に馴れてなかったはずだな。そんなヤツも犠牲になっちまったってのは酷だな。

    百田「(――って感傷に浸る時間はねぇ。王馬たちが心配だ。急いで戻らねーとな…)」

    探しもんは見つけたんだ――あとは返すだけ。
    …少し順調すぎるのが気になるが…それを気にしてもラチがあかねー…それよりも王馬と夢野だ。アイツらのことが先だ。

    頭を振って『 プールサイド 』から出る事にした。



    ▼ 【 女児?の遺体の一部 】を入手しました… ▼
    説明:(文化人形に導かれて見つけた赤黒い染みだらけの袋です。給食着のサイズの麻袋で、名札が取り付けられています。やや重みがあり口が堅いのと不気味さがあって中身を見る気にもなれません)




    百田「――王馬っ!!」

    『 更衣室 』への扉を思いっきり開き身体を滑り込ませる。ポタリポタリと髪の毛や服から滴る水を気にもせず廊下側近くにいるであろう王馬たちを目で探す。…っと、いたな。王馬の姿を捉え、傍に近寄るが近くに夢野の姿はねぇ。

    …一体どうしちまったんだ?

    王馬「もー大きな声出さないでってば!」

    百田「悪ぃな…夢野は――」

    どうしたんだ、という声を飲んでしまった。
    王馬が黙って指差す方『 プールサイド 』側からの扉からは見えねー位置、ロッカーに凭れるように夢野はいた。
    俯いてるのと暗さとが相余って…息してるのかどうかも怪しく思わず王馬を2度見しちまった。テメーっま、まさかっ…っ!!

    百田「王馬てめっ」

    夢野「…だ、だい…丈夫じゃ…」

    胸倉を掴みかかろうとした手が止まる。夢野がゆっくりとした動作で顔を上げ、まだ青白い顔をしているがほんのりと頬に赤みを差している様子にホッと胸を撫で下ろしちまった。

    王馬「――早とちりし過ぎだってば」

    百田「あ、おう…わりぃな」

    夢野はゴホゴホと咳き込みつつ、スカートの裾を軽く絞っていた。

    夢野「んぁ…事情は後で聞く…今は大きな声出さんで…くれぬか?…耳にひび、く…」

    百田「…おう、分かったぜ」

    夢野が目を醒ましてくれた、という安堵感が支配しちまって、涙腺がっ…くっ、良かったな。
    王馬がオレの方を見て持ってる『 それ 』を指さした。

    王馬「これだね。ちゃんと見つかったんだ」

    百田「ああ、中身は見ちゃいねーが…恐らく、な…」

    雨やら水やらで濡れて滴る水の色は赤い。その中に『 良からぬもの 』が入ってる証拠だ。中身を見る気がないのは王馬も同じらしく咎めなかった。


    王馬「コレを渡せば良いんでしょ?さっきみたいに」

    百田「おう。そうだが…肝心の幽霊がどこに居るのかがわかんねぇよな」

    夢野「――くちゅん!」

    首を傾げてっと夢野がくしゃみをした。
    そりゃそーか。時期的には寒くはねーが濡れた身体で調べるのを再開すっのも衛生的には良くねぇよな。
    それは王馬もオレも同様だ。何処かに…ドライヤーとまでは言わねーが『 乾かすもの 』がある場所に行きたいのが本音だ。

    百田「とりあえず、オレもテメーらも濡れちまってる。乾かしてからでも行動は再会出来っだろ」

    王馬が静かに頷く。3人ともびしょ濡れに近い。何処か休憩出来そうな場所と言えば――

    王馬「…あんまり行きたくないけど『 保健室 』はどう?」

    ――王馬からの提案にオレらは黙って頷いた。




    【 『 王馬小吉・夢野秘密子 』と合流しました 】


  113. 113 : : 2019/09/24(火) 00:21:24

    『 更衣室 』で出来るだけ服や髪の毛を絞りそれから出ることにした。

    オレは髪の毛や上着を絞れば何とかなったが、プールに落ちた王馬や夢野は違ぇ。夢野は上着が無事だったのが救いだったがそれ以外はびしょ濡れだ。王馬だって似たような状況で、頭の傷が開かねぇか心配したんだが…王馬が「問題ない」しか言わねぇからこっちもそれ以上は聞かなかった。
    ――聞いた所で要らぬ争いが起きそうだったしな。

    夢野「…濡れてるからかなり気持ち悪いのぅー…」

    王馬「元々の原因は夢野ちゃんだけどねー!」

    夢野「むぅ…それは、すまぬ…」

    廊下に出るや否や、夢野がしょんぼりした顔で愚痴る。王馬の返答が正論すぎて夢野が更にしょぼくれてんぞ…。

    百田「夢野しょぼくれんなって。起きちまったもんは仕方ねーだろ?」

    夢野「うむ…そうじゃが…」

    夢野の頭をポンポンと叩く。夢野はビクッと肩を震わせてたが「すまぬ」とだけ答えたんだ。

    王馬「まー頭はいい感じに冷えたんじゃないのー?」

    百田「王馬、ったくこんな時にも冗談はよ…」

    王馬「『こんな時』だからこそでしょ。まーオレの冗談通じないんじゃーしょうがないけどね!」

    にししと笑うが唇が紫色だ。…そりゃそうか。
    段々と肌寒さに加え不気味さがま、増してるからな…って深く考えてっとチビりそうになる。ヤメだ。悪い方向に考えねぇようにしねーと気が滅入っちまう。

    百田「また『 保健室 』に行くとはな。往復しかしてねーが…ちゃんと進んでんだよな…そのアレだ『 幽霊の気を沈める 』だったか?」

    ぐしょり、ぐちょり。水分だらけの上履きの足跡を残しながらも廊下を歩き始めた。王馬を背負うにも濡れちまってるし、背負うにもちょっと気が引けたから歩くスピードは王馬に合わせて、だ。
    夢野がはぐれない様にと掴むオレの裾は水が滴ってるな。

    王馬「それだったら今度こそオレたちのやってる行動が無意味になっちゃうでしょ?
    それが一番つまらない展開だし流石にないと思いたいね」

    夢野「そう、じゃな…」

    珍しく王馬が肯定の意味で答える。夢野の顔色はいまいちよくねーが大丈夫なんだろうか?
    ――と振り向くと夢野と視線が合っちまった。夢野はオレの心を読み取ったのか俯く。

    夢野「百田よ。ウチは平気と言いたいが…ここを通る度に空気が重くなるのじゃ。
    恐らくこの階のどこかにおるのじゃろうな…『 被害者の幽霊 』とやらがの」

    百田「ゆ、夢野…そ、そうなのか」

    ぶ、ぶ物騒な事をサラッと呟くんじゃねーよ!!
    だったらそいつらを見つけた方が早いんじゃねーか?とも思ったが、先行く王馬が眉間にシワを寄せた。

    王馬「それなら夢野ちゃんの言う気配を察知して『 幽霊 』を探し出すのも手だけど…1人浄化――除霊してるような状態だからさ、異変を察知した残り2人が同じ場所にいる可能性も否定出来ないよね。
    だから先に見つけるのは『 3人目の遺体の一部 』からじゃない?
    その方が上手く行けば2人同時に何とかできるからさ」

