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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

苗木「交換日記しようよ!」

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  1. 1 : : 2017/11/11(土) 13:13:51
    っしゃぁ!ssのお時間です(´・ω・`)!どうも、ルカでございます(´・ω・`)

    今回は『秋のコトダ祭』に参加させていただきます(´・ω・`)

    それぞれ、各週でお題が変わることになってます(´・ω・`)!よろしくおねがいしますm(_ _)m


    2週目のお題は『日記』でございます!


    それではスタートです(っ´ω`c)
  2. 2 : : 2017/11/11(土) 13:25:11
     ここは希望が峰学園の1年生の教室。授業も終わり、みんなが一目散に帰っていくなかで、残っていた男女がいた。



     彼らは日直だったらしく、男子生徒の方はほうきを……女子生徒の方は黒板消しを持っていた。



     女子生徒の方が黒板消しをクリーナーにかける。



    ……ブォォォォ…………



     と言う音が教室内に響いていた。その音に耳を傾けながら男子生徒の方がほうきをゆっくりと動かしていく。



     教室のホコリがほうきによって集められる。すると、ホコリが集められてたまるかといわんばかりに教室内を舞った。そして、そのホコリによって男子生徒が咳き込んだ。




    「大丈夫ですか?」




     と女子生徒がその男子生徒の顔を覗き込んだ。あまりに近づいたので男子生徒は顔を赤らめ、




    「大丈夫……今日に限ってホコリが舞っちゃって……」




     とこたえ女子生徒から距離をとり、それを確認した女子生徒は姿勢を戻した。男子生徒は大きく一息して気持ちを落ち着け、辺りを見渡して頷いた。




    「よし!終わりだ!ちりとりお願い!」



    「わかりました!」




     女子生徒は黒板消しを黒板のレールの上に置くと、ちりとりを取りに掃除箱へと向かった。掃除箱の中にはほうきが3本とちりとりが2つ入っていた。



     2つのうちの1つに手をかけた女子生徒は男子生徒の元に歩み寄りかがんだ。それを見た男子生徒がゴミを回収していく。




    「ふぅ……後はゴミ出しか……」



    「早くやってしまいましょう!」




     2人はすぐにゴミ箱の中にゴミを捨てると、ゴミ袋を結び教室を後にした。
  3. 3 : : 2017/11/11(土) 13:27:18
     ゴミ捨て場は少し遠いのでその道中彼らは雑談することにした。




    「舞園さん!明日の予定は?」



    「明日は休みですよ!」




     どうやら女子生徒の名前は舞園と言うようだ。その後も話を続ける。




    「よし!それなら明日はカラオケだね!」



    「はい!そうですね!」



    「桑田くんと霧切さんも誘おうか……」



    「ダブルデートですか?苗木くんは霧切さん好きですもんね!」



    「そ……そんなんじゃないよ!」




     舞園が、目を細めて男子生徒の頬をつつくと、彼は跳びはねて舞園の方を見て両手を横に振った。



     もう1人の男子生徒の方は苗木と言うようだ。2人は中学校のころの同級生で、中学時代は話をしたことはなかったが、この希望が峰学園に入ってから話す機会が増えていた。



     そして、明日彼らは同級生の桑田と霧切を誘いダブルデートをする予定のようだ。
  4. 4 : : 2017/11/11(土) 13:30:47
     ゴミ捨て場へと向かう廊下の窓には色鮮やかな紅葉(もみじ)がひらりひらりと落ちていくのが見えた……




    「きれいですね……」



    「うん……ねぇ……舞園さん!今度どこかで一日休みが取れそう?」



    「そうですね……今月中に一回とれそうですが……」



    「それならその時に紅葉(こうよう)をみにいこうよ!」



    「いいですね!!私、お弁当作ります!!」



    「よし!!それじゃぁ……」



    「また四人で行きましょうね!!」



    「え!?どうして僕の考えていることが分かったの!?」



    「エスパーですから……」



    「え?」



    「冗談……ただの勘です!」



    「もう……舞薗さんの勘は鋭すぎるよ……」




     そんな会話をしているうちに二人はゴミ捨て場の前にいた。そこには3つの袋と一冊のノートが置いてあった。



     苗木はそのノートに気づくと、すぐさま拾い上げて不思議そうにノートを見た。




    「なんのノートだろ?」



    「日記帳ではありませんか?」




     舞園が指を指しているところを見ると白い文字で『Diary』と書かれていた。



     その後、苗木はノートを注意深く見た。ノート全体は黒色……パラパラと開いていったページもうっすらと黒かった。そして、中を見ると何ページか破られていた。




    「これって……字は見えるのでしょうか?」




     舞園が不思議そうにノートのページを見た。苗木は首をかしげて少し考えた後……




    「試しに何か書いてみようか……」




     と言うと苗木はシャープペンシルをポケットから出して『あ』と書いてみた。すると不思議なことに文字は白の用紙に書いているのと遜色がないぐらいはっきりと見えた。



     しかし、まだ不思議なところが多かった。このノートは誰のものなのか……



     そもそもどこから……




    「とりあえず、これは僕が持って帰ろうかな……」




     苗木はそう言うと、自分たちが持ってきたゴミ袋を放り投げて、そのノートを小脇に抱えた。




    「危なくないですか?先生に話をした方が……」




     舞園は苗木の服を掴むと、苗木に体を寄せた。すると苗木は彼女にほほえみ、




    「大丈夫だよ!それに先生はもう帰っていると思うしどちらにしても明日渡さないとね!」




     そう言うと、彼女の肩を持って教室へと歩いて行った。
  5. 5 : : 2017/11/11(土) 13:31:37
     教室に着くと、舞園が心配そうに苗木に話しかけた。




    「そのノート大丈夫ですかね?やっぱり、どう考えてもおかしいですよ……」



    「まぁ、ふつうのノートだと思うよ?あれだったら、交換日記に使ってかもいいかもしれないね!」



    「とりあえず交換日記にするかは置いといて、なにも書かない方が良いかと思います。」



    「わかっているよ!大丈夫!」




     舞園が不安そうに苗木を見た。苗木はいつものように優しい表情で、その日記帳をカバンに入れて舞園に話しかけた。




    「それじゃぁ、明日のカラオケ楽しみにしてるね!」



    「はい!霧切さんは呼んでおいてくださいね!」



    「うん!霧切さんは任せて!」



    「あの人を呼べるのは苗木くんだけですよ!」



    「そんなことないって!それじゃ行こうか!」




     そういうと、2人は教室の扉を閉めて自室に戻った。
  6. 6 : : 2017/11/11(土) 13:33:09
     苗木は部屋に戻る前に霧切の部屋へとむかった。霧切の部屋は苗木の部屋の隣にあるので、何か連絡があれば帰りに寄るようにしていた。



    ピンポーン……



     苗木は霧切の部屋につくとすぐにチャイムを押した。しばらくすると扉が開き、中から銀髪の少女が出てきた。彼女が霧切だ。




    「どうしたの?」



    「あ、霧切さん!いま時間大丈夫?」



    「えぇ……少しだけなら……」




     霧切はそう言うと苗木を招き入れた。霧切自身はもう着替えておりいつもの制服ではなく部屋着で過ごしていた。



     部屋にはファイルが開かれていた。おそらくいま関わっている事件のファイルであろう……



     苗木は近くの椅子に座った。霧切はベッドに腰掛ける。




    「それで、用ってなに?」




     霧切は髪をかき上げながら苗木に質問をした。苗木はすぐに答える。




    「あ、それなんだけど……」

     


