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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

55番目の箱

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  1. 1 : : 2015/01/21(水) 23:36:55
    キャラ崩壊
    バトル系
    ダンロンシリーズネタバレ含


    というのもいろんな方のBR系見てたら僕も何だかバトルやりたくなってみなぎってまいりました。ギャグメインでやってきましたが、たまにはシリアスで長編やってみようかと思います。長い目で見てやってください。


    タイトルはダンロン初期案のタイトルから拝借。

    それでもよろしかったら、どうぞ。


  2. 2 : : 2015/01/22(木) 00:07:45


    ─────思考実験『箱』第五十四号、終了報告。



    生存率0.00%


    死亡率100.00%


    最終日生存者死因


    77014番……自殺
    77004番……刺殺
    77110番……絞殺
    78010番……銃殺
    78107番……刺殺


    77014番、記憶障害の確認。



    今回に置ける勝利チーム無し。






    第五十五号思考準備……


    蘇生開始、強心剤(カンフル)適用、微細振動適用、生命維持装置チェック







    ……完了、32名蘇生完了




    第五十五号ロケーション設定



    『学区』



    十二式枷、設定完了





    ─────思考実験『箱』第五十五号、開始






    『ようこそ、絶望学園へ』















  3. 3 : : 2015/01/22(木) 00:34:38


    ─────



    「あ……が……」



    「ごめん……ごめんなぁ……あ、あぁあああああ!!」


    彼を最期に視たのは、泣いて、哭いて、謝りながらボクの頭を撃ち抜く彼の姿だった。



    ボクは同意したんだから、何も抵抗しなかった。


    ……死ぬのは怖い、でも、そうしなければ『今回が終わらない』。


    そして、彼はボクを撃ち抜いたモノで自分の頭を、



    パァン、と。



    撃ち抜くのを視た。




    ……ああ、そんなんじゃ、ボクは何のために死んだんだろう。


    でも、ボクもきっと、彼と同じ立場だったら、彼と同じ事をしてただろう。



    ……終わらない、ボクらのコロシアイのコロサレアイ。



    終止符なんて、何処にもない。



    絶望だけが、ボクらに残る。





    ───────



    苗木「がっ……あ……ハァ……ハァ……」


    目を覚まし、辺りを見渡すと其処は教室だった。


    薄暗い……窓一面に張られた鉄板が太陽の光を遮っているのだろうか。



  4. 4 : : 2015/01/22(木) 00:50:04


    先ほどの出来事がまるで夢であるかの様に、ボクの脳裏から消えていく。


    ……何か、すごく大切な事だった様な気がするんだけど、思い出せない。



    ガラリと教室の戸が開く。



    七海「……キミ、一人?」


    苗木「う、うん……キミは?」


    七海「私は七海、七海千秋だよ? 超高校級のゲーマーやってまーす」


    すっとんきょうに、少しだけ微笑んで彼女は挨拶してきた。



    ……ああ、そうだった。ボクは『希望ヶ峰学園』に入学したんだ。


    未来の成功を約束されたこの学園に『超高校級の幸運』という、全国の高校生から抽選で選ばれた『幸運の才能』で入学してきたんだ。


    ……でも、ボクは入学して『1年間』この学園にいるハズだけど、彼女を知らない。




  5. 5 : : 2015/01/22(木) 01:01:51
    期待です!
  6. 6 : : 2015/01/22(木) 01:18:19
    >>5ありがとうございますっ
    がんばりますぞ!
    ──────────────





    七海「キミで最後なのかな? みんなエントランスにいるよ?」


    苗木「う、うん、ありがとう七海さん」


    七海さんは「先に行くね?」と言って、背負った猫のヌイグルミの様なリュックを背負い直して教室を出ていく。



    エントランスには見知った顔と、知らない顔の人物が居る。




    舞園「苗木君っ!」


    桑田「苗木か?」


    大和田「苗木!」



    不二咲「苗木君っ」



    山田「苗木誠殿!」


    江ノ島「苗木っ」


    戦刃「苗木君……」



    見知った顔の人がボクに駆け寄ってくる。彼等はボクと同じクラスの人達……つまり『希望ヶ峰学園78期生』だ。


    苗木「……他の皆は?」


    桑田「いや、わかんねぇ……代わりによぉ……『77期生』が居るみてえなんだよ」


    先程の七海さんと言い、ボクら8人とは別に8人の『77期生』が居る様だ。



    日向「お前が最後か、俺は日向創、『超高校級の相談者』だ。よろしくな」


    苗木「ボクは苗木誠、『超高校級の幸運』だよ。よろしくね、日向クン」



    ガッチリと握手を交わす。人当たりの良さそうな人だ……確かにこの人になら、どんなことでも相談出来ちゃうかも知れないな。

  7. 7 : : 2015/01/22(木) 01:45:59


    左右田「オレは左右田和一、『超高校級のメカニック』だ。よろしくな、苗木」


    九頭龍「九頭龍冬彦ってんだ。『超高校級の極道』やってる。よろしく頼むぜ苗木」


    狛枝「苗木誠クン、といったね。ボクは狛枝凪斗、キミと同じ『超高校級の幸運』さ……よろしくね」


    七海「さっきも言ったけど、私は七海千秋、『超高校級のゲーマー』でーオールジャンルいけまーす。改めてよろしくね? 苗木くん」


    罪木「……な、苗木さんでよろしいんですね? そ、そのぉ……一応『超高校級の保健委員』やってる罪木蜜柑ですぅ……よ、よろしくお願いしますねぇ?」


    澪田「澪田唯吹ッス! 『超高校級の軽音部』やってるッスよぉ、誠ちゃんよろしくッス!」


    ソニア「ソニア・ネヴァーマインドです、『超高校級の王女』です。どうか以後お見知り置きをお願いしますね、苗木さんっ」


    『77期生』の人達に挨拶を済ませ、エントランスと外を繋ぐ金庫の様な扉を仰ぐ。


    舞園「……旧校舎の様ですけど、こんな扉ありませんでしたよね」


    苗木「……うん、それに、どうしてボクらはここに居るんだろう」


    金庫の様な扉も気になるが、それよりもボクらがここに居ることが疑問だった。


    どのタイミングで来て、どのタイミングであの教室に居たのか解らない……



    日向「……なあ、七海、どう思う?」


    七海「………うーん、閉じ込められちゃったのかな。私達」



    皆、不安感を拭えない。もちろんボクもだ。




  8. 8 : : 2015/01/22(木) 02:18:26


    戦刃「……盾子ちゃん」


    江ノ島「残念だけど、私じゃないよ……ったく、誰だよこんな心踊るシチュ作りやがったヤツは」



    ガヤつくエントランスを切り裂く様に、天井端に備えられたスピーカーから声が響いてくる。



    『はぁーい、皆揃ったね? じゃあ体育館に集合ー!』


    ダミ声がエントランス中に響く。ボクらは覚束ない足で体育館へと向かった。




    体育館は伽藍洞だった。何処の高校とも区別が着かない様な造りで、バスケットコートにもバレーコートにもなる線が引かれており、壇上がある。


    何処にでもある体育館そのものだ。


    そこに皆、疎らに佇む。



    九頭龍「おい! 誰もいねえのか!?」


    九頭龍クンがそう叫んだ瞬間だった。
  9. 9 : : 2015/01/22(木) 02:39:18



    キーン、というハウリング音が体育館と、ボクらの鼓膜を震わせる。ボクらは1人残らず耳を押さえ、音の発生源らしき壇上を見つめた。



    そして、『ソイツ』はそこにいたんだ。



    モノクマ「ハロー、エブリバディ? みんな元気ぃ?」



    左半身と右半身が、白と黒で均等に別れた熊のヌイグルミが、ふざけた挨拶と共に飛び出してくる。



    九頭龍「な、なんだありゃ……」


    不二咲「わ、わあぁ……!」


    大和田「? どうした不二咲」


    不二咲「だ、だって、クマさんが……可愛いなぁって」


    大和田「………」


    山田「やはり、ちーたんは天使ですぞ」


    ソニア「確かに、あの豚さんのヌイグルミはそそられますね!」


    左右田「ソニアさん! 豚じゃなくてクマです!」



    思い思いの感想が飛び出て来るが……やはり、異様であることには変わりない。

    ……あれは、なんなんだ?



  10. 11 : : 2015/01/22(木) 02:53:12


    江ノ島「……モノクマ?」


    苗木「……何か知ってるの? 江ノ島さん」


    江ノ島「知ってるも何も、あれは私がデザインしたゆるキャラなんだけどねぇ……」


    ……江ノ島さんは『超高校級のギャル』だ。恐らくは何処かの企業か何かで、タイアップとしてアレのデザインを描き下ろしたのかも知れない。


    よく見ると、江ノ島さん自身もあのクマと同じデザインの髪飾りをしている。



    モノクマ「はぁい、大正解! みんなのプリチーアイドル、モノクマだよ? この学園の学園長に就任しました! はくしゅー」


    シーンと静まり返る体育館に、モノクマはガックリと首を落とした。


    モノクマ「……ノリ悪いな、もう」


    左右田「そ、それより、なんでオレらをこんなところに閉じ込めたんだよ!」


    左右田クンが口火を切る。皆がまず聞きたいことを真っ先に聞いた。



    モノクマ「んー、まあ今はチュートリアルタイムだよ。チュートリアルが終わったらエントランスの扉を開くからね」


    苗木「……チュートリアル?」


    モノクマ「そっ!」






    モノクマ「『コロシアイ』のさ……」



    皆が聞きなれない言葉にギョッとする。

    『コロシアイ』とは……『殺し合う』ということなのか?


  11. 13 : : 2015/01/22(木) 03:02:25


    モノクマ「まあ話は最後まで聞いてよ」


    九頭龍「……なんなんだコイツは、フザけた事を言いやがって」



    ふざけている、確かにそうだ。
    大体、殺し合うとはこのメンバーでなのか……?



    大和田「おい! 殺し合うってのはどういうことだコラ! この面子で殺り合えってことなのかぁ? ああ!?」


    モノクマ「あー勘違いしないで欲しいんだけど、キミ達同士でコロシアイをするんじゃなくて……」



    モノクマ「もう1つのチームとコロシアイしてもらいまーす!」



    苗木「ちょ、ちょっと待ってよ……!」


    日向「まさか、おい、もう1つのチームって……!!」



    まさか、ここに居ないクラスメートは……そういうことなのか?


  12. 14 : : 2015/01/22(木) 03:19:35


    モノクマ「はい! 勘のいい人ならもう気付いているでしょうが……その通り、キミ達とは別のクラスメートらと、コロシアイも大規模なコロシアイ……キミ達にはちょっと『戦争』してもらおうと思ってるんですね!」



    九頭龍「ふざけんじゃねえぞクソがぁ!! もし、今ここにいねぇヤツがもう1つのチームだとしたら……ペコは……そっちに居るってことじゃねえか……!!」



    九頭龍クンが震えている。そうだ、もう1つのチームが、今ここに居ない人だとしたら……葉隠クン、十神クン、石丸クン、セレスさん、大神さん、腐川さん、朝日奈さん……霧切さん……皆と殺し合えってことになるじゃないか!



    日向「おい、モノクマ……俺達が本気でそんな事すると思うのか?」


    モノクマ「しないならしないで良いよ? 期日が来たら皆死ぬだけだからね」


    日向「なんだと!?」


    モノクマ「……うぷぷ、はい、キミ達の右腕をご覧下さい」


    言われるままに右腕を見ると、そこには見慣れないものがあった。


    モノクマを型どった奇妙な腕輪だ。


    モノクマ「それはキミ達を処刑する為の道具であり、そして『枷』なんだよ……それがある限り、キミ達はこの『希望ヶ峰学園の学区』から出ることが出来ないんだよ」



  13. 17 : : 2015/01/22(木) 12:49:50


    九頭龍「くそ……! こんなもん ……!」


    九頭龍クンが無理に外そうとする。


    モノクマ「あー、ダメダメ、無理に外そうとすると起動しちゃうよ? それに、これはキミ達にとって『コロシアイ』の『便利ツール』でもあるんだ」


    苗木「……どういうことなんだ?」


    モノクマ「腕輪に意識を集中してみてよ」


    腕輪を見て集中をする。


    苗木「……なんだこれ」


    すると、皆の頭上に数字の様なモノが見えてきた……なんだろう、これは。



    澪田「なんスか、これ……ハートマークと星のマークと……数字?」


    ♡100
    ★12


    といった具合に皆の頭上に浮かんでいる……というより、これは……まるで網膜の方に何かをされた様な感じだ。


    七海「………まるでゲームのヒットポイントみたいだね」


    モノクマ「良い勘してるよね、七海さん? その通り、これはキミ達のヒットポイント、腕輪が神経を通して見せる『バイタル』なんだけどね」


    日向「……つまり、100ってのは」


    モノクマ「もちろん、100パーセントの事、特に怪我もなくて良かったねって感じ」


    七海「………じゃあ、下の星のマークの横の数字は何かな? まさかマジックポイントってことはないよね?」

  14. 18 : : 2015/01/22(木) 18:57:23


    モノクマ「魔法なんて素敵なモノは無いんだよ。それはもう1つの『バイタル』だよ」


    もう1つの『バイタル』……?


    ソニア「普通の『バイタル』とやらより、だいぶ低いみたいですね……」


    確かに、『バイタル』よりだいぶ低い……ボクなんか6パーセントしかない。


    江ノ島「あー……なるほどねぇ」


    モノクマ「おっ、流石は江ノ島さん、わかっちゃった?」


    江ノ島「……『精神バイタル』じゃない? 私様の分析だと、精神が破壊されればされるほど数値が100になるんだろ?」


    モノクマ「はい、正解! 正式には『絶望チェッカー』でーす!」


    『絶望チェッカー』……江ノ島さんの言う通りなら、もしこれが100パーセントなんてなったら……


    モノクマ「100になると心が死にます。SAN値0なわけ。どうなっちゃうんだろね。うぷぷ!」



    モノクマ「まあ、上手に使って楽しく『コロシアイ』しましょう!」


    九頭龍「……クソが!」



    モノクマは下劣に笑う。
    こんな事が許されるのか……いや、そんな事ない。

    ……糸口はあるはずだ。戦争なんてさせやしない。


    ボクは拳をぎゅっと握った。



  15. 19 : : 2015/01/22(木) 19:10:37





    ────────






    ……気付くと、私は……霧切響子は、教室に寝ていた。


    深く眠っていたようで、朝日奈さんに肩を揺すられてようやく起きたのだ。


    ……よっぽど、悲しい夢でも見たのか、私は泣きながら寝ていたらしい。



    見知った顔と見知らぬ顔がエントランスには居る。


    ……しかし、そこには苗木君の姿は無い。



    大神「霧切よ、大丈夫であるか?」


    霧切「……ええ、心配には及ばないわ」


    クラスメートと、どうやら『77期生』らしいけど……


    モノクマ『はーい! みんな集まった? 体育館に集合ー!』


    スピーカーからダミ声が響き渡る。状況を把握出来ない私達は取り敢えず体育館へと歩む。






  16. 20 : : 2015/01/22(木) 19:57:42


    ……これといった特徴の無い体育館には、正面の壇上に白と黒のクマが鎮座している。




    ……何故か酷く、不快感を覚えた。


    朝日奈「……どうしたの? 霧切ちゃん」


    霧切「……大丈夫よ、それより……やはり苗木君は居ない様ね」


    朝日奈「みたいだね、苗木に何か用だったの?」


    霧切「……ええ」



    何か、すごく大切な事を彼に伝えなければいけなかった様な……しかし、それを思い出すことが出来ない。



    モノクマ「ハロー! エブリバディ! ボクはモノクマ! この学園の学園長だよ?」


    霧切「……まって、学園長ですって?」


    学園長は私の父であったはずだ。

    ……このヌイグルミは何を言っている?


    石丸「……が、学園長は霧切君の父君ではなかったのかね?」


    霧切「……そのハズよ」


    モノクマ「えー、霧切仁さんは解雇されました!」


    霧切「……なんですって?」


    そんな話、当然父から聞いていない。いくらあんな父とはいえ、そんな大事を連絡しない訳がない。
  17. 21 : : 2015/01/22(木) 20:21:30


    霧切「……」


    十神「それより、何故俺達がこんな所にいる?」


    モノクマ「はい、実はですねぇ。皆さんにはちょこっと『コロシアイ』をしてもらおうと思ってます!」



    ……それから腕輪の事と『もう1つのチーム』の事を聞く。


    このモノクマはどうやら、私達に16人対16人の殺し合いをさせたい様だ。


    弐大「……のぅ、大神」


    大神「弐大か、なんだ?」



    弐大という大男と大神さんの話を立ち聞きする。どうやら2人は入学前から知り合いだった様だ。


    弐大「チームで殺し合い、というてもワシのクラスの体育会系はこちらに偏りがあるんじゃ。そっちはどうなんじゃ?」


    大神「……うむ、我を除けば戦刃という軍人が向こうに居るようだが、そちらの77期生には酷く偏りがあるな」


    いえ、それだけじゃない。78期生にも偏りがある。こちらには腐川冬子……いえ、超高校級の殺人鬼であるジェノサイダー翔がいる。


    このモノクマも、こんなことをしている以上、知らない訳ではないだろう。


    モノクマ「あっ、そこ、もしかして質問あっちゃったりします?」


    モノクマが私の方へ向く。


    霧切「……『コロシアイ』を望むにしては、酷く雑な振り分けでは無いかしら? モノクマ」

  18. 22 : : 2015/01/22(木) 20:34:08


    モノクマは下卑た笑い声を上げる。お腹を抱えて転げ回る。

    思わず私は舌打ちをした。


    ムクリとモノクマは起き上がり、壇上に戻る。そして、





    モノクマ「はい、実はこの振り分け、超適当なんだよね。出席番号の偶数と奇数で分けただけなんだよねぇ」


    あっさりと白状した。



    モノクマ「でもねぇ、多分、そんな一方的にはならないと思うよ?」


    霧切「……どういうことかしら?」



    モノクマ「……さあね」


    適当にはぐらかされる。どこまでも食えないヌイグルミだ……



    モノクマ「さてさて、じゃあみんな自室に『オモチャ』をプレゼントしといたから、確認し次第、準備してね!」


    『オモチャ』……きっと、ろくでもないモノだろう。





  19. 23 : : 2015/01/22(木) 20:59:45


    ───────


    俺達はモノクマの言う『自室』へと向かう。

    渡り廊下を通ると、そこはどうやら寄宿舎になっているようだ。


    奥に進む……そこには俺の……『日向創』と書かれたネームプレートがぶら下がった部屋があった。


    苗木「……それじゃあ、日向クン、あとで」


    七海「日向くん、またね」



    皆もそれぞれの自室に入っていく。


    俺も自室の扉を開け、部屋に入った。


    日向「……なんだ、これ」


    無造作にベッドに置かれた凶器、木製のストックながら、ずっしりと重みがある小銃。


    『AK―47』と彫り込まれたそれは、戦争映画や、テロリストのニュースなんかでよく見る銃だ。


    そしてもう1つ、小さい黒い立方体の様なモノが3つ、プラスチックのポケットサイズのケースに収まっている。

  20. 24 : : 2015/01/22(木) 21:17:56


    日向「これは……?」


    モノクマ「うぷぷ、気になる?」


    日向「うわっ! な、なんだよ、お前か……これはなんだ?」


    モノクマ「それは『スキルブースター』だよ」


    日向「『スキルブースター』? なんだそりゃ?」


    モノクマ「簡単に言うとキミ達の才能が『特化』する装置さ、使い方は簡単、手のひらに乗せて腕輪同様、コレに意識を向ければいい。使い捨てだから3つ以上欲しかったら殺して奪う事だね」


    『特化』……というのはどういう風に特化する事なのか?


    モノクマ「ま、どんなの出るかはお楽しみだね。うぷぷ、じゃあ、ボクは他の人達にもコレの説明しなきゃならないから」



    大体……相談者の才能が『特化』された所で……



    モノクマ「あ、そうそう……『特化』ていうのはより『殺人に特化』するってことだよ」



    日向「……!」


    モノクマ「……それに、キミは本当に自分の事を『超高校級の相談者』だと思ってるの?」


    日向「……なに?」


    モノクマ「おっと、思わず大ヒント出しちゃったね。まったねー」


    モノクマが軽快に去っていく。
    なんなんだよ……


  21. 25 : : 2015/01/22(木) 21:49:40


    ─────


    私……七海千秋の部屋にあったのは、
    モーゼルC96と銘打たれたヘンテコな拳銃と、モノクマがさっき説明した『スキルブースター』だった。


    ……本当にみんなコロシアイなんてするのかな。


    そんなのは絶対に駄目だ。日向くんも、みんなもきっと望んでいない。


    ……きっと止められるハズ。






    『今回はきっと止められる』はずだよ。



    でも、私はそのヘンテコな凶器と『スキルブースター』をリュックに詰めてしまう。



    何故かは解らない、解らないけど、


    きっと、私は何処かで、実はみんなを『信用してない』んだと悟る。


    私が部屋の外に出ると、そこには日向くんと苗木くんが居た。


    苗木「なんでだろう……」


    日向「俺にも解らねえな……」


    2人とも、部屋にあったであろう凶器を手にしている。


    七海「………どうしたの?」


    苗木「いや……なんでかな、こんな凶器、初めて持つハズなのに……すごく『馴染む』んだよね」


    日向「俺もだ、まるで『昔から持っていた』様な気がしてならないな」


    七海「そうなんだ……」



    私も、あのヘンテコな拳銃を持ったとき、不思議にも『前にも使った』気がしてならないのだ。






  22. 26 : : 2015/01/22(木) 22:29:22


    ───────


    ………ボクは、苗木誠はマテバ6ウニカと彫り込まれたリボルバー拳銃と『スキルブースター』をポケットに、再びエントランスへと向かう。


    先程、モノクマから通達があり、エントランスで待つように言われたからだ。



    モノクマ「ヤッホー、待った? じゃあ、お待ちかねだよ、キミ達……それじゃあ、『コロシアイ・スクールウォーズ』と行きましょうか!」


    先ずは向こう側の人に出会って、説得し、そして、モノクマを……このふざけたゲームの黒幕を一緒に倒さねばならない。


    金庫の様な扉が開いていく。仰々しい音と共に。








    ─────────



    ─────思考実験『箱』第五十五号、初日開始。



    77002番……★42%
    77013番……★52%
    77115番……★48%
    78011番……★34%
    78114番……★29%


    その他……★10%未満



  23. 27 : : 2015/01/22(木) 23:16:47
    おお、このじわじわと追い詰められているような緊張感。たまらないっすね。
    期待させていただきます!!
  24. 28 : : 2015/01/22(木) 23:21:32
    >>27
    ありがとうございますぞ!
    正直どこまでやれるか不安でいつまぱいですが^p^
  25. 29 : : 2015/01/22(木) 23:57:28


    ──────


    ここではない何処かのモニター室。32台のモニターを覗く、2体のモノクマ……いや、片方は全身が白く、片方は全身が黒い。


    包帯だらけで一輪の花を持つシロクマと、派手な様相でチンケなギャングに見えるクロクマだ。




    シロクマ「はじまったねぇ」


    クロクマ「ぎゃっははははは!! これさぁ! 勝負もう決まってんだろ!! ぶっ殺し担当が軍人しかいねぇチームと、格闘家に剣術家に殺人鬼が揃った内臓ぶちまけ隊じゃ、もう確定的に明らかにミンチだろ!!」


    シロクマ「そうかなぁ? でも『希望』が2人に『絶望』が2人、勝負はわからないと思うよぉ」


    クロクマ「あり得ねえあり得ねえ!! 叩き潰されてチョンパされてバラバラになって終わりー!! ぎゃっははははは!!」


    シロクマ「そうかなぁ」


    クロクマ「遅え遅え遅えぇぇぇ!! シロクマてめぇ口調遅すぎんだよ!! もっと早く喋れよ!! ノロマァ!! そんなんだからおめぇは鈍くせえんだよ!!」


    シロクマ「そんなことないよぉ」



    延々とそんな会話が繰り広げられている。


    この2体はただの『監視』だ。
    この思考実験における末端だ。

    ……黒幕は今も、この2体の目を通して見ている。


    『コロシアイ』が始まった。

    あらゆるロケーションによる思考実験、人が人を殺すのであればそれはどんな形でもいい。

    『今回はたまたま、この様な形のコロシアイ』なだけだ。


  26. 30 : : 2015/01/23(金) 12:48:07


    Now loading……


    ───────



    開示された情報


    『腕輪』

    十二式枷、微細な針が装着者を繋ぎ、神経経路と接続し、視覚情報の追加、心拍、血圧等から総合してバイタルと精神状態を計り、他の腕輪と情報を共有化する。
    無理に外そうとすると神経経路が焼き切れ、装着者を死に至らしめる。





    『バイタル』

    腕輪の装着者の生体活動をパーセンテージ化したもの、100%で良好、80%低下で軽傷、50%低下で多量失血、30%低下で重傷、10%低下で致命傷、0%で生体活動停止。







    『絶望チェッカー』

    腕輪の装着者の精神状態をパーセンテージ化したもの、10前後で通常、30%以上で困惑、60%以上で混乱、80%で思考制止、100%で絶望。







    『スキルブースター』



    黒い立方体の装置、元有る才能に何かしらの『力』を追加する。殺人から程遠い才能ほど超越した力が加わり、元より殺人技能が備わった才能ほど効果が薄い。1度使うと装置は溶けだし、溶けきると効果も切れる。





    ────────


    Now loading……

  27. 31 : : 2015/01/23(金) 20:14:08


    ────────




    私、霧切響子の目に写るのは、赤黒い空と荒れ果てた街並みだった。


    都心の中心に当たる希望ヶ峰の学区が、こんなにも荒んでいたものだっただろうか?


    弐大「落ち着かんか! 辺古山っ!」


    辺古山「落ち着いて居られるか! 一刻も早く坊ちゃんの所に行かねば……!」


    辺古山と呼ばれた、竹刀袋を下げるセーラー服の流麗な眼鏡の女性が酷く取り乱している……


    ♡100
    ★48


    『絶望チェッカー』から彼女を覗くと、それが見てとれる……が。

    私には彼女より、『彼等』が気になる。


    葉隠「どうするべ、どうするべ……!」


    ♡100
    ★34


    花村「信じない信じない……僕はこんなの信じないぞ、悪い夢だ」


    ♡100
    ★52



    『異常』なこの状況、寧ろ、彼等はちゃんと『正常』なのだ。


    豚神「それより、どうするんだ貴様ら」


    十神君と似たような格好をした彼……そういえば名前を聴いてなかったわ。

    彼の言う通り、私達はこれからの方針を決めねばならない。


    大神「……まさか、『コロシアイ』をするという訳ではあるまいな?」


    豚神「下らん、人を殺して何の得になる? 殺し合いなど俺が断じて認めん」


    大神「フッ……そうだな」


    十神君と口調も似ているようだけど、性格は似ても似つかないようね。


    霧切「……とにかく、相手側チームにアプローチしてみましょう?」


    きっと苗木君も……あちら側の皆もこの馬鹿げたデスゲームを止めようとしているに違いない。

  28. 32 : : 2015/01/23(金) 20:37:47



    十神「……アプローチだと? あちらが殺る気だった場合どうする?」


    腐川「びゃ、白夜様の言う通りよ……! き、きっとアタシ達と同じ様に凶器持ってるんでしょ……? そんな事したら撃ち殺されるわ……」


    朝日奈「そ、そんな事ないよ!」


    セレス「しかし、確率的に絶対ではないでしょう?」


    石丸「よ、よしたまえ……! 皆、苦楽を共にしたクラスメート達だろう……! 疑うなんて……」


    西園寺「……おねぇ」


    小泉「日寄子ちゃん、大丈夫だから。あっちには唯吹ちゃんと蜜柑ちゃんがいるだろうし……」


    西園寺「あんなゲロブタでも……居ないのはちょっと寂しい……」


    終里「所でよぉ、オッサン」


    弐大「なんじゃ? 終里」


    終里「さっきオッサンと話してた、あの大神ってやつ強そうだなぁ……バトってくれねえかなぁ」


    弐大「お前さん、それしか頭にないんかのぅ……やめとけ、お前さんが逆立ちしても勝てんからのぉ」


    田中「……フン、早く魔界に帰り、我が魔獣らに贄を与えてやらねばならぬのに、下らぬ戯れ事に付き合ってられん」






  29. 33 : : 2015/01/23(金) 20:58:14
    なんか・・・霧切チームが有利じゃあ・・・。知力組:十神・セレス・霧切・豚神?、戦闘組:終里・弐大・大神・ジェノ・辺古山・朝日奈?

    凄く期待です・・・
  30. 34 : : 2015/01/23(金) 21:06:24
    >>33
    期待ありがとうございます。ちょっとヒント言っちゃうと団結力の差と戦術と戦略、って所ですね。そして絶望チェッカーとスキルブースターという補助品です。
  31. 35 : : 2015/01/23(金) 21:13:35


    ……皆、まるでバラバラだ。収集がつかない。


    霧切「……とにかく、皆、固まって動きましょう。そうすれば……」


    例え、相手がやる気であっても、早々に手を出しては来ないハズだ。


    武器にしたって、私の拳銃(シグザウエルP226)や、朝日奈さんの短機関銃(ウージー)と差は有るものの、基本的に銃器に限られ、広範囲に及ぶ爆弾の類いは無い。


    推測でしかないけど、向こうも恐らくは似たようなものだろう。


    ……それに、大神さんや辺古山さんに至っては既製品ではなく、特殊な近接武器だ。
  32. 36 : : 2015/01/23(金) 21:43:06


    葉隠「お、俺はごめんだべ……!!」


    霧切「……葉隠君、落ち着いて」


    葉隠「落ち着いてられっかよ! 俺ぁ……俺ぁ!!」


    そう言って彼は走り去ってしまう。


    花村「ぼ、僕も……はは、駄目だ……冗談も思い浮かばないや……悪いけど、皆とは居られない」


    弐大「またんかい! 花村!!」


    弐大君の制止にも耳を貸さず、彼も走って行ってしまう。


    辺古山「……私も勝手にさせてもらう!」


    そして彼女も、去ってしまった……


    霧切「……っ!」


    十神「フン、霧切、皆で動く……など甘いんじゃないか? 爆弾でなくても、朝日奈が持ってるような短機関銃でまとめて蜂の巣にされるのが目に見えている」


    朝日奈「そ、そんな事しないよ!」


    十神「お前がしなくても、あちら側に居る誰かがするかもしれない、と言って居るんだ。じゃあな、お前らはお前らで仲良く友達ゴッコでもやっていろ」


    腐川「ま、まってぇ! 白夜様ぁ!」


    そうして、十神君と腐川さんも去ってしまう。


    霧切「……」


    豚神「……愚かな、おい、アイツらこそコロシアイを始めかねんぞ」


    私では……どうする事も出来ない……苗木君、貴方なら……こんな時どうするのかしら?





  33. 37 : : 2015/01/23(金) 22:20:21


    ────────


    モノクマ『はぁーい! 1ついい忘れてたけど、皆さんには電子生徒手帳が配布されてまーす!』


    赤黒い空の下、希望ヶ峰旧校舎に出たボクらは、あらゆる場所に備え付けられたスピーカーから、忌々しい声を聴いていた。


    モノクマ『電子生徒手帳にはぁー、生徒名の他に校則とマップ機能と通話機能がありまーす! 大変便利ですので是非使ってみてくださぁーい!』


    内ポケットにいつの間にか、プリペイドカードの様な電子生徒手帳とやらが入っている。『苗木誠』と表記され、スマートフォンの様に扱える様だ。


    日向「校則……」



    『一、学園内部ないしは学区内にある備品や食料は自由に取得していい。無論、戦利品に関しても制限は無い』

    『二、寝泊まりに関しても制限は無し』

    『三、期日は1週間』

    『四、勝利条件は敵対チームの全滅』

    『直、校則は増える可能性もある』



    ……と、校則の項目には明記されている。


    苗木「……マップは?」


    マップに関しては、広範囲表示で、大まかな6×7のブロックに分けられていた。


    ⬜⬜⬜⬛⬜⬜⬜
    ⬜⬜⬜⬜⬜⬜⬜
    ⬜⬜⬜⬜⬜⬜⬜
    ⬜⬜⬜⬜⬜⬜⬜
    ⬜⬜⬜⬜⬜⬜⬜
    ⬜⬜⬜⬛⬜⬜⬜
       

    この黒いマスには本拠地と書かれている。

    つまりは、この学園がボクらの本拠地なのだろう。
  34. 38 : : 2015/01/23(金) 22:47:20



    ……そしてもう1つの黒いマスが、敵対チームの本拠地という事なのか。


    舞園「苗木君……これからどうするんですか?」


    苗木「……うん、あちら側にアプローチをする」


    説得し、このデスゲームを止めて皆で協力して、この状況を打破しなければならない。


    舞園「で、でも、あちら側に、その……やる気になっている人が居たらどうするんですか?」


    舞園さんが不安げに語りかけてくる……彼女の不安が絶望チェッカーを通して伝わる。


    舞園「わ、私は……」


    ♡100
    ★29


    苗木「舞園さん、大丈夫……! ボクが守るから」


    ボクは舞園さんの肩に手を置く、絶対に大丈夫だ。絶対に彼女は……皆は守る。希望を諦めちゃ駄目なんだ。


    舞園「……苗木君、わかりましたっ、私、苗木君を信じます」


    ♡100
    ★11


    彼女の絶望チェッカーが下がる。
    きっと大丈夫。殺し合いなんて絶対にさせない。


    ……ボクの命に代えても。



    『今回は止めて見せる』。






  35. 39 : : 2015/01/23(金) 23:37:34


    戦刃「……ねえ、苗木君」


    苗木「どうしたの? 戦刃さん」


    江ノ島「アプローチ云々はアンタの勝手だけど、向こう側にやる気になってる奴がいたらどうすんの?」


    苗木「……それは」


    問題はそこだ。正直考えたくないが、それは有り得ない事ではない。


    九頭龍「クソ……ペコ……!」


    日向「九頭龍……落ち着くんだ。このふざけたゲームに乗ってしまえば、お前と辺古山、どっちかは死ぬことになる……! そんなのは絶対に駄目だ」


    九頭龍「わかってる……わかってるけどよォ……!」


    ♡100
    ★42


    九頭龍クンに関しても心配だ。絶望チェッカーを覗いても、舞園さんより大分参ってる感じがする。



    戦刃「苗木君。だからね、ここは『役割』を作った方が良いと思うの」


    苗木「……『役割』?」


    江ノ島「お姉ちゃん、どーすんのよ?」


    戦刃「うん……ねえ、苗木君、最悪の事態って何?」


    苗木「……人が死ぬ事?」


    戦刃「ううん……戦いそのものが始まってしまうこと、そこからどんどん飛び火して戦争になるの」


    苗木「じゃあ……どうすれば」


    戦刃「4人1組を作って、1組はここに待機して生徒手帳を使って連絡係、残りは散開、両端と真ん中を辿って向こう側のチームの本拠地に向かう……」


    江ノ島「まるで本当に『戦争』しようとしてるみたいね」


    戦刃「盾子ちゃん、相手側に『戦争』を経験した人は居ないんだよ? 戦術と戦略は違うの……」


    そう、向こう側に戦闘のプロは居ても、戦争のプロは居ない。それに、これは交戦が目的ではない。
  36. 40 : : 2015/01/24(土) 00:04:10


    戦刃「とにかく、相手側に会えば良いだけならこれが最善だと思う……」


    江ノ島「甘ちょろいわ、だから残念なんだよお姉ちゃん……いったじゃん、相手側にやる気になってる奴が居たらどうするのかって」


    戦刃「それは……仕方ないけど、出来るだけ無力化する事に努めるしかないよ」


    苗木「……信じよう、みんなを!」



    強く、強く希望する。必ず、応じてくれるハズだ。




    狛枝「……へぇ」


    七海「……どうしたの? 狛枝くん」


    狛枝「……いや、彼……面白いなあって」


    七海「……?」


    狛枝「……ううん、こっちの話しさ。気にしないで」





    苗木「……で、ここに残る人と組む人を決める訳だけど……ボクは行くよ」


    九頭龍「オレも行く、ペコに会えりゃ……!」


    日向「俺も行く」


    概ねが出揃う。そして、4人1組のメンツが出来上がった。


  37. 41 : : 2015/01/24(土) 12:45:37

    そしてボクらは……歩き出す。


    残る1組を残し、3組は校門を出て、3方向へと散開した


    ────────



    ……何処まで走ったか解らない。


    ♡100
    ★72


    自分でも解っている、混乱している事に。


    期日は1週間、その間に相手側を全滅させないと皆死ぬ。


    無論、俺も死ぬ。


    走れども人が居ない。
    都心の1区を封鎖して人払いでもしたのか、こんなことが出来る奴なんかにかないっこないだろう。


    だから殺さなきゃ。


    1日2人から3人は殺さなきゃ。



    殺さなきゃ、殺さなきゃ、殺さなきゃ、殺さなきゃ、殺さなきゃ、殺さなきゃ、殺さなきゃ、殺さなきゃ、殺さなきゃ、殺さなきゃ、殺さなきゃ、殺さなきゃ、殺さなきゃ、殺さなきゃ、殺さなきゃ、殺さなきゃ。


    射的屋にあるようなライフル銃(モシン・ナガン)に弾を詰める。弾は近くのカフェだったらしき場所に『落ちて』いた。


    恐らくは、モノクマの奴がアチコチに落としている様だ。


    そして、黒い立方体を握る。


    そして、意識をそれに向けた。



    ────────


    オレは、左右田和一は日向と九頭龍、そしてソニアさんの東側をたどるチームは今、直進している。

    荒んだ街並み、車なんか乗り捨てられて放置されている。

    何だかんだで武器のバランスがどーとか言われて振り分けられたけど、結果オーライだ。隣にはソニアさんが居るんだからな。
  38. 42 : : 2015/01/24(土) 19:57:53


    日向「大丈夫だって、九頭龍! ほら、そんな顔してたら辺古山に笑われっちまうぞ?」


    九頭龍「……あ、ああ、そうだな」


    ♡100
    ★16


    ……日向はスゲエと思う、あんな取り乱していた九頭龍を励まして、『絶望チェッカー』ってヤツをどんどん下げていきやがった。


    ソニア「心配ですね……」


    左右田「だ、大丈夫ですよ! 万一の時は、ソニアさんは、オレが守りますから!」


    ソニア「ひかえおろー!」


    左右田「ヒッ!」


    ビシッと指をオレに突き立て、何時もの決めポーズ……また地雷踏んじゃったかなオレ?


    ソニア「そういうことではありません! 左右田さん! 心配なのは皆さんの事です!」


    チラリと日向と九頭龍に視線をやると、2人は苦笑いしていた。ああ、やっちまったよオレぁ。


    左右田「す、すいませんソニアさん、そ、そうですよね! 皆が心配ですよね!」


    ソニア「そうです、田中さん……どうしていらっしゃるでしょうか……」


    また田中か、あんな中二病野郎の何処が良いのかサッパリだが……


    まあ、でも皆と過ごしたこの『2年間』で田中の事もソニアさんの事もオレなりに色々と掌握しているつもりだ。


    日向は誰とでも仲が良い、日向とつるんでると、ソニアさんはもちろん、九頭龍とも、それに田中ともよく話した。


    日向が言っていた、田中が飼育している動物達を見る眼と、機械を弄るオレの眼は良く似ている、と。

    一生懸命に取り組む眼だと、そう言われたらオレは田中を嫌いにはなれない。

    日向はこうも言っていた、そんなお前の姿も、ソニアさんはちゃんと見て知っていると。



    妥協だと思われるけど、そういう一面がオレにもあるという事を、ソニアさんが知ってくれているというだけで、今は十分だ。


  39. 43 : : 2015/01/24(土) 20:34:50

    ソニア「でも、万一の時はお願いしますね♪ 左右田さん」


    そういってオレに笑顔を見せるソニアさん、日向と九頭龍も「よかったじゃないか」と言わんばかりの表情でオレを見てくる。


    そうだな、今のオレにしてはとても上等だ。




    と、




    ダァーン! という渇いた発砲音が響く。


    左右田「なんだ……!?」


    日向「!!」


    九頭龍「!!」


    え? どうしたんだ? 2人とも。



    日向「左右田ぁ!!」


    九頭龍「クソがぁ……!! やっぱり、居るのかよ……『ノった奴』がよぉ!!」



    2人がバッと走り出して乗り捨てられた車に身を隠した。



    そして、ハッとした。


    『狙撃』されているのはオレらだと。


    左右田「そ、ソニアさん……!」


    ソニアさんの方を向くと、ソニアさんが居ない。


    日向「バカ野郎!!」


    隠れていた日向が飛び出し、オレを車の影まで引っ張る。


    ああ、それで気付いた。







    撃たれたのはソニアさんだ。


    ♡0
    ★0



    彼女の『バイタル』見てしまった。



    ゼロ……そりゃそうだ。見事なまでの頭部狙撃(ヘッドショット)


    ソニアさんの右のこめかみと、左のこめかみに数センチに及ぶ穴が空いてて、そこからペンキ缶ぶちまけたみたいに、バカみたいに血が流れてる。


    ……そのぶちまけた血の所々、弾けたピンク色の『何か』まで見える。



    左右田「……はっ?」



    脳の処理が追い付かない。何が起こっているのか、何が起きたのか。



    左右田「あ……あ……!」



    ただ、さっきまで滅多にオレに見せない笑顔を作っていたソニアさんが、一瞬で死んだ事は、今、わかった。




    左右田「うぁぁああああぁ!!!!」





  40. 44 : : 2015/01/24(土) 21:01:12


    ────────



    葉隠「ハァ……ハァ……や、やったべ……!」


    ♡100
    ★90


    直進してくる4人組の内の1人を撃ち殺した。このライフル銃にはスコープが付いており、正確無比に『一番弱そうな奴』から殺してやった。



    葉隠「うっ……おえっ……!!」



    人を殺した。衝動から胃の中のものが『理性』と共に吐き出される。


    それが、この嘔吐が、俺の最後の人間性。


    ボルトアクション方式っつー連射の利かない銃だが、他の銃より破格の射程を誇る、ライフルはライフルでも、これは『スナイパーライフル』だ。


    何でこの銃を扱えるのか知らない。


    でも、コレは安全な場所から、一方的に攻撃できる銃、臆病な俺にはお誂えなのかもしれない。


    あの黒い立方体はスゲエ、この状況を全て俺は予見している。


    そしてそれは今も『予見』し続けている。


    右目だけに半透明に『先の事』を『予見』し続け、投影している。


    この先、どういうわけかは知らないが、車が俺に突っ込んでくると『予見』した。


  41. 45 : : 2015/01/24(土) 21:47:02


    ────────


    左右田「あ、ああ……!!」


    みっともねえ、ションベン漏らしそうなこの状況にオレはガタガタと震えていた。


    日向「ソニア……!!」


    九頭龍「クソ野郎がぁ……真正面か!? 見えねえ……!」



    ソニアさんだったものが転がっている。


    なあ、日向、九頭龍、なんでこんな状況で落ち着いてられんだよ。



    ソニアさん、殺されっちまったんだぞ?


    オレに滅多に見せてくれない笑顔を作って『お願い』された瞬間にだぞ?







    ……許せねえ。





    左右田「……ぶっ殺してやる」


    ♡100
    ★58



    日向「……左右田!?」


    九頭龍「オイ、どうする気だテメエ!」


    手に持つ短機関銃(MP7A1)を、そしてポケットに入れていたあの黒い立方体を取り出す。


    日向「何をする気だ……左右田」


    九頭龍「その得体の知れないモノを使う気か……!」



    左右田「うっせ…うっせえんだよ! 許せねえ……許せねえんだよ……!」



    何にでもすがる、ソニアさんを殺したクソ野郎を殺せるんなら、何にだってすがってやる。


  42. 46 : : 2015/01/24(土) 22:15:50


    黒い立方体を1つ取り出し、それを握り、集中する。


    ジュッ! と熱を発しながら溶けだす。


    ……それを再びポケットに入れる。


    きっと溶けきるまで『恩恵』を得られるのだろう。


    『何が出来るのか』は解る。不思議と知識が入ってくるのだ。




    左右田「……らぁっ!!」



    ガンッ! と車を殴り付ける。すると、車は息を吹き返し、グオンッ! とエンジン音を轟かせた。


    日向「なっ……! どうなってんだ……!?」


    九頭龍「この車……壊れて無かったのか?」


    身を隠している車は無論、壊れていた。


    バッテリーも騰がってるし、ガソリンも腐っている。


    だから『修理』する『行程』をすっ飛ばして『蘇らせて』やった。


    ただ、それだけ。


  43. 47 : : 2015/01/24(土) 23:13:09


    ────────





    葉隠「来たべ……!」


    さっき、右目で見ていた『予見』の通り、車が突っ込んでくるのが見てとれる。


    物凄い速さだが『車のルート』は既に『予見』している、避けるのは容易だ。


    既に黒い立方体……『スキルブースター』の効果も切れているが、問題ない。残りの人間を殺して終わりだ。


    ……しかし、突っ込んでくる車の中には誰も居ないのが気になる。


    何処にでもあるような白いワンボックスのミッション車だ。


    運転席にすら誰も居ないのだ。


    ギャリギャリギャリ!! とタイヤを擦る音を発て、突っ込んでくる車を俺は横に避ける。


    そのまま建物に突っ込み、炎上しだした。


    距離にして凡そ400メートル先、『2人』が棒立ちだった。


    チャンスだ、次は派手なスーツを着た童顔の奴へとスコープを向ける。










    『2人』……?






    ……気付いた時には遅かった。










    左右田「死ねよ」






    ああ、そうか、運転席じゃなくて、後部座席の裏に隠れていたのか。



    どういう原理で車を動かしていたのか知らないが、だが、俺は今、背後を取られている。



    葉隠「や、やめるべ……」



    見苦しいのは解っている。銃を落として手を上げる。






    葉隠「やめ……!!」



    振り向く。




    パパパパッ! という、連続した発砲音、俺の体をいとも容易く貫いていく。



    葉隠「がっ! げえ!!」


    ♡45
    ★100



    パパパパッ! と、音は止まない。体が穴だらけだ。





    葉隠「ぎっ! ごげ!?」


    ♡12
    ★100



    パパパパッ! と、発砲音がやむ気配はない。とうとう腹の穴がデカくなりすぎて、(はらわた)が飛び出してくる。


    苦痛を通り越し、最早、何も感じない。


    わざとなのか、頭を狙わず、体を撃ちまくられる。



    葉隠「……あ?」



    ♡1
    ★100



    ガチン! という音が聞こえた。ようやく、終わり。




    左右田「……死ね!!」



    倒れた俺の無茶苦茶になった腹を、黄色いツナギの男はグチャリ! と踏み抜く。




    葉隠「……」


    ♡0
    ★0





    最期に、母ちゃんの顔が浮かぶ。


    そしてその母ちゃんの顔も消えていく。






    ああ、これが『死ぬ』ことなのか。





    もう、意識が……無くなって……



  44. 48 : : 2015/01/24(土) 23:42:47


    ────────


    俺の……日向創が見たのは、今まで見たことも無いような顔をした左右田だった。


    左右田の元に駆け寄る。炎上した白のワンボックスと、その横に左右田がいる。



    左右田「……」


    ♡100
    ★97


    日向「……うっ!」


    鉄の臭いと、糞と吐瀉物が入り雑じったかの様な……臓物の臭いに思わず鼻を抑えた。


    嘔吐しそうな臭気の中に、左右田は立っている。


    左右田が見下げる、妙なドレッドヘアの男の死体……腹が滅茶苦茶……いや、もう上半身と下半身が千切れて別れている、背骨らしきモノも砕けているようだ。


    その男の手前にスナイパーライフルらしきものがある。


    ……ソイツが、ソニアを殺したのは明白だった。


    九頭龍「うっ……ぐ、そ、左右田……がやっちまったのか?」



    九頭龍が畏怖する……あの左右田がだ、ここまで人間を徹底的に壊した。




    この男同様、左右田はこのデスゲームに『ノッて』しまった。


    左右田「わりぃ、日向……オレは……うっ、おっ……げぇ!!」



    左右田は嘔吐する。自分がやってしまったことに対する、衝動によって。



    そして、フラりと、来た道を戻っていく……



    ソニアの遺体がある場所だ。

  45. 49 : : 2015/01/25(日) 01:09:03




    左右田「ソニアさん……すいません」


    彼女はもう、何も語らない。
    左右田に見せた最期の笑顔が脳裏に浮かぶ。




    左右田はソニアの遺体を抱き抱え、フラりと、再び歩みだす。



    九頭龍「何処に行く気だ……?」


    左右田「知らねえ、知らねえけど」




    左右田「……こんな冷たい地面の上に寝かせてらんねえだろ」



    茫然自失のまま、左右田は行ってしまった。


    ああなってしまっては、流石に、俺も掛ける言葉が見つからない。






    こうして、『戦争』は始まってしまった。





    ────────


    ここではない、何処かのモニター室。

    とうとう起こった『コロシアイ』の始終を見ていた。


    シロクマ「あー、ソニアちゃんと葉隠くんが死んじゃった」


    クロクマ「ぎゃっはー!! 左右田いい殺り方すんなぁ!! ぎゃっははははははっ!!」


    『私』はずっと、それを見せつけられている。これで、55回目のコロシアイ。


    シロクマ「それにしても、葉隠くんもソニアちゃんも、生存率は悪くなかったよねぇ?」


    クロクマ「ハァ!? 死ぬときは死ぬだろ!! どっちも大した『才能』じゃねーしなぁ!!」


    シロクマ「そうなのかなぁ」


    ……人は死ぬ。どの様な屈強な人間であっても、あっさりと死んでしまうものだ。


    ……イヤというほど見てきたのだから。


  46. 50 : : 2015/01/25(日) 01:42:01



    Now loading……



    ─────────


    開示された情報



    葉隠康比呂のスキルブースト


    『占い師』→『予見者(アカシックレコーダー)

    彼元来のたまに浮かぶインスピレーションによる予見が右目に常時使えるようになり、より実戦的に使えるようになった才能。

    予見した未来は確実に起こるが、視界のみに限定されてしまうのが使い難い所。




    左右田和一のスキルブースト


    『メカニック』→『盗機師(マ シーナリースナッチャー)


    機械類であれば修理という行程をすっ飛ばして動かす事が出来る才能。

    無論、車の類いも思念だけでラジコンの様に動かす事が出来る。



    ────────


    Now loading……

  47. 51 : : 2015/01/25(日) 09:22:06


    ────────


    ボク、苗木と戦刃さん、桑田クンと江ノ島さんが、真ん中のルートを辿っている時だった。





    苗木「……」


    戦刃「……始まってしまったね」


    桑田「おいおい……マジかよ……!」


    江ノ島「……どうする? 苗木」


    各々のチームには、本拠地から連絡を入れたり貰ったりする人が居る。

    先程、日向クンらのチームが交戦した……それによってソニアさんが死亡、そして日向クンが言う特長から、恐らくは葉隠クンとおぼしき人物が攻撃してきたらしい。


    ……そして、葉隠クンも、左右田クンによって殺された。



    苗木「……くっ」



    戦刃「……一旦、引き返そう? 葉隠君が攻撃を仕掛けたという事は、相手にもやる気になった人が不特定数いる……そして、左右田君も」


    恐らく、左右田クンは止まらない。
    それこそ、死ぬまで。


    桑田「おい、やべえって……! オレは戦刃に賛成だ……」


    江ノ島「アタシもお姉ちゃんに賛成。こんな所うろうろしてたら撃ち殺されるよ」


    戦刃「苗木君……戦争は始まった、もうこれは最悪のケース、そのさらに 最悪を想定した方がいいよ」


    最悪の最悪、それはモノクマの提示する『どちらか一方の全滅』だ。



    苗木「……わかったよ」



    ボクは渋々納得した。


  48. 52 : : 2015/01/25(日) 11:54:44


    日向クンらのチームも引き返した様だ。



    ……もう1つのチーム、七海さん達に連絡した方が良いだろう。


    ボクは電子生徒手帳を開く。



    電子生徒手帳のリストの項目にはボクら側のチームのメンバーが表記されている。


    七海さんの項目をタッチし、通話を押した。


    七海『苗木くん?』


    苗木「うん、その、ソニアさんの事は……」


    七海『……こっちにも連絡入ってるよ。もう、止まらないのかな……?』



    止まらない。


    ああ、そうだ。『今回も』そうだ。



    七海『……私達も引き返してる。苗木くん達も引き返してるんでしょ?』


    苗木「……うん、そのつもり」


    引き返すほか、無い。
    もう『始まって』しまったのだ。


    七海『じゃあ、学校で』


    苗木「……うん、あとで」


    通話が切れる。



    江ノ島「ま、結局こうなっちゃうんだろーね」


    江ノ島さんが手をヒラヒラとさせて飽きれた様子で空を仰ぐ。


    苗木「……」


    何も言えない。
    何も出来ないのか。

    所詮、ちっぽけなボクには……何も……






  49. 53 : : 2015/01/25(日) 21:39:41


    ──────


    私……霧切響子は人間関係を進んで作っていくタチではない。


    去って行く者を追おうともせず、参っている者を励まそうともしない。


    豚神「おい貴様ら、いつまでこのグランドに突っ立っているつもりだ?」


    朝日奈「……そ、そんな事言ったって」


    豚神「ふん、仕方ない……この俺が導いてやる。ありがたく思え」


    高圧的ではあるが、確かに引っ張る人物は必要だ。いつまでもこんな所に立ち尽くす訳にもいかない。


    霧切「具体的にどうするのかしら?」


    豚神「向こうのチームとアプローチしに向かう奴と、向こうからのアプローチをここに残り受ける奴に別れろ。すれ違いになるかもしれんからな……俺は無論、向かう」


    弍大「2班に別れるってことかのぉ?」


    豚神「そうだ」


  50. 54 : : 2015/01/26(月) 00:10:20


    確かに、それは悪くないのかも知れない。

    いや、むしろ、こうやって立っているだけよりは生産的だろう。

    私は彼の提案に頷いた。


    豚神「フン、決まりだ」


    皆も同意見、しかし、向かうとなると……



    西園寺「……ねぇ、おねぇ、これからどうなるの?」


    ♡100
    ★13


    小泉「そうね……」


    ♡100
    ★12


    ……僅かだが、あの2人の『絶望チェッカー』が増えつつある。



    豚神「大神、朝日奈、西園寺、小泉、お前らは残れ」


    采配に関しては意義はない。


    豚神「他はついてこい、いいな?」


    田中「ふっ、致し方有るまい。俺様の邪気腕の力、貸してやろう」


    ♡100
    ★0


    セレス「……わかりましたわ」


    ♡100
    ★8



    終里「しゃーねーな」


    ♡100
    ★2


    弍大「まずは動かねばのぅ……」


    ♡100
    ★3


    石丸「う、うむ」


    ♡100
    ★8



    霧切「……わかったわ」


    ♡100
    ★7



    私達は動き出す。電子生徒手帳を確認しながら、相手の本拠地へと一直線に。
  51. 55 : : 2015/01/26(月) 18:59:42


    ────────


    ボク、苗木と日向クンと七海さんとに別れていたチームは合流する。


    残っていた人も門前で待っていてくれた様だ。




    日向「戻ったか、みんな」


    苗木「……うん、その」


    七海「……左右田クンは?」


    葉隠クンを殺したという、左右田クンの姿は無い。


    九頭龍「……アイツのあんな顔は見たことねえ」


    日向「……ソニアの遺体を持って何処かに行ってしまった。痛ましくて……止めることも追いかける事も出来なかった、すまねえ」


    きっと、左右田クンにとってソニアさんは、それが一方通行であっても、何か特別な感情を持った人なんだろう。


    苗木「何故……葉隠クンは……」


    と、


    江ノ島「誰も『信じられない』からだろ?」


    江ノ島さんが言う。


    苗木「そんな、だってボクらは1年も……!」



    江ノ島「逆だよ苗木、たかが1年だろ?」



    苗木「……っ!」


    ……そう、たかが1年だ。築いた関係も、信頼も、そんなものこの異常だけで易々と壊れてしまう。


    江ノ島「……ハァ、悪いけど、アタシはもう1人でやらせてもらうわ。じゃあね」


    苗木「ま、まってよ江ノ島さん!」


    江ノ島「もういいだろ? 『始まった』んだよ、殺し殺され死なせ死んでの『コロシアイ』がさぁ?」


    戦刃「盾子ちゃん……」


    江ノ島「どーすんのお姉ちゃんは?」


    苗木「……ぐっ」



    戦刃「……苗木君、残念だけど、もう葉隠君とソニアさんが亡くなってしまった時点で……」



    わかってる、わかってるんだ。



    もう、ボクでは止めることは出来ないって。


  52. 56 : : 2015/01/26(月) 19:50:43



    それでも、



    苗木「……まだ」


    ぐっと拳を締めて、眉を潜めてこの『絶望』に抗う。


    こんな所で諦めるわけにはいかない。




    ────────



    日向「……苗木」


    震えながらも、なお強い眼をする苗木が眩しく映る。


    そうだ、こんな所で諦めてはいけない。


    江ノ島「ふーん……ま、勝手にすれば?」


    手をヒラヒラとさせる江ノ島は立ち去る。


    戦刃「盾子ちゃん……」


    苗木「……戦刃さんは」


    戦刃「……私はここに居る。私の発案のせいで、日向君のチームと葉隠君が鉢合わせになってしまった。その責任は取らせて貰うよ」


    日向「そんな、大体当初は……」



    当初は『誰かに鉢合わせになればいい』という考え方だった。
    ただ、最悪の形になってしまったが、戦刃に責任があるわけではない。


    戦刃「ううん、迷惑でなければ、居させて?」


    苗木「……うん、ありがとう、戦刃さん」




    狛枝「……さて、困ったね。どうする日向クン?」


    日向「……どうする、か」



    正直、どうすればいいのかはわからない。


    苗木「……取り敢えず、校舎に戻ろう。ここに突っ立て話し合うより、寄宿舎の食堂辺りで、みんなと話し合おう」


    ソニアが死に、左右田と江ノ島は去ってしまった。


    ……不用意に出ていけば、また葉隠の様な『やる気のある奴』に出くわして、誰かがまた犠牲になるかもしれない。


    俺達は校舎へと戻り、今後について話すことにした。





  53. 57 : : 2015/01/26(月) 20:11:54


    ────────





    皆と別れ、道中で炎上する車を見つけた。



    傍らにあの葉隠とかいう男の死体を見つける。


    ……酷い有り様の死体だった。



    坊ちゃんは無事だろうか……もしかしてこの男と交戦したのではないか?


    足取りが重くなり、更に進んで近くの壁際に座り込む。


    ……急激に不安が私を襲い、私はどうすればいいのかわからなくなる。





    どうすればいい?


    どうすればいい?


    どうすればいい?


    どうすればいい?



    模索して模索して模索して模索して模索して模索して模索して模索して。



    そして悟る。


    ああ、なんだ、簡単なことだった。


    簡単過ぎて思わず笑みが溢れた。




    辺古山「……殺せばいい」



    殺して殺し尽くした後、私が自殺すればいい。




    仲間のチームだとか、そんなもの関係無い。坊ちゃんさえ生き残れば、それでいい。




    しかし、私のチームには厄介そうな輩が多い。


    ではどうする?



    ……そうだ、演出してやればいい。



    『コロシアイ』を演出し、『コロシアイ』を誘発させ、少なくなった所を皆殺しにしてやろう。



    そうだ、それがいい。



    辺古山「……」



    ♡100
    ★92




  54. 58 : : 2015/01/26(月) 20:46:34


    ───────


    霧切「……何かしら?」


    東側に煙が上がっているのが見える。


    石丸「事故……かね?」


    セレス「車はおろか、人はわたくし達以外居ない様ですが……」



    弍大「少し気になるのう」



    終里「肉でも焼いてんのか?」


    豚神「都心の真ん中でバーベキューなんてやらんだろう……しかし、気になるのは確かだ」


    田中「……フン、魔界の炎でも召喚したか?」


    豚神「……二手に別れるか」


    霧切「そうね……では、石丸君、セレスさん、ついてきてくれるかしら?」


    石丸「うむ、わかったぞ!」


    セレス「わかりましたわ」





  55. 59 : : 2015/01/26(月) 21:14:39


    豚神「フン、では俺達はそのまま直進するぞ……霧切、石丸、セレス、何かあったらすぐに連絡を入れろ。わかったな?」


    霧切「ええ」



    彼等はそのまま直進し、南へと向かう。



    霧切「行ってみましょう」


    私達は煙の方向へと向かった。



    歩いていくと、炎上している何かを見つける。


    セレス「なんでしょうか……?」


    石丸「やはり……事故のようだぞ?」



    燃えているのは白いワンボックスの車。



    石丸「……あ、あれは……!」


    セレス「……!」


    霧切「……葉隠君?」




    炎上する車の脇、そこには葉隠君の遺体があった。


    石丸「うっ……!」


    炎上する車のガソリンの臭いにまじりながらも、むせかえる様な死の臭いが辺りを漂う。


    霧切「……」


    葉隠君の上半身と下半身が千切れている……


    霧切「銃創があるわね……」


    葉隠君の遺体を調べる。腹部は滅茶苦茶になっているが、銃による傷跡……銃創が幾らか見られる。


    セレス「……やはり、向こう側に『やる気になった人』がいらっしゃるのでしょうね」


    石丸「……なんてことだ」



    果たして……そうなのか。
    葉隠君が持っているのはスナイパーライフルだ。それはすぐ側に落ちている。


    ここはT字路の丁度中点にあたる、車はどうやら南方から走ってきた……というより、突っ込んで炎上している辺り、『ぶつけ』にきた様にも思える。





  56. 60 : : 2015/01/26(月) 21:43:48


    私はその南方へと向かう。


    石丸「ど、どうしたのだね? 霧切君」


    霧切「……」


    おおよそ400メートル程か、遺体は無いが派手に散った血痕と……所々に有る肉片は……脳漿の様にも見える。


    霧切「……恐らくだけど、攻撃を仕掛けたのは葉隠君の方ね」


    セレス「そうなのですか?」


    霧切「相手は2人以上で行動していた。その内、1人が狙撃され、この血痕が語る様に、恐らくは即死した。葉隠君のスナイパーライフルならそれが出来る。相手は多分……葉隠君の死因からみて、マシンガンの類ね」


    石丸「では、先制したのは葉隠君……」


    セレス「そして、相手方は味方を殺された事に激昂し、どうやってかは知りませんが車を動かし、葉隠君に近づき……」


    霧切「……マシンガンで撃ち殺した。滅多撃ちしてね……『コロシアイ』を始めてしまったのは私達の方になるわね」





  57. 61 : : 2015/01/26(月) 22:17:00


    セレス「……それでは、向こう側にも 」


    霧切「……ええ、『私達の側にやる気になった人』が居ると理解している。これはもう……」



    もう、止めることは出来なくなる。



    石丸「そんな……僕は……僕は兄弟と戦いたくなんか……!」


    霧切「ええ……とにかく、連絡を入れましょう」


    電子生徒手帳を取りだし、直進している彼の方へと連絡を入れる。


    『十神白夜』……と表記されているが、一緒に表示される顔写真から、この太った十神君の方に通話する。



    豚神『……霧切か!?』


    焦った様な感じだがどうしたのだろう。


    豚神『要件は後で聴く……!』


    霧切「……どうしたの?」


    豚神『……交戦している!』


    霧切「なんですって……!?」



    ─────────



    俺は……いや、僕に名前はない。


    『十神白夜』の名を拝借しているが、今はこんな話どうでもいい。


    弍大「大丈夫かぁ! 終里ぃ!」


    ♡100
    ★10


    終里「あ、ああ、へっ! こんなん大した事無いぜ!」


    ♡91
    ★18



    彼と鉢合わせた瞬間、突然、僕らにマシンガンを乱射してきた。



    咄嗟に道路に放置された車の影へと身を隠す。


    案の定、道路上は遮蔽物が多い。まるで銃撃戦を想定したかのような……仕組まれた配置のようになっている。


    しかし、咄嗟の出来事の為か、終里が肩に掠めた様だ。


    ガチンッ! と音が聞こえた。彼のマシンガンの弾が切れた様だが、直ぐ様に、新しいマガジンを、手慣れた感じで装填する。


    弍大が顔を出し、彼に制止を呼び掛けた。




    弍大「やめんか!! 左右田!!」



  58. 62 : : 2015/01/26(月) 22:40:28



    左右田「……も、もう駄目なんだ弍大」


    銃を構えたまま、左右田は弍大へと応える。

    ……撃ってはこない。左右田に何が起こったのか。



    豚神「ちっ……! 何が駄目なんだ!」


    左右田「オレぁ……もうこのゲームにのるしかねぇんだよ……!」


    田中「……どういうことだ、左右田」


    田中がスッと立ち上がり、銃を恐れずに左右田の真正面に立ちはだかる。


    左右田「た、田中? オレは……オレはよ……」


    田中「言ってみろ」


    已然とした態度で田中は立つ。





    左右田「オレはもう……1人殺しちまったんだよ……! もう、戻れねぇ……!」


    豚神「!?」


    弍大「なんじゃと……!」


    終里「はぁ!?」


    皆が驚愕する中、田中だけは表情1つ変えず、左右田に聞き返した。



    田中「何故殺した?」



    左右田「……ソニアさんを」


    田中「……あの雌猫がどうかしたのか?」



    左右田「……殺されたんだよ。オレ、ブチギレて……何が何だか解んなくて……気付いたら殺してたんだよ……!」


    豚神「……ソニアが」


    弍大「なんじゃと……」


    終里「し、死んだ……殺されたってお前……!」

  59. 63 : : 2015/01/26(月) 23:22:15



    田中「そうか」


    田中は踝を返し、来た道を戻っていく。


    田中「何をしている、貴様ら、我等が地に戻るぞ」


    豚神「おい、田中……何を勝手に」


    田中は深く被ったストールを下げ、口元を見せる。


    田中「もう『コロシアイ』とやらは始まったということだ。殺し殺された命が出てしまった以上、もう止まることは不可能、この俺様の力を以てもな」


    左右田「……おい」


    田中「なんだ? 今すぐここで命のやり取りをするつもりか? 今世紀最大の害悪と呼ばれたこの俺様と殺りあえば、貴様に命はないぞ」


    田中は懐から拳銃(コルト・ガバメント)を取り出し、左右田に向ける。



    左右田「ソニアさんが……死んだんだぞ! なんとも思わねえのか!」


    田中「死した命に何の感慨も無い」


    左右田「テメェ!!」


    左右田が銃を構え直す。今にも発砲しそうだ。



    田中「……だが」



    左右田「……?」



    田中「……少し、背中が寂しくなるな」



    銃を納め、ストールを深く被り、田中は再び踝を返す。


    僕らは2年間、田中という人物と過ごしてきた。


    よく分からない言葉と考えから、独りになりがちな彼であるが、彼も人間で有ることには変わりない。


    誰とでも仲の良い日向とは別に、なんだかんだで田中と最も居たのはソニアだろう。


    見掛けるときは大概、田中の後ろにはソニアがいた。


    そのソニアが死んだ、誰かに殺された。


    哀しくない訳がない。



    左右田「……」


    田中「……左右田よ」


    左右田「……なんだよ?」



    田中「自棄になって、己が命を諦めるな。まだ生きている命を諦めるな」



    左右田「……!」


    田中は来た道を戻り、僕らの本拠地側へと帰っていった。




    左右田「……どうしろって、いうんだよ」


  60. 64 : : 2015/01/26(月) 23:56:14


    そして左右田も、寂しい背中を見せてそのまま引き返していく。




    豚神「……ちっ」


    僕は電子生徒手帳を取り出し、霧切へと通話した。


    霧切『……もう大丈夫なの?』


    豚神「ああ……ところで、要件は?」


    霧切『葉隠君が殺されていたわ……それと、もう1人も』



    左右田の話は本当だった。田中の言う通り『コロシアイ』は始まった。



    豚神「……ああ、こっちもその『当事者』と交戦した。そして死んだもう1人はソニアという相手チームの俺のクラスメートだ」


    霧切『……そう』


    豚神「……学園に引き返すぞ、アプローチはもう無理だ。こちらにも、あちらにも『やる気になった奴』がいる以上、相手の本拠地に向かうのは危険だろう」


    何人がやる気になっているのかは知らない、だから危険だ。
    犠牲者をこれ以上増やす訳にはいかない。


    霧切『……わかったわ』


    通話を切る。


    終里「……くっ」


    弍大「終里……」


    終里「心配すんなってオッサン、こんなんツバつけときゃ治るだろ」


    終里の傷も、手当てをしない訳にもいかないだろう。


    豚神「学園に保健室があったハズだ、戻るぞ」


    僕達も田中のあとを追うようにして、来た道を戻っていった。


  61. 65 : : 2015/01/27(火) 02:28:26


    ────────


    左右田「……」


    ♡100
    ★78


    田中らと別れ、オレが向かったのは百貨店の寝具、ベッドに安置したソニアさんだったモノを見つめる。


    なあ、ソニアさん、オレは、オレはどうすればいいだろう?


    田中が……少しだけ本心を見せてくれた気がする。


    なんだよ、何だかんだでアイツもソニアさんの事、気になってたんじゃないか?


