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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

ザックレー「リヴァイ・アッカーマンに死刑判決を言い渡す」

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  1. 1 : : 2015/08/08(土) 17:39:52


    ネタバレ注意。

    17巻のネタバレを少し含むので、まだ読んでいない方は要注意。


    原作と異なる箇所が多々あります。
  2. 2 : : 2015/08/08(土) 17:47:51
    ザックレー「リヴァイ・アッカーマンに死刑判決を言い渡す」







    審議所で薄汚ねぇ豚野郎どもが俺に下した刑罰は死刑だった。






    別に死ぬのは怖くねぇ。






    人はいつしか必ず死ぬのだから。






    ただ…死刑とはなんとも間抜けな死に方だ。








    審議所の窓から見える青空はとても美しく思えた。






    地上は俺にとって生きにくい場所だった。







    あまりにも太陽の光が眩しすぎて、あまりにも空気が綺麗で…






    あまりにも地上は美しかった。







    そんな場所で俺が生きていくのは無理だ。






    初めから分かっていた事だ。






    なのに、何故?






    俺は死刑となった今、生きてきた中でこの上ない程に悔しさを感じていた。




















    ーーーーーーーーーーーー

    調査兵団本部




    モブ「早馬です!
    リヴァイ兵士長に判決が下されました。
    判決は…死刑との事です!!!」







    エレン「死刑…!?
    どうしてリヴァイ兵長が殺されなきゃいけないんですか!?」






    コニー「おいおい、どういう事だ…?
    リヴァイ兵長は殺されちゃうのか!?」






    本部内は騒然とした。





    そりゃそうか…




    人類最強と言われる兵士長に死刑判決が下ったのだから。







    ハンジ「みんな、落ち着くんだ」






    エレン「ハンジさん!?
    落ち着いてなんかいられないですよ!!
    どうして…どうしてリヴァイ兵長が!?」






    ハンジ「エレン、落ち着くんだ。
    私もあんまり詳しい事は分からない…
    けれど多分、彼の過去が関係しているんだと思う…」





    ジャン「…過去?」





    ハンジ「あぁ…そうだ。
    モブ、エルヴィンはまだ帰ってこれそうにないのかい?」





    エルヴィンは調査兵団で唯一、今日の裁判に出る事を許された。





    私は今日の裁判に参加拒否をされてしまった。





    早打ちですら審議所内に入れてもらえず裁判が終わった後、ザックレー総統の使いが早打ちに判決を口頭で伝えるという異常なものだ。







    一体どうなっているんだ…?








    モブ「はい…
    本部に帰って来るのは早くて半日経った頃だと…」







    ハンジ「わかった、ありがとう。
    早馬に乗って疲れただろう。
    部屋で休んで来るといい」





    モブ「はっ!!
    失礼します」





    今、本部にいるのは新リヴァイ班と私だけだ。





    リヴァイの過去を勝手に誰かに話すのは気がひけるが…





    仮にも彼らはリヴァイ班だ。




    隠し通す訳にはいかない…






    ハンジ「みんなよく聞くんだ。
    エルヴィンが帰ってくるまで、私が知っている事を話すよ」


  3. 3 : : 2015/08/08(土) 17:50:34
    期待
  4. 4 : : 2015/08/08(土) 18:03:04
    期待
  5. 5 : : 2015/08/08(土) 20:13:25
    ハンジ「さっきも言ったように、リヴァイが審議にかけられたのは過去の行いが原因だとエルヴィンから聞いた。
    だからこれから、リヴァイの過去についてみんなに話しておくよ」





