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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

モブリッタ「分隊長お戯れを!!」―モブハンがもし性別逆だったら―

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  1. 1 : : 2014/08/22(金) 15:27:10
    モブリットとハンジ
    本来男と女…ですが、これを性別逆転させてみました

    他のキャラは逆転していません
    ネタバレは単行本です!!
    よろしくお願いいたします!!
  2. 2 : : 2014/08/22(金) 15:34:39
    パタ、パタ、パタ、パタ…

    私は殊更ゆっくりな足取りで、分隊長室へと向かう

    分隊副長に任じられてからと言うものの、私の辞書に安らぎなんて言葉は無くなった

    部屋を見れば、その理由の一つはすぐにわかるわ…

    パタ、パタ…

    私の独特の足音…

    分隊長にいつもからかわれる原因の一つ

    はぁ、ため息がこぼれた

    今日こそは一日、穏やかに過ごせます様に

    私はそう念じながら、分隊長の部屋の前に立ち、大きく深呼吸をした
  3. 3 : : 2014/08/22(金) 16:28:32
    大きく深呼吸をし、意を決して扉をノックしようとしたその時

    「モブリッタ!!おっはよー!!」
    大きな声と共に、勢いよく扉が開いた

    「ふえっ!?」
    私は思わず奇声をあげた

    「ははは、何だよその声、可愛いなあ。もしや君、朝から誘ってるのかい?」

    「ぶ、分隊長!?誘ってません!!」
    私は顔を真っ赤にしながら必死で否定した

    「何だ、残念だなあ…。私は何時でもオッケーなんだけどなあ?」
    分隊長はそう言うと、私の肩をがしっと抱いた

    「きゃぁ!!止めてください!!セクハラですよ、分隊長!」

    「今日もモブリッタが元気で飯が旨そうだ!!さ、食べに行こう!!」

    私は分隊長に肩を抱かれながら、食堂に連行されてしまうのだった

  4. 8 : : 2014/08/22(金) 17:47:56
    私はモブリッタ・バーナー

    こう見えても、調査兵団第4分隊の副隊長です

    アッシュグリーンの目は少し下がり気味で、いつも自信がなさそうだと言われます

    ブラウンの、少し癖のある前髪は、真ん中でいつも勝手に分かれて、あまり手間はかからない

    髪の毛は邪魔なのでショートカットにしているけれど、最近は少し伸ばしてみたいなあと思ったり…

    身長は170㎝あって、女性にしては高い方
    だけど、背が高いから得した事なんて無くて…

    できたらもっと小さく生まれたかったなあ…と言うのが本音

    そんな、ごく普通の女が、ごく普通の兵士として調査兵団に入ったはずなのに

    何故か調査兵歴一年足らずで、異例の分隊副長大抜擢

    そこから私の平凡だった毎日が、一変した

    私の上司であるハンジ・ゾエ分隊長のせいで…
  5. 9 : : 2014/08/22(金) 18:10:37
    「モブリッタ、パン、あーんしてくれよ、あーん」

    分隊副長という役目は、要するに分隊長の補佐という事

    私の隣で何かをほざいているこの、眼鏡の男の補佐役だという事

    食事の度にこんな事を言われる…立派なセクハラ、立派なパワハラ、だと思う

    あーんだなんて、恋人同士や親子がやるものじゃない

    どうして『ただの上司』にそんな事をしなきゃならないのよ…

    私はこめかみを指で押さえた

    「モブリッタ、聞こえない振りするんじゃないよ、つれないなあ…」

    分隊長の拗ねたような声に、ちらりと隣を伺うと、この人はにっこりと人好きのする笑顔を見せた

    「やっぱり聞こえてた。モブリッタ、あーんして?」

    首を少し傾けて、ねだるように上目使いをしてくる分隊長

    男なのに、妙に色っぽい

    私は顔を真っ赤にした
    本当に、恥ずかしい…でも、一回はやらなきゃしつこく言われてしまう

    私は無言でパンをちぎり、それをフォークに突き刺そうとして、止められる

    「パンはフォークで食べないだろ?」

    うー、いちいち正論で来るから言い返せない…

    「……い、一回だけ、ですよ?分隊長」
    私は諦めて、親指と人差し指でパンをつまんで、分隊長の口へ運んだ

    パンを口に入れた瞬間、

    「ひゃっ!?」
    何と分隊長は、私の指をぺろっと舐めた

    「ご馳走さま、モブリッタ。美味しかったよ…ふふ」

    「!?!?」
    あーーー!!
    私は声にすら出せない悲鳴を、心の中であげたのだった
  6. 12 : : 2014/08/22(金) 22:57:18
    「分隊長、酷すぎます!!」

    私は食事もそこそこ、席をたった
    もう、我慢できない!!

    セクハラも、ここまで来たら許せる範囲を越えている

    「ねえねえ、怒らないでくれよ、モブリッタ…減るもんじゃないんだしさ」

    分隊長は慌てた様子で、私の兵服の袖を握って引っ張った

    「減る、減らないの問題じゃありません!!もう私、限界です…!実家へ帰らせて頂きます!!」
    私はキッと、分隊長を睨み付けて叫んだ

    周りの兵士たちが、食事の手を止めて興味深げに見ていたが、気にしていられなかった

    「ま、待ってくれよ、モブリッタ。君がいなきゃ私は仕事にならないよ…頼む、行かないでくれ」

    分隊長は、私の手をぎゅっと握りしめて、真摯な眼差しを向けた

  7. 13 : : 2014/08/23(土) 10:46:55
    しばらく立っていたけど、分隊長の何時になく真剣な眼差しに負けて、椅子に座った

    「次やったら、帰りますからね…」

    仏頂面でそう言うと、分隊長はうんうんと頷いた

    「もうしない!!と思う」

    「分隊長…?!」
    まだ懲りていなさそうな分隊長に、鋭い目線をやった

    「しない、しません!!モブリッタ、許して?」
    分隊長はそう言って、私の顔を覗きこんだ

    ヘイゼルの瞳が、きらりと光って、私の顔を映し出していた

    すらりと伸びた鼻梁、細面の頬、中性的な美しい顔立ち

    女の私よりも美しいと思う

    羨ましい…

    「…モブリッタ?私の顔に何か付いてる?あっ、もしかしてみとれてた!?いやぁ照れるなあ!」

    「ちっ、違いますっ!!」

    図星をさされて、思わず声を裏返らせてしまった…
  8. 16 : : 2014/08/23(土) 22:19:27
    こんな感じで、私は上官であるハンジ分隊長にいつもからかわれていた

    調査兵団では日常茶飯事な光景だとか言われているけれど、やられている私にしてみたら、冗談じゃない…

    この人の副官になってからというもの、この様な紛らわしい態度のせいで、まともな彼氏一人出来た事が無かった…

    訓練兵時代にはそれなりに付き合ったりした事もあったのに

    ハンジ分隊長のお気に入り、のレッテルを貼られた私に、そんな相手が現れるはずもなく…

    私は半分諦めて、分隊長の側での任務に、日々明け暮れていたのだった

    数々のセクハラ紛いの事をされながら…

  9. 17 : : 2014/08/24(日) 09:46:48
    「分隊長、今日の予定は前回の壁外調査の報告書の作成がお済みでない分を仕上げて、未処理で放置されていた書類を徹底的に片付けます」