     苗木は明日の放課後に桑田と舞園とカラオケに行くこと、それに霧切も参加するかどうか聞いた。霧切は快諾したので、集合時間と集合場所を伝えた。




    「それにしても急なのね……」



    「まぁ、舞園さんの休みが急に変わったりするからね!」



    「確かにそうね……その制度どうにかならないかしら……」



    「難しいと思うよ……」




     そんなたわいもない話をしていた苗木だが、あることを思いだした。日記のことだ。
  7. 7 : : 2017/11/11(土) 13:37:02
     霧切にも相談しておこうと思い、苗木はカバンの中から日記をとりだした。




    「このノート……さっきゴミ捨て場で拾ったんだけど……」



    「それは何?……って、このノート……もしかして……」




     霧切は日記を手に取ると、パラパラとめくり始めた。



     苗木はこの日記を手にした状況を霧切に話した。すると霧切は首をかしげ、日記をめくり中を確認した後苗木に返した。




    「明日先生に相談するか処分することを進めるわ……」



    「やっぱりそう思う?」



    「えぇ……この日記は『危ない』わ……」




     すると霧切はある事件ファイルを取り出して苗木に見せた。




    「これって……」



    「これは最近起こった連続殺人事件よ……」




     そのファイルによると、1か月ほど前、都内のある進学校で高校1年生の生徒が突然倒れ、目を覚ました後クラスの生徒を虐殺したと言う殺人事件だった。



     そのページには死体の状況が事細かに書かれていた。全部読んでも仕方ないなと思い、現場の状況だけ目を通すと、現場はその生徒の所属クラスの教室で、死体は四肢と首がバラバラに斬られており、首以外は教室の後ろに積み上げられ、首は各生徒の机の上に置かれていた。



     そして、苗木はそこに添付されていた写真を見たが、その写真が強烈すぎた。まさに、この世の終わりを告げるかのような殺人現場の写真がファイルに貼られていた。生徒一人一人の苦しそうな表情を見ると思わず口を覆った。




    「うっぷ……」




     すると苗木は強烈な吐き気に襲われた。あまりのグロテスクさに体が受け付けなかったのだろう……昼ごはんに食べたラーメンが一部戻ってきたがここで吐くわけにはいかないと思い、苗木はすぐさまのみこんだ。




    「大丈夫?」




     霧切が心配そうにこちらを覗き込んだが、苗木はすぐに手を霧切りのほうに向けて




    「大丈夫」




     と答え、視線をすぐにファイルに戻した。



     そのページを見終わった苗木は霧切が用意してくれたミネラルウォーターに口をつけた。そしてそれを口に含み飲み込む。心を落ち着けた苗木は次のページをめくった瞬間驚きのあまり飛び上がった。



     そこには1冊の日記帳の写真があった。その日記調の表紙を見ると苗木の持っている日記帳と全く同じだった。




    「この事件を犯した犯人は殺害の状況は覚えてないと言うことらしいの……」



    「覚えてないだって?こんなに猟奇的な殺人をしていたのに?」




     苗木は思わず霧切の顔を見た。その美しい顔はどこか青ざめているようにも感じた。霧切は話を続けた。




    「この殺人には不思議なことがたくさんあるのよ……」



    「不思議なこと?」




     苗木は聞き返すと、霧切はファイルのページをめくり、写真を指さしながら苗木に説明を始めた。




    「一番の謎は凶器が発見されてないことよ。首を絞めた形跡もない。それどころか……」



    「現場にあった死体の首はみんな切り裂かれていたよね?」



    「えぇ……そしてさっき、苗木君が写真で見たように教室のそれぞれの机の上に並んでいたわ……」




     霧切はそう告げると苗木はもう一度写真を見た。後ろに積み上げられている胴体には首はない……そして、その首は各机に並べられている……こんなことをして覚えてないというのはどうだろう……。



     快楽殺人の類かと苗木が考えていると霧切はさらに話を続けた。




    「そして、この日記帳が事件にかかわっている理由は、事件が起きる前日に犯人の学生は日記をこのノートに書いたらしいの……」



    「日記を……?」



    「そう……日記……犯人は日記を書いてシャワーを浴びてからの記憶が一切残っていないらしいの」
  8. 8 : : 2017/11/11(土) 13:39:22
    「な……なんだって!?」




     苗木は青ざめていた。日記を書いたことで、こうなるのか……つまり……




    「日記による……洗脳……?」



    「その線が濃いわね……」



     驚く苗木をよそに冷静に話を進める霧切。その霧切を見て改めて探偵のすごさを感じていた。そして、苗木は質問をした。




    「その日記は?」



    「もちろん見つかってないわ……というより、いま見つかったのだけど、実際に日記を書いたと思われるページは破られていたわ……」



    「そっか……ありがとう!霧切さん……ボクはもう休むよ……」




     苗木はそう言うと日記を手に立ち上がり霧切の個室の扉に手をかけた。




    「まって!日記は絶対に……」



    「わかってるよ……おやすみ……」




     その言葉を残し、苗木は霧切の部屋を後にした。その後姿を見ていた霧切の表情は不安に満ちていた。




    「苗木君は好奇心旺盛なところがあるから心配ね……」




     霧切はそうつぶやくとベッドに横になった。



     霧切の部屋を後にした苗木は少し考え事をしていた。日記による洗脳による殺人なんかバカバカしいが彼女の話も筋は通っていた。




    「(日記を書いた人による連続殺人……まさかな……)」




     そう考えながら苗木は自室の扉を開いた。
  9. 9 : : 2017/11/11(土) 13:41:30
     部屋に戻った苗木はベッドに寝転がり、掃除の時に拾ったノートをまじまじと見ていた。



     ふつうの黒い表紙のノート……表紙に関して不気味なのは『Diary』の文字が右寄りに書かれていることだった。

     表紙を見終わった苗木はノートの1ページをめくり、眺めてみると日にちを書く部分と内容を書く部分があった。どうやらふつうの日記帳のようだ。




    「(この日記帳で殺人が本当に起きるのか?)」




     苗木は半信半疑になりながら日記帳を机に置いた。



     ただ少し気になるのは表紙が黒いことと、中の紙も少し黒っぽいことだ。



     すると苗木はシャープペンシルを手にして椅子に座った。




    「少しぐらい書いても問題ないだろ……」




     苗木はそう呟くと日記を簡単に書いてみた。




    【11月8日 僕は今日、舞園さんと一緒に掃除をした。ゴミ捨て場にはきれいな紅葉がゆっくりと落ちていた。舞園さんと紅葉を見に行く約束をした。今からが楽しみだ。掃除のゴミ捨ての時にこのノートが落ちていた。どうやら日記帳のようなので、今日からこのノートに一筆書いていこうと思う。】



    「文章硬いな……」




     苗木は小さくほほえみながら、そのノートを閉じた。そして、苗木は服を脱ぎ、シャワールームへとむかう。



     しかし、シャワールームに入った苗木には、その後に聞こえた悪魔のささやきが聞こえていなかった。
















    『その契約……承った……』
  10. 10 : : 2017/11/11(土) 13:47:03
    ……シャーーーー…………



     シャワーの音がシャワールームに鳴り響く。その音を聞きながら、苗木は鼻歌交じりに髪の毛をワシャワシャと洗った。シャンプーの良い香りが鼻の奥を癒す。そして汚れを捕まえてくれたシャンプーを洗い流す。



     そして、タオルを手に取り、ボディーソープをしみこませ体を洗い始める。ボディーソープの泡をまとったタオルが苗木の体を滑る。苗木の胸の部分や下半身の部分もタオルは滑り、泡がそこにたまった汚れを捕まえた。



     そして苗木はシャワーでそれらを洗い流した。泡が排水口に流されていく。



     苗木はフゥッとひと息ついてからだを拭いていた。すると、体をふいている最中、苗木は不思議な感覚に襲われた。




    ズキン!!




