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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

エレン「オレは貴女の悲しみを受けとめる」ハンジ「私が君に授けるもの」※リヴァハン←エレ

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  1. 1 : : 2014/11/23(日) 12:15:59
    こんにちは。ページを開いていただき、ありがとうございます。

    執筆を始めさせていただきます。

    今回の条件は、こちら↓↓↓

    * ハンジさんは、女設定

    * リヴァハン要素濃い目…かつ、エレン→ハンジの内容も含みます

    * ハンジさんの年齢は28~29歳くらい。リヴァイは、30代前半くらい。

    * 不定期な更新

    * 色々と矛盾点が出てくるかも。(毎度の事ですが…すみませんorz)

    * アダルト展開あり(ある程度は自重する…つもり)

    * 諸事情により、先ほどまでいただいていたコメントは非表示にさせていただき、コメントを制限させていただきました。申し訳ありません。

    * 数珠繋ぎへのご意見等ございましたら、こちらまでお寄せいただけたらと思います。
    http://www.ssnote.net/groups/964/archives/3
    …以上の条件でもかまわない、という方は、ぜひ読んでいただけたらと思います。よろしくお願いします。
  2. 6 : : 2014/11/23(日) 12:33:23
    その日は、朝から激しい雨が降り続いていた。

    エレン・イェーガーは、小脇に書類を携え、足早に廊下を歩いていた。

    巨人化する能力をもつ、エレン。さぞや体力仕事ばかりかと思いきや、デスクワークも、時にこなさなければならなかった。

    自分が巨人化している間、感じたこと、気づいたこと等を、まとめるのが主だった。

    正直、彼にとって、簡単な作業ではなかった。巨人化している間の記憶はほとんどなく、思い出そうとすれば、時おり、激しい頭痛に襲われる。

    そんなわけで、なかなか書面を埋めることができず、気がつけば、書類の提出期限はとっくに過ぎてしまい、こうして大慌てで提出先である上官、ハンジ・ゾエの部屋へと急いでいたのである。

    エレン 「はぁ…遅くなっちまったな…一刻も早く提出しねぇと…」

    ハンジ自体、多少提出が遅れても、寛大に許してくれそうなものだが、問題はそのまた上の上官である、リヴァイの存在だ。

    エレン 「ハンジさんはともかく…兵長に知られたら…」

    いつかの審議所での恐怖がよみがえる。エレンは、ぶるりと身震いし、ある1つの案を思い浮かべる。

    エレン 「そうだ…確か、こっちの道のほうが近いな…」

    調査兵団本部も、けっこうな広さである。そして、普段通っている通路の他にも、様々な抜け道やら、細い裏道などが存在する。

    入団当初はよく迷ったものだが、今となっては、もう慣れている。

    エレンは、普段使われていない、人気の無い通路を使い、少しでも早く、ハンジの自室へと向かうことにした。
  3. 7 : : 2014/11/23(日) 12:58:08
    外が雨ということもあり、日が当たらず、その通路は薄暗かったが、エレンも何度かこの通路を使ったことがあったので、慣れた足取りで歩を進めていた。

    そして、角を曲がろうとした、その時…

    「…リヴァイ…」

    人の声、そして気配を感じ、エレンは慌てて壁の陰に身を潜めた。

    そして、そっと顔を出し、様子をうかがう。

    ハンジとリヴァイだった。別に、この2人が一緒にいること自体、不自然なことではない。彼らは同じ兵団の兵士なのだから。

    ただ問題なのは、2人が何をしているか、ということで…

    ハンジ 「リヴァイ…んっ…」

    2人は、熱い抱擁を交わしていたのである。エレンは、たちまち顔に火がついたかの如く熱くなり、慌てて両手で自分の目をふさいだ(…が、指の間からしっかりと見ていた)。

    エレン (ハンジさんと兵長…まさか2人が、そんな関係だったなんて…)

    エレンは、その場からそっ…と離れようと、きびすを返そうとして…

    カチッ…!

    近くにあった小石を、見事に(?)蹴っ飛ばしたのである。

    エレン 「いーっ!?」

    そしてその拍子に、大声まで上げてしまい…

    ハンジ 「…ん~?誰かそこにいるのかな~?」

    見つかってしまったのである。

    角から顔を出したハンジは、心なしか顔が火照り、両手は素早く、はだけた胸元を直していた。

    ハンジ 「あ…エレン。なんだ…見てたの…?」
  4. 9 : : 2014/11/23(日) 13:33:55
    明るい口調で問われるも、エレンは力の限り(そこまでしなくても良いのだが)叫ぶ。

