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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品はオリジナルキャラクターを含みます。

この作品は執筆を終了しています。

#4 想う【セレナ続き4】 

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  1. 1 : : 2014/02/08(土) 09:52:40
    #0生まれる、#1集う、#2いとしむ、#3刻むに続き、5作目の作品になります。よろしくお願いします。
  2. 3 : : 2014/02/08(土) 09:56:19
    846年、ペトラたち第100期生は、調査兵団に入団する。
    セレナ.ラングレーは、負傷兵の迅速な対応と豊富な知識が評価され、看護兵になり、ペトラとオルオも、兵士として確実に成長を遂げていった…
  3. 4 : : 2014/02/08(土) 10:06:14
    ー849年
    「…では、お薬を出しますので、安静にしていてください。」

    医務室でセレナは、負傷兵の看護にあたっていた。看護兵の仕事は壁外遠征の時だけではない。常時であっても、負傷兵の回診や、体調不良者の看護にあたっており、気の休まる時はなかった。
    セレナは医務室を出た。思わず息をつく。

    「お~い、セレナ!」

    ペトラの声がする。セレナの表情が和らぐ。

    「…ペトラ。」 「今日も回診?」

    「そうなの。最近風邪が流行ってるみたい。ペトラも気を付けてね。」

    「私は大丈夫だよ。それよりセレナこそ、疲れてるんじゃないの?」

    ペトラの言葉に、セレナは微笑して、

    「…ま、多少ね。でも、私が倒れる訳にはいかないわ。せっかくエルヴィ

    ン団長から指名を受けたんだもん。頑張らなきゃ。」





  4. 5 : : 2014/02/08(土) 10:18:40
    セレナは、エルヴィン団長に特別な思い入れがあるようだ。3年間共に調査兵団で活動してきて、ペトラはそう推測していた。
    滅多に自分のことで感情を表に出さないセレナが、エルヴィン団長の事となると、嬉々とした表情を見せるのだ。

    (セレナって…エルヴィン団長のこと…)

    「おぅ、2人共、揃ってんな!」

    オルオだ。最近また背が伸びた気がする。体格もガッチリと男らしくなってきた。性格は大して変わらないが、巨人討伐数の伸び率には、目を見張るものがあった。

    「オルオ。」 ペトラが笑顔で迎える。

    「…どうしたの、体調不良?」 セレナが問う。

    「おいおい、そう言ってるお前の方がよっぽど調子悪そうにみえるぜ?」

    「…そうかな…」 「昨夜は眠れたのか?」

    「…急患が出て…ずっと付きっきりだったから…」

    「だったら今のうちにでも眠っておけよ。今日は休日だろ。」

    「うん…そうするよ。ありがとね。」

    セレナはそう告げると、寝室へ向かって歩いていった。











  5. 6 : : 2014/02/08(土) 10:28:51
    「セレナ…大丈夫かな…」

    ペトラは心配そうだ。

    「大丈夫だろ。あいつ、看護兵になったとき、エルヴィン団長から直々に

    指名を受けたって、はりきってたじゃんか。」

    オルオは呑気に答える。

    「そうだよね…」

    ペトラは不安気に応じる。
    すると、4人の先輩兵士がこちらに向かってくる。全員男性だった。ペトラとオルオは敬礼する。

    「あ、いいって別に。今日は休日だしな。」

    先輩兵士は、オルオの肩を抱くと、

    「…お前、今いくつだ?」 「…18っス。」

    先輩兵士は満足そうに笑い、

    「いい時期だな。俺たちと一緒に来いよ。」

    オルオは、そのまま連れていかれる。ペトラもあとに続こうとするが、止められた。

    「悪いな。これは男だけの楽しみなんでな。」 「はあ…」

    ペトラは1人取り残された…。






  6. 7 : : 2014/02/08(土) 10:35:58
    「あの…どこ行くんスか…?」

    オルオは、不安気に問う。先輩兵士は声を潜め、

    「お前さぁ…」 「はい…」 「恋人はいるのか?」

    オルオの頭に、ペトラの姿が浮かぶ。

    「いや…いません。」

    「じゃあまだ未経験なんだな。」 「経験っスか?」

    「女を抱いた事があるかって聞いてんだよ。」

    オルオは、生唾を飲む。

    「いや…ないです。」

    先輩兵士は楽しそうに笑い、

    「じゃ、行かないとな。」



  7. 8 : : 2014/02/08(土) 11:06:17
    気がつくとオルオは、ウォール.ローゼの街中にある店の前に立たされていた。外見はただの宿屋の様に見えるが…。

