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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

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ピクシス「二つの塔」 ⑥ 進撃×ロード・オブ・ザ・リング

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  1. 1 : : 2015/06/13(土) 12:33:27
    進撃×ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔 第9話、第10話です。


    http://www.ssnote.net/series/2278



    よろしくお願いします<m(__)m>
  2. 2 : : 2015/06/13(土) 12:36:34






    「着いたのねッ!」




    「やったッ! 着いたぞ!」




    「ヘルム峡谷だッ!」













    リコに導かれたローハンの民は、苦難の末、ようやくヘルム峡谷へと辿り着いた。










    ヘルム峡谷――――――ローハンの第一王家最後の王である追手王ヘルムから名が取られた峡谷であり、強固な壁の後ろには角笛城が聳え立っている。




    ローハンの防衛の要であり、この砦は難攻不落として知られていた。







  3. 3 : : 2015/06/13(土) 12:37:50








    桟橋を上って壁にある扉に近づくと、中から扉が開いた。




    ―――――中には既に、サルマンの侵略によって故郷を追われたローハンの民が避難していた。




    その多くは老人や子供であり、兵士の姿があまり見られなかった。









    コニー「マーティンッ! サニーッ!」




    マティンサニ「「あんちゃんッ!!!」」








    西の谷の危急を知らせた二人の兄妹は、ようやく一番上の兄と再会した。




    コニー「無事でよかった。本当によかった・・・・・・。」




    二人を抱き寄せ、思わず涙するコニー。









    サニー「さびしかったよ。あんちゃんッ!」




    マーティン「僕もさびしかった・・・・・・うえぇぇぇんッ!」






  4. 4 : : 2015/06/13(土) 12:38:58







    「門を開けろッ! 王が戻られたぞッ!」




    しばらくして、魔狼(ワーグ)の奇襲を退けたピクシスの騎馬隊が戻ってきた。












    リコ「たった・・・・・・これだけ?」




    急襲による死者は予想外に多く、リコはポツリとつぶやいた。




    そして、リコもまた、次のことに気が付いた。










    リコ「・・・・・・リヴァイはどこだ?」




    尋ねられたライナーは目線を下に落とした。




    ライナー「あいつは・・・・・・崖から・・・・・・。」





  5. 5 : : 2015/06/13(土) 12:40:17









    ――――――――――うそだッ!




    リコ「そんなバカなことがあるか! あいつがそんなことで死ぬわけがないだろッ!」




    ライナーに背を向け、リコは一人歩きだした。




    くそ、嘘だ嘘だ・・・・・・そんなバカなこと、あってたまるものかッ!

















    ピクシス「・・・・・・。」




    遠巻きに様子を見ていたピクシスは、姪の顔が再び曇ってしまったことに心を痛めながら、砦の補修作業に取り掛かり始めた。











  6. 6 : : 2015/06/13(土) 12:42:04





















    グリマ「あの砦には弱点があります。壁の中央にある、人が通れる大きさの排水溝です。」












    サルマンはオルサンクの塔の中で、鉄製の球の中に何かを詰めているようだった。




    グリマ「これは・・・・・・火薬? これでいったいどう戦うというので?」




    サルマン「むむ。」




    火のついた燭台をもって不用意に近づいたグリマを制止するサルマン。





  7. 7 : : 2015/06/13(土) 12:43:23






    サルマン「壁さえ破壊すれば、あの砦は落ちる。」




    グリマ「それは不可能です。数千の軍が居なければ、砦は落とせません。」




    サルマン「数万だよ。」




    グリマ「しかしそんな軍がどこに・・・・・・―――――















    ブオッ! ブオオオオオオオッ!!!












    ベランダに出ると、グリマは言葉を失った。




    角笛の音が鳴り響き、雄叫びが大地を震わせる。

















    ――――――そこには、長い槍を持ち、武装した一万ものウルク=ハイが既に展開していた。





  8. 8 : : 2015/06/13(土) 12:44:15







    サルマンが右手を上げると、ウルク=ハイは静かになった。









    サルマン「新しい勢力の誕生だッ! その勝利は最早目前ッ! 今宵、大地はローハンの血で穢されるッ! ヘルム峡谷へ進撃せよッ!!」




    その力のこもった声に、ウルク=ハイはどよめいた。









    サルマン「戦争だッ!!!」




    ウオオォオオォォォォオオォォォォォッ!!!




