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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品はオリジナルキャラクターを含みます。

南柯の夢 〜End or Continue?〜

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  1. 1 : : 2015/07/31(金) 20:20:52
    前作の続編です。

    ちょっとエロチックな話になると思われますので苦手な方はご遠慮ください。

    なお、前作を見なくても楽しめるように頑張りますが、見ればより楽しめるかと思いますのでお時間あればどうぞそちらもよろしくお願いします!

    未読の方向けに、以下の要素を含みます。

    ・R-18含む

    ・基本現パロのエレアニで、ジャンミカ含みます。

    ・シリアスなシーン一切ナシ。つか大きな事件もナシ!まあ安心!

    ・割と現実的な話を目指します(そうなるとは言ってない)

    以上を踏まえてご覧くださいませ!

    前作↓
    http://www.ssnote.net/archives/28658

    執筆中の感想はこちらに!↓
    http://www.ssnote.net/groups/45/archives/7#res_num5

    ※8月11日追記

    既存のキャラを崩さない為に後輩キャラはオリキャラを出すことに決定しました。

    あまり出張らせず、違和感を生まないよう努めますのでご理解のほどよろしくお願いします。

    また、どうでもいいかもしれませんが、後輩キャラ名一覧はグループのスレに載せますので興味がありましたらそちらもご覧ください!

    ※さらに追記。

    R-18の直接的な描写は>>141からになります。

    「見たくねえよタコ!」という方は>>147まで飛ばしてくださいませ!
  2. 2 : : 2015/07/31(金) 20:50:23
    エレン「だからお前さぁ!」

    アニ「アンタも大概だよ!」

    クラスメイトは「ああ、またか」と諦めにも似た感情を抱きつつ、また自分のなすべきことに取り掛かる。

    ここ最近では日常茶飯事なのだ。

    この高校の名物になりつつある「痴話喧嘩」だ。

    エレン「お前大概にしたらどうだ?今年に入って何回目だよ!」

    アニ「そういうアンタだって鼻の下あからさまに伸ばしてたじゃん!」

    エレン「伸ばしてねえよ!」

    アニ「ふん、あんなにニヤけた顔してよく言うよ」

    エレン「あれは事故だったんだって!」

    アニ「事故でもあんな嬉しそうな顔滅多に見ないけどね」

    エレン「いい加減に頭にきた!」

    アニ「こっちもだよ!」

    「「ふんっ!!」」

    1週間に1度なら少ない方、多いと1週間に3、4回クラスで口喧嘩を繰り広げる。

    本人達は普段はクラスのまとめ役として周りに気を配るが、喧嘩中は全く周りが見えていない。

    最初こそ困惑したクラスメイトもこれが1学期間続けば流石に慣れる。

    ライナー「またかよアニ・・・」

    アニ「・・・いいでしょ別に」

    ライナー「あのなぁ、お前らいつものことかもしれないけどよ・・・」

    しかし喧嘩の理由は同意しかねる、と言いたげだ。

    というより事実そうだ。

    彼らの喧嘩の理由はいつも「後輩に告白されていること」にあるのだ。
  3. 3 : : 2015/07/31(金) 21:02:35
    高校2年になってからこれが続いている。

    新たに後輩ができた事が大きな要因だ。

    ライナー「いやな、分からないけどよ、毎回よく喧嘩するよな」

    アニ「今回はエレンが悪い」

    ライナー「・・・なんでそう思うんだ?」

    女子への対応はネットで調べて完璧な(実践する相手ナシの)ライナーは聞き役に徹することにする。

    ベルトルトは好きにさせればと2人に関してはあまり口を出さない。

    アニ「・・・前に一緒に帰ろうとした時に」

    ライナー「ああ」

    アニ「エレンが手紙で呼び出されて、それで・・・」

    ライナー「いつものことだろ 最近は増えてるらしいが」

    ライナー「お前もエレンがモテることは知ってるだろ?それに、それはお前もだろうが」

    アニ「それは・・・」

    ライナー「まあそれはいい 彼氏が告白されていい思いしないのは分かるけどさ」

    アニ「どうも慣れないんだよね・・・だから毎回怒れちゃってさ」

    ライナー「まあ自然なことなんじゃねえの?ぶつかり合えるだけお前らはマシだよ」

    アニ「そうかな・・・どうも自信なくて」

    ライナー「ただ・・・いや、あんまり不安にさせることは言いたくないけどよ」

    ライナー「お前まだエレンの事好きか?」

    アニ「それは・・・もちろん」

    ライナー「マンネリ化ってやつだよ
    どんなに好きでも拗れは出てくる」

    ライナー「ただたまには素直にならねえとそのままお終いだぞ」

    アニ「・・・」

    ライナー「じゃ、頑張れよ」
  4. 4 : : 2015/07/31(金) 21:18:49
    私は自信がない。

    エレンの前で意地を張って、なかなか素直に気持ちを伝える事もできない。

    告白された時はそりゃあ嬉しかった。

    ムードもなにも無かったが、想っていた相手に告白されれば気分は高まるし、この上なく幸せな気分になった。

    他のどの男子に告白されてもそんな気分は感じず、ただ申し訳なさを感じただけだった。

    それは今も変わらないが、相手は、エレンはどう思っているのだろうか。

    アニ「(可愛い子に告白されればそりゃあ嬉しいのは分かるけど・・・)」

    こちらは全く揺るぐ事はなくても男は違うと聞く。

    いつかの保健の授業で「男は肉体的、女は精神的な繋がりを重んじる」と習った。

    アニ「(確かに・・・あれから何もないけど・・・)」

    あれからとは1年の時の8月の初デートから、だ。

    あれから予定が全くかみ合わず何も進んでいないのだ。

    アニ「(飽きられた・・とか)」

    ゴメンと謝る度に「しょうがねえよ」と笑って許してくれるエレンだが、無理強いしないあたりがまた不安を煽る。

    我ながら面倒な女だ。

    アニ「・・・」ハア・・・
  5. 5 : : 2015/07/31(金) 21:41:57
    そんな時ほど周りの女子の男諸君へのダメ出しだの陰口などが耳に入ってくる。

    やれ誰々の彼氏はいいだとか、それに対してダメなところを言ったり、

    後輩の誰がイケメンだとか、先輩の誰がカッコいいとか、

    果ては経験済みだのまだだの言ったりと言った具合だ。

    立場上そんな話に巻き込まれることもあるが、エレンの悪口を言う者は今の所いない。

    だいたいベタ褒めしていってお終いだ。

    ミーナ「アニぃ・・・」

    アニ「な、なに?」

    ミーナ「いい加減にしなさいよ〜
    なんであんな喧嘩ばっかりするの?」

    アニ「そんなこと言ったって・・・」

    ヒッチ「分かるよぉ〜分かる分かる」

    ヒッチ「大方彼氏の気持ちが分からないってやつでしょ」

    アニ「・・・」

    ヒッチ「図星」

    アニ「・・・だったら何?」

    ヒッチ「確かめればいいじゃん」

    アニ「どうやって・・」

    ヒッチ「それは委員長次第ですよ〜」

    ヒッチ「答えのある恋愛ほどつまらないモノはないでしょーが」

    ミーナ「ヒッチからそんな言葉が出るとは」

    ヒッチ「何なら服脱ぐくらいのことすれば分かるんじゃないかな」

    アニ「な、な、なにを・・!」

    アニ「も、もういいや ゴメン用事あるから!」

    バタン!

    ヒッチ「清く正しい綺麗な恋愛してる女子高生が今時いるとはねぇ」

    ミーナ「しかし珍しいね 食いつくなんて」

    ヒッチ「純情ガールに発破かけないとアブナイからね」

    ミーナ「私はあんたの思考が危ない気がするけど・・・」
  6. 6 : : 2015/08/01(土) 18:32:54
    ーーー

    ーー



    どうも周りの女子から聞くにエレンは「相当奥手」らしい。

    確かにエレンからキスをねだられたことは数えられるほど、しかも片手に収まる回数だけだ。

    直接聞いたときは何やら「ガードが固い」などと言われたが、そんなつもりは一切ない。

    が、言われてみれば手が触れ合っただけで反応してしまうし、顔が近づけばそれだけで体温が1度くらい上がるのは感じる。

    またエレンは無自覚にやってるのか、狙ってやっているのか分からない。

    アニ「たまには積極的に、かぁ・・」

    ベルトルト「あれ、アニ こんな廊下に突っ立ってると危ないよ」

    アニ「あ、あぁ、ベルトルトゴメン」

    ベルトルト「いや、僕はいいけど、どうしたの?」

    アニ「何でもない 気にしないで」

    ベルトルト「あ、そう・・んじゃ

    ライナー「バァァアカ!ベルトルトお前はバァァアカなのか!?」

    ライナー「女の子の気にしないでは"気にして〜!"ってやつの裏返しなんだよ!」

    ベルトルト「え?でも気にしないでって言ってるし」

    ライナー「お前は男子が"気にして"って言っても気にしたくねえだろ?」

    ライナー「しかし女子が気にしてって言ったら気にするよな?」

    ベルトルト「まあそりゃ」

    ライナー「しかし女子はな、あつかましく思われたくないという心理が男子よりもー」

    そんなことをギャーギャー喚いてる2人は放っておいて、意識は遠くに置いている。

    このクラスは理系特進。

    エレンは理系でも文理混合クラスでクラス4つ分離れている。

    わざわざこちらまで来て貰って話すか、喧嘩するかのどちらかだ。

    最近は喧嘩してその日の会話が終わることが増えているが。

    その後はクラスの子や隣のミーナやヒッチなどと話している。

    キーンコーン

    ここで授業前の予鈴。

    アニ「(切り替えなきゃ)」パシン
  7. 7 : : 2015/08/01(土) 18:39:07
    ーーー

    リヴァイ「今日は古典のナナバ先生が出張の為自習だ お前らも聴いてるよな」

    リヴァイ「小テスト対策でも何でも勝手にやってろ 以上」

    特進クラスの方針は「生徒に委ねる」だ。

    というのも特進というだけあって頭脳が化け物じみてるような輩も何人かおり、先生がついていけない事案も発生するからだ。

    その筆頭が

    アルミン「・・・」カリカリ

    アニ「(アルミンは古典できるのに・・エレンは教えてもらわないのかな)」

    ライナー「ちゃんとやれよアニ」ボソッ

    アニ「・・・わかってるよ」

    リヴァイ「おいそこ話すなら堂々と話せ
    関係ないことだったら許さんぞ」

    ライナー「いや、いつ見てもリヴァイ先生の髪の分け目が

    リヴァイ「後で面談だブラウン、レオンハート」

    ライナー「すみませんでした」

    アニ「(アンタ・・・)」
  8. 8 : : 2015/08/01(土) 18:51:38
    ーーー

    ーー



    アニ「もう少しまともな言い訳無かったの?」ハァ・・・

    ライナー「咄嗟の割には上出来だろ?」

    アニ「最悪の結果だよ・・・」

    ということで先ほどの授業の件で廊下を並んで歩く。

    咄嗟に髪の分け目を話題にするとは逆に尊敬するが、人の考え事中に勝手に小突いて勝手に巻き込まれるのはいい思いはしない。

    加えて学校中で有名なアニと兄貴柄のライナーが並んで歩いているのだ。

    声は何度もかけられる。

    「ライナー羨ましいなオイ!」

    「アニー彼氏君はどうしたの?」

    「見ろよ アニ先輩ガチで綺麗だよな」

    「ブラウン先輩やっぱいい体格してるな 憧れるよ」

    ライナー「エレンに見つかったら俺凄い目で見られるんだけど」

    アニ「別にやましいことしてるわけじゃないんだからいいでしょ」

    ライナー「お前なぁ・・・あいつの怒ってるときの目見たことある?」

    ライナー「突き刺さるみたいな視線だから もうね、泣きそうになるぞ」

    アニ「ふーん」

    ライナー「おいおい無関心かよ ホントに

    アニ「大丈夫だってば」

    ライナー「・・・ならいいんだがな」

    ーーー

    ーー



    リヴァイ「で、ちゃんと息抜きはしてるんだろうな?」

    アニ「・・・は?」

    リヴァイ「特進クラスの奴らは毎年特進という自覚が重荷になって、体調を崩しやすい」

    リヴァイ「見た所ブラウンはともかくレオンハートは何かに悩んでる様子がうかがえる」

    アニ「そんなことは・・・」

    リヴァイ「まあ追求はしないが当事者同士で問題は解決しろ」

    アニ「はあ・・・・」

    リヴァイ「ブラウンお前は授業中にちょっかいを出すな 小学生か」

    ライナー「はぃ!?ちょっかいなんて

    リヴァイ「後ろからシャーペンでつついてちょっかいじゃないと?」

    ライナー「いやアレは・・・・」

    リヴァイ「帰ってずっと勉強しろとは言わんが授業は勉強のためにある」

    リヴァイ「せめて授業中は集中しろ」

    ライナー「・・・ヘーイ」

    リヴァイ「モップと雑巾どっちがいい」

    ライナー「ハイッ!すみませんでした!!」

    リヴァイ「戻っていいぞ」
  9. 9 : : 2015/08/01(土) 20:29:36
    ーーー

    ーー



    ライナー「・・・意外と見てるんだな先生」

    アニ「まあ私は部活で関わることもあるし、そう考えると納得できるけど」

    ライナー「ふーん・・・」

    アニ「それより無駄口叩いてていいの?次、英単語の小テストだよ」

    ライナー「あ!そうじゃん!!つか何、アニは余裕なのか!?」

    アニ「昨日予習済みだけど?」

    ライナー「追試ラインは?」

    アニ「100点中70点未満」

    ライナー「ぐぉぉぉ・・・なんで理系なのに英単語を覚えなきゃならん!」

    アニ「お言葉ですが物理、化学の分野でも英語は大切ですよライナーさん」

    ライナー「敬語やめろ 危機感煽られてる気がしてツライ・・・」

    アニ「ふふ」

    ライナー「・・・いいよなお前は 余裕があってよ」

    アニ「え?何が?」

    ライナー「なんでもないでーす」

    アニ「あ、そう」

    ーーー

    ーー



    場所は戻ってクラス。

    皆直前に詰め込んでいるらしく、単語帳を広げている。

    アニ「すごいよねこの空間・・・」ヒソ

    ライナー「物音一つ立てたら殺されそうだもんな・・・・」ヒソ

    アニ「とりあえず大人しく席に着こ」ヒソ

    ライナー「御意」ヒソ
  10. 10 : : 2015/08/01(土) 20:48:58
    ゲルガー「おらお前ら単語帳しまえー」

    ゲルガー「今さら詰め込んだとこでムダなんだよ ハイきりーつ」

    休み時間終了ギリギリに来た英語担当のゲルガー先生の号令でそのピリピリした空気は終わりを告げる。

    諦めた表情を浮かべる者や未だにブツブツと単語と意味をつぶやく者がいるなか、余裕なのはアニを含めた数人のみ。

    ライナーにいたってはクラス戻ってからのあの数分さえ睡眠にあてていた。

    アニ「アンタって奴は・・・」

    ライナー「ほっとけ・・・」

    ゲルガー「んじゃテストはじめるぞ」

    ーーー

    ーー



    場所は変わってこちら文理混合クラス。

    エレン「愛ってなんだろうな・・」

    ジャン「急になんだよ」

    エレン「最近アニが冷たいんだよ」

    ジャン「喧嘩してるだけだろ」

    エレン「でもよ・・・」

    ジャン「今回の原因はお前だって聞いたけど」

    エレン「しょうがねえだろ・・・お前だって告られれば

    ジャン「喧嘩売ってんのかお前は」

    エレン「別に売ってねえよ」

    ジャン「お前のそのラノベの主人公並の鈍感スキルはホントに天然モノなのかよ」

    エレン「何に怒ってんだよ」

    ジャン「もういい相手にするのも疲れる」

    エレン「ハァ・・・」

    ジャン「いつもみたいに仲直りすりゃいいだけだろ」

    エレン「・・・なんか今回はいつもよりアニへそ曲げてるっぽいんだよな」

    ジャン「それが分かるのに理由わからねえとはどういうこった」

    エレン「お前はミカサと喧嘩したことねえの?」

    ジャン「ねえな!する予定もねえな!」


    エレン「仲睦まじくて羨ましいこって」

    ジャン「お褒めに預かりまして」へへ
  11. 11 : : 2015/08/01(土) 21:34:06
    エレン「笑うな気持ち悪りぃ」

    ジャン「ァア!?」

    エレン「しかし分かんねえなぁ・・・」

    ジャン「お前ほんっとことごとく男を敵に回す発言ばっかだよな」

    ジャン「そのうち刺されるぞ・・つか刺されろ」

    エレン「ちげーよ なんで初めて会った俺に抱きつけるんだろうなって」

    ジャン「・・は?」

    エレン「いや、だから後輩なんだけど、なんで俺に抱きついたのかなって」

    ミカサ「呆れた」ヌッ

    エレン「うおっ!?」

    ジャン「ミカサ!!」

    ーーー

    ーー



    数時間後。

    ショートホームルームが終わり、部活の時間だ。

    といっても今日は部活は無い。

    いつもなら放課後までには仲を戻して2人仲良く並んで帰るのだが、今日はその間にミカサが立っていた。

    エレン「・・・」

    アニ「・・・」

    ミカサ「(・・・気まずい)」

    ミカサ「(というかそれ以前によく考えれば別にエレンから何かしたわけじゃ無い)」

    ミカサ「(そうは言ってもアニは納得し無いだろう)」

    ミカサ「(・・・どう仲裁すべきだろうか)」

    エレン「・・・なあアニ」

    アニ「・・・何」

    エレン「その、何が悪かったかわからないけどよ、えと、すまんかった」

    アニ「・・・」

    ミカサ「(正直というか、鈍感というか・・・)」ハア・・・

    アニ「・・・やっぱり嬉しかったの?」

    エレン「は?」

    アニ「抱きつかれたんでしょ」

    エレン「いや、それは・・・」

    アニ「別にもう気にして無いけどさ」

    エレン「なら・・・」

    ミカサ「エレンの鈍感がここまで酷いとはとは思わなかった」

    エレン「は?」

    ミカサ「あのね

    アニ「いいよミカサ エレンの鈍感っぷりは分かってるから」

    ミカサ「・・・」
  12. 12 : : 2015/08/01(土) 22:05:12
    ーーー



    ミカサ「私がこれほどあきれるのは久しぶり」

    エレン「な、なんだよいきなり」

    アニと別れて2人で帰路についたとき、ミカサは開口一番に言った。

    ミカサ「エレンは女心が全く分かっていない」

    エレン「みんなそう言うけどさ、俺は

    ミカサ「なら聞くけど、エレンはアニが他の男子に抱きつかれたらどう思う?」

    エレン「絶対そいつを許さん」

    ミカサ「今時それに気づかない男子高校生がいるとは思わなかった」

    エレン「いいだろ別に・・・」

    ミカサ「アニは良くない」

    エレン「・・・謝ってくる 今回は俺が悪かったな」

    ミカサ「そうしたほうがいい」

    ーーー

    ーー



    バタン

    アニ「・・・ッ」

    アニ「あんっの鈍感スケコマシ!!」

    ボフンッ!!

    枕がベッドの上で2、3回跳ねた。

    アニ「ハアッ・・・ハァ・・・」

    アニ「ハア・・・・」

    アニ「・・なんで好きになっちゃったんだろう」
  13. 13 : : 2015/08/03(月) 17:14:55
    知っている。エレンがモテるのは付き合っていても告られていることを見れば明らかだ。

    自分も告白されていることを考えればあまり強くは言えないが、やっぱり相手が告白されているのはいい気分はしない。

    アニ「・・・こんな気持ちだったのかな」

    この時アニが思い出していたのは、ライナーの話だ。

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    アニ「は?」

    ライナー「前にも言わなかったっけ?あいつ、他の奴がアニのこと話してるだけで眉間にシワ寄せるんだよ」

    アニ「・・・エレンが?」

    ライナー「んもーみなまで言わせるなよアニちゃん」

    アニ「気持ち悪い」

    ライナー「酷い・・・」オヨヨ

    アニ「・・で、それがどうしたの?」

    想ってくれていることが解り嬉しい限りなのだが、目の前の大男の動作がいちいち目につく。

    ライナー「ありゃ、この子気づいてないよベルトルト君」

    ベルトルト「なんてことだ!無自覚とは恐ろしいねライナー君」

    アニ「蹴っていい?」

    ライナー「落ち着いて え、ホントに気づいてない?」

    アニ「ハッキリいいなよ」

    ベルトルト「君も同じってこと」

    アニ「は?私は

    ライナー「女子集団からエレンの話が出るとお前面白いくらいビクッとしてるだろ」

    アニ「まさか」

    ベルトルト「追加でその日1日は機嫌悪くて僕たちが蹴られる割合が高くなる」

    アニ「・・・いちいち計算してるの?」

    ベルトルト「ふふふ・・・過去100日で蹴られたのは32回、エレンが話題に出てそれに反応した日100日で蹴られたのは65回だ」

    ライナー「お前凄いなベルトルト!」

    アニ「アンタら・・・」

    ベルトルト「そんなガチ目に引かないでよ つまり君は自分でも気づかないうちにエレンにゾッコンというわけだ」

    アニ「幼馴染に言われると凄い恥ずかしいんだけど・・・」

    ライナー「最近エレンとギスってるんだろ?」

    アニ「それは・・・」

    ライナー「前にも言ったが素直になって気持ちを伝えてやったほうがいいぞ」

    ライナー「男ってのはバカな生き物だから愛を感じないと途端に冷めちまうもんなんだよ」

    ライナー「いつもそうしろとは言わん
    でもたまには向かい合って話すことも大事だ」

    ベルトルト「1年の文化祭前みたいになりたくなければ尚更ね」

    アニ「ライナー、ベルトルト・・・」

    ライナー「恋愛アドバイザーからのアドバイスは以上だ!崇めろ!」


    アニ「・・まず彼女作りな」

    ライナー「ほっとけ馬鹿野郎」

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  14. 14 : : 2015/08/03(月) 18:32:58
    ピンポーン

    インターホンが鳴り、それに親が出ると、聞き慣れた声。

    思わずベッドの上で姿勢を正してしまった。

    お母さんに比べて少し重々しい足音が近づいてくる。

    ノックのあと、「入るぞ」と一声かかり、ドアが開いた。

    ガチャリ

    エレン「アニ」

    アニ「・・・何」

    なんと可愛げのない反応だともう呆れるしかない。

    アニ「抱きつかれて鼻の下伸ばしてた浮気者が何の用ですか?」

    素直になれ。

    意地を張るな。

    エレン「・・・そのことを謝りに来たんだよ」

    本当に参っているような顔で言うので、自分も罪悪感を感じる。

    エレン「ゴメン・・・その、告白されて」

    アニ「知ってる」

    エレン「で、断ったら"ゴメンなさい"って言われて・・・」

    エレン「抱きつかれて、逃げられたんだよ・・・」

    アニ「嬉しかったんでしょ?」

    エレン「違ッ・・・まぁ少し・・・」

    馬鹿正直というか馬鹿というか・・嘘でも嬉しくなかったと言ってくれればいいのに・・・

    いいところでもあるのだが、こういう時に気を一つ遣わないのはどうかと思う。

    ふと今日ヒッチに言われたことを思い出す。

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    ヒッチ「服を脱ぐくらいのことすれば・・・」

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    アニ「(出来るわけないでしょ!)」

    一人頭をブンブンと振り払うように振り、その意見を追い出す。

    エレン「ア、アニ?」

    アニ「な、何?」

    エレン「その・・・ホントゴメン 俺だって抱きつかれたかったわけじゃねえんだ」

    アニ「・・・私だったら」

    エレン「え?」

    アニ「抱きついたのが私だったら・・・嬉しい?」

    エレン「そ、そりゃモチロン!」

    そんなエレンの懐に思わず飛び込んで



    ボディーブローを一発ぶち込んだ。
  15. 15 : : 2015/08/03(月) 18:44:59
    エレン「おま、そこは、普通・・」

    アニ「怒ってる相手に抱きつきてもらえると思ったら大間違いだよ!」

    エレン「ゴ、ゴメンって・・・」

    アニ「・・・」ツーン

    エレン「俺、馬鹿だからこういう時どうすればいいか分かんねえんだよ・・」

    アニ「じゃあその頭直してから来れば」

    エレン「そうしたいのは山々だけど生憎もう伸びしろが・・・」

    アニ「・・・ハァ」

    アニ「もうなんか怒るのもアホらしくなってきた」

    エレン「いや、もう本当に申し訳ないです・・・」

    アニ「ねえ、エレンはさ・・・」

    エレン「ん?」

    ここで聞けば流石に答えるだろう。

    アニ「私のこと・・・」

    嘘でも。

    ・・・嘘、でも。

    アニ「・・・何でもない 忘れて」

    エレン「お、おう・・・?」

    エレン「もう、怒ってねえか?」

    アニ「怒ってないよ」

    エレン「そうか・・・でもホント悪かった」

    アニ「いいって こうなるのも初めてじゃないし」

    エレン「・・・なあ、俺が抱きつかれて怒ってくれたってのは、まだ俺の事好きって解釈でOK?」

    アニ「は・・・?」

    エレン「あ、何言ってんだ俺!ゴメン、今のナシ!!」

    アニ「いや、その

    エレン「もう怒ってねえなら安心!本当に良かった!そんじゃまた!バーイ!」

    アニ「あ・・・」

    そのまま大きな音を立てながらドアを開けて階段を駆け下りていった。

    アニ「・・・」

    止めようとした右手はまだ浮いたままだった。
  16. 16 : : 2015/08/04(火) 20:18:31
    ー次の日

    アニ「ーという感じです・・・」

    ミカサ「・・・なるほど」

    アニが友達と話していると文系特進のミカサが来た。

    そこで話をうまく切り上げて行くと、昨日のことを聞かれた次第だ。

    ミカサ「エレンは恋愛に関して奥手気味だということを再認識した」

    アニ「まあ、私も大概だけどね・・」

    ミカサ「本来なら男子がリードすべきだけどエレンには期待できそうにない」

    アニ「なかなか言うねミカサ・・・」

    ミカサ「ぜひアニに頑張って欲しい」

    アニ「・・・」

    ミカサ「?どうかした?」

    アニ「いや、エレンの事やっぱり私よりわかってるんだなぁって思ってね」

    ミカサ「妬いてる?」

    アニ「いや、別に妬いては・・・・」

    ミカサ「昔から一緒だったから、その分の差だと思う」

    ミカサ「・・・まあ、それだけじゃない部分もあるけど」

    アニ「え?」

    ミカサ「他の子に聞かれるとエレンが危ないから昼休みに話そう」

    アニ「え?う、うん」

    ーーー

    ーー



    約束をした以上エレンの誘いは断らせてもらって、テラスでミカサと弁当を広げる事になる。

    アニ「ミカサと食べるのは久しぶりだね」

    ミカサ「クラスも離れてしまったし、仕方ない」

    アニ「文系特進だよね?大変でしょ」

    ミカサ「理系教科はどうも苦手だからそっちよりはかなり楽だと思う」

    アニ「そっか」

    ミカサ「・・・で、本題に入るけど」

    アニ「あ、うん」

    2人揃って箸でおかずを取り、口に運ぶ最中。

    次のミカサの発言で思わず箸ごと取り落としそうになった。

    ミカサ「私はエレンの事が好きだったの」

    アニ「えっ・・?」
  17. 17 : : 2015/08/04(火) 22:28:24
    ミカサ「小学生の頃から、一緒にいるのが当たり前だった」

    ミカサ「けどアニも知ってる通り、エレンは鈍感だから・・・」

    アニ「そう、だったんだ・・・」

    ミカサ「昔の話だけどね」

    アニ「あの・・・後悔、してないの?」

    ミカサ「・・・してないわけじゃない」

    ミカサ「けど、エレンには貴女がいるから」

    アニ「ミカサ・・・」

    ミカサ「それに私にもジャンがいる」

    ミカサ「それだけで十分すぎるほどだから」

    アニ「恨まれてるんじゃないかと・・」

    ミカサ「私が?アニを?」

    アニ「なんとなく、好きだったんじゃないかって思ってたから」

    ミカサ「私は同時に2人も好きになれるほど器用じゃない」

    アニ「・・・」

    ミカサ「・・・本当は少しアニが羨ましかったんだけどね」

    アニ「ミカサ・・・」
  18. 18 : : 2015/08/05(水) 16:12:13
    ミカサ「とにかく」

    ミカサ「私が言うのもなんだけど、エレンはチキンだ」

    ミカサ「だからアニがリードしてあげて」

    アニ「・・私は1人に対してもどうしたらいいかわからないくらいだよ」

    ミカサ「アニならエレンを背負えると信じてる」

    アニ「・・・・」

    ドタドタとテラスに続く廊下が騒々しくなってきた。

    ミカサ「おっと・・・見つかってしまった」

    アニ「え」

    走っているのは男子の集団。

    先頭を後ろ向きで走っているのはエレンとジャンだ。

    「お前ら押すなよコラ!」

    「帰れオイ!俺のミカ

    「カンケーあるか!同じ空間の空気を吸いたいだけだ!」

    「あわよくばエレンの座を奪う」

    「何ぬかしてんだ馬鹿野郎!」

    「るっせえチキン!」

    「ぁあ!?」

    目に見えて怒っている先頭2人と、数の力で圧倒している男子諸君。

    同級生だけでなく、後輩先輩を含んで大所帯になっている。

    テラスの入り口のドアをぶっ壊す勢いで開くと、その人の波が流れ込んできた。

    エレン「逃げろアニ・・・・」

    ジャン「ここは・・俺らが引き受けたい・・」

    エレン「なんで願望形なんだよ」

    ジャン「押しつぶされてんだぞ・・ぶっちゃけ無理くさい」

    そんなことを言っているうちに、人の山の上部にいた後輩がアニ達にダッシュし始めた。

    アニ「ちょっ・・・」

    ミカサ「この量は流石に・・・」

    エレン「重いっつうんだよ・・・!」

    ジャン「今すぐ降りろやゴラァ!!」

    リヴァイ「オイてめーら・・これはどういう状況だ?」

    その一声で全員の動きがフリーズした。
  19. 19 : : 2015/08/05(水) 16:41:58
    リヴァイ「廊下は走るな 小学校時代の教えも守れねえのかお前らは」

    リヴァイ「埃が立って飯が不味くなるばかりか掃除の手間も増えやがる・・」

    リヴァイ「ここまで聞いて言いたいことは?」

    エレン「・・・アリマセン」

    リヴァイ「ならいい、と言いてえところだがお前ら2人は良くねえよな?」

    ジャン「・・・ハイ」

    リヴァイ「先頭2人を除いて他の奴らは帰ってよし 次やったら命はなし いいな」

    バラバラと名残惜しそうに振り向きながら帰っていく男子を目の端に捉えつつ、注意は怒られている2人に向いた。

    リヴァイ「・・・気持ちはわからんわけじゃないが、仮にも部活の現副部長2人だろうが」

    リヴァイ「もう少しうまく他の奴らの誘導ができねえのか?」

    エレン「好きこのんであんなことやってたわけじゃないですよ!」

    ジャン「そうっすよ!なんか急にドタバタ廊下走ってて、声を聞いてたらミカサとアニがここに居るから会いに行くとか話してたの聞いて駆けつけただけなんですよ!」

    すると先生はこちらを呆れ切った目で見て再びエレン達に向き直ると一言。

    リヴァイ「・・・学校のアイドルみてえだな わけがわからん」

    エレン「な!でも人気のわけは分かるでしょ!?」

    ジャン「そっすよ!2人とも美人だし!クリスタも加われば完璧なんですけどね!」

    リヴァイ「お前らはあいつらが追われて嬉しいのか嬉しくねえのかどっちなんだ」

    エレン「嬉しいけど不愉快です!」

    リヴァイ「・・面倒くせえなお前ら」
  20. 20 : : 2015/08/06(木) 19:44:32
    ーーー

    ーー



    数分の説教の後解放されてようやく2人はいつになっても男子の話題に事欠かない学校のアイドルに行き着いた。

    エレン「で、何もされてねえな?」

    ジャン「大丈夫かミカサぁぁ!!」

    アニ「私たちは大丈夫だけど・・」

    ミカサ「逆に大丈夫?」

    ジャン「全く問題ありません!!」

    エレン「ったくよぉ・・・いつになったらあの波は無くなるのやら」

    ミカサ「エレンが言えることじゃない」

    ジャン「・・・チッ」

    エレン「んだよジャン」

    ジャン「ベーつーにー」

    アニ「相変わらず自分には無頓着だよねエレン・・・」

    エレン「な!そんなことはねえだろ!」

    ミカサ「いや、無頓着というより」

    アニ「鈍感」

    ジャン「男子に喧嘩売る死に急ぎ野郎」

    エレン「どういう意味だコラ!!」

    ジャン「自分の胸に聞け馬鹿」

    アニ「そうだそうだー」

    エレン「な、なんだよアニまで!!」

    ジャン「エレンきゅんは鈍感だもんなー」

    ミカサ「ねー」

    アニ「ねー」

    エレン「いつからそんな親密度を・・」
  21. 21 : : 2015/08/06(木) 19:58:27
    ーーー

    ーー



    アニ「・・・いつまでへそ曲げてるの」

    エレン「別に曲げてないですー」

    アニ「あからさまに機嫌悪いじゃん」

    エレン「俺はいつもそうなんですー」

    アニ「ふーん・・・じゃエレンは私といても楽しくないと・・・」

    エレン「そ、それは違うぞ!」

    アニ「やっと戻った」

    エレン「・・・謀りやがったな」

    アニ「別にそんなつもりは無かったけどね〜」

    エレン「嘘つけ・・・」

    アニ「・・・」

    エレン「・・・何?」

    アニ「ねえ、エレンってさ、その・・」

    エレン「うん」

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    ミカサ「私はエレンのことが好きだった」

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    アニ「ミカサとは幼なじみなんだよね」

    エレン「なんだよ突然 まぁそうだけど何で今更?」

    アニ「どう思ってた?」

    エレン「ミカサをか?」

    アニ「うん」

    エレン「改めて聞かれると恥ずかしいな・・・でも、そうだな」

    エレン「"家族"みたいなモンかな」

    アニ「・・家族」

    エレン「そ 家族」

    エレン「・・・ミカサに聞いたのか?」

    アニ「な、何を?」

    エレン「俺でもなんとなくだけど気づいてたからな・・・」

    アニ「え・・・」

    エレン「あいつが俺のこと・・・子供扱いしてることくらい」

    アニ「え」
  22. 22 : : 2015/08/06(木) 20:12:45
    エレン「小学校でもご飯粒つけてたら取ってきたし」

    エレン「重いもの俺が持とうとしてもかっさらうし」

    エレン「挙句"私はエレンが一番大事"って言ってきたし」

    エレン「もう間違いなく子供扱いしてたよなコレは」

    うんうんと一人で納得するエレンを見て、私は呆れるしか無かった。

    そんな気持ちだだ漏れの行動を子供扱いで済ませるとは・・・

    まぁ、少しミカサが男らしい部分があるとはいえ、普通はこの歳で思い直せば気づくだろう。

    アニ「ホンットに・・・鈍感!」

    エレン「は!?」

    アニ「なんかホントに自信無くなってくるよ・・・」

    エレン「な、なんでだよ!?」

    アニ「気づかなくていいよもう・・・そんな時来ないと思うけど」

    エレン「お前も俺を子供扱いすんのかよオイ!!」

    アニ「コレを子供扱いされてると思ってるなら尚更気づかないだろうね!」

    エレン「ッ・・・」

    突然歩みを止めてこちらをじっと見るエレン。

    アニ「・・・エレン?」

    エレン「・・自信ねえのはコッチだよ」

    アニ「は・・・?」

    エレン「なあ・・・教えてくれよ」

    エレン「お前は俺といて楽しいのか・・・?」

    アニ「な、なにを突然・・」

    エレン「最近喧嘩ばっかしてるし、今だってそうだし」

    エレン「俺にはお前が俺といて楽しそうには見えないんだよ・・・・」

    アニ「そんなこと!」

    エレン「最近思うんだよ 俺の一方通行なんじゃねえかって」

    エレン「別に縛るつもりはさらさらねえから、お前が嫌ならもう

    アニ「それ以上言わないで!」
  23. 23 : : 2015/08/06(木) 20:40:49
    アニ「・・・やっぱりエレン鈍感すぎ」

    エレン「だから

    アニ「それも含めて好きだって言ってるの!この鈍感!!」

    エレン「は・・・?」

    アニ「もう二度と言わないから!今のすごい貴重だからね!OK!?」

    エレン「お、OK」

    アニ「ならよし!」

    それから急に速度を上げてずかずかと帰路を歩く。

    エレン「なんだよソレ・・・」

    後ろではエレンが口元を押さえて悶えているのには全く気がつかないが、同じようにアニの羞恥に満ちた顔にエレンは全く気づかなかった。

    ーーー

    ーー



    エレン「じゃ、またな」

    アニ「・・・ウン」

    エレン「そんな恥ずかしがるなら

    アニ「本当の事だし!恥ずかしがってなんかないし!」

    アニ「またね!送ってくれてありがと!」

    バンッッッ!

    エレン「・・・悩んでたのバカみてえ」

    ハハ・・と乾いた笑いを一人でこぼしていたその姿はさぞかし不気味だった事だろう。

    現に何人かの下校中の中学生は振り返っていた。

    ー場所は変わってアニの家

    アニ母「玄関壊れるでしょ もっと大事に扱って」

    アニ「ご、ゴメン・・・」

    アニ母「で?今日はどんな痴話喧嘩を

    アニ「痴話喧嘩なんかじゃないってば!」

    アニ母「そう思ってないの2人だけだって」

    アニ「なにが!」

    アニ母「ミカサちゃんから聞いたわよ
    悩んでたから発破かけたって」

    アニ「ミカサ・・!」

    アニ母「あんまりあの子の手を煩わせちゃダメよ エレン君に嫌われちゃうぞ」

    アニ「・・・その語尾はちょっとキツいよお母さん」

    アニ母「な!まだまだイケるって!」

    アニ「そう思ってるのはお母さんだけだよ」

    アニ母「コラアニ!」

    アニ「ご飯まで宿題やってくるー」

    アニ母「・・・もう」クスッ

    ーーー

    ーー



    パタン

    アニ「(・・穴があったら入りたい)」

    アニ「(なんであんな恥ずかしい事言えたの私!)」

    アニ「(その勇気褒めてあげたいけどやっぱり恥ずかしすぎる!!)」

    アニ「(素直になるってこんなにメンタルにクるものだったっけ!?)」
  24. 24 : : 2015/08/08(土) 17:51:09
    ーーー

    ーー



    1日後 教室にて

    バタンと突然ドアから顔を出したアルミンが自分のクラスにもかかわらず、失礼しますと言い出した。



    アルミン「アニ、さん!」

    アニ「は、はい?ていうかアニでいいって」

    アルミン「ああ、ゴメン で、アニ」

    アニ「何?」

    アルミン「エレン今どこにいるか知らない?」

    アニ「いや、知らないけど・・・なんで私に?」

    アルミン「あ、えっとエレンのことミカサの次くらいに把握してるんじゃないかなと思って」

    なんか悔しいと思いつつも一番の理解者はミカサなのは重々承知だ。

    自分もライナーとベルトルトに関しては一番理解してる自信はある。

    アニ「で、どうしたの?」

    アルミン「いや、今日僕の家で古典教えてって言うからじゃあ塾のあとならいいよって言って」

    アニ「うん」

    アルミン「その時間確認したから言っておこうと・・・」

    アニ「LINEで伝えればいいんじゃない?」

    アルミン「あぁ!その手があった!」

    アルミンは勉強はできるが、たまにこういった抜けてるところも見せる。

    これによってやはり人間だと、基地外じみた頭脳を持つ彼を根から悪く言う者はそれほどいない。

    ミカサ「今の話聞かせてもらった」

    アルミン「ミ、ミカサ!?」

    ミカサ「というより勉強の話、さっき私は聞いてない」

    アルミン「あ、ゴメン」

    やはりミカサにもエレンの場所は聞いていたのか。当然と言えば当然だが。

    アルミン「正直僕は理系だから古典がそれほどできるわけじゃないんだけどね」

    ミカサ「なら私もアルミンの家に行く」

    「「「「なに!?」」」」

    アルミンより早く反応したのは周りの男子たち。

    声にこそ出さなかったものの、クラス中の男子が少なくともびくりと肩を反応させた。

    ミカサ「あ、そうだ アニも来て」

    アニ「え、私も?」

    ミカサ「エレンはアニがいないとまともに勉強しないから」

    「「「「はぁぁあ!?」」」」

    アニ「そ、そんなことないと思うけど」

    ミカサ「私が言うんだから間違いない」

    ミカサ「あ、ひょっとして用事あった?」

    アニ「いや、無い・・・」

    ミカサ「なら決定 私は文系だから特に生物と化学を教えて欲しい」

    アルミン「うん、分かった」

    ミカサ「アニはエレン担当でお願い 疲れたらすぐにでも変わるから」

    アニ「いや、やりま・・・」

    普段表情を変えないミカサが目に見えてニヤリと口角を上げた。

    「してやったり」という顔だ。

    ミカサ「決定」

    アニ「ちょっ!」

    ミカサ「じゃ、私とアニにも時間教えてね」

    アルミン「うん、分かった」

    そのクラスの男子全員がエレンに殺意を覚えるのは言うまでも無い。

    そしてその殺意はアルミンへと向いた。

    「羨ましいぞお前!」

    「なんだよ!?この学校のアイドル二人連れ込むたぁどんなパラダイスだ!」

    「俺も行っていいか!?」

    「俺も行くぞ!!」

    アルミン「そんなに入らないよ!!」
  25. 25 : : 2015/08/08(土) 18:23:30
    ーーー

    ーー



    そして時刻は夜10時。金曜日だ。

    この時間では当然親に「ちょっと行ってきます」なんて言葉は通用しないがアルミンに勉強を〜と言えば余裕で行けちゃうのだが。

    嘘がつけない彼も今回は嘘をつくわけではないのでなんら問題はない。

    ということで。

    ーアルミン宅

    アルミン「ーって感じでみんな来るって言って断るの大変だったんだからね!」

    エレン「そいつは申し訳ない・・」

    半笑いで謝る話題の渦中の人に怒りを覚えないわけではないが、鈍感スキルは昔から相変わらずでその点についてはもう諦めている。

    はあ、とため息を一つついてミカサとアニに向き直った。

    アルミン「それよりも君達二人!」

    アニ「はいっ?」

    ミカサ「何か?」

    アルミン「君達は男子に常に注目されてるんだから少しは自重してよ!」

    アニ「な、なにを?」

    アルミン「発言だよ!はーつーげーん!!」

    ミカサ「・・・何を言っているのかよくわからない」

    アルミン「鈍感バカは一人で十分だよ!」

    エレン「え?バ・・・えぇ?」

    ミカサ「アルミン・・・」パキッ

    アニ「それは言い過ぎ」パキパキッ

    アルミン「ゴメンなさい」

    アルミン「で、でもだよ!今日は言うぞ!」

    アルミン「モテてるって自覚はあるよね!?」

    アルミン「だから"男子の家に夜遅くにお邪魔する"って旨を大きい声で言うのはやめなさい!」

    ミカサ「何故?」

    アニ「?」

    アルミン「何で"何言ってんだコイツ"って顔してるの!?」

    アルミン「夜に男の家に行くってのはつまり

    と、ここでエレンが一言。

    エレン「早く古典教えて」

    ーーー

    ーー



    それから一時間ほどで小休憩に入ったとき、アルミンに小声で注意をするエレンの姿がそこにあった。

    ちなみに場所はトイレ前の廊下だ。

    エレン「お前なぁ・・・」

    アルミン「何?」

    エレン「ミカサはともかく俺とアニはお互い初めてお付き合いってやつをしてんだぞ」

    アルミン「え、アニってそうなの!?」

    エレン「いやまぁ、俺もビックリしたんだけどかなり初心」

    アルミン「あれまぁ」

    エレン「しかしアニは無自覚に男を煽る天性の魔性の持ち主だ」

    アルミン「・・・つまり危機感を」

    エレン「まっっったく持ってないぞ」

    アルミン「ェェ!?高校二年だよ!?いくらなんでも夜に男の家に上がるって意味は

    エレン「分かってるはずだけど多分俺とお前だからだな」

    アルミン「というよりまだ君達そこまでいってないんだよね?」

    エレン「あ、当たり前だろ つかそれはミカサとジャンもだろ」

    アルミン「・・・前に聞いちゃったんだけど」

    エレン「あ?何をだよ」

    アルミン「前ミカサ、ジャンと"ゴムが・・"って話してて」

    エレン「う、嘘だろ!?しかもそれってつまり・・・」

    アルミン「そこで途切れたけど、僕の昼ドラ視聴歴から考えるに・・・」

    エレン「その先は・・・"破れてたの"・・か?」

    エレン「い、いやいやナイナイ!!あいつにそんな度胸あるわけない!」

    アルミン「だ、だよね!ミカサそういうの徹底しそうだもんね!」

    「「あ、あはははは!!」」
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    ー同じ頃、部屋にてミカサとアニ

    アニ「・・・二人とも遅いね」

    ミカサ「アニ、貴方は初心というか鈍感というか・・・」

    アニ「え?」

    ミカサ「あの2人はきっとなにか相談をしている」

    アニ「な、何を?」

    ミカサ「男同士で話すこと・・そしてこのシチュエーション」

    ミカサ「つまり!」

    アニ「つまり・・・?」





    ミカサ「私が知っているエレンのエロ本の隠し場所をどこに変えるかの相談、に決まっている」ドーン

    アニ「な・・・!」
  26. 26 : : 2015/08/08(土) 20:17:46
    ミカサ「断言できる理由は一つ」

    アニ「・・・」ゴクリ

    しばしの沈黙。そして、

    ミカサ「・・・エレンは」

    アニ「エレンは・・・?」

    ミカサ「エレンは・・ムッツリだから」

    アニ「え?」

    ミカサ「中学のときからそう、本当は興味あるくせに"僕そういうの無理です"的なオーラ醸し出してた」

    アニ「え、えぇ・・・?」

    ミカサ「エレンはモテてるという自覚からそういう話題を避けている」

    ミカサ「しかし!前にアニには教えたように3、4冊エロ本を隠し持っている」

    アニ「そ、そりゃあエレンだって男の子なワケですし・・・」

    ミカサ「確かにそう しかし、アニはどう思う?」

    アニ「ど、どうってそりゃ・・・しょうがない部分が大きいから・・・」

    ミカサ「でもそれが自分に似ている部分があったら?」

    アニ「・・・まあ、いい思いはしない」

    ミカサ「その通り」

    ミカサ「私が前に上がった時確認したけどエレンの持っているモノはいずれも金ぱ

    エレン「お前はなんつーことアニに暴露してんだぁぁぁ!!」
  27. 27 : : 2015/08/08(土) 20:27:39
    ーーーーーーーーーーーーーーーーー

    ミカサ「エレン、盗み聞きは良くない」

    エレン「俺のエロ本盗み見てるお前に言われたくねーよ!!」

    ミカサ「あれは、そう、どこからともなく風が吹いてきて」

    エレン「お前嘘下手くそ過ぎんだろ!」

    アニ「エレン・・その、手は

    エレン「洗ってるよ!って何言ってんだ俺は!!」

    アルミン「あんまり大きい声だしたら近所迷惑だよ!」

    エレン「そういやアルミンもクリスタ似のロリ貧n

    アルミン「だぁぁぁぁぁあ!!!エレン!何でこの場で言うんだよ!!」

    エレン「つーかアニも何気にムッツリじゃね?」

    アニ「は、はぁ!?」

    エレン「だって手を洗うだのそういうこと知ってるし!」

    アニ「なななな何を!!それはその、保健の授業で!!」

    エレン「保健の授業でそこまでやったっけぇ?」

    ミカサ「エレン、それはモロセクハラ」

    アルミン「ミカサだってゴムだの何だの前にジャンと話してたじゃないか!」

    ミカサ「!?」

    アニ「え!?まさかミカサそこまで・・」

    ミカサ「そ、そのゴムじゃない!!」

    エレン「ほらアニ、あっちのゴム知ってんじゃん!」

    アニ「だからそれは保健の授業!!」

    アルミン爺「うるさぁぁぁぁあい!!」

    ーーーー

    ーー



    エレン「・・・もうみんな忘れよう
    恥は出し合っただろ」

    アニ「・・・うん」

    ミカサ「・・・確かに」

    アルミン「もう僕死にたい・・・」

    エレン「勉強に戻ろうぜ そろそろ」

    アニ「うん・・・」

    ミカサ「そうしよう・・・あ、アニ、ここの分子式の考え方って・・」

    アニ「ああ、うん、そこは・・・」

    アルミン「エレン、僕たちも・・・」

    エレン「あぁ、始めるか・・・・」

  28. 28 : : 2015/08/08(土) 20:40:19
    こうしてようやく本来の目的に戻った。

    しかし、そんな到底異性間とは思えぬ恥の晒し合いは想像以上に時間を食っていたらしく、気がつけばもう12時直前だ。

    エレン「なあ、そろそろ帰ったほうが良くねえか?特にアニとミカサ」

    アルミン「そうだよ・・・というか今でても補導の対象かもしれないけど」

    アニ「そうだよね・・・明日も部活あるし」

    ミカサ「午後からだからゆっくり寝られるとはいえ、この時間は幾ら何でもまずい」

    エレン「遅くなるって言っといたか?」

    ミカサ「一応」

    アニ「家を出た時間も時間だったし、まあ言ってはおいたけど・・・」

    エレン「・・・帰るぞ二人共 アルミン、ありがとな」

    アルミン「あ、うん・・・一人でいいの?」

    エレン「大丈夫だって 二人共俺がちゃんと送るよ」

    ミカサ「さすがエレン」

    アニ「エレン・・・」

    エレン「アルミンの家からだとミカサの家のほうが近いか じゃ、ミカサから」

    ミカサ「分かった」

    エレン「そのあとアニな」

    アニ「うん」

    ミカサ「ありがとうアルミン 助かった」

    アニ「ありがとね」

    アルミン「いえいえ お役に立てて何よりだよ」

    エレン「じゃ、またな」

    ーーー

    ーー



    護送中。

    こんな夜遅くにも関わらず、車の通りは全く減らない。

    街にもまだ結構な数の光が灯っていて、言うほどの暗さはなかった。

    エレン「意外と明るいな」

    アニ「割と街中なんだね」

    ミカサ「そうか アニは少し離れているから・・」

    アニ「いいなぁ此処」

    ミカサ「エレンといれば何処でもいいんじゃないの?」

    アニ「・・・そう、だね」

    エレン「嬉しいこと言ってくれるなぁ」

    ミカサ「にやけすぎ」

    エレン「だってよ・・・やべっ!二人共コッチだ!」

    ミカサ「あっ・・・」

    アニ「ちょっ!」

    少し狭い路地に入り込む理由はその後すぐ通り過ぎた自転車に乗っている人の格好で分かった。

    アニ「警察・・・」

    ミカサ「・・・相変わらず警察の気配には敏感」

    エレン「あんなことがありゃ誰だってそうなるわ・・・」

    アニ「・・・?」

    ーーー

    ーー

  29. 29 : : 2015/08/08(土) 20:53:16
    そのあと少々回り道をしてミカサの家に着くと、やはりミカサの親が心配そうな顔で出てきた。

    遅くなった理由と謝罪を述べると少しの説教を喰らったが、なんとかなった。

    しかしそれは昔からの付き合いであるミカサの家だったから。

    アニの家でそうなるとは、それも彼氏となんて誤解される可能性もある。

    足取りは重くなった。

    ーーー

    ーー



    アニ「何があったの?」

    エレン「え?」

    アニ「警察と」

    エレン「あー・・それ聞いちゃう?」

    アニ「聞きたいな」

    苦虫を噛み潰したような顔でこちらを見やると、渋々といった具合に話しだした。

    エレン「・・まぁいいけど」

    エレン「小学生の時、一回家出したんだよ」

    アニ「え・・・?」

    エレン「つってもちょっとした反抗心でな 別に何か大きい事件があったわけじゃない」

    ホッと安心したように息を吐き出すと、それを聞いて「そんな心配されることはしてねえよ」と言い聞かせた。

    エレン「で、その時に・・・ちょうど今くらいの時間かな あちこちでパトカーのサイレンが聞こえてきて」

    エレン「最初は他人事みたいに思ってたけど"あの子だ!"って追いかけ回されてさ」

    アニ「えぇ!?」

    エレン「そんな全力の鬼ごっこしたことなんてなかったし、大人に追いかけられて怖くて怖くて」

    エレン「ま、結局捕まって警察にちょっと説教喰らって親心配させてお終い」

    エレン「でもその追われた時の感じで未だに警察には慣れねえな・・・」

    アニ「・・まあ補導される時間までいたのは悪いんだけどね」

    エレン「そりゃそうだな」ハハ

    エレン「っと、また警察だ」グイッ


    ーーー

    ーー



    それからまた30分程でアニの家に着く。

    アニも自分の家の玄関を前にして、緊張しているらしい。

    深夜なのでインターホンを押すわけにもいかず、こっそり入ろうと静かにドアを開けた。

    アニ「送ってくれてありがとう・・・じゃ、

    アニ母「おやすみなさい、はちょっと待った」

    アニ「!!」

    エレン「!!」

  30. 30 : : 2015/08/08(土) 21:05:47
    アニ母「なんで帰ってきたの?」

    アニ「いや・・その・・・遅くなって悪かったけど・・なにもそこまで

    アニ母「てっきり泊まってくると思ったんだけど」

    アニ「え?」

    エレン「へ」

    アニ母「エレン君と一緒だって言ってたし、明日午後練って聞いてたし」

    アニ母「エレン君モテそうだけど、奥手だから大丈夫だと思って」

    エレン「ア、ソデスカ・・・」

    アニ「いや、でもやっぱり・・・」

    アニ母「そんな警戒しなくても大丈夫だって エレン君チキンだって前アニ言ってたじゃない」

    エレン「酷くないですか・・・?」

    アニ「そ、それは違うっていうか、あの・・・」

    アニ母「そういうわけだから、ほらエレン君も上がって」

    エレン「いや、でも俺・・・」

    アニ母「ちょっとお話ししておきたくて」

    そういうアニのお母さんの顔は真剣で、断るに断れなくなってしまった。

    まあ、アルミンの家に泊まるかもと言ってはあるので大丈夫だろう。

    LINEで一報入れておけば問題ないはずだ。

    エレン「わ、分かりました・・・」

    ーーー

    ーー



    実は仕事から先ほど帰ってきたばかりだというアニのお母さん。

    日勤と夜勤は不定期で今日は日勤だったが残業が大変だったそうだ。

    アニはというとどうやらシャワーを浴びているらしい。

    そんなことを考えていたら椅子に座らされて、そのアニのお母さんと向かい合っている次第だ。

    エレン「・・・」

    アニ母「エレン君」

    エレン「は、はい」

    アニ母「本題の前に、親御さんは大丈夫?」

    エレン「あ、ちゃんと連絡入れて了承は得ました」

    少しの嘘は混じっているが。

    アニ母「なら良かった 急にごめんなさいね」

    エレン「いえいえ」

    アニ母「で、本題」

    アニ母「正直な話、アニとはどこまでいってるの?」

    エレン「その・・・」

    アニ母「娘の母親としては心配なの」

    アニ母「正直に、ね」

    エレン「実はその・・・全然進んでなくて」

    エレン「まだせ、接吻もままならないというか、数えられるほどしかしてないというか・・・」

    アニ母「・・・確認するけど一年経ってるよね?」

    エレン「お恥ずかしいというかなんというか・・・」

    アニ母「逆の意味で驚いた・・・」
  31. 31 : : 2015/08/08(土) 21:16:47
    アニ母「ま、まあ想定してたのとは違ったけど、それはそれで不安事項があってね」

    エレン「?」

    アニ母「あの子、ちょっと素直じゃないから怖がってる部分もあって」

    エレン「怖がる?」

    アニ母「呆れられてるんじゃないかって思ってる節があったの」

    エレン「呆れ・・」

    アニ母「素直な気持ちをまだ伝えられないってすこーし相談受けたから」

    アニ母「あの子の毒舌だったり蹴りだったりは甘えだと思ってあげてね 本当にあなたの事好きみたいだから」

    エレン「・・・あんまり身体的にも精神的にもダメージは負いたくないですけど」

    エレン「でも、それ聞いて俺も安心しました」

    エレン「俺だけじゃないんだって思えて」

    エレン「でも、そろそろ進展させたいとは思ってるんですけどね・・・」

    アニ母「あ、その、そんな焦らなくてもいいんじゃないかな?」

    エレン「なんで貴女はそんなに焦ってるんですか」

    アニ「出たよ エレンお風呂は?」

    エレン「おう、行く前には入ったけど」

    アニ母「なら入っちゃって 夏だから汗もかいたでしょう」

    エレン「すみません・・何から何まで」

    アニ「え?2人で何話してたの?」

    エレン「別に、何でも」

    アニ「・・・お母さんまさか」

    アニ母「娘の彼氏取る親なんているわけないでしょ」

    アニ「冗談だよ」

    エレン「・・・」フッ

    アニ「な、なに?」

    エレン「納得しました」

    アニ母「でしょ?」

    アニ「な、や、やっぱり何話したのか教えて!」

    アニ母「さあね〜じゃ、私は寝るからシャワー浴びちゃってね」

    エレン「すみません じゃ、遠慮なく・・・」

    アニ「エレン何を聞いたの?」

    エレン「さぁーて、シャワーシャワー」

    アニ「エレンー!」
  32. 32 : : 2015/08/09(日) 16:50:54
    ーーー

    ーー



    その後、当然眠りに就くワケだが流石にアニと同じ部屋は憚れるのでリビングのソファーにでも・・・と思っていた。

    しかしそこはアニのお母様。一筋縄ではいかなかった。

    シャワーを浴びた後のこと。

    いつものようにバスタオルで身体を拭かせてもらって、頭を小さいタオルで拭きながらリビングに戻った。

    また服を借りるのは申し訳ないし、アルミンの家に行くときに一度着替えているので自分のハーフパンツを履いた。

    しかし、いつもの癖で上は何も身につけないで出て行ってしまった。

    もちろんウブなアニさんはコレを直視することは出来ず・・・。

    バシィッ!

