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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

逢いたくていま【ペトラ誕生日企画】

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  1. 1 : : 2014/11/05(水) 15:31:48
    こんにちは!!!

    やっちゃいますよー、ペトラ誕生日企画!!!

    数珠繋ぎ今、心拍数ヤバいです!!!まさか、旧リヴァイ班の誕生日が設定されてたなんて…ハァハァ。

    ペトラ誕生日企画、詳しくは、こちらまで→http://www.ssnote.net/groups/964

    ペトラのみならず、旧リヴァイ班愛が溢れて止まらない方、お待ちしてます!!!

    さて、今回のお話の条件はこちら↓↓↓

    * 不定期な更新

    * オルペト

    * 頭の血管が切れそうな興奮状態でぶっ立ち上げたw

    …以上の条件でもかまわない方は、ぜひ読んでいただけたらと思います。

    数珠繋ぎはまず、頭を冷やしに行ってから、執筆させていただきたいと思います。
  2. 6 : : 2014/11/05(水) 21:20:22
    旧調査兵団本部。

    ペトラ・ラルは、ここで、ある強敵と戦っていた。

    それは巨人でもなく、ヒトでもなく


    ペトラ 「」


    浴室に広がる、“カビ”という名の、強敵であった。
  3. 7 : : 2014/11/05(水) 21:27:26
    ペトラ 「…はぁ…今日中に終わるかなぁ。寒くなってきた時期なのに、どうしてこんなにカビが生えるんだろう…」

    12月の始め。いつしか屋外では、吐く息が白くなりはじめていた。

    くわえて、空気が乾燥しはじめて、小まめな保湿が必要になる時期でもあった。

    ペトラが所属する班の班長であるリヴァイは、異常なほどの潔癖症であり、ガラスであれば、一点の手垢も、彼は見逃さない。

    …よって、班員であるペトラたちも、こうして訓練の無い休日であっても、本部内の清掃を余儀なくされるのである。

    ペトラ 「…手、荒れるな…」

    ペトラは思わず、ブラシを持つ手を見、顔をしかめた。

    掃除が終わったら、忘れずにクリームを塗らないと…。

    兵士という立場にあっても、ペトラとて、女の子である。
  4. 8 : : 2014/11/05(水) 21:42:34
    「…ペトラ…」

    ペトラ 「きゃっ…」

    いきなり背後から声がして、ペトラは思わず声を上げる。

    オルオ 「はっ…何驚いてやがる…」

    振り向くと、オルオが呆れ顔で自分を見下ろしていた。

    ペトラ 「…もお、オルオ…急に話かけないでよぉ…」

    そう言って、頬をふくらませるペトラに、オルオはなぜか目をそらして

    オルオ 「…ぼ、ぼうっとしてるお前が悪いんだろ…」

    浴室の中だからなのか、声にエコーがかかる。オルオはそう言ったきり、目をそらしたまま、何も言おうとしない。

    心なしか、顔が少し赤いようにもみえる。ペトラはわけが分からず、怪訝な表情を浮かべ

    ペトラ 「ねぇ…一体、何の用なの?」

    オルオは、目を泳がせながら

    オルオ 「…いや…掃除、全然はかどってねぇな…」

    その言葉に、ペトラはムッとして

    ペトラ 「悪かったわね、これでも一生懸命やってるのよ!」

    売り言葉に買い言葉。オルオも、ムッとしてペトラを見、

    オルオ 「別に俺は…そんなつもりで言ったわけじゃねぇよっ!」

    ペトラ 「じゃあ、どういうつもりで言ったのよ!?」

    オルオは、ぐっと詰まり、

    オルオ 「……もういいっ!」

    そう言い放つと、オルオは勢いよく踵を返し、立ち去ってゆく。

    ペトラ 「なんなのよ、もう…あれ?」

    立ち去ってゆくオルオの右手に、タワシが握られているのが見え、足元は裸足で、ズボンの裾が、少し折り曲げられている。

    …もしかして…手伝ってくれようと…してた…?

    ペトラ 「だったら、素直に言えばいいのに…」

    ペトラのつぶやきは、オルオには聞こえなかった。
  5. 11 : : 2014/11/06(木) 21:51:01
    浴室を出たオルオは、裸足のままサンダルをつっかけ、廊下を歩いた。

    「…おっ、もう風呂の掃除、終わったのか?」

    声をかけられ、オルオは足を止めた。声の主は、グンタだった。

    廊下の掃除の途中なのか、ほうきを持ったまま、こちらを見ている。

    オルオは、再び目を泳がせた。まさか、手伝いもせず、ケンカだけして帰ってきたなんて、言えるはずもなく

    オルオ 「…あ、ああ。風呂場はもうすぐ終わるって言うから、先に戻ったんだ。」

    とっさについた嘘にも、グンタは疑いもせず、微笑む。

    グンタ 「…そうか。風呂場はとくに大変そうだから、心配したんだが、よかった。」

    オルオは、心をチクチク痛めたまま

    オルオ 「…あとは、エレンか?」

    グンタ 「ああ。1人で庭を掃除してる。草も伸びほうだいだから、手間取ってるだろう。」

    それを聞き、オルオは、呆れ顔でため息をついてみせる。

    オルオ 「ったく、しょうがねぇな。見に行ってやるか。」

    グンタ 「…ああ。色々やらせてすまないな、オルオ。」

    背後からかけられた仲間からのねぎらいの言葉に、オルオは、再び胸が痛むのを感じた。
  6. 12 : : 2014/11/07(金) 23:03:40
    オルオ 「おーい、新兵…」

