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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

ミカサ「体温」

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  1. 1 : : 2016/05/07(土) 17:40:36

    非常に暗い内容になるので、苦手な人は注意
  2. 2 : : 2016/05/07(土) 17:41:09

    その日まで私は知らなかった。
    誰かの幸せというものは、人の欲によって奪われるのだと。




    この世界は残酷で、無情なものだということに。
  3. 3 : : 2016/05/07(土) 17:42:41

    ―――844年のあの日


    私は大好きなお母さんとお父さんと暮らしていた。
    その日、お母さんから“東洋の一族に伝わる印”を腕に刻んでもらった。
    かなり痛かったが我慢することができた。

    「よく我慢できたね」


    とお母さんは私を褒め、頭を撫でてくれた。
    私の頭を撫でるお母さんの手が大好きだった。



    「この印は私たち一族が受け継がなきゃいけないものなの。ミカサも自分の子供ができた時にはこの印を伝えるんだよ?」

    お母さんは私の手を握りそう言った。

    その時私は昔から思っていた疑問を両親にぶつけてみることにした。


    ―どうやったら子供ができるの?


    「さあ・・」

    お母さんは首をかしげた。


    ―ねぇ、お父さん


    お父さんは困ったような顔をして

    「いや・・お父さんもよく知らないんだ。もうじきイェーガ―先生が診療に来る頃だから先生に聞いてみようか・・」

    この日はイェーガ―先生が診察に来る日だった。
  4. 4 : : 2016/05/07(土) 17:44:15


    その時戸をノックする音が聞こえた。


    「イェーガ―先生お待ちしておりました」


    お父さんが戸を開けた。
    私はやっと子供の作り方がわかるのかと、ワクワクしていた。







    ・・・でも、私の期待は打ち砕かれた。






    「がッ・・!?」

    突如お父さんの悲鳴が聞こえた。
    お父さんを見ると、左胸にナイフが刺さり、血が流れていた。


    ―お父さん!?


    「あなた!?」




    「失礼します」

    家の中に3人の男が入ってきた。


  5. 5 : : 2016/05/07(土) 17:47:01



    帽子を被った男、金髪の男に黒髪の男。
    3人の男がこちらを舐めまわすように見る。



    取り乱す私たちをよそに男たちは斧をちらつかせてきた。


    「こいつで頭を割られたくなかったらーー



            『うあぁぁぁぁ!!』


                              

                            !?」


    その時お母さんが机に置いてあったナイフを持って男たちに襲い掛かった。

    「ミカサ!! 逃げなさい!!」


    ―え・・お、おかぁさん・・


    どこに逃げればいいのか、お父さん、お母さんはどうすればいいのか

    そんなことを考えていたら・・

    「いい加減にしろー!!」

    金髪の男がお母さんを斧で思いっきり殴った。

    「あっ・・」


    お母さんは血を流して倒れた。


    ―お母さん!!

    私がお母さんに駆け寄ろうとしたとき、何かがそれを阻んだ。




    「おめぇはおとなしくしろよ」

    帽子を被った男が私を蹴り上げた。


    地面に倒れ込んだ私に追い打ちをかけるように帽子の男は目いっぱい私を殴った。



    ―ッ!!

    「おい、ずらかるぞ!!」

    黒髪の男がそう言うと帽子の男が私を抱え外に出て行った。





    そこで、私の意識は途切れた。




  6. 6 : : 2016/05/07(土) 17:47:11


    この日私の何気ない日常は終わり、全ての自由が奪われた。



    ・・体温はまだ温かい
  7. 7 : : 2016/05/07(土) 17:48:36

    ―んんっ



    重い瞼を開けると見慣れない壁が見えた。
    コンクリートだろうか?
    私は床に横たわっていた。
    両手は縄できつく縛られているみたいで、力を入れてもびくともしない。
    上を見上げると暗い天井が見えた。


