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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

エレン「シャドーモセス事件」 ⑤ 進撃×MGS

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  1. 1 : : 2016/03/18(金) 02:34:49
    進撃×MGS1のコラボ、いよいよ⑤に突入いたします。
    よろしくお願いします<m(__)m>
  2. 2 : : 2016/03/18(金) 02:36:36











    通信棟Bの屋上でハインドDを撃墜したエレンは、再び室内へと戻り、中にいたアルミンと合流した。
    興奮冷めやらぬ様子で、アルミンは少し上ずった言葉遣いで話しかけてきた。



    「エレン! さっきはホントにすごかったね!? 映画みたいだったよ!」









    対して、エレンの表情は晴れなかった。



    「映画のヒーローのようにはいかねぇさ。俺は、女一人守れなかったんだからな。」








    アルミンはハッとして、それから、少し気遣うように話し始めた。







    「・・・・・・・・・・・・ミカサのことかい?」

    「・・・・・・。」

    「・・・・・・・・・・・・ねえ、エレン。一つ、聞きたいことがあるんだ。」

    「何だよ?」








    「エレンは・・・・・・・・・・・・人を好きになったことある?」







  3. 3 : : 2016/03/18(金) 05:55:31










    「そんなことを聞くためにここに来たのか?」

    「うん・・・・・・・・・・・・傭兵でも、人を好きになることがあるのかなって。」






    今度は、アルミンの顔が翳った。
    僕がアニに対して抱いている感情が何なのか・・・・・・・・・・・・僕にはまだ分からなかった。


    だから、遠回しに、エレンに聞きたかったんだ。







    「何が聞きたいんだよ?」

    「いや・・・・・・・・・・・・戦場でも、愛は芽生えるのかな?」









    僕がアニに抱いている感情が・・・・・・・・・・・・愛なのか、どうか。







  4. 4 : : 2016/03/18(金) 05:57:44









    エレンは暫く深く考え込み、やがてぼそりとしゃべり始めた。
    そこにはどこか、迷いがあるかのように、僕には感じられた。









    「・・・・・・・・・・・・たとえどんな時代でも、どんな状況でも、人は人を愛せるだろ。だがな・・・・・・愛したければ、守らなくちゃならねぇよ。」



    俯きがちに話すエレンの瞼の裏には、恐らくミカサの姿が映っているんだろう。











    そうか・・・・・・・・・・・・エレンにとって、ミカサはもう、特別な(ひと)なんだね。











    「ありがとう、エレン・・・・・・・・・・・・そうだよね。」



    ・・・・・・・・・・・・僕も、やっと分かった。















    僕は・・・・・・・・・・・・アニが好きなんだ。








  5. 5 : : 2016/03/18(金) 06:26:38









    「で、アルミン・・・・・・・・・・・・お前はこれからどうする?」

    「どうするって、君のことをサポートするよ。」

    「そうか・・・・・・・・・・・・分かった、よろしく頼むぞ。」








    エレンがそう言うと、アルミンは再びステルス迷彩のスイッチを押し、透明になった。
    足音が上へと遠ざかっていく。



    この薄暗い通信棟Bの中で、エレンはエレベーターのスイッチを押し、エレベーターが上がってくるのを待つ。









    漸くエレベーターが上まで上がってきたので、エレンはやっと来たかとため息をついてエレベーターに乗った。





    ビーッ!

    「!? なんだ!?」





    その瞬間、重量オーバーを示す警報音が鳴った。
    おかしいなと思いつつも、エレンはエレベーターのスイッチを押した。







    ガコンと音がなって、エレベーターが下へ下へと降りていく。
    階段を使わくて済んだので、エレンはホッとため息をついた。







  6. 6 : : 2016/03/18(金) 06:28:16







    プルルルッ! プルルルッ!


