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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

逆転ロンパ〜絶望と希望と逆転と〜chapter4–1【狂喜乱舞と来訪者】(非)日常編

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  1. 1 : : 2017/04/09(日) 14:32:49
    逆転ロンパももう4章です、まぁまだまだ先長いけどね
    注意事項とかは過去作品の>>1からお願いします
    今更ですが、両作品の原作のネタバレふんだんに盛り込まれてるのでお気をつけください
    それではコロシアイ学園生活、再開です
  2. 2 : : 2017/04/09(日) 14:47:10

    I・生徒達はこの学園内だけで共同生活を行いましょう。共同生活の期限はありません。

    II・夜10時から朝7時までを“夜時間”とします。夜時間は立ち入り禁止区域があるので、注意しましょう。

    III・就寝は寄宿舎に設けられた個室でのみ可能です。他の部屋での故意の就寝は居眠りとみなし罰します。

    Ⅳ・この街について調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません。

    Ⅴ・学園長ことモノクマへの暴力を禁じます。

    Ⅵ・仲間の誰かを殺したクロは“卒業”となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。

    Ⅶ・生徒内で殺人が起きた場合は、その一定時間後に、生徒全員参加が義務付けられる学級裁判が行われます。

    Ⅷ・学級裁判で正しいクロを指摘した場合は、クロだけがオシオキされます。

    Ⅸ・学級裁判で正しいクロを指摘できなかった場合は、クロだけが卒業となり、残りの生徒は全員オシオキです。

    Ⅹ・電子生徒手帳の他人への貸与を禁止します。

    Ⅺ・コロシアイ学園生活で同一のクロが殺せるのは、2人までとします。

    Ⅻ・生徒が死亡した場合、後に編入生が来ることがあります。

    XIII・電子生徒手帳の分解を禁じます。

    XV・監視カメラの破壊を禁じます

    XVI・スーパーの商品は自由に持ち帰って構いません

    XVII・武道場への出入りをしばらく禁じます。





    苗木誠
    桑田怜恩
    葉隠康比呂
    不二咲千尋
    舞園さやか
    霧切響子
    大神さくら
    左右田和一
    弐大猫丸
    西園寺日寄子
    小泉真昼
    ソニア・ネヴァーマインド
    ???
    ???

  3. 3 : : 2017/04/09(日) 19:32:34


    ……………………………………





    ……………………………………







    ……………ああ、もう朝か






    ……なんだか、あんなことが起きた後なのに、随分グッスリと寝ていたな




    コンコン


    苗木「……」


    部屋をノックする音が聞こえた


    昨日、あんなものを見たばっかりだから、あんまり人と会いたい気分じゃないけど…まぁそんなことは言ってられないか


    苗木「おはよう」

    ドアを開けたと同時に挨拶をした


    舞園「おはようございます!」

    苗木「ああ、舞園さんか…よかった」

    舞園「よく眠れましたか?」

    苗木「まぁ、そこそこに」

    舞園「そうですか…でしたら安心しました」

    苗木「舞園さんは大丈夫? その…色々あったけど」

    舞園「大丈夫です …もう、あんな気の迷いは起こしません」

    苗木「そっか、よかった」

    舞園「………苗木くんは、大丈夫なんですか?」

    苗木「大丈夫って?」

    舞園「昨日の後、だいぶ参ってたみたいでしたけど…」

    苗木「…………」

    舞園「…今はムリに話さなくても結構です」

    舞園「でも、その気になったら、こんな私でよければして欲しいです」

    舞園さんは優しく微笑んだ

    心身共に追い詰められた僕にとっては、その微笑みは女神のように写って、強い慈愛の念を感じてしまう

    ……グッスリ眠れたのは、追い詰められて心が疲れていたからなのかもしれない

    ちょっと前は寝心地が良くなかったスポーツ選手用ベッドも、体が慣れれば心地よい安心感と倦怠感をもたらしてたのだ

    苗木「ありがとう、舞園さん その優しさがあれば、ボクは大丈夫だから」

    苗木「ところで、みんなはもう起きてる?」

    時計を見てみれば、どうやら少し寝過ごしてしまったみたいだ

    モノクマの耳障りなチャイムも無視してしまうほど熟睡したらしい

    舞園「ハイ、一応…でも」

    苗木「でも?」

    舞園「やっぱりみんな、沈んでます 昨日あんなことがあったから、当たり前かもしれませんが…」

    苗木「…あんまり、気を使われたくないけど、行くしかないよね、うん…」



    ボクは眠気が残る身体を起こして、みんな待つ一階へと降りていった


  4. 4 : : 2017/04/11(火) 22:32:51

    桑田「あ、苗木…お、おはよう」

    苗木「おはよう、桑田クン」

    葉隠「おう!昨日の占い通り、苗木っちは32分と27秒の遅刻だべ!!」

    左右田「どんな占いだよそれ!」

    葉隠「左右田先輩もやってみっか?一回千円…なんだけど、ここは太っ腹に半額でやってやんぜよ!」

    ソニア「それだったら、やるしかないぜよ!左右田さん」

    左右田「いや、いくらソニアさんの頼みでも詐欺に頭突っ込むのは無理があるというか…」

    小泉「朝からへんなのに引っかかってるんじゃないわよ ほら苗木、朝ごはん作ってあるから」

    苗木「ありがとう、小泉先輩」

    弐大「応ッ!強固な肉体の基礎は規則正しい食生活からじゃあ!!! ちゃんと残さず食せよ!」

    桑田「あーもう朝からウッセーなー、ほら、その…さっさと食べろよ オメーだけだし」

    苗木「いただきます」





    モノクマ「全く〜、なに?この辛気臭い雰囲気」




    苗木「!」

    左右田「テッ…テメェは!!」

    モノクマ「あのねえ…人の1人や2人が死んだ程度でそんな感じになってるんじゃないよホントにさ」

    モノクマ「君たち、葬式のテンションをいつまで引きずってるつもりよ? その年じゃおじいちゃんおばあちゃんの葬式でも泣かないでしょ?」

    霧切「空気を読まずに出てきた所悪いけど、さっさと持ち場にでも戻ってくれる?」

    大神「全くだ………失せろ 貴様の相手をするつもりはない」

    大神「我の理性が狂わぬうちに視界から消えろ」

    モノクマ「うぷぷぷ…いいの?せっかく外に出るための情報を仕入れて来たのに?」

    不二咲「仕入れてきたって、どういうこと?」

    モノクマ「えーと、まぁそれを説明するにはこうかくかくしかじかと…」

    モノクマ「でもまあいっか!ネタバレになっちゃうしね!楽しみにしてた作品ほどネタバレで心が傷つくからね!」

    小泉「ていうか、あんたが首謀者なんだから調べるも何もないでしょ」

    モノクマ「首謀者っつっても僕はまだ戻ってきたばかりだからね 色々と知りたいことがあるのよ、色々と」

    西園寺「戻ってきたばかりってどういう事〜?」

    モノクマ「ハッ!またネタバレを言ってしまった!!」

    モノクマ「ま、どうでもいいや んで、外に出るための情報っていうのは…」


    モノクマ「なんと!この街の中の今まで行けなかったエリアが解放されましたッ!!」

    舞園「エリアが、解放…ですか?」

    弐大「ちょっと待たんかぁ!!!」

    モノクマ「ぬおおっ!」

    桑田「うわぁっ!?」

    弐大「そもそも、あそこには壁があったじゃろうが!!どうやって壁を越えろというんじゃ!!」

    モノクマ「越える必要はないよ、どかしておいたから」

    苗木「えっ?どかして、おいた…?」

    ソニア「不躾な質問ですが、弐大さん、あの大きな壁は退かせるものなんですか?」

    弐大「あの壁は大の大人40人分ほどの高さがあったはず、その上ワシと大神でブン殴っても、情けないことに傷一つつかんかった…」

    弐大「撤去する方法なんぞ思い当たらんぞ…」

    モノクマ「ま、人間がおいた物だからね 人間に動かせられないことはないよ」

    モノクマ「あ、ボクはクマだったね、忘れてたよ」

    舞園「自分のキャラまで忘れちゃうんですか…」

    モノクマ「記憶回路に少し障害というか、エラーがあってね フライパンで叩けば別のキャラクターに変貌しちゃうぐらいに記憶がもろくなっちゃったんだよ」

    左右田「イヤゼッテーウソだろ!! そんなポンコツ見たことねえぞ!!」









    モノクマ「そうそう、言い忘れてたことがあるんだけど……」

    モノクマ「みんな、これからは外出るときは武器持った方がいいよ……今の世の中いろいろ物騒だから」

    苗木「えっ…!?」




    モノクマは意味深なことを言い放ち、モンローウォークでその場を後にした









  5. 5 : : 2017/04/12(水) 23:29:48
    不二咲「ね、ねぇ…武器を持った方が良いって、どういうことぉ?」

    桑田「俺に聞くんじゃねーよ、知るわけねーだろ」


    武器を持っていけ……

    突然そんなことを言われても、ボクらはすぐにはその真意なんて理解しようがなかった

    それに、朝日奈さんたちを死に追いやったあの忌むべき凶器を手にするなんて、とてもできやしない

    霧切「ところでどうするの? このままくすぶっててもラチがあかないけど」

    葉隠「そ、そりゃあわかってるけどよ…」

    左右田「いや、なんつーかさ……俺たち、本当にこんな感じで良いのかなーなんて…」

    左右田「ずっと外出ようなんて…夢見てさ」

    苗木「え?」

    桑田「…よくわからねえけど、俺も左右田にサンセーかな〜」

    舞園「外に出たくないって、それってどういう意味ですか?」

    桑田「い、いやだってほらさぁ!! 外に出たいって気持ちはまだわかるよ!?全然わかるけどさ!」

    桑田「だけどさぁ…結局そこに一番つけ込まれてるじゃんか…オレたちって」

    舞園「だけど…! だけど、それじゃあ…」

    西園寺「だけど…なんなの?反論できないんだったら黙っててくれる?」

    西園寺「結局外に出たいって思っちゃったから前の事件がおきちゃったんじゃーん」

    不二咲「ちょ、ちょっと…その話を掘り起こすのはやめましょうよぉ……」

    弐大「じゃが、ワシは九頭龍の犠牲を忘れたくなどない 無論、朝日奈もな」

    弐大「これ以上目の前の人間を失いたくないという気持ちはわかるが……ふむ、どうしたものかのう 噴ッ、らしくないわい、この弐大猫丸がこんなに迷い悩むなど…久方ぶりじゃ」

    苗木「………ちょ、ちょっと待ってよ! 諦めるのはまだ早いよ!」

    小泉「…………」

    小泉「ムリじゃない、こんなの」

    苗木「え?」

    小泉「諦めようが諦めなかろうが、外に出ようが引きこもろうが、結託しようが散ろうがなんなのよ……全部同じじゃない」

    小泉「どう転んだって、私たちはモノクマの掌の上じゃない…今まで考えないようにしてきたけど、本当は最初から終わりだったんだよ、何もかも」

    苗木「で、でもみんなが結束を緩めたら、それこそモノクマの思う壺だよ!希望を捨てなければ…」

    小泉「だから同じだって言ってるでしょ」

    苗木「…………」



    反論できなかった


    ボク自身、外に出ようとする意思は潰えていなかった


    朝日奈さんのためにも、支えてくれる仲間のためにも、成歩堂さんや家族のためにも


    協力しあって、なんとしてでも脱出しようと考えていた



    だけど、みんなが同じとは限らない


    誰だって命は惜しいし、感情的な話以前に慎重に判断したい人もいる
    当然だ


    そんな意見すら淘汰できるほどの説得力なんて、ボクの言霊(コトダマ)にはない



    しばらくの沈黙



    ボクは、朝日奈さんの想いまで否定されたような気がして……何も反論出来ない自分を思いきり殴りたくなった


    小泉「…ごめん、私、部屋に戻って考えるから」

    西園寺「ちょ、ちょっと待ってよー、小泉おねえ」

    小泉先輩達が、寂しそうに戻っていった

    葉隠「ま、探したいやつだけで探しゃいいんじゃねーべか? オレっちは構わねーぞ」

    葉隠「果報は寝て待て…ゆっくり待ちゃいいんだよ」

    弐大「ええい!まるで気が持たん!こうなったらトレーニングじゃ!!」

    桑田「うう…苗木に舞園ちゃん、ごめんな、ホント」

    桑田「俺、ちゃんと色々考えてくるから、ちょっと待っててな」

    左右田「お、俺もとりあえず一旦戻るぞ」

    不二咲「苗木くんたちに協力したい気持ちは山々なんだけどぉ、私も少し部屋に戻るね」



    苗木「そんな………」


    ぞろぞろと、それぞれの場所へと戻るみんな



    誰も……引き止められなかった



    いや、引き止めなかったといった方が正しいかもしれない



    最初の頃の団結力がウソのように、みんなバラバラになってしまった














    ボクはなんて無力なんだろう


    朝日奈さん達の死って…なんだったんだろう

  6. 6 : : 2017/04/13(木) 16:36:47


    結局、残ったのはボクを含めて5人だけになった


    ソニア「そんな…どうして皆さんは…」

    大神「…………」

    舞園「バラバラになるのが、一番危ないのに、どうして……」

    霧切「嘆いたって仕方ないわ 私たちには私たちの出来ることを尽くしましょう」

    苗木「そうだね…それじゃあ、少し準備したら、すぐに向かおうか」

    霧切「ええ、そのつもり」



    ……外の探索といっても、なんだか微妙な空気だな




    うん…こういう時こそ誰かと話して気を紛らわすかな

    せめて少しでもみんなの事、理解したいし





    自由行動【残り1】

    (舞園、霧切、ソニア、大神)

    >>7
  7. 7 : : 2017/04/13(木) 17:08:23
    スキル取ろう
    舞園さん
  8. 8 : : 2017/04/15(土) 15:28:21
    舞園「安心してください、苗木くん」

    舞園「私は今後何が起きても、ずっとあなたの味方ですから」


    笑顔で振舞ってくれる舞園さんと過ごした




    苗木「舞園さん、前から気になっていたんだけどさ…」

    舞園「なんですか?」

    苗木「どうして舞園さんは、ボクと接する時に後ろめたそうな顔になるの?」

    舞園「…………」

    苗木「…ごめん、気のせいだよね、多分」

    舞園「いいえ、わかってます ごめんなさい、心配かけて」

    苗木「ボクも、無理に聞き出すつもりはないけど、出来れば、話して欲しいんだ」

    舞園「………」

    苗木「やっぱりダメかな?だったら、

    舞園「いいえ、大丈夫です 苗木くんにこれ以上心配させるわけにはいきませんね」

    舞園「苗木くん…少しだけ、私の部屋に来てくれますか?」

    苗木「わかった」


    ーーーーーーーーーーーー



    舞園さんの部屋にお邪魔した


    スーパーから持って来たであろう小物が、いくつか並んでる


    ……やっぱり、いつ見てもアイドルらしい雰囲気だなぁ、この部屋


    舞園「はい、ハーブティーです どうぞ」

    苗木「ありがとう、舞園さん」

    舞園さんのハーブティーを飲んで、お互いにリラックスした状態になる


    舞園さんの淹れるお茶、やっぱり美味しいな


    舞園「では、余談もなんですから、早速本題に入ってもよろしいでしょうか?」

    苗木「うん、いいよ」



    舞園「…私、あの時のこと、今でもすごく後悔することがあるんです」

    苗木「その後悔してる事っていうのは…」

    舞園「その…いじめを、止められなかったこと…です」

    ………やっぱり、そういう事だったんだ


    舞園「私も知ってます 井森さんのいじめ…」

    舞園「事あるごとに金品を要求されたり、それに対応しないと脅されたり…いろいろ噂はたってました」

    舞園「苗木くんも、そのターゲットにされていたって噂も」

    苗木「……後悔してることって、やっぱり止められなかったこと?」


    舞園「私、苗木くんがいじめられてるのをなんとかして止めたくて……だけど、私も、脅されてしまったんです」

    苗木「舞園さんの弱みを?」

    舞園「それは…私のメンバーの弱みでした」


    メンバーの…?

    舞園「彼女には、マスメディア会社に勤める父親がいて、『お前が何かしたら、父親の権力で、いつでもお前のお友達を自由に出来るんだぞ』って脅されて…怖かったんです」

    苗木「きっとみんな、そんな風に脅されていたんだね」

    舞園さん自身を脅しても、自分の身を徹してかばうかもしれない……だから敢えて舞園さんの仲間を脅したのか


    今はもうこの世にはいないとはいえ、本当にひどい人だったな

    舞園「苗木くん……あの時私は、苗木くんがイジメられてるのを知っていて、それを無視してました」






    舞園「苗木くん……怨んでくれても構いません 赦して欲しいとは思いません」



    舞園「あの時……苗木くんの助けになれなくて、本当にごめんなさい」

  9. 9 : : 2017/04/15(土) 19:33:20


    苗木「……………プフッ」


    舞園「えっ?」


    苗木「い、いや……舞園さん、そんなことで悩んでたのかなって…ごめん」

    舞園「ちょ、ちょっと、苗木くん!私だって真面目に悩んでいたんですよ!!」

    苗木「う、うん、そうだよね、笑ったらさすがに失礼だよね…」

    苗木「だって……そんなの当たり前だよ」

    苗木「自分自身だけじゃなくてメンバーまで脅されて、そんなの、何もしなくて当たり前じゃないか」

    苗木「それにボクも安心したよ 舞園さんたちが彼女に何もされていないなら、ホントに良かった」



    舞園「……………もう、苗木くんったら」




    舞園さんは、一周回って少し呆れ気味に、そしてとても安堵したように微笑んでくれた


    舞園「苗木くん…なんだか本当に前向きですね 呆れるぐらいに」

    苗木「うん、これでも元々前向きだったけど、ある人に会ってからはもっと変わったから…」

    舞園「ある人…?」

    苗木「…ううん、なんでもない とにかくもう気にしないで大丈夫だよ ボクは全く舞園さんのことなんて恨んでない、むしろ感謝してるよ」

    苗木「どんなに辛い時も、舞園さんの自然な笑顔に癒されて頑張ってこれたんだ」

    苗木「舞園さんの笑顔が、ボクの暗い時代を支えてくれてたんだ だからボクからもありがとうって言いたい」


    舞園「……苗木くん、私決めました!」

    舞園「私、苗木くんの助手になります!!」

    苗木「え、ええっ?助手?」


    唐突な話に、ボクは戸惑う


    あの舞園さんが、こんなボクの助手?


    むしろボクが助手というべき立場のハズなんだけど……


    舞園「これから苗木くんの助手として、一緒に外に出る方法を探りましょう それが、今の私に出来る精一杯の恩返しです」

    苗木「ボクと一緒に探す、か……」

    舞園「私は苗木くんとなら、なんだって出来る、どんな壁も乗り越えられる そう思うんです!」


    舞園「だから苗木くん、お願いです」


    舞園「私を……助手にして頂けますか?」



    苗木「そうだね…こんなボクでいいなら、喜んで」



    舞園さんが助手か……立場が逆転してるような気がするけど、悪くない


    それに、舞園さんとなら、この絶望を一緒に乗り越えられるかもしれない



    彼女との絆が、一段と深まっていく


    それを確信し、ボクは舞園さんの手を取った












    舞園「苗木くん、助手として、改めてよろしくお願いしますね♪」





  10. 10 : : 2017/04/15(土) 19:37:02


    オートスキル【想いを歌にこめて】をゲットしました


    【想いを歌にこめて】
    反論ショーダウン時に、発言力が5回復
  11. 11 : : 2017/04/16(日) 15:36:00

    舞園「ところで、本当にこの人数で行っても大丈夫なのでしょうか…」

    霧切「確かに心許ないけど、そうも言ってられないわ 彼らの迷いを払拭するには時間が必要よ」

    ソニア「でしたら、せめて弐大さんだけでも呼んでみませんか?」

    大神「無駄だ、耳をすますのだ」



    ドゴオオオオオオオン

    ボコオオオオン

    ドカカカカカカカカ



    ……工事現場なのかな?この音って



    本当にトレーニングの音で合ってるのかな?


    霧切「トレーニングに夢中なら、今は声をかけない方がいいわね あの音だと何が起こるかわからないし」

    苗木「う、うん…そうだね」

    舞園「では、私たちだけで行きましょうか」



    舞園さんを筆頭にして、僕たちは再びあの街に繰り出した



    それにしても…さっきのモノクマの言葉はどういう意味だったんだろう?

    武器を持っていけ、なんて…

    まぁ、今は深く考えても仕方ないか



  12. 12 : : 2017/04/19(水) 18:33:04

    舞園「今日もいい天気ですね、苗木くん」

    苗木「そうだね 雲ひとつない晴天だね」

    ソニア「…こんな時でも、陽の光は優しくて暖かいものですね」

    苗木「そうですね…」

    大神「うむ……確かにまるっきり無くなっている」


    ボクたちは駅前広場まで来ていた


    昨日までそこにあったはずの壁が、まるで元から何もなかったかのようにこざっぱりとしていた



    ソニア「駅前広場の荒れようを見ると、この先も荒れた場所が多いのでしょうか?」

    霧切「行ってみなくちゃわかりませんけど、足下には気をつけた方がいいわね」

    大神「左様…どのような罠があるのかわからぬ」

    舞園「やっぱりここって、テロや暴動の跡地ではないでしょうか?」

    苗木「だとしても、ここはどこなんだろう…ニュースじゃそんなこと全く聞いてないけど」

    ソニア「そもそもここは日本なのでしょうか? 世界には日本街がある国も存在しますが」

    大神「あまり考えたくはないのだが…我らが眠っている間に何かが日本で起きていたのかもしれん」

    霧切「今はいくら考察しても推測の域を出ないのよ 私たちはとにかく探すしかないわ」

    苗木「そうだね…それじゃ二手に分かれよう、ボクと舞園さんは正面の大通りを進むから、霧切さんたちは奥のマンション街を目指して進もう」

    霧切「あら、珍しく積極的ね それにわざわざ相手を舞園さんにするなんて…」

    ソニア「しかも……ふたりきり…」

    苗木「あっ」


    ほぼ無意識でいってしまったことで、ボクは急に恥ずかしくなった


    いや、本当にたまたまなんだけど…


    霧切「…まぁ何があったのか詮索するのはやめておくわ 行きましょう」

    大神「うむ、ではさらばだ」

    ソニア「苗木さん、一体次は誰に乗り換えるのでしょう…あっ!なんでもございません!!では!」


    おっかないことを口走ったソニアさんと霧切さんと大神さんは、マンション街の方へと向かった


    …なんで誤解されたんだろ


    舞園「苗木くんは女たらしだと勘違いされてるのではないでしょうか?」

    苗木「えっ!?」

    舞園「私、わかるんです エスパーですから」

    苗木「ああ…それってさすがに冗談だよね?舞園さん」

    舞園「うふふ、冗談です♪」


    舞園さんを連れて、ボクは大通りを進む



  13. 13 : : 2017/04/20(木) 18:42:08


    苗木「…やっぱり、荒れている」



    まっすぐストリートを歩くボクと舞園さん


    だけど、その惨状は足を進めるに比例してどんどん酷くなり………


    街行く窓は割れ、家は燃跡となり、しまいにはコンクリートまで軽く隆起してるほどだった


    舞園「………」

    苗木「舞園さん、平気?」

    舞園「…ちょっと、掴まっててもいいですか?」

    苗木「わかった 慎重に進もう」


    それでも少しずつ歩いて行くと……もうそこは街と呼べるものでは無かった


    ピサの斜塔のように傾いたビルや、クルマだったものの残骸


    乾いた血らしき茶色の跡



    ………ここって、一体なんなんだ?