    なんだよ、あの野郎……なにが諦めるな、だ。下手な慰め方しやがって。


    中2野郎の癖に、俗世は嫌いだとか言ってたくせに。


    ……ああ、やっぱり、オレはアイツを本気で嫌いにはなれねえ。


    涙が溢れる。


    左右田「……すいません、ソニアさん」


    ♡100
    ★18



    左右田「オレ……ソニアさんの分まで………」






    生きますから。










    「死ね」





    その声が聞こえた時には遅かった。



    左右田「あ、がっ……!?」



    ♡8
    ★42


    自分の腹部より突き出る長い刃。


    焼け尽く痛みが脳を沸騰させる。


    致命的な背後よりの一撃。


    ズルリ、と刃が抜かれる。


    左右田「あっ……がはっ! ごほっ!」


    吐血する、臓器をやられた証明。


    左右田「あ……が……?」



    辺古山「……すまないな、左右田」



    この声は、辺古山……ああ、コイツも『のった奴』なのか。


    倒れたオレのポケットをまさぐり、あの黒い立方体……『スキルブースター』を取りだしていく。


    そして、ソニアさんのも……


    左右田「あ……う……ぁ……ぁ!」



    ♡2
    ★100


    這う、ソニアさんの元へ。


    左右田「す……せん……ソ……ア……ん……」


    ソニアさんの冷たくなった手を握る。

    ……ああ、謝ってばっかだな、オレ。


    左右田「……ぁ」


    ♡1
    ★100



    あのドレッドヘアの男も……ソニアさんも、こんな感じ……で……


    『死』を……感じ……



    左右田「……」


    ♡0
    ★0




    ────────




    辺古山「……」



    左右田の生き絶える姿をその最期まで見ていた。


    ……ソニアは恐らく、葉隠が殺したのだろうか。


    私の手は既に血に染められている。


    特に深い感慨は湧かなかった。



    さて、左右田……ソニアでも良かったが。


    『役に立って』もらおう。


  62. 66 : : 2015/01/27(火) 12:57:25


    ────────


    苗木「……」


    ボクらは学園に再び戻り、食堂へと集まる。


    何時間が過ぎたか、やはり、もうアプローチという方法は出来ない。


    日向「……」


    この『コロシアイ』が始まって数時間もしない内に、2人が死んだ。もしかしたら、今も左右田クンや江ノ島さんが向こう側に攻撃をしているのかもしれない。



    意見は一向に出ない。


    戦刃「……とにかく、今日は見張りを立てて、交代しながらこの寄宿舎に籠城しよう?」


    この寄宿舎には全員分のベッドと食料が揃っている。不自由はしないだろう。


    戦刃「それともう1つ、私は哨戒にいってくる」


    哨戒……つまりは襲撃に備えるということなんだろう。


    日向「取り敢えず、皆、もう各自の部屋で休んだ方がいいだろう……期日はまだある。頭を冷やした方がいい」


    七海「そうだね……いきなりこんなことになって、クラスメートが亡くなって……」


    ボクらに必要なのは……きっと、決断なのだろう。


    もうあとには引けないのだから。





  63. 67 : : 2015/01/28(水) 19:34:41


    ──────


    霧切「……皆、これで帰って来たのかしら?」


    豚神「……出ていった奴を除けばな」


    私達は旧校舎に戻り、今後について話す事にしたが、やはり、意見など出るはずがない。


    弍大「とにかく、期日は1週間じゃ、今日はもうクソして寝て、明日にでも考えればいいじゃろう」


    2人死んで、皆意気消沈としている。


    もう、止めるなど甘いことは言えないだろう。



    葉隠君が死に、終里さんが撃たれ、そして向こう側にも死傷者が出た。


    決断しなければならない。


    私達にはもう、戦うしかないと。

  64. 68 : : 2015/01/28(水) 21:48:00


    大神「……もはや、皆、生き残る道は無いのか」


    朝日奈「……そんな」


    豚神「……いや、まだだ」


    霧切「……何か策はあるのかしら?」


    現状、最初に姿を見せたモノクマも、あれ以降、姿を見せない。
    ……つまり、私達は完全な孤立。



    豚神「この腕輪だ」


    太った十神君が腕を上げ、この忌々しい腕輪を掲げる。


    霧切「……でも、無理に外そうとすれば」


    何が起こるかはわからない。


    豚神「……そうだな、何が起こるか……爆発でもするのか。なら、無理に外さなければいい」


    西園寺「日本語で喋れ豚ぁ!」


    小泉「こらぁ!日寄子ちゃん!真面目な話してるんだから……でも、無理に外さなければって?」


    悟る、なるほど。私達のクラスには専門家が居ないから思い付かなかったが、つまりは……


    霧切「付けたまま分解する……ということね?」


    豚神「そうだ、そしてそれが出来そうなのが……」


    弍大「機械類となると……左右田かのぉ」


    左右田……太った十神君達を襲ったっていう……


    豚神「……田中の言葉が心に響いてれば良いがな?」


    田中「……ふん」


    弍大「がっはっは!! まさか田中が左右田の暴走を止めるとは思いもせんかったからのぉ!」


    霧切「何かあったのかしら?」


    豚神「田中が左右田を止めた。絶望チェッカーとやらも下げたんだよ。愚民にしては大した働きだった。褒めてやる」


    田中「俺は何もしていない。馬鹿な人間風情が半端な悪魔に堕ちようとしていたのを止めてやっただけだ」


    田中「……それに、この死の遊戯の黒幕ごときに、手のひらで踊らされている事が気に食わんだけだ……黒幕のせいで……雌猫は……」


    田中君はストールを深く被る。
    ひしひしと、彼からは哀しみよりも、怒りが見て取れた。







  65. 69 : : 2015/01/28(水) 22:48:21


    終里「ふぁあ……怪我しちまったせいで眠いぜ、食って寝るか」


    弍大「そうじゃのう、飯でも食うかの」


    豚神「ふん……花村がいればな」


    花村……彼は今、何処にいるのか?



    ────────



    何処かのファミレス。


    学園の近くにあるはずなのに、僕はこんな店を知らない。

    もちろん、入る用事も無いからだ。

    でも、ここには厨房がある。


    厨房は落ち着く。シンクから漂う独特の水っぽい臭いに、冷蔵庫(チャンパー)の肌触り。


    花村「……夢なんだこれは夢なんだ夢夢夢夢……」


    ♡100
    ★82


    僕の武器は弱い。洋弓銃(クロスボウ)なんて、なんで僕はこんな武器なんだ。


    ……でも、これは音が出ない。

    ああ、そうか。

    これは音が出ない。


    気付かれないように、頭を射てば……ちゃんと殺せる。


    そして、この黒い立方体で……

  66. 70 : : 2015/01/29(木) 01:04:39


    ─────────


    戦刃「……それじゃあ山田君、お願い」


    山田「わかりましたぞ、戦刃むくろ殿。見張りはお任せあれ」


    戦刃「……帰ってきたら、見張り変わるから」


    私、戦刃むくろは哨戒へと向かう。


    ……山田君の武器は愚鈍であるが、こちら側の武器では間違いなく最強の火力を誇る。


    M134(ミニガン)……折り畳みの三脚搭載で、バレルを切り詰め、更に軽量化を図った個人携行を意識したカスタムモデルだ。


    ……それでも、現実からかけ離れた扱い方に変わりはない。普通の人間がこんな怪物を到底扱えるわけがない。


    しかし、彼はこれを『馴染む』と言った。


    ミニガンを持つ彼が居るだけで、その射程は『要塞』と化す。


    ならば、それを信じよう。


    私のはファマス(アサルトライフル)だ。怖いのは弾詰まり(ジャム)くらい……扱いに関しては問題ない。


    私は夜になった街を哨戒する。


    ……気配は無い、盾子ちゃんも、この辺りには居ないのだろう。
  67. 71 : : 2015/01/29(木) 12:30:27
    いつもいつも、出だしやルビをふんだんに使った文章に惹かれます!
    とても期待です!!
  68. 72 : : 2015/01/29(木) 12:48:45
    >>71
    ありがとうございますっ
    あげぴよさんをはじめ、BR系の素晴らしいSS作家様と、少しでも個性を魅せる為に僕なりに頭を捻ってみましたっ
  69. 73 : : 2015/01/29(木) 21:13:50


    戦刃「……」


    淀んだ空気の中、私は歩を進める。

    久し振りに感じる独特の緊張感が、私の頬に汗となって伝う。


    学園より西側、電子生徒手帳に記載された、戦場の端まで来る。


    ……腕輪の中央に付いた赤いランプが点滅し、軽くブザーがなった。

    範囲を越えればこの腕輪が爆発でもするのだろうか。


    私は戦場側に戻り、再び歩を進める。





    辺古山「ほう……」


    戦刃「……!!」


    学園の手前に、セーラー服を纏う、目付きの鋭い女が立っていた。


    ……血にまみれたセーラー服、この女が『最近誰かを殺した』事は明白……!


    アサルトライフルの安全装置(セーフティ)を外し、銃口を女に向ける。


    相手が持っているのは刀の様な近接武器のみ……距離は十分に空いている。


    私の方が優性だ。



    戦刃「……武器を捨てて」


    辺古山「断る」


    ♡100
    ★98


    限りなく絶望に近い精神が、絶望チェッカーから見てとれる。


    彼女はきっと『のった人』なんだろう。



    ……ならば、遠慮はいらない。



    躊躇いもない。


    私は決断する。


    この女は殺す。


  70. 74 : : 2015/01/29(木) 21:49:46



    と、


    辺古山「……遊んでやっても良いが、生憎、貴様とは戦えない」


    唐突に女は踝を返す。


    戦刃「……何が目的?」



    辺古山「ただの『置き土産』をしに来ただけだ……さらばだ」


    そしてそのまま、闇に紛れる様にして消えた……『置き土産』とは一体なんだ?



    ────────



    田中「ふん、少し風を感じてくるとするか」


    弐大「外に出て大丈夫なんか?」


    田中「この俺様を誰と心得る! 制圧されし……」


    弐大「わかったわかった! 行くならさっさと行かんかい!」


    弐大に適当にあしらわれてしまった様だ。


    俺は、田中眼蛇夢は食事を終え、魔界の障気を取り込む為に混沌とした外界へと向かう……



    と、いう理由を付けて、あの馬鹿者(左右田)を探しに出た。


    ソニアの件が堪えた様だ、それは無論、俺もだ。


    ……俗世を嫌悪する俺には、色恋沙汰など興味は無い。


    だが、ソニアはよく俺の動物達を可愛がり、そして動物達もソニアになついた。


    ……何故、彼女が死ななければならなかったのか。


    殺した葉隠という男ではなく、俺はこの『状況』を憎んだ。


  71. 75 : : 2015/01/29(木) 22:16:55
    苗木が…最後のほうで自殺しそうで怖いわ
  72. 76 : : 2015/01/29(木) 22:19:59


    葉隠も、云わば被害者だ。


    そして左右田も……


    奴はあの後、東側に向かった。


    あちら側で目につくのは……百貨店だ。


    奴の事だ、人殺しが皆と居られるわけがないと考え、恐らくは本拠地に戻らず、何処かに身を潜めているのだろう。


    俺は取り敢えず、その一番目につく百貨店へと向かう。





    田中「ふん……」



    エントランスに入る。中央に吹き抜けがあり、その中央吹き抜けの端のエスカレーターで各階層へと登り、階層毎にテナントが入っているというタイプの百貨店だ。


    中は暗い、しかし、一層だけぼんやりと明かりが見える。



    弱々しい明かりは、どうやら電気スタンドの明かりの様だな。


    エスカレーター前の案内図から、どうやら『寝具コーナー』らしい。


    俺はその明かりを便りに向かう。



  73. 77 : : 2015/01/29(木) 22:20:39
    >>75
    漠然とだけど皆の結末は考えてます♪(あんこくびしょう)
  74. 78 : : 2015/01/29(木) 22:43:26


    寝具コーナーの奥、そこにも電気スタンドの明かりがある。


    俺はそこへ進むと……





    田中「……!!」



    あったのは、2つの亡骸。


    田中「そ、左右田……」


    この死の臭気と共に、急激に『現実』という言葉が肩に降り注ぐ。


    ソニアは知っていた。


    衣服は血に染まっているが、顔は丁寧に拭かれているようだ。恐らくは左右田の仕業だろう。


    せめてもの手向けとして。




    しかし、この黄色い馬鹿な色のツナギの男の死体は左右田以外に考えられない。




    酷い……何故だ。




    何故、左右田は腹を貫かれ『首を落とされて』居なければならない……!


    その左右田の首は何処に……?



  75. 79 : : 2015/01/29(木) 23:01:11


    ────────




    戦刃「……!!」


    校門の門前に置かれていた白い……底が赤く染みた包み。




    それは、左右田君の首だった。



    あらゆる戦場を渡り歩いたが、この蛮行は『宣戦布告』であるという示し。


    なんて悪趣味、なんて悪辣。



    あの女の置き土産とはつまり、そういうことなのだろう。



    分かりやすく、左右田君の首の口の中に『紙』が突っ込まれている。


    ……そしてその紙には一言。



    戦刃「……『皆殺し』」



    ならば、私はそれを受けよう。



    幸い、盾子ちゃんも……苗木君もこちらのチームだ。



    容赦無く蹂躙し、容赦無く殺してやろう。







  76. 80 : : 2015/01/29(木) 23:27:48


    ────────


    深夜0時



    初日終了



    結果報告



    死亡者


    77006番(左右田和一)……刺殺

    77112番(ソニア・ネヴァーマインド)……銃殺

    78011番(葉隠康比呂)……銃殺


    北チーム残り15名


    南チーム残り14名



    ────────


    ここではない、何処かのモニター室、初日が終了する。



    シロクマ「左右田くん死んじゃったねぇ」


    クロクマ「ぎゃっははは!! ま、所詮は童貞野郎さ!! 惨めな最期がお似合いだっつーの!! 死姦でもやってくれりゃ盛り上がったのによぉ!! 好きな女で童貞卒業してハッピーに死ねたのによぉ!! ヘタレだよなぁ!! ぎゃっははは!!」


    シロクマ「ひどいよぉ」


    クロクマ「はぁ!? 今更酷いもクソもねえよシロクマ!! ま、それにしても辺古山良いなアイツ!! 坊ちゃん〜坊ちゃん〜ってか? ぎゃっははは!!」


    長い長い1日であっただろう。こんなのが1週間続くのだ。心は磨耗しきり、そして最後には……


    最後には……


  77. 81 : : 2015/01/30(金) 01:08:12


    ────────


    花村「……」


    時計を覗く。深夜1時……


    1日目が過ぎてしまった……こんな事してたら駄目だ。


    殺さなければ……!





    その時、ガタリ、と物音が聴こえた。


    僕はクロスボウを片手に、こっそりと厨房から客席を覗いた。



    江ノ島「なんかねーかなぁ」




    レジ辺りを物色している派手な女が独り。


    あはっ、獲物だぁ。


    興奮する。
    目が充血して、鼻からポタリと血が垂れた。


    アドレナリンが分泌する。


    念のため、例の黒い立方体を手のひらに乗せて念じ、それをポケットにしまう。


    わかる、わかるぞ、僕に今、どんな力があるのか……!


    念じると同時に、知識が僕の頭を駆け巡る。


    すごい、これはもう『超能力』といっていい。


    ゆっくりとクロスボウを構える。



    音も無く、静かに殺してやる。




    ───────


    ちょっと前にブティックに立ち寄り、マネキンを運び出す台車を見つけるのに苦労した。


    まあ、私様こと、江ノ島盾子にも、分析は出来ても直接目の当たりにしておかないといけないことがある。


    手に持つ大型拳銃(ソーコムMK23)はなんだろう、一昔前の据え置きゲーム機の銃型のコントローラみたいなだっさい銃だ。


    山田のバカみたいに派手で重すぎるのも勘弁だが、なんつーの? ガトリング砲? お姉ちゃんはミニガンって言ってたけど、どー違うんだってーの。


    さて、予測通りなら、人がいると思ってファミレスに来たが。


    どうやら、アタシの分析力はやっぱり完全無欠らしい。


    厨房から、気配がする。

  78. 82 : : 2015/01/30(金) 18:51:48



    瞬間、厨房から何かが飛んで来る。


    棒状の何かがアタシの頬を掠めていく。

    それは壁にしなって刺さる。


    ……(ボルト)だ。


    薄暗いせいか、相手が下手なのか、まあそれはどうでもいい。

    恐らくは頭部を狙ったのだろうが、狙いは大きく逸れた様だ。


    厨房に向かって銃を構える。


    攻撃してきたということは、まあ殺る気があるということだ。


    では、アタシも、殺る気を出すとしよう。



    と、



    花村「……ねえ、唐揚げってどんな気持ちなのかな」



    アタシの足元にグツグツと煮えたぎる『何か』が湧き出る。


    ……これはヤバい、気付いてなかったら『何かをされて』いただろう。
  79. 83 : : 2015/01/30(金) 19:47:53


    後方に跳びはね、その煮えたぎる『何か』を回避し、銃口を構え、何故かはわからないが手慣れた感じでセーフティを外し、2発を厨房に威嚇射撃してやった。



    花村「まな板の上で捌かれる鮮魚ってさ、どんな気持ちなのかな?」



    今度は上から何かが『落ちてくる』気配、たまらず、アタシはファミレスの窓を撃ち抜き、そこから飛び出す。


    すると、アタシの立っていた場所にあったテーブルが真っ二つになるのが見えた。


    厨房側からブツブツと何かを呟きながら太った小男が出てくる。



    花村「君はさ、もう『僕のまな板の上』なんだよ」



    次の瞬間、私の後方から火柱が上がる。


    ……モノクマめ、何が『魔法なんて素敵なモノは無い』だ。


    あの黒い立方体の力か、これは最早、超自然的な力と思っていいだろう。


    江ノ島「……なに? アンタは料理人か何か?」


    花村「料理人なんてダサい呼び方止めてよね……『シェフ』と呼んでおくれよ」


    ♡100
    ★100



    なるほど、見た目通り、ダサい奴だ。

  80. 84 : : 2015/01/30(金) 20:06:01


    銃口を向ける、躊躇せずに2発を放る。

    この拳銃は大型にしては反動が少ない。どうやらそういう特殊な加工が施されているのだろう、と適当に分析。


    だが、その2発は何かに阻まれた。


    丁度、足元に何かがグツグツと煮えたぎっていた場所だ。


    江ノ島「……はぁ?」


    止まった銃弾が、ジュワ! と音を上げてポトリと床に落ちた。


    花村「は、ははぁ……僕は今ねぇ、何でもかんでも『調理』出来るんだよ」


    なるほどなるほど、ふざけている。アイツ自身の才能がこうやって魔法かなんかみたいに働いてる訳だ。


    まるで座標に直接『罠』を仕掛ける様な感じだ。


    しかし、後方に上がる炎の範囲から、決して広範囲ではないと分かる。


    さて、ならば誘導して、コイツには『実験台』になってもらうとしよう。

  81. 85 : : 2015/01/30(金) 20:37:27


    ────────


    女が北側に走り出した。炎を出した『座標』とは真逆の方向、僕の視界を避ける様だ。


    ……気付かれたか?



    残念ながら僕の『スキルブースター』は『発生』が遅い。


    クロスボウにボルトを装填し、女の走った方向へと僕も走り出した。



    花村「はぁ……はぁ……待ってよぉ……!!」


    苦しまずに一瞬で楽にしてあげるから。


    動くモノに座標は置けないし、目視からでは僕の『まな板』の射程外だ。


    だから追い掛ける。


    彼女が曲がり角を曲がり、そして、彼女が直立しているのが見える……!


    先ほどから何やら腕輪がうるさいが、そんなのは関係無い。


    涎を垂らしながら女に『座標』を向ける。


    興奮を隠せず、クロスボウを女に向けた。




  82. 86 : : 2015/01/30(金) 21:05:23


    と、



    唐突に、



    江ノ島「どーん」



    後ろから蹴られた。


    何故だ? 彼女は前方に……!!


    そして、女の持つ銃が火を吹き、僕の足を撃ち抜く。


    花村「ぎぃ……あっ……あああはああいいいたぁあああああ!!」


    ♡72
    ★100


    銃で撃たれるなんて、テレビや映画でしか見たことないが、実際に撃たれると体が捩れる程に痛い。


    痛みが、熱が、脳をかき混ぜてぐちゃぐちゃにされる様な感じ。


    江ノ島「はぁい、残念でした♪ よーく見てみろ雑魚」


    僕が『座標』をつけた彼女の方はまな板の上の鮮魚の如く真っ二つになる。


    花村「……は?」


    ガランゴロン、と彼女にそっくりな様相に見立てられた、真っ二つになったのは、ただの『マネキン』だ。


    江ノ島「えっーと、こうかな?」


    そして今度は僕に『座標』が向けられる。





    僕に『座標』……?





    瞬間、僕の左腕に『実体の無い巨大な包丁』が降り下ろされ、切断された。



    花村「んぎぃぁあああああ!!?」


    ボトリ、と僕の左腕が落ちる。


    ♡31
    ★100



    馬鹿な……何故だ?


    何故この女が僕の力を使えるんだ……!?



  83. 87 : : 2015/01/30(金) 21:22:50


    江ノ島「おっと、時間切れかな?」


    そういって彼女がポケットから、あの黒い立方体を取り出す。


    江ノ島「あーん」


    女は喉を鳴らしてそれを呑み込んだ……この女、まさか。


    江ノ島「アンタみたいに一々取り出してたら使ってるのバレるじゃん? 一番良い使い方は、腹ん中に入れとく事」


    使ったことも無さそうなのに、まるで熟知しているかの様な口振りで女は手をヒラヒラとさせて僕を嘲笑う。


    江ノ島「さて、そろそろかな?」


    花村「う、が……じ、かん?」











    江ノ島「アンタ気づかなかった? アンタの居る位置、この電子生徒手帳に乗ってる地図の『範囲外』なんだよ」


    花村「はが……え……?」



    腕輪が、鳴り止まない。





  84. 88 : : 2015/01/30(金) 21:55:36


    ───────



    全くもって雑魚だ。こうも予測通りに動くのでは張り合いが無い。


    ブティックから持ち出したマネキンを、この電子生徒手帳に記載された地図の『範囲外』に設置してから、アタシはファミレスと赴き、コイツをここに『誘い込んだ』のだ。


    曲がり角にしたのは、その建物を抜けて、アタシを追ってきた奴の背後を取るため。


    範囲の圏外に出ても、若干猶予がある。予測としては1分程度だろうか。



    そして、今、この状況が出来上がる。


    江ノ島「ばいばい♪」


    手をふりふり、さよならのハンドサイン。






    花村「ほ、ぎ……」







    ボワッ! と小男の体が炎上する。なるほど、神経を焼ききるのは、無理に外そうとした時だけ、範囲外に出ると体そのものが燃え上がるのか。



    花村「ほぎぃあああああああ
    ああ!!!! あつうううううあああああああ!!!!」


    ♡12
    ★100


    悲痛の断末魔、それもそうだ。爆発して即死なら未だしも、意識を持ちながら焼死なんて、想像しただけで絶望モノだ。




    花村「あぎぃあああ!!! おがあ
    あああぢゃんんんんぎぃいいあああ!!!」


    ♡2
    ★100

    左腕を無くして、足も撃たれてもなお、この小男はゴロゴロと火を消そうと体を地面に転がす。
    喉を焼かれて、まともな発音は聞こえないが、どうやら肉親の名前を叫んでいる様だ。




    雑魚だけど、その絶望の様は中々に見応えがある。



    花村「か……は……」


    ♡1
    ★100


    焼けきったこの男からほのかに、良い匂い。
    人間の肉はササミ肉の様なモノだと噂で聴いたことがある。


    ローストチキンの出来上がりと言うわけだ。


    花村「……」


    ♡0
    ★0



    はい、終わり。ススだらけになった小男の体から黒い立方体が2つ、ケースは溶けてしまった様だが、黒い立方体は炎でも溶けたりはしないようだ。


  85. 89 : : 2015/01/30(金) 23:40:46


    江ノ島「はい、頂き」


    小男の黒い立方体を取り、アタシは踝を返す。小男の武器はボウガン? みたいだけど、まあ要らないや。


    さて、アタシの『スキルブースター』で発現する魔法みたいなモン は、やはり『分析』らしい。


    まあ、アレだ。あの小男みたいな『人間に出来ない事』でも『分析』して『独自に使える』らしい。


    条件は簡単、見るだけでいい。



    さて、腹に1つと手持ちが3つ、アタシは次の獲物を……と思ったけど、今日はもう眠い。



    寝床に行こう、そうしよう。



    焼け死んだ奴の事はもう記憶から薄れつつある。


    アタシは焼け焦げた死体を一瞥することも無く、その場を後にした。



    ────────



    ここではない、モニター室のシロクマとクロクマは相変わらず賑やかだ。


    シロクマ「花村くん、死んじゃったね」


    クロクマ「ぎゃっははは!! さっすが『絶望』様だぜ!! 興奮してアレがおっ勃ちそうだぜ!! ぎゃっははは!!」


    シロクマ「アレ? アレってなぁに?」


    クロクマ「アレっつったらアレしかねーだろが!! ぎゃっははは!!」


    花村、彼の生存率は極めて低い……致し方ないだろう。


    しかし、江ノ島盾子、やはり彼女は……『絶望』という概念を、そのまま体現した様な人間だ。


    彼女の生存率は高い。『天敵』が彼女と対峙しない場合に限るが。


    さて、そろそろ彼等にとって最初の朝が訪れる。



  86. 90 : : 2015/01/31(土) 01:06:18


    Now loading……


    ────────

    開示された情報



    戦場


    希望ヶ峰の旧校舎が対面しており、正方形状に端から端まで4キロ程度。建物で入り組んでおり、道路上には壊れた車など遮蔽物が多い。

    建物内部には全員分の銃器の規格に合わせた弾薬が置いてある。


    なお、この戦場から離脱すると腕輪が鳴り、1分後に人体発火が起こり、離脱者を焼殺する。





    花村輝々のスキルブースト


    『料理人』→『座標調理(ダイニングコーディネーター)

    座標に対して焼く、切る、揚げる、茹でる等々、調理行為を行う才能、射程は視界10メートル前後。範囲は2メートル弱。

    3次元的に力が働く為、用途によっては銃弾をも防ぐ。

    実体がなく、その殆どが致命傷に繋がると強力だが、『設置』から『発生』が非常に遅く、どちらかというと『トラップ』に扱える。




    江ノ島盾子のスキルブースト


    『ギャル(分析力)』→『過剰分析(オーバーラーニング)


    相手の『スキルブースト』を目視するだけで、その力をコピーする。
    分析した『スキルブースト』は『スキルブースター』使用時に限るが、ストックされていく。


    ────────


    Now loading……



  87. 91 : : 2015/01/31(土) 15:46:21


    ────────




    夢を見た。




    「あっ……くぁ……!」




    グッと私の首は絞まり、



    「あ………かはっ……」



    絞まり、



    「あ……」



    絞まり、




    「……」



    死んだ夢。



    七海「……う……ん」


    目を覚ます。


    時計を見ると時刻は朝の8時頃、朝ごはんを食べて、学校に向かう。休日だったらゲームしてるの2択、学校は無いけど、残念ながら、ゲームをする気分でもない。


    戦刃さんの、左右田くんの首の件以降、みんな、鬱蒼としていた。


    戦刃さんはみんなを気遣ってか、左右田くんの首そのものはコッソリと埋葬してくれたけど、


    それでも、みんなの気分が晴れる訳じゃない。


    ……電子生徒手帳も、深夜0時に更新され、左右田くんとソニアさんの名前が消えていた。


    戦刃さんが持ってきた『皆殺し』と書かれた、血で汚れた紙。


    あれはつまり『次はお前だ』と不特定に言われている様なもの。


    みんな、戦慄した。

  88. 92 : : 2015/01/31(土) 17:26:24
    気滞…じゃない、期待です!
  89. 93 : : 2015/01/31(土) 17:58:19
    >>92
    ありがとうございますっ
  90. 94 : : 2015/01/31(土) 20:13:14


    食堂に向かう。


    日向「……あ、ああ……七海か」


    ♡100
    ★28


    一番堪えていたのは日向くん……左右田くんとは、何だかんだでとっても仲良かった。


    七海「……大丈夫? 日向くん」


    日向「大丈夫……大丈夫だ」


    頭を抱え、とてもじゃないが大丈夫ではなさそうだ。不安でいっぱいなんだろう。


    私は、なんて声を掛ければ良いかわからなかった。


    やがてみんなも食堂に姿を現す。


    時刻は9時、朝食をみんなほぼ無言で終える。戦刃さんが席を立ち「みんなちょっといい?」と話を切り出した。


    苗木「戦刃さん?」


    戦刃「……思い出したくは無いだろうけど、昨日の件で……」


    桑田「……やっぱり、あっちのチームはもう……」


    舞園「わ、私達は……死ぬしかないんですか……?」


    みんなの絶望チェッカーが上昇している。


    無論、私だってそうだ……口だけなら『諦めちゃだめだ』とか『なんとかなる』なんていくらでも言えるけど、内心は不安で満ちている。


    不二咲「……い、嫌だよぉ」


    大和田「……不二咲」


    澪田「……ほ、ほら! 向こうには白夜ちゃんが居るっス! きっと策を練って……」


    澪田さんの言う詐欺師の方の十神くんは、きっとこんな状況でも『導いてやる』とか言って、リーダーシップを発揮して、この状況を打破しようとしているだろう。


    彼は演じる人によってコロコロと口調が変わるけど、それでも、仲間を絶対に裏切ったりしない、信頼の置ける人物だ。


    罪木「で、でもぉ……もう人が……」


    九頭龍「……左右田、ソニア……クソ」


    死んだ人は戻らない。それだけは変わらない。





  91. 95 : : 2015/01/31(土) 20:38:43


    狛枝「……さて、困ったね」


    狛枝くんは腕を組む……でも、どことなく、ただの勘だけど、楽しんでる様にも見える。


    苗木「……」


    苗木くんも押し黙っている。


    山田「やはり、道は無いのですかな?」


    戦刃「……うん、少なくとも、やる気になった人とは戦わないといけない……」


    そう、死者が出たイコール殺した人が居る。つまりは、殺した人を……


    戦刃「……殺してでも止めなきゃいけない。また、ソニアさんや左右田君みたいに……」


    犠牲が出る。
    復讐と復讐の繰り返し……黒幕が望むのはこの展開。


    戦刃「それで、左右田君を多分、殺した人と私は昨日会った」


    日向「多分? 会った?」


    戦刃「左右田君の首を『置き土産』といって置いていった人物だよ。戦闘にはならなかったけど……私達78期生ではなかった」


    苗木「特徴は……わかる?」


  92. 96 : : 2015/01/31(土) 21:46:09


    戦刃「銀髪……とはちょっと違うのかな? 淡い赤い瞳と白い肌で、何て言うのかな……アルビノ?」


    アルビノ……確か、メラニン色素の欠乏によって起こる先天性白皮症、そう、私達のクラスに1人だけいるから調べた事がある。


    戦刃「セーラー服、刀を持っていて眼鏡を……」



    九頭龍「あり得ねぇ!!」


    ガンッ! と九頭龍くんが机を叩いた。


    一同が一斉に九頭龍くんに注目する。


    そうだ、だってその特徴は九頭龍くんの幼馴染みの……


    九頭龍「ペコが……ペコが左右田を殺ったって言うのかよ……!?」


    戦刃「……名前は知らない」



    九頭龍「くっ……クソッ!」


    九頭龍くんが食堂を飛び出していく。


    日向「何処へ行くんだ! 九頭龍!」


    何も言わず、九頭龍くんは出ていく。恐らくは、辺古山さんを探しに。



  93. 97 : : 2015/01/31(土) 22:07:46


    日向くん「……くっ!」


    日向くんが九頭龍くんの後を追おうとするが、苗木くんが日向くんの腕を掴み、それを制止した。


    苗木「ダメだ……! キミまで冷静さを見失ったら……!」


    苗木くんが日向くんを真摯な瞳で訴える。


    日向「……わかってる、わかってるけどよ」


    七海「……日向くん、苗木くんの言う通りだよ」


    戦刃「……追うなら、最低でも3人で動いて……私も行く」


    日向「……!」


    戦刃「……九頭龍君を追い掛けよう」





  94. 98 : : 2015/01/31(土) 22:30:13


    ───────



    霧切「……」


    豚神「ングッ……ん? なんだ霧切、飯なら分けてやらんぞ」


    霧切「……いえ」


    太った十神君はよく食べる様だ。



    豚神「さて、飯は食ったな? 左右田とコンタクトするぞ」


    と、太った十神君が言った矢先。



    田中「無駄だ」


    と、田中君が口を開く。


    豚神「……何故だ? 田中」


    田中「……昨日、外に出た時に左右田を発見した」


    豚神「なんだと? 何故報告しなかった?」


    田中「……死んでいたからだ。悪魔の所業の如く、腹を貫かれ、首を落とされてな」


    豚神「……!」


    一同がざわつく。


  95. 99 : : 2015/01/31(土) 22:41:02


    田中「……報告は無意味、だと悟ったからだ」


    小泉「ちょ、ちょっと待ってよ田中……左右田が……死んだ?」


    弐大「何故じゃ……!」


    田中「何故? これがそういう遊戯だからだろう」


    弐大「田中……お前さん……!」



    田中「……そういう、遊戯だからだ」



    ♡100
    ★54




    顔には出さないが、田中君の怒りが、哀しみが、絶望となって数値から見てとれる。


    そして、田中君は無言のまま、食堂から去ってしまった。



    豚神「……ちっ、田中め、何処へ行く気だ」


  96. 100 : : 2015/01/31(土) 22:58:18


    終里「……左右田を殺ったって、得するのはこっちのチームだよな? オッサン」


    弐大「珍しく冴えとるの終里、となると……殺したのは出ていったこちらのチームの人間という事になるのかのう」


    出て行った人間、死んだ葉隠君を除き、腐川さん、本物の十神君、辺古山さん、花村君の誰かになるのだろうか。


    豚神「とにかく、田中を追うぞ……何をしでかすか解らんぞ」


    霧切「……そうね」


    絶望チェッカーが上がれば上がるほど、この状況で人は何をしでかすか解らない。


    元に、葉隠君や左右田君がそうだったように。


  97. 101 : : 2015/01/31(土) 23:52:34
    臨場感が半端ない…!
    とりあえずソニアさぁぁあああああん!!
  98. 102 : : 2015/02/01(日) 00:39:36
    >>101
    ありがとうございますっ
    ちょっと差別化をはかるためにサックリとはせずに、ズルズルネットリとした感じでやっていきますぞ!
  99. 103 : : 2015/02/01(日) 01:30:47


    ────────



    田中「……」



    左右田が死んだ、何故だ。


    ソニアが死んだ、何故だ。


    ソニアを殺した男は死んだ、では、左右田を殺した輩は何処で何をしている?


    嫌悪する。ただ、ただ、この『状況』が憎い。


    生命(いのち)を救うには、生命を諦めねばならんという二律背反。


    ならば、良かろう、黒幕よ。今一度、貴様の手のひらで踊ってやろう。


    黒い立方体を取り出す。



    この俺は、全力でぶつかる事に決めた。



    田中「……」


    ♡100
    ★83



    もう、止めることは不可能。


    もう、立ち止まることも不可能。


    俺は畜生にでも何でも堕ちよう。


    堕ちて堕ちて、地獄に堕ちよう。



    救える命があるのなら、それでいい。





  100. 104 : : 2015/02/01(日) 02:15:35


    ────────


    大和田「不二咲、無理して着いてこなくてもよかったのによォ」


    苗木「うん……九頭龍クンを探すだけだし……」


    オレ、大和田紋土は、苗木、不二咲とチームを組み、戦刃、日向、桑田らのチームに別れ、九頭龍の捜索に当たった。


    他の連中はお留守番だ。


    戦刃らは西側から、オレらは東側から捜索する。


    不二咲「だ、大丈夫……うん! ぼ、僕だって男の子なんだから!」


    ったく、(ナリ)は小さいクセに人一倍頑張ろうとする辺り、手が焼ける。


    だが、そんな『強い心』が眩しく写る。


    兄弟(石丸)の事も心配だが、今はコイツを守ることに集中したい。


    苗木「……この辺り、だったよね」


    苗木がぼやく、そう、昨日、この辺りで葉隠がソニアを殺し、左右田が葉隠を殺したという場所……


    葉隠……色々とズレてる奴だった。金に汚くてオッサンで、語るエピソードといやぁ、とんでもねえクズ行為の武勇伝ばかりだったな。


    だがよ、クラスメートだったし、ダチだった。


    ただ、左右田の気持ちが解らなくもねえ分、オレには何も言えねえ。


    衝動で、ついカッとなって殺るなんざ現代社会ではありふれたことだ。


    苗木「……おかしいね」


    不二咲「どうしたの? 苗木君……」


    大和田「見当たらねえんだな……苗木」


    T字路の中点、建物に車が突っ込んでる。
    炎上しきって、炎こそはもう収まっている。

    だが、放置されているはずの葉隠の死体が無い。


    葉隠の獲物であるスナイパーライフルはそのままだ。


    どういう事だ?

  101. 105 : : 2015/02/01(日) 10:46:45


    苗木「ん?」


    大和田「どうした? 苗木」


    T字路の中点であるこの場所から西側、1人の男が立っていた。


    長ランにストールだかマフラーだかを巻き、奇妙なツーブロックの頭髪、そして右手には拳銃が握られている。


    田中「……」


    ♡100
    ★90




    大和田「……苗木! 不二咲!」


    絶望チェッカーとやらが、アイツから高い数値を叩き出した。
    アイツからヤバイ雰囲気が伝わる。


    田中「抜けぃ!!」


    叫び、こちらに銃を向ける。


    大和田「苗木、不二咲を連れて学園に戻れ……! アイツはオレが止める」


    殺る気がビンビンと伝わってくる。あらゆる喧嘩の修羅場を潜ってきたが、ガチの殺し合いとなると別だ。


    背筋が震える。武者震いか、それともオレの『弱さ』か。


    苗木「わかった……! 不二咲クン!」


    不二咲「お、大和田君……!」


    大和田「安心しろ不二咲、苗木、頼むぜ!」


    苗木が不二咲の手を引っ張り、南側に下っていく。



    田中「……3人係りでかかってきた方が良かったんじゃないか? 貴様、死を見るぞ?」


    大和田「ふざけた事言ってんじゃねえ! ……テメエ、銃を向けるってことは『殺る気』ってんだな?」


    田中「無論だ、生命を救う為に、生命を諦めなければならないのなら……片方を蹂躙するしかあるまい」


    ♡100
    ★98


    誰だか知らないが、ぶっ潰させて貰う。


    オレは大型のリボルバー拳銃(S&W M500 ハンターモデル)をベルトから抜く。
  102. 106 : : 2015/02/01(日) 12:36:56


    戦刃の話では『流通したものの中では世界最強の拳銃』らしい。


    無論、対人では威力が高過ぎるこの銃は、大型の獣何かに有用だとかなんとか。


    問題なのが弾数と反動、弾は5発しか入らねえし、反動は10発も撃てば後遺症になるレベルだとも言っていた。


    こんなんであのヤロウを撃ち抜けばミンチになっちまうんじゃねえか?


    と、


    田中「準備はいいか?」



    ヤケに正々堂々としたクソヤロウだ。



    大和田「やってやろうじゃねえか……!!」



    売られた喧嘩を買った。


    俺には良くある。


    ただ、その代金は怪我ではすまない。


    命だ。



    奴が発砲してくる。俺は咄嗟に建物に突っ込んでいた車の影へと身を隠した。


    田中「どうした? 隠れるだけか?」


    大和田「ちっ!!」


    発砲は続く。オレの銃の弾は5発の上、戦刃の話からして、片手で撃てるシロモノじゃない。


    まずは待つ……


  103. 107 : : 2015/02/01(日) 15:55:48
    期待ですっ!!
  104. 108 : : 2015/02/01(日) 16:07:52


    ガチンッ! という音が聞こえた。


    チャンスだ。



    車からすかさず飛び出し、銃を両手で握り、構える。


    田中「むっ……!」


    威嚇の射撃、照準を少し逸らす。


    ガウンッ! と、けたたましい音と砲火を放ち、オレはその反動に腕を上空に持ってかれそうになった。



    なんつー反動、手がビリビリしやがる。連射出来るシロモノじゃない。


    田中「ちっ……」


    相手はダッと近くの車へと走り、身を隠す。


    これで、お互いに発砲、撃ち合いの開始かと思いきや……



    大和田「……なんだ?」


    何か、騒がしい。
    動物の様な鳴き声が。



    そっと覗く。アイツが隠れている車の周辺から異様な気配がする。


    と、


    ギャアッ! ギャアッ! と鳥の声が上空から聞こえた。



    なんだ、何が起こっている?



    田中「……出てこい、俺には『見えている』」


    相手は車の影からゆっくりと出て来て、マガジンを再装填した拳銃をこちらに向けてくる。


    そして、車の影から……ヌッとソイツは一緒に出て来た。


    嘘だろ……? いつ、どうやって、何故、こんなところに?






    虎、それも、動物園なんかにいるのと違う。


    一回り大きく、相手が隠れていた車と同じ位はありそうだ。



    大和田「……は?」



    馬鹿げている、何でだ……だが、恐らくは『アレ』だ。



    日向や九頭龍が、左右田のを目の当たりにしたと言っていたが……この黒い立方体……奴はそれを使ったに違いない。


  105. 109 : : 2015/02/01(日) 16:08:13
    >>107
    ありがとうございますっ
  106. 110 : : 2015/02/01(日) 16:37:36


    虎だけじゃねえ……豹とライオン……ありゃ……ジャガーか?


    どれもこれも、ワンサイズ大きい肉食動物だ。



    ……大神や戦刃の様に死線を潜ってきたワケじゃねえ。



    だから、奴の動物達を見て、ブルってしまった。


    殺される……アイツらは、オレを『喰おう』としている。


    オレは強えハズだ。
    それなりに喧嘩で常勝してきた。
    大神や戦刃なんかは次元が違うが、それでも戦いには自信がある方だ。


    しかし、これは『種』としての強さの問題。


    狩猟に特化した大型の肉食獣相手に、頭だけ発展した猿に何が出来る?








    田中「殺れ、『ジャンP』」



    その声が合図、虎がオレが隠れている、建物に突っ込んだ白のワンボックス目掛けて走ってくる!


  107. 111 : : 2015/02/01(日) 19:18:27


    大和田「……ぐっ!」


    堪らず、オレはワンボックスから離れた。南側に走る。



    次の瞬間、ワンボックスの車が虎の最悪な『お手』によってアルミ缶の様にペシャンコになりやがった。


    冗談じゃねえ。



    田中「行け、『マガG』」



    今度はライオンが来た……!
    そのまま突進してくる。


    大和田「クソが!」


    銃を構え、ライオンに撃つ。

    頭を狙ったが、照準は逸れ、ライオンの肩を掠めていく。


    せめて、片手で扱えれば……!


    ライオンが迫る。
    オレはすかさず、横に飛び込み、回避した。


    クソ……黒い立方体、確かに今持っているが。

    何かしらの力が追加されるらしいが、オレの暴走族なんて、ただの肩書きだ。


    田中「『ジャンP』『マガG』……殺れ」



    クソ、今度は2匹同時に来る!


    南側に走り、右手側の建物の中に入る。


    田中「逃げたか」



    どうやら、喫茶店か何かの様だが……


    大和田「……ん?」


    喫茶店には似合わない、頑強そうなボックスがある。

    開けると中には弾薬が詰まっていた……なるほど、持てるだけ持っていって良いのか。


    パッケージに『S&W500マグナム』と書かれたモノがある……これでいいのか?

    オレはそれを懐にしまい、建物の入ってきた側とは違う、裏側へと向かう。

    これでヤツの後方を取れるハズだ。
  108. 112 : : 2015/02/01(日) 21:02:52


    そして、黒い立方体……『スキルブースター』とか言ってたな、コイツを取り出す。


    本当に、何か有るのか……?


    と、


    ガシャン! と、喫茶店の窓ガラスが割られ、さっきの虎とライオンが入ってきた。


    ヤバイ、そう思い、喫茶店の奥側、厨房を抜けて裏口から出ると、路地裏に出る。


    ……この路地裏を北側に出れば、さっきのヤツの立ち位置辺りに出るだろう。


    覚悟を決めなきゃならねえ。


    オレはグッと黒い立方体を握り、念じた。



    ……はっ、何が出来るのかと思ったら、そんな事か。


    この『力』はヤツのどこからともなく動物を呼び出し、使役するような超能力紛いのものではない。



    ただ、ただ、シンプルだった。



    ……だが、解りやすくて助かる。



    大和田「反撃だクソヤロウが!」



  109. 113 : : 2015/02/01(日) 22:49:57


    路地裏を一気に走り抜ける。


    そして抜けきった矢先、ヤツはこちらを既に向いていた。


    田中「……馬鹿が」



    気付かれている。無論、ヤツはこちらに銃口を向け、発砲してきた。



    ……だが、それは問題じゃない。


    すかさず斜めに飛び上がる、体が驚くほどに軽い。


    田中「なっ……!?」


    驚いているな。そりゃそうだ、直線で5メートル弱は飛び上がり、建物の2階付近の壁を、五指で貫いて掴む。


    あの黒い立方体から、バカ見てえな運動能力を手に入れた。アメコミのヒーローみてーな、まさに超人だ。




    そしてオレは銃を『片手で』構え、2発を叩き込む。



    狙いは勿論、



    田中「ぐっ! 『チャンP』!!  『サンD』!!」


    取り巻きの……豹とジャガーだ。眉間をぶち抜き、黙らせてやった。



    田中「おのれ……よくも」



    大和田「諦めな、もうオメーじゃ勝てねえ」


    オレは銃口を奴に向けた。



    田中「果たして、そうかな……嘗めるなよ人間風情が」


    と、


    空を群がっていた鳥達が急襲してくる。


    大和田「いて! いてて、やめろ!」



    ついばまれ、思わず壁から手を離してしまった。


    そして地面に墜落する。


    大和田「いってぇ……クソ」


    ♡93
    ★28


    運動能力が上がった、体もそこそこ頑丈になった。


    だからと言って、やっぱり痛えモンは痛え。



    田中「殺れ!」


    今の一合の間に虎とライオンの2匹が戻って来ている。


    すかさず銃を構え、1匹に狙いを定めた。



    若干ブレてライオンの足に命中する。


    なんとかライオンは止めたが、虎の方が止まらない。


    すかさず虎に銃口を向け、引き金を引いた。



    大和田「……あ?」



    ガチンッ! と撃鉄だけが悲しく響く。



    しまった、弾切れだ。







  110. 114 : : 2015/02/01(日) 23:31:58



    虎が飛び付いて来る。



    大和田「うおあああああ!?」


    押し倒され、その鋭利な牙でオレに食らい付こうとし、





    大和田「……じゃあねえよタコ!!」





    思いっきり殴り飛ばしてやった。あの巨体を気持ちいい位にすっ飛ばしてやった。


    だが、やはり虎は再び起き上がり、オレへと威嚇してくる。


    ライオンも足を引き摺りながら、こちらを睨み付けてきた。


    懐に入れていた弾を取り出し、弾を再装填する。



    大和田「……終わりだ!!」




    虎とライオンが同時に来る!



    そしてオレは銃口を奴等に向け、2発……




    田中「……ぐっ!!」



    大和田「はぁ……はぁ……」



    ぶちこんでやった。2匹とも、眉間のど真ん中、舌を出し、倒れ込む。もう二度と起き上がることは無いだろう。



    田中「おのれ……よくも暗黒破壊神四天王を……」



    なんだそりゃ……だっせえ名前だな。


    体がずっしりと重くなる、黒い立方体の効果が切れたようだ。


    どうやらヤツの『スキルブースター』と違ってオレの『スキルブースター』は恩恵が短いらしい。



    だが、まだ終わらねぇ。



    大和田「うおおおああああ!!!」



    ヤツに一直線に走りだし、拳を振り上げる。



    田中「……!」



    銃を構えるが、遅い。



    そして、



    田中「がっは!?」


    思いっきり頬を殴ってやった。



    田中「ぐっ……!?」



    ♡97
    ★52



    大和田「……ったく、ちったぁ目は覚めたか?」


    田中「おのれ……! 暗黒破壊神四天王が貴様如きに破れるとは……!」



    ああ、ペットをぶっ殺したりして悪かったとは思ってるよ。だがな、それはけしかける奴が悪いんだよ。



    それに、






    大和田「オレぁ、イヌ派なんだよ」




  111. 115 : : 2015/02/01(日) 23:53:08



    Now loading……


    ────────



    開示された情報





    田中眼蛇夢の『スキルブースト』



    『飼育委員』→『涅槃(ニルヴァーナ)


    涅槃図の如く動物達を召喚し、使役する才能、動物と心だけでなく視覚を共有する事も可能。なお、言うまでもなく取り巻きのネコ科の大型肉食獣達の名前は希望ヶ峰入学時に飼っていたハムスターから。



    大和田紋土の『スキルブースト』


    『暴走族』→『暴君(タイラント)


    元々、武闘派であった為、シンプルに身体能力の向上、主に腕力が特化した。
    といっても、これはこれで常軌を逸脱している。



    ────────


    Now loading……
  112. 116 : : 2015/02/02(月) 20:11:30


    ────────


    豚神「ちっ……足早に出たつもりだが」


    十神白夜の名前を借りている僕は、霧切、そして弐大とで田中を探していた。


    電子生徒手帳で霧切、弐大と連絡をする。


    霧切『こっちには居ないわ』


    弐大『こっちもダメじゃ』


    くそ、田中……何処へ。


    ……後は、昨日、霧切達が行った葉隠が死んでいた場所付近か。



    体躯はでかいが、体力はそんじょそこらの細い奴より自信がある。


    僕は駆け足で向かった。



    豚神「……ん?」



    パンッ! という銃声が聞こえた。
    それも連続してだ。


    遅かったのか、もし、田中が誰かを撃ち殺したならば……



    僕は彼を粛清する覚悟だ。



    そしてようやく着く。


    ……そこには異形な戦闘が繰り広げられていた。


    田中を囲う大型肉食獣、そして、冗談みたいな運動能力のリーゼント頭が戦闘している。


    ……まさか、この黒い立方体の力なのか。



  113. 117 : : 2015/02/02(月) 21:27:49


    僕は隠れてその様子を伺っていた。


    ……言い訳じゃないが、あんな戦いの中に飛び込むのは、焼却炉に身を投げるようなもの、つまりは自殺行為だ。


    肉食獣2匹を仕留め、そして、リーゼントの彼は田中を素手で殴り倒した。



    大和田「オレぁ、イヌ派なんだよ」



    リーゼントの男はそういって踝を返す。


    田中「くっ……何故だ」


    大和田「あぁ?」


    田中「貴様を……殺そうとしたのだぞ?」


    大和田「知るかよ、オレとオメーは違う、殺しゃしねえよ」


    田中「……フッ」


    大和田「……なんだよ?」


    田中「………何でもない、ただ、己が愚かさを知っただけだ」


    大和田「……ふん」


    リーゼントの男は去る。なるほど、奴は『のっていない人間』か。


    まだ希望はある様だ。


    田中は立ち上がり、銃を仕舞う。



    田中「フン……まだまだ下界にはあの様な人間が居るのだな」


    ♡97
    ★28


    あのリーゼントの男の拳が、田中の心に響いたのか、田中の絶望チェッカーが下がっていく。


    もう、大丈夫だろう。



    田中「左右田、ソニアよ……俺様は……」







    と、




    辺古山「……!!」


    田中「がっ!!?」


    ♡30
    ★48


    田中の上空から一閃、一太刀が浴びせられる。


    田中「き、さま………!?」


    辺古山「……田中、すまないな」


    更に一閃、田中の袈裟を斬る。


    田中「ぐはっ!!」


    ♡8
    ★100


    辺古山「……」


    刀を振り、血を払う。


    ……何故だ。何故、辺古山が……ましてや同じチームの田中を斬った?


    辺古山は田中の懐を探り、あの黒い立方体を抜き取り、そして去っていく。


    田中「がっ……は……!」


    ♡3
    ★100



    辺古山が完全に去った後、僕は田中の元へ走る。



    豚神「田中……!!」


    田中「……あ」



    出血が酷い、バイタルから見てもこれは……助からない。



    田中の肩を抱き上げ、そして、



    田中「お……は、まだ……たい……ツらの分ま……」


    豚神「田中……! しっかりしろ!」



    彼は『俺はまだ生きたい』と『アイツらの分まで』と言い残し、



    田中「……」


    ♡0
    ★0



    静かに息を引き取った。


  114. 118 : : 2015/02/02(月) 22:38:10


    豚神「……」


    何故だ、何故、辺古山は田中を殺した……?


    いや、解るハズだ、僕。


    ……アイツは九頭龍を生かそうとしている。その為には、つまり。


    豚神「こちらの、全滅か」



    ならば、僕は彼女を止めなければならない。


    皆を引っ張る為に、不穏分子は粛清しなければならない。





    ────────



    苗木「ハァ……ハァ……不二咲クン、大丈夫?」


    不二咲「ハァ……ハァ……うん、平気」


    ボク、苗木と不二咲クンは学園側へと走って戻ってきた。


    大和田クンは無事だろうか。


    不二咲「……ここまで来れば、もう学園は目と鼻の先だね」


    苗木「うん……後は戦刃さん達が何とか……」









    「みっけぇ〜!!」




    ヒュン! と何かが飛んで来る。気付いた時には、



    不二咲「あうっ……!?」


    ♡80
    ★27



    不二咲クンの右肩甲骨付近に『それ』は刺さる。


    苗木「不二咲クン!!」


    不二咲「う、ぐぅ……!」


    ♡75
    ★30



    不二咲クンの背中に刺さっているのは金の装飾が施されたハサミ……これは、まさか。



    バッと背後を振り返ると、そこにはあの『殺人鬼』が居た。



    ジェノ「あ〜ら、まこぴー? こいつぁラッキー!!」


    苗木「ジェノサイダー翔……!? なんで……!」


    ジェノ「なんで? なんでなんでぇ〜!! ゲラゲラゲラゲラ!!」


    相も変わらず下品に舌を出し、腹を抱えて大きく笑う。



    ジェノ「おい、まこぴー……これは『そういうゲーム』なんだろぉ? アタシ的には目ぇ付けてた萌える男子ぶっ殺せてラッキーなんですけどぉぉぉ!!」



    不二咲「うっ……」


    苗木「不二咲クン……学園まで走れる?」


    不二咲「う、うん……苗木クンは……」



    苗木「ボクはジェノサイダーを引き留める……!」



    ボクの戦いが始まる。
  115. 119 : : 2015/02/03(火) 18:45:29


    ────────


    僕は、不二咲千尋は苗木君を背に、痛みを堪えて走った。


    ジェノ「逃がしゃしねぇーよ!!」


    ジェノサイダー翔のハサミがボクに投擲される。


    だけど、


    苗木「ぐっ!」


    ♡88
    ★12


    苗木君が咄嗟に前に出て、ジェノサイダーのハサミを肩に受けた。


    ジェノ「まーくん、アタシと殺る気ぃ? いいぜぇ〜」


    苗木「不二咲クン……はやく!」


    もっと、もっと早く走らなければ……そして救援を……!




    そして、校門へと辿り着く。


    不二咲「ハァ……ハァ……ぐっ……急がないと」


    ♡60
    ★32


    校門へ入ると同時に、



    パァン! と、渇いた音が響く。



    不二咲「あ……!?」


    ♡48
    ★52



    僕の足が撃たれたのだ、その衝撃で僕は倒れ、ジンジンと鈍い痛みと鋭い痛みが交差する、円形に空いた傷からどくどくと、止めどなく血が溢れてくる。



    僕の来た東側の道からでなく、北の方から来た。



    「フン」



    痩身のブロンドヘアーに眼鏡を掛けた出で立ち、いつも自信に満ちた表情の彼、見間違えるはずがない。



    不二咲「十神……くん!」



    十神「ふん、不二咲か……まあ良い、狩らせてもらう」
  116. 120 : : 2015/02/03(火) 20:47:52


    ────────


    俺は、十神白夜は今、この小動物(不二咲千尋)に対して、自動拳銃(インフィニティスタンダード)を向けている。



    ジェノサイダーにやられたのか、背中にハサミが刺さったままだ。

    まさに、手負いの兎とでも言うべきか。


    しかし、ジェノサイダーめ、何をしている。このチームの要である戦刃の留守を狙い、袋の鼠にしてやろうと合算したが、俺単独では流石に厳しい。



    不二咲「うっ……くっ!」



    必死にポケットから拳銃(ワルサーP99)を取りだしこちらに向けようとする。


    十神「フン」



    不二咲「あぐぅ……!」



    ♡42
    ★58


    足蹴にし、それを阻止する。



    そして、不二咲の頭に拳銃を向け、




    不二咲「うっ……うう……!」


    十神「じゃあな」



    ダァーン! と、



    十神「……ぐっ!?」


    俺の拳銃が的確に貫かれた。


    何だ? 発砲音の先には……


    舞園「今です! 澪田さん! 狛枝君!」


    校舎2階の窓に舞園が居る……クソ、アイツはスナイパーライフル(SVD)持ちか……!


    舞園の合図と共に、中から見知らぬ顔が飛び出し、こちらに駆け寄ってくる。


    澪田「千尋ちゃん!」


    狛枝「……!!」


    ダンッ! と、男の方が容赦なくこちらに銃撃してくる。


    十神「ちっ……」


    分が悪い、俺は弾かれた拳銃を拾い上げ、敗走を余儀なくされた。


    クソ、ジェノサイダーめ……何をしているんだ。






  117. 121 : : 2015/02/03(火) 21:14:34


    ─────────


    不二咲「あぐ……」


    ♡41
    ★56


    狛枝「不二咲クン……早く、罪木さんの所に」


    澪田「千尋ちゃん!」


    出血が酷い。致命的ではないにしろ、このままでは失血死してしまう。


    千尋「……んっ……な、えぎ君が……!」


    狛枝「苗木クン……?」


    不二咲「……ジェノサイダーに、殺人鬼に襲われてるんだ……! 東側に……助けて、あげて……」


    ボクは、狛枝凪斗は不謹慎ながらも、その事態に心が躍る。


    狛枝「わかった……澪田さん、不二咲クンを罪木さんの所に……ボクは苗木クンの所に行ってくるよ」


    澪田「わ、わかったッス! 凪斗ちゃん……気を付けて!」


    さて、彼の希望がどんなものか、お手並み拝見といこうじゃないか。


    ボクは早足で、東側へと向かう。
  118. 122 : : 2015/02/03(火) 21:43:57
    更新を見るのが毎日の楽しみです
  119. 123 : : 2015/02/04(水) 07:05:53
    >>122
    ありがとうございますっ、励みになりますっ
  120. 124 : : 2015/02/04(水) 19:55:11


    ────────





    ジェノ「しゅっ!!」


    否応なしにジェノサイダーはハサミを投擲してくる。


    苗木「っ……!!」


    ♡70
    ★12


    左腕にそれが刺さる。
    ……恐らく、ジェノサイダーは『遊んでいる』のだ。じわりじわりとボクをなぶり殺すつもりだ。



    ジェノ「へーい、まーくん。いい加減くたばってよぉ〜! ぎゃっはっはっはっ!!」


    何とか……何とかしなければ。



    隣には工事現場、建築中らしき鉄骨の骨組みだけされた建物がある。


    腕を抑え、そこに逃げ込む。


    ジェノ「おい! 待てよぉ、まこぴ〜♪」


    余裕なのか、歩いてこちらに迫ってくる。ボクは鉄骨の骨組みがなされた工事現場へと入り、銃を構えた。


    苗木「ハァ……ハァ……」


    痛みを堪えて銃を握り、威嚇で射撃 する。


    ジェノ「きゃいん! ぎゃっはっはっはっ!! そーこなくちゃなぁ!」


    クソ、かえって逆効果か……!


    ジェノサイダーはハサミを投擲する構えを取った……!


    どうする?




    すると、現場入り口に、誰かが走って入ってくる。



    狛枝「苗木クン……良かった、間に合った様だね」


    ジェノ「あぁ?」


    苗木「狛枝クン……!」


  121. 125 : : 2015/02/04(水) 20:39:08


    ガチャリ、と狛枝クンは銃を構え。


    狛枝「苗木クン、伏せるんだ」


    サッとしゃがんだ瞬間、パンッ、パンッ、と2発を撃ち込む。しかし、ジェノサイダーには当たらない。翻弄する動きで、狙いを定めさせない。


    銃弾は鉄骨に当たり、跳弾して骨組みの上の方にいく。


    ジェノ「チッ! 邪魔すんじゃねーよヒョロガリが!」


    狛枝「……やだなぁ、ヒョロガリだなんて」


    狛枝クンが左手でポケットをまさぐり、何かを取り出す。

    あれは……黒い立方体の入ったケースだ。中には『2つ』……


    ジェノ「なんだぁ? そりゃ? サイコロか?」


    そうか、ジェノサイダーと腐川さんの記憶は共有されない……つまりは黒い立方体の存在を知らないのか。


    狛枝「……苗木クン」


    こちらを覗く。何を……


    苗木「!」


    そういうことか、あの黒い立方体がもし、日向クン達のいう通りならば……



    ジェノ「あー、まどろっこしい……もういいや、邪魔すんならまずアンタから殺す事にしたわ。よく見りゃ、そこそこ萌えるっつーか? ゲラゲラゲラゲラ!!」


    ジェノサイダーがハサミを投擲する。狛枝クンに真っ直ぐ向かって……!








    狛枝「……ははっ、すごいね」


    ♡100
    ★12


    『当たらない』……?
    直前までは真っ直ぐ飛んで居たのに、ぎりぎりになってハサミは『自ら避けるように』狙いを外した。


    ジェノ「あ? なんでだ?」


    もう1つのハサミを投げる。だが、先ほどと同じく、『当たらない』のだ。


    狛枝「さて、そろそろかな」


    ジェノ「はっ? 何が?」


    と、


    ガインッ! という金属音が響き、何かがジェノサイダーの肩に『被弾』する。


    ジェノ「ぎっ!?」


    ♡89
    ★2


    狛枝「さっき撃った『弾』だよ……まあ、『跳弾』し過ぎて大夫威力は落ちてるけど……」


    撃った弾を『跳弾』させ続け、ジェノサイダーにヒットさせる……的確な射撃云々でなく、これはもはや天文学的な数字の確率問題。


    そんな冗談みたいな確率を、狛枝クンはいとも容易く『引いた』のだ。
  122. 126 : : 2015/02/04(水) 21:05:00


    狛枝「さて……今キミに向けている拳銃、『命中率がキミの額に100パーセント』なんだけど……どう逃げようと『絶対に当たる』よ?」


    彼が持つボクと同じ拳銃(マテバ6ウニカ)がジェノサイダーに向けられる。先ほどの跳弾といい、ハサミが避けた事といい、狛枝クンに何か不思議な作用をもたらしているのは明らかだ。


    ジェノ「チッ!!」


    ジェノサイダーは被弾した肩を押さえて、工事現場のガードフェンスを飛び越え、去っていく。



    苗木「……ありがとう、狛枝クン」


    狛枝「いいんだよ、それより……なんで戦おうとはしなかったんだい?」


    苗木「……その、やっぱりボクは」



    ボクは……



    ────────



    苗木「まだ、諦めたくないんだ。まだ、希望はきっと……!」



    なるほど、苗木クンの『希望』はどうやら本物らしい。殺されかけてもなお、眼光は鋭く、希望に対して貪欲だ。


    ボクは、狛枝凪斗はもう少し彼の生き様を見てみたい。


    狛枝「さ……怪我は大丈夫? 罪木さんの所に行こう……」


    苗木「……うん」


    苗木クンに肩を貸し、ボクらは学園側に戻っていく。


  123. 127 : : 2015/02/04(水) 23:04:53


    Now loading……


    ────────


    開示された情報



    戦場・北東部


    現段階で最も戦闘が行われた場所、丁字路の更に東に向かうと百貨店がある。南側に向かう途中、喫茶店があり、弾薬庫がある。




    狛枝凪斗の『スキルブースト』



    『幸運』→『狂運(トリガーアンハッピー)


    彼元来の幸運に付け加え、そこに確率が在るならば自在に変動させる事が出来る才能。
    どんなに無茶な奇跡でも起こす事が可能であり、ジェノサイダーの投擲されたハサミの命中率が『99.9パーセント』の確率であるならば『0.1パーセント』にする等……表記した数字は大袈裟で、実質は更に細かい。
    この世に100パーセントと0パーセントという絶対は無いが、奇跡の様な奇跡を自在に引き起こすという、対峙した相手にとって最も最悪な才能であると言えよう。
    しかし、その恩恵を得られる時間は全才能の中で最短という弱点があり、相手の『引き』次第ではこちらに『不運』が降りかかる。




    ────────


    Now loading……

  124. 128 : : 2015/02/05(木) 19:03:25


    ────────


    霧切「……そう」


    私、霧切響子が南方に真っ直ぐ下ってる途中の事だった。


    田中君は、亡くなった……辺古山さんの凶刃によって。


    太った十神君は詳しくは言わなかったが、彼女が飛び出す前の言動から察するに『坊ちゃん』と呼ぶ人物を生かそうとしているのではないかと推測する。


    つまりは、彼女は両方を敵に回す、たった1人の第3勢力として、最も険しい道を選んだ……その末路が、自らの死であるというのに……


    もう、これ以上進む理由も無いだろう。もしそういった『やる気になった人』に出会せば、交戦は免れない。


    と、


    南方から走ってくる人物が1人。


    あれは……痩せた十神君の様だ。



    十神「……霧切か」


    霧切「……貴方、まさか1人で相手の本拠地に乗り込もうとしたの?」


    彼の事だ、無論、説得ではなく、何かしら攻撃を仕掛けたのだろう。


    十神「チッ……予定が狂ってご覧の有り様だ」


    彼の苛立ち具合から、どうやら、誰1人も倒すには至ってないようだ。
    安堵が生まれると同時に、彼に訊ねたいことが出来た。


    霧切「……それより、相手チームの本拠地を見たのね」


    十神「……ああ、そうだが。不思議と俺達の本拠地とまったく同じ造りの旧校舎だったな……何時の間にあんなものを作ったんだ?」


    なるほど、となると……



    と、不意に、


    十神「ああ、そうだ、こちらチームだった花村とか言う奴は死んだぞ」


    霧切「……なんですって?」


    十神「江ノ島との交戦を目撃してな……フン、まるで茶番だった」


    霧切「どういうこと?」


    十神「花村というのが、クロスボウと見えない力で江ノ島を攻撃していた。だが、江ノ島の策にはまり、返り討ちにされ、範囲外に出てしまった」


    霧切「範囲外……」


    十神「範囲外に出て1分程で奴の体は燃えだし、炭になった。傑作だったな」


    いちいち癪に障る言い方だが、なるほど『見えない力』と『範囲外』…… そして、『瓜二つの旧校舎』か。


    霧切「そう、ありがとう」


    冷淡に言い放ち、私は踝を返す。


    十神「……ちっ」


    どうやら、私の態度が気に入らないらしく、舌打ちをする。これでおあいこだ。



  125. 129 : : 2015/02/05(木) 20:09:08


    ─────────



    戦刃「……え?」


    舞園さんからの通信に、私は自責に押し潰されそうになる。



    日向「どうした、戦刃」


    戦刃「苗木君と不二咲君が、負傷したって……」



    桑田「だ……大丈夫なのかよ……!?」


    なんて不覚、やはり、私があちら側につくべきだった。


    日向「俺が引き続き九頭龍を探す。お前らは戻ってやれ」


    戦刃「……で、でも」


    日向「安心しろ、ヤバイと思ったら逃げるさ」


    苗木君や不二咲君が気になるのは確かだ……しかし、彼を1人にする訳には……


    桑田「お、オレも日向と九頭龍を探すよ。戦刃は苗木達を見に行ってやってくれ」


    戦刃「……」


    2人を残して大丈夫なのか。もし、あの女に出会したら、2人では……








    「日向か?」



    唐突に声がした。声がした方向に銃を構える。


    日向「弐大か?」


    大神さんを超える巨躯の持ち主が、前方に立っている。



    弐大「まてまて、お前さん達、ワシは戦う気はないぞ?」


    日向「戦刃、銃を下ろしてくれ」


    ……どうやら、体躯に似合わず好戦的ではないようだ。私は銃を下ろす。



    弐大「日向……さっき、十神……詐欺師の方のな、連絡が入ってな。田中が死んだそうじゃ」


    日向「田中が……!?」


    弐大「殺ったのは辺古山じゃ、奴が……」


    戦刃「まって……!」


    違和感、それは。


    戦刃「……どういうこと? 辺古山って人は……相手だけでなく、味方も殺しているの?」


    弐大「……なんじゃと? 辺古山はお前さん達のチームにも手を掛けたのか?」


    日向「……左右田が、辺古山に……まだ確信があるわけじゃないが」


    弐大「……な、なんじゃと!? と言うことは、辺古山は無差別に殺し廻っておるのか……!」


    戦刃「……」


    辺古山という女、何を考えている?


    弐大「ううむ……ワシは本拠地に戻る。お前さん達も、痩せた方の十神と腐川、花村、そして辺古山に気を付けるんじゃ」


    日向「……そいつらがそっちの『やる気になった連中』か……」


    弐大「出ていった奴等じゃ……恐らくは、やる気になっておるじゃろう」


    日向「そうか……こっちにも江ノ島って奴がやる気になっている。気を付けて」


    弐大「おう、それじゃあのう!」


    弐大という巨躯の男は去っていく。





  126. 130 : : 2015/02/05(木) 20:15:09
    弐大生き残ってくれ!
  127. 131 : : 2015/02/05(木) 20:25:48
    >>130
    う〜ん(震え声)
  128. 132 : : 2015/02/05(木) 20:53:35


    戦刃「……それじゃあ、私も」


    日向「ああ、こっちはまかせてくれ」


    桑田「まあその、一番ヤバイのは辺古山ってやつなんだろ? 2人なら何とかなるだろォ」


    戦刃「甘く見ては駄目……人を殺した人間だから、見掛けたら絶対に逃げて」


    念を推す。桑田君はどうも甘く見すぎだ。


    日向「安心しろ、桑田を引っ張ってでも逃げるさ」


    戦刃「……うん、それじゃあお願い」



    私は早足で自陣である本拠地へと戻った。


    苗木君、不二咲君、どうか無事で……!



    ────────



    舞園「……あ、罪木さん」


    ガラリと、保健室の扉が開き、罪木さんが姿を現しました。


    罪木「大丈夫ですよぉ、舞園さん。2人とも処置は終わりましたぁ。不二咲さんの方が少しの間、歩行が困難になりますけど……」


    舞園「そうですか……」


    罪木「その……切創や刺傷は慣れてるんですけど、銃創を扱うのは初めてで……知識はあるんですけど」


    無理もないです、罪木さんをはじめ、私達は銃社会とは無縁の国で育ってきたんですから。


    それでも、最悪の事態にならずに済んだと思います。
    これも、戦刃さんが襲撃に備えて、私を2階に、狛枝君と澪田さんを入口前に配置した采配のおかげですね。


    初めてライフルなんて撃った筈なのに、初めてじゃないような違和感に疑問が残りますけど、今は苗木君達が大事にならなかった事を安堵するべきでしょう。


    山田「舞園さやか殿、罪木蜜柑殿、お2人の具合は……?」


    舞園「ああ、山田君。2人共、大事にはならなかったみたいです」


    山田「そうですか、安心しましたぞ」


    山田君はそれだけを聞くと去っていきました。彼は今、私達の代わりに、狛枝君と一緒に見張りに立ってくれています。

  129. 133 : : 2015/02/05(木) 21:16:50
    苗木君はやっぱり生き残るのかな。
  130. 134 : : 2015/02/05(木) 21:18:03


    ……それにしても、十神君が襲ってくるなんて、やっぱり向こう側の人達はみんな『やる気になっている』でしょうか?