    私は、半歩前を歩く分隊長の背中にそう声をかけた

    すらりとした体型
    私より少し高い上背

    線が細く見えるけど、兵服の下にはしっかり鍛えられた肉体がしまい込まれているのを知っている

    何度もこの人の背中を流しているから

    しなやかな筋肉を持つこの人は、ひとたび立体機動をすれば、まるで蝶の様にふわりと、時には隼の様に速く鋭く、華麗に宙を舞う

    その戦いは軍神というよりは、道化師と言った感じでトリッキーだ

    まるで巨人と戯れるかの様に跳んでいると思えば、一瞬で的確にうなじを削いで見せる

    要するに、この人はどうしようも無いセクハラ上司だけど、調査兵団の分隊長の名に相応しい戦闘能力を持っていた

    頭脳も明晰で、一つの事柄からいくつもの可能性を頭の中ではじき出す事ができた

    状況判断も的確…非の打ち所が無いように見えた

    ただ、セクハラばかりする事と、巨人への興味が異常であることを覗けば…の話だけど…

  10. 18 : : 2014/08/24(日) 10:56:14
    「えー、書類整理かあ、めんどくさいなあ…」

    不満そうな声をあげながら、私の方をちらりと振り返る分隊長

    「ちゃんと終わらせたと言っていたのに、ベッドの下になんか隠すのがいけないんですよ、分隊長」
    私は口を尖らせた

    昨日、分隊長がお風呂に入っている間に、散らかった部屋を片付けていた所、ベッドの下からあるわあるわ…未処理の書類の束が…

    それ以外は、いかがわしい本が数冊…
    まとめて机の上に並べておいたのだった

    「君は私にセクハラしたんだ…思い出した。私の秘蔵の本を見ただろ…?念入りに隠しておいたはずなのに…」

    「ベッドの下に隠すなんて、子どもじゃないんですから…」
    私は呆れを隠しもせずに、ため息混じりにそう言った

    「君は私のお母さんかよ…」

    「あなたみたいなだらしの無い子、産んだ覚えはありません」

    私はふん、と鼻を鳴らした

    セクハラを受けている時以外の口論と突っ込みでは、負けはしない

    案の定、分隊長は押し黙ってしまった

    でも次の瞬間…

    「ははは、確かに君みたいな真面目な子から、私みたいな不真面目が産まれるのは不自然だな」

    そう言って、分隊長は高らかに笑った

    そのこぼれる様な笑顔に、私は一瞬目を奪われる

    「別に、あなたが不真面目とは一言も言っていませんが…」
    それを隠すように顔を背けて、呟くように言った

    「今日は真面目にやるよ…うん、仕方がない。怖いお母さんに見張られているからね…」
    分隊長はそう言うと、自分の体を自分の腕でぎゅっと抱いて、身震いした

    「私は怖くないです!!」

    私がそう言うと、分隊長はまた笑顔になって、私の肩を抱くのだった

  11. 19 : : 2014/08/24(日) 16:20:29
    分隊長の部屋兼執務室に入って愕然とした

    昨日片付けたはずの部屋が、また大暴れしていたから…

    ほったらかしの書類、読みかけの本、脱ぎ散らかした服、あらゆる物が部屋中に散乱していた

    「分隊長、これは……あなたの部屋だけ、昨夜嵐がきたんでしょうか…?」
    私は顔をひくひくさせながら言った

    「あー、そうなんだ!!活発な低気圧の影響で積乱雲が発生して…」

    「くだらない言い訳は聞きませんよ!!さっさと片付けて下さい!!仕事ができる様になるくらいまで!!」
    私は頭ごなしに叱りつけた

    「う、うん…怖いなあ、モブリッタは…鬼みたいな顔してるよ…」

    「分隊長は机の上を整理してくださいね?私は他の場所をしますから」

    眉を潜める分隊長を無視して、私は床に散らばっている服を拾い集め始めた

    「あー、これはエルヴィンに貸してやろうと思ってた本だ!!持って行ってくるよ!!」
    そう言って、本を片手に部屋の扉に向かう分隊長の首根っこをつかむ

    「持って行かなくて結構です!!さっさと部屋を片付けて下さい!!って、いかがわしい本じゃないですかっ!!もう、これは処分します!!」

    私は団長に持っていく予定だったいかがわしい本を、分隊長から取り上げた

    「わあ、返せよ、私のバイブル…」

    「何がバイブルですか!!真面目に掃除をして、書類を全て処理したら、返しますかもしれませんからね?」

    私がそう言うと、分隊長はふて腐れたように頬を膨らませた
    「モブリッタがつれないから、ずっと溜まる一方…だからそのバイブルが必要なのに…」

    「な、何の話ですか!?」

    「モブリッタがやらせてくれないから…」

    分隊長は不満げな口調で、上目使いで私を見ながら言った

    「や、やらせてくれない…?当たり前でしょう!?何を考えているんですか!?分隊長には他に沢山女がいるじゃないですか!!私のせいにしないでください!!」

    私は執務机をばん、と叩いて叫んだ

    そうだ、分隊長はよくモテる
    私が相手をするまでもなく、いつも沢山の女に言い寄られているくせに…

    私にセクハラなんてする必要無いはずなのに…

    本当にこの人がわからない
    変人の中の変人だと言われているから、仕方がないのかもしれないけど

    でも私はこの人の副官で、この人の世話、補佐一切を任されているのだから、わからないでは済まされない

    私は懸命に、分隊長を理解する努力はしているつもりだった

  12. 20 : : 2014/08/24(日) 17:17:27
    「おおー!!部屋が見違える程綺麗になったね!!さすがはモブリッタ、調査兵団の綺麗好きツートップ!!」

    分隊長は、綺麗になった部屋を眺めながら、パチパチと手を叩いた

    「出したら片付ける。要らないものは処分する。ゴミはゴミ箱。これだけ守って下さったら、部屋に嵐はこないはずですよ、分隊長」

    私ははぁ、とため息をついて、ソファに座り込んだ

    さすがに朝から大掃除は疲れてしまう

    私がこめかみを指で押さえていると、隣に分隊長がどかっと腰を下ろした

    そして、がしっと私の肩を抱く

    「ひゃっ!?」

    「モブリッタ、また可愛らしい声出しちゃって…君は誘い上手だなあ」

    分隊長はそう言いながら、私の顔をじっと見つめてきた

    「さ、誘ってません…離して下さい、分隊長…」
    私はしどろもどろに言葉を発した

    私はどうも、こういう状況で分隊長を上手くあしらう事が出来ない

    真っ赤になって、思うように言葉が出なくなってしまう

    「そんなに泣きそうな顔しなくても…何もしやしないよ、モブリッタ。ほら、掃除を手伝ってくれたお礼がしたいから、口開けて?」

    分隊長の言葉に、私はぶんぶん首を振る

    「い、嫌ですっ…また、セクハラするんでしょう!?もう騙されませんから…んっ!?」

    私は言葉の途中で、口になにかを押し込まれた

    甘くて丸い物だった

    「セクハラなんかしないって…人聞き悪いなあ。キャンディだよ、この間町で買ってきたんだ…モブリッタにあげようと思ってね」

    「…あ、ありがとうございます、分隊長…」
    私は勘違いをしたのが恥ずかしくて、顔を更に真っ赤にしたのだった

  13. 21 : : 2014/08/24(日) 23:24:37
    綺麗に整頓された執務机で、書類とにらめっこをしている分隊長

    ブラウンの髪の毛は肩より少し下の長さ程あるが、ハーフアップにして後ろでまとめていた

    男性には珍しい髪型と言えるけど、調査兵団にはもっと髪が長い人がいたりするので、そこまで違和感はない

    この髪型と、細面の顔立ちのせいで、たまに女に間違えられる事があったが、本人はそれすらも楽しむような人柄だった

    書類に向けられているヘイゼルの瞳は、くるくるとよく動き、いろいろな感情をストレートに見せた

    今は、真剣な目をしている
    こうしていると、本当に頼もしく見えるのだけれど、普段の行動が全てを台無しにしていた

    「モブリッタ…疲れたなあ」

    分隊長は、そう言うと、大きく延びをした

    「コーヒーでもお入れしてきましょうか?」

    「ああ、頼むよ。君の愛がたっぷりつまったコーヒーね?」

    分隊長は、いたずらっぽい笑みを浮かべてそう言った

    「ミルクをたっぷりですね、わかりました」
    私は肩を竦めて、部屋を後にした
  14. 22 : : 2014/08/25(月) 12:47:10
    「分隊長、コーヒーお入れしました」
    ミルクたっぷりのカフェオレ、砂糖は無し…それが分隊長が好きなコーヒースタイル

    マグカップになみなみと注がれたコーヒーに、分隊長は鼻を近付けて匂いをかぐ

    「ん~いい香りだ。おちちの匂い。落ち着くなあ…」

    そう言うと、何故か私の方を振り返り、じっと見つめてきた

    「な、何ですか…分隊長…」
    自分に注がれる熱い視線に、私は思わず後ずさる

    「お乳の匂いがするんだ」
    そう言う分隊長の目線はよく見ると、私の胸にしっかり合わせられていた

    「ぶっ分隊長?!何処を見てるんですかっ…それに、おちちじゃなくって、ミルクですっ…」
    私は慌てて、持っていたトレイで胸を隠した

    「君のそれも、同じような匂いがするの?確かめたいなあ…」
    分隊長は不敵な笑みを浮かべながら、言葉を発した

    「し、しません!!そんな匂い!まだ出産した事も無いのに…」

    「そっかあ…女の人のそれはさ、赤ちゃんの為にあるんだよね。でも何故か、男はそれにすっごく触りたくなるんだ。どうしてなんだろうね?」

    至極真面目な顔つきで、私の胸をトレイ越しにまるで透視するかの様に見据えてくる分隊長に、私は背中を向ける

    「し、知りませんよ、そんな事…。あ、赤ちゃんの物なんですから、見ないで下さい!!分隊長」

    「んー、でも今は君には赤ちゃんいないじゃないか。だからそれは…」

    「分隊長の物じゃありませんからね!!」

    私は分隊長の言葉を遮るように、叫んだ
  15. 23 : : 2014/08/25(月) 14:09:54
    「ははは、先に言われてしまったか。流石はモブリッタ」
    分隊長は愉しげに笑った

    おそるおそる分隊長の方に向き直ると、分隊長は少し熱めのコーヒーに、ふぅふぅと息を吹き掛けていた

    「熱すぎましたか?」

    「いや、丁度いいよ。直ぐに冷めてしまうからね…いただきます」
    分隊長はコーヒーを一口すすった

    そして顔を綻ばせる

    「モブリッタ、美味しいよ。特におちちの味が…」

    「もう、それはいいですからっ!!」

    私が顔を真っ赤にすると、分隊長は微笑みながら口を開く

    「いやあ、本当に可愛いなあ、君は…」
    顔一面をほくほくとさせて、満足げに呟いた

    「か、可愛くなんて、ありません…」
    私は恥ずかしくなって、顔を両手で覆った

    「可愛いって…本当だよ?そろそろ認めるべきだと思うな?」

    「そ、そんな事より、きちんとお仕事なさって下さい!!分隊長!」

    私はそう言うと、未処理の書類を分隊長の顔に押し当てたのだった
  16. 24 : : 2014/08/25(月) 16:53:23
    私をからかう時は楽しげで真剣な癖に、事務処理になると突然やる気を無くしてだらだらする分隊長

    ほんっとに世話が焼ける人

    「う~、これはどうでもいい書類…これもこれも…」
    ペンを鼻の下と上唇に挟み、唸り出した

    「どうでも良くはありませんよ、分隊長。これは備品類の会計書類ですし、これは巨人の捕獲作戦の許可書…大事な物ばかりじゃないですか」

    「はっ、そうだ!!巨人の捕獲、許可出てたんだった!!頑張らなきゃ!!」

    分隊長は途端に元気になる…巨人に興味を持ち出して数年、初めて捕獲を許されてからと言うものの、それら全てに名前を付けて可愛がるほど、巨人を愛でていた

    「はい、ですがその前に書類を全て片付けてしまいましょうね?」

    私がそう言うと、分隊長はこくりと頷いた

    「ああ、そうだね。やっつけてしまおう。モブリッタも手伝って?」

    「はい、分隊長。真面目にやって下さるなら、お手伝いします」

    私は机の上の未処理の書類を半分、手にとって、ソファに向かおうとした

    すると、分隊長が立ち上がる

    「あっ、私も一緒にソファで書類を…」

    「分隊長は執務机でお願いします!!」
    私はぴしゃりと言い放って、分隊長を椅子に座り直させたのだった

  17. 25 : : 2014/08/25(月) 22:22:08
    「ふぅ…やっと終わった…書類を全て駆逐してやった!」

    分隊長が机に残った最後の書類にサインをして、一日がかりの書類処理がやっと幕を降ろした

    「分隊長、お疲れ様でした。丁度夕食の時間になっていますね」
    時計は午後7時をさしていた

    「ねえモブリッタ、ご飯の後さ、飲みに行かない?最近あまり行けてなかっただろ?」

    分隊長は、あまり酒が強い方ではない

    でも、私が結構お酒に強いことを知ってからと言うものの、こうしてたまに誘ってくれた

    多分、分隊長なりの気遣いだと思う

    お酒をゆっくり飲むような機会が、特に分隊長の補佐になってからめっきり減ったからだ

    「私は嬉しいですけど…分隊長はあまり飲まないのに…」

    「いいんだ。私もたまには少し飲みたいし、君が飲んでるのを見てるのも好きだしね」

    分隊長はそう言うと立ち上がり、私の肩にぽんと手を置いた

    「それならいいんですが…」

    「いいんだよ、さあ善は急げ!!夕食を駆逐しに行こう!!」

    そしてまた、肩を抱かれて食堂へ足を運ぶのだった、
  18. 28 : : 2014/08/26(火) 08:12:25
    男女逆転して男が女より酒ダメってw
  19. 29 : : 2014/08/26(火) 08:49:24
    >ハンジもどきさん☆
    性別が逆なだけで、他は変わりないのですw
    ハンジさん男にしたらやばいですねw
  20. 30 : : 2014/08/26(火) 11:10:21
    夜のトロスト区