    歩いて行き着く先は、広大な公園のような敷地


    ただタコの山とブランコと倉庫があるだけの簡素なものだった


    舞園「すみません、ちょっとここで休憩してもいいですか?」

    苗木「そうだね、そろそろ腰を下そうか」


    倉庫の前にはベンチがあるし、舞園さんの顔色も悪くなってきた

    そりゃそうだよな…こんな映画でしかみたことないような物騒なところ歩いてたら


    舞園「…どうして、こんな惨状になっているのでしょうか?」

    苗木「どうも軽い事件には見えないよね…完全にテロか戦争の跡みたいだ」

    苗木「街並みも完全に日本だ…看板も日本語だし、韓国の日本街とは違うっぽいね」



    何より気になるのが……このマーク


    色んな民家の壁に共通あったマークだ

    二つの大小の円に、三日月マークを三つ重ねたようなマーク……

    ゲームとかでみたことある、いわゆる生物災害、バイオハザードのマークだ

    これが貼ってあるってことは…


    舞園「生物災害ということは、単純なテロときう訳でもなさそうですね」

    苗木「えっ!?」

    舞園「エスパーですから」

    苗木「………」


    やっぱり舞園さんってホンモノの……


    舞園「もう少しだけ調べられるところを調べましょう、そうすれば、もっと細かい事までわかります」

    苗木「そうだね…それじゃまずこの倉庫から調べてみようよ」

    ベンチの裏にあった倉庫から調べよう

    ボクは一番手っ取り早いところから調べ始めた

    ガラガラガラガラ










    そして、その刹那だった




    文字通りまさか、の事態だった



    舞園「苗木くんっ!!! 危ない!!!!」



    舞園さんが声をかけた時にはもう遅かった



    半開きの倉庫の奥から光るビー玉のような小さな光




    その光はボクを捉えると、つかさず…






  14. 14 : : 2017/04/22(土) 12:39:57
    苗木「うわあっ!?」

    猫「ミャーーウ」


    猫に威嚇された


    眠りを妨げられて不機嫌なのか、猫は威嚇した直後に走って公園を出て行ってしまった



    舞園「はぁ…よかった」

    苗木「び、びっくりした…」

    舞園「苗木くん、ケガはないですよね?」

    苗木「うん、ちょっとだけ噛まれたぐらいだよ」

    舞園「よかった……なんだか取り越し苦労でしたね」

    苗木「それよりも、早速調べてみようよ 公園の倉庫なら、何かしら防災用具や非常食があるかもしれないし」

    舞園「わかりました ええっと、これは……大きなシュラフが何個も…」

    苗木「シュラフ…?どうしてシュラフがこんなところに」

    舞園「何かしら災害が起きた時に、公園でキャンプができるようにあるのではないでしょうか ほら、非常食も簡易テントもありますし」

    苗木「せっかくだから、シュラフの中とかも見てみる? 色々入ってるかもしれないし」

    舞園「このなかに色々詰まってたらいいのですが…」


    舞園さんはシュラフのジッパーに手をかけた

    しかしちょっと開いた途端、すぐに辞めた


    舞園「………」

    苗木「舞園さん、どうしたの?」

    舞園「なんだか…血生臭い臭いがします」

    苗木「!」



    そうだ、忘れてた


    この街の1番の《異常》……


    それはあちらこちらに死体が転がっている事だ


    苗木「舞園さん、早くここを出よう わざわざ死体なんて調べる必要もないし」

    舞園「は、はい…」


    舞園さんが顔色を青くしてシュラフに背を向けた





    ガバッ


    苗木「!!」


    舞園「きゃっ!?」







    ???「アア……アアア…」





  15. 15 : : 2017/04/23(日) 01:38:32


    苗木「…!?」


    淀んだ虚空を切り裂くように、舞園さんの叫び声が聞こえた




    …………信じられない光景だ



    シュラフから伸びる腕



    片腕だけで拘束され、恐怖に慄く舞園さんの瞳



    そして聞こえる、謎のうめき声



    ???「アア、アアアアアア!!!!」



    舞園「ッッ…〜〜〜〜!!!!」


    口を強く塞がれ、叫ぶことができなくなっている舞園さんは、大きく目を見開き、涙を流しながら必死に助けを乞うている


    やがてシュラフの中から、その腕の持ち主がゆっくりと姿を現した


    ???「アアアアア……ウウ」



    苗木「だ、誰だっ!」



    ???「………ウウ」


    出てきたのは、顔が青白く、皮と骨だけの、人のような何かだった



    恐ろしいのは、皮と骨だけだというのにその腕力は女子高生1人を身動き取れないまでに拘束することだ


    そして、男は喋った



    ???「ゼツボウ……ウウ…シロォ……」


    苗木「絶望…だって?」



    ???「ゼツボウ……ゼツボウヲ………キサマニモ……ゼツボウ…」


    男はぐわっと、その細身の肉体に似合わぬ大口を開ける



    舞園「!?!?!? 〜〜!!!!」





    舞園さんが噛まれようとしている



    なんの意図があるのかわからないが、あいつは舞園さんを噛もうとしていた






    それだけで、ボクがあの男に飛びつくには十分な動機だ



    実際、この時何も考えてなかった




    舞園さんを助けなきゃ





    舞園さんを守らなきゃ





    男の歯が、舞園さんの首に突き立てられる寸前





    ガブッ




    舞園「〜………!!」



    舞園「え…?」












  16. 16 : : 2017/04/24(月) 17:26:25


    自分でも信じられない速度でその男に飛びついていた


    そして………


    苗木「ううっ!ううぅう…」


    腕で舞園さんを、男の凶牙からかばったのだ



    パーカーにうっすらと血が滲む


    苗木「ッ……!!」

    舞園「苗木くん!?」



    男がボクに気を取られたのか幸いして、舞園さんは一瞬緩まった男の手から離脱することができた

    ???「ウグググ……!」

    苗木「ッああっ!!!!」


    男の噛む力がさらに強くなる


    腕にさらに痛烈に歯が食い込み、思わず悲鳴を上げる


    舞園「いやぁあっ!!!!!!」



    ドカッ


    ???「ッッウ…!」


    ふと、腕にかかる負荷が重くなったかと思いきや、そのすぐ後に歯に力がなくなる


    舞園さんが、うんていの鉄パイプで男の頭を殴ったのだ




    男はその場に力なく倒れた


    舞園さんの服に返り血が多少ついていたが、今は身なりを気にする余裕はなかった


    舞園「苗木くん!!! 大丈夫ですか? ケガ、見せてください!!」

    苗木「だ、大丈夫…だよ…… 噛まれただけだし」

    舞園「パーカーまで血が滲んでるのに平気なはずがないでしょう?」

    苗木「確かにそうだね……ごめん」

    舞園「謝るのは私の方です 私が迂闊に行動しなければ、苗木くんをこんな目に遭わせることなんてなかったのに…」


    苗木「とにかくスーパーに行こう あそこならケガを治療する道具もあるはずだし」

    苗木「後悔するよりも先に、行動を起こさないと」

    舞園「…そうですね、わかりました 少し腕、見せてください」


    舞園さんは汗拭き用タオルでボクの腕を止血してくれた



    そして命辛々、ボクらはその場を後にした
  17. 17 : : 2017/04/27(木) 14:20:50


    舞園「消毒するので、ちょっと我慢してくださいね」

    苗木「うん 痛っ…」

    舞園「ひどい…歯型が結構食い込んでますね」

    舞園「ごめんなさい、私が迂闊だったばかりに」

    苗木「先に提案しちゃったのはボクだよ こっちこそごめんね、舞園さん」

    舞園「…これで応急処置は完了しました」

    舞園「でもあくまで応急処置なので、痛むようでしたら無理に腕を使わないでくださいね」

    苗木「舞園さんは手馴れてるね 普段からやってたりするの?」

    舞園「舞台でケガをした時用に、いつでも応急処置のやり方は心得てるんです ワイヤーアクションとかで高いところから落ちたりしたら、何もできないと大変なので」

    苗木「へえ…さすがアイドルだね」

    舞園「アイドルは笑顔の裏で、いつも努力してるものです」

    笑顔の裏で努力、か…確かにそうかもしれない



    実際、今舞園さんが見せているのは、無理して作った笑顔だから


    苗木「…舞園さん、今日はもう戻ろう」

    舞園「えっ?どうしてですか? やっぱり腕が痛むとか…」

    苗木「……舞園さん、さっきから膝が笑ってるよ」

    舞園「えっ…」



    今一番感情を抑えているのは、舞園さんの方だ

    突然、謎の男に襲われて、なおかつその男を思いきり鉄パイプで殴ってしまった

    精神的な動揺は、舞園さんの方が大きい



    舞園「……やっぱり、苗木くんの前ではウソはつけませんね」

    苗木「気分が落ち着くまでゆっくりしよう、舞園さん ボクに出来ることは何でもするから」

    舞園「お気遣い感謝します では、お言葉に甘えて…」

    舞園「えいっ」

    苗木「ええっ!?」


    何を思ったのか舞園さんは…座ってるボクの膝に突然頭を乗せてきた

    いわゆる膝枕の体制だ


    苗木「舞園さん、急に積極的になってどうしたの……?」

    舞園「ふふ♪こっちの方が落ち着くんです♪」

    舞園「ここでしばらくゆっくりしてても…いいですか?」

    苗木「わ、わかった……」

  18. 18 : : 2017/04/29(土) 16:28:15
    舞園「霧切さんたち、少し遅いですね…」

    苗木「うん、10時にはスーパーに来るって言ってたけど、何かあったのかな」

    舞園「…ちょっと不安ですね、あちらは大神さんもいるから心配は無用かもしれませんが」

    苗木「…あのゾンビみたいな人はなんだったんだろう」

    舞園「動いていたけど、寧ろ生きてるようには見えませんでしたね 腐敗臭も凄かったです」

    苗木「もしかして、ここで起きた事件に巻き込まれた人たちの成れの果て、なのかな…?」

    舞園「ゾンビウィルスにかかって動き出す、といった具合でしょうか?」

    苗木「まるでパニック映画みたいで現実味が湧かないよ」


    現実味、か…

    ここに来てから、現実味って言葉がいかに脆くてツギハギだらけの言葉だったのかを思い知らされた

    ここにあるのはリアルであってリアルではない

    ただただ信じられないような現実が襲ってくるだけだ

    舞園「あ、霧切さん!」

    霧切さんら3人がスーパーに入って来た


    誰もケガをしてる様子なない
    どうやら無事だったみたいだ

    霧切「マンション街を探索したけど、調べた限りほぼ全ての扉は固く閉ざされていたわ」

    大神「うむ、我の怪力をもってしても不可能だった」

    ソニア「あとは、他の場所に比べて世紀末チックだったところでしょうか…それぐらいしか成果が出せませんでした」

    苗木「そうなんだ…こっちも似たようなもんだよ」

    霧切「ところで舞園さん、その返り血は何? どこかケガをしたの?」

    舞園「正確には、ケガをしたのは苗木くんなんです 突然変な男に腕を噛まれて、ここで応急手当てを施したばかりなんです」

    霧切「変な男?」

    舞園「信じられない話ですが…シュラフを開けた時に変な男が中に入ってたんです」

    舞園「その男が、私を襲って、苗木くんがそれをかばって…」

    大神「待て、その男とやらは一体何者だったのだ?」

    舞園「わかりません ただ急に襲いかかって呻き声を上げて…まるでゾンビのような人でした」

    ソニア「モノクマの用意したエキストラという事でしょうか?」

    霧切「その男を捕まえて話を聞き出す方が早いわ どこにいたの?」

    舞園「えっと…その人なんですけど…」

    舞園「多分、もう口は聞けない状態なんです」

    霧切「…殺したって事?」

    舞園「……そうかもしれません さすがに生存確認までする肝はなかったので、わかりませんが…」

    霧切「そう……わかったわ これ以上聞くのも踏み込み過ぎね」

    ソニア「ですがどうしましょう? アンデッドがうろついてる様では、安全に捜査することなんてできませんけど…」

    大神「一旦戻って、対策を考えねばならぬ また下手に動けば、今度は誰かが死ぬかもしれん」

    ソニア「十分に捜査することも許されないなんて……私たちはどうすればいいのでしょうか」

    霧切「私たちには私たちにできることをしましょう とにかく私は戻るわ」

    霧切「こんなところで、命を落とすわけにはいかないから」



    ボクらは戻って、作戦を練り直すことにした

  19. 19 : : 2017/04/29(土) 23:55:20

    ーーモノクマ劇場ーー

    モノクマ「人っていう生き物はね、常に仮面をかけてる生き物なの」


    モノクマ「さすがに初対面の人に素のままの自分で対応する人なんていないでしょ?だからまずは…相手がどんな仮面を被っているのか見極めるの」

    モノクマ「そして相手の仮面の種類を見てから、その人の仮面の奥を知るべきかどうかを考えるんだよ! つけてる仮面のセンスで、どんな人なのかわかるからね〜」

    モノクマ「そして仮面を外した時、その仮面の下の顔を受け入れるか受け入れないかはあなた次第 ドン引きして突き放すのも、ありのままの姿を好きになるのもあなた次第」

    モノクマ「……だけど人間ってクマと違って身勝手な生き物でね〜〜」





    モノクマ「自分の仮面は取りたがらないのに、他人の仮面の下はと〜〜〜〜〜〜〜〜〜っても気になっちゃうんだよね〜……うぷぷぷぷ」




  20. 20 : : 2017/04/30(日) 22:34:07
    苗木「あれ? 誰も起きてないのかな…?」

    ソニア「皆さん、部屋に引きこもって眠っているのでしょうか?」

    桑田「ヒトを引きニートみてーに言うんじゃねーっての」

    大神「桑田よ、1人で何をしてるのだ」

    桑田「んん〜、なんか朝から落ち着かないっつーか、ずっとソワソワしててさ…」

    桑田「なんかあんまり考え込みすぎんのもカッチョイイ俺らしくねーからさ、仕方ねーから弐大のおっさんの特訓に付き合ってたんだよ」



    弐大「コラ桑田ァ!!休憩時間に勝手にサボって出て行くんじゃあ…応、なんじゃ、お主らも戻ってきてたのか」

    弐大「ちょうどいい!!これから心身の鍛錬も兼ねてNEWトレーニングルームでワシのメニューを一から…
    大神「弐大殿、他の様子はどうだ?」

    弐大「何ぞや、今日はつれないよのう大神よ」

    弐大「さすがにみんながみんなワシや桑田みたいに能天気ではないのう さっきからずーっと部屋にこもりっぱなしだ」

    弐大「特に小泉が不安じゃのう……あの目、かなり気が滅入ってるぞ」

    桑田「ああん?さりげなくヒトを能天気扱いするんじゃねーよこの脳筋!!」

    弐大「噴!バットの振り方もボール球の見切り方も半人前のお前さんが他人を脳筋呼ばわりとはいい根性じゃ」

    桑田「はぁ?どうゆー意味だよ」

    弐大「確かにお前さんは才能がある だが練習してないせいでフォームはめちゃくちゃ、オマケに何をするにも勢いと直感まかせ…全く、どこかの誰かにそっくりじゃ」

    桑田「ベツにいいだろ、それで勝ってきたんだからよ」

    弐大「いい訳なかろうが!! そんな基礎の足りないプレイじゃ、プロの選手になった時に必ず後悔するぞ!!」

    弐大「お主は松井秀喜やタイカップのようなスーパーメジャーリーガーになりたくないのか?」

    桑田「そんなのにキョーミねぇっつーの! ベツにメジャーがダメなら国内プロで頑張りゃいい話だろ?」

    弐大「噴!どうやらお前さんに努力を諭すのは時間の無駄のようだな…」

    桑田「呆れたかよ、だったらさっさと見限りゃいいじゃねーか」

    弐大「もうお前に言葉はいらん!!ワシが1から10まで無理やりにでも叩き込んでやるぞおおおお!!!」

    桑田「え、ちょ、はぁ!?なんでそーなるんだよ!!!!」

    弐大「もうお前さんの話は聞かん!!さぁついてこい!!!!もう一度特訓じゃあああああ!!!」

    桑田「ちょ、ちょっと待てって、おい!! 話聞いてる?」

    弐大先輩は軽々と桑田クンを担いで、走って行ってしまった……


    大神「それにしてもNEWトレーニングルームとはなんだ? 我々がここにきた時にはそんなものはなかったはずだが」

    霧切「外に新しいエリアが解放されたように、この体育館にも新しい場所が解放されたようね」

    舞園「外だけではなく、この体育館も捜索すると必要があるという事でしょうか」

    大神「今はまだいいだろう、それよりも…」

    ソニア「ええ、皆さんの様子を見に行きましょう 幸い弐大さんと桑田さんは気を取り戻してますが、他の人が心配です」

    苗木「ボクも心配だな……特に小泉先輩が」

    霧切「小泉先輩にきつく言われた事、割と残ってるみたいね」

    苗木「うん、あの時の小泉先輩、怒ってるとも悲しんでるともいえないような、すごい複雑な表情をしていたんだ」

    苗木「小泉先輩だけじゃない、左右田先輩や西園寺先輩も…すごく悩んでると思う」

    苗木「ボクたちに出来るのは、そばにいることぐらいかもしれないけど…何もしないよりはマシだよ」

    霧切「だけど、彼女はまたあなたのことを拒絶するかもしれないわ」

    苗木「…そうだよね、ボクがあんなこと言っちゃったから」

    ソニア「苗木さんはあまり悔やまないでください 少なくとも、苗木さんが事件を解いてくれたおかげで、今の私たちがあることは理解してくれると思います」

    ソニア「きっと、まだ現実を受け入れきれてないだけのはずです だから、ここは私にお任せください!」

    舞園「私もご一緒していいですか? 女の子同士、ちゃんと話し合えば小泉さんもわかってくれると思います」

    ソニア「では、お言葉に甘えて、舞園さんのチカラもお借りしますね」

    大神「待て…もしもの事もある 我も共についていこう」

    ソニアさんと舞園さん、大神さんが、寮の上の階へと歩いていった


    霧切「……ところで、さっきからそこで聞き耳を立ててるのは誰?」


    苗木「えっ?」


  21. 22 : : 2017/05/05(金) 21:40:25
    西園寺「……何よ、盗み聞きして悪かったわね」

    苗木「西園寺先輩…?」

    霧切「ずっとこんなところにいて、どうしたんですか?」

    西園寺「うるさいブス、子供扱いするんじゃないわよ」

    …………

    いつも人の心をえぐってくる西園寺先輩の毒舌に、なんだかキレを感じない


    苗木「西園寺先輩、部屋に戻らなくていいの?」

    西園寺「いいわよ…戻ってたってソワソワするし」

    霧切「小泉先輩のことで何かあったの?」

    西園寺「うるさいわね あんたら陰キャラに話す事なんてなにもないんだけど」

    霧切「ベソをかいた後がありますよ 小泉先輩に、何かされたのかしら?」

    西園寺「うう〜…し、知らないし! 気安く話しかけんなこのゴキブリホイホイ!!」

    霧切「…そうね、あまり首を突っ込むのは私の悪い癖だわ ごめんなさい」

    西園寺「いいわよ…はーあ、ゴキブリホイホイと話したらゴキブリの臭いが移るからもう部屋に戻る」

    霧切「………」


    西園寺先輩は階段を登り部屋に戻った


    苗木「霧切さん、急に西園寺先輩にふっかけるなんて、どうしたの?」

    霧切「……いいえ、少し彼女が怪しいと思ってしまっただけ」

    霧切「ヘタに勘繰って取り越し苦労をする…探偵の悪い癖よ」

    苗木「そうなんだ…だったらいいけど」

    霧切「ただ…」

    苗木「ただ?」

    霧切「私たちの会話に参加せず、立ち聞きしていた理由はなんなのでしょうね」

    霧切「彼女自身も…私たちのことを疑ってたのかしらね」

    苗木「え?」

    霧切「苗木くん、覚えておくといいわ」

    霧切「自分が他人を疑うとき…その他人もまた、あなた自身を疑ってるのよ」


    苗木「………」

    この時の霧切さんの言葉は、ボクにはまだ理解できていなかった

    ただ、ボクが感じたのは……

    ……………

    言葉にできない霧切さんの視線だった


    苗木「あ、あのさ、霧切さん」

    苗木「舞園さんたちが小泉さんを励ましてる間にさ、ちょっとだけこの体育館の設備を見に行こうよ」

    霧切「…そうね、新しいエリアも解放されたみたいだし」

    霧切「行きましょう、少ない時間を無駄にしないためにも」

    苗木「そうだね」




  22. 23 : : 2017/05/06(土) 11:19:59

    弐大「墳!うおりゃあああ!!!」

    桑田「ちょ、ちょっと待てって!打てねえって!!速すぎだろ!!!!」

    弐大「なんだと?この程度も打ち返せんとは、やはり実力が足りん用じゃ!!!」

    桑田「俺も人間だぞ!? 人間に打てるボール投げろよ!!ゴリラボール投げんじゃねえっての!!!」

    弐大「ほほう……キサマはまだ自分が人間だと錯覚していたのか?」

    桑田「へ?」

    弐大「お前さんの肩、腰、腕、脚の筋肉、どれを取っても寸分の無駄もない最強の肉体だというのにか?」

    桑田「ど、どういう事だよ…?」

    弐大「お前さんはやはり超高校級というだけあって、他のどの野球選手よりも素質が高いという事じゃ」

    弐大「ワシの指示通りに鍛えれば…地上最強の野球選手となれる!!」

    桑田「ち、地上最強…?」

    弐大「そのためのトレーニングじゃあ!!ワシのボールを打ち返してみろおおおお!!!!」

    桑田「よ、よっしゃ! やるぞ!やってやるぞ!!」

    ガゴオオオン

    桑田「………あれ?」

    桑田クンのバットは、確かに弐大先輩の投球にクリーンヒットした

    どうみてもクリーンヒットしてた

    だけど………


    桑田「お、おい……バットが折れるぐらいの勢いで投げても意味ねえだろうがよ……」

    弐大「知らんのか?これはお前さんの投球の2分の1にも満たない速度だぞ?」

    桑田「はぁあ??」

    弐大「今のはバットが安物だっただけじゃ 実際の試合ではさらに強度の高いバットが使われる」

    弐大「それにお前さん、人のバットに当たるボールを投げたことがあるのか?」

    桑田「いやそれは……まぁ、ねーけどよ」

    弐大「ならば、今度は自分の投球がいかに恐ろしいものかを確認するんだな、ボールを全力で投げてみろ」

    桑田「いいけど……うおりゃあっしゃあコラァ!!」

    桑田クンの投げた豪速球を、弐大先輩はグローブもなしに受け止めた

    弐大「うおおおおおおっ!!!!」

    桑田「えええ!?」

    結果から言えばボールは止まった しかし、その球は、まるで後ろに引きずるように弐大先輩を30㎝ほど後退させたのだ

    桑田「……こ、こんなに強かったのか?俺?」

    弐大「フッフッフッ……思い知ったようだな、自分の潜在能力を」

    桑田「……マジか…」


    霧切「…楽しそうにしてることだし、ここを調べるのは後でにしましょう」

    苗木「それに、巻き込まれて怪我したくないし」

  23. 24 : : 2017/05/07(日) 23:27:56

    新たに解放された体育館の地下一階に進んだ

    地下一階の廊下の大きなガラス窓から、広大なプールがみえた

    苗木「ここは…プールだね」

    霧切「25mのと、飛び込み用の深いプール、ここは競技用のプールね」

    霧切「更衣室はこの下の階にあるのかしら?」

    苗木「いや、更衣室への入り口はこの階にあるよ 男子用と女子用だね」

    霧切「私たちの部屋みたいに、カードリーダーがあるのね」

    霧切「これがあれば、異性が勝手に入ってくることはなさそうね」

    苗木「後はトイレと自販機と…ダメだ、ほとんどの扉がロックされてる」

    霧切「こっちの扉は開いてるわよ」

    苗木「これは…倉庫だね」

    苗木「デッキブラシに水に掃除機にタオルに非常食にレインコート……うーん、イマイチ使えそうなものはないな」

    霧切「ここは元々防災用施設も兼ね備えた体育館みたいだし、不思議ではないわね」

    苗木「………それにしても、水、綺麗だね」

    霧切「まだ誰も利用してないからね 入りたいなら入ってくれば? 私は待ってるわよ」

    苗木「いや、遠慮しておくよ」

    …………プールか…


    このプールを、朝日奈さんと一緒に泳ぎたかったな

    …なんて、今更過去を想いふけっても意味ないよね
  24. 25 : : 2017/05/08(月) 00:00:01
    苗木「あれ?桑田クン達、戻っちゃったのかな?」

    さっきのトレーニングルームに戻ると、桑田クンと弐大先輩の姿がなかった


    きっと激しいトレーニングを終えたんだろう


    ちなみにこのNEWトレーニングルーム…少し前に弐大先輩と大神さんがトレーニングした時に壊してしまった武道場を改修したものらしい

    おかげで前よりも色々設備が充実してる

    ピッチングマシーン、トレーニング用具、水泳用タオル、健康雑誌、柔道の帯……おそらく、ここに連れてこられたボク達用に用意されてるのだろう

    霧切「特に変わった様子はないみたいだけど……いいえ、正確には『もれなく変わってる』けど」

    苗木「それにしても不思議だね どうやってこんな速さで改修したんだろう」

    苗木「少なくとも、数日で改修が出来るぐらいには、ここの人材は足りてるってことなのかな?」

    霧切「そうなると、敵はとても大きいわね、苗木くん」

    苗木「……大きいからといって、立ち止まる訳にもいかないけどね」

    苗木「帰りを待ってる家族がいるし…ボクが生きて帰ってくることを望んでくれる人だっているし」

    霧切「帰りを待ってる家族、ね……」

    霧切「家族が帰りを待ってるというのは、とても幸せなことよ、苗木くん」

    霧切「そのありがたい家族のためにも…ここで投げ出しちゃ駄目よ」

    苗木「霧切さんにも、待ってくれる家族はいるでしょ?」

    霧切「………………」

    苗木「?」

    霧切「……家族、ね…」

    霧切「ごめんなさい、あまり軽はずみに命題にするものでもなかったわね」

    霧切「戻りましょう 舞園さん達の話も聞きにいかないと」

    苗木「う、うん……」



    霧切さん…家族のことで、何かしこりがあるのかな?


