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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

狛ロウノヒ

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    • 8

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  1. 1 : : 2015/01/03(土) 20:23:22
    ※グロいよっ
    ※ダンロンシリーズネタバレ含
    ※絶対絶望少女ネタバレ含


    前作"ジグ左ウパズル"
    http://www.ssnote.net/archives/29522






    ─────希望は輝く。



     何処でそれを観たのだろうか覚えてはいない。



    「何なのよアンタァァァ!!?」



     彼は絶望の全てを受け止めて、



    「……希望は、希望は前に進むんだ!!」



     絶望の少女を論破し尽くし、



     抗い、導き、そして、打ち倒した。



     それを画面越しで観ていた。


    「あ……あは……」


     それはとても素晴らしい光景で、


    「あはは……はは………!」


     それはとても輝かしい光景で、


    「あはははははははははは!!」




    ─────それは、とても妬ましかった。

  2. 2 : : 2015/01/03(土) 20:28:27
    期待です!! 狛枝ェ…
  3. 3 : : 2015/01/03(土) 20:32:59


     "彼"に成りたかった。


     それが叶わぬなら、


     せめて当事者でありたかった。


     なんて素晴らしい。


     なんて輝かしい。



    ─────闇ニ揺レル白蝋ノ火。




    Chapter.0




    「……」


     ふらつく足で、もぬけの殻になった絶望の学園に独り。

     白髪はまるで、命の短い患い人の様で、明日にでも死にそうな表情をしている。

     
  4. 4 : : 2015/01/03(土) 20:33:11
    >>2
    あんざますっ
  5. 5 : : 2015/01/03(土) 20:54:11



     未来機関と言ったか、生き残った希望の少年らの救助の為に、此方には居ない。


    「……アンタもか?」


     小柄で童顔の、スーツを着た栗毛色の髪の、酷くやつれた少年がそこに居る。


    「……そうだね」


     白髪の少年は表情を変えずに応えた。

     童顔の少年は"何か"を包んだ、血に滲んだ包みを持って、空虚を視て呟く。



    「……見てねえんだ、妹が死ぬところ」


     彼はブツブツと、己の絶望をぼやいて去っていった。


     学園の入り口、強固な金庫の様な扉の前に、少女がへたり込んでいる。


     やはり、血に滲んだ"何か"の包みを持って、焦燥と恍惚の表情で、涎を垂らしてブツブツとぼやく。


    「……あの人はまだ生きてるんです"これ"があればあの人は永遠なんですあの人はまた許さない皆を殺して私を許してくれるんです……」


     ぐちゃぐちゃの黒髪と、血塗れの看護服を着た少女は俯き、何かを信じている、狂った様に。


     学園内に辿り着く。あの2人が行って戻ってきたであろう道に、それはある。

     血痕、きっとこの先に"それ"はある。


     エントランスから寄宿舎へ趣き、トラッシュルームの床にある入り口、其処を下っていくと、ゴミの山があって、ポツンと、"それ"はあった。

  6. 6 : : 2015/01/03(土) 21:12:56
    公式化してもおかしくないくらいのクオリティ。期待です。
  7. 7 : : 2015/01/03(土) 21:31:30


     それはもう、人の形をしていない。骨と肉の血溜まり。

     粉砕された頭蓋の破片にまとわりつく脳漿は、かつてどんな絶望を考えていたのだろう。
     叩き潰されてバラバラになった肋骨の内側、その心臓だったモノの内に、何を思っていたのだろう。


     もう、知ることは出来ない。


    「……?」


     そして、その血溜まりの離れた場所に"それ"はあった。

     上腕は潰れていたが、その下は完全な形で残っている。


     絶望の左腕。


     そして、彼はふと、考えた。


     絶望から、あの希望の光を産み出すならば。


     己が絶望に成れば良いと、絶望と言う名の、希望の為の踏み台であれば良いと。


     気付けば白髪の少年は、"それ"を手にしていた。


     この左腕は、一体どんな絶望を作り出してきたのだろう。


     もう、それも知る事は無いが。

  8. 8 : : 2015/01/03(土) 21:31:48
    >>6
    あんざますっ
  9. 9 : : 2015/01/03(土) 21:57:17