    「入るぞ。」

    先輩兵士に促され、オルオは中に入る。外見とは裏腹に、中は薄暗かった。
    入るとすぐにカウンターがあり、店員とおぼしき男性が迎える。

    「…いらっしゃいませ…」 「5人だ…」

    先輩兵士が慣れた様子で言う。

    「奥へどうぞ…」

    店員に促され、奥へ入ると、さらに暗くなる。お互いの顔を識別するのが難しい位だ。

    「…好きなのを1人選べ。ただし、自分の名前を絶対にしゃべるな。」

    先輩兵士の声がした。どうやらオルオに言ったようだ。
    オルオは目を凝らしてよく見ると、椅子に女性が数人座っているのが分かった。先輩兵士は各々女性の肩を抱き、さらに奥へと消えていく。

    「…初めてでいらっしゃいますか?」

    いつの間にか店員がオルオのそばに立っていた。

    「あっ…いや…」

    オレ、帰ります! そう言って逃げ出そうとしたが、店員が即座に

    「あの子がよろしいかと。」

    と、1人の女性を紹介されてしまう。オルオは、仕方なく女性の側に寄った。
    近くで見て、女性の顔がはっきりと見えた。髪は短く、大きな瞳と、すべすべとした肌が愛らしい。
    女性はにこりと笑いかけ、

    「…行きましょ。」

    女性はオルオの腕に自分の両腕を絡め、歩き出した。オルオの肘に、柔らかいものが当たる…。オルオは、促されるまま、奥の部屋に入る。
    暗いが、目が慣れてくると、ベットがあるのが分かる。





  8. 9 : : 2014/02/08(土) 11:24:27
    「さあ…」

    ベットへと促される。女性はオルオのジャケットのワッペンを見、

    「…調査兵団なのね…」

    「あ、あ…はい…」 「素敵ね…」

    女性はオルオの頬に手をやる。いつも一緒にいるペトラやセレナには…(セレナには少しあるかな…)ない、大人の女の色香が漂う。

    「キスもしたことない?」 

    「そう…です…」

    女性は笑って 「何で敬語なのよ…」

    女性はオルオの首に手を回し、

    「じゃあ、そこから教えないとね…」

    女性の唇が近づく。オルオは目を閉じた…
    ペトラの顔が浮かぶ。オルオは我に帰り、

    「あっ、すんません!」

    女性を押し戻した。女性は気を悪くする様子も見せず、

    「私、好みじゃない?」 とさらりと問う。

    「いや、そうじゃないっス!あのオレ、好きな子がいて…」

    そこまで言って、しまった、と思った。そこまで言う必要ないじゃないか!



  9. 10 : : 2014/02/08(土) 12:05:18
    「そう…そうなの…」

    女性はオルオの隣に座り直す。

    「少しお話ししない?」 「え?」

    「あなたの話、もう少し聞きたいわ。ダメかしら?」

    「あ…大丈夫っス。」

    「その好きな子って、あなたのことどう思っているのかしら?」

    「多分…ただの…友達っつーか…そいつには他に気になる奴がいるみたい

    で…」

    「あら、そうなの。」

    女性は思案するように目をそらし、

    「それってもしかして…リヴァイ兵士長って人じゃない?」

    オルオは驚いた。

    「!?なっ…どうして…」

    「彼は有名だもの。人類最強の兵士だっていうじゃない。私、本物見たこ

    とないけど、きっと素敵な人なんでしょうね…」

    女性はうっとりと目を潤ませた。

    「あぁ…まぁ…男のオレから見ても、憧れるというか…いつかは…兵長

    みたいに強くなりたいと思ってて…」

    正直、最初はチビで嫌味な奴だと思っていた。思わず胸ぐらを掴んでしまった事もあった。しかし、共に壁外に出る度、果敢に自分達を守り、戦いの厳しさを背中で教えてくれた。
    オルオは、実際自分がリヴァイ兵士長の様に華麗にうなじを削ぐ姿を何度も夢見た事があった。