    ウルク=ハイの興奮は最高潮に達し、いよいよヘルム峡谷へ向けて進撃を開始した。























    サルマン「・・・・・・人間どもに、夜明けは来ない。」











    第9話


    アイゼンガルド、動く





  9. 9 : : 2015/06/13(土) 18:23:25













    ジャン「おい、何だよあれ・・・・・・。」




    マルコ「俺の目が信じられないよ。」









    ――――――蟻が群がるかのごとく移動するその大軍を、ジャンとマルコはファンゴルンの森、木の髭の肩の上から目撃した。




    木の髭「アイゼンガルドからは煙が上がっておる。最近はずっとそうじゃ。サルマンはかつて木や鳥を愛した。じゃが、今の彼の心は機械と歯車で出来ておる。」








    ジャンは焦燥に駆られていた。




    ジャン「あいつら、リヴァイたちを襲うつもりじゃねえだろうな?」




    マルコ「・・・・・・俺もそう思うよ、ジャン。」









    ―――――――友人たちは必死に戦おうとしている。



    俺たちに、何かできることはないのだろうか?



    彼らは自問自答していた。




  10. 10 : : 2015/06/13(土) 18:24:43









    木の髭「ふむ・・・・・・上古以来のことが、この世界で起きようとしている。わしらエントもどのようにするのか決めなくてはなるまい。」












    木の髭が森の中にぽっかり空いたように広がる平原に出ると、次々と他のエントたちが集まり始めた。




    彼らは皆、木がそれぞれ種類の異なるように、樫の木やブナの木など、様々な外見を持っていた。










    彼らに固有の、エント語で、木の髭は挨拶を始める。




    エントの寄合――――――エントムートが始まった。









    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






  11. 11 : : 2015/06/13(土) 18:56:33



















    く・・・・・・俺は・・・・・・死んだのか・・・・・・・・・・・・














    ・・・・・・ペトラ・・・・・・・・・・・・















    俺の目の前に、ペトラが姿を現した。




    ペトラ「貴方に、ヴァラールの恩寵を。」











    起き上がれない俺に、口づけをする。






  12. 12 : : 2015/06/13(土) 18:57:06















    薄目を開けると、俺はあおむけに横たわっていた。





    川に流され・・・・・・傷を負ったようだ・・・・・・・・・・・・。















    頬に、何かが触れる。





    ああ・・・・・・俺がさっきまで乗ってた馬だ・・・・・・。





    膝を折って、俺に乗れと言っているかのようだ。





  13. 13 : : 2015/06/13(土) 18:57:31








    俺はなんとか馬に掴まり、ゆっくりと跨った。





    しばらくは体に力が入らず、ゆすられるままに乗っていた。





    だが、体に力が戻り始めた頃、俺は目撃した――――――――おおよそ一万ほどの、ウルク=ハイの大軍を。















    俺は走った。




    平原の中を、力いっぱい。




    そしてついに俺は、ヘルム峡谷へと辿り着いた。






  14. 14 : : 2015/06/13(土) 18:58:15









    「門を開けろッ!!!」








    砦の中に入ると、人々はざわめいた。




    どうやら、俺は死んだことになっていたらしい。







    すると、聞き慣れた声が聞こえてきた。




    ライナー「どけ、どけッ! あいつを一発ぶん殴ってやるッ!」





















    リヴァイ「誰をぶん殴るだと? このクソ野郎が。」




    ライナー「く、この・・・・・・べらぼうに向こう見ずな、死に急ぎ野郎をだッ!」




    ライナーは今にも泣きそうな声で言った。




    ライナー「よく、戻ってきたな・・・・・・。」




    そう言うなり、思いっきりライナーはリヴァイに抱き付いた。




  15. 15 : : 2015/06/13(土) 18:59:43







    しばらく抱き合った後、リヴァイは言った。




    リヴァイ「王に伝えることがある。ピクシスはどこだ?」




    ライナー「この砦の一番奥の部屋だ。」









    リヴァイが最も奥の部屋の扉の前に来ると、そこにはアニが待っていた。






    アニ<遅かったじゃないか。>




    リヴァイ<ちっ、悪かったな。>






    エルフ語で会話をしていると、アニが手を差し出し、手のひらを開いた。




    アニ<あんたに返すよ・・・・・・大切なものだろ?>




    そこにはノルドールのナイフと、ペトラのネックレスがあった。















    リコ「!!!」




    リコは奥の部屋の扉の前でアニと話すリヴァイを見つけた。