    …いや、人の家庭の事情まで詮索してどうするんだよ、ボク
  25. 26 : : 2017/05/08(月) 21:29:44


    苗木「舞園さん達、まだ戻ってきてないみたいだね」

    霧切「今頃小泉先輩と談笑してるんでしょう それとも様子を見に行く?」

    苗木「いや、男子のボクが女子の話の輪に混ざっても浮いちゃうだろうし…」

    霧切「相変わらず、まるで自信がないのね」

    苗木「あははは…さすがに女子だけだと話題に困ったりするよね」



    霧切さんと話してると、桑田クンが階段を降りてきた


    桑田「ん? おう、苗木か」

    苗木「桑田クン、練習お疲れ様」

    桑田「なんだよ、見てたんなら言えば良かったのに」

    桑田「それにしても、さっきはホントゴメンな! オレもイロイロマイナスな気持ちになっちゃっててさ!」

    苗木「無理もないよ、人の死体なんて見せられて……ボクも桑田クンに元気が戻ってくれてよかったよ」

    桑田「…自分も色々大変な割にはこっちの心配までしてたのか?」

    苗木「いくら自分が大変でも、友達のことを心配せずにはいられないよ」

    桑田「へー、やっぱ苗木って凄えや」

    桑田「初めてあったときだって、ここでの学級裁判のときだって…なんだかさ、お前見てっと自分がちっぽけに感じるぜ…」

    霧切「人間なんて、ひとりひとりはちっぽけな存在よ」

    霧切「でも、人が強くなれるのは人のおかげなのよ、桑田クン」

    桑田「人の…おかげ?」

    霧切「きっと苗木くんが強くあれるのも、あなたが支えてあげてるおかげじゃないかしら」

    霧切「栄光は一夜にしてならず…その英雄の影には、いつでもたくさんの仲間や協力者、共感者がいるものなのよ」

    桑田「そ、そっか…俺のおかげか…へへへ」

    桑田「なんかさ、アレだよな霧切って ここのメンバーの第2のおかん」

    苗木「お、おかん…?」

    霧切「……光栄、と受け取ればいいのかしら?」

    桑田「そーそー!!ちなみに第1のおかんは小泉な!」



    小泉「ふーん、私が第1のおかんなんだ」

    桑田「そーそー小泉はメシ作ってるし左右田やオレのケツ引っ叩いてくれるあねさん的な…」

    桑田「ってアレ??お前小泉じゃん!!」

    小泉「何よ、いちゃ悪かった?」

    苗木「小泉先輩、その…大丈夫、なんですか?」

    小泉「ああ、なんていうか…こっちもさっきは辛く当たってゴメンね」

    小泉「もう大丈夫!ソニアちゃんたちと話して元気になったから!」

    苗木「それなら良かったです 安心しましたよ」

    小泉「ほら!もう時間も時間だしさ、何か作っておこうよ あ、桑田は弐大とか左右田とか読んできて」

    桑田「んん〜…まぁ元気なら別にいーか メンドいけど」

    霧切「大神さん達はどうしたんですか?」

    小泉「ああ、今はそれぞれの部屋に戻ってるよ 私が呼んでくるね」

    霧切「いいえ、私が行くわ」

    小泉「ああ〜、そっか…」

    霧切「小泉先輩は苗木くんと料理を…いいえ、できれば苗木くん以外の人とお願いします」

    小泉「そう?わかった」




    霧切さんと桑田クンは上の階のみんなを呼びに行った


  26. 27 : : 2017/05/11(木) 16:06:52


    小泉「苗木、いま洗い物手伝えないの?」

    苗木「うん…実は色々あってさ」

    苗木「腕を怪我しちゃって、湿布を貼ってるんだよ」

    小泉「そうだったの? 応急手当、ちゃんとしてる?」

    苗木「うん、舞園さんのおかげで」

    小泉「そう…後でさやかちゃんにしっかり感謝しなさいよ」

    苗木「……小泉先輩」

    小泉「ん?」

    苗木「その…計量カップの水、溢れてますよ」

    小泉「あ、あれ…ど、どうしたのかな?アハハ…」

    小泉「………」

    苗木「小泉先輩…」

    小泉「………」

    苗木「小泉先輩!」

    小泉「キャッ!? 何よ、突然声かけないでよ!料理に集中してるのに!」

    小泉「も、もう…塩余分に入っちゃったじゃない…!」

    苗木「…やっぱり、平気じゃないんじゃないですか?」

    小泉「え?」

    苗木「小泉先輩、さっきから手の動きがぎこちないですよ それに声もよくつまってるし…」

    小泉「…き、気のせいだよ、気のせい」

    苗木「でも小泉さんの手…」

    小泉「気のせいって言ってるでしょ しつこい」

    苗木「あ、ごめんなさい」


    まただ

    あの時みたいに、起伏がなくて冷たい声だ


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


    小泉「だから同じだって言ってるでしょ」

    小泉「…ごめん、私、部屋に戻って考えるから」

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



    小泉先輩…やっぱり無理してる


    ……だけど今はやめておこう

    無闇に人の心の傷を漁るのはボクにとっても良くないし

    苗木「小泉先輩、ボクはできる範囲で手伝うから、やって欲しい事があったら言ってくださいね」

    小泉「うん…ありがとう」



  27. 28 : : 2017/05/13(土) 22:54:26
    夕食の時間帯になり、何人かの人もみんなの前に顔を出すようになってきた


    桑田「おっ!今日のメシも美味そ〜じゃん!」

    西園寺「当たり前じゃーん、貧乏人が食うような薄汚い草なんかとは比べものにならないぐらい、小泉おねえの手料理は美味しいんだから」

    弐大「何? それはワシの薬草の事を言っているのか?」

    弐大「確かに味は賛否両論あるが、ドクダミは立派な栄養になるんじゃ!!お主も断ってばかりでないで、少しは食べんかぁ!!!」

    舞園「あの…それって私の部屋にもあったドクダミ茶の事ですよね? ひょっとしてアレ、そのまま食べたんですか?」

    弐大「無?なぜじゃ 湯に浸して身を除くより、自然そのままの栄養の方が身体にいいじゃろう」

    大神「弐大殿…それは余りにも節操がなさすぎると思うぞ」

    葉隠「ま、いいじゃねえか ちょうど腹も減ったし、明日のための腹ごしらえといくか!」

    小泉「ちょっと!まだ全員揃っていないのに手を出さないでよ!」

    葉隠「占いで、今日はさっさと飯を食えって言われたんだ それにしたがってるだけだよ」

    西園寺「はいはい、誰もアンタみたいな詐欺師の言い訳なんか聞かないって…」

    葉隠「詐欺師言うなって!これでもしっかり商売繁盛してんぞ!?」

    桑田「左右田のヤツは食わね〜ってよ、あと不二咲ちゃんも」

    ソニア「お二方とも、どうされたのでしょうか?」

    桑田「さぁ?2人ともやる事あるんじゃねーの? あの棚だってまだ完成してねーし」

    桑田「不二咲ちゃんだってまだパソコンのデータの復旧作業に没頭してたからさ」

    弐大「何?小泉がせっかく用意してくれたご馳走を口にせんとは不届き千万じゃ!」

    弐大「どれ、ワシが焼きをいれに…」

    桑田「い、いやいや!後でちゃんと食べるって言ってたから…」

    小泉「いいよ、後で食べるなら 待ってるとご飯も冷めちゃうし」

    霧切「それじゃ、頂きましょうか」

    舞園「はい!いただきます!」



    ーーーーーーーー



    葉隠「かー、よく食ったべ」

    ソニア「それにしても、相変わらず大神さんと弐大さんのおかわりの量は凄かったですね」

    小泉「うん…まさか冷蔵庫のお米パック10個を全部使うとは思わなかったよ」

    弐大「しかしいかん…目先の飯に目が眩んで、左右田と不二咲の分を残すのを忘れるほど食ってしまったわい…」

    大神「仕方ない、地下の自販機にあった苺パンを妥協案として持っていくか……」

    桑田「んじゃ、俺が持ってくわ」

    葉隠「んあ?珍しく働く気になったか?」

    桑田「んなわきゃねーだろ、あいつの様子見も兼ねてだよ、様子見」

    小泉「わかったよ お盆貸すから、それを向こうまで持ってっといてね」

    小泉「あ、あいつが寝てたら渡さなくていいから それと不二咲ちゃんのもお願いね」

    桑田「何だよ、人使いが荒えな〜」

    苗木「ボクも手伝うよ、桑田クン 1人でお盆二人ぶん運ぶのは効率悪いしさ」

    桑田「おっ!サンキュー苗木! いや〜やっぱり持つべきは気の合うフレンドだよな〜、オマエほんと良くわかってるわ〜」

    小泉「もう、そういう奴の手伝いなんてしなくていいよ どうせ友達に押し付ける癖がつくだけだから」

    桑田「は?なんだよ!オレがそんな奴に見えんのかよ!?」

    葉隠「むしろそういう奴にしか見えないべ」

    桑田「オメーは黙ってろ葉隠!!」

    苗木「桑田クン…盛り上がってるところ悪いけどさ、早く持ってかないと味噌汁が冷めちゃうよ…」

    桑田「おっとそうだな、んじゃ俺不二咲の方のお盆持つから、苗木は左右田のお盆持てよ」

    ソニア「さりげなく重い方のお盆を苗木さんに押し付けた…こやつ、中々やりおる!」

    桑田「い、いいからさっさと行くぞ〜…」



    桑田クン…この様子じゃ将来も心配だ……


    予定通り桑田クンとボクはお盆を持って上の階までご飯を運びに行った
  28. 29 : : 2017/05/14(日) 11:13:48
    コンコン

    桑田「おーい左右田、起きてっかよ」

    桑田「………」

    桑田「左右田〜、合言葉は言わねーぞ」

    苗木「そもそも防音だから、ノックの音しか聞こえないって…桑田クン」

    桑田「………んだよ、寝たのか?」

    ガチャッ

    左右田「……お!おう…桑田か! !おはような!!」

    桑田「おはよう?もうそろそろ夜時間だっつーの」

    左右田「そ、そっか…まぁいいや、メシ持って来てくれたのか? ありがとうよ」

    苗木「桑田クンじゃなくて、小泉先輩にお礼を言ってください 左右田先輩」

    左右田「おう、後でバッチリ礼を言っといてやるよ」

    桑田「……おい、出てこいよ 渡せねえじゃん」

    左右田「…ま、周りにお前ら以外の奴、いないよな?」

    桑田「心配すんなって…俺ら以外はみんな寝てるし」

    左右田「わ、わかった、安全なんだな? よーし…」

    抜き足差し足で、そーっと部屋から左右田先輩が出てきた

    桑田「…なぁ、お前まだ疑ってんのか?」

    左右田「べ、別にお前らのことを疑ってる訳じゃねーよ!!」

    左右田「ただ、その…不安じゃねえかよ」

    左右田「…あんまり大声で言いたくないけど、起きちまった事は起きちまったんだよ」

    桑田「そ、そんな縁起でもねえ事…言うなよ……な、なぁ?苗木?」

    苗木「そうだね…あんなの見せられて、もう人を殺そうだなんて思う人はいないだろうし」

    左右田「や、やっぱりな!!いや〜オレの思った通りだったぜ!!」

    左右田「もうこれ以上起こったら…ホントたまったもんじゃないっつーの」

    桑田「んじゃ、メシちゃんと食えよ」

    左右田「ああ、ありがとう 二人ともまた明日な」


    左右田先輩はお盆を持って、自分の部屋に逃げるように入っていった


    桑田「…そんじゃ、俺らも寝ようぜ、オールでハッチャケするのもいいけど…そんな気分じゃねえや」

    苗木「うん…おやすみ 桑田クン」

    桑田「明日から俺も外の探索に加わるからさ〜、その時はよろしくな〜苗木〜」

    苗木「わかった、それじゃまた明日ね」



    桑田クンと別れ、ボクは部屋のベッドに仰向けになった


    コロシアイなんて、起こるわけない


    起きる寸前まで、ボクも桑田クンも、そう思ってた


    だけど…これが現実


    現実に、コロシアイが起きて、誰も守れない裁判が始まって、クロが処刑された


    …そんな事の後で人を殺すことなんて、出来るだろうか?


    ……………………


    この闇は、どこまで続いているんだろう


    そんな事を考えながら、ただただ真っ白な天井を見つめる


    心のどこかで、見えない未来を求めながら……



  29. 30 : : 2017/05/18(木) 21:57:35

    オマエラ、7時になりました、起床時間です
    起きてくださーーい!!







    苗木「……………」



    漠然とした安心感と、確かな不安


    今のみんなを見て思った事だった


    確かに少しの軋みはあったけど、雰囲気そのものは至って平穏だった



    …うん、あんまり考えすぎるのが一番良くないな


    とりあえず朝だ、起きなくちゃ




    ーーーーーーーーーーーーーーーー




    桑田「苗木〜おはよ〜」

    苗木「桑田クン?今日は何だか早起きだね」

    桑田「ちげーよ、オールだよオール」

    苗木「寝なかったの?」

    桑田「おうよ!多分オレ舞園ちゃんの曲全部歌えたんじゃねーかな?」

    苗木「オールでハッチャけたんだ…結局」

    桑田「寝れねーもんは仕方ないじゃん、それなら朝までオールでオケるのがこの世の常識だろ?」

    苗木「桑田クン、ギャルじゃないんだから…」

    舞園「苗木くんは、昨日はちゃんと眠れましたか?」

    苗木「ベッドに慣れたおかげで、ぐっすりと」

    桑田「不二咲ちゃんはどうよ? 昨日は遅くまで作業するとか言ってたけど?」

    不二咲「うん、それの事なんだけど…」

    不二咲「パソコンのデータが、もうほとんど復旧してるんだぁ 後は破損したメモリーの復元に成功出来れば…」

    葉隠「なるほど、ここに住んでた人間の記録が読めるってか」

    左右田「おお、やったな!でかしたぞ不二咲!!」

    不二咲「えへへへ…」

    ソニア「では、明るい話題も上がった事ですし、そろそろ探索の準備を始めてはいかがでしょうか?」

    桑田「サンセーサンセー!!メンドーだけど今日から俺も参加するからさー!」

    西園寺「あんたのアリンコ並の脳みそが役立つとは思わないけど〜?」

    桑田「イヤ誰がアリだよ!!俺の脳みそ何だと思ってんだよ!!!」

    弐大「実際お前さん、投球フォームを観察してわかるが、ほとんど考えて無いからのう…」

    葉隠「考えて《無い》んだな、《有り(アリ)》だけに」

    桑田「上手い事言って閉めようとすんじゃねぇ!!」

    霧切「それでは、9時半から出発にしましょう それまでは自由時間よ」

    苗木「わかった、霧切さん」



    ふう…自由時間か…


    今日は誰と過ごそうかな?


    (桑田、葉隠、不二咲、霧切、大神、左右田、弐大、西園寺、ソニア)

    >>31
  30. 31 : : 2017/05/18(木) 22:03:03
    死臭がするの誰だ…?
    うーん弐大で
  31. 32 : : 2017/05/19(金) 22:47:48
    弐大「応!苗木よ…遂にトレーニングをする覚悟を決めたか……」

    弐大「良かろう、ではまずしなやかな上腕二頭筋と背筋を鍛えるトレーニングからじゃ!」


    弐大先輩の筋トレに付き合った








    弐大「さて苗木、ワシに会いに来たという事は、遂に決めたんじゃな!?」

    弐大「さぁ、なんのスポーツがやりたい?サッカーか?相撲か?バレーか?ガバディか?」

    苗木「ガバディってスポーツなんだ…っていうか、そもそも決めてないというか…」

    弐大「ふむ…お前さん、しっかり運動していないじゃろ」

    弐大「そんなんだと、近い将来、あっという間に老けるぞ!!!」


    苗木「そ、そうなんですか…」

    弐大「ええいじれったい!!!!こうなったらワシが決めてやる!!お前さんのスポーツはズバリ!!ボクシングじゃあ!!」

    よ、選りに選って危険なのを選ばれた!?


    苗木「えっと…ソレって強制ですか?」

    弐大「応!ここから出たら、お主も立派なスポーツ選手にしてやる!!」

    弐大「そして、卒業する頃には《超高校級の幸運》改め《2代目超高校級のボクサー》として生まれ変わるのだ」

    苗木「ボクサー、かぁ……」


    でも確かに…悪くないかも


    さすがに幸運の肩書のままで卒業するのは、なんというか締まらないし


    ボクシングも華のあるスポーツだし良いかも…


    弐大「よし!!まずは相手から殴られても平気な肉体を作るぞ 今すぐ腹筋6000回、背筋4000回、腕立て伏せ8000回じゃあ!!」

    苗木「いやいやいや、無理がありますって、弐大先輩…」

    弐大「心配するな!!お前さんはいくらでも伸ばし用のあるダイヤモンドの原石じゃ!!! それも特大じゃあ!!」

    弐大「ワシが手取り足取り…ボクシングのやり方を叩き込んでやるわい!!!!」

    苗木「え、ええ……」

    い、今更断れないよな………







    弐大先輩と、汗が尽きるまでボクシングの訓練を受けた……



  32. 33 : : 2017/05/20(土) 07:11:56

    霧切「さてと…前回までの捜索範囲はここから前方までだったわね 今回はこの体育館の裏側、スーパー側の方を探しましょう」

    葉隠「ああ、寮の窓から見えてたな あの壁がいつの間にか撤去されてたが」

    葉隠「全く、音もなくよくやるぜ、こっちなんて気がつかずに朝までぐっすりだったべ」









    モノクマ「ふぁあ〜、全く、昨日の作業で疲れちゃったよ〜」

    苗木「!!」

    モノクマ「おはよーございます、今日も清々しい朝ですね〜、少し雲行き怪しいけど、まぁ清々しいって事にしておきましょう」

    大神「モノクマ、昨日も言ったはずだ……我の怒りに触れぬうちに失せろ」

    モノクマ「えっ?ボクは別に動機を配りにきたわけじゃないよ?」

    モノクマ「何だよ、そっちの期待をしてたのか〜……そりゃ欲しいよね、動機 話が進まないもんね」

    左右田「い、いらねーから、さっさと要件を済ませよ!!」

    モノクマ「はい、わかりました」

    モノクマ「ところでみんな、覚えているかな? あの校則の話」

    不二咲「あの校則って?」

    モノクマ「にぶいなぁ〜、華々しいコロシアイを彩るあの行事が始まるんだよ?」

    桑田「コロシアイを学校生活みたいに言うなっての! どうせ動機だろ!?」

    モノクマ「いや違うよ、あれだよあれ」

    弐大「ええい!勿体ぶらずに漢らしく言わんかぁ!!!!」

    モノクマ「ほら、《転校生》の話だよ」

    苗木「て、転校生……?」

    モノクマ「ほら、校則にもあったでしょ?」


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


    Ⅻ・生徒が死亡した場合、後に編入生が来ることがあります。


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



    モノクマ「そう!今日はその編入生の編入日なのです!」

    モノクマ「リーダー枠の九頭龍くんとムードメーカー枠の朝日奈さんがいなくなってからなんだか辛気臭いし、景気付けには丁度いいんじゃない?」

    小泉「ふざけないで!あんたが九頭龍を追い詰めて、葵ちゃんを殺させたくせに人事みたいに言わないでよ!!」

    モノクマ「そんなつもりはないよ、彼は自分の弱さに負けただけだからね」

    モノクマ「彼がさ、なんであんなに裁判で悪あがきしたか知ってる? 何としてでも生き残りたかったからだよ」

    モノクマ「口ではあの子の為とかなんとか言ってたけど、本質は君たち全員を殺してまであの子と会おうとしたんだからね 相当なエゴイストだよ、九頭龍冬彦は」

    左右田「テメェが九頭龍を語るんじゃねえ!!」

    モノクマ「血気盛んもいいところだけど、編入生探しも忘れないでね? その人はこの街のどこかに軟禁されてるから」

    ソニア「お待ちください その人って、本当に私たちに関係ある人物なのですか?」

    モノクマ「…ま、超高校級のコロシアイに参加できるのは超高校級の生徒しかいないよね〜!多分だけど」

    モノクマ「大なり小なり、関係あるんじゃないかな?」

    モノクマ「それじゃ、ボクはそろそろ戻るよ!早くしないとウイスキーが腐っちゃうからね!」


    モノクマはルンルンとスキップしながら消えていった……
  33. 34 : : 2017/05/20(土) 07:12:13


    桑田「結局、動機は転校生が混ざってからにするつもりなのか?あいつ」

    葉隠「…ウイスキーはそうすぐ腐らねえぞ」

    霧切「そのつもりのようね とにかく私たちも急がないと、時間がないわ」

    西園寺「てゆーかさ、そもそもその編入生なんて探さなきゃいいじゃん?」

    西園寺「編入生がみつからなかったらさ、動機なんて配られないんでしょ? だったら探すだけムダじゃーん」

    苗木「いや…それでも、さすがに放置するわけにはいかないよ」

    苗木「あの街は危険だし…ボクたちの助けを待ってるかもしれないんだからさ」

    西園寺「あくまで探すつもりなんだ? お人好しもそこまでくると全自動迷惑振り撒きマシーンレベルだよ」

    不二咲「えっと…西園寺先輩は、探索に参加するの?」

    西園寺「するわけないじゃん、こんな茶番じみた仲良しごっこはもうこりごりなの 私はもうここでの生活を受け入れるつもりなんだから」

    霧切「それにしても困ったわね、西園寺先輩一人だけ残していくのも」

    西園寺「人を留守番出来ない子供みたいに言うんじゃないわよ!」

    桑田「実際ガキみてーなもんだろ、忍耐も体格も」

    西園寺「黙れ!この!汚い!赤色の!猿!!!」

    桑田「イデデ!!!デコピン連打かよ!?」

    舞園「それじゃあ、苗木くんは残ってくれますか?」

    苗木「え?ボクが?」

    舞園「苗木くんは、昨日の怪我の事もあるし、一旦ゆっくりした方がいいのではないでしょうか」

    苗木「…気遣ってくれてありがとう」

    霧切「わかったわ 班わけは外でやりましょう」

    桑田「じゃーな!苗木! あれから色々あっただろうし、今日ぐらいゆっくりしろよ!」

    苗木「桑田クン…」


    ボクと西園寺先輩以外のメンバーは、ぞろぞろと玄関に並んで、寮から出ていった
  34. 35 : : 2017/05/20(土) 16:31:26
    苗木「…………」


