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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品はオリジナルキャラクターを含みます。

人類再反撃物語【オリ進】

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  1. 1 : : 2018/08/25(土) 23:45:10
    進撃の巨人の3期を見てしまったせいで眠ってた厨二心がまた目覚めてしまった!何かSS書きたい!
    しかし原作キャラを使えばキャラ崩壊がなんだのと言われて心が折れそう!
    そうだオリキャラでやろう!キャラ崩壊なんて言われたってキャラ作ったの俺だしな!うん!

    ってな感じでやります。でもオールオリキャラはとんでもなく時間食うので、たまに原作キャラを出していきます。

    シガンシナ区奪還戦までのネタバレを含みます。マーレ戦ルートとは別世界線です。

    展開に矛盾とか生まれても初心者だから優しくしてね

    以上大丈夫な方のみ読み進めていただければ幸いです。
  2. 2 : : 2018/08/25(土) 23:46:48


     オレは、自由の翼を見た。


     
     あれは、『英雄』の紋章だ。


     
     オレは、あの二人みたいに――いや


     
     あの二人以上の『英雄』になりたい!



    ――――――――
  3. 3 : : 2018/08/26(日) 00:09:18

    885年。初の超大型巨人の出現から40年、調査兵団の行動によってシガンシナが取り戻され2,30年程。
    巨人や人類についての秘密があるとされた、グリシャ・イェーガーの保有する『地下室』には何も残されておらず、死体の山の上に築き上げた結果は、人類のわずかな安寧だけであった。
     
    ――そして、3年前。シガンシナ区の壁は突如として破壊された。
     
    再び攻めてきた鎧の巨人、及び獣の巨人によって、人類はまた、巨大な天敵に為す術なくはいぼくする、恐怖の日々を思い出すこととなった。

    これは、巨人側から再進撃を受けた人類が、巨人に反撃するまでの物語である。
     
     
     
     
    ー訓練兵訓練所 通過儀礼ー
     
    教官「おい貴様ァ!」
     
    ???「はっ!」

    教官「貴様は何者だ!?」

    マグダレーナ「はっ!私はカラネス区出身、マグダレーナ・ルエルです!」

    ー現在公開可能な情報
    マグダレーナ・ルエル:黒髪のポニーテールと、同じ色のキリッとした目を持つ背の高い女性。気が強そう。

    教官「何しにここに来た!?」

    マグダレーナ「憲兵団に入り、この混乱した世界を内部から叩き直すために来ました!」

    教官「…はっ。大きく出たな新兵。目指すといい。だが…」

    教官の顔が、マグダレーナに近付く。気の強そうな彼女だが、その教官の顔に恐怖し冷や汗を垂らしながら固まってしまった。

    教官「奴らの性根は、貴様ごときに叩き直せるようなやわなものではない。」

    マグダレーナ「………も、申し訳、ありません………。」

    教官「次!貴様は…」

    マグダレーナはその場でへたりと倒れ込む。それだけで、あの教官の威圧がどれだけのものか、よくわかる。

    ――そんなの、巨人に比べたら、大したことないけどな。

    教官「貴様は何者だ!?」

    カンナ「うっす〜!私は名前もない山奥の村の出身のカンナ・フリッツっす〜!よろしくっす!」

    ー現在公開可能な情報
    カンナ・フリッツ:銀髪のロングにまん丸の茶色い目をした少女。『フリッツ』は元・王家の名である。ふざけた態度が目立つ。

    カンナ「言いたいことはわかるっすよ!『フリッツ』っつったら、人類を欺いて王家を名乗ったクソ集団っすもんね!…でも私、生まれた時から言われのないことで迫害を受けてきたんです。望んでこの家に生まれたわけじゃないのに…それでここに来ても迫害をウケるなんて酷すぎます。どうかご慈悲を……およよよよ〜。」

    教官「それは…たぶん、貴様のふざけた態度が原因だな。それを改めろ!そして、貴様は何しにここに来た!?」

    カンナ「カンナちゃんのココが魅力なのに、わかってないっすね教官センセーは!」

    教官「いいから答えろ!貴様は何しに…」

    カンナ「憲兵団に入って、ヒストリア女王様のお膝元でえっちで過激なことを…うへへへへ………じゃなくて。王にこの身を捧げるためにきました!本当っす!」

    ー現在公開可能な情報
    カンナ・フリッツは変態である。

    教官「…はぁ。貴様には既に呆れさせられている。…だが、あの女王様に下心を持って近づけば…どうなるか、わかっているな?」

    カンナ「…ご、ごくり…どうなるんすか………」

    教官「……………人生の破滅だ。」

    やけに力のこもった教官の言葉に、カンナも思わず言葉を詰まらせた。
    ………もしかして…経験者、なのだろうか。
  4. 4 : : 2018/08/26(日) 01:08:35
    ウホ?期待!(`・∀・´)
  5. 5 : : 2018/08/26(日) 01:21:29
    期待?
  6. 6 : : 2018/08/26(日) 01:32:31
    教官「貴様は何者だ!?何しにここに来た!?」

    ???「ふん。態度を弁えろ、汚い顔をした庶民が。」

    教官に対して、めちゃめちゃ高慢な態度だ。彼は一体…。

    教官「ほほう…貴様はどうやら、私の反感をどうしても買いたいようだな。」

    ジルヴェスター「庶民の報復など恐るるに足らん。私はジルヴェスター・ヴァイセンホルン。ヴァイセンホルン家を継ぐ貴族なのだからな!」

    ー現在公開可能な情報
    ジルヴェスター・ヴァイセンホルン:ヴァイセンホルン家を継ぐ貴族家の一人息子。金髪を貴族カットしている。高慢な態度が目立つ。

    教官「…はぁ。まあいい。好きにすればいい。だが………巨人相手に、自らの権力の誇示は通用しないぞ?」

    ジルヴェスター「はっ。ほざけ。」

    最初から喧嘩腰で教官に行こうだとか、貴族ならではの考え方なのだろうか。全く理解できない。



    教官「次は貴様だ!何しにここに来た!?」

    フーゴ「はっ!シガンシナ区出身のフーゴ・ラルフです!調査兵団に入り、巨人生態について研究したくここへ参りました!そうそれはある日のこと…突如として破壊された壁からやってきた巨人に、私の母は目の前で食い殺されました。それも、頭だけ残して。何のために頭を残したのでしょう?私はそれが疑問で疑問で、試しに私も母の頭に齧り付きましたが何もわかりませんでした。そこから巨人への興味は湧き、その後文献等で彼らについて研究し………」

    教官「長い!それと貴様じゃなくて隣の貴様に聞いている!貴様は既に地獄を見、通過儀礼を終えた身であろう!?出しゃばるな!」

    フーゴ「た、大変申し訳ありません!この失態をどう拭えばいいのか新兵の私にはいささか難しい問題でございましてもし教官殿のご都合等よろしければこのような状況における対処の方法などをご教授願えたらなと思うのですが…」

    教官「あぁもういい!なんなんだ貴様は!?」

    ー現在公開可能な情報
    フーゴ・ラルフ:金髪のロン毛にオレンジに近い黄色の目。よく喋る。



    「ぐがー………。」



    教官「………おい、貴様。」

    ???「んにゅ………?」

    教官「貴様は一体、今何をしていた?」

    ???「………(私じゃないよね)zzz」

    教官「貴様だ貴様に言っているのだ!!この通過儀礼中に寝るだと!?訓練兵団をバカにしているなら今すぐここを出ていってもらうぞ!?」

    エミリ「ひゃいっ!?つ、通過儀礼中に寝るような愚か者はこの場にはいません!ご安心くださいませ教官!私はユトピア区出身、エミリ・ゾんまーふぇい………zzz」

    教官「同じことを二度言わせるな!寝るんじゃない!!」

    ー現在公開可能な情報
    エミリ・ゾンマーフェルト:亜麻色のショートヘアーに茶色い目が半開き状態。夜行性らしい。
  7. 7 : : 2018/08/26(日) 02:00:10
    >>4
    ウホホ!期待ありがとうございます!!

    >>5
    期待?ありがとうございます!!精一杯頑張らせてもらいます。

    眠気と構成と戦いながら執筆しますので今後とも期待していただければ幸いです。
  8. 8 : : 2018/08/27(月) 14:24:07
    教官「貴様は何者だ!?何しにここに来た!?」

    トオル「あえっ、俺ですか…えぇっと、俺はマツシタ・トオル。何しにっていうか…駅までの行き方を聞いたら、なんかここに着きました。…迷子ですね!あは、あはは、あははははは〜………。」

    ー現在公開可能な情報
    トオル・マツシタ:素性一切不明の、東洋人のような見た目の少年。あそばせ黒髪に茶色い目をしている。

    教官「そうか!それは滑稽なことだな!だがここに、迷子のガキを預かるような余裕はない!覚悟のない者はとっとと去れ!!」

    トオル「えぇ!?困ります!!俺、ここに来てから状況が意味わかんなくて混乱しているんですよ!?なんかずっと走っていたら、巨大な壁が現れたと思って、好奇心でそっち向かってみたら大きいお友達が沢山で………なんであの人達全裸だったんでしょう?発情していたんでしょうか?」

    教官「…まて貴様。壁がどうしたと?そういえば先程も『エキ』などと聞き慣れぬ単語を発していたが…」

    トオル「………あれ?」

    教官「貴様もしや…壁の外から来たのか?」

    トオル「えぇっと…はい。なんか、門?が壊されていたので、そこからひょいっと侵入して………」

    教官「捕らえろ。」

    教官の形相が変わる。今度は威圧なんかでは済まされない…本物の、敵意だ。
    教官の一言で、同じくここに務める教官であろう人物達は、トオルのことを押さえつける。

    トオル「え、えぇ!?嘘でしょ!?迷子の俺にこの仕打ちって!?…あぁもう!!なんで俺ばっかり不幸な目に〜〜〜!!!」



    ???「待ってください。」

    横から男が、静かな声で発言をした。

    教官「貴様は…通過儀礼を終えたロイ・エルモットか。これはもはやこの訓練兵団だけの問題ではない。人類存続にも関わるものだ。口を挟もうならば貴様も…」

    ロイ「だからお待ちくださいと言っているのです。早計な行動で、無実の人の命が奪われるのは見ていられません。――その行いは、巨人と同類、そう認識致しますが。」

    ー現在公開可能な情報
    ロイ・エルモット:茶色い前髪が少し目にかかる程の長さで、目の色は赤。目と同色のメッシュが入っている。イケメン。

    ロイ「俺の出身はシガンシナ区。両親は巨人の被害を受け死亡。――敵こそ違えど、今の状況は当時と何も変わりません。」

    教官「これは人類の平和のための決断だ。貴様が判断するべきことでは…」

    ロイ「元・調査兵団なんだろ。巨人と同じって言われて、プライドはねえのかよ。」

    教官「……………。」

    ロイ「そいつは嘘をついているようには見えないし、そんな面倒な嘘をつく理由はない。が、もし面倒事を抱えている、壁の外の連中なら、自分の素性を隠し通すのが基本ではないでしょうか。ライナー・ブラウンや、ベルトルト・フーバーのように。
    裏を返せば、そいつは何も持っていない。面倒事なんて何もない。自分の素性をぺらぺら明かしてしまうくらいにはね。」

    教官「だが、壁の外の人間だと分かったら、それなりの対処が…」

    ロイ「教官殿、貴方には何が見えているのでしょうか?敵は人間だ、とでも?
    違います。敵は巨人です。壁の外側だろうが内側だろうが、それは変わりません。人類同士の殺し合いなど愚かなのです。」

    あの教官に怯まないでここまで発言するなんて…とんでもない度胸だ、あのロイって奴。
    あれはきっと『英雄』になるためには必要なものなんだ。そう直感した。

    ロイ「もし何かトラブルがあった際、真っ先に疑われるのは、壁の外から来たと自称してしまったトオルです。そこまでして壁の外から来た、と言う理由が思い浮かびません。なので俺は、こいつの言葉を信じていいって、そう思うんですよ。」

    教官「………。そうか。なら好きにするといい。そいつの身柄は貴様に預けよう。ロイ・エルモット。何かあれば迷わず殺せ。兵士たる者、人類のための取捨選択は必要なのだからな。」

    ロイ「感謝します。」

    トオル「あの…えっと、ありがとう。よくわからないうちに命が救われてたけど、よかったよ。えっと、ロイ君?は、俺を見張ってくれるんだっけ?よろしく。」

    ロイ「…あぁ。」

    教官「では、気を取り直して次だ!貴様は………」
  9. 9 : : 2018/08/27(月) 16:15:36
    教官「貴様は何者だ!?」

    リリー「リリー・アッカーマンです。リランより強いです。」

    ー現在公開可能な情報
    リリー・アッカーマン:リラン・アッカーマンの双子の姉。黒髪ロングに黒に近い色の目の清楚そうな見た目。

    リラン「は?リリーなんかよりもオレの方が強いし。雑魚の分際で何チョーシこいてんんの?」

    ー現在公開可能な情報
    リラン・アッカーマン:リリー・アッカーマンの双子の弟。姉と同じ色の髪と目をしている。刈り上げをしているのはリヴァイ元・兵士長を意識しているようだ。

    リリー「私の方が強い。」

    リラン「オレの方が…!!」

    教官「貴様ら…この場がどういう場所か分かって、その痴話喧嘩を始めたのか?」

    リラン「あぁん!?」

    教官「心臓を捧げよ!貴様らは何のためにここに来たのだ!?」

    女のリリーの方は、すぐに敬礼のポーズをし、教官に向き直る。

    リリー「巨人に恨みはありませんが、アッカーマン家の能力は、巨人駆逐に適切なので、その道を進もうかと。」

    しかし、リランの方は首を傾げ固まっている。

    リラン「何やってんのお前。ってか心臓を捧げよって何?やだよオレ、捧げたら死んじゃうじゃん。」

    一同「……………。」

    ー現在公開可能な情報
    リラン・アッカーマンはバカである。

    教官「貴様の頭には栄養が行っていないようだな。ご自慢の運動神経に、脳のための栄養分が取られたか?」

    リラン「違うね!オレ達アッカーマン家は栄養なんてなくたって、いつか覚醒する。そうなったらどうしたって強くなれるのさ。努力なんかでは超えられない壁を教えてやるよ!!はっ!!」

