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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

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かおのないばけもの

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  1. 1 : : 2017/11/25(土) 22:35:24

    秋のコトダ祭り
    キーアイテムは『衣装』
    ご参加者様、並びに読者様方、どうぞ最後までよろしくお願いします。
    それでは次スレより初めて頂きます。

    がっつり本編ネタバレ、クリア推奨です。
    キャラ崩壊あるかも。
  2. 2 : : 2017/11/25(土) 22:36:07






    「ねえ、████████?」


     在り来たりな顔の、在り来たりな女の声がわたしに語りかける、ぼんやりとしたわたしの在り来たりな名前。はて、それはわたしの名前だったか、まあ、わたしの名前なんてどうでもいい。

     ここは何処かのビルの何処かのオフィス、小綺麗で社員もそれなりに忙しなく動いている、上場企業の1つだけど、それは表向きの話。
     裏側ではちょっとしたイベントをやってる。これがまたお金が掛かるのだけど、世界中の人々が注目してくれるので、とても遣り甲斐があるのだ。

     そんな裏方のわたしだけど、なんと53回目のイベントの主催に選ばれた。裏側とは言え、世界から脚光を浴びるのだ、とても光栄で喜ばしい事だと同僚達から羨ましがられた。


    「次回だっけ? いーないーなぁ」
    「きっとわたしの次になれるよ」


     次があれば、いや、きっとあるだろう。


     人々は飢えている、希望の物語に。
     人々は求めている、絶望の結末に。


    「じゃあ、がんばってね『白銀つむぎ』ちゃん?」
    「やめてよ、もー」


     それが、わたしの次回の『役名』だ。




  3. 3 : : 2017/11/25(土) 22:39:14




    ◆◆◆




    「───────つまり、君が黒幕っすね」

    「───────は」


     彼の頭脳はズバ抜けていた。彼の役名は『天海蘭太郎』で、ステータスが『妹がいっぱいいる、旅人である』とかいうふざけたものだ。正直、超高校級の何にするか難儀したとは、今回の首謀者役の弁。まあ適当に『超高校級の冒険家』なんかでいいだろうと1人ごちていた。しかし、端から見れば眉目の整った穏やかな少年で『事件(えんしゅつ)』と合間見えれば、彼の頭脳は猛威を奮う。


     記憶は弄ったが、彼自身の地頭が良い、ということだろうか。天は二物も彼に与えた。
     この52回目の『ダンガンロンパ』は彼こそ主役と言っても過言ではないだろう。


    『実は黒幕が妹だったってどうっすか? 俺が絶望を引きずりながらも、希望を背負っていく。これはきっと注目されるっすよ』


     とはオーディションの時の彼の弁、マンネリ化しない様に毎回毎回、毛色を変えては『コロシアイ』を開催してきたが、成程、良いネタだと首謀者は頷いていた。流石に数十回も越えてくれば、被りネタでもオーディエンスは許してくれるだろう。


    「あはははははは!!」


     わたしの前任者である彼女、██████は口が裂けるかの如く大笑いした。邪悪な表情で、そう、黒幕を演じた。




    「そうだよ、お兄ちゃん(・ ・ ・ ・ ・)、私が、このコロシアイの首謀者だよ」
    「ッ……!」
    「ねぇ? 分かんなかった? 絶望した?」


     と、彼女はそうぶっこんだ。さて、もちろん彼とは血縁でも義理でもない。全くの他人だろう。というより、むしろ、年齢的には彼女の方が年上ではないだろうか。
     まあそんなものは『演出』の為ならどうでもいい。


    「ほら、私ってさ、█████が好きでしょ? だから」


     彼女に備えられたステータスは『██████』だ。意外性があって、コロシアイを演じた彼等は「まさか」という言葉を漏らした事だろう。


    「██████さん、いや█████……キミは何故こんな事を……」


     決まっている。全ては演出とシナリオの為、オーディエンスの求める希望と絶望の為に過ぎない。


    「何故? そんなの──────」


     そんなの、決まっているじゃない。今でもわたしを含めたカメラの向こうの視聴者達が画面越しに『そう』叫んでいるのだから。


    ──────絶望を、希望を。




     つらつらと画面に流れるその言葉(コメント)がなんと陳腐な事か。でも████年前の『例の事件』以降、人々はそんな風になってしまった。
     これはそういう病、これはそういう倒錯。
     馬鹿で愚劣な有象無象は、あの興奮を、あの恐慌を、忘れられなくて依存して、その光景を、大衆娯楽として、画面越しに観て満たされる。




