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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

ハンジ「華より男子」―進撃version―

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  1. 1 : : 2014/04/02(水) 14:25:33
    「華より男子」―進撃version―

    人気コミックの進撃のキャラversionです

    主な登場人物

    主人公―ハンジ(金持ち学園に無理して入った貧乏少女)

    道明寺―リヴァイ(乱暴者のリーダー)
    西門―エルド(イケメンナンパ男)
    美作―エルヴィン(マダムキラー。まとめ役)
    花沢類―ナナバ♂(大人しい引っ込み思案で人見知り美少年)

    現パロ、全員高校生
    華の四人組と言われるイケメン(超金持ち)と、持ち前の雑草魂で生き抜く少女の物語

    花より男子の原作を知らなくても分かるように書いていきます

    キャラに名字がない人には適当につけます
    キャラ崩壊や、捏造あり

    それでもいいよ♪な方よろしくお願いいたします♪

  2. 2 : : 2014/04/04(金) 08:46:59
    私はハンジ・ゾエ

    今年高校一年生になった
    普通のサラリーマン家庭の、普通の女子高生

    入った学校がちょっとばかり変わっていたせいで、まさかこんな事になるなんて…

    後悔先に立たず

    それを身をもって知ることになる
  3. 3 : : 2014/04/04(金) 08:58:02
    高級ブランドのセーラー服に身を包み、朝日輝く中をとぼとぼとあるく娘

    背がすらりと高く、髪は無造作にハーフアップに結い上げられている
    トレードマークの眼鏡の下には、愛嬌のある大きな目が、虚ろな光を宿していた

    「はぁ…」
    ため息をつく娘

    「(今日も、あの魑魅魍魎がたむろする学校に行かないとだめなのか…気が滅入るなあ…)」

    娘は生気がまるで失せたような面持ちで、歩みを無理矢理進めていた

    「(だいたい私にはこんなクソ高い服似合わないんだよ…似合ってたまるか…)」

    自分の身を包む、可憐な中にもスタイリッシュさがある、皆が憧れる制服にチラリと目をやり、げんなりした

    「(こんなの着てるだけで、勝手に上流階級と想われるんだ…うちはただのサラリーマンだっての…)」

    娘…ハンジ・ゾエは盛大に顔を歪ませた

  4. 4 : : 2014/04/04(金) 09:11:35
    ハンジはとぼとぼと歩きながら、くぐりたくもない校門…セントトロスト学園の門をくぐった

    セントトロスト学園は、上流階級が通う名門学園

    校門前の、まるで中世の城の庭のようなエントランスには、ベンツは当たり前、ロールスロイスや、リムジンが何台も停まっては、上流階級の子女達がしゃなりしゃなりと降り立っていた

    「(あの車一台でさ…マンション買えるだろ…勿体ない…)」

    ハンジは心の中でそう思ったが、顔には出さなかった

    笑顔を張り付けて教室に向かう

    「あら、ハンジ、ごきげんよう」
    ふわりとした感じの娘が声を掛けてきた

    「ミーナ、おはよう」
    ハンジは張り付けた笑顔のまま御辞儀をした

    ミーナはにっこり笑った
    …上流階級の微笑み
    何の苦労もしたことがない、くったくの無い笑み

    ハンジは、十の昔に忘れていた笑顔をミーナの中に見て、少し羨ましく、少し感傷的になった

    「(私もここにくる前は、こんな風に笑えていたよね…)」

    またハンジの口から、ため息がもれた

    「(今日も一日、なにも起こらず、滞りなく過ぎますように…)」
    ハンジは心の底からそう祈った

    この学園にきてから、この切なる祈りは毎日の日課であった
  5. 24 : : 2014/04/05(土) 15:33:16
    「ほんと、ここの学園の方々って、凄い桁違いな方ばかりだよね、ハンジ」

    ミーナがうっとりした表情で呟いた
    ハンジはちらりとミーナを見て、口を開く

    「私からみたら、ミーナも立派な上流階級だけどなあ…」

    「うちなんて、小さな下請け会社経営なだけだもん…大したことないよ」

    「…うちは普通の会社員だよ…?」

    教室に向かいながら、お互い小さな声で話した

    「あの方が持っているのは、ヴィトンの新作…あの方のはプラダだわ…」

    羨ましげに、生徒が持つブランドバッグを見るミーナ

    「(あの鞄一個で二月は食費浮くよね…勿体な…)」

    ハンジは心の中でそう呟き、口に出してはこう言った

    「ほんと、羨ましいね。私が持っても似合わなさそうだけど…」

    「そんなことないよ~ハンジったら」

    そんな話をしていると、教室にたどり着いた

    ドアをガラッと開けると、クラスメイトが部屋の角に集まって、何かを遠巻きに見ていた

  6. 25 : : 2014/04/05(土) 15:44:25
    「あっ…ダズ君だ…」

    ミーナがハンジに耳打ちした

    部屋の真ん中の席で、段ボールに荷物を詰める男子生徒がいた

    名前をダズ

    彼は、生気の抜けた表情で、段ボールと向き合っていた

    「集団いじめか…」
    ハンジは小さく呟いた

    クラスの人気者だったダズだったが、ある日をきっかけに、集団いじめにあうようになった

    その原因が、学園を牛耳るイケメン金持ち四人組、F4…に逆らったからであった

    彼らに逆らえば、下駄箱に赤い紙が貼られ、それを合図に全校生徒がいじめに走るという

    …F4にしてみれば、ただゲームを全校生徒に提供して遊んでいるだけであった

    ただ、ターゲットになった生徒はみな耐えきれず、転校していった

    「…あっ…」

    ダズの手から、本が落ちた

    ハンジは拾おうと駆け寄ろうとし、ミーナに止められる

    「ハンジ、手伝ったらダメよ…目をつけられちゃう…」

    「(…胸くそ悪っ…)」
    ハンジは舌打ちした

    本来なら、このような事黙ってられる性格でないハンジ

    それをなぜ我慢しているか、それには深いわけがあった
  7. 31 : : 2014/04/06(日) 10:59:07
    ハンジの家は、社宅だった

    社宅内では、父が一人出世街道から乗り遅れ、いつリストラされてもおかしくない状況だった

    そんな家庭状況の中、上流階級が集まる学園に両親が入れた理由が…

    その学園にいるというだけで、憧れられるネームバリューと、私学特有の学力特待生で、入学金、授業料が免除になるからであった

    ゆえにハンジは、意地でもこの学園を卒業せねばならないし、その為には目立つ事は御法度であった
  8. 40 : : 2014/04/08(火) 09:26:19
    ダズ君は、背中を丸めて教室から出て行った

    ハンジは、後を追いたい衝動を理性総動員で押さえ付ける…
    「(我慢、我慢…)」

    「ダズ君、生気がぬけてたねぇ~」

    「やっぱり二ヶ月もたなかったなぁ」

    「助けてあげられないしねえ、そんな事すれば自分がターゲットになっちゃうし~」

    クラスメイトの他人事の様な会話

    とは言え、手を差し伸べられない私も同罪…

    はぁ、とため息をついた時だった

    「ねえねえ今日club行くんだけど~超イケメンがたむろってるらしい所~」

    「えーっ行く行く!!」

    …おいお前ら何歳なんだよ、とついつい突っ込みたくなるハンジ

    「ハンジさん達も行かない?」
    唐突に会話を振られてぎょっとするハンジ

    「(行けるわけないだろ!?)あっ、私は今日は夜バイトなの」
    ついうっかり心の声を口に出しかけて、すんでの所で止められた

    クラスメイトは眉をひそめる
    「バイトしてるんだ、偉いよね~おこずかい足りないしね~」

    「そ、そうなの…はは」
    ハンジは苦笑いした

    「私なんて月にたった5万円だしね…まあ、パパに言えばこっそり貰えるけどさあ!!」

    ハンジの心を音で表現すると、まさにぐぬぬ…が相応しいだろう

    「(私なんてこづかい貰ってないよ!!)」
    ハンジははぁ、とため息をついて、踵を返した

    「ハンジ?!どこいくの!?」

    「ちょっとはばかりへ…」

    ミーナの言葉に返事だけをして、ハンジは部屋を出た
  9. 43 : : 2014/04/08(火) 15:34:20
    ―学園の廊下―

    ハンジは廊下を歩きながら、心の中で毒づいていた

    …ったく、何なんだよ…クラスメイトがいじめられて、あんな有り様になっているのに、皆平気な顔してさ…

    CLUBだの小遣いだの、呑気な話ばっかりで、本当に呆れるよ…!

    って言いつつ、私だって同じ穴の狢なんだけどさ…

    はぁ~と盛大にため息をついて、廊下から外階段に繋がる扉を開けた




    学園の一番隅っこの、一番静かな非常階段

    ハンジの一番好きな場所だった


    階段からは広い庭を見渡せる

    外の心地よい風が、適度な暖かさを乗せて…ハンジの暗い心の内を、まるでぬぐい去るかの様に吹いた


    ザァァッ…


    風で髪がふわりとなびく


    ハンジは大きく息を吸い込んだ

    「…金だけ持っててのーたりんのいかれポンチ!!豚野郎共!!ばーかばーか!!クソばかっ!!」

    はぁはぁ…一気に外に向かって捲し立てた

    ハンジは両手を伸ばしてのびをした

    「はぁ~すっきりしたぁ!!また豚小屋に戻るとしますか!!」

    そう言い残して、非常階段を後にした


    そんなハンジの姿を、半階したの階段の踊り場で寝そべっていた人物に、目撃されていたとは知らずに…

    「…ぶ、豚野郎共…」
    その人物は、それがつぼに入ったのか、しばらく身をよじって笑っていたのだった
  10. 47 : : 2014/04/08(火) 17:16:48
    ワタシモしたいーそんなこと。(о´∀`о)
  11. 58 : : 2014/04/09(水) 20:15:30
    ワクワク((o(^∇^)o))期待だよ!ロメ姉!( *・ω・)ノF4は社会的抹殺しないとね♪
  12. 62 : : 2014/04/09(水) 21:54:20
    ―放課後―

    「ミーナ、私、ごみ捨てに行ってくるね」

    私は、唯一と言っていい友人ミーナにそう声を掛けて廊下に出た

    ゴミ捨て場に行こうとすると、廊下に人だかりが出来ていた

    ちらりと様子を窺うと、何だか剣呑な雰囲気だった

    「おい、ゴミ箱が脚に当たっただろうが…」

    「ひぃぃ、す、すみませんリヴァイさん…」

    げげっ…胸くそ悪い奴等にあっちゃったよ…

    この学園を牛耳る…F4

    どすの効いた声で、這いつくばって謝る生徒に鋭い一瞥をくれているのが、そのグループのリーダー、リヴァイ・ラインベルガー

    背は160㎝で私よりちびだ
    髪は襟足を刈り上げたツーブロックで、黒い艶のある前髪が、鋭い目付きを少し隠している

    ラインベルガー家と言えば、ホテル、飛行機会社、銀行など数々の会社を束ねている世界的にも有名な大富豪なんだ

    この学園にも多額の融資をしており、そのせいか、ばかげたゲームを止めるどころか、見て見ぬふりしかできないのが、この学園の先生達だ

    「リヴァイさん、かっこいい」
    ため息とともにもれるそんな声が、あちこちからあがる

    …どこがかっこいいんだよ!?ただの目付きの悪いチビじゃないか!

    まあ、よく見たら端正な顔立ちかもしれないけどさ…っていやいや、それはないわ!

    「リヴァイ、その変でやめておいてやれよ。ちびっちまうぞ?」
    そう言ったのは、エルド・ジン

    こちらは金の髪をくるっと後ろで小さくだんごにしている、涼やかなイケメン

    同年代の女子で、こいつに言い寄られてベッドインしなかった奴はいないらしい

    私は誘われてもついていかない!
  13. 66 : : 2014/04/10(木) 11:20:52
    「エルドの言う通りだ。そろそろお開きにしてやれ。俺はこれから忙しいんだ、早く帰りたい」

    そう言って時計を気にしている男は、エルヴィン・スミス

    リヴァイやエルドより幾分大人びて見えるこの男
    背が高く、豊かな金の髪をポマードで7・3分けに撫でつけている
    立派な体躯の持ち主

    筋の通った高い鼻に、優しげなブルーの瞳
    きっちり整えられた眉
    まぎれもなくイケメンだ

    「忙しいってどうせお前、また人妻とデートだろうが」
    リヴァイが汚いものを見るような目でエルヴィンを見た

    「ああ、その通りだ。今日はインペリアルホテルのスウィートルームをリザーブしてあるんだ」
    そういってふっと笑みを浮かべるエルヴィン

    そうそう、こいつはマダムキラーと呼ばれているんだ
    エルドと並んで、天下の狩人(ナンパ師)と呼ばれているらしい

    「エルヴィン、いい加減にしておかないと、旦那にそのうち殺されるぞ?」
    エルドが苦笑気味に言った

    「大丈夫だ、そんなへまはしない。俺は一途だからな・・・お前みたいにあっちこっち手を出しているわけではないんだ、エルド」

    「一人に絞れるって、尊敬するさ、エルヴィン。俺にはできない、彼女たちの中から一人を選ぶなんてそんな残酷なことは・・・」
    エルヴィンのその言葉に、エルドがこめかみに指をあてて苦しげにつぶやいた

    「あーあ、飽きたし、下半身バカはほっといて帰るぜ、ナナバ」
    リヴァイがもう一人の男の肩をぽんと叩いた

    その男はふんわりとした髪を手でかき上げ、リヴァイにまっすぐ目を向けた
    「あ、うん。そうだね」

    リヴァイに肩を叩かれた男は、ナナバ・ヘニング
    柔らかい雰囲気と物腰が、中世的な男
    口数が少なく、ほとんど話をしている所は聞いたことがない

    まるで妖精の様なあどけない、美しい瞳は、いつも遠くを見ているような感じがする
    すっと通った鼻梁、ちいさな顔、薄いが形の整った唇

    なんとなく影の薄いこの男だけは、他の3人とは雰囲気がちがっていた

    「下半身バカとは・・・童貞の言う事は違うな」

    そう言うエルドに食って掛かるリヴァイ

    「お前は不潔なんだよ!近寄るな!うつる!」

    「ははは、何がうつるんだよ、リヴァイ」
    エルヴィンがその様子をみて笑った

    「下半身ばかがうつるっていってんだよ・・・きめぇ!」

    「・・・俺からすれば、その年で女に興味がないお前のほうがきめぇ!」
    エルドにそう切り返され、ぐぬぬ・・・といった表情をするリヴァイ

    「興味がないわけじゃねぇ!俺に見合う女がいねぇだけだ!俺はだれでもいいわけじゃねえんだからな!」

    「ねぇリヴァイ・・・もう行こう?みんな見てて、気持ち悪い・・・」

    ナナバがリヴァイの服の裾を引っ張った

    「おお、すまんナナバ。よし帰るか」

    そう言って、嵐が去って行った


  14. 73 : : 2014/04/11(金) 11:33:18
    学校から帰り、いつものバイトに勤しむハンジ

    ハンジの家はなかなかの困窮具合で、こうして稼ぐバイト代も、家に生活費として入れていた

    「ハンジ、今日はまたいつも以上に疲れ切った顔してない?大丈夫?」
    そう心配そうに声を掛けるのは、ハンジの中学時代の同級生である、ペトラ・ラル

    彼女もまた至って普通の家庭の普通の女子高生
    ハンジとは違い、普通の公立高校に通っている

    「うーん、今日もさぁ、F4が大暴れしててさ・・・いじめられてたクラスメイトが退学しちゃうし・・・私は見ている事しかできないし・・・。なんだか情けなくってさぁ・・・」

    ハンジは栗色の髪の毛に栗色の瞳をもつ、優しげな雰囲気のペトラに、ついつい愚痴をこぼしてしまった

    「そうなんだ、ハンジらしくはないよね…確かに。だってさ、ハンジってすごく正義感が強いじゃない?そういう理不尽ないじめって大嫌いなのに・・・」

    「うん、嫌いなんだ。でも、助けてしまうと私も学園にいられなくなるだろうし・・・一番嫌なのはさ・・・そういう考えしか持てない、自分自身なんだ・・・」
    ハンジは深いため息をついた