    リリー「そうやって慢心するからバカなのよ。バカ。」

    リラン「あぁん!?」

    教官「静まれ!!貴様らを騒がせるために、この通過儀礼をやっているわけではないぞ!!」

    教官の威圧に、姉のリリーは冷静になり敬礼のポーズをとる。が、頭に血の昇った弟のリランは、教官を睨みつけてしまう。
    全員が心の中で「あちゃー」と思った。

    教官「ほほう、貴様…その度胸だけは褒めてやろう。」

    リラン「あ?褒められたって嬉しくねーよカス。」

    瞬間、教官がリランの頭を押さえ付けた。来る…教官お得意の頭突きが――!!
    オレ達は反射的に目を逸らした。耳には鈍い音が届く。

    リラン・アッカーマンは死んだ。そう確信した時だった。

    リラン「急に頭を抑えるから、びっくりして蹴っ飛ばしちまったじゃねえかよ。」

    その時立っていたのはリランの方で、なぜか教官が倒れ伏していた。

    リラン「でもこれって、オレは悪くねえよな?先にやってきたのはそっちだもんな?…それとな、教官サンよぉ。」

    にんまりと、満面の笑みを見せて、リランは倒れている教官に近付く。

    リラン「頭に栄養がないのはお前の方だぜ。このツルピカハゲ男。」

    うっわー……………。
    自分が優位だと分かった瞬間に、急に態度がでかくなる奴、よくいるよな。
    やはりこいつ…バカだ!!
  10. 10 : : 2018/08/27(月) 16:29:59
    さて、ここまでこの個性豊かな訓練兵の姿を見てもらったと思うが、実はまだオレの紹介はまだされていない。
    というのは、先程フーゴの時に教官が言っていた『通過儀礼を終えた者』にオレが含まれるからだ。
    だから、教官に対するアピールも必要ない。けど、それじゃあみんなが混乱するだろうから、オレの過去と一緒にオレ自身のことも、自己紹介しようと思う。



    オレの両親は調査兵団だった。
    彼らも訓練兵から始め、そこで二人一緒に過ごすうちに恋に落ち、調査兵団に入り暫くしてから、結婚し、オレを産んだらしい。

    二人はオレにとっての『英雄』だった。未知の世界―――自由へと踏み込み、強大な敵に二人手を取り合って戦う二人は『英雄』だ。
    そして、オレもそうなりたいと願った。

    それはあの日――人類最悪の日も同じだ。あの日、父は民間人を庇い死亡。母も獣の巨人を補足し単騎で挑んだそうだが呆気なく砕かれた。死体もない彼らのやり口に、オレの英雄に対する『願い』は『使命』へと変わった。



    オレの名前は、ヨルン・ヨルムナス。
    いずれ『英雄』となり、人類を救う男の名前だ。
  11. 11 : : 2018/08/27(月) 16:37:00
    ー現在公開可能な情報
    ヨルン・ヨルムナス:世にも珍しい白色の髪に肌色。血に染まったような真っ赤な目が特徴。現在で言うところのアルビノに近いが、特に直射日光を浴びても問題は無い。
    その奇異な見た目から、周囲の人からはあまり良く思われていなかったそうだ。
  12. 12 : : 2018/08/27(月) 16:40:09
    おぉ?面白そう笑 期待!
  13. 13 : : 2018/08/27(月) 17:00:12
    通過儀礼を終えると、訓練兵には部屋が割り当てられた。

    一部屋に二段ベッドが二つあり、残りの狭い面積は荷物置き。4人で暮らすにしては、少々狭すぎる空間だ。

    オレの部屋だけがそうなのかというと、そうではない。他の皆の部屋も同様だ。
    でも仕方ない。それが巨人が我ら人類に出した損害だ。小さくも、これは巨人の影響でもあるんだ。

    だから、巨人から土地を奪い返し、この部屋を広げてやればいいだけの話。そのためには調査兵団に入るしかないんだ…!



    同じ部屋となったのは、ジルヴェスター・ヴァイセンホルンとフーゴ・ラルフ、リラン・アッカーマンの3人とオレだ。

    正直、最悪な割り振りだとしか思えない。三人中二人は教官に反抗という問題児。残る一人も教官の静止も聞かずべらべら喋りまくるような奴だ。問題児の集まる部屋…そう呼んでも支障はない。

    ってことは、オレもその問題児扱いされてるってことか!?なんで…オレは何もやってねえのに!
    どうしてだろうか…と頭をかいて悩む。髪の毛が抜けた。その抜けた一本の髪の毛を見て、より落胆した。

    ヨルン「オレの身体のせい…なのか。」

    この変な色をした見た目のせいで、オレも異端児扱いされているんだろうか。

    オレ自身がどれだけ『いい人』であろうと、この見た目で全てを否定される。…偏見ってのは、酷いもんだ。

    フーゴ「どうかなさいましたか?」

    ヨルン「うおあっ!?」

    フーゴ「す、すみません怖がらせてしまったみたいで…昔から私は存在感が薄いだのいつの間にか背後にいるなどと言われ続けて急に声かけるといつも怖がらせてしまうのです。しかしどのように声をかければ相手を怖がらせることがなくなるのかわからず結局いつもこのような話しかけ方になってしまい反省もしているのですがどうしようもなく…」

    ヨルン「わ、わかったわかった。…で、なんだ?どうかなさったかって?」

    フーゴ「はい。同じ部屋でこれから暮らす仲間同士、ちょっとしたコミュニケーションをと思い、一番まともそうな貴方に声をかけようとすればどうやらお悩みの模様で…思わずどうかしたのかと声をかけてしまったものの私に解決の糸口などなくあたふたするだけでより貴方を混乱させてしまうのではないか、でも貴方は誰かに話を聞いてもらいたいんじゃないのかと葛藤している現状でございます。」

    ヨルン「せ、説明ご苦労さま…。声をかけてくれてありがとな。…そうだな、悩みはあるぞ。」

    金髪の少年、フーゴは微笑みながらオレの話を聞く姿勢になってくれた。
    …なんだよ、案外まともじゃん。確かによく喋るけど、でもオレのためを思ってくれているんだし。

    ヨルン「…なあ、フーゴ・ラルフ…だよな?」

    フーゴ「えぇ。そういう貴方は、ヨルン・ヨルムナス…でしたね?」

    ヨルン「覚えてくれてありがとう。フーゴ。…オレの悩みはな…この見た目だよ。」

    頭や皮膚を指さしてそう言う。これで大体察してくれるだろう。

    フーゴ「………???」

    しかし、フーゴは首をかしげたまま固まってしまった。…あれ、どういうことだ??

    ヨルン「あの、オレこんなに白いんだよ?」

    フーゴ「み、見りゃわかりますけど…?」

    ヨルン「なんとも、思わないのか…?」

    フーゴ「…?えぇ、綺麗な色だと思いますよ。」

    …………え、



    ヨルン「えぇーーーーー!!!??」
  14. 14 : : 2018/08/27(月) 17:01:07
    >>12
    期待ありがとうございます!これからも是非、よろしくお願いします!
  15. 15 : : 2018/08/27(月) 18:22:36
    話によると、どうやら彼の近くでは珍しくはないそうだ。近くに住んでいるじっちゃんばっちゃんと同じような髪色………ってこれおじいちゃんの白髪(しらが)と同じにされてる!?

    綺麗な色と言われた時には一瞬ときめいたが、白髪扱いされていたと知るとちょっとショックだ。

    おしゃべりだし、どこか天然な部分もあるが、言うほど問題児じゃないのかもしれない。

    フーゴ「そうだ。残りのお二人ともお話しませんか?」

    …前言撤回。
    怖いもの知らずな問題児の中にお前も入っているわ。間違いなく。

    ヨルン「お、オレはちょっと…あの二人は…」

    フーゴ「行きましょうよ!さーレッツゴー!」

    ジルヴェスター「うるさいぞ庶民共!このジルヴェスター・ヴァイセンホルンの前で、騒ぐんじゃあない!」

    フーゴ「す、すみません…ああこういう時はどうしたらいいんでしょうか、貴族様を怒らせたことなんて1度もないから対処法なんて全然わかりませんようもう。そもそもヴァイセンホルン家と言えば………」

    ヨルン「わかった、わかったから落ち着けフーゴ。ジルヴェスターも起こして悪かった。許してやってくれ。」

    ジルヴェスター「フン。許しを乞うならその態度を示せ。地に額をくっつけて………」

    ヨルン「やるか!!」

    フーゴ「地面に額をくっつけて…その後どうしたら!?」

    ヨルン「フーゴもやんないでいいから!!」

    やっぱりここは、問題児だらけの部屋だ…!!



    一旦部屋を出ると、なんだか賑やかな笑い声が聞こえてきた。たぶん隣の部屋――ロイとトオル、あと名前は覚えていないが、二人の男子の個室、のはずだ。
    こっちとは違って、全員比較的まともな人達で構成されている。とても羨ましい。オレもおっちに行きたい…!

    フーゴも同じ声が聞こえたらしく、小声で「気になったので行きましょう」と耳打ちしてきた。こいつの行動力、半端じゃあねえな…。



    トオル「強すぎでしょ、ロイ君…本当に初めて?」

    ロイ「当たり前だ。壁の外の文化に触れた事なんてない。」

    部屋に入ると、トオルとロイ、そして二人の男子――ではなく、三人の女子が座っていた。なぜだろうか。

    ヨルン「あの…悪ぃ。何してたんだ?」

    ロイ「あぁ。トオルが持ってきた、壁の外の『ゲーム』をやっていた。」

    トオル「人狼ゲームって言うんだけど…知らないよね。色んな役職があって、誰が『狼』か当てるゲームなんだけど…経験者の俺なんかより、初心者のロイ君の方が圧倒的プレイングするんだもん。びっくりだよ。」

    ヨルン「へぇ。面白そうだな。な?フーゴ。」

    フーゴ「えぇ、えぇ!とても興味あります!ぜひ私も参加を…あっ、申し遅れました。私はフーゴ・ラルフ。調査兵団に入り……」

    ロイ「知っている。自覚ないかもしれないが、お前の自己紹介は印象的だった。」

    フーゴ「そうなのですか。いやはや本当に自覚はありませんでした。ただ自分のことを紹介しただけなのですが、そんなに人の印象に残ったでしょうか?でも少しだけ分かってはいるのですよ。緊張するとよく喋る…と言いますか。パニック状態で言いたい内容がまとまらずに話が長引いたりすることはしょっちゅうあると少し思ってはいるのですがやはり昔から持った特性を変えることはむずかしく…」

    ロイ「あぁ。わかった。わかったから、黙れ。」

    ロイは眉の一つも動かさず、フーゴの長話を指摘した。オレだったら表情筋が歪んていたと思う。

    フーゴ「し、失礼しました…。」

    ヨルン「ところで気になっていたんだが…どうして男子寮に女子が?しかも3人。」

    トオル「このゲームは二人じゃできないからね。ほんとは同室の二人に声をかけたかったんだけど、どっか行っちゃって…それで、誰かを誘おうって外に出たら声をかけられて…」

    女子A「ぐ、偶然!たまたま会っただけなんですよ!?」

    女子B「ま、待ち伏せなんてしてないよねー!」

    女子C「ねー!」

    …初日からモテモテだな。トオルはともかく、ロイは誰もが認める美少年だ。兵士と言えどまだ十数年しか生きていない少年少女だ。かっこいい彼氏や可愛い彼女が欲しいと思ったっておかしくはない。

    …でもやっぱ、こいつばっかりで納得いかねえ!
  16. 16 : : 2018/08/27(月) 21:05:05
    フーゴ「…つまり、基本のルールは『人類陣営』と『巨人陣営』に別れて戦う、というわけですね?巨人陣営は人の姿をして兵舎に潜り込んでいる。それを私たちが推察し、当てるゲーム…と。」

    トオル「うんまあ…それでいいよ。実際人狼なんかより、巨人に例えた方がわかりやすいだろうしね。」

    フーゴ「巨人側はすぐに人類を滅ぼそうとはせず、一日一人ずつを食って、巨人と人類の数を等しくするのが目標。に対し、我々人類は、巨人を全滅することが目標。これだと人類は一方的に食い殺されるだけなので、まずは毎日の決まりとして『処刑』をすることにした。巨人だと疑わしい兵士を、一日一回、拒否権なしで殺せる。更に、駐屯兵団、憲兵団、調査兵団という兵団を作る。駐屯兵団は、処刑された兵士の死体を調べ、本当に巨人か否かを当てることが出来る。憲兵団は、生きている兵士を身元確認し、巨人か否かを当てることが出来る。調査兵団は、生きている兵士を巨人の脅威から一日一回守ってくれる。…なるほど、完璧なまでに頭脳戦ゲームですね。」

    トオル「あっ、それじゃあゲームマスターは俺がやるよ。」

    ロイ「よろしく。」

    オレもなんとかルールを理解出来た。
    ただ体を動かせるだけじゃあ、本当の英雄にはなれない。機転のきいた動きが求められることだってある。頭の回転を鍛えることも、必要になるかもしれない…。

    トオルがそこまで考えているかはわからないが、オレはこのゲームを利用して、より英雄に近付けさせてもらう!