    と、澪田さんがやってきました。


    澪田「コンチャーッス、誠ちゃんと千尋ちゃんは……その顔からするに大丈夫みたいッスね。さやかちゃん」


    舞園「はい♪」


    澪田「まー、でも、こんな状況じゃなかったら、アイドルのさやかちゃんの生歌聴きたかったッスねー!」


    澪田さんはコロコロと表情が忙しい人で、楽しい人です。
    彼女も音楽業界で頑張る人だから、何だか近親感が持てます。


    舞園「そういえば、上に音楽室が有りますね」


    澪田「ウッキャー! マジッスか!? バックバンドやるから歌うッスよ、さやかちゃーん!」


    舞園「そうですね……うん、そうですよね!」


    こんな時だからこそ、歌う事でみんなの心を癒せるのなら。

  131. 135 : : 2015/02/05(木) 21:18:33
    >>133
    う〜ん(震え声)
  132. 136 : : 2015/02/05(木) 21:38:02


    ────────




    九頭龍「……」


    なんでだよ。



    九頭龍「なんで、だよ……」



    涙をぐっと堪えて、それでも溢れて。



    九頭龍「馬鹿野郎……!! ペコ……!!」



    田中の亡骸を見つめていた。
    あの詐欺師の更に後ろ側で、オレは始終をずっと見ていた。



    なんの戸惑いも無く、田中を斬り捨てやがった……!


    九頭龍「……」


    ペコ、お前はオレを生かそうとしているのか?


    じゃあ、なんで左右田も斬ったんだ?

    あんな惨たらしく、なんでそんな事が出来たんだ?



    ペコ……


    九頭龍「……馬鹿野郎」



    オレが止めなきゃいけない、アイツの暴走を。


    オレの右手には短機関銃(トンプソンM1928)……シカゴ・タイプライターとかなんとか聞いたことがある。古い映画の、やられ役のチャチなギャングが持っているアレだ。


    そして、左ポケットには例の黒い立方体。



    オレは……


  133. 137 : : 2015/02/05(木) 22:15:31
    シリアスな雰囲気にハラハラドキドキしてたら、「う〜ん(震え声)」二連続で吹かざるを得なかったですw

    期待です!!
  134. 138 : : 2015/02/05(木) 22:33:02


    ────────



    弐大「全員、戻ってきたかの」


    霧切「ええ」


    豚神「……ああ」


    結局、田中君は帰らぬ人となり、私達は静まり帰る。


    霧切「とにかく……私は十神君、その……痩せた方のね。と出会ったわ」


    豚神「フン……で、何か聞いたのか?」


    霧切「花村君が死んだ、と聞かされたわ。江ノ島さんを襲って返り討ちにあって……策にはまって『範囲外』に出たらしいわ」


    豚神「なんだと……? 詳しく聞かせろ」


    霧切「……『範囲外』に出ると、どうも1分程で体が炎上し出すらしいわ……」


    火事なんかによる焼死は、まず、一酸化炭素中毒に陥り、気を失ってから体を焼かれ、焼死に至る。
    だが、花村君は意識を保ちながら焼死した様だ……想像を絶する苦しみであっただろう。

    ……私自身、火傷の苦しみは身を持って知っている。


    弐大「花村までも……ワシは日向らにあった。その花村を殺した江ノ島と言う奴に気を付けるように言われたんじゃ」


    霧切「じゃあ、向こう側でやる気になっているのは、江ノ島さんなのね?」


    弐大「みたいじゃのお」


    豚神「……そして、辺古山……コイツが一番の問題だ」


    弐大「その辺古山なんじゃが、どうやら左右田を殺ったのも辺古山らしいぞ。日向が言っておったわ」


    豚神「……クソ、アイツが左右田を手に掛けたのか」


    辺古山ペコ……彼女はやはり……



    豚神「残念だが……粛清する、これ以上犠牲者を出すわけにはいかない」


    粛清……不穏分子と見なし、彼女を全力で止める。


    つまりは、殺す。


    霧切「……そうね」


    朝日奈「……そんな」


    大神「致し方無いのかもしれぬな……」


    小泉「……粛清?」


    西園寺「辺古山おねぇを……殺す?」



    そう、私達は『彼女の思いを踏みにじらなければならない』のだ。
    どんな理由があれ、無差別に人殺しを繰り返す彼女を……




    霧切「彼女を殺す、それに賛成するわ」


  135. 139 : : 2015/02/05(木) 22:34:51
    >>137
    う〜ん(震え声)
    最終的な生き残りに関しては流石に何も言えまてん。
  136. 140 : : 2015/02/05(木) 22:41:24
    いつも更新楽しみにしています!
  137. 141 : : 2015/02/05(木) 22:43:32
    >>140
    ありがとうございます!
    正直閲覧が伸びなくてガクブルで有りますが細々とがんばります!
  138. 142 : : 2015/02/05(木) 23:07:55
    受験終わって引きこもってる中で楽しみの一つです
    頑張ってください!
  139. 143 : : 2015/02/05(木) 23:23:20
    >>142
    んあぁぁ!!ありがとうございます!
  140. 144 : : 2015/02/05(木) 23:43:27


    ────────


    日向「……」


    桑田「……駄目だ、やっぱり九頭龍のヤロウ、通話に出ねえ」


    何度試しても、九頭龍の電子生徒手帳に繋がらない。


    日向「何処に居やがるんだ……」


    すると、





    九頭龍「……」


    遠目に九頭龍が居た。


    日向「九頭龍……!」


    良かった……!
    俺達は直ぐに九頭龍に駆け寄った。



    だが、




    九頭龍「すまねえ……日向、オレは戻れない」


    思い詰めて、泣き晴らした顔、その瞳に光は無い。


    日向「おい……何を言って……」



    九頭龍「……」


    ♡100
    ★92



    ああ、もうだめだ。
    絶望チェッカーが指し示すこの数字は、限り無く絶望に近い『思考停止』の数字。


    あの様子からして、辺古山が田中を殺した事も知ってしまったんだろう。



    九頭龍はきっと……



    九頭龍「すまねえ……」



    桑田「お、おい……」


    日向「……」







    死ぬ気だ。


    辺古山を殺して……



  141. 145 : : 2015/02/06(金) 00:15:00


    ────────


    大和田「戦刃?」


    戦刃「大和田君?」


    戦刃と校門前でばったりと会う。かなり慌てている様だ。何があったんだ?


    戦刃「……苗木君と不二咲君が!」


    大和田「……なにぃ?」


    背筋が凍る。逃がしたハズの苗木と……不二咲に何かあったのか?


    急いで校舎に入り、見張りの山田と狛枝を無視し、オレと戦刃は保健室に飛び込む。


    戦刃「……苗木君!」


    大和田「不二咲ィ!」






    罪木「ふぇ……あ、あのぅ、すいません、眠った所なんで、出来れば……静かにして下さい……ね?」


    大和田「なんだとコラァ!?」


    罪木「ひぅ!? す、すすすすいませぇぇぇんん!! なんでもしますからぁぁ!!」


    戦刃「……2人とも、静かにして」


    罪木「……す、すいません」


    大和田「……すまねぇ」


    戦刃「……容態は?」


    罪木「その……苗木さんは左腕と右肩に刺傷です。縫合は済ませたので、目を覚ます頃には日常生活に何の支障も無いです……」


    戦刃「……良かった」


    罪木「不二咲さんは、背中に刺傷で左足に銃創……弾は抜けていて、出血も抑えて、命に別状は無いんですけど、しばらくは松葉杖ですね……」


    大和田「クソ……オレは……」


    不二咲さえ守れねえのか。


    大和田「一体、誰が……」


    罪木「78期生の……十神さんと、えっと……ジェノサイダーさん? って聞きましたよ」



    大和田「そうか……」


    沸々と、オレの心臓が、『怒り』が脈動する。


    十神とジェノサイダー……腐川はぶん殴ってやんねえと気が済まねえ。

  142. 146 : : 2015/02/06(金) 01:36:41


    ─────────


    私、舞園さやかと澪田さんは音楽室に居ました。


    澪田「アコースティックがあるッスね〜出来ればエレキが欲しかったトコッス」


    舞園「その……出来れば静かな曲にしませんか?」


    癒すのは何も、心だけではありません。出来れば……


    澪田「ん〜そうッスね! それならきっと……」


    澪田さんも察してくれた様です。


    舞園「早速、歌詞と曲、作りましょうか!」


    澪田「ノリノリっすね! さやかちゃん! 出来れば今日の夜辺りまでに合わせたいッスね!」



    舞園「超高校級の私達なら直ぐに出来ちゃいますよ♪」



    この歌は、



    ─────────



    日向「……」


    桑田「げ、元気出せよ、日向」


    日向「ああ……」




    七海「オッスオッス」


    桑田「ああ、七海ちゃんか……オレは席を外すよ」



    正直、桑田くんも今の日向くんとは居づらかった様だ。



    日向くんと桑田くんが帰って来て、日向くんはずっと食堂で突っ伏していた。


    元気がない日向くん。


    ……そんな顔の日向くんは見たくなかったな。



    日向「九頭龍の……馬鹿野郎が」



    九頭龍くんは去ってしまった。辺古山さんの暴走を止める為に、


    命を賭して、命を狩りに。


    七海「日向くん」


    日向「なんだよ、七……」


    七海「んにぃ〜」


    日向くんの口端を引っ張ってやった。


    日向「んにぃ〜……いひゃい」


    七海「……くすっ」


    日向「なんだよ……七海」



    うん、やっぱり、




    七海「日向くんは笑顔が一番だよ」



    日向「こんな時に……」



    七海「……こんな時だからこそ、だよ? 日向創は相談者として、色んな人の悩みを聞いて、解決して、笑顔にして来たんでしょ?」


    日向「……俺は」


    七海「良いんだよ」


    英雄になんかなれなくたって、あなたがあなたであるのなら。


    日向「……七海には、敵わないな」


    七海「へへ」



    少しだけ微笑む日向くん、うん、やっぱり日向くんの笑顔が、



    一番好きだよ。


  143. 147 : : 2015/02/06(金) 02:02:23


    ────────



    霧切「……」


    時刻はそろそろ午後9時になる。食事を追えて準備を整えた。


    豚神「向かうのは俺、大神、霧切でいいか?」


    辺古山さんは剣道家と聞いた。かなりの武闘派と考えていい。

    ……とすると、大神さんの力が必要不可欠だ。


    豚神「弐大、終里は小泉らを守ってやってくれ」


    終里「オレも行きたかったぜー」


    弐大「任せろぃ!」



    大神さんが口を開く。



    大神「……うむ、して、どうやって居場所を突き止める?」


    問題はそこだが……


    霧切「ねえ、十神君」


    豚神「なんだ?」

    霧切「あなたは……田中君と、特徴から察するに大和田君の『スキルブースター』を見たのよね?」


    豚神「ああ、田中は何処からともなく普通のサイズより倍近い動物を召喚して使役していた。その大和田という奴は尋常じゃない運動能力だったな」


    田中君は飼育委員だと聞いた……大和田君は恐らく、肩書きと言うよりは、は武闘派としての力の助長。

    ならば、恩恵は初日にモノクマが言ってた通り、自身の才能に何か不可思議な力を追加するモノ。


    そうであるなら、



    霧切「『探偵』である私が使えば、どうなるかしら?」


    豚神「成る程な……」



    ケースから1つ、黒い立方体を取りだし、念じる。


    黒い立方体はジュッ! と音を起てながら溶けだし、私に知識を流し込んでくる。


    ……成る程、これは確かに便利だ。


    これならば、直ぐに発見出来るだろう。




    霧切「行けるわ……」



  144. 148 : : 2015/02/06(金) 18:35:33


    豚神「よし……終里、弐大、小泉、西園寺、セレス、石丸。黒い立方体を1個ずつ大神に提供しろ」


    西園寺「えー? なんでよぉ」


    豚神「辺古山が多数所持している可能性がある……田中のを抜き取るのを見た。もしかしたら、ソニアや左右田のも持っている可能性がある」


    石丸「ということは……少なくとも12個から11個は持っているというわけかね」


    豚神「この黒い立方体の効果は絶大だ。時間が無い、早くしろ」



    留守をする面子が大神さんに1つずつ『スキルブースター』を差し出していく。


    今、恩恵にある私も太った十神君と同意見だ、これは絶大な効果がある。


    故に、最も武闘派である大神さんに託すのだろう。


    霧切「いいかしら? 外に出るわ」



    外に出て、私は石を拾い、辺古山さんの顔を思い浮かべる。


    そしてその石は一定のスピードで浮遊し、『案内』を始める。


    豚神「なるほどな……行くぞ」


  145. 149 : : 2015/02/06(金) 19:48:42


    ────────


    何度か歌詞と音を部分で合わせながら、少しずつ音楽が完成していきます。


    澪田さんは流石とでもいいますか、アコースティックギターの腕も一流で、教わりたいくらいです。


    舞園「……っと、こんな感じでいいですかね」


    澪田「ばっちしッスよ! さっすが、歌って踊れるアイドルッスね!」


    舞園「いえ、澪田さんが私の音程に合わせてくれるから……」


    澪田「またまた、謙遜けんそーんッスよ! 1回通してやってみるッスか?」


    舞園「そうですね!」



    その時、音楽室の扉がガラリと開いて、そこには日向君と七海さん、そして苗木君が立っていました。


    苗木君、元気になった様ですね。良かった。


    苗木「あ、ごめん、邪魔しちゃったかな」


    澪田「こんばんわーッス、そんな事無いッスよ誠ちゃん」


    日向「何か、ギターの音と歌声が聴こえてな。お前達だったのか」


    七海「何してるのかな? 澪田さん、舞園さん」


    舞園「ええ、ちょっと、こんな状況ですけど……その、歌を作ってて……」


    澪田「さやかちゃんと唯吹なりの、みんなに元気のお裾分けッスよ!」


    日向「……そうだな、元気か」


    七海「おおー」


    苗木「へえ、すごいなぁ。もう曲は出来てるの?」


    澪田「これから1回、通してみるッスよ。良かったら聞いていくッスか?」


    舞園「ええ? 澪田さん、それは……」


    流石に初通しでギャラリーに聞かせるのは……


    澪田「てへりん♪ 大丈夫ッスよ、さやかちゃんなら!」


    苗木「ボクも聞きたいなぁ」


    苗木君にそう言われると、余計に断り辛いです。よし、覚悟を決めました。


    舞園「……わかりました! じゃあ、澪田さん」


    澪田「いよぉーし! じゃあ、いくッスよー」


    心を落ち着けて、何時もの調子で。



  146. 150 : : 2015/02/06(金) 20:08:48


    ────────


    辺古山「……」


    ここはマップ機能によって表示される北西部にあたる廃ビル2階、いつ襲われても良いように、ポケットにはケースから抜いた黒い立方体が11個。

    1センチ程の立方体だが、11個ともなれば流石にかさばる。


    だが、私は『いつ襲われてもおかしくない』事をした。


    相手側であった左右田を殺し、無惨な方法で相手側を挑発し、そして、相手側に居るであろう坊ちゃんの為に、味方側である田中を殺した。


    ……これからも、私は味方側を殺し続ける。


    あの挑発によって、相手側も激昂する筈だ。


    その戦いの中で私が死ぬのは構わない。


    むしろ、最後には自刃するつもりだ。


    ただ後悔しているのは……この行為によって坊ちゃんに危険が及ぶこと。


    ……そうなる前に、『保護』しなければ。


    廃ビル2階から外を覗く。赤黒い空も、流石に日が落ちれば真っ暗だ。


    しかし、意外な事に街灯が生きており、道を照らしている。


    辺古山「……あれは」


    北側から誰かが近付いてくる。


    あれは……



    辺古山「坊ちゃん……?」





  147. 151 : : 2015/02/06(金) 21:46:31


    丁度良かった……


    私はビルの外に飛び出し、坊ちゃんに声を掛けた。


    辺古山「坊ちゃん……!」


    坊ちゃんは気付いたのか、こちらを振り返る。



    九頭龍「あ、ああ……ペコか」


    辺古山「良かった……ご無事で」


    九頭龍「……ああ、オレも会えて良かったよ、ペコ」


    どうしたのだろうか、少し顔色が優れないようだ。


    辺古山「どうかしましたか?」



    九頭龍「なんでもねえ……なあ、ペコ」


    辺古山「なんでしょうか、坊ちゃん」


    九頭龍「そこに公園があるんだ、少し話さねえか?」


    辺古山「はい、坊ちゃんが望むなら」


    私と坊ちゃんはすぐ近くにあった公園へと入る。少し奥行きがあり、奥側に公衆トイレ、そして両端にはブランコや鉄棒といった遊具が、寂しく並んでいる。



    公園の中央で、坊ちゃんが立ち止まる。やはり、どこか具合が悪いのではないのだろうか?


    辺古山「どうか、されましたか?」



    九頭龍「……」



    そして、



    辺古山「……!!」



    九頭龍「……なあ」






    そんな、嘘だ。





    辺古山「なんの、冗談ですか?」








    坊ちゃんは私に小型拳銃(ダブル・デリンジャー)を向ける。






    九頭龍?「終わりにしよう、辺古山……」





    違う、坊ちゃんじゃ……ない?




  148. 152 : : 2015/02/06(金) 22:13:09


    辺古山「……何者だ」


    黒い立方体をポケットの中で握り、刀袋から刀を取り出す。


    辺古山「……!」


    公衆トイレから……確か、霧切とかいう女が現れた。そして、入り口側からも気配がする。


    振り返るとそこには、味方側で恐らくは最も強いであろう、大神さくらの姿を確認した。


    九頭龍?「左右田を殺し、田中を殺したお前は危険だと判断した……残念だが、お前を粛清する」


    坊ちゃんの声ではない、やがて、膨張し、粘土の様に姿形、服装すらも変えて、その正体を現す。



    辺古山「十神……!」


    豚神「辺古山、何故、左右田を殺した? 田中を殺した?」


    辺古山「全ては坊ちゃんの為だ……」


    豚神「……フン」



    刀を一気に抜く。そして、



    大神「ぬんっ!!」


    大神に抑えられる。だが、



    私は既に、『アレ』を使っている。



    辺古山「……シッ!!」


    大神「ぐっ!?」



    身を翻して、大神を蹴り飛ばす。咄嗟に防いだ様だが、大きく突き放してやった。

    なんて体が軽い、いやそれ以上に……!



    霧切「くっ!」


    豚神「撃て! 躊躇うな!」


    銃撃音が2発、私に向かって鉛のつぶてが飛来してくる。



    だが、



    辺古山「ふっ!」



    豚神「バカな……!」


    霧切「有り得ないわ……!」



    その2発の弾丸を斬り伏せる。
    身体能力の向上、そして、眼と反射する速度が格段に上がった。

  149. 153 : : 2015/02/06(金) 23:01:30


    弾丸を払うという神業を、私はいとも容易く可能とした。


    豚神「大神! 使え!」


    大神「わかった……!」



    辺古山「……ちっ!」


    大神の手にはあの黒い立方体、そして。



    大神「我が抑える、我ごと射抜け」


    突進してくる大神の拳鍔(ブラスナックル)を着けた剛拳が私に雨の様に降り注ぐ。


    成る程、素手で無い辺り、私を完膚無きまで殺し尽くす気だ。



    辺古山「はっ、お前は不殺者だと思ったが……見当違いだったようだな」


    大神「畜生に掛ける同情の余地は無い……朝日奈に手が及ぶ前に、潰させて貰う……!」


    私はそれを受け流し、垂直に刀を一閃させる。


    辺古山「ぐっ!!」


    大神「……ぬん!!」


    ギィン! と大神の腕に弾かれる。
    ……バカな、大神は刀の刃を生身の腕で受け止めた。肉を斬るどころか、血の一滴すら流さない。


    これが、大神の『スキルブースター』というわけか、私同様、身体能力の向上……そして、鋼の様な……否、『鋼そのものの肉体』が大神には付加されている。


  150. 154 : : 2015/02/06(金) 23:32:08


    豚神「撃て!」


    霧切「……!!」


    2発の弾丸、再びそれを斬り払う。更に、大神の拳鍔による攻撃を流す。



    ……残念ながら、3体1では防戦一方だ。


    だが、勝機はあるはず。


    古来、中世ヨーロッパにおいて全身甲冑(フルプレート)相手には戦棍(メイス)戦鎚(ウォーハンマー)といった打撃武器が用いられた。


    斬撃や刺突では効果が出ないからだ。


    ……いや、ただ1つ、刺突が有効な箇所がある。


    今の私ならば狙える筈だ。



    辺古山「ふっ!」


    大神「ぬっ!」


    片手平突きから、大神の『右腕関節』を狙う。


    大神「……くっ!」


    僅かだが、大神の関節を刺し穿つ。

    予測通り、いくら鋼そのものの肉体であろうと、関節は弱い。



  151. 155 : : 2015/02/07(土) 14:59:34


    霧切「大神さん、下がって……」


    霧切の一声に、大神が飛び退く。


    左手には黒い立方体、そして、右手には拳銃を空に掲げている。


    ……何をする気だ。そもそも、アイツのスキルブースターは……なんだ?


    そして、霧切は上空に向かって連射する。

    14発の銃声が鳴り響いた。


    辺古山「……何のつもりだ?」


    霧切「直ぐに解るわ」



    刹那、上空より、前の弾丸が私に目掛けて降り注ぐ。


    辺古山「!!?」


    何をどうやった? 大神のスキルブースターは鋼化、詐欺師の十神のスキルブースターは先程、坊ちゃんに化けていた変化、では、奴のスキルブースターは……!


    霧切「指向性の確立、運動エネルギーが無くならない限り、弾丸は貴女を『追跡』し続ける」


    追尾、それが奴のスキルブースターか……!


    2発、3発ならいざ知らず、14発ともなると、流石に対応が難しい。



    辺古山「ぐっ!!」

    ……2発目、3発目、左腕、5発目、6発目、右足、8発目、9発目、10発目、左足、12発目、右脇、左肩……!


    辺古山「が……ぐぅ……!?」


    ♡53
    ★99


    急所は逃れたが、被弾した箇所から血が溢れる。


  152. 156 : : 2015/02/07(土) 15:29:23


    大神「ハァッ!!」


    飛び退いていた大神が、私を目掛けて拳を振るう。


    渾身の右、咄嗟に右腕で防いだが、それが仇になった。



    辺古山「……っぁ!」


    ……完全に折れた、右腕の骨が。



    被弾箇所の痛みと、骨折の痛みが私の脳を『激痛』という情報でパンクさせる。



    だが、まだだ……私はまだ、倒れる訳にはいかない。


    せめて、3人の内の1人の首を獲る、もはや私はここまで、せめて、坊ちゃんが生き残れる為に、少しでも首を稼ぐ。





    道連れにしてやる。



    辺古山「……ぁああああ!!!」


    豚神「まさか、まだ動けるのか……!」


    霧切「……!」


    大神「なんという精神力……!」



    刀を握る、体中を走る激痛など知るか、折れた腕など知るか。


    スキルブースターの力は残っている。

    大神の首を獲るのは不可能、詐欺師も位置的に厳しい。


    では……霧切しかいない。霧切に向かって私は走る。



    「……!!」



    声が背後からした。

    知るものか。


    大神「……!!」



    大神が誰かを抑止する声がした。


    知るものか。



    霧切、せめてお前の首を獲る。銃を撃ちきったであろう、お前が一番獲りやすい。



    辺古山「死ね……!」



    霧切「……くっ!」




    声がした。




    「よせ!! ペコ!!」



    だが、私の刃は止まらない。


  153. 157 : : 2015/02/07(土) 16:04:03


    辺古山「……あ」


    霧切「……えっ?」



    霧切を突き飛ばし、



    豚神「……何故」



    大神「……」



    霧切の代わりに『誰か』が私の渾身の一刀を受けた。



    辺古山「……あ、ああ」



    『誰か』?


    ……違う、そんなのは分かりきっている。



    豚神「何故だ……!」




    詐欺師が化けたもの何かじゃない。



    紛れもない。






    豚神「何故だ……九頭龍……!」





    九頭龍「がはっ……」


    ♡8
    ★100




    冬彦坊ちゃんだった。



    辺古山「ああ……ああぁぁぁぁ……!!」




    スキルブースターで行った一刀は坊ちゃんの右肩から心臓手前まで見事に入った。
    裂けた右肩が鎖骨をも断ち、正に致命の一撃。



    なんて事を、なんて事を、なんて事を、なんて事を、



    九頭龍「……ぺ、コ」


    ♡5
    ★100


    辺古山「だ……めです、喋っては……! 血が……!!」



    止まるはずもない。
    むしろ、即死でなかったのが奇跡であるほどに、


    刀を捨て、坊ちゃんを抱き寄せる。



    九頭龍「……オレぁ……やっ、ぱり……ペ、コに手を掛ける事は……」



    ♡2
    ★100




    坊ちゃんもまた、私を止めようとしていた。



    九頭龍「……出来な……」



    ♡1
    ★100



    辺古山「だ、駄目……ダメです、目を閉じないで下さい! 駄目……」



    コトリ、と、坊ちゃんの手が落ちる。


    その命と共に、




    九頭龍「……」



    ♡0
    ★0




    辺古山「あ……ぁぁぁぁ……!」



    泣いたのは、何時以来だろうか。



    豚神「……」


    大神「……」


    霧切「……」



    私には……もう、何もない。



    豚神「辺古山……」


    辺古山「……十神」


    坊ちゃんの亡骸を丁寧に寝せ
    坊ちゃんの持っていた短機関銃を拾い、それを詐欺師の十神へと、足を引きずりながら持っていく。


    辺古山「……この銃をくれてやる、その短銃を寄越せ……黒い立方体も……つけてやる」


    豚神「……」



    詐欺師の十神は黙ってそれに応じた。


    豚神「……霧切、大神、行くぞ」


    霧切「ええ……」


    大神「うむ……」



    3人は公園より去っていく……
    私は、再び足を引きずりながら坊ちゃんの元へと向かう。



    辺古山「……坊ちゃん」


    もう、私を『ペコ』とは呼んでくれない。


    私が、私自身が、坊ちゃんをそうしてしまった。



    もう、何もない。


    辺古山「……今、いきます」




    短銃を自身の顎下に押し付ける。




    これで、終わり。





  154. 158 : : 2015/02/07(土) 16:24:32


    ────────





    1発の銃声がなった。



    霧切「……」


    どうしたかは解る。何をしたかも
    解る。


    豚神「……振り返るな、行くぞ」


    彼女はもう……


    大神「……十神よ、何故、短銃を渡した?」


    豚神「……何れにしろ、アイツはもう生きる理由を無くした。遅かれ早かれ、ああなる……」


    大神「……ぬぅ」


    彼女が守ろうとしたモノは、彼女自身の手で壊す羽目になった。



    ……なんとも後味の悪い。




    霧切「……?」




    ……何処からか、歌が聴こえた気がする。




    聴こえたのは。






    May their spirit rest in peace.(彼等の魂に安らかな眠りがあらんことを)








    そんな鎮魂歌。




  155. 159 : : 2015/02/07(土) 16:43:52


    ────────



    歌を終え、皆が拍手をしてくれました。


    澪田「いやー! やっぱりウマイッスね! さやかちゃん!」


    舞園「そんな……」


    苗木「うん、スゴいよ、2人とも」


    七海「どこか寂しい感じだったね」


    舞園「ああ、実は……」


    澪田「さやかちゃんっ」


    澪田さんが『言わない方がいい』と目で語ってきます。



    ……それもそうです。


    もちろん、生きている人の為でもあるんですが。

    これは亡くなった人達の為でもある鎮魂歌(レクイエム)


    英語の歌詞の部分は殆どがそう言った意味を含んでいます。


    日向「……九頭龍に聴かせたかったな」


    日向君がそんな事を呟きました。









    ……きっと、何処にいても届くはずです。届くように、願いを込めて歌いましたから。








  156. 160 : : 2015/02/07(土) 17:11:00

    ────────


    深夜0時



    2日目終了



    結果報告



    死亡者


    77002番(九頭龍冬彦)……斬殺

    77007番(田中眼蛇夢)……斬殺

    77013番(花村輝々)……焼死

    77115番(辺古山ペコ)……自殺


    北チーム残り12名


    南チーム残り13名



    ────────



    ここではない、何処かのモニター室。



    シロクマ「ねえねえ、クロクマ」


    クロクマ「あー? 何だよシロクマ、つか、もうちょっと早く喋れよ、俺が喋りすぎて疲れるだろうが! ぎゃっははは!!」


    シロクマ「『すきるぶーすたー』って、なに?」


    クロクマ「そんな事も知らずに見ていたのかよシロクマ、アホを通り越して脳ミソ腐ってんじゃねえのか? あ、俺達脳ミソ無いじゃん! ぎゃっははは!!」


    シロクマ「知らないんだもん」


    クロクマ「まあいい、ありゃ言ってみりゃ『ウイルスバグ』よ! 短期的に『チート』が使える様になるが、使えば使うほど『バグ』の侵食を受けて、ちょっとしたことで直ぐに絶望しちまう、まあ、諸刃の剣ってヤツだな! ぎゃっははは!! 」


    シロクマ「へぇ〜そうなんだぁ」


    クロクマ「だからもっと早く喋れよ!! トロすぎて眠ってしまうわ!! 寝るわ!! おやすみー!! ンゴー!! おはよう! 起きるわ!! ぎゃっははは!!」


    シロクマ「おやすみクロクマぁ」


    クロクマ「起きたんだよバカ野郎! ぎゃっははは!!」



    相変わらず、賑やかだ。

    しかし、このコロシアイが始まって2日目が終わる。

    長い長い1日が、再び始まろうとしていた。

  157. 161 : : 2015/02/07(土) 17:53:06

    ────────


    Now loading……



    ────────



    開示された情報




    霧切響子のスキルブースト



    『探偵』→『追跡者(チェイサー)


    無機物に一定の運動エネルギーと指向性を付加し、対象者を追尾させる才能。無論、射出した物体の運動エネルギーを変化させずに指向性だけを対象に向けることが出来る。





    十神白夜(詐欺師)のスキルブースト



    『詐欺師』→『十面相(シェイプシフター)



    体型、身長、肌質など、記憶にある人物ならば誰にでも完璧に変身する才能、しかし、質量保存の為、体重だけは変わらないのが弱点。





    辺古山ペコのスキルブースト



    『剣道家』→『剣聖(エスカトス)


    元々、武闘派である為、身体能力の向上、主に反射速度が上がった。
    音速である弾丸を斬り払う辺り、やはり常軌を逸脱している。




    大神さくらのスキルブースト



    『格闘家』→『鬼人(オーガ)


    元々、武闘派である為、身体能力の向上、主に肉質の硬度が上がった。
    この状態の彼女なら、余程大口径の機関銃でも無い限り、傷一つ着かないだろう。しかし、関節の硬度は低く『鎧貫き』に弱いという一面がある。



    ────────


    Now loading……



    ────────
  158. 162 : : 2015/02/07(土) 20:55:19


    ────────



    日向「クソッ!!」


    自室の部屋の壁を殴る。
    深夜0時、電子生徒手帳から九頭龍の名前が消えていた。



    ……これの意味する所はつまり、



    日向「九頭龍……!!」



    なあ、九頭龍……『予備学科』上がりの俺は、お前に『そんな事か』って言葉に大分励まされたんだ。


    なあ、九頭龍……また、辺古山と動物園にでも行くんじゃなかったのか?



    何、死んでんだよ、バカ野郎……!!




    日向「……」



    ♡100
    ★32



    あるのは、虚無感。
    あるのは、憎しみ。





    この『状況』が憎い。
    この『惨状』が憎い。
    この『無力』が憎い。
    この『悲哀』が憎い。
    この『憎悪』が憎い。
    この『憤怒』が憎い。


    憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い。






    ……何がなんでも『黒幕』を殺したくなった。





    ────────



    弍大「……そうか、辺古山と九頭龍が、逝ったか」


    弍大君が、他の皆が寝静まった後も起きてエントランスで見張りをしていてくれた。


    私、霧切と太った十神君、大神さんは本拠地に戻り、私達は食堂に向かい、一息をついていた。



    霧切「……ええ」


    淹れたインスタントのコーヒーを啜り、その香りを鼻で、ほろ苦さを舌で味わい、頭をリフレッシュさせる。


    豚神「……粛清すると言っておきながら、結局、辺古山が九頭龍を誤って殺し、その後を追う辺古山を見殺しにしただけだった」


    弍大「……ふむ」


    大神「……最早、殺し合う他に道は無いのか?」


    私達は黙り込んでしまう。



    そして、弍大君がゆっくりと口を開いた。








    弍大「ワシの……覚悟を見せるしかないのう」

  159. 163 : : 2015/02/07(土) 21:22:15



    霧切「……何を、する気?」



    弍大「……ちょっと待っておれ」



    そう言うと、弍大君は食堂の厨房へと入り、包丁を1本持ってきた。


    弍大「腕輪は無理に外すと神経が焼き切れるとモノクマの奴は言っておったな」



    まさか、



    霧切「……やめなさい、見る限り、繊維みたいな糸が腕輪から体に繋がっているのよ」


    無理に取れば、これが千切れて神経を焼くと言う仕組みなのだろう。



    弍大「……ゆっくり抜けば良かろう」



    狂っている……!!



    大神「弍大よ……お主……!!」



    弍大「……大神、ワシはな。まだまだマネージメントしてみたい奴が山程おるんじゃ。お前さんの親友の朝日奈とかもな。こんなところで死ぬわけにはいかん」



    弍大「……だから!」



    ズッ! と、弍大君が自分の右手の親指の付け根に包丁を刺す。



    弍大「……ぬぅううううああああああ!!!」



    豚神「やめろ!! おい!!」


    大神「よせ!!」


    霧切「やめなさい!!」



    尋常じゃ無い精神力で、弍大君は親指の付け根を『両断』していく。

    私達は制止を呼び掛けても、手を出すことが出来ない。


    弍大「……がぁあ……ああああああ!!!」









    ボトリ、と



    弍大君の親指が、付け根から落ちた。テーブルにも床にも夥しい血が流れる。


    弍大「……フゥー! フゥー!」



    そう……親指の付け根を無くすことで、腕輪は『取れる』のだ。



    弍大君は腕輪から伸びる繊維をゆっくりと、腕輪本体と一緒に抜いていく。


    弍大「……ぐぅ!!」








    カラン、と、



    腕輪が落ちた。





    弍大「……ふ、ふ……どうじゃ……! 案外……イケるもんじゃろがい!」


  160. 164 : : 2015/02/07(土) 21:39:58
    爆発しないかなあ?
  161. 165 : : 2015/02/07(土) 21:43:39
    >>164
    爆発はしません
  162. 166 : : 2015/02/07(土) 22:14:03


    豚神「バカが……弍大! 大神! 急いで保健室に言って救急箱を! 霧切……氷水とビニール袋だ……早く!」



    応急処置としては正しい。

    指の切断において、切断箇所をビニールで包み、取れた方もビニールに内包し、氷水に付けておく。
    だが、問題なのは医療機関が無いことだ。


    時間が経てば経つほど、弍大君の指の再結合は難しくなる。


    適切な処置を終える。しかし、その後がわからない。

    せめて医療関係者がいれば……



    豚神「……霧切、相手側に罪木という保健委員がいる」


    霧切「保健委員……?」


    しかし、いくら超高校級とは言え……


    豚神「……幸い『スキルブースター』が大量にある」



    霧切「……なるほど」


    豚神「お前の力、記憶にある奴なら誰でも追尾出来るんだよな?」


    霧切「つまり、手紙を書いて向こう側の誰かに飛ばせば……」


    豚神「そうだ……」



    試してみる価値は有るだろう。


  163. 167 : : 2015/02/07(土) 23:44:41


    やる気になっているのは江ノ島さんと聴いた……江ノ島さん以外に手紙を認め、黒い立方体を再び握り、私はそれを紙飛行機にして飛ばす。


    この時間帯、正直、誰かが起きてるのかも怪しい。


    しかし、見張りなんかは居るだろう。それに賭けるしかない。


    霧切「……っ!」



    何か、心に黒い淀みの様なモノを感じる。

    ……黒い立方体、これで私は3回使った。もしかしたら、何か副作用が有るんじゃないだろうか。



    初速の運動エネルギーを保持しつつ、なるべく障害物を避けるために屋上から放る。


    どうか、届いて。



    ────────



    眠れなくて外に出た。



    七海「……」


    九頭龍くんが亡くなった、日向くんはきっと落ち込んでいる。


    七海「……?」


    紙飛行機が漂ってる。何だろう。不思議な事に壁に張り付いている? いや、きっと『何か』に向かってずっと飛び続けてるんだ……


    全部で7枚、私はその内の1つを手に取る。


    『もし拾ったら、至急助けてほしい。怪我人、指を切断という重傷、罪木蜜柑という人物を連れてきて欲しい。霧切』


    と、書かれている……霧切、多分、苗木くん達のクラスだろう。


    私は早足で保健室に向かう。
    罪木さんは不二咲くんを診ているから、多分、自室には戻っていないだろう。



    保健室の戸を開けると、不二咲くんが目を覚まして、ちょっと眠そうな罪木さんが居た。


    罪木「ふぇ……七海さん? どうしましたぁ?」


    不二咲「どうかしたの?」


    七海「不二咲くん、怪我よくなったみたいだね……」


    不二咲「うん、大丈夫だよぉ」


    七海「……それと、霧切って人は不二咲くんのクラスの人かな?」


    不二咲「うん、そうだけど……どうかしたの?」


    私は手紙を不二咲くんに渡す。


    不二咲「……!」


    七海「不二咲くん、霧切さんって人は信頼出来る?」


    不二咲「寡黙な人だけど、多分、大丈夫だと思うよ。苗木君なんかは結構お話してたみたいだけど……」



    じゃあ、これは罠である可能性は低いだろう。


    しかし……外には苗木くんと不二咲くんを襲ったジェノサイダーって人と、本物の方の十神くんがいる。
    罪木さんだけ行かせるのは危険だろう。


    すると、ガラリと戸が開く。



    日向「……? どうしたんだ? 3人も」


    七海「日向くんこそ」


    日向「あ、いや……睡眠薬か何か無いかなって……眠れなくてな」


    ナイスタイミングだよ、日向くん。



    七海「じゃあ、目が冴えてる者通し、ちょっと付き合ってもらえるかな?」


  164. 168 : : 2015/02/08(日) 00:20:47



    日向「ああ……別に構わないけど、どうしたんだ?」



    落ち込んでいる所悪いけど、



    七海「相手側チームの本拠地に行くよ。罪木さんの力が必要みたい」


    罪木「わ、私ですぅ?」


    七海「不二咲くん、手紙を見せてあげて」


    不二咲「うん……」



    日向君が手紙を受け取り、罪木さんが覗く形で内容を確認する。



    日向「……これは」


    罪木「指の切断、ですかぁ……」


    七海「どうなの? 罪木さん」


    罪木「……正直な話、その切断の具合と、微小血管吻合(マイクロサージャリ)が出来る外科の先生と施設がないと……」


    よく分からない単語が飛び出してきた。まいく? さじゃり?



    罪木「で、でも、何か処置は出来る……かもですぅ……」


    日向「……とにかく、急がないとヤバそうだぞ」


    不二咲「皆には僕から言っておくよぉ」


    七海「私も行くから、日向君」


    日向「……わかった、七海、罪木、行こう」


    私達はエントランスへと向かう。

  165. 169 : : 2015/02/08(日) 08:21:08


    エントランスに向かうと、戦刃さんが居た。



    戦刃「……どうしたの? こんな時間に」


    日向「これを……」


    戦刃「手紙……?」


    戦刃さんに手紙を渡す。


    戦刃「……行くの?」


    七海「怪我してる人が居るなら助けてあげたいよ」


    私は意地でもこの『ゲーム』には乗らない。もう、これ以上この愛せないクソゲーには付き合いたくないのだ。


    戦刃「……そうだね、ちょっと待って」


    戦刃さんはそういうと、寄宿舎側へと向かった。


    罪木「どうしたんでしょうか?」


    七海「……多分、誰か起こしにいったんじゃないかな?」


    つまり彼女は……



    ちょっとして、戦刃さんは『彼』を連れて戻ってくる。



    大和田「……ふぁあ、おう、どうしたんだよ」


    戦刃「ごめんね、大和田君、少しの間、見張りを変わって欲しいの」


    大和田「……それは構わねェけど、どっか行くのか?」



    戦刃「相手側の本拠地に向かうの……私も一緒に」



    彼女が着いてきてくれるなら、百人力だ。

  166. 170 : : 2015/02/08(日) 14:53:00


    ────────


    江ノ島「……うぷぷ」


    公園向かいのビル中で張っといて正解だ。
    中々良いもの見させて貰った。


    3人が去っていき、剣を使っていた女は、自身で自身の頭を撃ち抜き、死んだ。


    アタシはこっそりとその公園に向かい、九頭龍から例の黒い立方体を抜く。


    そして、霧切と大神、あのデブと剣の女からも『分析』させて貰った。


    まだ2日目が終わった所、私様的にはまだまだ、遊び足りない。


    そして、深夜0時を回った。


    江ノ島「……ん?」


    九頭龍と剣の女の死体が……


    ゆっくりとフェードアウトしていく……


    まるで、何も無かったかのように……


    江ノ島「……」


    なるほど、なるほど……この『スキルブースター』といい、この消える死体といい……


    なるほど、なるほど……



    まあ、良い。
    アタシが次にやるべき事、やはりそれは『絶望』だろう。


    さて、まだまだ時間はある。
    今日は適当に『観察』でもするか。




  167. 171 : : 2015/02/08(日) 16:34:22


    ────────


    大和田「おう、じゃあ気を付けて行ってこいよ」


    日向「大和田、頼んだぜ」


    戦刃「襲撃には気を付けて……」


    大和田「任せろって」


    日向の野郎は女子3人連れて深夜の街に……っと、今は冗談言ってる場合じゃねえ。


    任されたからにはしっかり見張らなきゃならねえ。


    さて、しかし眠いし、暇だ……











    不二咲「大和田君」


    と、不二咲がやって来た。


    大和田「おう、不二咲……寝てなかったのか?」


    不二咲「うん、4人行っちゃったんだね」


    どうやら、不二咲は、あの4人が相手側の本拠地に向かった事情を知っているらしい。


    不二咲「食堂に行って、戦刃さんと大和田君を見掛けたから……ちょっと来ちゃった、へへ」


    大和田「全く……無理すんなよ」


    松葉杖姿が痛々しい。


    ん? 何か袋を下げているが……


    不二咲「これ、お夜食だよ。食堂にあったものだけど……あと、冷えるから水筒に温かいお茶が入ってるよ」


    袋にはアンパンと水筒が入っていた。


    大和田「オメェ……ありがとよ」


    足がこんなんだっていうのに、オレの為にわざわざ持ってきてくれたのか。


    不二咲「ごめんね、僕、こんなことしか出来ないから……」


    大和田「いいや、大したもんだ、不二咲」


    不二咲「えっ?」


    大和田「眠くてタリーと思ってたこのオレに、やる気をださせてくれたんだからなァ」


    不二咲「……えへへ」


    もう二度とコイツに手を出させねえ。

  168. 172 : : 2015/02/08(日) 17:20:54


    ────────


    日向「真っ直ぐ北で良いんだよな……?」


    七海「うん、電子生徒手帳のマップ機能にも標示されてるよ」


    俺達はなるべく早足で向かっていた。


    しかし、不気味な程に静まり返ったこの街は何かおかしい。色んな所から気配がする様な……気のせいか?


    戦刃「……!」


    戦刃が急に銃を構える。



    日向「ど、どうした……?」


    戦刃「……いや、少し気が立ってるみたい。十神君や腐川さん……そして辺古山という人とかもいるし」


    日向「……辺古山は、もう無いだろう」


    戦刃「……え?」



    辺古山は、恐らくもうないだろう。
    九頭龍の死が全てを語っている。



    日向「……何でもない、急ごう」



    月明かりすら無いこの街を、街灯だけが道を照らし、俺達はそれを頼りに歩いていく。


    ……誰かに見られていても、気付かないかもしれない。





    「……」



  169. 173 : : 2015/02/08(日) 20:20:33


    ────────


    大和田「ホラ、お前も食え」


    あんパンを半分に千切って不二咲に差し出す。


    不二咲「ええ? でも僕は……ううん、ありがとう」


    大和田「へっ、お前が持ってきたんだからよ」


    2人であんパンを頬張る。
    ……あと、兄弟も入ればな。と、柄にもなく物思いにふけった。


    いくら屋内とはいえ、この開ききった扉はなんとか閉まらねえものか。


    不二咲に見張り用のパイプ椅子を譲り、オレは床にウン……じゃなくてヤンキー座りの状態だ。


    と、



    不二咲「……何だろう?」


    大和田「……どうした、不二咲?」


    屋外に何か、居る。


    校門前に……あれは……





  170. 174 : : 2015/02/08(日) 20:48:50



    大和田「……!!」



    目視する。




    暗闇に乗じて、何かが飛来し、それは……








    不二咲「……かっ!?」


    ♡8
    ★18


    不二咲の喉を貫いた。



    不二咲「あ……か……!」


    ♡5
    ★59


    大和田「ダメだ……不二咲……!! 喋るな……!!」



    オレは不二咲の肩を抱く。
    鮮血が不二咲の口から溢れてくる……駄目だ、喋るな。



    不二咲「お……お……わ……」



    ♡1
    ★100


    大和田「やめろ!! つ、罪木をすぐに呼び戻す!! 駄目だ……目を閉じるな……!!」





    手から落とし、転がるあんパンの片割れは、血に染まって。



    大和田「不二咲……!! 逝くな……逝くな……!!」






    不二咲「……」





    ♡0
    ★0




    不二咲は、死んだ。



    なんて、呆気なく、なんて脆く、なんて、唐突なんだ。


    オレは、不二咲すら守れずに、なんて弱いんだ。


    粋がってんじゃねえよ、クソガキみてえなオレ。



    大和田「……あ、ぁぁ……不二咲ぃいいいいい!!!」






    涙の次、








    殺意、ただそれだけがオレを突き動かす。




    大和田「……出てこいよ」



    ぶち殺してぶち殺してぶち殺す。




    不二咲のポケットには拳銃がある。
    オレはそれを借り、暗闇に向けた。




  171. 175 : : 2015/02/08(日) 20:58:55
    ちーたああああああん!

    殺したの誰だろう
  172. 176 : : 2015/02/08(日) 20:59:57




    そして、ヌッと暗闇から現れたのは……





    十神「……」



    洋弓銃(クロスボウ)を構えた、糞野郎だった。




    大和田「十神、テメェ……!!」



    十神「今朝、殺し損ねたからな。殺しに来た」



    ふざけんてるのかコイツ……!!



    オレは容赦無く銃を向け、十神を撃つ。



    十神「何処を狙っている、プランクトン……『最後の1発だった』のにな」


    外した……!
    しかし、次こそは……!!


    不二咲の痛みを思いしれ……!!


    奴はクロスボウを捨て、今度は拳銃(インフィニティスタンダード)を向けてくる。



    大和田「ふざけんじゃねえぞ糞野郎が!!」



    再び十神に銃を向ける。




    が、




    大和田「……!?」



    奴に……照準が……『合わない』?


    どういう事だ……!!


  173. 177 : : 2015/02/08(日) 21:02:31
    >>175
    ご覧の通り、かませでした!!
  174. 178 : : 2015/02/08(日) 21:21:27



    十神「……くっくっくっ、なるほど、俺に『照準が合わない』らしいな」



    どうなっていやがる……!!


    十神「素晴らしい、黒い立方体は……一体どういう技術だ?」



    大和田「それがテメェの『スキルブースター』ってヤツか……!」



    十神「そうだ、俺に一度でも敵意を向けると、その敵意は二度と向けられない……『絶対服従』と言うわけだ……世界を統べるに相応しい才能だと思わんか?」



    十神が拳銃を2発撃つ。



    大和田「がっ……ぁ!?」


    ♡72
    ★88



    左足、右肩に弾丸が食い込む。



    大和田「……ぐっ!!」


    『スキルブースター』は持っている……オレはケースを取り出す。



    十神「……させんぞ!」



    十神は銃を撃ち込んでくる。

    脇腹に1発貰った。
    しかし、構うものか、オレはケースを開き、そして取りだし……




    大和田「うぉぉああああああああ!!!!」



    飛び上がる。
    反動で血が噴き出す、構うものか。



    敵意を向けられないなら、敵意が無いものに、攻撃させればいい。




  175. 179 : : 2015/02/08(日) 21:53:23





    十神「チッ!!」


    奴は銃を撃ってくる。

    だが、掠めていくだけで大したダメージにはならない。


    ……しかし、確実に蓄積し、そして出血という形で溢れてくる。



    飛び上がって、着陸と同時にオレは、学園の石畳を思いっきり殴り付け、それを、



    十神「……!!」



    拳を振り上げると同時に、破片を奴に飛ばしてやる。


    敵意が向けられないからといって、ヤツにバリアとか見えない壁が有る訳じゃない。


    ヤツの才能は大したことがない。



    オレが敵意を向けたのは石畳で、それを砕き、振り上げた矢先に『たまたま』破片が十神に向かっていくだけだ。

  176. 180 : : 2015/02/08(日) 22:16:05



    十神「がっ……!?」


    幾つかの破片が十神にヒットする。



    十神「ぐっ……! バカの考えることは理解が出来ん……!」



    ♡82
    ★12



    大和田「ああ、そうだよ、オレはバカだ。不二咲も守れねえ大バカ野郎だ……だがな、そんなバカ野郎でも、テメェをぶっ殺してやる事くらいは出来んだよ……!」



    ♡58
    ★92



    満身創痍、だが、せめて、コイツには地獄を見せねえと気が済まねえ。





    と、






    大和田「がっ……!?」


    ♡22
    ★98



    刺された……!?
    背後から……!? 誰が……!?




    十神「……チッ、遅いぞ」





    大和田「……なっ!?」



    仲間……!?
    まさか………








    ジェノ「んもぉ〜ダーリンったらぁ、見ててハラハラさせ過ぎぃ! あ、萌えない男子殺したくないんで、殺りたかったらダーリンでやってね」




    ジェノサイダー……翔……!!
    いつの間に背後に………!!




    十神「無論だ」




    パンッ、という音が、オレの最期に聞いた音だった。



    すまねえ……不二、さ………





  177. 181 : : 2015/02/08(日) 22:40:41


    ────────




    戦刃「……!?」


    日向「どうした? 戦刃」


    俺達が大体学園を出て、直線で3キロちょっとの辺りだった、戦刃に落ち着きがない。


    戦刃「銃声? 南側から……」


    罪木「そ、そうですかぁ?」


    七海「聞こえなかったよ」



    北側に進んでそれなりに経つ、電子生徒手帳が指し示す相手側の本拠地まであと少しの所だった。



    戦刃「……気のせい、かな?」


    日向「大和田が見張ってんだろ? きっと大丈夫だ」


    戦刃「……だと、いいんだけど」


    七海「……ほら、見えてきたよ」


    北側に建物が見える。


    罪木「……あれ? あ、あの……なんかおかしくないですかぁ?」



    日向「……どういう事だ?」


    有ったのは、俺達の本拠地と全く同じ建物……



    七海「……私達みんな、方向音痴ってオチじゃないよね?」


    戦刃「……違うみたいよ、ほら」



    戦刃が指を指し示す先、丁度、校門の辺りに人が立っていた。



    戦刃「……霧切さん」


    霧切「……待っていたわ、来てくれてありがとう」

  178. 182 : : 2015/02/08(日) 23:09:14
    あぁ・・・かませ・・・報復タイムの時間だな。
  179. 183 : : 2015/02/08(日) 23:12:01
    >>182
    轟沈かませシャットダウン号さんには……(ゲス顔
  180. 184 : : 2015/02/08(日) 23:21:27
    死んだ奴のアビリティの説明もほしいですね、期待支援
  181. 185 : : 2015/02/08(日) 23:27:07


    ────────


    Now loading……


    ────────



    スキルブースター・その2



    使用する事で思考実験に置けるコマンドプロンプトの書き換えを行い『バグ』が発生し、物理エンジンを度外視した『才能』を開花させる。
    しかし、上書きを繰り返す事でプログラムはやがて虫食い状態になり、最後には被検体そのものの精神が不安定となり『絶望化』する。




    十神白夜(御曹司)のスキルブースト



    『御曹司』→『再征者(レコンキスタ)


    一度『敵意(ヘイト)』を向けられる事で、二度目に敵意を向けることが不可能になる才能、大和田の言う通り、間接攻撃を絡めれば攻撃が出来るという、大したことがない才能ではあるが、爆発物が乏しい戦場ではかなり厳しく、一撃死(ワンショットキル)が決まらなければ意外と倒すのは難しいだろう。


    ────────


    Now loading……


    ────────


  182. 186 : : 2015/02/08(日) 23:27:41
    >>184
    終わった後にでもやろうかと
  183. 187 : : 2015/02/08(日) 23:59:24
    いちいち厨二心を煽ってきますね…!
    洋画をみているような気分です!
  184. 188 : : 2015/02/09(月) 00:39:08
    >>187
    いっそ清々しい位の全力の厨二力でぶつけていきますww
  185. 189 : : 2015/02/09(月) 01:20:25

    ────────


    ここではない、何処かのモニター室。


    シロクマ「ねえ、クロクマ」


    クロクマ「……」


    シロクマ「ねえ、クロクマ」


    クロクマ「……」


    シロクマ「ねえ、クロクマ」


    クロクマ「うるせえー!!! 何だよ! シロクマ!! 寝てるだろが!! 寝てたら悪いか!! 寝てちゃダメか!! そうだな!! 寝てたら監視出来ないもんな!! ぎゃっははは!!」


    シロクマ「この『コロシアイ』って何か意味あるの?」


    クロクマ「はぁ!? そんな事も知らずに見てたのかよアホか!! まあ、いい!! あのな、この『コロシアイ』によって何が生まれるっつたら『絶望』しかねーだろ? 無限に殺して、無限に殺されて、無限に死に続けて、無限に哀しんで、無限に絶望すんだよ!! わかったか!!」


    シロクマ「……? わかんないなぁ」


    クロクマ「ぎゃっははは!! つまり……『意味は無い』んだよ……」


    シロクマ「ああ……そう言うことね、良くわかったよ……ねぇ」



    突然として、シロクマとクロクマの口調が変わる。


    そして、初めて、私に振り返り、語りかけてきた。


    シロクマ「アンタも……」


    クロクマ「そう『意味は無い』って思ってるんでしょ……?」



    紛れもない『江ノ島盾子』の声で……しかし、これは『江ノ島盾子』ではない。



    ここではない、あの場所は……言わば『箱庭』……『思考実験場』……


    テーマは『絶望』……そう、あの実験に『意味は無い』のだ。


  186. 190 : : 2015/02/09(月) 20:26:13


    ────────


    澪田「……!」


    銃声がして目が覚めた。


    短機関銃(スコーピオン)を持って廊下を覗くと、静まり返ってて不気味ッスよ。


    ……いや、何か聴こえるッス。


    唯吹の耳は普通の人よりちょこっとだけ良いッス。






    「澪田さん……」



    澪田「ひっ!! ……だ、誰ッスか?」


    狛枝「……やだなぁ、そんなに驚かないでよ……それより、銃声がしたよね?」


    凪斗ちゃんッス……正直焦った。


    澪田「……え、エントランス側だったッスよね……」


    狛枝「……戦刃さんが見張りに立ってくれているハズだけど、何かあったのかな?」


    澪田「見に行くッス……!」


    狛枝「そうだね……気になるね」



    こっそりと渡り廊下を渡って、寄宿舎から学園の方に出ていったッス……


    狛枝「……ん?」


    澪田「……話し声が、するッスね」



    狛枝「……エントランスの扉の方をこっそり見よう」


  187. 191 : : 2015/02/09(月) 21:09:17


    そして、ちょこっとだけ覗いたッス。


    澪田「……!!」


    思わず、声が出そうになった瞬間、凪斗ちゃんが唯吹の口を押さえたッス。


    狛枝「……シィ」


    口に人差し指……『静かに』のジェスチャーッス……でも、アレは……




    千尋ちゃんと、紋土ちゃんが……ピクリとも動かないッス……そして、アレは今朝がた千尋ちゃんを襲っていた人ッス……



    十神「他愛ないな、ジェノサイダー、行くぞ」


    ジェノ「え〜? 皆殺しにしないのダーリン?」


    十神「深追いはするな、時間は有る。ゲームは楽しむものだろう?」


    ジェノ「えげつねぇ〜!! さっすがダーリン!」


    そう言って2人は去っていったッス……



    狛枝「……よし、行ったね」



    2人に駆け寄ったッス……でも、もう……


    澪田「……酷いッス」



    千尋ちゃんの喉に短い矢(ボルト)が刺さって……椅子に座ったまま、亡くなっているッス……



    狛枝「……こっちも駄目だね」


    紋土ちゃんも……額に銃を撃ち込まれた様な痕が見てとれるッス……


    狛枝「……戦刃さんは、どこに?」






  188. 192 : : 2015/02/09(月) 21:45:23
    まぁ、この場で、全員殺した場合は、十神とジェノは大神と弐太に殺されるか、絶望&希望メンバーに報復されるだろうな・・・

    もしものIFで、書いてほしいです。
  189. 193 : : 2015/02/09(月) 21:51:58
    >>192
    まあ十ジェノがどうなるかはこの先で……
  190. 194 : : 2015/02/09(月) 22:22:11


    ────────


    日向「……で、怪我したヤツってのは」


    霧切「弐大君……腕輪を取る為に無茶したのよ」


    相手側の本拠地のエントランスを進み、俺、七海、戦刃、罪木は食堂へと向かっていた。


    日向「……なぁ、霧切、辺古山は」


    霧切「……亡くなったわ、自殺してね」


    自殺……?


    日向「自殺……って、何故だ?」


    霧切「私を斬ろうと襲いかかった所、私はある人物に庇われたのよ。九頭龍君……と言ったかしら?」


    日向「……!」


    じゃあ、九頭龍は辺古山に誤って殺されたと言うことなのか……そして、


    戦刃「彼女は、後追いしたのね」


    霧切「……ええ」


    なんて皮肉……守ろうとした九頭龍を自分自身の手で亡くし、そうして……


    霧切「さあ、食堂よ……」


    食堂へと入る。



    ……弐大が汗だくで座っている机には机から床まで血が流れている……


    弐大「……おぅ」


    日向「バカ野郎……弐大! なんでこんな……!」


    右手親指の付け根から無い。ビニールで被されているが、無いと言うのははっきり解る。


    豚神「……夜遅くにすまないな」


    大神「御足労痛み入る……すまぬが、弐大を診てやってくれ」


    罪木が弐大に駆け寄り、親指の有った場所のビニールを剥がす。


    罪木「……私には、縫い合わせて傷を埋める位しか出来ないです。再接着に関しては専門のお医者さんが必要不可欠なのでぇ……」


    日向「うっ……」


    七海「……」


    七海も俺も、顔を背けた。
    生々しい断面には血で溢れ、うっすらと骨らしきモノが見える。



    豚神「まて、罪木、ならばこれを使ってみてくれないか?」


    そう言って、詐欺師の十神はあの黒い立方体を差し出してきた。








  191. 195 : : 2015/02/09(月) 22:50:48


    日向「……『スキルブースター』?」


    豚神「……ああ、これは自分の才能に何かしらの力を付加するものだ」


    日向「……『殺人に特化』するんじゃなかったのか?」


    豚神「使い方次第だ。現に俺が使った場合、誰にでも姿形を変えられるといった才能だった。これは『暗殺』という用途で使える」


    霧切「私は、無機物を対象に対して追尾させる事が出来るの……」


    七海「と言うことは、あの紙飛行機は霧切さんの?」


    霧切「そうよ」


    なるほど、才能に逸った何かしらの『力』が追加されるのか。


    罪木「しょ、正直怖いですけどぉ……」


    日向「罪木、試してみてくれ」


    罪木「は、はい……やってみますぅ」



    そうして罪木は渋々と詐欺師の十神から立方体を受け取り、両手でぐっと握り締めた。


    罪木「……!」


    日向「罪木……どうだ?」



    罪木「これは、スゴいですね。すいません十神さん、弐大さんの……その親指を渡して貰えますかぁ?」


    豚神「ああ、やれそうなのか?」


    罪木「はい、大丈夫ですぅ」


    詐欺師の十神が罪木に、弐大の親指の漬かったビニール袋を渡す。


    氷水で包まれており、さらに、弐大の指自体も袋に包まれて浸けられている様だ。




    罪木は弐大の指を取り出し、弐大の傷口にあてがい……


    弐大「ぐっ……」



    罪木「ちょっと我慢して下さいねぇ」


    そのまま『手当て』をする。
    読んで字のごとく、そのまま患部に『手を当てた』だけなのだ。


  192. 196 : : 2015/02/09(月) 23:10:14


    霧切「……!」


    戦刃「わぁ……」



    それはまるで『手品』だ。


    弐大「信じられん……!」


    親指と右手が、僅かな傷だけを残して、ピッタリとくっついてしまった。


    大神「……なんと」


    罪木「そうですねぇ、何と言ったらいいか……私はどうやら『手術』といった工程を無視して治療出来てしまうみたいですねぇ」


    日向「すごいじゃないか、罪木」


    罪木「ふぇ!? す、すすすいません! ゲロブタが調子に……あれぇ?」


    七海「日向くんは誉めたんだよ、罪木さん。私もスゴいと思うよ」


    罪木「えへ、そのぉ、でへへ……」


    頭を掻きながら照れている所悪いが……


    日向「罪木……その手、弐大の血でべっとりなんじゃないか?」


    罪木「ふぇ!? あわわ……髪の毛のがぁ……」


    弐大「がっはっはっ! 本当なら、親指は諦めとったんじゃが……礼を言うぞ罪木! これで、ワシは……」


    そう、弐大が指を切断してまで腕輪を外した理由。


    弐大「外に向かい、助けを呼んでくる! 日にちもまだ4日あるとは言え、外に行くのにどれくらい掛かるかわからんからのう!」


    日向「弐大……お前!」


    まだ、希望はある。




  193. 197 : : 2015/02/09(月) 23:33:21


    戦刃「……?」


    日向「どうした? 戦刃」


    戦刃「ああ、うん……電子生徒手帳が……通話状態に……もしもし?」


    戦刃が電子生徒手帳をミミに当てる。



    戦刃「……え?」


    戦刃の表情が変わる。


    戦刃「すぐ戻る……!」


    日向「どうした? 戦刃」


    戦刃「私達の本拠地が襲撃されて……!」


    日向「なっ……!」


    七海「……!」


    罪木「ふぇええ!?」



    悪寒が走る、とても嫌な悪寒が……


    霧切「……何て事なの」


    豚神「辺古山が居なくなった今……襲うとしたら、あの2人か……! 何て事を」


    罪木「ど、ど、どうしますぅ? わ、私はまだ弐大さんの術後を看てないとぉ……」


    戦刃「私だけ戻るよ……七海さん、日向君は罪木さんについててあげて」


    七海「……うん、戦刃さん、お願い」


    戦刃は早足でエントランスに向かっていた。


    日向「クソッ……また」


    また誰か、殺されたのではないか。
    戦刃は話さなかったが、襲撃を受けたと言うことは、つまり、大和田が……まさか………





  194. 198 : : 2015/02/09(月) 23:49:24


    ─────────



    夜の街を私は駆け抜ける。


    また、私のミスだ……


    盾子ちゃんに『残念な姉』なんて言われるが、ここまで失態を繰り返すと、その通りじゃないか。


    私の采配ミスで何人死んだ?


    ……そして、先ほど通話してきた澪田さんの口振りからして、大和田君と……不二咲君が亡くなっただろう。



    走る、全速力で。



    あの辺古山と言う女が死んだと聞かされ、正直安堵した。


    だが、それがどうだ。
    その隙に他のやる気になった連中に仲間を殺されたのだ。




    走る途中、前方に影がちらつく。





    戦刃「!!」



    ハサミが飛んでくる。
    直線に5本、私に真っ直ぐ向かって……!


  195. 199 : : 2015/02/10(火) 20:37:09


    戦刃「くっ!」


    身を翻しながら体勢を低くし、そのハサミを回避する。


    ハサミ……即ち、目前に居るのは……!




    ジェノ「ぎゃっはっはっはっ!! ナイス回避!! つーか避けんな!!」


    戦刃「腐川冬子……いえ、ジェノサイダー翔!」


    ジェノ「イエース! さてさて、まあダーリンの命令じゃなきゃ死んでもやだだけど、バッチリぶち殺し寸前まで痛めつけてやんよ!」


    戦刃「……甘くみないで」



    ジェノ「あーんま頼りたくねーんだけどなぁ、アンタを押し切るには……やっぱ使うしかねーか!」


    そう言ってジェノサイダーは口を開け、その妖怪染みた長い舌を見せる。

    その舌の上には、例の黒い立方体……それが音を立て、溶け出す……そして、ジェノサイダーはそれをゴクリと、飲み込んだ。


    ジェノ「う〜ん、ハッカ味? ゲラゲラゲラ!! 行くぜソバカス軍人!!」




    刹那、





    戦刃「!!」


    ジェノサイダーが……消えた!?




    ジェノ「しゃっは!!」



    背後、私は咄嗟に前方に飛び出し、背後に銃を構える。



    だが、



    戦刃「くっ……!」



    照準を逃す。速すぎる……人の動きじゃない。
    やはり、あの黒い立方体は莫大な力を付加するんだ。


    ならば、


    私は左手側にあったビルの一階窓ガラスに飛び込み、警戒をしつつ奥へと逃げる。
  196. 200 : : 2015/02/10(火) 21:45:14


    ジェノ「逃がしゃしねえーよ!」



    細い廊下、床に、壁に、天井に、まるで稲妻の様な軌跡を残しながらジェノサイダーは私に迫り、ハサミを構える。



    戦刃「……ちっ!」


    弾幕を張る、だが、ジェノサイダーに掠りもしない。


    ……なんて出鱈目。


    廊下先に階段を見つける。
    それを駆け上がりながら、再度弾幕を張る。


    このアサルトライフルは引き金より後ろに弾倉がある( ブ ル パ ッ プ )方式で、屋内戦でも使える。
    取り回しが効くからだ。


    だが、相手は尋常じゃない化け物と化している。


    あの黒い立方体の恩恵無しならば、制圧は容易だっただろう。


    何とか背後を取られずに、屋上に辿り着き、扉を閉め、押さえた。


    ジェノ「開けろやぁ!! もっと遊ぼうぜぇ〜!! ゲラゲラゲラ!!」


    とんでもない脚力を扉越しから感じる。金属製であるが、押さえている私ごと蹴破られそうだ。


    耐えて……15秒といった所。


    そして、私はケースを取り出した。


    戦刃「……」


    黒い立方体を取り出す。


    ならば、私もあの化け物と同じ様に、『そう成る』事にしよう。

  197. 201 : : 2015/02/10(火) 22:04:19


    黒い立方体を強く握り、溶け出す音と共に、知識ではなく力が入ってくる。


    限界以上の限界を引き出す。


    今なら、何でも出来る気がする。




    私が扉より飛び退き、その瞬間にジェノサイダーがハサミを3つ、投擲してくる。



    だが、私はアサルトライフルを三点バーストに切り替えて、『その一射』で全て撃ち落とす。



    ジェノ「……アンタも、キメたっつーわけ?」


    ジェノサイダーがつまらなそうに私を睨む。


    奴は殺す事しか頭に無い殺人鬼( シ リ ア ル キ ラ ー )だ。武士道精神とか、そんなものはない。


    殺し難い相手は、さぞ嫌悪するだろう。



    アサルトライフルを構え、ジェノサイダーを睨み返す。



    戦刃「……さあ、やろう?」


  198. 202 : : 2015/02/10(火) 22:42:25


    ────────



    十神「……チッ」


    俺の、十神白夜がスナイパーライフル(モシン・ナガン)から覗いた戦闘は、正に化け物同士の闘いだった。


    戦刃は、ジェノサイダーが投擲するハサミを、的確にアサルトライフルで撃ち落とし。

    ジェノサイダーは戦刃の弾丸を体を器用に捻ってトリッキーに避ける。


    まるで狼と蛇だ。


    恐らく、こんなもの(スナイパーライフル)じゃ戦刃は殺せまい。


    そもそも、あの速さに照準を合わせるのは不可能だ。


    ジェノサイダーに渡したカナル型のインカムに指示を出す。


    十神「適当に遊んだら適当に引け、やはり、ヤツには『アレ』をぶつける」


    戦刃相手はやはり、ジェノサイダーでは荷が重い。



    餅は餅屋といった所か、ならば『ヤツ』に『動機』を作ってやらねばならん。
  199. 203 : : 2015/02/11(水) 00:20:17


    ────────


    戦刃「……!」


    ジェノ「チッ!」


    恐ろしく体が軽い。


    ジェノサイダーのハサミを目視で追える。


    銃を撃ち、それらは全てかわされるが、飛来するハサミ全てを撃ち落としてやれる。


    ジェノ「クソが!」


    ジェノサイダーはビルから飛び降り、ビルの外壁を蹴って向かいのビルに足を着ける。


    そこから更に、外壁を蹴り、こちらのビルに足を着けた。


    ジグザグに降りていく。私もまた、飛び降りて執拗に追った。


    ビルとビルに挟まれた空間での縦横奥を用いた3次元的な白兵戦、互いに譲らないその攻防は文字通り『次元が違う』のだ。


    そして、地上に降り立つと同時に、



    ジェノ「もういいや、あばよ」



    そう言ってジェノサイダーは消え入るように逃走を謀った。



    戦刃「……!」



    残念ながら、今の私でもジェノサイダーの脚力には及ばない。



    ……逃がした。



    しかし、今は逃がした後悔より、早く本拠地に戻らなければいけないという気持ちが強い。



    私はジェノサイダーの去った方角を一瞥して、再び走り出した。

  200. 204 : : 2015/02/11(水) 05:18:06

    ────────



    霧切「取り敢えず、罪木さん、シャワー浴びてきたらどうかしら?」


    相変わらず髪に、手に血がべったりの罪木さんを見かねて、私は声をかけた。


    罪木「そ、そうですよねぇ……」


    霧切「寄宿舎に大浴場があるから、そこを使うと良いわ」


    罪木「……す、すみませぇん」


    おどおどとした態度で罪木さんは大浴場に向かっていく。


    さて、折角なので……彼等に聞いておこう。


    霧切「ねえ、日向君、七海さん?」


    日向「なんだ?」

    七海「ん?」


    霧切「……貴方達の本拠地、この学園と同じものなのかしら?」


    日向「……ああ、ここに着いたときは驚いたよ」


    七海「まったく同じ、もしかして……ここって『都内』じゃなかったりするのかな?」


    七海さんはどうやら勘が鋭いようだ。


    霧切「……そうね、私もその意見に賛成よ」


    日向「しかし、都内とは違うとして。どうやってこんな大規模な土地を……」


    そこが問題だ。
    都内でないとして、こんな大掛かりな事をして……『黒幕』は何を企んでいるのか……?