    エレン「あばっ!!」

    アニ「な、なんで服着てないのに出てきたの!!」

    エレン「あ・・・わり、いつもの癖で」

    アニ「ししし親しき中にも礼儀ありって言うでしょうが!」

    エレン「でも下は履いてるから

    アニ「そういう問題じゃないの!」

    そういえば付き合う前もシャワー借りたときに上半身見られてそれだけで恥ずかしがられたっけ・・・。

    エレン「・・・スイマセン」

    アニ母「あら、なかなかいい身体してる」

    アニ「お母さん!!」

    エレン「まあたしなむ程度には鍛えてますからね」

    アニ「いいから服を着ろッ!!」
  33. 33 : : 2015/08/09(日) 17:05:43
    ーーー

    ーー



    その後アニの部屋に押し込まれて現在に至る。

    アニ「なんでこうなるの・・」オヨオヨ

    エレン「まあ気にしなくていいって」

    アニ「気にするべきはアンタでしょうが!」

    エレン「俺だって多少は遠慮してんだぞコレ!」

    アニ「ど・こ・が!!」

    エレン「つーかお前のお母さんなかなかオープンなんだな!俺スゲーと思っちゃった」

    アニ「もう・・・ホントお母さん勘弁してよ・・・」

    エレン「仮にも彼氏だぞー?そんな嫌がらなくてもイイじゃん」

    アニ「嫌・・・じゃないけどさぁ」

    アニ「何かこう・・いろいろ間違ってる気が・・・」

    エレン「添い寝しろって言ってるワケじゃないんだしさ」

    エレン「じゃあ俺ベッド使うからアニは床で

    アニ「はぁ!!?」

    エレン「ちょ、ガチギレすんなよ ジョークだって 俺が床で寝るから」

    アニ「・・・それはそれで風邪引かれたら困る」

    エレン「んじゃあどうしろと・・・」

    そこまで言い終わる前にアニはノソノソとベッドの端っこに寄ってスペースを空けた。

    依然背中を向けたままだが。

    エレン「・・・え?マジで?」

    アニ「嫌なら床でも外でも寝て風邪引けばイイよ」

    エレン「(言ってることめちゃくちゃなんだけど・・・)」

    エレン「では好意に甘えて・・・」

    ーーー

    ーー

  34. 34 : : 2015/08/09(日) 17:30:40
    ー3時間後

    アニ「ん・・・」

    朝に弱い自分には珍しく、変な時間に目が覚めてしまった。

    夢の中で悪党にかかと落としを喰らわせるところで、いささか少女らしい夢かは疑問だが、とにかく目が覚めてしまった。

    再びまどろみに意識を沈めようとまた瞼を閉じようとするが、あることに気づいた。

    アニ「あれ・・・エレン?」

    背を向ける姿勢は変えずに寝てしまったことで身体が悲鳴をあげるが、それどころではない。

    確かにベッドに入ったはずのエレンの姿はそこになかった。

    アニ「エレン・・・?」

    アニの中に焦りが生まれはじめた。

    まさか黙って帰ったんじゃ・・・

    と勢いよくベッドから起き上がり、勢いよく足を地面につけて

    柔らかい何かを足蹴にした。

    エレン「ぅぐぇえっ!?」

    アニ「!?」

    片足はエレンに乗っかる形になり、アニもバランスを崩す。

    無意識ゆえ、尋常でない勢いだったのだ。

    エレンの苦しみ方も尋常ではない。

    しかしそこはエレン、倒れかかったアニを半分白目を剥きながら腕で庇い、顔面の激突を防いだ。

    ーーー

    ーー



    アニ「っ・・・あ、エレン!」

    エレン「急に何すんだよ・・・ぐほっ」

    アニ「ご、ごめん 大丈夫・・じゃないよね」

    エレン「お陰様でな・・ゴホッゴホッ」

    アニ「う・・その、エレンが帰っちゃったかと思って」

    エレン「まともに寝てねえんだぞ・・そんなのあるわけねえだろ」

    アニ「・・・ゴメンナサイ」

    エレン「つかお前、この体勢色々まずい」

    アニ「え・・・?」

    もともとエレンは下から庇ったのだから当然ではあるのだが、アニはそれを跨ぐ形になる。

    所謂馬乗り状態だ。

    朝というには早すぎる時間帯だが、エレンの色々な感覚器官もだんだん目を覚ますワケで、男からすればヤバいところまで来ているのだ。

    これは流石に引かれる・・・。

    エレン「と、とにかく一回降りて」

    アニ「嫌」

    エレン「え?」

    アニ「・・・もう少しこうやってたい」

    しかしどうも毎回甘える間が悪いアニはそれに気がつくはずもなく、倒れこんできた。


    エレン「(え、えええ・・・ここでデレちゃうのお前・・・?)」
  35. 35 : : 2015/08/09(日) 20:13:54
    エレン「あ、後でいくらでもしてやるからさ 今はちょっと・・・」

    アニ「黙って好きにさせて」

    エレン「(なんでいっつも素直に喜べないタイミングでこうなるんだよ・・)」

    華奢な身体や、隔てるものがそれぞれの衣服だけでほぼ直接伝わる体温が理性を削ぐのに時間はかからない。

    アニ「なんか・・眠くなってきた」

    エレン「そ、そうか・・・人肌の温度は心地いいからな じゃ、寝ろ」

    アニ「うん・・・」

    エレン「あ、でもちゃんとベッドで・・・」

    アニ「・・・」スースー

    エレン「嘘だろ・・・オイ アニ」

    微笑みを浮かべながら寝息を立てているが、こちらはそんな穏やかではない。

    だらりと力を抜いてこちらに身を預けているがゆえ、色々なものが押しつけられて冷静さをどんどん欠いてゆく。

    目の前の顔にかかる髪を指でかき分けると、瞼を閉じた整った顔が見える。

    自身の胸に頬を寄せて眠っているため、どうしても髪に隠れてしまう部分もあるが、惚気以前にやはり美人といえるだろう。

    髪は解かれており、普段のキリッとした雰囲気ではなく、幼気な感じだ。

    エレン「(色々・・・クるものがあるな)」


    とはいえ相手は寝ていて、こちらを信用して身を預けているのだ。

    ・・まぁそれ以前に警戒すらされていない、と言った方が正しいのだが。

    エレン「(この・・天然男子キラーめ)」

    ーーー

    ーー




  36. 36 : : 2015/08/09(日) 20:29:46
    アニ「んぅ・・・」

    次に目が覚めたのは午前の8時半。

    普段ならもう少し寝ているところだが、深夜に起きたことで二度寝・・いや、三度寝する気にはならない。

    しばらくして自分がしっかりベッドで寝ていることに気づいた。

    アニ「あれ・・・?」

    確か一回起きて・・で、その後エレンを踏んでバランス崩して・・頭打ちそうになったところを庇ってもらって・・。

    そのまま寝たはず・・・。

    アニ「・・・」

    まぁ、トイレにでも行っているのだろう。

    そこまで考えが至ってようやく別の可能性を考えた。

    アニ「ひょっとしてエレン・・今日午前部活だったのかな・・?」

    だとしたらかなり申し訳ないことをした。

    寝て約2時間後に起こされ、挙句8時からの部活のためにまた6時前に起きる。

    自分には困難どころか絶対不可能だ。

    急いで階段を駆け下りた。

    ーーー

    ーー



    アニ母「うん、5時頃かな 帰ったよ」

    アニ「やっぱり・・・」

    アニ母「何かあったの?」

    アニ「いや・・別に・・・」

    アニ母「彼、横腹押さえてたけど」

    アニ「知ってるなら聞かないでよ!」

    アニ母「かわいそうに・・・重かったでしょうね」

    アニ「う・・・か、軽いって言ってくれたし!耳赤くなってなかったから!」

    アニ母「耳?」

    アニ「エレンは嘘つくと耳が赤くなるからね 嘘はつけないの」

    アニ母「へぇ〜・・アニもそうだったらいいんだけど」

    アニ「そうじゃなくて心からホッとしてるよ」

    アニ母「まあなんにせよ迷惑かけたんだから謝っときなさいよ」

    アニ「・・・ハイ」

    ーーー

    ーー



    バスケ部は基本的に1日練習で、たまに半日練習となる。

    大体は他の体育館部活とのバランスを取る為であるが、まあ理由はどうだっていい。

    男女バスケ部は一括りで数えられるため、片方が半日練習ならもう片方も必然的に半日練習となる。

    今回の場合は午前男子、午後に女子だ。

    入れ替わりのときに謝っておこう。そう心に決めた。

    ーーー

    ーー

  37. 37 : : 2015/08/09(日) 20:57:53
    そして時刻は12時。

    練習開始は1時からだから、今から出ればかなり余裕がある。

    いつも、特に夏は割とギリギリまで家で待機して全力で学校に向かう。

    徒歩通学は自転車通学と違って登下校で風を感じられず、暑さが何倍にも感じるのだ。

    ー実際のところはそれが事実かわからないが、勝手にそう思っている。

    今日もそうしたいところなのだが、エレンに帰られる前に合流して謝っておきたい。

    ダレる身体を鞭打って、地獄の炎天下のもとに出た。

    ーーー

    ーー



    約10分後

    学校に着いて、体育館の方へ向かうとちょうど男子が練習終了の挨拶をしているところだった。

    アニ「(間に合った・・)」

    休みの部活のときくらい通学も練習着でいいと思うのだが、この学校はそれがなぜか許されていない。

    そのため着替えるという一つ余分なプロセスが必要になるのだ。

    とまぁ、そんな個人の愚痴を聞き入れてくれるほど生徒会は甘くないワケで強引に納得している次第である。

    更衣室に入ると既に殆どの1年生が来ており、挨拶をされる。

    2年生はまだ誰も来ていないようだ。

    掛けられた挨拶を返すと、雑談になる。

    しかし今回はそれに興じる暇は余り無い。

    後輩達には悪いが早々に切り上げさせてもらい、着替えを終えて更衣室を後にした。

    ーーー

    ーー



    エレン「しっかし体育館は暑いよなぁ」

    ジャン「夏は地獄だぜ全く・・・」

    マルロ「あれ・・・エレン、寝不足か?」

    エレン「あ、分かった?昨日あんまり寝れなくてな・・・」

    男子達は正直、女子に比べてとても好ましい関係を築いているといえるだろう。

    先輩後輩の中も良く、実際エレンの周りには同級生の他、後輩達が何人もいる。

    3年生の先輩は既に引退し、部長はマルロ、副部長をエレンとジャンが務めていると聞いた。

    自分たちの場合、慕ってくれる子もいるが、そればかりでは無いのも事実だ。

    そういう部分は男子が羨ましいと思うこともある。

    そんなことを今考えてもしょうがないと振り切って、コートの入り口で大声で呼んだ。

    アニ「エレン!」

    男子バスケ部だけでなく、他の部活の男子の視線も感じるが、それももう慣れた。

    差し入れ代わりに買ったスポドリを携えてそこに立つ。

    エレン「お、ア

    「アニ先輩だぜオイ!!」

    「やべえやっぱり凄え綺麗」

    「色っぺーなぁ」

    エレン「ちょ、お前らアニは

    「分かってますってエレン先輩!」

    「一途ですもんね〜羨ましい」

    エレン「冷やかすなよコラ」

    ジャン「え?なに?"アニ、大好きだ!!"だって?」

    エレン「な・・・!おま・・!」

    マルロ「ジャン・・・」ハハ

    アニ「ちょ・・・」ボッ!

    「おい見ろアニ先輩顔赤くしてんぞ!」

    「めっちゃ乙女っすね・・くそ〜・・」

    「可愛い!ヤバいめっちゃ可愛い!!」

    アニ「は、早く来て!」

    エレン「お、おう おいお前ら!変なこと言うな!!」

    ジャン「ごゆっくり」ケッ

    エレン「言われなくてもそうするわ!」

  38. 38 : : 2015/08/09(日) 21:22:08
    ー体育館入り口

    アニ「あ、これポカリ」

    エレン「お!いいのか?サンキューな」

    今頃更衣室に入ったであろう2年生と後輩達を引き離し、入り口に移動した。

    ここなら大丈夫だろう。

    その頃には火照った頬の温度も引いていた。

    エレン「あいつらいっつもアニを見るとずーっと話してんだぜ」

    エレン「褒めちぎられて羨ましい限りだねぇ」

    グビグビと喉を潤しながら話しかける。

    美味しそうに飲んでいるのを見るとこちらも喉が渇いてくるが、これは謝罪の品でもある。

    我慢しなさい。

    アニ「まあ、そりゃ嬉しい限りだけど・・私が言われて一番嬉しいのはエレンだから」

    むせてゲホゲホと咳き込むエレン。

    話の内容的には別におかしくはないが、突然こんな可愛げのあることを言われる とまずクルのは嬉しさより驚きの方が大きい。

    エレン「お、おいおい、そんなこと言っても何も出ねえぞ」

    アニ「そんな何かを求めて言葉発するようながめつい女じゃないよ」

    エレン「そりゃ知ってますけど・・・そうではなく」

    アニ「まあいいや・・・謝るために今日は早く来たんだ」

    エレン「謝る・・・?」

    アニ「今日夜遅くに起こした挙句踏んで、しかも寝ちゃったから」

    エレン「あー・・・アレね」

    エレン「いいよ 可愛かったし」

    アニ「ちょっと、エレンまでそんなこと・・・」

    エレン「俺に言われるのが一番嬉しいんだろ?」

    アニ「・・・そういうのズルい」

    エレン「い、いひゃいアニ」

    頬をつねるが怒りは微塵もない。

    周りからすれば惚気の応酬で、非リア達にはヘルゾーンだが、本人達は至って真面目かつ無自覚故、なおさらタチが悪い。

    アニ「とにかく、ゴメンね色々」

    エレン「おう 気にすんな・・・つっても踏むのはやめてな」

    アニ「う・・・そ、そこは気にすんなって言ったんだから流してよ」

    エレン「慌ててたのか知らねえけど、今まで喰らったヤツのなかで一番痛かった」

    アニ「ハイ・・・申し訳ありませんでした」

    エレン「ふっ・・・まあいい思いさせてもらったしな」

    アニ「え?」

    エレン「抱きついたまま寝てくれてさ
    色々やばかったけど」

    アニ「・・変態」

    エレン「お前からやってきたんだろ!?」

    アニ「最後の言葉が変態じみてるって言ったの!」

    アニ「いっつも一言多いんだから・・」

    エレン「んだよー 1年の時は言葉が足りずに色々あったからこうしてだな」

    アニ「なんかエレン色々ずれてるんだよね・・・」

    エレン「よく言うぜ・・・」

    アニ「今のどういう意味!?」

    エレン「べーつに?なーんも」

    アニ「言わなきゃ蹴る」

    エレン「すぐに暴力行使は女子として如何なものかと思いまーす」

    アニ「ぐっ・・・」

    エレン「ま、甘えてくれて嬉しかったのは本当だからな?」

    エレン「たまにはああいうことさせてくれよー」

    アニ「やっぱり変態」

    エレン「今のどこが変態なんだよ!?」
  39. 39 : : 2015/08/10(月) 23:20:02
    アニ「でも私は楽しいよ エレンといると」

    エレン「そ、そりゃどーも・・・」

    アニ「あ、顔紅い」

    エレン「るっせ!」

    アニ「フフ」

    アニ「あ、そろそろ時間だから行くね」

    エレン「え、あ、もうそんな時間か」

    エレン「じゃ、練習頑張ってな」

    アニ「うん、頑張る」グッ

    簡単に別れの挨拶をして、アニは体育館の方へ戻り、エレンは離れた仲間の元へと駆けて行った。

    ーーー

    ーー



    ミカサ「甘い」

    アニ「な、何が」

    ミカサ「まるで砂糖にガムシロップをつけてそれをグラニュー糖にぶっかけて、それをカキ氷のように掻き込んだかと思うくらい甘ったるい」


    アニ「そんなの食べた事ないでしょ・・」

    戻って早々ミカサの第一声はそれだった。

    そして周りには後輩の部員達。

    この構図でロクな目にあったことがない。

    今回もその例外に漏れることはなかった。

    「とぼけないでください!さっきエレン先輩といましたよね!」

    ミカサ「たまたま目に入ってつい15分ほど見入ってしまった」

    アニ「たまたま目に入った割には、かなりの時間見入ってたんだね・・・って見てたの!?」

    「アニ先輩めっちゃ可愛いこと言ってませんでした!?もうこっちが悶えそうでしたよ!!」

    「エレン先輩と代わりたい!後でアニ先輩がさっき言ってたこと私に向けても言ってください!」

    アニ「二度と言えるか!!」

    ミカサ「出来れば私にも言ってほしい」

    アニ「真顔で言わないでよ!」

    ミカサ「やっぱりアニは純情な乙女で私はとても嬉しい」

    「ホントですよね〜」

    アニ「・・・バカにしてるでしょ」

    ミカサ「まさか、私たちは乙女なアニがこの部活の癒しだと思ってるくらいだから」

    アニ「・・喜んでいいのやら悪いのやら」
  40. 40 : : 2015/08/11(火) 21:11:15
    ミカサ「照れなくてももっと全面的に喜べばいいのに」

    アニ「あのねぇ・・・」

    ???「そろそろ始めるぞー!あとあんま惚気るなー!私への当てつけかコラ!」

    アニ「いや、でもミカサ達が冷やかして・・・」

    ???「二人してリア充なんだからいいだろうが!張り倒されたいのかー!?」

    ミカサ「イザベル先生、落ち着いてください 練習始めましょう」

    イザベル「う・・・そ、そうだな よーし、じゃあ部長挨拶!」

    アニ「お願いします!」

    「「「お願いしまーす!!」」」

    イザベル「じゃあまずいつも通りフットワークから・・・」

    今更ながら女バスの顧問はイザベル先生という。

    リヴァイ先生と知り合いらしいが基本的にはイザベル先生から絡んでいることが多い。

    リヴァイ先生はそれを喜んでいるようには・・・見えないが、めんどくさがってるだけで嫌ではないようだ。

    もう一人ファーランという人と親しいらしいが他の学校に勤務しているらしく、そこは割愛。

    先ほどの反応からも分かるように独身+彼氏ナシ。

    リヴァイ一筋故「残念な美人」となってしまっているのだ。

    ここら界隈では珍しい赤毛であり、顔立ちも整って熱い性格。生徒からは慕われているのだが・・・。

    アニ「じゃ、ストレッチ始め」

    「「「はい!!」」」

    ーーー

    ーー



    イザベル「ミカサ!もっと腰低く!ファール取られるぞ!」

    イザベル「アニ!フェイクからのクロスオーバーの割合が多いからオフェンスのバリエーション増やす!!」

    イザベル「ハンナ!フォーメーション番号の誤認が多い!ちゃんと記憶!」

    イザベル「サァァアシャァァァ!!猪突猛進過ぎ!!本能抑えろ!!」

    オフェンスのフォーメーションだったり、ゾーンディフェンスだったりと今までの主軸の変更はせず、それらの増強をしている練習が多い。

    3年生が引退してすぐでも練習の質は落ちているどころかハードになっている。

    やりがいが有り、注意されて伸びるタイプのミカサやアニはそれで一向に構わないのだが・・・。

    ーーー

    ーー



    「「「お疲れ様でした!」」」

    4時間ほどの練習を終え、部員のほとんどはクタクタだ。

    外周も1年2年共に未だに活用。不満に思う2年生も少なからずいる。

    ー更衣室

    サシャ「つ、疲れましたね・・・」

    ハンナ「いっつもハードだから・・・」

    「あのアニ先輩とミカサ先輩は・・?」

    サシャ「え?あー、部長と副部長ですしイザベル先生と話しているのでは?」

    「そう、ですか」
  41. 41 : : 2015/08/11(火) 21:47:07
    ???「あの、アニ先輩ってバスケ上手いんですか?」

    そう問いかけたのは1年生の中でもっとも期待されている、ユリア・ベーメルという生徒だ。

    突出した技術ゆえ、単独プレーが多い節がある。

    また、少々軽率な行動や遡行も目立ち、中学生の時は問題を起こしたことも少なからずあるようだ。

    ユリア「確かに人格的には人気かもしれないですけど、それでもバスケは上手くなきゃマズいんじゃ?」

    サシャ「実際上手いですよ かなり」

    ユリア「でも彼氏にうつつを抜かしてるトコあるじゃないですか」

    ユリア「遊んでばっかりな気がしてどうもね」

    上級生に対して物怖じせずそんなことを言うのはこの子くらいだ。

    7月になればそれも慣れたもので咎める2年はいないが、よく思われているわけでもない。

    諫めようとする者ももう居なくなった。

    ミカサ「だったら今度一対一やってみればいいのでは?」

    いつの間にか更衣室に入ってきたミカサにみんなの視線が集まった。
  42. 42 : : 2015/08/11(火) 22:23:33
    ミカサ「きっとアニがこのチームをまとめてる理由が分かる」

    ユリア「それは楽しみです お疲れ様でした」

    入れ違いになるように更衣室を出ていくユリア。

    振り返ることもなくミカサは着替えを始めるが一年はどこか心配しているような面持ちだ。

    ミカサ「どうかした?」

    問いかけられたのはリリーというアニにと同じように金髪蒼眼の持ち主だ。

    髪はショートなので見間違えるようなことは無いのだが、アニと仲がいい後輩の1人だ。

    リリー「いや・・先輩に何も言わずに勝手にあんなこと言っちゃって・・・」

    ミカサ「アニは負けず嫌いだから」

    リリー「そういう問題じゃ・・・」

    ミカサ「心配はいらない きっとアニもあの子を必要としてるし、なすべき事も分かってるはず」

    リリー「信用、してるんですね」

    ミカサ「そうでなきゃこの部活を任せられないから」

    ーーー

    ーー



    同時刻。駐輪場にて。

    先ほどまで口に出していた女子の想い人
    がそこにいた。

    確かアニ先輩と一緒にいるのを正午過ぎに見かけたのだが・・・。

    ユリア「あの・・・」

    エレン「ん?あ、邪魔だったか?悪いな」

    そう言ってそそくさと座っていた場所を動く。

    やはり何度見てもイケメンだ。

    何度見ても、というのは部活でだけでは無い。

    普通の学校生活の中でも廊下を通ったりといったそんな何気無い瞬間も眼で追っていた。

    普段男子と話す事は割とあるが、エレンレベルととなると面と向かうと流石にドギマギしてしまうだろうと予想がつき、声なんてかけられなかった。

    加えて同性から見ても美人と評判のアニ先輩と付き合っているという事実も知ったのだ。

    ずっと話す機会なんて訪れないだろう。

    そう思っていた矢先の出来事だった。

    エレン「あれ?君確か女バスの1年ですば抜けて上手いって評判の・・・」

    エレン「えーっと・・・ユリア、ちゃん?」

    ユリア「知ってるんですか?」

    エレン「知ってるも何も、アニがベタ褒めしてたからな 他の子はまだ覚えきれてないけど」

    微笑を浮かべて話しかけられ既に脳内はちょっとしたパニックだ。

    昔からスポーツだけは他の子よりずっとできたからそれに打ち込んできたのだ。

    恋なんてしている暇があったら体を動かしてたいと思っていたくらい。

    だから告白されれば来る者拒まず去る者追わずといった具合に、あまり綺麗ではない恋愛をしてきた。

    得られるものはほとんど得てきた。それでも初めて得られないものができた。

    ーユリアはエレンに恋をしたのだ。

    所謂一目惚れというやつだろう。
  43. 43 : : 2015/08/11(火) 22:47:33
    エレン「選抜チームに所属してた事もあるんだろ?凄いな」

    ユリア「その、唯一の取り柄ですから・・・」

    エレン「勉強も出来るんだろ?俺そっちは全然だから羨ましい限りだねえ」

    ユリア「・・・アニ先輩、確か特進クラスですよね?」

    すると途端に先程とは異なり満面の笑みを浮かべた。

    エレン「そうなんだよ! あんな練習しててなーんで勉強出来んだろ・・」

    エレン「ま、俺の努力が足りないだけなんだけどな」ハハ・・・

    ユリア「あの・・・アニ先輩とは幼なじみなんですか?」

    エレン「あー・・・いや、知りあったのは高校だ」

    少々言い淀んだ部分があったが、何かを察して追求はしない。

    そんな仲ではないし、なりようもないからだ。

    エレン「幼なじみなのはミカサだな」

    エレン「そうだ、アニとミカサってどうなんだ?」

    ユリア「どうっていうのは・・・」

    エレン「ユリアちゃん達はどう思ってるのかって事」

    ユリア「あぁ・・・」

    ここで自分がアニ先輩に対する思いを全てぶつけるとどんな風に言われるんだろう。

    そうだ、どうせもうこの恋は実らないのだからついでに壊して・・・

    ユリア「・・尊敬できる、人だと思います」

    そんな事をふと考えた自分が酷く醜く感じて、逃げるように当たり障りのない事を言っていた。

    エレン「そうか、やっぱりか」

    浮かべているであろう微笑みを、とてもじゃないが見る事は出来なかった。
  44. 44 : : 2015/08/12(水) 21:01:03
    エレン「あ、ミカサ」

    遠くからやってくる影を見て即座にミカサだと判断できたのはあの珍しい黒髪故だろう。

    幼なじみということもあり、遠目でも分かるようだ。

    先程のこともあるのでもう此処には居たくないし、近いうちにアニ先輩が来れば邪魔者になるのは目に見えている。

    ユリア「じゃあ私はそろそろ」

    エレン「おう、またな!」

    朗らかに笑って見送ってくれる視線を背中に感じながら自転車にまたがって漕ぎ出した。

    ーーー

    ーー



    ミカサ「エレン、 ひょっとしてずっとアニを待ってたの?」

    エレン「いや、飯食ってからまた来た」

    ミカサ「また面倒なことを・・・」

    エレン「いいだろ別に 確かお前ら明日オフだろ?」

    ミカサ「そうだけど、どうして?」

    エレン「せっかく休みが重なる貴重な日だぞ?予定がなければ遊ぼうかと思ってな」

    エレン「アニのことだからこの夏はあんま外に出たくないだろうからまた家にお邪魔して・・・」

    なにやらブツブツと独り言にもなっていない計画を一人で立てているのを半ば呆れながらミカサは見ていた。

    エレン「あ、そういえばお前はいいのか?」

    ミカサ「は?」

    エレン「いつも練習の後はシュート練習アニとやってるんだろ?」

    ミカサ「そうだ、今日は用事があるんだった」

    エレン「まじかよ、なら早く帰ったほうが・・・」

    ミカサ「そうさせてもらう しっかりアニを送るように」ビシッ

    エレン「分かってるって まるで先生だな」

    さすがミカサと言うべきか、無駄に洗練された無駄のない動きで自転車を操り、超スピードで校門を抜けていった。

    少し遅れて女バスの自転車通学組がきて少し話をしてから送った。

    名前とは一致していないが顔はあらかた覚えているので大体のメンバーが帰ったことは悟った。

    そうしてエレンは再び体育館へと向かったのだった。

    ーーー

    ーー

  45. 45 : : 2015/08/12(水) 21:14:09
    ボールを打ち付ける音が一人で練習のするには大きすぎる空間に響く。

    体育館内は冷暖房完備という充実した設備なのだが、残っている自分の為だけにつけてくれているはずもなく、再び汗が流れ始めた。

    練習中に言われた通り、相手を抜く選択肢を増やす練習をしているわけだが、やはり実践しなければ通用し得るのかが分からない。

    そんな時に入り口に来たのがエレンだった。

    エレン「よっ やってるな」

    アニ「エレン?なんで今此処に?」

    エレン「ミカサと一緒なら向こうで待ったてたんだけどな 用事らしいから代わりに来てやった」

    アニ「頼んでないけど」

    エレン「相変わらずだなオイ そもそも一対一の練習なら相手がいないと厳しいだろ」

    軽口を言い合う2人の口角は上がっている。

    分かっていると言わんばかりにエレンは一度はしまったバッシュを履いて制服のシャツを出し、腕をまくって臨戦態勢に移った。

    アニも紐を結び直してエレンを待つ。

    エレン「お前が10点取ったら練習は終わりな」

    以心伝心といった具合に自分が終わろうとしたところに来て、基準の提案をしてくれる。

    アニ「うん、いいよ」

    エレン「よし、来い!」

    腰を落として構えると、エレンのスイッチが切り替わった。

    パスを出して返されたのを合図に、一対一は開始された。
  46. 46 : : 2015/08/16(日) 11:06:34
    ーーー

    ーー



    それから約15分後。

    エレン「あー・・・きっつ」

    アニ「なら来なきゃよかったのに」

    エレン「ばっかお前、そうはいくかよ」

    大の字になって地面に転がるエレンを覗き込むようにして微笑むアニをこれまた笑顔で見るエレン。

    アニ「でも普段エレンもっと当たり強いでしょ 遠慮してたの?」

    エレン「お前ちょっとでも触ると変態扱いするからだよ」

    アニ「スポーツの時にするわけないでしょ!」

    エレン「終わったら蹴ってくるだろどうせ」

    よっと跳ね起きで起き上がると、器具庫へ向かって行き、モップを持って戻ってきた。

    アニ「そんなことするわけないでしょ」

    エレン「ちょっと腰のとこに手を添えただけで払ったの何処の誰だよ」

    アニ「アレは条件反射」

    エレン「ふーん」

    やべ、めっちゃ跡になってる、と寝転がっていた場所を念入りにかけながら、特に気にするでもなく話しかける。

    アニもモップをかけながらそれを返していた。

    モップかけが終わると一礼してコートを出て、バッシュをしまう。

    エレン「じゃ、俺入り口で待ってるから」

    アニ「分かった シャツしまいなよ」

    エレン「えー暑いし誰もいないからイイじゃん」

    アニ「見苦しいから」

    エレン「なんかミカサに似てきたなアニ・・・」

    ぶつくさ文句を垂れながらもしっかりしまうあたり、頭が上がらないのがうかがえる。

    ーーー

    ーー



    そして並んで帰宅中。

    エレン「この時間になると割と涼しいな」

    アニ「風が気持ちイイね」

    夏で昼が長い今、さほど暗いわけではないが、居残り練習の事もあって陽はもうすぐ半分沈みそうだ。

    エレン「アニ、明日暇?」

    アニ「明日?特に何もないけど」

    エレン「んじゃ数学教えてくれ!」

    アニ「イイよ 分かるとこなら」

    エレン「よっしゃ!アニのことだから外出るの嫌だろ?」

    アニ「・・その通りだけどそうやって言われると腹立つ」

    エレン「まあまあ、じゃ家にお邪魔してイイか?」

    アニ「あ・・明日は確かお客さん来るって言ってたっけ・・・」

    エレン「マジか じゃあどうすっかな・・」

    アニ「ならエレンの家に行かせてよ」

    エレン「へ!?俺の家!!?」

    アニ「駄目?」

    エレン「イイけど、何も無いぞ?」

    アニ「勉強するのに必要なのは机、筆記用具、問題集だけだよ」

    エレン「頼もしいことで」

    アニ「部屋見てみたいし」

    エレン「あー・・・うん、そういや入れたことなかったもんな」

    エレン「じゃ、来いよ!せっかくだし午前中からがイイけどアニだからなぁ」

    アニ「どういう意味?」

    青筋を浮かべて静かに怒りをダダ漏れさせるアニ。

    エレン「あ!いや、でもお前朝弱いじゃん!」

    アニ「その気になれば起きれるから」

    エレン「そ、そうか なら9時でイイか?頼むから目を覚ませきってから来いよ」

    アニ「分かってるって」

    エレン「だとイイんだがな・・・」
  47. 47 : : 2015/08/16(日) 18:51:38
    アニを送り、帰宅してから早急に掃除に取り掛かった。

    前日になって急いで掃除をしている姿は夏休み最後の追い込みをする中学生そのものだ。

    急に決まったこととはいえ、普段から掃除しておけよ、と思わず舌打ちをせずにはいられない。

    こんな感想を抱くのだ。汚れ具合は想像に難く無い。

    一度食事を挟んでの掃除を終えたのは時計の短針が10と11の間を示した頃だった。

    エレン「終わった・・・」

    出たゴミは大きな袋3つ分。

    こんな夜に掃除機などを駆使していた為、周辺の家から苦情が来そうだが許していただきたい。

    ついでにカモフラを施して健全男子の味方の冊子もしっかり捨てた。

    バレなきゃ問題無いが、バレたら死ねる。

    隠し場所は自分よりもミカサが把握してるので、前のアニとの会話が頼りになった。

    エレン「(それってどうなんだろうな・・)」

    もうミカサに対して恥は数えられないほど晒しているから今更ではあるのだが、男子としてはソレは情けない。

    情けない、といえば奥手な自分。

    進展させたい。受験期の3年生になればアニとのつながりはますます薄くなる。

    が、恋愛の教科書はオトナ向けのものはあったが、綺麗なソレはない。中身的な意味で。

    エレン「(明日も父さんは仕事、母さんもパートって言ってたな)」

    エレン「(い、所謂"今日は親居ないんだ"状態かコレ!!)」

    エレン「(って何考えてんだ俺!もう狙ってるの見え見えじゃねえか!)」

    エレン「(落ち着け・・・アニは初心だ
    そんなことすればドン引きは必至)」

    エレン「(でもアイツ夏だとかなり薄着なんだよな・・・)」

    エレン「(かといってパーカーとか着てこいとかアホの極みだし)」

    エレン「(いや、見たいし絶対そんな事言わないけども)」

    とは言ってもいつも現物を目の前にすると此方が照れてしまって直視など出来ず、その度にあとで悔いることになっているのだ。

    今度こそ見るぞ!と、本来の目的からかけ離れた目的を見出し始めるエレンを止めるものは残念な事に誰もいない。

    その一方で、アニもまた自分で言った事を恥じていた。
  48. 48 : : 2015/08/16(日) 19:03:24
    風呂に入ってからバタンと部屋のドアを閉めると、乾かして下ろしたままの髪をワシャワシャとかきむしった。

    アニ「(さらっと何言ってんの私!)」

    アニ「(男子の家なんて行ったことないよ!どうすればイイの!?)」

    親に相談しようにも天然ドSな母親は間違いなくニヤニヤと変なことを言ってくるに違いない。

    アニ「(と、とりあえず寝坊だけは絶対避けなきゃ)」

    タイマーを6時半から7時半までの間の1時間、5分おきにセットした。

    幾ら朝に弱くてもココまですれば機嫌は悪くなっても起きるはずだ。

    イラついてスマホを投げて壊すことがなければ、の話ではあるが高価な通信媒体だ。そこまではしないはず。

    音量も最大にして準備はOK。

    あとは課題をこなして寝れば良し。

    アニ「(落ち着け・・・何も遠足の前日じゃないんだから)」

    アニ「(いや、いやいやいや誘ってるわけじゃないし、大体エレンも大胆じゃないから大丈夫大丈夫)」

    エレンが家でまさにその事で悩んでいるとは露知らず、少々失礼な結論に至ってシャーペンを手に取った。

    一度深呼吸をしてノック部分を親指で叩いた

    つもりがペンを逆に持っていたらしく、芯の部分を思い切り親指で押し込んでしまう。

    少ない面積だとより大きな力がかかるという中学の勉強内容を身をもって体験した。

    アニ「いっ・・・た!!」
  49. 49 : : 2015/08/16(日) 20:00:30
    ふーふーと息をかけてどうにか痛みを堪えた。

    無意識とは恐ろしいものだ。

    エレンの受けた痛みも相当なものだっただろうと申し訳なさを今一度感じる。

    指先の赤い点からつうっと垂れる血を拭き取って絆創膏を貼った。

    これでヨシ、と動かせる状態まで回復さてからテキストに向き直った。

    少々指を動かしにくくなったがさほど支障はない。

    集中モードに切り替えて数式とのにらめっこを開始した。

    ーーー

    ーー



    アニの家では先ほどから何度も同じ曲の冒頭が再生されては止め、再生されては止めが繰り返されていた。

    時計は7時21分。

    スヌーズをOFFにしたところでタイマーは五分おきに設定されているため無意味に等しい。


    アニ「うるっさいなぁもう・・・」

    それでも外界の音を完全にシャットアウトしていたアニの意識が覚め始めたのは最後の10分前だった。

    アニ「(昨日の私は何・・血迷ったの?)」

    OFFの日にこんな事は自分がするはずがない。

    未だボーッとする頭で昨日の事を振り返っていき、エレンの家に行く事を思い出した。

    アニ「あーそっか・・・そっか!」

    急いで身支度をして階段を駆け下りたところで母も起きてきた。

    アニ母「お母さん疲れてるんだから静かにしてくれない・・?」

    アニ「ゴメンゴメン」

    アニ母「何・・・今日何かあったっけ?」

    アニ「あーうん、ちょっとね」

    アニ母「あぁ、エレン君と約束でもしてるのね」

    アニ「何でそれを!?」

    アニ母「アンタいつもエレン君何かある時"ちょっとね"って言うから」

    アニ「・・・」

    頭を抱えずにはいられない。エレンに負けず劣らずの単純っぷりだ。

    アニ「・・そうだよ、騒々しくてゴメンなさいね」

    アニ母「いつもの事でしょ・・・ご飯はテキトーに食べてね」

    アニ「言われなくてもわかってますー」

    ふわぁと大きな欠伸をするとまた部屋に戻ってしまう母親。

    娘から見ても休日のだらけっぷりはいつもと比べてかなりのギャップだ。

    アニ「やれやれ・・・」

    呆れながらも焼きあがったトーストを齧ると、時間をかけ過ぎたのか、ところどころ黒くなっている。

    アニ「あ、苦い・・・」



    ーーー

    ーー

  50. 50 : : 2015/08/17(月) 20:30:59
    アニ「意外と片付いてるんだね」

    エレン「だろ?」

    時間きっかりに来たアニに少々驚きつつも家に上げて、部屋に入った。

    昨日の掃除によって出た燃えるゴミは今朝ゴミに出したばかりだ。

    他のゴミも下にまとめて置いてある。

    落ち度はない。完璧だ。

    アニ「昨日急いで片付けたとか?」

    エレン「なんで分かるんだよ・・・」

    アニ「やっぱり」

    ふふ、と微笑んで、エレンの頭を人差し指で優しく押した。

    エレン「お前のために掃除したんだぞ?もうちょいこう・・・」

    アニ「ありがと」

    エレン「あ・・・うん」

    自分から言っておいて望まれたようにするとこの反応だ。

    ぽりぽりと痒くもないであろう頬を掻いて視線を泳がせる。

    アニ「困ってるエレン君カワイイ」

    エレン「バカにすんなコラ」

    アニ「バカにはしてないけどなー」

    と、此処でエレンが突然動きを止める。

    エレン「アレ?」

    アニ「?」

    エレン「お前二の腕の辺り、ちょっと肉付き良くなったか?」

    アニ「う、うそっ!?」

    エレン「ウソだよー焦ったアニちゃん可愛い〜」

    アニ「アンタねぇ!乙女には言っていいジョークと悪いジョークがあるよ!」

    エレン「あいにくその辺は心得てないんです〜」

    アニ「て言うかそんなとこ見てるなんて、エレンやっぱりミカサが言ってたみたいにムッツリだね」

    エレン「何を言うか!俺は高2からはそういう事にはオープンになったぞ!」

    アニ「誇って言うことじゃないよ!」

    エレン「そ、も、そ、も」

    エレン「俺の家までには街通らなきゃ来れないよな?」

    アニ「うん」

    エレン「そんなに肌出して声とかかけられなかったのか?」

    エレンが言うのもそのはず、ミニワンピにショートパンツという、夏とはいえかなり露出度が高い服装だと言えるだろう。

    アニの白い肌の相乗効果もあって見栄えはもちろん良いのだが・・・

    アニ「あー・・・2、3人には」

    エレン「だよなぁ・・・」

    アニ「でもほら、何かあったわけじゃないし」

    エレン「あってからじゃ遅いんだろうが」

    アニ「そりゃそうだけど、こればっかりはどうしようもないでしょ」

    エレン「でもよ・・・」

    アニ「私はエレンの前で1番可愛いって思われたいもん」

    エレン「・・そういうの俺の前だけで言えよ?OK?」

    アニ「エレン以外に言おうなんて思わないよ」

    エレン「そりゃあよかった ウンほんと何より」
  51. 51 : : 2015/08/17(月) 21:07:57
    ーーー

    ーー



    アニ「ーってこと 分かる?」

    エレン「・・・ん?あ、あぁ」

    アニ「ちゃんと聞いてる?」

    エレン「聞いてるって」

    アニ「人がせっかく教えてるのに・・」

    ぷうっと頬をわずかに膨らませて不満を表すアニ。

    勘違いなぶりっ子がやるとイタさMAXのそれが似合う女子なんて数えられるほどしかいないのではないだろうか。

    エレン「ゴメンゴメン、次いつこうして2人になれるかと思っちゃって、な」

    アニ「ふーん」

    エレン「去年はクリスマスとか春休みとか期待してたのに部活あるしよ・・・」

    その結果ダラダラと進展がないままで・・というのは言い訳に過ぎないが、それでもアニも同じことは思っていたらしい。

    アニ「確かに・・・」

    エレン「長期休みじゃねえとやっぱゆっくりも出来ないしなぁ」

    アニ「しかも今年が遊べる最後のチャンスだしね・・・・」

    エレン「受験かぁ・・・受験だよなぁ」

    アニ「・・・ねえ」

    エレン「ん?」

    アニ「高3になったらさ、どうする?」

    エレン「どうするってのはつまり・・」

    アニ「私たちの事」

    エレン「あぁ・・・」

    勉強の合間、エレンが恐れていた話題がついに出てきた。

    高校1年の付き合い始めた頃から危惧していた事だ。

    考える事は出来るだけ避けていたが、この状況では考えなければなるまい。

    エレン「アニは、どうしたい?」

    アニ「私は・・・そりゃ、別れたくはないよ」

    エレン「うん」

    アニ「けど、エレンと居たらそりゃ遊びたくなっちゃうし、勉強も蔑ろになりそうだし」

    エレン「なら、距離を一旦置くか?」

    エレンとて、別れたいと思った事は1度もない。

    しかし、互いに依存していてはおそらく受験には失敗してしまう。

    エレン「俺だって別れるのは嫌だけどさ、きっと俺も勉強しなくなっちまう」

    アニ「うん・・・」

    エレン「お互いに志望校に合格して、進路が確定したらまた俺から復縁お願いすっから」

    アニ「・・・縁を切るわけじゃないでしょ」

    エレン「そうだよな で、まだ想ってくれてたらその時は」

    アニ「勿論」

    皆まで言うなとばかりに続きを言う。

    エレンは笑い、それにまた笑顔を返すアニの顔は少しだけ迷いがあった。

    アニが思っていたのは受験の事もあったが、その後の大学に入ってからの事だった。

    それでもいい。その時にしっかり2人で考えよう。

    ハナから縁切りなんて頭にない。幼なじみが言っていたように自分は自分で思っている以上にエレンを想っているようだ。
  52. 52 : : 2015/08/17(月) 22:40:16
    ーーー

