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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

エルヴィン『同期の桜』ナイル~エルヴィン誕生日記念SS~

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  1. 1 : : 2014/09/24(水) 19:43:45
    エルヴィン『同期の桜』ナイル

    エルヴィンとナイル
    道を別った二人の、訓練兵時代の若き頃の話

    過去の妄想話です
    ネタバレは単行本


    http://www.ssnote.net/groups/839/archives/1#top
    こちらのエルヴィン誕生日記念に参加の作品です
    よろしくお願いいたします♪
  2. 2 : : 2014/09/24(水) 20:57:51
    人類が壁に囲われて100年

    緩慢に流れる時を、ただ飼い慣らされる様に壁に守られて暮らしていた

    その平和が永に続くものだと誰もが信じていた、そんな時代

    だが、壁の外には確かに存在していた

    人類唯一の天敵、巨人

    抗いようのない、圧倒的な力を持つ巨人に対して、人類はあまりにも無力だった

    人々は壁の外から目を背けた

    壁に囲われ、仮初めの平和を甘受しながら、人々は息を潜めて生きてきた

    恐怖から逃れるにはそうするより他無かった
  3. 3 : : 2014/09/24(水) 21:06:43
    そんな人類の中にも、やはり変わり種は存在する

    人類の叡知と努力の結晶、自由の翼の名を冠する調査兵団

    平和な壁の中に留まらず、果敢に外へ翼を広げ、羽ばたこうとする彼らは、彼ら以外の人類にとって、理解しがたい、だがどこか憧れを抱く存在であった

    壁の外には、人を食らう巨人の存在が確かにある

    だが、彼らは恐れない

    犠牲を出しながら、傷つきながら、それでも羽ばたきを休めることは無かった

    人類を巨人の支配から解放するための、たった一欠片の手掛かりを掴むために…

    彼らの目は壁の外を見据えていた
  4. 6 : : 2014/09/25(木) 08:33:52
    与えられた仮初めの平和を甘受していたこの時代

    壁の外に興味を持つ事を憚られたこんな時代にも、変わり者集団である調査兵団を目指す若者が僅かばかりだが存在した

    今年もそんな稀有な存在が、訓練兵として南部地域訓練兵として入団してきた

    多くの訓練兵が、安全な内地を勤務地とする憲兵団か、壁の中を見守る駐屯兵団を目指していた

    壁に囲われた土地で、食いっぱぐれない様にするには、兵士になる事が一番手っ取り早かった

    調査兵団に行かない限りは巨人の恐怖に曝される事は無い

    兵士になるためにはある程度の素質は必要ではあったし、訓練も過酷を極めるが、そういった理由から、兵士になろうとする者は事欠かなかった
  5. 7 : : 2014/09/25(木) 08:54:27
    調査兵団を目指す稀有な存在である彼は、真っ直ぐ前を見据えていた

    冷たい光を宿す青い瞳は、何処か遠くに向けている

    そんな最中、訓練兵が順に教官に恫喝されていく

    『それまでの自分を否定して真っさらな状態から兵士に適した人材を育てるため』

    といううたい文句で、毎年行われる通過儀礼である

    青い瞳の青年は、自分の隣で胸ぐらを掴まれて首を絞められている同僚をチラリと見やる

    隣の彼は、名前を言っただけで胸ぐらを掴まれた
    声に力がなかったかららしい

    小さな事でも何でもいい…難癖を付けて罵倒するのがこの通過儀礼

    青年は内心肩を竦めた

    難癖を付ける事が出来ないほど、完璧な受け答えをしてやろうか…

    そんな考えが青年の脳裏に過ったが、首を振る

    目立つ行為は御法度だ

    訓練兵に入団する以前から、彼は自らにそう言い聞かせてきた

    それをこんな所で覆すのは道理に叶わない

    そんな思考を巡らせているうちに、隣の気の毒な同僚が解放され、青年の前に教官が仁王立ちした
  6. 8 : : 2014/09/25(木) 19:13:10
    「貴様名を名乗れ!!」
    まるで喧嘩腰の様な態度で、青年にそう叫ぶ教官

    上背は、180㎝を越える青年よりも更に高い…190㎝は優に越えている様だ

    青年は青い瞳を教官に向けて、非の打ち所の無い敬礼を施す

    そして、腹の底から声を張り上げた

    「はっ!!トロスト区出身、エルヴィン・スミスです!!」

    青年の真摯な眼差しが、教官の顔を射貫く

    もともと低いがよく通る声を、いつも以上に張り上げた結果、回りの兵士達が目を丸くするほどの声量となった

    同僚の兵士達は、皆青年…エルヴィンに注目する

    青年はそんな雰囲気を肌で感じて、少しやり過ぎたか、と心の中で呟いた

    そんな回りの同僚達の、奇異とも、羨望とも取れる視線の中、教官だけはピクリとも動揺を見せなかった

    「貴様は何をしにここへ来た!!ここはお前のような優男が来るような場所じゃない!」

    優男…と言う言葉に多少引っ掛かったが、予想はしていた質問だった

    確かに上背はあるものの、まだ本格的に身体を鍛えたわけでも無い

    回りの兵士達の様に、農業や林業に勤しんでいた訳でもなく、本を友に静かに過ごしてきた様な青年だ

    体格的に劣るのは仕方の無い事だ

    青年は一瞬眉を潜めた

    「はっ!!自分は憲兵団に入るためにここに来ました!!その為に、懸命に努力する所存であります!!」

    教官に真摯な眼差しを向けて、また先程の様によく通る声を張り上げて、そう言った

    「貴様の様な顔だけの優男が、憲兵団に入れるわけが無いだろうが!!」

    教官は青年…エルヴィンを睨み付けながら捲し立てた

    エルヴィンは何も言わず、ただ教官をじっと見詰めた

    青年の青い瞳には、静かだが熱き焔が揺蕩っている様に見えた

    教官はしばしその目を食い入る様に見つめていたが、やがて踵を返し、エルヴィンの元を後にした
  7. 9 : : 2014/09/25(木) 19:20:45
    自分の元を、他の兵士達とは違い、殊の外平和裏に立ち去った教官に視線を送りながら、エルヴィンは小さく息をついた

    (…とりあえず、一難は去ったかな)

    最後の視線のぶつかり合いは、言葉の無い戦いのような物だった

    何故教官が、エルヴィンには他の兵士の様に、しつこいまでの恫喝をしなかったのか…

    彼の瞳に宿る何かを、教官は感じ取ったのかもしれない

    彼がついた嘘も、感じ取っているのだろうか

    彼が目指しているのは憲兵団では無いと言うことを
  8. 10 : : 2014/09/26(金) 08:17:27
    南部地域より訓練兵に志願した約300名の若者達

    彼らの殆どは、エルヴィンが先程言った憲兵団を目指していた

    だが、その道は狭く厳しい…何故なら、憲兵団に入るためには、この300人の内10位以内の成績が必要なのだ

    だから、教官がエルヴィンに対して無理だと言ったのはあながち間違いではない

    巨人と戦うための実技、座学の成績
    これが彼らの運命を大きく左右する

    それぞれ、日頃の訓練から教官に点数を付けられていくのだ

    そして、兵士として素質の無い者は、容赦なく開拓地送りにされるのである

    初日から、その厳しい洗礼は数人の訓練兵志願者に向けられた

    彼らは開拓地にて、厳しい労働を強いられる事になるのであった

  9. 11 : : 2014/09/26(金) 16:36:06
    「しかし、思った以上に厳しいな…もう開拓地送りになる奴がいるなんてよ…」

    教官からの洗礼を受けた後、早速始まった訓練に、皆が閉口していた

    ただで飯が食える程甘い世の中ではない

    厳しい事は皆百も承知の上だったが、初日から開拓地送りになったり、いきなり高い場所から宙吊りにされたり…

    その厳しさは、彼らの想像を遥かに超えていた

    「あの通過儀礼なんざ、かわいいもんだぜ…俺は今日の訓練で2回は死にかけた」

    「あれがこれから三年間、毎日続くのか…生きて兵士になれる気がしねえ」

    「いや、今日のなんか序の口なのかもしれないぞ…」

    訓練兵初日を終え、食堂で夕食にありつきながら、兵士達は一様に肩を落としていた

    そんな中、一言も口を聞く事なく、食事に手を付けていた青い目の青年エルヴィンは、先程から自分の横合いから、射すような視線を感じていた

    「…」
    無言のまま、視線を送ってくる相手に、ちらりと目を向けた

    視線の相手は、不機嫌そうで、それでいて何処か心配そうな表情をエルヴィンに向けていた

    黒い髪に黒くて少し上がっている目、薄い眉の男

    ハンサムと普通の間くらいの顔立ちだ

    「…優男、顔色が良くないぞ、大丈夫か」
    黒い髪の男は、エルヴィンに視線を向けながら、ハスキーな声でそう発した

    「…君は、ナイル。ナイル・ドーク。ウォールローゼ南区出身…だったか」
    エルヴィンは黒い髪の男にそう言いながら、口角を少し上げた

    「ほう、覚えているのか…」
    ナイルは感心したように頷いた

    「まあ、だいたいだがな」
    エルヴィンは肩を竦めてそう言った

    「お前は…」

    「エルヴィン・スミス。心配掛けてすまない。さすがに今日の訓練はきつくてな」

    エルヴィンのその言葉に、ナイルは眉をひそめる

    「今日のなんぞ序の口だぞ。お前は背は高いが痩せすぎだ。もっと鍛えろよ。でなけりゃ、憲兵どころか開拓地送りになるぞ」

    どうやらナイルは、エルヴィンの名前は覚えていなかったものの、憲兵団志望と言うのは記憶していたらしい

    「ああ、そう思っていた所だよ。善処しよう」
    エルヴィンはそう言って微笑んだ
  10. 12 : : 2014/09/27(土) 08:45:34
    訓練兵の期間は三年

