ssnote

x

新規登録する

作品にスターを付けるにはユーザー登録が必要です! 今ならすぐに登録可能!

このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品はオリジナルキャラクターを含みます。

「エレン・イェーガーの奇妙な冒険」第1話

    • Good
    • 0

loupe をクリックすると、その人の書き込みとそれに関連した書き込みだけが表示されます。

▼一番下へ

表示を元に戻す

  1. 1 : : 2019/07/02(火) 19:52:18
    何度も何度も何度も何度も投稿し直してすみません。


    前に書いていたメモを復元できたのでスレごと建て直しました。
    つまり書き溜めができている状態なので、編集など多少のロスはありますが比較的早く書いていく事ができます。


    以下の要素に注意


    ・ジョジョキャラは出てこないよ。もしエレン達がスタンド能力を身につけたら……って話です。


    ・キャラ崩壊、及び全く世界観が違うので注意。


    ・オリジナルキャラ、及びオリジナルのスタンドといったとんでもなく恥ずかしいモノが登場してしま います。3年後の黒歴史です、きっと。



    ・舞台はヨーロッパにあるどっかの架空の王国で現パロ。1980年代くらいのイメージ(適当)。
    10年前まで大きな戦争をやっていたという設定で(規模としては第二次世界大戦くらい)。
  2. 2 : : 2019/07/02(火) 19:53:37
    第1話「サヴェジ・ガーデン作戦(炎の庭へ向かえ!)」



    ーーーー



    この世界には『超能力』を持つ人間がいて、そういった奴らが世間に紛れ込み、ごく普通に暮らしてい る。


    おそらく普通のヤツなら、そんなブッ飛んだ話、露ほども信じないだろう。


    俺の名は『エレン・イェーガー』。
    『リヴァンプル』という小さな港街に住む、いわゆる普通のヤツだ。


    俺は確かに何の能力も持たない普通のヤツだが、このブッ飛んだ話を信じている。


    何故なら、俺の周りの人間は普通じゃない……特別な能力を持った人間だったからだ。



    己の『心の形』を動かす超能力……『スタンド能力』を。
  3. 3 : : 2019/07/02(火) 19:55:16
    ーーーー



    ───西暦1985年、5月某日……欧州某国の湊街、『リヴァンプル』からこの物語は始まる。



    ガチャッ


    エレン「おはよう」スタスタ…


    グリシャ「おっ、ようやく起きたか」ジュゥ-…ジュゥ-…!!


    朝起きてリビングに降りると、そこにいたのは俺の父……『グリシャ・イェーガー』だった。


    職業は個人経営の『医者』で、朝こうしてゆっくりと飯を作っているのは珍しい事だ。


    今日は暇という事だ。


    エレン「……あれ、アイツは。まだ起きてねぇの?」フワ-ア…!!


    グリシャ「ミカサの事か?確かに珍しいな、お前なら、しょっ中だがミカサが寝坊とは……
    だから、こうして私が代わりに慣れない朝飯を作ってる」ジュゥ-…ジュゥ-…!!


    エレン「父さん、ずっと俺とミカサに料理任せっぱだったもんな。ちゃんと作れんの?」


    グリシャ「医者ってのは手が器用だ、料理だって得意に決まってるだろう。これ、必定」


    エレン「料理は手際とタイミングだよ」
  4. 4 : : 2019/07/02(火) 19:55:55
    ガチャッ…!!




    エレン「おっ」



    ミカサ「おはよう。おじさんにエレン」スタスタ…


    グリシャ「おはよう、ミカサ。今日は珍しく遅かったじゃないか」


    ミカサ「ごめんなさい......今日から三連休だから、つい」


    エレン「珍しいこった」



    コイツは『ミカサ・アッカーマン』。


    苗字も違うし奇妙な言い方だが、まぁ……『家族』ってやつだ。


    幼い頃、両親を亡くし、そこを俺の両親が引き取った。
  5. 5 : : 2019/07/02(火) 19:58:20
    ミカサ「朝ごはん手伝おうか?」


    グリシャ「いいや、大丈夫だ。もうすぐできるからな」


    ミカサ「そう」フワ-ア…


    グリシャ「う〜む……このウィンナーの焼き具合がなぁ……もう少しなぁ……!」ジュゥ-...!!


    エレン「別に気にしねぇから早くしてくれよ」



    ジジジジ……!


    グリシャ「ん……?」


    ミカサ(ガスコンロが……)


    ボンッ!!!


    グリシャ「あちゃぁ〜……」


    エレン「だから言ったのに……安モンはやめとけって」


    ガスコンロ「」シュゥ-…!!


    プスプス…!!


    ミカサ「朝ごはん……どうするの?まだ生焼け……」


    グリシャ「なぁに。朝食の心配はいらない。何故なら……」グググ…!!


    ボワッ……!


    そう言って父さんは何気なく、自身の指先に『炎』を灯した。


    普通のヤツなら絶対にできないような事を


    まるで息をするみたいに、何気なく。



    グリシャ「うおっと……『能力』を使うのも久しぶりだからな……火加減もなかなか難しい……」メラメラ…!!



    エレン「……う〜ん」

    エレン(自分の爪に火を灯し、それを使って料理、か……
    やっぱ普通じゃねぇ。俺の周りの人間は……)
  6. 6 : : 2019/07/02(火) 20:12:07
    まぁこんな感じに……俺の父さんは『炎を操る』という特別な力を持っている。


    『スタンド能力』と呼ばれる力で、偶然なのか、運命なのか?
    それは分からないけど同じようにミカサもスタンドを持っている。


    家族の中でスタンドを持っていないのは俺だけだ。




    母親もいたが、俺が6歳の時に死んだ……いや、正確に言うと殺されたんだ。



    殺したソイツは父さんが『大戦』中に軍医として活動していた際、敵国の兵士だった男……

    突然、炎の能力に目覚めた俺の父さんは戦場の最前線に駆り出された。

    そして、その最前線で壊滅させた部隊の生き残りの内の一人が、その男だそうだ。



    俺の母さんを殺ったのは、その復讐の為なのだろう。


    父さんは、その事について深くは教えてくれないし『炎の能力』も滅多に使わない。


    エレン(……自分への戒めのつもりなんだろうな)


    それからもう一つ……スタンド能力というのは、謂わば『目に見えるエネルギー』であり、スタンド使いはそれぞれ固有のヴィジョンを持っている。


    俺はミカサの人型のスタンドは見たことがあるが、父さんのは一度たりとも見た事がない。


    せいぜい能力を行使する際に、うっすらと手の甲の辺りにヴィジョンが重なっているのを見るくらい だ。



    父さんはスタンドの姿とは即ち、自らの『心の形』であると、いつの日か言っていた。



    エレン(……父さんの『心の形』は俺たちに見せられないような……そんな醜い物なのか?)
  7. 7 : : 2019/07/02(火) 21:32:29
    ミカサ「エレン。それじゃあ私たちはテーブルの上でも片しておこう」


    エレン「おう」スクッ


    ……と、そんなこんなで俺と父さんと、ミカサの3人家族。


    ミカサ「あ……また、置きっ放し。昨日食べたチップス」


    エレン「へいへい。分かってるよ」



    ……これじゃあ家族っつーより『母親』だよなぁ……
  8. 8 : : 2019/07/02(火) 21:51:12
    ーーーー


    カチャカチャ…


    グリシャ「んッ、我ながらなかなか良くできてるな!美味いッ!こんなんだったら医者やめて料理人でも目指そうか」モグモグ


    エレン「簡単な料理しか作らねぇクセに何言ってんだか……」パクパク


    ミカサ「!」ケホッ


    グリシャ「? どうした、ミカサ」


    ミカサ「いや、その……このウィンナー焦げてる……けほっ、けほっ……!焦げてる所食べちゃった」


    グリシャ「す、すまん……」


    エレン「ほら見ろ」


    グリシャ「『能力』を使って焼いた部分だなぁ……やはり久々で火加減が分からん」


    グリシャ「仕方ない、エレン。お前が食べてやりなさい」


    エレン「はぁ?何で俺が……」


    グリシャ「お母さんが言ってたろ。『女の子には優しくしてあげない』ってな」


    エレン「あのなぁ、コイツはもうそんな歳でもねぇだろ……」ハァ…


    グリシャ「お前だってそんなつまらん事で意地を張る歳でもないだろう」


    エレン「何だと、この野郎ォ〜?」


    グリシャ「『野郎』とは何だ、親に向かって」


    ヤイノヤイノ


    ミカサ「あの……2人ともいいから。もう全部食べちゃったから」モグモグ…
  9. 9 : : 2019/07/02(火) 21:56:22
    グリシャ「やれやれ……ところでだ。2人とも今日は何か用事はあるか?」


    エレン「? どうしたんだよ」モグモグ


    グリシャ「いや、私も今日たまたま休みなんだよ、仕事が。
    別にだからどうって言う事でもないんだが、たまには父親らしい事でもと思ってな。今日は3人でどこ かに遊びに行かないか?汽車を使って」


