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第五騎竜偵察隊

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  1. 1 : : 2020/02/08(土) 11:58:48
    お題有りssに飛び入りで参加させてもらいました!お題は下記の通りで進めさせていただきます!

    お題
    ・お風呂
    ・夕焼け
    ・光
    ・シール
    ・崖

    次スレより本編です
  2. 2 : : 2020/02/08(土) 12:01:01
    「もしも、魔法使いなれたら…」
    「もし、俺が勇者だったら…」

    そういうのを彼だって想像しなかった訳ではない。

    しかしながら、「空想」というモノは大概にして現実より甘いモノである。

    甘いから、人は求める。

  3. 3 : : 2020/02/08(土) 12:01:26
    気がつくと、俺は温の中にいたんだ。

    荒唐無稽の極みだがそうとしか説明のしようがない。

    俺は、唐突にそこに居たんだ。まるでリスポーンでもしたかのように。

    腕を振り、脚をバタつかせ水面を目指した

    だが…

    幸いにして、そこは足が着く程度の深さであった。

    「幸い」なんて思ったのは3秒後までだったけど。

    「ブハッ……! ハァハァハァ!!」

    数秒ぶりの酸素を味わう余裕は俺には与えられなかった。

    「貴様……ッ!!ここで何をしている!!」

    女声が聞こえてきたと思ったら俺の意識は再び闇に蹴落とされた。
  4. 4 : : 2020/02/08(土) 12:04:13
    ~懲罰房~

    さて、俺は何故こんな所にいるのか。

    覚えている事から整理してみよう。

    名前は…… 遠山 蛍一(とおやま けいいち)。歳は… 確か17だったと思う。

    ………………

    やはり、どう頭を捻っても湯に落ちる前の事は何も思い出せない。

    覚えているのは名前と歳、あとは… ここが少なくとも自分の帰るべき場所ではないという事。

    「おい!のぞき野郎!食事だ。」

    そして、なぜだか女湯に侵入した嫌疑をかけられ独房にブチ込まれている。

    蛍一「のぞき野郎……?」

    監守「事実じゃねぇか。ここの隊長サンの湯浴み覗いてたんだろーが」

    蛍一「気付いたら… そこにいたんだ…」

    監守「ハッ! 無意識に覗いてたってか!無害そうな面してとんだクソ野郎だな」

    蛍一(覗きから離れてくれよ…)

    監守「とにかく!さっさとソイツを食って取り出し口に置いとけ!」

    木のトレーには古そうなパン、水、塩があった。

    監守「ったくよぉ… お前くらいの歳のヤツらは立派に…」

    その後の事はよく聞こえなかった。

    ……産まれて初めて「クサイ飯」を食ったがやはり美味いモノではない。




    翌日

    蛍一「さむ…っ!」

    堅いベッドと煎餅蒲団で体は冷えきっていた。

    今は冬なんだろうか?俺はいつまでここに居るのか?

    が、そんな心配事はする必要がなくなった。

    監守「着いてこい、覗き野郎。」

    蛍一(まだ言うのか…)

    監守「念のため聞いとくがお前歳は?」

    蛍一「17だったと…」

    監守「なら兵役には充分だな」

    蛍一「は? 今なんて…」

    監守「お前もこの国の役に立って来ンだよ!!」

    背中をど突かれ出た先はグラウンドのような場所。

    既に俺と同じくらいの男女が整列させられていた。

    視線に耐えかね、俺も列に並んだ。
  5. 5 : : 2020/02/08(土) 12:04:50
    「整列! 気を付け!」

    思わず、背筋を伸ばしてしまう。

    蛍一(なんか… さっき兵役とか言ってた気がするな……)

    「これより、貴様らウジ虫を殺戮機器に昇華する!!」

    映画か何かでしか聞かないようなセリフが教官らしい男の口から飛び出す。


    「返事!!!」


    「はい!!!」


    結論から言って、「兵役」というのは嘘でも聞き間違いでも何でもなかった。

    こんなに運動したのは多分産まれて初めてだし

    産まれて初めて銃を持ったし

    産まれて初めて投げられ…蹴られ…ぶん殴られた……
  6. 6 : : 2020/02/08(土) 12:06:29
    訓練生宿舎

    日が暮れてからフラフラと宿舎へ向かう人の群に俺も着いていく。

    蛍一「確か… 部屋は……」

    今は余計な事を考えるのは止そう。 そんな余力も無い。

    「おい!あと半鐘でメシだぞ! 寝るなよ!」

    どうやら同じ部屋になったらしい同輩の声でなんとか現実に帰ってきた。

    蛍一「悪い… 食堂は確か……」

    「1階に降りて左だよ! 聞いてなかったのか?」

    ……こいつとルームメイトになれた事は目が覚めてから一番の幸運だったかも知れない。



    食堂

    恐らくは10代後半がこの食堂のほとんどを占めている割には整然とした食事風景だ。多少、雑談の声が聞こえるくらいだ。

    蛍一「……………」

    このに来てからというもの、美味いと思えるモノは口にしていない。昨日食べたクサイ飯よりはマシだが。

    「『期待してた程じゃねぇな』って顔だな?」

    件のルームメイトがトレーを抱えて隣に座った。

    「これでもマシな方って聞いてたんだけどなぁ。やっぱ訓練生程度じゃこんなモンか…」

    ルームメイトは勝手に話を進める。

    蛍一「なぁ、お前は…」

    「おっと… 悪い悪い、まだ名前も言ってなかったっけな」

    ロイス「俺はロイスってんだ。ま、短い間かも知れねぇけどよろしくな!」

    蛍一「あぁ… 俺は蛍一。ホタルに…漢字の1って書くんだ。」

    ロイス「え? ホタル?? カンジ…??」

    蛍一「いや、だから漢字っていうのは…」

    指で蛍一の漢字を書いてみるがロイスには一向に通じない。

    ロイス「お前… もしかしてここいらの出身じゃないのか?」

    蛍一「た…たぶん……」

    ロイス「多分って………」

    ロイス「ま、まぁ 答えたくなけりゃ… 聞かねぇでおくぜ…」

    答えたくないと言うよりは答えられないのだが…

    ロイス「ともあれ!よろしくな!ケーイチ!」
  7. 7 : : 2020/02/08(土) 12:07:20
    部屋に戻るとロイスの他にもう1人ルームメイトがいたがそいつは既に寝ているようだった。

    やがて、ロイスも床に就くと消灯時間となり、月明かりだけが窓から差してくる。

    そして、これはロイスには言っていないあの食堂で思い出した事がある。

    蛍一「俺って多分… あんな風に誰かと飯食った事なかったな…」

    食堂に入ったあの時。唐突に、見覚えのある光景が脳内に浮かんだ。

    同じような格好をした同い年くらいの男女が大小様々なグループを作って食事をしている。

    俺は… どうやらそのどれにも属していないようだった。

    居ようが居まいが、目の前にいる男女が気付く事はなかっただろう。

    だが、やはり自分の帰る場所はフラッシュバックにみたあの景色だという気がしてならない。

    そして、ここに居た時から気になっていたこと。

    蛍一「漢字… 俺はいつこんなモノを…?」

    蛍一「逆か? そこいらにある字を俺は読めている……」

    何かが決定的に矛盾しているのにその矛盾の正体は… はっきり言ってさっぱり不明だ。

    といって、その矛盾を打開する手立ても見つからない。

    今はとにかく、目の前にある障害に立ち向かうしかないのかも知れない。

  8. 8 : : 2020/02/08(土) 12:09:39
    ~Tips~


    半鐘

    古くからここでは昼は日時計、夜は月時計により時間を測ってきた。半鐘とは鐘を1回鳴らす事。分に直しておおよそ25~30分である。

    新月の夜には鐘を鳴らす鐘番は休業である。
  9. 9 : : 2020/02/08(土) 12:19:00
    翌日

    起床ラッパと共に宿舎にいる全員が飛び起きる。

    俺もボーッとはしていられないようだ…

    2日目からいきなり銃を用いた訓練となった。

    教官のピリピリした表情と日程の過密さからもこの国の状況はだいたい見て取れる。

    なんでも俺達はあと13日程で訓練期間を終え、配属となるようだ。

    正直1年はここにいる覚悟だったが別の覚悟が要るらしい。

    午前中でいっきに銃の分解、組み立て、点検について学んだ後は…

    いよいよ実射だそうだ。

    射撃場

    俺たちが使うらしい銃はマシンガンだとかアサルトライフルみたいな洒落たモノとは程遠かった。

    とはいっても特別冷遇されているわけではない。

    この上下二連魔導小銃は今現役バリバリなのだそうだ。

    独特な発射音と同時に的が砕ける音がした。

    ロイス「っしゃあ!」

    「次弾装填! 次、二連射!」

    平たく言うならこの銃はレーザービームを続けて2発撃つ銃だ。弾丸ではなく光線が飛ぶため新兵でも標的に当てやすい。これが現役を張り続けているのにはこういう理由もあるのだそうだ。

    「1発目を撃ち終わってから照準を合わせるな! 1発目の時点で2発目の照準もあわせるんだ!」

    やはり銃である以上、反動は付き物だ。二連射を連続して当てるのは容易ではない。

    「よし! 次の者に代われ!」

    蛍一「…………」

    これが俺が戦場で命を預けるらしい銃の重さ。

    隣に目をやると、もう1人のルームメイトがそこにいた。

    昨日、俺たちに先んじてさっさと眠りに就いていたあいつだ。

    蛍一(なんか… 目つき違うよな……)

    「俺じゃなくて的をみたらどうだ?」

    横顔を覗いたのはバレていたようだ。

    蛍一「分かってる!」

    「よし、それでは始めるぞ…」

    「装填!」

    薬室に光が封じ込められた小ビンのようなカートリッジを2発込める。

    「狙え!」

    言われた通り、照門と照星そして的が一直線になるように構える。

    「撃ッ!!」

    引き金を引き終わると既に光線は的を貫通していた。着弾までのタイムラグが無に近い。

    「さて、二連射だな。 今日のところ2発とも急所に当てた者はいないが…」

    1発装填し直し、次の的に狙いを定めた時。

    銃の角度を微妙に上げ下げしていると、奇妙な光景が目に映った。

    蛍一(こいつは……なんだ…!?)

