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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

【ロンパ&ドラゴンズ】三章:絶対強者

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  1. 1 : : 2014/01/16(木) 00:52:40
    序章:http://www.ssnote.net/archives/6840

    一章:http://www.ssnote.net/archives/7111

    二章:http://www.ssnote.net/archives/7385


    今回はオールバトルでお送りします

    一番喜んでいるのは間違いなく俺氏です←
  2. 2 : : 2014/01/16(木) 01:00:47
    戦刃「九頭龍くん、小泉さんを安全なところへお願い」

    九頭龍「ああ、分かってら!」


    戦刃はそう言うと、日向の背に飛び移る。


    戦刃「背中、借りさせてもらうよ?」

    日向『…落ちても知らないぞ』

    霧切『………………』


    戦刃の放った銃弾はあくまで牽制が目的なのを見透かした霧切は、ゆっくりと旋回するように上昇していく。

    十神『…追うぞ』


    狩人たちは一斉に頷いた。

  3. 3 : : 2014/01/16(木) 01:04:40
    バトル…最高ですね!(笑)
    楽しみにしてます!
  4. 4 : : 2014/01/16(木) 01:22:36
    >>3
    ありがとうございます!誰得かと言われたら俺得ですね!(
  5. 5 : : 2014/01/16(木) 01:22:42
    西園寺『待ちやがれこのボッチ竜!!』

    霧切『…それは無理よ。あなたの風に捕らえられてしまうもの』


    西園寺の強烈な突風を受け流しながら、くるくると飛び回る霧切。


    十神『退け。考えもなしに乱発したところで上手く利用されてしまうのがオチだ』


    十神の言う通り、霧切は自らを狙う風を盾に様子を窺っている。


    西園寺『うっせーな、指図すんな!!』

    十神『…そのまま風を吹かせておけ』


    そう言うと、十神は光のブレスを打ち出す。光は風に囚われることなく霧切に直撃した




    霧切『同じ手は何度も食らわないわよ』


    霧切は瞼を閉じていた。

    元々視覚を封じていれば、目潰しの光など恐るるに足りない。


    戦刃「この霧が撒き散らされてる範囲は、滅びの竜の索敵範囲…。小細工は効かない」

    十神『チッ。下等生物にしてはやるじゃないか』

    霧切『…それはどうも』
  6. 6 : : 2014/01/16(木) 01:36:37
    =不死山:中腹=

    江ノ島「おー、やってるやってる」

    大神「…作戦通り行けば良いがな」


    地上では霧に紛れて、うっすらと十神の光のブレスが確認出来た。

    翼を持たない竜や人間のハンターは、地上で戦闘に備えている。


    辺古山『何にせよ我々は信じて待つより他ない。…それに、気掛かりもあるしな』


    昨晩より里に戻らない苗木───。この山に居ることは確かだろうが、この広大な土地を探し回るのは骨が折れそうだ。


    辺古山『倒された…?いや、まさかな……』
  7. 7 : : 2014/01/16(木) 01:50:07
    =不死山:上空=

    日向「ウオオオオオオッ!!」ブンッ!

    戦刃「………………」


    ドゴン!ドゴン!


    霧切『くっ…!』


    日向の打ち出すトゲは、風の盾に阻まれて思うような威力は出ていない。

    しかし、戦刃はそのトゲに手榴弾を乗せるという荒唐無稽な技を繰り出していた。


    霧切『痛っ…!!』


    破裂した手榴弾の破片はさらに風に乗り、霧切の脚を僅かに切り裂く。


    霧切『戦刃むくろ…かなりの猛者ね』


    重々承知だけど、と一言付け加えると、霧切は旋回を止めた。

  8. 8 : : 2014/01/16(木) 17:01:30
    待ってました
    バトル‼︎いいですねぇ
    頑張ってください‼︎

    どうでもいいけど名前変えた(元漆黒の)
  9. 9 : : 2014/01/16(木) 20:50:04
    >>8
    ありがとうございます!
    名前変えたんですね何で漆黒のを取っちゃったんですか…←
  10. 10 : : 2014/01/16(木) 20:50:11
    十神『どうした、逃げるのはもう止めか?』

    霧切『…私の相手は江ノ島盾子と戦刃むくろ……。なるべく無関係なあなたたちに危害は加えたくないわ』

    日向『無関係だと…?』


    無関係という言葉に日向は反応する。


    日向『フザケるなよ…。俺たちの里に勝手に立ち入ってきて、七海を……!』

    霧切『七海…っていうのは、あの竜守りの娘さんの事かしら?』


    睨む日向とは対照的に、霧切はツンとすましていた。


    霧切『悪いとは思っていたわ。…だけど悟られる訳にはいかなかったの』

    十神『何を隠している』

    霧切『…言える訳ないじゃない』

    十神『そうか。…なら』


    ズズズズズ……


    霧切『!!』バッ


    霧切は間一髪、迫り来る光球を避ける。


    十神『無理やり吐かせてやろう。…それすら拒むなら死ね』
  11. 11 : : 2014/01/17(金) 00:09:03
    バトル、かっこいいよぉ〜
    もう最高ですね‼︎

    漆黒の〜の方がいいですか?
  12. 12 : : 2014/01/17(金) 00:27:54
    >>11
    十神が無駄に役にハマるんですねこれが
    『漆黒の』の方がかっこいいですよ!
  13. 13 : : 2014/01/17(金) 00:28:01
    十神『俺の《彗星》の力は未知数。それ故加減は出来んからな』


    十神の打ち出す光球は凄まじい熱気を帯びながら霧切を狙う。


    霧切『くっ…!』

    豚神『甘いぞ』バッ


    そこに追い討ちをかけるように豚神の突進が続く。


    霧切『見た目に合わずなかなかやるのね』

    豚神『当然だ。俺はこの里…いや、この世界の中でも希少な飛竜・岩鱗種だからな』

    霧切『鎧のようなウロコをまとった飛竜…確かに厄介かも』

    霧切『あなたはあの竜と双子なのかしら』

    十神『なっ…!おぞましいことを言うな!!』

    霧切『フフ……』

    十神『笑うな愚民め!』

    日向『………………』
  14. 14 : : 2014/01/17(金) 07:52:29
    >>12
    では元に戻しましょう

    そうなんですよね
    なんか十神がかっこいいんですよ
    そして苗木はまだ寝てるのか
  15. 15 : : 2014/01/17(金) 23:37:58
    >>14
    十神がかっこいいのはかませではないからです←
    苗木は…うーん
  16. 16 : : 2014/01/17(金) 23:38:07
    …… …… …… …… ……
    …… …… …… ……
    …… …… ……
    …… ……
    ……



    苗木『う……』


    焼け焦げた臭いが鼻につく。

    目が覚めたとき、辺りは見知らぬ石の街だった。


    苗木(ボクは…夢でも見てるのか?)


    カムクラ『…目は覚めましたか?』

    苗木『わぁっ!?』


    心臓を掴まれるような冷たいあの声。
    驚いた苗木は一歩後ずさる。


    カムクラ『【発芽】…一体どうしたのですか』

    苗木『は、発芽…?何言ってるんだ?』

    カムクラ『あなたこそ…。相当弱っているのでしょうか』

    苗木『だから発芽って何だよ!』


    怒鳴り、目の前に立つカムクラとおぼしき竜を睨み付ける…


    苗木『!!』


    …と同時に、鼓動が跳ね上がるのが分かった。


    カムクラ『まだ慣れませんかね。発芽とは【芽吹きの祝福】…あなたのことですよ』


    紅の瞳、長い鋭鱗。
    いくつかの相違点はあるものの、目の前に佇む竜を苗木は知っている。


    苗木『日向クン……』
  17. 17 : : 2014/01/17(金) 23:54:06
    待ってました苗木の話し

    話しを変えますが、資料画像ってどうなりました?
    出来ればどれくらい描けたか教えていただけると嬉しいです
    ちなみに催促ではありませんゆっくり描いてくださいね‼︎
  18. 18 : : 2014/01/18(土) 00:16:53
    >>17
    画像の方ですが私が検定が立て込んでいて…申し訳ないです(>_<)

    一応予告していた5人のアナログのラフは出来てます。後は取り込んでデジタル作業に移すだけの段階です。
  19. 19 : : 2014/01/18(土) 11:23:59
    >>18
    頑張ってください‼︎
    何度も言いますがゆっくりで大丈夫です
  20. 20 : : 2014/01/18(土) 11:25:42
    >>19
    ありがとうございます!地味に進められるようにがんばりますね!
  21. 21 : : 2014/01/18(土) 11:25:50
    カムクラ『…その名は捨てました。僕は【神の座す故】…カムクラです』

    苗木(【芽吹きの祝福】に【神の座す故】…?意味が全く分からない……)


    分かるのはこれが夢か幻であるということ、自分は【芽吹きの祝福】…発芽と呼ばれている存在という事だけだ。


    カムクラ『…世界は浄化されました。古い竜は再び眠りにつくのみです』

    苗木『古い竜…』

    苗木(どういうことなんだ?ここは過去の世界なんだろうか……)

    カムクラ『僕らの役目は終わりです。不死の山もあなたを待っているでしょう……』


    カムクラは苗木を置いて空へ飛び立つ。


    苗木『お、おい!お前はどこに行くんだよ!?』

    カムクラ『…僕もまた、帰るべき場所に導かれるだけです』


    それだけ言うと、どこかへ行こうとする




    ???『待てっ!!』

    シュウウウウウウ……


    苗木『!?』


    辺りが紫の霧に覆われる。


    カムクラ『キリギリ…!まだ死んでいませんでしたか……』

    苗木(霧…切……?)