    その間彼らは数人同部屋で過ごす

    その部屋の掃除から、食事の下ごしらえ当番、洗濯など、身の回りの事は全て自分達で行う

    戦うための実技や座学だけではなく、生活面、精神面も鍛え抜かれるのだ

    エルヴィンは固いベッドに身体を預けながら、本を読んでいた

    「おい、布団も枕もカビ臭いな…」

    同部屋の同僚達の言葉に、確かに部屋中カビと埃の不潔なオンパレードだと内心思いながらも、気にしなかった

    清潔な所で寝られる保障など、とうに諦めてきたからだ

    自分がこれから行くべき場所には、寝る場所どころか、生きていく場所すらない

    壁外の環境は過酷なのだ

    多少のカビや埃で参るわけにはいかない

    平和に眠れるだけましなのだから

    …とはいえ、いつまでこの見てくれだけの平和が続くかは分からないが
  11. 13 : : 2014/09/27(土) 09:57:59
    「お前…エルヴィン、同じ部屋だったか」
    本を読むエルヴィンの肩がぽん、と叩かれた

    エルヴィンが顔を上げると、先程食堂で話しかけてきた男…ナイルがそこにいた

    「そうらしいな、三年間よろしく頼むよ」

    「ああ、それよりお前、この埃だらけの部屋をなんとも思わんのか…?ひどい臭いだと思うんだが…」
    ナイルはそう言って、眉をひそめた

    彼は育ちが良いのだろうか

    エルヴィンは、自分がそこまで気にはならなかったため、なんとなくそう思った

    よく見れば、兵服の下のシャツもパリッと糊の入ったブラウスで、質も良さそうだ

    「確かに埃だらけだが、今はどうしようもないしな。そんなに気になる程酷いかな、この部屋」

    エルヴィンの言葉に頷くナイル

    「酷いだろう。俺は息もしたくない程だ」

    エルヴィンは内心肩を竦めたが、口に出してはこう言った

    「まあ、休日になるまで我慢だ、ナイル。君も疲れた顔をしているぞ、人の事は言えない」

    「確かに、慣れん環境は疲れるな。ベッドは固いし枕は染みだらけ…訓練よりもこっちの方が過酷だ」
    ナイルは眉をひそめながらそう言った

    ユーモアのつもりだったのだろう

    エルヴィンはそう思い、彼に向かってにやりと笑いかけた

    「俺は天井のシミの方が気になる。先程から、あれがじっと俺を見ている気がして寒気がする」

    エルヴィンが天井を指差す方向に視線をやるなり、ナイルはブルッと身を震わせる

    「おい、言われなきゃ気がつかんのに…気がつけばそれにしか見えんじゃないか…」

    「あれも、大掃除の時に擦ってみるか?おちるかな」
    エルヴィンが問いかける様にナイルに話しかけると、ナイルは後ずさった

    「お前が擦れよ、責任持ってな。俺はやらん」

    「つれないな、ナイル。一緒に仲良く…」

    「しない!」

    後にあらゆる意味での終生のライバルになる二人の出会いは、こんな感じであった
  12. 14 : : 2014/09/28(日) 08:06:35
    翌日は、立体機動の適性検査だった

    これは生来のバランス感覚が問われるため、ここでもまた、訓練兵が振るい落とされる

    腰で留められたベルトと、高く組まれた鎖で身体を両側から吊り下げられ、その腰の起点だけで体のバランスを取るのだ

    エルヴィンは、これをなんなくこなした

    特に何の訓練もしていなかったのだが

    そうかと思えば、まったく出来ずに素質無しとみなされて開拓地送りになった者も数名…

    ナイルはと言うと、これまた危なげなくクリアしていた

    「流石だな、ナイル」
    エルヴィンが訓練を終えた同僚にそう声を掛けると、彼は肩をすくめた

    「これくらいの事、出来て当たり前だ。お前も余裕だっただろ?」

    「…いや。実は冷や冷やものだった」

    エルヴィンのその言葉に、ナイルは…

    「嘘つけ。お前謙遜してるだろ?それか、大きな猫でも被ってるな」
    首を振り、そう言うのだった

  13. 15 : : 2014/09/29(月) 07:53:02
    「結局、今日も開拓地送りが数人出たな。思っている以上に先が見えん」

    ナイルは、訓練の合間の食事時に不安げな表情で、そう口にした

    長方形のクッキーの様な固い物が、彼らの昼食だ

    「ああ、だが君はセンスがあるという噂だぞ」

    エルヴィンはナイルの隣に腰を下ろして、固いクッキー…野戦糧食を口にした

    味気なく、歯ごたえだけは一人前…そう思った

    「センス…なあ。必死にしがみついていただけだがな。しかし、不味いなこれ」
    ナイルは眉をひそめた

    「…まあ、野戦糧食だからな。非常時や、壁外ではこればかりらしい」

    「……萎えるな」

    ナイルははあ、とため息をついた
  14. 16 : : 2014/09/29(月) 14:04:26
    「ナイル、君は調査兵団を希望しているのか?」
    エルヴィンは彼の言葉にふと気になる点があって、そう訊ねた

    野戦糧食を口にするのは、非常時か壁外遠征

    非常時という状況は今のところ無いし、壁外へは調査兵団に入る以外行くことは無い

    それなのに、何故彼は萎えるのか…少し気になったのだ

    「ん?ああ…。そのつもりでここに来た」
    ナイルは頷いた

    エルヴィンは内心驚いた

    埃やカビを嫌い、明らかにいい所育ちのナイルが、よもや調査兵団を希望しているとは

    そして、自分と同じ変わり者を、こんなに早く見つけられるとは

    驚いた素振りは顔には一切出さず、エルヴィンは口を開く

    「そうなのか、物好きだな、君は」
    そう言って、肩を竦めた

    「まあな、いろいろ理由はあるんだ。物好きは百も承知だ。家も、勘当寸前で出てきた」

    ナイルはエルヴィンに、真摯な眼差しを向けた

    エルヴィンは、彼のその瞳からなにかを読み取ろうとするかの様に、青い瞳で眼差しを受け止めた

    ナイルの瞳から感じる強い意思

    燃え盛る焔の様な何かを、その目から確かに感じたのであった


  15. 17 : : 2014/09/30(火) 10:05:30
    その日の夜、エルヴィンはまたベッドの上で本を読んでいた

    夕食後から就寝までの時間が、訓練兵達にとっては唯一の自由時間

    皆思い思いの過ごし方をしていた

    「お前はまた本か…そんなに面白いのか?」

    ナイルはそう言いながら、エルヴィンの本を覗き込んだ

    「ああ、唯一の趣味なんだ、読書がな」
    エルヴィンはちらりとナイルに視線を移動させたが、すぐにまた本に戻した

    「読書が趣味…」
    ナイルは眉をひそめた

    「ん?何か問題でもあるのか、ナイル」
    エルヴィンはナイルの様子に、首を傾げた

    「いや、お前のイメージにぴったりだ。先生とかやりそうな雰囲気だしな。なのに何故訓練兵に…」

    「俺にもいろいろ事情があってな。君と同じで…」

    エルヴィンの言葉に、ナイルはしばらく目を見開いていたが、やがて頷いた

    「なるほどな。俺達は案外似た者同士なのかもしれんな」
    ナイルはそう言って、エルヴィンの肩をぽんと叩いた

  16. 18 : : 2014/09/30(火) 14:47:35
    訓練兵生活も、一月経てば皆慣れてくる

    初めの一月を耐え抜いた若者達は、より実践的な技術を学んでいく

    座学では、基本的な勉学にプラス巨人の生態、人類の歴史、立体機動装置やスナップブレードの登場の歴史など、様々な事を詰め込むように学ぶ

    実技では、主に立体機動装置の使いこなしを学ぶ

    立体機動装置で、人は宙を舞い、空を飛ぶように移動することが出来る

    そのスピードも速い

    だが、その分リスクも生じる
    立体機動は、人が出来ないような行動を可能にするが、普通に生活しているだけでは体感できない程の重力が身体にかかるのだ

    それを毎日の様に訓練していくうちに、その重力や、着地の際の衝撃に耐えうる様に、体が自然と作り上げられる

    エルヴィンも例外ではなかった

    貧弱だとナイルに言われたその身体は、元々筋肉がつきやすい体質だったのだろうか…

    日を追うごとに厚みを増し、立派な体躯を作り出していった


  17. 20 : : 2014/09/30(火) 17:39:08
    ※すみません、投稿順みすってました。
    今日読んでくださった方 、お手数ですがまた読んでやってください…(;つД`)
  18. 21 : : 2014/09/30(火) 17:39:15
    「エルヴィン、お前体重増えすぎだろ…もう服が合わないって」

    二月を過ぎた頃、訓練兵の兵服がどう我慢しても自分の身体に合わなくなったため、エルヴィンは教官にそれを申し出た

    「父は男にしては華奢な方だったんだが、俺は母に似たのかな…自分でも驚いているよ」

    サイズが合わなくなり、ぴちぴちになっているシャツの裾を引っ張りながら、エルヴィンは困ったように首を傾けた

    「まあ、貧弱なままでは立体機動には耐えられんからいいんだろうがな。今日も着地に失敗して怪我をしたのが15名、一人は骨折…こうなってしまえば悪ければ開拓地送りだからな」

