ssnote

x

新規登録する

作品にスターを付けるにはユーザー登録が必要です! 今ならすぐに登録可能!

このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品はオリジナルキャラクターを含みます。

東方双赤星 Episode6―鋼のタスク―

    • Good
    • 0

loupe をクリックすると、その人の書き込みとそれに関連した書き込みだけが表示されます。

▼一番下へ

表示を元に戻す

  1. 1 : : 2017/04/08(土) 22:09:05
    注意
    このSSには以下の成分が含まれます。
    ・異常な数のオリキャラ
    ・独自設定
    ・原作と若干違う世界観
    ・不定期投稿
    ・パロディ(主にガンダム類)
    ・趣味全開
    それでも良いならゆっくりしていってね!
  2. 2 : : 2017/04/08(土) 22:10:20


    『お前は何で俺を助けてくれたの?』


    『あなたの特異的な能力は貴重だからよ。』



    違う、それは一番の理由じゃない。



    『とにかく、命を粗末にしないことね。 あなたは、しばらく私の管理下に置くわ。』



    何でだ、何で俺は安心しているんだ?



    『いいかげん、「母さん」って言ってあげなよ。』



    何を言ってるんだ、俺は。

    俺は生まれながらにして使命を背負ったんだ。

    親の犯した罪を、一生をかけて返済しなければならないだろ。



    『はよ酒持ってこいつってんだろ! 使えねーなァッ!!』



    『あなたは私の身代わりなのよ。 私のために耐えなさい。』



    嫌だ・・・。



    こっちに来るな・・・ッ!


  3. 3 : : 2017/04/08(土) 22:50:21


    「ん・・・?」



    身体が低い音とともに小刻みに揺れ、慣性で少し前に傾きそうになり、千條遥斗は目を開けた。

    顔のすぐ左にある小さな窓には一面の暗闇と眩しい赤いランプ、そしてぼんやりと滑走路が見える。



    『皆様、長いフライトお疲れ様でした。
     只今、成田国際空港に着陸いたしました。
     只今の時刻は、1月28日、午後11時14分でございます。』 



    機内アナウンスとほぼ同時に見たスマートフォンの画面にも、まったく同じ時刻が表示されていた。

    待ち受け画面には、遥斗と一緒に紫と藍、橙が映っていた。



    『ベルト着用サインが消えるまで、お座りのままお待ち下さい。
     物入れを開けたときに、荷物が・・・』



    彼は、紫に頼まれてユーラシア大陸の妖怪の生態系について調査を行っており、一週間後に帰る予定だった。

    しかし、異変が起きたから幻想卿に帰って来るよう、紫に頼まれた。

    異変解決なら霊夢にまかせればいいじゃあないかとも思っていたが、わざわざ紫が言うのなら何か理由があると思い、残った仕事を放棄して今に至る。


    身体をくるんでいた毛布を取り払い、茶色の鞄を肩にかけ、遥斗はアルミ製の重厚な扉を抜けた。

    既に、義手の機銃は取り外されていた。











    Episode 6




    「鋼のタスク」
  4. 4 : : 2017/04/10(月) 20:05:05



    「あー、頭が痛い・・・。 飲み過ぎたー・・・。」



    異変が起こって既に20時間、ようやく萃香が目を醒ました。

    障子が開き辛かったり、やけに床がきしむが、そう思う暇も与えず二日酔いが襲う。

    目をこすり、細く開けた目蓋の先にあったのは・・・。




    「な・・・な・・・」



    霊夢の部屋が驚くほどすっきりとしていた。

    すっきりというより、半分ほどどこかに無くなっていた。

    壁と襖の代わりに、昨日霊夢が見たような朝焼けが丸見えになっていた。



    「えちょ、れ、霊夢・・・!?」



    そして霊夢の姿も無い。

    ただ一人、萃香は半壊した神社に取り残されてしまった。




    「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ!!」
  5. 5 : : 2017/04/12(水) 21:50:30
    刻、霧雨魔法店。