    「っつう……!!なん……だ?」




     急に苗木の頭を針で突き刺すような痛みが襲った。苗木は頭を抱えながら眉をひそめた。




    ズキーーン!!




     今度の痛みは長かった。その後も5秒間隔ぐらいで痛みが続いた。そのあまりの痛みに苗木は大声で叫んだ。




    「ウァァァァァァァァァァァァ!!」




    ドキ――ン!!



     すると今度は胸が締め付けられるような痛みが彼を襲った。痛みのあまりおもわず左胸を押さえた。

     左胸を手で押さえていた苗木だが、そこで明らかに自分の鼓動が速くなっていることに気づいた。そして、急にゆっくりなったり、速くなったり、速度に緩急が付き始めた。




    「ウァァ!!……ハァ…………ハァ……ック!?」




     苗木はあまりの胸の痛みと頭の痛みに叫んだりのたうち回ったりしていたが、ここは苗木の自室である。この学生寮の個室は全て防音だ。外にいる人たちに聞こえるはずもない……




    「(とりあえず、シャワールームから出ないと……)」




     苗木は地面を這いつくばりながらシャワールームの外へと出た。そして、服を着るのも忘れ、全裸のまま自室のトビラに手をかけた。消えゆく意識の中、苗木は扉の鍵を開けた。




    「(開いてくれ……)」




    ズキーーン!!




     しかし、苗木の思いむなしく、また頭を突き刺すような頭痛が襲った。




    「グ……グハァァァァァァ!?ハァハァ……カハァ…………ァ……カァ…………」




     扉の前で叫ぶが誰も来ない。そして、そのまま苗木は部屋の中でのたうち回った。




    「(なんなんだ!この痛みは!?痛い!痛すぎる!!)」




     そして、あまりの痛みに苗木の意識がそこで途絶えた。



     すると苗木の机から日記が落ち表紙から新たな文字が浮かび上がった。



     そこに書いてあったのは……












































    Welcome to Hopeless Diary swapping!!(絶望交換日記へようこそ!)
  11. 11 : : 2017/11/11(土) 13:49:16
     翌朝、舞園が教室に入ると、霧切と桑田が話をしていた。



     少し周りを見渡すと十神とセレスがチェスをしていたり、石丸が不二咲に勉強を教えていたり、朝日奈と大神がガールズトークをしていて、至って普通の教室だった。荷物を置いた舞園は2人のもとに駆け寄った。




    「おはようございます!今日はカラオケ楽しみですね!」



    「そうね……」




     霧切が元気なさそうに答えた。舞園はすかさず桑田に何かあったのか聴いた。




    「実はよ……まだ、苗木が来てねぇんだよ……」



    「え!?」




     舞園は辺りを見渡したら苗木の姿はなかった。いつも舞園よりも先に苗木が来ていた。これは入学式以降ずっとそうだった。



     そして、次に教室にやってきたのは大和田だった。大和田も異変に気づき、こちらに歩いてきた。




    「おう……苗木はまだか?」



    「まだみたいね……」




     そういう霧切の表情は暗かった。すると大和田が脱ごうとしていた特攻服を着直して、




    「ちょっくらアイツの部屋行くか……桑田……ついてこい……」



    「ったく、しゃぁねぇな……」




     そう言うと2人は教室の外に歩いていった。




    「(もしかして……あの日記……)」




     舞園がそう考えていると霧切が舞園の近くによってきた。




    「昨日、舞園さんと苗木くんが日直だったわね?」



    「はい!そうでしたよ!」



    「何かおかしなことなかった?」



    「いや……日記を拾っただけですが……」



    「そう……」




     そう答えると霧切は考え込んでしまった。舞園は何か事件に関係していることなのかと不思議そうにに霧切の顔を見ていた。



     すると、廊下から物凄いスピードで桑田が走ってきて扉を勢いよく開けた。
      



    「大変だ!!」




     その声に教室にいた全員が振り返る。
     



    「騒々しいですわよ……」



    「まったくだ。」




     チェスの勝負をしていた十神とセレスはその対局をしながら、桑田に注意した。




    「わ……わり……って違うんだって!とにかく大変なんだよ!!」



    「どうしたん?言ってみ?」




     そう聞いてきたのは葉隠だ。そして、桑田はことの重大さを大声で叫んだ。




    「苗木が……苗木が部屋で倒れてるんだよ!!」
  12. 12 : : 2017/11/11(土) 13:50:21
     クイーンを進軍させようとしていたセレスの手が止まった。そして、元々いたクイーンの拠点に戻して桑田の方を見た。十神もそれにあわせて扉の方を見る。



     静寂の時が流れる。その時を刻むように時計の針が、



    チッ……チッ……



     と行進を続ける。その音が少し続いた後、霧切が長い銀髪をかき上げた。そしてゆっくりと歩を進める。




    「とりあえず行きましょう……確認しないといけないわ……」




     そう言うと霧切は教室を出た。それに続いて舞園達も部屋を出た。



     霧切達が小走りで苗木の部屋に駆けつけた。職員室に報告に行った石丸を除いて全員が苗木の部屋の前にいた。




    「苗木くん!!」




     すぐに駆け寄ったのは舞園だった。そこには学ランを脱いでいた大和田がいた。ふと苗木を見るとその上に学ランが被されていた。




    「おそらく、シャワーを浴びた後に倒れたんだろ……全身裸だったからな……あまりの痛さに助けを呼ぼうとしたが呼べなかったんだろうな……」




     大和田はそう言うと苗木を担いだ。苗木の体が見えないように担ぐとそのまま歩いて行った。
  13. 13 : : 2017/11/11(土) 13:52:49
     苗木を保健室まで運んだ大和田は不器用なりに苗木に患者服を着せて寝かせることにした。



     その後、みんなは教室へと戻っていった。付き添いが必要だろうと言うことで、苗木の元には舞園と霧切がつくことになった。
     


     みんなが教室に戻るのを見送ると、霧切は舞園に日記で起きた殺人事件の話をしていた。その話を聴いた舞園はにわかに信じがたい表情をしていた。




    「そんなことがありえるのですか?」



    「信じられないのはわからないこともないけど、実際におきた大きな殺人事件なのよ……」




     霧切はそう言うといつものように髪をかき上げた。舞園はやはりにわかには信じにくいようで、小首をかしげた。



     すると、苗木の口元がかすかに揺れ、




    「んん……」



     という絞り出したような声を上げた。舞園と霧切は跳びはね苗木の元に寄った。すると、苗木が頭を抱えながら体を起こした。




    「あれ……ここは……って、なんだこの服!?」




     驚いた表情の苗木に舞園が苗木の身に起こったことを伝える。すると、心当たりがあるようで……




    「やはりあの頭痛は夢じゃなかったのか……」




     とつぶやいた。するとたまたま保健室に来ていた桑田がみんなに報告をすると言うことで教室にかけていった。




    「僕も教室に戻ろうかな……」



    「駄目ですよ!寝ててください!」



    「ありがとう……でも、僕自身は問題ないんだ!」




     そう言うと苗木はベッドから降りて、自分の部屋に歩いて行った。その足取りは軽快だ。




    「(本当にさっきまで気絶していた人の足取りでしょうか……)」




     その様子を見ていた霧切が舞園に耳打ちした。




    「今日のカラオケ……少し遅くなってもいいかしら?」



    「構いませんよ……事情聴取ってやつですか?」




     霧切の問に対して舞園も耳打ちで返した。すると霧切は頷いて続けた。




    「今回のことは苗木くんの行動に鍵があるかも知れないの……おそらく彼は日記を書いていると思う……」




     舞園は頷いて、桑田には自分から説明することを告げて教室に向かおうとした。その時……




    「ウグァァァァァァァァァァ!!」




     寄宿舎の方から叫び声が聞こえた。



     突然の悲鳴に2人は跳び上がった。そしてすぐさま2人は苗木の部屋にかけだした。
  14. 14 : : 2017/11/11(土) 13:56:08
     部屋に入ると苗木は上半身裸の状態でうずくまっていた。体を小刻みに揺らし、床をゴロゴロと転げ回った。その様子はまさに地獄絵図だった。舞園はすかさず悲鳴を上げた。



