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魔法少女は魔王になりたい! 02「魔女の統べる村」

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  1. 1 : : 2017/12/22(金) 19:58:55
    半年以上前に書いた完全オリジナル作品の続きです。メインキャラが増えて賑やかになっています。恐らく誰も第一話を覚えていないと思うので、下のURLより一話を読んでからこちらを読んでいただけると幸いです。
    http://www.ssnote.net/archives/53725

    感想・批判・質問等はご遠慮なく……
  2. 2 : : 2017/12/22(金) 20:00:45



    ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



    「お前って、当たり障りのないことしか言わないよな」

    ある日友人に、こう評されたことがあった。

    そう思われても仕方が無い、と思った。
    人の目ばかり気にしてしまう自分は、浮いた発言を恐れていつも無難な言葉を選んでいる。本当なら最適な言葉を選びたいのだが、失敗することを恐れて無難なところに落ち着いてしまう。

    そんな自分は、思ったことをそのまま口にしたりだとか、心のままに行動したりだとか、本能的な行為とは一切無縁の日々を過ごしていたように思う。



    ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



    冷たく暗い海の底から、自分の体が徐々に浮び上がっていく。やがて上方から幾つかの光芒が射し込み、それは数を増やしていく。気付けば視界は輝きに埋め尽くされて、いつの間にか水面から顔を出していた。

    そんな目覚めの感覚だった。



    意識の覚醒によって瞼が開かれると、目の前には華美な装飾が施された天井が。どうやらここは屋内らしい。それも豪邸。
    背部の感触は心地良いもので、肩より下には布団が掛けられている。それらを確認して、自分が眠っていた場所はフカフカのベッドの上であることを確認。

    自身の現状と、意識の喪失の直前までの記憶を繋ぎ合わせることで、タクマは自分がここで眠るに至った過程を導き出す。その過程が正しければ、この豪邸の正体は――。

    「やっと目を覚ましたみたいだね。おっはよー!」

    右方から、聞いたことのない女性の声で朝の挨拶の言葉を掛けられた。近くに自分以外の存在があることを知らなかったタクマは、驚いて咄嗟に声がした方へと顔を向ける。

    「――うわあああああああ!!」

    瞬間、タクマは盛大に悲鳴を上げる。
    右方に顔を向けたタクマの目に映ったのは、金髪の少女の生首だった。それがこちらに笑顔を向けている。ホラーでしかない。

    「どうしたの!?」

    部屋の外でタクマの悲鳴を聞きつけた者が、慌てた声を上げたのが耳に入ってきた。こちらの声には聞き覚えがある。続いて、こちらに近付いてくる足音が聞こえてきた。声を上げた少女が、何事かと駆けつけようとしているのだろう。
    それから間もなく、部屋の扉が勢いよく開かれる音が鼓膜を劈いた。そして少女は、事態の真相を理解する。

    「メア! 驚かせるようなことをしちゃダメでしょ! タクマは怪我人なんだから」

    「ごめんなさい、アリス様。久し振りの来客だったから、ちょっとはしゃいじゃって……。お陰様で新鮮な反応が見られて、私は大満足です」

    部屋へと入ってきた少女――アリスは、生首に向かって叱咤の声を浴びせる。生首はそれに対し一応は反省の意志を見せるも、表情といい後半の言動といい全く懲りてはいない様子。それにしても、生首が叱られているとは何とも異様な光景だ。

    「もうっ、仕方の無い子なんだから……。満足したのなら、ちゃんといつもの場所に戻しなさいよ」

    「ただいま!」

    アリスの指摘に、生首は元気な返事で了承する。すると生首は、重力を無視して宙へと浮遊を始めた。呆気に取られたタクマは、口をポカンと開けたまま生首の動きを目で追う。生首が向かう先は、タクマの足下の方向。

    「なっ!?」

    そこに佇んでいたのは、メイド服を着た首無しの少女であった。今の今までその存在に気付いていなかったタクマは、驚きの声を漏らす。とは言え、最初に生首を見た時に比べれば遙かに小さいリアクションだ。
    やがて生首は、首無しメイドの身体の本来首があるべき所へと辿り着く。そして首の断面と断面がくっ付けば、金髪ポニーテールのメイド少女が完成だ。

    「改めまして。ここウィッカ邸でメイドを務めている、亜人族デュラハン種のメア・ハンリでーす! 話はアリス様から色々聞いてるよ。よろしくね、タッくん」

    生首と首無しが合体したことで生まれたメイド――メアの挨拶を受けると共に、タクマは未だかつて呼ばれたことのない呼称を授かった。

  3. 3 : : 2017/12/22(金) 20:01:54

    「ところでタクマ、怪我の具合はどう? 痛みはもうない?」

    「ええっと……」

    アリスに怪我の具合を尋ねられたタクマは、昨晩自分が負傷した部位である腹部に手を当てみる。腹部に痛みは一切感じられない。それは患部に触れるまでもなく、タクマがアリスに尋ねられるまで自分が重傷を負ったことを半ば忘れかけていたことからも明らかであった。

    「大丈夫、完璧に治ってるよ。ありがとう、アリス」

    「お礼を言われる程のことはしていないわ。簡単な治癒魔法を掛けただけよ」

    「だから、余計なことは言うなって。『私のお陰よ』って威張っていれば良いんだから」

    口元を綻ばせながら、タクマはアリスの謙虚すぎる姿勢を指摘する。そこが彼女の美徳であるとも思いながら。

    「そういうわけで、傷のことは良いんだ。だから……、昨日の晩の襲撃の裏事情みたいなものを、話せる範囲で良いから教えてくれないか」

    「分かっているわ。こちらの事情に巻き込んでしまったもの、それぐらいは当然の義務よ」

    「まあまあ、その辺の話はミラちゃんも交えてということで」

    事情を説明して欲しいというタクマの嘆願に、アリスは首を縦に振る。が、そこにメアが割り込み、事情説明を一先ずお預けにすることを提案する。
    タクマとしては、説明を後回しにされることに異存はない。また、新たな人物名の出現をタクマは聞き逃さなかった。

    「ミラちゃん?」

    「ウィッカ邸で執務をしてくれてる子。難しい話は大体ミラちゃんが纏めてくれるの。他にも、執事見習いのルカりんって子もいて、この二人にアリス様と私を合わせた四人で生活してるの」

    「へぇ……」

    使用人が三人もいることに対し、アリスの豪邸に見合った財力を垣間見るタクマ。しかし、居住者が四人という事実にはどこか拍子抜けを覚えもした。何故なら、何かが足りないから。

    「そう言えば、アリスの家族は一緒に住んでないのか?」

    疑問をそのまま口に出してしまったタクマは、目の前のアリスの表情が曇ったのを見て慌てて口を塞ぐ。だが、時既に遅しだ。
    創作物のキャラクターが踏みがちな地雷を、まさか自分が踏んでしまうことになろうとは。恐らく、彼女の家族は――。

    「ごめん、アリス。無神経な質問だった」

    「良いの良いの! 気にしないで!」

    「――あのぉ」

    ここで、新たな声が二人の間に割り込んで来た。メアの話から、声の主は執務担当のミラちゃんか執事見習いのルカりんのどちらかであることは明白。
    そしてタクマは、その姿を見ただけで声の主がどちらであるかを判断することができた。

    「朝食の準備が済みましたです。食堂へ参りなさってください」

    短く藍色の髪と何より獣耳が特徴の、少年か少女かの判別も付かない中性的で幼い子供が、ちぐはぐな敬語を用いて朝食の時を告げた。
  4. 4 : : 2017/12/22(金) 22:12:58

    「こいつがルカりんか?」

    「何故その呼び名がもう定着しているですか!?」

    一応自分の予想が合っているかを確認するため、タクマは目の前の子供がルカりんであるかを尋ねる。すると子供は、質問への返答を飛ばして、自分が既にニックネームで呼ばれていることへの疑問を唱えた。

    「それはもちろん、私がルカりんのことを『ルカりん』って紹介したからだよ!」

    その質問に、メアが満面の笑みと立てた親指を見せながら返答する。だが、メアの態度は子供のお気に召さなかった模様。

    「その呼び方、余り広めないでくださいってメアさんに言ったじゃないですか!」

    「えっ、嫌なの?」

    「嫌ですよ」

    「何で?」

    「何でってそれは……」

    メアに「ルカりん」という呼び名のどこが気に食わないかを問われた子供は、顔を赤らめモジモジし始めた。客観的に見て、とても可愛らしい姿だ。
    だが子供としては、いつまでもモジモジしているわけにはいかない。今こそ、ハッキリと意志を伝える時なのだ。

    「可愛らしくて女の子みたいだからですよ!」

    それは君の見た目にも言えることだというツッコミを、タクマは胸の内にそっと閉まう。

    「ゴホン。兎に角、料理が冷めてしまうですから今すぐ食堂に参りなさってください」

    「そうね。諸々の話は、食堂に行ってからにしましょう」

    子供――少年は咳払いを挟み、用件を再度伝える。それにアリスが応じ、食堂への移動が決定した。

    そして少年の先導の下、一同は部屋を出て廊下を歩く。この廊下がまたものすごく広く、学校の廊下と同程度の幅と長さを誇っている。装飾も寝室の天井同様豪華で、床には赤い絨毯が敷かれており、壁際の数カ所には花が飾られている。どうやら、この豪邸はタクマの想像以上の豪邸であるらしい。
    そんな長い廊下だが、所詮は廊下であり、一分と掛からずに一同は目的地に到着する。少年は扉の取っ手に手を掛け、その扉を開こうとする。だがその前に、少年は手を止め後ろ――タクマの方へと顔を向けた。

    「すみません。自己紹介をすっかり忘れていましたです。僕の名前はルカ・フォルフ。よろしくお願いしますです」

    「おう、よろしくな」

    自己紹介を済ませたルカは、再び手を動かして扉を開ける。

    「――お待ちしておりました、アリス様」

    扉を開けた先では、三人目の使用人が主の到着を待ち構えていた。
  5. 5 : : 2017/12/22(金) 22:14:35

    ショートカットの黒髪に、赤い瞳が特徴的な彼女は、主を歓迎する言葉を掛けた後、タクマと双眸を合わせ始める。

    「アリス様から貴方のお話はお伺いしております、タクマ様」

    ルカのそれとは違い、彼女は正しい用法を以て丁寧な言葉遣いを用いタクマに話し掛ける。ピシッとした黒いスーツに身を包んでいることから受ける印象通り、礼儀正しい性格なのだろう。タクマがそう思ったのも束の間――、

    「リリス様に出会わなければ今頃野垂れ死んでいらっしゃった、無知無力無一文の三拍子揃った無能様ですね」

    「いきなり毒吐き過ぎだろ!」

    礼儀の欠片も感じられない、容赦の無い毒舌がタクマに浴びせられた。全部事実なだけあって、タクマの心へのダメージは大きい。

    「ごめんね、タクマ。この子は別に、貴方を責めているわけじゃないの。ただ、思っていることをそのまま言っちゃうだけなの」

    「アリス。きっとフォローしようとしてるんだけど、それはフォローになってない」

    「アリス様のお心遣いを解していらっしゃるのなら、そのような事をおっしゃるのは無粋ではありませんか? だからモテないのですよ」

    「会って一分未満のお前にモテないとか言われる筋合いはない」

    フォローどころか逆にタクマを口撃する結果となったアリスの言葉に、タクマは泣く泣くツッコミを入れた。すると使用人の女性は、冷たい口調で新たな毒舌をタクマに浴びせる。タクマも負けじと言い返すのだが、今までモテたことがないのもまた事実なので、どうにも勢いがない。

    「さて、そろそろ自己紹介と致しましょう。私、ウィッカ邸にて執事を務めております、カーミラ・ヴァン・シェリダンと申します。以後、お見知り置きを」
  6. 6 : : 2017/12/23(土) 22:30:45



    毒舌執事・カーミラが自己紹介を終えると、一同はカーミラに誘導され食堂の席へと着く。
    食堂のテーブルは長方形状であり、入口側から見て縦に長い。縦の辺にそれぞれ四人ずつ座れるようになっており、対して横の辺にはそれぞれ一人のみが座る構造となっている。
    座席の配置はというと、最奥の上座にアリスが座り、アリスから見て左側にメア、カーミラが、右側にタクマ、ルカが、それぞれアリスに近い方に詰めて座っていく形となっている。

    一同を着席させたカーミラは、隣接している調理場から全員分の料理を載せたワゴンを引いて来て、それぞれの前へと皿を置いていく。

    「これって、レバニラか?」

    見慣れた料理を目にしたタクマは、それが、自分が元いた世界にあるものと同じであるかを問う。カーミラはその問いに頷きで肯定を示す。

    「これ、ミラちゃんの得意料理なんだ」

    「へぇ。変わってるな」

    「ミラちゃんは吸血鬼だから、鉄分が多い料理が大好物なの。何度も作ってる内に腕も上達していってね。今じゃ絶品と呼んで問題ないぐらいの美味しさなんだよ!」

    メアの補足説明を受け、タクマは率直な感想を口にする。得意料理というのは大体子供が好きそうな料理であるイメージがあっただけに、レバニラは得意料理としては異質なものに感じられたのだ。
    その感覚は間違っていなかったようで、メアはタクマの言葉に異を唱えることなく、それどころか更なる補足説明を加える。どうやらレバニラを作る腕は超一流のようで、カーミラの作るレバニラを褒め称えるメアの口元からは涎が零れ出している。

    「はしたないですよ、メア。まるで腹を空かせた豚みたいです」

    「お前の毒舌って、身内も標的になんのかよ」

    同僚であるはずのメアをも豚呼ばわり。収まる事のないカーミラの毒舌に、タクマは嘆息混じりにこう零した。だがタクマとしては、レバニラが絶品であることも、カーミラの毒舌は誰にでも襲い掛かることも後回しにして、尋ねたいことがあった。

    「吸血鬼だからって、俺の血を吸うようなことはないよな?」

    吸血鬼――読んで字の如く、血を吸う鬼だ。そんな彼等は、一般的に人間の血を好むとされている。
    もしかしたらカーミラにとって、自分は肉食獣の縄張りに迷い込んだ草食獣のようなものではないのだろうか。アリスの部下である以上そのようなことはあり得ないだろうが、それでもハッキリさせておきたいことであった。

    「貴方のような無能の血、こちらから願い下げ申し上げます」

    「ホッとしたけど釈然としない!」

    「そもそも、我々吸血鬼にとって血は不可欠なものという訳ではありません。言うならば、嗜好品のようなものですよ。平時においては、他の亜人族や、貴方のような人間達と同じ食事だけで事足ります」

    「そういうもんなのか」

    吸血鬼なのに血は不要。食事は人間と同じで良い。そんな吸血鬼の性質に、タクマは安堵と共にどこか拍子抜けした感覚を抱く。

    「無駄話はこのくらいにして、皆様まずは食事をお召し上がりください。タクマ様が拝聴したがっている話は、食事を摂りながらということにしましょう」

    カーミラが話を一旦締めて、一同は朝食を開始した。
  7. 7 : : 2017/12/23(土) 22:34:47

    「――うまっ! さっすがにメアの褒め方は盛ってると思ってたけど、これはホントに絶品だな!」

    「でしょでしょ!」

    カーミラの作ったレバニラを一口頬張ったタクマはその味が、メアが上げに上げたハードルをいとも容易く超えてくるのを感じ、称賛の声を上げる。メアは共感を得られたことが嬉しかったようで、テンションの高い声でタクマの称賛に反応する。

    「褒めたところで、貴方達を豚として見る目を帰るつもりはありませんよ」

    「まあまあ、素直になれよ」

    二人からの賛辞の言葉を受けても、カーミラの毒舌は揺らぐことを知らない。そんな彼女の態度を、タクマは照れ隠しの一種だと思いこのように声を掛ける。これだけ褒められて、気を良くしない者などそうはいないはずだ。だが……。

    「俺はツンデレよりも主人公にデレデレしてるヒロインの方が――。お前、もしかして本心から言ってる?」

    「はい」

    「思ってる以上にとんでもない女だな!」

    カーミラの冷たい表情から、彼女の毒舌が本心からのものであることを察したタクマ。その観察眼は見事に的中する。
    彼女は本当に、二人の称賛を何とも思っていなかったのだ。