    魔理沙はいびきを鳴らしながら椅子に前後逆の姿勢でもたれかかっている。

    一方、霊夢は無言で魔理沙のノートを捲っている。


    薬の効き目は彼女の予想を遥かに上回り、全く眠気が起きない。

    『お前はオレが護衛してやるぜ☆』と言っていた魔理沙は夢の世界へ引き込まれ、ただ一人薄暗い部屋に残されてしまった。

    暇つぶしといったら山積みになっているノートをあさって読むことしか無い。

    とは言っても字が汚いし、霊夢は魔法も化学も分からないのでかえってどうじようもない苛立ちが彼女を襲う。


    ただ何ページにも連なる化学式やら設計図やら何かの早見表を眺めながら非常に長い時間を待つしかない。

    霊夢がそう思い初めてから数時間が経ったとき、瘴気混じりの埃で汚れた窓を誰かが叩いた。

    既に魔法の森には低い太陽からの光が差していた。


    霊夢は窓の鍵を開け、顔を出した。



    「こんな朝に何の用? ・・・あ。」



    そこには、珍しい来客が待っていた。




    「よっ。」



    堀川雷鼓。

    しばらく前に起きた異変の時に発生した付喪神で、和太鼓から外の世界の楽器に乗り移った、というところまで霊夢は覚えていた。


    “付喪神”という時点で、既に霊夢は彼女が関わっているのではないかと疑っていた。




    「調子はどう?」



    「この異変、アンタが絡んでいるの?」



    「質問に質問で返すのはマナー違反じゃないの?
     それに、これには私も驚いているよ。この事で昨日から君を探し回ってたんだよ。
     いやー、でも驚いたよ。 神社に行ったら半分さっぱりしてるんだもん。
     誰に聞いても知らないって言うしアリスさんに限っては人形取り出すし・・・」




    「早く要件を伝えて。」




    ひとりでに話し続けて陶酔している雷鼓を霊夢が睨んだ。

    窓から入って来る冷風と塩素のような瘴気の臭いで魔理沙の目蓋が少し開いた。



    「いやさ、昨日夕方あたりから沸いたのは付喪神だって情報が出始めたでしょ。
     あれ、合ってるようで違うんだよ。
     単に物にエネルギーが溜め込まれたんじゃなくて、もっと何て言うかその、こう・・・」



    「霊夢を狙うように作られてるんだろ?」
  6. 6 : : 2017/04/13(木) 22:02:34
    「霊夢が来た瞬間にあの付喪神はおかしくなった。
     オレや他の奴らには見向きもしないし里でも危害を加えられた人妖はいないと来た。
     半分くらいの異変は霊夢が解決しちまうんだからこんな感じに先手を打っても可笑しくはないだろ?」



    その解答は、実に模範的なものだった。

    しかし、今回の異変は例外だった。




    「真っ当な答えだけど、それは無いわね、あと『半分』は余計。」



    「はぁ、何でだ?」



    「異変が起きる少し前に、主犯と思われる奴が来たのよ。
     幻想卿を守るために付喪神を大量に湧かせるって、確かに予告していたわ。」



    魔理沙と雷鼓にとってそれは初耳だった。

    平和を守るために異変が起こされたという例はこれまでに無い。

    そして、このような挑戦的な行動をとる主犯格に出会った事の無い魔理沙も、霊夢と同じく不気味に思った。




    「・・・おっと、もうすぐ八橋と弁々の稽古が始まるんだった。」



    窓枠に肘をついて話に聞き入っていた雷鼓がふと思い出した。

    魔法店から少し距離を置くと背を向け、両腕を広げた。




    「じゃあまた! ロックンロールッ!!」



    腕が木材のような茶色の複雑な構造物に変化し、それは二つの大太鼓に早変わりした。

    二面あるうちの片方の皮から紅炎があがり、爆音とともに遥か彼方へと飛び去ってしまった。




    「・・・本ッ当に変な奴。」



    「だな。」

  7. 7 : : 2017/04/15(土) 13:15:35

    空はすでに薄浅葱色に染まっており、真っ白な雲が太陽を半分ほど隠していた。



    「とりあえず窓閉めてくれない? 寒いし瘴気臭いからさ。」



    瘴気は、人間が長時間吸い続けるとめまい、吐き気、酷くなると高熱や心臓発作を起こすため、魔法の森で窓を開けっぱなしにするのは自殺行為だった。

    空気清浄機を一日中付けっぱなしにしている(ついでにこれで瘴気を集めている)魔理沙は大丈夫だが、これ自体が魔理沙の手作りで希少なため、魔法の森に家が建つことは非常に少ない。