    「そっか。あなたには越えられない壁ってとこかしら。」

    「はぁ…まぁ、そんなとこっス。」

    「青春ねぇ…」 女性は遠い目になる。


  10. 13 : : 2014/02/08(土) 19:35:44
    「あなたの好きな子は、その兵長の何に魅力を感じてるのかしら。」

    「そりゃ、強いところ…」

    女性はオルオの方に向き直る。

    「女はただ強いだけの男に惹かれたりしないわ。きっと他にも何かあるの

    よ。」

    「見た目、とか?」

    (背を縮ませるのは…無理だろうなぁ。)

    「そうね…彼の内面とか。声とか、しゃべり方とか…」

    「なるほど…」

    オルオは、真剣に聞き入っていた。

    「でも、あなたにだってあなたの良さがあるわ。それをアピールすること

    も大切よ。」

    「そう…ですか…」

    (オレの良さって…何だろう…)

    そう考え込むオルオの頬に、女性は優しくキスをした。

    「これ位、してもいいでしょ?」

    女性はいたずらっぽく笑う。オルオもつられて笑う。
    別れ際、女性は言った。

    「あなたはもうここには来ない方がいいわ。…次はシーナの女を相手に

    する位になりなさい。リヴァイ兵長みたく、ね。」

    女性はウインクし、背を向ける。

    「バーイ…元気でいなよ…」

    「はい。…あなたも、お元気で…」

    女性の表情をうかがい知る事はできなかったが、きっと、笑っていたのだろう…。




  11. 14 : : 2014/02/08(土) 19:46:36
    別の日、壁外遠征の後、リヴァイは兵服ではなく、私服姿で歩を進めていた。
    ここはウォール.シーナである。すでに、日が傾きかけていた。
    リヴァイはそのまま街の外れにある小綺麗な建物の中に入っていく。
    リヴァイが中に入ると、待ち構えていたかの様に、店員が対応する。

    「いらっしゃいませ…いつものでよろしいですか。」

    リヴァイはさりげなく右手を挙げる。肯定の合図だ。即座に1人の女性が出てくる。茶色の髪を肩まで伸ばした、瞳の大きな女性だ。店員はさりげなくその場を離れ、女性は軽く頭を下げ、リヴァイを奥の部屋へと促した。
    部屋に入り、戸を閉めると、女性の表情が和らぐ。

  12. 15 : : 2014/02/08(土) 19:56:54
    「…来てくれたんですね…」

    「ああ…時間がない…」

    リヴァイはすぐに女性をベットへと押し倒し、唇を押し付け、舌を絡める…
    シーナの娼婦は、他のローゼ、マリアの娼婦たちに比べ、見た目、技術の他、感染症などの病気をもっていない、出産履歴がない、といった厳しい審査をくぐった者にしかなれなかった。無論、料金もケタ違いではあったが…。
    リヴァイはそのまま首筋を舐めながら服を脱がせていく…
    今回リヴァイが抱く女は、何回か相手にしたことがあった。毎回という訳ではないが、やはり相性というものもある。
  13. 16 : : 2014/02/08(土) 20:31:19
    リヴァイは裸になった女の上半身を愛撫しながら、自分も服を脱ぐ。そして性器に避妊具を付け、そのまま女の中に入っていった。
    女の喘ぎ声と、荒い息遣いが続く…。リヴァイは、考えていた。

    今日も、何人かの部下を亡くした。顔を1人ずつ思い浮かべていく…。
    人類最強の兵士…そう呼ばれてから、どの位経つのだろう。兵士長という立場になってから、何人の部下を救った…何人の部下を死なせた…。
    部下たちの死は無駄ではない。…無駄になんかさせない。死んでいった者たちの意志は、自分の中にあるのだから……。
    そうだ…俺は…

