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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

サシャ「天翔ける天馬の捕まえ方」

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  1. 1 : : 2014/08/29(金) 13:09:18


    タイトル通り、サシャとジャンのお話です

    ネタバレはコミックスまで

    いつもながら、キャラは私のイメージと妄想の産物です

    14巻からの派生未来、よろしくお付き合い下さいませm(_ _)m


    ※頂いたコメントを非表示にするのは偲びないので、執筆終了まで制限をかけさせて頂く事をご了承ください※

  2. 2 : : 2014/08/29(金) 13:11:15


    狩人の心得 〜其の1〜
    【持ち得る全ての感覚を研ぎ澄ませる】



    自称「調査兵団団長補佐」のサシャ・ブラウスが団長の執務室を訪れると、まだ早朝にも拘らず部屋の中はもぬけの殻だった

    きれいに整えられたベッドに軽く手を触れ少し考える

    それから窓を開けて頭を突き出し、しばらくじっと動かずにいた


    (ふむ……そろそろですね)


    勝手知ったる団長室


    部屋主がいないことなど気にもせず、サイドボードから茶器一式と茶葉を取り出す

    ティーポットに入れる茶葉はスプーン山盛り二杯

    カップは二つ

    調理場から持って来たお湯をティーポットに勢い良く注ぐ


    ポットに蓋をし、そのまま目を閉じたサシャは、心の中でカウントダウンを始めた


    (……後3分)


    中庭にある井戸で水を使う音


    (……後1分)


    回廊を歩くブーツの音


    (……30、29、28)


    もう目を閉じて集中する必要はなかった

    カップを温めていたお湯を薬缶に戻し、ティーポットを手に取る


    (……3、2、1)


    カウント0で執務室の扉が開き


    「おはようございます!」


    サシャは満面の笑みで部屋主であるジャンを迎えた




  3. 3 : : 2014/08/29(金) 13:54:06


    獲物の心得〜其の1〜
    【考えたら負け】



    「ん、来てたのか。おはよう」


    にこにこと笑うサシャの前には、香しい香りを放つ紅茶のカップが二つ


    今では淹れられた紅茶を、当たり前のような涼しい顔で飲めるようになっていたが、初めてこれを見た時は死ぬほどびっくりした


    危うく腰を抜かしかけたが、なんとか踏ん張り


    「お前…何やってんの?!」


    壁外で奇行種の奇襲を受けた時にも出さなかったような声で、叫んだ記憶がある


    当の本人はけろっとした顔で

    「自主練お疲れ様でした!」

    などと言いながらジャンの顔をじっと見つめ


    「ちょっとお疲れのようですね…」

    と、カップの一つに少し多めの蜂蜜を入れていた


    最初は単なる偶然だと思っていた

    しかしそれが2度3度となると、驚きを通り越して気味が悪くなってくる

    始める時間も決めていないし、終わる時間もまちまちな、まるっきり気紛れな朝の日課に、ピッタリ時間を合わせて紅茶を淹れるこいつは……


    「狩人ですからね」


    疑問符だらけのジャンの心中を見透かしたかのように、狩人サシャは得意気に続けた


    サシャ曰く、室内の空気の匂いとベッドの温度で、部屋を留守にしている時間の、おおよその目星がつくという

    それから窓を開けて音を聞く

    立体起動のガスやアンカーの音が、訓練用の林のどの辺りでするか

    「今日はもう音がしていなかったので、じきに戻ると思ってました」

    後はひたすら集中してジャンが発する音に耳を澄ます


    近しい間柄の者なら、足音だけで個人が特定出来るらしい


    「ジャンは左右のバランスが均等で、綺麗な歩き方をしますよね。音が規則正しくて気持ちがいいです」


    「そ…そうか?」


    「立体起動が上手いのも納得です」


    「うむ……」


    唯一自信のある所を褒められれば悪い気はしない


    エレンとは違い、対人格闘にメリットのある鎧のような筋肉は必要無い

    寧ろ筋肉が付くことによる体重の変化は、ジャンにとってはあまり好ましくないものだった


    身体に叩き込まれた感覚は、ほんのわずかな変化でも微調整を必要とする

    そのため自主練習とは言っても、ほぼ立体起動の訓練しかしない


    今のジャンの職務状態で立体起動の技術を更に磨く事は、あまり意味の無い事なのかもしれないが、なにより彼は空を翔けるあの感覚が大好きだった


    アンカーを巻き取り、次の目標にアンカーを刺すまでのわずかな時間、彼は風を纏い空と同化する

    何ものにも縛られない自由な瞬間、ジャンの心はドロドロした重い俗世から解放され、翼を広げて遥か高みへと昇華していくのだった

  4. 4 : : 2014/08/29(金) 14:31:59


    「ジャンの立体起動は馬のようです」



    ブフッ……!!



    思わず紅茶を吹き出す




    「お前、褒めてんのか貶してんのか、どっちだよ!」


    「褒めてるんですよ?」


    キョトンとした顔にからかうような色は見えない


    「褒めるなら普通、鳥みたいとか言うだろう?」

    「あー…鳥は違いますね。鳥のように翔ぶのはミカサです」

    サシャは座ったまま、大きく両腕を広げた


    「鳥の翼を動かす筋肉って凄いんですよ?優雅に翔んでいるようにみえますけど、結構な力業なんです」

    鳥の翼の真似だろうか、フワリと腕を動かす


    「ミカサの立体起動は、鷲や鷹の翔び方とよく似ています。長距離を翔ぶのには向きませんが、スピードと、獲物に与える破壊力は最強です」


    「なるほど…」


    なんとなく分かる気がして納得してしまうが…

    それにしても『馬』って……

    いや…顔が馬面だと言われるのはいい加減慣れたけどね…


    釈然としないジャン


    「ジャンの立体起動にはリズムがあります。極力身体に負荷が掛からない無駄の無い動作をするので、その時々によってリズムも変わるんですよ」


    馬もそうでしょ?