    すると、アルミンから通信が入ってきた。







    『エレン! 言い忘れていたことがあるんだけど・・・・・・・・・・・・。』

    「!? 今度は何だよ!?」

    『いや、僕がエレベーターに乗って上へと昇った時なんだけど、何故だかブザーが鳴ったんだ。それが気になって・・・・・・。』






    その瞬間、エレンはハッとしてアルミンに尋ねた。






    「・・・・・・・・・・・・なあ、そういやお前、ステルス迷彩はFOXHOUNDに支給される予定だったって言ってたな?」

    『うん、ナイルが一つとっていったから、試着品は5着あるはずなんだ。』







    __________嫌な予感がする。







    「このエレベーターの最大積載量は?」

    『300gだよ。』

    「お前・・・・・・・・・・・・体重は?」

    『え? 63㎏かな。』

    「じゃあ、このエレベーターには・・・・・・・・・・・・最低5人は乗ってるってことかッ!」

    『!! 逃げてッ! エレンッ!!』









    次の瞬間、目に見えない腕に首をギリリと絞められ、息が苦しくなった。
    脳みそに十分な酸素が届かず、視界が赤く沈んでいく。









    「もう遅いッ! 死ね、エレン・イェーガーッ!!」



    姿の見えない4人の敵が、狭いエレベーターの中で一斉にエレンへと襲い掛かってきた。







  7. 7 : : 2016/03/18(金) 06:36:17








    咄嗟にエレンは右ひじを思い切り後ろへと引いた。
    エレンの首を絞めていた兵士のみぞおちに右ひじがめり込み、首を絞める腕の力が弱くなる。






    「おらあぁッ!!」



    一瞬の隙を突き、エレンは兵士の腕を掴んで思い切り地面へと投げつけた。






    「がはぁッ!!」



    床にたたきつけられて気を失う兵士。
    続けざまにエレンは狼狽える姿の見えない兵士へと掴みかかった。







    __________ステルス迷彩は、よく見ると、うっすらと輪郭が見える。





    僅かな視覚を頼りにエレンは兵士の胸倉をつかみ、エレベーターの壁へと叩き付ける。
    後頭部を強く打った兵士は即座に気絶してくずおれた。







  8. 8 : : 2016/03/18(金) 06:37:40








    そこから更に、エレンは流れるような動きを見せる。






    次の兵士はナイフを抜いて、エレンを刺し殺そうと迫ってきた。
    が、ナイフを握った兵士の右腕を掴むと、そのままエレンは腕をひねり上げた。






    「ぐああッ!!」



    兵士の手から、ポロリとナイフが落ちる。
    それが床につくのとどちらが早かったか・・・・・・エレンは胸倉をつかんで兵士を地面へと投げつけた。








    最後の兵士は距離を取り、銃を構えてエレンを撃ち殺そうとする。







    バァンッ!


    が、相手が銃を抜くよりも早く、エレンの銃弾は敵の頭を撃ち抜いた。











    「はぁ、楽に降りれると思ったんだがな・・・・・・・・・・・・。」



    エレンはさっきとは違う意味でため息をつき、丁度下に到着したエレベーターを降りた。






  9. 9 : : 2016/03/18(金) 07:55:14











    やっとの思いで通信棟を抜けて外に出ると、いよいよ猛烈なブリザードが吹き付ける雪原へと出た。
    どこからか、狼の遠吠えが聞こえてくる。








    「やっとだな・・・・・・。」



    この雪原を渡っていくと、漸くメタルギアのある地下整備基地へと辿り着く。
    ここまで来るのに、幾度も激戦を潜り抜けてきた。







    「うっ・・・・・・。」



    流石に疲れがたまり、一瞬ではあるが足元がふらついた。









    (くそ、気をしっかり持たなくちゃな・・・・・・・・・・・・。)




    エレンは気合を入れ直し、再び雪原を歩き始めようとする。
    すると、エレンの目にあるものが飛び込んできた。









    「こ、これは・・・・・・・・・・・・。大佐、聞こえるか?」

    『何だ?』

    「墜落したハインドDの残骸に、パラシュートが引っ掛かってやがる。」

    『!? エルヴィンの野郎か?』

    「そんなはずは・・・・・・第一、墜落してくハインドDから飛び出すなんて狂気の沙汰だ。飛び出した瞬間にローターに切断されちまう。」

    『じゃあ、俺はまだ生きているってアピールしたいのか。』

    「或は俺を吊るしあげる気なのかもな―――――そのパラシュートみたいによ。」







    ぞっとしない話だ。
    不気味に思いながらもエレンは通信を切り、地下整備基地へと歩き始めた。







  10. 10 : : 2016/03/18(金) 07:57:14










    バァンッ!