    そんなハンジの頭をよしよしとなでるペトラ

    「ハンジは悪くないよ。ご両親のために勉強をがんばって入った学校なわけだしさ。でもさ・・・私としては残念だよ。セントトロスト学園の人たちに、ハンジの良いところを知ってもらえてないのがさ・・・」

    ペトラは複雑な表情で、そう言った

    「ペトラ・・・」

    「だって、ハンジって誰かがいじめられていたりしたら、すぐにかばって助けてあげていたじゃない?私だってなんども助けてもらった。そんな優しいハンジのことを誰も知らないなんてさぁ・・」

    「ペトラ・・・ありがとう」
    ハンジは友人の言葉に、思わず涙が出そうになった

    「ところでさ、F4ってどんな人たちなの?すごく興味があるんだけど!」
    ペトラは突然目を輝かせはじめた

    「うーん、外見だけは、イケメンンだよ。。本当に、でも性格がクソ悪い。ありえない」

    「でも、お金持ちなんだよねぇ・・・?お会いしてみたいなぁ!」

    「あんなのにあったらだめだよ!妊娠させられちゃうよ!!」

    私は思わず声を荒げた

    「ハンジ!妊娠て!」
    ペトラはそんな私の様子に吹き出した


  15. 88 : : 2014/04/14(月) 09:31:29
    ―次の日―

    「次は音楽かぁ・・・音楽室に移動しなきゃね」
    ハンジは音楽の教科書を鞄から取り出して、ミーナのところへ駆け寄る

    「ミーナ、音楽室行こう?」
    ミーナの肩をポンとたたいて、笑顔でそう言った

    ミーナは少し驚いた表情をハンジに見せる
    「ハンジ・・・誘ってくれてありがとう」

    そういって、はにかんだような笑顔を見せた

    「えっ?ど、どうして?」

    「だって、ハンジはいつもどことなく寂しそうで・・・それに、私を誘ってくれるって、あまりなかったじゃない?だからさ、ハンジは私のことを友達だと思ってくれてないのかなぁ・・って、少し不安になっていたんだ・・・」
    ミーナの少し寂しげな表情に、ハンジは心打たれた

    「ご、ごめんねミーナ、あなたの気持ち、あまり考えてなかった・・・本当にごめんね」
    ハンジはミーナに素直に頭を下げた

    ハンジは嬉しかった、こんな風に思ってくれている人が、この学園に一人でもいたという事が
    嬉しくて嬉しくてたまらなかった

    この子を守ってあげたい、そう思った

    ・・・昔の自分・・・中学生までの自分に戻れそうな、そんな気がした

    「ハンジ、音楽室にいこ♪これからもよろしくね!」
    ミーナの笑顔に、ハンジも笑顔になった

    「うん、ミーナ、行こっ」

    二人は仲良く教室を飛び出した




    教室を出て、二人はスキップをしながら廊下を駆ける

    音楽室に行くために、階段を降りようとした、その時・・・

    「きゃぁぁぁ!」

    ミーナが階段から足を踏み外し、下まで落ちた

    「いったぁぁい!」

    「ミーナ!大丈夫?!ってうわ!!」

    ミーナにあわてて駆け寄ろうとして、ハンジはかちーんと体が固まった

    なぜなら・・・

    「おい、てめぇ・・・でけえけつをのけろよ・・・」

    この学園で一番最悪な男が、ミーナの下敷きになっていた・・・
  16. 89 : : 2014/04/14(月) 09:45:37
    「あっ・・・す、すみませんすみません!!」
    ミーナはあわててその男の上から飛びのき、何度も頭を下げた

    学園で一番最悪な男、リヴァイは鋭い視線でミーナを一瞥した

    「腰が痛ぇ。服が汚れた」

    「リヴァイ、大丈夫か?」
    すぐさまナンパ師エルドが駆け寄り、心配そうな顔をリヴァイに向けた

    「大丈夫じゃねぇ・・・おいてめぇ・・・どう落とし前つけるか、わかってるよな?」
    背筋の凍るような視線をミーナに対してぶつけるリヴァイ

    「わ、わざとじゃないんです・・・お許しください・・・」
    ミーナは蚊の鳴くような声で、必死に許しを請う

    しかし、リヴァイの気は収まらなかった

    「おい、こいつの下駄箱に赤札を・・・」

    リヴァイがそう口走った瞬間―



    「ちょっと待ちなよ!」
    ハンジがミーナとリヴァイの間に割って入った

    「・・・なんだてめぇ・・・貧相なつらしやがって」
    リヴァイがハンジをにらみつけた

    「わざとじゃないんだ、これだけ謝っているんだから、許してあげてよ!相手は女の子だよ?!」

    ハンジはリヴァイに突っかかった

    「おっ、珍しく反発してきたな」
    後ろからその様子を面白そうに見ているのは、マダムキラーのエルヴィン

    「・・・」
    興味がなさそうなナナバ

    「許すも許さないも、こいつは俺の腰を砕けさせ、服を汚したんだ・・・落とし前つけてもらうのが筋だろうが・・・」
    リヴァイが眉をひそめた

    「・・・腰が砕ける、は使い方が違うと思うがな、リヴァイ・・・」
    エルヴィンは密かに頭を抱えた


    「・・・と、とにかくだ!こいつの下駄箱は赤札・・・」

    「大体あんたたちなんて、結局は親の金と親の権力でエラそうにしている、腰ぎんちゃく野郎どもじゃないか!ちっせえ男どもだよ!」
    ハンジはF4を指さしてそう言い放った

    「・・・ほう、腰ぎんちゃく野郎?か・・・」
    リヴァイはニヤリと笑ってハンジを見据えた

    その瞬間、ハンジは今までせっかく我慢に我慢を重ねてきたことが、すべて無駄になった事を誘ったのだった


  17. 97 : : 2014/04/15(火) 08:56:50
    その日、すぐにハンジの下駄箱には例の赤札・・・が貼られる事になった

    周囲の態度は一変し、誰一人としてハンジと目を合わせようとする者がいなくなった

    ずっと我慢してきたのに、ついつい出てしまった生来の正義感の強さのせいで、ハンジの学園生活に暗雲が立ち込める事になった



    ・・・しまったなぁ、やってしまった

    私はただ平穏無事で3年間をなんの面白みもなく、息をひそめて生活していたかったのに、どうしてこうなっちゃったの?

    下駄箱の赤札を見つめながら、私は目を伏せた

    私がかばったミーナですら、私と顔を合わせてくれなくなった

    ・・・いや、それは仕方がないよ、赤札を張られた生徒に味方をすれば、同じようにターゲットになってしまうんだから
    だから、ミーナは悪くない、うん

    悪いのは誰?
    我慢できなかった私?
    そういういじめをとめられなかった先生?
    傍観している生徒たち?

    ・・・勿論そのすべてに責任がある


    でも、一番の元凶は・・・クソ腹が立つ、クソ生意気な、クソバカどもだ!


    私は下駄箱の赤札をばりっと引きちぎった

    「うわー今度のターゲットは女だな」

    「やっべ、また楽しめそうだな・・・w」

    背後で他人事のように語らう生徒たちのほうを、振り返りぎろっとにらみを利かす

    「・・・見世物じゃないんだよ!バカども」

    そう言い放ち、つかつかと廊下を歩む

    時折投げかけられる野次など気にせず、颯爽と、肩で風を切るように
  18. 98 : : 2014/04/15(火) 09:04:03
    すると、廊下でたむろっているクソばかF4に出くわした

    「お、次のターゲットだな、さて何日持つかな?かけるか」

    ニヤリと笑うリヴァイ

    「俺は一週間・・・だな、なかなか骨がありそうだ」

    エルドが顎に手をやりながら言った

    「俺は、4日かな・・・女性にはつらい仕打ちだろうしな」

    エルヴィンのその言葉に、無性に腹が立った

    ・・・ならやめさせろよバカが!

    「私は・・・興味がない・・・」
    一人けだるげな表情で、虚空を見つめながらそういったのは、ナナバだった

    「おいおいナナバ、かけなんだから、一応何日か言えよお前?」

    リヴァイが眉をひそめた

    そんな、人の人生を賭け事にするようなバカ共に、わたしはつかつかと歩み寄った

    「・・・おい、ターゲットがおでましだぞ?」
    それに気が付いたエルドが言葉を発した

    その言葉にF4全員が私に視線を浴びせる

    その好奇な視線を振り払うかの様に、私はふんっ!と鼻を鳴らした

    そして・・・

    ポケットから取り出した、お手製の赤札を、奴らの額にぺたぺたぺたぺたと貼ってやった

    「げっ、なんだこりゃ」
    リヴァイが目の前にぶら下がる赤札にあたふたする、そんなことはお構いなしに、私は仁王立ちで言葉を放つ

    「あんたたちみたいな性根の曲がったバカ共は、私がまっすぐに矯正してやるよ!!ばーか!」

    唖然とするやつらの顔に、もう一度ふん、と鼻を鳴らして・・・

    私はその場を後にした
  19. 101 : : 2014/04/16(水) 09:43:04
    こうして私は・・・学園中から好奇でいじのわるい視線で見られるようになった

    でも後悔はしていない

    だって、私は悪くない、そうでしょ

    曲がったことが大嫌いだった自分

    何にでも立ち向かっていた自分

    勇気があった自分

    そんな自分に戻るための、第一歩を踏み出したのだから




    あくる日の朝―


    「お母さん!おかわり!」

    私は3杯目のご飯のおかわりを要求した

    当然!だって今日からあのゲスいF4と、長いものにまかれまくりの全校生徒と戦わなければならないんだから!

    しっかり体力つけなきゃ!

    「お姉ちゃん・・・太るよ?」
    そう心配そうに声をかけてくれるのは、弟のサムエルだった

    「大丈夫だよ!これでも足りないくらいなんだから!」

    「・・・帰宅部なのに?」

    「そうよ!そうなの!よし!ごちそう様!」

    私は食器を炊事場に持って行く

    ついでに母の肩をぽんとたたく

    「ねえお母さん!私は強い、そう、ものすごく強いよね?!」

    捲し立てる私に母は怪訝そうな目を向けた


    「・・・どうしたの、ハンジ?」

    「どうなの?!私は強い?!」


    「・・・あなたは強いわよ、ハンジ」

    母は首を傾げながらそう言った

    「よっしゃー!行ってきまーす!!」

    勢いよく玄関を飛び出し、外の世界へ繰り出した

  20. 102 : : 2014/04/16(水) 09:48:00
    そうだ、私は強いんだ

    金に苦労した事がない、親のすねばかりかじってるあんな野郎どもに負けるはずがない

    勉強だって、負けない

    運動だって、たぶん負けない

    何よりも、雑草の様なこの魂の強さは絶対に負けないさ!



    ・・・でも、本当に大変な事をしちゃったかもな・・・

    今までに赤札を貼られた人はもれなく学園を去って行った

    私も、そうなるのかな


    ・・・両親に顔向けができないよ、そんなことになったら


    いや、迷うな私!

    私は戦う!

    絶対に、負けない

    両親のためだけじゃないんだ


    私の意思が、負けたくないと言ってる

    だから・・・戦う
  21. 103 : : 2014/04/16(水) 09:57:40
    学園に入ると、誰一人としてハンジに近寄る生徒はいなかった

    「まぁ、仕方ないか。そりゃそうだよね」

    ハンジは独りごちた

    教室へと歩く道すがら・・・

    どこからか飛んできた野球のボールが、ハンジの体に当たった

    「帰れよ!貧乏人!」

    どこからか飛んでくる野次


    ハンジは唇をかんで耐えた

    「負けない・・・」

    ハンジは小さな声でつぶやいた


    教室に入ると、クラスメイトが一瞬で、蜘蛛の子を散らす様に教室の隅に集まった

    「おはよう」
    いつも通り挨拶をするが、もちろん反応する生徒はいなかった、それどころか・・・

    「・・・っ」

    あろうことか、生卵がハンジに投げつけられた

    それはハンジの頭に命中して、ぶちゃっという音とともに、つぶれた

    「大体この学園はな、お前みたいな貧乏人が来るところじゃねえんだよ」

    「いつまでもつかねw」

    そんな野次に、ハンジは何も言わなかった


    ・・・言えなかったのかもしれない

    顔は真っ青になっていた

  22. 104 : : 2014/04/16(水) 10:18:19
    「机が、無い・・・」
    ハンジがぼそっとつぶやいた時、がらりと教室のドアが開いた

    「ほら全員、授業を始めるぞ。席につけ」

    先生が来た・・・だが、生卵をつけたハンジには見向きもしない

    「先生、机がありません」

    ハンジが発言すると、先生は目をそらしながら

    「そうか・・・倉庫にでも予備があるだろう・・・さ、教科書を開いて・・・」

    「・・・」

    先生すらも、このいじめというゲームに逆らう事は、許されていなかった

    わかってはいたが、厳しい現実

    ハンジは唇を強くかみ、教室を出た
  23. 105 : : 2014/04/16(水) 10:18:39
    くだらない、くだらない、腐ったクソどもばっかりだ!!

    何なんだよ、いったい!

    私が何をした?!

    お前らに何も迷惑かけてないだろ?!

    絶対に絶対に、あいつらの前では泣かない!


    いつもの非常階段にダッシュで向かう

    階段の扉を開け、私はその場で突っ伏した


    「うわぁぁぁあん!くやっしいいよおおおお!クソ野郎どもめぇぇ!」

    そして、大声で泣いた

    その時・・・


    「うるさいなぁ・・・頭に何つけてるの・・・?おしゃれなの?それ」

    鈴の鳴るような、きれいな声

    はっと目を開けると・・・

    目の前に、あろうことかF4の一人が座っていた
  24. 106 : : 2014/04/16(水) 10:18:57
    「なっ・・・あんたなんでこんなところに?!」

    「・・・それは、私が言いたいセリフなんだけどな・・・というか、その頭は何?気になって仕方がないんだけど。汚いよ・・・」

    私の頭を気にしているのは、F4のナナバだった

    けぶるような表情に、柔らかな光を宿す瞳は、何故か人を包み込むような温かさが感じられた

    だけど、こいつは私の敵だ!

    「頭?!あんたたちのせいで、全校生徒に敵みたいにされてるんだよ!おかげで朝から卵ぶつけられたんだよ!」

    「ふうん・・・興味ない・・・」

    なんだそれ!自分で聞いといて興味ないってなんなんだ、こいつは



    でも、ナナバは・・・とっても綺麗

    素直にそう思う

    なんだろう、線が細いのか・・・はかなげで、驚くほどまつ毛が長い

    色の白い肌は、女性がうらやむようにみずみずしい

    筋のすっと通った鼻梁、薄いが形の良い唇

    どれをとっても美少年

    ・・・いかんいかんいかんいかん、見とれるなバカ!!
  25. 107 : : 2014/04/16(水) 10:19:24
    「そういえばさ・・・君、ここでよく叫んでたよね・・・すっごくうるさかったよ・・・」

    ナナバはぼそっと、眉をひそめてつぶやく様に言った

    「ええええええええ聞いてたの?!!」

    「聞いてたんじゃないよ、聞こえてたんだ・・・うるさいんだもん、静かに本を読んでいたかっただけなのにさ」

    さも迷惑そうに話すナナバ

    「そ、それはすみませんでしたねぇ!!」

    私は頬を膨らませた

    「まあ、面白かったけどさ・・・あはは」

    ナナバはそういって、笑顔になった

    私の心臓が、どきっと踊ったのがわかった

    「面白いってなんだよ・・・こっちは必至なのに」

    「・・・君が必至だとかいじめられてるとかは、一切興味ないよ。それより早く学園を出た方が、いいよ」

    「うるさい。興味ないなら口出すな!私は意地でもここに居座ってやるんだからね!!」

    私はそう言うと、その場を後にした



  26. 113 : : 2014/04/17(木) 09:32:03
    教室に戻ると、誰もおらずシーンと静まり返っていた

    「そっか、次は体育だったね」

    ハンジは教室を見渡した
    まるで今の自分の心の中のように、がらんどうの教室

    「・・・あれ・・・机が・・・」

    先ほどクラスを教室に飛び出した時には確かになかった自分の机が、教室の元の位置に戻されていた

    「ハンジ・・・」

    背後から蚊の鳴くような小さな声がかかる

    振り返ると、ミーナが泣きながら立っていた

    「ミーナ」

    ハンジは体ごと振り向き、ミーナを見た
    涙にぬれた、その顔を

    「ハンジ、ごめんね・・・あなたは私をかばってくれたのに…私は・・・机は、焼却炉のところにあったの・・・」

    ミーナは泣きながら、そう言った

    「ミーナ、探してくれたんだね・・・ありがとう」

    ハンジは胸が温かくなった気がした

    「ううん、ハンジ、本当にごめんね…私、私・・・」

    「・・・ミーナ、早く行って?私と話しているのがばれたらやばいよ?私は大丈夫だから!」

    私はミーナに笑顔でそう言った

    「ありがとう・・・ハンジ・・・うん」

    ミーナも笑顔を見せて、踵を返していった



    私のために机を探してくれたミーナ

    私のために机を教室に戻してくれたミーナ

    やっぱり優しい、そう思った

    どれだけ勇気がいることだっただろう

    私は、ダズ君がいじめられていても、何一つできなかったのに、ミーナは・・・

    よし、私も負けてはいられない

    前を向こう!!