    ナイルが日誌を見ながらため息をついた

    彼は訓練兵の中でみるみるうちに頭角を現し、元々の真面目な性格もあってか、訓練兵のまとめ役の様な役割を任じられていた

    「開拓地送りか…ぞっとしないな。ここまで来て…」
    エルヴィンが眉をひそめると、ナイルはまた、息をついた

    「ああ、何とかそうならない様に教官にも掛け合っているが、素質がないのに無理をしては、それこそ命取りだからな…こればかりは教官に任せるより他ない」

    「ナイル、君は真面目過ぎる。優しすぎると言った方がいいか…」

    エルヴィンの言葉に、ナイルは口を尖らせる

    「真面目に考えて何が悪い。俺はいつも真面目が取り柄なんだ。知らん間に女を取っ替え引っ替えする様なお前とは違うんだよ!」

    ナイルはエルヴィンに向かって、そう捲し立てた
  19. 22 : : 2014/09/30(火) 17:40:01
    「…人聞き悪いな、ナイル。取っ替え引っ替えなんかしていないぞ。言われたら断れないだけだ」

    エルヴィンは肩をすくめた

    エルヴィンは貴公子然とした見た目と態度、そして優秀な頭脳のせいか、訓練兵の中でもだんとつでもてた

    最近の立体機動訓練でも著しい成果をあげ、その人気はうなぎ登りだった

    「一番たちが悪いやつじゃないか…本気にならんくせに、手だけは出して…そのうち恨まれるぞ。というか一人くらい譲れよお前」

    「恨まれるようなミスはやらかさないさ。後腐れの無い関係だけだ。俺は君とは違って不真面目だが、その辺はちゃんと考慮しているよ」

    エルヴィンは、ナイルに向かって苦笑しながら言葉を発した

    「本気で好きになったりはしないのか、勿体無い」

    「それはまあ、そのうちだな。ははは」
    エルヴィンの笑いに、ナイルはバサッとエルヴィンの頭に何かを被せた

    「……サイズが大きい兵服だ。貰ってきてやったぞ。礼は明日酒を奢ってくれたらそれでいいぞ。エルヴィン」

    「助かったよナイル。しかし、余計に高くつく気がするんだがな…」

    エルヴィンの言葉に、ナイルはふんと鼻で息をした

    「つべこべ言うなよな。明日死ぬほど飲むぞ、俺は。覚悟しておけよ、エルヴィン」

    ナイルはそう言うと、ぽんとエルヴィンの肩を叩いて、自分のベッドに潜り込んだのだった
  20. 23 : : 2014/10/01(水) 12:01:07
    訓練兵にとって、待ちに待った初めての休暇の日

    つかの間の休息を、実家へ帰る者、街で過ごす者など、朝から食堂はいつも以上に大にぎわいだった

    そんな中、エルヴィンは部屋のベッドの上で、相変わらず本を読んでいた

    「エルヴィン、お前はどこか行かないのか?」

    同室の兵にそう声を掛けられたが、エルヴィンは首を振る

    「今日はちょっと、予定がね」

    「…あ、なるほど、デートか。そりゃいいな。じゃあ俺は出掛けてくる」

    兵は納得したように頷くと、部屋を出ていった

    「デート…か」
    エルヴィンは肩を竦めて、また本に目を通した



  21. 24 : : 2014/10/01(水) 12:08:48
    実際の所、数人の女性兵に誘われてはいた

    だが、今日は一人ゆっくり読書に現をぬかしたかった…女性にではなく

    元々あまり恋愛感情を持たないエルヴィン

    誘われれば身体は重ねるが、心までは許さなかった

    それには深い理由があったのだが、エルヴィンは誰にもそれを打ち明けた事はなかった

    自分が考えて、目指している事の、回りに与える影響、危険性

    それらを踏まえると、とてもじゃないが軽々しく他人にそれを語る事は出来なかった

    それも、彼が幼い頃に学んだ、教訓がなせる行動であった
  22. 27 : : 2014/10/02(木) 09:14:03
    久々にのんびり寛げる休日

    部屋にいると、ひっきりなしに自分を遊びに誘う兵士たちが訪れる

    断るのも申し訳なく思ったエルヴィンは、外に出る事にした

    とは言っても、本を片手にぶらりと散歩だ

    街の本屋に行くのもいいかもしれない…憲兵の検閲を逃れた『外に関する本』でも見つけに行こうか

    私服姿でなら、そんな本を手にとっても見咎められないかもしれない

    エルヴィンはいろいろ思考を燻らせながら、兵舎を出て街に繰り出した
  23. 28 : : 2014/10/02(木) 16:16:25
    街を歩いていると、仲の良さそうな子供たちが遊ぶ姿を各所で見受けた

    エルヴィンにも、勿論幼くあどけない頃は存在した

    同年代の周りの子供達の中でもかなり利発で、優等生だった

    教師をしていた父親のお陰もあったであろう…とにかく本が好きで、勉強に熱中する幼少期を過ごした

    大人しそうに思われていたが、実はかなり好奇心が旺盛で、たまに突拍子もないことを提案して、子供たちは勿論、大人までも驚かせる事があった

    幼い頃から、考えることが好きだったエルヴィン

    だが、たった一つの疑問が、彼の人生を大きく変える事になった

    その疑問を父に投げ掛け、その考えに符合する答えを父から聞き出したエルヴィンは、それからというものの、その考えに終始没頭するようになった

    その考えが正しい事を知らせたいがために、周りの子供たちを説いていった

    ただ、その考えは、壁の中に住む人類にとって禁忌と言われる考えであり、王政府が禁じている考えでもあった

    それでもエルヴィンは、新しい可能性に胸を震わせ、周りの人間にその考えを説いていく

    そんな矢先…

    父が死んだ…事故死だという

    馬車に撥ね飛ばされたらしいが、明らかな拷問の痕があった

    エルヴィンはそこで、自分の過ちを察した…父を死に追いやったのは王政府で、その引き金となったのが、自分の考えを外に漏らしたからだと言うことを

    後悔は先に立たない…その日以来エルヴィンは、自分と父の考えを立証するために生きてきたのであった
  24. 29 : : 2014/10/03(金) 09:04:49
    幼い頃の、取り返しのつかない過ち

    それが常にエルヴィンの頭にあるからこそ、無用に目立つ事を恐れ、まさに鷹が爪を隠す様に生きてきた

    訓練期間でもそう心がけているつもりではあったが、元々持ち合わせていた頭脳に、運動能力、そのどれもが彼が優れている事を公に示し、いつの間にか同僚達の中でも一目置かれる存在になっていた

    優秀で鋭い爪を完全に隠す事は、出来なかったのであった

    露店で飲み物を買い、静かな公園のベンチに腰を掛けて本に没頭していると、ぽん、と肩を叩かれた

    「こんな所で色男が一人読書か」

    エルヴィンが振り向けば、そこにナイルがいた

    「…ナイル、いたのか」

    「たまたま、見かけただけだがな。かじりついて読んでいたが、何の本なんだ」

    ナイルが本を覗こうとすると、エルヴィンはパタンと閉じた

    そして眉をひそめる
    「覗き見は無粋だぞ、ナイル」

    「女の風呂を覗いている様な言い方すんな、エルヴィン」
    ナイルは不満そうに口を尖らせた

    「こんな本だよ」
    エルヴィンはナイルに表紙を見せた

    本の表紙には、世界の植物と題された題名が書いてあった

    「…それは表紙だけだろう。さっき中身をちらっと見た」

    ナイルのその言葉に、エルヴィンは目を見開いた

    本は表紙をすげ替えた物で、中身は禁忌とされている、壁外に関する文献だったのだ

    「………」
    エルヴィンはナイルに鋭い視線を当てた

    口外されては、訓練兵にいられなくなるかもしれない

    うかつだった…ちら見しただけで内容がわかる人がいると思えなかったのに

    エルヴィンが思考を巡らせていると、ナイルが息をついた

    「心配するな、エルヴィン。俺は誰にも言わん。寧ろ、俺もそんな本を持っていた。親に処分されちまったがな」
    ナイルはそう言うと、肩をすくめた

  25. 30 : : 2014/10/04(土) 07:23:06
    「ナイル…君も壁の外に興味があるのか」

    「ああ、チビの時からずっと気になっていたさ。小さい時に一度、壁の上に上らせて貰ったんだが、その時からな」

    ナイルは不敵な笑みを浮かべた

    「そうだったのか…」

    「そうさ、だから俺は…調査兵団に行こうかなと思っているわけさ」

    軽い口調で話すナイルに、エルヴィンは顎に手をやりながら言葉を発する

    「確かに調査兵団に行く以外、壁外に出る事は出来ないからな。だが、巨人がわらわらいる場所へ行くとは、正気の沙汰とは思えないぞ、ナイル」

    「ははは、出会って付き合ってみたら、案外いいやつらかもしれんぞ」
    ナイルは愉しげに笑った

    「そんなわけないだろう」
    エルヴィンが肩を竦めてそう言うと、ナイルは一転、真剣な眼差しを見せた

    「俺は、壁外に何があるのかを知りたいんだ。毎日を壁に阻まれた生活に、いつ終わりが来るかわからん。その前に何か打開策を練るべきだ」

    エルヴィンは彼のその言葉に、目を大きく見開いた

    そして、自分と似た考えを持っている者を初めて見つけた事に、内心諸手を挙げて喜んだ

    だが表には出さずに、慎重に言葉を選ぶ

    「壁外へ出たいなど物好きだとは思うが…俺も君の気持ちがわからんでもないよ」

    「そうか、そう言ってくれたのはお前が初めてだ、エルヴィン」
    ナイルは笑みを浮かべながらそう言った

  26. 31 : : 2014/10/05(日) 01:21:54
    「エルヴィン、お前は壁外に興味があるくせに、憲兵希望なんだな」
    ナイルは少し寂しげな表情を見せた