    遠くから鳴り響いてきたのは、一発の銃声。
    銃弾がエレンの右頬を切り裂き、エレンは慌てて木陰に身を隠した。









    「アルミン、聞こえるか!?」

    『どうしたの、そんなに慌てて?』

    「ステルス迷彩に予備はあるか?」

    『いや、予備はなかったはずだよ・・・・・・・・・・・・どうして?』

    「くっ、間違いない。俺は今――――・・・・・・・・・・・・狙撃を受けてる! こんなブリザードの中でだッ!!」








    降った雪が風で舞い上がり、視界がホワイトアウトするこの状況で、これ程正確に狙撃をしてくる奴は、俺には一人しか思い浮かばなかった。








    『まさか・・・・・・・・・・・・アニが。』

    「ああ、俺は今・・・・・・・・・・・・アニに狙われてるッ!!」







  11. 11 : : 2016/03/18(金) 07:58:46








    通信機の向こうでアルミンは押し黙った。
    ややあって、アルミンは震える声で。







    『エレン・・・・・・・・・・・・アニを、アニを殺さないでッ!』

    「目を覚ませッ!!」

    『アニはいい人なんだッ! 話せばわかってくれるッ!!』

    「あの女はそんな甘い世界に生きちゃいないッ!!」






    涙声になりながら、必死に懇願するアルミン。
    すると・・・・・・・・・・・・







    『ここからはあんたが良く見える。』

    『「!!」』






    突然、アニが無線に割って入ってきた。
    無線機の向こうで高笑いをする声が聞こえ、アルミンの悲痛な叫び声が聞こえてきた。







    『アニ! 止めてくれッ!!』

    『子供はでしゃばるな。言っただろう・・・・・・・・・・・・あんただけは、私が狩るってね。今度は逃がさない。』






  12. 12 : : 2016/03/18(金) 07:59:20







    アルミンの悲鳴など全く耳に入っていないかのように、アニはエレンへと語りかける。








    「この嵐の中で狙撃してくるなんて、お前、大した腕の持ち主だな。」

    『分かる? 女の方が戦士には向いている。』

    『止めてくれッ! エレンッ! アニッ!!』

    『うるさいッ!!』






    アニは最早、獲物(エレン)のことしか見えていなかった。
    稀代の天才女狙撃手―――――――恐るべき狼は、飢えた獣のようにエレンへとささやきかけた。







    『私は近くにいる。あんたの近くにね。』

    「自ら存在をアピールするなんざ、スナイパー失格だな!」

    『そう思う? 私の宣言は死の宣言――――――あんたの死が近いってことだ。』









    歯を食いしばり、怒りに震えながら、エレンは呟いた。









    「・・・・・・・・・・・・ミカサの借りは返す。」

    『男は詰めが甘い。最後の最後で・・・・・・・・・・・・根を上げる。』







    それっきり、アニからの通信は途絶えた。


    吹雪が吹きすさぶ雪原の上で、お互いを遠くから狙い合う、静かなる決闘が始まった。







  13. 13 : : 2016/03/18(金) 15:04:49
    めっちゃ期待☆☆
  14. 14 : : 2016/03/18(金) 15:39:13
    >>13
    期待&お気に入り登録ありがとうございます!
  15. 15 : : 2016/03/19(土) 05:00:57









    木陰からそっと様子を窺い、俺はPSG-1スナイパーライフルを手に取ってスコープを覗き込む。
    風の暴れる音と共に、心臓が胸をうるさくたたく音が聞こえてくる。



    雪原に広がる木立。
    その影に恐らくアニは隠れて俺の命を狙っている。









    文字通り、精神と精神を削り合うような、静かな勝負。
    一瞬の判断ミスが、即死に繋がる。









    前回の時とは違い、アニは完全に殺気を消していた。
    どうやら前回は俺を罠に嵌めるためにわざと存在を主張していたらしい。



    つまりは手加減されていたということだ。









    と、その時、一瞬、鋭い殺気が放たれた。






    (!! 気付かれた!?)



    そう思った俺は咄嗟に木陰に再び身を隠す。
    微かな銃声が響き、鋭い牙が食い込んでくるかのように、数発の銃弾が木に撃ちこまれる。







    するとすぐに殺気が消えた。
    再びエレンが銃声の聞こえた方角へスコープを覗くと、アニはもう姿を消していて、僅かな痕跡すらも残さない。


    そうやってじわじわと獲物が疲れるのを待ち、最後の一撃をいつ加えようかと待ち構えている。









    くそ、あいつ・・・・・・・・・・・・本物の狼だ。







  16. 16 : : 2016/03/19(土) 05:01:58









    ビュウウゥゥゥッ!!


    再びブリザードが吹き荒れ、視界がホワイトアウトして前が全く見えなくなる。








    そんな中にあって、俺は必死にアニの痕跡を探していた。
    恐らくアニだって、視界が効かないのは一緒だ。



    別の木陰へと移動し、スコープを覗き込んでアニを探し出す。









    「「!!」」



    どちらが早かったか、エレンとアニはスコープを通じ、お互いの存在を見つけ出した。
    響き渡る二発の銃声、そして、猛吹雪の遠吠え。







    「ぐ・・・・・・・・・・・・。」



    血がぽたぽたと純白な雪の上に滴り落ちる。






    あの時、放たれた銃弾は手ぶれのせいでアニの左肩を負傷させるにとどまった。


    そして、俺もアニによって右肩を被弾した。
    ・・・・・・・・・・・・痛み分けといったところか。











    「・・・・・・・・・・・・くっ。」



    私としたことが、まさか、撃たれるなんてね・・・・・・・・・・・・。








    激痛に顔を歪め、アニは木陰に隠れて座り込み、右肩を押さえた。
    押さえた左手の隙間から、血が流れ落ちていく。







    油断はしていなかった。


    だが、目が合うまで気が付かなかった。
    否、気が付けなかった。







    再びジアゼパムを飲み込み、スコープを覗く。
    今度こそは、確実に仕留める。







  17. 17 : : 2016/03/19(土) 05:04:17








    その時だった。







    ヒュンという音と共に、雪原の中央に忽然と男が現れた。










    「!! アルミンッ! 何で出てきやがったんだッ!!」



    思わずエレンが大声を上げる中、アルミンは両手を拡げた。

















    ・・・・・・・・・・・・馬鹿な男だ。



    ミカサと同じようにアルミンを撃って、今度こそエレンを誘き出す。
    何も変わらない・・・・・・・・・・・・










    アニはスコープの標準を、アルミンの胸へと向けた。


















    雪原に響く一発の銃声。



    純白の雪の上に赤い花が咲いたかのように鮮血が飛び散って、それから、悲鳴が聞こえた。
















  18. 18 : : 2016/03/19(土) 05:05:36

















    私は、スナイパーだ。
    待つのが、任務。



    微動だにせず、ただ、ひたすら・・・・・・・・・・・・













    「しっかりしてッ! アニッ! アニッ!!」



    泣き叫ぶような声を上げて、アルミンは傍らにしゃがんで何度もアニの名前を呼んだ。
    口から血を吐き出し、アニは仰向けに倒れていた。








    「肺を、やられた・・・・・・・・・・・・もう助からない。お前なら、分かるだろ、エレン。楽にしてくれないか?」

    「・・・・・・・・・・・・。」







    アニは、再び引き金を引くことが出来なかった。
    アルミンを守ろうとしたエレンは、引き金を引いた。


    エレンは無言のまま、アニにゆっくり近づき、側へとしゃがみこんだ。






  19. 19 : : 2016/03/19(土) 05:09:38









    「やっと、分かったのに・・・・・・・・・・・・僕は、君が大好きだって、ああぁ、何で、どうして!?」



    傍らで泣き崩れるアルミンを、かすれる目でアニは覗き込んだ。
    それから、アニは、静かに語り始めた。









    「私は、クルド()だ。戦場で生まれて・・・・・・育ったのも、戦場だ。銃声や怒号、悲鳴が私の子守唄だった。
    来る日も来る日も狩り立てられ、憑かれたように戦う――――――それが私の日課だった。