  27. 114 : : 2014/04/17(木) 09:42:44
    学園では毎日卵を投げられたり、靴を隠されたり、ひどいことをたくさんされた

    それでも私はめげなかった


    以前の、こっそり隠れて言いたいことを言えなかった自分より

    以前の、困っている、いじめられている子に手を差し伸べられなかった自分より

    今のこの、ぐちゃぐちゃにされながらも前を向いている自分が好き

    だから、何をされても、何を言われても、私は前を向いていられた


    気が付くと、赤札が貼られて一週間、私は毎日休まず登校していた





    「おい、あの女、まだのうのうと登校してるらしいな」
    廊下でたむろしているF4の一人、マダムキラーのエルヴィンが楽しげにそう言った

    「なかなか、タフだよな?よくみりゃ結構いい女だと思う、俺は」
    エルドはそう言って不敵な笑みを浮かべた

    「・・・面白い子だよね・・・なんかさ、外国に留学してる、リヴァイのお姉さんにちょっと、似てる気がする」
    ナナバはぼそっと呟く様に言った

    「ちょ、冗談じゃねえ!俺の姉ちゃんはもっと美人でもっとこう・・・!」

    「・・・はい、ボキャブラリーの少ないリヴァイ君、わかったわかった」
    エルヴィンが叫ぶリヴァイを制止した…何せここは廊下、生徒たちがみんな興味深く自分たちを見つめているからだ

    「あいつ・・・ハンジ・ゾエは必ず今日、この学園から追放する・・・手は打ってあるんだからな」

    リヴァイはにやりと笑った

    「なんだ・・・またろくなことを考えてなさそうだな・・・リヴァイ」
    エルドははぁ、とため息をついた

  28. 115 : : 2014/04/17(木) 09:53:21
    「・・・ああ、今日は下靴がなくなってるなぁ・・・どっかに落ちてないか探してこよ。。。」

    怒涛の一週間の最終日の夕方、行方不明になった下靴を探すべく、教室に戻った

    薄暗くなった廊下をすたすたと歩く

    そこに、背後から声がかかった

    「やあ、ハンジさん」

    珍しく声がかかり、振り向くと、数人の男子生徒が薄ら笑いをうかべてハンジを見ていた

    「・・・なんだよ?何か用?って・・・きゃああ!!」

    ハンジは突然男たちに羽交い絞めにされ、教室に連れ込まれた


    「…おとなしくしろよ、けがしたくなけりゃな・・・友達がほしいんだろ?なってやるよ」

    「その前にちょっと・・・な、へへ」

    げひた笑いを浮かべる男子生徒

    ハンジは身の危険を感じて羽交い絞めを振りほどこうとしたが、できない

    「は、はなせ!!」

    自由な足で、自分の体をまさぐろうとした男子の顔を思いっきり蹴り飛ばした

    「くっ・・・貧乏人が、やりやがったな・・・」

    「やっちまえ!」

    男の一人がハンジの頬を叩き、床に体を押し倒した


    制服の上からハンジの体を触る男子ども

    ハンジは嫌悪感で吐きそうになった

    「やだ、やだ!やめて!!」

    ついにその瞳から涙が零れ落ちた、その時・・・



    「ねえ君たち、なにやってるの?」


    鈴の鳴るような美しい声


    非常階段で聞いたあの声


    男たちの後ろに、ふわりとした雰囲気をまとったナナバが立っていた

    ただし、今日はいつもとは少し雰囲気がちがった

    ・・・眉をひそめて、唇をかみしめていた

  29. 116 : : 2014/04/17(木) 10:01:42
    「な、ナナバさん・・・」

    男たちがハンジを組み敷いたまま、突然現れたナナバの方を向く

    「何を、しているのか?って聞いているんだけど・・・」

    「お、おれたちは、リヴァイさんに頼まれて・・・その・・・」

    しどろもどろに言う男に、ナナバは首を傾げる

    「・・・リヴァイ・・・そう。君たちはもう帰っていいよ」

    ナナバは鈴のなるような声に、少し怒気をまぜたような強い口調で言った

    「いや、ですが・・・」


    「さっさと、離れろ!」

    その口調が、今まで見たことのないような、鋭いものになった

    男どもはナナバの声に追い立てられるかのように、逃げて行った


    「・・・大丈夫?メガネちゃん」

    ナナバはそう言って、ハンジに手をさしのべた

    「・・・大丈夫・・・なわけ、ない、じゃない」

    ハンジはそう言いながらも、ナナバの手を握った

    ほっとして、瞳から大粒の涙をこぼした


    「そうか、まあ、どうでもいいんだけどね・・・君の体がどうなろうと・・・」

    ナナバは肩をすくめてそう言った

    「どうでもいい・・・って・・・なんだよ・・・じゃあなんで助けたんだよ・・・」

    しゃくりあげる私を後目に、ナナバは首を傾げる

    「なんで・・・って、そうだね・・・ああいうやり方は、気に食わない、それだけ。じゃぁね」

    ハンジを立ち上がらせると、ナナバは踵を返して去って行った



    「ありがとう・・・ナナバ・・・」
    ハンジはその後ろ姿に、頭を下げた

    もう、だめだと思った

    それを助けてくれた、あの人の背に、天使の羽がみえた、気がした






  30. 122 : : 2014/04/18(金) 09:13:58
    翌日の学校


    私はひじょーに怒っていた

    当然だ

    当たり前だ

    だって、私は昨日

    処女を喪失しそうになったんだぞ!!

    けだものみたいなクソバカ共に、やられそうになった・・・許せなさすぎる

    私は初めては王子様の様な素敵な、大好きな人と・・・って決めてるんだからなっ

    ・・・そこでなぜナナバの顔が思い浮かんじゃうんだよ・・・ばかばか私!


    廊下を歩く私に、いつもどおりの野次が飛ぶ

    「また性懲りもなくきやがったな」

    「もう一週間すぎたぜ・・・今日もお見舞いしてやらぁ!それ!」


    ・・・ワンパターンなやつめ

    私はおもむろに、テニスのラケットを自分の顔にかざした

    パシャッ・・・そのラケットの網に、生卵がぶつかった

    「げっ・・・!」

    私の頭に卵を当てる事に失敗したまぬけに、つかつかと歩み寄る


    「毎日同じパターンに引っ掛かる私じゃないんだよ、もっと頭を使いな!あとね・・・卵は食べるもんなんだよ!!」

    私はラケットにこびりついた生卵を、そのクソ生徒の服でぬぐった

    「ひっ、制服が・・・」

    「あら、素敵なコサージュですこと、おほほほほ」

    私は高笑いをして、その場を後にした


    すると、視線の先に、にっくきリヴァイのちびが見えた

    「・・・・・・・・・・・・」

    私はつかつかと無言で駆け寄った

    「お、おい、リヴァイ」

    隣にいたエルドが、私に気が付いて、リヴァイの肩を叩いた瞬間


    「リヴァァァァァァイ!お前だけはゆるさーーーーん!!死ね!!」

    私のジャンピングスピンドロップキックが、リヴァイのどたまに炸裂した

    「うわぁぁぁあ」
    リヴァイは顔面を蹴られて、その場に頽れた

    「うわっ・・・強烈・・・」
    エルドが思いっきり引いた

    「大丈夫か?リヴァイ」
    エルヴィンが介抱するが、リヴァイの視線はあさっての方向を向いていた

    「・・・ね・・・ねえちゃん・・・?」
    わけのわからぬ言葉を発して、間抜け面を虚空に向けていた


    「リヴァイ!あんたね?それでも男なの?!女の子を襲わせるなんて、最低最悪、死んで償いな!!」

    私は怒りが収まらず、ポケットに入れていたテニスボールを卵つきテニスラケットで、思い切り打ちつけた

    …奴に向かって


    「・・・すごいな・・・」
    ナナバがその様子を、関心した面持で見つめていた

    「・・・・」
    リヴァイは、何故か頬を真っ赤に染めていた





  31. 123 : : 2014/04/18(金) 09:25:16
    よし、なんかすごくスッキリした

    私は周りの奇異な視線を気にせず、スキップしながら教室に向かう

    後からまたきつい仕返しがくるかもしれない・・・けど、やり返せた

    やられたまんまじゃ面白くないしね!

    「よし、これからも負けないからなっ!!!!」

    周りの生徒たちに聞こえよがしに、大声で叫ぶ私だった



    「・・・なぁ、リヴァイ、お前そりゃ駄目だわ。さすがに俺も引くぞ」

    エルドがリヴァイに向かって眉をひそめていた

    事の顛末を、ナナバから聞いたのだった

    「なにがダメなんだよ!生意気だから黙らせてやろうと・・・」

    「こいつは昔からこうだよな・・・自分の思い通りにならなきゃ、むちゃくちゃ無理やりなんとかしようとする・・・」
    エルドがため息をついた

    「もう、やめないか?俺はもともと女をターゲットにするのは、気が進まなかった」
    エルヴィンが、鏡で髪を整えながらつぶやいた

    「そうだよな、俺もそう思うそれに・・・」

    エルドがエルヴィンに同調する

    「処女らしいじゃないか、ならばよけい、俺がもらってやらなければならないという責任が・・・」


    「おいおい、ハンジも狙ってるのか、エルド・・・」
    エルヴィンが肩をすくめた

    「面白そうだしな、だが俺にもなびかんかもしれん、あいつは・・・」
    不敵な笑みを浮かべるエルドに、リヴァイが食って掛かる

    「おい、やめろよ!!あいつには手を出すな!!」

    「・・・リヴァイ?お前どうした、顔が真っ赤だぞ・・・?」
    エルドが興味深げな視線をリヴァイに向けた

    「もしかして、やきもちでもやいてるのかな・・・?」
    ナナバはぼそっと呟いた

    「な、な、そんなわけねーだろうが!!」

    しかしその顔は、真っ赤の限界値を超えていた




  32. 142 : : 2014/04/21(月) 09:27:20
    ハンジは非常階段に来ていた

    あの時処女喪失の危機を救ってくれたナナバに、もう一度お礼を言いたかったのだ

    「いないね・・・」

    放課後だ、もう帰ったのかもしれないな・・・そう思いつつ、非常階段を後にした

    その時・・・切ない旋律がどこからともなく聞こえてきた

    「ピアノ・・・?」

    優しげで柔らかい・・・角の無い音というのか・・・
    音楽素人のハンジでも、その旋律が美しいという事だけは理解できた

    まるで、いじめに耐えている自分の心を優しく包み込んでくれる様な・・・そんな音

    その音に導かれる様に、ハンジは歩を進めた


    音楽室をのぞくと、その美しい旋律を奏でる主の姿がハンジの目にはっきりと映った

    「ナナバ・・・」

    その甘い美しい旋律を奏でている主は、まさにその音色にふさわしい人物であった

    まるごとそのまま、ナナバの人となりの様な、美しく柔らかな音色

    ハンジはそっと音楽室に足を踏み入れた


    しばらくその音色をじっと静かに聞いていると、いつの間にか音が止まっていた

    「・・・めがねちゃん」
    その鈴の鳴るような凛とした声が、そう言葉を発した

    「あっ・・・ナナバ・・・ピアノ、上手だね。びっくりしたよ」
    ハンジはどぎまぎしながら言った

    「ピアノ・・・?ああ、こんなの片手間の趣味だよ・・・適当にしか弾いていないし」
    ナナバはそう言うと、ぽろぽろっと鍵盤を指ではじいた

    「あ、あのさ・・・昨日は、ありがとう。危ないところを助けてくれて」

    ハンジはぺこりと頭を下げた

    すると、ナナバはピアノをぽんぽんぽんとまた指ではじいた

    「ど・う・い・た・し・ま・し・て・・・って聞こえない?ふふ」
    ナナバはそういって楽しげに笑った

    ハンジはきょとんとした
    「えっ、聞こえないんだけど・・・」

    「聞こえないか・・・残念」
    ナナバは首を傾げた

    「・・・不思議な人・・・」
    ハンジはぼそっと呟いた

    「ん?なんか言った?」

    「ううん、何も言ってないよ、うん」
    ハンジはそう言ってへらへらと笑った

    「・・・間の抜けた顔だね・・君」
    ナナバはそのハンジを見て、眉をひそめた

    「ちょ・・・そりゃ、あんたに比べたらそうかもしれないけどさ・・・」
    ハンジが口を尖らした

    「・・・でも、よく見たら結構可愛いと思うよ、うん。めがねちゃん」
    ナナバのその言葉に、顔が紅潮するハンジであった




  33. 143 : : 2014/04/21(月) 09:34:31
    「本当に、ありがとう。助かったよ」
    ハンジはもう一度、頭を下げた

    ナナバはピアノの椅子から立ち上がると、ハンジに歩み寄った

    「あのね、別に君のためにやったわけじゃないんだから、お礼はいらないよ。もう忘れて?私の事は」
    静かにそう言った

    「忘れてって・・・」

    「だって、どうでもいいんだもん、正直・・・本当に。めがねちゃんの事なんてさ」
    ナナバはそう言って踵を返し、音楽室を出ようとした

    ハンジはその後ろ姿に声をかける

    「忘れるなんてできるわけないよ!また、非常階段に会いに行くかも!」

    ナナバは振り返らずに口を開く
    「そう・・・また私の静かな時間を邪魔しにくるんだね・・・」
    そう言って、部屋を出て行った


    ハンジは自分の顔が限界まで赤くなっているのを感じていた

    いつのまにかめがねちゃんと呼ばれていたこと

    可愛いと言われたこと

    素敵なピアノが聴けたこと・・・

    すべてが奇跡のような瞬間

    その素敵な時を胸にしまい込むように、両手を重ねて胸に当てたのだった


  34. 149 : : 2014/04/22(火) 11:38:10
    その日から、少しずつ私への生徒たちの態度が変わってきていた

    私が普通に廊下をあるいていると、以前ならば罵声が飛び交っていたのだが、最近は・・・

    「ハンジさん、おはようございます」

    「ハンジ、おはよう!」

    などと声をかけてくるのだ

    ・・・何でだろう…と思っていたんだけど


    「結構かっこいいよな、ハンジ」

    「うん、いままでF4に刃向って勝てたやついなかったじゃん?あいつはすげえよ」

    ・・・どうやら英雄視され始めているみたいだった


    まあ、以前のこそこそ隠れている私よりも、こうして好き勝手言える今のほうが自分も好きなんだけど、まさかあのいじめてた生徒たちまでも心変わりするとは

    ちょっとだけうれしかった



    ハンジが少し喜んでいたころ・・・

    「リヴァイさん・・・みんなあいつに声をかけてますよ・・?なんかそれ自体がゲームの様になっているみたいで」

    リヴァイが下っ端とそんな会話をしていた

    「なんだそれは・・・どういう状況だ・・・ありえねぇ」

    「リヴァイさん、どうされますか?」

    リヴァイはしばらく頭を巡らせた

    「・・・よし、決めた、車を用意しろ」

    リヴァイは不敵な笑みを浮かべた
  35. 150 : : 2014/04/22(火) 11:47:36
    「ん・・・ふぁっ!!!」
    ハンジは目を覚ました瞬間飛び上がりそうになった