    うっすらと、的に孔が2つ空くビジョンとそうでないモノが視界に映った。


    俺は先程のビジョンが映った時の角度に銃を合わせ…

    引き金を2回引いた。

    強烈な反動に銃身は跳ね上がり、思わず目を閉じる。

    「ほう… 二連射を当てるか……」

    「それも2人か」

    瞼を開くと、目の前の的は2つ風穴を空けていた。

    そして、隣にいたアイツも同じ様に2つ風穴を作った。

    「しかしトーヤマの方は目を閉じているな。早い内に直せよ」

    蛍一「は…ハイ!」






    それから数日の訓練の間。例の「ビジョン」によって、俺の射撃訓練での成績は同期の中でもかなりの上位に食い込む事が出来た。

    しかし、それ以外の所では良くてやっと平均といった所だった…

    特に魔術の成績が酷かった。

    蛍一(一体……俺はどんな所に来ちまったんだろう…?)

    蛍一(火だとか電撃は手から出るもんだったか…?)

    聞くに、成績優秀者は「騎竜隊」への入隊を推薦される。

    ドラゴンに乗って戦う兵士だそうだが。

    蛍一(……もしかしてパイロットって事か?それともマジでドラゴン…??)

    ロイス「残りの日数も少なくなってきたな」

    蛍一「…あぁ、ロイスはどうなりそうなんだ?配属。」

    ロイス「もうちょい頑張れば騎竜隊に推薦されるみたいだけど正直悩んでるな」

    ロイス「俺高い所ダメなんだよ…」

    ロイスは何とも器用な男だ。

    射撃、魔術、格闘、基礎体力測定。

    その何れにおいても平均以上の実力を持っている。

    オマケに手先も器用で武器の分解修理も早い。

    ロイス「まぁ、陸上専門の騎竜隊もいるらしいけどな。ケーイチの方は?」

    蛍一「俺は選抜射撃手にならないかって言われてる…」

    ロイス「へぇ~ 要は狙撃手みたいな感じか」

    選抜射撃手とは前線から少し内側に下がった地点から長距離武器を運用する射撃手だ。

    主に対竜手砲の使い手を言うのだそうだが俺も正直、あまり深い所まで理解はしていない… というか出来なかった。

    そもそもここに来るまで、例の女湯以前の記憶が全く無い。

    というか普通、覗きの疑いをかけられたヤツに兵役なんか任せていいのか?

    ……考えるのはよそう。どういうわけか何も考えずに流されるままの方がしっくり来る。
  10. 10 : : 2020/02/08(土) 12:20:25
    ロイス「…で? そちらさんは?」

    ハッと現実に戻された。

    「………」

    彼の名前はシュタイン。俺やロイスと同じルームメイトであり、同期ではほぼ全ての科目において首席を獲得している。

    シュタイン「決まっている… 俺はもちろん騎竜兵になる。」

    ロイス「さすが首席だねぇ…」

    シュタイン「お前らとは事情が違うだけだ。俺は俺の意志でここに来た。」

    自分なりには一生懸命やっているつもりだが、やはり無理に連れて来られた者もいるのだろう。何度が脱走騒ぎもあった。

    だが、この訓練所に落第は無い。

    ここへ来た者は全て前線送りなのだから。

    シュタイン「……今日はこの上を騎竜隊が通るんだそうだ」

    ロイス「あぁ~じゃあ集会っていうのはそれかな」

    「訓練生は全員中央広場に集合!」

    休憩が終わって早々、全員に集合がかかった。
  11. 11 : : 2020/02/08(土) 12:21:41
    「お前達の中にも騎竜兵に志願する者が何人かいるが…騎竜兵というのは我がバルドラ帝国兵にとって最も誉れ高く最も強大な戦力である事は皆も承知の通りだ。」


    俺は今初めてこの国の名前を知った所だが…

    「この国を千年以上に渡り護り抜いてきた"騎竜兵"の姿… お前達もしかと目に焼き付けておけ……」


    「第一騎竜戦闘団 第五騎竜偵察隊に敬礼!」

    そして、俺は改めて自分が元いたであろう場所とは全く異なる所である事を自覚させられた。

    騎竜兵の名の示す通り、彼等は竜に股がり大空を駆ける。

    大きく広げた翼、発達した脚部と爪、そして牙の並ぶ顋。

    "ドラゴン"とは比喩でも何でもなく、まさに竜その物だった。


    見入るあまり、敬礼を忘れそうになる。

    この国では敬礼は拳を握り腕を水平に胸の前で掲げる。

    空にいる騎竜兵も同じ様に敬礼を返した。
  12. 12 : : 2020/02/08(土) 12:24:59
    正直、あの日見た騎竜兵はカッコいいと思っていたし、少なからず憧れのような感情もあった。

    ロイスもシュタインも揃って騎竜兵に推薦され、専門的な訓練を更に積んだ後戦場に出るのだそうだ。

    俺は勧められた通り選抜射撃手となり…

    今まさに戦場にいる。




    北方防衛戦線 レストレイド城塞 第一城壁

    「選抜射撃隊へようこそ新兵。」

    「ま、お互い精々生き残れるように努力しようぜ」

    この気の良さそうな男2人が俺の指導役という事らしい。

    蛍一「よろしくお願いします。」

    「よし、早速だが対竜手砲の扱いは覚えたか?」

    蛍一「はい、頂いた教本でおおよそ頭に入れました…」

    「速やかに全て頭に入れるんだ。でなければ死ぬぞ。」

    「まぁ"見聞より体験"だ。まずは実際射つ所を見てみろ。ほれ」

    双眼鏡を投げ渡された。

    城壁の下は既に戦場と化している。

    レーザービームの翔ぶ先には地面が見えない程の… 多分敵が押し寄せてくる。

    「移動速度… およそ15ハイン、距離1500トエル…」

    「右の岩壁の方から数えて5番目の竜車が見えるか? アレを撃つ。」

    なるほどこの国では戦車の事は竜車と呼ぶらしい。

    蛍一「この手砲で… 本当に倒せるんですか?」


    「どんなヤツが相手で… こちらの武器が何であろうと必ず殺りようはある。」

    「そろそろ射つぞ。的をよく見ておけ。」

    砲撃の音と共に光が線を成して飛翔し…


    戦車…いや、竜車のキャタピラを吹っ飛ばした!

    "足が止まったぞ、そっちから見て5輌目だ"

    次の瞬間、砲声と共に竜車は炎に包まれた。

    「今はお前にも分かるようにパトルスを送った。あの岸壁を見てみろ。」

    このレストレイド城塞は険しい山に切れ目を入れたような谷の底にそびえる北方方面最大の防衛拠点だ。

    この国に外部から入る為には空から入るルート、南方戦線の海から入るルート、そして陸からはこの谷を通るしかない。

    バルドラを囲む山は健脚を持つ陸竜を運用する陸上騎竜兵以外はまともに移動出来ない程に厳しく深い。

    ましてや竜車や歩兵の大軍を率いてこの山を越えるのはかなり無理のある話だ。

    竜車はそもそもこの山を越えられないし
    歩兵の大軍は山の地形を知り尽くしたバルドラの陸上騎竜兵や野性生物のエサとなるだけだ。

    バルドラに陸から侵攻するならばやはり広く開けた谷底から大軍を送り込む。

    それを阻むのが三重の城壁と堀から成るこのレストレイド城壁だ。

    そして、先ほど先輩方が指した場所。

    この深い谷を形成する2つの崖の内部には無数のトンネルと銃眼が設けられている。竜車に止めを刺した攻撃は岸壁のトンネルにいる部隊のものだ。

    つまり、谷底を攻め上がる側はレストレイド城塞から放たれる前方からの攻撃と岸壁に開けられた銃眼からの上方の攻撃に曝される事になる。

    バルドラは現在、陸からのカザフラ王国、海からのメルキア国からの侵攻を受け2正面作戦を強いられている。

    にも関わらず、水際で食い止められているのはまさにこの地形とそれを利用した要塞、そして騎竜隊の力によるものだ。
  13. 13 : : 2020/02/08(土) 12:27:15
    「次はお前が射ってみろ。」

    手砲のグリップを握りスコープを覗く。

    「いいかこの手砲は下の連中が使う魔導銃とは違って実弾も出る。だから弾道の計算が要る。」

    「とりあえず… あの味方の展開を妨げてるあの機関銃がいるだろう。スコープにおおよその目安が振ってあるから…あとは自分で調整しろ。」

    蛍一「これ1本で竜車を倒す事は可能でしょうか?」

    「貪欲だな。そのうち教えてやる。だが今はあの機関銃を黙らせるんだ。」

    ビジョンに従い、俺は引き金を引く。

    うっすらとではあるものの、弾の軌跡、着弾した後の様子まで見ることが出来る。

    これは未来への動きを教えてくれる。

    機関銃が吹っ飛び、銃手は崩れ落ちた。

    「見事! 初弾で当てたか…」

    「お前… 初めて人弾いた割には冷静だな」

    「カロイ… 今は」

    蛍一「…仮にイヤだと言ったら… 戦いに参加せずに済みましたか?」

    「………………」

    「相棒が失礼を働いたな、そうだ。今は目の前の事に集中するしか無いな。」

    「すまん… いい腕だったぞ! 今度は観測について…」

    そうだ… "そうするしかない"んだ。

    これしか道はないからここを進むしか無いんだ。

    どういうワケだかこの国に攻め入るためにこの崖下の道を往く奴らのように。
  14. 14 : : 2020/02/08(土) 12:29:40
    ~Tips~