    朝、目覚めると、仲間や家族の遺体が、累々と横たわっていた。
    私は朝日を見ながら、今日の命を祈った。


    政治や歴史は、単に私をなぶるだけの存在でしかなかった。
    そんな時、あの人が現れた。あの人――――――英雄サラディンが助けてくれた。」









    「サラディン――――――ビッグボスのことか。」



    その名前にハッとしたエレンが呟いた。
    苦し気に息を切らせながら、アニは話を続けた。










    「私は、スナイパーになった。身を隠し、スコープから世界を傍観する立場になった。
    戦場を内からではなく、外から客観的に見る立場に。私はそうやって戦場の外から殺戮を・・・・・・人の愚かな歴史を見てきた。


    私は世の中に復讐するためにこの部隊、この蹶起に参加した。


    でも、私は・・・・・・狼としての誇りを失ってしまった。
    復讐の念が、身も心も私を変えてしまった――――――今の私は、犬、同然。」






  20. 20 : : 2016/03/19(土) 05:11:37









    アニの氷のような瞳から、一筋の涙が流れていく・・・・・・。
    そんなアニの手を包み込み、アルミンは優しく語りかけた。








    「違うよ、アニ・・・・・・・・・・・・君は、狼だ。」

    「アル、ミン?」

    「ユーピック語では狼のことをケグルネクといって、神聖な生き物として崇めてる。君は決して犬なんかじゃない。」







    エレンも静かに相槌を打つ。
    ややあってエレンも、いたわるようにアニへと話しかけた。



    「確かに俺たちは消耗品――――――“戦争の犬”だ。けど、お前は違う。お前は・・・・・・・・・・・・狼だ。」










    アニの中で、在りし日の英雄の姿が、エレンと重なった。







    「あなたは、誰? もしかして、サラディン?」

    「お前は、ミカサを殺さなかった。」

    「たとえ傍観者でも・・・・・・女や子供が血を流すのは見たくない。」

    「安心しろよ。狼らしく、気高く死ねる。」









    アニは微笑んで、安堵の表情を浮かべた。



    「今わかった・・・・・・・・・・・・私は、誰かを殺すために潜入していたんじゃない。殺されるのを待っていたんだ・・・・・・・・・・・・あんたのような男に。
    あんたは英雄だ・・・・・・私を戦場から解放してくれる・・・・・・。」







  21. 21 : : 2016/03/19(土) 05:12:47








    そう言うと、アニはアルミンの両手を振りほどいて、横へと落ちた銃に手を伸ばした。







    「私の、銃を・・・・・・銃は身体の一部なの・・・・・・・・・・・・。」

    「アニ・・・・・・・・・・・・。」






    小さくアルミンは呟き、アニの銃を拾い上げると、そっとアニの胸の上へと置いた。
    銃を握りしめ、アニは呼びかけるように、小さな声で呟く。








    「みんな、いる?」







    アニの声に反応してか、ウルフドックの遠吠えが聞こえてくる。
    まるで、嘆き悲しんでいるかのように。











    「さあ、英雄、私を、解放して・・・・・・・・・・・・。」









    アニはそう言って、静かに目を閉じた。









    「さよなら・・・・・・。」



    アルミンは立ち上がって背を向け、目をつぶって両耳を塞いだ。










    エレンは静かに立ち上がり、銃をアニの頭へ向けて構えて。



























    重い引き金を引いた。









  22. 22 : : 2016/03/19(土) 05:14:05











    狼の遠吠えが、吹雪の弱まった雪原の上に響く。









    アニの亡骸を見下ろして、アルミンは涙をこぼして呟いた。



    「エレン・・・・・・・・・・・・君は、戦場でも人を愛せるって言ったよね? 僕は・・・・・・何もできなった。」








    すると、エレンは懐からハンカチを取り出した。
    それは、アルミンがエレンに渡した、アニの白いハンカチだった。


    エレンはそっと、アニの顔の上に、ハンカチを被せた。








    「これは、持ち主に返す。俺にハンカチは必要ないからな――――――涙は既に枯れている。」



    そう言うエレンの表情は、見たこともないほどに悲壮さを漂わせておきながら、固い決意をその深緑の瞳に秘めていた。









    「もう時間がない。俺は地下整備基地へ潜入する。」

    「分かってる。」

    「自分の身は自分で守れ、誰も信用するな。」

    「ああ・・・・・・。」

    「メタルギアの破壊に失敗すれば、恐らくここは空爆を受けるはずだ。」

    「・・・・・・そうだね。」







  23. 23 : : 2016/03/19(土) 05:16:24








    それからエレンは、僕の顔を見た。
    悲壮さと、勇敢さとが入り混じった、覚悟を決めた男の顔で。







    「もう逢うこともないかもしれないな。」

    「無線機は手放さないよ。君のことをずっと見守ってる。」

    「いつでも逃げて良い・・・・・・・・・・・・残りの人生、好きなように生きろ。」







    そういうと僕に背中を向けて、地下整備基地へと歩き始めた。
    夜の闇の中に、エレンの背中が遠ざかっていく。









    「エレンッ!!」



    僕は、最後に大声を上げてエレンに問いかけた。









    「アニは、何のために生きていたのかなッ!?

