このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。
獅子の心臓は狩人に射抜かれる エレアニ 現パロ
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                  - 1 : : 2018/02/04(日) 10:54:40
- 題名通り、エレアニの現パロになります。
 処女作につき見苦しい所が多々発生すると思いますが、どうか温かい目で見守ってやってください。
 
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                  - 3 : : 2018/02/04(日) 11:19:42
- 軽やかな風が桜の花びらを運ぶ。
 そんな中を爽やかに歩く学生たち。
 ・・・と言いたいところだが、この学生たちはどうやらそうも言っていられないようで。
 エレン「ミカサ!アルミン!急がねえと遅刻するぞ!!」
 アルミン「誰のせいでこうなったと思ってるの!!」
 ミカサ「エレン、これからはもっと早く起きるべき」
 エレン「悪かったよ!だから急げ!!!」
 同じく必死に走る同志や、もういっそ諦めゆっくりと通学する友人に挨拶をしながら、なんとかぎりぎりの時間で三人は教室に飛び込んだ。
 
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                  - 4 : : 2018/02/04(日) 11:29:20
- ―――
 ――
 ―教室
 エレン「つ、疲れた・・・」
 机に頭部の体重をすべて預け、うめき声のように呟く。
 ライナー「ずいぶんとぎりぎりの登校だったじゃねえか。何かあったのか?」
 エレン「いや、布団が俺のことを好きだって言って離してくれなくてよ」
 ジャン「じゃあいっそ付き合っちまえばいいじゃねえか、お似合いだと思うぜ」ケラケラ
 エレン「・・・ジャン、いくら疲れててもお前をぶっとばす体力くらいはあるぞ」
 ジャン「やってみろよ、俺は優しいから一撃で沈めてやるよ」
 その発言を聞いてエレンが頭部を机から離してジャンと向かい合う。
 ジャンはすでにファイティングポーズをとった上に、挑発までかましている。
 エレンがその挑発に乗り、同じくファイティングポーズをとった段階で、
 キース「・・・貴様ら、早く席につかんかぁ!!!!!!」
 始まってもいない試合に終了のゴングが鳴り響いた。
 
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                  - 5 : : 2018/02/04(日) 12:02:46
- 朝のホームルームが終わると、一限目の始まるわずかな間だが、エレンのもとへ見知った顔が集まってくる。
 ミカサ「エレン、ジャン、喧嘩をしてはダメ。けがをしてしまう」
 エレン「つっかかってきたこいつが悪い」
 ジャン「人のアドバイスを無下にしたこいつが悪い」
 この時、まったく悪びれる様子も見せず悪態をつきあう二人の姿に、呆れたと肩を落とす以外にできることのなかったミカサを誰が責めれるだろうか。
 ライナー「まぁまぁ、なんにせよ二人が痣をつくりあわずに済んでよかった。それよりお前ら、次の生物小テストだろ?勉強しなくて大丈夫か?」
 ミカサ「・・・一応最後に確認しておこう」
 ジャン「俺もやっとかねえとやべぇな」
 エレンの右隣りの席からの思わぬ助け舟にミカサが便乗し、席に戻り、それにまた便乗してジャンも席に戻る。
 「災難だったね」
 今度は左隣りから自分を呼んだであろう声を聞きつけてエレンが振り返る。
 エレン「おはよう、アニ」
 アニ「おはよう。エレンは勉強しなくて大丈夫なの?」
 エレン「・・・やべっ!」
 そうして会話もそこそこにエレンは教科書を広げたが、この直前では頭に入ってくるはずもなく、もれなく宿題を追加された。
 
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                  - 6 : : 2018/02/04(日) 19:27:18
- ―――
 ――
 ―放課後、エレン宅
 エレン「だぁー!!多すぎる!!」
 エレンの手から離れた大量の生物のプリントが四方の宙を舞い、ひらひらと床に落ちる。
 エレン「ちっくしょうハンジ先生め、いくらなんでも多すぎるだろ・・・」
 自業自得の事態でも、エレンは悪態をつかずにいられなかった。
 ハンジ先生は人前で怒鳴って説教したり、職員室に呼び出して長々と説教したりはしない。
 本人曰く、「みんな何が悪いかくらい自分で分かってるでしょ?」とのことらしい。
 しかし、原因が分かってる以上やることは分かってるな?と、有無を言わさんばかりの大量の課題を出してくることで有名なのである。
 しかし、そこは負けず嫌いのエレン。このままやらずに授業の日をむかえるのは嫌だろ?と自分に言い聞かせる。
 この負けず嫌いをテストに生かせていないことは本人すらも疑問に思うところであるのだが。
 エレン「ちくしょうやってやるよ!!」
 自分に発破をかけ、再び課題に向き合いペンを走らせる。
 エレン「・・・だぁー!!!!!」
 再びプリントが宙を舞うまでの短い間だけ、だが。
 
