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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

閑話【隙間アルミン詰め合わせ】

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  1. 1 : : 2014/11/03(月) 23:44:39


    アルミンお誕生日おめでとうございます( ´ ▽ ` )ノ

    って事で日付けが変わる前に滑り込みました

    大人104期生シリーズ(?)の隙間短編三本です


    一話目は『駆逐王子と腹筋の魔女』の後
    >>2

    二話目は『百花繚乱』の後
    >>13

    三話目は『そして僕と彼女は小鳥のように』の後
    >>20

    になりますが、本編読んでいなくても全く問題ないです。


    CPは本編通りアルアニですが、基本ふざけてると思います。
    キャラ崩壊注意です。
    下ネタが苦手な方はご注意ください。


    下書き無しの為ゆっくり更新になりますが、以上が大丈夫な方はよろしくお付き合い下さいませm(_ _)m
  2. 2 : : 2014/11/04(火) 00:51:31


    ひとつめ【譲れない想い】






    それはまだ夢だけを見ていられた頃…



    アルミン「エレンー!」


    エレン「おうアルミン!」


    アルミン「今日も持って来たよ!」



    金色の、たんぽぽみたいな丸い頭が坂道を駆け上がってくる

    両手に重そうな古い本を抱えて…



    エレン「バカ!走るなよ!また転ぶぞ……って…ほら…やっぱり…」


    アルミン「う〜〜……」


    エレン「大丈夫か?アルミン」


    アルミン「うん、大丈夫!」エヘヘ


    エレン「えへへじゃねぇよ。鼻の頭擦りむいてるじゃねぇか…抱えた本離さねぇから…」


    アルミン「大丈夫だよ…こんなの舐めとけばすぐ治る!」


    エレン「舐めるって…お前…」


    アルミン「………ん?…あれ?ん〜〜〜っ!」


    エレン(うん…自分の鼻の頭舐められるような器用な奴はそうそう居ねぇよな……)ハァ


    エレン「アルミン、こっち向け」


    アルミン「え?」


    エレン「消毒だ」ペロン


    アルミン「!!あわわ……あ、ありがと……エレン……」


    エレン「もう無茶すんなよ?」


    アルミン「うん…でも早くエレンとこの本見たかったんだ…」


    エレン「ったく…焦らなくても、これからもずっと一緒だろ?二人で外の世界に行くんだから」


    アルミン「エレン…」


    エレン「約束だからな!」


    アルミン「うんっ!」




    交わした約束が必ず叶うと疑いもしなかった頃…







    ーーーーーーーーー

    ーーーーーー

    ーーー





    エレン「………ん……夢か……」


    エレン(久しぶりに見たな…子供の時の夢なんて……)


    ミカサ「……エレン?」


    エレン「あ、起こしちまったか?悪い。まだ早いから寝てろ」


    ミカサ「ん……」



    エレン(…………)




  3. 3 : : 2014/11/04(火) 21:35:53


    ーーー翌朝

    調査兵団トロスト区支部食堂


    ジャン「ここいいか?」


    エレン「おう」


    ジャン「お前最近疲れてねぇ?」


    エレン「そうか?」


    ジャン「顔色は悪くないから体調不良ってわけではなさそうだが…」


    エレン「まぁな」


    ジャン「なんだ?浮かない顔しやがって」


    エレン「んー…なんでもねぇよ」


    ジャン「おかしな奴だな…」



    エレン「……俺って変なのかな…」


    ジャン「……あん?どういう意味だ?」


    エレン「……お前に聞いてもわからねぇか…」


    ジャン「おい!てめえが回りくどい言い方するからだろうが。言いたい事があるならハッキリ言いやがれ」


    エレン「ハッキリわかんねぇから聞いてんだよ…」ハァ



    ジャン「……どうした?お前」



    ミカサ「エレン、朝の訓練は私が済ませておいた」


    ジャン「よお、ミカサ」


    ミカサ「おはよう、ジャン」


    エレン「すまなかったなミカサ」


    ミカサ「大丈夫。昨夜は夜中に目が覚めてたみたいだし。ゆっくり寝られた?」


    エレン「ああ、ありがとな」


    ミカサ「アルミンはまた朝抜き?」


    ジャン「あいつはまともな時間に寝たり食ったりしないからな」


    ミカサ「身体に良くない…
    ジャン、あなたはアルミンの上官なのだから、ちゃんと見て欲しい」


    ジャン「無茶な事言うな…お前らの言う事も聞かないのに」


    エレン「ごちそうさん」


    ジャン「もう行くのか?」


    エレン「ああ、朝の訓練サボっちまったからな…自主練してくる」


    ミカサ「いってらっしゃいエレン」



    ジャン「あいつなんかおかしくないか?」


    ミカサ「………」





  4. 4 : : 2014/11/04(火) 22:42:50



    ーーーその夜


    ミカサ「……エレン?」


    エレン「……あ、わりぃ」


    ミカサ「ううん、構わない」


    エレン「……ミカサ、今夜は無理かもしれねぇ…」


    ミカサ「…うん、無理は良くない。ゆっくり休んで」


    エレン「ごめんな、ミカサ…ありがとう」



    ーーーーーーーーー

    ーーーーーー

    ーーー


    ミカサ「……という事があった…」


    ジャン「………」


    ミカサ「最近三回に一回はこんな感じ……エレンは私の事好きではなくなってしまったのだろうか…」


    ジャン「いやいやいや!それはないだろう!」


    ミカサ「でも……」


    ジャン「あー…なんで朝っぱらから部屋に押しかけられてこんな相談を受けてるんだか分からねぇが…それは置いておいても、あいつがミカサに惚れてるのは間違いない」


    ミカサ「そう…だろうか…」


    ジャン「後一ヶ月で結婚だろ?」


    ミカサ「うん…」


    ジャン「あいつからプロポーズしたんだよな?」




    ミカサ「………それは私から」



    ジャン「………そっか」



    ミカサ「………」


    ジャン「………」


    ミカサ「………」


    ジャン「……あ、そうだ!そういう相談なら、適任がいるじゃねぇか!」


    ミカサ「アルミンは今とても忙しい。壁外拠点の改善案をハンジ団長と煮詰めているから」


    ジャン「……だよな」


    ミカサ「………」


    ジャン「よし!最近あいつがおかしいのは俺も気になってたし、それとなく聞き出してやる」


    ミカサ「………」


    ジャン「……こらこら、お前に上手く出来るのか?って顔するんじゃねぇよ」


    ミカサ「……お願いする」


    ジャン「おう。任せろ」




  5. 5 : : 2014/11/05(水) 21:43:20


    ジャン(とは言ったものの…)