    「ん…いた…い」

    思わず我に帰る。女の顔が苦痛に歪んでいる。リヴァイは動きをゆるめた。

    「あ…ごめんなさい…私…」

    リヴァイは女に軽くキスをし

    「いいから続けるぞ。」

    リヴァイは徐々に動きを速め、射精した。
    終わったら見繕いをし、男は立ち去る。それがルールだった。しかし、女はリヴァイを引き留める。

    「あっ、あの…」

    「何だ。」 「いえ…」

    女は目を伏せる。

    「何か言いたい事があるのか。」

    リヴァイは静かに問う。

    「今日は…なんだか、あなたが…不安そうにみえたから…」

    「…そうか…」

    リヴァイは息をついた。

    「なら…そうかもしれんな。」

    女は、その言葉に驚いたが、黙っていた。あまり深く詮索しないのがルールだ。リヴァイは続ける。

    「俺は…強くない…が、強くあり続けなければならねぇ。人類の希望とや

    らが、俺の背中にはあるらしいんでな。」

    「…。」 女には、彼が人類最強の兵士、リヴァイであることは分かっていた。名前を告げずとも、何度も自分を抱いた鍛え抜かれた肉体や、たまに交わすごくわずかな言葉のやり取りで、彼女は見抜いていた。









  14. 17 : : 2014/02/08(土) 20:39:45
    「あなたが不安…なのなら…もう一度…」

    女は、リヴァイに向かって両腕を広げ

    「私を…」 

    リヴァイは、女に背を向けた。

    「…バカ。無理すんじゃねぇよ。」

    街に明かりが灯りはじめていた…。
  15. 18 : : 2014/02/08(土) 21:09:29
    「はぁ…」

    オルオは、本日何度目かのため息をついた。風俗店の1件から、1ヶ月が経過していた。
    あれからペトラと何回か会話はしたものの、どうもぎこちなくなってしまい、ペトラに不審がられ、撃沈。とにかく、兵長のことをどう思っているのか、好きなのかどうかだけでも確かめたくて、その事に触れようとしたが、うまく言えず、ますます事態はこじれてしまう…。
    ふと、オルオは、ある人物の顔が頭に浮かぶ。

    (そうだ、セレナに相談してみよう。あいつは何でもオミトオシだからな

    。何かいいアドバイスが貰えるかもしれない。女の事は女に聞くのが一番

    だ。)

    「今日は確かアイツ、医務室の当番だったな…」

    そうつぶやいて、オルオは医務室へと向かった。大体いつもセレナが当番になると、なぜか体調不良を訴える男性兵士でごった返すのだが、今日は誰もいない。

    「セレナー?セレナ、入るぞー」

    医務室の戸を開けて中に入ると、セレナは医務室の机に突っ伏して眠っていた。

    (こいつも疲れてんだな…)

    思わず苦笑する。

    (相談はまた今度にするか…。)

    オルオは、そっと部屋を出て行こうとして、ふと、薬品棚が目に入る。いつも厳重にカギをかけている引き出しが、今は開いている…。オルオは薬品棚に近づき、引き出しを覗く。

    「惚れ薬でも入ってりゃな…」

    と、つぶやいてみて、笑う。

    「…オルオ!」

    いつの間にかセレナが駆け寄って来る。そのままオルオの手を掴み、棚から引き離す。

    「…何だよ、いきなり…」

    思いの外強く手を掴まれ、オルオはけげんな表情を浮かべる。

    「…見たの?」 いきなり問われる。

    「何をだよ。」 オルオは問い返す。

    「引き出しの…中身…」

    「はぁ?まぁ少しは覗いたけど…何が入ってるかまでは見てねぇよ。」

    「…そう…」

    セレナは、堅い表情のまま机に向かう。オルオに背を向けたまま、

    「それで、何か用?」

    オルオは苛立った。

    「もういいよ。何なんだよお前。カギかけねぇのが悪いんだろ!」

    そのままオルオは出ていってしまう。セレナは、何かを悟ったかのように、目を閉じた…。









  16. 19 : : 2014/02/08(土) 21:28:42
    オルオは、怒りに肩を震わせ、ツカツカと歩いていた。

    (何だよ…オレが薬を盗むとでも思ったのかよ…何だよまったく…)

