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この作品は執筆を終了しています。

君だけにあげる『薬』

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  1. 1 : : 2017/11/15(水) 00:11:38
    この作品は

    ・ししゃもさん主催秋のコトダ祭り投稿作品
    ・テーマは『薬』
    ・ダンガンロンパのネタバレ注意

    です。

    完結まで書き終えていますが、最終日までに書き溜め+その日の更新で文量を増やしてみようと思います。

    それではどうぞ。


    悲報:フライング投稿  日記を14日までと勘違い
    16日なるまで放置します……。

    気を取り直していきます!
  2. 2 : : 2017/11/15(水) 00:16:22
    「だーいすきだよ! 赤松ちゃん!」


    この男の子にそう言われるのは何度目だろうか。


    私は慣れてきたその言葉に対して、こう答えた。


    「はいはい。ありがとう」


    「あー、オレは真剣なのに適当にあしらうなんて酷いんだぁ…! お、オレ…悲しくて悲しくて……」


    「笑っちゃうんでしょ?」


    「あったりーっ! さっすが赤松ちゃん。オレのことわかってるね!」


    王馬君とのこんなやり取りも何度目だろうか。


    王馬小吉。超高校級の総統。


    彼曰く、悪の組織のボスらしいけど……私からすればただのいたずら好きの嘘つき少年だ。


    「うーん、どうやったらオレの気持ちが伝わるのかなー?」


    「……どうせ嘘なんでしょ?」


    嘘。


    それはじわじわと毒のように心へと染み込み、信用を失わせる。


    彼はその()を使い続ける。



    「にししー、バレた? いやー、オレが人を好きになるなんてありえないってねー。赤松ちゃんもオレのことよくわかってるね!」


    「………」



    彼自身は根っからの悪というわけではないとこれまでの付き合いからわかっている。



    だが、彼の性質は悪である。



    人をからかおうとしたり、人心を乱そうとしたり……そこに喜びを感じる点において彼は悪であると言える。



    だが、それは彼のアイデンティティであり、彼が彼であることを証付けているものだ。



    そんな王馬君を……私は心の底から憎むことができないでいる。


    「ニシシー!」



    「………」



    憎めないけれど、その笑顔に時々イラつきを感じる。



    王馬小吉は私にとってそんな存在である。
  3. 3 : : 2017/11/15(水) 00:33:24
    「好きだよー、赤松ちゃん!」


    「………またそれ? はいはい。ありがとう」


    「……つまんない。つまんないよ赤松ちゃん! 最初の頃の顔を赤くして慌ててたキミはどこに行ったのさ!」


    「いや、さすがにほぼ毎日言われ続けてたら慣れるし、こういう反応にもなるよ…」


    「ふーん……赤松ちゃんは夫婦生活とかで毎日好きだよって言われたくない人なんだね……そういうのってすぐ離婚したりするんだよ?」


    「………」


    王馬君の言葉に慣れてしまった、というのは事実だろう。


    だが、私の中でその言葉が響いていないのは、『王馬君を異性として見ていない』ということと『王馬君の言葉は嘘である』という2点が大きいだろう。


    2点目は憶測だけど、王馬君のことだ。嘘に決まっている。



    「ふーん。まっ、いいや。赤松ちゃんに好きって言ってもらえるまでオレ、頑張るからさ!」


    「………そう」


    はっきり言って迷惑だ。


    私がいくら相手にしなくても、周りはそう見てくれないし……。


    噂なんかになってしまったら火消しが大変だ。




    「……いっつも好きって言ってくるけど、1つのパターンしかないの?」


    「オレってば喋るの苦手だからさ。気の利いた告白のセリフなんて言えないんだよねー」


    「………嘘でしょ」


    「うん! 何なに? 赤松ちゃんもセンスのある告白のされ方とかされたいわけ?」


    そんな少女漫画に憧れるような年齢はとっくに過ぎている。



    そういう告白のされ方にあこがれがないわけじゃないが、私にとっては普通に告白してくれればそれで充分だ。



    「ないよ。その人に無理なく普通に告白してくれたらいいと思う」


    「そっかー。じゃあ、オレの告白は正攻法なんだね!」


    「王馬君を肯定したわけじゃないよ」



    否定したのに王馬君は嬉しそうに笑っていた。
  4. 4 : : 2017/11/16(木) 21:21:30
    「月がきれいだね、赤松ちゃん」


    「今真昼間だけど……」


    「おっと、それはうっかりしてたね!」


    「………」


    さらっと流してしまったが、王馬君が言ったフレーズについて、さすがの私も意味くらいは知っている。