    エレン「んだよ話って」


    ジャン(イラついてるこいつに、穏便に話せる自信はない…とりあえず…落ち着かせよう)


    ジャン「まぁ、たまにはいいんじゃねぇの?数少ない同期なんだし、昔話でもしようぜ」


    エレン「……あ?どこにそんな暇があんだよ。大体お前との思い出なんて、ロクなもんじゃねぇし」


    ジャン(うわー…何こいつ?視線で人が殺せそうなぐらいやさぐれてる……)


    エレン「お前分隊長になってから手抜き過ぎなんじゃねぇの?今アルミンが詰めてる計画だって、ほんとならお前がやるべき事だろ」


    ジャン(ぐっ……!我慢…我慢…穏便に……)


    ジャン「……確かに、あいつには色々助けてもらってるな」


    エレン「自覚があるならもっとしっかりしろよ」


    ジャン「お、おう…すまん…って…なんで俺がお前に謝らなきゃならねぇんだ!!」


    エレン「てめえのせいでアルミンが…!」



    ーーーガチャ



    アルミン「僕がどうかした?部屋の外まで怒鳴り声が聞こえてたよ?」


    ジャン「お、アルミン、会議終わったのか?」


    アルミン「まだだよ。とりあえずアウトラインは固まったから、後はジャンにも一緒に詰めてもらおうと思って呼びに来たんだ」


    ジャン「そ…そうか…うん、今行く…」


    エレン「………」


    ジャン(……なんか凄い目で睨まれてる気がするのは気のせいだよな…?)


    アルミン「じゃぁお願いね」


    エレン「…………」


    アルミン「あ、エレン」


    エレン「なんだ?!アルミン!」パァァ



    アルミン「あんまりジャンに喧嘩売っちゃダメだよ?同期とはいえ、ジャンは上官なんだから。
    みんなの前では控えてね?」





    エレン「………………」チッ





    ジャン(何これ?俺なんか悪いことした?)汗




  6. 6 : : 2014/11/05(水) 22:25:05


    ーーーーーーーーー

    ーーーーーー

    ーーー



    ジャン「……と、いうわけだ」


    ミカサ「そう…」


    ジャン「すまねぇな…役に立てなくて」


    ミカサ「ううん。なんとなく分かった気がする…」


    ジャン「あいつがおかしい訳か?」


    ミカサ「エレンは…多分アルミンの事が…」



    ジャン「は?」



    ミカサ「他の女なら許さないけど…アルミンなら…」



    ジャン「まてまてまてまて!なんで男同士でそうなる?!」



    ミカサ「ジャンは知らないだけ…世の中には色んな愛のカタチがある…昔ユミルが言っていた…」


    ジャン「いや…知ってるけど…そうじゃなくて…」


    ミカサ「私は…エレンの側に居られるなら、第二夫人でも構わないっ!」


    ジャン(……なんか色々間違ってる…アルミン男だから…
    『夫人』になれねぇから…)


    ミカサ「ありがとう…ジャン」フラフラ


    ジャン「大丈夫か?ミカサ」


    ミカサ「大丈夫…だいじょうぶ…うん…」




    ジャン(ほんとに大丈夫かよ…)汗





  7. 7 : : 2014/11/05(水) 22:46:14



    ーーー翌日

    再び食堂


    ジャン(なんでこいつらこのテーブルに来るんだよ…)


    ミカサ「……」ドヨーン


    エレン「……」ムスッ





    ジャン「……」ハァ





    アルミン「おはよう!久しぶりに朝食に間に合ったよ」ニコニコ




    「アルミン!!!」




    アルミン「どうしたのみんな?朝からお葬式みたいな顔して……っ!うわっ!エレン!?」



    エレン「アルミン〜〜〜!!!」ギュー



    アルミン「エ、エレン??何?何があったの!?」



    ミカサ「!!」


    ジャン「」汗ダラダラ



    アルミン「ちょっ、ちょっと落ち着いてエレン!苦しい…!ミカサ!ジャン!エレンをなんとかして!」


    エレン「アルミン〜!」ギュ〜〜!