    エレン「ハンジさん、リヴァイ兵長の過去を知ってるんですか!?」




    アルミン「そう言えばリヴァイ兵長の過去の事は何一つとして、僕達は知らないね…」





    そう。




    リヴァイの過去を知る者は多くない。






    いや、知っているのはきっと私とエルヴィンくらいだろう。






    ハンジ「彼は自分の事をあまり語りたがらないからね。
    じゃあ、本題に入るよ。
    彼は調査兵団に入る前は地下街にいたんだ」





    コニー「地下街!?
    地下街って壁の中じゃ、どこも比べものにならないくらい治安が悪いって言われてる…」




    ハンジ「あぁ、そうだよ」




    みんな驚きを隠せない様子だ。




    地下街と言えば治安が悪く、お世辞にも綺麗な場所とは言えないような所だ。



    それに…人同士の殺し合い、人身売買なんかが日常的に行われているという。






    人類最強と言われる男がそんな地下街出身だと聞いて驚かない者はいないだろう。






    ハンジ「彼は物心ついた時には既に地下にいたと言っていた。
    これから話す事はリヴァイから聞いた地下での話だ。
    みんなには少しキツイというか、なかなか残酷な話だと思うけど…」






    前置きもそこそこに私は静かに話し始めた。





    新リヴァイ班のみんは、私の目をみてじっとしている。




    彼らは今までの地獄のような経験を得て、少しは免疫がついたのか先程の動揺に満ち溢れた顔とは裏腹に今は真剣な表情だ。






    ハンジ「彼…リヴァイが覚えているのはおおよそ7歳からの記憶だ…」









    ーーーーーーーーーーーーー




    彼は物心がついた頃からずっと同じ部屋に居たと言っていた。



    ずっとと言っても彼が覚えているのは7歳からの記憶…



    いや、その頃本当にリヴァイが7歳前後なのか自分でも分からないらしい。



    何しろ彼には親や身寄りはいなかった。




    ただ居るのは彼が閉じ篭っている部屋のベッドに横たわる若い女1人。



    彼には、その女が誰なのかすらも分からなかったらしい。
  6. 6 : : 2015/08/08(土) 20:52:32
    その女性は動くわけでもなく、喋るわけでもなくずっとベッドに横たわったまま。



    リヴァイもまた動くわけでもなく、喋るわけでもなくその女性を部屋の隅からじっと眺めているだけ。





    そして、ある時彼は気付いた。



    その女性は死んでいた。



    いつまで生きていたのか?



    いつ死んだのか?



    それすらも彼には分からなかった。



    けれど彼はその女性が生きていようが死んでいようが関係なく、ただ部屋の隅からじっと眺め続けていたらしい。




    そんな毎日を過ごしていたリヴァイだが、ある日その部屋に1人の男がやって来た。




    「おい…
    おいおい、おいおい。
    ずいぶんと痩せちまったな…クシェル…」




    見知らぬ男はそう言いながら部屋へと入ってきた。




    リヴァイ「死んでる」


    リヴァイはその男に一言、そう告げた。



    「お前は?生きてる方か?」



    男はリヴァイの方に顔を向けてそう問うが、リヴァイが返事をする事はなかった。




    「おいおい、勘弁してくれよ…
    わからねぇのか?名前は?」



    返事を返さないリヴァイに対して、今度は名前を問う。



    リヴァイ「リヴァイ…ただのリヴァイ…」




    リヴァイが自分の名前を知っている所から亡くなった女性と話した事があるのか。


    はたまた別の人と関わりを持ったことがあるのは明確だったが、そこまでは覚えてないらしい。




    「そうか。
    俺はケニー…ただのケニーだ。
    クシェルとは…知り合いだった…
    よろしくな」




    その男はケニーと名乗った。



    そして亡くなった女性の名前はクシェル。


    リヴァイの母親だったらしい。



    彼もケニーに聞いて初めてその女性が自分の母親だと知ったと言っていた。




    それから彼はケニーと名乗る男に部屋から連れ出された。



    覚えている中では初めて、部屋の外に出たらしい。
  7. 7 : : 2015/08/08(土) 21:20:53
    期待!
  8. 8 : : 2015/08/09(日) 10:28:12
    ちょー期待
  9. 9 : : 2015/08/09(日) 11:13:58
    ケニー「お前ずっとあの部屋で閉じ篭ってたのか?」