    「そんなこと言わないの、タクマ。カーミラも、少し口が悪すぎるわよ」

    「申し訳ありません。しかし、修正するつもりはありません」

    「アリスには服従しても、そこは譲らねぇのかよ」

    主であるアリスがカーミラの言動を咎めるが、カーミラは素直に謝罪こそするも改善の意志が無いことを宣言。彼女の毒舌を鎮めることは、絶対服従の主を以てしても困難であるようだ。

    「――あの、そろそろご本題の方に入った方が良きなのでは?」

    料理の感想から端を発した与太話。それを終わらせ、話の本筋を呼び戻すことを提案したのは、相変わらず言葉遣いがちぐはぐな執事見習いのルカだ。

    「そうだった。危ねぇ危ねぇ。カーミラの毒舌に乗せられて忘れるところだった。ありがとな、ルカりん」

    「そ、その呼び方はお止めに申し上げてください!」

    『ルカりん』と呼べばルカは顔を真っ赤にして恥ずかしがる。それを分かっていながら……いや分かっているからこそ、タクマはルカへの感謝の言葉にその渾名を添えた。案の定、ルカは赤面しながらその名で呼ぶことを咎める。
    やっぱり可愛らしい男の子だ。そう思い、タクマは表情を綻ばせる。

    「無能な上に少年嗜好のド変態でしたか」

    「そういう意味の笑顔じゃねぇよ。てか、お前もこいつの可愛らしさを――いや、このままお前の毒舌にいちいち絡んでたら埒が明かない。ここはこれ以上の言及は止めて、ルカりんの提案に従い、話を本題に戻すことにする」

    「その呼び方は止めてと……」

    「昨日の晩の襲撃……、あれには一体どんな事情があったのか教えてくれ」
  8. 8 : : 2017/12/23(土) 22:35:26

    再三襲い掛かるカーミラの毒舌への反抗心を抑え、タクマはいよいよ核心への一手を打った。
    それに対して、一同の中で明らかに表情を変えた者が一名。アリスだ。

    「どうしても、気になるの?」

    先程までの穏やかな表情から一変、彼女は真剣な顔でタクマを見つめてそう尋ねる。

    「まあな。勿論、教えられる範囲で構わないけど」

    アリスの問いかけに、タクマは控え目な回答を返した。実質、それが本心だ。
    巻き込まれた身としては、どんな事情に巻き込まれたか気になる部分はある。だが、このままアリスの導きのままに人間界へと向かえば、もう二度と関わらない事情でもあるのだ。自身とは無関係の事情を、相手の気持ちも無視して詮索する程タクマは無神経でも剛胆でも無かった。

    「こちらとしても、本来無関係である貴方を巻き込んでしまった責任があります。ですから、貴方の要望にできる限り応える義務があります。不本意ですが」

    タクマの回答に対しアリス側の答えを取り次いだのは、カーミラであった。難しい話はカーミラが纏めるというメアの発言の通りだ。

    「不本意ならそんな責任感を負う必要はないぞ。別に、巻き込まれたことを怒っているわけじゃない」

    「いいえ、それはできません。貴方の要望に応えること以上に、果たすべき責任を果たせないことが不本意です。なので、貴方に事情を話すことに致します。しかし……、貴方に必要以上に情報を渡したくないというのも本音です」

    「なるほど。それで結論は?」

    「事情の説明に際して、質疑応答の形式を採らせていただきます。貴方の質問に対し、我々は可能な限り回答します。勿論、全ての質問に答えられるわけではないので悪しからず」

    本音と義務の狭間で、メアが提案した形式。それは要するに、タクマの知りたいことだけ答え、それ以上は何も明かさないということだ。
    タクマはその提案に不服はない。譲歩としては十分すぎる。よってタクマは頷き、肯定の意を表した。

    「それじゃあ、早速最初の質問をさせてもらう。昨晩からずっと気になってたことだ」

    最初の質問に当たって、タクマはこう前置きをする。昨晩の襲撃で、アリスが口にした発言の中でどうしても気掛かりになっているものがある。それは――、

    「『魔王候補』について、詳しく教えて欲しい」
  9. 9 : : 2017/12/23(土) 23:47:16

    放たれたタクマの疑問。これに対し、表情を変えた者はいない。予期されていた質問であるということだろう。実際、アリスに後で説明すると言われていたことだ。
    質問を受け、今度はアリス側が回答する番となるが、そこでアリスが挙手をして発言の意志を示す。アリスはカーミラの目配せを受けると、タクマをしっかりと見つめて口を開いた。

    「その質問に答える前に、こちらから質問をしても良いかしら?」

    「ああ、構わないけど」

    「タクマは、魔界のことをどの程度知っているの?」

    回答に当たって、タクマの事前知識の量を把握しておきたいという旨の質問だ。だが、どの程度かと言われても……、

    「ゼロ。何にも知らない。アリスから教えてもらったこと以上のことはな。あっ、さっすがに魔王が魔界の王だってことは知ってるぞ」

    「タッくんタッくん。一応言っておくけど、魔王は魔界の王じゃないからね」

    「マジか!」

    雀の涙程の事前知識すらもメアに否定され、少しショックを受けるタクマ。その様子にアリス達は呆れ気味だ。

    「それじゃあ魔王がどんな存在かを、私が教えてしんぜよう。難しい話になったら私の出番なくなっちゃうから」

    「おう。よろしく頼む、メア」

    「まず大前提から話すと……魔王は四人いる!」

    「四人!?」

    魔王が複数名いる、その事実を伝えられたタクマは驚きの声を上げる。
    王とはある社会集団におけるトップ、権力の頂点たる存在だ。頂点であるということは、つまり唯一無二の存在であるはずなのだ。

    結論から言うとその前提は、魔界においても同様であったのだが。

    「魔界っていうのは五つの国に分かれてるの。真ん中に一つと、東西南北に四つ。ちなみにここは西の国ね。そんでもって、東西南北の国々にはそれぞれ王がいる。それが魔王ってこと」

    「魔界に国が五つもあるのか。RPGのイメージで、魔界は魔王独裁の一枚岩なもんだと勝手に思ってたよ」

    「んと……、RPGが何かは分かんないけど、その考えもあながち間違いじゃないよ。実際、タッくんの言う魔界の王と呼べる者がいるわけだし」

    「そいつは何て呼ばれてるんだ?」

    「大魔王。大魔王は魔界の真ん中の国の王で、周りの四国を支配する権利を持ってる。まっ、大体は四魔王の自治に任されてて大魔王が出て来ることは殆どないけど」

    「なるほど。てことは、魔王は十分に王と呼べる存在だって事だな。そしてアリスは、その魔王の候補者であると」

    「――その通りよ」

    魔王について大まかな理解を得たところでタクマがアリスについて触れると、今まで回答してきたメアではなく、アリス自身がタクマの言葉に回答を述べた。

    アリスは質疑応答が始まってから、真剣な表情を一切崩していない。自身を標的にした襲撃に巻き込んでしまった責任があるとはいえ、無知の極みのタクマの疑問に真摯に向き合ってくれるその姿に、タクマは彼女の誠実さと気高さを感じ入る。
    だが、それが即ち彼女から魔王候補たる器量を垣間見たことになるか……と問われれば、タクマの答えはノーだった。王に必要なのは、この二つだけではない。良い人柄の人間全員が、王に向いているわけではない。或いは、寧ろ――。
    要するに、彼女に王を感じるには、タクマは彼女の優しさを身に受けすぎたのだ。損得勘定をかなぐり捨てて、何も持たない自分に手を差し伸べたその姿は、彼女の美しさと相まって余りにも――、

    「魔王らしくは無いよな……」

    不意にタクマは、そんな本心を吐露してしまう。そしてその呟きは、一瞬の沈黙を招いてしまった。
  10. 10 : : 2017/12/23(土) 23:48:38

    「――あっ、その、悪く言ったつもりはないんだ。寧ろ良いこと……だと思う……」

    「……気にしないで。私自身、それは自覚しているから」

    慌ててフォローを加えるタクマだが、アリスは別にショックを受けているわけではなかった。それどころか――、

    「それでも私は、魔王になる。支えてくれる皆のために、勿論自分自身のためにも、必ず」

    強い意志と信念の籠もった声で、彼女は自らの決意を述べた。

    「――魔王候補についての説明はもう十分かしら?」

    「あ、ああ」

    「だったら、話を進めましょう。他に聞きたいことは?」

    十分な回答であったかの確認を行った上で、アリスはタクマに次の質問へと移るように促す。そしてタクマは既に、二番目の質問の内容を決めていた。

    「魔王候補は複数いる。そして候補者同士の仲は最悪で、互いが互いを脱落させようと画策しててその一つが昨晩の襲撃――。これが俺の考えた昨晩の襲撃の背景なんだけど、どのくらい合ってる?」

    その内容は、自身が立てていた仮説の正誤を尋ねること。タクマは目覚めてからこの時まで、自分なりに断片的な情報を繋ぎ合わせ事情を考察していたのだ。
    そして彼の仮説は見事に、的中していた。

    「驚きました。殆ど当たっています。頭蓋の中身は空っぽであるとばかり思っておりましたが、知識はなくても知能はお持ちであるようですね」

    タクマの正確な仮説を聞き、カーミラは感心を言葉に表す。その感心が小さくないものであることは、相変わらず毒だらけの発言の中に一つ、褒め言葉――とまではいかずともタクマの能力を多少ながら認める節が含まれていたことから明らかだ。
    だがその感心が、即ち高評価に繋がるかと言えばそうではない。

    「何故、それ程細かな仮説をお立てになることができたのですか?」

    仮説の根拠を問うカーミラの眦が微かに鋭くなり、(まなこ)には仄かな疑念を孕んでいるのをタクマは感じ取った。
  11. 11 : : 2017/12/23(土) 23:49:24
    スパイか何かの可能性を、僅かではあるが疑われている。それに気付いたタクマは内心尻込みながらも、平静を取り繕い回答に望む。後ろめたいことなど、何も無いのだから。

    「理由は極めて単純。どの世界のどの国でも、後継者候補の周りには争いがつきものだから。そしてそのパターンは大きく分けて二つ。一つ目は候補者が一人の場合で、この場合は現体制の転覆を謀っている奴等に狙われることが多い。正式にトップになってからよりも、候補者に過ぎない段階の方が襲いやすいだろうからな。そして二つ目は、候補者が複数いる場合。この場合は一つしかない椅子を巡る候補者間の争いが主だ。俺はアリスが『魔王候補』って言ってたことからこの二パターンまで絞ってた」

    「……そこから正解のパターンの一つに絞り込みなさった過程は?」

    「魔王候補がアリスだけじゃないと思ったからだ」

    「何故そのようにお思いに?」

    次々に襲い来るカーミラの質問の応酬。元々あった質問側と回答側の立場が丸っきり逆転している。そうせざるを得ない程、カーミラから見たタクマの知識は偏っていた。魔界のことを何一つ知らないタクマが、少ないヒントから正確にアリス達の事情に辿り着いたことへの違和感が大きかったのだ。
    いきなり踏み込み過ぎた質問をしてしまったかと、タクマは今頃になって内心反省していた。疑いの目を向けられることは、他人の目を気にしがちなタクマにとっては辛いことだ。それは誤解だと、強硬に主張してしまいたくなる自分もいる。だが今この場において自分がなすべき事は他にあることを、彼は知っていた。

    「一番の理由は、アリスの警護の薄さだ。幾らアリス自身が強いからといって、一人で出歩かせるのは危険だし、幾らカーミラ達が強かったとしても、屋敷を護るには人員が少な過ぎだ。この二つから、人手不足は明白。でも俺が西の魔王城・ウエステリアの繁栄具合を見た限りだと、魔王ってのは唯一人の後継者に録な警護をつけられない程弱い存在じゃなさそうだった。以上のことを踏まえると、魔王は敢えて後継者候補に警護をつけていないと考えるのが自然だ。そしてその理由は一人くらい殺されても問題はないから――、何なら、生き残った奴を後継者にしようと考えてる可能性だってある。……こんな感じの考え方で、俺は魔王候補が複数いるという仮説を立てた。この説明で納得してくれるか?」

    因みに、これ程までにタクマがスムーズに思考を展開できたのは、彼が創作物の世界に慣れ親しんでいて影響が大きい。後継者候補同士の戦いというのは、バトル漫画等によくあるシチュエーションだ。

    そして、タクマの説明に対するカーミラの答えはと言うと……。

    「一応は、納得致しました。しかし――」

    カーミラは説明に対する納得を述べるが、直後に逆説の接続詞を続ける。そのことに、出来る限りの答弁を尽くしたタクマは息を呑む。この説明でもなお疑念が残るのならば、これ以上の答弁の言葉は出て来ないからだ。
    だがそんなタクマの不安は、杞憂に終わる。
  12. 12 : : 2017/12/23(土) 23:49:46

    「もう良いでしょう、カーミラ。タクマが敵じゃないことは、昨日半日一緒に過ごした私が証明するわ。そもそも今は、私達が質問に答える番よ」

    「ミラちゃんの言いたいことも分かるけど、タッくんは怪しい人には見えないよ。説明もちゃんと理にかなってるし、一先ず信じてあげようよ」

    「僕も全く同意見であるです。僕達の想像よりも、タクマさんの頭が良かったということでしょう」

    カーミラ以外のウィッカ邸の面々が、それぞれタクマを擁護する意見を口にしたのだ。

    「メアとルカはともかく、アリス様がそのようにおっしゃるのであれば返す言葉もありません。タクマ様、無礼な真似をしてしまい申し訳ありませんでした」

    三人の意見に――実質はアリスの意見にカーミラは屈し、タクマに疑念を向けた事への謝辞を述べる。

    「そのことは謝らなくても良いよ。俺の発言に怪しまれるようなところがあったのも事実だし。それより、質問の続きを良いか?」

    「どうぞ」

    「その候補者同士の争いについて、もう少し詳しく聞いても良いか?」

    漫画やアニメの視聴によって培われた推理力で、タクマはアリスが魔王候補者間の抗争の渦中にあることを言い当てた。しかし、この世界についてタクマの知識はゼロな訳で、候補者間抗争に関しても具体的な話は何一つ知らない。

    「……タクマが本当に知りたいのなら、私達はそれに答えるわ」

    タクマの次なる質問に対し、返答したのはカーミラではなくアリスであった。一応はタクマの問いを肯定するアリスだが、その表情はどこか曇っている。そしてその原因が、二の句で明かされる。

    「でもこの情報は、私達だけではなく他陣営の機密にも関わりかねないものだわ。だから知るだけでも、それに伴うリスクが生じてくる。わざわざ力を持たないタクマに刺客を向けるなんてことは、殆ど皆無ではあるけれど。だから、それを踏まえた上で考えて、本当にこれ以上を知る必要があるのかを」

    「そう言われると……」

    知る必要はない――というのが、タクマの本音だ。それも当然、最初の予定通りに事が運べば、今日の昼には彼は人間界へと送られる。そうなればもう、魔界の事情に関わることは無いだろう。
    そして、タクマにこれ以上厄ネタを教えたくないというのが、アリスの本音であることはタクマの目には明白だった。となれば、両者の本音は合致。

    「やっぱり――」

    「聞かなくていいや」と、タクマが答えようとした時だった。

    「いいえ、お話しします。それが先程の無礼のお詫びです」

    「ちょっとカーミラ! 勝手に――」

    「東の魔王候補の数はアリス様を含め六名。この六名から一名を選出する戦い――魔王選抜戦を一カ月後に控えながら、戦力的に活路を見出せないでいる。以上が、我が陣営の現状でございます」

    カーミラはアリスの制止に耳を貸さず、独断でタクマに全てを明かした。
    それが、カーミラが主の意志に背いてまで決行した賭けであったことを、アリスとタクマが知ることは終になかった。
  13. 13 : : 2017/12/24(日) 16:16:48
    「魔王選抜戦……」

    突如として流し込まれた情報。タクマはその中から最も重要であると思しき用語を抜き取り復唱する。
    その一方で、アリスはカーミラの突飛な行動に疑問を抱いていた。

    「どうして全部話しちゃったの!? そもそもさっきまで、カーミラはタクマのことを疑っていたじゃない!?」

    「その通りです、アリス様。だからこそ、無礼のお詫びの印として申し上げました。それに、全てを話すことこそが、私がタクマ様への疑念を払拭したことを証明する一番の近道であるとも考えましたので」