    「目が覚めたのか?」


    小汚い恰好をした男が薄汚い笑みを浮かべながら言った。
    あの時私たちを襲った男とは違うようだ。


    なぜ私がここにいるのか、小汚い男が語ってくれた。


    男は人身売買を行う輩の一人らしい。
    奴隷に使えそうな子供、髪が綺麗な子供、可愛い子供・・・
    気に入った子供の誘拐を人攫いに要求し、金を払ってソレを買っている。
    買った子供を奴隷として売り払ったり、人体実験に使ったりして商売をしていると。


    そんな暮らしをしていた時に、偶然にも私を見つけたのだ。


    “東洋人”は非常に珍しく、何が何でも手に入れたいと渇望し、人攫いに大金をはたいてまでして私を買ったというのだ。



  8. 8 : : 2016/05/07(土) 17:49:48



    ・・私はこれからどうなるのだろうか?
    奴隷に売り出されるのだろうか?
    人体実験に使われたりするのだろうか?



    そんなことを考えている私をみて小汚い男はニタニタと笑っている。




    「やっぱ子供はいたぶるに尽きるよな」


    そう述べた直後男が私の顔を勢いよく殴る。



    ―ッッ!!



    ひどい激痛が走った。
    あまりにも不意に殴られたため傷みを覚悟する瞬間すらなかった。


    「へへっ、いい顔だ。その表情好きだぜ」

    「“東洋人”なんて珍しいモノをいたぶれる機会なんてそうそうねぇ」



    「奴隷として売り払うのもいいが・・やっぱり、子供には暴力を振るうが一番だよなぁ」


    ゾクッとした・・





    「あんたは俺が面倒見てやるよ」


    そう言うと今度はお腹を殴ってきた

    私の顔が苦痛に歪んでいくのをいっさい気にせず暴力を振るう。

  9. 9 : : 2016/05/07(土) 17:51:04


















    背中








    全身を絶え間なく


    殴る


    蹴る


    殴る


    蹴る・・・




    何度も



    何度も



    何度も・・・



    止むことのない暴力が私を犯す



    何度も続く暴力の中で私は意識を手放した。




    ・・体温はまだ暖かい。



  10. 10 : : 2016/05/07(土) 17:53:11

    ―――


    目を覚ますと、コンクリートの壁が見えた。

    どうやら、私はまだあのコンクリートの部屋にいるようだ。

    首が痛くてあたりを見渡すだけでも一苦労したが、周りを見渡した。

    そこには私に暴力を振るった小汚い男はいなかった。

    逃げるなら今がチャンスだと思い、私は立ち上がろうする。








    だが、立ち上がることはできなかった。




    ―ッ!!



    立とうとした私はだったが、痛みに負けてしまいそれは出来なかった。
    足も目いっぱい傷つけられていたようで、力を入れようとするだけで激痛が走る。



    ・・きっと、あの男はどれくらい痛めつければ立てなくなるのか知っていたのだろう。



    両腕は未だ縄で縛られたままだった。
    床が少し朱くなっていた。
    私の血だろうか・・


    チャンスだというのに、身動きすらろくにできない。




    部屋から逃げ出すことができない。



    痛みから逃げることもできない。



  11. 11 : : 2016/05/07(土) 17:54:51


    これは私へのお仕置きなのだろうか?





    ・・・昔、お母さんに『悪い子にはお仕置きをしなきゃいけません』といって私が悪いことをするとお尻を叩いていた。


    私はあの時のお仕置きが、”痛み”が嫌で、悪いことはしないようにしていた。




    でも、私は今、あの時以上の痛みを味わっている。




    私は悪い子だったのだろうか?




    だから、こんなお仕置きにあっているのだろうか?

    もしかしたら、私は知らず知らずのうちに悪いことをしていたのかもしれない。




    でも、お母さんとお父さんもお仕置きを受けた。

    私はともかく、あの二人は悪いことをするような人たちではない。
    私はそのことをよく知っている。




    ・・じゃあ、これはお仕置きではないのだろうか?