    エレン 「みっ…見てませぇん!!!」

    ハンジは笑って

    ハンジ 「ははは。見られちゃったかぁ…仕方ないな…」

    エレン 「見てません!!!」

    ハンジ 「私も迂闊だったな…人気の無い場所を選んだつもりだったのに…」

    エレン 「見てません!!!」

    ハンジ 「よっし。これからは、リヴァイか私の部屋の中だけにするか。」

    エレン 「見てません!!!」

    ハンジ 「それにしても…新兵に見られちゃうとはね…」

    エレン 「見てません!!!」

    ハンジ 「…あ、エレンそれ、この前提出してって頼んでた書類?」

    エレン 「見てませ…ん?…あ、はい…そうです…」

    エレンは、持っていた書類を、ハンジに手渡す。ハンジは、ざっと目を通すと

    ハンジ 「う~ん…やっぱり巨人化してる時の記憶は曖昧なんだね…ま、いいや。ありがと。」

    いつしか、目の前にいるハンジは、エレンの知っている、いつもの上官、ハンジ・ゾエに戻っていた。

    エレン 「あの…ハンジ…さん…」

    ハンジ 「ん、なあに?」

    エレンは、本来言わねばならないことを、口にした。

    エレン 「書類の提出が遅れてしまい…申し訳ありませんでした…」

    ハンジは笑って手をヒラヒラさせ

    ハンジ 「いいっていいって。私もよくやるからさ。」

    エレン 「…はあ…」

    そこへ、2人の間に、人影がよぎる。

    リヴァイだった。

    エレン 「あ…兵ちょ…」

    エレンは、声をかけようとしたが、ためらった。

    彼の瞳の中に、何とも形容し難い冷たさが、潜んでいるのを感じたからだ。

    その冷たさの中に…悲しみも孕んでいるようにもみえた。

    ふと、エレンはハンジをみる。

    ハンジは、リヴァイをみていた。

    悲しみを孕んだ瞳で。
  5. 18 : : 2014/11/23(日) 15:38:35
    ハンジ 「…あのさ、エレン…」

    エレン 「はっ…はい!?」

    ハンジが、静かに口を開く。先ほどの悲しげな表情を、わずかに残したままで。

    ハンジ 「ちょっと…私の部屋まで来てくれないかな…」

    エレン 「…は、はい…了解です…」

    ハンジの自室へ入ると、ハンジは扉を閉め、息をついた。

    ハンジ 「…リヴァイとの事だけど…」

    エレン 「はいっ!?」

    先ほどの出来事を咎められると思ったエレンは、身をこわばらせ

    エレン 「すっ…すみませんでした…その…覗き見するつもりは…」

    ハンジ 「…ちがうよ…」

    ハンジは寂しげに笑い

    ハンジ 「いちおう言っておくけど…私とリヴァイは、そういう関係じゃないからね?」

    すぐにピンとこなかったエレンは、思わず

    エレン 「そういう関係…ですか…?」

    ハンジ 「うん…いわゆる、恋人同士ってやつ?…ちがうからね。」

    エレンには、理解できなかった。

    エレン 「えっ…でも…さっき…」

    ハンジ 「そう。いわゆる…まぁ、ぶっちゃけ、身体の関係はもってるんだけど、気持ちとしては、ちがうというか…」

    生々しい発言に、エレンは赤面し、うつむく。

    ハンジは、すまなそうにエレンの顔をのぞきこむ。

    ハンジ 「ごめんね。若い君にこんなこと言って…でも、見られたからには、きちんと言っておかなきゃいけないと思って…リヴァイのためにも…」

    リヴァイ。

    その名を呼ぶたび、ハンジの瞳に、悲しみの色が浮かぶ。

    エレン 「…すみません…自分には、いまいちよく理解が…」

    ハンジは笑った。

    ハンジ 「それで良いと思う。私たちの関係を理解するには、まだ君は若すぎるよ。ただ、私とリヴァイは、恋人同士じゃない。それだけ、理解してくれればいい。」

    エレン 「…はあ…」

    ハンジ 「…リヴァイにはね…」

    ハンジは微かに頬を染め、悲しげに顔を歪めた。

    今、ハンジの目の前に、15歳の新兵は存在しないのだろう。

    まるで、自らに言い聞かせるが如く…

    ハンジ 「リヴァイには…私がお願いして…抱いてもらってるだけなの…それだけなの…」

    うなだれるハンジの背中を、エレンはそっと支えるのが、やっとだった。
  6. 20 : : 2014/11/23(日) 19:12:50
    その翌日も、あいにくの雨だった。

    エレンとリヴァイは、屋外での訓練や実験をすることができず、今後の対策について話し合っていた。

    リヴァイ 「エレン…巨人になるのは慣れたか?」

    エレン 「少しずつ、巨人になっている間の自我は保てるようになりましたが…まだ…慣れるという程のものでは…」

    リヴァイはふと、窓の外を見る。雨が降り続いている。

    リヴァイ 「昨日も雨だったな…こうも続くと、気が滅入るな…」

    エレン 「そう…ですね…」

    リヴァイは、エレンを見る。

    リヴァイ 「…昨日のことだが…」

    エレンは、すぐに何のことか察し、緊張を強める。

    リヴァイ 「別に、覗き見ていたことを、咎めるつもりはない。そもそも、人気の無い場所とはいえ、人目につく可能性がある所でねだってきやがったクソメガネが…」

    リヴァイはここで、言葉を切った。エレンが赤面していることに気づき

    リヴァイ 「…すまない…新兵に話すようなことじゃねぇな…」

    エレン 「いえ…そんな…」

    リヴァイは、息をついた。

    リヴァイ 「…あれから、ハンジから何か言われたのか…?」

    エレンはうつむいたまま、答えた。

    エレン 「あの…その…兵長とハンジさんは…その…」

    辿々しい口調ではあったが、リヴァイは辛抱強く、エレンの言葉を待った。

    エレン 「恋人同士では…ないと…」

    リヴァイ 「ああ…そうだな…」

    あっさりと認めるリヴァイを見、エレンは続ける。

    エレン 「そのことだけ…理解してほしいと…兵長のためにも…」

    リヴァイは、眉間のシワを深くする。

    リヴァイ 「俺のため…だと?」

    エレン 「はい。ハンジさん、そうおっしゃってました…すごく、寂しそうに。」

    リヴァイは、思案するように天井を仰ぎ見ると

    リヴァイ 「エレン…これは俺とハンジの問題だ。これ以上、お前は干渉しなくていい。」

    エレン 「はい…分かってます…」

    しかし、エレンの心の中には、寂しげに微笑むハンジの顔が、離れることなく、残り続けていた。
  7. 21 : : 2014/11/23(日) 20:07:28
    その夜のことだった。雨は、勢いを弱めたものの、いまだにしとしとと、降り続けていた。