    庭に出たオルオは、今期入団してきた新兵、エレン・イェーガーを呼んだ。

    エレン 「はいっ、何でしょう、オルオさん…」

    すぐに茂みの影から、エレンが顔を出す。そしてオルオのもとに駆け寄ると、何を言われるのだろうか、という目でオルオを見つめている。

    先輩兵士に対し、非常に従順な彼も、巨人に変身する、という特殊能力をもっている。

    もし、彼が巨人化し、暴走した場合、殺害することを目的に編成されたのが、オルオを含む特別作戦班、通称、リヴァイ班である。

    オルオ 「…庭の掃除はどうだ?」

    オルオの問いに、エレンは即座に

    エレン 「はっ。完了しています。」

    オルオ 「完了だぁ?」

    オルオは眉を寄せ、庭を見回す。

    …確かに、伸び放題だった草は取り除かれ、落ち葉やゴミなども、キレイに掃除されている。

    エレン 「…あの…オルオさん…」

    おずおずと声をかけられ、オルオはエレンを見る。

    エレン 「その…オルオさんはたしか、台所担当でしたよね?」

    オルオ 「ああ。そうだが?」

    エレンは、オルオの足元を見

    エレン 「…どうして、裸足なんですか…?」

    イタイとこを突かれ、オルオはムッとした表情で

    オルオ 「うるせぇな、俺がどんな格好で掃除しようが、俺の勝手だろ!」

    そうまくし立てられ、エレンは慌てた様子で

    エレン 「すっ…すみません…余計な事をきいて…」

    すると、2人の頭上で声がした。

    「おいおい、オルオ、何ムキになってるんだ…」
  7. 15 : : 2014/11/08(土) 22:31:45
    エレン 「…あれっ…今、声が…」

    エレンは、声の主がどこにいるのか分からず、きょろきょろと辺りを見回す。

    オルオも分からない様子で、上を見上げたまま

    オルオ 「おいエルド!どこにいるんだ!?」

    エルド 「…ここさ!」

    見ると、エルドが立体機動を使い、颯爽と2人の目の前まで降りてくる。

    悔しいが…認めたくないが、兵士なら誰しもそう変わらない動きでも、エルドがやると、とてもカッコいい。

    オルオは、そんな現実に、唇を噛み締める。

    エレン 「エルドさん…訓練をなさってたんですか?」

    エレンの問いに、エルドは首を振る。

    エルド 「いや。俺はこの旧本部の外壁の掃除をしていたのさ。はしごを使うよりも、この方が扱いに慣れてるしな。」

    そんなエルドに、オルオはすかさず

    オルオ 「おい、そんなことに立体機動装置を使ったのか?もしそれが兵長に知れたら…」

    エルドは肩をすくめ

    エルド 「立体機動の使用は…兵長命令だ…」

    オルオはその事実に、ぐうの音も出せず

    オルオ 「…けっ。」

    と、そっぽを向く。そんなオルオの足元を見たエルドは、ニヤリと笑い

    エルド 「…風呂の掃除は終わったのか?」

    エレン 「えっ…風呂は確かペトラさんの…」

    エレンの戸惑いをよそに、オルオはエルドに向き直り

    オルオ 「風呂場なんて知るかよっ。もう庭も終わったんなら、もう掃除はいいだろ。俺は先に休むからな。」

    と、すごすごと、エレンとエルドのもとを去っていった。

    エルドは、呆れた様子で息をつくと

    エルド 「まったく…しょうがないな、あの2人は…」

    エレン 「えっ…あの2人って…」

    戸惑い続けるエレンをよそに、エルドはオルオの背中を見つめ続けていた。
  8. 16 : : 2014/11/09(日) 21:53:25
    ペトラ 「あ~あっ、疲れた!」

    日の入りの時間が早くなり、外が暗くなりはじめた頃、ようやく風呂の掃除も終わり、ペトラは食堂に備え付けの椅子に腰をおろした。

    エレン 「…ペトラさん、お疲れ様です。」

    ペトラが腰をおろすタイミングに合わせ、エレンが目の前に紅茶を置く。ペトラの顔が、わずかにほころぶ。

    ペトラ 「あら、気が利くじゃない、エレン。」

    エレンははにかんだ様子で

    エレン 「兵長に紅茶を淹れるようになってから、すっかり身についてしまって…」

    グンタ 「…にしてもペトラ。お前風呂の掃除、オルオに手伝ってもらったんじゃないのか?」

    グンタがペトラの向かいの席に腰をおろしながら訊ねる。

    エレンも気になったのか、グンタにも紅茶を配りながら、ペトラに目を向ける。

    ペトラ 「あ、それは…」

    ペトラは、ふと皆から視線をはずす。そこへ、エルドが食堂に入ってくる。
  9. 19 : : 2014/11/10(月) 20:44:08
    エルド 「…ん、どうかしたのか?」

    グンタ 「いや、ペトラが風呂掃除にずいぶんと時間がかかっただろ?オルオが手伝いに行ったはずなのに、おかしいと思ってな。」

    グンタの説明を聞き、エルドが口を開こうとしたとき、ペトラが

    ペトラ 「オルオには…手伝おうかって言ってもらったんだけど、私が断ったのよ。私、自分のペースで黙々とやりたかったから。」

    その言葉に、エルドは意外そうに眉を上げ、グンタとエレンは、そうだったのかと顔を見合わせる。

    グンタ 「…でもな、ペトラ。せっかく手伝いに来てもらったんなら、やってもらえば良かったじゃないか。手、ずいぶん荒れてるぞ?」

    グンタにそう指摘され、ペトラは自分の両手を見、顔をしかめる。

    ペトラ 「はぁ…クリーム塗っても、すぐには治らないんだろうな…」

    そう肩を落とすペトラに、エルドが声をかける。

    エルド 「ペトラ。今日はお前が一番先に風呂に入れよ。」

    ペトラは驚き、顔を上げる。

    ペトラ 「何言ってんのよ。一番風呂はいつも兵長が…」

    エルド 「いいんだ。兵長には、俺から言っておく。それに兵長は今、玄関の掃除に集中していて、風呂に入るのは当分先になるだろうし。」

    エレン 「兵長…まだ掃除なさってるんなら、手伝いに行かないと…」

    そう言って飛び出そうとするエレンを、グンタが止める。

    グンタ 「待て。エレン。兵長は自分のペースでやりたいそうだ。下手に手を出そうとすると、逆に気を悪くされるぞ。」

    エルド 「クモの巣と戦う兵長…見てみたいけどな。」

    グンタ 「そうだな。ははは。」

    笑い合うグンタとエルドを尻目に、エレンは息をつき、ペトラは頬杖をつき、刻々と闇に包まれてゆく空を、ぼんやりと眺めていた。

  10. 20 : : 2014/11/10(月) 20:50:15
    オルオ 「…はあ…」

    白い息を吐く。何度目だろう。

    オルオ 「…はあ…」

    1人、旧本部の入口の前に佇むオルオ。

    まったく…何度目なんだろう。

    ペトラの表情に、ときめいたのは。

    『…もお、オルオ…急に話かけないでよぉ…』

    あのときの、あいつの顔。

    …やべぇ…可愛い…。

    それから、胸の鼓動が止まらなくなり、自分でも何を言っているのか分からず、気がつけばケンカになっていた。

    手伝ってやれなかった…力になって…やれなかった…。

    オルオ 「はあ…なんでだよ…」

    そんなつぶやきも、白い息とともに、空へと舞い上がってゆく。
  11. 21 : : 2014/11/11(火) 21:29:10
    「…オルオ…」

    オルオ 「ひっ!?」

    突然声をかけられ、オルオはびくりとする。見ると、それは自分たちの直属の上官、リヴァイ兵士長だった。

    リヴァイ 「…何をしている…ということは、きかないでおく…」

    リヴァイはそう前置きし、オルオの足に視線を落とし

    リヴァイ 「だが…その格好は解せねぇな…寒いだろ。」

    この寒空の下、裸足でサンダル履きなのを、咎めているのだろう。

    オルオは、今さらながら、ぶるっと体を震わせた。サンダルを履いた足は冷えきり、感覚を失っている。

    オルオ 「あの…すんません…」

    リヴァイは言った。

    リヴァイ 「すぐに風呂に入って、体を温めろ。」

    オルオ 「でも…兵長…」

    いつもは、兵長が一番に…。

    そう続けようとするオルオを、リヴァイは遮った。

    リヴァイ 「これは命令だ。お前も大切な戦力だ。ここで体調を崩されたら、他の班員にも迷惑がかかる。それを忘れるな…」

    そう言い残し、リヴァイは踵を返す。
  12. 22 : : 2014/11/12(水) 11:51:09
    人類最強の兵士でありながら、部下へのさりげない優しさも併せもつ…。