    トオル「というわけで、巨人陣営の勝ちだ。」

    ヨルン「ぐあー!負けたー!フーゴ、まさかお前が巨人だったなんて…!」

    フーゴ「いやあ、簡単に騙されてくれて助かりました。ロイの援護射撃もあって、助かりましたよ。」

    ロイ「…あぁ。だが、MVPはフーゴだ。俺も大してこのゲームをやったわけじゃないが、お前の判断力に助かった。」

    トオル「す、すごいや…俺には何があったのか全然わからなかった。…一番の経験者のはずなんだけどなあ。」

    負けてしまったし、悔しい気持ちもあるのだが、それ以上に二人の完璧なチームワークと、言葉巧みにオレ達を動かす手腕は、とても勉強になった。

    ヨルン「ありがとう、楽しかった。」

    トオル「こっちこそ。また遊びに来てね。あっ、今度はオレ達がそっちに行くかも。」

    ロイ「『達』って…俺は行くとは一言も言ってないが…」

    トオル「行きたくない?」

    ロイ「………行く。」

    ヨルン「あー…悪いが、こっちの部屋は来ない方がいいぞ。メンツがメンツだしな。」

    フーゴ「貴族家のご子息のジルヴェスター・ヴァイセンホルンと、教官をボコボコにしてしまったリラン・アッカーマンですからね…。私も夜な夜な、寝首をかかれないか心配で心配で…。」

    ロイ「……そいつは、ご愁傷さまだな。」

    トオル「でもそれなら尚更、二人の安否も心配だし、いつかそっちに訪ねるよ。」

    ヨルン「…あ、ありがとう………。」

    少し照れくさくなってしまい、オレは顔を伏せて答えた。

    ヨルン「そろそろ眠くなってきたな…。」

    フーゴ「もうそんな時間ですしね。おやすみなさいお二人とも。また明日、です。」

    トオル「おやすみー。あっ、そっちの女子も、今日はありがとうね。」

    ロイ「また来てくれ。おやすみ。」

    こうして、オレ達はそれぞれの部屋へと戻り、就寝することになった。
  17. 17 : : 2018/08/27(月) 21:26:32
    カンカンと甲高い音が鳴り響く。その音でオレ達は一斉に目覚めた。
    これが目覚ましの代わりになるんだが、起きても鳴り響く音が耳障りすぎる。

    兵服を着て、身支度を整えていたら、ちょうどフーゴも起きてきた。あとの問題児は知らん。

    フーゴ「ふわぁ…おはようございます。いい朝ですね。」

    ヨルン「あぁ、おはよう。」

    フーゴの支度が整うまで、軽くストレッチをしておく。今日から本格的な訓練が始まるそうだ。準備運動は必要だろう。

    フーゴ「すみません…おまたせしちゃって。でも、そんなに私のことを待たなくても良かったのでは?」

    ヨルン「…あ、あぁ。わり。なんていうか…友達を待つのって、当たり前…じゃ、ないか?」

    友達なんていなかったから知らないんだけど…なんて言えずに、ちょっとしどろもどろになりながら答えてしまった。

    フーゴ「友達…そう、友達ですか。ありがとうございます。そうですね、私と…いえ、僕とヨルンは友達です。」

    ヨルン「…あ、あぁ。ありがとう。」

    改めて口に出されると、ちょっと小っ恥ずかしい気持ちにさせられる。

    フーゴ「さ!食堂へ向かいましょう!美味しくもないご飯が待っていますよ!」

    ヨルン「しっ。まだあいつら寝てるんだから…」

    こうしてオレ達は、食堂へと向かった。



    食堂にはちらほらと人が居たが、どれも名前も知らない人達だ。オレとフーゴは、それぞれ自分の分の朝食をとる。
    正直、育ち盛りからしてみたら全然少ない量だ。これで一日運動できるとは思えない。…が、これも全て、巨人がきたことによる土地不足が原因だ。仕方ない…と言い聞かせて、少ない量を味わって食べていた。

    ヨルン「なあ、フーゴ。お前も、調査兵団志望なんだよな?」

    フーゴ「…え、えぇ。そうですけど…。『も』ってことは、ヨルンも?」

    ヨルン「…あぁ。だからさ、フーゴ………」



    「巨人の奴ら、絶対絶滅させような。」
  18. 18 : : 2018/08/27(月) 22:53:29
    閲覧数が100を越えました!こんな完全自己満足SSをたくさんの方に読んでいただけて光栄です。今後とも是非よろしくお願いします!



    教官「今日で貴様らが、成長もせずに呑気に過ごして一週間となる。そこで、貴様らの能力の向上を確かめるためにテストを行う。」

    おそらく皆オレと同じで、内心では「えぇー!?」と思っていたが、ここで声をあげるほどバカはいないようだ。

    リラン「えぇー!?」

    ………前言撤回。バカがいた。

    が、教官はあれ以来トラウマなのか、リランに対し強く出ることは無い。情けないというか…可哀想というか…とにかく、どんまいだな。

    教官「座学試験に馬術、対人格闘、そして最後に立体機動のテストを行う。技巧等の試験はまた次回だ。ただし、形式は通常訓練と変わらない。普段の訓練と同じようにやってくれて構わん。中間順位発表を見て、己が目指すべき場所を見定めるといい。」

    いわば、年に数回ある定期試験…といったところか。能力確認のために…。

    そうと分かれば、少し燃えてきた。調査兵団志望の場合は、10番台に入る必要も無いが、かといって下から数えた方が早いような順位で、英雄になれるわけがない。

    オレが目指すべき場所は―――

    ヨルン「主席卒業。…誰よりも強い、英雄になるんだ。」



    座学試験。
    背後で唸り声を出しているのはリランだ。やはりバカだこいつは。
    しかし、その唸り声はバカにできない。集中力を削られてしまう。もしそれが目的なら、こいつはとんでもない策士だと思う。

    教官の立場が、彼より弱いというのが問題だ。どうにかしてくれよ………。

    またカンカンとチャイムの甲高い音が鳴る。これで座学試験は終了だ。リランの妨害があったものの、手応えはあった。

    絶対に…オレが、英雄になってみせる!!




    次に行われたのは馬術訓練だ。これがどうしても苦手だ。人付き合いをほとんどして来なかったオレに、動物付き合いなんてランクが高すぎる。

    オレの馬は、オレと同じ白い色をしている。もしオレがロイみたいにかっこよければ、白馬の王子様〜だなんて呼ばれていただろうが、そうはならなかった。

    他の奴を見てみれば、餌をやったり乗ったりと、もう手懐けている奴らが多い。――この後れは、次の試験で取り返す!




    次は対人格闘術。二人一組となって、片方が盗人、片方が兵士となり、対処法を学ぶというものだ。
    普段の訓練中は、評価が低いだのなんだのって、不真面目な人間が多い中、今日はさすがに真面目にやっている連中が多い。

    フーゴ「あはは、やっぱり運動は苦手ですね…。向いていない。」

    尻もちをついて倒れたのはフーゴだ。オレのペアを頼んでいる。

    ヨルン「大丈夫か。」

    オレは手を差し出すと、フーゴはそれを掴んで立ち上がった。

    ヨルン「次はオレが盗人だな。」

    フーゴ「あはは…お手柔らかに。」

  19. 19 : : 2018/08/27(月) 23:37:20
    最後は立体機動訓練だ。これが一番の肝。どの訓練よりも評価が高く、何よりカッコイイ。
    そのため、主に男子は完全に使いこなそうと力を上げてくる。

    みんなが努力をするから、ここで物を言うのは『才能』だ。本当に使いこなせる奴と、そうでない奴。
    そこの絶対的な壁が『才能』。努力量じゃ覆せないものだ。

    その中でも、特に才能のある奴らが…アッカーマン双子と、意外にも、ジルヴェスターとエミリもあげられる。



    リラン「いーーーーやっほーーーーー!!!!」

    ヨルン「っ!?」

    リランに背後から猛スピードで追い抜かれ、目の前にいた標的を横取りされてしまう。

    ガスの消費なんかは気にせずにブン回っている。頭と同じでガスもスッカスカにするつもりだろう。今上手いこと言ったな、オレ。

    また別の獲物を見つけるため、木にアンカーを突き刺すと、今度は別の奴の影が見えた。



    それは、一種の芸術作品のようにも思えた。
    立体機動を用いた芸術作品。その動きは空を舞う蝶。その刃は獲物を仕留める蜂。その顔は、狂気に歪んだ熊。
    奇怪な動物の組み合わさったようなそれが、何故かオレには芸術作品に見えた。

    そこにいたのは、ジルヴェスター・ヴァイセンホルン。帰属家と甘く見ていたが、実力は本当だったらしい。

    美しい動きに見惚れていると、今度はこちらの獲物までとられてしまいそうだ。
    気持ちを切り替えて、オレはまたアンカーを木に突き刺し移動した。



    先程のジルヴェスターに対し、今度現れたのはエミリ・ゾンマーフェルトだ。
    地面にアンカーを突き刺し低空飛行。ブレードを投げうなじを切りつけた後に回収。一連の動きは、プロの調査兵団ですら難しいそれだった。

    エミリ「何見てるの〜?今試験中だよ?」

    ヨルン「わかっている。…だけどお前、本当に凄かったんだな。」

    エミリ「んまあ、夜中になれば今の5000倍は力出るけどね。」

    …………。

    しばらくの沈黙の後、エミリは「うそうそ。」と前言撤回をした。よろしい。

    エミリ「アタシも憲兵団志望だからね〜、ここで無駄な時間を使うワケには行かないからっ、じゃねっ!」

    そのまま、エミリはどこにもアンカーを刺さずに、ガスの力だけをコントロールして森の中をかけていった。

    ジルヴェスターを『芸術』というなら、エミリは『技術』だ。真反対ではあるが、どちらも実力者であることは間違いない。

    オレは、あれを越えなきゃならないのか………!!

    なんて、今になって怖気付く必要なんてねえな。
    気を取り直し、獲物を探し、討伐する。ずっとこれを繰り返していたら、今日の試験は終了していた。
  20. 20 : : 2018/08/28(火) 02:03:30
    期待
  21. 29 : : 2018/08/28(火) 13:02:41
    >>20
    ありがとうございます!今後ともよろしくお願いします!

    先程荒らしを確認しましたので非表示にしました。読者の皆様にはご不便おかけします…m(__)m
  22. 30 : : 2018/08/28(火) 16:39:23
    フーゴ「お疲れ様です。ヨルン。」

    ヨルン「お疲れ様、フーゴ。」

    フーゴ「やはり試験となると、全員活気が違いますね。…僕は調査兵団志望ですから、10番台に入る必要もありませんが。」

    ヨルン「殆ど憲兵志望だもんな。確かに内地での生活なんて美味い話、誰もが喉から手が出るほどほしいだろうけど…。」

    余談だが、フーゴが自分の一人称を「僕」に変えたのは、オレに対する信頼の証だ。
    緊張が解けて、堅苦しい態度がなくなった…といったところだろうか。短いやりとりもスムーズにできるようになった。

    フーゴ「さて、結果発表の前に、夕食を一緒に、どうですか?」

    ヨルン「そうだな。運動の後は飯だよな!」

    オレ達は満場一致(二人しかいないが)で飯を食うことにした。



    ー食堂ー

    フーゴ「あぁ違うよ。」

    ヨルン「えぇっ!?まじかよ!?自信あったんだけどなー」

    食堂で飯を食いながら、オレ達は座学の答え合わせをしている。
    フーゴの知識量は人並みじゃなく、座学においては現状トップを突っ走っている。

    オレはそんな友人に見てもらいながら勉強したお陰か、座学に関しては割と好成績がとれている。
    が、やはり友人本人には及ばないみたいだ。

    ヨルン「はぁー…なあ、オレって何ができるんだ?」

    フーゴ「…と、言いますと?」

    ヨルン「判断力や頭の回転はフーゴやロイの方が上回ってて、立体機動もオレなんかよりできる奴は多い。『これができる』って特徴がないのって、ちょっと寂しいなーなんて思っちゃったりしてさ。」

    フーゴ「そうですね…。たしかにどれも、中の上止まりって感じはあります。全般をそつなくこなせる兵士と言われれば、僕だってリリーさんを思い浮かべますし。」

    ヨルン「だよなー…。」

    フーゴ「……ヨルンは、英雄になりたいんですよね?」

    ヨルン「あ、あぁ…そうだけど。」

    フーゴ「理想の英雄像は?やっぱりリヴァイ兵士長のような方ですか。」

    ヨルン「…そうだな。それもあるけど…一番は両親だ。」

    フーゴ「…両親?」

    ヨルン「オレの両親は調査兵団だったんだ。『あの日』に大量の巨人に殺されたけどな。
    二人が俺にとっての英雄だ。自由を求め、圧倒的力に立ち向かい、人類を自由へ導く翼…それがオレの、理想の英雄像、だな。」

    フーゴ「………なるほど。深い話ですね。それで、両親はリヴァイ兵士長より優秀だったのでしょうか。」

    ヨルン「…えっ?」

    フーゴ「答えはおそらくNOでしょう。あの兵士より優れた人間などいない。それが『人類最強』という意味なのですから。
    能力的に優れていることが『英雄』なのであれば、君は両親ではなく、リヴァイ兵士長を理想の英雄像とするべきです。
    そうしなかったってことは、あなたの思う英雄に必要なのは、能力ではない何か、ではないでしょうか。」

    ヨルン「…能力ではない、何か…。」

    フーゴ「…ちょっと、理屈っぽい話になってしまいましたね。さあほら、もうすぐ結果が発表されます。行きましょう。」

    ヨルン「あ、あぁ。うん。」

    能力ではない何かが、英雄にとって必要………。
    オレの目指す英雄って、一体なんなんだ。
  23. 31 : : 2018/08/28(火) 17:06:55
    結果発表と言っても、全員分が貼り出されるわけではない。教官の口頭から、10番台までが発表される。以降誰がどの順位かは発表されない(後で個人的に教官に聞けば、アバウトな順位だけは教えてくれるそうだが)。

