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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

苗木「ボクたちの青春と泡沫の戦争」

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  1. 1 : : 2015/12/12(土) 21:46:23
    たけのこまんじゅうです!
    合作します。

    Deさんと合作しますよ!
    わーい!わーい!
    こうして未更新ssが増えていくんだね…

    次はDeさんの挨拶です!
  2. 2 : : 2015/12/12(土) 21:52:42
    ブルルンww ブルルンww ヒヒーンwwwww
    Deと申します!四年前からずっとアプローチをしてたたけまんさんが、遂に折れてくれました(捏造) !テンション上がっております!

    頑張りますので、たけまんさん及び読者の皆様、よろしくお願い致します!
  3. 3 : : 2015/12/12(土) 21:54:59
    たけまんさん受験お疲れさまでした!
    屈指の実力を持つお二人の合作、激しく期待です!
  4. 4 : : 2015/12/12(土) 22:12:32
    じゃあ始めていきます!
    頑張ります!ファイッ!


























    教室の扉がある。

    取っ手に手をかけ、横に力を加える。

    ガラガラと音を立てて、扉は開く。


    当たり前のこと。


    扉を開くと、みんながいる。

    【超高校級】なんて枠に入れなくても、個々で存在感を放つみんな。

    ボクのクラスメイト。

    ボクの大事な友達。

    そんなみんなが一斉にこちらを向いて、


    「おはよう」


    と、声をかけてくれる。

    ボクも何も考えずに


    「おはよう」


    と、返す。

    そして1日が始まる。


    当たり前のこと。


    そして授業が始まる。

    科目は……


    苗木「えー…
    また《銃火器》の授業?」

    十神「はっ…
    文句を言うならサボればいいじゃないか」

    苗木「言い方にトゲありまくりでしょ」

    十神「どうだかな…」


    それだけ残して、体操服に着替えた十神クンは教室を後にした。


    苗木「うわっ、ボク最後じゃん!」


    教室に誰もいない事に気づいたボクは、急いで体操服に着替えて教室を後にした。


    授業の科目に《銃火器》がある。



    これも、当たり前。
  5. 5 : : 2015/12/12(土) 22:47:30




    西暦2020年。


    地球が抱える環境問題は、学者達が推測していた以上の速度で悪化が進み、その結果、国家同士での資源を巡っての争いは絶えなくなった。


    明確な『戦争』は起きてないが、不自然な空港での事故や、各国の主要人物が謎の失踪を遂げている。



    戦争は国境線スレスレに立っていた。



    それに伴い、日本では『戦争教育』がスタートする。


    いつ戦争が始まってもおかしくはない。次世代の子供達の青春は、戦争により真っ黒に塗り潰された。




    ーーーーーー

    ーーー


    ーーーーー

    ーーーー



    特別教室に入ると、既にクラスメイトは、射撃のテストを受けていた。



    教師「山田!! 65点!!!」


    山田「よっしゃ! 平均キタコレ!」


    教師「……ん?お、苗木! まだやってないのはお前だけだぞ!早速、テストを受けてもらう!」


    苗木「は、はい!!」



    苗木(これ苦手なんだよな……)



    僕は机の上にあるヘッドホン型の耳栓を耳にあて、震えの止まらない手で拳銃を握る。


    拳銃で的を狙い、正確に射撃する。『動かない的を撃って何の意味があるのか』、以前、十神君がそう言っていた。


    全くもってその通りだと思う。実戦ではほぼ何の役にも立たないだろう。しかし、この授業が未だにカリキュラムに組み込まれている現状は、戦争特化省の怠慢だと言わざるを得ない。





    苗木「……ふぅ……精神集中」




    目を閉じ、あらゆる外部の音を遮断していく。


    さっきまで耳に鳴り響いていた雑音は、一切届かなくなった。



    苗木「ッ!!」


    骨に意識を使い、身体を地面に固定する。


    強く引き金を握りしめると、火花が散り、銃口から銃弾が飛び出す。


    鈍い音が轟いたかと思うと、視界の先にある的に一部が凹んでいたため、命中していたことがわかった。




    教師「凄いな苗木! ど真ん中! 100点じゃないか!!」


    苗木「は、はは……ありがとうございます」




    この後、クラスメイトからも褒められる。


    そして、みんなで戦争への決意を燃やす。


    これも当たり前。




    けど僕は、こんな当たり前が大っ嫌いだった。


  6. 6 : : 2015/12/12(土) 23:06:07
    教室に戻る。

    数人の男子が、ボクの元に集まる。


    桑田「なあなあ、苗木」

    苗木「ん?どうしたの桑田クン?」

    桑田「今日の実技テストの事なんだけどさ…」

    苗木「?」


    ああ…またか…


    桑田「ほんっっっとお前どーやってあんなやってんの!?
    マキシマムすげーっつーか!
    いや、オレにも教えてくんね?マジ!」

    苗木「ははは…
    だからあれは集中してるだけだって…」

    石丸「集中なら僕もしているぞ苗木君!
    しかし!いつも僕は中心を僅かに逸れてしまうのだ!
    苗木君!何かコツがあるのだろう!」

    苗木「だ、だからそんなのないってば…
    いつも言ってんじゃん…」

    葉隠「ま〜たそうやってはぐらかす!
    苗木っち!早ぇとこ白状するべ!」

    苗木「葉隠クンまで…もう…」


    と。

    いつものこと。

    実技テストの後は、ボクの元に大体この3人が集まる。


    桑田クンはモテるため。

    石丸クンは授業に意欲的なだけ。

    葉隠クンは…分かんないけど。


    とにかく、ボクの射撃の精密さについていつも聞いてくる。

    本当…ただ集中しているだけなのになぁ…


    苗木「はぁ…」


    適当に言い繕って、ボクは3人を追い返すとため息をついた。

    流石にこう、毎回こうだと疲れる。


    苗木「ええと…次の授業は……」

    霧切「《体術》よ、苗木君」

    苗木「え、ホント…?」

    霧切「あら、嘘だと思うなら信じなくてもいいけど」

    苗木「反射的に言っちゃうもんなんだよ…」

    霧切「ふふふ、分かってるわよそんな事」

    苗木「もう…」


    笑いながら霧切さんは教室を出て行った。

    それにしても、2限続けて戦争関連なんて…

    今日は嫌な日………

    …ん?


    あぁ…


    苗木「また最後じゃん!!!」
  7. 7 : : 2015/12/12(土) 23:28:20




    ーーーーー

    ーーー

    ーーーーーーー





    夕焼けが射し込む教室で、僕は独り、鞄を整理していた。


    桑田君と舞園さん、そして霧切さんは、校門で僕のことを待ってると告げ、出て行った。




    『戦争教育』が義務教育に取り入れられ5年。


    国立高校のカリキュラムにも取り入れられ始めたのが、2年前。



    あれだけ戦争法案反対と掲げていたマスコミも、今では戦争賛美の声を掲げている。


    僕はこの国の移り変わりを通して、人間の合理性、冷たさを感じとった。


    自分の身に危機が迫れば容赦なく倫理を切り捨て、人の屍を喰らい尽くす。




    『この世界はおかしい』



    そう思うようになった中学生の頃を顧みる。


    今はそんなことを思っていない。








    苗木「人がおかしいのは……元からだった」




    誰でもない、誰かにそう呟き、誰もいない放課後の教室を後にする。


    廊下に出ると、制服を着た男性とすれ違った。




    ???「……」



    苗木(見たことない人だった……先輩かな? )



    先を急ぎながらも、答え合わせをしたい性分に駆られ、走りながら振り向く。





    どうやらその男性も振り向いていたみたいで、バッチリと目が合った。



    しかし、名前が浮かんでこない。





    苗木(……ああ、予備学科か)




    その人物から目を逸らし、待ち合わせの場所へと向かう。


    夕陽がやけに不気味に、僕の影を照らし出していた。



  8. 8 : : 2015/12/12(土) 23:48:48

    《戦争教育》が導入されたからと言って、今までの授業内容が廃止されたわけじゃない。

    国語、数学、理科、社会、英語…

    その他もろもろ+《戦争教育》といった具合。

    もちろん、街は5年前と同じで人が働いているし、希望ヶ峰学園も変わらず【超高校級】を募っている。



    だからこそボクたちは麻痺してしまった。



    戦争という『非日常』を『(非)日常』に、そして『日常』へと思い込まされた。

    5年前はそれこそ反対の声だらけだったはずなのに…

    今じゃ『戦争反対』は異常な発言。

    こんな風な思考すら『異常』とされる社会となってしまった。

    …。

    そうやっていつでも合理的だったのは、今も昔も変わらないけど。


    苗木「……」


    ふと、さっきすれ違った予備学科の人を思い出した。

    ボクと同じ目をしていた、あの人を。


    苗木「…」


    ボンヤリ思い出しつつ歩を進めていると、いつの間にか校門に着いていた。

    舞園さんが元気に手を振っているのが分かる。


    そう、今はアイドルが銃を持つのすら当たり前なんだ…。

    ボクが持つ違和感は、だからこそ『異常』であって…

    …。



    …だから?

    あれ、どうという事もないじゃないか。



    苗木「待たせてごめーん!」


    脳を停止させ、ボクは元気に手を振り返した。

    聞いた話だと、今からカラオケに行くらしい。

    舞園さん、仕事は?
  9. 9 : : 2015/12/13(日) 00:24:47


    ーーーーーー

    ーーー

    ーーーーーーーー



    紅く照らされた校舎。


    さっきの生徒には、俺の動揺は気づかれなかったようだった。そのことに胸を撫で下ろす。


    ???「同じ……目をしていた」


    朝、洗面所に設置された鏡に写る俺の目、それと同じ雰囲気を持つ人物に出逢ったのは、これで2人目だった。


    そんなことを考えていると、不意にポケットの中の携帯電話が音を立て揺れ出す。


    慌ててそれを手に取り、耳に当てた。



    ???『日向クン……計画は順調かな?』


    日向「は、はい!……命令通りに、『霧切 仁』も殺しました」


    ???『うん! エクセレント!』


    ???『……で、誰にも見られてないよね?』



    一瞬、喉がキュッと締まる。俺はどうするべきだろうか。本当のことを言うべきか。



    日向「……」

















    日向「はい、俺の姿は誰にも見られていません」


    ???『良し!じゃあ大成功だね! 誰かに見られたら、怪しまれちゃうところだったしね! だって君、予備学科だもんね!!本館には本来いないはずだもんね!!!』


    日向「……はい」


    ???『あっ(察し) べ、別に君を傷つけるつもりはなかったんだ!! 本当だよぉ、許して!!!』


    日向「いや、別に大丈夫です。それじゃ、行かなきゃいけないんで切りますね」



    プツッと通話が途絶える。






    予備学科と言って蔑まれるのは慣れていた。


    だから怒ってなんかいない。


    怒ってなんか……


















    日向「……悔しいッ…………!!」



    目から涙が溢れ落ちる。復讐をするんだ。この世界に。


    負の感情が、俺に国を裏切る力を与えてくれる。俺は歯をくいしばって、拳を強く握りしめた。


  10. 10 : : 2015/12/13(日) 07:17:18
    ーーーーーーーーーー
    ーーーーーーー
    ーーーーー

    ーーー




    カラオケの途中、霧切さんは血相を変えて急いで帰ってしまった。

    もちろん、その時点でその事を疑問に思わなかったわけじゃないけど…


    教師「えー、霧切は家の都合で休みだ」


    何か嫌な予感がした。

    ハッキリとは言えない嫌な予感。

    胸の中をモヤモヤした何かが這いずりまわっているような…

    今までもこんな事はあった。



    ……そう、5年前に。




    舞園「霧切さん…どうされたんでしょうか…」


    ホームルームを終えると、間も無く舞園さんがボクの元へとやって来た。



    苗木「分かんないけど…
    でも、家の事情なら仕方ないよね…」

    舞園「そうですね…」

    苗木「…」

    舞園「…苗木くん?」

    苗木「………ん?どうしたの?」

    舞園「えっ?
    あ、いや…何ていうか…
    元気ないなぁって思ってですね…」

    苗木「そうかな?
    いつものボクだけど?」

    舞園「……」

    苗木「ははっ、もう大丈夫だって!
    ごめんね、心配かけて」

    舞園「もう!
    ホントに何もないんですね!」

    苗木「ホントだってば〜」

    舞園「……ならいいです」


    そして舞園さんは自分の席へ戻っていった。

    最後に小声で「バーカ」って言ったのを、ボクは聞き逃さなかった。


    苗木「ごめんね舞園さん…
    ありがとう」


    国民的アイドルが友達ってだけでも贅沢なのに、その子に心配されるなんて…

    ファンの人が知ったらボク殺されちゃうなぁ…


    苗木「…よしっ」


    何弱気になってんだよ、ボク。

    前向きだけが取り柄だろ?

    霧切さんの事は確かに心配だけど…

    …うん、きっと大丈夫。

    何事もなくまた日常は続く。

    今日も、明日も、その先も…

  11. 11 : : 2015/12/13(日) 15:56:56



    教卓の上の乱雑した書類を、いそいそと担任はかき集めている。


    クラスメイト達は腰に拳銃を携えながら、1限目が始まるまでの空いた時間で談笑をしていた。



    不意に、窓ガラスにヒビが入る。


    それ自体は小さな音で行われた。




    そしてそれが、(非)日常の終わり。


    直後、担任の頭が大きく揺れたかと思うと、はち切れんばかりの破裂音が教室を襲った。


    担任は倒れこんだまま、ピクリとも動かず、じわりじわりと赤い液体が床を這っていく。



    教室を絶叫が包み込んだ。





    十神「馬鹿かァ!! 座れッ!!」




    十神君の呼びかけで、ハッと我を取り戻した僕らは、授業通りに机の下に隠れる。


    ドクドクと脈を打つ心臓を止める術を、僕はまだ知らない。



    セレス「おそらく隣のビルからの正確な射撃……」


    セレス「攻撃……ですかね」


    朝日奈「攻撃ッ……!?」



    それはそうだろう。そう思ったけど、決して口には出さなかった。


    結局は他人事。危機が迫っているのに、それをどうしても自分に当てはめられない。


    なんだ。いつだって無責任で他人任せ、昔と全然変わってないじゃないか。僕は少しだけ安心した。




    大和田「まあ、とにかく面倒なことは置いといてよ……どうする? このままここにいるか? 戦うか?」











    ???「違うな、『逃げる』んだよ」


    突然にドアが開き、男性が転がり込んできた。









    松田「そーっとこっちに来い、初めてヤる時の女がスカートめくる時の速度と同じだ」



  12. 12 : : 2015/12/13(日) 23:33:13


    もちろん、何が始まったかは明確だった。

    ボクだけじゃない。

    みんなわかっていた。


    苗木「…」


    ボクたちに『逃げる』という選択肢を与えてくれたあの人、よく学園内で噂されていた人だ。



    【超高校級の神経学者 松田夜助】



    なんでも、『ブレイン・コントロール』研究の最高責任者に抜擢されたっていう若手ホープ。

    最高責任者だなんて、最早高校生でも何でもない気がするけど…

    …。

    なんてことを異常事態に考えるボクは既に『異常』だと、そう思った。

    そんな考えを気に留めることなく、ボクは辺りに反応を伺う。


    女子は特に朝日奈さんが怯えている。

    何とか大神さんが落ち着かせようと声をかけているけど、耳に入ってないみたい…

    大丈夫かな、心配だ…。


    男子は比較的落ち着いてる…というか。

    この『異常』事態を心待ちにしていた節がある人間が数名。

    きっとどこかで、銃をぶっ放す機会を得たかったんだと思う。

    うーん…あまり快くは思わないかなぁ。


    といった具合の事をざっくりとまとめ、ボクは誰かが発言するのを待った。

    ここで発言するのはどう考えても得策じゃない。

    流石にそんなのボクでも理解できる…。

    そうだなぁ…例えば十神クンがーーー


    十神「貴様、松田夜助だな?」

    松田「……ああ」

    十神「手短に話せ
    …今何が起こっている」


    あ、聞いてくれた。



    松田「ああ、そうだなやっぱ話さないとだよな…
    …長くなるぞ」

    十神「手短に話せと言っただろ…」
  13. 13 : : 2015/12/14(月) 23:28:32





    松田「『霧切仁』が死んだ」



    彼の口からいきなり飛び出した言葉は、真っ直ぐ僕の心臓めがけ突き刺さってきた。


    どうやら、そう感じたのは僕だけじゃないらしい。



    桑田「う、嘘だろ……!?」


    腐川「て、ていうか……! なんでそんなに断片的なこと伝えるのよ……! 順を追って説明出来ないの!? もしかして私がブスだから、話を早く切り上げようとしてない!?」


    松田「手短に話せって言ったのはお前らのリーダーだろうが……まあ、でも」



    小言を呟きながら、松田さんは十神クンとセレスさんの方に視線を少し向ける。



    松田「今のでわかった奴らも……いるみたいだぞ」


    松田「どうだ? 俺の代わりに説明するか?」


    セレス「面倒なので御断りしますわ」


    十神「御託はいい、お前の口からさっさと話せ」


    彼らの痛烈な態度を快く思わなかったのか、少し間を空けて、松田さんは口を開いた。


    松田「なぜ霧切仁が殺されたか、理由はおそらく『希望ヶ峰学園』の失落だ」


    大和田「失落……!?」


    不二咲「……そっか、他国から見れば、敵国の次世代を担うプロフェッショナルが揃ってる高校だから、そこは出来れば落としたいはずだよね」


    松田「そういうことだな。さらに言えば、日本の戦争教育の結晶であるここが落とされれば、間違いなく国民の士気は下がる。つまり、『俺たちの死』が『敵国の勝利条件』だ」


    舞園「じゃ、じゃあ……私たちの『勝利条件』って一体何なんですか!?」


    松田「ん? そうか、まだ1年は習ってなかったな。というか現代社会はまだ授業に組み込まれてなかったか」








    松田「俺たちの『勝利条件』は『正体の露呈』だ、もちろん敵国のな」








    石丸「なるほど! 敵国の正体が露呈することで、我が国への攻撃を口実にその国を他国との連携で落とせるわけですね!」


    松田「ああ、国際法が宣戦布告した国は一切の人権を剥奪されるって時代に合わないルールを敷いてるからな。敵国の資源と土地大量ゲットのチャンスでもあるってわけだ。気張ってけよ。ていうかお前、予習する範囲尋常じゃないな、キモッ」


    石丸「……」


    松田「まあ、とりあえず今は逃げるぞ、逃走は早い方がいいしな……それに戦闘は77期生の方が慣れてるだろ。そっちに任せよう」


    松田「……えーっと、点呼したいんだが、お前ら全員で何人いるの?」



    苗木「霧切さんを除いて、13人です」



    松田「あー、そっか…………なんか悪いな」


    セレス「気にしないでください、『彼女たち』の死は仕方のなかったことですから」


    松田「オーケー、じゃ、さっさとここから出るぞ。いいか、幼女を想像しろ。とびっきり可愛いヤツをな。その目線の高さでこい。いいな、ロリじゃなくてペドだぞ」



    僕らは身を屈めながら、窓からの射線が通らない道をゆっくりと進んでいき、廊下へと流れ出ていった。



    桑田「あ、あの……で、どこに行くんすか?」


    松田「あー、それは……」



    刹那。松田さんが桑田クンの問いに答え終わる前に、本来なら誰もいない教室から、何人もの人影が飛び出してきた。


    山田「ぎゃーーーーッ!?」


    葉隠「嘘だろォ!?」



    僕らとの距離は、わずか20㍍強。武器を持った彼らとの激しい接戦は避けられないだろう。


    背後から聞こえる音から推測すると、どうやら後ろにも回り込まれているらしい。



    松田「おかしい……! こんな簡単に希望ヶ峰学園の警護が突破されるなんて……!」



    松田さんはそう言葉を発する。


    そしてその次に、僕たちにさらなる驚愕が襲いかかった。









    『その人影たちの服装を、苗木誠たちは知っていた。』



    『あれは……【予備学科】の制服』


    『なぜ、裏切ったのか。お前らはここに憧れて入ったのだろ?今までのくだらない努力を無駄にする気か? この学校への忠誠はどうなった? 様々な思いが交錯した結果、身内の裏切りに、誰もが微動だに出来なかった。』










    『……ただ、この学校の常識を嫌う苗木誠だけは、拳銃を構えていた。』








  14. 14 : : 2015/12/15(火) 00:16:14

    この人たちも予備学科だけど…

    …何て言うかさ、違うんだよね。


    松田「……っ!?
    おいお前何してる!
    多勢に無勢もいいところだぞ!」


    苗木「キミたちは…この前廊下ですれ違った『あの人』と全然違うんだ」


    ボクの行動が予想外だったのかな?

