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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

エルヴィン「団長の苦悩」とモブリット「副長の苦労」

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  1. 1 : : 2014/06/30(月) 09:32:17
    団長の苦悩と副長の苦労

    調査兵団団長エルヴィン・スミスと、分隊副隊長モブリット・バーナーの、一見なんの接点も似ている所もない二人の、知られざる苦悩と葛藤の物語

    シリアスです

    ネタバレは単行本

    感想は此方に頂ければ嬉しいです!!
    http://www.ssnote.net/groups/553/archives/1



    よろしくお願いいたします
  2. 2 : : 2014/06/30(月) 09:32:40
    「私に頼みたい事、ですか?エルヴィン団長」

    夜の帳が下り、薄暗い部屋に設えてある執務机の正面に立ち、首を傾げる一人の男

    薄いブラウンの髪は、何もせずとも勝手に真ん中に分かれ、後ろはきっちりと刈上げられている

    男性にしては少し顔が丸みを帯びており、どことなくあどけなさが残っていた

    その顔に備わっている柔和な瞳は、ほんの少しだが目じりが下がっており、より一層彼の印象を柔らかい物にしていた

    その柔和な彼の表情が、いささか曇っていた
    不安・・・からだろうか

    夜の、突然の呼び出し
    しかも、自分が所属する兵団の、トップからの呼び出しだ

    緊張の面持ちで入室した時には、彼の目の前で、執務椅子に座っている金髪の偉丈夫はにこやかな笑みを浮かべていた
    だが今はその表情を消し去り、真摯な、それでいて何かを探るような目を自分に向けていたからだ

    その偉丈夫が発した言葉が、更に彼を不安に駆りたてた

    「そうだ。頼みたい事、というより命令だ。モブリット・バーナー」
    人に指図をし慣れた、その口調
    有無を言わせない、断固たる意志

    その低く、それでいてよく通る声は、聴く者の反論を許さない、そんな雰囲気を醸し出していた

    モブリットと呼ばれた命令を受ける側の男は、背中を震わせた
    本能的な恐怖からか、畏怖からか
    目の前の男から感じる威圧感は、彼の背筋を凍らせるのに十分であった
  3. 3 : : 2014/06/30(月) 09:34:08
    「ご命令には、謹んで従います。エルヴィン団長」
    モブリットはごくりと生唾を飲み込んだ後、静かにそう言った

    そう、彼は、目の前の男に反論などする余地も、立場も、経験則も、何も持ち合わせていないのだから、当たり前だ
    従うしかないのだから

    囮になれと言われればなるしかないし、死ねと言われれば死ななければならないし、とにかく何でもするしかないのだ

    いつしか緊張からか、モブリットは拳を握りしめ、その手の平には汗がにじみ出ていた

    すると、その様子を見ていたエルヴィンが、ふと笑みを溢す
    「そう、怖がられては命令する事すら憚られるんだが」

    まるで面白い物を見る様な目を、モブリットに向けてそう言った

    モブリットは慌てて首を振る
    「いえ、団長。怖がってはおりません」

    「そうは見えないんだが・・・まあいい、君に頼みたい事というのは、ハンジの事だ」
    エルヴィンは今度は優しげな表情を、モブリットに見せた

    だが、モブリットはエルヴィンの口からでた名前を聞いた瞬間、びくっと肩を震わせた
    額から、汗がにじみ出た

    後ずさりする事だけは、なんとか耐えた、そんな感じだ
    「ハ、ハンジ・・・班長・・・ですか」

    名前を言うのすら憚る様な、そんな言い方をするモブリットに、エルヴィンは苦笑した

    ハンジという名を聞けば、ほとんどの部下はこんな反応をするのが常だった
    全然目新しいわけでもない

    だがエルヴィンは、自分の部下の中でも殊更優秀なハンジ・ゾエを、名前を言うのすら憚られる様な存在のまま放置する事を由とはしなかった

    今回目の前の男をわざわざ呼び出したのにも、そんな理由があっての事だった
  4. 4 : : 2014/06/30(月) 09:35:05
    「モブリット、班長ではない。ハンジ・ゾエ第二分隊長、だ」
    エルヴィン・スミスははっきりとした口調でそう言った

    モブリットは目を見開く
    「第二・・・分隊長。昇進ですか」

    「ああ、実力に見合った昇進だとは思わないか、モブリット」
    エルヴィンは頷きながら、目の前の男に問いかける

    モブリットは一瞬考える様に視線を足元に向けたが、やがてエルヴィンに視線を戻した

    「はい、そう思います。エルヴィン団長」

    「少々引っ掛かるところがある様な顔をしているが」

    エルヴィンの問いかけに、モブリットは首を数回横に振る

    「引っ掛かる事など・・・」
    ある、なんて言えるはずもなく、モブリットは押し黙った
  5. 5 : : 2014/06/30(月) 10:36:56

    「まあ、君が思っている事は良くわかる。あれは・・・ハンジは、少々癖があるからな」
    エルヴィンは顎に手をやりながら言葉を発した

    少々?そんな表現で済む様な癖だとは言えない・・・と心の中では思っても、言葉には出せないモブリット
    ただ、目は口ほどに物を言うとでも言おうか

    モブリットは、落ち着かなさげに目を伏せた

    「で、君に頼みたい事というのはだが・・・君に、第二分隊副隊長をやってもらおうと思う」

    エルヴィンがさらっと言ったその言葉に、モブリットは驚き、目を見開いた

    「・・・え?」

    「辞令、モブリット・バーナーを、第二分隊副隊長に任命する」

    エルヴィンはそう言って、一枚の書状をモブリットに手渡した

    モブリットは震える手でその書状を受け取り、目を通す
    ・・・何回読んでも、第二分隊副隊長という言葉は消える事はなかった

    ダリス・ザックレー総統と、エルヴィン・スミス団長のサインもきっちり記載されている
    偽でもどっきりでもなく、本物の、辞令だった

    「あ、あの・・・エルヴィン団長・・・」
    モブリットは縋る様な目でエルヴィンを見た

    「何だ、モブリット副隊長」

    「・・・自分は班長職すらした事がなく・・・いきなり分隊副隊長など、勤まるとは思えません」

    モブリットの言葉に、エルヴィンは首を振る

    「もう、決まった事だ。それに、大出世だぞ?ありがたく受け取るべきではないかな」
    エルヴィンはいたずらっぽい笑みを浮かべた

    モブリットはなおもエルヴィンに抗議の意を表する

    「団長、自分には無理です。副隊長など、それに・・・」
    第二分隊の隊長は・・・ハンジ・ゾエだ

    モブリットはのどまで出かかったその名前を、辛うじて飲み込んだ
  6. 6 : : 2014/06/30(月) 16:00:24
    「それに…の先に続けたい言葉も、解っているつもりだ」

    エルヴィンは、モブリットの今にも泣き出しそうな顔を見ながら、頷いた

    「では、何故、自分が…」
    モブリットは頭を振った

    どう考えても、今の自分のキャリアを省みて、副隊長が適任であるとは言いがたい

    自分は良くも悪くも『普通』の、『ありふれた』調査兵団員だ

    リヴァイ兵士長の様な、突出した能力も、ミケ分隊長の様な、戦闘力も、エルヴィン団長の様なカリスマ性も、何も持ち合わせていない

    命令を受けて、それを遂行する事はできる

    だが、命令をしたり、作戦を練ったりするようなタイプでは断じてない

    それに、第2分隊ということは、ハンジ分隊長の補佐役という立場になる

    副隊長と言うだけでも、自分には重荷なのに、その上あの、ハンジ・ゾエという人の補佐

    どう考えても、無理だ

    モブリットは、懇願する様な視線をエルヴィンに投げ掛けた
  7. 7 : : 2014/06/30(月) 16:31:29
    「何故君が、ハンジの補佐役に抜擢されたか…、それを知りたいのか?」

    エルヴィンはモブリットの目をじっと見つめて言葉を発した

    「はい、できましたら…」

    その理由を聞いた所で、副隊長職を辞退できるわけでも何でもない

    だが、モブリットとしては、何故自分の運命がこんなに急に舵を切ったのか、一応聞いておきたかったのだ

    エルヴィンは、ふう、と息をついた
    「ハンジは、兵団内でもすばぬけて能力が高い。知性、戦闘力、両面において高水準で、考え方もウィットに富んでいる」

    モブリットは頷いた
    そこは誰もが認める所であったからだ

    「だが、残念な事に、精神面がいささか厄介だ。特に壁外でな。君も見たことがあるだろう。ハンジが巨人に対して、どう対応するのかを」

    モブリットは知っていた
    ハンジが何故、兵団内で名前を出すことすら憚られる存在になったかを

    全ては、壁外での問題行動が原因だった

    「はい、存じ上げています」
    モブリットは頷いた

    巨人を憎むあまり、吐き気をもよおすような討伐の仕方をする

    うなじを削げばいいのに、目をくりぬき、耳を削ぎ、指、足、手…とにかく切り刻むのがハンジの狩りだった

    それらを全て、楽しげに、頬を紅潮させながら行うハンジに、着いていこうとする部下はいなかった

    「確かにハンジは厄介な所がある。だが最近の壁外遠征で、沢山の死者を出した。もはやハンジを分隊長職につける以外に道はない。このままハンジを捨て置くのは、人材の無駄にしかならんのだ」