    ーー



    それから約2時間半後、勉強にも区切りをつけ、昼食をどうするかを考える。

    エレン「あ、そっか昼飯」

    アニ「もうそんな時間か じゃ、一旦私帰って・・・」

    エレン「せっかくだしこのまま何処か食いに行ってまた戻って続きしようぜ」

    アニ「でも私今日お金そんなにないよ」

    エレン「おいおい勉強を休日に教えてもらってんだぞ 金払わせるつもりなんてさらさら無いって」

    アニ「でも」

    エレン「俺が奢りたいし第一昼飯代貰ってるから1人分増えてもどうって事無いって」

    エレン「お礼は素直に受け取りなさい」

    アニ「う、うん・・・」

    エレン「うし、じゃ行くか」

    ーーー

    ーー



    ライナー「・・・で、またここ来たわけ?」

    エレン「お前部活は」

    ライナー「今日はオフだ ありがたい事に」

    ペペロンチーノを啜りながら視線はこちらに寄越して話すライナー。

    前食べたピザが美味かったからという理由で再びこの店に訪れたのだが、先客がいたわけで・・・。

    ライナー「しかしお前ら仲良いなぁ 休日の度に一緒に遊んでんのか?」

    アニ「今日は休みが重なったからね」

    エレン「久々だし親家にいないしで此処に来た結果がコレかよ・・・」

    ライナー「そんなしけた面するなよ せっかくのペペロンチーノが不味くなる」

    エレン「そいつは失礼しましたね・・」

    ライナー「ま、俺はもう食い終わるし長居する気もねぇ お二人でごゆっくり」

    最後の麺の一塊をちゅるりと平らげるとスグに代金を支払って店を出た。

    エレン「ホントに此処のペペロンチーノ好きなんだなライナー」

    アニ「私それ食べようかな・・・」

    エレン「頼むんだったら一口くれ」

    アニ「良いよ エレンの奢りなんだし」

    エレン「じゃ、俺はピザとポテトと・・あと飲み物はどうすっかな」

    アニ「私オレンジジュース」

    エレン「はいよ」

    ーーー

    ーー



    その後約1時間ほど滞在して、会計を済ませた。

    話題は尽きることは無かったが、来る前に話した事は1度も話には出てこなかった。

    家に帰り、勉強再開・・・としたかったがアニはそうもいかない。

    アニ「口の中がベタついて何か気持ち悪い・・・」

    エレン「あー・・・歯ブラシねえからなぁ」

    エレン「悪いけど口濯いで我慢してくれねえか?」

    アニ「うん・・・」

    大満足の味だったが、少々油が多く使われていたらしく、面倒臭がりの割に綺麗好きなアニはそれが気になっていた。

    洗面所で自分だけ歯を磨くのは申し訳ないが、歯ブラシの買い置きも無い。

    ゴメンなと今一度謝って、2人並んで歯の掃除をしていた。

    そしてまたそれから10分後にようやく部屋に戻った次第である。

    アニ「んー・・・」

    エレン「まあ気になるよな」

    アニ「んん・・・」

    未だに口の中が気になるアニは眉を寄せて少々不快そうな顔だ。

    それを苦笑しながら見て諌めるが、昼食をとった後は眠気が襲ってくる。

    エレン「眠いなぁ・・・」

    アニ「しっかりしなよ・・・って言いたいけど一理あるね」

    ふわぁと口を押さえて欠伸をすると、目を何度か瞬かせてその睡魔を飛ばそうと試みていた。

    こちらは負ける気満々でもういつでも瞼をクローズすれば意識を飛ばせる状態。

    エレン「悪い、マジで眠いから寝ていい?」

    アニ「私も・・・」

    エレン「じゃ、アニはベッド使えよ」

    アニ「エレンもだよ」

    エレン「え?」

    アニ「添い寝しよ」

    そう言ってそそくさとベッドの上に乗って壁際へと寄った。

    エレン「髪とか引っ張られても怒るなよ」

    アニ「大丈夫だよ・・・」

    もう返事も朧げだ。

    一昨日というべきか昨日というべきか、1度は経験しているシチュエーションだ。

    今更気にしても仕方あるまい。

    エレン「じゃ、先に起きたほうが起こすって事で」

    アニ「了解・・おやすみ」

    エレン「はいよ おやすみ」
  53. 53 : : 2015/08/17(月) 23:09:02
    一度寝たら滅多な事では起きないアニよりエレンのほうが早く起きるのは当然だ。

    ・・しかし例外的に、今回はアニのほうが早く起きてしまった。

    意識の覚醒には少々時間がかかったが、口に残る不快感のせいか、あまりよく眠れなかったらしく寝呆ける事は無かった。

    寝返りをうったのか、いつのまにか向き合う形になっている。

    目が覚めた時は驚いたが、こうしてじっくりエレンの寝顔を見るのは初めてだ。

    いつもエレンより早く寝るし、起きるのはエレンよりも遅い。

    じっくりとその顔を見るのは未だに恥ずかしくて出来ないが、相手に見られてないとなれば話は別だ。

    アニ「(顔ちっちゃい)」

    ぷにぷにと頬を触ると若さ相応の弾力がある。

    アニ「(肌綺麗だなぁ・・・)」

    そんなちょっとしたイタズラをしていると身を捩らせて少しだけ顔を顰めた。

    アニ「(あ、起きちゃったかな)」

    しかし瞼は閉じたままで、宙を彷徨った片手がアニの腰に回ると安心したように破顔した。

    アニ「(か、可愛い・・)」

    母性本能をくすぐられるとはこの事か。

    やれショタはサイコーだの何だのと騒いでいた友達の気持ちがほんの少しだけ理解できた気がした。
  54. 54 : : 2015/08/19(水) 21:44:15
    エレン「んん・・・ミカサ・・・」

    アニ「ミカサ、かぁ・・」

    ただの寝言、と受け流す余裕はなかった。

    自分といる時はやっぱり自分の事を考えて欲しい・・・。

    とはいえ相手は夢の中だ。外界から言ったところで無意味だし、エレンにとってミカサも大事な事は分かっており、咎めるつもりなどさらさらない。

    さらさらないが、それでも同じ時間を共有する時は少しくらいこっちを優先してくれてもいいのに・・・。

    アニ「(ミカサとはエレンにとってのベクトルは違うんだろうけどね・・・)」

    エレン「(あーもー深く考えるのはやめよ・・・)」

    沈んだ気持ちを振り払って集中しようと午前中勉強していた机に向かってノートとテキストを広げた。

    ーーー

    ーー



    エレン「あれ・・・アニ?」

    アニ「ん?あ、起きた?」

    エレン「先に起きてるなんて珍しいな・・・」

    アニ「起きて早々バカにするとはいい度胸してるね」

    エレン「バ、バカにはしてねえよ!」

    アニ「ふふ、いやエレンの寝顔可愛くて起こすのが憚られただけ」

    エレン「そ、そうか・・・」

    時間を確認するともう4時過ぎだ。

    帰ってきたのは2時くらいだったはずだから2時間も睡眠に当ててしまったという事か・・・アニといたのに。

    エレン「(俺のバカ・・・)」

    添い寝という一時の魅惑にあっけなく吸い寄せられてしまった。それに関して後悔はしてないが、どうせ勉強せず寝るのなら話していた方が楽しいに決まっている。

    エレン「ゴメンなアニ」

    アニ「ん、何が?」

    エレン「いや、せっかくの休みなのに・・・」

    アニ「何を今更」

    呆れたと言わんばかりに苦笑を漏らしてこちらを見た後、再び机に向き直った。

    エレン「明日学校じゃなきゃいいのにな」

    ボソリとこぼした言葉に返事はなかったが、アニの事だから微笑んでいるのだろう。

    ふっと自嘲すると自分も数学のテキストを解き始める。

    カラスが1羽、自分に向いて情けないと鳴いた気がした。

    ーーー

    ーー



    6時頃、アニは一つ伸びをするとバッグに荷物を詰め始める。

    エレン「帰るのか?」

    アニ「こんな時間だしね」

    エレン「そっか 送るよ」

    アニ「いつもありがと」

    エレン「いえいえ お世話になってますんでね」

    よっこらせと立ち上がり、玄関を出るといつものように並んで道を歩く。

    こうするのもあと8ヶ月・・・くらいか。

    もっと早くに会っていればと思わずにはいられなかった。
  55. 55 : : 2015/08/19(水) 22:38:05
    ーーーーーーーーーーーーーーーーー

    しかし、お互い忙しくなった部活によって夏休みにオフの日が重なる事は1度もなかった。

    他の体育館部活は最近できたという新しい体育施設で部活を行っていたらしい。

    おかげでこちらは常に体育館が空いている状態で、もったいないとばかりに何かと熱血漢の顧問は毎日練習をいれてきやがったわけだ。

    お情け程度の3日間の盆休みも当然家の用事なんかがあるわけで自由な時間もない。

    結果、部活の練習と課題以外に何もせずこの夏休みは終了。

    夏休みが明けたら明けたで行事にテスト、模試など忙しくそうこうしていたら年末に。

    年末年始は1番家族で忙しい時だ。クリスマスくらいは・・と思っていても実際には顧問のタマゴさんが部内マラソン大会をプレゼントしてくれた以外は何もなし。先生許すまじ。

    年が明ければ学年末一直線、加えて「受験生0学期」なんて言葉を耳にタコができるくらい聞かされ、今度は勉学重視だ。

    春休みも遊べそうになかった。

    となればもう話し合う機会なんて終業式の後くらいしかなかった。

    ー修了式終了後

    修了式の後は部活動が禁止されている。

    コレはチャンス・・と言うべきか、この後話し合う事柄を考えるとそうは言えない。

    でも夏に決めたのだ。お互いの為に。

    エレン「(何処だアイツ)」

    帰りのホームルームが終わってすぐに理系特進クラスに行くも、アニの姿はなかった。

    同じクラスのアルミンに聞いてもわからないとのこと。

    まぁアニの事だから誰かが見てるだろう、と聞き込みをするとすぐに理由はわかった。

    しかし、どうやらあちこちに移動しているらしく、場所が全く掴めない。

    エレン「(ったくこの感じ・・・久々だなぁ)」

    おそらく3年生の先輩たちがこぞって告白しているのだろう。

    それに便乗して一年ぽっくり共も、といった具合か。

    気分悪い限りだ。

    エレン「(終わりと同時にかっさらえばよかった)」

    あれ、こんな事前にも思ったな、などと考えていると金色の髪の毛が背の高い人の間からチラリと見えた。

    エレン「アレは・・・クリスタか」

    しかし目的の人物と髪型が全く違った。

    アニと同じ被害者を気の毒に思いつつ、通り過ぎよう・・・と思ったがどうにも様子がおかしい。

    そうこうしているといわゆる壁ドンなるものをやっている。

    エレン「(オイオイ、現実で壁ドンやっちまうのかよ・・・)」

    リアルにやられると幾らイケメンでも引く、と女子は話していたことを思い出し、なおさらクリスタが気の毒になった。

    エレン「あ、クリスター」

    わざと大声で呼ぶと3年生らしき人はびくりと肩を跳ねらせた。

    エレン「えーとこちらは初めましてっすね」

    敬意のかけらも出さずに挨拶するとどもりながら返してくる。

    視線は全く合わずあちこちをチラチラと見ていた。

    エレン「(壁ドンやる勇気今出せよ情けない・・)」

    そんな様子を見てこりゃ助太刀要らなかったかと思いながらもホッとした表情を浮かべるクリスタは放ってはおけなかった。

    アニならヤバイ時は股間の一つや二つ蹴り上げて危機を乗り越えるだろう。

    しかしクリスタにそんなことができるとは思えない。

    エレン「この後クリスタと約束あるんでちょっと借りていいですか?」

    「あ、あぁ」

    コレまた情けない声で返してくるのを背中で聞いて駐輪場の陰まで連れてきた。

    帰る奴は帰ったし、この場所なら見つからないだろう。

    エレン「要らない世話だったか?」

    クリスタ「ううん、助かった ありがとエレン」

    エレン「そっか ならよかったよ」

    クリスタ「アニを探してるんでしょ?さっきの人の所に行く途中で見たよ」

    エレン「マジで?何処だ?」

    クリスタ「多分旗の掲揚台だと思う」

    その後、あ・・・と声を零すのをエレンは聞き逃さなかった。

    エレン「どうした?」

    クリスタ「い、いや、見間違いだと思うけど・・・」

    クリスタ「アニとその人手を繋いでたような・・・」

    エレン「は・・・?」

    クリスタ「いや、でもアニは凄い嫌そうな顔してたから多分腕を掴まれてそのまま」

    皆まで聞かずエレンは駆け出していた。

    背筋を冷や汗がたらりと伝う。

  56. 56 : : 2015/08/19(水) 23:29:59
    ー掲揚台

    アニ「えっと・・・デルラ先輩、ですよね」

    顔を見るのも話すのも初めてだ。

    さっきここに連れてこられる途中で名乗られて、それを口に出す。

    デルラ「アニちゃんだよね、やっぱ有名なだけあるね」

    顔は優男っぽく、異性ウケしそうな顔ではあると思う。

    身体も恐らくスポーツ部所属だったのだろう、受験生特有のたるみだったりそういったものは見受けられない。

    それでも強引な態度は頂けないし、何より軽いノリだったりといった雰囲気が嫌いだった。

    強く握られた手首をさすり、恨めしげにそれを見る。

    アニ「それで、話っていうのは」

    デルラ「まぁアニちゃんの事だからわかってると思うけど、俺と付き合ってくれないかな?」

    アニ「・・お気持ちは嬉しいですけど、私」

    彼氏がいる、と言おうとして止めた。

    エレンの事だ。きっと夏に決めた事を話し合おうと言ってくるはずだ。

    でもそれは一旦距離を置く、という旨の事だ。

    距離を置くとはすなわちこの関係を一時中断するということであり云々・・。

    デルラ「何?彼氏と何かあったの?」

    察しが良いのがタチ悪い。

    アニ「彼氏がいるって知ってるなら・・」

    デルラ「でも今もそうだったけど、関係よろしくないんじゃないの?」

    アニ「そういう事じゃないですから」

    デルラ「でも俺だったらそんな哀しげな顔させないんだけどな」

    アニ「べ、つに哀しくなんかないです」

    少しだけ語気が荒くなってきた。

    アニ「あの、もういいですか? 告白に関してはお断りします」

    これ以上話してたら何かに絡め取られそうで話を終わらせた。

    しかし向こうはそうさせようとはしなかった。

    一瞬だった。先ほどさすっていた右手の手首を再び強い力で握り、左手は壁に張り手のように突く。

    相手の身体と壁で挟まれて逃げ場は無くなり動揺していると、顔が迫ってくる。

    抵抗する事もできず、唇が重ねられた。

    アニ「ッ!!」

    それだけにとどまらず、何かが口の中に入ってくる。

    壁に突いていた左手はそれと同時に身体のラインをなぞり始めた。

    気持ち悪い。嫌。最悪だ。

    ー自分がこうなることを許すのは1人だけだ。

    歯列をなぞろうとあちこちを無理やり動き回る舌を思い切り噛んでようやく男の動きは止まった。

    デルラ「ってえなコラ・・」

    しかし追い討ちをかけようにも、逃げ出そうにも身体に力が入らない。

    膝が微かに震えている。

    初めてオトコという別の生き物に対して"恐怖"を感じた。それに身体が真っ先に反応してしまったのだ。

    目の前のオトコはもはや餌を眼前に見据えた肉食獣にしか見えなかった。

    ガラガラッ!

    不意に後ろから滑りの悪いドアが開く音がした。

    アニ「ッ!!」

    エレン「アニ!」

    デルラ「チッ・・・」

    エレンの姿を確認すると、脚に力が戻った。

    おぼつかない足でエレンのもとまで数メートルのところで崩れる。

    わずかに内出血して蒼くなった手首を優しく持って、引き寄せられると途端に色々なものが込み上がってきた。

    抱き込んだアニの背中を優しく叩く間、エレンの目には確かな殺気が込められ、それは目の前の人間に向けられる。

    デルラ「惜しかったのによ・・・」

    声を出すまいと必死に歯を食いしばってエレンの制服の襟のあたりを掴むアニ。

    エレン「お前、サッカー部の時から何人も女子と付き合っては棄ててきたらしいじゃねえか」

    デルラ「向こうから寄って来たから使うだけ使って棄ててやっただけ」

    デルラ「エレン君と同じだと思ってたけど、あの反応ってことはまだアニちゃんとは

    エレン「アニの名前を呼ぶな 殺すぞ」

    デルラ「仲睦まじい限りで羨ましいよ」

    ー壊したくなるくらいー

    それを横で言った後、その場を去ろうとする彼を止めたのはエレンではなかった。

    エルド「はい、ストーップ」
  57. 57 : : 2015/08/20(木) 00:03:13
    エルド「立派な暴行だからなお前」

    デルラ「エルド、相変わらずだよな
    お前もアニちゃん狙ってたもんな」

    エルド「一緒にすんな」

    デルラ「こっちだってエルド君みたいな童貞と一緒にされたくないね」

    エルド「お前みたいな経験人数だけの痛い男になるくらいなら一生童貞でいいさ」

    通り抜けようとしたデルラをエルドが肩を掴んで止めるとすぐさまデルラは拳を振り上げた。

    それをサラリと避けると襟元を掴んで相手の身体を背中に乗せ、それを廊下に思い切り叩きつけた。

    背中を強く打ち、身動きが取れないソレを軽く持ち上げ、エレン達へと向く。

    エルド「エレン、俺らのアニちゃん頼むぞ」

    エレン「・・・ハイ」

    エルド「今のアニちゃんにはお前が必要だろ」

    エレン「・・・なんでエルドさんモテないんですかね」

    エルド「余計なお世話だ」

    担いだ彼を運ぶエルドを目だけで見送ると、今一度しっかりとアニを撫でた。

    エレン「怖かったよな・・・ゴメン」

    アニ「・・遅い」

    エレン「ゴメンな」

    アニ「・・・怖かった」

    エレン「あぁ」

    アニ「それで、エレンがどれだけ優しかったのか分かった・・」

    エレン「そんな・・・」

    アニ「エレンが一番大切なのに・・どんなことも初めてはエレンって決めてたのに・・」

    エレン「お前・・・」

    アニ「身体を触られて、口に舌入れてきて、ホントならエレンにしか許したくなかった・・・!」

    エレン「もういい 喋らなくていい」

    アニ「エレン・・怖かった・・・!」

    もう一度言うとまた肩に顔を擦り寄せて、制服を濡らした。

    エレン「よく、頑張った」

    アニ「今日だけ・・・今日だけだから」

    アニ「ずっと一緒にいて・・・」

    エレン「勿論だ」

    しっかりと腕の中のアニを確かめるように少しだけ腕に力を入れて、アニを抱きしめた。

    胸の中は依然として先ほどのくそったれに対する殺意で満ちていたが、アニが一番大事だ。

    これからアニの人生にとってこの上なく大事な一年だというのに、自分の欲に忠実な最低な野郎である。

    エレン「(・・クソが)」
  58. 58 : : 2015/08/21(金) 21:57:01
    それからはアニには誰にも声をかけさせなかった。

    腕を引っ張る事はせず、アニのペースに合わせてゆっくり、でも手だけは決して離さずに幾度となく通った道を歩く。

    その時のエレンには周りの風景だの人々の事など頭に入ってこなかった。

    先ほどよりは足取りはしっかりしているが、普段のような凛々しさは全く感じられない。

    舌打ちしたいのを堪えて、エルド先輩と学校の処断に期待するとしよう。

    思う事は数多あれど、当然ではあるが今のアニは男子に対する警戒が最高値だ。

    普段ならすれ違った男に二度見される事は気にしないが、それにも過剰に反応して手を握る力が一瞬強くなる。

    エレン「大丈夫だ 俺がいる」

    言葉は返ってくることはなくただコクコクと頷くだけ。

    それでもあんな目に遭ってなお男の自分を信用してくれているのだ。

    もう先ほどまで話し合おうとしたことなど頭に残ってはいなかった。

    ーーー

    ーー



    普段よりも早い速度で帰宅し、心配かけたくないという相変わらずの他者を優先するアニの意見を一時聞き入れ、アニのお母さんには体調が良くないと少しだけ嘘をついた。

    階段に注意しながら肩に手を添えて部屋に入り、アニをベッドに寝かせる。

    エレン「・・もっと早くに気づけば良かった、ホントゴメン」

  59. 59 : : 2015/08/21(金) 22:46:53
    ふるふると首を横に振ってからアニは漸く言葉を発した。

    アニ「エレンのせいじゃないよ」

    弱々しく笑うアニを見るのが辛い。

    アニ「エレンがいつも言ってたことをしなかった私が悪いんだから」

    エレン「俺が言ってたこと・・・?」

    アニ「無防備だから警戒しろってこと」

    アニ「エレンが優しいから、あんな事されるなんて想像もつかなかったよ」

    エレン「無理に笑わなくていい 俺にまで気は遣わなくていいんだ」

    エレン「言いたくない事は言わなくていい けど言いたい時に言わなくてどうすんだよ」

    エレン「文句も、泣き言も全部受け止めるから・・・」

    これじゃあもうどちらが縋っているのか分からない。

    それでもこの自己犠牲ばかりのコイツに分からせてやりたかったのだ。

    エレン「俺は女心に疎いから分からねえこともあるだろうけど・・・」

    エレン「アニのことはライナーやベルトルトに負けねえくらい想ってる自信はある」

    自然に出た笑みを浮かべてふわりと頭を撫でると、つうっと溢れるように一滴、涙がアニの頬を伝った。

    この時初めてアニはエレンに泣き顔を見せたのだった。
  60. 60 : : 2015/08/23(日) 21:16:51
    落ち着くまでは声をかけることはしなかった。

    しゃくりあげるように、不器用な泣き方ではあったがそれでもその服を掴んだ手は決して離さない。

    エレン「今日明日はゆっくり休め
    俺は・・・」

    アニ「居て」

    明日は女バスは練習で自分はオフだ。

    体調不良とでも言えばアニの普段の行動からしてすぐに信用してもらえるだろう。

    そう思ったのを見越したのか、アニは

    アニ「明日は行くよ」

    エレン「でも」

    アニ「大丈夫 これから大会なんだから私が休むわけにはいかない」

    エレン「・・・」

    アニ「その為にも今だけはエレンには此処にいてほしい・・・っていうのはダメかな・・・」

    エレン「・・・納得できないところが2つある」

    アニ「・・・?」

    エレン「一つが今だけってトコ、もう一つはダメなわけねえってことだ」

    普段我儘なんて言わないんだ、それこそ今だけでいいから言ってほしい。

    そう思うとまた無理に笑った。

    アニ「そっか・・・なら今日は甘えよ」

    エレン「アニ・・・」

    また背中をポンポンと優しく叩くとまた顔を肩に埋められた。

    どれくらいそうしていただろうか。

    目元を赤くしたアニはおもむろに立ち上がった。

    アニ「(くち)・・洗ってくるね」

    エレン「ああ・・・」
  61. 61 : : 2015/08/23(日) 21:35:53
    キュッ

    水道の蛇口をひねって流れる水を止めた。

    しかし止めてなおアニは洗面台の前で立ち尽くしたまま。

    アニ「・・・」

    今洗ったばかりの唇をなぞると、つい数十分前に味わった屈辱とエレンに対する申し訳なさが込み上がる。

    それをかき消すように水をまた手に貯めて少し強く撫でるように洗う。

    思わず下唇を噛んでそれを堪えた。

    アニ「ゴメン・・・エレン」

    あそこでエレンが来なかったら自分はどうなっていただろうか。

    全ての力が抜け落ちるようになって身体は動かなくなっていたことを考えれば・・・想像するのも嫌だ。

    目の前で見た飢えた獣の表情を思い出しただけで嫌悪感が込み上がる。

    そして手によってなぞられた自分の身体も汚れたものにしか思えない。

    ・・なんだか情けなくてエレンの前に姿を見せたくない。

    あの時エレンは深いキスをされる自分を見てどう思ったのだろうか。

    いや、見たのかは分からないけど、見たとしたらきっと・・・

    逆の立場だったら自分は間違いなく耐えられない。

    アニ「ゴメンなさい・・・エレン・・」

    ーーー

    ーー

  62. 62 : : 2015/08/25(火) 18:40:31
    部屋に戻って。

    エレン「落ち着いたか」

    アニ「うん、心配かけてごめん」

    エレン「いいんだ」

    アニ「・・・どの辺りから見た?」

    エレン「は・・・?」

    アニ「エレンは掲揚台に来てまず、何が見えた・・・?」

    エレン「・・・」

    少しの間が生じる。

    思い出してる、というわけではなく言いにくいといった感じだ。

    当然だ。自惚れるわけでは無いが、自分がされたことを客観的に見たらどう思うかなどしれたことである。

    エレン「・・アニが押さえつけられたところだった」

    見えた時はまだ掲揚台が見える廊下の突き当たりの窓だったとも付け加えて説明してくれた。

    アニ「そう・・・」

    エレン「・・なんとなく、いつかこういうことが起きるんじゃないかって、思ってた」

    アニ「え?」

    エレン「俺は、嫌われるのが怖くて手が出せてねぇだけなんだよ」

    エレン「普通の男ならアニをそういう目で見ることも嫌という程分かってた」

    エレン「それでもお前のそばにいれたから少し安心しちまってたんだ・・・」

    俯いてポツリポツリと話すエレンはこの上なく悔しそうで、なにより泣きそうな顔をしていた。

    エレン「もう、こんな目に遭わせねえから・・・だから・・」

    その後の言葉はパクパクと小さく口を動かすだけで出てこなかったけど、察することはできた。

    アニ「・・・嫌だった」

    エレン「・・?」

    アニ「あの人にされたこと、全部気持ち悪かった」

    エレン「ああ・・」

    アニ「だからエレン」

    いっそのこと、と言おうとしたときエレンは優しく右手で口を塞いできた。

    手つきとは逆にこれまで以上に悲しげな顔をする理由が分からない。

    アニ「むぅ・・?」

    エレン「いいんだ、今日はもう寝ろ」

    お前の母さんには俺から上手く言っとくから、とだけ言ってそのまま部屋を出てしまった。

    帰るときは必ず一言言うから戻っては来てくれるのだろう。

    だが、なぜエレンは・・・。

    アニ「・・・」
  63. 63 : : 2015/08/25(火) 18:59:04
    バタン。

    エレン「・・・」

    一枚ドアが二人を隔てている。

    エルドさんにLINEをしてからスマホをポケットに入れ、そのままズルズルと背中をドアに押し付けながら座り込んだ。

    エレン「・・・」

    アニの意思は尊重してやりたいし、女に恥をかかせるということは疎いエレンでもダメだ分かりきったことだ。

    それでもこんな流れでなるようになってしまうのは許せなかった。

    エレン「・・・ッ」

    何が正しいかなんてもう熱くなった頭では分かりようもない。

    しかしアニがあの後何を言おうとしたのか、それだけは聞いてはならないと直感で悟ったのだ。

    きっとあのまま進んだら後悔していた。それもお互いに。

    アニのお母さんには何て言おうか、アルミンなら上手いこと考えてくれると思ったが、それも振り払う。

    よろよろと立ち上がって、なけなしの理性を振り絞って静かに階段を降りていった。

    ーーー

    ーー



    その頃アニはエレンに言われた通りに布団に入ろうと着替えようかと考えたところだった。

    しかしさっき洗った口も、触られた身体にも未だにあの感触が残っている。

    触れられた事実は変わらないが、それでも洗い流したかった。

    ドアを開け、下の階の風呂場へ向かう途中にお母さんに何やら話すエレンのすがたが見えた。

    それを特に慌てるでもなく聞くお母さんを見る限り、不自然のないようには話してくれているのだろう。

    アニ「お母さん、エレン、ちょっと寝たいからシャワー浴びる」

    それにあやかってこちらもそう言って足早に風呂へ向かった。

    返事を聞かずに向かったのはらしくなかったかもしれないが、嫌悪感をいち早く流したかったのだ。
  64. 64 : : 2015/08/25(火) 21:55:57
    それでもやはりあのぞわりと背中を走った悪寒は取れることはなかった。

    少々力を入れてしまい腕や腹、腰のあたりがヒリヒリと痛む。

    頭が冷えて物事を冷静に考えられるようになったという意味では浴びて良かったと言えるだろうが、あの経験に到底見合うものではない。

    部屋に戻ろうと廊下を通ると、先ほどの場所にはエレンは居なかった。

    部屋に行ったのかと階段を上がれば予想通りそこには部屋の前で立ちすくむエレンの姿がある。

    アニ「エレン・・・?」

    エレン「上がったか」

    少し驚きの混じった反応だったが、後ろから突然声をかけたのだから無理もないと納得し、二人で部屋に入る。

    流れるように、というより半ば押し込まれるようにベッドに入らされて、「寝ろ」とだけ言われた。

    普段のエレンからは考えられない素っ気なさで、少しだけ怖かったが大人しくその目を閉じた。

    ーーー

    ーー



    眠りから醒めると横に見慣れた頭が見えた。

    ベッドに寄りかかるようにして座り、眠っているエレンの姿。

    窓から見える景色はすっかり暗くなっており、少し遠くに街の灯りが煌々と輝いているのが見えた。

    近所の家の灯りは無いことから、かなり遅い時間であることが分かる。

    アニ「(ありがと・・・)」

    少し手を伸ばして頭を撫でるように触るとスグに反応し、キョロキョロと辺りを確認した。

    アニ「あ・・ゴ、ゴメン起こしちゃって」

    エレン「いや、何もないならいいんだ」

    ホッと息をつくエレンはいつものエレンのように見えた。

    アニ「・・・エレン、やっぱり他の男の人に触られた身体ってイヤ、だよね」

    エレン「・・・」

    アニ「・・・」

    エレン「まぁそりゃぁ・・・良くは思えないな」

    アニ「ッ・・」

    当然だ。昼ドラよろしく抱かれてこそいないものの、自分の女たる部分を触れられた。

    自分が感じる嫌悪感をエレンが感じていないわけがない。

    それでもエレンはこう続けた。

    エレン「でもアニがアニで居てさえくれば俺も変わらないでいられるから」

    アニ「・・?」

    エレン「気にするななんて軽々しく言えないし言うつもりもねえけど・・・」

    エレン「お前は何も汚れてねぇよ」

    アニ「!」

    あと3時間くらい寝てろとまた掛け布団を顔をすっぽり埋めるくらいまで被せられた。

    普段デリカシーの欠片もないことを言ったりするくせに、こういう時はどうしてこうも言ってほしいことを言ってくれるのか。

    アニ「(ズルイよ・・・)」

    ー離れたくない。
  65. 65 : : 2015/08/25(火) 22:28:04
    その日の朝、身体のあちこちが日に焼けたようにヒリヒリと痛んで目を覚ました。

    エレンは一度起きた時と変わらず、同じ位置でスースーと寝息を立てている。

    のそりと今度は起こすことがないよう慎重に出ると、着替えを取り出した。

    すると後ろからゴホンとワザとらしい咳が聞こえてくる。

    エレン「あー・・・俺トイレ行ってくる」

    アニ「あ、うん・・」

    起こしたのか自分で起きたのかは分からないが、通用しようもない嘘で部屋を出て行くエレン。

    耳が赤い事からもそれが証明されている。

    ともあれ着替えを終えて廊下に出るとそこにいたエレンは「行くのか」とだけ聞いてきた。

    アニ「うん、行くよ」

    エレン「そうか、気をつけてな」

    アニ「エレン」

    エレン「ん?」

    アニ「エレンが居てくれて、よかった」

    あんな事があった後でもそばに居てくれた。

    男子に対する警戒が厳しい筈の今朝も其処にいることが自然に思えていた。

    何より半ば自棄気味だった自分を宥めて、そして優しい言葉をかけてくれた。

    エレン「そっか、なら良かった」

    お互いに不安は全く解消されてはいない。

    それでもエレンが居てくれる事は今のアニにとって何よりも大きな勇気をくれたのだった。

    アニ「行ってきます」

    エレン「ああ、行ってらっしゃい」

    ーーー

    ーー



    アニを送り出したのち、エルド先輩からのLINEを確認すると、どうやら問題のクソヤローは先生に引き渡したとのこと。

    加えて確定ではないにしろ、恐らく合格した大学の入学許可の取り消しなどの処置は取られるだろうとのことだ。

    被害者であるアニの親に連絡がいくのは恐らく避けられないだろう。

    それでもうやむやにされるよりははるかにマシであった。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
  66. 66 : : 2015/08/26(水) 07:37:18
    それもあって部活に顔を出したアニは先生の呼び出しをくらっていた。

    今となっては心当たりしかないので、やはりきたかという気持ちだった。

    しかし貴重な練習時間を献上するのは・・と真面目なアニは頼み込んでそれを練習後にずらしてもらったのだった。

    ーーー

    ーー



    イザベル「ーっていうのは本当なんだな」

    アニ「ハイ・・」

    イザベル「親御さんには」

    アニ「・・言ってないです」

    イザベル「そりゃそうだよな」

    先生との一対一の面談はなかなかキツい。

    それでも他の先生にまで囲まれるよりはずっとよかった。

    イザベル「他の誰にも言ってないのか?」

    アニ「エレンには・・言いました それに彼は現場を見ていたので」

    イザベル「そうか・・」

    アニ「でもエレンは納得はいってなかったですけど受け止めてくれたんです」

    イザベル「文句の一つも言わずに、か?」

    アニ「え、ええ」

    イザベル「そうか、ほかに見たのはエルド・ジンと当事者のみか」

    イザベル「じゃ、コレは私とアニ、それとエレンとエルドだけに留めておくか」

    アニ「え・・・?」

    イザベル「私はこれでも女だ 親にはこういう事は言いたくないのは分かる」

    イザベル「ヤツには処断は下るだろうけど、お前自身も納得いかないと思う」

    イザベル「それでもヤツ担当はリヴァイ兄貴・・・あ」

    つい、といった感じで流れるように珍しいリヴァイ先生の呼び方が出てきていた。

    「まあいいか」とスルッと訂正しつつ

    イザベル「リヴァイ先生にそいつは任せてるけど、あの人なら色々察してくれてる筈だ」

    ニッと笑顔を見せられ、こちらも脱力した。

    イザベル「で、これからは部活の事なんだけど・・・」

    ーーー

    ーー

  67. 67 : : 2015/08/27(木) 00:06:43
    身体は触られただけで、傷害されたわけではない。

    手首のあざも1日で引いたし、バスケをするのに支障はない以上、参加するのが普通だ。

    休んでは大会前の部活の士気に関わることは自分の立場上分かりきったことである。

    高校最後の大会だ。こんなことなんかでくじけるわけにはいかないのだ。

    アニ「やります ですからこの事は」

    イザベル「ああ、分かってる 任せとけ」

    合意の頷きをもらい、職員室をあとにした。

    帰宅しようと荷物をまとめると、部室の窓から見慣れた後輩が道を通っていくのが見えた。

    あれは・・

    アニ「ユリア・・?」

    どうしてこんな時間まで、と疑問に思ったが、かなりのスピードだった事もあって声もかけられなかった。

    仕方がない、とバッグを持って昇降口を通り過ぎ、校門に行こうとすると私服の大学生くらいの男がいた。

    どこかで見た事がある気がして記憶の引き出しを引っ張っていると後ろの通路から手が伸びてきて、自分の腕を掴んできた。

    すぐさま振り返って、その手の持ち主を視認するとため息を吐いた。

    アニ「エレンか・・・」

    エレン「悪いな、でもそっちから行くのはやめとけ」

    エレンが顎で示したのは校門付近の男で、もう一度確認した時ピンときた。

    エレン「駐輪場横から出る 部活終わりで悪いけど走れるか?」

    アニ「勿論」

    エレン「さすが」

    すぐに踵を返して駐輪場に向かう。

    向こうからは見えなかったのか、特にそいつは慌てるでもなくスマホをいじっていた。

    ーーー

    ーー



    エレン「あの野郎・・」

    アニ「まだ私を・・・?」

    エレン「自分の進路が断たれたのを察したんだろうな」

    エレン「だから本気でアニを獲るつもりだぞ」

    アニ「そんな」

    エレン「本来なら警察沙汰のハズなのに何かと内輪で解決しようとしてやがる」

    エレン「この学校から犯罪者を出したとなりゃ評判は下がって寄付金も必然的に減る」

    エレン「あいつも学校も似たようなもんさ」

    アニ「ッ・・・」

    エレン「だから迎えに行くから、部活にしろ授業にしろ、必ず」

    アニ「う・・うん・・・」

    こんなにも恐怖を連続で感じることになろうとは。

    今人生で一番の緊張感ある場面の上に自分は立っているのではなかろうか。

    リヴァイ先生とイザベル先生はまだしも、学校の処断はもう信用できない。
  68. 68 : : 2015/09/05(土) 22:49:38
    それから大会まではあっという間だった。

    気にしている暇も無いほどで、練習に全力だったし、本能的に記憶から追い出していたのかもしれない。

    そんな自分をエレンやイザベル先生は何かと気にかけてくれたことも大きな力になってくれた。

    そして本番。

    日付は6月26日。

    アニとミカサを筆頭にコートに立った。

    ーーー

    ーー



    一回戦目は今まで練習試合をしたことがない学校だったが難なく一勝。

    午後に行われた二回戦目は隣町の高校だったが、98-79で勝利。

    その日は勝ち星二つで終えることができた。

    1ブロック4校での予選リーグ。次に勝てば決勝トーナメント進出確定だ。

    それは明日の最後の試合だ。イザベル先生の労いの言葉をチーム全員で受けたあと、帰路に着いた。
  69. 69 : : 2015/09/05(土) 23:17:05
    自分の家から遠かったこともあり、今日はバスだ。

    近くにバス停があるのはありがたい。

    その中でエレンからのLINEで男子もリーグで2勝したことを知る。

    アニ「(よかった)」

    お互いに頑張ろうと励ましあい、スマホをスリープ状態にする。

    窓にコツンと頭を預けると、程よい振動が眠気を誘う。

    そのまま睡眠欲に負けて瞼を閉じた。

    ーーー

    ーー



    次に目を覚ましたのは降りる一つ前で少々冷や汗をかいたのは秘密だ。

    バスを降り、まっすぐ家に向かうと何やら後ろに気配を感じた。

    バッと振り返っても誰も居ない。

    そのうち幻覚まで見えてきそうで急いで家から離れ、入り組んだ道を走り抜けた。

    ここら辺には生まれた時から住んでいるのだ。自分の庭みたいなもの。

    また戻ってきたときには後ろにもどこにも気配は感じ取られなかった。

    自分を落ち着かせてからドアを開けると緊張した面持ちの母が待っていた。

    ーーー

    ーー



    アニ母「そう、勝てたのね」

    アニ「うん、エレンも今の所2勝だって」

    アニ母「そう」

    アニ「ちょっと汗流してくる」

    そういって風呂場に向かう途中気になって振り返ると先程とは変わり落ち着いてお茶をすすっている。

    アニ「(バレては・・・ないか)」

    ほっとして廊下を進み、もう振り返ることはしなかった。

    ーーー

    ーー



    しかし、次の日アニ達は苦戦を強いられていた。

    イザベル先生がボソリと「やるじゃないかファーラン・・・」と不敵な笑みを浮かべていたのが印象的だ。

    第3クォーターで点差は22点。

    ひっくり返すことは不可能ではないが、先程からこちらの追加点が無い。

    というのも、昨日に比べて明らかに動きが悪い後輩がいたのだ。

    「タイムアウト、白」

    イザベル先生も違和感には気付いたらしく、タイムアウトをとった。

    イザベル「どうしたんだユリア」

    ユリア「別にどうも」

    イザベル「ファンブルも多いし個人プレーも目立つ」

    イザベル「なによりお前がトラベリングなんて」

    ユリア「ちょっともつれただけですよ」

    リリー「一度休んだほうが」

    ユリア「大丈夫だって言ってるでしょ」

    ミカサ「(プレー中は足を痛めた素振りもないし、スピードもあった)」

    ミカサ「(手を抜いている・・?いや、プライドの高いユリアにそれは・・)」

    予選リーグは勝つことが最低条件。勝つためには圧倒的なセンスを持つユリアは不可欠だった。

    アニ「ならよろしくね」

    出られない三年生も不満はあるが、彼女の実力は知っている。

    ユリア「もう終わるんで出ます」

    簡単なストレッチをして気怠げに手をプラプラと揺らしながら再びコートに入った。
  70. 70 : : 2015/09/05(土) 23:36:20
    それでもやっぱり彼女の動きは変わらなかった。

    出たのは第3クォーターからだからスタミナ切れということはないだろう。

    センターのサシャへのパスはかなり厳しく、ミカサには速攻でも無駄に前方に投げる。

    アニへはわざわざフォーメーションのパターンから外れたパスまで時折出した。

    それでも全員が決めていったのは個々の技術があってのものだろう。

    しかし当然体力は必要以上に使うことになり、第3クォーターが終わった頃には流石にアニもミカサもバテ始めていた。

    点差はほとんど変わらず19点。

    焦りから第4クォーターはミスが多くなっていく。

    アニ「ハァ・・・ハァ・・・」

    ミカサ「アニ、限界?」

    アニ「まさか」

    ミカサ「そうこなくちゃ」

    普段から技術を爆発させて進み続けてきた2人も口ぶりとは裏腹に肩で息をしている。

    ミカサ「あと5分で何点?」

    アニ「みんなで30点」

    ミカサ「一人6点 カバー有りで」

    アニ「上等・・!」

    ーーー

    ーー



    アニ「ステイロー!」

    掛け声とともにチームの雰囲気が変わる。

    ディフェンスはオールコートマンツーマン。

    ボールを奪った瞬間ゴールへ決める。

    その本質通り、ミカサを口火に点を重ねていった。

    それから2分間、相手にシュートさせることもなくシュートを決めていく。

    ーユリア以外は、であるが。
  71. 71 : : 2015/09/05(土) 23:54:53
    連続得点で相手のチームの士気は下がる。

    それとは逆に流れは完全にこちらのものだ。

    宣言通り、残り15秒で同点に追いついた。

    だめ押しの点でトドメをさせる。

    アニ「もう一本、獲るよ!」

    覇気のある返事を背中に聞き、目の前の相手に集中する。

    右か、左か。もう考えてディフェンスなんてしていない。

    あるのは過去に培ってきた感覚だけ。

    それでもあと数センチというギリギリでことごとくボールを捌かれる。

    アニ「(もう・・一歩・・・!)」

    必死に食らいつき、相手がパスするために放ったボールに指先がかすった。

    ー残り9秒。

    ミカサ「ユリア!」

    パスコースを逆算していたのか、そこへ敵より早くたどり着きボールをスティールした。

    残り5秒。

    ゴールへミカサとアニが走り出す。

    敵陣の敵は一人。

    対してこちらは2人。

    ー勝てる。

    すぐさまボールを放つユリア。

    ちらりと肩越しにボールを確認するが、自分とリリース後のユリアの間にボールはない。

    アニ「・・!?」

    驚くと同時に足が絡まる感覚がした。

    ミカサ「アニ!」

    身体が傾くと同時にシューズの間に挟まる格好になったボールが目に入った。

    そのボールはパスと言うにはあまりに低すぎる弾道だったのだ。

    突然すぎる出来事に反射で手を出しても間に合わない。

    アニ「(ぶつかる・・!)」

    しかし床にしては柔らかすぎる感触が頭に響く。

    頭の下に割り込んだのは共に速攻に向かっていたミカサの腹だった。

    ミカサ「うっ・・」

    相当な勢いだったか、アニの頭が石頭だったのか、おそらく前者だろうがミカサは一瞬呻くような声をあげる。

    ボールを追う味方よりも早く相手がボールを攫い、ゴールへと向かっていくのを眺めることしかできなかった。

    残り2秒。

    後ろから追う形で全力で走っていた仲間も反応できず、速攻を許してしまう。

    残り1秒。

    敵とユリアの一対一。

    相手がシュートモーションに入っても彼女はジャンプすることはせず、

    ブザーと同時に放ったボールはリングへと吸い込まれていったのだった。
  72. 72 : : 2015/09/12(土) 20:15:09
    アニ「・・・」

    ミカサ「やられた・・・」

    飛び跳ねるように喜ぶ相手をただ眺めることしかできなかった。


    アニ「負けた・・・」

    言葉に出せばそれが真実だとストンと胸に落ちてきた。

    並んで相手チームと向かい合い、握手をして互いを労う。

    向こうは嬉しさが滲み出てその行為を作業的に行うのみだったが、咎めるつもりなんてさらさらない。

    その後観戦に来てくださった方々にお礼を述べたのち、3年生を筆頭としたユリアへの非難が始まるのは無理もない。

  73. 73 : : 2015/09/12(土) 20:59:01
    アニ「ゴメン、ユリア」

    それでも頭を下げたのはアニだった。

    周りも一瞬にして静かになり、あのミカサも驚きを隠せない。

    ユリアも強固な姿勢は何処へやら、素で驚き固まっている。

    アニ「あのパスが取れてれば勝てた・・負けてゴメン」

    ミカサ「アニ・・・」

    サシャ「な、なんでアニが謝るんですか!あれは・・・」

    アニ「ユリアのパスはどれもいつもよりも遠く・・というより相手のゴール側に投げてた」

    アニ「それは私たちを信用してくれてたからだと思ってる」

    アニ「それを取れなかった・・今回の負けは私に責任が

    ユリア「なんでそうやって庇うんですか」

    ここで初めてユリアが口を開いた。

    ユリア「私のせいだって・・他の人たちみたいに言えばいいじゃないですか」

    ユリア「そうやって責められてる方の味方についていい気になって満足ですか?」

    アニ「ユリア・・」

    ユリア「さぞかし気分が良いでしょうね!全てを持ってるセンパイが羨ましい限りですよ!!」

    ユリア「貴女にとってはどうでも良いからそんな余裕があるんですよ」

    アニ「どうでもいい・・・?」

    ユリア「私がどんな思いでこの試合をしたか・・分からないくせに調子に乗るな!」

    感情の高ぶりで私情が入っていることには気づいていない。

    そう言って荷物を持って出て行くユリアと入れ違いにミカサが控え室に入ってきた。

    すり抜けようとするユリアを今回は逃さなかった。

    ミカサ「ユリア、話がある 外に行こう」

    ミカサ「皆も外へ アニは荷物をまとめてて 10分で戻る」

    アニ「・・・」

    コクリとだけ頷くアニを視界の端に入れ、むんずと強く掴んだままのユリアの肩を引き外へ出て行った。

    ーーー

    ーー



    ミカサ「私は貴女のような性格の持ち主は正直苦手だ」

    ユリア「・・・誰だってそうでしょ 今のセンパイたちは」

    ミカサ「でも私たちは貴女が必要だった」

    ユリア「また綺麗事並べる気?もうウンザリなんだけど」

    あの戸惑いもなくなり、相変わらずの強気の姿勢に周りの上級生は眉を顰める。

    ミカサ「アニは貴女とは真逆なのは分かっているはず」

    その言葉でプチンと何かがユリアの中で切れた。

    ユリア「そうだよ、私が出来るのはスポーツだけ」

    ユリア「だから他の事なんか何も気にしないで打ち込んできた」

    ユリア「そしたらあちこちから勧誘がきた」

    ユリア「だけど皆が欲しいのは私の"技術"だけ・・・」

    ユリア「誰も私自身を必要としてなんてくれなかった!!」

    ユリア「アンタたちだってそうなんでしょ!」

    ミカサ「その通り」

    他の部員が戸惑いを見せている中、ミカサだけは、さも当然と冷酷に言い放った。
  74. 74 : : 2015/09/12(土) 21:44:51
    ミカサ「でもアニは違う 貴女という人間の本質は見抜いていた」

    ユリア「はっ!だったら私なんて試合に出さないように言ってたんじゃないの!?」

    ミカサ「貴女"だから"出した」

    ユリア「は・・・?」

    ミカサ「アニが貴女をレギュラーに推したのは技術があるからじゃない」

    ミカサ「貴女が生粋の"負けず嫌い"だと知っているからだ」

    ユリア「は・・・?」

    ミカサ「誰よりも試合での勝利を重んじてたからだ」

    ユリア「そ、それは・・・」

    ミカサ「それまでの過程なんてアニにとってはどうでもいい」

    ミカサ「アニは"今の"貴女を必要としていた」

    ユリア「そんなの・・・ただの・・・」

    ミカサ「実際私達の理解の範疇を超えてる」

    ミカサ「だから今からしてくるといい」




    ミカサ「アニとの"一対一"を、ね」

    ーーー

    ーー



    ヒタヒタと廊下を歩くのはもう自分と大会運営の関係者くらいだ。

    他のチームは一喜一憂したのち、もう帰路に着いたのだろう。

    そんななかで自分たちのチームの控え室のドアからはまだ光が漏れていた。

    ユリア「・・・」

    謝るつもりなんてさらさらなかった。が、少しそれが揺らいだのも事実。

    ミカサの言葉に従いここまで来たのは、アニに対する希望が少なからずあったからだろう。

    ユリア「・・どうせみんな・・同じなのに」

    一人ぼやいてドアノブに手を掛けて、音を立てぬようゆっくり開いた。

    長いすに座る見慣れた背中は心なしかいつもよりも小さく見える。

    見慣れない片足をもう片方の足の腿に乗せる座り方は新鮮だった。

    もっとも、それが自身の足首の冷却をするためだったのだが。

    ユリア「アニ・・センパイ」

    アニ「ユリア」

    くるりと振り返ったアニはいつものような微笑みを浮かべていたが、目元だけはわずかに腫れ、紅くなっていた。

    アニ「話、終わったんだ」

    ユリア「ええ、まあ・・」

    アニ「・・ホントにゴメン 勝てなくて」

    ユリア「・・・」

    アニ「部長としての役割、果たせなかった」

    ユリア「・・人の上に立つって、そんなに無理をしなきゃいけないんですか」

    アニ「・・・?」

    ユリア「センパイは自分を殺し過ぎてるんじゃないですか・・?」

    アニ「・・私は、強くなかった」

    ユリア「え?」

    アニ「誰よりも弱かったんだ」

    他の人に言うのは初めてなんだけどね、と付け加えてから続ける。

    アニ「・・・幼稚園の頃私はいつも1人だった」

    アニ「友達といえば幼馴染の2人くらいでね、それ以外必要だとも思わなかった」

    アニ「誰よりも弱かったから、自分で壁を作って守るのに必死だったんだと思う」

    ユリア「・・・」

    アニ「それでもエレンと会って、変わりたいと強く願った」

    アニ「それからだよ 格闘技を始めたり、自分から話しかけたりしたのは」

    ユリア「・・意外です 昔からああいう性格なのかと」

    アニ「まさか」

    アニ「今の私のスタートはそれからだよ」

    アニ「形は違うけど、自分を殺したのはその時だけだから」

    少し間が空く中、ユリアは少し思惑する。

    彼女は全てを捨てて今の自分を得ている。

    なら私自身は何なのだろう・・と。

    その答えは間接的にだが、与えられた。

    アニ「他の人にとっては偽りの自分だ、とか言われるかもしれない」

    アニ「けど私にとっては今の私が私自身なんだ」

    アニ「殺した自分と今の自分自身を入れ替えた、って感じかな」

    ユリア「自分自身を・・入れ替える・・」

  75. 75 : : 2015/09/12(土) 21:56:07
    ユリア「私にも・・入れ替えられると思いますか?」

    アニ「変わりたいと願った時にはもう入れ替わってるよ」

    アニ「人はみんなに要求される"仮面"が必要になる」

    アニ「それはいくつ持ってても全然構わない」

    アニ「でもその仮面の下の変わった自分を、いつか晒け出せるように、ね」

    偉そうに説教しちゃったね、とまた少し恥ずかしげに頬をかくと、バッグを担ぎ上げた。

    アニ「そろそろ10分経つから出よっか」

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    「きっとアニがこのチームをまとめている理由がわかる」