    パトルス

    念話を通じて相手の意識に直接語りかける事により音を発せず、離れた相手とも意思のやり取りが可能な魔術。

    この魔術があるため、バルドラは通信インフラに乏しい。
  15. 15 : : 2020/02/08(土) 12:31:44
    国が追い詰められている選抜射撃手としての生活は想像通り忙しいモノだった。

    本来、選抜射撃隊は観測手と射撃手のツーマンセルで作戦を遂行する。

    しかし、俺のチームは先輩2人と俺の3人で敵を射ちまくっている。

    俺に付く筈だった観測手が死んだためだ。

    1日でやる事は迫り来る敵をビジョンに従って引き金を引き続けるだけ。

    「この所更に攻撃が激しいな… 騎竜隊も手が回りきっていない」

    「"鉄竜"がここまでやって来ると厄介ですね…」

    蛍一(竜車が戦車って事は…)

    蛍一("鉄竜"はやっぱり……)

    下が騒がしくなってきた。

    「騎竜隊が掩護に来たぞ!」

    「……バカ!あれはちげぇ!」

    「鉄竜が来るぞ!!」

    城壁の上にも緊張が走る。

    「新入り! やる事は分かるな!!」

    蛍一「もう狙ってます!!」

    羽根が2枚重なった飛行機が4機こちらへ向かって来る。

    羽の下には何やら黒い円柱のようなモノが見える。

    「右から殺るぞ!! 3人で同じ的を狙う!」

    噴水のように吹き上がって来る弾を突っ切って鉄竜が突っ込んで来る。

    「機銃で殺れよ!」

    「ダメだ! 今そっぽに向けたら歩兵が突っ込んで来るぞ!!」

    「塹壕から出るな!墜落に巻き込まれるぞ!!」

    下も混乱しているらしく絶え間なくパトルスが飛んでくる。

    「…よし!」

    先輩がエンジンに当て、1機落とした。

    蛍一(よし…俺も…!)

    ビジョンのお蔭で敵の未来位置が分かる。

    2機目、3機目も地面に吸い込まれていった。

    「爆弾抱いたまま死にやがれ…!」

    「まだ1機いる! 奴らの狙いはこっちの城壁だぞ!!」

    ヤツの動きはこれまでの3機とは違った。

    「ちょこまかと……!」


    上下左右に細かく機体を揺らしながら射弾をかわす。

    そのせいか…

    蛍一(どれだ……? )

    本来、未来位置に映るはずのビジョンが今は2つ見える。

    蛍一(未来への動きが2つ……!?)

    「何してる! お前も撃て!!」

    「当たらなくてもいい!撃つんだ! このままでは投弾される!!」

    俺は直感で……

    上のビジョンを撃った。



    ………………当たりだ。

    鉄竜が火を吹いた。

    「やった!」

    「やるな…! だが当てる事にこだわり過ぎだ。射撃には進路を妨害する役目もある。次は…」

    「……待て! ガロス!まだだ!!」

    プロペラも止まり、機体が炎に包まれてなお……

    その1機は進路を見失わない。

    「クソッ!! 撃て!!」

  16. 16 : : 2020/02/08(土) 12:35:22

    ビジョンで見た光景と現実すぐに一致した。

    爆音と衝撃が第一城壁に鳴り響く。

    「ぐおっ!」

    そして、城壁が崩れ去る…

    ビジョンを俺は見た筈だった。

    「はは……っ! ざまぁ見ろ! このレストレイドの城壁がそんなチンケな爆弾で崩れるかよ!!」

    蛍一「…………」

    蛍一(俺が見たどのビジョンでも……あいつは爆弾を投下しなかった…)

    蛍一(あいつは…… 最初からこれを……?)

    蛍一(それに…… あの城壁が吹き飛ぶビジョンは………)

    「……ガロス! どうした!」

    先輩の声で現実に戻される。

    「メルド…… すまん 負傷した……」

    「しっかりしろ! 傷は深くねぇ!」

    「おい新入り! 地下の治療所まで行って回復薬を持ってきてくれ!」

    「俺はここで止血する…! 早く行け!!」

    蛍一「了解!!」
  17. 17 : : 2020/02/08(土) 12:36:24
    転がるように階段を降りると、やがて薬品と血の匂いが鼻を突いた。

    蛍一「すいません! 回復薬を……!」

    「薬品庫にあるからさっさと持っていけ!!」

    叫び声が聞こえる病床には… 目をやらない事にした。

    治療所のすぐ隣が薬品庫になっている。

    蛍一「回復薬…… これか?」

    棚に所狭しと薬品のビンが並ぶ。

    ビンに緑色の液体が詰められている。「いかにも」って感じだ。

    蛍一「早く戻らなきゃ……!」

    踵を返そうとしたその時……

    蛍一「じ……地震!?」

    立っていられない程に地面が揺すられる。

    蛍一「くそっ……! デカいぞ!」


    "バキッ!!"

    ここで一番聞きたくない音が耳に入った。

    蛍一「ぁああああああああああああああああああああああああ!!!!」

    最後に目に入ったのはビンの雪崩だった。
  18. 18 : : 2020/02/08(土) 12:40:20
    ______
    ____
    __




    どれ程時間がたったのか。

    蛍一「ぶっヘッ!! ゲホッ! ゔぉええぇ……!!」

    緑色の液体が口から飛び出た。

    棚は崩れ、薬品は床にプールを形成し、ランプが落ちたためだろう。所々火の手が上がっている。

    蛍一「そうだ…! 回復薬!」

    瓦礫と薬品のプールの中から無事なビンをなんとか見つけた。

    蛍一(外服用と内服用があるって聞いたけど… 俺が今ケガしてないのは外服用の回復薬に浸かったおかげか…)

    火の手の中から燃えた瓦礫を取り出し、来た道を戻る。

    治療所はすっかり静かになっている。というより上からも何も聞こえない。

    蛍一「一体…… 何が起こったんだ…?」

    どれ程時間がたったのか。

    蛍一「ぶっヘッ!! ゲホッ! ゔぉええぇ……!!」

    緑色の液体が口から飛び出た。

    棚は崩れ、薬品は床にプールを形成し、ランプが落ちたためだろう。所々火の手が上がっている。

    蛍一「そうだ…! 回復薬!」

    瓦礫と薬品のプールの中から無事なビンをなんとか見つけた。

    蛍一(外服用と内服用があるって聞いたけど… 俺が今ケガしてないのは外服用の回復薬に浸かったおかげか…)

    火の手の中から燃えた瓦礫を取り出し、来た道を戻る。

    治療所はすっかり静かになっている。というより上からも何も聞こえない。

    蛍一「一体…… 何が起こったんだ…?」

    入ってきた地上への階段は瓦礫で塞がれている。

    蛍一「大地震でも起きたのか…?」

    瓦礫を押しのけ、地上へ戻ると…

    すぐに答え合わせができた。


    蛍一「………は?」

    ビジョンは間違っていなかった。

    第一城壁は内側、つまり第二城壁側から吹き飛んだ形跡がある。

    そして第一、第二城壁にとどまらず…

    第三城壁も無残な姿を晒していた。

    第二城壁に至っては石材や何やらが熔けたような形跡さえある。

    どう見たって地震の仕業じゃない。

    蛍一「一体……何が起きたってんだよ………」

    バルドラを千年に渡って守り抜いたと言われるレストレイド城塞はいつの間にやら陥落していた。

    蛍一(味方と合流するか…? いや、そもそもどこに行ったんだ? そうだ…!先輩は……)

    「おい!誰かいるのか!」

    バルドラの兵士とは全く違う装い。


    ………敵だ。

  19. 19 : : 2020/02/08(土) 12:41:54
    とっさに瓦礫の陰に身を隠した。

    「……なんだよ 何もいねぇじゃねぇか…」

    「早くしねぇと酒がなくなっちまう……」

    蛍一(なぜ……敵がこんな所まで…)

    蛍一(どうする… どうするどうするどうするどうする……!?)


    ガタンッ


    瓦礫が音を立てた。

    俺が手を乗せたせいでバランスが崩れたらしい。

    「……ッ! バルドラの生残りか!?」

    ………最悪だ。当たってる。

    銃を携えた兵士がこちらへ歩いて来る。

    一応、こちらだって拳銃くらいはある。

    しかし、あれ1人を今倒せた所で意味は殆ど無い。

    蛍一(畜生………ッ!!)