    エレン「面倒くせぇからパス。いや、面倒っつーか……アルミンと約束してんだよ、釣りの」


    ミカサ「私も……そろそろ買い出しに行かなきゃいけないし。
    それにさっき壊れたガスコンロ。あれの代わりも見に行かなくちゃ」


    グリシャ「むむ……そうか、仕方ないな。内陸にある『モーリス』の町にでも観光に行きたいと思っていたの だが。
    用事があるのなら仕方ない」ズズッ


    エレン「『モーリス』の町って言ったらあそこか?あの山ん中にある……スンゲェ小さい町。 あそこ俺も一回行ってみたいと思ってたんだよ、この前テレビでやっててさ。
    結構、有名な観光地になってきたみたいじゃん」


    ミカサ「おじさん、今度の休暇はいつ?」


    グリシャ「……少なくともお前たちの高校の休みとはかぶらなそうだな」


    エレン「……間がわりぃ親父だな」ボソッ


    ミカサ「ま、まぁ……忙しいからしょうがない。おじさんは久々の休日、家でゆっくりしてて」


    グリシャ「あぁ、そうさせてもらうよ」
  10. 10 : : 2019/07/02(火) 22:01:24
    グリシャ「それから、お前たち。今日は出かけるんなら少し用心しておけよ」


    エレン「あ?『用心』だ?」


    グリシャ「今日は『層』が薄いんだ。殆ど『色』がついてないからな」



    ミカサ「!?……層が薄い?」ガタッ…!!



    スタスタ…ガラァッ!!



    ミカサはグリシャの言葉を聞くなり席を立ち、そうして窓を開けた。


    窓から見上げた空には何やら不気味な『目玉模様』がいくつも浮かんで見える。



    ミカサ「……!」



    ゴゴゴゴゴ…!!



    これは確かに我々からすると奇妙で信じ難い現象であるが、彼女は別にこの『奇妙な現象』について驚いたのではない。


    むしろこの空に浮かぶ『目玉模様』とは、彼女ら特別な人間にとって見慣れた日常の風景であった。


    ミカサ(おじさんの言う通りだ……今日は層が薄い……目玉模様の『色』がかなり薄い)


    彼女が驚いてるのは、その『目玉模様の色が薄い』という現象……


    層が薄くなっているという事に驚いているのであった。


    グリシャ「……まぁ滅多な事は起こらないと思うがな。大丈夫だろう」パク…


    ミカサ「……!」



    チラッ


    エレン「……」モグモグ…


    ミカサ「……エレン」



    エレン「……」カタッ…

    エレン「何だよ、ミカサ」
  11. 11 : : 2019/07/02(火) 22:05:22
    ミカサ「見ての通り、今日は層が薄い」


    エレン「……あぁ、そうだな。それで?」


    ミカサ「本当に万が一……念のためだけど……今日は何か起こるかもしれない。
    だから今日はなるべく一緒に行動を……」


    エレン「何でだよ」


    ミカサ「! な、何でって……エレンも知ってるでしょ?あの空に散らばってる『目玉模様』の事は!
    アレの色が薄い日は『不思議な事件』が起きやすい!だから……」


    エレン「俺がそういう奇妙な事件に巻き込まれねぇように、今日はお前が付きっきりで俺を守るって言いてぇのか?」


    ミカサ「えぇ、そうよ」



    エレン「嫌だね、お断りだ」



    ミカサ「……!」
  12. 12 : : 2019/07/02(火) 22:08:11
    エレン「俺は確かにお前らみてぇに『スタンド』は使えねぇよ。ただの人間だ」



    エレン「けどな……だからってお前に守られる筋合いはねぇんだぜ?
    それに最近は層が薄くなるなんてしょっ中じゃねぇか……いちいち身構えてちゃバカバカしいっつーの……」


    ミカサ「でも……『万が一』何か起こったら……」


    エレン「……」


    ミカサ「私はエレンが大事で……」

    エレン「だから!」


    ミカサ「!?」ビクッ
  13. 13 : : 2019/07/02(火) 22:12:46
    エレン「……それがウゼェってんだよ!俺はお前の弟でもなければ子供でだってないんだぜ!?」



    エレン「確かに何の能力も持っていない俺なんて、お前からすると『ザコ』で危なっかしく見えるかも しれねぇが……自分の身なんて一人で守れる!お節介焼くんじゃねぇよ!」


    ミカサ「違う、エレン……!私が言いたいのは『強い』とか『弱い』とかじゃなくて……ただアナタを……!」


    エレン「……もういいよ」ガタッ


    ミカサ「エレン!?」


    エレン「ごちそうさま。食器片付けておいてくれ……出かけてくる」スタスタ…


    ミカサ「待って、エレン……!」


    バタン!!


    シィ-ン…
  14. 14 : : 2019/07/02(火) 22:37:50
    ミカサ「エレン……」


    グリシャ「……」



    ミカサ「どうしよう……エレンが何か大変な事に巻き込まれたら、私は……」


    グリシャ「大丈夫だ、ミカサ。層が薄いからと言って必ずしも何かが起こるわけじゃない」



    ミカサ「……」



    グリシャ「……前にも話したかもしれんが、恐らくあの空に散らばってる不気味な『目玉模様』は何者かの『スタンド能力』なのだろう。
    果てしなく巨大な……この世界の空をくまなく覆っている……いつの時代からあるのかも分からない……」


    ゴゴゴゴ…!!


    ミカサ「その能力は……」



    グリシャ「あぁ。『悪意のあるスタンド能力』を無効化する事。
    だから、この世界もスタンドという厄介な能力を持つ者がいる割には平和なのだろう。まぁ、あくまでも私の予想でしかないがね」



    グリシャ「しかしここ10年近く、この無効化の能力が弱まってきている。
    『目玉』の模様が薄い日に限って、スタンド能力を用いって行われたと思われる奇妙な犯罪が起こる」


    ミカサ「つまり層が薄い日は無効化の能力が弱まっていて……その隙にスタンド能力を持つ犯罪者が暗躍しているっていう……そういう事よね?」


    グリシャ「その通りだよ、ミカサ。だから今日みたいな日は念のため用心しなくちゃいけない。
    エレンも馬鹿じゃないんだ。余計な事に首を突っ込んだりはしないだろう」


    ミカサ「でもエレンは正義感が強いから……何かあったらすぐに巻き込まれそうで……」



    グリシャ「……ミカサ。エレンが心配かい?」


    ミカサ「……」コク


    グリシャ「……そうか」
  15. 15 : : 2019/07/02(火) 22:50:42
    ミカサ「……おじさん、どうして伝わらないんだろう。私はただエレンのことが心配で、それを守りたいだけ……」


    グリシャ「今日は放っておきなさい。まぁ私も男だ。アイツの気持ちが分からんわけでもない。
    自分と同い年の女子の方が自分より強くて守 ってくれる……確かに男としては、なぁ」モグモグ…


    ミカサ「……そういうものなの?私には分からない。
    それに私は……スタンドを持ってるとか持ってないとか、そういう事関係なくただエレンを守りたいだけなのに……」


    グリシャ「そう、ミカサには分からないだろう。アイツの気持ちを完璧に理解する事はできないだろうな」


    ミカサ「……」



    グリシャ「ミカサはエレンを守りたいと思ってくれている。
    だけどエレンはそれをコンプレックスに思 っているんだな……どこまでいってもすれ違いだ」


    ミカサ「……私とエレンはこのままずっと、分かり合えないままなのかな?」


    グリシャ「そうだな……人は皆、『心の形』が違う。大半のいわゆる『普遍的』な95%は理解し合えても、残りの5%はその個人を特徴付ける個性的な『心の形』だ」



    グリシャ「そして、その『心の形』の表れがスタンド能力のヴィジョンだよ。人それぞれが異なった哲学を持っている。
    決して他人には理解できない領域……」


    ミカサ「じゃあ私はエレンと……」

    ミカサ(……一生すれ違いっぱなし……?そんなの……!)


    グリシャ「いや。そうじゃない、ミカサ」



    グリシャ「確かに互いが完全に理解し合う事など不可能だ。それは例え『親友』や『家族』のように親密な間柄であっても……所詮は『他人同士』なのだから。
    違う経験を積んで生きてきた人間……共有し合った『思い出』はその中でのほんの一部」


    ミカサ「……じゃあ、やっぱり……」



    グリシャ「だけど互いに『理解し合おう』と努力し、限りなく心の距離をゼロに縮めていく事はできる」



    ミカサ「え……?」
  16. 16 : : 2019/07/02(火) 22:55:21
    グリシャ「完璧な理解という結果には辿り着かないかもしれないが、それに至るまでの『過程』が大切だ。
    私はな、ミカサ。君がエレンに近付こうと努力してくれている事がとても嬉しいんだ。私の息子には勿体ないくらい……誇りに思ってる」


    ミカサ「おじさん……」


    グリシャ「……これからもアイツの事を頼むよ。家族同士助け合うんだ」


    ミカサ「……うん、分かった」コク



    ーーーー


    …………
  17. 17 : : 2019/07/02(火) 23:00:02
    …………


    ーーーー



    『リヴァンプル』の街、とある軍港跡


    ザザァ-ン…ザザァ-ン…!!