    何故か全裸だったのだ

    「どどどどどどどういうこと?!」

    数人の女性が自分の体をまさぐっていた

    「おとなしくなさってください・・・うーん、くびれがないですね・・・」

    「胸はまあ、寄せてあげればなんとか・・・」

    そんなことをぶつぶつつぶやきながら、ハンジの体をまさぐるのは

    「これって・・・えすて???」

    自分とは一生無縁だと思える言葉を、変な発音で口走るハンジに、エステティシャンは頷く

    「はい、そうですよ。リヴァイ様のご指示です」

    「リヴァイの・・・?」

    あいつ、何考えてるんだろ・・・とハンジは頭の中を?マークだらけにした


    エステが終わると、次はなにやら高そうな服を着せられた

    「な、な、なにこれ!!すっごい高い服・・・じゃない」

    ハンジは、学園の金持ち娘に一度見せてもらったことがある、ブランド物の服の雑誌に載っていたその服を、何故か身に着けさせられた

    靴もそのブランドとおそろいの、おしゃれな靴

    締めには美容師が髪を整え、うっすら化粧まで施した


    最終的に鏡に映った自分の姿をみて、ハンジは唖然とした


    「だれだ・・・これ・・・」

    それほどまでに、様変わりしていたのであった


  36. 151 : : 2014/04/22(火) 11:56:44
    「ほう、まあまあ似合ってるじゃねぇか」

    その時、背後から声がかかった

    「・・・げっ!!」

    そこには不敵な笑みを浮かべたリヴァイが立っていた

    「まあ、姉ちゃんと比べりゃ牛とすっぽんだが、ま、お前もまったくいけてねぇわけじゃねぇな、ふん」

    「・・・月とすっぽんだろ?それ言うなら。バカじゃないの?いやバカだね」

    ハンジはじと目でリヴァイを見た

    「う、うるせえ!俺は・・・いやいい。それより、どうだった?一流のトータルコーディネイトは。ま、金のことはいいたくねぇが、しめて50万といったところかな」

    「ごごごごっごごご・・・ごじゅううううまん?!」

    「・・・たかだか50万でなにを言ってんだてめぇ・・・ああ、庶民の感覚だとそうだよな」

    リヴァイはふん、と鼻を鳴らした

    「何が庶民の感覚だよ!あんたの感覚がおかしいんだよ、まったく!!」

    ハンジは頬を膨らませた

    「ふん・・・うるせえ。まあこの恰好なら、俺の隣にいても遜色はねえな・・・」

    「・・・は?何の話?」

    「…鈍い奴だなお前。俺はお前をそばにおいてやってもいいって言ってるんだ。いじめられることもないし、一流のケアが受けられる。万々歳だろうが?」

    リヴァイは勝ち誇ったような笑みを浮かべた

    ハンジは鋭い視線をリヴァイに送った

    「・・・いや、あんたの隣なんてくそくらえだし」

    「・・・じゃあ、そのケアの代金はどうするんだ?」

    「・・・・・・・」

    ハンジは言葉を失った

    「まあ、それは俺がやらせたわけだし、別に金を払えと言ってるわけじゃねえんだ。俺は・・・」
    リヴァイの言葉を遮るように、ハンジは手近にあった机をばん!と叩いた

    「金はバイトして返すから!!制服を返して?家に帰る!!」

    ハンジは激昂した

    「いや、まてよハンジ・・・あのな」

    突然しどろもどろになるリヴァイに、なおも鋭い視線を送り続けるハンジ
    「私はね、金なんかにまかれるようなやっすい女じゃないんだよ!その辺の腐った女と一緒にするな!おとといきやがれ!」

    そう言って、部屋を後にしたのだった



    「・・・ハンジ」
    リヴァイはその後ろ姿を、食い入るように見つめていた
  37. 157 : : 2014/04/23(水) 09:45:52
    私は部屋を飛び出し、廊下を駆け、大きな玄関扉を勢いよく開ける

    外の空気を一刻も早く吸いたかった

    なんだかとても息苦しくなっていた

    「・・・やっぱり、金持ちの家の空気って、独特だよね・・・」
    私は独りごちた

    玄関扉を出ると、ここは城か?!というような広大な庭に、噴水が設えてある

    「・・・出口まで遠すぎるでしょ・・・逆に不便だし」

    と愚痴が出てしまうほどの、広さだ

    やっとの思いで門にたどり着いた私は、ふと後ろを振り返った

    ・・・立派な邸宅だ

    そして、今の私の恰好・・・

    一度でいいから来てみたかった、ブランドのおしゃれな服

    肌を触ると、すべすべとしながらも弾力があった・・・憧れの、エステ

    女の子が憧れるものがすべてつまった、この白亜の豪邸


    「・・・そばにおいてやってもいい・・・か」
    私ははぁ、とため息をついた

    普通の女の子なら、その言葉を喜ぶんだろうな
    でも私は、どうしても喜べなかった

    確かに今日の出来事はすべて、私が夢見ていたことだ

    小さなころの夢・・・お姫様になりたい

    そんなものは非現実的だと思っていた

    でも実際、そういう生活をしている人がいるんだなと、正直目からうろこだった


    でも、だからといって、他人から与えられた物で満足したいとは、私はどうしても考えられない

    自分でつかみ取りたいんだ

    お姫様になれなくてもいい


    ただ誰かに必要とされる、そんな存在になりたいと私は思う

    今日の事はいい思い出

    ここを一歩でれば、またいつもの私に戻るんだ

    門を一歩出て、大きく伸びをする

    「はーーー!よっしゃ、私は私さ!」
    私はぱちっと両頬を手のひらで叩き、気合を入れなおした
  38. 158 : : 2014/04/23(水) 10:04:01
    颯爽と家路につく私

    曲がり角をまがったその時・・・

    どんっ!電柱とぶつかってしまう

    「いったぁぁぁ・・ああ・・・前見てなかったよ・・」
    私は頭を抱えてうずくまった


    「・・・何やってるの?コント?新作のコント?」

    頭上から、鈴のなるような声がかけられた

    私が顔をあげると、首を傾げて不思議そうな顔をしている・・・ナナバがいた

    「コントって・・・そんなわけないでしょ」
    私は打ちつけた額をさすりながら立ち上がった

    「いや、だってさ・・・普通歩いてて電柱にぶつかる?わざとだよね、絶対。でなきゃおかしいよ」
    ナナバは眉をひそめながら言った

    「おかしくないって・・・前みて歩いてなかったから・・・」
    私はなんだか恥ずかしくなった

    「・・・前見て歩いてないって・・・君はバカだね?」
    ナナバは私の顔を覗き込んでそう言った

    そのビー玉のようにきらきらと純粋そうな瞳に、思わず吸い込まれそうになる

    「バカじゃないよ。これでも成績は学年トップだよ」

    「・・・へぇ・・・すごいね、案外、バカじゃないんだね」

    ナナバはそう言うと、私の額を手で撫でた

    「ひゃっ」
    私は思わず変な声を出してしまった

    「腫れてるよ?たんこぶだね。みっともない顔がさらにみっともなくなってる・・・ふふ」
    ナナバはふっと微笑みを浮かべた

    「誰の顔が・・・みっともないんだよ」
    私は唇を尖らせた

    「君の顔だよ?何か反論があるの?」

    「・・・ないよ」

    「だよね」

    ナナバは頷いた

    なんて失礼な奴だ・・・
    確かにナナバに比べたら、私の顔なんてクソほどの価値もないだろう

    けどさ、一応女なんだよ私は・・・
    そう思った瞬間

    「でもさ、君は瞳がきれいだ。大きくて、いつもくるくるといろんなところを見ていて・・・だから、やっぱりみっともない顔じゃないね」

    そういって、ふっと笑みを浮かべたナナバ

    「・・・・なんだよ、それ、どっちなんだよ」

    私の顔は、真っ赤になっているだろうな
    そんなこと言われるとは、思っていなかったから・・・

    「君は瞳がきれいだよ。それだけ」
    ぼそっと呟いて、去って行った

    「・・・ナナバ・・・」
    私はその後ろ姿を、目に焼き付けるかのようにずっと見送っていた






  39. 159 : : 2014/04/23(水) 10:06:08
    翌朝・・・

    ハンジのクラス内にて

    「ちょっと、なんかさ、リヴァイさんがあのハンジにちょっとちょっかいかけてるらしいよ?」

    クラスのイケイケ女子が、そんな話をしていた

    「・・・なにそれ、どういう事よ?ヒッチ」

    「なんか、エステとかさせてもらったらしいよー」

    「・・・許せない・・・私のリヴァイさんに・・・」
    ヒッチは瞳に暗い焔を滾らせた



    校内前庭にて―

    「きゃーーーF4よぉぉ!!」

    「なんてすてきなのっ・・・!」

    そんな歓声の中、堂々と校内を練り歩くF4

    「やっぱりエルドさんよねぇ・・・顔はもちろんだけどさ・・・あのスマイルがさぁ・・・見ただけで妊娠しそう」

    「えーっ私はエルヴィン様かなぁ・・・大人の雰囲気でリードしてくれそうじゃない?」

    女たちの黄色い声援は、各々のファンによってつづられていた

    「私は断然不思議な魅力のナナバさんだわー。かわいがってあげたーい!」

    「・・・でもやっぱり、一番は、リヴァイさんよねぇぇぇ!!」

    その声が何故か一番大きかった


    「・・・ちっ何がいいんだよ、あんな奴ら」
    私はその様子を後目に、ぼそっと呟いた

    確かにみてくれは一流モデルに引けはとらない
    リヴァイは身長がアレだけど・・・

    でも性格が最悪じゃないか
    何がいいんだか・・・

    でも、でも・・・
    ナナバだけは、女の子たちの意見に賛成だった
  40. 162 : : 2014/04/24(木) 10:19:19
    ハンジが教室に入ると、なぜかクラスがざわついていた

    「さっすが、公立中からきてるだけあるなー」

    「うぶな顔して、やってることはやってるんだな」

    「きたねぇなぁ・・・」

    昨日とは打って変わったようなクラスメイトの態度に首をかしげた

    ところが、ハンジが教室の前に目を向けた瞬間

    「・・・・・・なんじゃこれぇぇぇぇぇ!!!!」

    思わず大声で叫んだ

    黒板にはこう書かれていた

    『ハンジは中学時代に2回中絶しているやりまくり女だ』

    どういうことだ・・・これはいったいどんな状況だ・・・

    私はなぁぁ・・・・・処女なんだけど!

    ・・・そうか、リヴァイのせいか・・・あいつ・・・


    ハンジは苦虫をかみつぶした様な顔をして、リヴァイを探すべく教室を駆けだした


  41. 163 : : 2014/04/24(木) 10:27:18
    校内の中庭にやつらはたむろしていた
    のんびりとベンチにすわってしゃべっている4人は、確かに絵になる

    しかーし今の私は怒り最高潮なんだ!!!

    私はのんきに話す奴の前に仁王立ちになった

    そして・・・

    「リヴァイ・・・あんたね・・・・クラスメイトになにふきこんだんだよっ!!!!」

    奴に向かってそう叫んだ
    すると奴はきょとんとした

    「何の話だ?言ってる意味がわからねぇんだが」

    「すっとぼけないでよね!!クラスメイトに2回も中絶してるとか黒板に書かせてさ!!!どうせあんたが書かせたんだろ?!」

    私は捲し立てる様に叫んだ

    「いや、まて俺は何も・・・」

    「私は子どもなんておろせないんだよ!!!!!だって私は。・・・・・処女なんだから!!!!!!」

    あたりに響き渡るような大声で、私は叫ぶ

    そして、リヴァイの頭をげんこつでたたいて、その場を後にした

  42. 164 : : 2014/04/24(木) 10:39:28

    「なあ、リヴァイ、お前またえらいことを吹き込んだものだな」
    エルヴィンが困ったような表情で、リヴァイを見た

    「いや、まて。・・・俺も何のことかわからねえ」
    リヴァイが考え込むような表情をしていた

    「・・・ま、クラスの女子あたりが嫉妬してるんじゃないかな」
    エルドがそう言うと、ナナバがためいきをつく

    「はぁ・・・女子ってうざいよね。やっぱり私は嫌いだ」

    「いや、ナナバ、女子はいいぞ、柔らかくてな・・・」
    エルヴィンは不敵な笑みを浮かべた

    「ああ、そうだ、最高だ。一人になんてしぼるのはばかだよ」
    エルドが涼しげな笑みを浮かべた

    「いや、そこは独りに絞っておけよエルド・・・」
    エルヴィンがあきれたような表情を見せた

    「お前こそ、人妻はやめておけよ?そのうち殺されるぞ?」

    「だから・・・人妻の魅力がわからないお前がだな・・・」

    「・・・・お前ら下半身バカの話ばっかきいてたら、脳みそ腐る。というかな、おれにわざわざ処女なんていってきやがるって・・・まさかあいつ・・」
    リヴァイが考えを巡らせるように顎に手をやった

    「な、なんだよ気持ち悪い顔・・・」
    ナナバがそんなリヴァイをみて、若干引いた

    「・・・・ナナバ、俺はわかった・・・ハンジはな、俺に処女をもらってほしいんだ!!だからわざわざ処女だって言いにきやがった!そうにちがいねえ」

    「・・・・リヴァイ・・・・・」
    3人は一様に、がっくり肩を落とした


  43. 169 : : 2014/04/25(金) 11:45:11
    クラスにもどると、教室はがらんとしていた

    ただ、二人の女子生徒が黒板を消しているのがみえた

    「女の子にこんなこと書くのはひどいよね」

    「うん、これはやりすぎだわ」

    そう言っているのは、クラスでもいけいけ金持ちギャルで有名な、ヒッチと取り巻き

    私とは正反対な性格で、ほとんど接することも、言葉を交わすこともなかった

    その子達が、私に対する暴言が書かれていた黒板を、消してくれていた

    「ヒッチさん」

    私は彼女たちに歩み寄った

    「あ、ハンジさん。さすがにひどいなあって思ってね。消しといたわ」

    「・・・ありがとう」

    本当に意外だった
    だってこの人たちは、特にF4に執着していて、ヒッチはリヴァイのことを物にしたいとずっと言っているくらいだからだ

    F4にいじめられている私に話しかけること自体が異例だ

    「ハンジさんてさ、すごいかっこいいよ」

    「そうね、F4に逆らってさ・・・なのにこんなことを書かれて・・・同じ女の子としてどうしても許せなくってさ」

    そう言ってくれる彼女たちを意外だと思いながらも、うれしかった


  44. 170 : : 2014/04/25(金) 11:50:15
    その日の夕方
    バイト先で、ペトラと話をしていた

    「ええーえーダンパ?いいじゃない、行ってきなよー楽しんできなよー」

    「だってさぁ、場違いに決まってるじゃない?気軽なジーンズパーティーっていってもさぁ・・・」

    私は憂鬱を絵に描いたような顔をしていた

    そんな会話をしていたとき、がらっと店の自動ドアがあいた

    ・・・ちなみに私のバイト先は和菓子屋さんだ

    団子や、かわいい和菓子をたくさん扱っている

    そのドアから入ってきたのは、あきらかにこの店の雰囲気にそぐわない人達だった

    「あれ・・・ハンジじゃないか」

    金の髪を後ろに束ねてオールバックにしている、エルドと

    「めがねちゃん」
    そういってビー玉の様な瞳で私を見る、ナナバだった


  45. 171 : : 2014/04/25(金) 20:27:17
    まってマス!
  46. 172 : : 2014/04/26(土) 11:46:13
    >名無しさん☆
    いつもありがとうございます♪
    こちらは平日に更新しますね^^
  47. 175 : : 2014/04/28(月) 09:30:21
    「ちょっと!!何この人たち!超イケメン・・・世界が違う・・・」
    ペトラの顔がとろんとした