    兵長…俺、一生あなたについてゆきます…。

    オルオはリヴァイの背中を見送りながら、あらためて、そう心に誓う。

    でも、自分は…兵長のようにはなれない…。

    どんなに服装を合わせても。

    どんなに口調を真似したとしても。

    兵長には、自分には越えられない“何か”があった。

    その事実が、ガラスの破片のように、オルオの心に刺さり続けている。

    兵長に一歩でも近づくことができれば…そしたら、ペトラとも…。

    オルオ 「へっくし!」

    オルオはくしゃみをすると、足早に旧本部の中に入り、入浴の準備をし、風呂場へと急いだ。
  13. 23 : : 2014/11/12(水) 11:58:14
    「…あの、兵長…」

    リヴァイが廊下を歩いていると、エルドが声をかけてくる。

    リヴァイ 「なんだ。」

    リヴァイは足を止める。

    エルド 「兵長…折り入って、お願いがあるのですが…」

    リヴァイ 「…とりあえず話せ。それから判断する。」

    エルド 「いつも、兵長が一番最初に入浴されてますが、それを今夜はペトラに譲っていただけないかと…」

    リヴァイは眉間のシワを深くする。

    リヴァイ 「つまり…ペトラが俺たちの中で、一番最初に入るということか。」

    エルド 「ええ。…申し訳ないのですが、もうすでに入浴しているかと…」

    エルドの言葉に、リヴァイは驚いた様子で

    リヴァイ 「…おい、それはいつの話だ!?」

    エルド 「…は?」

    リヴァイ 「ペトラが風呂に入ったのは、いつの話だ!?」

    エルド 「今から…4、5分前かと…」

    リヴァイ 「…チッ…」

    リヴァイは慌てた様子で、風呂場へ向かう。

    エルド 「えっ…兵長…兵長!?」

    エルドはわけが分からず、リヴァイのあとを追った。
  14. 24 : : 2014/11/12(水) 13:16:05
    ペトラは、脱衣場に入ると、服を脱いだ。

    鏡に映る、自分の身体を見る。

    兵士として鍛え上げ、筋肉のついた体ではあるものの、肩のなだらかな線や、柔らかな乳房は、自分が女であることを、明確に示していた。

    自分1人が、このリヴァイ班の中で唯一女性であることを、あからさまではないにしても、皆が気を遣ってくれていることは、気づいていた。

    エレンの監視にしても、班員の中で交代でやっているが、自分が入浴やトイレの担当になることはなかった。

    ペトラ 「…ま、エレンも男の子だもんね…。」

    兵士という立場にあっても、その事実は変わらない…変われない。

    ペトラは、身体にバスタオルを巻こうと、タオルの入った引き出しを開ける。

    ペトラ 「…えっ…とぉ…」

    そこへ、なんの前触れもなく、脱衣場の扉が開かれ、突然の出来事に、ペトラも自分が全裸なのも忘れ、その人物を見たのだった。
  15. 25 : : 2014/11/12(水) 13:52:28
    リヴァイとエルドが浴室へと向かう途中、ペトラの悲鳴が聞こえた。

    エルド 「!?…いったい、何が…」

    戸惑うエルドを尻目に、リヴァイはある程度の察しがついたのか、大きくため息をつく。

    エルドとリヴァイが脱衣場の前につくと、籠だのオケだの、体重計(!?)だのが散乱するなか、オルオが倒れていた。

    エルド 「オルオ…いったい、何があったんだ!?」

    エルドも、だいたいの状況は察知したのか、語気を強める。

    オルオは、床から顔を上げることなく

    オルオ 「…知らねぇよ…」

    エルド 「知らないわけないだろ!?」

    グンタ 「なんだ…どうした?」

    エレン 「ペトラさんの悲鳴が聞こえた気がしたんですが…」

    グンタとエレンも、何事かと集まってくる。

    エルド 「何があったのかは…オルオに説明してもらわないとな…」

    エルドは、オルオをにらむ。

    リヴァイ 「いや、エルド。こうなったのは、俺にも責任がある。」

    上官からの意外な言葉に、エルドは驚く。

    エルド 「兵長の!?」

    リヴァイ 「そうだ。俺がペトラが先に入るとも知らず、オルオに最初に入るよう指示した。外にぼおっとつっ立って、寒そうにしてたからな。」

    グンタも呆れ顔で

    グンタ 「…だとしてもオルオ。中に人の気配がするかどうかくらい、確かめてから入れよな。」

    エレン 「せめて…ノックくらいするべきだと、オレは思います。」

    エレンもオルオを見下ろしながら口を開く。

    すると、脱衣場の中から声がした。

    ペトラ 「えっと…みんな、そこにいるの…?」

    エルド 「…あ、すまんなペトラ。すぐに退くから…」

    ペトラ 「ついでに悪いんだけど、そこに転がってる変態も、片付けといてくれる?」

    ペトラに言われ、エルドは苦笑すると

    エルド 「…了解。しばらく立てないだろうから、グンタ、足を持ってくれるか?」

    グンタがオルオの足を持とうとすると、リヴァイがオルオの両腕をつかみ上げ

    リヴァイ 「…引きずりゃいいだろうが…」

    と、オルオをずるずると引きずってゆく。

    エルドたちは、お互いにため息をつき合うと、そのあとに続いた。
  16. 29 : : 2014/11/13(木) 08:03:28
    ペトラは、とりあえず入浴を済ませ、リヴァイを捜した。

    自分の入浴が終わると、次の者に入るよう促すのが、いつの間にかリヴァイ班の中で、暗黙のルールになっていたのだ。

    ペトラ 「…あ、兵長…」

    オルオの自室の方角から歩いてくるリヴァイに、ペトラは声をかけた。

    ペトラ 「先程はお騒がせして、すみませんでした。あの、お風呂が空きましたので…」

    リヴァイは息をつくと、

    リヴァイ 「…俺の方こそ、配慮が足りなくて、すまない…」

    ペトラはあわてて

    ペトラ 「いっ、いえ、そんな…」

    リヴァイ 「…いちおう確認だが…」

    リヴァイはここで言葉を切る。どう続けるべきか、悩んでいるようにもみえる。

    ペトラ 「…なんでしょう…」

    リヴァイ 「…俺に言いづらいなら、言わなくてもいいが…」

    リヴァイが言いよどんでいる。珍しいことだった。

    リヴァイ 「あの時…オルオに…何もされてないな?」

    あの時。

    ペトラは思い出し、顔を真っ赤に染めながらも、

    ペトラ 「さっ…されてません!私、すぐに物投げつけて…それでオルオが倒れて…」

    リヴァイは、静かに歩きはじめる。

    リヴァイ 「…ならいい。変な事をきいて、すまない。」

    ペトラ 「…いえ…」

    リヴァイは、ペトラをチラリと見た後、

    リヴァイ 「…風呂に入ってくる…」

    と、去っていった。
  17. 30 : : 2014/11/15(土) 22:44:28
    ペトラはリヴァイが去ったあとも1人、その場に佇んだ。

    リヴァイ兵長とて、男だ。女である自分に、彼なりに気を遣っているのだろう。

    リヴァイ兵長、エルド、グンタ、オルオ…そして自分。

    互いに背中をあずけられる仲間になる…そう誓い合ったのに。

    越えられない事実。ペトラは、言葉にならない寂しさを、その右手に包みこんだ。
  18. 31 : : 2014/11/15(土) 22:51:56
    「…ああ…」