     その悲鳴を聞いたのか、足音が近づいてきた。桑田だ。




    「舞園ちゃん!どうした!?」




     その様子を見た桑田も足を止めて、立ち尽くした。今まで見たことのない光景が、目の前に広がっていたからだ。



     しかし、そのような状況の中でも霧切は冷静に周りを見た。そして、苗木のもとにかけより、抱き寄せた。




    「大丈夫!大丈夫だから!落ち着いて……」



    「ハァ……ハァ…………ウグッ!?……ガァ……」




     落ち着いてと言われて落ち着けるわけもない。苗木は頭をよりいっそう抱えて霧切の胸に顔を埋めた。そして、霧切が苗木の部屋の机を見ると、日記から黒い光が放たれていることに気づいた。それを見た霧切は近くに居た桑田に大声で指示を出した。




    「桑田くん!苗木くんの机の下に落ちているノートを破り捨てて!!」




     桑田はすぐさま頷き、全速力で机にノートに駆け寄った。そして、ノートに手をかけようとしたその時、その場にいた4人とは別の声が霧切、舞園、桑田の頭の中に響いた。




    『この日記に……触るな!!』




     その声とともに日記から衝撃波のようなものが出てきて、桑田を吹っ飛ばした。とばされた桑田はドアの外まででて向かいの壁に思いっきり背中をぶつけた。




    「桑田くん!!」




     霧切と舞園が声をかけたときには桑田は意識はあるものの、軽い脳震盪を起こしたのか視界が少しぼやけているようだ。




    「(何!?いまのは……私たち以外に……だれかいるの?)」




     そう考えていた霧切だが、更に衝撃の光景が続いた。なんと頭の痛みのあまり悲鳴を上げていた苗木の声がぴたりと止んだのだ。




    「苗木……くん?」




     霧切が声をかけると、苗木はゆらぁっとたちあがった。そして、目をゆっくりと開いた。その目はまるで、闇に染まっているような目で、見ていると吸い込まれそうだった。



     そして……霧切に話しかける……




    「霧切さん……交換日記しようよ……」



    「は?」




     あまりに急すぎる展開に霧切は聞き返した。すると苗木はため息交じりに霧切の顔を見て、




    「だから……交換日記だよ……ほら、このノートでやるんだ」




     と苗木は黒い光をはなっているノートを拾い上げ霧切に見せた。



     その表紙には『Welcome to Hopeless Diary swapping!!(絶望交換日記へようこそ!!)』と書かれていた。
  15. 15 : : 2017/11/11(土) 13:59:19
     霧切はその光景に驚きを隠せなかった。さっきまで自分が死ぬのではないかというぐらいの激痛に襲われていた人だとは思えない言動だったからだ。ただ、一つだけわかることはこの状況はかなりまずい。



     そう感じた霧切は頭をフル回転させた。今の苗木の様子をじっと伺った。



     まず、苗木の姿を見ると、周りにオーラのようなものが揺らめいていた。色はほんのり黒く、炎のようにゆらゆらと揺らめいていた。



     次に霧切は苗木の顔を見た。その表情は恍惚に満ちており、さらに目の方を見ると先ほどの闇は更に深くなっていた。




    「(苗木くんに何があったというの……)」




     霧切は背中に寒気を感じると、そのまま後ろを振り返り、




    「走って!!」




     と叫んだ。それに反応した舞園と桑田はその場を離れて全力で走った。霧切もその後を追う。しかし、苗木はその3人を追うこともなく、その場で叫び声を上げた。




    「アハハハハハハハ!ねぇ!ねぇ!どこいくの?霧切さぁん!!僕と交換日記しようよ~!!」




     霧切たちは苗木の声を聞きながら死にものぐるいで走った。



     特に舞園は霧切から事前に聞いていたためか、アイドルの顔を捨てて必死に走った。



     桑田も先ほど脳震盪を起こしているからかフラフラになりながらも走っていた。



     霧切達は全力で走って教室に駆け込んだ。その様子を見た全員が驚いた表情で彼女たちをみて駆け寄った。
  16. 16 : : 2017/11/11(土) 14:01:10
     霧切たちの周りに駆け寄った中にはチェスの対局を打ち切っていた十神がいた。




    「おい!苗木はどうした!」




     十神が霧切の前に立ち問い詰めた。しかし、霧切達は誰も口を開かない。



     それもそうだ。今起きていることをそのまま伝えても信じてもらえるはずもない。



     苗木がいれば信じてくれるだろうが、その苗木もその場にはいなかった。




    「もしかして、苗木くんに何かあったのですか?」




     セレスが山田の入れたロイヤルミルクティを飲みながら霧切達にきいたが、彼女たちは話せなかった。



     今この場で何も言えない事実……それが霧切達を束縛していた。



     しかし、その束縛をやさしくほどこうとする人物がいた。大神さくらだ。




    「我等はそれ以上を聞かぬが、我等にも知る権利はある。お主らが話したいタイミングで話せ。それまで待とう」




     その言葉を聞いた霧切達は、それぞれ束縛された鎖が解き放たれたように悲しんだ。舞園は近くに居た朝日奈の胸で涙を流し、桑田は近くの机に拳を撃ち付け、霧切は唇を噛んだ。



     教室にいるメンバーはその光景を見て何かを察したのか全員椅子を霧切達の近くにもってきて椅子に腰をかけた。



     そして、心を落ちつかせた霧切達3人はゆっくりと今の現状を話した。




    ……苗木のこと



    ……彼の持っている日記のこと



    ……前向きな彼が狂気に落ちたということ




    ……すべて
  17. 17 : : 2017/11/11(土) 14:03:13
    「ま……マジか……」




     あの暴走族の大和田ですら絶句するぐらいだから相当なのであろう。教室が静まりかえる。
     



    「……今のところは苗木くんが落ちつくまでは何もできないわ。」




     霧切が冷静に言ったが、十神はあることを質問した。




    「その苗木が持っている日記を燃やすことはできないのか?」




     眼鏡をあげながら霧切にきいた。その質問に霧切は首を横に振った。桑田が十神の前に立って答えた。




    「それは無理だ。俺が日記を取り上げようとしたときに衝撃波みたいなのがでて弾かれた。」



    「それに桑田くんが日記を拾おうとしたときに、私達以外の誰かの声が聞こえました」



    「ありえん。そのような非人道的なこと」



    「少なくともそのような非人道的な行動を見ている人たちがこの部屋には三人いるわ」




     霧切が最後にそういうと舞園と桑田がうなずいた。その様子を見た十神は考え込む姿勢を見せた。


     しかし答えは出なかったのか、髪の毛をかきむしり、霧切たちにこう答えた。




    「とりあえず俺が何かやってみよう。早い内に手をうつ方がいいだろう。」




     そうすると十神は自室に戻った。それに続いて皆も自室に戻ることにした。



     しかし……翌日……教室には十神の姿はなかった。
  18. 18 : : 2017/11/11(土) 14:04:16
    「おい!十神っちは!?」




     教室にかけこんできた葉隠が叫んだが教室にはその叫び声が響くだけで、静寂が続いた。



     その静寂を破ったのは霧切だった。




    「十神くんは……消息不明よ……」



    「は!?なんでだべ!?」




     そう問いかける葉隠以外のメンバーは『あいつ』が原因だと予想していた。そこで葉隠はある事実に気づく……




    「ん?苗木っちもいないんか?」




     そう……十神だけではなくて苗木も欠席していた。といっても、苗木の場合は自室に籠もっているだけだが……




    「苗木は自室だ。我ですら近づけない。なにやら結界のようなものを感じる。」




     大神が答えた。どうやら八方ふさがりのようだ。



     クラス中が震えていた。次は誰になるのか……



     恐怖で舞園と朝日奈は肩を抱き合い、桑田は近くの壁に拳を当てていた。



     他のメンバーもそれ相応の格好で立ち尽くしているところにあの声が聞こえた。



    「やぁ……みんな」
  19. 19 : : 2017/11/11(土) 14:05:35
     教室の中に戦慄が走った。そこには苗木の姿があった。昨日あれだけのたうち回って苦しんでいた苗木が……