    ハンジは、リヴァイの自室の扉を叩いた。

    リヴァイ 「…入れ。」

    ハンジ 「おっじゃましま~す。」

    声を弾ませ、足どりも軽く、ハンジは入室する。リヴァイは、ベットサイドに腰をおろしたまま、表情を変えることなく、ハンジを迎える。

    ハンジは、明るい表情のまま、窓の前に立つ。

    ハンジ 「あっりゃ~、まだ降ってる…明日こそ、エレンの実験やりたいんだけどなぁ…」

    そう言って、口を尖らせるハンジ。

    リヴァイ 「…ハンジ…」

    リヴァイは、静かに口を開く。

    ハンジ 「…な、なに…?」

    ハンジはドキリとして、振り向く。

    リヴァイ 「お前…エレンに言ったそうだな…俺たちは恋人同士じゃないってことを、理解しろと…それが…俺のためだと…」

    ハンジは、一瞬表情を崩したものの、すぐに笑顔を作り

    ハンジ 「あっ…あはは…だってそうでしょ。リヴァイだってイヤでしょ、こんな私と恋仲と思われんの。」

    リヴァイは、静かに立ち上がり、ハンジの方へゆっくりと歩み寄る。

    ハンジは、ゆっくりと後ずさる。リヴァイはそれを追う。

    ハンジ 「私だって…イヤだよ…リヴァイ…」

    リヴァイは、それを追う。

    ハンジ 「イヤだよ…だって…だって…」

    背後を壁に阻まれ、ハンジはその場に、ずるずると座り込む。

    ハンジ 「だって…もしあなたまで…」

    リヴァイは、ハンジのもたれる壁に両手を押しあて、ハンジの上に覆い被さる。

    そしてその耳元で、静かに言った。

    リヴァイ 「それで今日は…どうしてほしいんだ…?」

    ハンジはその身体にしがみつきながら

    ハンジ 「あたためて…いつもみたいに…」

    リヴァイは目を伏せ

    リヴァイ 「…分かった…」

    ハンジは、そのあともしばらくの間、その男の胸の中に、顔を埋めていた。
  8. 22 : : 2014/11/23(日) 21:24:45
    翌日は、雨はあがり、青空が広がった。

    ハンジ 「いぃぃやっっほ~~~いぃっ!!!」

    屋外に出たとたん、はしゃぎまくるハンジ。

    その後ろを静かに歩く、リヴァイとエレン。

    エレン 「ハンジさん…いつにもまして、お元気ですね…」

    リヴァイ 「…ああ…」

    エレンの言葉に、静かに応じるリヴァイ。

    エレン 「今日が良い天気で…こうして、外で実験ができるから…ですかね…」

    リヴァイ 「…まあ、クソメガネのことだ。そんなところだろう。」

    ハンジは、エレンとリヴァイに、とびっきり輝く笑顔をみせ

    ハンジ 「さあ、エっレぇぇぇン、はりきって、頑張るよ!!!」

    エレンも笑顔をみせ

    エレン 「はい…ハンジさん!」

    リヴァイは、そんなハンジを、表情を変えることなく、見つめ続けていた。
  9. 23 : : 2014/11/26(水) 14:43:35
    そしてまた、夜を迎えた。

    エレンは、ハンジの自室にて、共に今後の巨人化実験の内容について、綿密な打ち合わせをしていた。

    ふいに、ハンジは勢いよくイスにもたれかけ、う~んと伸びをする。

    ハンジ 「…っか~、まだまだ課題は山積みだね…ま、その方が退屈しないけど。」

    エレン 「…そうですね…」

    ハンジは、そんな自分を見つめるエレンに笑みを向け

    ハンジ 「…どうしたの、私の顔に、何か付いてる?」

    エレン 「あっ…いえ、そんなんじゃないです…」

    エレンは慌てて首を振り、続ける。

    エレン 「そうじゃなくて…ハンジさん、また、元気になってよかったなって…」

    ハンジ 「へっ?私が?」

    エレン 「…はい。あの、オレが…兵長とハンジさんが…その…仲良くしている現場を目撃してしまった時…少々、元気がなかった気が…」

    ハンジは、エレンが言い終えると同時に、腹を抱えて笑い出す。

    ハンジ 「っ…ははは…私とリヴァイが…仲良く…エレン、君、おもしろい言い方するんだね。」

    エレンは赤面し、うつむく。彼にだって、あの時2人が何をしていたかは理解していた。ただ、15歳の少年にとって、それを直接口に出して言うことは、恥ずかしいことでもあったのだ。

    だがハンジは

    ハンジ 「普通に、私とリヴァイが抱き合って濃厚にキスしてたって言えばいいのに…」

    いとも簡単に口にし、エレンの顔はますます赤くなる。
  10. 24 : : 2014/11/26(水) 14:54:55
    エレン 「はぁ…すみません…自分にはまだ、経験が無いもので…」

    律儀に答えるエレン。

    ハンジは、そんなエレンの肩に手を回し、そっと顔を近づける。

    ハンジ 「じゃあ…今、してみる…?」

    エレン、大慌て。

    エレン 「ちょっ…ハンジさ…それは無理ですって!!!」

    ハンジはパッと手を放し、ごめんごめんと笑う。

    ハンジ 「冗談だってばエレン。やだなぁ、そんなに慌てることないのに…」

    見ればエレンは、なんとかハンジの手から逃れようともがき、机に思い切り顔をぶつけていた。

    ハンジ 「あらら…大丈夫?」

    エレンをのぞきこむハンジ。彼女の顔を近くに感じ、エレンは再び赤面し、慌てる。

    エレン 「うわっ…!」

    そしてその拍子に、イスから床に転げ落ちる。ハンジは、ため息をつくと

    ハンジ 「ごめん。本当に…私のことは心配しなくていいから…」

    エレンは、ぶつけた腰をさすりながら

    エレン 「すみません、オレの方こそ、余計な心配をしてしまって…」

    ハンジ 「そんなことないよ。それにしても、新兵に気を遣わせるなんて、ダメな上官だね、私も。」

    ハンジが見せる精一杯の笑顔に、エレンは立ち上がると

    エレン 「そんなことありませんよ、ハンジさん。これからも、頼りにしてます。」

    ハンジは、目を潤ませる。

    ハンジ 「…ありがとう…」
  11. 25 : : 2014/11/26(水) 22:05:20
    「…で…」

    エレンとの打ち合わせを済ませ、ハンジは今夜もリヴァイの自室に訪れていた。

    相変わらず無表情のままハンジを迎えたリヴァイは、冒頭の一言を口にする。

    ハンジ 「…で、って?」

    リヴァイ 「今日は…何の用でここに来た…もう夜中だろ。」

    ハンジ 「でもリヴァイ、まだ寝ないでしょ?」

    さも自分の部屋のようにくつろぐハンジに、リヴァイは大きくため息をつき

    リヴァイ 「俺が就寝することによってお前が帰るんであれば、寝る。」

    ハンジは苦笑し

    ハンジ 「ま、リヴァイももうトシなんだし、ちゃんと寝たほうがいいと思うよ?」

    リヴァイ 「そのセリフ、そっくりそのまま返す。」

    ハンジ 「私は、まだ若い!」

    得意気にふんぞり返るハンジを尻目に、リヴァイは入り口の扉を開くと、

    リヴァイ 「…帰れ。」
  12. 26 : : 2014/11/26(水) 22:14:11
    ハンジは、足早にリヴァイのもとへと駆け寄り、おそるおそる背後からその身体を抱き締める。