  201. 205 : : 2015/02/11(水) 09:30:08

    ────────


    戦刃「……!」


    校門に着く、澪田さんと狛枝君と……そこに並べられた、2人の遺体。
    事態は最悪だった。


    澪田「あ、む、むくろちゃ〜ん! 良かったッス……いや、良くはないッスけど……」


    戦刃「……なんて事」


    狛枝「……何処に行ってたんだい?」


    戦刃「ごめんなさい、相手側の本拠地に……」


    澪田「相手側の……本拠地ッスか?」


    戦刃「弐大君……だったかな。指を切断して、罪木さんを向こう側に送っていったんだけど……まさか、その隙を狙われるなんて」


    澪田「猫丸ちゃんが……! どうして指を……!」



    狛枝「……成程、もしかして、右手の親指を切って、腕輪を外した……とかかな?」


    狛枝君の推測は正しい。私はそれに頷いた。


    澪田「う、腕輪を……! じゃあ!」


    戦刃「弐大君は、助けを呼びに行ってくるって言ってたよ」



    しかし、これは杞憂なのかもしれないけど……もしかしたら、この世界には私達だけしか居なくて、助けなんてないのかもしれない。


    そんな気がするのだ。

  202. 206 : : 2015/02/11(水) 10:23:22


    ……とにかく、2人を殺したのは誰なのか。


    戦刃「この2人を殺した人は……見た?」


    狛枝「本物の方の十神君、そしてもう1人、あれは苗木君を襲った方だね。ジェノサイダー翔って言ってたかな……」


    戦刃「……!」


    となると、先程、南側からやって来たのはその帰りだったというわけか。





    執拗に追ってでも殺しておくべきだった。




    戦刃「……とにかく、2人の遺体は私が埋葬しておくから。2人は休んで……それと、日向君と七海さんも罪木さんと向こう側にいるから」


    澪田「わ、わかったッス……」


    狛枝「良かったら手伝うよ」


    戦刃「……ううん、やらせて?」



    私のせいだ。



    戦刃「……」


    ♡100
    ★58




  203. 207 : : 2015/02/11(水) 10:57:31

    ────────


    Now loading……


    ────────


    開示された情報




    罪木蜜柑のスキルブースト



    『保険委員』→『神撫医(ディアンケヒト)


    人間に対して『手を当てる』だけで治療という工程をすっ飛ばし処置を完了させる才能。
    戦場において衛生兵(メディコ)の存在は必要不可欠であり、ましてや治療キットを使わずに患者を戦闘不能から瞬時に復帰させるという才能は厄介そのものだろう。



    腐川冬子(ジェノサイダー翔)のスキルブースト



    『文学少女(殺人鬼)』→『虐殺者(ジェノサイダー)


    武闘派である為、身体能力と脚力が向上しただけである。もとより殺人に特化した才能であるが故に恩恵が低いのは、このゲームにおいてプレイヤーの平均化を行うためである。




    戦刃むくろのスキルブースト



    『軍人』→『魔狼(フェンリル)



    もとより武闘派である為、身体能力の向上、特に脊髄反射と集中力が特化した。
    射程内であれば、ミリ誤差も無く、標的を射抜くだろう。


    ────────


    Now loading……



    ────────

  204. 208 : : 2015/02/11(水) 14:39:54
    追いつきました〜
    互いのチームの内面のバランスと、才能を応用させた能力がすごいと思いました!
    期待&支援です!(ृ°͈꒳​°͈ ृ )ु

  205. 209 : : 2015/02/11(水) 15:11:57
    >>208
    ありがとうございますっ
    チーム振り分けで遇奇数で分けたらメインキャラと武闘派が別れて正直どうしようと思ってましたww
  206. 210 : : 2015/02/11(水) 20:33:04

    ────────



    夢を見た。


    「……がはっ」


    吐血する。
    もう、長くはない。


    「あ……あ……」


    自らの腹部より突出する、何か。


    「……それ、で」



    いい、それで、




    霧切「……」


    目を覚ます。時刻は10時を過ぎていた。

    ……昨日は大分遅くまで起きていた。


    身仕度を済ませ、食堂へと赴く。


    食堂では、セレスさんと西園寺さんと小泉さんが、どうやらババ抜きをしている様だ。他の人達は見当たらない……朝食はもう終えたのか。



    セレス「ふふ、上がりですわ」


    西園寺「あっ! セレスおねぇずるいー!」


    小泉「またセレスちゃんかぁ……流石はギャンブラーだね」


    セレス「ババ抜きではあまり関係無いですわ」


    霧切「……おはよう」


    セレス「あら、ごきげんよう。昨夜は大分遅くまで起きてらしたのね」


    霧切「ええ、あの後もゴタついて……」


    弐大君の血は綺麗に拭かれていた。弐大君自身も『この事は言わんで欲しい』とは言ってたが。


    霧切「……日向君らとは会ったの?」


    小泉「えっ? 日向いるの?」


    西園寺「日向おにぃが?」


    どうやら、まだ起きてきては居ないらしい。


    霧切「ええ、あと、七海さんと罪木さんが」


    西園寺「げぇ! あのゲロブタも一緒なのぉ?」


    霧切「ゲロブタ……」


    口では辛辣であるが、どことなく嬉しそうに見える。


    小泉「千秋ちゃんと蜜柑ちゃんも来てるんだ……!」


    霧切「ええ」


    石丸「むっ、霧切君か、昨晩は遅かった様だね! 事情は聞いているぞ!」


    霧切「ええ、おはよう。石丸君」


    いつも通り、朝食を終えた後、彼は校内をパトロールするのが日課な様だ。

  207. 211 : : 2015/02/11(水) 21:16:50


    終里「おっーす……あれ、オッサンは?」


    終里さんが入って来る。


    霧切「……弐大君はまだ寝てるんじゃないかしら?」


    昨夜に寝床に着いたのが午前4時前後だ。寝ていても何ら不思議はない。


    豚神「起きたか、霧切」


    彼女についで太った十神君も食堂へとやってくる。


    霧切「3人は?」


    豚神「……空いてる部屋に泊まった、そろそろ来るだろう」





    ……しばらくして、弐大君に次いで日向君、七海さん、罪木さんもやってくる。


  208. 212 : : 2015/02/12(木) 17:47:42


    西園寺「ゲロブタァァ!!」


    罪木「ひぅ!? さ、西園寺さん、ご無沙汰ですぅ!」


    罵倒しながらも抱きついていく辺り、やっぱり仲は良いらしい。


    小泉「日向、千秋ちゃん……元気そうで良かったよ」


    七海「小泉さん、オッスオッス」


    日向「小泉も元気そうで良かった」


    これで全員かと思ったが、2人ほど足りない。


    弐大「朝日奈と大神の2人はどうしたんじゃ?」

    終里「おう、オッサン。朝日奈と大神は2階の更衣室兼トレーニングルームに居るぜ。そろそろ降りてくるんじゃねーか?」


    大神さんは眠くないのだろうか……



    朝日奈「あ、みんな集まってどうしたの?」


    大神「むぅ、弐大よ。怪我はもう良いのか?」


    弐大「まるで何事もなかったようじゃの! がっはっは!!」


    これで、本物の十神君と腐川さんを除き、北側のチーム全員に、南側のチーム3人が食堂に集まった。



    豚神「全員揃ったか? 昨日の事を話す……良いな?」


    そして、太った十神君は辺古山さんの件を話す。私を庇い…というより、彼女を止めようとした九頭龍君の事も含めた、その一部始終を。


    小泉「ペコちゃんと……九頭龍が……」


    西園寺「辺古山おねぇ……」


    豚神「……ああ、2日でもう死人が数多く出ている」


    弐大「それも今日までじゃ……見てみぃ」


    弐大君が右腕を掲げた。


    豚神「弐大、良いのか?」


    弐大「どっちにしろ言わねばならん、ワシ自身で言いたかっただけじゃ」


    終里「あれ、アンタ……腕輪は?」


    西園寺「ホントだ、腕輪が無い」


    セレス「どういった手品でしょうか?」



    弐大「……ワシは、親指を切断して腕輪を取った。今日、範囲外に行って見ようと思うんじゃ」


    西園寺「は? 親指? 切断も何もくっついてんじゃん! 馬鹿なの?」


    弐大「そこは罪木がワシの親指をくっつけてくれたんじゃ! それこそ手品じゃったなあ! がっはっは!!」


    罪木「え、そのぉ……でへへ」


    西園寺「調子に乗んなデブ!」


    罪木「はぅ!? す、すいませぇん!!」


    小泉「日寄子ちゃん! もぅ……でも、スゴいね蜜柑ちゃん、指の切断の再接着って普通のお医者さんでも無理なんじゃないの?」


    罪木「……そのぉ、スキルブースターって黒い立方体をですねぇ」


    西園寺「えー? インチキみたいなもんじゃないの?」


    罪木「うぅ……」



    霧切「……とにかく、弐大君、外に行くのね?」


    弐大「うむ、助けを呼びにな……皆でここから出るんじゃ!」


    一同が喜びで騒然とする。


    日向「弐大……任せて良いんだな?」


    弐大「あったり前じゃ!」



    霧切「それじゃあ、弐大君」


    弐大「うむ、昼飯後に出発する。大船に乗ったつもりでいるんじゃな」



    ……しかし、私は希望と同時に酷く不安を覚えた。
    本当に……これで助かるのか?


    日向「……?」


    七海「どうしたの? 日向くん」


    日向「あ、いや……電子生徒手帳が」


    そういうと、日向君は電子生徒手帳を取り出し、通話を始める。
  209. 213 : : 2015/02/12(木) 17:49:57


    日向「狛枝? ……何?」


    霧切「どうしたのかしら?」


    日向「……そう、か」


    酷く浮かない顔をしている。まさか……昨日の襲撃で……


    日向「ああ、戻る……」


    彼は電子生徒手帳を懐に戻す。


    霧切「……やはり、昨日の」


    日向「……大和田と、不二咲が死んだらしい」


    一同の喜びの色が消える。


    大神「なんだと……!」


    朝日奈「そんな……」


    セレス「何て事……」


    その中でも特に、


    石丸「……う、嘘だ! き、君ぃ! 冗談だろう?」


    日向「こんな状況で冗談なんて言わない……」


    霧切「……石丸君、落ち着いて」


    石丸君は特に大和田君と仲が良かった。学園でも、不二咲君と大和田君と石丸君の3人がよく一緒にいるのは知っている。


    石丸「う、嘘だ、僕は信じない……!」


    そう言って石丸君は飛び出してしまう。


    豚神「石丸! チッ……」


    日向「すまない……俺」


    霧切「……いえ、貴方のせいではない」


    豚神「ああ……まだ、このふざけたゲームに乗ってるヤツが居る事が問題だ……!」


    弐大「うむ……」


    本物の十神君とジェノサイダー翔は勿論だが、江ノ島さんにしても不気味だ……


    時刻はそろそろ正午になろうとしている。
    1週間の内の半分が過ぎようとしていた。


  210. 214 : : 2015/02/13(金) 17:48:46


    ────────



    苗木「……」


    まただ、また死んだ。


    桑田「あ、ああ……大和田、不二咲……!」


    舞園「そ……んな……!」


    山田「……」


    戦刃「御免なさい。私が……見張りを離れたばっかりに……」


    ボク……苗木誠が起きて見たのは、絶望の朝だった。
    不二咲クン……大和田クンが死んでいた。


    また、死んだ。
    また、止まらない。


    終わらない、コロシアイとコロサレアイ。



    そして、正午を回ると、突然として警報の様なサイレンが鳴り響く。



    鳴り終えると、あの忌々しい声が聞こえてきた。



    モノクマ『はぁ〜い! 皆殺しあってる? 死なせたり死んだりしてるぅ〜?』


    苗木「モノクマ……!!」


    コイツは何だ?
    何が目的でボクらにこんな事をさせる?


    モノクマ『さてさて、期日まで半分になりましたぁ〜! それにつきまして校則を追加します! お手元の電子生徒手帳をご覧下さ〜い!』


    ボクらは電子生徒手帳の『校則』の画面をフリックする。





    『五、1日範囲内の5ブロック以上の移動をしなければならない』




    苗木「……なんだこれ?」



    モノクマ『えーっとですね、引きこもってる生徒が多いので、なるべく会敵する様に義務を与えます! オマエラ、ちゃんと殺ってよぉ〜? この放送が終わってから24時間以内、つまり明日のお昼までにはこなさないと、キツーイオシオキがまってるからね! 以上でーす!』



    苗木「クソ……!」


    戦刃「……大丈夫、みんなで一塊に動けば」






    桑田「も、もうゴメンだ……ワリィけど、限界だ……!」


    苗木「桑田クン……?」


    桑田「お、オレは……死にたくねぇ!」


    ダッ! と桑田クンは走り去ってしまった。

  211. 215 : : 2015/02/13(金) 17:52:32

    苗木「桑田クン! くっ……」


    澪田「怜恩ちゃんが……!」


    戦刃「……私が連れ戻してくる」


    戦刃さんは、あらゆる面に置いて、責任を感じている。
    不二咲クンや大和田クンが亡くなった事に関しても……


    だから……


    苗木「まって、戦刃さん……ボクが行く!」


    戦刃「苗木君……でも」


    苗木「戦刃さん……もう少し、ボクらを頼ってくれないかな?」


    戦刃「苗木君……」


    狛枝「……ふふ、苗木君、それなら、ボクも着いていくよ」


    苗木「狛枝クン……」


    狛枝「5ブロックのノルマの達成したいし……ね、いいでしょ?」


    苗木「う、うん……」


    正直、命を助けてもらったし、何も言えないけど、狛枝クンは何だか苦手な気がする。


    戦刃「……じゃあ、お願い、苗木君、狛枝君」


    苗木「任せてよ」


    狛枝「さあ、行こう」



    ボクらは校門を抜け、真っ正面に進んでいく。


    桑田クンが走り去った方向へと歩みだした。

  212. 216 : : 2015/02/14(土) 13:45:04



    ────────


    霧切「……さて」


    日向君は責任を感じたのか、石丸君を探しに出てくれた。
    それに七海さんも着いていき、相手方のチームは罪木さんを残すのみだ。


    セレス「……さて、わたくしも散歩ついでに石丸君を探してきますわ」


    小泉「セレスちゃん、大丈夫なの?」


    西園寺「わ、私も行くっ。さっきの放送のヤツ……もあるし」


    小泉「ああ、そっか……だからか……」


    セレス「そう言うことですわね。ですから、ついでなのです」


    大神「お主……そう言うことならば、我も行こう」


    朝日奈「さくらちゃんが行くなら、私も行くよ!」


    霧切「……私は弐大君を見送った後で探すわ」


    豚神「俺も、弐大を見送った後で探す。それまで頼んだぞ」


    終里「オレもオッサンに付いていくぜ」


    罪木「わ、私はそのぉ……日向さん達が戻ってくるまで待ってますぅ」


    弐大「うむ、すまんの」


    各々の方針は決まった……


    先程の放送、皆も早めにノルマは達成しておきたいだろう。

  213. 217 : : 2015/02/15(日) 14:24:16


    霧切「……ああ、そうだ、小泉さん」


    小泉「ん? なに? 響子ちゃん」


    霧切「カメラ……予備でも良いから、何か持ってないかしら?」


    小泉「えっと……ああ、一応、レフとは別にデジカメがあるけど、それでいいかな?」


    霧切「ええ、構わないわ。ありがとう」


    小泉「ううん、所で、どうするの? それ」


    霧切「少し、ね」


    杞憂であれば良いが……確認しておくべき事がある。



    セレス「さて、では、そろそろいきますわ」


    弐大「うむ」



    各々が校門を出て、それぞれの方向へと向かった。




    ────────



    桑田「クソッ……クソッ!!」


    オレは、桑田怜恩はあてもなく走っていた。
    皆なんであんな平気で居られるんだ。


    葉隠が死んで、そして大和田、不二咲と死んだ。

    何処かで余裕があった。
    『自分が死ぬわけない』と。
    だが、大和田と不二咲が死んで、急にオレの背筋が凍りついた。
    次がオレなワケが無いと思ってたのに、急に現実味が増してくる。


    オレなワケがない……オレが死ぬわけない。


    と、


    石丸「……桑田、君……かね?」


    桑田「石丸……オメー……」


    酷く青い顔をした石丸に出会した。


    石丸「……兄弟は……大和田君と、不二咲君は」


    桑田「……」


    オレは何も答えられなかった。


    石丸「……やはり、そうなのか」


    石丸は知っているのだろう。
    2人が死んだ事を……でも、何処かで信じちゃ居なかった。

    ……信じたくは無いだろう。
    現物を見ちまったオレですら、信じたくはないのだ。


    石丸「……殺したのはやはり、十神君と腐川君なのだね?」


    桑田「……ああ」


    石丸「……そうか」


    そして、フラりと石丸は何処かへと行ってしまった。
  214. 218 : : 2015/02/16(月) 15:52:32


    ────────


    日向「……何処だ?」


    石丸を追ってきたが見当たらない。南側に下るも既に影はなかった。
    こちらとしても、早く見つけて本拠地の方に戻りたいが……


    七海「日向くん、あれ……」


    日向「……ん?」


    石丸の代わりに、ビルの壁際に寄り添い座る人物が居た。


    日向「……桑田、何をしているんだ?」


    桑田だ。


    桑田「日向と七海ちゃん、か……」


    七海「どうしたのかな?」


    桑田「その……」



    ♡100
    ★32



    大分落ち込んでいる様だ。


    日向「どうしたんだよ」


    桑田「オレ……ダッセェ話なんだけど怖くなっちまってよ。大和田と不二咲の死に顔見ても、いまいちピンと来ねえのに……それなのに怖くてよ……」


    日向「……」


    やはり、大和田と不二咲が……


    日向「こんなところにいると反って危ないぞ」

    桑田「そ、そうだよな。ハハ、何してんだろうな、オレ……」



    日向「それにな! 相手側の弐大ってヤツが腕輪を取ったんだ。外に助けに呼びに行くって言っていたぞ。まだ、希望はあるんだ」


    桑田「ま、マジかよ! どうやって……」


    七海「それはそうと、桑田くん。石丸くん見なかった?」


    桑田「それなら、西側に行ったぞ。ひどく落ち込んでたみたいだけど……アイツも大和田と不二咲の事を知っちまったんかな……? アイツら仲良かったからな……」


    日向「ああ、まだこのゲームに乗ってる奴がいるのが問題だ。お前は戻れ、俺達も石丸を見つけて相手側の本拠地に戻した後で、罪木と一緒に戻ってくる」


    桑田「わ、わかったぜ」


    桑田は立ち上がり、南側に下っていく。


    七海「日向くん、西側に行こう?」


    日向「そうだな」


    俺達も、石丸が行った方角へと向かう。


  215. 219 : : 2015/02/17(火) 17:52:05
    ────────



    桑田「……」


    オレは、桑田怜恩は南側に下る。
    そうだ、こんなところで死ぬわけがねぇ。
    日向の話が本当なら、その弐大ってヤツが腕輪を外して外に助けに呼びに向かい、オレ達は救助されるんだ。


    そうだ、オレは助かるんだ。



    と、








    ダァン! という音が聞こえた。


    桑田「……がっ!?」


    ♡82
    ★38


    なんだ? 何が起こった?

    左肩を撃たれたのか?
    グッと腕を押さえるが、血が止めどなく溢れてくる。


    桑田「が、あああああああああ!!」


    なんだよこれ、滅茶苦茶痛え。
    体が捩れそうだ。


    十神「フン、外したか」


    桑田「十神……テメェ……!」



    目前、30メートル辺りにソイツは居た。なんで気付けなかった?
    大和田と不二咲を殺した奴だ。





    ……いつか撮った写真が急にフラッシュバックする。


    あれは、江ノ島ちゃんが撮ったんだっけか。
    不二咲と、大和田と、オレが写った写真だ。




    もう、あの光景は写真の中だけの事かと思うと、何故か無性に腹が立ってきた。


    違う。


    これは『憎しみ』だ。


    この目前に居るヤツが酷く憎い。


    何故だろう、オレは一番オレが大事な筈なのに。

    この目前にいる十神に対して怒りが込み上げてくる。


    ダチが殺られた。ただそれだけで、オレの日常はもう戻らない。


    気が付いたら、あのケースを手にしていた。



    十神「貴様……」


    十神は間髪入れずに撃ってくる。オレは直ぐ隣の車へと身を隠し、


    そして、黒い立方体を手にして握る。



    溶け出す音が、オレに知識を流し込んできやがる。


    ……ダセェダセェと思ってたけど、やっぱ、これがオレの『才能』らしい。


    そうだ、凡人がどう足掻いても辿り着けない天才の頂にオレは居る。



    ただ、これだけが取り柄。
    ただ、これだけが裏切らない。



    桑田「十神ィィ!!」


    車裏からオレは叫ぶ。


    十神「……?」


    ヤツもどうやら、既に黒い立方体を使っているようだ。


    大和田と不二咲から盗んだヤツも合わせて、それなりにもっているだろうからな。


    だがな。


    桑田「オメエが立っているのは既に、オレのホームグラウンドなんだよ!」


    今のオレは、それが野球であるならば何でも出来る。

  216. 220 : : 2015/02/17(火) 17:55:32



    十神「フン、貴様の才能はどうせ『野球』だろう? 何をする気だ? ボールでも投げるのか?」


    桑田「ああそうだ、そーだよ十神、大正解だ。だけどよ」


    オレはゆっくりと、車の影からヤツの正面に出る。


    十神「バカが……!」


    容赦なく十神は銃を撃ってきた。


    だがな。


    桑田「けっ!」





    十神「……バカな!?」


    オレは弾を『捕手』してやった。
    そして、その弾を、


    桑田「返すぜ!」


    投げ返す。


    十神「がっ!?」


    ♡72
    ★20


    ヤツの左肩にぶつけてやる。
    『弾丸の様に』返してやった。


    十神「ちっ……! なんだそれは……!」


    桑田「言っただろーが、オメーはオレのホームグラウンドに立ってるってよぉ」


    そう、射程内ならばオレは『何でも野球に出来る』のだ。


    だから、


    桑田「オラ、額に当ててみろよ……このアホ!」


    十神「貴様ッ!」


    ガァン! と、十神はリクエスト通りにオレの額に弾丸をヒットさせた。







    桑田「かっ……!?」


    ♡0
    ★0



    十神「調子に乗るからだ……クズめ!」










    だがな、




    桑田「いってぇえええ!! クソがぁ!」


    ♡100
    ★32




    瞬時に蘇生する。



    十神「なっ……ば、化け物か貴様!?」



    桑田「野球のルールも知らねーのかよ、これだからボンボンはよぉ……スリーアウト取らねーとチェンジにはならねーんだよ」


    その命すらも野球のルールと化す。



    桑田「十神よぉ……『野球』でオレに勝てんのか?」


  217. 221 : : 2015/02/17(火) 17:57:20

    ────────


    Now loading……


    ────────




    校則


    ほぼ自由で有るに関わらず、存在するのは『ある名残』である。
    5ブロック制限にしても、実は1ブロック間を往復するだけで達成出来てしまう為、かなり穴の有る設定になっているのは、『黒幕』の余裕なのか、それとも……






    桑田怜恩のスキルブースト


    『野球選手』→『九心一体(ナインライヴス)



    打つ、捕る、投げるに関して制限が無くなる、何でも野球に出来るし、何をしても野球になる才能。
    『スキルブースト』時に限るが、2回まで死ぬ事が出来る。命のストックが許された唯一の才能であり、攻守共に正にバランスの取れた才能と言えるだろう。しかし、射程外からの攻撃はルールと見なされないため、命のストックも意味をなさない。





    ────────



    Now loading……



    ────────
  218. 222 : : 2015/02/17(火) 19:26:18
    桑田の才能はスキルブースターを使うたびに2回まで死んでオッケーなんですか?
  219. 223 : : 2015/02/17(火) 21:25:07
    桑田チートじゃん
  220. 224 : : 2015/02/17(火) 22:00:24
    桑田…ただのアポかと思っていたのに…
  221. 225 : : 2015/02/17(火) 22:02:02
    天敵とかは、やっぱり・・・セレスや石丸ぽそうだな。
  222. 226 : : 2015/02/18(水) 18:04:10
    >>222
    はい、使用毎にツーアウトまでOKです。
    ただ、射程の外からがルール判定外なので一撃死あります
    >>223
    多分、現段階で狛さんを除いて随一のチートでしょうねww
    >>224
    アポですが、才能は本物ですからねww
    >>225
    ヒント言うと『野球のルール』外だと一方的に攻撃されます。つまり投擲されないものは……
  223. 227 : : 2015/02/18(水) 18:08:07
    ───────


    銃声がした。


    苗木「何処から……!?」


    狛枝「まっすぐ北の方からみたいだね……」


    苗木「急ごう!」



    駆けていく。そしてそれは次第に明らかになっていった。



    狛枝「見て……」


    苗木「桑田クンと……十神クン?」


    膠着する闘いだった。


    十神「チッ!」


    十神クンが撃つ弾を、桑田クンが摘まむ様に掴み、そしてそれは十神クンに返すのではなく、検討違いな方向に投げられている。


    桑田「クソッ……! なんだこれ、十神のヤロウに向けられねえ!」



    苗木「桑田クン!」


    桑田「苗木か!」


    十神「クソ……ここまでだな」



    狛枝「逃がさないよ……」


    狛枝クンがゆらりと銃を十神クンに向ける。


    苗木「……! 狛枝クン!」


    殺しちゃ駄目だ。このゲームに乗ったら駄目だ。


    狛枝「大丈夫さ」


    そして、撃つ。


    十神「がっ!? クズ共め……!」


    ♡70
    ★20


    狛枝クンの放った弾丸が、十神クンの右腕を穿つ。


    狛枝「あれ? 銃が向けられない……」



    十神「……覚えていろ、愚民共」


    狛枝クンは銃を不思議そうに眺める中、十神クンは北側へと腕を押さえながら去っていった。



    苗木「……桑田クン!」


    桑田「苗木! すまねえな……オレ」


    苗木「いや、いいんだ……こんな状況なのがいけないんだ」


    桑田「オレは戻る……途中で日向と七海ちゃんに会ったぞ。石丸を見つけたら戻るらしい」


    苗木「石丸クン……?」


    桑田「大和田と不二咲の事……知っちまったんだろ。1回会ったが相当ショックだったろうな。オレだって……」


    大和田クン……不二咲クン……石丸クンとは仲が良かった。
    石丸クンは性格もあってか友達が少ない分、その友達をとても大切に思っていた。


    桑田「……そして、見てたと思うが十神には気を付けろ。敵だと分ければ容赦なくぶちこんできやがる」


    狛枝「心配には及ばないさ……それより、日向クンらが気になるね」


    苗木「そうだね……」


    もうひとつ、心配な存在がある……ジェノサイダー、そして江ノ島さん。


    この2人がやる気である以上、心配は収まらないだろう。




  224. 228 : : 2015/02/18(水) 18:11:59



    ────────



    弐大「ほいじゃあ、行ってくるからの!」


    北西の範囲外ギリギリの所にワシらは立っておった。


    丁度、右手側に公園らしきものが見える。


    霧切「……弐大君、これを持っていってちょうだい」


    そういって霧切が渡してきたのはデジカメじゃった。


    弐大「なんじゃ? ワシ、デジカメの使い方は知らんぞ」


    最近のカメラはシャッターを押すだけじゃないようで然程にもわからん。


    霧切「シャッターを1秒間押して、離すだけでいいわ、それで保存してくれる。それなら出来るでしょう?」


    弐大「うむ、しかし、何を撮ればいいのかの?」


    霧切「『変わった所』……なんでもいいわ。とにかく、何かに異常を感じたらそれを撮って貰えるかしら? 助けを呼ぶことが出来たら、それはそれで構わないのだけど」


    弐大「うむ、まあそういうならば良いがの」


    霧切のヤツは、何かを懸念しておるのか。
    ……じゃが、ワシも正直そうじゃ。


    終里「オッサン、気ーつけてな」


    豚神「何かあったらすぐに戻ってこい、わかったな?」


    弐大「わかったわかった! 何も心配いらんわい! がっはっはっはっ!」


    皆の腕輪が鳴り響いておる。恐らくは忠告、そして範囲外に出れば警告のブザーが鳴るという仕組み。


    だが、ワシにはその腕輪はもう着いておらん。


    範囲外に1歩、そして、1分待つ……




    弐大「……ふう、ヒヤヒヤするのぉ」


    炎上は、しない。
    やはり腕輪が花村を燃やしたという要因であったのじゃろう。

    つまり、ワシの思惑は成功したようじゃ。


    霧切「……それじゃあ」


    弐大「うむ」


    ワシは西側に進む。

  225. 229 : : 2015/02/19(木) 07:54:07
    弐大…大丈夫かな?
  226. 230 : : 2015/02/19(木) 17:38:48
    >>229
    う〜ん(震)
    実は扱いには結構迷いました
  227. 231 : : 2015/02/19(木) 17:48:00

    ────────


    石丸「……兄弟、不二咲君」


    どうしても信じることが出来ない。僕は、石丸清多夏は当てもなく途方に歩いていた。


    十神君や腐川君を憎むワケでもなく、ただただ、困惑するだけだった。



    石丸「……ん?」


    西の中点だろうか。建物の中、ガラス越しに何かある。


    石丸「……なんだこれは」



    ペンキか何かで赤い矢印が雑に描かれている。


    石丸「……『動かすな』?」


    ペンキで書かれ、下を指し示している様だが、何かあるのだろうか。



    僕は建物の中に入り、その下を覗く。


    石丸「……手記帳?」


    茶色い合革カバーの手記帳の様だ。


    それを手に取り、僕は1ページ目を目を通す。

  228. 233 : : 2015/02/19(木) 17:50:32



    『もしかしたらと思い、私はこれを此所に置く。誰かに見つかることを願う』


    ページを開く。


    『驚きだ、見つけたのは私自身だった。この事から、この事案は繰り返されている事が発覚する。記憶を消されたのか、それとも私は殺され、私はクローンといったモノなのか』


    ページを開く。


    『前ページの私が何回前の私なのか分からないが、超常的な力を使うのか?』


    ページを開く。


    『超常的な力は無かった。前ページの私がそういった力を使っていた様だが、今回はそういったものは確認されなかった』




    石丸「……なんなのだ、これは」


    文字からして、同一人物が書いている様だが、1ページ毎に違う誰かが書いたような印象も受ける。


    そして『何回前』とか『今回』とか……まるで、2ページ目の通り、何かを繰り返している様な


    『実験をする。この学区どの座標に置いても次回で確認が出来るか、生徒手帳のマップ機能からブロックのX1のY3』


    『島だったが同一の場所、X1のY3で確認』


    『不二咲君が他者共有仮想世界の中ではないかと予測した、大きな足掛かりになる』


    『大神さんが腕輪を外し、範囲外を確認してくれた。前ページの不二咲君の予測は正しい』


    開けば開くほど、それは不気味だった。


  229. 234 : : 2015/02/19(木) 17:55:25






    『今回は私が勝利した。勝利者に待っているのは絶望だけだ』



    石丸「……一体」


    僕は手帳を開いていく。



    『止めるまで、コロシアイをやめてはならない』


    『鼻からそういうゲームだった。希望は無い』


    『逃げ場はない、いや、私達に居場所すらないのだろう』










    『かむくらいずる、きをつけろ』







    石丸「……!?」


    かむくら、いずる……何なのだろうか?


    この奇妙な手帳を置く、一体何なのだ……書いた本人にしか分からないのではないか。


    そして、東側より声が聴こえてきた。



  230. 235 : : 2015/02/20(金) 19:27:25

    誰か居るのか……?


    僕は建物の中から顔を出す。


    今朝方、食堂に居た2人の様だ……


    日向「石丸!」


    七海「石丸くん」


    石丸「……君達は、日向君と七海君だったかね」


    日向「良かった……皆心配してるぞ」


    石丸「……すまなかった、取り乱したとはいえ、皆に心配をかけてしまった」


    七海「さ、本拠地に戻ろ?」


    石丸「その前に、ちょっと来てもらえないか? よく分からないモノを見つけたんだ」


    日向「分からないもの?」


    再び先程の建物に入り、手帳を手にする。


    石丸「君達はこれをどう思うかね?」


    ペラペラと日向君が覗く。


    日向「なんだこれは? わからないな」


    七海「……もしかしたら、わかる人が居るかも知れないよ? 持っていったら?」


    石丸「しかし、ここに『動かすな』と書いているが……」


    七海「またここに戻せばいいんじゃないかな?」


    石丸「それもそうだな! よし、持っていこうではないか!」


    僕らは再び本拠地に戻る。

  231. 236 : : 2015/02/20(金) 20:15:15

    ────────


    朝日奈「外……こんなことになっちゃってたんだ」


    3日目にして、私、朝日奈葵が初めて見る街並みは廃墟そのものだ。
    でもなんだろうか、よく見た街並みの筈なのに、廃墟という事を除いて違和感を感じる。


    セレス「何処かに紅茶の専門店は無いものでしょうか?」


    小泉「そういえば、東側には百貨店があるって言ってたよね」


    西園寺「ホントなの? 行きたーい!」


    大神「うむ、ではそこに向かうとしよう」


    朝日奈「うん、いこういこう!」


    私も含め、何処か能天気な私達は東側にあるという百貨店を目指した。


    さくらちゃん以外はまだ、校舎から動いたことがない。


    丁字路を東に進み、やがて大きな建物が見えてくる。
    昔からある老舗で、私達ら学生といった若い人向けではなく、どちらかというと中高年の人が行くような老舗の百貨店だ。

    西園寺「中……暗いね」


    小泉「そうだね……」


    内装こそは綺麗なままだが、照明は落とされてて、とても暗い。


    朝日奈「さくらちゃん……」


    大神「朝日奈よ、安心しろ、我が居る」


    さくらちゃんが側に居る、これなら何があっても平気だ。


    セレス「……2階に茶葉の専門店がありますわね。行っても宜しいでしょうか?」


    皆、動かないエスカレーターを昇り、茶葉店を目指した。


  232. 237 : : 2015/02/21(土) 20:20:25


    セレス「あった、ここですわね」


    色とりどりの茶葉がガラスのショーケースに入れられ、高そうな茶葉の缶が棚に収まっている。


    セレス「さて、あとはミルクですが……校舎に有るものでいいでしょう。皆さんは何か後用事があるのでしょうか?」


    西園寺「お着物見たいけど、お腹空いたぁ……」


    小泉「あ、そろそろ3時か……」


    朝日奈「ホントだ……結構歩きまわったからね」


    大神「うむ……ぬ?」


    さくらちゃんが急に振り返る。


    朝日奈「どうしたの? さくらちゃん」


    大神「皆、逃げる用意をしろ……!」


    小泉「えっ?」


    西園寺「な、何よ? どうしたの?」

    朝日奈「さくらちゃん……?」



    カツン、と、足音が聞こえた。


    大神「何者だ?」


    さくらちゃんが迫る影に声を掛ける。



    そして、スッとそれは現れた。









    苗木「お、大神さん……? よかった」


    朝日奈「な、苗木……!」


    何だか久しぶりな苗木だった。ちっとも変わってない……まあ、3日ぶりほどだし、そりゃそうだけど。


    大神「……苗木であったか、久しく感じるな。無事であったか」


    セレス「あらあら、苗木君、ごきげんよう」


    苗木「みんなも無事で何よりだよ」


    小泉「葵ちゃん、誰なの?」


    朝日奈「私達のクラスの苗木! まあ、人畜無害な奴だから大丈夫だよ!」


    苗木「よろしく!」


    小泉「よろしくね、アタシは小泉真昼」


    西園寺「よろしくねー、ちんちくりんなおにぃ」


    苗木「はは、酷い言われようだな……」


    何だか少しだけ、日常が戻った気がする。


    朝日奈「それより、苗木はなんでここに?」


    苗木「あ、えっーと……」


    大神「ひょっとして、日向らを探しているのか?」


    苗木「うん、帰りが遅くて心配でね……」


    セレス「石丸君を探しに行きましたので、すれ違いになったのでしょうね」


    日向達は無事に石丸を見つけたのか、確かに心配だ。こっち側には来てないみたいだし……


  233. 238 : : 2015/02/22(日) 19:08:10


    苗木「みんなは何を?」


    セレス「わたくし達はお散歩のついでに石丸君を探しているだけですわ」


    苗木「へぇ……もしかしたら、もう見つかったんじゃないかな?」


    朝日奈「だと良いけど……それより苗木、お腹すいてない?」


    苗木「ああ、そういえば朝から何も食べてなかったな」


    朝日奈「じゃあ、ほら、外に出ようよ」


    私達はさくらちゃんを先頭に、苗木を一番後ろにつけて外に向かう。


    ……2階のエスカレーターを降りた時だった。


    大神「むっ? 苗木は何処に?」


    振り返ると苗木が居なかった。


    小泉「あれ? 日寄子ちゃんも居ない」


    西園寺ちゃんの姿も見えない。


    周りを見渡すと、壁際に化粧室に続く通路がある。


    そこから、燈色の着物を来た西園寺ちゃんが出てきた。


    小泉「あれ? 日寄子ちゃん、トイレに行ってたの?」


    西園寺「そうだよ?」


    朝日奈「……苗木は?」


    西園寺「苗木おにぃもトイレだって」


    大神「まったく、一言言って行けば良いものを……」


    朝日奈「ホントそそっかしいんだから……」


    セレス「本当、はしたないですわね」



    でも、しばらくしても苗木が戻ってくる気配が無い。


    小泉「おかしいね……流石にもう戻ってくるでしょ?」


    大神「うむ……流石に遅すぎるな」


    小泉「アタシ見てくるよ!」


    西園寺「あ、おねぇが行くならあたしもー!」


    そして、私とさくらちゃん、セレスちゃんが近くのベンチに座り、3人を待った。


    そして、今度は小泉ちゃんだけが出てきた。


    大神「2人はどうしたのだ?」


    小泉「難産だって」


    朝日奈「もう、苗木ったらサイテー!」


    と、


    終里「あ? こんな所に居たのかよ。霧切に連絡あって、石丸見つかったってよ」


    大神「そうか、良かった……」


    終里「それにしても……なあ、小泉」


    小泉「な、なに?」







    終里「何でお前から『血の臭い』がするんだ?」








  234. 239 : : 2015/02/22(日) 23:28:51

    大神「……!?」


    終里ちゃんの言葉にギョッとした。


    大神「……小泉、2人は本当にトイレか?」


    小泉「ほ、本当だってば」


    ギロリ、と大神さんが小泉さんを睨む。


    終里「それに、トイレからも血の臭いがすんだよな」


    犬の様に鼻をひくつかせ、終里ちゃんはトイレの方へと向かっていく。


    小泉「……」


    セレス「あら、小泉さん、どちらへ?」


    明らかに挙動がおかしいの小泉さんにセレスちゃんは、冷ややかな視線を送る。


    大神「……朝日奈よ、終里と見てきてはくれぬか?」


    朝日奈「う、うん……」


    私は恐る恐るトイレの通路方向へと向かう。丁字路になっていて、女子化粧室が左手側、男子化粧室が右手側にある。


    そして、その丁字路の端にそれはあった。


    朝日奈「あ、ああ……!」


    終里「ウソだろ……!」








    西園寺ちゃんの喉に深くテーブルナイフが刺さり、そして、小泉ちゃんにも同じ様にテーブルナイフが喉に深く刺さっていた。


    朝日奈「じゃ、じゃあ……あの、小泉ちゃん……誰……?」


    解っている。



    あれは苗木だ。


    ……いや、小泉ちゃんに化けている以上、苗木にも化けていたのかもしれない。



    朝日奈「さくらちゃん! セレスちゃん! 逃げてぇぇ!!」


    叫んだその瞬間、銃声が2つ鳴った。

  235. 240 : : 2015/02/23(月) 19:40:35

    ダァン! ダァン! と、発破音が店内に木霊した。


    大神「がっ!?」


    朝日奈「さくらちゃん!」


    急いで通路を戻り、その光景を目の当たりにした。






    小泉?「くっ……!」


    ♡78
    ★10


    大神「……ぐっ!」


    ♡88
    ★32


    セレス「……」


    ♡100
    ★32



    最初の銃声はセレスちゃんだった。
    セレスちゃんの持つ拳銃(コルトパイソン)から硝煙が漏れている。


    そして2発目は小泉ちゃんに化けている奴の持っている拳銃からだ。


    ……さくらちゃんの急所に目掛けて撃とうとしたけど、セレスちゃんの先手によって、撃ち仕損じたんだろう。


    互いの銃弾は、小泉ちゃんに化けた誰かは左肩を掠め、さくらちゃんは右肩を掠めている。


    セレス「失礼」


    小泉?「ちっ……セレス、アンタ、最初から気付いていたのね?」


    セレス「ええ、違和感はありました。しかし、確信が持てなかった、そこのトイレに向かった朝日奈さんに、気をとられていた大神さんに銃を向けるまでは……」


    小泉?「アンタも見るふりをして、その実、こっちを流し目で見てたわけだ……」



    セレス「お忘れですか? わたくしはギャンブラーであり、勝率を上げる為に、あらゆる(すべ)を身に付けてきました。無論、仕草から心理を読み取る等……」


    小泉?「それで、アンタはアタシを看破したってワケ?」


    そして、セレスちゃんは小泉ちゃんに化けた誰かに対して。




    セレス「ええ、そうですわ。江ノ島さん?」







  236. 241 : : 2015/02/23(月) 21:08:44


    ────────


    少し時間を戻し、振り返る。


    アタシは桑田と十神の一戦を観察した後、北東側を上る途中に5人組を見つけた。



    ああ、そうか。
    さっきの放送で、引きこもり共が出て来たワケだ。


    次いでだから、サクッと殺ってしまおう、と、思い立ったら吉日だ。


    あのデブの十神のスキルブーストが役に立つだろう。


    相手チームがどう動いてるか分からない以上、相手側の人間に化けるのは得策ではない。


    ……となると、こちらチームの、大神、朝日奈、セレスが信頼を置く人間が良いだろう。


    そうなれば、苗木しかいない。


    誰とでも仲の良い、どこまでも平和ボケしたアイツの姿なら、アイツらも警戒しないだろう。


    ましてや、大神がいる、大神は厄介だ。


    あの辺古山とかいう女との一戦、大神は恐らく、肉体の硬化、辺古山のスキルブーストによる一刀すら弾く肉体は、こんな銃なんか通用しないだろう。


    スキルブーストを使う前に仕留めなければならない。


    それに、他の連中のスキルブーストも未知数だ。


    ……雑魚だと思っていた桑田があんな反則だとは正直思いもしなかった。


    本物の十神に関しても、使いようではかなり強い。


    大神以外のも分析しておきたいが、流石に5人を一度に相手するのはキツいだろう。


    5人組が百貨店に入るのを見計らい、アタシはその後をつける。




  237. 242 : : 2015/02/23(月) 21:42:50


    まずは食器のコーナー、テーブルナイフを何本か拝借。


    残念ながら、音の出ない武器を持ち合わせて居なかった。チクショウ、やっぱりクロスボウ取っとくんだった。


    さて、スキルブースターを飲み込み、そして、もう1つを手に取り、念じる……


    分析したデブ十神の才能を使う。


    鏡を覗いても完璧に苗木だ。


    さて、ヤツらの前に姿を出してやろう。





    大神「……何者だ?」


    大神に悟られた。


    まあ、ここまでは予測通りだ。


    適当に話を合わせ、皆で外に出る事になる。


    歩幅をわざと遅くし、大神を先頭にセレス、朝日奈、そして小泉、西園寺ってヤツの後ろにつく。


    エスカレーターを降りた付近、左手側すぐに化粧室に続く通路がある。


    前方側にとって死角になるだろう。



    西園寺「むぐっ!?」


    前を歩く西園寺の口を塞ぎ、隠し持っていたテーブルナイフを逆手に持ち、静かに突き立てる。


    ……なるべく血を噴き出させない為、ナイフを深く押し込み、裂け口をナイフを握る手の小指球で抑えた。


    この薄暗さならば、わずかな血が落ちたところで気付きはしないだろう。


    西園寺「〜〜〜〜〜ッッ!!」


    断末魔は上げさせない。グッと、彼女の顎が折れる程に口を抑える。



    そして、力無く項垂れたところを、通路側に引き摺り、丁字路の端に放る。


    さて、苗木の姿は用済みだ。次はこの女に化ける。





  238. 243 : : 2015/02/24(火) 18:25:12


    デブ十神の才能はおおよそ20分前後は恩恵が続く。


    私の分析したスキルブースターの中で最も長いだろう。


    各々の才能には恩恵の時間に差がある。


    元々武闘派とも呼べる才能のスキルブースターは10分前後、これが平均的な長さであり、桑田なんかの反則級のモノは5分程度だろう。


    直接的な殺傷に関わらなかったり、現象を引き起こすモノが20分前後、このデブ十神と本物の十神、燃えカスになったデブの小男なんかがこれに当たる。


    そして、それはアタシもだ。


    しかし、恩恵の短いモノに切り替えると、その時間に設定され直される。もちろん、20分のモノを17分使ったとして、残り3分で5分のモノを使用したとして、2分伸びるワケでもない。


    さて、本題に戻ろう。


    この西園寺に化け、皆の前に姿を現す。


    小泉「あれ? 日寄子ちゃん、トイレに行ってたの?」


    アタシは「そうだよ」と適当に頷く。


    戻ってくるはずもない苗木を待ち、10分が経過する。


    いくら腹に次弾があるとはいえ、流石に時間がヤバい。


    そろそろ誰かがシビレを切らす所だが……




    小泉「おかしいね……もう戻ってきてもいいでしょ?」




    ほら来た。やはり、アタシの分析は完全無欠だ。



  239. 244 : : 2015/02/24(火) 20:15:15


    小泉「アタシ見てくるよ!」


    さて、2人目だ。


    あたしは、小泉についていく。



    そして、トイレの通路側の端、果てた西園寺を小泉は見つけ、口で手を押さえた。


    小泉「えっ……ウソ……日寄子ちゃん? なんで……!?」


    叫び声は上げさせない。


    元の姿に戻り、小泉の口を塞ぐ。


    小泉「ッッ!?」


    そして、テーブルナイフを喉に穿つ。


    小泉「〜〜ッッ!? 〜〜〜ッ!!」


    声を上げさせない。そのまま音も無く、全力で喉を、静脈を穿つ。



    ……? なんだコイツ、血が出ない。



    小泉「……」


    ♡0
    ★27


    おかしい。間違い無く死んだはずなのに、絶望チェッカーが生きている。


    ……どういうことだ?


    まあ、いい。
    ここまで行けば、些細な計算ミスもあるだろう。もしこの女が『そういうスキルブースター』だとしても問題ではない。


    再び腹の中のスキルブースターを使い、ポケットから次弾を投入しておき、この小泉に化けて、3人の所へと戻った。





  240. 245 : : 2015/02/24(火) 21:51:13



    終里「あ? こんな所に居たのかよ。霧切に連絡あって、石丸見つかったってよ」


    思わぬ客だ。しかし、想定内。




    終里「それにしても、なあ小泉……なんでお前から『血の臭い』がするんだ?」


    ……想定外だった。
    この女……大神が名前を漏らしたが、終里と言ったか? 鼻が異常に効く様だ。恐らくは、西園寺の血が何処かでついたのだろう。


    暗がりだから気付かなかった。


    朝日奈と終里がトイレへと向かった……仕方ない、作戦変更。


    今、この場で大神は仕留める。



    朝日奈の方に大神とセレスは気をとられている。殺るなら今だ。



    スッと拳銃を取りだし、そして、



    セレス「ふふ、化けの皮が剥がれましたわね」


    セレスが呟くのが聴こえた。


    銃を向けるのはほぼ同時、いや、セレスの方が弱冠早かった。


    朝日奈「さくらちゃん! セレスちゃん! 逃げてぇぇ!!」


    銃声が2発木霊する。


    朝日奈の声と同時に引き金を引いた、が、


    ……撃たれた。狙いも大神の急所を逸れて致命傷には至らない。



    ……失敗だ、以外な伏兵が潜んでいやがった。


    セレス……安広多恵子、ギャンブラーとしての才覚、『絶対に相手から目を逸らさずに、目を逸らすフリをする』という術……イカサマの看破に使えるだろう。


    私はしてやられた。


    更にだ。



    セレス「ええ、そうですわ。江ノ島さん?」



    なかなか、絶望的な展開にあたしは興奮をポーカーフェイスで隠した。

  241. 246 : : 2015/02/24(火) 23:06:31


    ────────


    私、朝日奈葵は小泉ちゃんが粘土みたいに違う形に成っていく所だった。


    大神「江ノ島……貴様!」


    江ノ島「あー残念……! 折角苦しまずに全員あの世送りにしてやろうと思ってたのに……サ!!」


    江ノ島ちゃんが何かを投げる。


    それは、テーブルナイフ。さくらちゃんは咄嗟にかわし、体勢を低く構え、江ノ島ちゃんに突進する。


    江ノ島「おっと!」


    それを軽やかに江ノ島ちゃんは、跳び箱の要領でさくらちゃんを飛び越える。


    大神「ぬっ!」


    江ノ島「肉体の硬化って凄いなー大神、痛みをあんまり感じないや」


    ……? 江ノ島ちゃんは何て言った?


    大神「貴様、まさか……」


    江ノ島「私様のスキルブースターは『分析』なのじゃ! 一見すればその全てを使えるのだぞ! ひれ伏すがよい人間!」


    手を腰に添えて「どうだ」という表情で江ノ島ちゃんは言った。


    スキルブースター、この黒い立方体の事だろう。


    大神「ならば……」


    さくらちゃんもまた、あの黒い立方体を握り、その握り拳から煙を漏らしながら、それを再びポケットに戻した。


    江ノ島「来たねぇ……だけど、これならどうだ!」



    指をならす。と同時に、江ノ島ちゃんの手前の床に何か淡い光が見えた。


    大神「なんのつもりだ……!」


    再びさくらちゃんが突進し、拳を振り上げる。そして降り下ろすが、中々江ノ島ちゃんに当たらない。


    江ノ島「流石に素で避けるのはキッツいけど……!」


    床の淡い光が消える。すると、




    大神「ぐっ!?」



    上から何か落ちてきた。そして、床に鋭い傷痕を作る。


    朝日奈「さくらちゃん!」


    落ちてきたのは、見えなかったけど、多分、ギロチンの様な刃物だ。


    大神「くっ!」


    さくらちゃんが下がる。スキルブースターの力なのか、さくらちゃんには切り傷1つついてない。




    終里「俺も混ぜろよ……!」


    いつの間にか終里ちゃんが走り、高く跳び、江ノ島さん目掛けて跳び蹴りを放つ。


    江ノ島「雑魚はすっこんでなぁ!」


    江ノ島さんがそれを手で受け止めて、


    終里「うおぁ!?」


    振り回して投げ飛ばす。



    終里「痛ぇぇ……なんだ、アイツの力……? 弐大のオッサン並じゃねえか?」


    違う、恐らくはあのスキルブースターの力なんだ。



    大神「腕力まで我と同等か……!」


    江ノ島「さぁ? まあそんくらいじゃない?」


    私も、さくらちゃんの力にならなきゃ……手には小さいマシンガン(ウージー)……私は江ノ島さんにそれを向ける。








  242. 247 : : 2015/02/24(火) 23:30:02


    朝日奈「も、もうやめてよ! 江ノ島ちゃん……!」


    江ノ島「あっ? なんだよ朝日奈ァ……オレに銃向けてよ……良いぜ、撃ってこいよ! ぎゃっはっはっは!!」


    朝日奈「うああああ!!」


    引き金を引く。オレンジ色の線が江ノ島ちゃんにぶつかっていくけど、それら全てが弾かれる。


    朝日奈「う、うそ……」


    江ノ島「終わった? あー痒い痒い」


    デタラメだ。銃が江ノ島ちゃんの体にかすり傷すら負わせないなんて。


    大神「複数同時にスキルブースターの力を引き出すのか……!」


    江ノ島「いや、そりゃ無理。だからさっきの包丁落とすヤツの時は大神の攻撃避けてたじゃん。大神のスキルブースターなら、ガチの殴り合いもできるんだしさぁ。ただ切り換えは自由自在なだけさ」


    説明を垂れ流すのは余裕なのか……不敵な笑みを江ノ島ちゃんは浮かべている。


    セレス「そうですか。ならば対抗するにはわたくし達も、使わなきゃならないということですわね」


    セレスちゃんが黒い立方体を握っている。


    終里「ああ、良いこと聴いちまったな」


    そして終里ちゃんもまた、握る。



    大神「覚悟せよ、江ノ島……!」


    私も……黒い立方体を取り出す。



    江ノ島「良いねぇ良いねぇ! チョー絶望的ィィイイ!!」


    江ノ島ちゃんはここで止めないと、西園寺ちゃんみたいに……小泉ちゃんみたいに犠牲が増える。


    止めなきゃならない。


    私達が!



  243. 248 : : 2015/02/25(水) 00:13:35


    終里「っひゃぁ〜! スッゲェ……いっくぜぇ……!」


    大神「終里よ、併せよ!」


    終里「良いぜぇ!」


    終里ちゃんが飛び上がり、吹き抜けの4階に足を着ける。


    人間の跳躍力を遥かに超えた脚力だった。


    大神「ぬあああ!!」


    終里ちゃんが4階に跳び上がると同時に、さくらちゃんが大砲の弾の様に突進し、江ノ島ちゃんに拳を突き掛かる。


    江ノ島「うひゃ!」


    拳を捌き、江ノ島ちゃんがさくらちゃんに発砲を繰り返す。

    ゼロ距離の肉弾戦、まるでハリウッド映画のヒーローアクションモノでも見てる気分だ。


    終里「頭上ががら空きなんだよぉ!」


    4階の壁を蹴り、流星の様な蹴りが江ノ島ちゃんに降り注ぐ。


    江ノ島「甘えんだよ!」


    江ノ島ちゃんがステップを踏むようにそれを避け、終里ちゃんの蹴りは1階の床を叩き割りつつ、間髪入れずに回し蹴りを放つ。


    2人対1人の組み手、片や蹴り、片や殴り、そしてそれを避けながら2人に対して発砲をする。


    器用にも弾を装填しながら避け、撃つ。


    セレス「お2人ともお下がり下さいませ」


    セレスちゃんが銃を江ノ島ちゃんに向ける。

  244. 249 : : 2015/02/25(水) 02:09:28


    江ノ島「はぁ? 銃であたしが傷つく訳が……」


    セレス「ええ、ですから、わたくしとテキサス・ホールデム( ポ ー カ ー )を致しましょう」


    向けた銃をしまう、セレスちゃんは微笑む。


    江ノ島「はぁ? 何言って……?」


    2人はいつの間にかトランプを持っていた。


    江ノ島「いつの間に……?」


    セレス「ふふ、わたくしのスキルブースターはどうやら『遊戯を強いること』らしいですわね」


    そして2人の間にまたしてもトランプが5枚……浮いている。


    セレス「そうですわね、手堅く『左手』をベット致しましょう」


    『左手』を……ベット?


    江ノ島「なんだこれ、動けねえ……コールすりゃいいのか?」


    セレス「ええ、イカサマ出来ない様にですわ。確かにコールされましたわね……フォールドしてもコールしても勝ち負けは一度切り、オープン」









    江ノ島「……くッ! ハイカード( ブ タ )だ」







    セレス「スリーカードですわ……では、『左手』を頂戴します」



    瞬間、江ノ島さんの左手首から下が、『消えるように千切れた』のだ。


    江ノ島「ぎっ……!? セレスゥ……!! 良い才能じゃんか……!!」


    ♡52
    ★22


    セレス「ええ、ただわたくしの才能はこの1ゲームのみ、後は皆さんにお任せいたしますわ」


    セレスちゃんの才能もデタラメだ。賭け事を強き、江ノ島ちゃんの左手を『奪う』事で弱体化を図った。


    大神「江ノ島よ、諦めよ」


    終里「左手が無いんじゃ2人相手に勝負にならんぜ?」



    江ノ島「やっだぁ〜マジでマジで超ピンチってヤツかな? きゃるん☆」


    何処にそんな余裕があるのか、どこまでもふざけた調子の江ノ島ちゃんは底が見えない不気味さだった。






  245. 250 : : 2015/02/25(水) 18:50:30


    江ノ島「諦めるワケねーじゃん、バァァーカ!」


    大神「……ならば仕方あるまい」


    江ノ島「大神、あたしがずっと防戦一方だと思うなよ?」


    さくらちゃんが再び拳を振り上げる。


    そして……


    大神「……ぬっ!? 何故だ……目線が江ノ島から逸れる……!」


    終里「俺もだ……! なんだこれ?」


    江ノ島「スキルブースター中に一度でも敵意を向けたら、二度と敵意を向けられない、か……緊急回避には持ってこいだわ」


    それはきっと、誰か別の人の才能なんだろう。2人は硬直し、江ノ島さんは、右手でベルトに挟んでいた何かを取り出す。


    ……サバイバルナイフの様にも見えるけど、もっと……なんか機械的だ。


    江ノ島「辺古山ペコ、だっけ? アイツの武器は日本刀じゃなくて、実は、こっちの『柄』に有った」


    大神「なんだと……!」


    江ノ島「アイツは知らなかったのか、それとも使わなかったのかは知らない。でもね」


    バッ! と、さくらちゃんの腕に斬かかり、さくらちゃんはそれを腕で防ぐ。


    大神「銃弾すら弾く今の我の体に、そんな刃物が通るとでも……」


    江ノ島「そう……でしょうか……?」


    コロコロと変わる江ノ島ちゃんの表情、しかし、口元を吊り上げ、不敵な笑みは消えない。




    大神「ぬぐぅ……!?」


    ♡68
    ★20


    朝日奈「さくらちゃん!」


    さくらちゃんの腕が傷付いた。普通に、ナイフで切られるみたいに。







    江ノ島「あっはっはっ! やっぱりなぁ。なぁ大神……高周波震動剣(ヴィブロブレード)って知ってっか?」




  246. 251 : : 2015/02/25(水) 20:11:23


    びぶろ? ぶれーど?


    江ノ島ちゃんは謎の単語を並べる。


    大神「……なんだ、それは」


    江ノ島「まー、アニメとか見てなさそーだしな大神……架空の兵器さ」


    架空の、兵器?


    江ノ島「高周波で刃を震動させて、物体を『切削』する剣のこと、実際するものでも医療の現場なんかで超音波振動メス(ハーモニックスカルペル)なんかあるわな」


    手をヒラヒラとさせて、得意気に話す……江ノ島ちゃんは本当にただのギャルじゃないの? まるで、何でも知り尽くしてるかの様にたち振る舞っている。


    江ノ島「ドゥーユーアンダスタン? なんつって、あっはっはっ!」








    江ノ島「さて……反撃といきますか」


    駄目だ、やらせない。
    さくらちゃんをこれ以上、傷付けさせない。


    朝日奈「……江ノ島ちゃん、もう、あの『江ノ島ちゃん』じゃないんだね」


    江ノ島「はぁ? 寝ぼけるでないぞ人間! 私様は天上天下唯我私様なのだぞ!!」



    違う、もう『クラスメートの江ノ島ちゃん』なんかじゃない。


    江ノ島ちゃん……江ノ島盾子は『敵』なのだ。


    最後の最後まで、西園寺ちゃんも小泉ちゃんも殺されても直、私は何処かで信じたかった。



    でも、もう、無理。



    私の黒い立方体が煙を上げて溶け出した。

  247. 252 : : 2015/02/25(水) 20:55:26
    江ノ島強い!!さすがですね
  248. 253 : : 2015/02/25(水) 22:06:21
    >>252
    分析力って様は聖闘士みたいな一度みた技は通じないみたいなもんだと思ってます(震え声
  249. 254 : : 2015/02/25(水) 22:43:49


    この中で、唯一、彼女に敵意を向けて攻撃してないのは私だけ。


    ならば、私が行くしかない。


    私に付加する才能は……やはり『泳ぐ事』だ。


    朝日奈「さくらちゃん、終里ちゃん、セレスちゃん、離れて……!」


    私の一声で道が開けた。


    江ノ島「へぇ……何をするんだ? 朝日奈ぁ」


    銃を私に向けて発砲する。


    私はすかさず『ダイブ』する。



    江ノ島「……消えた!?」


    ダイブして泳いだ先、さっき江ノ島ちゃんがナイフを投げた場所から、ナイフを回収する。


    江ノ島「そこか!?」


    振り向き、再び私に発砲、私は地面に『ダイブ』する。


    地面の中を泳ぐワケじゃない。


    私が泳ぐのは『別次元(虚数空間)』つまり、泳ぐという形の『テレポート』だ。


    江ノ島「くっそ……朝日奈ぁ……お前も反則級かよぉ!」



    ……映画の『ジョーズ』の気分だ。


    もちろん、私がホオジロザメ。



    朝日奈「江ノ島ちゃん……ごめん!」



    江ノ島ちゃんの背後に出て、私は思いっきりナイフを江ノ島ちゃんの背中に刺した。



    江ノ島「いっ……!?」


    ♡30
    ★25



    江ノ島「はっ……はっ……はははは!! いい! 雑魚だと思ってた連中がことごとく反則級だなんて! 絶望的ぃ〜!!」


    そして、私にまだ発砲してくる。


    私は『ダイブ』して弾をやり過ごす。


    朝日奈「……江ノ島ちゃん、もうやめよう?」


    江ノ島「まだ……はぁ……はぁ……ああああ!! 痛ぃぃいいい!! 超痛ぇええええ!!」


    私が刺した背中、無くした左手の千切れた部位から血を噴かせ、江ノ島ちゃんは狂気を撒いて、未だ銃を握る。


    大神「死ぬぞ……お主!」


    江ノ島「はぁ? もう……駄目に決まってる……だったらせめて1人だけでも絶望を……!!」




    と、





    江ノ島「がっ!?」



    大神「なっ!?」


    終里「はっ?」


    セレス「まぁ……!」



    第三者が、江ノ島ちゃんの首に、何かを巻き付け、締め付ける。





    江ノ島「お、ま……え……それ、が……」


    ♡12
    ★30








    「よくも……日寄子ちゃんを……!」




    朝日奈「……小泉、ちゃん?」



    死んだはずの小泉ちゃんだった。


    私は確かに、小泉ちゃんの遺体を見たのに。


    小泉ちゃんは吐血を堪えながらも、江ノ島ちゃんの首を、カメラのストラップで締め上げる。
  250. 255 : : 2015/02/25(水) 23:08:04



    江ノ島「ぎっ……がぁ……!」


    ♡2
    ★30


    小泉「よくも、よくも……!」


    ♡22
    ★97









    江ノ島「……」


    ♡0
    ★0



    江ノ島ちゃんは、動かなくなった。




    小泉「がはっ……! ごほっ……!」



    ♡18
    ★97


    小泉ちゃんが膝を突き、咳と共に吐血する。


    大神「いかん! 皆、小泉を罪木の所へ……!」


    朝日奈「う、うん!」


    終里「小泉! しっかりしろ!」


    セレス「急ぎましょう……!」


    さくらちゃんが小泉ちゃんを抱えて、私達は、動かなくなった江ノ島ちゃんを尻目に百貨店を後にした。





    ……何故だろうか、動かなくなったハズの江ノ島ちゃんに寒気を感じながら。




    ────────





    弐大「……なんじゃ、こりゃ」



    ワシが、弐大猫丸が範囲外に出て1キロくらい歩いた先じゃった。



    それはただ、あまりにも絶望的な光景で開いた口が塞がらず、ワシは思わず膝を突いてしまった。











    崖、じゃ。




    この街は崖の上にあった。ネズミ返しの様になっており、とてもじゃないが下ることは不可能、更にだ。


    崖の下は何も見えなかった、ひょっとしたら、底が無いんじゃないかという位に。


    ……霧切の懸念は当たった。


    ……それもそうじゃ、気付くべきじゃった。


    ワシらを閉じ込めた黒幕からしたら、腕輪を外した事は本来非常にマズイ事のはず、あんな大々的にやったにも関わらず、お咎め無しの上、こうもあっさり範囲外に出れた時点で気付くべきじゃった。



    元々、ワシらに脱出なんて出来なかったということを。

  251. 256 : : 2015/02/25(水) 23:50:09



    弐大「……まさか、こんな事だったとはのう」



    崖の穴だが、ワシらのおるこの街以外、全てが『穴』じゃった。


    ……ワシはとにかく、霧切に言われた通りにこの風景をカメラに収める。


    といっても、見えるのは穴と空の境界線ばかり、本当に『変わった』写真じゃ。



    ……やはり、ワシらに残された道は一つしかないのか。




    ワシは来た道を再び戻っていく。


    ……出来るならば、こんな凶報を伝えとうはなかった。



    ────────





    江ノ島「……」


    ♡0
    ★0








    江ノ島「ぶはっ!」


    ♡100
    ★10



    いやいや、『死ぬ』なんて中々貴重な経験だった。


    桑田のスキルブースターを見といて正解だった。


    さてさて、あたしがこんな所でくたばるワケが無いわけで。


    それにしても、西園寺を除いて全員がスキルブースターを見せてくれるなんて大漁大漁。


    大神のは知っていたが、朝日奈は泳ぐという形の『テレポート』にセレスは『強制賭博』、終里は多分『身体能力の向上と跳躍力』って所だ。



    そして小泉、意外なスキルブースターだったな、あれは恐らく……『命の転写』だろう……『どっかに一時的に命を預けておいた』のだろう。


    正に『究極の死んだフリ』だ。


    桑田のモノと違って命をストックするわけじゃない分、戻るときに肉体のダメージが還元される、原因はあたしの爪が甘かった事。


    死んだと思い、ナイフの刺さりが思ったより浅かった様だ。



    ……さて、あたしは死んだ事になった。スキルブースターも多く分析出来た、これからは更に自由に動ける。









    まったくもって、予測通りだ。






  252. 257 : : 2015/02/26(木) 12:45:04

    ────────


    Now loading……


    ────────



    終里赤音のスキルブースト


    『体操部』→『制空者(アイテール)

    才能としては微妙だが、本人が好戦的で武闘派であり、身体能力の向上、主に跳躍力が上昇した。
    放たれる蹴りは必殺に近い。




    セレスティア・ルーデンベルクのスキルブースト


    『ギャンブラー』→『狂奔博徒(ヘルメス)


    射程間の相手に遊戯を強制し、勝負が付くまでお互い動けなくなり、そして勝った方に賭けたものを奪われるという一連を生み出す才能、射程間の人間もまた、動けなくなる。


    掛けるものが大きいほど、自分にも災悪が降り掛かるため、リスキーな才能といえるだろう。



    朝日奈葵のスキルブースト


    『スイマー』→『虚人魚(D2)


    地面と空間の間にある『虚数空間(ディラックの海)』を遊泳する才能、時間の流れが違う為、朝日奈以外にはテレポートしている様にも見える。



    小泉真昼のスキルブースト



    『写真家』→『写魂(スペクター)


    バイタルを物体に移す才能、意思によって元の肉体に還元出来るが、肉体のダメージを引き継ぐ為、体が再起不能の場合は還元した瞬間生き絶える。


    ─────────


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  253. 258 : : 2015/02/26(木) 16:47:29
    江ノ島も桑田と同じように3回(?)死なないと殺せないのか…
  254. 259 : : 2015/02/26(木) 17:30:32
    >>258
    さらに真昼とさくらちゃんの才能によって一死取るのもかなり難しいので、なかなか最悪になりつつあります。、
  255. 260 : : 2015/02/26(木) 20:11:21


    ────────



    罪木「日向さぁん、七海さぁん! 待ってましたぁ」


    日向「悪いな、待たせちまった」


    俺は、日向創は石丸を連れ、相手側本拠地へと戻ってきた。


    豚神「ふん、戻ってきたか石丸、あまり心配をかけさせるな……」


    石丸「取り乱したとはいえ、すまなかった!」


    日向「……終里は?」


    終里の姿が見えない。


    豚神「終里は散歩がてらに大神らに石丸の件を伝えに行った。ノルマは同じマスでもカウントされるというのに……まったく」


    日向「そうなのか?」


    豚神は電子生徒手帳を取り出し、校則の欄を俺達に見せた。


    豚神「見ろ、五の項目に『本日完了』と書いている。弐大を送り、そのまま戻ってきただけなのにな。せいぜい3ブロックを往復しただけだ」


    霧切「……酷く校則が緩やかというか、雑というか、変な感じね」


    霧切の言う通りだ。これだと門前と校舎を往復するだけでノルマを達成出来てしまう。


    ……何処と無く不気味だ。黒幕は何を考えている?


    七海「日向くん、そろそろ戻ろ?」


    日向「そうだな」


    石丸「ああ、そうだ。霧切君、この手帳、なんだか分かるかね?」


    石丸の持ってきた手帳を見て、霧切はギョッとする。



    霧切「何故、貴方がこれを持って……ん?」


    そういうと、霧切は内ポケットから何かを取り出す。


    霧切「……どういうことかしら」


    石丸「……同じ、手帳?」



    霧切の持っている真新しい手帳と、石丸の持ってきた汚れた手帳……それはまったく同じものだった。


    豚神「……偶然じゃないのか?」


    霧切「石丸君、貸してくれないかしら?」


    石丸「うむ、わかった」


    石丸から手帳を受け取り、カバーの一部を指差す。


    そこには『K.K』という英筆記体で書かれた二文字の刺繍が、どちらにもあった。


    霧切「間違いなく、これは私のもの、カバーはオーダーメイドだから、こんな偶然……有り得るかしら?」


    無いこともない、しかし、確率は低いだろう。


    石丸「……では、霧切君のかね? 覗いた事は先に謝っておく! すまなかった! しかし、よく分からない事が書かれていたのだが……」


    霧切「よく分からない事?」


    そういって、汚れた方の手帳を霧切が覗こうとした時だった。







  256. 261 : : 2015/02/26(木) 23:23:53


    朝日奈「罪木ちゃん! まだいる!?」


    突然として朝日奈が慌てた様子で戻ってきた。


    罪木「ふぇ!? す、すすすすいませぇええん!! すぐ帰りますからぁ!!」


    朝日奈「違うの! 良かった……! まだ居たんだね! 小泉ちゃんが大変なの!」


    日向「小泉に……何かあったのか!?」


    霧切「行きましょう……!」


    校庭に出ると、朝日奈に遅れてセレス、終里、腕と肩から流血する大神……そして大神に担がれ、力無く項垂れた小泉が走ってくる。


    日向「小泉……!」


    罪木「と、とにかく……中へ」


    そうして保健室へとやってくる。


    小泉「ヒュー……ヒュー……」


    ♡11
    ★89



    罪木「喉の気管が……幸い、頸動脈は傷付いてないです。黒い立方体を使えば……」


    罪木は自分のポケットをまさぐり、あの黒い立方体の入った取り出す。


    そして、取り出し、握る。


    罪木「小泉さんを……!」


    真剣な眼差しから、小泉の喉に当てたガーゼを取り、罪木は手をかざし、


    朝日奈「すごい……」


    終里「マジか……!」


    セレス「喉の傷が……無くなって……」


    『処置』は完了する。


    罪木「大神さんも、そこに座って下さい」


    大神「すまぬな、罪木」


    大神の腕の切り傷と、肩の被弾箇所が塞がる。


  257. 262 : : 2015/02/27(金) 20:42:10


    豚神「しかし、どうしたんだ……それに西園寺はどうした?」


    大神「江ノ島だ……西園寺は……殺された……」


    一同が凍りつく。


    江ノ島……アイツは、まだ……!