    ウォールマリアが突破されて以降、この突端地区が人類の防衛の要となっていた

    集まる兵士も物資も多く、夜とはいえ、酒場や歓楽街の賑わいは衰える事はなかった

    「賑やかでいいね~いつ来ても」
    分隊長はきょろきょろと辺りを見回しながら、足取り軽く歩いていた

    「はい、そうですね、分隊長」
    私は分隊長の隣を歩きながら、相づちを打った

    「あ、あれ美味しそうだなあ…」
    夕食を綺麗に平らげたはずの分隊長が指差したのは、チョコレートだった

    「分隊長は甘いものが好きですね。キャンディといい、チョコといい…チョコレートは本当に高いですね」

    カカオが稀少なため、チョコレートはかなり高価な物になっていた

    一般人には手が届かない…貴族や上流階級は日常的に口にしているらしいけど

    「高いねえ…給料が全て本と研究費に消えちゃう私には手が出ない品だよ…」
    分隊長は肩を竦めた

    「いかがわしい本を買わなければ、なんとかなると思いますけど…?」
    私はじと目で分隊長を見た

    「ちょ、何か勘違いしてないかい?私はそんな本ばかり買ってないよ?生物学の本とか…古書とか…そういう類いのだね…」

    「…バイブルなんでしょう…?」

    「ま、まあそうだけどさ…って、それもこれも君がつれないから…」
    分隊長は口を尖らせた

    「無駄遣いをなさらないで下さいね、分隊長」
    私はふん、と鼻を鳴らした
  21. 31 : : 2014/08/26(火) 11:49:54
    「いやあ、いい飲みっぷりだなあ…惚れ惚れするよ!!」

    私にお酒を注ぎながら、満悦を顔一面に表したような笑顔の分隊長

    分隊長の屈託の無い笑顔は、とても幼く見えて、母性本能をくすぐるかもしれない…ほんの少しだけど…

    「お酒の強さだけは、そんじょそこらの男には負けません」
    グラス一杯のウォッカをぐいっとあおって、私はそう言った

    「頼もしいなあ!!いつもの可愛いのもいいけど、酒飲んで攻めてる感じの君も好きだなあ」
    分隊長は顎に手を当て、柔らかな笑みを浮かべながら、私を見ていた

    「別に攻めてませんよ…ほら、分隊長も飲んで下さい」
    私はあまり飲まない分隊長の口に、酒が入ったグラスを押し付けた

    「私が酔っぱらったら、ちゃんと連れて帰ってくれるかい?」

    「…はい、気が向いたら」

    「えー!!放置されたら襲われちゃうよ!!」
    分隊長は、頬を膨らませた

    「襲われはしないでしょうけど、不審者で憲兵に捕まるかもしれませんね」
    私は肩をすくめた

    「それはそれで困るじゃないか…」

    不満げな表情の分隊長が少し可愛く見えて、私はどきっとした

    「ま、まあちゃんと連れて帰りますから、ご安心下さい、分隊長」

    「あ、でも君が送り狼になるなら本望だよ?大歓迎だ!!」

    「分隊長!?」
    あらぬ方向へと思考を曲げる分隊長に、私は可愛く見えたという前言を撤回することにしたのだった
  22. 32 : : 2014/08/26(火) 15:43:12
    この酒場は、料理も美味しくて、調査兵は勿論、一般人や駐屯兵、はたまた憲兵にも人気があった

    本日もほぼ満席といった具合
    ただ、皆静かに飲んでいるため、不思議なほど落ち着いた雰囲気だった

    広い店内にはカウンターにテーブルに、個室まで備えてあり、特に個室は密談にもうってつけだった

    私たちは、今日はカウンターに座って寛いでいた

    少し遅い食事に舌鼓を打っている人がいるからだろうか、香ばしい魚の匂いが漂っている

    「いい匂いがするね。お腹がすきそうだよ」

    分隊長が、お腹を擦りながら私にねだるように言った

    「さっき食べたばかりですけど…分隊長はお酒をあまり飲みませんし、お魚頼んでみてはいかがですか?」

    私の言葉に、分隊長は目を輝かせる
    「いっ、いいのお!?無駄遣いだめって言われるかと…」

    「いかがわしい本を買うのはやめてくださいと言っただけですよ」
    私は肩をすくめた

    「じゃあ、もう本は買わない!!魚頼もっと!!マスターお魚焼いて!!」

    分隊長は嬉しそうに注文したのだった




  23. 33 : : 2014/08/26(火) 15:59:21
    「さかなさかなさかな~さかなをたべ~ると~」
    焼き上がった魚を鼻唄混じりに綺麗にほじくる分隊長

    魚の骨の標本かと思うほど、すみずみまでほぐした

    「ん~旨い!!これは絶品だ…贅沢に、塩味が効いてるじゃないか…」

    ちなみに塩も貴重品である

    「良かったですね、分隊長」

    「モブリッタにもあげよう、ほらあ~ん」
    分隊長は、私の口元に、魚のほぐし身をさしたフォークを近付けた

    「わ、私はお酒を飲んでいますから、魚はいりませんよ?」

    私は思わず後ずさるが、分隊長は魚を引こうとはしない

    「食べてみてよ、美味しいんだからさ…ほらあ~ん」

    「じ、自分で食べますから…」
    私は顔を真っ赤にしながら更に後ずさった

    「モブリッタ、食べて?」
    分隊長はそう言って、笑顔をみせた

    もはやこれ以上後ずされない

    公衆の面前でこんなこと、やりたくはないけど…やらなきゃこの状態から脱却出来そうに無いし…

    私は諦めて、差し出されたフォークの先にある魚をパクリと口に入れた

    「美味しい…」
    私は口に入れた瞬間、素直にそう言った

    「ね、美味しいだろ?ついでに間接キスも出来たしね」

    「分隊長、何言ってるんですかっ!!」
    私は顔を真っ赤に染めて、叫んだのだった
  24. 34 : : 2014/08/26(火) 16:41:54
    モブリッタ!そこをどけぇ!!
  25. 35 : : 2014/08/26(火) 17:17:40
    >ハンジもどきさん☆
    私と同じ気持ちですねww
  26. 36 : : 2014/08/26(火) 23:15:52
    分隊長は魚を平らげると、眼鏡をくいっと額に上げて、目を擦りはじめた

    「分隊長、もしかして眠たくなりましたか?」

    「ああ、ちょっとね…でもまだ寝ないよ?君はまだ飲めるんだろ?ちゃんと付き合うから」
    そう言いながら、欠伸をする分隊長

    お腹が一杯になったら眠たくなるなんて、ほんとに子どもみたい…ちょっと可愛いかも

    「無理なさらないで下さい。私も充分楽しめましたし…帰りましょう?分隊長」

    「折角なら、君に沢山飲ませてあげたかったんだけどなあ…」

    分隊長は不満そうに口を尖らせたけど、次の瞬間また欠伸をした

    「分隊長、欠伸ばっかりしてるじゃないですか。帰りましょう?」

    「…うん、わかったよ、そうしよう。ちょっと待ってて…トイレ…」
    分隊長はゆらりと立ち上がると、店の奥へ脚を向けた

    「気分が悪いんですか?ついていきましょうか?」

    「……ただのおしっこだけど、着いてきたかったらどうぞ?やっぱり興味あるんだね、モブリッタ」
    分隊長の意地悪な言葉に、私は首をぶんぶん振った

    「分隊長のばかっ!!さっさと行ってきて下さい!」
    私は思いきり叫んだ

    「へいへい…ついにバカと言われちゃったよ…くせになりそうだ…ははは」
    分隊長は戯けた調子でそう言いながら、店の奥へ消えたのだった
  27. 41 : : 2014/08/27(水) 00:19:41
    もう、ほんとセクハラ発言ばかりで参ってしまう…バカなんて言ってしまったし…

    「はぁ…」
    分隊長が去った方に向かって盛大にため息をついた時だった

    ぽん、と肩に手を置かれた

    「やあ、モブリッタ。久しぶりだな」
    振り返ると、懐かしい顔が目の前にあった

    「あら…久しぶり…」
    私はその男をよく知っていた
    訓練兵時代に付き合っていた、彼だった

    私が調査兵団を選んだことで、別れたんたけど…

    「頑張ってるみたいだな、調査兵団で」

    「…意外だったでしょ?生き残っているのが…」
    私は肩を竦めた

    彼の別れ際の言葉を思い出したから

    『調査兵団なんかに行けば、一年生きていられない』

    私は数年生きてみせた
    いつ、死ぬかわからない程の状況は、今も変わらないけれど…

    「意外だったよ。優しかった君が厳しい所で、ここまで生きてこられているのがね。しかし、結構苦労してるみたいだな、楽しそうだが」

    なるほど、さっきの分隊長とのやり取りを見られていたんだ…

    「苦労は年中よ。調査兵団にいればね」

    「…変わらないな、君は相変わらず真っ直ぐだ」
    彼は私を真摯な眼差しで見つめた

    「あなただって憲兵なんだから、真っ直ぐでしょ?」
    首をかしげる私に、彼は肩を竦めた

    「どうだかな…それより、今度また会えないか?モブリッタ。ゆっくり話がしたいな」

    私は暫く考えた後、頷いた
    「わかったわ」

    「良かった!!お、そろそろ行かなきゃな…じゃあまたな!?」

    彼は笑顔で手を振り、去っていった

    私はその後ろ姿を見ながら、ふぅと息をついた
  28. 42 : : 2014/08/27(水) 10:41:00
    「あー、すっきりした!!待たせたね、モブリッタ」