    「それはそうかもしれないけど……」

    アリスはタクマの方へと不安げな視線を向ける。視線の先のタクマは、カーミラから与えられた情報を反芻し整理している最中であった。その為、アリスの視線には気付かない。

    「ご心配には及びません。タクマ様をこのまま速やかに人間界へとお送りすれば、何一つ問題は生まれないのですから」

    視線の中に潜むアリスの感情を読み取ったカーミラは、それを拭い去るための言葉を掛けた。

    「珍しいこともあるですね。カーミラさんがアリス様の意見を無視するなんて」

    アリスとカーミラの問答を傍らで見ていたルカは、同じく傍観者の立場であったメアにカーミラの行動への感想を述べる。ルカにとっては、忠誠心の高いカーミラが主の意向に背いたことが意外なことのようであったが……、

    「いや、ミラちゃんはいつも通りだよ」

    メアは全く異なる感想を抱いていた。

    「――活路が見出せないでいる。そう、言ったな?」

    「はい」

    自身の脳内での情報整理を終えたタクマは、カーミラの言葉の一部を反復し内容の確認をする。その内容とは、アリス陣営が魔王選抜戦において極めて劣勢にあるというものだ。
    そしてそれを聞いてしまったタクマの頭には、彼の力には不相応なある思いが芽生え始めていた。

    「私達のことは、気にしなくて良いんだからね」

    その思いをいち早く察知したのはアリスだ。彼女が彼の思いに気付けたのは、同様の立場にあったら彼女もまた同じ思いを抱いてしまうからだろう。見知らぬ男に、得もないのに救いの手を差し伸べた彼女ならきっと――。
    そんな彼女は、その思いを鎮めるためにさっきの言葉を掛けたのだろう。だが、そんな彼女の気遣いは、逆に彼の思いを加速させる。

    彼女の優しさに何も報いぬまま、去ってしまって良いのか。
    彼女の願いを知りながら、何もせずに去ってしまって良いのか。
    無力だから仕方が無い。そんな哀れみを抱かれたまま、去ってしまって良いのか。
    ――否、

    「一つお願いがあるんだが……」

    そう切り出し、タクマは拳を強く握る。そして心の昂ぶりのまま、叫んだ。

    「俺に、アリス達の手助けをさせてくれ!」

    アリスの力になりたい――そんな想いを吐き出したタクマ。
    自分の力で助けになれるところなど、本当にあるかはわからない。それでも彼は、彼女の為に戦うことを願わずにはいられなかった。
  14. 14 : : 2017/12/24(日) 16:17:30

    「タクマ、自分が何を言っているかわかってるの!?」

    その願いを、アリスは拒絶する。

    「あなたは人間よ。本来、私達魔族とは相容れない存在なの。魔王候補を手助けする人間なんて聞いたことがない……、異常よ。そもそも、あなたは人間界に帰りたいんじゃなかったの?」

    タクマのしようとしている行動を異常と評し、また本来の目的を問い質すことで、アリスはタクマの思考の軌道修正を図る。

    助力する先の者の本意に背いてまで助けになろうとする行為は、善意の押し付けに他ならない。ここまで言われてしまった以上は、引き下がるべきだろう。
    だがそれは、彼女が本当に助けて欲しいと思っていなければの話――。

    「助けてもらった人に恩返しをするのは、至って普通のことだろう。その内容なんて関係ない。人間界に行こうとしてたのだって、魔界じゃ人間は生きていけないって言われたからだ。俺には身寄りなんてないし、ここで暮らすことを許してくれるんなら人間界に行く必要なんてない」

    人間界ではなく、元の世界に帰れるというのなら話は変わるかもしれないが、ここでの人間界が元の世界とは違うことは、今まで得た知識やアリス達の発言から容易に推察できることであった。

    「でも、ハッキリ言って普通の人間のタクマにできることなんて全く……とまでは言わないけど、殆ど無いのよ。それに、いつ命を狙われるかも分からない危険にさらされることになるわ」

    「つまり、全く無いわけでもないんだな。危険に関しては、もう十分承知してる。その上で俺は手助けがしたいと言った」

    「――私を育ててくれた両親は、三年前に殺されたわ」

    「え……?」

    突然語られる、先刻タクマが踏んだ地雷の真相。アリスの両親は予想通り亡くなっており、その失い方は予想を超えて悲惨なものであった。
    哀しい過去を告げられたタクマは、すぐに言葉を返すことができなかった。

    アリスは、言葉を続ける。

    「恨まれる事なんて、たぶんしていなかった。私が魔王候補であることが判明したのは半年前のことだから、権力争いに巻き込まれていたわけでもないわ。幾ら考えても、殺される理由なんて思い付かなかった。理由なんてなくても、他者を傷付け殺められるような者が、魔界にはゴロゴロ居るわ」

    魔界の不条理を、思い出したくない筈の自分の過去を交えて伝える。

    「況してや今は魔王選抜戦の渦中、いつ襲われたっておかしくはない。タクマが選ぼうとしている道は、常に生と死の狭間を行く道よ」

    「――それでも」

    どれだけ危険を説かれようとも、引き下がるわけにはいかない。
    決めたのだ。アリスの願いを叶えるために、彼女と共に戦うことを。

    「それでも俺は、アリス達の助けになりたい」

    「何のお礼もできないわよ。あなたにメリットなんてない」

    タクマの反論を受けても、アリスの態度は頑ななままだ。アリスはタクマがアリス達を手助けすることの無価値さを伝えることで、彼の想いを引き下がらせようと努める。だが、そんなことでは彼は退かない。
    尤も、彼を引かせる方法は簡単だ。しかしその方法を執ることができないのが、アリスという少女の本質である。彼女はどこまでも優しくて、気高くて、何より誠実だ。だから、

    「そんな話はもう良いんだ、アリス。俺がアリスから聞きたい答えは一つだけ……、助けて欲しいか! 欲しくないのか! それだけだ!」

    「私は――」

    彼女は嘘を吐くことができなかった。例え、少年を護るためだとしても。

    「助けて欲しい……、助けて欲しいよ! だって私は、魔王に……魔王になりたいから!」

    光の見えないこの状況から助けて欲しいという本心を、隠すことはできなかった。
    それが引き出されれば、タクマにはもう下がる理由はない。

    「……だったら、俺が助けてやる。――超微力だけど」

    最後に自信の無さが出てしまったが、タクマはアリスを助けると力強く宣言した。
  15. 15 : : 2017/12/24(日) 16:17:51

    「無知無力無一文の貴方にしては、随分と大きく出られましたね。最後がどうしようもなく残念でございましたが」

    「うるせぇ。実際何ができるか分かんなくて自信が無くなっちまったんだよ。でも、何かはあるはずなんだ」

    自分には、現代から異世界転移してきたという唯一無二の特性がある。この特性を活かす方法は何かしらあるはずだと、タクマは考えていた。
    転移時にチート能力は与えられなかったものの、現代知識無双などチートプランは他にも存在する。少なくとも、自分にしかできないことがあるはずだ。

    「それで、主の許可はほぼほぼ引き出せたけど、ウィッカ邸の参謀さんはどうお考えで?」

    「大変不本意ですが歓迎致します。猫の手も借りたい状況ですので」

    「不本意と歓迎って同時に使われる言葉じゃないと思うんだが……。まあ良いや、歓迎してくれるなら」

    毒舌カーミラが、毒を吐きつつも「歓迎」と述べた。このことからタクマは、自身の行動がありがた迷惑となっていないことを知り、意志をより強く固める。

    「勿論、私とルカりんも歓迎するよ!」

    「そいつはありがたい。これからもよろしく、メア、ルカりん」

    「よろー!」

    「よろしくお願いします! でも、その名前で呼ばないでくださいよ!」

    残るウィッカ邸の住人のメアとルカも、タクマの意志を歓迎する意を表してくれた。

    「それにしてもタッくんって、意外と頑固なところがあるんだね。ぱっと見、流されやすそうな感じだったからビックリしたよ」

    「その見立てはたぶん正しいよ。今回が特殊なだけだ」

    好きな女の子の助けになりたい。助けになって、格好いいところを見せたい。
    そんな男の意地というべきものが、思いの外自分に備わっていただけだ。

    「ちょっと! 主である私を置いて話を進めないでよ!」

    「助けて欲しいって言ったじゃないか」

    「それは別に、タクマに助けて欲しいって言ったわけじゃ――」

    周りが勝手にタクマを歓迎するムードになっている中、実のところは未だにタクマの陣営加入に許可を下していないアリスがその雰囲気に待ったを掛けようとする。だが、もう遅かった。議論の終着点は既に決まってしまっているのだから。

    「はぁ、分かったわ。アマミ・タクマ、貴方を私の陣営の一員として認め、ここウィッカ邸に住むことを許可します」

    諦めによる嘆息と同意の言葉を口にした後、アリスは改まった口調でタクマのアリス陣営加入を認可する。

    「ありがたき幸せ。今後、貴女の為に我が全身全霊を尽くすことを誓いまする」

    タクマはアリスのその口調に便乗して、気取った口調で彼女への忠誠を誓った。
  16. 16 : : 2017/12/24(日) 17:49:44

    「さて、そうと決まれば早速歓迎会の準備をしないとね」

    タクマの陣営加入の件が一段落したところで、アリスは新たな話題を展開する。それは、タクマの歓迎会についてだった。

    「そんなことまでしてくれるのか! 何か、申し訳ないな」

    「気になさる必要はございませんよ。別に貴方の為に行うわけではありませんから」

    自分の為に歓迎会をしてくれることに、建前では遠慮しながらも浮かれるタクマ。そんな彼に釘を刺してきたのは、仲間になってもやはり毒舌は変わらないカーミラである。

    「歓迎会はそもそも新規加入者を歓迎する為の会だろう。だったら、自然と俺の為の会になっちゃうんじゃないのか? 自分で言うのは変な話だけど」

    「貴方が先程なさった遠慮と同様に、歓迎会というのは建前ですよ。真の目的は、アリス様の領民達に貴方という無能が我々の仲間になったことを伝えることにあります」

    「ん、領民?」

    カーミラの説明の中に、タクマの知らない情報が含まれている。そのことに首を傾げると、メアが補足説明を加えてくれた。

    「ウィッカ邸のある丘を下ると、亜人族が住んでいる村があるんだ。デミッカ村って言うんだけど、そこに住んでいる村人達のことだよ」

    「近くに村があるのか。てことは、アリスは魔王候補であると同時にここら一帯の領主様でもあるってことだな」

    「そういうこと!」

    「へぇ……、領主様ねぇ」

    魔王らしさがないのと同様に、アリスには領主らしさも感じられない。地方の領主程度ならば、適性がない者でもやってやれないことは無いのだろうが。

    「デミッカ村の村民達は、我が陣営において唯一無二の絶対的な支持者です。彼等との関係を良好に保つことは、即ち陣営の安定性に直結します」

    「なるほど。良好な関係に『報・連・相』は不可欠だからな」

    「ホウレン草? これしきの説明で脳が壊れてしまいましたか」

    「そのホウレン草じゃない! 報告・連絡・相談! 俺が元々住んでた国の常識だよ!」

    その元々住んでいた国がこの世界には存在しないので、カーミラがそう思うのも無理はないのだが。

    「では早速、村へ報告に参ります」

    「うん、お願い」

    いつの間にか朝食のレバニラを全て平らげていたカーミラは、歓迎会開催のお知らせを届けるべく村へと向かうことをアリスに告げる。アリスの承諾を貰うと、直ぐさま食堂を後にしていった。何とも仕事が早い。毒舌に見合った有能さを兼ね備えているようだ。
  17. 17 : : 2017/12/24(日) 17:50:09

    「歓迎会かぁ。いつ振りだろう……。美味しいごちそうが食べ放題だし、今日は良い日だ! タッくんに感謝だね!」

    カーミラが居なくなったのを見計らったかのようなタイミングで、メアが歓迎会に当たっての本音を垂れ流す。この場にカーミラが居れば、「豚」を始めとする毒舌ワードの弾丸がメアに浴びせられていたに違いない。
    だが、私的感情百パーセントのメアの本音に、突っ込みを入れる者はいる。

    「メアさん。歓迎会はごちそうを召し上がるための場ではありませんですよ」

    それは真面目なルカだ。紛れもなく正論であり、必要以上の毒もない。最も無難かつ適した指摘と言えよう。しかし、ルカの指摘にも問題はある。ここでのそれは言葉遣いがおかしいということではなく――。

    「そんなこと言って~。ルカりんだって、カノちゃんに会うの楽しみにしてるでしょ!」

    「そ、そんなことはありませんです!」

    「じゃあどうしてお顔が真っ赤になってるのかなぁ?」

    問題とは、ルカがメアに勝つことは絶対にないということだ。
    それにしても、顔が赤くなっているルカが可愛らしい。

    「カノちゃんって誰だ?」

    「村のめっちゃ可愛い女の子! そして、ルカりんの恋のお相手さん!」

    「メアさん!」

    タクマの質問を受けてメアが勝手に秘密を暴露したことに対し、ルカはお冠の様子だ。そんな思春期入りたての少年の年相応の姿が、とても微笑ましい。

    「恋ねぇ。可愛い顔して、ませてるんだな」

    「ルカりんもちゃんと男の子なんだなあって、私は感慨深くなる訳なんですよ」

    「か、からかわないでくださいですよ」

    最早定番化しつつあるタクマとメアの可愛い扱いに、ルカは頬を膨らませて反発する。その姿もまた愛らしくて、自然と背中を押してあげたくなる。だから、

    「俺は応援するぜ、ルカりん! 人生の先輩として、何でも相談してくれ!」

    タクマは堂々と胸を張って、ルカの恋への助力を誓った。

    ――彼女いたことないけどね。

    「ふふっ」

    心の中で突っ込みを入れたところで、アリスがくすりと笑った。心の声が聞き取られたのかとタクマは一瞬ひやりとするが、今までそんな能力を持っている様子はなかったのでその仮説は却下。そもそも彼女の笑みは、恋愛経験も無いのに威張っているタクマを馬鹿にしている――というような嘲笑の類とはまるで違う。
    穏やかで、優しい笑みだ。

    「それは何に対しての笑いかな? 魔王候補の魔法少女さん」

    「ごめんなさい。嬉しくってつい笑っちゃった」

    「嬉しくて?」

    「うん」

    ルカの恋を応援する者が増えたことが、だろうか。
    そんな解答しか考え付かなかった自分が、アリスの回答を聞いてすぐに恥ずかしくなる。

    「――タクマが皆とすぐに仲良しになってくれたことが、嬉しかったの」

    無垢な笑顔でそう答えるアリスを見て、タクマは胸がこそばゆくなるのを感じた。

    そして、この世界ではアリスの為に生きようと、改めて決意を固めた。
  18. 18 : : 2017/12/25(月) 16:40:50



    ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



    デミッカ村へ歓迎会開催の旨を知らせに行ったカーミラが戻って来たのは、彼女が出発してから約三十分後のことだった。
    その時他のウィッカ邸の面々は未だに食堂に留まっていたので、彼女はアリス以外の面々に一言毒を吐いた後、直ちに歓迎会の日時について報告。その報告によると、歓迎会は早速今日の夕方に行われるとのことだった。



    そして現在、タクマはアリスとメアの二人と共にウィッカ邸の正門前にいた。

    「和なところだな。もしも空が青かったらだけど」

    小高い丘の上に構えられているウィッカ邸。その正門前からは、周辺地域の景色が一望できる。
    その景色を一言で言い表すのならば、田舎の農村部というのが最適だろう。視界の大部分を森林が占領し、その隙間に一階建ての平たい住居が集まっている地帯と、田畑地帯とが一つずつ点在している。住居が集まっているところが、恐らくはデミッカ村なのだろう。
    緑が多く、現代人に癒しをもたらす眺望なのだが、そこに水を差すのが紫色の空だ。自然の緑というのは青空の下で初めて映えるのであって、淀んだ空の下ではその緑も濁ったものになってしまう。
    恐らく魔界全土を覆っていると思しき紫色の空。これを目にする度に、自分が魔界にいることを思い知らされることになるのだ。

    「その言い方だと、実際は和じゃないみたいに聞こえるんだけど。自分の領地を悪く思われるのは、領主としては余り気持ちよくはないわ」

    タクマの一言多い感想に、この地の主であるアリスが物申す。
    領地を悪く言うつもりも、アリスを怒らせるつもりもないタクマは、慌てて誤解を解くべく弁明を述べる。