    霧に包まれるとクラリと意識が遠のく。

    苗木が意識を取り落とす寸前に見たのは、鋭鱗の飛竜らしき紫の竜だった。

  22. 22 : : 2014/01/18(土) 21:09:31
    …… …… …… …… ……
    …… …… …… ……
    …… …… ……
    …… ……
    ……


    【不死山:上空】


    日向「ゴアアアアアアアアア!!!」ブンッ!

    霧切『………………』ヒョイ

    戦刃「うわわ……」


    日向は背に乗る戦刃などお構いなしで、霧切めがけて尾を振るい続ける。


    霧切『大振りすぎるわよ。背中の彼女、落ちちゃうんじゃない?』

    日向『落としても知らないとは言っている…落ちたらコイツのせいだ』

    戦刃「メチャクチャだよ日向くん……」

    霧切『ふぅん…。じゃあ、あなたを狙って彼女が落ちても私のせいじゃないのね』

    戦刃「だからメチャクチャだって!」

    霧切『文句なら彼に言ってちょうだい』ブンッ

    戦刃「ひゃっ…!」ササッ


    ビシィッ!


    日向「ゴギャア!?」


    戦刃を狙った霧切の尾は、戦刃が避けたことにより日向の背に直撃した。


    霧切『…自業自得ね』


    日向の体躯はぐらりと傾き、吸い込まれるように落ちていく。


    戦刃「あ…、これはヤバい…かも」


    …もちろん、背に乗る戦刃も同様に……

  23. 23 : : 2014/01/19(日) 00:40:28

    時雨さん、頼まれていた設定画できました!
    絵はかなり下手くそですが ご了承くださいσ( ̄∇ ̄;)




    頑張って下さい
    応援してますよ~(* ̄∇ ̄)ノ
  24. 24 : : 2014/01/19(日) 00:53:00
    >>23
    おお、リオネットですか!
    今日はもうPC開けないしスマホはなぜか支部が覗けないks仕様なので明日じっくり見させていただきます(^^)/

    ありがとうございます頑張ります!
  25. 25 : : 2014/01/19(日) 01:14:26
    =不死山:中腹=


    ズドォン!!


    ソニア「きゃあっ、日向さん!!」

    豚神『日向!戦刃!』ズドン

    澪田「白夜ちゃん!何があったんすか!!」

    豚神『…滅びの竜の一撃にやられた』


    突如墜落してきた日向に、地上の面々は慌てる。


    豚神『背に乗っていた戦刃も一緒のはずだ』

    大神「しかし姿が見えぬぞ」

    朝日奈『もしかして…日向の下敷きに!?』

    終里「竜の下敷きになんかになっちまったらぺちゃんこだぜ!?」

    弐大『マズイ!急いで救出せにゃあならん!!』

    江ノ島「何?どーしたのよ」

    豚神『江ノ島!実は戦刃が日向の下敷きに……』

    江ノ島「あー、そういうことか。ほっとけほっとけ」

    ソニア『何を言っているのですか!?戦刃さんは大事なお姉さまでしょう?』

    江ノ島「いや、お姉ちゃんは……」

    戦刃「盾子ちゃん、呼んだ?」ヒョコ

    一同「『!!?』」


    その場にいた里の狩人たちは息を飲んだ。

    竜の下敷きになったはずの戦刃は無傷。

    それどころか、自らを下敷きにした日向の体を両手で持ち上げていたのだ。


    戦刃「よっと」ドサッ


    気絶しているのか全く動かない日向を地面に降ろすと、戦刃は少し肩を回す。


    戦刃「ふぅ、霧切さんやるね。これは少し本気を出した方がいいのかな?」
  26. 26 : : 2014/01/19(日) 01:44:28
    =不死山:最奥地=

    苗木『う……』


    今度こそ目覚めた苗木はゆっくりと立ち上がった。

    苗木『不死山…ってことは現実か』

    カムクラ『…目は覚めましたか?』

    苗木『わぁっ!?』


    なんだかデジャヴを感じるやり取りだが、今度こそまともに話せそうだ。


    苗木『カムクラ…!』

    カムクラ『懐かしい夢でしょう。…あなたはもう覚えてないかも知れないですが』

    苗木『あの街は…あの竜は何だったんだ?』

    カムクラ『あそこは人の都市【テンプルム】…かつて竜を追い出し、人間のみが作り上げた人間の理想郷でした』

    苗木『人間の理想郷……』

    カムクラ『言うまでもなく古い竜の怒りに触れましたよ。たった1日足らずで滅ぼされましたね』

    カムクラ『…この世界もいずれああなるでしょう。もう手遅れです』

    苗木『まだ決まったワケじゃない!』


    苗木は虚空に吠える。


    苗木『ボクがみんなを止める…絶対に!!』


    言うが早いが、苗木はその場から走り去っていった。


    カムクラ『…フン。せいぜい足掻きなさい』

    カムクラ『もう滅亡は防げないのですよ……』
  27. 27 : : 2014/01/20(月) 22:16:05
    【不死山:上空】


    十神『…毒か』

    霧切『別に死んだりはしないから安心しなさい』


    豚神は落ちていった1人と1頭を気遣って降りていった。


    霧切『お願い止めて。何度でも言うけど、あなたたちとは争いたくない』

    西園寺『日向おにぃとミリヲタ女殺っといて何言ってんだ!!』

    霧切『殺してないって言ってるでしょ?…困ったおちびちゃんね』

    西園寺『チビじゃねーよ目玉腐ってんのか!!』

    霧切『ふふっ』クスクス

    十神『…そうやって雑談で戦意を削ぐつもりか、気に入らんな』

    霧切『あら、争いなんてない方がいいじゃない』

    十神『争いのない世界など衰退していくだけだ。…それに戦うなら戦え。それが礼儀だろう』

    霧切『ずいぶんと勝負にこだわりがあるのね』

    十神『当たり前だ。勝利を宿命づけられた俺は負けた者への誠意として勝ち続ける。…十神の名に賭けt???『とうっ!!』ビュオッ


    十神の言葉を遮るように、黒い竜が雲の隙間から飛び出してきた。


    十神『!?…俺が喋っている途中に出てくるとは良い度胸だな、何者だ貴様?』

    ???『と、十神くん。ごめん』

    西園寺『謝ってる暇あればさっさと言えよ!』


    その竜は少なくとも里の者ではない。この状況で何故よそ者が乱入してくるのか。

    十神と西園寺は正体不明の竜を威嚇するように怒鳴った。


    霧切『彼ら気付いてないわよ』

    ???『そうみたいだね。じゃあ、もっかい自己紹介?』

    十神『…滅びの竜の仲間か?』

    ???『ち、違う違う!私は君たちの仲間だよ!…うん』

    ???『戦刃むくろ。私は戦刃むくろだよ』
  28. 28 : : 2014/01/21(火) 18:30:19
    【不死山:中腹】

    豚神『何が起こったんだ…?』

    澪田「さっきまで人間だったむくろちゃんが竜になっちゃったっす!!」

    桑田「あいつは…鍛冶屋で見かけた奴じゃねぇか…!!」

    大和田『どうなってやがんだ!?』


    再び訪れる困惑。


    江ノ島「あははっ!何そんな驚いてんだよ!!」

    石丸「江ノ島君、どういうことか説明してくれたまえ!!」

    江ノ島「いーよいーよ。ちょっと歴史のお勉強になっちゃうケド」


    そう言って江ノ島はひらひらと手を振った。


    江ノ島「さて、あなた方は【松田夜助】という名の竜をご存知でしょうか」

    朝日奈『うーん、知らない!』

    田中「松田夜助…古き知恵の歴史書にその名を見かけたことがあるな」

    ソニア『田中さん、お分かりになるのですか?』

    江ノ島「あんたブリーダーでしょ。まあ知ってそうよね」

    田中「…松田夜助。【最初の探求者】と呼ばれる漆黒の竜にして、古い竜が世を滅ぼすきっかけを生み出した咎人だ」

    大神「古い竜の怒りに触れるような探求とは一体何なのだ?」

    田中「松田夜助の研究。…それは人と竜の境を越える方法……」

    江ノ島「そう!人と竜の境目についてこそが松田くんの研究だったのよ」

    江ノ島「古い竜に疎まれる禁忌の研究…ね」
  29. 29 : : 2014/01/22(水) 22:41:54
    江ノ島「本来、人も小さな竜も古い竜の創造物。…ならこの両者の境目とは何なのか、その境を取り払うと生き物はどうなるのか」