    それに今ずぶ濡れ状態でなんかあった時にすぐ行動に移せるとも思えないしさ、と続けた。

    百田「テメーにしては慎重だな」

    王馬「当たり前でしょ?
    …ただでさえ何が起きてるのかも最原ちゃん達の行方も知れずなのにいきあたりばったりで行動出来る方が頭のネジはね飛んでるよ」

    …ここで終一の名前を出されると答えに詰まる。
    確かにそうだよな。ぐうの音も出ねぇ。

    百田「ってもよ、その『 3人目の遺体の一部 』っーのはよどこに…」

    人形『 …しく…しく 』

    百田・王馬・夢野「「「っ!!」」」

    『 保健室側 』の階段に差し掛かった時だった。まるで待ってましたと言わんばかりにケタケタと人形の声が響いたのは。
  114. 114 : : 2019/09/24(火) 00:22:09

    人形『 オ友達ノ子ガ ブツカッタ 』


    人形『 「壁」ノ 近クノ 床ノ下… 』


    人形『 頭ガ転ガル 視線ノ 先ノ下ヨ 』


    王馬「――っ!?」

    一人王馬の表情が曇る。ま、まさか…っ!
    友達のぶつかったって事はよ、アンジーの死体の側に有るってことだろうが!!
    思わず息を飲んじまうが『 文化人形 』は淡々とその先の言葉を紡ぐ。


    人形『 血ガ床下ニ 染ミテ 来テ 』


    人形『 ポタポタ、ポタポタ 』


    人形『 クサイクサイ、ニガイニガイ 』


    人形『 ハヤク ココカラ トリダシテ! 』


    人形『 ケタケタケタケタケタケタ!!! 』



    夢野「…う、嘘じゃ!!そ、そんなっ!!」

    夢野の悲鳴がこだまする。恐らく事情は大体把握しているんだろうがあまりにもこれはひでぇ、酷ぇよ…。
    夢野のポケットから半身を出している『 文化人形 』が嘲笑うかの如く狂ったように嗤う。そんな様に思わず顔を顰め、俯き唇を噛む。

    王馬「――っくそ!!…なんて所にあるんだよ!」

    バンッ!と王馬が壁を拳で叩く。その音に肩が震える夢野は今にも泣きそうな面構えをしてた。

    百田「…んな所にあるモン、易々と取れるわけねーだろうがっ」

    それが見知らぬ人の遺体のそばならまだ救いはあったかもしれねー…だがよ。『 壁にぶつかった遺体 』つーのはよ…1人しか該当しねぇ。

    んなもん。…っく。


    王馬「…オレが行く。行けば良いんでしょ」

    静まり返った階段の中で王馬が呟く。
    オレの袖を掴んでいた手を離して、夢野が王馬の側へと駆け寄り、胸倉を掴む。…それは普段行動がゆっくりしてる夢野じゃない速さだった。

    夢野「――っ!!王馬っ!!お主っ!!」

    涙声に王馬は胸倉を掴む手を払う。その手つきは嘘つきならぬ丁寧だ。

    王馬「最初見つけたのは夢野ちゃんだし、2人目は百田ちゃんだろ。だったら3人目はオレが取りに行くよ。夢野ちゃんに取りに行かせるのは流石に酷だしね。勿論百田ちゃんにも言えるけどさ」

    夢野の頭をポンポンと撫でる。が、視線はオレに向けられていた。
    ――いつもそうだ。コイツは勝手に物事を決めて勝手に行動しちまう。そして気づいた時にはもう戻れぬ位置に居るのはいつもの事だ。

    そう、今だってよ…。

    百田「いいのかよ。テメーはそれで」

    だがそれを咎める事は出来ねー…ただ言えるのは肯定でも否定でもねぇ。念を押すように再度聞くことだけだ。それに王馬は頷く。

    …決意は固ぇみたいだな。だったら咎める事は出来ねーな。
    する事なんて出来るハズがねぇ。

    王馬「先にいくね。…『 保健室 』で待っててよ」

    夢野「…うぐっ…」

    夢野のすすり泣く声を背に王馬は先へと踏み出した。


    …ズルいよ、お前。ホント美味しい所だけかっさらうのは上手いよな。

    嘘つきの癖によ。






    (大変お待たせ致しました!)

    question、>>115番さん、視点安価
    (どちらの視点でも進行します)


    …王馬か百田のどちらにしますか?
    名前を記入してください。
  115. 115 : : 2019/09/24(火) 17:35:19
    更新ありがとうございます
    王馬視点でお願いします
  116. 116 : : 2019/09/25(水) 00:39:14

    『 王馬小吉 』side

    あーもー。ドブのような匂いが髪の毛から臭ってる…タンカを切って『 3人目の遺体の一部 』を取りに行くと言ったは良いけど、やっぱり自ら進んでやるべきじゃないよね。

    せっかく夢野ちゃんが面倒くさがらずに包帯巻いてくれたけどさ。…っと話が逸れちゃったね。

    王馬「はぁ、この先か…」

    『 保健室 』の先、自分の血の跡にアンジーちゃんの血の跡を踏み潰し匂いが濃い廊下の先へと歩を進める。

    …ガラスの破片やら床に引っかかる制服の破片。
    上履きは道中で脱げたんだろう。あの時は冷静に見ることは出来なかったものをマジマジと見ながら進む。

    王馬「(時間が経過したのもあってなかなかキツイ匂いしてるよね…こりゃ百田ちゃんはおろか夢野ちゃんには任せられないよね)」

    さらに進む。…やや月明かりが翳り、廊下が暗くなる。明かりのつくものとポケットをまさぐったけどいくら探してもない。そっか。恐らくゴン太に襲われた時にでも無くしたんだろうなーあー災難だね!

    仕方ないからそのまま突き進む…と壁際まで来た。やや暗いから直視する事は無いだろうけど原型を留めていないそれがあまりにも惨い。

    王馬「…アンジーちゃん…」

    脳裏に必死に説得する彼女の姿が浮かぶ。今思えばあまりにも無策な中でよく行動しちゃったなとも思えちゃう。それはオレにも言えるけどね。

    王馬「…っと感傷に浸る間はないね。探させてね。アンジーちゃん」

    周囲を見渡す。アンジーちゃんの頭を探さないといけない。…とあった。半開きの生気の無い瞳。
    銀色の房が血濡れに染まってる。

    確か、その視線の先の突き当たりの床にあるっていったか。そこへと進む。目印と言わんばかりに夢野ちゃんから奪った帽子が落ちている。血塗れで返せそうにないから黙っておくか。

    ま、夢野ちゃん本人から咎められてないしね。

    王馬「乾いてる所をつまんで…っとあれ?」

    帽子の頭の部分を摘み、近くに置く。すると親切設計なのかそれとも嫌がらせか、麻袋が隠されていた。その大きさは今までの中で1番小さいかもしれない。血に濡れてない紐の部分を持ち上げて行くと血がぽたぽたと麻袋から滴ってる。うげぇ。

    王馬「暗いから名前までは分からないか。…『 保健室 』で確認しないとだな」

    再度振り返り、もう光を差さないアンジーちゃんの濁った青色の瞳を見る。ほんと嫌味だよな。

    王馬「…夢野ちゃんは必ず脱出させるからね、ませいぜい高みの見物しててよ。アンジーちゃん」

    …と。足元に何かが転がってきた。徐に拾うとそれはアンジーちゃんが普段首に付けていた首飾りだ。

    普段転がるような代物じゃないのにどうして?