    Chapter.1



     塔和の暴動以降、絶望の残党狩りは活発になった。

     白髪の少年は、絶望の少女が遺した"絶望の子"を匿ったのち、逃亡を繰り返していた。

     行方不明者リストに載る、最後の2人の内の1人。

     そして、塔和の暴動に1枚噛んでいたという十神らの証言により、重要参考人としてその身を追われていた。


     一定の場所に留まれば、直ぐに場所を突き止められてしまう。

     それは彼の不運なのか、それとも、未来機関に優秀な情報網でもあるのか。



    「逃げたわ!」


    「そっちだ!」


     廃墟となった、とあるビル内部。

     "未来"と銘打たれたスーツを着た男女が、白髪の少年を追う。

  10. 10 : : 2015/01/03(土) 22:27:24


     ビル内部は崩落が進んでおり、今にも崩れ落ちそうだ。



    「止まれ!」


     未来機関の男が白髪の少年にテイザー銃を向ける。

     ガスの圧力によってワイヤーを飛ばし、ワイヤーの先端の針を対象に刺して電流を流す、射てるスタンガンだ。


    「……」


     白髪の少年は、振り返り、男を一瞥する。


    「そのまま手を上げて、床に膝まずけ!」
  11. 11 : : 2015/01/03(土) 22:39:35


     少年は静止こそするが、手をあげようとはしない。


     彼は"賭けた"のだ。


    「手をあげ……!」


     未来機関の男が声を上げると同時に、その男の頭上の天井が音を発てて崩落した。
     粉塵が舞い上がり、落ちた天井の片が、未来機関の男を圧死させる。


    「あーあ……」


     悪びれる事もなく、落ちた天井に挟まれ、潰された未来機関の男の、辛うじて潰されなかった手を尻目に、白髪の少年は去っていく。

     悪びれる筈も無い、少年は男に何もしていないのだから。

     強いて言うならば、男の不運か、少年の幸運か。

     
  12. 12 : : 2015/01/03(土) 23:12:21

     
     そして屋上へと出る。


    「止まりなさい!」


     未来機関の女が、少年の背後に迫る。


    「……狛枝凪斗、元希望ヶ峰学園の生徒ね」


     狛枝と呼ばれた少年は、無表情のまま、未来機関の女を視る。


     何の才能も無い、何の希望も感じない、何の絶望も見えない、そんな女に狛枝は侮蔑の眼差しを向けた。


    「……はぁ」


     先程の男同様、狛枝はこんな"ゴミクズにも劣る有象無象"に興味も無いし、無駄な時間を割かれるのは我慢ならなかった。


     だから、"賭ける"のだ。

  13. 13 : : 2015/01/03(土) 23:49:48


     屋上の中心を境に、少年と女は向かい合う。

     未来機関の女もまた、テイザー銃を構え、少年を威嚇する。


    「……もう1人、機関員が居た筈よ」


    「……死んだよ、虫みたいにペシャンコになってさ。くくっ……傑作だよね?」


    「貴方……!!」


     狛枝は、まとわりつく様な声で女を挑発する。

     彼が手を下した訳ではないが、機関員の男が死んだのは事実、殺した訳ではない。男が勝手に死んだのだ。

     そして、その死を狛枝は嘲笑した。仲間の死を笑われ、女が激昂しない訳が無い。


    「今すぐ投降しなさい……! 貴方には塔和シティでの暴動に関わっているという疑いがある……さあ、手を上げ……」


     女が一歩前に出た瞬間、今度は床の崩落が起こった。


    「なっ……!?」


    「はぁ……」


     溜め息を吐く狛枝の姿を見たが最後、女は背中から落ちていく。


     そして、


    「がっ……あっ?」


     刺さる。


     女が見たのは、己の腹部から突出する、先が捻り切れ、尖った鉄パイプ。

     落ちた拍子に、それが女の体を貫いたのだ。


    「あっ……ああっ!?」


     悲痛の叫び声も虚しく。上から覗く狛枝は、冷ややかな瞳で一瞥して去っていく。


     女は手を伸ばす、誰でも良い、助けてくれと、だが、そこにはもう、誰もいない。

     やがて、力を失い、項垂れ、絶命した。



  14. 14 : : 2015/01/04(日) 00:35:30


    *


     崩落するビルから、涼やかな表情で狛枝は脱する。

     つまらなそうに、

     何かを望むように。



    Chapter.2



    「それで……塔和シティは?」


    「ああ、あとは、こまる……妹と腐川さんを信じてみるよ。だからボクらは、彼女らを安心して迎えに行けるように、絶望の残党を倒さなきゃね」


     未来機関第14支部、小柄でアンテナの様な特徴的な癖毛を生やす少年は、シルバーブロンドの切り揃えた髪に、片側にお下げを垂らす知的で美しい顔立ちの少女に、デスクを挟んで応える。


    「……そう、きっと大丈夫よ」


    「うん……ねえ、霧切さん」


    「何かしら? 苗木君」


     苗木と呼ばれた少年は、ある絶望の残党について考えていた。



    「……絶望の残党は、救えないのかな」


    「それは……難しいわね」



     元希望ヶ峰学園の生徒の生き残りである、絶望の残党、苗木は彼等の処遇を考えていた。

     程度に寄るが、彼等の精神は崩壊しきり、もう、社会適合は難しいとされる。

     終里朱音という絶望は、共に育った兄弟らが殺され死に絶え、一切の食事を取ることが無くなり、餓死寸前まで呆けていた。

     九頭龍冬彦という絶望は、親しかった妹が何者かに殺され、その犯人であった少女を殺し、やがて、絶望に染まった果てに、絶望の少女の右眼を移植して、絶望を見ようとした。

     ソニア・ネヴァーマインドという絶望は、自国が滅び行く事に絶望し、絶望と化し、絶望するためにその国の王と王妃である父母を、絶望の少女に差し出した。

  15. 15 : : 2015/01/04(日) 00:54:40


     もう"記憶を無くしてやり直す"位しか救いようがないのだ。


    「……もしかしたら」


     もしかしたら、という言葉は、覚悟がいる。だが、彼には1つの妙案があった。

     友人であった、あるプログラマーが関わっていた計画、ただそれは、画期的ではあるが、"ある危険"を孕んでいる。


    「救えるかもしれないんだ……」


     苗木は後悔している。


     絶望の少女を救えなかった事を。


    「……はぁ」


     霧切は腕を組んで、溜め息を吐いた。
     彼の優しさは危うい。心配でならないのだ。


    「貴方はもっと、そうね、葉隠君辺りを見習ったら?」


    「ええ? なんで?」


    「もっと自分の事を考えなさいって事よ」





     
  16. 16 : : 2015/01/04(日) 02:30:03


    *


     十神白夜は支部に帰還後、狛枝凪斗の情報を漁っていた。


    「ペニーワース……」


     彼は苗木らとはまた別に、唯一信頼を置く彼の執事の名を呟く。

     今もあの塔和シティに残されていると思うと、心配でならないが、塔和シティの暴動は鎮静化しつつあることと、人質となった十神を救い、街に残った苗木の妹と腐川を信じる事にした。