    僕は何のために!?
    エレンは何のためにッ!?」










    エレンは足を止め、ややあって振り返り、大声で答えた。









    「生きて逢えたら、答えを教えてやるよッ!!」

    「分かったッ!! それまでに、僕も答えを見つけておくねッ!!」










    再び背を向けて去っていくエレンに大声で告げて、僕は再びステルス迷彩のスイッチを押した。












    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇








  24. 24 : : 2016/03/19(土) 09:03:13
    超大作が書けていてうらやますぃ・・・
    期待!("´∀`)bグッ!
  25. 25 : : 2016/03/20(日) 06:30:02
    >>24
    頑張ります(*´ω`)b
  26. 26 : : 2016/03/20(日) 06:30:16









    「なぁ、マスター・・・・・・。」

    「ん? どうした、エレン?」






    ふとエレンは、エルドに通信を入れた。
    どこか思いつめた様子のエレンに対し、エルドは真剣に耳を傾けてくれているようだった。






    「俺達は・・・・・・やっぱり戦争の犬に過ぎないんだろうか・・・・・・。」

    「らしくないな、エレン。アニの言葉に影響されたか?」





    マスターの鋭い指摘に、俺は黙り込んでしまった。
    ややあって、俺の気持ちを察したマスターが、諭すように語り始めた。






    「・・・・・・戦う意義を自問しない兵士なんかいない――――――いるとすればただの殺人狂、異常者だ。けどな・・・・・・。
    戦いの目的を自らの死に見出してしまったものは、決して勝利することはない・・・・・・アニのようにな。


    死を懇願したとき、勝負は決まる・・・・・・・・・・・・お前はそうなるな、エレン。」







    そう言ってマスターは通信を切った。









    __________いよいよ地下整備基地へとはいる。


    メタルギアの待ち構える、基地の中へ・・・・・・。








  27. 27 : : 2016/03/20(日) 06:31:22








    「ぐっ・・・・・・暑いな・・・・・・。」



    扉をくぐり、階段を降りていくと、そこには溶鉱炉が広がっていた。








    ドロドロに溶けた鉄が尋常ではない熱気を発し、地下整備基地の中はまるで蒸し風呂のように暑かった。
    酷寒地獄からの灼熱地獄に、流石のエレンも辟易していた。







    『大丈夫かい!? エレン!?』

    「アルミンか・・・・・・暑くてたまら―――――うおっ!?」






    アルミンと通信を取っていると、いきなり配管から蒸気が噴き出した。
    熱い蒸気をもろに浴びて、エレンは思わず声を上げた。






    『気を付けて、エレン! そこにあるボイラー・・・・・・配管が古くてたまに蒸気が噴き出すんだ!』

    「これが・・・・・・たまにかよ!?」






    エレンの見るところ、配管の至る所から蒸気が噴き出していた。
    全くついてないなと思いつつ、エレンは蒸気の吹き止むタイミングを見計らって先へと進んでいった。







  28. 28 : : 2016/03/20(日) 08:29:52








    溶鉱炉がある間の北東。
    パトランプが目印になっている巨大な扉の前にエレンは到着した。






    『エレン、その扉の奥にある運搬用のエレベーターで下へと降りるんだ。』

    「アルミン、この下に・・・・・・あるんだな?」

    『うん・・・・・・・・・・・・この下に、メタルギアはある。』








    パトランプが赤く光り、ブザー音が鳴り響く――――――エレベーターが到着した合図だ。
    エレンは巨大な扉を開け、到着したばかりのエレベーターに乗り込む。



    コンソールのスイッチを押すと、ガコンという大きな音を立てて、エレベーターが下へと下りはじめた。










    『ちょっといいか、エレン?』

    「!! 何か?」






    エレベーターで降りる途中、不意にエルドから通信が入ってきた。







    『この通信は傍受されてるのか?』

    「いえ、大丈夫です・・・・・・他の無線はオフになってます。」

    『良かった・・・・・・・・・・・・ペトラのことなんだが。』

    「ペトラが何か?」







    マスターの様子は、何か焦っているかのようだった。
    不吉な胸騒ぎがする・・・・・・。


    すると、マスターはこんなことを言い出した。







  29. 29 : : 2016/03/20(日) 08:30:48







    『俺は以前FBIにいたこともある。それで、ペトラの身の上話なんだが・・・・・・。』

    「ああ、おじいさんがFBIの長官補佐だったとかいう。」

    『そう、おまけにニューヨークでおとり捜査をやっていたっていう話―――――――全てデタラメだ。』

    「!? どういうことですか!?」

    『彼女は“スパイ”かもしれないんだ。』







    フライパンで頭を殴られたかのような衝撃だった。


    ペトラが・・・・・・・・・・・・スパイ!?
    そんな馬鹿な!?