    「あれ、オルオ…」

    いつの間にか、ペトラとすれ違っていた。ペトラが駆け寄って来る。

    「どうしたの、何かあったの?」

    オルオは、医務室であったことを話すと、ペトラは辛そうに目を伏せた。

    「そう…私も気になってたんだけど…最近のセレナって少し変だよね…」

    「そういえばお前たち、最近一緒にいることが少なくなったよな。」

    「うん…まぁセレナは忙しいし…それに…」

    ペトラは言葉を切る。

    「それに…何だよ?」

    「セレナが何か…昔のセレナに戻ったっていうか…」

    「昔の?」

    「そう。訓練兵のころ…教官に名前を聞かれて、答えたくないって言って

    たころの…」

    「商売女って呼ばれてたころの、あいつか…」

    2人は遠い目をした。

    「…何か、あったんだろうな。あいつにも。」

    「うん…心配だよね…」

    オルオは、ペトラの方を見た。本当に心配そうな顔をしている。オルオは、明るい口調で

    「今度はお前がセレナの所へ行ってみてくれないか?オレだと何だかきま

    りが悪くてよぉ…」

    オルオの言葉に、ペトラは快くうなずいた。













  17. 20 : : 2014/02/08(土) 21:36:57
    「…セレナ?いる…?」

    訓練を終えてからの訪問であったため、セレナは負傷者の看護に追われていた。ペトラに気づくと、

    「ちょっと待ってて。」 と告げた。

    ペトラは、空いているイスに腰掛け、セレナの様子をぼんやりと眺めていた。看護兵は、壁外では荷馬車護衛班並みの待遇を受け、巨人と戦う事は滅多にない。ただ、看護兵たちの本当の戦いは、壁の中に戻ってきてからである…。
  18. 23 : : 2014/02/08(土) 22:32:24
    セレナは、てきぱきと負傷者の治療を終え、最後の兵士を送り出すと、笑顔でペトラの方を見た。いつものセレナだった。

    「どうしたの、ペトラ…調子が悪いの?」

    「ううん。ちがうの。オルオのことでさ…」

    その言葉に、セレナの表情が曇る。

    「…そうだね。謝らなきゃ、オルオに…」

    「いいんじゃない、別に。勝手に入って来た方が悪いんだし、オルオもそ

    んなに気にしてなかったよ。」

    ペトラは、できるだけ明るい口調で言う。しかし、セレナの表情は変わらない。

    「最近の私…変わったでしょ?」

    核心をつかれ、ペトラはあせる。

    「そ、そうかな…セレナも忙しいんだし、仕方ないと思うよ。」

    「…ペトラ…」

    セレナは静かに、ペトラと向き合う。

    「…オルオにも、伝えてほしいんだけど…」

    「え、なに?」 セレナは辛そうに目をそらし、

    「…もう、私と一緒にいない方がいいよ…」

    「えっ、どういうこと!?」

    意外な言葉に、ペトラは驚き問い詰める。セレナは辛そうに、本当に辛く悲しそうに顔を歪めてから、ふっと感情を失った目をペトラに向け、

    「…目障りなのよね…」 「え…?」

    「あんたたちは、巨人を倒しまくって英雄気取ってるかもしれないけど…

    戦うことの少ない看護兵を罵るようなことも言ってるそうじゃない。」

    「そんなこと、ないっ、絶対に!」

    「…巨人を倒すことがそんなに偉いのかしら。ただでかいだけのあいつら

    を倒すことなんて…」

    その言葉に、ペトラの中で何かが砕け散った…。

    「な…なによ…あんたたちこそ…巨人を…倒した事も…戦った事もないく

    せにっ!!」

    ペトラはそう叫んだ後、はっとした。とんでもないことを言ってしまったことに気づいたのだ。けれど、もう取り消すことはできない。
    セレナはうつむいて

    「そう…そうよね…私には、翼を背負う資格なんて…ないわよね…」









  19. 25 : : 2014/02/08(土) 22:52:54
    ペトラはなにも言えず、たまらず部屋を飛び出した。ペトラが去った後、セレナはしばらく、悲しそうにうつむいていた…。
    ペトラは通路を走り、角を曲がろうとしたところで、誰かとぶつかりそうになった。リヴァイ兵士長だった。

    「あ、すみません、兵長…」

    リヴァイは不審そうに眉を寄せ、

    「気を付けろ…そんなツラしてるとまた誰かとぶつかるぞ。」

    そう言われて、ペトラははっとする。いつの間にか、泣いていたのだ。

    「あ、すみません…」

    あわてて涙をぬぐう。リヴァイはそれを黙って見ている。
    兵長…兵長の言葉は、いつも乱暴だけど、いつも正しかった。壁外に出ると、いつも果敢に私たちを守ってくれた。
    兵長…兵長…
    リヴァイはため息をついた。