    江ノ島「松田くんはその研究の末、人でも竜でもない竜人を、竜に昇華させる実験に成功したのです」

    朝日奈『難しすぎて分かんないよ~』

    江ノ島「…ま、簡単に言えば竜人が竜の姿になれるってこと」

    ソニア『竜人が竜に?』

    辺古山『つまり、さっきの戦刃のようなことか』

    大和田『日向を持ち上げるぐれえの馬鹿力…竜人ならともかく、竜なら納得だな』

    江ノ島「残姉ちゃんは松田くんの被検体のなかで唯一の成功者。…それまでにたっくさんの竜人が実験で死んでいったわ」

    大神「…その殺戮が古い竜の怒りの原因か」

    江ノ島「うぷぷ、そゆこと!」

    江ノ島「まあ後は任せときますか。…お姉ちゃんは残念だけど、戦闘力はそこらの竜より全然高いからさ」
  30. 30 : : 2014/01/24(金) 21:55:16
    戦刃『逃がさない…』


    ◆戦刃むくろ…竜人(飛竜・鋭鱗種)
    誓約者(竜)…なし
    *江ノ島の双子の姉で始まりの人類の1人。滅びの竜を狙う江ノ島を守っている。竜人時には重火器、竜時には軍式格闘術で敵を退けるその姿は正に“強者”


    霧切『あなたなら遠慮しないわ』


    霧切はすっと標的を睨みつけると、霧の中を踊るように飛び回る。

    紫の体躯は同じく紫の霧の保護色となっていて、間々にうっすら姿が確認できるのみだ。


    十神『こそこそと…小賢しい』

    西園寺『落ちろ!!』


    そのわずかに察知できる姿を追うように、十神の《彗星》や西園寺の《旋風》が繰り出される。

  31. 31 : : 2014/01/25(土) 23:45:27
    苗木『ハァ…ハァ……!』


    もう随分と走り回っているが、誰1人として見かけない。

    呼吸を整えようと、少しだけ足を止める。

    苗木(みんなはどこにいるんだ!?)

    こうしている間にも仲間たちが霧切を仕留めようと猛威を振るっているかも知れない。

    …休んでなどいられない。

    意を決した苗木が再び駆け出そうとしたとき


    舞園「苗木くん!」

    狛枝『苗木クン!』

    罪木「苗木さぁん!」

    苗木『…舞園さん!狛枝クン!それに罪木さんも!』


    上空から、舞園と罪木を背に乗せた狛枝が降り立つ。と同時に、舞園は苗木に駆け寄った。


    舞園「苗木くん!…戻らないから心配してたんですよ……」ギュッ

    苗木『舞園さん…ゴメン。でもここまで来るなんて危ないよ』

    狛枝『ボクも止めたんだけどね…。「どうしても行きたい!」って言うからさ』

    罪木「私は七海さんの容態が安定したので、皆さんの治療のために来たんですぅ。…小泉さんから日向さんが重傷らしいと聞いたので、私が必要かなぁって……」


    罪木の「皆さん」という言葉で、苗木は自分が為すべき事を思い出す。


    苗木『…そうだ!みんなはどこ!?』

    狛枝『苗木クン落ち着いて。…みんなならこの先にいたはずだよ』

    苗木『えっ…?』

    苗木(ボクはみんなには会わなかったぞ……)


    イヤな予感がする。


    カムクラ『急ぎなさい』

    苗木『!?』バッ

    舞園「…苗木くん、どうかしましたか?」

    苗木『ううん……』

    苗木(みんなには聞こえてないのか…!)

    カムクラ『ええ、その通りです』


    嘲るような声が響いた。


    カムクラ『どうしたんです。世が滅びても良いんですか?』

    苗木(くそっ…、自分で邪魔しておいて!)

    苗木『イイわけないだろ…』

    狛枝『どうしたんだい?随分慌ててるみたいだけど』

    苗木『急いで止めないといけないんだ!みんなを…霧切さんを……!!』
  32. 32 : : 2014/01/29(水) 00:39:46


    十神(滅びの竜め……)


    竜化した戦刃が現れてからというものの、好戦的ではなかった滅びの竜が戦う姿勢を見せている。


    十神『こちらには見向きもしない…か』

    十神(だが奴が計画に移っている。滅びの竜の気が逸れている今がチャンスだ)

    十神『いくぞ西園寺。地上に引きずりおろしさえすれば俺達の勝ちなのだからな』

    西園寺『分かってるっつの』




    霧切「クオオオォォォン!!!」ドゴッ!

    戦刃「ゴアアアァァァン!!!」ドゴッ!


    2頭の雌竜が空中で吠え、ぶつかり合う。


    霧切『毒に耐性でもつけてきたの?』

    戦刃『前回割と痛い目に遭ったから…反省』

    霧切『…相変わらず、強いのに自信なさげね』

    戦刃『自信なくない。…ただお喋りは苦手なの』シュッ


    会話のさなかに放たれるストレート。
    霧切はひらりとかわし、霧の中に紛れるように姿を消す。


    霧切(まずいわね……)


    前回まみえたときより断然強い。

    そもそも霧切は戦闘は苦手だ。

    それでも自らの《濃霧》と《猛毒》がこくごとく敵を阻み続けるので、これまで生き残ってこれたのだ。


    霧切(でもどっちも効かない上に、相手は戦闘向きの竜……。どうしたものかしら)


    思考を巡らせる。策を模索する。


    戦刃「………………」


    しかし、現状を打破するための思案でさえ、戦刃にとっては無駄な足掻きでしかない。
  33. 33 : : 2014/01/29(水) 00:40:58

    ガシッ!

    戦刃『捕まえた』


    戦刃の長い腕が霧切の細い脚を掴んだ。


    霧切『くっ…、放して!』

    戦刃『うん分かった』ブンッ


    そう言うと、砲丸投げのように霧切を放り投げる。


    霧切『きゃっ…!』


    そしてその先には

    十神『フン』ドン!

    西園寺『死ね!』ガブッ!

    霧切(しまっ…!!)


    十神の《彗星》と西園寺の《麻痺》

    一気に視界がかすみ、力が入らなくなる。


    豚神『食らえ』


    ズシッ……!


    霧切「クァッ…!?」


    さらに豚神の巨体が上から降ってきた。


    霧切(上への警戒が薄れてた…!)

    豚神『…ごめんね。僕だってこんな事したくないけどさ……』ボソッ


    その体は決して容易に退かせるものではない。

    重力に従って、2頭は地上へ落ちていく……
  34. 34 : : 2014/02/01(土) 01:47:05
    =不死山:中腹=


    ズドオオオォォォン!!!


    豚神『俺の役目は果たしたぞ。行け、愚民ども!!』バッ

    九頭龍「よし、十神たちがやってくれたぞ!!」

    終里「よっしゃぁ!後は任しとけ!!」

    弐大『突撃じゃあああああああ!!!』


    もうもうと立ち込める土煙の中から豚神が飛び出すと同時に、地上の狩人たちが臨戦態勢に入った。


    霧切『どいてっ…!!』


    そこに霧切も砂まみれで現れる。


    霧切「クォォン!!」バッ

    霧切(神木まで…古竜の遺跡まで逃げ切れば……!)

    朝日奈『あっ、行っちゃうよ!』

    ソニア『あちらには確か神木が…!』

    田中「あそこに逃げられると厄介だな…。追うぞ狩人たちよ!」

    桑田「なんでオメーが仕切んだよ」
  35. 35 : : 2014/02/02(日) 20:41:55

    …… …… …… …… ……
    …… …… …… ……
    …… …… ……
    …… ……
    ……

    《麻痺》の苦しみに身を犯されながら 、霧切は駆ける。

    霧切(本当に…ひどい仕打ちね……。それもこれも全部あの竜のせい)


    愚かにも己の身一つで古い竜に抵抗するその背は、今でもよく憶えている。


    霧切(私が古い竜と…絶望と闘う宿命を負わされたのも全部全部……!)

    その所為で失ったものは多かった。


    霧切『結お姉さま……』


    今は亡き誓約者───五月雨 結の名前をぽつりと口にする。


    霧切(結お姉さまを失ったのも、全部全部…全部全部全部全部……!!)