     そして、彼女らの為にも、一刻でも早く、絶望の残党を倒し尽くさなければならない。


    「十神クン」


    「苗木か」


     苗木は資料を手に、十神の元にやって来る。



    「……狛枝凪斗の所在を掴んで急行した機関員から連絡が無いんだ」


    「ちっ……やはりか」


     塔和シティの暴動は鎮静化しつつも、未だに混沌は絶えず、そして一触即発にある。

     当事者である苗木の妹、苗木こまるの願いによって、未来機関が介入する事は出来ない。

     元々、塔和シティはデマによって、未来機関に対する不信感が強く、未来機関が介入すれば、それこそ戦争に発展しかねないのだ。



     そしてその暴動の裏に、狛枝凪斗の存在があった。

     暴動の鎮静化後、彼は塔和シティから行方を眩まし、そして、再び、別の場所で確認されたのだ。
  17. 17 : : 2015/01/04(日) 02:47:56


     向かった機関員の男女2名、2時間置きに通信を入れる様に指示されていたが、連絡が途絶え、5時間が経つ。


     もっと動員数を増やしたい所だが、塔和の暴動での機関員の死傷者数が思いの外多く、そういう訳にもいかない。


    「……仕方ない、俺が向かう」


    「ボクも行くよ……」


     狛枝に対して、苗木は嫌な予感を感じていた。

     それは同じ希望ヶ峰に選ばれた幸運としての宿命か、勘か。




      
  18. 18 : : 2015/01/04(日) 03:47:58



    Chapter.2



    「そう、なら私も行くわ」


     霧切に狛枝の元に向かう旨を説明すると、そんな言葉が返って来た。


    「ええ? でも……」


    「貴方が心配なのよ」


     真正面から堂々と、平淡な顔でそんな事を言われ、少し苗木は赤面する。


    「心配してくれるのは嬉しいんだけど……」


    「あら、またお腹にメスを刺されて帰って来るつもりなのかしら?」


     それを言われると苗木も辛い。罪木蜜柑の一件で、大事にはならなかったが、苗木は怪我をした。

     彼の幸運という才能は不確定で不安定だ。致命的な場面において本領を発揮するが、それ以外ではとことん不運であり、また怪我をして帰ってくるかもしれないと、霧切は不安で仕方ない。


  19. 19 : : 2015/01/04(日) 18:15:06


    *


    「なんだ、霧切もついてくるのか?」


     車庫には既に十神が待機していた。


    「苗木君が心配なのよ」


    「ふん、言えてるな」


    「な、なんだよ2人とも……」



     渋い顔をしながら苗木は車両に乗り込み、次いで2人も車両に乗り込んだ。



    *



     塔和より離れ、都心部より少し外れた場所に、それはあった。

     とあるテーマパークのなれの果て 、期間員の2人が最後に通達したビルの場所の付近だ。


     
  20. 20 : : 2015/01/04(日) 18:34:13


    「見て……」


     倒壊したビルを苗木は指差す。GPSを用いた通信機も丁度その場所を差していた。


    「……」


     完全に崩れ去っており、もし2人かこの中に居たのなら、生存は絶望的だろう。

     最も、既にそのとおりであるのだが。


    「付近に人影は無いな。このテーマパークか?」


     きらびやかだった門前は、"事件"前は人で溢れ返っていたのだろう。しかし、もうここに人が集まることはない。


     霧切は思考を巡らせ、狛枝の行動を予測追跡(トレース)する。


     
  21. 21 : : 2015/01/04(日) 21:06:51


    「彼……狛枝凪斗は何故こんなところに居たのかしらね?」


     霧切に習い、十神と苗木もまた、推測を開始する。


    「例えば、何かしらの物資の回収かな……?」


     苗木の推測を十神が否定する。


    「あり得んな、こんな辺鄙な所より、塔和に向かった方が良いだろう……例えば、奴は未来機関の攪乱を狙っているんじゃないか?」


     十神の推測を霧切が考察する。


    「あり得ない事ではない、もしかしたら、誰かを匿っている可能性もある。ただ、行動が疎ら過ぎて、それだけの理由にしてはどうも弱い……」


     霧切の考察に苗木が付け足した。


    「……匿いつつ、攪乱しているのとは裏腹に、もしかしたら誘きだしているのかも知れないね」


    「……! ……それだ、目的は恐らく、お前だ、苗木」


     十神はそれに賛同し、左右田和一の事を思い出した。

     狛枝凪斗は希望の少年に執着している。

     いや、希望そのものと言うべきだろうか。

     塔和での暴動もそうだ、奴は希望を見たかったのかもしれないし、逆に、とんでもない絶望を作ろうとしていたのかもしれない。


     もし、あの絶望の街に居たのが苗木こまるでなく、苗木誠であったなら、間違いなく彼は大人達の希望となり、そして、希望の戦士率いるモノクマキッズ達に絶望を与え、死に至らしめていただろう。