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    ああ、分かった。分かっていた。

    自分の完敗だ。勝てるはずなんてない。

    ユリア「待ってくださいアニ先輩!」

    アニ「ん?」

    ユリア「あの・・・」

    新しい自分の顔を晒け出せる人なんて、この人以外いない。

    昔の自分を仮面にするんだ。でも、この人にだけは・・・。

    ユリア「本当に・・すみませんでした・・・!」
  76. 76 : : 2015/09/18(金) 23:58:57
    ーーー

    ーー



    それからアニ、ユリアと合流する。

    いつもより距離が近いのは気のせいではないだろう。

    ミカサ「じゃあ帰ろうか」

    それを別段気にするでもなく帰路に着くが他の上級生は納得なんてしていない。

    ミカサとアニ以外は腑に落ちない表情だ。

    勝てた試合を捨てられたのだから。

    かといってプロを目指す者などいるはずもなく文句を言うに言えない。

    もう割り切ってしまうしかないのかと諦めかけていると珍しくユリアが皆を呼び止めた。

    ユリア「あの、先輩方、今日はすみませんでした」

    サシャ「(ユリアが・・・)」

    ミカサ「(謝るとは)」

    もちろん沈みかけてた気持ちはすぐに復活する。

    下手に出た途端に強硬姿勢だ。

    いつもなら喧嘩腰のユリアも言い返そうとする姿勢もなく罵倒を聞き入れていた。

    ーーー

    ーー



    これにてバスケ部は引退。

    あっけないものだ。終わってしまえば"あぁ、こんなものか"とさえ思う。

    心の中ではそう割り切っているのに胸の中は激しく動いている。

    アニ「悔しい・・・」
  77. 77 : : 2015/09/21(月) 21:19:05
    ーーー

    ーー



    エレン「そっか・・・お疲れ」

    アニ「うん、そっちは頑張ってね」

    エレン「任せとけ!」

    エレン達は無事決勝トーナメント進出だと知ったのは次の日だった。

    色々な疲労が溜まって昨日はすぐ寝てしまったのは仕方ない。

    アニ「・・・」

    エレン「どうした?」

    アニ「・・いや、楽しかったなって」

    エレン「部活が、か?」

    アニ「うん 最後はちょっと呆気なかったけどね」

    エレン「部活はそういうもんだ」

    アニ「そうだけど、もう少しやってたかったなーって」

    エレン「ならやりゃ良いじゃん」

    アニ「アンタねぇ・・・」

    自分たちが以前リヴァイ先生に少々咎められたベランダで並んで昼食をとる。

    先ほど購買で買ったパンを二つと牛乳。

    少々外で食べるには暑くなってきたが、数少ない2人になれる空間だ。

    アニ「来週の土曜からだよね?トーナメント」

    エレン「おう!トロスト地方だからすこーし遠いんだよな」

    アニ「へぇ・・・」

    エレン「・・そこは"応援に行くよ!"とか言わねえのかよ」

    アニ「あのね、悪いけどもう私は完全に受験モードに入んなきゃいけないの」

    エレン「ツレねえなぁ・・・太らねえように気をつけろよ」

    アニ「ホントにデリカシーのデの字も無いね」

    エレン「今のは意識して言ってるからな?」

    アニ「本当にいい性格してるね」

    笑いながら軽くデコピンをすると大袈裟に痛がるエレンにこれまたペチンと頭をはたいた。

    アニ「・・・弁当くらいなら作ってやってもいいけど」

    エレン「マジで!?是非お願いいたします!!」

    分かりやすく態度を変えるエレンに少々呆れながらも悪い気はしなかった。
  78. 78 : : 2015/09/21(月) 21:33:09
    ーーー

    ーー



    ピンポーン

    エレン「・・・」

    エレン「・・・ホントに作ってくれたんだろうな」

    まさかこの日に寝坊したとかはないだろう。

    アニは約束は必ず守る・・ハズだから親の申し出を断ってこうして来ているわけだ。

    しかしもし無かったら、大会中にコンビニなど行けず、貴重品も持ち込みは厳しい。

    エレン「(つまりこれが命綱・・!)」

    幸いすぐに階段を降りる音では無い足音が聞こえホッと一息。

    ガチャリとドアが開き、エプロンを着けたままのアニが出てきてくれた。

    アニ「お、寝坊してないね」

    エレン「それはこっちのセリフだっての」

    アニ「ふーん コレいらないんだ」

    エレン「ぐっ・・・」

    フフンと言わんばかりに小憎たらしく少し口の端を上げてホレホレと手に持った弁当を揺らしてきた。

    前述の通りこれを逃せば抜き飯。そもそもアニの手作りの弁当など逃せるハズもない。

    エレン「・・スミマセンデシタ オネガイデスカラソレヲクダサイ」

    アニ「んーまぁ合格 はい」

    ポンと渡してくれた弁当は見てくれの割にズシリと重みがあった。

    エレン「かなり入ってんだな」

    アニ「残したら許さないからね」

    エレン「分かってますともお母さん」

    アニ「わかってるならヨロシイ」

    エレン「しかしお前、エプロン似合うな」

    アニ「え?」

    エレン「家庭的な感じ、スゲェいい」

    アニ「そ、んなこと言ってないで早く行きな!!」

    エレン「ヘイヘーイ んじゃ、行ってきます」

    アニ「もう・・行ってらっしゃい」
  79. 79 : : 2015/09/21(月) 21:58:57
    その日の昼食時には部内で何故かその弁当の争奪戦が行われたことはつゆ知らず、アニは宣言通り勉強に勤しんでいた。

    誘惑されないよう、きっちりとスマホの電源もオフにしてある。

    さらにそれを下の階に置いておくという徹底ぶりだ。我ながら賞賛に値する。

    今日は不定詞の用法に少々不安のある英語を重点的にやるつもりだ。

    アニ「んん〜・・」

    しかし流石に1時間程やると完全な集中モードも切れてくる。

    一旦ペンを置いて伸びをすると背中のあたりがコキコキと鳴った。

    アニ「もっと効率的な勉強ないかな・・・」

    ボヤいても某猫型ロボットが助けてくれるわけでもない。

    完全なとばっちりだが、少しだけ恨めしげに机の引き出しを見て溜息を吐くと、重々しくまたシャーペンを握り直した。

    ーーー

    ーー



    エレン「ご馳走様 マジで美味かった」

    アニ「ホント?それはよかった」

    俺のなのに取り合いになっちまったけどな、と苦笑いするエレンにこちらも苦笑い。

    それで・・と結果を聞く前に向こうが先に口を開いた。

    エレン「・・・5点」

    アニ「ん?」

    エレン「5点差で負けちまったよ」

    いやー惜しかったなぁと笑うエレンは少し気丈すぎておかしかったけど、指摘などしない。

    アニ「頑張ったね お疲れ様」

    エレン「ああ、頑張ったんだぜ、俺」

    アニ「どうする?晩御飯食べてく?」

    エレン「いや、今日はいいや 悪いな」

    アニ「ううん いいんだ じゃ」

    エレン「おう、また明日・・いや、明後日か」

    ーーー

    ーー



    エレン「その日は枕がびっしょりだったっけなぁ・・・」

    ジャン「嘘こけ お前そんなキャラじゃねえだろ」

    エレン「なんで分かった」

    ジャン「悔しがることはあっても家で1人泣くなんて想像できねえよ」

    エレン「勝手に想像すんのやめてくんない?」

    ジャン「お前ほんと腹立つないちいち」

    エレン「部活終わったんだぞ ようやく静かな日々が訪れると思ったのによ」

    ジャン「残念だったな」

    エレン「そう思うならどっか行けや!」

    引退後もこんな言葉の応酬が終わることはなく、結局ほとんど日常生活に変化なんて無かった。

    エレン「あ、そういやお前最近ミカサと居ねえけど、どうしたんだよ」

    ビシッと体のありとあらゆる部分が停止しギギギと言わんばかりにロボットのような動きでこちらを向く。

    あ、地雷踏んだかコレ。

    ジャン「聞いてくれよエレンくぅぅん!!」

    エレン「オイ!離れろ!!」

    ーーー

    ーー

  80. 80 : : 2015/09/22(火) 21:44:47
    エレン「ーつまり、お前がミカサを怒らせた、と」

    ジャン「そうらしいんだ・・・全く身に覚えはねえけどな」

    エレン「ホントに心当たりねえのかよ?」

    ジャン「あったらお前なんぞに相談するわけねえだろ」

    エレン「あ?人がせっかく・・・」

    アニ「エレ・・・あれ?珍しい組み合わせ」

    エレン「望んでなったわけじゃねえけどな なんか用か?」

    アニ「大したことじゃないから後でいいや」

    アニ「で、ジャンはどうしたの?」

    ジャン「そうだ、アニはミカサと仲いいよな!なんかミカサ変わったことあったか?」

    さらっと呼び捨てにしたことにエレンは眉を寄せたが咎めると話が進まない。

    ここは大人になろうと流してやった。

    アニ「特には・・・別にいつも通りだと思うけど」

    ジャン「マジかぁ・・・何でだろうなぁ」

    アニ「喧嘩でもしたの?」

    ジャン「その方がハッキリしていいんだけどな・・・」

    エレン「ミカサは怒ってるっつーかそんな感じらしいんだけど原因が分からねえんだとよ」

    アニ「うーん・・・」

    アニ「あ、なら今日昼にやんわり聞いてきてあげようか?」

    ジャン「ほ、本当か!?頼む!!」

    エレン「メンドクセーなぁ・・・」

    アニ「アンタは何もしてないんだからいいでしょ」

    エレン「ヘイ・・・」
  81. 81 : : 2015/09/22(火) 22:30:31
    ーーー

    ーー



    ザクッ!!

    アニ「!?」

    ミカサ「・・・」

    昼食タイム。

    弁当を広げ、しばし勉強から離れられる至福の時。

    しかし隣のミカサから出る殺気は尋常ではない。

    そもそもいつもならミカサは食べ物を箸で突き刺すなんてことはしない。

    ということはあの唐揚げをジャンに見立てて・・・!?

    アニ「お、落ち着いてミカサ!犯罪はダメ!」

    ミカサ「は、犯罪?」

    アニ「なんで怒ってるのかは分からないけどとにかくそこまでしなくてもいいんじゃないかな!?」

    ミカサ「何を言ってるのか分からないんだけど・・・」

    アニ「いや、その、唐揚げが・・・ジャンが・・・」

    ミカサ「ジャン?」

    アニ「・・・アレ?」

    ーーー

    ーー



    ミカサ「別に怒ってるわけじゃない」

    アニ「あ、そうでしたか・・・」

    ミカサ「でもアニの慌てっぷりは面白かった」

    アニ「忘れてよ・・・」

    ミカサ「この記憶は来世まで持っていくから安心して」

    アニ「やめて!」

    一通りクスクスと笑われてから本題に戻る。

    戻るも何も聞き出すことは始まってすらいないのだが、まあそれはヨシ。

    アニ「でも何があったの?」

    ミカサ「いや、その・・・」

    ミカサがらしくもなくどもっている。

    この姿こそ来世まで持っていくべきだ。録画したい。

    ミカサ「ジャンが・・・」

    アニ「ジャンが?」

    ミカサ「・・身体を求めてきてる、気がする」

    アニ「え」

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    エレン「お前は原始人かぁ!?」

    ジャン「な、何だよ」

    エレン「つまりお前、エルドさんに会ってゴム貰ったってことだよな!?で、それを見られたんだよなぁ!!?」

    ジャン「声がでけえよ!」

    エレン「そりゃお前ら俺とアニより付き合いの期間は長いけどよ・・・」

    ハア、とため息がこぼれる。

    当然だ。幼馴染のそんなこと聞きたくないに決まってる。

    エレン「そういうのはきちんと2人で話し合うとか、いや、悪いことだとは言わねえよ?でもさ

    アルミン「聞こえたぞジャンコノヤロー!!」

    ジャン「アルミン!?」

    エレン「めんどくさくなってきたぞオイ・・・」
  82. 82 : : 2015/09/22(火) 22:43:42
    アルミン「僕たちは高校3年生だぞ!受験生なの!分かってる!?」

    ジャン「わ、わかってるし別に今しようって思ってるわけじゃねえよ」

    アルミン「今したところでもし子供が出来たらお前に養えるのか!?」

    ジャン「いや、だから」

    アルミン「君みたいな無責任な男がいるから望まれない子だの何だの

    ジャン「だから今じゃねえっつってんだろが!!」

    アルミン「へ?」

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    アニ「うわぁ・・・」

    ミカサ「私より引いてる」

    アニ「いや、でもやっぱ今の時期は流石に・・・」

    ミカサ「その辺はジャンもわきまえてるはず」

    アニ「ならいいんだけどね・・・」

    ミカサ「しかしいい気はしない」

    アニ「そりゃそうだよね」

    ミカサ「アニはもしエレンがその、そういうのを持ってたらどうする?」

    アニ「締め上げて問い詰めて簀巻き」

    ミカサ「・・・私よりも厳しい」

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    エレン「まず誤解を解け ミカサそういうのは慣れてないから」

    ジャン「・・何でお前がそういうの知ってんだ」

    エレン「あのな、んなこと言ってる暇あったら謝ってこいや」

    ジャン「そ、そうだよな・・」

    アルミン「そのゴムは捨てなよ?」

    エレン「やけに厳しいなアルミン」

    アルミン「自分で買えないような奴が本番でしっかりできるわけないだろってことさ」フン

    エレン「・・・なるほど」

    アルミン「意味もなく市販薬にパッケージ挟んで買うがいいさ」

    エレン「顔怖いぞ」
  83. 83 : : 2015/09/23(水) 00:07:58
    ー2日後

    ジャン「やっと分かってくれたぞ!」

    エレン「嘘だろ!?」

    エレン「(ミカサ心広いな・・)」

    エレン「ちゃんと捨てたんだろうな」

    ジャン「ああ、必要ねえしな」

    エレン「いや、必要ではあるけど」

    エレン「つか金輪際そういう相談は幼馴染にするんじゃねえ いいな」

    ジャン「誰が望んでするかってんだよ」

    何はともあれ解決したらしい。

    ミカサの海より広い心に救われたジャン。

  84. 84 : : 2015/09/23(水) 21:11:54
    アニ「・・・」

    ミカサとは「とりあえずまずは面と向かってジャンに制裁を加える」という方向で落ち着いた。

    確か今日ジャンを家に呼んで処すハズだ。本人は「許してもらえた」などと大はしゃぎしているだろうが、知らぬが仏である。

    アニ「(・・・)」

    エレン「おっすアニ、帰るぞー」

    まだ賑やかさが残る教室にエレンが現れると3年経っても何人かの女子はそちらを向く。

    さすがにそれにはもう慣れた。

    アニ「うん、今行く」

    今更冷やかす輩もいないし、何より特進クラスだ。

    バッグを肩にかけて、教室を後にした。

    ーーー

    ーー



    エレン「あれ、何でバッシュ持ってんだ?」

    アニ「いつもの癖で持ってきちゃっただけだよ」

    エレン「へぇ〜」

    アニ「・・・なに?」

    エレン「いや、珍しいなーと」

    アニ「私だって人間なんだからそういうこともあるって」

    エレン「へぇへぇ」

    アニ「・・・」

    エレン「・・・なんか怒ってる?」

    アニ「は?」

    エレン「なんかスゲー強張ってるから」

    アニ「いや、怒ってはないよ全然」

    エレン「んじゃ何だよ?」

    アニ「気になることがあって」

    エレン「?」

    アニ「エレンってエルド先輩と仲良かったよね」

    エレン「え?あー、まあそうかもな」

    アニ「アレ、貰ってないよね?」

    エレン「アレ・・・?」

    その指示語がなにを指しているのか、分からないが、なぜか挙動不審というか、恥じらいを含んだ表情と最近の出来事を照らし合わせて特定した。

    エレン「も、持ってねえよ!いや、ジャンと一緒にすんなって!」

    アニ「・・・」

    エレン「お願い、そんな見つめないでくれ 照れちゃう」

    アニ「・・・」

    エレン「持ってねえから!絶対!誓って!」

    アニ「・・・興味ないの?」

    エレン「へ?」

    アニ「何でもない でももしそういうの持ってたら海に沈めるから」

    エレン「は、はい・・・」

    何なんだ?と言わんばかりの困惑顔のエレンだが、それ以上の言及はマズイと悟ったらしく追求してこなかったのは幸いだ。

  85. 85 : : 2015/09/24(木) 04:45:06
    ー自宅

    アニ「はぁ・・・」

    アニが気にしているのは別にアレの所持の真偽ではなかった。

    エレンが本格的に勉強し始めるのは恐らく夏休みからだろう。

    それまでは割と2人で話すこともあるし、何より2人で帰っているのだ。

    しかし、甘い雰囲気になることは少なくなりはしたがあるにはあるのに、身体の一部や大部分が触れるようなスキンシップが全くないのだ。

    最初はあまり気にしていなかったが、部活が終わっても変わらないと割と気にする。

    アニ「確かに奥手ではあったけどさ・・・」

    次の機会にでも抱きつくくらいのことをしてやろうか、などと思いいつものように課題を開いて机に向かう。

    芯を補充してさあやろうとペンを動かしかけて、思考がとある事に行き着いた。

    アニ「卒業式の後から・・・か」

    時期的に考えるとその時からそういったことがぱったりなくなった。

    アニ「(やっぱり気にしてるんだ・・)」

    ハァ、と自分にため息をひとつ零し、ペンを走らせるも全く集中できない。

    最終的に少し身体を背もたれに預けるとすうすうと眠りについてしまった。

    ーーー

    ーー



    目が覚めた時にはもう外は真っ暗で、スタンドの光が異様に眩しい。

    ああ、部屋の電気をつけてなかったと気づいても時間的には夕飯だ。

    スタンドを消しても部屋の中は目をつぶっても歩ける程世話になっているのだ。

    どこにもぶつかることなく器用に物の隙間をぬって部屋を出ると予想した通り下の階からお腹を刺激するいい匂いが香ってきた。

    ーーー

    ーー



    アニ「ねえお母さん」

    アニ母「なに?」

    アニ「その・・・」

    アニ母「どうしたの?」

    アニ「お、お父さんと付き合って何年で結婚したの?」

    アニ母「(なんで突然・・・?)」

    アニ母「(もしかしてエレン君とそこまで考えて・・?)」

    アニ母「(ここは母としてアドバイスすべきか女としてアドバイスすべきか・・・)」

    アニ「お母さん?」

    アニ母「あ、ええと・・・会社で知り合って付き合い始めて・・4年くらい・・かしら」

    アニ「4年か・・・」

    それきり黙ってしまうアニ。

    母として不安は募る。

    アニ「まだ早いよね・・・」

    そしてぼそりと呟いたこの言葉で思わず音を立てて立ち上がってしまった。

    アニ「え・・・?」

    アニ母「そうよ!まだ若いんだから、その、惚れた腫れたってので結婚まで行き着くのはかなり危ないから!」

    アニ「そ、そう・・・」

    アニ母「あなたたちはまだ高校生なんだからその、エレン君がね、自分と貴女を養えるだけの職についてー」

    1人物凄くヒートアップしてしまった母に唖然しつつも、話してくれた事は一応頭にインプットした。

  86. 86 : : 2015/09/26(土) 18:27:22
    ーーー

    ーー



    次の日

    アニ「エレン!」

    エレン「ブフッ!!」

    エレン「おいっ!急に大きい声出すなよ!!殺す気か!」

    クラスのドアが開いたと思ったら大声で名前を呼ぶだけならまだいい。

    こちとら授業合間の至福のお茶タイムだったのだ。想像に難くなく、ゲホゲホとむせ込んだ。

    ヒーヒーと涙目のエレンを強引に連れ出し、いつものベランダへと向かう。

    到着した頃にはもう咳は止まったが、まだ胸の奥がジンジンする。

    エレン「で、何の用でしょう?俺っち勉強したいでござる」

    アニ「どの口が言ってんの ど・の・く・ち・が!」

    頬をつねってグイグイと上下に揺らすと「いひゃい」となんとも情けない声が聞こえてきた。

    エレン「なんか最近また暴力的になってねえか・・・?」

    アニ「ふん」

    エレン「それでホントに何の用だ?昼飯買いに行かないと」

    アニ「じゃあ買ってここに来て」

    アニ「10秒で」

    エレン「え?は!?ハァァァ!!?」

    アニ「ハイじゅーーう」

    エレン「ちょ、待て!分かった!戻るから!!」

    ーーー

    ーー

  87. 87 : : 2015/09/26(土) 21:36:12
    エレン「も、戻ったぞ・・・」

    アニ「ハイ、じゃあそのパン置いて」

    エレン「は、はい」

    アニ「で、そこに気をつけ」

    エレン「はい?」

    アニ「気をつけっ!!」

    エレン「は、ハイっ!!」ビシッ

    全く意味がわからん。最近のアニは特に。

    少しは乙女心なるものを分かってきたと思っていたのだが、この状況にあの台詞にもう意味が全っ然分からない。

    エレン「なあアニ、そろそろ教えてくれグオッ!!?」

    気をつけで一本の棒のように立っていた状態の自分の腹にアニが飛び込んできた。

    足を一本後ろに出していなければそのまま頭をコンクリートにゴッツンコだった。危ない危ない。

    そういや前はボディーブローかまされたっけ・・・。

    いやいやいやいや!それよりコレはマズイ!

    自分より小さくて、華奢で、線が細くて、でも柔らかくて頼りなくて・・・

    イカン!だからこの身体を離さねばならんと言っておろう!!

    エレン「あ、あの・・・アニ?これは一体・・・」

    アニ「・・・」

    だんまり。コレは正解の行動を出すまで
    喋ってくれないパターンか。

    大体怒ってる時だから・・・え?俺何かしたか?

    しかしそれよりも。

    エレン「(・・・なんかこういうの久しぶりだよな)」

    ここでピンときた。

    コレは俺がそういう求めをしなかったからアニからのアクションというわけか。

    しかし前いろいろあったからこうして遠慮していたわけで・・・

    エレン「・・・」

    アニ「・・・」

    ポケーっと考えていたらアニは顎を俺の制服に少しだけ埋めてこちらをじっと見ていた。

    エレン「・・・その、我慢できるのか?」

    ピクッと少しだけ反応を見せる。恐らく自分が思っていることに間違いはないらしい。

    アニ「・・・エレンに対して我慢したことなんてない」

    エレン「でもお前・・・」

    アニ「エレンならいいの」

    前も言ったでしょとやはりツンと怒った顔でこちらを見てくる。

    エレン「だってあの時は・・」

    アニ「エレンが嫌なら言って 離れる」

    エレン「ズリィぞ・・・」

    そう言って少し肩を引き寄せればホッとしたようにこちらに身を預けた。

    正解、らしい。
  88. 88 : : 2015/09/26(土) 22:15:26
    どのくらいそうしていただろう・・・

    なんて本や漫画にありそうな表現なんてできそうにないくらいの短い時間でアニは少し離れた。

    長くて10秒程度だっただろう。

    エレン「あ、あれ?」

    アニ「ありがと 充電できた」

    エレン「俺まだ出来てない・・・」

    手を前にプラプラと宙ぶらりんに垂れさせても微笑むだけ。

    エレン「はぁ・・いつかの初心なアニさんは何処へ・・・」

    アニ「人は常に成長するものだからね」

    エレン「言ってろ」

    このままではやられっぱなしで収まりがつかない。

    なんとかして小憎たらしくと可愛らしいその顔をまた紅く染めてやりたい。

    と、ここで我らが恋愛指南者(ライナー)に聞いたことを思い出す。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    エレン「鬱血痕?」

    ライナー「イェース」

    エレン「それっていわゆるキスマークだろ?それがなんだよ」

    ライナー「知らねえのか?場所によっては所有印になるんだぞ」

    エレン「何につけるんだよ」

    ライナー「そりゃお前、"コイツは俺の女だから手を出すな"って意味になるわけだぞ?」

    エレン「・・・つまり彼女とかってことか?」

    ライナー「グッドアンサー!その通りだ!!」

    エレン「何でそれを俺に言うんだよ」

    ライナー「つけ方にコツがあるんだよ
    いざって時にモタついて女性を萎えさせてはマズイだろ」

    エレン「理由になってねえよ」

    ライナー「俺には実践する相手がいねえんだよ!!」

    エレン「あ・・・」

    ライナー「その気の毒気な顔やめろ!」

    ライナー「しかしコツは任せろ 自分の腕で幾度となく練習してきたからな」

    エレン「習うなんて言ってねえよ それにアニは物じゃねえ」

    ライナー「言い方が悪かったよ でも何よりも虫除けになるから損はねえぞ」

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    見てろよアニ。お前の幼馴染の恋愛アドバイザーの力を!

    またギュッと肩を掴んでやると目を見開いた。

    首の後ろのあたりを左手で軽く包み、首筋を気持ちすぼめた口で覆ってやった。

    アニ「!!?」

    久々だなこの反応、と感動すら覚える。

    そのまま瞬間的に吸ってやると「うっ」と色気のある声が聞こえてきた。

    アニ「な、ななな・・」

    エレン「真っ赤っか」

    してやったりと笑うエレンとは対照的に決意通り真っ赤な顔で狼狽えるアニ。

    アニ「ぜ、絶対見えるトコでしょコレ!!」

    エレン「あーうん、見えるな」

    アニ「何してんくれてるのもう!」

    エレン「虫除けになるからいいかなって」

    アニ「だから私は!エレン以外の男子は・・・」

    エレン「俺以外の男子は?」

    アニ「ッ、な、何でもないよ」

    エレン「アニ」

    アニ「な、なに?」

    エレン「俺は誰よりもアニを信じてる」

    エレン「だからコレは所有印とかそんな失礼なモンじゃねえ」

    アニ「じゃあ何なの!?」

    エレン「"予約"だよ」

    アニ「は・・・?」

    エレン「この後受験勉強に全力にならなきゃいけねえだろ?」

    エレン「だからさ、一旦距離を置くって話 今からそうしよう」

    随分唐突だが、確かに先延ばししていたに過ぎないのだ。

    狼狽こそすれど、分かっていたことだ。

    エレン「だからさ、お互い進路が決まったら俺、またお前に告白するから」

    エレン「気持ちが変わってなかったらそんときゃいい返事くれよ」

    アニ「う、うん・・・」

    色々重なりまだ頭が追いつかないが、どうにか返事は絞り出した。

    エレン「じゃ、お互いクラスに戻ろうぜ
    あ、髪下ろせば見えねえし、そんな強く吸ってないからすぐ消えるハズだぞ」

    アニ「な、ならつけるな!」

    エレン「仕返し」

    ニヤリと笑うとそのまま駆けていってしまった。

    ヘナヘナと座り込みたかったが、負けるのは癪だ。しっかり足に力を入れて、無駄に姿勢良く自分もクラスへと戻った。
  89. 89 : : 2015/09/27(日) 19:31:35
    ー教室

    アルミン「あれ?アニ髪下ろしたの?」

    アニ「え?あ、うん、いろいろあってね・・・」

    アルミン「ふーん」

    ライナー「バッカだなアルミン 女子の髪を下ろすのと絆創膏はキスマーク隠しって相場が決まって

    スパァン!と相変わらずの綺麗な音でライナーが吹っ飛んだことでアルミンは察した。

    アルミン「(ホントにそれ隠してるんだ・・)」

    口に出したら巻き込まれると踏んであえて言わないでおく。

    ライナーは吹っ飛ばされてなおニヤニヤと笑っていて少々気味が悪い。

    アルミン「(エレン、積極的っていうか・・・)」

    アルミン「(バカなんじゃないの!?え?この時期にそういうことしちゃう!?)」

    下ろしても似合うね、とか可愛いとか言われても曖昧に笑うだけで多くを語らない。

    というか目は全く笑ってない。

    アルミン「(一回死ななきゃ分からないのかあの鈍感は・・・)」

    ーーー

    ーー


    帰宅して勉強して夕飯食べてまた勉強して・・・

    でも下ろしている髪が邪魔であまり集中できていない気がする。

    そもそも家なのだからもう髪をまとめてもいいのではないか。

    いや、もう風呂に入る時間だ。髪を洗えばどのみち下さなくてはならないのだから損しかしてない。

    アニ「全くもう・・・」

    我慢が必要なことなんてないとは言ったが・・・あの台詞だって頑張って照れる気持ちを必死に抑えて言い放ったのだ。

    二度と素面でなんて言える自信がない。

    アニ「(いつの間に痕のつけ方を・・)」

    思わず吸い付かれた箇所に手を置いてみると尚更落ち着かない。

    アニ「(あーもう!お風呂入ろう!)」

    洗面所に向かっていつものように着替えた服と今日着たワイシャツを洗濯カゴに放り込んで風呂場に入る。

    入ってすぐ髪をかきあげながら、痕をつけられた箇所を鏡で確認した。

    アニ「・・・消えちゃったか」
  90. 90 : : 2015/10/04(日) 20:38:44
    ーーー

    ーー



    アニ母「アニ?」

    アニ「ん?」

    アニ「首なんて押さえてどうしたの?虫にでも刺された?」

    アニ「うん、とびきり悪い虫に、ね」

    ?と意味がわからないといった反応を見せる母に微笑んでからまた自分の部屋に戻る。

    印が消えたことに対して思いの外残念に思っている自分がいることにはもう驚かない。

    アニ「ホント、悪い虫」

    零した言葉とは裏腹に、心底幸せそうな表情を浮かべていた。

    ーーー

    ーー



    エレン「引かれてねえよな・・?」

    エレン「いや、普通にドン引きだわ!絶対ドン引きだわ!!」

    エレン「うわぁぁぁ!何してんの俺!」

    そんなことは知らず、1人必要のない後悔を続けるエレンであった。
  91. 91 : : 2015/10/04(日) 20:53:07
    何はともあれ距離を置くことになったわけで、それ以降は必要最低限のコンタクトのみとなった。

    2人とも最初は距離感にドギマギしてはいても夏休みに入れば当然会う機会は全くと言っていいほど無くなるわけで、自然に慣れていった。

    不安にならないわけではないが、倦怠期になる前にこうすることができてよかったといえばよかったのかもしれない。

    アニ「ん〜・・・」

    一度集中モードに入れば煩悩を根こそぎぶっとばせるアニは勉強開始から5時間目で一度張り詰めた糸が途切れた。

    アニ「(やっぱり家だとこれから堕落しちゃいそう)」

    アニ「(学校の図書室解放始まったら行こ)」

    相も変わらずスマホの電源はきっちり切っているため今のところ勉強を阻害するものは何もない。

    小休憩を取ってもせいぜい5分だ。

    軽くチョコレートを齧り、今度は化学の問題集を取り出した。

    アニ「うし」

    ーーー

    ーー



    エレン「忘れたわこんな基礎!」

    一方の化学の問題集は宙を舞い、壁に激突して床に落ちたところだ。

    開かれたページは物質量だのモルだのといった化学基礎の内容だ。

    演習をやっているのなら簡単に解ける分野ではあるのだが、授業を寝ていたエレンは別。

    エレン「今度アニに聞こ・・・いや、ダメだな」

    スマホに伸びかけた手を引っ込め、再び机に向き直る。

    また問題集を拾うという無駄な行程にウンザリしつつも今一度解き始めた。

    また数分後、問題集が宙を舞うまでは、だが。
  92. 92 : : 2015/10/08(木) 20:40:44
    ーその後も自分の力で勉学に励み、わからないところは先輩だったり先生だったりに聞いて、センター試験に向けた勉強に加え、二次試験に向けた勉強も開始している。

    赤本の表紙の赤さに「マジで赤い!」と驚いたのも昔の話だ。

    他のぶっ飛んだ頭の持ち主は知らないが、アニとエレンは遊び呆けることなく、勉強に取り組んだ。

    夏休み明けには「顔つきが変わった」などと言われたものである。

    エレン「で、お前は順調か?」

    ジャン「今になって確率があやふやだぜ・・・」

    エレン「そりゃあお気の毒」

    ジャン「教えてくれねえのかよ」

    エレン「お前友達とだと絶対勉強しない系男子だろ」

    ジャン「お前を友達だと思ったことはねえよ」

    エレン「奇遇だな、俺もだ」

    ジャン「はははは!!」

    エレン「はははははは!」

    「「表に出ろやアホンダラぁ!!」」

    ーーー

    ーー



    エレン「ーって感じだったぞ」

    ミカサ「相変わらずジャンは準備が遅い」

    エレン「夏休みから始めたのは遅すぎるわな」

    ミカサ「エレンもそうだとばかり思ってたけど、立派になった」

    エレン「そりゃどーも」

    ミカサ「しかし、アニにゾッコンだったエレンが自ら距離を置く判断にでるとは」

    エレン「そ、そんな縋り付くようなレベルじゃなかったろ」

    ミカサ「いや、それくらいだった」

    エレン「・・マジか」

    エレン「そういうお前はどうなの?」

    ミカサ「心配には及ばない」

    エレン「漢らしいな 惚れそう」

    ミカサ「あ、浮気宣言」

    エレン「ちげーから」

    アルミンは今日は図書館にこもっているので、ミカサと2人で下校していた。

    こちらも進路指導室で勉強していたのだが、キリがいいところで帰ろうとしたところたまたまミカサとかちあったのだった。

    エレン「3ヶ月後にはセンターか・・」

    ミカサ「基礎みたいなものだからそれ自体は大丈夫なんじゃ?」

    エレン「舐めてると泣きを見るぞ」

    ミカサ「む・・それはそうだけど」

    エレン「まあ二次のほうが鬼門だとは思うけれどな」

    ミカサ「エレンは此処(シガンシナ)から出て行くの?」

    エレン「まあな、もっと中央で勉強したいし、そのために頑張ってるからな」

    ミカサ「そう、頑張って」

    エレン「お?寂しいか?」

    ミカサ「・・・うん」

    エレン「あー・・そうか・・えっと・・」

    エレン「ま、まあ長期休みとかはまたシガンシナに戻るからさ、それにほら、受かるかまだ分からねえし」

    ミカサ「エレンなら現役で受かる 私が言うんだから間違いない」

    エレン「行って欲しいのか欲しくねえのかどっちだよ」ハハ

    ミカサ「どっちも」クスッ

    エレン「よしてくれよ ジャンがまたうるさくなる」

    ミカサ「ふふっ」

    ーーー

    ーー



    ミカサ「じゃ、送ってくれてありがとう」

    エレン「おう、またな」

    ミカサ「また明日」

    バタン

    エレン「・・・アイツも寂しいって思ってくれてんのかねぇ」
  93. 93 : : 2015/10/08(木) 21:07:03
    そして冬休み。

    恋人と過ごす甘いクリスマスの夜なんて受験生とは真反対のベクトルである。

    所謂「あぁ、今俺赤本とベッドに一緒に入ってるんだ」という極限状態だ。

    冬休み明けすぐはセンターに向けた勉強のピークだ。体調を崩さないギリギリを縫う平均台を渡り続けている。

    それらしいことなんて大晦日の晩御飯が蕎麦だったくらいだ。

    その大晦日でさえも「今日は大晦日だからオールしてもイケるな!数学2単元余裕だぜ!」と謎のハイテンションですらある。

    年が明けてなおひたすら問題をこなし親戚には悪いがその辺の用事はパス。

    お年玉?んなもんより合格ください。

    そんな死線をくぐり抜けてきた猛者(受験生)たちは今、センター試験会場校の席に座って、地獄のレースの始まりを待っていた。

    すぐにでもペンを握れるよう手首と指はともにしっかりほぐしてある。カイロで温めて柔軟性も確保。直前に詰め込んで混乱するようなことも今のところはない。

    遅刻もしてない。完璧だ。

    「始めッッ!!」

    ーーー

    ーー



    エレン「・・・コレならイケるかも」

    二日間の試験を終え、自己採点をする。

    それに確信めいた何かを得た。
    目標を落とすことなく、第一志望に願書を出すことは出来そうだ。

    エレン「・・・アニ、どうだったかな」

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    アニ「んんー・・・」

    その気になっているアニさんは、ひたすら唸っていた。

    アニ「ギリギリ・・・すぎる」

    しっかり採点をしたから間違いなんて無いはずだ。

    つまり、今ある結果が本当の結果と考えていい。

    アニ「(・・・いや、受ける あそこじゃなきゃ意味が無いんだ)」

    それでも自分の意志を貫くことを選ぶ。

    アニ「(受かるかもしれないのに挑戦もせず逃げるなんてカッコ悪い真似、したくない)」

    ーーー

    ーー



    そして願書、もちろん滑り止めのものもだすが、2人の意識は本命に向いている。

    2月になれば家庭学習日となり、学校に来ることは無い。受験日もそこに含まれているので、もう迷っている猶予は無い。

    エレアニ「「(やってやらぁ!)」」
  94. 94 : : 2015/10/08(木) 21:24:53
    ーーー

    ーー



    かつてこんなに緊張したことがあったといえば、それこそ本願の二次試験以来だろう。

    2月中旬?あれ?上旬だっけ?覚えてねえや。

    それでも俺はそれを凌いで、心臓が破裂しそうなほど緊張していた。

    ドックンドックンいってやがる、落ち着け。

    そういうわけでかれこれ1時間ほどノートパソコンの前で静止している。

    親は気を遣ったのかわからないが2人ともいない。

    故にパソコンの消費電力だけがグイグイ増しているのだが今日だけだから。

    もう自分の受験番号を入力するだけで合否が分かるのだ。

    入力すれば家の通信環境からして3秒もせずに結果が出てくる。

    ようやく最後の桁まで入力し、あとはクリックするだけ。

    しかしその勇気が出ない。

    デリカシーが無いだの緊張感が無いだのと散々言われては来たが、今の俺を見て言って欲しい。

    ダメだ、一旦落ち着こう、とカーソルを判定ボタンから動かそうとした時。

    軽くタップしてしまったらしく、容赦なく合否判定のページに飛んでしまった。

    エレン「ちょっ!まっ・・・」

    ・・・

    ・・


    エレン「ハ・・ハハ・・・」

    エレン「ハハハ・・・」

    エレン「・・・」

    エレン「・・・チクショウ」



    そこに表示されたのは「おめでとうございます」の文字。




    エレン「受かってるならクリックするのもう一回やり直させてくれぇ!!」
  95. 95 : : 2015/10/11(日) 20:30:50
    何はともあれ受かったのだから、誰よりも早く親にラインを入れた。

    すると一瞬で既読がつき、土産を買って帰るとのこと。

    土産って、どこへ行っているのやら。

    エレン「よかったけど・・・なんだかなぁ」

    エレン「(もうちょっとこう、うぉぉ!って雄叫びなり上げたかった・・)」

    エレン「アニなら、受かってるよな」

    縋るような物言いになってしまったが、こればっかりは仕方ない。

    合格者は合格報告をする必要があるから、そのとき学校で会えればアニも合格ということになる。

    3月1日に報告、次の日に卒業式だ。

    まだしばらく待つことになる。

    エレン「頼むぞ・・・」

    ーーー

    ーー



    3月1日

    勘違いしないでほしい。今日はなんでもない普通の日だ。

    遠足前だとか、卒業旅行だとか、そういったイベントは一切ない。

    それでもタイマーを4時にセットして、きっかりに起きて、朝飯を食べて、開門の7時より前に学校に着くようにした。

    こうすることで去年の卒業式の事件からずっとアニが通るようにしている裏門に先に待機、アニが来るのをそこで待つことにしたのだ。

    エレン「行ってきます」

    ぼそりと呟くようにして、玄関をくぐった。

    いつもは自転車で行っていたが、今日は徒歩で行ってみる。時間もあるし。

    自分が学ぶ大学は此処からかなり離れている。

    この通学路を通るのもあと1、2回だ。

    エレン「(小学校、中学校、高校と此処で住んでたけど・・・変わったな)」

    此処から通学なんてできない、故に一人暮らしを始めるのだ。

    今のうちに目に焼き付けておこう、と。




    そう思っていたのは始め数分で、それからは

    エレン「(こ、こんなに遠かったっけか?)」

    息も絶え絶えに無駄を減らした歩みに集中しきる羽目となった。

    エレン「(体力・・・落ちたな・・・これはヤバイ・・・)」

    ーーー

    ーー

  96. 96 : : 2015/10/11(日) 21:04:08
    どうにか学校に着いたが、その時にはもう表門が少し賑やかだった。

    アニは朝に弱いからこんな早くには来ないだろう。

    一応気にはなるのでそちらに一旦向かい、知り合いと互いにおめでとうと労いあって、それから門が開いたと同時に離れ、また裏門に戻っていった。

    そういうわけで今は裏門の向かいの花壇のベンチに腰をかけているところだ。

    エレン「来てくれよアニ・・・」

    裏門から入る生徒も少ないとはいえゼロではない。

    何人かはベンチで下を向くエレンに注意が向くが、それもすぐにやめて門に入っていった。

    注意深くアニがこの門に来るための道の先を凝視していたが、来ない。

    金髪の子が見えるたびに喜びかけては落ち込むの繰り返しだ。

    エレン「(7時半・・・ヤベェ・・)」

    いつも高一の時アニが教室に来る時間帯だ。

    ぴったりということはないが、今からプラス10分以内に来なければ・・・。

    エレン「(来てくれ・・・)」

    こういう時は時間ギリギリに来るというドラマチックな展開なんだと自分に言い聞かせていると、金髪の子が姿を現した。

    エレン「ア・・・」

    クリスタ「あ、エレンだー!」

    エレン「ク、クリスタか」

    クリスタ「エレンも受かったんだね!」

    エレン「まあな!合否確認のときは心臓止まるかと思ったぜ」

    クリスタ「それは私もだよ〜ホント怖かった」

    エレン「クリスタは何処に行くんだ?」

    クリスタ「トロスト区だよ!バルドゥイン大学ってところ」

    エレン「そっか そんなに此処から遠くねえし、評判もいいし、良かったな」

    クリスタ「うん!」

    心の底から嬉しそうに笑うクリスタにこちらもまた微笑んでいると、またまた向こうから金髪が・・此処からでも違うと分かる。

    エレン「あれ?ライナーじゃねえか?」

    クリスタ「ホントだ!おーいライナー!!」

    クリスタが一声かければそれだけでラグビー部よろしく猛烈な勢いでやってきた。

    ライナー「クリスタ!・・とエレン!」

    エレン「おめっとさん」

    ライナー「まあ、一つ目標上げて運否天賦だったんだけどな!まさか受かるとは」

    エレン「スゲーじゃん!」

    ライナー「トロスト区のバルドゥイン大学なんだけどな」

    クリスタ「え!?ライナーもなんだ!!」

    エレン「(ライナーお前まさか・・・)」

    シラーっと白い目を向けるが、その言葉を聞いたのは初めてらしく、言葉通りキョトンとしていた。

    ライナー「へ?"も"?」

    クリスタ「私も同じ学校!うわー!嬉しい!!」

    ライナー「う、うう嬉しい!!?マジで!!?」

    もう幸せな世界に行ってしまわれた彼は放っておこう。邪魔扱いされそうだし。

    やれやれと坂の方を見ると、そこにいたのは・・・



    エレン「ア・・ア・・・!」

    エレン「アルミン!」
  97. 97 : : 2015/10/11(日) 21:25:22
    アルミン「エレン!あ!ククククリスタさんも!!」

    クリスタ「あ!アルミン〜!」

    ライナー「お、アルミン!」

    アルミン「お、おめでとう!その、」

    クリスタ「えへへ〜私とライナー一緒の大学だったの!」

    アルミン「なにぃぃ!!?」

    ライナー「いやーグウゼンコワイ」

    アルミン「ちょっとライナーもしかして!」

    ライナー「ね、狙ってやったわけじゃねえよ!?ホントたまたまだって!」

    アルミン「・・・」

    ブッスーと露骨に怪訝そうな顔になるアルミンだが、それもすぐに引っ込めてクリスタに

    アルミン「あそこはシガンシナにも近いからね ライナーに変なことされたらすぐ戻って来なよ」

    ライナー「オイ!どういう意味だそりゃ!」

    クリスタ「ライナーなら大丈夫だよ〜
    ね?」

    ライナー「当然だ!」

    フンムと心外そうに鼻息をして、それから時計を見る。

    ライナー「っと、もうこんな時間か そろそろ教室行くぞ!」

    エレン「あ、悪い俺もうちっと此処にいるわ」

    クリスタ「え?誰か待ってるの?」

    ライナー「クリスタさんクリスタさん、此処は行きましょ エレン!必ずこいよ!」

    アルミン「僕もいるんだけど!」

    ライナー「分かってるさ」

    ハハと笑いながら手を振る3人に手を振り返しているとき、時計の短針はもう8という数字をわずかに過ぎたところだった。

    エレン「マジかよ・・・」

    もしかしたらと最悪の不安が頭をよぎった。

    8時15分にクラスにいる必要があるのだ。今は8時10分を過ぎている。

    エレン「マジ、なのか・・・」

    頭を抱えずにはいられない。アニは、来なかった。

    ーーー

    ーー



    ジャン「・・・おい オイ!エレンお前何をお通夜ムード醸し出してんだ!」

    エレン「今はほっといてくれよダービーインパクト・・」

    ジャン「凹んでてもその口の悪さは健全なのな!つか何に凹んでんだよ」

    エレン「うるせえってんだよ・・」

    ジャン「ったく、どーせ朝アニに会えてねえから

    ブチリと何かが切れた。禁句を超えたタブーな事項を口にした。

    それでも大声で突っかからなかったのは大人だったと自分でも思う。

    エレン「黙れ」

    それでもジャンの口は止まらない。

    ジャン「だいたいお前受かってたんだな
    まったくビビらせやがって」

    エレン「あぁ?」

    ジャン「表門でミカサとアニでギリギリまで待ってたんだぜ?アニなんかガチで泣きそうになってて慰めんの大変だったってのに」

    いや、つかもう泣いてるようなもんだったか、俺が泣かせたみたいに見られてよ・・という愚痴は聞こえない。

    エレン「アニ・・・受かってんのか?」

    ジャン「おいおい知らなかったのかよ・・まぁアニの反応から見るにお互い連絡は取ってなかったんだろうとは思ったけど」

    ジャン「ったく般若みてえな顔しやがって・・・」

    エレン「なんだよーいやー!ビビったビビった!」

    アッハッハとバカみたいに笑うエレンからジャンはススッと距離を置き、周りもビックリしていたがエレンはまったく気にしなかった。
  98. 98 : : 2015/10/11(日) 21:42:04
    ーこちらは理系特進クラス

    アニ「・・・」

    ライナー「あー・・・どうしたんだよアニ」

    アニ「ん?あ、何でもないよ・・」

    ライナー「俺でもそんな暗い顔されたらテンション下がるぞ・・・」


    アニ「失礼な・・・でもゴメン」

    ライナー「で?何かあったのか?」

    アニ「何でもないって その、本当に受かったんだーって考えててさ」

    ライナー「そうか・・?」

    アニ「だから気にしないで ほら、夢じゃないみたいだし」

    そう言ってライナーの頬を抓るように引っ張る。

    ライナー「痛え痛え!!つかなんで俺の頬引っ張るんだよ!普通自分のだろ!」

    アニ「痛いのイヤだから」

    ライナー「ならこんな確かめ方するなよ!」

    アニ「ゴメンゴメン」

    その後他の男子に呼ばれるライナーを見送ると、他の女子だったりはたまた男子だったりと話しかけられ、そちらの相手をする。

    ライナーとの会話の様子で話しかけやすくなったのだろう。

    相手の話はしっかり聞いて返事もするし相槌もうつが、心のうちの100パーセントをエレンのことで占めていた。

    報告を済ませてまたみんなで何処かに行こうだの今から遊びに行こうといった会話があちこちで聞こえる。

    しかしとてもじゃないがそんな気分じゃないアニは用事があるからと苦笑いしてそれらを丁重に断っていった。

    そんな状態のアニのもとに突然エレンがさも嬉しそうに現れればフリーズするのは当然だった。

    エレン「アニー!!」

    アニ「・・・!?」
  99. 99 : : 2015/10/11(日) 22:09:12
    エレン「いやーなんだよー受かってたのかよお前!俺はもう軽く泣きそうだったんだぞ!」

    アニ「え・・?え!?えっと・・?」

    エレン「裏門で待ってたのに来なくてさーイヤー焦った焦った」

    アニ「その、受かって・・・?」

    エレン「ったりめーだろー その報告のために此処に来たんだからな!」

    アニ「ホントなんだよね!?」

    エレン「嘘ついたって惨めになるだけだろ此処にきたら」

    その笑顔から嘘がないと分かった途端、荷物を左手、右手でエレンの制服の肩をむんずと掴んでグイグイと強く引きずって行った。

    エレン「お、おい!?」

    ーーー

    ーー



    たまに一緒に昼食を食べてたテラスに到着すると、エレンを解放するやいなや満面の笑みを浮かべて抱きついてきた。

    アニ「エレン!!」

    エレン「うぐおっ!」

    アニ「よかった!ホントに良かった!」

    エレン「そりゃこっちのセリフだよ
    いつも裏門からくるのによー」

    アニ「たまたま歩いてたらミカサとジャンに会って、それで表門にね」

    エレン「なーんだ・・・心配して損したなぁ」

    アニ「そんな言い方ないじゃん」

    何を言うにも本当に嬉しそうでこちらまで嬉しい表情・・というより締まりのない顔になっている気がする。

    アニ「で、ほらエレン」

    エレン「ん?」

    アニ「ほら」

    これはまた自分で考えろパターンか。

    いや、もう分かってはいるのだ。この場面で促されるものなんて一つしかない。

    エレン「あ、ああ・・・ソレね」

    アニ「まさかエレン・・ナシにしようとか言わないよね・・・?」

    少し表情を曇らせたアニを見て全力でそれを否定する。

    エレン「いや、イヤイヤイヤ!ソレは無い!逆はあってもソレは一生無い!」

    アニ「い、一生・・・?」

    エレン「あ、いや、そのだな・・・あー!もう言うよ!!言うぞ!!」

    エレン「その、俺は!えっと・・」

    エレン「アニのことが!まだ、その、好き・・なんデス・・ヨ」

    尻すぼみになっていくセリフをアニは全くこぼさないように全力で聞いている。

    それが尚更恥ずかしくさせるが、此処で逃げては男じゃない。

    エレン「だから!もっかい!お付き合いの方を始めさせていただきたく思っております!お願い致します!!」

    アニ「ありがとう」

    さっき抱きついてきたときのような顔で、そのときよりも僅かに頬が赤くなっていたが、

    アニ「こちらこそ、またよろしく」

    その時はエレンはともかくアニは高校一年生の時に告白したような初心な反応では無かったけど、驚きが抜けた分何よりも幸せそうでそれが本当に嬉しかった。

    もっとも、頭の片隅でどうやったらゆでダコのような赤い顔にできるのだろうかと1人作戦を練っているのがエレンクオリティだ。

    エレン「(でも・・・離れちまうんだよな)」
  100. 100 : : 2015/10/15(木) 22:44:15
    アニ「そういえば聞けてないんだけど・・」