    霧切は惑っていた。

    自らのに不条理な身の上に。理不尽な宿命に……


    ???『それは…絶望しているのですか?霧切仁の娘……』


    ゾク…と悪寒が走る。
    それは間違いようもない仇の声。


    霧切『古い竜…!!』
  36. 36 : : 2014/02/02(日) 20:43:11
    古い竜『ええ、そうです。…見ない間に父親に良く似てきたものですね』

    霧切『あんな竜と一緒にしないでちょうだい』

    古い竜『外見なんて気にするものではありませんよ。そのウロコの下の腕……』

    霧切『!!』

    古い竜『五月雨 結が狂ったのも僕の寄越した絶望の執行人の仕業…というのはもう教えましたっけ?』


    嫌がらせのように…ゆっくりとゆっくりと耳に残すように……、古い竜は執拗に霧切に語りかける。


    霧切『その話は止めてっ!!』


    それをはねのけるように霧切は吠えた。


    霧切『古い竜に反抗して死んだ父親なんてどうでも良いわ。でも結お姉さまは……!!』

    古い竜『ツマラナイ…。止めましょうか、こんな話』

    霧切『ーーーーーっ!!』

    霧切(もう限界……)


    全身も痺れて、感覚が薄れてきた。その上古い竜に弄ばれ……


    ???『霧切さん!!!』

    霧切『!?』

    霧切『苗木君…!?』
  37. 37 : : 2014/02/10(月) 00:01:26
    罪木「お、おかしいですねぇ……」

    舞園「どうしたんですか?」


    横たわる日向の傍に罪木と舞園はいる。
    狛枝は2人をここで降ろすと、飛び出していった。


    苗木『霧切さんをこれ以上追い詰めちゃいけないんだ』


    苗木の言葉を信じて、里のハンター達を止めるために。


    罪木「確か日向さんは毒を食らったって聞いたんですけど…普通に気絶してるみたいですぅ」

    舞園「毒は体に回ってないんですか?」

    罪木「はい…。みたいですねぇ」


    毒を食らったのに毒が回ってないという矛盾。


    罪木「た、確か滅びの竜さんは毒を操ってましたぁ。だから相手を仕留めるなら毒を使うと思うんですけど…どうしてでしょう……」

    舞園「最初から日向さんを仕留める気なんてなかったんじゃないですか?」

    罪木「うゆぅ…分かんないですぅ」


    何はともあれ日向は無事だった。

    後はみんなを止められれば……
  38. 38 : : 2014/02/10(月) 01:28:23

    霧切の目の前に広がったのは、白いもやだった。


    霧切『!!』


    これは危険だと本能が察知する。

    が、一歩遅かった。


    霧切『くっ!ウロコが溶け………』シュウウウ…

    ???『それは溶けてるんじゃなくて腐ってるんだよ』

    霧切『あなたは…?』

    ???『初めまして、ボクは狛枝 凪斗。苗木クンから話は聞いてるよ、滅びの竜改め、霧切 響子さん』

    霧切『!?』

    霧切『ならどうして…!?』

    狛枝『わざわざ世界を滅ぼすような事を…って言うんだろう?』

    狛枝『答えは簡単さ。それは苗木クンの希望のため』

    霧切『希望…?』

    狛枝『好きなボクサーには強い相手と対戦してほしいって思うでしょ?あれと一緒だよ』

    狛枝『ボクは彼の希望をより輝かせるために大きな絶望を求めてるのさ。アハハハハハッ!!』


    ぐるぐると狂気の渦巻く瞳と高笑い。

    それはセリフと共に、狛枝という竜がまともでない事の証明として充分だった。


    狛枝『さあキミの希望も見せてくれよ!それはボクの希望を越えられるかい?』
  39. 39 : : 2014/02/10(月) 23:02:49

    狛枝が吐き出すのは炎のブレス。

    それが単純に敵を焼き尽くすだけの熱なら避けるまでもないのだが


    霧切『ううっ……』バッ


    痛みと《麻痺》に蝕まれる体を無理やり後方に跳ばす。


    狛枝『へえ…。毛鱗持ちのキミなら避けないと思ってたけど』

    霧切『その炎は普通じゃない。何かあるでしょう』

    狛枝『ははっ、素晴らしい洞察力だね』


    白く濁りを持って揺らめく炎はそれとなく不気味だ。


    狛枝『これは腐敗物を燃やす炎。…今ならキミのウロコだね』


    そう言って2発、3発と攻撃を重ねていく。

    霧切はギリギリのところで反応してかわすが、元々体は限界で、すぐに追いつかなっていった。


    霧切「クオオオオオン!!!」ジュウウウ

    狛枝『うん、弱ったところを追い詰めるのは少し卑怯かもしれないけど…まあしょうがないよね?じゃあ…』


    トドメだ。とそういう前に


    ???「ガアアアアアアアアアッ!!」


    小さな影が狛枝の懐に滑り込み、後ろ脚で蹴り上げた。


    狛枝『おっと!』


    狛枝はそれをかわし、ふわりと笑みを浮かべる。


    ???『狛枝クン、どうして…!』


    4足の体躯。緑に覆われた岩鱗。

    霧切は今度こそ確信する。


    霧切『苗木君…!』

    苗木『霧切さんゴメン。もっと早く来てあげられなくて……』


    苗木は霧切の傍に駆け寄った。
  40. 40 : : 2014/02/11(火) 23:23:01
    苗木『狛枝クン、どうして…!?』

    狛枝『また説明かい?』

    狛枝『ボクはキミに絶望を打ち破ってほしいんだよ。…霧切さんの死。そして古い竜の復活という絶望をね』

    苗木『キミの考えはよく分からない…でもね』


    苗木は霧切を守るように前に立ち、狛枝を睨み付けた。


    苗木『霧切さんを傷付けるなら…ボクはキミを許さない』

    狛枝『ははっ、嫌われちゃったね。でもこの機会にキミの実力を見れるのは悪くないかな』


    狛枝も受けて立つように苗木を見据える。


    苗木『霧切さんは行って。神木はもうすぐだから』

    霧切『ありがとう、苗木君……』


    出会ってから3度目となるお礼。…自分は本当に迷惑をかけてばかりだと、霧切は頭を垂れた。


    霧切(この借りはきちんと返さないといけないわね)


    そのためにも傷を早く癒さねば。

    霧切は再び神木へ向けて駆け出す。
  41. 41 : : 2014/02/12(水) 01:18:21
    狛枝『させないよ!』


    霧切を追うためにきびすを返す。


    苗木「オオオオオオオオッ!!!」

    狛枝『うわっ!!』


    苗木が吠えると大地がせり上がり、それを阻む。狛枝が飛び退いたところに潜り込み、2度目の足蹴りを見舞った。


    狛枝『当たらない…ってうわわっ!!』ガガガッ

    狛枝はすんでのところでそれをかわすが、大地は迎撃するようにつぶてとなって空を切る。


    狛枝『くっ…』

    苗木『逃がさない』シュルル


    苗木の言葉に応えたのは山の植物。植物は狛枝を捕らえるようにその体に絡みついた。


    狛枝『素晴らしいね!これが守り神の実力か』


    自由を奪われながらも、楽しそうに笑う狛枝。



    苗木『狛枝クン、もうやめて。これ以上戦いたくないよ……』

    狛枝『これだけ知的好奇心を刺激しておいてそのセリフはひどいな』シュウウウ


    自らの《瘴気》で植物を腐らせ、引きちぎることで拘束から抜け出す。


    狛枝『ああ、ワクワクするなぁ…。もっともっと、キミの力を教えてくれよ苗木クン!』

    苗木『狛枝クン……』
  42. 42 : : 2014/02/13(木) 19:21:20
    =神木:古竜の遺跡=


    霧切(着いた。ここなら……)


    霧切は足を止めて息をつく。

    人が立ち入れず、竜は争うことが出来ない神域。…安全なはずだった。


    ???「召喚獣!【這い寄る絶望】モノクマっ!」

    霧切『!?』バッ


    反射的に身を引く。

    そこに飛びついてきたのは半分は可愛らしい白色のクマ、半分は邪悪な黒色のクマという不気味な生き物 ─── モノクマだ。


    霧切『江ノ島盾子…!』

    江ノ島「ギャハハハハ!久しぶりだなあオイ!」


    その召還者は竜守りの娘であり、始まりの人類の1人である江ノ島盾子。


    江ノ島「あなたがここに来ることは予測済みです。これを機にきっちり仕留めさせていただきますよ」

    霧切『冗談じゃないわ…!』


    思わず後ずさる。もう自分に戦う余力など残されていない。


    江ノ島「行っけー!我らがモノクマ軍団!」
    江ノ島「…と言いたいところですけども」


    突如江ノ島が真顔になる。


    江ノ島「あたしの提案飲んでくれれば止めてあげない事もないかなーって」

    霧切『…どうせこの霧でしょ』

    江ノ島「あったりー」

    霧切『嫌よ。そんなことをすればどのみち死んでしまうもの。…だから』


    霧切は江ノ島に飛びかかる。


    霧切『どうせ死ぬならあなたも道連れよ…!!』
  43. 43 : : 2014/02/13(木) 19:22:26
    1行空け忘れ…すいません
  44. 44 : : 2014/02/14(金) 21:32:39


    苗木「アアアアアッ!!!」ジュウウウ

    狛枝『フフ、どうしたんだい?こんなモノじゃないだろう、キミの力は!!』

    苗木『くっ…!!』


    溶けたウロコを炙る炎の熱さに身をよじる。


    狛枝『もしかして遠慮してるの?ボクの事は侵入者として排除してくれても一向に構わないのに』

    苗木『イヤだ……』

    狛枝『全く…キミは優しすぎるよ』


    狛枝はそう言って、ただただうめく苗木に詰め寄った。


    狛枝『さて、キミはどうすればボクを殺しにかかってくれるのかな?』ミシッ

    苗木「!?」

    苗木「ウガアアアアアアッ!!!」

    狛枝『これでもダメかい?』クスクス


    ぐずぐずになった皮に爪を立て、執拗に煽る。苗木の悲痛な声が辺りに響く。


    苗木『ダメ…だ……』


    しかし、どれだけ痛めつけられようと苗木は決して信念を曲げない。

    真っ直ぐな鋭い視線で狛枝をさいなめるように見つめる。


    苗木『キミは…ボクの友達だ……』

    狛枝『ふぅん』


    でも狛枝にはその思いも伝わらない。


    狛枝『どうやらボクはキミを買い被りすぎてたみたいだ。ガッカリだよ……』シュウウ

    苗木「ギャッ……!!」


    《瘴気》を撒き散らし、苗木自身を腐らせるように覆い尽くしていく。


    苗木(植物の浄化が追いつかない…!!このままじゃ……)

    狛枝『さあ、どうするn十神『こうする』



    ドゴオオオン!!



