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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

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#7 汚(けが)れる 【セレナ続き6】

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  1. 1 : : 2014/02/23(日) 13:10:15
    只今より、執筆をはじめさせていただきます。前回、#6ねがう にて、原作通りだ、というコメントを頂きましたが、基本、ネタバレ記事等を駆使しながら、原作に忠実に従っているつもりです。
    今回も、コミック、アニメ派の方はネタバレ注意です…が、今回の物語では大きく違う点が出てきます。
    アルミンの女装シーンがお気に入りの方は、がっかりしてしまうかもしれません。申し訳ないです。
    では、始めます。
  2. 2 : : 2014/02/23(日) 13:29:57
    「おはよう、セレナ。」

    ハンジがセレナに声をかける。

    「おはよう…ございます…」

    セレナの様子に、ハンジは首をかしげた。

    「あれ…眠れなかったの?目が少し腫れてるみたいだけど。」

    セレナは目を反らして

    「大丈夫です…問題ありません。」

    「そっか…私もこれから忙しくてさ、巨人の硬質化について実験をしなき

    ゃいけないし、ニックを殺害した犯人についても調べないと…それに…」

    ハンジはセレナの目を見た。

    「君のことも…ね。」

    「私の?何のことですか。」

    「水だよ。」  「…水?」

    セレナは、眉をひそめる。

    「女型巨人捕獲作戦のあと、巨人化を解いて体が弱っているエレンに、君

    は水を飲ませた。」

    「はい、備え付けの、ただの水ですが。」

    「そう。水は、ただの水だった。だけど、エレンはたちまち元気になった

    。」

    「…。」

    セレナは黙った。ハンジは続ける。

    「それだけじゃない。いつか、兵団の合同訓練があったとき、エレンは足

    にひどいケガをしたそうだけど、君が手当てしたら、たちまち治っていっ

    た。」

    「…。」

    「それを君は、どう結論づける?」

    セレナは目を伏せて、

    「私に…何か特殊な能力があるとでも仰りたいのですか。」

    ハンジは笑みを浮かべ

    「それはまだ分からない。検証する必要があるんだよ。」

    セレナは疲れきった表情で

    「…解剖でもなさるおつもりですか。」

    「そんなことはしない。もし、君に本当に特殊能力があるのなら、人類の

    勝利にまた一歩近づく。死なれてしまっては元も子も無いからね。」

    ハンジはさらりと言ってのける。セレナはうつむいたまま、

    「わかりました。何をすれば良いのですか。」

    「とりあえず、エレンと合流して、一緒に実験に参加してもらうよ。…行

    こう、セレナ。」

    「…はい。」


  3. 3 : : 2014/02/23(日) 13:38:22
    その後、エレンによる巨人の硬質化実験が行われる。それと同時に、セレナの能力に関する実験も行った。
    エレンが巨人化を解く、セレナが水を飲ませる、経過をみる。
    次にまた巨人化を解いたあと、セレナ以外の人間が水を飲ませ、経過をみる。
    数回にわたり実験を重ねた結果、明らかにセレナが水を飲ませたときの方が、エレンの回復が早かった。ハンジはこう結論づけた。

    <セレナ.ラングレーは、巨人化の能力をもつ人間に対し、回復力を高めることのできる能力をもっている。>

    「エレン、そしてセレナの力をもってすれば、ウォール.マリア奪還も夢で

    はないね…」

    ハンジは満足気にほほえんだ。
    セレナはその後、新リヴァイ班と共に生活することになった。

  4. 4 : : 2014/02/23(日) 13:58:08
    セレナはあるとき、ミカサと2人で薪割りをすることになった。周りには2人の他、誰もいない。
    セレナが丸太を置き、ミカサがそれを斧で割る。単調な作業が続く。
    …ふと、次の丸太が置かれなくなり、ミカサは不審に思い、セレナの方を見た。セレナが口を開く。

