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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

レーゼドラマ

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  1. 1 : : 2016/07/06(水) 01:00:02

    どうも、連続警備員です。読み方はパトラッシュ。

    この度、『チームコトダ祭り』において射精バーサク(Aチーム)として参加させていただきます。


    よろしくお願いします。
  2. 2 : : 2016/07/06(水) 01:00:48

    『我々の中に、絶望がいる』



    集められた体育館。
    エンド・ステージで放たれたその言葉。



    あの日の言葉とともに、日常は幕を閉じる。











    非日常の幕開きとなった。












    「じゃあ……今日も始めるよ」

    師と同志が殺害された教室で、苗木は指揮を執った。



















    二週間前、生徒と教師が殺された。





    一人は、『超高校級の軍人』・戦刃むくろ。

    もう一人は……希望ヶ峰学園の学園長・霧切仁。



    二人とも教室で死亡していた。

    戦刃むくろは首と額に銃弾を見舞われたのが死因だろう。
    霧切仁の死体は口から血を流していた。



    それで終わりではなかった。



    それからというもの、のべつ幕なしに生徒が殺されていったのだ。
    16人いた生徒は今、半分まで減った。

    舞台に残っているのは苗木、大和田、山田、霧切、大神、江ノ島、セレス、不二咲。






    「霧切さん、江ノ島さん。もし辛かったら……席を外してもいいよ」


    姉と父を亡くした、ある意味今回の被害者である二人に苗木は声をかける。


    二人は揃えて首を横に振った。


    「まあ一応実の姉だし、真相を知って無念を晴らさないとね」


    霧切もそういう意味では同意なのだろう、何も言わなかったが真っ直ぐに苗木と目を合わせていた。



    じゃあ、と言って苗木は議論を続ける。




    「学園長が左手に握ってた花だけど……」

    教壇に横たわる霧切仁の写真。
    左手には花弁がバラバラに散った橙色の花が握られている。


    「これ、マリーゴールドだね。誰かに渡す予定だったのかな……?」

    写真をテーブルに広げて中心に置く。



    「しかしこの花、何でこんなバラバラに散ってんだ?花も撃ったのかよ?」

    「放たれた弾丸は戦刃さんあてに二発でしょう?花も撃ったとしたら三発でなければおかしいですわ」

    「戦刃さん、殺されたあとにもう一発撃たれたんだね……。霧切さん、学園長は何かあったの?」


    苗木の問いに少しだけ考えて答えを出す。


    「二人は『絶望』にころされたのかもしれない」





    ─────『絶望』。





    詳細は言わなかったが、彼は「この世を地獄に塗り替えるもの」「存在してはならない存在」と強く言っていた。





    そのような存在がこの箱庭の中にいる。
    化けの皮を被った三枚目が存在している……。




    「じゃあ……何だ、絶望を追って返り討ちってか?」

    「では戦刃さんは何故殺害されたのです?」

    「それは……偶然そこにいたから?」

    「落ち着いてくだされお三方、拙者も訳が分からなくなってまいりましたぞ」

    大和田、セレス、不二咲に山田。四人とも焦りに所作がめちゃくちゃ、そのうえ頭も追いつかず飼い殺しだ。



    「学園長と姉ちゃんの死因が違うのは何でさ?」
    「それぞれ別の人間に殺されたのかもしれないわね。軍用の武器なんかで」


    江ノ島を一瞥して半畳を入れる。
    霧切には珍しく、笑えないジョークだ。



    「つまり、戦刃と学園長を殺したのはそれぞれ違う人間なんだな?もうわけわかんねぇや」
    大和田が後ろ髪をかきながら溜息をついた。



    「そうですわね、一旦切り上げて()に移りましょう」
  3. 3 : : 2016/07/06(水) 01:01:30

    「十神クンと、腐川さんの事件だね」


    図書室で二人が死亡。
    双方とも喉を切られ死んでいる。



    「十神の携帯には、腐川を図書室に呼び出した経緯が残っている」

