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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品はオリジナルキャラクターを含みます。

クリスタ「金の彼女」ヒストリア「銀の彼女」第1話

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  1. 1 : : 2019/06/08(土) 09:37:57
    第1話「N.G.S」



    ーーーー


    自分で言うのもなんだが……私、クリスタ・レンズの一族は名家である。


    チュンチュン…


    クリスタ「……う〜〜ん」ムクッ


    クリスタ(……朝だ。全然眠れてない)フワ-ア


    寝室の窓から目をやると、私みたいな子供には贅沢過ぎるくらいのオーシャンビュー。


    ここ……二階の高さまで伸びた桜の木にはつぼみが膨らみつつある。
    春だなぁ。


    クリスタ(きのう少し夜更かしし過ぎた……お父さんにバレないかなぁ)ウトウト


    スタスタスタ…


    歩いて食卓まで向かう廊下は無駄に長く


    21世紀にしては少々レトロな……いや、かなり時代錯誤な洋燈(ランプ)が延々と壁に掛けられ並んでいる。


    クリスタ(今時わざわざランプに火を灯して明かりをつけるなんて不便じゃない?
    えるいーでぃーにしようよ、LED)スタスタ…


    Y字になった片側の下り階段を降りて、すぐ右に見える重厚そうな木製の扉


    その金の取っ手に手をかけ、私は自分の頼りなく小さな体全身で体当たりするように重い扉を押し開ける。


    ガチャリ


    「「クリスタお嬢さま。おはようございます」」ズラリ


    クリスタ「……みんな。おはようございます」ニコリ


    中で待ってくれているのは、私なんか世間知らずの小娘にも丁寧な言葉遣いであいさつをしてくれるお手伝いさんたち。


    各々が忙しそうに歩き回っていた様子だが、私が部屋に入ってくるなり足を止める。


    手にはふきんや、銀の皿に盛り付けられたスクランブルエッグとサラダ。
    このバカに広い部屋は私の家族の食堂という事だ。


    奥の厨房からチンと音がして、トーストが焼きあがったのが分かった。


    「クリスタお嬢さま、朝食の準備が整いましたよ。お父様もすぐにいらっしゃるそうです」


    クリスタ「うん。席に着いてるわ」
  2. 2 : : 2019/06/12(水) 22:11:50
    現パロエレヒスかな?
    期待
  3. 3 : : 2019/06/12(水) 22:56:14
    何故エレヒス……
  4. 4 : : 2019/06/14(金) 00:20:28
    レンズ家は元々、この小さな港町でこじんまりと金貸し業をしていただけの、いわゆる田舎貴族であった。


    しかし戦後の財閥解体政策の後は、残った元手を用いて本格的に銀行業を営み始め、その資産を順調に増大させていった。


    そして今では、この地方一帯では誰も知らない者はいないほどの大銀行の一つへと成長を遂げた。



    私の父……『ディッカー・レンズ』は、その事業の三代目当主であり、多忙な経営者だ。



    だから本来ならこうして朝、一緒に食事をとる事は、父の張り詰めたスケジュールに大きな負担をかけているはずなのだが……



    カチャカチャ…


    ディッカー・レンズ「どうだ、クリスタ。高校生活にはもう慣れたのか?」


    クリスタ「うん、お父さん。でもわざわざ帰ってきてくれなくても……私もう子供じゃないよ。
    お父さんが忙しい事くらい分かってます」


    お父さんはわざわざ「私と朝食をとるためだけ」に、自家用ジェット機を用いて都会からこの町まで戻ってくる。


    ディッカー「一人娘のお前の顔を見ないと、一日だなんて耐えられない。ダメだ、『私が』寂しくて死んでしまう」


    クリスタ「もう、子離れしなさいよ」


    要するに親バカなのだ。
  5. 5 : : 2019/06/14(金) 00:21:57
    広い食堂には食器と皿がカチャカチャとぶつかる音と、私たち家族2人の談笑だけが響く。