    だが、話しかけることが出来なかった。




    リヴァイが大切そうに、ネックレスをアニから受け取っているのを見たからだった。









    ――――――――少し、その女性が羨ましい。










    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






  16. 16 : : 2015/06/13(土) 19:18:28









    その女性は、裂け谷の自室で横になっていた。










    「入るぞ。」




    ペトラ「ええ、お父様。」










    彼女の父親であるエルヴィンが部屋に入ってきた。




    エルヴィンはもう何年も前から、娘のペトラに、至福の国ヴァリノールへの船に乗るよう説得していた。






  17. 17 : : 2015/06/13(土) 19:18:48





    エルヴィンはペトラを見つめ、もう何度も繰り返した言葉を口にした。




    エルヴィン「我らの故郷に帰るのだ、ペトラ。この世界に、希望はない。」




    ペトラ「嘘・・・・・・お父様は希望を託して、エレンやリヴァイを旅立たせたんでしょう?」




    エルヴィン「今話しているのは、その話ではない・・・・・・お前自身の希望について言っているのだ。」








    ややあって、エルヴィンは暗い調子で話を始めた。




    エルヴィン「例えばリヴァイが王位を継ぎ、お前が王妃となったとしよう。




    だが、リヴァイにはからなず寿命が来る。そしてお前も死すべきものとなり、長い時を暗闇の中で過ごさねばならないのだ。




    お前が最後の日を迎えるまで、お前は・・・・・・孤独だ。」









    ―――――――エルヴィンの話は、ペトラに暗い幻影を呼び起こさせた。




    白髪になったリヴァイがものも言わず横になり、自分は黒い喪服で彼の横に佇んでいる光景。






  18. 18 : : 2015/06/13(土) 19:19:30






    暗い幻影が去った後、今度はペトラの胸に、リヴァイとの思い出が麗しく蘇る。




    エルヴィン「ヴァリノールではすべてが癒され、お前のその想いも永遠に色褪せることはない。」




    ―――――――それは、リヴァイとの愛を思い出に変えよという残酷な説得だった。









    ペトラの頬に、涙が伝う。




    娘の涙の意味が、エルヴィンに分らぬわけがなかった。




    ―――――――別離の涙。それは、恋い慕うものへの、決別の涙であった。







    しばらくして、エルヴィンは娘の決意を見届けてから尋ねた。




    エルヴィン「・・・・・・父親への、愛はないのか?」




    ペトラ「・・・・・・愛しているわ、お父様ッ!」




    涙で濡れた声で、ペトラは答えた。









    そっとペトラを抱き寄せるエルヴィン―――――――彼の心にも、悲しみはあった。娘を悲しみの多いこの中つ国に残して行きたくない。なんとも不器用な親心だった。





  19. 19 : : 2015/06/13(土) 19:20:14






    やがて、ヴァリノール行きの船が出る灰色港へと出発するエルフの一団にペトラは加わった。




    その一団が、裂け谷をゆっくりと後にするのを、エルヴィンは見届けていた。




    馬にまたがったペトラは、一瞬こっちを振り向いた後、前を向いて進み始めた。



















    ふと、エルヴィンの頭の中に声が聞こえてきた。




    それは、ロスロリアンの奥方の声であった。




  20. 20 : : 2015/06/13(土) 19:21:08







    ガラドリエル「闇の勢力が動き始めています。




    サウロンはサルマンを操り、ローハンを襲撃するでしょう。










    指輪の持ち主の力は、弱まりつつあります。




    エレンは指輪の誘惑に晒されて、次第に正気を失っています。




    アルミンがそばに居て、何とか自我を保っている有様です。








    あなたは予見なさっていた。




    こうなることを承知で、エレンを旅に出したのです。




    彼も覚悟し始めています。この任務は――――――――・・・・・・・・・・・・


























    エレンの命と引き換えになるでしょう。





  21. 21 : : 2015/06/13(土) 19:22:38







    指輪は人間の手に落ちようと必死になっています。




    人間のほうが誘惑しやすい。




    そして、エレンはゴンドールの若き大将の手に落ちました。
















    指輪が目的を達成するまでは、もう少しなのです。」













    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇







  22. 22 : : 2015/06/13(土) 21:26:39
    期待です!サシャはもうちょいですか?ペトラのお父さんが団長なのが予想外です!頑張って下さい!!
  23. 23 : : 2015/06/14(日) 13:05:31
    いつもご期待ありがとうございます。