    自室に戻った(引きずられ、放り込まれた)オルオは、ベットに仰向けに寝転がり、息をついた。

    …見た…見てしまった…。

    ペトラの…その…裸を…。

    見てしまった瞬間、次々と投げられる物の直撃を受けた。正直、痛いの一言だった。その痛みはいまだに、あちこちに残っている。

    だが、今回のハプニングは…

    オルオ 「…悪くない…」

    誰も聞いていないのに、オルオはリヴァイの口調を真似してひとりごちた。

    そして、この悶々とした気持ちを抑えるべく、もう少し横になることにして…

    ふと、机上に置かれたカレンダーを見る。

    そして気づいた。

    オルオ 「そうだ…もうすぐ、あいつの…」

    あいつ…ペトラの…

    それを頭に浮かべると同時に、ペトラの裸体も頭からはなれず、オルオはどうしようもなく、布団の上に顔を埋めた。
  19. 34 : : 2014/11/16(日) 17:05:17
    コンコン。

    「オルオ…いるか?」

    ドアのノックする音で、オルオは目が覚めた。どうやらいつの間にか、眠っていたようだった。

    オルオ 「…あ…エルドか…開いてるぞ…」

    オルオが応じると、エルドが入ってくる。

    エルド 「…寝てたのか?風呂、空いたぞ。」

    オルオ 「…ああ…」

    オルオは、ベットサイドに座る。エルドも隣に腰をおろす。

    エルド 「…なあ…」

    エルドが、重々しい口調できりだす。

    オルオ 「…なっ…なんだよ…」

    何を言われるか、だいたいの見当がついたオルオは、目を泳がせる。

    エルドは、そんなオルオの両肩をつかみ、無理やり視線を合わせる。その視線は、真剣そのものだ。

    エルド 「…オルオ…」

    オルオ 「…だから…なんだよ…」

    エルド 「正直に答えろ。」

    オルオ 「…う。」

    エルド 「ペトラの…見たんだな…?」

    “何を”、という問いなど、皆無だった。

    オルオ 「…う…」

    口ごもるオルオの肩を、エルドは揺さぶる。

    エルド 「どうなんだ!?」

    オルオ 「…み…見た…」

    エルド 「しっかりと、か…?」

    オルオ 「…はい…」

    エルドは、声を張り上げる。

    エルド 「もっと大きな声で!!!」

    オルオ 「しっ…しっかりとこの目に焼き付けさせていただきましたぁっ!!!」
  20. 35 : : 2014/11/16(日) 17:11:24
    バタァン!!!

    オルオが答えたと同時に、扉が勢いよく開かれる。

    見ると、グンタとエレンが、そのまま部屋に入ってくる。

    グンタ 「聞いたぞオルオ!!!」

    エレン 「聞きましたよオルオさん!!!」

    エルドはエレンの姿を見ると、呆れた様子で肩をすくめる。

    エルド 「なんだエレン、地下の部屋に行ってろと言っただろ。」

    エレンは、しゅん、としながらも

    エレン 「すみません…自分も、気になったもので…」

    グンタは笑ってエレンの肩を抱き

    グンタ 「エレンも男だ。仕方ないさ…な?」

    エレンは笑って

    エレン 「はいっ!」

    そして、エルド、グンタ、そしてエレンは、ぎらぎらと目を光らせながら、オルオに詰め寄る。

    エルド 「さあ、オルオ…詳細をきかせてもらおうか…」
  21. 36 : : 2014/11/19(水) 13:55:33
    グンタは腕組みし、息をつく。

    グンタ 「やはり…胸からか。」

    エルド 「俺が見たところ…Cってところか。」

    エルドの言葉に、グンタは身を乗り出す。

    グンタ 「C!?俺はてっきりBかと…」

    エルドはにやりと笑い

    エルド 「甘いな。ペトラは意外にあるぞ。」

    エレンも興味津々といった様子で

    エレン 「どうしてエルドさんは、そんなに分かるんですか!?」

    エルドは、からかう様な笑みをエレンに向け

    エルド 「…ま、色々とな。」

    グンタ 「エルドには恋人がいるからな。」

    グンタの言葉に、エレンは目を丸くして

    エレン 「本当ですか、エルドさん!」

    エルドは、はにかんだ笑みをグンタに向け

    エルド 「グンタ…余計な事言うな。」

    オルオ 「エルド…お前、恋人がいるくせに、ペトラにも興味があるってのか!?」

    オルオは、エルドにつかみかかる。

    エルドはそれを冷静に押し戻し

    エルド 「それはそれ。これはこれだ。別にペトラを口説こうってわけじゃない。そうムキになるなよ。」

    ムキになる。そう言われ、オルオの頬はなぜか赤くなる。

    オルオ 「べっ…別に俺はムキになんか…あいつが誰に口説かれようが…構わねぇしよ…」

    もそもそとしゃべるオルオに、エルドは笑って

    エルド 「そうか…じゃあ今度、食事にでも誘うか…」

    オルオ 「…っておい!!!」

    あせるオルオ。

    エルド 「…冗談だ。」

    その言葉に、オルオはホッとした様子で腰をおろす。それを見たグンタも、声を上げて笑い

    グンタ 「…本当に分かりやすいやつだな、お前は。」

    オルオはベットの上で、フンとふてくされる。

    オルオ 「…ほっとけ。」
  22. 37 : : 2014/11/19(水) 14:08:41
    エレンは、しばらく呆然とそのやりとりを見ていたが、ふと背後に気配を感じ、振り向く。