    小さな頃から教え込まれた食事マナーは、ルーティーンワークのように繰り返すだけで、もはや形骸化したただの作業でしかない。


    ディッカー「勉強の方は順調かい?別に無理をしろと言ってるんじゃないんだ。
    疲れたら休めばいい。たまには息抜きも必要だからな」


    いかにも父親らしい、暖かい言葉に対して


    クリスタ「大丈夫だよ。まだ学校も始まったばっかりだし……家庭教師の先生も優しく教えてくれる」


    私は当たり障りのない言葉で返す。


    ディッカー「そうか」ニコリ



    これがレンズ家の、いつも通りの朝食だった。



    ディッカー「ところでだが、クリスタ……」


    クリスタ「?」


    ディッカー「ここ最近、物騒だと聞く。春の陽気に浮かれて阿呆な輩が増えるからな」


    クリスタ「あぁ……そういえばこの前も変質者出たみたいだけど……」


    ディッカー「そこでだ。お前も一人だと、いつ何が起こるか分からない。
    そろそろガードマンの10人や20人でも……」


    クリスタ「結構です」ピシャリ


    ディッカー「そ、そうか……」シュン…


    クリスタ(こんな片田舎で、黒尽くめのスーツたちに囲まれて登校するとかどう考えても目立つじゃん!
    私はもっと普通がいいの!)



    繰り返して言う。本当の本当に親バカなのだ。
  6. 6 : : 2019/06/15(土) 14:59:08
    私は朝食を終えると、最近お手伝いさんに付きっ切りで教えてもらったナチュラルメイクを済ませて玄関のドアを開けた。


    クリスタ「行ってきます」


    ディッカー「ク、クリスタ!やはり心配だ。せめて車での送り迎えだけでも……」


    クリスタ「いらないって!あんまりシツコイと私、お父さんの事嫌いになるから」プイッ


    ディッカー「そ、そんな!」ガ-ン!!


    そう言い残して私は学校に向かった。


    親バカ故に、だいたいこんな調子の事を言えば大抵の事は何とかなってしまう。


    ただし『大抵の事は』だ。私が何と言っても譲らない事だって少なくない。


    それは例えば週に何回か家庭教師にみてもらう授業の復習だったり。


    社交の場においての淑女のマナーのレッスンであったり。


    言い出せばキリがないが、私は別にそれについて、不満を持っているわけではない。


    そりゃ小さな頃は嫌で嫌で仕方なくて、泣いたりもしていたけど、中学に進学する頃にはもう理解はついていた。


    お父さんが私に対して鬱陶しいくらいに手を焼くのは、私がレンズ家唯一の一人娘で、大銀行の令嬢で、それから何より



    お父さんが私を愛してくれているからだ。


    愛がないという事はこの世で一番寂しくて、そして残酷な事だと思う。


    それに由来してか、私には正直周囲の人間に対して八方美人なところがある。


    だから、そんな私を想ってくれている家族の期待に応えない訳にはいかない。
  7. 7 : : 2019/06/15(土) 14:59:29
    分かっている。