    王馬「…なんでだろう」

    首を傾げると懐かしい声が響いたんだ。

    ??『 秘密子に… 』

    ??『 それは魔除けでもあるから…きっと役に経つと… 』

    …ふうん、コレが?
    そんなこと今まで話してなかったじゃん。

    ――でもまあいいか。


    王馬「まー胡散臭いけど貰ってこっかなー…わかったよ、アンジーちゃん」

    それを握り締めて今度こそその場を離れることにする。



    ▼【 血濡れの麻袋 】を入手しました…▼
    説明:(文化人形に導かれて見つけた赤黒い染みだらけのよくある給食用の箸セットの入ったぐらいの大きさの巾着袋です。名前の部分が血に濡れていて名前を判読するには明るい場所で確認する他方法がありません)



    ▼【 アンジーの首飾り 】を入手しました…▼
    説明:(夜長アンジーが普段から付けている首飾りです。出身地ではおまじないの一種として高校入学時に両親から貰ったもので、様々なものから護るという意味合いがあるようです)


  117. 117 : : 2019/09/25(水) 00:39:36

    アンジーちゃんの遺体を背に『 保健室 』へと入ると、百田ちゃんが気難しそうに灰被りのストーブの前で仁王立ちしてたんだよ。
    いやーびっくりたまげるよね!

    王馬「…なにしてんのさ」

    百田「お、おう。王馬か!今向こうで夢野が服脱いでんだよ。丁度あった…いや丁度じゃねーが、応急処置だがシーツで身体拭いてんだよ」

    ああ、成程ね。だからソワソワしてたんだー…。
    こっちは色々な思いでとるもん取ってきたのにね!全くすったもんだだよ!

    夢野ちゃんは、どうやらベッドのパーテーション
    の向こう側で着替えてるのかなんなのしてるみたい。シルエットが浮かび上がってるからスマホかなんかで明かりを使ってんだろうね。

    …と百田ちゃんがスっとシーツを差し出す。
    なんだよ。

    王馬「なにこれ?」

    百田「テメーもびしょ濡れだろ。気休めだと思うが拭いとけよ」

    ああ、そういう奴?…まあ別に気遣いとかしなくてもいいけどさ。

    王馬「えーそんな黄ばんでるので拭けるとでもおっふ」

    顔面目掛けてシーツが顔に掛かる。最後まで喋らせろってんだ!!
    …くしゅん、うわー埃っぽい!!

    百田「その…持ってるもん寄越せ。それから身体拭いとけよ」

    寄越せって割には奪い取るように取った百田ちゃんはそのまま仁王立ちして黙りこくっちゃった。

    なんだよ!なんだよ…もー!
    悪の総統がこんな風に指図されんの好きじゃないの分かってんのにどうしていつもコイツらときたら!!

    ハイハイわかったよ。そんなに拭いて欲しいのならお望み通りに拭くってば!

    王馬「…はぁ、わかったって!夢野ちゃん覗いたら怒るからねー?」

    夢野「そ、それはウチのセリフじゃ!!」

    減らず口は相変わらずで何より。
    とりあえず、上半身脱ぐもの一通り拭いて中に着てたTシャツを脱ぐ。…うわぁー緑色してるし、臭っ!

    こりゃ思ったよりもびっちょりで長時間着れたもんじゃねーな…と青色のシャツをストーブに置いてワイシャツだけ羽織る。うわー寒い!

    王馬「このシャツびちょびちょで着れたもんじゃないよー」

    百田「だろうな、そりゃそうだろ…でもな夢野よりはマシだろ?」

    百田ちゃんが袖を軽くつまむだけでも水が染みてくる。こんなのさっきまで着てたと思うだけで気持ち悪ー!

    王馬「このシャツ気に入ってたんだけど…洗濯してもどうせ落ちやしないんだろ…置いてこっと」

    百田「いいのかよ、それで」

    別にと返して、髪の毛を拭く。
    あーあキューティクルが傷んじゃう!!

    王馬「そうなんだよォオオオオオッ!!
    ウェジュルウェエエァイア!」

    百田「お、オメーッこの期に及んで嘘泣きかよ!!」

    しかも言葉に表しにくい表現やめろよな…とも言われちゃうと更に言いたくなっちゃうね!
    泣いてスッキリしたし。


  118. 118 : : 2019/09/25(水) 00:39:59

    一通り拭いてると夢野ちゃんがおずおずと顔だけ出した。どうやらオレの着替え姿を見たかったんだね!役得じゃん!そーそー見せないけどさ。

    夢野「もう、良いか?」

    オレがわざわざ結んだスカーフを結び直したのか結び目が不格好だし返す気ないのかよ…なんて思ってると夢野ちゃんがこっちに戻ってきた。

    百田「おう、もう夢野大丈夫なのか?」

    夢野「んあーウチは髪の毛が短かったのが功を奏したのじゃ。下着は濡れておるが問題はないぞ」

    ニコニコと微笑む姿は腹立たしいけど仕方ないね。

    夢野「王馬が戻ってきたということは…あったのじゃな」

    視線が百田ちゃんの手にある麻袋に留まる。
    見つかるまでの道筋でも話そうかとも思ったけどなんとも言い難い表情をしてるから追求しなかった!優しいね!

    王馬「まあね。あ、そうだ帽子はアンジーちゃんの遺体近くにあって使い物にならなさそうだから取らなかったけど、コレは渡しとくよ」

    腕に絡めていた『 アンジーちゃんの首飾り 』を渡す。奇跡的に血痕や欠けはないからアンジーちゃんの言う通り、魔除けとしては色々いいのかもね。

    夢野「そういえばウチの帽子をつけておらぬと思えばそういうことじゃったのか!し、仕方ないが帽子は諦めるとするかの。
    んあ?――…こ、これは…アンジーの…っ!」

    触って握りしめる。大事そうに抱くそれを見るとやるせない気持ちが押し寄せるけど押し寄せるだけだ。

    王馬「アンジーちゃん言ってたの思い出したんだよね。確かそれ『 魔除け 』になるんだって。だから丁度持っておいて損はないんじゃないの?…オレや百田ちゃんが持つには似つかわしくないしさ」

    夢野「…アンジーっ…」

    うっうっ…と嗚咽混じりに呟く。そうだよね。夢野ちゃんにとっては大事な友達だったアンジーちゃんの形見になっちゃう訳だよなーと思うと百田ちゃんに小突かれた。なに?