    「ごめん、そんなつもりはないんだ。本当に良いところだと思うぜ。ただ、どうしても紫色の空が目に付いてよ」

    「確かに、人間界の綺麗な青空の下で過ごしてきたタクマにとっては、この淀んだ紫の空はなかなか慣れないものよね。早とちりしてごめんなさい」

    「いやいや、俺も一言余計だったよ」

    アリスの怒りを買わずに済んだことに、タクマは胸をなで下ろす。それと同時にタクマは、自分の述べた感想に対する彼女の反応に意外性を感じていた。

    アリスは、エゴというものを欠片も見せない少女だ。利益も無いのにタクマを救い、微力でも恩返しをしようとすれば、タクマを危険な目に遭わせまいとその要求を拒む。利他主義とすら取れる程の行動を、ここまでタクマに見せ続けてきた。
    しかしアリスは今回、領地を貶されたことに対しあからさまに不快感を示した。この反応には、自分の所有物を大事にしたいという一種のエゴ的感情が垣間見える。それは決して悪い感情ではなく、清廉潔白なアリスのイメージが崩れるようなこともないのだが、タクマにとっては少し意外に感じられたのだ。

    そんな最初は意外に思えたこの反応。ほんの少し考え方を変えるだけで、腑に落ちるものになることにタクマは気付く。

    「――好きなんだな。この地と村の人達が」

    「ええ」

    アリスはただ、愛する郷土と隣人達を大事に思っているだけだ。
  19. 19 : : 2017/12/25(月) 16:41:43

    「さてさて、丘の上からの景色も存分に楽しめたことだし、そろそろ出発しましょ!」

    「そうね。早めに着いておいて、悪いことはないわ」

    ウィッカ邸前からの眺望を一通り楽しめたところで、メアがデミッカ村への出発をアリスへと進言する。タクマ達三人が正門前に集っているのは、歓迎会が行われるデミッカ村へ向かう為だった。因みに、ここにいないカーミラとルカは先に村へ行っており、歓迎会の準備をしている村人達を手伝っているらしい。
    歓迎会までまだ時間に余裕はあったが、アリスはメアの進言を聞き入れた。

    「では、デミッカ村へとしゅっぱーつ!」

    遠足の小学生のようにはしゃぐメアの先導の下、タクマ達はデミッカ村へと向かって歩き出した。



    ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



    「おっ、見えてきたな」

    ウィッカ邸と村とを繋ぐ、土を平坦にならしただけの道を歩いて約十分が経過した辺りで、タクマは数件の民家が建ち並んでいるのを視界の先に捉えた。先程、丘の上から確認したデミッカ村だ。

    「山奥の小さな村って表現するのがぴったりな雰囲気だな。落ち着いててリラックスできそうだ」

    「前半部分には同意だけど、後半部分には簡単には頷けないかも」

    タクマの零したデミッカ村への感想に、メアが賛成と反対の入り混じった意見を返す。

    「ああ見えて、意外と人口は多いのか?」

    「いや、そういうわけじゃないよ。人は少ないし、夜とかはやっぱり静かなんだけど……」

    逆接の言葉で一拍置き、その続きをメアが述べようとした時だ。
    道の脇に生い茂る木々の方から、ガサガサという音が聞こえてきた。そしてそれは徐々に、近付いて来る。

    「だ、誰だ!?」

    先刻まで、幾度となく襲撃を受ける危険性を説かれてきたタクマは、その物音から即座に敵襲を連想。身構えながら、音の主へ向かって声を上げる。すると、

    「あれ、タクマさん?」

    返ってきた声は、聞き覚えのあるもの――ルカの声であった。ルカは木々の中から飛び出し、タクマ達の前に姿を現す。

    「ルカりん!? お前何して――」

    「逃がさねぇぜ!」

    ルカのさらに後方から、新たな声が聞こえる。それと共に、ルカとは別にもう一つ足音が近付いて来るのも聞こえてくる。ルカのものより音は大きく、接近速度は速い。

    「ごめんです! タクマさん!」

    「へ?」

    突然のルカからの謝罪。タクマはその意味を解さぬまま、彼に引かれて彼の前方へと立たされる。まるで、盾のように。

    「え、盾?」

    次の瞬間、木々の中から人影が飛び出し――、

    「ごふぁ!」
  20. 20 : : 2017/12/25(月) 16:42:43

    勢いのままにタクマの腹へと突っ込んで来た。
    突進の威力は生半可なものではなく、タクマは苦悶の声を上げて尻餅をつく。

    「やべっ、知らない人に突っ込んじまった。大丈夫か?」

    「大丈夫じゃない! 半端なく痛かったからな!」

    突進の犯人に声を掛けられたタクマは、声を大にして自分の受けた被害の大きさを主張する。
    実際、突進を食らった際の激痛は人生で五本の指に入る程の痛みであった。不動の一位である、昨晩槍で刺された時の痛みとは程遠いが、可能なら慰謝料を請求したいぐらいだ。しかし、そんなことはできない。
    ここが異世界であるというのもその理由の一つだ。だが、今言いたいのはそんなわかりきったことではなく、慰謝料請求なんてことをしたら「大人気ない」ということだ。
    つまり、犯人の正体は――子供。それもやはりただの子供ではなく、左右の側頭部から一本ずつ、牛を連想させる形の角が生えている。尤も、その角さえ除けば体格の良い元気そうな10歳前後の普通の少年だ。

    「鬼ごっこ中かな、ジャンくん」

    「アリス様!」

    名前を呼ばれた少年――ジャンは、領主の姿に気付き背筋をピンと伸ばす。領民にとって、アリスはちゃんと威厳ある存在として認識されているようだ。

    アリスの発言から、突進を食らうことになった状況も理解できた。ルカとジャンが鬼ごっこをしていて、鬼のジャンの猛突進に追い付かれそうになっていたルカがタクマを盾にしたというわけだ。
    いつの間にか、ルカの姿は見えなくなってしまっている。後で泣かせない程度に説教せねば。

    「元気一杯遊ぶのは良いことだけど、他の人に迷惑を掛けるのはダメよ。これからは周りにも気を付けて」

    「はい……。分かりました」

    「うん、分かれば良し。それじゃあ、今しなければいけないことも分かるよね?」

    「えっと……、その……、兄ちゃん、ごめんなさい」

    アリスに諭され、ジャンはタクマに謝罪の言葉を述べる。
    素直にアリスの言葉に従う幼い少年の姿も、優しくジャンを諭した領主様の姿も、タクマには微笑ましく思われた。

    「今度からは気を付けろよ。ぶつかったのがヤンキーだったら、今頃お前は酷い目に遭っていただろうからな」

    「ヤンキー……? 良く分かんねぇけど、気を付ける。アリス様、もう鬼ごっこに戻っても良いですか?」

    「うん。怪我にも気を付けてね」

    「はーい!」

    アリスの許しを得た後、ジャンは手を振りながら再び森の中へと走って行った。

    「――メアの言っていたことの意味が分かったよ」

    「でしょ。ジャン以外にも、元気な子が一杯いるからね」

    「落ち着いてるっていうのは撤回させてもらう。小さいけど活発な村だ」

    現代社会の村と言えば、少子高齢化に悩まされているイメージが付き纏う。デミッカ村にもそのような先入観を抱いていただけに、子供達がはしゃぎ回る姿はタクマの目には鮮烈に映っていた。

    「こっちはそんな元気一杯な村を紹介したくてウズウズしてるんだよー。だから早いところ、村までの残り僅かな道を歩き切っちゃおう!」

    そう言って、メアは地面に尻を付けたままのタクマに手を差し伸べる。タクマは彼女の手を取り、補助を受けながら立ち上がった。

    「そうだな。それじゃあ、さっさと行くとするか。俺も、この村を紹介されたくてウズウズしてきたからな」

    心を躍らせて、タクマは村までの残り数十歩を歩き出す。アリスが、メアが、皆が、愛して止まない、小さくて元気一杯な村に辿り着く為に。



    デミッカ村には、村と森とを隔てる物はない。どこまでが森で、どこからが村なのか、明確な境界は誰にも分からない。
    だからタクマは、自分の勝手な基準で、「到着!」と声を上げた。その様子にアリスは目を細めながら、彼の正面へと躍り出て両手を広げる。

    「ようこそ、デミッカ村へ!」

    領主の歓迎の言葉によって、タクマは村へと迎え入れられた。
  21. 21 : : 2017/12/26(火) 12:44:09

    「――ようこそおいでくださいました。貴方が新たにアリス様の従者様になられたアマミ・タクマ様ですね」

    再び歓迎の言葉を貰ったのは、アリスの歓迎の言葉から間もなくのことであった。
    今度の歓迎主は、美少女とは打って変わって、黒髭を蓄えた五十代の男性だ。特徴的なのは禿げ上がった頭髪――もそうだが、タクマのへそ程の高さまでしかない身長。その姿から、タクマはある種族を連想する。

    「ドワーフ?」

    「はい、その通りでございます。自己紹介が遅れてしまいました。私、デミッカ村の村長を務めさせて頂いております、ボンツ・グリムと申します。以後、よろしくお願いします」

    「こちらこそよろしくお願いします」

    年長者からの丁重な挨拶を受け、タクマは敬語を以て応対する。一見すると違和感のない光景だが、ここにいる人物の立場関係を踏まえるとなかなかに矛盾した行為だ。

    「何でボンツ爺には敬語なの?」

    「何でって、年上の人に敬語を使うのは至って当然のことだと思うが……」

    メアの質問の答えとして一般論を述べるタクマ。しかし彼は、回答を終えたところで自身の言動の矛盾に気が付いた。

    「立場的には、ボンツさんよりアリスの方が上なのか。てか今考えたら俺、主に対してずっとタメ口の生意気な従者ってことになるよな! 優秀なわけでもないのに!」

    「別に、気にしなくて良いわよ。今更敬語に変えられても違和感があるし」

    そのままタメ口で良いというアリスの言葉に、タクマは内心安堵する。どうやら彼女に不快な思いを与えてはいないようだ。とは言え、もし本当に言葉遣いを改める必要があったのならばとっくにカーミラからきつい指摘を受けていたに違いない。

    「ところで皆様、開会の時間までまだ時間がございますが、いかがされますか? もう会場に向かわれるのでしたら、私が案内致しますが」

    「そうね……。タクマに村を紹介したいし、村の中を散歩していることにするわ」

    「承知しました。本当は私も同行して差し上げたいところですが、生憎歓迎会準備の仕事がまだ残っていますので、失礼させて頂きます」

    「出迎えありがとう、ボンツ。お仕事頑張って」

    「はい。ありがとうございます」

    アリスとこの後についてのやり取りを終えたボンツは、最後に一礼して去って行った。

    「良い人そうな村長さんだな」

    「良い人“そう”じゃなくて、良い人よ」

    タクマのボンツへの評価を訂正しながらも、アリスはご機嫌な様子だ。大好きな村の大好きな住民が褒められたことが、嬉しかったのだろう。

    「それじゃあタクマ、村の中を案内するから、私に着いてきて」
  22. 22 : : 2017/12/26(火) 12:45:13



    ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



    アリスとメアによるデミッカ村の案内も中盤に差し掛かって来たが、タクマの目を引く建造物や場所は一つも現れていなかった。
    二人が案内するものといえば、誰かの家、井戸、田んぼといった代わり映えのないものばかり。こんな辺境の村に、観光名所的なものを期待する方が愚かというものだ。だからタクマはそのことに少しも幻滅していないし、寧ろ楽しんでいると言っても良かった。
    美少女二人が輝かしい笑顔を見せながら、共に歩いてくれている。男としてはそれだけで満足だ。それに井戸の位置等、案内自体も今後この地に住む上で有益であることもあり、タクマはこの何も無い農村の散歩を満喫していた。

    「――おっ、見えてきた。タッくん、あれ見て!」

    ある方向を指差したメアは、活き活きとした声でタクマの視線を指先へと誘導する。指先が指し示しているのは、一見すると平凡な木造住宅だ。

    「さて、あの家は誰の家でしょうか? 勿論、タッくんが名前を知っている人の誰かだよ」

    唐突なメアからのクイズも、今散歩で三度目だ。タクマはその度に真剣に考え、尽く不正解している。知識が無いので当たり前ではあるが、そろそろ一つぐらい正解したいところだ。

    現在タクマが知り得ているデミッカ村の住人は、牛混じりの少年ジャン、村長のボンツ、通りがかった婦人のエーラ、鬼ごっこ中の小さな少年ケミィの四人。この平凡な住宅が村長ボンツのものである可能性は薄いが、他の三人の誰の家なのかは全く想像が付かない。
    そこでタクマは、このクイズの正解を別角度から推測することを試みる。別角度――それは、出題者の意図。今回のクイズを出題する時のメアのテンションは、これまでの二問よりも高かったように思われる。そして、いかにも悪巧みをしていそうなにやけ顔も見せている。完全に、何かある。不正解時、あっと言わせる何かが。

    ――成る程。それなら答えは三択。いや……一択だ。

    「あの家は……ルカの家だ!」

    「なん……だと……。正解よ」

    「よしっ!」

    三問目にして初めての正解に、タクマは思い切りガッツポーズをする。一方のメアは、タクマが正解したことに驚愕した様子だ。

    「何で分かっちゃうの!? 絶対村で会った人の誰かの名前を出すと思ったのに!」

    「そう思ってるだろうと予測できたからな。お前、悪巧みとか絶対できない質だろ。顔に裏があるってハッキリ書かれてたぞ。だから、裏をかいてウィッカ邸のメンツに絞ってみた」

    「でもでも、何でルカって分かったの!? あの自信満々な答え様、三択をダメもとで言い当てたようには思えない!」

    「ルカだと考えた理由は簡単……、お前がクイズに出しそうな奴って言ったら、ルカ一択なんだよ!」

    朝のやり取りだけでも分かる。メアはルカのことが大好きだ――、玩具的な意味で。

    渾身のクイズを解かれたメアは、地団駄踏んで悔しさを露わにする。こんな他愛も無いクイズ一つでこの態度、彼女の精神年齢はルカと同程度ではないのだろうか。
    そんなことを思っていると、先程クイズの題材にされたルカの家の扉が開かれた。家の中から出て来たのは――、

    「――屋敷の中ならいざ知らず、こんな道のど真ん中で幼稚を通り越して無知丸出しの素振り。同じアリス様の従者として恥ずかしくて目も当てられません。恥を知りなさい」
  23. 23 : : 2017/12/26(火) 12:45:39

    「えっ、ミラちゃん!?」

    突然メアを襲った凄絶なる毒舌。それだけで、家の中から出て来た人物が誰なのかは丸わかりだ。

    「恥知らずと無能をここまで連れて来てくださりありがとうございます、アリス様」

    「お礼を言われることじゃないわ。寧ろ、楽しませてもらっているもの。カーミラの方こそ、歓迎会の準備をありがとうね」

    従者の礼儀として、カーミラは主人であるアリスに挨拶をする。アリスもまた、歓迎会準備に勤しむカーミラに労いの言葉を贈った。

    一方のタクマは、ルカの家である筈の住宅からカーミラが現れたことに驚いている様子だ。

    「何でカーミラがルカりんの家にいるんだよ?」

    「自慢の洞察力を使って自分で考えてみたらどうでしょうか? それしか能が無いんですから」

    「なっ!? お前はいちいち……」

    質問を毒で返され、タクマには苛立ちが募る。元々他人の評価が気になるだけに、カーミラの毒舌はそれが彼女の性分だと分かっていても、多少は応えるものがあるのだ。いずれさらりと受け流せるようにならなければ、今後のウィッカ邸での生活はストレス性胃潰瘍待ったなしとなるだろう。耐性を付けねば。
    そんなことを思い気持ちを切り替えたタクマは、今度は素直に思考を始める。煽られた以上は、正解を言い当てて一泡吹かせたいと思ったからだ。

    「……お前は俺の歓迎会の準備をしている筈だ。アリスからの命令には絶対な以上、それは間違いない。てことは、カーミラがここにいるのは準備絡み。大方、歓迎会に必要な物がルカりんの家にあって、それを取りに来たんだろう」