    この古い名家から感じる重さは、私を愛してくれる故の重さだ。


    心から理解している。


    だから、日々のお稽古も勉強も、父からの度を過ぎたお節介も、何も不満な事なんてない。思っちゃいけないんだ。



    だけど、私には一つ……


    たった一つだけの、大きな不満があった。
  8. 8 : : 2019/06/15(土) 15:00:31
    愛されるだけじゃ人間、何か足りない。


    八方美人で受け身体質な私だけど、そんな私だって人を愛する事の大切さくらい分かる。


    そして「たった一つだけの、大きな不満」とは、それに起因する事である。
  9. 9 : : 2019/06/15(土) 15:27:44
    ーーーー



    私の家は山の斜面に面した、小高い丘の上にある。
    二階の窓から海が見えるのはそのためだ。


    家を出て急勾配の下り坂を降りると、磯の香りがする。


    この通りは、すぐ近くの海軍基地に勤務する隊員を客層に繁盛している居酒屋やバーの密集した飲み屋街で


    そのうちの一軒の軒先で、店主のおばちゃんが朝からホタテを焼いていた。



    クリスタ「今朝採れたばかりですか?」


    「あんら、レンズさんとこのお嬢ちゃん!
    そうよ〜、今年はよう採れそうだわ!
    一つ食べてくかい?」


    人に好かれるコツは、ヒトから向けられた好意を無下にしない事だ。


    クリスタ「うん、頂きます!」ニコッ


    本来なら香ばしい塩の味付けを朝から贅沢に味わえていたところなのだろうが


    歯を磨いたばかりの私の舌には、ミントっぽい風味の微妙なホタテが転がった。


    クリスタ(うげ〜〜。どうせだったら、もっと美味しく食べたかったなあ〜〜!ホタテ、好きなのに)


    でも、そんな態度を出したらおばちゃんに悪い。


    だから私は、持ち前の八方美人を発揮して


    クリスタ「ん、美味しいです!でも私、もうちょっと塩味ついてた方が好きだなー」


    そう言って笑ってみせた。


    露骨にベタ褒めしてはいけない。
    前向きな感想を述べるが、全肯定せずちょっとした小言をつけ足すのがポイント。
  10. 10 : : 2019/06/15(土) 16:48:39
    飲み屋街を抜けると最近改装したばかりの小さな駅があって


    私の通う公立高校は、ここから二駅分離れた駅の目の前にある。


    去年までこの町を離れて、都会の中学校に通っていた私はいつものクセで、乗車用ICカードをかざそうと財布を取り出したが、当然ここではそんな物使えない。


    というかそもそも改札機自体が存在しない。


    ホームの入り口にポケーッと立っている係員のおじさんに通学定期券を見せる。


    「んあ、いってらっしゃい。頑張ってこいよ」


    おじさんはとても眠そうで、ほとんど半目だった。


    クリスタ(多分、全然違う乗車券見せても通しちゃうだろうなー)ペコリ



    ちょうど私が乗り込んだタイミングで、電車は動き出した。
  11. 11 : : 2019/06/15(土) 16:49:49
    薄い緑の装飾が施された、二両編成の電車は海岸に沿って走っていく。


    今日はよく晴れているので、青い海に目をやると湾の向こう側の陸が見える。


    電車は私をガタゴト揺さぶり、15分ほどかかって学校前の駅に運んでくれた。



    学校は海岸から離れた街中にあるので、そこそこ賑やかだ。


    向かいの地元民ご愛用のスーパーマーケットでは、朝も早くから品出しがされている。


    その隣は駄菓子屋で

    うちの制服を着た女生徒と男子学生が、味の違うお互いのアイスキャンディを半分こずつ分け合って食べながら出てきた。


    クリスタ(まだ北国の春先なのに。カップル2人仲良く体冷えちゃうよー?
    ま、それはそれでラブラブでいいのな)


    どこか皮肉っぽく心の中で呟くが、正直言って羨ましくて羨ましくて仕方ない。

    この皮肉の根元には、妬みや羨望の感情がある事くらい気付いてるし、そもそも、その気持ちをムキになって隠しているつもりもない。


    私は、そのカップルの後に付くように校舎に入った。

    別に意図して彼らの後ろを歩いていたわけじゃないが、2人で狭い道を並んで歩くから追い越せなかったのだ。


    玄関口に入ってようやく私はカップルを早足で追い越した。


    クリスタ(私が『あの人』と付き合えても、絶対あんな迷惑行為はしないようにしよー……)ウンウン



    だからと言って、私は別にモテないわけじゃない。
  12. 12 : : 2019/06/15(土) 17:10:13
    だって私は、そこそこに可愛くて、何より人から嫌われたくない故に八方美人な振る舞いばかりをするし。


    「名家」だとか、「可愛い」だとか、挙句の果てには「モテる」だとか。
    さっきから自慢ぽい事しか言っていないがコレは本当だ。


    都会の中学校に通っていた頃もそうだったし、入学して2週間しか経っていないこの高校でも、一つ上の先輩に告られてる。



    え。じゃあ、何で付き合わないのかって?