    百田「あーいや、今の今まで忘れていたんだがよ。これ『 違う次元 』の時に見つけたんだ。返すぜ――スマホ」

    と渡されたのは画面にヒビの入ったスマホ。ヒビの隙間には赤いスジが入ってる事からゴン太に襲われた時、落としてしまって付いたものだろう。
    ってか百田ちゃんが持ってたのかよ。

    王馬「なんだ。持ってるなら早く返してくれたら良かったのにー」

    百田「ああわりぃな。返すタイミングをつい失っちまってたからよ」

    ま、とりあえずそれを受け取ってポケットにしまう。



    ▼【 王馬のスマホ 】を返しました…▼



    ▼【 夜長アンジーの首飾り 】を夢野に渡しました…▼



    王馬「まー。これで少し休憩したってことで、本題入らない?」

    夢野「本題…かの?」

    泣き顔を上げてオレの方を見る。色々思う所があるとは思うけど感傷に浸る前にすることがあるんだよね。それは。

    王馬「この『 2つの遺体の一部 』を『 それぞれに返さないと行けない 』って事だよ」

    百田「そうだな。ってもよ、これはどっちに返せばいいのかまずわかんねぇよな。間違えたりでもしたらよ…」

    百田ちゃんの顔色が青ざめる。想像でもしたんだろう。ま、最悪の事態を想定するのは至極当たり前だと思うけどさ。流石にアホな顔で表さなくてもいいよ。

    王馬「…まずは百田ちゃんが拾ったこっちの方は『 1の6 つじ ときこ 』って書いてあったよね」

    ストーブの上に置かれた大きめの麻袋を指差す。
    今更中身を見る気はしないけどいいものは入ってないのは匂いからして分かる。

    百田「んで、王馬が見つけたこれは…赤くて見づれえーな…とあった、王馬明かり照らしてくれねーか?ココだ」

    百田ちゃんに言われるがまま、さっき返してもらったスマホのライトを当てる…うっすらとだが名札が縫い付けてられていて名前が見える。

    百田「『 天神小学校 5の2 かんの ゆき 』か…」

    王馬「5年生と1年生なら体格で分かるかもね。
    まあ確率は2分の1だから百田ちゃんお得意の勘でも行けるかもしれないけどさ。もしもの時の保険で幽霊の名前を知っておけば呼びかけやすいかもよー?」

    夢野「…うむ。しかし、どうやって渡すかは…」

    王馬「1人目と同じように直接渡すしかないんじゃない。そしてどうなるかは――」

    乞うご期待!…って所かな。期待するもんじゃないけど出来ればいい方向に向かって言って欲しいもんだよね。

    百田「うっし、そうとなりゃ急げだな。早速残りの幽霊の説得を始めねーとだしな」

    話が纏まった所でついに動き出す。
    『 保健室 』をでて今度はさっき夢野ちゃんが反応した『 1階 』を重点的に見ることにしたのさ。


  119. 119 : : 2019/09/25(水) 00:40:20

    王馬「ってか!百田ちゃんの上着重いね!水含んでるせいもあって温もり感じらんないんだけどさー!!」

    夢野「お主が頻繁にくしゃみをするから貸してやっとるのじゃろうからそこまで言わなくともよかろうに」

    百田「夢野、それフォローになってねぇよ」

    『 保健室 』を出て階段を降りた所でまた一段と冷え込む。冷気じゃなくて霊気の方で冷えてる感じがするね!

    あまりにもオレがくしゃみをするからって強引に百田ちゃんの上着であるセーターを着てるのは良いけど半袖の上にセーターを着るもんじゃないよね!チクチクする…まるで百田ちゃんの尖った髭よりもチクチクするんじゃないの?
    …よく分からない例えしちゃったけど。


    喋っていると不意に『 中央廊下 』の手前で立ち止まった夢野ちゃんが静かに制止する。

    夢野「この奥に…おる。やつらがおる」

    なぞの霊感レイダーがビンビンな夢野ちゃんは声を潜ませる。案外早く見つか、

    百田「…案外早く見つかったな、ここからじゃ暗くて姿見えねーが…いるんだな」

    王馬「んもーオレの言葉とらないでよ!…2人1人なの?分かる?――夢野ちゃん」

    今まで騒いでいたオレたちに緊張が走る。そりゃそうだ。いつまでもふざけ合う場面じゃないしね。

    夢野「…強いから、恐らく2人じゃ」

    王馬「そう」

    夢野ちゃんがオレらを見る。先程までのか弱い彼女ではない。決意に満ちた瞳だ。

    夢野「…ここを進めば脱出の手掛かりが見いだせるかもしれぬ。良いな慎重に行くぞ…」

    百田「たりめーだろ、行くぞ。王馬、夢野」

    王馬「リーダーぶっちゃってさーなんなのさ。…まこれで脱出が出来たら万々歳だけどねー」

    互いに頷きあってオレらは廊下の先へと歩みだした…








    question、>>120番さん。

    イベント:2つの幽霊との邂逅

    (秒数安価、結果は後程)





    …これが最後の安価になりますようにお祈りしましょう
  120. 120 : : 2019/09/25(水) 07:40:18
    届け…!この想い…!
  121. 121 : : 2019/09/26(木) 02:53:16

    (安価結果発表です。
    偶数、ゾロ目…成功、奇数…失敗
    でした ですので一気に進みます。
    ご協力ありがとうございました!)


    廊下を無言で進む。…と暗かったハズの廊下に青白い2つの光が次第に近づいて来たんだ。

    夢野「――っ!来るぞ」

    夢野ちゃんが先頭に躍り出てオレたちの歩みを止めると同時に青白い光が一気にこっちに迫って来た!

    ??『 …かえひて……。 』

    ??『 かえひてぇえええっ!! 』


    百田「っ!?」

    息のつく間もなく2つの青白い光…幽霊に前後と背後を取られちゃう。嫌な威圧感とアンジーちゃんが殺されたあの時の記憶が混ざってどうも気持ち悪いね!!

    ??『 ゴボボッ!?…ゴブチュ、グチャ 』

    オレたちの背後に居るのが首から上のない小さな女の子の幽霊。恐らくこの子が『 つじときこ 』
    なんだろうね。

    ――そして。

    夢野ちゃんから見て数歩先に居るお下げの女の子…夢野ちゃんよりやや低い身長の片目が虚ろな目の子が恐らくもう1人の『 かんのゆき 』なんだろう。

    オレらは何も言わずに頷き合う。夢野ちゃんが百田ちゃんが持つ『 かんのゆき 』――アンジーちゃんの遺体の傍に落ちていた『 遺体の一部 』を受け取り差し出す。

    夢野「…お主の名前。『 かんのゆき 』じゃな。してウチらの背後にいるのが…」

    今度は百田ちゃんが振り返りやや青ざめた表情で『 つじときこ 』、プールで手に入れた『 遺体の一部 』を突き出す。って、僅かに震えてるの見ると笑うんだけどさ!