    エレン「ん?」

    アニ「エレンは何処の大学に?」

    エレン「そういえばお互い知らねえんだったよな」

    アニ「そっか エレンも私の大学知らないんだよね」

    エレン「まあ気軽に聞けるような状況でもなかったしな」

    アニ「で、何処?」

    エレン「フレンツヒェン大学 ブローン区の」

    アニ「ホント!?スゴいじゃん!」

    エレン「だろー?頑張ったんだぜ俺!」

    エレン「んでアニは?」

    アニ「ふふふ」

    アニ「シメン区のゲルティ大学なんだ」

    エレン「ま、マジで!?倍率の高さトップ3に毎年必ず入るあの大学かよ!?」

    アニ「スゴいでしょ」

    エヘヘとピースを見せるアニ。

    素直に尊敬せざるをえない。特進といえどそう簡単に入れる大学ではないのだ。

    きっと並々ならぬ努力をしてきたに違いない。

    エレン「いや、ホントすげえよアニ!」

    アニ「エレンだってスゴいよ」

    エレン「いやぁー俺はマグレだよマグレ」

    アニ「ミカサが言ってたよ エレンはあんな勉強する柄じゃないのに早くから頑張ってたって」

    エレン「そりゃあアニの前でかっこ悪いところ見せたくねえしな」

    アニ「恥なら嫌という程見てきたけどね〜」

    エレン「お前なぁ・・・」

    アニ「でも、そっか・・ブローン区か・・」

    地図上の直線距離にしても約350km。

    ほぼ間反対だ。

    ちょっと会いに来たよーなんてできる距離じゃない。

    エレン「・・・なかなか逢えなくなっちまうな」

    アニ「そうだね・・・」

    エレン「俺もさ、できればアニの大学に近いところ受けようかと思ったこともあったんだよ」

    アニ「そうなの?」

    エレン「ま、恋愛沙汰で人生の大きい分岐点になる大学を決めるなってアニに怒られそうだし、その通りだからやめたけど」

    アニ「よくわかってるじゃん」

    エレン「やっぱそう思ってるよな」

    アニ「でもまあ・・・」



    アニ「近くには居たいかも」

    エレン「そうだな・・・」
  101. 101 : : 2015/10/15(木) 23:00:06
    エレン「・・・」

    アニ「・・・」

    エレン「・・・その、アニは俺のこと好き、か?」

    アニ「・・応えたでしょ」

    エレン「ちゃんと聞きたいじゃん」

    アニ「・・・」

    ドコッと重みのある音がしたかと思うと肩に少々の痛みが走った。

    エレン「肩パンすんなよ!」

    アニ「・・好き、だよ、そりゃ」

    エレン「そ、そうか」

    アニ「で、なんでそれを?」

    すぐさまそっぽを向きながら聞いてくる。

    自分の気持ちを自分から言うのは恥ずかしいらしい。これはイイ弱点発見。

    エレン「その、今から大学始まるまでたくさんアニと遊びてえなーとか」

    エレン「あわよくば長期休みの時は会いたいなーとか・・・」

    なんてのは建前で、そこはアニも察しているのか何処か訝しげだ。

    はい降参。

    エレン「・・・お前絶対大学でモテるじゃん」

    アニ「え?」

    エレン「だから確かめておきたかったんだよ・・悪いかコノヤロー」

    アニ「・・・可愛い」

    エレン「うっせ」

    アニ「でもエレンのヤキモチ、嬉しいよ私は」

    エレン「俺の気も知らねえでよぉ・・」

    アニ「・・・でもその言葉そのまま返すよ」

    エレン「へ?」

    アニ「ううん、何でも それよりこの後暇?」

    エレン「え?あ、ああ、クラスの奴と遊ぶ話になる前にアニのところ来ちまったし」

    アニ「じゃ、今から遊びに行こ!」

    エレン「い、イイけどさっきの言葉ってどういう

    アニ「さあね〜」

    エレン「オイ!教えろよ!何を返すんだよ!?」

    アニ「そのうちわかるって」

    エレン「はあ・・?」

    ーーー

    ーー

  102. 102 : : 2015/10/17(土) 21:23:15
    アニ「んーこういうの久しぶりだね〜」

    ミカサ「部活があった時はこうはいかなかったからかなり久しぶり」

    アニ「制服のままのウチの学校の生徒も沢山だね」

    エレン「あぁ・・・実際今も」

    ジャン「隣にこいつがいるんだからな」

    エレン「・・・」

    ジャン「何だよ、怒るなよ勘違い野郎」

    エレン「それはもういいだろ うるっせえな!」

    ジャン「俺だってなぁ・・ミカサをお前の彼女さんに取られてんだぞ」

    エレン「いいよなアニ達は画になるから
    俺たち見てみろ 変な目で見られてるぞ」

    ジャン「今に始まったことじゃねえだろ」

    エレン「あぁ!?」

    ジャン「事実だろうが!」

    アニ「あれ?こんな店あったっけ?」

    ミカサ「んー・・見覚えがない 最近出来たんじゃ」

    アニ「少し疲れたし入ろっか」

    ミカサ「了解 ジャン、エレン、この店に・・・」

    ミカサ「・・・何を威嚇しあっているの?」

    ジャン「あぁ、今行くから気にしないでくれ」

    アニ「あ、ジャンにエレン取られた」

    エレン「変なこと言うなよアニ これは俺らのスキンシップだから」

    バチバチと火花を間に散らし、顔だけ向き合ったままその店の入り口に向かう。

    それを苦笑いしながら2人も続いた。

    最近はあまり見かけないスイーツバイキングで、値段もやはり少々張るがほぼ一年使う機会のなかった財布の中身が豊かで紐も緩んでいる三年生で大繁盛だ。

    店員さんの「相席(あいせき)でよろしいですか?」という質問も良く考えもせず二つ返事で承諾する。もちろんその間もジャンと向き合ったまま。

    ジャンと2人になる事だけは避け、どうにか先にアニと共に案内してもらえた。

    のだが・・・

    アニ「あれ・・・エルド先輩?」

    エレン「え」

    エルド「んぐっ!アニちゃーん!」

    エレン「あの・・先輩はここに1人で?」

    エルド「バカやろ 此処に1人とかどんな拷問だ」

    エレン「てことは・・」

    アニ「ひょっとして!」

    エルド「ふふふ・・・」



    エルド「・・罰ゲームだよこのやろー」
  103. 103 : : 2015/10/17(土) 21:43:36
    エルド「いやーしかしラッキーだわ
    まさかアニちゃんに会えるなんて」

    アニ「お久しぶりですねー」

    エレン「あの、俺もいるんですけど」

    エルド「あーお久エレン」

    エレン「酷くないすか・・」

    エルド「ジョーダンだよ その状況見る限り上手くいってるんだな」

    エレン「それはおかげさまで」

    エルド「別れてたら掻っ攫おうと思ってたんだけどね〜」

    アニ「またまた」クスクス

    エルド「駆け落ちしちゃおうとか計画してたよ俺ぁ」

    エレン「冗談に聞こえないんですけど」

    エルド「だって本気だもん」

    エレン「えぇ・・・」

    アニ「それは遠慮しときます・・」

    エルド「あー振られちったー」

    相変わらずケタケタと明るくてこちらまで楽しくなってくる。

    此処で気になる質問。

    エレン「でもエルド先輩、大学かなり離れてましたよね?」

    エルド「まぁなー はるばる100キロよ」

    エレン「何で此処に?帰郷ですか?」

    エルド「可愛い可愛い後輩が受かってるか心配でな」

    エレン「あーサッカー部の」

    エルド「そそ あの部活は脳筋ばっかだからな」

    エルド「ん、ちょっと待てよ もう此処にお前らがいるってことは報告は?」

    アニ「終わりましたよ?約1時間前に」

    エルド「マジか!クリスタちゃんは!?」

    エレン「受かって喜んでましたよ もしかしたらこの辺にいるんじゃないですか?」

    エルド「だな!こうしちゃいられねえ」


    ガツガツと少々汚く残りのチョコレートケーキを掻き込むと「ごゆっくり」と言葉を残して会計を済ませて出て行ってしまった。

    窓から出て行ったエルドさんと、大学の友達らしき人たちが見える。

    こちらの方を見て騒いでいるらしく、きっと「あの女の子誰だよ」的なことで盛り上がってるのだろう。

    何はともあれ2人になり、早速スイーツを取りに向かう。

    通路を挟んで同じ列の席にミカサ達が案内されたが、さすがにこの店で干渉してくることはないだろう。
  104. 104 : : 2015/10/17(土) 22:35:59
    ーーー

    ーー



    エレン「ん、美味えなこのムース」

    アニ「ホント、美味しい〜」

    エレン「あんまり食うと受験期のこともあって太るんじゃねえか?」

    アニ「今日だけだからいいの!」

    エレン「ま、アニは細いから大丈夫だよな もう少し肉ついてもいいとは思うぞ」

    アニ「あーダメ、それ以上言わないで」

    エレン「はい?」

    アニ「・・そんなこと言われたらホントに体重増やしちゃう あと、こういう場所でそういう話はNGだから!」

    エレン「へいへーい」

    アニ「もう・・・」

    反省するでもなくまた意識をムースに注ぐエレンを確認すると、自分のお腹や二の腕などをさりげなくチェックするアニであった。

    アニ「・・明日からまた少しバスケやろ」

    ーーー

    ーー



    ジャン「や、やっぱこうして面と向かうのって久しぶりだな」

    ミカサ「緊張してるの?」

    ジャン「だってずっと会えなかったじゃんか」

    ミカサ「確かにそうだけど・・会えなかった時よりそれまで一緒にいた時間の方が長いハズ」

    ジャン「そうだけどそうじゃねえんだよ
    男の繊細な気持ちは男にしかわからねえもんだ」

    ミカサ「む・・・それは何か悔しい」

    ジャン「へ?悔しい?」

    ミカサ「私は貴方のことをマルコの次くらいには理解してると自負している」

    ジャン「お、おお・・・!」

    ミカサ「つまり分からないことなど無い、と思っているわけ」

    ジャン「うんうん!」

    ミカサ「つまり、貴方が今望んでいるのは」

    ジャン「・・・」ゴクリ

    ミカサ「・・・」

    ジャン「・・・」

    ミカサ「私が選んだレアチーズケーキが食べたいと見た!」

    ジャン「え、えっと・・あ、お、おう!その通りだ!!美味そうでな!」

    ミカサ「やはり、貴方のことは分かる」

    ジャン「(違うけど違わねえ!実際喰いてえ!エレンのだったら要らねえけどミカサのは全力で喰いてえ!!)」

    ミカサ「はい、あーん」

    ジャン「おぅ!?」

    ミカサ「?要らないなら自分で食べてしまうけど」

    ジャン「いや!下さい!お願いしゃす!」

    ミカサ「ふふふ ジャン可愛い」

    ジャン「(はぅぁ・・・!)」

    この二組の周りの客達はあまりの甘さに自分たちのスイーツになかなか手をつけられなくなったとか何とか。
  105. 105 : : 2015/10/18(日) 04:20:33
    ーーー

    ーー



    エレン「ぁあー食い過ぎたー」

    アニ「堪能したみたいだね」

    エレン「アニもちゃんと食ったかー?」

    アニ「うん、おいしかったね」

    エレン「んー」

    アニ「な、何?」

    突然真剣な顔で凝視されて戸惑う。

    エレンがこんな顔をするのは珍しい。テンションもいつも・・・いや、1年前とは違う。

    アニ「えっと・・」

    思わず気になってもいない髪を少し弄る。

    こんな道の往来で立ち止まるのは迷惑だからと少し促すとしっかりついてきてくれるが、やはり何かを考え込んでいる。

    エレン「んー・・・ダメだ、やっぱどう考えても流れ変になるわウン」

    アニ「え?」

    エレン「今日アニが受かってたら家に誘いなさいって言われたからあのバイキング終わってからずっと考えてたんだけどなー」

    エレン「どう頑張っても話繋がらねえから誘い方がだな・・・」

    アニ「つ、つまり?」

    エレン「えーと、まあもうこの際流れとかどうでもいいや 照れちまうことに変わりねえし」

    エレン「その、もしよければこの後ウチで飯食っていかねえか?あ、予定とかあったら普通にそっち優先してくれれば」

    アニ「えっと、ウン、大丈夫だよ、その、ウン」

    エレン「よっしゃ!んじゃ、決定!やったぜ!」

    アニ「急に見つめてくるから何かと思えば・・・」

    エレン「だって二度目とはいえ今日からお付き合い開始したんだぞ?」

    エレン「臆病にもなるさ」

    アニ「ふーん・・・」

    エレン「な、なんだよ」

    アニ「別に、なんでもないよ 楽しみだな〜」

    エレン「??」
  106. 106 : : 2015/10/18(日) 05:26:39
    ー夜

    カルラ「あら、いらっしゃいアニちゃん」

    アニ「お邪魔します」

    カルラ「相変わらず綺麗ね〜惚れちゃう」

    エレン「よせよ」

    カルラ「怒らないで 冗談よ」

    カルラ「もう出来てるから手を洗ってきて頂戴」

    エレン「うぃー」

    アニ「はい」

    ーーー

    ーー



    グリシャ「いやはや、本当におめでとう」

    アニ「ありがとうございます!」

    グリシャ「息子がいつになく頑張っていたのは君のおかげだよ」

    アニ「そんな・・・エレン・・君の自分の頑張りですよ」

    エレン「別に君付けはしなくていいぞ」ククク

    アニ「うるさいなー!」

    エレン「ほら、正直に言えよ "自分もなんか恥ずかしいです"って」

    アニ「ぜんっぜん恥ずかしくないから!これっっぽっちも!」

    カルラ「あれ?そういえばアンタも確か"受験期に告白されんのはマジ勘弁"って言ってたわね」

    エレン「げっ!それはだな・・・」

    アニ「ふーん・・・告白されたんだー」

    カルラ「それ聞いた後なんて言ってたっけ・・・あ、思い出した」

    エレン「うわぁぁ!ダメだって母さん!いけない!それ以上はいけない!!」

    カルラ「"アニからの告白なら喜んで何回も受け直すのに"とか何とか」

    エレン「あああぁぁ・・・」

    それを聞いた後のエレンは謎のウネウネした動きで顔を隠しながら膝に埋め、アニはアニで真っ赤になって俯いてしまった。

    グリシャ「母さんの間で弱みになるようなことを言うからだぞ」

    エレン「うるさいな・・・まさかバラされると思ってなかったんだよ」

    エレン「それに本当のことだし!全然恥ずかしくねーよ!あぁ!全く恥ずかしくねえ!!」

    それを聞いてさらに顔から湯気が出そうなほど高騰したアニはもう十分だと言わんばかりにエレンの肩に手を置いて、ガクガクと揺らした。

    ーーー

    ーー

  107. 107 : : 2015/10/20(火) 05:41:18
    エレン「そろそろ時間も時間だし送ってくわ」

    カルラ「そうね あんまり遅くなると親御さんも心配するだろうし」

    エレン「母さん、前に俺たちがアルミンの家に行った時心配してたっけ?」

    カルラ「してたしてた」

    エレン「嘘こけ・・・」

    アニ「わかってないねエレン」

    エレン「は?」

    アニ「エレンの悪行に慣れちゃったんだよきっと」

    エレン「俺がいつ悪行なんて!」

    カルラ「あら、あの大規模鬼ごっこを忘れたとは言わせないけど」

    エレン「それは、その」

    アニ「はい、エレンの負け」

    エレン「あーもー早く行くぞ!」

    カルラ「送って遅くなるようなら連絡しなさいよー」

    エレン「わーってるよ」

    アニ「ありがとねエレン」

    エレン「ん」

    ブスッとふくれっ面のまま手を差し出してくるエレンにクスリと笑いかけると顔をそらされてしまった。

    アニ「冗談だよ エレンのお母さんも心配してたに決まってるって」

    エレン「どーだか 俺の事をケダモノとかぬかす親だぞ」

    アニ「それは違うね」ハハ

    エレン「・・・」ムッ
  108. 108 : : 2015/10/23(金) 22:10:13
    ーアニ宅

    アニ母「あら、おかえりなさい」

    アニ「ただいまー」

    エレン「夜分遅くにすいません」

    アニ母「いいのよ気にしないで それでエレン君は・・」

    エレン「受かりましたよ 第一志望!」

    アニ母「それはよかった!アニなんか自宅学習期間はずーっとエレンがーってうるさいくらい

    アニ「そんなことなかったでしょ!」

    アニ母「そんな事あった」

    アニ「いやその・・違・・わない・・ケド」

    エレン「そっか アニも心配してくれてたんだな ありがとよ」

    アニ「う、うん・・・お母さん言わないでよ」

    アニ母「貴方達の事だから明日以降も遊ぶんでしょう?」

    エレン「まあそうですね 暇ですし」

    アニ「ちょっと、勝手に」

    エレン「嫌か?それとも予定アリ?」

    アニ「全然嫌じゃないよ でも・・」

    エレン「?」

    アニ「その、明後日はちょっと予定あるの!ゴメン!」

    エレン「別に毎日ってわけじゃねえし良いよ」ハハ

    アニ母「あ、そっか あの2人とね」

    エレン「ちょうど俺もミカサとアルミンと出かけようって話してたからOK」


    アニ「ミカサもいるんだ、いいなー」

    エレン「お前もあの2人ってライナーとベルトルトとだろ?いいじゃん賑やかそうで」

    アニ「ベルトルトはともかくライナーは五月蝿いくらいだよ」

    アニ母「玄関で夜にずっと話してたら近所から苦情くるから中に入りなさい」

    アニ母「あ、折角だしエレン君泊まってく?」

    エレン「え、でも準備とか何も・・・」

    アニ母「いいからいいから さっきお母さんにも連絡入れて許可貰ったし」

    エレン「いつの間に」

    アニ母「アニから帰るって連絡きたときにね」

    エレン「えっと・・・いいか?アニ」

    アニ「もちろん」

    エレン「じゃ、遠慮なく・・・」

    ーーー

    ーー

  109. 109 : : 2015/10/24(土) 20:51:05
    エレン「ホント、2人きりは久しぶりだよな」

    アニ「だね、今までもそんなに多かったわけじゃないけど」

    エレン「あのなー誘うのってかなりキンチョーするんだぞ」

    アニ「分かってるよ 私もそうだったし」

    エレン「だろぉ?けど今の俺は違うんだぜ」

    アニ「は?」

    エレン「何せ受験を超えたんだからな それに比べりゃぁ何でも言えるぞ!」

    アニ「へぇーそれは楽しみだね」

    エレン「つーわけで抱きついてきてくれね?」

    アニ「はぁ・・?」

    エレン「だってそういうのまだ全然ねえし ホントなら一緒に風呂も

    アニ「じょ、冗談でしょ!?」

    エレン「風呂は、な でも抱きついてきて欲しいのはガチ」

    内心そんな拒否るなよ、と凹んだには凹んだが、何事も切り替えが大切だ。

    アニ「なんだ、ビックリさせないでよ」

    エレン「風呂はアニの許可もらえたら速攻でそうするけど」

    アニ「それはちょっと・・心の準備がまだ・・」

    エレン「(あ、ダメではないのね)」

    アニ「でも私がお風呂入ってからにして
    少し汗かいちゃったし」

    エレン「おう、分かった!」

    おふざけでのそっと腰を浮かせるとだから!、と肩に張り手を喰らって倒されてしまう。

    「部屋から出たら1週間会うの禁止」とまで言われて焦ったが、よく考えればアニの部屋を目に焼き付ける絶好のチャンスだ。

    何事にも下心を欠かさない、転んでも噛み付いて起き上がる、それがエレン。

    受験からの解放感と夜のテンションが相重なって最高にハイなのだから仕方ない、と自分を正当化して内心ウキウキだ。
  110. 110 : : 2015/10/25(日) 19:32:04
    ー風呂場

    アニ「(・・・全く)」

    一方こちらはエレンの野心など露知らず脳内でぶつくさ文句を垂れてるアニだ、

    アニ「(風呂に一緒って・・・)」

    アニ「(無理無理!少し受験期で体重増えちゃったし・・・)」

    アニ「(あぁ!もっと気を配っとくんだった!)」

    アニ「(いや、そんなこと考えてたら多分受かってなかったか・・・)」

    アニ「(・・・それでも悔やまずにはいられない)」

    普段の自分ならまずあの冗談を気にもとめてなかったハズだが、こちらもこちらで箍が外れているのは確かだ。

    加えてステップを進める意味でも今夜は割と重要・・・なハズ。

    そういえば昔ヒッチにアドバイスにならないアドバイスを貰ったような・・。

    アニ「(確かにお風呂に入れば服を脱ぐのは必然・・・)」

    アニ「(・・・何を真に受けてるんだ私は)」

    余計なことは考えず普通に入ろうと、ため息を吐きながら風呂場に入場する。

    しかしそこにもまた大きい鏡があるわけで、嫌でも自分の姿が目に入る。

    アニ「(お腹・・・は大丈夫)」

    アニ「(腕も、OK)」

    アニ「(見た目はそんなに変わってない、か)」

    少し安心。先ほどから見られる前提で考えがまた及んでいるが、それに気づくことはなく・・・。

    アニ「(でもやっぱり適度にスポーツはしたほうがいいよね)」

    1人決意を表明して、身体を洗って
    「ふぅ」と湯船に浸かった。

    体積が増えたことで湯船からは少しばかりお湯があふれるのを眺めながら、2人とも合格した安心をかみしめた。

    アニ「よかったぁ〜・・・」

    ーーー

    ーー



    その頃エレンは視覚に全神経を集中して何かないかと探しているところだった。

    今までは大体勉強するという口実でアニの家に上がっていたため、現在のように部屋を見る機会はなかった。

    エレン「(結構マンガあるんだなー)」

    エレン「(それも男子向けのアクションモノばっかり・・・アニらしいな)」

    エレン「(しっかし綺麗に保たれてるな
    俺とは大違い)」

    今度は机の上を見てみると、グリップ部が歪んだシャーペンや空の芯のケース、消しゴムのケースと其処だけはいろいろなものがある。

    エレン「(アイツ、やっぱかなり頑張ったんだな)」

    エレン「(流石だわ・・お疲れさん)」

    それを見ていれば落ち着きを取り戻し、おとなしくしていようと静かにまた床に座った。

    エレン「(受かったんだな・・俺たち)」
  111. 111 : : 2015/10/25(日) 19:50:35
    ーーー

    ーー



    エレン「ほら、出なかったぞ俺」

    アニ「よろしい」

    エレン「(部屋漁っては無いけど物色してましたなんて言えねぇえええ)」

    エレン「あ、じゃあ俺もお風呂もらっちゃっていいか?」

    アニ「あ、うん、いいよ 入っちゃって」

    エレン「ん?どうかしたか?」

    アニ「ううん、何でも無いよ」

    エレン「そうか・・・?」

    バタンとドアが閉まれば、"だはぁ"と大袈裟な息が出た。

    風呂から出たあとの数分間、自分から抱きつくという覚悟を決めるのに必死だった。

    約10時間前にテラスで無意識のうちにしていたことなのに、意識した途端コレだ。

    空白があったとはいえ約2年の付き合いだ。まるで一年生の時に戻ってしまったようではないかと叱咤してどうにかドアを開けた次第。

    スグにでも抱きついてしまいたかったが、どうにも間が悪い。

    どのみちすることには変わりないと割り切ってベッドの上で膝を抱えて座って待っていると途端に眠気が襲ってきた。

    アニ「(あ・・・コレはマズい・・・寝ちゃう・・)」

    体勢を解いて立てばいいのだが、睡眠欲は机上論ではどうにかなるものではない。

    そのままコテンと倒れこみ、瞼を閉じて今にもまどろみに沈むーと言ったところでエレンが部屋に戻ってきた。

    エレン「マジかよ・・・先におネムはねえだろアニさん・・・」

    アニ「お・・・起きて、るよ」

    エレン「え」

    アニ「完全に落ちる直前だったけど、ね・・」

    エレン「ふぅ・・・ギリギリセーフか」

    危ない危ないと安心するエレンと、夢への入り口で現実に引き戻されたアニとでテンションの差はあるものの、それも数分で同じものへと昇華された。
  112. 112 : : 2015/10/28(水) 20:59:34
    エレン「んじゃあ、ホラ」

    そう言ってベッドの上であぐらをかいて、手を広げる。

    早く来いと言わんばかりに期待に胸を膨らませた満面の笑みだ。

    一方でアニは自分にゴーサインを必死に出すもなかなか行動に移せないでいる。

    自分からというのはハードルが高いのか・・・いや、だから数時間前にやった事でしょうと堂々めぐり。

    エレン「・・・そんなに嫌?」

    不安になって問いかければ顔だけで無く全身を横に振ってそれを否定する。

    エレン「ならホラ、早く早く」

    アニ「わ、分かってるよ」

    スーハーと一回だけ深呼吸して、のそりと膝を引きずり一歩分近づく。

    アニ「じゃ、じゃあ、いい?」

    エレン「おう、ばっちこい!」

    今までにそうした時はかなりの勢いで飛び込んだが、今回はゆっくりと沈み込むようにキュッと密着した。

    エレン「おぉぅふ・・」

    アニ「・・声がいやらしいんだけど」

    エレン「いや・・だってアニ華奢なんだもん」

    アニ「・・・言ってな」

    エレン「それになんかいい匂いするな」

    アニ「やめてよ」

    エレン「へへ・・なんかスゲー幸せ」

    回された腕に力が込められるとほぼ同時に自分も腕に力を無意識に込めていた。

    アニ「こんな日がくるなんて思ってなかったよ」

    エレン「え?」

    アニ「全部エレンのおかげだよ ありがとう」

    エレン「俺なんかしたっけ?」

    アニ「無自覚ならそれでいいよ 私は甘えてばっかりだったけど、本当に嬉しいんだから」

    エレン「よくわかんねえけど、アニが幸せならそれでいいや」

    アニ「鈍感(どんかん)〜」

    エレン「うっせ!」
  113. 113 : : 2015/11/01(日) 19:51:10
    この時のエレンはまだ(・・)下心のかけらもなかった。

    しかし、それも数分単位で続けば厳しくもなる。

    加えて受験生活が終わったことで気も少しばかりハイになっているのだ。

    気がつけばアニの肩を優しく押して、手を絡ませて自分もろとも倒れこんだ。

    アニ「ちょっ・・」

    あと少し動けば額がぶつかり合う距離だ。

    エレンは気の高揚はあれど全く動かない。

    アニもまたその少々の強引さに驚きを隠せないでいた。

    アニ「え・・・と」

    エレン「・・・」

    何処かで見た目だ。記憶の引き出しの相当奥にある物らしく、スグには分からない。

    この状況でエレンの意識が何にあるのかは明白だ。それが分からないほどおぼこくはない。

    が、本能的に何かを察知した身体は意思とは無関係に反応してしまっていた。

    エレン「わ、(わり)い・・調子に乗り過ぎた」

    慌てて離れるエレンが見たのは自分の身体の僅かな震えで。

    それに気づいたのは自身の方が遅かった。

    アニ「ち、違うのエレン コレは・・」

    エレン「いや、良いんだアニ 俺が急ぎすぎたんだ 本当(ホント)ごめん」

    心底バツが悪そうに視線を泳がせて、頭を掻きむしってどうしたら良いのかわからず路頭に迷った顔だ。

    アニ「本当、大丈夫だから」

    ドックンドックン早鐘のような心臓を抑えて冷静に言う。

    エレン「その、俺舞い上がっちまってたんだよ だから、違うんだ」

    エレン「怖かったよな・・・軽率すぎた」

    エレン「(俺のバカ・・分かってたことだろが)」

    エレン「(何であんなことしちまったんだよ・・!)」

    またワシワシと頭を掻いて

    エレン「湧いた頭・・ちょっと冷やしてくるわ」

    そんな後悔に溢れた顔でベッドから降りようとするエレンを止めたのは誰でもないアニで。

    彼女の細い指先がエレンの服をガッチリと掴んでいるのを気づいていながら振り払うことなどできるはずもなく、力なく振り返った。

    腰を浮かしかけたまま話しかける。

    エレン「ちょっと外行くだけだからスグ戻

    そこまで言ったところでまた力が込められ、先ほどとは逆にエレンが抱き寄せられるように引っ張られた。

    次の瞬間には自分の言葉を紡ぎ損ねて半開きの唇がアニのそれに隙間なく覆われていた。

    エレン「!!?」
  114. 114 : : 2015/11/07(土) 22:17:51
    アニ「違うのは、コッチ」

    エレン「お、おま・・・」

    アニ「怖くなんか無いよ ちょっとビックリしただけ」

    エレン「震えてたじゃねえか・・」

    アニ「それは・・・でも、ホントに違うの」

    エレン「悪い・・・俺が、ホント最低だわ・・・」

    情けないが、本当に泣いてしまいそうだ。

    欲丸出しの行動に加えて、去年の事もあるのだ。怖がらないわけが無い。

    それがわかっていながら求めてしまったなど、"つい"なんて言葉で片付けられるはずがないのだ。

    アニ「その・・・今は親がいるからであって・・」

    エレン「気を遣わなくていいって・・」

    アニ「確かに少し怖かった部分もあるけど、でも・・」

    アニ「・・・安心した」

    エレン「え?」

    アニ「エレンこそ気を遣ってくれてたってことは分かってる」

    アニ「けど元々奥手だったし、そういうアクションも自分からだったから興味ないんじゃないかって心配だった・・」

    エレン「え・・っと」

    アニ「その事はもういいから、だから・・・」

    アニ「今はまだちょっと心の準備ができてないからムリだけど・・・」

    ここから先は聞いたら自制ができなくなると本能が警告を出す。

    しかしどうして耳をふさぐことなんてできようか。

    アニ「エレンとは、いつかそうしたい」

    エレン「!!」

    アニ「だから、つまり、イヤじゃないっていうか、怖いってだけじゃない事は知っておいて」

    エレン「あ、あぁ」

    エレン「・・・やっぱ情けねえわ俺」

    アニ「今に始まったことじゃないよ」

    エレン「ハハ・・だよな カッコ悪ィ」

    エレン「・・・俺、頑張るから」

    アニ「期待してるよ」

    赤い顔を逸らしつつ話している為、アニの顔は見えない。

    それでも自分の思いは伝わったらしく、確かな返事はもらえた。

    アニ「じゃ、寝よっか オオカミさん」

    エレン「・・・ああ」

    男を転がす手練手管ではと錯覚するようにフワリと妖艶な笑みを浮かべ、布団へと誘う。

    それを見て性懲りもなくまた湧き上がる欲を抑えるも、その口だけは抑えられず思わず問いかけた。

    エレン「・・・まさかとは思うけど、アニってひょっとして身体だけの関係の男とか何人かいたりし

    アニ「まだ経験ないからっっ!!」

  115. 115 : : 2015/11/08(日) 07:25:19
    ーーー

    ーー



    次の日も街へ繰り出すもやっぱり知り合いだらけ。

    エレンの進言に従ってその日はお互いの家に帰る。

    その次の日は予定通りあの背の高い男2人と遊びに出かけることとなる。

    ライナー「なんか、友達っつーか」

    ベルトルト「絶対僕たちアニのボディーガードだと思われてるよね」

    アニ「2人して黒が基調の服装だからだよ」

    ライナー「さっきも知らない人にサイン求められてたろ」

    アニ「ちゃんと説明したってば・・」

    ベルトルト「そういえばエレンには今日のこと説明したんだよね?」

    アニ「もちろん 拗れるのは勘弁だしね」

    ライナー「ああぁー・・・ほんと愛されてんなぁ〜」

    ベルトルト「アニもアニだよエレンが羨ましいね〜」

    アニ「・・何その生ぬるい眼差し」

    ライナー「別にー?なっベルトルト」

    ベルトルト「そうそう、なんでもないよ
    ね、ライナー」

    アニ「ふーん・・私には言えないようなことなのかい?」

    ライナー「別にそういうことじゃなくて、危なっかしかったからなお前ら」

    アニ「うるさいなー!その話はもうイイでしょ!」

    アニ「ほら!あの店入るよ!」

    ベルトルト「はいはーい」ムフフ

    ライナー「はいよー」ムフフ

    アニ「だからその目をやめて!」
  116. 116 : : 2015/11/11(水) 20:55:04
    ー同刻 エレン一行

    ミカサ「エレン・・・」

    アルミン「そこまでしといておしまいって・・・」

    エレン「・・・仕方ねえだろ」

    事情は当事者と先生方しか知らないのだから当然ミカサたちはエレンがそこで止めた真意は計れないだろう。

    とはいえ理由はあれど情けない。

    据え膳食わぬは男の恥という言葉が胸に突き刺さる。

    エレン「それはイイだろ ホラ、早く映画見に行くんだろ」

    ミカサ「大切にしてるのは分かるけど・・・」

    アルミン「そういうミカサはどうなの?」

    ミカサ「・・・」

    アルミン「黙秘!?」

    エレン「つかアルミンは浮いた話の一つはねえのか?」

    アルミン「ふっふっふっ・・・」

    ミカサ「その反応は・・・」

    エレン「もしかして」

    アルミン「相合傘しちゃいましたー!」

    ミカサ「おお」

    エレン「それ結構イイとこまでいってんじゃね?誰とだよ」

    アルミン「アニと」

    その瞬間、エレンの顔から表情が消えた。

    エレン「ハァァァア!!?事情によっちゃお前許さねえぞアルミン!」

    アルミン「受験期だったからね〜仕方ないよ〜」

    エレン「悪怯れねえなこの野郎!」

    殴りかかる勢いもだんだんと失せて目に見えて失望してきたので、そろそろ本当のことを言おう。

    アルミン「なーんてね まぁ相合傘にはなったけど何もないよ」

    エレン「どういうことだよ・・・」

    アルミン「クラスで残って勉強して、帰りに雨で困ってたらアニが傘に入れてくれたんだ〜」

    ミカサ「アルミンが入れられる側だったの・・・」

    アルミン「そのあとはエレンのこととか惚気とか聞かされて独り身には辛かったんだからね!」

    エレン「・・ホントか?」

    アルミン「なんなら本人に確認すれば?"アルミンに俺が誰かを誑かしてないか聞いたのか?"って」

    ミカサ「(アニ可愛い・・・!)」

    エレン「聞く 絶対」

    再起動をしたエレンにハイオクを注入してやろう。

    アルミン「あと独り言ダダ漏れだったとも言ってあげなよ」

    エレン「どんな?」

    アルミン「それを本人に聞くの あ、悶え死なないようにね」

    エレン「よっしゃぁぁぁあああ!!明日聞くぞォォォ!!」

    アルミン「で、ミカサはジャンとはどうなの?」

    ミカサ「・・・エレン」

    エレン「ん?」

    ミカサ「アニをもらってもイイ?」

    エレン「イイわけねえだろ!」
  117. 117 : : 2015/11/11(水) 21:09:02
    アルミン「何かあったの?」

    ミカサ「実は卒業式の日に家に泊まらないかと誘われて・・・」

    エレン「それで?」

    ミカサ「嫌じゃなかったし、緊張しながらも泊めてもらったんだけど・・」

    アルミン「だけど・・・?」

    ミカサ「・・・」

    ミカサ「・・・何も、なかった」

    アルミン「本当ジャンとエレンはソックリだね」

    エレン「うっせ」

    エレン「つかお前確かジャンがその・・ゴム持ってた時めっちゃ怒ってたじゃん」

    ミカサ「それは時期がその・・アレだったし、別にそれが過ぎれば、その、構わないというか・・・」

    この頃からアルミンは白目を剥いて何も言葉を発しなくなる。

    エレン「認めたくはねえけど、なんとなくあいつの考えは分かるよ」

    ミカサ「え?」

    エレン「自信がねえんだ もともとミカサはそんなに感情は表に出ねえしな」

    ミカサ「それは自覚がある」

    エレン「多分気持ちが一方通行なんじゃねえかって思って踏み出せねえんだ」

    ミカサ「なるほど」

    エレン「俺も偉そうなことは言えねえけどさ、ちゃんと素直に気持ちは言わなきゃな」

    ミカサ「なかなか、私にはハードルが高い・・・・」

    エレン「俺も頑張らなきゃだけどよ」

    ミカサ「よし、明日言ってみる」

    エレン「あ!あんまりその、誘惑とかはすんなよ!?」

    ミカサ「?急にどうしたの?」

    エレン「いや、別にそこまで進まなくてもイイんじゃねえかなー?って」

    ミカサ「・・・エレン、経験の若さを気にしてもしょうがない」

    エレン「う、うるっせえな!別に急いでるわけじゃねえよ!」

    ミカサ「でも、アニを大事にしてあげてるのはイイこと」

    エレン「・・・まあ、そりゃ」

    ミカサ「・・・アレ?アルミンは?」

    エレン「え?」

    アルミン「・・・」

    ーーー

    ーー

  118. 118 : : 2015/11/11(水) 22:14:06
    ー次の日

    いくら卒業したからとはいえ、いつまでも遊んでいるわけにはいかない。

    あとひと月は猶予があるが、その間にもこの場所から遠く離れた自分たちの新生活の拠点の準備をしなければならないのだ。

    エレンもアニも大学や他の施設へのアクセスが多い場所のアパートを借りることにしている。

    2人とも一人っ子かつ親の給料も恵まれている方だ。

    それに加え国立の大学である。仕送りに頼りきった生活は堕落を招くため、食費等は自分で稼ぐのは確定だ。

    しかし、立地条件やら他の部屋との壁に防音壁があるやらと相当イイ部屋に住めたのはその家賃を請け負ってくれたことにある。2人は申し訳なく思いつつも両親に感謝した。

    とまあ、大変だと言った準備も2人で遊びつつも2週間もしないうちに終わり、受験期の勉強癖が根強く残る2人は入学前の課題も即座に片付ける。

    しかし、新居には早いうちから行って慣れておく必要がある。

    はある意味で、別れの日はやってくるのだ。

    ーーー

    ーー



    3月20日

    エレン「俺さ、明後日にはもう新居に移るんだ」

    アニ「私も、その予定」

    エレン「そうか ことごとく予定があうなー」

    アニ「そうだね」

    エレン「・・・泣いてもイイんだぜ?」

    アニ「アンタの為の涙なんて絶対流したくない」

    エレン「俺が泣きそう」

    アニ「長期休暇の時は会えるでしょ?」

    エレン「もちろん」

    アニ「・・・絶対だからね」

    エレン「ああ、約束だ」

    アニ「しばらく会えなくても・・この、関係で・・・いてくれるんだよ、ね」

    エレン「俺の為の涙はねえんだろ?
    絶え絶えになってんぞ」

    アニ「茶化す、な・・・!」

    エレン「当然だって まだ一緒に風呂に入ってもらってないからな」

    バシッと割と本気で叩かれて痛いが、こっちだって本当は泣きたい気分だ。

    すぐ会えない距離に離れてしまうのだから。

    エレン「何かあればLINEでも電話でもなんでもイイから連絡くれよ」

    アニ「エレンも、ね」

    エレン「ああ、必ず」

    日は何時間も前に落ちて、辺りには電灯が点いてぼんやりと暗い道を点々と照らす。

    最後だからと奮発して、有名なアミューズメントパークでのデートの最後、アニも自分もいつもよりも無駄にはしゃいでいたのはこの時が来ることをわかっていたからで。

    アニは耐え切れなかったが、エレンは絶対ココでは耐え抜くと決めた覚悟でそれはぶれなかった。

    夜行バスの中、深夜なのもあってはしゃぐことはできなくても、コソコソと小さく話をする。

    肌に悪いぞと寝るのを促しても"うるさい"と言ってアニはずっと起きていた。

    俺も寝付きたいとは思わなかった。

    少しでも、2人の時間を共有できるように、と。

    ーーー

    ーー



    早朝5時過ぎには自分たちが今まで何度もお世話になっていた馴染みのターミナルに到着する。

    そこからまた始発のバスに乗ってアニの家へ向かう。

    こんなほぼ丸一日の無茶な計画を許してくれたアニのご両親へ今一度感謝をして向かった。

    そして最寄りのバス停に到着して、5分も歩けばその玄関に到着したのだった。

    アニ「・・・」

    エレン「終わっちまったな」

    まだ寒くて白い息が2人の口から零れる。

    エレン「楽しかったか?」

    アニ「今まででイッチバン、ね」

    エレン「そっか 行けてよかったよ」

    アニ「エレン、ありがとね」

    エレン「・・・いつか、さ」

    アニ「?」

    エレン「いつか、今回の旅行代金くらい全部俺が奢れるくらいの甲斐性身につけるから・・・」

    エレン「だから、まだ気が早いって言われるだろうけど、俺は真剣にお前と・・・」

    その続きは自分の意思とは裏腹に口が動くだけで出てこなかった。我ながら情けない。

    それでもまた涙を流して、それでも笑顔で抱きついてきたアニを玄関前でも構わずしっかりと引き寄せた。

    いつも早いうちに外をうろつくどこぞの猫が半ば呆れるように一度だけ喉を鳴らしたのだった。
  119. 119 : : 2015/11/15(日) 21:52:36
    ーーー