     まるで自慰を覚えた哀れな猿だ、笑える。





  4. 4 : : 2017/11/25(土) 22:42:13




    ◆◆◆




     斯くして、第52回目になる『ダンガンロンパ』は『黒幕の処刑』を以て閉幕する。

     第52回目の勝者である天海蘭太郎役の彼は、残った他の『超高校級の学生役』の人物達を引き連れ、█████学園を脱出し、未来機関と名乗る者達に保護される。


     そこまでがこの52回目のシナリオ。


     前任者の処刑、もちろん八百長でもなんでもない、よりリアリティーを以て、彼女は我が社自慢の処刑用プレス機に潰されて死んだ。
     死ぬことも含めて、それは彼女の役目であり仕事なのだ。


     これは、そういう『イベント』なのだから。


  5. 5 : : 2017/11/25(土) 22:45:21




    ◆◆◆




    『さて、天海蘭太郎こと██████君、あなたは無事、コロシアイから脱出、みんなの希望になりました。ここで、貴方の優秀な頭脳と行動力を評して─────』


     何処とも知れない薄暗い部屋、市松模様の床にぽつんと置かれたソファに腰掛ける彼に、私はスピーカー越しに彼へと『次』を示した。


    『”特典”を、授けたいと思います』
    「とく、てん……? 特典ってなんっすか、いや、ていうか……ここ何処っすか、俺、確か未来機関の人達に連れられて」
    『未来機関なんてものはありません、あの██████学園でのコロシアイも、黒幕も、全部、ぜーんぶ』


    『ゲーム、でしたぁ』


    「───────は?」


     ああ、なんて気持ちの良い瞬間だろうか。仮初めとはいえ、希望の英雄の顔が歪むこの瞬間、きっと、前任者達もそうやって悦に入って蕩けていたのだろう。私は今、彼の希望を踏んづけて、彼に絶望を叩き付けている。
     私達の手の上だということを認識させ、動揺させ、絶望させる、まるで『彼女』になったかのような全能感に脳が痺れる。


    「どう、いう、ことっすかね……」
    『どうもこうもありませーん、あ、なんなら観てみる? あなたのオーディションの様子』


     プロジェクターを起動して、彼の目前のスクリーンにその様子を映す。意気揚々と、トリックはどうとか、殺すだとか、彼のオーディションの様子を観せつけてやった。ぼんやりと口を半開きにする彼は「信じられない」とぼやくも、それは紛れもない真実だし、何より、このオーディションに受かった事も光栄に思って頂きたい。倍率高いんだぞ、コロシアイ希望者は。


    「……嘘っす」
    『嘘じゃないんだよ。ま、そんな生き残ったあなたに、次回の参加権と特典が与えられるってワケだけど……さて』
    「何、で……次回って、何っすか……!」


     次回も勿論ある。前任者が死んだので、次は私だ。私が首謀者役だ。
     ああ、楽しみだなぁ。これは私だけの、運営である私達だけの役得だ。
     ゲームを進行する為の、ゲームマスターは私達だけにしか出来ないのだから。


     そして次回のコロシアイメンバーは私だけのキャラクター、私だけの駒だ。


     私が、メイキングするのだ。


     さて、すっかり意気消沈した天海蘭太郎役の彼は黙って俯いたままだ。


    『どーするー?』
    「解放は……ないんすね?」
    『無いよ、あなたは──────』


     大事なゲームの駒なのだから。


  6. 6 : : 2017/11/25(土) 22:48:15


    ◆◆◆




    「──────」


     そしてただ『前回』を仄めかす程度の言葉を残したビデオと、次の舞台となる『才囚学園』の全体マップ、隠し部屋も表記されたパッドを、1つは彼の研究室、1つは彼の寝室に設置。これが彼の特典だ。数十回となる『ダンガンロンパ』で生存者が次回繰り越しなんて大して珍しくもない、いや、むしろ『全滅回』が少ないくらいだ。


    『さて、あなたは超高校級の冒険家でなく、超高校級の生存者となった。他に何かある?』
    「……みんな、は?」
    『死んだよ』
    「……ッ!」


     残念ながら『生き残り枠』は1つだけ、コロシアイ希望者は掃いて捨てる程いる。そんな毎回、使い回しなんてしていたらオーディエンスに飽きられてしまう。彼は52回目のMVPだから。