    「……今日は変化球なの?」


    「変化球? 何のことかなー?」


    「……月が綺麗ですねっていうフレーズはI love youの意訳って言われてるってことくらいは知ってるでしょ」


    「ええー!? そうなんだねー! オレってば全然知らなかったよ!」


    「………」


    白々しい棒読み。


    絶対に嘘だ。



    「……毎日好きって言ってくるけど……何が目的なの?」


    「え? 好きな相手には好きって言うもんじゃない? それとも赤松ちゃんは好きって気持ちは表に出すもんじゃないとか考えてる人?」


    「……そうじゃないけど…」


    好意を持たれるのは別にいいことだ。


    それを伝えてくるのもまぁ悪いことではない。



    ただ、何度も何度も伝えて来るのが嫌だ。



    「……私をからかうのが目的なの?」


    「違うよ。オレは本当に赤松ちゃんが大好きなのさ」


    「………」



    ダメだ。


    王馬君にまともに取り合うつもりはないらしい。


    飽きるまで王馬君のこの遊びに付き合うしかないらしい。



    「あー、でもね。赤松ちゃん。オレってさ、オレのことを好きなやつは死んでもゴメンなんだよね」


    王馬君が突然私の目を覗き込んできた。


    私の何もかも、すべてを見透かされそうで底冷えする感覚を得たけど……顔が固定されたように動かない。


    いつの間にか、王馬君の視線に釘付けにされていた。



    「むしろ、オレのことが大嫌いなやつのほうがいい。……だから、オレは赤松ちゃんが大好きなんだよ」



    王馬君がやっと視線を外したら、私も体の硬直が解けた。



    「……私は別に王馬君を嫌ってないけど…」



    「ふふーん。そういうことにしといてあげるよ」



    王馬君のいたずらが成功したような笑みに私は少し苛立った。
  5. 5 : : 2017/11/16(木) 23:55:02
    「赤松ちゃーん! 今日も可愛いねー! 大好きだよ!」


    「…はいはい。こんな食堂で叫ばないの。みんな見てるじゃん」


    もはやいつものこと、とほかのみんなもスルーだ。


    当初は噂になったら面倒…なんて考えていたが、それも杞憂だった。


    王馬君が本気で言ってるわけがないと、私もみんなも取り合わなかったからだ。


    私もいつものように適当にあしらった。


    「う、うぅぅ……みんなの前で恥ずかしい気持ちを抑えて言ったのに……ウォぇあああああああ!!! ひどいよおおおおおお!!!」


    「ちょ、ちょっとみんなに迷惑だから…!」


    「じゃ、じゃあ…オレにも大好きって言ってよおおおおおおお!!」


    「え、ええ……もう、仕方ないなぁ…」


    思えば何度も『好き』と言われ続けてきたが、自分から言ったことはない。


    「………す……」


    たった二文字。


    それが中々口に出せない。


    「………うぅ…や、やっぱり赤松ちゃんはオレのこと嫌いなんだあああああ!!」


    「そ、そんなこと…!」


    簡単だ。


    言える。


    王馬君には悪いけど、何の感情もない。


    だから口からいくら好きと言おうと、心から好きと言うことは絶対にない。









    「………すき……」



    カーッ、と一気に顔が紅潮したのを感じた。


    心臓がうるさいほどに脈打つ。



    「……へへーん、やっと赤松ちゃんからその言葉が聞けたや。まっ、どうせ嘘ってわかってるけどねー」



    嘘。


    そう。嘘だ。



    この胸の脈動も……きっと不整脈だ…。



    この顔の熱さも……きっと急に風邪をひいたんだ…。



    王馬君の顔が見れないのも……………。



    「あっれ? どうしたの赤松ちゃん?」


    ずいっ、と王馬君の顔が近づく。


    ……さっきよりも熱くなってきた。


    体調が悪化したんだろう。



    「…何でもないよ」



    今の私にはそう答えるだけで精一杯だった。
  6. 6 : : 2017/11/18(土) 20:41:08
    「好きだよ赤松ちゃん! 今日もいいおっぱいだね!」


    「……サイテーだよ」


    出会い頭にセクハラ発言。


    でも、王馬君なら仕方ないのかなとも思ってしまうし、不思議とゆる……せないね。うん。


    「東条さんに言いつけるからね」


    「あー…それはちょっと勘弁…!」


    両手を合わせて東条さんにだけは言わないでくれ、と頼まれてしまった。


    その後、バツが悪そうに王馬君は去っていった。


    ふふーん、今日は何だか勝った気分だ。


    気分もいいし、ピアノでも弾こう。


    スキップしそうなほど軽やかに私は音楽室へ向かった。









    「~~~~」


    ここは軽快に……ここは強めに……ここは一瞬だけ弱々しく…!