    エルヴィンはエルロンド卿の役ですからね。


    サシャはもう少しで出てきます。
  24. 24 : : 2015/06/14(日) 13:07:20














    エレン「くそ、ここはいったいどこなんだよ?」




    アルミン「ごめん・・・・・・僕にも分らない。」




    ゴンドールの大将であるエルドに捕えられた後、エレンとアルミンは目隠しをされ、担がれてこの場所に移された。










    アルミン「どうやら滝の裏にある洞窟。しかもそこかしこに武器や食料が積まれているところを見ると、この人たちの拠点みたいだ。」




    エルド「随分と頭の切れる旅人もいたものだな。」




    エレアル「「!!!」」









    第10話


    イシリアンの滝






  25. 25 : : 2015/06/14(日) 13:07:47






    エレンたちの後ろにいたエルドが二人の正面に座った。




    エルド「さて、お前たちの目的を聞かせてもらおうか?」




    アルミン「なぜ僕たちに目的があると?」




    エルド「簡単なことだ。目的もなしにここに足を運ぼうとする人間はそうはいない。あの醜い奴もお前らの仲間だろう?」




    アルミン「醜い奴?」




    ――――――――ゴラムのことか。僕たちからこっそり離れて逃げおおせたのか。あいつめ・・・・・・。









    エレン「いや・・・・・・あいつは・・・・・・仲間じゃねえよ。」




    アルミン「!!!」







    ―――――――思わず声を出しそうになった。あれだけゴラムに寛容なエレンが、仲間じゃないと言い切った。




    僕は・・・・・・・・・・・・君が分からなくなってきたよ。




  26. 26 : : 2015/06/14(日) 13:08:46






    エレン「俺たちは・・・・・・9人で旅をしてたんだ。」




    エルド「ほう。」




    エレン「その内の一人、ガンダルフはモリアで・・・・・・死んだ。」










    エルドの表情が険しくなる。




    エルド「ミスランディアが・・・・・・死んだッ!?」




    アルミン「・・・・・・モルゴスのバルログとの戦いで、奈落の底に落ちていったんです。」




    エルド「・・・・・・。」









    エレン「そして、俺たちはパルス・ガレンで離れ離れになった。」




    エルド「・・・・・・そうか。」



  27. 27 : : 2015/06/14(日) 13:09:13







    エルドは、エレンがどうしても旅の目的を話したくなくて、話をそらしているのを感じ取っていた。




    その為、エルドは質問を変えた。








    エルド「他の仲間にはどんな者たちが?」




    エレン「ホビットが俺たち含めて4人、人間が2人に、エルフが1人、ドワーフが1人だ。」




    エルド「ホビット?」




    アルミン「僕たちのような小さい種族です。」




    エルド「成程な・・・・・・それで、人間が2人いるといったが?」




    エレン「リヴァイとベルトルトだ。」



  28. 28 : : 2015/06/14(日) 13:10:14






    エルド「!!!」




    今度は、エルドが驚いた顔をした。




    エルド「お前は・・・・・・ベルトルトと仲間だったのか?」