    「ああ、今の所はな」

    「…いや、お前はなんだか信用できん。腹の底では何を考えているのか、全く読めんからな」
    ナイルはエルヴィンの目をじっと見つめた

    エルヴィンはその視線をしっかり受け止める

    「そうか、こんなに素直なのに、信用できんとは…傷付くよ、ナイル」

    「嘘つけばかが。どこが素直なんだよ、気持ち悪いぞエルヴィン」
    ナイルはエルヴィンの言葉に、肩を竦めた

    「酷い言われようだ…ははは」

    「何が傷付くよ、だ。毛の生えた心臓してるくせによく言うぜ」

    楽しげに笑うエルヴィンに、ナイルは呆れたような表情で、ため息混じりにそう言ったのだった
  27. 32 : : 2014/10/05(日) 23:44:40
    「この店の飯が凄く旨いともっぱら噂でな…休暇は絶対に行ってやると思っていたんだ」

    他愛の無い話をしながら、あちこちをぶらついた後、ある酒場に入った

    年期の入った…だが手入れの行き届いた店内では、沢山の人が酒を酌み交わしていた

    「そうなのか、それは楽しみだな」
    エルヴィンはナイルの言葉に相づちを打った

    辛うじて空いていたテーブルを見つけて、椅子に腰を下ろすや否や、ナイルはメニューにかじりついた

    「どれが一番旨いだろうな、エルヴィン」

    「さあな、店の者にお勧めでも聴いてみたらどうだろう」

    エルヴィンの言葉にナイルは頷くと、丁度注文を聞きに来たであろう娘に口を開く

    「なあ、この店一番のお勧め料理は…」
    ナイルはそこまで言って、言葉を止めた

    エルヴィンが怪訝そうにナイルを見ると、端から見てもわかるほどに、顔を真っ赤にしていた

    「お勧めですか?オムレツや、オムライスですね。懐が温かいなら、焼鳥なんかもお勧めです」

    娘は笑顔でそう言った

    エルヴィンには、ナイルが顔を真っ赤にする理由がわかった

    娘はとても美しかった

    しかも、ふわりと人好きのする笑顔を浮かべていた

    男なら誰でも釘付けになるだろう

    「じ、じゃあオムレツと…焼鳥…あとは…」

    ナイルはエルヴィンの好みを聞く事を忘れて、しどろもどろに注文を口走った
  28. 33 : : 2014/10/06(月) 22:47:16
    娘が立ち去った後、しばらくナイルは放心状態だったが、やがて口を開いた

    「いや、驚いた…」

    「ん、何がだ?ナイル」

    エルヴィンの問いに、ナイルは彼女が立ち去った方をちらりと見やった

    「何がって、凄い美女だと思わないか?」

    エルヴィンはナイルの言葉に、しばし考える様に目を閉じた

    やがて、ゆっくり頷く

    「確かに美人だったな。気さくそうだし、愛嬌もありそうだし」

    「…だよな。俺の初恋の女に似てる、かもしれん」

    ナイルは息をついた

    「初恋の…君は初恋はいつなんだ?」

    「13歳かな」

    「……遅いんだな、ナイル。意外だったよ」
    エルヴィンは目を見開いた

    「本気で恋をしたのは、だぞ。小さい頃には淡いやつならやってる!」
    ナイルは顔を真っ赤にして声を上げた

    「そうか、そうだよな」

    「ちなみにお前は…」

    「…初体験が、13歳だよ、ナイル」

    今度はナイルが目を見開いた

    「は、早すぎるだろ、嘘つけエルヴィン!!お前はまだ童貞だ!!」

    「何を言うんだ、君こそ紛れもなく童貞だろう?」

    「……オムレツ、とお酒、お持ちしました…あはは」
    その時、二人の争いの背後から、鈴の音の様な心地よい声がした

    二人がほぼ同時に振り向くと、噂の美女が、楽しげに笑っていた

    美味しそうなオムレツに、お酒よりも…

    二人は彼女の笑い顔に釘付けになったのであった
  29. 34 : : 2014/10/07(火) 13:47:55
    「お兄さん達、その…あはは!」
    娘はテーブルに料理と酒を置いた後、耐えきれなくなったのか、またお腹を抱えて笑い始めた

    「な、何だよ…笑いすぎだろ…」
    ナイルは顔を限界まで朱に染めながら、ぼそっと言葉を発した

    「その反応を見る限り、やはり図星か、ナイル。君は童貞…」

    「うるさいエルヴィン!!何を勝手な事を…!」

    ナイルは机をバン、と叩いて声を荒げたが、如何せん真っ赤な顔で、全く迫力が感じられなかった

    「あはは、お兄さん達面白いわね!!仲良しなんだ…ふふ」
    尚も楽しげに笑う娘に、ナイルは首を振る

    「こいつと俺が仲良しなわけ無いだろ!!」

    「なんだ、親友だと思っていたは俺だけなのか…悲しいよ、ナイル」
    エルヴィンは目を伏せてそう言った

    「あら、お兄さん可哀想…えっと、ナイルさん、仲良くしてあげてね?」

    娘はそう言うと、ひらりと踵を返して厨房の方へと去って行ったのだった
  30. 35 : : 2014/10/07(火) 13:55:42
    「いやあ、旨かったな」
    二人が店を出た時には、すでに辺りは真っ暗になっていた

    エルヴィンは久々に食べた美味しい料理に、満足げに腹を撫でた

    「ああ、そうだな。兵舎の料理は味気ないスープにパンだけが多いしな。それより……」

    ナイルはそこまで言って口ごもった

    エルヴィンはちらりとナイルの顔に目をやって、不敵な笑みを浮かべる

    「ナイル、まだ顔が赤いぞ」

    「うるさい、酒のせいだ、酒の!!」
    ナイルはますます顔を赤くして、激昂した

    「ナイルさん、と言われていたな…」

    「ふん、お前のせいで変な印象持たれちまった…」

    「童貞か?真実なら仕方があるまい」
    エルヴィンは肩をすくめた

    「いいんだよ!!お前みたいに誰彼構わずなんか、気持ち悪いったら無い!近寄るなよ、性欲がうつるわ!!」

    ナイルは口を尖らせながら、しっしっと手でエルヴィンを追い払う仕草をした

    「俺が性欲の塊みたいな言い方をするな…悲しいよ、ナイル」
    エルヴィンは悲しげに瞳を揺らした

    「ふん!!そんな顔しても無駄だ!!不潔野郎め!!」

    「……君は確か、一人くらいよこせと言ったよな?ということは、君も性欲の塊だ」

    「人の挙げ足ばかりとりやがって…」
    ナイルはふん、と鼻息を荒くそう言ったのだった

  31. 36 : : 2014/10/07(火) 17:07:35
    おぉっっ
    新しい組み合わせだ(=´∀`)人(´∀`=)
    今後の展開に期待×10000!!
  32. 37 : : 2014/10/07(火) 17:24:01
    >りんりんさん☆
    ありがとうございます♪
    二人の仲の良さwそして今後の展開を楽しく真面目に書きますので、よろしくお願いいたします♪
  33. 38 : : 2014/10/07(火) 23:18:22
    「そう言えば…名前を聞くのを忘れていたな…」
    部屋に戻ってからも、ナイルはよほど彼女が忘れられないのか、物思いに耽っていたと思えば、そんな事を口にした

    「ナイル、君は彼女に一目惚れしたんだな」

    「そ、そんなんじゃない!ちょっと、いやかなり気になるだけだ!!…だが…」

    ナイルはそこで言葉を切り、そして息をついた

    「だが、何だ?ナイル」

    エルヴィンの気遣わしげな声に、ナイルは顔を一瞬歪ませ、ふんと鼻を鳴らす

    「次の休暇もあの酒場へ行く。付き合えよ、エルヴィン」

    「ああ、毒を食らわば皿までと言うしな。しっかり見届けてやるよ。君の…恋する姿を…ははは」
    エルヴィンは楽しげに笑いながら、ナイルの背中をぽんぽんと叩いた

    「笑うなエルヴィン!!俺は真面目にだな!!」
    ナイルはバカにされている様に感じて、激昂した

    「わかっているさ、君が真面目に、彼女に恋をしているというのはな。ま、頑張れよ、ははは」

    「ちっ、上から物を言いやがって…」
    ナイルは舌打ちをして、ベッドに潜り込んでしまった

    「おやすみ、いい夢見れればいいな」
    エルヴィンは、拗ねたナイルにそう言葉をかけて、自分もベッドに横になったのであった
  34. 39 : : 2014/10/07(火) 23:39:06

    要するに、未来にはライバルの様な存在になる彼らであったが、若かりし頃には互いを親友と認め合う仲であった

    まるでタイプの異なる二人、だが凹凸がぴったり嵌まる様な、そんなコンビである彼らは、この様に、訓練兵時代は公私共に仲良く過ごしていた

    女性に事欠かなないエルヴィン

    恋すらまともにしたことがなかったナイル

    そんな終生のライバルの二人の間に、一人の美女

    二人の物語は、この女性無しでは語れないであろう
  35. 40 : : 2014/10/07(火) 23:55:02
    次の休暇も、ナイルに半ば連行される形で例の酒場に足を踏み入れたエルヴィン