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                  - 7 : : 2018/02/04(日) 19:28:57
- ―――
 ――
 ―
 なんとか課題を終わらせてみると、すでに時間は19時になろうとしていた。
 エレン「夕飯は・・・、そっか、今日は二人とも帰り遅いんだっけな」
 エレンの両親は共働きで、帰りが遅くなることがしばしばある。
 こういう日はエレンが夕飯を担当することになっている。
 エレン「・・・買い物行かなきゃだめじゃんかよぉ」
 朝ぎりぎりで登校したとき以来の脱力で椅子の背もたれに体重を預ける。
 すでに課題に満身創痍のエレンは、何とか冷蔵庫にあるものだけで済ませられないかと下の階へ確認しに行く。
 エレン「とりあえず米炊くのと・・・、卵くらいしか中身ねぇ」
 最悪それでも済ませることは可能か、と一瞬考えてみたものの、成長期真っ盛りの少年がそれだけでたりるはずもなく。
 エレン「行くしかねぇか・・・」
 自分の頬を両手で叩き、買い物に行くだけとは思えない気合を充填して買い物へ向かった。
 
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                  - 8 : : 2018/02/05(月) 13:31:45
- スーパーに着いたエレンは、来る途中にスマホのメモに書いたものをかごに入れていく。
 エレン「(あとは肉と・・・、この際だし、お菓子もいくつか補充しとくか)」
 そう思い、肉をかごに放り込んだ後、お菓子コーナーへ行くと、何やら見知った人影が二つ。
 エレン「・・・ミカサ?」
 ミカサ「エレン!どうしてここに・・・そっか。今日はおじさんとおばさんが遅い日だっけ」
 どうしてミカサがうちの親のシフトを把握しているのか、という疑問を直前で飲み込んだエレンは、もう一つの人影にも目を向ける。
 エレン「アニも一緒なのか。二人で買い物か?」
 アニ「う、うん。一緒に遊んでたついでに、お菓子買って帰ろうってことになって」
 エレン「入学一週間で仲良くなったなぁ」
 ミカサ「アニはいい人、なので、仲良くならない理由がなかった」
 アニ「ミカサもかっこいいし、優しいからね、すぐ仲良くなれちゃった」
 そういってほほ笑むアニの笑顔にエレンは心臓が跳ね上がるのを感じた。
 ミカサ「エレン、どうかしたの?顔がとても赤い」
 エレン「な、なんでもねぇよ!それよりお前らもあんま遅くなるなよ!じゃあな!」
 そう言い残し、エレンは慌てたようにレジへ駆け込んだ。
 ミカサ「・・・ほほう、これはこれは」
 まるで悪の黒幕が遠くから敵を観察しているときのような笑みを浮かべながらうなずく。
 アニ「ミ、ミカサ?すごく悪い顔になってるよ?」
 ミカサ「なんでもない。アニは買うもの決まった?」
 これは後で問いたださねば、という思考をいったん頭の隅に置き、アニに問い返す。
 アニ「ううん、まだ少し悩んでて・・・」
 うーん、とうなりながら両手に持ったコアラのマーチと極細ポッキーを見比べるさまは、同性のミカサでもほっこりとしてしまう可愛さがあった。
 ミカサ「私はコアラがおすすめ、こっちは少し安いから。ちなみにこれはやめておいた方がいい。これを食べるなら牛脂でも舐めてた方がマシ」
 と、商品棚から聞いたこともない会社の見たこともないパッケージのお菓子を取り出す。
 アニ「そ、それ、そんなにひどいの?逆に気になるんだけど」
 ミカサ「私にお金があれば胃洗浄を頼みたかったくらいには」
 アニ「う、それはやめとこうかな・・・。じゃあ、コアラにしよ!せっかくミカサがおすすめしてくれたんだし」
 ミカサ「強制したようだったら、ごめんなさい。でも、本当におすすめ」
 アニ「私も気になってたし全然大丈夫だよ」
 アニは笑顔のままレジへと進んでゆく。
 なるほどこういうところにエレンは・・・。と一人納得したミカサは、アニの後を追ってレジへと進んだ。
 