    エレン「ああ、俺とベルトルトは仲間だ・・・・・・そう信じてる。」









    すると、エルドは立ち上がった。さっきまでと違い、少し感情的になっている。




    エルド「では残念なお知らせになるな・・・・・・ベルトルトは死んだ。」















    二人のホビットは、何かに殴られたような衝撃を受けた。




    エレン「死んだッ!? 何処でッ!? どうやってッ!?」




    エルド「俺が知りたいくらいだ・・・・・・・・・・・・どうして俺の兄貴が死んだのかをなッ!」




    エレン「えっ!?」




    アルミン「兄弟!?」












    ――――――エルドの胸に蘇るのは、兄弟として過ごした最後の時間。




    ベルトルトがエルドを残して旅立っていった日の光景―――――・・・・・・






  29. 29 : : 2015/06/14(日) 13:12:32







    ~数か月前~





    その日、ゴンドールの兵士たちは沸き立っていた。




    ベルトルトの活躍により、モルドールによって奪われていたオスギリアスが奪還されたのだ。










    歓声に沸くゴンドールの軍を前に、ベルトルトは建物の屋上に立って剣を抜き、執政の家を表す白い御旗を突き刺して叫んだ。




    ベルトルト『かつてこの都には、美しい音楽や、芸術が溢れていたッ!』




    声も高らかにスピーチをするベルトルト。








    ベルトルト『ここを、かつての栄光ある姿に戻そうッ!!』




    ベルトルトの言葉に、ゴンドールの軍人たちも歓声を上げる。








    ベルトルト『オスギリアスはッ! ゴンドールによって奪還されたッ!!!』





    爆発的な歓声・・・・・・その場に居合わせた全員が、モルドール相手に勝利したことに酔いしれた。









    ベルトルト『ゴンドールッ!!!』




    兵士たち『『『ゴンドールッ!!!』』』







    高らかに勝どきをあげる兵士たち。




    その日は、かつてのゴンドール王国王都、オスギリアスがモルドールから奪還され、全員が勝利に酔いしれた日だった。





  30. 30 : : 2015/06/14(日) 13:13:40






    エルド『兄貴ッ!』




    ベルトルト『エルドッ!』




    エルド『いいスピーチだったぞッ! 短くてッ!』




    ベルトルト『早く酒が飲みたいからさッ!』




    屈託なく笑い合う兄弟。




    ベルトルト『酒を持ってきてッ! もう喉がカラカラだッ!』










    勝利の美酒に酔いしれるゴンドールの兵士たち。




    ハンジ『いや~、ベルトルト。君最高だったよ~! 君の戦いっぷりに思わず滾ったなぁ~!』




    サシャ『凄かったですよ、ベルトルトッ! 右手で敵の首を一捻りだったんですからッ!』




    ベルトルト『ちょっと、変な武勇伝作らないでよッ!』




  31. 31 : : 2015/06/14(日) 13:15:21






    少し誇張されてはいたものの、ベルトルトが指揮を執ってこの都が奪還されたことは間違いなく、仲間たちから様々な祝福を受けた。




    モブリット『やりましたねッ! ベルトルトさんッ!』




    オルオ『まぁ俺がいたからここまで出来――』ガチッ! ブシャァァァッ!!!