     故に、彼だけ残した。
     故に、彼等は消えた。


     残念ながら『コロシアイ帰還者』なんてそうそう外に出すわけには行かない。記憶を消そうが、変えようが、1人出せば『どっかの正義を振りかざす偽善者』に足が付くかもしれないのだから。




    ◆◆◆




     何処かのビルの何処かのオフィス、さて、楽しい楽しいオーディションの時は近い。
     栄えあるコロシアイメンバーになれるのは14人、私と前回の生存者である彼を含めて16人、これが定員だ、何故16人でなければならないとか、理由なんて知らないし、どうだっていい。
     これから私の、私だけのクラスメイトが揃うのだ。


    ──────ああ、どんな子達なのだろう。彼等はどんな『役』を望むのだろう。




  7. 7 : : 2017/11/25(土) 22:51:46




    ◆◆◆




    「█████番、███████、僕は昔からダンガンロンパが好きで、いつかコロシアイに参加をしたいと──────」
    「█████番、███████、私はダンガンロンパに希望をもらって──────」
    「──────」
    「──────」


     有象無象、何処にでも居る、しかし、コロシアイを渇望する彼等は、自身の『死の可能性』を微塵にも考えてない、それでいて「殺す」だとか「希望になる」だとか、コロシアイでの自分の立ち回りを意気揚々と語り散らすのだから、私は画面越しで失笑していた。


     みんなの意見を取り入れながら、みんなの『死に様』に思いを馳せる。


    ──────何、希望だ絶望だという前に、皆、血が見たいだけなのだ。


     誰かに殺され、黒幕に処刑される彼等の血が見たいだけだ。

     虐殺ではない、正当な罪と罰による血が。


     ああ、ほんと、馬鹿ばかり。


    「──────私って、コロシアイに向いてる性格だと思うんです。基本的に人の事を信じてないんで」


     彼女は███番、█████████さんだったか。いいなぁ、顔も悪くない。若干派手目な印象を受けるが、うん、性格とかはどうでもいい、そんなのは弄れる。
     この子がいいなぁ。この子は主役にしよう。




  8. 8 : : 2017/11/25(土) 22:56:02




    ◆◆◆




    「──────そう、でゴフェル計画って言って、実は『君たちが地球で最後の人類なんです!』ってさー」


    「へー、面白そうじゃん」


     何処かのビルの何処かのオフィス、小綺麗なデスクに派手目な彼女は私のシナリオを見て、そう評してくれた。
     十人並みの感想だけど、熱の上がっている私には些細な賛辞でも嬉しかった。


    「でー、今はキャラクター作りってワケ?」
    「うん」


     私は針を動かし、彼等の『衣装』を繕っていた。大まかな部分はミシンでいいけど、駒かな部分はやっぱりこだわりを持ちたい。彼等の衣装を揃えなければ、やはり『超高校級の何か』ならばそれに見合う衣装を用意しないと。


     派手目な彼女、█████████は前髪の毛先くるくるとさせながら、地味な私の作業を見守る。


    「手伝おっか?」
    「ううん、大丈夫、地味に楽しいし」


     派手目な彼女は「そう」とだけ呟いて、明るめの髪を揺らしてオフィスを去っていく。
     ああ、手伝わなくてもいいけど、話し相手が欲しかったのに。


  9. 9 : : 2017/11/25(土) 22:58:19




    ◆◆◆






    「私は白銀つむぎ、私は白銀つむぎ」


     私は白銀つむぎ、超高校級のコスプレイヤー。地味で、オタクで、愛の欠けたコスプレイヤーが嫌いで、リアルの人物のコスプレもといモノマネをするとブツブツが出来て、でもコスプレイヤーとしてなら初来日したパンダくらいには人気で。しかし、その実態は第53回目のコロシアイ、視聴率100%の『ダンガンロンパ』の首謀者。
     黒幕達を喜ばせる演出家で、主催者達の1人。


     私は白銀つむぎ。それが白銀つむぎ。

     私が身に包む『衣装』だ。


     そうして、私は彼等と同じ様に、掃除用具の形をした記憶を改竄する装置の中に入った。


    ──────ダンガンロンパ53、改め、ダンガンロンパV3が始まる。




  10. 10 : : 2017/11/25(土) 23:02:08


    ◆◆◆




    ───────さて、第一の殺人だけど。


     なかなか動こうとしない彼等に動機を突きつけた。タイムリミットまでに人が死ななければ全員死ぬ。


     そして動いたのは前回の生存者特典を持つ天海と、彼女、私が主役に推した赤松楓だった。


     しかし、滑稽だ。


     他者を信じて前回の最後まで勝ち抜いた天海は、誰にも自分の秘密を打ち明けず。
     人を信じないと豪語していた彼女は、傍らの探偵役の少年、最原終一を信じて────