    酒を奢る…ただし一杯だけ

    そんな萎びた条件を飲んだのは、エルヴィンも彼女に会いたかったからかもしれない

    彼女はそれほどまでに魅力的だった

    道行く男なら、10中9は振り返るだろう

    しかも、変に気取らず、明るく元気で気さく

    そして、どんな男でも虜にする何かを彼女は持っていたのかもしれない

    カウンターに腰を下ろすと、例の娘がやってきた

    「ご注文は…あら、あなた達はあの時の…」

    「や、やあ、久しぶりだな」
    ナイルはぴょいと手を上げて、挨拶をする

    すでに顔が真っ赤だった

    エルヴィンはそんなナイルを見ながら、腹を抱えて笑いそうになるのを必死で抑えた

    ナイルは訓練兵の中でもなかなかの優等生だ

    規律には厳しく、模範のような男

    なのに、娘の前ではからっきし

    そのギャップに思わず吹き出しそうになるのは仕方がないだろう

    「そちらのお兄さんも、お久しぶり。何だか楽しそうね、お兄さん」

    娘はエルヴィンの顔を覗き込んでそう言った

    「ん?ああ楽しいぞ。ナイルが…」

    「エルヴィン!!余計なことを言うなよ!!」

    ナイルは寸前の所で、エルヴィンの言葉を遮った

    「あはは、相変わらず仲良しね。ナイルさんと…」

    「俺はエルヴィン。君は?」

    エルヴィンはさらりと自己紹介をし、彼女に名前を問うた

    「私はマリー。よろしくね!」
    彼女はふわりとした髪を揺らして、ぺこりとお辞儀をした

    ほんのり、かぐわしい花の香りが二人の鼻腔をくすぐった


  36. 41 : : 2014/10/08(水) 20:58:03
    「へえ、お兄さん達は訓練兵なのね。がっちりしてて、いい体してるなあって思っていたの」

    娘の言葉に、ナイルは首を振る

    「いや、エルヴィンはともかく、俺はあんまり体格には自信無くてな…こいつは入団当初は貧弱だったくせに、一人抜け駆けしやがって…いつの間にかいいがたいになってやがったんだ」

    「抜け駆けとは、人聞きの悪い。何も特別な事はしていないよ。一生懸命訓練に励んでいるからこそこうなった」

    エルヴィンは厚い胸板を誇張するかの様に反らし、拳でぽんと叩いた

    「それならお前、まるで俺が一生懸命やってないみたいになるだろうが!!」
    ナイルは不満げに顔を歪ませた

    「あはは、二人ともいいコンビね。楽しいわ、聞いているだけで」

    二人の男のやりとりを見ていたマリーは、微笑みを浮かべながらそう言った
  37. 42 : : 2014/10/09(木) 17:26:47
    それから二人と彼女は、彼女の給仕の合間をぬって取り留めの無い話をした

    「訓練兵にも、女性はいるわよね?ナイルさんはその…出会いは無かったの?ほら、ど……」
    マリーはそこまで言って言葉を濁した

    「いや、あの、そのな…」

    「ナイルは自分より腕っぷしの強い女は抱けないみたいなんだ。ここの女は皆化け物だといつも嘯いてるしな」

    ナイルのしどろもどろに返事に、エルヴィンはフォローにならないフォローを入れた

    「あら、そうなんだ。強い女性は憧れるけどなあ、私」
    マリーは頬に手を当てながらそう言った

    「俺も強い女は好きだな」

    マリーに同意するようにエルヴィンはうんうんと頷いた

    「マリー、強くなったらエルヴィンに食われるぞ!!何せこいつは見境がないからな!!」

    ナイルの言葉に、マリーは一瞬エルヴィンに驚いた様な顔を向けたが、やがて笑顔になった

    「そうね、エルヴィンさんはもてそうだもの。私も気を付けるわ」

    そう言って、微笑むのだった
  38. 43 : : 2014/10/10(金) 13:06:21
    そんな楽しい時間はあっという間に過ぎ去るもの

    二人は夜遅くに兵舎へ戻ってきた

    「ったく、お前ばかりいい風に思われやがって…」
    ナイルはぶちぶちと不満を口にしながら、エルヴィンに恨みがましい目を向けていた

    「いい風に思われてはいないだろう?俺は完全に遊び人認定されたと思っているんだが」

    エルヴィンがそう言って肩を竦めると、ナイルはふん、と鼻を鳴らした

    「モテそうとか言われてたじゃないか。それに、マリーがお前を見る目は、完全にお前に見とれている目だったさ!!」

    「そうかな、そうは思えないんだが、もしそうならそれはそれで嬉しいかもしれん」
    エルヴィンはそう言って、悪戯っぽい笑みを浮かべた

    ナイルはそれを見て、肩をがっくり落とした

    「…はあ、顔のいい奴は得だよな。中身はえげつない程悪知恵が働く、油断ならない男なのにな…」

    「お、誉め言葉として受け取っておくよ、ナイル」

    「誉めてないわ!!誰がお前みたいな得たいの知れん奴なんかを誉めるか!!」

    そんな漫才じみた会話を交わしながら、二人は部屋に戻って就寝したのであった
  39. 44 : : 2014/10/11(土) 08:24:41
    こんな軽口を叩いている様な二人であったが、訓練中はいたって真剣そのものだ

    ナイルには、調査兵団に入るという希望があるため、特に立体機動や巨人の生態について、より一層真剣に取り組んだ

    エルヴィンも入隊式の時の宣誓以来、周りには憲兵団志望と思われており、訓練や座学に力を入れて当然だと周知されていた

    その結果、エルヴィンとナイルは他に並び立つ人はいない程の好成績を修める事となった

    「なんなんだ、エルヴィン。目の上のたんこぶみたいに俺の上にのしかかりやがって…」

    張り出された成績と点数を見ながら、ナイルは毒づいた

    定期的にこうして、順位が張り出される
    エルヴィンが一位、ナイルは二位だった

    「のしかかっていないだろう。一位と二位にはかなり差が有るように見えるんだが…」
    エルヴィンは肩を竦めた

    「かなり、じゃない。少し、だ!!」
    ナイルはふん、と鼻を鳴らした

    「ナイル、君は負けず嫌いなんだな」
    ナイルのその様子を、好もしげに見詰めるエルヴィン

    性格のまるで違うこの友人に、自分と似た所をたまに見つけると、何となく嬉しくて心強く思った

    「お前には負けるわ!!実地の試験では仲間を使って獲物を横取りしやがるし…油断も隙もない。女はともかく、順位くらい譲れよな!!」

    「俺も負けず嫌いだからな。君と同じで。譲られても嬉しくないだろうから、手は抜かん」
    エルヴィンはにやりと不敵な笑みを浮かべた

    「余裕でいる間に首根っこつかんで、引きずり下ろしてやるからな!!」

    「ああ、期待して待っているよ」
    エルヴィンはそう言って、ナイルの肩にポンと手を置いたのだった
  40. 45 : : 2014/10/12(日) 00:06:19
    訓練兵生活も早一年

    成績トップを独走するエルヴィンに、食い下がるナイルは、優秀さの上で訓練兵達の中でも有名になっていた

    そんなある日、エルヴィンは一人で街を歩いていた

    久々の非番だったが、ナイルは実家へ帰省するというので、エルヴィンは珍しくナイル無しの休暇を過ごすことになったのだった

    夜にはいつもの馴染みの店に行こうと決めてはいたが、昼は差し当たり予定はない

    久々に、本を片手にぶらぶらしようか、と考えていたのだった

    商店街を抜け、公園に続く道を歩いていると、視線の先に見知った顔があった

    エルヴィンはしばらく考えた後、その人物に歩み寄った

    「やあ、マリー」

    「あら、エルヴィンさんじゃない。今日は一人なの?珍しいわね、ナイルさんがいないなんて」

    見知った顔は、酒場のマリーだった

    ナイルが片想いをしているらしい相手だ…本人は認めないが

    「ナイルは実家へ呼び出しさ」
    エルヴィンが肩を竦めると、マリーは目を見張った

    「実家へ呼び出し…なにしでかしたの?」

    「もうすでにしでかしてるさ。何せ親の反対を押しきって訓練兵に入隊したらしいからな」

    エルヴィンの言葉に、マリーはなにかを考える様に視線を下へ向けた

    「ナイルさんは、そこまでして兵士に成りたかったのね。自分のやりたいことがあるなんて、羨ましいわ」

    マリーはそう言うと、ため息をもらした

    「マリーには、夢はないのか?」

    「私の夢は…ごく普通よ。結婚して、優しい旦那さんと子どもに囲まれて暮らすの。今は…両親がいなくて一人だから…」
    エルヴィンの問いに、何処と無く寂しげな表情でマリーは言葉を紡いだ



  41. 46 : : 2014/10/12(日) 23:29:03
    「なるほど、ご両親が早くに他界か…育ての親のお祖母さんも他界して、今は一人暮らしか」

    「ええ、そうなの。気ままな生活ではあるんだけどね。酒場でバイトをして、友達と遊んだり…でもやっぱり何処か、寂しいとは感じているの」

    公園のベンチに二人で腰かけて、そんな話をしていた

    マリーは自分の身の上をポツリポツリ話した

    エルヴィンは相づちを打ちながら、マリーの顔を見詰める

    美しい横顔は、今は少しくすんで見えた

    いつも笑顔しか見せないマリーの、もの悲しげな表情がそう見せていたのかもしれない

    それでも、大きな瞳に長いまつげ、桜の花びらの様な美しい形の唇に、目を奪われずにはいられなかった

    ナイルが一目惚れするのも無理はない

    エルヴィンは内心そう思った

    ともすれば自分も惚れてしまうかもしれない、自分の目的を達するために捨てたはずの感情が、首をもたげてしまうかもしれない

    それほどまでに、マリーは美しかった

  42. 47 : : 2014/10/13(月) 21:08:28
    「マリーが寂しいなんてな…全くそんな素振りは見せなかったし、気が付かなかった。割りと人の顔色を伺うのは得意なんだが」