    やっぱりまだ痛むな…腕


    みんなには詳しく言ってないけど、怪我そのものは決して浅くはないみたいだ


    それよりも…


    西園寺「……」

    苗木「西園寺先輩、昨日から言いたいことがあったんだけど…」

    苗木「は?その青臭いガキみたいなアンテナ直してから声かけてよ」

    苗木「……」

    相変わらず絶句するレべルだな…西園寺先輩の暴言は


    西園寺「…まぁいいけど、説教だったらお断りだからね 小泉おねえだけでも…」

    苗木「やっぱり昨日、小泉先輩に、何か言われたんだね」

    西園寺「だ、だから何もないって!!あんたストーカーなの!?いい加減関わらないで!」

    苗木「……おでこの絆創膏」

    西園寺「え?」

    苗木「西園寺先輩って、一昨日までは何もつけてなかったのに、昨日からおでこに絆創膏をつけてるよね?」

    苗木「何か違和感があると思ったら…まず見た目だったんだ 前髪で少し見えにくいけど」

    西園寺「こ、これは…その…」

    苗木「その時から様子がおかしいのは、小泉先輩もだよ、表情に余裕が全く見えないし…」

    苗木「…小泉先輩に、何か暴力を振るわれた、とか?」

    西園寺「な、なんでそんな結論にたどり着くのよ…脳みそ入ってんの!?」

    苗木「もし違うなら、そんな目尻に涙を浮かべながら反論しないと思うよ 違うかな、西園寺先輩」

    西園寺「う、うううう〜〜…」

    西園寺「うわあああああん!!!!苗木おにいが私をいじめるよおおおお!!!」

    苗木「ご、ごめんなさい…ほら、素甘食べますか?」

    西園寺「要らない!!人の心に土足で踏み込んでこないでこのクソもやし!!!」

    苗木「う、確かにそうだったかもしれない…でもボクはただ、西園寺先輩がちょっと心配で…」

    苗木「小泉先輩もずっとあんな感じだし、何か揉め事でも起きたのかなぁって思って」

    西園寺「うう…私の事なんか心配してるとか、お人好しもここまでくると自然災害だよ…」

    西園寺「人に話聞く時はもっと丁寧に話せって親から教わんなかったの!?」

    苗木「……」

    それは西園寺先輩だけには言われたくない

    西園寺「ハァ…もういいよ、ここまでくると隠すのも面倒だし」

    苗木「相談してくれるんですか?」

    西園寺「…わかった、アンタなら周りの人間に言いふらすこともなさそうだし」

    西園寺「あーあ、ホンットしつこく絡んできてウザいなー」
  35. 36 : : 2017/05/20(土) 16:59:22

    小さな机と椅子を用意して、西園寺先輩と向き合って話す


    そういえば、西園寺先輩とこういう風に会話したことはなかったな


    西園寺「……あのね、結論から話すと、小泉おねえに頭、殴られちゃったんだ」

    苗木「…………」

    西園寺「あの夜ね、小泉おねえ、色々あったからとっても動揺していたみたいなんだ」

    西園寺「自分の部屋で、家族の写真眺めながら泣いていたの」

    苗木「そうだったんだ…」

    西園寺「そこで小泉おねえに話しかけたら、おねえが急に血相変えてワナワナし始めてね」

    西園寺「それで小泉おねえ……そこにあったティーポットみたいなので殴ってきて…」

    苗木「咄嗟にティーポットで殴るなんて、衝動的だね」

    西園寺「そう、そしたらその後、小泉おねえはまた表情を崩して、泣きながら何度も謝ってたの」

    西園寺「私は別にポットで殴られたぐらいで小泉おねえの事嫌いになったりしないけどさ、それ以来、ちょっと小泉おねえと一緒にいるのが…なんていうかさ…」

    苗木「怖くなったんですか?」

    西園寺「いや…怖くなったっていうよりは…一緒だと気まずい感じ、かな」

    西園寺「なんかあんなに優しい小泉おねえが豹変しちゃうなんて、予想外だったし」

    西園寺「でもね、このままじゃいけないって思ってるから、早く小泉おねえにあの時の事、もう一度聞きたいんだ 忘れようとして忘れられるものじゃないから、向き合わないとって思って」

    西園寺「なんて言いながら、私もこうやって離れちゃってるんだけどね〜」

    苗木「なるほど…」

    西園寺先輩にとって、小泉先輩はこの輪の中で数少ない居場所だったんだろうな

    その小泉先輩が揺らいじゃったら…自分の居場所が見えなくなっちゃったってことか


    苗木「…西園寺先輩、今からでもみんなと合流しましょう」

    西園寺「…はあ?」

    苗木「小泉先輩と少しでも長くいた方が、後々話を切り出しやすくなると思いますし…悪くないんじゃないかな?」

    西園寺「…でも、あんたはいいの? その…怪我だっけ?」

    苗木「このぐらいは平気だよ」

    西園寺「でも何かあったら…どうせ私なんて迷惑かけちゃうし」

    苗木「迷惑だなんて思わないよ」

    西園寺「え…?」

    苗木「仲間同士の悩みなんだから、一緒に解決するのは当たり前だよ ここまで聞いて今更なかったことにもできないしさ」

    苗木「ボクじゃ頼りないかもしれないけど、何かあったらどんどん頼って欲しいかな」

    西園寺「…………また」

    西園寺「同じこと、言った……あの人と」

    苗木「?」

    西園寺「い、いいからボケッとしてないでさっさと支度しなさいよ!!私は後からついていくから!!」

    苗木「は、はい…」


    西園寺先輩、急に怒ってどうしたんだろう?

  36. 37 : : 2017/05/20(土) 19:28:37


    西園寺「ちょっと、準備遅すぎでしょ あんたはカタツムリか何かなの!?」

    苗木「いや、ごめん 少し靴を探すのに手間取って」

    西園寺「もう、行くならさっさと行くよ 小泉おねえたちなら体育館の裏側…もっと正確にいうと寮の裏側だね あのスーパーのある方面に向かったんだよね」

    苗木「行くついでに、あっち側には何があるのか一応見てこよう、西園寺先輩」

    西園寺「えー、めんどくさいよー そのまま直で合流でいいじゃん」

    苗木「直で合流って言っても、どこにいるのかわからないし…外への出口を探しながらみんなを探すのが一番じゃないかな?」

    西園寺「…確かにそうだね、悔しいけど」

    西園寺「それじゃさっさと行くよ、苗木おにい」

    西園寺「あ、言っとくけど15分たっても誰にも会えなかったらデコピン30本コースね〜」

    苗木「いや、それは勘弁してください…」
  37. 38 : : 2017/05/20(土) 19:31:43


    苗木「スーパーの正面の道路を塞いでた両壁が…撤去されてるね」

    西園寺「そんなん言われなくても見ればわかるよ〜、それより、右の道か左の道、どっちを先に調べるの?」


    苗木「う〜ん、そうですね……」

    1・右から
    2・左から

    >>39
  38. 39 : : 2017/05/20(土) 21:20:36
    右から
  39. 40 : : 2017/05/22(月) 22:46:21


    苗木「よし、右から行こうかな」

    西園寺「ふ〜ん、典型的だね、苗木おにい」

    苗木「いざという時は右を選べ、って、この間本に書いてあったんだ」

    西園寺「その理由って?」

    苗木「右はライトだから…ってことですよ」

    西園寺「………は?」

    苗木「右と正しいをかけて、ライトって…」

    西園寺「いややめて、もういいから、そんな使い回された賞味期限切れのシャレに興味ないもん」

    苗木「…すみません」



    ーーーーーーーーーーーーーーーー


    右側の道の奥には、大きな神社仏閣があった


    苗木「へえ…立派なお寺だね 鳥居も大きい」

    ゲシッ

    苗木「痛った!! さ、西園寺先輩、急に…」

    西園寺「あのね、神社の鳥居は真ん中を通るのはルール違反なんだよ?必ず鳥居の外から周らないといけないって小学生でもわかるよ?」

    苗木「そうだったんですか…」

    西園寺「はぁ〜、これだから西洋に媚びた文化でぬくぬくと育った甘ちゃんはイヤだな〜 なんでどいつもこいつも向こうに甘えて自分の文化を歪めたがるんだろ」

    西園寺「ま、いつまでも古いものに囚われるなって考えもわからなくはないけどさ〜」

    苗木「中、入っても平気なのかな?」

    西園寺「どうせ人なんていないんだし、いいんじゃないの?」



    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  40. 41 : : 2017/05/24(水) 18:35:24

    苗木「特に荒れてる様子はないかな… 本当に寺そのものって感じだ」

    西園寺「……待って」

    西園寺「…私、このお寺、来たことあるかも」

    苗木「えっ?」

    西園寺「…よくあの人が連れてってくれた、円卓寺に似てる」

    苗木「円卓寺…?」

    西園寺「少し遠いところにあったお寺だよ …なんだかそっくり」

    西園寺「いや、そっくりどころか…昔のまんまだ」

    苗木「西園寺先輩、その寺の詳しい場所ってわかる?」

    西園寺「……わからない、けど確か、近くにスーパーがあって、都内の場所だったはずだよ」

    苗木「近くにスーパー…?」

    西園寺「あ!そう考えてみると、この土地の地理って円卓寺周辺に似てるかも」

    苗木「でも…でもどうしてなんだろう?」

    苗木「ここが都会のど真ん中なら、どうして誰も助けに来ないんだろう?」

    西園寺「…知らないわよ ま、気のせいかもしれないし…」

    西園寺「それにしてもそっくりだよ モノクマもどうやって再現したんだろうね〜」

    苗木「う〜ん、ボクに聞かれても…」

    西園寺「誰も真面目な答えなんて求めてないよ 見た目だけじゃわからないし、中入って確かめるね〜」



    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



    鳥居を過ぎて、岩盤と砂利続きの小道をまっすぐ渡って、お寺の入り口の戸を引く


    入ってすぐに棚式の下駄箱、そして土足禁止の意の絨毯、真正面にふすまがある

    床は年季ある黒ずんだ色のヒノキのフローリングで、歩くたびにギシギシと不安な音が鳴る

    入って正面に大きな引き戸があり、右と左に道が分かれている

    苗木「ちょっと、動かしますね」

    西園寺「口より先に手を動かして」

    ガラガラガラガラ

    苗木「う〜ん、立て付けが悪いな…」

    中に入ると、巨大な仏壇に大きな仏像が鎮座しており、周辺に小さな仏像がいくつか並んでいた

    大きく畳が広がっていて、両隣にそれぞれの廊下に出るふすまがあった
    右手に服を入れる大きな衣装箱が積まれたタンスが置いてある

    …それにしても広いな、全員分の布団は敷けそうだ

    西園寺「…やっぱり同じだ これ、円卓寺の如来像だよ!」

    西園寺「うう〜、ここまでそっくりだと逆に気持ち悪いよ〜〜」

    苗木「見た目も派手だな…雄々しいというか、生き物だったら絶対に敵わない相手というか ていうか、如来像って棍棒持ったりするんだ」

    西園寺「そりゃ、仏様は地獄の閻魔大王だからね 裏表激しいったらありゃしないよ」





  41. 42 : : 2017/05/25(木) 21:31:24

    苗木「押入れの中も色々入ってるね」

    西園寺「どさくさに紛れてタメで喋らないでよ 虫酸が走るんだけど〜?」

    苗木「…ごめんなさい ん?これ…刀?」

    西園寺「え?」



    西園寺「…嘘でしょ…?いや、でもこの感じ、間違いない…」

    西園寺「これ、ここの和尚が好んでた金箔の模擬刀だよ! すぐに手に金箔がこべりつくやつ!」

    西園寺「やっぱり…ここは円卓寺だよ!」

    西園寺「だってこんな瓜二つなお寺、あるわけないもん!」

    苗木「…本当にそうなのかな?」

    西園寺「は?」

    苗木「西園寺先輩が本当にここの地理を把握してるなら、あの体育館や駅前広場だって、きっと知ってるよね?」

    西園寺「…確かにあんな大きい体育館なんてなかったし、駅前広場の龍の像なんて聞いた事ないけど…」

    西園寺「でもこれは本物だもん!こんな偶然ありえないよ!!」



    ……嘘をついてるようには見えない



    という事は、本当にここが…?


    でもだとしたら、どうして西園寺先輩すら知らない建物があるんだろう?


    このムジュンは、何なんだろう……?


    葉隠「なんだなんだ〜?骨董品コレクションなら俺も混ぜてくれって、ありゃ?」

    弐大「お前さんら…体育館の寮にいるんじゃなかったのか?」

    音もなく、葉隠クンと弐大先輩が背後に来てた

    苗木「ああ…弐大先輩に葉隠クン」

    葉隠「さっきのはなんだ?まさか結構高めの骨董品じゃ…」

    西園寺「あんたの欲まみれの薄汚い手で触るんじゃないわよこのクズ!! その頭むしりとられたいの!?」

    葉隠「ええっ!? 急に酷いべ!?」

    弐大「立ち聞きするつもりはなかったが、ここはお主の地元なのか?」

    西園寺「ううん、別にそんなんじゃないよ ただ知ってる場所に酷似してるってだけ」

    葉隠「ただ、一つわかったことがあるべ」

    葉隠「どこもかしこも日本語の看板、それに寺まであるなんてよ……ここは完璧に日本国だべ!!!」

    弐大「応!まごう事なき日本じゃ!!」

    西園寺「私はあんたらみたいに単細胞じゃないからそんな素直に喜べないわよ」

    苗木「もう少し捜索すれば、もっと色々わかるかもしれないし、日本かどうか考えるのは後にしようよ」

    葉隠「まぁ…それもそうだな 本当にここが日本なら、すでに自衛隊がヘリ飛ばして俺たちを助けに来てくれるはずだし…」

    弐大「ええい…謎は深まるばかりじゃ…」

  42. 43 : : 2017/05/27(土) 21:33:26

    部屋の左側の障子を開けると、寺の囲いの壁の前に美しい日本庭園が広がっていた


    綺麗な模様の庭石、小さな築山、僅かな木々、その真ん中で優雅な存在感を主張する池……まるで観光用ポスターに出てくるような日本庭園だ


    こんな小さなお寺にもあるものなんだな……


    西園寺「やっぱり庭園もそっくりだ〜」

    ソニア「あ、西園寺さんに苗木さん!」

    苗木「ソニア先輩も、この寺を?」

    ソニア「そうなんです! 実は私、最果ての地日本に来たら一度でいいからこの日本庭園を目の裏に焼き付けたかったのです!!」

    ソニア「ああ、あと何時間でもここに座っていたいです…」

    西園寺「足痺れて動けなくなるよ〜」

    ソニア「丁度縁側もあることですし、ここはお茶と猫を用意して、縁側おばあちゃん気分を心ゆくまで満喫したいです!」

    ソニア「ああ、日本の夏…緊張の夏です」

    苗木「お茶はどくだみ茶ぐらいしかないし…猫なんてまずいないし…」

    ソニア「でしたら、苗木さんが猫になられてはいかがでしょう?」

    苗木「えっ?ボ、ボクが猫になるって…何それ」

    ソニア「日本には、確かコスプレという文化があったはずです」

    ソニア「私が読んだ文献によると、とある人物の格好に扮してその人物になりきる文化で、様々な国に扮装文化はありますが、特に日本が最も盛んに行われてると聞きました」

    ソニア「苗木さん、ここは男らしく、猫耳をつけてくれませんか?」

    苗木「お、男らしくっていうのかな…ソレって」

    ソニア「大丈夫です!猫耳はすでに用意してありました!この寺のタンスの中に!」

    苗木「……本当にやらないとダメですか?」

    ソニア「断る理由が見当たりません!」

    西園寺「いいじゃんいいじゃん、いい感じに辱められてきなよ、苗木おにい」

    西園寺「どうせ苗木おにいは影薄いんだからさ〜、それつければ少しはキャラが立つんじゃないかなー?」


    お、鬼だ……!


    ソニア「では苗木さん!!お願いします!!この猫耳を!!」

    苗木「はぁ………」





    こうしてボクは、謎の猫ごっこに付き合わされてしまった……






    ………舞園さんや桑田クンに知られたら嫌だな…



  43. 44 : : 2017/05/28(日) 11:55:19

    ボクたちは、もう片方の廊下に出た

    寺の入り口から入って、左側に進んだ位置だ



    …………………



    多分、今のボクは他人と目を合わせることができない


    あの猫ごっこに、案の定葉隠クンと弐大先輩が乱入してきたのだ


    弐大先輩には哀れみの顔で呆れられ、葉隠クンはまるで子を見つめる父のように笑っていた


    そしてその2人の眼前で西園寺先輩にボロクソに罵られたので、当然メンタルは儚く崩れ去る


    多分、この恥は一生引きずる羽目になるだろう

    左側は、子供達用の遊び場といったところか、綺麗に芝が刈りそろえられた広めの庭だ

    焼却炉と消火栓があるぐらいで、特に何の変哲もない

    西園寺「ねえ猫、下ばっか見てないで前向いてあるてくれるかな〜?」

    苗木「…西園寺先輩、もう、猫って呼ばないで…」

    西園寺「懐かしいなー ここであの人と走り回った時期もあったなー」

    苗木「西園寺先輩がさっきから言ってるあの人ってさ、誰の事なの?」

    西園寺「そこまで教えてどうすんの? アンタなんて友達じゃないんだしさ」

    西園寺「ていうか、なんであの子がここで昼寝してるのよ」

    不二咲「…すぅ……」


    不二咲さんはどうやら縁側でグッスリと寝ているみたいだ


    普段からあのパソコンの解析に時間を費やしてるらしいし、ブルーライトもガンガン浴びてだろう
    当然眠くもなるはずだ

    西園寺「ソニアがあそこにいたんだから、一緒に行動してたんじゃないの?」

    苗木「不二咲さん、こんなところで寝てたら風邪引きますよ」



    不二咲「んん……あれぇ?」

    不二咲さんは、ゆっくりと上体を起こし、少しクマの溜まった目をかいた

    不二咲「あれ?いつの間にこんなところで寝てたんだぁ」

    不二咲「苗木くん、起こしてくれてありがとねぇ」

    不二咲「そういえば、ソニア先輩は、もうどこかに行っちゃったのかな?」

    苗木「ソニア先輩なら、向こう側の縁側で日本庭園を眺めてたよ 多分まだいるんじゃないかな」

    不二咲「そっか、わかったよ ありがとう」


    不二咲さんは淡白な挨拶でその場を去った


    そうだ、あとで確認しないとな……不二咲さんが解析したパソコンの話

  44. 45 : : 2017/05/28(日) 12:43:48

    寺を調べ終えたところで、ボクと西園寺先輩は左側の道を進んだ

    左側には、スポーツ用品店があった、それもそこそこ大きな敷地の


    西園寺「ええ〜、スポーツなんて私興味ないよー」

    苗木「これも出口探しの一環ですよ、西園寺先輩」

    西園寺「…わかっわよ」


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


    桑田クン、大神さん、霧切さん、舞園さんの4人が中にいた

    野球、ソフト、サッカー、バレー、水泳、バスケ、柔道、空手、陸上競技、セパタクロー…思い浮かぶひと通りのスポーツ用品が揃っているな

    桑田「あれ?そこの2人って…寮で待ってるんじゃなかったのか?」

    苗木「いや、なんだかウズウズしてさ」

    舞園「嬉しいですけど、無理は禁物ですよ、苗木くん」

    大神「ふむ、しかし、ほとんど揃っているな」

    大神「しかしこの高級プロテインまで売ってるとは…本当に等価を払う必要はないのか?」

    桑田「いいじゃんいいじゃん、勝手に持ってこうぜ」

    桑田「あ!でも俺はパスな!道具持って帰ると弐大のおっさんがトレーニングトレーニングってうるせえったらありゃしねえの」

    大神「実際お前は鍛錬不足だ もう少し努力することを知るのだ」

    桑田「メンドクセー、努力なんて他の誰かにやらせとけばいいんだよ」

    舞園「桑田さん…そんな努力を掃除当番みたいに…」

    桑田「イヤーごめん!!俺舞園ちゃんみたいに努力するっていう才能がないからさ!! 俺には努力って概念がねー……あ、ごめん、嫌味っぽくなっちまった」

    舞園「とにかく、桑田さんはいくらでも伸び代があるのです 才能は努力する人に与えられた特権、その特権を活用しない手はないでしょう?」

    桑田「うーん、そう…かも…?」

    西園寺「ねーねー、やっぱり戻ろうよー、こんなところ探したって出口なんてあるわけないってー」

    苗木「そうかもしれないね…西園寺先輩が戻りたいなら、ちょっと戻ろうか」

    霧切「…少し待ってくれるかしら?」

    苗木「?」

    霧切「何か…妙な音が聞こえない?」

    苗木「妙な…音?」

    霧切「ほら、少し静かにして、耳を澄ましてみて」

    苗木「…うん」


    ボクらはみんな口を閉じて、その音を探そうと耳をスポーツ用品店全体に傾けていた


    聞き取るまでに少し時間がかかったけど、その音はすぐに聞こえた




    桑田「!?」

    大神「この音…なんの音だ?」

    霧切「まるで、人が呼吸するような…」

    舞園「ちょっと待ってください!人が、呼吸するって、もしかして…」

    霧切「ええ…舞園さんと苗木くんの言っていたアレかもしれないわね」

    桑田「ア、アレ?」

    西園寺「アレってどういう意味?説明してよ」

    霧切「苗木くんの腕の傷…事故によってつけられたものではないわ」

    大神「…ああ、聞いた話によると……まるで屍のような男に襲われたらしいな」

    桑田「し、屍って……要するにそれ、ゾンビって事?」

    霧切「それが…このスポーツ用品店のどこかに眠ってるらしいわね」

    苗木「…………」

    みんなの間に緊張が走る


    モノクマの策略なのかどうかは知らないが…この街には何かがいる


    この声の主も、その何かなのか……?

    大神「ムッ…!音のする方向を聞き取ったぞ」

    舞園「聞き取った…といわれましても…」

    大神「わかってる 我の背中の後ろについてこい」

    ボクらは大神さんの後ろにそっとついていって…そして、店のレジの裏に積まれた段ボールの前に立った


    苗木「た、確かに聞こえるね」

    大神「下がってろ……我が引き受ける」

    西園寺「う、うう〜」

    霧切「ゆっくり開けるのよ、下手したら相手を刺激するかもしれないわ」

    大神「百も承知、では、行くぞ」



    大神さんは、壊れ物を扱うようゆっくりと段ボールの蓋を開けた


    そして……………
  45. 46 : : 2017/05/28(日) 12:52:34


    ???「すぅ……むにゃ…むにゃ…」

    大神「…何者だ?この女は」

    段ボールの中にいたのは、ボクらの予想に反して…健康的な肌の色をした、眠る少女だった


    大神「…これは、どういう事だ?」

    苗木「さぁ、ボクにもわからないよ」

    西園寺「…ウソでしょ?」

    苗木「え?」

    霧切「西園寺先輩、彼女を知ってるんですか?」

    西園寺「し、知ってるもなにも……この人は、私の同級生だよ!」


    モノクマ「はい、ご明察の通りでございます!」

    苗木「モノクマ…!」

    モノクマ「うぷぷ…言ったでしょ?コロシアイはバラエティ番組と同じで、人数が多い方が盛り上がるって!」

    モノクマ「と、いう訳で今回新たにコロシアイ社会科見学に参加してくれるのは…」















    モノクマ「なんと!あの《超高校級のゲーマー》の!七海千秋さんでしたーー!!!」


  46. 47 : : 2017/05/28(日) 19:17:59


    苗木「な、七海千秋…?」


    確かに、聞いたことがある

    希望ヶ峰学園の、77期生の1人…つまり西園寺先輩たちの同級生だ

    どうして、そんな人がここに…?