    走る速さに合わせて脚を運ぶ順番を変えるじゃないですか?


    何故か嬉しそうな笑顔になったサシャは、謳うように言った


    ウォークは4拍子

    トッ、トッ、トッ、トッ

    トロットは2拍子

    トトッ、トトッ、トトッ、トトッ

    キャンターは3拍子

    トトトッ、トトトッ、トトトッ



    そしてギャロップになると……

    トンッ…!



    ーーー馬は一瞬宙に浮かぶんです



    指先でテーブルの上を叩いていたサシャの指が、4本ともそこから離れた


    ジャンの脳裏には、彼が1番好きな、あの瞬間の浮遊感が蘇る




    「ジャンは天を翔ける馬なんです」




    サシャの笑顔が陽の光に向かって翔んだ時のように眩しい




    「…………………そっか」




    子供のように邪気の無い顔を向けられたジャンは

    何故毎日のように紅茶を淹れてくれるのか

    何故こんなに無防備な表情を自分に見せるのか


    その他諸々、全ての思考を停止させ、とりあえず美味しい紅茶と心地よい朝のひと時に身を任せることにしたのだった






  5. 5 : : 2014/08/29(金) 21:08:54


    狩人の心得〜其の2〜
    【獲物の習性を熟知する】



    その日サシャがいつものように団長室に向かうと、部屋の中から静かな寝息が聞こえた

    もちろん扉を開ける必要は無い


    今日の紅茶は無しですね


    仕方がないのでまだ朝食には早いが、食堂に向かう


    ここのところ落ち着いていたのに…発情期でしょうか…

    爽やかな朝には相応しくない単語を思い浮かべるサシャ


    調理場から流れてくる美味しそうな匂いを嗅ぎながら、今日の日程をおさらいする


    午前中はデスクワークと幹部ミーティング

    昼は商会主催の食事会

    午後はシーナでヒストリアとの謁見と夜会


    ふむ…いつもながら、調査兵団の団長らしくない予定ですねぇ

    そうは言っても、そうそうかつての調査兵団らしい危険な任務や、巨人との死闘があっては困るのだ


    ついこの間、アルミンがエレン達を伴って2回目の外洋航海に出掛けている

    これからの調査兵団の仕事は、海の向こうへと広がって行くのかもしれなかった


    事実ジャンは、彼の馬鹿正直な性格には似合わない公の食事会や夜会にマメに出席しては、兵団に投資してくれる貴族や商人達に顔を売り、根回しをしている


    どうやらアルミンに本格的な外洋調査船をねだられたらしい


    どうもアルミンには甘い気がするんですよねぇ…

    彼が調査兵団の大切なブレインということ以外にも、何かジャンなりの思いがあるような気がしてならない


    はっ!

    まさかジャンは純粋なヘテロじゃ無いのでは…!


    サシャの妄想は、朝っぱらからとんでもない方向へと暴走していった


  6. 6 : : 2014/08/29(金) 21:35:41


    「サシャ、おはよう」

    「あ…おはようございます、ミカサ!」


    不埒な妄想を中断されたサシャは、ほんのり赤く染まった頬を両手で叩いて目を覚ました


    「どうしたの?」


    「いえ、なんでもないです。私も発情期なのかもしれないですね…へへっ」


    「は…はつじょ…う…?」


    いつも冷静、クールビューティーなミカサが、サシャの口から飛び出したはしたない言葉に顔を真っ赤にする


    落ち着け……落ち着け私……

    もう小娘じゃないんだから…

    エレンとも夫婦になったし…

    こっ…子供だっているんだから…


    平静を装って健気に立ち直ろうとするミカサ


    意外と彼女はこういう話に免疫がなかった


    一方のサシャはといえば、訓練兵時代に仲が良かった一人にユミルが挙げられる段階で推して知るべし

    元々サシャの村は、性に関しても比較的開放的な風土と民族性があった

    その上、街の子が聞いたら赤面するような性用語は、馬の種付けで子供の頃から聞いている


    「あ…あの…今日はジャンの所には行かなかったの?」


    さっき聞いたのは何かの間違いだったと思いたい

    そんなミカサの願いも虚しく…


    「ジャンも発情期みたいで、ゆうべは娼館で過ごしたみたいですよ。久しぶりだからがんばり過ぎちゃったんですかね…まだ寝てます」


    「………そ……そう…」



    あぁ…

    私は馬の発情期なんかに、これっぽっちも興味はない…

    爽やかな朝には聞きたくなかった…

    いや、昼夜を問わず聞きたくない…


    激しい後悔の念に襲われるミカサ


    「でも、どうして男性ばっかりそういう場所があるんでしょうね?女性だって発情するんですから、同じようなお店があってもいいと思いません?」


    「あの…サシャ?そういう事は大切に思う人と…」


    「もちろんですよ!つがいになるのは、この人しかいないと決めた、ただ1人の男性だけです!」

    力説するサシャに少し安心したミカサは、ここぞとばかり、うんうんと大きく頷く


    そうそう、女子たる者恥じらいを忘れず、将来の伴侶の為に堅く貞操を守り……


    「だけどその大切な人と結ばれるとは限らないじゃないですか?」


    「え?」


    「だから手近な相手で性欲を解消するっていうのは、ありだと思うんですよねぇ」


    内容がこれでなければ、つまみ食いを見つかった少女のような可愛らしい顔で、ペロッと舌を出すサシャ



    ミカサの中で何かが切れた



    真っ赤な顔で立ち上がり、天然無垢な野生児に向かって指を突き付ける




    「サシャっ!!貴女をそんな子に育てた覚えはないっっ!!!!」










    ーーーあんなに大きな声を出す兵士長を見たのは初めてでした


    ……と、その場に居合わせた新兵は、後にそう語った




  7. 7 : : 2014/08/29(金) 22:15:05


    獲物の心得〜其の2〜
    【知らぬがホトケ】



    さて、自称とはいえ自分の補佐を名乗る側近が、かつての初恋の相手に自分の下半身事情を語っているとは夢にも思っていないジャンは、朝食時間が終わるギリギリになってようやく目を覚ました