    『いいか、こんな嘘は高校生でも見抜ける――――――当時のFBI長官、エドガー・フーバーは人種差別主義者(レイシスト)で有名だった。日本人だった彼女の祖父がFBIに入れるはずがない。
    さらに、50年代はまだマフィアのおとり捜査は行われていなかった。初めての潜入捜査は60年、しかもシカゴからだ。』







    __________そう言われてみると、局長(オルオ)社長(サネス)の死、サイボーグ忍者。


    腑に落ちないことが多すぎる。







    「まさか・・・・・・・・・・・・ペトラが何か仕組んだとでも?」

    『分からない・・・・・・あるいは、テロリストと繋がっているか・・・・・・。』

    「!! そんな・・・・・・。」

    『とにかく気を付けろ。俺ももう少し調べてみる。』








    マスターが通信を切った頃には、運搬用のエレベーターは一番下のフロアに到着していた。







  30. 30 : : 2016/03/20(日) 10:23:03








    エレベーターによって通じていた最下層――――――目の前の地下倉庫を抜ければ、遂にメタルギアのある格納庫に到達する。








    さっきは灼熱地獄だったが、ここは冷凍室になってるのか、再び酷寒地獄が戻ってきた。


    と、エレンは妙なことに気が付いた。








    「なあ、アルミン・・・・・・・・・・・・ここは地下倉庫だよな?」

    『うん。』

    「何で鴉がこんなところに・・・・・・しかもたくさんいやがるんだ?」








    不気味な鴉たちの鳴き声が、渦巻いている。
    彼らの鳴き声は無線越しにアルミンの耳にも届いた。







    『とても、不気味だ・・・・・・。鴉自体はこの島にいたけれど、FOXHOUNDが来るようになってから、島中の鴉がここに集まりだしたんだ。』

    「・・・・・・・・・・・・そうか。」








    俺は前にも、鴉を肩に乗せていた奴を知っている。
    成程、目の前の扉からは、ものすごい殺気を感じる・・・・・・・・・・・・。







    俺は銃を構え、倉庫の巨大な扉の前に立った。
    ゴウンという音が鳴り、扉が左右へと開いていく。







  31. 31 : : 2016/03/20(日) 10:24:41







    倉庫の中には、沢山のコンテナが積まれていた。
    規則正しく碁盤目のように積まれたコンテナ―――――――その上に、あの男がいた。








    「ようこそ白人(カサック)!」







    背中に大きな鴉の刺青を彫った、筋骨隆々の大男――――――――ライナー・ブラウン。




    相変わらず上半身は裸。
    だが、その背中には筒状の巨大なマガジン、そして、身の丈を超えるほどの巨大なバルカン砲を抱えている。








    「ここから先は通さん! なあ、お前ら!?」



    ライナーが呼びかけると、天井に張り巡らされたパイプにとまった鴉たちが一斉に威嚇するように鳴き出した。









    「こいつらも興奮している―――――――鴉は残飯処理じゃない。不要なものを自然界に返すだけだ。そして、時に傷ついた狐をも襲うことがある。」

    「お前・・・・・・・・・・・・Mー1戦車に乗っていた奴だな? その巨体でよく我慢できたな?」

    「ハッハハハハハ・・・・・・あれは戦いとは呼ばん。」







    そう言うとライナーはコンテナから飛び降りた。
    ドオンという音と共に着地し、それからゆっくりとエレンを見据えた。



    「お前がいかなるものか、鴉と傍観していたのだ。結論は出た。鴉たちはお前を戦士として選んだ。」







  32. 32 : : 2016/03/20(日) 10:28:29








    すると、ライナーの姿がみるみる黒くなり、遂には鴉の姿になった。









    「!? これは、幻覚か!?」



    鴉はエレンに近づき、エレンの体をすり抜けていった。
    目の前には変わらずライナーがそこに立っていた。







    と、そこへ、一羽の鴉がエレンの肩にとまった。
    途端に、エレンは動けなくなった。






    「な、何だ? 動け・・・・・・・・・・・・。」

    「お前は今、死の宣言を受けた。」






    ライナーは不敵な笑みを浮かべ、話を続ける。








    「お前、東洋人の血が流れているな? 成程、お前も俺たちと同じモンゴル系か。アラスカ・インディアンは日本人に近い。祖先が同じともいわれている。
    狩人(イェーガー)は好かんが、同族ならば相手に不足はないな・・・・・・・・・・・・手加減はしないぞ!?」

    「くっ、上等だ!」







    ライナーは再び笑うと、首を動かした。
    俺の肩にとまっていた鴉が飛び去り、再び体が動くようになった。






  33. 33 : : 2016/03/21(月) 04:18:50








    「エレン・・・・・・お前もアラスカの人間だ。世界エスキモー・インディアンオリンピックを知っているな?」

    「その怪力・・・・・・・・・・・・「棒引き」や「四人運び」で鍛えたのか。」

    「そうだが、俺の力の強さはそれだけではない。オリンピックに「耳引き」という競技がある――――――紐でお互いの耳を引っ張り合い、酷寒の厳しさに耐えうる力を養う競技だ。強さは精神面からくる・・・・・・。」