    ーー



    「エレン君、行っちゃうのー?」

    「私もついて行っちゃおうかな」

    エレン「もう勘弁してくれ! 俺彼女いんの!」

    どんなに喚こうが彼女たちの耳には届かない。

    今日で大学は一旦終業。人それぞれだがしっかりと単位を取ってきたエレンは最速での長期夏季休暇となる。

    その日のうちにアニの処へ行こうとすぐに支度を開始したのを見逃さない集団に巻き込まれたわけだ。

    エレン「じゃあなお前ら、ぜってーついてくんじゃねーぞ!」

    後ろから聞こえるブーイングを無視してホームへと向かった。

    ーーー

    ーー



    大学のサークルでもバスケをやっているため足には自信がある。

    とはいえガッチガチの陸上をしている子もいるわけでとてもじゃないがそれには敵わない。

    慣れてきたとはいえ、現地の人程の土地認識はないので本当に突き放したかは定かではない。

    エレン「やれやれ・・・」

    直線距離300キロは伊達じゃない。

    早く来いと駅への到着まであと数分の新幹線に念を飛ばすも時刻表の時間前に来ることはなく、しっかりとそれに従ってやって来た車両にため息を吐きつつ乗り込んだ。

    ーーー

    ーー



  120. 120 : : 2015/11/15(日) 21:55:29
    エレン「(いやー新幹線は偉大だねぇ)」

    文明の利器に感謝しつつ、何事もなく到着したことを喜んだ。

    アニから教えてもらった住所と部屋番号を頼りに難なくアパートに到着するも、時間はもう夜9時を回っている

    その彼女には最近入り直したサークルの新歓コンパの為10時頃を目処に帰ってくるとのこと。

    どこで後1時間近く時間を潰そうかと考えていた矢先、電話がかかってきた。

    エレン「ベルトルト?珍しいな」

    そういやアニと同じ大学の経済学部だったなと思い出す。

    ともかく男同士で連絡を取り合うなんてそうはしない。

    エレン「もしもーし、どうした?」

    『あ、エレン!もうコッチに着いてる?』

    エレン「おう、今着いてアニのアパートの前だけど、なんかあったのか?」

    『そのアニを引き取りに来て欲しいんだ!来ればわかるから!』

    エレン「お、おう、んで何て店だよ」

    引き取りに来いだなんてそれこそイレギュラーだ。

    何があったんだと不安がよぎる。

    『"ぎゅうぎゅう"って焼肉屋!アニのアパートからそんな遠くないから!頼んだよ!』

    エレン「分かった、何があったかわかんねえけど、上手くその場を繋いでくれよ」

    そのまま電話を切り、マップで場所を確認する。

    徒歩15分といったところか。結構遠いじゃねえか。

    悪態をつきつつ、交通機関よりも早いと判断して走ってその場へ向かった。

    ー嫌な予感がする。

    ーーー

    ーー



    エレン「ホラ・・・着いたぞ」

    来るときの三倍近く時間をかけてようやくアニのアパートに着く。

    アニ「・・・」

    だらりとだらしなく下がった腕、少々乱れた服。

    エレン「アニ・・・」
  121. 121 : : 2015/11/15(日) 22:15:59
    エレン「お前・・下戸(げこ)なんだな」

    アニ「そぉんなことないよぉ」

    エレン「おい、しっかりしろよ・・・」

    アニ「大丈夫大丈夫、ゼンッッゼン酔ってないから」

    寝ぼけた時よりもひどい乱れっぷりだ。

    両親が共にお酒に弱いと言っていたのを思い出す。

    どうにか部屋の鍵を開けさせてなだれ込んだ。

    ーーー

    ーー



    部屋

    エレン「・・・お前まだ未成年だろが 何で酒飲んでんだよ」

    アニ「だぁから酔ってないの!ずっと烏龍茶啜ってましたぁ!」

    エレン「いや、酔ってるだろ!それに随分と他の男とベッタリしてたよな!」

    アニ「あーヤキモチ?エレンくーん」

    エレン「茶化すな!」

    アニ「さっきから言ってるじゃん 本当に烏龍茶しか飲んでないよぉ」

    ・・・まぁ、人間出来てるアニが未成年飲酒するとは思えない。

    となると不埒な輩がコップごとすり替えたか。

    エレン「絶対飲みサーだろアレ」

    アニ「かもねぇ〜でも聞いてよー!前入ってたバスケサークルなんだけど!」

    アニ「まさかのヤリサーだったのヤリサー!!」

    エレン「はぁ!?」

    アニ「あれは危なかったなぁ〜」

    危機感を欠片も匂わせず、あははと笑う。

    こちらは逆に嫌な汗がダラダラ背筋を辿っている。

    エレン「おま・・・」

    アニ「ダイジョーブまだ処女だから!」

    普段アニの口から100パーセント出てこないワードがボロボロ出てくる。

    酒に完全に呑まれている。

    無事だと安心できない状態だ。

    エレン「とりあえず水飲め、ホラ」

    アニ「烏龍茶でお腹ダッポダポなんだけどー」

    エレン「口答えすんな、ホラ」

    アニ「冷たいなあ・・私今日めっちゃ楽しみだったのにさぁ・・・」

    エレン「そりゃ俺だって」

    アニ「なのにさ、エレン怒ってるじゃんせっかく会えたのに」

    エレン「それはお前がだな・・・」

    アニ「どーせ向こうでもイッパイ言い寄られてるんでしょ?可愛い子たちに」

    エレン「あー・・・えっと・・」

    アニ「・・・ひょっとして経験済み?」

    エレン「・・・まだだよ」

    アニ「じゃあまだ"どーてー"なの?」

    エレン「そーだよ!だから早く酔いを覚ませ!!つか今日は寝ろ!」

    アニ「まだまだ夜はこれからだろぉ・・語ろうよぉ〜・・・」

    言葉とは裏腹に寄りかかったまま寝息を立て始めた。

    エレン「ったく・・・絶対もう酒飲まされんなよ」

    大きなため息ひとつの後、寝室に無断でお邪魔するのは憚られておそらく備え付けであるソファーに寝かせてブランケットを被せてやった。

    エレン「あ・・・俺どこで寝ればいいんだコレ」
  122. 122 : : 2015/11/15(日) 22:28:54
    アニ「んん・・・?」

    アレ、どうしてソファーで・・・と思ったのは一瞬で。

    途端に冷や汗をかく。

    アニ「(ウソッ!?ここ誰の部屋!?)」

    まさか誰かに所謂"お持ち帰り"されてしまったのかと思ったが、紛れもなく自分の部屋だ。

    アニ「(いつ戻ったっけ・・?)」

    アニ「(ッ!!それより今何時!!?)」

    時計を確認すれば午前2時10分過ぎ。

    今日(正確には昨日だが)ウキウキしながら学校に行った記憶はあるから、エレンが来る日なのは間違いない。

    アニ「(嘘だと言っ・・)」

    スマホを探してテーブルを見るとそこにはうつ伏せで眠る影。

    月の光でそれがエレンであるのは一目でわかった。

    アニ「エレ・・ン・・・」

    自然に口からこぼれた呼びかけに応じることなく、穏やかな寝息を立てている。

    この状況を考えるとエレンが店から連れ出して、家まで付き添ってくれたのだろう。

    カードキーは自分しか持っていないから。

    しかし醜態はさらしていないだろうか。

    どーも店に入ってからの記憶は曖昧で、どういうわけだか頭もガンガンする。

    お酒の匂いのせいかな、と飲まされていたことにも気づいていない。

    何であれ、もう泣きそうだ。せっかくの再会なのになんたることだ。

    もっとはっきり拒否の姿勢を見せればよかった。というかすっぽかすべきだった。

    アニ「(起きたらすぐ謝らなきゃ・・)」
  123. 123 : : 2015/11/21(土) 23:13:36
    ーー数時間後

    アニ「ゴメンなさい・・・」

    エレン「あー、酔いの方は?」

    アニ「ちょっと頭痛いくらいだけだから大丈夫」

    時刻はまだ6時過ぎ。

    アレから目が冴えてエレンが起きる現在まで起きていた次第だ。

    特に何かをするわけでもなくボケーっとしていただけである。

    ・・頭痛はその為なのでは、と思ったがコレは違う気がする。気がするだけ。

    エレン「とにかく、自分では飲んでないんだな?」

    アニ「ウン、ホントに飲んでないよ」

    エレン「ったく、あんまこういうこと言いたかねえけどそのサークル止めた方が良いと思うぞ」

    アニ「そうだね・・入ったばっかだから申し訳ないけど・・・」

    エレン「未成年に酒をこっそり飲ませるとか犯罪だからな」

    アニ「だよね、何とかするよ」

    エレン「・・・で、その、だな」

    アニ「ん?」

    エレン「今の前に入ってたサークルって・・・」

    アニ「・・・昨日の私、それについてなんか言ってたの?」

    エレン「バッチリ "ヤリサー"だって」

    アニ「ヤッ・・・それは・・・」

    エレン「で、ホントに大丈夫なんだよな?」

    アニ「噂聞いてすぐ抜けたよ、事実だったみたいだし」

    エレン「秀才揃いの割に常識ねえ奴多いんだな・・こっちも大概だけど」

    エレン「しっかしお前、親御さんと一緒で酒にも弱いんだな」

    アニ「そんなに酔ってたの・・?」

    エレン「ベロンベロンだったぞ 下の話平気で言うくらい」

    アニ「シモ!?嘘でしょ!!?」

    エレン「さっきのサークルの話も自分から言ってたし」

    アニ「もう寝る・・・」

    エレン「まだ朝だぞ!」

    アニ「はしたないところ見られた・・・お嫁にいけない・・」

    ヨヨヨと少々大袈裟には見えるが、本当に後悔しているようだ。

    エレン「ハイハイ俺が貰ってやるからしっかりしろホラ」

    アニ「エレンみたいなムッツリはイヤ」

    エレン「誰がムッツリだ!つか嫌って言うな!!泣くぞ!」

    アニ「ほ、本気だったの?」

    エレン「知るかバーカ!」
  124. 124 : : 2015/11/22(日) 23:28:50
    ー30分後

    アニ「朝はこのパンで我慢してくれる?」

    エレン「朝はいつもパンなのか?」

    アニ「いちいち朝ごはん作る時間が無くてね・・・」

    エレン「まさか"遅刻遅刻〜"ってパン咥えながら通学したことないよな?」

    アニ「一回だけやった」

    エレン「マジかよ!?」

    アニ「冗談だよ コンビニに飛び込んだことが何十回かあるくらい」

    エレン「多くねえか・・・?」

    アニ「しょーがないじゃん 起きれないんだもん・・」

    エレン「相変わらずだなぁ・・・」

    アニ「ふふ」

    エレン「なんだよ?笑っちゃってさ」

    アニ「なんか嬉しくてね」

    エレン「そ、そうか つか照れるからそんなじっと見るな!」

    アニ「パンを頬張るエレン、リスみたいで可愛い」

    エレン「やめろって!」

    アニ「それで、その、いつまでいるの?」

    エレン「ん?此処にか?つか今日はアニが案内してくれるんだろ?」

    アニ「そっちじゃなくて、ホラ、いつ戻るのかなーって」

    エレン「ああ、俺がね そうだな〜あんまり長居して迷惑かけたくねえしな」

    アニ「別に迷惑ってことはないよ」

    エレン「ありがとな でも長くて1週間くらいかな」

    アニ「そっかぁ・・・」

    エレン「ミカサ達とも会う約束あるし、その時また会えるだろ?」

    アニ「2人きりになれないじゃん・・・ミカサと会うのも楽しみだけどさぁ」

    エレン「嬉しいこと言ってくれるな〜
    昨日の酒残ってるんじゃね?」

    アニ「さっさと記憶から消してよ!」

    エレン「お断りします〜」

    ーーー

    ーー



    それから街に出た。

    アニは此処にきて半年ということもあり、結構繰り出してるのか色んなことについて詳しい。

    店の位置や情報、何が美味いとか此処で何ができるとか、諸々。

    自分の実家のそばも割と都会だと思っていたが、井の中の蛙だった。

    此処は本当に、何もかもがでかい。

    エレン「スゲェ・・・」

    アニ「大都会でしょ?私も最初はひっくり返りそうになったよ」

    エレン「ああ、本当にスゲェよ」

    アニ「げ」

    エレン「ん?どした?」

    らしくない濁音をともなった一言が聞こえたかと思ったら、向こうから女性が3人ほどやってくる。

    アニ「あちゃー・・・」

    エレン「知り合いか?」

    アニ「大学の友達・・・」

    エレン「そんなめんどくさそうにすんなよ せっかくわざわざこっちに来てくれてるのに」

    アニ「そのうちにわかるよ・・・」
  125. 125 : : 2015/11/24(火) 00:18:14
    ーーー

    ーー



    エレン「・・・よーく分かった」

    アニ「でしょ」

    先ほどの子達は悪い人ではないのだが、いかんせん女を捨ててると言ってもいいキャラだ。

    何がと言うと、ど直球な下ネタやソッチの話をバンバン言ってくるタイプである。

    若干引きながら少し離れようとしてもアニが腕を掴んだことでヒートアップした彼女たちにやむなく巻き込まれ・・というわけだ。

    エレン「なんかすげー疲れた・・嵐かよ」

    アニ「でもいい子たちなんだよ」

    エレン「女子が話してる内容、男子よりエグいな」

    アニ「一部だよ一部」

    エレン「アニもそういう話するんだなー意外だわ」

    アニ「してないっ!」

    エレン「あれー?でも昨日は

    アニ「決めた あんたの記憶消えるまで殴る」

    エレン「オイオイ可愛いアニちゃんはそんなことしません〜」

    アニ「ぐ・・・」

    エレン「別に引かねえけどな〜」

    アニ「だからしてないって!」

    ーーー

    ーー



    夕方。何でも今日はアニが夕飯を作ってくれるとか。

    此方に来た楽しみの1つだ。

    前にバスケの試合での弁当を作ってもらったのだが、あの時は争奪戦になって自分でさえあまり食べれていない。

    全部俺のものなのである。

    その具材をスーパーに買いに来ているわけだ。

    エレン「今の俺ら夫婦っぽくね?」

    アニ「そ、そう?」

    エレン「いや、分かんねえけど父さんと母さんで並んでカート押して買い物してるイメージ」

    アニ「私からしてみればエレンが子供、私は親って感じで」

    エレン「どーせガキっぽいですよ・・」

    エレン「で、晩飯は?」

    アニ「チーハン」

    エレン「うほっ!やったぜ」

    アニ「やっぱ子供」

    エレン「あんまバカにすんなよー何なら俺らの子供作ってやろうか?」

    アニ「ばっ、バカなこと言ってないで、ホラ!」

    エレン「オイオイ大学生ジョークだよ、なー」

    アニ「そんな文化ないでしょ!」
  126. 126 : : 2015/11/26(木) 18:55:44
    ー1時間後、アニ宅

    アニ「ただいま」

    エレン「おかえりー」

    アニ「何であんたが言うの」

    エレン「だって俺も同じだけど"ただいま"っつってもだれもお帰りって言ってくれねえんだぞ」

    エレン「だから俺が言ってやった」

    アニ「・・ありがと」

    エレン「どういたしまして」

    アニ「エレンもお帰り」

    エレン「おう、ただいま」

    エレン「なんか手伝うことあるか?」

    アニ「一応お客さんなんだからいいよ何もしなくて」

    エレン「バッカそうはいくか 下宿してるようなモンだし」

    アニ「随分良物件な下宿先ですねえ」

    エレン「自分で言うかソレ・・・」

    アニ「ま、とにかくエレンは座ってなよすぐ作っちゃうから」

    エレン「楽しみにしてます」

    それから鼻歌交じりに具材を切る音だったり、肉を焼く音だったりとお腹をきゅうっと刺激する要素が漂ってきた。

    その間俺はTwitterで時間を潰していたのだが、ここで流れていくタイムラインで見逃せないものがあった。

    エレン「んだよコレ・・・」

    画像は明らかに今日のアニで、かなりのローアングルから取られている。

    人ごみの中でスマホを低い位置にさりげなく構えてインカメラで撮ったのだろう。

    エレン「ふざけやがって・・・」

    アニ「何見てるの?Twitter?」

    エレン「うぉわぁ!?」

    アニ「なーにを見てるのかなぁ?」

    ジトーっとこちらを睨んでくる。

    不可抗力とはいえここで「はい、貴女の太もも見てました」何て言ったら野宿コースは確定。

    アニ「ミカサに送らなきゃ "エレンがTwitterでエロ画像見てました"って」

    エレン「ちがぁぁあう!断じてちがぁぁあう!!」

    彼女のスマホを見ればLineを開き、もう送信をタップするだけでその旨が送られる状況だ。

    嘘つくときの弱点は割れてしまっているので、ここは正直に言うしかあるまい。

    極力誤解を生むことは避けて。

    エレン「あのな、Twitterでお前の画像がだな・・・」

    アニ「え、また?いつの間に・・・」

    エレン「そう、また・・・また!?」

    アニ「友達に教えてもらってね もうかれこれ3回くらい」

    ため息交じりだが、それどころじゃないだろう。

    アニ「ん、待って じゃあさっき見てたのが・・私の!?」

    エレン「だな 服一致してるし」

    アニ「何見てんのっっ!!」

    エレン「ばっ!俺だって見たくて見たわけじゃ・・・!」

    アニ「本物ここにいるでしょーが!」

    エレン「お、お前っ!だからそういう誘うようなことを・・あだっ!痛え!」

    アニ「消して!今すぐ!」

    エレン「俺にどうこうできる問題じゃないんだけどぉ!」

    ーーー

    ーー



  127. 127 : : 2015/11/27(金) 20:44:46
    ーーー

    ーー



    エレン「はぁ・・・とりあえず飯食おうぜ 今ので腹減った」

    アニ「そうだね・・せっかく作ったし、冷めたら元も子もない」

    エレン「それでは」

    そう言って2人でテーブルを挟み、向かい合って座る。

    1人用というには十分すぎるそのテーブルも2人ならちょうどいい。

    エレン「いただきます」

    アニ「頂きます」

    早速メインディッシュのチーハンことテーズハンバーグに手を伸ばす。

    それに比べアニは何にも手を伸ばさずこちらを見るだけ。

    エレン「ん?食わねえの?」

    アニ「いや、私はいいからホラ」

    エレン「?おう」

    アニが食べない理由は分からないがお言葉に甘えて頂く。

    エレン「・・・めっちゃ美味(うめ)え」

    アニ「よかった 毒見してくれてありがと」

    エレン「毒味ィ!?お前俺を生贄にでもするつもりだったのか!?」

    アニ「嘘だよ 料理は私の得意分野だから」

    エレン「ったくよー・・・」

    苦笑いしながらも箸を進めていくと、アニも伴って食べ始めた。

    アニ「ん、美味し」

    エレン「流石だなーコレ全部俺のか」

    アニ「私のでもあるけどね」

    エレン「高体の弁当の時はほとんど取られちまったんだよ」

    アニ「そうだったんだ」

    エレン「ぜってーもうあいつらには食わせねえけど」

    アニ「そんなこと言わないの」

    エレン「俺のお母さんかよ」

    アニ「私はそのつもり」

    エレン「おいおい随分な若妻だな」

    アニ「そりゃどーも」

    ーーー

    ーー



    エレン「で、だ」

    アニ「ん?」

    エレン「何回だ?正直にな」

    アニ「えーと・・・私が認識してるのは7回・・・かな?」

    エレン「やっぱりな・・・」

    アニ「そういうエレンは?」

    エレン「5回」

    アニ「ふーん」

    エレン「もうちょっとリアクションとってくれてもいいじゃん」

    アニ「だってエレン君は私にベタ惚れだもんね〜」

    エレン「ぐ・・・」

    エレン「・・妬いてくれたっていいじゃん」

    アニ「おあいにく様」

    エレン「あーあ、あの可愛いアニちゃんは何処へやら」

    アニ「目の前にいるでしょ」

    エレン「俺はこんな娘知らないもん
    事あるごとに顔真っ赤にするウブなアニちゃんしか知らない」

    アニ「何年前の話を・・・」

    エレン「ちぇー」

    まだブーブーというエレンだが、アニも心中はモヤモヤとしたもので渦巻いていた。

    5回と聞いて動揺しなかったわけではない。抗体が出来たようなもので、顔に出さなくなったのが自然に上手くなっただけである。

    エレン「あ、そうだ」
  128. 128 : : 2015/11/27(金) 21:12:36
    エレン「見てこれ」

    そう言って見せてきたスマホの画面には楽しそうに笑う男集団。

    中心はエレンで相変わらず一部の男子を除いて人気らしい。

    エレン「こいつらとは結構遊んだりしてるんだ 今度アニがこっちに来いよ」

    アニ「え?」

    エレン「俺の彼女可愛いだろ〜って自慢したらみんな会いたがってさ 中には嘘だろって言う奴もいたし」

    アニ「何バカな事言ってるの・・」

    エレン「目の前の"可愛いアニちゃん"自慢しただけだろ?」

    フフンと笑いながら言われるが、どうも"可愛い"というエレンの言葉にだけは慣れない。

    エレン「で、来てくれるよな?」

    アニ「・・・仕方ないね」

    エレン「よっしゃ!」

    そう喜ぶエレンを見るのは悪い気がしない。

    少し温度が上がったように感じる頬を隠してスマホを見ると結構な数の写真がある。

    アニ「結構撮ってるんだね」

    エレン「え?あッ!あの、うん、まあ」

    アニ「・・・?」

    そのままススッとスワイプして見ていくが、ある写真で指が止まった。

    アニ「・・これ何?」

    エレン「あのー・・それは・・・」

    見れば見知らぬ(ひと)と顔を近づけあっている。

    その口を繋ぐのはあの国民的お菓子。

    アニ「へー・・ポッキーゲームしたんだねぇ・・・」

    エレン「違うんだって!ほら!ノリっつうかさ!このあとすぐ折ったから!」

    アニ「ふーん・・ポッキーの日はまだなのに、ねぇ」

    エレン「あいつら飲んでたんだよ!俺はオレンジジュース啜ってたけど!」

    耳は赤くない。嘘ではないのだろうが、気に食わない。

    アニ「私に対してはやれないのに?」

    エレン「高校1年2年の時は毎年仕掛けただろうが!」

    エレン「でもお前"ポッキー"って聞いただけで俺をはっ倒してきただろ!」

    アニ「それは!学校でやろうとするからでしょ!!」

    エレン「なら今やってやらぁ!ポッキーあるか!?ないならハイチュウ!」

    アニ「そう都合よくあるわけないでしょ!」

    エレン「ならナシでいいな!」

    アニ「ちょっ・・・!」

    エレンは強引にこういう事をするタイプではないが、それまでの事もあってイロイロ溜まっている。

    何処で覚えたと問い詰めたくなるようなスピードで唇を合わせてきた。

    アニ「んんっ・・・!」

    エレン「・・・」

    すぐに離せばかつて見てきた真っ赤な顔が見えて満足気なエレン。

    反対に体温が上がって恨めしげにこちらを見上げるアニ。

    それを見て満足していたエレンは本能に追い詰められ出した。

    エレン「(そ、そんな顔すんなよ・・我慢できなくなんだろ・・)」
  129. 129 : : 2015/12/06(日) 01:03:53
    エレン「ど、どーよ コレでいいだろ?」

    アニ「なにが!」

    エレン「ちゃーんとアニともポッキーゲーム出来るって証明」

    アニ「ポッキー使ってないじゃん!」

    エレン「え、あったほうがよかったのか?」

    アニ「それはっ!・・・その・・」

    エレン「みなまで言うなって 分かってるよ」

    アニ「もういい、お風呂はいってくる・・」

    エレン「はいよ」

    そう言って自分も立ち上がってみれば、

    アニ「1人でだから!」

    エレン「チェッ」

    ジョークだと割り切ってしまわねば本気でやらかしそうだった。

    今一度自分を戒めて、不貞腐れるふりに専念した。

    ーーー

    ーー



    アニ「・・・」

    待たせすぎなのでは、と思わないわけでは無い。

    実際高校2年生くらいの時期には経験済みの子も周りには居た。

    大学に入る直前だってエレンはギリギリで踏みとどまったとはいえ、求めてきてはいるのだ。

    アニ「ハァ・・・」

    この夏季休業で、エレンがこちらに泊まると聞いて、そうなるんじゃないかとも思った。

    見られて恥ずかしいようなところは無いと思うが、自分から誘えばフシダラな女だと思われないだうか。

    そう思ったことにして、なんだかんだでエレンに委ねてしまうあたり、自分がズルく思えてしまう。
  130. 130 : : 2015/12/06(日) 19:17:54
    風呂から出ればすぐにエレンが入っていく。

    どうもまだ甘い雰囲気が苦手だ。

    と言っても嫌な訳ではなく、単に自分が自分らしくなくなることで自信を失うのが殆どだ。

    アニ「(いつもどんなこと話してたっけ・・・)」

    こんな風に思うのはいつもの事だ。

    エレン「どした?ぼーっとしちゃって」

    振り返れば頭をタオルでわしわしと拭きながら歩いてくるエレン。

    しっかりとシャツとハーフパンツを履いているのだが、なんだかチラチラと見える鎖骨に色気を感じて思わず目をそらせてしまった。

    エレン「で、俺今日はソファーで寝ていい?」

    アニ「え?あ、ベッドで寝なよ お客さんにそんな所で寝させる訳には・・」

    エレン「お前はどうすんだよ」クスッ

    アニ「わ、私もベッドで寝る」

    エレン「お?添い寝してくれんの?サービスいいな」

    アニ「昨日は悪いことしちゃったしね・・・」

    エレン「いいってことよ でも変なトコ触っても怒るなよ?」

    アニ「ワザとやったら放り出す」

    エレン「ワザとなんてするわけねえだろ!」

    多分、と心の中で呟くがなんだかんだ言ってやれるだけの度胸は無いので思わずため息が出そうになった。

    エレン「んで、もう寝るのか?」

    アニ「んー・・・そうしよっか」

    エレン「夜更かしはシワ増えるからな」

    アニ「うっさい」

    エレン「んじゃ、早く寝室に行こうぜ」

    アニ「ハイハイ」

    ーーー

    ーー



    エレン「(・・・んー ん?)」

    結構な距離を歩いた今日は、しっかりと疲労をためていたらしくすぐ寝付いてしまったらしい。

    そこでハタと気付く。

    エレン「(あれ・・・?俺アニと向かい合って寝てたっけか?)」

    確か寝るときは殆ど背中を向けていたはずだ。

    目を覚ますのはだいたい自分が先だが、視界に入ってくるのはいつも華奢な背中であったはず。

    しかし今回はあどけない表情を浮かべる顔が目の前にある。その瞼はしっかりと閉じられて開くことが無いのではと錯覚するほど。

    エレン「(ち、(ちけ)え)」

    じっと見つめても全く気付かずに寝ている。

    エレン「(あーあ・・・相変わらずで何よりだよ)」

    全く警戒してないどころか、シーツの上で僅かに握られたその手を自分のそれで覆ってやれば口に薄い笑みを浮かべる。

    エレン「(天然なのが恐ろしいわマジで・・・)」
  131. 131 : : 2015/12/06(日) 19:28:58
    しかしアニも完全に無意識、というわけでもなかった。

    ー約3時間前

    アニ「・・・ね、ねえ、エレン」

    勇気を出してちゃんと誘ってみようか。

    ベッドに入ってから覚悟を固めるまでにかなりの時間を要したが、ようやく言葉になった。

    ・・・そう思ったのに、もう寝息を立てている。

    アニ「(ね、寝ちゃった・・・意気地なし・・・)」

    自分に対して心でそう言って、背中を向けていた身体を寝返りをうつようにしてエレンに向き合わせた。

    離れてから半年も経ってないのに何処か大人びて、魅力が増したように感じる。

    惚気にも似た感想を抱きつつ、その顔を眺める。

    これほど近い距離で見られるのはキスの時と共に寝る時くらいだろう。

    うち、前者は目を固くつぶってしまう為、今の状況でしか基本は見られない。

    アニ「(あの写真・・・消してよ)」

    彼にとっては余興の1つであろう其れに対して妬いてしまう。

    自分も同じようなことをやってやろうかと思ったが、エレン以外となんて真っ平御免だ。

    アニ「(なんで私ばっかり・・・)」

    文句も吐けないのはエレンとの時間を険悪にしたく無いという強い思いからである。

    そんなことを思っているうちに眠気は積み重なって、そのまま眠ってしまった次第だ。

    ーーー

    ーー

  132. 132 : : 2015/12/06(日) 21:04:21
    ー次の日

    相変わらず先に起きたのはエレンの方で。

    特にやることもないので朝食の支度をすれば後から起きてきたアニに謝られた。

    エレン「俺がやりたくてやったんだ
    美味い?」

    アニ「う、うん・・・美味しいけど・・」

    エレン「ならオーケー」

    ニッと笑えば向こうもたどたどしくも笑ってくれた。それでイイんだ。

    アニ「今日はどうしよっか」

    エレン「部屋でゆっくりしねえか?昨日は歩き回ったし」

    アニ「イイけど・・・」

    エレン「ん?どっか行きてえのか?」

    アニ「せっかく2人なのに勿体無いなって、ちょっと思っちゃって」

    エレン「そういう時間も悪くねえさ」

    アニ「エレンがイイならイイけど」

    というわけで部屋でまったり中だ。

    自分の言葉に嘘は全くない。

    部屋なら無断で写真を撮られる心配もないし。

    ーーー

    ーー



    昼の2時ごろ、静かでも居心地の良いアニの部屋に来客があった。

    ピンポーン

    アニ「誰とも約束はしてないはずなんだけど・・・」

    エレン「急用かもしれねえぞ」

    アニ「うん」

    そう言ってパタパタとインターホンに近づいて画面を確認すれば

    アニ「なんでもなかった」

    エレン「え、いや、でも」

    アニ「誰も来てないよ」

    スピーカーからは周りも考えずに吠える声が聞こえてくる。

    その声の主は・・・

    ーガチャリ

    ライナー「なんでさっさと出ないんだよアニ」

    ベルトルト「ごめんエレン、止めたんだけど・・・」

    エレン「いや、イイんだ」

    アニ「・・・エレンと過ごすって言ってあったと思うんだけど」

    ライナー「だからこそだっての」

    アニ「用は何?場合によっては・・」

    ライナー「いや、アニに用はねえんだ」

    アニ「は?」

    ベルトルト「エレンに用があるんだって」

    エレン「え?俺?」

    ライナー「つーわけで一旦席外してくれるか?」

    アニ「いや、ここ私の・・・」

    ライナー「ベルトルト、頼むぞ」

    ベルトルト「ごめんねアニ ちょっと出よう」

    アニ「いや、だからここは私の住居なんだけど!」

    ベルトルト「謝るからさ、ホラ」

    エレン「まあこんな真剣なんだ 真面目な話なんだろ」

    だから、な!とエレンに頼まれれば言葉に詰まってしまった。

    アニ「・・・分かったよ」

    渋々ベルトルトと出て行ってしばらくして。

    エレン「で?何だよ用って」

    ライナー「こんなこと聞くのもアレだが、イイか?」

    エレン「お、おう 何のことか分からねえけど」

    ライナー「こいつを渡しにきたんだ」
  133. 133 : : 2015/12/06(日) 21:36:37
    エレン「・・・どういう意味だよコレ」

    ライナー「見たまんまだ あ、もしかして持ってきてるのか?」

    エレン「いや・・・」

    ライナー「ならイイじゃねえか」

    エレン「お前らはそれでイイのかよ?」

    彼が渡してきたのは紛れもない避妊具で。

    包み隠すこともせず、パッケージはそのままにどかっと差し出してきたのだ。

    エレン「つ、着け方分かんねえんだけど」

    ライナー「俺にも分からん」

    エレン「はぁ!?」

    ライナー「相手がいないんだ 仕方あるまい」

    どうしてこうも何でもないようにこんなもの渡せるのか。

    自分がジャンに「ミカサとうまくやれよ」と避妊具を渡すのと同じことだ。

    ライナー「お前は奥手すぎると言っているだろう」

    エレン「で、でもそういうのはちゃんと体調とか・・・」

    ライナー「甘いッ!」

    ライナー「あのなぁエレン・・・あいつはずっと悩んでたんだ」

    エレン「は・・・?」

    ライナー「高校卒業式終わってから、俺とベルトルトとアニの3人で遊びに行ったことがあってな」

    エレン「ああ、あの時か」

    ライナー「その時に相談されたんだよ」

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    アニ「ね、ねえ2人とも」

    ライナー「ん?」

    ベルトルト「どうしたの?」

    アニ「2人はさ・・・えっと、何ていうか・・・」

    ライナー「どうしたんだよ?ハッキリ言ってくれねえと」

    アニ「つ、つまり!・・・シ、シたいとかってやっぱ思うの?」

    ライナー「え」

    ベルトルト「ブーッッ!!!」

    ライナー「そ、それって、アレの事だよな?」

    アニ「・・・うん」

    ベルトルト「」

    ライナー「や、藪から棒だなオイ」

    アニ「・・・実は私さ、高2の時に知らない先輩にちょっと無理矢理キスされたりして、さ」

    ライナー「オイ!初耳なんだけど!」

    アニ「言えるわけないじゃん・・・」

    ライナー「あ、その、悪い・・」

    アニ「それからさ、エレンからしばらく何もなかったんだけど・・まあ受験前だったのもあるけど」

    ライナー「ああ」

    アニ「昨日、ね」

    ライナー「ヤ、ヤッたのか?」

    アニ「まだだよッ!!」

    ライナー「あ、そう」ホッ

  134. 134 : : 2015/12/06(日) 21:54:44
    アニ「でもその、昨日は寸前までいった・・・のかな・・?」

    ライナー「いや知らねえけど・・・」

    アニ「と、とにかく!それでちょっとびっくりしちゃったっていうか・・・」

    ライナー「あぁ・・・だいたいわかった」

    アニ「求めてくれるのは本当に嬉しいんだけど、まだちょっとさ・・」

    ライナー「焦らなくてもイイさ エレンはその辺しっかりしてるしな」

    アニ「・・・焦ってるわけじゃないんだ」

    ライナー「ん?」

    アニ「しょ、処女って面倒くさがられるとか、あるらしいって・・・」

    ライナー「はぁ・・?どこ情報だよソレ」

    アニ「女子はそうだって言ってたし・・結構経験ある子が、ね」

    ライナー「あのなぁ、だいたいの男は経験無い子の方が嬉しいからな」

    アニ「そ、そうなの?」

    ライナー「だからそういうとこで心配なんて何もいらねえよ」

    アニ「う、うん・・でも」

    ライナー「まだ何かあんのか?」

    アニ「・・・躊躇してる間に、他の子と、その」

    ライナー「あいつはそんなことしねえよ」

    ライナー「それはお前が一番信じてやらなきゃダメなはずだろ?」

    アニ「そうだけど・・・」

    ライナー「なら信じてやってくれ あんなイイ男他にいねえよ」

    アニ「・・・うん、ありがとライナー」

    ライナー「おう!ちゃんと避妊はしろよ!」

    スパァァァンッッッ!!!

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    エレン「・・・そうか」

    ライナー「お前もそういう事を思わなかったわけじゃ無いんだろ?」

    エレン「まあ、な」

    ライナー「ならちゃんとやれ んで、アニが今もこれからも好きだって伝えてやってくれ」

    頼む、と頭をさげる彼は妹を心配する兄の姿そのもので。

    しっかりとその箱をこの手に受け取った。

    ーーー

    ーー



    じゃあなと帰っていった彼らを見送った後、彼女はもちろん聞いてきた。

    アニ「何の話だったか、聞いてもイイ?」

    エレン「アニの話」

    アニ「え?私・・・?」

    エレン「そ、すっごく大事な話だった」

    アニ「?」
  135. 135 : : 2015/12/08(火) 06:06:32
    その場はうやむやにしたが、今日の夜だ。

    相変わらず兄貴キャラが板についており、お膳立てされた感が否めない、いや実際お膳立てされたわけだが。

    それでもそうでなければ動けないのだ。

    コレでまた言い訳をしていてはもう二度と進めない気がする。

    それから夜までは異様に短く感じた。

    ーーー

    ーー



    夜にまたアニの料理を食べる。

    が、どう話を切り出すべきかとか、正しい順序だとか、そういう事を考えてしまい、正直味がわからないほどだった。

    アニ「エレン?ぼーっとしてるけど、風邪でも引いた?」

    エレン「え?あ、いや、別に何とも無いぞ」

    アニ「ホント?無理しないでよ?」

    エレン「おう、でもホントに大丈夫だから」

    まさか「夜事情」について作戦練ってましたなんて言えるわけもなく。

    しかし、似たようなことは言わねばならないという謎の状況。

    ライナー達が来たせいで、これから夜は変な気分になってしまいそうだ。

    エレン「・・・なぁ、アニ?」

    アニ「んー?」

    彼女の返事は間伸びしていて、緊張感は見出せない。

    洗濯物をたたみつつ、視線だけこちらによこしてきた。

    アニ「どうかした?」

    エレン「あの、さ・・」

    アニ「うん?」

    エレン「今日お前って・・・大丈夫か?」

    アニ「ん・・・?何が?」

    エレン「えーっとだな、つまり・・・」

    アニ「えっ・・と・・・?」

    エレン「・・・お前と、シたい」

    アニ「・・・!」
  136. 136 : : 2015/12/09(水) 20:44:18
    ーときは戻って数時間前

    エレン達がまさかゴムを挟んで大真面目に話しているとは露知らず。

    アニとベルトルトは街に出ていた。

    ベルトルト「いや、ゴメンね2人の時間を邪魔しちゃって」

    アニ「そう思うならちゃんとライナー止めてよ・・・」

    ベルトルト「ライナーが言い出したら聞かないのは、アニだって知ってるでしょ?」

    共感と落胆の混じったため息をひとつこぼし、話題を変えた。

    アニ「そういえばライナーいないのって珍しいね」

    ベルトルト「いつも3人だったからね」

    アニ「"だった"・・・か」

    ベルトルト「仕方ないさ ずっと一緒に居られるわけじゃない」

    アニ「・・・ずっと3人でいられると思ってた」

    ベルトルト「アニ・・・」

    アニ「分かってたけどさ、昔は想像もつかなかったし」

    ベルトルト「・・・浮気でもしてみる?」

    アニ「それは無いね」

    ベルトルト「それでいいじゃないか」

    アニ「え?」

    ベルトルト「僕たちのことだ お爺ちゃんお婆ちゃんになっても、きっと一緒にゲートボールやってるよ」

    アニ「・・・そうかな」

    ベルトルト「それに、その中にエレンも入ってくるだろうし、僕もライナーもきっとお嫁さん連れて行くし」

    ベルトルト「エレンはエレンでミカサやアルミンも連れてくるし」

    そうなったら大所帯だね、と笑うベルトルト。

    それでも本当にそうなれるかと不安が拭いきれない。

    アニ「そうだね・・・」

    ベルトルト「子供も連れてさ、その頃には孫もいるかもね」

    アニ「・・・ふふ」

    ベルトルト「だから、アニ」

    アニ「?」

    ベルトルト「"独り"になんてしないから」

    ベルトルト「たとえ彼氏や夫が居たとしてもと、ずっとそばに居られるのは"幼馴染"の特権だから、さ」

    アニ「・・・アンタ達がいてくれて良かったよ」

    滅多に言わないセリフはしっかりと聞こえたけれど、ハッとした表情から聞かれたくなかったのだろうと察して。

    ベルトルト「ん?なに?」

    とぼけたふりをしてやれば。

    アニ「なんでもない、気にしないで」

    どこかホッとした顔をしているアニにこちらは聞こえないように、心の中で言ってあげた。

    「僕達も、アニがいてくれてよかった」
  137. 137 : : 2015/12/09(水) 21:51:57
    ベルトルト「そういえばエレンはどのくらい居るの?」

    アニ「あと3、4日だって」

    ベルトルト「短くない?もう少しいればいいのに」

    アニ「私もそう言ったんだけどね・・」

    ベルトルト「そっか・・・で、どうするの?」

    アニ「何が?」

    ベルトルト「何が?って・・・だって夜も一緒に過ごしてるわけでしょ?」

    アニ「う、うん、まあ・・・」

    ベルトルト「身体は大丈夫?無理してない?」

    アニ「なんの話か全然分からないんだけど・・・?」

    ベルトルト「え」

    アニ「え?」

    ベルトルト「ひょっとしてアニさん・・いや、なんでもない」

    アニ「そこまで言ったなら全部言いなよ」

    ベルトルト「いや、ホントごめんなさい知らなかったんです」

    アニ「はあ・・?」

    ベルトルト「(この2人まだだったのか・・!)」

    完全に一回二回なんてもんじゃないと思っていた。

    幼馴染としては安心したような、複雑なような。

    しかし高校3年生の最後では相談も受けたし(気絶しかけたが)、エレンが少々かわいそうに思えて助け舟を出すことにした。

    てっきりライナーは避妊を勧めるために突然来たのかと思ったが、どうやら初めてからしっかりするように釘を刺しに来たらしい。

    となると自分よりライナーの方が観察眼が優れていることになる。

    ベルトルト「えっと・・・エレンと付き合って3年目だよね?」

    アニ「ちょうどそのくらいだね」

    そこで何が言いたいのかをアニは察したらしく、こちらをジト目で睨んできた。

    アニ「・・・変態」

    ベルトルト「いや、僕は純粋に心配をしただけだから!」

    アニ「どうだか 彼女いるのにいいの?それで」

    ベルトルト「違うってば!」

    アニ「・・・待たせすぎなのは分かってるよ」

    ベルトルト「・・・」

    アニ「だから、その、今日あたり頑張ってみるよ・・・」

    アニ「でも、その、フシダラだと思われるんじゃないかとか・・・」

    ベルトルト「いや、大丈夫だよ」

    アニ「何を根拠に・・・」

    ベルトルト「同じ男なんだ エレンだって、きっと考えてるハズさ」

    ベルトルト「ただ無理はしないでね」

    アニ「な、なんかありがとう・・・?」
  138. 138 : : 2015/12/12(土) 23:43:27
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    エレン「我慢してたけど・・足りなくなってきちまった」

    アニ「・・・」

    エレン「ダメなら言ってくれ ちゃんと待つから」

    アニ「・・・ううん、大丈夫」

    エレン「え、ま、マジで?」

    アニ「聞き直さないで・・・タダでさえ恥ずかしいんだから・・・」

    エレン「わ、悪い」

    アニ「でも、ちゃんと避妊は・・・」

    エレン「それなら心配ねえ ライナーに貰った」

    アニ「・・・なんでライナーそんなの持ってるの」

    エレン「こいつを届けるために来たようなもんらしい」

    アニ「相変わらず何考えてんだか・・」

    エレン「まあまあ・・・それで、ほんとに・・・」

    アニ「私だって・・そういうこと考えなかったわけじゃないし・・・」

    エレン「そうか、えっと、あはは・・」

    分かりやすく口角が上がっている。

    嬉しそうな表情と言えば聞こえはイイが、はっきり言えばニヤけているのだ。

    所謂、締まりのない顔である。

    アニ「下心見え見えなんだけど」

    エレン「なっ!失敬な!」

    アニ「それはいつものことか」

    エレン「そ、そんなことないだろ!?」

    アニ「ふふ」

    エレン「何その笑い!?」

    アニ「先、シャワー浴びるから待ってて」

    あいつ処女だよな、でもその割には落ち着いてるし・・・。

    男女では貞操概念が異なるというがこういうことか?などと下世話なことを考えいるうちにアニは浴室へと向かう。

    アレ、これはもしかしてぬか喜びか?などと悪い方へ想像が転がっていく一方、そんなことはないと自分に言い聞かせたりもした。

    それが杞憂だと分かるのはそう遅くはないのだが、目先の事しか目に入らない彼にとってこれは重要事項である。

    そして現在エレンの頭の中を占めるアニはアニで、これからのことで頭がいっぱいだった。
  139. 139 : : 2015/12/13(日) 07:05:33
    シャワーの蛇口を捻って水を止めてもポタリポタリと暫く雫が落ちてくる。

    身体を入念に洗い、鏡を見てチェックをしたところだ。

    1人で入るには少しばかり大きい浴槽はやっぱり今日もやや大きく見えて。

    アニ「(あ、順序逆かな・・・?)」

    そういえば心の準備ができたら一緒にお風呂に、などと言った気がしてきた。

    いや、絶対言った。間違いない。

    アニ「(大胆っていうか・・なんか色々恥ずかし・・・)」

    1人で顔を赤らめて、かぶりを振って、また考え込んでの繰り返し。

    2分ほどかけて、今更発言を悔いても仕方あるまいという結論に至り、風呂場を出た。

    装備(いふく)一式を身につけ、その扉を出た。

    ウダウダしててはエレンを待たせてしまうし、自分の決めた覚悟も揺らいでしまいそうだったからだ。

    ーーー

    ーー



    エレン「じゃ、俺も借りるぞ 寝んなよ?」

    アニ「シャワー浴びたばっかりなんだから眠気なんてないよ」

    エレン「ならいい!」

    そう言って駆けていったエレンを苦笑しながら見送って、部屋に1人になればキンチョーしてくる。


    誰かいるわけでもないのに、姿勢を正して正座してしまうあたり、重症だ。

    すんすんと自分の香を確認したり、贅肉は無いかと確認したり、落ち着かないったらありゃしない。

  140. 140 : : 2015/12/13(日) 22:22:46
    出てきたエレンは何故だか少し冷たい気がした。

    物理的な意味で。

    それに気づいたのはエレンに手を握られて寝室まで連れて行かれるときだった。

    アニ「な、なんでこんな冷たいの?」

    エレン「え?あ、水浴びたからな・・」

    アニ「なんで?お湯出なかった?」

    エレン「いや、なんかもう色々ヤバかったから一旦落ち着こうと・・・」

    アニ「・・・期待しすぎ」

    エレン「そんな目で見ないで 泣きそう」

    軽口を叩けたのもそれまでで。一度寝室についてしまえば、そこはもういつも使ってるとは思えない淫靡な場所にしか思えない。

    大きめのベッドが尚更その感想をかきたてた。

    エレン「(ヤバイ、緊張ヤバイ)」

    アニ「(心臓がうるさい・・・)」

    ベッドを目の前に立ち尽くす2人。

    最初にアクションを起こしたのはエレンのほうだった。

    動機は"こういうのは男がしっかりリードしてやらなければならない"と言われていたからである。

    エレン「ほら、来いよ」

    先にベッドにあがってポンポンとシーツを叩いて促せば、コクリと頷いてアタフタと急いでこちらに来る。

    エレン「毎日このベッドで寝てるのか?」

    アニ「え?あ、うん・・」

    エレン「デカくてなんかエロいな」

    アニ「アンタの頭はそんなのばっかか!」

    エレン「そうだよ」

    即答すれば顔を赤くして「変態」と一言。

    エレン「今からそういうことするんだから仕方ねえだろ?」

    問いかけても無言だ。無言は肯定だと分かっているのでニヤリと少しだけ笑った。

    エレン「できるだけ優しく頑張るから」

    小さく頷いたのを確認してから、ゆっくりとアニを押し倒した。

    今度は震えない。もう、大丈夫だ。
  141. 141 : : 2015/12/13(日) 22:23:58
    アニ「エ、エレン・・・」

    エレン「・・・」

    苦しくないように体重は相手の身体に乗せず、アニの身体に四肢で半分またがる姿勢になる。

    シーツに縫い付けるのは片腕、それも利き腕でない左手だけだ。何かあれば手刀で気絶でもさせてくるだろう。

    それがないのをいいことに自分の唇を、彼女の下ろされた髪をかきわけて露わになった首筋に落とす。

    アニ「あ・・・」

    エレン「アニ・・・」

    首筋から鎖骨の方へと這わせていくが、着たままの服は勿論邪魔になるわけで。

    最終確認・・・というより覚悟を問うように聞いた。

    エレン「・・・いいんだな」

    アニ「うん・・・エレンがイイ」

    もう既に息が上がり始めてる彼女がそれでも即答してくれたことが何よりも嬉しい。

    服の中に手を忍ばせて、上半身を優しく撫でるように這わせる。

    こそばゆそうに身をよじるアニが可愛くて目を細めれば、視線を逸らされてしまった。

    ゆっくりと服を脱がしていくのが恥ずかしくてたまらないらしい。

    アニ「・・早くしてよ」

    エレン「ハハ・・悪い、見惚れてた」

    そう言えばバカ、と額を人差し指で優しく突かれた。

    自分とアニが高校生だったときにたまたま見てしまった腰のくびれも隙間からわずかに覗く色気のある水色のブラ。

    エレン「・・色っぺえ」

    アニ「どこ見て言ってんの・・・」

    一旦手を離して完全に服を脱がせ、自分と彼女のありのままの身体を隔てるのはブラだけとなった。

    ブラを取り去って見れば、ふっくらと形のいい胸は横たわっていても形を崩すことなく、綺麗なまま。

    思わずゴクリと喉を動かせば顔を更に紅くして腕で隠そうとする。

    エレン「隠すなよ、勿体ねえ」

    アニ「う・・・」

    手を重ねて動かせば綺麗な薄桃色の乳頭が覗く。

    身体のラインに沿うように手を這わせていく。

    夢にまで見た2つの丘陵を目の前にして高鳴りを抑えきれない。

    しかしそれを目の前にしたらそれを汚してしまう、歪ませてしまうと思い自然と異常なほどのソフトタッチとなってしまう。

    極力優しく包んで、揉むというにはあまりに弱く、図らずも人差し指と中指の間に位置した乳頭が指に掠る度に彼女の甘い声が聞こえてくる。

    アニ「んん・・・」

  142. 142 : : 2015/12/13(日) 22:26:43
    それでも我慢の限界は着々と近づいていて、現にエレン自身はもう熱く滾っていた。

    パンツの材質的に外観ではまだぱっと見分からない程度ではあるが、それも時間の問題だろう。

    思わずぱくりと蕾を口で含めば「んんっ!」と思わずといった具合に高い声が聞こえてきた。

    ハッと口を塞ぐもエレンの耳にはとうに届いており、口角が上がる。

    それを見て


    アニ「アンタの触り方のせいだよ・・」

    エレン「お褒めにあずかりまして」

    アニ「褒めて・・ない・・!」

    顔は羞恥のせいだけでなく紅く染まっている。

    胸を自分なりに堪能したところで手は本能に従って自然と下へ向かう。

    腿を撫でつつまだ手を一切つけていないショートパンツの隙間からギリギリで触れていく。

    無意識だろうが、膝や腿を擦り合わせ始めた。

    アニ「イジワル・・・」

    エレン「だっていちいち可愛いから」

    余裕ぶっているように見せたいのは男の性で。

    今のアニにはそんな狙いを見据えられるような余裕もない。

    アニ「・・・慣れてる」

    それでも誤解をされたくない為イマイチSにはなりきれない自分がいた。

    エレン「言ったろ 俺は今は童貞だって」

    アニ「嘘、でしょ」

    エレン「耳、見てみなって」

    そう言って顔を近づければ閉じられた大きめな眼を薄く開いてこちらに向けて、思わぬ反撃をしてきた。

    まさかそのままカプッと耳朶を優しく咥えてくるなど誰が想像できるだろう。

    エレン「・・!」

    アニ「紅く、なった」

    そう言って勝ち誇ったというには少々似合わない、妖艶な笑みで笑いかけてくる。

    エレン「このヤロ・・・」

    そう言って先ほどより指を深く入れてショーツと肌の間の際どい縁をなぞればまた小さな声で啼き始める。

    そこから少し進めては退いて、また進んで退いてを繰り返していく。

    アニ「うぅ・・ん・・・」

    エレン「(これが・・・)」

    指先の感覚から察するに脚の付け根はぷくりと膨れていて、周りは薄い茂みに覆われている。

    視認したわけでは無いが、今の年齢ではそれだけで想像には十分すぎるほどの判断材料だ。

    アニ「エレン・・ちゃんと・・!」

    エレン「ああ・・じゃ、腰をすこし浮かせてくれ・・」

    こちらももう爆発寸前だ。加えて恥じらいを込めた催促。

    耐えろという方が無理である。これで「ちゃんと言わないと・・」なんて余裕がどこから出てくるだろうか。

    細い脚を辿って下ろせば普段は絶対見られない光景が広がっているわけで。

    やっぱり動きを止めて見入ってしまう。

    アニ「イイ加減に・・」

    エレン「綺麗だよ スゴく」

    アニ「ぅ・・・」

    本音を零せば非難は途切れ、また眼をぎゅっと閉じて顔をそらせる。

    もちろん身体の熱は誤魔化せていない。

    つつっと中心を指で辿れば、男子とは全く異なるその女性たる部分であることを認識せざるをえない。


  143. 143 : : 2015/12/13(日) 22:27:11
    アニ「んんっ・・・ッ」

    エレン「(え、と・・・どうなってんだ・・?)」

    イケナイ本やネットで得るようなにわか知識しか持ちあわせていない自分では痛がせてしまうかもしれない。

    そんなことを頭の片隅で思うが、本能が遥かに勝る。

    左手は彼女の秘部をショーツの上から(まさぐ)りつつ、顔を再び上半身の方へ持って行った。

    アニは少し背が伸びており、以前のようにすっぽりとはいかないが、ちょうど頭と頭が並ぶ位置だ。

    首の後ろに腕を回せば艶かしく身体を時折揺らす彼女は気配を察して眼を開けた。

    アニ「・・・」

    声を出すまいと唇を噛んでいるのが分かる。

    エレン「噛むなよ 傷ついちまうだろ」

    アニ「・・いま、の、声聞かれ、たく、ない」

    我慢しながら言うというのは本当に性質(タチ)が悪い。

    エレン「ほらアニ、口開いて」

    反抗心からなかなか開いてくれないが、回した右手で上を向く胸の蕾を摘んでやれば思わずといった具合に声が漏れた。

    アニ「あっ・・・」

    それを見逃さず、彼女の下唇を自身の唇で覆う。

    啄むように何度も角度を変えていると右手への意識は疎かになれど、上に下に刺激を受けるアニもそれどころではない。

    一旦離れてしっかりと唇を合わせ、舌で控えめにきっちり閉じられたそこをノックすれば無用心にも開かれる。

    アニ「んぅ・・!?」

    予想外の感覚に戸惑いを隠せないアニ。

    彼女の小さく、熱い舌は狭い口内を逃げまどう。

    が、一度触れ合えばそこからは止まらない。

    アニ「ん・・んん・・・」

    戸惑いつつも自分からも舌を絡めて、このなんとも言えない満たされた気分を満喫する。

    口の中からはクチクチと生々しい音が聞こえてくるが嫌悪感はない。

    かつてその日に初めて知った先輩にやられた時とは大違いだ。

    この先の事を期待している、という点でも。

    アニ「(クラクラしてきた・・)」

    呼吸が辛くなってきたところで、ちょうどエレンを顔を離した。
  144. 144 : : 2015/12/13(日) 22:28:19
    舌と舌を透明な糸が繋いで、ぷつりと途切れる。

    かつてのバスケの走り込みの時と同じくらいの息の切れ方だ。

    エレン「はっ・・・ヤラシ」

    アニ「あんたも・・ダラシない」

    エレン「まだ直にも触れてねえんだぞ?」

    そう言って薄い空色のショーツの上から指を少し食い込ませればクチリと確かな水音がする。

    んっと反応を見せたかと思えば今度は向こうが自分の猛りに手を重ねてきた。

    エレン「あ・・・」

    アニ「情け、ない・・声出てる」

    どこで覚えたんだこんな事。

    まさか街で会ったアニのあの友人たちか。

    そんな悪態をついている間もアニの手は自身を優しく撫でてくる。

    まるで慈しむようで、もうはち切れそうなのが自分でもわかった。履いたままのパンツで痛くなってきた程だ。

    それを知ってか知らずか、彼女の空いている手は自分のパンツを脱がしにかかる。

    エレン「お・・オイ」

    アニ「私ばっかり脱ぐのは不公平・・
    でしょ?」

    エレン「一体何処で・・・」

    全部脱げば自分もボクサー1枚だけだ。

    先ほどと違って抑えられる素材ではないため、そそり立っているのが丸わかりだ。

    エレン「(結構恥ずかしいなコレ・・)」

    そんな事を思いつつ、エレンもアニのショーツをサッと脱がせれば、僅かな水音を立てつつ糸を引く。

    エレン「あ、糸引いた」

    ぼそりと呟けばスパンと状況に似合わない程しっかりとひっぱたかれた。

    アニ「実況・・するな・・ッ・!」

    アニのそこは想像に違わず薄い金の茂みで。

    初めて女性のソコに手を重ねて中指でスジに這わせれば、またヌチリと淫猥な音が立った。

    アニ「うっ・・・」

    さすがのアニも自分の手を動かすまで意識が回らなくなってきたらしい。

    エレン「手、止まってるぞ」

    挑発するように言えば、負けず嫌いなところがあるアニはすぐに乗って、再び手を動かす。

    それでもやはり先ほどよりも弱々しく、時折止まる。

    エレン「ホラ」

    彼女の主張し始めている花芽をツンと()つけば、ビクンと身体を少し反らせた。

    アニ「ふうっんッッ・・!」

    エレン「(すげえ反応だ・・・)」

    すると彼女は自分の肉棒を辿るだけだったその手を先端に移動させて、汁の滴るその場所を親指の腹で撫で始めた。

    エレン「うぉ・・・」

    その声を聞いて手応えを得た彼女は、独特のぬめりが指に付くのも厭わず、執拗に責めてくる。

    此方の分け目をなぞられればゾクゾクと快感が背中を走る。

    エレン「練習とか、した?」

    アニ「んなわけないでしょ、バカ・・」
  145. 145 : : 2015/12/13(日) 22:28:39
    しまいには手のひら全体でこねくり回されて、もう腰がガクガク言ってしまいそうだ。

    エレン「(くそ・・・)」

    負けじと此方も指の腹で花芽を刺激してやれば今度は向こうが喘ぐ番。

    アニ「うう・・くぅ・・・」

    お互いこういう場面でも何故だか張り合ってしまう節がある。

    皮の上からキュッと強めに摘んでやれば一際高い声をあげ、またハッとして空いている腕で口をふさいだ。

    エレン「もっと声、出せって」

    アニ「・・イ、ヤぁ」

    エレン「我慢すんな」

    アニ「この・・!」

    それでも恥じらいからか、触り方が遠慮がちだ。

    エレン「コレならアニの方が早そうだな」

    ニヤリと口角を上げて言えば、言葉通りムッとして、それでも躊躇いつつ手を上下に動かしてさすってきた。

    エレン「(あー・・・コレやべえ)」

    ふっかけておいてなんだが、もう触られただけで果ててしまいそうだ。そんな情けないところは見せたくない。

    指二本で力を少々入れて撫でれば、ビクビクと時折身体が跳ねるように反応を見せる。

    エレン「イイ?」

    アニ「知ら・・ない・・・!」

    何かに怯えるようにイヤイヤと首を振る。

    思わず、だろうがキュッと手の中のソレを少し強く握られた。

    エレン「うっおッ!」

    アニ「ん・・あ・・ゴメン」

    危なかった。こういう不意打ちが一番怖い。

    エレン「いや、大丈夫」

    もう長くは持たない。そう察して指を中に入れようとすれば、少なすぎる量で無い粘液が導いた。

    アニ「う・・・」

    エレン「痛えか?」

    アニ「な、んか・・・変な、感じ」

    エレン「そうか」

    少しずつ出入を始めれば、苦しさではない感覚で声が漏れ始める。

    アニ「あ・・・ぅ・・」

    エレン「・・・ほんとお前可愛すぎ」

    本音が漏れればやっぱりまだキッと睨みつけてくる。それすらも愛おしくてもうイロイロ限界だ。

    人差し指に加えて中指も入れてやればもうそんな考える余裕も奪われて、目に薄い膜が見え隠れしてきた。

    エレン「辛かったらちゃんと言ってくれよ」

    アニ「辛く・・・ない・・」

    エレン「・・無理はすんなよ?」

    アニ「違う・・これじゃあ・・・」

    エレン「ん?」

    アニ「これじゃあ、エレンが、気持ちよく、ない」

    頭のどこかが爆発したのではと思った。

    こんなカワイイこと言われて我慢なんてできるはずもない。

    エレン「それ反則・・」


  146. 146 : : 2015/12/13(日) 22:29:26
    アニの手を自分の分身から優しく離すと、我ながら呆れるほど速くゴムを装着した。

    初めて着けるので、モタついて萎えさせたらどうしようという心配も杞憂に終わる。

    エレン「痛かったら、肩でもどこでも噛むなり握りしめるなりしろよ」

    そう言ってから身体を沈め、数回の往復の後、挿入すれば普段でもそうは見ない苦悶の表情を浮かべる。

    背中に回された腕はより強く力が込められ、爪が僅かに食い込んできている。

    チリッと痛みが走るが、そんなものとは比べ物にならない痛みに耐えているのだ。

    罪悪感がこみ上げるが、キツく締めてくるその快感に抗うのでこちらも手一杯だ。

    エレン「(クソッ・・やべぇ・・!)」

    アニ「ェ・・ェレン・・!」

    ゴツゴツとした男の身体である自分と、柔らかな身体のアニ。

    彼女の豊かな胸は自分と彼女の身体で挟まれ、形を歪めている。

    中で熱く、うねりを伴って刺激を与え続けてくるのを我慢しつつ、彼女の苦痛の波が通り過ぎてくれるのを待った。

    エレン「大、丈夫か・・?」

    アニ「だい、じょう、ぶ・・だから」

    生理的な涙を浮かべたまま微笑んでくるもんだから、思わず膣内の肉竿もビクリと反応し、それを直に感じたアニがまた1つ呻いた。

    アニ「ゆっくりなら、イイから」

    エレン「あぁ・・」

    正直、ゆっくりしたのなんて最初だけだった。

    途中からは我も忘れて腰を振った気がする。

    そんな曖昧にしか思えないほどだった。

    エレン「はっ・・!はぁ・・・!」

    アニ「うぅ・・・いっ・・」

    肌と肌がぶつかり合う音と、水っぽいペチペチという音。

    飛び散る液は僅かに、しかし確かに血の混じった薄い赤色で。

    自分にできたことは手を伸ばすアニに応えてより密着するように身体で抱きつきあったくらいのものだった。

    アニ「エ・・レン・!」

    エレン「やべぇ、もうッッ・・!」

    自分が果てる直前に見たのは、自惚れでなければ、泣きながらも本当に嬉しそうな彼女の美しい顔で。

    聞こえたのは

    アニ「エレン、好きッ・・」

    ーーー

    ーー



  147. 147 : : 2015/12/14(月) 22:05:19
    次に目を覚ました時、エレンはまだ瞼を閉じていた。

    その頬に触れようと手を伸ばすと、肩が異様にスースーしてぶるりと震えてしまった。

    それもそのはず布団から出た腕も肩も何も纏っていないのだ。

    アニ「ッ!?」

    それだけじゃない。一糸纏わぬ姿である。

    それは目の前のエレンも同様で、無駄な肉のない、引き締まった身体が布団から出ていた。

    途端に恥ずかしくなり布団を引き上げて自分の身体を隠す。

    アニ「(・・本当に私たち)」

    足の間もその奥も、まだ少しだけヒリヒリと痛むが、あの時と比べればちっぽけなものだった。

    ちゃんとゴムをつけてくれたから自分の中には何も残ってはいないはずなのに、どこか満たされている気がして、今一度布団を口元まで引き上げる。

    エレン「ん〜・・・」

    アニ「あ・・・」

    肌と布団が触れ合っているため、違和感をすぐに察知したのだろう。また腕を出して、それが彷徨った。

    その後突然、腰に両手を回して引き寄せるものだから、驚いて固まってしまう。

    お互い何も着ていない為、当然ソコとソコが直接触れるワケで、もう恥ずかしくてたまらない。

    アニ「〜〜ッ!」

    エレン「んん・・・?」

    声にならない悲鳴が聞こえたのか、瞼を重たげに上げてこちらをじっと見つめてくる。

    アニ「あ、あの・・エレン・・・」

    エレン「ん おはよ」

    そう言って右手は腰に回したまま、左手で後頭部を包んで胸に抱き寄せた。

    ただでさえ朝が弱いために働かない頭は、そんなことされたためにもう処理が限界だ。

    アニ「うぅ・・・もう・・・」

    心の中で非難するアニに気づかず、エレンはまたスヤスヤと夢の中。

    その落ち着いた彼の寝姿とは裏腹に、主張し始めた下半身のソレに気づいて、また顔が真っ赤に染まったのは誰も気付かなかった。
  148. 148 : : 2015/12/19(土) 20:55:01
    ーーー

    ーー



    エレン「ん・・・あり・・?」

    意識が定まると、どうやら隣にあるはずのぬくもりが無いらしい事に気づいた。

    エレン「アニ・・・?」

    とりあえず服を着て、のそりとまだ少しばかり重い身体を引きずって寝室を出ていくと

    エレン「あれ・・・イイ匂い」

    アニ「あ、エレンおはよ」

    エレン「お、おう、おはよう」

    いつもと変わらない様子のアニを見て、拍子抜けというか残念というか。

    あれ?俺昨日アニと寝たんだよな、と不安になるも、

    アニ「(いた)た・・・」

    腰をさすっているのを見て一安心。

    アニ「な、なんでニヤニヤしてるの・・」

    エレン「いや、夢じゃなくてよかったな、って」

    アニ「朝からそういう話はナシ!」

    エレン「夜ならイイんだな?」

    アニ「そ、そういう事じゃない!」

    エレン「それはともかく、洗い物は俺がやるから」

    アニ「イイの?」

    エレン「無理させたしな」

    だから!と怒るアニを笑いながら諌めて一緒に朝食をとった。

    いつになく気分のイイ朝だった。

    ーーー

    ーー



    それからは本当にあっという間に過ぎ去ってしまった。

    その夜以降も誘ってみたが、頑なに首を縦に振らなかった。

    話が平行線になった時に、どさくさに紛れて折衷案として風呂を一緒にと提案したがあえなく拒否。

    少し凹めば"嫌なわけではない"と必死に演説してくれたのでまたの機会に必ずと約束までこぎつけた。

    我ながらなんという下心だろう。
  149. 149 : : 2015/12/19(土) 23:52:10
    そんなわけで今日は我が家に帰る日である。

    遠慮はしたのだが見送ると言って聞かないので駅まで一緒に来た次第。

    エレン「また盗撮されても知らねえぞ・・・」

    アニ「大丈夫だって」

    エレン「俺は良くねえんだけどなぁ・・」

    アニ「変態」

    エレン「今のは純粋な心配だろうが!」

    アニ「"見てイイのは俺だけだ!"みたいな事考えた?」クスッ

    エレン「今回は考えてねえよ!」

    アニ「ふーん・・・」

    エレン「何だよ!?文句あんのか!?」

    アニ「なんかそれはそれで腹立つ」

    エレン「何だそりゃ・・・」

    ーーー

    ーー



    エレン「んじゃ、世話になったな」

    アニ「次2人で過ごせるのは冬かな?」

    エレン「おう!クリスマスは絶対2人な!」

    アニ「分かった 絶対行くよ」

    エレン「そんときは風呂

    バシッ!!