    「…変なこと、きいてもいい?」

    「変なこと?」

    「もし…もし、あなたがエレンに、もう自分のそばにいるのはやめてくれ

    って言われたら…どうする?」

    ミカサは不思議そうにセレナを見る。何でそんなこときくんだ、と言わんばかりに。セレナは笑ってみせた。

    「ごめんね。…気にしなくていいから。」

    「エレンが…」

    ミカサが口を開く。

    「え…?」

    「正直…今までエレンが私に…自分の…そばにいてほしいって言ったこと

    はない。むしろ、オレはお前の弟でも子供でもない、と言って…私から離

    れることもためらわなかった…」

    ミカサはここでいったん言葉を切る。彼女がここまで長く自分の気持ちを言い表すのは珍しいことだった。彼女は必死で言葉を探す。
    自分の心に見合う言葉を。

    「でも…私がもしエレンに、もうそばにいるのはやめろと言われても…私

    はやめない。そんなことは不可能。私は…良い人間になろうとは思わない

    …けど…自分の決めた生き方を生きる人間ではありたいと思う。それが今

    、エレンのそばにいて、守ってゆく、ということで…」

    感情が先走ってしまい、自分の言っている発言に対し、まとまりがつかな

    くなったミカサは、困った様に目を反らす。

    「自分の…決めた生き方…」

    セレナは、自分よりも年若い少女から、何かを見いだせた気がした。なぜか気持ちが楽になる…。



  5. 5 : : 2014/02/23(日) 14:02:03
    「おい、ミカサ!」

    声がする。エレンだ。

    「何ぼやっとしてんだよ。薪が無いと、メシが作れねぇだろ!」

    ミカサは急いで薪を集めはじめる。

    「…ごめんね、エレン。私が話しかけてたものだから、ミカサの手を止め

    てしまったの。怒らないであげてね。」

    薪を拾い集めながら、セレナが言う。エレンは不思議そうに首をかしげた。


  6. 6 : : 2014/02/23(日) 14:20:34
    その後、ヒストリア、エレンによる狂言誘拐作戦が実行に移され…ようとしていたが、配役をめぐり、事態は紛糾した。
    エレン役は、ジャン.キルシュタインで即決まり。
    問題は、ヒストリアの方である…。

    「やっぱり、女の子がやるべきだよ。男か女かの違いなんて、すぐにバレ

    てしまうよ。」

    そう主張するのはアルミンだ。彼はヒストリアと同じ金髪、青瞳であったため、危うく女装させられそうになり、必死に抵抗の意志を示していた。

    「女の子って…サシャかミカサか?どっちも背の高さの違いとか、髪の色

    とかですぐバレるんじゃないのか?」

    ジャンの発言に、アルミンはうつむく。確かに、自分がやらなければ、仲間の誰かを危険にさらすことになる。
    ここは自分が…
    アルミンが口を開きかけたとき、肩にそっと手が置かれる。

    「…私がやるわ。」

    一同、驚いた。

    「セ、セレナさん…大丈夫です、僕が…!」

    アルミンの言葉を手で制して、セレナは笑った。

    「私とヒストリアの方が背の高さだって近いし、髪はカツラで何とかなる

    …私だって女の子だしね。」

    結局、エレン役をジャンが、ヒストリア役はセレナがやることになった。
    セレナの能力のこともあり、この決定にハンジは苦言を呈した。

    「君の持つ能力も、未だわかってない部分も多いし、エレンやヒストリア

    と同じように、身を潜めていてもらいたい。」

    「ハンジ分隊長、私なら大丈夫です。誰かがやらなければ事は進みません

    …おまかせください。」

    セレナはそう言って、にっこり笑う。それを見て、ハンジは戸惑いながらも許可した。

    (ついこの間まで、この世の終わりが来た、みたいな顔してたのに。何か

    あったのかな…)

    ハンジは思った…。






  7. 7 : : 2014/02/23(日) 14:34:06
    そして作戦は決行され、エレンとヒストリアに扮した2人は、作戦通りに連れ去られる。
    この作戦の目的は、人類の希望というべき存在である、エレン、そしてヒストリアを狙う存在をあぶり出すためのものであった。
    当然、残りのリヴァイ班があとをつけ、救出のため、屋根裏に待機する。
    連れ去られた2人は、イスに体を縛りつけられる。
    誘拐犯は、中年の男たちだった。今のところ確認できるのは2人だ。
    セレナは、しおらしくイスに縛りつけられ、目を伏せていた。…瞳の色の違いがバレないようにするためである。