    単純にその人が「私の好きな人」じゃないってのもある。


    でも違う、そうじゃない。それは根本的な問題じゃない。



    下駄箱から靴を取り出そうとしたら、白い紙が落ちた。


    クリスタ(……ん。またか)ヒョイ


    案の定、と言うべきか。


    その白い紙は学習ノートの切れ端でもなく、ましてやゴミを他人の下駄箱に詰め込むイタズラでもない。


    綺麗な白い便箋は、男子ながらも気遣ってくれたのだろう可愛らしいテープで留められていて、その内側に彼の思いをつづった鉛筆の跡が透けて見えた。


    つまり恋文である。


    クリスタ(何時だろ。放課後はお稽古あるからなー)カサカサッ…


    こんなにスカしてみせて、「届け先を一つ隣の私の下駄箱と間違っていた」とかだったら恥ずかしいにもほどがある。


    私は彼の気持ちを無下にしないよう、丁寧にテープをはがし、内容を確認する。



    内容を要約すると、以下の通りである。


    ・送り主(名前不明)はクリスタ・レンズに大切な話がある。

    ・集合時間は17時、遅刻厳禁。

    ・体育館裏にて待つ。



    クリスタ「んー……」


    クリスタ(夕方の5時、放課後か……まぁ話がすぐ済めばギリギリお稽古の時間にも間に合うかな)カキカキ


    クリスタ(よし、メモ帳にも時間と場所書いたしバッチリ!
    今日も一日頑張ろう)



    私は手紙をカバンの中にしまって靴を履き、教室へと向かった。
  13. 13 : : 2019/06/15(土) 17:44:20
    ーーーー



    夕方の17時、恋文に指定された時間。


    その10分前に着けばいいかなと思い、授業の終わった教室から体育館裏まで向かったが


    少々早かったようで、そのさらに5分前、つまり指定時間の15分前に来てしまった。


    クリスタ(どうしよう、ヒマだな。ここ座る場所ないし……)


    なんて考えてたら、反対側から茶髪の男子生徒が歩いてきて

    「やぁ、ごめん。待った?」

    だなんて聞かれたからビックリだった。


    クリスタ(時間よりかなり早くから待っててくれてたんだな……)


    と感心したが、「もし私が好きなあの人に想いを告げる時が来たのなら?」と考えると、その時は1時間でも3時間でも早く待つだろうから、感心ではなく共感した。


    クリスタ「ううん、待ってないよ」


    むしろ、あなたが待っててくれたんでしょ?



    やがて彼は私の目の前まで来て、テンプレート通りの告白をしてくれた。


    「レンズさん、俺は君がずっと好きだった。もし俺でよければ、その……」



    「付き合ってください!」
  14. 14 : : 2019/06/15(土) 18:24:41
    何で告白の時って、今までタメ口だったのに「付き合ってください」は敬語なんだろう。


    クリスタ(まぁ、「俺と付き合って!」とか「アタシと付き合え!」とかだったら強引な感じするものね)