    真っ直ぐにバルカン砲を構えるライナー。
    エレンも銃を構え、厳しい声で問いただした。






    「それを今からやろうってのか?」

    「形が変わるが趣旨は同じだ!」

    「違う! これは競技なんかじゃない――――――ただの殺し合いだッ!!」

    「さあ、お前が何者か、じっくりと見せてもらうぞッ!!」








    ライナーは叫び、トリガーを引いた。
    激しいマズルフラッシュと共にバルカン砲の弾が放たれ、巨大な銃声が倉庫中に響き渡った。






  34. 34 : : 2016/03/21(月) 04:19:42








    間一髪、バルカン砲の襲撃を躱したエレンは、コンテナの間を影のように走り回った。









    あのバルカン砲・・・・・・・・・・・・恐らくM61A1。
    本来なら戦闘機に搭載されるシロモノだ。



    それを両腕で軽々と扱って見せるとは・・・・・・・・・・・・まあFOXHOUNDが化け物ぞろいなのはもう知ってるから今更だが。








    「そこかッ!?」



    バルカン砲を掃射しながら、近づいてくるライナー。
    すると、バルカン砲の爆音とは違う轟音が響き渡った。







    (今の音、コンテナが落ちてきた音か!?)







    二段に積まれたコンテナ。
    ライナーはその下のコンテナを蜂の巣にすることによって一段目をひしゃげさせ、二段目のコンテナを通路へと落としていた。


    徐々に逃げ道が狭められており、碁盤目状の通路が次第に塞がれていった。








    (くそ、まるで詰将棋だな。)



    あんなでっかい図体にも拘らず、心理戦、頭脳戦を挑んでくるとは、FOXHOUNDの隊員は誰一人として侮れない。






  35. 35 : : 2016/03/21(月) 07:01:04








    (奴め・・・・・・・・・・・・俺の目的に感づいたな。)







    ライナーはいよいよ慎重になった。
    ある程度逃げ場を塞ぎ、唯一の逃げ場においてバルカン砲を携えて待ち構えるつもりだったのだが、エレンの動きが静かすぎて、彼ですら感知できなかった。


    エレンをコンテナで囲った時点で勝敗は決すると思っていたのだが、それだけでは上手くいかなさそうだ。









    バシュウッ!!


    と、その時、何かが発射される音が聞こえてきた。
    逃げ場から飛び出してきたのは、リモコンミサイル(ニキータ)







    「!! 小癪なッ!!」



    バルカン砲を連射して、ニキータを撃墜するライナー。
    ニキータには小型カメラが搭載されている―――――――さては、俺の位置を測るために撃ってきたな。


    エレンに位置を悟られたことに気が付き、ライナーはそっと、エレンを囲ったかごの中へと移動し始めた。








    その時だった。






  36. 36 : : 2016/03/21(月) 07:02:23







    ドゴオォオンッ!!


    再び大きな爆発音。
    それから雷のような、コンテナの落ちる轟音。








    「!! まさか・・・・・・・・・・・・。」



    ライナーは、何が起こったのかをすぐに察した。








    あいつ、かごを破るためにC4爆弾を使ったのか!?
    ぐう、まずい・・・・・・・・・・・・。









    エレンはC4爆弾をセットし、道を塞いでいたコンテナをC4爆弾で吹き飛ばした。
    かごから逃げられてしまっては、元も子もない。



    と、その瞬間、コンテナの向こうに一瞬、エレンの姿が見えた。










    「逃がすものかッ!!」



    一瞬で姿を隠したエレンを追い、ライナーはバルカン砲を掃射した。













    カチッ!







    突然、ライナーの足元で、小さな音がした。



    「!! こ、これは!?」














    __________クレイモア地雷!?



    ライナーの足元で、エレンの仕掛けたクレイモア地雷が炸裂した。













    「ぐうっ・・・・・・。」



    煙の中から傷ついたライナーが飛び出してくる。










    大した奴だ、俺を罠に嵌めるとは。
    だが、詰めが甘かったな。俺はまだ・・・・・・・・・・・・――――――


    煙から逃れるライナー。
    その先には、しかし、FAMASアサルト・ライフルを構えたエレンがいた。










    「!! しまっ・・・・・・・・・・・・―――――――



    ライナーが言い終わらないうちに、エレンはライナー目がけて銃弾を放った。









  37. 37 : : 2016/03/21(月) 07:03:24









    「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・・・・・・・。」



    バルカン砲を床へと取り落とし、ドォンという音が倉庫内に響く。
    全身に銃弾を浴びて血まみれのライナーは、倉庫の壁に寄りかかって笑みを浮かべた。








    「ボスの・・・・・・いう通りだ。どうやら、不要だったのは俺のほうだったらしい・・・・・・。」








    完全敗北――――――負けを認めたライナーの表情は、むしろすがすがしくさえあった。
    ライナーの肩に、鴉が一羽、飛んできて止まった。


    ライナーは、肩にとまった鴉を見やり、それから再びエレンを見た。








    「だが、俺の残骸は残らない――――――俺の肉も魂もこいつらに同化する。俺の骸は自然に還る。俺は見ているぞ、エレン。ハハ・・・・・・このセキュリティ・カードを受け取れ。先へと進める。」



    ライナーは懐から、セキュリティーレベル7―――――最高レベルのセキュリティーカードを取り出すと、これをエレンに託した。









    「何で、俺にこれを?」

    「お前は、自然が創りだした狩人ではない。お前もボスも・・・・・・・・・・・・違う世界から来た。俺たちの知る世界ではない。
    さあ、決着をつけて来い。俺は最後を見ている・・・・・・。」