    「り…竜だ!! 竜がここに!!」

    一か八かで拳銃に手を伸ばした時、それはやって来た。

    「ギャアアアアアアアアアアアアア!!」

    空からやって来たそれはいとも容易く敵兵の頭を噛み砕きどっかへ放り投げた。

    と… 同時に、ぐったりと倒れこんでしまった。

    蛍一「だ…… 大丈夫ですか!」

    竜の背中から人が転がり落ちてきた。

    「……ハァ… ハァ………」

  20. 20 : : 2020/02/08(土) 12:44:09
    蛍一「そうだ…! これを……!多目に持ってて良かった」

    蛍一「回復薬です! これを!」

    およそ40代以上だろうか?その男は俺の目の前に手を出しそれを阻んだ。見るに耐えられない程の重傷であるのに関わらず。

    「それは…カイル…… 俺の竜に使え………俺は… もう助からん……」

    蛍一「何を言って……!」

    「頼む! 聞いてくれ!! 俺はもう… 隊長の元までは…… もたん………!」

    「第一騎竜戦闘団隷下… 第五騎竜偵察隊隊長……ルリア・ホーキンスに……これを……」

    スクリオ…情報媒体だ。自身の見聞きした物をイメージし、魔力を流す事で文章、音声、映像でも記録に残すが出来る。

    ……少し焦げているが…

    「頼むぞ…… 俺は間に合わなかったが… それにはこの城塞を吹っ飛ばしたモノの……正体が…!」

    「カイルに乗って飛べば首都までは7日で着く………」

    「頼む……! 時間…が……」


    ……俺に情報媒体を渡すと彼は事切れた。

    蛍一「"レルク・シュテール印す"………」


    スクリオの表面に印された名だ。


    ______
    ___
    __


    蛍一「これが……竜………」

    彼を簡単に埋葬し、改めてその竜に目をやる。

    1度はあの訓練所で目にした竜が今手に触れる場所にいる。

    この竜もやはりあちこちに深い火傷がある。

    蛍一「先輩……すいません。間に合わなくて… この薬は…こいつに使います…」

    火傷の痕に回復薬をかけてやると竜の身体がピクリと動いた。

    蛍一「本当は布に染み込ませて巻くといいんだが…」

    2本持ってきた回復薬のビンであったが、全長10mくらいありそうな竜の身体を癒やすには節約してギリギリの量だった。
  21. 21 : : 2020/02/08(土) 12:46:01
    ~Tips~

    回復薬

    バルドラの山地にて採れる薬草や土を混ぜ合わせた物。外服用は殺菌作用と細胞分裂を活性化させる効果を持ち傷口を早く修復する。
    内服用は血液と骨の生成、栄養素の素早い補給が出来る。
    どちらもバルドラに生える植物でなければ精製する事が出来ない。
    しかし、両方使えば身体の半分が炭化したり脳や心臓を完全に破壊されたような状態でなければほぼ生存が可能である。

    ちなみに、外服用は飲むことでも効果を発揮するが大人でも飲み込めないくらいには不味い。
  22. 22 : : 2020/02/08(土) 12:47:12
    竜の眼が開いた。

    「グゥウウ………!」

    竜が首をもたげ、こちらを睨む。

    剥き出しにした牙が立ち並ぶ。

    恐らくさっきの兵士の物であろう髪の毛が牙に挟まっているのを見てしまった。

    そいつは俺の方から目を反らさない。

    蛍一「違う! 俺は味方だ!!」

    その竜は飛び掛かった。

    俺の頭を飛び越えて…

    「ワァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

    「撃て! 撃ちまくれ!!」

    「畜生! 竜なんて聞いてな……!」

    牙で噛み砕き、爪で八つ裂きにし、尾の刃で敵を真っ二つにするその姿に…

    俺は不思議な事に見入っていた。

    「……お前が敵ではない事ぐらい見れば分かる。」

    「パートナーの埋葬… 私の手当て…感謝の極みである。」

    「……どうした?竜が喋ったら意外か?」

    蛍一「君は確か… カイルと言ったか……」

    カイル「そうだ。産まれてより200余年…その名前で呼ばれている。」

    カイル「シュテールから… 話は聞いているか?」

    蛍一「これを… 隊長のルリアって人に渡してくれって……」

    カイル「隊長は我々とは別に南方戦線へと情報収集へ向かわれた。情報を持ち帰り、我々と首都で合流する。」

    カイル「スクリオは首都にある解読機でなければ読み解けぬからな。」

    蛍一「その… 我々っていうのは……」

    カイル「………ここに来るまでに5人と4竜を喪失した。今は私と……お前だ。」

    蛍一「……すまん。」

    カイル「お前が気にかける事ではない。それより早く乗った方がいい。」

    蛍一「わ…分かった」


    足かけから登り、鞍に跨がる。

    蛍一(俺が… 竜に……)

    カイル「丸腰で行く気か。ほれ」

    敵が持っていた短機関銃とマガジンを咥えて手渡してくれた。

    「斥候が帰らんぞ!」

    「俺らはこっち… お前らはそっちを捜せ!」

    カイル「時間が無い、飛ぶぞ。」
  23. 23 : : 2020/02/08(土) 12:48:35
    俺を背に乗せたままカイルは高く飛び上がる。

    蛍一「すごい… 羽音がほとんどしなかった…」

    カイル「派手に鳴らした方が良かったか?」

    蛍一「いや、これでいい… 首都は南だな?」

    カイル「そうだ。だが覚悟しておく事だ。カザフラ兵は"それ"を血眼になって探している。俺の事もな…」

    カイル「他の4つのスクリオは恐らく敵の手に渡ってしまったが…」

    蛍一「これに書かれている情報は…ヤツらにとってそれほどの…」

    カイル「情報という武器は多少の不利などひっくり返して余る程だ。」

    カイル「"新兵器"の詳細ともなれば尚更だろう…」

    蛍一「竜車や鉄竜の事か?」

    カイル「あるにはあるがソイツに書かれてるのは違う。」

    カイル「ここを吹き飛ばした兵器についてだ…」

    蛍一「爆撃か?」

    カイル「爆撃じゃない。"砲撃"だ。」

    カイル「悪いが詳しい事を知りたいのは私も同じだ… 私は砲台のそばまでは行ったが… 内部までは入りこめないのでな…」

    蛍一「そうか……」

    カイル「このまま夜明まで飛ぶ。そしたら一度降りるぞ。」

    蛍一「了解…!」


    満天の星空の下を俺は竜と駆ける。
  24. 24 : : 2020/02/08(土) 12:50:15
    夜明け前に森林に着陸し、それから睡眠をとった。

    ……二時間だけ。

    カイル「悪いが時間がない。多少は無理をしてもらうぞ。」

    蛍一「多少ね………」

    蛍一「どこか経由して行くか?」

    カイル「当然。私とて7日ひたすらに飛ぶ事は出来んしお前にも休息と食事が要る。」

    カイル「もう少し行った先に物資集積所がある。そこで食糧と水を手にいれる。」

    カイル「キツい道中になるぞ。覚悟しておけ。」

    蛍一「まぁ… そうだろうな…」

    そういえば最低限の装備以外は着の身着のまま城塞を後にしたのだった。

    なんとか食える実を見つけられたのは僥倖だったがなるべく早くまともな食事に戻りたい。

    集積所までは大した距離ではなかった。

    集積所があるはずの方向から煙が見えるが……

    蛍一「集積所っていうのはこの先だよな?」

    カイル「………気を付けろ。敵が見える。」

    蛍一「ここから見えるのか?」

    カイル「当然、竜の眼を見くびるな。」

    カイル「して… どうする? 我々の役目を優先するならば…無視するのが賢明だ。」

    蛍一「……助けよう。」

    カイル「何……?」

    蛍一「味方が戦ってるんだろう! 行くべきじゃないのか?」

    カイル「……フッ」

    カイル「新たな騎竜兵よ。まだ名前を聞いていなかったな…」

    蛍一「ケーイチ… ケーイチ・トーヤマだ。」

    カイル「では行くぞ!! 覚悟は出来てるな!!」

    ケーイチ「勿論!!」
  25. 25 : : 2020/02/08(土) 12:52:37
    翼を返し、煙の先まで一直線に降下する。

    カイル「やはり交戦中か… もう見えるな!ケーイチ!」

    ケーイチ「あぁ!」


    「クソ……! レストレイドが破られるなんてよ…!」

    「こんな包囲状態では物資を運び出す事もできん…!」

    「……おい!ありゃ何だ!」

    カイル「ガァアアアアアアア……!!」

    降下しながら集積所に迫る敵に銃弾を浴びせる。

    カイルが敵兵を足で掴み上空から放り投げる。

    「騎竜だ…! 騎竜が来たぞ!!」

    味方からは歓声が沸き上がる。

    「騎竜!?なぜこんな所に!」

    「狼狽えるな! 第三、第四小隊は対空射撃!」

    一瞬にして制空権を失なった敵側からは慌てる声がする。

    カイル「奴ら竜車まで出したのか… あれを倒さねばいつまで経っても味方は動けん…!」

    ケーイチ「見たところ… 竜車を破壊出来るような大砲は無いか……」

    ケーイチ「あれを倒せばいいんだな?」

    カイル「言っておくがアレを掴んで飛び上がるのは不可能だぞ。」

    ケーイチ「分かってる。竜車の上に俺を下ろしてくれ!」


    カイル「フッ…… 正気か?」

    そう言いつつも彼は竜車に向かって高度を下げ始めた。

    ケーイチ「掩護頼むぞ!」

    俺は竜車のハッチの上に飛び乗った。

    「おい!なんだ?」

    「被弾か?」

    ハッチを上から開け、銃口を突っ込み、引き金を引いた。

    「クソッ!! 騎竜兵が竜車の上にいる!!」

    「撃ち殺せ!」

    俺を狙う敵は全員カイルが相手をしてくれる。

    ケーイチ「どっかで… 主砲の向きを変えられるはず……」

    「おい!1号車! そっちは大丈夫なのか!」

    無線機から声がする。

    ケーイチ「大丈夫だ! こっちは任せてくれ」

    ひと言だけ無線に応え……

    砲塔を回す。

    ケーイチ(見える… この武器でも弾と敵の軌跡がハッキリと……!)