    「正解です。少し簡単過ぎたようですね。しかしここは、流石と言っておきましょう。その調子で、洞察力を鍛えていってください」

    「お、おう……」

    カーミラの問にも正解を言い当てたタクマだが、彼女からの素直な賛辞に逆に呆気に取られ、ついたどたどしい返事をしてしまう。これは一体何事か、そう思っていると――、

    「重ねて言いますが、それしか能が無いんですからね」

    やっぱり毒が飛んできた。何故わざわざ一言余計に付け加えるのかと溜め息を吐くが、彼女の言動がいつも通りであったことへの安堵の溜め息でもあったことを自覚し、彼女の毒舌がいつの間にか無くてはならないものと化していることにタクマは恐怖する。

    ――私の見立ては間違っていなかったようですね。

    カーミラのその小さな呟きは、タクマの耳には届かなかった。

    「――カーミラさーん! 立ち話も良いですが、歓迎会まで時間が……アリス様!?」

    タクマが溜め息を吐いた辺りで、ルカの家の中からカーミラを呼ぶ声が聞こえてきた。続いて声の主が、カーミラが出て来た時と同じ扉から姿を現すと、領主の存在に驚きの声を上げる。
    その声の主の姿だが、藍色の髪をした獣耳の青年だ。そしてその特徴は、ある人物を連想させる。

    「こんなところにいらっしゃるとは。アリス様、メアさん、いつも不肖の弟がお世話になっております」

    「お世話になっているのはこっちの方よ、ネス。ルカは真面目に働いてくれていて、とても助かっているわ」

    「言葉遣いが滅茶苦茶なのが玉に瑕だけどね」

    会話内容から分かるように、先の連想は正しく、ネスという名の青年はルカの兄である。
    アリスの従者・ルカの兄として、弟の主人に挨拶をするネス。その挨拶を受けて、アリスはルカを褒め称える。そこにメアが水を差すが、ネスの表情は明るい。軽口を叩けるぐらいには、親交が深いのだろう。
  24. 24 : : 2017/12/26(火) 12:45:58

    「アリス様とメアさんと一緒にいらっしゃるということは、貴方がタクマさんですね。カーミラさんから、貴方のことはお伺いしておりますよ」

    「カーミラからって事は、中身はお察しだな」

    「ええ、まあ……。ですが、彼女との付き合いも長いですからね。毒の中に隠れた称賛もしっかりと読み取っていますよ」

    「マジか。対カーミラスキルを極めるとそんな事もできるんだな」

    「ネスの虚言を信じないでください。私は一切褒めていません」

    「何故折角のフォローを無為にしようとする?」

    どこまでも毒舌を忘れない、そんなカーミラにタクマは最早呆れ顔だ。だが、ネスの言う、カーミラが非常にわかりにくい言い方で僅かながらにタクマのことを褒める言葉も発してくれたという説は、不思議と真実であるように思われた。

    「さて、本当ならもっとお話していたいところですが、先程言ったように歓迎会まで時間がありません。私とカーミラさんは一度失礼させていただき――」

    「いいえ、もう急ぐ必要はありません」

    歓迎会準備に追われているネスは、名残惜しそうにしながらも会話を切り準備に戻ろうとする。だが、それにカーミラが待ったを掛ける。

    「人手が増えましたから」

    そうネスに告げたカーミラの言葉には、悪い予感しか感じられない。その証拠に、彼女の視線はタクマとメアの二人に向けられており――、

    「ここで出会えたのも何かの縁というものですよ。貴方達二人にも手伝ってもらいます」

    「やっぱりか! 俺一応歓迎される側の人間だぞ!」

    「それ以前にアリス様の従者です。しかも、一番下っ端の」

    「うぐっ……」

    ああ言えばこう言う。そんな言葉がぴったりのカーミラが決めたことだ。何を言ってもその決定を変えることはできないだろう。
    タクマは反論を諦め、肩を落としながらも分かったと承諾の意思を示す。メアもまた、それに続いた。

    「さっすがタクマ。カーミラとも仲良しになったのね」

    このやり取りの一部始終を静観していたアリスの感想であるのだが、この時ばかりはタクマも、彼女の緩すぎる思考回路が心配になった。
  25. 25 : : 2017/12/26(火) 12:50:50



    ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



    「――てか、人手が欲しいこの状況で、ルカりんは何やってんだよ?」

    カーミラとネスに続いてルカの家へと上がったタクマは、降って湧いてきた疑問をそのまま口にする。

    「最近は皆と遊べてなかったから、貴重な機会についサボりたくなっちゃったんでしょ? ルカりんは真面目だけど、心は年相応だから」

    「まあ、本当なら遊び盛りの年頃だしな……。でも、それを止めて働かせるのがカーミラの仕事だろうが」

    メアの回答に納得するタクマだが、それはそれで別の問題が発生する。ルカと一緒に歓迎会の準備の為に村へと先んじて向かったカーミラが、彼を自由にさせてしまっているというものだ。
    そんなタクマの言葉を受けたカーミラは、やや咎める口調であったことを意にも介さず、さらりと答えた。

    「役立たずは何人いても意味がありませんから、貴方は精々お邪魔にならないようその辺りを勝手にブラブラしていなさいと、ルカには指示しました」

    相変わらず容赦の無い毒舌だ。真っ先に抱いた感想はこれだが、段々違和感が湧き上がってきた。カーミラやメアに比べれば見習いのルカは確かに微力かも知れないが、村人達よりは遙かに動ける人員である筈だ。役立たず呼ばわりはいつもの毒としても、そんな戦力を遊ばせておくようなことをカーミラはしそうにないのだが……。

    「そこが、カーミラさんなりの優しさなんですよ。――意味、分かります?」

    「それってどういう……ああ、成る程。分かった。分かったが……すげぇ分かりづらいな」

    今度はカーミラに聞こえないよう、小声で彼女をフォローする発言をするネス。それを受けて、タクマは漸く彼女の真意を理解する。強烈な毒の裏には、ルカを遊びに行かせようという計らいがあったのだ。しかし、表の毒がキツすぎてその裏にはなかなか気付けない。ルカも気付いたかは分からない。が、結果はカーミラの狙い通りになった。

    「もっと素直になれば良いのにって、度々思いますよ。でも、そこが彼女の良いところでもあるんだって、最近思うようになりました」

    目を細めてそう語る彼の顔は、僅かに紅潮している。

    「まあ、大変そうだが頑張れよ。応援はする」

    「はい?」

    顔は申し分ないし、料理は上手い、性格も本当は良いのだろう。だが、如何せん口が悪すぎる。それに、彼女が誰かに恋をするところを想像できない。
    当然成就するまでには茨の道が待っているだろうし、首尾良く成就したとしても、彼は一生涯彼女に振り回されることになるに違いない。
    そんなことを思い、タクマはネスの肩に手を置くと共に応援の言葉を贈った。ネスはタクマが何故そのようなことを言ったのか理解できなかったようだ。

    ――しかし、兄弟両方の恋路を応援することになろうとは……。

  26. 26 : : 2017/12/26(火) 12:51:09

    「――貴方達には、ここにある食材を運んでもらうわ」

    そんな会話をしている間に、カーミラとネスがこの家に取りに来た物が保管されてある部屋に到着した。その目的の物とは、村人全員分の大量の食料品であった。

    「すごい量だな。でも何でまた、ルカりんの家にこんなに大量の食料が? 一家族が消費する量じゃないぞ」

    「それは、ネスの村での役職が関係しているわ」

    タクマの疑問に答えたのは、先程までタクマ達のやり取りを静観する立場であったアリスだ。

    「ネスには、デミッカ村の自警団の団長をしてもらっているの。優しそうな見た目で、実際とても優しいのだけれど、ネスの腕っ節は村一番よ」

    「お褒めに預かり光栄です。尤も、アリス様とメア様には劣りますけどね」

    そう言って謙遜するネスを改めて見ると、ぱっと見には長身痩躯である彼だがその実態は筋肉質な身体であることに気付かされる。いわゆる細マッチョというやつだ。
    しかし、自警団の団長であることと大量の食料を保有していることに何の関係が……。

    「あら、今回はすぐにお聞きしないんですね?」

    「それをしたら絶対お前に毒を吐かれると思ったからだよ」

    カーミラの茶々に返答しながら、タクマはあくまで自分で考えて答えを得ようとする。
    洞察力しか能が無い――、カーミラの毒舌は悔しいことに的を射ている。そしてその洞察力においても、凡人の域を出る領域には無い。だがこれから先、アリスに待ち構えているだろう人外の戦いにおいて彼女の役に立つには、何か一つでも良いから人外に通用する力を持たなければ。洞察力を鍛えようとする彼の行いには、そんな考えも含まれていた。

    その様子を、カーミラは真剣な眼差しで見つめる。当のタクマはその視線に全く気付かないが、間もなく答えに行き着いた。

    「自警団と言ったら、やることは防衛だ。それに関わるって事は……、食料を盗賊とかから護る為に、村の食料全部を村で一番強いネスの家に置いてる――ていう感じか?」

    「……すごいわ、タクマ。殆ど正解よ」

    「ふぅ。これでカーミラに毒を吐かれなくて済んだよ」

    「村の全食料がここにあるものだけである訳がないでしょう? 全部ではなく四分の一です。常識でものを考えてください。そんなこともお分かりにならないとは、貴方には失望しましたよ」

    「結局毒吐かれた! てか厳しすぎるだろ!」

    九十点の解答の筈だが、十点の減点をカーミラは厳しく追及してくる。そんな彼女に、タクマは辟易するしかない。

    「ミラちゃん! タッくん! 無駄話をしている暇があったら、さっさと運んで!」

    すると、会話してばかりで一向に作業に取り組まないタクマとカーミラを叱責する声が飛んできた。一度に持てる可能な限りの食材を抱えながら二人に檄を飛ばしたメアは、怒り顔と言うよりは威張り顔をしている。
    いつも言われ放題であった立場が、一瞬とは言え逆転したことを勝ち誇っているようである。だが、こんなことで勝ち誇っているようではカーミラに勝つこと等できるわけがなく――、

    「メアがお持ちになっているその食材は、今日は必要ありませんよ。説明もお聞きにならずに一人先走ってしまわれるようなせっかちな方は、早死にすること間違いなしです。と言うか明日にでもお亡くなりになるでしょう」

    「ぐはっ!」

    自身のミスから一瞬で形成を逆転され、結局強烈な毒を食らうことになってしまったメアは声を上げて崩れ落ちた。それにしても、いつもよりも更に毒がキツかった気がする。仮初めとは言え勝ち誇られたことに、少々ムキになったのかも知れない。

    「――さて、そろそろ運搬に取り掛かることに致しましょう」

    言葉の暴力に屈し跪くメアを歯牙にも掛けず、いつも通りの平然とした口調でカーミラは作業開始を一同に促した。
  27. 27 : : 2017/12/26(火) 22:49:27



    ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



    「――あ、アリス様!」

    「ようこそおいでくださいました!」

    「お早いご到着ですね。開会までまだ掛かりますのでそちらにお掛けになっていらしてください」

    両手で食料を抱えながら歓迎会の会場である広場に着くと、出迎えたのは領主アリスを歓迎する言葉達だ。彼女への尊敬の念は、どの村人にも備わっているようだ。
    そして遅れて、今日の主役であるタクマにも歓迎の言葉が掛けられる。

    「貴方がタクマさんですね。これからよろしくお願いします」

    「お荷物お持ち致します。貴方もアリス様と一緒にお掛けになっていらしてください」

    カーミラからの冷遇の直後だけに、村人達からの厚遇に恥ずかしさを覚えながらも、胸が熱くなるのを感じる。

    「社交辞令に決まっているでしょう。それより、運ばなければいけない食料はまだまだあります。怠惰に座っている時間はございませんよ」

    直後、温まった心に冷水を掛けるような発言がカーミラから飛んでくる。彼女は一日に毒を吐けば気が済むのだろうか。比喩ではなく、息を吐くように毒を吐いている気がする。
    だが、その毒は実際には全て正論であり、タクマは素直に彼女の言うことに従うしかない。

    「アリス様はこちらでお休みになっていてください」

    「ありがとう。お仕事頑張ってね……タクマも」

    「おう」

    アリスから激励の言葉を貰い、タクマは再びルカとネスの家へと向かうべく広場を背に歩き出す。正直、歓迎される立場である筈なのにこうして下働きをさせられていることには未だ納得していない。だが、アリスの声援を受けた以上はしっかりと仕事をやり切るつもりだ。

    しかし意外だったのは、アリスがすんなり村人達やカーミラに言われた通りに休憩を始めたことだ。度を超えたお人好しのアリスの性格を考えると、自分だけが休んでいるような事態を嫌がりそうなものだが……。

    「自分の領地にいる時は、上としての自覚もしっかり持ってるってことか」

    下働きのような仕事を進んでやっているようでは、好感を得られることはあっても威厳は生まれない。それに、上司が余りに何でもかんでもやってしまうと、組織として上手く回らなくなってしまうことがままある。その辺りのことを、アリスはちゃんと考えているのだろう。

    「さっきは魔王らしくないなんて言ったけど、思ったより王様してるんだな」

    「おっ、タッくんてばアリス様の魅力をまた一つ発見した感じ?」

    タクマの呟きに、隣を歩くメアが反応を示す。

    「確かにアリス様はあんまり上に立つのに向いてない性分してるけど、ちゃんとそれを自覚して改善しようと頑張ってるのよ」

    「ああ、それが良く分かったよ。要は、今までの印象通り真面目って事なんだろうけど」

    「そうだね。アリス様が真面目だから、向いてなくても魔王になる為の努力を怠らないし、その努力を実らせて王様としての能力も少しずつ獲得しているし、領民達もアリス様を尊敬している」

    「そして、従者に愛されている」

    「――分かってるじゃん」

    そう言って、メアは輝かしい笑顔をタクマに向けながら親指を立てる。その笑顔の眩しさは、アリスに惚れている筈のタクマの心を一瞬だけ我が物にしてしまう程のものであった。
    その移り気を自覚したタクマは、平常心を取り戻そうと咳払いを一つ入れる。

    ――本当に、慕われているんだな。メア達にも、村人達にも。
  28. 28 : : 2017/12/26(火) 22:51:05

    「……そう言えば、この辺って亜人しか住んでないのか? ウエステリアなんかだと、色んな種類の住民が住んでたけど」

    屋敷の面々、そして村で出会った人達の顔を思い返してタクマは気付いた。ウィッカ邸のベッドで目覚めてからこれまで、一見すると人にしか見えない――亜人の姿しか見ていないということに。幾多の異形に遭遇した昨日が嘘のように。

    「そうだよ。この村には亜人族しかいない。他の種族の住民がいると、都合の悪いこととかもあるしね……」

    「まぁ、昨晩のトロルみたいなのと一緒に暮らしていける気はしないな。しかしこうして亜人族ばかりの村にいると、自分が魔界にいるってことをすっかり忘れちまいそうになるよ。と言っても、あの暗い空見た瞬間思い出すんだけど」

    「――それって本気で言ってる?」

    「え――?」

    突然、メアの表情が強張った。先程の笑顔からの豹変に、タクマは何か気に障ることを言ったのではないかと思い自分の言葉を反芻する。だがしかし、心当たりのある発言が思い浮かばない。

    「魔界にいることを忘れそうになるってことよ。それ、本気で言ってる?」

    「あ、ああ」

    「まるで人間が暮らしてる村みたいだって、そう思ってる?」

    「ああ、思ってる……。何て言うか……、これぞ、ファンタジー世界の人里……って感じがする」

    「――うん。私も……そう思う!」

    続け様の問答に、正直に回答したタクマ。メアの機嫌を更に損ねてしまうのではないかという懸念の下の回答となったが、自分の回答はこの場において正しいものであったようだ。
    同意の言葉と共に、再び笑顔を見せてくれたことがその証拠だ。
  29. 29 : : 2017/12/26(火) 22:51:24



    ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



    そして一行は、再びルカの家へと辿り着く。タクマ達が一回目の運搬を終えた時点で、既に必要な食料の半分以上を運んでいた為、一人一人が持つ量は前回よりも少なくて済んだ。
    食料を運び終えると、残る準備は料理だけになる。タクマはお役御免となり、漸く腰を下ろすことを許された。カーミラとしてはなるべくこき使いたかったようだが、タクマに料理の経験が無いことを知ると、彼女は舌打ちをして彼に休憩しているよう命じた。因みに、メアも料理方面のスキルはゼロのようで、同じくお役御免となった。