    モノクマ「ほら、リーダー枠の九頭龍くんがいなくなってから、ブー垂れのキミたちの尻を叩いてくれる人がいなくなっちゃったでしょ?」

    モノクマ「だから…九頭龍くんの替わりとして、今回の編入生は七海千秋さんに、決定しました!」

    西園寺「ちょ、ちょっと待ってよ!そもそも、どうやってこんな場所に連れてきたの?」

    モノクマ「あ〜、それはキミたちと全く同じ方法だよ、全く」

    苗木「全く同じ方法…つまりボクがこの学園に来たときと同じか!」

    桑田「あ、ああ…確か…校門の前に立ったら急に眠くなって…」

    モノクマ「…………」

    モノクマ「同じ方法っていうのはね…君達を眠らせた方法ってよりはね…」

    モノクマ「あ、ダメダメ!うっかりネタバレを喋りそうになったよ!」

    モノクマ「だめだよ!!こういうネタバレを食らうと、進める意欲が半減だからね!」

    モノクマ「みんなも自分の目で真実を確かめたいなら、さっさとコロシアイを初めて、この街から抜け出す権利を持ってから考えようね!」

    舞園「待ってください!」

    モノクマ「おや?」

    舞園「替わりなんて言い方、あまりにもひどいです…私たちにとっての九頭龍さんはたった1人しかいないのに……その価値を否定するような言い方は…!」

    モノクマ「ふ〜ん、まるでテンプレのような反論だね、どのドラマの台本からコピーアンドペーストしたの?」

    モノクマ「それにさ…その九頭龍くんを絶望に突き落としたのはオマエラなんだよ?」


    ………!!



    モノクマ「オマエラはさ、九頭龍冬彦っていう人間の何を知ってるの? 性格?生い立ち?」

    モノクマ「そんな事説いたって仕方ないじゃん!結局彼は、ただの人殺しだったんだよ? ヤクザは怖いねぇ、自分の仲間の為にカタギを犠牲にするなんて…」

    モノクマ「そして犯人だってわかったら、よってたかって九頭龍くんを糾弾しだして、終いには『許すつもりはない』だっけ?」

    モノクマ「こーんな厳しいセリフを彼に吐き捨てたのは誰だったかな〜??」

    大神「………!!!」

    モノクマ「九頭龍くんを助けたかったなら、最初からもっと九頭龍くんと仲良くすればよかったじゃん、九頭龍くんと関わってあげれば良かったじゃん 九頭龍くんの心の痛みを知ってあげれば良かったじゃん」

    モノクマ「それなのに…いざ死んだら良い人扱いなんて、オマエラ、自分たちで言っててムシが良すぎると思わないの?」

    舞園「そ、それは………」

    モノクマ「あーあ、君たちがちゃんと協力し合えば起きない事件だったのにな〜」

    桑田「う、うるせえ!!オメーがあんな動機配らなきゃ…!!」

    モノクマ「配らなくたってどうせやるでしょ?コロシアイ ボクにはわかるよ、君って一番最初に誰かを殺して裁判で死にそうな顔してるからね」

    桑田「誰が一番最初に死ぬ雑魚だってェ!?」

    モノクマ「うぷぷぷ…それじゃあ、七海さんを自分たちの寮まで運んでいってね? こういう共同作業は、先生じゃなくて生徒のやる事だから!」

    モノクマ「それじゃ、バイバイキーン!!」


    モノクマは、スキップのような動きで跳ねて消えていった……



  47. 48 : : 2017/05/29(月) 00:07:36

    苗木「………」


    どれだけ目を逸らそうとも、耳を塞ごうとも、自分を欺こうとも、どこまでもついてくる事実


    それは、この街で誰かが死んだこと


    そしてそれは、ボクが暴いてしまった『真実』


    一度張り付けられた背中の十字架は…そう簡単には下ろせない


    ボクはモノクマの発言で…それを思い知らされた


    …けど、今は感傷に浸ってる場合じゃない



    大神「…この腹のなり…腹を空かしているみたいだ」

    霧切「少し肌も荒れてるわ どうやら、しばらく食事を与えられていなかったみたい」

    桑田「だったらさ、さっさと戻ってメシ食わせてやろうぜ そうしないと死んじまうんだろ?」

    苗木「それじゃあさ、ボクがスーパーでおにぎりなりパンなり持ってくるよ」

    霧切「わかったわ 大神さんは彼女を私と一緒に体育館まで運んでいって それと桑田くんと舞園さんはお寺側に行った人たちに事情を説明してきて」

    大神「承知した」

    舞園「私も了解しました」

    霧切「それと、西園寺先輩は苗木くんと一緒に小泉先輩と左右田先輩をスーパーから呼んできてもらえるかしら」

    西園寺「あ、そっか…小泉おねぇ、会えないと思ったらそんなところにいたんだね」

    霧切「ええ、さっきスーパーの前で目撃したの きっと今もそこにいるはずだわ」

    苗木「そうだね…それじゃ、呼びに行きましょう」

    西園寺「ハイハイ、わかったって…」




    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
  48. 49 : : 2017/05/29(月) 14:32:59


    左右田「なぁ、いいだろ?頼むよ!一生のお願いだよ!」

    小泉「だから、それだけはダメなんだって!」

    左右田「いやマジでなんでもするからさ…とにかくお前にしか出来ないお願いなんだよ!」

    小泉「うう〜ん、だからさ…」

    西園寺「ちょっとそこのビビリ、なんの取り柄もない童貞のクセして小泉おねぇを困らせてると指の骨の関節全部折り曲げるわよ!?」

    左右田「うわっ!? どいつもこいつも急に出てくんなよ!」

    小泉「あー、日寄子ちゃんに苗木? 丁度良かったよ ちょっとさっきから左右田がしつこくせがんできて困るんだよ…」

    小泉「言っとくけど、それだけは絶対にあげられないからね! 私のプライドが許さないから」

    左右田「頼む!本当に頼むから!」

    小泉「だいたいさ…私のためって言ってるけど、それってあんたがしたいだけじゃないの?」

    左右田「うぐぐ…まぁそういう側面もあるけど、お前にデメリットはないだろ? 減るもんじゃあるまいし…」

    小泉「はぁ…しつこいわね」

    小泉「…後でちょっとだけ、考えてあげる」

    左右田「ほ、本当か? まったく恩に着るぜ小泉!」

    小泉「だ、だから決めたわけじゃないって!勘違いしないでよ!もう…ほら、苗木たちも来たんだし、要件を聞かないと」

    左右田「ああ、そういえば、そうだったな 苗木、西園寺、何の用だ?」

    苗木「ええっと、ちょっと話すと長くなるんですけど…」


    ボクは、スポーツ用品店で七海先輩を見つけたことと、七海先輩が今回のコロシアイの編入生であることを明かした


    左右田「お、おいおいマジかよ…七海まで巻き込んじまったのか…」

    苗木「だけど、七海先輩は空腹で倒れちゃってるみたいで、スーパーから何かしら軽食を持って帰りたいんだ」

    小泉「そうなんだ…これならわかったわ 千秋ちゃんの好きそうな食べ物を持ってくればいいんだね」

    小泉「苗木たちは先に戻ってて、私と左右田で探してくるから」

    左右田「んじゃ、七海によろしく言っといてくれ、苗木」

    西園寺「…あ、あのね、小泉おねぇ!」

    小泉「…?」

    西園寺「えっと、この前は…その…ごめん」

    小泉「…ううん、日寄子ちゃんは悪くないよ 悪いのはむしろ私の方だから」

    左右田「? なんの話だ?」

    小泉「ほら、ボサッとしない!さっさと持っていくよ!」

    左右田「お、おう…」


    小泉先輩は、左右田先輩を引っ張るようにスーパーに入った


    西園寺「………ねぇ、さっきの会話怪しいと思わない?」

    苗木「?」

    西園寺「いや、絶対怪しいよ!間違いなくそうなんだって!」

    西園寺「あの童貞は…こ、小泉おねぇの…あれを…奪おうと…」

    苗木「…西園寺先輩、多分違うと思いますよ」

    西園寺「うわああああん!!クソ童貞に優しい小泉おねぇが犯されちゃうよおおお!!」


    そういう言葉は…大声で叫ばないでほしい


    西園寺「うう〜、絶対食い止めてやる!!あのクズの爪、ペンチでひっぺがしてやるんだからぁ!!」


    物騒な高校生だな…
  49. 50 : : 2017/05/29(月) 20:19:49


    次々起こる不可解な出来事に混乱しながらも、ボクは寮に戻ってきた


    どうやら小泉先輩と左右田先輩以外は全員揃っているらしい


    弐大「しかし、驚きじゃのう…まさか七海まで誘拐していたとは」

    ソニア「これが、編入生制度ですか…古来から転校生というのは、主人公と結ばれる運命らしいですが、さすがに今回はそうもいきませんね…」

    葉隠「霧切っち、その七海だか七味だかの体調はどうなんだ?」

    霧切「私の部屋で安静にさせて、今は不二咲さんが看病してくれているわ」

    桑田「そんじゃあ、しばらくして意識を取り戻したら、なんて説明するんだ?」

    舞園「うーん、コロシアイをしているってだけでも異常事態なのに、すでに死人が出てるって言うのは、混乱してしまうかもしれませんね」

    西園寺「そのまま説明するしかないじゃーん 本人が混乱したって、ここで起きたことはしっかり説明しないと納得しないかもじゃん」

    弐大「ううむ…それもそうなんだが、ドストレートに言うわけにもいかんじゃろ」

    葉隠「いっそのこと、全部ドッキリでした〜!!って言って片付けるのがいいんじゃねえか?」

    葉隠「うん、それが一番平和だべ!」

    桑田「…最終的にウソついてどうすんだよ」

    霧切「説明する方法は後で考えましょう 小泉先輩達も戻ってきたみたいだし」

    寮のリビングに小泉先輩と左右田先輩が顔を出して、不二咲さん以外の全員が揃った

    小泉「軽食って、こんなのでいいんだよね?」

    霧切「サンドイッチにおにぎり…充分だと思います」

    左右田「メシ食ってないときに、急に色々食わせるのも限度があるし、まぁこのくらいで良いかって思ってな」

    小泉「ねえ、千秋ちゃんの体調はどうなの?」

    霧切「目を覚ましたら、不二咲さんが報告に来てくれるので、それまでは待っててください」


    七海さんの安否がハッキリするまで、ボクらはリビングで待っていた

    何かを考え込む人

    ずっとソワソワしてる人

    ジュースを飲んでごまかす人

    それぞれ自由に過ごしてるそのときに、報告が来た

  50. 51 : : 2017/05/31(水) 18:46:45

    コツ、コツ、コツと靴の底が鳴る音が聞こえた

    少し急ぎ足で、不二咲さんが戻ってきた


    みんなが不二咲さんの方を振り返り、報告を待つ

    霧切「不二咲さん、彼女の様子はどうだった?」

    不二咲「うん…それなんだけど、一応は元気になってくれたみたいだねぇ」

    弐大「それなら話が早いわい!! では早速見舞いに行くとするか!」

    不二咲「いや…もう自分で歩けるって言ってたよ」

    桑田「もう回復したの?早くね?」

    左右田「ああ、あいつは一度寝ると起きた時のキレがすごいんだよな…」

    西園寺「そりゃもう、死体が蘇ったみたいにね」

    ボクらがそんなたわいない話を進めているうちに、もう一つの足音が聞こえてきた


    今度は不二咲さんとは別物の、もう一つの……


    《来訪者》の足音が





    七海「………………」

    七海「………………………………」

    葉隠「んあ?フリーズしちまったか?」

    小泉「ゲームバグじゃないんだから…ほら、千秋ちゃん? もう歩けるの?」

    七海「うん、ただ、しばらく何も食べていなかったから頭がボーッとしちゃってさ」

    七海「大丈夫だよ ほら、身体自体は何も異常なしだから」

    ソニア「本日も正常に作動してるようですね!年季モノのファミコンみたいにならなくて安心しました!」

    七海「不二咲さんも、看病してくれてありがとね 色々助かったよ」

    不二咲「ううん 当然のことをしただけだよ…」

    七海「それじゃ、自己紹介が遅れたね」








    七海「私は七海千秋、《超高校級のゲーマー》なんて呼ばれてるけど…まぁ、何卒よろしくね」




    ーー七海 千秋 (ナナミ チアキ)

    【超高校級のゲーマー】


  51. 52 : : 2017/06/01(木) 23:32:07


    七海「初めましての人は初めましてだね 確か、苗木くんに大神さんに舞園さんに桑田くんに葉隠くんに……ええっと、霧切さん、であってるかな?」

    霧切「ええ、あってますよ」

    七海「うん、どこかで聞いたことがある気がするんだよね、霧切さんって…」

    葉隠「そ、そんで…どう説明するんだべ?ここで起こった、その…諸々の事情についてはよ」

    左右田「そ、それはだな…」

    七海「ううん、無理に話してくれなくてもいいんだよ」

    七海「だって…私、知ってるから 何が起きたか、全部」

    ……!!!


    七海さんの表情が、さっきまでのほんわかしたものから変わって、一気にモヤがかかったような、哀しい表情になった

    七海「みんなの家族が殺されるっていう動機で、九頭龍くんが、殺しに手を染めちゃったんだよね?」

    七海「それで朝日奈さんがターゲットになって、コロシアイが起きて…そして九頭龍くんはおしおきを…」

    弐大「ま、待った! なぜお主がそこまで知っとるんじゃあ!?」

    七海「モノクマにね…見せられたんだ みんなの様子をね」

    ソニア「みんなの様子を見せられた…となると、もしかして九頭龍さんが処刑されているところも、ですか?」

    七海「うん、そうなんだ」

    舞園「辛くは…ないんですか?」

    七海「そりゃ辛いよ…目の前で自分のクラスメイトが殺される瞬間を見せられたんだもん」

    七海「理不尽だよね…なんで九頭龍くんが死ななくちゃいけなかったんだろう」

    七海「だけど、本当に辛いのは…実際に九頭龍くんを、朝日奈さんを喪ったみんなの方だよね?」

    七海「それなのに、私ばっかり辛いだなんて言ってられないでしょ?」

    小泉「千秋ちゃん…」

    七海「だからこれからは、私も外への出口の探索に協力するよ ほら、1人でも多い方が見つかりやすいはずだよ」

    大神「なるほど…事情を知ってるのであれば話は早い」

    舞園「でも今日はもう夕方ですし、明日から一緒に探しましょう、七海先輩」

    舞園「先輩づけで呼ばなくったっていいよ ここにいるみんな、同い年の人もほとんどでしょ?」

    葉隠「俺はダブりまくって20だけどな!」

    不二咲「えっと、誇らしげに言うことなのかなぁ?」

    西園寺「ええ〜?私小泉おねぇ以外のヤツにそんな馴れ馴れしく言われるのやだよ〜」

    桑田「誰もオメーと馴れ馴れしく接したりなんかしねーって…」

    ソニア「私も以前から、先輩後輩呼びは少し距離感があると思ってました」

    小泉「共同生活してる仲なんだし、タメ口で呼んでもいいんじゃない?」

    左右田「苦手なら、さん付けクン付けでも構わねーけどな!」

    不二咲「それじゃあ…左右田、クン…?」

    左右田「おう、そんな感じでいいぜ」

    大神「我はおそらく変えることは出来んが…」

    弐大「まあそのまま呼びたいヤツはそのままでいいだろ…それよりも緊張して腹が減ったぞ」

    小泉「それじゃあ、ちょっと早いけど今日はもうご飯にしようか 日寄子ちゃん、手伝ってくれる?」

    西園寺「え?いいの?」

    小泉「うん、一緒にご飯作ってみようよ!」

    舞園「私もご一緒してよろしいですか?これでも、料理番組でそこそこ食事は作ってたんです」

    ソニア「私も参加させてください!!ノヴォセリック料理なら誰にも負けません!」

    大神「…プロテインの調合ならば」

    小泉「あの…これって競い合いじゃなくて、共同作業だからね?」

    七海「うんうん、みんな楽しそうで何よりですな」

    七海「それじゃあ私も、料理シミュレーションゲームで鍛えた勘を活かして、頑張ろっかな!」





    こうして、女性陣総動員での料理が始まった


    その日の夕飯は、美味しいけどとても滅茶苦茶で斬新で…


    ボクたちは、やっぱり彼女たちも超高校級なんだなって思い知らされた


    ………いろんな意味で

  52. 53 : : 2017/06/03(土) 10:47:59



    ガヤガヤと騒いでいるうちに、時間はあっという間に夜時間近くまで回っていた


    慌ただしい一日も、これでようやく一区切りついた


    葉隠「うう…不味くはなかったけど、めちゃくちゃダイナマイトな料理だったべ」

    桑田「それよりなんつーかさ、馴染むの早くないっすか?七海さんよ」

    左右田「ま、七海は俺たちのクラスの学級委員長みたいなモンだからな」

    桑田「うげえ、イインチョタイプ? そういうタイプの子苦手だわ…」

    小泉「女の子の前で好みがなんとかって…デリカシーとかないの?」

    七海「私は委員長なんて言っても、結構ゆるくやってる方だよ? ほら、みんなは基本好き勝手に振る舞うし」

    西園寺「ああ〜、終里おねぇとか花村とかは、結構やりたい放題して小泉おねぇに迷惑かけてるからね〜」

    苗木「やりたい放題か…」

    舞園「苗木君も、そういうクラスに憧れてるんですか?」

    苗木「いや、そういうわけじゃないけど…でも、つまらなくはなさそうだよね」

    弐大「無、もう9時か どうする?時間的には早いが、もう就寝といくか?」

    霧切「今から出るには遅いし、もうベッドについた方がいいわね」

    七海「それじゃあ皆、今日はいきなりでビックリしちゃったかもしれないけど、改めて、これから何かと色々よろしくね」

    ソニア「はい!合点承知の助です!」



    七海さんが加わって、久しぶりにボクらはワイワイとはしゃいでしまった




    大声で笑う人や、楽しく歌う人…




    コロシアイが起こる前までの、和やかな雰囲気が、そこにはあった




    晴れやかな気分と心地よい倦怠感の中、ボクはギリギリまで下で談話している皆よりも先に、ベッドに着くことにした
  53. 54 : : 2017/06/03(土) 11:46:53


    ーーモノクマ劇場ーー


    モノクマ「えっ!?もしかして、自分は生きてて意味がないなんて思ってるの!?」

    モノクマ「何言ってるんだよ!当然だよ!意味なんてないに決まってるじゃん!」

    モノクマ「人間の一生なんて、どうせ食う寝る遊ぶを延々と繰り返すだけでしょ? それのどこに意味があると思ってたの?」

    モノクマ「しかも、キミ自身がそれに価値を見出せないなんて、本当に意味ないじゃん!むしろなんで今まで生きてこれたの?」

    モノクマ「そんなに意味のない人生を送るのがいやなら…とっとと死んじゃえばいいじゃないか!!」

    モノクマ「…それとも、それ以上の尊厳がキミにあるっていうのかい?」

  54. 55 : : 2017/06/03(土) 13:10:44


    モノクマ「オマエラ、グッモーニン!!朝7時です、起床時間ですよー!」










    モノクマ「あ、そうそう、朝起きて、ご飯を食べ終わったら、全員体育館に、集合してくださーい!!」

    モノクマ「来なかったら許さないからね!」





    ああ、もう朝か……


    昨日はみんなより早く寝たから熟睡出来たけど……



    ……………体育館に来い?



    …………………………



    ボクは嫌な予感を理性で押し殺し、体を布団から出した



    と、同時に


    コンコンコン


    ドアをノックする音が聞こえた


    ボクは特に疑いもなくドアを開ける


    桑田「おーっす苗木ーー!!」

    苗木「く、桑田クン? 珍しいね、ボクよりも早起きなんて…」

    桑田「バーカ!そんないい子に見えるかよ!オールだよオール!!若さのエネルギーってヤツ!」

    苗木「桑田クン…テンション高いからって無理しないでよ」

    桑田「そんでさ、さっきよく聞いてなかったんだけどさ…モノクマ、なんつってた?」

    桑田「モーニングコール以外に、なんか言ってたよな?」

    苗木「そ、それは………」

    苗木「…ほ、ほら!とりあえず、一旦朝食を食べようよ!」

    桑田「お、おう、そうだな」


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





  55. 56 : : 2017/06/03(土) 17:36:06


    桑田クン以外にも、小泉さん、弐大さん、霧切さん、葉隠クンがすでに集合していた

    弐大「苗木よ!!今のアナウンスは聞いたか?」

    苗木「うん、確か…朝ごはんの後、体育館に集合しろって」

    桑田「は?た、体育館?」

    葉隠「これは、リアルな話嫌な予感しかしねえって… 絶対あれだべ!間違いないべ!」

    小泉「ちょ、ちょっと…不安になるからやめてよ」

    霧切「…まずはみんなを起こして朝ごはんにしましょう そうしなくては始まらないわ」

    苗木「うん、そうだよね」



    ボクたちは残ったみんなを起こしに行って、全員が揃った



    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



    ソニア「あの、お話とはなんでしょう? 不躾ながら、モノクマのモーニングコールも聞き逃してしまって…」

    霧切「朝食を食べた後、全員体育館に集合しろと言ってたわ」

    不二咲「体育館に集合って…まさか…」

    左右田「あー知らん知らん!オレは知らねーぞ!」

    左右田「そんなの聞いてねーよ!聞いてなかった事にしてやる!」

    西園寺「じゃあモノクマに刃向かった罰として処刑されてきたら〜? ほら〜、扱いの面倒な童貞が1人減るよ〜?」

    左右田「うっせうっせぇ!誰が童貞だ!こんなところで野垂れ死にしたくねえっての!」

    西園寺「は?童貞に童貞って言って何が悪いのよ?」

    左右田「うるせぇ…オレは童貞なんかじゃ…」

    西園寺「じゃあ誰で卒業したってのよ?」

    左右田「え? そ、それは…言えねー!!」

    西園寺「はっきりしなさいよ!!誰で卒業したのか言えよこのビビリ!!!」

    小泉「ひ、日寄子ちゃん!そんなムキになってどうしたの!?」


    まだ引きずってたんだ…昨日の小泉さんと左右田クンのやりとり

    大神「とりあえず早い所朝食を済ませて、モノクマのいる体育館に急ぐぞ」

    弐大「どうせ下手に引き延ばそうとしても、おしおきを受けるかもしれないしのう…仕方あるまい」

    七海「…………」

    七海「ねぇ、九頭龍くんが殺人を犯しちゃったのも…その動機のせい、なんだよね?」

    苗木「…うん、そうなんだ」

    七海「……じゃあ、覚悟を決めないとね 私たちも、覚悟を…」

    小泉「……」

    葉隠「七海っち、来た途端急でビックリすると思うけどよ…」

    七海「ううん、昨日も言ったでしょ?私は平気だから」



    そしてボクらは、それぞれ無言のまま、朝食を口にした


    そして朝食を完食し、約束の時間が迫っていた……


    絶望の時間が…






    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  56. 57 : : 2017/06/03(土) 18:20:49


    全員が、体育館でモノクマが出て来るのをただただ待っていた


    桑田「な、なぁ、またこの床が抜けて、裁判場に連れてかれたりしないよな?」

    左右田「さすがにねーだろうけどよ…あの裁判場って、コロシアイが起きたときしか使わないんだろ?」







    モノクマ「いえす!ざっつらいと!!」

    左右田「うぎああああああ!!!!」

    西園寺「その汚い顔で叫ぶな!!」

    左右田「な、なんだよ急に!!後ろから出てくんじゃねえっての!!」

    モノクマ「ボクは最近気がついてしまいました」

    モノクマ「この中で、一番驚かすと面白いのは、左右田和一くんなのではないかってね!」

    モノクマ「だからボクは、オマエラの前に現れるときは、必ず左右田くんを驚かします!!」

    左右田「オレで遊んでんのかよ、堪忍してくれって!」

    舞園「もう少し心を強く持つ努力をすればいいのに…」

    小泉「もう!そういうのはいいから、さっさと要件を話してよ!」

    弐大「今こうしている間にも、ワシらの探索時間は刻一刻と減っている…事情があるなら手短にせんかぁ!!!」

    モノクマ「ハァ…仕方ない、年頃の子はそうだよね」

    桑田「わかってんならさっさとしろっての…」

    モノクマ「オッホン!えー、では説明いたします!」

    モノクマ「今回は、七海さんが加わり、より結束を固めたオマエラのために……」





    モノクマ「コロシアイを盛り上げる、新しい《動機》を、持って来ましたーー!!」




    苗木「動機…!!」



    モノクマの一言で、その場の空気が一気に凍りついた


    だけど…最初のときと違うのは、みんな、覚悟を決めているという事だった


    なにが来ても極力たじろがないように、覚悟を決めていた

    モノクマ「ありゃ?みんな人生で初めてバリウムを飲むときみたいな顔してるね?」

    大神「貴様の罠など百も承知、覚悟の上だという事だ」

    モノクマ「全く、覚悟なんてされたら、オマエラの驚く顔がみられないじゃないか!」

    モノクマ「仕方ない、左右田くんをビビらせて自己満足とするか…」

    左右田「だからやめてくれって!心臓が止まるわ!」

    七海「ねぇ、その動機の内容ってなんなの?まさか、ただ言って終わりじゃないよね?」

    モノクマ「もちろんですとも…その動機の内容は、これでーーす!!」







  57. 58 : : 2017/06/03(土) 21:19:12



    モノクマ「じゃじゃーん!モノクマパスポート〜!!」




    モノクマは手元から、モノクマの顔が大きく刻印された、謎の銀色のカードを持ち出した



    苗木「モノクマ、パスポート…?」

    モノクマ「うぷぷ…」

    葉隠「そ、そんなのがどうしたんだってんだ!!希少金属とかじゃねーと、俺は認めねーからな!」

    ソニア「例え希少金属だったとしても、そんなもののためにコロシアイを起こすわけにはいきません!!」

    モノクマ「もーそんなちっぽけな動機じゃないって」

    舞園「じゃあそれは…なんなんです?」

    モノクマ「えー、一から説明しましょう!」



    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


    このカードの名前は、モノクマパスポート!