    『敵』は微動だにせずボクの演説を聞いてくれている。


    苗木「『あの人』は…そう、屈してもなお刃向かおうとする “意思” が感じられたんだ…」

    苗木「それがないキミたちはさ、ボクからしたら…」


    迷いはなかった。

    『敵』は『消す』。


    当たり前のこと。


    苗木「《異常》なんだよ」



    銃声が1つ、教室に響いた。

    次いで地面に、予備学科生徒の1人が横たわった。

    丁度、教卓付近で倒れている教師の様に。

    眉間に一発。

    即死。


    苗木「なあ……返せよ、ボクの日常」


    返せよ。





    松田「……」


    こいつはもう…狂ってる。

    それを感じたのはきっと、俺だけじゃなかった。

    恐怖に包まれていた教室は、仲間によってさらに赤く染まった。

    もう、白なんかには戻れない。

    こいつはヤバい。

    こいつはもう、穢れた。



    松田「クッソ…
    聞いてねぇよこんなの…!」


    『奇しくも、《非日常》に最初に加担したのは誰よりも《日常》を大切にしていた少年だった。』

    『まさしく皮肉。
    彼は彼自身の手で、非日常を歓迎したのだ。』

    『そして、彼が引いた引き金が戦争の合図と化してしまった事を、まだ彼は知らない。』


    ーーーきっと、知ることはない。
  15. 15 : : 2015/12/15(火) 20:35:25



    十神「む、そっちも片付いたか」


    大神「……」



    十神クンは拳銃を肩にかけながら、廊下へと繋がるドアからこちらを覗いている。


    大神さんの方は何やら悔やんでいるような表情をしていた。



    苗木「……それで、今からどこに向かうんです?松田さん?」


    松田「あ、ああ……いや、どこにも向かわない。ただ逃げるだけだ」



    松田さんはブツブツ小言を呟きながら、再び廊下に向かって出て行き、僕らもそれに続いた。



    舞園「私たち……どうなっちゃうんでしょう」



    移動しながら、舞園さんは消え入りそうなか細い声でそう言葉を紡ぎだす。



    苗木「……守るよ。僕が」


    舞園「え……?」


    苗木「……」



    僕はそれ以上は何も答えることなく、松田さんの指示を仰ぐため口を塞いだ。



    松田「……いいか。さっきも言ったように、戦闘は全て77期生に任せる」


    桑田「俺たちじゃ力不足ってことっすか?」


    松田「半分ハズレで半分当たりだ。お前らに足りないのは力じゃねえ、『武器』だ」


    山田「はて、武器?」


    松田「ああ、77期生は各々の超高校級の器に合った『特注の武器』を持っている。そして、それを使いこなす訓練も受けている」


    松田「『超高校級の才能』と『特注の武器』が合わさるとなると、それはもはや『武器』じゃねえ、『兵器』だ」


    大和田「えーっと、俺らの『武器』は無いんすか?」


    松田「いや、俺のラボにあるのはあるんだが、まだ試作段階でな……冬休み明けくらいには完成させるつもりだったが」










    苗木「じゃあ決まりだ。その武器で戦いましょう」




    僕のその言葉で場が凍りつくのを肌で感じとった。中でも一番変化が見られたのは松田さん。




    松田「……いや待て、おいおい」


    松田「おかしいだろ!? まだ試作段階っつたろ!?」


    苗木「ええ」


    松田「ええじゃねえよ……! まだ理解してねえようだから、わざわざこの俺様がもう一度説明してやる……!」




    松田「あの『予備学科』が裏切ったんだッ! つまり、希望ヶ峰学園以上のどデカイ何かがこの攻撃には絡んでいる!!」


    松田「それでもなお降りずに戦うって言うのなら、その動機を言え!!」












    苗木「この世界が……おかしいから」












    松田「クソォ……動機になってねえ……!」






  16. 16 : : 2015/12/15(火) 21:28:15
    苗木「あれぇ…」


    松田さんの反応、みんなの反応から、やっぱりボクは『異常』なんだなぁって改めて思った。

    うーん、みんなはこの現状が間違ってるって思ってないのかな…

    ……案外思ってなかったりして。


    松田「いいか、ちんちくりん…
    お前よーく聞け」

    苗木「…」

    松田「…おい聞いてんのか」

    苗木「…あっ、ボクのことですか?」

    松田「お前以外にちんちくりんなんていねぇだろうがよ」

    苗木「結構クるなぁ…」

    松田「んなこたどーでもいいんだよ!
    動機が動機になってねぇんだってお前!」

    苗木「あー…
    おかしいものを放っておける人間じゃないんですよね、ボク」

    松田「そういう問題じゃねぇだろ…」

    苗木「…」


    そういう問題じゃないのかな…?

    そんな感じじゃダメなのか…

    具体性の無さか?


    十神「俺は苗木に賛成だぞ」

    松田「おいおいおいおいリーダーまで何言いだしやがる」

    十神「だってそうだろう?
    例え試作品であろうと、何も無いよりははるかにマシじゃないか」

    松田「試作品だと色々とあるんだよ…」

    桑田「オレの武器なんだろうなー」

    大和田「金属バット」

    桑田「アポ…?」

    松田「危機感持てよお前ら命狙われてんだぞ」



    朝日奈「そ、そうだよみんな…!
    なんでそんなに平然としていられるの!?」


    松田「っ!」

    松田(あー…こりゃしくじった)

    朝日奈「だ、だって先生がし……死ん…
    うっ…うぉえっ…」

    大神「朝日奈…!
    ゆっくり息をしろ…
    我が背中をさする…全部吐き出してしまえ…」

    石丸「だ、大丈夫かね朝日奈くん!?
    今すぐ拭き取れる物をーーー」


    松田「勝手に動くな!
    マジで死にてぇのか!?」


    石丸「ぐぅっ…
    …失礼しました……」

    松田「…」

    朝日奈「なんで…なんで…!
    うぅっ…」

    大神「朝日奈…」

    朝日奈「みんな狂ってるよ!苗木も!十神も!
    なんで平気で引き金を引けたの!?
    相手は同じ『人』だったんだよ!!?」

    苗木「…」

    十神「何を甘ったれたことを言っている…」

    松田「っ!
    おいリーダーそれ以上は」

    十神「俺たちが殺っていなければ今頃貴様はどうなっていた?」

    朝日奈「…それは……」

    十神「それと、相手は『人』ではなく『敵』だ」

    朝日奈「…」

    十神「『敵』に情けをかける奴がいるか?
    いないだろう?」

    朝日奈「…」

    十神「自分のために『敵』を消す」

    朝日奈「…」

    十神「それが…」


    大神「もうやめぬか」


    十神「はっ!
    俺は正しいことを言っているだけだ」

    大神「それは主観であろう?
    『正しいこと』ではなく、『正しいと思っていること』の間違いだ」

    十神「ほう…
    そうか…では貴様は『敵』に情けをかける阿呆ということか」

    大神「……この議論、不毛だとは思わぬか?」

    十神「ふっ…
    確かにそうかもしれないな…」

    朝日奈「……」

    松田「…済んだか?
    見つかる前に早く行くぞ」

    大神「すまなかった…
    行こう」

    朝日奈「…」

  17. 17 : : 2015/12/16(水) 00:17:29



    身を屈めながら、僕らは急ぎ足で松田さんの後ろをついていく。



    石丸「松田先輩、貴方のラボは結局どこにあるのでしょうか?」


    松田「地下室だよ。すぐそこの階段を降りて少し行くと、1階に赤い扉があるだろ、あそこから行く」



    その会話が終わったっきり、沈黙がグループを支配した。考えてみれば、いつ奇襲を仕掛けられてもおかしくない状況下だ。会話なんてしてる余裕は無い。ただ歩くだけでも擦り減る精神は想像以上のものだろう。







    『ただ、奇襲ってのは、想像以上に想像以上の角度から攻めてくるものを指すのであって』


    『警戒くらいで対処出来るものは、奇襲とは呼べない』


    『そういう意味じゃ、多分』










    『これが最上級の奇襲』










    突如、壁にヒビが入っていき、コンクリートの破片が廊下に飛び散っていく。


    正確に言えば気づいてない人も数人はいたようだけど、みんなが、呆気に取られたその次の瞬間、爆音が轟き、壁が一気に崩壊した。


    無数のコンクリートの塊が激しく、僕らの方へと突っ込んでくる。迫り来る恐怖に、足がすくんで動けない。決壊した場所から冷気が入り込んだ。


    冬が来ていたのだと感じていると、どうやら破壊された壁の規模は想像以上だったらしいことに気づく。コンクリートの塊の隙間から晴天の空も仰ぎ見れた。



    松田「避けろォォォッ!!」



    僕らはみっともなく、そこらに転がり回って、数秒間続く落石を耐え忍んでいた。


    ≪体術≫の授業を受けておいて良かったと、今、受け身を実戦で初めて使って思った。


    コンクリートの塊が床に打ち付けられるたび、騒音が生まれ、クラスメイトの声は掻き消され、視界は完全に遮断されていく。



    松田「お前ら走れッ!! 誰でもいいッ!! 俺のラボに辿り着けッ!!!」



    この攻撃で何かを悟った松田さんは、そう叫び、声を荒げる。


    何らかの攻撃を受けた希望ヶ峰学園は、もう崩壊寸前だったようだ。


    さっきから地響きが止まらない。


    僕はこの攻撃を仕掛けた奴を一目見てやろうと、足に力を込め……












    足がない。



    慌てて見渡すと、僕の右脚も左脚も僕の身体からは離れた場所にあった。血が足の周りに飛び散っている。おそらくコンクリートの塊が僕の両脚を切断したのだ。痛みがないのはアドレナリンの所為か。


    言いようのない激しい虚無感に駆られ、僕はその場にうずくまる。フラッシュバックする思い出。


    運動会、マラソン大会、登校の記憶、それらはもう、過去のものとなった。


    次に湧いてきた感情は、











    堪えられないほどの怒り。




    僕はほふく前進で少しずつ前に進む。授業でやってて良かったと少しそう思った。


    いや、そもそも授業をしなきゃいけない環境じゃなかったら、僕の足が切断されるなんて事態には陥ってない。


    やっぱり死ね。






    僕は徐々に破壊された箇所から身を乗り出し、何が起きたのかを知ろうとした。














    あまりに巨大だった。


    十数㍍はあるであろう高さを持ち、その八本の足はまるで丈夫な鉄骨のようだ。


    全体的に金属で覆われており、それが人工物であることは一目でわかる。


    僕は、これが夢なら本当に醒めてくれと思い、そして蛇に睨まれた蛙が、相手を見つめ返すことしか出来ないように、ずっとその蜘蛛のような金属の動く塊を見ていた。



  18. 18 : : 2015/12/16(水) 16:19:21

    ーーーーーーー

    朝日奈「ハッ…ハッ…ハッ…!」


    土煙で前が見えない…

    瓦礫が土を巻き上げて、呼吸もしづらいし周りも見えないし!

    瓦礫が飛んでくるってことは私はもうすぐ死ぬ…

    …死ぬ。

    ああ、死ぬのか…。


    朝日奈「…はぁ…はぁ…はぁ……」


    死ぬと理解してしまえば、呼吸は自然と落ち着いた。

    どうせ落ちてくるなら瓦礫さっさと落ちないかな…

    こんなおかしな世界、いたくないし…ね。


    ポタッ…


    朝日奈「………?」


    あれ?雨?

    …それにしては暖かいような……。

    雨なのかな……?

    最期だし、空を見るのも悪くない……かな。


    朝日奈「………!」


    影。

    私よりはるかに大きい、影。

    それが何なのか、土煙なんかで認識できなくなるわけなかった。



    朝日奈「さくらちゃん!!!?」

    大神「…朝日奈よ……ゴフッ!
    …無事か……?」


    雨と思ってたのは、さくらちゃんの血で。

    私の上に瓦礫が飛んでこなかったのはさくらちゃんが庇ってくれてたから…?


    朝日奈「なんで!?
    そんな…さくらちゃんなんでそんな…!」

    大神「…言わせるな、気恥ずかしい」

    朝日奈「馬鹿!さくらちゃんの馬鹿!
    私なんか庇う必要なんてなかったのに…!」

    大神「我がそうしたかったならそうしたのだ…
    後悔はない…!」

    朝日奈「さくらちゃん…」



    松田「誰でもいいッ!!俺のラボに辿り着けッ!!!」


    朝日奈「!
    松田さんの声…!」

    大神「行け…朝日奈よ…」

    朝日奈「さくらちゃんを置いて行けるわけないじゃん!」



    大神「行け!!!」



    朝日奈「っ!」

    大神「我ももう持たぬ…
    ここにいれば時期に危険な目に遭う!」

    朝日奈「で、でも…でも!」

    大神「早くしろ…!」

    朝日奈「……」

    大神「早く!」

    朝日奈「……んね、ごめんね…!」


    私は背を向けて走り出した。

    ラボを目指して。

    涙を拭って。

    涙を拭うのは、土煙より涙が邪魔だから。

    進むのに涙はいらないから。

    邪魔だもん。邪魔だもん。邪魔だもん。邪魔だもん。邪魔だもん…!


    朝日奈「…」


    許さない。

    こんなことになったのは…だって《戦争教育》のせいだから。

    許さない。

    さくらちゃんをこんな風にしたのは《戦争教育》…いいや。

    この世界だから。

    だったら!


    朝日奈「こんな世界私がぶっ壊してやる!
    絶対…!」


    だから涙はいらない。

    邪魔だもん。
  19. 19 : : 2015/12/16(水) 23:28:59


    ーーーーーー



    松田「……」



    松田さんが呆然と立ち竦んでいるのを見かけ、空が明るく見える場所に僕は近寄った。



    山田「どうしましたか?」


    松田「……ああ、お前か」


    松田「どうもこうもねえよ。見たろ? あの蜘蛛」


    山田「ええ……アレは異様ですぞ。多分、僕じゃ何も出来ない」


    松田「……そういうこと言ってんじゃねえの、俺は」


    山田「へ?」


    松田「……お前も知ってるだろ、戦争の『禁忌』」


    山田「き、禁忌……?」


    松田「お前本当にここの生徒か?まあ……いい。いいか、禁忌ってのは俗に言うルール違反のことだ」


    山田「戦争に……ルール違反が?」


    松田「あるんだよ、赤十字の旗への攻撃禁止とか、そんなレベルの話じゃないルール違反が大きくわけて2つ」


    松田「1つ目は『化学兵器』の禁止」


    松田「第一次世界大戦での毒ガスの使用が、明らかに人道性に欠けるっつって問題になった。それが1つ目のタブー」


    松田「ふたつ目は『核兵器』の禁止」


    松田「直接投下されたのは日本だけだが、その破壊力は人知を超えていた」


    山田「……で、それがあの機械の蜘蛛と何の関係が?」


    松田「……お前本当『あ……(察し)』が出来ねえんだな。ニセコイの主人公か?」


    松田「今まで述べたタブーは、これまでのもんだ。現代の戦争のタブーはそれだけじゃねえ」


    松田「あの蜘蛛は<ディアヴォロ>という」








    松田「3つ目のタブーは<ディアヴォロ>の禁止」







    松田「あの蜘蛛の動力源は人間の生命エネルギーを使っている。あの機械の腹の中に、おそらく十数人は生きた人間が入っているだろうな」


    山田「なっ……!? ってことは、もしあの機械の蜘蛛がずっと動けば……!?」


    松田「中にいる奴らは間違いなく死ぬ。それが理由で禁止になった」


    山田「なんてことだ! 急いで助け」



    足に力を込め、蜘蛛へと突っ込もうとした僕の肩を松田さんは強く握りしめる。



    松田「おいおい……馬鹿かお前はッ!?」


    山田「なんでッ!?」


    松田「もうそんな次元の話じゃねえの!!」


    松田「タブーは犯さないから、禁忌なんだッ!」


    松田「今、それが崩れたッ!どんな馬鹿かは知らないが、よっぽど馬鹿らしい!」


    松田「遅かれ早かれ世界は剣を抜くッ!!核兵器と毒ガスにまみれた戦争が始まるッ!!」


    松田「そうなったら、うぷぷ…第三次世界大戦の幕開けだよ!ってレベルじゃないッ!」


    松田「人類滅亡もあり得る……そして、フフ、笑っちゃうだろ……それが」





    松田「今、目の前で起きてるんだぜ」





    蜘蛛は不気味に、ぎこちなく揺れている。赤色のギラギラした獣のような目が僕を見ていた。


    背中にある斑点から、大砲の筒のようなものが伸びている。おそらく、あれが先程の攻撃の正体。そして、その筒はゆっくりと、僕たちの方へと移動していく。


    発射まで、もう数秒しか無いのだろうか。蜘蛛は微動だにしなくなり、筒の位置は固定された。


    僕にできることは何だろう。


    松田さん言うように、もう世界は戦争を始めてしまうのだろうか。


    ただ、それでも……










    山田「僕は戦いたいッ! この国はッ! 死なないぞッ!」





    僕は激昂し、校舎から飛び降りる。


    松田さんが何かを叫んでいるが、内容は吹き抜ける風のせいで耳に入ってこない。


    蜘蛛の足へと手を伸ばし、触れる。手の皮が擦り剥ける感触が、灼けるような痛みと共に襲ってきた。



    山田「痛いけど……ッ! これしきだ……!」




    僕は泣きべそをかきながら、その足を伝って上の方へと移動していく。


    蜘蛛は異常を感知したのか、僕が乗り込んだ足のみを何度も地面に叩きつけた。



    山田「耐え……!!?」





    手が、僕の血で滑る。


    落下していく中で、思い出すのは幾つもの走馬灯。愛しき思い出たち。




    山田「ああ……それでも、僕は守ったんだ……思い出を……数秒でも……」




    目頭が熱くなり、級友の顔を思い浮かべる。


    十数㍍の高さがやけに高く感じた。そろそろ地面だろうか。






    ふと、苗木殿の顔が浮かぶ。


    そうだ。彼は大丈夫だろうか。精神が不安定に思えた。いや、なんで今さらそんなことを。


    なんで苗木殿の顔を最期にーーーーー?









    ーーーーーーーー最期じゃないから。




    誰かが答えてくれた気がした。



    ???「君が救ったんだ……数秒だけど」





    狛枝「だが、その数秒が全てをッ!」









    僕の身体は宙に浮いていた。そうか、これが、77期生の……『兵器』。













  20. 20 : : 2015/12/17(木) 16:11:57

    狛枝「っと…
    流石に口だけじゃ安心できないよね…」

    山田「…どのようにして宙に浮いているかの方が気になってきましたぞ」

    狛枝「流石に安心しすぎだよ…
    …で、左右田クン!
    ソレどうにかなりそう!?」

    左右田「あー…
    それがよ、アレたしか中に人いるよな?」

    狛枝「まあ、そうだね…」

    左右田「どう考えても動力源どうにかしねぇと無理だわこりゃ」

    狛枝「えぇ…
    でもボク予備学科達を救出したりしたくないよ…」

    左右田「しなきゃ世界終わるぞマジで!」

    狛枝「予備学科救出の他に方法ないの?」

    左右田「無ぇよ」

    狛枝「ホントに?」

    左右田「絶 対 だ」

    狛枝「はぁ…」

    山田「あのぅ…先輩……?」

    狛枝「ん?…ああ、どうしたの?」

    山田「助けていただいてありがたいのですが、拙者がここにいると邪魔になる気が…」

    狛枝「確かにそうだね、うん、そうだ…
    キミは怪我もしちゃってるし、安全な所に行ってもらおうかな」


    先輩がそう言うと、拙者は勝手にスライドしていって…

    ホントどうなってんだコレ…


    山田「貴重な体験ですぞ〜…ぁ〜…」


    狛枝「…ふぅ」

    左右田「じゃ、やりますかね」

    狛枝「気は乗らないけどまぁ…
    仕方ないよね…」

    左右田「…さっきレーダーで確認したんだけどよ、中にざっと10人強いた」

    狛枝「やる気削がれるなぁ…
    中にそんなにワラワラ予備学科がいるだなんて考えただけで吐き気するよ…
    しかも今からそこに突入するんだよ?
    やってらんないよ…」

    左右田「んな理由で世界放棄すんなよ!」

    狛枝「冗談だよ…いやホントに…」

    左右田「じゃあさっさと行ってこい!!!」

    狛枝「あいあいさー…」


    とか何とか言ってると…

    いつの間にかボクの頭上には〈ディアヴォロ〉の足が…


    狛枝「あ…
    …あちゃー」

    左右田「『あちゃー』じゃねぇよ!
    お前何してんだよ避けーーー」


    ズゥン…!