    「ああ、そうだった。」



    霊夢が窓を動かし、老朽化から甲高い軋みがあがり、完全に閉めきるのには少し力が必要だった。


    魔理沙が台所の蛇口をひねり、顔に冷水を掛けた。

    真冬ということもあり、その思わず手を突っ込むのを躊躇するような冷たさで一気に目が覚めてゆく。



    「霊夢ぅー、紅茶用意しようか?」



    食器棚から2セットのティーポットを取り出し、洗濯ばさみで吊るされた若干使い古されたパックを熱湯とともにポットに入れる。




    「私はいいわ、紅茶嫌いだし。でも紫が飲むかも。」



    「お邪魔してるわー。」




    霊夢の隣には、いつの間にか紫が座っていた。

    とてつもない程長寿な妖怪であるが、魔理沙が初めて会った数年前に比べると若干ほうれい線が目立つような気がした。




    「うわっ、いつの間に!? これだからスキマ妖怪は・・・。」




    霊夢の目の前に現れたばかりの紫は、少し急ぎ気味にスマートフォンを取り出し、ボタンを押した。

    ホーム画面には、やはり藍と橙、そして遥斗が映っていた。




    「遥斗から連絡があってね、向こうもけっこう不味いらしいわ。」



    そう言うと、紫は遥斗の電話番号を入力し、画面に現れた緑色のボタンを押した。

    数秒も経たぬ間に半年ぶりの、低く落ち着いた声が流れた。



    「もしもし、俺だ。」
  8. 8 : : 2017/04/15(土) 22:25:29

    数分前、外の世界の国道外れ




    遥斗は、幾つものベルトが巻かれた上着を拾い、腕を通した。

    片方の腕は細いが筋肉質で、もう片方は二の腕の中間から先が金属光沢のある機械で出来ていた。

    彼は胸元のベルトを止め、当たりを見渡した。


    まず、彼の目の前にはペシャンコに潰れ、炎をあげる自動車がある。

    そして、いたる所にフクロウのような仮面を被った死体が転がっていた。

    顔面、もしくは全身に小さな風穴がいくつも空いていた。


    スマートフォンを取り出した遥斗は、八雲紫の電話番号を入力した。


    応答を待つほんの数秒の時間も長く感じるほど、表情には全く表れてはいないが、彼は焦っていた。



    『もしもし、もう日本に着いた?



    盗聴を防ぐために殆ど連絡をとっていなかったため、会話するには約二か月ぶりだった。



    「はい、もう神社に向かっていましたが・・・。」



    辛うじて原型を留めている車のフレームに肘をつき、遥斗は空を見上げた。

    真冬ということもあり、朝焼けに染まる空には雲がひとつもない。



    「襲撃されました。 どうやって居場所がばれたのかは判りませんが、クロウ兵6体、いづれも八卦炉と重火器を装備。
     車がぶっ壊されたので多分今日中に着くのは無理ですね。」


    『そう、まああなたが無事なら問題無いわ。 私が迎えに行く方が早いだろうから、そこで半日くらい待てるかしら?』


    「大丈夫です。 あと、霊夢と話せますか?」



    その言葉を聞いた紫はゆっくりと空間を指でなぞった。
  9. 9 : : 2017/04/16(日) 13:42:29

    「それが、こっちの神社に居ないのよ。 萃香は爆睡してるし社が半分吹き飛んでるし・・・」


    『遅かったか・・・。』



    霊夢も、俺と同じように襲撃を食らった、名が知れていて強いから何十のクロウに襲われたのではないかと、遥斗は霊夢の身を案じていた。

    死ぬことは無いとは言え、数体を相手にするのも厳しいのに大群に立ち向かえば、無傷で済むはずは無い。




    「でもどこかにいるみたいよ。 昨日の朝から、極限まで霊波を抑えているみたいだから位置を絞りきれないのよ。
     魔法の森の近くだとは思うけど、とても広いし、体を動かすのはだるいし・・・。」