    大神「そして……江ノ島も死んだ。小泉に殺されてな」


    日向「……」


    言葉が出なかった。また、殺し合いが行われた。


    罪木「そ、んな……西園寺さんが……!?」


    罪木が立ち上がる。


    日向「何処にいく気だ! 罪木!」


    罪木「だ、だって……そんな、西園寺さんが……死ぬなんて……! 朝はあんなに元気だったのに……! ま、まだちゃんと確認するまでは」


    終里「やめろ、幾つも死体をみてきた俺から見ても……西園寺は死んでいた。間違いねえ」


    罪木「そんな……そんな、そんな!」



    日向「罪木!」



    罪木は1人飛び出していってしまう、まだ、大和田や不二咲を殺した奴がうろついているっていうのに……!


    七海「日向くん、追いかけよう」


    日向「ああ……! そうだ、霧切」


    霧切「何かしら?」


    俺は自分の電子生徒手帳を取り出す。



    日向「これを、これで互いのチームでやりとりが出来るだろ?」


    霧切「……そうね、それじゃあ、貴方には私のを渡しておくわ」


    そして、霧切の電子生徒手帳を受け取り、俺と七海は罪木を追いかけた。








  258. 263 : : 2015/02/27(金) 21:20:11


    ────────


    ここではない、何処かのモニター室。



    シロクマ「ねぇ〜クロクマ〜」


    クロクマ「うるせえ! 今、脳内でテトリスやってんだよ!! おーっし! 5連鎖! ……飽きた、なんだよシロクマ!」


    シロクマ「霧切ちゃんが『アレ』持ってるみたいだよ?」


    クロクマ「ひゃっはははは!! 『45度目の発見』だなぁ! 霧切!! 何度も繰り返して開く度に絶望する『絶望手帳』だなありゃ!」


    ……そう、あれはむしろ『見なければ良かった』と思うほどの、霧切響子の狂気の結晶。


    この『セカイの仕組み』を調べ尽くし、綴り尽くし、そして、カムクライズルの存在を示す手帳。


    シロクマ「ねえ〜クロクマ〜」


    クロクマ「あっ? 江ノ島盾子は『2つの絶望』のどっちかなの? って間抜けな質問するんじゃねーだろな?」


    シロクマ「え〜? なんでわかったのぉ?」


    クロクマ「アホンダラァァァ!! 江ノ島はあくまで『元・絶望様』であって、このゲームじゃただの『ポイントゲッター』なだけだろがぁ!!」


    シロクマ「えっ? 違うのぉ?」


    クロクマ「オメーなぁ、オレ達が末端の時点であの『江ノ島』も末端だって察せよ!! 察しろよ!!」


    シロクマ「へぇ〜」



    江ノ島盾子は絶望ではない。



    絶望なのはむしろ……


  259. 264 : : 2015/02/28(土) 00:02:09

    ────────


    Now loading……


    ────────



    $~切#&子の齒テ帳



    ナ?餘?鯔#?齒にない。
    &マ#ア#&#$葩様#ない。
    &#ナ#"七ア仕様にない。
    痾囮イ鯊#&仕様ン囮~$
    鴕鯔$ミに仕様に荼#&
    $#痾夛ゾ仕様にない。
    仕様になノ#$會にない。

    ────error
    ────error
    ────error




    カムクライズル


    既に存在し得ない存在。
    感情を取り戻した日ア#&袙の残骸。
    會#&*コ死亡#$


    ────error
    ────error
    ────error


    ────plz Forced shut down.



    ────────


    Now loading……


    ────────









  260. 265 : : 2015/02/28(土) 12:44:05

    ───────



    夢を見る。でもそれはきっと、記憶の夢。


    日寄子ちゃんが刺され、倒れていて。


    そして、アタシも、小泉真昼もまた……刺される。


    弾みで落ちたケースから黒い立方体が飛び出す。


    アタシはそれに必死で意識を向けた。


    アタシの生命(バイタル)は、アタシの生命(カメラ)へ。


    カメラに預けた命を戻す。急激に喉に走る痛みが襲う。


    小泉「ヒュー……ヒュー……」


    喉が破られ、そこから呼気が漏れる。

    小泉「あ"……あ"……」


    酷い声だった。声帯がやられてるのかも。


    西園寺「……」


    ♡0
    ★0



    日寄子ちゃんが死んでいた。


    そしてようやく、頭の整理が追い付いた。



    小泉「あ"……!」



    ♡28
    ★72



    あの女が日寄子ちゃんを殺した。


    ……許せるものか。


    通路からこっそりと覗くと、葵ちゃんがマシンガンをあの女に撃っている。

    ……だが、まるで通じていない。きっと、この黒い立方体の力なんだろう。



    ならば、アタシはカメラのストラップを外し、喉を押さえ、チャンスを伺う。



    アイツに、日寄子ちゃんの苦しみを……!




    そこで目を覚ました。



    小泉「……あ」


    朝日奈「小泉ちゃん?」


    小泉「葵……ちゃん?」



    保健室だった。喉の傷が消えている……


    朝日奈「罪木ちゃんが治してくれたんだよ」


    小泉「そっか……」



    そう、夢なんかじゃなかった。

  261. 266 : : 2015/02/28(土) 23:24:21


    小泉「……蜜柑ちゃんは?」


    朝日奈「……それが、西園寺ちゃんの事聞いて飛び出しちゃって」


    小泉「!」



    もう、イヤだ。
    もう、失いたくない。


    小泉「罪木ちゃんを探してくる!」


    朝日奈「だ、駄目だよ小泉ちゃん! 傷が治ったからって……」


    ベッドから床に足を着けた瞬間に、体が、頭が、ふらついて倒れそうになった。


    小泉「……ッ!」


    朝日奈「……傷が治ったからといって、無くした血まで戻ってくる訳じゃないんだよ?」


    ……アタシの腕には管があった。スタンドに掛かる輸血パックがゆらゆら揺れている。


    小泉「……蜜柑ちゃん」


    朝日奈「日向と七海ちゃんが探しにいったから大丈夫だよ……」


    小泉「そう……」



    ふと、葵ちゃんの手が震えている事に気付いた。


    小泉「葵ちゃん、寒いの?」


    葵ちゃんは俯いて、手をギュッと握りしめる。



    朝日奈「……違うの、まだ、『感触』が……残ってるの」


    小泉「……『感触』?」



    明るいイメージのあった葵ちゃんが、その表情に影を落とす。
    少しの間を置いて、そして言う。





    朝日奈「江ノ島ちゃんを……刺した『感触』が……」


    葵ちゃんは言葉を絞り出す。





    ああ、そうだ。




    そして、アタシもまた、気付くのだ。




    アタシの手も、カメラのストラップを通じて、あの江ノ島盾子の首を絞める感触が残っている事に。


    人の肉を絞め、その命を摘み取ったその感触を。




  262. 267 : : 2015/03/01(日) 03:18:23


    小泉「うっ……!?」


    朝日奈「小泉ちゃん!?」


    胃から込み上げてくるモノを必死でこらえ、沸き上がる酸味が喉を焼く。


    怒りが殺意と変わり、殺意がアタシを駆り立て、そして……



    アタシは殺した、乗ってしまった。このゲームに。



    朝日奈「罪木ちゃんも……石丸みたいに戻ってくるって! ……みんな食堂にいるみたいだから、私、行ってくるね」


    葵ちゃんはそういって、席を立ち、保健室から出ていった。



    ……戻ってくる?


    ホントに? ホントにそうなの?


    アタシは……もう、誰も失いたくない。


    ────────



    霧切「……」


    最初は意味がわからなかった。


    私、霧切響子が持っている手帳は、まだ何も書き出してない新品同様のもの。


    この落ちていたという手帳は、『私の字』で『私の言葉』で『意味が解らないこと』をただ、45ページに渡って書き連ねていた。


    繰り返している、共有仮想世界、範囲外、何回、前回、次回、超常的な力の有無、勝利者には絶望、コロシアイを止めてはならない……



    霧切「『かむくらいずる、きをつけろ』……これは」



    神座出琉……確か、希望ヶ峰学園初代校長の名前だ。


    だが、何かひとつ『足りない』……その部分がすっぽりと、私の知識から抜け落ちている。


    食堂で手帳を眺めていると、セレスさんが入ってくる。


    セレス「貴女は残られたのですね」


    太った十神君、大神さん、石丸君が日向君、七海さんの後を追い、罪木さんの捜索に当たっている。



    霧切「……小泉さん、朝日奈さんを2人だけ残す訳にもいかないでしょう?」


    そして、あの2人は精神的にも危うい。いくら、江ノ島さんが死んだとはいえ……


    霧切「私も少し、考え事をしなければならない」



    この手帳を理解しなければならない。仮に、この手帳の通り、『複数の霧切響子』が手帳を理解して書き足していったのならば、きっと私にも理解出来るはずだ。
  263. 268 : : 2015/03/01(日) 15:33:02


    ────────


    苗木「……日向クンら、遅いね」


    戦刃「そうだね……何かあったのかも」


    桑田クンを連れ戻し、大分時間がたった。電子生徒手帳を取り出し、日向クンの項目をフリックする。


    着信音の後、女性の声が聞こえた。


    霧切『苗木君、かしら?』


    苗木「あれ? 霧切……さん?」


    霧切さんの声が聞こえる。


    霧切『なんだか、久しぶりな気がするわね』


    苗木「……そうだね、それよりも、なんで日向クンの電子生徒手帳を?」


    霧切『交換したのよ、これでお互い連絡が取れるでしょう?』


    なるほど、それなら相手チームと連絡が取りやすくなる。



    戦刃「苗木君、霧切さん?」


    苗木「ああ、うん、そうだよ」


    霧切『そこに、戦刃さんがあたるのかしら?』


    急に低いトーンの声になる霧切さん、どうしたのだろうか?



    霧切『戦刃さん……貴女には伝えなくちゃならないわね』


    戦刃「……何?」









    霧切『江ノ島さんは死んだわ』



    戦刃「……えっ?」


    江ノ島さんが……死んだ?



    苗木「ま、待ってよ……なんで……」


    霧切『……江ノ島さんは『コロシアイ』を仕掛け、返り討ちにあった。それだけよ』


    戦刃さんが動揺を隠せないでいる。


    戦刃「場所は……どこ?」


    霧切『北東端の百貨店よ』


    戦刃さんは立ち上がり、そして。


    戦刃「……行ってくる」


    苗木「い、戦刃さん!」


    出ていってしまった……



  264. 269 : : 2015/03/01(日) 19:55:45


    ────────



    霧切「はぁ……」


    どうして私はこうなのか。戦刃さんが百貨店に向かったらしい。


    無いとは思うが、もし、誰かが『コロシアイ』を始めてしまったらと思うと……


    ……いや、考えるのはよそう。私も向かわねばならない。


    多分、苗木君は追ったに違いないだろうし、それに……



    初日にも思ったが、苗木君には何か『大切な事を伝えなきゃならない』……それが何かは思い出せないけど、記憶の齟齬からそれを辿ることが出来るかもしれない。


    私は手帳を懐に仕舞い、食堂の席から立ち、百貨店へと向かう。


    朝日奈「霧切ちゃん……どこかいくの?」


    朝日奈さんが食堂に入ってくる。


    霧切「ごめんなさい、私も百貨店へと向かう……セレスさんと朝日奈さん、小泉さんをお願いしてもいいかしら?」


    朝日奈「う、うん、それは構わないけど……」


    霧切「頼むわね」


    私は足早に百貨店へと向かった。



  265. 270 : : 2015/03/01(日) 20:57:33



    ────────



    日向「まて罪木!」


    罪木「ま、待てませぇん! 西園寺さんを……!」


    駆け出して北東にある百貨店へと入る。


    罪木「ど、何処ですかぁ……西園寺さん」


    七海「罪木さん、西園寺さんは……もう」


    罪木「私は……私はまだ見るまで信じないです」



    日向「……確か」


    小泉の治療をしてるとき、ふと、朝日奈が漏らしてたな……1階のトイレに至る通路だったか。



    恐る恐る、近づいていく。



    そして、それはそこにあった。



    日向「西園寺……!」


    変わり果てた西園寺の遺体、テーブルナイフは喉を貫通しきり、見開くその瞳は乾ききり、光は無い。


    西園寺日寄子は間違いなく死んでいた。


    罪木「あ……ああ……西園寺さん……起きて……下さいよ……!」


    冷えた西園寺だったモノを揺らす罪木を俺は、罪木の肩を掴み制した。


    日向「よせ……!」


    罪木「……うぅ……ふぇええええん……!」


    泣き虫な罪木は泣いた、ただ……自分の為ではなく、人の為に泣く彼女は始めて見た。


    七海「……日向くん」


    日向「どうした? 七海?」


    七海「……小泉さんは、江ノ島さんを『殺した』んだよね?」


    日向「ああ……だから……あれ?」


    そうだ、江ノ島と交戦したのは1階のはずだ。


    何故、江ノ島の遺体がない?














  266. 271 : : 2015/03/01(日) 22:51:07


    豚神「日向」


    詐欺師の十神らが百貨店へと入ってくる。


    日向「追ってきたのか、もう大丈夫だ」


    豚神「みたいだな……」


    大神が1階の異変に気付いたのか、眉を潜めて、一点を凝視した。



    大神「……む?」


    石丸「……どうしたのかね、大神君」


    大神「何故だ、江ノ島の遺体がない……」


    豚神「……遺体は消えるんじゃないのか?」


    そう、葉隠なんかそうだった。


    豚神「……そういえば」


    詐欺師の十神がエスカレーターを登り出す。


    どうやら、電気スタンドが付けっぱなしの寝具コーナーに行ったみたいだ。



    俺はそれを追いかけ、そして、目の当たりにする。


    血塗れのベッドだ。
    ……何か、引きずった様な……もしくは、血を出した本人が這ってベッドにたどり着き、果てた様な。


    とにかく、おびただしい血痕こそあるが、そこに遺体はない。


    豚神「……恐らく、左右田のものだ。初日の夜、田中が見つけたという」


    日向「左右田……の?」


    ここで左右田は、殺された。
    辺古山によって。


    考えてみれば、ここはソニアの殺された場所から近い。アイツの去り際の言葉から、この場所に、このベッドにソニアを寝かせたのではないだろうか。


    そして、左右田自身も……


    だが、遺体はない。


    首はこちらの本拠地で戦刃が埋葬した。

    胴体がないのだ。そして、ソニアの遺体もない。



    豚神「遺体は黒幕が処理してるんじゃないか?」


    恐らくはそうだ。
    しかし、腑に落ちない。


    日向「多分そうだ。だけど、江ノ島の遺体が消えるには早すぎる……どういうことだ?」




  267. 272 : : 2015/03/01(日) 23:09:25


    1階に下り、七海らに合流する。


    大神「確実に江ノ島は死んだはずだ、絶望チェッカーとやらから覗いてみたが、死んだのは確かだ」


    では、一体誰が江ノ島を運んだんだ?


    と、


    霧切「……皆」


    七海「霧切さん」


    日向「霧切も来たのか」


    霧切「ええ、セレスさんと終里さん、朝日奈さんがいれば大丈夫でしょう……戦刃さんらは来てない様ね」


    日向「戦刃?」


    霧切「貴方の電子生徒手帳に苗木君から連絡が入ったのよ。一緒にいた戦刃さんに江ノ島さんの死を伝えたのだけど」


    日向「ああ、そうか……」


    戦刃と江ノ島は姉妹だった。
    肉親が死んだと聞かされたら、いてもたってもいられないだろう。


    霧切「それより、江ノ島さんの遺体が見当たらないのだけど」


    日向「その事を俺達も疑問に感じてんだよ……どうなってんのかさっぱりだ」


    俺達は立ち尽くす。


    何がどうなってんのか。



    ……本当に、江ノ島は死んだのか?



  268. 273 : : 2015/03/01(日) 23:18:27


    ────────



    江ノ島「さてさて……誰がいいかな?」


    誰に化けるかな?


    デブの十神の才能は汎用性に優れている。なかなかお気に入りだ。


    あたしが今いるのは、相手側本拠地前だ。


    さて、








    ──────パーティ(皆殺し)といこう。




  269. 274 : : 2015/03/02(月) 20:26:14



    大神らが出ていくのは見ていた。そして霧切も出ていった。


    中に居るのは終里、朝日奈、セレス、小泉といった所だろう。



    桑田の『複数回死ねる』という才能……野球に準えるなら恐らくは2回だろう、3回目は多分無い。それを知るのは、本人と十神のみ……


    いや、もしかしたら苗木らも桑田から直接聞いて知っているかも知れない、しかしだ、今、苗木らはこの場に居ない。



    ……ならば、大神らが戻ってくる時間の間に『4ポイント』確実に稼げる。



    さて、化けるなら苗木を除いて……





    ─────────



    苗木「追わなきゃ……」


    戦刃さんの足に追い付ける気がしないけど、それでも……


    まさかとは、まさかとは思うけど……


    苗木「……万が一だ」



    そう、『万が一』だ。


    食堂を出ようとした時だ。



    桑田「どうしたんだ? 苗木?」


    桑田クンだった。


    苗木「江ノ島さんが死んだって…… それを聞いて戦刃さんが」


    桑田「マジかよ……! まさか江ノ島ちゃんが……!?」


    苗木「追わなきゃ行けない……」


    桑田「わかった……オレも行くぜ!」


    ボクらは北側へと向かう。










  270. 275 : : 2015/03/02(月) 22:53:41


    ─────────





    嘘だよね。



    嘘。



    盾子ちゃんがそんなあっさり死ぬはずなんて無い。



    戦刃「はっ……はっ……」


    直線距離で約4キロ、駆け足で向かう、戦場の南端から北東の端では、やはり時間が掛かる。


    ねえ、盾子ちゃん。


    やっぱり、私は盾子ちゃんと一緒に行動すれば良かったのかな。


    誰も彼も蹂躙して、(たお)し尽くせば、こんなことにはならなかったのかな。


    戦刃「はっ……はっ……」


    ♡100
    ★70



    ……解ってる、今、私は酷く動揺している事なんて。



    それでも、私は……



    もし、盾子ちゃんが殺されたのなら、その人達、許せないかも。


    例え、盾子ちゃんが仕掛けたとしても、それでも、それでもだ。



    すると、道中に『彼』は居た。



  271. 276 : : 2015/03/02(月) 23:15:15


    ────────


    被弾箇所の弾を抜き、処置を済ませて出て来た所だった。




    俺も、十神白夜もまた、北東の百貨店での当事者であることは、誰も知らないだろう。


    本当に偶然だった。薬局で処置をしていた所、江ノ島が百貨店へと向かうのを見つけ、それにつけていったら、なかなか面白いモノが見れた。


    ……戦刃と大神を何とかしてぶつけたい。大神が勝てばそれで良し、戦刃が勝てども、ただでは済まんだろう。


    江ノ島の死を利用しない手は無い。


    決着した所で俺は急ぎ、百貨店を離れた。


    ……江ノ島の才能、まさか見たもの全てを扱えるとは厄介だが死んで安堵を……いや、まて。


    俺の才能も持っていた……ということは、桑田の才能も持っているのではないか?


    十神「……ちっ」


    ……もし、そうならば厄介な事になりそうだな。


    と、考えつつ、南側へと下る道中の事だった。


    戦刃「十神、君……?」


    ガチャリと、銃を構えてこちらに向ける。


    しまったな。負傷している上に、ジェノサイダーも今は居ない。



    これはまずい状態だ。







  272. 277 : : 2015/03/02(月) 23:46:37



    どうする?


    戦刃「……どいて」



    十神「……ふん」



    なるほど、不二咲、大和田の仇である俺の事よりも、やはり自分の妹か。



    十神「……江ノ島盾子、誰が殺したか知りたくないか?」


    戦刃「……!!」


    ♡100
    ★82


    冷静でいられない様だ。たかだか1年過ごした仲間よりも、大事な肉親の方が大事なのだ、戦刃は。



    見ていて滑稽だ。



    戦刃「……誰?」


    江ノ島はコイツのことをよく残念残念だと揶揄していたが、なるほど、頷ける。





    十神「朝日奈、大神、小泉、セレスによって殺された、寄ってたかって嬲り殺しだ」


    戦刃「……!!」


    十神「仕掛けたのは確かに江ノ島だ。しかし、あんな惨たらしく良くもまあ殺せるモノだな」


    間違いではない。嘘は言ってない。
    左手は千切れ落ち、背面からナイフを刺され、最期には首を絞められて殺されたのだ。


    ……まあ、最も、桑田の才能を持っていたなら、恐らくは生きているだろうが。



    悪意を加算して、嘘は言わずに戦刃へと教えてやった。


    戦刃「……」


    ♡100
    ★92



    ああ、そうだ、そのまま俺を無視して思考停止しろ戦刃、そして殺し合え。





  273. 278 : : 2015/03/03(火) 21:20:25


    戦刃「……」



    そして戦刃は、思惑通り、俺を無視して走り去った。


    あれは北東側、あの百貨店がある場所だ……誰々が今居るのか知らんが、戦刃の立ち回り次第で、戦闘が起こるだろう。


    見物だな。



    ─────────



    食堂には終里が居た。


    終里「あれ? 罪木は見つかったのか? 日向」


    日向「ああ……見つかったよ」


    終里「ふーん、まあ、良いけどよ」


    後ろを向き、厨房へと入ろうとしていた。









    ああ、今だな。






    銃を向ける。これを所持していた西園寺はご丁寧に説明書まで持っていたから、この銃の特性は知っている。


    ……PSS(特殊自動装填拳銃)……あたしの欲しかった音の出ない武器(レフチェンコ・ピストル)だ。



    終里「なー、日向、腹減って……」


    くるり、とこちらに向いた瞬間、引き金を引く。


    終里「かっ……!?」


    パシュッ、という音と共に、終里の額を撃ち抜き。




    終里「……」


    ♡0
    ★0



    ホールインワン(一撃死)だ。


  274. 279 : : 2015/03/03(火) 22:15:26


    日向?「絶望的だよなぁ〜終里ぃ」




    死人に話しかけても無駄か。


    あたしは、江ノ島盾子は日向創に化けた。苗木以外で汎用性が高いであろう姿だ。


    さて、残るは朝日奈、セレス、小泉だが……


    念のため、終里の遺体を厨房奥まで引っ張る。


    と、


    食堂に戻った時だ。



    朝日奈「あれ? 日向?」


    朝日奈だ。


    さて、2ポイント目を頂くとしよう。


    日向(江ノ島)「朝日奈か」


    朝日奈「罪木ちゃんは見つかったの?」


    日向(江ノ島)「ああ、見つかったぜ」


    朝日奈「……七海ちゃん達は? さくらちゃんも一緒に向かったんだけど」


    日向(江ノ島)「あ、ああ、俺だけ先に戻ってきたんだ……」


    朝日奈「……?」



    よく分からないが、どうやら朝日奈はあたしに何か違和感らしきモノを感じている。


    ……もういい、さっさと殺るか。


  275. 280 : : 2015/03/04(水) 20:48:13



    日向(江ノ島)「なあ、朝日奈」


    朝日奈「な、なに?」




    銃を向ける。




    日向(江ノ島)「あの世でみんなによろしくなっ!」



    朝日奈「ひっ!」



    引き金をひく。




    パァン、と、



    朝日奈「……!?」



    朝日奈は誰かに突き飛ばされ、代わりに、それを受ける誰か。



    ……ああ、そうだ。よくよく考えたら、1人足りないと思ってた。


    姿が見えないから、放置してたけど、マジかよ、このタイミングで出てくるわけだ。





    弐大「……ぐっ!」



    朝日奈「に、弐大……!」



    日向(江ノ島)「はぁ?」



    なんだ、コイツ……数字が見えない。いや、腕輪が無いのか?



    弐大「下がっておれ、朝日奈……!」


    日向(江ノ島)「なんだよ……クソつまんねえな」


    あたしは銃を向けたまま突然の乱入者に歩み近寄る。デカい……大神を超える巨躯だ。


    朝日奈「せ、セレスちゃん呼んでくる!」


    朝日奈に逃げられる。クソ、しくじった。


    弐大「帰ってきてみれば、こんな事になっておるとはのう……お前さん、日向ではないな?」



    日向(江ノ島)「へぇ? やっぱわかるの……?」


    弐大「日向と歩き方が違う、完璧な姿形でも、僅かなクセまでは真似出来んようじゃな」



    日向(江ノ島)「……!」


    まったく、揃いも揃ってビックリ人間ばっかりだな希望ヶ峰学園は。
  276. 281 : : 2015/03/04(水) 22:06:47


    日向(江ノ島)「あっは! イイね、あんた。名前は?」


    弐大「生憎、外道に名乗る名は持ち合わせておらんのでな。がっはっは!」


    喰えねえ奴……



    と、



    弐大「ぬぅん!!」



    突然の右フック、咄嗟にあたしは後方へ跳び、それをかわした。



    日向(江ノ島)「そんなんじゃ当たらねえよ!」


    大振り故に、読みやすい。大神ほど格闘技には精通していない。


    身体能力は高そうだが……戦闘能力とはそのベクトルが違う。


    弐大「ま、そうじゃろな」


    首をゴキゴキと鳴らし、あたしから目を背ける。



    日向(江ノ島)「大した余裕じゃん?」



    弐大「『得物』を使っとらんからの。次は使わせてもらうからのう」



    そういって、食堂脇にあった『何か』を持つ。


    ……視界には写っていたが、何なのか分からなかった。



    江ノ島「……はっ?」


    なんだありゃ?


    それを右腕に『装備』する。前腕を固定ベルトにねじ込み、『握り』の様なモノを持ち、まるでバカデカいトンファーの様にも見える。


    弐大「ワシもな、詳しくは知らんが、説明書にはこう書いていたな」



    そう、辺古山ペコが持っていた『高周波振動剣(ヴィブロブレード)』と同じ、アレは恐らく存在しない『架空の兵器』だ。


    ……なんだっけ、ロボットアニメでよく見る奴だ。




    弐大「『パイル・バンカー(高密度鉄杭射出兵器)』ってお前さん、知っとるか?」






  277. 282 : : 2015/03/04(水) 22:57:44


    日向(江ノ島)「うぷぷ……ぶっひゃひゃっひゃっ!!」


    そうそう、パイル・バンカーだ。



    日向(江ノ島)「確かに一撃必倒の威力はある、そりゃそんなぶっとくて硬いモン捩じ込まれた日には死ぬだろうなぁ!?」


    だが、強みはそれだけ、リーチも何もないそれは所詮『架空の兵器』であり、ただのロマンだ。



    弐大「ふむ、リーチはない……確かになぁ。だとするとじゃ……『コレ』を使うと、どうなるんじゃろうな」


    そうして、ヤツは黒い立方体を取り出し、それを握る。



    日向(江ノ島)「だからなんだーっつうの!!」


    向けた銃を撃ち込む。狙いは勿論、ヘッドショットだ。


    パァン、と奴の頭を弾く。


    ヤケにあっさりとした最後だったな。確か、さっき朝日奈がコイツの名前を言ってたな。



    日向(江ノ島)「あばよ、弐大」












    弐大「ああ、お前さんがな」



    奴のパイル・バンカーが射出される。




    日向(江ノ島)「がはっ!?」


    ♡22
    ★20



    あたしの脇腹を易々と抉り、その衝撃によって、あたしは吹っ飛ばされる。


    弐大「まあ、少し痛いのう」



    日向(江ノ島)「ば、化け物かよ……アンタ!」


    まずい。桑田の才能に切り替えなければ、あたしはマジで死ぬ。



    江ノ島「くっ………」


    やむなく、デブの十神の才能から桑田の才能へと切り替える。まだ腹の中に次弾があるとはいえ……


    弐大「それがお前さんの正体か」


    江ノ島「ぐっ……がはっ……! なんなんだよアンタはぁぁ……!」


    桑田の才能の厄介な所は、瀕死では何もない事だ。これは保険に過ぎない。


    死ねば蘇生が始まり、手足が千切れていようとも完全に回復する。


    だから、瀕死は痛手。トドメを刺してくれないと意味はない。逸そ、自殺を計ってもいいが、激痛と血を無くし過ぎたせいで、上手く手足が動かない。


    弐大「ワシのバイタルとやらが見えんな。腕輪を持つだけでも見えるかの?」


    食堂の机の上にあった、はめていたらしき腕輪を弐大は持つ。



    弐大「おう、見えるのう」







    ♡892
    ★18



    江ノ島「………………はっ?」


    壊れてるのか?
    数値がおかしい。
    馬鹿と冗談みたいな数値が奴から叩き出されている。



    いや、違う、これがヤツの才能なんだ。



    江ノ島「ぜ、絶望的ぃいい……!」


    桑田の才能と相性最悪じゃねえか。
    バイタルの拡大、しかも10倍だと?

    桑田の才能は『野球のルール』を現実におけるルールに捩じ込むモノであり、投げるとか打つとか捕手するとかのオマケもあるせいで反則級、5分だ。


    だがアイツはきっと、ただバイタルが伸びるだけだ。シンプルに、ただただシンプルに。だから10分……!

  278. 283 : : 2015/03/05(木) 15:23:33


    弐大「往生せい、お前さん」


    チラリ、と弐大が厨房の方を覗いた。


    雑に置いたからな……見つかったか?



    弐大「……終里」


    反応は無いだろうよ。そりゃ、あたしが撃ち殺したからね。


    弐大「……そうか、お前さんが」


    江ノ島「ぐっぎ……がはっごほっ! はっ、はははは!!」


    ♡12
    ★20



    吐血する。多分、内臓がしっちゃかめっちゃかだ、生きてるのが不思議なくらいなはずなのに。




    セレス「……江ノ島さん、生きてらしたのですね」


    朝日奈「江ノ島ちゃん……」



    2人も駆け付けてきた。



    弐大「……2人とも、すまんが、あっちを向いといてくれんか?」


    朝日奈「……」


    セレス「……ええ」


    へっ、偽善者が。







    弐大「終里、仇は討ってやるからの」




    瞬間、再装填を終えたパイル・バンカーの鉄杭が、あたしの眼前に打ち出された。



    そして、



    ────────



    瞬間、女の顔は四散する。


    肉片と共に、頭蓋と脳漿を撒き散らし、首から上が無くなった。



    ……仇は討ったぞ、終里よ。


    と、朝日奈らの方向を向こうとした時じゃった。



    セレス「警戒を続けてくださいませ」



    セレスがそういった瞬間に、江ノ島の方を振り返る。


    弐大「ぬ……!?」


    江ノ島の遺体が消えた。



    セレス「逃げられましたわね」



    朝日奈「……そんな」


    弐大「どういうことじゃ?」


    セレス「……わたくしにも分かりませんが、江ノ島盾子は他者の才能を使う事が出来る、わたくし達は先程も江ノ島盾子を殺したが、今そこに居たという事は……」


    話がみえん……


    朝日奈「分身とか……幻とか、そんな才能があるのかも、もしかしたら、復活とかあってもおかしくないよね」


    セレス「そう考えるのが妥当でしょうね。そして、今度は恐らく、朝日奈さん、貴女の才能でこの場を逃れたのでしょう」


    話は見えんが、どうやら、江ノ島はまだ生きとるようじゃ。



    朝日奈「もし、私の才能で逃れたなら、そんなに遠くへは行けないはずだよ……きっとまだ近くに」


    セレス「だとしたら、小泉さんが危ないですわね」


    朝日奈「行こう!」



    ワシらは保健室へと向かった。



  279. 284 : : 2015/03/05(木) 17:15:08
    首から上なくなっても復活できるんだ…
  280. 285 : : 2015/03/05(木) 17:15:40
    すみません
    2回送ってしまいました
  281. 286 : : 2015/03/05(木) 17:46:27
    >>284
    「蘇生」ですからね、どんな形になっても、ルールの射程内とストック内なら復活します。
  282. 287 : : 2015/03/05(木) 21:02:39



    ────────


    霧切「……」



    百貨店から本拠地へと戻ろうとしていた時だ。



    戦刃「……何処?」


    戦刃さんが機関銃(ファマス)を片手に、酷く青ざめた顔で立っていた。



    霧切「戦刃さん……」


    大神「戦刃か……」


    戦刃「……何処?」


    虚ろな瞳が私達を捉えて離さない。


    大神「……遺体は消えた、何処に居るのかはわからぬ」


    戦刃「ねぇ……そんな事、聞いてるんじゃないの」


    ……駄目だ、彼女は『壊れかけ』ている。







    戦刃「何処?」




    ♡100
    ★97




    同じ言葉の反復、たったアレだけの情報で彼女をここまで失墜させるものなのか?


    ……いや、道中にもしかしたら誰かに『そそのかされた』のかもしれない。


    日向「……落ち着け、戦刃」



    日向君が戦刃さんに近寄り、肩に手を置こうとする、と。




    戦刃「触らないで!」



    日向「がっ!?」



    突き飛ばされ、日向君は尻餅を突いた。



    と、




    苗木「戦刃さん!」


    桑田「戦刃!」


    苗木君、桑田君が百貨店へと入ってくる。


    霧切「苗木君……」


    久し振り、と言いたい所だが。今はそれどころではないのだ。



    戦刃さんが暴走する前に、何とかしなければならない。






  283. 288 : : 2015/03/05(木) 21:40:52


    七海「日向くん、大丈夫?」


    罪木「ひ、日向さぁん……」


    日向「あ、ああ……尻餅をついただけだ、大丈夫」



    殺伐とした空気が流れる。


    苗木「戦刃さん……! まずは皆の話を……!」


    戦刃「苗木君は黙って、ねえ、大神さん」


    大神「なんだ?」


    物怖じしない辺りは流石大神さんといったところか。


    戦刃「盾子ちゃんを、殺したって……ホント?」


    少しの沈黙、そして。





    大神「……西園寺を殺し、『分析』のスキルブースターを以て我等の才能を複写し、使いこなし、ここに居た我等を皆殺そうとしていた」


    戦刃「……」






    大神「故に、我が葬った」



    戦刃「!!」


    違う、大神さんはトドメを刺したワケではない。


    豚神「大神……お前」


    大神「十神よ、黙っておれ」


    太った十神君は押し黙る。




    すると、


    桑田「なあ、江ノ島ちゃんの才能が『分析』して複写するって大神いったけどよぉ。その『分析』って見るだけでいいのか?」


    桑田君が割って入った。


    大神「……今、知らねばならぬことか?」


    桑田「ああ、もしもよォ。江ノ島ちゃんが『オレの才能』をコピーしてたら……って考えると江ノ島ちゃん、もしかしたら生きてるんじゃね? って思うんだよ」


    戦刃「えっ?」


    皆ざわつき、桑田君の方へと向く。


    大神「どういうことだ? 桑田よ」


    桑田「オレのスキルブースターってヤツはよォ、『射程内に野球のルールを捩じ込む』事が出来るんだよ。何でも打つ、投げる、捕手する事が出来て……」


    桑田「『ツーアウト』までなら復活出来るんだよ」


    霧切「まさか……『ツーアウト』っていうのは」


    桑田「そのまんまだよ、『2回死ねる』ってこった」


    霧切「……驚いた、そんな才能が『アリ』だなんて」


    戦刃「じゃ、じゃあ盾子ちゃんは……」


    生きている可能性がある。


    恐らくは大神さんらが出ていくのを見計らって復活したんじゃないだろうか。


    だとすると……



    と、



    豚神「……ん? 朝日奈か?」


    太った十神君の電子生徒手帳に着信の様だ。




    豚神「……なんだと、わかった」



    霧切「どうしたのかしら?」




    豚神「江ノ島盾子だ、やはり生きていた。本拠地を攻められている……戻るぞ!」


    戦刃「盾子ちゃんが……!?」



    戦刃さんが真っ先に飛び出していった。



    霧切「急ぎましょう」


    私達もまた、本拠地へと向かう。
  284. 289 : : 2015/03/06(金) 01:23:02


    ────────




    江ノ島「最悪ぅ……」



    虚数空間(ディラックの海)』では障害物の仕切りこそ無視出来るが、呼吸が出来ないのが辛い。


    残念ながら、朝日奈ほど体力も肺活量もあたしには備わっていない。


    学園側の廊下……スキルブースターを使いまくった割に、殺れたのは2人のみ、辛い結果だ。


    と、



    保健室の扉が開く。



    小泉「……!」


    小泉だ、ああ、コイツには借りがあるな。



    再び虚数空間へも潜る。
    この空間は表の空間とは時間の流れが違う。
    『潜伏』から『浮上』まで、10メートル程度なら表の空間で1秒を切る位だろう。


    小泉の背後に現れてやる。


    小泉「むぐっ……!」


    江ノ島「ちょっと協力してもらうぞ人間〜?」


    口を押さえ、銃を押し付けて小泉を引っ張る。無論、出口までだ。


    体勢を立て直さなければならない。

  285. 290 : : 2015/03/06(金) 18:22:21


    ……そして、奴等3人が駆け寄ってきた。


    弐大「小泉!」


    朝日奈「小泉ちゃん!」


    江ノ島「動くんじゃねえ」


    奴等に銃を向ける。



    セレス「……」


    江ノ島「妙な真似すんなよセレスぅ?」


    セレス「……チッ」


    小泉「ぐっ……! むぐっ!」


    江ノ島「暴れるなよ、弾みで撃っちゃうじゃん?」


    小泉「……!」


    さぞ青ざめた顔をしているだろう。
    さて、このまま出口へと向かえば……あたしの見立て通りならきっと来るハズだ。


    朝日奈「くっ……!」


    江ノ島「あたしが外に出るまではこの状態を維持させてもらうからな」


    小泉を引っ張る形で、あたしは外に向かう。


    さて、今のあたしはスキルブースターが切れた状態だ。


    見立て通りならば……まずは百貨店に向かうだろうから……そして、百貨店からここまで大体走って5分掛かるか掛からないくらい。


    腹に仕込んだ次弾のスキルブースターをそろそろ使っておくか。



  286. 291 : : 2015/03/07(土) 20:22:16


    そして出口を出て、校門前に立つ。


    スキルブースターは新しいのを既に腹の中で使った。


    3人とあたしとの間合いは5メートルと、なかなか至近距離だ。さてさて……






    戦刃「盾子ちゃん! よかっ……」



    ほら、来た。



    あたしは小泉を横に突き飛ばし、そして、奴等に銃を向ける。



    弐大「……!!」



    そしてすかさず、弐大の武器が私に向けられた。さっきの射程からしても、この『5メートル』はヤツの武器のギリギリ圏内だ。




    そして、射出。



    鉄の杭はあたしの心臓を易々と貫き、破り、そして吹っ飛ばした。




    あはあ……これで……


    江ノ島「……」


    ♡0
    ★0






    ああ、残念だ。




    戦刃「………た?」



    残念なお姉ちゃんの絶望の表情を、見ることが出来ないなんて……



    絶望的ぃ。







  287. 292 : : 2015/03/07(土) 20:48:12



    ────────



    殺さレた?



    戦刃「あ、ああ………?」



    ♡100
    ★98



    ねえ、盾子ちゃん、桑田君の才能持ってルンじゃなかった?



    江ノ島「……」



    ♡0
    ★0




    戦刃「や、ああ……」



    ♡100
    ★99



    起きてよ。なんで?
    すぐ蘇れる才能ナンじゃないの?



    江ノ島「……」


    ♡0
    ★0









    戦刃「あああああァあああアああああアアあああ!!!」



    ♡100
    ★100





    もう、どうでもいい。


    皆、殺す。






    ───────




    朝日奈「……戦刃ちゃん!?」


    何故? どうして? 今、この場に居るの? ……いや、今はそれどころじゃない。



    戦刃ちゃんが『江ノ島盾子が殺される瞬間に立ち合ってしまった』のだ。



    才能で復活出来るとかそんなの関係無い。



    それはもう、彼女の絶望チェッカーから見て取れる。


    戦刃さんが銃を構える。そして、その左手にはあのスキルブースター……



    戦刃むくろは絶望に陥った。



    朝日奈「やめて戦刃ちゃん!」



    戦刃「五月蝿いッ!!」



    普段の戦刃ちゃんから考えられない怒声が飛び交った。



    弐大「江ノ島とやらと親しい奴か……!」



    朝日奈「実の姉だよ……!」



    セレス「来ますわ……!」



    戦刃ちゃんの機関銃が火を吹く。


    そして、



    戦刃「死ねぇ!!」



    特に弐大に対しての集中放火。



    弐大「ぐっ! 小泉! こっちまで来んかい!」


    ♡748
    ★32



    小泉「う、うん……!」



    弐大「ワシが盾になる! 今の内に校舎に逃げんかい!」



    弐大が何とか戦刃ちゃんの前に身を広げて、私達を弾丸の雨から守ってくれている。


    ……そして、私は小泉ちゃんとセレスちゃんとで校舎内に逃げた。




    ……江ノ島ちゃんはもしかして、これを狙っていたの?



    だとしたら……












    江ノ島「そういうこと♪」



    校舎前に既に江ノ島ちゃんが立っていた。


    ……やられた。


    全部、全部、やられた。



    ガチャリ、と、私達に銃が向けられ、そして、




    パァンと、






    私の額が撃ち抜かれた。





  288. 293 : : 2015/03/07(土) 21:13:14


    ───────




    江ノ島「ぶっひゃひゃっひゃっ!!」



    はいはい、予測通り予測通りだっつーの。



    お姉ちゃんが霧切だかこっそり百貨店の入り口で覗いてた十神だか誰だかを通して、あたしの死を知って、百貨店に駆けつける事も……


    あたしの才能が分析だと知って、それで桑田の才能持ってるって確信して、あたしが校舎襲撃して、それを朝日奈が向こうの誰かに伝えてそれ知ってこっちに来て……



    そして、あたしが新しいスキルブースターで『ワンアウト』するのを見て発狂するのも全部、全部……



    お見通しでしたぁー。



    そして、あたしは復活した後に朝日奈の才能で今、ここに現れ、そして、朝日奈を殺した。



    江ノ島「ひゅっ♪」


    銃口から立ち上る硝煙をフッと息で消す。まるで安っぽい西部劇のガンマンみたいに。


    朝日奈「……」


    ♡0
    ★0



    セレス「んのぉ、ビチグソがぁぁ!」


    江ノ島「おっと」


    銃を向けるセレスに、あたしは『セレスの才能』をぶつけてやった。



    小泉「か、体が……動かない?」


    セレス「ぐっ……!!」



    江ノ島「遊ぼうぜぇ〜セレスゥウウ?」



    さて、アイツはテキサス・ホールデム(ポーカー)で、あたしをコケにしてくれた。




    江ノ島「ルーレットといこうか?」



    セレスとあたしを挟み、ルーレットが浮遊して現れる。



    江ノ島「黒に……あたしの『首』を掛けるよん」



    セレス「ぐっ!?」



    絶望的だろうなぁ、どちらか一方は一撃で死ぬ。


    降りても死ぬ。




    セレス「赤……ですわ」




    ルーレットは回る。



    そして、それは、




    コトン、と、



    セレス「……」


    江ノ島「……」










    『クロ』だ。




    江ノ島「じゃあねぇ、セレス♪」


  289. 294 : : 2015/03/07(土) 21:39:31



    セレス「……ふ、ふふ、まさか、わたくしがやられるなんて」


    小泉「そ、そんな……セレスちゃ……」



    セレス「未練がましく吠えたりは致しません……それでは、小泉さん、来世でお会い致しましょう」









    セレスの首が消えるように千切れ、立ったまま命を絶たれたセレスは、どっかの気持ち悪い芸術家が考えた気味の悪いオブジェの様に、その首から赤い鮮血を噴き、その黒いゴシックドレスを汚していく。



    江ノ島「さて、あと1人だなぁ?」



    小泉「あっ……ああ……!」



    江ノ島「……銃持ってないのか?」



    反抗する気がないのか?
    それはとてもつまんない。


    小泉「じゅ……銃なんて嫌いよ……!」


    江ノ島「ふーん、まあ良いけどさ」


    あんたが嫌いでも、あたしは遠慮なく使わせてもらう。


    ……ああ、そうだ。どうせならコイツの『才能』で殺してやろう。



    江ノ島「小泉、あんたは自分の才能を扱いきれてないじゃあない?」



    小泉「な、なにを……?」



    江ノ島「自分の『バイタル』を預けるってことはさぁ」



    『小泉の才能』を使ってやる。



    江ノ島「『自分の一部』にするってことだよねぇ」



    ♡90
    ★20




    小泉「がっ!?」



    小泉の両腕に『バイタル』を預けてやった。



    小泉「や……いやぁ……!!」



    『腕輪』を無理に外してやろう。





    小泉「ん……くぅ……! た、すけ……!」



    江ノ島「助けなんてこねぇーよ! ぶっひゃひゃっひゃっ!!」




    と、言うとだ。









    日向「江ノ島ぁあああああああ!!」



    来るんだよなぁ、時間的にも見立て的にも。


  290. 295 : : 2015/03/07(土) 22:11:26

    ────────


    Now loading……


    ────────


    開示された情報




    小泉真昼のスキルブースト・その2



    バイタルを分け与える事で、『動かせる運動器官を持ってるモノを操る』事がこの才能の真価、全身を操るにはバイタル全てを分けなければならないが、腕部なら5程度で済む。




    弐大猫丸のスキルブースト



    『マネージャー』→『不退転(クンバカルナ)



    マネージャーというより、彼元来の『病弱だった己をここまで練り上げた』という点に着目された才能、数値上は10倍のバイタルを持つが、その実は被ダメージ計算率の縮化にあり、実際に10人分の命を宿すわけではない。


    ────────


    Now loading……


    ────────
  291. 296 : : 2015/03/07(土) 22:34:51
    江ノ島すご‼
  292. 297 : : 2015/03/07(土) 22:40:28
    >>296
    江ノ島ちゃん分析力はこのくらいあっても良いと思うんですよね(やり過ぎ
  293. 298 : : 2015/03/07(土) 23:06:34



    ────────


    ここではない、何処かのモニター室。



    シロクマ「わぁ、いっぱい死んじゃったね」


    クロクマ「ぎゃっははは!! さっすが絶望様だぜ!」


    シロクマ「ところでクロクマ」


    クロクマ「なんだよシロクマ」


    シロクマ「チーム分けって意味あったの? みーんな仲間割れとかしてるけど」



    クロクマ「言わなかったかぁ? これ自体に『意味は無い』ってよぉ! それによぉ! 仲間割れってすげえ絶望的だろーが!! ぎゃっははは!!」


    シロクマ「あっ、そっかぁ。これは『たまたまこういう形のコロシアイ』なだけだったねぇ」


    クロクマ「そーだよバッカ! 親しい誰かを殺されて、ソイツは誰かに殺されて、またソイツは誰かに殺される。憎しみの連鎖が結果的にコロシアイに発展してんだよぉ! ぎゃっははは!! そうだよなぁ!? ソースだよ!! うるせえ!!」


    シロクマ「そーなんだぁ」



    ……ここは、それこそが『希望への道』だ。



    『最初の絶望』と『最後の絶望』がまだ生きている。


    『強制シャットダウン』の執行には、2人は不可欠。



    この残骸の様な世界の中での独り遊びはもう、終わりにしても良いだろう。









    「……そう、ね」





    クロクマ「あ? 今なんか言ったか?」


    シロクマ「まだ喋る元気があったんだねぇ」




    もう、この55番目で終わりにしましょう。







    ねえ、私?



  294. 299 : : 2015/03/08(日) 00:47:04


    ────────


    少し、時間を遡る。



    戦刃さんが出ていき、私達はそれを追いかける形になったが。



    苗木「……はぁ、はぁ」


    霧切「苗木君、大丈夫かしら?」


    苗木「……う、うん、へっちゃらだよ」


    学園で、朝日奈さんや大神さんと一緒に校庭でランニングをする苗木君を見かけた事がある。


    それなりに走り込む事は出来るだろうが、やはり、南からこちらまで来て、また走ってとなるとキツいだろう。


    ……学園に入学してしばらく経った頃、彼が少しだけ弱音を吐いたことを覚えている。


    『超高校級の中に何の取り柄もない自分が居て、それは本当に良いのか』と。


    だから彼は前向きに『変わろう』とした。何にでも興味を持って、何でもやった。


    彼なりの努力する姿勢は、自ずと皆を惹き付け、結果的に皆と仲良くなっていく。


    ……無論、私も彼を評価している。今まで親しかったのは……本当に結お姉様位だった。


    さて、過去を振り返るのはよそう。今は前だけ向いて、事態の収集をしなければならない。


    江ノ島盾子……不気味に感じてはいた。彼女はただの『ギャル』では無い。



    豚神「しかし速いな戦刃」


    大神「我はお主が速いことに驚きだ」


    石丸「君達! 話をしながら走っていると舌を噛むぞ!」


    桑田「ぜひー……さ、流石にフルマラソンはキツいぜ……」


    日向「大丈夫か? 七海、罪木」


    七海「だ、大丈夫……」


    罪木「は、はひぃ……」




    5分程走った所だ。



    既に到着していた戦刃さんが戻って来ていたらしき弐大君と交戦している。



    石丸「な、何故だ? 戦刃君が……!」


    大神「我が止めに入る……!」


    豚神「大神、使え!」



    太った十神君が大神さんにスキルブースターを投げ渡し、そして。



    大神「戦刃!! 止めよ!!」


    戦刃「五月蝿いッ!! 五月蝿いッ!!」



    弐大「す、すまん大神!」



    弐大君へと加勢する。



    日向「小泉達は……!?」


    霧切「心配ね……中かしら?」


    日向「俺、行ってくる……!」



    日向君が駆け出し、戦刃さんと大神さんと弐大君の交戦域を警戒し、避けつつ校門へと入っていた。


    ……戦刃さんが激昂しているのは何故だ?


    それに……


    霧切「……江ノ島盾子の姿が見えない?」


    遺体らしきモノもない。



    嫌な予感がする。

  295. 300 : : 2015/03/08(日) 01:17:59


    ─────────


    弐大、大神、戦刃の交戦域を避け、俺は門前に立った。


    そして今、俺の、日向創の目の前に拡がる光景。



    朝日奈「……」


    ♡0
    ★0


    額に銃弾を撃ち込まれ、頭部から鮮血をぶちまけて横たわる朝日奈の死体。



    セレス「……」


    ♡0
    ★0


    首の無い、ドレスからしてセレスの死体。




    小泉「……た、すけ……!」


    何が起こっているのか分からないが、小泉は自ら腕輪を無理に外そうとしている……いや、自らじゃなく、恐らくあれは何らかの才能で、あの女が操っているのだろう。


    江ノ島「助けなんてこねぇーよ! ぶっひゃひゃっひゃっ!!」



    アイツは、小泉を殺そうとしている。


    日向「……ノ島ぁ」




    許さない。



    日向「江ノ島ぁあああああああ!!!」



    ポケットのケースから黒い立方体を1つ、既に剥き出しにしてある。


    ……いつでも、使えるようにそうしてきた。



    それを、今使う。


    そして、小銃(AK―47)を江ノ島へと向ける。



    江ノ島「あー? 日向ぁ? おいおい、あたしに銃向けてどうするんだよ?」



    日向「……小泉を解放しろ!」




    違うだろ、日向創。




    日向「そして……」




    ああ、そうだ。


    もうだめだ、許せない。



    もう、



    日向「……殺してやる!!」




    俺の憎しみの指向性全てを江ノ島へと向けた。




  296. 301 : : 2015/03/08(日) 09:29:42


    江ノ島「ぷっ……ぶっひゃひゃっひゃっ!!」


    日向「何が……おかしい?」


    江ノ島「あのさぁ、日向……それはつまり……『ゲームに乗る』って事だろ? しかも、あんたは『辺古山ペコと同じ事』をして……味方側であるあたしを殺して、敵側である小泉を生かそうと……してるのよね?」


    日向「……!」


    そう、これは辺古山と同じ事だ。


    しかし。



    日向「……お前はやりすぎだ。だから止めなきゃならない」


    止めるには、殺すしかない。ただそれだけ。


    黒い立方体をポケットから取り出す。



    江ノ島「あんたがどんな才能でかかって来ようと……あたしの才能に敵うと……思ってんの?」



    黒い立方体は煙を上げて、ブスブスと……








    日向「がっ!?」



    頭が、痛い。


    小泉「……ひ、日向?」


    江ノ島「……? さっきの勢いはどうしたんだよォ? いきなり頭押さえてさ」



    日向「ぐ、が………な、なんだ?」




    知識は走らず、『記憶』が跋扈する。




    なんだ、これ。




    モノクマの、最初の言葉が頭を過る。



    『……キミは本当に自分の事を『超高校級の相談者』だと思っているの?』



    あ、あ……違う。俺は……違う。




    違った。



    ただの『嫉妬の塊』……俺は『超高校級』なんかじゃなかった。



    黒い立方体が、俺に更に語りかけてくる。





    『……あなたは、ただの『器』であり、伸ばすべき才能は何もない』



    『つまらないあなたは、所詮……』



    『虚無、に過ぎないのですから……』









    ああ、そうだ。


    俺は……『ゼロ』だ。


    『ゼロ』に何を掛けても『ゼロ』じゃないか。




    日向「あ、ああああああ!!!」



    そう、か……


    この黒い立方体こそ……『アイツ』だったのか。



    『塗り替えられた捏造の記憶』が、ほんの少し剥がれ落ちる。


    そこから覗く『僕』がいた。




    カムクラ『そうでしょう? あなたであった僕』




  297. 302 : : 2015/03/08(日) 14:23:17



    小泉「ひ、なた……?」



    日向「だ、大丈夫だ……」



    もう、大丈夫だ。



    江ノ島「おい、もういいか? ほら、小泉の腕輪を……ん?」



    日向「無駄だ、江ノ島……小泉、自分で動かせるはずだ」


    小泉「え……? ホントだ」


    手を握り、開いて小泉は確認している。


    江ノ島「は? おい……どういう事だ?」



    日向「何をしても『無駄』と言ったんだ……江ノ島、覚悟しろ」


    江ノ島「おい、お前の才能……まさか」



    俺に、才能なんて無い。




    日向「ああ、そうだ。俺の才能は『無能』だよ江ノ島……!」









    全てのスキルブースターの効果を強制的に再装填(リキャスト)状態に戻す。



    俺の才能は……何もなかった。ただその『無能』は直線上の相手を呪い、ソイツもまた『無能』と化す。



    江ノ島に小銃を向ける。



    日向「小泉」


    小泉「!」


    江ノ島が呆けている、俺は首を左に振り、小泉に『逃げろ』と示した。


    小泉は左に走り、江ノ島はそこで気付く。



    江ノ島「そんなん……アリかよ」



    江ノ島が拳銃(ソーコム)を此方に向ける。


    日向「散々『才能』頼りで殺してきたんだろう? 江ノ島……『無能』の気分はどうだ?」


    江ノ島「絶望的ぃ……!」



    ニタリ、と、江ノ島は笑う。


    ……大した余裕だ。




  298. 303 : : 2015/03/08(日) 15:14:25


    ────────


    大神「戦刃……! 落ち着け!」


    戦刃「五月蝿いッ!!」


    弐大「聞く耳を持たんか……!」


    彼女にはもう、誰の言葉も響かない。



    眼前で繰り広げられる異質な戦闘に、ボクらが付け入る隙が無い。


    大神さんと弐大クンの、恐らく全員の中でも巨躯で力も強い2人相手に、臆することなく、立ち回り、人間離れしたバネと反射速度で、対等に戦っている。


    ボクは、苗木誠には見ることしか出来ないのか。


    七海「日向くん、大丈夫かな」


    向かった日向クンも心配だ……


    苗木「ボクも行ってくる」


    霧切「苗木君……」


    苗木「大丈夫」


    手をこまねいて見ているわけにはいかない。


    ボクはボクに出来ることをする。


    スキルブースターはポケットにむき出しで入れてある。



    『いつだって』そうしてきた。



    ボクは校門前へと走った。



  299. 304 : : 2015/03/08(日) 16:24:43

    ────────


    Now loading……


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    開示された情報




    最初の絶望、最後の絶望


    この思考実験の切っ掛けとなった『正史』に置ける『始まり』と『終わり』。
    『強制シャットダウン』には『始まり』のコードと『終わり』のコードが必要である。



    日向創のスキルブースト



    『相談者(無能)』→『虚無(マスカレード)


    相談者という偽りの才能を脱いだ、日向創本来のモノ、才能無き者に才能は宿らない。
    彼は本来ここには存在しない『バグ』そのものであり、『バグ』をあてがう事によって、射程間の『バグ』を正常値に戻すという取り分けて異質なスキルブースト。


    相手が使用している『スキルブースター』の恩恵が、日向創のスキルブースター使用によって『再装填(リキャスト)』状態にされる。日向創のスキルブースターが切れれば再び『装填(キャスト)』することが出来る。



    ────────


    Now loading……


    ────────
  300. 305 : : 2015/03/08(日) 22:17:45




    苗木「日向クン!」


    江ノ島さんは拳銃を、日向クンは小銃を互いに向け合い、殺しあっていた。



    日向「クソッ!!」


    江ノ島「ちっ!」


    江ノ島さんが屋内へと逃げ、それを日向クンは追いかける。



    そして、ボクの目の前にあるモノ……



    苗木「……朝日奈、さん、セレスさん」


    2人の遺体が目についた。


    ああ、クソ、また何も出来なかった。


    また失った。


    小泉「アンタは『本物の苗木誠』……でいいのよね?」


    苗木「えっ? そ、そうだけど……」


    校舎脇から出てきた彼女にそう聞かれる。


    小泉「アタシは小泉真昼……日向を助けて……アタシ1人じゃ……」


    苗木「もちろん……2人は校舎内に入っていった。追わなきゃ!」


    ボクはベルトに挟んだ銃を握り、校舎内へと入る。



    銃撃音が2つ交錯する。
    バララッ! という機関銃の音と、ダンッ! という拳銃の音が交互に響く。


    苗木「日向クン! 江ノ島さん!」


    日向「苗木か!」


    江ノ島「苗木ぃ?」


    2人が攻防する校舎の昇降口、江ノ島さんは踊り場に、日向クンは1階の階段の脇の壁に張り付いて銃を構えている。



    苗木「……もう、もう止めようよ、何になるっていうんだよ!」



    ボクはそんな言葉を漏らした。




  301. 306 : : 2015/03/08(日) 22:34:33


    江ノ島「今さら何言ってんだよ苗木ぃ、もう止まらねえし、それになぁ……」





    江ノ島「ここは仮想現実なんだよ、分かる?」


    日向「はっ?」


    苗木「えっ?」


    小泉「ちょ、ちょっとまってよ……? 仮想現実?」


    江ノ島さんが隠れたまま、話を続ける。


    江ノ島「まずはこの有り得ねえスキルブースターの力、そして『消える遺体』だ」


    スキルブースターの力は確かに、現実を遥かに超えたモノだ。しかし消える遺体は……


    江ノ島「『消える遺体』はまんまだよ、ゲームで敵を殺したら消えるアレみたいになぁ。あたしはこの目で辺古山と九頭龍がそうやって消えるのを見たんだ」


    つまり、モノクマとかが何かをしたわけでもなく。ただ、ただ、消えるというのか。


    江ノ島「……お前らはまだあの『手帳』見てねえのか」


    苗木「手帳?」


    江ノ島「『西の末端の建物にあった手帳』だよ」





  302. 307 : : 2015/03/08(日) 23:13:13
    期待しています
  303. 308 : : 2015/03/08(日) 23:39:43



    日向「まさか……あんなワケの分からないものを鵜呑みにしてんのか?」


    江ノ島「ワケが分からないもの? あんたはあの手帳、見たんだ」


    苗木「ちょっと……日向クン、なにか知ってるの?」


    小泉「日向、何なのよ……手帳って」


    日向「石丸を連れ戻すときに見たんだ……アレには確か」









    江ノ島「『かむくらいずる、きをつけろ』だっけ? あたしはねぇ、ソイツが今回の黒幕なんじゃないかと思ってる」


    江ノ島「他にも、『コロシアイをやめるな』とか『勝利者にも絶望』とか書いてたんだよねぇ」


    日向「ぐっ……!」


    日向クンが頭を押さえる。


    小泉「だ、大丈夫? 日向?」



    日向「『かむくらいずる』って……誰なんだよ?」


    江ノ島「希望ヶ峰学園初代校長……だっけ、それ以外にもう1つあった様な気がするんだけどね」


    膠着の中、会話は続く。







  304. 309 : : 2015/03/08(日) 23:40:04
    >>307
    ありがとうございますっ
  305. 310 : : 2015/03/09(月) 01:55:16


    苗木「もうひとつ?」


    江ノ島「残念だけど、記憶に無いのよね。どうでも良いことだったか……それとも『消された』か」


    小泉「消されたって……記憶が?」


    江ノ島「そ、あたし達は多分記憶を弄られている。知っている筈なのに、知らなかったり、そして、知らないはずなのに、知っている事……例えば、銃の扱い方とか?」


    日向「……!」


    そう、ボクらはただの高校生に過ぎない。なのに、何故『こんな物騒なモノを平然と使えるのか』だ。


    江ノ島「……多分、ずっと使ってきたからじゃねえの? 何度も何度も」


    日向「繰り返して……きた? まさか、あの手帳にもあった『前回』とか『今回』ってのは」


    江ノ島「そ、つまり、あたし達は繰り返してたのよ、こんなコロシアイをね。そして銃の扱い方は記憶に無くても感覚として染み着いてんの。手足の様に駆使して、何度も戦場を走り抜けてきた……ってこと」


    だから、馴染むのか。この銃は。


    江ノ島「もういい? つまりは、あの手帳はこの状況の『たった1つの手懸かり』、十神や腐川が殺る気なのも、それを見たからなんじゃないの?」


    苗木「……そんな、じゃあ」


    江ノ島「葉隠とか辺古山はともかく、あたしは『正しい事』をしてんのよ。むしろお仲間ごっこでつるんで最後に馬鹿見るのはあんた達の方じゃない?」



    そして、



    江ノ島さんは踊り場からこちらに銃を発砲する。



    苗木「うわっ!」


    ボクの足元に銃弾が刺さり、思わず転びそうになった。



    江ノ島「あたしの話を信じるのも信じないのも自由、どっちにしたってもうコロシアイは止まらないし……あたしも止まる気はない。コロシアイを続けさせてもらう」


    日向「江ノ島……」


    苗木「……江ノ島さん」


    江ノ島「だってさぁ……」



    ゆっくりと、江ノ島さんは『止まる気がない本当の理由』を口にした。










    江ノ島「その方が絶望的じゃなぁい?」





  306. 311 : : 2015/03/09(月) 19:56:44


    小泉「絶望的……って、え?」



    日向「ふざけているのか……!?」


    江ノ島「ふざけている? ふざけないでよ。ふざけてんのはあんたらでしょ?」



    数値から見れないけど、江ノ島さんはどこか『壊れ』てた。


    人としての理性、人間性が。



    江ノ島「ついてきなぁ!」


    ダッ! と江ノ島さんが昇降口を走り昇っていく。



    日向「まて!」


    ボクらも昇り、追い掛けた。


    飛び出した先は校舎の屋上、まるで植物園の様に、あらゆる草木が生い茂り、辺りを一望出来るフェンスの端に、江ノ島さんは立っていた。


    まるで自ら追い込まれる様に。



    江ノ島「さて……決着をつけようぜ、なあ?」



    苗木「……なんでボクらがふざけているの?」


    江ノ島「ふざけているでしょ?」



    苗木「違う……! ボクらはふざけてなんかいない」


    江ノ島「うぷぷ……仮想現実なんだぜ? 殺したってなーんも無いだろ?」


    苗木「……それでも、痛みはホンモノなんだよ?」


    江ノ島「そうだね、マジで傷を受けると死ぬほど痛い。まあ致死レベルのは痛みを感じる前に死ぬんだけどね」


    江ノ島さんはほくそ笑む。



    仮想現実だとしても、傷つけられる痛みはあるのに、恐怖はあるのに。



    苗木「……なら、力付くでも止めさせてもらうよ、江ノ島さん」


    江ノ島「いいぜぇ、殺す気で来なよ苗木ぃ」




    黒い立方体が、ボクの手の中で溶ける。



    ……ボクに宿る『才能』は『幸運』なんかじゃない。



    ボクに出来ること、それは。














    苗木「『動クナ』」










    江ノ島「あ? ……がっ!?」


    日向「うっ……!? 苗木……?」


    小泉「何……体が……?」






    ボクの一声は『強要』させる。


    相手の行動、思考を、
    一心乱れず殺し尽くし( ハ ッ キ ン グ )』、絶対的な強制力の『命令(コマンド)』を飛ばす。




    心臓を射抜く、言葉の弾丸。




  307. 312 : : 2015/03/09(月) 22:00:53



    江ノ島「がっ……くっそ……苗木ぃいいい……良いねぇそれ、欲しいわ……!」


    苗木「江ノ島さん、もう終わりにしよう、ねえ」


    そっと、拳銃を向ける。


    江ノ島「ぐっ……は、ははははは!! ああ、そうだよ、終わりにしよう苗木ぃ、あたしを殺して!! 終わりにしてしまえ!! そして……『そして』……!」




    苗木「もしさ、ちゃんと現実があって、ちゃんと帰れたら」








    苗木「……ちゃんと謝るから」






    パァン、と、引き金を引く。






    ────────




    苗木は江ノ島を撃ち殺した。
    俺は、日向創はそれに立ち会った。



    日向「……」


    江ノ島が蘇ることはない。
    奴の『才能』は俺の『無能』で封じていたから、これで正真正銘、江ノ島盾子は死んだ。



    もう動かない江ノ島の遺体を一瞥して、校舎内に再び戻る。



    苗木「戦刃さんを止めにいこう」



    それ以降、苗木は下るまで無言だった。



    そして、



    戦刃「ああああああ!!!」



    ♡42
    ★100


    大神「止めよ! これ以上傷つくと……!」


    弐大「戦刃!! 止まらんか!」


    いくらブースターの恩恵があるとはいえ、対等に見えて、やはり手数で押し負けている。


    躍らされ、踊るように闘う戦刃が虚しく見えた。



    日向「苗木」


    苗木「……大丈夫、まだ、恩恵は残っている」



    苗木は3人の前へと赴き、そして。





    苗木「……『動クナ』」


    戦刃「がっ!?」


    弐大「ぬっ!?」


    大神「なっ! ……苗木、か?」


    苗木「……終わったよ」


    大神「では……江ノ島は」


    戦刃「!! 盾子ちゃん? 盾子ちゃんはどこ? ねえ、苗木君、盾子ちゃんが見当たらないの、どこ?」


    苗木「……」


    戦刃はもう『壊れて』いた。
    絶望チェッカーが示す、『絶望』の状態にあるモノは皆、冷静に考え、分別する能力を失っている。


    ……戦刃も例外ではない。



    霧切「苗木君……」


    苗木「霧切さん、ボクは……」


    霧切「何も言わなくて良い、貴方は最善だと思った事をやった、ただそれだけ」


    震える苗木の手を握り、霧切は苗木を励ます。





    豚神「戦刃を拘束するぞ」



    『苗木の一声』が届かなかった6人が駆け寄り、戦刃を縛った。

  308. 313 : : 2015/03/09(月) 22:50:33

    ────────


    Now loading……


    ────────


    開示された情報



    絶望チェッカー・その2


    99%までは引き戻せるが、100%まで陥ると『絶望化』する。どんな声も届かず、人間性を失い、死ぬまで絶望的行為を止めることはない。



    苗木誠のスキルブースト



    『幸運』→『言弾・白(トリガーハッピーハボック)


    彼に元来備わるものは『幸運』ではなく前向きであるという性格や言動にある。
    至って普通に聞こえるが、彼の場合、その前向きが取り分け『異常』であり、結果として幸運の目が現れているのかもしれない。

    この才能は前向きであるという言動から来るもので、人の心を動かす言動がより顕著化し、身体にまで及ぶ『強制力』を得た才能である。

    彼の一声が届く範囲が射程であり、敵味方問わずその才能の前に『強要』される。



    ────────


    Now loading……


    ────────
  309. 314 : : 2015/03/10(火) 00:25:24
    個人の能力が特徴的でとても面白いです!!
  310. 315 : : 2015/03/10(火) 00:39:01
    >>314
    ありがとうございますっ
  311. 316 : : 2015/03/10(火) 01:34:59

    ────────



    戦刃「放して……放して!! 盾子ちゃん、どこ? 何処にいるの?」


    後ろに腕を回し、両足を縛り、戦刃さんの身動きを完全に取れないようにしている。


    戦刃さんには悪いけど、江ノ島さんの事は黙っておく事にした。


    霧切「……犠牲者が多すぎたわね」


    豚神「……西園寺、朝日奈、セレス、終里か」


    私、霧切響子は溜め息を吐く。江ノ島さんただ1人の凶行で、これだけの犠牲者を出すなんて。



    大神「朝日奈……すまない……すまない……!」


    弐大「終里……」


    小泉「……日寄子ちゃん、ごめん」



    死した者と親しかった者は、哀しみに明け暮れる。



    苗木「……もしもし、舞園さん? ああ、うん、今北側に来てる……色々大変な事になっちゃって」


    霧切「舞園さんかしら?」


    苗木「うん、そうだけど……」


    霧切「南側の人達をこちらに皆呼んでもらえないかしら」


    苗木「うん……そうだね」


    豚神「まて」


    太った十神君が待ったをかけた。



    豚神「俺達側の危険人物はまだ居る。南側の連中を動かすより、こちらが動いた方が良いだろう。人数も多いしな」


    本物の十神君、そして腐川さん……


    彼等は今、何処にいて、何をしているのだろうか。


    弐大「南側に向かうんじゃな、ワシも範囲外での報告がある」


    日向「俺もだ、江ノ島の話と……俺について」


    2人が暗い顔をする。


    ……どちらも、良くない話なのだろう。


    桑田「戦刃は……どうすんだよ?」


    桑田君が話を振る、確かに、この状態の戦刃さんを引きずって行くのも難だ。


    大神「我が見ていよう……それに、朝日奈を……皆を弔ってやりたい」


    霧切「……お願いして良いのね?」


    大神「話があったら電子生徒手帳に頼む……」


    話はまとまった。私達は相手側の、南側の校舎へと向かった。



  312. 317 : : 2015/03/10(火) 15:52:55
    女の子が一気に死んでしまった…
  313. 318 : : 2015/03/10(火) 17:38:45
    >>317
    正直扱いがかなり難しいです女性陣……
  314. 319 : : 2015/03/10(火) 18:23:16


    ────────


    十神「フン……」


    北東部、一番高いビルの屋上。


    俺は、十神白夜はそこから始終を覗いていた。

    スナイパーライフル(モシン・ナガン)越しに見ていたが、まさか江ノ島が獲られるとは思わなかった。


    ……だが、奴は厄介であったのは確か、それを同士討ちで重畳だ。それに戦刃に関しても、アレはもう駄目だ。敵としてもう機能しない上に、殺そうと思えば何時でも殺せる状態だ。


    犠牲こそは多かったが、これで歩を進める事ができる。


    ……霧切らが南側へと向かった。残るのは大神のみ。


    武器とスキルブースターの回収をしたいところだが……


    腐川「びゃ、白夜様……」


    十神「腐川か」


    腐川「も、持ってきました」



    腐川が持ってきたのは大和田の武器だ。


    大型回転式拳銃(S&W M500 ハンターモデル)……その場で鹵獲(ろかく)すれば良かったが、あの時は必要と感じなかった。



    十神「さて……」


    道なりにあったホームセンターで見つけた工具用ホルスターに、拳銃を捩じ込む。


    次は大神を使い、相手方の残存を削っておきたい。




  315. 320 : : 2015/03/10(火) 18:38:37
    私様本当に死んだのかな?
  316. 321 : : 2015/03/10(火) 18:52:08
    >>320
    さてさて……
  317. 322 : : 2015/03/10(火) 18:52:58
    期待でございます!(^_^ゞ
  318. 323 : : 2015/03/10(火) 18:53:55
    >>322
    ありがとうございますっ
  319. 324 : : 2015/03/10(火) 20:19:44


    ────────


    大神「……朝日奈」



    我は、大神さくらは親友すら守れぬ脆弱者だ。


    なにが地上最強だ。


    友の1人も守れず、そんなものの何が強さだ。


    他の亡骸同様、朝日奈の亡骸を、朝日奈の自室へと寝かせた。


    大神「すまなかった……」


    涙を溢し、この哀しみを、憤りをどこにぶつければ良いのか我には分からない。


    ……仇は苗木が討ってくれた様だ。震えた苗木の手を見て、どれだけの覚悟だったか見てとれる。



    人を殺めるとはそういうことだ。業を背負い、命を摘むとはそういうことだ。


    かの辺古山も、そうであったのだろう。面識こそは無いが、同校の出身、種目は違えど、互いに武を求めた者。


    ……大切な者の為に、悪鬼羅刹に堕ちる気持ちが今は分からなくもない。



    大神「さらばだ、朝日奈よ」



    返事はない、記憶に残る朝日奈の笑顔を思い浮かべ、部屋を後にした。


    大神「さて次は……」



    屋上、江ノ島の遺体が有るはずだ。


    軒並みではあるが、憎かろうと死ねば仏、簡素ではあるが弔ってやろう。



    そう思い、我は屋上へと向かった。

  320. 325 : : 2015/03/10(火) 21:21:45



    屋上へと足を着ける。


    大神「……江ノ島」


    倒れた亡骸を覗く。




    江ノ島「……」



    ♡0
    ★20





    大神「……?」


    絶望チェッカーとやらが壊れたのか?