    もう朝かよ……


    有能なサシャ補佐官の予想通り、昨夜は娼館で明け方までを過ごした


    とは言っても、夜の暴れ馬だった時代はまだ若い頃、ほんの短い間しかなかった

    ここ数年は、専ら街の影の部分に関する情報を集める為に通っている


    どんなにガードが堅い奴でも、ベッドの上では気を弛ませる

    どうせ何も分からないだろうと高を括っている奴らは、彼女達のいる所で簡単に口を滑らせる


    別にジャンはこの街の治安を良くしようなどという、高尚な理由で情報を集めているわけではない

    たくさんの人が集まり、便利で清潔な暮らしを約束する街の生活

    街で生まれ、街で育った生粋の街っ子ジャンは、光の裏側には必ず影が出来ることを子供の頃から知っていた


    必要悪とまでは言わないが、光と影は、切っても切り離せないものなのだ


    ジャンの目的は影自身ではない

    光の中でも最も明るく輝く場所に居る奴ら

    彼らが持つほんの小さな「弱味」を得る為に、影で生きる強かで、思いのほか聡明な彼女達の話を聞いているのだった


    ちなみにこれは、彼が心から信頼している参謀、アルミンから伝えられた方法だ


    『夜会では努めて低姿勢で好感度良く振る舞うんだよ?』


    『裏から手に入れた情報は、上手に使ってね?』


    『絶対に恨みを買うようなやり方をしちゃダメだよ?』


    その結果調査兵団に流れ込んでくるであろう、決して少なくはない額の資金を妄想して、その可愛らしい顔を台無しにしてぐふふと笑う


    だれだよ…こいつの事を、夢を追いかける永遠の少年とか言った奴は…


    そして今、お腹が真っ黒な夢見る少年は、爽やかな笑顔を残して海の向こうへと旅立っている


    ジャンに調査船の造船を進められるだけの資金と、協力者の確保という宿題を残して



    あーー夜会めんどくせぇ



    寝不足の頭を2,3度振って、眠気覚ましの洗顔をする為中庭へと向かう



    今日もあいつはついて来るのかな…

    またユミルんとこに預ければいいか……



    彼女の発情期発言や、つまみ食いテヘペロ告白など知る由もないジャンは、まるで子供の預け先を思案する親のように、今日の予定について頭を巡らせていた




  8. 8 : : 2014/08/30(土) 20:25:59


    狩人の心得〜其の3〜
    【狩場の選択を間違えるな】



    「またお前留守番かよ。なんの為について来てんの?」


    女王陛下不在の豪奢な部屋で、お行儀の悪い二人のお留守番隊は、すっかり暇を持て余していた


    ソファーでゴロゴロしながら砂糖菓子をつまんでいたサシャは、ユミルの問いに頬を膨らませる


    「ユミルだってお留守番じゃないですか!」


    「私はいいんだよ。毎回誘われてるけど断ってんだから。ああいう気取った場所は、反吐が出る」


    「汚いですねぇ…まぁ私も苦手ですけど」


    ヒストリアの匂いが染み込んだベッドの上で、ふかふかの羽枕を弄んでいたユミルは、サシャの答えに呆れたように言った


    「だったらついて来なきゃいいだろうが」


    「だって私は団長補佐官ですから!」


    「非公認のな……ってか、補佐なら補佐らしく、ちゃんと夜会に出て団長をサポートしろよ」


    「あーーそうなんですけどねぇ…私団長命令で夜会への出入り禁止なんですよ…」


    「なんだそれ?!お前何やらかしたんだ?!」

    面白い事を見つけたとばかり、枕を投げ捨てサシャに詰め寄る


    「何したっていうか…」

    ぽりぽりと砂糖菓子を齧りながら少し考えるサシャ


    「ユミルは覚えてませんか?ほら、一回、夜会に出るからってユミルのドレス借りたじゃないですか」


    「そんなこともあったな。ヒストリアが、いつか私が夜会に出る気になったらって作ってくれたやつだな」


    「そう、そのドレスを借りた日の事なんですけど…」


    「お前私とそんなに身長変わらないくせに、ドレスの胸が入らなかったんだよな………あ……なんか思い出したら腹が立って来た。一発殴らせろ」


    「嫌ですよ!大体あのドレスのせいで出入り禁止になったようなものなんですから!」