     ただ、教室にいるメンバーはいつもの苗木と違うまがまがしさを感じていた




    「苗木……だよね?」



    「な……苗木くん……今まで……何をしていたのかね……?」




     朝日奈が驚いていると石丸が一歩ずつ苗木に歩み寄った。



     石丸は何とか苗木と面と向かって離せる距離まで歩み寄った。超高校級の風紀委員ですら震えが止まらない。




    「(止まれ!止まれ!!なぜ震えるのた!僕の体よ!!)」




     石丸がそう心に言い聞かせていると苗木が、



    ニタァ……



     と不気味な笑みを浮かべて石丸をのぞき込み……




    「ねぇ……石丸くん。交換日記をしようよ……」




     と問いかけた。石丸はすっかりと縮こまってしまったが、交換日記と聴きすぐさま対応した。




    「交換……日記…………か……そ……そうだな!やろう……やろうでは……ないか……」




     そう言うと、石丸は苗木に日記を渡して欲しいと言わんばかりに手をさしのべた。その様子をクラスのメンバーが黙ってみていた。



     すると、苗木はその手の上に日記を置いた。




    「日記……書いたら持ってきてね……」




     その言葉を残し、苗木は教室を後にした。
  20. 20 : : 2017/11/11(土) 14:06:37
     石丸は手に持った日記を眺めていた。まがまがしさに包まれた日記……




    「おい!大丈夫か!」




     すぐに大和田が駆け寄った。そして、石丸の手に持たれた日記を見せて見ろと言わんばかりに手から引き剥がそうとすると、日記から衝撃波が放たれた。



     大和田はすんでの所で避けたが、もんどり打って尻餅をついてしまった。




    「これだ!この衝撃波に吹っ飛ばされたんだ!!」




     桑田が叫ぶ。その様子を見て霧切があることに気づいた。




    「石丸くんは大丈夫なの?」



    「あぁ……問題ない……」




     霧切はそう言うと、もう一度日記に手を差し出した。すると今度は静電気のような



    バチッ!



     と言う音が教室内に響いた。と言うことは……




    「石丸くんと苗木くんの間に何かが結ばれたわね……」




     と霧切は告げた。
  21. 21 : : 2017/11/11(土) 14:08:35
    「何かって……なんだね?」




     石丸が恐る恐る聞いた。その様子を全員が見守る。



     その様子を確認すると霧切は大きく深呼吸をして石丸の目を見ながら話し始めた。




    「恐らく、石丸くんと苗木くんとのあいだで契約がむすばれたのよ。」



    「契約?」



    「そう……それがなんの契約かはわからないけれども、何かしら結ばれたはず。」



    「何か根拠でもあるのかね?」




     その石丸の言葉を聞いた霧切は大和田を指さして話を続けた。





    「さっきの大和田くんを見ると一目瞭然だわ。さらに、私達がこの部屋に来る前には桑田くんも同じ体験をしているはずよ!」




     すると霧切は桑田に流し目で視線を送った。すかさず桑田は無言で頷いた。




    「これで、わかったでしょう?大和田くんと桑田くんは日記が持てていないし、私も触ろうとしたけれども触れなかった。」



    「つまり……石丸が日記を持てているのは苗木と何かしらの契約を結んだためと言うことか……」



    「そう言わざるを得ないわ……」




     霧切の会話に大神が質問した。霧切は静かに頷いた。



     すると今度は霧切が歩み、石丸の前で止まった。




    「石丸くん……お願いがあるの……」



    「な……なんだね?」




     思わず石丸は唾を



    ゴクリ……



     と飲み込んだ。しっかりと霧切の目を見ようとするが、目線が浮ついているのがわかる。焦点が定まっていない。



     それに気づいた霧切は石丸の手を取った。



     石丸は驚いて霧切の顔を見た。




    「落ち着いて……ゆっくり深呼吸して……」




     霧切のその言葉通りに深呼吸をすると石丸の体から震えが止まった。そして彼はすぐ近くの椅子に腰掛けた。




    「すまない……話を続けてくれ。」




     石丸の落ちついた様子を見た霧切は話を始めた。




    「その日記に書かれている内容をよんでほしいの。1ページ残すことなくね……」



    「それぐらいならお安い御用だ。」




     そういうと石丸は日記を開いた。
  22. 22 : : 2017/11/11(土) 14:12:56
     石丸は1ページ目を開いた。見覚えのある字で書かれていたためか、声が震えそうになった。



     すると、後ろから大和田が石丸の肩に手を乗せた。それにより石丸の呼吸も落ちつく。



     石丸はゆっくりと読み始めた。




    【11月8日 僕は今日、舞園さんと一緒に掃除をした。ゴミ捨て場にはきれいな紅葉がゆっくりと落ちていた。舞園さんと紅葉を見に行く約束をした。今からが楽しみだ。掃除のゴミ捨ての時にこのノートが落ちていた。どうやら日記帳のようなので、今日からこのノートに一筆書いていこうと思う。】




    「あ、これは……このノートを見つけた日に書いていたんですね……」




     舞園がすぐに返した。そして霧切は発見された苗木の状況を踏まえて整理を始めた。




    「つまり、この日記を書いた日……一昨日には苗木くんに何かしらが起こったということね……」



    「何かしらってなんだべ?」




     それに口を挟んだのは葉隠だ。霧切は葉隠の顔をみたらため息をつき、




    「それがわかったら苦労しないわよ……」




     という言葉を残し日記に目を向けた。その日記は見た目ではふつうのノートだ。しかし、この日記に書き込みをしただけで苗木が変わってしまった……



    何かしらの怨念が組み込まれたノート……




    「……まさかね」




     そうつぶやくと、石丸に続きを読むように告げる。




    【11月9日 今日は十神くんが僕の部屋に来た。どうやら僕にその日記を捨ててほしいらしい。こんな素晴らしいアイテムを捨てるわけないじゃん。交換日記をしようと話をしたが断られた。なんで断るのかな?交換日記を断った十神くんなんて……】




     そこで石丸が言葉に詰まった。小さくわなわなと震えていた。




    「おい!どうしたんだよ!委員長!!」



    「続きはまだでして?」




     桑田とセレスが待ちくたびれたように言葉を発した。



     すると、我に還った石丸はゆっくりと続きを読み始めた。




    【……交換日記を断った十神くんなんて……】












      
















    【……死ねばいいんだ。】























    【そうだ!死ねばいいんだ!交換日記を断った人全員殺しちゃえばいいんだ!!】
























    【十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ね十神死ねみんな死ねみんな死ねみんな死ねみんな死ねみんな死ねみんな死ねみんな死ねみんな死ねみんな死ねみんな死ねみんな死ねみんな死ねみんな死みんな死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね……】



