    なら、どうして私はこんな目にあっているのだろうか?



    私が何をしたっていうの?



    なんで・・




    どうして・・






    ―・・・どうして私なの?



    いつの間にか私の思考は声になっていた。

  12. 12 : : 2016/05/07(土) 18:15:00
    期待です
  13. 13 : : 2016/05/07(土) 18:47:28
    期待
  14. 14 : : 2016/05/07(土) 21:02:15

    >>12,13
    ご声援ありがとうございます。


    今日中で執筆が完了します。
  15. 15 : : 2016/05/07(土) 21:04:42



    「おお!! こいつはなかなかのモノじゃねぇか」






    入口あたりで、刺青を入れた男が嬉しそうに言う。
    隣にはあの小汚い男がいた。
    どうやら刺青の男は小汚い男に連れてこられたみたいだ。



    「だろ? 東洋人なんて滅多に遭遇できねぇからな。丁重に扱えよ」



    「へへっ、わかってるわかってる」





    刺青の男がノコギリのようなものを持ってこっちに来る。



    ―ひっ!?




    「オイオイ、そんなにビビんなくてもいいじゃねえか?」




    ―・・ご、ごめんなさい。






    「あ?」







    ―私が何か悪いことをしたなら謝るから?
     


     もう私に暴力を振るわないで・・・








    ―ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい・・・





    私は堰を切ったかのように謝罪を述べた。



    ひたすら謝罪を述べる私に面食らったのか刺青の男はぼうけていたが、


    「お嬢ちゃんは何も悪いことはしてねぇだろう?」



    「俺はお嬢ちゃんの縄を切ってあげようとしているだけだ」





    ―・・本当に?




    「ああ、本当だぜ」



    刺青の男はニッと笑いながら答えた。




    よかった、やっと自由になれるんだ。


    やっぱり私は悪いことはしていなかったんだ。
    私は安堵した。




    「お嬢ちゃんこっちに腕を見せな」




    ―うん!!




    私は体を反転させて背を向けた。

    反転する時に体が地面にすれて痛かったが、これから得る自由のことを考えれば我慢することはたやすかった。




    「よ~し。じゃあ行くぞ~」



    刺青の男が縄にを切ろうとしている














    ・・そう考えていたのは私だけだった。








  16. 16 : : 2016/05/07(土) 21:10:13


















    “グチャ”っという音が部屋の中に響き渡った。









    ・・縄を切るのに、“グチャ”なんて音はするのだろうか



    そんなことを考えていたら・・・











    「ごっめ~ん」



















    「間違って腕ごと切っちゃった♪」










    ・・・


    ・・











    ・・今、









    ・・・今、なんて言った・・??







    腕ごと??








    うでごと??








    ウデゴト??








    うで・・??









    私は腕に力を入れようとする






    ・・だが、当然腕に力は入らなかった













    腕はもう切断されているのだから・・・














    ―いやああああああああああああああああァアアアアアア!!!!!








               『腕がない』







    そのことを意識した途端、今まで感じたことのない激痛が全身を駆け巡った。













    ―嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘うそうそそ!!!!








    何かを叫んでいなければ痛みに耐えられなかった。

    嘘だと自分に言い聞かせなければ死んでしまいそうだった。






    「嘘じゃねぇよ」







    「ホラ」







    刺青の男は私の目の前に朱く染まった私の腕を置いた。








    ―あっ、ああああああああああああああァァァァァァァァァ!!!







    私の絶叫がこだました。






  17. 17 : : 2016/05/07(土) 21:12:48

    刺青の男にドン引きしたのか小汚い男は




    「オイオイいきなり腕切らんでもいいじゃねえか」



    「ムシャクシャしてたんだ。・・山小屋で捕まえたあの餓鬼が、思いの外脆くてな。すぐ死んじまったんだよ」



    「あー、アイツもう死んだのか。なら仕方ねえな」





    ・・・仕方ない??