  9. 9 : : 2014/08/30(土) 21:08:09


    そう、サシャはあの日、見たことも無いような美味しい料理が食べてみたくて、ジャンに頼み込んで急遽夜会への出席を許可してもらっていた

    兵服が正装とはいえ、サシャが着ていたものはドレスコードに引っかかるくらい、くたびれている

    仕方なくユミルのドレスを借りることになったのだ


    ユミルの身体に合わせて作られたドレスは、元気に育ったサシャの胸を収めるには些か小さ過ぎた


    ユミルは「ちくしょう…腹立つなぁ」としきりに呟きながら、ハサミを持ち出して、器用に胸の一箇所だけに切り込みを入れた

    切り込みがこれ以上深くならないように軽く縫い止めて、再びサシャに着せてくれる


    結果…

    背中のボタンは止まったものの、真っ直ぐに入れただけの切り込みは綺麗に割れて、胸の谷間が大きく見えるなんとも色気のあるデザインのドレスに変わってしまっていた


    着慣れないドレスにサシャの気持ちは早くも挫けそうになっていたが、ユミルの「とっとと行って来い!」の一言で、半ば追い出されるように夜会へと向かったのだった


  10. 10 : : 2014/08/30(土) 21:42:39


    夜会会場へと向かったサシャは、会場に一歩足を踏み入れた途端、料理に釣られて出席してしまったことを激しく後悔した


    閉鎖的な村を出てから今日まで、色々な人に会い、色々な経験をしてきた

    だいぶ順応性が付いてきたと自分では思っていたが、ここはレベルが違いすぎた

    ちょっとした地方豪族でも怖気づくほどの煌びやかな世界は、サシャにとって全く異次元の空間だった


    焚かれている香木や、貴族達のつける香水の香り

    楽団が演奏する音楽と、談笑する人々のざわめき


    ここはサシャにとって完全なアウェイだった


    持ち前の感覚が全く役に立たないことで、言い知れぬ不安に襲われる


    そのまま踵を返して帰ろうかと思ったが、ジャンには一言伝えておかないと心配をかけてしまうだろう

    女官に言伝を頼むという簡単な方法も思いつかないくらいパニックになっていたサシャは、先に来ているはずのジャンの姿を必死で探した


    しなやかな肢体に露出度の高いドレス姿のサシャは、当然のことながら会場にいた人々の視線を集めてしまう


    うーーーなんか恥ずかしいです…

    それに凄く怖い…


    慣れた下ネタは平気でも、慣れない夜会やドレスは恥ずかしい

    それがサシャ・ブラウス


    テーブルに並んだ美味しそうな料理に手を延ばすこともなく、キョロキョロと辺りを見回す


    半ば泣きそうになりながらウロウロするサシャは、突然後ろから声を掛けられ、文字通り飛び上がった

  11. 11 : : 2014/08/30(土) 21:57:43


    『お嬢さん、どうしました?』

    『ひゃい?!』


    振り向くと、顔立ちの整った品のいい青年がにこやかに微笑んでいる

    まわりの淑女達から小さな嬌声が上がった


    『どなたかをお探しですか?』


    たくさんの視線を一気に集めながら、サシャは迫り来る危険を察知していた


    背中を駆け上がる不快な感覚は、頭のてっぺんまで上り詰めて、全身の毛をザワザワと逆立てている

    サシャの本能は、このキラキラとした男の持つ、黒くて危険な匂いを敏感に感じ取っていた



    やだ…

    怖い…

    気持ち悪い…



    ここが森の中なら、すぐさま距離を取って身を隠しただろう


    けれどここはサシャの森ではない

    着飾った人々がひしめき合うこの空間は、彼のテリトリーだ


    絶望的な気分になったサシャは、それでも相手の視線を真っ直ぐに受け止め、気丈に男と対峙していた


    視線を逸らしたら負ける


    身についた本能だけがサシャの味方だった


    自分をじっと見つめるサシャに、すっかり勘違いをした男がその手を伸ばす



    反射的に身を引いたサシャは、何かにぶつかって一瞬よろめいた



    ーーーすみません、何か失礼がありましたか?