    百田「オメーが『 つじときこ 』なんだろ?受け取れよ。これはテメーらのモンだ。」

    2人はオレみたいに言いたい事を言わなかった。あーあ言えば良かったのにと思う反面、2人の強ばった表情でさ取っちゃうね。

    我慢してんだなって。大人だねー。


    …静寂が包む。2人が差し出したそれは同時に幽霊の手の中に収まり僅かな光を生み出したと思えば――吸収され、2人の姿が元の姿へと戻って言ったのさ。



    ▼【 血濡れの麻袋 】を差し出しました…▼



    ▼【 女児?の遺体の一部 】を差し出しました…▼



    ??『 …。 』

    かんのゆきの方が瞳を伏せ目配せするようにオレら背後を気にする。それに伴って背後から声が響く。

    つじときこ『 …ありがとう…おにいちゃん、おねえちゃん 』


    百田「――っ!!」

    それだけ呟くとよしざわりょうと同様に光となって消えちゃった。ビビってふらつく百田ちゃんの姿が滑稽だけど、かんのゆきの言葉に現実に引き戻される。

    かんのゆき『 …ごめんなさい。ありがとうございます。…お姉さん、お兄さん方… 』

    悲しそうに天を仰ぐ。そんな表情されたらこっちだって何もいえないじゃん!!

    夢野「お主…」

    それは夢野ちゃんも同じみたい。かんのゆきに触れようと手を伸ばした時だった。

    かんのゆき『 ――っ!! 』


    ガタガタ…ガタガタ…


    夢野「んあ!?」

    百田「またかよっ!?」

    王馬「地震っ!!しかもこれって――」


    かなり大きな揺れが場を支配したんだ。最初に『 天神小学校 』に来た時、来る前と同じぐらいの揺れが、ヤバっ、立ったていら――




  122. 122 : : 2019/09/26(木) 02:53:39











    『 ???? 』side


    大きく揺れるここは『 保健室 』。
    揺れは収まることはなく荷物は動き、物が落ちて床に破片が飛び散ります。

    ただ一点。まるで守られてるように動かない保健医の使う机の上のノートがペラリペラリとページがめくれ、



    そして―――












  123. 123 : : 2019/09/26(木) 02:54:03

    『 夢野秘密子 』side

    …うっ。身体が酷く重いのじゃ…。
    瞼を開き、起き上がるとする。
    いつの間にやら気を失っておった様であれほどの地震だったのにどうやら身体は痛くも痒くもない。

    夢野「…ここは…?」

    どことなく雰囲気が違う。それは今までおった『 天神小学校 』ではなく、それは。

    夢野「っ!!ここはっ!まさかっ!」

    見慣れた16もの机。
    思い出してきたのじゃ!怪談をやると真宮寺とアンジーが机を後ろ押して皆で囲った…ウチらの通う『 希望ヶ峰学園 』の1年校舎じゃ!!

    驚き周囲を見渡す。…王馬が教台に倒れており、百田は窓側にもたれかかっておる。…っとポケットからスマホを取り出すと時間は23時過ぎを表示しておった…んあ?なんじゃと!

    夢野「と、とにかく王馬と百田を起こさねばならねばっ」

    未だふらつく足元じゃったが踏ん張り一歩一歩と進む。まずは王馬じゃ。
    教台に横になる王馬の側へと行き、肩を激しく揺する。

    夢野「王馬っ!王馬っ…しっかりせい!!」

    どれぐらい気を失っておったのかも分からぬ。じゃが濡れていたはずの髪の毛と百田の上着がかわいておったから結構な時間気を失っとったかもしれぬ、と思うと身体が震えてきてしまうのじゃ。

    夢野「王馬っ」

    何度呼びかけても反応はなく、ま、まさか頭の傷のせいでしし死んで――

    王馬「ごほっ、げほっ…うっ…」

    涙で目がうるうるして来おった最中、僅かに動き咳き込んだ姿にホッと胸を撫で下ろしたぞ。

    夢野「よ、よかった…っ」

    王馬「…う。ゆめのちゃ…ん?」

    僅かに顔を上げ意識を取り戻した王馬がウチと視線が合う。良かったっ!

    王馬「…ここは、ど――!?」

    完全に覚醒した王馬の言葉が止まり固まった。
    どうやらここが何処なのかを理解したようですぐに立ち上がる。

    王馬「帰ってこられたの…?」

    驚き固まる王馬がサイド周囲を見渡す。そりゃそうじゃ、ウチも驚き何も言えなくなっとるのじゃから。望んでいたものがこのような形で取り戻せるとは夢にも思えなくて。

    夢野「そうじゃ!先ず百田を起こさねばならぬ!」

    言葉が上手く言えておるかも分からぬがそれに王馬が頷く。そのままウチらは百田の側へと駆け寄りその肩を激しく揺さぶった。

    夢野「百田!百田!!」

    王馬「寝坊助な百田ちゃん!起きろって」
  124. 124 : : 2019/09/26(木) 02:54:24

    百田「…う…こ、ここは…」

    暫くして目を覚ました百田はウチらの表情を見て驚く。地震はと戸惑いながらも立ち上がった。

    百田「…『 天神小学校 』じゃねーのかっ!って事はっ」

    弾かれたように扉に走る。そして廊下へと1歩踏み出してようやく状況を理解したようで安堵の息を吐きウチらの元へと戻ってきたのじゃ。

    百田「夢じゃねーよな…」

    震える百田の声にウチは零れそうな涙が零れてとめどなく溢れた。そうじゃ、帰れたのじゃっ!!
    その様に王馬が脇を小突いて来るが気にしない。涙と嗚咽を我慢出来んじゃったから許せ。

    今だけは――


    王馬「夢野ちゃん。泣いて喜ぶのまだ早いよ。
    最原ちゃんたちの姿はない。同じ次元にいたオレらしか居ないみたいだよね」

    百田「だよな」

    ポンポンと百田がウチを宥め、言われた言葉に冷静になる。そうじゃ。最原達が居らぬ。廊下に倒れておるならば百田がさっき廊下に出た時に見つけてるはずじゃしの。

    夢野「というこ」

    ウチが教台を見た瞬間じゃった。王馬が倒れていたはずの場所が黒く爛れ、黒い無数の手がこちらへと伸ばしておったから。

    夢野「っ!!な、なんじゃ!?」

    王馬「――まだ終わってはないみたいだね」

    百田「っくそっ!」

    そこからうっすらと見えるのは『 天神小学校 』の校舎。まだ終わっておらぬというこのなのか!
    息を飲むウチらじゃったが『 天神小学校 』側から青白い光が3つ、現れたのじゃ。

    それは先程ウチらが『 遺体の一部 』を渡した幽霊の3人で、彼らは静かに黒い境界線上に浮いて驚くウチらを見つめていた。

    百田「今度はなんだって言うんだよ!」

    百田の怒号に近い声が外の激しい雷鳴と合わさる。音に震えるウチをよそに『 かんのゆき 』が1歩こちらにより、手を胸の前で組み静かに語り出すのじゃ…

    かんのゆき『 ちょうどこんな、雨のふる ほうかごの事でした…
    わたしがゆうかいされたあの日
    …わたしはお母さんとケンカをしてしまいました… 』

  125. 125 : : 2019/09/26(木) 02:54:42

    まるで聞いて欲しいという声色でウチらを見ながら窓に視線を向けるのじゃ。窓からは雨が吹き込んでおって確か台風か何かが来ている事を思い出したのじゃ。

    かんのゆき『 お母さんと顔を合わせるのがいやで学校の後、わたしは家へ帰らずに……ぼぉっと、わたりろう下にしゃがんで、雨をながめていました。 』

    王馬「急になんの話を」

    夢野「分からないのじゃが、聞かないといけぬ気がする…」

    百田「っても勝手に話し出してんだぜ?」

    コソコソとウチらが話しておっても気には留めず、淡々と呟いていくのじゃ。

    かんのゆき『 そうしたら……わたしのとなりにヨシカズ先生がすわって
    うんうんと、わたしの話をきいてくれたのです。 』

    かんのゆき『 先生…言葉を話せない病気だったけれど、心はやさしい人だったから…
    わたしは好きでした。…けれど… 』

    かんのゆきの言葉が詰まる。なんじゃ?
    確か、そのヨシカズっと言うものが話によるとお主らを殺したのではないのか?
    ふと違和感と疑問がせりあがった時、かんのゆきはゆっくりとウチを見つめた。