    リヴァイ「そう…」



    ケニー「今まで何食って生きてきたんだ?」



    リヴァイ「部屋にあるもの…」




    部屋にあるものとは、麻の袋に大量に詰め込まれた腐ったパンと大きな容器に入れられた泥水の事だった。



    そんな物を飲み食いしていたのかと驚くかもしれないが、地下街では珍しい事では無いらしい。






    ケニー「しょうがねぇなぁ…」



    彼はそう言ってリヴァイをある場所へ連れて行った。




    少し歩いて辿り着いた場所は安易な食堂のようなところだった。


    さっきは腐ったパンや泥水なんかは珍しくないとは言ったが、地下街にも食堂や酒場があるにはあるらしかった。




    ケニー「とっとと食えよ」



    彼ははリヴァイにパンと暖かいスープを振る舞った。



    もちろん、腐っているものでは無い。



    ケニー「…うまいか?」



    ケニーの問い掛けにリヴァイはただ小さく頷くだけだった。



    彼は昔から無口らしい。




    そしてその日から、ケニーとリヴァイは共に生活を始めた。





    リヴァイはケニーからいろんな教育を受けたらしかった。



    その教育は普通の教育とは180度違うもので、最初に教えられたのはナイフの握り方だった。



    それからご近所付き合い、挨拶の仕方に身の振り方。



    そしてナイフの振り方をおしえて貰ったと言っていた。



    あまりよくは分からないけれど、ご近所付き合いや挨拶の仕方なんかも、まともなものではなかったんだと思う。




    けれどその頃のリヴァイにはそれが間違った教育である事なんて分かるはずもなかった。





    毎日毎日ケニーにナイフの使い方を教わり、そしてあろう事か人の殺し方までも教わったのだ。



    ケニー「おい、リヴァイ。
    人を殺す時はな…こうやって…喉を掻っ切るんだっ…!!」



    それも実践でだ。






    そんな教育を受けたリヴァイは1年後、初めて人を殺す事となった。





    その日はいつものように、食料を盗りに出掛けた。


    これもケニーの教えだ。



    自分の食べる物は自分で用意する。



    つまり、お金なんて無いリヴァイには盗む他なかった。





    商人「おい、クソガキ!!!」



    いつものように食料を盗り、いつものように商人に追い掛けられる。




    しかし、一つだけいつもと違う事があった。

  10. 10 : : 2015/08/09(日) 12:52:38
    期待
  11. 11 : : 2015/08/09(日) 17:32:56
    その商人は思った以上に足が速かった。


    それに体格も自分の倍ほど大きい。



    もし捕まってしまえばただじゃ済まないだろう。



    彼はそんな事を考えながら走り続けた。




    …が、仮にもまだ10歳にも満たない少年。



    体力も限界へと近付いていた。




    それに比例し、みるみるうちに商人との距離は縮まっていく。






    そしてついに、商人が手を伸ばせばリヴァイを捕まえる事が出来るほどに迫っていた。




    商人「やっと捕まえた…」



    商人がそう言いながらリヴァイへと手を伸ばす。




    それと同時にリヴァイは走るのをピタリとやめ、勢いよく商人の方へと振り返った。





    商人「あ…?」




    リヴァイは振り返るや否や隠し持っていたナイフで商人の指を斬りつけた。



    そして、息を吐く間も無く今度は足にナイフを突き刺す。




    彼の最大限の力を使い商人の足を深くえぐっていき、今度は勢い良くナイフを抜き取る。




    商人の足から勢い良く血が吹き出し、彼の服に血飛沫が飛び散る。




    商人「おい…ガキ…」



    商人が怒りの表情を浮かべながら、その場に倒れこむ。





    そしてとどめと言わんばかりに、リヴァイは商人の首を掻っ切った。





    そう、全てケニーに教えられた通りに。




    自分と同じ、もしくは少し大きいくらいの相手なら直接喉を掻っ切って殺す。




    けれど自分より遥かに大きい相手はまず足なんかを狙い体制を崩したところで、目や喉、頭なんかの急所を狙う。





    1年を通して教え込まれた事が皮肉にも今、役にたったみたいだ。




  12. 16 : : 2015/08/09(日) 19:44:18
    そしてその時、リヴァイは自分の中にあるとてつもない力が解き放たれたような感覚がしたという。