    狛枝「ギャアッ!!?」ドサッ

    十神『何をしている愚民め……』

    苗木『と、十神クン…!!』


    十神は《彗星》の力で狛枝を吹っ飛ばすと、苗木の前に降り立った。
  45. 45 : : 2014/02/14(金) 21:34:43
    苗木『あ、ありがとう……』

    十神『フン、これぐらい礼を言われるほどの事でもない』

    十神『それよりなぜこんな状況になったか説明してもらおうか。…場合によってはこいつにそれ相応の罰を下さんといけないかもしれないからな』


    今、目の前で倒れている竜は殺意を以て苗木を攻撃していた。

    それならば、里の掟によって裁かれるのは然るべき報いだろう。


    苗木『彼は…少し気が立ってただけだよ。罰なんて必要ない』


    それでも、苗木は狛枝を庇った。


    十神『お人好しめ。…まあいい、今回はお前の気を酌んでやるよ』


    そう言って十神は背を向ける。


    十神『罪木の所に行け。滅びの竜は俺達が仕留めておいてやる』

    苗木『!!』

    苗木『ダメだよ!それは絶対にダメだ!』

    十神『まだ言うか……』

    苗木『十神クン、ボクを信じて』


    苗木の雰囲気は真剣そのもの。

    何か妄念に取り憑かれているわけでも、第三者に操られているわけでも無さそうだ。


    十神『………………』


    何より、苗木という竜が仲間を裏切るのは100%有り得ない。常に相手を思い、そのために最善を尽くす。


    …軟弱なお人好しで、だからこそ慕われるし、強い。

    それが十神の中にある苗木の姿。


    十神『…どうすればいい』

    苗木『十神クン…!ありがとう!!』

    十神『早くしろ。礼を言ってるヒマがあるならな』
  46. 46 : : 2014/02/17(月) 13:19:48

    ガキンッ!?


    霧切「クァッ……!?」

    戦刃「盾子ちゃんは私が守る」


    霧切の渾身の一撃は、人型に戻った戦刃のククリに阻まれた。


    江ノ島「残姉ちゃんにしてはナイスタイミンッ!」

    戦刃「えへへ、まっかせて!」ブンッ

    霧切「アアアアアッ!!」ブシュ


    戦刃は手にしたククリで霧切の前脚を斬りつける。


    戦刃「【霧裂きの霊竜】霧切響子…。悪いけど死んでもらうね。あなたは生きてちゃいけないの……」ボソッ

    戦刃「みんな、こっち!」

    『「オオオオオオオーーーッ!!!」』ドドド


    戦刃が声を張り上げると、里のハンター達がなだれ込んできた。


    霧切『何で!?ここは人は立ち入れない、争いはタブーの神域でしょう…!!』

    江ノ島「そのハズだったんだけどね~…。どうやら古い竜が弱ってるみた~い」

    霧切(古い竜が弱ってる…?まさか、そんなはず……)

    ソニア『控えおろーう!!』バリバリッ!!

    辺古山『滅びの竜、覚悟!!』ズバッ!!


    先陣を切るソニアと辺古山。

    《電撃》と斬撃が霧切に襲いかかる。


    霧切「クアアアアァァァァン!!!」


    霧切にそれを防ぐ術はない……。
  47. 47 : : 2014/02/17(月) 13:21:28
    あ、最初の擬音の後ろのクエスチョンマークは誤打ですすいません…
  48. 48 : : 2014/02/18(火) 14:13:03

    日向「グ…ウ……」ムクッ

    罪木「日向さぁん!」

    舞園「大丈夫ですか?」

    日向『罪木、舞園……』

    日向(そうか…俺は滅びの竜に叩き落とされたんだったな)

    日向『悪いな。何回も迷惑かけちゃって……』

    罪木「わ、私は全然大丈夫ですよ。日向さんが無事で本当に良かったですぅ……」ギュッ

    日向(クソッ…何やってんだ俺は!七海の仕返しも出来ないでみんなに心配かけてばっかりだ……)


    日向は俯いて、ただひたすら後悔する。


    日向(滅びの竜…何としても倒さないと……)

    苗木『日向クン!』

    日向『苗木…ってお前どうしたんだよその怪我!!』


    久しぶりに見た苗木は随分とボロボロだった。


    苗木『イヤ、ちょっとね…。平気だよ、少し治療してもらいにきただけだからさ』


    そう言って罪木を見る。


    罪木「分かりましたぁ。ちょっとくすぐったいかもしれないですけど心配しなくていいですよぉ」タタタ

    苗木『うん、お願い』


    罪木は苗木の傍に寄り、その体を抱き寄せ、撫でる。

    すると柔らかいピンクのもやが広がり、一人と一頭を包み込んだ。

    苗木の表情は穏やかになっていく。


    舞園「…罪木さんが《治癒》の力を使っているのを見るのは初めてです」

    日向『普段は薬で治療するからな。ああやって力を使うのは傷が大きいときか重傷のときだけだ』


    その罪木が苗木を一目見て力を使うということは、よほど苗木の傷はひどいのだろう。
  49. 49 : : 2014/02/18(火) 14:14:07
    日向『………………』


    自分の無力への悔しさと滅びの竜への憎しみがグチャグチャになって日向に押し寄せる。


    日向(俺が…もっと警戒してれば七海は無事だったのに。十神の言うとおり、早めに始末しておけば良かったのかもしれない)

    罪木「終わりです。お疲れ様でしたぁ」

    苗木『ありがとう、罪木さん。それじゃ急いでるから!』バッ

    日向『待てよ苗木!!』

    苗木『…どうしたの?』

    日向『どこに行くんだ?また滅びの竜のところか?』

    苗木『うん。霧切さんを助けないと』


    助けないと───

    ───その言葉にぞわりと憎悪が生まれた。

    日向『何でだよ…!何であいつを助けるんだよ!?』

    日向『あいつは七海を傷つけた!俺はあいつを許せない!…助けるなんてできっこない……!!』

    苗木『日向クン、聞いて』

    日向『嫌だ!聞きたくない!』ブンッ

    苗木『うわっ!?』サッ


    日向の尾が苗木を狙い、地を穿つ。


    日向『俺はあいつを倒す!そうでもしないと気が済まない!』

    日向「グオオオオオオオオオ!!!」


    一声吠えると、日向は空へ飛び立っていった。


    苗木『日向クン!』

    舞園「日向さん!」

    罪木「日向さぁん」
  50. 50 : : 2014/02/24(月) 00:24:23
    いいですね〜
    ゆっくりしてますね〜
    頑張ってくださいね!
    支援
  51. 51 : : 2014/02/27(木) 00:59:25
    >>50
    ほんとタラッタラしててスイマセン!頑張ります!
  52. 52 : : 2014/02/27(木) 00:59:30

    ジェノ「ゲラゲラゲラゲラッ!オメーら殺られたくなけりゃその竜から離れなっ!!」


    威勢のいい声と、投げつけられる大量のハサミ。

    滅びの竜を痛めつけていたハンター達はそれをかわそうと一旦引いた。


    ジェノ「いい、この竜に手ぇ出したら承知しないわよっ!!」ビシッ


    ◆ジェノサイダー翔…純血
    誓約竜:十神白夜
    *腐川冬子の別人格であり、里の歴史上、最も凶悪なハンター。こだわりのハサミで気に入った男性や雄竜のみを殺害し、『チミドロフィーバー』の血文字を残す。俗に言う『貴腐人』


    …そんなジェノサイダーが滅びの竜を庇ったので、当然その場はざわつく。


    朝日奈『ちょっと、あんた何で……』

    ジェノ「アタシの意思じゃねーよ。むしろ白夜様に庇われる竜なんてソッコー殺したい!!」

    大神「十神が…だと?」

    十神『俺ではない。これは苗木の意思だ』バサッ


    ジェノサイダーの隣に十神は降り立った。
  53. 53 : : 2014/02/28(金) 23:02:10

    十神『…苗木はそいつが【滅びの竜】と認識したうえで庇っている。詳しい事情は長いから省くぞ。貴様達はただ答えればいい』

    十神『貴様達は苗木を信じるか?疑うか?』

    江ノ島「えっと、あんたたちの都合とか知らないんですけど」

    十神『部外者は黙ってろ』

    江ノ島「部外者ぁ?ちょっと勝手なこと言わないでくれなーい?」

    戦刃「私達は古い竜の意志に従って滅びの竜を倒そうとしてる。むしろ部外者はあなた達。…邪魔するならあなた達は敵」ジャキッ


    戦刃はククリ刀を収め、代わりに背負っていたマシンガンの安全装置を外して構える。

    本来ならとても人間が扱える代物ではない大きさだが、竜でもある戦刃には関係ない。


    戦刃「古い竜は絶対。レジスタンスは抹殺が掟。…だから、ごめんね?」


    ダダダダダダッ!!