    ここは私だけの世界。



    ピアノの音が一つ鳴るたびに足跡ができて、それに従っていくと一つの道となる。


    そうして、一つの曲…一つの世界となる。



    ピアノの音が一つ鳴る度に私の世界が一つ色づく。


    軽快に素早く弾くと、動物が駆け上がるような森。


    重低音が多いと、深い深い海の底。


    リズムが良いと、仲のいい人たちでお茶会。


    曲ごとにそんなイメージが湧き上がる。



    今弾いている曲はゲールの蝶々という曲。


    蝶のように軽快で自由に空を飛び回っているような……そんなイメージが湧き上がる曲だ。






    ………この自由な感じは…王馬君みたいだなぁ……。




    一瞬湧き上がったぼんやりとした思考に押す鍵盤を間違えた。



    すると、さっきまで見えていた道しるべが消えて、曲が崩壊していく。



    気づくと私の世界は、音楽室に戻っていた。





    「……むぅ……せっかく……」


    「せっかく何?」


    「え…?」


    振り向くとそこには王馬君がいた。


    完全に一人だと思っていての独り言を聞かれて恥ずかしくなる。



    「な、なんでいるの…?」


    「え? そりゃあ、オレが赤松ちゃんのこと大好きだからだよ!」


    「それは答えになってないよ!」


    「んー、強いて言うなら…面白そうだったからだよ!」


    王馬君らしいその言葉に脱力した。


    そうだ、大した理由なんてあるわけがないだろう。


    ちょっとピアノの音が聞こえたから、とかその程度かもしれないし、何より王馬君がまともに答えるはずがない。


    「にしても、軽快な曲だよね。赤松ちゃんってもっと大人しい曲とか弾くんだと思ってたよ」


    「そりゃあ…私だって色々弾くよ? ゆっくりなペースのものも、ペースが早いのも…」


    「ふーん。まっ、いいや。地味に一人鑑賞会できたし、オレは満足だよー!」



    そう言い残して王馬君は出て行った。



    「…………」



    なんで私は、王馬君を思い浮かべただけでミスしてしまったんだろう。


    その日、私が答えを得られることはなかった。
  7. 7 : : 2017/11/20(月) 22:01:58
    「赤松ちゃん。大好きダヨー!」


    「…なんでちょっと棒読みなの」


    「えー? こんなに誠心誠意心を込めているのに……赤松ちゃんにそんなこと言われるなんて悲しいよ…」


    「………」


    いつもの。



    そう、いつものやり取り。



    いつから『いつも』になっているかもう覚えていないけど……。



    そう、だからいつもどおり私は適当に…。



    「…………」



    「あれー? 赤松ちゃん? どうしたの?」



    「……別に。呆れてものも言えないだけだよ」



    「……ふーん」



    その時の王馬君の表情は……総統らしくとても悪い笑みを浮かべていた。
  8. 8 : : 2017/11/20(月) 22:02:41
    「あっかまつちゃーん! 元気ー?」


    「…元気だけど、どうしたの?」


    「別に? 英語だとよくあるじゃん? Hello. How are you? ってさ。元気?って聞くのは別にそんなにおかしくないでしょ?」


    「……そう言われるとそうだけどさ」



    …今日の王馬君には違和感があった。


    何だろうか。



    髪型変えた? 服装がいつもと違う? 



    いや、よく見なくても、そんなことはない。



    「…ん? どうしたの? エッチなこと考えてるの?」



    「そんなこと考えてないよ! もう!」



    王馬君のからかいにさっきまで考えていた疑問は消えてしまった。
  9. 9 : : 2017/11/21(火) 23:05:54
    「はぁ……最近何だか調子がおかしい…」


    体調が悪いとかではない。


    むしろ、体の方には活気が溢れている。


    それでも調子が悪いと感じるということは、心の方に問題があるんだろう。


    「んー……ストレス…なんて溜め込むことはしてないし……」


    イライラしているわけでもない。


    ただ…もどかしいような、何かが欠けていて気持ち悪いような変な感覚だ。


    「……ピアノを弾けば治るかな…」


    ぼんやりと考えながら私は音楽室へと向かった。










    「………ダメだなぁ……」



    何曲弾いても気分は晴れない。



    ミスはするし、途中で弾くことをやめてしまうし……これでは作曲家にも曲にも失礼だ。



    ピアノを弾くことをやめて、散歩に出ることにした。



    軽く運動すれば気分が晴れることを祈って…。





    「…あれ? 最原君と王馬君だ」



    適当にぶらついていると、校門前にいた二人を発見した。



    特に用事もないけど、挨拶くらいはしておこう、と思って近づくと…。



    「そういうところ好きだよ、最原ちゃん!」



    ………え?