    グンタ『はぁ、全くお前は・・・・・・。』




    ベルトルト『あはははは・・・・・・。』








    様々な仲間と杯を交わし、ベルトルトはエルドの元へと戻ってきた。




    ベルトルト『今日は忘れられない一日になったよ、エルド。』




    エルド『俺もだ・・・・・・兄貴。』









    都の片隅で、こっそりと杯を交わす兄弟。




    ――――――彼ら兄弟は、お互いに深い絆で結ばれていた。







  32. 32 : : 2015/06/14(日) 21:55:13
    ベルトルト……
    分かってはいたけど悲しい…
    期待です
  33. 33 : : 2015/06/15(月) 16:08:52
    この家族は本当に報われないですよね・・・・・・。


    期待ありがとうございます。
  34. 34 : : 2015/06/15(月) 16:14:27







    お互い杯に入ったビールを飲み干していると、俄かに兵士たちが、奥のほうへ向かってあわただしく敬礼をし始めた。






    エルド『兄貴・・・・・・お出ましだ。』




    ベルトルト『やれやれ・・・・・・もっと兄弟でゆっくりしたかったんだけどね。』










    奥からやってきて、功績のあった兵士たちと握手を交わすのはゴンドールの執政――――――ロッド・レイス。




    彼もまた、勝利の余韻に浸り、上機嫌で自分の息子を呼んだ。








    ロッド『さて、この戦いで最も功績を上げた勇者はどこにおる?』




    ベルトルト『父さんッ!』







    ベルトルトとエルドは、執政ロッドの息子であり、共にゴンドールの大将であった。




  35. 35 : : 2015/06/15(月) 16:36:26





    ベルトルトと向き合うと、ロッドは両手を広げ、そのまま抱擁を交わした。




    ロッド『聞いたぞ、ベルトルト。右手で敵を一捻りにしたそうじゃないか!?』




    ベルトルト『誇張ですよッ! エルドも手柄を立ててくれたんです!』








    すると、ロッドはエルドのほうを向いた――――――先ほどまでの上機嫌さとは打って変わって、冷たい表情であった。




    ロッド『ベルトルトが守っていたオスギリアスの防衛を放棄し、都に逃げ帰ったエルドがか?』




    エルド『あの時は多勢に無勢でした。』




    ロッド『ベルトルトは少数で防衛していたのだぞ。』




    返す言葉のないエルド。




  36. 36 : : 2015/06/15(月) 16:37:19






    ベルトルト『父さんはいつもそうだ・・・・・・。』




    弟に冷淡なロッドに、ベルトルトは嫌気がさしていた。




    父の元から離れていくベルトルトを、ロッドはすぐに追いかけた。




    ロッド『またんか、ベルトルト。話がある。』




    ベルトルト『話?』









    ロッドは周りに聞こえないよう、声を落としてしゃべり始めた。




    ロッド『裂け谷のエルヴィン卿から使者が来た。一つの指輪が見いだされたらしい。』




    ベルトルト『!!! 本当ですか!?』




    ロッド『うむ、そのことで会議が招集された。そこでは恐らくエルフたちが指輪の所有権を主張するだろう。だが、指輪はエルフたちには渡さん・・・・・・我らゴンドールのものだッ!』