    かんのゆき『 …お姉さん、お兄さん。ごめんなさい。 』

    夢野「お主…」

    ウチの声に僅かに視線を逸らして軽く頭を振ると再度向き合ったのじゃ。

    かんのゆき『 さっきは…ありがとうございます… 』

    かんのゆき『 殺されたわたしたちを…成仏させようとしてくれて… 』

    『 遺体の一部 』を渡し本来の人格を取り戻したのか嫌な気配は微塵も感じられぬ。

    百田「成仏させようと…って『 遺体の一部 』を渡しただけじゃ足りなかった、って事かよ」

    百田が噛み付く。それにビクッと肩を震わせつつも答える。

    かんのゆき『 はい。成仏にはいたらないんです。例え『 遺体の一部 』に『 人形の懺悔 』を渡されても…無意味なんです 』

    それは、と続ける。

    かんのゆき『 わたしたちの成仏に許す、許さないのそれぞれの【 意志 】は関係ないんです。そもそも【 懺悔 】が違うんです 』

    王馬「『 懺悔 』が違うって?」

    そうじゃ。成仏には『 犯人の懺悔 』がいると思っておったのじゃが…首を傾げるウチらにかんのゆきは言葉を紡ぐ。

    かんのゆき『 方法は正しいと思います。わたしたちが【 天神小学校 】を異空間に閉じ込めた【 断片 】だから… 』

    かんのゆき『 だけど違うんです…【 犯人の懺悔 】が…犯人は… 』

    王馬「『 犯人が違う 』?だって犯人は――」

  126. 126 : : 2019/09/26(木) 02:55:00

    王馬の言葉にかんのゆきが返答に詰まる。真実は違う――そうでも言いたいのか?

    百田「そもそも、アンジーを殺しておいてテメーは良くもそんなことをっ」

    かんのゆきはその言葉に1歩下がった。泣きそうな表情でそれでも健気に答える。

    かんのゆき『 わたしたちは…【 天神小学校 】を留めておく【 歯車 】にしか過ぎないんです。だから… 』

    と呟いたが頭を振り微笑んだ。

    かんのゆき『 殺され方が…殺され方だったので…感情のコントロールが出来ないんです…お姉さん方が【 遺体の一部 】を返してくれた事で本来の人格が取り戻せたのですが…それもすぐに失うでしょう 』

    王馬「だとしても――!」

    王馬が一歩出る。何も言わぬウチの代わりに気持ちを吐いてくれた王馬の袖を掴み静かに答える。

    百田「夢野…良いのかよ?『 私達は死に方が悲惨だったから人を殺してもいい 』って理論はダメだろ!
    それこそ本末転倒だろうが」

    …ごもっともじゃ。アンジーはかんのゆき達の手によって殺された。それは事実じゃしアンジーは帰ってくることは無い。それをこいつらにぶつけた所で無意味なのじゃ…もうアンジーは…死んだもの達は…っ。

    夢野「…だったら、だったら最原たちをここに『 天神小学校 』から脱出する事は出来ぬのか!?」

    アンジーや死んだもの達は帰らないのであればせめてまだ生きておる最原たちを助けてはくれぬか!?

    しかし、ウチの言葉にかんのゆきは視線を逸らす。無理なのか…?

    かんのゆき『 それは難しいです…ごめんなさい。
    ただでさえ【 天神小学校 】は無差別に人の命をくらい続けてきました。そこに残された幽霊たちは行き場を失い理性が壊れかけているんです。…それはわたしを含めてみんなそうです。
    みんなが無作為に人を殺す怨霊になってしまうのも時間の問題です 』

    夢野「お主もウチらを助けてはくれぬ、という事かの」

    コクン、と僅かに頷き悲しそうにごめんなさいと呟く。

    百田「だ、だとしたら終一たちを救う方法はあんのか!?だったらオレらが助けるからよ」

    百田の言葉に頷くウチと王馬。気持ちは皆同じ…じゃな。ウチらの決意に押されたのかかんのゆきはその小さな口を開いた。

    かんのゆき『 ひとつだけあります…皆さんが知る方法です。もう一度【 天神小学校 】へ戻って
    …わたしたちを…【 天神小学校児童連続殺害事件 】の【 被害者 】を成仏させてくれれば…
    【 歯車 】を失った【 天神小学校 】に大きな歪みが生まれます。
    そうすれば…もしかしたら… 』

  127. 127 : : 2019/09/26(木) 02:55:15

    百田「もう一度、あの場所に行くってことかよ」

    百田が腕を組み唸る。それに王馬もやっぱりといった風に頷きかんのゆきを見る。

    王馬「…なるほどね。だろうとは思ったよ」

    夢野「じゃが…『 遺体の一部 』とも『 犯人の懺悔 』も足らぬとはどういう事かの?…ウチらはそれではあと1人、ソヤツを成仏するしかないというワケになるのじゃが――」

    違和感。何故かあと一人の部分に違和感を感じておった。何故じゃ?とそれは王馬の声に掻き消される。

    王馬「あのさ、かんのゆきちゃんでいいの?
    さっき口ごもったことあったよね。『 犯人が違う 』に近いニュアンスをしてたけどさ…それってつまりは」

    かんのゆき『 あの時のこと、思い出したくないんです。話したくないんです。…でも 』

    王馬の言葉を遮るようにかんのゆきが畳み掛ける。そして、ウチの方へと一歩一歩と歩み寄る。

    かんのゆき『 【 あの日の真実 】知りたいのであれば教えます。…お姉さん。手を…わたしの手を取ってくれますか? 』

    言われるがままにかんのゆきの差し出した手に触れる。ひんやりとした白銀と同じような感触。じゃが実体があって掴むと返してきて…

    かんのゆき『 少し、目を閉じてください 』

    目を瞑る。その瞬間、コツンと額に何かが当たる…なんじゃ?戸惑うウチをよそに百田と王馬が何か言っておるが聞こえない。
    近くに居たハズなのにどこか遠くで聴こえる音。
    身体が震え、芯から冷える感覚が全身を貫き――そして痛みが走る。