    エルヴィンの眼差しは真剣そのものだった

    モブリットは、その眼差しを受け頷く
    「確かに、ハンジさんの能力は、調査兵団にはなくてはならな貴重なものです。ですが、だからと言って何故自分が…」

    「適材適所だ。俺には君が…ハンジの補佐役として適任だと思った。それだけだ。頼まれてくれ、モブリット」

    エルヴィンは立ち上がると、モブリットに歩み寄った

    そして、彼の肩をぽんと叩いた

    モブリットは何か言いたげな顔をエルヴィンに見せたが、結局何も言わず、言った所で辞令が覆るわけでもなく、諦めたように、息をついた

    「…善処いたします」
    モブリットは力なく呟いた

  8. 12 : : 2014/06/30(月) 19:14:48
    団長室を出たモブリットは、深いため息をついた

    扉の前で、もう一度書状を確認する

    …何度見ても、当たり前だが同じ事しか書かれていない

    もう一度ため息をつき、書状を胸のポケットにしまいこんだ

    しっかりと折り畳んで…今あった事から目を背ける様に

    第2分隊副隊長、と言えば聞こえはいいが、実際には『ハンジ・ゾエ』という人の謂わば金魚のふんの様な物だ

    自分の実力でその立場になったわけではない、そんなに自惚れる要素も、実績も皆無だ

    何故自分が『ハンジ・ゾエ』の金魚のふんに選ばれたのか

    数回の壁外遠征で、あの人の奇行ぶりはしかと目に焼き付けた

    近くでも何度か見た
    止めようと、した事もある
    だが止められなかった

    他の兵士達は、あの人を遠巻きに見ているだけだった

    もしかして、それを人伝に聞いたのか…

    だが、止められなかったのだから意味はないだろうし…

    考えても仕方がない事だと気がついたモブリットは、もう一度ため息をつき、宛がわれた自室へ足を運んだ

  9. 14 : : 2014/06/30(月) 21:54:35
    「心底、嫌そうな顔をしていたな…」
    モブリットが部屋を出た後、エルヴィンは腕組みをして、息をついた

    モブリットの気持ちが分からないわけではない、むしろ、エルヴィンにとっても苦渋の決断だった

    ハンジを分隊長に据える為には、誰かが常に彼女の行動を把握する必要があった

    把握するだけではない、その行動に対して諫言できる人選を、ずっと練っていた

    ハンジは、立場が上であるエルヴィンが言っても、聞く耳をもたない

    誉めても、叱っても、貶しても、脅しても…あの壁外での奇行は収まらなかった

    彼女の躾、と称して最終手段として押し倒して言うことを聞かせようとすれば、女なんかに生まれてこなければ良かったと、涙を流して拒絶された

    何をやっても、無駄だった
  10. 15 : : 2014/06/30(月) 22:08:19
    そんな中、壁外遠征中にただ一人、ハンジの奇行を止めようとした人物がいると聞き、その者について調べさせた

    戦歴も目立つ物はなく、訓練兵卒業成績も、上位には変わりはないが、10位以内に入るほどでもなかった

    風貌は兵士と言うよりは、優男に近い
    体格もいたって普通
    柔和で穏和な人となり

    立体機動術も、ブレードの扱いも、突出したものではない

    ただ、判断力と注意力、周囲への配慮、その辺りに光るものが見えた

    戦う技術だけが、生死を分けるわけではない

    むしろ、壁外においては、状況判断が重要になってくる

    ハンジに今足りないものを補える人材

    モブリット・バーナーを抜擢したのは、そう言った理由からであった
  11. 16 : : 2014/06/30(月) 22:22:20
    勿論、異例の大抜擢だ

    他の分隊副隊長を選ぶのであれば、こうはいかない

    戦歴著しい訳でもないモブリットが、いきなり分隊副隊長などになれば、他の兵士からすれば、ただのえこひいきにしか見えないだろう

    だが、事情はいささか異なる

    何せ、第2分隊長は、誰もが避けて通りたい上官、ハンジ・ゾエだ

    その副官ともいえる副隊長に、いくら給料や立場や肩書きが上がろうとも、誰が好んで就きたがるか

    だから、第2分隊に限っては、いきなりの抜擢でも誰も後ろ指を指さないという算段があった

  12. 17 : : 2014/06/30(月) 22:41:40
    エルヴィンには、この調査兵団をより強固にしていく必要があった

    それは自らの思いを具現化するためであった

    その夢の実現のためにどうしても必要な人材…駒があった

    一つはリヴァイ

    リヴァイは既に、手に入れた

    至高の戦闘マシーンでありながら、その状況判断力、精神力、全てにおいて著しく高水準

    これより強い駒は人類には存在しないだろう


    そして、もう一つの駒が、ハンジだった

    戦闘力は並の兵士を遥かに越え、柔らかな思考を持つ、至高の知性を持った駒

    ハンジには入団当初から、兵団を背負って立つ人材だと目をかけてきた

    強く賢いだけではない
    女性らしく、情に厚い、優しい人となり
    部下にも人気があった

    だが、壁外遠征を重ねる毎にその行動に異常な物が垣間見える様になり…

    いつしか、情に厚かった人となりが変わってしまい、壁内ではまるで死んだ魚の様な虚ろな目をし…

    壁外では、逆に目を血走らせ、巨人を残酷に削ぐ…その事だけを追い求めて、暴走するようになった

    そんなハンジをなんとか復活させたい、エルヴィンにはそんな狙いがあった
  13. 20 : : 2014/06/30(月) 23:13:27
    モブリットは、その新しい階級に応じて個室を与えられた

    個室と言うのは、兵士にとっては憧れだ

    班長以上でないと入れないからだ

    第2分隊副隊長という肩書きも、ハンジ・ゾエという人の補佐も、どれも喜ばしい話ではないが、個室を与えられるという事だけは、素直に嬉しかった

    シンプルな部屋には、すでに自分のなけなしの荷物は運び込まれていた

    早速、部屋の掃除と整理に取りかかる

    モブリットは元来の性格からか、掃除や身の回りの整理整頓はきっちり行うタイプだった

    手際よく片付け、掃除をしている間だけは、嫌なことや煩わしい事が全て忘れていられた

  14. 22 : : 2014/06/30(月) 23:23:18
    部屋の片付けを終えると、明日からの勤務について、否が応にも考えが及ぶ

    ハンジ・ゾエ分隊長との顔合わせ

    そこからは補佐として、ほぼつきっきりの状態が、半永久的に続くだろう

    考えただけで、背筋が震えた

    「ハンジさん…か」

    よく考えてみれば、自分がまだ新兵になったばかりの頃は、明るく快活で、優しく思いやりのある、そんな印象を受けた気がする

    随分昔の様に思えるが、ほんの数年前だ

    何がハンジを変えたのか

    モブリットは考えを巡らせてみたが、答えは出なかった

    とにかく差し障りないように、補佐をするしかないな、と思い、またため息をついた

  15. 26 : : 2014/07/01(火) 08:37:10
    「おい、あの優男に本当に奴のお守りを言い付けたのか」

    団長室のソファにどっかり腰を下ろし、弦の様な眉をひそめる男

    何時もの鋭い視線も今は影を潜め、憐れむ様な、気遣う様な、そんな印象を与える目をしていた

    「ああ、そうだ、リヴァイ」

    エルヴィンは無表情で頷いた

    リヴァイは肩をすくめる
    「…気の毒に」

    「気の毒か?異例の大抜擢、しかも上司は女性だ。喜ばれると思うんだがな」
    エルヴィンはいたずらっぽい笑みを浮かべた

    「お前は思っても無いことをいけしゃあしゃあと言いやがる…」
    リヴァイは顔を歪めた

    「まあリヴァイ。彼を気の毒だと思うなら、躾の方法の助言でもしてやってくれ」
    エルヴィンは、リヴァイに歩みより、肩をぽんと叩いた

    「冗談じゃねえ。俺は奴の躾の仕方なんか知らねえ」
    リヴァイは首を振った

    「そうか?唯一ハンジはお前の言うことはたまに素直に聞くから、何か方法でもあるのかと思ったんだが」

    「何もしてねえ!」
    吐き捨てる様にそう言うと、リヴァイは立ち上がった

    そして、部屋の扉に向かって踵を返す

    「…リヴァイ、本当なら、お前が一番の適任だと思う。だがお前をハンジに付きっきりにするわけにはいかん。お前には独自に動いて貰いたいからな」

    エルヴィンのその言葉に、リヴァイは振り返る

    「いや、俺には奴をまともに戻す事は出来ねえ。傷を舐め合う事は出来てもな」

    「…そうか」
    エルヴィンは真摯な眼差しを、リヴァイに向けた

    「俺も、マトモじゃねえからな。奴をまともに戻すには、まともな奴に引っ張りあげて貰うしかねえ」

    「なるほどな。だから俺にも無理だったと言うわけか」
    エルヴィンは不敵な笑みを浮かべた

    「マトモじゃねえ代名詞じゃねえか、お前は」
    リヴァイはふん、と鼻を鳴らした

    「たしかに、ハンジにはマトモでいてもらいたい、そう思うよ」

    エルヴィンは一転、優しげな表情を浮かべて、静かにそう言った

  16. 27 : : 2014/07/01(火) 10:53:57
    翌朝

    目を開けると、見慣ない天井のシミの痕に、昨日の出来事が夢ではなく現実であったと悟らされる

    「・・・はぁ」
    モブリットは盛大にため息をついた

    今日から自分に与えられる新たなる任務が、重く圧し掛かる
    命令だ、仕方がない、だが、なんだかやるせない

    そんな心とは裏腹に、彼の真面目な人となりが彼の身体を動かす

    さっとベッドから降りて、しわになったシーツを整え布団も綺麗に直す
    寝間着から兵服に着替える・・・その間無駄な動き一つしない

    洗面所へ行き、歯磨きに洗顔は念入りに
    髪の毛は何もせずともいつも通り真ん中でわかれる癖がついている

    ただ、後ろが飛び跳ねている事が多々有るので、確認は怠らない

    鏡に映る自分の顔に、まったく冴える所が見当たらない

    いかにも気の弱そうな、自分の性格を如実に表している顔が、はっきりと鏡に映しだされている

    何故こんな自分に、そんな大役を任せる気になったのだろうか
    モブリットは心の中でひとりごちた

    昨夜から何度となく繰り返される、自問自答

    考えても仕方がない事だ、命令されれば従うしかない立場なのだから

    それでも考えずにはいられない、モブリットであった
  17. 28 : : 2014/07/01(火) 11:06:25
    兵服のベルトも着用し、さてそろそろ部屋を出ようかと思った時