    ーーー

    ーー



    アニ「ただい・・・」

    誰もいなくなったその部屋。

    今朝までの騒がしさは嘘のようで、しんと静まり返っている。

    アニ「(帰っちゃった・・・)」

    高校卒業前と比べて切なさこそ少ないが、やはり少々寂しい。

    次に会えるのはミカサ達も含めて。また2週間もすれば逢えるのだが、2人きりとは意味合いも変わってくる。

    アニ「(でも大丈夫)」

    それでもツラくないのは肉体的にも精神的にも繋がりが強まった事にある。

    まだ一回ではあるが、それは大きな意味を持っていた。あんなに満たされた気分を伴った痛みなど、この先出産する時くらいだろう。

    そんな事を勝手に想像して、そんな自分が恥ずかしくなってくる。

    アニ「(どうなるのかな、この先)」

    自然と頬が緩んで、早く会いたいなと、またエレンの事へと思考は飛んだ。
  150. 150 : : 2015/12/23(水) 19:19:21
    ーそのまた2週間後

    ミカサ「久しぶりアニ」

    アニ「ミカサ!」

    ミカサ「少し背が伸びた?」

    アニ「お母さんと同じこと言ってる」

    ミカサ「私もお母さんだから当然」

    アニ「誰がお母さんだって?」クスッ

    エレン「ジャンのその謎の刈り上げも変わってねえなぁ?」

    ジャン「お前のいつもの強面もな!」

    エレン「モノホンの馬に髪の毛を毟らせてやろうか?おおん?」

    ジャン「上等だよコラ リアルな血眼にしてやらぁ」

    ライナー「お前ら久々の再会に何で殺気立ってるんだよ・・・」

    ベルトルト「相変わらず仲良いね」

    アルミン「あれ?クリスタ!?」

    クリスタ「やっほーアルミン!久しぶり!」

    ユミル「残念だったなライナーさんよぉ
    クリスタと2人きりにはなれねえぞ?」

    ライナー「か、構わんぞ?ハハハ!」

    ユミル「(何だこいつ・・・動じていない!?)」

    ライナー「(ユミルも一緒・・・ストーカーだろ此奴・・・!)」

    アルミン「(ユミルNICEだよ!)」

    ベルトルト「ユミルもクリスタとは恋人みたいに仲良いね」

    ユミル「馬鹿野郎ベルトルさん 将来の私の嫁だぞ?」

    クリスタ「エヘヘ〜ユミル、お断りします!」

    ユミル「な、ナニィ!?約束が違うぞクリスタ!!」

    クリスタ「婚約した覚えは無いよ?」

    ユミル「あの日の誓いの行為を忘れたのか!?」

    クリスタ「わ、私はまだしょz

    ライナー「うぉぉぉおおクリスタ!イケない!それ以上はイケない!!」

    エレン「へークリスタってまだ

    ミカサ「エレン・・・」

    アニ「エーレーンー・・・」

    エレン「ふ、復唱しちゃダメ・・・?」

    ーーー

    ーー

  151. 151 : : 2015/12/23(水) 19:33:19
    エレン「何で男女で別れるんだよ アホかお前ら」

    ジャン「ミカサぁ・・・」グスッ

    アルミン「仕方ないよ 向こうは4人、こっちは5人で奇数だし」

    ベルトルト「別れるならこうだよねってクリスタに言われちゃったし」

    エレン「絶対俺らをイチャつかせないためだろコレ・・・」

    ライナー「お前らはいいよな!俺らなんかイチャつく相手も居ねえんだぞ!」

    アルミン「そうだよ!そんな贅沢な悩みはお父さんが許しませんよ!」

    ライナー「そうだバカヤロー!お前たちにはまだ早い!」

    エレン「(避妊具(ゴム)渡してきた奴が言うかソレ・・)」

    ーーー

    ーー



    ジャン「なぁエレン・・・」

    エレン「んー・・・?」

    ジャン「お前らはどこまで進んでるんだ・・・?」

    エレン「結婚目前」

    ジャン「マジかー・・・マジで!?」

    ライナー「・・・」

    ベルトルト「あー・・・」

    アルミン「」

    エレン「・・・1回だけだけど」

    ジャン「そうか・・・もう・・・」

    エレン「変な想像したらコロス」

    ジャン「俺にはミカサがいるからしねえよ・・・」

    ライナー「その様子じゃジャンはまだなのか?」

    ジャン「・・・情けねえよな」

    ベルトルト「そんな事ないよ・・・待たせてるのかもしれないけど」

    ライナー「不安を煽るなベルトルト」

    ジャン「ムード作れねえし、アレ以降愛想尽かされてるんじゃねえかとか・・」

    そうして長々とジャンの嘆きが展開されている頃。

    女子グループでも。

    ユミル「で、どうなんだ?ミカサ、アニ」

    アニ「何が?」

    ミカサ「?」

    ユミル「言わせるなよ君たちぃ・・・」

    ユミル「イクとこまでいったのか?お?」

    クリスタ「ユミル、セクハラだよ・・」

    ユミル「んー?別にいやらしい事だとは言ってねえだろぉ?」

    クリスタ「なっ・・!」

    ユミル「いやらしい事だけど」

    クリスタ「ユミルー!!」

    ミカサ「ユミル・・・貴女って人は」

    アニ「・・・」ビクビク

    ミカサ「アレ?アニ・・・?」

    アニ「んッ!?い、いやっ!あの!別にそういうわけじゃ!誘ったとかそういうのじゃなくてアレは!」

    ミカサ「ア、アニ?」

    ユミル「ほほーう・・・アニさんがねぇ」

    アニ「ちがっ・・・うなぃ・・ケド」

    クリスタ「ホント!?アニ!!」ガタッ

    アニ「う、うう・・何この羞恥プレイ・・・」

    ミカサ「いや、アニが勝手にボロを出したっていうか・・・」

  152. 152 : : 2015/12/23(水) 19:56:56
    ユミル「んで?どんな事してんの?女◯盛りとか?」

    クリスタ「そんな事しないよ!◯◯◯くらいまででしょ!」

    ミカサ「あの、2人とも・・内容がえげつないんだけど・・・」

    アニ「まだ1回だけ!」

    ミカサ「アニ、声大きい・・・」

    ユミル「となるとフ◯◯くらいか?」

    クリスタ「ユ、ユミル!」

    ミカサ「クリスタ、さっき自分が言ってた事の方がスゴかった」

    アニ「そ、そういうみんなは?ホラ!ユミルとか!」

    ユミル「アニさん、それはセクハラですよ」

    アニ「どの口が言うの?どの口がぁ!」

    ユミル「い、いひゃい!いひゃい!!」

    アニ「全く・・・」

    ミカサ「私はまだ」

    アニ「へ?あ、そうなんだ・・」

    ミカサ「やはりあの時シめ過ぎたのだろうか」

    クリスタ「何したの?」

    ミカサ「ジャンを簀巻きにして太平洋に投げ込んだ」

    ユミル「ソレだな」

    ミカサ「う・・・」

    アニ「ミカサ優しすぎだよ・・・」

    クリスタ「ええぇ・・・アニ・・・?」

    ユミル「まあなんにせよ奥手なんだろ?エレンも大概だと思ってたが」

    ユミル「ったく男子は揃いも揃ってフニャ◯ンばっかか」

    ユミル「いいかミカサ 焦らなくてもいいんだぜ?そういうのは男が言うべきモンだ」

    ユミル「あのミカサバカのジャンなら嫌でもスグに飢えて襲ってくるよ」

    ミカサ「ま、全く嬉しくない励まし・・まあ、あの、ありがとう・・・」

    クリスタ「ひょ、ひょっとしてユミルも既に・・・?」

    ユミル「安心しろクリスタ 私はお前のためにしっかり純潔を守ってるぞ!」

    クリスタ「あ、アハハ・・・」

    ーーー

    ーー



    場所は移って予約しておいたホテルへ。

    ちょっとした宴会場で再会記念パーティーである。

    当然未成年なのでお酒は飲んではいけない。が、タガの外れたユミルに加えてまさかのアルミンまでが半狂乱で・・

    ミカサ「あ、頭がボーッとす、りゅう・・」

    ジャン「大丈夫か!?ミカサ!!」

    アニ「アレぇ?私を置いてどこ行く気エレンきゅうん?」

    エレン「ど、どこにもいきませんってアニさん」

    アニ「なぁにズルズル下がってんの?こっち来な」

    エレン「は、はい・・」

    アルミン「どいつもこいつも羨ましいんだよぉ!あ、生2つ追加」

    ライナー「俺なんかよぉ・・大学クリスタと一緒なのによぉ・・・」

    ベルトルト「大丈夫だって 今日なんか特にチャンスじゃないか」

    ライナー「そんな事言ったってよぉ・・俺図体に似合わずチキンだから・・」

    ベルトルト「頑張んなよ・・・」

    ユミル「あぁん!?クリスタはやらねえっつってんだろこのタコ助!!」

    アルミン「そうだそうだー!僕が貰うゾォ!!」

    ユミル「引っ込んでろコノヤロー!私の嫁だぁぁ!」

    クリスタ「私はぁ・・・みんな好きだよぉ〜・・・」

    クリスタ「ライナーも・・ユミルも・・ア、ア・・・誰らっけ・・・?」

    アルミン「クリスター!アルミンだよ!僕アルミン!ぎゅーっと抱きしめて!」

    ユミル「帰れ似非(エセ)雪だるま!」

    とまあ騒がしい事この上ない。

    この騒ぎは約5時間半にわたって繰り広げらることとなる。

    ーーー

    ーー

  153. 153 : : 2015/12/23(水) 20:10:07
    アニ「しかし暑いねこの部屋・・・」

    エレン「だから脱ぐなって!お前露出癖でもあんのか!?」

    アニ「馬鹿やりょおぅ!全裸になるのはエレンの前だけだぃ!」

    エレン「お、おう・・・じゃなくて!つーかもう酒は飲むなっつったろ!」

    アニ「知るかよぉ!アルミンコンチクショーが注いでくれたの飲んだだけ!」

    エレン「アルミン!」

    アルミン「酒でもねえとやってられねえんだよぉ!ぁぁああ!」

    エレン「(ダメだ・・・考える事を放棄している・・!)」

    アニ「ねえエレンー?部屋行こう」

    エレン「な、なんでです?」

    アニ「イチャイチャしたーい」

    エレン「そ、それってつまり・・・?」

    アニ「エレンはイヤ?」

    エレン「理、理性ないだろ今!」

    アニ「もうシたことあるんだからいいジャーン」

    ミカサ「いけまへんよぉ・・・認めまへん!」

    エレン「ミ、ミカサ!?」

    ミカサ「アニは私と手合わせするんでひょ?」

    ジャン「アニと浮気なんて許しませんよミカサさーん!!」

    ミカサ「鍛錬しなきゃダメぇ・・・」

    アニ「私とシようってのかい?ミカサぁ・・・」

    ジャン「お願いミカサァ!俺を捨てないでくれぇぇ!」

    ミカサ「ひゃんと構えるの!ホラ!」

    アニ「アレ?あっちの勝負じゃないの・・・?」

    ミカサ「む・・・不満・・?」

    アニ「んー・・・じゃあ折衷案でどっちが彼氏を先にその気にさせるか勝負」

    ミカサ「よくわからないけどまぁソレでいいんひゃない・・・?」

    エレン「おい!?ちょ、待てアニ!みんな見てる!」

    ジャン「俺を捨てないでくれぇ!頼む!金なら払うからぁ!!」

    アニ「れでぃいぃ・・・」

    ミカサ「ごぉ!」

    「「ぎゃぁぁぁああああ!!」」
  154. 154 : : 2015/12/25(金) 20:07:18
    ーーー

    ーー



    エレン「なんだってんだよもう・・」

    ジャン「ミカサぁ・・・浮気なんてヒデェよぉ・・・」

    ライナー「独り身には辛えよぉ・・・」

    アルミン「ほら、しっかりしなよライナー」

    ベルトルト「あ、酔い醒めたんだねアルミン」

    アルミン「お風呂入ったらスグだね」

    エレン「あーあ・・・アニと入りてえ〜」

    ジャン「おい!今ミカサはアニと入ってるんだよな!?」

    エレン「あー?そりゃそうだろー」

    ジャン「ミカサの貞操が危ない!」

    エレン「お前泣き上戸なのかよ・・・」

    ジャン「うぅぅ・・・」

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    アニ「引き分けかぁ・・・一緒にお風呂入りたかったのに・・・」

    ミカサ「ほぇ?いつも一緒(いっひょ)に入ってるの?」

    アニ「ううん、入ってないんだよねこれがぁ」

    ユミル「(コイツ、酔うとこんなオープンになんのか・・・)」

    アニ「この前恥ずかしがらずに誘えば良かったな〜・・・」

    ミカサ「大胆・・・」

    ユミル「(ミカサはぶれないが、ろれつが回らなくなって思考能力が低下か)」

    クリスタ「えへへ〜・・いいなぁ私も青春したぁ〜い」

    ユミル「(で、クリスタは笑い上戸・・・か?コレは つか)」

    ユミル「お前は高校でもアホみてえにアホ共に言い寄られてたろ」

    クリスタ「やだよぉ〜・・・んーエレンみたいな人がイイ〜」

    アニ「あぁーん?ダメだよクリスタァ!エレンはわーたーしーのー!」

    クリスタ「あー必死なアニカワイイなぁもぉ!むしろアニがほし〜」

    ミカサ「ソレはダメ アニは私の」

    ユミル「おいクリスタ!愛人を堂々と作るんじゃねえよ!」

    クリスタ「私はみんな愛しまーす」

    ユミル「エレンにも劣らねえ天然スケコマシぶりだな・・・」

    アニ「おいこらユミルゥ!エレンのこと詳しいな!まさか関係持ってんのかぁ!?」

    ユミル「お前酔うとホントこの上なく面倒(メンド)くせえな!」

    アニ「友達秘伝で昇天させてヤるぞぉ・・・」

    ユミル「ダメ、おいコラ!おま、その手のワキワキした動きやめろ!オイ!」

    ミカサ「しっかり学習せねば・・・」

    ユミル「ミカサ!お前唯一止め得る人材だろ!何でそっちサイドに・・・」

    クリスタ「私も混ざるー!」

    そこから先はマトモな批判も悪態も出来ず、普通の言葉は出てこなかった。

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  155. 155 : : 2015/12/25(金) 20:38:17
    エレン「・・・何でそんなげっそりしてんだユミル」

    ユミル「ほっといてくれ・・・もう話すのもダルい」

    エレン「んでアニは?」

    本当に疲れきった様子で右手の親指で後ろに横に並ぶ3人を示した。

    ユミル「タッチな あとはアニ頼むわ」

    エレン「あ?あ、ああ・・そのつもりだけど・・・」

    今一度後ろを確認すれば右手で顔を覆った3人が脱力して歩いてきた。

    こちらもユミルほどでは無いにしても何処か疲れているらしい。

    エレン「どうしたんだよ」

    ミカサ「違う、違う あんな濃いとは思わなくて・・・」

    エレン「は?」

    クリスタ「もっと軽いかと思った・・記憶曖昧だけど気づいたら・・・」

    そう言ってクリスタはごめんユミルゥ!と全力で追いかけていった。

    エレン「どういうことだ・・?」

    アニ「エレン、違うの・・・私はノーマルだからホント」

    エレン「話が見えねえんだけど」

    アニ「今夜その気ならいくらでも付き合うから、ホント誤解しないで・・・」

    エレン「何で半泣きなんだよ おいどうした つか酔い覚めたのか?」

    アニ「覚めちゃったの!」

    エレン「き、キレんなよ・・・」

    ーーー

    ーー



    部屋

    アニ「ーというわけで、意識はあったんだけど止められなくて・・・」

    エレン「・・お前あの友達とは絶対飲んだ時に知り合ったろ」

    アニ「私もそんな気がしてきた・・」

    エレン「まあ別にいいけどよ 女子なら でもユミルには明日謝っとけよ?」

    アニ「もちろんです・・・いや、今から行ってきま

    エレン「ダメ それは明日な」

    アニ「何で?」

    エレン「"その気ならいくらでも付き合う"って言ったよな?」

    アニ「いや!それは、あの!」

    エレン「意外と性欲強いのな 俺とタメ張れるんじゃねえか?」

    アニ「そんなことない!」

    エレン「へぇ、ユミルとは出来んのに俺とはダメなのか・・傷付くなぁ・・・」

    アニ「う・・・」

    エレン「イイよな?」

    アニ「ダメ、では、なぃ・・ケド」

    エレン「せっかく俺たちとジャン達は気を利かせてもらったんだ あ、大丈夫 ちゃんとアレは買ってきたから」

    アニ「・・・初めからそのつもりだったんじゃん」

    エレン「帰ってからお前のことしか考えられなかったんだもん 仕方ねえだろ」

    アニ「・・・ホントあんた、私のこと大好きだね」

    エレン「お互い様だろ?」

    アニ「・・・」プイッ

    エレン「2回目だしな 長くなるぞ?覚悟しとけよ」

    アニ「じょ、上等だよ」

    ーーー

    ーー

  156. 156 : : 2016/01/02(土) 21:17:12
    ーーー

    ーー



    翌朝

    アニ「・・・」ゲッソリ

    クリスタ「アニ、なんか疲れてる?」

    アニ「あ、ううん、大丈夫」

    ユミル「う〜ん私たちの作ったチャンスを活かせたようで何よりだなぁ〜」

    アニ「アンタのせいでコッチは!」

    エレン「おっす、おはよー」

    クリスタ「あ、エレン!アニに何かしたの?」

    エレン「ちょっとイチャイチャしてた」

    クリスタ「うらやましー!イチャイチャー!」

    アニはうつむきっぱなしである。

    クリスタは乙女全開でウキウキしているらしい。

    ユミルは昨日の事など嘘のようにニヤニヤとしている。

    そしてミカサはというと。

    エレン「あれ?ミカサは?」

    クリスタ「ジャンと一緒の部屋にしたよ!」

    ニッコリと満面の笑みでいうクリスタと下卑た笑みを浮かべるユミル。

    彼女らなりのジャンの為の采配なのだろう。

    そのチャンスを活かせたのかは後で歩き方がたどたどしいミカサの姿で察することとなった。

    エレン「俺だってさぁ・・・ちゃんと」

    アニ「アレはアンタの・・アレが長かったから・・その!」

    エレン「前戯だけで寝ちまうとは・・」

    アニ「慣れてないんだから仕方ないじゃん!」

    エレン「そこがイイんだけどな」

    アニ「バカにするな!」

    相も変わらず顔を真っ赤にして、食らいついてきて思わず口の端が上がる。

    酔いが回っていたせいもあってか昨日は素直で可愛くて仕方がなかった。

    しかし果てさせて満足したまでは良かったが、そこからクタリと動かなくなり、心配したらスースーと寝息を立てていたのだった。

    生殺しもいいところである。
  157. 157 : : 2016/01/02(土) 21:17:46
    おかげでNTRの趣味もない為、一晩ムラムラと格闘するハメになったのだ。

    アニの抱き枕は気持ち良かったが。

    エレン「クリスマスプレゼントはアニでお願いしまーす」

    アニ「バカ」

    エレン「あぁん!?」

    アルミン「独り身ツラい・・・」

    ライナー「独り身ツラい・・・」

    クリスタ「独り身ツラい・・・」

    そんな話を横で聞いているベルトルトは複雑な表情だが、それに2人が気づく事はなかった。

    ミカサとジャンは一歩進んだ距離感に戸惑っている様子である。

    念のため言うが、彼らはエレン達よりも付き合っている期間は長い。

    それにエレンが気づけば喰ってかかるのだから棚上げもいいとこだ。

    ユミル「イイ加減に惚気を止めろバカップルどもめ」

    アニ「惚気なんてしてない!」

    エレン「何が悪い!」

    ミカサ「な、私達は違うというか」

    ジャン「そ、そーですよねミカサさん」

    アルミン「戸惑い過ぎだよジャン・・」

    クリスタ「今日はスイーツ食べに行くよー!」

    おお!!と歓声をあげる女性陣とライナーにアルミン。

    大人しく微笑むベルトルト。

    そして苦い顔のエレンとジャン。

    エレン「なあジャン・・・コレ」

    ジャン「ああ・・男だけは勘弁だ・・」

    ーーー

    ーー



    エレン「ありがどうグリズダ」

    ジャン「ありがどぉぉ」

    アニ「何でこんなに感動してるのこの2人・・・?」

    ミカサ「さあ・・・?」

    またまたクリスタの提案で、お惚気が止まらない4人とその他独り身+ベルトルトの5人に別れる事となった。

    案の定そのまま桃色空間を展開しだした4人ではなく、その他5人はと言うと。

    ユミル「クリスタ、本当に彼氏いないのか?」

    クリスタ「うん、いなーい」

    ベルトルト「でも大学でもモテてるんでしょ?」

    クリスタ「うーん・・告白される事とか遊びに誘われる事はあるんだけどね」

    ユミル「モテてんじゃねえか」

    クリスタ「でも高校の方が良かったよ
    皆もいたし」

    ライナー「ク、クリスタ・・一応俺は高校からの付き合いだぞ」

    クリスタ「うん!だからライナーにはホント助けられてるんだよ!」

    ライナー「うぉぉおおおおお

    バシッ!!

    ライナー「痛いぞアルミン!」

    アルミン「・・・後輩としてそっち行こうかな」

    ユミル「受験し直すつもりかよ!ダハハ!!」


    ベルトルト「ははは・・・」


  158. 158 : : 2016/01/02(土) 21:18:55
    ーまたまた4人の方へ。

    アニ「ミカサとジャンは夏休みは2人で過ごしたりしたの?」

    ミカサ「うん、とても楽しかった」

    ジャン「どーだエレン」

    エレン「いちいち自慢すんな腹立つ」

    ミカサ「何もしてこなかったけど・・」

    思わず噎せるジャンとアニ、途端に煽るような笑顔を向けるエレン。

    ジャン「昨日はアレだったろ!」

    ミカサ「エレン、ジャンは上手いのだろうか」

    エレン「いや、知らねーよ」

    ミカサ「ねえアニ、エレンはどう?」

    アニ「ど、どうって言われても・・」

    エレン「どうなんだ!?アニ!」

    アニ「何でエレンも喰いつくの!」

    ジャン「どうなんだよア

    すかさず引っ叩くエレン。

    エレン「何でお前も聞きたがるんだよ」

    ジャン「だってよー・・・エレンより下手なんて悔しいじゃねーか」

    そこで途端に顔を上げて、あぁそうかと閃いたように笑顔になる。

    それはもう腹が立つくらい爽やかな笑顔で。

    ジャン「じゃあどっちがそれぞれの彼女を早くイかせられ

    皆まで言わせてもらえず3人同時に叩かれたのは言うまでもない。

    ミカサよりもアニの方が強くぶっ叩いていたのは予想外だったが。

  159. 159 : : 2016/01/02(土) 22:30:38
    そして店を出てからR◯UND1に行き、ボウリングとスポーツを楽しんだ。

    更にカラオケ、その後に解散。

    その頃にはもうその次の日の午前3時過ぎだった。

    そこから送りをベルトルトに任せてアニと別れて新幹線で帰れば既に朝の7時。

    エレン「疲れた・・・」


    だるい身体を引きずってシャワーを浴び、軽装に着替えてベッドに入った。

    エレン「あぁぁ〜・・・お盆だし実家にもすぐ行かなきゃな・・・」

    でも少し遅れてもイイだろう。連絡だけいれておこうと思ったところで意識は身体とともに布団に沈んだ。

    ーーー

    ーー



    カルラ「お帰りエレン」

    グリシャ「おお、お帰り」

    エレン「ただいまー・・・ 変わらないな全然」

    カルラ「まだ半年経ってないんだから当然でしょ」

    クスクスと共に笑うこの雰囲気、改めて帰ってきたのだと実感する。

    久しぶりの家族での夕飯はいつも食べていたものより豪華だった。

    相変わらずチーズハンバーグは美味しくて涙が出そうなほどである。

    カルラ「それで、アニちゃんとはまだ付き合ってるんでしょ?」

    グリシャ「まだ続いているのか やるなエレン」

    エレン「どういう意味だよ」クスクス

    カルラ「何かと誤解生む事ばっかするからねエレンは」

    エレン「そんなことねえだろ!?」

    グリシャ「天性の浮気癖か」

    カルラ「誰に似たのやら」

    グリシャ「カ、カルラ?俺は浮気はしてないぞ?」

    カルラ「知ってるわよ ・・・その割には冷や汗出てるけど?」

    グリシャ「チ、チーズハンバーグの湯気がだな・・・」

    エレン「あー父さん浮気性だったのか」

    グリシャ「違うぞエレン!」
  160. 160 : : 2016/01/08(金) 23:08:42
    ーーー

    ーー



    翌日

    半年ぶりに高校に顔を出せば高校の教師の方々が出迎えてくださった。

    もともと先生方に会うつもりはなかったが、他にも何人か来ているらしい。

    それに合流するような形になったわけである。

    一応探してみたが、残念なことにアニは戻ってきていないようだ。無念。

    挨拶を済ませてから帰ってまた親のところに泊まり、次の日に帰宅した。

    その夜アニに学校の写真を送れば、向こうも学校の写真を送り返してきた。

    どうやら入れ違いになったらしい。

    エレン「あー・・・惜しいことしたなぁ・・」

    とはいえ、これだけ距離が開いていれば交通費もバカにならないので大人しく、第二の故郷で友達と遊び呆けた。

    ーーー

    ーー



    エレン「あぁぁ・・・終わっちまったな」

    ズゾゾと少々汚い音を立てて、残り少なくなったコーラを啜った。

    友達と講義の合間にテラスのベンチで話していれば、改めて夏が早く終わってしまったと実感する。

    残ったのはこの暑さだけだなと額を伝う汗が恨めしい。

    エレン「っちぃ・・・」

    紙製の薄いコップをキチンと分別してボックスに放り込み、再び部屋に戻る。

    次の講義で今日は終わり。明日は長期休み明け後の初めての土曜日だ。

    エレン「・・・会いてぇ」

    大学生では中学高校に比べて上下関係をうるさく言われることは無い。

    歳の近い友人のような関係性が保たれている。

    入ってすぐは女子といることも多くあまり上の学年の人たちにはよく思われていなかったみたいだが、それもすぐになくなった。

    ・・・もちろん一部はどうにもならないが。

    講師の先生が出欠をとって講義を始めれば、早くも舟を漕ぎ始め、眠気との戦いが繰り広げられた。

    ーーー

    ーー

  161. 161 : : 2016/01/11(月) 16:42:37
    さて、ようやく終わったと息を抜くのもまだ早い。

    少し前から始めたファストフード店のバイトである。

    今日は夜から朝にかけての8時間ほど。

    時給の高さに釣られたが、労働時間は過酷と言えるだろう。

    とはいえ深夜であることもあって客数は少ないためそれほど大変なわけでは無い、らしい。

    そんなわけで現在午後11時過ぎ。

    まだお客さんは入ってきているが、だんだんと減っている。

    12時にはやんちゃな高校生たちも何処かへ行ってくれるだろう。

    エレン「あー・・・」

    バレないようにため息を吐いて、残りまだ6時間以上はあるこの勤務時間をどうしようと悩み始めた頃。

    また若い女性客2人が店に入ってきた。

    エレン「いらっしゃいませー」

    慌ててだらけていた姿勢を正し、接客スマイルを向ける。

    約三ヶ月後のクリスマスの為にも、この仕事を失うのは避けたい。

    ーーー

    ーー



    6時ごろ、交代の店員が入ってきて、ようやく自分の土曜日がやってきた。

    「お疲れ様です」と挨拶をし、すぐさま帰宅。

    泥のように眠った。

    しかし脳の奥底では時間を無駄にしたくないと潜在的に思っているらしく、昼前には再び目が覚めてしまう。

    エレン「あぁー・・・暇・・・」

    それにも慣れつつあるエレンはそのまま身体を起こし、明日は布団を干そうと思ったとき、相変わらず止まないスマートフォンの通知に目を留めた。

    エレン「(金貯めてるって言ってるだろーが)」

    遊びの誘いを根こそぎ断っていく。

    途中ジャンの嘆きも見えた気がしたが面倒なので「知らん」とだけ返した。

    エレン「ん?」

    最近はなかなかリアルタイムで会話できないアニからのラインだ。

    送られてきたのは朝8時か。彼女の休日にしては珍しく早いな。

    『今、友達とディズニー(⌒▽⌒)』

    『お土産欲しい??』

    エレン「イイよな〜手軽に行けてよ」

    こちとら朝まで夜通し働いてきたってのに。

    そういえばアニもバイトをしてるとか言ってたっけ。

    結構割のイイ・・・というか良すぎる金額で、水商売系じゃねえだろうな!?と心配したらぶん殴られたけど。

    なんでも集客力が段違いで給料が爆上げされたとかなんとか。

    エレン「・・・そういや昨日普通に夜遅くでもそんなに客数変わらなかったよな」

    エレン「騙されたぜクソ・・・」
  162. 162 : : 2016/01/11(月) 17:20:37
    とりあえず、大学生活から縁が離れたお菓子を頼んでおいて、週明けの小テスト対策を少しばかり進めた。

    倹約とバイトが重なって、親の仕送りがかなり余っており、その仕送り主たちに心配されるほどだ。

    それを使ってプレゼントを豪華にしたところであまりこちらは気持ちよくはない。

    自分で稼いだ金で贈ることに意味があるのだ、と、今時珍しい信念を持つエレン。

    いつから自分はこんなにも計画的になったのだろうと我ながら不思議である。

    エレン「(晩飯の材料買いに行くかな)」

    このまま家にいても仕方ないし、冷蔵庫の中身も減ってきている。

    財布をひっつかんで、重々しいドアを開けて外へ出た。



    ーーー

    ーー




    とはいえずっと遊ばないのは自分に取っても、交友関係でも宜しくない。

    周りの彼女持ちとは状況が同じなのでいざこざは無いが、そうでないものは特別金を蓄える必要もないわけで。

    痛手にならない程度に出かけたりして遊びつつ、着々と貯めていれば11月の半ばには十分過ぎるほど貯まったのだった。

    エレン「うー・・キッツー」

    モーゼス「エレンさっきから唸ってるけどよ、どうした?」

    エレン「バイトがブラックで・・・給料はイイんだけどなー・・・」

    モーゼス「時給1500円超えだろ?破格じゃねえか」

    エレン「それに比例して出なきゃいけない時間も日も増えてんだよ・・・」

    モーゼス「集客力だろうなー俺たちにゃ縁のない話だけどな!!」

    約2ヶ月働いて気づいたのは、深夜にたくさん来るのは完全にイレギュラーだということ。

    女性客が圧倒的に増えたこと。

    それに気づいた店長が給料を上げてくれたこと。

    それに伴ってシフトが鬼になったことだ。

    どうやらどこぞのアニと同じ道を辿っているらしい。

    お陰で冬季休暇まで詰め込まれそうになって、せめてクリスマスの二日間だけはと懇願する羽目になったのだった。

    ちなみにモーゼスは年齢的には2つ上だが、一度他の大学に入ったものの、ソリが合わず、1年後に受け直して此処に来たのだ。

    モーゼス「なな、もっかいエレンの彼女見せてくれねえ?」


    エレン「え?あ、あぁ・・・ホラ」

    モーゼス「あぁぁぁ・・ほんと羨ましいなぁ・・・」

    エレン「冬休みこっちに来るんだ 楽しみで仕方ねえよな〜」

    モーゼス「ホントホント・・・ってお前はいつも連絡取り合ってんだろ?」

    エレン「直接会うのが一番に決まってるだろ」

    モーゼス「チッ・・・絶対お前だけは俺たちのクリスマスパーチーに招待してやらねえからな!」

    エレン「ヘイヘイ」

    ニヤつきながら了承すれば「チクショー!」と悔しがる。

    モーゼス「つか会わせてくれるんだろうな!?」

    エレン「・・・アイツがイイって言えばな」

    正直なところその場で発情されれば、友人たちの息の根を止めなければならなくなるので避けたい。

    ーというのは建前で、個人的に独り占めしたいので断りたいところなのだが・・。

    前に調子に乗って自慢したことが悔やまれる。

    モーゼス「で、いつ来るんだ?」

    エレン「アニなら単位ちゃんと取ってるだろうし・・・23日前後じゃね?」

    モーゼス「今確認しろ!つか相談しろ!」

    ホラホラと急かす彼に呆れつつ、まあ予定はしっかり立てておきたいという部分もなくはない。

    とりあえず待ってろと目が血走っている彼を抑えた。
  163. 163 : : 2016/01/11(月) 17:42:40
    アニ「あ」

    ペトラ「ん?どうかした?」

    アニ「あ、いえ、気にしないでください」

    通知音が小さく鳴ったのに気づくも、後にしようとするが。

    思わず反応してしまった事で、この察しのイイ、"元バスケ部の先輩"はニンマリと笑いかけてきた。

    ペトラ「ははーん・・・カレシか」

    アニ「アハハ・・・正解です」

    自分で確認する前に、後ろから覗き込まれて隠すのに忙しい。

    ペトラ「あれ?アニって思ったより男の子とラインしてないんだね」

    アニ「え?あ、言われてみればそうかもしれないですね・・・」

    ペトラ「いや、違うか」

    アニ「え?」

    ペトラ「スタンプ送って問答無用で会話をぶった斬ってるんだねぇ〜・・」

    そう言ってヒョイとスマホを取られると、物凄い速度で確認していった。

    アニ「ちょ、ちょっと!」

    ペトラ「でもそれはセクハラまがいの言動をしてきた人に限る、か」

    アニ「ヒトのを勝手に・・・」

    ペトラ「ごめんごめん、いやー見られて困る会話をしてるとは」

    アニ「 し て な い で す 」

    ペトラ「じょ、冗談だって」

    アハハと引きつった笑いを浮かべるペトラと、特有の黒さを超えたドス黒いオーラを纏い始めたアニ。

    目に見えて話題をそらせようと、ペトラは冷や汗を浮かべながら

    ペトラ「そ、そうそう!早くエレン君に返信しなくていいの?」

    アニ「・・・します」

    それにあっさり乗っかったというより、優先順位が完全にエレンの方が上だと示して、うーんと唸り始めるアニであった。

    アニ「(冬季休暇は何日からだったかなぁ・・・)」

    ーーー

    ーー



  164. 164 : : 2016/01/16(土) 16:36:54
    そんなわけで約束通りの日。

    冬季休暇突入は12月22日だった。

    その日のうちに新幹線に乗り込もうと駅で待つ。

    ・・・と、此処まではどこぞのエレンのいつかの行動と全く同じだったわけだが。

    男が一人で新幹線に乗るのと、女が新幹線に一人で乗るのでは状況が違うわけで。

    知らないおじさんに絡まれて、お兄さんにも絡まれて、



    なんか今だって後ろに不穏な気配が・・・。

    ポンポンと肩を叩かれ、少し覚悟を決めて振り返れば

    ジャン「よっ」

    アニ「あれ、ジャン!」

    ジャン「久しぶりだな"お下戸さん"」

    アニ「何で覚えてるの・・・」

    ジャン「やれやれ、アレだけ見せつけられて忘れられるわけねえっつの」

    アニ「それにしても何で此処に?」

    ジャン「俺は昨日大学が休暇に入ってな」

    なんでも少々早い忘年会の後、朝に向こうを発って此処にいるらしい。

    ジャン「んで、エレンの方へ行くのか?」

    アニ「まあね〜 ジャンはミカサのとこへ?」

    ジャン「お前らみたいにウキウキだったらいいんだけどな・・」

    アニ「違うの?」

    ジャン「倦怠期ってのかな・・・どーも上手くいかなくて」

    もしかしたら愛想尽かされたのかもな、と苦笑いを浮かべるジャン。

    エレンと同じく感情がすぐ表に出る彼の気分のアップダウンはミカサが関わる時が特に顕著だ。

    アニ「謝りに行くんだね」

    ジャン「怖くてな・・・向こう着いて拒否られないといいんだけど」

    アニ「・・・私も行こうか?」

    ジャン「いや、イイよ ありがとな」

    高校生の時とは違って、自分で解決しようとするあたり、やはりジャンも成長しているらしい。

    それでもミカサを想っている度合いはまっったく変わっていないのは嬉しかった。

    アニ「そっか あ、来た」

    話しているうちに新幹線が来る午後2時32分になり、きっかり其れはやってきた。

    アニ「此れに乗るんでしょ?」

    ジャン「はぁー・・(こえ)え・・・」

    アニ「相談なら乗るよ? ジャンと一緒なら他の人に付きまとわれることもなさそうだし」

    ジャン「相変わらずだなオイ そっちでヤバい仕事してねえだろうな?」

    アニ「エレンと同じこと言ってる」

    しっかりとそれはないと否定して、席に着いてしばらく後、ゆっくりと目的地に向かって出発した。
  165. 165 : : 2016/01/21(木) 20:05:29
    ーーー

    ーー



    アニ「いいんじゃない?」

    ジャン「は?」

    アニ「いや、こういう風に言うのもなんだけどさ」

    ジャン「?」

    アニ「ジャンって前からミカサの言うことには絶対服従って感じだったじゃん?」

    ジャン「え、マジで?そんな風に見えてた?」

    アニ「みんな十中八九そう言うよ」

    ジャン「おぉぅ・・・」

    アニ「ちゃんとお互いの本心ぶつけれてるならいい事だよ」

    ジャン「そう・・・なのかねぇ」

    そうだよと励ませばすぐに立ち直り、今一度気合いを入れ直している。

    これなら大丈夫だろう。

    しかしミカサが怒っている理由が分からない。

    ジャン「でもなんであんな母ちゃんみてえに・・・」

    アニ「うーん・・・」

    未だ母親に対しては思春期のような対応を取っている(らしい)ジャン。

    今回はモロ母親になってきたようなミカサに対してつい突っかかったらしい。

    アニ「ミカサはなんて言ったの?」

    ジャン「いろいろ小言言われたから"俺はエレンじゃねえ"ってキレちまったんだよ・・・」

    そしたら突然怒ってな・・・と再び肩を落とす。

    ジャン「まああいつにとってエレンは大事なのは知ってるしな・・・」

    アニ「どういうこと?」

    ジャン「あいつと一緒にすんなって言いたかったんだろきっと」

    アニ「んー・・・」

    アニ「("エレンじゃない"か・・・)」

    ーーー

    ーー



    アニ「あ、私もう降りなきゃ」

    ジャン「話したら楽んなったよ あんがとよアニ」

    アニ「ううん、もっと力になってあげたかったんだけど・・・」

    ジャン「気にすんなって なんとかするさ」

    アニ「じゃ、またね」

    ジャン「おう、エレンによろしくな」

    駅に到着したことを告げるアナウンスを聞き、新幹線を降りて駅の構内を歩けば迎えに来てくれたエレンが待っていた。

    アニ「ウキウキしすぎ」

    エレン「っせーなー、いいだろ別に」

    アニ「いいけどね、別に」

    エレン「素直に再会を喜べないのかよコラ」

    アニ「はいはいうれしいうれしい」

    エレン「てんめ・・・」
  166. 166 : : 2016/01/21(木) 20:14:16
    アニ「あ、そうだ 新幹線で偶然ジャンに会ったよ」

    エレン「お、マジで?元気だったかアイツ?」

    アニ「ミカサと喧嘩して凹んでた」

    エレン「嘘だろ?あいつがミカサと喧嘩ァ?」

    信じられないと目を丸くする。

    あのデレデレぶりからは確かに想像できないな、と納得できるが。

    エレン「ま、いいや とにかくウチ来いよ」

    アニ「野宿させるつもりだったんですかねぇ?」

    エレン「テントと寝袋ならあるぞ?」

    アニ「ふーん、ならホントにそうするけど」

    エレン「嘘ですゴメンなさい来てください」

    ふふっと笑えば「やっぱこうなんのか・・・」とエレンはエレンで肩を落とした。

    ーーー

    ーー



    アニ「いい部屋だね」

    エレン「だろぉ?」

    アニ「いい不動産屋さんだったんだ」

    エレン「俺の管理がイイからだろ其処は!」

    アニ「素敵なコーディネートですねー」

    エレン「なんか俺に恨みでもあんのかお前」

    アニ「自分の胸に聞いてみたらどうですか?」

    そう言えば本当に「お前知ってる?」と私の胸に聞いてき・・・





    そのまま2メートルほど廊下を飛んだ。

    エレン「いってぇな!」

    アニ「自分の胸に聞けって言ったの!」

    エレン「いや、俺には心当たり無いし、アニと生まれた時からいるその双子なら

    アニ「さて、帰ろうかな」

    エレン「冗談だってオイ!!嬉しくて舞い上がってんの察しろよ!!」

    アニ「身の危険しか感じないんだけど・・・」

    エレン「でも荷物置いちゃってるあたりやっぱアニも嬉しいんじゃ

    アニ「うっさい!!」
  167. 167 : : 2016/02/01(月) 22:03:26
    此処まで来て帰っては交通費が無駄になるから云々と照れ隠しを聞いてにやけていれば肘鉄をもらった。

    その暴力行為も照れ隠しの1つなのは分かるが、身体的ダメージは勘弁してほしいところではある。

    イテテと患部をさすりつつ、時計を見ると午後6時前。

    エレン「出かけるにはちょっと遅くなっちまったな」

    アニ「まあこの距離だしね」

    エレン「あーあ・・・もっと近けりゃなあ」

    それを嘆きつつ、夕飯の準備に取り掛かる。

    キチンと今日の為に飯の材料は買い込んであるので、その点は心配ない。

    どーせ"ちゃんと自炊してない"って思われてるだろうし、腕を見せてやろうということだ。

    アニ「あ、ご飯はどうするの?」

    エレン「俺が作るよ 材料買っといた」

    アニ「料理できるの?」

    エレン「この9ヶ月の一人暮らしの成果見せてやっから」

    アニ「楽しみにしてるよ」

    テレビでも見てろと言って、向こうも頷きはしたが、スイッチを入れる気配はない。

    ソファーに腰をかけて、此方を見ている。

    ・・・なんか緊張するからヤメテ。

    ーーー

    ーー



    アニ「美味しい!」

    エレン「だろだろ?」

    アニ「まさかグラタン作るとは・・・いいとこカレーだと思った」

    エレン「俺のこと舐めすぎだろ・・・」

    アニ「ウソウソ、エレンって家庭科とか成績良かったでしょ?」

    しばらく前に縁を切った教科だ。高校生になってから1年しか履修してないからざっと2年ほど。

    そう言われてみれば意外と優秀だったかも、と自画自賛。

    エレン「まあな・・・あ、でも裁縫は苦手だったな 今もだけど」

    アニ「へー、エレンが縫い物してるの見たかったなあ」

    エレン「見て面白いモンでもねえだろ」

    そんなことないよ、と笑う。

    やはり一緒にいてこんなにも満たされる相手はそうはいない。

    アニ「ごちそうさま ホント美味しかったよ」

    エレン「アニのお墨付きなら自信持っていいよな俺」

    アニ「保証するよ」

    うし、と内心しっかりガッツポーズを決めて食器をシンクへ運ぶ。

    アニも手伝ってくれて、そのまま食器洗いも一緒にやった。

    その最中も、そのあとも最近の話で話題が尽きず、夜1時頃までずっと話し込んでいた。
  168. 168 : : 2016/02/08(月) 22:51:40
    エレン「いいなー・・俺も行きたかったぜディズニー」

    アニ「行けばいいじゃん 1人で」

    エレン「ソレ拷問だろうが」

    チラリと時計を見ると午前1時を少し過ぎたころ。

    こちとら目は血走る勢いで覚めてはいるが、アニは何かと今日は忙しかったのではなかろうか。

    大学が終わって、スグに新幹線に乗り、ジャンの相談に乗ってきたらしいし。

    エレン「アニ、眠くねえ?」

    アニ「ん?全然だけど」

    エレン「そうか、ならいいんだけど」

    アニ「・・・まさか寝込みを襲おうとか」

    エレン「お前は俺をケダモノとしか思ってねえのかオイ」

    アニ「あれ、違うの?」

    エレン「お望みとあらば今スグ夜の格闘戦やってやんぞコラ」

    アニ「セクハラです誰かこの子逮捕してください」

    なんか俺たちジャンに似てきた気がする。

    まああいつと違うのは全力出せば簡単に組み敷けることだが。

    挑発しているように見えてもコイツはこういうやり取りを純粋に楽しんでるフシもあるのでなかなか大変である。

    アニ「とは言ってもちょっとシャワー浴びたい」

    エレン「ヘイヘイ 好きなようにお使いくだせえ」

    廊下出て右の2つ目のドアが洗面所と風呂場だ、と説明したら素直にお礼を言うあたり、やっぱり楽しんでやがったなと苦笑した。

    ーーー

    ーー



    エレン「俺のベッド1人用だからアニが使えよ」

    アニ「ん、エレンは?」

    エレン「ここのソファーで寝るから」

    アニ「・・そっか ありがと」

    エレン「あ、残念に思った?どうしてもって言うなら添い寝してあげるよアニちゃーん」

    アニ「別に思ってないから むしろ安全で嬉しい限りだし、広く使えるしね」

    語気を少し強めて言ったところを聞くとあながちハズレでもないらしい。

    エレン「ふーん」

    ニヤニヤと言ってやれば人の枕をぶん投げて顔面に当てやがった。結構痛い。

    エレン「俺は今日午前中からバイトあっからあんま一緒にいられねえけど好きに過ごしてな」

    アニ「え、バイトあったの?しかも午前中からって大丈夫なの?」

    途端に整った眉を八の字にして、申し訳なさそうにするアニ。

    エレン「おう、大丈夫大丈夫 アニと違って朝弱くねえし」

    アニ「か、改善してるから」

    多少は、と枕に顔を埋めて視線だけこちらに寄越すのを見てフッと笑えばまた枕を投げそうだったので急いで退散した。

    ドアの外から朝作っとくから、と言って自分もソファーにタオルケットを携えて向かい、ゴロリと手すりを枕にして瞼を閉じる。

    睡眠時間は短くなるが、今後のことを考えればそんなことは痛くもかゆくもなかった。
  169. 169 : : 2016/02/08(月) 23:08:34
    アニ「(・・・眠れない)」