    1人の男が、そんなセレナ(が扮するヒストリア)に、少女とは思えぬ美しさ、そして醸し出す色香に、たまらず後ろから抱きしめ、乳房をまさぐりはじめる…。
    男の荒い息遣いに、セレナは一瞬戸惑うが、すぐに冷静さを取り戻す。

    「き…君の声を…聞かせてくれよ…キレイな声を…」

    男が荒い息遣いのまま、セレナにささやく。
    セレナは黙ったまま、頭の中で着々と“作戦”を練っていた。
    …と、大切なことに気づく。ジャンがいたんだった。



  8. 8 : : 2014/02/23(日) 14:49:25
    セレナは、そっとジャンの方に目を向ける。ジャンが必死に目を反らしている。ジャンは、予想だにしなかった刺激的な展開に…要は、ドキドキしていたのである。目は反らしても、手がふさがっているため、耳から生々しい“実況”が流れてくる…。
    …ふと視線に気づく。セレナが、何かを訴えるようにこちらを見ている。真剣なまなざしに、ジャンは思わず見入る。
    セレナの唇が動く。声には出さないが、唇を読め、ということらしい。
    ジャンはセレナの唇に注視する…。

    (み…て…い…ろ…?見ていろ?)

    ジャンが理解したのを確認すると、セレナはたちまちとろんとした目付きになり、熱い吐息を漏らしはじめる。その様子を見るなり、男の興奮が高まりだす。

    「ん…おじさん…だめ、私…」

    「ん?何がだめなんだい?」

    「きもち…よくて…頭が…変に…もう…がまんできなくて…」

    そんなセレナの言葉に、もう1人の男がナイフを片手に

    「な、なぁ、1度こいつで楽しんでから縛り直してもいいんじゃねぇか。

    こいつだって犯された後じゃ抵抗出来ねぇだろうし…」

    2人の男は興奮しきっており、もはや理性を失っているようだった。








  9. 9 : : 2014/02/23(日) 14:58:56
    素早くセレナを縛りつけていたロープが切られ、セレナは2人の男の手により、床に押し倒され、身体をまさぐられ、服に手をかけられる。セレナが声を上げる。

    「いやっ…たくさん見てる人がいる…他にも誰かいるんでしょ…恥ずかし

    いよぉ…」

    「大丈夫だ…俺たち以外に見張りはいねぇよ。しばらくは、他の奴等も戻

    らねぇ…それまでに終わらせてやるから…」

    男の言葉に、セレナは冷静な表情に戻り、

    「そう…」

    1人の男が、壁に向かって吹っ飛び、白目をむき気絶する。

    「なっ…なんだ!?」

    セレナは、状況がつかみきれていないもう1人の男の右手首をつかみ、相手に寄り添うようにして自分の左腕を被せ、相手の右腕を制した。



  10. 10 : : 2014/02/23(日) 15:18:40
    そのまま、相手の右腕を内側に強く捻り上げる。

    「…っ痛っ…!」

    男が声を上げる。だがセレナはやめようとはせず、男に問う。

    「あんたたちは、何?何の目的で私たちをさらったの?」

    「もっ…目的…?そんなもの知らね…」

    男がそう言い切るのも待たず、セレナはそのまま腕を極め、全体重をかけて押し潰しながら、男の肘をへし折った。

    「うっ…ぎゃあああっ!!」

    男の絶叫が倉庫内でこだまする。

    「あらあら、痛そうね。答えてりゃよかったのに、ね。」

    そう言ってセレナは力を緩めずに、男に愛らしい笑顔を見せてみる。男は涙目になって

    「わ、わかった…言うから…やめてくれ…」

    と言う。その言葉に、セレナは眉を潜め、

    「まあ。私にまだ何かさせるつもり?…代償はさっき払ったはずよ。私の

    身体でね。あんたが触りまくってた私の身体の代償は…いつ…ねぇ、いつ

    …払うつもりなのかしら?」

    そう言いながら、セレナは先ほどへし折った男の肘に、さらに体重をかけ続ける。男の悲鳴が響く。

    「リ…リーブス商会…そこに雇われただけだ!リーブス商会の会長にな!俺

    は何も知らされてねぇんだ!」

    その言葉を聞くなり、セレナはさっさと男から離れ、服を直すと、天井に向かって声をかける。

    「…だそうですよ、リヴァイ兵士長。もうすぐこいつらの仲間も来るでし

    ょうし、早く縛り上げてしまいましょう。」










  11. 11 : : 2014/02/23(日) 15:37:35
    その言葉を聞き、天井裏に隠れていた面々が下りてくる。リヴァイ以外の者たちの顔が、心なしか青ざめている。
    セレナは、ジャンを縛りつけているロープをほどきにかかる。