    ベルトルト『いったいどういうことです!?』




    ロッド『我らは長年モルドールと争い、中つ国の自由を守ってきた。その我らがモルドールと戦う武器として、指輪を手に入れるのは必然だ。』




    ベルトルト『・・・・・・。』




    ロッド『意志の強いお前なら使いこなせる。裂け谷へと行くのだ、ベルトルト。』




  37. 37 : : 2015/06/15(月) 16:38:11






    ベルトルトは、しかし、命令を拒否した。




    ベルトルト『僕は、行きたくありません。』








    立ち去っていくベルトルトに、ロッドは少し大きな声で言った。




    ロッド『父の命に逆らうのかッ!?』








    この様子を見かねたエルドが、ロッドに進言した。




    エルド『私が行きます!』









    ロッドの対応は冷淡であった。




    ロッド『ほう、ゴンドールの大将、エルドが自らの器を試すチャンス、という訳か。』




  38. 38 : : 2015/06/15(月) 16:38:45





    しばらくの沈黙の後、ロッドはエルドに言い渡した。




    ロッド『この任務は期待を裏切らないベルトルトに任せる。』




    ベルトルト『父さんッ!』




    ロッド『エルドの話はもうよせ。あいつは、役立たずだ。』









    きっぱりと言い切って、執政は去っていった。










    歓喜に沸くのもそこそこに、ベルトルトは旅の支度を整えた。




    ベルトルト『すまない、エルド。』




    エルド『気にするな、兄貴。俺は今日という日を忘れない。』




    ベルトルト『うん、僕もこの日を忘れない。』












    ベルトルトはそのまま、馬に乗って裂け谷へと出発していった。





  39. 39 : : 2015/06/15(月) 16:39:30

















    数か月後、ロッドとエルドはそれぞれ、吹き鳴らされるゴンドールの角笛の音を聞いた。





    その数日後、エルドは目撃した――――――エルフの小舟の中に、その身を横たえたベルトルトの亡骸を。












    遅れることさらに数日、二つに割れた角笛が大河アンドゥインの岸辺に打ち上げられ、それは執政ロッドの元へと届けられたのだった。







  40. 40 : : 2015/06/15(月) 20:24:08
    期待です!
  41. 41 : : 2015/06/15(月) 23:21:02
    いつも期待ありがとうございます。


    おかげで書き続けるモチベーション維持に繋がってます。頑張りますね。
  42. 42 : : 2015/06/15(月) 23:21:37
















    エルドは回想に耽り、エレンとアルミンも何を話したらよいのかわからず、お互いにしゃべることもないまま、ただ時間だけが過ぎていった。












    すると、グンタがやって来て、エルドに耳打ちをした。




    (グンタ「三人目を見つけたぞ。」)








    それを聞いてエルドは立ち上がった。




    エルド「エレン、アルミン・・・・・・ついてくるんだ。」









    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




  43. 43 : : 2015/06/15(月) 23:22:09






    エレンたちは滝の裏にある洞窟から、イシリアンの滝壺の近くまで案内された。




    日はすっかり暮れており、月明かりの美しい夜であった。








    (バシャッ!)




    エレンがふと滝壺を見ると、そこには滝の下で魚を取るゴラムがいた。








    エルド「あの池は神聖な池でな。あそこの池に入ったものは死罪になる。」




    エルドが腕を上げる――――――滝つぼの周りにある茂みの中に隠れていた兵士たちが、一斉に弓を引く。




  44. 44 : : 2015/06/15(月) 23:23:28







    ――――――このままじゃ、確実にゴラムは殺される!




    エルドが手を降ろそうとした瞬間、俺は叫んでしまった。




    エレン「止めろッ!」








    すかさずエルドは問いかける。




    エルド「なぜだ?」










    もう、言い逃れは出来ない。




    エレン「あいつは・・・・・・俺たちの道案内だ。俺と・・・・・・話をさせてくれ。」






  45. 45 : : 2015/06/15(月) 23:25:50















    スメアゴル「ぴちぴち跳ねる、いい魚~♪」




    魚を取って上機嫌なスメアゴルに、俺はゆっくりと近づいた。









    エレン「スメアゴル。」




    こっちを振り向いたスメアゴル。








    スメアゴル「旦那?」




    エレン「あぁそうだ。俺だよ、スメアゴル。」




    スメアゴル「もう出発しるの?」




    エレン「そうだ、こっちに来い。俺を信じてくれ。」













    手に持っていた魚をくわえ、スメアゴルはエレンに向かって歩き始めた。




    ガバッ! スメアゴル「うわぁッ!!!」




    すると、突然茂みから出た兵士に、黒い布を頭からかぶせられた。









    エレン「なっ、ふ、ふざけんなよッ!!!」




    スメアゴル「だ、旦那ぁッ!!!」




    そのままスメアゴルは、エルドの指示で滝裏の洞窟へと連れていかれてしまった。














    エレンは、スメアゴルを誘い出すための、おとりとして使われたのである。








    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





  46. 47 : : 2015/06/15(月) 23:27:21








    うわああぁぁぁああぁぁぁぁああぁぁあぁぁぁッ!!!