    左右田「狛枝ああああああ!!!!!!」
  21. 21 : : 2015/12/18(金) 01:16:54



    蜘蛛の強烈な蹴りは、辺りに土煙を巻き上げ、狛枝の姿を覆い隠していく。



    左右田「ま、まさか……!?」



    俺が動揺していると、土煙を割って何やら浮いている人影が見えて来た。



    狛枝「安心してよ……左右田クン、君の技術力と松田クンの発想は、この程度じゃ死なないだろ?」


    狛枝「『Want To Stey Here(重力のない世界へ)』」


    狛枝「僕の『兵器』の名前だ……覚えといてね」






    Want To Stey Here(重力のない世界へ)



    Student Rank:S

    概要: 重力とは即ち時空のねじれである。身体に取り付けた紐状の装置により、時空の軸を認識し、ある程度自由自在に捻じ曲げる。そのおかげで、重力の強さや方向を自分から半径2〜3メートルまで操れる。








    ーーーーーーーーーーーー







    俺は突き進んでいる。


    何が起こってるかは全くわからないし、もう理解しようと思えねえ。




    大和田「ただ松田先輩のラボに行かなきゃいけないのは、わかる……! わかってるそれだけを、俺はやるッ!!」




    赤い扉のすぐ側まで辿り着き、緊張を隠せない指で扉のボタンを強く押す。


    エレベーターが上がってくるのが、やけに遅く感じ、まどろっこしかった。


    呼吸を荒くしながらも、周囲に気を配る。すると、忙しい足音が近づいてくるのがわかった。


    大和田「クソッ!? 新手か!?」



    俺は懐から拳銃を取り出し、その足音が聞こえた方へと銃口を向ける。


    心臓が抑えることの出来ない速度で、ドクドクと脈を刻み出した。






    朝日奈「ええっ!? ちょ、私だって!」




    その足音は朝日奈のものだった。


    安堵から、一気に腰の力が抜ける。だが、それをあと少しのところで踏ん張った。




    大和田「驚かすなって……あ」




    チーンと間抜けな音を立て、エレベーターが修羅場にギリギリ間に合ったヒーローのように現れる。


    ぶん殴りたいのを我慢した。こんなにムカつく登場はニセコイの主人公くらいだろうと高を括ってたが、他にもいたらしい。





    朝日奈「行こう!」




    朝日奈は何かを決意したかのように、力強い一歩を踏み出した。慌てて、俺も後に続こうとする。


    次の瞬間、真後ろから銃声が轟いた。



    一気に神経が研ぎ澄まされ、瞬時に身体を捻り後ろを凝視する。





    石丸「うぐっ……!?」


    十神「我慢しろ! 走れ! おいお前らァ! ちょっと待て!」




    少し離れた背後には、足から血を流しながらも駆けてくる石丸と、不器用な励まし方をしながら走る十神がいた。


    そしてさらにその後ろに……数人の、予備学科の姿。その中の1人は銃を構えている。






    自分が何をしているかわからなかった。


    だが、ただ、駆けていた。


    石丸たちの方向に。





    朝日奈「大和田……!?」




    そしてそのまますれ違う。




    石丸「なっ!? 兄弟!?」


    十神「振り向くなッ!! 」





    十神「……行くぞッ……!!」






    サンキュー十神。



    俺は、目の前のしけた面をしている予備学科共を見据え、拳を握りしめる。


    自分が何をしているかはわからない。


    まともに考えれば、エレベーターに乗り込み、石丸たちが無事に来ることを祈るべきだったろう。





    だが、自分が何をしているかわからない分、何をすべきかは明確にわかっていた。





    大和田「俺を置いて……先に行けッ!」




    チーンと、拍子抜けした音と共にエレベーターは降下していき、戦いの火蓋が切って落とさた。



  22. 22 : : 2015/12/18(金) 20:49:28



    ーーーーーーーーーー



    石丸「兄弟…すまない…すまない…!」


    朝日奈「…」


    石丸「僕が不甲斐ないばかりに…
    僕が兄弟を…悔しい…悔しい!」


    十神「怪我人は黙ってろ…
    貴様の声はただでさえ大きいからな…」


    石丸「しかし十神君!
    僕は僕自身を許せない…
    …いいや許してはならないっ!」


    十神「…黙ってろ」


    石丸「だって兄弟は僕を守るために…!
    あの場で僕が残っていれば兄弟はーーー」



    十神「黙っていろと言ったんだッ!!!」



    石丸 「なっ!?
    と、十神君…?」


    十神「チッ…
    クソッ…クソッ…!」


    朝日奈「十神…」



    やっぱり十神も悔しいんだ…


    仲間を見捨てたこと、それが十神のプライドも一緒に傷つけたんだ…



    十神「仕方無かった…仕方無かったんだ…
    …クソッ!」


    朝日奈「…誰もあんたを責めないよ」


    十神「……」


    朝日奈「悪いのは十神でも石丸でもない…
    こんな風にした『世界』が悪いんだよ…」



    自然と声に怒気をはらんでしまう。


    ダメ。冷静でいないと。ダメ。ダメ。


    …ダメ。



    石丸「朝日奈君…」


    十神「……この世界の何処に、この俺のことを責める権利がある奴がいると言うんだ」


    石丸「…仕方無かったのか?
    今ならまだ間に合うのでは…」


    十神「おい石丸」


    石丸「…?」


    十神「その命、もうお前1人のものではないだろう?
    無論、俺もそうだが…」


    石丸「何を言いたいのだ…?」


    十神「…生きるぞ、大和田の分まで」


    石丸「……」


    朝日奈「…」


    石丸「僕はまだ…兄弟を諦めたつもりはないぞ」


    十神「ふっ…そうか」


    石丸「ラボにある『兵器』…」


    朝日奈「うん…そうだね…」


    十神「『兵器』に頼りたい気持ちも分かるが…
    試作品だぞ?
    貴様ら、どうするつもりだ?」


    朝日奈「十神が言ったじゃん」


    十神「?」


    チーン…


    そして扉は開く。


    先にあるのは恐らく、私たちの唯一の希望。




    朝日奈「『何も無いよりははるかにマシ』
    でしょ?」



    私は十神に向かって、言った。



    石丸「だな…!」


    十神「…そうだったな」



    十神の顔が少しほころんだ気がした。


    私たちはまだ、諦めてない。

    こんな絶望的な状況だろうと…。

    絶対に諦めない。

    諦める気なんて、ない。



    朝日奈「行こう、みんなが待ってる。」
  23. 23 : : 2015/12/18(金) 23:49:05



    エレベーターから一歩を踏み出すと、何やら円形状に囲まれた証言台のようなものが視界に映る。


    それらの証言台1つ1つに、私たちの顔写真を貼ったプレートが立てかけられており、江ノ島さん達のプレートには赤い罰が描かれていた。




    朝日奈「どういうことだろう……自分の顔写真が貼られてるところに行けばいいのかな?」


    石丸「そういうことだと思うぞ、さ、行こう」




    石丸が前に進むので、私もそれにつられて足を前に出す。


    すると私たちの存在に気づいたのか、男女の二人組がひょっこりと証言台の真ん中から現れた。





    ???「……ん、おっ、もう来たのか」


    ???「思ったより早かったわね」






    石丸「あっ!? 貴方たちは!? 九頭龍先輩と、小泉先輩ではないですか!?」


    九頭龍「おお、よく知ってるな」


    小泉「遅れてごめんね、さあ……反撃開始と行こうよ」



    十神「……」


    朝日奈「よかった。先輩たち……間に合ったんだ……!」


    朝日奈「十神、私たちも行こ?」



    私は後ろにいる十神に視線を向ける。







    彼は銃を構えていた。照準は九頭龍先輩の方に寸分の狂い無く定まっている。




    十神「……ッ!」



    十神のその目から、信じられないほどの殺気が溢れかえっていた。




    石丸「な、何んだ……!? 十神君!? まさか……」


    石丸「裏切るつもりかッ!?」


    小泉「……!」


    九頭龍「……」


    朝日奈「……十神、馬鹿な真似はよしてよ。血迷ったの? さっきまでのかっこいいセリフは何だったのよ。発言と行動が一致してないなんて、まるでニセコイの主人公だよ」











    十神「……え、何? おかしいのは俺か?」


    十神「違うな……お前ら、もう少し思考を働かせろ」


    十神「疑問を抱け」


    十神「なんでこの先輩がここに居るのかっていう疑問を……!」



    十神「俺たちがここを目指してることを知ってるのは、俺たちだけのはずだろ?」


    十神「さすがにあの爆音の中で、近くにいた俺ら以外に松田先輩の命令が聞こえたとは思えない」



    九頭龍「……おいおい、何を言ってるんだ十神、俺たちはお前らの戦力、もとい『兵器』が必要だと判断したから確保しようと思ってだな」


    十神「フン、お前それおかしいだろ。『兵器』が必要だと思ったのなら、最優先すべきは俺たちの安全確保だ……『兵器』は特性に合った超高校級が使ってこそ意味がある。俺たちが死んでしまったら何の意味もない」


    十神「だのに、なんでお前らは俺ら放置してここに来てるんだ。俺らが放置プレイで悦ぶ人種だとでも思ったか? 親切心でやったのか?」


    十神「まあ、俺も超高校級の完璧とはいえミスはする……全て俺の勘違いかもしれない」



    十神「だが……俺を納得させてみせろ」




    小泉「ちょっと! いい加減にし」




    小泉先輩が十神に非難を浴びせようとすると、十神の拳銃から火花が飛び散った。


    小泉先輩の顔に、一筋の赤い線が刻み込まれ、そこからすーっと血が流れていく。



    十神「不審な動きは全て射殺だ、OK?」




    九頭龍「……」





    九頭龍先輩は黙りを決め込んだまま、十神を微動だにせず見据えている。




    十神「……言っとくが、黙秘権なるものはないぞ。ここは法の及ばない地下だからな」


    十神「いや、戦争に法を持ち込むのがそもそもナンセンスだったな」



    十神「……まあ、お前らが裏切り者だったとしても、それはいい」


    十神「大切なのは、お前らの勝率だ」










    十神「教えろ、半分より上なら俺が裏切ってやる」





  24. 24 : : 2015/12/19(土) 20:03:08


    ーーーーーーーーーーーーー


    桑田「あああっ…腕ッ…!
    オレの腕がぁああああ!!!!!!」



    叫び。


    桑田の右腕は無数の瓦礫に下敷きとなり、その光景は野球人生の再起不能を否応なく叩きつけた。



    桑田「何でだよ何でだよ何でだよ何でだよ何でだよ何でだよ何でだよ何でだよ何でだよ何でだよ何でだよ何でだよ何でだよ何でだよ何でだよ何でだよ何でだよ何でだよ何でだよ何でだよ!!!!!!?
    野球…!オレ野球が…野球がぁっ!!!」



    そのむき出しの感情は、さらに状況を悪化させる。


    何故なら、敵の目的はーーー。



    桑田「腕がぁ…!
    オレの腕…野球…!もうオレ野球が…!!!」




    希望ヶ峰学園生の殲滅。



    桑田「……あ?…誰……」


    オレが叫んでいた間に、誰かがオレの顔を覗き込んでいた。


    土煙のせいで顔はよく見えなかった。


    ただ仲間ではないと理解できた。




    だって、今オレの目の前には銃口があるから。




    パンッ



    と、乾いた音が響いた。


    それは1人の人生を終わらせるには、十分すぎる音だった。
  25. 25 : : 2015/12/19(土) 21:07:20
    期待!液体!キタアアアア!!
  26. 26 : : 2015/12/20(日) 00:29:47
    >>25
    ンドゥールさんありがとうございます!
  27. 27 : : 2015/12/20(日) 00:44:02




    日向「……」



    身体を痙攣させた赤髪の男の動きが止まるのを確認して、俺はその場を離れようとする。


    これでいいんだと自分に言い聞かせ、拳銃を強く強く握りしめた。



    日向「……なあ、七海、お前だったらなんて言うかな」


    日向「やっぱ、復讐なんて馬鹿らしいって言うんだろうな」


    日向「……でもな、お前がいない世界でいくら生きてても馬鹿らしいんだ」


    日向「俺の生きる理由は復讐、シンプルだろ」




    伸ばした足を止め、踵を返し、本校の生徒を再び見つめる。高校生に有り勝ちな反骨精神の塊のような服装だと感じた。


    こんなしょうもなさそうな奴の命と、七海の命が平等か? いや、せめて平等にして欲しかった。


    俺は引き金に手をかけ、何度も銃弾をそいつの身体へと撃ちこんだ。撃ち込まれる度、腕が小刻みに揺れていた。


    これは俺の決別の死体蹴り。






    日向「……本校の生徒、話せば分かる奴もいた。何人かはこちら側についてくれた」


    日向「だけど、それでも、誰も七海を救おうとしなかった。悪だ。だから終わったら殺す」


    日向「けど……それは俺も」





    復讐が終わったら、俺も死のう。


    生きる理由は無くなるし、何より俺は俺が殺したい人物の中のトップクラスだったから。



  28. 28 : : 2015/12/20(日) 22:09:00

    日向「…」



    自分の中にある矛盾を飲み込んで、俺は視界の悪い道を歩む。


    …ん?


    誰か倒れてる……また78期生かな。


    躊躇わずに撃つ。さっきの様に。


    まあ…元から躊躇ってはないけど。


    別に悟られてもいい。音を立てて近づく。


    顔を確認できる所までーーー。



    日向「……!
    お前は…」


    苗木「キミは…この間の廊下の…」


    日向「…78期生、苗木誠だな」


    苗木「そっか…拳銃…返り血…
    …殺すんだね、ボクを」


    日向「ああ、サヨナラだ」


    苗木「いいよ、早く殺してくれよ…
    脚が無くなっちゃったんだ…どの道出血多量で死んじゃうしね…」


    日向「……脚…」



    こいつも…戦争に "奪われた" のか…


    可哀想にな…俺が楽にしてやるよ。



    日向「…どうだ、楽しかったか?
    今までの学園生活は」


    苗木「ははっ、どうだろう…
    《戦争教育》なんて無ければ…かな」


    日向「っ……!
    …そっか…お前もそう思うか」


    苗木「やっぱりキミもそう思う?
    始めてキミも見たときにね、思ったんだよ」


    日向「…?」



    苗木「『ああ、ボクと同じ目をしてるな』って」



    日向「!」


    苗木「やっぱり間違ってなかったよ…」



    同じ目…か…。



    日向「お前の目は真っ直ぐで綺麗でさ…
    俺なんかとは全然違うよ」


    苗木「…真っ直ぐだと思うよ?キミの目」


    日向「…」


    苗木「確かに迷いはある…
    けどさ、何て言うか…1つの目的のために突っ走ってる?気がしてさ…」


    日向「……そう見えるなんて、お前お人好しだろ?」


    苗木「ははは…よく言われてたよ…」


    日向「…」


    苗木「…?」


    日向「ごめんな、お前を殺すことしかできなくて」


    苗木「仕方ないよ…これが《戦争》でしょ?」


    日向「ああ…そう……だな」


    苗木「……ねえ、名前は?」


    日向「…【予備学科】日向創 だ」


    苗木「日向クン…か」


    苗木「いい名前だね」


    日向「…!」



    なんでお前は…そんな笑顔でいられるんだよ…!


    なんで七海と同じ台詞を!


    同じ笑顔を俺に向ける!?


    なんで!



    日向「決心…鈍っちまうだろ……!」
  29. 29 : : 2015/12/21(月) 23:24:44



    だが、俺はその鈍りを、心を削り研ぎ澄ます。



    日向「……お前は、俺が殺す。他の誰でもない、俺が殺さなきゃ駄目なんだ」


    日向「そんな気がする」



    苗木「……じゃあ、最後に答えていってくれ」


    苗木「僕が抱えてた問題、君なら解けるんじゃないかと思う」






    苗木「……『何もしなかった僕が悪なのか? そして動いた君が正義なのか?』」






    日向「質問の意図は凄えわかるよ。だからはっきりという。俺から言わせればお前は『悪』じゃない」


    日向「でも『正義』でもない。苦しんでる人に救いの手を差し伸べ無かったんだからな」


    苗木「……じゃあ、君が『正義』なんだ?」


    日向「ああ、俺はそう思う。そうじゃなきゃこんなことしねえよ」


    苗木「……ハァハァ……ねぇ、日向先輩」








    苗木「僕は君が『悪』だと思う」









    日向「どういう意味だそりゃ?」


    苗木「その言葉通りだよ。君が『悪』だ……と、思ってる」


    苗木「確かに、僕と君は見つめている場所は同じだ」


    苗木「けど、君は踏み出したッ……世界に対抗するために。僕はその場に留まった。君は留まることを『悪』と呼ぶんだろ? じゃあ僕には、踏み出すことこそが『悪』なんだ」


    苗木「みんなが思ったことを口に出来る奴が『正義』で、多数派に流された方が『悪』だなんて馬鹿げてるッ……!」


    苗木「僕は今まで唇を噛み締めながら踏みとどまってたんだ……! 世界を変えるより、自分を変える方が誰も悲しまないからッ!」


    日向「それは違うぞ。俺たちは踏み出さなきゃいけないんだッ!変わろうが、弱い奴は虐げられるッ!なら……」


    苗木「ならどうする?次は強い奴が虐げられる世界を作るつもりなの?」


    日向「……お前とは、決定的に分かり合えないようだな」


    苗木「うん、それが、戦争だから……」






    苗木「そして、本当にありがとう、舞園さん」







    疑問はあった。それは、苗木誠は何故この出血量で死ななかったのかという疑問が。


    誰かが手当てしたと考える方が普通だろう。しかし、俺にはそれを考えるための精神的余裕が無かったのだ。



    瓦礫の陰からアタッシェケースが宙を舞い、苗木の手元に叩きつけられる。





    日向「これは……『兵器』ッ……!?」







    苗木「本当にありがとう、舞園さん、誰よりも早くラボに到着してくれて。そして、僕の『兵器』を優先して運んでくれて」


    苗木「他の人にも数個渡したファインプレーを褒めたいけど、とりあえず今はゆっくりして、流れ弾の傷を安静にさせといて」






    苗木がアタッシェケースを開き、中から一対ではなく、左手のみに着用出来る手袋のようなものを取り出す。手袋にしてはやけに機械的だった。







    苗木「『兵器』の名は」


    苗木「『そして本当にありがとう(死ね死ね消えろ)












  30. 30 : : 2015/12/22(火) 00:24:26

    立ち上がる事をせず…いや、できないのだが。


    苗木は俺を真っ直ぐに見据えた。


    その目は、輝いてなどなかった。


    酷く曇っていた。俺みたいに。



    苗木「改めて…《戦争》しようか?」



    こいつは…


    苗木誠(こいつ) は…!



    苗木「日向創クン?」


    日向「お前はここで殺す!
    絶対にッ!!!」


    言い知れぬ恐怖を抱いていた。


    冷静になんて、なれない…!



    苗木「…」


    日向「っ!」


    脚がないんだ!こいつは動けない!


    落ち着け!落ち着け!落ち着け!


    頭に一発ぶちかますだけだ!それで終わり!


    それで俺の勝ち!こいつは死ぬ!


    そうだろう!?そうだよな!!?



    苗木「…そうやってキミがボクに銃を向けるからさ、ボクもキミに殺意を向けなければならないんだよ?」


    日向「はっ!
    ハッタリかよ…!お前それで何をするっていうんだよ!?」


    苗木「こうするの」



    ーーーー瞬間。


    俺が銃を握っていた右手が。



    日向「あれ?」



    『消えていた』



    苗木「『ありがとう』、ボクに殺意を向けてくれて…
    だから『消えろ』」







    そして本当にありがとう(死ね死ね消えろ)


    Student Rank : S


    ボクに向けられた殺意は剥き出し。
    そんな生臭くて忌々しいモノを向けられるのならば、いっそ『消して』しまおうかーーー。

    《兵器》の装着者に向けられた『殺意』を感知、そして抹消。
    向けられた『殺意』だけ、相手が抹消される規模は拡大する。
    抹消とは即ち、無。






  31. 31 : : 2015/12/22(火) 20:35:01



    希望ヶ峰学園の戦争教育の科目は全てで4つ。


    『銃火器』『体術』『情報』『戦争倫理』


    これら1つ1つに授業や定期考査を通して内申点をつけ、順位をつけていく。


    生徒ランク、通称『Student Rank』は上から、『S』『A』『B』『C』があり、戦争教育の科目うち、どれか1つでも1位を取ったものだけに『S』ランクが与えられる。







    苗木 誠……




    『体術』11位。


    『情報』12位。




    『戦争倫理』欠点。











    ……『銃火器』1位ッ!!









    俺は苦痛に顔を歪め、叫び声を上げながら苗木誠から数歩飛び退いた。


    右手から溢れ出る血を糸を使って絞り、出血を少しでも抑える。




    日向(苗木が『銃火器』で1位ってのは聞いている……!だったら、『兵器』も『銃火器』に沿ったもののはずッ!)


    日向(だがなんだこれは……!?)




    あまりにも異質過ぎる。






    苗木「……どうしたの?」


    苗木「向けろよ……殺気」



    日向「グフッ……ハァハァ、つくづく羨ましいな……」


    苗木「……」


    日向「才能ある奴は……みんなが自分を犠牲にして手を貸してくれるんだろう?」


    日向「けど、お前らはそれをちっとも悪びれないし、報いようともしない」


    日向「なぁ、『七海千秋』……って知ってるか?」


    苗木「……いいや、熱膨張なら知ってるけど」


    日向「だよなぁ!? 知るわけねえか! お前らみたいな優秀な奴がいちいち道草の雑草なんて見てる暇ねえか!?」



    日向「……いたんだ。予備学科に」



    日向「天使みたいにいい子だった。現実に絶望して、つまんない顔した予備学科の連中に希望を与えてくれた。無論、俺にも」


    日向「……ある日、本校の奴らの『兵器』を開発するための人体実験が予備学科で始まった」


    日向「怪我人は出ないって説明で聞いてたが、七海はその実験の事故で死んじまった」


    日向「希望ヶ峰学園は、何の謝罪もしなかった。謝罪したら……自分たちの罪を認めることになるからな」



    苗木「なるほどね、それが動機ってわけか」



    日向「ああそうだよ!! これが戦争だ!! 人権という人権が蹂躙され、涙を血で覆い隠す!!!」


    日向「だから俺が、変えるッ!!世界が戦争の 瀬戸際にいる今のうちにッ!!!」





    苗木「……僕からしたら、君の方が羨ましいんだ」


    苗木「いいよね……自分の考えを表に出せて、それに協力してくれる仲間もいて」



    日向「ああ!! なんでみんなが俺についてきてくれるか教えてやろうか? 俺が完膚なきまでに正しいからだよ!!」


    苗木「ああ、君の考えは正しいと思う。ただ……行動は完膚なきまでに『悪』だ」


    苗木「僕は、家族が好きだ。友達が好きだ。朝日を見るのが好きだ。弁当を友達と食べるのが好きだ。小鳥を見るのが好きだ。海老名ちゃんを崇めるのが好きだ」


    苗木「このクソくだらない日常を守るために、僕は最悪な世界を守らなきゃいけないんだッ!! 矛盾を心に抱えながらッ!!!」


    苗木「君が羨ましいッ! 喪うものが何もないから何でも出来るんだろ!?」


    苗木「だったらかかってこいよ……! 決着をつけよう……! 君と僕でッ!」



    日向(決着……こいつの『兵器』に殺気を見抜かれると消される……! どうする……!?)


    日向(……いや、そもそも、こいつは……!?)





    日向(どんな方法で攻撃しているんだ……!?)






    そこが突破口な気がした。



  32. 32 : : 2015/12/22(火) 23:26:49

    苗木「…どうしたんだよ?
    ほら、早くかかってこいよ!
    まさかさっきので怖気付いたのか!?」


    日向「っ!」



    俺は激情に任せて、腰に下げていたもう一丁の拳銃を左手で抜き取り、苗木に対して構えた。


    こんな時のために、左手だけでも撃てるよう訓練は受けている。


    引き金を引くと同時に撃鉄も引きあがる銃だ。


    まさに『こんな時のため』の銃。


    だから問題はない。


    望み通り、決着はつく。


    …相手が普通であれば。



    日向「…」



    さっきまでとは対照的に、俺たち一言も喋らずに互いを見据えている。



    場に漂う雰囲気のお陰で、幾分か頭を冷やすこともできた。


    ………。


    本来であれば俺が圧倒的有利。


    いや、負ける要素はない。


    ーーー本来であれば、だが。




    日向「………」


    苗木「……」




    拳銃の標準を苗木の眉間からブレさせることなく、俺は頭で必死に考える。


    こいつはどうやって俺に攻撃を加えた?