    アルミン「……で?ミカサとまたいつもみたいに喧嘩して、それから釣りに出かけた……と」


    エレン「ほっとけよ……」



    ザザァ-ン…



    アルミン「はは、ごめんごめん。分かったよ。黙っとく」クスッ


    エレン「……さんきゅ」ボソッ


    アルミン「さて、今日の釣果はどんな案配かな?いつもみたいに話ほうけて終わらなきゃいいけど」カチャッ…



    エレン「ふふっ……」クスッ



    アルミン「? 何だよ、いきなり薄ら笑いなんて浮かべて」


    エレン「いや、何でもねぇ。ただ……お前は良いよなって思って。アイツと違ってぐちぐち口うるさくねぇし」



    アルミン「......」 ハァ…

    アルミン「どうしてそんなにミカサの事、邪険に扱うかなぁ」
  18. 18 : : 2019/07/02(火) 23:06:03
    エレン「それは……お前……!」


    アルミン「念のために確認しておくけどさ。ミカサが君の事を大切に思っている、っていう事は理解し てるよね?」


    エレン「……それがウザいんだよ」


    アルミン「はぁ……贅沢な悩みだよね」


    エレン「……それはそうかもしれねぇが……でも鬱陶しいモンは鬱陶しい」


    アルミン「『人は一度失わないと大切なモノに気が付かない』って本当だねぇ。
    どうだい?家出でもしてみたら」


    エレン「はぁ?」



    アルミン「自分を大切に思ってくれてる人のありがたみが分かるかも……って、ダメか。
    家出なんてしようものならミカサ、意地でも止めるだろうしなぁ」
  19. 19 : : 2019/07/03(水) 07:30:29
    エレン「……」


    アルミン「要は君、あれだろ?自分だけスタンド能力を使えないのを気にしていじけてるんだ。
    そんな事、気にしなくていいのに」


    エレン「気にするに決まってんだろ。俺以外の……父さん、ミカサ……それからお前。全員が持ってるのに、だ。
    俺だけが無力なんだよ。だからアイツが余計な世話を焼く……って、お前……」


    アルミン「ん?」


    ゾワァ-…


    エレンが何気なく親友の方を向くと、彼の持っているはずの『釣竿』がほんの数センチずれて宙に浮いていた。


    エレン(これは……)ゴシゴシ


    妙に思って目を凝らして見てみると、実際には浮いている訳ではない。



    ズズズ……!!



    よく見ると、釣竿は何者か……得体の知れない『何か』の腕によって支えられていた。


    その腕はほんのりと透けて見えて、幽霊のようでもある。


    赤黒い鎧のようなゴツい質感で……それがアルミンの肩の辺りから伸びている。



    まるで彼の『背後霊』が腕だけを伸ばし、それが釣竿を支えているかのように見えた。



    これが彼らの言う『心の形』......スタンドであった。
  20. 25 : : 2019/07/03(水) 07:35:44
    エレン「スタンドに竿を持たせるって……お前」

    エレン(それくらい自分で持て)


    アルミン「ははは、だろう?馬鹿らしく思うだろ?
    でも実際、日常生活の中ではこんな『馬鹿らしい事』くらいにしか使えないんだよ、スタンドなんて。 だから気にしない方がいいよ、エレン」


    エレン「いや、でもお前のスタンドの『物を操る能力』。結構役に立つだろ」


    アルミン「どんな場面で?」


    エレン「例えば……『戦い』の時とか」


    アルミン「僕たちの住む平和な世界で、そんな物騒な事はあり得ないね」


    エレン「分かんねぇだろ」


    アルミン「それに君はスタンドを使う事は出来ないかもしれないけど、その『形』を見る事はできるじゃないか」


    エレン「……」



    アルミン「スタンドのルール。

    ①スタンドとはエネルギーを持った自身の『心の形』で、スタンド使いはそれを操る事ができる。

    ②スタンドは、その本体の性格を特徴付けるかのように何か一つ固有の『能力』を持つ。



    そして3つ目。スタンドのヴィジョンは、同じく『スタンド使い』しか見る事ができない」
  21. 29 : : 2019/07/03(水) 07:38:00
    エレン「……知ってるよ」


    アルミン「つまりスタンドを見る事ができる君は『スタンド使い』としての素質があるって事だ。
    まだ発現してないだけで……いずれは自身のスタンドを操る事ができるようになるよ、今みたいに『見る』だけじゃなくてね」


    エレン「幼い頃からそう言われて続けて、今じゃもう17だ。
    いつになったら俺は、ミカサから守ってもらうようにならなくて済む?」


    アルミン「まぁまぁ、別に良いじゃないか。スタンドを見る事ができるんだから。普通の人には何にも見えないんだよ?」


    エレン「……そうだな」


    エレン(見えるのにそれを自分で使えないからこそコンプレックスなんだがな……スタンド使いの才能 はあるのに、操る事はできない……俺の精神が弱い証拠だ)
  22. 30 : : 2019/07/03(水) 18:07:59
    アルミン「ていうか僕はね、スタンド使いなんて一種のノイローゼみたいなモノだと思ってるよ」


    エレン「? 確かにスタンドは一般人には見えないが、実際にあるエネルギーだ。
    俺たちは、そのエネルギーを『絵画』のように見る事ができる」


    アルミン「どうかなぁ。それ自体も僕らの共有する『幻想』で本当はそんなモノ無いのかもしれない。
    第一、普通の人からしたら『不気味な目玉模様が空を覆い尽くしてる』だなんて……誰がそんな事信じ るんだ?って感じだろうし」クイッ



    アルミンはエレンに空を見上げるよう仰ぐ。



    エレン「……」チラッ



    空ではやはり、不気味な目玉模様……『悪意ある能力』を封じるという、謎のスタンドが浮かんでいる のであった。



    エレン(……遠近感が分からない、薄紫の不気味な目ん玉スタンド(いつもは濃い紫)……普通の人間にはこれが見えないんだよな)

    エレン「これが見えるって事は、俺も精神の何処かがおかしい狂人なんだな。
    ……そりゃそうだ。普通の人間には『空に浮かぶ目玉模様』も『背後霊』も見えやしない」



    アルミン「ともかく不気味だけどアレがある限り、スタンドに関するトラブルなんて滅多に起こらない って事だ。今日みたいに効力が弱まってる時以外は……
    十分な用心は必要だけど、そこまで神経質になる事はないよ」



    エレン「あぁ、そうだな」

    エレン(そうだ……ミカサの奴は心配し過ぎなんだよ)
  23. 31 : : 2019/07/03(水) 18:31:38
    すいません。全然関係ないんですけど執筆した後続きどうやって書くんですか?
  24. 32 : : 2019/07/03(水) 20:01:58
    >>31シリーズ物にしたいのん?
  25. 33 : : 2019/07/03(水) 20:09:25
    ザザァ-ン…ザザァ-ン…


    アルミン「……」


    エレン「……」


    ザザァ-ン…


    アルミン「……うーん、それにしても釣れないねぇ」


    エレン「そういや釣りに来てんだったな。竿を握ってるっつーのに忘れるところだったぜ。あんまりにも手応えがないもんで」


    アルミン(だらだら釣り糸垂らしてるだけで、もう3時近いな……)