    サシャがぶつかった男は穏やかな声でそう言うと、そのまま彼女の肩を抱いた

    懐かしい声に力が抜ける…


    『いや、このお嬢さんが誰かを探しているようだったので…』


    『ああ、そうでしたか。ありがとうございます。多分私を探していたんでしょう…お手数をおかけしました』


    肩にジャケットかかけられ、落ち着く匂いがサシャを包む


    『この子は私の補佐官です。体調が悪かったみたいなんですが、無理矢理連れてきてしまって』




    ーーその後の二人の会話は、もうサシャの耳には届いて来なかった



  12. 12 : : 2014/08/30(土) 22:16:26



    「ほぉ、王子様に助けてもらったんだな」


    話を聞き終わったユミルは、からかうようにそう言うと、再びベッドに転がった


    「王子様なんかじゃないですよ…その後散々叱られたんですから…あんな誘うような格好してたら、勘違いされても仕方が無いんだぞって…」


    「それで夜会禁止令か」


    「はい…別に二度と行きたいとは思ってないので、いいんですけどね」


    「しかしジャンの奴がそんなに出来た人間になっていたとは…」


    「二人とも笑いながら穏やかに話してましたし…私はすっかり安心しちゃって、後のことはあんまり覚えてないんですけどね」


    その時の事を思い出したのか、サシャの頬が少しだけ赤く染まった


    そしてそれを見逃すユミルではない


    「お前、ジャンに惚れてんのか?」


    「ほ?!」


    確かに『自称団長補佐官』としてジャンについて回るようになったのはその日からだ

    ジャンのそばにいることが増えて、彼の色々な面を見ることは、サシャにとってとても楽しいものだった

    彼の何気ない優しさに触れれば心が温かくなり

    彼が困っていればなんとか助けになりたくて、持てる限りの力でサポートした


    彼の笑顔を守りたいと思った


    その笑顔を自分に向けて欲しいと思った



    「惚れるって…つがいになる相手って事ですか…?」


    ちょっと独特なサシャの感覚をよく知っているユミルは、当然のように言った


    「そういうことだ。それだけじゃないけどな」


    「……他に何があるんです?」


    待ってましたとばかり、ユミルはサシャにとって一番わかりやすい言葉でそれを伝えた


    「お前はジャンに発情するのか?」



    「!!!!!」



    性欲と恋愛がバラバラだったサシャの中で、二つの感覚が一つになった


    「……じ…じゃんと…?」


    可哀想なサシャは耳まで真っ赤になり、初めてつがいになる男として意識したジャンへの、複雑な思いに翻弄されていた


    貞操観念は動物並みでも、恋愛感情は少女のようにまだ幼い

    これもサシャ・ブラウス


    ここにミカサがいたら、このサシャの純情さを見て泣いて喜んだことだろう


    しかしここにいるのはミカサではなくてユミルだった


    ニヤニヤしながらサシャの慌てぶりを眺めている


    このまま放っておいてもいずれはくっつくだろうが…

    それじゃぁ面白くない

    せっかくだから楽しませてもらうか



    ユミルのお腹もなかなかに黒かった



    「おい芋女!これから夜会にいくぞ!」


    ベッドから飛び起きてサシャの手を取る


    「え?!ダメですって!出入り禁止なんですよ?!」


    慌てるサシャに、ユミルは邪悪な笑みを浮かべた



    「大丈夫だ。そこは私に任せとけ!」




  13. 13 : : 2014/09/01(月) 21:02:56


    獲物の心得〜其の3〜
    【油断大敵】



    その頃ジャンは、もうすっかり馴染んでしまった夜会での社交活動を、いつもの通り順調にこなしていた


    アルミンの馴染みの駐屯部隊長は『自分が飲んだくれの兵士でいられるうちは平和な証拠』だと言っていたらしい

    確かにその通りだ

    調査兵団団長が、夜会でへらへら笑っていられるうちは平和な証拠なのだ


    さて…今夜はどれだけ引き込めるか


    丁度世代交代の時期に差し掛かっていることは、ジャンにとってかなりありがたい追い風になっていた


    前回までに顔を繋いでいた若い貴族達を見つけ、そちらに足を進める


    元々憲兵志望だったトロスト区の貴公子を舐めんなよ!


    ーーー誰にも言われたことないけどな…


    そういえば今日の昼、幹部ミーティングの後でミカサにおかしなことを言われた


    ミカサはここ数年見せたこともないような殺気の篭った眼つきでジャンを睨み付け

    『ジャン、貴方のせいでサシャがはしたない子に育ってしまった。もういい歳なんだから、いい加減落ち着きなさい!』

    と…


    全く意味がわからない

    なんで俺のせいなんだ?


    あいつが食い意地の張った、はしたない子なのは昔からだろう

    最近は食糧事情も安定してきて、飢えを満たす為の暴走は無くなっていたが、それでも美味いものに対する執着心は衰えていない


    今でもサシャは、見ている者まで幸せな気持ちになるほど、嬉しそうに、大切に食事を摂るのだ

  14. 14 : : 2014/09/01(月) 21:21:58

    サシャの事を考える時、ジャンの心はホッコリと温まった

    持ち前の勘の良さは、ジャンの体調から精神状態までを正確に把握し、献身的にサポートしてくれる

    兵士としての技術もトップクラスで、作戦遂行時には捨て身の覚悟でその力を存分に振るってくれていた

    もう正式な補佐官でもいいんじゃないかと思うが、いかんせん、サシャはデスクワークが絶望的に苦手だった

    団長に代わって、様々な雑務の指示や書類作成を任される立場の補佐官に就くには、少々…いや、だいぶ足りない部分が多かった


    もういっそ俺の嫁でよくね?


    密かにジャンはそう思っていた

    根拠の無い自信家なのは昔のままだ


    ミカサに感じたようなトキメキも、切なく甘い疼きも感じたことはないが、サシャと過ごす時間は彼にとって唯一飾らない自分でいられる時間だった


    サシャが自分にとってかけがえのない相手だということは、もうずいぶん前から自覚している


    それでもジャンは躊躇っていた


    理由はただ一つ


    彼女に対して欲情することがない


    という致命的な事実があるからだった


    可愛いとは思う

    癒されもする

    面倒をみてやるのも楽しい

    でも女性としての魅力は……



    うん、嫁は無いか…




    さすがに自分にとって心地良いからといって、こんな中途半端な気持ちで彼女に手を出すほどジャンは腐っていない


    彼女が自分のそばから離れないのをいい事に、すっかりこの状況に甘えてしまっている



    まぁ、この程度にはジャンは腐っていた





    一旦サシャの件は頭から振り払い、本来の目的に集中しようと、笑顔を口元に貼り付けて紳士淑女の輪に入ろうとしたまさにその時


    テラスの辺りで小さな悲鳴が上がった


    何事かと視線を向けたその先、人々の垣根が割れた向こう側には……





    「サシャ?!」





    所々に木の葉が付いた乱れ髪に、ボロボロに汚れた服を身に纏った野生児が、今にも泣きそうな顔でジャンを見つめていた




  15. 15 : : 2014/09/01(月) 22:28:59


    狩人の心得〜其の4〜
    【全力で真摯に獲物と向き合え】



    その少し前、サシャはユミルに連れられて夜会会場へと潜入していた


    ユミルは給仕、サシャは女官の姿に扮装している


    「ユミルー…やっぱり帰りましょうよぉ…」


    女官に化けているおかげで、人々の注意を浴びることはなかったが、ジャンに見つかったらまた叱られる

    こんな所に連れてきて、ユミルは一体どうしようと言うのか…


    「うるせぇ、お前は黙って言うこと聞いてりゃいいんだ」


    横暴だ

    理不尽だ

    ユミルの馬鹿!