    背後からぽんと肩に手を置かれて振り返ると、にこにこ笑っている分隊長がそこにいた

    「分隊長おかえりなさい。ちゃんと手は洗いましたか?」

    「あっ!!」
    私の問いに、肩に置いた手をぱっと離す

    「分隊長、トイレの後は手を洗う!!常識ですよ!!洗ってきて下さい!!」
    私はポケットからハンカチを取り出して、分隊長に押し付けた

    「モブリッタお母さんに叱られたー」
    分隊長はそう言うとぶるっと震えて、ハンカチ片手にまたトイレに行った

    「もう、誰がお母さんよ…」
    私は思わず一人ごちた

    泣く子も黙る調査兵団分隊長のはずなのに、どうしてこう、基本的な事が抜け落ちているんだろう…

    顔も良くて頭も良くて、強くて優しいのに、それらの美点を覆い隠す欠点の数々…

    私はこめかみを指で押さえた

    「モブリッタ~洗ってきたよ。あれ、頭痛いのかい?」

    トイレから戻ってきた分隊長が、心配そうに問いかけてきた

    あなたのせいで頭痛がするのよ…
    とはさすがに言えない

    「いえ、大丈夫です。さ、帰りましょう」
    私がそう言うと、分隊長はしばらくじっと私の顔を凝視してきた

    「…………あの、分隊長?何か…?」
    あまりにもじっと見られて、私は恥ずかしくなって目をそらした

    「ああ、ごめん。不躾に見すぎちゃったかな?モブリッタはやっぱり可愛いなあと思ってね」

    そんな事を恥ずかしげもなく言う分隊長に、私は何も言い返すことが出来なかった

  29. 43 : : 2014/08/27(水) 11:10:29
    繁華街を抜けて、静かな裏通りを兵舎に向かって歩を進める

    時おり吹く風が頬を撫でる
    飲酒によって火照った頬をひんやり癒してくれる様で心地良い

    「ねえモブリッタ」
    隣を歩く分隊長が、突然問いかけてきた

    「はい、何でしょうか、分隊長」

    「あのさ、さっき酒場で話していた男は、知り合いかい?」

    やっぱりあの人と話していたのを見られていたんだ

    何も隠すことは無い、私は頷く

    「はい、訓練兵時代の知り合いです」

    「…ふうん、イケメンだったね。もしかして元彼とか?」

    こういう勘の鋭さは、この人の特技とも言えるかもしれない…

    「はい、その通りです。私が調査兵団に行った事で、終わったんですけどね」

    私が静かにそう言うと、分隊長は探るような視線を私の顔に当てた

    「…なるほど、将来を約束した仲だったか」

    「いえ、そこまで考えてはいませんでしたよ、分隊長」

    そうなってもいいとは、お互い思っていたかもしれないけど、もう過去の話だ

    今となっては分からないし、調査兵団に入るような女を好き好んで結婚相手に選ぶはずがない

    実際それを理由に別れたのだから

    「モブリッタは、いい女だ。彼は君を手放したことを、今さら後悔しているのかもね」

    分隊長は私の頭をそっと撫でながら、優しげな口調で言った

    わたしは頭を撫でられる感覚に、何処かほっと安心するような気持ちになった


  30. 48 : : 2014/08/27(水) 14:58:21
    「はあ~楽しかった」
    部屋に入るなり、ベッドにダイブする分隊長

    眼鏡も取らず、そのまま目を瞑る
    「分隊長、ちゃんと寝間着に着替えて、歯を磨いてから寝てください」
    私は整理棚から分隊長の寝間着を取り出しながら言った

    「すーすー」

    「こら、寝た振りしないで下さい、分隊長」
    寝息を立てる真似をする分隊長の眼鏡を外し、寝間着をベッドの上に置いた時、分隊長は突然起き上がった

    少し前屈みで立っていた私の顔の目の前に、分隊長の顔がある

    鼻先と鼻先が触れあうくらいの距離

    私は後ずさろうとしたが、それは叶わなかった

    分隊長に、腕を掴まれていたから

    「モブリッタ…楽しかったかい?」
    分隊長は微笑みを浮かべながら、私に問いかけた

    限りなく優しい笑顔に、穏やかな口調

    私は思わず目を伏せた

    「はい、楽しかったです。…分隊長どうされましたか?」
    目を開けて言葉を発した時、分隊長は何故かいたたまれないような、そんな表情をしていた

    「ん?あ、いや、なんでもないよ。楽しんで貰えたなら良かった。さて、着替えるかな…」

    分隊長はそう言うと、兵服を脱ぎ始めた

    「ちょ、ちょっと待って下さい!!私がいるのに…」

    「いいよ、減るもんじゃなし。見せたいし、見てよモブリッタ」
    そう言いながら、スラックスのベルトを抜き去る分隊長

    「や、や、嫌ですよ!!見ませんっ!!デリカシーが無さすぎですっ!!分隊長のバカっ!」

    私は顔を真っ赤にして叫んだ

    「また、バカって言われた…可愛いなあ…。うーん、堪らない…どうしてくれよう」
    分隊長は真面目な顔つきで、私にそう言ってのけた

    「し、知りませんよ…!どうしてくれよう何て言われたって!!私、部屋に帰りますから…おやすみなさい!!」

    私は踵を返し、分隊長の部屋の扉のノブに手を掛けた

    「モブリッタ、おやすみ。いい夢みてね?私の…」

    「みっ見ません!!夢の中にまで出てこないで下さい!!」

    私はそう返事をして、部屋を後にしたのだった
  31. 49 : : 2014/08/27(水) 16:14:07

    私は部屋に戻るなり、両手で顔を覆った

    「あーっもう…恥ずかしい…」

    間近で見た分隊長の顔

    意外にも睫毛が長かった
    眼鏡をかけていないだけでも、雰囲気が変わる

    綺麗な顔立ちだけど、私の手を掴んだ腕の力、首もとの象徴、そして匂い…全て自分に無いもの…男のそれだ

    「堪らないって…何よ…」
    私はふぅと息をついた

    分隊長が見せた、切ない様な、いた堪れない様な表情…
    それが私を混乱させていたのだ

    「今日は、危なかったかも…いいえ、まさか…」
    私は首をぶんぶん振った

    「ただのセクハラ上司のいつもの行動じゃない…気にしたらだめだわ…」

    そうだ、こんな事を気にしていたら、これから先やっていけない

    私は強く頷いて、酒の酔いを覚ますべく、窓を開けるのだった




  32. 52 : : 2014/08/27(水) 18:53:26
    翌朝、分隊長を起こすべく部屋の扉をノックするが、音沙汰がない

    まだ寝ているのかもしれない…よくあるパターン

    私は扉をガチャリと開けた

    「分隊長、おはようございます」
    そう言いながら部屋に入るが、やはり返事はない

    ベッドには仰向けで、口を半開きにして寝ている分隊長の姿があった

    閉まったままのカーテンを開けて、朝日を部屋に取り込む…良かった、昨夜は部屋に嵐は来なかったみたい

    私はそっとベッドに歩み寄る

    セクハラ上司とは思えない程、あどけない顔をして眠っている分隊長を起こすのは気が引けたが、今日は大事な打ち合わせがある…起きてもらわなければならなかった

    「分隊長、おはようございます。起きてください、朝ですよ」
    私はベッドの側に置いてある椅子に腰を下ろして、ぺちぺちと分隊長の頬を叩く

    何度かそれを繰り返していると、いきなりその手を掴まれた

    「ん…いたずらするこの手は誰の手だい…?」
    分隊長は目を閉じたままそう言った

    「起きたなら、目を開けて下さい、分隊長」
    わたしの言葉に、分隊長は目を開けた

    「やあ、おはようモブリッタ。夜這いにしては遅くないかい?もう朝じゃないか…いや、私はいつでも準備は出来てるんだけどね?」

    分隊長はそう言うと、私の手を引っ張って自分の胸に引き寄せた

    「ちょ、ちょ、ちょっと!」
    私は分隊長の胸に顔を埋める形になってしまい、狼狽えた

    離そうとするが、私の手を握っていない方の手が、しっかり私の後ろ頭に添えられて、動けない

    「モブリッタのこの、うなじが綺麗で好きだなあ…」
    分隊長は、指で私のうなじをなぞった

    私は、その感覚に堪えられず、びくっと体を震わせた

    「ははは、可愛い反応だね…本当に」

    私は愉しげに笑う分隊長に対して、ついにきれた

    体を引き離して、ひらりと立ち上がる

    「分隊長!!お戯れを!!もう、だめです、耐えられません!!副官解任要求してきます!!」
    私は涙目になりながら、部屋を飛び出した

    「ちょ、ちょっと待ってくれよ!?」
    そんな声が背後から掛かったけど、聞こえない振りをした

    もう、限界だわ…
    セクハラされ続けてはや幾年…
    ただの上司にあるまじき態度…

    私はエルヴィン団長に直談判すべく、廊下を足早に進んだ


  33. 54 : : 2014/08/27(水) 20:20:14
    「モブリッタ、どうした、またなにかやらかしたか?ハンジが」
    私の顔を見るや否や、エルヴィン団長は肩を竦めた

    分隊長への苦情は調査兵団では日常茶飯事

    それも私が補佐についてからはかなりましになったらしいけれど、その代わりに私が貞操の危機に瀕している…

    涙ながらに訴えるしか、術はなかった

    「エルヴィン団長、もう私限界です…分隊長のセクハラ行為…我慢できません!!」
    私はキッと団長に鋭い視線を向けて、断固たる口調で言葉を発した

    「セクハラ行為か…確かによくハンジは君に甘えていると聞いているが…」

    「あ、甘えているという段階を越えています…今朝なんかですね、寝ている分隊長を起こそうとしたら、手を引っ張られて、綺麗なうなじだと言われて、触られましたっ…!」

    私は顔を赤くして訴えた

    決して恥ずかしいからじゃない…怒っているから顔が赤いの…

    「ほう、確かに綺麗なうなじだな」

    「エルヴィン団長!?」

    「……冗談だ。いや、うなじは綺麗なのは否定しないよ。しかし、ハンジは君と付き合っていると認識していたんだが、違うのか?」

    エルヴィン団長の言葉に、私は驚いて目を白黒させた

    「つ、付き合っていません!!ただの上官と副官の関係なだけです!!どうしてそうなるんですか!?」

    「…いや、ハンジが君に対してやっている事は、セクハラと言うよりマーキングに近いからかな。ほら、人前でわざと恥ずかしいことをさせるだろう?あれは、ハンジが他の男に対して、モブリッタは自分のものだと牽制している様に見えるんだが、違うかな?」

    私は首を振った
    「でも、私は分隊長とは何の関係もありません…」

    「そうか、それならばハンジの態度は確かに行きすぎているかもしれんな。俺からもよく言っておこう。だが、差し当たりあいつの副官をこなせる人材に心当たりはない。副官解任要求は、却下だ」

    予想通りの返事に、私は肩を落とした

    「なあモブリッタ。あいつはふざけている様に見えるが、根は真面目だ。暖かく見守ってやってくれたら嬉しいんだが…」

    団長の言葉と、憂いを秘めたような表情に、私は頷くしかなかった


  34. 56 : : 2014/08/27(水) 21:21:56
    分隊長室へ、重い足取りを向けながら私は思考を燻らせた

    根は真面目…そんな事は分かってる
    何年も側について、死線を潜り抜けて来たんだから

    分隊長は私にとってはただの上官、だけどその絆は何よりも強い

    じゃあ何故今さら、セクハラ行為を許せなくなっているのか

    …セクハラなんて、女性の敵だからに決まってるからじゃない

    上官にされたら、拒絶出来ないからじゃない…

    団長が言い聞かせてくれるはずだから、きっとセクハラは無くなるだろう

    私はそう言い聞かせて、分隊長室の扉をノックした
  35. 57 : : 2014/08/27(水) 23:44:38
    ノックをしたが、返事がない
    扉を開けて部屋に入るが、もぬけの殻だった