    それから三十分程が経過。村人達のほとんどは広場に集い終えており、賑やかな様相を見せている。その数は四十人程だ。
    村人達は皆、領主の新たな従者に興味津々なようで、代わる代わるタクマに自己紹介の挨拶をしに来てくれる。その態度はどれも敬意に満ちたものであった。アリスの威光の賜物だ。

    「――急げ急げ!」

    大方の村人との挨拶を済ませた辺りで、広場の外から慌てた数名の声が聞こえてきた。声質から言って、その声は子供のものである。とすれば、声の主は自ずと決まって来よう。

    「はぁ、はぁ……間に合った……」

    「重役出勤とは、随分と偉くなったもんじゃねぇか。ルカりん」

    声の主である、鬼ごっこで遊んでいた村の少年達の一人――ルカへとタクマが声を掛ける。
    広場までは全力疾走して来た模様で、ルカを始め少年達は一様に肩で息をしている。

    「ルカりんがサボってくれたお陰で、俺は歓迎される側なのに馬車馬の如く働いたんだからな。後で覚えておけよ」

    「その呼び方はお止めに申してください! でも、サボってしまったのは……謝罪するです」

    仕事をせずに遊んでいたことを咎められたルカは、言い訳もせずに謝罪の言葉を述べる。この素直さを、カーミラにも見習ってもらいたいものだ。
    そして、こんなにも素直で良い子を苛めるつもりは端から無い。

    「……その分、ちゃんと楽しんだか?」

    「え? ――はい……です」

    「そうか! なら良し! それに免じて、今回はルカりんの頭を撫でさせてくれたら許してやるよ」

    そう言ってタクマはルカの頭に手を置くと、そのままわしわしと撫で始めた。
    ルカの髪はさらさらで、とてもさわり心地が良い。加えて二つの獣耳の感触がその心地よさにアクセントを与えてくれて、いつまでも撫でていられそうだ。

    「や、止めるですよー」

    頬を赤らめ、恥ずかしそうに嫌がる素振りを見せるルカ。しかし、その様子はどこか嬉しそうにも見える。とても可愛らしい。天使か。

    「やはり少年嗜好の変質者でしたか。皆さん、この魑魅魍魎から離れた方が良いですよ」

    「うわっ! カーミラ!?」

    背後からの急襲。ルカの頭を撫でることに夢中で、カーミラの接近に気付けなかったようだ。そしてその急襲はクリティカルヒット。毒舌自体はそこまで大したダメージでは無いのだが、彼女の発言を受けた少年達が僅かに距離を取ったのが辛い。

    「いや、違うからな! 飼い犬を愛でるような感覚だから!」

    「首輪を繋いで飼育したいと言うことですね。気持ちが悪すぎて悪寒がしてきました。責任を取って死んでくだされば幸いです」

    「ああもうお前には何を言っても無駄だったな! それで、筆頭料理係のお前がこんな所をほっつき歩いてるって事は、料理の準備は出来たんだな?」

    「勿論です。そして料理の配膳が済めば、いよいよ歓迎会の始まりです。貴方以外誰も望んでいない、世界中で最も無駄な歓迎会の……」

    歓迎会をやると言い出したのはお前らだろうという突っ込みは、タクマの心の中に留められた。
  30. 30 : : 2017/12/28(木) 00:30:14



    ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



    「――皆様、今日は我が屋敷の新たな従者の為に、ようこそおいでくださいました」

    銀鈴の如き美しい声が、広場一帯に響き渡る。その場にいる誰もがその天上の調べに聞き入り、発声者の優美かつ堂々としたその姿に見入る。
    美しさと高潔さを兼ね備えた少女――領主・アリスによる開会の挨拶が行われていた。

    「先ず私の方から簡単ながら、今日の主役であり、新たな仲間となる者――アマミ・タクマについてご紹介します」

    アリスはそう言って聴衆の視線を、彼女の斜め後方でメア、カーミラ、ルカと横並びになって挨拶を聴いているタクマの方へと促す。これまで彼女に向けられていた視線が一斉に自分に向いたことを感じ、凡人・タクマは恐縮しながら軽い会釈をした。

    「最初に皆様には、彼の種族についてお伝えしておかなければなりません。既にお気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、彼は――人間です」

    ――視線の色が僅かに変わった。

    人間。そう宣言する度――厳密に言って二度、タクマは自分へと向けられる視線に込められた感情が、信号機が青から赤へと変わるかのように、甚だしく変貌を遂げるのを感じてきた。当時はそれにただただ困惑していたが、今にしてみればその宣言は魔界全体への宣戦布告と同義であることが分かる。何とも、恐ろしい発言をしたものだ。
    そして二度目の宣言をアリスへと向けて言い放った後、その宣言を行うことを彼女によって止められた。それから、人間であることを自分から発信したことは無い。視線の色が変わる感覚に襲われたことも無い。

    そんな宣言を今、それを禁じてきた筈のアリスによって間接的に発信された。その瞬間に感じ取った、「色の変化」にタクマは一瞬表情を強張らせる。
    しかし遅れて、その変化の程度も、中身も、ウエステリアで感じ取ったものとは大きく異なることに気付く。多少なりとも、似通ったものも混ざっていない訳ではなかったものの。

    「亜人族である皆様からして見れば、大なり小なり思うところがあるとは思います。その思いを、偏見だ、誤解だ、と言って否定することはできませんし、するつもりもありません。しかし、これだけは言わせてください。彼は、我々亜人族を無条件で受け入れてくれています。だから皆様、どうか彼を受け入れてください」

    タクマが人間であると告げた後、このようにアリスは言葉を続けた。そして最後に、深々とお辞儀をする。その様を目にした村人達は、拍手によって彼女の発言を讃えた。

    ――彼女はどうして、自分なんかの為にここまで言ってくれるのか。頭を下げてくれるのか。
    彼女へと捧げられる温かな拍手を目の当たりにしながら、タクマの胸の内に抱かれる疑問。人間を魔界の村に住まわせることが、この世界においては自身の想像以上に非常識で、難しいことだということは理解している。だから、彼女はこれだけ言葉を尽くしているのだ。それは分かる。
    だが、分からない。何故彼女はタクマを村に住まわせる為に、ここまでのことをしてくれるのか。一度は、拒んでいた筈なのに……。

    「歓迎会の主役が難しい顔しないの。聞きたいこととかはまだまだあるだろうけど、今のタッくんの仕事は笑顔でいること、だよ」

    生じた疑問についてあれこれ考えていると、メアが声を掛けてきた。どうやら疑問が顔に出ていたようで、歓迎される側に相応しくない表情を指摘される。

    「ごめんごめん。でも一つだけ、今聞いても良いか?」

    「簡単なことなら、良いよ」

    「どうしてアリスは、俺の為にここまでしてくれるんだ?」

    そんな表情を取り払う為に、溜め込まれた疑問をメアへとぶつけた。その答えは――。

    「それで難しい顔してたとしたら、タッくんは間抜けさんだね」

    「あのなぁ、これでも真面目に考えて……」

    「アリス様に難しいことはできないよ。だから難しい顔して考える必要もなし」

    「――――」

    愚問だった。
    何度も答えに触れてきた筈なのに、自分は今更何を悩んでいたのだろう。

  31. 31 : : 2017/12/28(木) 00:30:33

    「ではここで、タクマ自身からも一言挨拶をしてもらいます。タクマ」

    「はいよ」

    アリスから挨拶をするように言い渡されたタクマは、返事をして一歩前へと出た。
    自分からも挨拶をしなければならないことを知らされてはいる。定型文のような、無難な挨拶は考えてきている。でも、それでは足りない。つまらない。だから、

    「――どうも、ご紹介に預かりました。俺が、今朝からアリスの従者になった天見拓磨です」

    思っていることを、そのまま言うことにしよう。

    「えっと……、始めに言っておきますが、俺は力がありません。常識もありません。これといった特技もありません。正直、カーミラに言われているように無能です。そんな俺が今ここに居るのは、アリスの優しさに甘えまくった結果だと思っています」

    聴衆がざわついているのが分かる。それもそうだ。新入生歓迎会でいきなりこんな自虐的な発言をされたら、先輩側はドン引きする。でも、伝えておかなければならないことだ。

    「俺には何もありません。凡人ができることしかできません。だからこれから、メアを、カーミラを、ルカを、そしてデミッカ村の皆のことを頼って頼って頼りまくることになると思います。常識を知らない俺は、人間の自分がこの村に居ることがどれほどのことかは分かりません……。だけど、図々しくもお願いさせてください。その時は、俺を助けてくださいと!」

    ここで、一礼を挟む。そして締めだ。

    「こんな感じで、俺は愛と勇気と他力本願でアリスのことを支えていこうと思いますので、どうぞよろしくお願いします!あと人見知りなので皆の方から声を掛けてくれると嬉しいです!」

    そうして最後にもう一礼。
    我ながら、情けない上に臭いという最高に恥ずかしい挨拶をしてしまった。人間、見切り発車で走り出して碌な事には――、

    ――パチパチパチパチ

    恥じらいに顔が紅く染まりかけた時、無数の乾いた音がタクマの耳を埋め尽くした。
    その拍手は先程アリスに届けられたものと変わらない、いやそれ以上のものだった。

    ――人間、やってみるものだな。

    目頭が熱くなるのを感じながら、タクマは顔を上げ元の位置に戻る。その時、村人達と一緒にアリスも拍手をしてくれているのが見えた。
    どうやら、一番伝えたかった人にも伝えられたようだ。
  32. 32 : : 2017/12/28(木) 01:06:32



    ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



    「――では堅苦しい話はこのぐらいにして、皆様自由に料理を食べたり、談笑を楽しんだりしてください!」

    歓迎会始まりの挨拶は、アリスのこの言葉によって締めくくられた。そして村人達は、カーミラ達が作った料理へと手を付け始めていく。

    「って、またレバニラかよ!」

    その料理が朝食と全く同じであることに気付き、タクマはカーミラのレバニラ押しの強さに驚嘆する。

    「カーミラさんの看板料理ですからね。こういう公の場では必ずレバニラが振る舞われるです」

    そんなタクマの驚嘆の声に説明を加えてきたのは、歓迎会直前まで村の子供達と遊び回っていたルカだ。そして彼の後ろでは、五人の少年少女達が興味津々な目でこちらを見ている。その中の一つには、見覚えもある。

    「兄ちゃんが新しいアリス様の家来だったんだな! さっきはごめんな!」

    「ジャン……だったな。別にもう怒っちゃいないけど、マジで痛かったからな!」

    「お兄、いつの間に従者さんと知り合ったの?」

    「ルカくんの同僚さんってことだよね!」

    「僕はノブって言います! よろしくお願いします!」

    「ちょっ、抜け駆けすんなよ! 俺はケミィ!」

    半牛半人の少年・ジャンがタクマに絡んできたのを皮切りに、五人の子供達が一斉にタクマに話し掛けてきた。その子供達の姿は、半獣半人であったり、身長が極端に小さかったり、黒いコウモリのような羽が生えていたりと多種多様である。

    「おいおいお前ら、同時に話し掛けるな! 聖徳太子じゃないんだから、聞き取れねぇよ」

    「聖徳太子……? よく分からないですけど、僕の方から一人ずつ紹介なさりましょうか?」

    「ああ、頼むよ」

    一人ずつルカが紹介していくという提案に、タクマは同意し他己紹介を依頼する。その頼みを聞きルカは首肯すると、まずはジャンの隣に立つ。

    「最初は彼からいくですよ。彼のことはもう知ってるみたいですが、念のため。彼はジャンって言って、牛型の獣人種です」

    「改めてよろしくな!」

    「おうよ。突進はもうごめんだけどな」

    ルカからの紹介が終わると、ジャンが挨拶で続ける。同時に右手を差し出されたので、タクマはそれに応え握手を交わし、挨拶を返した。

    「次は……、ヘレンを紹介するです」

    続いてルカが向かったのは、ジャンと同じく半人半牛の、しかし性別は違い少女だ。

    「彼女も牛型の獣人――ジャンの妹なんですよ」

    「へぇ……。言われてみれば目元とかが似てる」

    「よ、よろしく!」

    「こちらこそよろしく」

    挨拶の声は溌剌としていて、兄同様活発な子のようだが、こちらは人見知りの面もあるようだ。

    「さて次は……」

    次にルカが移動した先は、大人しそうな猫耳の少年と、身長がタクマの股下以下の少年の間だ。

    「ノブとケミィを紹介するです」

    「何で纏めるんだよ! これじゃあ脇役みたいじゃん!」

    「まぁまぁ、この方が効率的だし良いでしょ」

    一人ずつ紹介されるはずだったのにいきなり纏められたことに、極小少年ケミィは反発を示すのだが、それを猫耳のノブが合理的な意見で諫める。成る程、見た目だけではなく性格もそれぞれ違っていて面白い。

    「ノブは猫型の獣人種。僕等の中じゃ一番頭が良いですよ。ケミィはドワーフで、村長さんの孫に当たるです」

    「つまり、未来の村長候補って訳か。一番向いてなさそうなのに」

    「どういう意味だぁ!」

    タクマがケミィをからかうと、ケミィは顔を真っ赤にして反発してきた。その一方で、他の子供達は大笑い。タクマの指摘は図星であり、子供達の間でもよくいじられているのかもしれない。強く生きろよ。

    「次に、カノを紹介して最後ですね」
  33. 33 : : 2017/12/28(木) 01:07:03

    他己紹介も残すところ後一人、コウモリのような羽が特徴的な少女――カノだ。だが、彼女を説明する上で特筆すべき点は、その羽でもなければ、将来有望そうな可憐な容姿を持っていることでもない。

    「えっと……ですねぇ……。カ、カノは……」

    「急にぎこちないぞ」

    最も特筆すべき点は、彼女がルカの意中の相手であるということだ。

    「ごほんっ! えと、カノはサキュバスです。羽のせいで悪魔種だと思ったかもですが、これでも歴とした亜人種です」

    「タクマさん、よろしくお願いします」

    「おう、よろしくな」

    ルカのことも――と内心付け加えて、タクマはカノに挨拶を返した。
    それにしてもサキュバスとは、この可憐な容姿も納得というものだ。よくよく見れば、僅かながらも胸は膨らみを帯びており、女体特有の曲線美も既に保持していて、背徳的な色気を醸し出している。ロリコンだったら危なかった。

    「ところでお前らは、さっきまで鬼ごっこで遊んでたよな。鬼ごっこはよくやるのか?」

    単純な興味関心からの質問だ。異世界の、それも魔界の子供達が何をして遊んでいるのか興味が湧いたのだ。

    「うん、よくやるぜ!」

    「私とケミィは獣人種の皆より足が遅くて、いっつも大変な思いをしてるんですけど……」

    その質問にジャンが元気よく答えてくれたのだが、それに続いてカノが、水を差すように種族の違いによるハンデが生じていることを不満げに述べる。おおらかで優しい性格を想像していたが、小悪魔系なのかもしれない。サキュバスなだけに。

    「他にはどんな遊びをしてるんだ?」

    「後は隠れん坊をたまにします。いつも服を汚してしまうので、お母さんに怒られるのを覚悟でやらないといけないんですけど」

    次の質問に答えてくれたのは、ノブだ。彼はルカ同様丁寧語を使ってタクマに話し掛けてくるのだが、今の所はルカと違って正しい言葉遣いをしている。できればルカの言葉遣いを指導してやって欲しい。
    それと、一つ気になる点が。

    「鬼ごっこも服が汚れるから、結局怒られないか?」

    寧ろ、一杯走り回る分鬼ごっこの方が汚れそうな気がする。そんな人間らしい質問に答えるのは、文句が多めのケミィだ。

    「隠れん坊の方が百倍汚れるに決まってるだろ! 臭いを消す為に服に色々擦り付けるんだから!」

    「臭い?」

    「僕達獣人種は、臭いでどこに隠れているか見つけれちゃうです。だから、草や土で臭いを誤魔化さなきゃなんです」

    決めつけて掛かる口調のケミィの回答では説明不足なので、ルカが補足説明をいつものちぐはぐな言葉遣いで加えてくれた。成る程、人間が行うゲームを亜人族が行うと、勝手が違ってくる場合もあるということか。