    竜車の砲弾が貫いたのはバルドラ兵ではなく…

    もう1輌の竜車だった。

    「がぁっ!!」

    「クソッ! 脱出しろ!!」

    そして、バルドラ兵もただ引き込もっているだけではない。

    「撃て! 蹴散らせェーー!!」


    敵兵は総くずれだ。

    「ダメだ。割にあわん。撤収だ!」

    「それにしてもあの黒い竜…… どこかで…」

    ______
    ___
    __

    「助かったぜ… まさか騎竜兵がこんな辺境まで来てくれるとは…」

    「レストレイドが大変な事になってるって聞いたが… よく無事だったな……」

    カイル「我々は急ぎ首都に戻らなければならない。レストレイドの件とも深く関係している。」

    「そうか… まさかレストレイド城塞が破られるなんて…」

    「にしてもあの兄ちゃんの竜車乗りは最高だったな!」

    「あぁ、お陰で竜車を1台無傷で手にいれられた。」

    ケーイチ「あの場では…あぁするしか倒す方法が思い浮かばなかっただけです…」

    「けどせめて今度は手投げ弾を投げ込む程度にするんだな… 持ってないなら荷物にも入れといてやるよ。」

    「俺達ももっと南へ下がって味方と合流する。せっかくの物資を敵に奪われてたまるかってんだ」

    ケーイチ「色々とありがとう… お互いに健闘を。」
  26. 26 : : 2020/02/08(土) 12:54:44
    ケーイチ「一晩飛んだ所なのに… もう竜車が……」

    カイル「敵の進攻が想定より速い… 追撃は恐らくこれだけじゃ済まんぞ……」

    カイル「飛ばすぞ!! 一刻も早く首都にに着かねば……!」


    最低限の睡眠と食事以外はぶっ通しで飛び続けて4日が経った。

    やはり陸上は少しずつ進攻が進んでいるようだった。

    レストレイド城塞は北方方面担当の騎竜兵と竜の駐屯地を兼ねていた。

    地上部隊によると北方方面の騎竜兵を見かける機会がずいぶん少なくなったという話だ。やはり騎竜隊は相当なダメージを受けたのだろう。

    ここへ来て、制空権までもが怪しくなってきた。

    ケーイチ「思ったより早く着きそうだな!」

    カイル「この分ならば明日には合流が可能だ… 」

    ケーイチ「…お前も飛びっぱなしだろう。留まっても1~2時間… 起きてんのか寝てんのか分からん状態でじっとしてるだけだし…」

    カイル「私は人間とは身体の構造が違う。お前こそ眠れているんだろうな?」

    ケーイチ「あぁ… 竜の背中に身体をくくりつけて寝るなんて初めての経験だけどな…」

    カイル「魔導師でもいればもう少し楽に…」

    カイル「………待て。ケーイチ、鉄竜の音だ。後からだ…」

    ケーイチ「どうする?撒くのか?」

    カイル「奴らを首都に招待するわけにはいかん」

    ケーイチ「やるしかないか…」

    空中で踵を返して来た航路を戻る。
  27. 27 : : 2020/02/08(土) 12:56:36
    ケーイチ「4機だ この前見たヤツより…若干大きいな…」

    カイル「カザフラ王国の戦爆機だ。後にも機銃が着いてるぞ」

    ケーイチ「後にも?」

    カイル「俺が死角に入り込むからお前は動力源にでも尾翼にでもソレを撃ちまくればいい。」

    カイル「行くぞ!! 落ちるなよ!!」


    ケーイチ「お…おい!」

    カイルは正面から戦爆機に突っ込んで行く。

    「黒い旋竜…… 情報通りだ!」

    「撃て!!」

    当然、4機全てから銃弾で迎えられる。

    カイルは…高度を少しずつ下げながら弾幕をくぐり抜ける。

    カイル「掴まれ!!」

    機体の真下に差しかかろうという時、鎌首を上げてパイロット達の頭上に舞い上がる。

    ケーイチ「何をしたんだ…?」

    カイル「私の尾でヤツらの羽根をむしってやった」

    二枚の羽根を折られた戦爆機が地面に進路を変えた。

    ケーイチ「は…速い…!」

    カイル「あんなハリボテに追い付かれはしないさ。」

    カイル「見物してないでお前も撃て」

    ケーイチ「了解だ!」

    ケーイチ「弱点は…… 動力源と尾翼…!」

    カイル「真ん中のヤツを殺る。 何ならパイロットを狙ってもいい。」

    ケーイチ「あぁ!」

    「隊列を乱すな!戻って来……!」

    「あ? おい!! 嘘だろ!!」

    主を失った鉄の竜はフラフラと高度を失なっていく。

    カイル「これで厄介なのは片付けたな」

    ケーイチ「厄介…?」

    カイル「今落としたのは隊長機と副隊長機だ。」

    カイル「狙う優先度はこう決める。」

    ケーイチ「なるほど… よく分かった!」

    残り2機のうち、1機を落としたその時。
  28. 28 : : 2020/02/08(土) 12:58:19
    最後の1機が空中で爆発四散した。

    「ハハーーッ!! やっぱ新型はたまんねぇぜェーーーーッ!!」

    カイル「ケーイチ…お前が撃ったのか?」

    ケーイチ「いや… 違う! 何か来る!!」

    エンジンの音を掻き鳴らし、何かが横を通り過ぎて行った。

    ケーイチ「凄い速さだ……!」

    カイル「追うぞ!」

    上空へ登っていったソレを追う。

    ケーイチ「さっきのヤツらとは比べ物にならない……!」

    上空に上がった敵機より一足先にカイルの速度が落ちた。

    カイル「ダメだ…! 一旦降下するぞ!!」

    180度下方に旋回し急降下するのを見るや否や

    奴も失速を利用しながら機首を下に向けて突っ込んで来た。

    重い砲撃のような音が背後から追って来る。

    カイル「チッ……!」

    翼膜に穴が空いていた。

    カイル(火力もさっきのヤツらより上か…!!)


    ケーイチ「アイツ…… 羽根が1枚しか無い… これまで見てきたヤツは全部羽根が二枚重ねだった……!」

    カイル「用心しろよ…… アレはカザフラの新型鉄竜だ…!」

    ケーイチ「新型………」

    ケーイチ「だからって…! 関係あるかよ!!」

    後に向かって撃ち返す。

    「なんだァ? ありゃ短機関銃か??」

    「口径が足りねェよ 口径がァああああ!!!」

    カイル「伏せろ!」

    敵の照準器の前をカイルは蛇行しながら飛行する。

    が、途中でその新鋭機は上空へ引き返していった。

    ケーイチ「逃げた…?」

    カイル「逃げてはいない! もう1度来る!!」

    予言通り、高度を回復した後再びこちらへ機首を向けて来た。

    ケーイチ「お前火とか吐けないのかよ!?」

    カイル「そういうのは私のような小型の竜には無理だ!!」

    カイル「お前こそどうだ?当てたのか?」

    ケーイチ「何発かは当たったが……正面からじゃダメみたいだ…」

    カイル「伏せろ! また来る!!」

    砲撃音に追いかけられながらカイルは敵の前から離れようとしない。

    カイル「クソッ! 格闘戦に乗って来ない…!」

    が、ある程度追いかけると敵は再び上空へ戻っていった。

    ケーイチ「どういう事だ?」

    カイル「ヤツはいつでも自分に有利な状況でなければ攻撃して来ないという事だ。」

    カイル「もっと言うなら… 近づいてすら来ない。」

    ケーイチ「だが… 逃がしてくれるわけでもない……」

    カイル「魔術が使えるならば…… とっくにそうしているか…」

    ケーイチ「悪いね……」

    ケーイチ「ならカイル、こういうのはどうだ?」



    ________
    _____
    ___

    カイル「正気か?」

    ケーイチ「決まれば一番確実だろ?」

    カイル「……いいだろう。」

    カイル「言ったからには決めて見せろ!」

    ケーイチ「応!!」
  29. 29 : : 2020/02/08(土) 13:04:14
    「うろちょろ避けんじゃねェーーーーッ!!」

    「役に立たねぇ部下とウゼェ敵が一番ムカつくんだよォおおおおおおおお!!」

    ケーイチ「来る!!」

    カイル「タイミングは任せろ!!」

    紅く塗られた特徴的な機体がこちらを捉えた。

    このまま真っ直ぐ飛べば… あの機関砲で俺がバラバラになるのは確定だった。

    射弾をくぐり抜け向かう先は ヤツの真横

    「何……ッ!!」

    竜が落とせないなら、飛行機を落とす火力が無いならば。

    パイロットを撃てばいい。

    鉄竜が素早くて当たらないのなら……


    それに飛び乗ってでも……!!



    口やかましい鉄の竜は下降を始める。

    ケーイチ「やべ……っ!! カイル……!!」


    言い終わる頃には足元にカイルの背中があった。

    ケーイチ「助かった… ありがとう。」

    カイル「全く… 次やる時は離脱の事も考えておくんだな。」

    ケーイチ「いや… 見えてたさ。」

    カイル「…なに?」

    ケーイチ「何でも無い。」


    カイル「しかし、操縦者を狙う… 騎竜兵にはなかなか無い発想だな。」

    ケーイチ「そうなのか?」

    カイル「騎竜兵と竜は人竜一体…… 背中に乗せた兵を殺されるのもそうだが… 殺した相手を放って逃げる等… 生き恥を晒すに他ならないからな。」

    カイル「つまり、騎竜兵が死んだところで竜は戦い続ける。故に騎竜同士の戦いでは竜を殺すのが定石なのだ。」

    ケーイチ「でも… 飛行機は自らの意思で動いている訳じゃない。」

    カイル「いいところに目をつけたな…」

    カイル「さて、直に首都だ。報告に行かねば…」
  30. 30 : : 2020/02/08(土) 13:10:39
    ~Tips~

    竜の戦闘

    ケーイチのパートナー、カイルは敵の鉄竜よりも旋回性に優れる。格闘戦(旋回を繰り返しながら敵の後ろを取る戦い)においては無類の強さを発揮する。

    それとは対照的に敵より有利な位置(敵の頭上)からまっすぐに降下し、1度攻撃を加えたら降下の速度を活かしてそのまま有利な位置に戻る戦法もある。こちらは機関砲を搭載するカザフラの鉄竜乗りがよく使うテクニックである。
  31. 31 : : 2020/02/08(土) 13:19:13

