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  1. 1 : : 2020/08/21(金) 19:35:13
    東方projectの二次創作作品です。久々に文章を書くので恐らく見苦しく拙いものになりますがそれでもよろしければ下にスクロールいていってくださいませ。
  2. 2 : : 2020/08/21(金) 19:44:36
    「……ねえ、どうしよう。今日もダメだったの……。」

    「なんなんだ今年のこの虫害の多さは! 今までこんなことはなかったじゃないか!」

    「うちなんてタンスの中の織物まで虫に食われてるのよ、本当になんなの……!」



    ……噂には聞いていたが、思っている以上に事態は深刻なようだ。


    今年は異常気象があった、だとか明らかな環境の変化が起こったわけでもないというのに虫に作物やら衣服が荒らされ食われ、といった被害が甚大なようだ。


    かくいう私もその被害者の一人で、魔法の森で過ごしていたにも関わらず締まっていた衣服に明らかになかった穴が無数に空いていた。


    アリスだとかに聞いても同様の被害を受けたらしい。元より風の噂で虫害の話は聞いていたが、こうして人里に出向いてみれば噂以上に問題になっているらしい。

  3. 3 : : 2020/08/21(金) 19:53:38
    「……なんでこんなことをしているんだ……?」



    この問題を起こしている根源に心当たりがある。虫の妖怪……そして、そんな虫を使役しているリグル・ナイトバグだ。


    そもそも魔法の森は虫どころか普通の人間ですらもまともに過ごせないほどの異様な環境で、そこですら被害を受けている。

    それに加えてこの状況だ。明らかに何か外的要因があると考えた上で一番有り得るのはリグルだ。


    ただ、そんなことをして何になるのか? わざわざこんな迷惑なことをする意図が解せない。


    あいつ自体人に迷惑をかけてやろうだとかそんな性格の悪い奴ではないと記憶してるんだが……。



    んー…………。



    ……解んないな。所詮は何も取り柄もない頭もさほどよくない普通の魔法使い、考えても思考は足踏み状態だ。


    そもそも本当にリグルの仕業なのかも解らないし、今あれこれ考えても推定でしかない。本人に確かめる方が早いな……。


  4. 4 : : 2020/08/21(金) 20:06:41
    ─────────


    「…………いないぜ……。」



    思い当たる節のある場所を探してみたがどこにも居ない。文字通り草の根掻き分けて探したのだが、形跡すらも見つからなかった。


    そして、これまた妙なことにこれだけ草が生い茂って人の手の届いてないような場所にも関わらず、羽虫の一匹も居ない。

    今は夏、こういう場所には鬱陶しいほどの虫や鳴き声が聞こえてきてもいいのだが、それは微塵もなく草が風に吹かれ当たる音しか聞こえなかった。


    虫害被害が甚大にも関わらずここまで虫に会わないとなると本当にリグル…………、そうでないにしろ外的要因が関わっているのは間違いないだろう。



    しかしどうしたもんか。ここまで探してもいないとなると本人に問う線は一旦やめにして別の奴にでも話す方がいいかもしれない。


    幸い今は夏だ、日は傾いているがまだ明るい。夜になる前に出来る行動をしておきたい。

  5. 5 : : 2020/08/21(金) 20:16:24
    …………いや待てよ?


    これ程の虫害が起こっているのであれば寧ろ夜まで待ってその現場を見た方がいいのではないか?


    リグルの仕業だと仮定した場合だが、使役するためには流石にその場に居るだろうし、例えそうでなくても実際に見てみれば何か解ることもあるかもしれない。


    いくら探しても見つからないんだ、これだけの被害がある以上今日も何かしらの被害は出るだろうしそうしてみよう。やっぱ足で調査してこその魔法使いだぜ。



    …………それにしてもイヤな感じだ、冬かと思うくらい静かな草むらは何か不気味さすら感じる。

    イヤな予感がする。虫の知らせってやつだろうか……?




  6. 6 : : 2020/08/25(火) 21:50:37
    ─────────


    夜。幸いなことに許可をもらって被害にあった畑に潜ませてもらうことになった。


    無惨に食い散らかされた作物たちはまだ収穫されておらず、月明かりのもと未だに畑の上に哀しく姿を現していた。


    一応まだ被害が薄い作物もあるようなのでそれを守ってほしいとも言われたが、私はパワーの魔法使いだ。正直作物を犠牲にせずに虫除けするのは難しいものがある。

    まあ私の目的は虫害がどういったものなのか、リグルの仕業なのかはたまた別の誰かの仕業なのか、まさかの本当にただの自然なものなのか。それを確認したいだけだ、作物を守る件に関しては返答を有耶無耶にしておいた。


    そんなので潜むことを許可してくれた里人に感謝しつつ畑の端でいつ来るかも解らない虫を待ち続けていた。

  7. 7 : : 2020/08/25(火) 21:59:17
    いやしかし。明らかにおかしいな、なんだこの静けさは。


    さっきの草むらにいたときと同じ感覚だ、虫の鳴き声が一切聞こえない。風が吹いて草が音を奏でる以外に今私の周りに音はない。強いて言うならば吐息か。


    明らかに異常な虫害が起こっていたというのに、ここまで虫の気配すら感じないのもおかしい。

    畑の主が強力な虫除けを焚いただとかいう話も一切聞いていないため、本当に異常だ。夏の夜なんかいつもこんな土臭い所にいれば宴会かというほど騒がしいほど鳴いているというのに。