    「面白い発見だな。でも基本的には、日本の子供とやることは一緒か。他には?」

    「……な、ない! だ、大体鬼ごっこをして、た、たまに隠れん坊してる!」

    独り言で考えを纏めた後、続けられた質問に答えてくれたのは人見知りのヘレンだ。人見知りを発揮してこれまで余り発言できていなかったが、本当は自分も話したかったのだろう。その気持ちは凄く分かる。
    それにしても、鬼ごっこと隠れん坊だけとは、随分と寂しいものだ。

    「その二つだけだといつかは飽きるだろう。ここは一つ、俺が新たな遊びを伝授してやる。とびきり面白くて、足が遅い奴でもちゃんと楽しめる奴だ」

    「本当か兄ちゃん!」

    「やったー!」

    タクマの提案に、子供達は素直な反応を見せてくれる。その様子が微笑ましく思えると共に、年長者としての優越感が湧き上がってくる。

    「それじゃあ早速、明日の朝にでも伝授しに行こう。皆、期待して待っているように。ところで……」

    「どうしたですか?」

    「――トイレ何処?」



    ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



    「ふぅ……危うく漏らすところだった」

    広場から少し離れたところにある、公衆用トイレにて用を足すタクマ。実は彼は、歓迎会開始直前から尿意を催していたのだが、機を逸し続けてこの時まで我慢することになってしまったのだ。

    「やっぱり、トイレは行ける時に行っておかないとな」

    そんな教訓を胸に抱きながら、公衆トイレを後にする。その時だった。

    「――っ!?」

    急に視界がふらついたのは。
    重度の貧血にも似た症状。まだ日も落ちていないのに、意識を蝕む睡魔が確かにタクマを浸食している。

    「何が……、どうなって……」

    体調の急変に理解が及ばないまま、症状はみるみる悪化し遂にタクマは地に膝を着く。
    それから、意識を完全に消失するまでは一瞬であった。
  34. 34 : : 2017/12/29(金) 13:02:44



    ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



    目覚めと共に感じたのは、口の中のざらついた感触だった。それから意識が明瞭になるにつれて、自分の現状が判明していく。両手のそれぞれが鎖によって壁に繋がれ、拘束されている状態だ。

    「――ここは……どこだ?」

    屋内であることは確かだ。だがそれだけ。部屋の装いに見覚えはない。
    しかし、意識を失っている間がそこまで長くはないと仮定すると、この建造物が何であるかは大体想像が付く。デミッカ村の住居の一つだ。

    「この仮定が外れて、ずっと遠い所まで拉致されたとかだったら絶望的だけどな」

    だからこそ、仮定を信じることにする。助かる可能性がある方を前提とする、希望的観測の何が悪い。
    そして前提を立てたところで、考えるべき点は――。

    「ようやく目覚めたようだな」

    考えるべき点の内、一つの答えが勝手に判明された。それは拉致した犯人の正体であり、タクマの目覚めを待ち侘びていた襲撃者は――二人の悪魔だった。

    「――悪魔で合ってるよな?」

    「いかにも。そして、ルシファー様の部下。これで……理解は及んだか?」

    「ご親切にどうも」

    昨晩と同じく、魔王選抜戦絡みというわけだ。

    二人の悪魔はどちらも紫色の体色をしている。その体色以外は、昨晩の襲撃者の内槍を使っていた方の見た目とほぼ同様。二人が悪魔族であることは、実のところ聞くまでもないことだった。
    他に昨晩の槍の悪魔との相違点と言えば、声が高くて女性と思しいところか。聞き覚えがある気もするのだが、こんな人外な見た目の知り合いは今現在居ないので気のせいか、ウエステリアで通りすがっただけだろう。

    「それで、非力で無能な俺を拉致して何のつもりだ? 言っておくけど、俺が居なくなっても何も変わらないと思うぞ」

    見逃してもらえないかという願望からが半分、率直に目的への関心からが半分の言葉だ。尤も、この言葉に対する返答は大方の予想が付いている。

    「そうかもしれないな。だが、アリス陣営の者であるというだけでも貴様の存在は、価値がある。我々にとってはな」

    大方の予想――そして最悪の予想が的中しつつあるのを感じタクマは苦笑い。そしてその見立ては正しく――、

    「貴様の持っている情報、全て吐いてもらおう」

    尋問――もとい拷問の開始が宣言された。



    「がふっ!」

    宣言の直後、後頭部を掴まれ顔を地面へと押し付けられた。

    「分かってはいると思うが、拒めば命はない。だが、素直に話せば無傷で帰してやってもいい」

    「信じ……られるかよ」

    そのように言われ、素直に話して呆気なく命を奪われたシーンを、創作の世界で何度も目にしてきた。自白を促す甘言の可能性は高い。

    「気持ちは分かる。だがお主が自分で言うように非力で無能であることはこちらも把握済だ。それはつまり、お主を帰しても何の害にもならぬと知っているということ」

    不信を募らせるタクマを諭して来たのは、今まで黙っていたもう一人の悪魔の方だ。こちらの声も女性のものである。そしてやはり、聞き覚えがあるような気が……。

    「あんたら、何処かで俺に会ったか?」

    「……さて、何のことだか。会ったことがあれば話してもらえるのかな」

    「それはねぇな」

    「だろうな。……話を戻そう。お主が素直に話せば無傷で帰す。これは約束しよう。そもそもお主が生き残る可能性のある選択肢は、話すことだけなのだがな」

    その通りだ。悪魔の発言の真偽に関わらず、タクマに与えられた選択肢は一つだけ。言われるがまま全てを暴露するだけだ。
    尤も、それはタクマの命を優先した場合の話――。

    「あれ、おかしいな……。らしくねぇこと、しようとしてるぞ」

    冷静に考えろ。屋敷に住むことを認められてからまだ半年。他所に知られては不利益になる情報など、何も握らされていないに違いない。話したところできっとアリス達への被害はほぼない。それにきっと彼女は許してくれる。優しい彼女なら。
    冷静に、合理的に、現実的に……。
  35. 35 : : 2017/12/29(金) 13:03:10

    ――そんなの無理だ。

    「さぁ、貴様の答えを――」

    「話すわけないだろ……馬鹿が」

    瞬間、頭蓋を割らんばかりの激痛が走る。

    「がっぁぁぁあああ!」

    それは地獄の拷問――には遠く及ばない行為だった。悪魔はただ、後頭部を握る力を強めただけ。爪を剥がれたわけでも、骨を折られたわけでも、眼球をえぐられたわけでもない。それなのに、苦鳴は断末魔の如く上がり、痛みに身体が痙攣を始める。

    自分は、なんて弱い存在なんだろうか。
    それもそうだ、凡人なのだから。凡人であることに甘んじていたのだから。凡人であろうとさえしていたのだから。
    でも、それはもう止めたはずだ。

    「何故拒む? お主はアリスに従って間もない筈だ。命を捨てられる程の忠義を抱くには、関わりが短すぎる」

    その通り。普通に考えたら命なんて捨てられない。

    「少し強く握っただけであの叫び様だ。苦痛に耐えられるような我慢強さもあるまい」

    その通り。あれ以上酷い目にあったら発狂する。

    「そもそも貴様は……、貴様は人間だろう! 魔物であるアリスに、命が賭けられる筈がない!」

    その通り。普通に考えたらおかしいだろ。

    「どうして、貴様はあの娘を護ろうとする!」

    「――心が叫んだから」

    不合理極まりない答え。きっと悪魔は呆気に取られているに違いない。もしかしたらアホ面を見せているかも知れない。そうだとしたら、今しかない。
    心の叫びを、現実の叫びに――。

    「心が叫んだから。身体が勝手に動いたから。言葉が勝手に出て来たから。助けたいって思ったから。助けになりたいって言いたくなったから! 俺はアリスの為に命を賭けるんだ! 理屈じゃない! 衝動だ! ほんとっ……」

    徐々に昂ぶっていく声。だが突然、か弱く情けない声へと変わった。

    「ほんとっ……おかしな話だよな」

    自嘲するように、タクマは語る。だがその表情は、どこか悦びが滲み出ていて――。

    「そんな衝動的な考えだけで生きれる奴なんて、馬鹿か天才だけだ。普通の人間は、それじゃあ上手くいかないからって、理屈に頼るようになる。普通ならどうするかって考える。自分はおかしくないかって考える。気にする。少なくても、俺はそうして生きてきた。本能なんてクソくらえ。普通が一番だって……」

    思い返されるのは小学生の時。運動音痴だったタクマは、常にそれを気にしていた。運動で遊べばいつも皆の足を引っ張り、責められる。責められるのがとても嫌だった。普通になりたかった。上手くなくて良い、責められないぐらい普通に。苦手ばかり見ていた。苦手を克服することばかり考えた。秀でたところだってあったのに、それを伸ばそうとはしなかった。
    能力だけじゃない。行動もだ。人と違う考え方をしてしまうことを自覚していたタクマは、必死にそれを矯正しようとした。好きでもない流行の曲を聴いたり、興味のない人気テレビ番組を観たりして。
    気付けば、凡人が出来ていた。

    「気付けば、自分が本当にしたいことなんて分からなくなってた。心の叫びなんて、一切聞こえなくなってた」

    行動も、言動も、常に模範解答を探すように生きてきた。

    「それなのに、急に聞こえてきたんだよ。心が騒ぎ出したんだよ。アリスを助けたい、自分にできることなんて無いかもしれないけど、助けようとしたいって。……迷惑な話だよな。普通に考えて、足手纏いの穀潰しが増えるだけだって分かってるのに。でも、気になっちまったんだよ」

    誰も心に秘めているもの――未知への探究心。それがタクマにもあっただけの話だ。

    「心の叫ぶままに生きたらどうなるかって! 本能のままに歩んだら何が待ってるかって! そしてこの解答の正誤判定は、死ぬまでは分からない! だから俺は、死ぬまではアリスを――いや、俺自身の心の叫びを、裏切る気はない! そういうことだ! 恨まないから殺すならさっさと殺せよ!」

    不屈を誓う啖呵を切り、忠義と共に死ぬことを嘆願するタクマ。
    これだけ言ったにも関わらず情けないことだが、本格的に拷問なんて事になったら黙秘を続けられる自信は無い。だからせめて、心が折れない内に死ぬことを望む。

    ――折角拾った命なのに、一瞬だったなぁ……。

    交通事故で、一度は落とした命。それがこの世界で再生されてから、僅か二日。短かった二度目の人生に思いを馳せ、タクマは死を待つ――。

    「――合格です」

    不意に跳び込んできた、この場にそぐわない言葉。顔を地に押し付けていた力が急に無くなったと同時に、タクマは何事かと顔を上げる。

    そこには、毒舌執事と金髪メイドが自分を見下ろしている姿があった。
  36. 36 : : 2017/12/29(金) 13:09:35



    ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



    早い話が、「試験」だった。
    タクマが本当に他陣営のスパイではないのか。そして、アリスへの忠誠心が本当にあるのか。それを試す為の試験が、先程の誘拐事件の真相である。
    因みに、タクマを襲った強烈な睡魔は「リム」、二人の悪魔姿は「コーピル」という魔法によるもの。流石はファンタジー世界だ。

    「事情は分かっても、なかなか『はいそうですか』とは言えないな。マジで怖かったし、マジで痛かったからな」

    「陣営の未来が懸かった試験なのですから、生半可なものにはできませんでした。仕方が無かったのです。従って、謝るつもりはありません」

    拘束されていた村の住居を出たところで事の真相を語られたタクマは試験内容への不満を漏らすが、カーミラは全く意に介さない。なお、タクマの頭を掴み地面へと叩き付けたのはカーミラである。

    「まぁまぁ、無事突破できたんだし、細かいことは気にしない気にしない。最後のタッくんの言葉には、ちょっとキュンとしちゃったな」

    「や、やめてくれよ……」

    「あんなに臭い台詞を口にできる者はそういませんよ。尊敬します」

    「やめろぉ!」

    後半の演説のことを、メアからは優しく、カーミラからは皮肉たっぷりに突かれ、タクマは羞恥の余りその場にうずくまる。
    今考えれば、あれだけの長台詞を最後まで黙って聞いてくれたのも、タクマの本心を知る為だったのだろう。本当の敵だったら、あんなに素直に聞いてくれるはずはないのだから。

    「そんなに恥ずかしがらなくても良いじゃん。あの言葉のお陰で合格が決まったのも事実なんだし。尤も私からすれば、スパイの疑いは試験の前から無かったようなもんだし、忠誠心の方も最初から合格するって信じてたけど」

    「……自分で言うのもあれだが、俺ってそんなに好感度上がるようなことしたっけ?」

    出会って一日も経っていない。本心を語り合ったわけではないし、難関を共に突破したわけでもない。それなのに何故メアは、ここまでタクマを信じられたのか。それにはちゃんと、理由があった。

    「好感度とはちょっと違うかな。まずスパイじゃないって確信したのは、タッくんのぶっ飛びすぎた言動だよ」

    「はぁ? 言っとくが俺は、当たり障りのない発言に定評がある男だぞ」

    「……それを本気で言ってるから、信じられるんだよ。スパイにしては常識がなさ過ぎるもん。恩返しの為とは言え、人間が魔物に助力すること自体がおかしいのに……、亜人が人間みたいなんていう人間、世界中探してもタッくんしかいないと思うよ」

    メアが指摘しているのは、二回目の食料運搬の為に広場からネスの家へと戻る最中の発言だ。
    亜人族の村にいると、魔界にいることを忘れてしまいそうになる。
    これぞファンタジー世界の「人」里。
    タクマは確かにそう言って、亜人と人間とを類似したものとして扱った。それが当然であると思っていたのだが、もしかしたらそれはこの世界において禁忌であったのかもしれない。

    「――気に障ったか?」

    「ううん。寧ろ、嬉しかった」

    メアは目を閉じ、穏やかな表情で当時の心情を語る。その表情から、彼女の語った言葉が決して気遣いによるものではないことが分かった。
  37. 37 : : 2017/12/29(金) 13:09:52

    「それでね、忠誠心の方も信じた理由なんだけど……」

    「おう」

    「タッくん、アリス様のことが好きでしょ?」

    「なっ!? それは……、その……、ああ、そうだよ」

    心の秘密を暴かれたタクマは、どぎまぎしながら顔を真っ赤に染め上げる。一瞬惚けることも考えたが、疑われた以上はばれるのは時間の問題になるので素直にアリスへの好意を認める。

    「バレバレだったか?」

    「まぁね。ルカりん程じゃないけど」

    ルカよりも好意が分かりやすい人は、それこそ世界中探してもいないと思う。

    「主に下心があるとは、困った従者ですね。精々豚の如き醜態を晒さぬよう、努めてください」

    「分かってるよ。好きな子にかっこ悪いとこ見せられないからな」

    「醜く下劣な動機です。しかし、無いよりはマシでしょう。では改めて、これからもよろしくお願いします。タクマ」

    「――名前」

    これではまるで、ギャルゲーのヒロインだ。
    今までカーミラは、タクマの名前を呼び捨てで呼んだことはない。今朝、客人として接している間は様付けで、それ以降は「貴方」だとか「無能」だとか、とにかく名前を呼んでくれなかった。

    「試験合格ってフラグがセットされて、名前が呼び捨てに……てか」

    「何を言っているのかは分かりませんが、挨拶を無視とは失礼極まりますね」

    「悪い悪い。……こちらこそよろしく。カーミラ」



    こうして、正式にカーミラとメアに認められたタクマは、二人と共に歓迎会の会場へと戻っていった。
    尚、この試験はアリスとルカには内緒で行われているようで、二人――特にアリスに話すことを固く禁じられた。人を疑うことを知らないアリスの為を思っての試験なのだが、彼女に知られると恐らく叱られてしまうとのこと。確かに彼女は、人を疑うことを知らないだけでなく、人を疑うことを嫌いそうだ。

    だからタクマは、何事もなかったかのような顔でアリスの傍へと歩み寄り――、

    「本当に、良い村だな」

    それを聞いて満面の笑みを浮かべるのを見届けながら、改めて思い人に全てを尽くすことを誓った。
  38. 38 : : 2017/12/30(土) 08:58:49



    ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



    魔界の月は赤く、その光は夜空を妖しく紅に染め上げる。

    紅の月光が射し込む部屋で、カーミラは一人紅茶を飲んでくつろいでいた。夜半の自室で過ごすこの時間は、執務としての職務に勤しむ彼女にとって、唯一と言える癒しの時である。騒がしいメイドや幼稚な見習い、そして無力な新人から離れたことで創り出される孤独な空間に、彼女は入り浸る。それは、誰にも邪魔されるのことのない時間――の筈なのだが。