    王馬君の一言に私の足は止まった。



    何の話だろう。



    いや、王馬君と最原君が仲がいいのは前から知ってるし、最原君の一面に対して好きって言ったということが何となくわかる。




    けど……。



    そもそも……そもそも……だ。




    なんで私は…足を止めて物陰に隠れたのか…。




    私は…何にショックを受けて足を止めてしまったのか…。



    呆然とする私を他所に、二人は会話を続ける。




    「…はいはい。僕は王馬君のそういうところが嫌いだよ」



    「えー? そういうところってどういうところ?」



    「特に何も思っていないのに、簡単に好きって言っちゃうところだよ」



    「……なんで、オレが好きだなんて思ってない、って思ってるの?」



    「それは……」



    「オレが普段嘘をつくから…だよね。うん……。そうだよね。嘘つきなオレが誰かを好き、なんて言っても伝わるわけないよね……」



    「あ、あの…王馬君?」






    「………ぷっ……アッハハハハ! 最原ちゃん焦ってやんの! オレがそんな殊勝な態度するわけないじゃん!」



    「なっ…!? べ、別に心配なんてしてない…!」



    「嘘だねー! オレってば人が嘘ついたらすぐわかるからね! アッハハハハハ!」



    楽しそうに会話する二人に私は結局声をかけられず……そのまま来た道を戻って音楽室へと戻ってきた。



    「…………何なんだろ…」



    嬉しくも悲しくもない。





    だけど、苦しい。




    私は今どんな顔をして、どんな感情を抱いているのか……。




    自分自身のことがわからなかった。
  10. 10 : : 2017/11/21(火) 23:06:55
    「あっかまつちゃーん!」



    「………何?」



    「あれ? ご機嫌斜め?」



    「…別にそういうわけじゃないけど…」



    「生理?」



    「ふん!」



    普段の私なら手を気遣ってビンタなんて真似はしないが、この時ばかりは咄嗟に手が出た。



    「よっ! それじゃあ当たってあげれないねー」



    「………」



    ムカつく。



    空振りしたときにこのイラつきが発散できなかったため、余計にムカムカする。



    「で? どうしたの? オレでよければ相談に乗るよ?」



    「……2つ言いたいことがあるんだけど…。一つは別に悩み事なんてないってこと。もう一つは…王馬君に相談することはないってこと」



    「うっわ! はっきり言うね! さすがのオレもショックだよー!」



    嘘くさい…。



    「まっ、オレも悩みなんて相談されても茶化しちゃうだろうし、それが正解だよ。赤松ちゃんはオレのことわかってるね~」



    「…………」



    何なんだろ…。



    王馬君の一挙一動の揺さぶられて……いちいち動揺して……



    いつからこんなことになったんだろう…。





    「……にししー。ねー、赤松ちゃん」



    「何?」



    「オレに対して、何か言いたいこととか思うこととかあるんじゃない?」



    「………別にないよ」



    実際はあるにはあるが、言葉にできていない。



    今の感情や想いの正体がわからないと、誰にも説明はできないだろう。



    「………オレってばさ。欲しいものは全力で手に入れる主義なんだよね」



    「…急に何?」



    「欲しいものには全力で……それこそオレにできるすべての手段を持って手に入れるんだ」



    「………何が言いたいの?」



    「そのうちわかるよ」



    王馬君は意味深に笑いながら、去っていった。



    「……本当になんなの…」



    疑問に答えられる王馬君は既にその場にいない。



    私のつぶやきも誰に聞かれることもなく、消えていった。
  11. 11 : : 2017/11/21(火) 23:10:36
    「ねぇ、赤松ちゃん」


    「………」


    「ねーねー! ねーねーねーねー!」


    「ああ! もう! 何!?」


    「なんでもなーい!」


    「………」


    イライラ。


    王馬君がふざけてくるからイライラ……してるわけじゃない。


    ……何でだろう。


    なんでこんなにもイライラしてるんだろう…。


    王馬君がその後も何か語りかけてきていたが、すべて無視した。