    思っていても口には出せないサシャ

    ユミルとの上下関係は、サシャの中で今だに健在である



    ーーーさて、これからどうするかな



    そして主犯のユミルは、実際のところ全くのノープランだった


    彼女はこの場でサシャとジャンを引き合わせ、自分の気持ちに気付いたばかりのサシャの、初々しい反応を楽しみたいだけだった


    上手くすれば、いつもすかした顔して悪態ばかりをついてくる生意気な馬面が、普段見せないような意外な一面を見せるかもしれない


    まさに行き当たりばったり


    まぁ、何もなくても暇つぶしにはなる


    ユミルにとって、最愛のヒストリアのそばで彼女を見守るという生活は、自分の最大の望みであると共に結構なストレスを感じるものでもあったのだ


    少しぐらいのおふざけは目を瞑って欲しい


    中庭へと続くテラスに立ち、中の様子を窺う


    先ずはジャンを見つけないと…


    集中してジャンの姿を探していたユミルは、いつの間にか隣にいたサシャがいなくなっていることに、全く気が付いていなかった



  16. 16 : : 2014/09/01(月) 22:36:20



    その時サシャは、中庭にある散策用の小さな森の中、木の上に身を潜めてじっと辺りの様子を窺っていた


    女官が着る長いスカートは、木登りの邪魔になるので短く裂き、端切れを両手にきっちりと巻いていく


    森の中で発せられた女性の悲痛な声は、恐らくサシャにしか届いていない


    ある一点にその気配を感じたサシャは、そこに向かって迷うことなく木の上を移動した


    後ろで小さくまとめていた髪を解き、風が毛束を揺らすのに任せる

    髪の流れは風を読み、空気の乱れを感じてバランスを保つ助けになっていた


    次第に近くなる剣呑な空気


    欲望に任せて弱い者をいたぶる獣と、怯えきって逃げる事も出来ない守るべきものの、声にならない悲鳴


    獣は2体


    恐らく目の前の獲物に夢中で、周りのことなど気にしていないだろう

    それでも木々が風に揺れる音に合わせて慎重に、迅速に進む


    サシャに恐怖心は全くなかった


    ここはサシャの森だ


    微かに風に乗って流れてくる夜会のざわめきも、もう彼女の心を乱したりはしない

    持ち得る限りの力を尽くして、その場へと急いだ




    そして夜目が効く狩人の瞳が彼らの姿を捉えた時

    身なりの良い服を着た2人の男は、遊歩道から外れた草むらに引き倒した小柄な女官の上に、覆いかぶさろうとしていた



    興奮している男達は、真上の枝に人がいることなど気付きもしない



    サシャは手に巻いた端切れを固く結び直すと、立っていた枝を掴んで勢い良く飛び降りる



    男達の後頭部に向かって






    ーーー充分にスピードの乗ったその両脚は、一瞬で2体の獣を仕留めていた



  17. 17 : : 2014/09/02(火) 12:05:23



    「お前、夜会に出ると何かしらやらかすな」


    ジャンの呆れたような言葉に、サシャはしょんぼり項垂れた


    ーーーまた迷惑を掛けてしまった…


    サシャの倒した男達は憲兵の手で医務室に運ばれ、襲われていた女官は大した怪我もなく、無事だった


    会場に現れた野生児に、夜会は一瞬騒然となったが、機転を効かせたジャンが直ぐに外に連れ出したのと、騒ぎを聞きつけたヒストリアのフォローで騒ぎが長引く事は無かった


    ユミルはヒストリアにこっぴどく怒られて、次の夜会には自分をエスコートするようにと約束させられた



    そしてジャンとサシャは憲兵の取り調べを受け、今やっと解放されたところだった



    「………ごめんなさい」



    部屋から出たサシャは、開口一番ジャンに謝った



    本当は貴方の助けになりたいんです


    貴方の笑顔が見たいんです


    貴方を困らせる様な事はしたくないんです


    貴方にとっての一番じゃなくても

    私にとって一番な貴方のそばには居られれば、それで充分幸せだったんです…


    乙女なサシャは、謝ること以外、溢れる想いを言葉にすることが出来なかった



    何故ならさっき森で獣を倒したサシャは、乙女ではなくて狩人だったから


    ジャンへの想いも気遣いも、全て忘れて走ってしまったから…


    この時ばかりはサシャも、身体に染み込んだ狩人の本能を恨んだ


    やっと自分の気持ちに気付いたのに…


    きっとジャンはもうそばには置いてくれない…



    乙女の自分が可哀想で

    迷惑をかけてしまったのが悲しくて

    俯いたままのサシャの目からは、涙がポロポロと流れていた

  18. 18 : : 2014/09/02(火) 12:44:19


    「しかし、良くやってくれたな」



    明るい声と共に俯いた頭をくしゃっと撫でられたサシャは、何のことを言われているのかわからず、顔を上げた


    「え?」


    ジャンは嬉しそうに目を細めて笑っている


    「なんだ?今頃怖くなって泣いてんのか?」


    違う…

    そうじゃないんです…



    お前怖がりだもんな

    そう言いながら優しく撫で続けてくれる


    その手がとても嬉しくて、ますますサシャは何も言えなくなってしまった


    「あいつら金で地位を手に入れた俄か豪族なんだよ。中央に出入り出来るようになって、調子に乗って陰で好き勝手してるらしい」


    サシャの沈黙をどう取ったのか、ジャンは話を続ける


    「せっかく高い金払って買った地位は手放したくないだろうしな。いい金蔓になりそうだ」


    楽しそうに笑うジャンの声に、ようやく涙が止まる



    「……怒ってないんですか?」




    「なんで怒るんだ?お前は何も間違った事してないだろ?」





    どんよりと曇っていたサシャの胸に、明るい光が射した




    「はい!」




    うんうんと頷くジャンの笑顔


    ミルクティー色の髪も


    優しく撫でてくれる温かい手も


    まるで天馬のように空を翔けるしなやかな身体も



    この魂の入れ物ごと全部欲しい!