    アルミン「どうしたのさ!エレン!」





    エレン「アルミン!俺と結婚しよ!!」






    食堂内全員「え?!」







    ミカサ(石化)「」


    ジャン(石化)「」




    アルミン「へ?!エレンはミカサと結婚するんでしょ?!」


    エレン「〜〜〜〜〜!」


    アルミン「とりあえず落ち着いて?ね?そんなにくっ付いてると暑いし……………んっ?暑い……熱い……?」


    エレン「………」グッタリ


    アルミン「エレン?!どうした?大丈夫?!」



    ミカサ(石化)「」

    ジャン(石化)「」



    アルミン「ミカサ!ジャン!エレン酷い熱だよ!早く運んで!」



    ミカサジャン「!!!」






    ーーーーーーーーー

    ーーーーーー

    ーーー


  8. 8 : : 2014/11/05(水) 23:01:09



    ーーー医務室



    アルミン「全く…ジャンはともかく、いつも一緒にいるミカサが気付かないなんて…」


    ミカサ「ごめんなさい…」シュン


    アルミン「たぶん今流行ってる流感だとは思うけど…」


    ジャン「いや、でもこいつ機嫌は悪かったけど、体調は悪く無さそうだったぞ?」


    アルミン「巨人能力者だからね、症状はだいぶ抑えられていたんだと思う」


    ミカサ「エレン……私がしっかりしていなかったから…」


    アルミン「そういえば君たち様子がおかしかったね?喧嘩でもしたの?」


    ミカサ「ううん…もういいの…」


    ジャン「ミカサ……」


    ミカサ「ジャン、行こう。二人きりにさせてあげて」ガシッ


    アルミン「は?」


    ミカサ「アルミン…エレンを幸せにしてあげてね…」


    ジャン「え?おい、ミカサ?なんか首が締まっ…………」ズルズル





    ーーーパタン





    アルミン「………?」




  9. 9 : : 2014/11/05(水) 23:19:46



    エレン「……ん」


    アルミン「あ、エレン気が付いた?大丈夫かい?」


    エレン「アルミン……!」ガバッ


    アルミン「ストップ!だめっ!移るから!」


    エレン「……はい」シュン


    アルミン「一体どうしたのさ?ミカサもジャンもおかしいし…」


    エレン「あいつらがおかしいのは知らねぇよ…」


    アルミン「なら君は何であんな事したの?」


    エレン「…………」ボソボソ


    アルミン「何?聞こえない。
    ちゃんと話さないと生ニンジン口に突っ込むよ?」


    エレン「!」ビクッ


    アルミン「エレン…一体どうしたのさ…」ハァ




    エレン「……アルミンと…本物の家族になりたかったんだ…」




    アルミン「え?」



    エレン「ずっと俺とミカサとアルミンは家族みたいに一緒に居て…だけど俺とミカサが結婚して本物の家族になったら…アルミンだけ一人になっちまう…」



    アルミン「エレン…」



    エレン「だから俺…アルミンとも結婚して、本物の家族になりたかったんだ!」



    アルミン(……途中までは良かったのに…何でそんな結論になるかな…)汗



    アルミン「えーっと…あのねエレン、男同士では結婚出来ないんだよ?知ってるでしょ?」



    エレン「アルミンは知らないだけだ…世の中には色んな愛のカタチがあるんだ…昔ライナーが言ってた…」



    アルミン(………それガチのやつじゃん…)汗


  10. 10 : : 2014/11/05(水) 23:40:35



    アルミン「ねぇエレン…本物とか本物じゃないとか、そんなに大切?」


    エレン「わかんねぇよ…でもアルミンが一人になるのは嫌なんだ。
    なのにお前は俺たちの結婚が決まってから前よりずっと忙しそうで…ジャンとやたら一緒にいるし…もしかしたらこのまま離れていくつもりなんじゃないかと思って…」



    アルミン「そっか…ありがとう、エレン。
    でも僕は一人になんかならないよ」



    エレン「……ほんとか?」



    アルミン「うん。最近僕が忙しくしてたのはね、君たちの式の前に面倒な事全部済ませて、ゆっくり祝福してあげたかったからだ。
    僕は誰よりも君とミカサの結婚を嬉しく思ってるんだよ?」



    エレン「……寂しくねぇのか?」



    アルミン「寂しい?どうしてだい?君たちが家族になれば、僕にも家族が増えるかもしれないのに」クスクス


    エレン「?」



    アルミン「たぶん二人によく似た黒髪が綺麗な可愛い家族だよ」



    エレン「あ……」



    アルミン「今までは3人で家族だったけど、これから4人になるかもしれない。ううん、もしかしたらもっと増えるかもね」


    エレン「家族が増えるのか…」



    アルミン「そうだよ。そしたらみんなでシガンシナの野原に行こう。
    ミカサが作ってくれたお弁当持って……」




  11. 11 : : 2014/11/05(水) 23:53:29



    ーーー子供の頃2人で遊んだ春の野原に、家族みんなで行こう


    ーーー俺に似た男の子とミカサに似た女の子と…アルミンに似たたんぽぽ頭の女の子と…


    ーーーエレン…君とミカサからは金髪の子は生まれないよ…


    ーーーいいんだ!生まれるまで頑張る!


    ーーーふふ…それは大変だ…





    家族みんなで行こう

    暖かくて優しい風が吹く

    故郷の野原にーーー




    ーーーずっと一緒だよな?


    ーーーもちろんだよミカサもね




    ーーー約束だぞ?


    ーーーうん!