    夢野「んあっ!?ななな、なにがっいたっ…っ!」

    言葉が吐けないほど、立てないほどに痛みが走りそのまま―――泥に埋まる様な感覚が身体を包み…



    夢野「(暗い。ここはどこじゃ)」

    気がつけば横たわっておる。
    土の感触が妙に生々しい。確かウチは…教室で話しておったハズじゃ。なのにどうしてウチはこんな場所に居るのか理解出来ずにおった。

    夢野「(身体が…1ミリとも動かぬ…なぜじゃ!?)」


  128. 128 : : 2019/09/26(木) 03:27:31

    『 最原終一 』side

    東条さんが淡々と読み上げる記事を僕らは目で追いつつもその声に身を委ねる。

    東条「『 犯行現場で唯一生き残った赤いワンピースの女児、篠崎サチコ。サチコの家族は怯えるように他県に移って行ったとされている。
    驚いた事にこの篠崎家についての記述はこの事柄以外、当時の書類や文献のどこを見てもなにも見当たらない。
    惨劇の舞台となった学校や現役校長の嫡男による凄惨な犯行、そのスキャンダラスな背景の取材に目が眩み、この小さな生存者の聴取が疎かになったのではと予想したのだがそうではなかった。

    だれもそのサチコのその後を辿る事が、出来なかったのだ。 』」

  129. 129 : : 2019/09/26(木) 03:39:42

    『 夢野秘密子 』side

    夢野「(1ミリも動かせぬが…部屋の光景は何となくわかる…ぞ)」

    うちのマジ…魔法で動くことも出来るやもしれぬがマナが切れてしまって発動には至らぬ。ぐぬぬ…

    夢野「(恐らくはかんのゆきが見た光景を見せられておるのだと思うのじゃが…)」

    だとすれば、ウチの隣に小さい女子…これは『 つじときこ 』かの。その隣に男子…『 よしざわりょう 』じゃな。
    そしてウチのもう一方の隣には『 赤いワンピースの女子 』…ということは唯一生き残ったとされる女子じゃろうな。

    夢野「(手足を縛られて床に転がされておる…)」

    泣き声や悲鳴が響く中、どこからか図体のでかい男が現れたのじゃ。…コイツが『 ヨシカズ 』…犯人だとされる人物じゃな。ソイツがウチに近寄り布のようなもので目元を覆った。な、なんじゃ?

    夢野「(目隠しをされ、視界は奪われた。手足を縛られてしまっておるからなにも抵抗は出来ぬ)」

    底知れぬ恐怖が支配する。いくら魔法で鍛えられたウチとはいえ、おしっこをチビりそうになってしまう…怖い…誰か…王馬、てんこぉ…。

    夢野「(耳が過敏になっていく…)」

    泣き声が聞こえる度恐怖が増す。嫌じゃ…もう嫌じゃ…っ!!逃げたくなる、じゃが逃げることが出来ぬ。
    底知れぬ絶望感が支配して自然とウチも涙で目隠しの布が染みてきおった。

    足音が遠ざかる。『 ヨシカズ 』とやらがブツブツとうわ言のように単語を発する。
    かんのゆきが話しておった様に『 言葉が上手く話せぬ 』というのも手伝って聞づらい。じゃが…

    夢野「(じゅん、ばん…順番かの?それはどういう――)」

    ウチの戸惑いを打ち消すかの如く遠くで何かが刺さる音がした。ぐちょり、とそれは肉を断ち切るような――っ!

    ??『 ぃ"っ?! んぎぁああぁああっぃあ!?』

    遅れて『 よしざわりょう 』の声と血の臭いが漂ってきた。…なんじゃ!?
    凄まじい音波に近い声がその場に響く。それは刺す音に応じて聞こえ耳にこびり付く。


    ??『 ヴッ…ぃた…っアガッ、ンガッ…ヴッ… 』

    何十分という間聞こえていただろうか?時間が酷く長く感じられて辛い。もうやめてくれ!!


    夢野「(なにがっ…どうなっ)」

    ??『 アっ…アガッ…ご、…ヴッ…… 』

    声がどんどん小さくなっていく。…命の終わりが目に見え、そして消えてしまった。

    …殺害されておる。その実感がさらに恐怖となりうちの身体を強ばらせる。

    夢野「(もう終わりに…ならぬのか?)」

    ウチの祈りは届かず、すぐに隣の『 つじときこ 』へと向かう。

    ??『 い、いやぁぁああっ!! 』

    ザクり、ザクリ。今度は音じゃった。
    どこを刺されておるのじゃろうか?…それにしても大量に何かがゴボゴボと流れた音だけになった。

    …やがてゴトン、と何かが落ちる音がして静かになった。床に流れてくる液体と生臭い匂いが気持ち悪くなる。

    夢野「(…っ!足跡か?)」

    ジャリ、ジャリ…と足音が近付いてくる。
    『 よしざわりょう 』、『 つじときこ 』と来たら次は…『 かんのゆき 』、ウチじゃないか!?

    夢野「いやっ、やっ…!!」

    思考が停止してしまって口を金魚の如くパクパクとさせる。いや、まだ死にたくなっ…!!

    足音が止み、ぐいと髪の毛を引っ張られる。…痛みと同時に目隠しが…ズレ、ウチは見た―――


    『 ソイツ 』の顔を。

  130. 130 : : 2019/09/28(土) 02:49:54

    『 最原終一 』side

    東条「『 天神小学校の開校当初から閉鎖されていた地下室で、行方不明だった児童達の亡骸が発見された時の現場は、まさに酸鼻極まる凄惨な光景だった。
    鑑識の調査の結果、凶器は逮捕時に犯人が手にしていた、【 大きな裁ち切り鋏 】と断定。
    躊躇があったのか、男のものにしては軽めな力で、しかし執拗に殺意を持って犯行に及んだ事は確実であった。
    公式発表では、児童たちの死因は【 舌を切り取られたことによる失血死 】とされていたが、実際はもっと惨たらしい凶行が行われていた。 』」

    一呼吸。東条さんそれにしてもよく噛まずにしかも怪我をしているのに聞きやすい声色で読むよな…。

    東条「…最原君?…どうかしたのかしら?」

    視線があった。よほど不安な表情をしていたのだろうか?問いかけに赤松さんもこちらを見たんだ。大丈夫、続けてと答え、文字に視線を落とした。

    東条「そう。分かったわ…続けるわ」

    更に一呼吸。彼女が視線を落とし読み始めた。

    東条「『 以下は、規制によりメディアで報道されていない殺害の手口である。現場で惨劇を目撃したサチコの証言に基づいている。
    手足を縛られ目隠しをされた被害者達は、1人ずつ距離をおいて寝かされ順番に殺されていった。
    ひとりは鋏で腹部をメッタ刺しにされた上に臓器を抜き取られショック死。臓器は地下室の土床に粗雑に埋められた。
    ひとりは鋏で数十回にも渡って頬を刺され、口から上の顎部がちぎれて死亡。 』」

  131. 131 : : 2019/09/28(土) 02:50:12

    『 夢野秘密子 』side


    …目隠しがズレ、否剥ぎ取られウチの眼前に晒された光景はあまりにも酷すぎたのじゃ。

    血塗れの大きな鋏を手にウチを見下ろしているのは、ウチに目隠しを施した大男『 ヨシカズ 』ではなく。

    ウチの隣に寝かされておったハズの…
    『 赤いワンピースの女子 』じゃったのだから。

    生者とは違った異質な霊気に晒される。死んだ魚のような濁った灰色の瞳で見据えてケタケタと狂ったように笑いだしたのじゃ!!