    「ああ、F4の二人だよ。エルドとナナバ」
    私はちょっと顔を紅潮させながら、ペトラに言った

    「ああ、やばいほんとにかっこいい・・・」
    ペトラはもはや夢うつつ状態・・・だめだこりゃ

    「あんたたち、こんなとこでなにやってるの?」
    私はわざとつっけんどんな口調で奴らに話しかけた

    「何やってるって・・・通りがかったらさ、顔が見えたから…寄っただけだよ」
    ナナバが鈴のなるような声でそう言った

    「なんとっハンジに会いに来たんだって!ちょっとすごいすごすぎる・・・あ、私はハンジの中学時代の友人の、ペトラ・ラルです!いつもハンジがお世話になってます!」
    ペトラが興奮さめやらぬ状態のまま、奴らに自己紹介をした

    「だれが世話されてるんだよ・・・されてないし・・」
    私はため息をついた

    「へぇ、ペトラちゃんかぁ。なかなかかわいいね。今度一緒にお茶でもど・・・」
    エルドの言葉を遮る様に、私の手はエルドの口を押える

    「ばかいうな!ペトラを手籠めにしようなんて許さないからね?!」

    「えっ、お茶いきたい・・・」

    「ばかペトラ!!妊娠しちゃうよ!!!」

    私のその言葉に、エルドは涼しげな笑みを浮かべて言葉を放つ
    「大丈夫だ、ハンジ。俺はその辺抜かりはないからな」

    「そういう意味じゃないんだよ!!ばか!!」
    私は激昂した

    「ぷぷっ・・・めがねちゃん、面白い・・・ふふっ」
    その様子を眺めていたナナバが、お腹を抱えて笑い始めた

    ・・・やっぱり、変わってる・・・けど、なんだか愛しい、そう感じて首をぶんぶんと振った
  48. 176 : : 2014/04/28(月) 09:39:14
    「ねえ、これってかわいいよね・・・これ、ちょうだい」
    ナナバが和菓子のショーケースを覗きながらそうつぶやいた

    ナナバが指さしているのは、桜の花の形をした砂糖菓子が上に乗っかった、桜餅だった

    「これ?甘いものが好きなの?ナナバ」
    私は顔の赤らみを気にしながら、そう言った

    「ううん、私は甘いものは苦手・・・だけど、かわいいからさ・・・いくら?」

    「350円だよ」

    ナナバは財布から小銭を取り出して、私に渡した
    少しだけ、指先が手のひらに触れ合う

    それだけで、私の心臓の鼓動は跳ね上がった気がした

    「おい、ナナバ。そろそろ行くぞ?」
    エルドの言葉に、ナナバは踵を返した

    「ありがとうございました!!」
    ペトラは二人の背中に、何故か敬礼を施していた


    嵐の様な時間が去った

    ペトラはまだ夢うつつ状態だ
    「はぁ・・・二人とも、王子様みたいだったね・・・あんな人たちと同じ学校だなんて・・・うらやましいな」

    「まて、私はあいつらのせいで学園中でいじめにあってるんだよ?まったく・・・ペトラは」

    私はため息をついた

    「でもさぁ、あのナナバって人と会話しているハンジって、すっごく乙女な顔してるよー好きなんでしょ?そうでしょ?」
    ペトラの意外に鋭い直感に、私はどぎまぎした

    「そ、そんなことあるわけないでしょうが・・・確かに、F4の中ではまともかなぁとは思うけど・・・さ」
    さすがに好きだなんて・・・
    私は顔の紅潮が最高潮に達したように感じた

    「その恋、応援しちゃう!!」

    「勝手に応援しないでよね、ペトラ!面白がらないで!」

    「あははwハンジかわいーー」

    ペトラはそう言って、私の頭を撫でた

    「あ、そろそろ行かなきゃ・・・ダンパだった・・・やだなぁ」

    私は腕時計を見て、呟く様に言った

    「そっか、会費二万円のダンパか!楽しんできてね!」

    「楽しいのかなぁ・・・とりあえず、行ってくるね」

    「行ってらっしゃい!!」


    そして、バイト先を後にし、私は着替えてダンパ会場に向かった
  49. 177 : : 2014/04/28(月) 10:53:41
    期待!ふぁいとぉ!
  50. 178 : : 2014/04/28(月) 11:57:04
    >>蘭々さん☆
    がんばります!!おおー!!
  51. 181 : : 2014/04/30(水) 11:58:42
    ダンスパーティー会場前には、着飾った若者たちがたくさんいた

    「なにこれ・・・ラフなジーンズパーティーじゃないし・・・」
    ハンジはあきらかに浮いた格好をしていた

    呆然としていると、背後から声がかかった

    「あら、すごい恰好できてるわね?ハンジ」

    ヒッチだった
    まわりの若者たちと同じ様に、おしゃれで高そうな服を着ていた

    「こんな六本木のど真ん中のホテルで、ラフなジーンズパーティーなんてするわけないじゃない!会費2万円なのにさw」
    ひっちのとりまきの女子がいじわるそうな笑みを浮かべてそう言った

    ハンジは内心恥ずかしかったが、それを表には一切出さずに言葉を放つ
    「いいよ、私はこの恰好が好きだし。きかざりゃいいってもんじゃないしね」

    そう言って、パーティー会場へ入った

    実は足が震えていたが、気にしない事にした

    周りは高級そうなスーツに身を包んだ男性もたくさんいた
    女性はもちろんみな着飾っていて、あきらかにハンジは浮いていた

    「・・・だましたんだね、あなたたち・・・」
    ハンジはヒッチたちをにらんだ

    「当たり前じゃない!あんたみたいなどぶ女が、リヴァイさんたちに近づこうなんてするから、罰をあたえてやったのよ!」

    「帰ればいいんじゃない?回れ右して」

    ・・・ハンジはその瞬間、ぷちんと何かが頭の中ではじける音がした

    「だれが、帰るかよ・・・居座ってやるさ」

    そう言うと、会場の奥に歩を進めた

  52. 182 : : 2014/04/30(水) 12:06:51
    会場奥に歩を進めている途中で、いきなり使った後のグラスを手渡された

    「あらやだwww貧相な恰好だから、ウエイトレスと間違えられたのねwww」

    ヒッチが意地悪く笑いながら言った

    「・・・」
    私は何も気にせず、とりあえず2万円分の元はとろうと、がつがつ食べ始めた

    「・・・美味しいじゃない・・・」
    料理はとてもおいしかった
    まわりにいる奴は全員敵に見えたが・・・

    そんな様子を見ていたヒッチがまた口を開いた
    「私たちはね、あんたみたいなどぶ水のんだ貧乏女とは違うの!たっぷりお金をかけて、素敵な女性になって、F4みたいな金持ちの男をゲットするのよ。邪魔しないで」

    そう言い放った

    私は無視をした
    馬鹿につける薬なんてないしね

    その時だった
    「君、とっても個性的だね・・・どこの学校?セントトロスト学園?!あの名門かあ・・・めずらしいね、君みたいなワイルドな子もいるんだね」
    いかにも金持ちそうな、おっとりした男が声をかけてきた

    それを機に、数人の男たちに質問攻めにされるハンジ

    「君素敵だよ。今までにないタイプだ」
    一人の男性がそういった瞬間、ヒッチの静かな言葉があたりに響いた

    「ああそうだよ、こいつは中学で2回も子供をおろしているいんらん女だからね」

    私はそこでピーンときた
    そうか・・・こいつらが黒板に落書きした犯人だったんだ

    ・・・だまされた・・・
    私は内心がっくりと膝をついた
    また、信じていた人にうらぎられた気分になった

    こんなことならだれも信じなきゃよかった
    そう思った

    だが・・・負けたくない、そんな雑草魂が、私を奮い立たせた

    「だれが子どもなんかおろすかよ。ただ着飾ったばかみたいな連中なんて、こっちから願い下げさ!親のすねかじって、せいぜいままごとやってるんだね!!」

    私はそう言い放って、近くにあった肉をぽいぽいと口にいれて、会場を出た

  53. 187 : : 2014/05/01(木) 12:00:05
    「く、くやしい・・・」
    私は外をぽつぽつと歩きながら、涙をこぼしていた

    騙されたことが悔しかった
    それ以上に、人を信用して裏切られたことが悔しくて仕方がなかった

    でも、私は間違ってはいなかったと思う
    言いたいことは言えたと思う

    F4みたいなやつと付き合いたいって?結婚したいって?
    冗談じゃない・・・なんであんなのがいいの?わかんない

    金さえあればいいの?

    私はお金より、本当に好きな人を恋愛したりしたい

    好きな人・・・
    その瞬間、またある人の顔が頭に浮かんだ

    そして、その顔を思い出した瞬間、自然と涙が止まった

    そうだ、また明日学校へ行こう

    そして、非常階段に行こう

    それだけを楽しみに、私はまた前へ進むことを決めた
  54. 188 : : 2014/05/01(木) 16:58:49
    ハンちゃん…ナナバ様が心の支えになり始めているんだね…、辛すぎて涙が!
    でも負けずに頑張ってほしいぜ!(>_<)ゞそして続きに期待だぜハニー☆はぐはぐ
  55. 191 : : 2014/05/02(金) 10:15:57
    次の日・・・・
    私は普段通り学校に行き、たまに投げかけられる罵声にもめげる事なく授業を受けていた

    でも・・・昨日の事がショックで、どうしても頭の中がフリーズ状態だった

    そうだ、非常階段へ行こう・・・そう思ったら行動は早い

    私は4限目を終えたと当時に、非常階段に駆け込んだ

    非常階段の扉を開けたその先には・・・

    「あ、めがねちゃん」
    純粋な瞳をこちらに向けた、ナナバの姿があった

    「ナナバ・・・」
    私がその場で動かず立っていると、ナナバが手招きをした

    「こっちへきなよ?さあ」
    そう言って、自分が座っている横を指さした

    「うん」
    私は素直にそれに応じ、ナナバの隣に腰を下ろした

    ナナバはしばらく本に視線を向けていたが、ふとこちらをみて呟く様に言葉を紡ぐ
    「めがねちゃん、何かあった?ちょっと元気がないように見えるね・・・ま、どうでもいいけど」

    ・・・最後の一言は余計だけど、ナナバは私の方を心配そうな表情を浮かべてそう言ってくれた

    「・・・まあ、いろいろ」

    「そっか、まあいろいろあるのが人生だしね」
    ナナバは肩をすくめて、また本に視線を移した
  56. 192 : : 2014/05/02(金) 10:23:17
    「実はさ・・・クラスで黒板に書き込みがあって・・・」

    「ああ、知ってるよ。君すごいね、もう二回も堕胎してるって」
    涼しげな顔をしてそんなことをいうナナバに、私は自分の膝をバン!と叩いた

    「うそだよ!そんな事あるわけないじゃない!」

    「はは、わかってるよ。だって処女なんだよね?・・・ま、それこそどうでもいいけどね」
    ナナバはまた肩をすくめた

    「まあ、どうでもいいよね」
    私はうつむいた

    「でもさ・・・そんな事を言われようとまっすぐ前を向いてる君は素敵だと思うんだ。これはどうでもいい話じゃないよ」
    唐突にそんなことを言ってくるナナバに、私はどきどきを隠せなかった

    「あ・・・ありがと」

    「今までさ、こんなにF4に食って掛かって、しかも無事な人って初めてなんだよ。君って希少種だよね」

    「何その化け物の様な呼び方・・・」
    私ははぁとため息をついた

    ナナバは鈴のなるような声で笑って、言葉を発する
    「はは、ほめ言葉のつもりだよ、めがねちゃん」

    その言葉に、私は嫌な事すべて、帳消しになった気分になった




  57. 199 : : 2014/05/07(水) 08:31:39
    「あっ、ねぇねぇめがねちゃん!」
    ナナバが突然今までに無いような大きな声を発した

    「な、なに?ナナバ」

    「あのさ、フランスと日本の時差ってどれくらいなのかな?」

    何で突然フランスとの時差なんだ・・・?
    変な人

    「えっと、たしか日本の時間より8時間戻せばいいのかな」

    「そっか!ありがとうめがねちゃん!物知りだねー君」
    ナナバはそう言って笑顔を見せた

    このフランスの時差を聞いてきた事が、後々自分の心に重くのしかかってくるとは、この時私は知る由もなかった
  58. 200 : : 2014/05/07(水) 09:21:40
    「ねえちょっと、あれなに?」
    ハンジとナナバが非常階段で話している所を発見した人物がいた

    よりによってヒッチ達だった

    「ヒッチ・・・あいつ、リヴァイさんだけじゃなくて、ナナバさんにまで手を出してるなんて・・・許せなくない?」
    ヒッチの取り巻きがそう言った
    ヒッチは頷く

    「これは・・・呼び出し決定だわ。例のことも教えてあげないとだし・・ね」
    ヒッチはにやりと不敵な笑みを浮かべた



    放課後・・・

    「ハンジ、ちょっと顔かしな」
    ヒッチは取り巻きを引き連れてハンジに詰め寄った

    「・・・いいよ」
    断るのもめんどくさいハンジは、素直に応じた
    どうせこんな着飾るしか能のない奴に、自分をどうこうできるなどと思わなかったからだ

    校舎の中庭に呼び出されたハンジは、ヒッチ達に案の定因縁をつけられた
  59. 201 : : 2014/05/07(水) 09:21:54
    ―中庭にて―

    「あんた、リヴァイさんだけじゃなくてナナバさんとまで階段でなかよくしてたじゃないの?いったいどういうこと?淫乱女が!」
    ヒッチがそう切り出してきた

    「なんだよ、うるさいな。リヴァイと仲良くした覚えなんかないんだよ。ナナバとは確かに階段で話をしていたけど、それだけさ」
    私はふんと鼻を鳴らした
    だが、ヒッチの不敵な笑みはかわらない

    「ま、強がり言ってるのも今のうち…これ、見てみなさいよ」
    そう言ってヒッチがハンジに見せたのは、お高めの服が載っているお嬢様御用達の雑誌だった

    その表紙を飾っているのは、金の髪がさらりと肩のあたりまであり、大きな瞳ではかなげで、だが意志のしっかりした目をしている、美しい女性だった

    「ヒストリア・レイス・・・ソルボンヌ大学在学・・・セントトロスト学園大休学中、ミス・ティーンオブ・フランス?」

    「そうよ、それがナナバさんの恋のお相手。あんたなんかとは雲泥の差ね。ちなみにヒストリア様はもうじき日本に帰国なさるのよ?残念ねwハンジ」

    華麗なる経歴、華麗なる美貌
    私が持っていないものすべて持ち合わせているような、まさに童話に出てくるお城のお姫様の様な人

    そして、ナナバの好きな人
    ・・・そうか、だからフランスとの時差を気にしていたのか・・・

    私は、頭を強く殴られたような衝撃を感じた気がした
  60. 206 : : 2014/05/08(木) 10:47:06
    「ね、ハンジ。あなたみたいなうすよごれた泥女とは格が違うのよ?わかるでしょ?!あんたみたいなのをナナバさんが本気で相手するはずないじゃない?!わかったらさっさとこの学園からでていってよ!!」
    ヒッチの取り巻きはそう言ってハンジをどんと後ろに押した
    もう一人の取り巻きは持っていた図鑑を投げつけた

    「・・・・」
    私は言い返すこともできず、ただ茫然とその暴力に耐えるしか、なかった

    いろいろな思いが交錯し、耐えきれなくなりふと目を伏せたその時―

    「おいてめえら!誰がこんなことをしろと命令した?!」

    最近聞きなじむようになったこの声

    「あっリヴァイさん!」
    ヒッチととりまきがあわてて私に手を上げることを止める

    「俺がいつこいつに手を出していいといった?!こいつをいじめていいのはな・・・俺だけなんだよ!ばかが!わかったらさっさと散りやがれ!10秒以内にいなくならなけりゃ、お前らの下駄箱に赤札が行くからな!」

    リヴァイのその言葉に、ヒッチたちは蜘蛛の子を散らす様に消えた

    私はがくりと地面に膝をついた
    かろうじて涙はこらえていた

    リヴァイ「ふう・・・うぜえ女どもだったな・・・おい、ハンジ、大丈夫か?」
    リヴァイがいつになく優しげな声で、私にそう声をかけた

    私はその言葉におもわず、涙をこぼしてしまった

    リヴァイ「お・・・おい、なくなよてめえ・・・」
    リヴァイは真っ赤になりながら、座り込む私に手を差し出した
  61. 207 : : 2014/05/08(木) 10:51:10
    その手をつかもうとして、寸前のところで思いとどまる
    ・・・そうだ、大体いじめられる原因をつくってるのがこいつなのに!!