    大神がコトンとテーブルにそれを置く。
    画面には『大事な話がある。23時、図書室』とだけ打ってあり、片隅には腐川による既読の白文字が刻まれていた。



    「何かそれっぽい証拠品はありましたの?」

    「何も残ってないわ。腐川さんの方にも」

    霧切がそう言うとセレスは少し溜息を吐いて髪をいじる。


    「けど十神が呼び出すほどだぜ?余程のことがあったに違いねぇ。アイツは何やかんや言って腐川を一番信用してたハズだ」

    うんうん、と苗木が頷く。


    「どちらも凶器は見つかっておりませんな……ただ十神白夜殿には珍しく、漫画を読んでいたと」
    資料に目を通しながら山田が言う。十神が到底触れることもないであろう一冊が図書室のデスクの下に落ちていたのだ。



    「ダメだ頭パンクしそうだぜ……苗木、次行ってくれや」

    「……うん」







    舞園さやかが殺された事件に、苗木は少し躊躇う素振りを見せながら進行する。

    舞園の部屋で起きた殺人事件。
    その場では、舞園以外にもう一人の意外な屍体があった。




    それが桑田怜恩だった。

    包丁で刺殺された舞園の横で彼もまた刺殺されていた。


    「この事件の前、俺桑田を見たんだけどよ。江ノ島の部屋に行ってたんだってな?」

    大和田がキッと睨む。



    「ああ。しょーもない自慢話ばっかりして私が軽返事してたら勝手に出てったけどね」

    「した話はそれだけ?」

    「んー。特に大事な話とかは無かったね。結局ナンパだったんかしら」

    訳がわからない、というような手振りで江ノ島は返事する。



    「…なんだ、前2件に比べてこの二人のとばっちり感」

    「いえ、そうでもないわ」


    霧切は一枚の写真を拾いあげる。




    「これは舞園さんが残したダイイングメッセージ。桑田君はわからないけど、舞園さんは何か思ってた筈よ」


    写真にうつるのは、舞園が書いた『7124』の血文字。



    「ななせん……ひゃくにじゅうよん」

    不二咲が読み上げる。
    霧切が彼女の方に向けたのは数字に強い人間だからか。




    「すまん、俺もう頭がリタイアしてる。苗木、次」


    狂言回しが苗木を催促する。






    「次は……朝日奈さん」


    大神の顔つきが変わる。



    事件の犯人は葉隠康比呂だった。

    だが、視聴覚室で作業していた彼女を殺したその動機は謎のままである。



    「今までの事件もあのヤローが犯人でしたって落じゃねぇだろうな」

    「何しに仲間を殺すんですの」

    「して、朝日奈さんは視聴覚室で何してたの?」

    頭が使えない人間を自称する彼女には遠いように感じる場所にいた。
    何か、特別な作業があったのではないかと皆が思っていたのだ。

    「まぁ、今となってはわかんねぇか。もう4日前の話だぜ……」



    「……そうですわね。苗木君、次で最後ですね?」

    「うん」



    全員が一斉に資料をめくった。
  4. 4 : : 2016/07/06(水) 01:04:20
    石丸が殺された事件。
    美術室で頭を殴られて死亡していた。


    文字に起こせばそれだけだが、衝撃的だった。


    「不可解なのは黒板の文字……ですわね」

    セレスが写真を指でトントンと叩く。




    『絶望は二人だった。もう一人ももうすぐ此方(こちら)に向かうであろう』




    二人『だった』─────。




    「内容も驚いたけどこの書き方、既に一人はこの世にいないような文章だよね……」


    「それともう一つ、『時計』ですな」



    石丸が死んだ美術室では壁にかけてあった時計が教壇の上に置いてあった。


    その時計は、物凄い速さで回っていた。
    多分1分間を1秒かけずに刻んでいただろう。短い針が秒針の如き速度で動いていたのが目に焼き付いている。


    そして止まった、『23:45』。




    「あれは……何を表してたんだろう」


    「さあ……ただ、石丸清多夏殿は何かを知りすぎたのかも知れませんな」

    「知りすぎた?」

    山田は眼鏡をクイッとあげて苗木から写真を受け取った。



    「彼のメッセージは自分が知りすぎて『もう一人の絶望』に消されてしまったことを表しているのでしょうな。そして石丸清多夏殿が殺害されてからは誰も死んでいない。つまり…」