    俺はどのタイミングで腕を失った?


    腕を失う前に苗木は何かモーションを行ったか?


    何をした?何をしていた?何を見逃している?



    日向「………」


    苗木「……撃たないんだ?」


    日向「なんだよその言い方…
    まるで撃ってほしいだな…」


    苗木「ははは!
    そんなわけないじゃん!
    やっぱりキミ頭おかしいよ!」


    日向「ッ……!」



    こいつの挑発に乗るな!今は考えろ!


    考えろ!日向創!


    こいつの1つ1つの行動、言動に何か意味があるはずなんだ!


    思い出せ!思い出せ!何でもいい!



    日向「…?」



    『撃ってほしい』


    言動を整理しろ…。


    今までの苗木の言動…その全て…。


    俺が右腕を失ってからの言動…。


    全て整理し、まとめろ…!


    何か違和感を感じる!


    なぜ『撃たれたがってる』?


    これはおかしいだろう?


    撃たれる事によって《兵器》が作動するのか?


    …いや、俺は『撃っていない』


    作動条件(トリガー) は、行動ではない…


    もっと別…脳の電気信号だとかそのレベル…!


    ……?


    脳の、電気信号……?



  33. 33 : : 2015/12/23(水) 23:14:05



    まさか、脳が発する微弱な電気信号を感知して攻撃をしているのか……!?


    『兵器』の開発には、超高校級の心理学者が関わっているとも聞く。殺気を見抜き攻撃を仕掛けるのも不可能ではないのかもしれない。




    日向(だが、しかし、それをどうやって……!?攻撃は見えなかったぞ……)





    苗木は膝をついたままこちらをジッと見つめ、荒い呼吸をしながら口を開いた。




    苗木「……ハァハァ、まあ、さすがに欠陥品だ」


    苗木「まだ、『完成』してない。二回発動したら何分間かのクールタイムがいる。海老名ちゃんルートを続けてやってたら、興奮で体力がもたないのと同じだよ」






    苗木「……けど、まだ、あと『一回』だけ発動出来る」


    苗木「構えろよ、日向 創……!」





    日向「ああ、もうわかった……」


    苗木「……?」


    日向「殺気を感知されて、俺の攻撃の前に攻撃されるってことがわかった。そして、それを防がないかぎりお前に攻撃は到達しないってことも」


    日向「……けど、わからない。お前がどうやって俺に攻撃してきているのかが」


    苗木「じゃあ、どうする? 普通に射殺される?」


    日向「……いや、わかったことはもう1つある」





    日向「わかったんだッ!真に撃つべき場所がッ!!」



    俺は自分の頭部に銃口を合わせる。そして息を大きく吐きながら、引き金を引いた。


    拳銃が大きな破裂音を轟かせながら、俺の手の中で震え上がる。



    日向(何度も実行した……その度に七海の顔を思い出すから、何度も失敗した……)


    日向(自殺を上手い具合に失敗する方法は簡単だ。七海を思い浮かべればいい)


    日向(そして……意識は消えていく)




    俺は薄れゆく意識と共に、身体の力がどこかへ解き放たれる感覚に陥った。








    『だがッ! 日向 創 は、握りしめていたッ!』



    『拳銃をッ!』





    苗木「ま、まさか……!? 『昏睡状態』で撃つつもりかッ!?」


    苗木(昏睡状態に陥ると、脳が正常に作用しなくなる……! 確かにそれなら殺気すら脳は発さないかもしれないッ!ただ、その状態で引き金は弾けないぞッ!?)





    『これで終わってもいい、日向 創 は、そう思っていた。だからこそ、半端な自殺により出来た、死ぬ前のその一瞬』


    『脳は全ての機能を排除し、最期の目的を果たすために死力を尽くしたーーーーー』










    日向「引き金は……弾ける」






    『日向 創の肉体が地面に打ち付けられたのと同時に、苗木 誠へと銃弾が突き進む』




  34. 34 : : 2015/12/24(木) 14:33:57

    倒れた日向創は、動かない。


    銃弾が捉える先、それを見届けることはない。



    日向「…」



    勝敗は、既に決していた。



    苗木「……ごめんね、ボクの勝ちだ」



    『殺意』とは、即ち『意志』である。


    『意志』は宿る、時には人へ。


    時には、物へ。




    苗木「ゼェ…ゼェ…!
    はっ、はははっ…もう限界だ…
    体力の消耗が激しすぎる…」


    苗木「日向創…
    恐ろしいよ全く…!
    トドメを刺さなきゃならない!今ここで!」


    苗木「……けど、ボクが限界だ…
    少し眠るよ…少し…」




    日向創は勘違いをしていた。


    まず、《そして本当にありがとう(死ね死ね消えろ) 》が感知するのは微弱な脳の電気信号などではない。


    殺しを行おうとする『意志』、つまり『殺意』を感知する。


    それが装着者に向けられて、始めて作動するのだがーーー。



    『殺気』と『殺意』とは、似て非なる物だ。



    殺そうとする『気迫』、これが『殺気』


    殺そうとする『意志』、これが『殺意』だ。


    苗木誠も、撃たれる直前までこれを誤解していた。


    日向創が取ったのは『殺意』ゆえの行動であり、その一連の動作に『殺気』はなくとも『意志』は宿っていた。


    苗木誠を殺そうとする、意志。


    その『意志』が引き金を引く指に集中し、そして引き金を伝って拳銃へ。


    弾丸とともに、『殺意』は放たれた。


    つまり。


    そして本当にありがとう(死ね死ね消えろ) 》は、弾丸に込められた『殺意』に反応し、そして弾丸を抹消したのだ。



    苗木「…」


    日向「…」



    この戦場において安らかに眠る2人は、場違い以外の何者でもなく。


    しかしどこか晴れやかな顔をしているのは果たしてーーー。


    眠りについた2人は夢を見る。


    いつまでも続くと願ったあの日々を。


    平穏はもう、夢の中にしか存在しない。
  35. 35 : : 2015/12/24(木) 18:24:59
    期待です!
  36. 36 : : 2015/12/24(木) 22:41:28
    >>35
    期待アリーヴェデルチ
  37. 37 : : 2015/12/24(木) 22:59:41




    同刻。


    異質な一室に佇む五人は、その緊迫した雰囲気に呑まれないよう、互いに敵対関係にある人物を睨めつけた。


    だが、その中の2人は、誰を見ていいかがわからない。




    朝日奈「本当に……それ、本当に言ってるの!? 十神!!」


    石丸「嘘だと言ってくれ!」


    十神「悪いな。俺は本気だ。そして九頭龍先輩、さっさと教えてくれないか? お前ら側の勝率を」



    少しの沈黙の後、九頭龍は重苦しく口を開く。



    九頭龍「おそらく97%、俺たちが勝つ」


    朝日奈「9……97ッ!? う、うそ……!?」


    小泉「嘘じゃない。根拠はあるの。77期生のSランクが3人こちら側についたわ」


    石丸「4人中……3人もッ!?」


    十神「おいおい、確かにそれは勝つための立派な根拠だが、証拠はないだろ、信じられるか」


    九頭龍「いや、証拠ならある。それは俺たちが『正しい』側だってことだ。誰だって『正しい』方につきたいだろ?」


    小泉「そういうことね。強いて言うなら、あなたたちの友達もひと……」


    九頭龍「おい……言い過ぎだ」


    小泉「あ、ごめんごめん」


    九頭龍「……まあ、そういうことだ」


    十神「『正しい』……か、俺は自分で正しいとか間違ってるとか言う奴のことは基本信じてないんだよ。だって、どちら側も正しい部分があるからだ。戦争なんてそんなもんだろう」


    十神「どっちも正しいから争ってるんだ」


    九頭龍「……それは違うな。いや、違うって問題じゃなく、その考え方は弱いぞ十神」


    九頭龍「自分の行動が正しいと思い、相手が悪だから攻撃するッ! 白と黒の決別をつけるッ! それが戦争をイキキル覚悟だッ!」


    九頭龍「お前には覚悟が足りない」


    十神「……」


  38. 38 : : 2015/12/25(金) 23:58:29

    十神「…イキキル覚悟……か」


    九頭龍「…あ?」


    十神「そいつがあれば俺は大和田を救えたか?」


    十神「桑田を救えたのか?」



    俺は目の端に捉えていた。


    大和田の顔写真に赤い罰が浮かび上がる瞬間を。


    同様に、桑田も。


    そして…大神も。


    3人が死んだことを、悟った。



    十神「もう既に3人もッ!
    貴様らの裏切りで仲間が死んだ!!!」


    石丸「ま、待ってくれ十神君…!
    き、ききき兄弟が死んだなどと決めつけないでくれたまえ!」


    十神「今はお前と話してるんじゃない!
    目の前の『敵』と話してるんだッ!
    口を慎め愚民が!!!」


    朝日奈「え?………え?桑田も?なんで?え?」



    俺の発言の根拠を理解できないのか、2人は混乱している。


    …。


    十神「俺は理解したくない!
    何故今ここまで貴様らに対して怒り震えているのか!」


    十神「友情などという物は邪魔でしかない!
    仲間意識など持つだけ無駄!
    そう信じて生きてきた!」


    十神「それは間違いだったと気づかされた…!
    だから俺は今度は…ずっと続くと信じた…」



    本当は、理解している。



    小泉「…」


    十神「ああ、分かったよ…
    これだけは『理解』できた」


    九頭龍「…」


    小泉「っ…」




    ーーーーーーーだから。



    十神「俺は俺のために『もう仲間を死なせない』
    それが俺の覚悟であり、イキキル理由だ」




    九頭龍「つまりテメェは…仲間を傷つける存在こそを『悪』と捉え、攻撃するんだな?」


    十神「ああ、その通りだ」


    九頭龍「そうか…悪かったな…
    テメェは『覚悟』してきてる奴だった…」


    十神「訂正どうも…」





    十神「だから死ね。」


    小泉「!!!
    九頭りゅーーー」



    引き金を引いた。


    発砲音が部屋に響き渡る。


    インターバルは無かった。


    狙いにも狂いはなかった。


    俺は確実に、目の前のチビの眉間にお見舞いしてやった。



    ーーーーーーーーなのに。




    十神「…なるほどな、それが《兵器》ってわけか」



    目の前には、両手にメリケンサックの様な見慣れない武器を取り付けた九頭龍先輩がいた。


    右手から僅かに煙が出ている…



    つまりこいつは、銃弾を掴んだ……!



    九頭龍「ご名答…これが俺の《兵器》だ」


    小泉「……この選択、きっと後悔するよ?」


    十神「はっ…最後通告か?
    馬鹿馬鹿しい…」



    十神「十神の名を冠した時点で、俺の人生は後悔だらけだったよ!」


  39. 39 : : 2015/12/26(土) 23:14:18



    十神(だがしかし九頭龍の『兵器』、迂闊に近寄れんッ! 1回だけ退くッ!!)



    俺は足で地面を蹴り上げ、後方へと逃れようとする。身体が宙に浮いたその瞬間。


    九頭龍が右手を突き出し、若干地を離れた感じで高速移動しながら迫ってきた。



    九頭龍「体制は立て直させないッ! 一度崩しかけたジェンガは二度と元には戻さないッ!」


    十神「貴様ッ……!」



    俺は冷や汗を垂らしながら、即座に反応し、銃弾を見当違いの方向に撃ち込む。


    すると、九頭龍の動きはだんだん遅くなっていき、奴は悪態をつきながら地に足をついた。




    九頭龍「テメー……俺の『兵器』のシステムを理解したってのか?」


    十神「さあな、ただ、『動くものに無差別に反応』するってことはわかったぞ」


    十神「『短所って長所じゃん』とドラゲガイが言ってたのを思い出すな。確かに短所は長所だ。無差別に反応するから銃弾にも対応出来る」


    十神「……だが、無差別に反応してしまうからこそッ! 『余計な物の動き』が起こった際にはいちいち電源を切らなきゃいけないらしい」


    十神「それを踏まえた上で、俺は『こうする』」




    俺は腰に掛けていたもう一丁の拳銃を取り出し、身につける。





    十神「二丁流だッ! 果たしてお前の『兵器』はどっちの銃弾に反応するんだろうな?」



  40. 40 : : 2015/12/27(日) 12:01:11

    俺は同時に、その2丁拳銃を炸裂させた。


    一方は右、一方は左…


    全く逆の方向へと進んでゆく。


    九頭龍先輩の両手は否応無しに銃弾へと反応。


    そして九頭龍先輩が両手を広げた瞬間。




    十神「バンッ」




    今日何度目かの発砲音の後、九頭龍先輩のワイシャツは赤く染め上げられた。




    九頭龍「ぐぅっ……!?」


    十神「答えは『どちらにも反応する』でした…と」


    九頭龍「十神ィ…!
    テメェ左手も追尾機能が施されてるって分かってやがったのか!?」


    十神「は?そんなわけないだろ?
    ただの『勘』だよ」


    九頭龍「…」


    小泉「……わかった」


    九頭龍「チッ…
    こいつぁヤベェかもしんねぇな…」


    九頭龍「…あー、勿体ねぇよ……
    テメェぐらい頭の切れるやつ殺しちまうってのはよ…」


    十神「ほう…傷を負っておきながら大した自信だな?」


    九頭龍「テメェは何にも分かってねぇ…
    この《兵器》のシステムの理由をよ…」


    十神「…何?」


    九頭龍「この《兵器》にこんなシステムがついてる理由はな…」




    瞬間。


    小泉先輩がこちらに向かって走り出した。




    十神「なっ!!?」



    カチッ…


    しまった!右の銃はさっきので弾切れ…!?


    あまりに突然の事で気が動転した!



    小泉「なんで『こんな』システムが備わってると思う?」



    そして小泉先輩はあっさりと俺の横を駆け抜けてゆき…


    目の前には右手を突き出した状態の九頭龍先輩がいた。



    九頭龍「正解は…
    テメェを殴りに行くため、だ」






    I don't think you(殴るだけの簡単な作業)


    Student Rank : A


    概要 : 備わったシステムは、『敵』に近づき殴るためのもの。
    本来付与された《兵器》としてのシステムは、『単なる身体能力強化』である。






    九頭龍「よォ、十神…
    これからテメェを殴るが…
    テメェがどんなに痛がろうが許しを乞おうが泣き叫ぼうが…」


    九頭龍「『俺はお前の事を一切考えない』」

  41. 41 : : 2015/12/27(日) 13:19:27
    期待!
  42. 42 : : 2015/12/27(日) 21:32:03
    >>41
    期待ありが銃
  43. 43 : : 2015/12/27(日) 21:46:37



    九頭龍から放たれた拳が、俺の顔面を鋭く捉える。歯が抜け落ちた、普段味わない奇妙な感覚。


    口から血が飛び出し、舌を鉄の味が埋め尽くした。



    十神「グフッ……」



    眩暈も引き起こり、ふらついていると、後ろから強烈な蹴りを浴びる。


    背骨が悲鳴をあげ、俺は膝をついた。



    九頭龍「ナイス小泉」


    小泉「どうも」



    正面と背後で会話がなされ、俺は自分自身が敵に挟まれていることに気づく。



    九頭龍「……『お前は後ろにも向かえない』し、『俺にも向かってこれない』」


    九頭龍「『お前が向かうべき道はどこにもない』」




    十神「……なら、それでいい」


    十神「俺はどこにも向かわなくていい、だから頼んだ、石丸、朝日奈……」




    石丸・朝日奈「「任された!!」」



    奴らは既に、自分の顔写真が貼られてあった場所に走り出していた。



    小泉「なっ……普通なら、仲間を助けようと動くはずなのにッ!」


    小泉「あんた……信頼ないの?」




    本当は喋るだけで猛烈な痛みが腹部を襲うのだが、黙っておくのは俺の性分が許せなかったので、俺はふてぶてしく小泉に話し出す。



    十神「いや、信頼はされてる……見捨てるのと信頼は同意義だ」



  44. 44 : : 2015/12/27(日) 22:46:41
    期待です!!DE様!たけまん様!
  45. 45 : : 2015/12/28(月) 18:56:38
    >>44
    ありがとうございます!
  46. 46 : : 2015/12/28(月) 19:17:43


    小泉「くっ…!」


    十神「いいのか?動いて…
    それとも九頭龍先輩も一緒に連れて行くか?」


    小泉「っ……!」


    九頭龍「……まあ、いい
    テメェさえ殺れりゃあ後の2人はハッキリ言ってクズだからよ」


    十神「はぁ…
    なにも分かってないな…」


    九頭龍「あ?」


    十神「なにか?
    貴様はまさかあいつらの《兵器》のこと調べ上げたっていうのか?」


    九頭龍「はぁ…
    なるほどそういう事か…」



    ドッ‼︎



    十神「っ…!」



    腹に一発だけでこれかよ…!



    十神「ゼェ…ゼェ…ゼェ…」


    九頭龍「まあお前さっきも言ったけどよ…
    例えテメェら全員が《兵器》使おうが勝てるんだわ…97%」


    十神「は…ははっ…
    俺たちなめすぎだろ…おいおい…」


    九頭龍「…」


    小泉「…でも確かに十神の言う通りだよ」


    九頭龍「…あ?」


    小泉「確実に勝たなきゃいけないよね?
    3%を潰さなきゃ…じゃない?」


    九頭龍「……まぁ、確かにそうだ」


    十神「……チッ」



    気を引いて時間を稼ぐつもりだったが…


    小泉先輩が冷静すぎたな…



    十神「ふぅ…!
    おい朝日奈!石丸!もういいか!?」


    石丸「任せたまえ十神君!
    《兵器》の扱いは今の時間で心得た!」


    朝日奈「うん、石丸に同じく
    ……いつでも『殺』れるよ、うん」


    十神「それは頼もしいな…
    …とりあえず俺を助けろ」


    石丸「無論ッ!!!」



    そう言う石丸の右腕には腕章…



    九頭龍「…あぁ?腕章?
    《兵器》としてはいささかどうなんだそりゃあよ…」


    小泉「でも松田が創ったんだよ?
    どんな物でも《兵器》として恐ろしすぎるのはアタシたちがよく知ってるじゃん」


    九頭龍「…だな」


    石丸「先に謝っておこうか!
    裏切り者とはいえ先輩に無礼を働くことをなッ!」
  47. 47 : : 2015/12/28(月) 21:27:03



    石丸は腕章を腕に身につけたまま、その腕の方を地面に向けて倒れこんだ。


    俺には意図は読めないが、おそらくそういう『兵器』だと考えるしかあるまい。


    石丸によって身体で隠された腕は、ここからでは確認出来ず、先輩達も石丸の言動に精一杯の警戒を敷いてるようだった。



    九頭龍「……オイオイオイオイ、何やってんだ? お寝んねにはまだ早いぞ?」


    石丸「ええ、承知しています。それに、今から寝るのはあなた達の方ですから」


    石丸「永遠に」




    溢れ出んばかりの殺気を感じ取ったのか、九頭龍は本来ならば考えられない方向に視線を向ける。


    真上。


    一瞬、味方である俺ですら思考を停止した。






    石丸が腕章を付けた方の腕が浮いていたのだ。


    そして、それは拳銃を握っている。




    石丸「『Hit And Run(轢き逃げ)』」



    空中から雨のように、銃弾が文字通りに降り注ぎ、九頭龍に襲いかかる。


    奴はそれを驚異的な身体能力で対処しようとするが、肩や脚の一部を弾き飛ばせなかった銃弾が貫いた。



    九頭龍「うおおおおおッ!?」



    バランスを崩し千鳥足になる九頭龍に、小泉が飛びつき、二人して射線から遠ざかっていく。



    小泉「何なのアレ……!?」


    九頭龍「知るか、ただ、気張れよ……もう1人殺る気マンマンな奴がいるぞ」



    九頭龍と小泉は朝日奈の方を見つめる。



    朝日奈の両目は充血し、まるで獲物を狩る直前のような風貌だった。


    なるほど、確かに殺る気マンマンだ。





  48. 48 : : 2015/12/29(火) 10:33:23

    朝日奈「…さくらちゃん、見ててね」


    九頭龍「っ!
    来るぞ!小泉構えろッ!」


    小泉「言われなくても…!」





    朝日奈「《素晴らしきこの世界(許さない許さない許さない)》 」








    僅かに、地面から振動を感じる…


    オレは敵に注意しつつ地面の様子を伺っーーー



    九頭龍「おいおいおいおいなんだよ『コレ』!!?」


    小泉「冷たいと思ったら…!」




    いつの間にか、オレたちが立っている場所には水が湧いていた。


    しかも丁寧にオレたちの立っているところだけ。



    朝日奈「水位はこのまま上昇するよ?
    逃げられないし、逃がさない」


    九頭龍「っ…!?
    もう膝まで!?」


    小泉「いやでも水だよ!?
    普通にここから離れればいいじゃん!」


    九頭龍「っ!
    そうだよな…ワリィ、焦ってた」



    そして俺は横にステップをした。


    小泉も逆方向に。




    朝日奈「無駄だよ…
    私の殺意(みず) はどこまででも追いかける」


    九頭龍「んだと…!?」



    溜まった水がオレたちに合わせて移動…


    ご丁寧に着地地点付近で待ち構えていた。


    ジャプン…という音と共に、オレたちはまた水に囚われる。



    朝日奈「そして水位は上昇するよ…」


    九頭龍「…!」



    言われて気づいたが、もう腰まで水が来ている!


    クソッ…!どうする!?


    このまま水位が上昇し続ければ、顔まで浸かって溺れて死ぬ!


    十神がオレの《兵器》のネタバラシしやがったからあいつら一歩も動きやがらねぇ!


    水はついて来る!水から逃れることは不可能!


    どうする…!