    無視し続けても王馬君は語りかけてくる…。






    「…あ、あの…赤松さん?」


    「さっきから何なの!?」


    「え…えっと……」


    声を荒らげた先にいたのは、王馬君ではなく最原君だった。


    いつの間にか王馬君はどこかへ行ってしまったらしい。


    「あ…え、っと…最原…君…」


    「き、機嫌悪いみたいだね…。ごめん……日を改めるよ…」


    「あ…!」


    声を掛ける前に最原君は走り去ってしまった。


    「…やっちゃった……」


    イライラしてて叫んだこと、王馬君だと思い込んだこと、イライラしたことに関係のない最原君に当たったこと。


    色々な事実に後悔が次々と湧いて出てくる。


    そんな自分にイライラするし、原因がわからないことにもイライラする。


    「……なんなの…もう…!」


    「にしし……最原ちゃんかわいそー」


    「……王馬君…」


    「あ、さっきのはオレのせいじゃないと思うよ? あんまり反応してくれないから、赤松ちゃんは相手してくれないと思ってさっきまで百田ちゃんと話してたし!」


    ずっと王馬君が語りかけてきていたように感じていたのは幻聴だったらしい。


    「………」


    「……で、赤松ちゃん。前にも聞いたけどさ。オレに言いたいことか思うことがあるんじゃない?」


    「………ないよ」


    「あ! 聞きたいことでもいいよ?」


    「聞きたいこと……」


    あるにはある。



    王馬君の一挙一動に過敏に反応してしまうこと。



    王馬君の行動にイライラを募らせてしまうこと。



    前まではこんなことはなかった。



    自分の心境に何か変化が生じたと言われればそれまでだが……王馬君が何かしたのではないか?




    ……そう尋ねられたらいいのだけど…。



    「………何も……ないよ…」


    「えー? 本当にー?」



    「ないものはないよ」


    「そっかー。まっ、オレは気が長いからね。赤松ちゃんが話してくれるようになるまで待つよ!」


    王馬君は私の何を知っているのだろう…。


    …私のこの心境も見破られているのだろうか。



    王馬君のことがわからないが、私は私自身のこともわからなくなってきていた。
  12. 12 : : 2017/11/21(火) 23:12:49
    それからの日々はひどいものだった。


    どこか上の空だったり、意味もなくイラついたり……。


    ピアノにも集中できない。


    何が原因かわからなくて余計イライラして…。



    「……はぁ……」


    「赤松ちゃーん!」


    「……王馬君」


    「暗いよー! 暗すぎてきのこが生えてきそうだね!」


    「……放っておいてよ…」


    「………ねぇ、赤松ちゃん」


    油断していた…わけじゃない。


    ただ、王馬君があまりにも自然に動いたせいで、咄嗟に反応できなかった。




    「大好きだよ、赤松ちゃん!」



    「あっ……!?」



    背筋がゾクゾクとして、頭が何だか麻痺したようにぼんやりとした。




    「……な、なに…?」


    「あはは。赤松ちゃんってば、まんまとハマっちゃってるねー」


    「……え…?」


    どういうこと…? 何の話?


    混乱する私を他所に王馬君は話を続ける。


    「言葉ってさ。なんてことないことでも人を傷つけたりするよね? よく何てことない言葉が原因で傷ついたー、なんてよくあることだよね」



    王馬君の笑みがより深くなる。



    「逆に何てことない一言で救われる、なんて人もいるんだよね。いやー、言葉って人によっては『薬』にも『毒』にもなって不思議だよねー」


    「……それが…何なの…?」


    「……赤松ちゃんにはさ、『薬』を与えてたんだよ。ずっとね。あ、もちろん物理的なものじゃないよ?」


    「…………?」


    「ここまでの流れでわかんない? いや、わかんないフリ?」


    王馬君は再び顔の真ん前まで近づいてきたと思ったら



    「大好きだよ、赤松ちゃん」



    「あっ…うっ……!?」



    「……こんな感じ。わかった?」



    王馬君の言葉に鼓膜が揺さぶられて脳が麻痺する。


    考えがまとまらない。


    それでも思考は進める。


    大好きって言われたら体が反応する…? なんで?


    ありえない。


    なんでこんなことに…?