    弾丸飛行の目的地、ここがバルドラの首都バルドニス。

    国土の海沿いに位地するこの土地は北端のレストレイド城塞よりkmに直しておよそ2000kmに位置する。

    国政、商業、流通、貿易の中心地であると同時に城塞都市でもある。

    非常の際には国民全員がここへ籠城できるだけ程の面積と貯蓄がある。ここはバルドラにとっての最後の防衛線でもある。

    「騎竜兵が来るぞ!」

    門の前にカイルを止める。

    「所属と氏名は?」

    ケーイチ「レストレイド城塞防衛軍第108選抜射撃隊所属 ケーイチ・トーヤマであります!」


    舌を噛みそうだ。

    「レストレイドにまだ生き残りがいたのか!?」

    「だが何故射撃手が竜に乗っている?」

    カイル「第五騎竜偵察隊ルリア隊長に急ぎ伝える事がある。」

    「えっ? なんだ五騎偵かよ………」

    カイル「………」

    積る状況で説明に苦慮している所へ…

    彼女が現れた。

    「北門にわたしの部下が来たと聞いたが」

    カイル「隊長……!」

    ケーイチ「あれが…」

    カイルとよく似た竜からその人は降りた。

    つやの消された黒い軽装の鎧。

    それとは対照的な長く艶のある黒髪をたなびかせつつ、眼はまるで猛禽のような鋭さを湛えていた。

    そして俺には彼女に見覚えがあった。

    ケーイチ「あ… あんた……!」

    カイル「?? 面識があるのか?」

    ルリア「貴様は………!」

    ケーイチ「違う! あれは本当に事故で……!」

    ルリア「何が事故か!ぬけぬけと貴様…!」

    「……ひとまず彼の話を聞いてはどうですか? カイルと共にいるのも気になりますし。」

    カイル「助かる…」

    ケーイチ「とりあえず…! まずはこれだ。」

    ルリア「それは…? シュテールに渡したはずだが……」

    カイル「レルク・シュテールは戦死しました」

    カイル「いや、カザフラに向かった者の内… 帰って来れたのは私だけです…」

    ルリア「いや、よく戻ってくれた。カイル……」

    カイル「……トルメアに向かった者は…」

    ルリア「わたし以外… 戦死だ。」

    ルリア「成る程。『死神ルリア』というワケだ…」

    「気にする必要はありません。皆覚悟の上、命懸けで情報を得ました。」

    ケーイチ「………」

    ルリア「そちらの彼は? カイル」

    カイル「彼はレストレイド城塞防衛戦軍の生き残りです。シュテールが見つけ…緊急的に私のパートナーとなりました。」

    ルリア「貴様が… カイルに……?」

    ケーイチ「他に…方法はなかった… あの時はカイルも重傷だったし…」

    カイル「ですが、彼を背に乗せ… 確かな適性を感じました。」

    ルリア「成る程…… 」

    「カイルは評価が甘い所がありますからね…」

    カイル「ここに来るまでに敵機を撃墜しながら来たんだ。適性が無ければとうに死んでいる。」

    ルリア「お前の今後の処遇は追って伝える… ご苦労だったな。覗き魔殿。」

    ケーイチ「あんたまだ……」

    俺たちを残してさっさと飛び立ってしまった。

    ケーイチ「……お前にも新しい騎竜兵があてがわれるかな?」

    カイル「さぁ…? だが、私はお前と飛ぶのは悪く無いと思っている。」

    ケーイチ「俺もそう願う願うよ。何だか2人で戦うのに慣れてきちゃってね」

    カイル「2人……か。」

    カイル「新たな任は明日には科されるだろう。今日はとりあえず宿でも取れ。」

    カイル「ひとまずは別れだ。ケーイチ。」

    カイル「あぁ、また会おう。カイル…」

  32. 32 : : 2020/02/08(土) 13:20:42
    安宿で一晩を明かし、朝食にありつく。

    ケーイチ(まさか相部屋でベッドも2人で使うとは…)

    安さも納得の朝食である。

    ルリア「ケーイチ・トーヤマはいるか!」

    ケーイチ「はい! ここに!」

    ルリア「貴様に対する処遇が決まった! すぐに外に来い!!」

    朝食もそこそこにさっさと外に出ると見慣れた顔があった。

    ケーイチ「カイル…!」

    ルリア「不幸にも… 貴様は我が第五騎竜偵察隊の一員となった。」

    ルリア「早速で悪いが…貴様には色々と用意してもらう物がある。着いて来い。」


    第五騎竜偵察隊 営倉

    ルリア「制服と鎧はそこだ。自分に合ったモノを選べよ。」

    ケーイチ「軽い…!」

    ルリア「その分防御力は無いから気を付けろ。偵察騎竜は速さと身軽さで生き残るんだ。」

    ケーイチ「そのための軽い鎧…」

    ルリア「兜も忘れるなよ。」

    ルリア「…よし、少しはらしくなったか。その外装は竜の背で屈めば風に押し戻されにくくなる。」

    ケーイチ「空気抵抗が少なくなるって事か…」



    ルリア「お前は確か銃を使うんだったな。ならそこにある銃と弾を持っていけ。」

    ケーイチ「これは… 魔導銃ですか?」

    ルリア「そうだ。そいつなら鉄竜の外板、小型竜の鱗まで貫通出来る。実弾に比べて当てるのも簡単だからな。」

    見かけは古めかしいが色々と合理的に出来ている。

    ルリア「さて、カイル達の元に戻るぞ。一刻も早くお前を一人前の騎竜兵にしなければならん。」


    ルリア「ただでさえお前は騎竜兵向けの訓練をすっ飛ばしている。まずは…」

    「おい!五騎偵!ミーティングだ!!さっさとしろ!! 」

    ルリア「チッ…… 仕方がない。訓練はまた後だ。」

    ルリア「すぐに行く!!」

    ルリア「たぶん、お前が持ち帰った情報についてだろう…」

    ケーイチ「俺… 本当に大丈夫なんですかね……」

    ルリア「……腕は実証済みだろう。自信を持て。」

  33. 33 : : 2020/02/08(土) 13:24:45
    騎竜隊中央屯所

    バルドラが抱える軍事施設の中でもそこは最も権威ある場所だと言う。

    有史以来、大空の支配者として君臨する最強の兵「騎竜隊」が始まった地でもある。

    「なんだ? こないだのツレはどうしたよ?」

    「また1人かよ五騎偵さんよ」

    ルリア「退け。お前らと違って忙しいんだ。」

    ケーイチ「そ… そうだ! 五騎偵には俺が…」

    肘が鳩尾に入っていた。

    ケーイチ「ぐ……へ…ッ!!」

    ルリア「今度余計な事を言ったら除隊にしてやる。」

    ホールに入るとすでに他の騎竜兵が並んでいた。

    第一空竜戦闘団、第三地上竜戦隊ざっと目に入るだけで数十にも昇る部隊が顔を連ねている。

    その中には見覚えのある顔もあった。

    ケーイチ(ロイスにシュテール…! あいつら…やっぱ騎竜兵になったんだな…)

    こちらに気付いた2人は少なからず驚いたようだ。

    ケーイチ(あとで説明しないとな…)

    ケーイチ(同じ列にいるのはさっきの連中か……)

    ケーイチ「騎竜隊にも色々いるんですね…」

    ルリア「……………」

    ケーイチ「いや…!色んな役割の兵士がいるんだなって話です!」

    ルリア「まぁ… そうだな。竜にも色々種類や得意分野がある。それを活かして役割に当て込んでいく。」

    ルリア「大きく分けて旋竜、闘竜…… あとは豪龍…… なんていうのもいるな。」

    ルリア「まぁそれについては訓練の時にでも説明してやる。始まるようだ。」
  34. 34 : : 2020/02/08(土) 13:32:20
    「諸君。前置きは無しだ。さっさと本題に入るぞ。」

    ルリア「バルドラ王国騎竜隊総司令だ。顔くらいは覚えとけ」

    総司令「皆、現場もレストレイドが消し飛んだだの敵の新兵器だの様々な噂が飛び交って混乱の極みだろうが…」

    総司令「その情報はどうやら正しいと言わざるを得ない事を、その根拠を… 先日。五騎偵が持ち帰った!」

    総司令「スクリオを解析した結果… その新兵器の概要が掴めた!」

    何もなかったステージに映像が現れる。

    総司令「魔導爆縮砲…… これがヤツらの新兵器だ。」


    「魔導兵器?」

    「どういうこった…!?」

    どよめきが走る。

    総司令「静粛に!」

    総司令「ヤツらがどういう経緯でこんな兵器を用意出来たか…今は重要ではない。大事なのはコイツがこれからどうするのかという事だ」

    総司令「察している者もいるかも知れないが…レストレイド城塞を吹き飛ばした犯人はコイツだ。コイツの脅威の大きさは皆も知っての通りだ。」

    総司令「そして…コイツが次に狙う場所こそ… 今回最も重要な点だ。」
  35. 35 : : 2020/02/08(土) 13:50:33
    総司令「コイツが次に狙うのは…要塞気球フェインズだ。」

    ケーイチ(要塞気球…?)