     あの街の当事者は苗木こまるだからこそ、正解だった。

     勧善懲悪ではない、どちらも救うという選択が出来たのは普通の彼女だからこそである。


     そして、希望でも絶望でもなくなった街に狛枝は大いに失望しただろう。


    ─────故に、原点に帰るのだ。


  22. 22 : : 2015/01/04(日) 21:22:44


    「……狛枝凪斗が、ボクを?」


    「ああ、左右田和一を拘束した時、奴が其処に居たのを話したのは覚えているだろう。奴は、恐らく……」



     と、言いかけた所で、鼓膜を突き破るような爆発音が、テーマパーク側で響いた。


    「な、なに? 爆発?」


     耳を手で覆い、苗木は硝煙の上がる方向を視る。
  23. 23 : : 2015/01/04(日) 21:39:35
    狛枝ェ…
    見てて引き込まれそうな魅力的な文章ですね!
    期待です!
  24. 24 : : 2015/01/04(日) 21:45:38


    「行くぞ……!」


     十神が走りだし、2人はそのあとを追うように走った。





    Chapter.3




    ─────絶望は囁いた。


     もっと世界に絶望を。


     もっと阿鼻叫喚の地獄を。


     男も女も子供も全部、


     失意し、悲嘆し、


     粉砕し、殺傷し、


     発狂し、憤怒し、


     葛藤し、鬱蒼し、


     果てて絶望しろ、と。



     この美しく醜い世界に這う蟲は、


     絶望こそが相応しい。


     蟻の様に潰されて死ね。


     蝉の様に鳴き叫び死ね。


     蛾の様に火に飛び死ね。


     死ね、死ね、死ね、死ね。


     呪詛は絶えず、望みは絶たれる。


     そんな彼女を心底憎むからこそ、




    ─────希望中毒者(ホープジャンキー)絶望(ふみだい)と成る事も厭わない。





      



     




  25. 25 : : 2015/01/04(日) 21:45:58
    >>23
    有難うございますっ
  26. 26 : : 2015/01/04(日) 22:51:05


    *


    「ふふ……」


     爆発を起こした本人が、とある高 い建物の屋根の上から、此方へと向かう3人を双眼鏡で覗いていた。


    「きた……!」


     クローズアップで覗くのは、無論、希望の少年。


     絶望の真逆、己に似て、異なり、それ以上に、


     ある意味、狛枝よりも希望中毒。


    「……さて、辿り着けるかな」


    「……苗木、誠クン?」


     最悪の絶望(ふみだい)が、彼等に絶望(きば)を向ける。



    *


    「爆発したのはここか……!」


     メラメラと燃える炎に包まれた建物を、3人は見ていた。

     電車の様な乗り物に、それに連なる建物が音を発てて焼け落ちていく。


    「……ドッキリハウスの類いかな」


     燃え落ちるストロベリーピンクとマスカットグリーンの建物の付近に、何かが落ちていた。




  27. 27 : : 2015/01/04(日) 23:11:04
    凄いな…尊敬です。
    今風に言うと、マジリスペクトってやつです。
  28. 28 : : 2015/01/04(日) 23:20:40


    「これは……!」


     ハッキング銃。

     未来機関が作った正規品ではなく。これは、構造を理解した誰かのレプリカのようだ。


     左右田和一が持っていた集積回路を狂わせる黒い箱をヒントに、未来機関が独自に開発した。ハッキングプログラムを電波として飛ばし、対象のプログラムの強制権を獲る為の、拡声器型の特殊武器である。


    「……使えって事か?」


     十神はそれを手にする。機械類に対して絶大な効果を持つこれは、苗木こまるという普通の少女をあの絶望の街で生き残らせた要因の1つだ。



    『みつけたぞぉ』



     そして、それは居た。

     忌々しい声、鋭利な爪、ふざけたデザインの、その不細工なヌイグルミは、苗木らの前に姿を表す。

  29. 29 : : 2015/01/04(日) 23:21:19
    >>27
    そんなことないよ!(テレテレ

    有難うございますっ!
  30. 30 : : 2015/01/04(日) 23:47:30


    「モノクマ……!」


     塔和だけではない、このモノクマは神出鬼没に出現し、有りとあらゆる場所で虐殺を起こし、暴動を引き起こしている。

     この"殺人機"の製造は、塔和によって行われていた事が発覚し、大規模な製造は塔和の暴動の首謀であった希望の戦士達の失踪により、止まったと思われていた。


    「……狛枝が匿ったのは、まさか」


     十神の脳裏にある少女が過る。

     腐川、こまるらに後に聴いた話であるが、塔和グループの御曹司、塔和灰慈の腹違いの妹、塔和モナカという10歳前後の少女が居り、その少女が、あの暴動全ての黒幕であったと。