    抑える方法は……。




    「……い、いつから……どうやって……」


    「いつから、って言われたら1ヶ月くらい前かな? どうやって、って言われたら言葉と視線を使ったトリック……催眠術みたいなものかな。毎日言われ続けて、赤松ちゃんってばオレの『好き』に慣れてきてたでしょ?」


    「………」


    最初こそ動揺したその言葉もいつもの嘘と思ってたし、いつも適当に流してた。


    確かに聴き慣れていたかもしれない…。


    …そういえばいつからか『大好き』、という言葉を聞いていない。


    「よくあるじゃん? 我慢して我慢して、欲望を開放したらより嬉しさが増すあの感じ。それと同じ原理だよ。オレの目を見ながら『好き』って言われると赤松ちゃんが嬉ぶように催眠をかけたって感じ………思った以上に過敏に反応しちゃってるみたいだけどね」


    王馬君は楽しそうに笑っている。
  13. 13 : : 2017/11/21(火) 23:18:37
    王馬君が再び顔の前にゆっくりと近づいてくる。



    動けないというのもあったけど……逃げる気にならなかった。



    「大好きだよ。赤松ちゃん。本当にね」



    ……薄々わかっていたけど、間違いない。



    私の脳は王馬君の言葉に喜んでしまっているんだ。



    『大好きだよ』と言われて…。



    王馬君に『大好き(くすり)』を投下されて、脳が喜んでいる。



    「…………」



    「で、赤松ちゃんは?」



    「………」



    「普通告白されたらその答えを言うもんじゃない?」



    「………私は……王馬君のことが嫌い…だよ…!」



    「アッハハ! だよねー!」



    一頻り笑った王馬君は、今度はニヤついた笑みを浮かべる。



    「まっ、関係ないけどね」





    王馬君が私の体を抱きしめてくる。



    抵抗できないし…する気もなかった。



    頭の痺れが快楽に変わり、抱きしめられた刺激も快楽へと変わる。



    薬物中毒者が再び薬を求めてしまうように…。




    私は王馬君から与えられる『(大好き)』にもう囚われてしまっているのだ。



    「前にも言ったよね。オレってば欲しいもののためなら、オレにできるすべての手段を持って手に入れるって」




    「例え、赤松ちゃんを『()』漬けにしてでも、オレは赤松ちゃんが欲しいんだよ」







    摂取し続けた『薬』は本来の役割を超越し、体や心に悪影響を及ぼす『毒』となる。



    『薬』とは使い方を誤れば『毒』だ。




    王馬君の言葉は『薬』であり、『毒』。




    この『毒』に私はもう抵抗する術を持たない。




    『毒』と知っていても…私はもう与えられるがままに貪るだけ。




    「…にししー!」



    子供のような無邪気で邪悪な笑顔で王馬君が近づいてくる。




    私は王馬君の言葉に漬けられてもう抜けられないことを確信しながら、その口づけを受け入れた。




    「大好きだよ。赤松ちゃん……このままずっとオレのことなんか大嫌いなままのキミでいてね」



    END
  14. 14 : : 2017/11/21(火) 23:26:22
    以上です。

    コトダ祭の4つのテーマの中一番最初に思いついた話です。
    物理的な薬ではなく、心に与える薬……と考えると、『言葉』も一つの薬であるとテーマを決めたら……。

    赤松さんが王馬君の言葉中毒になる話が出来上がってしまった…。

    人によっては胸糞悪いでしょうかね。

    他にも多くの方がコトダ祭りには参加しておりますので、そちらの作品もぜひ。

    それでは、またどこかで。
  15. 15 : : 2020/10/26(月) 15:02:24
    http://www.ssnote.net/users/homo
    ↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️

    http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
    ↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
    ⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️

    ⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
    10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
    みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
    今回は誠にすみませんでした。


    13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
    >>12
    みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
    現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました

    私自身の謝罪を忘れていました。すいません

    改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
    今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
    あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
    SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
    本当に今回はすみませんでした。




    ⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️

    http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi

    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️

    56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ごめんなさい。


    58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ずっとここ見てました。
    怖くて怖くてたまらないんです。


    61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
    お願いです、やめてください。


    65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    元はといえば私の責任なんです。
    お願いです、許してください


    67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    アカウントは消します。サブ垢もです。
    もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
    どうかお許しください…


    68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    これは嘘じゃないです。
    本当にお願いします…



    79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ホントにやめてください…お願いします…


    85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    それに関しては本当に申し訳ありません。
    若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
    お願いですから今回だけはお慈悲をください


    89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    もう二度としませんから…
    お願いです、許してください…

    5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
    ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
    本当に申し訳ございませんでした。
    元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
    私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
    今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。

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