    冬眠から覚めたばかりの紫の体はまだ覚醒しきっていなかった。

    面倒事を嫌う性格もあって、年末から3月までは殆ど出歩いたりしない。



    「でも、魔法店にいるかもしれないわねー・・・。 ああ、腰が痛い・・・。」



    『それなら最初からそうして下さいよ・・・。』



    ここ数年の紫の老化は顕著だった。

    数百年かけてようやく人間でいうところの1歳分の歳をとるのが今までだったが、人間以上の速度で老けてゆく。


    “パープルダンプ症”という病名に名付けられたのは永遠亭の使用が可能になってからなので、発見は約五年も遅れてしまった。

    11年前に受けた腹部の傷から妖力が漏れ出ているということは以前から分かっていたが、結局完治する方法は無く、18歳程度だった姿は既に三十代後半へと変容していた。

    最近は緩やかにはなってきてはいるが、彼女の身体能力は既に全盛期の三分の一程まで低下、そして速過ぎるからだの変化に心が付いて行けず、“支離滅裂”とまでは行かないがかなり弱っていた。



    「じゃあ、後でかけ直すわね。」



    紫は画面に表示され続けていた赤いボタンを親指で触れた。
  10. 10 : : 2017/04/17(月) 22:11:07


    「わざわざアンタからかけてくるとは驚いたわ。 何かあったの?」



    携帯が紫の手から離れ、霊夢が耳に近付けた。



    『要件が二つあってな。 まず、頼まれてた緑茶の茶葉がだめになった。
     帰りに襲われて全部黒焦げになったから土産は持って帰れない。』



    幻想郷の茶葉と外の世界のそれは品種が違い、微妙に香りが違うらしい。

    外の世界のお土産として霊夢から頼まれ、取り寄せたものだった。

    暇な時に遥斗がに飲み比べてはみたが、残念ながら彼は味覚に乏しかった。



    「ああ・・・。 まあ、遥斗は無事みたいだし、それは次の時でいいわ。 もう一つは?」



    『予定を早めて多分明日には帰って来れる。 異変、大変だろ?』



    「そんなに大変でもないよ、今の所は。 それに今日中に黒幕を叩けるだろうし。」



    その突然の自身に満ち溢れた言葉に魔理沙、遥斗、紫も驚嘆した。

    基本的には、隠れている異変の首謀者の居場所を割り出すのには一日程度では済まない。

    西行寺幽々子が起こした異変でも、冥界の入口を探すのに3日も費やしていた。



    「な、なんでそんな事が言えるのぜ?」



    そう魔理沙に聞かれると、霊夢はスッと指を時計に向けた。

    年代物の振り子時計で多少の誤差はあるものの、まったりとした幻想郷ではさほど問題ではなかった。



    「確か、主犯が私の所に来たのは昨日の夜明けよりも前。 大体もうすぐ28時間経つわ。
     位置を特定できるように、トラップに引っ掛けたときにちょっとした仕掛けを付けておいた。
     三十時間で起動するはずだから、一時間以上私の体内時計に誤差があるとしても長くて三時間後には位置が分かるはずよ。」
     