    トントン

    扉をノックする音が聞こえた

    モブリットが扉開けると、兵士が敬礼をして立っていた
    「副隊長、おはようございます」

    そう言われたが、モブリットは一瞬首を傾げる

    「ああ・・・そうか。おはようございます」
    初めて副隊長と言われ、面食らってしまったモブリットであった

    あわてて敬礼を返すと、副隊長、と呼んだ兵士はモブリットにちゃりんと音をさせて何かを手渡した

    「分隊長室の鍵です。出てこない場合勝手に開けて入っていいそうです。好きに使ってくれとの事です。では失礼いたします」
    兵士は少々気の毒そうな表情をモブリットに見せて、立ち去った

    残されたモブリットの手に握らされた鍵
    モブリットは恐る恐る手のひらを開けて、小さな鍵に視線を落とす

    「分隊長の部屋の鍵・・・?俺に一体何をさせるつもりなんだ、団長は」

    モブリットはまた、ため息をついた

  18. 29 : : 2014/07/01(火) 11:38:43
    足取りが軽くなるはずもなかったが、今日の分隊長の予定を見るとそろそろ部屋に赴いて、朝の支度をしてもらわなければならない

    モブリットはいましがた有り難く頂戴した小さな鍵を手に、分隊長室へと向かった

    「おはようございます、モブリットさん」
    廊下ですれ違う兵士に、表面はにこやかにあいさつを返すモブリット

    まだ、モブリットが副隊長になった事を知らない兵士もいるらしい
    辞令自体は今朝張り出されているはずだった

    そうなれば、もう後戻りはできない
    意を決して、前に進むしか道はない

    はぁ、と本日何度目かのため息をついた時、モブリットの足がぴたりと止まる

    分隊長室・・・ハンジの部屋の、前だった

    「・・・」
    一瞬躊躇した後、モブリットはコンコンと扉をノックした

    中から返事は無い

    もう一度、今度は少し強めにノックをする
    コンコン
    「分隊長、おはようございます」

    すると、部屋の奥から小さな声が聞こえてきた

    「入って」

    モブリットはその言葉通り、部屋の扉をあけて入室した
  19. 30 : : 2014/07/01(火) 11:39:05
    部屋は、自分が入っている部屋より幾分広かった

    大きな本棚には何も本が入っていない状態だった

    大きな執務机、ソファにテーブル、ベッド
    生活に必要なすべての家具が揃っていた

    そして床には・・・沢山の本に書類の束に、服・・・が散らばっていた

    「・・・・・・」
    モブリットはそれを見て顔をゆがませる

    几帳面な性格が、床の上に物が散らばっている事態を容認できなかったのだ

    だがここは自分の部屋じゃない、さしあたって大事なのは、分隊長をきちんと任務に送り出す事だ
    モブリットはため息をついた


    朝日が昇っているのに、カーテンも開けないままの薄暗い部屋

    その窓際に置かれた簡素な椅子に、ハンジは座っていた

    モブリットの様子をじっと伺う様に、視線を彼に固定して

    「・・・昨日、引っ越したばかりだから、暴れてる」
    ハンジは不服そうに、ぼそっと呟いた

    きっとモブリットが顔をゆがませた上に、ため息をついたのを見ていたのだろう

    モブリットはびくっと背中を震わせた

    「・・・はい、分隊長」
    しどろもどろに返事をした

    自分も昨日引っ越したばかりだが、部屋の整理はできている…なんてことは口が裂けても言えそうになかった
  20. 31 : : 2014/07/01(火) 11:47:47
    「エルヴィンに私の補佐をするように命令されたんだってね、君も、大変だね」
    ハンジはまるで他人事の様にそう言った

    「はい、分隊長、本日付けであなたの補佐の任を受けました、モブリット・バーナーです。よろしくお願いいたします」
    モブリットは至って事務的に挨拶をし、頭を下げた

    「・・・よろしくね。いつまで続くかわからないけど」
    ハンジはそう言って、不敵な笑みを浮かべた

    その言葉に、モブリットは慄然とする

    いつまで続くかわからない?

    分隊長か、自分、どちらかが死ぬまで続くはずなのだ
    団長の命令は絶対だ
    たとえどんなに不服があろうとも、途中で意見を変える様な人ではない

    だからこそ、ハンジのその発言は、死を、命を軽視している様に聞こえた

    それを平気で言える分隊長、そしてこの表情

    モブリットは頭を振った
    だが、言いたい事があろうとも、今は口を出す気分にすらなれない

    モブリットはことさら大きなため息をついた

    もはや、この上官にどう思われてもいいと、そう思ってしまったのであった

  21. 32 : : 2014/07/01(火) 11:59:23
    その頃団長室では・・・

    「ついに、お前も動いたか、エルヴィン」
    長身の男がその大きな身体を窮屈そうにソファに沈めてそう言った

    「ああ、ミケ。そろそろハンジにも仕事をしてもらわなければならんしな。さて、どうなるか、賭けるか?ミケよ」
    エルヴィンはミケの向かい側のソファに腰を下ろし、不敵な笑みを彼に向けた

    「賭けか・・・お前は相変わらず博打が好きだな。モブリットを宛がったのも、どうせ博打なんだろう」

    「・・・ああ、そうさ。俺にはこれしか能がないといつも言っているだろう」
    エルヴィンは自嘲気味につぶやいた

    「その博打に知らずに付き合わされているモブリットが気の毒だと思わんか」

    「・・・ただの博打じゃない。彼を外したらもう他に打つ手はないと、俺は思っている。モブリットには気の毒かもしれないが、これしかもう、俺には思いつかない」
    エルヴィンは真摯な眼差しをミケに向けた

    「駒を駒として使えるようにするために、宛がう駒・・・か」
    ミケは顎に手をやって、考える様なそぶりを見せた

    「優秀な駒は、一つとして無駄にはしたくない。お前ならわかってくれるだろう?ミケ。で、どっちに賭ける?」

    「・・・モブリットが勝つ、方に賭けたい気持ちだがな。現実問題として難しそうだ。ハンジの病は本当に、厄介だ」
    ミケはスン、と鼻を鳴らした

    「じゃあ、俺は・・・」

    モブリットが早速諦めかけているそんな時に、調査兵団の二大幹部と言われる二人は、こんな会話をしていたのであった
  22. 33 : : 2014/07/01(火) 14:53:48
    団長室でのやり取りなど勿論知らないモブリットは、相変わらず寝間着のまま椅子に座っている上官に、目をやった

    髪はボサボサ、顔は見るからにやつれており、目の下にはくっきりくまが見てとれる

    自分と2、3才しか年齢が違わないはずだが、凄く老けて見えた

    「分隊長、今日は着替えはなさらないんですか?」
    モブリットは一応聞いてみた

    「…着替えるよ。ただ困ったことに、兵服が何処にあるのかわからない」

    ハンジは山積みになった荷物を指差しながらそう言った

    言葉とは裏腹に、特段困った様子でも口調でもなかった

    感情が欠落…しているのだろうか

    モブリットは首を傾げつつも、動こうとしない上官の代わりに、荷物の山の整理に取りかかった

    この中のどこかに、兵服が紛れていると踏んだからだ

    手際よく荷物を片付けていくモブリットを見ながら、何の感情もその顔に出すことなく、ハンジはただ椅子に座っていた


  23. 34 : : 2014/07/01(火) 15:08:10
    ものの 10分で、山積みになっていた荷物や散乱した本を部屋のあちこちに片付けたモブリット

    やっと人心地がつく部屋になった

    兵服も、シワだらけではあるものの見つかったので、ハンガーにかけた

    モブリットは満足げに頷いた…ところで、上官の存在を思い出す

    「はっ、分隊長…」

    振り返ると、ハンジは椅子に座ったままだった

    ただし、先程まで開いていた目は、しっかりと閉じられていた

    「…この状況で、寝た…のか?」

    椅子に歩み寄りそっと顔を覗くと、すうすうと定期的に、寝息が聞こえてきた

    「分隊長」
    つんつん、と上官の肩をつつく

    「…ん…」
    ハンジはその刺激に身じろぎした
    その拍子に椅子からずり落ちる…だが、起きない

    「もしかして、寝不足なのかな?そうとう酷い、顔だしな」

    ハンジが起きていれば死んでも口にしないような言葉を発して、モブリットはため息をついた

    「初日から、遅刻か…よいしょ…」

    モブリットはぼそっと呟いて、上官の体をベッドに運んで寝かせてやった
  24. 35 : : 2014/07/01(火) 15:57:50
    「団長、申し訳ありません」
    団長室に入るや否や、頭を下げたモブリット