    エルヴィンの言葉に、マリーはクスッと笑みをこぼした

    「のほほんとしているように見えた?」

    「まあな、底抜けに明るい様にしか見えなかったしな。苦労していたのか?」

    エルヴィンは、隣に座るマリーに気遣わしげな表情を向けた

    「苦労と言うほどは…確かにずっと働いてはいたけれど、このご時世そんな子は沢山いるし、甘えてられないしね。それに、お婆ちゃんは優しかったのよ。だから、今は寂しいけど、ずっと幸せだったのよ」

    マリーはそう言って、ふわりと微笑んだ

    「そうか、それなら良かったよ。君は美人だし、男が放って置かないだろ、選びたい放題だ。だから必ず幸せな家庭を築けるさ」

    「そうだといいけど…何処かに幸せにしてくれるいい男はいないかしらね?」
    マリーはそう言いながら、艶やかな目をエルヴィンに向けた

    その思わせ振りな態度は、エルヴィンの気持ちを揺らすのに充分だった

    エルヴィンは心の揺れは全く表に出さないように、口を開く

    「いくらでもいるさ。ゆっくりじっくり選ぶといい」

    「ふふ、そうね。そうさせてもらうわ」
    マリーは微笑みながら、頷いた
  43. 51 : : 2014/10/14(火) 17:34:15
    >エレアニLoveさん☆
    ありがとうございます♪嬉しいです(///∇///)
  44. 52 : : 2014/10/14(火) 20:04:17
    それから二人は、町を歩きながら他愛の無い話に華を咲かせた

    話はエルヴィンの訓練兵生活に及んだ

    「へえ、300人もいる中で首席なんだ…凄いわね」

    「いや、何とかかじりついているだけだよ。いつ蹴落とされるかわからないしな。何せすぐ後ろにはナイルがいるしな」
    マリーが自分に向ける感嘆と、尊敬の眼差しに、エルヴィンは肩を竦めた

    「ナイルさんは二位なの?それも凄いわ。あなたたちって、エリート二人組だったのね。ただの楽しい人達ではなかったんだ」
    マリーは尚も、目を見開いていた

    「いや、ただの楽しい人達だよ。少なくともこうしている間はな。エリートなんて言われてもピンとこないな。俺たちは君と同い年の、普通の男だよ」

    「そうよね、普通よね。でも、とても頼りになりそうだわ」
    マリーはエルヴィンに柔らかな笑顔を向けた

    「ああ、何時でも頼ってくれよ。ナイルも喜ぶだろう」

    「え?ナイルさんがどうして喜ぶの?」
    マリーはきょとんとした

    「まあ、ご想像におまかせするよ」

    「なあにそれ、思わせ振りね!!」

    マリーはそう言って、頬を膨らませるのだった

  45. 53 : : 2014/10/14(火) 22:09:33
    期待しかないです!
    頑張ってください‼︎(#^.^#)
  46. 54 : : 2014/10/14(火) 22:35:38
    >メープルさん☆
    ありがとうございます!!頑張るしかないです(///∇///)
  47. 55 : : 2014/10/15(水) 16:34:04
    小一時間ほど歩いた二人は、商店街の一角の小さなカフェで、腰を落ち着けた

    マリーとの会話は、まるで気心の知れた旧知の親友との関係の様に穏やかで、居心地の良い雰囲気の中で進んだ

    マリーは、身の上話をきっかけにエルヴィンに様々な話をした

    恋愛の事や友達の事、好きな食べ物から興味のある事柄まで、話は多岐にわたった

    「エルヴィンはさ、壁の外って見たことがある?南の壁の向こう側」

    マリーの言葉に、エルヴィンは頷く

    「シガンシナの南壁の上になら、何度か上がったよ。訓練の一環でな。砲台の整備なんかを学んだりするんだ」

    「私は見たことが無いのよ。やっぱり真下には巨人がたくさんうろうろしてるの?勿論、巨人も見たことが無いんだけど」

    マリーはエルヴィンの顔を覗き込む様に見ながら、そう言った

    「そうだな、うろうろしているよ。巨人は、人類の天敵そのものだ。問答無用で人を喰らう。見た目は人を大きくしただけに見えるんだがな」

    「巨人は怖いわ。だっていつも調査兵団の強そうな人達でさえ、皆壁外から帰ってきたらぼろぼろだもの…。でも、何も知らないのは、もっと怖い気がするの。変かも知れないけど、何となくね…」

    マリーはそう言うと、不安そうな瞳を窓の外に向けた

    「そうだな。だが大丈夫だよ。立派な壁があるしな。滅多なことは無いだろう…多分な」
    エルヴィンは心にもない事を言った

    滅多な事が起こるかもしれないと危惧しているのは、他ならぬエルヴィンだ

    だが彼はここでそれを打ち明ける訳にはいかなかった

    彼の考えが上に…王都の輩に知られれば、彼だけではなく、関わる人間が犠牲になる、それを身をもって体験したからだ

    マリーに、そんな恐ろしい世界を体験させたくない、そんな感情も確かにあった


    自分の目的を達する為には、自分より大事な存在を作るわけにはいかない

    これ以上彼女に深入りはするなと、自ら警告を発しながら、それでも惹かれずにはいられなかった

  48. 56 : : 2014/10/16(木) 09:52:58
    こうしてあっという間に時間は過ぎ、マリーは仕事の時間になった為、エルヴィンは彼女を酒場まで送り届けた

    「また、店に遊びに来てね」
    マリーは笑顔でそう言った

    「ああ、近いうちにまた顔を出すよ」

    エルヴィンがそう言うと、マリーはじっと彼の蒼い瞳を見つめた

    そしてゆっくり口を開く

    「今度、デートに誘ってね」
    そう言って、悪戯っぽい笑みを浮かべた

    「ナイルも言っていたが、俺は危険らしい。それでもいいのか?」

    不敵な笑みを浮かべてそう言うエルヴィンに、マリーは一瞬目を見開いた

    だが、その驚きの表情はすぐに艶やかな笑みにとって変わる

    「いいわよ、エルヴィン。あなたになら…ふふ」

    そんな返しが来るとは予想していなかったエルヴィンは、降参といった体で首を振った

    「…負けだよ、マリー。君は本当に強いな」

    「そんなくらいでは負けないわよ?あなたは負けを認めたわけだし、また遊んでね、約束よ?」

    そう言って、エルヴィンの小指に自分の小指を絡めると、半ば強引に約束をとりつけて、マリーは酒場に消えたのだった
  49. 57 : : 2014/10/17(金) 08:33:23
    「な、なんだって!?貴様エルヴィン、抜け駆けしやがって!!」

    その日の夜、実家から帰ってきたナイルに隠す事無く、マリーと会ったことを話したエルヴィン

    案の定ナイルは顔を真っ赤にして怒った

    「抜け駆けじゃないぞ。偶然会っただけだ。やましい事など何もないよ」

    「やましい事なんかあってたまるかよ!!」
    ナイルはふん、と鼻を鳴らしてソッポを向いた

    そんな直情的なナイルを、少し羨ましく思ったエルヴィンは、怒りをぶちまけられながらも、笑顔で応対する

    「また酒場に来てねと言われたよ。近いうちに顔をだそう、ナイル」

    「言われなくても行くさ…。お前はいつもいい所ばかり取るな。なんなんだよ、偶然会って…半ばデートじゃないか。運が良すぎだろ…」

    ナイルは散々捲し立てて疲れたのか、肩を落としてそう言った

    「まあ、二人ではいたが、他愛の無い話をしただけだよ」

    「他愛の無い話をしながら二人でいるのが、デートじゃないか!!」

    ナイルは机をバン、と叩いた

    エルヴィンは眉をひそめてぼそっと口を開く

    「手をつないだり、抱き締めたり、キスをしたりはしていないぞ」

    「あ、あ、あほか!!そんなのされてたまるか!!マリーにはするなよ!?マリーに手を出したら口を聞かん!!」

    ナイルはそう言うと、布団に潜り込んでしまった

    「心配するな、手は出さないよ。誓って、出さない」

    エルヴィンはそう声を掛けて、ナイルの背中を布団越しにぽんと叩いた


  50. 58 : : 2014/10/18(土) 08:32:18
    翌日、ナイルの恨み言でも聞く覚悟で朝の支度をしていたエルヴィンであったが、結局ナイルは、昨日の事には一切触れてはこなかった