    戦刃のマシンガンが火を噴いた。

    無論それをやすやすと食らう訳もなく、十神とジェノサイダーは回避する。


    十神『所詮は音速。俺の光速とは天地の差だ』


    十神の放つ《閃光》が熱を持って戦刃に迫り、戦刃もまたそれをかわす。


    戦刃「別に…当たらなきゃ一緒だし」

    桑田「いやいやいや!どっちも避けるとかマキシマムクレイジーだろ!」

    終里「す、すげえ!つえーなあいつら!!」
  54. 54 : : 2014/03/01(土) 14:56:24
    戦刃「あなた達、死ぬよ」


    戦刃はすっと、里の狩人達を見つめる。


    戦刃「【絶対強者】の私が言うから間違いない。あなた達は死に急ぐ生き物の目をしてる」

    十神『【絶対強者】?大仰な二つ名だな』

    戦刃「二つ名じゃないよ。これは私の【忌名】(イミナ)…私の本質」

    江ノ島「【悲劇の時代】ロストワンのあんた達には【忌名】も【欺名】(アザナ)も意味不明かもね~」


    【悲劇の時代】ロストワン
    【忌名】に【欺名】

    訳の分からない単語が次々と登場し、またも混乱が訪れる。


    辺古山『【悲劇の時代】…少しだけ、小耳に挟んだ事がある』

    九頭龍「マジか、ペコ」

    辺古山『この世界は創世から今まで6度、古い竜によって滅び、繁栄してはまた滅ぼされるを繰り返している』

    辺古山『そして私達が生きる今こそが【悲劇の時代】ロストワンだと……』
  55. 55 : : 2014/03/05(水) 13:22:04
    「古い竜」とやら、俺のガンスに勝てるかの?
  56. 56 : : 2014/03/05(水) 13:24:29
    あと、伝説の超期待です!! この物語を題材にしたモンハンが出たら絶対買います!!
  57. 57 : : 2014/03/05(水) 23:43:58
    >>55 >>56
    コメントありがとうございます!私ガンランス使えないんですよねw
    モンハンぐらいのディテールで楽しんでいただけると幸いです
  58. 58 : : 2014/03/05(水) 23:44:05
    十神『そんなもの吟遊人の戯言だ。だいたい6度も大胆な滅亡を繰り返していて、その事を綴った書物が無いことが証拠だろう』


    希望ヶ峰の里は他の都市に比べて歴史書や古文書が豊富だ。

    しかしその書物の中でさえ、古い竜はおとぎ話の存在だった。


    江ノ島「分かっちゃねえなあんたら…それこそ歴史の落とし穴なんだよ」

    江ノ島「ねぇねぇ!落とし穴って何のことか教えてほしい?教えてほしい~?」

    江ノ島「あ、別にあなた達に拒否権なんてないんですけどね……。滅びの竜にはもっと絶望してもらわないと…はぁ」


    コロコロと表情を変えながら一方的に喋りまくる江ノ島。


    江ノ島「それでは明瞭かつ簡潔にお答えしましょう。それは……」

    江ノ島「………………」


    それまで饒舌だった彼女は突然口を閉ざす。

    ソニア「ど、どうなさったのですか…?」

    江ノ島「…飽きたわ」

    桑田「あ、飽きたぁ?」

    江ノ島「そーそー、あたしって絶望的に飽きっぽいんだよねー。ってことで」パチン


    江ノ島が指を鳴らすとポポポンッと弾けるような音と同時に大量のモノクマが現れた。


    江ノ島「やっちゃえー。我が那由多のモノクマ軍団…とついでに残姉ちゃん」

    戦刃「ついでって…。まあいいや、うん……」シュン


    モノクマの大群と戦刃が空を舞った。
  59. 59 : : 2014/03/08(土) 21:30:34

    豚神『澪田!』

    澪田「はいはい白夜ちゃん!ご指名ありがとうございまむ!」バッ


    澪田は元気いっぱいに返事をすると、豚神の背中に飛びつく。


    豚神『いつもの雑魚討伐だ。分かってるな』

    澪田「任せて!てか噛ませて!」

    豚神『行くぞ…!』


    豚神が大地を蹴り、跳躍する。

    目前に迫るモノクマの群れ。


    澪田「みんなー!今日は唯吹のライブに来てくれてありがとーう!!」

    九頭龍「やべえ、全員耳ふさげ!」

    澪田「それじゃあ早速行ってみよう!聴いてください!『勢いで産んでみたのはいいけど父親が分からない』!」


    次の瞬間、溢れ出したのは爆音。


    『うぎゃっ!!』

    戦刃「ッ!」


    モノクマたちと、さすがの戦刃も一瞬ひるむ。


    大神「お主の相手は我だ…!」

    戦刃「させないよっ!」


    大神を視界に捉え、トリガーに指をかけるが

    朝日奈『さくらちゃん!』ビュオオッ


    朝日奈が撃ち出す《凍結》のブレスがそれを阻んだ。


    大神「ふんっ!」バキッ!

    戦刃「がはっ…!?」


    戦刃の体は地に叩きつけられた。
  60. 60 : : 2014/03/08(土) 21:49:13

    ソニア『やむを得ん、私の名は引導代わりだ、迷わず地獄に堕ちるがよい!』バリバリッ

    田中「『魔鼠列空慟哭術』!」バッ


    ソニアの《電撃》が空気を震わせ、破壊神暗黒四天王たちが田中の指示に合わせて飛び出す。


    石丸「悪は罰する!行くぞ、兄弟!」

    大和田『おうよ!全開で行くぜ、兄弟!』


    風紀委員と暴走族。
    相反する2人の反動の前に、モノクマなど敵ではない。


    終里「おらおらおらー!」ドカッ

    弐大『ガッハッハッハ!死にたい奴からかかってこんかーい!』バキッ


    終里と弐大は、師弟らしい息のあったコンビネーションでモノクマたちを蹴散らす。


    ジェノ「ゲラゲラゲラゲラッ!ぬいぐるみがアタシに勝てるとでも思ってるわけ!?」ズババッ

    十神「チッ…。貴様はもう少し静かに狩れないのか?」ドゴッ


    攻撃を仕掛けながら、お互い背中を預けるように立ち回る十神とジェノサイダー。


    大量のモノクマたちが空を舞い、消滅していく。


    江ノ島「……フフフ。人間と小さな竜風情にしてはやるではないか」ニヤニヤ


    江ノ島はその様子を、どこからか取り出した王冠を頭に乗せ、悠々と眺めていた。
  61. 61 : : 2014/03/08(土) 21:50:51

    九頭龍「すげえだろ、ウチのハンターたちはよ」

    江ノ島「ホホホ、確かに。ここは素直に褒めて遣わそうぞ」

    桑田「テメー、いきなり攻撃してくるたぁどーいうことだよ!」

    江ノ島「…群からあぶれた雑魚ほどよく吠える……」

    桑田「何だとテメーコラクソボケウンコタレッ!!」

    辺古山『落ち着け桑田……』


    辺古山は逆上する桑田をなだめると、江ノ島を見据える。


    辺古山『歴史の落とし穴とはいったい何なんだ?古い竜と滅びの竜にはどんな関係があるんだ?』

    江ノ島「う~ん。教えてあげてもいいけどぉ~、ちょっと欲張りすぎって感じぃ?」


    ドサッ!