    エレン 「…へ、兵長!?」

    エレンの声に、他の3人も驚き、振り向くと、リヴァイがいつもの不機嫌顔のまま、立っていた。

    リヴァイ 「お前ら…今何時だと思ってやがる…」

    決して大きくはないが、低くよく響くその声は、3人の男たちと、1人の少年を怯えさせるには充分だった。

    エルド 「もっ、申し訳ありません、兵長…」

    グンタ 「すぐに寝ますので…」

    オルオ 「俺もすぐに風呂に…」

    エレン 「オレも地下に…」

    リヴァイは、不意に目を反らし

    リヴァイ 「…別に俺は構わねぇんだが…」

    意外な言葉に、きょとんとする4人。

    リヴァイ 「お前ら…あんまり声がでかいと…ペトラの部屋にまで聞こえるぞ。男同士の会話も、ほどほどにしろ。」

    会話する事自体を咎めているのではないと分かり、オルオたちはホッと胸を撫で下ろす。

    リヴァイ 「何にせよ、早く休めよ。明日も訓練だ。」

    そう言い残し、リヴァイは自室へと戻っていった。

    ホッと息をつき、エルドが口を開く。

    エルド 「…さて、もう寝るか…」

    グンタ 「そうだな。」

    エレン 「そうですね…」

    オルオ 「…おい、ちょっと待ってくれ。」

    オルオの言葉に、3人は足を止める。

    エルド 「…どうした、オルオ…」

    オルオは続ける。

    オルオ 「ちょうど皆集まってるから、相談したいんだが…」

    グンタ 「何の相談だ?」

    オルオは、机上のカレンダーにチラリと目を向け

    オルオ 「…実は…もうすぐあいつの…」

    オルオの“相談”の内容を聞いた一同は、再びオルオの周りに腰をおろす。

    男たちの夜はまだ、終わりそうになかった。
  23. 42 : : 2014/11/20(木) 21:48:29
    翌日、1日何事も無く訓練を終え、夜になった。

    ペトラは、入浴を済ませると、ふう、と息をついた。

    次に入浴するのは、オルオだった。昨日の出来事が脳裏によみがえる。でも、すぐに呼びに行かなければ、あとがつかえてしまう。

    ペトラ 「…変に意識する必要無いんだわ。オルオだって、気にしていないはずよ。」

    ペトラは、そうひとりごちると、オルオの自室へと向かった。

    扉をノックすると、彼はすぐに顔を出した。

    オルオ 「…あ…」

    ペトラ 「…。」

    お互い、赤面したまま、一言も喋らない。

    しばしの沈黙のあと、やっとの事でペトラが口を開く。

    ペトラ 「おっ…お風呂…」

    声が裏返りながらも、ペトラは続ける。

    ペトラ 「お風呂…空いた…から…」

    オルオ 「…お、おう…」

    そして、再びしばしの沈黙のあと、ペトラはくるりときびすを返すと

    ペトラ 「じゃ、じゃあ…さっさと入ってよね…」

    足早に去ってゆこうとするペトラを、オルオは止める。

    オルオ 「あ、ちょっと…」

    ペトラ 「な、なによ…」

    オルオに背を向けたまま、ペトラは足を止める。

    オルオ 「きっ…昨日は…その…」

    オルオが自分に伝えたい事に、何となく予想がついて、ペトラはそっと振り向く。

    見れば、オルオはうつむいたままだった。

    オルオ 「昨日は…その…すまなかった…というか…」

    というか!?

    ハッキリと謝ってもらえるとばかり思っていたペトラは、

    ペトラ 「というかって何!?ちゃんと謝りなさいよね!!」

    その言葉に、オルオはムッとした様子でペトラをにらみ返す。

    オルオ 「だから、ちゃんと謝ってんだろうが!!!」

    ペトラ 「全っ然謝った事になってない!!!」

    オルオ 「じゃあ、どうすりゃいいんだよ!?」

    ペトラ 「それくらい、自分で考えなさいよね!!!」

    ペトラと言い合ううち、頭に血がのぼったオルオは、思わず

    オルオ 「…なんだよ、ちょっと裸見られたくらいで…」

    はっと口をつぐんだが、もう遅かった。

    ペトラは、ツカツカとオルオの前まで歩み寄ると、平手でその頬を打った。

    ペトラ 「…もう…オルオなんか…知らない…」

    震える声でそう告げると、ペトラは背を向け、走り去ってしまった。

    一瞬見えたその顔は、泣いているようにもみえた。


  24. 45 : : 2014/11/22(土) 21:22:23
    …やってしまった…

    オルオは、ぶたれた頬を、そっとさすりながら、悔しさに顔を歪めた。

    ペトラがどんなに傷ついているか、分かっているつもりだった。

    見てしまった自分が悩んでいる、それ以上に、ペトラを悩ませてしまっていることも。

    分かっている…はずなのに…。

    こんな気持ちのまま、自分はあの日を迎えるのだろうか。

    オルオは、浴室に向かって歩を進めた。ペトラが、たった今走り去っていった道を。

    今までペトラと共に時を過ごして、ここまで互いに距離を感じたことは無かったのに

    オルオは、今までに1番と言っても良いくらいに、ペトラの事を想っていた。
  25. 47 : : 2014/11/22(土) 21:38:59
    次の日、エルド、グンタ、そしてオルオの3人は、そろって非番だったため、街に出ていた。