     驚くべきは、そんな少女が塔和グループロボット開発部門最高責任者であったという事。


     もし、あの少女が生きていて、狛枝が匿ったとしたなら。

     あのロボットを造るくらい、造作は無いだろう。


  31. 31 : : 2015/01/05(月) 01:15:18


    「ちっ!!」


     十神はハッキング銃を構え、トリガーを引く。青いプラズマの様な電波がモノクマの左目に直撃し、思考の中心となる集積回路を暴走させ、やがて、動力炉に影響し、


    『また来週ぅ〜』


     ふざけた声と共に自壊する。


    「……奴め、俺達で"ゲーム"をするつもりか?」


     塔和で行われたゲームは"魔物(オトナ)を狩り殺す戦士(コドモ)らによるハンティングゲーム"であった。

     その実、そんな絶望の中で苗木こまるの心を成長させ、それを失墜させ、彼女を"2代目の絶望の少女"にさせるという思惑があった。

     それは腐川の存在と、苗木こまる自身の選択によって打ち砕かれたが。


     では、狛枝が望むのは何だ?

     恐らくそれは、もっと純粋なもの。

  32. 32 : : 2015/01/05(月) 03:07:09


    Chapter.4



    ─────雑音が止まない。


     持ち得たのは不運と幸運。


     たったそれだけ。


     予備学科(ゴミクズ)に妬まれ、


     本科(きぼう)に避けられ、


     自己の生い立ちは散々たるもので、


     空っぽの幸運に誇りも感慨も無くて、


     やがて"精神病質(サイコパス)"となった少年は、



     絶望に感染する筈など無かった。




    ─────元より、"絶望"なのだから。


     
  33. 33 : : 2015/01/05(月) 11:46:45
    鳥肌がヤバい…
    期待です!
  34. 34 : : 2015/01/05(月) 12:35:32
    >>33
    有難うございますっ
  35. 35 : : 2015/01/05(月) 20:23:14


    *



    『ぐひひっ!』


     わらわらと湧いて出てくるモノクマに3人は囲まれる。


    「……くっ!」


    「一旦、ジープ車両まで戻って装備を整えるぞ、俺が援護してやる」


     飛び込んでくるモノクマに対し、十神はハッキング銃を向け、放射する。

     モノクマを自壊させていくが、キリがない。
     スタンロッドを構え、苗木と霧切は警戒しつつ、走り出した。


     だが、


    「逃げろ! ビーストだ!」


     十神が叫ぶ。

     ビーストモノクマという、四足歩行の非常に俊敏なモノクマが苗木と霧切に迫る。

     十神の放つハッキング銃の言弾を軽やかに避け、獣の様に突進してくる。



     
  36. 36 : : 2015/01/05(月) 20:41:56


     そして飛び掛かる。


    「苗木君っ!」


     刹那、霧切がビーストモノクマの腕を流れる様に掴み、


    「ふっ!」


     地面へと叩き付ける、そして。


    「……!!」


     苗木はその隙を逃さず、ビーストモノクマの左目に、スタンロッドを刺突し、スイッチを入れる。

     ブスブスと黒煙を上げながら、やがてビーストモノクマは動かなくなった。


    「急げ!」


     十神がハッキング銃で応戦し、その背後を苗木と霧切は走り抜けていく。
  37. 37 : : 2015/01/05(月) 20:59:01


    *


     何とか、テーマパーク門前のジープ車両に辿り着く。
     車両に乗せているのはケプラーベスト、そしてお誂え様にハッキング銃とテイザー銃が3挺ずつある。


    「念の為にベストを着けて行きましょう……!」


     モノクマは人間を容易く殺せる力を持っている。殺傷能力が高く、迂闊な近接戦闘は非常に危険だ。

     気休めでしか無いが、2人はケプラーベストを着込み、ハッキング銃を手にして、急いで十神の元に戻った。



     
  38. 38 : : 2015/01/06(火) 00:00:27


    *


     十神がハッキング銃で次々にモノクマを自壊させていく。


    『こらぁ!』


     2体のモノクマが十神に飛び掛かる。


    「ふっ!」


     十神は1体を蹴り上げ、もう1体にハッキング銃を放射する。



    「……へぇ、流石は超高校級の御曹司だね」


     その声の主は、モノクマ達に紛れ、そして、何かを十神に向けた。


    「ぐっ!?」


     瞬間、十神に針の様な何かが刺さる。


    「き、さま……何を……?」


    「安心してよ、ただの麻酔針さ……さ、連れてきて」


     モノクマの動きは一斉に止まり、1体のモノクマが、倒れた十神を担ぐ。

     そして、再び、狛枝は先程いた建物へと向かう。
     まるで西洋の城の様な、荘厳な建物へと。


    「……あーあ、ハッキング銃も無駄に……」


     と言いかけた所で、


    「ああ、そうか。使わせればいいのか」


     邪悪な笑みを浮かべる。

     彼の布石はまだ続く。
  39. 39 : : 2015/01/06(火) 18:34:45


    *


    「……! 十神クンは?」


     多量に壊れたモノクマの残骸に、十神の姿は無かった。

     多く居たモノクマの影も無く、あっけらかんとしていた。


    「……見て、苗木君」


     残骸の集中している場所から、少し離れた位置に有ったのは、針の様なモノ、探偵である彼女の観察眼は些細なものも見逃すことは無い。


    「縫い針ってことは、無いよね……」

    「ええ、糸を通す穴もないし。そして、少しだけ血が付着している……そしてこの血、まだ乾いてなくて新しい」


     十神は、これに刺されたのだ。と霧切は予測する。


    「恐らくは麻酔針の様なモノでしょうね……これで気絶させられて、運ばれている時に落ちた……と考えられる」


    「つまり、この針の有った方向……」


     その方向に見えるのは、例の城であった。

     このテーマパークの目玉ともいえる様な、まるでおとぎ話にでも出てきそうな城の外観が、その、位置からでもよく見える。


    「……あの城ね」


    「恐らく、行こう!」


     苗木と霧切はジープ車両より持ってきたテイザー銃を腰に差し、ハッキング銃を手に、城へと向かう。



  40. 40 : : 2015/01/06(火) 19:11:11


    Chapter.5




    ─────この草木を(有象無象を)