    「――他人の安らぎの時間の邪魔をして、どのような御用ですか? つまらないものでしたら問答無用でご退出願いますよ」

    「タッくんもルカりんもアリス様も抜きで、ミラちゃんと二人で話したいことがある――これじゃあダメかな?」

    カーミラの休息に水を差した者――メアが訪問の理由をこのように述べる。カーミラはその理由を吟味。結果、メアの要望を承諾した。

    「密談の途中で、三人の内の誰かがいらっしゃるということは――?」

    「ないない。ルカりんはもう寝てるし、タッくんとアリス様は庭でお散歩中だよ」

    「……それはそれは、タクマの身の程知らず振りは相変わらずのようですね」

    配属初日の新人従者にして主と二人きりで戯れるという行動に、カーミラは困った笑みを浮かべながら苦言を呈する。

    「――ミラちゃん、機嫌良さそうだね。思惑以上の結果が得られて大満足ってとこ?」

    「……さて、何のことでしょうか」

    「惚けなくても良いって。他言はしないからさ。タッくんを一番仲間に引き入れたがっていたのはミラちゃんでしたーって」

    メアからの核心を突く言動。それを受け、カーミラは大きな溜め息を吐いた。

    「お馬鹿さんかと思っていましたが、意外と頭が回るのですね」

    「いいや、私は馬鹿だよ。ミラちゃんの事だから分かっただけ」

    「成る程、貴方らしいですね」

    秘密がばれたと言うのに、カーミラは相変わらず微笑を携えている。元々、メアには気付かれても良かったのだ。そして、自分の態度の僅かな変化からそれに気付いてくれたことが、嬉しかったのかもしれない。
  39. 39 : : 2017/12/30(土) 08:59:54

    「質疑応答を行った時に思いました。これは思わぬ良い拾い物をしたかもしれないと」

    「良い拾い物――タッくんが聞いたらどう反応するかな。褒められたことに驚くか、物扱いに怒るか。それで、どうしてそんな風に思ったの?」

    「先ず一つに、無知無力無一文の彼が私達に不足しているものをお持ちになっていたからです」

    タクマには知識が無い、力も無い、財力も無い。これらの物は、魔王選抜戦において心許ないレベルではあるものの、アリス陣営が既に所持しているものでもある。しかしタクマは、無い無い尽くしに見える能力の中に一つだけ、アリス達に欠けているものを所持していた。
    そしてその能力は、カーミラが何度も指摘している。

    「洞察力。それから派生する、少ない手掛かりから最適解へと近付く力――果ては、戦略眼。それが、私がタクマに見出した力です」

    「それについては同感。タッくん、時々察しが良いというか、良すぎてやっぱり間者なんじゃないかって思うことがあったもん。でも、戦略眼まで言うかぁ」

    「今の彼にそこまでの力は無いでしょうが、後々その段階まで達していただかなければ困ります。謀略に長ける者がいない――これが我が陣営最大の欠点なのですから」

    アリスは、頭は悪くないのだが、物事に正面から取り組むことしか知らない。
    メアとルカは言わずもがな。
    カーミラは基本的な戦略知略は心得ているが、無難な策しか思案できない。そして、現在魔王選抜戦において最弱候補であるアリスが魔王になることは、無難な策だけでは絶対に叶わない。現状をひっくり返すような奇策を打ち立てていかなければ、アリス達に勝ち目はないのだ。

    「あの常識の無さもまた、奇策を考案するに当たって活かされるはずです」

    「確かに確かに。私達が持ってる固定概念が、タッくんには無いからね」

    無知故の思考の無垢さ。これが優れた洞察力と噛み合えば、タクマは優秀な軍師になれる……かもしれない。

    「それで、他の理由は? 先ず一つって言ったってことは、当然他にもあるんでしょ?」

    「もう一つだけございます。言わずもがな……ですよ」

    「――そうね」

    アリスを魔女と知って、それでも好意を持っている人間。その存在価値がどれ程かを、タクマは自覚していない。
    どんな希少な宝よりも、その価値は尊く――。

    「アリス様の真の目的を達成する為に、彼の存在は不可欠です。それを私達は肝に銘じた上で今後に臨んでいかなければなりません……不本意ですが」

    「分かってるよ、ミラちゃん。絶対、アリス様の望みを叶えてあげようね」

    「ええ、絶対に――」

    アリスから受けた、一生を懸けても返しきれない程の恩を返す為に。
  40. 40 : : 2018/02/17(土) 18:11:38



    ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



    魔界の月は赤く、その光は夜空を妖しく紅に染め上げる。

    紅の月光が射し込む部屋で、カーミラは一人紅茶を飲んでくつろいでいた。夜半の自室で過ごすこの時間は、執務としての職務に勤しむ彼女にとって、唯一と言える癒しの時である。騒がしいメイドや幼稚な見習い、そして無力な新人から離れたことで創り出される孤独な空間に、彼女は入り浸る。それは、誰にも邪魔されるのことのない時間――の筈なのだが。

    「――他人の安らぎの時間の邪魔をして、どのような御用ですか? つまらないものでしたら問答無用でご退出願いますよ」

    「タッくんもルカりんもアリス様も抜きで、ミラちゃんと二人で話したいことがある――これじゃあダメかな?」

    カーミラの休息に水を差した者――メアが訪問の理由をこのように述べる。カーミラはその理由を吟味。結果、メアの要望を承諾した。

    「密談の途中で、三人の内の誰かがいらっしゃるということは――?」

    「ないない。ルカりんはもう寝てるし、タッくんとアリス様は庭でお散歩中だよ」

    「……それはそれは、タクマの身の程知らず振りは相変わらずのようですね」

    配属初日の新人従者にして主と二人きりで戯れるという行動に、カーミラは困った笑みを浮かべながら苦言を呈する。

    「――ミラちゃん、機嫌良さそうだね。思惑以上の結果が得られて大満足ってとこ?」

    「……さて、何のことでしょうか」

    「惚けなくても良いって。他言はしないからさ。タッくんを一番仲間に引き入れたがっていたのはミラちゃんでしたーって」

    メアからの核心を突く言動。それを受け、カーミラは大きな溜め息を吐いた。

    「お馬鹿さんかと思っていましたが、意外と頭が回るのですね」

    「いいや、私は馬鹿だよ。ミラちゃんの事だから分かっただけ」

    「成る程、貴方らしいですね」

    秘密がばれたと言うのに、カーミラは相変わらず微笑を携えている。元々、メアには気付かれても良かったのだ。そして、自分の態度の僅かな変化からそれに気付いてくれたことが、嬉しかったのかもしれない。
  41. 41 : : 2018/02/17(土) 18:12:03

    「質疑応答を行った時に思いました。これは思わぬ良い拾い物をしたかもしれないと」

    「良い拾い物――タッくんが聞いたらどう反応するかな。褒められたことに驚くか、物扱いに怒るか。それで、どうしてそんな風に思ったの?」

    「先ず一つに、無知無力無一文の彼が私達に不足しているものをお持ちになっていたからです」

    タクマには知識が無い、力も無い、財力も無い。これらの物は、魔王選抜戦において心許ないレベルではあるものの、アリス陣営が既に所持しているものでもある。しかしタクマは、無い無い尽くしに見える能力の中に一つだけ、アリス達に欠けているものを所持していた。
    そしてその能力は、カーミラが何度も指摘している。

    「洞察力。それから派生する、少ない手掛かりから最適解へと近付く力――果ては、戦略眼。それが、私がタクマに見出した力です」

    「それについては同感。タッくん、時々察しが良いというか、良すぎてやっぱり間者なんじゃないかって思うことがあったもん。でも、戦略眼まで言うかぁ」

    「今の彼にそこまでの力は無いでしょうが、後々その段階まで達していただかなければ困ります。謀略に長ける者がいない――これが我が陣営最大の欠点なのですから」

    アリスは、頭は悪くないのだが、物事に正面から取り組むことしか知らない。
    メアとルカは言わずもがな。
    カーミラは基本的な戦略知略は心得ているが、無難な策しか思案できない。そして、現在魔王選抜戦において最弱候補であるアリスが魔王になることは、無難な策だけでは絶対に叶わない。現状をひっくり返すような奇策を打ち立てていかなければ、アリス達に勝ち目はないのだ。

    「あの常識の無さもまた、奇策を考案するに当たって活かされるはずです」

    「確かに確かに。私達が持ってる固定概念が、タッくんには無いからね」

    無知故の思考の無垢さ。これが優れた洞察力と噛み合えば、タクマは優秀な軍師になれる……かもしれない。

    「それで、他の理由は? 先ず一つって言ったってことは、当然他にもあるんでしょ?」

    「もう一つだけございます。言わずもがな……ですよ」

    「――そうね」

    アリスを魔女と知って、それでも好意を持っている人間。その存在価値がどれ程かを、タクマは自覚していない。
    どんな希少な宝よりも、その価値は尊く――。

    「アリス様の真の目的を達成する為に、彼の存在は不可欠です。それを私達は肝に銘じた上で今後に臨んでいかなければなりません……不本意ですが」

    「分かってるよ、ミラちゃん。絶対、アリス様の望みを叶えてあげようね」

    「ええ、絶対に――」

    アリスから受けた、一生を懸けても返しきれない程の恩を返す為に。
  42. 42 : : 2018/02/17(土) 23:48:50



    ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



    月下、屋敷の前庭に佇む、絶世の美少女。彼女の美貌を以てすれば、魔界の気味の悪い紅い月光でさえも、その美しさを引き立たせる化粧と化す。

    月光の照明に照らされる美少女――アリスの姿に、タクマは魂を奪われたかのように呆然と見入っていた。

    「ボーッとしてないで、タクマもこっちへ来たらどう? 日中の景色とはまた違った良さがあるわよ」

    「おう」

    アリスの指摘を受け、タクマは彼女の下へと小走りで向かう。彼女の傍らに辿り着くと、そこには紅く染め上げられた森林、そしてデミッカ村の眺望が待ち構えていた。
    アリスの言う通り、歓迎会へ向けた出発の時に眺めた景色とは一味も二味も違う。だが、彼女の言う良さはまたしても感じられなかった。まだまだ魔界の空に慣れるには時間が掛かりそうだ。

    「ところでアリス、こんな夜更けにわざわざ呼び出した理由は?」

    「ごめん、迷惑だったかしら?」

    「そ、そんなことはないって! 元々しょっちゅうこの時間帯まで起きてるし。ただ、どうしてだろうって気になっただけ」

    純粋な興味から聞いただけだったのだが、あらぬ誤解を生みアリスに申し訳なさそうな顔をさせてしまった。タクマはその誤解を直ちに正そうと、慌てて本意を明かした。

    「そう……、なら良かった。タクマを呼んだ理由は、ちゃんとお礼を言う為が一つ」

    「お礼なんてとんでもない。寧ろ、俺が言いたいぐらいだ」

    カーミラに何度も言われたように、タクマは無知で無力だ。魔界で生きていく術など、何一つ持たない凡人だ。そんな凡人が今こうして平凡な生活を手に入れている、それは奇跡と言って遜色ない。そしてその奇跡をもたらしてくれたのは、紛れもなく――

    「アリス、君のお陰で俺は今を生きてる。改めてありがとう」

    「ど、どう……いたしまして」

    お礼を言うつもりが、逆になってしまったことに困惑しながらも、アリスの表情はどこか嬉しそうだ。

    「――って、お礼を言われるのは私じゃなくてタクマの方! 私を支えてくれるって、そう言ってくれて嬉しかった。だから、ありがとう」

    「どういたしまして。……だけど、アリスは最初俺が仲間になることに反対だったよな」

    「それは、そうだけど……。こっちにも色々あるの」

    タクマの指摘に言葉を濁すアリス。タクマは、本当はアリスの本心を知っている。最初反対していたのは、タクマの身を案じていたから。それを決して自分では言わないところも彼女の美徳であり、損をしてしまうところでもある。
    ただし、余り戦力にならないであろうタクマの陣営加入にここまで礼を尽くそうとするのは、彼女のお人好しさだけによるものではない。

    「そう、タクマを呼んだ理由のもう一つはその色々を話す為よ」
  43. 43 : : 2018/02/17(土) 23:50:01

    そのお人好し以外の理由を話すと、アリスは言う。それは、タクマにとって待ち焦がれていたものであった。アリスがタクマを本当に信頼してくれたという証明になるからだ。
    だが同時に、少し怖くもあった。今まで見ることのなかった、アリスの闇の部分を垣間見ることになるかもしれないからだ。無論、多少のことではアリスへの忠義が揺らがない自信はある。しかし、ここは魔界。アリスも見た目は美少女だが、魔族の一員でもある。タクマの想像の及ばない何かを抱えていてもおかしくはない。もし、そうであった時……、

    自分が心変わりしてしまわないか、それを考えると怖かったのだ。

    「ただ、色々って言っても今話すのはその中でも一番大切なことだけ」

    「一番大切なこと?」

    「うん。それは、私の本当の目的。――野望って言った方が正しいかしら」

    野望という言葉に、タクマは一層の怖気を覚える。だが、ここで聞きたくないなどというわけにはいかない。アリスの信頼に、応えなければ。

    「私の野望、それは――」

    固唾を飲み込んで、アリスの言葉に備える。

    「魔界を統べる大魔王になること。そして、人間と魔族の共存を実現する事よ」

    「――――」

    その言葉を聞いたタクマは、絶句した。

    「ちょ、ちょっと、何で黙っちゃうの!? やっぱり、馬鹿みたいだって思ったんでしょ!」

    ああ、そうだ。馬鹿みたいだなって思った。そう思ったら、今度は笑えてきた。

    「今度は笑って……、絶対、馬鹿にしてるでしょ!」

    「――馬鹿になんてしてないよ」

    アリスはアリスである、そんな当たり前のことに気付けなかった自分が馬鹿らしくて、笑えて、そして――、

    「礼を言うのはやっぱり俺の方なんだなって、そう思っただけだ」

    こんなことを言ったら、またアリスは礼を言うべきなのは自分だと主張するだろう。

    大魔王となり、人間と魔族の共存を実現する。
    常人ならば口にすることさえ憚られるような大き過ぎる野望。そして、非現実的過ぎる願い。当人達とて、奇跡でも起こらなければ到底叶わないことは理解しているに違いない。
    そこへ現れた奇跡――それが、無知無能の凡人タクマだ。
    魔界に現れ、アリスへの忠義を抱き、魔族に何の偏見も敵意も持たず普通に接する人間、真に理想像といえる存在だ。彼女達が将来、本当に大魔王になれたなら、人間と魔族の共存に本格的に着手できる時が来たならば、その存在がもたらす希望は計り知れない。
    だからアリスは、タクマにここまで礼を尽くそうとするのだ。

    「――だから、お礼を言うのは私の」

    「アリス」

    予想通りのアリスの言葉を遮り、タクマは彼女の名を呼んだ。そして、告げる。

    「そのお礼は、後でもらうよ。アリスが魔王になって、大魔王にもなって、人間と魔族が共存できるようになったら、その後で、アリスの最高の感謝を、俺にくれ。約束だ」

    「……うん。約束よ」

    彼女の顔を微かに朱色に染め上げるのは、月光によるものかそれとも――。




    -02fin-
  44. 44 : : 2020/10/26(月) 14:55:48
    http://www.ssnote.net/users/homo
    ↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️

    http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
    ↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
    ⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️

    ⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
    10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
    みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
    今回は誠にすみませんでした。


    13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
    >>12
    みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
    現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました

    私自身の謝罪を忘れていました。すいません

    改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
    今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
    あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
    SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
    本当に今回はすみませんでした。




    ⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️

    http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi

    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️

    56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ごめんなさい。


    58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ずっとここ見てました。
    怖くて怖くてたまらないんです。


    61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
    お願いです、やめてください。


    65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    元はといえば私の責任なんです。
    お願いです、許してください


    67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    アカウントは消します。サブ垢もです。
    もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
    どうかお許しください…


    68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    これは嘘じゃないです。
    本当にお願いします…



    79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ホントにやめてください…お願いします…


    85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    それに関しては本当に申し訳ありません。
    若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
    お願いですから今回だけはお慈悲をください


    89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    もう二度としませんから…
    お願いです、許してください…

    5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
    ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
    本当に申し訳ございませんでした。
    元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
    私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
    今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。

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