    「あんたのせいでいじめられてるんだよ!ばーか!!」
    私は涙をぽろぽろとこぼしながらそう言った

    「・・・あんな女にやられたくらいで泣くなんて、おまえらしくねえじゃねえか?なんかあったのか?」

    リヴァイはバカなはずなのに、何故かこんな勘だけはするどい・・・

    「何も・・・ないよ!!ばーか!!!!」
    私はその手を振り切って、その場を走り去った

    私はあんな最低な奴の言葉で、何故か涙がでた
    リヴァイの言葉で救われた?
    リヴァイの行動に、救われた?

    ・・・違う、あいつは最低な奴なはず
    私を校内でいじめにあわせている張本人、いいやつなはずがないんだ

    でも・・・最初に感じていたイメージとは若干、少しずつ・・・何かが変わってきているような気がしていた




  62. 210 : : 2014/05/09(金) 10:46:07
    私がリヴァイと別れた後、しばらく中庭をぶらついていると、また声がかかった

    「おっ勤労処女!こっち来いよ」

    私が振り向くと、エルヴィンとエルドのナンパ師コンビが庭で座ってランチをしていた

    「な、なんか用?」
    私は突然有りえないやつらから声をかけられて、どぎまぎした

    「いや、俺とエルヴィンだけってなんだか女っ気なくてさびしいだろ?だからお前みたいなのでも一応女だから呼んでやってるんだ。ほら座れ座れ」

    そう言って半ば強引にエルドに腕を引かれて、隣に座らされた

    「ほら、ハンジ。これを食べなさい。うまいぞ?」
    エルヴィンはそう言って、私にサンドイッチを手渡してくれた

    一口食べると、本当においしかった
    そういえば、久々に誰かと食べるランチだ

    いじめられている間、いつも一人でお弁当食べていたしね

    「うん・・・美味しい」
    私がそういうと、エルヴィンはわしゃわしゃと私の頭を撫でてくれた

    「だろう?俺のおすすめだからな。しっかり食べなさい。お前は少しやせすぎだ」

    「確かに・・・もう少し胸に肉が付かなきゃ面白くないな」
    エルドはそう言いながらニヤリと笑った

    「なんでそこで胸の話なんだよ!」
    私はあわてて両手で胸を隠した

    「ない胸隠しても仕方がないだろう?早く食べなさいハンジ」
    エルヴィンの言葉どおり、私は胸のことはあきらめてサンドイッチを食べることに集中する事にした
  63. 214 : : 2014/05/11(日) 20:18:59
    F4もなんだかんだ言っていい人ですね!!
  64. 216 : : 2014/05/12(月) 09:24:10
    エルド「そう言えば、もうすぐヒストリアが帰国するらしいな」

    エルドはそう言って、コーヒーを口に含んだ

    エルヴィン「ああ、そうらしい。どうやらJALのキャンペーンガールに選ばれたらしいぞ。まちのあちこちでヒストリアのポスターが貼られるらしい。まるでアイドルのようだ」

    エルド「まあな、でもヒストリアはアイドルというよりは女優だろうな・・・」
    エルドは何かを思い出す様に視線を遠くに移した

    エルヴィン「そうか、だから最近のナナバはテンションが高いんだな」
    エルヴィンが納得したように頷いた

    ハンジは思い切って気になる質問を二人にぶつけてみることにした

    ハンジ「ねえねえ、ヒストリアってどういう人なの?」

    エルド「ヒストリアはな、レイス財閥のお嬢様だ。見た目だけじゃない、頭もよく優しく、まあ最高の女だろうなと思う」

    エルヴィン「ナナバの初恋の人でもあるよ」
    エルヴィンの言葉に、ハンジは胸がずきんと痛んだ

    ハンジ「そうなんだ・・・」

    エルヴィン「ナナバは小さい頃は今よりももっとおとなしくてな・・・というか、根暗というかな?ほとんど何も話さず、誰とも遊びもしない奴だったんだ。あいつは長男で、家がすごく厳しいところでな・・・おやじにかなりきつくしつけを施されていたらしい・・・それで、精神的にまいっていたんだ」

    エルド「そうそう、暗かったよな。で、そのナナバを根気よく遊びにつれだしていたのが、ヒストリアなんだ。そのうちナナバはヒストリアにだけは心を開くようになってな・・・で、今の様に、まあ・・・相変わらず変わったやつだしあまりしゃべらないが、気さくなところも出す様になった、ってわけさ」

    ハンジ「なるほど・・・」
    ハンジは思った

    ヒストリアは見た目も美しく、聡明であるという
    そのうえ、傷ついた幼いナナバの心をいやすほどの優しい人物

    ハンジ「天はニ物を与えないなんて、うそだよね」
    ハンジはため息をついた

    エルド「当たり前だろ?俺たちをみろよ。何物でも持ってるからな?」

    エルヴィン「まあな」

    ハンジ「ばーか」
    ハンジはそう言って舌をぺろっとだした

    エルヴィン「ま、ハンジはそうしてばかみたいな顔していたほうが似合うぞ。さっきの様なくらーい顔は、お前には似合わん」

    エルド「そうだな、お前がくらいなんて気持ち悪いったらないな。あほみたいな顔してろよ。で、俺たちを笑かしてくれ」

    エルドはそう言ってポンとハンジの肩を叩いた

    ハンジ「お前らぁぁあ!あほみたいな顔といい笑かしてくれといい・・・堪忍袋の緒がきれたぁぁぁ!」
    ハンジはいきり立って、エルドとエルヴィンに詰め寄った

    エルヴィン「おお、こわ・・・とでもいうと思うか?案外愛らしいかもしれん。怒っているほうが」

    エルド「俺も、怒ってるほうが好きかもしれないな」

    二人のその言葉に、ハンジはあきらめたかのようにサンドイッチをぱくりと口にくわえた

  65. 219 : : 2014/05/13(火) 11:29:38
    学校からの帰り道、エルヴィンとナナバから聞いたヒストリアさんの情報を頭の中で反芻していた

    ヒストリアさんは、とっても美人で優しくて素敵な人なんだろう

    自分とは住む世界が違う人なのだろう

    私はため息をついた

    私はやっぱり、ナナバが好きなのかな・・・

    ナナバとは住む世界が違う
    ヒストリアさんとも、住む世界が違う

    私なんかが憧れていい人ではなかったんだ、ナナバは

    荒野に咲く一輪の花の様なナナバに心惹かれるのは、でも仕方がない事だと思う

    憧れるくらい、いいじゃない・・・

    こっそり、誰にも知られずに、憧れているだけなんだから



    とぼとぼと歩いていると、駅前に大きなポスターが貼られていた

    そのポスターには、美しい女性が凛としたたたずまいをみせながらも、ふわりとした笑顔で、水着姿で映っていた

    そのポスターの頬に、愛おしげにキスを落とす人物を、私は見てしまった

    ナナバだった

    あまりにも絵になるその光景に、私はめまいがした

    「・・・あ、めがねちゃん」
    ナナバが私に気が付き、歩み寄ってきた

    私は、動悸を隠すのに精いっぱいだった

    「なに・・・あんな、ポスターなんかにキスしちゃって」
    思わず、そう口走ってしまった

    その瞬間、ナナバの柔らかなほほ笑みが、固まった様に見えた

    視線がするどく、私の顔を刺す

    「・・・」

    その瞬間、ナナバが私の腕をぐいっとひっぱる

    「あっ」

    私がそう口走った瞬間

    ナナバの唇が、私の頬に落とされた

    「めがねちゃん・・・私のことが好きなんだよね?こうして、欲しかったんだよね?」

    そういって、いたずらっぽく笑う、ナナバ

    「・・・だ、誰が・・・」
    いつものナナバとは違う雰囲気に私は面食らった

    「なんでも、してあげられるよ。じゃあね・・・」

    ナナバはそう言って、去って行った

  66. 224 : : 2014/05/14(水) 10:45:01
    次の日・・・

    「いやああーーんヒストリア様、やっぱりすてきーー!」
    クラス内では街中で貼られていたポスターの話題で湧きかえっていた

    「すっごい美人だよな・・・しかも社長の娘。ピアノにバレエに、しかも勉強までおできになる、スーパーウーマンだよな」

    どうやらヒストリアさんは本当にすごい人らしかった

    「うちの学園の伝説の一人だもんなー。もう一人は、リヴァイさんのお姉さまだけどな」

    ・・・リヴァイのお姉さん?伝説?なんなんだろ
    きっと暴力沙汰でもおこして伝説作ったんだろうね、うん

    「・・・やっぱりどこぞの馬の骨の女とはちがうわー。ヒストリアさんにかなうはずがないのよねー」

    私に聞こえよがしにそう言ってくるのは、ヒッチと取り巻きたち

    「・・・」
    私は無言で教室を後にした

    そんなこと、私が一番よくわかっている
    ヒストリアさんに自分がかなう部分なんて、どこにもないことくらいわかっている

    俯きながら廊下を歩いていると、ごんと人にぶつかった

    「いた・・・っ」
    前を向くと、そこには・・・

    「ようハンジ。前みてあるけよな。ああ、俺に抱き着きたかったのか」
    ・・・リヴァイだった
    こおの勘違い野郎が

    「だれが抱き着きたいんだよ、そんなことクソほどにも思っていないよ」
    私は苦虫をかみつぶした様な顔をリヴァイに向けた
  67. 225 : : 2014/05/14(水) 10:49:52
    その時だった

    「おーいリヴァイー!ヒストリアが帰ってきたぞーー!!」
    エルドが廊下の端からそう叫ぶのが見えた

    エルヴィンが横にいる
    そして・・・

    「ヒストリア・・・」
    その横にいるナナバが、呆然と立ち尽くす

    「ナナバ・・・大きくなって!!」
    立ち尽くすナナバにふわりと抱き着きキスをする、美しい女性

    その人こそが、ヒストリア

    ナナバの瞳が、今まで見た事のないほどに潤んでいるのが私の所からもはっきりわかった

    どこからどう見ても、絵になる二人

    私は完全に、二人が絵の中の世界の人に見えて、一歩ずつ、後ずさった

    私はここにいてはいけない、そう思った
  68. 228 : : 2014/05/15(木) 09:47:29
    ヒストリアさん、すごくきれいだったなぁ・・・

    美人でお金持ちで、すごく優しそうな人だった

    ナナバが好きになるほどの人だもん、当然だ

    うちなんて・・・

    「パパの若い頃はなああ、献血してそのジュースをのんでな!夏の暑さをしのいだんだぞ」

    「パパはバイトもたくさんしていたわよ」

    ・・・こんなんだもん、比べること自体まちがってる

    そうだ、私は不相応にもあんな金持ち学園に入った、そのこと自体間違ってるんだ

    だから、明日からは現実に戻ろう・・・現実の、普通の庶民の自分の立ち位置に、戻るんだ

    ナナバとも距離を置こう・・・そうじゃないと、自分が崩れてしまいそうだから
  69. 229 : : 2014/05/15(木) 10:13:51
    六本木のとあるレストランにて

    「ほんと、みんな大きくなったわね」
    F4のメンバーと、帰国したばかりのヒストリアが食事を楽しんでいた

    「ヒストリアは相変わらず美人だな。ポスターもすごくきれいだった。大人の色気というのかな」
    そう言うのはエルヴィン

    「あなたは相変わらず口がお上手ね。その口でまた年上の女性を口説きまくっていると聞いているわよ」
    ヒストリアはエルヴィンに苦笑した

    「そういえば、リヴァイ、お姉さんは元気なの?」

    ヒストリアがリヴァイに話を振った

    「ああ、姉ちゃんは結婚して、アメリカに行ってるよ」

    「あら、さびしいわね。リヴァイはお姉さんと仲良しだったものね」

    「あの、強烈な姉さまだよな、超美人だが。そういえば!その姉さまに匹敵するような強烈なキャラが学園にいたんだ、ヒストリア」
    エルドがヒストリアにそう声を掛けた

    「ああ、そうだ!ハンジっていう奴な!」
    それに同調するエルヴィン

    リヴァイが首を横に振る
    「あんなやつねえちゃんの足元にもおよばねえよ!!ねえちゃんは美人だ!」

    エルヴィン「だが、あの蹴りとか、性格の強烈さは勝るとも劣らんと思うぞ」

    リヴァイ「・・・う、ま、まあそうかも・・いや!!ちがう!」

    ヒストリア「・・・ナナバは一言もしゃべらないけど、しんどいの?」
    ヒストリアが突然そう切り出した

    ナナバはレストランに入ってから一言も話していなかったのだ

    ナナバ「そんな事ないよ」
    ナナバはぼそっと呟いた

    エルド「ナナバは昔からうれしいと言葉数が少なくなるよな、だからうれしいんだよきっと」
    エルドはそう言ってふっと笑みを浮かべた

    ナナバ「そ、そんなんじゃないよ!」
    ナナバは頬を染めた

    ヒストリア「そういえば、ナナバは彼女はいるの?」

    ナナバ「いないよ」

    ヒストリア「あら、こんなにいい男なのに彼女がいないなんて信じられない。男を磨くためにも女の子と付き合いするのよ?そうね、モデルの仲間でも紹介してあげるわ」

    ナナバ「・・・・いらないよ!」
    ナナバは顔を真っ青にした

    エルヴィン「(ああ、ヒストリア、ナナバの気持ちを知ってていうのか・・・)」
    エルヴィンは心の中でつぶやいた

  70. 231 : : 2014/05/16(金) 09:39:21
    ヒストリア「そうよね!合コンなんていらないわよね?ナナバは私のナナバだもんね」
    ヒストリアはそう言うと、ふてくされるナナバをぎゅっと抱きしめた

    ナナバは一瞬頬を染めたが、すぐにヒストリアの腕を振り払う
    ナナバ「ヒストリア!貴女はどうしてあんな、あんな恰好でポスターにうつったんだよ・・・皆が見るんだよ?」

    ナナバは泣きそうな顔でそう言った

    ヒストリア「・・・あ、あのポスターのこと?水着だから、大丈夫よナナバ」
    ヒストリアは優しげに微笑んだ

    ナナバ「そんな、だって、裸・・・みたいじゃないか!」

    ヒストリア「・・・ナナバ・・・貴方は・・・もう。大好きよ」
    ヒストリアはナナバをもう一度抱きしめた

    ナナバ「・・・・・・・・」

    ナナバは知っていた
    ヒストリアの大好きが、自分だけに向けられた物ではないことを

    ナナバはエルヴィンも、エルドも、リヴァイも大好き、だ

    自分と同じくらい、大好きだ

    ヒストリアにとって、自分は特別な存在ではないことを、ナナバは知っていた

    抱き締められながら、ナナバはふと目を伏せた
  71. 234 : : 2014/05/23(金) 08:26:38

    次の日

    校舎の廊下をとぼとぼと歩く私
    昨日のナナバとヒストリアさんを見て、私はつくづくあの人たちと住む世界が違うんだなあと実感した
    そう、もうこれ以上あの人たちに近づかない方がいいんだと、そう思った

    あの、ナナバの純粋でまっすぐな瞳
    不思議な雰囲気
    美しい顔立ち

    全てに惹かれている事に気が付いたけれど、私には届かない世界
    私には届ける事ができない想い

    だから、諦めよう、そう思った

    そんなことを考えながら歩いていると、後ろから頭をぽすっと叩かれた

    「よう、三つ編みなんて貧乏人が好きそうな髪型だよな」
    ・・・空気読まないやつだな・・・

    後ろを振り返ると、案の定したり顔のリヴァイがいた

    こいつも背は低いが顔はいい
    しかもF4の他の3人と比べても実家の金持ち度は群をぬくほど、世界的に有名な財閥のおぼっちゃん

    こいつとも本来なら世界が違うんだ

    ・・・なのにこうずけずけと人の世界に入り込んでくるこいつ

    今はこいつの存在が疎ましくて仕方がなかった

    「ほっといてよ、貧乏なんだから仕方ないだろ」
    私はそう言って、リヴァイを振り切るように駆け出した

    「お、おい・・・まてよ」
    リヴァイがそう制止しした気がしたが、無視した

    その時・・・
  72. 235 : : 2014/05/23(金) 08:42:27
    「ハンジちゃん?ハンジちゃんだよね?!」
    廊下の先から、私の名を呼ぶ声がした