    一人で納得した後に返事を返そうとしたら、私が疑問に思っていた分の妙な間を感じ取って、その男子生徒は言葉をつなげた。


    「俺、小学校の時レンズさんと同じクラスだったんだ」


    あぁー、やっぱり。何か見た事ある顔だと思ったんだよね。

    おもかげが残ってる。


    クリスタ「もしかして、バスケ部の……」


    「そう、俺だよ!ぶっちゃけ誰か分からなかっただろ?」


    彼は確か、女の子みたいに静かで、クラスの中心にいるというよりも、一人でいるのが好きな子だった。


    でも今の彼は確かに違う。


    クリスタ「ごめんなさい、確かに分からなかったかも」クスッ


    おとなしさの象徴である黒髪は茶色に染め上げられ、その目には今までの経験を基にした自信が宿っていた。

    女の子と話すのも慣れた感じだ。


    クリスタ「変わったよね」


    「だよな……俺、変われたよな」


    そう言うと彼は何だか感極まった感じで下を向いた。
  15. 15 : : 2019/06/15(土) 18:29:50
    「小学校の頃さあ、俺ずっと自分に自信がなかった。
    別に一人でいるのだって好きでいた訳じゃねーし。バスケは下手だし面白い話も出来ないしさ、そういう自分の薄っぺらさを人に知られるのが嫌で友達ができなかったんだ。

    レンズさんにも告白できなかった」


    クリスタ「……」


    「だからレンズさんが地元を離れて都会の中学校通う、って聞いた時すげー後悔したよ。
    でも逆に次会える機会があったら、レンズさんに告れるくらいの自信と実力は付けておこうと思ったんだ」


    クリスタ「そんな事……思っててくれてたんだ」キュン


    ヤバい、ちょっと揺らいだ。


    「勉強はどん尻だったけどこの高校入れたし……バスケも頑張ったんだ。
    小学校の頃はレギュラーだなんて夢のまた夢だったけど……中学では4番とって全国大会行ったんだ。多分レンズさんの通ってた私立中学の奴らにも勝ったぜ。メチャクチャ強かったけどな」