     摘んでしまおう(殺し尽くそう)


     きっと、そこには(絶望の中でこそ)


     綺麗な一輪が(輝く希望が)


     咲いているだろうから(あるだろうから)
  41. 41 : : 2015/01/06(火) 20:52:30



    *


    「壊れろ!」


    『ぐぎぁあああ!!』


     倒せどもキリがなく、何処から湧いてくるモノクマに苗木と霧切は辟易していた。


    「……これじゃ、前に進めないわね」


    「それでも、行くしか……!」


     突っ込む訳には行かない、先程述べたように迂闊な近接戦闘は自殺行為に等しい。ビーストモノクマはたまたまやり過ごせたが、それでも、リスクを上げるよりは、堅実に1体ずつ仕留めていくしかない。


    「何か手立ては……?」


     しかし、次々に現れるモノクマに対処するばかりが手一杯だった。


    「……!」



     霧切は何かを見つける。



    「…苗木君、こっち!」



     苗木は走り出した霧切に着いて行きく。モノクマらも当然追いかけてくるが、走りながらなんとかハッキング銃を放射し、自壊させていく。

  42. 42 : : 2015/01/06(火) 21:07:46


    「んっ……くっ!」


    「手伝うよ!」


     霧切が見付けたのはマンホールだった。2人は蓋を持ち上げ、暗い空間へと繋がる梯子を降りていく。



     暗く、臭いも酷い。
     しかし下水道にはモノクマの気配は無いようだ。


    「ふぅ……取り敢えずは一安心かな」


    「安心するのはまだ早いわ……この下水道を使って、あの城に近づきましょう」


     ペンライトを照らす。汚水が流れる脇に足場がある、幅は狭いが歩けないことはない。

     城のある方向へと歩み始める。


     
  43. 43 : : 2015/01/06(火) 21:29:20



    *



     テーマパーク前、1人の男の影。

     ジープ車両が未来機関のモノであると解り、ゆらりとテーマパークのエントランスへと入っていく。


    「……」


     ただ、その幽鬼は"とある集積回路"だけを持ち、なんの武器も持ち得ず、丸腰であった。


    『こらっ!』


     残されたモノクマが彼に目掛けて駆け寄ってくる。


     つまらなそうにそれを見て、彼はモノクマが飛びかかってきた瞬間。


    ─────ただ、それの頭を手で掴み、圧壊した。


     つまらない、と一言吐き捨て。



     そして、彼もまた、城の方へと向かう。

  44. 44 : : 2015/01/06(火) 22:30:22
    おおお、すごい...!期待です!
  45. 45 : : 2015/01/06(火) 22:49:04
    >>44
    有難うございますっ
  46. 46 : : 2015/01/06(火) 23:14:26