  38. 38 : : 2016/03/21(月) 07:08:14








    「そうだな・・・・・・・・・・・・お前にヒントをやろう。お前の目の前で死んだオルオ・ボザド―――――あれは、本物ではない。」

    「!? 何だって!?」

    「あいつはベルトルト・フーバー―――――俺たちと同じFOXHOUNDだ。あいつは変装の名人で、血液まで偽装する。その為にDARPA局長の血液を全部抜き取って血を入れ替えた。だが、死神までは騙せなかったようだがな・・・・・・。」

    「死神? そんな手間までかけて、何で局長のふりを!?」









    「フフフフ・・・・・・ヒントはここまでだ。後は自分で考えるんだな。」








    すると、今まで戦いを眺めていた鴉たちが一斉にライナーに群がり始めた。
    肉をついばむ生々しい音、飛び散る血の音に混じって、ライナーの声が聞こえてきた。









    エレン・・・・・・・・・・・・自然には限度を超えた殺戮は存在しない。
    必ず終わりがある。だが、お前は違う。








    お前の進む先に終着駅(ターミナル)はない。








    どこまで行っても、
    いくつ屍を乗り越えようと、




    終わりのない殺戮だ、
    救いのない未来、





    いいか、エレン・・・・・・・・・・・・












    俺は・・・・・・・・・・・・見ているぞ・・・・・・・・・・・・









  39. 39 : : 2016/03/21(月) 12:41:58









    鴉たちがバサバサと飛び立った後には、彼が背負っていたマガジンとバルカン砲、そして、床の血だまりだけが残った。







    ライナーは、俺の出自について、何か知っているようだった。
    俺自身ですら知らない・・・・・・・・・・・・出生の秘密。




    そして、もう一つの秘密・・・・・・・・・・・・オルオとサネスの怪死についても。









    プルルルッ! プルルルッ!

    と、このタイミングで通信が入ってきた―――――マスターエルドからだ。








    『エレン・・・・・・・・・・・・聞こえるか!?』

    「マスター。」

    『ライナーに勝ったようだな・・・・・・・・・・・・ペトラのことについてだが、他の無線をオフにしてくれ。』










    やはり焦った様子のマスターに相変わらず不吉な予感を覚える。
    するとリヴァイが横から割って入ってきた。








    『ペトラがどうかしたか、エルド?』

    『!! 仕方がない、リヴァイにも聞いておいてもらった方がいいかもしれないな。ペトラはそこにいるのか?』

    『いや、席を外している―――――仮眠をとっているところだ。』







    少しため息交じりに話すエルド。
    ややあってエルドは自分が調べたことを話し始めた。








    『俺なりに調べてみたんだ。ペトラ・ハンターのことを・・・・・・・・・・・・そうしたら、驚愕の事実が発覚した。』

    『事実?』












    『・・・・・・・・・・・・そこにいる「ペトラ・ハンター」は偽物だ。』







  40. 40 : : 2016/03/21(月) 12:43:26






    『!? な、なに!?』

    「どういうことですか!?」






    これを聞いたリヴァイの動揺は一通りではなかった。
    いや、俺だって寝耳に水だ。


    オルオもペトラも偽物とは、一体俺は何を信じればいいのか分からなくなってきた。








    『どういうことだ、エルド!?』

    『確かに「ペトラ・ハンター」は実在する。いや、実在した・・・・・・・・・・・・彼女は中東で行方不明になっている。恐らく、彼女は「ペトラ・ハンター」という戸籍をどこかで手に入れたんだ。』

    『待て、それが本当だとしたら、大変なことになるぞ!』








    しかし、どうしてリヴァイはここまで狼狽する。
    この狼狽の仕方は、彼にしては余りにも不自然だ。



    まさか・・・・・・・・・・・・








    「リヴァイ・・・・・・・・・・・・まだ俺に隠していることが!?」

    『ない・・・・・・・・・・・・そんなものはな。』

    「身体を張って戦っている俺に対して、あまりにも失礼だろ! お前・・・・・・本当に変わったな。」

    『・・・・・・・・・・・・。』








    リヴァイの反応を見るに、俺には言えない秘密がまだあるらしい。
    リヴァイの煮え切らない態度にイライラしていると、エルドから畳みかけるように通信が入ってきた。







    『とにかくだ、リヴァイ・・・・・・・・・・・・ペトラはすぐに拘束しろ!』

    『!! ダメだ、あいつ抜きにこの作戦は遂行できない!』

    『出自の怪しい兵士を置いておく方が作戦に支障をきたすだろう! それに、彼女もFOXHOUNDだ!』

    『・・・・・・・・・・・・そもそも裏切ったとしてもおかしくはない、ということか。』







    リヴァイもエルドも、どちらも焦りに駆られているのか、口調が自ずと早口になる。
    やがて、リヴァイは信じたくないのか、苦渋の表情、といった様子で応答した。







    『・・・・・・・・・・・・俺もペトラを洗ってみる。少し時間をくれ。』

    「ちっ、俺には時間がないんだがな。」







    吐き捨てるように言って、エレンは通信を切った。











    いよいよ残すはメタルギアのみ・・・・・・・・・・・・。
    俺は地下倉庫を抜けて、メタルギアのある地下整備所へと向かっていった。








  41. 41 : : 2016/03/21(月) 12:47:10
    以上で、⑤は終了になります。
    次回はいよいよメタルギア・・・・・・MGS1の最終話となります。


    よろしくお願い致します<m(__)m>

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