    霊夢の能力のうち一つは“博麗式陰陽術を使う程度の能力”と呼ばれていた。

    ※四話以前と設定が違いますが無かった事にして下さい<(_ _)>



    “致命傷を与えずに妖怪を討伐する”事を目的に数百年前の陰陽師がこの技術を開発したと言われている。

    その陰陽師こそが初代博麗であり、直接の血縁が無くとも博麗の役職に就いた人間が受け継ぐ事が出来る。


    人によって異なるものの、基本的には結界の生成とエネルギー吸収などによる無力化が必ず使用できる。

    現在のところ原因は分かっていないが、霊夢のそれだけは他と比べて非常に殺傷力が高かった。

    その力がこれまでの幻想郷のバランスを崩すことを、六歳で就任した霊夢を見守っていた紫は懸念し続けていたが、現在のところ霊夢が生きている人や妖怪を殺したことは無い。

    外の世界で生存する事が困難になった弱い妖怪を保護する目的で創った幻想郷にとって、そのような事はあってはならなかった。


    ところで、その能力は非常に応用力に優れている。

    そのフレキシブルな動作は他では代用が利かない。

    そのうちの一つが、その“仕掛け”であった。
  11. 11 : : 2017/04/17(月) 22:42:06




    「三十時間が経過するまでは多分絶対にばれない。」



    「随分と曖昧じゃねえか・・・。」



    この適当で自由奔放な霊夢の性格があったからこそこの能力が惨事を引き起こさない事を紫は約6年前、霊夢が10歳の時に知った。

    紅霧異変の時だった。


    たった一人で紅魔館を制圧したにも関わらず、一切の犠牲者を出さなかった。

    それどころか主犯ともすぐに和解し、侵略者たちは住人へと早変わりしたのだ。



    『でも早期解決が図れるのならそれで良いんじゃあ無いのか?
     俺が帰って来る前に片付いてれば色々と助かるからな。
     まあ、これ以上通話を長引かせると盗聴とかが心配だ。 また後で会おうな。 無茶はするんじゃあ無いぞ。』



    「そっちも、安全にね。」



    プツリという音とともに画面に「通話終了」の文字が浮かんだ。

    霊夢の表情がいつもより少しだけ明るくなっている事は、毎日話す親友の魔理沙だからこそ気付く事ができたのだろうか。



    「リア充・・・」ボソッ



    「ん、何か言った?」



    小声で何かを言っても、三人しかいない密室では容易に声が聞こえてしまう。

    魔理沙は挙動不審ながらも笑ってその場をごまかしたのであった。
  12. 12 : : 2017/04/20(木) 23:15:25

    再び誰かが窓を叩いた。

    霧雨魔法店に短い間にこれほどの来客があるのはめったに無い事だ。

    不審に思いながらも霊夢は閉じたばかりの戸を開いた。




    「ああもう・・・。 今度は誰? こっちは忙しいんだから用があるならさっさと言って。」



    「よっ。」



    そこに居たのは、見慣れない少年だった。



    「・・・誰だお前。」



    魔理沙より若干低い身長、童顔に髪は淡い緑っぽい色をしている。

    その質問を待っていたかのように彼は窓から部屋に侵入しながら話し始めた。



    「ボクを誰だと思っているんですか? タスクさんですよ。
     ちょっと博麗霊夢って人に用があるんですけど、この中にいます?」



    そうは言うものの、常に顔は霊夢の方を向いていた。

    彼からは常に人間とも妖怪とも違う異様な霊気が漏れ出ている。



    「私が博麗霊夢だって分かっているみたいね。 何の用?」



    紫がそっと口元を扇で隠した。

    彼女が、タスクのそれに似た妖気を確かに感じたことがあるからだ。



    「えっとですね、まず、妹が色々と迷惑をかけました。 けっこう反省してるんで許してやって下さい。」



    「妹・・・?」



    霊夢には心当たりが無かった。

    それもそのはず、一年以上前に一瞬戦った、というよりはしょぼい攻撃を受けた事を覚えているわけが無い。



    「ほら、第二次侵食異変前の透明化するさ。」



    タスクがこの言葉を言った途端、魔理沙が八卦炉をこめかみに押し当てた。

    同時に紫も顔をしかめた。


    第二次侵食異変の事を知っているのはごく限られた人妖だけである。

    この事とは無関係なはずの彼が知っているのはあり得ない。



    「テメェ、なぜそれをッ!!」



    「まあまあ、落ち着いて下さいよ。 霊夢さん、思い出しましたか?」



    「ええ、たった今思い出したわよ。 それじゃあ私もアンタに質問。 どこまで知ってる?」



    タスクの表情が微妙に変化したのを、後ろに居た紫は気付かなかった。


  13. 13 : : 2017/04/21(金) 23:02:32



    「えっとですねェ、霊夢さんがボクの妹、ステラに傷一つ付けなかった事、それともう一つ。
     ボクの弟、影牢は腰から下を削がれたこと。 あと侵食異変の事を少し・・・ですよ。」