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                  - 9 : : 2018/02/05(月) 19:03:45
- ―――
 ――
 ―
 エレンが買い物から帰り、夕飯のカレーの入った鍋を見つめていると、ピロリン♪とLINEアプリにメッセージが届いたことを知らせる着信音がポケットから聞こえた。
 エレン「ん?ミカサ?」
 ――――――――――――――――――
 ミカサ・エレン、単刀直入に聞く
 ミカサ・アニのこと、好きなの?
 ――――――――――――――――――
 エレン「ッ!?ゴホッ!!」
 そのミカサからの突然のLINEにむせ返りながら返信を返すと、画面を開いたままだったのかすぐに既読がついた。
 ――――――――――――――――――
 エレン・そんなわけないだろ
 ミカサ・隠しても無駄。
 エレン・ほんとだって。
 ミカサ・私はエレンの幼馴染。よってエレンが今カレーを作ってる時にこのLINEを見てむせ返ったのもお見通し。
 ――――――――――――――――――
 エレンはスマホの画面から目を離し、どこに隠しカメラがあるのかとくまなく探したが、どうやらどこにもないらしかった。
 エレン「じゃあ普通にバレバレってことじゃねぇか・・・」
 結論から言うと、ミカサの最初の問いに関するエレンの答えは、YESである。
 いわゆる一目惚れというやつで、ついさきほどまでもスーパーで出会えた嬉しさを噛みしめながらカレーを作っていた。
 ――――――――――――――――――
 エレン・何で分かった?
 ミカサ・スーパーでの態度を見れば一目でわかる。
 エレン・うるせぇ
 ミカサ・エレン。本当に心から好きなら、ちゃんと男の子であるエレンから声をかけること。こういうことは男の子からアタックするべき。私とジャンのときもそうだった。それで今はうまくいっている。だから、頑張れ。応援してる。
 ――――――――――――――――――
 エレン「そうだよな・・・。ミカサもジャンと・・・」
 ミカサは中学時代からジャンと付き合っている。
 ジャンがミカサにベタ惚れだったのは中学では周知の事実だったし、ミカサも今では俺やアルミンと同等以上にジャンのことを好いているだろう。
 ミカサにジャンと付き合うことになったと報告されたときの寂しさや焦りが急に鮮明に思い出される。
 エレンだってモテないわけではない。むしろかなりモテる方だ。
 しかし、理由もはっきりとは口に出せないが、付き合うという選択肢が今まで告白された女子へは出てこなかった。
 そんなタイミングでの報告だったからだろうか。余計にミカサのことが大人に見えて自分の前を進んでいる気にさせられた。
 そんなことを考えているエレンの思考を否応なしに中断させるかの如く、もう一件メッセージが届く。
 ――――――――――――――――――
 ミカサ・ひとつ言い忘れてた。これに関しては私もできる限り協力はしよう。ただし、アニを不幸せにするようなことがあれば容赦しない。以上。
 ――――――――――――――――――
 エレン「・・・やるしかねぇな」
 きっかけが幼馴染からのLINE、しかも最後には脅迫文付きという、なんとも情けないスタートだなと自分を少し卑下するように笑い、それでも決心して気合を入れなおし、自分の日常を再開する。
 エレン「・・・って!カレーの底の方焦げてんじゃねえか!!」
 ・・・こりゃ前途多難だな。とエレンが落胆すると、時間帯も考えないカラスが一羽、同意するように鳴いた。
 