    ルリア(敵の動向を空から知るための巨大な気球だ… 早い話が我が軍の目だ。)

    俺の頭に?が浮かんだような顔を見てルリアさんがパトルスで答えてくれた。

    総司令「フェインズの魔導防壁をもってしてもこの兵器の直撃を耐える事は不可能だ…」

    「そんな…」

    「マジか…」

    「では一気呵成にその兵器を破壊すべきです!!」

    総司令「我々は今、領土の制空権を握り続けるのがやっとという状態だ。今君たちを敵の巣の中に放り込む訳にはいかん。」

    総司令「また、フェインズは素早く動けるわけじゃない。故に敵の砲撃を外させるのも困難だ…」


    総司令「そこで我々はフェインズの魔導師と協力し、防衛魔導術式を空中で展開する事にした。」

    総司令「つまり、敵の砲火を防ぐ盾を我々で展開し、砲撃を無効化するのだ。」

    総司令「だがこれには敵の鉄竜による妨害も充分懸念される。我々に防衛術式を展開させないためにな。」

    総司令「敵は着弾と撤退のタイミングをギリギリまで詰めてくるはずだ。この作戦はスピードが肝心となるぞ」


    総司令「詳しい配置は追って伝える。皆今日は休め!」

    総司令「この作戦の決行は明日だ。」
  36. 36 : : 2020/02/08(土) 14:14:09
    寮舎

    ロイス達とも顔を合わせたかったが今はそんな暇は無かった。

    何より、向こうも俺も準備があった。

    何せ、俺の大の苦手な魔術が明日の作戦では重要な要素になる。かなり単純な形ではあるが魔方陣も正確に描かなくては……

    ルリア「確認も大事だが… 早く寝ろよ。睡眠不足はいい仕事の敵だ…」

    ケーイチ「はい。これが終わったら…」

    ルリア「まだ渡してない物があったな。」


    ルリア「ちょっと腕出せ。」


    ケーイチ「え? 渡してない物…?」

    彼女は何やらワッペンのような物に黒いタール状の物を塗り…

    俺の服の袖にペタリと張り付けた。

    最後に指を鳴らすと黒いタールが一瞬で乾いた。

    ルリア「部隊章だ。大規模作戦なのに部隊章も無しでは締まらないだろう?」

    ケーイチ「あぁ… そういえばそうでしたね……」

    ルリア「……失くすなよ。」


    それだけ言い残して部屋を後にして行ってしまった。


    ケーイチ「……勿論です。」
  37. 37 : : 2020/02/08(土) 14:25:41


    明朝


    早くも位置取りとその確認に追われていた。


    ルリア「もっと早くに戻れ。ガイドラインがあるんだ。そこだけ目指して飛ばせばいい。」

    ケーイチ「これが… 防壁術式ですか……」

    気球の前に巨大な魔方陣が光でもって描かれている。

    ルリア「そうだ。これ事態にも僅かに防壁としての役割はある。後はこれに我々が魔力を流すことで堅牢な魔導防壁となる。」

    ルリア「ちなみにこの術式、気球のヤツも含めて味方は通り抜けられるんだ。もっとも… 今回はそんな機会無いだろうが…」


    ケーイチ「良かった…! これなら俺でも何とか…」


    「敵さんのお出ましだ! とんでもない数だぞ!!」

    ルリア「始まるぞケーイチ。腹をくくれよ…」
  38. 38 : : 2020/02/08(土) 15:00:31
    「見えて来ました…フェインズと護衛部隊です。」

    「よし! まずは我々が戦端を開く!」

    「全機! 機体を上げ角15ドレンに保て!」

    「40機に8発…… 合計320発のロケットを……」


    「喰らえ!!」


    俺のビジョンにもそれは映った。

    カイル「敵の遠距離攻撃!! 噴出弾だ!!」

    「総員散開! あの程度ならフェインズの防壁で耐えられる!!」


    雨のように噴出弾が飛び、背後で爆発した。

    ケーイチ「こんな物まで…!」

    ルリア「来るぞ! 着いてこい!ケーイチ!!」

    「煙幕とは小癪な…!」

    フェインズの前は白い煙に包まれた。

    「この煙に乗じて来るつもりだ! 迎撃態勢!!」

    ケーイチ「隊長! ロケ……噴出弾の第二波が来ます!!」

    ルリア「なぜ分かる!」

    ケーイチ「俺には見えるんです!!」

    ルリア「見える……」

    カイル「……! いや、確かだ! 隊長! 回避を!!」

    噴出弾の第二波が到達し、何人かが巻き込まれたようだ。

    ルリア「本当に飛んで来たな…」

    第二波もまた防壁に阻まれ、白い煙を辺りに残す。

    ケーイチ「ヤツら一体何がしたいんだ…?」


    「……!」

    「……!……イチ!!」


    ルリア「ケーイチ!! 聞いているのか!!」

    ケーイチ「はい!!」

    ルリア「なぜパトルスに応えない!」

    ケーイチ「すいません! 聞き取れ無かったんです!!」


    「……………、……!」

    また聞こえなくなっている。

    ケーイチ「マズイ!!」

    ビジョンは第三波の噴出弾を捉えていた。

    ケーイチ「隊長!! 避けて!!」


    俺は声の限り叫ぶしか無かった。
  39. 39 : : 2020/02/08(土) 15:39:18
    噴出弾の第三波が押し寄せる。

    視界が悪くあまり遠くは見通せないがまた何人かが巻き込まれたのが悲鳴から分かる。

    しかし、彼女は別だ。

    ケーイチ「この視界の中であれを避けるなんて…」

    ルリア「さっきからパトルスが通じない……!この煙何か変だぞ!!」

    ケーイチ「……あれ? そういえばガイドラインは?? さっきまで煙の中でも光るから見えていたのに…」

    ルリア「マズい……!やはりただの煙じゃなかった!!」

    ルリア「魔術が使えない……! この煙は魔力を通さないように出来ているんだ!」

    ケーイチ「じゃあ…… まさか防壁は……!」

    ルリア「こんな状態じゃ張れない!」


    ケーイチ「そんな……!」
  40. 40 : : 2020/02/08(土) 15:50:59
    カイル「ケーイチ! 鉄竜隊だ! 突っ込んで来るぞ!!」


    カイル「80…… いや、100以上だ!!」

    広大な煙幕の中を鉄竜と竜が入り乱れる。

    ルリア「ケーイチ!離れるなよ!!」

    ケーイチ「言われずとも!!」

    ルリアは短槍を、俺は銃を構える。


    「クソッ!! これでも喰らえ!」

    闘竜がホバリングし、背後から来た敵機に火炎を直撃させる。

    「ざまぁ見ろ! 丸焼きだな!」

    「おい! 後ろだ!!」

    味方に狙いを定めた敵機を彼女の鉄槍とレーザーが貫く。

    ケーイチ「…よし!」

    ルリア「敵の方が連携が取れている…! ヤツらこの煙の中でも意志疎通できるらしい……」

    カイル「だがこれでは… 防壁を展開出来ん…」

    ケーイチ「俺達が飛び回る事でうまく煙を散らせないか?」

    ルリア「少し時間がかかるだろうな……」

    ケーイチ「なら……」


    ケーイチ「ぐっ……!」

    突然激しい頭痛に襲われた。

    ケーイチ「あ……頭が… 頭がいてぇ……」

    カイル「ケーイチ…!?」

    カイル「隊長! 援護を頼む!」

    ルリア「全く世話の焼ける……!」
  41. 41 : : 2020/02/08(土) 15:54:28
    カイル「どうした!?辺りはもう敵だらけだぞ!!」

    ケーイチ「それは分かってる…!!」


    ケーイチ「ぐ… うぅ……ァァあああああああああああああああああああああッッ!!!!」


    頭痛が臨界を迎えると……


    巨大な光球が煙幕を突っ切って

    敵も味方も焼き殺し

    ついには要塞気球までも粉々に吹っ飛ばした。
  42. 42 : : 2020/02/08(土) 15:59:39

    ケーイチ「ハッ………!!」


    気がつくと、頭痛はすっかり消え、俺はまだ煙幕の中にいた。

    ルリア「どうした! 頭痛はもう大丈夫か!」

    ケーイチ「なんとか……」

    ケーイチ(今まで… 俺は弾や敵の行く先を見ることで戦闘を潜り抜けてきた……)

    ケーイチ(もし… もしも今見た光景がそのまま未来への動きだとしたら………)




    ケーイチ「隊長……」

    ルリア「なんだ! 飛行中なんだ!もっとハッキリ喋れ!!」

    ケーイチ「このままでは… 要塞気球は吹っ飛びます…!」

    ルリア「何……!?」
  43. 43 : : 2020/02/08(土) 16:13:35
    ケーイチ「あいつらは多分… 味方を撤退させる事はしません…… 最後まで… 何が何でも防壁を展開させないつもりです……」

    ケーイチ「最終的に… 味方ごと焼き殺すつもりです……」

    ルリア「なぜ… なぜお前には先の事が分かる!? さっきも……!」

    ケーイチ「どうして見えるようになったかまでは分かりません…… だけど…」

    ケーイチ「俺が見た光景は…… どれも現実になってきました……」

    カイル「お前の射撃がやけに上手いのも… その実"見えていた"からという事か?」

    ケーイチ「…そうだ。」

    ケーイチ「……信じられないかも知れませんけど……」

    ルリア「…………」


    ルリア「ケーイチ。お前、懲罰を受ける覚悟はあるか?」

    ケーイチ「え?」

    ルリア「お前がその結果を避けたいなら… 私に考えがある。」

    ルリア「だが、見なかった事にしたいと言うなら…」

    ルリア「この場から… 逃げてもいい。」

    「推奨出来ません。ルリア。敵前逃亡などしては……!」

    ケーイチ「もちろん…!俺はこの結果を避けたいですよ!」

    ケーイチ「なんだか… "そうした方がいい"って… 素直にそう思えるんです!」


    ルリア「そうか……」

    ルリア「では、私もお前もこれが終われば懲罰房行きだな…」

    ケーイチ「はい…!!」

    乱戦を突っ切り、気球を目指す。
  44. 44 : : 2020/02/08(土) 16:23:38
    ケーイチ「それで… どうするんですか!?」

    ルリア「要塞気球を落とす!!」

    ケーイチ「お… 落とすんですか!?」

    ルリア「そうだ。砲撃を止める事もできず、防御することも出来ないなら砲撃を避けるしかない。」

    ルリア「竜で引っ張れない事はないが説明している時間もない!」

    ルリア「要塞を支えてる気球のうち1つを壊して下降させる!」

    ケーイチ「なるほど… それで避けるという事か…」

    カイル「だが… 要塞気球は気球その物もかなり頑丈に出来ている…」

    「我々だけで気球の表面に穴を開けられるかは五分五分です。ルリア。」

    ルリア「そこは……カイルとシエル。お前を信じるしかない。お前も… 私を信じてくれるか?」

    シエル「何を今更。信頼を寄せていなければ合計1305日も飛んでいません。ルリア。」

    ルリア「よし…… ならば行くぞ! 要塞気球を落とす!!」

    「「「了解!!」」」
  45. 45 : : 2020/02/08(土) 16:33:23
    要塞気球フェインズ

    「この煙… やはり魔術干渉剤が含まれてます…! これでは防壁を展開出来ません!!」

    「この気球で高速で動くことなど出来ん…」

    「畜生!! だからカザフラの発動機でもくっ付けりゃよかったんだ!! あの石頭共!!」



    ガァン!!