    英雄に必要なのは、能力じゃない何か。
    フーゴのその発言が、ずっと引っかかっていた。オレにとっての英雄像って、一体なんなんだろうか。

    やみくもに突っ走って、ただ力をつければなれる、そう思って追いかけていたものは、一体なんだったのだろうか。

    教官「それでは、今回の試験において、成績上位者10名を発表する。」

    ー第10位
    ロイ・エルモット

    ー第9位
    ヨーゼフ・ゼネシー

    ー第8位
    ソフィ・カベル

    ー第7位
    マグダレーナ・ルエル

    ー第6位
    ヘイホフ・ゲヌイト

    ー第5位
    リラン・アッカーマン

    ー第4位
    ヴァレリィ・ベレネス

    ー第3位
    エミリ・ゾンマーフェルト

    ー第2位
    ジルヴェスター・ヴァイセンホルン

    ー第1位
    リリー・アッカーマン



    教官「以上だ。」

    リラン「なぁっ!?なんでリリーの奴が1位で、このオレが5位なんだよ!?」

    教官「当たり前だ愚か者!いくら身体能力が高いからといって、ガスの吹かしすぎなどの問題点も多かった。それに何より、貴様座学の試験を白紙で提出しただろう!?」

    リラン「そんなの、リリーだってそうだろ!?オレが解けない問題をあいつが解けるわけないんだし!!」

    リリー「解いたわよ。バカにしないで。」

    リラン「なにィッ!?」

    バカは放っておこう。

    それよりも、オレとフーゴの名前、どちらも入っていなかった。

    フーゴの運動神経は正直言って高くはない。座学だけトップレベルに高いが、やはりそれだけだと10番台は難しかったようだ。
    逆に、オレはフーゴがさっき言っていたように、どれも中の上止まり。ここまでは凡人が努力して到達できる領域だ。それじゃ英雄にはなれない。

    ヨルン「どうすりゃいいんだか…」

    『能力以外の何か』についても分からないし、かといって能力もない。
    オレはどうしたら、英雄になれるんだろうか。

    フーゴ「できるようになるためには、できる人に聞くのが早い、そう僕は思いますよ。」

    その後、『先に部屋で休んでいます』と言い残して、フーゴは去ってしまった。

    できる人に聞く…か。そうだな、行動しない限り、何も変わらない。

    変化しないことはオレの望むところではない。ここはやみくもにでも行動して、何かを掴んでみせる。
  24. 32 : : 2018/08/28(火) 18:00:39
    ヨルン「入るぞロイ……ってうおっ!?」

    ロイ「あぁ。入れ」

    ヨルン「いや入れじゃねえよ!なんで裸の女がいるんだよ!?」

    ロイ「…下着つけてるし別に平気だろ。裸じゃない。」

    ヨルン「お前はバカか!?つかおま……な、なな、何をやっていたんだよ!?」

    ???「脳内ピンク色だネ少年。別にウチとロイはそんな関係じゃないよ。」

    ロイ「そんな関係ってなんだ?ソフィ。」

    ソフィ「ロイは知らなくていいの。」

    ソフィ、と呼ばれて気付いた。
    こいつが第8位のソフィ・カベルだったのか…。

    ー現在公開可能な情報
    ソフィ・カベル:金髪お団子と、空を閉じ込めたような青い瞳が特徴。巨乳。エロい。

    ソフィ「そんでもって少年、君とは初めましてだネ?お名前は?」

    ヨルン「あ、あぁ…ヨルン・ヨルムナスだ。ってか服を着ろ!」

    ソフィ「あらら、興奮しちゃって…ほっぺたが瞳の色と一緒になっちゃってるよ〜。あっ、ちなみにウチはソフィ・カベル。よろしくネ。」

    いいから服を着てくれ…!目のやり場に困るんだこっちは…!!

    ヨルン「…あぁそうだ。ロイ…それとソフィも。10番台入りおめでとう。2人に――ってか、最初はロイだけのつもりだったけど、聞きたいことがあるんだ。」

    ソフィ「強くなるためには…とかだったらお断りだよ。ウチ強くないし、鍛え方は人それぞれだからネ。」

    ロイ「同感だ。それに俺は、運良く10番台入りしただけ…。他がもっと力をつければ、俺みたいな凡人はすぐに蹴り落とされる。」

    ヨルン「…そ、そうか…。邪魔したな、悪い。」

    ロイ「…いや、そんなことはないが。………無理するなよ、お前。」

    ヨルン「…あぁ、ありがとな。おやすみ、いい夜を。」

    ロイ「……?あ、あぁ。いい夜を…?」

    オレは結局何も得られないまま、皮肉をこめた一言だけ残しロイの部屋を後にしてしまった。

    でもなんで、ソフィは下着姿であそこに居たんだ…?そんな関係じゃないって本人は言っていたが………



    ソフィ「ふぃー…危なかったよ。あと一歩遅ければ、少年にもこれをみせるところだったネ。」

    ロイ「それで、見せたいものってなんだ?」

    ソフィ「…これ。」

    ロイ「…腹に傷が。痛そうだな。」

    ソフィ「見ててネ。」シュウウウ

    ロイ「………は?」

    ソフィ「やっぱり混乱するよネ。ウチ、生まれついて持っているんだよ。」

    ロイ「こ、これってまさか…………。」

    ソフィ「そ。ご存知の通り―――」




    「巨人の力、だネ。」
  25. 33 : : 2018/08/29(水) 23:35:58
    リリー「あっ…」

    ヨルン「…?どうかしたのか?」

    リリー「あっ…えっと………。」

    兵舎は男子寮と女子寮に分けられていて、異性の寮に入れるのは玄関まで、という暗黙のルールがある。
    もしそれを破るようなことがあれば、教官の雷こそ落ちないが、噂が広がってしまい『あの人は異性の寮に入った変態』というレッテルが貼られてしまう。年頃の男女にとって、これ以上の拷問はないと言ってもいい。

    もし誰かに用事があるなら、事前にどこかで待ち合わせるか、ここを通った誰かに呼び出してもらうしかない。
    そして、その玄関に彼女がいるってことは、誰かに用事があるってことなのだろう。

    ヨルン「リランならたぶん寝てるぞ。」

    リリー「あの、リランじゃなくって………キミ。」

    ……………はい!?

    いや、確かにオレの方も用事があった。現在主席の天才兵士に、どうすれば英雄になれるか聞きたいと思っていたところだ。

    でもなんで、向こうの方もオレに用事が………?

    リリー「キミに話があるの。なるだけ人に聞かれない場所だとありがたい。」

    これは…もしや彼女の反感を買うようなことをしてしまったから、「お前ちょっと兵舎裏な」っていう奴なのだろうか…?

    ヨルン「す、すまん!心の準備が…」

    リリー「こ、心の準備…!?わ、わかった…待つ、待ちます。」

    彼女を負かすことができたら、オレにとっての英雄に近付くかもしれない。こんな形で勝敗をつけるのは、オレも望むところではないが。
    だが、本当にそんなことができるのか…?男と女で殴り合えば、男が勝つことが大半だが…例外だってある。目の前の少女が、まさにその例外なんじゃないだろうか。

    それに…こんな女の子に暴力を振るって勝手に優劣つけて、それで本当に英雄なんかになれるのか…?

    リリー「で、できた…?」

    ヨルン「あ、あぁ。悪い。もういいぞ。」

    心做しか、夜の暗闇でもわかるくらい、彼女の顔が赤くなっている気がする。
    そりゃそうだよな!オレが彼女を怒らせたのに、オレが一方的に待たせたんだ。そりゃ怒るだろ!何をやっているんだオレは!?

    闘気に満ち溢れている彼女に、勝敗をつけるだなんて馬鹿な発想から、どれだけ被害を最小に済ませるかに思考がシフトチェンジしていた。
  26. 34 : : 2018/08/29(水) 23:52:20
    リリー「け、結婚してください…。」

    ヨルン「……………ごめん、聞こえなかった。」

    リリー「結婚してくださいっ!」

    父さん、母さん、ごめんなさい。産んでくれてありがとう。
    僕はどうやら一生許されないことを仕出かしてしまったようなので、今から地獄を見てきます。

    ヨルン「…あの、リリー…さん?」

    リリー「…あの、返事は…後日、聞く…から。」

    一日だけ猶予をくれた!優しいねリリーさんは!!
    今のうちに遺書を書いて両親に別れの挨拶をして、あとついでにフーゴにも今までありがとうって伝えてやるか。

    リリー「…えぇっと…あの………」

    ヨルン「悪い、聞きたいんだ…ですけど、オレ何かしました?あの、できることなら何でもするから、許していただけると…」

    リリー「…?私たちに接点はないはず。」

    ヨルン「ないよ?!ないからこそ、オレに求婚すること自体が間違っているんじゃないか!?やっぱオレなにかしたよね!?」

    リリーは首を傾げている。自分の心に聞いてみたらってことでしょうか。心当たりがないなんて、口が裂けても言えないな…。

    リリー「…?アーリマ達は、三日目に告白したと言っていた。」

    アーリマとは、この前仲良く巨人ゲームをやったロイ大好き三女子の一人だ。たぶん「達」と言っているから、三女子全員のことを言っているのだろう。
    関係ないが、三女子は全員ロイに告白し玉砕している、と風の噂で聞いた。

    ヨルン「…だから、初対面で求婚してもおかしくない、と?」

    リリー「うん。」

    ヨルン「そのー………何のために、でしょうか?やっぱ腹いせ?オレなんかした?」

    リリー「何でって…告白する理由なんて、一つしかない。キミに、一目惚れしたから。」

    どきっ…上目遣いで見てくる彼女に、思わずオレの心も揺らぎそうになった。

    リリー「…決して、リランにも恋人がいるから、対抗心を燃やしたわけではない。…決して。」

    本音はこっちだな。
    なんだよ!オレの心の揺らぎを返してくれよ!あれよく見たらちょっと可愛いなとか思っちゃったし、白と黒で並んでいたらちょっとお似合いかなとか思っちゃったじゃねえかよ!!クソッ!!

    リリー「それで…返事は………」

    ヨルン「あー…でもなんで結婚?」

    リリー「リランが恋人なのに、私も恋人で同じラインなのはダメ。」

    ヨルン「あー………オレ達まだ子供だから、大人にならないと結婚できないの、知ってる?」

    リリー「…知らなかった。さすが私のヨルン。博識。」

    ヨルン「これ一般常識だし、あともう既に彼女面するな。『婚約』ならできるだろうけど、結婚は無理だ。」

    リリー「それなら仕方ない。なら婚約を…」

    ヨルン「…お前、見た目に寄らず強引だな。」

    東洋ではこいつみたいな容姿の奴を『ヤマトナデシコ』と言うと、文献で見た気がするが…中身は真逆なようだ。

    ヨルン「まず一つ目、リランは本当に彼女がいるのか?」

    リリー「いる、と聞いた。」

    ヨルン「誰から?」

    リリー「…リランから。」

    はぁ、と思わずため息が漏れた。…こいつやっぱりバカだな!きょうだい揃ってバカだな!?

    ヨルン「あいつが本当のことを言っている証拠はない。もしかしたら、見栄をはっただけかも。」

    リリー「でももし本当なら…私はリランに負けたことになる…」

    ヨルン「お前、本音出てるぞ。やっぱリランに勝ちたいだけなんじゃないか。」

    リリー「うっ…ち、違う…………って、言い訳も無駄だろうか。」

    さすが、姉の方は回転する脳が少しだけ残っているみたいだ。バカだけど。

    ヨルン「はぁ…ようは、ちょっとでもリランより優位に立ちたいんだろ?」

    リリー「…うん。」

    ヨルン「よっしわかった。ニセコイするぞ。」

    リリー「………え?」
  27. 35 : : 2018/08/30(木) 00:15:27
    リリー「ニセコイ…?」

    ヨルン「『偽物の恋』の略称だ。あのリランだったら、ちょっと一緒にいただけでコロって騙されてくれるだろ。これでオレとお前の面倒事も片付く。簡単な話だろ?」

    リリー「…う、うん。」

    名案だと思ったのだが、リリーはあまり乗り気じゃないようだ。

    ヨルン「…やっぱ、対等よりも優位な方がいいのか。」

    リリー「………。」

    ヨルン「ならニセコンだ。これは偽物の婚約な。オレが部屋であいつと婚約したって話す。そうすりゃ、本当にあいつに女がいたとしても、お前の方が優位だろ?」

    リリー「…う、うん………。」

    ヨルン「大丈夫だ、オレに任せろ!」

    親指を立ててみるが、やはりリリーの態度は変わらずだった。

    何が不満なんだろうか…やっぱりオレ、知らぬうちに何かやっていたのだろうか………。

    リリー「…不束者ですか、よろしくお願いします。」

    ヨルン「いやそういうのいいって。偽物なんだから、これ。」

    リリー「………。」

    最後まで、リリーの顔は曇りっぱなしだった。



    リラン「嘘だな。」

    シッパイシター
    バカだから騙せる、だなんて高を括っていたらこのザマだ。まさか一瞬で見破られるなんて思わなかった。
    本当はこいつ頭が良くて、今もカマをかけてきている…とかじゃないよな?

    リラン「お前、あいつの匂いがしてこねえよ。男女の関係なら、手繋いだり…き、ききき…きしゅを………したりとか………………あ、だだだ…抱き合って………あぁもうやめろ恥ずかしい!!!」

    あなたが一人騒いでいるだけですけどね!?
    しかし、匂いか…そんなもので特定するとは思わなかった。

    確かに、今日一日話しただけで、実際に触れ合ってすらいない。距離が近付いたわけでもない。
    リリーが乗り気じゃなかった理由もようやく解明した。最初からそう言ってくれればよかったのに…。

    リラン「あいつの差し金か?まったくご苦労なこったぜ。オレの方が天才だってのに、あいつは未だに認めてねえのな、なっはははは!!」

    ヨルン「順位的にはお前の方が下だけどな。」

    リラン「うっ、うるせーよ!あいつはあれだ!教官にカラダ売ってんだよ!!恥ずかしい!!言わせんな!!」

    だからお前が勝手に言ってるだけだろ!?子供かよ!?

    …いや待て!やっぱりこいつはバカだ。自分から墓穴を掘っている!
    ならこの勝負…オレ達の勝ちだ!!