    リヴァイは、とくに何もすることなく、ハンジの言葉を待つ。

    ハンジ 「リヴァイ…ごめん…」

    リヴァイは、息をつき

    リヴァイ 「それは何に対して謝ってやがる…色々ありすぎて、キリがねぇ。」

    ハンジは、リヴァイを抱き締める手を、きゅっと強め

    ハンジ 「…ごめん…今日も…その…」

    リヴァイは、ハンジの手をほどく。そして、ハンジと向き合う。

    リヴァイ 「てめぇはもっと、色っぽく誘えねぇのか。」

    ハンジ 「無理…だって、まだ若いんだもん。」

    リヴァイ 「てめぇは若いんじゃなくて…まだガキなだけだ。」

    ハンジ 「そんなガキなハンジさんでも…ちゃんと抱いてくれるリヴァイは、大人なんだね。」
  13. 27 : : 2014/11/26(水) 22:28:09
    リヴァイは扉を閉め、カギをかける。

    リヴァイ 「…ハンジ…」

    ハンジ 「ん、なあに?」

    リヴァイ 「今夜も相手はしてやる…ただし、明日から一週間は、俺の部屋には来るな…ま、仕事の用件なら別だが…」

    ハンジは、おどけた様子で腕組みし、う~んと唸る。

    ハンジ 「…一週間、リヴァイ断ちかぁ…」

    リヴァイは、ベットへと向かいながら

    リヴァイ 「それを約束できるなら…さっさとこっちへ来て脱げ。」

    ハンジも、ベットへと向かいながら

    ハンジ 「うん…分かった。…リヴァイ…」

    リヴァイ 「なんだ。」

    ハンジ 「…ごめんね…」

    リヴァイは、自分のシャツのボタンを外しながら

    リヴァイ 「約束を追加だ…もう謝るな。いちいち面倒だ。」

    ハンジはメガネを外し、髪をほどきながら

    ハンジ 「…了~解。」
  14. 28 : : 2014/11/28(金) 23:29:03
    それから数日が経ち、エレンは久方ぶりに、同期であるアルミン、そしてミカサと顔を合わせた。

    エレン 「よう、お前ら。久しぶりだな!」

    アルミンは、エレンの顔を見るなり、笑顔で手を振る。

    アルミン 「エレン…元気そうだね!」

    エレン 「はは、まあな。」

    それに対しミカサは、思いつめた様子でエレンに駆け寄ると

    ミカサ 「エレン…何も酷い事はされてない?ちゃんと食事は摂れているの?」

    ミカサに詰め寄られ、エレンは少しうっとうしそうに顔を歪め

    エレン 「酷い事とかされてねぇし、メシだってちゃんと食ってるよ。余計な心配すんなよ!」

    語気を強めるエレンに、ミカサはうつむいた。

    ミカサ 「そんな…私はただ…」

    そんな彼女の様子を見、エレンはミカサの顔をのぞきこみ、ほんの少し優しい口調になる。

    エレン 「おい…そんなに落ち込むなよ。…その…せっかく心配してくれたのによ…キツイ事言って…悪かった…」

    そんなエレンの様子に、2人の幼なじみは驚く。

    以前の彼からは、想像できない態度だった。

    アルミン 「エレン…何か、あったの…?」

    突然問われ、エレンは首をかしげる。

    エレン 「は?…別に、何もねぇけど。」

    ミカサ 「エレン…とにかく私は、家族であるあなたを、守りたい。それだけ。あなたが過度に気を遣う必要はない。」

    と、エレンから目を反らしながら言うミカサは、微かにその頬を染めていた。
  15. 29 : : 2014/11/30(日) 21:06:58
    ふと、先輩兵士がミカサを呼ぶ声が聞こえる。

    アルミン 「あ…ミカサ、ほら、行かないと…」

    ミカサ 「分かってる…じゃあエレン、また…」

    エレン 「ああ。またな、ミカサ…」

    ミカサは、名残惜しそうに後ろを振り返りながら、先輩兵士のもとへと向かっていった。

    エレン 「…なぁ、アルミン…」

    アルミンと2人きりに(少し離れた場所に、監視役の兵士はいたが)なり、エレンは静かに口を開く。

    エレン 「お前の意見を聞きたいんだが…」

    思いの外、真剣な眼差しに、アルミンも何事かと耳を傾ける。

    エレン 「…オレ今、ハンジさんと毎日顔を合わせてるんだが…」

    アルミン 「ああ。巨人化の実験に、ハンジさんは必ず立ち会ってるからね。」

    エレン 「そうなんだ…で、ハンジさんの様子なんだが…」

    アルミン 「様…子…?」

    話の流れがいまいちつかめず、アルミンは眉を寄せる。

    エレン 「ハンジさん…元気が無いんだ…」

    アルミン自身も、ハンジ・ゾエがどのような人物であるかは、把握しているつもりだった。

    巨人への興味関心を、人一倍持ち、常に死と隣り合わせという環境にありながらも、笑顔を絶やさず、パワーの塊のような人だった。

    アルミン 「それは…心配だね…」

    エレン 「本人は普段通りに振る舞ってるつもりみたいだけど…なんか、引っ掛かるというか…」

    自ら感じた違和感を、なんとか言葉にしようと考え込む友人に、アルミンは微笑んだ。

    アルミン 「心配なんだね…ハンジさんのことが…」
  16. 30 : : 2014/11/30(日) 21:17:45
    エレンは、はにかんでみせる。

    エレン 「毎日顔を合わせてっからな…オレも、ハンジさんには色々と世話になってるし…何か、力になれねぇかと思って…」

    先ほどのミカサに対する態度も、今の彼の様子をみれば納得できた。

    身体的な能力のみならず、精神的な面でも、彼は成長しつつあるのだろう。

    そんな幼なじみに、アルミンは静かに言った。

    アルミン 「…僕も、年上の女の人のことは、よく分からないけど…」

    エレンも、隣に立つ幼なじみの話に、じっと耳を傾ける。

    アルミン 「自分が…伝えたいと思った事を、素直に話せばいいんじゃないかな。それが間違ってるかどうかなんて、自分はそれが正しいと思ってるんだから、分からないだろ?それを伝えた事によって、どうなるかは、誰にも分からない。エレンが、ハンジさんを元気づけるために、伝えたい事を、伝えればいい。エレンは…いや、僕たちはお互い、伝えたい事を、きちんと伝えられる時間なんて、そう多くは残されていないからね。」