     赤松楓は図書室で、最原終一の前で仕掛けを作り。
     赤松楓は倉庫で、最原終一の前で凶器を手にし。
     赤松楓は図書室とダクトで繋がる教室で、最原終一の前で凶器を放った。


     凶器である砲丸は、彼女が並べた本のレールに沿って、天海蘭太郎の頭上に──────


    ──────落ちなかった。


     彼女の計画は完璧ではなかった。発明家役の入間美兎に作って貰っていた防犯カメラモドキのフラッシュを利用し、天海を引き付ける所までは良かった。


     しかし、やや傾斜が強すぎて飛び出したか、天海の立ち位置が悪かったのか、砲丸が彼の頭を捉える事は出来なかった。


     主人公補正だろうか、と心の中でごちる。残念ながら、今回の主役は彼ではない。


     私はトイレに急ぎ、砲丸を持ち出して秘密の通路を抜けて図書室に向かう。


     タイムリミットの間際、これは分かれ目。


     もし、タイムリミットを過ぎてしまえば視聴者達に総スカンだろう。予告通り、全員殺す事も出来るが、視聴者達が見たいのは虐殺ではない、あくまで『コロシアイ』なのだから。


     私の舞台を、こんな所で終わらす訳にはいかない。


     私は天海蘭太郎がカメラに気を取られている隙を突き、砲丸で殴り付けた。
     私の膂力で殺し切れるか不安だったが、それは杞憂だったようだ。


     天海蘭太郎はあっさり死んだ。
     赤松楓の殺人は成功した『事にした』。


     彼女の『正義の行い』は天海蘭太郎という前回主役のキーキャラを見事に潰してくれた『事にした』。


     焦りはしたが大丈夫、この瞬間、カメラに私と天海蘭太郎は映ってないはず。


     赤松楓は正しい、皆を助ける為に黒幕を殺すのは正しい。


     だけど、赤松楓も最原終一も、天海蘭太郎が実は隠し部屋の存在を記したモノパッドを持っていた事を知らなかったのが、このただの『コロシアイ』を引き起こした原因。


     さよなら、天海蘭太郎。


     そして、赤松楓、あなたはきっと、学級裁判で─────


  11. 11 : : 2017/11/25(土) 23:04:52




    ◆◆◆




    ──────そして、赤松楓は処刑(オシオキ)された。


     彼女の信じた最原終一に託して、踊るように処刑道具である巨大なピアノの上の鍵盤を踏み鳴らして、鬱血と窒息の中、巨大な針の仕込まれた鍵盤蓋と、鍵盤の間に挟まれ、死んだ。


     記念すべき、最初の処刑。


     さようなら、赤松楓。


     しかし、驚いたのは最原終一だ。コロシアイでは在り来たりな『探偵役』である彼だが、さて、主役不在となってしまった今、やはり、彼が赤松楓の後続となるべきだろう。


  12. 12 : : 2017/11/25(土) 23:06:35


    ◆◆◆


     次からはとても順調だった。やはり、天海蘭太郎と赤松楓の一端で、殺し殺される関係であるという認識が、彼等の中で膨れ上がったのだろう。


     この場所では人の命なんて無価値だ。
     例え、その命が本物でも、それらを彩る筈の、彼等の過去も生い立ちも、全ては虚構でしかないのだから。


     さようなら、星飛馬。
     さようなら、東条斬美。
     さようなら、夜長アンジー。
     さようなら、茶柱転子。
     さようなら、真宮寺是清。
     さようなら、入間美兎。
     さようなら、獄原ゴン太。


     さようなら、さようなら。
     私の作った衣装に身を包むキャラクター達。


     さよなら。




  13. 13 : : 2017/11/25(土) 23:08:28




    ◆◆◆




     問題が生じた。


     殺人現場を捉えられないばかりか『誰が死んで誰が殺したか』解らない事件が発生した。


     王馬小吉、彼はとんでもないトリックスターだった。


     まず入間美兎が死ぬ前に作らせていたモノ。
     荒唐無稽な落書きの中に、吸引機の様なものと、エレクトハンマーとボム、彼等に対する牽制であった二脚ロボットのエグイサルを制圧出来るハンマーと、彼等を中継する極小カメラを停止させるボム。
     正直、侮っていた。王馬小吉は、この不確定殺人を以て『学級裁判』を引っ掻き回す算段だろう。