    紫が背中に異常な感覚を覚えた。

    ピリピリとした焼けるような痛みが彼女を襲う中、タスクが振り返った。

    余裕があったようなさっきの表情とはまるで違う、憎しみ、怒り、殺意といったエモーティコンが溢れていた。



    「八雲紫、テメーだよなァ! ボクは一年半の間、ずっとテメーを殺すのを楽しみにしてたんだよッ!!」



    激昂したタスクのズボンのポケットから無数の金属片が浮き上がって来る。

    先が尖っているそれは、幻想郷のものとは相違があるものの、誰でも釘であると理解できる。


    そのうち幾つかが既に紫の背中に突き刺さっていた。




    「くそっ、こいつやっぱり悪者かッ!」



    八卦炉の小さな排熱パネルが開き、射撃可能な状態へと変化する。

    続いて霊夢の周りに八つほどの陰陽玉が現れ、左手にはお札が握られる。


    しかし紫は左手を横にし、攻撃をしないように合図した。



    「霊夢、魔理沙、あなた達は手を出さなくて結構。 坊や、力を見せてもらおうかしら。」

  14. 14 : : 2017/04/24(月) 23:27:52




    全ての鋼鉄の“牙”が紫の方を向き、一斉に移動を始めた。

    二人とも既に魔法店の外におり、逃げ続ける紫をタスクが釘とともに追尾する。


    弾速自体は通常のエネルギー弾と同程度ではあるが、五十を優に超えるそれらは全て粗い追尾弾である。

    がむしゃらに紫の方向へと飛び、進路が変わる度に遅れてカクンと曲がり再び加速する。




    「並みの妖怪には効くだろうけど・・・そんな単純な動きだけでこの私を倒したいだなんて・・・なァッ!!」



    今まで全く攻撃をしていなかった紫の周りの空間に無数の切れ目が走る。

    眼球のようなエフェクトが覗く空間から数本の熱レーザーが放出され、追っていた殆どの釘を焼き払った。

    消し炭となった半数ほどの武装を気にも留めずにタスクは低い高度から追い続ける。



    「逃げてんじゃねェェッ! 殺す・・・殺してやる!!」


    タスクの方が若干速いため、距離が少しずつ縮まってゆく。


    ズボンから四個のビー玉サイズの鉄球が落下し、地面に跳ねると同時に宙に舞い上がった。

    紫の左右に付いたそれらから小さい鉄片が飛ばされ、頬をかすめた。




    「鋼符・・・マグネットスフィアだッ!! ミンチにしてやんよ!」
  15. 15 : : 2017/04/27(木) 22:54:08



    側面から大量に小さな鉄粉が飛散し、紫の身体を射抜こうとする。

    普通の人間や妖怪ではその場で文字通り“ミンチ”にされるはずであった。


    しかし、タスクは甘く見ていた。

    義弟に重傷を負わせた時点である程度の強さがあるのは知っていたものの、憎しみは彼から平常な思考を奪ってしまったのだ。



    「な・・・!?」



    マグネットスフィアによる攻撃は、一発も当たらなかった。

    というより、紫の姿はどこにも無かった。


    タスクは、今までにワープを使える人妖を相手にした事が無かった。

    そうで無い相手に対して、彼の“重金属を操る程度の能力”は無類の強さを誇る。


    しかし、幻想郷はそう甘くなかった。



    「なかなかやるみたいねぇ。 ・・・でも」



    どこからか嘲笑する声が聞こえたのと同時に、タスクが大きな影に呑まれた。




    「影・・・?」



    見上げると、明らかに場違いな物体が迫って来ていた。

    空から降って来た列車が低く飛行していたタスクに衝突し、直下に落ちていった。


    それが地面に接触することは無く、かわりにハウリングのような不快な音を放った。

▲一番上へ

名前
#

名前は最大20文字までで、記号は([]_+-)が使えます。また、トリップを使用することができます。詳しくはガイドをご確認ください。
トリップを付けておくと、あなたの書き込みのみ表示などのオプションが有効になります。
執筆者の方は、偽防止のためにトリップを付けておくことを強くおすすめします。

本文

2000文字以内で投稿できます。

0

投稿時に確認ウィンドウを表示する

著者情報
pvpvpv0712

通りすがりの御大将

@pvpvpv0712

この作品はシリーズ作品です

東方双赤星  ~A Story Of Eclipse~ シリーズ

「東方Project」カテゴリの最新記事
「東方Project」SSの交流広場
東方Project 交流広場