    エレン「……」


    アルミン「......」



    ミャア ミャア



    エレン「……おい、見ろよ。カモメが低く飛んでる。荒れるんじゃねぇか?」


    ミャア ミャア


    アルミン「違うよ、エレン。ミャアミャア鳴くのは『ウミネコ』だ。カモメじゃない」


    エレン「細けぇなお前。どっちでも良いじゃんかよ」


    アルミン「それに低く飛んでて天気が悪くなるかも、ってのは『ツバメ』だよ」


    エレン「あ、あはは……そうだっけか?」ニガワライ


    アルミン「まぁそれ抜きにしてももう全然釣れないしね。
    今日はもう引き上げない?」


    エレン「ん。そうするか」カチャカチャ


    アルミン「うん」マキアゲ マキアゲ


    シュルルッ…



    エレン「はーあ……結局、今日も全然釣れなかったな。昼飯どうする??金持って来たか?」


    アルミン「うん、あるよ。昼はいつもの……そこにあるレストランでいいよね?」


    エレン「おっ、賛成だぜ。よっしゃ!全然釣れなかった腹いせにフィッシュサラダたくさん食べてやるぜェーッ!」ワシッ


    アルミン「あはは、いいね。それじゃあ行こうか」スクッ


    エレン「おう!」ニカッ



    スタスタ…



    ……こうして俺たちはいつもの、馴染みの釣り場を後にした。


    別に釣れなくたって構わなかった。


    ただこうしてダラダラと、何気ない話をしながら釣り糸を垂らしているのが重要なんであって。


    それが俺にとっての大切な日常だった。



    空では相も変わらず、不気味な目玉模様が俺を見つめている。


    そして俺の家族や親友は、その背中に得体の知れない背後霊を背負う。



    俺だけが普通。



    奇妙な世界に、俺一人だけが置いてきぼりにされたような心地だった。



    いつか自分もその奇妙な世界に巻き込まれていくのだろうと微かな期待をして、 でも結局は何も変わらない。


    そんな日常。




    『ずっとこんな日々が続くんだろうな』




    そう思っていた、港街の日常。




    最後の日常。




    ーーーー


    …………
  26. 34 : : 2019/07/03(水) 20:11:09
    スタンド名−『フェアリー・キング・ハート』

    本体−不明

    【破壊力-なし スピード-なし 射程距離-A
    持続力-A 精密動作性-なし 成長性-A】

    空を星のように覆い尽くす無数の目玉模様のヴィジョンを持つスタンド。

    悪意あるスタンド能力を『無効化』する能力。
    模様の色が濃いほど完璧な無効化だが、逆に薄くなれば薄くなるほどに無効化能力が弱くなり、近年ではほとんどそのスタンドパワーが弱まっているとされている。

    何十年も前から、この世界の全ての空を絶え間なく覆い続けているスタンド。
    本体やソイツの目的は不明だが、このスタンドのおかげでこの世界の秩序が保たれていると言っても過言ではない。

    元ネタはクイーンのファーストアルバムから『My Fairly King』。
  27. 35 : : 2019/07/03(水) 20:16:20
    ーーーー



    同時刻……『リヴァンプル』の街、商店街



    ガヤガヤ…!!


    ミカサ「……」スタスタ

    ミカサ(ふぅ……凄い人混み。心なしか皆んな、同じような方向に向かってる気がするけど……今日は何かあっただろうか?
    特に目立った祭り事とか人が集まるような行事は無かったと思うけど。
    まぁ単純に休日だからっていうのもあるのかな)


    ガヤガヤ…


    ラッシャイ ラッシャイ!!


    ミカサ(まぁ、それはともかく買い出し済ませなきゃ。今朝壊れたガスコンロも見なくちゃいけないし)



    「おっ、ミカサじゃねぇか!」


    ミカサ「あっ……ハンネスさん」ピタッ



    私は呼び止められて振り返る。


    声の主はハンネスさん。


    この商店街の一軒で卸売業を営んでいて、私やエレン、そしてアルミンが小さい頃から面倒を見てくれて関わりがある。



    ミカサ「どうも」ペコリ


    ハンネス「買い出しか?よかったら見てってくれや」


    ミカサ「えぇ、そうさせてもらいます」


    ハンネス「へへっ、どうも!」
  28. 36 : : 2019/07/03(水) 23:15:59
    ガララッ


    ミカサ「……」スタスタ…


    ハンネス「しかしアレだな。ミカサもすっかり大きくなって……」


    ミカサ「会う度にそれ言ってない?」


    ハンネス「来てくれる度にそう思うからだよ。
    こうやってカバンさげて買い物してるのを見るとよォー、『お使いに来た子供』っつーよりかは『夕飯をどうするか考える若妻』って感じだな!」ガハハッ


    ミカサ「……」ジロリ


    ハンネス「……おっと、悪かったよ!別にそーゆー意味で言ったんじゃねぇっての。単に大人っぽいって意味だ!」


    ミカサ「……なら良いんですけど」


    ハンネス「そうだよ!むしろ、そうやって顔しかめるところは年相応でめちゃくちゃプリチーだぜェ〜?」



    ミカサ「……」ムスッ



    ミカサ「それじゃあ……」スタスタ…


    ハンネス「あぁーっと、行くな行くな!悪かったって!せっかく寄ってくれたんだ、何か買ってってくれよォ〜……
    ほら!コレ今日とれた中で一番でっけぇタラ!」アセアセ


    ミカサ「……」ピタッ

    ミカサ「……買います」チャリン


    ハンネス「ま、まいどぉ〜……!」

    ハンネス(ほっ……)
  29. 37 : : 2019/07/03(水) 23:19:24
    ミカサ「全く……いい歳して、店に女の子来る度口説くのはやめた方がいい」ハァ-…


    ハンネス「バカ。口説いてんじゃねぇやい。セールストークってやつだ!」


    ミカサ「だから奥さんに叱られる」クスクス


    ハンネス「お、おめぇなぁ〜……先週のアレ見てたのかよぉ〜ッ!」


    ミカサ「奥さん優しい人なんだから大事にしなきゃ」


    ハンネス「アレが優しい、ねぇ……お客に対しちゃあ、そりゃそうなんだろうがよ。最近の俺への扱いが酷いの何のって」トホホ…


    ミカサ「あははっ」クスッ


    ハンネス「はぁあ〜……アイツもなぁ〜、ちょうどお前くらいの年頃の頃は可愛かったんだけどよォ〜。
    どうして女って歳とるとヒステリックになるかねぇ。 ミカサ、お前はそのまんまでいてくれなよな」


    ミカサ(それはお互い様なんじゃないだろうか……?)
  30. 38 : : 2019/07/03(水) 23:20:41
    さっきの者ですシリーズものとかじゃなくて普通に書く方です。書き方読んでもわからなかったんで教えてください。
  31. 39 : : 2019/07/03(水) 23:24:42
    ハンネス「しかしこうして大きくなったミカサ見るとアレだな。
    もうエレンの子供と一緒に買い物に来てくれる日も近いかもしれんなァァ〜ッ。なぁ〜んてッ!」ククッ


    ミカサ「!?」カァッ///

    ミカサ「こっ!ここここッ!!こどどどど……ッ!!!『子供』なんて///
    ハンネスさん!私たちはまだ17……!まだ早いッ!」


    ハンネス「ガハハッ!!良いねぇその初々しい反応!そーゆー所はやっぱ歳相応で可愛らしいぜェ〜ッ」


    ミカサ「セクハラ……///
    ……『初々しい』も何もエレンとはそういうのじゃないし、ただの大切な家族……」



    ミカサ「それにエレンは私の事……」


    ハンネス「?」


    ミカサ「……」シュンッ
  32. 40 : : 2019/07/03(水) 23:26:16
    >>38
    スレッドの建て方は分かりますか?スレッド建てたら、このスレに投稿してるみたいに本文から文章打ち込むだけですよ
  33. 41 : : 2019/07/03(水) 23:35:59
    ハンネス「お、おいおい……どーしたんだよ……」


    ミカサ「別に……」


    ハンネス「別に、じゃねぇよー……明らかに何かあっただろォー……ま、例の如くアレか?
    『俺にベタベタすんなッ!』っつー、思春期男子特有の……面倒くせぇ……」


    ミカサ「……だいたいそんなところ。私はエレンを守りたいだけなのに……」


    ハンネス「……ま、アイツの気持ちも分からんではないがね。 小さい時からよォ、アルミンに突っかかる悪ガキにエレンが猪突猛進して……ソレをお前がブッ飛ばして。
    エレンが『余計な事すんじゃねぇッ!』ってか?」


    ミカサ「……」コク


    ハンネス「アイツも、もうガキじゃねぇんだから割り切りゃいいのに……って、まぁ男の17はまだガキか」


    ミカサ「……」


    ハンネス「オメェは小さい頃から、身体はシッカリ女の癖して、体格の良いガキどもをバッタバッタなぎ倒してたもんなァ」


    ハンネス「俺ァ見てて時々ゾッ!とする事もあったね。何せあんまり強いんで、触れてさえいないのに相手がふっ飛んでるよーに見えた事もあったぐらいだからな」



    ミカサ「えっ」



    ハンネス「『もしかしてサイキッカーなんじゃねぇのォ〜ッ!?』って本気で思ってた事もあったぐらいだかんな!ガハハッ!!」


    ミカサ「あ、あはははは……!まさか……そんな、サイキッカーだなんて……テレビのインチキですよ。『超能力者』みたい……あはははは……!」ダラダラ…!!


    ハンネス「だよなぁ〜ッ!霊能力ゥゥゥゥ〜ッ!!ガハハハッ!!バッカらしっ!!」ゲラゲラ



    ミカサ「あははは……!」ダラダラ…!!