    「ん?どうしたモブリット」

    朝から珍しく訪問してきたかと思えば、いきなり頭を下げる部下に、エルヴィンは怪訝そうに言葉をかけた

    「分隊長は、遅刻します。任務については自分が代わりに遂行致しますので」

    申し訳なさそうに言うモブリットに、興味深げな目を向ける

    「遅刻か。体調でも悪いのか?」

    「いえ、ただの寝不足です。精神的な面は、自分が判断できる範囲ではありませんが」

    モブリットは生真面目を絵にかいたような応答をした

    エルヴィンは、しばらくモブリットの表情を伺っていたが、やがてにっこりと微笑んだ

    「ハンジの事は君に任せてある。わざわざ遅刻くらいで謝りにくる必要もない。好きにしてくれればいいぞ、モブリット」

    モブリットはその言葉に、目を見開いた

    「…はい、了解致しました」

    言いたいことは山ほどあったが、上官に言えるはずもなく、モブリットは頭を下げて、退室した
  25. 36 : : 2014/07/01(火) 16:17:10
    モブリットは団長室を出た後、すっかり忘れていた朝食のために、食堂に行った

    すでに人はまばらで、皆今日の任務へと動き出しているのだろう

    食事のトレイを片手に、隅の方に座ろうと移動していた時、横合いから声がした

    「よう、モブリット…副隊長」

    その声には、聞き覚えがある
    振り返ると、自分が想像した通りの人物がいた

    「リヴァイ兵長…おはようございます」
    モブリットは頭を下げた

    リヴァイは隣の空いたスペースを指差す

    モブリットにそれを拒絶する意思はない
    大人しくリヴァイの横に腰を下ろした

    「…大変だな。副隊長」
    リヴァイはちらりとモブリットの顔を見て、言葉を発した

    「…はい」
    モブリットは頷いた

    リヴァイとハンジの間に何らかの関係がある事は、モブリットならずとも、調査兵団の誰もが知っている事だった

    だからこそ、モブリットは自分が補佐として側に付きっきりになったり、あろうことか部屋の合鍵を持っていたりする事に対して、なんだか申し訳なく、リヴァイに向ける顔がなかった

    自分の意思では無いのだが

    だが、そんなモブリットの気持ちを知ってか知らずか、リヴァイは真摯な眼差しを向けて、静かに口を開く
    「ハンジをよろしく頼む」

    「…はい?」
    モブリットは思わず聞き返した

    団長だけでなく、兵長まで、あのハンジさんを自分に押し付けるのか

    そういう関係なら、精神面でも生活面でも支えてやればいいのにと、そう思わずにはいられなかった
  26. 37 : : 2014/07/01(火) 16:30:21
    「お前の言いたいことは、何となく分かる」

    言うことすら、団長と同じだ

    好きにしてくれだの、よろしく頼むだの、そんな事をいきなり言われて、はい喜んでなどと言えるはずがない

    他力本願すぎやしないか、しかもなんで自分なんだ

    「分かっていただけて光栄です」
    モブリットは、思ってもいないことを、ため息混じりに呟いた

    「俺には、出来ない。奴を元に戻すのはな」

    リヴァイは小さな声でそう言った

    「兵長に出来ないならば、自分に出来るはずがない…ですが、命令ですので、従うだけです」

    モブリットは結局、パンを一口かじっただけで、その場を後にした

    あのまま話していると、とんでもない事を、リヴァイに言ってしまいそうだからであった

    だがモブリットは、ハンジの分の朝食を持って出る事だけは忘れなかった

  27. 38 : : 2014/07/01(火) 16:58:13
    よろしく頼む、俺には出来ない、そんな事を言われて、ますます自分の首が締まっていると感じたモブリット

    自分こそ病気になりそうな気がしてきていた

    命令には従う…それは当然だ
    与えられた任務にも誠意を持って取り組む…勿論そうするつもりだ

    だが、今回請け負った…いや、請け負わざるを得なかったこの任務は、自分には到底こなすことが出来ない部類の物としか考えられなかった

    誠意があろうとも、努力しようとも

    それが実るとは思えなかった

    要するに、自分は厄介事を押し付けられたのだ

    昇進…等とは名ばかり
    体のいい、左遷じゃないか

    モブリットは、分隊長室の前で、盛大にため息をついた

  28. 39 : : 2014/07/01(火) 17:29:09
    「分隊長、失礼します」
    ノックをしたが返事が無いため、モブリットは部屋に入った

    相変わらずカーテンは閉まったまま
    薄暗い部屋は先程のままで、ベッドにはハンジが横たわっていた

    ソファ前のテーブルに食事のトレイを置いて、カーテンと窓を開ける

    ザアッ…と風が、新鮮な空気を伴って、部屋に吹き込んできた

    部屋を出た時とほぼ同じ格好で寝ているハンジにちらりと目をやった後、モブリットはまた、部屋を後にした

    念のため、鍵をかけて

    寝ているハンジを起こす、という行動に、何故でなかったのか、自分でも不思議だったが、あの酷すぎる顔が気の毒で見ていられないからだ、と結論付ける事にした

    今日は差し当たって、急を要する任務も無い

    大きく延びをして、分隊長の代わりに任務をこなすべく、足を踏み出した

  29. 41 : : 2014/07/01(火) 17:48:35
    「…ははは」
    エルヴィンは夕暮れ時の団長室で笑っていた

    一人で笑っていた訳ではない
    目の前には二人の仲間がいた

    ミケとリヴァイだ

    身長はでこぼこの二人だが、どちらも優秀で、エルヴィンの宝の様な存在であった

    「笑い事か?ハンジは今日一日仕事をしなかったらしいぞ。前代未聞だ」
    リヴァイは眉をひそめた

    「分隊長昇進一日目にして、サボりとは…さすがと言った所だな」
    ミケはスン、と鼻を鳴らした

    「いやいや、なかなか面白いじゃないか。ははは」
    エルヴィンは楽しげに笑っていた

    どうやらつぼにはまった様だった

    確かにモブリットには、好きにしてくれればいいと言った

    まさか、一日仕事をさせなかったとは…予想外だった

    予想外の出来事は、エルヴィンにとっては大好物だ

    知的好奇心をそそる

    モブリットという男は何かやらかしてくれるかもしれない

    エルヴィンは楽しげな笑みを浮かべながら、二人の仲間に頷いてみせた



  30. 43 : : 2014/07/01(火) 19:11:59
    「こんな時間まで、私はずっと寝ていたわけか…」
    ハンジはベッドの上で体を起こし、呻くような声で言った

    モブリットは上官の事など意に介していない様子で、処理途中の書類に目を通していた

    そう、初めは可哀想だからと思って寝かせていた

    だが、上官たちの無責任な態度に少々腹が立った彼は、言われた通り『好きにした』のだった

    要するに、面倒くさいから起こさなかったのだ

    自分でやった方が早いと思ったという理由もある

    分隊長が寝間着のままでも、仕事をしなくてももはやどうでも良くなっていた

    仕事さえ滞りなければ文句は言われないだろう

    何故自分が分隊長の性格矯正まで請け負う必要があるのか

    彼は頭の中に沢山のもやもやを抱えながらも、仕事は怠らなかった

    後から難癖をつけられないように、殊更丁寧にこなしてやったのだった
  31. 44 : : 2014/07/01(火) 21:27:02
    「おはようございます、分隊長。よく眠れた様でなによりです」
    モブリットはハンジに視線を移して、言葉を発した

    「…一日、サボってしまったじゃないか」
    ハンジは不服そうに口を尖らせた

    「…たまにはよろしいかと。目の下のくまがかなり濃かった様ですし」

    モブリットは書類に目を通しながら言った

    「人の寝顔を覗いたの?悪趣味だね」

    「…あなたの体調管理も、自分の仕事なんで」
    モブリットは静かにそう言って、またハンジに視線を送った

    朝よりは幾分くまも取れ、やつれた顔もましになった様に見えた

    髪の毛はぼさぼさだが、それさえ何とかすれば、見れるようにはなるだろう

    「…お腹がすいた」
    ハンジはぼそっとそう言った

    「そう言えば、朝も昼も、食べてらっしゃいませんでしたね。もうすぐ夕食ですが、少し早めにとりましょうか」

    モブリットの言葉に、ハンジは頷くが、表情を少し曇らせる
    「ああ。でも今さら着替えるのが面倒だね」

    「…でしたら、こちらにお持ちしますよ。少々お待ち下さい」
    モブリットはそう言うと立ち上がり、部屋を後にした
  32. 45 : : 2014/07/01(火) 22:33:03
    モブリットが食事を持って部屋に戻ると、ハンジは執務机に向かって、書類に目を通していた

    全て、モブリットが処理をした後ではあったが

    「お待たせ致しました」
    モブリットがそう言うと、ハンジは顔を上げた

    「書類…全部やってくれたんだね」

    相変わらずその表情からは、殆ど感情を捉えられなかったが、言葉は感謝の意を表している様に感じた

    「はい、大丈夫…だったでしょうか」

    「ああ、完璧だ。君が…分隊長をすればいいんじゃないかな」
    ハンジは肩をすくめた

    「…分隊長、お食事をどうぞ」
    モブリットは、ハンジの言葉に返事をしない代わりに、執務机の上にトレイを乗せた

    そして、代わりに書類を抱える

    「団長の所へ、持って行って参ります」
    そう言うと、また部屋を後にした

    「…せわしないなあ…」
    その後ろ姿を見送った後、ハンジは肩をすくめた

    だが、すぐに腹の虫が警報を鳴らし出したので、食事に取り掛かった
  33. 48 : : 2014/07/02(水) 20:43:15
    「やあ、ご苦労だったな、モブリット」

    団長室に入るや否や、モブリットににこやかにそう言ったエルヴィン

    すごぶる機嫌が良さそうに見えた

    「エルヴィン団長、書類は全て決裁済みです。よろしくお願いいたします」

    モブリットは事務的にそう述べて、書類の束をエルヴィンに手渡した

    「結局あれから、君が一人で今日の仕事をこなしたらしいな」

    エルヴィンの言葉に、モブリットは素直に頷く

    「はい、分隊長はかなりお疲れのご様子でしたし、私に出来る範囲の仕事かと思いましたので、差し出がましいとは思いましたが…」

    「いや、助かった。たしかにあいつは最近あまり寝ていないらしくてな、君が寝かせてくれたお陰でハンジもリフレッシュできただろう、礼を言うよ」
    エルヴィンは、モブリットにそう言うと、頭を下げた