    確かに私の中学のバスケ部は……というか、スポーツも勉強も都内でトップクラスだった。

    本当はエスカレーター式で、その付属高校まで通うつもりだったけど、訳あって地元の高校に戻った。


    「この茶髪もぶっちゃけ高校デビューだしな!ありきたりだろ?」


    クリスタ「私は黒い髪でも良いと思うよ?ていうかカッコいいもん」


    「でもさ。それでも……この髪も、バスケも、勉強も……次に君と出会う時のために努力した俺の経験の証なんだ。まさか、高校で戻ってくるとは思わなかったけどさ。




    君のために変わったんだ。
    だからさ……俺と付き合ってよ、レンズさん」



    彼は真っ直ぐな瞳で私を見つめた。


    あぁ……震えてる、彼。


    さっきは女慣れしてるだなんて思ったけど、変わらない部分は小学から変わっていない。


    何か良いな、こういうの。


    だけど……










    クリスタ「ごめんなさい。その気持ちには答えられない、私」
  16. 16 : : 2019/06/15(土) 19:32:15
    「あ……」


    彼は、うろたえながら私から目を逸らそうとする。
    次の言葉を探そうとしてるのだろう。


    しかし私は彼の目を追うと捉えて離さず、そのままジッと見つめた。


    すると彼はピクッと肩をすくめ、振られた事をジワジワと実感してきたようで、しばらく見つめ合った後


    「そっか。ごめんな、いきなりこんな事言って」


    と、諦めのついた声で言った。


    クリスタ「私の方こそ、せっかく勇気を出して言ってくれたのにごめん」


    「いいんだよ。レンズさんを好きになれたおかげで俺は変われたし。
    君は振る時だって誠実でいい子だ」


    誠実……と言われると、少し違う気がした。


    確かに私は自分を好きになってくれた人と話し合い、そして振る時は、決して目を離したり、話半分で聞いたりする事はしない。

    でも、それはせめてもの罪滅ぼしでしかない。


    それは私の普段の態度。そう、人から嫌われたくない故の八方美人をしている事。


    別にあなたたちに好かれたくてやってるんじゃない。好きな子は別にいる。その人になら話は別だが。


    あなたたちには、ただ……そう、嫌われたくないだけ。


    人に嫌われるのは、どうしても怖いの。これはきっと、私の生まれ持った性癖。ごめんなさい。


    そういう中途半端な態度が男の子を騙してしまう。

    だから、その罪滅ぼしなんだ。
  17. 17 : : 2019/06/15(土) 19:43:44
    それに比べて彼は真面目だと思う。


    自分に足りないモノを認識し、その足りない部分を持っている他者を妬むのではなく、しっかりと補っていこうとしたのだから。


    彼にとって私は、その補っていこうとするキッカケであって、実は大して燃え上がるほど好きだというわけではなかったのだろう。


    ただ、クラスの中で愛想がよくて、そこそこに顔が整っていて、令嬢で目立っていた女の子を小学生が好きになっただけ。憧れの気持ち。


    でも彼は、自身の変わるキッカケとなった私に、お礼というか何というか、その……つまり、一つの区切りとして私に告白してくれたのだろう。


    真面目な彼は、そうしなくては次の恋に進めないから。
    初恋の女の子に告白もせずに終わるだなんて、苦しくて苦しくて仕方がなかったんだと思う。



    その証拠に彼は妙に吹っ切れたような顔をしている。
  18. 18 : : 2019/06/15(土) 20:06:41
    スッキリとした、だけどまだ少しだけ心残りのあるような表情で彼はこう聞いてきた。


    「好きな子、いるの?」


    私は、その質問に対して


    クリスタ「えっ、あっ……す、すすすすす好きな人!って言うかさ!!!」ドキッ!!


    バレバレなくらい不自然にはぐらかし








    クリスタ「……『許嫁』がいるの、結婚する事が決められた」


    そして、嘘をついた。


    「いいなづけ……?あぁ、そっか。レンズさんの家って……」


    クリスタ「うん……ごめんね」


    いや、正確に言うと嘘ではない。


    確かに私には「親から結婚する事を決められた」許嫁がいる。


    だけど、彼を振った理由としては嘘だ。


    さっきごまかした時にバレただろうが、私には許嫁とは別に好きな人がいる。
    だから断った。



    でも、その好きな人にも思いは伝えないだろう。
    ありえない事だが、例え告白されたとしても馬謖を切って振る。


    「親から決められた」という事。それだけで私には、どうしようもなく逆らう気力がヘトヘトとなくなってしまうのだ。


    お父さんはきっと、この世界で一番、私の事を愛してくれている。


    親だから当然という人もいるかもしれないが、そうとは限らない。
    実際、死んだ私の母親はそうだった。


    だから、この大きな愛を裏切る訳にはいかないんだ。
    お父さんの愛がなければ、私の心はきっと凍てついて、そして死んでしまう。


    だから、私はその許嫁と結婚する。するしかないんだ。


    それが私が恋人を作らない理由であり、家族に対して思うたった一つの大きな不満だ。
  19. 19 : : 2019/06/15(土) 20:08:34
    「もしさ……その許嫁がいなかったら俺は今、レンズさんとキスしてた?」


    クリスタ「……ううん。多分、してなかったと思う」


    「……そっか」


    クリスタ「うん」



    私は、最後まで「嘘は」つかないままでその場を立ち去った。


    彼を振った理由は、その一端しか言ってないし、肝心な事ははぐらしたけど、嘘はつかない。


    それが男の子に対する、私の唯一の罪滅ぼし……
  20. 20 : : 2019/06/15(土) 23:39:04
    ーーーー



    体育館脇の通路はグラウンドに面していて、グラウンドでは野球部、サッカー部が活動をしていた。


    校舎の東側を歩いている私は西側に隠れていく太陽に見捨てられ、クシャミを一つした。


    するとグラウンドのまだ陽の当たるサッカー場から、ポォーンと白黒のボールが一球


    クリスタ「うわわ!こっち来る!」アワワ


    私のいる日陰に大きな弧を描いて落ちてきた。


    ボスン…!!