    ミカサ(言えない……絶対に言えない。小さい頃はスタンド能力が制御し切れず、無意識のうちに悪ガキをふっ飛ばしてただなんて……口が裂けたって、絶対に……!)アハハハ……!
  34. 42 : : 2019/07/03(水) 23:54:30
    ハンネス「がっはは……あぁ〜あ……笑った、笑った……!そんで?ウチではもう買っていかねぇのかい?」


    ミカサ「えぇ、これくらいで」


    ハンネス「そうかい。そんなら今日の夕食はアイツの好きなホラ……何だっけ?」




    ミカサ「フィッシュパイ?エレンの好物」


    ハンネス「そうそう、それだよ!アイツ単純だからよォ〜ッ、好きなモン食わせときゃ案外コロッと仲直りできるかもしれんぜ?」


    ミカサ「あはは!ありがと、ハンネスさん……っと、もうこんな時間……3時半からローゼンさんとこの八百屋で特売あるんだった。それじゃあ」ペコッ


    ハンネス「おう、また来てくれよな」

    ハンネス(う〜む……ミカサの奴、やはり若妻の貫禄……!)
  35. 43 : : 2019/07/04(木) 00:11:11
    ーーーー


    ガヤガヤ…!!


    ミカサ(……やっぱり凄い人だかり)スタスタ



    八百屋の特売に行ったらその次は今朝壊れたガスコンロを見に行って、その次は……



    ミカサ「……」


    ドンッ!!!


    ミカサ「!?」グラッ


    「いっててェ〜……!」


    ミカサ「?……」クルッ


    ミカサが後ろから何かにぶつかられ背後を見ると、そこには8歳くらいの少年が反動で倒れていた


    少年「くっきゅうぅゥ〜〜ッ……ちっくしょ、膝擦りむいちゃった、手もだ。
    ツバ付けとけ、ペッペ ッ……!」


    ミカサ「……」
  36. 44 : : 2019/07/04(木) 00:15:31
    ミカサ「君、大丈夫?」スッ


    少年「あッ、おねぇちゃん急にぶつかっちゃってごめんね!
    でも一人で立てる、手はイラネ。ほら、俺今、手ェ擦りむいてツバ付けたばっかだからさァ〜、汚ねぇからさァ〜」スクッ


    ミカサ「そう……でもこの人混みの中走ってちゃ危ない」


    少年「反省するけどさ。でも俺、今マジに急いでんの」


    ミカサ「……急ぐ」ボソッ


    やっぱり、この商店街を歩く人たちは今日……何か急いでいる


    やはり何かあるのだろうか……例えばこう、イベントとか……大きい


    少年「つーわけで。ぶつかったのは悪いけど、そんじゃあね。ねぇちゃん」スッ


    ミカサ「待って」


    少年「?」


    ミカサ「あなた……いや、あなただけじゃなくて何だかこの通りにいる人たち。いつも以上に忙しそうにどこかを目指してるようだけど。
    何かあるの?」


    少年「あれぇ〜ッ、うっそ知らねぇのねぇちゃん!?今日はよォ〜『奇術師』がこの街に来るんだぜッ」



    ミカサ「奇術師?」

    ミカサ(アレか……マジックショーとかする。テレビによく出る……ほとんどインチキの)
  37. 45 : : 2019/07/04(木) 18:11:23
    期待!この作品スキ♡(´。•ㅅ•。`)
  38. 46 : : 2019/07/04(木) 19:17:20
    >>45
    期待ありがとうございます♡
  39. 47 : : 2019/07/04(木) 19:21:26
    少年「街の北にある『港公園』で演るんだってさ。
    そこ行くにはここの商店街走るのが一番早いってわけ」


    ミカサ「この人混みじゃ普通に別の道行った方が早いと思うけど。ワザワザこんな狭い通路」


    少年「あっ、それもそーか。頭いいなおねぇちゃん!」


    ミカサ(『港公園』か。エレン達がちょうど今釣りに行ってる……軍港跡に近い)


    少年「そうだ!よかったらおねぇちゃんも来なよ!『港公園』の浜辺の隅っこのチッポケな所でやるから入場は無料だぜェーッ。
    ま、この大人数で席取れるかどーかは知らねぇけどさ……って、だから俺は急いでんだった!ほら、早く行くぞねぇちゃんッ!」ワタワタ


    ミカサ「ううん。悪いけど私買い物あるから」フリフリ

    ミカサ(それに港の方に行くとエレンと鉢合わせてしまうかもしれないし……少し気まずい)


    少年「ちぇっ、何だよケチなねぇちゃんだなァ〜せっかく誘ってあげたのに。
    そんじゃあねッ、ぶつかってゴメン!」ダッ!!



    ミカサ「あっ、ちょ……!もう……走るなって言ったばかりなのに……」ハァ…



    ーーーー


    …………
  40. 48 : : 2019/07/04(木) 19:24:30
    …………


    ーーーー


    軍港跡前の食堂


    ガララッ!!


    \アリヤトヤシタ-ッ/


    エレン「ふーっ、食った食った!」ニコニコ


    アルミン「機嫌直ったね」スタスタ


    エレン「そりゃお前、美味いモン喰えば自然と笑顔にもなるものだろ」スタスタ


    アルミン「フィッシュサラダにフィッシュパイ……君、ホントーに魚料理好きだよね」


    エレン「んん、何かな。魚っつーか『海』に関する事は小さい頃から好きだぜ。
    この『リヴァンプル』の港街にだって生まれた頃からずっと住んでるけどよォー。なぁーんか生まれてくるもっと前から憧れの気持ちがあったような気がすんだよなぁー……『海』」


    アルミン「あ、何かソレ僕もすごく分かるよ。前にミカサも言ってた。
    僕たち前世は相当『海』に縁が無い人生だったのかもね」
  41. 49 : : 2019/07/04(木) 19:32:38
    エレン「おっ?『前世』ってお前……そーいうスピリチュアルな事信じる奴だったか?
    吸血鬼信じて十字架とかニンニクとか持ち歩いちゃうタイプか?」


    アルミン「スピリチュアルも何も無いよ。実際に『スタンド能力』っていうオカルト現象が身近にあるんだから」


    エレン「ま、まぁ……そういやそうだったな」


    ドンッ!!


    エレン「!?……いって」


    少年「ぐぬぅッ!?」ドサッ


    エレン(何だ……子供がぶつかってきた?)サスサス


    アルミン「大丈夫?」


    少年「いっててて……クッソォー、またぶつかっちゃった。さっきのねぇちゃんが言った通りだな。
    『走るな』って……いや、でも俺マジに急いでるんだし!仕方ないよね」スクッ


    エレン「ったく、あぶねーな。何ブツブツ喋ってんだよ」ギロッ


    少年「ヒイィィィッ!!怒らないでくれよおにぃちゃんンンーーッ!!謝るからさ……ゴメンぶつかって……!」シュン


    エレン「え、いや分かりゃいいんだけどよ……つーか俺そんなに怒ってねぇぞ?」


    アルミン「エレン目付き悪いんだから。睨まれたらそりゃ怖いよ。せめて言葉だけは優しくしてあげて」


    エレン(いや……だから俺、別にそんなキビシー事言ったつもりないんだがな……)シュン

    エレン「それよりお前、膝と手ェ擦りむいてんじゃねぇか。大丈夫なのか?」


    少年「大丈夫だよ。これさっき商店街でねぇちゃんにぶつかって出来た傷だから……大丈夫。ほら、ペ ッペッってツバ付けといたから、ダイジョーブ」グイグイ


    エレン「わ、分かったから傷口見せつけんな。きたねーな!」ギロッ


    少年「ご、ごめんなさいィィッ!!」


    エレン「えっ」ビクッ


    アルミン「エ・レ・ン〜?」ジロッ


    エレン「え、いや……だから、あの……怖がらせるつもりはなくてだな……フツーに喋っただけ……!」オドオド

    エレン(そんなに俺って怖ェのかな……目付きとか……)
  42. 50 : : 2019/07/04(木) 19:57:22
    アルミン「そんなに急いでどこに行くつもりだったんだい?」


    少年「ショーがあるんだよォー、『奇術師』の!」



    エレン「奇術師......マジシャンの事か?」


    少年「それがあるからさァ〜僕、お家でやってる店の番サボって観に行く事にしたんだよ。エヘヘ」


    エレン「サボんなよ……」


    アルミン「よっぽど好きなんだねぇ」


    少年「勿論だよ!シルクハットから鳩出したり口から万国旗ピロピロ出したりさァー、魔法みたいで大好き!
    テレビでしか見た事無かったからさァ〜、まさかこの街に来るなんて」キラキラ


    アルミン「それは楽しそうだね」ニコニコ


    少年「うん、本当にそうなんだよ!あっ!だからこんな話してる場合じゃなくて俺急いでるんだったよ、マジで!
    それじゃあね、にいちゃん達!ぶつかってごめんなさい!」タッ!!