    モブリットは思わず後ずさる

    団長が人に頭を下げたなど、見たことも聞いたことも無かったからだ

    「…い、いえ、自分は何も…」
    モブリットは唐突に恐ろしくなり、冷や汗をかきはじめた

    「本当に、助かったんだ、モブリット。明日からも大変だろうが、頼まれてくれるか?」

    エルヴィンは緊張しはじめたモブリットとは裏腹に、笑顔でそう問い掛けた

    「も、勿論…私の仕事ですから…。明日は、きちんと仕事をして頂くつもりです」

    モブリットは内心どきどきしながらも、辛うじて震える声で返事をした

    「よろしくたのむ、モブリット」

    エルヴィンの視線は真っ直ぐモブリットをさしていた

    モブリットはまた背中を震わせたが、頷く
    「はい、できる限りの事をします」

    エルヴィンはそんなモブリットに、満足そうな笑みを見せて、頷いたのだった
  34. 53 : : 2014/07/04(金) 14:59:18
    モブリットは考え事をしながら、分隊長室に続く廊下を歩いていた

    エルヴィン団長はやはりとてつもなく大きい存在だ…それを再確認した

    不服があることも、全て見通されていたのだ

    それでいて叱責一つせず、逆に謝辞を言ってくる
    器の違いを感じた

    やはり自分に出来る事は、文句を言わずただ兵士としての責務を果たすのみ

    さしあたって今の責務は、分隊長をなだめすかして、何とか分隊長らしくさせる事だ

    ただ、時おり見せる狂犬の様な血走った目を向けられると、心臓を鷲掴みにされたように身動きが取れなくなる

    それにも慣れていかなければならない

    自分が何故、ハンジ分隊長の補佐に選ばれたのかはわからない

    だが、モブリットとしてはこの仕事を誠心誠意頑張るしかないのだった

    分隊長室の前で、もう一度深いため息をつき、部屋に入室した
  35. 54 : : 2014/07/04(金) 17:23:47
    「ただいま戻りました」
    モブリットはそう言うと、執務机に歩み寄った

    ハンジはまだ食事の途中だった

    寝間着のまま、眠たそうに目を擦りながら、無気力に食事を口に運んでいた

    「…ちっとも旨くない」
    ハンジはそう言うと、ふんと鼻を鳴らした

    旨くないと言う割りには、食事はほぼ綺麗に食べられていた

    「このご時世ですから、仕方がありませんね」
    モブリットは諭すような口調で言った

    「…たまには肉が食べたいよ…ねえ、君だってそう思うだろ?!」

    ハンジは立ち上がると、傍らに立つモブリットに詰め寄り、何故か胸ぐらを掴んだ

    突然の行動に、モブリットは面食らった

    「ぶっ、分隊長…?」

    モブリットを見据えるハンジの瞳は、真っ赤に充血していた

    「…済ました顔して差し障りのない事言って…君に私の補佐なんて出来ない。私は誰にも…側にいてもらいたく、ない!!」

    ハンジはそう言い捨てて、副官の胸ぐらを乱暴に離した

    「分隊長…」
    モブリットははだけた胸元に手をやりながら、ハンジに注意深い目を向けた


  36. 57 : : 2014/07/04(金) 20:59:32
    モブリットには、理解が出来なかった

    先程まで、確かに眠たそうにしていたが、普通に食事をしていたはずだ

    殆ど完食してもいる

    自分が掛けた言葉も、確かに当たり障りの無いものではあったが、それが問題になるとは思えない

    何が気に食わなかったのか、分からなかった

    目を血走らせて怒るのは、何も壁外だけではないと言うことだけは、頭の中に入れた

    ハンジは暫くモブリットを睨み付けていたが、やがてふぅと息を吐いた

    「…お腹いっぱいになったから、寝る」
    ハンジはそう言って、ベッドに飛び込んだ

    すぐに寝ては、良くない
    そうは思ったものの、あんな事があった後だ

    「…おやすみなさい、分隊長」
    モブリットは小さな声でそう言って、食べ終えた食事のトレイを手に、部屋を後にした
  37. 60 : : 2014/07/06(日) 10:38:48
    部屋に戻ると、どっと一日の疲れが襲ってきたのだろうか…モブリットは服もそのまま、ベッドに倒れ込んだ

    慣れない仕事ばかりな上、気性が安定しない上司との手探りのやり取り

    それらは想像以上に彼の体を酷使していた

    「どうしたらいいのか、分からない…」
    枕に顔を埋めて、小さな声で呟いた

    「…だけど、やらなきゃならない。それが団長から与えられた任務なんだから」

    そう言いながらも、何の案も頭に浮かんでこない

    だめだな、これでは行き詰まる

    そう思ったモブリットは、何かの解決策を探るべく、兵舎内にある書庫へと足を運んだ

    そう、ハンジのあの気性の移り具合を『病気』だと判断したのだ

    その心の病に対しての知識など勿論全く無いモブリットは、それを埋める事から始めようと思ったのだった

    普通の人間なら面倒くさがってやらない様な事だが、彼の生真面目な性格が、それを許さなかった
  38. 64 : : 2014/07/07(月) 11:40:02
    書庫は普段あまり使われておらず、埃っぽくどことなく湿気臭かった

    とりあえず医療書がある本棚で本を漁っていると、数冊精神に関する書物があったので、それを手にした

    持ち出して読もうと思ったが、この湿気臭く埃っぽい部屋をなんとかしたくなったため、窓を開けて部屋中の埃を綺麗にし、テーブルを拭いてそこで読む事にした

    こういう事からも、モブリットが根っからの綺麗好きだというのがわかる

    ・・・調査兵団にはもっと綺麗好きがいるのだが

    本をぺらぺらとめくりながら目を通していると、さまざまな対処法が書かれていた
    とはいえ、本当に大事なのはハンジ分隊長がなぜそんな精神状態になったのか、その原因を探る事が先決らしかった

    ハンジ分隊長と長く一緒にいるリヴァイ兵士長やエルヴィン団長、ミケ分隊長なら知っているのだろうか

    今度聞いてみようか・・・そんな事を思いながら、本を読み進める

    読めば読むほど頭を抱えてしまう

    例え優しく全てを赦すように接しても、逆効果になる場合もあるし、かといって厳しくするのも問題

    「臨機応変に、か・・・行き当たりばったりってことだよな」

    モブリットは盛大にため息をついた

    「とりあえず、誠心誠意尽くす事を考えよう・・・」
    モブリットは本を2冊ほど拝借し、部屋に戻る事にしたのだった
  39. 67 : : 2014/07/10(木) 15:14:41
    こちらに感想頂ければ嬉しいです!!
    http://www.ssnote.net/groups/553/archives/1
  40. 68 : : 2014/07/10(木) 16:03:42
    翌朝、身なりを整えて分隊長室に向かったモブリット

    今日は壁上哨戒の任務が与えられていた

    調査兵団とはいえ、いつも壁外へ行っているわけではない

    壁外遠征の合間には、壁内を守る兵士としての役目も果たしていた

    部屋を数回ノックしたが、返事が無かったため、モブリットは扉を開けた

    「分隊長、失礼します」
    部屋はまだカーテンが閉まったままで薄暗く、ほんの少しだけ、窓から日の光が射していた

    ベッドの上に人の影

    歩み寄ってみると、ハンジが眠っていた

    すうすうと寝息を立てるその姿は無防備で、顔はあどけなく見えた

    今日は朝から忙しい

    どうしても起きて着替えてもらわなければならない

    モブリットは、意を決してハンジの身体を抱き起こした

    「分隊長、起きてください。朝ですよ」

    しばらくすると、ハンジはうっすら目を開けた

    「…なんだ、君か…」
    そう言うと、ベッドから滑るように降りて、服を脱ぎ始める

    モブリットはその行動に内心驚いたが、顔にも態度にも出さず、着替えをベッドの上に置いたのだった

    いきなり異性の前で裸になるなど、聞いたことがないが、この人を自分の常識に当てはめては一生理解できないだろう

    モブリットは少しでも彼女を理解すべく、その行動を注意深く見守る事に徹していた
  41. 69 : : 2014/07/10(木) 17:08:36
    朝食後、トロスト区突出壁上へ