    2人の少年の横を、風が通りすぎてゆく。

    茶色がかった前髪を揺らしながら、エレンはつぶやいた。

    エレン 「伝えたい事、か…」

    風になびく金色の髪をかき分けながら、アルミンはエレンを見る。

    アルミン 「ごめん…上手く言えなくて…」

    エレンも、アルミンと向き合う。

    エレン 「いや…ありがとな、アルミン。オレ、やってみるよ。」

    そしてまた、夜を迎えた。
  17. 31 : : 2014/11/30(日) 21:30:07
    ハンジ 「今日も1日お疲れ様、エレン。」

    実験を終え、今日もハンジは、エレンを笑顔でねぎらう。

    エレン 「いえ…ハンジさんこそ、お疲れ様でした。」

    ハンジ 「私はそんなに疲れてないよ。」

    エレン 「…いえ…」

    エレンはうつむき、口をつぐんだ。ハンジはその様子に、眉をひそめる。

    ハンジ 「…どうしたの、エレン…」

    少しの沈黙のあと、エレンは重い口を開いた。

    エレン 「ハンジ…さん…最近…その…」

    ハンジ 「私が…なに…?」

    エレン 「元気が…」

    ハンジ 「うん?」

    エレン 「…無いかと…」

    エレンがそう言い終えるなり、ハンジは声を上げて笑いだす。

    ハンジ 「はっはっは…そうみえる!?ぜ~んぜんそんな事ないんだけど…ははは…」

    エレン 「兵長と…」

    ハンジの笑い声が止まる。エレンは続ける。

    エレン 「兵長と…なにか、あったんですか…?」

    ハンジの表情も消える。ハンジは、ゆっくりとエレンを見る。

    ハンジ 「どうして…そう、思うの…?」

    エレンは、そんなハンジの豹変ぶりに慌て

    エレン 「いえっ…なんとなく、そう思っただけです…本当に…」

    ハンジは下を向き、静かに言った。

    ハンジ 「…リヴァイに…」

    エレン 「…はい…」

    ハンジ 「一週間、リヴァイの部屋に来るなって言われた…」

    エレン 「兵長に…ですか…」

    ハンジはエレンの目を見る。

    ハンジ 「これがどういう意味か…分かる?」

    エレンは、何度もうなずいてみせ

    エレン 「はい…分かります…はい…」

    そんな少年の様子に、ハンジは寂しげに笑ってみせる。

    ハンジ 「だから私は、寂しいわけさ…」
  18. 32 : : 2014/11/30(日) 21:40:59
    エレン 「そう…ですか…」

    どう言葉を続ければよいか分からず、うつむくエレンの肩に、ハンジは優しく手をのせ

    ハンジ 「大丈夫。仕事は、ちゃんとするから。君は、余計な心配をしなくてもいいんだ。」

    黙ったままのエレンに、ハンジは息をつくと

    ハンジ 「じゃあ、私は部屋に戻るから…おやすみ…」

    そう言い残し、立ち去ってゆくハンジ。エレンは、その拳をぎゅっと握りしめて

    エレン 「…ハンジさん…」

    ハンジは、立ち止まる。

    エレン 「そんなに…落ち込まないでください…」

    ハンジ 「落ち込んでなんかないよ。逆に、リヴァイのほうが、私と会えなくてしょげてたりして…ふふふ。」

    エレン 「兵長の様子はいつもと変わりません。」

    ハンジ 「…。」

    エレン 「…ハンジさん…」

    エレンは、ハンジと再び向き合う。

    エレン 「くよくよしていても、仕方ないですよ。今は、前に進むべきです。オレも、精一杯やります。しかし、ハンジ分隊長の力も、必要不可欠なんです。」

    ハンジは黙って、エレンを見ている。エレンはいつしか、自らの熱弁に酔いしれ、頬を紅潮させ、しゃべり続ける。

    エレン 「そうです…オレは、この巨人化する能力を使いこなして、必ずウォール・マリアを奪還します。そして、オレん家の地下室に行き、巨人の謎を解き明かしましょう。そして巨人を…この世から駆逐しましょう。やりましょう、ハンジさん…!」
  19. 33 : : 2014/11/30(日) 21:56:24
    エレンの熱弁が、がらんとした通路の向こうに、響き、消えてゆく。