    辺古山「グオオッ!?」

    九頭龍「ペコッ!!」

    大神「ぬうっ…!!」

    朝日奈『さくらちゃん、大丈夫!?』


    辺古山の背に直撃したのは大神。
    その衝撃で辺古山は崩れ落ちる。


    戦刃「ふぅ。左腕イっちゃったよ」


    更にその後ろに、左腕をだらりと垂らした戦刃が現れる。


    戦刃「ごめん。思ったより手間取っちゃった」

    江ノ島「ゴメンじゃねーよ!本っ当に残念なお姉ちゃんだなテメーは!!」

    戦刃「ご、ごめん…ごめんね盾子ちゃん」オロオロ

    九頭龍「あの大神を…!?バケモンじゃねーかよ……」
  62. 62 : : 2014/03/09(日) 01:15:54

    江ノ島「さて、質問でしたね。それではお答えしましょう」

    江ノ島「これまで滅亡した時代にはそれぞれ名があります」パチン


    江ノ島が指を鳴らす。

    呼び出されたモノクマの手にはホワイトボードがあり、そこには時代の名とおぼしきものが書かれていた。


    ─古に始まり古に終わる─
    【虚無の時代】ノーバディ

    ─そして時代は始まった─
    【伝説の時代】レジェント

    ─平和にて脆弱─
    【静寂の時代】ピース

    ─世界は止まる事を知らない─
    【繁栄の時代】グロウ

    ─存在こそ罪─
    【小人の時代】フールメイク

    ─闇が全てを覆う─
    【無知の時代】アウト

    ─忘却したものの価値を知れ─
    【悲劇の時代】ロストワン


    仰々しい時代の名。

    その中でもひときわ目を引いたのは…


    九頭龍「【無知の時代】…?」
  63. 63 : : 2014/03/28(金) 23:58:06

    江ノ島「あー、【無知の時代】アウトね。それって時代と言えるかはビミョーなところなのよ」


    江ノ島は前髪を弄びながらつらつらと語る。


    江ノ島「だってそれって古い竜が歴史を抹消しようと、世界を飛び回って破壊し尽くした2年間のことだもん」

    辺古山『つまりそのときに、以前の歴史はすべて、闇に葬られてしまったのか…!』

    江ノ島「うぷぷ。それだけじゃないんだな~これが」


    チッチッチッと指を振りながら、モデルウォークでその場を歩き回る。


    江ノ島「これは古い竜が、小さな竜と人間どもに与えた最後のチャンス……」

    江ノ島「人間は【繁栄の時代】グロウから恐ろしい勢いで技術力を高め、竜への恩恵を忘れ…、やがて【小人の時代】フールメイクには竜を迫害する風潮まで生まれたのです」

    江ノ島「だからぁ~、古い竜は怒って、一度文明を根絶やしにすることで世界をリセットしちゃったんだよ!」

    江ノ島「それから約6億年…。それが【悲劇の時代】ロストワン。つまり今」

    九頭龍「ろ、6億年!?」


    希望ヶ峰の里に残る最古の古文書すら、記されたのは約3億年前。


    つまり、里の者はたった1つの時代…しかも、その約半分の歴史しか把握出来ていなかったのだ。


    江ノ島「悲しいことに、いくら古い竜が制裁を加えても、歴史は繰り返します……。はぁ、絶望的…と古い竜はもううんざりしてるんです……」

    江ノ島「何か変化があったとすれば竜が忌名を忘れちゃったことぐらい!完っ全な退化!絶望的ィ!」

    江ノ島「まあ失ったのは忌名どころでは無いのですが…。ま、それは後で話すよ」

    江ノ島「とにかく!あんたたちは文明を絶やしてまで希望を望んでいた古い竜の想いを完っ璧に裏切った!」

    江ノ島「分かってんの!?あんたに言ってるんだよ霧切響子!!」


    狂ったように次々と言葉を紡ぐ江ノ島。

    怒号とも狂喜とも取れる大声は、不死山の山間にこだまし、大音響で広がっていく…。
  64. 64 : : 2014/03/29(土) 13:23:56

    大神「ぬぅ…、しかしまだ分からぬことが多い……」

    朝日奈『さくらちゃん、大丈夫!?』


    朝日奈に気遣われながら大神は立ち上がり、問い詰めるような視線で江ノ島を睨み付けた。


    戦刃「………………」スッ

    江ノ島「お姉ちゃんはアタシが言うまで何もしないで」

    戦刃「…分かった」

    大神「滅びの竜───霧切がお主たちの敵であることは理解した。しかし、我らにとって、霧切はどちらなのだ?」

    江ノ島「それはオマエラの意志によるね」

    江ノ島「オマエラがこの時代の『保守』を望むなら、霧切は『味方』」

    江ノ島「この時代の『淘汰』を望むなら、霧切は『敵』ってこと」

    豚神「『淘汰』とは…、古い竜の復活と世界の滅亡ということか」

    澪田「そんなら響子ちゃんは味方ってことっすかね!?めちゃボコっちゃったっすよ!?」

    九頭龍「十神!唯吹!」


    先ほど先陣を切った2人が、こちらにやってくる。


    江ノ島「そもそもアンタたちは事の事情を知らなさすぎるんだよ…。説明する俺の気持ちにもなってくれ」

    江ノ島「まあ雑魚の集まりがいくら疑問を喚いたところで、私様がその全てに答えてやる義務などないのだぞ」

    江ノ島「でもぉ~、盾子ちゃんはとぉ~っても親切だから、全部教えてあげちゃう!感謝しなさいよねっ!」

    江ノ島「…ですが、その前に主役がやってきてしましたね」

    辺古山『主役…?』


    「それが誰か」という疑問を口にする前に、答えはやってきた。


    江ノ島「残姉、迎え撃てっ!」

    戦刃「了解!」ガシャッ


    戦刃は素早く安全装置を解除し、再びマシンガンを構える。


    ガガガガガッ!!


    そこに鋭い大地の破片が飛来して、弾丸とぶつかり、相殺された。


    苗木『江ノ島盾子…、戦刃むくろ…!』


    江ノ島「来たね、苗木」
  65. 65 : : 2014/03/29(土) 14:34:35

    =竜狩りギルド=


    セレス「はあああっ!」ビシィッ!

    山田『うおおおお!拙者のジャスティスハンマーを食らうがいいですぞ!』ズゴォン!


    竜狩りギルドを襲撃した、謎の白黒のクマ。

    花村「あわわわっ……何なんだよこれぇぇぇっ!!」

    左右田「チクショオ…。何だってんだよ!」

    小泉「もう、男子のクセに情けない!2人ともこっち!」

    西園寺『おねぇはわたしが守るっ!』ビュオオオ


    モノクマに立ち向かうのは、セレスに山田、小泉を気にかけてギルドに戻った西園寺。

    ムチにカナヅチの尾、荒れる風がモノクマを退ける。


    不二咲「何かこのクマたち…、千秋ちゃんの召喚獣と似てるなぁ」


    竜守りの娘が受け継ぐ『召喚獣』を喚び出すスキル。


    不二咲(このクマたちの召還者は、もしかして江ノ島さん…?)

    セレス「不二咲くん!こちらにいらっしゃいな」

    不二咲「!」


    不二咲はセレスの誘導通り、彼女の促した方へと駆ける。


    セレス「危険ですので、戦えない皆さんはギルドのシェルターへ避難してください。西園寺さんが護衛してくれるでしょう」

    西園寺『おねぇについてけない奴は置いてっちゃうからね!』
  66. 66 : : 2014/03/30(日) 17:48:21

    左右田「そういやあのインチキ占い師…、どこ行っちまったんだ?」

    小泉「葉隠なら先にさっさと行っちゃったよ!まったく……」


    西園寺に守られながら、戦えない者たちは通路を駆け抜ける。

    ギルドの地下に位置するシェルターは、あらゆる竜の猛攻やブレスに耐える安全地帯だ。


    小泉が扉を開けると、罪木の診療所から運ばれてきた七海と、隅っこで何かをぶつくさとつぶやいている葉隠がいた。


    不二咲「は、葉隠くん…大丈夫?」

    葉隠「大丈夫もへちまもクソもないべ!」


    振り返った葉隠の顔は蒼白で、言葉通り切羽詰まっているのが伝わる。


    小泉「ちょっと落ち着きなよ…。一体全体どうしちゃったの?」

    葉隠「じ、実は……。リアルな話、視えちまったんだ……」

    花村「み、視えたって…何が?」

    葉隠「《予知》だよ《予知》!それも最悪の未来だべ!」

    左右田「まーたインチキかよ。どうせ古い竜だろ、もう聞き飽きたっつの」

    葉隠「テキトーなこと言うなって!呪われんべ!」

    左右田「テキトーなのはどっちだよ!!」

    小泉「はいはい、ケンカしない!」


    小泉は葉隠と左右田の頭にゲンコツを見舞った。


    不二咲「で、でも…もしかしたらハズレじゃないかも。葉隠くん、詳しく聞かせてくれないかなぁ?」

    葉隠「あ、ああ…分かった」



    不二咲が、3割という極めて微妙な精度の葉隠の《予知》を信じたのは、ある理由がある。


    不二咲(葉隠くんの《予知》…。悪い予感のときだけは、よく当たるんだよねぇ……)
  67. 67 : : 2014/04/03(木) 15:27:53

    =竜狩りギルド:シェルター=


    葉隠「そんで古い竜は滅びの竜に制裁を加えるんだ。その瞬間、殻を脱ぎ捨てて…」

    葉隠「………………」


    小泉「何?そっからどうなるの?」

    葉隠「こ、これ以上はよく分かんないべ!」

    葉隠「ただ、うっすら古い竜の姿は視えたんだ。…見ただけで呪われそうな、不気味な竜だべ……」

    左右田「アバウトすぎるっつーの!もっと分かんねーのかよ」

    葉隠「うう…、もう勘弁してくれって……」

    不二咲「う、うん、もういいよぉ。ありがとう、葉隠くん」


    これ以上は厳しいと判断した不二咲は、話を中断させた。


    不二咲(これは…マズいかもなぁ)