    「私達8人の中に絶望がいる────ということね」











    そこまで言ったところで、僅かな静寂の後にセレスの溜息がこぼれる。




    「結局昨日…いや、3日前から何も進展がありませんわね」

    「仕方あるめーよ、一つひとつが不可解すぎんだよ」

    「今日もここまでですな……苗木誠殿、よろしいですかな?」



    「……うん」



    いつも通りというべきか、話し合ったことは昨日おとといと変わらないものだった。












    「はあ」


    江ノ島盾子はベッドに横たわり肩の力を抜く。
    全ては計画通り。の筈だった。




    ─────我々の中に絶望がいる。




    あの言葉から計画は狂い始めたのだ。

    音無涼子と松田夜助は行方不明、協力者であった姉が殺害され、絶望を植え付ける器だった一つ上の学年及び予備学科の連中との連絡が途絶える始末。
    そして意図せぬ不可解な殺人事件の連続。



    しかし江ノ島は至って冷静だ。
    死際、水の代わりに柿を差し出された石田三成のように冷静である。

    『この世界を絶望に変える』
    元々、リスクや障害は計り知れないほどあるような遊戯である。
    少しの擦れが生じるのは想定の範囲内なのだ。


    「いいさ、少しだけ─────」









    ─────犠牲が増えるだけだ。










    江ノ島盾子は机の下から乱雑にパソコンを取り出す。


    そしてキーボードの上に数々の『証拠品』を並べた。
  5. 5 : : 2016/07/06(水) 01:04:58

    それから3日間、殺人事件は起きなかった。

    会議の進展といえば、不二咲が学園長のパソコンにいくつものダミーデータがあり、その中から一つだけ違うものを見つけたという報告のみ。





    「苗木」

    隣で夕食をとる苗木に江ノ島が話しかける。


    「何?」
    「あんた今夜暇?」
    「えぇ!?ま、まあそうだけど……」
    「じゃあ今夜アンタの部屋にお邪魔しちゃおっかなー」

    それだけ言うと、頬を赤らめる苗木に背を向けて自分の食器を片付けた。





    夕食を終えて部屋へ戻ると、彼女は小さく笑った。

    全て、揃ってる。


    机に並べられた資料。
    パソコンに収納されたいくつものデータ。

    そして……。



    兎にも角にも三枚目は今夜、馬脚を現すだろう。



















    犯人は─────────苗木誠。

















    彼が『仕切っていた』。
    彼が鶴の一声となって周りの人間を動かした。良い意味でも(・・・・・・)悪い意味でも(・・・・・・)



    そして、それを良しとしなかった大和田、セレスの言葉。







    今夜は長い戦いになりそうだ。

    夜明けとともに真相を語ることになるやもしれない程に、ね……。



    フッという短い笑いとともに眠気に襲われ、少しだけ安堵の息をついた。








    ──────────










    その日見た夢は、起床してから秒で断片的になってしまう。
    『夢』とは、寝ている間に見るもの。起きている者には夢を見る権利は与えられない。
    故に大事な夢だったとしても、目を覚ましている限り忘れなければならないものなのだ。