    何処かへ行ったのかな…

    私はベッドに散乱する、乱雑に畳まれた寝間着を手に取り、綺麗に畳み始めた

    何時もと少し違う事に気がつく…そうだ、寝間着を雑にでも畳むなんて今までなかった

    ちょっと気を使ったのかな…

    そう思うと、申し訳無いような可愛いような、そんな気分になった

    しばらくすると、扉が開いて、分隊長が戻ってきた

    「おかえりなさい、分隊長」
    私がそう言うと、分隊長はほっとしたように息をはいた

    「ただいま、モブリッタ。あ、一応たたんだんだけど…」

    「はい、分隊長偉いですね。もう少し綺麗に畳むともっといいんですけど…男性はこれで十分です」

    私の言葉に、分隊長は照れたような笑みを浮かべる

    「モブリッタに誉められた…嬉しいな」
    分隊長のその表情に、私はまた、目を奪われたのだった
  36. 58 : : 2014/08/28(木) 10:40:09
    そのまま、少し遅めの朝食をささっと食べて、今日の重要事項である巨人捕獲についての打ち合わせに向かった

    「今回もすんなり捕獲出来たらいいなあ…前回は実験でやり過ぎちゃったから、そこを反省するとして…うーん」
    分隊長は真剣な眼差しで、自分で書き出した作戦案や、機材のメモに目を通していた

    前回の捕獲作戦では、数体の巨人を捕獲したが、実験の最中にうなじを切りすぎておじゃんにしてしまっていた

    分隊長はどうやら、巨人のうなじに弱点以外の何かがあるとふんでいる様で、執拗にその部分に対していろいろ試していた

    弱点以外の何か、はまだ私にも知らせていない…こういうものは本人から語るまでは聞かないのが鉄則、だから私もあえて聞かなかった

    「分隊長、思考の最中に申し訳ありませんが、兵長の部屋に到着しました」

    私は、目的地を通り過ぎようとした分隊長の腕を取った

    「あっ…本当だ…はは」

    「ちゃんと前を見て歩かなければ危ないですよ、分隊長」
    私は肩を竦めた

    「ああ、そうだね。でも、君がいるから……いや、何でもない。部屋に入ろう。リヴァイが待ってる」

    分隊長は何かを言いかけて、首を振った

    そして、兵長の部屋の扉をノックもなく開けたのだった

  37. 59 : : 2014/08/28(木) 11:18:47
    「おい、ハンジ…部屋に入る前にノックくらいしろよ、てめえ…」
    苦虫を噛み潰したような顔のリヴァイ兵長が、部屋の真ん中で仁王立ちしていた

    背は低いのに、凄い威圧感…怖い

    私が恐れのあまり気配を消しているのに対して、分隊長は全く動じない

    「やあ、ごめんごめん!!そうだよね、ペトラとお取り込み中かもしれなかったし。あっ…さすがに昼間からやらないか~ははは」

    「おい、モブリッタ、お前…旦那の躾はどうなっていやがる…」

    ぎゃあ、わたしに矛先が向いた…気配を消していたはずなのに…
    と言うか、旦那って何よ!

    私が反論しようとした時

    「旦那だなんて言ってやらないでくれよ。モブリッタが可哀想だ」
    分隊長が代わりに反論した…何故か少し寂しげに感じたのはきっと気のせい

    「旦那じゃねえならなんなんだ。愛人か?」

    「そっ、そんな関係は一切ありません!!普通に上司と部下です、兵長!!」
    私がそう言うと、分隊長が相づちを打った

    「そうなんだ、リヴァイ。そういう事でよろしく頼むよ」
    分隊長は頷きながらそう言った

    何時もとはまた何かが違う

    そう、いつもなら私の嫁だとか言い張って、また話をややこしくしていたはず

    団長に念を押されて変わったのかもしれない

    でも、何処と無く寂しげな表情をほんの一瞬見え隠れさせているのは…

    いいえ、勘違いに違いない

    私はそう言い聞かせて、セクハラが無くなりつつある現実を素直に喜ぶことにした
  38. 62 : : 2014/08/28(木) 18:51:53
    「じゃあ、二日後に決行だな。機材の準備はしておけよ、ハンジ」

    「ああ、了解!!班の他の子達にもよろしくね、リヴァイ!!」

    いくつかの打ち合わせを済ませ、私たちは席を立った

    「じゃあまたね~リヴァイ」
    分隊長が部屋の扉を開けて出ていった

    「では兵長、よろしくお願いいたします」
    私は会釈をし、分隊長の後を追おうとした

    「待て、モブリッタ」
    不意に兵長に呼び止められ、向き直る

    「はい、兵長」

    「ハンジの様子、おかしくねえか?いつもより随分しおらしい気がするが…喧嘩でもしたか?」

    兵長の言葉に、私は内心驚いた…兵長も気がついていたんだ

    「喧嘩はしていません。確かに少し様子がおかしいですが…もともと変だったのがまともになったといいますか…」

    私の言葉に、兵長は頷く
    「確かにそうかもしれねえな。元が元だからな。呼び止めてすまなかったな」

    「いえ、大丈夫です、兵長。ご心配お掛けしました」

    「モブリッタ…お前が頼りだ。あいつを見捨てないでやってくれ」
    兵長は私にそう言って、肩をぽんと叩いた

    「見捨てるだなんて…そんな事は…」

    私はそう言うと、兵長の部屋を後にした
  39. 69 : : 2014/08/29(金) 08:41:20
    団長といい、兵長といい、分隊長に甘過ぎるんじゃないかと思う…

    セクハラ被害者は私なのに、何だか私が心が狭いみたいになってない…?

    そんな事を考えながら、分隊長の後ろを歩く

    「モブリッタ、機材の確認だけしておこうか」

    分隊長が不意に振り向き、言葉を発した

    「はい、そうですね。不備があってはいけませんし」

    「よし、じゃあ善は急げ!!レッツゴー!!」
    分隊長はそう言って、私の肩に手を伸ばしかけたが、引っ込めた

    私が怪訝そうな顔をすると、複雑そうな表情で鼻の頭をぽりっとかいた

    「あ、ついつい何時もの癖で…はは。さ、行こうか」

    自嘲気味に笑って、また背を向ける分隊長に、私は何だか凄い罪悪感を感じてしまった
  40. 72 : : 2014/08/29(金) 18:55:16
    昼食中も午後も、特にセクハラをされる事無く、久々に悲鳴をあげない勤務時間を過ごす事が出来ていた

    そして、今日一日の予定が全て終わった

    ハンジ「モブリッタ、今日も補佐ありがとう。私は風呂に入ってくるよ。たしか…三日に一度は入らなきゃ、だよね」

    分隊長はそう言うと、自ら棚を漁って着替えを取り出し始めた

    私は目を丸くする…今までに一度だって、自分から風呂に入るなんて言わなかったし、着替えを用意する事も無かったからだ

    モブリッタ「分隊長…」
    私はなんだか心配になって、分隊長の顔を覗いた

    ハンジ「どうしたの?モブリッタ。そんな心配そうな顔をして…。大丈夫、ちゃんと綺麗に洗ってくるからさ」

    分隊長はそう言うと、手をひらひらさせてから、部屋を後にした

    モブリッタ「分隊長…エルヴィン団長によほど言われたのかしら…」
    分隊長のあまりの態度の豹変ぶりに、私は首を傾げずにはいられなかった
  41. 73 : : 2014/08/29(金) 23:28:13
    分隊長がお風呂に行ってしまったので、私は何だか手持ち無沙汰になり、自分も風呂に入る事にした

    風呂場には数人の女性兵士がいた

    皆調査兵とはいえ、年頃の女性達…風呂に入ればいろいろな事を大っぴらに話す

    「もし出来ちゃったらどうするのよ~?」

    「本当、駄目よね。でも何も用意していない時に不意に…とか困るのよね」

    出来ちゃったら…って、あっちの事情の話しか…

    私が何となくその話に耳を傾けながら、身体を洗っていると、女性兵士が声を掛けてきた

    「モブリッタ副長!!お背中流しますよ」
    出来ちゃったらの話をしていた女性兵士の片割れだった

    「いいわ、自分でするから…ゆっくり浸かって話をしていて?」
    私がそう言うと、女性兵士は首を振った

    「たまには流して貰うのもいいですよ?いつも分隊長の背中をお流ししている方でしょう?」
    そう言って、タオルで丁寧に背中を擦る

    「いつも…ではないけど、たまにね…」
    私は嘆息をついた

    不潔な分隊長を風呂に無理矢理入れると、必ず背中を流すことを強要される…いいえ、断じて私は服は脱がないし、分隊長だって、ちゃんと下は隠しているけど…

    「いいなあ…ラブラブで…分隊長は鼻の下伸びっぱなしだし」

    「そうそう、お似合いですよね。そうだ、副長!!副長はもし相手が用意してない時にしたいって言われたらどうします?分隊長はその辺適当そうだから、準備してなくて勢い余って…って良く有りそう」

    女性兵士達の言葉に、私は唖然とする

    「ま、待って…?私は分隊長とそう言う関係じゃないわ…今まで一度も無いし」

    私の言葉に、今度は女性兵士二人が唖然とする

    「えっ…うそ。だっていつもあんなに大っぴらに見せつけているのに…分隊長…」

    「自慢の嫁だなんて言いまくっているのに…付き合って無いんですか!?」

    頷く私に、女性兵士達はぽかんと口を開けて、目をぱちくりさせていた
  42. 75 : : 2014/08/30(土) 00:15:35
    「そうなんですか…付き合って無いのに、あの態度でしたか。皆付き合ってるものだと思っていますよ」
    女性兵士の言葉に、頷く私