    不二咲「千秋ちゃんが起きてくれれば、どうにかなるかもしれないけど……」


    義妹であり、竜守りの娘の七海。

    不二咲の家は古くから科学技術と商業の発展に尽くしてきた「人間の一族」と呼ばれてきた。


    この世界では人間=科学、竜=自然


    科学が発展しすぎれば世界は竜にとって住みづらく、自然が猛威を振るえば惰弱な人間は飲み込まれてしまう。


    だからこそ竜と人間の架け橋となる存在が必要であり、それが竜守りの娘───七海なのだ。


    人間の一族と竜守りの娘が家族の契りを結ぶことで、それを調和の証として、竜と人間はこれまで共存してきた。


    不二咲「千秋ちゃん……」


    ただそんな歴史とは一切関係なく、不二咲は純粋に兄として、妹の七海の身を案じる。
  68. 68 : : 2014/04/03(木) 15:29:48

    現れた苗木はほんの少しの間江ノ島を睨むと、すぐに霧切の元に駆け寄る。


    苗木『霧切さん……』

    霧切『苗…木君……?』


    微かだが、確かに返ってきた返事。


    江ノ島「まだ生きてるか、しぶといわね」

    霧切『死ねないわ…。ここまで来て』


    霧切はそう言うと、ふらふらと立ち上がる。

    死にかけの体に反して鋭い眼光を宿す瞳。
    …それが彼女の覚悟を示していた。


    十神『滅びの竜…いや、霧切。貴様の目的は何だ?なぜその目的を果たそうとする?』


    十神を先頭に、モノクマの掃討を終えた里の者たちも集まってくる。

    里の者たちは、苗木を含めて、霧切に関して知らないことが多すぎた。


    霧切『…ここまで来たら話してもいいわよね。私が今更どうしようと、あなたは止めないでしょう…?』

    江ノ島「まあね。でも……」

    苗木『でも…?』


    江ノ島は「うぷぷ」と笑みを漏らすと、ぼそりとつぶやいた。

    江ノ島「さあ、今度は真打ちの登場だよ」




    「グオオオオオオ───────ッ!!!」




  69. 69 : : 2014/04/03(木) 15:30:51
    >>67>>68逆です…本当すいません
  70. 70 : : 2014/04/03(木) 16:56:00

    =不死山:古竜の遺跡=


    苗木『日向クン!』


    間違いなく、その咆哮の主は仲間である日向のものだった。

    それを聞いた瞬間、彼の痛烈な叫びを思い出す。



    『俺はあいつを許せない!』

    『助けるなんて出来っこない…!!』

    『俺はあいつを倒す!』



    苗木『日向クン、ダメだ!』

    日向「オオオオオオ─────ッ!!!」


    現れた日向は、もはや無我状態だった。

    怒りで全身のウロコを逆立て、眼は紅に染まっている。


    霧切『彼…!もう毒の効果が切れたのね』

    十神『効果が切れただと?』

    霧切『私は確かに彼に《猛毒》を浴びせたけど…。ちょっと気絶するだけの毒よ、殺す気なんてなかったもの』

    苗木『霧切さん……』

    苗木(やっぱり、彼女は敵なんかじゃなかったんだ……)


    苗木は彼女の本質に改めて確信を持つ。


    苗木(彼女の行動は、どこかでボクたちのことを考えてくれてる……)

    霧切『彼と竜守りの娘さんに、致死の《猛毒》を食らわせてしまったときは冷静じゃなかったわ。…謝って許される事じゃないけど、申し訳ないと思う』


    あのときバラまいた毒霧こそが本物の《猛毒》

    それこそ罪木の適切かつ迅速な処置がなければ、日向も七海もあの世行きだっただろう。


    霧切『彼に、謝らないと…許されなくても……』


    そう言って飛び立とうと一歩踏み出すが


    霧切「グウゥッ……!」ガクッ

    苗木『大丈夫!?』

    霧切『くっ…。ごめんなさい、肝心な時に……』

    苗木『そんな、キミを責めたりなんてしないよ!誰か罪木さんを……』

    日向「ゴガアアアアア─────ッ!!!」


    苗木の声を掻き消す轟音。

    日向はその身を翻すと、勢いよく尾からトゲを撃ち出した。
  71. 71 : : 2014/04/03(木) 17:13:34

    =不死山:古竜の遺跡=


    苗木『日向クン!』


    間違いなく、その咆哮の主は仲間である日向のものだった。

    それを聞いた瞬間、彼の痛烈な叫びを思い出す。



    『俺はあいつを許せない!』

    『助けるなんて出来っこない…!!』

    『俺はあいつを倒す!』



    苗木『日向クン、ダメだ!』

    日向「オオオオオオ─────ッ!!!」


    現れた日向は、もはや無我状態だった。

    怒りで全身のウロコを逆立て、眼は紅に染まっている。


    霧切『彼…!もう毒の効果が切れたのね』

    十神『効果が切れただと?』

    霧切『私は確かに彼に《猛毒》を浴びせたけど…。ちょっと気絶するだけの毒よ、殺す気なんてなかったもの』

    苗木『霧切さん……』

    苗木(やっぱり、彼女は敵なんかじゃなかったんだ……)


    苗木は彼女の本質に改めて確信を持つ。


    苗木(彼女の行動は、どこかでボクたちのことを考えてくれてる……)

    霧切『彼と竜守りの娘さんに、致死の《猛毒》を食らわせてしまったときは冷静じゃなかったわ。…謝って許される事じゃないけど、申し訳ないと思う』


    あのときバラまいた毒霧こそが本物の《猛毒》

    それこそ罪木の適切かつ迅速な処置がなければ、日向も七海もあの世行きだっただろう。


    霧切『彼に、謝らないと…許されなくても……』


    そう言って飛び立とうと一歩踏み出すが


    霧切「グウゥッ……!」ガクッ

    苗木『大丈夫!?』

    霧切『くっ…。ごめんなさい、肝心な時に……』

    苗木『そんな、キミを責めたりなんてしないよ!誰か罪木さんを……』

    日向「ゴガアアアアア─────ッ!!!」


    苗木の声を掻き消す轟音。

    日向はその身を翻すと、勢いよく尾からトゲを撃ち出した。
  72. 72 : : 2014/04/03(木) 17:20:59
    はい、2回送ってしまいました。
    ミス多すぎます自分…本当すいませんちょっと死んで生き返って来ます()
  73. 73 : : 2014/04/10(木) 23:01:35
    本当に面白いです!
    更新待ってますよ!
  74. 74 : : 2014/04/10(木) 23:34:07
    >>73
    ぎょええまさかふじやまさんからコメント来るとは…ありがとうございます頑張ります(震え声)
  75. 75 : : 2014/04/10(木) 23:36:08


    苗木『霧切さん、危ない!!』


    日向の狩りを何度も見た里の者は瞬間的に理解した。


    『あれは殺意を込めた致命の一撃だ』と…


    苗木「ゴアアアアアアアアアッ!!!」


    だからこそ苗木も全力で霧切を守ろうとする。

    幾重にも頑強で分厚い大地のバリケードを張り、彼女を覆った。


    ズズズズズ……!!


    地が唸るのも、仲間たちが悲鳴をあげるのもお構いなしだった。

    それほどに必死だったのだ。



    だが……


    ???『実力差とは、無情ですね……』




    ドズンッ……!!



    霧切「グアアアアアアアアアアン!!!」


    苗木『ウソだろ……!?』


    その場にいる者全てが驚愕した。


    苗木の全力をもって作られた小さな防護壁は、まるでミルフィーユにフォークを突き立てたように、あっさりと貫かれたのだから…


    多量の血を撒き散らしながら、霧切は崩れ落ちた。


    苗木『そんなっ…霧切さんっ!!!』

    ???『死んでませんよ』

    苗木『!?』


    その声は確かに頭上から降ってきた。
    そして頭上にいるのは…



    苗木『日向クン…?』

    日向(?)『懐かしいですね、古い竜よ。いつだって彼らは皆一様に同じ顔をする』

    十神『貴様…、何者だ』

    日向(?)『信仰の薄れ…人だけでなく竜までもが竜を傷つける時代……』

    そう言うと、日向の体がゆっくりと落ちていった。


    苗木『日向クン!!』
  76. 76 : : 2014/04/11(金) 00:17:47


    苗木『え……?』

    十神『何だ…あれは』


    日向の体は確かに落ちてきた。

    しかし、空中に確かに静止している塊があった。


    豚神『サナギ…。いや、サナギから羽化した…』



    その塊を覆う薄皮が───薄皮のようなウロコが剥がれる。


    そのウロコは長い鋭鱗だった。その間々から翼が伸び、紅の瞳が覗く。


    里の者たちは神秘的な禍々しさを放つその光景を、ただ見つめることしか出来なかった。



    江ノ島「古い竜───カムクライズルのご帰還だ」






    カムクラ『…終わらせましょうか。この悲劇を、永遠に』


    ◆カムクライズル…飛竜・鋭鱗種
    誓約者:なし
    *世界の創造神とも言うべき太古の竜。忌名は【神の座す故】で、日向創は仮の姿である。偉大な父なる《天空》と繁栄の象徴《太陽》の力を操る。






    ーto be connectedー
  77. 77 : : 2014/04/11(金) 19:56:25
    やっぱり、ロンドラ面白いですね!
    続きにも期待ですです!!

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