    モノクマパスポートは、この体育館やきぼうタウン、全体にバラまいてありまーす!

    だけど、これはただのコンプリートアイテムじゃないよ…

    なんと!コレを持って最寄りのモノクマにプレゼントすれば……


    なななんと!!自分以外の誰かの知られたくない秘密を、こっそりと見ちゃうことが出来るんです!!



    なお、開封された秘密は、コロシアイが起きなければ、24時間後に世間に公開されます!

    3日間コロシアイが起きなければ、全ての秘密が公開されまーす!!


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



    モノクマ「秘密をエサに脅すも良し! こっそりバラすも良し!それが嫌なら真っ先に殺すも良し!」

    モノクマ「さあ、このモノクマパスポートで、オマエラもコロシアイを満喫しよーう!!」

    苗木「ひ、秘密が……バラされる…?」

    桑田「お、オレらの秘密が…バラされるって、どういう意味だよ?」

    モノクマ「そのままの意味だよ?桑田くんの秘密でも苗木くんの秘密でも、容赦なく、内密に、報告するからね!」

    モノクマ「でもいきなり探せなんて言われても、オマエラはどうせへーこら文句言うでしょ?だから…」

    モノクマ「じゃーん!今回は初回ボーナスとして1枚だけ差し上げます!」

    大神「初回ボーナスだと?」

    七海「まるでゲーム感覚だね…こんなのに、九頭龍くんも朝日奈さんも殺されちゃったんだね」

    モノクマ「あ!言っておくけどリセマラは通用しないよ?パスポートは、一回使えばそれっきりだから」

    モノクマ「それじゃ、僕は自分の仕事に戻るので、皆さんも自分の仕事…外の探索に取りかかってくださーい!!」





    そう言って、モノクマは嫌な笑みを浮かべ、忍者のようにサッと消えていった………


  58. 59 : : 2017/06/04(日) 11:10:23

    モノクマが過ぎていった後に残ったのは、重い重い沈黙だった


    自分の秘密がバラされる


    どんな秘密が?


    そのことで頭がいっぱいだった


    真っ先に口を開いたのは、七海さんだった


    七海「ねえ、それで…これからどうしよっか?」

    不二咲「タイムリミットは、3日間なんだよねぇ…?」

    ソニア「その間に出口を見つければいいんですよね?」

    葉隠「いいや、外の探索も危険だべ リアルな話、誰かがこっそり秘密をモノクマからもらってるかもしれないしな」

    苗木「そんな…!ボクたちの中にそんなことする人なんて…!」

    西園寺「いない…なんて言い切れるワケないじゃーん」

    苗木「!!」

    西園寺「アンタがこいつらのことどこまで信用してるのか知らないけどさぁ…」

    西園寺「会ってまだ間もない人間達のことを、どうして信用できるのかな〜って思っただけだよ」

    苗木「そ、それは…」

    西園寺「ホンット、どいつもこいつもあっさり他人を信じるから、付け入る隙を与えちゃうんだよ」

    左右田「………」

    左右田「た、確かにそうだけどよ…信じねー限りは、始まらねえだろ?」

    左右田「俺だって、自分と仲のいい連中を疑うのって、なんか気が気じゃねーし…」

    桑田「おっ!左右田いい事言う!」

    桑田「つーわけだよ!信じたくねえんなら1人で勝手に引きこもってろよ!」

    小泉「ちょ、ちょっと桑田…」

    西園寺「…フン、わかったわよ」


    西園寺さんは、そう吐き捨てるように言い残し、イライラしたような顔でその場を去っていった

    舞園「西園寺さん、相変わらずですね」

    弐大「あいつ、急にどうしたんじゃあ? 最近になってから人をよく疑うようになったみたいなだが…」

    弐大「小泉、何か心当たりはあるか?」

    小泉「え?」

    七海「驚くことでもないよ 小泉さんって、西園寺さんと仲が良かったからね」

    小泉「あ、いや、そういうことじゃなくて急に振られたから…」

    弐大「で、どうなんじゃ?腹を借りる気持ちでワシになんなりと申し付けてみろ!」

    ソニア「『胸を借りる』ですよ、弐大さん」

    葉隠「ヨーロッパ人に日本語を教えられてんぞ!?」

    小泉「ううん、最近は特に…いつもと変わらなかったよ?」

    苗木「………………」

    弐大「無ゥ…まぁいいとするか 西園寺が他人に対してあんな態度をとるのは一度や二度ではない」

    左右田「どうせコロシアイが起きたから信用できなくなったってだけだろ?」

    左右田「ったく、あんなのが何度も何度も起きてたらたまんねーっての」

    ソニア「で、では…左右田さんはコロシアイを気に入っておられたのですか…!?」

    左右田「いやソニアさん、『たまんねー』ってそういう意味じゃないです…」

    葉隠「今度は正しい構図だべ…」

    七海「私たちも一度部屋に戻ろっか 考えなきゃいけないことは山積みだし、一度肩の力も抜きたいし」

    霧切「まずはしばらく休んで、対策を考えましょう…生憎一分一秒も無駄にしてる時間はないわ」

    桑田「そうだな、戻るとすっか」



    ボクたちは、少し気まずい空気を抱えたまま、自分たちの部屋まで戻った


  59. 60 : : 2017/06/04(日) 12:31:18

    ぼくは部屋で1人、考え事をしながらただ天井を眺めてた


    ……うん、ぼーっとしてるだけじゃ始まらないな


    みんなのところに行ってみよう



    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


    七海「うーん、そうじゃなくてさ、ほらもう少し上」

    葉隠「なぁ、七海っち そんなにゲームって肩こるもんなのか? もうずっと肩揉んでるけど一向に終わる気配がしないんだが…」

    七海「むにゃ…むぅ……」

    葉隠「速攻で睡眠に入った!?」


    休憩ということで、各自ヒマを持て余しているようだった


    誰とヒマを潰そうかな?

    【自由行動】残り2

    (桑田、葉隠、不二咲、舞園、霧切、大神、左右田、弐大、ソニア、七海)

    >>61
  60. 61 : : 2017/06/04(日) 12:38:06
    だ…誰が死にそうだ…?
    左右田が怪しい…かな?
  61. 62 : : 2017/06/04(日) 18:43:58

    左右田「全く…誰が他人の秘密で人殺しなんてするんだよ」

    左右田「なあ苗木、お前もそう思うだろ?そうだよな!」



    左右田クンの愚痴に付き合った



    左右田「全く、急に変なところに連れてかれたと思ったら、コロシアイだのなんだの…ハッキリ言ってついていけねーぜ…」

    苗木「うん、ボクもよくわからないよ…」

    左右田「ま、俺は全然怖くねーけどな!コロシアイなんて起きるわけねーんだからな!!」

    苗木「…左右田クン、声震えてるし、顔も強張ってるよ」

    左右田「ハイウソです…ハッキリ言って滅茶苦茶怖いです…じゃなくってさ!」

    左右田「そういう話をしたいわけじゃねえんだ、なんかこうもっと前向きな話をさ」

    苗木「前向きな話、か…そういえば左右田クンはさ、どうやって《超高校級のメカニック》になったのかな?」

    左右田「ああ、それかー 別に大したことじゃないんだけどなぁ…」

    左右田「家が、親父の自営業の自転車屋でさ、昔から自転車の修理の依頼が多かったんだよ」

    苗木「自転車の修理だけで、超高校級のメカニックに…?」

    左右田「ちげーよ、ウチは、自転車以外にもいろいろと修理の依頼が回ってくるんだよ」

    左右田「子供のオモチャに、ゲーム機に目覚ましに携帯…あと大きいのだとテレビとか冷蔵庫とかだな」

    左右田「あ、あとたまに車のタイヤやエンジンの点検とかもあったっけか」

    苗木「ほとんど何でも屋だね…」

    左右田「ああ、『形あるものならなんでも修理できる』って親父も言ってたな」

    左右田「ホントは電子生徒手帳も改造してえんだけどよ、モノクマがダメって言うからにはダメなんだよな…」

    左右田「あーあ…この街は機械が少ねえし、監視カメラも分解したら怒られそうだしな…」

    苗木「ボクの目覚まし時計で良ければ貸そうか?そういうのでも問題ないんでしょ?」

    左右田「え?でも、起きる時間わからねーと困らないか…?」

    苗木「モノクマのモーニングコールで嫌でも起こされるし、それで起きなくても舞園さん達が起こしてくれるから大丈夫だよ」

    左右田「おお、気がきくじゃねーか苗木! じゃあ早速借りてもいいか?」

    苗木「うん、じゃあボクの部屋に来てよ」

    左右田「おう!サンキューな!」

    左右田「何かいい物が出来たら、すぐに見せてやっから待ってろよ!」


    左右田クンに目覚まし時計を貸した……

    【残り1回】
    (桑田、葉隠、不二咲、舞園、霧切、大神、弐大、ソニア、七海)

    >>63
  62. 63 : : 2017/06/04(日) 18:57:22
    葉隠かなぁ
  63. 64 : : 2017/06/04(日) 20:26:21

    葉隠「ふう〜、何だか肩もみも疲れたべ、本人も寝てるしよ」

    葉隠「なぁ苗木っち、値切ってやっから、ちょっくらスーパーまでダッシュして酒買って来てくんねーか?」



    葉隠クンのパシリを断った




    葉隠「苗木っち…俺最近スゲーことに気がついちまったんだべ」

    葉隠「占いでこんなに苗木っちにいい結果が出るんならよ…その幸運にあやからない手はないってな!!」

    苗木「ここに連れてこられた時点でボクの幸運なんてたかが知れてるけど…」

    葉隠「ンなわけねーっぺ、そもそもその理屈でいったら、一番の幸運はモノクマだべ!」

    葉隠「あんな頭おかしい殺人鬼の幸運に媚びるぐらいならお前の方が幾分マシだべ」


    ……『幾分マシ』って言うのが引っかかるな

    苗木「でもさ、ボクの幸運にあやかるって、具体的にどうするの?」

    葉隠「決まってんだろ!儀式だよ儀式!」

    苗木「ぎ、儀式…?」

    葉隠「でもこの儀式をするには、最低バナナは6個は欲しいな…よし!バナナ7個持ってこい!」

    苗木「…葉隠クンが持ってきてよ」

    葉隠「年長者の言うことは素直に聞けって、元・超高校級の政治家も言ってたべ!」

    苗木「あの人って結構前に汚職で告発されたはずなんだけど…」

    葉隠「う、うるせえ!とにかくバナナが必要なんだよ!」

    苗木「…そもそもどうしてバナナなの…?」

    葉隠「いいか苗木っち、バナナは風水的にとても縁起のいいモノなんだべ」

    葉隠「バナナの有名な産地は主に国内では九州、海外ではハワイやバリ、フィジーで生産されてることも多いんだが…」

    葉隠「灼熱の太陽の元育てられた植物には、幸運を招く『陽』のエネルギーがたくさん詰まってるんだべ!!」

    葉隠「おまけに黄色だから、金運もアップだ!」

    苗木「…葉隠クンって思いの外知ってるんだね、そういうこと」

    葉隠「ま、風水はまだ勉強中だからかじる程度だけどな…とにかくバナナ7個だ!7は幸運の数字でこれまたお得だからな!」

  64. 65 : : 2017/06/04(日) 20:55:31

    葉隠クンの部屋にお邪魔して、バナナ7個を献上した

    ……お香の匂いがするな

    箱を見た限りだとインド産の、いかにも胡散臭い感じのお香だ

    葉隠「良し!それじゃあ今から儀式を執り行うべ!」

    苗木「ちょっと待って葉隠クン!これ、いくらぐらい搾取するつもりなの…?」

    葉隠「搾取言うなって!ホントなら1回5,000円貰う予定の占いだけどよ、今はサービス期間中だから太っ腹にタダでやってやるよ!」

    苗木「タダ、か…うん、それなら別にいいけどさ……」

    葉隠「よっしゃ!それじゃあ準備するから、少しそこに立って待ってろよ」


    葉隠クンはそう言って、ボクの周りにお線香やバナナ、(本人曰く)水晶玉、おまけによくわからない物体をいくつか置いて、床に水性ペンで魔法陣のようなものを書いた

    葉隠「よし、ま、あの本通りにやればなんとかなるか…ハァ〜〜サトラシユケタケ〜……」

    よくわからないお経を数分間唱え続け、ようやく儀式が終わった

    葉隠「…タレガサヨソノカ!!よし!決まった!」

    苗木「よ、ようやく解放された…で、これって結局なんのおまじないなの?」

    葉隠「いや、これは元々クライン語の書物の占いだから詳しい意味は知らんが…」

    葉隠「まぁざっくり言うと他人に幸運を分けられる儀式だべ!ありがとよ、これで俺はしばらく安寧だ」


    そんなテキトーでいいんだ…

    葉隠「うし!苗木っちも疲れただろ?ジュース持ってきてやったから飲もうぜ!あ、それと儀式も終わったしバナナも食っちまうか」

    苗木「そうだね、このままにするのは勿体無いから」

    葉隠「それとよ、苗木っち」

    苗木「?」

    葉隠「お前もこんな訳わかんねえことに巻き込まれていろいろ悩んでることはあると思うけどよ、たまには考えるのやめて、意味もねえ事やって気楽にしたらどうだ?」

    苗木「え?」

    葉隠「苗木っちはスキあらばいつも気難しい顔してんべ そんなんじゃ幸運も逃げてくぞ」

    葉隠「少しは俺みてーに能天気に笑ってみろよ、その方が楽だぜ?」

    葉隠「人間って生き物はな、笑って飯食ってりゃ幸せ感じられるぐらい単純でテキトーな生き物なんだよ」

    苗木「葉隠クン……」

    …最初の頃は、ただの危ない人だと思って関わりたくなかったけど、確かに葉隠クンの言うとおりかもしれない

    ボクも、少し葉隠クンの見方を変えていこうかな…


    葉隠「あ、それと忘れんなよ?」

    苗木「何を?」

    葉隠「決まってんだろ、5000円だよ」

    苗木「えええっ!? で、でもサービス期間中だからタダだって…」

    葉隠「あー悪いな、お経唱えてる最中にサービス期間は終了しちまったよ」

    苗木「そ、そんな理不尽な…」

    葉隠「という訳でだ…外に出たら、5000円忘れんなよ!?約束だからな!!」

    苗木「…………」







    タダより高いものはない、ってことか…


    ……うん、やっぱり葉隠クンとは距離を置こう、ゼッタイに



  65. 66 : : 2017/06/04(日) 20:58:11
    オートスキルをゲットしました


    【占い】
    閃きアナグラムの時、最初の文字が埋まってる
  66. 67 : : 2017/06/05(月) 23:03:09





    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


    もう一度全員が集まり、今後の動き方について話すことになった



    小泉「ねえ、前から思ってたんだけど、コレはどうするの?」

    小泉さんはモノクマから初回ボーナスとして渡されたモノクマパスポートを机に出した

    桑田「その辺に捨てときゃいいだろ」

    舞園「誰かが拾ったらどうするんですか?」

    桑田「弐大のおっさんにとっちめてもらう」

    弐大「こいつ、まるで成長しておらん……!!!!」

    大神「投棄しておくにはあまりにも危険だ、今この場でへし折ってしまおう」

    すると大神さんは、そのパスポートを手に取り…

    大神「ふんぬ!!!!」

    一瞬…まさに一瞬

    光の速さもの、刹那の一瞬

    ベキベキとモノクマパスポートを握り潰した

    一瞬で…モノクマパスポートは粉々になった

    大神「よし、これで安心だろう」

    左右田「お、俺が今まで見てきた中でもトップクラスの馬力だぜ…」

    弐大「噴、超高校級の格闘家ならば、この程度くらい出来なければ話にならん」

    七海「ねぇ、今のって早送りじゃないよね?」

    ソニア「いいえ…リアルガチです」

    不二咲「でも、外でみつけた場合はどうすればいいのかな…?」

    西園寺「それこそこの間みたいに2人1組で行動すればいいんじゃないの?」

    霧切「モノクマの事だから、トイレに置いている可能性もあるわね できれば同性のペアがいいけど…」

    弐大「なぁ、霧切よ」

    霧切「何かしら?」

    弐大「たった今閃いたのだが、いっそのこと《探索をしない》という手段はどうだろうか?」

    苗木「探索をしない…?」

    葉隠「なるほど、外への希望を諦めてここでみんな仲良く一生暮らすってか! それなら納得…」

    葉隠「するわけねぇだろ!! 諦める理由がどこにあるんだべ!?」

    弐大「しかし、あの秘密が全員分公開されるのは確か3日後じゃったな?」

    弐大「だったらその3日間の間は何もしなければいいんじゃ!!各々自由に過ごせばな!」

    小泉「うーん…響子ちゃん、どういう意味かわかるかな?」

    霧切「まるで時効のシステムね…つまり、世の中に自分の秘密がバレるのは承知で、この3日の間、探索をしないで生き延びるという事よ」

    霧切「3日経ってしまえば、私たちの秘密は世間の目に晒されるものの、そのかわりにモノクマの動機は無効になる…それで全員が生き残るならこれほど効率的な考えはないわ」

    葉隠「おっしゃ弐大っち!どこまでもついていくべ!」

    左右田「切り替え早っ!?」

    苗木「…………」





    でも、本当に大丈夫なのか…?

    あのモノクマの悪意が、こんなところで留まるのか……?

    それが疑問だけど…今はそれしか手段が無さそうだ



  67. 68 : : 2017/06/05(月) 23:26:57

    不二咲「でも、引きこもってるだけっていうのもちょっと…」

    弐大「当然じゃ、それでは身体がなまってしまう…そこでだ!!」

    弐大「お前さん達、プールで泳ぐ気はないかあああ!!!!」

    桑田「お!プール!?マジ!?」

    舞園「プール!良いですね!」

    桑田「ついてくついてく!!泳ぎまくるって!」

    弐大「……桑田よ、普段の練習を真面目にやるなら、の話じゃぞ?」

    桑田「マジでマジに受けるから!だからお願いだよ猫ちゃん!俺もプールで爽やかに一汗かきたいんだよ〜♪」

    弐大「…今回だけじゃ」

    桑田「おっしゃあキタアアアアアア!!」

    ソニア「ですがどうしても外に出たいという方は、どうすればいいのでしょうか?」

    弐大「有無…それは参ったのう、そこまで考えていなかったぞ」

    霧切「外から帰ってきた時に、持ち物を検査すればいいんじゃない?」

    葉隠「持ち物検査?…なんでだ?」

    霧切「モノクマの事だから、秘密を打ち明けるときはただ口頭で伝えるだけに収まるはずがないわ」

    霧切「きっと…何か書類のような形にして、事細かに記載するはずよ」

    七海「そうなの?モノクマ」



    モノクマ「うぷぷぷ…霧切さんにはお見通しだね!」

    七海「あ、ほんとに出てきた」

    モノクマ「えー、霧切さんの推測通り、ボクにパスポートをくれた人には、それと交換する形で、その人の秘密が書かれたファイルを贈呈します!!」

    モノクマ「某ゲームの設定資料集の数ページ並みの、大ボリュームで書くから、楽しみしにしててね!!」

    左右田「ケッ、悪趣味なヤローだぜ…」

    モノクマ「それにしても、よくそんなこと推測出来たよね、霧切さん」

    モノクマ「うぷぷ…そんなにボクのことに興味を持ってくれるなんて、なんだか身体が火照って、バッテリーが熱暴走して爆発しそうだよ!!」

    葉隠「そりゃリアルガチでやばいべ!!こんなところで俺巻き込んで吹っ飛ばないでくれ!!」

    大神「真に受けるな、どうせ冗談だ」

    霧切「黒幕の正体やその動向を探ることは別に不自然ではないでしょう?」

    モノクマ「それにしたって、知りすぎだよ、知りすぎちゃってるよ やっぱりキミとボクとは心が繋がってるのかな?」

    霧切「バカな冗談は言わないで、要件は終わりよ」

    モノクマ「うぷぷ、りょーかーい!!グッバーイ!!デスペアー!!」


    モノクマは別れの挨拶を残して去っていった



  68. 69 : : 2017/06/06(火) 23:45:18

    弐大「噴、バカなことをいいおる…ワシらの中に、そんな動機で人を殺す人間が居るわけないだろう…」

    霧切「どうでしょうね…繰り返すけど少なくとも、どんな秘密でも明かされる覚悟は決めないといけないわ」

    葉隠「つってもよ、モノクマが言ってる秘密ってどんなレベルの秘密だべ?」

    不二咲「きっと、私たちに殺人を強要するぐらいだから…それ相応の秘密なんじゃないかな?」

    葉隠「なんだべ、人を殺してまで守りたい秘密って…聖人君主じゃねえけどイカれてるべ」

    弐大「ええい、そんな事よりプールじゃ!!泳ぎたいやつは各々の性の更衣室で着替えを済ませ、体育館地下のプールに集合じゃあ!」

    桑田「よっ!待ってました!」

    舞園「ソニアさん、ご一緒にいかがですか?」

    ソニア「はい!ジャパニーズ青春物語に、水着回は必須ですからね!」

    左右田「ソ、ソニアさんの…水着姿、か……」

    左右田「いやダメだ、抑えるんだ…俺にはやるべきことが……」

    桑田「左右田!オメーも一緒に泳ぐぞ!25mどっちが速いか比べようぜ!!」

    左右田「うう…わかったよ、まあ今日ぐらいは行ってやるから」

    桑田「よっしゃ!!ありがとよ!」

    苗木「珍しいね、左右田クンがソニアさんに釣られないなんて」

    左右田「釣られてるわけじゃねー!俺が勝手についていってるだけだ!」

    左右田「ていうか、アレだよ…小泉からの答え、まだだし」

    西園寺「それ以上小泉おねぇの名前口にするとお前の口にゴキブリホイホイのとりもち詰め込むわよこの変態!!」

    左右田「だーもうなんだよさっきから!!俺に親でも殺されたのかよ!?」

    小泉「えっとね…さっきから左右田がくどいんだよ…」

    西園寺「そ、そんなに…!?」

    小泉「うん…監視カメラ作りたいから、カメラ貸してくれって」

    西園寺「…………え?」

    小泉「でもこれはみんなの写真を撮るためのものだし、人にあげたくないからさ だから断ってるの」

    西園寺「……取り越し苦労だよ」

    小泉「何か言った?」

    西園寺「ううん、なんでもなーい」

    桑田「苗木、お前も一緒に泳ぐよな? 一緒にいい汗かこうぜ?な?」

    苗木「どうしようかな…」

    七海「一緒に行ってきたら?こういうのは楽しんだもの勝ちだよ?」

    桑田「よし、苗木と七海ちゃんも確定だな」

    苗木「いや、考えてる最中だったんだけど…まぁいいか」


    桑田クンに言われるがままに、ボクはプールに入ることになった



  69. 70 : : 2017/06/07(水) 00:14:08
    小泉と西園寺あたりが怪しいな
  70. 71 : : 2017/06/08(木) 15:36:58