    石丸「…?」


    朝日奈「これが私の《兵器》だよ、石丸」


    石丸「いや、何が何だかさっぱりなのだが…」
  49. 49 : : 2015/12/29(火) 19:45:15
    幻覚?
  50. 50 : : 2015/12/29(火) 22:39:53
    >>49
    違います!(打ち合わせがないので俺も分からない)
  51. 51 : : 2015/12/29(火) 23:09:27


    朝日奈「目を凝らして見てよ」




    九頭龍「凝らす……だと……!?」



    俺は騒ぎ立つ血の流れを抑え、水の発生源を特定しようとする。水の不快な感触は、既に胸の辺りに到達していた。


    焦燥感を隠せない心境の中、水中に漂う、幾つかの謎のリングを見つける。




    九頭龍「これは……ドーナツかッ!?」


    小泉「何でッ……ドーナゴポポッ」


    九頭龍「小泉ッ!?」




    小泉の口元は既に、真っ青な水で覆われていた。このまま鼻まで覆われてしまったらーーー




    朝日奈「地球に生命が存在するのは、水があるから」


    朝日奈「さくらちゃんに逢えたのも全てこのおかげ」


    朝日奈「『素晴らしきこの世界』は……水を発生させる」




    素晴らしきこの世界(許さない許さない許さない)



    SR:B


    空中に水を発生させる。ドーナツ状の兵器。酸素と水素をドーナツの穴から放出し、空気中で化合して水を作り出す。その際、甲殻類の脳下垂体前葉で合成される、物質流動抑制作用の働くナナナニウムを水に含ませる為、水はその性質を保ったまま固まる。ナナナニウムの量を調節することで多少の追尾が可能である。






    九頭龍「クソッ……水野郎ッ!! 死ね!! 水はさっさと死ね!!!」



    朝日奈「そろそろ九頭龍先輩もお休み」




    俺の視界が、一気に水によって埋め尽くされ、呼吸をするという選択肢を奪った。


    絶望に心を挫かれそうになったその隣で、水が弾け飛ぶ音と衝撃が聞こえる。



    使うんだな……小泉。







    小泉「……人の溺死まで2分だけ、時間がある。2分経つまでに九頭龍を助ける」


    朝日奈「2分なんて言わずに、今助けてあげたらどうです?」


    小泉「……隙を見せたら、石丸君に撃たれるでしょ」


    石丸「……ッ」


    小泉「朝日奈さんの兵器は直接的な攻撃は出来ない……つまりこれは、私と石丸君の一騎打ちになるわけよ。さぁ、覚悟しなさい」


















    十神「お前がなぁッッ!!!」





    『完全に死角からだった』


    『兵器を待たぬものは戦いに参加する資格すらないというのが常識』



    『ならばッ! その常識の隙を突こう!!』



    『資格の死角をついた攻撃ッ!!!』





  52. 52 : : 2015/12/30(水) 02:17:27
    小泉「…」



    小泉「《shutter chance(お願い笑って) 》」



    パシャッ…



    十神「…!?」



    いつの間にカメラを構えていた!?


    それに今のは…カメラのシャッターを切った音?


    いやしかし!



    十神「何も起きてはいないッ!
    このまま貴様が死ねッ!!!」


    小泉「…」


    十神「…」


    小泉「…」


    十神「…」


    小泉「……笑ってくれないんだね」


    十神「…」



    朝日奈「……え?十神?」


    石丸「どうしたのだ十神君!
    絶好のチャンスだろう!?
    どうして引き金を引かないのだ!!?」


    十神「…」


    小泉「…ダメだよ、届かない」


    石丸「なッ!?
    どういう事だ!」


    小泉「今、十神の時は動いていないから」


    朝日奈「………は?」


    九頭龍(小泉…)


    小泉「でもね、この《兵器》デメリットもあってさ…他と違ってね…
    だからあまり使いたくないの…ね?」


    朝日奈「…!」



    その目は、ただただ虚ろだった。


    私は目の前の人に、恐怖した。




    小泉「九頭龍を解放してくれればいいの…
    それで十神も許したげる」


    朝日奈「……」



    勝てない。



    ザパァ…



    九頭龍「ハッ…!ハッ…!ハッ…!
    ゲホッ!ゲホッ!」


    小泉「ごめんね、九頭龍…
    もっと早く使うべきだったよね」


    九頭龍「いいから《兵器》の効果はやく解除しろって!
    お前なんで…!」


    小泉「なんでって…」



    朝日奈「…え?」



    あれ?小泉先輩が持ってるのって…?


    銃?



    石丸「やめろォォォォオッ!!!」



    小泉「さよなら。」




    今日何度目かの発砲音。


    十神白夜の頭を、銃弾が貫通した。


    十神「…」



    表情を変えることなく、本来吹き出すはずの血ですら一滴も流れることなく、十神白夜は逝った。




    九頭龍「…」


    小泉「うん、解除しなきゃだよね」



    そして血は流れ始める。


    十神白夜の時は動き始め、そして止まった。



    小泉「…ッ
    ごめん、九頭龍あとはよろしくね…」


    九頭龍「…!」



    倒れかけた小泉を支えた後、床へゆっくりと寝かせた。



    九頭龍「…お疲れ様、小泉
    …後はオレが何とかするからよ」



    ごめんな、小泉。


    使わせちまって。




    九頭龍「…お前らはキッチリ殺す」



    九頭龍「小泉が削った命に誓うッ!!!」








    shutter chance(お願い笑って)


    SR : B


    カメラ型の《兵器》であり、シャッターを切って起動させる。
    《兵器》で撮影した対象の動きを、写真に閉じ込めたかのように『止める』。
    しかし、時を止めた時間に応じて小泉自身の命を削る。
    故に、rank : B。
    デメリットが大きすぎるため、誰も使わせようとしない。
    本当は、使われるべきでない《兵器》。
  53. 53 : : 2015/12/30(水) 22:23:56



    水はおそらく、物質抑制作用を働かせる物体の効果を止めることで、元の水とし飛び散らせたんだ。


    すまない。本当に。








    九頭龍「うおおおおおッ!! てめえらは絶対に殺すッ!!!」



    俺は勢いに身体を任せ、飛びかかる。



    石丸「『轢き逃げッ』!!」


    すると石丸は腕章をつけた方の腕を押さえ、俺の視界から隠した。



    九頭龍「てめえの兵器はッ……正直、理屈がわからん!! だから今殺すッ!!」



    俺は奴の目の前に立ち塞がり、奴の攻撃の前に蹴りを繰り出す。


    石丸の顔面に靴が命中する、そのコンマギリギリの距離で、朝日奈が飛び込んできた。


    朝日奈の目を抉るようにしてキックが叩き込まれ、肉の弾ける不快な効果音と共に、彼女は地面に跪く。




    石丸は無表情で退いていた。


    そして俺を、轢いていた(轢き逃げ)




    宙に浮かんだ奴の腕が握る銃から放たれた銃弾が、俺の心臓を貫く。


    頭が無性に熱くなり、目の焦点が朧になる。


    俺はそのまま、後悔の念を枕に、地面と抱き合った。








    石丸「……これが捨てるということか。これが勝利なのか」



    酷く虚しかった。


    目から無数の涙が溢れ落ちるが、気にとめてくれるものはもう誰もいなかった。


    僕は自分の方に銃口を向け、天からのセルフジャッジを受ける。


    ーーーーーーーーさようなら。



    5人による乱戦に勝者はいなかった。









    Hit And Run(轢き逃げ)


    SR:B


    実は既にワープの技術は確立している。ヨーロッパで行われた実験で、分子の性質を読み取り、それをそっくりそのまま別の地に作り出すことに成功した。この兵器は、それを腕に限定した範囲で行っている。難点は、この実験でワープされる前の方の分子は、ボロボロになり崩れ去ってしまったことだ。


  54. 54 : : 2015/12/30(水) 23:37:54

    蓋を開けてみれば、あっけない幕引き。







    十神白夜 : 頭を撃ち抜かれ死亡。

    朝日奈葵 : 蹴られた際の脳震盪、それによるショック死。

    石丸清多夏 : 自決。

    小泉真昼 : 『兵器』の使用過多により死亡。

    九頭龍冬彦 : 心臓を撃ち抜かれ死亡。





    時間にして、およそ20分強。


    研究所に5つの死体が出来上がった。


    それぞれの想い、覚悟、その全ては、余すことなく全て儚く散ってゆく。







    セレス「…仕方ないよね、だって
    …それが『戦争』だもの」








    研究所に辿り着いたギャンブラーは、死体の山を見てふとそう呟いた。







    ーーーーー
    ーーーー
    ーー

    ーー
    ーーーー
    ーーーーーー



    狛枝「It' show time.」



    完全自立の馬鹿でかい機械蜘蛛に、とりあえず10倍のGをかける。


    ミシミシと音を立てつつ、〈ディアヴォロ〉は地面共々沈んでゆく。


    狛枝「流石の耐久力だね…参っちゃうなぁ…
    普通の機械ならこれでペッチャンコなのに…」


    狛枝「でもまあ、動きは止めたよ」


    左右田「ロケラン発射あああああああああ!!!!!!」


    狛枝「ナイスタイミングだよ左右田クン!」



    ボクの背後から発射音が聞こえ、そして…



    ドゴォン‼︎‼︎‼︎



    左右田クンが放ったロケットランチャーは、見事〈ディアヴォロ〉の腹に炸裂…


    …したんだけど。



    左右田「マジかよ…
    これ俺が造った中で1番威力が高ぇやつだぞ…?」



    そのボディには曇り1つなく、標的をこちらへ定めさせるだけの結果となってしまった。



    狛枝「うわぁ…マズいね…
    これどうやって中に進入しようか…?」


    左右田「それは俺が聞きてぇよ!
    ああああどうしよどうしよどうしよ!」




    今は動きを止めてるから大丈夫だけど、ずっとこうしておけるわけでもないし…


    早く策を練らないと…!
  55. 55 : : 2015/12/31(木) 17:38:47



    狛枝「……しょうがない、こじ開けるよ」


    僕が手を前にかざすと、蜘蛛は今度はピクピクと震え出した。


    狛枝「上からの重力じゃなくて、左右に裂くように重力ッ!! しかもさっきの時より強めだぞッ!!」



    左右田「チクショ〜……ロケランが駄目ならよぉ〜……!!」


    左右田「これしかねえだろッ!!」




    左右田「『宇宙旅行(ザ・ファースト)』」


    左右田クンは、ポケットから発射スイッチのようなものを取り出すと、それを強く押した。


    酷い地響きと共に少し離れた場所の地面が割れていき、鋼鉄のロケットの先端が露わになる。



    左右田「俺の兵器はロケットッ!! ぶつけてやるぜーッ!!」



    火を噴きあげ、煙を巻き上げながら、ロケットは空高くへと飛び去っていく。


    その光景は神秘的で、昼間だった空間が、一気にかき消されまるで夜のようだった。


    吹き荒れる風圧で、蜘蛛と僕はその場に留まることが危うくなる。




    狛枝「す、凄い……!! で、でもどこに行くの!?」


    左右田「あと数分したら落ちてくると思うから、それまで耐えてくれッ!!」


    狛枝「……」


  56. 56 : : 2015/12/31(木) 23:18:19
    狛枝「ったくもう…
    しょうがないなぁ…」


    ズゥンッ…‼︎



    狛枝「さっきボディを裂く方にまわしてたのを全部上からの重力に変換したよ」




    確かに馬鹿でかいしペッシャンコにもならないけどまあ、数分程度なら防いでおけるか

    狛枝「…な?」



    左右田「…!?
    狛枝あああああアァアアア!!!!!!」



    あれ?


    景色が赤く染まってるや…というか…


    なんか地面が逆さまだし蜘蛛もさかさまだしどうなって んだ こ れ ?






    何も理解できないまま、狛枝の首と胴体は切り離された。


    紅く光る蜘蛛の8つの目から高熱レーザーが横一直線に放たれたことは、左右田にしか分からなかった。


    そして、狛枝凪斗の命は尽きる。



    無論。


    蜘蛛を縛っていた重力は解除される。



    〈ディアヴォロ〉は再び、動き出す。



    左右田「チクショォォォォオおおおお!!!!」




    あと何分だ!?あと何分で落ちてくる!!?


    まだかよまだかよまだかよまだかよまだかよまだかよまだかよまだかよまだかよまだかよまだかよまだかよまだかよまだかよまだか



    左右田「あ」



    同様に、左右田も息絶えた。


    上半身と下半身を分けられ。


    左右田が最期に見たのは、絶望だった。


    蜘蛛などではなく、悪魔。


    成す術など元より無かったかのように、悪魔は歩を進める。


    全てを終わらせるために。
  57. 57 : : 2015/12/31(木) 23:18:43
    あ、途中で送信しちゃいました…
  58. 58 : : 2015/12/31(木) 23:34:15
    マジスカ…
  59. 59 : : 2016/01/01(金) 23:27:17
    >>58
    まじです
  60. 60 : : 2016/01/01(金) 23:45:40




    『希望ヶ峰学園……それは、日本の学生なら一度は誰しも憧れ、そしてその夢を途絶えさせる場所』


    『ただ、その学園に毎年、神に好かれ、入学出来る者がいる』


    『そしてその入学生の中の78期生も、日本各地から集められた超高校級の高校生が占めていた』







    『超高校級の格闘家、大神 さくら』


    『霊長類最強と呼ばれた彼女は、戦争教育の歴史の中でも異質で、体術はもちろん1位。Sランクだった』



    『超高校級の御曹司、十神 白夜』


    『どんなことでもこなしてしまう彼は、ある意味超高校級の完璧だった。無敵。戦争においてもその冷静さとスキルで切り抜けるだろう』



    『他の超高校級の学生も、国民にとっての希望だった!!!』


    『彼らが戦う姿は、常軌を超えている!!!』



    『だからこそ、国民は湧き立つ!!!心を踊らせる!!!』







    『死亡』


    『死亡』


    『死亡。死亡』




    『死亡』


    『-------死亡』


    『惨めに泣き叫び、死亡』



    『戦争に失望し、死亡』






    『仲間を庇って死亡』






    『負け犬』

    『役立たず』



    『ーーーーーーーーー死亡』






    『この時点で、学園側の負けはほぼ確定していた』


    『78期生の生徒を多く失い、唯一の味方である77期生のSランク、狛枝 凪斗も殺してしまった』




    『戦争に起死回生はない』




    『負け、負け、負けーーーーーー。』












    松田「……」






    『ただ、この男が最後の命運を握っていた』



    『地獄に舞い落ちた糸を手繰り寄せることの出来る者がいるとすれば、おそらく松田ただ1人』




  61. 61 : : 2016/01/02(土) 19:12:14



    セレス「…酷い死に様ね、朝日奈さん
    せめて綺麗な顔がよかったよね…」


    セレス「石丸くん…自殺したの…?」


    セレス「十神くん…ふふっ、変な顔…」


    セレス「まるでみんな眠ってるみたい…
    …なんて言えないよね」




    『感傷に浸るのはそこまでにしてもらっていいか?』




    セレス「っ!?」



    突如、研究所に響き渡る声。


    辺りを見回すと、どうもスピーカーが備え付けられているみたいだった。



    セレス「その声…松田さんですか?」


    松田『ああ、そうだ松田夜助だ』


    セレス「わたくしが感傷に浸ってる様に見えた、ということは…
    …あなた今研究所内がどんな様子か把握できているということですわね?」


    松田『バッチリ把握してるぞ』



    セレス「つまり、あなたは十神くんたちを見殺しにした…ということですか?」


    松田『言い方は悪いことこの上ないが、まあその通りだな』


    セレス「…チッ」



    途端、松田さんの声に嫌悪感を覚えた。



    松田『俺が動いてどうこうなってたか?
    無理だろう?
    そりゃあ悪いとは思ってるぜ?』


    セレス「御託はいいです…
    わたくしに何のご用ですか?」


    松田『…ぶっちゃけ、このままじゃどう考えたって俺たちの負けだ』


    セレス「……まあ、顔写真のバツ印である程度察せる部分はありますが」


    松田『つまりそういうことだ…
    この短時間でそんなに死んじまってる』


    セレス「…」



    察していたとはいえ、事実を突きつけられると…こう…いい気はしない。



    松田『…で、だ。』


    セレス「?」


    松田『俺たちは勝たなきゃならない』


    セレス「それは勿論ですわ」


    松田『だがこのままでは負けてしまう』


    セレス「…ええ」


    松田『相手は〈ディアヴォロ(タブー) 〉を導入した』


    セレス「……何が言いたいのですか?」


    松田『セレスティア・ルーデンベルク…』



    不意に研究所の扉が開いた。


    そこに、松田さんがいた。




    松田「お前、禁忌の礎になる気はねぇか?」




    いや、そこにいたのはきっと…


    ただの研究者。
  62. 62 : : 2016/01/03(日) 10:20:24



    松田「俺の『兵器』は『此れ迄は(アナリスト)』」


    松田「要約すると、何でも作り出せる能力ってことだ」


    セレス「何でも……? それは少しおかしくないですか? 何でも作り出せるのなら、何故私たちの『兵器』を作るのに欠点や時間が発生するのでしょうか」


    松田「いや、だから『此れ迄は』なんだって」


    松田「『此れ迄』の物は幾らでも作り出せるが、『新兵器』となれば試行錯誤する時間がかかる」


    松田「『ディアヴォロ』は『此れ迄』の兵器だ。だから今直ぐ作り出せるッ!!」


    セレス「……なるほど、で、私がディアボロの礎になった時の私たち側の勝率は?」


    松田「2%だな」


    セレス「……少ないですね」


    松田「そりゃまあな、でも『0%』が『2%』ななるってのは異例なんだ」


    松田「乗るか乗らないかはお前が決めろ。人権は優先させてやる」


    セレス「……」


    セレス「私が思うに、勝利っていうのは、味わってこそ意味があるのです」


    セレス「ディアボロの礎となった私が生きてる確率はどのくらいでしょう?」


    松田「0%」


    セレス「そうですか……では、断らせていただきます。味わえない勝利に意味はない」


    松田「……わかった。それがお前の選択なら否定はしねえよ」





    山田「……待って……くださいッ」






    セレス「山田クン!? 貴方どこから!?」


    松田「おいおい、寝てろっつったろ」


    山田「セレスさん……僕は、この国を守りたいんです」


    山田「生き残っても、国が無くなってたら意味がない。そして、貴方が死んで国が残っても意味はない」


    山田「そして僕も死にたくない」


    山田「両方救うために……一緒に、乗りません?」


    セレス「私と心中する気ですか?」


    山田「そうなったらそうなったで、綺麗な死に方ではないでしょうか」


    セレス「……わかりました。では松田さん?私たち2人が乗った時の生存確率は?」


    松田「『0.01%』」


    セレス「『0%』から確率がつくのは異例……でしたよね。では乗りましょう」





    2人は手を取り合い、お互いの顔を見つめて、微笑み合っている。


    これが最後の記憶になるかもしれない、そう考えたか無意識かは知らないが、どこか切なそうだった。


    そして死の香りというのは、妙に色っぽく、豚と少女の戯れが、俺にはエロ同人誌のように見えた。






    松田「じゃあ……始めるか」


  63. 63 : : 2016/01/04(月) 19:43:12
    セレス「…」



    なんて気丈に振る舞うのは、やっぱり山田くんの前だからなのかな。



    山田「…セレス殿」


    セレス「はい?」


    山田「山田一二三、最後の最期まで貴方に着いて行く所存で…」


    セレス「おい豚」


    山田「ブヒィッ!?」


    セレス「最期になろうがんなもん知らねえけどよ、テメェは最後までわたくしの下僕だからな」


    山田「…!
    セレス殿…」


    セレス「だから、必ずわたくしを生きて勝利へ導いてくださいまし?
    所詮豚でもその程度できますわよね?」


    山田「…勿論ですぞ」


    松田(ああやだやだ…
    こういうの見るの嫌いなんだよなぁ)



    松田「お2人、そろそろいいか?」


    セレス「あら、待ってて下さったのですか?
    意外に親切なのですね」


    松田「そりゃあ死にに行ってもらうみたいなもんだしな…
    少しぐらいは待つよ」


    セレス「へぇ…」


    山田「……で、拙者たちはこれからどうすればよろしいのですか?」


    松田「ただそこに立ってろ」


    山田「…はい?」


    松田「お前らの立ってるところに〈ディアヴォロ〉を創り出すから」


    セレス「ここまでくると兵器も恐ろしいですわね…」


    松田「ただな…
    資源がどう考えても足りねぇからな…
    うーん、学園の資材使うか」


    山田「が、学園の資材…?」


    松田「ちょっと待ってろよ今創るから」


    セレス「…?」


    松田「《此れ迄は(アナリスト)》起動 」



    ウ゛ンッ



    セレス「…え?」



    気づけば、目の前は研究所ではなく大きなディスプレイだった。


    画面の中央に人がいるということは捉えられた。


    セレス「あれは…松田さん?」


    松田『そうだその通りだ』


    セレス「っ!」



    さっき研究所にいた時と同じ。


    スピーカーを通して松田さんの声が聞こえる。



    松田「今お前たちは〈ディアヴォロ〉の中にいる…
    しかもそこはいわゆる『脳』みたいなとこだ」


    セレス「…操縦室?」


    松田「セレス、お前が動かすんだ」


    セレス「わたくしが…?」


    山田「…で、なるほど拙者が動くための養分というわけですな」


    セレス「っ!?」



    後ろから声が聞こえた。


    山田くんの声が。


    けど、そこには誰もいなった。



    セレス「山田くんが…養分…?」


    松田「お前が今から動かすやつはな、外で暴れてるのより断然エコなんだよ
    …ぶっちゃけ、1人の犠牲で結構無茶できる」


    山田「なるほど…
    だからセレス殿だけだと生きてる確率は『0%』だったわけですな」


    松田「そういう事
    …あ、ちなみに山田は『そういう部屋』にいるから」


    セレス「…」



    つまり、最初から2人とも生き残るっていう選択肢は無かったわけか。


    あーあ…失敗したなぁ…。



    セレス「…理解できました」


    松田「お前ら賢いよ、うん賢い。
    俺褒めちゃいたいマジで」


    セレス「御託はいいからさっさと操縦の説明しやがれやこのビチグソが」


    松田「あー、そうだったな悪い悪い」


    セレス「チッ…」


    松田「この〈ディアヴォロ〉、まあ蜘蛛みたいな外見をしてるんだよ」



    松田くんがそう言うと、恐らく〈ディアヴォロ〉の概形らしき画像がディスプレイを埋めた。


    セレス「なるほど、確かに蜘蛛ですわね」


    松田「これ、お前が動かしたいように動かせるから」


    セレス「は?」


    松田「なんつーか…念じてみろ
    『動けー』とかそんな風に」

  64. 64 : : 2016/01/05(火) 23:37:24



    ーーーーーーーーー

    ーーー

    ーーーーーー




    私たちは今、左右田さんが放った『宇宙旅行』が墜落しているのを見ています。


    大気圏の断熱圧縮により焦げ付いた機体の表面を、私は羨望の眼差しで捉えました。





    どがーん。





    辺りの地面を削り上げ、爆風を巻き起こしながら、それは『ディアヴォロ』に炸裂します。


    希望ヶ峰学園の屋上から見るその光景は、絶景でした。


    爆煙により、『ディアヴォロ』の姿は隠れてしまいます。私は手に汗握りながら、『ディアヴォロ』の安否を心配しました。





    ソニア「田中さん!? 『ディアヴォロ』はどうなってしまうのでしょうか!?」


    田中「案ずるな雌猫よ。『ディアヴォロ』は柔ではない。必ず生きている」


    田中「まあ、いざとなったらSランクである俺様が戦うさ」




    田中さんはニヒルな笑みを浮かべます。


    ああ(詠嘆)、かっこいい。


    名前は忘れてしまいましたが、クソウザい蛆虫カス野郎のアプローチを一蹴してきたのは、彼の格好良さが田中さんに1000000000000分の1にも及ばなかったからでしょう。






    煙が突風に流され、視界が開けてくると、田中さんの言う通り、確かに傷つきボロボロになりながらも、『ディアヴォロ』はまだ動いていました。









    ですが……何故か、もう1匹、新品の『ディアヴォロ』が佇んでいたのです。



  65. 65 : : 2016/01/06(水) 23:19:43

    セレス「居ました、あれですね」



    目の前には、真っ黒に塗りつぶされたメカメカしい蜘蛛。


    流石に理解できる。


    何もせずに挑んでいたら、絶対に負けていた。



    だけど



    今の私にはアレと同等、もしくはそれ以上の力がある。


    犠牲の元に…ではあるけど。


    だったら、勝たなきゃ【超高校級のギャンブラー】の名折れでしょう?