    しばしの沈黙ののち、ハンジは口を開く。

    ハンジ 「…正しいね…」

    その言葉が、自分の熱弁への賛同だと思ったエレンは、笑顔をみせる。

    ハンジ 「…ほんとに…」

    しかし、それは間違いだった。

    ハンジ 「正しすぎて…ヘドが出るよ…」

    エレン 「…えっ…」

    ハンジ 「エレン…君は、やっぱりまだ子供だね…」

    そんなことはありません、とも言えず、エレンは黙りこくる。

    ハンジ 「正しいことだけが全てなら…私とリヴァイの関係は正しくない。エレンは、もう私はリヴァイのところに行かないほうがいいって、思ってるんだね…」

    エレン 「いえっ…それとこれとは別…」

    エレンの頬に、ハンジはそっと触れる。

    ハンジ 「じゃあエレン…君がリヴァイの代わりになってくれる…?」

    エレン 「…えっ…そ…」

    戸惑うエレンをよそに、ハンジはその耳元に囁く。

    ハンジ 「ねぇ…どうなの…?」

    リヴァイ兵長の代わりになるという事が、どういう事なのか、エレンにも理解できていた。

    つまりは…ハンジさんと…

    エレン 「…っ…」

    思わず、生唾を飲む。

    しかし、彼の猪突猛進な性格が、状況を瞬時に動かした。

    エレンは、ハンジの両肩をつかむと

    エレン 「オ…オレでよければ…!」

    真剣な眼差しを自分に向ける少年の頬を、ハンジは両手でつまんでみせる。

    ハンジ 「バっカだね~、冗談だよ。私が君みたいな新兵、相手にできるわけないでしょう?」

    エレン 「へっ…へも、ひゃんじはん…おへ…」

    頬をつままれたまま、しゃべるエレン。ハンジは笑って両手を放す。

    ハンジ 「…でも、ありがとう、エレン…」

    そしてハンジは、エレンが止める間もなく、足早に去っていった。

  20. 34 : : 2014/12/02(火) 22:23:13
    「…ほう、そうか…」

    きゅぽん、という小気味良い音と、リヴァイの声が重なる。

    ここは、リヴァイの自室である。夜も更け、リヴァイはワインの封を開ける。エレンは、落ち着かない様子で、リヴァイの勧めたイスに座っていた。

    リヴァイ 「あのクソメガネ…新兵に何言ってやがる…」

    リヴァイはため息をつくと、机の上にグラスを2つ並べ、そのうちの1つにワインを注ぐ。

    リヴァイ 「…エレン、お前はどうする?」

    突然問われ、エレンは何を問われたのか分からず、戸惑う。

    リヴァイは大義そうにワインボトルをエレンに見せ

    リヴァイ 「…飲むのか…?」

    エレンは慌てて首を振る。

    エレン 「いえっ…自分には、まだ…」

    リヴァイは、ワインボトルに貼られたラベルを眺めながら

    リヴァイ 「俺がお前くらいの歳には、もう飲んでいたが…ま、こんな良い酒じゃなかったがな…」

    エレンは酒に関して、良い思い出がなかった。以前、ピクシス司令からスキットルに入った酒を勧められ、ものの勢いで口にしたものの、とても体が受け付けられる代物ではなく、盛大に吹いてしまったのだ。

    上官から勧められた酒を断るのは心苦しいが、ここでまた盛大に吹いてしまうよりは…かなり、ましな判断だろう。

    リヴァイは1人、ワインの入ったグラスを持ち、その色を眺めながら

    リヴァイ 「俺からの酒は断っておいて…ハンジからの誘いは断らないとはな…」

    先程のハンジとのやりとりを、エレンはリヴァイに話していた。

    エレンはハンジが立ち去った後、どうしても地下の自室で眠ることができず、かなり迷った結果ではあったが、こうしてリヴァイの自室の扉を叩いたのである。

    リヴァイ 「エレン…お前、ハンジがはぐらかさなきゃ、あいつと寝てたのか?」

    その問いに、エレンはワインの代わりに注がれた水を吹いてしまう…それはもう、盛大に。
  21. 35 : : 2014/12/03(水) 22:07:40
    エレン 「そっ…そんなわけないでしょう!!!」

    と叫んでから、エレンははっとした。

    目の前には、ポタポタと水を滴り落とし、いつにも増して不機嫌な顔を向けるリヴァイの姿が…。

    エレン 「…あ…えっ…と…」

    頭が真っ白になり、言葉が出ない。

    そしてよみがえる、審議所の恐怖。

    リヴァイ 「…エレン…」

    エレン 「はいぃっ!?」

    リヴァイ 「…そこのタンスから、タオルを取れ…」

    タオル!?タオルで…何をされるんだ…

    エレン 「…どうぞ…」

    エレンは覚悟を決め、リヴァイにきれいに洗濯されたタオルを手渡した。

    リヴァイ 「…ああ…」

    リヴァイはタオルを受けとると、ごく当たり前のように、自分の濡れた髪と顔を拭きはじめる。

    エレン 「…兵…長…」

    リヴァイ 「どうした?」

    リヴァイは、せっせと髪と顔を拭き続ける。

    エレン 「兵長に水を…かけてしまったのですが…」

    ひととおり拭き終わったのか、リヴァイはタオルを軽くたたみ、机の上に置く。

    リヴァイ 「…そうだな。」

    エレン 「怒らないんですか?」

    その言葉に、リヴァイはエレンをギロリとにらみ

    リヴァイ 「そうしてほしいのなら…そうするが?」

    エレン 「いえっ…遠慮しときます!」

    エレンは即答した。
  22. 36 : : 2014/12/03(水) 22:16:26
    リヴァイ 「…そもそもな…」

    リヴァイは、再びイスに腰をおろす。

    リヴァイ 「俺があいつを突き放したせいでエレン…お前にまで迷惑をかけたな…」

    あいつ。

    ハンジのことだろう。

    エレン 「ハンジさんを兵長は…突き放したんですか…」

    エレンはその言葉の語気を強めた。その様子に、リヴァイはエレンを見る。

    リヴァイ 「…なんだ。言いたいことがあるなら、言え。」

    エレンは迷った。

    しかし、以前目の当たりにした、ハンジの悲しみに満ちた表情が、彼の背中を押した。

    エレン 「兵長は…悪い事をしたと…思います。」

    リヴァイは、その長い脚を勢いよく組んでみせ

    リヴァイ 「ほぅ…それで?」

    エレン 「ハンジさんはきっと…兵長のことを…愛してらっしゃると思います。」

    リヴァイ 「…で?」

    エレン 「真剣に…想ってらっしゃると…」

    リヴァイ 「…だから?」

    エレン 「それなのに…突き放されてしまって…」

    リヴァイ 「…。」

    エレン 「ハンジさんが…その…気のど…」

    ダンッ!!!

    突如リヴァイがワイングラスを机に叩きつける音に驚き、エレンは、言葉を切った。
  23. 37 : : 2014/12/28(日) 21:35:20
    リヴァイ 「…正しいな…」

    その言葉が、決して自分への賛同とは限らないことを、エレンは知っていた。

    リヴァイ 「本当に…お前の言葉は正しすぎて…」

    その先に続く言葉を、エレンは知っていた。

    リヴァイ 「…ヘドが出る…」

    リヴァイは、そう静かに締め括る。その瞳に、暗い光を宿したままで。

    エレンはうつむき、思案に暮れた。

    正しいこと、間違っていないことを口にしたことによって、相手に反感を買われることは、これが初めてではなかった。

    何度もあった。自分の言っていることが、正しければ正しいほどに。

    相手が自分に反発すれば、迷わず立ち向かった。

    その胸ぐらをつかんで

    時には、拳を交わして。

    自分が正しいのだと、相手に理解させるために。

    しかし今は…

    リヴァイ 「…俺はな…」

    リヴァイが静かに口を開く。エレンは顔を上げ、じっと彼の話に耳を傾ける。

    リヴァイ 「ハンジが…事ある毎に俺の所に来るのは…間違いだと思った。」

    エレン 「ハンジさんも同じような事を言ってました。恋人同士でもない自分が、兵長のところに行くのは、正しくない事だ、と。」

    エレンの言葉に、リヴァイはピクリと眉を上げる。心なしかその瞳に、わずかに光が射す。しかし、その表情に、さほど変化は無かった。

    エレンは静かに、リヴァイに問うた。

    エレン 「リヴァイ兵長…もうハンジさんとは、会わないおつもりなんですか…いやもちろん、仕事とは別で…」

    リヴァイ 「…クソメガネ次第だ。」

    エレン 「ハンジさん次第…」

    リヴァイ 「あいつがもう、俺を必要としないというのなら、俺は身を引く。それが、あいつが一丁前に他に男でもできた時か、あいつなりに吹っ切ることができた時なのか…それは分からんが…」