    葉隠「俺たちゃ何してりゃいいんだ?あまりプールの気分じゃないんだが」

    不二咲「私は、作業の続きをやるねぇ 本当にあともう少しで復元できるから」

    左右田「復元できたらすぐに声をかけてくれよ!」

    小泉「私は買い出しに行ってくるよ 何かリクエストとかある?」

    ソニア「ひと泳ぎした後なので、お魚が食べたいですね お刺身でお願いします」

    小泉「リクエストありがとね、ソニアちゃん」

    弐大「よし!ではワシらもそろそろおっぱじめるとするか!!」



    ボクたちプール組は、弐大クンと一緒に寮を出て、体育館地下のプールを目指して歩いた


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


    桑田「………」

    苗木「桑田クン、着替えなくていいの?」

    男子更衣室で、ボクたちが着替えてる間、桑田クンは神妙な面持ちで考えてた

    弐大「プールに入りたいと言ったのはお主の方だろう、何があったのだ?」

    桑田「いや、何があったってワケじゃないんだけどさ…」

    桑田「この隣の部屋って、女子が着替えてるんだよな?」

    左右田「それがどうかしたのか?…って、もう読めてきたな…」

    桑田「決まってんだろぉ!? 男の青春っつったら女子更衣室覗きだろ!!」

    苗木「男の青春に分類していいのかな…」

    桑田「ここってさ、何気にカワイイ娘多いじゃん!?覗こうぜ!ロマンだろ!覗かない手はないって、マジで!」

    左右田「何回覗く覗く言ってるんだよ…」

    桑田「よし決めた!!今から覗きに行く!!」

    苗木「く、桑田クン!さすがにまずいって…」

    モノクマ「コラー!!!何してるのオマエラ!!」

    左右田「ぎにゃあああああああああああ!!!!」

    苗木「モノクマ…?」

    左右田「なんだよ毎回毎回!!なんで俺の真後ろにいるんだよ!!」

    モノクマ「あ、ゴメンね 左右田クンに用はないの、ボクがお咎めしたいのは…そこの赤髪のキミだよ!」

    桑田「あー俺じゃねーな?地毛黒だし」

    モノクマ「キミ以外に誰がいるの!!キミだよキミ!!」

    弐大「ボケとツッコミが逆転しておる!?」

    モノクマ「全く、女子更衣室を覗こうだなんて…不届き千万もいいところだよ!!こうなったら校則に追加しちゃいますからね!!」

    モノクマ「だってボクは、オマエラに健全に、コロシアイを楽しんでほしいんだから!」

    左右田「健全なコロシアイってなんだよ…」

    ピロリーン

    モノクマが言うと同時に、ロッカーに置いていた生徒手帳が音を出した



    XVII・異性の更衣室に入るのを禁じます。


    桑田「うわー、マジか…ガン萎えだわ、マジ萎えだわー……」

    モノクマ「行っておくけど、入ったらその場で即!処刑だからね!即決即断!!」

    モノクマ「さて、次は誰の後ろから現れようかな〜」

    左右田「やめろって、おい…心臓止まるから」


    モノクマは、また突然消えていった……


    桑田「あー、女子更衣室立ち入り禁止かー つまんねー」

    桑田「仕方ねー、あんまり深く考えないようにするか!」

    左右田「開き直り早っ!?」
  71. 72 : : 2017/06/08(木) 17:44:08


    着替えを済ませたボクたちは、更衣室の階段を降りて、すぐにプールへと集まった

    桑田「………やっぱりか」

    左右田「ああ?今度はどうしたんだよ 感情が忙しいやつだな」

    桑田「だってみんな綺麗な水着着てくれると思ってたのに、スク水しかいねーんだもん なんでだよ…」

    ソニア「や、やはり水着回はビキニのほうが良かったのでしょうか?私は肌を露出するのが得意ではないので、スク水を選びましたが…」

    左右田「いえいえ全然OKですむしろソニアさんの清楚なイメージにフィットしてます!」

    ソニア「そうですか、ではビキニに着替えてきます」

    左右田「えっ!?なんで!?」

    弐大「まぁいいではないか、スク水のほうが激しい運動もしやすいだろう」

    桑田「…いや待てよ?……なぁ苗木」

    苗木「…今度は何?」

    桑田「スク水なんて色気が無えと思ってたけどよ…よく考えたら体のラインが胸、腰回り、ヒップまでぴっちり強調されていて…」

    桑田「逆にエロいじゃん 大発見だわコレ」

    苗木「…………」

    確かに、スク水を着たみんなは、体のラインがしっかりわかるようになっている

    特にスタイルの良い人は、それが尚更……

    七海「………」

    七海「苗木くん、表情が(よこしま)なそれになってるよ」

    苗木「えっ?」

    桑田「なんだよ、お前もやっぱり狙ってる女の子がいたのか? どれどれ、どの娘が狙い?」

    苗木「や、やめてよ桑田クン…そんなの」

    左右田「言っとくけどソニアさんは渡さねーぞ!!絶対だからな!!」

    苗木「だから狙ってなんかいないって…」

    弐大「フッ…青春も良いが、そろそろプールも冷えてきた頃じゃ まだ時期は春だが、ひと泳ぎと行こうではないか!!!!」

    桑田「おっしゃあ!!いやっほおおおおおう!!!!」

    左右田「ずっとテンション高いな、あいつ…」

    桑田クンは全力疾走で、ドボン、と大きな水音を立ててプールに飛び込んだ


    続くように、ソニアさん、左右田クン、弐大クン、七海さんがプールに飛び込んだ


    舞園「…苗木くん」

    苗木「どうしたの?舞園さん」

    舞園「あの、変なことを聞くようですが…私の水着、似合ってますか?」

    苗木「え?…う、うん! 似合ってる、と思うよ!」

    舞園「ふふ…ありがとうございます…」

    舞園さんは、少し顔を赤らめて言うと、それをごまかすようにプールに飛び込んだ


    苗木「……さて、色々あったけど、今は全部忘れて泳ぐか…」



    アキレス腱を伸ばして、ボクはゆっくりとプールの水に浸かった



  72. 73 : : 2017/06/08(木) 22:41:58

    桑田「おーい左右田!ボール持ってこいよ!水中キャッチボールやろうぜー!!」

    左右田「あのなぁ…水中でも豪速球投げられるのはこの世界中で大神と弐大とお前ぐらいだっての…」

    ソニア「七海さん!水泳で、どっちが速く泳げるか勝負しませんか?」

    七海「おー、いいねー バグったハイパーオリンピックみたいにはいかないけど、私も水泳は速い方だと思うよ?」

    弐大「各々楽しそうだな!提案した甲斐があるというものよ、ガッハハハハハ!!」


    ボクたちは、久しぶりに本気ではしゃいだかもしれない

    水を掛け合ったり、プールに思いっきりドボンと飛び込んだり、潜ったり……


    それぞれが、ひとときの安らぎを心ゆくまで満喫していた……

    ボクは、少し早めにプールから上がって、楽しんでるみんなを眺めながら体を休めていた

    舞園「苗木くん、隣いいですか?」

    苗木「どうぞ」

    舞園「運動して喉が渇いたと思うので、スポーツドリンクを持ってきました!」

    苗木「ありがとう、一本もらうね」

    ボクは舞園さんの持ってきたスポーツドリンクを飲んで、プールサイドで舞園さんと談笑してた

    舞園「……急にこんなこと言うのも良くないかもしれませんが…」

    苗木「?」

    舞園「朝日奈さんがこのプールを見たら、きっと喜ぶんだろうなって…思ったんです」

    苗木「…そうだね、ボクらは、この街でかけがえのない大切なものを失ってしまったんだ…」

    苗木「もう2度と、大切な人を失いたくない…だからこそ、コロシアイが怖い…」

    苗木「でも、目を背けてたって前には進めないんだ 死んだみんなの分まで、ボクが思いを引きずって生きるんだ…」

    苗木「九頭龍クンの思いも…朝日奈さんの思いも……全部」

    舞園「私は、あまりにも辛いときはいっそのこと忘れてしまうのがいいと思ってしまうことがあるのですが…」

    舞園「苗木くんは、2人の死を受け止めた上で、忘れるよりも辛い道を選ぶんですね…」

    苗木「ボクだって、1人でそんな道を歩くことはできないよ」

    苗木「でもボクは、独りじゃない 舞園さんに、桑田クンに、大神さん…みんながいるから、辛い道も歩めるんだ」

    苗木「希望を捨てずに、前へと進むことができるんだ」

    舞園「苗木くん……」

    舞園「私では、朝日奈さんの代わりにはなれませんが…」

    苗木「朝日奈さんの代わりになんてならなくていいよ 確かに朝日奈さんの代わりはいないけど、舞園さんの代わりもいないから」

    舞園「…も、もう、素でそんなこと言われたら、いくら私でも…」

    苗木「?」

    舞園「わ、私ちょっと早めにあがりますね」

    苗木「あ、ちょっとまって!」

    舞園さんは、珍しく少し顔を紅潮させてプールサイドから姿を消した


    そして、遊び疲れたボクたちも、元の生活に戻ろうとしていた……



    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




  73. 74 : : 2017/06/09(金) 23:09:37


    苗木「ふう…スッキリした…」

    桑田「あー、遊び疲れたわ (ねみ)い…」

    七海「まだ眠っちゃダメだよ?この後ご飯もあるんだから」

    七海「ふう……あー、やっぱり眠いね 仮眠とる?」

    左右田「お前もかよ…」


    ソニア「とても楽しかったです 久々に嫌なこと全部忘れてドツボにどハマりしてしまいました!」

    ソニア「何より、苗木さんと舞園さんのプールサイドでの青春が見どころでした!!」

    苗木「ちょ、ちょっとソニアさん!?」

    桑田「オイ苗木!舞園ちゃんとったら地獄に落とすからな!マジで!」

    苗木「とらないよ!!舞園さんはまだ現役アイドルなのに…」

    七海「…アイドルじゃなかったら?」

    苗木「え?」

    七海「舞園さんがアイドルじゃなかったら、舞園さんとは付き合うのかな?」



    …ソニアさんに続いて、七海さんまでボクを興味津々に見つめている

    舞園「……ふふっ」

    桑田「あれ?舞園ちゃん、笑った?…この状況で笑うって……苗木オメーやっぱりとったな!?」

    苗木「とってないって!!誤解だよ桑田クン!!」

    桑田「このやろ〜、こうなったらあの手この手で吐かせてやるぞ〜 舞園ちゃんとナニしてんのか白状させてやっからな!」

    弐大「ええい!!乳繰り合うでない!!もうさっさと戻るぞおお!!」

    左右田「そうだな、今頃小泉も買い出しから戻ってきてる頃かもしれねーし、いい加減戻るか」



    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  74. 75 : : 2017/06/10(土) 12:44:31


    リビングでは、みんながご飯を今か今かと待っていた


    葉隠「ムムムム……」

    ソニア「葉隠さん、珍しく真剣に何かを読んでるようですが、どうなさったのですか?」

    葉隠「ソニアっちか オレもついに見つけたんだべ……!!」

    左右田「見つけたって…何をだ?」

    葉隠「この街から脱出する方法だべ!!」

    ソニア「ほ、本当なんですか!? 教えてください!!言い値で買います!!」

    桑田「なあオイ、それってマジの情報なのか?」

    葉隠「マジもマジ、マジックだべ!! ほら、このページを見てみろよ…」

    葉隠クンに言われた通りにそのページを覗いてみると……

    苗木「えっと…シャザンムの、魔法…?」

    葉隠「ほら、この魔法の説明を読んでみろって」

    シャザンム…

    神話に伝わる神々の力を集約した魔法
    ヘラクレス、マーキュリー、トール、ホルス、アダム、イザナミ、アマテラス、ブッタ、そしてゼウスの名を詠唱し、雷を引き寄せることによって、雷に打たれたものを好きな場所に瞬間移動させる上級魔法

    ………なんだ、コレ?


    葉隠「こいつはこの間スーパーで拾った世界中の魔法が書いてある本でな、その中でも一番脱出に適してるのはコレだと思ったんだべ!!」

    弐大「…まさか葉隠、この本の内容を真に受けているのか…?」

    葉隠「魔法だからって舐めたら痛い目に遭うぞ?魔法文化は俺たちの知らないところで発展を遂げてる可能性だってあるんだからな!」

    七海「えっと、知らないところで発展してるならどうして本なんかに載ってるのかな?」

    葉隠「それは…出版社の諸事情があったんだろ」

    桑田「ハァ〜アホらしい、つくならもっと面白い嘘つけよな」

    葉隠「ウ、ウソじゃねーって!!いつか証明してやるからな!!魔法は本当にあるんだって!」

    ソニア「そうです!魔法は実在します!」

    左右田「ソニアさん?どうして葉隠の肩なんか持って…」

    ソニア「肩を持つもなにも、私は過去にこのシャザンムの魔法を見たことがあるのです!」

    左右田「え?」

    ソニア「私が子供の頃、お城でお手伝いさんの帰りを待っているときでした…」


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



    何気なくゲームなどをして過ごしていたら、突然空が真っ暗になって、心配になって、お手伝いさんを出迎えに行こうとしたんです

    そしたら、ドーン!!と、大きな雷が家の前に落ちた音が聞こえて…慌てて外に出たんです


    そしたらお城の庭に、大きな焼け焦げた跡があって…そこにお手伝いさんが立っていたのです!!


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



    ソニア「むかしは不思議に思っていましたが…今やっとわかりました!」

    ソニア「お手伝いさん達は、シャザンムの魔法で瞬間移動してきたのです!!」

    葉隠「よっ!さすがノヴォセリック公国!やっぱソニアっちはよく分かってるべ!」

    桑田「いやいや余計に意味不明だって…」

    葉隠「とにかく、この方法を成功させるまで、俺は諦めねえからな!」

    弐大「噴、1人で勝手にやっておれ…」



  75. 76 : : 2017/06/10(土) 16:28:08

    苗木「小泉さん…なんだか遅いね」

    大神「魚を選ぶのに手間どっているのか?」

    ソニア「もう少し細かい注文をしておくべきでしたね…」


    ガチャ

    小泉「ただいま〜…って、家じゃないからただいまじゃないよね…?」

    桑田「今となっちゃ家みたいなモンだし、ただいまでいいんじゃね?」

    不二咲「今日のご飯のお魚って、なんなの?」

    小泉「一応鮮度の良さそうな魚を選んできたけど…どうかな?」

    ソニア「鮭ですか!でしたら私の大好物です!」

    小泉「あはは ソニアちゃんの好みに合うのでよかった それじゃ料理するから待っててね」

    西園寺「小泉おねぇ、私も一緒に料理していいよね?」

    小泉「うん!一緒に作ろうよ!」

    霧切「…………まって、小泉さん」

    小泉「?」

    霧切「…その服にしまっている封筒は何?」


    苗木「…え?」



  76. 77 : : 2017/06/11(日) 11:15:03





    霧切さんの一言で、その場の空気は急速に凍りついた


    小泉さんが持っている謎の封筒……

    ポケットに折りたたんでいる封筒が、僕の目にも入った


    小泉「な…なに?響子ちゃん」

    霧切「そのポケットの封筒を見せて、と言ってるのよ」

    その霧切さんの態度はいつにもなく高圧的で…明らかな敵意があった

    小泉「………」

    大神「小泉殿…まさか」

    小泉「ち、違うんだって!これはモノクマの動機とは…!」

    霧切「関係ないなら…見せられるはずよ」

    小泉「………」

    西園寺「ちょっと!自体を漁るのが趣味の変態女なんかが小泉おねぇにちょっかい出さないでよ!!」

    小泉「…」

    西園寺「ねえ、そうだよね…?別に動機とは関係ないよね…?小泉おねぇ」

    小泉「…」

    桑田「ケッ!黙ってねーでなんか言ってみろよ!!自分が潔白だって言ってみろってんだ!!」

    小泉「…」

    桑田「結局ダンマリかよ、じゃあさっさとそれを…」




    小泉「…みたいなら、見せてあげるわよ」




    桑田「は?」



    小泉さんは、ポケットの封筒を乱暴に取り出して、破き捨て…中身を机の上に叩き出した




    小泉「みたいなら……勝手にみればいいじゃない!!!!!」



    それはいつもの小泉さんとはまるで別人のような……






    粗暴で、感情的な振る舞いだった






  77. 78 : : 2017/06/11(日) 11:27:44














    小泉さんの取り出した封筒の中身………


    そこに記載されていたのは……







    桑田クンの秘密だった






    桑田「……え?」



    【桑田怜恩は、少年野球チームからお金を巻き上げていた】




    桑田「ハ、ハァ!?」

    不二咲「こ、これって…もしかして…」

    七海「モノクマの言っていた…動機?」

    小泉「…なんなら、私が読み上げてあげるよ」



    小泉さんは資料を手に取り、大きな声で読み始めた





    小泉「桑田怜恩は、《将来有望な野球選手》という縁で、度々少年野球チームで指導と称して子供から高額な金品を要求しては、口封じのために子供達を脅し…」





    桑田「…やめろ…」




    小泉「子供達が自分のいうことを聞かなければ、『千本ノック』と称してその子供達にボールを当てるなどの危害を加え…」




    桑田「やめろよ…やめろって」




    小泉「子供達と仲がいいように見せかけるため、表向きでは真面目な指導者を装っていた…」






    桑田「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」






    桑田クンはそこにあったドレッシングの入ったビンで、小泉さんに襲いかかった







  78. 79 : : 2017/06/11(日) 11:40:20







    ……………静寂


    一つの大きな音で、静まり返るリビング


    割れたビンを持っている桑田クンと…


    頭をドレッシング塗れにして、ドクドクと血を流す小泉さん


    桑田「………あ、あれ? オレ、一体なにを…」

    ソニア「く、桑田さん…そんな……」

    葉隠「う、うああああ………」

    西園寺「こ、小泉おねぇが……小泉おねぇが……!」



    苗木「桑田クン………………」


    桑田「い、いや…違うんだって…こんなん、ウソだよ…絶対に罠だって……」

    大神「…ならば何故そんなに動揺しているのだ」

    桑田「そ、それは、その……」

    ソニア「今は桑田さんを責めている場合ではありません!!早く小泉さんの応急手当てを…!!」

    七海「わかった 左右田くん、たしか部屋に救命バッグがあったよね?」

    左右田「お、おうわかった!急いで持ってくるぜ!!」



    小泉さんを手当てする、という目的の元、みんながまた動き出した




    そんな中、桑田クンは……


    桑田「……………………………」


    桑田クンは、ただただ茫然と立ち尽くしてるだけだった




    …ずっと親友だと思っていた桑田クン




    励ましたいのに…慰めてあげたいのに……




    それなのにボクは…彼にかける言葉が見つからなかった





    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




  79. 80 : : 2017/06/11(日) 11:49:48
    桑田…マジか…

    でもこれ苗木にもイジメ設定付いてるし

    弐大あたりも結構ヤバめの秘密がありそうだ…
    あの提案するにしても…

    どうしよう…

    誰 も 信 用 出 来 な い
  80. 81 : : 2017/06/11(日) 13:43:45
    カッとなった桑田も悪いけど、かと言って桑田だけが責められるようなことではないと思うが…これが原因で孤立しないといいけど
  81. 82 : : 2017/06/11(日) 14:51:34







    しばらくして、事はひと段落ついた



    小泉さんは療養を受け、今は自室で安静にさせてる


    …………だけど、どうしても引っかかる


    小泉さん…どうして動機なんかに負けちゃったんだろう


    全く兆しがなかった、といえば嘘になるけど…

    クソッ!もっとボクが…早く行動していれば……


    無理してる小泉さんを、少しでも理解できれば…


    でも、同じぐらい心配な人がいる……


    桑田クン………


    君がそんな人だったなんて…ここに閉じ込められる前から知っていた君が、そんな人だったなんて信じたくないのに…


    信じる…信じない…



    苗木「……ああもう、ボクは一体誰を信じればいいんだよ!!」


    苗木「…何度繰り返せばいいんだよ」


    コンコン

    苗木「?」

    不意に、自室のドアがノックされた

    苗木「…」

    少し怖いけど、開けてみるか…

    ガチャ

    舞園「苗木くん…少しお邪魔します」



    苗木「…舞園さん?」





  82. 83 : : 2017/06/11(日) 15:16:41


    舞園「ご容態は平気ですか?」

    苗木「うん…腕の傷はもう癒えてるよ それより、桑田クンは?」

    舞園「さっきから呼びかけてるのですが、一向に部屋から出てくる気配がないです……目の前であんな事されたら、激昂してしまう気持ちもわかります」

    苗木「舞園さんは、桑田クンの事を信じてるんだね…」

    舞園「例えあそこに書いてあったことが事実だとしても、桑田さんがあの時、私を止めてくれたことに変わりはありません」

    舞園「どっちにしても、あんなのは過去の情報です 私は今の桑田さんを信じます」

    舞園「桑田さんと小泉さんの処遇をめぐっては、また明日になってから霧切さんと考えましょう 今日はもう、遅い時間ですし」

    苗木「でも…お腹が空いたね」

    舞園「冷蔵庫に何か残ってるか、確認に行きましょうか 何もなければスーパーに行きましょう」

    苗木「そうだね」




    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



    結局冷蔵庫にめぼしいものは見当たらず、ボクと舞園さんはスーパーに行った


    舞園「おにぎりとお茶でいいんですか?」

    苗木「うん、今はそれぐらい胃に優しい食べものの方がいい」


    舞園「では私も、パンだけにしておきますね」

    舞園「? あれは…」

    舞園さんは、スーパーのエントランスの花壇の茂みの中に、何か光るものを見つけた

    舞園「…こんなところにも」

    忌々しいモノクマパスポートだった

    苗木「どうする?舞園さん」

    舞園「私の力ではベキベキにへし折る事は出来ないので、大神さんか弐大さんに頼みましょう」

    苗木「その方がいいかもね」


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



  83. 84 : : 2017/06/12(月) 17:30:11

    霧切「大神さん、話って何?」

    大神「予め言っておくが、これはデリケートな話題だ 他のものの耳に入れたくはない」

    大神「だから霧切、お主だけに伝えに来た」

    霧切「他言無用…そう言いたいのね 分かったわ」

    大神「今、小泉と桑田の件によって、仲間全体がかなり緊迫状態に陥っているのは知っているだろう」

    霧切「ええ、そうね」

    大神「包み隠さず言おう このままじっとしていれば、また次の殺人が起きかねん…そんな事はあってはならない事態だ」

    霧切「何か代替案があるという事? 私の考えてるものだと…」

    大神「ああ、《捜索の再開》だ」

    霧切「やはりね…理由を聞かせていただけるかしら」

    大神「動機を恐れて何もできないようでは我々は前に進むことは不可能だ」

    大神「ならばせめて、皆で出口を探すという共通の目的の元で、一時的にでも団結を強めるしかあるまい…」

    霧切「言いたいことはわかったわ こちらで善処するつもりよ」

    大神「話が早くて助かる」

    霧切「いえ、こういうときはお互い様よ」



  84. 85 : : 2017/06/12(月) 18:13:21

    苗木「大神さん、いないかな…」

    舞園「うーん、やっぱりみんなもう寝床についてしまったみたいですね」

    苗木「そっか…」

    仕方なく、ボクと舞園さんは誰もいないリビングで夜ご飯を食べた

    食事をとってる最中に、階段から人が降りてくる音が聞こえた

    左右田「ん?苗木に舞園か…こんな時間に何してんだ?」

    苗木「見ての通り夜ご飯だけど…左右田クンはどうしておきてるの?」

    左右田「い、いや、なんつーか寝るに寝れなくてよ…結局不二咲のパソコンの修理の手伝いをしてたんだ」

    左右田「あ、そうそう!!ついに完全にメモリが復活したんだよ!!あのパソコン!!」

    舞園「本当ですか!」

    左右田「こんなときにウソなんか言うわけねーだろ?なんなら今から見せてやるよ!」

    苗木「わかった…観に行こう」


    パソコンのデータを確認すべく、ボクらは左右田クンの後を追った


  85. 86 : : 2017/06/12(月) 20:36:27

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


    不二咲「あ、苗木くんに舞園さん…起きてたんだね」

    苗木「うん…お腹が空いて」

    左右田「なぁ不二咲、早速見せてくれよ 例のパソコンのデータ!」

    不二咲「うん…わかったよ」

    不二咲さんは左右田クン自作のパソコン棚からパソコンを取り出して、電源を入れた


    不二咲「あ、このパソコン…日記があるみたいだね!」

    左右田「よっしゃ!狙い通りだぜ!」

    左右田「ここで何があったかわかれば、脱出する道がわかるかもしれねえ!」

    ボクたちは、その日記を読み上げていった




    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



    6月 12日(火)

    今日も快晴の青空!やっぱり天気の良い日は出勤が憂鬱じゃなくていいね。

    でもきぼうタウン駅のモノレールは今日も混んでいた。こればかりはちょっとキツイ。


    6月 13日(水)

    今日は有給をとって、みんなで映画を観にいった!!