    *


    「長いわね……」


     この悪臭から抜け出したい一心か、霧切はそんな事をぼやく。


    「うん……」


     苗木はそれに頷く。

     モノクマの気配は相変わらず無い。地表に多く居たが、地下側まではカバー出来てない様だ。

     悪臭漂う地下道を抜け、漸く梯子を発見した。

     この、まるでカンダタの蜘蛛の糸の様な梯子に、苗木は既視感を覚える。


    「……思い出すね」


    「そうね、以前にもあったわね」


     苗木が処刑されかけ、間一髪でダストシュートに放られた時の事だ。


    「……本当に、申し訳無い事をしたわ。何度謝っても、許される事では無いのだけど」


    「もう良いんだよ、霧切さん。それに……今、ボクがここに居るのも、紛れもなく霧切さんのお陰なんだから」


     梯子を上がる。カツン、カツンと、そんな靴の音が響く。


    「……ふふ、あの時、霧切さんったら頭にカップ麺の容器乗せてさ」


    「もうっ……! ふふ……」


     少しだけ、顔が綻ぶ。

     鉄面皮などと呼ばれた彼女も、苗木の影響なのか、以前より格段に笑うようになった。


    「貴方のせいで私も大分、変になったわ」


    「ええ? それってボクが変ってこと?」


    「ええ、とっても」


    「ひどいなぁ……」


     そうして霧切はまた、少しだけ、純粋に微笑むのだ。




  47. 47 : : 2015/01/07(水) 00:17:42


    *


     マンホールを開ける。上から持ち上げるよりは、下から持ち上げる方が、容易であり、苗木1人だけでも、蓋は持ち上がる。


     周りを覗くも、モノクマの影はない。
     そして目前には大きな建物が広がる。


    「……当たり、だね」


    「……行きましょう」



     2人はマンホールから出る。目的の城の入り口は、すぐそこにある。

     迷い無く走り出す。


    「……」


     その背後に人影が居ることにも気付かずに。

  48. 48 : : 2015/01/07(水) 00:47:50


    *


     しばらく放置されていたせいか、城内はカビ臭い。
     目前にはエントランスが広がり、ステンドグラスと鞭の付いた槍が目につく。

     そして、縄で縛られ、拘束された十神と、拳銃を持つ狛枝が空間の中央に立っていた。


    「ああ……会えて光栄だよ。苗木、誠クン」


     肩を抱き、歓喜に震え、濁らせた瞳を苗木に向ける。


    「十神クンを放すんだ……!」


     ハッキング銃からテイザー銃に持ち替え、それを狛枝に向ける苗木と霧切。


    「……勿論」


     そういって、狛枝は十神の頭に拳銃を突き付ける。


    「……止めなさい!」


     グッと前に出て霧切はテイザー銃で威嚇した。
     しかし、狛枝は動じることなく、そのまとわりつくような声で苗木と霧切に言葉を放つ。


    「ははっ、ねえ、苗木クン……ボクとゲームをしようよ……ねえ?」


    「ゲームだって……?」


     狛枝凪斗は異常だ。
     この倒錯者からは江ノ島盾子とは異質の絶望を放ってくる。

     己の絶望ではない、他者の希望を求めている。

      
  49. 49 : : 2015/01/07(水) 01:01:01


    「そう、つまり、こういうことさ」


     そういって、十神が拾ったと思われるハッキング銃を、苗木達の方に放った。


    「そのハッキング銃はボクが改造したものだ。キミらの持っているハッキング銃には無い仕様が追加されている」


    「……無い仕様?」


    「まあ、それは自分で確認するんだね。さあ、そのハッキング銃は捨てて、そっちを拾うんだ」


     苗木は渋々とし、持っているハッキング銃を捨て、狛枝が放ったハッキング銃を手にする。


    「……で、これでボクに何を望むの?」






     
  50. 50 : : 2015/01/07(水) 19:06:28


    「……簡単さ、それでボクを撃ち抜けば良いんだよ」


    「……?」


     ハッキング銃はあくまで"機械"に対して効果を発揮する代物だ。人体に撃ち込んでも、これといった効果なんてありはしない。


     だが、彼は左袖を捲り、"彼女の左腕"と共に、"それ"を苗木と霧切に見せつけたのだ。


    「な……ん、その腕は……!」


    「貴方……まさか……!」


    「ああ、そうそう、これは彼女のさ……キミが一番良く知る彼女の左腕だ……なんでだろうね、憎くて憎くて堪らない筈なのに、愛しくて仕方がないんだ……」


     
     狛枝には"混じって"いるのだ。あの"絶望の少女"が。


    「……っと、これじゃなくて、こっちの腕輪だよ」


    「……何かしら……?」


    「……モノクマの頭を模した腕輪?」


     塔和で行われていた"ゲーム"の標的にも、その腕輪はつけられていた。


    「……ば、爆弾だ!」


    「十神クン!」


     十神が目を覚まし、腕輪の正体を明かす。

     塔和では、この腕輪によって標的達は、街から抜ける事が出来なかった。

     この腕輪が爆発し、装着者を死に至らしめる為だ。


  51. 51 : : 2015/01/07(水) 19:52:42


    「……おや、お目覚めかな?」


    「ちっ……まさか、"二度"もお前にしてやられるとはな……」


    「ハハッ、まあそんな気に病む事はないよ。ボクはね、運が良い時はトコトン幸運なんだ……こんなにうまくコトが運ぶなんてね」



     十神は塔和でも、この男の手にかかり、人質となった。人質交換として苗木こまるの身柄を条件に、利用されたのだ。


    「その爆弾で……何をするつもりなの?」


    「……何を? 霧切響子さん……こんな腕輪で出来る事なんて、1つしかないよ?」


     絡みつく声は、霧切の背筋を掴み、凍らせる。苗木誠に似て、それでいてまったく非なるモノ。


    「……自殺? それとも私達と無理心中かしら?」


     冷や汗は止まず、それでも踏み込む霧切に、狛枝は淡々として応える。


    「……全ては希望のためさ」


     理解が及ばない。この男には常識や非常識といった括りは通じない。


     倒錯者の中でも群を抜いて、この男は異端なのだ。

  52. 52 : : 2015/01/07(水) 20:06:32



    「……貴様、この場で塔和シティの再現をするつもりか?」


     十神が狛枝を睨みつける。だが、相変わらず、この男は飄々とし、不気味に笑みを溢すだけ。


    「……そうさ、この腕輪はボクだけが死ぬ程度の火薬が詰められている。苗木クン……そのハッキング銃こそ、この腕輪の爆発条件さ」


    「……なんだって!?」


     狛枝は笑う。もはや、イカれているという言葉も、今の彼には些細なモノだ。



    「ボクが死ねば十神クンは助かる、でも、キミが撃つのを躊躇えば、十神クンは死ぬ……どうだい? さぁ、ボクを殺して魅せておくれ……また、あの希望の光をさぁ!!」



     絶望は絶望に絶望し、意地でも希望を生み出そうとする。その命すらも投げ出して。

  53. 53 : : 2015/01/07(水) 20:53:20


    「さあ……苗木クン……!」


     苗木はこの怪物に戦々恐々とした。絶望と希望がまるで同じものであるかの様に振る舞うこの男は、自分の命なぞ、はじめから勘定には入ってないのだ。


     圧倒的に純粋に、ただ、望むだけ。


    「さあ……どうするの?」


     十神の頭に拳銃が押し付けられ、狛枝はその拳銃の引き金に指をかける。



    「……なら、こういうのはどうでしょう?」



     第三者の声が、空虚に響く。


     それは、入り口の方向から聴こえたその瞬間、苗木の横を掠め、何かが高速で投擲された。


  54. 54 : : 2015/01/07(水) 21:02:44


    「!!」



     それは的確に、


    「ぐっ!?」


     狛枝の持つ拳銃を突き刺し、


    「っ!!」


     霧切はその隙を突き、テイザー銃を撃つ。



    「がっ……!?」


     狛枝は予想外の出来事に目を白黒させながら、入口に目をやると、そこには、



    「……つまらないですね」



     幽鬼の様に、それは立っており、狛枝は穿たれたテイザー銃の鉄針に感電し、気を失った。



    「……なんだ?」


     十神は狛枝の持っていた拳銃を見る。拳銃にはモノクマの残骸らしき腕の爪部分がバレル付近を見事に貫いている。


     幽鬼は静かに佇む。


  55. 55 : : 2015/01/07(水) 21:21:33