    「また攻撃か!?」


    カイル「くっ……! 硬いな……!!」

    シエル「我々の蹴爪でも貫通しないとは……!」

    シエル「ルリア。加速術式をお願いします。」

    ルリア「大丈夫か…? 骨折の可能性が……」

    シエル「状況を打開出来なければどちらにせよ死ぬだけです。お願いします。ルリア…」

    ルリア「……わかった。もう一度だ……!」

    ルリア「聞いていただろう! 加速術式をかける! カイルの背にしっかり掴まれよ!」

    ケーイチ「了解!!」



    バガァン!!!



  46. 46 : : 2020/02/08(土) 16:46:32
    ______
    ____
    __


    ロイス「術式… 氷結牢……!!」

    鉄竜が氷の塊になって落ちていく。

    「ロイス! お前の竜は負傷してる! 無理せず一旦退け!!」


    ロイス「でも…!」

    「お前が抜けて空く穴なんてねェよ さっさと行けよ」

    ロイス「……分かりました! 必ず戻ります!!」

    「シュタイン。お前もだ。ロイスに着いてやれ。」


    シュタイン「了解。」


    ロイス「すまねぇなぁ… 俺が前に出すぎたせいで……」

    シュタイン「過ぎた事は仕方ない。次はやるなよ。」

    ロイス「今頃…… ケーイチもどっかで戦ってんのか…」

    シュタイン「しかし… なぜあいつが騎竜に………」


    煙の向こうから金属を叩くような音が聞こえる。


    ロイス「まさか…… 攻撃!」

    シュタイン「………可能性はあるな。」
  47. 47 : : 2020/02/08(土) 16:55:45


    ケーイチ「クソ…… ダメか… 」

    ルリア「撃っても蹴っても…… 想像以上に頑丈だな……」

    カイル「だが…… 少しずつではあるが削れてはいる…」

    ルリア「急ごう…! もうあまり時間が…」


    「な…何やってんだお前ら!?」

    ケーイチ「ロイス! シュタイン!!」

    ロイス「その穴…! お前達がやったのか?」

    ケーイチ「そうだ…! このままじゃ敵の砲撃がコイツを直撃してみんな死ぬ! だからコイツを一個割って地上に下ろすんだ!!」


    ロイス「ま…マジかよ……!」

    ロイス「だがそんな事すればお前もタダじゃ…!」

    シュタイン「なるほど。そういう事か…」

    ロイス「シュタイン……?」

    シュタイン「ヤツら… 全くもって退くタイミングを伺ってる素振りも見えなかった…」

    シュタイン「恐らく本当にギリギリまで引き付けたいか……」

    シュタイン「それか… 味方ごと消し飛ばすつもりなんだろう……」

    シュタイン「コイツを引っ張るのもムリなら… 地上に下ろしてしまうのが一番確実か」
  48. 48 : : 2020/02/08(土) 17:11:29
    ロイス「けど… 大丈夫か? もし勢いよく地面に落ちたりしたら…」

    ルリア「そうならないようにこの補助気球を壊すんだ。」

    ロイス「…………」


    ケーイチ「頼む!もう時間が……!」


    俺達が問答をしていると西の空がやけに眩しくなった。





    ……あの日、レストレイドで生き残った者たちは口々にこう言ったという。

    「西の空が明るくなった」

    「日が沈んだと思ったらまた沈んだ」

    「太陽が西から登った」

    と……


    証言通り、橙色に耀くそれはまるで夕陽のようだった。

    ただし、西から"登って"いるが……


    ケーイチ「まさかあれが……」

    ケーイチ(あれはあの時見た光の玉……!)

    ルリア「間違いない… 敵の新兵器だ……!」

    橙色に輝く巨大な光球が向かって来る。


    ケーイチ「頼む!! あれが着弾したら終わりなんだ!! 協力してくれ!!」


    ロイス「あぁ……!分かった!! やってやるさ!!」



    上空に4人と4匹の竜が滞空する。


    ルリア「これが最後のチャンスだ…… 全開で飛ばすぞ…!」

    ケーイチ「了解……」


    ルリア「さぁ…… 行くぞ!!」


    身体から一瞬重力がなくなるような感覚の後…

    急速に気球の外壁が迫ってくる。


    ケーイチ「開けぇええええええエエエエエエ!!!!」


    4匹の竜による同時蹴りはついに気球の外壁をブチ抜いた!!
  49. 49 : : 2020/02/08(土) 17:22:13

    ケーイチ「やった……!」

    ロイス「開いたぞ!!」

    ルリア「ぼさっとするな! 退避しろ!!」


    光球は鉄で出来た竜を飲み込みながら邁進する。

    「なんだ!!」

    「なぜ…! なぜだぁああああああ!!」

    気球は高度を下げていく。


    ケーイチ(頼む!… 間に合ってくれ……!!)

    光球は気球の魔導防壁の上を掠め、そのまま上空へ飛んでいった。

    ルリア「上手くいった……!」

    ロイス「すげぇ……!!」

    シュタイン「ギリギリだったな…」

    ケーイチ「っしゃあ!!」

    俺達が歓喜に溢れる頃。敵は混乱の極みにあった。

    恐らく、自分たちが囮である事は伝えられていないのだろう…


    要塞気球は地面に落ちたものの、速度がそこまで出なかった事と落下地点がバルドラ領内の森林であったため、木が緩衝材となり、また修理して運用が可能だそうだ。


    結果として、要塞気球フェインズ防衛戦はバルドラの勝利に終わった。
  50. 50 : : 2020/02/08(土) 17:35:40

    ________
    _____
    __


    フェインズ防衛戦は結果的に勝利に終わった。


    外では祝杯が上げられているが俺達はお呼びではないらしい。

    ロイス「納得出来ん!!」

    ルリア「そうだそうだ!!」

    ケーイチ「またこの牢屋かよ…」

    シュタイン「やはり気球を落とすべきじゃなかったのかも知れんな?」


    「特例でも罰則は罰則だ。」


    ケーイチ「…あれ? この声は……」

    あの日、俺を牢屋に入れた看守だ…

    看守「どうあってもありゃ味方への攻撃だぜ… 要塞気球もしばらくは使えなくなっちまったしなぁ」

    シュタイン「俺達が地面に下ろさなければ永遠に使えなくなる所だったんだぞ」

    ルリア「あの戦いで最も大きな功労者はこいつらだと言うのに……!」

    ルリア「しかも"狙いを外したマヌケな敵"などと浮かれる有り様か……!」

    看守「ま、俺も悪魔じゃねぇ… お前らの言い分だってまぁ納得出来んじゃないぜ…?」

    看守は懐から葡萄酒と薫製肉を取り出した。

    看守「次からはもっと器用にやるこったな…」


    ケーイチ「これ… バレたらあんたも…」

    看守「あ? 罪ってのはバレるから罪なんだぜ?」

    看守「それとも… お前がチクるか?」

    ケーイチ「……そんな事はしない。」

    看守「だろう?」


    鉄格子越しに月を眺め、語らいながらささやかな祝杯の時は流れた。

    この戦いは勝利に終わったものの、バルドラの戦いはまだまだ終わらないだろう。

    きっと、俺達が呼び出される日もそう遠くはないのだろう。

    end
  51. 51 : : 2020/02/08(土) 17:41:32

    あとがき

    今回はオリジナルでわちゃわちゃとやってみました!

    初めて手を出すジャンルなので試行錯誤も兼ねて、今回は読み切りという形を取らせていただきました。
    好評ならば折りを見て続きも書いていきたいと思います!
  52. 52 : : 2023/08/24(木) 13:32:32
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    2 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 16:43:56 このユーザーのレスのみ表示する
    sex_shitai
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    oppai_jirou
    catlinlove

    sukebe_erotarou
    errenlove

    cherryboy
    momoyamanaoki
    16 : 2021年11月6日 : 2021/10/31(日) 19:01:59 このユーザーのレスのみ表示する
    ちょっと時間あったから3つだけ作った

    unko_chinchin
    shoheikingdom

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    pantie_ero_sex
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    アカウントの譲渡について
    http://www.ssnote.net/groups/633/archives/3654

    36 : 2021年11月6日 : 2021/10/13(水) 19:43:59 このユーザーのレスのみ表示する
    理想は登録ユーザーが20人ぐらい増えて、noteをカオスにしてくれて、管理人の手に負えなくなって最悪閉鎖に追い込まれたら嬉しいな

    22 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:37:51 このユーザーのレスのみ表示する
    以前未登録に垢あげた時は複数の他のユーザーに乗っ取られたりで面倒だったからね。

    46 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:45:59 このユーザーのレスのみ表示する
    ぶっちゃけグループ二個ぐらい潰した事あるからね

    52 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 20:48:34 このユーザーのレスのみ表示する
    一応、自分で名前つけてる未登録で、かつ「あ、コイツならもしかしたらnoteぶっ壊せるかも」て思った奴笑

    89 : 2021年11月6日 : 2021/10/04(月) 21:17:27 このユーザーのレスのみ表示する
    noteがよりカオスにって運営側の手に負えなくなって閉鎖されたら万々歳だからな、俺のning依存症を終わらせてくれ

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jun

シャガルT督

@jun

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