    ウォールマリアが事実上突破され、人類規模で行った奪還作戦も失敗に終わった

    今やこの突出壁上の外側は、巨人の領域となっていた

    ハンジは鋭い視線を壁外へ向けていた

    「あの、アホみたいな奪還作戦…体のいい口べらし…あれは最悪だった」
    ハンジはそう言いながら顔を歪ませた

    「…確かに、後味が悪すぎる作戦でした」
    モブリットは静かにそう言った

    「でも、あれをやらなきゃ、人類は全滅…だったんだろ?仕方ないんだろ?」

    ハンジはまた、副官に詰め寄った
    だがその瞳は、昨夜のように血走ってはおらず、何時もの目だった

    「…はい。食糧難が深刻化していて…食いぶちを減らす以外、方法が無かったようで…」

    モブリットは俯きながら呟くように言った

    思い出すだけで吐き気をもよおす作戦だった
    ろくな武器をもたない一般人が、多数犠牲になった

    「私たちは生きてる。一体、何のため?私は部下も沢山殺したよ。何のため?私は何か一つでも人類の役に立てた?役立たずなのに、何故生きているんだろう?」

    ハンジの独り言の様な言葉に、モブリットは、ハンジが何故不安定なのかを探る糸口を見つけた

    だが、今は何も言わず、ただ首を振った

    「死にたいのに、死ねないんだ。私は沢山、背負っている。だから、死ねない」

    ハンジは虚ろな瞳を壁外へ向けた

    「分隊長には、まだ成すべき事があるから、死ねないのではないでしょうか」
    モブリットのその言葉に、ハンジはふんと鼻を鳴らす

    「相変わらず、いい子ちゃんだね、きみの意見は。私の成すべき事ってなんだよ?教えてくれよ」

    ハンジはモブリットの顔に自分の顔を近付けて言った

    「今は、それを模索する段階です。まだ我々は、巨人の事を…なにも理解していないのですから」

    「巨人を理解するだって?アホらしい。あいつらは理解する対象じゃなくて、倒す対象なんだよ!」

    ハンジはまた、副官の胸ぐらを掴む
    だがモブリットは落ち着きはらっていた

    「確かに、倒す対象です…しかし、倒すにしろ、あれが何処から来ているのか、弱点が何故体の大きさに関わらず同じ範囲のうなじなのか…そう言った疑問を解決する糸口が…」

    「…君、本気でそれを言ってるの…?正気なの?」
    ハンジは目を見張った

    「本気です。何でもいい、解決する糸口を掴みたいと思っています」

    モブリットの真摯な眼差しに、ハンジはしばらく考える素振りをみせていたが、やがて頷く

    「確かに、倒すためにはまず、その対象の事を事細かに調べあげる必要があるね…君の言は正しいよ」

    ハンジはそう言うと、今まで見せたことのない顔を副官に見せた

    笑顔だった

    モブリットはその笑顔に、思わず目を奪われたのであった
  42. 70 : : 2014/07/10(木) 22:23:55
    「ほう、今日は朝から任務に出たか」
    エルヴィンは斥候の話を聞きながら頷いた

    「はい、ハンジ分隊長は今日は機嫌が良かったのか、副長とにこやかに話されていました」

    「にこやかに…?あのハンジがか」

    斥候の言葉に、エルヴィンは目を見開いた

    あの手この手を使っても、どうしてもハンジ機嫌をとることが出来なかったのに、あの男ときたら…

    見た目はただの優男だが、やはりなかなかやるようだ…エルヴィンは自分の読みの正しさに不敵な笑みを浮かべた

    「見張りは…どう致しましょう。分隊長には気付かれている様ですが…」

    そう、ハンジが無茶をしでかさない様に、エルヴィンは常に見張りをハンジにつけていたのであった

    その事も、ハンジは気に入らなかった

    「見張りはしばらくはいいだろう。モブリットに任せてみよう。ハンジもその方が機嫌が取りやすいだろうしな」

    エルヴィンの言に、斥候は頷き、部屋を後にした

    ハンジは言う
    自分にはもう構わないで欲しいと

    自分にはもう何も成すことはできないと

    だが、それでは困る

    調査兵団にとって、エルヴィンの野望にとって、ハンジの能力は必要不可欠だ

    泳がせる訳にはいかない

    立ち直ってもらわねば困るのだ

    その最終手段としてつけた副官が、想像以上の効果を今のところ、ハンジに与えている

    モブリットにとっては大変な任務であろう

    だが、彼自身によってハンジが少し、笑顔を取り戻した

    エルヴィンはその事実は、巨人の討伐数以上に重要な事だと認識していた

    「モブリット…頼んだぞ」
    エルヴィンは、そう一人ごちた



  43. 71 : : 2014/07/10(木) 22:37:06
    モブリットはそれからも、日々ハンジに誠心誠意尽くした

    ハンジに対しては言葉は飾らず、思ったままの事を口にした

    嘘や上部だけの会話は、すぐにハンジにばれて、不快感を与えるからだ

    身の回りの世話も、全て彼がバックアップした

    ハンジのやりやすい様に、常に考えながら行動した

    その忠犬ぶりは、調査兵団で話題になるほど徹底されていた

    ハンジは…
    やはりたまに狂犬ぶりを発揮して、モブリット相手に暴れる事はあった

    それでも、暖簾に腕押しのような彼の態度にいつしか、ハンジは暴れる事が少なくなっていった
  44. 72 : : 2014/07/11(金) 15:15:22
    そんなある日の事

    「ねえモブリット」
    分隊長の部屋で、書類の処理をしながらハンジはモブリットを呼んだ

    モブリットはいつも傍らに控えているが、今日は兵服ではなく、私服にジャケットを着用していた

    「はい、何でしょうか、ハンジさん」

    「休日くらい休んでればいいのに」
    ハンジは肩をすくめた

    ハンジの副官になってから、初めての休日だったのだが、モブリットはいつも通りハンジの傍で補佐に就いていた

    「そう言うわけにはいきませんよ」
    モブリットはそう言いながら、処理の終わった書類を纏める作業に勤しんでいた

    「見張らなきゃいけないから?」
    ハンジは鋭い目線をモブリットに向けた

    モブリットは首を振る
    「お言葉ですが…俺はエルヴィン団長に、分隊長を見張れ、等という命令も、休日返上しろという命令も、受けていませんよ」

    モブリットのその言葉に、ハンジは首を傾げる

    「じゃあなぜ、今日ここにいるんだい?」

    「何故って…実は俺もよく分からないんですよ」
    モブリットは困ったように首を傾げた

    「ええ!?自分で分からないとは…君って相当変わってるって言われない?」

    「いいえ、どちらかというと、常識人だと自負していますが」

    「自分では、だろ?君はやっぱり変わってる」
    ハンジは納得した様に頷いた

    「普通ですよ。分隊長一人に仕事をさせて、自分はゆっくり…なんて出来るタイプの性格じゃないだけです」

    モブリットはそう言うと、顔に笑みを浮かべた

    モブリットはこの日以来、休日問わずハンジの世話を焼いた

    モブリットの忠犬振りに、休日などなかった
  45. 73 : : 2014/07/11(金) 15:32:43
    日々のモブリットの献身的な介護…のお陰もあってか、笑顔と落ち着きを取り戻しつつあったハンジ

    だが、明日からはまた壁外遠征が始まる

    壁外で特に暴走するハンジを、モブリットがどこまで止めることが出来るのか

    エルヴィンにとっては、一種の賭けであった

    何とかこの機会に、ハンジに自分自身を取り戻してもらいたい、そう考えていた

  46. 74 : : 2014/07/11(金) 16:59:46
    壁外遠征前日の夜

    明日に備えて、モブリットはハンジを早めに風呂に入れ、着替えさせてベッドに押し込んだ

    「君は…横暴だよ…モブリット…」
    ハンジは恨めしげな目を副官に向けた

    「気に入らなかった事については、謝罪します。ですが、明日のためにもすっきり、気持ちよく休んで頂かねばなりませんので…ご理解下さいませんか」

    モブリットはゆっくり丁寧に、言葉を紡いだ

    「モブリット、何言ってるのか分からないよ!!もっと簡潔に言ってくれない?!」
    ハンジは大きな声をあげた

    モブリットはそんなハンジにちらりと目をやって、口を開く

    「五日も風呂に入っていない状態は不潔です」
    きっぱり言い放った

    「いつもこんなもんだったよ!!誰も文句は言わなかった!!」
    ハンジは身体を起こして抗議した

    だがモブリットは…

    「はい、そうだったかもしれませんが、私は言うだけです。他所は他所、うちはうち、です。今まではそれで良かったかもしれませんが、これからはちゃんと風呂にも入って頂きます」

    モブリットはそう言いながら、ハンジの身体をベッドに押し付けた

    「人権侵害だ!!好きに生きさせてくれよ!!」
    ハンジは身体を押さえられながらも、モブリットの胸ぐらを手で掴んだ

    そんな事には構わず、モブリットは真摯な眼差しをハンジに向け、言葉を発する

    「人権侵害という前に、まずは人間らしい生活を送って下さい、分隊長」

    ハンジはそれを聞いて、拗ねたのか頬を膨らませて、布団に潜り込んだのだった
  47. 75 : : 2014/07/12(土) 20:09:36
    ハンジを寝かしつけて、一日の介護を終えたモブリットは、分隊長室を出て、大きく伸びをした

    「ふぅ、今日も無事に済んだ…問題は明日だな」

    ハンジに対して得てして普通に、冷静に対処している様に見えるモブリットだが、内心いつも緊張していた

    何がきっかけて暴発するかわからない、常にそれを覚悟しながら、ハンジに接していた

    日々共に過ごすうちに、徐々にハンジは落ち着きを取り戻してきた様に思う

    だが問題は、壁外でどうなるか、だ

    明日はより一層気を引き締めなければならない

    巨人に対してどんな変貌を見せるか、それをどうやって止めるか

    様々な案を頭に浮かべては消しながら、とにかく明日を無事に乗りきるしかないと、心に決めたのであった
  48. 76 : : 2014/07/13(日) 16:17:38
    翌朝

    モブリットが分隊長室を訪れると、すでにハンジは全ての支度を整えていた

    「おはようございます、分隊長。今日は支度が早いんですね」
    部屋に入るなりモブリットがそう声を掛けると、ハンジは頷く

    「そりゃそうさ。今日は壁外遠征だろ。巨人を沢山やっつけなきゃいけない日じゃないか。気合が入らないわけがない」
    ハンジは少々顔を紅潮させながら、興奮気味に言葉を発した