- 
                  - 10 : : 2018/02/05(月) 20:26:52
-   ~ ani side ~
 
 アニ「・・・びっくりしたぁ」
 
 アニは自分の部屋に帰るなり、抱き枕代わりの猫のぬいぐるみを抱きながらぽつりと独り言を呟く。
 
 アニ「エレンってあのスーパーよく行くのかなぁ・・・。だったら家もそんなに遠くないのかな?」
 
 そういいながら猫の顔をぷにぷにとつつく。
 
 アニ「・・・って!なんでエレンのことばっかり!」
 
 そう言って無罪の猫に拳を振り下ろすも、ぬいぐるみ特有のふかふかさに衝撃は吸収され気持ちは変わらぬまま。
 
 アニ「・・・好きな人とかいるのかなぁ」
 
 アニはミカサと仲良くなってから、いろいろなことを教えてもらっていた。
 
 エレンが中学時代にモテていたこと。今現在は彼女はいないこと。それから、胸の大きい人がタイプであることまで。
 
 アニ「わ、私、大丈夫だよね・・・?」
 
 アニは自分の胸を舌から持ち上げながら、うん、大丈夫。と確認する。
 
 アニ母「・・・何やってるの?」
 
 アニ「ひゃうわっ!?」
 
 アニは突然の来訪者に大慌てで胸から離した手でぬいぐるみを掴み投げつける。
 
 その素早さはまるで熟練された投てき手のようだった。
 
 しかし、さすがは母といったところだろうか。アニからの攻撃はあらかじめ予想済みだったらしくぬいぐるみをしっかりとキャッチして呆れた顔をアニに向ける。
 
 アニ母「いきなり野蛮ねぇ。いいじゃない、胸触って確認してるところ見られたくらい。女同士なんだし」
 
 アニ「な、なんでノックしてくれなかったの!?」
 
 アニ母「ちゃんとしたわよ。でもあんた、彼氏のこと考えてたからか知らないけど、ずっとぶつぶつ言って気づかなかったじゃない」
 
 アニ「あ、ごめん・・・。じゃなくて!どこから聞いてたの!?」
 
 アニ母「・・・って!なんでエレンのことばっかり!・・・好きな人とかいるのかなぁ」
 
 つい先ほどまでアニが言っていたことを、そっくりの口調で言い直す。
 
 親子で声が似ていることもあってか、本当に録音したものを流したように再現度が高い。
 
 アニ母「この様子だとまだ片思いって感じかなぁ。あ、晩御飯できたから降りといで。あと、頑張るのよ、アニ」
 
 ふふふと笑いながらアニ母が扉を閉めると、その扉の奥から悶えたような声が聞こえてくる。それを聞いてもう一度ふふふと笑うと今度こそ下へ降りて行った。
 
 アニ「お母さんのバカ。そんなんじゃない・・・、と思う・・・」
 
 当の本人は恋愛経験にとんと疎いため、この恋心に気が付いてはいなかった。
 
 もちろんアニもかなりモテる方で、告白は何回もされていたが、それでも自分から誰かに特別な好意をもったことなどただの一度もない。
 
 それゆえ、アニは一人悶々と答えの出ない問いを、帰ってきてから繰り返していた。
 
 アニ「・・・とりあえず下に降りよ」
 
 普段の勉強以上に頭を使ったアニは、疲れた頭と心を少しでも癒すために下へ降りた。
 
 ・・・とは言っても、
 
 アニ母「アニのあんなかわいいところ見たのいつぶりかしら。家もそんなに遠くないのかな・・・?なんて言いながらぬいぐるみいじってて・・・」
 
 アニ父「孫を見れる日もそんなに遠くないのかもしれんなぁ」ハハハ
 
 アニ「お父さん!!お母さん!!」
 
 食事中はずっとからかわれ、休まることはなかったのだが。
 
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                  - 11 : : 2018/02/06(火) 14:40:14
- ―――
 ――
 ―翌日
 ミカサ「おはよう、エレン」
 エレン「お、おはよう」
 昨日のことがあったからか、ミカサを見てつい過剰に反応してしまう。
 ミカサ「何も今更動揺しなくてもいい。入学してから、エレンがアニに恋心を抱いていたであろうことは薄々感づいていた」
 エレン「バッ!?こんなとこで言うなよ!?」
 アルミン「・・・へぇ~~~~」
 一緒に聞いていたアルミンの顔が悪代官顔負けのニヤつきを見せる。
 エレン「アルミンのその顔に嫌な予感しかしないんだけど・・・」
 アルミン「今回は僕は静観してるつもりだよ。見てるだけでも楽しそうだし・・・ね?」
 どうやらこの話に関してアルミンから悪代官顔が剥がれることはなさそうだな、と半分諦めたエレンは足を学校へと進めながら話を戻す。
 エレン「でも、どうすりゃいいんだろうなぁ・・・」
 ミカサ「まずは自分から挨拶するべき。入学してから一週間くらいとはいえ、一度も自分から挨拶をしていないのはどうかと思う」
 アルミン「エレンは基本ヘタレだからね、しょうがないよ」
 エレン「うるせぇよ!!・・・でも確かにそうだな、まずは挨拶からだよな。よし、俺頑張るわ!」
 アルミン「応援しているからね。頑張って」
 決意はしたものの、やはり心の準備が出来たわけではないらしいエレンは、緊張を隠すように速足で教室へ向かう。
 ミカサ「エレン、嘘もついてないのに耳まで真っ赤」
 アルミン「僕たちも行こっか!ジャンもそろそろ教室にいるだろうしね」
 ミカサ「・・・それは急がねばならない」
 ミカサの足取りもエレンに負けないくらい早くなる。
 やはり付き合って短くないとはいえ、とても初心なミカサのことである。恋人の話を出されたことが原因であろう、顔をエレンほどではないにしろ、しっかりと判別できるくらい赤らめていた。
 そんなミカサを見て、ささやかな仕返しはしておいたよ、エレン!と一人満足げな顔をアルミンがしていたことは二人が知ることはなかった。
 