    智代子は《ブラックキャナリー》が観たいと言ったが、飛鳥のリクエストで《未来大冒険》を鑑賞した!やっぱり映画は楽しい!


    …………

    8月 20日(日)

    今日はあの日から丁度1年になるという。

    僕たちはあの日を忘れてはいけない。

    この世界は絶望から…超高校級の絶望から救われた。

    だけど、まだまだ課題は山積みだ。

    亡くなられた方々への供養と、未来への祈りを込めて、駅前で家族と黙祷を捧げた。

    この想いが天まで届きますよう。



    …………


    10月 8日(土)

    マンション街でテロが発生したらしい。

    どのような組織によるテロなのかは不明だが、今後も注意が必要だそうだ。

    今日は早めに仕事を切り上げて、家族の元に戻った。


    …………

    10月 19日(月)

    飛鳥が突然熱で倒れた。

    病院に搬送したが、まだ容態が回復しないそうだ。

    飛鳥、可愛い娘の飛鳥、どうか無事でいてくれ。

    …………


    10月 30日(木)

    どう考えてもおかしい。

    飛鳥の急熱が何日経っても治らない。

    そして病院ではたくさん急熱患者が搬送されていて、中には凶暴化して看護師の喉を噛みちぎった男もいるみたいだ。

    ……早めにここを出て行った方がいいかもしれない。


    …………

    11月 15日(日)

    娘が死亡した。

    何がなんだかわからない。

    智代子も動揺を隠せない様子だった。

    とにかく、この街から逃げなきゃいけない。

    精神を侵された暴徒が、街のいたるところで大暴れしている。

    僕は死にたくない。

    死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない。


    ………

    11月 16日(水?)

    発熱しょうじょうが出てきた

    もうわたしも

    死ぬかもしれない

    千代子だけおくりだして、私は部屋にのこる


    ………


    1〒月 17にti(¥)

    アダマが某ッ@シテ北…チヨ子わSin/だ

    もウ録にmo&j○も内※无

    |i(|liノダレ華助け*%<€

    あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ




  86. 87 : : 2017/06/12(月) 21:00:04

    左右田「な、なんなんだよ…これ…」

    不二咲「これって…全部ここで起きた出来事なの……?」



    日記の内容を見て、ボクたちはただただ、青ざめるしかなかった………


    その日記にあったのは……何気ない日常が、かけがえのない日常が……

    まるでカーペットに水が染み込んでゆくように………


    絶望へと変わっていく瞬間が記されていた


    まるで、ボクたちのコロシアイ学園生活みたいに


    舞園「な、なんでこんな……これって事実なんですか?」

    左右田「こ、こんなのが事実なワケ…ないだろ」

    不安の捌け口として、半ば興味本位で見てしまったその日記は…

    結果的に、ボクらをさらなる不安に陥れた


    不二咲「ええっと…苗木くん、何か心当たりってあるかな?」

    苗木「うん、そういえば…あのときボクに襲いかかったあの人って…」

    舞園「確かに、この日記に出てきた看護師の喉を噛みちぎった男に近いかもしれません」

    左右田「え?ちょ、ちょっと待て なんだその男ってのは」

    不二咲「苗木くんの腕のキズって…もしかして…」

    苗木「…左右田クンと不二咲さんには、ちゃんと説明してなかったね」


    ボクと舞園さんで、そのときの状況を説明した


    左右田「…おいおいおいおい、ますますこの日記の信憑性が増してきたじゃねーか…」

    不二咲「それじゃあ、外の探索は充分に注意しないとねぇ…」

    舞園「きっと、基本的にはシュラフに入れられてるんでしょう…それなら平気だと思います」

    左右田「そ、そうか!それなら安心だな!おう!!」

    苗木「うん…」


    左右田「…ああもう!さっさと寝るぞ!!明日に備えて準備だ!」

    不二咲「…ねえ、左右田クン」

    左右田「ん?」

    不二咲「このパソコン、左右田クンの部屋に置いておいてくれるかな…?」

    左右田「ああ、まぁ怖いもんな 女の子なら尚更、こういうのって…」

    左右田「それじゃあこの事はみんなに…言っておいた方がいいかな?」

    舞園「あまり賛成できません 余計に混乱させてしまう可能性もあるのに…」

    左右田「わかった、それじゃあこいつはしっかり俺が預かっておく この4人だけの秘密だな」

    苗木「そうだね…おやすみ、みんな」

    不二咲「うん、おやすみ…」


    ボクたちは、重い足取りでそれぞれの部屋に戻った



  87. 88 : : 2017/06/13(火) 07:59:05

    ーーモノクマ劇場ーー


    モノクマ「あれ?なんでボク、こんなところで寝てたんだっけ?」

    モノクマ「おかしいなぁ、ボクはベッドで寝てたはずなのに、なんでシュラフに?」

    モノクマ「あれれ?おかしいなぁ」

    モノクマ「……まぁ、おかしいモンだよね、世の中なんて」

    モノクマ「たった1人の視点から観た世の中なんて矛盾だらけだよね」

    モノクマ「ボクのガールフレンドからしたら、ボクがこんな風に寝床を間違えるなんて当たり前の光景かもしれないのに…」

    モノクマ「……ま、いいや!おやすみー…」



  88. 89 : : 2017/06/13(火) 13:26:25


    オマエラ、7時になりました、起床時間です
    起きてくださーーい!!






    苗木「………」


    気がつけば、ボクは逃げるようにベッドについていた


    この度重なる、訳のわからない現実から…信じられない現実から逃げるように


    …なんでだよ


    …なんでこんなときにボクは…誰も信じてやれないんだよ

    桑田クンも、舞園さんも、大神さんも、霧切さんも、小泉さんも………!!!

    苗木「………ダメだ」

    苗木「怒るほどの元気も、湧いてこない…」


    ボクは無気力に、自分の部屋のドアノブに手をかけた……



  89. 90 : : 2017/06/13(火) 14:09:41


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


    舞園「おはようございます、苗木くん」

    苗木「舞園さん、おはよう」

    リビングには、小泉さんと桑田クンを除いて、いつものメンバーが集まっていた

    苗木「…ところで、この大きなバッグは何かな?」

    リビングのど真ん中に、大きなスポーツバッグが置いてあった

    弐大「昨日は寝るに寝れなくてのう…仕方なく、大神に教えられたスポーツ用品店に向かって、一通り道具を持ってきたんじゃ」

    弐大「各種競技用のボールに筋トレ用具も揃えておる これで存分に練習できるわい!!」

    左右田「ともかく、これで小泉以外は全員揃ったみたいだな」

    霧切「全員…?」

    七海「まだ桑田くんが来ていないよね?昨日のこともあったし、無理はないと思うけど…」

    左右田「ああ、そいつについての話なんだが…」

    左右田「今朝、桑田の部屋に行ったらよ…いなかったんだ、あいつ」

    舞園「いなかった…?」

    左右田「ああ、体育館とかプールとか探し回ったけど見つからなかったんだ」

    葉隠「もしかして…桑田っちが逃げちまったってことか?」

    左右田「ま、端的に言えばそういうことだな…体育館にも居ねえとなると、街に逃げちまったんだろうなぁ」

    苗木「街に逃げたって…大変だよ!早く探しに行かないと!」

    西園寺「別に探さなくたっていいじゃん、あんなやつ」

    苗木「え…?」

    西園寺「バカの苗木おにぃにわかりやすいように言ってあげればね…あんな最低最悪のクソ野郎なんて探すだけ時間の無駄だって言ってるのよ」

    苗木「そんなのあんまりだよ…!それに、追い詰められて外で自殺なんかしてたら…」

    西園寺「別に自殺してたってそんなの自業自得だよ、あいつは小泉おねぇを殺そうとしたんだよ!あんたもみたでしょ?」

    葉隠「まさしく、『ついカッとなって殺っちゃいました』って感じだったな…ありゃ」

    西園寺「苗木おにぃは知らないかもしれないけどね…一度人を殺そうとした人間は絶対に反省なんかしないんだよ?何度でも殺しにくるし、何度でも開き直るんだよ」

    苗木「…桑田クンがあんな行動に走ったのは、止められなかったボクにも責任があるんだ」

    苗木「だからボクは探しに行くよ 何と言われようと、桑田クンは親友だから」

    西園寺「そっかー、苗木おにぃの脳ミソはチンパンジー並だったんだね そこまで言うなら諦めるよ」

    霧切「仕方ないわね…今日は桑田クンの捜索としましょう 残りたい人は部屋に残って結構よ」

    葉隠「仕方ねー、桑田っちが何かの拍子で戻ってくると信じて、おれはここに残るべ」

    左右田「…外に出るのが面倒なだけじゃねーのか?」

    葉隠「あ?左右田っちはエスパーか?」

    左右田「当たってんのかよ…」

    ソニア「私は小泉さんの様子も気になりますから、ここで待ってますね」

    弐大「ワシは、桑田は必ず戻ってくると信じておる…いつまでも待っているぞ」

    西園寺「…私は別に探さないし、あいつの事だってどうでもいいから」

    七海「それじゃあ残るのは弐大くんと葉隠くんとソニアさんと西園寺さん…で、いいよね?」

    不二咲「…ごめんなさい 私も残っていいかな?」

    不二咲「なんか昨日から…その、気分が悪くて」

    霧切「それじゃあ残りのメンバーは、外で桑田くんの捜査に手伝ってくれるって事でいいのよね?」

    舞園「わかりました」

    大神「承知した」

    霧切「それじゃあ朝ごはんはなしにして、早めに出発しましょう 今は時間がないわ」

    苗木「そうだね…」
  90. 91 : : 2017/06/13(火) 14:47:55
    まって…桑田死んでないよね…?
  91. 92 : : 2017/06/13(火) 15:26:38
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


    七海「それじゃ、私は一通りこの体育館とプールをチェックし直すね」

    左右田「それじゃ、おれはもう一度男子更衣室をみるぜ」

    霧切「私と大神さんと舞園さんと苗木くんは外を調べてくるわ」

    大神「七海殿に左右田殿、くれぐれも気をつけてな」

    左右田「ああ、わかった」

    七海「みんなも気をつけてね モノクマパスポートなんか拾ったらぐちゃぐちゃにしちゃってね」

    苗木「わかった、それじゃあまた後でね」



    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



    苗木「それにしても…どうやって探せばいいんだろう…」

    霧切「…人間は逃げようとするとき、できるだけ遠くに行こうとする傾向が強いわ」

    霧切「それも、自分が知らないような場所に行く傾向がね」

    舞園「つまり、桑田さんは私たちの探索していない場所まで行った可能性が高いという事ですか?」

    苗木「桑田クンが知らないとなると…きっとマンション街や大通り、辺りじゃないかな?」

    霧切「あくまで可能性の問題だけどね…」

    舞園「では、私と大神さんでスーパーやスポーツ用品店を調べてきます 苗木くんと霧切さんはマンション街の方へお願いしますね」

    霧切「決まりね、早く出発しましょう」



    ボクたちは、体育館の出口で別れて、それぞれ別々に動いた




  92. 93 : : 2017/06/13(火) 18:27:04

    苗木「初めて来るけど…マンション街もなんだが荒れてるね…」

    日記に書いてあった通りだと、ここでテロ…みたいな出来事が起こったらしいけど…

    苗木「まさかマンションに忍び込んだとか…ないよね?」

    霧切「私が確かめてみるわね」

    霧切さんは、マンションの部屋のドアノブに手をかけて、力任せに引っ張った


    霧切「相変わらず個室は鍵がかかっててどの部屋も入れないし、マンションに隠れるのは無理ね…」

    苗木「やっぱり、そこらへんでじっとしてるんじゃないかな?」

    霧切「それで済めばいいけどね」

    苗木「どういう事?」

    霧切「桑田君が昨日の夜からいなくなって、今まで見つかってない理由を説明できるもう一つの仮説があるわ」

    苗木「それって…もしかして」

    霧切「ええ、桑田君が《殺された》という可能性よ」

    苗木「え…?」

    霧切「…いえ、ただの仮説で不安を煽るのは良くないわね ごめんなさい、今のは全て忘れて」

    苗木「う、うん…」


    その後もマンション街を調べてみたけど…

    結局桑田クンは、影も形もなかった

  93. 94 : : 2017/06/13(火) 19:50:57


    ボクは、この間謎の人物に襲われた公園まで戻ってきた

    さすがにシュラフを覗くのはよした方がいいとして…やっぱりここにも桑田クンはいなかった

    結局大通りにもマンション街にも桑田クンはおらず、ボクは気を重くして歩いていた

    苗木「桑田クン…本当にどこに行ったんだよ……」

    歩いてると、前から見覚えのある人影が見えていた

    シルエットで桑田クンではないのはわかるけど、あれは…


    七海「うーん、その顔だと、そっちも見つからないみたいだね」

    左右田「なんだよ、結局どこも同じかよ」

    霧切「どこも同じという事は、舞園さんたちも?」

    左右田「ああ、未だに見つけられてないらしいな」

    七海「とりあえず、大分時間も食っちゃったから、一旦みんな集合した方が良くないかな?」

    霧切「収穫が何かしらあればいいけどね…」

    左右田「なぁ、収穫っつうのもなんだけどよ…道端にこんなもんが落ちてたんだよ」

    苗木「これって…なんだ?」

    左右田クンは、ポケットから藁半紙の切れ端のような紙をボクらに見せた


    霧切「まさか…動機の封筒?」

    苗木「!」


  94. 95 : : 2017/06/13(火) 20:13:32

    霧切「これって、どこに落ちていたの?」

    左右田「これはスポーツ用品店の出口付近に落ちてたんだ 俺たちが捜索をしてる時にたまたま見つかったんだけど…」

    七海「これってつまり…誰かがまた、モノクマパスポートを使ったってこと…かもしれないよね」

    苗木「だ、誰かって…」

    左右田「桑田かもしれねぇな…とにかく一刻も早くあいつを見つけねえとまずいんだよ!」

    霧切「確かにこんなものを見つけた以上、放置しておくのは危険ね…」

    苗木「待ってよ!桑田クンが殺人を企ててるなんて、そんな…」

    左右田「…あいつの豹変ぶり、お前だって見ただろ」

    苗木「た、確かにそうだけど…!でも!」

    苗木「…ボクは親友として、桑田クンの事を裏切れないよ」


    そう、桑田クンは裏切れない


    だって…今のボクがあるのは成歩堂さんのおかげであると同時に…


    桑田クンのおかげでもあるんだから…

    苗木「舞園さんたちも呼んで探そう!この封筒を開けたのが桑田クンなら、あのスポーツ用品店の近くにいるはずだよ!!」

    苗木「そして…ボクらで桑田クンを止めよう」

    左右田「…ったく、相変わらずお前は凄えよな」

    左右田「こんな時だってのによ…そんなに前向きでいられるなんてな」

    霧切「前向きなのが取り柄…なんでしょ?」

    苗木「うん、たとえみんなが疑っても…ボクだけは桑田クンを信じ続けるよ」

    七海「それじゃあ、舞園さんたちのところに早く戻ろうか」

    七海「大丈夫だよ 今の苗木くんが桑田くんに会えれば、きっと桑田くんも気を改めてくれるから…」




    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  95. 96 : : 2017/06/13(火) 20:36:19

    スーパーの前まで来たけど…どこにいるんだ?舞園さんと大神さんの2人は



    霧切「2人は、舞園さん達に覚えはない?」

    左右田「いや、さっきまでこの辺にいたはずだと思うん…だけどな」

    七海「うーん、窓から覗いた限り、スーパーの中にもいないみたいだね となると…」

    霧切「スポーツ用品店か、あのお寺か、そのどちらかね」

    左右田「だったらまずはスポーツ用品店からだ!あそこなら桑田がいる可能性もある」

    七海「うん、言われなくてもわかってるよ こういうアドベンチャーゲームは、一番犯人のいそうなところから消去法で探すのが基本だもんね」

    左右田「犯人とか縁起悪い事言うんじゃねーって!行くぞ!」

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



    舞園「ここの周辺に桑田君が、ですか?特に見ていませんが…」

    大神「それにしても…動機の封筒の切れ端だと?」

    霧切「ええ、それを桑田君が握っている可能性が高いわ」

    舞園「そんな…!!また誰かの秘密がばら撒かれるとしたら大変です!」

    七海「自体は一刻を争う状況だね でも、こういう時こそ落ち着いて行動しないと…」

    七海「うーん、このスポーツ用品店にも桑田君はいないんだよね…だとすると…うーん」

    左右田「だーもう落ち着きすぎだっての!!消去法で寺だよ寺!!」

    左右田「ここ周辺にいるって話だろ?スーパーにもいなくてココにもいねーんなら…後はあの寺しかないんだよ!」

    霧切「あまりいい予感はしないわね…急いで寺に行きましょう」

    大神「我らもそう思っていたところだ…丁度先ほど、寺に向かっていった人物がいた」

    苗木「向かっていった人物…?」

    霧切「話は後よ 急ぎましょう」

    舞園「ええ、万一あの人が桑田君に会ってたら、あまりいい事は想像できません」



    ボク達は、考えるより早く、とにかく早くお寺を目指した




    1分でも早く


    1秒でも早く


    休みなく走って、寺までたどり着いた





  96. 97 : : 2017/06/13(火) 21:46:32


    七海「うーん、人がいる気配は…ないね」

    苗木「大丈夫だよ…多分桑田クンは、この中のどこかにいるから」

    左右田「桑田、待ってろよ…今引きずり出してやるからな」

    舞園「…ちょっと待っていただけますか?」

    左右田「ああ?今度はなんだよ…」


    苗木「………」





    何かを感じ取った舞園さんの表情は……まるで人形のように血の気が引けていて……



    何か、恐怖に怯えてるような表情だった



    大神「舞園…?どうしたのだ?」


    舞園「…………」

    左右田「きゅ、急に呼び止めたと思ったら今度は黙って…もうなんなんだよ!」

    霧切「…もしかして、舞園さん」



    霧切「臭いを…感じているの?」

    苗木「臭い…?」






    そう聞いて、ボクたちは一斉に嗅覚を研ぎ澄まし始めた






    鼻に感覚を敏感にして…自分の五感を捨てて、鼻の神経に感覚を総動員した



    七海「…これって、もしかして……」






    霧切「ええ、鉄分の臭い………もっと言うなら…」











    舞園「言わないで、ください………」


    舞園「だって…だって……そんなのって……」




    左右田「おいおいおいおいおいおい…嘘だろ?嘘だと言ってくれよ、なぁ!?」



    嘘……


    そうだよ、こんなの……嘘に決まってる



    また、起きただなんて……


    また、誰かが、誰かを……




    大神「しかもこの臭い…あのふすまの向こう側か!」



    霧切「………」





    七海「ということは…あの障子の向こうに…?」








    苗木「そんな……そんなのバカげてるよ……だって……だって………こんな、前ぶりもなく……」








    そこでボクは思い出した






    ここでは、そのバカが…嘘が…







    なんの前ぶりもなく、突然、無慈悲にやってくることを









    霧切「……ふすまを開けるわよ……」

    舞園「…………」

    左右田「………」

    大神「…………」

    七海「…………」

    苗木「…………」








    霧切さんは、精巧なガラス細工を扱うように…ゆっくりと、そのふすまを開けた








    中の空気が、外に出てくる





    一気に鉄の臭いが……血の臭いに変わる…







    そして…………あり得ない現実が、ボクらに牙を向ける



  97. 98 : : 2017/06/13(火) 21:54:29










    そこにあったのは…………………













    頭から血を流し………両手両足を拘束され……






    変わり果てた姿と化した……






















    【超高校級の日本舞踊家】の西園寺日寄子さんだった




  98. 99 : : 2017/06/13(火) 21:54:55
    舞園「い、いや……………」





    舞園「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」



  99. 100 : : 2017/06/13(火) 21:56:18





    モノクマ「ピンポンパンポーン」




    モノクマ「死体が発見されました」




    モノクマ「一定の自由時間の後、学級裁判を開きます」



    モノクマ「…一応サービスで言ってあげるけど、スーパーの近くのお寺だからね!」



  100. 101 : : 2017/06/13(火) 22:01:27









    …………………………………



    ボクは言葉を失った






    また、始まろうとしている







    誰も信じることができない、最悪の……



    コロシアイが








    ーーーーーーーーーーーーーーーー

    逆転ロンパ〜絶望と希望と逆転と〜

    Chapter4–1


    『狂喜乱舞と来訪者』(非)日常編

    おわり

    to be continued










    生き残りメンバー 12人 ?

    苗木誠
    桑田怜恩 《?》
    葉隠康比呂
    不二咲千尋
    舞園さやか
    霧切響子
    朝日奈葵 【dead】
    大神さくら
    左右田和一
    九頭龍冬彦 【dead】
    弐大猫丸
    西園寺日寄子 【dead】
    小泉真昼
    ソニア・ネヴァーマインド
    七海千秋
    ???


  101. 102 : : 2017/06/13(火) 22:05:52
    はい、書き終わりました

    みてよレス数、今までで最短だね…
    次は明日にでもスレ立てする予定です
  102. 103 : : 2017/06/13(火) 22:15:11
    西園寺……だと(;゚д゚)!?

    予想の斜め上を飛び越えました(;゚д゚)


    お疲れさまですm(_ _)m
  103. 104 : : 2017/06/13(火) 22:20:53
    お疲れ様です

    西園寺は死ぬとき拘束される星の下に生まれた女性
  104. 105 : : 2017/06/14(水) 12:53:46
    前半の仮初めの日常、新しい謎。そして後半の息を飲む展開。充実した読了感を得られました。
    お疲れ様でした!
    次回も期待しています(o^-')b
  105. 106 : : 2017/06/14(水) 14:58:41
    >>103
    >>104
    2ヶ月じっくり書いた甲斐がありました…ありがとうございます!

    >>105
    おっぱい!!!!
  106. 107 : : 2017/06/14(水) 19:00:36
    ……西園寺か。現状じゃ桑田が一番怪しまれる位置だしそもそも行方不明だしで、生死問わず、桑田がキーパーソンになりそう。ただ自分の中でめっちゃ疑ってる人がいるんだけど…はてさて。次回も楽しみっす

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1999summer

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