    ・・何を言って・・





    「やっぱり首を切るのはまずかったかね」







    「でもまあ腕ならすぐには死なないだろ」









    「このお嬢ちゃんは」
    刺青の男は私を見下しながら言った。






    ―ッッ!!!!







    「東洋人の腕はやっぱり綺麗だなぁ・・」
    私の前に置いた腕を回収し、愛くるしそうに腕を抱き寄せる。






    「・・そうだ」






    刺青の男は何か思い出したかのようにこっちを振り返る。







    「お嬢ちゃんに一つだけ教えといてやる」








    「確かにお嬢ちゃんは悪いことはしていねぇ」









    「でも、世の中ってのは悪いことしていなくても痛い目に合う不条理なものなんだよ」







    ―あ、ああ・・








    刺青の男は得意げな顔で語り、ずらかるぞと言って小汚い男と共に部屋を出た。







    私は痛みに耐えられなくなり意識を手放した。










    ・・体温はまだ温かい。





  18. 18 : : 2016/05/07(土) 21:15:38

    ―――








    目が覚めると、私はまた、あのコンクリートの部屋にいた。






    周りを見ようとしたが、前髪が目に垂れていて邪魔だった。
    髪が乱れているのに気づき直そうとした。







    でも私は失念していた。











    『私の腕はもうない』ということに。








    ―・・そうだ・・・そうだった・・





    自分の手がないことを忘れてしまうほど私の意識は朦朧としていたのだ。









    東洋の印を刻んだあの腕は今となってはお母さんと唯一の繋がりがあったものだった。







    でも・・私の腕はもうない・・・



    私は本当の意味で孤独になってしまった。






    誰か






    誰か、





    誰か、これが夢だと言って欲しい。

    これはただの悪夢なのだと。




    そうだこれは夢なのだと








    誰かが夢から覚ましてくれるのを期待し、私は目をギュッとつぶる。










    でも、そんな私の期待をよそに聞こえてきたのは男の薄汚い笑い声。









    “これは現実なのだよ”と私に言い聞かせるように嗤う。

    夢だと願うことすらも許してもらえない。





    終わりなき暴力がまた私を犯す。





    腕がない私に遠慮することなく暴力を振るう。



    痛みで体が軋んでいく。






    深く









    深く













    深く・・・






    心体に痛みを刻んでいく・・・






    ・・体温はまだ暖かい。





  19. 19 : : 2016/05/07(土) 21:22:06


    ―――――


    ―――










    気が付いた時には私は見知らぬ家にいた。






    ここはどこだろうか。


    少なくともあのコンクリートの部屋ではないことはわかる。





    なにを思ったのか、私は自分の腕があった場所に視線をやった。






        
    私の腕は"まだ"ついていた






    私は戻って来れたのだろうか?





    あれは夢だったのだろうか?