    アルミン「あはは、気を付けなよ〜?」フリフリ


    エレン「ったく。また誰かにぶつかったりしなきゃいいけどな」
  43. 51 : : 2019/07/04(木) 20:01:31
    アルミン「マジックショーか。ここら辺で人を集めるんだったら多分『港公園』でやるんだろうけど……エレンこの街でこんなのやるだなんて知ってた?」


    エレン「いいや、今初めて聞いたぜ。
    もっと前から告知しておいてもおかしくねぇとは思うんだがな、こんな寂れた街なんだから尚更よ」


    アルミン「だよねぇ。僕だって知ってたら、今日これから出かける予定明日に延ばしたのに……」


    エレン「えっ、何だよお前。今から出かけるのか?」


    アルミン「うん。隣町の親戚の家にちょっとね」


    エレン「あぁ。アルミンの爺ちゃん、本屋畳んでそっちに越すんだっけか」



    アルミン「そうそう。それで相談事があるらしくて……今日これから話に行くんだ」


    エレン「何だ。じゃあショーは俺一人で観に行くか……それじゃあな、アルミン」タッ


    アルミン「うん、明日会ったらショーの内容どんなだったか聞かせてくれよ」フリフリ


    エレン「お〜う」フリフリ



    スタスタ…


    エレン「……」

    エレン(さて、俺も公園行くか)


    タッ…
  44. 52 : : 2019/07/04(木) 20:05:47
    スタスタ…


    エレン「……」



    ……マジックショー、か。 『世界大戦』が終わってから、もう10年が経つ。


    俺の国は戦勝国とは言え……被害も甚大だったし、俺の母……『カルラ・イェーガー』が殺された頃……


    その辺りはまだ復興も全然進んでなかったし、それこそこんな『マジックショー』だなんて華やかなモン……拝める時代じゃなかったよな。




    エレン「......平和な時代になったよなぁ」
  45. 53 : : 2019/07/04(木) 20:25:15
    戦争の惨禍が過ぎ去り、平和な時代になった今でも、俺の心には『復讐の炎』が灯っていた。


    それはそうだ。この世界のどこに、自分の母親が殺されて、相手を恨まない人間がいるだろうか。


    しかしながら、俺の『復讐心』の炎はどこか歪であり、演劇や小説で描かれるような『周りを巻き込んで燃えんとす赤黒い復讐の炎』では無かったのだ。


    自身の肉親を殺された割にはどこか冷めていて……静かな炎。
    だけど決して消えてしまいそうな程弱々しい訳ではない、確かにこの胸の内でゴウゴウと激しく燃えている。


    奇妙な復讐心。相手の事を恨む一方でどこか冷静な……






    確かにそこにあるはずなのに自分の目にすら見えない『透明な色をした燃え盛る炎の復讐心』。






    それが俺の胸の内にはあった。
  46. 54 : : 2019/07/04(木) 20:27:34
    何故こんな奇妙な精神を持ち合わせてしまったかと言うと、その原因は俺の父親、『グリシャ・イェーガー』にあった。




    母さんを殺されてから暫くの間、俺は世間一般の復讐劇で描かれるような『復讐心』を滾らせていた。


    しかし、父さんはと言えば偶に思い出したかのように涙を流す事はあったが、それでも母さんを殺した男の恨み節を垂れるような事は一度も無かった。



    そのどこか達観したような、冷めた態度に俺は心底腹が立って遂には我慢が出来なくなり、喧嘩をした事があった。






    ーーーー


    …………
  47. 55 : : 2019/07/04(木) 20:47:16
    …………


    ーーーー


    〜8年前〜



    エレン「何でだよ!?父さんは悔しくないのか!?母さんはもう戻ってこないんだぞ!?何で……墓の前に立つ度にそんな……興味ないみたいな……!涼しい顔が出来るんだよ!?」バンッ!!


    グリシャ「……」


    エレン「父さんは『復讐』しようとは思わないの?母さんの事が大事じゃないのかよ!?」


    グリシャ「エレン……」


    エレン「俺の名前なんて呼ぶな!母さんを殺したヤツの『名前』は!?思い切り叫べよ!母さんのお墓の前で!!!
    名前が分かったんなら……俺がソイツの事、探し出して……ぶっ殺してやる!!!」


    グリシャ「!……エレン!!!」キッ



    パンッ……!




    『ぶっ殺してやる』……その言葉を聞いた瞬間、父さんはまるで恐ろしいモノを見るかのように俺の方に目を向け……そして、次の瞬間には何かを噛みしめるみたいに苦しい顔をしてから、俺の頰を殴った。



    エレン「……ッテェ……!何すんだよッ!!!この野郎!!」ガァッ!!


    グリシャ「……」パシッ


    エレン「!? 離せチクショウ!!!」ジタバタ



    当時9歳だった俺が殴りかかるのを父さんはいとも簡単に受け止め……そしてそのまま離さずに、ただ 『エレン……!エレン……!』と俺の名前を呼び続けた。


    俺は暴れながらも、名前を呼ぶのに対して『クソ野郎』だとか『バカ親父』……『腰抜け野郎』『薄情者』『弱虫』……


    その他にも、今まで使った事が無いくらいに汚くて稚拙な言葉で返した。


    遂には俺が



    『父さんは自分の家族が大事じゃないんだ!!!だから母さんの復讐をしないんだ!俺の事を殴るんだ!』




    ……そう言った瞬間に、父さんは俺を抱きしめていた。
  48. 56 : : 2019/07/04(木) 22:01:01
    エレン「!!……は、離せよ!!!」


    グリシャ「……大事だから殴るんだ……!大事だから『ぶっ殺してやる』だなんて……そんな言葉……使って欲しくないんだ……!」



    『頼むから、エレン……私と同じ過ちを繰り返さないでくれ……『憤怒』に身を焦がすな……人を憎むなよ……!」



    エレン「……!」


    グリシャ「……エレン。私自身、この『大戦』で沢山の命を奪ってきた。突然身についた『炎のスタン ド能力』を使って……何人も……何人も……!!!」


    エレン「そ、そんなの当たり前だ!!父さんは、仲間を沢山失ったんだろ!?だったら、その復讐のために仇をとるのは間違った事なんかじゃない!!
    母さんのもそうすればいい!!」



    グリシャ「……母さんが殺されたのは私のせいだ……!」



    エレン「え……」



    グリシャ「……元はと言えば、私はただの無力な『軍医』だった。しかし突然スタンド能力に目覚め……殺された仲間の復讐をするようになった。
    『戦争』という異常な環境ゆえにこの殺しには正当性ができたが、『復讐』そのものに正当性なんてない……!
    己の中で燃え盛る激情の炎をぶつけるだけの……愚かな行為だ」


    エレン「……!」


    グリシャ「『復讐心』というものは、まるで炎のように広がって行き……そして憎しみで世界は包まれる。
    カルラの死は、ただその炎が巡り巡って燃え移っただけなんだ……!」



    グリシャ「私は仲間を殺され……その復讐に敵国の兵士を焼き殺した。
    そして、その数少ない生き残りにもまた 『復讐の炎』が燃え移った」



    エレン「もしかして……その生き残りって……」



    グリシャ「あぁ、カルラを殺した男だ。
    私や今のお前のように復讐の炎を宿した彼は、大戦が終わってすぐにお前の母親を殺したんだ……」


    エレン「そんな……!」




    グリシャ「そう、『憤怒の罪』は炎のように燃え移る。それが私の炎のスタンドの意味なんだ」


    エレン「……ッ!」
  49. 57 : : 2019/07/04(木) 22:10:24
    グリシャ「……」


    エレン「だ、だからって!俺たちが復讐を止める理由にはならない!!」


    俺や父さんの胸の内で燃えている『復讐の炎』はどこにぶつけりゃいいんだよ……?


    何かにぶつけなくちゃ、俺たちは……!



    グリシャ「いいや、エレン。この炎は人から生み出されたモノではない。人の手の及ばない『罪』が火種なんだ。
    誰かが死ねばこの炎が消えるといったような……そんな単純なモノではないんだ」





    『耐えねばならんのだよ』





    エレン「くそっ………ちくしょう……母さん……!母さん……!」ポロポロ…!!




    グリシャ「……だからお前に母さんを殺した男の『名前』は教えられない。奴の名前を知ったのなら、その時お前は抑えられぬ激情に駆られ『復讐』する事にしか生きる意味を見出せなくなるだろう……
    だから、お前にヤツの名前は教えない」


    エレン「……ッ!」ギリッ


    グリシャ「この炎は私たち『イェーガー家』で燃え尽きて……そして終わらせなくてはならない」





    俺はこの日、この世には誰一人として『悪人』はいないのだと悟った。



    まず根底にあるのは『罪』だけ。人が『悪事』を働くより先に……『罪』がただひっそりと佇んでいる。


    この世の最初は『火』だったように……人の手の及ばないどこか世界の奥深く……そこに『罪』の源があって、時折、溶岩が噴出するかのように地から這い出し、人々の心を蝕み犯す。


    人の心は憤怒に燃える。



    『憤怒の罪』に身を焦がす者は、まるで修羅のようだが、しかし。
    それでも決して彼は『悪人』ではないのだ。




    この世には『悪人』なんていないんだ。






    ーーーー


    …………
  50. 58 : : 2019/07/05(金) 18:17:43
    …………


    ーーーー


    エレン「……」スタスタ…


    エレン(もしも母さんを殺したあの男がもう一度俺の目の前に現れ……そして、また他の誰かを殺そうとしているのに立ち会ったのなら……俺はソイツを止めるどころか……殺してしまうだろう)


    だけどそれは決して私怨のためじゃない……その男がこれ以上、この世に『復讐の炎』を広げないため……


    憎むのは『人』ではない。『罪』だ。



    エレン(いや、本当にそうなのか……俺は奴を殺す『口実』が欲しいだけなんじゃないのか……?
    綺麗事。自分の心の中の響きが良いように……そう思いたいだけなんじゃないのか?)