    病める時も

    健やかなる時も




    死が3人を別つまで…








  12. 12 : : 2014/11/06(木) 00:09:56


    ーーーーーーーーー





    アルミン「……ん…もう朝か…」


    エレン「……んはよ…」モゾモゾ


    アルミン「エレン、具合はどう?」


    エレン「おう、だいぶ楽になってる…」


    アルミン「良かった。熱も下がったみたいだね…ちょっとおでこ貸して」


    エレン「ん…」オデココツン


    アルミン「あー…うん、下がって……」





    ーーーガチャ





    ミカサ「あ………」




    アルミン「ん?」


    エレン「?」




    ミカサ「うわぁぁぁん!」号泣




    アルミン「えっ!何?ミカサ!どうしたのっ?!」オロオロ



    エレン「ミカサ!」


    ミカサ「!!」ビクッ



    エレン「赤ちゃん作ろう!!」



    アルミン「エ、エレン?!朝っぱらから何てことを!」



    ミカサ「エレン!!」パァァ






    アルミン「こらこら君たち!こんな所で何してんの!馬鹿なの?!
    エレン!服脱がないで!
    ああもう!ミカサ!それはダメ!」











    ーーーアルミン23歳の誕生日は

    こんな朝で始まりました











    ーーーーーーーーー

    ーーーーーー

    ーーー




    後日




    ミカサ「最近エレンが激しくて…」テレテレ





    ジャン「聞かねえよ?!」











    ひとつめ終わり


  13. 13 : : 2014/11/06(木) 22:58:15




    ふたつめ【引き出しの中の宝物】







    ーーー彼女の白くしなやかな身体が俺の上で獣のように跳ね

    甘いく熱い疼きをそこに伝える

    触れ合う肌の密度が限りなくゼロに近づくと

    彼女は切なげな吐息を漏らして俺の耳元に唇を寄せた

    「もう…我慢出来ません…」

    柔らかな肉の重みが俺の理性を奪い

    狩人から狩られる獣へと変わった彼女を、激しい衝動のままに高みへと追い立てる

    「あっ…ジャン…!」

    「サ……










  14. 14 : : 2014/11/06(木) 23:21:16





    ジャン「おい、何やってるんだ?」


    アルミン「うわっ!ジ、ジャン?!
    いらっしゃい!お茶でも淹れるね?」


    ジャン「待てぇぃ!」


    アルミン「う……」


    ジャン「茶なんかいいから…」


    アルミン「……」汗


    ジャン「こ れ は な ん だ ?」


    アルミン「……なんだろね?」ウワメヅカイ


    ジャン「俺にその手は通じねぇ!」ペシッ


    アルミン「痛ったーい!殴ることないじゃないかぁ!」泣


    ジャン「るせぇ!大人しく報告書書いてると思って様子見に来てみたら…」


    アルミン「だって…済んでしまった事を思い出してチマチマ書くのって飽きるんだよー!僕は常に前を向いて生きていきたいんだぁ!」


    ジャン「お前はコニーか!大体何で芋女なんだ!」



    アルミン「え?そこ?……って言うか…まだ彼女の名前出してないし…」


    ジャン「サが付く敬語の狩人って言ったらあいつしかいねぇだろう」


    アルミン「ん〜と……サ……サ…サネス?」


    ジャン「どんな拷問だ!」


    アルミン「そんなに怒らなくても…サネスはともかく、サシャと君はお似合いだと思うけどな……」



    エレン「サシャは胸がでかいしな」


    アルミン「エレン?!いつから居たの?!」


    エレン「アルミンが頭をど突かれてた辺りから居たぞ」


    ジャン「おい、何でお前が芋女の胸の事なんか知ってるんだ…?」


    アルミン「……ジャンてば食いついてるし…」


    エレン「この前うちに泊りに来て風呂に入った時、娘が『サーちゃんのおっぱいこーんなおっきかった!』って言ってたからな」


    ジャン「……そうか………」ニヤニヤ


    アルミン「エレン、娘に何を報告させてるの…
    そしてジャン、顔がキモチワルイ…」


    ジャン「いやいや、俺はでかい方がいいなんて思ってないから!
    やっぱりこう…反応というか…感度が一番だよなぁ?」


    エレン「おう、初めて気が合ったな。ちなみにミカサは手のひらサイズだ」



    アルミン「エレン、嫁のバストサイズを簡単に人に漏らすな。
    ほら、ジャンの顔が一段とキモチワルくなってる」


    ジャン「なってねぇから!」


    エレン「まぁいいや。じゃあ俺はその辺走ってくる。またなアルミン」



    ーーーパタン







  15. 15 : : 2014/11/08(土) 20:29:46



    ジャン「あいつ何しにきたの?
    どんだけ体力有り余ってんの?」


    アルミン「さぁ…最近巨人化してないせいかもね…
    何気に僕にしか挨拶していかなかったな…」


    ジャン「そこは気付かない振りするもんだろ…地味に傷付く…」


    アルミン「はいはい。お茶でも飲む?」


    ジャン「おう、頼む」


    ユミル「私はコーヒー。ブラックで」


    アルミン「はーい。ってユミル?!」


    ユミル「よう、暇だから遊びに来てやったぞ」


    ジャン「お前まだヒストリアんとこに居るのか?」


    ユミル「あいつが離れたがらないんだから仕方ないだろ。
    今は公務に出てるから時間潰しだ」


    アルミン「ユミルは仕事しないの?」


    ユミル「私の仕事はヒストリアの私生活全般のフォローだ。
    公務以外の時間はずっと一緒に居るしな」



    アルミン「それは世間一般で言う所のヒモだね…」


    ジャン「ヒモだな…」


    ユミル「なんだお前ら、羨ましいのか?」


    アルミン「女王陛下のヒモって、ちょっと凄いよね?」


    ジャン「女王陛下じゃなくても羨ましい…」


    ユミル「こんな調査兵団団長はイヤだ」


    アルミン「同感だよ…」


    ジャン「正直者で何が悪い!」


    ユミル「まぁ、ヒストリアには『見守り隊』のおっさんがついてるから、お前らじゃヒモにすらなれねえけどな」


    アルミン「『見守り隊』?」


    ジャン「なんだそれ?」


    ユミル「決して姿は現さず、それでいてあいつの身の回りの凡ゆる人間関係を掌握する為に、じっと見守り続けているおっさんだ」


    アルミン「何それ?それってダメなやつじゃない?危ない人だよ!」


    ジャン「憲兵は何やってんだよ…そのストーカー野郎の正体は分かってんのか?」




    ユミル「ああ、元調査兵団団長エルヴィン・スミスだ」





    アル・ジャン「………」汗





    アルミン「あああ!エルヴィンさん!さすがだなぁ!」


    ジャン「大人の男の包容力を感じるよな!」



    ユミル「……小者共め…」ペッ





  16. 16 : : 2014/11/08(土) 21:03:01



    ジャン「ちくしょう!ヒモのお前に宮仕えの苦労が分かってたまるか!」


    アルミン「そうだよ…僕だって書きたくもない報告書書かされてさ…
    団長のジャンへの回付無視ならチョロいけど、これは中央に提出するらしいから手が抜けない…」



    ジャン「最近俺ん所に回ってくる決済が少ないのはお前のせいか…」



    ユミル「報告書ってこれか?」


    アルミン「それは違うよ。気晴らしに書いてただけ」


    ユミル「ほう…なかなか面白い」


    アルミン「でしょ?」ニコニコ


    ジャン「どこがだよ…そんなに書きたきゃ自分を使え!」


    アルミン「あー…僕はそういう生々しいのはちょっと…
    ほら、サシャやミカサを差し置いて、女神の代役したこともあるくらいだし…
    毎年恒例の付き合いたい兵士ランキングでは毎回トップ3だし…」


    ジャン「姐さん姐さん、30近いおっさんがなんか言ってますけど?」


    ユミル「子供の頃可愛かった奴って、年取ってからの劣化が激しいんだよな…」


    アルミン「うっ!」グサッ


    ユミル「大体身代わりしたのって何年前だよ?
    まだ毛も生え揃って無いガキだったろ?」


    アルミン「………」ズキズキ


    ユミル「それにその変なランキング、男性兵士が8割を占める調査兵団での上位だよな?
    どういう事なのか分かんないか?
    お前はどこに向かって行こうとしてるんだ?」


    アルミン「………」ズキズキズキズキ


    ユミル「早いとこ軌道修正しないと、劣化が進んで需要が無くなるぞ?」


    アルミン「」アルミン ハ チカラツキタ…


    ジャン「さすがユミル!」


    ユミル「うるせー黙っとけ、素人童貞」


    ジャン「………ハイ」シュン



  17. 17 : : 2014/11/08(土) 21:35:08





    ミカサ「ユミル、アルミンはれっきとした男の子」



    アルミン「ミカサぁ〜〜!」キラキラ


    ユミル「おう、ミカサ。相変わらず神出鬼没だな」


    ミカサ「訓練兵時代に培った忍びの術はまだ健在」フフフ


    ジャン「その術をどんな目的で使ってたんだろな…」コワイコワイ…


    ミカサ「実は…場所ははっきりとは言えないけれど、アルミンの私室の隠し戸棚には彼が思春期の頃から収集していたその手の本が幾つかある。
    私は家族としての使命からそれを一冊づつチェックした。
    でもその中に男色を書いた物は一つも無かった。
    ちなみに…はっきりとは言えないけれど一番多いシチュエーションは……」