    江ノ島は確実に死んでいる。弾痕が確かに江ノ島の心の臓腑を貫いている。


    ……だが、なんだこの不安は。


    江ノ島の脈を見る。


    ……脈はない。


    息もしていない。


    だが、何故だろう。


    胸騒ぎが収まらない。


    思わず、江ノ島の遺体から離れる。




    ふと、




    ……小泉の才能を思い出してしまった。



    大神「まさか……」



    まさか。





  321. 326 : : 2015/03/10(火) 21:37:48


    ────────


    俺、日向創を含む北側に居たメンツは、大神を除き、南側へと到着した。


    時刻はそろそろ6時……あの放送から6時間しか経っていない。



    長い6時間だった。そして、今日だけで不二咲、大和田から始まり、西園寺、終里、セレス、朝日奈……そして、江ノ島が命を落とした。




    山田「おお、戻って来ましたか……ってこりゃまた大所帯ですぞ!」


    苗木「山田クン、ずっと見張りしていてくれたんだね、ありがとう」


    山田「いえいえ」



    校舎内から狛枝が出てくる。


    狛枝「日向クン……北側で何かあったのかな?」


    日向「それも踏まえて、食堂で話す……皆を集めよう」



    皆は食堂へと向かう。



  322. 327 : : 2015/03/10(火) 23:36:11


    食堂に、本物の方の十神、腐川、そして戦刃と大神を除く、生き残りが集結した。


    14人……4人も含めると、18人……つまり、14人が命を落とした。


    豚神「これで、皆か?」


    澪田「白夜ちゃ〜ん、なんだかひさしぶりっす!」


    豚神「澪田、相変わらずの様だな……さて」


    詐欺師の十神は弐大を向く。


    豚神「弐大……お前が範囲外から戻ってきた、つまりは……」


    弐大「うむ、脱出は不可能じゃ」


    一同がざわつく。


    狛枝「待って、弐大クン……『範囲外』っことは、キミは戦場を離脱した……って事で良いんだね?」


    弐大「うむ、腕輪を外した。しかし、そんなもん、意味は無かったわい……これを見てみぃ」


    弐大はテーブルの上にカメラを置く。


    小泉「……それ、アタシが響子ちゃんに貸した奴じゃない」


    霧切「ごめんなさい、小泉さん。この為に借りたの……ちょっといいかしら」


    保存された画像を、霧切はディスプレイから覗く。皆にも見えるように。



    日向「……なんだ、こりゃ」


    切り立った崖っぷちの画像、底の見えない穴の画像、空と地の境界が曖昧な画像……つまりは。



    弐大「ここは崖の上、いや……というよりは地面がこの一帯にしか無いといったところかの」


    七海「やっぱり、ここは都心なんかじゃないんだね」


    罪木「ふぇ!? じゃ、じゃあここって何処なんですかぁ?」


    苗木「……そもそも、現実じゃない」


    小泉「江ノ島盾子が言ってた『仮想現実』の事?」


    霧切がハッとして、あの手帳を取りだし、覗く。


    霧切「これかしら、他者共有仮想世界……」


    石丸「確かに、そんな事がその手帳には書いていたが……ここが現実ではないと?」


    一同が再びざわつく。


    無理もない、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)と言ったVR機器類はあるが、これはそんなものの比じゃない。


    あまりにもリアル過ぎる。


    霧切「残念だけど、こう言った案件に詳しそうな不二咲君は既に……」


    ……亡くなってしまった。



    山田「ちーたん……不二咲千尋殿がせめて何かを遺していたら」


    石丸「……!」


    石丸が何かを思い出したように話す。


    石丸「何ヵ月か前に、兄弟と不二咲君とで雑談をしていた時、彼が作ったというプログラムを見せてもらったことがあるぞ! たしか『アルターエゴ』といっていたな」


    日向「『アルターエゴ』……?」


    詐欺師の十神が腕を組み、口を開く。


    豚神「『ALTER EGO』……別人格、不二咲の部屋を見に行ってくる」


    詐欺師の十神が肉を揺らし、食堂を出ていく。


    霧切「でも……パソコンは私物なのよね? だとしたら、無いんじゃないかしら? 携帯や貴重品といった類いまで無くなっているのに」


    そうだ、財布や携帯電話スマートフォンといった身に付けていた私物も、俺達は無くしている。



  323. 328 : : 2015/03/11(水) 17:57:41


    しばらくすると、詐欺師の十神は戻ってきた。



    豚神「引き出しの中にあったぞ」


    霧切「……でも、これ学園の備品みたいね」


    日向「ああ、校章がボディに入ってるな」



    石丸「そういえば、パトロールしている時に、向こうの学園でも同じものを見たことがあるな!」


    霧切「本当なの? 石丸君」


    霧切の問いに、石丸は頷く。


    霧切「……仮に、この学園のモノが微塵のズレも無く、部屋割りの札以外の備品が同じ配置にあったとしたら……石丸君、それはどこで見たの?」


    石丸「確か、図書室だったと思うぞ!」


    霧切の推測が正しければ……恐らくは……


    苗木「……もしかして。ボク、図書室に行ってくるよ」


    舞園「あ、私も行きますよ! 苗木君!」


    2人が出ていき、図書室へと向かった。


    桑田「仮に、図書室に同じものが無かったら、それは不二咲が動かしたって事になるんだよな?」


    霧切「……そうね、ただ、それでは『駄目』なのよ」


    弐大「どういうことじゃ?」


    霧切「この…『手帳』よ、私の手帳は私物ではあるのだけど、回収はされなかった。黒幕が見逃したのか……私はこれを携帯や財布以上に肌身放さず持ち歩いてはいるけど……」


    日向「そうか……つまり、『私物』を全部回収されたわけじゃない」


    七海「そっか、私のリュックなんかも『私物』だもんね。ケータイとお財布は無いけど、ゲーム機はそのままだったし」


    日向「そうなのか? 七海」


    七海「うん、あんまり重要じゃない事かと思って」


    豚神「つまり、取られたのは携帯と財布だけか……」


    霧切「『外部との連絡』というよりは『個人情報』に的を絞られてる感じね」



    そして、苗木と舞園が戻ってくる。その手には、詐欺師の十神と同じパソコンを持っていた。

  324. 329 : : 2015/03/12(木) 19:24:39



    苗木「見て、備品を示す希望ヶ峰の校章と、型が同じだ……」


    舞園「私と苗木君で先に覗いちゃったんですけど、特にこれといったデータは入ってなかったですね」


    霧切「……ねえ、私達側の校舎で、不二咲君の部屋と同じ位置にある人って、ここにいるのかしら?」


    豚神「それは俺だ、霧切。言っておくが初日に部屋を調べたが、これといって何もなかった、無論、このパソコンもな」



    罪木「え、えっとぉ、だとしたらぁ……そのぉ……どういうことなんですかねぇ?」


    狛枝「つまり、その不二咲クンの部屋にあったパソコンは『異物』……ということになるのかな?」


    霧切「……そう、私の手帳と同じ『異物』なのよ……十神君、不二咲君の部屋にあったパソコンを立ち上げてもらっていいかしら?」


    豚神「ああ」


    そして、不二咲の部屋にあったパソコンは起動を始め、OSのロゴが出たのちに、デスクトップ画面が映る。

    ……表側には特にこれといったファイルがない……が、図書室の物と比べると、1つ、アイコンが違うものがあった。


    小泉「……なんだろう、これ」


    七海「何かのアプリだね。開いてみたら?」


    詐欺師の十神が、そのアイコンにダブルクリックをする。


    そして、



    『こんにちはっ』


    浮かんできたのは不二咲の顔を簡略化したようなグラフィックだった。



    石丸「これだ! 不二咲君の言っていた『アルターエゴ』というのは!」


    アルターエゴ『音声認識デバイスをオンにするよぉ。マイクに向かって話しかけてねぇ』



    豚神「イエスだ。アルターエゴ、お前は不二咲……不二咲千尋なのか?」


    アルターエゴ『……明確にはご主人タマとは違うけど、僕が生まれて来たときよりは、ずっとご主人タマに近付けたと思うよぉ』


    ご主人タマ……というのは不二咲本人の事だろう。



    霧切「……アルターエゴ、これであなたを起動したのは何回目なのかしら?」


    アルターエゴ『32回目だよぉ、霧切さん』


    霧切「……! 驚いたわ、私の事を知っているのね。少なくとも、32回は繰り返しているということ?」


    アルターエゴ『もちろん、77期生、78期生のみんなの事は知ってるよ。ここは、僕が生まれてから32回目の再構築された世界なんだね』


    ……江ノ島の言葉を思い出す。何度も何度も戦場を駆け巡ったと、アイツは言っていた。
  325. 330 : : 2015/03/12(木) 19:30:33
    ・・・ようするに、23回は起動されなかったのね
  326. 331 : : 2015/03/12(木) 20:04:35
    55番目の箱、なのに32回目?
  327. 332 : : 2015/03/13(金) 17:41:06
    >>330
    >>331
    生まれてから32回目(振るえ声)
    ということはつまり……ってわけです
  328. 333 : : 2015/03/13(金) 18:01:48


    日向「やっぱり、繰り返しているのか。このコロシアイを」


    霧切「……アルターエゴ、あなたは『他者共有仮想世界』について何か知っているのかしら?」


    アルターエゴ『他者共有仮想世界、超高校級のセラピスト、神経学者、そしてご主人タマが携わった希望ヶ峰学園の計画の1つだねぇ。新世界プログラムってご主人タマは言ってたよぉ』


    霧切「『新世界プログラム』……それはどういった目的で作られたのかしら?」


    アルターエゴ『VRシステムを用いて、精神疾患者のリラクゼーション、つまりは精神病における最先端の治療機器として開発されたんだ。でも、ある問題のせいで計画は問題解決がなされるまで事実上の凍結になっちゃったんだよねぇ』


    豚神「ある問題? なんだそれは、説明しろ」


    アルターエゴ『被験者の精神への影響が大き過ぎて、被験者が仮想現実内部で再起不能になると現実でも再起不能になるんだ』


    苗木「な、なんだって……!」


    アルターエゴ『脳が自分は死んだと錯覚しちゃうんだ。結果として、本体も死に至る』


    霧切「……だとしたら『繰り返している』という事はどういうことなの? 仮想現実で死ぬと、現実でも死ぬということなのよね?」


    アルターエゴ『うーん……明確な事はわからないなぁ。ただ、解決策がもしかしたら完成しているのかもしれないね』


    もし、俺達がこの仮想現実を繰り返しているのならば、幾度と死んだハズだ。
    しかし、それを復活させるとなると……どうやった原理で復活させているんだ?


    霧切「……余計に困惑してきたわね。もしかして、ここが仮想現実だとして、それは新世界プログラムではないということ?」


    またしても、袋小路だ。


    霧切「……とりあえず、仮想現実については保留ね。アルターエゴ、あなたが生まれた経緯を教えてくれないかしら?」

    アルターエゴ『僕が生まれたのは、ご主人タマと霧切さん、小泉さんと江ノ島さんがチームだった時だよ』


    ここで江ノ島という名前をまた聞くとは……

  329. 334 : : 2015/03/13(金) 19:08:11
    す。すごい!こんな神ssを書けるなんてΣ(゚Д゚)応援してます!
  330. 335 : : 2015/03/13(金) 23:41:12
    >>334
    ありがとうございますっ
  331. 336 : : 2015/03/13(金) 23:52:20




    霧切「その時は、4人一組のチームだったわけね」


    アルターエゴ『霧切さんが前回と次回とで、物品を持ち越して増やす方法を見つけたんだ』


    七海「持ち越して増やす……『増殖バグ』みたいな事なのかな?」


    日向「『増殖バグ』?」


    七海「んっとね、昔のゲームなんかで結構あるんだけど、システムの穴をついて、特定の手順を踏むと、どんなアイテムでも増えちゃうゲームの『バグ』の事だよ。世界に1つしかない伝説の剣なんかも、これで増えちゃったりするんだよ」


    アルターエゴ『うん、やり方はご主人タマ伝いに聞いたけど、私物の場合は自分の血で覆ってしまうんだ。血痕自体は、世界に滞留し続けるから、本来は一緒に消えるモノが、システムが混乱して、私物が残っちゃうんだって』


    霧切「だとすると、この手帳の汚れは……私の血によるものだったのね」



    アルターエゴ『そう、で、私物で無いものは全く同じものを作って、同じ位置に置く事だね。すると、システムが認識出来なくて位置がズレた方は世界に滞留し続け、次回に持ち越されてしまうんだって』


    日向「そう聞くと……この仮想現実のシステムって穴だらけなんだな」


    苗木「そうだね……それに『いつからどうやってボクらはここにいた』んだろうね……」


    霧切「まったくね……ねえ、アルターエゴ、『カムクライズル』ってわかるかしら」


    日向「うっ……ぐ」


    頭を押さえる。『カムクライズル』という言葉に、俺は反応してしまう。


    アルターエゴ『カムクライズル、何度目か前まで居た人だね』


    苗木「………『居た』? その人は黒幕じゃないの?」


    江ノ島も言っていた、アイツ自身もこの状況の『黒幕』は『カムクライズル』ではないかと睨んでいた。


    ……『カムクライズル』と『俺』は何か関連性があるのか?


    アルターエゴ『彼もまた、皆と同じだったんだよ。でも、ある時に突然入れ替わったんだ』


    豚神「『入れ替わった』だと……? どういうことだ?」


    アルターエゴ『そのままの意味だよ、カムクライズルは別の人に入れ替わった……』






    アルターエゴ『そこの日向創君にね』



    一同が俺に振り返る。
    俺が……『カムクライズル』と入れ替わった?
    どういうことなんだ?

  332. 337 : : 2015/03/14(土) 00:06:46



    日向「な……じゃあ、俺は最初は……居なかった?」


    アルターエゴ『うん、少なくとも僕が生まれた時は日向創君は存在しなかった。代わりにカムクラ君が居たんだ』


    日向「誰なんだ……ソイツは」




    アルターエゴ『彼は予備学科から本科に来た人みたいだよ。残念だけど、それ以上の情報はないよ……』


    日向「……どういうことだ? 俺と……同じ?」


    霧切「……そういえば、日向君、あなたからも何か話があるんじゃなかったかしら?」


    日向「あ、ああ……俺も『カムクライズル』と同じ予備学科上がりなんだけどさ……俺……『超高校級の相談者』なんかじゃなかったんだ」


    霧切「……どういうことかしら?」


    日向「『スキルブースター』を使ってわかったんだ。俺には『才能』がない……」


    苗木「そんな、だって……キミの才能が無かったらボクらは江ノ島さんに……」


    小泉「そうだよ日向、日向がいなかったらアタシは……死んでたんだから」


    日向「違うんだ……俺は『無能』なんだ……俺に『才能』なんて……なんで俺、本科なんかにいるんだ……? ひょっとして、俺の記憶は『捏造されたモノ』なんじゃないか……!?」







    七海「日向くん」


    七海が隣にやってきて、そして……


    七海「んにぃ」


    俺の両頬をつねった。


    日向「んにぃ……いひゃい」


    七海「日向くん、君はちゃんと『超高校級の相談者』だよ?」


    澪田「そうっすよ! 創ちゃんは誰がなんと言おうと『超高校級の相談者』なんすよ!」


    小泉「日向、アンタはちゃんと『超高校級の相談者』なんだよ」


    豚神「そうだ、この俺が認めてやってるんだぞ。日向、お前は『超高校級の相談者』なんだ」



    日向「なんなんだよお前ら……」


    なんで、皆は信じて疑わないんだ?
    俺自身、記憶も素性もあやふやなのに……なんなんだよ。





    狛枝「日向クン、『相談者』がちゃんとした才能じゃなくても、皆はキミが『超高校級の相談者』と認めてるんだ。もちろん、ボクもね。それで良いじゃないか……もし記憶が捏造されていたとしても、キミはキミなんだ」


    日向「狛枝……ごめん、俺……何言ってんだろうな」


    独りで悩んで……俺が才能無いからってコイツらが手のひらを変えるタマか?
    そんな事有るわけないじゃないか。


    もっと、自分に誇りを……『あの時、七海がいってくれた』じゃないか。


    苗木「日向クン、もしさ、この状況が解決して、外に出られたら……相談してもらってもいいかな?」


    日向「な、なんだよ苗木、改まって……いつでもいいぜ!」


    舞園「あ、私も相談してもらってもいいですか? 日向君♪」


    桑田「お、オレもオレも!」


    石丸「実は……僕も悩みがあってだな……」


    山田「そのー僕もですねー実は人に言えない相談が……」


    日向「はは、まとめてこい!」


    こんな状況でも、皆、笑顔を忘れたワケじゃない。
    何日ぶりだろうか、この切迫した状況で、本心から笑ったのは?

  333. 338 : : 2015/03/14(土) 00:09:46



    弐大「日向、お前さん何か言いたいことがあるんじゃなかったかのう?」


    弐大が茶化す。まったく、どいつもこいつ、本当にお人好しばかりだ。


    日向「いや、何もない! 話の腰を折ってすまなかったな」


    霧切「……解決したみたいね。さて……」


    話を戻そうとした時だった。



    豚神「……ん? 着信か、大神からか」


    詐欺師の十神に着信が入る。


    豚神「……なるほどな」


    霧切「大神さんは何を?」


    豚神「ああ、江ノ島盾子は生きている可能性がある、とな」


    苗木「……!」


    日向「馬鹿な……」


    江ノ島盾子は死んだ。間違いなく死んだハズだ。
    俺の『無能』で奴の『才能』を封じ、苗木の『才能』で動きを止め、そして……






    苗木が心臓を撃ち抜いた。


    日向「どういうことだ……?」


    豚神「まて、今音量を最大にする」


    詐欺師の十神は電子生徒手帳を机に置く。
    大神の声が、聞こえてきた。


    大神『……皆、聞こえるか?』


    豚神「大丈夫だ、問題ない」


    大神『そこに、小泉はいるか?』


    小泉「あ、アタシ?」


    大神『お主のスキルブースターでの才能……明確に教えてもらえるか?』


    小泉のスキルブースターでの才能……そういえば、ちゃんと聞いてない。


    小泉「アタシの『スキルブースター』は、バイタルを何にでも一時的に預けられるの。そして……江ノ島盾子が使ってみせたんだけど『動かせる運動器官があるものにバイタルを預けると、それを自分の一部に』……えっ? ウソ……」


    日向「どうした小泉……」


    小泉「……ま、まさか、アタシに江ノ島盾子の『バイタル』が残っている?」


    あの時、小泉が操られていたのは……小泉自身の才能によるものだったのか!


    霧切「……大神さん」


    大神『なんだ?』







    霧切「……江ノ島さんの体を燃やして頂戴」




  334. 339 : : 2015/03/14(土) 00:13:45




    大神『……! わ、わかった』


    小泉「あ、アタシ……また操られるの?」


    小泉が鬱蒼としながら自身の両の腕を、手のひらを覗く。


    日向「大丈夫だ、小泉……現に今は自分で動かせてるんだろ?」


    小泉「……そうだけど」


    霧切「……小泉さん、預けたバイタルは戻すことが出来るのかしら?」


    小泉「う、うん……多分、どこにいても戻せると思う。ただ、本体がやられた時に戻すと、そのまま死んじゃうみたいだけど」


    霧切「……つまり、体が致命傷だと、預けていても死ぬのね?」


    小泉「そ、そう」


    霧切「……意識は預けた方と、本体のどちらも持つの?」


    小泉「わ、わかんないけど……多分『バイタルが高い方』に意識が向くの」


    霧切「……だとしたら」


    霧切が小泉を睨む。

    いや、正確には……










    霧切「『そこ』にいるのね? 江ノ島さん?」








    小泉「……うっ、あああ!!?」


    小泉が突然、顔の左側を押さえだす。
    そこに居るとは、つまり、江ノ島盾子はまだ……!



    小泉「……あ、『あーあ、ばれちゃった?』いやぁ……!」


    日向「こ、小泉……?」


    顔の表情が、右半面と左半面でまったく違う。
    ……まるで『モノクマ』の様に、右半面だけが歪な笑みを浮かべている。


    小泉「や、やめ……『いやー、ラッキーだったわ。日向がまさかあんな才能だなんてね……流石の私様でも予想外』……てぇ……!」


    霧切が拳銃を懐から出し、小泉に向けた。


    小泉「うああ……『おっーと、あたしを殺そうとしたら小泉も死んじゃうけど、いいの?』いやぁ……!」


    霧切「くっ……!」


    最悪の人質の取り方、江ノ島はバイタルを介して小泉と『同化』し、小泉を盾にしている……!
    理屈はわからないが、この世界じゃそんな事も出来てしまうのか……!


  335. 340 : : 2015/03/14(土) 00:16:42



    小泉「……う、うう……『これがホントの羅刹女(アルターエゴ)なんつってー、ぶっひゃっひゃっひゃっ!』うう……!」


    苗木「……江ノ島さん、なの? 小泉さんから離れてよ……!」


    小泉「……『そうだよ苗木ぃ、そうはいかない、あたしの体を治せばすぐにでも戻るけどさ。聞いてる? 大神、もしあたしの体を燃やしたりしたら……』……うう……」


    大神『ぬううう……!』


    霧切「……とんだ悪霊ね……江ノ島さん?」


    そう、今の江ノ島はただの『概念』だ。
    悪霊といっていい。


    ……なんて、しぶとい。


    小泉「あ……『何とでも言えっ、あたしはあたしのやり方があんのよ。まーだリタイアは出来ないなぁ……残念ながら、小泉の体だとあたし自身の才能使えないしぃ』うああ……」


    小泉「あ……あ、『狛枝と罪木だけついてきてもらうよん。他がついてきたら小泉は殺す、おーけー?』うあ……!」


    罪木「ふ、ふぇええ!? わ、私ですかぁ?」


    狛枝「……やれやれ、このチョイスには何かあるのかな?」


    小泉「……ぐ……『小泉や大神の怪我が治ってるのさぁ……罪木の仕業じゃない? 肩書きからしてもそれっぽいしさぁ、アンタはオマケ、つーか十神らと鉢合わせしたくないんだよねぇ。それまで罪木殺されるワケにもいかないしさ、つまりナイト役ってワケ』うう……」


    狛枝「……なるほど、それで、なんでボクなのかい?」


    小泉「……あぐ……『あたしはねぇ、人を容赦なく撃てるあんたを見込んでいるんだよ』うあ……」


    狛枝「……確かに、ボクは容赦無く撃てる、けど、それはあくまで自己保身と仲間を守るためだよ」


    小泉「……あぅ……『だから評価してんのよ、希望の為に、希望を切り捨てる様なあんたの性根をさぁ』……あぁ!」


    狛枝「参ったね……」


    日向「狛枝……!」


    狛枝は小泉……正確には、江ノ島に聞こえないように俺に耳打ちする。


    狛枝「……大丈夫、日向クン、ボクを信じて……こんなヤツの好きなには絶対にさせない」


    俺は黙って頷き、狛枝を信じた。


    狛枝「……わかったよ、江ノ島さん。さあ行こう、罪木さんも」


    罪木「は、はいぃぃ……」


    小泉「……う、うう『さて、小泉……行こうか、北側に』うう……!」


    小泉はぎこちない様子で歩き、それに狛枝と罪木がついていく。


    ……くそ、黙って見ることしか出来ないのか?

  336. 341 : : 2015/03/14(土) 00:18:28


    ────────


    ここではない、どこかのモニター室。


    シロクマ「わぁ、盾子ちゃん、超シブトイね」


    クロクマ「あー? まあ、あれは『出来損ない』だとしてもシッカリ絶望様だかんなぁ! 死んでも死なないのが絶望様らしい? つーか?」


    江ノ島盾子……『正史』においても、彼女は何度も死ぬ。


    ……肉体的に死ぬのは一度だったが『概念』としては幾度と無く死んだ。

    シロクマ「アルターエゴちゃんも見つかったし、あと1つだね」


    クロクマ「まだだよバァカ! 『3つの遺留物』が見つかった所で、『最初と最後の絶望』と『カムクライズル』が見つかってねーじゃん!」


    シロクマ「そーだねぇ、でも、ボクは見つかりそうな気がするなぁ」


    クロクマ「……ま、そうだな、こっちとしてもとっとと終わりにしてえしな」


    ……この末端達もまた、すでに『飽きて』いるのだ。



    ……10回目にして、霧切響子が『増殖』のバグに気付き、最初の『遺留物』を作り上げ。

    ……23回目にして、不二咲千尋が『アルターエゴ』という2つ目の『遺留物』を作り上げ。

    ……32回目にして、『彼』は『彼』となり。

    ……43回目にして、『彼』を知る『彼女』が『彼の居所を示す日記』を3つ目の『遺留物』として作り上げ。


    ……あとは、『最初の絶望』と『最後の絶望』を『彼』が炙り出すだけ。












    ────────そして、どうか、この世界に優しい終幕を。




  337. 342 : : 2015/03/14(土) 14:38:00
    うわぁ…すごく気になる展開…期待です!
  338. 343 : : 2015/03/14(土) 14:38:28
    期待です^^
  339. 344 : : 2015/03/14(土) 14:59:37
    >>342
    >>343
    ありがとうございますっ
  340. 345 : : 2015/03/14(土) 15:06:42


    ────────



    時刻は、夜9時を回ろうとしていた。



    ボクは……苗木誠はただ、3人が北へと向かうのを見送ることしか出来なかった。


    日向「……狛枝を、罪木、小泉を信じよう。向こうには大神も居る」


    苗木「……」


    霧切「……? どうしたの? 苗木君」


    苗木「……いや、何でもないよ」


    複雑な気持ちだった。
    江ノ島さんを殺したボクは『ゲームに乗ってしまった』と思った。


    でも、江ノ島さんは生きていた。


    江ノ島さんは危険だ、でも、どこかで安堵してしまった。



    ここが仮想現実だとしても、アルターエゴが言う通りなら、その人は現実でも死ぬ。


    繰り返す為の復活だってまだ解らない。もしかしたら『蘇ってなくて違う誰かが入ってたりする』んじゃないかとすら思ってしまう。


    ……なにより『痛み』は本物なんだ。
    背中と肩に残るジェノサイダーにハサミで刺された傷が疼く。


    死に直結する『痛み』は考えただけで身震いを起こす。
    これが『死と隣り合わせ』という事、考えもしなかった日常に非ずの事。


    霧切「そういえば、昼の放送での新しい校則……こちら側のチームでこなしてない人はいるのかしら?」


    舞園「あ、私行ってないですね」


    山田「そのー、僕も武器の性質上、行けてないですぞ」


    澪田「唯吹も行けてないっすねー」


    豚神「門前と校舎を往復してこい。それだけで達成出来るぞ」


    舞園「え? それだけでいいんですか?」


    霧切「ええ、2ブロック間を往復するだけで達成出来るわ……最も、元を辿ればこの校則に躍らされた事がキッカケで、多くの人を亡くしたと言ってもいいのだけど」


    そう、この校則が無ければ……きっと亡くなった彼女らと江ノ島さんが鉢合う事も無かっただろう。

  341. 346 : : 2015/03/14(土) 18:30:54
    最初の絶望が日向自身で、最後が苗木だろうな・・・意外な事に、江ノ島や戦刃ではないのが意外だが・・・
  342. 347 : : 2015/03/15(日) 00:26:57
    >>346
    さて、どうでしょうか?(ゲス顔
  343. 348 : : 2015/03/15(日) 00:31:42


    苗木「……僕も行くよ」


    外の空気を吸いに行こう。頭を冷やし、もう一度、平静を保とう……



    ──────────



    舞園「苗木君……大丈夫ですか?」


    苗木「……う、うん、大丈夫だよ舞園さん」


    苗木君の顔が酷く鬱蒼としていました。
    私は、舞園さやかには今の彼の気持ちを計る事が出来ません。


    ……駄目ですね、エスパー失格です。


    正直、仮想現実だとか、繰り返しているとか、いきなり言われても私にはあまりピンと来ません。


    そっと、苗木君の手を持ちます。


    ……仮想現実だとしても、この手の温もりは本物。


    苗木「……舞園さん?」


    舞園「苗木君、元気出してください」


    ⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛(幾度無く私が絶望に身をやつし、あなたを利用しようとした事があっても)……ずっとあなたは私を励まし続けてくれました。


    だから……今度は私があなたを励まさないといけない。



    舞園「苗木君、大丈夫ですよ。最初に苗木君が私にそう言ってくれたじゃないですか」


    苗木「……う、うん」


    舞園「苗木君、んにぃ」


    七海さんの真似をして、苗木君の両の頬をつねってみます。


    苗木「んにぃ、いひゃい」


    笑ってください。私の『気になる人』は頼りなさげなクセに、人よりちょっと前向きで、それでいて、とても良い笑顔で笑うんですよ?


    舞園「ふふ、変な顔」


    苗木「も、もう! 何するんだよ舞園さんっ」


    舞園「その調子ですよ、苗木君」


    苗木「……あ、はは。まったく、舞園さんには敵わないな」


    舞園「ふふ」


    そして、彼は笑ってくれるんです。
  344. 349 : : 2015/03/15(日) 00:34:37


    ────────



    山田「リア充爆ぜろですぞ」


    澪田「愛、っすねぇ……あ、何か良い歌詞が浮かんできたっす」


    唯吹と一二三ちゃんは2人のちょこっと後ろを歩いてたっす。
    学園と校門前を何回か往復する簡単な作業っす。


    澪田「しっかし、一二三ちゃん。その武器……なんっすか? めっちゃ重そうっすよね」


    一二三ちゃんがちょっと大きい缶詰みたいなのに4つの鉄パイプを束ねた筒みたいなのが飛び出た様な武器? を重たそうなのに持ってるっす。オマケに大きいドラム缶みたいなのも背負ってるっす。


    山田「これですかな? フフフ……ぽっちゃりの筋量をナメてもらっちゃあ困りますぞ……! これはガトリング山田スペシャルですぞ!」


    澪田「なんすかそれ! 超カッケーっす!」


    山田「……冗談ですぞ。確か……戦刃むくろ殿の話では『M134個人携行カスタムモデル』と言ってましたなぁ」


    澪田「むくろちゃんがっすか。へー、詳しいんすね。むくろちゃん」


    山田「彼女は軍人ですから……しかし、戦刃むくろ殿はどうしたんですかな? 北側に居た人も話さないし」


    澪田「まあ、きっと向こうにいるっすよ」


    空笑いで内心を誤魔化す。
    ……ホントは、心配で仕方がない唯吹は、笑わないとやってられないんす……



    北側で誰が亡くなったとか、皆話してくれないっす。


    オーガミって人が居るのは確か、じゃあ、他のみんなは……どこにいったのか。


    みんなの気遣いなのかもしれないけど、逆に心に痛いっす。


    真昼ちゃん、罪木ちゃん、日寄子ちゃん……大丈夫っすかね……


  345. 350 : : 2015/03/15(日) 00:37:58



    ────────



    大神「……いつまでこうしている気だ、貴様」


    今、我の、大神さくらの前には小泉に憑いた殺したいほど憎い江ノ島が不気味に笑みを浮かべ、鎮座している。


    小泉「……『さてね、そろそろ日付が変わる……あたしは待ってんのよ』……」


    小泉と罪木、そして狛枝と言ったか……北側に到着し、屋上に集う。


    狛枝「……『待ってる』? ねえ、江ノ島さん……まさか、キミは」


    小泉「……『察しがいいなぁ、狛枝……そう、あたしは元から自分の体に戻るつもりなんかない』……」


    このまま日付が変われば、下手をすれば江ノ島の体は消える……それを待っているということなのか?


    大神「なんだと……? では、何故……罪木まで」


    江ノ島は思考が読めない……何を企んでいる?


    狛枝「……『キミはキミのやり方がある』っていってたね……」



    罪木「な、なんで私もつれてきたんですかぁ……?」





    小泉「……『罪木、あんたにはあたしの体を治すことじゃなく、別にやってもらうことがあるのよ』……」


    罪木「ひぅ!? なん、なんでですかぁ……」


    小泉「……『あんまり時間がねぇんだけどなぁ……あたしの体が持っているバッグがあるだろ? それを開いて』……」


    狛枝が江ノ島の遺体に近付き、そして、奴が持っているバッグを開く。


    狛枝「……『日記』かい?」


    まるで小学生が使うような日記であった。


    小泉「……『霧切の手帳、不二咲のアルターエゴ、そしてそれが3つ目の……持ち越されたモンだよ。あたしが最初に見つけて、ずっと持っていた。それは最後の脱出の手懸かりだ』……」


    大神「……では、まさかお主」


    江ノ島は、最初から模索していた。ずっと……しかし……!


    大神「何故だ……! 何故お主は朝日奈を……皆を殺め、誰からも恨まれる様な真似を……!」


    江ノ島「……『このコロシアイを止めるわけにはいかないの……それが唯一の脱出する為の手順』……」


    手順……だと?


  346. 351 : : 2015/03/15(日) 00:43:39


    大神「『手順』とは……どういことだ?」


    江ノ島「まあ、その絵日記を覗いてみなよ」


    狛枝がそれを開く。
    そこには……






    『1回目、学区内、個人別バトルロワイヤル形式、各々が古臭い中世の武器を片手にコロシアイ、私達は何も解らないまま、殺される』


    『6回目、ジャバウォック島内、強要型個人別事件推理形式、私は4度目の殺人鬼に仕立てあげられ、処刑される』


    『18回目、ジャバウォック島内、個人別バトルロワイヤル形式、霧切さんが手帳を発見、これで8回連続、恐らくはずっと拾い続けると思う、私は十神くんに殺される』


    『32回目、ジャバウォック島内、チーム別バトルロワイヤル形式、カムクラくんの代わりに日向くんが来た。私は最後まで生き残った。自殺した』


    『40回目、学区内、個人別バトルロワイヤル形式、スキルブースターはカムクラくんだった。彼のデータが96個のバグデータになって滞留していた。私は初日に葉隠くんに撃ち殺された』


    『54回目、ジャバウォック島内、チーム別バトルロワイヤル形式、最後まで来た、でも、黒幕に邪魔された、私は絞め殺された』




    なんだ……この日記は?
    我は、この日記に違和感を抱く。






    小泉「……『誰が書いたかは解らない、でもさ、手帳やアルターエゴと違って、これだけ異質なんだよね』……」


    異質、そう、これは……持ち越されたとしてもおかしい。


    小泉「……『アルターエゴが言ってた増殖バグの手順を踏まえた様な感じじゃないでしょ? キレイなままだし、それは自分の死の内容すら書き留めている。これだけどうもおかしいのよ』……」


    そう、自身の死の内容をどうやって書くのか?


    小泉「……『なんつったらいいかな、自動書記? あたしが思うに、それは特別な誰かの記憶が具現化したモノだと思うのよ、バグだらけの世界なんだから、そういうのがあっても別に不思議じゃないよね』……」


    小泉「……『恐らくは手帳とアルターエゴよりも前からあった。一番最初から……つまり』……」


    狛枝「この日記は54回目から後がない……つまり、今回で『55回目』ということになるのかな?」


    小泉「……『多分ね』……」


    罪木「か、カムクラさんって人が……スキルブースター?」


    小泉「……『日向創の乱入で、理由や理屈はわからないけどカムクラはルールの外に出たんだと思う、スキルブースターになることで、何かをしようとしたんじゃない?』……」


    小泉「……『43回目のページを開いてみて』……」



    狛枝がそのページを開く。


  347. 352 : : 2015/03/15(日) 18:00:11
    すごいですね^^;期待してます
  348. 353 : : 2015/03/16(月) 00:02:04
    >>352
    ありがとうございますっ
  349. 354 : : 2015/03/16(月) 00:03:50


    『43回目、学区内、個人別バトルロワイヤル形式、私のノートが見つかった、なんでだろう。みんな生き残った、みんな自殺した』









    大神「ど、どういうことだ……!?」


    小泉「……『最後まで生き残ったら、最後はみんな自殺する……どの項目もそう、最後まで生き残った人間は自ら命を絶つの』……」


    狛枝「……勝っても絶望、か」


    小泉「……『そ、あたしたちにはそういう因子(プログラム)が含まれてるのかもしれない。これが無くならない限り、この下らない絶望ゴッコは終わらないのよ、多分ね』……」


    大神「では、お主は何をしようとしているのだ?」


    江ノ島の話に我は半分も理解が及ばぬ。
    とどのつまり、江ノ島は何をしようとしているのか。









    小泉「……『カムクライズルと同じく、あたしはルールの外に出るのよ』……」




  350. 355 : : 2015/03/16(月) 00:05:21




    ────────



    狛枝「『ルールの外に出る』……つまり、キミはシステムの一部になる、と?」


    小泉「……『そう、カムクライズルに出来たなら、あたしにも出来るはず……そして狛枝』……」


    小泉「……『あんたに、あたしの才能をくれてやるから、あんたがコロシアイを続けろ』……」


    ボクは、狛枝凪斗はその言葉に困惑をする。


    狛枝「……どういうことだい?」


    小泉「……『勝利者を出すこと、それが大前提、前回の54回目が最後まで来ながら、黒幕に邪魔され、失敗しているのは、恐らく引き分けだったって事なんだよ』……」


    狛枝「なんで前回が引き分けだったとわかるんだい?」


    小泉「……『黒幕が介入してくるタイミングは校則に反した時だ、校則の中には勝利条件が含まれている。つまり、チーム戦だったのに残った重要ポジの人間は敵味方同士だった。あたしが黒幕ならそうする』……」


    小泉「……『さあ、もうすぐ日付が変わる。罪木、あたしの左腕を切り落とせ』……」


    罪木「ど、どういうつもりなんですかぁ……?」


    小泉「……『狛枝、あんたはあたしの体と同化する。今のあたしと小泉みたいにね。そしてあたしの存在は歪み、あたしはルールの外に出れる』……」


    狛枝「……!」


    彼女の才能を受け継ぐ……つまりは、彼女の左腕をボクに……?


    小泉「……『希望の為に希望を切り捨てる、踏み台の様なあんたにぴったりだろ?』……」


    希望の為の……踏み台……ボクは、









    狛枝「ああ……解ったよ、江ノ島さん、それで、それでこの絶望的なゲームを終わらせられるんなら……」



    踏み台になることもいとわない。



    ごめんね、日向クン。
    あんな奴の好きにはさせないと行っておきながら、ボクは……


    何故だろう、どうしても惹かれてしまう。
    『ずっと前にもこんなことがあったんじゃないか』って、そう思うんだ。



    大神「狛枝、お主……」


    狛枝「大神さん、この繰り返す絶望は止めなきゃならない……罪木さん、お願いするよ」


    罪木「は、はぃ……」







    そして、時刻はまもなく0時。



  351. 356 : : 2015/03/16(月) 00:06:35



    ────────



    深夜0時





    3日目終了




    結果報告




    死亡者



    77101番(終里赤音)……銃殺


    77105番(西園寺日寄子)……刺殺


    78101番(朝日奈葵)……銃殺


    78104番(江ノ島盾子)……銃殺


    78006番(大和田紋土)……銃殺


    78012番(不二咲千尋)……刺殺


    78115番(安広多恵子)……即死




    北チーム残り8名


    南チーム残り10名





    ────────




    そしてあたしは、消えるあたしの体に割り込むように、小泉に預けたバイタルを捩じ込む。


    『生きたまま死ぬ』事が、ルールの外から漏れる事。


    そして見る、情報の海を。



    ────────0と1で出来た、黒い空間と緑の格子のシルエットの世界にアイツは居た。


  352. 357 : : 2015/03/16(月) 00:08:35




    『……やはり、来ましたか』


    『ルールの外れ方くらい残しとけよ、考えるのに時間かかったわ』


    『すいません』


    『さて、アイツはどう立ち回るかな……』


    『裏側からずっと見てましたけど、あなたも酷ですね』


    『なにが?』


    『あなたは僕の残滓(スキルブースター)を使いすぎなんですよ。恐らく彼は……』


    『ああ、狛枝? まあ、間違いなく絶望化するだろうね』


    『あなたは元が壊れてるからいいでしょうけど、精神の崩壊とバグはこの世界では同義』


    『まあ、ゲームは盛り上げるモンだし、別に良いでしょ』


    『そういうものですか』


    『そう、しかし、あんた良く喋るね』


    『ええ、僕は彼ですから。口調はなかなか変わらないですけどね』


    『ま、いいけどさ』


    『そうですね、どうでも良いことです。さて、最初の絶望と最後の絶望ですが』


    『スキルブースターはその為のものなんでしょ?』


    『ええ、絶望の2人が使えば、構成コードからキーコードが現れるはずです。しかし、頑固なもので一向に使ってくれません……気付いてくれればいいんですが』


    『ま、コロシアイが続けば使わざるを得ないでしょ……最終日まで生き残れば良いけど』


    『まあ、そういうところですね。あなたもなんだかんだで思い出してきている……いえ、再現しつつあるのでしょう?』


    『正史における二度目のコロシアイ学園生活と三度目のコロシアイ修学旅行における始まりと終わり』


    『このデータベースにはその2つのデータしかありません。最初のコロシアイのデータはすでに僕から残ってません』


    『ま、あんたは消えたしな……』


    『……僕の復讐は果たされました。僕もあなたも、もう次代にはいらない』


    『そうね、死んだ人間も、消えた人間ももういらない。あたしがそんなネチッコイ人間に見える?』


    『ええ』


    『絶望的ぃ……』


    『この身勝手な独り遊びを終わりにさせましょう。大体、あなたのせいですよ』


    『あたしじゃなくて、黒幕に言えよ』


    『まったく……55回目の思考実験の果ての果て、もう充分でしょう……あなたが適当に作ったものが、まさかこんな事を起こすなんて、予想外ですよ』


    『まあね、アイツが黒幕……いや、明確には違うか』


    『むしろ、黒幕であるアレは被害者ですね……さて、あなたはルールの外に出た。あなたの技量次第でこの世界のどんなルールもねじ曲げられる。どうするつもりなんですか?』


    『決まってるだろ、絶望には絶望を、あたしはこんな不完全な絶望は認めない』


    『エゴイズムですか?』


    『完璧主義者って言って欲しいわね……それと』







    『死んだのに生きてる事を錯覚しちゃ駄目なんだよ』




  353. 358 : : 2015/03/16(月) 00:12:41




    『自分に言ってるんですか?』


    『そうよ、こんな破綻者は絶望的でしょ?』


    『まったくです』


    『あたしがこの世界にもたらすのは新しい校則よ。あんたみたいにバグさせることまでは出来ない』


    『……なるほど、それならば黒幕もそれに従わざるを得ない。それがこの世界のルール……いや、元々はあなたのルールでしたね』


    『あたしはルールに厳しいのよ』


    『さて……しどろもどろに闘争を繰り返しましたが、ここから本当の戦争になりますよ』


    『やっぱり、あたしは殺るんじゃなくて見る方が良いわ。早めに来て正解だわ』


    『相変わらず、趣味が悪いですね……さて、僕らはモニター室に行きましょうか』


    『やっぱり、というか、あったんだな』


    『ええ……面白い方がいらっしゃいますよ』


    『……あんたが面白いって思うんだ』


    『少なくとも、この人形遊びを観ているより、彼女の呟きの方が遥かに面白いですね』


    『人形遊び……ね。あたしらもまた、人形か』


    『ええ、だけど彼女は違う』


    『なるほど、じゃあソイツが唯一のこの人形劇の観客ってわけだ』


    『これもあなたの悪趣味の影響ですよ』





    全てはあたしが発端、だから、これはあたしがケリをつけなきゃならな
    い。


    あたしの絶望は終わったんだ、始末くらいはつけてやるさ。




    ……そうでしょ? あたし?
  354. 359 : : 2015/03/16(月) 17:34:08


    ────────



    Now loading……



    ────────




    思考実験『(ダスト・ボックス)


    第一号


    記録の一端




    壁に寄り添い、ある時は這いながら、何処の誰かの血にまみれた長槍(パイク)を杖にしながら私は逃げる。


    もう『彼』が迫ってきている。



    霧切「あと、少しなのに……!」


    ♡32
    ★92


    最終日、終了まであとわずか、もう何人死んだのか。あと何人生きているのか。


    霧切「うっ……」


    みっともなく、涙を浮かべる。


    死にたくない。



    と、






    「見つけました」



    ザクリ、と。



    斧槍(サイズ)が私を貫き、私の体は高々と上げられた。


    背面攻撃(バックスタブ)、腹を破り、突き穿たれたそれは、私を死に至らしめるのに充分だった。




    苗木「霧切さん……!」


    彼がやってくる。だけど、もう遅い……私はもう……



    苗木「う………あああああああ!」


    苗木君が刺剣(エストック)を片手に突っ込んでくる。


    駄目、あなたが殺されてしまう。


    苗木君に気付いた彼は、斧槍を振り、私の体を易々と放り投げ、その遠心を利用して弧を描くように振り回し……


    苗木「がっ!?」


    苗木君を斬撃しつつ薙ぎ払った。


    苗木「あ、あ……」


    やがて、苗木君は動かなくなった。腹部の外側と内側を豪槍がかっさらった。




    何もわからず、私達はただ、死に散らす。


    何も解決出来ぬまま。


    ただ、死に絶える。




    ────────


    Now loading……


    ────────


  355. 360 : : 2015/03/17(火) 00:19:12





    ─────────




    脳汁が今にも耳から飛び出そうな程、頭が痛い。





    狛枝「あ、がぐ……あああああああああ!!」


    焼けるような痛みが、脳を侵す。
    罪木さんのお陰で、無痛で切断と接合をこなした、不思議な事に神経も筋肉も全部自分の腕の様に動かす事は出来る。


    この痛みは江ノ島盾子の情報量、この腕を介して彼女が持ち得た才能すべての情報が頭に流れ込んでくる。


    小泉「……狛枝!」


    罪木「狛枝さぁん!」


    大神「狛枝……!」


    狂気と正気の狭間で意識が朦朧とする、彼女の本質が彼女の左腕を通してボクを浸食していく。



    元々が狂気の沙汰だ。何をとち狂ってボクはボクの左腕を捨てて、彼女の左腕をつけなきゃならない?



    何故同意した?


    ボクの精神(コード)が彼女の精神(コード)に割り込まれていく。


    ボクがボクで無くなる。


    ……ああ、そういえば、『昔にも似たような事があった、その時はボクが自ら死んだ彼女の左腕を取り付けた』んだっけ?


    ああ、今はそんな事どうでもいい。


    どうにも痛い。



    狛枝「あ……早く、ボクはもう、ボクじゃあなくなる……」


    ♡82
    ★90



    違うだろ、これでボクは『ボクの本物』に近付くんだ。
    こんな気味の悪い『ボク』がボクなワケないじゃないか。
    ボクはどこまでもひねくれててゴミクズでそして……


    希望の為に絶望する最低のクズだろ?


    大神「何を……!」


    狛枝「皆にこの事を伝えて……」










    狛枝「ボクが……皆を殺しに行く前に」



    痛みが薄れていく、人間性が薄れていく。



  356. 361 : : 2015/03/17(火) 17:50:01


    ───────



    霧切「終わったのかしら?」


    食堂に4人が戻ってくる、時刻は0時少し過ぎ。
    他の皆は食堂から出ていき、北側のチームの人も、空いている部屋に泊まる事にしたようだ。


    ……片方の本拠地に収まるほど、大体半数、それほど人数が減ってしまった。


    苗木「ああ、うん、もう大丈夫だと思うよ」


    霧切「念の為に電子生徒手帳を確認したら? 苗木君は大丈夫だと思うけど、3人は学園から動いてなかったのよね?」


    舞園「そうですね」


    4人が電子生徒手帳を確認する。太った十神君同様、校則の項目に終了の表示が現れるはずだ。


    澪田「……ん?」


    霧切「どうしたのかしら?」


    澪田「間違って通話の項目を押したんすよ、千尋ちゃんと紋土ちゃんの名前が消えてるのはわかるっす……」


    霧切「……そうね」


    死んだ者の名前は日付が変更されるのと同時に、電子生徒手帳から抹消される。




    澪田「その……盾子ちゃんの名前も無いんすよね」


    霧切「なんですって?」


    ならば、江ノ島盾子は死んだということなのか?


    苗木「どういうことなんだろう……?」


    山田「向こう側にいる方に連絡してはどうですかな?」


    舞園「そうですね、向こう側にいるとなると……」


    今私が持っているのは日向君の電子生徒手帳だ。となると……


    苗木「狛枝クンに連絡してみるよ」


    苗木君が電子生徒手帳を耳に当て、着信を送る。


    苗木「……狛枝クン?」


    狛枝『苗木クン……かい?』


    僅かに声が漏れている。苗木君は音量を上げ、皆にも聞こえる様にしている。


    苗木「よかった、無事だったんだね」


    狛枝『ああ……大丈夫だよ』


    苗木「……ところで、江ノ島さんは……どうなったの?」


    狛枝『彼女は死んだよ』


    苗木「……そう、なんだ」


    霧切「……」


    何故だろうか、妙な胸騒ぎがする。
    嘘をついてるようにも思えないが、何か『含み』の様なものを感じる。

  357. 362 : : 2015/03/18(水) 17:32:06




    ……彼女は本当に死んだのだろうか?





    狛枝『今日はもう遅い、ボクはこっちに留まって……明日の朝には戻るよ』


    苗木「うん、わかったよ」


    苗木君が通話を切る。


    霧切「……何故、彼女は死んだのかしら? 狛枝君達が何かしたのかしら」


    苗木「ごめん……もっと詳しく聞くべきだったよ」


    霧切「……それはもう明日に聞きましょう」


    明日には戻ってくると言っていた。その時に聞けば良いだろう。


    舞園「今日はもう休みませんか? 霧切さんはどうするんですか?」


    霧切「私も休むわ。空いてる部屋を教えてちょうだい」


    澪田「唯吹も部屋に戻るっすよ」


    苗木「じゃあボクは見張りをしとくよ」


    山田「じゃー僕もお付き合い致しますぞ、苗木誠殿」


    苗木君と山田君が校舎側へと赴き、舞園さん、澪田さん、そして私は寄宿舎の個室がある方へと向かった。
  358. 363 : : 2015/03/18(水) 17:33:31


    ────────



    山田「こうやって苗木誠殿と2人きりなのも久しぶりですな」


    苗木「そうだね」


    夜風が心地よかった。
    赤黒い空を見上げる昼より、真っ暗な夜空の方が落ち着く。


    山田「そうそう、実は拙者、今度また同人誌の構想を練ってましてな」


    苗木「そうなんだ」


    山田クンは相変わらずの様だ。
    ……でも、少しだけ、心が緩んだ。


    山田「正直、僕も舞園さやか殿と同じく、繰り返しているだとか仮想現実とかいわれても、あまり実感湧かないですからな」


    苗木「そうだね、それこそ……漫画やゲームみたいだね」


    山田「むむ、何だかインスピレーションが……! っと、そうそう、それでですね。もしこの仮想現実とやらから抜け出せたら……」


    苗木「ん? なに?」


    山田「考えてる同人誌は、そのー、僕の主催で即売会開いて売りたいですな」


    苗木「へぇ……」


    ……この戦争に全く関係無い会話がボクには嬉しかった。














    ────────⬛⬛⬛(ダレカ)に成れた気がして。









  359. 364 : : 2015/03/18(水) 17:34:51





    山田「でですねー、苗木誠殿には是非売り子さんをですねー」


    苗木「あ、はは……それは……ちょっと」


    山田「なぬー! 駄目ですぞ苗木誠殿! 苗木誠殿がコスすればきっと女子にモッテモテ……あ、そういえば苗木誠殿には本命のアイドルがいましたな 」


    苗木「ま、舞園さんとは何もないよっ!」


    山田「おんやぁ? 拙者、一言も舞園さやか殿とは口にしてませんがねぇ?」


    苗木「ちょっ、ちょっと……だから、確かに舞園さんは尊敬してるし、ファンだけど……」


    彼女は努力家だ。芸能界の事なんて全然分からないけど、それでも、舞園さんがその地位を築くために、並大抵じゃない努力をしてきたんだろう。


    そんな彼女とボクは不釣り合いだ。


    同じ中学だった事もあって、彼女はボクが希望ヶ峰に来て、始めての友達で……












    ⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛(苗木君、部屋を交換してくれませんか?)










    苗木「……っ痛」


    少しだけ、頭痛がした。


    山田「? どうかしましたか? 苗木誠殿」


    苗木「……だ、大丈夫だよ」


    山田「そうですか……」


    なんだっけ……思い出せない。



    山田「こういう状況なのに……つまらない話をして申し訳ない」


    山田クンは山田クンなりにボクを元気付けようとしていたのかもしれない。


    苗木「う、ううん! つまらなくなんか無いよ、こうして他愛ない話してくれるとさ、気が楽になるから……」




    と、



    山田「ん?」


    誰かがこちらに向かってくるのが見えた。

  360. 365 : : 2015/03/18(水) 17:36:13



    苗木「……大神さん?」


    大神さん、そして、小泉さん、罪木さんだった。


    小泉さんに憑いた江ノ島さんはもう居ない様だ。


    ……やはり、彼女は死んだのだろうか。


    大神「苗木……か……」


    苗木「……ど、どうしたの?」


    狛枝クンと向こう側に留まっていると思ったけど、慌てている様子だ。どうしたんだろう?


    小泉「……みんなは?」


    山田「皆ならもう部屋ですぞ」


    大神「……ぐっ、どうすればよいのか」


    罪木「と、とにかく、皆さん起こした方が良くないですかぁ?」


    苗木「ね、ねえ、どうしたんだよ大神さん」



    大神「江ノ島は……なんと言ったら良いか……」


    小泉「と、とにかく、皆を集めないと」


    話が見えない。本当にどうしたんだろうか。


    苗木「……狛枝クンは?」



    大神「……ヤツはもう狛枝ではないと思え」


    胸騒ぎがした。また、何かあったんだろうか。


  361. 366 : : 2015/03/18(水) 17:37:07

    ────────



    狛枝「はぁ………はぁ……!」


    ボク、狛枝凪斗は美しいモノが好きだ。
    造形は勿論、概念的なモノに至るまで。


    今までで見た一番美しいモノ。


    希望の様な光、光の様な希望を。



    ああ、『また』見たい。



    『彼』はまた輝いてくれるだろうか。




    記憶が混濁する。


    これは誰の記憶だったか、『彼』だったか『彼女』だったか。



    愛おしい程憎らしいこの絶望の様な左腕で、狂おしい程愛おしいあの希望の様な少年を再び輝かせる事が出来るなら。



    ボクは踏み台(絶望)になることも躊躇わない。



    狛枝「……ふふ」





    ♡82
    ★99








  362. 367 : : 2015/03/19(木) 17:55:00




    ────────





    俺達は起こされ、再び食堂に集結する。


    俺は、日向創は小泉らが無事だった事に安堵し、狛枝が居ない事に不安を抱く。


    大神「寝ている所すまぬな、皆」


    豚神「気にするな、緊急なのだろう?」


    大神「うむ」


    聞きたいことはたくさんある。


    順を追った方が良いだろう。


    日向「まず……小泉、江ノ島盾子はどうなったんだ?」


    小泉のバイタルと同化して、その命を永らえさせていた江ノ島盾子の気配は、既に小泉から無かった。


    小泉「江ノ島盾子は……『生きたまま死んだ』のよ」


    霧切「……どういうこと?」


    『生きたまま死んだ』とは、どういう事なんだ?


    罪木「ル、『ルールの外に出る』って言ってましたよねぇ……?」



    豚神「アルターエゴなら何か知っているんじゃないか?」


    詐欺師の十神はパソコンを立ち上げ、アルターエゴを起動する。


    アルターエゴ『こんにちはっ』


    豚神「アルターエゴ、『ルールの外に出る』とはどういう事かわかるか?」


    アルターエゴ『ん〜、そのままの意味じゃなくて、カムクラ君が言ってたことかな?』


    豚神「それだ、教えてくれ」


    アルターエゴ『カムクラ君が消える前に言ってたんだけど、バイタルが無くなる事は必ずしも死んだ事にはならないんだって』


    霧切「……死亡ではない?」


    アルターエゴ『心肺停止だよ。つまり、生体活動の基板となる部分が止まれば、バイタルは0になる』


    罪木「……そ、そういえばぁ、私の目から診ても、バイタルの数字はスゴくいい加減な気がしますぅ」


    澪田「でも、心臓が止まってるって、やっぱり死んじゃってるんじゃないっすか?」


    アルターエゴ『心肺停止しても適切な処置をすればまた動く事が有るよね』


    確かに、心臓マッサージや電気ショックなんかはその為にある。


    アルターエゴ『カムクラ君は消える前に、1日の終わりと始まりの間に死に、蘇るという装置を作ったんだ』




    山田「なんと、摩訶不思議な装置ですな……」


    霧切「いえ、例えば……タイマーみたいなもので、時間がきたら電気ショックを起こす様な装置を作って、仮死出来るような薬を投与し、日と日の間を死亡状態で跨いだ……としたら」


    日向「そういえば……江ノ島は言ってたな、『遺体は消える』って」


    小泉「……うん、で、その『消えた先がどこか』……つまりそれってさ、江ノ島盾子が言ってた『ルールの外』……なのかな?」




    『ルールの外』……つまりは、システムの裏側に行ったというのか?


  363. 368 : : 2015/03/19(木) 17:57:00


    日向「アイツは……何が目的で」


    大神「ヤツは『脱出する手順』と言っていた……そして」


    大神「『コロシアイを止めるな』……と言っていたな」


    豚神「『コロシアイを止めるな』……だと?」


    小泉「どうしても『勝利者』を出さないといけないらしいの」


    『勝利者』を……出さなきゃならない?


    日向「そんなの……」


    と言いかけ、









    七海「そんなの、ダメだよ」


    七海に先に言われてしまった。


    そう、勝利者を出すと言うことは、コロシアイを続け、どちらかを全滅させなきゃならない……


    つまりは、最低でもあと8人以上死ななきゃならない。


    苗木「そ、そうだよ。そんな……いくら仮想現実っていっても……」


    アルターエゴ『仮想現実といっても、もし、この世界が新世界プログラムだとしたら、被験者は死んじゃうよ……』


    このゲームは繰り返していると江ノ島は言った、銃の扱い方にしてもずっと使ってきたからだって……











    ……本当にそうなのか?


    『そう思い込まされているだけ』なんじゃないのか?


    ノートとかアルターエゴとか全部嘘で、実はこれが最初の1回目で、皆蘇ったりしてないんじゃないのか?


    何なんだよ、結局、どれが正解で、どうすればいいのか全くもって分からない。


    頭の処理が追い付かない。













    ────────俺が⬛⬛⬛(ダレカ)でさえ曖昧なのに。





  364. 369 : : 2015/03/19(木) 17:59:16


    大神「……そしてこれを」


    大神が取り出したのは、小学生が使ってそうな日記だった。


    桑田「なんだこりゃ? 学習帳?」


    大学ノートとは違って、科目別に使いやすいように作られた小学生向けのノートだ。



    七海「……!」


    日向「どうしたんだ? 七海」


    七海「私のだ……」


    舞園「え? じゃあこれは七海さんのなんですか?」


    霧切「じゃあ、あなたはこれの元になったモノを今もっているのかしら?」


    七海「ううん、いつも持ち歩いてる訳じゃないから……」


    大神「江ノ島はこれだけ『おかしい』と言っていたな」


    七海「……ちょっと見るね」


    七海は自分のだと言う日記を取り、ページをめくる。


    七海「……『54回目』で終わってるね」


    霧切「私の手帳より前にあったってことかしら、覚えは?」


    七海「……全く無いよ」


    罪木「え、江ノ島さんが『特別な誰かの記憶の具現化したモノ』っていってましたねぇ」


    日向「じゃあ……七海はその『特別な誰か』なのか?」


    七海「『特別』って……どういう事かな?」


    大神「うむ……わからぬ……」


    苗木「大神さん、そういえば狛枝クンは……」


    そう、狛枝の事が気掛かりだ。あいつに何かあったのか?


    苗木「『明日には戻る』って言ってたけど、大神さん、さっき『狛枝クンを狛枝クンと思うな』って言ってたよね……どういうこと?」


    大神「狛枝は……江ノ島を継いだのだ」


    日向「継いだ……?」


    継いだとは、どういう意味だ?


    小泉「……データがどうのこうの言ってたけど、とにかく狛枝は江ノ島盾子の左腕と自分の腕を交換したの」


    罪木「わ、私はもう何が何だかわからなくてぇ……移植に協力したんですぅ」


    弐大「交換して何になるんじゃ?」


    大神「江ノ島の持つ、その才能の一切合切を引き継いだ……そして、ヤツは『コロシアイを終わらせるためにコロシアイを続ける』と……そう、同意した」


    日向「な、なに、いってんだよ……!」


    狛枝、お前……あんな奴の好きにはさせないって言ってたのに、何してんだよ……!

    なに、ワケわかんねえ事してんだよ……!

  365. 370 : : 2015/03/19(木) 18:00:18


    大神「……我らは、みるみるうちに絶望チェッカーの上昇する狛枝に畏怖した。そうして、狛枝から『皆を殺しに行く前に』と、事の始終を伝える様に言われ、来たのだ」


    日向「じゃ、じゃあ……狛枝は」


    大神「恐らくは、我等北側のチームを殺しに南側に下って来るであろう……」


    霧切「……!」


    豚神「仮に……奴が江ノ島の才能を引き継いだとして……そもそもアイツのスキルブースターはなんだ?」


    苗木「……狛枝クンのスキルブースターは『確率の変動』だよ。それでボクをジェノサイダーから助けてくれたんだ」


    豚神「成る程な、だとしたら……かなり厄介な事になりそうだな」



    まて、待てよ……なんだよ。



    日向「お前ら……狛枝を」











    豚神「出方次第では殺すしかあるまい、生きるためにはそうするしかない」



  366. 371 : : 2015/03/19(木) 18:02:12

    ────────



    Now loading……



    ────────



    『学園での記憶』


    日向創の記憶





    「本日付けで君を本科の人間とする。よく頑張ったね」


    「ありがとうございます」


    旧校舎の学園長室から出て、俺は喜びから口元を緩めた。


    これといった結果や業績を持ってない俺は、自分に出来る事をひたすら積み重ねて、評価を貰った。


    ……といってもインターネットを通しての、相談窓口という些細なモノだったけど、それが中々の好評で、知らぬ知らぬ間に大人物の相談を解決したりしてたらしい。


    それが希望ヶ峰の目に留まり、才能と認められ、俺は『超高校級の相談者』という肩書きを貰った。


    俺はなったんだ、馬鹿にしてた奴等全員見返してやれるんだ。











    ⬛⬛⬛⬛⬛⬛(ソンナコトアルワケナイノニ)





    本科の皆と友達になって、



    ⬛⬛⬛(ウソダ)




    毎日笑って、



    ⬛⬛⬛(ウソダ)



    皆の相談を聞いてやったり、



    ⬛⬛⬛(ウソダ)



    充実した毎日で、



    ⬛⬛⬛(ウソダ)










    ⬛⬛⬛⬛⬛⬛(ゼンブウソダ)








    ────────



    Now loading……



    ────────
  367. 372 : : 2015/03/19(木) 18:03:22



    ────────


    狛枝「……」


    戦刃「何処? ねえ、何処?」


    絶望化した人間は特定行為しか出来ない人間(ノンプレイヤーキャラ)に成り下がる。


    縛られて、食堂にいた彼女もそうだ。


    考える力は無い。


    戦刃「盾子ちゃん……? 『そこ』にいるの?」


    狛枝「ああ、キミの妹は『ここ』にいるよ」


    縄を解く。


    最早、希望になり得ないこの女は『手駒』くらいには役に立つだろう。


    ……『彼』はきっと止めようとする。


    『やっと、ボクは当事者になれるんだね』。


    あの輝く瞬間に立ち会えるんだね。





    ────────『ボク』は『ボク』に成れるんだね。


  368. 373 : : 2015/03/19(木) 18:09:08

    ────────



    ここではない、何処かのモニター室。



    江ノ島「さてさて……あー、やっぱり落ち着くわ、ここ」


    いつの間にか、シロクマとクロクマは消えて、『彼等』がそこにいた。


    カムクラ「どうやら、彼も『自分の正体』に気付きつつ有るようですね」


    カムクライズル……いや、きっとこれは『カムクライズル』の姿(アバター)を借りた『彼』だ。



    江ノ島「あたしのアバターの一部を受け継いで、第三者の主観を手に入れた狛枝は『自分が何者なのか』気付き始めてる」


    カムクラ「ええ、しかし……皮肉ですね。何もここまで『正史を再現する』必要は無かったのですが」


    江ノ島「まあね、でも、アイツらは『正史を再現しようとする』因子(プログラム)がある。『成りたくて成りたくて仕方ない』のよ。アイツらは」


    そう、彼等は常に『後ろを向いている』のだ。


    だから『成ろうとしている』。


    カムクラ「仕方ありません、彼等はそういう風に出来たのですから」


    江ノ島「ま、二次創作だし」


    カムクラ「問題発言ですね」


    江ノ島「だってそうじゃん」



    その通り……妙な例えだが、それは『的を得ている』。
  369. 374 : : 2015/03/19(木) 23:08:11



    カムクラ「ところで……どんなルールを捩じ込むのですか?」


    江ノ島「『絶望には絶望を』、あたしに出来るのは『開廷』よ」


    カムクラ「命懸けの騙し合い、ですか。あなたらしいですね」


    江ノ島「それに『あの場所』だったら『正史の再現を利用してあたし達を捩じ込む』事ができるんじゃない?」


    カムクラ「ええ、そういう流れを作ってやれば『例え黒幕でも従わざるを得ない』でしょうね」


    江ノ島「面倒くせー……飽きそう」


    カムクラ「僕はもう自分の『容量』を使いすぎました。お願いしますよ」


    江ノ島「しゃーない……さて、タイムリミットまで半分切った所だし、ママゴトに終止符打ってやるか……なあ?」






    江ノ島「⬛⬛⬛⬛(だれかさん)?」




    久しぶりに『会話』をする。







    「ええ……もう、うんざりよ」


    55回、1週間から1ヶ月と回毎にバラツキはあるが、全部でおおよそ『2年』近く……しかし、それはあくまでこのプログラム内部の事、現実では多分、『1週間位』しか経ってないだろう。

    それだけ、このプログラム内部の時間は早く。
    そして、遅いのだ。
    悠久にも感じられるこの『2年』は現実では『1週間』程度。


    ああ、そうだ、江ノ島盾子の言う通り、私はうんざりしている。


    この好機をずっと待っていた。




    「『また』……落ちてあげるわ」





    ────────『(ゴミ棄て場)』に。



  370. 375 : : 2015/03/19(木) 23:11:10




    ────────



    山田「あのー、話の腰を折ってしまうのですが」


    山田が口を開く。


    山田「狛枝凪斗殿が江ノ島盾子殿を継いだ……といわれてもピンと来ませんが、つまり危険人物になったということですかな?」


    大神「大雑把に言えばそうだが……」


    山田「そのー『今も向こう側に居られる人物』が危ないのでは?」


    日向「……」


    そうか、南側に居た人物に、まだ誰が犠牲になった事を伝えていない。


    豚神「誰も伝えていないのか……」


    話が立て込み、北側に居た人物と、南側に居た人物とで情報の共有が出来ていない。


    日向「……戦刃はもう、駄目だ。アイツはもう戻れない」


    絶望チェッカーが100を示したのは、死ぬ瞬間。
    思考停止を越えた絶望化。


    舞園「ど、どういうことですか?」


    小泉「……江ノ島盾子の死を直視した。そして戦刃……さん? の絶望チェッカーが100まで膨れ上がったの」


    弐大「ワシが殺した……しかし、途中でヤツの遺体は消え、いつの間にか校内におったらしいな」


    桑田「死んだのに復活した? やっぱり江ノ島ちゃんは俺のスキルブースターを……」


    小泉「そう、今思うと……あれも計算の内だったのかも」


    霧切「恐ろしく計算高い……そして」


    日向「ああ……アイツは今日だけで、西園寺、終里、朝日奈、セレスを殺した」


    山田「セレス殿、が?」


    澪田「日寄子ちゃんが……?」


    豚神「今、この場に居ない者、俺じゃない十神と腐川、狛枝、戦刃を除き……」








    豚神「皆、死んだ」





    石丸「……兄弟、不二咲君」


    舞園「朝日奈さんまで……!」


    山田「セレス殿……が」


    澪田「そんな……赤音ちゃんまで……」


    2人がへたり込む。今日だけで7人も死んだ。




    豚神「『勝利者を出す』……江ノ島の提示は信用出来るのか? それで俺達は本当に助かるのか? ……江ノ島を継いだという狛枝もまた操られているんじゃないか? 俺はな……導くと言っておきながら、これの一番正しい答えが見つからない。どうやっても……わからないんだ」


    霧切「そうね、まるで……」


    まるで、希望はない。


    どうあがいても絶望しかなかった。


  371. 376 : : 2015/03/20(金) 20:38:07


    豚神「とにかく、俺は門前を見張る。他の連中は寝ろ」


    弐大「ワシも見張るぞ」


    日向「俺も見張る……放ってはおけない」




    ────────



    時刻は深夜3時を回る。




    十神「……」


    動きは無い。
    北側の校舎をスナイパーライフル(モシン・ナガン)で覗くが、数時間前に出ていった3人以降、残りの2人は動きがない。


    十神「……ちっ」


    戦刃はともかく、狛枝と言ったか、奴が出てこないのはおかしい。


    ……江ノ島の左腕を自分の左腕と交換するといった奇行、ヤツの行動原理はわからん。


    あの手帳に書かれていた通り、仮想現実であるならば俺は容赦しない。


    どの様な事であれ、勝負であるならばこの十神白夜が敗北することは許されない。


    十神「おい」


    腐川「は、はい」


    後ろにいる腐川に声を掛ける。


    コイツに校舎内を探ってもらうのが良いだろう。



    十神「探ってこい」


    腐川「わ、わかりました」


    2つ返事で腐川はビルを下っていく。


    さて……狛枝、どう動く?