    横を見ると男たちが会話をしていた。





    あの人攫いの男たちだ。





    どういうわけか、私に暴力を振るい続けた"あの男たち"はいなかった。



  20. 20 : : 2016/05/07(土) 21:26:24



    「ごめんください」




    突如、家の中に男の子が入ってきた。

    人攫いたちは初めはつけられていたのかと思い、警戒していたが、「迷子になってここに来たのだ」と男の子が言ったので安堵していた。







    その時だった。






    男の子は凄い怖い顔をして


    「死んじゃえよクソ野郎」

    そう言うと男の子が隠し持っていたナイフで金髪の男の首を掻っ切た。







    男の子は金髪の男が息絶えたのを確認すると、外に出て行った。





    帽子を被った男は仲間が殺されたのを見て、すぐに追いかけようとした。





    だが、玄関に手を掛けようとした時に、戸が開き箒が飛び出した。




    箒に突き刺された帽子の男はバランスを崩し仰向けに倒れ、それに追い打ちをかけるように男の子は帽子の男が倒れた隙にナイフでなんども身体を突き刺した。





    何度も







    何度も






    何度も







    その姿はまるで獲物を屠る狩人のようだった。





    男の子は我を忘れるまでナイフで帽子の男を刺していたが、ハッとし、私の手を縛る縄を切ってくれた




    男の子の名前は“エレン”というらしい。




    エレンはイェーガ―先生の息子で、診療の付き添いで私の家に来た。






    だが家に私はいなく、あったのはお母さんとお父さんの死体だけだったためエレンは私を探しに来てくれたのだ。




    よかった






    ・・・よかった








    ー私を救ってくれる人がいたんだー




  21. 21 : : 2016/05/07(土) 21:28:32



    助かったと安堵した私だった










    が、人攫いは3人いたということを思い出した。








    「え?」


    とエレンが聞いた直後、エレンは黒髪の男に蹴り払われた。



    「ぐっ」




    「テメェが殺ったのか!? 俺の仲間を・・!!」




    「・・殺してやる!!」




    黒髪の男は怒りをあらわにし、エレンの首を締めあげて壁に打ち付ける。






    エレンが苦しそうに悶える。

    私はどうしたらいいかわからずオロオロしていた。






    「戦え!!」




    その時エレンが叫んだ。






    「勝てなきゃ死ぬ・・勝てば生きる・・」





    この世の理を問うかのように私に叫ぶ。






    「戦わなければ勝てない」






    ―!!







    その言葉に私は思い出した。






    私はこの光景を何度も見てきたはずだ


    蟷螂が蝶を捕食するように、人が鳥を打ち殺すように





    この世界は戦わなければ生きてはいけない






    残酷な世界だということに













    気が付くと私はナイフを握り3人目の人攫いの左胸を突き刺していた。






  22. 22 : : 2016/05/07(土) 21:32:53


    その後イェーガ―先生が憲兵を連れてやって来た





    イェーガ―先生はエレンをこっぴどく叱っていたが、私たちが無事だったことに安心し、エレンをギュッと抱きしめていた。



    エレンはイェーガ―先生のもとに帰る。

    家族のもとに・・







    でも・・私の家族はもう・・・




    いない・・






    これからは一人で寒い中生きていかなければいけない。













    「やるよこれあったかいだろ?」





    余程私が寒そうな様子だったのか、エレンが私にマフラーを巻いてくれた










    「あったかい・・・」







    とても不器用な巻き方だったが、私にはすごく暖かく感じた。
    私の体温が温まっていった。






    「ミカサ私たちの家で一緒に暮らそう」








    「え・・」
    イェーガ―先生が私に持ちかける






    「辛いことがたくさんあった・・君には十分な休息が必要だ」






    いいのだろうか?





    私なんかが、この人たちの家族なんかになっても







    私が返答を窮していたらエレンが手を差し伸べた。






    「ほら早く帰ろうぜ俺たちの家に」






    その言葉に思わず涙が流れた。




    私は知らなかった。

    涙は悲しいときだけでなく嬉しいときにも流れるものだということを。





    「・・うん!」



    流れた涙を拭って、破顔した顔で答えた。






    私はエレンの手をとろうとした




















    手を






















    手を・・





















    手を・・・













    おかしい。





    いくら手を伸ばそうとしてもエレンの手には届かない















    ・・届かない。





















    『今のあなたには腕がないでしょう』


















    『だから、届くわけないでしょ?』












    どこからか私をあざ笑う声が聞こえた。






  23. 23 : : 2016/05/07(土) 21:34:39
    期待です‼
  24. 24 : : 2016/05/07(土) 22:15:00
    期待です
  25. 25 : : 2016/05/07(土) 22:37:41