    ペトラも同じく非番だったのだが、朝早く、1人でどこかへ出掛けていってしまった。

    エレンとリヴァイは、巨人化実験のため、そろって任務についていた。

    エルド 「ところで…お前らは、何を買うのか決まったのか?」

    グンタとオルオの数歩先を歩くエルドは、振り向き様に問いかける。2人は、そろって目をそらせた。

    グンタ 「う~ん、考えてはみたんだが、なかなかこれ、というのが思いつかなくてな…」

    エルドは、黙ったままのオルオに向かい

    エルド 「オルオはどうなんだ?何か、決めてきたのか?」

    オルオは、なぜか顔をしかめて

    オルオ 「…あんなやつに、わざわざ物を贈ること、ねぇよ!」

    意外な発言に、エルドもグンタも驚く。

    グンタ 「…おいおい、そもそも、ペトラの誕生日の事を言い出したのは、オルオ、お前だろ。」

    エルド 「そうだぞオルオ…さては、また何かあったな…?」

    エルドの言葉に、オルオは図星だと言わんばかりに、目をそらせる。

    エルドは肩をすくめ

    エルド 「…何があったのかは知らんが、仲直りのためにも、何かプレゼントするべきじゃないのか?」

    オルオは、目をそらしたまま

    オルオ 「そんな…物で解決するなんて事…」

    エルドは、オルオと目を合わせる。

    エルド 「じゃあ、何かとっておきの口説き文句のひとつでも、考えてるのか?」

    オルオ 「くっ…口説き…?」

    エルド 「そうだ。ペトラを一発で口説き落とせるくらいの、甘い甘い言葉を…だ。」

    エルドの言葉に、グンタは笑って

    グンタ 「無理無理。オルオにそんな言葉、出てくるわけがない…」

    オルオは、ムッとした様子で

    オルオ 「バカにすんな!…本気になれば…俺だって…」

    エルドとグンタは、生温かい笑みをオルオに向け

    グンタ 「…ま、せいぜい頑張るんだな…」

    エルド 「口説き落としたら、報告してくれよな。」

    オルオはますますムキになって

    オルオ 「お前ら、いい加減にしろって!」

    エルド 「…さ、冗談はこれくらいにして、行こうか。」

    グンタ 「そうだな。」

    スタスタと歩きはじめる、エルドとグンタ。

    オルオ 「冗談なのかよ…って、ちょっと待てよ!」

    オルオも慌てて、2人のあとを追った。
  26. 49 : : 2014/11/22(土) 21:50:52
    グンタ 「…エルドは、何か考えてるのか?」

    グンタの問いに、エルドは肩をすくめ

    エルド 「…実を言うと、俺も具体的には…女の好みは、よく分からん。」

    グンタは、眉を寄せ、エルドを見る。

    グンタ 「なんだ…愛しのカノジョにきけばいいだろ?」

    エルド 「…そんなこときけないよ。他の女に贈るプレゼントは、どんな物が良いか、なんて…きいたら即、ケンカになってしまう。」

    グンタ 「自分以外の女に、プレゼントを贈る気か、と?」

    エルド 「そんなところだ。」

    グンタは、感慨深そうに息をつくと

    グンタ 「女ってのは、嫉妬深いもんだな…」

    エルド 「ああ…まったくだ…」

    談笑しながら歩く2人の後ろをとぼとぼと歩きながら、オルオは1人、思案にふけ、そして…

    オルオ 「…な、なぁ…」

    オルオに声をかけられ、エルドとグンタは、何事かと振り向く。

    オルオ 「俺なりに…考えたんだが…」

    オルオは、自分の案に自信がもてずにいながらも、エルドとグンタを引き連れ、とある店へと向かった。
  27. 50 : : 2014/11/22(土) 22:02:18
    ペトラは街に出て、とある店のショーウインドウに飾られた絵画を、じっと見つめていた。

    絵画に描かれている少女。

    美しかった。

    雪の様に白い肌。微かに赤く染まった頬。優しげに微笑んだ瞳。

    少女から、“女”へと変化しようとしている、そんな年頃なのだろう。そう、自分とちょうど同じくらいの…。

    ペトラは、ガラスに映る自分の姿に視線を移す。

    いつもの兵服とは違い、私服姿の自分。

    でも、自分は絵の中の少女とは違う。自分は…人類に心臓を捧げた、兵士なのだ。

    ペトラは、ガラス越しに少女の頬をそっと撫でた。

    自分は…いつか…巨人との戦いの中で、その命を散らすのだろう。

    兵士として。

    ペトラ 「…あなたは…」

    絵の中の少女に語りかける。少女は、微笑んだまま、ペトラを見つめ返す。

    ペトラ 「あなたは…どうなのかな…」

    この絵の中の少女は、どんな人生を歩むのだろう。

    女として…ささやかだけど、幸せな人生を送るのだろうか。

    大好きな人と出会い

    純白のドレスを着て…一緒に腕を組んで…

    子供を産み…愛する人と、共に年を重ねてゆく…

    ペトラ 「…っ…」

    なぜだろう。悲しくて…堪らなかった。

    兵士として生きる道を…自ら選んだくせに…。

    その大きな瞳から、涙がこぼれそうになった時だった。後ろから、聞き慣れた声が聞こえた。
  28. 51 : : 2014/11/22(土) 22:16:36
    「…ペトラじゃねぇか…」

    名前を呼ばれ、ペトラは慌てて目を擦り、振り向く。

    オルオだった。

    オルオ 「何してんだ…そんなとこで…」

    心なしか、いつもより優しい口調に、ペトラは普通に応じようとするも、昨日の事を思い出し、つん、と目をそらす。

    ペトラ 「あんたには…関係ないでしょ。」

    オルオ 「…そうか…そうだよな…」

    オルオの意外な態度に、ペトラは思わずオルオを見た。

    いつもなら、言い返してくるのに。その際の返事だって、考えていたのに。

    ペトラ 「…オルオ…」

    ペトラが何か言いかけた時、エルドとグンタも姿をみせる。

    エルド 「ペトラじゃないか。」

    グンタ 「こんなところで…偶然だな。」

    ペトラは、曖昧に微笑むと

    ペトラ 「え…ええ、そうね…あなたたちこそ、こんな所で何してるの?」

    エルドは、少女の描かれた絵画の前に歩み寄りながら

    エルド 「まあ…色々と野暮用でな…それにしても、見事な絵だな…」

    ため息まじりに言うエルド。グンタも、そんなエルドの隣に立ち

    グンタ 「本当だな…ペトラは、これを見てたのか?」

    グンタに問われ、ペトラは再び少女の絵画の前に向き直る。

    ペトラ 「うん…たまに来るんだ。なんか、見てると嫌な事忘れるっていうか…」
  29. 52 : : 2014/11/22(土) 22:32:29
    エルドは息をつくと