    ジャン「ミカサ!はっきり言っちゃってる!もうやめてあげて!!!」


    アルミン「」アルミン ハ マッシロニナッタ…


    ユミル「別に劣化美少年の性癖には興味が無いからどうでもいいや」



    アルミン「………ミカサのばかぁ…」泣



    ミカサ「泣かないでアルミン。
    いつかあなたにも素敵なパートナーが現れるはず」ナデナデ


    ジャン「泣かせたのは誰でしたっけ…」


    ユミル「そう言えばミカサとエレンは結婚したんだったな」


    ミカサ「そう。昼も夜も、エレンの巨人化を収められるのは私だけ」


    ユミル「いやいや、エレン程度で巨人は無いだろ」


    ミカサ「失礼な!エレンを侮辱すると許さない!」


    ユミル「いいかミカサ、ダズみたいなのを巨人って言うんだ」



    ミカサ「!!!!」


    ユミル「だろ?」


    ミカサ「……彼なら……仕方ない……」




    アルミン「何?何で知ってるの?
    見たことあるの?!ダズ様??」


    ユミル「ああ、ちなみにお前らのは……」


    ミカサ「ユミル!東洋には『武士の情け』ということわざがある」


    ユミル「『情けは人の為ならず』ってのも無かったか?」


    ミカサ「それは、情けをかけるといつか自分に返って来るから、人には優しくしましょう…という意味」


    ユミル「そうだったのか…ずっと間違えて覚えてた」


    ミカサ「間違え易いから気を付けるといい」




    アルミン「要するに情けをかけてもらえるレベルって事だね…僕たち…」


    ジャン「お、俺は大きさで勝負してねぇから!感度重視だし!めちゃめちゃ敏感だし!」




    アルミン「ジャン……男でそれは致命的だよ…」



    ミカサ「ぷっ…」



    ジャン「」チーン



    ミカサ「あ…エレンが呼んでる…
    またね、アルミン、ユミル」




    ーーーパタン






    ユミル「何か聞こえたか?」


    ジャン「いや…?」


    アルミン「僕はもう慣れた。あれ10回に9回は勘違いだから」


    ユミル「正解率一割かよ」ヤレヤレ








  18. 18 : : 2014/11/08(土) 22:04:19



    アルミン「で…何の話してたんだっけ…」


    ジャン「忘れた…疲れたからもうどうでもいい…」


    ユミル「お前らもいい歳なんだから、そろそろ所帯持てばいいだろ」


    ジャン「なんかめんどくせえんだよな…」


    アルミン「僕はまだやり残した事があるし…」


    ユミル「素人童貞が面倒くさがるのは分かるが、劣化美少年がストイック過ぎなのは怪しいな…
    もしかして誰かに操を立ててたりするのか?」


    ジャン「名前より長い渾名で呼ぶな…」


    アルミン「別に操なんか立てて無いけど…まぁある意味そうなのかな」


    ジャン「それ誰だ?」


    アルミン「言うわけ無いジャン」


    ジャン「言っちゃえばいいジャン?」


    ユミル「お前ら馬鹿ジャン…」



    ジャン「まぁ、正直誰でもいいけどな。お前って頭が良すぎて要らねぇ事まで考えてそうだから、そこだけは気になる」


    ユミル「真面目ジャン」


    アルミン「んーありがとう。
    でも今は考える事しか出来ないから…」


    ジャン「何考えてんだか知らねぇけど、自分が幸せじゃなけりゃ人を幸せには出来ねぇって昔誰かに聞いたぞ」


    ユミル「そうだなぁ…自己犠牲のいい子ちゃんは間近で見てたからよく分かるわ」


    アルミン「僕は幸せだよ?みんなと一緒にこうして平和な日々を送れてるんだから」



    ジャン「ならその幸せを後ろめたく思うんじゃねぇよ」



    アルミン「後ろめたく…か…」



    ジャン「何でもかんでも背負い込んで、身動き取れない様にはなるなってことさ」



    アルミン「ジャン…君…もしかして知ってるの?」



    ジャン「知らねえけど〜↑」


    ユミル「ヤメろ、その話し方…」イライラ



    アルミン「そっか…」



    ユミル「私も分かったぞ!」ウヒヒ


    アルミン「え?」汗


    ユミル「そいつお前より強いだろ?」


    アルミン「……うん」


    ユミル「名前は2音だな?」


    アルミン「……う、うん」


    ユミル「立場が違うからすんなりとはいかねぇんだろうな…」


    アルミン「……まぁ…ね」


    ユミル「そして巨人の……」


    アルミン「うわぁ!ダメダメ!」


    ユミル「図星か…」ニヤニヤ


    アルミン「………」黙…


    ユミル「よし!どうせ暇だから、お前と彼女の幸せな物語を執筆してやろう!」


    ジャン「お前そんなの書けるのかよ?」


    ユミル「自慢じゃ無いが、訓練兵時代は毎回ヒストリアの小論文を代筆してた」ドヤァ


    アルミン「もう時効とはいえ、威張れる仕業じゃないよね…」


    ユミル「ごちゃごちゃ言ってねぇで、楽しみにしとけ♪ じゃあな!」




    ーーーバタン







    アルミン「………」




    ジャン「………ドンマイ」







  19. 19 : : 2014/11/08(土) 22:37:40




    ーーーそれから数日後


    ユミルから便箋100枚にも渡る長編『官能小説』が送られて来た



    題名は『A to Z』



    普段ガサツな彼女らしくない、繊細で綺麗な文字が並ぶその小説の内容は…



    ファミリーネームが『2音』で…


    『巨人』研究がライフワークで…


    『元上官』の眼鏡美人の彼女と僕が


    知的好奇心の赴くがままに、次々と新しい性技の扉を開いて行き…


    めくるめく官能の渦に巻き込まれて行くという…


    全くもってけしからんものだった…






    そして小説に添えられていたカードには作者からのメッセージがーーー



    『劣化美少年、30歳の誕生日おめでとう。
    年の差もキャリアの差も乗り越えて、幸せになってくれ』



    ーーーと、書かれていた








    ーーー僕は

    少し前屈みになりながら

    机の一番下

    鍵のかかる引き出しにその小説をそっとしまった…










    ジャン「しまうのかよ!!」








    ふたつめ終わり








  20. 20 : : 2014/11/10(月) 19:56:54



    みっつめ【それでもまた朝は来る】






    その朝アルミンが目覚めると

    毛布を敷き詰めただけの狭い小屋の中はもぬけの殻でした


    この小屋はアルミンの幼馴染達が、昨日のうちにほんの一刻ほどで作ったものです


    ずっと外で野営をしていた疲れが出たのでしょうか、彼にしては珍しくぐっすり眠っていたようです



    身体を起こしたアルミンは、欠伸を一つした後、水筒の水で口を濯いでさっぱりします

    それから残りの水で手ぬぐいを濡らし、顔をひと撫でして朝の支度は終わりです

    彼の髭は薄いので一週間位放置してもやっとカビが生えた程度にしか見えませんし、寝癖を見つけては口煩く注意してくる姉のような幼馴染もいないので、気が楽でした


    彼は床に寝ていたせいで所々痛む身体を用心深く動かしながら、硝子のはまっていない窓から外を見ました

    と…

    森の切れ目に黒く蹲る何かの姿を見つけましたーーー





  21. 21 : : 2014/11/10(月) 20:42:03




    エレン巨人「(おい、こっちにいるみたいだぞ)」クイクイ


    女型「(なんか見えてるね…)」コクコク


    鎧巨人「(しっかり見えてるぞ)」グー


    エレン巨人「(よし、行くか)」グッ!


    女型「(とっとと行くよ)」コクン


    鎧巨人「(じゃぁ行くぞ)」グッ!