    セレス「わたくしと、山田くんの命をBett
    …もちろん『勝利』に」


    山田「…」


    セレス「ここまで来たら仕方ありません…
    勝ちますよ、山田くん」


    山田「もちろんですぞッ!!!」



    自己暗示にも似た私たちのやり取りは、もう自己暗示に留めてはいけないことで。


    つまり、実現しなきゃいけないことで。



    目の前の蜘蛛は、先ほど墜落してきたロケットにボロボロにされている。


    確か、動力源は蜘蛛のお腹の部分。


    そこを叩くなら…



    セレス「豚ァ!!!
    とりあえずレーザーぶっ放すぞ!!!!!」


    山田「御意ッ!!!」



    意識を集中させると、画面にゲージが表示される。



    山田「ぐぅっ…!
    なんのこれしき…!!!」



    キィィィイ…という音とともにゲージは上昇し…


    ……完全にエネルギーを100%充填した所で。



    セレス「狙いは右足と胴体の付け根!
    発射ッ!!!!!!」


  66. 66 : : 2016/01/08(金) 23:56:36



    紅い光線が、私たちの乗る蜘蛛よりひと回り大きいそれの胴体へと撃ち込まれる。


    瞬間的に火花が散っていき、崩壊音を立てながら、相手側の『ディアヴォロ』は地に伏せた。



    セレス(凄い……たったの一撃で……!?)



    安堵と恐怖の感情の波が、心の堤防に押し寄せる。


    もし、これが戦争で使われるようになったら。


    たいして操縦の訓練を受けてない私でも、ここまで扱いこなせている現状。


    今回の戦争で禁忌が犯されたことにより、大量生産され、あらゆる人種が『ディアヴォロ』の礎になるかもしれない。


    そう思うと、震えが止まらなかった。


    芯が冷え切り、呼吸が荒くなる。


    『生』から逃げたくなる。


    私はこの絶望感を知っていた。






    ーーーーこれは『死』に対する圧倒的な絶望。






    日常においても偶発的に起こるこの発作とも呼べる現象は、私が人間として生まれた以上は避けられないのかもしれない。


    ただ今までは、ポーカーフェイスでそれを受け入れてきた。


    しかしどうやら、それは仮初めの虚勢だったらしい。


    真の『死』を目の前にした私は、非常に脆く弱々しかった。






    山田「……セレス殿? どうされました……?」







    山田君の声が、私の恐怖を薄めた。


    そうだ……まだ、そうなると決まったわけではない。




    勝てばいいんだ。


    勝てば、勝つ。



    相手の『ディアヴォロ』は沈めた。ならば後は裏切り者を始末するだけ。



    私はなけなしの闘志を燃やし、前を見据えた。


  67. 67 : : 2016/01/09(土) 03:02:08

    ソニア「!!!?!?」



    『ディアヴォロ』が堕とされた!!?



    田中「雌猫、落ち着け」


    ソニア「で、ででででも田中さん!!!」


    田中「……その目は捉えていないのか?」


    ソニア「え…?」



    果たして、わたくしの目はーーーー


    ーーー捉えていました。




    獲物を品定めする蜘蛛の姿を。




























    セレス「……」



    画面には、生命を探知するレーダー…


    で。


    目の前の蜘蛛から反応6つ。



    つまり。



    セレス「山田くん!
    あっちから攻撃きます…!」


    山田「な、なんですと…?」


    セレス「多分わたくし達がさっき撃ったのと同じのがきます!
    バリア張れたりするかなこれ…」


    山田「セレス殿!
    素が出てますぞ!こらえて!」


    セレス「あああああああああ恥ずかしい死にたいいいいいいいいいいい」


    山田「死ねんのじゃあああああ!!!!!」


    セレス「わぁっとるわビチグソがぁぁぁぁぁぁぁあああああッ!!!!!!」




    叫んで恐怖を払拭ーーー


    ーーーしたつもりをする。




    セレス「…っ!
    高エネルギー反応検出!
    そろそろ来ます!」


    山田「合点承知の助ェ!!!」


    セレス「一か八かバリア展開!」



    すると、うっすらと半透明の膜が張られているのが確認で



    セレス「っ!!!?」



    蜘蛛の中にいても伝わる熱風。


    そしてとてつもない衝撃。


    眩い閃光が画面一杯を満たし、目をくらませる。


    その最中に、レーザーがこちらに向けて放たれたと理解できた。


    ジリジリと後退している。


    でも、レーザーは本体には届いていない。



    セレス「…行ける!」

  68. 68 : : 2016/01/10(日) 00:29:50


    突然、前方からの圧迫感が収まり、私たちの身体は向き合っていた分前へと投げ出される。


    バリアは既に容量を超えていたのか、解かれていた。





    セレス「良しッ!! 行きましょう山田クンッ!!」




    私たちはレーザーが飛んできた方を見据え……



    見据え……





    身体がやけに重い。


    いや、正確には『ディアヴォロ』の動きが鈍い。




    セレス「……や」




    セレス「山田……クン……?」






    私の消え入るようなか細い声に、返答はなかった。沈黙が辺りを支配する。




    セレス「返事を……して……下さいよ……!」




    顔を歪ませ、強く手を握りしめるが、彼がもう戻ってこないことは脳で悟っていた。


    だったら。


    私がすべきことは。


    この強く握りしめた拳で、奴を。







    セレス「……葬る」






    私は気力を振り絞り、ボロボロになりながらも蠢めく、最悪の蜘蛛の方へと駆ける。



    そして、そのままのスピードで突っ込んだ。





    セレス「私1人じゃたいしたエネルギーは練れないでしょう……でもこれなら関係ないッ!!」


    セレス「これならッ!!!」






    校庭に爆炎が巻き起こった。


    私は薄れゆく意識の中、また、来世で、友達と会えることを祈った。










    ーーー来世は、戦争なんてありませんように。







  69. 69 : : 2016/01/12(火) 22:59:18






    ーーーーーー
    ーーーー
    ーー


    ーー


    ーーー



    松田「…ふぅ、とりあえずは止めた」



    …尊い犠牲だったよ。


    いや、本当にそう思ってるぜ?


    ホントにホントに。



    松田「セレスたちの『ディアヴォロ』と視覚共有してたが…
    …さて、結構遠くに田中とソニアがいたな」



    しかも『ディアヴォロ』が墜ちた事をどうもソニアが嘆いていた…


    …ってことは。




    松田「なるほどなるほどなるほどなーるーほーどー…
    …裏切り者か」



    俺、今キレそう。


    これは心からマジで。




    松田「なるほど…そういや九頭龍と小泉がんなこと言ってやがったな…
    そっかそっかまだいやがんのか…
    …ってことは」



    舞園「……松田さん?」


    松田「っ…
    …ああ……舞園か」


    舞園「あの…ラボってここですよね…?」


    松田「ああ、ここだぜ?」


    舞園「………ヒッ!?」


    松田「…なーに怯えて……」



    ああ、死体か。



    舞園「え、え…?え?
    十神くん?石丸くん?…え?
    それって…朝日奈さん…ですよね……?」


    松田「はっ!
    何怯えてやがんだよ舞園さやか!
    これが戦争だろ?仲間が死ぬのが!」


    舞園「そっ、それでも!
    こんなの…こんな…っ!」



    松田「白々しいんだよ女優かオメェは」



    舞園「へ…?」


    松田「いや、もう演技しなくていいんだぜ?
    だって俺全部知ってるからよ」


    舞園「……」


    松田「なあ?」






    松田「78期生の裏切り者さんよォ!
    俺は今腹が煮えくり返りそうなんだよ!」






    舞園「…!」


    松田「言っとくが、ラボでの行動は音声含めてまる聞こえだぜ?
    だから俺は他の78期生の『兵器』がどうなったかも知っている」


    舞園「…降伏…してください」


    松田「は?
    降伏してクソブスども助けられてたなら、今俺はここにいねぇよ」
  70. 70 : : 2016/01/13(水) 23:23:01
    面白いです!期待!
  71. 71 : : 2016/01/15(金) 21:30:53
    >>70
    ありがカボチャ!!
  72. 72 : : 2016/01/15(金) 22:00:14




    松田「やれやれ……これが本当のチェックメイトって奴か?」


    松田「ヤフーチャット万歳ッ……!」


    舞園「……もう、『兵器』はありません。降伏してください。命を無駄にしないでください」


    松田「別にいいよ。俺のくらい、欲しけりゃくれてやる」


    松田「だがな、お前が本当に降伏して欲しいのは苗木だけだろ」


    松田「俺とお前の仲じゃないか、嘘なんてつくんじゃねえよ」


    舞園「……」


    松田「……で、無視と。今回限りでこのSSは打ち切りにさせていただきますってか?」


    松田「ふぅー……いやー……青春って怖いねえ。相手のことなんか顧みずに自分の生き方ができるんだからな」


    舞園「ッ!? わ、私はッ!! 苗木クンのことを考えてッ!?」


    松田「違うな、そうかもしれないが、違う」


    松田「苗木は絶望するんだぜ。起きて、自分以外の同級生が、1人を除いて死んだことを理解しちまったらよ」


    舞園「それでもッ……私は苗木クンに生きて欲しかった……!!」


    松田「じゃあ爪が甘すぎだろ。舐めさせてくれよ。ぺろぺろ、んめな〜」


    舞園「……ど、どういうことですか!?」


    松田「んん? 大方、『苗木クンだけは絶対殺さないでね!』って約束してんだろうけど、向こうからしたらあんな厄介なの生かしておくわけないじゃないか」


    松田「戦争が終わる前に殺される。そしてお前も」


    舞園「……じゃ、じゃあ、私は何のためにッ!?」


    松田「意味がない以上に、クソ迷惑だから切れてんだろうがッ!!」


    松田「戦争に裏切りも何もない。弱い方が全部奪われる。ただのそれだけ。それを理解できてなかったお前の負けだ」


    舞園「うっ……ううっ……!」


    松田「泣いても助けない……まあ見てけよ」
























    松田「最後の切り札が大暴れするのをなッ!!」


    舞園「最後の……切り札……!?」


    松田「復唱ありがとう!そう!! 最後の切り札!!」


    松田「俺の科学の結晶を苗木誠に注ぎ込んだッ!!」


    舞園「えっ……なんでッ……!? 苗木クンは死んだんじゃ……!?」


    松田「言っとくが、お前はもう同級生じゃないからな。裏切り者だ。そして苗木は絶望するんだッ!! 同級生が1人を除いて全滅したことにッ!!」


    松田「霧切がギリギリで苗木をここまで運んでくれたッ!! そして本当にありがとうッ!!」


    松田「完成させた新兵器を名づけてッ!!」




    松田さんが指を鳴らすと、不気味なライトが適当に辺りを照らす。


    私が見たのは、サイボーグのような、そんな感じの人影だった。


    頭にクセ毛を生やしたそのサイボーグは、泣いてるように見えた。











    松田「『ニューダンガンロンパV3(ボクの名前は苗木誠だ)』」


  73. 73 : : 2016/01/15(金) 22:40:43

    舞園「は………?」


    松田「は?
    どうした?なんで泣いてんだ?
    苗木生きてたんだぜ?喜べよ?なあ?」


    舞園「生きて……え………?
    これ……サイボーグ……」


    松田「あー…
    んだよ、理解できねぇ?
    俺が苗木誠の体を改造(いじ)った。
    で、これが完成したわけよ
    アンダスタン?」


    舞園「いじっ………た…?」


    松田「しょうがねぇな…
    理解する頭のないお前のために一から十まで説明してやるよ」



    松田「霧切が苗木を拾ってここまで来た」


    松田「霧切は俺に苗木の延命を頼んだ」


    松田「下半身トんでたから『兵器』を下半身とした」


    松田「ついでだから全身『兵器』にした」


    松田「そして、唯一にして無二、最初で最後、故に最高の『完成体兵器』が完成した」


    松田「以上だ」


    舞園「…………」


    松田「ちなみに名前の最後の『V3』ってのは俺の趣味だ
    イカしてるだろ?」


    舞園「……………」


    松田「おいおいおいおいおいおいおいおい」


    舞園「………」


    松田「どうしたよポカンと口を開けて」


    舞園「…………」


    松田「自分の理想とかけ離れてたか?
    それとも、お友達が…ましてや苗木がこんな姿になるなんて思ってなかったか?」


    舞園「……………」


    松田「まさかこの後に及んで人徳とかの話してくんのか?」


    舞園「…」


    松田「……返事ぐらいしてくれよ…ったく…」


    舞園「………」


    松田「じゃ、俺行くわ
    声を出すことすらできない奴と会話する気もないんでね」


    舞園「…」



    そう言って、過ぎてゆく。


    私の中のドロドロしたドス黒い感情を生んだ当人は、ゆっくりと私の横を通り、そしてそのまま扉に向かって行く。




    松田「あ、そうだそうだそうだ」


    舞園「……」


    松田「今『V3』に話しかけても無駄だぞ
    そいつの心は今は眠ってる」


    舞園「……な…ぎ……?」


    上手く声が出せない。


    届くわけもない声を、苗木くんへ向ける。



    松田「おうおう悲しい悲しい…
    かすれ声で想い人の名前呼んじゃってさ…」


    松田「まあ。」













    松田「俺殺したら苗木が戻ってくるかもな」












    舞園「ーーーーーー!」


    私は『兵器(マイク)』を握った。
  74. 74 : : 2016/01/16(土) 23:56:50



    松田「だが無駄だ」



    松田が手を翳したその瞬間、私のマイクは部品を撒き散らしながら破裂する。


    閃光が目に飛び込み、私の手に堪えられないほどの激痛が疾る。滲む視界で手のひらを捉えると、螺子が深く突き刺さっているのを確認出来た。




    舞園「クッ……!?」


    松田「全ての試作品の『兵器』は俺の管轄下だ。俺には通用しない。それでもかかってくるならかかってきな」


    舞園「あなたを殺せばッ……!! 苗木クンがッ……戻ってくるんですよね!!」


    松田「ああ、そうだな(便乗) でも今のアイツはただの操り人形だ。松田’s マリオネット」


    舞園「じゃあ殺すッ……私に出来る償いはこれしかないのだからッ!!」


    松田「償い償いって……女子高生がそんな大層な言葉使ってんじゃねえよ」


    舞園「戦争には何もない。敗者は奪われる。ただのそれだけ……ですよね?」


    舞園「じゃあいいじゃないですか、どんな言葉を使おうと、戦争なら全てが赦される」


    松田「わかったわかった。だったらさっさと来い」


    松田「お前の人生に引導を渡してやる」





    私は震える肩を止める。


    その瞬間、世界の動きが鈍くなった。


    ゆっくりと熱気にさらされた空気が舞い上がるが、私たちは微動だにしない。


    初めの一歩を踏み出したのは、私だった。






    そこからは一瞬だ。


    地を強く蹴り、一気に奴の胸元まで駆け上がっていく。その勢いのまま喉元へと針を突き刺そうとした。



  75. 75 : : 2016/01/17(日) 19:17:32

    が。


    針が松田の喉元を捉えるギリギリで、私の腕は動かなくなった。


    そう、腕を掴まれた。




    苗木くんに。




    舞園「…!」


    松田「だから言ったろ?
    今の苗木は松田'sマリオネット…
    俺が思うままに動かせる」


    苗木「…」


    舞園「な、苗木くん……
    離して…ください…」


    苗木「…」


    松田「お前人の話聞かねぇな?
    こいつに言葉は届かないんだって」


    舞園「苗木くん!
    私です!舞園です!ほら!!」


    苗木「…」


    舞園「敵じゃないです!
    クラスメイトじゃないですか!」


    苗木「…」


    舞園「苗木くん!返事してくださいよ!
    腕を離して!」


    苗木「…」


    舞園「ねぇ!苗木くん…!」



    今度は痛みじゃなかった。


    私は大粒の涙をボロボロとこぼした。


    滲んだ視界は、まだ苗木くんを捉えている。



    舞園「苗木くん…なんで…なんで…」



    松田「なんで?」



    舞園「…!」


    松田「結果言えばお前のせいだろ?」


    舞園「私の…」



    違う。



    舞園「私が…苗木くんだけを助けようとしたから?」


    違う。


    舞園「…」



    違う。



    舞園「……違う」


    松田「あ?」


    舞園「あなたが苗木くんをこんな風にしたんだから…
    あなたのせいです…!」


    松田「そうか、それがお前の答えか」


    松田「じゃ、『V3』
    俺は先に行ってるから、後はよろしく」


    舞園「なっ!?
    ちょっと待ーーー」




    苗木「了解。
    主人(マスター)への殺意を感知。
    消去します。 」






  76. 76 : : 2016/01/21(木) 20:01:57




    松田「やれやれ……面倒な奴だったな」



    俺は後ろを振り向きもせず、エレベーターに向かって歩みを進める。


    霧切の起動にはもう暫く時間がかかるはずだ。


    だから今は、この場から離れることだけを考えよう。目を覚ました2人を俺が操り、このくだらない戦争に終止符を打つ。




    松田「さて……上に行くか」




    エレベーターのボタンを押そうと、人差し指を出して気づいた。


    指がグズグズに崩れ、腐った肉の間から骨が見えている。




    松田「なッ!? 何ィーーッ!?」


    松田(いっ、いつの間にッ!?)


    松田「グフッ!?」




    突如、吐き気が込み上げ、俺は血反吐を地面に撒き散らした。紅い模様が床に描かれていく。




    松田「これは……『罪木』の兵器ッ!? だ、だが、どうやって毒を……!!」




    エレベーターは舞園以外の人間を乗せていない。そして舞園も怪しい素振りを見せていない。




    松田「怪しい素振りを見せていない……!? まさかあの野郎ッ……!!ウグッ!?」




    激しい頭痛が、俺に跪かせる。


    そのあまりの痛みに、幻聴が聞こえてきた。





    舞園『松田さん……あなたは言いました。自分の試作品は全て支配下だと。私はそれを聞いて安心しました。だってそれはつまり、完成した77期生の兵器は支配外ってことですからね』



    舞園『私は罪木先輩の毒を自分盛り、あなたに空気感染させました』


    舞園『私の狙いは最初から心中だったんです。これが、苗木クンを戦争から救うことだと疑いませんでした……』






    幻聴の音が小さくなっていくと共に、俺の意識も薄れていく。そして、無念にも途絶えた。





    ーーー

    ーーー

    ーー

    ーーーーー






    残った部屋で、男女が目を醒ます。









  77. 77 : : 2016/01/25(月) 09:40:04


    苗木「…」



    バラバラになったマイクの部品を眺めていた。


    なぜこうなってしまったのか理解できない。


    本当は、ここがどこかを調べなきゃならない。


    でも、マイクを見ていないと現実を見てしまうから。


    誰かが倒れているのを視認しなきゃいけなくなるから。


    だからマイクを眺めていた。








    チャーミングスマイリング(私だけを見て)

    SR : B


    舞園さやかの美声も、このマイクを通せばたちまちに兵器となる。
    その歌声を聴いた者の鼓膜は破れ、しばらく動くことすら叶わない程の眩暈を起こすだろう。
    ただし、範囲指定ができないために仲間を巻き込む可能性が高い。自身も多少のダメージを負う。






    ーーーーーー
    ーーー
    ーー







    腐川「…」



    〈ディアヴォロ〉が墜ちた傍で、アタシはハサミを拾った。


    妙にしっくりくるソレは、おそらく松田が言っていた『兵器』だという事を伺わせる。


    アタシはこれを使えるかは分からない。


    けど、アイツじゃなくてアタシが使わなきゃいけない気がする。


    ……なんとなくだけど。



    腐川(でもなんでこんな所に………)


    ……。


    腐川「…隠れてないで出てきなさいよ」



    間を置いて、〈ディアヴォロ〉の後ろから2人の人間が顔を出した。


    ソニア「……見つかっちゃいました」


    田中「ほう…貴様…
    俺様の気を読み取れるか…」


    腐川「………」


    気づかないフリしといた方がよかったかも…
  78. 78 : : 2016/01/29(金) 19:22:34



    田中「ん、お前は……そうか、腐川冬子か」


    ソニア「兵器名は『クロック・タワー』ですよね!!」


    腐川「ッ!?」


    腐川(なんで、バレてる!?)