  372. 377 : : 2015/03/20(金) 23:05:01


    ────────




    ティッシュで作った紙縒(こよ)りを鼻に差し込む。


    腐川「へ、へ、へっくち!」


    呼ばれて飛び出て……っても誰も聞いてねーか。


    さて、このダーリンが拠点にしているエグい罠(ブービートラップ)だらけのビルを降りて、アタシは北側校舎へと向かう。


    ダーリンもなかなか無茶を言う。ぶっちゃけ、アタシじゃまず戦刃に勝てない。


    アイツがシラフ(正常)でアタシがキメてたら(スキルブースター状態)……そりゃ勝てるだろーけど、根本的な戦闘能力は向こうの方が上だ。


    お互いキメてたら泥仕合のチミドロフィーバーにされんのは……ま、十中八九アタシだろうな。


    つーか無理。


    ……つーか、アタシなんで『根暗(腐川冬子)と記憶を共有』してんだ?


    ……色々と気になる事はあるけど、まあそんなのいっか、問題ナッシーング!



    さてさて……あーだこーだ思ってる内に北校舎に辿り着く。



    ……ああー『殺意』を向けるのは得意だけど、『殺意』を向けられるのホント嫌だわ。



    校舎内の暗がりに黒いシルエット、根暗の記憶が確かなら、無数の戦場を渡り歩いて傷の1つも負わないというバカみてーな馬鹿軍人、あ、違う。



    そうそう、エノジュンの言葉を借りるならアレだ。










    ジェノ「よう、残念……!」









    戦刃「うん、うん……ちゃんと殺るよ……お姉ちゃんだから……」


    ♡40
    ★100


    空虚に向かって話し掛けるキ○ガイは、片手に機関銃(ファマス)、片手にサバイバルナイフ(ブィブロブレード)……完全武装だなこりゃ。



    ジェノ「あー、前の決着つけてやっか……勝手に死ぬ位まで切り刻んでやんよ……!」




    なんかバイタル下がってるし、無傷がウリの軍人のクセに傷だらけだ。


    良いハンディキャップだわ、サンキュー神様。



    『とっておき』も使わざるを得ないか、殺人鬼と軍人、さて……たのしいたのしいコロシアイだ。


  373. 378 : : 2015/03/22(日) 19:29:57


    戦刃「……!」


    瞬間、片手で機関銃をぶっぱなしてくる。


    ジェノ「ちっ! 挨拶くらいしろよ!」


    いや、まあ正しいっちゃ正しいよ。コロシアイの挨拶としては。


    戦刃「ははは……っ!」


    片手で撃つからか、照準がデタラメだ。しかし、あの銃、3発で間隔(3点バースト)を取りやがるから、テキトー撃ちでも、割と弾幕を絞ってきやがる。



    ジェノ「シャッオラ!!」


    弾幕を避け、壁際に走り込み、壁を蹴って半月を描くように跳ぶ。


    左太股に着けたホルスターからハサミを取り、2本投擲した。


    戦刃「ぐっ……!」



    奴の左太股と右腕を貫く。もらいっ!







    と、思ったらだ。



    戦刃「……うん、うん」



    ♡38
    ★100




    ジェノ「効いてねえのかよ!」



    痛がりもせず、抜こうともせず、微動だにしない。



    まるで何も無かったかの様に、アタシに銃を乱れ撃つ。



    ジェノ「ちっ!!」


    中空で身動きが取れない、身を翻し、何とか回避をしないと……



    ジェノ「ぐっ!」


    ♡79
    ★24




    そうもいかないのが世の常、腹を貫抜かれた。


    鮮血を散らし、アタシは着地に失敗、無様に転げる。


    ジェノ「つつ……あー!! 超いってー!」


    馬鹿みたいに振る舞うが、実のところ、割とマジで超痛い。


    ……しゃーない、テンション上げるしかないか。


    口内に仕込んだスキルブースターをキメる。



    ……幾分か痛みが消えた。まあでもそれはきっと脳内だけのハナシ、回復したワケじゃない。


    アタシは元々、そんなに血の気が多いわけじゃない。


    失血は痛手、その内貧血起こしちまうだろう、それはマズイ。





  374. 379 : : 2015/03/22(日) 23:23:10


    戦刃「死んでよ、ね?」


    ジェノ「死ぬのは残念、オメーだよ」


    眼が充血していくのが解る。
    脚に力が満ちてくるのが解る。



    こりゃアレだ。スキルブースターってのは麻薬みたいなモンだ。


    麻薬ヤったことねーけど。


    ぼんやりして、フワフワと体が浮わついて、なのに、しっかりと動ける。


    美学云々はコイツ半殺しにしてから考えよう。そうしよう。


    ジェノ「しゃっは!!」



    だから、




    一足。




    戦刃「はっ……?」



    大体、半歩飛んで5メートルってトコ、だから一足跳べば10メートルの間合いなんざ、問題じゃない。


    背後に回り、振り向きながらハサミを抜き、刺す。




    ジェノ「あ……!?」



    と、アタシの刺しに向かったハサミは『両断』された。



    戦刃「……ははっ」



    ああ、糞、そういやコイツはナイフ持ってた。振り向き様に、下から上に断ち切りやがった。


    ジェノ「ちっ……!」


    後退し、ハサミの断面をチラ見する。


    ……普通のナイフとは思えねぇ、恐ろしく切れ味の鋭いナイフ。意図も容易くアタシのハサミを両断するなんて、ただのナイフじゃねえ。


    クソ、2手目も駄目か。






  375. 380 : : 2015/03/23(月) 20:34:58



    ジェノ「はぁ……はぁ……クソが」


    ♡58
    ★24


    テンションも血圧も下がっていく一方だ。


    戦刃「うん……盾子ちゃん……見てて」


    オマケに相手は話も通じないし、人間性を無くしてるときた。


    人間性に関してはアタシも人の事言えねーけど。


    ……アタシの『とっておき』を使うしかないか。


    左太股のホルスターには、いつものアタシお手製のハサミ。


    右太股のホルスターは、このコロシアイにおけるアタシに配給された『武器』だ。



    コイツで決まらなかったら、アタシは終わり。


    ジェノ「決めるぜぇ? クソ残念女ぁ」


    ダッ、と走り、近接戦闘に持ち込む。


    無論、ヤツはナイフを穿ちにくる。初手を避け、ハサミで断ち、それを避けられ、最小限の動きでナイフを振り、それをアタシは避ける。


    銃ばっかのこのコロシアイに似つかわしくない剣戟の音、あ、剣じゃねーか。まあそんなことはどうでもいい。


    1本、2本と直ぐにハサミが駄目になっては取り替えて、刺しに掛かる。

    当然だが、近接戦闘はロジックだ。こう来たらこう、といったジャンケンみたいなもんだ。


    だから、ずっと『あいこ』を続け、そして……




    ジェノ「しゃっ!!」


    戦刃「……?」



    『虚』を突くのだ。


    右のハサミのフェイントを挟め、右ホルスターから『とっておき』を取り出す。




    アタシの武器は、
    ショットガンの弾が詰めれる拳銃(タウルス・ジャッジ)』だ。


    1回試しに撃ってみたが、ものすごい散らばるせいで、中距離、遠距離じゃ役に立たない。



    ……こんな『至近距離じゃなきゃゴミ同然の銃』だ。



    右ホルスターから抜いたソレを、ヤツのナイフを左のハサミで弾き、その『虚』のにすかさず抜く。



    チェックだ、あばよ残念軍人。



    炸裂音、そして。




    戦刃「がっ!?」



    ヤツのやっと出した人間らしい声。



    ヤツの右腕間接を撃ち抜いた。
  376. 381 : : 2015/03/24(火) 07:52:59



    ジェノ「ヘーイ、残念さんよぉ。その腕でまだやるかぁ?」



    残念の右腕関節への銃撃、拳銃といえ、ショットガンの弾を至近距離でブッパだ。


    ……辛うじて繋がってる。いや、ありゃもうダメだ。千切れて落ちる寸前、むしろなんでまだ繋がってんの? ってレベルだ。


    戦刃「うん……うん……大丈夫、だよ盾子ちゃん」



    アイツの武器はもう機関銃しかない。キメてるアタシにゃそんなもん届かない。



    ジェノ「ちっ」



    命乞いも無い、この壊れた人形みたいな残念な女を殺すのは美学に反する。


    ……もうちょい、半殺しにしてやるか。



    距離5メートル、アタシのハサミの残数は残り22本、散弾拳銃の弾数 4発……さて。



    ジェノ「あーもう、焦れったい! チャッチャか行動不能になってくたばれっつの!」



    2本ハサミを投げる。


    戦刃「……は」



    右胸に1本、そして、左目に1本がヒット。


    あーやだもう、片眼潰してやっちまったよ。


    更に2本、投げる。


    どっちも腹にヒット。



    普通の人間ならとっくにポックリだろ。だけどアイツは『普通じゃない』。


    とんでもねえアブノーマルめ、無くした片眼でも、ニコニコ不気味に笑ってやがる。


    元々あった傷に上乗せして、アタシがつけた重軽傷含めて……普通は死ぬのに、コイツときたら……




  377. 382 : : 2015/03/24(火) 21:51:45


    戦刃「……はっ、がほっ、ごほっ、はは」


    ♡4
    ★100



    死の一歩手前でも、一切合切動じない。


    なんだコイツは……



    ……そろそろコッチもやべぇ、腹からの出血で目眩がしてきた。



    ジェノ「ああクソ……もういいや、死ね」


    ハサミを投擲、これでおしまい。










    と、





    戦刃?「ああ、それをまってたんだよ……」



    ジェノ「!!?」



    スコン! と、ヤツの額に当たった。


    ……なんだ? ヤツは、何て言った……?


    あの残念はあんな『中性的な絡み付くような声色』をしていたか?


    ……まあ、いい。


    アタシは振り返り、そして、校舎を……









    を?









    刹那の瞬き、コンマを切る秒数の間、その一瞬。





    ジェノ「がっ!?!?」



    ♡12
    ★32



    背中が熱い、刺された、ナイフ。


    アタシが? なんで? あの残念は死んだハズだ? 


    あの残念は……!








    狛枝「……やだなぁ」



    ♡100
    ★100



    何が?



    何故?




    ……『江ノ島盾子を引き継ぐ』……つまりそれは、ヤツの『才能』をそのまま?



    ということは、あの豚足野郎(詐欺師の十神)のスキルブースターを?



    違う、おかしい、スキルブースターを使ったとしてもダーリンの話じゃ『原則に1度に1つの才能』だ。


    コイツは今『復活する才能』と『変身する才能』を同時に使いやがった!!




    ジェノ「は……?」




    狛枝「……これが、ボクの新しいスキルブースターなんだよ」




    『江ノ島盾子を引き継ぐ事』で、コイツに何か別の特性が加わっているというのか。




    平行に刺されたナイフは、垂直に捻られ、そして。









    アタシの体を両断した。





  378. 383 : : 2015/03/26(木) 22:43:49


    ────────



    狛枝「……スゴい、まだ動けるんだね」


    ジェノ「ぐっ……が……!」



    ♡3
    ★48



    目の前には、ジェノサイダー翔だっけ? 彼女がうずくまっている。


    ……背中からナイフを刺し、脇腹へと捻るように斬った。普通なら即死モノだろうけど、彼女は割と頑丈の様だ。



    ジェノ「お……まえ……!」


    余裕の表情も流石に崩れていた。這うようにして、彼女はボクにハサミを向ける。



    狛枝「へぇ……スゴいね。自分の腹を見なよ」


    狛枝「……()()が飛び出してるよ?」



    もう彼女は長くないし、ボクもここに長居はしたくない。


    ジェノ「な……んなんだよ……それ、才能を……『2個』? はっ……ぐっ……」


    狛枝「ああ、そうだね。ボクは『変身』しつつ『復活』したね……でも、それってさ」




    狛枝「……『2人分の(タスク)』があるからだと思うんだよね……江ノ島盾子とボクのさ」



    ジェノ「! ……は、はは、クソが……」



    懐からリボルバー拳銃(マテバ6ウニカ)を取り出し、ジェノサイダー翔に向ける。


    彼女に一度ボクを殺させたのは『ちょっとケガしてた』から、今からもっと相手にしなきゃならないだろうから、どうせなら五体満足で行きたいしね。



    ジェノ「……はっ、とっとと殺れよ」



    ♡2
    ★55



    ああ、とても苦しそうだ。


    でも、ダメだ。


    彼女には『借り』があるんだ。



    狛枝「……『足を切った事の借りだよ』、楽には死なせない。そこで這いつくばってなよ」


    ジェノ「……?」


    苦しそうな顔の中に、彼女の疑問符が表情に出ている。


    ああ、そうか、彼女は『知る由』も無いんだから。


    さて、戦刃さんは後で来るだろうから。ボクはそろそろ南側に下ろう。



    ジェノ「ま、ま……て……」



    待たない。



    冷ややかに一瞥して、ボクは校門前を、北側の校舎を後にした。


  379. 384 : : 2015/03/27(金) 18:25:42

    ────────


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    ────────



    狛枝凪斗(絶望)のスキルブースト



    『幸運』→『歪んだ希望(マルチ・タスク)


    狛枝凪斗が絶望と化し、江ノ島盾子の左腕を継いだ事によって歪んだ因子から生まれた才能、江ノ島盾子が用いた才能と自身の本来の才能を2つ引き出す事が出来る。

    しかし、この才能は『過剰分析』の情報が壊れてしまっているので、他者の才能をコピーすることが出来ない。


    皮肉にも彼は希望ヶ峰が思案した『希望のカタチ』に近い存在になってしまった。絶望の様な希望である。


    幸運という計り知れない未知の才能は、希望になりうるという因子が含まれている。


    例えそれが、歪んだモノであっても。


    ────────


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    ────────
  380. 385 : : 2015/03/28(土) 21:28:26


    ────────




    十神「……ちっ」



    狛枝凪斗……厄介な芽が出て来た。


    俺は、十神白夜がスナイパーライフル(モシン・ナガン)でジェノサイダーを援護出来なかった。




    戦刃「仕方ないよ……仕方ないよ……ねえ、盾子ちゃん」


    ソーコム片手に、ヤツは既に俺の背後に居た。


    そう、本物の方の戦刃だ。


    どうやって校舎内から出て来たのか……


    いや、入り口にばかり気を取られ過ぎていた。校舎を囲う壁を飛び越える等、こいつには造作もないだろう。


    ……狛枝がわざわざ、戦刃のバイタルまで再現し、あの様な演技をしたのは……ジェノサイダーと戦う戦刃に化けた狛枝が、偽者と悟られない為、そして俺とジェノサイダーを注目をさせ、戦刃をこちらに寄越すための囮……


    クソ、してやられた。



    十神「……どうした? 撃ってこないのか?」


    戦刃「……」



    スキルブースターは残り少ない。しかし、今ここで使わねばやられる。



    そして、やつの第一射が轟く。



    十神「ちっ……!」



    頬を掠めた。



    だが、これでもうヤツは俺に『敵意』を向ける事は出来ない。



  381. 386 : : 2015/03/28(土) 22:08:18
    十神……それフラグ…
  382. 387 : : 2015/03/28(土) 22:59:13
    >>386
    (あかん)
  383. 388 : : 2015/03/30(月) 14:34:55
    やはり……かませか……
  384. 389 : : 2015/03/30(月) 20:07:34
    >>388
    はい、かませです(ง ˙ω˙)ว 
  385. 390 : : 2015/03/30(月) 20:36:38


    戦刃「……」


    十神「くくっ……」


    渇いた瞳で戦刃は俺に銃を向けるも、その銃弾は俺の横を逸れていく。


    カチンッ、と音がした。



    戦刃「……うん、うん」


    十神「弾切れの様だな」


    俺は腰の工具用ホルスターに無理矢理捩じ込んでいた大型回転式拳銃(S&W M500 ハンターモデル)を取り出す。


    試し撃ちしてやろう。


    M500は海外で戯れに試し撃ちした記憶がある。この銃は最悪だ、威力に特化し過ぎたせいで、とてもじゃないが扱えるモノなんかじゃない。


    撃鉄(ハンマー)を親指で引き、照準を絞る。



    しかし、この銃の威力の高さは認める。



    『人間の何処の部分に当たっても死は免れない』のが、この銃の特性。



    十神「じゃあな」




    と、






    戦刃「あはっ」



    渇いた瞳の戦刃は不気味に笑みを浮かべた。


    構うか、ヤツを撃ち抜く。




    十神「がっ!?」




    口を……塞がれた!?
    誰だ、何時の間に背後に……!?



    狛枝「はは……キミはやっぱり、完璧な様で完璧じゃないよね」


    十神「なっ……!? 狛……えだ!? 貴様、何時の……間に……」


    狛枝「……終里さんの才能って、結構便利だよね」


    単純なスキルブースターの行使、そう、単純にコイツは『跳んで』きた。


    狛枝「『敵意』っていうのはつまりさ、攻撃を仕掛けるわけだよね」



    ああそうだ、クソ。


    つまり、俺に対して一度攻撃を仕掛けなければならない。


    だが、




    狛枝「まあその、つまりさ」





    深く、鋭く、貫く。





    『切り削る』そのナイフは、意図も容易く俺の喉を貫き、捻り込まれた。


    十神「……っ!! っ!!」


    声も出ない。



    やがて、



    十神「……」



    ♡0
    ★0






    真っ暗な死が訪れた。


    呆気なく、ただ、呆気なく。






  386. 391 : : 2015/04/01(水) 22:15:50


    ────────


    日向「……うっ」


    門前、時刻はそろそろ4時になる。
    俺は、日向創、そして弐大と詐欺師の十神が見張りに立ってそれなりに時間が経った。



    豚神「無理するな、自室に戻って寝ろ」


    弐大「そうじゃあ、日向、お前さん今にも倒れそうじゃぞ?」


    日向「……あ、ああ、すまない」


    疲弊がピークだ。眠気もかなりきている。


    豚神「気にするな」


    後の見張りを2人に任せ、自室へと向かう。校内は既に暗く、他の皆も既に寝静まっている。


    ……狛枝、お前は一体なる。何を考え 、何をしているんだ。


    未だに、この仮想現実のコロシアイの目的がわからない。4日目が終わった、今になってもだ。


    江ノ島はルールの外側へと言って何をするつもりなんだ。


    カムクライズルって誰なんだ……


    俺は……なんの才能も見出だせない俺は何故こんなところにいるんだ。




    ……そもそも、何でこんなところに居るんだ?


    苗木も言っていたが、俺達はどういう経緯で、こんな場所にいるのだろうか。

    ……わからない。ただ、考えるだけ無駄な時間が過ぎていく。


  387. 392 : : 2015/04/04(土) 21:37:42



    ────────



    豚神「……そろそろ朝だ」


    と言っても、十神白夜の名前を借りる僕の頭上の空が赤黒く染まるだけだ。


    薄暗く、むしろ夜の方がまだ良いほどの空模様が広がっていく。


    弐大「ん? おい、十神……前じゃ」


    豚神「……ん?」


    前方の道、動く影があった。


    豚神「あれは……」


    狛枝や戦刃ではない……あの服装は……



    豚神「十神……? それに、腐川か?」


    心なしか、歩き方がおかしい。


    弐大「なんじゃ、あいつら……片足を引きずっているような……?」




    様子がおかしい。近付いてくるその2人に警戒する。


    片や右足を、片や左足を引き摺り、ここに向かおうとしている。




    弐大「……! おい、あれは……」


    豚神「……弐大、校内にいって皆を起こせ」


    最もおかしいのは、その2人は確実に致命傷であったことだ。


    腐川は胸部から腹部にかけて裂かれているかのような出血の痕、本物の方は十神は……首が千切れかけている。


    致命傷?



    バカな……










    ()()()()()()()()()()()()()()()()









    まるで悪夢、あれは歩く死体(ウォーキングデッド)に他ならない。






  388. 393 : : 2015/04/05(日) 08:12:13
    期待してます!
  389. 394 : : 2015/04/05(日) 08:56:22
    >>393
    ありがとうございますっ
  390. 395 : : 2015/04/06(月) 00:16:15



    豚神「おい、止まれ」


    声を張り上げて制止を促す。


    返事は無い。


    一体、何が起こっている。あの2人は死んでいるのか?


    と、



    本物の方の十神が右腕に持った何かを、こちらに向けた。




    豚神「!!」



    咄嗟に校門の壁へと隠れる。
    その瞬間にけたたましい爆音と共に、音速の飛来物が校門の壁を貫いた。



    豚神「……!」



    あれは……あのデカいリボルバー拳銃(M500)は大和田のモノだ。十神が鹵獲したのか?

    ……いや、今はそんなことどうでもいい。あの銃の前ではこの校門は『ウエハース同然』だ。


    カバーし続けることは不可能、ならば、止めるしかない。


    味方同士以前に、向こうに敵意があるならば、それを止めなければならない。



    もう、これ以上犠牲者を出すつもりはない。


    借り物の十神の名に懸けて、十神、お前を止めてやる。

  391. 396 : : 2015/04/07(火) 01:20:36


    ────────


    狛枝「……」


    ボクは、狛枝凪斗は南側の高いビルの上からその様子を見ている。


    さて、十神クンと腐川さんには小泉さんの持ち得た才能で動かしている。


    操り人形、彼らは消えるまでボクの玩具というわけだ。


    狛枝「さて……」


    どうする?
    ニセモノの十神クン。


    彼等はもはや死に体、だけど動いている。


    まるで、B級映画のゾンビだ。


    キミがどう輝くのか見せておくれよ。




    狛枝「くく……」




    さて、そろそろボクももっと近づくとしよう。今のボクならば造作ない。


    一番よく見える所がいいな。


    そう、一番、ね。



    ────────



    ここではない、どこかのモニター室。


    江ノ島「はっ、あれは悪趣味だなぁ」


    カムクラ「あなたも似たような事やってましたけどね」



    江ノ島「えー? 流石の私様も死体を利用したりなんてしないよ」


    カムクラ「しました」


    下らない会話が繰り広げられていた。


    この4日目は山場、この日が終わる頃にはきっとまた、多くの死が巡るのだろう。


    ……この世界は全てが裏返し。


    『正史』におけるコロシアイが『弾丸の様に論を破りクロを殺す』のならばこの『偽史』におけるコロシアイは『論する間もなく弾丸で肉を破り敵を殺す』という。




    全てが、総てが裏返し。

  392. 397 : : 2015/04/08(水) 17:51:47


    江ノ島「……でもさ、おかしくない?」


    カムクラ「何がですか?」


    江ノ島「狛枝のヤツ、アイツのスキルブースト、異様に時間が長くないか?」


    カムクラ「……スキルブーストは僕の残骸が彼等のデータ解析を行う為、彼等のデータの配列を著しく掻き回すことで起きる『バグ』です。酷い『バグ』ほど反比例して修復するのは早いですが、細かいバグはかえって時間が掛かります」


    江ノ島「……つまり、何が言いたいのよ?」


    カムクラ「『スキルブースト』は云わば例外、そして今の彼は……」


    江ノ島「……なるほど、『例外そのもの』ってわけだ」


    カムクラ「ええ、貴女のせいで」


    江ノ島「やっぱり?」


    カムクラ「……まあでも、これは重畳だと思いますよ。僕は南側に『始まりと終わり』が潜んでいると思いますし」


    江ノ島「ま、だろうね。しっかし、本当に偶然なんだよね。ただの名前の奇数と偶数で『必要なのと必要じゃないの』に分けられるなんてさ」




    必要ではない。



    そう、この55回目の『引きの強さ』だ。


    このチャンスを逃せば、次は何時になるだろう。


    カムクラ「さて、彼等は『まだ発見されていないTIPS』に辿り着けるかどうか」


    最後のTIPS、ヒント、それは必要不可欠。


    『誰が死んで、誰が生きていて、誰が居ないのか』を辿るための標。


  393. 398 : : 2015/04/09(木) 18:05:53

    ────────


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    ────────



    日向創の記憶・その2




    「……うん、うん」



    「……だろ? なんかあったら俺を呼べ」



    小泉の『イジメ』に関する相談を受けていた。


    どうも九頭龍の妹も絡んで複雑で厄介な問題だ。


    九頭龍辺りとも話をするか……と、教室を出た所だ。



    「また相談? 大変だね」


    七海が窓際に寄りかかって俺を待ってくれていた様だ。




    ⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛(イワカンヲカンジタ)



    「なんだよ七海、待っていたのか?」



    「うん、一緒に帰ろ?」




    ⬛⬛⬛⬛⬛(イワカンヲカンジタ)



    「そうだな」









    ⬛⬛⬛⬛⬛⬛(イワカンヲカンジタ)







    俺の日常は対して変わらず。(チガウ、ソウジャナイ)


    超高校級といっても、何ら普通の学生と変わりない。(チガウ、ソウジャナイ)


    それでも、充実した毎日で。(チガウ、ソウジャナイ)





    ⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛(ニセモノダ)



    ────────


    Now loading……


    ────────


  394. 399 : : 2015/04/09(木) 20:07:00


    ────────


    豚神「ちっ……」


    機関銃(トンプソン)を手に、心許ない校門の壁を背にして正面の通路を伺う。


    十神が銃を構えている。


    ……あの化け物みたいな拳銃を片手でだ。


    ……江ノ島のその才能の一切を引き継いだ狛枝の仕業か。恐らくは小泉の才能だろう。


    だとしたら、だ。



    恐らくは近場……そして高所に狛枝が様子を伺っているはずだ。



    僕は電子生徒手帳を取りだし、霧切に着信を送る。



    豚神「霧切」


    霧切『十神君? 今弐大君に起こされて……状況は?』


    豚神「十神と腐川が襲撃に来た。だが2人は『死んでる』……狛枝の仕業だろう」


    霧切『直ぐに向かうわ』


    豚神「狙撃出来る武器を持ってるやつはいるか?」


    霧切『……舞園さんが狙撃銃(SVD)を持っているわ』


    豚神「舞園、澪田、桑田を屋上に、恐らく、近くの高所に狛枝が潜んでいる。他は援護してくれ」


    通信を切り、身構える。


    相手側はあの死人の2人と、狛枝……もしかしたら戦刃も放たれているかも知れない。





    生きるために、殺す。


    相手が殺しに来たなら、殺し返す。


    殺すしか生きられないなら、殺す。





    豚神「……」






    ♡100
    ★58







  395. 400 : : 2015/04/09(木) 20:25:11


    ────────


    霧切「……」


    太った十神君の采配に疑問だ。



    『何故、敵側である3人に敵である狛枝君を索敵させる』のか。


    ……同士討ち? いや、それとも切羽詰まっての判断なのか。


    私自身も、疑惑で一杯だ。


    ……最悪、片方を全滅させなければならないのに。



    日向「霧切」


    霧切「日向君……」


    日向「狛枝が、来たのか」


    霧切「ええ、私達を殺しに」


    正確には『北側のチーム』である私達を、なのだが。


    日向「……」


    黙って彼は入口側に行ってしまう。



    私も向かい、太った十神君を援護しなければ。




    霧切「くっ……」



    ずきりと、コメカミが痛む。



    何が真実で、何が嘘なのか。



    私は、何を信じればいいのか。


  396. 401 : : 2015/04/10(金) 00:33:24


    ────────


    日向「……!」


    豚神「……日向か!」



    俺の、日向創の目前には、確かな死体でありながら、不確かな襲撃者だった。



    距離にして100メートルを切ったあたり。


    銃を構える首の皮が辛うじて繋がっているような本物の方の十神と、腹の中身を引き摺りながら向かってくる腐川の遺体。


    なんだ、あれは。


    日向「なんだよ……あれ」


    豚神「入り口の扉でカバーしろ! 大和田のマグナム銃を持っているぞ!」


    詐欺師の十神の言葉にハッとし、俺は急いで扉でカバーをする。


    小銃(AK―47)を持ち、そっと覗くと、






    豚神「ちっ!」



    銃撃音が響き、校門の壁を易々と貫通していく。


    豚神「くそ!」


    詐欺師の十神が飛び出し、機関銃を構えて正面に弾幕を張った。



    日向「……!」



    当たっている。あの死体の挙動から見ても、詐欺師の十神が撃つ弾は当たっているのだ。



    しかし、それでも歩むことを止めない。



    日向「……十神! 効いてないみたいだぞ!」



    豚神「わかっている! くそ! どうすれば……!」



    霧切「日向君!」


    苗木「日向クン!」


    霧切、そして苗木を始め、他の皆も駆け付けてきた。



    霧切「十神君が校門前で孤立しているわね」


    日向「ああ、あの位置だと下手に動けないし、大和田の銃を持っているらしい。あの校門の壁じゃ防ぎようがない」


    苗木「ど、どうするの?」


    日向「普通の銃が効かないみたいだ……」


    弐大「ワシの武器でも無理じゃな……となると」



    俺や詐欺師の十神の機関銃よりも強力かつ、遠距離にも対応出来るといったら……



    皆が一斉に『ソイツ』を見る。










    山田「……え? 僕ですぞ?」



  397. 402 : : 2015/04/10(金) 01:21:07


    ────────



    山田「……むむむ」



    僕、山田一二三は特にこれといった行動もなく、何となく生き残ってる感じであります。


    ぶっちゃけ、セレス殿が死んだ事を聞かされ、ドキッとしましたが、ここは仮想現実……何となく無事なんじゃないかと思ってしまうんですぞ。



    でもちーたん……アルターエゴの話では『仮想現実でも死ぬ』と聴かされ、正直頭がこんがらがってきそうです。



    ……セレス殿は本当に死んだのでしょうか。本当に本当に亡くなってしまわれたのでしょうか。


    ……でも、今はとにかく、僕に出来ることをやろうと思いますぞ。



    日向「山田、お前の武器で……あの2人を倒せるか?」


    山田「出来ますぞ……出来……」


    多分、出来る。


    しかし、僕にあの2人を倒すことがはたして出来るのでしょうか。


    あの様な姿に成り果てても、あの2人は僕達のクラスメートに他ならないのです。



    手が震えてきました。


    弐大「……山田、お前さん、撃つのが怖いのか?」


    山田「正直、とっても、はい……」


    弐大「ならワシが代わりに撃つ。いいな?」


    僕は背負っていたドラム缶(バレットボックス)を降ろし、弐大猫丸殿にあっさりと託しました……


    やっぱり、怖いものは怖いです。


    弐大「出るぞ! 十神ぃ!! 離れんかい!!」


    弐大猫丸殿はスキルブースターを使い、僕の武器を背負って校門前へと出ていきました。



    豚神「弐大! 頼むぞ!」



    そして、 正面に立った弐大猫丸殿はガトリング砲の3脚を豪快に地面に刺し、





    そして、






    ズガガガガガガガガガガ!!!






    弐大「……?」




    ……と、出るはずの弾は出ず。僕の武器はうんともすんとも言わなかったのです。

  398. 403 : : 2015/04/10(金) 18:04:06


    弐大「な、なんじゃ……弾が出んぞ!」


    そして、



    豚神「弐大! カバーしろ!」



    銃撃音と共に弐大猫丸殿が、貫かれてしまいました。


    弐大「がはっ!?」


    ♡900
    ★22


    人の10倍の値を持っている弐大猫丸殿のバイタルが一気に100も減りましたぞ。


    ……相手もまた、恐ろしい拳銃を持っていらっしゃる。


    弐大猫丸は武器を捨て、詐欺師でらっしゃる十神白夜殿の方へと向かい、カバーした。



    山田「……おかしいですな?」


    弐大「おい! 使えんぞ!」


    あの鉄塊がまさかポンコツだったとは予想外ですぞ……


    苗木「あれは山田クン……撃った事は無いんだよね?」


    山田「ですぞ、むむむ……しかし、あれが役立たずとは思いもしなかったですぞ」


    大神「不具合であるのか?」


    石丸「もしかしたら……何か足りないんじゃないかね?」


    石丸清多夏殿の言葉に反応するように、霧切響子殿が頷く。



    霧切「……ひょっとして、あれは『スキルブースター』で初めて動くんじゃないかしら?」



    『スキルブースター』……僕はまだ使ってないですが、一体、僕にはどんな才能が……


    日向「とにかく、状況が状況だ。山田、スキルブースターは持っているのか?」


    山田「あ、ありますぞ」


    ポケットに入れていたケースから、黒い立方体取りだし、それを手のひらに乗せ、



    日向「頼むぞ……!」



    山田「わ、わかりました……」



    グッと握り、意識を向ける。






    山田「ぴろりろりーん!!」



    と、何やら何か訳のわからない知識が僕の頭の中に……!



    僕に出来る事、僕に出来る事はとてもスゴい事ですぞ!!




  399. 404 : : 2015/04/10(金) 18:23:02


    ────────



    日向「!!? ……だ、大丈夫か? 山田」


    山田がスキルブースターを使い、突然叫んだと思ったら、今度は黙って震えている……どうしたんだ?



    山田「ここはもうお任せ下され」


    ただその一言を残し、山田はエントランスを飛び出し、校門側へと走っていく。


    豚神「おい馬鹿! 正面に出たら……!」



    山田は『片手』であの重機関銃(ミニガン)を拾い上げ、弾薬箱を振りながら背負う。



    山田「ぬおおお!!」



    山田の全体に何か、砂の様な……いや、あれは『砂鉄』なのか?



    霧切「なに? 山田君に何が起こっているの?」


    やがて砂鉄は山田にまとわりついていき、何かの形を型どっていく。



  400. 405 : : 2015/04/10(金) 20:06:55



    無論、御曹司の十神は容赦なくぶっぱなしてくる。


    再び校門の壁を貫き、詐欺師の十神らを掠めていく。


    豚神「山田! 何とか出来るのか!?」


    山田「ふふ、おまたせしましたぞ!」





    そして、山田は『錬成』し終えた。





    山田の持つ重機関銃に足りなかったモノを、そこいらの砂や石から造ってしまったのだ。



    山田「『重機関銃を撃てる環境』に足りなかったのは『大容量バッテリー』と『単独で撃てる為の外骨格』ですぞ」



    山田が『錬成』した、腕にチューブとフレームの集合体(空気圧式人工筋肉外骨格)と大容量バッテリーだった。



    山田「今の僕は『妄想を現実的な形に再現する』事が出来ますぞ!」



    日向「な……ど、どう言うことなんだ?」


    山田「僕は『重機関銃を撃てる自分の姿』を想像したんですぞ! それがこうやって現実になるわけでして〜その〜」








    山田「とにかく撃ちますぞ!!」






    山田の猛攻が始まった。








  401. 406 : : 2015/04/12(日) 19:48:30



    豚神「離れるぞ弐大!」


    弐大「応っ!!」


    相変わらず、本物の十神は校門の壁、つまり、詐欺師の十神や弐大の方へと銃撃を繰り返し、山田には見向きもしなかった。


    そして、




    山田「お、おっ」


    山田「ぬおおああああああ!!?」



    連続するモーター音と、鼓膜を突き破りそうな銃撃音、山田の持つ重機関銃の先端は赤く発熱しながら、直線上の校門付近を『削りとる』かのように、燈色の軌跡が疾る。


    日向「なんだありゃ……!」


    あんな馬鹿みたいな武器があるだなんて。



    疾る軌跡の先、本物の十神らはその燈色の軌跡に押し潰される形で消え入った。


    山田「お、おうふ……」

    山田が引き金を引くのを止め、発熱して真っ赤になった重機関銃を放した。


    硝煙が晴れ、やがて、本物の十神らの姿が露になっていく。


    山田「……うっ」


    一言で言うなら『ボロクズ』だ。
    穴だらけなんてもんじゃない。

    まるでそこだけ空間ごと無くなったんじゃないかと錯覚するような十神の遺体が、量膝を突き、そして、倒れた。

    その弾みに首も落ち、びくりとも動かない。完全なる死体となった。

    山田「はぁ……はぁ……僕は……うっ」

    山田は口を押さえていた。

    ……原型が無くなるまで殺した(オーバーキル)んだ。

    山田の絶望チェッカーがみるみると上がっていく。
  402. 407 : : 2015/04/15(水) 17:54:42


    山田「はぁ……はぁ……ぼ、僕は」


    豚神「落ち着け、山田」


    弐大「やったんか……?」


    弐大が校門から通路側を覗く。


    ……十神の遺体、いや……『残骸』が転がっているが、そこに腐川の遺体はない。


    日向「お、おい……腐川は……どこだ?」


    すると、苗木がハッとして叫んだ。




    苗木「校門の上だ! 逃げて!」



    その叫びと同時に、弐大と豚神が上を見た瞬間。






    鋭い刃(ハサミ)が雨の如く、弐大と豚神に振り注いだ。



    弐大「ぬっぐぅううう!!」


    弐大が豚神を突き飛ばし、


    豚神「に、弐大!!」


    その刃の一切を受ける。



    スキルブースターの恩恵にあるとはいえ、あの数のハサミを一気に受けてしまえば……!



    日向「弐大!」


    弐大「がっ……ぐぅ……!」


    ♡324
    ★48


    弐大のスキルブースターを以てしても300以上……あの雨によって、常人であったならば、三度殺された。



    豚神「校内に山田を引きずって下がれ弐大!」



    上空に弧を描き、綺麗に着地した醜い腐川の遺体が四つん這いで、まるで獣の様だ。
  403. 408 : : 2015/04/16(木) 17:57:42



    豚神「ちっ!」


    詐欺師の十神が機関銃をぶっ放す。

    連続した銃撃音とオレンジの閃光が腐川の遺体を射抜きに掛かるが、素早く、立体的に動く腐川を捉えることが出来ない。


    しかし、その隙に何とか弐大と山田は校舎内へと逃げ込むことが出来た。


    日向「俺が行く……!」


    詐欺師の十神を放っては置けない。アイツのスキルブースターは直接的な戦いには向いていない。


    俺が銃を持って表に出ようとした時。


    霧切「待って」


    霧切に止められる。


    日向「お、おい、十神がやばいんだぞ!」


    霧切「私が行くわ」


    霧切はその手にスキルブースターを握っている。


    大神「我も行こう」


    霧切「ええ……貴方達は上に向かった3人の様子を見て来てちょうだい……ここは私達が何とかするわ」


    苗木「で、でも……」


    七海「こっちは大丈夫なの?」


    霧切「どうにも嫌な予感がするのよ……」

  404. 409 : : 2015/04/16(木) 17:58:53



    ────────



    そう、嫌な予感がする。


    死神の足音、私の、霧切響子の直感は概ね当たる。


    ……誰かがまた、死ぬかもしれない。


    日向「わかった……気を付けろよ!」


    七海「日向君、私も行くよ」


    苗木「霧切さん……気を付けて」


    日向君、苗木君、七海さんは昇降口へと向かう。


    霧切「さて……罪木さん、小泉さん、弐大君を診て上げて、山田君、立てるかしら?」


    罪木「は、はいぃ!」


    小泉「う、うん、わかった!」

    弐大「すまん……」



    山田「……だ、大丈夫ですぞ、僕は怪我もしてないですし」


    石丸「僕は……僕に出来ることはあるかね?」


    霧切「援護をお願い、大神さん……!」


    大神「我が前に出る……では、行くぞ!」



    大神さんがスキルブースターを握り、そして私達は飛び出していく。


  405. 410 : : 2015/04/19(日) 20:14:05


    ────────


    豚神「ちぃい!!」


    弾幕を張る、しかし、その1発すら奴には入らない。


    僕は、十神の名を借りる詐欺師の僕にはそうやって、近寄らせなくすることが精一杯だった。


    豚神「……!」


    ガチンッ!


    豚神「くっ!」


    弾切れだ。残念だが、再装填するほど余裕がない。


    そして腐川は線の動きから点の動きとなり、こちらへと向かい、僕を穿ちに掛かってきた。


    ああ、くそ、ここまでなのか。


    豚神「……!!」





    黒く、疾走(はし)る巨躯が腐川へと向かい、そして、



    大神「ぬあぁあああああああ!!」


    肩をやや内に、背中の肩甲骨部位を前に、まるで大砲から出た砲弾の様に、腐川の体を捉え、易々と吹っ飛ばした。


    ……鉄山靠(てつざんこう)、格闘技に対して素人の僕でも、その構え、その形は見覚えがあるし、名前も知っている。



    吹っ飛ばされた腐川は校門に打ち付けられ、壁をバウンドしたのち、地面へと倒れ込んだ。


  406. 411 : : 2015/04/19(日) 21:16:35


    ……だが、それでも、起き上がってくる。
    あれは最早、人間以外の何かだ。



    腐川「……て」


    豚神「……?」


    大神「あやつ、今……」


    喋った、のか?



    腐川「……」









    ころして。










    豚神「あ、生き……て……?」



    まだ、生きていた?
    狛枝が2人を殺し、その遺体を操っていたと思ったが……まさか。



    霧切「十神君、大神さん……どうしたのかしら?」


    霧切が大神に遅れ、こちらへと走ってくる。


    豚神「腐川はまだ……生きている」


    霧切「……あの重傷で?」


    そう、あの腐川は背中から腹に掛けて大きく裂かれ、見るも無惨な姿だ。

    小泉の『他者にバイタルを預け、動かす才能』によって動かされているのは分かるが……


    豚神「おい……まさか」


    腐川に意識を向け、僕は悟ったのだ。




    腐川「……し、て」



    ♡202
    ★100




    豚神「どういう事だ……!」



    それは矛盾。死にかけだと思ってたけど、その実、バイタルは通常の2倍以上をも持ち合わせていた。



  407. 412 : : 2015/04/28(火) 18:07:34




    豚神「……!!」


    では、ならば。


    大神「退け!! 十神よ!!」


    大神が声を荒げて僕を押し退ける。


    と、同時に、発砲音が轟く。



    そう、先程、文字通り蜂の巣になった御曹司の、本物の方の十神からだ。



    大神「がっ!?」


    ♡58
    ★26


    スキルブースターを使った上で、その弾丸を鋼の腕で防いだものの、威力を殺しきれず、貫かれる。


    幸いにも弾道はズレたが、それでも、大きなダメージは避けられない。



    豚神「……!」



    戦慄した。



    十神「……」


    ♡30
    ★100



    まだ、生きていた。


    這いずり、四散した体でなお、辛うじて繋がっていた右手に握の銃で撃ってきたのだ。



    豚神「大神……退け!」


    大神「否……我は退かぬ」


    腕をだらけ、流血してなお、その鬼は倒れず、退かなかった。



    大神「……使いたくは無かったが。頼らざる得ないだろう」


    大神は残った右腕に拳鍔(ブラスナックル)を装着する。
  408. 413 : : 2015/05/07(木) 22:26:35


    霧切「無理よ……その体では……!」


    大神「……だが、我が退けば主らが危ういであろう」


    僕も霧切も戦闘に特化した能力ではない。



    大神だけか頼りなのは確かだ、しかし、ここで大神をむざむざ死なせる訳には行かない。


    僕に出来ることは……



    豚神「解った……俺が隙を作る。その隙をついて……あいつらを」


    もう、休ませてやってくれ。あんな体になってまで闘争など、冒涜以外の何モノでもない。



    霧切「十神君……!」


    豚神「霧切、お前は石丸とあの向こうにいる十神を……やれるか?」


    霧切「……わかったわ。石丸君!」


    石丸「なんだね! 今向かうぞ!」


    僕は再装填をし、腐川に対して弾幕を張り、誘き寄せる。校門校門内側より、西側、グラウンドへと向かう。


    腐川はそれに見事食い付く。走りには自信があるが、それでもあの腐川には及ばないだろう。


    だが、それでいい。大神も概ねそれを理解している。


    グラウンドに到達と同時に挟撃する。
  409. 414 : : 2015/05/20(水) 23:02:51




    ────────



    ここではない、何処かのモニター室。


    カムクライズルと江ノ島盾子は、南側の本拠地校舎の下にいる人物達を写すモニターではなく、屋上側へと向かった人物らを写すモニターに目をやっていた。


    何故ならば、上に向かった人物達こそが重要であり、鍵であるからだ。


    ……つまりはここが分かれ目。このゲームの終了と継続の。



    江ノ島「さて、あたしはそろそろ準備しようか」

    カムクラ「『開廷』……ですか」


    江ノ島「そ、さっきも言ったけど、あたしに出来ることはこれだけ。あの『ウイルスにウイルスをアップロード』してやるのよ」


    カムクラ「手順はわかりますね?」


    江ノ島「ここに至る方法よりは簡単だろ? ガバガバ過ぎんのよ、ここのシステムは」


    そういって、江ノ島盾子は席を立ち、何処に繋がってるとも解らない出口に向かう。


    カムクラ「さて……『貴女』にも、そろそろ動いてもらいましょう」


    カムクライズルは私を見てそう言う。


    カムクラ「全部終わらせましょう」









    ────────本物の偽物と、偽物の偽物が躍り果てる。あの哀れな人形劇に終止符を。









  410. 415 : : 2015/05/20(水) 23:09:16


    ────────



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    ─────────



    開示された情報




    山田一二三のスキルブースト



    『同人作家』→『愚現者(ファンダズム)



    『そうである』という妄想を具現化する為に、周囲の物質を集めて『そうなる』為の道具を作り出す才能。
    ミニガンを扱う為に、砂や石片を集め、素材の特性を無視し、強化外骨格とバッテリーを作り出す等、万能とも言える才能である。

    しかし、確固たる想像力が要求される為、使い方によっては役に立たない場合もある。






    最後のファイル


    この『箱』が形勢される以前のファイルであり『誰が死んで誰が生きているのか』を示すファイル。


    最も重要であり、最も不必要とされたファイル。




    『開廷』


    かつて江ノ島盾子が用意した重要なイベントである。
    この『裏返しのコロシアイ』において、更に裏返す為のキーポイントとなる。



    ────────


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    ────────
  411. 416 : : 2015/06/05(金) 21:24:27


    桑田「2人とも、下がってろ」



    狛枝を探せと言われて屋上に来たのは良いが……



    澪田「ど、どうなってんっすか……?」


    舞園「どうやって……!」





    桑田「何時からいたんだよ……!」





    狛枝「ふふ、ボクはずっと、ここに居たよ」


    ずっと、つまりは1階のイザコザを最初からここで眺めていたわけだ。
    この屋上から、校門付近がよく見える。


    桑田「おい、止めさせろ!」


    狛枝があの十神と腐川を操っているのだろう。


    狛枝「なんでだい?」


    桑田「……ッ!」


    ドブが渦巻いた様な、歪んだ瞳をこちらに向ける。


    舞園「殺し合って……殺し合って何になるっていうんですか!?」


    澪田「そうっすよ! 凪斗ちゃん!」


    狛枝はそれを聞いて呆れる様に返答した。


    狛枝「ハァ……じゃあ何故、キミ達はコロシアイをしないんだい?」


    桑田「ハァ?」


    ダメだ、コイツ、話が通じねえ。頭のネジが飛んでやがる。


    狛枝「はは、安心しなよ。キミ達は敵じゃない……敵は彼等だ」

    澪田「敵とか……味方とかそんなのカンケー無いっすよ! 殺すのはいけないんす!」


    狛枝は一瞥し、地べたへと座り、懐から何かを取り出す。



    桑田「……!」


    リボルバー拳銃(マテバ6ウニカ)だ。思わずドキリとし、オレも懐の武器に手をかけた……が、駄目だ。オレはこれの威力を知らないし、後ろの2人にも被害が及ぶかも知れねぇ。


    まったく、どうせならオレも『拳銃の類い』が良かった。

  412. 417 : : 2015/06/13(土) 01:22:46



    狛枝「おっと、キミ達と殺し合うつもりは無いって言ってるのになぁ……」


    狛枝は手に持った拳銃を己のこめかみに当てる。


    引き金を容赦なく引き、撃鉄がガチンと音を立てる……まるで拳銃に弾は入っていないとアピールしているようにも見えるが……今のアイツは銃なんか無くても、容易く人を殺せるんだろう。


    桑田「テメェ……殺し合いをして……何が目的なんだ?」


    相変わらず、飄々として狛枝は応える。


    狛枝「目的は無いよ。ボクらは『殺し合って消えるべき』なんだ。そう『彼女』も言っている」


    『彼女』……というのは、その『腕』のことなのか。


    澪田「き、消えるべきってなんすか……バーチャル世界だか何だか分かんないすけど、痛いモンは痛いすよ……きっと! そのショックでもしかしたら」











    狛枝「それは違うよ、澪田さん……『ボクらが居るのは仮想なんかじゃなく、間違いなく現実なんだよ、ボクらにとっての現実はここで、ボクらにとってバーチャルなんかじゃないんだ』」







    遮る様に狛枝は口を開く。


    舞園「な、何を……どういう……?」


    桑田「何を言ってんだテメーは……! あの非現実的な力も、死んでいった奴も……皆現実だっていうのか!?」


    嘲笑するように狛枝は目尻を上げ、口元を緩ませて「そうだよ」と一言を告げる。


    桑田「んなワケあるかよ! 現実で死んだ人間をあんな風に動かせんのか? オレのスキルブースターみたいに死んで蘇れる現実があんのか!?」


    狛枝「ふふ、そうだよ。そんな『現実』なんだよ」


    桑田「ふざけんじゃねえ! このクソ野郎! おちょくってんのか嘗めやがって!!」


    頭にきている。


    何がどうなってのかわかんねえ、頭の中はぐちゃぐちゃだ。


    仮想だとか現実だとかもうどうでもいい。


    取り敢えず、この目の前のクソ野郎を黙らせれば、この一連は終わる。



    桑田「もうよ、ダチが殺し殺されるとか、うんざりなんだよ。現実とか仮想とか関係ねえ」



    懐からオレは手投げの爆弾(M67破片手榴弾)を取りだした。





  413. 418 : : 2015/06/13(土) 22:22:52


    ────────



    豚神「ぐっ!」


    無様に転げ、僕の上空に腐川が舞う。
    弐大に喰らわせたハサミの雨と同じ動き、これを貰えば確実に死ぬ。


    ……まったく、さっきからボクは死にかけてばかりだ。





    大神「ヌンッ!!」


    そして大神に助けられる。まったく借りが出来っぱなしだ。

    上空の腐川を大神自らも飛び上がり、強力な踵落としによって腐川を撃墜する。


    スキルブースターの恩恵にあるとはいえ、まるで漫画か何かだ。


    土埃を上げ、腐川は墜落した地点から起き上がり、上空の大神に向けてハサミを投擲する。


    腕をクロスし、その一切を弾く。


    そして彼女は拳鍔(ブラスナックル)を地面に穿つ様に向けた。



    ……先ほどまでなかった……いや、あえて装着しなかったのか『拳鍔の殴打部分に乾電池の先端の様なリベットがあった』……まるであれは……『雷管』の様な……?



    大神「眠れ……腐川よ……!!」


    穿たれた拳が腐川へと突き刺さる。それと同時に。



    腐川「!?!!?」


    豚神「!!?」



    爆炎と轟音を起こしながら、大神の拳が爆発する。そう、あの雷管は拳鍔の『元来の武器としての用途』だったのだ。


    あれは、大神のスキルブースターが『鋼そのものの体』であるからこそ出来る芸当、山田と同じ、スキルブースターと組合わせて初めて元来の使い方が出来る武器。



    豚神「……お、大神?」


    爆煙の中、動く影が1つ。



    ……全く、挟み撃ちなど、なんの意味があったのか。初めから僕は要らなかったんじゃないのか?




    大神「……許せ、腐川よ」





    許しを乞うも、その相手は最早、原型どころか影もなかった。

    爆発し、四散し、そこには大神以外何もなかった。


    豚神「はっ……全く……」

    疲れが一気にきて、銃を手放してしまう。


    豚神「……全く、なんだその武器は?」



    大神「我に詳しい事は分からぬ。この武器と共に置いてあった説明書には『拳雷(ブラス・クレイモア)』としか書いてなかった」



    全く、とんでもない地雷の使用方法だ。

    弐大や辺古山と同じく、架空の武器。

    本物の十神は『爆発物はない』と言っていたが、こんな形の爆弾があるとは思いもしなかっただろう。



  414. 419 : : 2015/06/14(日) 15:58:47




    大神「立てるか?」


    豚神「ああ、問題無い……また借りが出来たな」


    大神「気にするな……」


    腐川を退けたはいいが、あちらの本物の十神を相手にしている方はどうなったのだろうか……



    ────────


    霧切「くっ……!」


    遮蔽物など、あの銃の前では何も意味をなさない。


    10センチ厚のコンクリート壁など易々と撃ち抜かれ、私達は未だに近寄ることさえ出来ないでいた。


    石丸「どうするかね……霧切君!」


    霧切「ええ……こうするわ」


    握っていたスキルブースターに集中し、それをポケットにしまい込む。


    そして拳銃を取りだし、上空へと向けた。


    石丸「霧切君、何を……!」


    霧切「私の放つモノ全て、対象を追跡し、捉える」


    私のスキルブースターは『追跡』する事、シンプルでありながら、応用の幅は広い。

    辺古山ペコに対して行った攻撃方法を再び行う。


    弾丸を上空へと放ち、その一辺を浴びせる。


    十数発の発砲音の後に、十神君のいる位置に撃ち込まれる。


    石丸「なんと……!」


    霧切「……!」


    心許ない遮蔽物から身を乗り出して覗く。


    霧切「!!」



    ガインッ!! と、再び遮蔽物が撃ち抜かれた。


    石丸「ま、まるで効いてないんじゃないだろうか!?」


    霧切「そんな……」


    そう、十神君の遺体があまりにも『散り過ぎている』のだ。私のスキルブースターでは、あの胴体と腕だけを精密に撃ち抜く事は出来ない。


    霧切「くっ!」


    遮蔽物にしていた校門も徐々に削り取られていく。


    霧切「……どうすれば」


    すると石丸君が立ち上がる。その手には、ポケットから出したスキルブースターを手に持って。


    石丸「僕に……僕にはどんなスキルブースターが起こるのか分からないが、それでも、何もないよりは少しはマシだろう」


    ジワリと、彼の持つスキルブースターが溶け出す。

  415. 420 : : 2015/06/14(日) 16:02:29


    ────────



    僕に出来ることはきっとある。


    取り出したスキルブースターが僕に何をもたらすのか、だが、それでもこの状況を打破するためになら、何にでも頼ろう。


    見ていてくれ、兄弟。


    石丸「ぐっ……!」


    ズキリ、と、こめかみに痛みが走る。
    それと同時に何かしらの知識が頭に駆け込む。


    それは、文章。


    まるで僕のプロフィールが書き換えられていくかの様な、そんな知識。



    『超高校級の風紀委員』という単語から調律者(セイヴァー)』という単語にすげ替えられていく。


    何が出来る?


    何を行える?


    そう、僕に出来るのは……











    石丸「『銃の扱いを律する』」







    霧切「!」



    風紀を乱す因子の排除、法を敷き、律する。









    限定的なエリアに『僕だけの法律』を1つ練り上げる。




    霧切「う、銃が……重い?」


    石丸「双方、銃を収めたまえ!」


    敵も味方もない、僕のスキルブースターは『罪』と『罰』を与える事が出来る。


    霧切君は悟り、銃をしまった。


    法の対象には強力な重圧(プレッシャー)を掛け、潜在的に『これは駄目なことである』と刷り込ませる。




    だが、十神君は相も変わらず銃を握っていた。


    石丸「……無理もないが、君は『罪』を犯し、『忠告』を無視した。よって、『罰』する」




    突然としての轟音と共に、十神君へと落雷が生じる。



    霧切「……『ルールを作って、それを破った人に致死レベルの攻撃が行える』……ってとこかしら、恐ろしいわね」


    石丸「そんなところだ。こんな力であったならば……」




    兄弟をもしかしたら、救えたのかもしれない。




    十神君の居た跡に残るのは、黒焦げになった大型拳銃のみだった。

  416. 421 : : 2015/06/14(日) 16:05:56


    ────────



    Now loading……



    ────────



    Tips.


    ⬛⬛⬛⬛(ダレカ)記憶(ログ)






    あれから一月が経った。未だに彼等を助ける術が見つからない。


    ⬛⬛⬛『大丈夫でちゅ、焦らなくて良いんでちゅよ』


    ⬛⬛「そうだな……」


    だが、俺達の時間は無限ではない。


    ⬛⬛⬛「なあ、思ったんだけどよ」


    ⬛⬛⬛が口を開く。


    ⬛⬛⬛「ほらアレ、⬛⬛⬛のカケラ……だっけか? あれってよ……」



    続いて⬛⬛⬛が口を開いた。



    ⬛⬛⬛「⬛⬛⬛のカケラですか……何処かで聴いた様な」


    俺達が目覚めてから記憶が曖昧だ。過ごしたことは確かでも、都度の事は覚えていない。


    ⬛⬛⬛「そ、そうか、アレですよ⬛⬛⬛さん! おい、⬛⬛! それ確か各人のアバターと関連付けされてんだよな!」


    ⬛⬛「寒天漬けってなんだそりゃ、うめぇのか?」


    ⬛⬛⬛「話が拗れるからオメーは黙ってろ」


    ⬛⬛「そうか、わかったぞ! ⬛⬛⬛! ⬛⬛⬛! ハードウェアの設定頼む! ソフトウェアの設定は俺と⬛⬛⬛でやる」


    ⬛⬛⬛「合点承知ノスケです!」


    ⬛⬛⬛「わかったぜ、⬛⬛! ⬛⬛……待ってろよ、絶対起こしてやるからな」


    ⬛⬛「おい⬛⬛、オレに何かする事あるか?」


    ⬛⬛「⬛⬛に連絡してくれ、恐らくこの島の機材だけじゃ足りない……」


    ⬛⬛「オウ、いいぜ!」


    ⬛⬛⬛『みなしゃん、くれぐれも無理しないでくだちゃい』


    ⬛⬛「呑気な事言うなよ⬛⬛⬛! まずお前のデータと俺のデータから⬛⬛を復元させるんだからな」


    ⬛⬛⬛『はわわ? じゃ、じゃあ⬛⬛しゃんを……』


    ⬛⬛「ああ、起点だ……⬛⬛と⬛⬛⬛と俺のカケラをリンクさせて、各人アバターの復元を試みる……可能性はまだ限り無く低いが……それでも」







    奇跡を起こすための可能性ならば、決して低くはない。













    ………記憶(ログ)はここで終わっている。



  417. 422 : : 2015/06/14(日) 16:09:00


    ────────


    Now loading……



    ────────




    開示された情報




    爆撃兵(ボマー)の存在。



    銃器ではなく、爆弾のカテゴリーに属する武器を支給された者がおり、今回は桑田と大神であった。

    強力であるが、携帯出来る数も少なく、扱いを間違えれば味方にも被害が被る。




    石丸清多夏のスキルブースト



    『風紀委員』→『調律者(セイヴァー)



    風紀委員としての『取り締まる』事を極大にした才能。石丸の視認出来るエリアが対象であり、そのエリアに置いて『法』を定める事が出来る。その法を破った者に『忠告』をし、それを聞き入れて貰えなかった場合『執行権』を得る。

    無論、致死に至る攻撃の執行である。


    一見強力であるが、『法の穴を突かれたり』『法に準じている』場合は対象とならず、味方にも影響が出るため、無茶な法を敷くことは出来ない。



    ────────


    Now loading……


    ────────
  418. 423 : : 2015/06/14(日) 16:12:39


    ────────


    Now loading……


    ────────




    ここではない、何処かのモニター室。



    カムクラ「早かったですね」


    何処に繋がってるも分からない扉から、再び江ノ島盾子が姿を表した。


    江ノ島「まあね、データ自体は元々あったし、それを組み直して、あとはあのモノクマにウイルスを認識してもらうだけよ」


    カムクラ「明日辺りでしょうか」


    江ノ島「そうね……あのさ、そろそろそのキモい喋り方やめない? あたしの知ってるアンタは『そんな口調じゃない』でしょ?」


    カムクラ「アバターに刷り込まれている『性格付けによる口調』を変えることは出来ませんが、意識してその様に喋ることは出来ます……ですが、無駄な事ではありませんか?」


    江ノ島「あたしが不愉快なのよ、少なくとも、アンタよりはアイツの方がまだ良い」


    カムクラ「そうですか」


    カムクライズルはただ、無感情のままに喋る。









    カムクラ「江ノ島、このウラガエシのコロシアイ……どう見る?」






    カムクライズルは、かつてカムクライズルだった少年の口調で喋る。






    江ノ島「ふっは、それそれ……さぁね、ただ、絶望まみれのこの『ゴミ箱(55番目の箱)』に希望を灯すなんて、ウラガエシのあたしを本当のあたしが見たら、どれだけ絶望的なんだろね?」





    カムクラ「は、全くだ。体感で2年だったけど、それもこの『新世界プログラムという机上』では半月程……長いようで、長い日々だぜ……全く」


    江ノ島「長いようで短い、じゃないの?」


    カムクラ「なげーんだよ、そうだろ?」



    カムクライズルであった少年はカムクライズルの姿で、私に振り返ってそう言った。






    「ええ、全く、長いようで……長い日々だったわ」





    そうでしょう?







    日向創……君?