    「…セレナ.ラングレーとかいったな…」 「え?」

    「あの看護兵だ。お前と同期の…」

    「あ…はい。セレナがなにか…」

    「お前のそのツラと、何か関係があるんじゃないのか?叫び声がここまで

    聞こえてきたぞ。」

    当たってる…さすが兵長…。

    「…言っておくが、俺は兵士長として看護兵とお前たち兵士を差別したこ

    とは一度もない。人にとっての痛手ってのは、命を失うことばかりじゃな

    い…」

    「?どういう…ことですか…兵長…」

    「それはてめぇで考えろ。あいつの事を一番理解できるのが自分だと思う

    のならな。」

    リヴァイはそう言うと、去っていった。
    翌日、ペトラはその意味を知ることになる。












  20. 26 : : 2014/02/08(土) 23:03:55
    その日、ペトラは庭に出ていた。庭掃除の当番だったのだ。手を抜くと、兵長から大目玉をくらう。しっかり取り組まなくては…。ペトラは集中し…集中し過ぎて、思わぬ所まで出てしまった。

    「あ、こんな所まで…」

    そこは、負傷兵が体を休める病棟の裏口だった。
    …ここは、遺体を火葬場まで運ぶための出口である。
    不意に、裏口の戸が開く。ペトラは慌てて物陰に隠れる。…遺体が運ばれていく。そばに誰かいる…セレナだ。
    セレナは、神妙な面持ちで遺体を見送る…が、ふと何かに気づき、遺体の運搬を引き留める。遺体を運んでいた看護兵と、何やら話し込んでいる…
    話し終えると、看護兵は遺体の荷車をその場に置き、去っていく。
    セレナは病棟へと入っていく…。

  21. 27 : : 2014/02/08(土) 23:15:06
    ペトラは、周りに誰もいなくなったのを確かめると、病棟へと近づいていった。中からうめき声が聞こえる…。
    ペトラは、カーテンのすき間から中を覗く。1人の兵士が、うめき苦しんでいる。全身を包帯で巻かれ、右足は太ももから先がなくなっている。前回の壁外遠征で負傷したのだろうか…。
    セレナは、しばらくその兵士を見下ろしていたが、ふと、薬品棚の方へと向かい、例のカギのかかった引き出しを開け、薬を取り出すと、また先程の兵士の元へと向かう。兵士はまだうめき声をあげている。
    セレナは、薬のビンを開け、錠剤を1粒取りだし、兵士の口の中へねじ込んだ…
    兵士は、より一層苦しみはじめ、そして、動かなくなった…。
    セレナはそのまま薬のビンを引き出しにしまい、カギをかけた。

    (ちょっと…これって…)

    ペトラの心臓が高鳴りだす。

    (これって…殺…)