    >>23,24
    ご声援ありがとうございます。


    仕上げに入ります。
  26. 26 : : 2016/05/07(土) 22:38:55



    ―――――


    ―――


    ――










    「お目覚めかいお嬢ちゃん」




    薄汚い男の声が鼓膜に響いた。




    私はあのコンクリートの部屋にいた。




    「全然反応してくれないから、てっきり死んだのかと思ってひやひやしたよ」


    まぁ死んだらそれはそれでいいけど、とニヤニヤして嗤う。




    「おやおや泣いているのかい?」






    いつの間にか私の目からは水滴が垂れていたようだ。





    「泣いてる顔もいいよね・・」








    「腕がなくて涙も拭えなさそうだから、俺が拭ってやるよ」








    えっ?と思い私は腕に視線をやる









    やはり・・私の腕はもうなかった。







    男は手に付いた私の涙を舐め



    「また後で会おうねお嬢ちゃん」




    「もっともっと遊んであげるからね」




    そう述べると部屋を後にした。




  27. 27 : : 2016/05/07(土) 22:43:01









    ―・・・










    ―・・・











    ―・・・嘘、











    ―嘘だ













    ―・・・嘘だ











    "あれ"が夢だっただなんて・・







    今私が置かれている状況が夢だったらなとはずっと思っていた。








    でも、自分が夢の世界に行って現実逃避していただけだなんて・・・











    私は知らなかった。







    夢は時に現実よりも残酷なものだと。



    悲惨な現実に突き落とされるくらいなら夢など見たくなかった。



    あのまま夢に溺れていれば幸せだっただろう。


    でも、現実はそれすらも許してはくれない。













    戦わなければ勝てないと夢の中の男の子“エレン”は言った。












    でも・・











    でも、
















    戦うことができるのはまだ、負けていないものだけだ












    私は腕を切られ、暴力で身も心も犯され・・















    もうとっくに負けている。










    戦意どころか、生きることすら喪失し始めている。









    私は切なくなって泣いた。










    初めは声を殺していた。










    それでも我慢できなくなり声をだして泣いた。






  28. 28 : : 2016/05/07(土) 22:44:05

    ―――




    どれくらい泣いたのだろうか




    未だに涙は枯れることは知らない




    「うるさく喚くな!」



    と先ほど私を起こした男とは別の男が私を蹴りつける。




    それでも、私は泣くのを止めなかった。





    千切れそうな声で何度も泣いた。





    誰も救いの手を差し伸べてはくれないというのに。








    ・・まだ体温は温かい


  29. 29 : : 2016/05/07(土) 22:50:12


    ―――――


    ―――








    次に目を覚ましたとき、私は霧の中に居た。










    なんだか周りがボワボワしてよくわからない。





    周りに目をやるが、霞んでてよくわからなかった。







    視界が霞んでいる中




    そこで、お母さんとお父さんの姿を見つけた。






    ―お母さん、お父さん!







    二人は私に気付くと嬉しそうな顔をしてこっちに来た。






    「ミカサ、よく頑張ったね」





    「ミカサ、ミカサ・・」



    お父さんは私を抱き寄せ、お母さんは私の頭を撫でる。





    いろんな思い出が私の中に流れ込んできた







    お父さんと一緒に虫獲りに行った日、お母さんと一緒に料理をした日、
    二人が目いっぱい祝ってくれる私の誕生日・・・









    そういえば、二人とも私が笑うと凄く嬉しそうな顔をしていた。









    「ミカサの笑ってくれる顔が私たちにとって一番の幸せよ」






    とよく二人とも言ってたっけ・・・








    薄れゆく意識の中















    最期に一度だけ私は笑った。





  30. 30 : : 2016/05/07(土) 22:50:51





    ―――


    ―――――
















    ・・体温が冷たくなっていく中で私は息絶えた。




  31. 31 : : 2016/05/07(土) 22:53:32


    これにてこのSSはお終いです。


    私にとっての処女作、第1作目になります。


    今後に生かしたいので、感想等をいただけるとたいへん嬉しいです。
  32. 32 : : 2016/05/08(日) 09:49:49

    よかったですよ!これからも頑張ってください!
  33. 33 : : 2016/05/15(日) 23:29:47
    すごい物語に引き込まれました!
    予想できない展開にもとてもワクワクしました!
    お疲れ様でした!

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LUNACY

Garnet

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