    「…大丈夫?」

    声をかけてみるが、ジャンはなかば放心状態だった。目の前で繰り広げられた生々しいドキュメントは、少々刺激が強すぎたらしい。
    それは他の104期生も例外ではなかった。
    コニーは男2人を縛り上げながら、サシャにそっと耳打ちする。

    「やべぇ…オレ、トラウマになりそうだ…」

    サシャも青ざめた表情のまま、

    「私もです…」

    アルミンは、ジャンの方へ駆け寄る。

    「ジャン、無事か!?」

    アルミンに肩を揺さぶられ、ジャンはようやく我に帰る。

    「アル…ミ…ン?」

    「ジャン、もうすぐ奴らの仲間が来る。しっかりするんだ。」

    「アルミン…オレ、この短い時間の中で、ひとつ学んだことがあるんだ

    …」

    「ん、なに?」

    ジャンは、セレナが聞いていないことを確認すると、

    「…女は怖い。」

    アルミンはセレナの方を見て、

    「…うん、そうだね…」

    倉庫に、リヴァイの声が響く。

    「何してる、早くしろ。」









  12. 13 : : 2014/02/23(日) 21:39:13
    再開するにあたり、幾つか補足させていただきます。
    オリキャラの登場です。
    リーブス商会の息子、アルス.リーブスです。原作では会長は登場しますが、息子のアルスは私自身のオリジナルです。
    次に、ネタバレ要注意!ですが、原作でリヴァイは、リーブス商会を相手取り、エレン、ヒストリアを渡す事を引き替えに、3つの条件を提示します。
    1  リーブス商会は今後調査兵団と共に中央憲兵や王政、法に歯向かうこととする。
    2 リーブス商会は調査兵団を心の底から信用すること。
    3 今後リーブス商会が入手した珍しい食材、嗜好品は優先的に調査兵団に回す。紅茶とか。→この条件に対し、会長はリヴァイの欲深さに感服します。
    以上のことをふまえて、続きをお楽しみください。
  13. 14 : : 2014/02/23(日) 21:59:30
    その後、残る誘拐犯一味を拘束し、リヴァイはリーブス商会会長との交渉にこじつける。
    そのやりとりに、するどい目線を送る1人の青年がいた。リーブス商会会長の息子、アルス.リーブスである。

    「…父さん、本当にこいつらの言うことを信じるつもりなのか?こいつら

    の失態のおかげで、僕ら民衆はどれだけ苦しめられたのか、分かってるの

    かい!?」

    そう言い放つアルスに、会長は呆れ顔になって

    「アルス、いい加減にしろ。儂らにゃもう、この道しか残されとらん。

    それに儂は、この旦那の欲深さが気に入った。迷いはない。」

    そして会長は、リヴァイに向かって

    「息子にも、ある程度のことは任せとるんです。息子の同意も得にゃ、話

    が進まねぇ…。」

    と言い、ため息をつく。アルスは、しばらく父親や、調査兵団の面々をにらみつけていたが、ある人物に視線が移ると、くぎ付けになってしまう。
    その視線の先には、変装を解いたセレナが立っている。
    アルスの顔が、ほんのり紅潮する。リヴァイはそれを見逃さなかった。

    「…あの女が気に入ったのか。よし、貴様が条件を受け入れるのなら、友

    好の記念として、あの女を明日1日貸してやる。明後日の昼までに返却し

    てくれればいい。」

    会長は戸惑った。

    「あ…の…女を…息子にですかい?…これはまた美人だ。旦那の女じゃな

    いんですかい?」

    会長の問いに、リヴァイはセレナを見、

    「…俺のじゃない。俺にはもったいない位の、大した女なんでな。」

    その言葉の意味を、先程の倉庫の1件を知る104期生一同は理解していたが、リーブス親子は知るよしもない。
    アルスは、そばに近づいて来たセレナに、心奪われている様子だ。
    その様子を見、リヴァイは会長に向かって右手を差し出す。