    ヨルン「お前、口に出すだけでも恥ずかしがっているのに、よく自分で言ったこと、彼女とできるよな?」

    リラン「…なっ!?」

    ヨルン「手繋いだりー、キスしたりー、抱き合ったりー………経験者なら、口に出すくらい屁でもないよな?恋人持ちサンよ。」

    リラン「あ、あの…それは………」

    ヨルン「そして、そんなお前は知らないはずだ。オレとリリーがどんな関係なのかを…触れ合わずとも、お互いの愛を確かめ合える、そんな関係のことを…!!」

    リラン「そ、それは………!?」



    ヨルン「『遠距離恋愛』だ!」
  28. 36 : : 2018/08/30(木) 00:41:55
    リラン「遠距離…?」

    やばい!思った以上にこれを言うのは恥ずかしいぞ!!
    さっきまでガキだなんだって言って悪かった、リラン!

    遠距離恋愛とは
    本来ならば、遠く離れた地に住む相手と、手紙などでやりとりし、お互い顔は見えないが愛し合っていますと言える関係を『遠距離恋愛』と言うのだが…

    ヨルン「オレは見ての通り白髪で、『人』っていう枠でみたら変な奴なんだよ。場合によっては人とすら見てくれねえやつもいる。
    こんな奴と付き合っている、なんて言えば、あいつにだって飛び火しそうだろ?だから、オレとあいつは『表面上』無関係ってことにしている。これが遠距離恋愛だ!」

    リラン「…ん、んな話あるわけ…!?」

    ヨルン「ないって言いきれるのか?恋愛もしたことない癖に。」

    リラン「うぐっ…?!ち、ちくしょう!!覚えとけよお前ら!!!」

    なぜかリランはそのまま外へ飛び出してしまった。…これから就寝の時間だと言うのに。

    やっぱ、バカなんだな、あいつ…。

    フーゴ「そ、そうだったのですか…ヨルン。」

    ヨルン「って、フーゴまで信じなくていいから!!」



    ー翌日ー

    リリー「『恋愛ごときで勝った気になるなよ!』って言われた。」

    ヨルン「あぁ、オレ達の勝ちだぜ。」

    リリー「それと…この件の代償として、こんな目にあった………。」

    そう言って、彼女が指差した先には、なぜか複数人が群がっていた。

    男子A「おいおい聞いたか?リリーちゃんって付き合ってるらしいぜ。」

    男子B「なんでもつきあっているのは、あの白髪の変な奴だって。」

    女子A「でも、その白髪のヨルンって子、あの子を守るためにずっと秘密にしていたんでしょ?」

    女子B「マジかよイケメンだな!お前らもそんな人間になれよ!!」

    ……………。
    なんという、ことでしょう…………。

    そりゃそうだ。リランにこの話をすれば、誰かに言いふらすに決まっている。思春期のオレ達は、恋愛事情に興味津々な部分がある。
    誰かがちょっと広めた途端、それはウイルスのように伝染していって…最後はこうなる。

    男子C「あ、例の二人じゃん。ひゅーひゅー!!」

    ………………。
    またしくじった…………!!!!

    リリー「もう少し…ニセコイ、しなきゃいけない。でしょう?」

    リリーは、なぜか嬉しそうに微笑みながら、そんなことを言った。

    ヨルン「…ったく、どうしてくれんだよ。」

    そんな彼女とは反対に、オレは暗い顔でため息をついた。
  29. 37 : : 2018/08/30(木) 15:15:32
    つい先程メアドで仮登録をしました。まだメールが来ず、未登録の状態ですが、登録ユーザーになったらグループ等で細かくキャラ設定を掘り下げたりしたいなあなんて考えております!
    どうぞ今後とも応援よろしくお願いしますm(_ _)m
    (それと、気になるキャラーとかいれば教えて下さるとモチベーションに繋がったりするなあ…なんて思います笑)
  30. 38 : : 2018/08/30(木) 18:24:07
    期待です!
  31. 39 : : 2018/08/30(木) 18:32:42
    >>38
    ありがとうございます!

    そしてご連絡が遅れました。やっとこさユーザー登録完了しました…!最初メアドで登録しようとしていたのに、なんかメールなかなか届かなくてもう一回ユーザー登録し直そうとしたところ、グーグルのアカウントでの登録が可能とのことでしたので、そっちでやったらあっという間でした。チクショウ………
    グループを活用してよりキャラの魅力が磨かれればなあとおもっています!どうぞ今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m
  32. 40 : : 2018/08/30(木) 19:39:46
    訓練兵にも、日数にしたらかなり少ないが、休暇というものが与えられている。
    段々と、男女共にグループのようなものを作り始めており、そのグループの中で「ねえ今日どこいくー?」「えー私街いきたいー」だなんて会話をしている。

    当然オレにそんな相手はいない。せいぜいフーゴとロイ、トオル…あとはリリーと、ソフィはちょっとだけ話せる程度。貴重な休暇を、オレなんかに捧げてくれるかと言えばきっとノーだろう。
    今日は適当に昼寝して過ごそうかと考えている時、人の影が見えた。

    …いや、あっちは訓練所だろ?休暇まで訓練するようなバカがいるわけ………

    マグダレーナ「ふっ…ふっ………!」

    ………いた。
    シンプルな筋肉のトレーニングをしているのは、マグダレーナ・ルエル。初日の通過儀礼において、「憲兵団を叩き直す!」といきごんでいた、強気そうな少女だ。

    ヨルン「一人か?」

    そんでもって、思わず声をかけてしまうオレもきっとバカだ。

    マグダレーナ「ひ、一人になったんじゃない。好きで一人をやっているだけだ。」

    ヨルン「いや誰も一人になったのか?なんて聞いてねえんだけど…気にしてんの?」

    マグダレーナ「ち、違う!私は…休暇などという言葉に甘えて、訓練を怠ることがないようにと…!!私は、憲兵団を正すために、強くあらねばならないから…」

    強く…強く、か。

    マグダレーナ「…おじいさまが、そう言っていたんだ。」

    ヨルン「おじいさま?」

    脈絡もなくでてきた単語に、オレは首を傾げる。

    マグダレーナ「あぁ。あの日…『シガンシナ奪還作戦』で死んだ、マルロおじいさまだ。…知らないと思うけどな。
    彼は常日頃から、憲兵団を正すと意気込んでいたが、結局は調査兵団に巻き込まれて死亡した…って、全部聞いた話なんだけど。」

    ヨルン「…その人の願いを叶えるために、ってか?」

    マグダレーナ「……。」

    マグダレーナは小さく頷いた。…そうか、彼女にとっては、マルロおじいさまって人が、『英雄』…なのか。

    ヨルン「応援している。」

    マグダレーナ「…えっ!?あっ、あの……ありがとう…。そう言われるとは思ってなくて…。」

    ヨルン「そうか?立派な夢だって、オレは思うけどな。」

    彼女は、理想の英雄像を掴んでいる。そのために努力を重ねている。

    …オレは、どうなんだ?親の存在を間近に見ながら、何のための『英雄』だったのか…何もわかっていなかった。

    マグダレーナ「お前も…」

    ヨルン「うん?」

    マグダレーナ「お前も、頑張れよ…えぇと…」

    ヨルン「あぁ…名前か。オレはヨルンだ。よろしく、マグダレーナ。」

    マグダレーナ「あ、あぁ!よろしく、ヨルン。」

    人の努力を見れば見るほど、オレの英雄は遠のいていく。
    …2人は、何を求めていたんだろうか?
  33. 41 : : 2018/09/01(土) 20:33:29
    ー翌日ー

    カンナ「よっすよっすー!浮かない顔をしたそこの白髪君!ちょいとお姉さんに話をしてみないかい?」

    起きて早々、変なのに絡まれた。
    昨日休んだからといって、体力が全回復しているわけではない。なるだけ面倒なイベントは避けたいところなんだが…。

    ヨルン「お前は…カンナ・フリッツだったよな。…オレに何か用か?」

    カンナ「用がない限り話しかけるな!って閉鎖的になっていたら、オトモダチいなくなっちゃうっすよ?」

    ヨルン「う……っるせー!お前には関係ないだろ!?」

    カンナ「関係ないから忠告しちゃいけない。ほらほらぁ、またそうやって殻に閉じこもる。相手がどんな人間であれ、話は聞くべきっす。ふざけた口調の変態女でも、偽物の王家を演じて民衆を騙したクソ一族でも…―――巨人の中身でも。」

    カンナ「『英雄』の必須条件は、『悪魔になること』だと思うっす。クソ狭ぇ壁から飛び出して、死を覚悟して何を望む?―――それは『己の自由』や『真実』。―――どれもこれも、身勝手極まりなくて、人類なんて視界に一ミリも入っちゃいない。たぶん、彼らにとっちゃ、巨人ですらただの障害物でしかなくって…駆逐対象なんかじゃない。それが『悪魔』…まあ、私の持論っすけどね。」

    ヨルン「あく…ま……?」

    カンナ「悪魔は全てを利用する。敵も味方も、己でさえ…。閉鎖的になり、身内だけしか視界に入らないなら、それは悪魔じゃないっすよ。とっとと開拓地に帰って、お友達といちゃいちゃしてろって話っす。」

    カンナ「今の話をどう利用するかは、お前次第っすよ。『悪魔の末裔』サン。」



    ヨルン「………。」

    カンナは言いたいことだけ言って去っていってしまった。

    英雄の条件は…悪魔になること………。
    一体、彼女には何が見えていて、なんでオレには見えないんだ…?
  34. 42 : : 2018/09/02(日) 23:06:13
    真夜中。教官の見回りがないこの時間に、オレとリリーはある約束をしている。

    『毎日一緒にあって、現状報告をする』。

    オレとリリーの『ニセコイ』関係がバレていないか…という報告。あとは、密会している方が恋人っぽいから、という理由で。

    オレとしては、とっととこんな関係終わらせたいが…一度引き受けたものは仕方ないし(反抗したら怖いし)仕方なく付き合っている。

    ヨルン「…そんな大事な夜なワケだけど…お前ら、何してんの?」

    彼らがいるのは、女子寮の前。何となく察しはつくが、あえて聞いてみる。

    ???「誰だお前は!?喧嘩なら買ってやるぞ!」

    ???「バカッ!大声だすな…静かにしろ………!」

    ヨルン「…あぁ、オレはヨルン・ヨルムナス。…で、そっちのでっかい方は、ヨーゼフ・ゼネシーだな。」

    ヨーゼフ「あ、あぁ。俺はヨーゼフ・ゼネシーで間違いない。」

    ー現在公開可能な情報
    ヨーゼフ・ゼネシー:頭のてっぺんにアホ毛のある茶髪と鋭く光る銀色の瞳をした筋骨隆々な大男。

    ヨルン「第9位おめでとう。…その肉体を見りゃ、努力の桁の違いがわかるもんな…憧れるよ。」

    ???「そーだ!兄貴はすっげーんだぞ!!」

    ヨルン「…んで、そっちのお前は?」

    ニコラ「オレはニコラ・シュミット!兄貴の一番弟子だ!」

    ー現在公開可能な情報
    ニコラ・シュミット:亜麻色に近い金髪ハーフアップの美少女。ヨーゼフを「兄貴」と呼び従う。

    ヨーゼフ「俺はこいつを一番弟子にしたつもりはねえんだけど…まあ、気にしないでくれ。」

    ヨルン「あ、あぁ…それで、お前らは何をしてんだ?」

    ニコラ「何って、覗きだぞ?男のロマンってやつだろ?」

    ……バカがまた増えた。

    ヨルン「…っていうか、お前は別に女だろ?覗かなくても………。」

    ニコラ「失礼だなお前。

    …オレは男だよ。」

    ヨルン「……またまた冗談を。」

    ニコラ「むっきー!冗談じゃねえよ!オレは男だ!ほら」

    ヨルン「あぁやめろ!やめろ!!わかったから脱ぐな!!!」

    ー現在公開可能な情報
    ニコラ・シュミットは男の娘

    ヨルン「…で、覗きをしていたと。」

    ヨーゼフ「…いや、そんな変態を見る目で見ないでくれよ。…俺もこいつに付き合わされてんだ。」

    ヨーゼフ「こいつ…女っぽいから、男らしくなりたいんだってよ。…方向は違うけど、こいつが頑張っているのを、否定はしたくはない…からな。」

    ヨルン「…ははっ。お前は、兄貴に相応しいな。」

    ヨーゼフ「…あ、あぁ。ありがとう。でも、お前まで兄貴とか言い出すなよな?」

    ヨルン「しねえって…安心しろ。」

    ヨルン「まあ、覗きをしていたことを言いふらさないとは言えねえが…」

    ヨーゼフ「あっ…それだけは勘弁してくれ……。」

    ニコラ「兄貴!こんなどこの馬の骨とも知らんやつに、屈さないでくれよ!!」

    ヨーゼフ「ニコラ…無茶言うなって………。」

    ヨーゼフをからかうだけからかって、オレはそこから抜ける。
    …あいつ、待たせたら怖いしな。
  35. 43 : : 2018/09/05(水) 21:06:11
    転機。

    もしオレが調査兵団に入り、その名を「英雄」として轟かせていたら、それはきっと、今日が転機だと思う。



    今日は二度目の休暇。前回のことを踏まえ、有意義な休暇の使い方をしようと考えていた…のは良いのだが、具体的にどのような行動をすれば良いのかわからず、結局普段通りに、外に出てはぶらぶら散歩し…何か思いついたらそれを実行。そんな計画性の微塵もない、いつも通りの休暇を送ろうとしていた。

    特に買い物の予定もないのに、わざわざ街へと向かう。一人で街というのも不安というか、ちょっと寂しい感じがするけど…そこに関しては慣れっこだから、問題は無い。

    やっぱり活気のある街だ。人が多くごった返しになっている。今日来たのが初めてだからわからんが、たぶんオレ達訓練兵の割合も相当高いはずだ。

    ???「おっと。」

    ヨルン「ぐぇっ!?」

    後ろから押されたような感覚に、普段鍛えている体幹を用いてなんとか耐える…というのが理想だったが、ぶつかってきたものの重量の方が高く、オレは転倒してしまった。

    ヨルン「いっつつ…」

    ???「悪ぃな。加減ってもんを知らねえんだ。」

    ヨルン「そ、それが謝っている態度で…………」

    その次の言葉が紡げなかった。
    圧倒的な威圧感と鋭い眼光。それだけでその人の存在が分かった。

    ―――かつて、人類最強と言われた男。
    リヴァイ・アッカーマンだ。

    禿げてはいないが髪も白髪になり、何より車椅子に乗っていることが、人類最強も老いには勝てないということを実感させた。

    リヴァイ「加減を知らねえのは後ろの奴だ。俺に非はない、と主張させてもらうが?」

    車椅子の背後…おそらくあれを押していた人だろう。
    東洋顔に綺麗な黒髪、すらりとした肢体は女性にとっても男性にとっても憧れだろう。
    人形のように感情が伺えない、市松人形のような女性が、そこに立っていた。

    ???「すみません…制御がきかないもので。」

    リヴァイ「あぁ、許そう。」

    その短いやりとりに、オレの意思は反映されちゃいない。…だけど、そんなことはどうでもよかった。


    英雄だ。
    本物の英雄が、オレの前に現れた。
    オレの目指す英雄は、きっと両親のような人間だろうと思っていたが、違った。

    圧倒的な力と、巨人を絶滅させ、人類を救うという覚悟。2つを兼ね備えたリヴァイ・アッカーマンは…本物の「英雄」だった。
    目の前に現れた時、改めてそれを実感した。敗北を知らない生きた伝説こそ、オレの目指すべき、英雄…!