    あの状況で一瞬にして状況判断し、目にも留まらぬスピードで動き回り、大の男の足の肉をえぐる力強さ。



    全てが8歳の少年と思えぬ行動だ。



    その感覚とやらも納得せざるを得ない。




    そして、これがリヴァイの初めて人を殺めた時の話だ。





    リヴァイが初めて人を殺めた時、ケニーはたいそう喜んだそうだ。





    リヴァイ「ただいま…」



    先ほど盗ってきた食料を抱え、リヴァイはケニーの元へと帰る。



    ケニー「…ん?
    おいおい、おいおい。
    お前誰か殺ったのか?」



    リヴァイは返事をする事なく、こくりと1度頷いた。



    するとケニーはいきなり大笑いしたかと思うとこう言った。




    ケニー「よくやった。
    リヴァイよ…この世は力が全てだ。
    力がある者が偉いんだ」



    ケニーはリヴァイの頭に手をポンッと置くと続けてこう言った。



    ケニー「この1年間お前に教えた事は地下で生きていくのに必要な事だ。
    けどよぉ、リヴァイ。
    お前は地上の世界があるのを知ってるか?」




    この時リヴァイは初めて地上の世界がある事を知った。


    地下で生まれ、地下で育った彼には自分の見ている世界が全てだった。


    つまり、地下でしか生活した事のない彼にとって地下が全てだと思っていたらしい。



    だから地上の世界があると知った時は酷く驚いたと言っていた。




    リヴァイ「地上…こことは違うのか…?」




    ケニー「あぁ、全く違うさ。
    お前はここの空気しか吸った事ねぇから分からないと思うが、ここはひどくドブ臭ぇ。
    けど地上はどうだ?
    地上には日の光が差し込んで、空気もここと比べ物にならないくらいうめぇ」




    リヴァイは生まれて初めて胸を高鳴らせた。


    こことは全く違う世界。


    行ってみたい。


    彼は素直にそう思ったと言っていた。




    リヴァイ「…俺、上に行きたい」



    ケニー「あぁ、行きたきゃ行けばいい。
    さっきは力がある者が偉いと言ったが、地上に行き壁の外に出た奴が一番強くて偉い。
    ただし弱い奴は壁の外に出るどころか、地上でも生きていけねぇ。
    だから地上に行きたきゃ自分の力で行くんだな。」



    リヴァイにはケニーの言っていることが理解できなかった。


    壁とは何なのか?


    壁の外という所はまた地上と違う世界なのか?


    地上には自分の力ではいけない所なのか?


    上への道のりはそんなに厳しいのか?


    彼はその晩、ずっとそんな事を考えていた。



  13. 17 : : 2015/08/09(日) 20:12:19
    期待です
  14. 18 : : 2015/08/09(日) 20:13:44
    そして次の日、彼は早速上を目指した。