    分からねぇ……分かりたくねぇな。





    だから俺の心の中には今でも『透明な炎』が燃えてるのだろう。





    エレン「……」スタスタ…

    エレン(そろそろ『港公園』だ。嫌な事思い出しちまったな。ショーでも見てスッキリしよう……)



    ーーーー


    …………
  51. 59 : : 2019/07/05(金) 18:21:07
    …………


    ーーーー


    少年「はぁ……はぁ……!」タッタッタッ…




    少年は走っていた……


    そう。先ほど商店街でミカサにぶつかり、軍港跡の食堂でエレンにぶつかった、あのそそっかしい少年である。


    先ほども彼らに説明したように奇術師が来るという『港公園』のマジックショーへと急いでいた。



    入り組んだ通路を駆け抜ける……



    そこは大きな港街にはよく見られる『コンテナターミナル』であった。


    はるか異国からの荷物をその中に蓄えている 『巨大コンテナ群』……その立方体が構成した複雑奇怪な迷路を走り抜けているのだ。



    タッタッタッ…!!



    少年「へへっ……!ちぃーっと複雑そうに見えっけどよォォ〜〜ッ。この『コンテナターミナル』を通り抜けるのが『港公園』への一番の近道だって俺知ってんだもんねェーッ。
    マジックショーは一番先頭で見るって決めてたからな!」タッタッタッ…!!
  52. 60 : : 2019/07/05(金) 18:33:08
    キュイッ!!


    少年「よっしゃぁー!ここの角を曲ばればすぐそこだぜェーッ!!」タッ…!!




    ドンッ!!!




    少年「ッ!?」ドサァッ!!


    ???「……?」ギロォッ!!



    少年「ヒィィィィッッッ!!!」ビクゥッ!?


    ???「……」




    ゴゴゴゴゴゴ……!!




    少年「あわわわわ……!!『二度あることは三度ある』って言うか……!!また人にぶつかってしまったァァァ……!!!」



    ???「……」ジロォ-ッ



    少年(ヤベェよォォ~ッ!!メチャクチャ見てるよォォォォ~ッ!!!すっげぇ怒ってる!!さっきの ねぇちゃんやにいちゃんと違って……!謝らなきゃ……ッ!!)アワアワ…!!

    少年「あ、あの……!」

    ???「さっきまでよォォ〜、『港公園』にいたんだ」

    少年「!?」

    少年(へ……?)

    ???「だからよ、さっきまで公園にいたんだッ!!俺はな!
    この街に来るのは久々だから『なぁんか面白い所ねぇかなぁッ?』って暇そーにしてるジジイに聞いてみたんだ。そしたらよォォ〜……!」



    ???「紹介されたのが、そこにある『港公園』だとォォォォ〜〜ッッッ!?くそックソッ!!!この俺を舐めてんのか田舎モンがッ!!全然ツマンネェーじゃねぇかよッ!!クソッ!クソッ!」ドガッドガッ!!



    少年「ひっ、ヒィィィィ!?」

    少年(なっ、何だ!この『オッサン』!?)


    ???「その上、この『コンテナ置き場』で迷っちまうしよォォ!心底『イラつ く』ぜッ!!!そんでもって一番ムカついたのは、そんなイラついた時にぶつかってきたガキ!!!」ジロッ!!


    少年「ヒッ!?」


    ???「『お前』だァァァッッ!!!」ドグァァッ!!


    少年「ご、ごめんなさいッ!!!ぶつかってしまって!おじさんッ!!」ペコォーッ!


    ???「『おじさん』だと?ふざけんじゃねぇよお前ッ『お兄さん』ダロオォォッ!?」


    少年「……ご、ごめんなさいッ!お兄さん!!」
  53. 61 : : 2019/07/05(金) 18:47:18
    ???「ムカつくぜッ!腹の底から……マグマみてーにッ!スッゲェ『ムカつく』ッ!!!
    お前のその顔とかよォォ~~、見てるだけで……!」


    少年「か、顔が『ムカつく』だなんて、そんな……い、言いがかりだッ!!」


    ???「『口答え』!これもポイント高いぜェーッ!!!
    それにお前……さっき『二度あることは三度ある』って言ったな?つまり少なくともこの俺以外の2人を『怒らせた』ってわけだ……!これもポイント高いぜ」


    少年「ポイント……?」

    少年(何言ってんだコイツ……?)



    ???「お前には中々よォ〜、『人を怒らせる才能』があるようだな……よし、気に入った。お前が『適役』か……ブツブツ……!」


    少年「お、怒らせる才能?そ、そんな才能いらねぇよ!」



    ???「本人は望まなくても身に付いてしまうのが『才能』なんだぜぇ〜。宿命のようにな……!……いいよ、お前は。気に入った。だから特別に教えてやる」


    少年「……」


    ???「お前……マジックショー観に来たんだろう?だから急いでて俺にぶつかった……こんな人気のない『コンテナターミナル』の通路で……!」


    少年「そ、そうだよッ!俺急いでるんだ!だからここ通せよッ!」


    ???「イラッ……!……ホントーに『怒らせる』のが得意だな……!ま、だから気に入ってんだが。
    いいから聞けって……!そのショーだが……『奇術師』は来ねぇぞ」


    少年「えっ……?」



    ???「何故なら、このショー自体が元から無かった、俺がでっち上げた嘘の告知だからだ」



    少年「じゃ、じゃあ『奇術師』ってのは何だったんだよッ!今日来てくれるんじゃないのかッ!?
    僕らの街に……マジックを披露しに……」



    ???「だぁいじょうぶだよォ、ガキィィィッ!!心配すんなって!一つだけショーを始める方法があるッ!」


    ゴゴゴゴゴゴゴ……!!


    少年「……な、何だよソレ!」


    ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!


    ???「それは……!」ズズズズ……!!


    ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!


    少年「ッ……?」フラッ…

    少年(……何だ、コレ?意識が……)




    ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………!!




    ???「───お前自身が『奇術師』になる事だ、少年よ。
    『怒りと殺戮のショー』を演じる奇術師に……な」ニヤリ







    ーーーー


    …………
  54. 62 : : 2019/07/05(金) 18:51:50
    …………


    ーーーー


    〜港公園〜


    エレン「ふぅ……」ザッ


    ガヤガヤ……!!


    エレン(着いた)



    港公園!


    エレン達の住む港街『リヴァンプル』で一番大きな、イベントを行う際によく貸し出される公共施設である。


    海開きをしたビーチには『観覧車』や『メリーゴーランド』、さらに『テント・サーカス』などのように、砂浜であるのにも関わらず、まるで遊園地のようなアトラクションが満載である!


    そこから海へ向かって『桟橋』が突き出ており、それがグングン広がっていく……謂わば海上に設置された木組みの足場なのだ。


    そして、その桟橋上にも砂浜と同じようにジェットコースターやゲームセンターなどのアミューズメント施設が乱立している……『海上遊園地』である!
  55. 63 : : 2019/07/05(金) 18:58:59
    エレン「……」


    エレン(小さい頃は父さんによく連れて行ってもらったよな。ミカサや……それにアルミンも連れて行ってもらって)


    ワイワイガヤガヤ…!!