    「……貴方は」


     霧切はその異様な出で立ちの男に目をやった。そして何よりも、驚嘆すべきは、投擲のコントロール。

     まるで、彼等のクラスメートだった、とある"野球選手"の様だ。


    「……名前はありません」



     幽鬼は語る。



    「"カムクライズル"という、僕の存在を示す記号だけしかありません」



    「カムクラ……イズル」



     それはあの希望ヶ峰付属病院であった被験者に付けられた名称。そして、行方不明者リストに載る最後の1人。



    「何故、ここに?」


     苗木が訊ねるも、彼はただ、


    「……その男と一緒に、僕も拘束してくれないでしょうか?」


     目的だけを述べた。


  56. 56 : : 2015/01/07(水) 21:41:14



    Epilogue




     狛枝、そしてカムクライズルを拘束し、3人は呆然とした。


     突然のカムクライズルの出現により、狛枝の狂気は止まったが、カムクライズルの腹の底が見えずに居たからだ。


     救援に来た機関員に2人を引き渡し、14支部に帰還したのち、苗木、霧切、十神はカムクライズルが収容された聴取室に向かう。



    「……」


     何を聴いてもカムクライズルは応えない、ただ、彼は、



     あの忌むべき女の才能で、分析した結果、最善と思われるこの行動に出ただけなのだ。


     聴取室を出て、3人は廊下で話す。

    「……駄目だ、彼は何を考えているんだ?」


    「解らん、ただ……あまり良くない事なのは解るな」


    「とにかく、彼についてはここまでね……それに」


     と、霧切は言葉を止める。


    「……それに?」


     苗木は訊ねると、霧切は「なんでもないわ」とそっぽを向いた。








     
  57. 57 : : 2015/01/07(水) 22:02:21


     霧切は帰還後に、本部からの、通達を見ていたのだ。







    『"超高校級の絶望"らについての引き渡しと処分について』







    *





     真っ暗な部屋、鉄檻の中に白髪の少年は不気味に微笑む。


    「……なんだったんだろうね、彼は」


     姿は見ていない。ただ、計画を台無しにされたという感情より、彼の正体について興味が湧いてくる。


     あのテーマパークの城の前、マンホールから少し離れた場に配置した残存する全てのモノクマを回避したのか、それとも、破壊したのか。


     丸腰で破壊したならば、それはあの格闘家や軍人でも難しいだろう。


    「……ふふ」



     また、何処かで出会えそうな気がしてならない。




    「……おもしろいなぁ」



     そして白髪の少年は、また出会えることに"賭けた"のだ。






    ──────絶望の唄は鎮まり、


     最期の唄が聴こえる。


     その唄が、


     素晴らしい絶望で、


     輝く希望でありますように。




    To be next…last song.






     
  58. 58 : : 2015/01/07(水) 22:05:44

    はい、妄想全開ですねすいません。

    次回でラストです。

    お目汚し失礼致しました。
  59. 59 : : 2020/10/26(月) 14:28:19
    http://www.ssnote.net/users/homo
    ↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️

    http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
    ↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
    ⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️

    ⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
    10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
    みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
    今回は誠にすみませんでした。


    13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
    >>12
    みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
    現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました

    私自身の謝罪を忘れていました。すいません

    改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
    今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
    あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
    SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
    本当に今回はすみませんでした。




    ⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️

    http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi

    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️

    56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ごめんなさい。


    58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ずっとここ見てました。
    怖くて怖くてたまらないんです。


    61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
    お願いです、やめてください。


    65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    元はといえば私の責任なんです。
    お願いです、許してください


    67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    アカウントは消します。サブ垢もです。
    もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
    どうかお許しください…


    68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    これは嘘じゃないです。
    本当にお願いします…



    79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ホントにやめてください…お願いします…


    85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    それに関しては本当に申し訳ありません。
    若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
    お願いですから今回だけはお慈悲をください


    89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    もう二度としませんから…
    お願いです、許してください…

    5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
    ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
    本当に申し訳ございませんでした。
    元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
    私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
    今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。

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