    「そうなのよ。今日も団長にセクハラをされると直談判しに行ったんだけど、付き合ってるんだと思われていたみたいでね…」

    「でも、分隊長は素敵だから、付き合ってしまえばいいのにって思っちゃいます。折角ですし…」

    女性兵士が頬に手を当てて、うっとりした表情で言葉を発した

    「そ、そうかしら…」
    私はしどろもどろになりながら、かろうじてそう返事をした

    「そうですよ!!かなり変わってますし、大変でしょうけど、顔よし性格よし強しですからね~!」

    「ハンジ分隊長ってかなりすけべですけど、そんな所も可愛いですしね。むっつりすけべじゃない所が男らしいです!!」

    女性兵士達の熱弁に、私はたじたじだった



  43. 79 : : 2014/08/30(土) 09:03:10
    風呂から上がって廊下を歩きながら、先程の女性兵士達との会話を反芻する

    確かに分隊長は女性に人気がある

    スケベなとも言われていたけど、皆それを嫌がってはいない…絶妙なラインで接しているのだろう

    そのラインを大幅に超える態度をとるのは、私相手だけ

    『付き合ってしまえばいいのに』
    女性兵士のその言葉

    想像すると顔が火照る

    付き合ってしまえば、今までセクハラと言っていた行為は全て、愛情表現という名のスキンシップに変わる

    そう考えれば、あまり悪い気はしないかもしれない…

    なんて考え至って、ますます顔に熱が籠った

    モブリッタ「でも、付き合っていないもの…何も言われた覚えもないし…」
    私は小さな声で呟いた

  44. 80 : : 2014/08/30(土) 21:48:46
    自分の部屋に戻ろうと廊下を進んでいると、部屋の前に誰かが立っていた

    …まさに噂をすれば、分隊長だった

    「やあ、モブリッタ。君もお風呂入ってきたんだね。私も今日はピカピカだよ?髪の毛も綺麗にリンスした」

    分隊長はそう言うと、髪の毛をかきあげた
    髪を下ろしていると、女性に見えなくもない

    「分隊長、髪が綺麗ですね。いい香りもします」
    私は分隊長の髪を指で掬う

    さらりと流れるブラウンの髪
    本当に念入りに洗ったらしい

    ふわりと花の香りがした

    「たまには綺麗にしないとね。自分でね…あっそうだ、モブリッタ、これ」

    分隊長はそう言うと、私に一枚の紙を手渡した

    「何でしょうか…」

    「さっき門番の兵士が預かったってさ。憲兵の印が入ってる。君宛の手紙だね」
    私は徐に手紙を開封する

    昨日あった、元彼からの手紙だった
    早速、彼は私をデートに誘ってきた

    「デートのお誘いだろ?」
    分隊長はまた、図星をついてくる

    私は頷いた
    「はい、その様です。行くかどうかは未定ですが…」

    すると、分隊長は手紙を覗き見した
    「あっ、この日は確か、君非番だよね?行っておいでよ。私のために非番を潰す必要はないよ」

    分隊長と非番が重なっていない日は、私は大抵自主的に非番を潰して、補佐をしていた

    それを気遣ってくれているのだと思う

    分隊長は微笑みを浮かべていた
    私はしばらくその笑顔をじっと見つめていたが、やがて息をついた

    「はい、分隊長」

    私がそう返事をすると、分隊長は私の肩をぽんと叩いた

    「たまには楽しんでおいで、モブリッタ」
    そう言うと、手を振りその場から去っていった
  45. 81 : : 2014/08/31(日) 09:43:53
    分隊長はいつもの笑顔で去っていった

    その表情にも態度にも、微塵の翳りも見えなかったけど…

    分隊長が去って行く後ろ姿を見ながら、何故か私の心の方が、締め付けられる程に痛くなった

    楽しんでおいでと言われただけなのに、何でこんなに胸が苦しくなるのか

    私は自分の心が分からなくて、部屋に入って、ベッドに突っ伏した

    このまま眠れば、この何とも言えない切ない気持ちは消えるだろうか…

    そう思いながら、目を閉じた

  46. 82 : : 2014/08/31(日) 12:32:19
    翌朝、身体の重さになかなか起き上がる事が出来なかった私

    時計を見ると、すでに起きなきゃいけない時間は超えていた

    「起きなきゃ…」
    私は思うように動かない身体を無理矢理ベッドから起こして、兵服に着替えて顔を洗った

    鏡に映る自分の顔は疲れきった様にやつれていて、昨日の寝不足が堪えているのがくっきり出ていた

    寝癖のついた髪を撫で付けて、ため息一つつき、分隊長を迎えに行くために部屋の扉を開けた

    「おはよう、モブリッタ」
    部屋から出た瞬間、爽やかな耳障りのよい声が聞こえた

    分隊長が、私の部屋の前で、すでに用意を整えて待っていたのだった

    私は目を見張った
    今までに自分から起きたり、用意を整えたりする事など、殆どなかったから

    そういう事がある時は、遊びに行く時と、巨人に関する任務の時だけだった

    今日は普通に事務処理の日だ

    「分隊長…おはようございます。早いですね」
    私がそう言うと、分隊長はふわりと笑みを浮かべて、口を開いた

    「ああ、いつまでもやってもらっていては、君に迷惑をかけてしまうからね…やれる事はやろうと思ったんだ」

    「そう、ですか…」
    それが分隊長なりの気遣いだとわかっていながら、何となく寂しい気持ちになる自分に、内心呆れていた

    「うん。いつまでも君にあらゆる事をやってもらうわけには、いかないしね。君には君の、人生があるから」
    分隊長のその言葉に、私は胸に銃弾を受けたような感覚に陥った

    「分隊長…私…」

    「ああ、そんな顔しなくていいんだ。私は大丈夫だからね?それより、君は体調が悪そうだ。休んでおいた方がいい。明日は大事な日だからね」

    分隊長はそう言うと、私の額に手で触れようとした

    だけど、その手は私に触れる事は無く、握りこぶしを作って引っ込められた

    「分隊長…」

    「熱があると思う。顔が赤いし、目がとろんとしてる。医務室まで歩けるかい?いや、やっぱり無理はだめだ。部屋に戻って寝てなさい」

    分隊長はそう言うと、有無言わさず私を部屋に押し込めてしまった
  47. 83 : : 2014/08/31(日) 12:47:25
    部屋の扉に背を預けながら、自分の額に手を当てると、確かに熱かった

    「熱…かあ」
    体調管理も出来ない自分に腹が立つような情けない様な、そんな気分になって、思わず深いため息をついた

    ベッドに腰を下ろすと、突然張り詰めていた糸が切れた様に、力が抜けた

    枕に顔を埋めて、目から溢れ出す何かを堪える

    「しんどいよ…」

    目から溢れ出す物が涙だというのは分かっていた

    けれど、何故泣く必要があるのか…熱のせいで気が弱くなっているのか

    私はその理由に気がついていながらも、認めたくなくて、必死で涙を堪えた

    「ハンジ、分隊長…」
    限りなく優しい上司の名前を、涙を堪えながら、呼んだ

    名前を呼んでしまえば最後

    後から後から流れ出す感情が、涙の川となって、やがて顔に大河を描き出したのだった
  48. 84 : : 2014/08/31(日) 13:07:08
    枕に顔を埋めて泣いていると、扉をノックする音が聞こえた

    分隊長だろうか…泣き顔を見られてしまう

    私は慌てて飛び起き、顔をハンカチで拭った

    「ど、どうぞ」
    そう言うと、部屋の扉が開いた

    「モブリッタ副長、大丈夫ですか?診察にきました。ハンジ分隊長からの命で」
    部屋に来たのは、調査兵団所属の女医だった

    ベッドに座り、診察を受けたあと、女医は言葉を発した

    「疲労に、風邪が重なったのでしょう。熱も高い…今日一日ゆっくり休んで頂けたら…薬も後から届けますから」

    「……ありがとう。あの、分隊長は?」

    私の言葉に、女医は微笑みを浮かべる

    「凄い勢いで医務室に飛び込んでいらして、大変だから早く行ってやってくれって…何が起こったのかと思いましたよ。副長は、愛されていて羨ましいです」

    私は女医の言葉に、首を横に振った

    「愛されてなんて、そんな事…」

    「愛されてますって!!のろけないで下さい、副長。ではお薬は後程」

    女医はそう言うと、部屋を後にした
  49. 85 : : 2014/08/31(日) 15:30:36
    愛されていて羨ましい…

    端から見ればそう見えているのか

    確かに、分隊長は今まででも、行きすぎたセクハラ行為はあったものの、いつも優しくて思いやりと気遣いのある上官だった

    ただそれは自分だけに向けられているわけではなく、誰にでも分け隔てなく優しいのが分隊長だったから、自分が特別に愛されているなんて思わなかった

    分隊長が他の人にやらない行為が、行きすぎたセクハラ、だった

    それを向けられていた私は、分隊長にとって特別な存在だったんだろうか

    「頭がぼーっとする…」

    私は思考を中断して、兵服のままベッドに倒れ込んだ

    目を閉じて、熱っぽい息を吐く

    今日は仕事になりそうにない

    分隊長に迷惑をかけてしまうな…明日は大事な巨人捕獲作戦の決行日、事務処理の後には、リヴァイ班との最終打ち合わせも控えているというのに…

    私はため息をついて、枕に顔を埋めた


  50. 86 : : 2014/08/31(日) 19:52:38
    しばらくベッドに突っ伏していると、扉がノック無く開いた

    かと思えばまた閉まる…

    何だろうと思っていると、コンコンとノックが聞こえてきた

    「どうぞ?」
    私が怪訝そうな口調で扉に向かって声を出すと、また扉が開いた

    部屋に入ってきたのは…

    「やあ、ごめん。ノック忘れてしまったよ、モブリッタ。薬、貰ってきたよ。それと、一応朝食…食べられそうならと思ってね」
    トレーを片手に、ばつの悪そうな表情の分隊長だった

    「あ、すみません、分隊長…」

    起き上がろうとする私を、分隊長が制する
    「動いたらダメだ。というか、兵服のままじゃないか…着替えなきゃ。着替えはどこかな…」

    分隊長は棚を探ろうとして、動きを止めた

    そして、ちらりと私を振り返る
    「あっ…勝手に探したらダメだよね」

    「二番目の引き出しに、寝間着が入っています、分隊長」
    私がそう言うと、分隊長は頷いて、棚を開けて寝間着を取り出した

    「ピンクのとブルーのと、白のふりふりかあ…じゃあこれで…」

    分隊長が私に手渡してくれたのは、白のフリルがついた寝間着だった

    「分隊長はこういうフリルが好きなんですか?」
    私は何気なくそう聞いてみた

    すると、分隊長は目を見開いて、一瞬考えるような素振りを見せた

    「ああ、そうだね。でも君なら、何を着ても…」
    分隊長はそこまで言って口ごもった

    「…分隊長?」

    「何を着ても、モブリッタは似合うし可愛いと思うよ…。さて、着替えたら薬を飲んで寝ておいて?私は仕事をやっつけてくるから。あ、心配しなくていい、頑張ってくるからね」