    この学園で今私の名前を堂々と呼ぶ人はいないはずだ
    なぜなら、私は赤札のお尋ね者だから

    なのに声を掛けてくるって・・・
    注意しようと視線を廊下の先に向けると

    「あ・・・モブリット君?」

    なんと、ぱたぱたと私に駆け寄ってくるのは、幼馴染のモブリット君だった

    「ハンジちゃん!すごく久しぶりだね!元気にしてた?この学園に通ってたんだ!」
    モブリット君はがしっと私の手を握りしめてそう言った

    彼は私より少し背が高い、普通の外見の青年
    少し気の弱そうに見えるし、実際気の弱いところがあった

    幼稚園と小学校低学年までは同じクラスだったのだ
    その時は私より背が低くて泣き虫で、よくいじめられていたので、私がよく助けに入っていた

    「う、うん、奨学金でね」

    「僕はさ、農家やってたじいちゃんが土地を手放してさ・・・ほらよくある公共用地買収ってやつだよー。あれでまとまったお金が入ってきてね、まあ、いわゆる土地成金てやつだよ。恥ずかしいんだけどさ!で、東京に引っ越してきたんだ」
    モブリット君はにこにこしながらそう話していた

    そこで思い出した
    私とこんなに仲良くしゃべったらよくない事を

    「あのさ、モブリット君・・・私とはあまり仲良く話さない方が・・・」
    私はおずおずそう話した

    「え、どうしてだよ・・・こんな名門学園に入るのがすごく不安で・・・君がいたから今すごく安心しているのに・・・」
    悲しそうな顔をするモブリット君

    それをみているとなんだかいたたまれなくなってきた
    ・・まあ、たまに私に話しかけてくる人いるし、大丈夫か・・・

    「そ、そうか・・そうだよね。うん」

    「ハンジちゃんは昔ほんと強かったよね!僕はよく君に助けられたよー。勉強も運動も、虫取りもかんけりも、全部ハンジちゃんの独壇場だったよね!」

    「・・・そう、かな。うん」

    「そうだよ!良く近所に虫取りに行ってさ、花の蜜吸ったりしたよね!」

    「…小さい頃はよくそうして遊んだね!」

    私はだんだん楽しくなってきた

    こうして懐かしい子どもの頃の話をすることも、親しげに話しかけてくれる友人も、今は学園にはいないに等しかったから

    「二人でさーがりがりくんのあたりの棒もって、駄菓子屋さんにいってさ、わけて食べたよね」
    モブリット君はそう言って、なぜか顔を赤くした

    「そ、そうだね!あれ当たるとうれしいんだよねー!!」

    「今でもガリガリ君はよく食べるよ、僕!」

    ああ、そうだ、私がほしかったのはこういう、普通の感覚で会話ができる友人・・・

    私はとても幸せな気分になった

    後ろで苦虫をかみつぶした様な顔をしているリヴァイには気が付かず・・・



  73. 241 : : 2014/05/26(月) 09:50:22
    私はモブリット君と同じクラスになった

    昼休み、一度も来た事がない高校のカフェテリアに足を運んだ
    何故来た事がないかって?
    こんなところでランチができる様な、裕福な家庭じゃないからだよ

    でも今日は・・・

    「モブリット君、本当にいいの?ごちそうしてもらっちゃって」
    モブリット君がお弁当を持ってきておらず、一緒に来てほしいと頼まれたのだった

    その上、カフェテリアのランチをおごってもらう事に・・・

    「いいよ、ハンジちゃん!お金だけは持ってるから気にしないで!僕はハンジちゃんのお弁当を食べるよ!・・・うわあ卵焼き美味しい!
    モブリット君は私にカフェテリアのランチを食べさせておいて、自分は私が作ってきたお弁当を食べていた

    嬉しそうに顔を綻ばせている彼を見ていると、なんだか幸せな気分になれた

    「カフェテリア初めてなんだ、とっても美味しい!」

    「美味しいならよかったよ!また来よう?ね」
    モブリット君は笑顔でそう言った


    そんな私たちに鋭い視線を向けていた人物に気が付くはずもなく・・・
    私たちは愉しいランチの一時を過ごした
  74. 242 : : 2014/05/26(月) 10:03:49
    放課後―

    「ハンジちゃん、一緒に帰ろう?」
    モブリット君と下校する事になり、二人一緒に玄関に行った

    「あれーこれなんだろう、赤い紙が貼ってあるよ?歓迎しますってことかなあ?」
    のんきなモブリット君の声に、私はどきっとした

    「えっ?!」
    あわててモブリット君の下駄箱を覗く

    そこには・・・
    赤札が貼られていた

    「ハンジちゃんどうしたの?なんでそんな顔・・・うわっ!」
    いきなりモブリット君にぶつけられた、生卵

    「モブリット君ごめん!説明は後でするから!逃げよう!」
    私はモブリット君の手を取って駆けだそうとしたその時・・・

    行く先で立っている人物に気が付いた

    私はそいつをぎろりと睨む

    「リヴァイ・・・あんたこれいったいどういう事?」

    「どういうことだと?そう言う事だ」
    リヴァイはふんと鼻で笑った

    「私をいじめの対象にするのはいいよ!なんで関係のない、今日来たばかりのモブリット君に対してそんな仕打ちをするんだよ?!」

    私は激昂し、リヴァイに詰め寄った

    「お前が・・・お前が悪いんだ!」
    リヴァイの言葉に、私はわなわなと全身を震わせる

    「なんで私が悪いんだよ、この脳足りんの大馬鹿野郎が!私の唯一のオアシスを汚すようなマネしやがって・・・絶対に許さん!」

    「じゃあなんだ?あいつは脳があるのかよ?!」

    「少なくともあんたよりはあるね!大有りだね!!」

    はぁはぁと息を切らせながら私は叫んだ

    「お前あいつが好きなのかよ?!」

    「ああ、好きさ!あんたみたいな脳足りん男よりも何百倍も大好きだよ!!!」

    私がそう言った瞬間

    リヴァイの手が私の頬を打った

    「・・・あ、すまん」
    リヴァイは我に返ったように謝った・・・だけど私は・・・

    「て・・・・めええええ!女の顔を叩くなんてなんて奴!一回死んでこぉぉい!!!」
    そう叫びながら、リヴァイに飛び膝蹴りを食らわせた

    そして、モブリット君の手を引いて学園を逃げ回った
  75. 248 : : 2014/05/29(木) 09:46:31
    「ふう・・・どうやらまいたみたいね・・・」
    私とモブリット君は学園中逃げ回り、人けのない中庭の茂みに隠れていた

    「な、なにがどうなったんだい・・・?なんでこんな目に・・・」
    モブリット君は頭から生卵やらゴミやらぶつけられて、全身ぼろぼろになっていた

    …もちろん私も同じ状態だが

    「よく、わからないけど、この学園にいたら、さっきのあのクソ忌々しい奴に逆らったらこうなるんだ。なんでモブリット君が狙われるのかはよくわからないんだけど・・・だからね、君は転校したほうがいいよ。うちは貧乏だから転校なんてする余裕ないけど・・・」

    私はモブリット君の手を握りしめて言った
    モブリット君は目に涙を浮かべていたが、首を横に振った

    「僕が転校したら・・・君は一人になるじゃないか」

    そう言って、私の手を握り返してきた
    私をじっと見つめるその瞳は、小さい頃ただいじめられて泣いていたモブリット君の瞳とは違って見えた

    「モブリット君・・・」
    私はその気持ちがとてもうれしくて、涙が零れ落ちた・・その時だった

    「あら、こんなところに赤札カップルが隠れてるわ・・・お似合いの飾りをつけてねw生卵のww」
    そう言うのはヒッチとその取り巻き達だった

    「リヴァイさんがあんたなんか助けたのは気まぐれなんだよ、本来ならこうなるのがふつうだよ!貧乏人が!」

    そう言われても私は言い返せない、実際貧乏人だから

    「な、何だい君たちは!失礼だな!」
    モブリット君はヒッチたちにくってかかった

    自分からそんなふうに立ち向かっていくなんて、モブリット君は強くなったなあ・・・私はそう感じた

    「汚い!寄らないでよ?!みんな―ここに赤札カップルがいるわよーーー!」
    ヒッチの声に、生徒たちの怒号が近づいてくるのがわかった

    「モブリット君、逃げよう!」
    私はモブリット君の手を引いて、その場を一目散に立ち去った
  76. 251 : : 2014/05/30(金) 11:06:47
    トロスト学園大学カフェテリアにて

    「なんだか、外が騒がしいわね」
    ヒストリアがテラスの外にちらりと目をやって小さな声で言った

    「ああ、またリヴァイのやつが勝手に赤札貼りやがったからな・・・」
    エルドがため息まじりにつぶやいた

    リヴァイはふんと鼻を鳴らす
    「俺たちはゲームの提供者だろうが?たまには楽しませてやらなきゃならねえ責任がある」

    「リヴァイたち・・・またそんなくだらない事をやっているの?いい加減にすればいいのに」
    ヒストリアは目を伏せてため息を漏らした

    「俺たちはもうやめようと思ってるんだ。だが、リヴァイが暴走するからな」
    エルヴィンも同じようにため息を漏らした

    「ちっ」
    リヴァイは舌打ちをした

    「そんな事よりヒストリア、パリではいい男いたのか?」
    エルヴィンが興味深げにヒストリアに問いかけた

    「うーん、運命の人と言ってくれる人はたくさんいたわ・・・でも、こちらが運命を感じなかったらそこまででしょう」

    「なるほどな」
    頷く一同

    「あ、そういえばナナバ、あなたとってもいい男になったわね?彼女はいるの?」

    ヒストリアはずっと俯いて黙っているナナバに声を掛けた
    ナナバはちらりとヒストリアの方に視線をやった

    「ううん、いないよ」

    「あら、どうして?あなたほどの男ならより取り見取りなはずなのに。たくさん付き合って、男を磨かなきゃだめよ?」
    その言葉に顔を真っ青にするナナバ

    そして、エルドがあわててその場を取り繕う
    「あ、その話は置いといてだな・・・今回のサマースクールはハワイだろ、まあ飽きたけど無難なとこか」

    「そ、そうだな・・・まあ暇だし行くしかないだろ。現地の人妻とのアバンチュールも待ってるしな」
    そう言うのはもちろんエルヴィンだ

    「お前・・・ハワイにまでいるのかよ、そういう人妻」
    リヴァイが吐きそうな顔でそう言った

    「俺は現地調達だな」
    エルドはにやりと笑った

    「お前らの下半身どうにかしなきゃいけねえな・・・」
    リヴァイは眉をひそめた
  77. 254 : : 2014/06/03(火) 10:45:45
    大学の方までにげてきた私とモブリット君

    その目にとびこんできたのは、大きな掲示板
    そこには、サマースクールについての張り紙がなされていた

    「は、は、ハワイだって?!サマースクールに?参加費50万とかありえないし・・・」
    私は発狂しそうになった

    ハワイといえば、夢の場所
    芸能人がたむろしている、私も新婚旅行はハワイにいきたいなあなんて思ってたりするほど、金銭的に遠い場所

    それを軽々しく夏休みに行くのか、この学園の生徒は

    開いた口がふさがらなかった

    「へーハワイかあ・・・ハンジちゃんは行くのかい?」

    「行くわけないじゃない・・・50万だなんて」

    「じゃあ僕も行かない!ねえ、それならさ、夏休みは僕の別荘に来ない?熱海にあるんだけどさ。海が近くて、海水浴にぴったりだよ!あと、小さいけどクルーザーもある!」

    モブリット君が目をきらきらと輝かせて言った

    「え、え、え、別荘?!いいの?!」

    「もちろんいいよ!ハンジちゃんと一緒の夏休みなんて最高だよ!!」

    モブリット君は嬉しそうに顔をほころばせた

    その時だった

    「いたぞ―――赤札かっぷる!!」

    「中流どうしのなれあいカップルいたぞおーーー」

    ゴミをなげつけられ、生卵を投げつけられながら、私たちはまた必死に逃げた

    そして、目の前の豪華な扉をばーんとあけた

    そこはカフェテリアだった

    大学生たちが優雅にランチを楽しんでいるそんな時間

    汚い恰好の私たち

    周りから悲鳴がこだまする

    「何この子たちきたない!!!」

    「くさーーーい!!」

    私たちは一瞬足をとめた
    その瞬間・・・

    箒でがすっと頭をなぐられ、地面にたたきつけられた

    「・・・ねえナナバ、これはどういうこと?なぜこの子たちはこんな目に?」
    涼やかな声が頭上から聞こえてきた

    顔をあげると、今一番会いたくなかった人物が目の前にいた

    ヒストリア・レイス

    彼女は美しい顔をくもらせていた

    よりによって一番見られたくないところをみられてしまった

    私は、唇を強くかんだ
  78. 255 : : 2014/06/03(火) 10:57:43
    「大学のお兄様お姉さま方すみません!こいつらはすぐにひきとりますんで・・・おらっ」

    生徒が私の頭を箒の柄で叩く

    頭がいたい・・・体中がいたい
    でも、もうどうでもよくなっていた
    ただ茫然と、されるがままになっていた

    その時だった

    私の身体がふわりと宙に浮く
    「お前ら、がきくさいことやってるんじゃねえよ!!」
    その声は、ナナバの物だった
    口調は、いつものナナバとは打って変わって、厳しい物だった

    そう、宙に浮いたのではない、私の身体は、ナナバに抱きかかえられていた

    「ナ、ナナバ・・・」
    私は涙があふれてきた

    「おい、ナナバ・・・どういうことだこりゃ?お前はF4の一員だよな?こいつを助けるっていう事は、俺の仲間からはずれるってことだぜ?」

    リヴァイが焦ったように言葉をまくしたてた

    「・・・リヴァイ、君もいい加減にしろよ。ハンジは女子だ。さすがにやりすぎだとは思わないか?」

    ナナバの言に、リヴァイは首を振り、そして私を指さす

    「お前、まさかこんな奴に惚れてるんじゃねえだろうな?!」

    「・・・・」
    ナナバはそのリヴァイの言葉を肯定も否定もしなかった

    「よくわかった、お前とは金輪際絶交だ!そいつと好きにしてろ!!」
    リヴァイは机をばんと叩いてカフェテリアからでていった

    「おいリヴァイ・・・ちょっと!!」
    エルヴィンがそのあとを追う

    「とりあえず、俺たちはリヴァイをなだめてくる、すまんなナナバ」
    エルドはそう言うとその場を後にした

    「うおおおおF4決裂だぁぁぁl!これは大事件だぞ!!」
    そんな奇声とも歓声ともとれる声をはっしながら、生徒たちは大学を後にしていった

    私はしばらくそのままナナバに抱かれていたが、突然ナナバがその手をぱっと放した

    重力にさからえない私の身体は地面にたたきつけられる・・・はずが、意外と柔らかいところにおちた

    「いだっ・・・」
    真下には倒れていたモブリット君がいたのだ
    おかげで、モブリット君がクッションの役割を果たした

    「ご、ごめん、大丈夫?モブリット君」
    私はあわててモブリット君の身体からのいた

    そして、そんな私に美しい白い手が差し伸べられる
    「あなた、こっちへいらっしゃい。綺麗にしなくちゃね」

    私が顔を上げると、ヒストリアが眉をひそめて、だが限りなく優しげな瞳を私に向けていた
  79. 262 : : 2014/06/04(水) 10:01:31
    大学の女子トイレにヒストリアさんに連れられて入った