    リヴァイ「…なぁ、ミカサ。お前はこいつをどう思う?」

    背後の東洋女性は、ミカサというらしい。…どこかで聞いたこと、あるような…?

    ミカサ「どう…ですか。………ライナーに、似ていると思います。」

    リヴァイ「はっ、こいつは壁を乗り越えて、戦士としての自覚がどうたらってことで来た人間ってか。」

    ミカサ「………。」

    リヴァイ「面白い。お前、こっちこい。」

    ………えっ!?話が全く見えなかったぞ!?

    何がなんだか全くわからないまま、オレは人類最強の後をついていった。
  36. 44 : : 2018/09/09(日) 00:23:41
    リヴァイ「お前、調査兵団に入るな?」

    ヨルン「は、はい…。オレは、巨人をぶっ殺して、外の世界に出て、人類の平和を―――」

    リヴァイ「御託はいい。お前…違う目的があるだろ?」

    リヴァイ兵士長のその言葉は、まさに図星だった。
    人類最強の力なのか、あるいは………。

    ヨルン「おっしゃる通りです。オレはただ、英雄になりたいんです。あなたのような、生きる伝説に憧れて…」

    リヴァイ「なあ、お前。巨人の中身が『人間』ってのは…知ってるよな?」

    ヨルン「は、はい…それは、存じておりますが………。」

    リヴァイ「巨人の正体は人間。お前は、英雄になるために人を殺すわけだ。何人殺すかは知らねえ。場合によっちゃ、地下街で有名だった『切り裂きケニー』にすら勝るかもしれない、大量殺人だ。」

    ヨルン「………。」



    ヨルン「それの、どこが悪いんでしょうか?」

    ミカサ「………。」

    リヴァイ「………なぁ、ミカサ。」

    兵士長は、人形のようにぼうっと突っ立っていたミカサさんに声をかける。

    リヴァイ「確かにこいつはライナー寄りの思考をしている。強い憧れを感じるとオレも思う。…が、本質は『悪魔』だと思う。」

    悪魔。
    カンナの話から一度も聞いていなかった言葉と、まさかこんなところで出会うとは思わなかった。

    これが偶然なのか必然なのか…

    リヴァイ「夢のため、憧れのために…敵だけでなく仲間さえも見捨てる。人類の安否なんてどうだっていい。…それがお前の、イカれた性質だ。」

    突きつけられた事実は…なんていうか、バカらしいって思ってしまった。
    別にオレは、そこまで非道な人間になったつもりはない。なんていうか…過剰すぎやしないか、そう思った。

    リヴァイ「エルヴィン・スミスってやつを知っているか?」

    兵士長は、さっきからオレに質問ばかり投げかけてくる。正直…うんざりしてきている。

    ヨルン「はぁ…知っていますが。」

    リヴァイ「お前は、あの悪魔が何を目的に、壁の外の巨人と戦っていたか、知っているか?」

    ヨルン「い、いえ…」

    リヴァイ「…夢のためだ。」

    ………夢?
    また似たような単語が…一体、オレはどんな姿をしていて、どんな風に見られているんだ…。

    リヴァイ「壁の外の真実を。人類史に残る矛盾を暴くため。…あいつの親父が殺された理由を、追い求めるため。
    そのためにあいつは、平気で人を犠牲にしてきた。」

    リヴァイ「お前の目は、あいつと同じだ。」

    ……………オレ、が?

    リヴァイ「てめぇ…なんで






    なんで笑っていやがるんだ?」
  37. 45 : : 2018/09/18(火) 20:42:42
    リヴァイ兵長との邂逅から1週間は経過した。
    あの日から、オレと兵長は師弟関係にある。

    オレは兵長のことを「老師」と呼び慕い、兵長もオレの力を引き出そうと全力を注いでくれる。
    皆が寝静まった真夜中に、それは始まる。

    ヨルン「老師!」

    リヴァイ「だから老師はやめろ。俺はまだ70だ。」

    ヨルン「70いっていれば十分ですって。」

    リヴァイ「あ?」

    こんなやりとりも、もはや日常の一つとなってしまった。

    これから始まるのは、普段の訓練では決して身につかない、圧倒的な力を身につける訓練だ。

    リヴァイ「…それにしても、よくテメェは飽きずにここに来るな。こっちは長い間起きちゃいられない老人なんだ。ちょっとは労わってほしいものだがな。」

    ヨルン「やっぱり老いているじゃないですか。」

    リヴァイ「………言うようになったじゃねえか、ガキ。」

    車椅子に座ったまま、老師はオレを睨みつける。―――その目の焦点があっていないことには、とっくに気付いていた。

    ミカサさんから聞いた話によると、リヴァイ老師は老いの影響で、目の病気にかかったらしい。「ハクナイ症」というらしいが…詳しい症状についての知識はない。

    そんな状況にありながら、オレの力を引き出せるから、老師の力のおそろしさがよく分かる。
    人類の味方でよかったと、そう痛感しているのはオレより他にいまい。

    ヨルン「それじゃあ老師、今日もよろしくお願いします。」

    リヴァイ「うるせぇな。…とっとと始めろ。」

    さあ、兵長から始めの合図がかかった。
    集中しろ、自分……………!!
  38. 46 : : 2018/09/18(火) 23:43:41
    ー翌日ー

    リリー「ねえ。」

    捕まりました。

    ヨルン「はい…。」

    リリー「私、昨日も待っていた。」

    ヨルン「えぇっと…はい。」

    リリー「何か言うことは?」

    ヨルン「…ごめんなさい。」

    リリーとオレは、未だニセコイ関係にある。
    そのための密会をすっぽかして、老師との訓練に浸っていれば…そりゃ、相手様も怒りますわなと、納得はしている。

    ヨルン「でも、そこまで一途な振りしなくたっていいんじゃないのか?」

    リリー「………ダメ。誰かに見られたら困るのは私。」

    ヨルン「そうだけど…ってか、オレ今後もそんな構っちゃいられないぞ?」

    リリー「なんで?」

    ヨルン「なんでって…詳しくは言えないけど、まあなんでもだ。」



    リリー「別の女と会っているの?」

    ぞわり、と寒気がした。
    今目の前にいる少女に睨まれただけで、オレの体についている危険察知能力が警鐘を全力で鳴らしている。

    ヨルン「女の人は…まあいるけど。」

    リリー「やっぱり…。浮気………。」



    リリー「削ぐ。」

    ヨルン「ちょちょちょちょっと待って!男もいるから!しかもおじいちゃん!!」

    リリー「…なら尚更、なんでそんな人達と密会を…?」

    ヨルン「あー…悪い。それは言えない。言うなって向こうから言われてるんだ。」

    ここでリヴァイ老師の存在がしれたら…訓練兵内じゃ大騒ぎだろうしな。

    何より、オレだけの老師だ。他の奴らに知られたら、オレの英雄像が薄れてしまう。

    リリー「…そう。分かった。」

    やけに物分りのいいリリーは、そのまま踵を返しどこかへ向かっていった。

    ヨルン「なんだったんだ…?まあ、いいか。」

    気にしたって仕方ないだろうと、オレは心を切り替え朝食をとりに向かった。
  39. 47 : : 2018/09/23(日) 22:43:32
    ジルヴェスター「ヴァイセンホルン家の名にかけて。ヨルン・ヨルムナスに一騎打ちを申し込む。」

    対人格闘訓練時、ジルヴェスターがオレに近付いて来たと思ったら、そんな言葉をオレにぶつけていた。

    対人格闘訓練は、本来ペアとなり、格闘術の実戦として「盗賊」側に「兵士」側が技をかけるという、シンプルな訓練だ。教官の目が届きにくく、大半の人間はサボったり、適当にやったりしている。

    だから余計に、二番手のジルヴェスターからの申し出に、自然と周囲の注目も集めていた。

    ヨルン「…悪い、フーゴ。」

    フーゴ「いえいえ。…正直、そろそろ僕では相手にならないだろうと思っていました。…君は強くなりました、ヨルン。」

    励ましの言葉と共に、オレはジルヴェスターに向き直る。
    貴族は腕を組み、堂々とした態度でオレの一挙手一投足を見ている。

    ヨルン「待たせて悪いな。その申し出、受けて立つ。」

    決闘が成立した瞬間、外野はよりざわつき始める。

    ジルヴェスターは早速構える。ヨーゼフほどではないが、その恵まれた肉体はこちらが不利であることを示している。

    オレも相手に合わせて構える。頬を伝う汗を拭うことすらできない。



    ―――集中しろ。目の前にいるのは巨人だ。

    ―――オレより強い力を持った奴をねじ伏せて、オレは英雄になる。



    フーゴ「速い!?」

    ヨーゼフ「ジルヴェスターの奴、反応が一瞬遅れたな。」

    タックルをした体勢のまま、力をかけ相手を投げ飛ばす…とはいかず。
    イメージしていた動きとはかけ離れた動きが構成され、そのままオレははじき返されてしまう。

    やはり、体格差のある相手に、力でごり押すのは効かない。

    リリー「何の策もなしに突っ込んで…あれじゃあ自分の体力が尽きるのが先なんじゃ…」

    カンナ「…勝負、あったっすね。」

    外野の数と比例して、緊張感が高まる。

    圧倒的な鬼気は、もはやこちらを殺しにかかっていると言っても過言ではない。…それをどうやって、オレは乗り越えればいい…



    リヴァイ『なぁ、―――。お前は間違ってない。』

    リヴァイ『やりたきゃやれ。』



    ヨルン「ッ―――!?」

    なんだ、今の…!?
    目の前にいたのは、リヴァイ老師の若い姿か…?いやでも、オレはそんなの、見たことない…!

    ジルヴェスター「余所見か!?なめた事してくれるなぁ!!」

    ヨルン「あグッ!?」

    すさまじい勢いの蹴りをかまされ、オレは姿勢を保てなくなる。
    よろけて二、三歩と下がったところで、ジルヴェスターはもはやオレに対して殺気を向けることもなく、もはや勝負あったと言わんばかりに緊張感を緩めた。

    ―――やりたきゃやれ、か。

    リヴァイ老師は、若い頃から変わっていないようだ。
    この謎の現象について、何か分かったわけじゃない…だけど、オレはあの『英雄』の言葉を信じてみる。

    ヨルン「フッ!」

    さっきと同じ戦法―――そう見せかけた。

    ジルヴェスター「…ッ!?」

    ヨルン「はぁぁぁ―――ッ!!」

    ブオン、と風を切り裂いて、あいつを地面に叩きつける。

    ジルヴェスター「…なんだ…今の………動きは………ッ!?」

    ヨルン「自分より体格の大きい奴相手に、せめて自分の身が守れるようにっていう格闘術らしい。」

    ジルヴェスター「…誰から教わった?」

    ヨルン「さあ――――――――――――



    誰の、記憶だろうな。」
  40. 48 : : 2018/10/27(土) 22:11:30
    「見ろ!!ティモ・カルステン兵士長だ!!」

    「あのリヴァイ兵士長にも勝ると言われる兵士長か!!頑張ってください!!兵士長!!」

    あぁ、やめろ。ボクをそんな風に見るんじゃない。
    ボクはそんな強くないし、増してやリヴァイ兵士長より上だなんて言われるほどじゃない。
    こんなに気が弱くて臆病で、何の取り柄もない才能もないボクが、兵士長だなんていう立場に着いていいはずがない。

    ー現在公開可能な情報
    ティモ・カルステン:人類史上最強の兵士と言われている、黒髪高身長、黒い瞳がぱっちり開いたイケメン。その見た目で巨人を狩り殺す姿のせいか、女性ファンが多い。

    調査兵「兵士長。団長がお呼びです。」

    ティモ「はい、すぐ行きます。」

    外面必死に良くして、功績もあげて、ちょっと大人しくしているだけでこの評価だ。ボクはただ、目立ちたくないだけなのに………

    ティモ「どれもこれも全部………。」

    あぁちくしょう。どれもこれも全部、あいつらのせいだ。

    あいつらのせいで………!