    乙女のサシャ復活の瞬間だった








    サシャはジャンに、確かに発情していた






  19. 19 : : 2014/09/02(火) 14:31:08



    獲物の心得〜其の4〜
    【本能は正義!】




    「で…なんでお前がここにいるの?」


    夜会に出席した夜に泊まる常宿


    いつもは別々の部屋で休むのだが、今日は何故かサシャが自分の部屋にいる

    しかも何故か、ベットに腰掛けた自分の膝の上に座っている



    「さっき良くやったって褒めてくれましたよね?」


    「……褒めたな」


    「頭…撫でてくれましたよね?」


    「……撫でたな」


    「もう少し…ご褒美下さい」


    「え?」


    ご褒美って……

    何?

    高い食いもんねだられるの?



    「ちょっと目を瞑ってもらえたら、直ぐ終わりますから」



    どこのおっさんだよ…


    分かって言ってんのか?




    サシャはジャンの身体に跨ると、そのまま上半身を倒した

    彼女の顔がゆっくりと近づいて来る



    その瞳は獲物を捕らえる肉食獣のような挑戦的な色をしていた



    いつもの無邪気な笑顔とは違う、誘うような微笑み



    今までサシャに対して感じたことの無い、妖艶な色気がジャンの理性を掻き乱す



    一気に鼓動が早くなり、身体に熱が溜まってくるのを感じた



    「おい、本気か?」


    「ダメですか?」



    吐息がかかる程の距離

    サシャは小さな舌で自分の唇をゆっくりと舐めた



    うわ…

    これ反則…


    こいつに欲情しなかった昨日までの俺、どんだけ見る目がなかったんだ…



    頭の中は大混乱だが、男としてのプライドが辛うじてジャンを支える


    「なら、目ぐらいつぶれ」


    「知らないんですか?追い詰められた獲物は何をするか分からないから、目を離しちゃいけないんです…狩りの鉄則ですよ…?」




    熱に潤んだ瞳に射抜かれて

    ジャンは捕食される覚悟を決めた




    「……今更逃げも隠れもしねぇから、目を閉じろ」


    「はい!」


  20. 20 : : 2014/09/02(火) 14:52:34



    2人の唇が軽く触れ合う


    サシャの唇は喜びに微かに震えていた


    「んー…ご馳走様でした。でも少し食べると、もっと欲しくなっちゃいますね…」



    「『待て』ができるほど出来た奴だとは思ってねぇよ…」



    自分が我慢出来ないとは素直に言えないジャンは、そう軽口を叩くとシャツのボタンに手をかけた



    「ふふっ」



    堪えきれない喜びの声がサシャの口から漏れ


    待ちきれないとでも言うように


    肩口に顔を埋め


    鼻を首筋に擦り付ける




    彼女に尻尾がついていたら、きっと千切れんばかりに振られているに違いない




    何これ?!

    この生き物可愛すぎる!




    今までの分のトキメキが、一気にジャンに襲いかかり







    俺…朝まで持つかな…








    その想いを最後に

    獲物は考える事を放棄した










    狩人の心得〜其の5〜
    【感謝の気持ちを忘れずに、ありがたく美味しく頂きましょう】






  21. 21 : : 2014/09/02(火) 15:25:16



    狩人の心得 〜其の6〜
    【日々是精進】



    自称「調査兵団団長補佐」兼「ジャン・キルシュタインの嫁」サシャ・ブラウスは、今日も狩りの準備に余念が無い


    調理場で冷たい檸檬水を作ると、ポットに入れてトレイに乗せた


    グラスの数は二つ


    畳んだシーツを首に掛けている


    絶妙なバランスを取りながら、小走りで中庭を突っ切る


    (……後3分)



    訓練用の森に着くと、少し立ち止まり耳を済ませ、大きめの切り株にシーツを被せた



    (……後1分)



    ポットとグラスをそこに置き

    まだ何も見えない森へと視線を向ける




    (……28、27、26)




    アンカーを打ち込む音が近づいて来る



    (……9、8、7)



    スピードを落としながら近付くジャンの姿が見えた



    少し汗をかいている

    冷たい飲み物にして正解でしたね




    サシャの笑顔を見つけたジャンは、日差しを背にして翔んでいるのに、何故か眩しそうに目を細めていた




    (……3、2、1)




    シュッ!







    「おはようございます!」






    「おう!」









    ーーーカウント0で、月毛の天馬はサシャの手の中に落ちて来た










    fin
  22. 22 : : 2014/09/02(火) 15:29:16



    【おまけ】



    「そう、ジャンと結ばれたのね」


    「はい!ミカサにも心配お掛けしました。ありがとうございます!」


    良かった…

    これでとりあえず安心


    いつも以上に輝いているサシャの笑顔に、ミカサの気持ちも明るくなる


    「もう手近な相手とそういう事しちゃダメよ?」


    「?」


    え?

    この子分かってない?



    「やですねぇミカサ!そんなことしてないですよ?だって今までこんなに発情したこと無かったですもん」



    「あ…ああ…そうなのね…」



    やっぱり私の育て方は間違えてなかった…



    喜びの涙に噎せるミカサの心中を知らないサシャは、頬を染めながら、いかにジャンが美味しかったかを嬉々として語っている



    うん…馬の味なんかに興味は無いから…



    こういう話を食堂でしてはいけないと、躾けなきゃダメだろうか…



    「でも……ねぇ、ミカサ?」



    「なぁに?サシャ」



    「エレン、早く帰ってくるといいですね!」



    「!!!」




    「ね?」




    「…………………ウン」












    調査兵団兵士長と団長補佐官が、乙女な話をしているうちは



    ーーーきっと平和な証拠なんです








    ホントに終


  23. 23 : : 2014/09/02(火) 15:32:19


    以上で終了です

    過去作品でなんとなくほのめかしていた2人をやっとくっつけました


    サシャ…ちょっと野生児過ぎた気もします…狩猟犬のイメージだったんですけど…(笑)


    最後までお付き合い頂き、ありがとうございましたm(_ _)m

  24. 24 : : 2014/09/02(火) 17:34:20
    執筆お疲れ様でした!