    ケニーの口振りでは上への道のりは酷く険しいように感じた。



    が、上に行く道はリヴァイが思っていたよりも遥かに簡単に見つかった。



    今までは気にも留めていなかった上へと続く階段。



    階段の先は日の光が入らない地下とは裏腹に眩しいくらいに輝いていた。



    誰に言われなくてもそれが地上へと続く階段だと直感で分かったそうだ。




    彼の胸はドクドクと大きく波打ち、武者震いだろうか。



    全身が震えた。



    彼は深く深呼吸をすると一段、また一段と階段を登っていく。




    そしてついに階段を登り終えた時、彼は初めて地上の空気を全身で感じた。




    リヴァイ「確かに…全然違う…」



    彼は日の光の眩しさに目を細める。



    空気だけではない、見るのも全てが地下とは180度異なるものだった。



    リヴァイが地上の光景を見て最初に驚いたのは、みんなの身なりだった。



    自分が着ているような薄汚い服を着ている者や、裸足で歩いている者は誰一人としていなかった。



    みんながみんな、綺麗な服を身に纏い靴を履いていた。



    当時のリヴァイは靴という物があるのは知っていたが、当たり前のようにみんなが履いているのに驚いたそうだ。



    何しろ彼は今まではずっと裸足で生活をしていたのだから。




    そして今度は、地上があまりにもが美しい事に驚いたそうだ。



    綺麗な家が建っている事、ゴミ1つ落ちていない道がある事。



    そして、今にも死にそうな奴や死体なんかがその辺に転がっていない事。




    あまりの美しさに彼はその場を動き出すことが出来なかった。





    「ねぇ、ママー?
    なんであの子はあんなに汚いの?」



    そんな言葉がどこからか聞こえてきて、リヴァイはやっと我に返った。




    「こらっ。
    見ちゃいけません」



    その会話はすぐ側を歩く親子のものだった。



    よく見れば通行人はリヴァイの方を見てはクスクスと笑ったり、露骨にも嫌な顔をし、鼻をつまみながら過ぎ去る者ばかりだった。



    彼には訳がわからなかった。



    何故自分は笑われているのか?


    何故自分はみんなから嫌な目で見られるのか?



    そんな事を考えている時、ふとケニーの言葉が頭をよぎった。




    『力が全てだ。強い奴が偉いんだ』




    リヴァイ「あぁ、そうか。
    こいつら全員殺せば、俺はこいつらより偉くなるんだ」



    彼は隠し持っていたナイフを手に持った。
  15. 19 : : 2015/08/11(火) 07:02:58
    その場は一瞬にして悲鳴と絶叫の渦に巻き込まれ、その場にいた者達はあちらこちらへと逃げ惑う。




    しかしリヴァイは誰一人として逃す事はなく、1人また1人と殺めていった。


    罪悪感なんてものは全く感じなかったらしい。


    むしろ優越感すら覚えたと言っていた。




    そして、10分足らずで十数人もの人々は8歳の少年に殺害されてしまった。




    リヴァイは返り血で自身を真っ赤に染め、ナイフを握る手を震わせた。


    人を殺めた恐怖とか、全員を仕留めた喜びのせいじゃない。



    この場にいた者全員を殺めたのに彼の心の中は悔しさでいっぱいだったと言っていた。




    何故?



    強い奴が偉いはずなのに。



    少なくても、この場にいた誰より俺は強く偉いはずなのに。



    なのに…その辺に転がっている亡骸よりも俺が劣っているように感じるのは何故?