    弧の終着点はちょうど私の胸元で、躱す間も無く私が意図せずボールを受け止める形となった。


    クリスタ「いったた……」


    自身の骨っぽい胸元をさすり


    クリスタ(私にもっとおっぱいがあったらなぁ、ボールの衝撃を吸収できたのに)


    ……だなんて、くだらない事を考えてるとグラウンドの方から一人の男子学生が走ってきた。


    「はははっ!ナイストラップ」タッタッ


    彼は猫みたいに大きな目で、男子にしては少しだけ長い黒髪の少年だった。


    クリスタ「エ、エレン……!」


    チラチラと黒い髪の隙間から見える額は、ほんのり汗ばんでいて、「髪、切ればいいのに」と私は思った。


    クリスタ(短くても似合うのに)


    エレン「レンズお嬢様、サッカーの才能あるよ。始めたら?」


    クリスタ「もう、同級生なんだからその呼び方やめてよ」


    エレン「わりぃわりぃ。やっぱ、まだレンズ家の令嬢が俺たちの通う高校にいるだなんて実感なくてさ。
    ちょっとずつ慣れてくよ、クリスタ」


    そう言って彼は、私の足元に転がっているボールを拾った。



    彼が何か動作をするたびに飛び散る汗が、空中で輝いて、彼の周りをキラキラさせているように見える私は異常なのか?



    いや、異常なんかじゃない。思春期の少年少女にとっては、それこそが正常。

    例え何をしていたって、好きな人は輝いて見えるものだ。





    クリスタ(あぁ、やっぱりカッコいいな)





    私は、この黒髪の少年……「エレン・イェーガー」に恋をしている。
  21. 21 : : 2019/06/16(日) 00:18:28
    クリスタ「サッカー部入ったんだ」


    エレン「いや、俺マジで勉強余裕ないからさ、部活は入んねぇ。
    だから、こうやってたまに勉強の息抜きついでの助っ人入る事にした。
    これでも小学4年から中3まではバリバリのサッカー少年だったからな」


    クリスタ「そういえば『あの時』もサッカーボール入れたネット持ってたもんね」


    エレン「あぁ……あれか?お前と俺が小6の頃、一度だけ会った事があるっつー……」


    クリスタ「本当に覚えてないの?」


    エレン「悪い。全然さっぱしだ」ニカッ


    クリスタ「いい笑顔で言わないで!傷つくなぁ」


    と、冗談ぽく笑ってみせるがけっこう心には大ダメージ。


    小さな町とはいえ、小学校は市内にいくつかあり、私と彼の通う学校は別々だった。


    エレンは覚えてないようだし、そもそも覚えてなくても仕方のないくらい短い時間だったが

    私と彼は中学校に進学する前に一度だけ出会った事がある。


    ついでに言うと、私が彼を好きになったのもその時で

    高校生になり、無理を言って都会からこっちに戻ってきたのも彼に会うためだ。


    彼と出会ったのは、都会の中学に通うのが決定した12月の事だったから、もうどうしようもなかった。


    だけど、彼がどこに進学するか分からない一か八かの賭けで地元の高校に入学し、それがたまたま同じ学校で


    なおかつ同じクラスだと知った時、私はもう運命すら感じてラブコメディのヒロインになった気分だった。
  22. 22 : : 2019/06/30(日) 19:18:54
    期待!
  23. 23 : : 2019/07/05(金) 07:22:29
    >>22
    ありがとうございます!投稿頻度低くてゴメンねー
  24. 24 : : 2019/08/02(金) 23:10:32
    疎かな僕のちょめちょめから
    厳かな君のちょめちょめへ
    新かな彼のちょめちょめは
    明かな彼女のちょめちょめより
    いきりだした彼女の子宮へ
    その小宇宙へと旅立つ
    あの頃の屁のツッパリにもなりはしないのに
  25. 25 : : 2019/08/04(日) 10:00:14
    うっわヘドが出るほどつまらん
    いつか黒歴史になるなこれはwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
  26. 26 : : 2019/08/10(土) 01:38:12
    頑張ってください
    期待してます
  27. 27 : : 2019/08/19(月) 14:25:07
    期待待機してんだよー!はよしろよー!
  28. 28 : : 2020/05/02(土) 21:47:13
    面白い嵐がいても投稿やめないでくださいハッピーエンドになるまで

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Anjelina

鹿クンが見てる!

@Anjelina

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