  22. 28 : : 2014/02/08(土) 23:37:29
    「おい。」

    背後から声がして、ペトラは飛び上がった。見ると、リヴァイ兵士長が立っている。

    「…見たのか…」

    リヴァイが静かに問う。ペトラはすぐに察して、

    「…はい。」 と答える。

    「…そうか。」

    リヴァイは歩き始め、病棟の中へと入っていく。ペトラは思わず後に続いた。リヴァイは静かにセレナへと近づき、

    「…こいつも見たそうだ。」

    リヴァイの声で、セレナはペトラに気づき、驚く。

    「…ペトラ…!?」

    「ごめん…セレナ…」

    ペトラはそれ以上何も言えなかった。

    「まぁ、見ちまったもんは仕方ない。今回はお前ら2人で行け。」

    リヴァイの言葉に、セレナは 「はい。」 と返事をし、ペトラに向かって

    「さ、この遺体を運ぶわよ。」

    と言い放った。ペトラは言葉を失い、動けないでいたが、担架を運んできたセレナに

    「…早くして。」

    と促され、ようやく体が動いた。遺体を担架に乗せ、先程の遺体と共に、火葬場へと向かう。

    「…セレナ…」

    「なに?」

    「兵長が…今回はって言ってたけど…それって…」

    「そうね。これが初めてじゃないわよ。」 セレナは続ける。

    「負傷した兵士が、誰しも順調に回復できる訳じゃない。回復することも

    …死ぬことも出来ずに、苦しむ人だっている。ウォール.マリアが陥落して

    土地が減って、そんな人たちを生活させる場所なんて確保できない…兵団

    で預かるにしても、そんな人たちにまで予算が回らない。

    …壁外遠征の度に負傷者が出る…ベットの数が足りなくなる…だから私が

    …ころし…」

    「もういいよっ!!」 ペトラは叫んだ。

    「…もう…」

    ペトラはその場に座り込んだ。













  23. 29 : : 2014/02/08(土) 23:53:42
    「ペトラ、もう私と一緒にいないほうがいい。」

    ペトラはゆっくりと顔を上げ、

    「…なんで、そう思うの?」

    「私は人を殺してるから。巨人を殺してるあなたたちと違って、私は人を

    殺してるから。」

    セレナは、淡々と答えた。

    「じゃあさ…」

    ペトラは、笑ってしまう。

    「もし…私やオルオが…死ぬことも出来ずに苦しんでいたとしても、セレ

    ナは、薬を飲ませて殺すの?」

    「そうね。」

    ペトラは、笑ってしまう。

    「…そっか。巨人に喰い殺されるよりは、いいよ。最期に誰かに看取って

    もらえるんだもん。」

    セレナに表情は無かった。ペトラは、セレナにも笑ってほしかった。

    「…でも、兵長が知ってたってことは…エルヴィン団長も…」

    そう言いかけたペトラに、セレナは強い口調で

    「確かに、エルヴィン団長は、この案を提案した。予算を確保しなければ

    人類の勝利はあり得ない。でも、実行するとなると、ずいぶん悩んでた…

    それで、私がやる、と言った。」

    「なんでセレナはそこまでして…」

    「団長のおかげで…」 セレナは、前を見たまま、言った。

    「私は生まれたから。」

    「生まれ…た…?」

    ペトラに、その意味は理解出来なかった。
    それから火葬場に到着し、埋葬を済ませると、2人は帰路についた。














  24. 30 : : 2014/02/09(日) 00:05:24
    「…セレナ。」

    「なに?」

    「私…信じて…いいかな。」

    「信じる?なにを?」

    ペトラは、セレナと向き合う。

    「セレナを、だよ。壁外では、常に何が起こるか分からない。私…本当に

    負傷して…本当に…そんなとき、セレナは一生懸命救おうとしてくれて、

    そして最期に、私のそばにいてくれるって。」

    「…。」 セレナは、その言葉に驚き、目を見開く。

    「でも」 ペトラは、セレナの手をとった。

    「私、セレナにそんな辛い選択は、もうさせたくない。私は兵士として全

    力で戦う。絶対に巨人に負けたりなんかしない。セレナ…私を信じて。」

    (信じる…そうだ。私は決めたんだ。ペトラを…信じるって…。)

    「…ペトラ…」

    セレナの声が震える。うつむくセレナの顔を、ペトラはのぞきこんで、はっとする。

    「…ごめん…」

    セレナは、涙していた。











  25. 31 : : 2014/02/09(日) 00:20:27
    本部へ戻り、セレナは今一度医務室へ向かい、ペトラは一足早く寝室へと戻ろうとしたが、リヴァイに呼び止められた。
    リヴァイの自室に促される。自室に通されたのは、これが初めてだった。

