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最後の闇の太陽

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  1. 1 : : 2017/07/11(火) 23:15:29
    やあ、お久し振りです。
    学業やら何やらで忙しくて全く浮上できていない私です。
    しばらくSSを書いていないせいで書き方を忘れてしまったので小説形式で行きたいなと思います。






    では本編投下します。
  2. 2 : : 2017/07/11(火) 23:22:29





    光を失った一人の妖怪が居た。


    彼女はかつて百鬼夜行の一員であり、最強の妖怪と言われていた。
    だが、一人の人間によってその力を封印され、幼子の妖怪へと成り下がってしまった。
    その際に付けられた封印の札は髪に結われているのだが、それは自分では触れられない。

    だがそれが外れた時、史上最凶にして最悪の異変が始まったのであった。
    それは後に『陽闇異変』と呼ばれる事になる。


    著:稗田阿求
  3. 3 : : 2017/07/11(火) 23:30:13





    一人、ふらふらと森を飛び回る謎の黒い球体があった。
    それは小さな人喰い妖怪の『ルーミア』
    闇を操る程度の能力を持ち、名前にしては然程強力ではない力だった。
    彼女は面倒臭がりで、自ら好んで人を襲う事は無い。だが、曲がり形にも人喰い妖怪。
    遭遇したのならばすぐさま逃げなくてはならない。


    彼女は最近、魔法の森に出現した祠を見る為にその目的地へと進んでいる。
    決して早いという速度では無いのだが、ゆっくりと確実な足取りで進んでいるのが分かる。

    そして瞬間、大きな木に頭をぶつけてしまった。そう、闇は自分でも視認は出来ないのだ。
    そして闇の球体は解けて、彼女の姿を現す。
    美しい絹のような金色の髪の毛に紅いサイドリボン。黒を基調としているワンピース風な服。
    妖怪といえど可憐な美少女だった。


    「いたた…誰よこんな所に木を生やしたのは…」

    その目元には微かに涙が溜まっている。
    ぶつけた時の衝撃は中々で、木々が騒めくには充分な威力だった。
    だが流石は妖怪。すぐに回復してまたしても祠へと向かって飛んでいくのである。
    傍ら、マイペースが売りの可愛らしい少女にも見えるものである。
  4. 4 : : 2017/07/12(水) 00:05:46



    「…んー、何だろう?この懐かしいような感じ」

    ルーミアは祠へ到着した。
    そこでの第一声がこれであった。
    闇の妖怪たる彼女にとっては何かシンパシーでも感じるのであろうか、祠からは魔力が溢れていた。
    紅く、そして黒く、憎悪と残虐に満ちた深泥な魔力。おどろおどろしい物だが、それに怯みもせずに進んでいく。

    祠の中へ入っていった。
    そこにあったのは一つの墓標と花だった。
    この祠は何かの墓なのだろうか。この魔力は何なのだろうか。ルーミアにとっては理解し難いが、何やら穏やかでないのは確かであった。












    一通り見終わって、祠から出ようとすると突然念話がなだれ込んでくる。
    『力を封印されし者よ、もう一度その力を振るい、全てを支配してみぬか?』

    「…え?なんなのよ?」
    されどルーミアは動じない。
    正確には理解出来ていない。力を封印されている等と、強さとは無縁だった彼女にとってはまさに想像の先を行くモノだった。
    博麗の巫女や白黒の魔法使い、湖の氷精や吸血鬼。様々な者が住むこの幻想郷でもルーミアは下の辺り。下級の妖怪よりは少し強い程度であった。

    『貴様の奥底に眠るその力、それを解放してやろうと言っているのだ』
    「私は特に力には興味はないわ、それに現状で困る事なんかあまり無いし」
    『ぐ…貴様…』

    念話に対して聞く耳も持たぬルーミアに対して苛立ちを覚え始める念話の主。

    「まぁいいわ、私も暇なの。少しくらいは話を聞いてもいいわよ」

    ようやく聞く気になったと、ホッとする念話の主であった。
  5. 5 : : 2017/07/12(水) 22:25:55




    『かつて、我は強大な力を持つ妖怪だった…
    だが、月面侵攻の際に重傷を負い、今こうして封印されているのだ。』

    「ふうん、そーなのか。」
    ルーミアは興味無さげな風に返す。
    ただ暇つぶしになるかと思って話を聞いてみたが、あまり頭の良くない彼女には理解が出来なかった。

    「それで、私は何をすればいいの?」

    ルーミアは念話の主に問う。

    『そこに一輪だけのアリウムの花があるだろう?それに闇を込めてくれ』

    「これ?…う…あまりいい匂いじゃないよ?」

    アリウムは臭気が少し強い花で、あまり好かれる花ではない。そしてその花言葉は──








    ───無限の悲しみ







    「!?」



    墓標から凄まじい闇の魔力の塊が溢れ出し、それが集い形を形成していく…
    そしてその形を現す。それは、まさしく黒い太陽であった。
    ルーミアの闇と似ているものの、この闇は更に深く、鮮やかで、強い。それは妖怪としての力を誇示しているようだった。

    『ククク…外に出るのは何年ぶりか…だがやはり完全には傷は癒えていないようだ…』

    「そう、それで私は帰っていいの?」

    『待て待て、貴様にはまだまだしてもらいたい事がある。その前に我の名前を聞かせてやろう。我はかつて《空亡》と呼ばれる妖怪だった』

    ─空亡、それは百鬼夜行絵巻の最後に記されると言われている闇の太陽を模した妖怪である。
    全てを闇に覆い、焼き払ったという最強の闇の妖怪だ。

    「私はルーミア。ただの人喰い妖怪だよ」

    『そうか…ではルーミアよ』

    空亡が呼びかけるとルーミアはこてん、と首を傾げる。

    『私と融合しよう』











    「………へんたいなのか」




    新たな誤解が生まれたのであった。

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著者情報
ryou-ss

砂味のぱふぇ(旧名:セレナ・ティレス)

@ryou-ss

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