    エレンは考えた。

    もし、ハンジが他の男性と出会い、普通に恋をしていたのなら、きっと、あの時のような、悲しみに満ちた表情を浮かべることもないのだろう。

    相手の男性もまた、ハンジを想っているのなら。

    だが、今は…

  24. 38 : : 2014/12/28(日) 21:42:16
    エレン 「兵長はハンジさんのこと…何とも思ってないんですね…」

    リヴァイ 「なぜお前に…そんなことを答えなきゃならないんだ…」

    その反応に、エレンは思わずリヴァイの顔を見る。相変わらずの無表情だが、その語気には、明らかに怒りを孕んでいた。

    エレン 「…すみません…」

    エレンが、そううなだれると、リヴァイは、いや、いい。と組んだ脚をほどき、居ずまいを正した。

    リヴァイ 「エレン、今日はもういいだろう。地下室へ戻って寝ろ。」

    エレン 「はい…兵長。失礼しました…」

    エレンは、そう言って立ち上がると、部屋の扉をくぐった。

    振り向き様に見たリヴァイは、グラスになみなみと酒をつぎ、一気にそれを飲みほしていた。

  25. 39 : : 2014/12/28(日) 21:58:36


    ハンジはその頃、巨人の実験に関する資料をまとめていた。

    いつもなら、直属の部下である、モブリット・バーナーに任せているのだが、あいにく彼は今、急用で故郷へと帰っている。

    なんでも、母親の容態が悪化したらしい。

    その知らせが届いた当初は、しきりに遠慮していた彼を、ハンジはなんとか説き伏せ、3日間の休日を与え、故郷へ帰らせた。

    …そんな経緯も相まって、もう深夜になるというのに、いっこうに終わる気配がない。ハンジは、深いため息をつく。

    ハンジ 「はぁ…なんか、モブリットのありがたみを実感したな…いつも当たり前のようにある存在って、失ってみて初めて、その大切さに気づくんだよね…」

    そうひとりごちた後、ハンジの胸が、チクリと痛む。


    リヴァイ…

    思い出したくないのに、思えば思うほど、今はつらいだけなのに、ハンジの頭の中は、いつしか彼の事で埋めつくされていった。

    ハンジ 「…はぁ…」

    ため息。静寂。1人ぼっちの夜。


    行きたい。リヴァイのところに。そして、彼の温もりに埋もれたい。

    …でも…


    ドンッ…


    ハンジ 「…んっ?」

    扉の向こうから…それも、かなり近いところから、物音がする。

    なんだろう。こんな夜更けに…

    ハンジは、不審に思いながらも、自室の扉をそっと開いた。
  26. 40 : : 2014/12/28(日) 22:09:03
    ハンジ 「…はぁい…なに…?」

    訪問者かもしれないと思い、外をのぞくが、誰もいない。

    ハンジ 「っかしいな…確かに物音…が!?」

    何気なく下を見下ろし、驚く。そこには…


    ハンジ 「リヴァイ!?」

    リヴァイが床に座り込んでいる。

    ハンジ 「ちょっとどうしたの…大丈夫なの、ねぇ…」

    ハンジがリヴァイの体に触れようとすると、リヴァイは素早くその手を逃れ、ハンジの部屋に上がり込む。

    ハンジ 「ちょっ…ちょっと…」

    ハンジは、扉を閉めると、リヴァイを呼び止めようとする。しかし、彼はツカツカと、部屋の奥へと進む。

    その先には、ベッドがある。

    ハンジ 「ちょっとリヴァイったら…」

    ようやく立ち止まったリヴァイに近づき、ハンジは何事かと尋ねようと、リヴァイの肩に触れようとし…


    ハンジ 「…っ…あっ…」

    そのまま、ベッドの上に押し倒された。
  27. 41 : : 2014/12/28(日) 22:29:16
    酒のにおいがする。

    ハンジ 「リヴァイ…酔ってるね…」

    リヴァイ 「…ああ。」

    ハンジ 「酔った勢いで私に夜這いをかけに来た…の…?」


    リヴァイは答えない。

    そしてハンジはその目を見れない。怖かった。そう思う理由を考えることさえも。


    ハンジ 「リヴァ…んっ…」

    唇を押し付けられ、何が起こったのか理解する暇もなく、舌を絡める。

    メガネはとっくに剥ぎ取られ、ハンジが時おり苦痛に顔を歪めるのも構わず、服も次々に脱がされた。

    リヴァイは、しばしハンジの身体を愛撫した後、自分の服を手早く脱ぎはじめる。

    その間に、ハンジはとろけかけた意識をわずかに戻し、問う。

    ハンジ 「…どうしたの、急に…」

    リヴァイはハンジと目を合わせることなく答える。

    リヴァイ 「…どうせお前、こうして欲しかったんだろ…」

    ハンジは、ピクリと眉を上げ

    ハンジ 「こうして…って…?」

    リヴァイは、最後の1枚を脱ぎ捨てると、ハンジの髪をそっと撫でながら

    リヴァイ 「あたためて…欲しかったんだろ…俺に…」

    ハンジは、その手に自らの手を重ねる。

    ハンジ 「どうして…そう思ったの…」

  28. 42 : : 2014/12/29(月) 21:56:02
    リヴァイ 「どうして…か。」

    それはお前が寂しいだろうと思ったから。お前がまたしょげていると、エレンが言っていたから。

    リヴァイ 「…さあな。」

    ハンジは、リヴァイの身体を優しく抱き寄せ

    ハンジ 「私が…寂しい思いをしてると思ったの…?」

    リヴァイは、スッと目をそらす。

    リヴァイ 「そう思うのなら…思えばいい。」

    ハンジ 「…うん…」

    ハンジは、彼の温もり、彼のにおいを感じていた。懐かしいと同時に、自分がいかにこれを望んでいたのかと思うと、哀しくて…哀しくて…

    リヴァイ 「…もう、いいか…」

    彼は続きを始めようとしていた。ハンジに、それを拒む理由など、どこにもなかった。





  29. 43 : : 2015/01/17(土) 21:54:26
    その唇から紡ぎだされるのは、荒い息と、喘ぎ声。

    他に何が要る…?