    エレン巨人「ガァ!」Go!




    エレン巨人「…」タッタッタッ←西へ走る


    女型「…」タッタッタッ←東へ走る


    鎧巨人「…」タッタッタッ←北へ走る




    ベルトルト「ストォォォォップ!!」



    エレン巨人「…」ピタッ


    鎧巨人「…」ピタッ


    女型「……」タッタッタッタッタッタッ



    ベルトルト「エレン!アニを止めて!」


    エレン巨人「…ガゥ」コクコク




    ーーーウガァァァァァ!!←座標発動中




    女型「!!」ビリビリビリ!




    ベルトルト「良かった…戻って来た」



    女型「………怒#」タッタッタッ



    ーーードスッッ!(蹴)



    エレン巨人「ガァゥ!」イテェ!


    女型「………#」ビリビリ キモチワルインダヨ!


    鎧巨人「……」ノビーー



    ベルトルト「アニ、エレン、喧嘩しないで!ライナーも寛いでないで止めてよ!」


    女型「……」チッ


    エレン巨人「ゔーー」


    鎧巨人「……」ポリポリ…


    ベルトルト「巨人化したら意思の疎通が難しいんだから、打ち合わせ通りに動いてくれないと…
    三人とも見えたの?」


    三巨人「……」コクコク


    ベルトルト「それは目的のものだった?」


    エレン巨人「……」クビカシゲ


    女型「……」クビカシゲ


    鎧巨人「……」コクコク



    ベルトルト「よし!じゃぁライナーが見た方向へ!」


    エレン巨人「ガゥ!」


    女型「……」ハイハイ…


    鎧巨人「……」Go!