    もともと目が冴えていたのもあって、全く眠くならない。

    一人暮らししている自分は、当然いつも寝るのは1人だ。

    たまに友達が泊まりに来たり、自分が友達のところへ泊まりに行くことはあるが、そう頻度が高いわけでもない。

    でもエレンと夜を過ごす時はいつからか2人で寝るのが増えていて、無意識のうちにそれが当たり前だとさえ思っていたらしい。

    そういえば高校生の時の自分のベッドも今の自分のベッドも大きめだから普通にできたんだんだなぁ、と冷静に推測する。

    確かに1人だと落ち着くこのエレンのベッドも2人では少し狭いかもしれない。

    密着すればいけないこともないだろうが。

    アニ「(密着って・・・)」

    そこまで考えて自分で恥ずかしくなり、フワフワの掛け布団を被る。

    そうすると冬でも暖かくて、眠気が徐々にやってきた。

    最近、休日睡眠モードと平日睡眠モードを使い分けられるようになってきたアニは、明日は休日睡眠になりそうと感じ取る。

    とはいえ二度寝するかしないかの違いでしかないのはご承知の通りだ。

    ーーー

    ーー



    予想通り、休日睡眠モードだったアニは目が覚めたと自覚したのは朝の9時少し前。

    当然既にエレンはバイトに行ってしまっており、部屋には自分だけだ。

    アニ「(静かだなぁ・・・)」

    エレンの置き手紙と作ってくれた朝食を食べて食器を洗う。

    暇なので部屋の掃除もした。

    あまりしたくはないのだが、無意識にアヤシイ本だの映像媒体だのを探してしまったが、それが無かったことに安堵を覚えたのは否定できない。

    アニ「ふう」

    一通り終わってから、洗濯もしなきゃと洗濯機で洗えるものは洗い、出来ないものは手洗いをしてベランダの洗濯竿に干す。

    終わった頃には丁度昼時になっていて、少しこの街を散策してみよう、と机に置かれていた鍵を取り、しっかりと戸締りしてから部屋を出た。

    ーーー

    ーー



  170. 170 : : 2016/02/08(月) 23:20:12
    街は今自分が住んでいる街とほとんど変わらず賑やかだ。

    今日は12月23日。祝日なのも手伝っているのだろうが、道路も交差点も店も人々でごった返している。

    アニ「(こっちと違って緑もあるんだ、イイ所だね)」

    交通量はこちらも負けていないので、戸惑うこともなく普通にこの街の住人と遜色なく歩き廻った。

    一度通った道は覚えているほうなので、迷うこともないだろう。今はスマホという文明の利器もあるし。

    とりあえず何か食べようと店を探している内に喉が渇いて自販機で飲み物を買う。

    丁度目の前に噴水広場があり、そこで飲んでいれば声をかけられ。

    やんわり断って歩いていても他の男の人に声をかけられ。

    それを振り切って息をついているとまたまた別の男の人に声をかけられ。

    アニ「(やれやれ・・・)」

    適当に1人でも大丈夫だろうと判断して入った店は女性客ばかりだった。

    ここなら大丈夫だろうと一安心すると、どうにも見覚えのある・・どころか誰だか確信できる後ろ姿が視界に入ってきた。

    アニ「(あれ・・ココってもしかして・・・)」
  171. 171 : : 2016/02/14(日) 22:29:20
    エレン「いらっしゃ・・・」

    アニ「おっす」

    エレン「冷やかしに来たのかコラ」

    ヒソヒソと呆れ半分の顔で接客されれば、親密な仲とはいえムッとせざるを得ない。

    アニ「一人の客として来たんですけど」

    エレン「ったくよー・・・ただいま混雑してますので名前を書いてお待ちくださいねー」

    いかにもマニュアル通りのような対応、腹立つ。

    アニ「ハイハイ」

    しばらく待って席に着けば、やはり周りは女性客ばかりだ。

    しかし妙だ。エレンの客席案内率と接客率が異様に高い気がする。

    というかエレンしかやっていない。いや、確かに厨房には人気があるが、それにしても割り振りが滅茶苦茶だ。

    気になりはするが、エレンのは仕事中。今聞くのは憚られる。

    アニ「(ブラックなのかなぁ・・・)」

    周りからはあの店員さんかっこよくない?などといったお褒めの言葉がちょいちょい聞こえるが、華麗なスルーを決め込むエレン君。

    女性客が多いのはそういうことかと納得し、持ってきてくれたコーヒーを一口飲んだ。

    ーーー

    ーー



    何はともあれ食事とその会計を済ませ、店を出た。

    ショッピングセンターが近くにあり、買い物もしようかと迷ったがエレンが休みの時に一緒に行けばいいかと止めておいた。

    声をかけられるたびに断るのも疲れるので、エレンの部屋に戻ることにしようか。

    そうして部屋に着いたのは午後2時少し前。

    アニ「(エアコンはまだ良いよね)」

    隙間風もなく、部屋の中はそれほど寒くはない。

    特別寒がりでないのと、遠慮深い思考が相まって暖房器具のスイッチは切ったまま。

    置き手紙の通り、買っておいてくれた歯ブラシで歯を磨いて何をするでもなく、ヒタリとソファーに座ると、そのまま横になった。

    アニ「(・・・眠い)」

    そう思ったが最後、睡眠欲に入って忠実なアニは深い微睡みに身を預けた。
  172. 172 : : 2016/02/14(日) 22:42:36
    ーーー

    ーー




    エレン「たでーまー・・・」

    明日明後日と休みを貰った代わりというか、今日はみっちり働かされた。

    時刻は午後5時。


    アニは来るし、積極的なお客さんはお客さんだし、疲れた。

    夕飯どうすっかな・・・と悩みながらリビングへ向かう。

    エレン「愛しのエレン君が帰りましたよーっと・・・」

    言って反応が返ってこないのはなかなか悲しくなる。

    エレン「アニ?」

    少しだけ心配になったが、すぐに見つけた。

    エレン「あんだけ寝といてまだ寝てんのかよ」

    呆れながらも起こすのは無粋だろうと、朝使ったタオルケットをかけてやり、自身はキッチンへ向かう。

    アニの家は高校の時から晩飯は早い方だったから、その基準だとそろそろ空腹で起きるかも、と下ごしらえを始めた。

    今日はどうしようか、と頭を悩ませる。

    エレン「(アニは和食好きだけど、厳しいよなぁ〜・・・)」

    握り寿司であれば出来なくはないが、多種の具材を一度に使うので少しばかり厳しい。

    つか和食といって寿司しか思い浮かばない自分にガッカリである。

    エレン「(レパートリー増やしとかなきゃな)」

    明日奮発することもあって、今日は少し控えめにしておこうかと思っていると、のっそりとアニが起き上がった。

    アニ「おはよ」

    エレン「ん、起きたか」

    アニ「うん・・・てつだう」

    寝起きのせいか少し舌足らずで可愛いな、と思ったが口には出さなかった。

    エレン「んじゃ、頼むわ」

    そうして2人キッチンに並んで、準備を開始した。
  173. 173 : : 2016/02/14(日) 22:55:42
    ーーー

    ーー




    エレン「ごちそうさま」

    アニ「ごちそうさまでした」

    迷った結果、夕飯は肉ばかり食ってるだろうから魚料理にしようというアニの提案に乗っかって鮭のムニエルとなった。

    確かにここ最近は魚を食べていなかった。さすがアニさん。

    アニ「明日と明後日はバイト無いんだよね?」

    エレン「おう、その分今日ちゃんと頑張ったしな」

    アニ「みたいだね」

    エレン「つーか何でわざわざ俺の働き先に来たんだよ」

    アニ「偶然だよ たまたま入った店にたまたまエレンが働いてただけ」

    エレン「本当かねぇ・・・」

    アニ「本当だって」

    エレン「あれ?そういえばアニはバイト大丈夫なのか?」

    アニ「うん、大丈夫」

    しかしその店の集客の主戦力であるアニをみすみす離すのは店にとって痛いハズ。

    男の俺もずいぶんズルズルと引き留められた。

    アニ「彼氏と過ごすって言ったらアッサリ許可してくれたよ」

    エレン「マジでぇ?俺なんかめっちゃ必死に止められたってか怒られたのに」

    アニ「落胆してた感じだったけど」

    エレン「あぁ・・・」

    きっと無自覚にフェロモン振りまいて、挙句彼氏と・・・と言ったのだろう。

    よく知らない店長に同情した。

  174. 174 : : 2016/02/25(木) 23:49:17
    エレン「(つか何に期待してたんだよ店長)」

    思考がそこまでたどり着いてから、やれやれと小さく息を吐いた。

    アニ「どうしたの?」

    エレン「いや、店長可哀想だな〜・・と」

    アニ「?何で?」

    エレン「(やっぱ分かってねえ・・・)」

    こういうところは変わらない。

    また一つ心の中でため息を吐いた。

    ーーー

    ーー



    エレン「あ、そろそろ風呂入るか?」

    アニ「!」

    肩を大きく揺らして反応を見せた。

    エレン「ん?」

    こちらとしては下心は全くなく、純粋に入るのかどうか聞いたに過ぎないのだが。

    アニ「あ、あの、ちょっとタンマ」

    エレン「へ?何で??」

    アニ「何でって・・・それは、だって」

    エレン「あ、まだ良いってことか?」

    湯冷め的な意味で、という意味なのだが、やはり噛み合っていないわけで。

    アニ「ま、まだ良い?うぅぅー・・・」

    エレン「ん?どした?」

    アニ「いや、うん、いい、よ」

    エレン「お、おう?まぁいいや、じゃ沸かすぞ」

    アニ「う、うっす」

    スイッチを押して、風呂が沸くまで10分ほどだ。

    どうも突然カチコチになったアニに思わず聞いた。

    エレン「どうかしたのか?あ、ひょっとして生

    アニ「このセクハラ男!!!」

    スパーンとぶっ叩かれて、痛む頭をさする。

    違うのか?と聞けば、真っ赤になって違うと叫ばれた。

    いや、叫ばなくても。

    エレン「ならどうしたんだ?」

    アニ「・・・何でエレンは何とも思わないの?」

    エレン「へ?」

    いや、だって風呂入るのに何かを思ったりしないだろ。

    あ、ひょっとして最近湯船じゃなくてシャワーで済ませることが多いのを読まれたってことか?

    それが気に食わないと。流石アニだ、伊達に一緒にいないぜ。

    エレン「あー、まあ少なくなったからなぁ」

    アニ「!」

    ピシリとアニの動きが止まった。

    エレン「?」

    アニ「入った経験あるの!?」

    エレン「は?」

    風呂に入った経験?そりゃあもちろん

    エレン「当たり前だろ?」

    あれ?なんかアニの拳が・・・あれ?なんか涙目になってるような・・・

    ・・・え?
  175. 175 : : 2016/02/26(金) 00:01:41
    エレン「おいアニ、一体・・・」

    アニ「誰と!!?」

    エレン「だ、誰と?」

    何が何だかわからん。

    風呂に誰と入ったか?いや、家では1人だし、友達が来た時だって家の風呂じゃ当然みんな別々だし・・・。

    エレン「1人に決まってんじゃん」

    アニ「はぁ!?だって今、経験あるって言ってたじゃん!」

    エレン「あの、さっきから何を・・・」

    声も震えてきたアニを見て、流石に焦る。

    なんだ。どういう事だこれは。

    よく思い出せ。たしか風呂を沸かすって聞いた段階でアニがおかしかったんだよな。

    んでもって、なんかバッチコイみたいなアニの態度とその後の言葉から考えて・・・。

    あれ、これ会話噛み合ってなかったのか?

    ひょっとしてアニは俺と入る事を覚悟決めたんじゃ・・・。

    ーーー

    ーー



    ぶっすーと俺の足の間で小さく収まっているアニ。

    髪は濡れないようにまとめられていて、うなじが色香を漂わせている。

    お互い一糸まとわぬ姿で正直こちらは緊張しているのだが、それは今さっき始まった事だ。

    エレン「俺が浮気した事今までにあったか?」

    アニ「うっさい」

    エレン「オイオイ・・・」

    何を話しかけてもつっけんどんな態度である。

    確認をしたところ、やはり自分の憶測通り話は食い違っていたらしい。

    つまりアニは存在しない俺と風呂に入った相手に嫉妬した、というより俺に対してブチ切れていたのである。

    しっかり説明して、考えさせれば「言われてみれば変だったか」的なポカンとした顔をして、次には顔を真っ赤にして洗面所に向かった次第だ。

    そして今に至る。

  176. 176 : : 2016/02/26(金) 00:18:46
    エレン「アニー・・・勘違いは俺の所為じゃねえぞ〜・・・」

    アニ「・・・」

    エレン「(無視ですか・・・)」

    こちらとしても股の位置に安住するアニさんの手前、反応させるわけにもいかず、自制心自制心と心で唱えていなくてはならない。

    仕方ないと彼女の胸の前で手を組んで、顎を肩に乗せればまたビクッと反応した。

    エレン「なぁ、俺ってそんなに信用ねえの?」

    アニ「・・・」

    エレン「アニー?」

    アニ「・・・メンドくさい、って思った?」

    エレン「ん?」

    突然突拍子もなくそう言われる。

    それでもようやく向こうから話し出してくれたことに安堵した。

    アニ「やっぱり、不安なんだ 重いって思われてるかもしれないけど・・・」

    エレン「・・・」

    アニ「エレンも男だからさ、私の知らないところでって思ったら怖くて・・・」

    そう思っていたところにあの会話だったことで、それで色々とゴッチャになってしまった。

    という事らしい。

    エレン「・・・あのねえアニさん、俺をそんなサイテーな男だとお思いで?」

    アニ「そうじゃないけど・・・そうだとしても仕方ないって思って・・・」

    エレン「その割には泣きそうだったろ」

    アニ「・・・」

    エレン「あのな、重いとかなんとか言ってるけど全然足りねえから」

    アニ「え・・?」

    エレン「もっとその気持ちを寄越せ」
  177. 177 : : 2016/02/27(土) 22:20:46
    エレン「ま、ちゃんと言ってくれれば俺も改善できるしな」

    アニ「・・・ん」

    なんだかんだまだまだ乙女成分が残っているようだ。

    これは来年も良いことあるな、と内心ニヤけつつ腕に力を込めた。

    アニ「・・・今日はナシ」

    エレン「えぇマジかよ・・・」

    ただ、この煽られっぱなしでの生殺しは堪える。

    アニ「なんかどっとつかれた」

    だんだんと体重がこちらへかかっているのが分かる。

    この舌足らずな感じも、寝る寸前であることを知らせているのだと理解できるほどに共に過ごしている。

    エレン「おいこら風呂で寝るな 溺れるぞ」

    アニ「ねてないよ・・・ねてない・・・」

    エレン「嘘こけ」

    滑りの良い肌がズルズルと自分に触れていくのはマズイ。

    エレン「ほら、早く出ろって つか逆上せてるだろアニ」

    アニ「そう、かも」

    しかし立ち上がる時もさりげなく隠しながら出ていくのが、残念というか、よかったというか。

    ともあれ無事数年来のミッションは達成できたのだ。

    エレン「(あぶなかった・・・)」
  178. 178 : : 2016/03/01(火) 22:05:22
    ー次の日

    モーゼス「お、エレン」

    エレン「・・・ハァ」

    開幕ため息とは無礼の極みだが、こちらは自慢したとはいえ会わせることには積極的では無いのだ。

    モーゼスの後ろにはゾロゾロと5、6人で来ているので尚更である。

    エレン「えーっと、アニ、コイツが昨日話したモーゼスで

    モーゼス「え、えっと、自分モーゼスといいます エレンにお世話になっております」

    アニ「アニ・レオンハートです エレンがお世話になってます」

    一応2つ上ということも伝えてあるので敬語だ。流石。

    モーゼスはあれだけ会いたがっていてのに緊張しているのが丸わかりだ。現に周りにイジられている。

    モーゼス「い、いやーエレン君、クリスマスイブだというのに済まないねえ」

    エレン「何を今更・・・白々しい」

    緊張してるのはモーゼスだけで、周りはスグにアニを囲んだ。

    「エレンのどこが良いんだ」

    「エレン結構スケコマシだぞ」

    とか、散々である。

    アニ「やっぱりそうなんですよねー」

    なんて本人にも言われる始末。

    半分白目を剥いて、密かに落胆するが

    アニ「タラシなところも、変態なところもあるけど隠し事しないところとかいいですよね?」

    モーゼス「嘘つけねえもんなエロン君」

    エレン「誰がエロンだオラ」

    アニ「嫌いになれたら良いんですけど」

    それはなさそうなんだよなぁ、とため息をつくアニを見て全員もれなくノックアウト。

    不純な動機で会いたいと言ってきた奴らはもれなく罪悪感にかられ、こちらを応援する始末。

    まあ、そのほうがいいのは確かだ。引き止める意味も無いし。

    エレン「可愛いこと言ってくれるねぇアニさん」

    あんだけ惚気て貰えれば十分だろう。

    アニ「ホントのことだからしょうがないよね」

    さも当然と言い切ったアニを見て、こちらが代わりに恥ずかしい。

    エレン「俺、お前に一生勝てない気がする」

    アニ「当然」

    エレン「ベッドの上では俺が勝つけどな絶対」

    アニ「・・・」

    じとりと睨まれ、顔をそらされてしまった。

    今夜たっぷり愛を囁いてもらおうと下心を丸出しにして、モーゼス達を見送った。
  179. 179 : : 2016/03/01(火) 22:28:57
    ー帰宅後

    エレン「来年は海だよなぁ」

    アニ「ん?」

    エレン「今のうちに計画練っておこうと思ってな」

    アニ「なるほどね あ、今度は私の友達とバーベキューとかしない?」

    エレン「お、いいな 他は・・・」

    目の前にはチキンだったり、チーズフォンデュだったりと盛りだくさんだ。

    食べれるのか不安だが、チキンなどのオードブルは明日でもOKだし、他も保存は短期なら問題ないので、とりあえずチーズフォンデュだけ片付けられればイイ。

    フランスパンを口に放り込みながら話はさらに盛り上がる。

    アニ「でも今日寒いから、今は海に行くのは想像できないね」

    エレン「そりゃそうだ」

    アニ「んじゃ水着選びはお願いね」

    エレン「え、俺一人でお前のを買うの?」

    アニ「一緒に決まってるでしょ サイズ的な意味でも」

    エレン「いや、なんとなくサイズは分かるよ」

    アニ「は?」

    エレン「前にシたんだし、アレは実測みたいなもんだろ?」

    アニ「この変態は・・・」

    エレン「まあこの冬季休暇でいくらかサイズアップするかもしれね

    夜空のお星様が1つ増えた、ような気がした。

    ーーー

    ーー



    エレン「ホワイトクリスマスにはならなかったな」

    アニ「真っ赤なクリスマスになりそうだけど」

    エレン「もうなってます」

    やれやれと首を振るエレンに青筋を浮かべ、ヒクつく口元を隠すことなく、鬼神の如き顔を向けてもエレンの態度は変わらない。

    アニ「誰のせいだと思ってんの?」

    エレン「恥ずかしがったアニの拳のせいだろ?」

    アニ「アンタの問題発言のせいだよ!!」

    エレン「怒るとシワ増えんぞ」

    アニ「この男は全く・・・!」
  180. 180 : : 2016/03/05(土) 20:43:51
    エレン「でも確かに今日は特に寒かったな」

    雪が降らないのが不思議なくらいだ。

    カラッと晴れてこそいたが風が冷たくて指先が痛かったっけ。

    アニ「そう?」

    アニはといえばそれ程堪えているわけでもなさそうで、割と平気そうだ。

    エレン「俺はコタツが恋しいぜ・・・」

    アニ「軟弱だなぁ」

    エレン「寒さ耐性があるからって調子乗ってると後であつーい目に遭うぞ」

    アニ「へぇ、何で?」

    エレン「分かってんだろ?」

    アニ「さあね」

    フフンと艶かしい微笑を浮かべてくる。

    今まではあやふやな事も多かったが、今日に限ってはハッキリと分かった。

    コレは挑発だ。間違いない。

    エレン「イブだぜ?分かってんの?」

    分かりきった問いを投げかければ、

    アニ「どうだと思う?」

    エレン「見てろよ」

    ーーー

    ーー



    エレン「さっきまでの余裕はどうしたのかなアニさん」

    アニ「このッ・・・」

    息も絶え絶えになった真っ赤な顔で睨んできても、咎める効果などこれっぽっちもない。

    自身の腕を抑える手にも力などこもっておらず、抑止にはなっていない。

    エレン「(あーヤベ、クソ可愛い)」

    2度目(生殺し未考慮なら数多あれど)ともなれば余裕も出てくる。

    少しばかり苛めたくなるのも愛しさの内だ。許してほしい。

    アニ「ちょっと・・・胸、ばっか・・・」

    不機嫌な色を滲ませて非難してくる。

    エレン「アラ、もう我慢できない?」

    アニ「エレンなんてきらい」

    エレン「それは困る」

    口角を上げていれば右手が頬に添えられる。

    それがいつの間にかキスの合図になっていた。

    彼女から促すのは滅多にないが、今それを言うのは無粋であると分かるようになったのは大きな進歩といえよう。

    アニ「へんたい」

    エレン「誘っといて今更何を」

    アニ「・・・誘って、ないし」

    エレン「どの口が言ってんだぁ?」

    ダメだ。さっきからにやけっぱなしだ。

    どうしてアニの前だとこうなってしまうのだろうか。

    エレン「今まで散々お預け喰らってんだ 好きにさせろ」

    アニ「許可取らなくても、そうする、クセに」

    クシャリと髪を撫でられて、こちらのキャパは限界突破である。

    まだ脱がせかけのままの彼女の服を、破ってしまわないようには気をつけたが、少々強引に引っぺがした。

    また非難の声が上がるが、既に弱々しくなっている。

    エレン「煽っといて今更ナシは認めねえからな」

    アニ「ココまで来て、そんなのないよ・・」

    エレン「んじゃ遠慮なく」
  181. 181 : : 2016/03/05(土) 21:46:39
    ーーー

    ーー



    アニ「・・・さむい」

    エレン「色気もへったくれもねえなオイ」

    アニ「だって」

    エレン「まあアレだけやりゃあな」

    ニシシと笑えば"きらい"と言われ、身体ごとそっぽを向いてしまった。

    エレン「風呂入ろうぜ そのままじゃ気持ち悪いだろ」

    アニ「・・・」

    返答はないが、きっと思案顔なのだろう。ん、と小さく聞こえてきた。

    エレン「まだ足りないなら

    アニ「入る」

    冗談、いやその気になれば全然余裕なのだが、思った通り即答だ。

    一緒にと促されたのは驚いたが、自他共に認める恒常性アニ欠乏症のエレンがそれをみすみす断るようなマネはせず。

    るんるんとスキップしそうな勢いで共に風呂場へ向かった。

    一方で、アニは自身の行動の意味が分かってからは頭を抱えずにはいられなかった。

    エレンのコトの最中、前後に見せる甘えたも、それが嫌でない自分にも。

    その後どうなるかなど知れているのに。

    アニ「ちょ、いつまで盛って・・・!」

    エレン「あんなんで足りるわけねえだろ 何ヶ月ぶりだと思ってんだ」

    アニ「こんなところで・・んむぅ!」

    どんな御託を並べようと無駄なのも、今更止められては困ることも、もう分かっている。

    そりゃそうだ。だって自分の身体の事だもの。

    今更立ち上がれないくらい力は抜けきり、その意思も削がれた。

    アニ「ホントあんた、私の事好き過ぎ・・・」

    エレン「当然だろ」

    お前は?と微笑まれながら聞かれれば、もうらしい抵抗なんて出来ない。

    アニ「・・・知らない」

    エレン「相変わらずだな・・・」

    最中はあんなに言ってくれるのにと、減らない口を塞いでやることが返答代わりだ。

    エレン「で、どうする?」

    ちゃぷん、と波が立つ。

    二人でも自由はある程度確保できる。

    そして向かい合う自分たち。

    アニ「・・・何言っても無駄でしょ」

    エレン「ご名答」
  182. 182 : : 2016/03/13(日) 20:34:19
    ーーー

    ーー



    アニ「・・・」

    エレン「・・・」

    2人でベッドに再び入ったのは夜もかなり深まった頃。

    もう真っ赤な服に身を包んだ白いお髭のおじさんの存在を信じるような歳ではない。

    どちらかといえばサンタさんになる側か。

    エレン「(また無理させたな・・・)」

    自覚の有無に関わらず煽ってくる彼女に非を擦りつけつつも、罪悪感は拭えない。

    今現在もむにむにと寝言とも言えない寝言を零しつつ、こちらに寄ってくるのだ。

    寝取る趣味はないが、また邪な心が湧き上がってくるのは許してほしい。

    エレン「(コイツは・・・ったく)」

    悪戯心で指で軽く額を弾けば、少し顔を顰めてまた元のように深く沈む。

    エレン「(やれやれ・・・)」

    コイツと共に過ごす夜はいつも悶々としている気がする。

    エレン「(・・俺って性欲強いのかな)」

    ーーー

    ーー



    エレン「うぁー・・・」

    アニ「あれだけはしゃげば無理ないよ」

    エレン「マジでかー・・・」

    今日はクリスマス。

    だというのに朝起きたら、いつもよりベッドの引力が物凄かった。

    アレ?と思った時にはすでに遅く、アニが俺の顔を見るや否や服をまとって駆け出していった。

    ショックを受けつつも、すぐに戻ってきたのを確認して安堵する。

    コレ!と差し出されたのは体温計。

    エレン「え?」

    アニ「早く測って」

    エレン「お、おう・・・?」

    数値は37.8。

    自分の中では行動には取るに足らない程度の微熱だが、身体のだるさが無いわけではない。

    アニ「呆れた・・・」

    エレン「そう言うなよ 大丈夫だって」

    アニ「ダメ 今日は寝てなさい」

    エレン「そんなこというなよぉぉ!折角のアニとのクリスマスだぞぉぉ!!」

    アニ「自分が悪いんでしょーが!」

    エレン「うぅ・・・」
  183. 183 : : 2016/03/13(日) 21:52:41
    というわけでクリスマスにも関わらず自分は殆どベッドの上で今日一日を過ごすことに。

    エレン「確かに拭き方甘かったかもしれねえけど、こりゃねえだろ・・・」

    アニ「あんなんじゃ風邪も引くよ」

    エレン「だってさぁ・・・」

    アニ「だっても何もない」

    冷たいよアニさーんと嘆いても流されて撃沈。

    エレン「アニだってあんなに」

    そこまで言ったら真っ赤な顔で手を振り上げて、そのままぐっとこらえてその手を下ろした。

    お、これは今日は何言っても大丈夫かもと病人らしからぬ頭の回転を見せる。

    アニ「で、何か食べれそう?」

    エレン「アニで」

    アニ「却下」

    エレン「・・・確か冷蔵庫にうどんあっからそれでお願いシマス」

    アニ「ヨロシイ」

    エレン「(俺って奴はよぉ・・)」

    反省しねえなと自嘲しながら待っていると、丼はスグに此方に来た。

    アニ「ハイ あんまり具材は入れなかったけど大丈夫?」

    エレン「作ってくだされば何でもOKですよ」

    いただきますとしっかり両手を合わせてから、箸を使って麺を啜る。

    エレン「うめぇ」

    アニ「良かった」

    じゃ、私もいただきますとちゃっかり自分の分も作っていたらしくアニも其処で食べ始めた。

    エレン「もうちょいくんね?」

    アニ「食欲はあるんだね」

    クスクスと笑いながら自分の分を此方の丼に、具材共々入れてくれた。

    エレン「クリスマスにうどん食うことになるとはなあ」

    アニ「不満?」

    エレン「いんや お前がいればそれでいい」

    アニ「・・・そ」

    あ、ちょっと恥ずかしいこと言ったな俺と苦笑いを浮かべかけるも、アニの顔でその苦笑はサッと引いた。

    しばらく麺を啜る音が響く、そんなクリスマスの昼のことであった。
  184. 184 : : 2016/03/13(日) 22:08:47
    エレン「ごちそーさま」

    アニ「ご馳走様でした」

    ありがとな、と礼を言うとドッと眠気が襲ってくる。

    エレン「んー・・・この程度の熱で、情けねえなクソ・・・」

    アニ「エレンは風邪引かない人だと思ってた」

    エレン「バカって言いてえのかオイ」

    アニ「そういう意味じゃないって」

    ほら、良い子は寝る時間です、とでも言いたげに掛け布団をかけて、横になるよう促してくる。

    その優しい手つきに流されつつ、その瞼は無理に開けたまま。

    エレン「寝るのは勿体ねえ気がするんだよな」

    アニ「病人は寝るのが仕事」

    エレン「なら俺ニートになる」

    アニ「働け」

    笑いつつ額に貼られた冷えピタの上に手をかざされ、おやすみと囁かれれば惚れ直すしかあるまい。

    少し体感温度が上がったところで意識は途切れた。

    ーーー

    ーー



    アニ「さてと」

    音を立ててエレンの眠りを妨げたくはないが、やらなきゃならないことはある。

    クリスマスといえども家事はこなさなければなるまい。

    泊めてもらっている身、手伝うのが筋ってものだろう。

    とはいえ黙々と進めれば、手際の良さもあってそれなりの速さで終わるわけで。

    洗濯物や洗い物、掃除をこなしてもまだ時間はかなり残っている。

    アニ「私も少し寝ようかな・・・」

    未だアニのうたた寝は少しでは済んでいないことに気づかないアニ。

    ちょっとのつもりが2、3時間なんてことはザラ。

    そんなことはお構いなく、スグにソファーに体重を預けて眠りについた。
  185. 185 : : 2016/03/19(土) 22:55:03
    アニ「あ、晩御飯」

    それでも使命感からか1時間ほどでパチリと目を覚まし、足は台所へ向いた。

    アニ「(確かお粥は消化悪いから・・)」

    アニ「(とはいえ2食連続うどんってのもなぁ)」

    んーと頭を捻るが、なかなかアイデアは浮かばない。

    アニ「(というか食欲あるかな?)」

    確認を兼ねて寝室へ向かうことにする。

    念のためマスク着用だ。

    アニ「エレン大丈夫?」

    エレン「あー大丈夫ー」

    アニ「いつ起きた?」

    エレン「丁度今さっき」

    アニ「なら良かった 食欲ある?」

    エレン「腹減ったーなんか作ってもらえる?」

    そう言って立ち上がると、一応止めはしたがふらつきなどは無かった。

    エレン「あ、空気清浄機出しとくから大丈夫」

    アニ「無理しないでね」

    エレン「今なら餃子でも何でも食えるぞ!」

    アニ「餃子は流石にムリだけど・・・」

    何かリクエストある?と聞けば

    エレン「んじゃ親子丼」

    アニ「親子丼?」

    エレン「おう 出来るか?」

    アニ「もちろん 材料があれば」

    エレン「そこは大丈夫 美味いの頼むぞ」

    なぜ材料があるのかは知らないが、恐らく自分でも食べたくて作ろうと思ったとかそういうことなのだろう。

    冷蔵庫開けるよ、と確認を取ってから材料を取り出し、腕を捲った。

    ーーー

    ーー



    エレン「いやーついてねえなホント」

    アニ「身から出た錆です」

    エレン「だってアニだもん ガッついちゃうのは仕方ないだろ?」

    アニ「知らない」

    エレン「でも毎回看病してくれんなら風邪引くのも悪くねえな!」

    アニ「次は無いかもね」

    エレン「コエーこと言うなよ」

    クククと笑い、そこからスッと顔が引き締まった。

    エレン「でもありがとな 1人じゃこうはいかねえわ」

    アニ「いえいえ」

    エレン「やっぱアニのこと好きだわ俺」

    アニ「知ってるよ」

    エレン「結婚すんならアニがいい」

    アニ「またそんな・・・」

    エレン「つかアニじゃないと嫌だわウン」

    アニ「そ、そりゃ・・あ、ありがとう・・」

    此方を見つめてきて、思わず逸らしてしまう。

    顔が熱くなるこの感覚も久方ぶりだ。

    それを知ってか知らずか、

    エレン「あ、その顔久々」

    アニ「うっさい!」
  186. 186 : : 2016/03/19(土) 23:29:28
    エレン「お、そうだ 危ねえ忘れかけてた」

    ちょっと待っててくれ、と寝室の方へ行ったかと思えば何やらゴソゴソと物が動く音がする。

    アニ「?」

    エレン「あの、ホラ、プレゼント」

    アニ「あ、そうだ 私も・・・」

    エレン「お、アニもくれんの?」

    アニ「えっと・・・」


    ーーー

    ーー



    ゴホン、とワザとらしく咳をする。

    いや、風邪的なものではなく。

    アニ「えっと、じゃあ私から」

    ハイ、ドーゾとまた珍しく硬い動きになっているのを見て笑いそうになるのを我慢する。

    エレン「おー!腕時計!!」

    超クールじゃん、と丁寧に開封して眺める。

    そこまでキラキラした目で喜んでもらえれば本望だ。

    よかったと一息ついてしばらくその様子を見る。

    エレンは何か欲しいとか全く言わないから割と悩んだのだ。

    友達に相談したり、店を回ったりしてみてもパッとくるものが無く。

    学生とも大人ともつかないこの年齢では金はあっても、プレゼントの内容はなかなか難しい。

    エレン「マジでありがとうな!」

    コトンと机に包装の箱を置き、今度はエレンが差し出す番だ。

    エレンが持つと可愛らしくてギャップのある、小さめな箱。

    アニ「指輪・・・!?」

    エレン「あの、まあ所謂ペアリングってやつ?これしかないと思ってたんだけど」

    種類多いし、サイズもズレてるかもだからそんときは直せるし云々。

    エレン「どう、かな?」

    アニ「ありがと!ホントにありがと!!」

    エレン「・・・おぅ」

    わぁ〜と掲げてみたり、はにかんだりと可愛さ爆発である。

    エレン「(やっべ、カワイイなクソ・・・)」

    奮発した甲斐があった。

    本当なら今日は色々出かけようとしていて、もっとシチュエーション的にもこだわりたかったところであったのは唯一の後悔ではある。

    また、その夜はアニの意識がほとんどそちらの方へ向いていたのも嬉しいが複雑だった。

    さらに病み上がりなのもあって、アレは無しなのも残念。

    とまあ、今にして思えば残念なことが多いクリスマスではあったが、十分満たされた1日だった。
  187. 187 : : 2016/03/24(木) 22:21:09
    ーーー

    ーー



    パカッ

    エレン「あのヤロ・・・」

    ジャン「なんだぁ?昼飯時に悪態なんかつくなよ」

    エレン「職場にお前がいる時点で悪態なんぞダダ漏れだ」

    ジャン「学生時代から変わんねえなこの野郎
    で、どうしたんだよ」

    エレン「・・・今日の弁当がだな」

    ジャン「うお!?ぜ、全部白米・・・一欠片のおかずもない・・・」

    エレン「やられたぜ・・・やはりタダモノじゃねえ・・・」

    ジャン「お前らホントにいい歳した大人かよ」

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    アニ「・・・」

    ミーナ「あれー?どうしたのアニ」

    アニ「・・・別に」

    ミーナ「ははーん、また喧嘩ですかぃ?」

    ペトラ「また旦那と?」

    アニ「旦那じゃないですし、そんなに頻度高くないです!」

    ミーナ「またまた〜」

    ハンナ「また痴話喧嘩?」

    アニ「ハンナにだけは言われたくない」

    ハンナ「ひどいなー・・・」

    アニ「まあ弁当白米だけにしてやったから少し気は晴れたけど」

    ペトラ「小学生のイタズラか!」

    アニ「だって・・・」

    ミーナ「そもそも何で喧嘩したの?」

    アニ「・・・私のアイス食べられた」

    ミーナ「はぁ?」

    ペトラ「ホントに小学生みたい・・・」

    アニ「アレほど食うなって言ったのに全く・・!」

  188. 188 : : 2016/03/24(木) 22:56:19
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    ジャン「ーつまり食ったんだな?」

    エレン「だって美味そうだったんだもん」

    ジャン「いい歳した大人が"もん"とか言うな」

    エレン「今日ハーゲンダッツ買って謝ればいいかなコレ」

    ジャン「知るか」

    エレン「毎日白米はキツい・・・」

    ジャン「購買でなんか買えばいいだろ」

    エレン「それはイヤだな」

    ジャン「じゃあ許してもらうなり白米かっ喰らうなりしろ」

    エレン「謝ります・・・」

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    ミーナ「ならハーゲンダッツでも買って貰えば?」

    アニ「もういいよ なんか幼稚だった」

    ペトラ「やっと気づいた?」

    アニ「最近ちょっとしたことでイライラしちゃってダメですね・・・」

    ペトラ「まあそればっかりはね 私だって今ちょうど

    ハンナ「ちょ!ペトラさんココ職場!」

    ペトラ「おっとっと」

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    ジャン「同棲してんだろ?ケンカが起きるのは仕方ないにしろお前らは理由がな・・・」

    エレン「そんなこと言ったってよ・・・起きちまうもんはどうしようもねえよ」

    ジャン「じゃあもう冷めてんじゃね?」

    エレン「それはねえな」

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    ペトラ「でもさ、貴女たち付き合って長いけど嫌だなってことないの?」

    アニ「ないですね」

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


    エレン「だってアニは」

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    アニ「だってエレンは」

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



    「「俺(私)のこと大好きだから」」



  189. 189 : : 2016/03/24(木) 23:00:24
    はい、こちらのssはこれにて終了となります。

    もう9ヶ月ほど書いていたんですねコレ。完結まで長くなってしまい申し訳ないです・・・。

    自分でも驚くくらいの甘さでしたがいかがでしたでしょうか。

    もう片方は甘さが全くと言っていいほどないので糖分不足をこちらで補わせていただきますた。許してちょ(´・_・`)

    現在執筆中のもう片方で私の執筆活動は終了となりますが、どうぞ最後までお付き合いくださいませ〜。

    長文になりましたが、あとがきとさせていただきます!ありがとうございました!!
  190. 190 : : 2016/03/24(木) 23:09:05
    忘れてました。最後の場面の設定的なものを書いておきます。

    エレンはジャンと同じ会社に就職。ジャン君が言っていたようにアニさんと同棲を開始しました。

    この時点では大学生活を終えてスグであり(一応5月終盤くらいのつもり)、お互い区切りがいいということで両方の親の許可を得ての同棲であります。

    ジャンとミカサも付き合ってます。ご安心を。ジャン君は何かと焦って婚約まがいなことしましたが、ミカサも満更でもない感じです。裏山。

    今回出番が少ないアルミン君ですが海外の方で働いてます。グローバル。

    他はライナーとベルトルトとマルコ、ユミルとクリスタはそれぞれ同じ会社に就職です。

    マルコはチームリーダーです。ユミルは変わらずクリスタLOVE。当然ですが。

    といった具合ですね。時間が取れればまた後日談書きます!あとコメント許可もします!

    長くなりましたがそいではまた!
  191. 191 : : 2016/03/24(木) 23:15:40
    お疲れ様でした!

    更に後日談を!?
    書かれるのをお待ちしてます
  192. 192 : : 2016/03/24(木) 23:23:34
    お疲れ様でした!

    毎日更新を確認して、更新される度にニヤニヤさせて頂きました!

    後日談も楽しみに待ってます!
  193. 193 : : 2016/03/24(木) 23:35:37

    初期から呼んでましたが、マジでクッソ萌えました!!

    クッソニヤけて読んでました!!

    更新が待ち遠しく何度更新スクロールをしたか…(笑)

    執筆お疲れ様です。エレアニジャスティスさんの作品はどれも最高ですね。

    後日談楽しみに待ってます。お疲れ様でした!!
  194. 194 : : 2016/03/27(日) 20:09:28
    お疲れ様でした!!

    後日談期待してますよ!!
  195. 195 : : 2016/04/02(土) 19:32:20
    皆様コメントありがとうございます!励みになります!!

    では短くなるとは思いますが、後日談を書かせていただきます!!
  196. 196 : : 2016/04/02(土) 19:58:40
    エレン「ああ!?なんで今の当たってんだよ!!?」

    アニ「はい、私の勝ち」

    エレン「なんだよ今の技キャンセル!」

    アニ「テクニックの一つでしょ」

    エレン「お前格ゲー強すぎんだよ・・・」

    アニ「自分が強くなればいいでしょー」

    エレン「ちくしょう・・」

    アニとエレンは家の中で何かと争う。

    喧嘩的な意味ではなく、競争意識が強いとでもいうのだろうか。

    家事などことあるごとにゲーム等で競い、負けたほうが担当するというものである。

    本日の種目は格闘ゲームであった。

    ちなみに担当はお皿洗いである。

    エレン「カレー食いたいなんて言うんじゃなかった」

    アニ「少ないほうでしょ?」

    エレン「よく言うぜ・・」

    あーあ、と渋々流しに向かって蛇口をひねる。

    アニ「じゃあ私は会社でやり残したことやってるから」

    エレン「ヘイヘイ」

    ーーー

    ーー



    エレン「どーよ職場は」

    アニ「楽しいよ 知り合いも多いし」

    エレン「そうか そりゃ何より」

    アニ「エレンは?」

    エレン「ジャンがいなきゃサイコーな職場」

    アニ「ほんと縁あるよね~」

    エレン「腐れ縁だろ」

    最後のお皿をコトリと置き、約20分かけて皿洗いは終了した。

    タオルで手をふき、アニのもとへ寄るとよくわからない文書がパソコンのスクリーンに出ている。

    エレン「うおー訳が分からん」

    アニ「だろうね」

    エレン「こんなのまとめなきゃいけねえのか」

    アニ「でももうすぐ終わるよ ほんとは家まで持ち込みたくなかったんだけどね」

    エレン「”アニ君、頑張ってるね”とか言われてそう」

    アニ「エレンの中の上司のイメージって古いよね」

    エレン「ひでえなあ 俺達のお上はまじでこんなんだから」

    アニ「ふーん」

    エレン「信じてねえだろ」

    アニ「うん」

    エレン「おいこら」
  197. 197 : : 2016/04/02(土) 20:22:21
    ちらりと机を見れば、数時間前にコンビニで買ったお高いアイス。

    いつの間にか冷凍庫から取り出してきたらしい。

    エレン「さっそく食ってんのかよ せっかく洗い終わったのに」

    アニ「これはちゃんと自分で洗うよ」

    エレン「そうでなきゃ困る」

    不機嫌だった朝が嘘のようだ。

    アニは不機嫌になると口数が一気に減るためすぐにわかる。

    今回は自分に非があることがわかっていたが、そうでなくとも同じである。

    エレン「ただ弁当を白米オンリーにするのは勘弁してくれ」

    アニ「おいしかったでしょ?」

    エレン「大変おいしゅうございましたー」

    皮肉を込めて言ってやる。

    アニ「なら明日も白米がいいんだね?」

    エレン「うおおおお!ごめん!ウソウソ!いや、不味くはなかったけどおかずは入れてくれ!!」

    アニ「冗談だよ エイプリルフール」

    エレン「もう遠い昔だろーが」

    高校時代から変わらぬ言葉の応酬は健在。

    アニ「よし、おしまい」

    エレン「お疲れ様でしたお嬢様」

    アニ「うむ、苦しゅうない」

    エレン「それなんか違くね?」

    アニ「じゃ、お風呂入ってくる」

    エレン「ヘイヘイ あー早く明日にならねえかな」

    アニ「アンタねえ・・・」

    今日は木曜日。

    となれば明日は金曜日。当然のことだ。

    休日は学生のころから誰もが欲してやまないものである。

    休める、遊べるという楽しみだ。

    ただし、同棲しているオトナのカップルであるエレン達には他の意味合いも含まれる。

    エレン「なんだよ?週末だぞ~」

    アニ「それだけじゃないくせに」

    エレン「はて、何の事だか」

    とぼけたふりをしているが口角が明らかに上がっている。

    平日は次の日がつらくなるためナシだが、次の日が休日なら関係ない。

    あらゆることに耐性の付いたアニだが、夜のことに関してはまだまだ初々しい反応を見せてくれる。

    エレン「ダメなの?」

    アニ「・・・ダメ」

    エレン「ふーん」

    ニヤニヤと視線を寄越され、思わず目をそらす。

    きっと目の奥では嘘を見透かされているのだろう。

    アニ「・・・ああああ!わかってるなら聞かないでよ!」

    エレン「ごめーん」

    アニ「お風呂入ったら私はすぐ寝るから!」

    エレン「アイスの容器とスプーン」

    アニ「わかってます!!」

    逃げるようにシャコシャコと洗ってきれいに濯いだ後、宣言通りお風呂場へ行ってしまった。

    エレン「(相変わらずだな~)」
  198. 198 : : 2016/05/03(火) 17:12:51
    期待
  199. 199 : : 2016/05/22(日) 17:59:26
    期待!
    エレンとアニ小学生か!w
  200. 200 : : 2016/09/12(月) 20:48:03
    エレアニでミカサがエレン好きすぎて、どんどんイカレてくるSSありませんでしたっけ?
    あれ結構好きなんですけど笑
  201. 201 : : 2016/09/18(日) 00:34:22
    この作品大好きです!何度も読ませて頂いてます!
    自分エレアニ要素ありの作品で昨日初投稿した
    者です!よかったらぜひご覧になってください

    宣伝失礼しました!
  202. 211 : : 2017/03/08(水) 16:36:53
    ー翌日

    エレン「はぁ…接待ですか」

    ジャン「コイ…エレンと俺で?」

    突然のお上からのお呼び出し。

    用件はどうやら別会社のお偉いさんとの飲みの席をセッティングし、なおかつそれに出席せよとのこと。

    エレン「(なんでよりによってこいつと…)」

    ジャン「(ツいてねえなぁ…)」

    何でも相手の会社の社長は女性のようで。

    本人たちには伝えられていないが、社長の横につけるのはその会社の推しの1人であることがほとんどだ。

    そこで性格云々はともかく顔は悪くないエレンと顔が広いジャンが選ばれたというわけだ。

    エレン「で、日時のほうは?」

    ーーー

    ーー



    エレン「嘘だろオイ…明日って急すぎるだろ」

    ジャン「お前は場所取るだけでいいんだろ?俺は人呼ばなきゃなんねえんだぞ」

    エレン「…どっちにせよ今日の夜も明日も会社に献上しなきゃならねえのか」

    ジャン「ミカサになんて言えばいいんだよ…」

    エレン「俺もアニになんて説明すりゃ…」

    2人揃ってため息を吐き、広場のベンチで飯を広げる。

    と、そこに人影が一つ。

    グンタ「おいおい、嫁からの弁当食うってのに何ため息ついてんだ」

    エレン「グンタさん…まだ嫁じゃないっす」

    グンタ「ジャンに向けてだよ 惚気るな」

    ジャン「あの事は忘れて欲しいんすけど…」

    同じ会社の先輩として働いているグンタがやってきた。

    エルドさんはまた別の会社なのだが、未だに交流があるらしい。

    きっと力になってくれるだろうと相談してみた。

    グンタ「はぁ、接待ねぇ…」

    エレン「結構あるんですか?こういうの」

    グンタ「会社の付き合いってのがあるんだろうな 俺の時はなかったけど」

    ジャン「人呼ぶったって、土曜に来てくれるかっての…」

    グンタ「ん、そんな事ないと思うぞジャン」

    ジャン「え?」

    グンタ「あー、まあお前らには分からねえだろうけど」

    エレン「なんですか、オルオさんみたいに」

    グンタ「うわ、ゴメン、今のは無意識」
  203. 212 : : 2017/03/08(水) 16:48:06
    オルオ「俺らみたいな独りもんには休日っつってもあんま嬉しくはないんだよ」

    ないよりいいけど、と付け加え、腕を組む。

    ジャン「なるほど、じゃあカレカノいない奴に声かけりゃいいんですね!」

    グンタ「その通りだが、なんか腹立つな」

    エレン「場所はどういうところがいいんですかね?安すぎてもダメだし…」

    グンタ「んー、ちょっと待ってろ」

    そう言って懐からスマホを取り出した。

    不思議そうに眺めていると、どうやら誰かと電話するらしい。

    ーーー

    ーー



    ありがとうございましたー

    エレン「はぁ…」

    ジャンからの連絡を受けて人数を把握、どうにか場所を取ることに成功した。

    エレン「エルドさん流石だわ…」

    グンタが先ほど連絡を取った相手は例のエルド。

    合コンなどの「セッティング神」と大学時代に伝説となった男のアイデアは伊達じゃない。

    エレン「(しっかし…)」

    やはりため息がまた溢れる。

    せっかくの2人での休日がコレでオジャンだ。

    明日は場所の下見もしなくてはならないため、朝が早い。

    要するに2人でイチャコラできないというわけだ。

    エレン「(渋ってたし、アニは嬉しいだろうけどな!)」

    半ばヤケになって「つまんねーなー!」と心の中で愚痴った。

    とにかく、今日の分の仕事はもう終わる。

    エレン「(さて…なんて説明するかなぁ)」

  204. 213 : : 2017/03/08(水) 17:07:09
    エレン「ただいまー」

    アニ「ん、お帰り」

    エレン「おー…」

    アニ「元気ないね」

    エレン「劇萎えだよ劇萎え」

    アニ「何が?」

    エレン「実は今日さ…」

    とりあえず経緯を話し、明日のことも話す。

    エレン「急すぎるしさー」

    アニ「実は私も明日、接待があるみたいで…」

    エレン「え、マジで?どこの会社と?」

    アニ「こっちも説明無し ただ来いとしか…」

    嫌な予感と汗が背中を走る。

    接待に女性社員を連れて行くとか嫌な予感しかしないだろう。

    特にまだ入って一年も経っていないのだ。

    あんなことやそんなことを無理やりさせて…やばい腹立って来た。

    アニ「エレン、顔怖い」

    エレン「お前、ちゃんと自分の身を守れよ?」

    アニ「は?」

    エレン「嫌な事は嫌って言うんだぞ!」

    アニ「な、何なの急に」

    エレン「お前が接待する側なんだろ!?お前の会社のイヤラシイ狙いが見え隠れしてんぞ!」

    アニ「今のは聞き捨てならないね!どう言う意味!?」

    エレン「だってそれって半分枕営ぎょ

    全て言い終わる前に顔面に張り手が飛んで来た。

    発言の意味を聞いといて言わせてくれてねえじゃんと思う暇もなく。

    アニ「ウチの会社の社長は女性だし!頼まれたって性接待なんて私がするわけないでしょ!」

    エレン「いや、誰も性接待とは…待て!性接待するのか!?」

    アニ「しないって言ってるでしょこのバカ!大体なんでそんな話になるの!?」

    エレン「自分の姿を鏡で見りゃわかるだろバーカ!お前綺麗なんだから真っ先に狙われるってわかんだよ!」

    アニ「そんなこと言ったらアンタだって顔もいいんだからどっかの女性社長に色気振りまいて来るよう言われたんでしょ!?」

    エレン「はぁ!?」

    アニ「この…!」

    ここで違和感。

    いや、もうなんとなく頭で察した。

    エレン「…あれ?」

    アニ「…まさか」
  205. 214 : : 2017/03/08(水) 17:40:11
    漫画であれば"どーん"という擬音が似合うシチュエーションである。

    お互い引きつった笑いを浮かべて向き合う。

    御察しの通り、接待相手はアニが勤める会社だったわけだ。

    エレン「(ふざけやがって腐れ上司ィィ!)」

    アニ「(なんとなくそんな予感はしたけど…まさか現実になるとは…)」

    系統がそれほど近くない会社だ。

    なぜ、と思わないわけでもないが、それも今はどーでもいい。

    盛り上げ役を呼んだジャンもドン引きだ。アニに加え、ペトラさんもいるわけで。

    周りを見ればなるほど、見た目が良い人ばかりだ。

    ここで2人に電撃の如く危機感がよぎる。

    エレン「(絶対にアニに酒を飲ませてはならん!)」

    アニ「(絶対に他の子に勘違いをさせてはならない!)」

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著者情報
monhanhityan

エレアニジャスティス

@monhanhityan

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