    ジャンサシャぁぁぁ!!

    大好きなのに私には書けない組み合わせを書いていただきありがとうございます!!
    ずっと叫びたくて、コメント規制解除を心待ちにしてました。

    サシャ…狩猟犬のイメージぴったりですね。時には尻尾を振って甘え、時にはどんな獲物も逃がさない…。ジャンも捕まえられちゃいましたね(フラフラ寄っていったようにも見えなくもないですが)。

    この二人ならとても楽しい家庭が築けそうな気がします。
  25. 25 : : 2014/09/02(火) 19:53:12
    見事な馬狩りでした!
    さすが野生児!
    狙った獲物は逃がさない(笑)

    獲物と狩人それぞれの心得にニヤリとしながら、するする読み進みました。

    私も狩りの参考にさせていただきます(えっ)

  26. 26 : : 2014/09/02(火) 22:08:19
    執筆お疲れさまでした!

    乙女と言いつつ、サシャったら随分な小悪魔じゃないですか?!

    ぐぬぬぬぬ、と思いながら読んでいました(笑)

    そして、かっこいいジャン( ̄□ ̄;)!!

    月子さんのジャンは花街の帝王な彼にときめかせて頂きました。
    にしても、成長したんだなあ…(遠い目)

    とっても美味しい大人のディナーをごちそう様です。
  27. 27 : : 2014/09/02(火) 23:13:37


    キミドリさん、コメント解禁お待たせしました。そして早速のご感想ありがとうございます♪
    ジャンサシャというよりサシャジャンになってしまいましたが、喜んで貰えて良かったです。
    仰る通り、この2人が夫婦になったら、ひたすら楽しそうですよね。
    後半は、もうお前ら後は勝手にやってくれ…という気持ちで書いておりました(笑)



    なすたまさん、ありがとうございます(^-^)
    2人共今まで通りで結構満足していたので、サシャの発情期に一押しして貰った感じです。
    ジャンからは手を出しそうも無かったのでw
    サシャの天然ギャップ萌え作戦、彼女は極端でしたが、意外と王道なので是非使ってみて下さい(笑)



    ありゃりゃぎさん、ジャンもサシャも、がっつり補正掛けました(笑)
    どんなご飯も美味しそうに食べるサシャなら、ジャンが凄くかっこ良く美味しそうに見えるんじゃないかと…
    きっとジャンは、花街のお姉様達に身体も心も成長させてもらったのでしょう(笑)
    ありがとうございました♪

  28. 28 : : 2014/09/03(水) 14:20:34
    執筆お疲れ様です。

    楽しく読ませていただきました。

    ジャンとサシャ、いい組み合わせですね!
  29. 29 : : 2014/09/03(水) 21:25:09


    カンナさん、ジャンとサシャの会話は、ボケとツッコミがはっきりしてるので、書いていても楽しいです(^-^)
    共感して頂いて嬉しいです。ありがとうございました♪
  30. 30 : : 2014/09/22(月) 21:38:28
    月子さんの文章は本当に読んでいて気持ちがいいです( ´ ▽ ` )ノ
    豊富な表現力、ユーモア、想像力、どれも最高ですよ(((o(*゚▽゚*)o)))
    もはやプロの仕事ですね
  31. 31 : : 2014/09/23(火) 00:03:42

    カンツォーネさん、読む事と絵を描く事は長く続けておりますが、文章を書き始めたのはこちらが初めてなので、今だにスレ立て時には手が震えます…(^_^;)
    なので楽しんで頂けると、本当に報われた気持ちになります。
    暖かいお言葉ありがとうございました。
  32. 35 : : 2023/07/04(火) 02:48:10
    http://www.ssnote.net/archives/90995
    ●トロのフリーアカウント(^ω^)●
    http://www.ssnote.net/archives/90991
    http://www.ssnote.net/groups/633/archives/3655
    http://www.ssnote.net/users/mikasaanti
    2 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 16:43:56 このユーザーのレスのみ表示する
    sex_shitai
    toyama3190

    oppai_jirou
    catlinlove

    sukebe_erotarou
    errenlove

    cherryboy
    momoyamanaoki
    16 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 19:01:59 このユーザーのレスのみ表示する
    ちょっと時間あったから3つだけ作った

    unko_chinchin
    shoheikingdom

    mikasatosex
    unko

    pantie_ero_sex
    unko

    http://www.ssnote.net/archives/90992
    アカウントの譲渡について
    http://www.ssnote.net/groups/633/archives/3654

    36 : 2021年11月6日 : 2021/10/13(水) 19:43:59 このユーザーのレスのみ表示する
    理想は登録ユーザーが20人ぐらい増えて、noteをカオスにしてくれて、管理人の手に負えなくなって最悪閉鎖に追い込まれたら嬉しいな

    22 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:37:51 このユーザーのレスのみ表示する
    以前未登録に垢あげた時は複数の他のユーザーに乗っ取られたりで面倒だったからね。

    46 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:45:59 このユーザーのレスのみ表示する
    ぶっちゃけグループ二個ぐらい潰した事あるからね

    52 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:48:34 このユーザーのレスのみ表示する
    一応、自分で名前つけてる未登録で、かつ「あ、コイツならもしかしたらnoteぶっ壊せるかも」て思った奴笑

    89 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 21:17:27 このユーザーのレスのみ表示する
    noteがよりカオスにって運営側の手に負えなくなって閉鎖されたら万々歳だからな、俺のning依存症を終わらせてくれ

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Tukiko_moon

月子

@Tukiko_moon

この作品はシリーズ作品です

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