    モブリットはそんなハンジの手を取り、ぎゅっと握りしめた

    「分隊長、今日はくれぐれも無茶をなさいませんよう。たくさんやっつけたい気持ちはわかるのですが、お一人で特攻されたり、無駄に巨人を痛めつける様な事は・・・」

    そこまで言ったモブリットの言葉を、ハンジは手で制止する

    「待った、モブリット。私は巨人が嫌いだ。だから痛めつけるのになんで遠慮しなきゃならない?死にやしないんだから、好きにさせてくれよ」

    ハンジのその言葉にモブリットはゆるりと首を振る

    「死にやしないって、誰がですか?あなたですか?」

    「うん、私」
    ハンジは頷いた

    「・・・お言葉ですが、ハンジさん。貴女だってもしかしたら、ほんの少しのミスで、ほんの少しの油断で命を落とす可能性があるんですよ。壁外はそういう所だとご存じなはずです。それなのにいらぬ行動をするのは、自ら命を捨てているのと同じだと思うのですが。もう少し、ご自分の事を労わってください」
    モブリットは諭すような口調で言った

    だが、ハンジは頬をふくらませる

    「モブリット、また話が長い・・・意味わかんないよ!」

    「要するに、無駄な動きをするなという事です。あなたは分隊長なんですから、他の兵士たちの手本にならなければいけないんですよ?」

    「私、分隊長なんてやめたいよ。自由にできないならさ」
    ハンジはふてくされたまま、ため息をついた

    「あなたは分隊長になるべき人です。辞める事は、許されてはいないのです」
    モブリットは静かにそう言ったのだった
  49. 77 : : 2014/07/14(月) 12:05:00
    そうこうしている内に、壁外遠征に出立する時刻となった

    エルヴィン団長を先頭に、両翼をミケ・ザカリアス第一分隊長、ハンジ・ゾエ第二分隊長が勤める

    モブリットはハンジの背後で、じっとその時を待つ

    その時、エルヴィン団長がふいに後ろを振り向いた

    モブリットの方に目をやると、頷き、また視線を前に戻した

    (頼んだぞ…と聴こえた…気がする。言われなくても、やるさ…)

    モブリットは内心そう思いながら、ハンジの背中を注意深く見守るのであった

    門が開き、壁外…巨人の領域へ足を踏み出す調査兵団

    しばらく進んだ後、長距離策敵陣形を展開すべく、隊列を等間隔で広げる

    モブリットはハンジについて、辺りを警戒しながら馬を走らせた

    ハンジは策敵班の間を異常がないか確認していた

    ある程度自由な行動を許されていたのだ

    だがそれも、モブリットによってかなり制限される事にはなるのだが

  50. 78 : : 2014/07/14(月) 12:09:38
    「分隊長、隊列から離れすぎです。もう少し陣形の中にお入り下さい」
    モブリットは先程から何度も、その文言を口にしていた

    だが、ハンジは全く耳を貸そうとしなかった

    「いち早く私が巨人を見つけて倒す方が、兵士を死なせずに済むだろ?」

    「あなたは分隊長です。指揮をとる役目があります。そんな貴女が前衛で暴れるのは道理にかないません」

    モブリットは諭すように言うのだが、ハンジは無視をした

    「聞こえない!!」

    上官のその言葉に、モブリットははぁとため息をつくのだった
  51. 79 : : 2014/07/15(火) 08:39:42
    「ほんっとに君はうるっさいなあ!!」

    「そんな余計な事言わないで下さい。舌噛みますよ!!」

    二人は掛け合い漫才よろしく、押し問答していた

    その時…

    ドーン!!という音と共に、右前方に黒の信煙弾が上がった

    「ハンジさん、奇行種です!!って…こら!!」

    「ひゃっほ~!!巨人ちゃん待ってろよ!!」

    モブリットがハンジに声をかけるや否や、ハンジは一人馬を走らせて、信煙弾が上がった方向へ行ってしまった

    「ああ、行ってしまった…目を血走らせていたな…もう、着いていけそうにない…けど、そう言ってられない…」

    モブリットはぶちぶちと愚痴をこぼしながら、ハンジの後を急いで追うのだった
  52. 80 : : 2014/07/15(火) 17:57:54
    モブリットが駆けつけた時には、すでにハンジは奇行種の身体に取り付いていた

    辺りには倒れた兵士達の姿…
    事切れている者が殆どだった

    「…ハンジさん」
    モブリットの視線には、完全に我を失っているハンジの姿が捉えられていた

    目を血走らせて、無茶な立体機動で奇行種の身体を削いでいた

    モブリットは黒の煙弾をもう一度打ち上げ、それから意を決して奇行種に向かって、アンカーを射出した

    「分隊長!!落ち着いて下さい!!」

    モブリットは奇行種の背中に取り付くと、ハンジに向かって叫んだ

    「こんの…でかぶつがぁっ!!」

    そう叫びながら、スナップブレードを舞うように閃かせるハンジ

    それ自体は無駄な動きはなく、理想的な機動を描いていたのだが、それはうなじを削ぐものではなく、手足、耳などを切り刻むための物だった

    ハンジは目をぎらぎらと輝かせ、口角を上げ、怪しげな笑みを浮かべていた

    「ハンジさん、囮は自分がやりますから、うなじを狙って下さい!!」

    モブリットはそう言うと、ハンジの動きを止めるべく、立体機動で身体を跳ばす

    「モブリット!?君はうるさい上に、狩りの邪魔までするのかい!?」

    ハンジはモブリットを睨み付けた

    モブリットは奇行種が伸ばした腕を、寸前で躱して叫ぶ

    「っ…!狩りをするなら、うなじを狙って下さい!!他の部分をイタズラに削る必要はありません!!」

    「ほらっどんくさい!!モブリット、死ぬよ!!離れてくれよ!!邪魔だ!!」

    「あんたが離れるなら俺も離れますよ!!」
    モブリットは、ハンジの言葉に強い口調で返事をした

    「ったく!!ちっとも言うことを聞かない副官だよっ!!」
    ハンジは舌打ちをしながら、身体を宙に舞い上がらせた

    そして落下しながらブレードを構え、力一杯うなじに斬撃を叩き込んだ

    うなじを削がれた奇行種の巨人は、地に伏した

    ハンジはひらりと地面に舞い降りた

    「ほら、簡単だろ。君の力なんか必要ない」

    肩で息をするモブリットに、不敵な笑みを見せるハンジ

    だが、その時だった

    「…危ない!!」

    モブリットが突然叫び、ハンジの身体を引き寄せて、後ろに引き倒した

    倒したと思っていた奇行種が、まだ生きていたのであった

    うなじを削ぎきれていなかったのだ

    ハンジが慌てて体勢を整えた時、奇行種の腕に思いきり身体を撥ね飛ばされた、モブリットの姿が視界に捉えられた

    ドサッ…地面に響く鈍い音

    ハンジはその音の方向に視線を這わすが、モブリットはピクリとも動かなかった

    「…嘘だ…嘘だ!!」
    ハンジは首を何度も振った

    だが、倒れて動かないモブリットと、目の前で、まだ動こうとする奇行種は、ハンジの視界から消える事はなかった

    ハンジは冷たい焔を宿したような瞳を、奇行種に向けた

    「お前はまた…また、殺した!!」

    スナップブレードを構え、つかつかと奇行種に歩み寄るハンジ

    強く噛んだ唇からは、血が流れ出した

    「ただで死ねるとは、思うなよ!!」

    ハンジは叫び、グリップを握りしめた、その時…

    「分隊長…!」
    ハンジの耳を撫でる、うるさい副官の声

    ハンジが声のした方向を省みると、モブリットが倒れてはいたが、目を開けていた

    「君…」

    「無茶はなさいませんように。手早く狩りをして下さい、分隊長」

    顔を歪ませながらも、自分に対して真摯な眼差しを送り、諭すモブリットに、ハンジは頷いた

    「任せて」
    その顔には、強い意思を感じる瞳が光輝いていた

  53. 81 : : 2014/07/15(火) 22:27:06
    ハンジは今度こそ、奇行種の巨人を討伐した

    華麗とも言えるその立体機動と身のこなし、そしてブレードの扱い

    モブリットは素直に、その姿が絵になると思った

    身体を動かそうとすると、激痛が走る

    地面に叩きつけられる瞬間に受け身はとったが、それでも無事では済まなかった様だ

    「…君、大丈夫…?」
    ハンジが歩み寄ってきた

    モブリットは頷く
    「はい、生きています。大丈夫です」

    「動けるかい?馬に、乗れる?」
    心配そうなその表情に、モブリットは心の何処かをくすぐられた様な気がした

    「しばらくすれば、動けます。ハンジさんは隊列にお戻り下さい」

    モブリットのその言葉に、ハンジは首を振る

    「…君は嘘をついてる。そうだろ?君は私の副官になってから一度も、嘘をつかなかった。何故か、それは、私にばれてしまうからだ。今は嘘をついてる。君は動けない。私には、わかる」

    ハンジは真摯な眼差しをモブリットに向けてそう言った

    モブリットはふぅと肩で息をした

    「…ハンジさん、話が、長いですよ」

    「君をさ、このままここに置いていけって言ってるの?」
    ハンジはモブリットの顔を覗きこんだ

    「まだ遠征は始まったばかりです。俺はいきなりあなたの足手まといにはなりたくはありません」

    モブリットのその言葉に、ハンジは、彼の身体を無理矢理抱き上げた

    「さあ、私が馬に乗せてあげるよ。それとも、私と一緒に馬に乗るのは、不満かい?」

    「ちょ、ちょっと、ハンジさん?!」
    モブリットはいきなりのハンジの行動に面食らった

    ハンジはペロリと舌を出す
    「副官殿は私の言うことを聞かないからね、あー重たい。私だってこんな抱かれ方した事ないのにさ~」

    「た、頼んでません!!」
    モブリットは気恥ずかしさで顔を真っ赤にした

    「休んでていいよ、モブリット」

    ハンジはモブリットを馬に乗せて、隊列に戻るのだった
  54. 82 : : 2014/07/16(水) 10:38:48
    目的地点までそのまま突き進んだ調査兵団