    砂浜には、まだ5月であると言うのにも関わらずビーチパラソルが乱立してあり、人でいっぱいだ。


    当然、人が多いという事は彼ら相手に商売する『売り子』などもウヨウヨ蠢いていて、港公園は大変賑やかだった。



    売り子「お兄さぁーん、ポップコーンお1ついかぁーっすかァ?」


    エレン「……何味あるんすか?」



    売り子「んーっとですねェ、スタンダードに『キャラメル』や『塩』もありますけどォー、変わり種で 『ショウガ味』とか『クリームソーダ』ってのもありますよォー?」


    エレン「げぇっ!クリームソーダ味だァ?あり得ねぇだろッ、ないない!普通に塩味きいたの頼むよ」



    売り子「いやいや、そんな事言わないでよお兄さんン〜。アタシも最初見た時は『ゲッ!何じゃこりゃァ〜、こんなの売れるわけないじゃないッ』って食わず嫌いしてたんですよォ。
    でも店長に言われて食べてみたら美味しーの何のって!」


    エレン「へ、へぇ〜……」ウサンクサ-


    売り子「『キノコを一番最初に食べた人』ってゆーかー、食べてみたら意外と美味しいッ!どうですお兄さん?お一つゥ〜、ポップコーン『クリームソーダ』。
    食べなかったら人生の『5割』損しますよ?ウフフ」



    エレン「じゃあ俺の人生は今『マイナス2割』だな」


    売り子「えっ」



    エレン「この前も同じような事言われたんだ……
    『これ食わなかった人生の7割も損する』って。

    『10割−(5割+7割)=マイナス2割』

    普通に塩風味のポップコーンで頼む」チャリン


    売り子「……マイドアリィー」シラケ-
  56. 64 : : 2019/07/05(金) 19:01:39
    エレン(んっ、うまっ)ポリポリ

    エレン「ところで、今日ここにマジシャンが来て『マジックショー』やるって聞いてたんだけど……それって、あの人だかりでいいのか?」ユビサシ


    売り子「そーそー。アタシもさっきまで知らなかったんだけど……さっき始まったばかりよ?」


    エレン「ふーん……」

    エレン(けっこう人いんなぁ。ま、どうせインチキなんだろうが……その『タネ』が分からない分には暇つぶしにはなるよな)
  57. 65 : : 2019/07/05(金) 19:12:28
    エレンは買ったポップコーンをつまみながらその人だかりの方に向かった。


    ガヤガヤ…!!


    ワァ-ワァ-!!ヒュ-ヒュ-!!


    エレン「おぉっ、けっこうな歓声だな。なかなか面白いって事か」ポリポリ



    会場は砂浜の端にあるチッポケな場所ではあったが簡易なステージがこしらえており、そこでいわゆる『奇術師』と呼ばれる者がショーをしているようだった。



    エレン「っつーかよォー、あのステージにいる『奇術師』ってヤツ……ずいぶんと小さいっつーか……
    まだガキじゃねぇか……?妙な『仮面』をつけてるせいか、雰囲気は出てるが……」


    ワァワァ…!!


    エレンの言う通りであった。



    ステージ上に立って次々と手品や芸を披露する『奇術師』と呼ばれる者は、まだ10歳にも満たない子供なのであった。


    マジシャンらしい、胡散臭い『道化の仮面』を被った少年である。



    仮面の少年「さぁさぁ……お次は……!」


    エレン「妙だよなぁ。フツーこーいうのってよォ、胡散臭いヒゲ生やしたオッサンとか、若い兄ちゃんが『華麗なる魔術師』……みてぇな売り文句でやるもんじゃねぇの?決して子供がやるモンじゃねぇ。
    そもそもあんなガキに、例えインチキだとしても高等な手品や奇術なんて披露できんのか……?」


    ゴゴゴゴゴ…!!




    仮面の少年「私の今身に付けてる『白い手袋』……ありますよね?」




    エレン(それに、どっかで見た事ある気がすんだよなぁ。しかも最近……気のせいだろうがよ)





    仮面の少年「この『白い手袋』を外しまして……!」スルッ





    エレン「!?」ハッ

    エレン(あの『白い手袋』を外した後の……あの手についた『擦りむき傷』……)





    仮面の少年「この何も入ってないハズの『白い手袋』からッ!」バッ!!





    エレン(あの奇術師とかいうガキ……まさか……『見覚えがある』ぞ)





    ウジャア…!!


    白い鳩「ポォ-ッ ポォ-ッ」バサァッ!!







    「「キャアァァァァァッッッッッ!!!」」







    バサバサバサァッ!!!



    奇術師……いや、仮面の少年が取り外した白い手袋から数十羽程の『白い鳩』が一斉に飛び出した。


    あんな狭い『手袋』の中にあれだけの数の鳩が存在してたなんて考えられない……それ故に『奇術』なのだ。





    「スッゲェェェェェェ!!」


    「何であんな狭ェ場所に『鳩』がァァァッ!?アバオオオオオッ!!考えられねェーッ!!!」


    「しかもまだ小さい子供なのに!すっごぉぉーい!キャワイイ〜ッ!!」



    ワァワァ…!!



    観客たちは驚きの声をあげた。


    エレンも当然そのレベルの高い奇術に驚いてはいたが、それ以上に不思議に思った事があった……!



    エレン(あの仮面被ってるガキ……奇術師を名乗っているガキ……!
    確かに今日会った……会ったばかりだ!
    軍港跡の食堂前で!俺にぶつかってきたあのガキだ!
    『マジックショーを観に行く』ってはしゃいでた……!)



    ゴゴゴゴ…!!
  58. 66 : : 2019/07/06(土) 08:47:37
    エレン(あの『手についてる擦りむき傷』…々間違いない!俺にぶつかってきた……軍港跡の食堂で……!)


    ーーーー


    少年『大丈夫だよ。これさっき商店街でねぇちゃんにぶつかって出来た傷だから……大丈夫。ほら、ペッペッってツバ付けといたから、ダイジョーブ』


    少年『ショーがあるんだよォー、『奇術師』の!それがあるからさァ〜僕、お家でやってる店の番サボって観に行く事にしたんだよ。エヘヘ』


    ーーーー


    エレン(あの時の……!)


    ゴゴゴ…!!


    エレン(仮面で顔が隠れていて分らないが……あの背丈や、着ている服……それに手についた『擦りむき傷』がアイツと同じ!)




    仮面の少年「お次は飛び立った『白い鳩』を呼び戻しィ〜、『真っ赤なバラ』に変えて差し上げましょう!」



    キャ-!!



    エレン(何でアイツがこのステージにいるんだ……!?)


    それがエレンの一番の疑問だった。


    エレン(いや、このマジックショーに『観客』としているんだったら分かる……すっげぇ分かる。
    だがアイツは『奇術師』としてステージ上に立ち!あんなにも華麗な奇術を魅せつけているッ、それが奇妙!)



    食堂前でエレンと少年が出会った時、確かに彼はショーを『観に行く側』の人間だったのだ。


    それなのに彼は今、不気味な面をつけて!自分自身が『奇術師』だと言わんばかりにッ!ステージ上に立っている!




    仮面の少年「ピュイ-ッ!!」



    白い鳩「ポポォ-ッ!!」バサバサ


    バサバサバサァッ!!!


    仮面の少年が口笛を吹くと、それに呼応するように、鳩たちは戻ってきた。



    エレン(何であのガキにあんな『技術』がある!?アイツは食堂前で会った時、ただ奇術に憧れるだけの平凡な少年だったはずだ。それなのにステー ジ上に立ってあんな……並外れたショーを?)


    呼び出された白い鳩は先ほどの宣言通り、少年の指に止まると、次々に真紅のバラへと姿を変えていっ た……!


    バラ「」ポサッ…



    「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」



    エレン(誰かに『代役』を任されたのか……?いや、そんな訳はない)




    仮面の少年「……!」


    ゴゴゴゴゴ……!!
  59. 67 : : 2019/07/06(土) 08:59:24
    エレン「なぁ」トントン


    男「あぁ!?何だよテメェー、人が夢中になってる時によォー」


    エレン「ご、ごめん。でも少し聞きたい事があってさ」


    男「んー、何だァ〜?……うわっ、おい!見ろよ!今度は『赤いバラ』が白くなったぞおォォー」


    エレン「......そのブッ飛んだ手品やってる『奇術師』ってさ、アイツ……名前なんていうんだ?」


    男「んああ?オメー、自己紹介の時いなかったのかよ。あのガキは確か……『プアー・マイケル』って 名乗ってたぜ。そういう芸名」


    エレン(『プアー・マイケル』……)チラッ



    ワァワァワァ…!!

    \いいぞーッ!/

       \ヒューヒューッ!/



    仮面の少年「ありがとうございます、ありがとうございます」スッ





    エレン「……その『プアー・マイケル』ってよぉ、パッと見たところまだまだ10歳にもなってないようなガキだけど……けっこう有名なのか?」


    男「? いいやァ、全く」


    エレン「......こんだけ凄いテクニックを持ってんのに?」
  60. 68 : : 2019/08/02(金) 23:08:07
    ケツの穴から一本捻りだせ!勇気とともに!
    そして僕らは風になる
    風になりたい
    風になりたい
    風になりたい

    そして今 風になる

▲一番上へ

名前
#

名前は最大20文字までで、記号は([]_+-)が使えます。また、トリップを使用することができます。詳しくはガイドをご確認ください。
トリップを付けておくと、あなたの書き込みのみ表示などのオプションが有効になります。
執筆者の方は、偽防止のためにトリップを付けておくことを強くおすすめします。

本文

2000文字以内で投稿できます。

0

投稿時に確認ウィンドウを表示する

著者情報
Anjelina

鹿クンが見てる!

@Anjelina

「進撃の巨人」カテゴリの最新記事
「進撃の巨人」SSの交流広場
進撃の巨人 交流広場