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進撃の巨人 オルタナティブ 〜東の訓練兵団〜

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  1. 1 : : 2018/05/03(木) 19:09:42


    カラネス区────。
    ウォール・ローゼの東に位置する突出都市。
    豊かな自然と盛んな農業が街を支えている。
    山陵に沈む燃ゆる夕陽は壁内大自然百景でも毎回上位に入るほどの美しさだ。街を横切る澄んだ青の川、新緑を蓄えた高昂と連なる山岳。まさに壁内随一の自然と共存する街、カラネス。


    その中心部よりやや東に、その施設は存在する。


    『訓練兵団訓練施設』


    104期目を迎える今年、新たな新兵たちが我こそはと訓練兵団の門を叩く。
    ある者は希望を。ある者は不安を。ある者は復讐を。ある者は己の使命のために。
    約3年間、巨人殺しの実力を磨くため、地獄に身を投じることとなる。


    後に訪れる最悪の結末を、彼らに知る術はない。








    進撃の巨人 オルタナティブ


    これは、エレン・イェーガー達トロスト区訓練兵団とは別の場所、カラネス区で繰り広げられる『もう一つの訓練兵団』の物語。
    誰の記憶にも残らない、記録にも残らない、忘却の訓練兵団達の物語。









    #01『アナザー・プロローグ』
  2. 2 : : 2018/05/03(木) 19:16:02
    期待!
  3. 3 : : 2018/05/03(木) 19:43:06


    845年。100年だけのかりそめの平和、歪で不均一な、揺れる天秤のような不安定な平和が跡形も無く崩れ去った日。
    人類が巨人に屈した日。
    人類が恐怖を思い出した日。
    人類が改めて、鳥かごの中に囚われていると知った日。


    そして、僕の人生の歯車が狂った日でもある。


    シン・イースター。弱冠10歳の少年はその日、お義父さんとお義母さんを亡くした。


    街を蔓延る巨人が巣穴に潜り込んだハイエナの如く人間を喰らい尽くす。残酷に、無慈悲に、屈託ない歪んだ嗤いを浮かべながら。
    ヤツらに知性は無いはずだが、その大きな掌に人間を掴んだ時の表情は、まるで大好物のお菓子をこれから食べる子供の笑顔のそれだった。
    楽しんでいる、そんな風に見えた。
  4. 4 : : 2018/05/03(木) 19:56:19


    10メートル以上はあろうかという巨躯が僕の家族を喰らう様は、それはもう酷い有り様でした。傍で見ている僕は、仲良く食卓を囲みご馳走を食べている家族を外から眺めているかのような気持ちでした。


    まずはお義父さん。腰を握り潰され、口から大量の出血。その時点でもう死んでいいたでしょうが、巨人は握る手の強さを緩めません。さらに力を加え、お義父さんの口から赤々しい、生々しい固形物が吐き出されていました。
    それからおもむろに頭を齧り、赤ワインを味わう貴族よろしく血を啜っていました。巨人の口元に滴った鮮血はやけに綺麗に見えました。
    そこから何度か咀嚼を繰り返して、その度に全身の骨がバキバキと砕け散る音が周囲に響き渡ります。とてつもない不協和音。しかし、街全域に伝染した恐怖と悲鳴の連鎖に阿鼻叫喚が響く絶望の旋律は、なるほど確かに美しいオーケストラの演奏のようでした。


    気づけばお義父さんはいなくなっていて、巨人の足元にはお義父さんが身に付けていた帽子と腕時計と筋繊維が剥き出しになった左足だけが落ちていました。
  5. 5 : : 2018/05/03(木) 20:04:17


    お義母さんはあっけないものでした。
    巨人が家を踏み抜いた際に瓦礫の下敷きになって圧死したのだから。僕の将来の話をしていました。笑顔が眩しくて、とても美人で、自慢のお義母さんでした。
    それが、あんな一瞬で。刹那の間に。


    「巨人に………殺されてしまうなんて」


    誰が予想しただろうか?
    今日この時この瞬間に巨人が壁を破壊し、シガンシナ区を陥落させるだなんて。
    さらにはシガンシナとウォールマリア内部を繋ぐ開閉扉も破壊するという弩級のオマケ付きで。


    どこかの楽天家が言っていた。


    「50メートルもあるような壁を、巨人共がどうこうできるはずはねぇ」と。


    そいつは真っ先に巨人の餌となってしまったが。


    「僕は……」


    真っ先に浮かんだ感情は、家族を失った悲しみではなく、街を滅茶苦茶にした巨人たちへの怒りでもなく、自分の命が助かったことに対する安心感でもなく。
    ただの脱力感と虚無感だった。
  6. 6 : : 2018/05/03(木) 20:18:50


    家族を亡くし、帰る家を無くし、生きる希望も無くした。何も無い。自分には何も無い。何も残っていないのだと、悪魔の形相をした巨人たちが教えてくれた。


    そしていま、眼前に迫る巨人がシンの人生の終わりを告げにやってきた。
    恐怖など微塵も感じなかった。死がすぐそこまで迫って来ているというのに。不思議だった。なんで自分がこのまで落ち着いていれるのか。


    「君は…………僕の死を告げにきたのかい?神様の使いかなにかかな?」


    などと問いかける余裕があったものだから、2度驚く。巨人は何も答えない。そりゃあそうだ。彼らとの意思疎通は不可能なのだから。


    4メートル程だろうか。小柄な巨人だったが、子供のシンにとってはとても大きく見えた。
  7. 7 : : 2018/05/05(土) 21:56:52


    その巨人はニタリと口角を持ち上げて笑った。
    酷く歪んだ笑顔だった。悪代官が人を欺く妙案を思いついた、そんな笑顔。
    ゆっくりとシンに近づき、その手を伸ばす。