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                  - 12 : : 2018/02/06(火) 18:19:45
- ―――
 ――
 ―教室
 今回は昨日のように遅刻もしておらず、教室に入ってもまだ皆席に座らずに各々談笑をしていた。
 エレンは、教室に入る間も惜しむように入り口で立ち止まると、さっそく自分の左隣りの席に目を向けた。
 エレン「・・・まだ来てないみてぇだな」
 念のため教室の中も見渡すが、それらしき影はなかった。
 ミカサ「エレン、早く入ってほしい」
 アニ「わ、私も入りたいんだけど」
 アルミン「ほら、みんな迷惑してるよ?」
 エレン「あ、あぁ、悪い・・・ってアニ!?」
 アニ「っ!?な、なにさ!?」
 探していた人物が突然後ろから来たことに驚くエレンと、それ以上に驚きながら返事をするアニを見て、ミカサもアルミンも笑いをこらえる。
 エレン「あ、いや・・・、お、おはよう?」
 アニ「お、おはよう・・・。何で疑問形?」
 エレン「い、いや、深い意味はないんだ!そうだ、入り口で突っ立っちまって悪かったな」
 アニ「そんなに気にしてないから大丈夫だよ。じゃあ、また後でね」
 アニはふふふっと笑いながらもともとそこにいたであろう女子の集団の元へ戻っていく。
 エレン「・・・引かれたよなぁ」
 教室に入るや否や、アニに聞こえない絶妙な音量で嘆きながら机にうなだれる。
 ミカサ「大丈夫、アニはそんなにひどい人ではない・・・と思う・・・」
 ライナー「どうしたエレン?今日は遅刻しそうだったわけでもないのに」
 昨日同様、ライナーがエレンの体調を気遣うように問いかけてきた。
 エレン「いや、なんでもねぇんだ・・・」
 ライナー「いやいや、なんでもない奴のうなだれかたじゃねえよ」
 苦笑いを浮かべつつも、体調に問題はないらしいと分かったライナーは、一安心したかのように破顔した。
 ミカサ「・・・ライナー」ボソッ
 ライナー「ん?なんだよ?」ボソッ
 いきなり耳打ちをされて驚きつつ、反射的にライナーも小声で返す。
 ミカサ「ライナーはアニと、それからベルトルトとも幼馴染だったと聞く。何かアニが好きなものを知っているだろうか?」
 この問いかけですべてのピースがつながったのだろう。ライナーの顔が朝方のアルミンと同じ顔になる。
 ライナー「・・・アニはチーズハンバーグが好物だから、それをつくる練習をさせたらいいかもな。あと、頭を撫でられたり、優しく抱きしめられるのが好きだ。まぁ、これは段階踏んでからだろうがな」ボソッ
 ミカサ「その察しの速さは助かる。これからも何度か頼りになるかもしれない」ボソッ
 ライナー「おう、任せとけ」ボソッ
 エレン「二人して何こそこそしてんだよ」
 ミカサ「今後の攻略情報を」
 ライナー「そういうこった」
 エレン「???」
 ライナーにひきかえ、あまり察しのよろしくないエレンがこの話の真相に気が付いたのは、今夜ベッドに意識を落とす数瞬前だった。
 
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                  - 13 : : 2019/10/01(火) 12:46:21
- ーーー
 