    こうもなってくるととうとう外的要因が何かしているとしか考えられないだろう。自然にこんなこと起こることは有り得ない。



    その考えを確信に抱き始めたとき、私の耳についに草や吐息以外の音が聞こえてきた。それも、明らかに異質に。



    波のように押し寄せてくる虫の音たちがこちらに向かってくる事を。


  8. 8 : : 2020/09/02(水) 19:49:55
    「うわぁ!?」



    そこからは一瞬だった。明らかに異質さを感じる音に耳を済まそうとした瞬間に視界を覆うほどの虫が襲ってきたのだ。


    あまりの多さに、作物だけでなく私の体にも虫たちが激突していく。その猛烈な勢いに私は気圧され、その場から動くことも目を開くことも難しくなった。


    平静を保つために深呼吸をしようと口を開けばそこに虫がやってくる。一匹一匹は弱い虫でもここまでの量になると私ひとりでは本当になす術がない。


    追突したり食われたりし、徐々に私の体もダメージを負っていく。大音量の羽音と土臭さで精神的にも不快だ、本当に異常事態だこんなの。




    虫の嵐が過ぎ去った頃には作物は一つ残らず食い散らかされいた。

    そして私自身も体に切り傷やら打撲やらが無数にできていて、死ぬような程ではないが療養が必要なほどダメージを負っていた。


  9. 9 : : 2020/09/02(水) 20:13:33
    ─────────


    「……ということがあったんだぜ。これはどう考えても異変だろ。」



    永遠亭での療養という名の一日軟禁を過ごし、ようやく自由になれたところで、妖怪退治のプロかつ信頼するライバルである霊夢に相談することにした。


    つまらなさそうな顔で煎餅を噛み砕かずにはみはみしている。行儀悪いぜ。



    「……私のところにも耳には入っていたのよ。人里の異常な虫害の件は。」



    半分食べた煎餅を皿の上に戻し、手を拭きながらこちらを見ずに気だるげに話し始める。今に始まったことではないが、このマイペースさに今は多少の憤りを感じた。


    「いや、おい……。そんなのんきなもんじゃないぜ。真剣に聞いてくれよ。」

    「ええ、のんきなもんだと思ってたわ。噂って信じるとろくなことないじゃない。」


    手を拭いていた紙を机に戻し、ふうと一息ついたところで、次は私の顔をしっかりと睨むように見てきた。眼光が鋭いだけで睨んでるわけではないと思うが。



    「大したものではないと思ってたわ。魔理沙がここに訪ねてくるまでは、ね。」

  10. 11 : : 2020/09/02(水) 21:28:12
    さっきまでの気だるさが若干抜け、私の顔…………というか体全体をなめ回すように見ている。少し恥ずかしいな。



    「…………いくらなんでもただの虫害なんかでそんな怪我なんてするわけないでしょ…………。その服も着替えてないんだか知らないけどボロボロだしね……。」


    ……そうだった。永遠亭に拘束してゆっくり療養するなんて柄じゃない、治療もたいしてしないまま飛び出してきたもんで包帯やらガーゼやらが見えるところにもたくさん覗かせていた。



    「……普通の人間よりもある程度実力のある魔理沙でもその規模の怪我をするともなると、虫害による普通の農業への被害もそうだけど、小さな子供がそれに襲われたりすれば下手したら命を落とすわよ。」


    間違いない、私だってただのか弱い少女ではないんだ。それでもかなりの痛手を負わされたのは事実であり、それ相応の危険を物語るには十分だろう。



    「……明らかにこれは異変として見ていいと思うわ。早く解決しないと……。」

  11. 12 : : 2020/09/02(水) 21:39:30
    「なあ、やっぱりこれって外的要因があることは間違いないよな?」

    「それは話を聞く限りだけど間違いないと思うわ。そんな現象が自然に起こるとは考えにくいもの。」


    霊夢はその場からすっくと立ち上がり、座っている私を見下ろしながら静かに続ける。


    「紫を呼んでくるわ。情報収集には何かと便利だもの。」



    そういうと霊夢は後ろを向いて神社の奥の方へと向かっていった。今神社にいるのだろうか?