    「よし、交渉成立だ。」

    2人は、固く握手を交わした。












  14. 18 : : 2014/02/26(水) 11:07:26
    …狂言誘拐の顛末を聞かされ、ハンジはため息をついた。

    「…あのねぇリヴァイ、セレナは本来、身を潜めてもらわなきゃいけない

    んだよ。何でそんな身売りまがいなことさせるかな…」

    「ああでもしなきゃ、商会との交渉は成立しなかった。どんなに守ろうと

    しても、守りきれなかったものは、今までにも数えきれん程あるだろう。

    …この女なら大丈夫だ。」

    リヴァイはそう言ってセレナを見る。

    「…セレナもそれでいいの?」

    ハンジはセレナに問う。セレナははっきりと

    「はい。これも商会の信頼を得るためです。おまかせください。」

    と言い、にっこりと笑う。セレナにしてみても、男と一晩過ごし、しかも“好きなように”されることがどういうことなのか、理解しているのだろう。
    もう、どうにでもなれ、と、ハンジはまた、ため息をついた。






  15. 19 : : 2014/02/26(水) 11:16:22
    翌日、アルスとセレナは、ローゼの街にいた。王都でさえ、治安が悪化している今、うかつに徒歩では移動できない。2人は馬車に乗っていた。

    「…。」

    アルスは、セレナの方を見た。セレナが見つめ返し、微笑んでくる。アルスはあわてて目を反らす。そんなやり取りが、何回か続く。
    アルスが自分から目を反らしている隙に、セレナはアルスを観察してみる。
    自分よりかはいくつか年上ではあるだろうが、“経験”自体ははるかに自分の方が上のようだ。

    「あの…アルスさん…」

    アルスは、慌ててセレナの方を向く。

    「なっ…なんだい?」

    「これから、どこへ行かれるのですか。」

    「ウォール.シーナだよ。」

    「…シーナまで…?」

    「そこに、おいしい料理を出す店があるんだ。ぜひ君にも食べてもらいた

    くてね。」

    そう言ってアルスは、セレナに笑いかける。セレナもそっと笑い返した…。





  16. 20 : : 2014/02/26(水) 11:39:20
    ウォール.シーナのレストランにたどり着くと、2人は食事を始める。周りは皆、貴族や金持ちばかりだ。
    セレナは、あたかも慣れた様子で食事を進める。それは、アルスの自然な慣れた振るまいと、見事に調和していた。はたから見ると、似合いのカップルに見える。これが政治的駆け引きから産み出された売春まがいの行為だとは、誰が想像し得ただろう。

    「…これから、どうするんですか」

    食事も終盤にさしかかり、セレナが口を開く。

    「うん…僕の家に招待するよ。その道中で、見てほしいものもあるしね。」

    「…そうですか。」

    その後2人は店を出て、再び馬車に乗った。シーナの街中を走る。

    「…君は、今の世界を見て、どう思う?」

    「今の?」

    「ああ。この、強い者が弱い者を喰らう。力の無い者は滅んでゆく、この

    世の中を。」

    セレナは外を見た。道端には浮浪者で溢れ、行き交う人々の目もどこか虚ろだ。ここはウォール.シーナだというのに。
    アルスは、神妙な面持ちで外を見ている。この状況に置かれている人々に、心底同情している様な表情だった。

    「…これが…」

    セレナが口を開く。アルスはセレナの方を見る。

    「私たち…調査兵団のせいだと…おっしゃりたいのですか…」

    「君たちは壁外に出て…たくさんの命と財産を消費して、何を得たんだ。」

    セレナは顔を歪めた。アルスは続ける。

    「人類の翼だか何だか知らないが、君らが無謀に壁の外に飛び出したせい

    で、民衆は多額の税金で苦しめら…」

    アルスは驚いた。隣にいるセレナが、固く握った拳から、血をにじませていたのだ。彼女は怒りを必死で抑えるあまり、拳に力が入り、ツメで手のひらを傷つけてしまったのだ。
    ここで感情的になり、アルスの気を悪くしてしまっては、計画は台無しになってしまう。セレナは耐えた。