  22. 22 : : 2014/11/10(月) 21:35:47




    この辺りの地面を調べるために集めた大小様々な石を、色々な方法を使って価値が有るものと無いものに選り分ける

    そんなお仕事を暫くした後、さすがに疲れたので休もうと、大きく伸びをしたアルミンは、鼻と口を覆っていた手ぬぐいを外して外へと出ました


    アルミン「……っくしゅん」


    マスクを外すのが少し早かったみたいです

    彼はホコリアレルギーなので、粉塵や花粉にも弱いのです


    アルミンは息を止めて身体に付いた石の粉をパタパタと払いました


    「………クシッ!…クシッ!」


    足元で小さなクシャミが聞こえます


    警戒することなく無防備な様子で近づいてくるその生き物には、外に出た時から気がついてはいましたが、見知らぬ土地で未知の野生動物と無闇に触れ合うのは危険な事です


    今回は鉱物の調査だったので、動物の図鑑は船に置いて来てしまっていました

    まぁ、あったとしても、あまり役には立たないようなお粗末なものなのですが…


    仕方が無いので彼は少し距離を置いて足元の動物を観察しました


    小さ目の犬ぐらいの大きさのその生き物は、猫に良く似た顔つきをしていました

    でもその鳴き声は甘くて高い猫のものとは違い、ギャーギャーと低くて太い響きです

    躯には薔薇のような斑点模様があり、金色の瞳はとても大きく、まだ幼獣である事を物語っていました


    アルミンは、手近な所にあった小枝を拾い、ずっと鳴き続けている生き物の口元に近付けました

    すると


    ーーーあむっ……ぺろぺろ…


    小枝の動きに合わせて頭をうごかし、夢中で後を追って来ます

    見たところ歯も生え揃っていないようなので、彼は枝を猫じゃらしのように振りながら小川まで誘導して行きました



    小川のそばには山羊が一頭繋がれていて、のんびりと草を食んでいました

    彼らが船から連れて来たものです


    アルミンは山羊を横抱きにすると、そのまましゃがんで幼獣の前にお乳を向けました


    ーーーあむっ!……んく…んく…


    やはりお腹が空いていたようです


    満足気に目を細め、凄い勢いでお乳を吸う姿は、とても可愛らしく、アルミンの口元は思わず緩んでしまうのでした






  23. 23 : : 2014/11/10(月) 22:06:32




    アニ「ったく…無駄に体力消耗しちゃったじゃないか」


    ライナー「すまんな…遠目では聞いていた特徴と一致してると思ったんだが…」


    ベルトルト「もういっそ、そいつでいいんじゃない?
    変な模様が付いてたけど…」


    アニ「ダメに決まってるだろ。
    ベル、あんたはそんないい加減な気持ちであいつの誕生日を祝う気なのかい?」


    ベルトルト(正直アルミンの誕生日なんかどうでもいい………とは言えない…)滝汗


    エレン「どのみち今日はもう巨人化は無理だ。
    アルミンも心配するし、帰るぞ」


    ライナー「だな」


    アニ「はぁ……仕方ないね…」




    ベルトルト「あのさ……」




    ライナー「どうした?ベルトルト」


    アニ「なんだい、言いたい事があるならはっきり言いなよ」




    ベルトルト「……僕たち巨人の脚でずいぶん遠くまで来ちゃってない?」



    エレン「あ……」



    ライナー「馬はどこだ…?」



    アニ「……たぶん…ずっとあっち…」






    四人「はぁぁ………」ズーーーーン…









  24. 24 : : 2014/11/12(水) 20:05:08




    さて、お日様はだいぶ高くなっていますが、幼馴染たちは帰って来る気配がありません

    それでもアルミンはあまり心配していませんでした


    河原に作られた、石を組み合わせただけの簡単な竃でお茶を淹れ、ふーふーと冷ましながらゆっくり飲みます


    彼らは普通の兵士よりずっと強いのです

    四人の中で一番小柄な少女でさえ、アルミンの何倍も強いです

    その上彼らは皆、地上最強の生き物になることが出来る特別な力を持っていました


    アルミンだけは普通の…いえ、普通よりだいぶひ弱なただの兵士なのです


    だけど彼は少年の頃のように卑屈になったりはしません


    彼には自分の成すべき事がはっきりと見えるようになっていましたから




    とても悲しく辛い事がたくさんありました

    昨日隣に居た兵士が、今日はもう居ないのです

    朝が来るのが怖くて、今日こそは自分の番だと、毎朝覚悟を決めていた時期もありました


    考える事だけが得意だった彼は、夜が明けるまでずっと迷路のような思考の中を彷徨って、それでも出口が見つからないまま残酷な決断を幾つもしてきたのです




    ーーーギャーゥ




    満腹になり、丸くなって眠っていた幼獣が目を覚まし、鳴きながらアルミンのそばに近寄って来ました

    琥珀の瞳で彼を見上げ、可愛らしく首を傾げています


    悲しかった時の事を思い返して、少し感傷的になっていたアルミンは、思わず小さな命の頭をそっと撫でていました

    気持ち良さそうに目を閉じて頭を擦りつけて来るその仕草は、子猫にとてもよく似ています


    ーーーぺろ…


    幼獣はヤスリのようにザラついた、でもまだ柔らかい舌で彼の手を一舐めし


    ーーーととっ…


    満足したのか踵を返して森へと向かって走って行きました


    お茶を飲み終えたアルミンも、小屋へ帰ろうと腰を上げましたが…



    アルミン「?」



    森の入り口に立ち止まり、こちらを振り返ったままじっと彼を見つめる幼獣の姿に、今度はアルミンの方が首を傾げました




  25. 25 : : 2014/11/12(水) 20:31:07




    ベルトルト「ね、ねぇアニ?もう少し丁寧に運んでくれない?」


    エレン「てめえ、ライナー!どこ触ってんだ!」


    ライナー「不可抗力だ」



    女型「……#」タッタッタッ…


    ベルトルト「アニ〜!せめて手の力を緩めてよ〜!おっさん三人が手のひらの中ですし詰めなのは辛すぎる!」



    女型「###」グッ



    エレン「痛ててて!こらアニ!お前がジャンケンで負けたんだから仕方ねえだろ!」



    ライナー「諦めろ…女ってのは理不尽な生き物なんだ…」


    ベルトルト「何悟っちゃってるの?!ライナー!」


    エレン「ホモゴリラ!そこ撫でるんじゃねぇよ!」




    ライナー「不可抗力だ…」



    ベルトルト「呼び方については否定しないんだね…ライナー…」





    女型「……ハァ」タッタッタッタッタッ






  26. 26 : : 2014/11/12(水) 21:02:57




    小さな生き物の後を追ってずいぶん長い間森の中を進んでいたアルミンは、目印用に裂いた手ぬぐいの切れ端が残り少なくなって来た事に、少しだけ不安を覚えていました


    幼獣は相変わらず少し歩いては振り返り、目印を枝に結ぶ為に立ち止まればそれが済むまでじっと待っています


    どういう訳か危険かも知れないという思いは全く湧いて来ませんでした

    なので彼は導かれるままに素直にその後をついて行ったのです



    次はシャツを破るしかないかな…

    そうアルミンが諦めかけたとき



    ーーー鬱蒼と茂っていた森が不意に開け、鼻につく異臭と共に、黒く澱んだ小さな池が彼の目の前に現れました





  27. 27 : : 2014/11/12(水) 21:46:30




    アニ「…疲れた……」


    ベルトルト「酔った…」


    エレン「まだ変な感触が残ってる…」


    ライナー「気の所為だ」




    アニ「結局目的のものは見つけられなかったし…」


    ベルトルト「ほんとにこの草原に居るの?」


    アニ「…あいつがそう言ってたんだから間違いないよ」


    エレン「かなり広そうだしな…そう簡単には見つからないだろ」


    ライナー「そいつをアルミンに見せてやりたかったと思う気持ちは分かるけどな…」


    アニ「……」ションボリ…


    ベルトルト「アニ?そんなにしょげないでよ…お誕生日の贈り物は何か別のものを探そう?」


    アニ「ん…」


    エレン「でも何でそいつじゃなきゃダメだったんだ?」






    アニ「…教えない」プィ






  28. 28 : : 2014/11/12(水) 22:23:48



    小走りで小屋へと戻ったアルミンは、持っていた水筒に入れて持ち帰って来た黒い水をテーブルの上に置き、興奮した様子で勢い良くメモをとり始めました


    アルミン「今回の船と同型でギリギリ1000バレル…積荷の全てを下ろしても1800…全く意味がない…」


    アルミンは頭の中に溢れてくるたくさんの情報を、口に出すことで整理しながら紙に書き留めていきます


    数字の羅列と計算式の後は貴族と商会の名前

    これには丸やバツを付け、丸を付けた名前のそばには数字を書き連ねます


    果てはシーナの工業地区でしか見ることの出来ない蒸留釜の簡易的な設計図を書き、そこにも幾つもの矢印と共にやっぱり大量の数字を入れていきます


    アルミン「ああ、うん、やっぱりこっちで精製まで済ませた方が効率的だ…流通ルートの確保と…技師の輸送…っと…あー待て待て…」


    時には頭を掻き毟り、唸り声を上げ、時には薄ら笑いを浮かべながら、日が暮れて手元が見えなくなるまで夢中でペンを動かしていました


    その様子はまるで、狂人がデタラメな落書きをしているようにしか見えません


    しかし彼の頭の中には、子供の頃に見た夢のような世界が広がっていたのです




    馬が引かなくても走る車

    燃える石でどこまでも走る乗り物

    細い路地まで明るく照らす、炎を使わない街灯




    すっかりその思いに没頭していたアルミンは、彼を人類にとっての宝に導いた小さな生き物がいつの間にか姿を消していることにも全く気付いていませんでした…




  29. 29 : : 2014/11/12(水) 22:41:36




    ベルトルト「やっと着いた…」


    エレン「あれ?小屋が真っ暗だぞ?」


    ライナー「河原で飯でも作ってるんじゃないか?」


    アニ「とりあえず休ませて…もう動きたく無い…」


    ライナー「そうだな…馬に揺られ過ぎてケツが痛い…」



    ベルトルト「ライナー、もうそのネタやめたら?エレンがお尻抑えて走って行ったじゃないか…」ハァ



    ライナー「心外だな」




    エレン「おいアルミン、いねぇのか〜?……ん!なんだこの臭い?!」


    ベルトルト「うわ!ほんとだ…なんだろう…」


    アニ「整備油の匂いに似てるけど…」


    ライナー「待てベルトルト、灯りは付けるな」


    ベルトルト「え?」


    ライナー「入り口の布を上げて中の空気を入れ替えろ」


    アニ「もしかしてこれかい?臭いの元は…。そばであいつが倒れてるけど…」汗


    ライナー「アニ、それを小屋の外に出せ」


    エレン「おい!アルミン!大丈夫か?!」


    ベルトルト「え?アルミン…この臭いの元の毒で…?」オロオロ


    ライナー「いや、精製してなきゃ大した毒性は無い。
    多分疲れて寝てるだけだろう」





    アニ「一体何してたんだい…こいつは…」





    ライナー「見つけたんだよ『燃える水』をな」




  30. 30 : : 2014/11/12(水) 23:17:51



    ーーーアルミンは幸せな夢を見ていました



    見渡す限り何も無い草原に、大切に思う少女と二人きりで立っています


    二人の目の前には地平線に沈みかけた夕陽と、金色に輝く鬣を持つ大きな獣が凛とした様子で遠くを見つめる姿がありました


    以前二人で見た図鑑に載っていた黄金の獅子


    その横顔は孤高の王の名に相応しく、近寄り難い美しさを湛えています


    ーーーね?やっぱりアニに似てる


    ーーーそうかい?