    【断ったやつみんな死んじゃえ!!】
  23. 23 : : 2017/11/11(土) 14:13:45
     みんなが全員硬直していた……しかしそれは石丸だけではない。そこにいた全員があまりの恐ろしさに硬直していたのだ。



     さっきまではやし立てていた桑田ですら腰が砕けたようにへたり込んでいた。



     教室に静寂が走る。



     そしてその静寂の中に現れた絶望の足音……




    「あれ?何してるのかな?」
  24. 24 : : 2017/11/11(土) 14:16:00
     その声に全員は扉のほうを振り向いた。そこにいたのは苗木だった……



     みんなすぐさま後ずさる。すると苗木はほほえみながら石丸に近づいた。




    「石丸くん、遅いから取りに来ちゃったよ……」



    「す……すまない……僕はこう言うのは苦手でな……時間がかかってしまうのだよ……」



    「アハ……まぁ仕方ないよね……生死を分けた交換日記なんだからさ……」




     その言葉に霧切が反応する……




    「それってどういうこと?たかが交換日記で人を殺せるわけがないじゃな……」




     そう言いかけたときにふと唇に柔らかいものがあたった。苗木が指を霧切の唇に当てていたのだ。




    「ちょっと酷いよ……霧切さん……僕の交換日記をバカにしないでよ……あ、そうだ……僕と交換日記をしない?」



    「いやよ!するわけ……」




     するとその時、教室内に信じられない音が響いた。



    ザクッ……



     その音とともに霧切の首が飛んだ。しかも、苗木は武器を持っていなかった。手刀で霧切の首を吹っ飛ばしたのだ。



    ゴトン……



     霧切の美しい顔が教室の床に転げ落ちた。



     いや、方法はどうでも良かった。希望が峰学園78期生が目の前で1人の少女が事切れる瞬間を目にしたのだ。




    「イヤァァァァァァァァァァァァァァァ!!」




     教室はパニックと化した。大神、セレス・戦刃以外の女子全員は泣き叫び、体を抱き寄せ泣いた。




    「てめぇ……何したかわかってんのか!!」




     大和田が声を荒げて、苗木の胸ぐらを掴みに行った。すると苗木は表情を変えることもなく話し始めた。




    「ねぇ……それよりもさぁ……まだ気づかないの?忘れられやすいんだね……ギャルなのに……」




     大和田はハッとして周りを見渡すとそこに江ノ島の姿がなかった。




    「おい!江ノ島どこいった!?」



    「しらねぇよ!!」



    「そう言えばどこだ?」



    「盾子ちゃん!!」




     大和田達が探していると苗木が大和田の手を払いのけて廊下へと出て行った。




    「おい!待てゴルァ!!うぉっと!」


     大和田が追いかけてすぐ、彼は後ろに倒れた。何があったのか大和田の方を見てみると苗木が江ノ島の首を持って……いや、正確に言うと髪の毛を掴んで江ノ島の首を高々と掲げていた。




    「いやぁ……彼女も断ってきたからさぁ……殺っちゃった♡彼女はスタイル綺麗だからさぁ……内臓も取り出してホルマリン漬けにしてるんだ……」




     そういうと苗木は自分の両肩を抱き寄せ、小刻みに震えていた。その顔は今まで見た苗木とはあきらかに違っていおり、まるで
    殺人を楽しんでいるようだった。すると怒りに身を震わせていた舞園が彼にむかって怒鳴り始めた。




    「あなたは……誰なんですか!!あなたは苗木くんじゃない!苗木くんはこんなことをするはずもない!!誰だ!!あなたは誰なのよ!!」




     今すぐ飛び出しそうな舞園をセレスと朝日奈が止めていた。その様子を見た苗木は不思議そうな表情を浮かべ、




    「僕は苗木だよ?舞園さんこそどうしたのさ?ほら……あのゴミ捨て場で紅葉を見に行く約束をしたじゃないか……」




     と返すのであった。この言葉に舞園は膝をついてしまった。教室内に苗木の高らかな笑い声が鳴り響いた。



     しかし、舞園以外にも黙っていない人物がいたことを苗木は知らなかった。
  25. 25 : : 2017/11/11(土) 14:17:56
    「おまえは苗木くんじゃない……」




     その言葉の方を苗木は振り返るとそこには1人の小さな鬼がナイフを振りかざしていた。




    「むくろちゃん!!」




     朝日奈の声と同時ぐらいに苗木にナイフがふり降ろされる。



     しかし、そのナイフは苗木の手に当たると



    カキン



     という音とともに折れてしまった。




    「クッ……(おかしい……手に当たったのにはじかれた……)」




     ナイフがだめだと判断した戦刃はライフルをだした。弾を装填し、銃口を苗木に向けた……はずだった。




    「(いない……)」




     なんと苗木が目の前から消えていたのだ。辺りを見渡した戦刃だったが見つからない。すると、戦刃の耳元で悪魔のささやきが聞こえた。




    「ダメじゃん……教室でライフルに弾を込めちゃぁ……」




     戦刃はぞっとした。今まで感じたことのない感情に戦刃は身震いした。




    「(いつ後ろをとられた……それよりも……なんだあの速さは……弾を込めるのに使ったの0.1秒……)」




     そう考えていた矢先、腹部にあり得ないほどの衝撃が走るのを感じた。それはまるで象に体当たりされたような衝撃だった。




    「……カハッ…………」




     目を見開いた彼女はそのまま後ろに吹っ飛ばされ教室の壁に激突した。その衝撃で彼女は意識をなくしていた。それを確認すると苗木はゆっくりと戦刃に近づき彼女の首を刈り取った。



     ここにいるみんなは冷や汗をかいていた。あまりに突然の出来事だったからだ。それもそうだ……あの苗木が、まったく傷を負ったことない軍人に蹴りをクリティカルヒットさせ絶命させたのだから。



     そして、辺りは静寂に包まれた。次は自分かという恐怖を残しながら……
  26. 26 : : 2017/11/11(土) 14:19:12
     苗木はその様子を見ると大声で笑い出した。自分が絶望の象徴だと言わんばかりに……



     その様子を見ていた舞園が石丸に耳打ちした。




    「石丸くん……とりあえず何かを書いてそれを苗木くんに渡してください。」



    「し……しかし……」




     石丸が反論しようとした口を紡いで舞園は続けた。




    「ここで石丸くんが止まってしまえばみんなが危ないんです……みんなを守るためにお願いします……」



    「わ……わかった……」




     苗木が笑ってる間に石丸はペンを進めた。




    【苗木くん……人を殺すのは良くない……思い直してくれ……】




     そう書いた石丸は苗木の元に歩み寄った。



     その足音を聞いた苗木は笑うのをやめて石丸の顔に目をやった。その視線に圧倒されそうになったが、石丸はゆっくりと歩を進めた。



     そして苗木の前に立ち止まり日記を差し出した。苗木はその日記を受け取るとみんなに背を向けた。




    「石丸くんから日記を受け取ったし、今日は帰るよ!しっかり亡くなった3人を弔ってあげるんだね!あ……あの御曹司を含めて4人か……」




     そう言うと笑い声を上げながら帰って行った。



     やっぱり十神も……



     そんな空気がこの教室に流れ込んだ。誰も顔を合わさない。ポーカーフェイスの持ち主であるセレスでさえも冷や汗が止まらなかった。特に石丸はもう目の焦点が合っていない。例えようのない恐怖が自分に押し寄せていたのだ。



     恐怖のあまり一人……また一人と無言で教室を後にする。



     そしてその教室は空になり……だれもその教室の床を今後踏むものはいなかった。
  27. 27 : : 2017/11/11(土) 14:21:20
     石丸は悩んでいた。苗木との交換日記をしていたが、その内容からは何も確信を得られないからだ。