    (僕は……死ぬのか)


    思えば、短い人生だった。
    幼少期の頃の記憶が無い。あるのはお義父さんたちに引き取られた後の記憶だけ。イースター性もお義父さんたちの名前だから、本当の自分の名前すら思い出せない。
    実質、シンはほんの2年ほどの記憶しか持っていない。


    (…………なんのために、生まれて来たんだろう)


    自分の存在価値とは、何なのだろうか。
    生まれてきた意味なんてあるのだろうか。
    ふと、そんなことを考えた。
    死ぬ間際だからか、いや違う。これはシンにとっての命題だったのだろう。


  8. 8 : : 2018/05/08(火) 07:03:15
    期待!
  9. 9 : : 2018/05/10(木) 20:15:02


    巨人の手が間近に迫る。逆光に照らされて巨人の影が完全にシンに重なった。


    掴まれる──。


    軽く握られてシンの呆気ない味気のない無意味な人生は終わり。自分の脳内で繰り返し放送される終わりというフレーズ。


    その刹那、シンの身体は強い衝撃によって右後方に吹き飛ばされた。巨人になぎ払われたのだろうかと思ったが、何かが身体に覆いかぶさるようにして倒れこんでいる。目を開けるとそこには。


    「逃げるよ!!」


    華奢な少女がシンの身体の上で顔面を蒼白にさせて叫んだ。


    この少女が巨人に掴まれるすんでのところでシンに体当たりして助けてくれたのだろう。
    巨人は呆然と虚空を掴んだ掌を眺めている。


    「急いで!」


    少女に腕を掴まれ、強引に引っ張られる。立ち上がると同時に駆け出す少女、つられて走り出すシン。
  10. 10 : : 2018/05/11(金) 18:40:02


    どれだけ走ったのだろうか。


    先ほどの巨人の姿は見えなくなった。
    阿鼻叫喚が響き渡るシガンシナの街を駆け抜けた。街は壊滅。巨人に蹂躙され、そこいらには赤くペイントされた誰のものとも知れない肉塊と臓物がぶちまけられていた。
    行きつけの魚屋の店主が巨人に喰われそうになっていたが、少女が「ごめんなさい」と小さくつぶやき傍を駆け抜ける。救える命、救えない命の判断。少女は何も間違っていないのに、大罪を犯した直後、後悔に苛まれる者のごとく苦しい表情をしていた。


    本当にどれだけ走ったのだろうか。


    いつの間にか駐屯兵のおじさんに連れられ、ウォール・ローゼに向かう船に押し込まれる形で放り投げられた。


    「なんとか無事だったね」


    少女はほんの少し安堵したような声で言った。


    「そうだね。…さっきはありがとう。助けてくれて」


    「ううん、助けれるって思ったら身体が勝手に。本当に無事でよかったよ」


    シンはとても感心した。
    少女は自分と同い年くらいだろう。精巧に作られた人形のような可愛らしい顔立ち。銀糸のような長い髪に大きな瞳。ぶっちゃけると超かわいいと思う。


    何より自らの命の危機にも顧みず赤の他人を助ける勇気と行動力に称賛を送りたくなった。
  11. 11 : : 2018/05/11(金) 23:00:54


    しかしこの少女、シガンシナの末端都市には似つかない上品な服装や佇まいをしている。身につけている装飾品も高価そうなものばかりだ。内地からはるばるやってきたのだろうか。だとしたらとんだ不幸に見舞われてしまったわけだ。親らしき人も見当たらない。年端もいかない少女が1人でシガンシナまで来るはずない。親がいないということは……そういうことだろう。


    「そういえばまだ名前聞言ってなかったよね。私はリリィ。リリィ・シュマーケン」


    シュマーケン……聞いたことがある。確か壁内でも上位層の地位に立つ貴族のはずだ。やはり内地からわざわざ赴いて来たのか。


    「僕はシン・イースター。君は……シュマーケン家のご令嬢かな?」


    「ふふっ。シュマーケンって聞いて臆せず会話するなんて……シンくんは肝が座ってるね」


    「まあ……シュマーケン家のいい噂はあまり聞かないよ。思想が極端すぎるし」


    貴族、兵士、生産者をはっきりと区別化させようとする動きを見せるシュマーケン家。当然生産者からの批判の声が相次いでいる。


  12. 12 : : 2018/05/11(金) 23:05:27
    やっぱ文字だけだと見にくいですかね?
    会話だけのやり取りにした方が見やすいんですかね……
  13. 13 : : 2018/05/12(土) 21:55:08
    >>12確かに正直すこし見にくいですけど、こういうタイプの話ならこっちの方がいい気もします!
  14. 14 : : 2018/05/13(日) 19:22:01

    >>13
    貴重なご意見ありがとうございます。
    シリアスな感じなので小説調で頑張ってみますね
  15. 15 : : 2018/05/13(日) 19:26:39


    にしても、まぁ。シンには何ら関係のないことだ。リリィは笑って応じてくれた。それ以降リリィとの会話は続かなかったが、ふと視線を後方に向けると、声を荒げながら夕陽に吼える少年と、そばでなだめる少女の姿があった。


    「駆逐してやる……ッ!……この世から……1匹残らず……!!」


    恐らく巨人に対しての復讐心だろう。シンと同い年くらいの少年があのように憎悪を剥き出しにして咆哮している。そんな光景が異常に見えた。

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Takumi78444785

かき氷

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