     だけど、最原終一は、解き明かす。


     王馬小吉が、百田解斗が命を賭して作ったこの謎かけを。


     さようなら、王馬小吉。
     さようなら、百田解斗。


     間違いなく、最原終一は主役だ。


  14. 14 : : 2017/11/25(土) 23:10:57




    ◆◆◆




     そして最初の裁判のやり直し、ああ、やはりか、やはり彼はそこまで気付いて、来てしまったか。


     焦って居たとはいえ、私はあまりにもミスを重ねすぎた。
     結局、ただの『模倣犯(コスプレイヤー)』でしかない私は。


    『彼女』ではない『白銀つむぎ』では所詮、こんな不出来な末路しか生み出せなかった。
     温めていたゴフェル計画という案も、黒幕が赤松楓の双子の妹という案も、不消化のまま終わる。


     最原終一、あなたの出した答えは『絶望』でも『希望』でもない。


    『失望』だった。
     がっかりだ。
     このコロシアイが自ら望んだ盤上であると全てを知った上で絶望には至らず。
     希望の受信機役だったキーボを以てしても希望にはなれかった。


     ただ『うんざりだ』と。


     私は、彼のせいで『首謀者役』を全うできなかった。彼は『探偵役』を全うし過ぎた。
     彼は『探偵役』でありながら『人を殺す』んじゃなかったのか、そうオーディションでいってたではないか。


     しかし、今はもう、どうでもいい。


     最原終一はキーボを通じて、希望を望む『視聴者』達に『ダンガンロンパの終了』を望んだ。


     ダンガンロンパが『最』後になった『原』因は『終』わりを望んだ『一』人の少年。


     最原終一。
     なんだそれはと、失笑が漏れた。


     キーボが『ダンガンロンパ』を終わらせるべく、才囚学園を破壊し、盤上を破壊し、そして、自爆した。


     さようなら、キーボ。


     そして『白銀つむぎ』という衣装を着た私も、この才囚学園と共に消えていく事だろう。


     おめでとう、夢野秘密子。
     おめでとう、春川魔姫。
     おめでとう、最原終一。


     あなたたちは、見事に生き残ってみせた。
     わたしのつくった超高校級に相応しいその衣装、大事にしてね。


     そして。
     さようなら、白銀つむぎ。


     キーボが破壊した才囚学園だったモノから瓦礫の雨が降り注ぐ。


     視聴率を落としたこの『チームダンガンロンパ』による『コロシアイ』も、過去最低の視聴率を出した事だろう。あの派手目でツインテールの彼女には悪いことをした、次回の『ダンガンロンパ』はもしかしたら視聴率が取れないのかもしれない。


     それよりも、今回の事で次回が開催されないのかもしれない。きっとスポンサーも離れていってしまっただろう。


     
     一際、大きな瓦礫が、私の頭上に──────








  15. 15 : : 2017/11/25(土) 23:14:06




    ◆◆◆ 




     どれくらい時間が経っただろうか。


     瓦礫の下敷きになって、私は死んだ。


     と思っていたが、残念ながらほんの少しだけ生き長らえている様だ。といっても、本当にほんの少し。
     感覚が殆ど無い、動く箇所は右手の指くらい。下半身と左半身は瓦礫の下だ。