    【苗木くん……人を殺すのは良くない……思い直してくれ……】



    【僕と交換日記してくれる人は殺さないよ!だけど、それ以外の人は……ね?】



    【何が理由であろうと殺人はいけない!』



    【ボクはみんなにこの日記のすばらしさを知って欲しいんだよ!!】



    【しかし……】




     石丸はその後が告げなかった……



     思い悩み自室の机にシャーペンを



    コン……コン……



     と打ち付ける。その音とともにシャープペンシルの芯が自分の元にとんでくる。



     それを見つめていた石丸は苗木に対してある疑念を抱いていた。




    「(苗木くんのあの目……空虚なものだった……)」




     あの目の奥底に秘めた何か……苗木の本心も日記に取り込まれてしまったのか……




    ピンポーン……





     そう考えていると、石丸の部屋のインターフォンが鳴った。



     石丸は誰かと思い扉に手をかけた。そしてゆっくりと開くとそこには苗木が立っていた。




    「やぁ!石丸くん!日記の進捗をね……」




     苗木は笑みを浮かべながら石丸に質問した。その表情は何かを欲している顔のようだった。



     その欲しているものとは恐らく日記であろう。



     石丸は少し震えながら苗木を見た。そして一言一言振り絞りながら話を始めた。




    「いま……書き始めたところだ……話題を変えようかとおも……」



    「石丸くんってさぁ……僕と日記する気ないでしょ?」




     石丸がそう言いきる前に苗木が言葉を遮った。



     口をあんぐりと開けた石丸が苗木の表情を見た。苗木はさっきとは打って変わってその表情は殺気に満ちたものへと変化をしていた。



     苗木はその後も石丸の顔を見続けた。そして話を続けた。




    「最初の時からおかしいと思ってたんだよね……だからさぁ……もう日記の内容を考えなくてもいいや……」




     すると苗木は手を胸の前に持ってくると石丸の元へと歩き始めた。




    「やはり最期はキミが兄弟と慕ったアイツと同じように殺そうか……」



    「ま……まさか……」




     石丸はその言葉を聞き怒りがこみあげていた。その怒りは徐々に殺気へと変わっていた。苗木はそのことを知らずにジリジリと距離を詰める。




    「まさか……貴様……兄弟を!!」




     そう言うと石丸は近くにあった椅子を苗木に投げつけた。しかし苗木はその腕を振り抜くと、石丸もろともその椅子を切り裂いた。



     石丸の体は真っ二つになり、その場に転がった。




    「まったく……本当にあいつと同じ殺し方になってしまったよ……」




     苗木は大きくため息をつくと石丸の首を切り取り、その部屋を後にした。
  28. 28 : : 2017/11/11(土) 14:22:40
     数日経ったころ、舞園は食堂にいた。朝ごはんを食べながら窓の外を眺めていた。



     舞園は不思議に思うことが2つあった。1つ目は苗木にこの数日間一度も会っていないこと。



     2つ目は食堂に来る人が減っていること……



     大和田が来なくなったことを皮切りに人数は減っていき、あの時間に厳しい石丸ですら朝食会に来なくなってしまった。



     その後もドンドン減り始め、今では舞園1人だ。



     1人の朝食は慣れていたが、それでも寂しい……



     目玉焼きもいつもより焦げてしまった。



     すると舞園は急に胸が痛むのが感じた。心臓の鼓動が早くなる。




    「(なんでしょうか……この胸騒ぎは……)」




     舞園は胸が締め付けられる感覚に合っていた……まさかそんなことは……



     霧切と江ノ島以外に誰か殺されてしまったのではないか……



     そう考えているとあの声が聞こえた。




    「おはよう!舞園さん!」




     その声を聞いた舞園はいそいで立ち上がった。そして、苗木を確認するとそのまま席に座り目玉焼きを食べ始めた。




    「何のようですか……」




     舞園は苗木に言葉を返したが目は合わせない。その様子を見た苗木は厨房からコッペパンとウインナー、チリソースをもってきてホットドッグを作っていた。




    「用って、僕だって朝ご飯を食べたくてね……」




     苗木は自分の作ったホットドッグに貪りつく。その様子はもうあの頃の苗木誠ではなかった。




    「みんなを……石丸くん達をどうしたのですか?」




     舞園は静かに聞いた。すると苗木は口についたチリソースを指でなぞりその指をくわえた。



     そしてそのまま上目遣いで舞園の顔を見る。舞園は思わずドキンとしてしまった。



     苗木はくわえていた指を離し、お手ふきで指についた唾液を拭き取ると舞園に答えた。




    「あぁ……彼らのことが知りたいんだね……それなら今日僕の部屋にきなよ……詳しく教えてあげるからさ……」




     苗木はそう言うと舞園のあごをクイッと持ち上げて自分の顔を見せた。その顔は狂気に満ちており、舞園が恐怖を覚えるほどであった。



     舞園は苗木の手を振り払うと食事を進めた。その様子を見ていた苗木はホットドッグを持ちながら自室に戻るのであった。
  29. 29 : : 2017/11/11(土) 14:23:42
     舞園は食後自室でベッドに寝転がっていた。




    「苗木くん……」




     もう、彼女の知っている苗木誠はここにはいない。鶴にやさしく手を伸ばしていたあのカッコイイ苗木はいない。



     そう思うと悲しくなった。そして、彼を救うためには彼と向き合うしかないと思った。




    「交換日記……してみますか……」




     舞園はそうつぶやくとおもむろに立ち上がり苗木の部屋へとむかった。



     足取りは決して軽いわけではない。しかし、彼女は真実を知るために苗木の部屋へと歩を進めた。




    ピンポーン……




     舞園の震える手が苗木の部屋のチャイムを鳴らした。舞園は自分の表情がこわばってることに気づいた。



     頬がヒクヒクと小刻みに揺れている。足がガクガクと震えている。



    今にも倒れてしまいそうになりながらも舞薗は仲間たちに何が起こったのかを知りたかった。



     体中の震えを抑えるために彼女は大きく深呼吸した。



    スウウウゥゥゥ……ハアアァァァァ……



     落ち着いた。



     震えも止まった。




    ガチャリ……




     扉が開かれた。その扉の先には苗木がいた。笑顔で迎えてくれた苗木の上半身には服がまとわれていなかった。苗木の胸板のきれいさが舞園が苗木に対して抱いていた嫌悪感をうばった。




    「やぁ!ごめんね!シャワー浴びててさ……」



    「いえ……きにしてませんので……それよりも、何か臭いませんか?」




     舞園は感じたことのある『臭い』を鼻の奥に感じた。



     苗木の口元が緩むのを感じながら舞園はふとあるときの記憶が頭によぎった。
  30. 30 : : 2017/11/11(土) 14:25:30
     舞園の記憶の中には3人の人物がいた。1人目は苗木である。2人目はおそらくその服装から石丸だろう。2人目は銀髪の女の子であった。



     いや……彼女を舞園は知っていた……




    「霧……切…………さん?」




     そうつぶやいた舞園は首をかしげていた。それもそうだ。霧切は……苗木に……



     すると舞園は聞き覚えのあるやりとりを耳にした。






    『石丸くん、遅いから取りに来ちゃったよ……』



    『す……すまない……僕はこう言うのは苦手でな……時間がかかってしまうのだよ……』



    『アハ……まぁ仕方ないよね……生死を分けた交換日記なんだからさ……』



    『それってどういうこと?たかが交換日記で人を殺せるわけがないじゃな……』



    『ちょっと酷いよ……霧切さん……僕の交換日記をバカにしないでよ……あ、そうだ……僕と交換日記をしない?』



    『いやよ!するわけ……』





    ザクッ……








    「イヤアアアァァァァァァ!!」




     記憶がよみがえるとはこのことだ。舞園は気づいたときには地面にうずくまり胸を押さえていた。その様子を見た苗木は舞園の肩を持ち介抱する。



     霧切を……自分の親友を殺した人物からの介抱……常識的に考えればそれは身の毛もよだつことであろう。



    しかし、舞園の心の中には不思議な感覚が流れていた。




    「(あれ?イヤじゃない……)」




     そう……からだが苗木に対して拒否反応をしめしていなかったのだ。



     その後も苗木の囁き、吐息、感触全てが心地よくなっていった。



     あれだけみんなのことを考えていた舞園の頭の中にはいまはもう苗木しかいなかった。
  31. 31 : : 2017/11/11(土) 14:27:18
     泣きに泣いた舞園は涙を拭いて真っ直ぐ前を見た後、苗木に質問した。