    何を紡ぎ出せば…この寂しさや不安。そんな暗闇から光が見えるのだろう。

    ハンジは、リヴァイに抱かれる度、そんな事を考えるようになっていた。

    好き?

    大好き?

    愛して…る…?

    他に何があるのだろう。今の自分と彼に、相応しい結びの言葉は。

    リヴァイ 「…ハンジ…」

    ふと名前を呼ばれ、ハンジはリヴァイを見る。

    ハンジ 「…ん、なぁに…?」

    少しかさついた、彼の唇。

    何も縁取ること無く、重なり合った。

    そして、また温もりを分け合う。

    ハンジ 「…うん…」

    きっとこれが、私たちの“かたち”。

    愛だと呼ぶには脆すぎるほど、弱くて儚い。

    それを抱いたまま、2人はまた、生きながらえるのだった。
  30. 44 : : 2015/01/17(土) 21:57:34
    ※…以上で終了とさせていただきます。

    いやあ、難しかったです。私も、もっと勉強しないと。

    明日をも知れぬ世界を生きてゆく2人の間に生まれた“関係”…うむ、これは要追試かなぁ(^_^;)

    長い執筆期間にもかかわらず、ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
  31. 45 : : 2015/01/17(土) 21:58:17
    読んでました

    乙です
  32. 46 : : 2015/01/17(土) 22:01:02
    >>45 とあくん!!!
    ありがとうありがとうありがとう(T_T)
    ずっと悩んでたんだよ、どう展開しようかって。
    珠さんもまだまだ勉強不足だねぇ(^_^;)

  33. 47 : : 2015/01/17(土) 22:32:34
    さだはる殿執筆お疲れ様でした。
    本当に良かったです!
    実を言うと、さだはる殿のリヴァハンに憧れている部分が…
    そして、これからも頑張って下さい♪
    応援してます‼︎



  34. 48 : : 2015/01/18(日) 10:27:05
    >>47 りぃちゃん!!!
    りぃちゃぁぁぁん\(; д ;)/←すがってる
    ありがとう嬉しいのよ嬉しいのよ
    さだはる、超悩んでたんだよぉ。
    そんなさだはるのリヴァハン好きになってくれて…めっちゃ励まされるわぁ。
    リヴァハンは奥が深いね。頑張るよ。
    りぃちゃんのことも応援してるよ。
  35. 49 : : 2015/01/18(日) 22:49:03
    執筆お疲れ様でした!

    なかなか煮えきらないリヴァハンは良い。
    原作の世界観だと、このぐらいの関係が一番妥当なのかなと思います。
    あえて名前のある関係にしないっていう。

    なんか私の中のリヴァハン像の一つをSS化してもらったみたいで嬉しいです。
    数珠繋ぎ殿とはよい酒が呑めそうだ…(私、お酒飲めませんけど)。
  36. 50 : : 2015/01/19(月) 21:30:21
    >>49 トリちゃん!!!
    あーーートリちゃぁぁぁん\(T д T)/ヒシ。

    超悩んだけどなんとか終われて良かったよぉ。

    大人の関係ってよー分からんわぁ。大人なのにぃ…

    トリちゃんにもすがってみたよ♪↑2行目のやつね。最後まで読んでいただき、ありがとうございますm(__)mペコ。
  37. 51 : : 2015/01/24(土) 16:35:18
    きゃあっ♪(*/∀\*)
    素敵なリヴァハン、ありがとうございましたぁ!♪
    さだはる殿のハンジが大好き♪
    そして、意味深げな文章が大好きです!
    次の作品も期待です!
    遅くなっちゃったけど、お疲れ様でした!♪
  38. 52 : : 2015/01/24(土) 21:37:23
    >>51 ゆう姫さま

    わあぁぁぁ姫ぇぇぇ\(> ▽ <)/ヒシッ。

    嬉しいよ!!!とくに、文章について感想を言ってもらえて

    修行中の身(いちおうね)としては、すっごい勇気づけられるし、励みになるよ。

    よーし、またリヴァハン書こっかなぁ♪読んでくれて、ありがとう(^^)
  39. 53 : : 2020/10/06(火) 15:23:56
    高身長イケメン偏差値70代の生まれた時からnote民とは格が違って、黒帯で力も強くて身体能力も高いが、noteに個人情報を公開して引退まで追い込まれたラーメンマンの冒険
    http://www.ssnote.net/archives/80410

    恋中騒動 提督 みかぱん 絶賛恋仲 神威団
    http://www.ssnote.net/archives/86931

    害悪ユーザーカグラ
    http://www.ssnote.net/archives/78041

    害悪ユーザースルメ わたあめ
    http://www.ssnote.net/archives/78042

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    http://www.ssnote.net/archives/80906

    害悪ユーザー提督、にゃる、墓場
    http://www.ssnote.net/archives/81672

    害悪ユーザー墓場、提督の別アカ
    http://www.ssnote.net/archives/81774

    害悪ユーザー筋力
    http://www.ssnote.net/archives/84057

    害悪ユーザースルメ、カグラ、提督謝罪
    http://www.ssnote.net/archives/85091

    害悪ユーザー空山
    http://www.ssnote.net/archives/81038

    【キャロル様教団】
    http://www.ssnote.net/archives/86972

    何故、登録ユーザーは自演をするのだろうか??
    コソコソ隠れて見てるのも知ってるぞ?
    http://www.ssnote.net/archives/86986

    http://www.ssnote.net/categories/%E9%80%B2%E6%92%83%E3%81%AE%E5%B7%A8%E4%BA%BA/populars?p=51

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