    ??『 アハハハハっ、アハハハハっ!! 』

    ウチより小さなその身体で扱う鋏の一定のリズムで刻まれた音が不愉快極まりない。背けようにも金縛りにあったように瞬きさえ許してくれぬ。

    錆びた鋏の切っ先は真っ赤に濡れ、そしてピンク色の何かがこびりついておった。それをゆっくりとした動作でウチの目へと向けられてしまう。

    夢野「(これが…真実、なのか…っ?!)」

    目を閉じたい、『 ソイツ 』から逃げたい。
    『 ヨシカズ 』が部屋の隅で蹲り泣いていた。…ああ、かんのゆきが話しておった通り優しい奴だったのじゃ…そしてアヤツはただ――

    ??『 あはははははっ!! 』

    笑い声が耳にこびりつく、酷く楽しそうにウチの瞳に目掛けてそのまま…っ!


    夢野「(んぁあああああっぁぁああっ!)」

  132. 132 : : 2019/09/28(土) 02:50:35

    『 最原終一 』side

    東条「『 ひとりは、鋏で眼球を何度も刺された上に…スープのように潰れた眼球を抉り出され、苦しみ抜いた末に失血死に至る。
    その後、何故か犯人は3人の遺体から舌を鋏で切断している。 』」

    酷い…なんなんだよ、それって。
    あまりにも残酷な当時の事件。それなら幽霊たちが怒るのは当たり前じゃないか。
    赤松さんも東条さんも顔色が悪い。想像してしまったのかもしれない。

    その続きのページへと手が止まる。誰だってそうなるだろう。


    東条「…ごめんなさいね。続き読むわ」

    ゆっくりと場を和ませようとした東条さんが再度声をかける。僕と赤松さんは頷くことしか出来なかった。

    東条「『 …執筆している私も胸の悪くなる、正に悪魔の所業である。
    児童3人が惨殺される中唯一生き残った少女サチコ。……保護された後、泣きじゃくる彼女の証言から追求が進み、ヨシカズは送検された。
    言い換えるなら彼を犯人確定に追い込んだ張本人である彼女には自宅の所在も、家族構成も一切の記録が残っていない。
    ……というより、はっきり言えば、存在していた痕跡が全くないのだ。

    ここからは仮説になる。果たしてこれは本当に……ヨシカズの犯行なのか?
    児童達を殺害したのは、本当にヨシカズなのか? 』」

    …確かにそうだ。あまりにもこの事件は謎が多い。この著者の言いたい点が理解出来る。
    『 篠崎サチコ 』という少女の存在が見えない。
    唯一生き残った理由も分からない。それならば…
    もしかして。

    最原「(有り得なくはない。殺害の手口から推察するに男ではない気がしていたからな)」

    だとすると、犯人は――

    考えが巡る中で東条さんの声が聞こえる。

    東条「『 後期のヨシカズは言葉による他人とのコンタクトは不自由だったとはいえ基本的には大人しく、他人に危害を加えるような性質ではなかった。生徒たちからも信頼されていた彼が突然このような凶行に走る道理がないのである。
    一方、それまで健康であったヨシカズの父親、柳堀校長が突然、奇怪な言動や行動をとり始めたのもこの時期だ。
    何かに取り憑かれたように屋敷の壁一面に意味不明の漢字の羅列を書きなぐったり何者かに怯えるように部屋の隅に篭もり、大声で喚いたり暴れたり、こちらも相当な事態になっていた。 』」

    東条「『 そこに私は、人智を超えた力の動き…巨大なる呪詛の側面を見ている。
    開校当初より閉鎖されていた、天神小学校の地下室に関する、なにか大きな呪いの存在……
    この児童連続監禁・殺害事件より、さらに遡ること、20年。
    朧気ながも、真相を知る手掛かりを、私は見つけたようにも思える。
    廃校になった後、取り壊されて別の学校がたっている現在では失われた天神小学校の地下室を調べる事は不可能だが…私の助手が、興味深い方法を見つけて来てくれた。 』」

    助手。それは恐らく。彼女の事だ。
    僕らは何度か会っている…『 冴之木七星 』。

    東条「『 不可能が可能となるかもしれない。これよりその準備に出かける。
    詳しくは次回の連載にてお伝えしたいと思う。楽しみにお待ち戴きたい。
    文:鬼碑忌コウ(2003年7月22日) 』」












    【 chapter:05 】end 



    死亡確定者:05 名 
    『白銀つむぎ』、『春川魔姫』、『夜長アンジー』、 
    『キーボ』、『入間美兎』 




  133. 133 : : 2019/09/28(土) 02:51:22

    (ここまで閲覧していただきまして、ありがとうございます) 


    (最後のchapter06の更新は10月1日予定です。
    それまでしばしお待ちください) 


    (以下バットエンドリストとなります。) 

    【 WRONG END 】リスト 


    (★1):『 救われたハズの命 』 

    内容: 最原単独行動時、男子トイレで物音がするも無視すると発生。
    個室で首をつっていた赤松に気が付かず、春川のスマホ取得後に戻り見た時、既にこときれた彼女の姿を見て自暴自棄になり個室の窓から飛び降り自殺する。


    (★2):『 目が合うと 』 

    内容:夢野単独行動、保健室を調べている時ベッドを調べると発生。
    言葉の喋れぬ男児の幽霊と目が合ってしまい気がつくと夜長と同様に壁に衝突し、圧死してしまう。

     
    (★3):『 誰かに誘われて 』 

    内容:夢野救出イベント時失敗すると発生。
    王馬が夢野の姿を見つけることなく共に溺死してしまい百田も何者かに背を押され彼もまた溺死してしまう。


    (★4):『 お察しください 』 

    内容:百田単独行動、プールサイドにて物音を無視する、または夢野救出イベント大失敗で発生。
    物音に気が付かず、プールの水を抜いてしまった彼は戻ってみると想像の絶する姿をしている夢野と王馬を見つけてしまう。驚くまもなく彼は突如としてやってきた獄原達に殺されてしまう。


    (★5):『 あの日の再演 』 

    内容:2つの幽霊との邂逅にて失敗すると発生。
    手違いで渡す遺体の一部を間違え幽霊たちが怒り、彼らと同様の手口で殺されてしまう。


    【 EXTRA END 】

    内容:春川のスマホを取得してな状態で進行すると発生。
    脱出する流れが整う中、春川の事で赤松の黒化が進行し最原、東条以外の仲間と合流する前にはぐれ自殺してしまう。そのショックで最原も黒化し死亡する。1人残された東条は他の生き残った生徒たちと共に脱出成功するも最原と赤松の怨念によって…ひとり、ひとりと姿を消していく。

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著者情報
bashikosama

飛んで火にいるばし子さん

@bashikosama

この作品はシリーズ作品です

【V3×コープス】真宮寺「これは…」 夜長「天神小学校…?」 シリーズ

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