    壁に取り付けられた門が開くと同時、ハース団長が大声をあげる。

    ハース「前進せよォ────ッ!!!」

    その合図と同時、ボクらは馬を走らせる。






    調査兵「今に見てろよ…お前らなんか、きっと………ティモ兵士長が………!!」

    調査兵は、痛みに悲鳴をあげながらもボクの名前を呼んでいる。

    だからやめてくれって、ボクはそんな大それた人間じゃない。そもそも、そう評価されることさえ望んじゃいないんだって。

    だってのに、お前らはそうやってそうやってボクのことを人類最強だの頼れる上司だのなんだのって………ああもううんざりなんだよ。どれもこれも全部、テメェらのせいだかんな………!!

    ティモ「なぁ…巨人!!」

    巨人「あ───?」

    ザシュッ!!

    巨人「」バタン

    調査兵「へ、兵長…!!」

    でかくて怖くて、とろくて鬱陶しい知性もない人を殺すことしか考えていない生きている価値のないゴミクズ『巨人』。
    縦1メートル横10センチを抉れば簡単に死んでくれる弱小生物。
    これの強さは数の暴力にある。一体二体程度なら、大した戦力ですらない。

    だから、カスで雑魚なボクですら殺れる。むしろ、一体ごときにやられているそこの調査兵は、もはや最初から兵士としてのスタートラインにすら立てていなかった雑魚以下のゴミだ。
    ああいうゴミ処理も、ボクに任されてしまう。兵士長だから。

    ティモ「テメェらのせいだぞクソ巨人共………ボクの…いやオレの残業が減らねェのは、全部全部全部全部全部全部全部全部ぜーーーーーんぶ、テメェら知能のない人間以下のゴミのせいだかンなッ!!!」

    あぁ、イライラする。イライラする。
    五体、十体、十五体と殺していくにつれて、その怒りはどんどん昂る。

    なんでテメェら間抜け面連中は、そんな痴態晒して生きていけンのかねェ?!
    そんなにオレの怒りを買いてェかクソがッ!!!

    調査兵「すごい…殺気が違う………。」

    調査兵「さすがリヴァイ兵士長より勝ると言われる人類最強の男…!格が違います!!憧れます!!」

    ティモ「オレの邪魔をしてンじゃねェ───ッ!!!」



    ー現在公開可能な情報
    ティモ・カルステンは二重人格者である。
  41. 49 : : 2018/10/29(月) 15:55:52
    「「はははははは!!」

    昨日の敵は今日の友、という言葉は実に偉大な言葉だと思う。

    なぜなら、オレことヨルン・ヨルムナスは今、ジルヴェスター・ヴァイセンホルンと肩を組んで笑い合っているからだ。

    話はちょうど2日前、メキメキと実力をあげるオレに不可解に思ったジルが、オレに対人格闘での決闘を挑み、オレが勝ったのだ。
    昨日はそのジルに実力をどこで身につけたかと詰め寄られ、答えているうちにいつしかお互いの夢や理想を語り始めていて…気付いたらこうなった。

    ジルとオレは良く似ていた。

    ジルは、「自分が何もせず、ただ壁の内側で家畜のように過ごすような貴族と一緒にされたくない」と思っているらしい。貴族というだけでそういった偏見で見られる世界を、自分の功績をもってして変える。──そんな英雄を目指しているそうだ。

    オレは偏見や印象を変えるなんて大それたことはできないけど、英雄になるという目標は一緒だ。だから、似た者同士。

    カンナ「男ってやっぱ単純っすねぇ。」

    ヨルン「女が複雑すぎんだよ。オレらはこうして肩組んでいりゃ自然と意思疎通できるようになんのさ。なあ、ジル?」

    ジルヴェスター「ヨルンの言う通りだ。友情に深い理由も、立場だって必要ない。」

    「「はははははは!!」」

    ジルヴェスター「…だが、調査兵団に入って、実力をのばして英雄となるのはこの私だ。」

    ヨルン「言ったなジル。オレの道を阻もうってなら容赦しないぜ。」

    ジルヴェスター「フッ。これは俗に言う『ライバル』という奴だな。貴様がライバルであって嬉しいぞ、ヨルン。」

    ヨルン「オレもだぜジル。」

    ジルヴェスター「そうかそうか。ではライバルよ。今日も手合わせ、願おうか?」

    ヨルン「はっ、今日こそオレが勝つ───あ?」

    互いに構えた瞬間、後ろから掴まれるような感触があった。

    リリー「………。」

    振り向けば、すごい顔をしていらっしゃるリリーさんが………

    リリー「行く。」

    ヨルン「あの…どちらへ………?」

    リリー「…………。」

    オレの質問には答えてもらえず、オレはそのままリリーに誘拐されてしまう。

    ヨルン「あの…ちょっと………も、もしもーし?!だ、誰かー!!助けてー!!!」
  42. 50 : : 2018/11/01(木) 09:14:24
    やっと追いついた!
    凄く面白いです!アッカーマンの双子とか頑張り屋の貴族とかマルロ似の女の子とか皆んなキャラが立ってる!
    引き継がれる教官の罵倒センスもキレキレで面白いです(というより作者のセンスがいいのか?)

    個人的にはジルヴェスター?君のキャラが一番好きです。二番目にフーゴかな。

    エレンやジャンみたいなギスギスした皮肉を言い合う感じの雰囲気も好きですが、ヨルンとジェルみたいな爽やかなライバル関係も(いい意味で)進撃の巨人らしくなくていいと思います。

    リヴァイ老師や人形みてぇにダンマリなミカサちゃんも登場した所で、過去キャラとの絡みも気になります。進撃の巨人の継承者とかも。

    あとエレンの硬質化で城壁都市につくった『無敵の処刑人(?)』はどうなったの?
    アレがあれば殆ど戦わなくても良さそうなもんですが……

    長文すみません!めっちゃくちゃ期待してます
  43. 51 : : 2018/11/02(金) 18:45:17
    >>50
    コメントありがとうございます!!ぜひ今後とも、キャラの今後の活躍など、期待していただけるとありがたいです!!

    例の処刑道具については存在をすっかり頭から抜けていました…!申し訳ない…!!
    顎の巨人や何らかの手段で、獣の巨人勢力が破壊した、と考えていただければと思います!!ご質問ありがとうございました!!
  44. 52 : : 2018/11/03(土) 10:54:00
    リヴァイ「………来たか。」

    今日も今日とて、リヴァイ老師のところへ。
    もはや日課となっているこのイベントのおかげで、オレの身体能力の向上はかなり見えている。

    今日、ヨーゼフに対人格闘で勝った。あの筋骨隆々な大男を倒せるほどに、オレの力は本当に成長している。
    なぜか、対人格闘に関して言えば、リヴァイ老師の教え以外にも、何か影響がある気がしてならないんだけど…それは、今考えても意味はないだろう。

    リヴァイ「チッ…俺が見てるっていうのに微塵も成長してねぇな。お前。」

    ヨルン「そうですか?筋骨隆々な大男をなぎ倒せるほどには強くなったと思いますが…」

    リヴァイ「てめぇは大きく見誤っている。その筋骨隆々な大男ってのは…ヨーゼフって言ったか。ハッキリ言うが、てめぇが倒したのは凡人だ。」

    ヨルン「で、でも…2位のジルとも渡り合えていますし…」

    リヴァイ「何度も言わせんな。てめぇは大きく見誤っている。んなクソ共の評価なんざ当てにならねぇ。…あの中で『天才』はただ一人だ。」

    ヨルン「…リラン、リリーのどちらか…ですか?」

    リヴァイ「…アッカーマン家の双子か。あれは俺どころか、そこのミカサにも劣るだろうな。」

    ミカサ「…………。」

    ヨルン「ミカサさん…って、そんなに強いんですか?」

    リヴァイ「当たり前だ。そいつも、俺も、アッカーマンの血をひいている。」

    アッカーマンの血…?

    リヴァイ「この血ってのは、戦闘に特化しているものらしい。何をどう動かせばいいのか、自由自在に肉体を制御できる。てめぇの言った双子が強いってのも、それが理由だ。…だがそいつらも比じゃねぇ天才がいる。」

    ヨルン「それは一体…?」

    リヴァイ「…俺が直々に特訓に付き合ってやってんだから、そんぐらいてめぇの力で気付いてほしかったものだが…まあいい。」

    リヴァイ「ヤツの名前は『エミリ・ゾンマーフェルト』。イカれた天才兵士だ。」
  45. 53 : : 2018/11/04(日) 15:31:05
    期待です!
  46. 54 : : 2018/11/04(日) 15:41:27
    期待だじぇー
  47. 55 : : 2018/11/06(火) 23:40:13
    >>53,>>54
    期待コメントありがとうございます!ご期待にそえられるよう頑張ります!!
  48. 56 : : 2018/11/09(金) 20:28:02
    ヨルン「確かに、あいつは前回の成績では第3位でしたけど…実際、あいつはジルやリリーに劣っています。それがどうして…」

    リヴァイ「そりゃ、教官のクソ野郎共に見る目がねぇからだ。あいつの座学の時間、見たことあるか?」

    ヨルン「は、はい。…微動だにしないで寝ています。」

    首をあげて黒板を見るように固定した状態で授業を受けるフリをしながら寝ている。たまにいびきや寝言が出てきて、それが教官に見つかって怒られているが…。

    リヴァイ「問題はそこじゃねえ。その首を固定した状態をキープしながら寝るって作業そのものが、尋常じゃないバランス能力を必要とする。日常から自分の能力を鍛え活かしている、唯一無二の天才だと言っていい。」

    ヨルン「は…はぁ………。」

    リヴァイ「あいつはアンカーを刺さないで立体機動を使いこなす。見慣れたてめぇらにとっちゃ、何でもないだろうが…それは全くもって逆。ただでさえ立体機動は、できない人間さえ多いってのに…アンカーを使わない動きなんて、俺ですらできねえな。」

    ヨルン「老師はできないんじゃなくて、しなかっただけじゃないんですか?」

    リヴァイ「…かもな。」

    エミリのすごさを熱心に語ってもらったが…やはりそのすごさは実感にかける。やっぱり、その光景を最初から見てきたからだろうか。
    でも、老師がこれほどに言うということは…きっとそうなのだろう。

    リヴァイ「…さてヨルン。てめぇの修行も今日で最後だ。今までよく耐えてきたな。」

    ヨルン「…えぇっ!?ろ、老師…どこか体調でも悪いので?!」

    リヴァイ「いいや、俺から教えることがなくなったってだけだ。」

    ヨルン「そ、そんなことは…まだオレは、老師のような英雄に近付けちゃ…!!」

    リヴァイ「あぁ、だから今日で『最後』にする。…おい、『トオル』。」

    トオル、その名前を聞いた瞬間に、1人の男の顔を思い出した。
    トオル・マツシタ…。壁の外から来たという不思議な少年だけど、まあ偶然だろう。そう思っていたら…

    トオル「やあ。よく頑張ってるね、ヨルン。」

    オレの想像していた人物…トオル・マツシタ本人が来た。

    ヨルン「老師…なんでこいつがここに?」

    リヴァイ「スパイだ。俺がどうしててめぇら訓練兵の情報を入手していたか…疑問に思ってこなかったのか、てめぇは。」

    ヨルン「…な、なるほど………。でも、トオルと老師に、何の関係が…。」

    リヴァイ「関係ならある。そこのミカサの息子がトオルだ。」

    ……えぇっ!?

    ヨルン「ってことは…トオルは、アッカーマン家の人間ってことですか!?」

    トオル「黙っててごめんね。俺、実は普段の訓練も手抜いているんだ。」

    ヨルン「でもどうしてあんな嘘を…」

    トオル「目立ちたかったから。じゃなきゃ、あんな面倒な嘘つかないって。」

    オレの質問に対して、トオルは簡潔に答えてくれた。おかげでオレは二の句が継げずにいる。

    リヴァイ「で、だ。ここでネタばらしをしたのも何も無目的じゃねぇ。…てめぇらにはこれで殺しあってもらう。」

    ミカサさんが、2つの立体機動装置を持ってくる。

    ヨルン「あの…?」

    リヴァイ「なんだ。」

    ヨルン「殺し合い…?つ、ついに老師もボケが…」

    リヴァイ「なわけあるか。エミリ・ゾンマーフェルトには及ばねえが、そこのトオルもてめぇより強い。そいつに勝って能力をあげる。レベルの高ぇ奴を倒せば自分のレベルが上がる。シンプルな話だろ。」

    ヨルン「そ、そうですけど…」

    リヴァイ「つべこべ言ってねえで、やれ。」

    と言われても…殺し合い…だなんて………。

    リヴァイ「別に、殺さないで相手に参ったって言わせたっていい。殺さないように手加減できるならな。」

    と言っても…アッカーマン家の能力の高さは、オレも知っている。
    それを相手に、手加減なんてことも無理だ。本気でぶつかったって、勝てるかどうか………。

    トオル「…んもう〜。おじさんはまだまだだなぁ〜。」

    立体機動装置を装備し、準備万端といった様子のトオル。本気でやるみたいだ…と冷や汗を拭おうとしたその時







    リヴ/ァイ「」

    トオル「殺意を煽るなら、こんぐらいのことはしないと。」

    リヴァイ元・兵士長の返り血を浴びながら、トオルはケタケタと嗤った。
  49. 57 : : 2018/11/09(金) 21:16:30
    いきなり殺伐とし過ぎい!てっきり松下君は日本から壁の世界に転生した人間だと思ってたんだが(困惑)
  50. 58 : : 2018/11/10(土) 23:49:50
    >>57
    コメントありがとうございます!!はたしてトオルは何者なのでしょうか…!?