    拠点設営をしながら、辺りの様子を伺う事は怠らない

    いつ巨人が襲ってきてもいいように

    緑に囲まれた美しい丘だが、巨人がいた形跡はある…ここは壁外なのだから当たり前なのだが

    ずっと昔にはここは人々の憩いの場だったのだろうか…

    そんな事を考えながら、モブリットは身体を休めていた

    痛み自体はかなりましにはなってきた
    とはいえ、立体機動に耐えるかと言われれば首を振る

    馬に乗る事は可能だろう…最低限自分の身は守れそうだ

    先程の様に、分隊長に抱き抱えられるのだけは避けたい…モブリットはそう考えながら、心なしか顔を赤くしていた

    恥ずかしいとしか表現しようがなかった

    守るべき人に助けられて…

    はぁとため息をついた、その時

    ポンと肩を叩かれて振り向くと、むにっと頬に違和感をおぼえた

    ハンジが、人差し指で自分の頬を突き刺していたのだった

    「ひっかかった」
    ハンジはにやりと笑っていた

    「…分隊長」
    モブリットは憮然とした表情を、上官に見せた
  55. 83 : : 2014/07/16(水) 10:57:53
    「やあ、お姫様」

    「…誰が姫ですか。まず性別を間違えないで下さいよ」
    悪戯っぽい笑みを浮かべるハンジに、モブリットは不機嫌さを隠しもせずに言葉を発した

    「抱っこされて、馬に乗せてもらうなんて、お姫様で、ヒロインの役割じゃない?」

    「…そこは否定しません。お手数お掛けしました」
    モブリットは憮然としながらも、頭を下げた

    ハンジに手間をかけさせたのは事実だからだ

    ハンジは首を振る
    「いや、元はと言えば、モブリットが私を庇ってくれたわけだし…だから謝る必要は無いよ、うん」

    ハンジはそう言うと、座っているモブリットの後ろから、腕を回して抱きついた

    「ハ、ハンジさん?!」

    「あのね…、ごめんね。そして、ありがとう」
    ハンジはモブリットの背中に顔を埋めて、小さな声で言った

    「いえ、俺は何も…」
    背中に感じる温かいハンジの吐息に、モブリットはますます顔を赤くした

    「生きていてくれて、ありがとう…」

    ハンジのその言葉を聞いて、モブリットは唐突に理解した

    ハンジが何故巨人に対して残虐になるのか、我を忘れるのか

    目の前で何人も、先程のように巨人に大切な仲間を、友人を、もしかしたら恋人も…奪われたかもしれない

    そんな状況が続いた結果、心が耐えきれなくなったのだ

    「ハンジさん、俺はこれからも、精一杯生きる努力をします」

    ハンジは頷く
    「うん、私もそうするよ」

    穏やかな口調でそう言うと、ハンジは腕に少し力を込めて、副官の身体を抱き締めたのだった
  56. 84 : : 2014/07/16(水) 11:24:46
    「…なるほどな。確かに君の言う通りかもしれん」

    壁外遠征を終え帰還した夜、モブリットはエルヴィンの部屋で、ハンジの様子について報告していた

    「今回は、一度暴走しただけで事なきを得ました。毎回そう上手く止められるかは分かりませんが…今後も注意深く見守っていこうと思っています」

    モブリットは淡々と言葉を発した

    エルヴィンは満足そうに頷く
    「君がついてから、ハンジは本当に変わった…いや、元に戻りつつあるて言うのかな。正直、君がここまでやってくれるとは思っていなかった」

    「ご命令に従うだけです」

    「…風呂にも無理矢理入れたそうだな」

    エルヴィンの言葉に、モブリットはつい、と視線をそらす

    「分隊長は俺を男と認識していませんから、自分もそれに応えただけです」

    エルヴィンは不敵な笑みを浮かべる
    「役得かな?」

    「…まあ、そうとも言います」
    モブリットは明後日の方向を向いて、言葉を発した

    「リヴァイがなんと言うかな?」

    エルヴィンのその言葉に、モブリットはふんと鼻を鳴らす

    「兵長に、分隊長を頼む、と押し付けられたんですよ。何か言われる筋合いはありません」

    エルヴィンはそのモブリットの言葉に、たまらず笑い出す

    「ははは、その通りだな。好きなようにしろと言ったのも俺だ。君は言われた通り行動しているだけだしな。ああ、忠実で仕事が出来る男だよ、君は…ははは」

    「笑い事ではありません。どれだけ大変だったか…」

    モブリットは顔を歪ませた

    エルヴィンは立ち上がり、彼の肩をポンと叩く

    「これからも、よろしく頼むぞ、モブリット」

    「…仰せのままに。エルヴィン団長」
    モブリットはエルヴィンに向かって、見事な敬礼を施した

  57. 85 : : 2014/07/16(水) 11:40:29
    分隊長室に戻るや否や、ハンジが飛び付いてきた

    「モブリット、何処行ってたの?!」

    まるで主人の帰りを待っていた飼い犬よろしく、モブリットの回りをぐるくる回る、ハンジ

    「団長に呼ばれていましてね。風呂、入ってきましたか?」

    「…いいや、まだだよ。だって昨日入ったよね?だから今日は入る日じゃないよ」
    ハンジは口をすぼめて小さな声で言った

    「今日は壁外遠征で沢山汗をかきました。汗臭いです。べたべたして気持ち悪いです。風呂行って下さい」
    モブリットは指で扉を指しながら、ピシャリと言い放った

    「や、やだよ面倒くさい」

    ハンジは首を振って後ずさった

    「…また無理矢理入れなければならないのでしょうか…」
    モブリットはじりじりと上官との距離を縮める

    「えっ…?!いや…」
    ハンジは顔を真っ赤にした

    それを見たモブリットは、ため息をつく

    「…赤くなられては…俺が風呂にお入れする事が出来ないじゃないですか…」

    「えっ!?どう言う意味!?」
    ハンジは目を白黒させた

    「要するに、俺を男だと認識されているなら、女性である貴女を風呂に無理矢理入れる行動は一般的におかしいという話でですね…」

    「あーっもう、モブリットは話が長い!!風呂には一緒に入る!!」

    ハンジは何を何処で間違ったのか、モブリットの手を引いた

    「な、な、何を仰ってるんですか!?セクハラです!!」

    「風呂に私を無理矢理入れる君に、言われたくないね!!やられたらやり返すのが、ハンジさんの持論さ!!」

    ハンジはそのまま、モブリットを風呂に連行したのであった


  58. 86 : : 2014/07/16(水) 11:45:29
    エルヴィンの予想通り、いやそれ以上の効果を見せた今回の人事

    調査兵団にとって貴重な駒であるハンジ・ゾエが完全復活をとげ、ますます活躍していくのは後日の話…

    その影には、彼女に対して献身的な態度で接してきた、副官モブリット・バーナーの功績があったことを、忘れてはならない

    彼はその後も、ハンジにずっと寄り添い、その行動の手助けをしていくのであった

    ―完―

  59. 87 : : 2014/07/16(水) 11:57:18
    師匠の書くストーリは本当に格好いいです!
    昔はハチャメチャだったハンジさんをモブリットのおかげで!!本当に素敵です!むしろ原作でもそんなお話があるのではないか!!と思って読んでました!!
    最後もハンジさんらしくて面白かったです!
    素敵なお話をありがとうございます!!
    次も期待してます!!!
  60. 88 : : 2014/07/16(水) 12:06:04
    >EreAni師匠☆
    師匠ありがとうございます!!
    いつも誉めてくれてありがとう(///∇///)
    モブリットが実は頑張ってるという、モブリットファンならではの話w素敵と言って頂けて嬉しいです♪
    最後はやはり、私はどうしてもやらかしてしまいますねww
    また頑張りますっ(^-^ゞ
  61. 89 : : 2014/07/17(木) 10:14:57
    すごい!今とばあああっちり繋がってる!
    やっぱりモブハンの神様です(*≧∀≦*)/

    これからも執筆頑張ってください!
  62. 90 : : 2014/07/17(木) 11:48:49
    >ハンジもどきさん☆
    読んで頂きありがとうございます♪
    今と繋がっていますか!!
    少しでも原作と近付けたらいいなあと思って書いていました♪
    またモブハン書きますので、遊びに来て下さい♪
  63. 91 : : 2014/07/17(木) 18:12:34
    こんばんは♪はぁはぁと興奮しながら読ませて頂きました!
    最初から最後まで、ハンジさんの成長日記かのように読んでしまった私はハンジバカですww
    私の知るモブリットが苦労性で可哀想なキャラと固まってしまっていたのですが、ハニーのモブハンのお陰で、たくさんのモブリット(イケメン)を発見できています!
    そしてそして!エルヴィンの旦那の策略家っぷりというか、裏でモブリットに期待している彼がかっこよすぎて惚れる!
    ハニーのエルヴィンさんが私的にはツボなので、美味しかったです!お疲れ様でした!
  64. 92 : : 2014/07/17(木) 22:29:30
    >だぁりん卿さん☆
    読んで頂きありがとうございます♪
    そう、ハンジさんがいかにまともに戻るか、を書いた、モブリットの育児日記なのですw
    私の中のモブリットはイケメンできる男たまに情けないやつです
    エルヴィンは全てお見通しなキャラがいいですよね♪すきですエルヴィン♪
    コメントありがとうございました♪

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fransowa

88&EreAni☆

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