    要するに江ノ島盾子は先程まで見ていた夢を起床して7秒で忘れ、『定刻』まで待つことにした。

    やはり、なかなか鋭い。
    『超高校級の探偵』が傍にいることを除いても大したものだ。

    だが私は『絶望』だ。
    何を失っても私とそのデータは遺る。
    引き金はすでに引いてあるのだ。

    ……なんて考えてたらその刻はやってきた。



    ─────行くか。



    ドアの開閉音だけが響き渡る薄暗い廊下を歩く。
    辿り着くは或る少年の部屋。


    「……やぁ」

    夕飯時とは打って変わって苗木誠は待っていましたと言わんばかりの態度でテーブルに片肘ついていた。




    テーブルの中心に置かれた拳銃を子猫のように撫でながら。





    無言で向かい合わせになって座る。


    「で、何の用かな」

    カップルのように見つめ合うのも束の間、別れ話になりそうな雰囲気が漂う。


    「こないだのカレー、私が作ったんだよ」

    「芋が溶け気味でまろやかだったよ。江ノ島さん、意外と庶民派なんだね」

    「ん、まーね。美味しかった?」

    「うん。ボクはあれ好きかな。食べたあと凄まじく眠くなったくらいには(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)、ね」



    江ノ島は目を細めて笑った。



    「今日のパスタ作ったの、アンタなんだってね。意外と家庭的なところあるじゃん」

    「見様見真似さ。作業ほとんど不二咲さんだし」

    「そっか。結構好きな味だったわーアレ。食ったあと眠気が襲うくらいには、ね」



    苗木が眉をひそめて笑う。



    目には視えない烈火が互いを焼き尽くさんと(せめ)ぎ合う。




    「さて、本題に移ろっか」

    「うん」






















    「苗木、誰が犯人だと思う?」
  6. 6 : : 2016/07/06(水) 01:05:57

    「誰が……だって?」

    うん、と江ノ島は頷く。




    「学園長、姉ちゃんを殺して不吉な連続殺人事件の引き金を引いたのは、誰だと思う?」




    苗木の表情は変わりなく、爽やかである。
    「君かもしれないね」とだけ言うと少しだけ首を傾けて笑う。
    さながら無邪気な子供のような純粋な笑顔だ。



    「あっはっは!こりゃ参ったねぇ」
    対して額に手を当てて笑うオーバーリアクションな江ノ島。



    「ボクはそう思うだけさ。今なら全部白状してくれていいんだよ」

    「いや、残念ながらそうはいかないよ。理由は二つ」


    苗木の目の前にピースサインで『二つ』を表すと、彼女は語り始めた。









    「一つ目は、『犯人は私じゃないから』さ」

    「なら犯人は誰か?それはな。アンタなんだよ、苗木誠」


    ピースサインをL字に変え、真っ直ぐに苗木を指差した。












    「アンタはこの前姉ちゃんの屍の写真を見てこう言ったよな。『殺された後にもう一発撃たれた』と」


    「『二発撃たれた』ならば文字通り『二発撃たれた』と考えるのが普通さ。けどアンタは確かに『銃殺されてから一発撃たれた』と表した。死体を調べた霧切でさえそんなことは一度も言わなかったのに、ね」