    私は動揺から、足元が浮くような錯覚を覚える。一体なぜ、私の人生はこうも絶望的なんだろう。


    殺人鬼の人格と身体を共有したり、性格がねじ曲がったり……そうだ。そもそも5年前から『戦争教育』なんて始まらなければ……



    私が思考を巡らせていると、田中が地面を蹴り上げ向かってきた。



    田中「フハハ!! 貴様の誤算はッ!!」



    田中の叫び声に合わせて、彼の周りを紅い甲殻のようなものが覆い出す。8本の角が、肩や腰から生えていた。












    田中「俺様の強さだ」



    いつの間にか背後を取られていた私は、なすすべなく、奴の紅い角に一突きにされ……





    ない。バキッバキッっと、私を攻撃しようとしたその角は何者かにへし折られていく。


    私を助けた人物は、田中をにらめつけ、角を握り潰しながら、私に言い放つのだった。






    苗木「安心してよ……もう誰も、死なせない」











  79. 79 : : 2016/02/01(月) 00:53:05
    田中「貴様は…?」


    腐川「苗木……なの?」


    苗木「……うん」


    腐川「でっ、でもあんた!」


    苗木「…後で説明する」


    田中「ほう…!
    貴様その体はどうした」


    苗木「…君が知る必要はない」


    ソニア「そこの貴方!
    田中さんに向かって無礼です!」


    苗木「…」


    ソニア「〜〜〜ッ」


    苗木「…」


    ソニア「〜〜〜ッ!!!」


    苗木「……」


    腐川「…苗木?」


    苗木「腐川さん、目を閉じてて」



    ソニア「田中さん!
    わたくし1人で十分です!」


    田中「…雌猫、殺れるな?」


    ソニア「もちろんです…」


    苗木「…ねえ、君」


    ソニア「なんですか…!
    今わたくしは気が立ってるんです!」


    苗木「君がボクに対して抱いてるのは、殺意?」


    ソニア「ええ、殺意です!
    今わたくしは貴方を殺してやりたい程に怒っています!」


    苗木「そっか…」












    苗木「…ありがとう(消えろ)














    腐川「……え?」



    もちろん、目を閉じるわけなかった。


    だって、戦場においてそれは命取りだから。



    田中「な…ッ!?」



    そう、目を閉じてないのに。




    苗木「………仲間はもう、誰も死なせない」






    田中「ソニアあああああああああああっ!!!!!!?!?!!!?!?」






    ブロンドヘアーの女は、姿形なく消えていた。




  80. 80 : : 2016/02/07(日) 19:22:45



    苗木「さあ、次は君かな?」



    苗木は田中に向けて腕を突き出し、指を自分の方に曲げ、「こっちに来い」と挑発のジェスチャーを取る。



    田中「話は聞いていたが、お前の兵器……いかれすぎだな」



    田中は歯を食い縛り、眉間に皺を寄せながら苗木を見据えた。



    田中「これは殺気じゃない……憤怒だ。だからお前の兵器は通用しない」


    苗木「それは違うよ。やってみないとわからない」


    田中「フン、どっちにしろ、お前が兵器を使わないことは不変の事実だろ?」



    田中は怒りで口調が乱れていた。


    私だってこんなことに巻き込まれて、我を忘れて激昂したい。しかしこの両者の前では、自分は小さ過ぎて、存在を気づかれないように薄めることしか出来なかった。



    田中「お前の兵器は2回までしか連続で使えないそうじゃないか。そのラスト1回を、ここで使うのはあまりにも勿体無い。だから使えない」



    田中は背中から生えた8本の紅い角のうち2本を地面に打ち付け、その反動で苗木に飛びかかる。



    田中「温存して死ねッ!!」


    苗木「……ッ!」



    苗木は私を突き飛ばすと、連続で迫り来る角をスレスレで避け、後ろに退くことで戦いを私から遠ざけていく。



    腐川「苗木……」



    私の消え入るような声は、彼に届かなかった。







  81. 81 : : 2016/02/08(月) 13:35:38
    苗木「…」



    表情1つ変えることなく、目の前の敵は俺の角を避けてゆく。


    1つ。また1つ。地面に突き刺さってゆく。



    田中「フハハハハハッ!!!!
    さっきまでの威勢はどこに行った!?」



    苗木「…」




    後ろにいるであろう腐川冬子はもう、俺の認識の外にいた。


    苗木誠の思惑通り、段々と距離は離れてゆく。


    だがこれでも問題はない、苗木誠を片付けてからでも遅くない。


    と、冷静ぶってはいるが実際はそんな事考えられるほど冷静でいられていないというのが事実。


    そう、ただ単に頭に血が上っているだけだ。




    田中「ここまでの憤怒はそうだな…
    動物が車によって無残に死んでゆくのを目の前で見た時…
    …それ以上だ」


    苗木「……」


    田中「いつまで避け続けるつもりだ?
    まさかこの角が切れるのを待っているのか?」


    苗木「…」


    田中「……返事は無し、気に食わんな」



    俺はありったけの怒りを背中に込める。


    先ほどまでとは比べ物にならない程に鋭利に尖った角。


    それを苗木誠へ向けて放つ。


    穿つ。



    田中「遊ばずに最初からこうすりゃあ良かったよ」


    苗木「…ッ!」


    田中「怒りに死ねェ!
    苗木誠ォォォオッ!!!!!!」



    これもまた今までと比べ物にならない程に、俺の角は風を切って苗木誠へと向かってゆく。



  82. 82 : : 2016/02/08(月) 23:15:56


    金属が重なり合う音が、辺りに響き渡る。


    苗木誠は機械となった身体を吹っ飛ばしながら、地面を転がり回っていった。


    俺様はそれを追撃するため、またも角を地面へ叩きつけ、その推進力で前へと突き進む。



    田中「冥土の土産に教えてやろうッ! 俺様のランクはSだッ!! お前ごときじゃ歯がたたないことを骨の髄までわからせた後殺すッ!!」



    苗木誠は倒れた身体を起こし、こちらの方へと拳を構えた。



    苗木「……」



    ゆらゆらと、まるで壊れかけの糸人形のようだった。足元がやけにふらついている。



    田中「どうした!? 黙って死ぬのか!?」



    俺は問答無用で角を瞬時に叩き込む。八本の角から繰り出す俺の連続攻撃は、紅い暴風のようだ……と、前にメス猫が言っていた。


    悪い気はしなかった。俺はこの兵器を『レッド アゲインスト』と名付け、日々、国を守るために修練した。


    だが、力は全てを奪う。持つ者も、持たざる者も。


    俺はそれは理だと納得し、仲間を守ることだけを決めた。国などどうでもいい。大切なのはいつだって自分なのだから。


    「……それはッ 違うんだよ!」



    田中「……ッ どういう意味だ」



    心を読まれていたのか? 殺気に反応して攻撃出来るくらいだ。今さらそんなことでは驚かないが。


    苗木誠は摩擦熱により発生した煙を身体から出しながら、俺を睨みつけている。



    苗木「大切なのはいつだって自分だけだって……僕だってそう思ってた。いざとなったら他人なんか切り捨ててやるって……それが強さだって疑わなかった」


    苗木「僕は誓いを立てた。仲間を守るため、僕は僕を殺すんだって」


    苗木「でも……ゆらゆらって揺れてるんだ!? 僕ってやつはさ!? 君にも大切な人がいるってわかったら、気持ちがブレて戦えない! 相手の殺気に反応して攻撃することがどれだけ気楽だったか今さらわかったよ!!」


    田中「だったらどうする!! ここで死ぬか!?」


    苗木「いや全部救うんだ……! 腐川さんも、日向クンも……!」


    田中「ならば俺を殺してみろッ!」


    苗木「もちろん君も救う!!」


    田中「……どうやって?」


    苗木「戦争があるからいけないんだ ……この国の王を殺す。この国から戦争を消すよ」


    田中「出来ると思うか?」


    苗木「そのためのこの身体だ。やっぱり僕は幸運なんだよ」


    田中「……ッ!!」




    俺は無意識のうちに攻撃を放っていた。伸縮自在の角が、四方八方から苗木に襲いかかる。


    攻撃せずにはいられなかった。こいつはゆらゆらだ。ゆらゆらとどっち付かず。今は善の方に身を置いているが、何かの弾みで悪になるかもしれない。


    単純な畏敬だった。



    苗木誠が踏み込み、俺だけを見つめ拳を打ち込んでくる。圧倒的速度に、俺はなす術もなかった。


    顔面に鉄の塊がぶつけられ、脳にめがけてシンバルを叩き込まれたようだ。




    ……いい踏み込みだった。軸のブレていない。





  83. 83 : : 2016/02/09(火) 14:01:14
    ーーーーー

    ーーー

    ーー







    一方その頃。某所にて。




    日向「……」




    眠っていた。夢を見た。いい夢を。


    夢の中では戦争なんてなくて、みんな平和に暮らしているんだ。


    みんな笑ってるんだよ。


    ……ははっ、まあ夢なんだけどさ。


    そう、夢なんだよ。


    夢は覚める。





    「あ、気がついた?」


    日向「え……どうして……」


    「やだなあ、君がへばってたからここまで運んだんだよ」


    日向「へばって………
    そうだ…苗木は……?」


    「ああ、彼なら居なかったよ」


    日向「居なかった…?
    殺せなかったのか…」


    「全く…満足に数も減らせずによくのうのうと生きてるよね?
    予備学科のくせにさ」


    日向「…っ
    すみません…」



    俺は悟られないように、悔しさを両手に込めて拳を握っーーーー


    ああ、右手は無かったんだった。



    「まあまあそんなにしょげないでよ…
    で、そんな予備学科に大ニュース!」


    「…大ニュース?」


    「希望ヶ峰学園生徒の完全抹殺の命令が『王』から下った」


    日向「え…」


    「何でかは分かるよね?
    他国経由とはいえ、内戦起こしてるこの現状を市民にこれ以上晒しちゃうのもねぇ?」


    日向「……」



    なら苗木は?俺のクラスメイトも…?



    「で、大ニュースってのはここからなんだよ」


    日向「え?」


    「『ディアヴォロ』なんていう禁忌が場に出ちゃってる以上、『王』はもう何でもアリだと判断した」


    日向「…ってことは」


    「察しがいいね、日向クン」














    狛枝「キミにはこれから『兵器(きぼう)』 になってもらうよ」






    日向「……」



    『王』直属の部下、狛枝凪斗はそう言った。


    最早文句など無かった。


    俺の人権なんてそもそも剥奪されてるようなものだったから。


    時期が少し早まっただけ。





    日向「分かりました」





    自分に言い聞かせた。
  84. 84 : : 2016/03/01(火) 00:09:25



    狛枝 凪斗が生きていた理由。


    胴体が真っ二つにされた際、誰もが死んだと思っただろう。


    ……何故?


    何故、胴体が真っ二つになったことと死を我々は結びつけるのか。


    処刑道具のギロチンでさえ、首を切り落とされてからも十数秒間意識があるらしい。


    つまり胴体が切断されようと、その後直ちに適切な処置を行えば死なないというわけだ。


    死なないのだ。適切な処置を行えば。


    ……それが倫理的に適切かどうかは置いといて。






    狛枝「……もう君もわかってると思うんだけどさ、今から行うのは後片付けなんだ」


    狛枝「78期生はほとんど死んじゃったし、放っておいてもV3が77期生をぶっ殺すだろうからね」


    狛枝「残ったV3を僕たちが撃つ、OK?」






    日向?「……」






    狛枝「おお、そうか、そういえばもう返事は出来なかったね。まいったな、これじゃ僕はお人形に話しかけるいたいけな少女みたいじゃないか」


    狛枝「言い方を変えよう。『はい』って言え」




  85. 85 : : 2016/03/12(土) 02:45:24


    ーーーーー
    ーーーー
    ーーー
    ーー





    田中眼蛇夢を下した後、ボクと腐川さんは生き残りを探して学園内を探索した。


    何処を歩いても死体。死体。死体。死体。


    瓦解した建物、立ち込める異臭。




    苗木「……」




    エレベーターへと続く廊下を進む。


    途中で太く逞しい腕が瓦礫の下から覗いた。


    ピクリとも動かず、辺りの床を血が彩っている。



    腐川「…大神……なの…?」


    苗木「…そう、だね」



    ボクは今はもうアンドロイド。


    ぶっちゃけ言うと生体反応の感知はできる。


    けど、だけど、それでも、自分の足で学園を探索して生き残りを見つけ出したかった。


    ここだけは機械に頼りたくなかった。



    苗木「…あ」



    エレベーターの前へたどり着く。


    複数の予備学科の死体、そして。



    腐川「大和田…」


    苗木「…きっと、誰かを逃したかったんだと思う」


    腐川「…」


    苗木「今更だけどさ、腐川さん大丈夫?
    その……死体…とかさ」


    腐川「だ…大丈夫なわけないでしょ…」


    苗木「そうだよね……ごめーーー」



    腐川「けど」



    苗木「…けど?」


    腐川「その…今度書こうと思うのよ…ノンフィクションで」


    苗木「腐川さん…」


    腐川「だから…その……出来るだけ現実と向き合わなきゃ…でしょ?」


    苗木「…そう、だね」



    そうだ。


    ボクらは向き合わなければならない。


    みんなが、大勢が死んだこの戦争を。


    みんなの死を慈しみ、語り継がなければならない。


    それをボクだけが担う必要はーーー


    そう、生きているのはボクだけじゃないのだから。



    苗木「…このエレベーターの先、一応ボクはどうなってるか知ってるけど」


    腐川「行くに決まってるでしょ」


    苗木「だよね」
  86. 86 : : 2016/03/17(木) 00:08:00



    エレベーターが騒々しく音を立てながら、僕らの退路を断っていく。


    僕らが完全に直方体に閉じ込められたのと同時に、自らの身体が少し浮くような感覚を覚えた。


    身体中の臓器が、持ち上げられるような気配。


    これが慣性の法則。


    止まっている物は止まり続け、動き続ける物は動き続けようとする。


    僕らも、日常を生きるが故、日常を生き続けようとした。







    今度は、身体が沈むような感覚。エレベーターがその動きを止めたのだ。


    扉から光が射し込んでいき、徐々にその量は拡大されていく。


    僕らは微動だにせず、それを眺める。扉が開ききったのと同時に、大きな一歩を踏み出した。

















    スパン……















    腐川さんの頭が宙に舞う。首の皮が抉られ、そこから赤い飛沫が細かく散っていくのを、僕は黙って目に焼き付けていた。


    彼女の身体が、人間としての存在を否定され、崩れ落ちる。




  87. 87 : : 2016/03/17(木) 02:05:02


    生体反応を感知する機能、これを意図的に切っていた。


    これは誤算だった。


    何故?無論、ここがまだ戦場だから。



    苗木「腐川さんっ…!」



    また…また救えなかった…!


    救えないのなら、ボクは何のためにこんな姿になって…



    苗木「…!」



    腐川さんの頭が床に落ちるのを、腐川さんの体が自立できなくなるのを見ることしかできない。


    動くことができない。


    だけど、見ることしかできなかった故に『見る』ことができた。


    目の前の敵の面を拝もうとすれば絶対に見ることが叶わなかったソレを。ボクは見た。



    鉄扇。



    腐川さんの首を恐らく切断したのであろうソレは、ブーメランのようにして敵の方へと戻って行く。


    この鉄扇は恐らく…



    苗木「…」



    ボクは今度こそ敵の方へと顔を向けた。


    果たしてそこには女の子がいた。


    涙をボロボロと流しながら、赤髪の女の子を抱きかかえた女の子がいた。



    苗木「…キミも失ったからそんな事をしてるの?」


    西園寺「…おねえ…おねえ…小泉おねえ…
    ねえ、邪魔だよね、アイツ」


    金髪にツインテール、そして着物。


    そんな装いの女の子が、赤髪の女の子の頭を撫でながら、呟いた。


    赤髪の女の子を膝枕した形で行われているそれは、はたから見ると慈愛に包まれていた。


    けど。


    着物の女の子の目はひどく濁りきっていて。だから慈愛なんてものは微塵にも感じられなくて。




    苗木「そっか…キミはもう…」



    彼女はもう、壊れてる。狂ってる。



    西園寺「うん、分かったよおねえ…
    蟻みたいにプチっと潰してくるから…だから待っててね…待って…待ってて…はっはははっ」



    赤髪の女の子を丁寧に床に寝かせると、殺すべき『敵』が立ちあがった。
  88. 88 : : 2016/03/22(火) 00:20:13





    地面を蹴り上げる。これだけでいい。


    これだけで、奴を充分殺せる。



    西園寺「うあああああコプッ」



    瞬時に西園寺先輩との距離を縮め、すれ違い様に顔面を握り、勢いに任せて首をへし折った。


    彼女の顔を掴んだまま、思いっきり床に叩きつけると、そこを中心にひび割れる。辺りの亀裂に、彼女の血が染み込んでいった。


    荒い呼吸を繰り返さ……ない。


    もう、涙すら出ない。


    生きてるって証も、ない。


    仲間は……いない。





    ないないない。




    苗木「僕には何もないのにッ……これ以上、何を奪うって言うんだよッ!!」




    感情が昂ぶり、誰もいない地下室で叫んだ。声が反響し、部屋を揺らす。


    感情だけは、ある。




    僕は、来た道を引き返そうと思った。



    いよいよ最終決戦だ。





    苗木「……王を、殺す」









  89. 89 : : 2016/03/27(日) 14:51:20

    事の真相は至ってシンプル。


    戦力的な意味で大きくなりすぎた希望ヶ峰学園を各国が危険と判断した上での国際的条約の内容が原因である。



    “ 今後一切日本を侵略しない。
    その代わり、日本で希望ヶ峰学園を抹消してくれ。 ”



    そうつまり、希望ヶ峰学園生徒の敵は世界であり国家。


    ただし、九頭龍や小泉のように国家に転覆し他生徒に説得を試みる人間もいた。


    無論、これは狛枝凪斗が『王』に提案したことである。


    元々はスパイとして希望ヶ峰学園に潜伏していた狛枝であろうと、何年も一緒にいれば情は芽生える。


    本当は芽生えてはならなかった情が。


    狛枝に絶対的な信頼を置いていた『王』はそれを快諾し、主に77期生を国家に加えようとした。


    これは狛枝の願いを聞き入れた事、そして他国への抑止力にも繋がったためである。


    言うなれば希望ヶ峰学園の生徒は、日本だけが持つ《生物兵器》ということだから。





    と言うのが、苗木誠が国のサーバーに侵入して得た情報の全てだった。


    何故今までそれをしなかったのか?


    場所が知れてしまうから。


    だが、それはもう気にしなくてよくなった。


    だって。







    苗木「このドロドロのグチャグチャになっちゃってるのは多分舞園さんだよね…
    セーラー服でしか判別できないボクをどうか許してね?」


    苗木「で、同じくドロドロのグチャグチャになってるこっちが松田クンだよね」


    苗木「最初状況を飲み込めた時、ボクはキミを少し恨んだよ…
    こんな体になっちゃったしね」


    苗木「けど今はすごく感謝してるよ…心から」



    だって。



    苗木「バイバイみんな、もう行くね」




    ボクは王を殺して、王になるよ。
  90. 90 : : 2016/04/06(水) 22:54:19



    五年前だった。


    テレビに映る、白ヒゲを生やした老人。割れた音声が、僕の焦燥感を掻き立てる。


    その人物は、自身を王だと名乗った。沸き立つ観衆の中で、僕はその言葉を息を潜めて聞いていた。


    しかし、僕にはどうも、その言葉はノイズがかかったように朧げなものであり、不確かなものであっだのだ。









    その王がいる場所は国会議事堂……と、一般には思われているが、真の居場所はジャバウォック諸島である。


    これは、側近中の側近しか知り得ない情報。少し本気を出して調べた。






    そして僕は今、ジャバウォック諸島に君臨する、遺跡の前に立っていた。


    海風が砂を巻き上げ、僕へ警告するように駆け抜けていく。


    僕はそのまま遺跡に近づくと、問答無用というように、扉に拳を撃ち込んだ。


    一瞬にして深い亀裂が入り、そこから細かい金属の破片が飛び出す。爆音が響き渡ると、今度は巨大な塊が辺りに鋭く散らばった。


    扉に空いた穴に、大きな一歩で踏み込んだ。





    中は薄暗く、閑散としている。物静かな雰囲気は、僕の緊張感と同調しているようでもあった。


    奥へ歩を進めると、青白い光を放つ、巨大な円柱を発見する。幅は数十メートル、長さは天井に届かんとしている。


    円柱の内側にあるのは、青い液体のようである。ボコボコと常に泡立ち、外部に巡らされたコードは、時々赤く点滅した。







    苗木「これが王の正体……」









    僕の中の兵器が、共鳴しているのを感じる。








    王は、『人の心』だったのだ。


    僕の『兵器』には人の殺気を感知するシステムが搭載されている。


    そして、その技術は王にも用いられていた。


    王は国民の心を感知し、実行するよう命令を出していた。


    つまり、国民の意思こそが王の正体だった。


    少数意見は抹殺し、多数意見を尊重する。


    王は、昔から存在するシステムだったのだ。




















  91. 91 : : 2016/04/07(木) 16:00:09
    そんな『(システム) 』が何故今回のような事を行ったんだ?