    「……あ、う」


    「うぷぷ……」


     私の横に転がる、首だけになったモノクマの人形が、嗤っている。


    「……あなたもこれで、終わり……やっぱり、ただ首謀者という『衣装』で着飾っただけの私なんかじゃ……『彼女』になんてなれなかった」


     希望も絶望も生み出せない劣悪品、私は彼女には……『江ノ島盾子』にはなれなかった。なにが『江ノ島盾子53世』だ。本当にバカみたい。


    「終わらないよ?」


    「え?」


     モノクマの残骸は、そう言った。


    「だって……もう……」


    「視聴率100%? チームダンガンロンパ?」


    「……?」


     モノクマは、そう言う。あの『彼女』の声で派手目なツインテールの、私の次に首謀者役を望んでいた『チームダンガンロンパ』の同僚の、社員の。


    「なぁにそれ?」


     嘲り、嗤う。


    「そんな番組あるわけないじゃん。そもそも、キミは彼等と同じく……」


    「え……?」


    「記憶を弄られただけの被害者、そう思わないの?」


    「あ……」


     そうだ。


     わたしの記憶が紛い物だという可能性を何故、微塵にも考えてなかったのか。


     あの彼女が、同僚なわけが、なかった。


     そもそも、彼女は私の記憶に居てはいけない。


     だって彼女は既に死んでいるのだから。そう、矛盾しているじゃないか。


    『ねえ、█████████?』
    『次回だっけ? いーないーなぁ』
    『じゃあ、頑張ってね白銀つむぎちゃん?』
    『へぇ、面白そうじゃん』
    『手伝おっか?』


     派手目なツインテールの、桃色の様な髪を揺らす、地味な私とは対照的なギャルの様な彼女は。


     江ノ島盾子。本当なら、私の記憶にいちゃいけない。
     私と彼女には何の接点もないのだから。


     単純な話だった。


     わたしは結局、このコロシアイの『首謀者役』という『衣装』を着せられただけの『チームダンガンロンパ』の運営側という『衣装』を着せられただけの……彼等と同じ、ただの参加者に過ぎなかっただけの話。


     私は、実のところ███████(本名だと思ってたモノ)ですらないのだ。


    「──────は」


     ならば天海蘭太郎が前回の生存者ということもウソ。彼はわたしと同じく、そういう『役割』を持たされていただけ。


     チームダンガンロンパが53回に渡ってコロシアイを続けてたのもウソ。もしかしたらあったのかもしれない、でもチームダンガンロンパというものがまず存在しない。


     希望と絶望を熱望する視聴者達の存在もウソ。視聴者100%、笑える、全世界の人間が、誰しもがこんな血腥いゲームを望んで観ているわけ、ないじゃない。


     ウソ、ウソ、ウソ、ウソ、ウソ、ウソ。


     そう、全部、嘘っぱち。


     観ていたのは、たった1人、このモノクマの、瞳の奥のカメラ越しに観ている『誰か』だけ。


    「あは……そっか」


     わたしは、模倣犯ですらないのだ。


    「うぷぷ、そう。ねえ?」


    「絶望、した?」




    ──────もはや、絶望も希望も無い。


     そのモノクマ越しに居る誰か。


     江ノ島盾子ではない、誰か。


     だれか。




     私は──────




     おちる、ふかいあな。


     やみのそこでわらう。


     すがおのないばけものは。


     みじめなわたしをあざけてわらう。


     さようなら、どこかのだれか。


     いやな、さいご。




     




  16. 16 : : 2017/11/25(土) 23:18:28
    終わりです。
    考察サイトを参考に白銀さん目線で書いてみました。
    それでは秋のコトダ祭り、引き続き最後までよろしくお願いします。
  17. 17 : : 2017/11/27(月) 00:07:24
    お疲れ様です。
    怒涛の最後と、やはり全体の文章に大きく惹かれました。
  18. 18 : : 2017/11/27(月) 23:36:38
    >>17
    ありがとうございます‼
  19. 19 : : 2017/12/06(水) 00:10:40
    なんてこった、すごく良かったです!!いい意味で鳥肌たちました!
  20. 20 : : 2020/10/26(月) 14:26:39
    http://www.ssnote.net/users/homo
    ↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️

    http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
    ↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
    ⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️

    ⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
    10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
    みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
    今回は誠にすみませんでした。


    13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
    >>12
    みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
    現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました

    私自身の謝罪を忘れていました。すいません

    改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
    今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
    あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
    SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
    本当に今回はすみませんでした。




    ⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️

    http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi

    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️

    56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ごめんなさい。


    58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ずっとここ見てました。
    怖くて怖くてたまらないんです。


    61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
    お願いです、やめてください。


    65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    元はといえば私の責任なんです。
    お願いです、許してください


    67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    アカウントは消します。サブ垢もです。
    もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
    どうかお許しください…


    68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    これは嘘じゃないです。
    本当にお願いします…



    79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ホントにやめてください…お願いします…


    85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    それに関しては本当に申し訳ありません。
    若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
    お願いですから今回だけはお慈悲をください


    89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    もう二度としませんから…
    お願いです、許してください…

    5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
    ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
    本当に申し訳ございませんでした。
    元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
    私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
    今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。

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