    彼は悔しさと疑問でぐちゃぐちゃになった気持ちを心に秘め、勢いよく地下への階段を降り始めた。



    そしてケニーが言っていた言葉の意味をようやく理解した。




    弱い奴は地上では生きて行けない。




    それは力が弱い奴ではなく、心が弱い奴の事を指していたんだ。



    地下出身と言うだけで、笑われ、軽蔑され、邪険に扱われる。



    彼にはそれが耐えられる事ではなかった。




    階段を降りきると、リヴァイは一目散にケニーの元へと走り帰った。




    リヴァイ「ケニー…!」



    リヴァイが勢いよく家の扉を開けると、そこにはいつものようにナイフを研いでいるケニーがいた。




    ケニー「ん…?
    おいおい、おいおいおい。
    朝一番でどこかに飛び出して行ったと思ったら人を狩りにでも行ったのか?」



    ケニーは血にまみれたリヴァイを見て、少し驚いた様子をしたという。




    まさかケニーも昨日の今日でまた人を殺してくるなんて思わなかっただろうし、リヴァイにベッタリとついた血の量は1人や2人殺めたくらいで付く量ではない。




    リヴァイ「上に…行ったんだ…」




    ケニー「あん?
    って事はあれか?お前は上の人間を殺しちまったのか?」



    リヴァイは黙ってこくりと頷く。





    ケニー「おいおい、おいおいおい。
    そりゃあいけねぇぜ…リヴァイ…
    何人殺した?」




    リヴァイ「10人以上…」





    するとケニーは大きく溜息をついた。




    ケニー「…リヴァイ。
    上の奴は殺しちゃいけねぇ」




    リヴァイ「なんでだっ!?
    地下の人間は死んでもいいけど、上の人間は死んじゃいけねぇのか!?
    ケニー…お前までも差別するのか!?」




    今では考えられないが昔のリヴァイは結構、感情を剥き出しにするタイプみたいだ。



    この時もリヴァイはケニーに向けて怒りをぶちまけた。



    そんなリヴァイを見て、ケニーはまた溜息をつく。




    ケニー「おいおい、おいおい。
    落ち着けよリヴァイ…
    差別しているのは俺じゃねぇよ。
    憲兵のやつらだ」




    リヴァイ「憲兵…?」




    ケニー「あぁ、でも話は後だ。
    もうすぐ憲兵がここへやって来るさ」




    すると彼等の話を聞いていたかのようなタイミングで扉が勢い良く開いた。




    憲兵「切り裂きケニー。
    民間人を殺したのはお前だな?」




    憲兵団はリヴァイに目をくれる事もなく、ケニーの方へと歩み寄っていく。




    ケニー「俺じゃねぇさ…」




    憲兵「お前以外いるわけないだろう。
    何しろ殺された民間人は全員、喉を掻っ切られていたからな…」




    ケニーは地下で"切り裂きケニー"という名で呼ばれ、みんなから恐れられていた。




    由来はその名の通り、何十人…
    いや…何百人もの人の喉を切り裂き殺して来たことからつけられた。



    リヴァイもケニーがそう呼ばれているのは知っていたが、上の人間までもがケニーの事を知っている事に驚いたそうだ。



    ケニー「俺じゃねぇって。
    よく見てみろよ?お前の目は節穴か?」




    憲兵「は…?」



    憲兵は部屋の中をくるりと見回す。



    そして何かに気付いたのか「あ…」と言葉を漏らして一点を重視する。




    そう。



    憲兵の目線の先には血に塗れたリヴァイが立っていた。
  16. 20 : : 2015/08/11(火) 13:26:12
    憲兵「おい、糞ガキ。
    まさかお前がやったのか?」