    「あいつと何か話したか。」

    「…はい。やむを得ない事情で…その…薬を…」

    「やむを得ない、か。」

    「…。」

    「エルヴィンも提案はしたが、実行するとなると相当渋っていた。が、あ

    いつが自分でやる、看護兵の方が実行しやすい、と言い張って、ついに折

    れた。俺も…部下が死ぬとなっちゃ放っておけねぇからな。見てて気持ち

    のいいもんでも無いがな。どうすることもできない。」

    リヴァイは、とても悔しそうな顔をした。ペトラは、こんな兵長を初めて見た。

    「お前も、係わってしまった以上、立場をわきまえろ。」

    「はい。…誰にも言いません。」

    ペトラは続ける。

    「セレナも、私を信じてくれています。」

    「そうか…」 リヴァイはペトラに背を向け、

    「ならいい。」

    なぜかその時、ペトラの中に、不安がさざ波の様に押し寄せてきた。


















  26. 32 : : 2014/02/09(日) 00:42:06
    「あの…兵長…」

    「何だ。」

    「もし…兵長の大切な人が…人を殺してたとしたら…」 「おい!」

    リヴァイに鋭く言葉を遮られ、ペトラは口元を押さえる。

    「お前は、あいつを信じるんだろ。その質問に何の意味がある。」

    「すみません…私、何だか不安で…おかしい…ですよね…」

    リヴァイは黙ったまま背中を向けている。

    「少し…兵長に近づいても…いいですか?」

    「…勝手にしろ。」

    ペトラはリヴァイのすぐ後ろまで来た。

    「…お願いです、兵長…」

    リヴァイは黙ったままだ。ペトラは震える声で言った。

    「抱きしめさせて…もらえませんか…」

    リヴァイは息をついて

    「…好きにしろ。」

    「では…失礼します…」

    ペトラは、後ろからリヴァイに、おそるおそる両手を回した。
    そっと、額をリヴァイの後頭部に触れさせる。
    兵長のにおいがする…身体は鋼の様に硬く、でも、ぬくもりは感じる。あたたかい…人類で一番強い背中…。
    ペトラには分かった。これから先、何か恐ろしい目にあったり、不安に苛まれたとしたら、今の、この瞬間を思い出すのだろう。
    そしてまた平気な顔してつき進んでいくのだろう。

    (兵長…あなたがいるから、私は強くなれました…ありがとうございます)

    ペトラは、リヴァイから離れた。

    「兵長…」

    「何だ。」

    「…ありがとうございます…」

    ペトラはリヴァイの背に、深々と頭を下げた。

    「…ペトラ…」

    「…はい…」

    「お前の不安とやらは、少しは消えたのか。」

    「…はい…」

    「…ならいい。」

    その後、ペトラ.ラルは巨人討伐数を飛躍的に伸ばしていき、850年、いよいよ第104期生を迎えることになる…。

























  27. 33 : : 2014/02/09(日) 00:49:13
    以上で#4想うを終了させていただきます。
    では、次回の予告を…
    いよいよ、というかやっと、第104期生が登場します。しかし今回の物語は、ペトラ、オルオ、セレナが中心になるので、残念ながら、主要として活躍する予定は無い…予定です。
    850年…そう、ペトラたちにとっての運命の日、第57回壁外遠征を、いよいよ迎えることになるのです…。
    読んでいただき、ありがとうございました。
  28. 35 : : 2023/07/09(日) 19:59:04
    http://www.ssnote.net/archives/90995
    ●トロのフリーアカウント(^ω^)●
    http://www.ssnote.net/archives/90991
    http://www.ssnote.net/groups/633/archives/3655
    http://www.ssnote.net/users/mikasaanti
    2 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 16:43:56 このユーザーのレスのみ表示する
    sex_shitai
    toyama3190

    oppai_jirou
    catlinlove

    sukebe_erotarou
    errenlove

    cherryboy
    momoyamanaoki
    16 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 19:01:59 このユーザーのレスのみ表示する
    ちょっと時間あったから3つだけ作った

    unko_chinchin
    shoheikingdom

    mikasatosex
    unko

    pantie_ero_sex
    unko

    http://www.ssnote.net/archives/90992
    アカウントの譲渡について
    http://www.ssnote.net/groups/633/archives/3654

    36 : 2021年11月6日 : 2021/10/13(水) 19:43:59 このユーザーのレスのみ表示する
    理想は登録ユーザーが20人ぐらい増えて、noteをカオスにしてくれて、管理人の手に負えなくなって最悪閉鎖に追い込まれたら嬉しいな

    22 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:37:51 このユーザーのレスのみ表示する
    以前未登録に垢あげた時は複数の他のユーザーに乗っ取られたりで面倒だったからね。

    46 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:45:59 このユーザーのレスのみ表示する
    ぶっちゃけグループ二個ぐらい潰した事あるからね

    52 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:48:34 このユーザーのレスのみ表示する
    一応、自分で名前つけてる未登録で、かつ「あ、コイツならもしかしたらnoteぶっ壊せるかも」て思った奴笑

    89 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 21:17:27 このユーザーのレスのみ表示する
    noteがよりカオスにって運営側の手に負えなくなって閉鎖されたら万々歳だからな、俺のning依存症を終わらせてくれ

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