    「ソレを知ってるのは……実際にそうしたアンタだけなんだよ」



    時折独特な所作を添えながら自慢気に語る。




    「学園長もボクが殺したと?」

    「学園長のブランデーに毒を入れた」

    「証拠は」

    「アンタの机の二番目の抽斗」






    淡々と続く会話を切り、江ノ島は席を立った。



    「ほぅーら。こんなに大事に保管しちゃってさ」


    洗濯バサミで切り口を塞いだ白い粉。


    「不法侵入したときにでも見つけたのかい?」

    「アンタが爆睡してる間に調べさせてもらったよ。夜這いしてもよかったけどね」

    「君の身体じゃ興奮しないかなぁ。ボクは控えめな方が好みでね」



    なお笑い続ける苗木。
    余裕が崩れ、追い詰められた絶望の表情はまだ拝ませてくれないようだ。



    「昔やってたねぇ。フグとトリカブトを混ぜれば毒が回る時間を調整できるとか」

    「じゃあ君の中ではもうその二人はボクが殺したことになってるんだね」




    わざとらしいほどに淡々としたままの姿勢を崩さない苗木に江ノ島は少し苛立ちながら続ける。




    「……で?二つ目の理由は?」




    フッと笑った江ノ島に苗木は初めて怪訝な表情を見せた。







    「二つ目は……『プログラムを成功させないため』だよ」

    「プログラム……?」




    ……フゥー。

    やれやれ、ここまで(とぼ)けるとは。
    江ノ島は溜息をつく他なかった。
    『自分たちが示唆しておきながら』、これはひどいものだ。



    「いいだろう。全部見せてやるよ!」



    「……『希望更生プログラム』の住人であるアンタにな!!」

    彼女は紙ふぶきを撒くように両手を上にあげた。

    『証拠品』の紙切れ達が空を舞う。
  7. 7 : : 2016/07/06(水) 01:08:28

    「これは………」

    苗木はばら撒かれたA4サイズの紙を一枚一枚丁寧に拾う。



    「あまり私を舐めるなよ。全てはもう私の手の内なんだよ!」



    「お前と霧切仁と不二咲千尋が中心となって開始された『希望更生プログラム』!それはこの世界で(・・・・・)私を敗北させ、現実世界の私(・・・・・・)の脳から『絶望』を消去するためのものだ」


    「不二咲のパソコンをハッキングして知ったんだよ。お前たちのほぼ毎日単位の通信記録を見てなぁ。私が殺した(・・・・・)十神と石丸もそれはそれは頻繁にやり取りしていたものだよ」


    「君は……あの二人を」



    ここまで一気に吐いて、苗木の言葉をも蹴って江ノ島は息を吸い込んだ。



    「私が何故『この時間』を待ったと思う?何故『この時間』を選んだと思う?」

    「それはな、お前が教えてくれたからだよ苗木誠!舞園と石丸の死体でなッ!!」

    「彼等が何か?」



    舞園のダイイングメッセージである7124。

    それは、4桁の数字を表してるようにも見えるが、『1』は『1』ではなかった。

    このメッセージの本当の読み方は『7/24』。

    プラス、石丸が死んだあの日あの場所の時計。


    「7/24の23:45。こいつは不二咲のデータの中にあった、『希望更生プログラムが開始される時間』だ。その証拠に、私がこの部屋に入ってから時計は全く動いていない!」

    江ノ島が苗木の部屋を訪れてもう15分は立っただろう。
    だが、苗木の電波時計は23:45のまま止まっていた。


    「お前がわざと私に残したんだよ。河原乞食を幾人も使ってな」


    「それだけじゃあない。霧切仁の死体が持っていたマリーゴールド。こいつは『絶望』の花言葉を持っている。こいつをお前はわざと散らして(・・・・・・・)私を煽ったのさ」


    「そんなお前を怪しんでいた朝日奈を葉隠で殺し、ソレを裁く名目で葉隠を口封(ころ)し、その独裁行為が仇となってお前が下駄を預けていた傀儡(かいらい)は私を選んだんだよ」



    「セレスさんと大和田クンか……信頼してたのにね」



    徐々に自身の行為を認めていく苗木。
    江ノ島の顔はにやりと歪む。




    「千両役者はその有能さ故に嫌われる。ウェルメイド・プレイはそう簡単には作れないのさ。わかるか?苗木よ」

    完全に見下す姿勢で彼女は語る

    「……まぁ要するにボクが殺したことも、ここがプログラムの中であることも君は見事に当てた、と」
















    「それで?当てたから何なの?」
    苗木の目が黒く光る。



    「このプログラムの空間ではボクは何も食べなくていいし何も飲まなくていい。風呂に入らなくなって身体は綺麗なまんまだよ。ボクにはひたすら有利でね」

    優雅に椅子に座ったまま手を広げて江ノ島を見据える。

    「だけど君はそうじゃない。自身の敗北を認めなければ、君はここから出られないよ。君は腹も減れば喉も渇くし、そうなれば精神も削られる。飲食物なんて勿論存在しないし、当然ながらドアも窓も開かないよ」