    憲兵がリヴァイに尋ねる。



    が、リヴァイはただ憲兵を睨むばかりで返事をしようとしない。




    憲兵「おい糞ガキ。
    死にたくなけりゃさっさと答えろ」





    リヴァイ「ケニーこいつはどうなんだ」



    リヴァイは憲兵に対して返事をする事はなく、ケニーにそう問いかける。




    ケニー「あぁ、こいつはかまわねぇぜ」




    ケニーが言い終わるか終わらないかのタイミングでリヴァイはナイフを手に持ち、憲兵の喉を一気に掻っ切った。



    ケニー「やれやれ。
    お前は人を殺すのが好きなのか?」



    ケニーは呆れたというような表情をしていた。



    リヴァイ「違う…
    こいつも俺の事を馬鹿にするような目で見てきたんだ。
    俺は…上の人間は嫌いだ」





    ケニー「あぁ、俺だって好きじゃねぇさ。
    この憲兵団達は特にな」




    そしてケニーはまた色んな事を教えてくれた。


    地上には憲兵団、駐屯兵団、調査兵団の3つの兵団がある事。



    3つの兵団のそれぞれの役割。



    憲兵団は自分達のような犯罪者にとっては敵である事。



    ケニー「そしてな、最後にお前に教えてやるのはコレだ」



    ケニーは憲兵の亡骸の腰あたりを指差す。




    リヴァイ「この箱の事か?」




    ケニー「あぁ、それは立体起動装置って言うんだ。
    それの使い方を教えてやる。
    この先、立体起動装置は必ず役にたつからな」





    そう言うとケニーはカチャカチャと憲兵の亡骸から立体起動装置を取り外す。




    そして、その立体起動装置を手に持ったかと思うと今度は奥の部屋へと入って行ってしまった。




    ケニーとリヴァイの住む家には2つの部屋があった。



    けれど、ケニーからは決して奥の部屋には入るなと釘を刺されていた。



    その為リヴァイはそこに何があるのか、何の為の部屋なのか何も知らなかった。




    ケニー「リヴァイ、来い」




    この時、彼は初めてその部屋へ足を踏み入れた。




    リヴァイ「なんだ…これ…」



    その部屋には所狭しとナイフや銃なんかが置かれていた。



    その中でも一番存在感を醸し出していたのは大量の立体起動装置だった。




    ケニー「驚いたか?
    これはな、俺を捕まえようと追ってきた馬鹿な憲兵さんのを頂いたのさ」


    つまり、切り裂きケニーという悪名を持った殺人鬼を捕まえるために地下へとやってくる憲兵団達。



    その憲兵団達はわさわざ武装して来てくれるので返り討ちにし、立体起動装置や刃を奪ったと言う事だ。
  17. 21 : : 2015/08/11(火) 14:17:29
    頑張ってください、期待です!
  18. 22 : : 2015/08/11(火) 19:29:52
    それから毎日のようにリヴァイは立体起動装置の練習をした。



    ケニーは誰かに教わったのか、はたまた自分で練習したのかは分からないが、立体起動装置の使いこなしがかなり上手かったそうだ。




    飲み込みも早く身体能力の高いリヴァイもまた、1ヶ月も経たない内に立体起動装置を使いこなす事が出来た。




    そして、その頃になるとリヴァイは毎日の様に誰かと喧嘩をし、誰かを殺め、食料だけでは無くいろんなものを盗むようになっていた。




    そうしてリヴァイは地下街では有名のゴロツキとなった。




    リヴァイ「…もう終わりか?」




    この日もいつものように、リヴァイが見知らぬ人に喧嘩を売っては喧嘩に明け暮れていた。




    周りにはゾロゾロと野次馬が集まりだす。



    喧嘩と言ってもお互いナイフを持っての、生きるか死ぬかの勝負だった。


    けれど誰も止める事はなく、それどころか歓声を上げ囃し立てるばかりだった。



    そんな野次馬の中に、いつものようにケニーの姿も見えた。


    ケニーはリヴァイの喧嘩をいつも遠くから傍観していた。



    リヴァイにはそれが少し嬉しかった。



    この頃になるとリヴァイはケニーにかなり心を開き、懐くようになっていたらしい。



    死にかけの自分を助けてくれて、いろんな事を教えてくれたケニーには表には出さないが感謝していたようだ。



    そして何より、負け無しの強さを持つケニーに憧れを持っていたと言う。



    けれど、その日。



    リヴァイの喧嘩の決着を見届ける事なく、ケニーは姿を消した。



    リヴァイもまた10歳足らずで負け無しの強さを持っていた。



    だからリヴァイが喧嘩に負ける事は到底無かったのだが、それでもケニーはいつも喧嘩が終わるまで見守ってくれていた。



    そして喧嘩で怪我をしたリヴァイの手当などもしてくれた。



    それなのに何故?



    彼は戸惑った。



    どちらかが死ぬか、どちらかが意識を失うまでは喧嘩は終わらない。



    そう、まだリヴァイの相手は動けはしないものの意識はハッキリとしていた。



    正直、喧嘩どころではなく今すぐにでもケニーの後を追いたかった。



    けれどリヴァイはケニーからの教えを思い出した。




    『喧嘩をしている時は相手に甘さを見せるんじゃねぇよ。
    相手が動けなくなるほどに負傷していても、意識がある限り必ずトドメをさせ。
    中途半端に勝ってしまうと帰り道に後ろから襲われたり、後から襲撃されたりするぞ。
    喧嘩した相手にはしっかりお前の恐怖は植え込んどくんだな』