    ただ時折何かを考える様に、遠くを見つめる素振りを見せていた

    そんな様子を見ていると、エルヴィンはつい口をついてしまいそうになる

    自分は調査兵団へ行くと決めている事と、マリーの気持ちがどうあれ、彼女との未来など考えてはいない事を

    たとえ自分の気持ちがマリーに向いていて、両思いであったとしても、エルヴィンにはそれを手放してまでやらなければならない事があるという事を

    だが、今はまだ話す時ではない、エルヴィンはそう考えていた


  51. 59 : : 2014/10/19(日) 07:27:17
    それから、休暇毎にマリーの酒場を訪れた二人

    エルヴィンはマリーと二人きりで会うことはしなかった

    マリーも、特に二人で会いたいとアプローチしてくる事はなく、時は過ぎた

    訓練兵生活も早二年

    兵士達は各々自分が進むべき道を見いだし始めていた

    元々憲兵団を希望していた兵士達も、成績がふるわなければその道は諦めざるを得ない

    調査兵団を志望していると公言するナイルの所には、後少しで上位10位に入れるという瀬戸際の同僚が、何とかならないかと相談…交渉に訪れる事があった

    彼らにとって、そんなプライドを捨てる様な行動すら惜しまない魅力が、憲兵団にはあったのだ

    「他力本願過ぎるだろう。手を抜いて、10位以内を譲れなんてな。奴等はみっともないとは思わんのか」

    ナイルの言葉に、エルヴィンは頷く

    「確かにみっともないな。だが、それをしてまで入るだけの場所なんだろう、憲兵団は」

    「頑張ればいいんじゃないか。俺はそう思うんだがなあ…」

    ナイルはため息をついた

    その表情は幾分暗かった

    「頑張れば何とかなるという段階でもないからな。何処かで上手く立ち回らないと、憲兵団には入れない」

    「その点お前は認めたくないが、何でも完璧だな…だんとつの一位で憲兵団入りだからな」

    ナイルはエルヴィンをちらりと見ながらそう言った

    「何でも完璧かな?たまにはへまをやらかしているぞ、俺だって」
    エルヴィンは肩を竦めた

    「成績はだんとつの一位。マリーもお前に首ったけ…完璧じゃないか」

    ナイルは寂しげに遠くを見据えて、言葉を発した

    エルヴィンはそんな様子のナイルを見て、あの事をそろそろ打ち明けようか、そう思ったのだった

  52. 60 : : 2014/10/20(月) 01:18:16
    「ナイル、話があるんだ」

    エルヴィンはある晩、ベッドで休もうとしていたナイルに声をかけ、屋外へ連れ出した

    ナイルは怪訝そうな顔をしながらも、エルヴィンに着いていった

    「話ってなんだ」

    訓練兵施設の運動場の片隅に腰を下ろして、ナイルはエルヴィンを見た

    その蒼い瞳は、真剣そのものといった風情を見せていた

    「ナイル、俺の進路の話だが…君は以前、俺が読んでいた本を見ただろう」

    エルヴィンはナイルに話を切り出した

    父親を失って以来、誰にも話さなかった事を

    「壁外に関する本だな。禁忌とされている…」

    「ああ、そうだ。実は俺は壁外に興味は勿論あるんだが、それだけじゃないんだ。俺が興味があるのは、巨人の事だ」

    エルヴィンの話に耳を傾けながら、ナイルは頷く

    「確かに、俺も巨人がどこから来やがるのか知りたいとは思う。それは王に禁じられた考えだから、公言はしないがな」

    「なるほどな、君もそうだったか。俺も…同じだ。巨人の事を知りたい、壁外の事も、そして…何故か歪んだように見える、この壁の内側の世界の事も」

    エルヴィンのその言葉に、ナイルは慌てて辺りを見回した

    「おい、エルヴィン。滅多なことを言うな。王が治めるこの壁内に疑問など抱くような発言は…」

    「わかっているさ。だから、君にだけ話している。大丈夫だ、もうへまはしない」

    エルヴィンは真剣ながらもどこか、哀愁が漂うような、そんな複雑な表情をナイルに見せた

    過去に自分が起こした、取り返しのつかない過ち

    賢すぎたがために、謀殺された自分の父
    愚かな息子である自分

    そんなエルヴィンの心の内を、ナイルが読み取れるはずがないのだが、彼は真摯な眼差しをエルヴィンに向けて、言葉を紡ぐ

    「何かあったか。過去に…失敗でもしたか。だからお前は慎重なまでに慎重なのか。上辺だけの女性関係もそれに通ずるのか」

    「俺は、取り返しのつかない過ちを犯した。それを覆すために、生きている」

    エルヴィンは意を決して、そう打ち明けたのだった

  53. 65 : : 2014/10/21(火) 01:18:52
    「エルヴィンお前、じゃあ憲兵になりたいって言う話は…」

    「あれはカムフラージュだ。最初から調査兵を目指すなど言えば、俺はまた目をつけられるかもしれん。何せ前科があるからな」

    エルヴィンは肩をすくめてそう言った

    「前科か…。その、父親が死んだ事と、お前が知りたい事というのは繋がっているという事なんだよな」

    「ああそうだ。父の、ある考えを俺は正しく自然だと思った。父の考えを聞いた瞬間、それまで何となく腑に落ちなかった壁の中の世界の秘密が、紐解けたんだ」

    エルヴィンは真摯な眼差しをナイルに向けて、そう言った

    ナイルはごくりと息を飲んだ

    「その、ある考えとは何だ」

    ナイルの問いに、エルヴィンは首を振った

    「確証が得られるまでは細部までは話せない。君まで巻き添えにしてしまうかもしれないからな」

    「今さら巻き添えの心配をされても遅いぞ、エルヴィン。ちゃんと話してくれ」

    ナイルの言葉に、エルヴィンはしばらく考えを巡らせる様に顎に手をやったが、やがて頷いた

    「巨人の正体、壁の中の歴史、それらを一つ一つ確認するために、俺は調査兵団に入る。父の考えが正しかった事を証明するために」

    「ふむ…巨人の正体か。人の形をしている事になにか秘密がありそうだとは思うが…俺にはそれくらいしか思い付かないな」

    ナイルは首をかしげた

    「ナイル、不思議だと思わないか。この統治機構は、巨人と戦うのが上手い奴ほど王都に近付くんだ。巨人と戦う可能性のある場所から離れるんだ。そこが、まずは1つの疑問だ。これ以上は俺は言う事は出来ない、わかってくれ」

    エルヴィンは蒼静かな光を宿した蒼い瞳を、ナイルに向けて言葉を発した

    「それが当たり前だと思っていたが、確かに腑に落ちないな。要するにお前の考えは、壁の中の統治機構を揺るがしかねない物だという事か」

    「ああ、その通りだ。さすがだな、ナイル」

    エルヴィンはそう言うと、ナイルの肩をぽんと叩いたのだった



  54. 70 : : 2014/10/21(火) 20:29:50
    >進撃の人さん☆
    ありがとう♪頑張ります!!
  55. 71 : : 2014/10/22(水) 00:09:10
    「じゃあ、俺とお前は同じ調査兵団志望って事だな」

    「ああ、そうだな、ナイル。よろしく頼むよ」
    エルヴィンはそう言って、ナイルに右手を差し出した

    ナイルはしばらく考えた後、その手を握った

    「これからも、壁外で犬死にしないように訓練に励むとするか」

    「ああ、そうだな、共に頑張ろう」

    エルヴィンとナイルは視線を合わせて頷いたのだった

  56. 72 : : 2014/10/23(木) 08:29:30
    それからと言うもの、二人はますます訓練に励み、その成績とやる気は他の訓練兵の追従を許さなかった

    生涯の戦友と呼べる存在を見つけたエルヴィンとナイル

    二人の存在は訓練兵団の中でも一際光輝いていた

    二人のその目に写るのは、壁外の広大な大地

    その大地を自由に駆け巡る事が、彼らの最終目標だった

    二人で共に調査兵団で生き抜き、必ず成し遂げようと、熱い目を互いに向けて、何度も語り合った

    二人の熱き友情は、とこしえに続くと思われていた

  57. 73 : : 2014/10/23(木) 08:55:59
    訓練兵生活も残りわずかとなった昨今、相変わらず休暇毎にマリーの酒場に足を運んでいたエルヴィンとナイル

    ナイルはマリーに本気で惚れている、それはエルヴィンの目から見ても明らかな程だった

    酒場からの帰り道、ナイルがぼそっと口を開いた

    「なあエルヴィン」

    「ん?ナイル、どうした」

    エルヴィンは立ち止まり、彼の方を向いた

    「マリーは、お前の事が好きなんだ」

    「…なんだ急に。それはそうだろ、嫌われてはいないはずだ。君の事も好きなはずだ」

    エルヴィンは肩をすくめた

    だが、ナイルは首を振る

    「いいや、マリーの気持ちは俺に向けられているのと、お前に向けているのとでは違いがある」

    「一緒だろ」
    エルヴィンは不思議そうな振りをして、首を傾げた

    「違う。悔しいが、成績も、恋愛も俺はお前には勝てない。マリーはお前の事が好きなんだ。なあ、一緒になるとか考えてみないか?」
    ナイルは言葉とは裏腹、辛そうな表情をエルヴィンに見せていた