    ーーー初めて君を見た時にもそう思ったんだ


    ーーーあんたは汚れた仔犬に見えたよ


    ーーーそれは酷いな…



    そう言いながらクスクスと笑う彼の顔を少女はじっと見つめます



    ーーー今は…全くそんな風に見えないけどね


    ーーーそう?それなら良かった




    アルミンは隣に立つ少女の手を取り、そこにそっと唇を落としました



    ーーー僕の宝物

    金色の鬣を持つ獅子の心と同じ名前を持つ君を

    これからもずっと愛し続けて行こう




    そして照れたように視線を逸らしました




    少女はそんなアルミンを眩しそうに見つめた後、小さな声で囁きました





    ーーー獅子の心は…これからもずっとあんたのものだよ








    遠く未来を見据え

    決して諦めずに道を切り拓いて行く

    誰よりも強い心を持つ兵士(アルミン)に捧げるーーー









    眠っているアルミンは知りませんでした


    夢の中にいる強く美しい少女が、寝癖が付いたままのボサボサの髪を優しく撫でつけ、労るようにその額に口づけをした事に





    ーーー誕生日おめでとう








    みっつめ終わり





  31. 31 : : 2014/11/12(水) 23:23:17



    ベルトルト「ねぇ…いつまでここに居るの?」


    ライナー「野営するには丁度いい陽気だし、このまま寝ちまおう」


    エレン「だな。小屋の中はまだ臭えし」


    ベルトルト「ハァ…」


    ライナー「どうしたベルトルト?腕枕欲しいのか?」



    ベルトルト「ヤメロ、ホモゴリラ。エレンが怯えてずっと向こうで丸まっちゃっただろ」






    ライナー「……星が綺麗だな…」フッ











    fin







  32. 32 : : 2014/11/12(水) 23:27:42


    以上で終了です

    久しぶりにSSらしい会話中心の作品が書けて楽しかったです。

    好き勝手に雰囲気だけで書いたので、読まれる方には不親切な部分が多かったとは思いますが、最後までお付き合い頂きありがとうございましたm(_ _)m


  33. 33 : : 2014/11/12(水) 23:36:58
    隙間アルミン、ステキな三作でした。
    執筆お疲れさまでした。

    明るい未来への希望を感じる、月子さんらしい優しいお話でしたね。

    燃える水を見つけたアルミン…石油王か…と、ついついアラブ系衣装を纏った彼を想像してしまいました(笑)
  34. 34 : : 2014/11/12(水) 23:46:48
    凄い素敵な三作でした!!
    本当に明るい未来で!特に巨人組が仲良くしててくれたのが自分の中で最高に嬉しかったです!!

    素敵な作品をありがとうございます♪
    執筆お疲れ様でした!次の作品も期待してます!!
  35. 35 : : 2014/11/13(木) 06:39:43
    執筆お疲れさまです。

    ほんわかしたお話、癒されました。

    エレンがひたすらライナーに怯えているのがかわいそうでしたが(笑)

    ライナー、まさかマジで…

    次回も楽しみにしてます。
  36. 36 : : 2014/11/13(木) 08:04:51


    なすたまさん、本編で出航の時になすたまさんに「いってらっしゃい」を言って頂けたので、幸運に恵まれたんだと思います(^-^)
    アラブ衣装のアルミン、金髪碧眼なのに何故か似合いそう…昔の少女漫画のようなキラキラのイメージです(笑)
    ありがとうございました♪



    EreAniさん、巨人組はどうしても暗く辛い運命を背負ってしまいますものね…(´・_・`)
    彼らの持つ力が人類にとって絶望や恐怖ではなく希望に満ちた力に変わり、人類と共存していける未来をアルミンが示して行けたら…と願って書きました。
    多分この後策士アルミンは原油の利権を笠に、彼らの開発協力の価値を説いて中央をねじ伏せるつもりです(笑)
    ありがとうございました(^-^)



    ありゃりゃぎさん、多分ライナーは浮かれちゃってるんです。
    ずっとベルさんと二人きりで、下手したらガチになりそうな生活が続いていたので…
    エレンが逃げなかったら、きっと焦るでしょう(笑)
    ありがとうございました♪

  37. 37 : : 2014/11/13(木) 15:44:02
    執筆お疲れ様でした!

    みんなの心の隙間に入り込むアルミン。そんな感じがしました。

    個人的には『A to Z』が物凄く読みたいのですが……引き出しから出してもらえませんか?駄目ですか。そうですか…。
  38. 38 : : 2014/11/13(木) 18:41:50

    キミドリさん、心の隙間…確かにそうですね。愛されアルミンでした(^-^)
    そして「A to Z」に興味を持って頂きありがとうございます。
    執筆中に覗いたヒストリアが「これを世に出すのは2000年早いよ///」と、言ったとか言わないとか…
    引き出しの鍵の場所はミカサが知ってますので是非(笑)
  39. 39 : : 2014/11/16(日) 17:29:05
    ほんわかした話で癒されました
    巨人組が大好きで原作ではもうおそらく報われることはないのかなって思ってるんでこうやって皆と仲良くしてる姿がとても嬉しいです

    執筆お疲れ様です、次回作も期待してます!
  40. 40 : : 2014/11/16(日) 20:39:41

    べるさん、妄想ぐらいは明るい未来を描きたいと思っているので、共感して頂けて嬉しいです。
    年末にかけて多忙な為、しばらくは読み専になりそうですが、べるさんのお話の続きを楽しみに待ちたいと思います(^-^)
    ありがとうございました♪
  41. 41 : : 2014/11/16(日) 23:32:17
    まさか読んでいただいていたとは!
    光栄です!
    自分も年末にかけて徐々に忙しくなっていくので更新は遅くなりそうですが....(^_^;)
    それでもよろしかったら是非読んでみてください!あまり面白い物を書ける自信はありませんが....w
  42. 42 : : 2014/11/17(月) 09:16:08

    >>41
    隙間時間や移動中に、コソコソ色々読んでます(笑)
    慌ただしい年末、マイペースでじっくり更新なさって下さい。応援しております♪

  43. 43 : : 2014/11/26(水) 19:23:27
    三作ともとてもおもしろかったです!

    素敵な作品をありがとうございます
  44. 44 : : 2014/11/26(水) 21:23:53

    凛卯さん、いつも読んで頂きこちらこそありがとうございます♪
    これからも楽しんで頂けるように頑張ります(^-^)

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Tukiko_moon

月子

@Tukiko_moon

この作品はシリーズ作品です

大人になった104期生のお話 シリーズ

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