    リヴァイは自分の下敷きになり、動けないでいる相手に迷わずナイフを突き刺した。



    それがこの喧嘩の終わりを意味し、周りの野次馬からは歓声が上がった。



    リヴァイはその歓声すらも耳に入らず、すぐにその場を後にする。



    そして必死にケニーと過ごした家へと走り帰った。



    きっと家に帰ればケニーがいつものようにナイフを研いでいるはず。


    そして、いつものように怪我の手当てをして「良くやったな」と褒めてくれるはずだ。


    そんな事を考えながら、彼は走り続けた。


  19. 23 : : 2015/08/12(水) 07:49:58
    リヴァイ「ただいまっ…」




    リヴァイは家に着くなり勢いよく扉を開け、辺りを見回す。




    しかし、そこにケニーがいる事はなかった。



    リヴァイ「おい、どこだよ」



    彼は息を整えながら奥の部屋へと顔を覗かせる。



    しかしそこにもケニーはいなかった。



    きっと何処かへ出掛けてるんだ。


    夜になれば帰ってくる。



    そう考えながら彼は部屋の隅に座り込んだ。




    けれどその夜、ケニーが帰って来る事は無かった。




    リヴァイの中に不安の波が押し寄せる。



    もうこのまま帰って来ないんじゃないか。


    もうこのまま一生会えないんじゃないか。



    そんな考えが頭の中をぐるぐると渦巻く。



    それでもリヴァイはケニーの帰りを待った。



    家から出る事もせず、食事もせず、ただ部屋の隅でぼぉっとケニーがいつも座っていた椅子を眺め続けた。



    そう…リヴァイがクシェルの事をただ眺めていた昔のように。






    そしてケニーはいよいよ1週間経っても帰ってくる事はなかった。




    さすがにリヴァイはこのままでは自分が死んでしまうと思い、いつものように盗みに出て1週間ぶりに食べ物を口にした。



    しかし、一口だけ食べるとリヴァイはまた部屋の隅に座り込んだ。




    リヴァイ「ケニー…お前は上に行ったのか…」



    この時リヴァイは直感でそう感じたと言っていた。



    ケニーは上に行ってしまい、上の人間となってしまった。



    悲しい気持ち、悔しい気持ち、裏切られたという気持ち。


    そんな気持ちが心の中で入り乱れた。



    そして、そんなどうしようもない気持ちを吐き出す為にリヴァイはまた喧嘩に明け暮れた。



    来る日も来る日も喧嘩をしては誰かを殺し、そんな事を数年続けている内に彼の名は地上にまで知れ渡っていた。



    そんな彼を憲兵団達は放っておく訳もなく、リヴァイを掴まめる為に毎日のように地下街へやって来た。




    けれど憲兵団達はリヴァイを捕まえるどころか、リヴァイに触れる事さえ出来ずにみな殺されていった。



    憲兵側も毎日兵士が殺されてはかなわないと言うことで、地下街に憲兵団達が来ることは少なくなった。



    この時、彼はもう15歳になっていた。
  20. 24 : : 2015/08/15(土) 23:46:04
    期待です!
  21. 25 : : 2015/08/28(金) 11:14:26
    マジ面白い!
    続きおねがい!
  22. 26 : : 2015/09/02(水) 15:21:44
    期待!
  23. 27 : : 2015/09/06(日) 07:06:33
    15歳になった彼は昔と比べものにならない程、心を閉ざし感情を露わにする事は無くなった。


    もちろん、そんな彼に友達や仲間もいるはずがない。


    しかしそんな彼に心の変化が起きる出来事があった。


    ある日、彼はいつものように盗みに出掛けた。


    けれどいつも盗みを働く場所ではなく、少し遠いところまで足を運んだと言っていた。



    距離にして彼の住む地域から5キロ程先の場所。



    彼はそこで衝撃的な光景を目にした。


    地下街のとある地域では売女が多くいるという噂があった。


    売女などに興味のないリヴァイはそんな噂も忘れかけていた。



    リヴァイ「ここが…」



    しかしその光景を見て、瞬時に彼はその噂を思い出した。


    辺りを見回せば赤子や幼子の亡骸がゴロゴロと転がっていた。



    彼の住む地域でも亡骸が転がっているのは良くある事。



    しかしその亡骸はどれも、年老いた老人だったりする。


    少なくとも彼の住む地域では子供の亡骸は疎か、子供自体がそういなかった。


    彼は一瞬にして、ここがその噂の地域なんだと分かったと言っていた。


  24. 28 : : 2016/01/31(日) 04:31:01
    期待です!頑張ってください!
  25. 29 : : 2016/08/05(金) 08:56:38
    ほ、放置????

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ayana0518

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