    何でも顔に出る…わかりやすい男だと、エルヴィンは好もしく思った

    「俺は、誰とも一緒になるつもりはないよ。今も、これからもな」

    「何でだよ!!調査兵団に入っても、結婚してる先輩方はいるだろ!?マリーの気持ちに応えてやれよ、エルヴィン」

    エルヴィンの言葉に、ナイルは目くじらを立てた

    「すまんが、俺はマリーをそういう意味で好きではないよ。ナイル、マリーは君が幸せにしてやってくれ」

    エルヴィンはナイルに真摯な眼差しを向けて、静かにそう言った

    「そんな事、出来るわけがないだろ…マリーの気持ちを考えたら」

    「出来るさ、ナイル。君は俺なんかよりずっと常識的な考えを持っているしな。俺は乱世を好む訳ではないが、今は何も考えたくないんだ。父親の考えを、実証する事以外はな」

    エルヴィンはそう言うと、ナイルの肩を叩いて笑みを浮かべた

    ナイルはエルヴィンの目を見つめた

    澱みの無い、力強く輝く青い瞳

    「わかった、お前がそこまで言うなら、そうしてやる。マリーは俺が貰うからな。後で泣いても知らんぞ」

    ナイルはふんと鼻を鳴らした

    「ナイル、頼む」

    「頼まれなくても、幸せにしてやるさ」

    ナイルはそう言って身を翻し、兵舎に消えたのだった



  58. 74 : : 2014/10/24(金) 09:54:02
    エルヴィンにとって、マリーの存在は明らかに特別だった

    だが、それを表に出す事は一切しない

    自分が成さねばならない事が、周りに与える影響…それを考えると、側に誰も近づけてはならない

    それに、自分が守らなければならない者がいれば、いざという時に決断が鈍るかもしれない

    マリーはナイルに託す

    デートに誘うという約束一つ守れない様な男よりよほど、ナイルの方が彼女を幸せにするだろう

    エルヴィンはそう心に思い、静かに目を閉じた


  59. 75 : : 2014/10/24(金) 10:14:23
    訓練兵団修了の日

    エルヴィンは皆の予想を裏切り、調査兵団入団を決めた

    訓練兵団首席の調査兵団入団は、何よりも話題になった

    ナイルは、憲兵団への入団を決めた

    マリーを守るためにそうしたのだろう

    マリーは暖かい家庭を築くのが夢だったと話していた

    それを叶えるために、ナイルは安定した職につく事を選んだのだろう

    憲兵団という、皆が憧れるエリート組織に

    こうして二人の親友の道は分かれたのだった

  60. 76 : : 2014/10/24(金) 10:19:19
    エルヴィンは、入団当初と比べて見違えるほどに変わった

    華奢だったはずの身体は、しなやかで厚い筋肉に覆われた立派な身体になった

    本ばかり読んでいた指は、立体機動の訓練によってたこができ、それが固くなって武骨になった

    ただ変わらないのは、青い瞳の輝き

    じっと前を見据える意思の強いその瞳

    うつるのは遠い未来の自由か、はたまた絶望か

    親友と道を別っても、愛する人の側にいられなくても

    彼の瞳の輝きだけは変わらない

    いつか彼の夢が、叶うその時まで


    ―完―
  61. 77 : : 2014/10/24(金) 10:57:24
    執筆お疲れ様です!
    原作で夢を語るのはエレンとアルミン達が壁の外を旅すると言っていたり、アニ達が故郷に帰るというのが目的であり夢であるように、大人組のエルヴィンにも夢がありそのために辛い現実を受け入れてる…そのように思っていたので読んでて凄いと思いました!!
    親友や愛する人と歩く道が違っても瞳の色が変わらないと言う表し方が素敵で、流石師匠!!!ってなりました!!
    素敵な作品をありがとうございます!!次の作品も期待してます!!!
  62. 78 : : 2014/10/24(金) 23:26:18
    執筆お疲れ様でした!
    エルヴィンとナイルの心理描写がとても素敵でした(≧∇≦)
    原作でもこんな感じにエルヴィンとナイルの訓練兵時代があるんじゃないの?って思いました!
    上手に表現できないけれど、歩んだ道が違くてもそれぞれの目標を持って生きているって事が印象に残りました。
    素敵な作品をありがとうございました。1人の88さんファンとして今後も期待しています!
  63. 79 : : 2014/10/24(金) 23:34:31
    >EreAni師匠☆
    読んでいただき、ありがとうございます♪
    アニたちにも、エレン達にも、形は違えど叶えたい夢があるんですよね…皆それに向かって必死に頑張っているんですよね…
    エルヴィンは全てを捨てて邁進してきましたからね…その夢や向かう先はまだ私たちにはわからないけれど…
    師匠、嬉しいコメントありがとう♪
  64. 80 : : 2014/10/24(金) 23:37:53
    >とあちゃん☆
    読んで頂きありがとうございます♪
    エルヴィンとナイルのおっさん(笑)コンビの若い頃を想像しながら書きました!!
    原作にもありそうに書けていましたか♪嬉しいです、ありがとう♪
    とあちゃんの暖かいコメント、いつも感謝しています!!
    ありがとう(///∇///)
  65. 81 : : 2014/10/25(土) 11:32:20
    執筆お疲れ様でした!
    エルヴィンとナイルの道が分かれるまでが大切に書かれていて本当に素晴らしいです!!マリーという存在は二人にとって大きな存在である彼女が羨ましいです。彼女のために自分の道を変えたナイルは流石男前だなぁっと思う反面、勿体無いと思ったり。エルヴィンは私の憧れた真っ直ぐな決意に従って羽ばたいてゆく背中が浮かばれました。
    原作風の展開に、本当にあってほしいなぁ思いました(笑)ナイルの初々しい反応にエルヴィンが本当に楽しんでいそうに見えて微笑ましい気分になって、他にも多くの気持ちを頂きました。
    素晴らしい作品をありがとうございます!
    最後に、ハニーのエルヴィンまじイケメン
  66. 82 : : 2014/10/26(日) 08:52:22
    >だぁりん☆
    読んで頂きありがとうございます♪
    調査兵団に入るという意志を捨てたナイルは、家庭人としていいですよね!!
    エルヴィンは、原作でもナイルよりも大人なイメージがあるので、それに準じて書いてみましたが、違和感が無いなら良かったです!
    エルヴィンイケメンですかw

    モブリットとエルヴィンをイケメンにする癖でもあるのかなあ私はw
  67. 83 : : 2014/10/30(木) 19:18:26
    乙です!

    面白かったです!

    来週のアルミンの誕生日もやるんですか?
  68. 84 : : 2014/11/01(土) 14:09:23
    お疲れ様でした。
    久方ぶりにエルヴィンのSSで目を奪われました。流石は88さんだ。
  69. 85 : : 2014/11/04(火) 08:35:06
    >アルミンloveさん☆
    読んで頂いてありがとうございます!!
    アルミンの誕生日、SS書けなかったです(*ToT)
    壁どんシリーズにはアルミンも出す予定ですので、またよろしくお願いいたしますm(__)m
  70. 86 : : 2014/11/04(火) 08:37:27
    >gjさん☆
    読んで頂きありがとうございます♪
    目を奪われるなんて、感激です(///∇///)
    エルヴィンは元わたしの一番好きなキャラで(今はモブリットw)思い入れがあるので、そう言って頂けて嬉しいです♪
  71. 87 : : 2014/11/12(水) 00:37:43
    お疲れ様でした!
    素晴らしかったです!
    これからもこのサイトで活躍してくださいね!
  72. 88 : : 2014/11/19(水) 13:04:06
    >自由こそ正義さん☆
    コメントありがとうございます♪
    お褒めいただき、感激です(*ToT)
    これからも頑張りますので、よろしくお願いいたします♪
  73. 89 : : 2014/11/19(水) 15:07:09
    エルヴィンとナイルの組み合わせ・・・・新しい。
  74. 90 : : 2014/11/19(水) 16:14:20
    >名無しさん☆
    ありそうでないですよね、二人の絡むSS(^^)v
  75. 91 : : 2014/11/23(日) 00:24:30
    すごい面白かったです!!
    お疲れさまでしたーー
  76. 92 : : 2014/11/23(日) 00:27:50
    >名無しさん☆
    読んで頂き、ありがとうございます!!
    嬉しいコメント、感謝です♪
  77. 93 : : 2015/01/09(金) 14:00:22
    エルヴィン大好きなので
    またつくってほしいです!
    漫画化してほしいくらいです!
    お疲れさまです(*^ω^*)/
  78. 94 : : 2015/01/09(金) 14:18:49
    >お粥さん☆
    読んでいただきありがとうございます♪
    漫画化(о´∀`о)
    エルヴィンは私も大好きです!
    新作にエルヴィンが出てきますので、またお暇なときにでも覗いてやって下さい♪
  79. 95 : : 2015/01/31(土) 14:03:23
    乙です!凄く面白かったです!
  80. 96 : : 2015/01/31(土) 14:04:36
    ↑は僕ですm(。≧Д≦。)m
  81. 97 : : 2015/03/01(日) 10:24:46
    乙ですー
    すごく面白かったです!!!
    エルヴィン大好きなので嬉しかったです(#^.^#)
  82. 98 : : 2015/03/01(日) 10:29:16
    >いぇーがーさん☆
    御返事遅くなりました!
    読んでいただきありがとうございます♪

  83. 99 : : 2015/03/01(日) 10:30:15
    >むーさん☆
    読んでいただきありがとうございます♪
    面白いと言っていただけて嬉しいです!
    わたしもエルヴィン大好きなんですよ(*´ω`*)
  84. 100 : : 2015/03/01(日) 10:33:35
    過去捏造なのにとてもいいお話でした

    ロメ姉の文章力には毎度惚れ惚れします( ̄▽ ̄)

    これからも頑張って!
  85. 101 : : 2015/03/01(日) 10:35:46
    >ぬこたん☆
    ぬこたぁぁん読んでいただきありがとうございます♪
    妄想を膨らませた結果の産物でしたが、いい話といってもらえて幸せです(^○^)
    これからもぼちぼち頑張るよ!
    ぬこたんも一緒にがんばろーぜ(*´ω`*)
    コメントありがとう(*μ_μ)♪
  86. 102 : : 2015/04/07(火) 12:27:13
    素晴らしかったです!
  87. 103 : : 2015/04/07(火) 22:44:31
    >名無しさん☆
    読んで頂きありがとうございます!
    エルヴィンとナイル、これからも活躍して欲しいです♪
  88. 104 : : 2015/04/09(木) 16:08:54
    とっても面白かったです!私もSSを書いていたんですけれど、(もう執筆は終了しましたが)こんなに読みやすく、面白くありません!
    88さんのSS、とても面白かったです!
  89. 105 : : 2015/05/03(日) 00:14:19
    エルヴィンとナイルかっこ良かったです!
  90. 106 : : 2015/05/03(日) 00:19:04
    >ボカロさん☆
    読んで頂きありがとうございます!
    SSは数を書くうちにどんどん上達していくと思うので、これからも沢山書いて下さい!
    面白いと言って頂けて嬉しいです(*´ω`*)
  91. 107 : : 2015/05/03(日) 00:20:17
    >聖アルミンさん☆
    読んで頂きありがとうございます( ^∀^)
    エルヴィンとナイルの話ってあまりないので、書いてみました♪

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fransowa

88&EreAni☆

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