    「君はボクが人殺しをしたことを当てて勝った気でいるんだろうけど、あんなのは君という存在を消すための『必要な犠牲』に過ぎないよ」



    「君がこのプログラムで『更生』する。そして世界中にポツポツと産まれている絶望を根から絶やすのさ。それが何よりの目的だよ」





    あくまで余裕。
    そのスタイルは崩れない。

    それを見る江ノ島、やはりフッと笑った。





    「ならお前は無知っていうことだね。いや、そういうフリだな」

    「ボクが無知?のフリ??」

    「そうさ」








    「希望更生プログラムは、強制シャットダウンが可能(・・・・・・・・・・・・)だ。私の更生に失敗したときのための、な」

    「!」

    そのための道具が(・・・・・・・・)お前の手元にある(・・・・・・・・)









    江ノ島は苗木から『ソレ』を奪うと─────。



















    「そしてこれが─────」














    「─────強制シャットダウンの方法だ」
  8. 8 : : 2016/07/06(水) 01:09:01
    「…………」





    人とは、愚かなものだ。





    『自分で手に入れた情報』には価値があると思い込み、それを信じて疑わない。










    ここはただの、苗木の部屋だ(・・・・・・・・・・・・・)










    不二咲のパソコンをハッキングさせた(・・・)のも、セレスと大和田の裏切りによる情報提供も、全てはこの手が合図したものだ。






    苗木誠は立ち上がり、時計を手に取る。

    デジタル数字で一定の時刻を指したステッカーを剥がし、本当の時間を確認する。




    「日付、変わっちゃったか。劇画の日(7月24日)に終わらせたかったのに」






    部屋のドアがノックされ、会釈を交わして身長の高い男が入ってきた。




    「終わったかい」

    「ええ。この通りです」



    「………学園長」











    一瞬。


    一瞬だった。



    目の前で自らのこめかみに銃口を向け、そして迷いなく発砲した。
    江ノ島盾子はもうこの世には存在していない。


    自分が正しいと思い込み、勝手にベラベラしゃべって勝手に死んだのだ。
    あんなにも簡単だった。あっけなく、簡単に命を投げ打った。



    「私が毒死、か。笑ってしまうな」





    霧切仁は苗木の机の真ん中の抽斗を開け、『風邪薬』を取り出す。






    「彼女は結局最後まで手のひらで踊らされながら死んだのか」
    「やれやれだ、終わったのか苗木」



    「十神クン」




    眼鏡をかけた長身の男が部屋に入ってくる。



    「ごめんね、咬ませ犬みたいな使い方しちゃって」

    「松田夜助の死体を代用したとはいえこの俺が死んだことにされたんだ。後で顎足いただくからな」

    「ええぇ、冗談きついよ」

    「十神君は厳しいな」



    三人の笑い声が響く。彼らは死体が転がる部屋で何事もなかったかのようにトークしているのだ。



    「ああそうだ苗木君。『更生』に失敗した連中の話だが」

    「はい」

    「全員処刑することにしたよ。響子や不二咲君と話し合った結果だ。まぁ仕方ないね」



    「い、いいんですか?学園長……」



    なんの迷いもない決断に焦った十神が眼鏡の位置を直しながら問う。

    その問いの答えは、聞くまでもなかっただろう。

    霧切仁は真顔で答えた。








    「当然だよ。ここは希望ヶ峰学園だ。絶望なんかの存在が許されるわけがないだろう?」











    二の句が継げない十神。


    「さて!苗木君、十神君。今日は祝おう。ガーベラを添えてペトリュスを開けよう。みんな学園長室で待っているよ」



    三人は仕事帰りの同僚数人が居酒屋に行くように、絶望の散った部屋から消えていった。













































    数日後、狛枝凪斗を含む15人の生徒が処刑されることとなるのだが────────それはまた、別の話である。




    END
  9. 9 : : 2016/07/06(水) 01:14:26

    これにて終了です。

    テーマは『ミステリー』、キーワードは『希望・絶望』でした。

    難しいテーマに何度も試行錯誤しながら考えましたが、結局納得のいく作品は執筆できませんでした。

    自分でも納得できるものを書くために、もっと文章・発想力を鍛えねばならないと感じました。


    それでは、引き続き『チームコトダ祭り』をお楽しみください。

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