    エルド 「なんかこの女の子…ペトラに似てるな…」

    その言葉に、ペトラは驚く。

    ペトラ 「はっ!?何言ってるの、全然似てないって!!」

    グンタ 「いや…こう比べてみると…確かに、なんとなくだが…」

    グンタも、絵画の少女とペトラを見比べながら言う。

    ペトラは、ぶんぶんと首を横に振りながら

    ペトラ 「そんな事ない!2人とも、どうかしてるわ!」

    頑なに否定するペトラを見、エルドは少し離れた場所で立ち尽くすオルオに声をかける。

    エルド 「オルオ、もう渡してしまったらどうだ?」

    その言葉に、ペトラは首をかしげる。

    ペトラ 「渡すって…何を?」

    オルオ 「エルド…ここでか…?」

    オルオも戸惑う。エルドは肩をすくめ

    エルド 「こっちも、いつまでもギクシャクしてる2人を見てるのも辛いし…な、グンタ?」

    グンタもうなずきながら

    グンタ 「そうだな…なんか、見ててもどかしいな…」

    2人に促され、オルオは仕方なくペトラの前まで来ると

    オルオ 「…ほらよ…」

    と、拳大ほどの包みをペトラに手渡す。

    ペトラ 「えっ…何、これ…」

    オルオ 「何って…もうすぐお前の誕生日だろ。」

    ペトラ 「…うん…」

    オルオは、ペトラから目をそらしたまま

    オルオ 「だから…ほら、プレゼントというか…」

    ペトラはあらためて、渡された包みを見る。

    ペトラ 「でも…これ、すっごく高価そうだけど…」

    オルオ 「心配すんな。俺と、エルドとグンタとで、金出しあったからよ…」

    そう言ったが早いか、オルオは再びペトラと距離をとる。

    エルドは苦笑しながら

    エルド 「嘘つけ、オルオ。お前1人で金出したじゃないか。」

    グンタ 「そうだぞ、オルオ。ペトラにどうしても謝りたいから、ってな。」

    2人の言葉に、オルオは顔を真っ赤にして

    オルオ 「余計な事を言うな!!!」




  30. 53 : : 2014/11/22(土) 22:42:20
    ペトラは、ふっと息をつくと

    ペトラ 「…いい…返す…」

    プレゼントの包みを、オルオに向かって投げ返す。

    オルオ 「何でだよ!?」

    ペトラ 「だって…私だって一方的に怒ったりして…悪いとこあったし…」

    オルオ 「関係ねぇって!素直に受けとれって!」

    オルオは、ペトラに向かって包みを投げる。

    ペトラはキャッチするも

    ペトラ 「いいって!」

    と、また投げる。

    オルオ 「受けとれ!」

    また投げ返す。

    ペトラ 「いらないから!」

    と、また投げる。

    エルドとグンタは、ちょうどテニスのラリーを見るかのごとく、包みが飛び交うのを呆然と見ている。

    オルオは、キャッチした包みを、ぐっと握りしめながら

    オルオ 「俺はな…これを使えば、お前も少しは状態が楽んなると思って…無い知恵絞って考えたんだ…それと…」

    こうなりゃついでに…

    オルオは、包みをぐっと自らの胸にあて、想いをそこに込めてみる。

    ペトラ……好きだ…

    オルオ 「だから、素直に受け取れ!!!」
  31. 54 : : 2014/11/22(土) 22:50:16
    ペトラは、包みを再び手にとると

    ペトラ 「使えって…これ、何なの…?」

    オルオ 「開けてみろよ。」

    ペトラは、ガサガサと包みを開ける。

    その中身は…

    ペトラ 「…あ…」

    庶民には到底手に入らなそうな、高級ハンドクリームだった。

    ペトラは、それをぐっと自らの胸に包み込むと

    ペトラ 「…ごめん…ありがと…バカオルオ…」

    オルオ 「…バカは余計だ。」

    オルオは、高揚していく心を…思わず小躍りし、にやついてしまう気持ちを、なんとか抑えこんだ。

    ペトラが…受け取ってくれた…自分が選んだプレゼント…

    …そして…

    ペトラ 「ちょっとオルオ、何にやついてんのよ。」

    オルオ 「は!?」

    どうやら、抑えきれていないようだ。

    ペトラ 「…気持ち悪い…」

    そう言うペトラの頬も、心なしか赤く染まっているようにみえた。

  32. 57 : : 2014/11/25(火) 21:26:49
    エルド 「…なあ、ペトラ。せっかくだから、ここでお前の肖像画を描いてもらわないか?」

    少女の絵画が飾られたその店は、肖像画などを描いてもらえる専門店だった。

    ただし、その依頼料は、調査兵団の兵士の給料からは、少々高額な値段だった。おおかた、顧客はシーナの貴族なのだろう。

    エルドの提案に、当然ペトラは首を振り

    ペトラ 「いいよ。その気持ちだけで、充分。」

    その言葉に、エルドは笑って

    エルド 「大丈夫。グンタと金出しあって…グンタ、いいよな?」

    グンタ 「ああ。俺たちからの、誕生日祝いだ。」

    エルド 「…さ、善は急げだ。早く店に入ろう。」

    4人そろって店に入り、ペトラはさっそく備え付けの椅子に座った。
  33. 58 : : 2014/11/25(火) 21:33:14
    ペトラ 「…ねぇ、お願いがあるんだけど…」

    絵師と向き合うペトラは、そばで見守るエルドたちに

    ペトラ 「私…1人じゃなくて、みんなでいるところを、描いてもらいたいな。」

    エルド 「えっ…いいのか、ペトラ…」

    ペトラは笑顔でうなずくと

    ペトラ 「うん…エルドとグンタ、ついでにオルオも、一緒がいい。」

    オルオ 「ついでって…どういう意味だよ…」

    エルド、グンタ、そしてオルオは、椅子に座るペトラの周りに集まった。

    ペトラは、皆が落ち着いたのを確認すると、絵師に向かい

    ペトラ 「すみません…お願いします。」
  34. 59 : : 2014/11/25(火) 21:45:08
    描いてもらう間、ペトラが口を開く。

    ペトラ 「兵長とエレンも、来られればよかったね…」

    エルド 「そうだな…」

    グンタ 「今度の壁外調査が終われば、少しは落ち着くだろう。そしたら、また、今度は兵長とエレンも一緒に、来ればいいさ。」

    オルオは、ぐすっと鼻をすすり

    オルオ 「兵長と同じ絵画に描かれるなんて…感激だ…」

    そのまま、グスグスと泣き出すオルオ。

    ペトラ 「オルオ泣かないでよ、気持ち悪い。」

    オルオは、ごしごしと涙をぬぐうと

    オルオ 「…泣いてねぇよ…」

    「あの…ちょっと、いいかな…」

    絵師から声をかけられ、4人は顔を上げる。

    エルド 「あ、すみません…動かないほうが、いいですよね…」

    エルドの言葉に、絵師は首を振り

    「いえ…そこの女性の方、もう少し、笑っていただけると…」

    オルオ 「おいペトラ、顔が怖いってよ。」

    からかうオルオ。

    ペトラ 「は!?そんなこと言ってないでしょ!バカオルオ!」

    オルオは、ますます楽しそうに笑い

    オルオ 「わ、その顔…お~怖っ。」

    エルドも、ニヤリと笑い

    エルド 「確かにペトラ、怒るとけっこう迫力あるよな…」

    ペトラ 「エルドまで、何言ってんのよ…ねぇ、グンタ?」

    ところがグンタも、いたずらっぽく笑い

    グンタ 「いや…それに関しては、俺もノーコメントだな。」

    ペトラ 「もうっ、グンタまで!」

    ぷうっと頬を膨らませ、むくれるペトラに、エルドは笑って

    エルド 「冗談だよ。ペトラは可愛いぞ…な、オルオ?」
  35. 60 : : 2014/11/25(火) 22:01:11
    エルドの言葉に、オルオは頬を染め

    オルオ 「チッ…知るかよ。」

    目をそらす。けれど、否定はしていないようだ。

    グンタ 「ペトラも…大切な仲間だからな…正直俺は、頼りにしてるんだ。」

    グンタの言葉に、ペトラは、はっとする。エルドも、深くうなずき

    エルド 「そうだな…俺も、ペトラを頼りにしてる。ペトラがいるからこそ、俺たちリヴァイ班は、こうして団結できているしな。」

    グンタ 「うん…ペトラには、感謝してるよ。」

    エルド 「ペトラと同じ班で戦えて、嬉しいよ。」

    ペトラは、思わず目頭が熱くなるのを感じた。自分はただ、勘違いしていただけだった。

    自分だけが、女だから、彼らには到底力及ばない、と。自分だけが女だから、周りに気を遣わせているのだと。

    そんなこと…すべて、杞憂だった。それに、たった今、気づく事ができたのだ。

    大丈夫…私は、彼らと共に、命を賭けて戦える…

    ペトラは、その決意を静かにその胸に刻んだ。

    エルド 「オルオも…黙っているが、ペトラの笑顔にいつも癒されて、感謝してるって顔をしてるぞ。」

    エルドの言葉に、オルオはこれ以上無いくらいに顔を真っ赤にして

    オルオ 「う、う、うるせぇよ!」

    ペトラは笑った。ペトラにも、分かっていた。言葉にしなくても、オルオの気持ち…ポケットの中には、先ほどプレゼントされたハンドクリームが入っている。

    ペトラ 「オルオ…顔、真っ赤だよ…もう…」

    …ありがとう。

    きっと、言葉にしなくても、伝えられる。きっとそれが、私たちの絆のかたちなのだから。

    ペトラは、周りにいてくれる仲間たちの温もりを感じ、穏やかに微笑んだ。

    絵師は、そんなペトラの微笑みを見、満足そうにうなずくと、筆を走らせた。

    その1枚の絵画は、4人の兵士たちが歩んだ時の一片を、確実に刻み込めていた。永遠に。
  36. 61 : : 2014/11/25(火) 23:15:38
    そして彼らは