    分隊長は捲し立てる様にそう言うと、部屋を出ていった

  51. 87 : : 2014/08/31(日) 20:04:50
    分隊長を見送って、私は思わず吹き出してしまう

    「ノック…し忘れて、扉開けなおすなんて…あはは。病人にフリルのよそ行きパジャマ着せるし…ああ、もう…」

    本当に可愛らしい人

    私はそう思って、頬を緩ませた

    そうか、私は…

    あの不器用な分隊長を愛しく思っているんだ

    可愛らしいだなんて本人には死んでも言えないけど、私は放っておけないあの人が大好きなんだと、確信した

    それを隠す事は出来ない

    あの人が私をどう思っているかは分からないけど、少なくとも私の気持ちは、あの人の方を向いている

    その気持ちを隠すのは止めて、ちゃんと向き合おう

    唐突にそう思った

    さしあたっては、分隊長が選んでくれたふりふりパジャマを着て、朝食を食べて薬を飲むことにした
  52. 88 : : 2014/08/31(日) 20:38:53
    結局その日は一日、部屋でゆっくり過ごした

    昼食も部下が持ってきてくれたから、私は部屋を一歩も出なくて済んだ

    朝以来、分隊長は部屋には来ていなかった…今日は夜も打ち合わせで忙しいはずだ

    私は何度か兵服を着ようとしたが、その度に、昼食を持ってきてくれた部下が言っていた、分隊長からの伝言を思い出し、思い止まった

    『今日は何があっても部屋から出ないでゆっくりしておく事。これは命令だよ』

    分隊長の優しい心遣い、無駄にはせずに素直に受け取ろうと思った

    そして、一枚の手紙を書いた

    それを、夕食を持ってきてくれた兵士に託す

    宛先は憲兵団トロスト区支部

    私は大きく延びをして、少し軽くなった身体をソファに預けて、夕食を口に運んだ

  53. 89 : : 2014/08/31(日) 20:58:27
    夕食は、お腹が一杯になるくらい食べることが出来た

    トレイの食器を洗って、ついでに歯を磨いて、顔を洗った

    疲れはかなり取れた様だ…朝よりはましな顔になっている

    明日は大事な捕獲作戦だし、今日は万全を期して、早く寝なきゃ

    ベッドに横になって、布団を被った時、扉がノックされた

    「開いています、どうぞ」

    そう言うと、扉が開き、分隊長が部屋に入ってきた

    「やあ、モブリッタ。もしかして起こしたかな?」

    「いいえ、今ベッドに横になった所です」
    私は分隊長に、微笑みかけた



  54. 90 : : 2014/08/31(日) 22:01:56
    「あ、起き上がらないで、寝ておいて。熱はどうだい?少し顔色も良くなっているみたいだけど」

    分隊長はベッドの側の椅子に腰掛けながら、心配そうに私の顔を覗き込んだ

    「熱はもう、殆どありません。一日ゆっくりさせてもらったおかけで…分隊長、ありがとうございます」
    私は分隊長の顔を見ながら、お礼を言った

    「いや、君の体調が一番大事だからね…良かったよ、ましになったみたいで」
    分隊長は安堵の笑みを浮かべて、そう言った

    「分隊長は…かなりお疲れの様ですね。あら…」
    私は分隊長の頬に手を伸ばした

    「ん?」

    「汚れてますね…煤がついた様ですけど。何処かで暴れたんですか?」

    私はそう言いながら、ベッドの上で身体を起こし、分隊長の頬の汚れをハンカチで拭く

    「ああ、多分機材の搬入中に付いたんだ…暴れてはいないよ」
    分隊長は少し不服そうな口調で、言葉を発した

    「そうでしたか。機材の搬入、あとは明日の打ち合わせまで、御苦労様です。明日は補佐させて頂きますから…」

    私は分隊長に頭を下げた

    「いや、無理はしないでくれよ。完璧に治ればいいけど、もし微熱でもあれば明日も君はお休みだ。君は明日は本来非番なんだからね。あ、それに明日は大事な日だろ?」

    「大事な日…?捕獲作戦は確かに重要ですけど、それ以外に何か?」

    私の言葉に、分隊長は肩を竦める
    「君は、明日デートだろ?」

    「……それはもう、断りました。今日言付けましたし」

    それを聞いた分隊長は、一瞬目を丸くした

    「どうして断ったんだい?まあ、体調が悪いからなんだろうけど…」

    「いいえ、気が進まなかったからです」
    私はきっぱりそう口にした

  55. 91 : : 2014/08/31(日) 22:25:06
    「そうか…それなら仕方がないね。逃した魚はでかかったと、今ごろ地団駄踏んでいるだろうね、彼」
    分隊長は苦笑した

    「さあ、分かりません。どのみち私は調査兵団を辞めるつもりはありませんし。あなたの補佐も、辞めるつもりはありません」

    私がきっぱりそう言うと、分隊長は真剣な眼差しを向けた

    「モブリッタ、君は…それでいいのかい?私が嫌では無いのかな…その、セクハラ上司だしさ」
    分隊長はそう言うと、ため息をついた

    「私は分隊長についていくと決めていますから。それは何があっても揺らぎません」

    私の言葉に、分隊長はヘイゼルの瞳を揺らした様に見えた

    「そうか…それなら、良かった」
    そう言って、ほっとしたように笑う分隊長が何だかとても愛おしくて…

    私は思わず、分隊長の手をぎゅっと握り締めた

    驚いたように目を見開く分隊長に、私は微笑みかけた

    「セクハラは、人前でされると恥ずかしいので、出来たらあまりやらないでほしいですけど…」

    私がそう言うと、分隊長は考えるように顎に手を当てた

    「うーん、じゃあ、人前じゃなきゃいいのかい?」

    分隊長はそう言うと、私の手を握り返した

    「そう言うわけではないんですけど…遊びでそういう態度を取られると、女としては複雑です…」
    私は静かに言葉を発した
  56. 92 : : 2014/08/31(日) 22:34:54
    分隊長ははっとした様な表情を見せた

    「遊び…そんなつもりはなかった。だって、私は君にしかその…セクハラはしていないし、いつも真剣に…」

    「真剣にからかっていたんですよね…私を…」
    私は分隊長の言葉を遮るように言った

    「からかっていた…うーん、何というか、好きな子ほど意地悪したいというか、可愛い反応を楽しみたいと言うか…」

    「あなたは子どもですか…?それってまるっきり、子どもの愛情表現ですよ…」
    私はじと目で分隊長を見た

    「ご、ごめんモブリッタ…でも信じて欲しい。私は、君にしかそういう態度はとっていないし、気にさわっていたから怒って泣いて飛び出して行ったんだろうけど…もう、泣かせる様な事はしないから…」

    あれ、分隊長の前で、私いつ泣いたかな…
    記憶に無かった

    「私、泣きましたか…?」

    「うん、エルヴィンに直談判してくるって言って飛び出して行った時、泣いていたよ」

    そうか、確かに涙ぐんでいた様な気がする

    自分でも忘れるくらいの感情の揺れに、分隊長は気がついていたんだ…

    それだけ私を見てくれていたという、まさに、証拠だった


  57. 93 : : 2014/08/31(日) 22:56:23
    「モブリッタ、ごめんね。子どもみたいな愛情表現しか出来なくて…君は私の事を良くわかっているから、私の気持ちもわかってくれていると勝手に思っていたんだ」

    分隊長は私の手をぎゅっと握り締めて、項垂れた

    「いいえ、私もセクハラセクハラと騒ぎすぎたかもしれません。分隊長が真剣に、私の事を考えて下さっていたのなら、セクハラにはなりませんし」

    「そうかな…」
    分隊長は上目使いでちらりと私を見た

    「分隊長がここ数日、私に気を使って下さって嬉しかったんですけど、逆に凄く寂しくもあったんです…」

    「セクハラが無いのがかい?」

    「違います!!もう…分隊長が私をもう必要としていないのかなって、考えてしまったり、分隊長が元気がない様に見えて…」
    私はふぅと息をついた

    「君は…私の事を考えてくれていたんだね。ありがとうモブリッタ…」
    分隊長はそう言うと、優しい笑顔を見せた

    「だって…分隊長は私の大切な人ですから」

    私が上司のその笑顔に惹かれるように言葉を発した

    すると、分隊長はそっと私の頬に手を伸ばす

    「触ってもいいかな…」
    そして、小さな声で私にそう問いかけた

  58. 94 : : 2014/08/31(日) 23:09:38
    「どうしてそんな事を聞くんですか…今まで散々セクハラしてきたくせに」

    私が頬を膨らませると、分隊長は不安げな表情を見せる

    「だって…もう2度と君を泣かせたくないから。君の嫌がる事はしないと誓ったから」

    「…分隊長、私は泣きませんよ、大丈夫です。ちゃんと、分隊長のお気持ちが分かりましたから…もう嫌がりません」

    私がそう言うと、分隊長は瞳を潤ませた

    辛うじて、涙は出さない様に、努力をしているような、そんな表情だった

    「モブリッタ、ありがとう…」
    分隊長の手が、私の頬に優しく触れる

    私は分隊長の顔が近づいてくるのを、大人しく待つ…

    やがて限りなく距離が近づいた時、私はぱっと口を押さえた

    「ん?あ、キスはだめなのかい?モブリッタ…」

    「はい、だめです、分隊長」
    きっぱりそう言う私に、分隊長は捨てられた子犬のような目をした
  59. 97 : : 2014/08/31(日) 23:40:19
    「そ、それならキスはしない…」

    「はい、今日は止めて下さい。風邪がうつるといけませんからね」
    私はそう言って、分隊長の頭をそっと撫でた

    「風邪がうつる…そう言う事だったのか、何だ…」
    分隊長はほっとしたような表情を見せた

    「明日は大事な捕獲作戦ですからね。私はともかく、分隊長が風邪で熱などだそうものなら、作戦中止になってしまいますよ」

    私は諭すような口調でそう言った

    「じゃあ…抱き締めてもいいかい?」

    「………それも、うつるといけませんからね…却下で」

    分隊長は不貞腐れた

    「じゃあ、胸を少し触るとかは…うつらないだろ…?」

    「分隊長…?何を考えているんですか?私は病み上がりなんですよ…その手、お止めください!!」

    分隊長はあろうことか、両手をわきわきと動かしながら私の胸に触れようとした

    私はピシャッと、不穏に蠢く手を叩いた

  60. 98 : : 2014/08/31(日) 23:55:03
    「うわーん、ここへきてやっと、数年越しの想いが繋がったと思ったのに…結局お預けじゃないか…」