    海外諸国の事情や要求、国民の総意を元に決定していない事柄が多すぎる…



    と、ボクの思考はそこまでで遮断せざるをえなかった。



    向こうから歩いてくる人影が見えたからだ。



    苗木「…っ!」



    ボクは臨戦態勢の構えを自然と取ってしまった。


    それほどまでに、向こうから近づいてくる相手は存在感を放っていた。


    …口を開くことすら許されない程の緊張感、圧迫感。



    人影が近づくにつれ、その姿が鮮明となっていく。




    苗木「……」




    黒いスーツ、赤い返り血、赤い目、黒い長髪。





    こいつがラスボス…で、いいよね?



  92. 92 : : 2016/04/16(土) 20:31:37
    誰が今生きてるの?
  93. 93 : : 2016/04/17(日) 21:27:16
    >>92
    テヘペロ☆
  94. 94 : : 2016/04/27(水) 23:33:31



    カムクラ「俺の名はカムクライズル。お前と同じサイボーグ人間だ」




    ワカメみたいな髪型のそいつは、丁寧に自己紹介を始めた。それを無言で睨みつける。



    苗木「……」


    カムクラ「『今回の王の命令は、海外諸国の事情や要求、国民の総意を元に決定していない事柄が多すぎる……』って顔だな? 説明してやろうか」


    苗木「そこまで読み取れるなんて凄いや。平成のジョセフ・ジョースターかな?大方、『死ね死ね消えろ』の類似品を搭載してるってところだろうね」


    苗木「じゃあ……説明してよ」




    カムクライズルは少し沈黙を誘った後、言葉を流動するように並べ出した。



    カムクラ「『王』が命令を出す条件は1つ。『国民の意識下において、3分の2以上の意見が発生した時』」


    カムクラ「戦争教育がスタートしたのも、貴様のクラスメイトの江ノ島姉妹が危険分子として殺されたのも、全部、『国民の要望』だったというだけの話だ」


    カムクラ「なぁ……人は本当に戦争を憎んでいるのか? 違うだろ。人が憎んでいるのは、あくまで自分に起こる不利益だけだ」


    カムクラ「利益を生む争いは人間の好物であり、マスコミが少し煽れば戦争賛成者を量産出来たことが、それを証明している」


    カムクラ「貴様だって本心はそう思っている。争いは仕方ないと割り切っている。ただ、被害が自分の周りを犯した時は平和を謳い、性善説論者になる」


    カムクラ「いい加減に気づいた方がいいんじゃないか。人間の本性に」





    苗木「……」




    カムクラは言葉を止めると、『王』に向かって歩みを進めた。




    カムクラ「実はこの『王』、国民へ直接問いかけもできる。俺と貴様、どちらが正しいか、国民に聞いてみよう。それが最終決戦だ」


    カムクラ「戦争をするか、しないか。貴様には『王の口』を1分間だけ使用する権利を与えよう」


    カムクラ「『王の口』は本国のあらゆるスピーカーと連係しており、ほとんどの国民に意図を伝えることができる……さあ、スピーチの内容はしっかり練ろよ。いい言葉を並べろ偽善者」


    カムクラ「さて、それじゃあ始め」







    爆音と共に『王』が弾け飛ぶ。柱から発生した黒煙に紛れ、青色の液体が飛び出した。


    ガラスの破片が、辺りに鋭く散らばった。こちらを向いていたカムクラがゆっくり『王』の振り返る。





    カムクラ「ああああァーッ!!いくらしたと思ってるッ!!!!?」









    パチパチと炎が上がり、崩壊音があちこちから聞こえてくる。僕はおもむろに口を開けた。






    苗木「国民の意思は関係ないよ。だって正しいのは僕なんだからッ!」




    さあ、正真正銘、最終決戦だ。



  95. 95 : : 2016/04/28(木) 08:39:56
    カムクラ「お前本当どうしてくれんだよ!
    正しいのは誰とかじゃなくて!」


    苗木「知らないよ…
    正しさを証明するための戦争なのに、そこを考えないほうがおかしいと思うーーー」



    相手は多分相当強い…


    だから奇襲だ。


    距離を一気に詰めて叩く!



    苗木「ーーーよッ!!!」


    カムクラ「!」



    サイボーグ故の人間離れした脚力で、敵に一気に詰め寄る。


    …が。



    カムクラ「はぁ…そうだよな、そうするよな」



    え?



    カムクラ「ツマラナイんだよ、戦法が単純で」


    苗木「な…!?」



    敵に詰め寄るのに1秒も満たなかったぞ!?


    なんで…なんで今アイツはボクの後ろをとっている!?



    苗木「っ…!」


    カムクラ「状況に戸惑わず、瞬時に思考を切り替えて反撃しようとするのは良い」


    苗木「くっそ…!」




    ボクは相手にかざそうとした左手を強制的に止めた。


    ……。


    全部読まれてる!


    冗談抜きでエスパーか何かって疑うよ…!



    カムクラ「動きを読まれてるということを『理解』したお前は、次に俺から距離をとる」


    苗木「…」



    バックステップで距離をとろうとした際、そんな声が聞こえた。


    お構い無しに距離をとる。



    苗木「…ははっ、チートかよってレベルなんだけど」


    カムクラ「サイボーグって点じゃ俺もお前もチートみたいなもんだけどな」


    苗木「同じ立場だから言わせてもらうと、キミの方がハイスペック」


    カムクラ「『国』が創り上げた最終兵器だからなぁ、俺
    そりゃあ、松田『ごとき』に創られたお前とはスペックに差はあるよ」


    苗木「…それでも、ボクが勝つ」



    スペックとかそんな事気にしてる場合じゃない!


    こいつに勝つための手を考えなきゃ…!
  96. 96 : : 2016/04/29(金) 00:42:35





    苗木「……ッ!!」



    僕は右腕の指先に高エネルギーを集中させていく。燃え盛る青白い光のような球体が発生した。



    カムクラ「なるほど、確かに当たれば死にそうだ……だが、お前も知っているはずだッ!! 俺はお前の意思を読み取れるッ! よって攻撃は万が一にも当たらないッ!!」


    苗木「……『答え』はもう出てるし、強いて言うのなら、もう王手飛車取り越えて君は詰みだッ!」


    苗木「撃つべき場所の、『真の答え』」




    僕は左腕の指先に集中させていたエネルギー弾を、こめかみへとぶっ放した。正真正銘の自殺。


    薄れゆく意識の中、思い出が走馬灯のように駆け巡っていく。



    カムクラ「なっ……『読めない』ッ!? 昏睡状態の中では、奴の意図が把握できないぞッ!?」




    駆け巡っていく思い出を力に、僕は最後の力でエネルギー弾を奴の方へ撃ち込んだ。


    その球体は奴の腹部を鋭く貫き、尚、直線を描いて飛んでいく。奴はその瞬間、瓦解する城のように崩れ落ちた。


    全て、全てが白に還っていく。


    世界というピーズが枠から外れ、舞っていった。


    誰ともわからない声が聞こえてくる。




    『これで良かったのか? 結局、お前は何も成していないぞ』






    「確かにね……みっともなく、暴れまわっただけかもしれない」




    「けど、『爪痕』は遺した。『爪痕』はきっと受け継がれる。僕は、僕の意思として生き続けるんだ」




    「そして僕の意思は……みんなでもある」




    「みんながいたから、僕は死にゆく今、慈愛に満ちている」




    「こんなに惨めなのに暖かいのは、みんなのおかげだよ」




    「最悪な世界に生まれた仲間達、そして僕に……最後の祝杯。グラッツェ」







  97. 97 : : 2016/05/02(月) 08:25:39
























    「なに勝手に終わらせてるの?」


    …。



    「これ以上はもう無理?
    立ち上がれないの?」



    ……。



    「貴方にはまだやり残したことが沢山あるでしょう?」


    ………。


    「…分かった」





















    カムクラ「…ツマラナイ」



    『日向創ごっこ』もそうでしたが、苗木誠の攻略法が全くもってツマラナイ。


    『日向創』だったらその可能性を考えきれないでしょうが…



    ……腹に穴が空いてしまいましたね。


    いくつかの機能が損なわれましたが、動けないほどではない…


    『日向創ごっこ』なんてせずに、最初から普通にやっていればこんな事にもならなかったのですが…


    …さて。




    「あら、何処へ行くの?」


    カムクラ「…新手ですか?」


    「いいえ、厳密に言えば違うわね」


    カムクラ「?」


    「私は苗木くんと貴方が対峙する前にこの場所に居たもの…
    私からすれば新手なのは貴方のほう」


    カムクラ「…」



    はて。


    機能が損なわれたからと言って、気配に気づかないことがあるでしょうか?



    「あら、さっきみたいに感情むき出しにはしないの?
    私的にはその方が好みなんだけど」



    カムクラ「こっちの、無感情の方がホントの僕ですよ…
    …まあでも」


    カムクラ「望みとあれば感情むき出しにしてやってもいいぜ?」


    「ええ、そうして頂戴?
    好感も持てるしね」


    カムクラ「お前ぐらいの美人にそんな事言われるのは喜ばしいな」


    「あら、無感情のくせにそういう事は言うのね」


    カムクラ「…で、わざわざ俺に会いに来たってことは」


    「そうね、これはただの復讐」


    カムクラ「じゃあ、あえてこう言わせてもらうかな…」




    カムクラ「父親と同じ目に遭わせてやるよ、霧切響子」


    霧切「安い挑発ね、それ」


  98. 98 : : 2016/06/06(月) 19:10:10




    霧切「さて、戦いの前に質問をいいかしら?」


    カムクラ「……質問。質問だと? 今さら何が聞きたいんだ? 私に対しての勝ち方でも聞きたいというのか? 攻略本でもあるまいし、そんなものあるわけないだろう。逆にお前がどうやって俺を殺すのか知りたいレベルだ」


    霧切「ええ、わかってるわ。私じゃあなたは殺せない。だから質問するの」








    霧切「『あなたは人間なの?』」








    カムクラ「人間かだと……? 何だ? 謎かけか? 強いて言うなら、おそらく違うだろう。苗木誠はあくまで自我を持っていたが、俺に自我はない。生きる理由は目的を遂行するということのみだ」


    カムクラ「お前を殺すというーーーーーーな」


    霧切「そう……それを聞いて安心したわ。本当に。安堵のため息が出ちゃうわね」


    カムクラ「……何なんだ。お前は。意味深なことを言って、死を少しでも遠ざけようという考えか? あいにくそんな茶番に付き合う気はないぞ」


    霧切「ええ、もうすぐ終わるから落ち着いて」


    カムクラ「フン……そんな安い言葉、誰が信じるというのだろうか。もうお前は終わりだ」


    カムクラ「俺は腕を今、振り上げている。これをお前の顔面に叩き込めば、一瞬であの世に送れるぞ。ーーー死ぬか?」


    霧切「いいわよ。もう終わったから」


    カムクラ「……今、緊急信号が脳に走った……本国からの信号だ」










    カムクラ「……貴様ッ! 『王』を使うのかッ!? 『王』の真価は、国民の願いを叶えることッ! 過半数が戦争に勝ちたいと思えば勝たせ、過半数が不穏分子を殺したいと思えば殺すッ……! そういう、願いを叶えるのが本来の『王』の能力ッ!!!!」


    霧切「ええ、私の『兵器』は古典的なの。使うタイミングを見極めれる人間でないといけない。『核ミサイル』っていってね。他国の攻撃を軍事衛生が探知すれば撃ち落せないこともないけど、自国のそれが爆発したのなら、誰も防ぎようがないでしょ」


    カムクラ「フフフッ……ぶっ飛んでやがるッ! お前はッ!! 俺を殺すためにッ!! 過半数どころか全票を獲得するためにッ!! 国民を抹殺したのかァッ!!!」


    霧切「ーーーええ、来世でまた逢いましょう」


    カムクラ「来世……か。違うな。俺もお前も地獄行きだよ。特に、勝つために国民を殺したお前はな」





    ぐちゃっ。





    ーーーーーーーー

    ーーー


    ーーーー

    ーー

    ーー




    江ノ島「『王』で出来ないこと?……ああ、うん。そうそう、唯一、それだけが無理だったんだよ」


    江ノ島「いや、ぶっちゃければ、無理だって思ってた……かな。案外やれば出来るもんだ」


    江ノ島「この話は本当に単純でね。まず最初に、一番大きい壁にぶち当たった。質量保存の法則って知ってるでしょ? 中学で習う物理の初歩」


    江ノ島「あんたがしたいっていうそれをやろうとすれば、その法則がガンガンに乱れるわけよ」


    江ノ島「だって、あんたがここから完璧にいなくなるわけだからね。だから不可能。無理してやったらどうなるか想像もつかない」


    江ノ島「けど、よくよく考えれば、私たちが生きてるこの世界はずっと繋がってるわけじゃない。たとえ話じゃなく、私たちは繋がりの上に生きてる」


    江ノ島「つまり、繋がっているんなら、大丈夫ってわけよ。その繋がりの上を移動するだけなら、質量保存の法則は乱れない。図で説明するなら、私たちは矢印なの。矢印のある一欠片がどこに付こうが、多少歪な形になるだけで総量は変わらない」









    江ノ島「ーーーーーーーーつまり、『王』を使えば理論的には過去に戻れる」




    ーーー


    ーーーーー


    ーーー


    ーーー






    「……ここは? ボクは確かに機械で……」




    がやがや





    苗木「……この雑踏、見覚えがある。五年前だッ!確か、偽王が出てくるんだ……なんで? 戻ったのかッ!? 時間がッ!?」


    苗木「う、嘘だろ……嘘じゃないんなら……」











    苗木「今度は……こっちの番だッ……!」




  99. 99 : : 2016/06/07(火) 00:09:48
    もうっ、能力殺し合いといい此れといい!なぜあなたはこんなにも滾る作品を考えてしまうんですかあぁあぁぁ!!Deさんは天才か!!

    たけまんさんもどの作品も魅力的な文体で、どんどん引き込まれて行ってしまうんですよぉ!好きっ!!

    やめてくださいお二方これ以上わたくしを興奮させるのは!

    いややっぱりやってください!!


    そしてとどまることを知らない期待期待、期待です。
  100. 100 : : 2016/06/07(火) 22:17:13
    >>99
    ありがとうございます! アカウントを作ったらssとか見てもらいやすくなりますし、こちらも見やすくなるのでありがたいです。舞園がクロになるss応援してます!
  101. 101 : : 2016/06/08(水) 07:54:09


    向かう先は決まってる!


    偽王が始まった…戦争が始まったあの場所!


    ここは5年前だ、間違いない。


    だけど、あの日からどれぐらい前か分からない。


    いや、もしかしたら数日過ぎているかも。




    苗木「…」



    それはないな…。


    あの日からすぐ、この場所も反戦争デモで人が溢れかえったから。


    だから今は少なくともあの日よりは前…!




    苗木「…ああ、いけるいけるぞ!」



    みんなを救える!まだ間に合うんだ…ッ!



    苗木「さあ、行こうか『王』の元へ」



    向かうべき場所は偽王が始まったあの場所。



    …の、地下。



    やるべき事は…始動前の『王』の破壊!













    ーーーーー





    松田「なんだ!?」



    突如高反応エネルギー体が現れた…


    座標は…





    …なに?



    松田「高反応エネルギー体がこちらへ向かってくる?」


    狛枝「どうしたの松田クン?
    何か想定外の出来事かな?」



    後ろから狛枝凪斗の声がする。


    こいつはあまり掴めないから好きじゃない…


    だが、問われれば答えなければならない。


    面倒だ…


    答えるためにモニターから目を外し、狛枝凪斗の方を向く。



    松田「いや、大したことじゃない…
    確かに想定外だが、別に対処できないほどではーーー」



    ドンッ!!!



    松田「っ!?」


    狛枝「…上の方からだね?」



    待て…ほんの数秒だぞ!?


    その間にここに辿り着いたというのか!?


    いや待て…落ち着け…落ち着け…!


    いける…大丈夫だ。



    松田「対処はできる…そのための『兵器』だ」
  102. 102 : : 2016/07/02(土) 22:27:32
    期待!面白い!
    戦争って恐ろしいですね…:;(∩´﹏`∩);:
  103. 103 : : 2016/07/28(木) 14:59:00
    ・・・(ワクワク
  104. 104 : : 2016/07/31(日) 23:32:19
    >>102
    人を傷つけるものって……怖いよね……

    >>103
    ワクワクさん!?
  105. 105 : : 2016/08/01(月) 00:14:52




    一瞬だった。


    2つの影が、地に突っ伏せる。



    松田「……ガハッ……!」


    松田(なんだこいつ……!? 初速度もパワーも段違いだ……!)



    苗木「五年前の行き遅れ兵器でボクに勝てると思うことこそが、君がボクに勝てない理由だよ」



    松田(五年前……フッ、そういうことか)


    松田「未来で『王』を使ったな? どうやったかは知らないが、日本国民全員を殺して……むちゃくちゃやりやがる」


    苗木「……」


    松田「過去に来てどうするつもりだ?」


    苗木「未来を変える」


    松田「悪いがそれはできない」


    苗木「なんで?」


    松田「では逆に聞こう、お前は『時の構造』を知っているのか?」


    苗木「……知らない」


    松田「なら黙ってろ。少し説明してやる」


    松田「いいか。時の構造、少なくとも王の中でのそれは、『流れ』だ。海(宇宙の終わり)に続いている川のようなイメージが、時だ。だからこそお前も時間の中を移動できた」


    松田「そして、お前は小魚だ。小魚が上流に来て下流の構造を変えられるか? 100%無理、不可能、やるだけ無駄だぞ」


    苗木「やってみなきゃ……わからないだろ。そのためのこの身体だ」


    松田「そういうレベルの話をしているんじゃない。未来は変えられないんだよ」















    松田「お前は何番目の苗木誠だろうな」







    苗木「ッ……!!」




    自らの足に激痛が走り、その場に膝をつく。呼吸をとる間もなく、間髪入れずに見えない何かがボクを押さえつけた。




    狛枝「ほんっと……つくづくボクは、幸運だね」


    苗木「クソッ……! クソッ……!! 放せッ!!」


    松田「よくあるタイムスリップ問題だろ。特に今回の場合は顕著だ。きっと、これは何度も繰り返している茶番なのさ」


    松田「未来の俺は何らかの原因で追い詰められ、なんとかなるという希望を胸にお前を改造するだろう。で、結局、紆余曲折あり今の時代のお前がまたここに戻ってくる」


    松田「ああ、嫌だねぇ。希望のない未来なんて知りたくなかったよ」


    苗木「ふざけんなッ……絶対止めてやる! 戦争なんか……起こさせない……!」


    松田「そうか? 戦争って受け入れてみれば意外といいもんだぜ。地球に対して人は多すぎるんだよ。このままじゃパンクしちゃう。誰が見たってわかることだ……増えたら、減らさなきゃな?」


    苗木「それでもッ……! ボクらは助け合わなくっちゃあ……!」


    松田「ああ、助け合うさ。国民でな。戦争ってそういうもんだよ」




    血飛沫が飛び散る。肉のつぶれる不快な音が響き渡った。


    2015年。苗木誠はジャバウォック島に眠る。







    狛枝「……これから、世界はどうなるんだろうね」


    松田「さあ、わからないな」


    松田「……ただ、宗教問題、人種差別、食料問題……それらを解決できる方法が戦争だけってのも皮肉なもんだな」


    狛枝「……そうかな」


    松田「あ?」


    狛枝「きっと、あるはずだよ」




    狛枝「誰もが納得する、解決方」


    狛枝「彼なら……それができたのかも、しれないね」









    泡沫。


    泡になって消えていく。


    きっと、世界大戦は間近。



    話し合いが好きな彼なら、あるいは止められるのかもしれない。





    END





  106. 106 : : 2016/08/01(月) 03:09:25



    1度は覆そうとした未来、自分には変えることはできませんでした…!

    と、いうわけで!で!De!
    「ボクたちの青春と泡沫の戦争」これにて完結となります!くぅ疲w
    打ち合わせ無しの合作ということで、予想外の展開の連続にハラハラしっぱなしでした!

    まずはDeさん、ここまで本当にありがとうございました!
    Deさんと合作できたこと、心より光栄に思います。

    次に風邪は不治の病さん!スペシャルサンクスです!
    実は、スレタイは風邪は不治の病さんに考えて頂いておりました!
    3人の合作だったのです!ビックリ!!!

    そして最後に、ここまで読んでくださった読者の皆様、本当にありがとうございました!
    自分のせいで半年以上続いてしまいましたが、これでホントのホントに終わりです!

    またいつかお会いしましょう!
  107. 107 : : 2016/08/01(月) 09:09:50


    グラッチェグラッチェグラグララ〜♫

    >
    グラ〜♫ グラララッララ グラララッララ!♫

    グラッチェ グラッチェ グラグラ グラッチェ〜♫

    グラグラ ラグラ グラグラ♫

    グラ〜♫ グラ〜♫

    グ ラ ラ ラ ッ ♫(グラッチェの歌)



    風邪さんのワンアイデアとたけまんさんの軌道修正力(ゴッド=エンペラー)のおかげでここまで無茶が出来ました。お二人にグラッチェの歌を。

    初めての合作で緊張いたしましたが、なんだか伸びてモチベ的にも良かったです。ほんと、読んでくださった方々にグラッチェの歌を。








    この作品は一度死んでますが、再び蘇りました。そのおかげで面白くなったのでたけまんさんの英断にグラッチェ。その際に曲げたくなかったのが、バッドエンドで締めることです。戦争を扱った時点でハッピーエンドで括る気は全くありませんでした。自分のわがままに付き合ってくれたたけまんさんにグラッチェ。


    これにて終わり! 閉廷!!ラブ&ピース!!
  108. 108 : : 2016/09/06(火) 05:58:10
    遅ればせながら…
    お2方、お疲れさまでした!

    とても面白く、そして考えさせられるssでした。

    そうですね…戦争によって幸せが生まれることはありませんよね

    なのにもかかわらず、このssは戦争を繰り返してる(絶望)
    日本も近いうち、また戦争になるのかもしれませんねぇ(遠い目
  109. 109 : : 2016/09/09(金) 13:17:43
    神SS

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donguri

たけのこまんじゅう

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