    「それで苗木くん……真実を教えてくれるんでしたよね?」




     元々彼女が苗木の部屋に来たのはそれが目的だったのだから……



     すると苗木は笑顔で彼女の手を取り部屋へと招き入れた。招かれた舞園は部屋の状況を見て思わず口をふさいだ。

     そして、入り口で味わった恐怖が沸々と自分の中に戻ってきた。体中が小刻みに震える姿はまるで、猛獣を目の前にした小動物のようだった。



     苗木の部屋で舞園が見たのはまさしく地獄だった。なんと苗木の部屋に同級生全員の生首がホルマリン漬けされて並べられていた。その首一人一人を見るとその目は閉じられていた。




    「こ……これは……」



    「きれいでしょう……みんなの首を並べたんだよ……」




     舞園は一つずつ首を見ていた。するとある違和感に気づいた。




    「(あれ?首が15個ある?)」



    「(おかしい……私たちは全員で16人のはず……)」




     舞園は不思議に思い首を1人ずつ数えていった。その体はまだ震えていた。




    「(江ノ島さん……十神くん……霧切さん……戦刃さん……桑田くん……不二咲くん……大和田くん……石丸くん……山田くん……セレスさん……大神さん……葉隠くん……腐川さん……朝日奈さん……!?)」




     なんとそこにはあるはずのない首があった。そう……その首は……




    「苗木くん!?」
  32. 32 : : 2017/11/11(土) 14:30:29
    「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」




     苗木は舞園の声を聴くと突然笑い出した。まるで、正体がばれたことを喜んでいるかのように……




    「あなたは誰なんですか!!苗木くんじゃない、あなたはだれなの!!みんなを殺して……何がしたいのよ!!」




     舞園は大きな声で叫び始めた。そこにはアイドルの舞園さやかはいなかった。



     仲間全員を殺した殺人鬼に対して憎悪をむき出しにしながら苗木……いや……彼の皮を被った怪物に問いただしていた。




    「『俺』が誰か?そんなことはどうでも良い……が、ヒントを与えるとしたらあの日記にとりついていた怨霊とでも言っておこうか……」




     そういうと、苗木の皮を被った怨霊は話を始めた。




    「俺はね……昔いじめられててさぁ……自殺しちゃったんだよね……それで俺の人生を終わらせてくれたやつらを懲らしめたい……その一心でこの日記に憑りついたのさ!!!」



    「そんな!!日記に憑りついた怨霊なんて……」



    「ありえないってか!?けど俺の顔をよく見てみろよ……ありえてるじゃねぇか……」




     そういうと怨霊は舞園のあごをくいっとあげて顔を間近に近づけた。そして、舞園を自分のもとに引き寄せ耳元で囁いた。




    「部屋の中で倒れていた時から苗木誠はいなかったんだよ!!あいつが倒れていたときには既に死んでいた。そのアイツの皮を俺が借りたわけさ……」




     苗木の話し口調が変わっていく。苗木の姿をして話をしている怨霊に舞園は思考が追いつかなかった。そして、舞園はそのままベッドへと押し倒された。




    「まぁ、アイツの首を切ったのは3日前なんだよね……アイツの体をコピーするのに時間がかかってさ……ほら、このアンテナがむずかしかったんだ!ハハ……」




     怨霊は舞園の上にまたがり笑っていたが舞園は真っ直ぐに怨霊を見つめたままだった。すると、怨霊が舞園の顔を拳で殴った。




    「笑えよ……」




     殴られた舞園は視線を外さずに怨霊を見続けた。そして、段々顔が舞園に近くなり唇が重なった。舞園は足をじたばたさせたが、怨霊が離れることはない。数秒重なった唇はそっと離れた。



     怨霊は再び舞園の顔を確認したがその顔には笑みはなかった。




    「なぁ……笑えよ!」




     その後も怨霊は2・3発ほど舞園をはたいた。そして、舞園の胸に手を伸ばし、その胸を揉んだ。胸の柔らかさで怨霊の手は不規則に動いた。舞園は艶やかな声が出ていたが何とか怨霊を振り切り、ベッドボードにもたれかかった。それを見た怨霊が舞園に問いかける。




    「なぁ……このまま俺のために子孫を残すか、死ぬかどちらがいい?」




     おそらくこれが『最期』の質問だろう……舞園は震えていた。自分がどう答えればいいかわからない。必死になって考えていると舞園の目に彼らの首が映った。



     その顔はみんな微笑んでいた。その顔を見ると自分がする決断は一つしかなかった。舞園はいつもの柔らかい表情で怨霊を見て




    「殺人鬼の……化け物の子孫を残すなら、私はみんなの元へ行きます!その方が百倍マシです!!」




     と答え舞園は微笑んだ。すると怨霊はいらだったのかそのまま彼女に対して腕を振り抜いた。





    ズバァァァン……





     おびただしい量の血液とともに彼女のほほえましい顔が床に転がった。
  33. 33 : : 2017/11/11(土) 14:31:45
    「つまらねぇ……」




     そこには今までこの希望が峰学園で殺人鬼に殺された人間の顔が並べられていた……




    「こいつだけは生かしておきたかったんだがな……」




     床に転がった舞園の顔を見ながら怨霊はそっとつぶやいた。舞園の顔はどこか嬉しそうだった。天国の彼らに会えたのだろうか……



     しかし、ここにいる殺人鬼はそんな心配をするわけもなかった。



    ふぅぅぅ……



     と大きく息をつくと怨霊は苗木の姿を捨て日記へと戻っていく……そして、その日記はこの部屋から消えた。



     この前代未聞の大量殺人事件の結末はわからない……



     希望が峰学園の教師が総出で調べたものの当事者たちがいなくなってしまっては……



    そしてまた日記に時は刻まれる……



    あの最大最悪の事件がまた幕を開けようとしていたのだ……


































    「交換日記しようよ……赤松さん」







  34. 34 : : 2017/11/11(土) 14:34:21
    お疲れさまでした(´・ω・`)


    今回の日記のお題目を聴いたとき、最初は仲良く交換日記でもしようかなと考えていたのですが、このような展開もいいかもねと思って書いたのがこちらになります(´・ω・`)


    初めてこのようなエンドを目指したので無理矢理感もあるかと思いますが最後まで読んで頂きうれしいです(*´∀`*)ノ


    コトダ祭はまだまだ続きます!3週目は『薬』で4週目は『衣装』となっておりますのでお楽しみを(っ´ω`c)


    では、また次回の作品でお会いしましょう(*´∀`*)ノ
  35. 35 : : 2017/11/11(土) 14:59:38
    お疲れ様でした!
    読んでいるこちらまで狂気が感じられるような、とても引き込まれる作品でした!
    次回も期待しています!
  36. 36 : : 2017/11/11(土) 15:24:59
    >>35
    ありがたいコメントありがとうございます(´・ω・`)

    これからも期待よろしくおねがいします(っ´ω`c)

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