    分隊長は両手で顔を覆って、呻くように言葉を発した

    「仕方がないじゃないですか…私は分隊長の事を思って…あっ!!」

    私がそう言った時だった

    分隊長はいきなり私の身体をベッドに組み敷いた

    「モブリッタ…うつらないから、お願いします、後生ですから…頼む…やらせて…下さい」
    分隊長はそう言うと、私の首筋に唇を押し当てて、強く吸った

    「痛っ!?ぶっ、分隊長お戯れを!!嫌です!!敬語でお願いされてもだめなものはだめです!」

    「止めたくありません…モブリッタ…風邪がうつるくらいくっつきたいんです…」

    分隊長はそう言うと、私をぎゅっと抱き締めた

    私は、分隊長の身体の温もりと、微かに薫る汗の匂いに、胸がどきりと高鳴った

    「分隊長…く、くっつくだけ、ですよ…?」

    「……私のあそこが、収まりつかないけど……どうしたらいい?いかがわしい本もさ、取り上げられてしまったし…」

    「し、知りません!!そんな事で泣きそうにならないで下さい!!分隊長のバカっ!!」

    今にも泣きそうな顔の分隊長に、私は激昂したのであった


  61. 99 : : 2014/09/01(月) 00:11:29
    「うっうっ…生殺しの刑だよね、これは…」

    結局うるさい分隊長のために、着替えてきたら、一緒に寝る…まで許可する事にした

    私って優しい…わけないか

    私は分隊長に腕枕をされながら、風邪がうつるのも気にせず、胸に顔を埋めていた

    「分隊長の腕枕、ちょうどいいです。良く眠れそう」

    「それは良かった…私のあそこはもうどうしようもない切ない状態だけど、諦めるよ、今日の所は…」

    分隊長は、不服そうに口を尖らせた

    「はい、諦めて下さい」
    私はそう言った…内心くすりと笑いながら

    「……………日付が変わったら今日じゃなくなるから、やるんだ」

    「そんなへりくつは聞きません」
    私の実も蓋もない言葉に、分隊長はぐうの音も出ないようだった


  62. 100 : : 2014/09/01(月) 00:31:27
    「…………モブリッタのバカっ」

    「………分隊長?」
    私はドスの効いた声でそう言った

    「いえ、何でもございません。お休みなさい、モブリッタ…ぐすん」

    「ウソ泣き、止めて下さい、分隊長……ふふっ」
    私はついに、吹き出してしまった

    だってあまりにも、可愛いから…

    「モブリッタ、笑ったな…ぐすん」

    「また、泣き真似してる…子どもみたいですね、分隊長は」
    私はそう言って、分隊長の頬を優しく撫でた

    「モブリッタ…そのまま私の下のあそこを撫でてくれたら…」

    「……撫でてあげましょうか?」

    私がそう言うと、分隊長はうんうんと頷いた

    「お願いします!!」

    「やっぱり嫌です」

    「モ、モブリッタのバカ!!期待させるなよ…」

    分隊長は頬を膨らませて、そっぽをむいた
  63. 101 : : 2014/09/01(月) 00:52:52
    「分隊長…私、分隊長の事が好きです。だから…いつでも、出来ますから。今日は我慢して下さいね」

    「…ああ。わかったよ、モブリッタ…。私も君が好きだ」
    分隊長は私の身体をぎゅっと抱き締めた

    私の太ももの上辺りに、何やら固い感触が押し当てられる

    「…………分隊長、諦めの悪い人ですね…」

    「何の事だい…?私の切ない息子の状態を、君に知ってもらいたいだけなんだけどな…。だいたいこうなってしまったのは、君の責任なんだからね?」

    「いいえ、時や所構わず発情する、忍耐力がない分隊長が悪いんですよ…」
    私は口を尖らせた

    「待って、私は忍耐力には自信があるんだ。一回で君を何度でもいかせてあげるから…任せて欲しい」
    分隊長は胸を張った

    「そういう意味じゃありません!!分隊長のバカっ!!」
    私はそんな事ばかり考える分隊長の頭を、思いきり叩いたのであった

  64. 102 : : 2014/09/01(月) 01:03:49
    結局そのまま分隊長のセクハラ発言を、私は突っぱね続けた

    そのうち、分隊長は不貞腐れながら、眠りについていった

    目の前にある、世にも愛しい人の寝顔に、そっと手で触れる

    私の大切な人は、どうしようもないセクハラ上司で、身の回りの事に目が行き届かない人

    だけど、分隊長は限りなく優しくて、強くて、スマートで、そしてかなりスケベな、愛すべき人

    私の、ハンジ分隊長

    名実共に、私の物になる…
    そして私も、分隊長の物になる

    私はこの人に、一生添い遂げる

    そう決意して、目を閉じる

    分隊長と同じ夢を追いかけるために…


    ―完―
  65. 103 : : 2014/09/01(月) 01:10:40
    執筆お疲れ様でした!!
    毎回本当に綺麗で格好いいお話ありがとうございます!!

    師匠のSS読むと学校やらバイトで辛くても頑張ろう!!ってなります!!
    そして、モブリッタが可愛い(笑)ハンジさんは格好いいし、可愛い(笑)
    本当に素敵なSSをありがとうございます!!
    次も期待してます!!!
  66. 104 : : 2014/09/01(月) 06:10:48
    執筆お疲れ様でした!!

    性別逆ということなのにとても深いお話で引き込まれました!
    モブリッタとても可愛いかったです♪男のハンジさんもとてもかっこいいですね!!
    素晴らしい作品、ありがとうございました♪
  67. 105 : : 2014/09/01(月) 07:28:16
    >EreAni師匠☆
    師匠との会話がまさかこんなSSになるなんてww
    ネタの宝石箱や~w
    ハンジさん男でもかっこいいと思う(*´ω`*)
    私が書いたらただのアレになってしまうけど…w
    私もいつも、師匠の作品に癒されています♪
    またお互い頑張りましょ!!
    コメントありがとうございました♪
  68. 106 : : 2014/09/01(月) 07:31:04
    >はんちゃん☆
    いつも読みに来てくれて、本当に嬉しかったです!!
    ありがとうございます(*´ω`*)
    私の男ハンジさんは暴走気味でしたが、原作ハンジさんが男でも、かっこいいと思いますw
    コメントありがとうございました♪
  69. 107 : : 2014/09/01(月) 09:19:59
    執筆お疲れ様でした!

    モブリッタかーわーいーいー!

    セクハラしないハンジさんはただのイケメンでしたね。でもちょっと物足りない…。モブちゃんの気持ちが何となくわかりましたw

    いつも素敵で楽しいお話ありがとうございます。
    次回作も期待してます。
  70. 108 : : 2014/09/01(月) 09:28:26
    >キミドリさん☆
    コメントありがとうございます♪
    モブリッタになりたい!!そう思いながら書きなぐったらこんな内容になってしまいましたw
    そう、やっぱり雄ハンジさんはセクハラ無しでは駄目ですな!(白目)
    いつもありがとうございます♪
  71. 109 : : 2014/09/01(月) 09:39:05
    執筆お疲れ様でした。
    毎日楽しく読ませていただきました。
    ハンジ分隊長は、いかがわしい本を買うお金を、これからはモブリッタちゃんのために、使うといいですね(^^)
    今回はモブハンならぬ、ハンモブ…だったのかな。
    2人とも、お幸せに!次回も期待しております。
  72. 110 : : 2014/09/01(月) 09:48:40
    >数珠繋ぎさん☆
    毎日!読んで下さってありがとうございます♪
    今回はハンモブですね!!
    どちらも結局思いあってはいましたが、愛情表現的に、ハンジが攻めすぎてますしねw
    お金は全てモブリッタに管理されて、完全に支配下に置かれる事でしょうww
    コメントありがとうございました!!
  73. 111 : : 2014/09/01(月) 19:31:27
    こんにちは!ハンモブ読ませていただきました(*´∀`*)ノ
    攻めハンジにドキドキしながら読んでいましたが、あのセクハラ発言の数々が下品に感じないのが不思議でした。これはイケメンの成せる技なのか!(真顔

    モブリッタは本当に可愛かったです。
    なんだろ、女子力高すぎてちょっと浮気してしまいました(笑
    本当におつかれさまでした!
  74. 112 : : 2014/09/01(月) 21:44:29
    >だぁりん☆
    わあ、読んでくれてありがとう♪
    雄ハンジ、あれだけ露骨なセクハラしてるのに…やっぱりイケメンは得だ…
    モブリッタは可愛くてしっかりもの、理想の女性像です(*´ω`*)
    私も嫁にほしいくらい!?
    コメントありがとうございました(*´ω`*)
  75. 113 : : 2014/09/03(水) 21:07:37
    執筆お疲れ様でした!

    泣いたり笑ったり表情がいそがいくてw(ノ´∀`*)
    モブリッタとハンジさんのセクハラ事件、モブリッタは意味が分からなくて訴えてしまってからのハンジさんの対応がひっっじょょょょょょうに寂しく、
    セクハラ事件解決した後のハンジさんの方がやっぱりいいなーとか思いました~.
  76. 114 : : 2014/09/03(水) 21:42:25
    >ハンジもどきさん☆
    読んで下さってありがとうございます♪
    ハンジさんはセクハライケメンですが、根は真面目で…
    書いていて私も切なくて、最後にそれが爆発しちゃいましたw
  77. 115 : : 2014/10/24(金) 21:15:55
    お疲れ様です!!
    もう最高です!!!モブリッタかわいい……というかモブリッタ、そこ代わってくださいお願いしますorzハンジさん女だから変態でも許されるけど、男になるとこうなっちゃうのか…でもモブリッタ羨ましい…ぐぬぬぬ……
    これからも頑張ってください!
  78. 116 : : 2014/10/24(金) 21:25:07
    >甘夏さん☆
    コメントありがとうございます♪
    私も男ハンジさんに迫られたい~(///∇///)
    ハンジさんは男にしたらやばいですよ!!
    かっこいいですけど…(///∇///)
    ぐぬぬぬ~w
    応援ありがとうございます♪頑張りますね!!
  79. 117 : : 2014/11/20(木) 22:00:09
    うう、やっぱ男女逆転よりそのままがいいかも。。
    でも、これはこれでよかったぉp(^-^)q
  80. 118 : : 2014/11/20(木) 22:01:11
    次は、性別原作通りでたのむ!!!!!!!
    きたいしてます(^^)d
  81. 119 : : 2014/11/20(木) 22:11:11
    >>117
    私の戯れSS、読んでいただきありがとうございます♪
    モブハンは今も新作更新中ですので、読んで頂けたら嬉しいです(*^^*)
  82. 120 : : 2015/04/28(火) 18:54:42
    モブリッタ可愛かったです。続き的なもの期待しています。乙。
  83. 121 : : 2015/04/28(火) 19:47:12
    >とあちゃん☆
    読んでくれてありがとう♪
    モブリッタと男ハンジさん、これの続きとなるとやばいのしか思い浮かばないよwどうしましょw
    妄想してみますw

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fransowa

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