    そのままスメアゴルは、エルドとグンタによって、殴る蹴るの暴行を受けた。




    エルド「そろそろいいだろう・・・・・・さて、教えてもらおうか?」







    エルドは背を向いて横になってうずくまるスメアゴルに尋問を始めた。




    エルド「お前は何しにここに来た?」











    すると、暴行され、嗚咽を漏らすスメアゴルに替わって、再びあの低い声でゴラムが語りだした。




    ゴラム「どうして泣いているんだい?」




    スメアゴル「うう・・・・・・う・・・・・・。」




    ゴラム「言っただろう? あの薄汚い盗人は裏切るって。」




    スメアゴル「ううう・・・・・・うう・・・・・・。」










    グンタ「な、なんだ・・・・・・こいつ。」




    突然現れた二重人格に困惑するエルドとグンタ。




    エルド「あのホビットたちが・・・・・・何か盗んだのか?」








    すると、ゴラムが初めてエルドたちにしゃべり始めた。




    ゴラム「何を盗んだかって・・・・・・わしらの、愛しいしとだよッ! ああぁあぁぁぁッ!!!」









    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




  47. 48 : : 2015/06/15(月) 23:27:51







    エルドに騙されて、ゴラム生け捕りのためのエサにされてしまったエレンとアルミンは、武器庫の中に閉じ込められていた。










    どうにかしてここから脱出しないといけない。




    せめて、エレンだけでも・・・・・・。








    アルミンはその頭を回転させ、エレンにそっと提案した。




    アルミン「エレン? 提案があるんだけど?」




    エレン「・・・・・・。」





  48. 49 : : 2015/06/15(月) 23:28:16





    エレンがこれといった反応を示さないのをよそに、アルミンは話を続けた。




    アルミン「・・・・・・指輪を使うんだ、エレン。」




    エレン「・・・・・・は?」




    アルミン「指輪を使って君だけでもここから逃げるんだッ!」




    エレン「な、何言ってんだよ、お前ッ!」












    エルド「そうか・・・・・・指輪がすべての答えだったのか。」




    エレアル「「!!!」」







    ――――――しまった! 僕らの会話が、聞かれていたッ!




  49. 50 : : 2015/06/15(月) 23:28:52





    剣を抜き、エルドがゆっくりとエレンに近づく。




    その切先がエレンの首元を探り、鎖にかけられた指輪を探り当てた。







    エルド「ゴンドールの大将エルドが、その器を試すチャンスか。」




    指輪を見つめ、エルドは息をのんだ。









    エレン「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・。」




    アルミン「え、エレン!?」







    白目を剥き、呼吸を乱し始めるエレン。




    次の瞬間、瞳を戻したエレンは剣をはじき、怒りを顕わにした。




    エレン「止めろッ!!!」




    エルド「なっ!?」










    これ以上はエレンが持たない――――――そう判断したアルミンが必死に訴えた。




    アルミン「僕たちは指輪を葬るためにモルドールの滅びの山へ行く使命をになっているんです! どうか行かせてくださいッ!!!」




  50. 51 : : 2015/06/15(月) 23:29:34







    丁度そのタイミングで、グンタが現れた。




    グンタ「エルド、オスギリアスのオルオから救援要請が来たぞ。」








    兄ベルトルトが取り返したオスギリアスが危機に瀕している。




    エルドは決断した。























    エルド「指輪の行き先はモルドールではない。ゴンドールだ。」





    こうして、エレンとアルミン、そしてゴラムは拘束され、オスギリアスへと連行されることになってしまった。









  51. 52 : : 2015/06/15(月) 23:31:22
    以上で第9話と第10話が終了です。



    次回はヘルム峡谷での戦いになる予定です。
  52. 53 : : 2015/06/15(月) 23:33:39
    おお、壮大なssですね。

    次回作頑張れ‼
  53. 54 : : 2015/06/15(月) 23:48:20
    コメントありがとうございます!


    二つの塔もようやく佳境に入りました。


    次回もよろしくお願いします<m(__)m>

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hymki8il

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進撃×ロード・オブ・ザ・リング ~二つの塔~ シリーズ

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