    運命の日

    第57回壁外調査を迎える…















  37. 62 : : 2014/11/25(火) 23:33:56




    エレンは、満点の星空のもと、彼らと向き合っていた。

    「…エレン…」

    リヴァイが背後から声をかける。エレンは、振り向くことなく、彼らを見つめ続けた。

    エレン 「…兵長…」

    彼らは、穏やかな笑みを浮かべたまま、エレンを見つめ返していた。

    とくに、中央に1人、椅子に座る女性は、より穏やかに、優しく、まっすぐに。

    エレン 「兵長…ペトラさんの部屋に…これが…」

    エレンは、彼らをリヴァイの前に掲げる。リヴァイも、彼らの微笑みと向き合う。

    リヴァイ 「…そうか。なら、それも一緒に、ペトラの家族のもとに返す。」

    エレン 「…はい…」



    エレンは、4人の兵士たちの肖像を、星空のもとに掲げた。

    まるで、何かの儀式であるように、粛々と。

    彼らは今、どこにいるのだろう。

    死後の世界…そんなものが、本当に、あるのだろうか。

    もし…もし、そんなものがあるのなら…そこで彼らはまた、共に時を過ごしているのだろうか。

    彼らは生きた。

    生きて…そして、絆を紡いだ。

    大丈夫…きっと逢える。



    リヴァイは、彼らの肖像に、そっと触れる。

    絵の中の彼らに向かい、何か声をかけているようにみえた。

    その様子を…見てはいけない気がして、エレンは、今一度彼らを見た。

    ペトラの笑顔。

    まだ、生きていた頃の彼女の面影が、そこにあった。

    エレン 「…ペトラさん…」

    ペトラを囲むように、微笑むエルド、グンタ、そしてオルオ。

    エレン 「みなさん…」



    …ありがとう…



    言葉にしなくとも、彼らには届くだろう。

    エレンは、再び彼らの肖像を、星空に掲げ、幾千もの星々たちは、彼らの刻んだ時を、余すことなく、光輝かせていた。

  38. 63 : : 2014/11/25(火) 23:37:46
    …以上で終了とさせていただきます。
    読みやすさを優先させるため、途中いただいたコメントは、拝読させていただき、返信後、非表示にさせていただきます。
    最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
    ペトラ誕生日企画は、引き続き実施しております。
    こちらもまた、よろしくお願いします。
  39. 64 : : 2014/11/26(水) 02:07:25
    執筆お疲れ様でした!

    オルペト可愛い。
    ペトラは兵士でありながら女の子なところもしっかりあって、それを知ってるオルオからのプレゼント…。いいですねぇ~。

    リヴァイ班の和気あいあいとした雰囲気がとても素敵でした。
  40. 65 : : 2014/11/26(水) 13:33:01
    >>64 トリちゃん!!!
    最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
    オルオ、今回は告っちゃいましたね(^^)
    リヴァイ班は、本編の中では儚くその命を散らしながらも、彼らも精一杯生き、絆を紡いだことを、今回は表現してみました。
  41. 66 : : 2014/12/01(月) 21:16:46
    ヤバイ…涙が……
    感動しました!ペトラ大好き、りヴァイ班大好きな私にとっては凄く素晴らしい作品でした!!ペトラ、なんで死んだの……
  42. 67 : : 2014/12/01(月) 21:25:03
    >>66 ペトラLOVE♪さん
    コメント&お気に入り登録、ありがとうございます。
    ほんとに…ペトラ…どうして死んだんだ…(;_;)
    数珠繋ぎも、リヴァイ班大好きなので、素晴らしいと言っていただけて、とても嬉しいです(^^)
    これからも、リヴァイ班への愛を、SS執筆というかたちでぶつけていきたいと思います。
  43. 68 : : 2014/12/02(火) 21:06:46
    お疲れ様です♪
    うぅ…な、涙が止まらない…(*´;⊂⊃;`*)
    ペトラ、いい子だったのに…女型の巨人許さんぞぉぉ!!
    さだはる殿、素敵な作品ありがとうです!
  44. 69 : : 2014/12/02(火) 22:09:08
    >>68 ゆう姫さま!!!
    最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
    女型の巨人、アニについては、私自身も、許せないという思いが消えません。
    どんな理由があったのか、今後の物語で明らかになるのでしょうが、
    …難しいですね(^_^;)
  45. 70 : : 2014/12/05(金) 21:23:36
    最後らへんのところ、泣けますね・・・(切ないなーーー)
     女型の巨人許せません‼<`ヘ´>
  46. 71 : : 2014/12/05(金) 21:38:37
    >>70 さっちさん
    最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
    最後の部分は、とにかくシリアスに仕上げてみたので、泣いていただき、切なく感じていただけて、
    数珠繋ぎとしても、心の中で、小さくガッツポーズです(^^)
    女型の巨人…許せないですね…
    アニにどんな理由があったのか、早く明らかになってほしいものです。
  47. 72 : : 2014/12/11(木) 20:42:52
    オルペト好きなので、キュンキュンさせていただきました。

    その分、原作どおりのラストが切ない…。

    リヴァイ班の死は世界の残酷さやエレンの成長のきっかけではありますが、本当に必要な死だったのかと思うと…。

    やるせないです。
  48. 73 : : 2014/12/11(木) 21:27:11
    >>72 ありゃりゃぎさん
    リヴァイ班の4人の死は、本当に衝撃でした。
    しかし、“自由の翼”の歌詞にもあったように
    最後の1人になるまで、人類が抗い続けるかぎり
    彼らの死は、無意味ではない、と言えるのではないでしょうか…そう、願いたいな。
    最後まで読んでいただき、ありがとうございました(^^)
  49. 74 : : 2014/12/17(水) 18:47:28
    第57回壁外調査 アニメで見たことがあるので、感動で涙がすごいことになってます(;_;)。
    でもアニはアニでかわいそうな気もします。
    ペトラはオルオから貰ったハンドクリーム、最後まで使い切れたのかな?
  50. 75 : : 2014/12/17(水) 21:27:46
    >>ヅラヴィン・スミスさん
    最後まで読んでいただき、ありがとうございます(^^)
    私も、第57回壁外調査は、アニメもみたのですが
    最後のアニの涙は、すごく脳裏に焼きついてます。
    ちなみに、オルオがプレゼントしたハンドクリームは、壁外調査の前にもぬっていったようです。
    結局使いきれなくて、他の遺品とともに、ペトラの家に保管してある、と脳内補完していただければと思います。

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