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進撃の三国志 エレン「桃園の誓い」進撃×三国志

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  1. 1 : : 2016/07/14(木) 21:20:34
    中国は広い。向こう岸が見えぬ大河と、雲の上にそびえる山脈と、地平線の先までつづく平原は、遥かな昔から人間たちのいとなみを見守ってきた。


    自然は変わらなくても、人の世は変わる。統一が長ければ分裂し、分裂が長ければ統一される。分裂の時期は英雄の季節だ。広大な中華の地を舞台に、猛将たちが勇をふるい、軍師たちが知を競う。


    紀元2世紀の末、400年近くつづいた漢王朝は、まさに滅びようとしていた。各地で反乱が起こり、群雄がたって、乱世が始まる。


    此れは、そんな分裂の時代に現れ、統一を目指して戦った、あまたの英雄たちの物語である...
  2. 2 : : 2016/07/14(木) 21:41:34
    ーーー中平元年(西暦184年)ーーー


    暮れなずむ田舎道を、ため息をつきながら歩いている青年がいる。大きく、綺麗な碧の瞳に、綺麗な髪が特徴的だが、初対面の人はまず顔に注目するだろう。いかにも、機嫌が悪そうな悪人面をしている。


    青年は姓名を家柄(イェーガー)、あざなを紅蓮(エレン)という。あざなというのは、成長してからつける名前で、あだ名のようなものである。大人になったしるしでもあり、親しい人の間では、あざなで呼びあうのが普通だ。


    紅蓮がため息をつく理由は2つあった。


    1つは背負っているかごの中のぞうりやむしろが全く売れなかったことである。


    紅蓮はもともと皇帝の一族につらなる名家の出身だが、役人をしていた父親が早くに亡くなり、母親と2人でつつましく暮らしていた。親戚に助けてもらいながら、ぞうりやむしろを編んでは売り、貧しい生活を送っている。
  3. 4 : : 2016/07/14(木) 21:53:07
    もう1つは、世の乱れである。


    この頃、漢王朝に対する農民反乱が各地で起こり、此処でも広がっていた。張角という男を首領とする反乱で、黄色い布を目印にしているため、黄巾の乱と呼ばれている。漢王朝の悪政を正すといえば聞こえはいいが、反乱軍は略奪や暴行を働くばかりで、山賊と何ら変わりはない。


    朝廷は義勇軍をつくって、反乱を鎮圧しようとしている。村の広場に義兵をつのる立て札があり、それを読んだ紅蓮は自分も参加したいと思っていた。だが、年老いた母を残していくわけにはいかず、ふんぎりがつかずにいる。
  4. 7 : : 2016/07/14(木) 22:10:06
    「つくづく自分が情けなくなるな...」


    紅蓮が1人ごちたとき、どこからか悲しげな牛の鳴き声が聞こえてきた。つづいて、人の悲鳴が夕闇を切り裂く。


    「なんだ!?」


    内心でまたか、と思いながら、紅蓮は声のする方向に走った。


    粗末な家の影で、2人の男が5人の賊に囲まれていた。座り込んだ男たちの後ろで、荷車をひく牛が震えている。


    「命が惜しかったら、金と商品をおいていけ」


    錆びた剣を振りかざして、賊の頭が凄んでいる。


    「この黄色い布が目に入らないのか。ああ?」


    5人の賊徒は、黄色というより茶色に見える布を額に巻いていた。いずれもまだにきびの残る若者である。
  5. 8 : : 2016/07/14(木) 22:18:19
    駆けつけた紅蓮は肩をすくめた。最近、黄布賊のふりをして、農民や商人を脅しつけるならず者が増えている。


    紅蓮には多少の武芸の心得があった。5人相手は楽ではないが、見て見ぬふりはできない。頭を痛めつければ、手下は逃げていくだろう。


    「やめろよ」


    背後から声をかけると、賊の頭が振り返った。そこへ、むしろを投げつける。


    「うわっ」


    頭は視界を塞がれてもがいた。紅蓮はそこへ素早く近づくと、腹に拳を叩きこんだ。怯んだ隙に腕をつかんで、剣を奪う。


    「きさま、何しやがる!」


    4人の手下がいっせいに喚いたが、紅蓮は動じずに告げた。
  6. 9 : : 2016/07/15(金) 18:27:15
    「お前達も根っからの悪党じゃないだろ。黄布賊の真似事などやめて、家に帰れよ」


    4人はしばらく顔を見合わせていたが、頭が腹を押さえながら合図を送ると、紅蓮を囲む位置に散った。5対1なら勝てるとふんだのだろう。


    「やっちまえ!」


    5人がいっせいに飛びかかってくる。紅蓮はひらりとかわすと、剣を横なぎに振るって包囲から脱出した。賊の1人が、血の流れた腕をおさえてうずくまる。


    「早く逃げろ!」


    紅蓮はへたりこんでいる商人達に向かって叫んだ。しかし、人も牛も立ち上がろうとしない。腰が抜けているのだろうか。
  7. 10 : : 2016/07/15(金) 18:34:40
    人質にとられでもしたら、まずいことになる。紅蓮は仕方なく、商人達を守る位置に移動した。


    その時である。涼んだ声が響き渡った。


    「手を貸すわ」


    現れたのは、綺麗な黒髪の女性だ。しかし、顔は無表情でどこか恐怖を感じる。


    女は賊の群れに飛び込むと、1人のみぞおちを蹴りあげ、1人のほうを殴り飛ばした。ついで、背を向けた1人の首根っこを掴んで持ち上げると、逃げ出した1人に投げつけた。2人は折り重なって倒れ、勢い余って転がっていく。
  8. 11 : : 2016/07/15(金) 18:40:11
    「強い」


    紅蓮は思わず呟いた。何しろ、瞬きする間もないうちに、4人の賊が倒れふしたのである。


    しかし、これだけでは終わらなかった。


    「そこまでだ!」


    新たに登場した蒼い瞳をした綺麗な顔立ちの青年は、無表情の女に棍棒で殴りかかったのである。ぶん、と空気が鳴るほどの一撃を、女は寸前で見切った。互いに距離をとって睨みあう。
  9. 12 : : 2016/07/16(土) 10:24:53
    「商人の人達が遅いなと思って来てみたらやっぱりだ。盗賊め、覚悟しろ!」


    蒼い瞳の背年は身長では無表情の女に劣るが、気合では女に劣らないほど迫力があった。身長も低く、腕も細いので強そうには見えない。


    「貴方、何か誤解をしてない?」


    「しらばっくれるんじゃない!僕は山賊と嘘つきが嫌いなんだ!」


    決めつけられて、蒼い瞳の青年も目を怒らせた。


    「人を山賊扱いとは無礼...。わかった、相手になる...!」


    このままでは、2人が戦いを始めてしまう。紅蓮は慌てて仲裁に入った。

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