    「女の子に対して・・・ひどいわね、どうぞ、これで顔をふいて」
    ヒストリアさんはそう言って、ブランド物の綺麗なハンカチを私に手渡した

    そのハンカチで顔を拭くなんて気が引けたが、折角の申し出、遠慮なく使わせてもらう事にした

    ハンカチは美しいが、それ以上にヒストリアさんの顔が美しい
    長い睫、大きな瞳、すらりとした鼻梁、柔らかそうな唇、小さな顔…どれをとっても満点の美しさだ

    「ありがとうございます」
    私は顔を拭きながらそう言った

    ヒストリアさんはふわりと微笑みを浮かべ、少し不思議そうな顔をした
    「ねえ、ナナバはあなたの事が好きなのかしら」
    突然そんなことを言い出した

    私は思わずぶほっと吹いた

    「そ、そんなわけないです」

    「でもね、あんなに熱く人をかばうような子じゃなかったから・・・」
    ヒストリアさんは首を傾げた

    「だ、だいたい、ナナバはヒストリアさんが好きなんですよ。わ、私なんか、貴方と比べれば月とすっぽんダイヤに石ころです!」

    私のその言葉に、ヒストリアさんはくすっと笑う
    「そうね、ふふ」

    その笑いさえも、美しくて目を奪われた

    ナナバが好きになるのもわかる気がした

    「ナナバも、大きくなったものね・・・いつまでも私のナナバというわけにはいかないわね」
    そう、少しさびしげな表情でつぶやくと、私の顔に触れた

    「ナナバは、あなたのことが本気で好きです…たぶん」

    「・・・まだ、汚れているわ。女の子はいつもきれいにしていなくちゃ」
    ヒストリアさんは私の言葉を聞いているのかいないのか、ハンカチを私から取ると、そのハンカチで私の顔を拭いてくれた

    「あ、ありがとうございます・・・あ、素敵な靴・・・」
    私はヒストリアさんの足元を見て、思わずつぶやいた

    綺麗な造作が施された皮の靴

    きっとブランド品なのだろう

    こんな素敵な靴をはけば、どこまでも行けそうな、そんな気がした

    「貴女の靴は汚れているわね・・・いい?靴だけはいつもいい物を履くといいわ。いい靴を履いていると、足取りも軽くなるの、そして・・・いい靴は、いいところへ連れて行ってくれるのよ?」
    私に諭す様にそう言うヒストリアさんは、見た目だけでなく、心も綺麗な人だ

    私はそう思った
  80. 267 : : 2014/06/06(金) 09:14:00
    やっぱりヒストリアさんは素敵な人だった

    ナナバが好きになる理由がよくわかった

    見た目もだけど、中身も・・・私が敵う相手ではないことがはっきりわかった

    でも・・・あの時私を抱き上げてくれたナナバの、あの力強い腕

    F4と決裂してまで私をかばってくれた、あの正義感

    私はやっぱりナナバが好きだ

    心で思っている分には、いいよね

    そんな気持ちの時はいつものお気に入りの場所・・・非常階段へ

    そこへの扉を開けると・・・

    「あ、メガネちゃん」
    いつもの先客・・・ナナバがいた

    涼しげな顔からは、さっき啖呵を切ったとは想像がつかない

    でも、確かにこの人は私を助けてくれた

    「ナナバ・・・あの、ありがとう、さっきは助けてくれて」
    私は小さな声でそう言った

    「・・・さっき?ああ、あんなのほんの気まぐれだから。それに・・・ああいうのほんと嫌いなんだ、私」
    ナナバはそう言って眉をひそめた

    「でも、F4と決裂しちゃったよね・・・」

    「ああ、いいんだ、そんなことはどうだって。自分がいいとおもってやったんだから」
    ナナバはそう言って、ふわりと笑みを浮かべた

  81. 273 : : 2014/06/09(月) 11:06:36
    甘夏さん☆
    疑ってしまいますよね!
  82. 275 : : 2014/06/24(火) 08:28:38
    >名無しさん☆
    楽しみにしてくださってありがとう!
  83. 276 : : 2014/06/24(火) 08:42:27
    ナナバは私をふわりと抱き上げてくれた
    その時の状況は最悪な物だったのに・・・

    それを全て払拭させるような、最高の出来事・・・だった
    私は頬を染めながら、非常階段を後にした

    「あ、ハンジちゃーーーーん」
    非常階段を出ると同時に、聞き覚えのある声がした

    モブリット君だった
    「あ、モブリット君・・・て何その格好」
    私はその姿をみて唖然とした

    モブリット君は手にフライパンを、頭には鍋を被っていたのだ

    「これかい?いいだろう?家庭科室から拝借してきたんだけどさ。コンバットっぽくていいかなって」
    モブリット君はそう言ってにこっと笑った

    「ま、まあいいけど・・・」
    私は苦笑いをした

    「僕さあ・・・こんなに大勢の人に追いかけられたりするの初めてでね。だからちょっとどきどきわくわくしてるんだ!戦いのさなか芽生える愛情・・・とかさ・・・!」
    モブリット君は頬を赤く染めた

    「・・・そ、そう、うんそうだね!」
    彼は気弱な男の子だったんだけど、案外大物なのかもしれない
    この状況を悲観的にとらえないところが正直にすごいと思った

    「で、さ。熱海の件だけど・・・僕の別荘に行くっていう話・・・あれ、前向きに進めてもいいよね?」

    「あ・・・うん・・・うれしい。ありがとう」
    なんだか顔がほてってきた・・・もしかして私、モブリット君に恋でもしてるのか・・・
    いや、ちがう、なんだか頭がふらふらと・・・

    「あ・・・あつい・・・」

    「あ、ハンジちゃん?大丈夫?って、身体が熱いよ?!熱があるんじゃないのかな?!」

    「う・・・そうかもしれない・・・」

    結局私は高熱を出して、家で寝込む事になったのである
  84. 277 : : 2014/06/24(火) 08:46:55
    翌日の夕方・・・

    「あーーー熱出すなんて久しぶりだなあ・・・というか、慢性疲労のせいだなんていわれちゃったよ?」
    私はげんなりした

    慢性疲労・・・これもすべてあのF4のせいだよね
    あいつらにいじめられてから、確かに精神的にも追い詰められた状況が続いた
    慰謝料請求すればとれるんじゃないかと思うよ

    とりあえず、今日は一日ゆっくりできた
    久々に平和な一時を過ごせた

    もう少し平和を満喫しようと思い、ベッドでごろごろと横になっていた、その時だった

    「ちょっと、あなた勝手に入らないでください!!」
    母親のけたたましい声

    「土足はこまる!」
    父の声

    「うわわわわ!」
    弟の声

    なんなんだろ・・・私はベッドから起きて、部屋から玄関を覗いた

    すると・・・

    「な、な、何であんたがこんなところにいるんだよ!!」
    なんと、玄関にはリヴァイが立っていた
  85. 289 : : 2014/08/18(月) 10:48:48
    「なんであんたがこんな所に来てんのよっ!!リヴァイ・ラインベルガー!!」

    私の言葉に、両親がかちんと音を立てて固まった…気がした

    「ラ、ラインベルガー…?」

    「あの、ラインベルガー家の、ご子息様でいらっしゃいますか…?」

    両親は震える声でそう言った

    リヴァイは至極真面目な顔つきになって、丁寧にお辞儀をした

    「はい、リヴァイ・ラインベルガーです。いつもハンジさんには学校でお世話になっています」

    なっ、なんだよこの話し方はっ!!
    なにいい子ぶってんの…

    背中に虫酸が走った

    と思ったら、両親がリヴァイにひれ伏した

    「ラインベルガー様!!よ、ようこそお越しくださいました!!このような所に…ほらっハンジ、ぼーっとするな、お茶の準備だ!!」

    「ささ、ラインベルガー様、どうぞ」

    ひきつったような怪しい笑みを顔に張り付けて、両親がリヴァイにへりくだっていた

    私はそれを見て、はぁとため息をついた

    ……だめだこりゃ

    私は諦めて、お茶を用意する事にした

    めちゃくちゃ、気にくわないけど

    っていうか、なんで来るんだよ…

    頭が痛い…ますます熱が上がった気がした
  86. 292 : : 2014/08/19(火) 10:32:35
    私が痛む頭を抱えて部屋に戻ると、奴が後からついてきた

    「ちょっと…なんで着いてくるんだよっ!!今から私は寝るんだからね!?頭痛いんだよ!!」

    私はこめかみを押さえながら、リヴァイに詰め寄った

    リヴァイは涼しげな表情で、口を開く

    「俺は見舞いに来てやったんだぜ?ばかは風邪ひかねえはずなのに、お前が熱だしたって聞いて、なんかの間違いじゃねえかと思ってな」

    「見ただろ!?ほんとに熱だしてんの!!さっさと帰れ!!」
    私はドアを指差しながら叫んだ

    「ほう…どれどれ」
    リヴァイはそう言うと、突然わたしの額に手を当てた

    「ちょ、ちょっと!触るな!!」

    「熱見ただけだろうが。やっぱり熱あるな。お前休んでろ」

    リヴァイはそう言うと、わたしの身体をベッドに押し倒した

    「ぎゃぁぁぁ!!なにす…」

    「ほら、布団も掛けてろよ?」

    私が叫ぶのと、リヴァイがわたしの体に布団を掛けるのはほぼ同時だった

    「早く帰ってくれよ…」
    私は何となく恥ずかしくて、しどろもどろになりながら言った

    「お前んち、俺んちの玄関よりもちいせえな。人ってこんなところで住めるんだな。あるいみショックだ」
    リヴァイは目を見開き、そして感心したような表情で、わたしを見た

    「こらぁぁぁ!!んな事でカルチャーショック受けんな!!」

    「帰れねえぞ。おばさんが飯食ってけって言ってたからな。まあシェフが作ったものしか食べねえ俺の口に合うはずがないが、折角だしな。ぼんびー人の飯を食うっつ~貴重な体験させてもらうさ」

    リヴァイはそう言うと、にやりと笑った

    「さりげなくバカにすんなぁぁ!!」

    「でけえ声だすな。熱あがるぞ?」

    「あんたのせいだぁぁぁ!!」

    わたしの悲鳴が、辺りに響き渡った

  87. 300 : : 2014/08/20(水) 09:20:32
    「では遠慮なく…頂きます」

    結局、私たち家族四人プラスリヴァイという何とも不可解なメンバーで、夕食の一時を過ごすことになった

    真面目な顔つきでうちの粗食を口に運ぶリヴァイ

    箸運びが何処と無く上品だ
    そうだ、こいつはスーパーお坊っちゃまだった

    いつもバカで酷いから忘れてた

    「ラインベルガーさんのお口に合うとは思えませんが、どうぞ沢山召し上がって下さいね」
    母がうっとりしながら言葉を発した

    「いえ、美味しく頂いています」
    秋刀魚の開きを綺麗に解しながら、リヴァイは言った

    「リヴァイさんって、凄いイケメンですねえ…品があるというか…」

    弟の言葉に、私は吹き出しかける

    品があるなんてあり得ない!!
    イケメン…まあは悪くは無いけど…

    「こらアルミン!!人の顔じっとみないの!!」
    弟のアルミンは、母にごん、と頭を小突かれた

    「いやあ、だって凄いイケメンだからさ…ついつい…憧れちゃうなあ」

    アルミンの言葉に、私は頭を抱える

    あんなのに憧れるなぁ!!弟よ!!

    私は心の中で叫んだのだった



  88. 320 : : 2015/01/06(火) 22:45:42
    古いものから更新しますので、おまたせしますがよろしくお願いいたしますm(__)m
  89. 321 : : 2015/01/08(木) 17:27:59
    「全く!私は病人なんだよ?!それなのにあんなやつに押し掛けられて、余計に熱上がるさ!」

    私は一家団らんとはいえない雰囲気の中、ほとんどの食事に手をつけずに部屋に引っ込んだ

    もう知らない、家族全員あいつにペコペコしちゃってさ……

    私はあいつのせいで酷い目にあってるっていうのに!

    あいつの事はいないと思って、さっさと寝よう…

    そう思って布団を被った時

    「よう、もう寝るのかよ?」

    空気も読めないリヴァイが部屋に侵入してきた……

    「当たり前だろ?私はまだ熱があるんだからね。もう帰ってよ」

    私は奴の顔も見ずにそう言った

    「せっかくこんな狭苦しい家に足を運んでやったんだ。すこしくらい相手をしろよ、ハンジ」

    「やだね、しっし」

    「ちっ、相変わらず礼儀のなってないやつだな」

    リヴァイはそう言って肩をすくめた
  90. 322 : : 2015/01/08(木) 17:51:38
    続きキター!
    ずっと待っておりました、期待です!
  91. 323 : : 2015/01/08(木) 18:27:13
    「礼儀だって?そんなのあんたに言われたくないね!」

    「ふん、俺はいつも礼儀正しい。人前ではな」

    リヴァイはそう言いながら、辺りをキョロキョロと見回す

    「ちょっと、あんまりじろじろ見るなよ!女の子の部屋だぞ?!」

    私が非難めいた言葉を口にするが、リヴァイは全く意に介さない様子であちこちを探り始める

    「ぜんぜん色気のねえ部屋だよな。ピアノとかねえのかよ?ベッドもねえし。引き出しの中にもアクセサリーとか時計とか一つも入ってねえし。化粧品とかもねえ。姉ちゃんの部屋を見せてやりてえくらいだ」

    「うるさい!これが一般人のごく普通の……いやちょっぴり貧乏な家庭の女子の部屋さ!っていうか棚開けるな!」

    私はタンスまで探ろうとするリヴァイの手を慌てて掴んだ

    「ん?何が入ってるんだ、見せろよ」

    「そこはだめだ!絶対だめ!」

    私がぶんぶん首を振ると、リヴァイはしばらく考えるように顎に手を当てた

    「そうか、わかった」

    理解した様子に安心した私はほっと息をついた

    と思ったその時

    「ちょっと、リヴァイ!?」

    リヴァイのあほは、いきなりタンスの引き出しを一気に開けた
  92. 324 : : 2015/01/08(木) 18:33:57
    「…………なんだこれ」

    「なんだって、下着だよばかあほくそちび!」

    私は顔を真っ赤にしながら、タンスの中味にくぎ付けになるリヴァイを引き離した

    そしてどかんと一発げんこつを食らわせた

    背が低いからげんこつしやすいんだよ

    「ってえ!下着って、白いのばっかりだったぞ?可愛い色のとかねえのかよ。ほら、あれだ……なんていうか、ヤりたい下着?オッケー下着?」

    「なんだよそれ!」

    「いや、エルドとエルヴィンが言ってた。女は脱がせて下着をみりゃ、気合いが入ってるかわかるってな」

    リヴァイはふんぞり返りながらそう言った

    「アホもの!勝負下着っていうんだよ!ばか‼」

    「あーそれだ、勝負下着。ねえのか」

    「あるわけないだろ!ばーか!」

    私はデリカシーのかけらもないリヴァイにあっかんべーをした
  93. 325 : : 2015/01/08(木) 18:34:23
    >とあちゃん☆ちょくちょく更新します♪
  94. 326 : : 2015/01/12(月) 15:59:07
    進んだぁぁ!
    リヴァイさん、ダメですよ~?女の子の部屋を物色しちゃ…
    ロメ姉さん、期待です!自分のペースで頑張ってね♪
  95. 327 : : 2015/01/12(月) 16:02:35
    ありがとう!ゆう姫♪
    がんばるばる(*´∀`)
  96. 328 : : 2015/03/14(土) 13:36:54
    期待です!花より男子好きです!漫画なくしたけど
  97. 329 : : 2015/03/14(土) 15:49:39
    RPG―7さん☆
    ありがとうございます♪
    期待されてるだけに頑張らなきゃいけませんね……!
    暫しお待ちください!
  98. 330 : : 2015/03/15(日) 19:37:19
    とっても期待!!
  99. 331 : : 2015/03/15(日) 20:09:21
    >リア充駆逐兵団さん☆
    ありがとうございます!
  100. 332 : : 2015/03/21(土) 00:31:46
    凄く待っている

  101. 333 : : 2015/03/27(金) 19:59:45
    期待です♪

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fransowa

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