    トオル「ほら…逃げないと。お前もこうなっちゃうよ?」

    ヨルン「チィッ!!」

    さっき老師から貰った立体機動を駆使して距離をとる。
    建物にアンカーを刺し移動する。こんな姿、教官にでも見られたら開拓地送り間違いなしだ。

    でも、こうでもしないとこっちは天国送りの可能性もある。だから必死こいて逃げていく。

    遠目に見ても、ミカサさんは一切動じていない様子だ。本当に人形みてぇな…。

    老師と特訓していたいつもの場所が遠ざかっていく。彼女──ミカサさんの安否の確認はできていない。



    トオル「見ぃーつけた。」

    トオルはこっち側まで来ると、アンカーをオレの腹部目掛けて射出する。
    アンカーの射出速度は尋常じゃないし、まともに躱せるならそれこそ人類最強だ。

    ヨルン「ウグッ…?!」

    だから回避は諦め、オレは腹部にそれを受ける。血が滲み出て、兵服が汚れる。
    老師なら「汚ねえな…洗え。」とか言いそうだな…なんて。

    あぁ…混乱した頭がすっと冷静になってきたぜ。
    そうか…お前が老師を殺したんだな………。

    ヨルン「う……らぁ!!」

    トオルの立体機動のワイヤーを、オレのブレードを使って切断する。空から迫ってきたあいつはバランスを崩し落ちる。

    刺さったアンカーはオレの腹部に取り残されたままだ。痛みに耐えながら引き抜き、そこら辺に捨てる。

    ヨルン「くっそ…医務室にでもいって───」
    トオル「まだ終わってねえんだよなあ!!」

    なッ…!?

    下方──つまりオレの立っている建物が倒壊する。その理由は一瞬で理解できた。



    ヨルン「お前………巨人だったのかよ………!!」



    トオル『…』ニィッ
  51. 59 : : 2018/11/11(日) 00:17:06
    期待ですー!
  52. 60 : : 2018/11/11(日) 21:23:16
    >>59
    期待コメントありがとうございます〜!!




    こんな壁内で巨人化とか、バカじゃないのかこいつは…!?

    民間人を殺しながら歩くトオルからオレは遠ざかっていく。
    初めて対峙する巨人か、まさか知性巨人とはな…ここで殺してしまえばスピード昇格間違いなし。ジルとも格差をつけられる。

    なんて、バカな事言ってられっか…!命あっての英雄だ。こんなところで無謀を働くのは勇気じゃねえ。

    「ど、どけーッ!!」
    「きゃー!!」
    「た、助けてくれー!!」

    民間人が巨人の脅威から逃れようと、雪崩のように壁内へ向かう。
    たった一体で街を滅ぼせるほど、巨人ってのは脅威なわけだ。

    ヨルン「勇気と無謀は違う……だから、オレが今すべきことは…あいつを倒すことじゃなくて、足止めだ。」

    思考を整え、オレは再度、立体機動の準備をする。
    足止めだけで十分。殺そうだなんて考えるな。相手はアッカーマン家の一人。場合によっちゃ、リリーより強い能力を、巨人の肉体で使える。オレじゃ敵わねえよ。

    トオルの巨人は爪をたて、オレに向かって攻撃してくる。

    ヨルン「は、や…!?」

    ギリギリで回避するものの、建物から落下。頭を打つが体制を整える。
    あいつの爪は厄介だ…。建物が簡単に崩れる。

    しかも動きが異常に速い。8メートルほどのサイズ…中小サイズに分類されるその巨人は、建物の屋上から建物の屋上に移り移動している。立体機動より速く動かれちゃ…こっちが不利じゃねえか…!!

    どうする…どうする………!?

    ヨルン「う………らああああああ!!!!」

    アンカーをあいつの肉体目掛け突き刺す。見事ヒットした。あとはワイヤーを巻いて向こうまで飛べば………!!

    トオル『………』ブオンッ!!

    トオルはさっきよりも数倍速い動きで建物の上を移動する。その勢いのあまり、刺さっていたアンカーが抜け転落。バランスがとれず今度は顔面で着地することになる。

    目が痛てぇ…って思うのも無理はないだろう。オレの左目から血が出ている。視力もない。右目だけのおぼつかない視界で、どうやって敵と対峙しろってんだよ…!!

    トオルはそんなオレのことを分かっているように、じわじわとこっちに近付いて来ている。クソが………!!

    目は使えない。耳を頼りにしながら、あいつの動きをとらえる。

    生きることを優先するか…足止めをして、民間人が逃げる時間稼ぎをするか………

    ヨルン「オレは………!!」

    そう、オレは───



    ヨルン「オレは、英雄だァ───ッ!!!」

    時間稼ぎを選択するッ!!
  53. 61 : : 2018/11/16(金) 18:44:58
    ドォン!!

    爆音があたり一面に響き渡る。何かが爆発したような音だ。

    それを爆発と仮定するなら、きっと今、目線が高くにあることも「爆発の余波で吹き飛ばされた」という説明がつくだろう。

    ……にしても、潰れた左目の視力も回復しているなんて…不思議なこともあるもんだな。これが奇跡って奴か?

    トオル『ウガァ───ッ!!!!』

    迫ってくるトオルの巨人から距離をとるために立体機動に手をかけようとする。

    が───

    ヨルン(ない…!?)

    腰のあたり、確かにつけていたはずの立体機動装置がない。

    それはおろか、オレの身にまとっていた衣服まで全部なくなっている。

    世間一般ではそれを「全裸」というのだろうが、それにしたってオレの肉体にはとても違和感がある。
    女のように豊満な胸と、ついているはずの男性器がないこと。ところどころ筋肉が剥き出しになっているように赤い。

    そういえば、目線は一向に下に落ちない。重力はいつ上に働くようになったのだろう?

    思えば、視界もやけに広い。あのトオルの巨人さえ、小さく見えてしまうほどに。

    ………冷静になれ、オレ。

    ──牙を剥き襲いかかってくるそいつを、オレは思いっきり蹴飛ばした。

    ヨルン『………アー………』

    意図した声が出てこないこと、足だけで目の前の巨人を蹴り飛ばせたこと、世界がまるで小さく見えること。

    ………信じたくはなかったが、オレは巨人になったみたいだ。



    何十年の前…それこそ、老師が現役で調査兵団をやっていた頃だ。

    当時、ウォール・シーナ内に、一体の巨人が出現したという。

    ほとんどの巨人が、中年の男性のような身体つきをしていることから、それと異なっていた例の巨人はこう呼ばれていた。


    「女型の巨人」


    今なら、自分のことのように思い出せる。

    女のような容姿をしているこの巨人は、パワーやスピード、どれをとっても他の巨人に劣らないオールラウンダー的存在だ。

    他の巨人と比べて(目の前にいる「車力の巨人」は除くが)その体長はおよそ1〜5mほど低いのが難点だが、それさえ補えるほどの高いポテンシャルを誇っている。


    それに、あの時ジルの前でみせた格闘術と、今トオルに向けてやった技は、前身の「アニ・レオンハート」が持っていた技術らしい。

    今ならそれさえ全部理解できる。今まで日常的にそうしてきたかのように、この新技を使える。

    「硬質化」と呼ばれる皮膚の一部を硬化させる能力だって、呼吸と同じように当たり前に繰り出せる。


    なあ、トオル…てめぇはその巨人の中で、一体どんな顔してやがんだ?

    わからねえから…引きずり出して、そのひでぇ顔を拝めてやるよ。
  54. 62 : : 2018/12/01(土) 23:21:14
    http://www.ssnote.net/groups/2625/archives/11
    オリキャラを募集していたりします。よければどうぞ

    それと、>>61の「車力の巨人」は「顎の巨人」に脳内変換お願いします。素で間違えました。ごめんなさい。











    顎『アガガガアアアアア!!!』

    女型『………。』

    驚異的なスピードで迫り来る牙から距離をとり、安定して回避行動をする。それにしても、トオルが所有している『顎の巨人』というのはかなりの脅威だ。
    その牙や爪の強度は、オレの硬質化を軽く削り取り、建物を移りながら移動する。爪を刺して自分の位置を固定し、三次元的な動きをとっているのは、立体機動装置の扱いととても似ている。

    硬質化無効…これが一番の難点だ。

    立体機動のブレード程度であれば、刃を通さない程度のことはできるが、何十年か前に調査兵団が開発した「雷槍」など使ってしまえば、鎧の巨人と呼ばれる前身硬質化している巨人でさえ防げない。
    ある程度こちらが有利になるものの、無敵の硬質化というわけではない。

    それに、硬質化をすると同時に筋肉も動かなくなる。全身に硬質化を巡らせたら、あとは顎に食われるだけ。
    使い所にも気をつけないと、こいつは倒せねえ。

    まずは、さっきのお返しだ───!!

    女型『フーッ』

    ブオンッ!!!

    さっき、顎の野郎が崩してくれた瓦礫を持ち上げ投げる。左足を軸にして、硬質化で地面に固定。
    それが、見事にあいつの顔にヒットした時、プロの野球選手ばりのコントロールに我ながら惚れ惚れした。…野球選手ってなんだ。

    顎『……………。』

    首から上がなくなった顎の肉塊を見て、オレは勝利を確信する。
    ただしこいつはまだ死んでいねえ。うなじを潰さない限りこいつは死なない。

    右手を硬質化させそいつのうなじ向けて、勢いをつけてパンチを───







    トオル「どこ見てんだよ」
  55. 63 : : 2018/12/01(土) 23:24:33







    背後から聞こえる声





    瞬きをすれば、世界は一瞬で巨大になる。





    声のする方を振り向けば、そこには───













    刃を構えたトオル・マツシタの姿があった。



  56. 64 : : 2018/12/02(日) 16:41:20
    なるほど、顎の顔面が潰された時、その肉塊に見切りをつけて脱出したようだ。
    うなじに抱えた主人を見失った顎だったものは、どんどんと蒸発していく。

    うなじから切り離され、空中を浮遊するオレの眼前、トオルは親指を口元に持っていく。

    あいつの親指から、一瞬血が滲む様子が見えた。それと同時──眩しい光が街全体を包み、そいつは出現した。



    ヨルン「………は?」

    出現したのは、さっきの倍以上はあると思われるサイズの巨人。15メートル級で、オレと同じく女みてえな丸みを帯びた肉体をしている。

    ???『ガアアアアアア!!!!』

    雄叫びをあげたそいつの口には血が滲んでいる。
    それは、ただ舌を噛んだだとか、唇を切っただとか、そういう話じゃあない。



    オレは見てしまった。

    そいつが、巨人化する直前のトオルを口に入れたことを───



  57. 65 : : 2018/12/02(日) 16:46:40
    なんだなんだなんだ…!?

    オレの混乱をよそに、その15メートル級の巨人は姿を失せる。あれは知性巨人か、無知性巨人か…それさえも分からない、謎の巨人。

    ただ、窮地を脱した…ということは正しい。オレを襲わなかった理由は分からないが、それだけは感謝し…次あった時は正体を確かめてやる、と意気込んだ。



    暫くしてから、駐屯兵団が駆けつけた。
    その様子を一部始終見ていたオレは、兵団の詰所にて話すことになった。
  58. 66 : : 2018/12/03(月) 10:57:48
    男が女型継承してもおにゃのこみたいな身体になるのか…男の娘ですねぇ
  59. 67 : : 2018/12/03(月) 17:48:27
    >>66
    ヨルンの身体的な特徴も含まれるので、白髪赤眼のアルビノ女巨人ですエモい(˘ω˘)(趣味に走るゴミ作者の図)





    「あー…はいはい。起きた起きた。生きてる?返事できる?お名前は?」

    ヨルン「えっと…ヨルン・ヨルムナスです。」

    「…巨人と遭遇した割に、結構余裕そうじゃん?見どころのある訓練兵だな〜。」

    髭を蓄えた3、40代ほどの男性兵士にじろじろとオレの体を見られる。
    あまりそんな目で見られると、気分良いものじゃないんだが…向こうは、そんなこと微塵も気にしていない様子だ。

    ウソサク「あっ、俺ぁウソサクってんだよ。ウソサク・ガメタミ。ま、しがない駐屯兵だ。」

    ヨルン「は、はぁ…」

    ウソサク「まあ、君は目の前で人間が蹂躙されてるところを見たわけだ。お気持ちはお察しる。…でもこっちも仕事なんでね。兵士の内心気遣うこともしつつ、聞くことは聞かなきゃいけない。…何があった?あの巨人は、どこから現れて、どうして消えていた?」

    ヨルン「………巨人が、倒しました。」

    ウソサク「………は?」

    ヨルン「街で突然巨人化したのは、オレの友達です。…トオル・マツシタ。壁外出身とか抜かしていた頭のおかしい人間…知ってるでしょ?」

    ウソサク「あ、あぁ…一応噂としては聞いたが…」

    ヨルン「ヤツは別に、壁の外から来たわけじゃなくて、アッカーマン家…つまり壁内で過ごしていた人間です。なんで壁の外出身と騙ったのかは分かりません。」

    ウソサク「すまん…そいつについては知ってる。…で、そいつが、どうしたって?」

    ヨルン「だから、巨人化したんです。」


    ウソサク「はああああ!?に、人間が…巨人になったってのかよ………」

    ヨルン「有名じゃないですか。女型の巨人の発生した壁外調査と、ウォール・シーナ内の戦い。」

    ウソサク「………んで、まさかお前も巨人化できて、そいつを倒したってわけじゃあないよな…?知性を持った巨人なんて、並の兵士じゃ勝てねえし…いっそ、調査兵団トップの実力のあるティモ・カルステンだってできるかどうか………。」

    ヨルン「………いえ、もう一体…知性があるのかないのか分かりませんが、おそらく壁内に発生したことを鑑みるに、知性のある巨人でしょう。…そいつが、トオルを喰らいました。」

    自分が「女型の巨人」であることは伏せ、事実を伝えると、ウソサク駐屯兵士は眉間を揉んで溜息をつく。

    ウソサク「……マジで?お前、持ってんな。」

    ヨルン「………えぇ。本当に。」

    まるで、巨人化の能力者が引き寄せられる運命にあったかのような、そんな感覚。
    オレの知らないところで、厄介な巨人戦争なんてものが行われてたりしたら、最悪だぞ…。
  60. 68 : : 2018/12/03(月) 18:22:26
    >>67はぇ〜、それはすっごい業が深い…
  61. 69 : : 2019/01/14(月) 19:37:36
    更新まだ?

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野良

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人類再反撃物語【オリ進】 シリーズ

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