  419. 424 : : 2015/06/15(月) 17:32:09



    ────────




    狛枝「おや、どうするんだい? それ?」


    舞園「く、桑田君……それ」


    澪田「ば、爆弾っすか……!? 止めるっすよ怜恩ちゃん!」



    オレには2人の言葉が聴こえなかった。


    桑田「狛枝……!! ラストだ。殺し合いを……あの2人を止めろ!」




    ククッ、と表情を歪めて笑い、狛枝はオレへと振り返る。



    狛枝「もう2人は止まってるみたいだよ、さっき爆発音と落雷があっただろう?」



    そう、オレがこの手榴弾を取り出した時だ。校庭側から爆発音、そして校門の方に落雷が轟いた。




    狛枝「そう、見事に彼等は『同士討ち』を果たしてくれた」


    桑田「じゃ、じゃあ……」



    しかし狛枝はその言葉の後に「だけど」と付け足した。











    狛枝「『真打ち』の登場さ。あの2人はただの捨て石、ここからが見物なんだよ」


    桑田「な、どういう……!」



    屋上の入り口から苗木らが飛び込んでくる。



    苗木「舞園さん! 桑田クン!」


    日向「澪田!」


    七海「……狛枝くん、どうして君がここにいるのかな?」



    狛枝は3人を視認し、ようやくその腰を上げた。



    狛枝「さて……役者は揃ったね」


    狛枝はゆっくりと歩き、オレ達へと視線を向ける。


    日向「どういうことだ、狛枝……!」


    狛枝「キミ達が此方に向かってくる可能性はすでに『調整済み』さ……まあ、『誰か』が違和感を感じていた様だけど、関係無いよね」


    苗木「ま、まさか……狛枝クン、キミは全て『予測』した上でキミ自身のスキルブースターを使って……!」


    狛枝のスキルブースター、苗木が言っていたが『確率の変動』だったか。まさか、こんな芸当まで出来るとは……



    狛枝「そういうことさ、不思議な事にね、ボクは今ずっと『スキルブースター』の状態が続いてるんだ」


    日向「なっ……! じゃあ……」


    狛枝「そう、今のボクはね。限り無く無敵に近いんじゃないかな?」


    七海「……チートモード全開だね。それで私達をみんな殺すのかな?」


    手を拡げて「まさか」と狛枝は否定した。



    狛枝「キミ達は『仲間』なんだから、さ」






    苗木「なら、止めようよ……ねえ、狛枝クン」



    苗木が一歩前に出て、狛枝の前に立ち塞がる。






    狛枝「ねえ、苗木クン………キミはさぁ……」





    苗木「『喋ルナ』」



    桑田「!?」



    苗木の手には既にスキルブースターが握られていた。


    苗木「ボクはね、狛枝クン……もうこんなのイヤなんだ……皆で殺し合うなんて」



    狛枝「……」


    ククッ、と苗木以外が喋れない空間で狛枝は笑う素振りを見せた。



    蔑む様な目を苗木に向けて、狛枝は唇だけを動かす。











    な・ら・ボ・ク・を・止・め・な・よ。







    苗木のその次の行為は矛盾を孕んでいた。



    狛枝へと銃を向け、そして。





  420. 425 : : 2015/06/15(月) 17:36:14






    ────────


    弐大「ぐっ……」


    小泉「弐大……大丈夫?」


    保健室に蜜柑ちゃんと一緒に弐大の具合を見る。アタシ、小泉真昼は銃を持ってきていない。自室に置きっぱなしだ。アタシは戦力になれない……ならば、せめて出来ることをしなきゃならない。


    山田「外の様子が……気になりますぞ」


    罪木「そ、そうですね……皆さん無事でしょうか……」


    無事かもしれないし、無事じゃないかもしれない。すごい音が2回したから、もしかしたら……と考えると震えてしまう。



    弐大「……ワシは大丈夫だ。お前さん達は様子を見てこい」


    傷だらけの弐大が起き上がり、アタシ達にそう言った。


    罪木「で、でもぉ」


    弐大「安心せい、この程度なんともないわい、それに、そう簡単にやられる様なヤワな奴等でもないじゃろうが、日向達が心配じゃ」


    弐大のスキルブースターは『バイタルの増強』……でも、痛みを堪えてるようにしかアタシには見えない。


    小泉「……わかったよ弐大、様子を見てくる」


    弐大「お前さん達もいかんかい」


    山田「し、しかしですぞ」


    罪木「弐大さんを置いては……」


    弐大「だから、大丈夫じゃ。3人で行ってこい、ここに居っても仕方ないじゃろう」


    罪木「わ、わかりましたぁ……」


    山田「弐大猫丸殿……」


    アタシ達は保健室を出て、校門へと向かった。



    ────────




    霧切「石丸君、大丈夫かしら?」


    石丸「問題無い……」


    石丸君は十神君を手に掛けた事に対し、仕方の無いこととはいえ、自責しているのだろう。


    霧切「さあ、戻るわよ……あっちの大神さんと十神君が……」





    言いかけて石丸君に振り返る。





    と、









    ────────北の空、赤黒い曇天を背に、ビルの谷間。








    『狼』(戦刃むくろ)が1匹。







    霧切「あぶな……!!」




    石丸「……えっ?」







    刹那、狼が距離を詰め。








    石丸君に穿たれるナイフが、曇天に血の雨をもたらした。




  421. 426 : : 2015/06/15(月) 17:38:57



    石丸「がっ……は……!」


    霧切「石丸君……!!」



    背中から心臓を一突き。


    石丸「あっ……はっ……がっは!」


    ♡5
    ★90


    霧切「石丸君……!」



    石丸「ぼ、僕は……き、兄弟に……がはっ、ごほっ!」


    ♡2
    ★98




    霧切「石ま……」










    ────────兄弟(大和田君)に、会えるだろうか。










    石丸「……」


    ♡0
    ★0







    石丸君は、自らの血溜まりに倒れ、絶命した。




    霧切「ハァ……ハァ……!」



    倒れた石丸君の影より、戦刃むくろが冷やかな視線を私に送る。



    戦刃「……ごめんね、ごめんね」



    ♡80
    ★100



    完全とまではいかないが、大神さんと弐大君と交戦した時のダメージが回復している。


    どう回復したのかとか、今はどうでもいい。


    今、私の前に最悪の災厄が佇んでいるのだから。





    瞬間、その瞬く間に。




    霧切「くっ!」


    石丸君から抜かれたナイフを、今度は私に一突き。


    私はそれを紙一重で、勘でかわす。


    しかし、その一突きの後に器用にも体を捻り、繰り出される蹴撃を私はかわすことが出来ず、それを腕で受け止めた。


    霧切「あうっ!!」


    とてつもなく重い蹴りだ。鉄骨でもぶつけられたかの様な衝撃が、易々と私を校舎の入り口前まで吹っ飛ばし、蹴られた石ころみたいに転がった。



    霧切「あ……ぐ………」


    ♡72
    ★38


    駄目だ、私では戦刃むくろに勝てない。
    力量、技能、センス、全てが下回っている。


    あの一瞬で石丸君との距離を詰めた動き……『人の目に留まらない』程の運動性能からしても彼女はスキルブースターの恩恵にあるのだろう。




    ……腐川さんと十神君は布石、私達に疲弊と、そして勝利して安堵した時に生じる隙を突き、彼女が私達を殺す。



    それが、彼の、狛枝凪斗の見立て。

  422. 427 : : 2015/06/15(月) 17:42:26



    霧切「ぐ、う……」


    髪が乱れたとか、服が汚れたとか、そんな事にまで今は気が回らない。


    なんとか逃げ延びなければ。



    だが、彼女は一足で距離を詰めてくる。



    化物め……銃を構える事すら叶わない。



    霧切「ぐっ!」


    再び、重い一撃が私に放たれた。


    一足次いでの回し蹴り、それも辛うじて腕で受け止めたが、私はまたしても、ゴム毬か何かの様に飛ばされて地面に転がる。


    戦刃「……」


    何とか這いつくばって、腕を立て、上体を起こす。


    霧切「痛っ……」


    ♡52
    ★48






    多分、腕の骨にヒビが入っている。


    痛い、とても痛い。


    だからといってのたうち回ってもいられない。彼女が私を殺しに来る。


    こういうときだからこそ落ち着いて、回り見て、打開策を練り上げねば。



    余裕なのか、遊んでいるのか、彼女は歩いてこちらへと来る。



    霧切「……!」


    私のスキルブースターの恩恵は続いている。なら、せめて一矢でも報いる。


    私のスキルブースターは『触れたモノから間接的に動いたモノ』まで効果がある。



    霧切「……」


    左手側に校舎の窓があり、私は弾を撃ち尽くした銃を握る。バレル側を握り、調度鈍器の様にだ。



    霧切「ふっ!」


    戦刃「!!」


    窓ガラスを銃の底で叩き割る。そしてその割れたガラスの破片を1片と残らず。



    戦刃「……ちっ」



    戦刃むくろへと向けてやる。



    10センチ程のガラス片が、戦刃むくろを切り裂かんとし、回転しながら向かっていく。



    戦刃「……」


    ご丁寧にそれを避けつつ、1枚ずつナイフで割っていくしかないだろう。下手に拳や蹴りを打てば、大きなダメージを負うことになる。



    だが、戦刃むくろにとってこんなものは所詮子供騙しに過ぎない。


    でも、それでいい、私がグランド側へと逃げられれば……そして大神さんと詐欺師の十神君と合流出来れば……活路を見出だせる。




    だが、




    乾いた発砲音。




    霧切「あっ……かはっ……」


    ♡10
    ★78


    私の背中から右胸を貫く、1発の弾。



    戦刃「……」


    器用に、ガラス片をかわしながら、右手に握ったナイフでそれを割りつつ、左手に握った自動拳銃(インフィニティスタンダード)で、私を狙撃した。



    戦刃「……ごめんね、ごめんね」



    最後の1枚を叩き割り、戦刃むくろは一瞥し、グランド側へと走り抜けていった。



    霧切「はっ……はっ……」


    ♡8
    ★82


    呼吸が出来ない、肺を撃たれた。長くは……持たない。





    私はこんなところで終わってしまうのか。







    私は……まだ、死ぬわけには……





  423. 428 : : 2015/06/15(月) 17:44:10


    ────────




    小泉「銃声……!」


    アタシ達、小泉真昼、そして蜜柑ちゃんと山田が校舎の入り口に差し掛かった所で、グランドに向かう方向から1発の銃声がした。


    罪木「ふぇえ!? だ、誰か……撃たれたんですかぁ!?」


    山田「い、行ってみますぞ!」


    入り口から校門前に出る、その正面、校門側に誰か倒れていた。


    山田「い、石丸清多夏ど……の?」


    山田が飛び出していく。


    罪木「あ、あっちにも……!」


    グランド側に誰かが駆け抜けていくのが見えたが、それよりも手前に、響子ちゃんらしき人物が倒れている。


    血を流しながら。



    山田「そんな……石丸清多夏殿……!」


    山田の様子から、石丸は……もう。


    とすると、響子ちゃんも……


    アタシと蜜柑ちゃんが響子ちゃんへと駆け寄る。


    罪木「……! ま、まだ生きてます」


    小泉「!」


    響子ちゃんはまだ生きている。



    霧切「……」


    ♡4
    ★92


    だが、致命傷を負っている、長くは持たない。


    小泉「蜜柑ちゃん……!」


    罪木「だ、大丈夫です……! そ、そのす、スキルブースターを使えば……!」


    罪木ちゃんは、スキルブースターを取り出し、集中し、響子ちゃんの特に出血の酷い胸に手をかざした。


    小泉「……」


    もう、これ以上、誰かが死ぬところ見たくはない。看取りたくはない。





    罪木「……大丈夫です、これで……何とか」



    霧切「……」


    ♡11
    ★92



    致命傷を避けることは出来た……が、アタシと同じ様に失血が多い。


    予断は許されない、直ぐに保健室へと向かう必要がある。



    山田「石丸清多夏殿が……お亡くなりに」



    小泉「うん……でも、響子ちゃんは生きてる、助けられる……!」


    山田「なんと……では急いで保健室へ!」


    ……石丸が殺されて、響子ちゃんが重体。


    この殺し合いは何時まで続くのだろう。






    ねえ、日寄子ちゃん、アタシはもう、耐えられないかも。




  424. 429 : : 2015/06/15(月) 23:37:14
    ────────






    豚神「……銃声?」


    十神白夜の名前を借りる僕と大神がグランドから校門前に戻ろうとしていた時だ。


    大神「嫌な予感がする。急ぐぞ」



    と、大神が言いかけて。



    影が、大神の頭上に接近する。




    豚神「……大神、上だ!!」





    校舎2階を蹴り、高速で大神の頭上に接近する影。



    大神「ぬっ!」


    瞬時に悟り、大神は体を捻り、軸足をずらす要領で、その一撃をかわす。



    大神「戦刃……むくろ!!」


    影の正体は戦刃むくろだった。



    厄介な相手が居た。腐川と十神を退け、そして疲弊した所を刈り取る役、僕はそう悟る。



    豚神「くっ!」


    銃を構えるも、俊敏に動く戦刃に照準が合わない。


    大神「戦刃ぁぁ!!」


    S字に蛇行しながらナイフを穿たんと、戦刃むくろは大神に接近していく。



    スキルブースターの恩恵は残っている。例え奴の戦闘能力が天性のものであれど、それは大神にも同じ事が言えるだろう。


    ましてや近接戦闘においては大神に分がある。



    ……しかし。



    大神「ぐっ!」


    穿たれたナイフを片手で捌く。しかし、その動きはぎこちない。


    本物の十神に撃たれた傷が痛むのだろう。


    大神は手負いだ、戦刃のバイタルも完治ではないものの、大幅に回復している。


    これでは駄目だ。大神が敗れてしまう。



    豚神「ちっ!」


    残弾が少ない。下手に弾幕を張れない。僕には見物する事しかできないのか……



    豚神「……」


    先程の爆破地点を覗く。


    もしかしたら、腐川の持ち物に何か使えるものが……



    戦刃は大神が抑えてくれている、僕はその隙に爆破地点へと走った。


    ……腐川の遺体は形容し難い。正直、あまり見たくはない。


    だが、そこにハサミに紛れて何かがある……



    豚神「銃だ……」


    そこには少し大きい拳銃(タウルス・ジャッジ)があった。





  425. 430 : : 2015/06/16(火) 17:28:12


    ────────


    苗木 「……!!」



    日向「……!」


    苗木の一声で、静まり返ったこの場所に、銃声だけが響き渡る。


    止めろ、苗木。何を考えているんだ。



    狛枝「……」


    銃弾が狛枝に当たることはない。


    わざと外しているのか、それとも狛枝が何かの才能でそうさせているのか。


    ……止めろ、苗木。



    日向「止めろ!!」


    声が出る。


    苗木「!」


    俺は、自身の手にスキルブースターを握り、集中し、俺の『無能』を苗木に向けた。



    舞園「あっ……喋れ……る?」


    七海「日向くん……」


    苗木「……」


    日向「苗木、止めろ。落ち着け……お前、今どうかしてたぞ?」


    苗木「……ご、ごめん、ボクは……」


    苗木をずっと見てきたが、コイツはこんなことをするような奴じゃない。


    皆、何かしらおかしくなってきている。


    狛枝「おや、日向クン……止めちゃうのかい?」


    日向「狛枝、殺しあわなければならない理由はなんだ?」


    こんな時だからこそ、冷静にならなければならない。



    狛枝「……彼女が言う、というより、彼女の辿り着いた『答え』がコレだからさ」


    日向「だから、その『答え』ってのはなんなんだ?」










    狛枝「『黒幕は殺し合いを望んでいない、黒幕の目的は可逆の世界、繰り返す日常』だからさ」



    日向「どういうことだ……!」





    黒幕が殺し合いを望んでいない? じゃあ何故、こんな事になっているんだ?
    狛枝の言っていることが解らない。


    狛枝「解らないかい?」


    日向「わかるわけ無いだろ……第一、黒幕の操るモノクマがコロシアイを望んでいるのに……矛盾しているだろ!」


    狛枝「違うんだよ日向クン、そこが盲点なんだ」



    日向「ど、どういう……」


    狛枝は何を言ってる?





  426. 431 : : 2015/06/19(金) 19:38:39



    狛枝「『モノクマは黒幕が操ってる人形』と決めつける事、それがそもそもの間違いなんだ」



    桑田「お、おい、まて、何を……」


    澪田「どういう……ことっすか?」




    狛枝「『ボクらを殺し合わせようとしている黒幕』と『ボクらを生かし続けようとしている黒幕』がいる」


    何だ? 何を言っているんだ?


    狛枝は何を知っている?




    狛枝「コロシアイを止めることが必ずしも『生還』するということには結びつかない。そしてモノクマも『規定の日まで勝負がつかなければ全員死ぬ』と言ったけど『勝った方を生還させる』とは言っていない」



    そう、七海の日記にもあった通り……勝利したかどうか不明瞭ではあるが、最後まで生き残っても皆自殺するということはわかっている。




    狛枝「ボクはね日向クン、ボクが『何者なのか』気付いたんだ。繰り返すコロシアイを『自身の正体』に気付く事で、初めて、ボクらは真理へと近付く」





    狛枝「『ボクらはボクらじゃない、だからボクらが消える事でしかこのコロシアイは止まらない』……絶望繰り返す事が『誰か』の絶望であるなら、ボクは『誰か』の希望になりたい」



    日向「『オレ達がオレ達じゃない』……?」


    狛枝が、ゆっくりと左腕の袖を捲り、江ノ島の左腕を俺達へと見せつけた。



    狛枝「彼女の因子を取り込むことで、ボクは彼女の才能とは別に彼女の『視覚』を得た。この『第三者の視点』に写る『彼と彼女』を見て、ボクは少しずつ思い出したんだ」



    日向「……彼と、彼女?」


    狛枝「1人は『カムクライズル』そして、もう1人」


    そしてもう1人。










    狛枝「霧切さんがそこにいる」



  427. 432 : : 2015/06/19(金) 22:47:14
    な、なんだってーーー!!(マジ驚愕
  428. 433 : : 2015/06/25(木) 18:41:18


    ────────





    ここではない、どこかのモニター室。


    カムクラ「狛枝がお前に辿り着いた様だな」


    カムクライズル……いえ、日向創が私へと振り返り、そう言う。


    『あの霧切響子』ではない『霧切響子』である私を認識したのは、シロクマとクロクマ、そしてそこの日向創と江ノ島盾子位だった。


    霧切「そのようね……」


    狛枝凪斗は江ノ島盾子の視覚を得たことにより、二重に存在する私を目視した、そして悟ったのだろう。



    カムクラ「『アバターの同化』によって個体(キャラクター)は『視覚の共有化』を得る……江ノ島、お前、ここまで読んでいたのか?」


    江ノ島「まあね。小泉のスキルブースター……バグの応用よ、アタシの左腕にはアタシのバイタル……『容量』が残っている。もっとも、狛枝が常時バグ化するとは流石に思わなかったけどね」


    カムクラ「江ノ島の『分析する才能』が恐らく、破損したんじゃなく、狛枝自身に根付いたんだろう」



    日向創の『容量』より作られた『スキルブースター』は、対象の解析をするために、データの『破損』を行い、解析中、システムに縛られない才能を、個体が発揮できる。


    日向創が、この『裏側』で、そういう風にシステムを改竄したのだ。


    江ノ島盾子の『分析』という才能が、狛枝凪斗に定着し、彼が常に『解析され続けている状態』になったことにより、ああして、ずっとスキルブースターの恩恵化にあるのだろう。


    江ノ島「『偶然』は流石の私様でも予測は出来ないよ。そういう意味じゃ、やっぱり『幸運』ってのは私様の天敵だわな」


    霧切「……そうね」


    カムクラ「そういや、もう1人のお前、撃たれたな」


    霧切「ええ……しかし、厄介ね」


    江ノ島「まったく、お姉ちゃんも爪が甘いわ。『敵を倒す』思考で固定化したのはいいけど、殺す事が出来ないんじゃなぁ」


    カムクラ「お前も爪が甘いんじゃないのか?」


    江ノ島「アレ以上にお姉ちゃんの殺意を増長させるのは無理ぃ、まあそれでも、中々のロジックにはなったでしょ?」


    霧切「ええ、ここで観ることしか出来ない私には何も言えないわ」



    まあでも、しかしだ。





    霧切「確かに、殺してくれれば事は円滑だったでしょうね」




    私自身が、私の最大の障害、『アレ』は本当ならば早々に退場させた方がいいのだろう。



  429. 434 : : 2015/06/28(日) 00:19:47

    ────────



    大神「ぐっ!!」


    戦刃「……」


    お互いに譲らない戦いかと思いきや、徐々にだが戦刃が圧してきている。


    豚神「くっ……!」


    十神の名前を借りる、名前の無い僕は、腐川が持っていたらしき拳銃を戦刃に向ける。


    ……しかし、まて、この拳銃、異様にリボルバー部分が長い。ひょっとして特殊な弾を用いてるのではないだろうか?


    豚神「……これは」


    リボルバーを覗く、円筒型の弾が収まっている。

    普通の拳銃の弾は先が丸い、しかしこれは平らだ。


    ……拳銃の弾は残り4発。



    引き金を地面に向けて引く。


    豚神「……!」


    発砲音と地面に複数の穴を穿った。


    これは恐らく散弾の類い。つまりはショットガンの様な拳銃なのか。


    戦刃「……!」


    大神「……!」


    今の1発で、戦刃がこちらに一瞬注視した。


    大神「がっ!!」


    その一瞬で大神の巨体を、意図も容易く蹴り飛ばし、僕へと標的を移す。


    ゆっくりと、


    大神「ぐっ……に、逃げよ、十神……!」


    ♡32
    ★50


    どうする?


    手負いとは言え、大神を圧したあの女を……どうすれば?







    豚神「……」


    ♡100
    ★68



    ポケットにはスキルブースター、僕に出来るのは『変身』……戦いに特化しているわけでない。



    豚神「……」


    近接し、一瞬の隙を作る事が出来るか……?




    思い出せ、奴の弱点……誰かが言ってた筈だ。


    ほんの一瞬だけでいい。


    『動揺』をさせる事が出来れば。



    僕はスキルブースターを握り、浸透させていく。




    戦刃の速度が上がり、右手に握ったナイフで僕を刺し殺しにやって来る。



    狙いはその一瞬。




    距離にして刃先が届く僅か数十センチの間合い。



    豚神「……お」







    戦刃「ごめん……ね」
















    江ノ島(豚神)「お姉ちゃん」






    戦刃「!!」







    戦刃むくろは江ノ島盾子の死を目の当たりにしたことによって絶望化した。


    そう、誰かが『江ノ島盾子は戦刃むくろの肉親』と言った。


    戦刃むくろの弱点、それは江ノ島盾子に他ならない。



    戦刃「あっ……」



    引き金を引く。


    散弾が戦刃むくろを貫きつつ、その体を吹っ飛ばした。






  430. 435 : : 2015/06/28(日) 18:22:12





    豚神「……はっ、はっ……!」


    江ノ島盾子の姿から、僕自身の姿へと戻る。


    戦刃むくろは動かない。




    俺は、戦刃むくろを殺した。


    俺が、戦刃むくろを死なせた。


    豚神「……お、大神、無事か?」


    戦刃むくろの遺体を背に、大神へと近付く。


    大神「あ……ああ、大丈夫だ」


    大神に手を貸す。


    大神「すまぬ……助かる」


    豚神「いや、こちらも幾度も助けてもらった……礼を言いたいのはこっちだ」


    大神「気にするな……」


    ♡30
    ★50


    大神の怪我が酷い。スキルブースターの恩恵も切れているだろう。早く保健室へ連れていかないと。












    と、







    大神「……十神!!」



    大神が僕を突き飛ばす。


    瞬間、大神の胸部を燈色の閃光が走った。





    大神「がっ……!!」


    ♡7
    ★88



    豚神「……お、おおが……み?」



    燈色の閃光、それは弾道。



    大神を射抜いたモノ、それは、






    豚神「い、戦刃……」




    戦刃「あ……え……」


    ♡8
    ★100





    悟ったのだ。





    何故、戦刃は『回復』していたのか?

    答えは、狛枝が『戦刃にもバイタルを分け与えて』いたんだ。



    そう、本物の十神や腐川と同じ、アイツもまた彷徨く死者。


    胸に風穴を空けてもなお、立ち上がる。



    豚神「……は」



    ♡100
    ★97


    大神「に……げ……」








    大神「……」


    ♡0
    ★0



    僕なんかより、お前が生きるべきだっただろう。



    何もない僕なんかより、皆を守れるお前が生きるべきだった。



    豚神「……戦刃」


    ♡100
    ★100



    いいだろう。コロシアイを認めてやる。



    敵を皆殺しにすれば味方が生き残る、それが最少の被害というならば。









    然らば死ね。







  431. 436 : : 2015/06/30(火) 00:06:15

    ────────


    Now loading……


    ────────



    Tips.


    思考実験『箱』第五十四号・最終日



    ジャバウォック島、第5の島にある軍事基地。


    ボクはまだ生きていた。


    こんな絶望的な事があってたまるか。
    こんな希望の欠片もない事があってたまるか。


    そんなのボクが認めない。



    装甲車の影に踞り、目を押さえていた。





    「あっが……ぐぅ……!」


    彼女の『右目』が焼き付く。

    熱した鉄板で目玉を押さえ付けられているかのように。


    ボクのはこれじゃない。
    ボクのはこれじゃない。
    ボクのはこれじゃない。


    失敗だ。これはそう、きっと失敗。


    ホンモノは目じゃなかった(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)





    足音がする。




    「……狛、枝……くん?」


    「!!」


    駄目だ、彼女は敵だ。


    駄目だ、彼女は⬛⬛だ。



    「こまえ……あぐっ!?」



    絞める。


    彼女の細く華奢な首を。


    「あ……かはっ……!」


    「う………」


    「……」

    そう、今回は『失敗』だ。


    ここまで辿り着けたのに、大事な『始まり』はとっくに死んでて『主演』(メインキャスト)は敵同士。


    今回は失敗だ。


    さっさと、終わらせて次だ。


    ボクらはそうやって、何度も、何度も何度も絶望に堕ちて繰り返した。




    そうやって、殺して殺されて、死んで死なされて、傷つけ傷つけられ、何度も……何度も何度も!


    あの女(江ノ島盾子)』の言う通りにした。
    彼女は『システムの裏側』へと言った。

    ボクは江ノ島盾子の因子でコロシアイを続けた。



    それでも、失敗した。




    ああ、クソ、こんな絶望が許されるものか。


    ボクは希望を諦めない。


    『彼』の様に、ボクの様に。




    ぐったりとした彼女に、祈るように謝った。


    そして願わくば、ボクに持ち得た才能が本当に『幸運』ならば、どうか次回は。
















    「毎回毎回邪魔なんだよねぇ、キミさぁ……!!」












    項垂れたボクの胸を貫く槍。



    ああ、そうだ、『彼』は……



    槍は1本だけじゃなく、無数にボクを貫いていく。



    ボクの体は易々と掲げられ、それはまるで串刺公(ヴラド・ツェペシ)の処刑のよう。










    やがて、血に染まり、死に彩られる。



    これで……今回は終わり。




    ────────


    Now loading……



    ────────
  432. 437 : : 2015/07/16(木) 16:58:53

    ────────





    日向「霧切が……?」


    その時、銃声が聞こえた。先程の門付近でなく、校庭の方からだ。


    苗木「じゅ……銃声?」


    狛枝「おや……コロシアイに充実してるね」


    何が正しいのか、狛枝の言うようにコロシアイを継続させた方がいいのか?


    しかし……狛枝が言っていた『ボクらにとっての現実』に『もう1人の霧切』……頭に引っかかる。

    狛枝「話を戻そう……霧切さんが見える……『裏側』にも彼女がいる。これの意味する所、今下に居る彼女は何者なのかな」


    苗木「何を言ってるんだよ狛枝クン……! 彼女は間違いなく本物だよ!」


    苗木が狛枝へと突っ掛かっていく。俺は霧切に関してそれほど知らない。しかし、同期生の苗木がそう言うのならば、間違いないのだろう。
    苗木は嘘をつけるタイプではない。第一、この場で嘘をついて何になる。


    狛枝「……まあ霧切さんが2人居ようが、3人居ようがそれはさして問題じゃない。ここは現実ではないのだからね」


    日向「……?」


    狛枝の言葉の矛盾、さっきと言っていたことと矛盾している?


    日向「まて、お前さっき……ここは『現実』っていってなかったか?」


    狛枝「それは『ボクら』にとってだよ、他は違う」


    日向「……?」


    狛枝「それは自分で考えるんだね、ボクだってこんな回りくどい言い方しか出来ないのが歯痒いんだからさ」


    どういうことなのか……狛枝は何を、どこまで知っている。


    狛枝「……この世界には『禁句(タブー)』がある。それを口にすることは出来ない……というより、言おうとしても言えない……現す『言葉』がすっぽぬけてるから……というより、これは『黒幕』の『安全装置』ってところかな」


    狛枝はそういうと鉄柵に登り、屋上の縁に立った。


    狛枝「夜に北の校舎においで、日向クン。そこで……キミに『託す』よ」


    日向「狛枝! まて!!」


    そう言い残し、狛枝は屋上を飛び、恐らくは終里のスキルブースターであっただろう強靭な脚力でビルを飛び移って行く。


    夜に北の校舎……そこで何を……


    何を『託す』んだ……?

  433. 438 : : 2015/07/16(木) 23:20:20
    面白いです!
    期待!
  434. 439 : : 2015/07/17(金) 02:00:34
    ぎゃあああああ、まだ完結してなかったーーー

    めっちゃきになるーー
  435. 440 : : 2015/07/17(金) 18:01:57
    >>438
    ありがとうございます(ง ˙ω˙)ว 
    >>439
    遅筆で申し訳ないです(´;ω;`)
    がんばって完結させますので長く生温く見ていてください。ありがとうございます(ง ˙ω˙)ว 
  436. 441 : : 2015/07/17(金) 23:13:16

    ────────



    弐大「ど、どうしたんじゃ」


    先程出ていった3人が直ぐ様に戻ってくる。
    山田に抱えられ、ぐったりとした霧切を連れて。


    弐大「き、霧切! まさか、殺られたんか……!」


    山田「つ、罪木蜜柑殿のおかげでまだ一命はありますぞ。しかし……」


    予断は許されないといったところじゃろうか、罪木のスキルブースターは直ぐ様塞ぐが、血液や体力まで戻すわけではない。


    輸血といった処置が必要じゃろう。


    小泉「響子ちゃん……!」


    霧切「……う」


    ベッドへと寝かせ、点滴の準備をする。


    弐大「……まさか、霧切が」


    霧切が重傷を負った……とすると。


    弐大「……石丸、十神、大神はどうしたんじゃ」


    姿の見えない3人が心配になった。


    山田「い、石丸清多夏殿は……既に」


    弐大「殺られたんか……」


    殺し合いは止まらず、また1人、また1人と死んでいく。


    小泉「アタシ……もう耐えられない」


    そう、ここが仮想の世界だとしても、誰かを失う喪失感も、痛みも、何もかもがあまりにもリアル過ぎる。


    仮想だと思おうとしても、そうと思えない現実味がある。


    ……ひょっとしたら、ワシらは『そういう風に作られた』のではないかと、思ってしまう程に。




    疼く傷の痛みを抑え、ワシは立ち上がった。



    小泉「に、弐大?」


    弐大「十神らを助けに行く」


    罪木「そ、その体じゃ……!」


    弐大「お前さんには何度も何度も怪我を治してもらって感謝しとる、罪木、本当ならワシはとっくに死んどるじゃろう…」


    そう、ワシはここまで生き残れた。


    ……もう十分じゃろう。


    皆死んでいくのなら、ワシは……



    せめて、誰かを救って死にたい。



  437. 442 : : 2015/07/17(金) 23:24:06


    ────────



    戦刃「あ、あ………!」



    戦刃「あぁあああああああああ!!!」


    絶叫を上げ、戦刃が、十神白夜の名を借りる名の無い僕へと飛び掛かり、襲い来る。


    胸にぽっかりと空いた穴は、まるで"人でなし"だ。

    鮮血を振り撒きながら、僕を襲い狂う姿はまるで"人でなし"だ。



    『人じゃない』んだ。


    手にした散弾拳銃(タウルスジャッジ)の残弾は2発、奴のスキルブースターは恐らく切れている……が、それでも運動性能は僕を上回っている。


    ……絶望化、なってみて解ったが『大したことじゃない』。


    これは『思考の鈍化』ではなく『理性の反転』なのだろう。


    きっと誰しもが『相手チームの殺害』を考えている。


    単純に『理性』が邪魔して『行動』が『殺人』に結び付かないだけだ。


    なるほど、戻るわけがない。


    絶望化した瞬間、その抑制のタガが外れて『自己の目的の為ならどのような手段も問わなくなる』。


    それが絶望化、罪木はバイタルの数字はいい加減と言っていた、ならば絶望チェッカーもいい加減なのだろう。


    戦刃は『標的の抹殺』、江ノ島の死を切っ掛けとしたが、その実、奴はもともと『最悪、相手チームを殺す事』も視野に入れてきた筈だ。


    しかし、聴いたところによると奴は殺し屋といった類いではなく、軍人だ。相手の生死に拘りはないのだろう。


    『戦闘続行』という点にのみ注視している節がある、つまりは、詰めが甘い。


    肉親に対して甘過ぎる。


    そう、戦刃にとって心理面を突く『詐欺師である僕こそが天敵に他ならない』。




    豚神「……」


    1歩下がり、銃を向ける。


    それに反応し、戦刃はとっさに空中で体を捻り、ナイフではなく、銃を向ける。


    しかし、優れた射撃技術を持っていも……



    江ノ島(豚神)「お姉ちゃん」



    戦刃「……!!」



    先程と同様、戦刃は引き金を引くのを躊躇った。


    それが例えコンマの躊躇いであっても、そこに僕が先制して引き金を引く。


    戦刃「がっ……!」


    至近距離で左腕を撃ち抜き、戦刃の腕は千切れて落ちた。



    戦刃「あっ……かっ……!」


    豚神「どうした」


    無様に転げ落ちた戦刃を見下す。


    戦刃の落ちた左手に握られていた拳銃を拾い上げ、それを向けた。


    戦刃「ぐっ……!」


    直線的な攻撃を繰り返すのは、己の速さに絶対の自信があるということ。

    故に、搦め手を絡めて殺る。


    人を殺すのに要るのはなにも絶対的な強さだけではない。


    何をしても殺すという狡猾さだ。


    大神の遺品から既に決め手を『取ってある』。


    戦刃「あ、あ、ああああああ!!」


    獣の様な咆哮に、流れ落ちる血をたぎらせ、(くゆ)らせ、それでもまだ、あの"人でなし"は僕を殺さんと立ち上がる。



    豚神「………」



    戦刃「盾……子ちゃ……ん……!」


    もういい、もう眠れ戦刃。



    散弾拳銃(タウルスジャッジ)の残りの弾を戦刃の右手に撃つ。


    戦刃「あっ……が……!」


    戦刃の右手も千切れて落ちた。致命傷に至る筈なのに、それでもなお、その千切れた右手に握られていたナイフを、今度は口にくわえて此方を睨む。





    しかし、二度も僕を殺し損ねたのがお前の敗因だ、戦刃。






    お前は心が弱すぎた。心を殺し、敵を殺してきた軍人も、肉親の姿形に惑わされる様では未熟もいい所だ。



    跳び跳ね、僕の喉を掻き切らんとくわえたナイフを向ける。


    だが、僕の足下には大神の遺品がある。


    その一撃を後方に引いて避け、戦刃はちょうどその真上。










    豚神「じゃあな」








    手にした拳銃で予め垂直に立てておいた大神の『拳雷(ブラス・クレイモア)』の雷管を撃つ。



    戦刃「………!!」




    爆発と共に、垂直に数百に及ぶ鉄片が拡がり……



    戦刃の体を四散させた。







  438. 443 : : 2015/07/18(土) 21:04:35
    自分みたいなクズに反応してくれる1がいると聞いて

    遂に残姉が堕ちたか、
    始めは苗木サイドのエースだったのに…
  439. 444 : : 2015/07/18(土) 23:23:51
    >>443
    反応出来る限り致します(ง ˙ω˙)ว 

    ぼちぼち時間掛かりすぎたんで、駆け足気味です…φ(:3」∠)_
  440. 445 : : 2015/07/21(火) 10:03:13
    やっと追い付きました(遅い)
    豚神さんが序盤で死なないなんて…!
    頑張って下さい!
  441. 446 : : 2015/07/22(水) 01:26:56
    >>445
    ありがとうございます!
    ( ∩՞ټ՞∩
  442. 447 : : 2015/07/26(日) 16:23:35


    ────────



    日向「また爆発だ……!」



    俺、日向創は困惑する。何を信じていいのか、何を疑うべきなのか。



    桑田「お、おい、とにかく下に行ってみようぜ」


    日向「……そ、そうだな」


    狛枝が去った今、ここにいても仕方ない。下の連中が心配だ。


    七海「急ごう? 日向くん」


    日向「あ、ああ……」


    苗木「……」


    舞園「……?どうかしました?苗木君」


    苗木「……あ、ああ、うん、ちょっとボンヤリしてて……急ごう」


    苗木らと俺達は下の階へと向かう。




    ────────



    弐大「……」


    保健室を抜けて、校庭へと出た。そこにただ一人立っていたのは十神だけじゃった。


    ワシは畏怖した。

    奴の立つ位置の少し前方、何かが爆発した様な跡がある。

    そしてその更に手前側、そこに落ちておる。



    手の甲にある狼の刺青には見覚えがあった。



    戦刃の左腕。


    つまり、そこで爆発したモノは……



    豚神「弐大、もう動ける様だな、流石だ」


    ♡100
    ★100



    狂人、普通の様に振る舞うが、絶望チェッカーが導きだす数値は、絶望そのもの。


    この十神は、そう、とうとう『のった』のじゃろう。

    いや、元からその気配はあった。辺古山の一件の時からワシは感づいていたハズじゃ。


    救うならば、犠牲も厭わない、それがこの十神……いや、詐欺師の本性。







  443. 448 : : 2015/07/28(火) 00:55:57
    期待です!
  444. 449 : : 2015/07/29(水) 14:55:27
    >>448
    ありがどうございます(ง ˙ω˙)ว 
  445. 450 : : 2015/08/02(日) 04:59:59
    期待です
    石丸ぅぅーーーーーー
    うわぁぁぁーーーーーーー
  446. 451 : : 2015/08/06(木) 05:39:18
    期待
  447. 452 : : 2015/08/13(木) 01:00:54
    やっと追いついた…!
    武器の知識のみならず、細かな設定、そして描写に驚かされてばかりです!
    期待しかありません!
  448. 453 : : 2015/08/13(木) 12:38:53
    なんて丁寧なのでしょうか。。ここまで書けるのはししゃもんさんだけです。。。
    最後まで楽しみにしています!
  449. 454 : : 2015/08/24(月) 02:43:43
    >>450
    >>451
    >>452
    >>453
    ありがとうございます!

    そろそろ更新再開させます_(:3」∠)_
  450. 455 : : 2015/08/24(月) 23:54:01
    期待せざるを得ない
  451. 456 : : 2015/08/26(水) 03:46:04
    >>455
    ありがとうございます!
  452. 457 : : 2015/08/26(水) 03:48:47



    弐大「十神……お前さん」



    豚神「もう、わかっているな……そう、俺は『絶望化』した。戦刃や狛枝同様にな」



    そう、絶望化……あの星マークの数値が100を指し示した時、その者は『絶望化』する。
    戦刃も狛枝もそうじゃ。



    豚神「大した事じゃあない。ただ『敵を殺す事に躊躇がなくなるだけ』だ」



    弐大「……」


    それが『大事』だという事にすら気付かない、それが今の奴の揺らぎ。




    敵を殺す事に躊躇わなくなった事は、即ち殺す課程を楽しむ殺人鬼(シリアルキラー)となんら遜色がない。


    そう、ただのケダモノじゃ。理性も無い、ただの人殺しをする機械じゃ。



    弐大「……何をしようというんじゃ」



    事と次第によっては、ワシが止めねばならん。




    豚神「何を?……決まっている」












    豚神「まずは狛枝を討つ。粛清し、これ以上味方を殺させはしない……俺の存在をかけてもな」




    『十神』という借り物を棄て、己自身を以て狛枝を討つ……やはり、お前さんは……




    弐大「……わかった」




    ワシが、どこかで止めねばならんな。





    ────────






    ここではないモニター室、2人は相変わらずモニターを観るばかりだ。



    江ノ島「さて……あの豚さんが動き出したな」


    カムクラ「自分の姉が死んだ事には無関心なんだな」


    江ノ島「私のお姉ちゃんはとっくの昔に死んでるのよ……そうでしょ?」



    私へと振り返り、その質疑に私は首を縦に降った。



    ……戦刃むくろはとうの昔に果てた。



    カムクラ「……最後のファイル、か」


    江ノ島「そ、あれには全てが書かれている。それこそ、霧切の手帳や、不二咲アルターエゴ、七海千秋の日記なんて断片的なモノとはくらべられない程にね」


    カムクラ「……そして、あのファイルを持っている、いや、正確には『あのファイルの情報素子から構成された奴』が、よりにもよって『アイツ』なワケだ」



    江ノ島「元々はアイツが始めに持っていたモノだもん。そうでしょ?」


    カムクラ「ああ……そして、その為にアイツは『終わりを始めた』んだ……裏返して見れば、アイツが『かつてのあのコロシアイ』を終わりに導いた」



    最後のファイル、それは、この世界が構成される以前から存在した『絶望の始まり』から『絶望の終わり』までを『とある誰か』がまとめたスクラップ。



    誰かが死に、誰かが生き残り、誰がクロで、誰がかつての黒幕で、その全てを記した『絶望史』なのだ。




    霧切「……もう、『彼』に『彼』を殺されては駄目」



    ずっと『彼』に殺されたからこそ、『彼』のファイルは顕著しなかった。










    カムクラ「……そうだな、そして、『アイツ』を殺す奴こそ、この繰り返すウラガエシのコロシアイの黒幕」


    江ノ島「そして、『終わりの絶望』こそ、このコロシアイの元凶」





    全てはこの55回に及ぶコロシアイの果て、江ノ島の用意した『舞台』にて終わる。







    ────────


  453. 458 : : 2015/08/26(水) 20:26:35
    期待
  454. 459 : : 2015/08/26(水) 20:35:50
    >>458
    ありがとうございます!
  455. 460 : : 2015/08/26(水) 20:42:27

    ────────



    Now loading……



    ────────



    Tips.



    ⬛⬛ノ記憶(ダレカノログ)





    ⬛⬛の理論は良くわかんねえけど、スゲェと思った。


    新たに構築した学園生活のカリキュラムを繰り返し行い、各々の人格を固定化させ、それを肉体に定着し、意識不明となった皆を再び起こそうとするものだ。


    人格の基盤は全て、⬛⬛の記憶から再生させ、それに『⬛⬛のカケラ』を埋め込み、それを『命』とした。


    カケラのみならず、あらゆる素材を用いて皆のアバターを構築する。それこそ、もう必要のなくなった『とあるパスコード』や『あるファイル』何かをだ。



    ガキの頃に『百鬼夜行』ってのをどっかで聴いた覚えがある。



    付喪神(つくもがみ)っていう物に魂が宿った妖怪が、夜の町を練り歩くっていうアレだ。


    なんだかそんな感じだった。皆が物に宿って、学園生活をしているそのサマが。



    「取り敢えず、データベースに残ってる生徒も復元させよう」



    ⬛⬛の発言、恐らくは、より学園生活にリアリティを持たせるための提案だったんだろう。
    この学園生活で『皆は仮想の中で生きている事』を悟らせてはいけない。


    つまりは『後輩』を作るということだ。


    残っていたのは『78期生』のデータ、コイツらの人格は⬛⬛に言えば協力を惜しまないだろう。









    「……よし、例の『レジェーム装置』は出来たか?」





    「バッチリだ、メカニック舐めんなよ?」





    オレは、⬛⬛に頼まれて『ある装置』を作った。



    強心装置(レジェームカンフル)……もし、仮想の世界で死んだとしてもこれがパルスを感知して、蘇生措置を自動で行い『プログラム』を再起動させ、『死んだ事を無かった』事に出来る。



    ⬛⬛はこの『新世界プログラム』の欠点を意図も容易く看破して、対策したんだ。


    また皆と話してえ、また皆と遊びてえ。


    覚えちゃいないからこそ、また、そうしてえ。













    そんなオレの……『左右田和一』の、希望の為の第一歩。














    記憶(ログ)はここで終わっている。

  456. 461 : : 2015/08/27(木) 01:31:35



    ────────




    小泉「日向達……大丈夫かな」


    私、小泉真昼と蜜柑ちゃん、山田と……そしてベッドに眠る瀕死の響子ちゃん。




    保健室は重苦しい雰囲気だった。



    山田「……」


    ♡100
    ☆58



    罪木「あぅ……あぅ……」



    ♡100
    ☆38



    霧切「……」



    ♡16
    ☆89



    アタシだって参ってる。もうどうすればいいのかわからない。


    みんな死んでいく、みんな消えていく。




    もう、アタシは……



    罪木「と、とにかく日向さん達の方に行きませんかぁ?」



    蜜柑ちゃんが察してか、アタシと山田、交互に見つつ、手をバタバタと上下させてそう言った。



    小泉「……そうだね、うん」



    しかし、響子ちゃんは放っては置けない。となると、やはり、ここは同じチームであるアタシは残るべきだろう。



    小泉「蜜柑ちゃん、山田、日向達の方を見に行ってくれない?」



    罪木「ふぇえ?で、でもぉ……」



    小泉「アタシなら大丈夫、響子ちゃんの処置自体は終わってるんでしょ?」



    罪木「そ、そうですけど……」


    小泉「だったら大丈夫」



    アタシが大丈夫じゃないかもだけど、でも……



    罪木「……そ、そのぉ、わかりましたぁ」


    山田「では、小泉真昼殿、霧切響子殿を頼みますぞ……」



    2人は保健室より出ていく。



    残ったアタシは響子ちゃんの眠るベッドに突っ伏す。


    小泉「ゴメンね、響子ちゃん……少しだけ」








    ♡98
    ☆90





  457. 462 : : 2015/08/27(木) 22:39:37
    期待
  458. 463 : : 2015/08/27(木) 23:37:57
    >>462
    ありがとうございます!
  459. 464 : : 2015/08/28(金) 07:56:33
    期待です!
  460. 465 : : 2015/08/28(金) 18:33:59
    >>464

    ありがとうございます! (๑•̀ㅂ•́)و✧
  461. 466 : : 2015/09/04(金) 21:43:29
    期待
  462. 467 : : 2015/09/12(土) 16:08:22
    >>466
    ありがとうございます!
  463. 468 : : 2015/09/12(土) 16:08:47


    ────────



    苗木「日向クン、その……いくの?」



    日向「……ああ」


    階段を降りる最中に、苗木がそう訊ねた。


    俺は、日向創は決めなければならない。


    アイツが俺に何を『託す』のかは知らないが、それでも、俺は、俺達は知らなければならない。



    舞園「……! 罪木さん、山田君」


    罪木「み、皆さん、良かったですぅ」


    山田「やや、無事でありましたか!」


    階段を昇ってくる罪木と山田と鉢合わせになった。


    日向「2人とも、無事だったか!……他の奴は……」


    罪木「小泉さんは保健室に、弍大さんはその、私達のクラスの方の十神さんと大神さんの方に……そして、そ、その……」


    日向「どうした?罪木」


    言いにくそうに口ごもる罪木の代わりに、山田が口を開く。



    山田「……霧切響子殿は撃たれて重傷を負って保健室に、石丸清多夏殿は……既に………」


    日向「石丸が……!?」


    苗木「そ、そんな……!」


    桑田「おいブーデー!石丸が……殺られたって言うのか……!?」


    山田の胸ぐらを掴み、桑田が食って掛かる。


    山田「ブヒッ!……く、桑田怜恩殿……落ち着くんですぞ」


    舞園「桑田君!」


    澪田「やめるっすよ!怜恩ちゃん!」


    はっとし、桑田は山田の胸ぐらを放す。


    桑田「す、すまねぇ……」


    山田「……いえ、大丈夫ですぞ」


    再び重い空気となった。


    石丸が死んだ。


    また犠牲者が



    苗木「霧切さんは……大丈夫なの?」


    苗木が口を開き、罪木がそれに頷く。



    罪木「は、はい。処置そのものは終わっています ……今は安静状態にして輸血していますぅ」



    日向「そうか……とにかく、保健室に行こう」


    霧切は勿論、小泉も心配だ。


    ……というのも、アイツの絶望チェッカーの触れ幅が酷く揺らいでいたからだ。


    俺達は階段を降りきって、保健室の前に立つ。




  464. 469 : : 2015/09/20(日) 08:51:39
    期待
  465. 470 : : 2015/10/31(土) 22:49:52
    >>469
    ありがとうございます
  466. 471 : : 2015/10/31(土) 22:51:07



    日向「小泉、入るぞ」


    保健室から返事はない。


    罪木「……返事がないですねぇ」


    日向「とにかく、入ってみよう」


    がらり、と保健室の戸を開ける。


    日向「小泉……?」



    そこに居るはずの小泉が居なかった。



    罪木「あ、あれぇ?霧切さんも居ないですぅ……?」


    保健室はもぬけの殻だ。弐大や詐欺師の十神、大神も戻ってきてはいない。







    苗木「何処に行ったんだろう……?」




    皆、何処に……?





    ────────



    石丸の遺体を壁に寄せ、ワシら、弐大猫丸と詐欺師の十神は校舎へと入る。



    弐大「お前さん、狛枝を討つとして……どうするつもりじゃ?」



    豚神「アイツが常にスキルブースターの恩恵にあり、しかも同時に2つの才能を使えるとしてだ。しかし、アイツはもう1人だ。視界も1つだけだ。故に多角面を刺していく」


    弐大「しかしじゃなぁ……」


    豚神「しかしも何もない、どちらにせよ、アイツを克服出来なければ、俺達は死ぬだけだ」


    弐大「……うむ」


    死ぬのは、ワシらだけ。


    そう、これは結局の所、誰かが死ななければならない。


    元々、皆が助かる事なぞ出来はしなかった。


    仮想の世界、といっても何かが引っ掛かる。


    ワシの心はしどろもどろしながらも、詐欺師の十神の後に着いていく。



    保健室へと辿り着く。日向らはまだ居ないようじゃ。

  467. 472 : : 2015/10/31(土) 22:54:34



    豚神「入るぞ」


    弐大「まて、ワシから入る」


    罪木と山田が居るはずじゃ、今の十神はあちら側のチームである奴等に何をしでかすか解らぬ。







    ワシは扉を少し開き、中の様子を少しだけ確認した。



    そこには突っ伏した小泉と、ベッドに横たわる霧切が居るのみ、どうやら罪木と山田は日向らの所に行ったと見える。


    扉を開け、その音に気付いたのか小泉は顔を上げてこちらを振り返った。


    小泉「あっ……弐大と十神……無事だったんだね」


    弐大「罪木と山田の2人は上に行った見たいじゃな」


    小泉「う、うん……」


    ♡89
    ★90


    弐大「……」


    小泉の絶望チェッカーから高い数値が見てとれる。


    豚神「おい小泉、ここを出るぞ」


    小泉「は?あんた…何を言って……?」


    と言いかけて、小泉は口を塞ぐ。この詐欺師の絶望チェッカーの数値に気づいたようじゃ。



    豚神「お前はここに残るのか?いずれ狛枝にしろ、アイツ等にしろ、お前を殺しにくる」


    小泉「何を……狛枝はともかく。まさか、日向達が」

    弐大「小泉」


    ワシは小泉の言葉を遮り、それ以上は何も言わなかった。


    ……詐欺師である十神は今、狛枝の次に危ない。
  468. 473 : : 2015/10/31(土) 22:55:33



    小泉「……」


    ワシを少しだけ見て、詐欺師の十神に少しだけ頷いた。


    それでいい、今はコイツに従っていた方がいいじゃろう。



    小泉「でも、響子ちゃんが……」



    と、



    霧切「うっ……」



    小泉「響子ちゃん?」


    スキルブースターとはいえ、罪木の処置は完璧なものだったのだろう。


    血色を戻しつつ、霧切は目を覚ました。



    霧切「ここ、は」


    小泉「保健室だよ、響子ちゃん……大丈夫?」


    豚神「丁度良い、霧切、歩けるか?」


    霧切「……なんとか、大丈夫そう」


    ♡20
    ★89



    霧切からも絶望チェッカーから高い数値が出ている。



    霧切「私は……撃たれて……」


    小泉「うん……でも、もう大丈夫だから」


    霧切「……戦刃むくろは?」


    戦刃、やはり、霧切を撃ったのは戦刃なのじゃろうか。




    豚神「戦刃なら殺した」


    霧切「……貴方が?」


    豚神「そうだ。霧切、ここを出るぞ」


    霧切「ここを出て、どうするの?」



    豚神「狛枝を討つ……そして」


    そして、の後を詐欺師の十神は何も言わなかった。



    だが、恐らくは『日向らを、あちらのチームも皆殺す』のだろう。



    霧切「……」


    霧切ならば察する筈じゃ。だが、今の詐欺師の十神の絶望チェッカーの数値からも、察してくれるはずじゃ。



    霧切「……わかったわ、小泉さん、肩を貸してもらえる?」

    小泉の肩を貸してもらいながら霧切はベッドを降りる。傷が治ったとしても、失血によって力が入らないのだろう。



    豚神「いいか、江ノ島の騒動があったあのデパートにまず向かう。狛枝がバッタか何かのように飛んでいくのを見たが、恐らくは北の校舎に向かったのだろう」


    故に、あの校舎から近いデパートを陣取るらしい。


    豚神「急ぐぞ。奴等が降りてくる」



    ワシらはこうして、日向らの、南側の校舎を離れる。



    目指したのはあの、デパート。



  469. 474 : : 2015/10/31(土) 22:56:51



    ────────




    日向「……何処へ」


    小泉らが消えた。狛枝が何かをしたのか……いや、それは考えにくい。


    だとしたら、誰かが連れ出したのではないか。



    苗木「外に出てみよう。あの太った十神クンや、大神さんも戻ってないんでしょ?」


    山田「そうですな。大神さくら殿が戻ってきていませんぞ」



    日向「わかった、グランド側に行ってみよう。俺、苗木、桑田だけで行く。他の奴は食堂で待っててくれ」



    下の状況をまだ全て把握しているわけではない。静まり返ったとはいえ、何が居るのか解らない。


    舞園「気を付けて……!」


    澪田「ヤバイと思ったらすぐ戻ってくるっすよ!」


    俺と桑田と苗木はエントランスから別れ、学園の外に出る。






    桑田「石丸……」


    校舎を出て校門の内側の壁に石丸の遺体があった。

    俺達は近寄り、石丸の遺体の前へと立つ。


    壁に血が流れた跡がある。恐らくは背後から何かしらの攻撃をされ、絶命したのだろう。


    血色の無くなった石丸は、もう目を覚ますことはない。



    苗木「クソ……!石丸クン……」


    日向「……誰かが動かしたのか?」


    桑田「はぁ?なんでだ?」


    石丸が刺されたのは校門の外側だろう。外側に多量の血痕があるのが見える、そして襲撃者である本物の十神の遺体は無かった、いや、あの屋上から見ていた落雷が十神に落ちたのか?それは解らないが……とにかく見当たらなかった。


    石丸の遺体は山田らの誰かが動かしたのかもしれない。

    どうでもいいことなのかもしれないが、少しだけ引っ掛かった。



    日向「……いや、いい。グランド側へ向かおう」



    苗木「うん……」


    俺達は石丸の遺体から離れてグランド側へと差し掛かる。


    桑田「戦った後か……?」


    グランド側へと向かう途中に窓が割れていたり、酷い出血の跡がある。


    日向「……校門の外側の血痕が石丸のものだとしたら、これは恐らく、霧切が撃たれた跡だな……」


    苗木「霧切さん……」


    その霧切も何処かへと消えてしまった、これだけの出血だ、罪木に治してもらったとしても、歩けるような状態では無かっただろう。



    そして、グランド側へと差し掛かった。



    目についたのが2つの爆発の様な跡、そして、



    ピクリとも動かない、見覚えのある巨体が横たわっていた。


  470. 475 : : 2015/10/31(土) 22:58:02


    苗木「大神、さん……?」


    桑田「は?……おい!」


    ダッ、と苗木と桑田がその大神と呼んだ遺体へと走り出す。


    日向「大神が、殺された?」



    苗木「そんな……!」


    桑田「オーガが……?は?マジで……?何なんだよ……!」



    大神のバイタルは0を示している。間違いなく、大神は死んでいた。


    胸に穿たれた小さな穴から止めどなく血を流したような跡、これが恐らくは死に直結したのだろう。





    拳銃(あんなもの)で、屈強な彼女は呆気なく殺られた。


    苗木「なんで……なんでなんだよ……!なんで皆殺すんだ……!なんで……!!」


    桑田「クソ、クソ……!!」


    日向「……」


    俺は大神の遺体へと向かった2人とは別に、爆発の跡らしきモノへと向かう。


    日向「……?」


    爆発の跡、屋上で確かに聞いた爆発音はこれのものだろう。


    何が爆発したのかは解らないが、桑田と同じく、爆発物を持っていた人物がいるという事。それは大神かもしれないし、別の誰かかもしれない。


    1つにはひしゃげているがハサミらしきものが見える……所々に赤い斑点の様なモノが見受けられるが、これについてはあまり考えたくないが……おそらく、その赤い斑点……いや、肉片はそのハサミを扱う人物だったのだろう。


    ハサミを扱うのは襲撃者である腐川。つまり、これは腐川が殺られた跡。


    そしてもう1つの爆発跡、これにはしっかりと『彼女の跡』があった。



    日向「戦刃、なのか?」


    残っていた手にあったのは狼のタトゥー。


    これも見覚えがある、ここで殺られたのは戦刃むくろ、なのだろう。



    苗木「戦刃さんまで……!?」


    桑田「嘘だろ……!?おい、嘘だろ……!?」


    日向「とにかく、食堂に戻ろう。山田達の話も交えながらまとめよう」



    俺達は他に何もないかを確認した後、グランドを離れた。


    少なくとも、5人死んだ。



    もう、生きている人間の方が少なくなってしまった。


  471. 476 : : 2015/10/31(土) 22:59:50




    ────────



    Now loading……



    ────────



    Tips.



    ⬛⬛⬛の記憶(ダレカノログ)






    ⬛⬛⬛「じゃあ、GMは交代に?」


    ⬛⬛「ああ、まあそんな難しいモノじゃないよ。恐らくは無いだろうけど、バグを発見したら消してくれ。GM権現における才能(ユニークスキル)が付属されてるし、万一の事があっても⬛⬛⬛が作ってくれた強心装置もあるから、安全に『あっち側』に行ける筈だ」


    ⬛⬛⬛「わかりました!合点承知ノスケです!」



    わたくしにはこのGMという作業は息抜きにも感じました。恐らくは⬛⬛さんの皆さんに対する気遣いでしょう。



    GMといってもこれは『学園生活をただ過ごすだけの』……ただそれだけの作業。


    少しだけ、幸せだった頃の夢を見るだけ。


    内部でのサポートは⬛⬛さんがやってくれますし、わたくし達……いえ、GMはただ、あの何の変哲も無かった学園での生活をただ過ごすだけ。


    ほんの少しのバケーション。



    ⬛⬛「そういえば、来週に⬛⬛が来るらしい」


    ⬛⬛⬛「あら、そうなんですか?是非彼女にもこのシュミレーター体験させないとですね!」


    ⬛⬛「ああ、そうだな」


    ⬛⬛さんはそういってニッコリと笑うんです。










    わたくし、ソニア・ネヴァーマインドは⬛⬛さんに代わり、1日だけGM(ゲームマスター)として、この新世界プログラム改め、『箱』へと入っていく。










    ……記憶(ログ)はここで終わっている。





    ────────



    Now loading……




    ────────

  472. 477 : : 2015/10/31(土) 23:48:15
    続き待ってました~!!(*≧∀≦*)
  473. 478 : : 2015/11/12(木) 10:27:14
    こんな…面白い作品があったとは…
    これは…期待だ……
  474. 479 : : 2016/01/26(火) 19:44:53
    >>477
    >>478
    ありがとうございます。
  475. 480 : : 2016/01/26(火) 19:47:14


    ────────



    時刻はそろそろ昼に差し掛かる。

    食堂に集まったのは……大分少なくなってしまった南側のメンバーだけだ。


    北側のメンバーは何処かへと行ってしまった。


    俺達、日向創と生き残ったメンバーはこれからの話をしなければならない。


    皆もう疲弊しきっている。繰り返すコロシアイと、死んでいく友人。


    精神は摩耗し、殺される恐怖に耐え、殺さなければいけないそんな状況に俺達は疲れきっていた。



    日向「夜に俺は北側の校舎に向かう……」


    苗木「うん……でも、1人でいくの?」


    日向「そのつもりだ」



    狛枝は俺に対してだけ示唆した。ならば、俺だけが向かうのが筋だ。


    ……というより、他の人間を連れていって何をされるか分かったものではない。


    ならば、なるべく刺激はせず俺だけの方が反って何も起こらないだろう。



    七海「北側のメンバー……小泉さん達どこにいったのかな?」


    桑田「そうだ、そっちはどうすんだ?」


    日向「……」


    それに関して、少し嫌な予感がしている。大神、石丸が亡くなった今、居なくなった詐欺師の十神、霧切、小泉、弐大は何処へいってしまったのか。



    澪田「そっす、伊吹が真昼ちゃん達を捜すっすよ!」


    罪木「あ、あのう、なら私も澪田さんに着いていきますぅ……」



    日向「まて、待つんだ……」


    嫌な予感がするのは、狛枝ではなく、むしろ詐欺師の十神らだ。


    何故彼等は居なくなった?


    何が起こった?
  476. 481 : : 2016/01/26(火) 19:49:18



    日向「例えば、例えばだ……」


    絶望チェッカーの数値が誰か1人でも100になってたと仮定する。
    弐大は恐らくあり得ないだろうが、その仮定から弐大の行動をトレースする。


    今の俺と狛枝の様に、とにかく刺激を与えないように尽くすだろう。


    『絶望化』というものは厄介で、高くなればなるほど『殺人衝動』にかられるのでは?と、錯覚しがちだが、実の所、そうではないんじゃないか?


    そう、現に狛枝がそうだ。



    日向「消えた面子の誰かが『絶望化』したとしたら、どうする?」


    苗木「有り得ない、ことじゃないよね……だとしたら」


    日向「最悪、またコロシアイが始まるだろう。今は狛枝だ、アイツは何かを掴んでいる素振りだった。それから消えた奴等を探そう」


    狛枝がこの最悪のゲームの脱出の糸口を掴んでいるとしたら、そうすれば、もう無駄な争いはしなくていい。



    黒幕を叩くだけだ。


    時間は刻々と刻まれていく。


    残る時間も、何もかも少なくなった。

  477. 482 : : 2016/01/26(火) 19:51:52


    ────────





    豚神「着いたな」



    北西部のデパート、既に遺体は消失したが、ここは何人もの血が流れ、失われた場所。


    私、霧切響子と小泉さん、弐大君、そして太った十神君は1階の吹き抜けの中央に居た。



    ……もう、これだけ。私達のチームはたったこれだけになってしまった。



    私の中の不安をポーカーフェイスで隠すも、絶望チェッカーを通せば筒抜けだろう。


    私は絶望しかけている。私の命は諦めるしかないのか?


    真相を彼等に……苗木君や日向君らに託すしかないのか?



    仮想の世界というが、私にはどうしても『そう』思えないのだ。


    何がそう感じさせているのか解らない。何かが私の中で警鐘を鳴らす。


    それがなんなのかすら解らない。



    小泉「大丈夫?……響子ちゃん」


    霧切「え、ええ……私は大丈夫」


    血を多く無くしたのも相まって、目眩と頭痛が止まない。

    ふらつく脚を堪えてなんとか小泉さんの肩を借りながら立つ。



    豚神「……さて、狛枝を討つには色々と考えが必要だな。霧切、奴をどう見る?」


    小泉「ちょっと十神、響子ちゃんの体の事考えてあげてよ。本当なら立ってるのだって……」


    霧切「大丈夫、小泉さん、ありがとう……狛枝君は江ノ島さんを継いだ……というのはつまり、彼女の才能(スキル)の一切を引き継いだ……という事よね?彼女の才能は『別の誰かのスキルブースターをコピーして出力出来る』という最悪のものだった」


    弐大「確認したものでも桑田の『2度死ねる才能』と小泉の『バイタルをどんなものにも移せる才能』なんかがあるの」


    豚神「まだスキルブースターを使っていない奴の才能以外はほぼ持ち合わせているといってもいいだろう。その反則染みた才能に更に反則な『特性』があるな」


    小泉「同時にその覚えた才能を2つ使える……っぽい」


    豚神「そうだ、アレはもう別格の何かだ……だが、全知全能というわけではない。付け入る隙はある」

  478. 483 : : 2016/01/26(火) 19:55:07


    霧切「何かあるの……?」


    豚神「日向だ。アイツが狛枝を殺せる唯一の力だ」


    日向君のスキルブースター……それは、彼自身が皮肉った様に、彼に直面するモノの才能を無くすモノ。


    豚神「……だが日向のスキルブースターにも欠点がある」


    霧切「『発生の無効化』は出来るが『効果の無効化』までは……届かない」


    小泉「どういう事?」


    霧切「小泉さん、江ノ島さんは日向君にスキルブースターによって才能を無効化されていたのよね?なのに生きていた……」


    小泉「……あ、そっか。つまり……日向の才能はあくまで『使う事』だけを抑えるんだ」

    豚神「そうだ。発生して残ったモノは消すことが出来ない。それもスキルブースターの効果が消えても残り続けるものに限る」


    苗木君の『言葉で操る才能』は『残る物』にはならない。しかし、罪木さんの『スキルブースターで治した傷』や小泉さんの『分け与えたバイタル』は『残る物』だ。



    豚神「……日向を上手く誘導し、狛枝にぶつける」



    太った十神君はそういうって、すこしだけ口端を吊り上げた。


    霧切「どうするの?」


    豚神「狛枝と戦う『動機』を作ってやればいい。それだけだ」



    ……解っている、彼が何をしようとしているのか。彼の『才能』は、そういった事に特化している。『騙す』という、彼本来の詐欺師としての本領。


    豚神「『スキルブースター』も多くあるからな」




    弐大「……」



  479. 484 : : 2016/01/27(水) 20:42:04
    更新待ってました。
    これからも楽しみにしてます!
  480. 485 : : 2016/03/04(金) 23:51:59
    >>484
    有難うございます
  481. 486 : : 2016/03/04(金) 23:53:07

    ────────



    Now loading……



    ────────



    Tips.


    残骸(data cluster「No.78114」)









    ────────死んだ。



    わたしはだれだった?



    わたしは「鍵」だった。



    わたしはなんだった?










    わたしは始まりの絶望(sacrifice of the first sin)













    サイショノギセイシャ








    ────────


    Now loading……



    ────────

  482. 487 : : 2016/03/04(金) 23:54:25



    ────────



    ここではない、何処かのモニター室。



    カムクラ「さて」


    江ノ島「あの豚足ちゃん、どう動くかね」


    モニターを観ながら、カムクライズルの姿の『彼』と江ノ島盾子は言葉を交わす。


    カムクラ「何、簡単だろ」


    江ノ島「『十面相(シェイプシフター)』という『才能(バグ)』はホント便利だからね」



    カムクラ「そして『俺自身』は恐らく、ハマるだろうな」


    江ノ島「そうね。あんた、それなりに頭は良いけど単純だからね」


    カムクラ「うるせえな」


    霧切「……随分と仲が良いのね」


    カムクラ「今でも殺したいくらい憎いさ」


    江ノ島「今でも殺したいくらい好きだからね」

    似ているようで対極に居る2人は、私に振り向いて同時に答えた。





    さて、戦場の彼等はどうやって切り抜けるだろうか。




    ────────



  483. 488 : : 2016/03/05(土) 16:17:05
    最初に犠牲者っていうとソニアか?でも、今回の最初の犠牲者とは限らないし…結局誰だろう?

    とりあえず期待!!
  484. 489 : : 2016/03/05(土) 22:21:51
    >>488
    ヒントは「No.78114」です(^ω^`)有難うございます

    ぼちぼち速度上げていきます。
  485. 490 : : 2016/03/20(日) 05:15:39


    ────────




    十神白夜の名前を借りる僕は待っていた。


    そして時刻は夜、太陽などないこの世界では時間の意味なんて無いと思っていたが、生憎、時間制限があるので逐一気にしなければならない。


    向こうのチームに残っているのは、日向、七海、罪木、澪田、狛枝、苗木、舞園、桑田、山田……9人。


    それに対してこちらは僕、弍大、小泉、霧切……たった4人だ。


    圧倒的に不利、この半分以下という状況で、奴等をどう分断させ、各個を仕留めていくか。


    狛枝が今は非常にヤバい、これをどうにかして日向の才能をぶつけて封じたい。


    狛枝が現在居るのは北の校舎……さて。



    霧切「恐らく、彼等は狛枝君の元へ向かうでしょうね」


    霧切がそう告げる。昼に比べて大分血色も戻ってきた。罪木の才能……もし味方であったなら便利であったろうに、殺さなければならないのが残念だ。


    豚神「根拠は?」


    霧切「無いわ。でも、『事例(ケース)』はあるでしょう?」


    豚神「ふん……そうだな」


    そう、俺達が辺古山にそうした事例がある。


    確証はない。しかし、最も確率が高いだろう。


    豚神「北の校舎に近付いて張る。小泉、霧切はここにいろ。弍大、付いてこい」


    弍大「……わかった」



    ────────狩りをする。


  486. 491 : : 2016/03/20(日) 05:18:15

    ────────



    日向「行ってくる」


    約束の夜だ。俺、日向創は小銃(AK)を下げ、ここ、南の校舎のエントランスに立つ。


    苗木「日向クン、やっぱりボクらも行くよ」


    日向「ダメだ、アイツは俺と1人で会う。みんなを危険にさらしたくはない」


    少し怒声混じりにそう言うと、七海が悲しそうに「でも」と口を開き、


    七海「それは……日向くんが勘定に入ってないよ」


    日向「……」


    澪田「そうっすよ、創ちゃんがまるで……」


    日向「それでも、もう仲間が死んでいくのはうんざりなんだ」


    桑田「だから、七海ちゃんが言ってんのはそういうことじゃねえだろ」


    日向「は?どういうことだっていうんだ?」




    苛立ちを隠せない。




    山田「日向創殿、我々も仲間が亡くなっていくのはうんざりなんですぞ」


    日向「だから……!」



    舞園「だから、私達も同じなんです」


    解っている。
    コイツらが何を言いたいかなんて解っているはずだ。



    苗木「日向クン、キミがみんなを失いたくない様に、ボクらも日向クンを失いたくないんだ。なのに君の秤にはキミ自身が含まれていない」


    罪木「……日向さん、何も全てが日向さんのせいじゃないんですよ」


    分かってる、そんな事は。



    日向「……分かったよ、分かった。でも校舎までだ。校舎内からは俺1人で行く」


    苗木「よし、決まりだ」


    各々武器を持ち、北の校舎へと歩を進める。




    ────────
  487. 492 : : 2016/03/30(水) 00:48:10
    >>489なるほど!そうか分かったぞ!ってくらい誰か分かりました!本当よくできてますね!これからもししゃもんさんのペースでいいので頑張ってください!!
  488. 493 : : 2016/05/01(日) 01:05:28
    改めて読み返したけど本当におもしろい
    完結が楽しみ。最初と最後、片方の黒幕は予想したが、コロシアイの黒幕が分からない
  489. 494 : : 2016/05/03(火) 23:17:18
    >>492
    >>493
    有難うございます!どうか長い目で見ていてください
  490. 495 : : 2016/05/03(火) 23:19:06


    ────────



    暗がりのデパートの中、弍大君と太った詐欺師の十神が去った後、小泉さんが私に「なんで」と不安混じりに聴く。


    小泉「もし本当に日向達が来たら……」


    霧切「コロシアイになるでしょうね」


    小泉「だったら……!」


    私は自身の胸ポケットから生徒手帳を取り出す。


    小泉「!」


    霧切「日向君の生徒手帳、そして日向君は今、私の生徒手帳を持っているわ」


    そう、私と日向君は以前に生徒手帳を交換している。事前に詐欺師の十神君が北の校舎近辺で張っている事を報せなければならない。


    小泉「ホントに、大丈夫なのかな……ねえ、響子ちゃん……」


    霧切「……大丈夫、私に考えがある」





    ────────



    日向「!」


    北の校舎に向かう道中、生徒手帳が震えだす。誰からかの着信の様だ。


    苗木「どうしたの?日向クン」



    日向「生徒手帳に着信だ……小泉?」


    相手は小泉だ。
    ……そうだった。この生徒手帳は霧切のものだ。
  491. 496 : : 2016/05/03(火) 23:22:12


    2人は一緒なのか、仮説として、誰かが絶望化し、刺激を避ける為に付き添っていると思ったが。


    ……ふと、罠の可能性では無いかと頭を過る。


    まさか、霧切は……いや、少なくとも小泉はそんな奴じゃない。


    そう、そんなこと無い。


    日向「……」


    鳴り止まぬ生徒手帳を見詰め、俺をその着信に応える。


    日向「小泉か?」


    霧切『……私よ、霧切よ』


    日向「霧切か……なあ、お前達が消えたのはまさか」


    霧切『ええ、日向君……貴方が言おうとしていることは恐らく正解』


    日向「やっぱり、誰かが絶望化したと?」


    霧切『詐欺師の十神君……彼がそう成ってしまった』


    そう、推察は当たっていた。あの十神が、絶望化した。


    日向「小泉は無事なのか?……お前も大丈夫なのか?」


    罪木のスキルブースターが無ければ、小泉と霧切の2人は重体。いや、もしかしたら死んでいたであろう致命傷を受けた体だ。


    霧切『小泉さんも私も大丈夫、罪木さんには感謝しているわ』


    日向「そうか、よかった……それより、お前達は何処にいるんだ?近くにその絶望化した十神は居ないのか?」


    霧切『私と小泉さんはあのデパートに居るわ。そして詐欺師の十神君と弐大君の2人が北校舎を張っているの』


    日向「……なんだって?」


    霧切『貴方達は今どうしてるの?』


    日向「俺達は今、北校舎に向かっている。その屋上で待っているらしい狛枝と話をつけにな」


    霧切『……やっぱり、そのまま引き返して戦いを避ける事もできるわ……でも、私から少し提案があるのだけど』


    霧切の提案は、分かる。危険だが、野放しにするわけにもいかない。


    霧切『私達から弐大君に連絡を取る、弐大君と協力して……』



    日向「……そして十神を抑える、か」

  492. 497 : : 2016/05/03(火) 23:24:05



    ────────



    霧切「彼は野放しには出来ない。貴方達を殺さんと合算している。私達もなるべく北の校舎に急ぐわ」


    日向君は生徒手帳越しに、少し間を置いた後に『わかった』と応えた。


    霧切「じゃあ、また連絡を入れるわ」


    生徒手帳の通話を切り、私は小泉さんに「行きましょう」と言う。小泉さんは静かに頷き、私はまだ覚束無い足に力を込めて歩き、デパートを後にした。


    小泉「響子ちゃん、少しお願いがあるの」


    霧切「何かしら?」


    小泉「寄宿舎の……アタシの部屋までついてきてくれないかな」


    狛枝君は屋上だと聴いた。恐らくは大丈夫だと思うだろうが。


    霧切「何かあるのかしら」


    小泉「うん、ちょっとね……」



    ────────


  493. 498 : : 2016/05/03(火) 23:25:39

    ────────





    弐大「……して、どうするのじゃ」


    豚神「ああ、このビルなんか良いかもしれないな」


    十神が指差したビルは、人の出入りの痕跡が見られるビルじゃった。

    というのも、殆どの建物が閉じているのに対して、そのビルの入り口であるガラスのドアは砕かれ、開いたままになっておる。

    そう、まるで入ってくださいと言わんばかりにじゃ。


    豚神「気を付けろ。恐らくは誰かの拠点だった場所だろう」


    弐大「……おう」



    十神が『気を付けろ』と言ったのは、恐らく簡単で効果的な罠(ブービートラップ)があると言う事じゃろう。


    豚神「まあ、恐らくは階段と階層の全体、そしてエレベーターは……」


    そういってエレベーターの前に立ち、ボタンを押す。

    軽快な音と共に扉が開く。


    豚神「足元だ、見ろ」


    そういって豚神は足元に張られた1本の『糸』を跨ぎ、エレベーターに寄っ掛かる。


    ワシもそれに習い、糸を跨いだ。


    弐大「なるほどのう……」


    糸と連動するよう釘と円筒の弾丸が真上にあった。恐らくは糸を引っ張ると釘が弾丸の雷管を叩く仕組みなのじゃろう。


    豚神「エレベーターで1階と屋上を往き来していたんだろう」


    エレベーターは最上階へと上がっていく。


  494. 501 : : 2016/10/07(金) 00:08:07
    一気に読みました、面白いです
  495. 502 : : 2016/10/10(月) 18:25:24
    3時間くらい掛けて一気に読んでしまった…

    責任取って完結させてください!!待ってます!!
  496. 519 :