    「…そんなにも…兵団を憎んでいるのなら…これから好きなだけ私を…痛

    めつければいい…もてあそべばいい…それだけにして…許してとは言えな

    いけど…私が全て受け入れます。」

    セレナは、まっすぐにアルスを見た。アルスは、何も言い返せなかった。












  17. 21 : : 2014/02/26(水) 11:53:37
    そして2人はローゼに戻り、リーブス家へとやって来た。商会会長の自宅ということもあり、大きくて豪華な屋敷だ。 

    「…門番以外、人払いはしてあるんだ…っていうか君、手は大丈夫か

    い?」

    アルスに問われ、セレナは何だか気恥ずかしくなって下を向いた。

    「…包帯か何かあれば、いただきたいのですが…」

    そんなセレナに、アルスは笑って

    「確か、あったはずだよ。さ、上がって。」

    セレナの治療が終わると、2人はアルスの自室に入る。

    「…まだ痛いよね?医者に看せたほうが…」

    アルスの言葉に、セレナは慌てて

    「いえ、大丈夫です。血ももう止まりましたし…」

    「そうか…」

    アルスはふと、窓の外を見る。

    「…すまなかった。君は怒ったよね、僕が軽率なことを言ったばかりに

    …」  「…いえ…」

    「僕にも…好きな子がいてね…その子は調査兵団に入って、壁外に出て、

    そのまま帰って来なかった…」












  18. 22 : : 2014/02/26(水) 11:56:45
    アルスは、セレナと向き合うと、そっと抱き寄せる。

    「…そんなとき、君が現れた。君とここで今、一緒にいることのできる条

    件が、調査兵団を信じることなら、従うよ。僕は、君たちを信じる。」

    アルスは、セレナに自分の唇を重ね合わせる。
    セレナはそっと目を閉じた…。
  19. 23 : : 2014/02/26(水) 12:05:37
    「…もう、朝か…」

    セレナと一夜を共にしたアルスは、カーテンから漏れる光に、眩しそうに目を細める。隣にはセレナがいる。セレナも目を覚まし、体を起こした。
    アルスは、セレナの手元を見て、驚く。昨日の巻いた包帯から、血がにじんでいるのだ。

    「まだ治ってないみたいだね。痛いだろ?」

    そう言ってセレナの手を取ろうとするが、セレナはそれを拒む。

    「…大丈夫です。私…着替えますから…」

    昨日とはうって変わって、よそよそしい態度だった。アルスは寂しげに微笑む。

    「そうか。もう今日の昼には、君を返却しなきゃならないんだったな。」

    アルスが言うのを尻目に、セレナはさっさと着替えに取りかかる。アルスも服を着始める。







  20. 24 : : 2014/02/26(水) 12:18:20
    セレナが髪を整えている頃、アルスも身繕いを済ませていた。
    不意に、セレナは後ろから抱きすくめられる。

    「…もう…会えないのかな。」

    そうささやかれ、セレナはきっぱりと

    「そうですね。」

    「…そうか…」

    「…信じるんですよね?」

    セレナに問われ、アルスは戸惑う。何のことだ、と。

    「私たち、調査兵団をです。その条件で、私はあなたに抱かれたのですか

    ら、きちんと守ってくださらないと困ります。」

    淡々と説明され、アルスは慌ててうなずく。

    「あ、ああ…ちゃんと…守るよ。君たちの提示した条件を、ね。」

    アルスの表情がひきつる。

    「君は…何なんだ一体…僕も…女性は初めてじゃないけど…君みたいなの

    は初めてだ。」

    セレナは、笑ってしまう。

    「帰ります。」

    セレナは、忘れてはいなかった。あの日見た翼を。自分も背負うことを受け入れたきれいな翼を。でも、今自分の背にあるものは、たくさんの欲望や悲しみにまみれた液体で汚れ尽くされ、羽ばたくこともできなかった。
    でも構わない。空に自由があると、壁の外に喜びがあると誰が決めたんだ。
    私は私の喜びの中で生きてやる。

    『…セレナ…』

    また、あなたにこの名を呼んでもらうために…











  21. 25 : : 2014/02/26(水) 12:21:28
    以上で、#7 汚(けが)れる を終了させていただきます。
    さて、いよいよセレナシリーズも次回が最終章となる…予定…です。
    読んでいただき、ありがとうございました。

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kaku

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