    はてさて、霊夢も動いてくれるとなればそれは心強い。紫もセットで付いてきてくれるなら百人力だ。


    私はさてどうしたものか。こないだ襲われた時にリグルか誰かの気配を感じようにも、虫が多過ぎて何も情報を得られなかった。


    ここは大人しく霊夢と紫の三人で相談して何をしていくかの作戦会議をしていくとするか。

  12. 13 : : 2020/10/04(日) 23:43:13
    「お待たせ致しましたわ……、あらまあ本当に結構な怪我をしているようね。」


    霊夢が奥の部屋から静かに戻ってきた。その後ろから、普段の服とは違った明らかに寝巻きを着た紫がいそいそと少し余裕のある笑みで着いてきていた。


    「悪いな、寝てたのか?」


    「そうですわ、たまに遊びにきてみてもこの神社ってつまらないものしかないの。客人のおもてなしが出来てないわよ?」



    ふああ、と欠伸を浮かべる紫を横目に霊夢が呆れたような力の抜けた声で続ける。

    「勝手に来といて勝手に寝るような奴を客として迎え入れてるつもりはないわ……。」


    そう言って浅いため息を着いたあと、すっと鋭い目付きの真剣な顔に戻った。



    「いいかしら、本題よ。」
  13. 15 : : 2020/10/05(月) 00:01:32
    「大体の話は霊夢から聞きましたわ。虫害…………それも特に人間の村が重点的に襲われているようですわね。」

    そう言いながら紫は静かにすぐ近くの空間に顔ほどの大きさのスキマを開いた。


    「さっきからスキマを駆使して幻想郷の中を探してみてるのよ、怪しそうな妖怪筆頭の子を。」


    スキマの中の目玉がぱちくりと違うタイミングでまばたきしている。もう見慣れたものではあるが、冷静に見るとやはり少し気持ち悪さがある。異形感というかなんというか。



    「魔理沙がそんな風になることを考えると、また畑とかで待機して犯人を炙り出すってのも危険で避けたい方法ね……。」

    「人里でスペカだとかをぶっぱなせれば良かったんだが、そんなこと出来るほどの余裕もなかったぜ。」


    それに、あんなところで使ったら近隣にも被害行きそうで恐ろしい。


    「…………うーん、やっぱりいろんな奴に聞いてみるのが早いのかあ?」


    頭で考えるのは苦手だ。下手に作戦を練るよりも猪突猛進で行った方が私向きかもしれない。


    「魔理沙が五体満足であればそうしてもらうところなのだけど……。その方があんた得意そうだし。」


    至極真っ当な理由で止められてしまった。実際のところ少し動くだけでも傷口に痛みが走るのが正直なところだから無理に動くのは確かに無理そうだ。

  14. 17 : : 2020/10/05(月) 00:14:52
    「せっかくの飛車なのにズタズタに傷付いちゃってたら使えませんわ。駒になるのなら駒になるなりの体調になってもらいたいものですわ。」


    はっきりと駒扱いをされたが、まあ決して外れてはない話だし紫は普段からこういう奴だ。


    「今日1日だけでも休んで明日から動き回るのはどうかしら……?」

    「心配してくれるのはありがたいが、昨日の規模のものが今日も来るかもしれないと思うと今日中になんとか道は見つけたいぜ……。」


    本当に凄まじかった。小さな子供が襲われていたら本当に命を奪われるかもしれないほどの圧だった。

    あれを体感している身としては一刻も早くなんとか解決したい、そんな気持ちになる。



    私の方を見ていた霊夢はふいっと顔だけを紫の方に向けて聞いた。

    「…………紫、リグルは見つかった?」

    「見つからないですわねぇ。これだけ探してれば普段なら見つかるものなのだけれど。まるで隠れているみたいですわ。」


    昨日の私と同じく怪しいところを探している様子だが、やはり見つからないようだ。


    ……このまま待っているのはやはり性に合わない。体は確かに未だに痛むがここは私らしく駒になってやろう。
  15. 18 : : 2020/10/30(金) 17:54:09
    「……じゃあわかったぜ。ここは一旦休むためにも永遠亭に戻るとしよう。」

    「大丈夫なの……? その怪我ならここで休んでいた方がいいんじゃないの?」


    不安そうに眉を下げる霊夢に多少心を痛める。まあそもそも永遠亭に戻って休むつもりもないのだが。


    「こっそり抜け出したからな。見つけ出されてしっぽり怒られる前に戻るぜ。」


    「そう……。」


    眉にシワを寄せ「相変わらず自分勝手だ」とでも言いたそうな険しい表情をしている、そういう表情をしてる霊夢は正直ちょっと怖いんだよな。

    まだリグルを捜そうとしてることがバレる前にとっとと退散してしまおう。



    「じゃあ行くぜ。紫もリグルを頑張って捜してくれ。」

    「もちろんですわ~。」


    境内に出た。ホウキに跨がりこのまま飛んでいこうとしてみる。こうやって全身を伸ばしてみると節々が痛くて敵わんな。

    私の体がドキドキ解体ショーにならないように速度を気を付けていかなければ……


    「…………無理しないでね。あんた、どうせ暴走するんだろうから。」


    「…………ははは、まあ死なんようにするぜ。……そんじゃあな!」



    じわじわと加速して人里の方へ飛んでいく。

    いつもよりも最高速を抑えたつもりなのだが、それでも気づけば神社が米粒のように小さくなっていた。


    …………それにしても霊夢には休む気がないことをバレていたようだな。困ったな、下手に嘘ついても今後すぐ解かれてしまいそうだ。


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著者情報
11212122212

ふぉん

@11212122212

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