 ーー
 
 ーそれから一週間後
 
 ミカサ「……エレンはヘタレ」
 
 エレン「……返す言葉もない」
 
 エレンはこの一週間、挨拶以外で自分からアニに話しかけることが出来ていなかった。
 
 アルミン「転校生だって一週間あればもう少し話すようになるよ?」
 
 エレン「うるせぇ…」
 
 ライナー「まぁそう言ってやるな。ウブなんだよエレンは」
 
 エレン「何でそんな知った風な口ぶりなんだよ」
 
 ライナー「まさかウブでもないのに話しかけなかった根性なしじゃあないよなぁ…?」
 
 エレン「……私はウブです。おっしゃる通りでございます」
 
 今回は勝ち目がないと悟ったのか、エレンは不本意ながらも相手の挑発を甘んじて受け入れた。
 
 ミカサ「遊びにでも誘えばいい」
 
 エレン「それ、ハードル高くないか…?」
 
 ミカサ「エレンはそれくらいハードルを上げた提案をしないと下を潜ってでもハードルに挑戦しようとはしないから」
 
 エレン「…………」
 
 こうもしっかりと自分の情けなさを見抜かれてしまっては押し黙るしかないエレンに、ミカサはさらに続ける。
 
 ミカサ「エレンもアニが好意を寄せられやすい人だということは知っているはず。このままアニに相手が出来たら絶対に後悔する。ので、嫌われようとも、キツい言い方になろうとも私はエレンの背中を押す発言をする」
 
 アルミン「……だってさ。どうするのエレン?自分のことをこんなにも応援してくれてる人の意見をを蔑ろにするの?」
 
 エレン「……今日、一緒に帰れるか誘ってみるよ」
 
 ライナー「それなら放課後は少し残っといた方がいいぞ。アニは今日委員会で遅くなるはずだ」
 
 エレン「わかった、頑張ってみるわ…。ミカサ、ありがとうな」
 
 ミカサ「気にする事はない。私は私の思ったことを言っただけ」
 
 こうして、かなりの力で背中を押されたエレンはようやくアニとの関係を進展させる覚悟を決めた。
 
 エレン「………でもなんて誘えばいいんだよ…?」
 
 ………決めたはずだ。
 
- 
                  - 14 : : 2019/10/04(金) 08:40:34
- ーーー
 ーー
 ー放課後
 ライナー「じゃあな、頑張れよエレン」
 エレン「おー……」
 ミカサ「元気を出してエレン。暗い顔のままではアニが困る」
 エレン「おー……」
 アルミン「あ、はは…。エレン、明日話聞かせてね?」
 エレン「おー……」
 全員の言葉に生返事なエレンに、3人が3人とも肩をすくめて教室を後にした。
 そんなみんなのに気づく様子もないエレンは、机に突っ伏してアニを待っていた。
 陽はすでに半分を山の陰に隠している。教室に残っているのもエレンだけになってしまった。
 エレン「委員会の仕事ってこんなに時間かかるのか…。まだ入学して二週間だってのにな……」
 赤色から紺色に変わる空を窓から眺めながら言葉を溢したところでアニが戻ってきた。
 アニ「あれ、まだ残ってたの?」
 エレン「あ、ああ、まぁな。ちょっと寝ちまってた」
 残ってた理由なんて考えていなかったエレンはとっさに答える。
 アニ「寝すぎだよ、エレンらしいけど」クスッ
 エレン「どういうことだよ……」
 エレン「てか、もうかなり暗くなったな」
 頭をひねってはみても作戦など浮かばなかったエレンは、現状を確認するようにとりあえず口に出してみた。
 アニ「ホントだね。お腹空いた……」
 アニが筆箱などを鞄に入れるのを待って、二人は教室を出る。
 エレン「…一緒に帰ろうぜ」ボソッ
 アニ「一緒に?」
 エレンが予行練習のつもりで小さく呟いていた言葉も人気の無い廊下では響いたらしく、聞こえたアニがエレンに問い返した。
 エレン「え!?あ、いや、夜道だと危険だし、男の俺が一緒に帰った方が安全かなって!ほら、あのスーパーに来てたって事は俺の家からそんなに遠く無いだろうし!」
 思わず言ってしまったにしては悪くない言い訳だなと思いつつも、何か口実を付けないと誘えないのか……と落胆する心をなんとか踏ん張らせる。
 アニ「じゃ、じゃあお言葉に甘えようかな」
 エレン「アニは何使って登校してるんだ?」
 アニ「自転車登校だよ」
 エレン「そうだったのか…。悪い、俺徒歩通学だから、帰る時間遅くさせちゃうな…」
 アニ「自転車は押して帰ればいいから大丈夫だよ!それに委員会の仕事で遅くなる事が多かったから、誰かと帰るの久しぶりだから楽しみだよ」ニコッ
 ……守りたい、この笑顔。
 エレンは心の中で合掌し、下駄箱から靴をとってニと帰路についた。
 
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