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この作品は執筆を終了しています。

今、蘇る死 前編 ~名探偵コナン×古畑任三郎~

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  1. 1 : : 2017/06/05(月) 17:06:37


    皆様どうもこんにちはこんばんは、進撃のMGSです。

    今回は古畑任三郎と名探偵コナンのコラボ作品を執筆しようと思いますw



    古畑任三郎の中から最も好きな話をコナンとコラボさせていきますので、よろしくお願いしますm(__)m



  2. 2 : : 2017/06/05(月) 17:10:07








    古畑「え~皆さんどうもご無沙汰しております~。


    今夜皆様にお目にかけるのは、類い稀なる計画犯罪。

    私が出会った犯人の中でも、最も巧妙に殺人を犯した男の登場です。




    そして今宵はもう一つ、類い稀なる名探偵とも出会いました。



    体は子供、頭脳は大人。



    名前はもう、おわかりですね?」







  3. 3 : : 2017/06/05(月) 17:13:55










               名探偵コナン


                  ×


                 古畑
                  任三郎








  4. 4 : : 2017/06/05(月) 17:14:42








    ___________東京都、鬼切村





    鬼切村とは東京の中にあって東京にあらざる場所。

    山々に囲まれた、人口の少ない寂しい村である。



    そこにある産業と言えば農業と、代々堀部家によって守られてきた堀部パンという会社があるだけであった。




    村人A「急げ!!」

    村人B「早く!!」





    山の中から数人が、台車をひいて田舎道を走っていく。


    台車の上には男が一人、深い傷を負って苦しんでいた。

    かなりの重症であり、深い切り傷からは出血が止まらない様子であった。




    やがて台車は堀部家の前に到着すると、堀部の立派なお屋敷の中から使用人や奥さんである珠代さんが出てきた。





    使用人A「旦那様!!」

    珠代「あなた!」

    使用人B「どうしてこんなことに!?」


    村人A「く、クマに襲われたんだ!」

    使用人A「早く救急車を!」





    青天の霹靂のような災厄に、堀部家の人々は慌てふためくばかりであった。







  5. 5 : : 2017/06/05(月) 17:16:04








    ___________堀部パン、専務取締役室





    山奥にひっそりと建てられた堀部パンの小さな工場。

    その工場に隣接するように、堀部パンの小さな事務所は置かれていた。


    専務取締役を務める堀部大吉は、ちょうど鳴り出した携帯を手に取った。





    大吉「はい・・・・・・。容体は? ・・・・・・分かった。」




    簡単に返事をして電話を切る大吉であったが、その後大吉は苦虫を嚙み潰したかのような顔をした。

    渋い顔をしたまま、大吉は重役の一人に電話を掛けた。




    大吉「社長がクマに襲われた。だから山の一人歩きはやめろとあれほど言ったんだ。私はこれから病院に行くが、最悪の事態も覚悟したほうがいい。」






  6. 6 : : 2017/06/05(月) 17:16:35







    堀部パンの倉庫のわきには、小さなサーキット場があった。

    とはいっても、実際に車を走らせるためのサーキット場ではなく。




    社員A「あ~また負けた!」

    音弥「あはははは、また僕の勝ちだね!」




    そう、ここは堀部大吉の弟、堀部パン専務の堀部音弥がラジコンカーで遊ぶためのサーキット場だったのである。



    音弥はいつも、取り巻きの社員数名と、いつもラジコンカーをして遊んでいた。

    兄とは違い、会社を継ぐ気もない、気ままな次男坊である。





    社員B「専務!!」



    とそこへ、顔色を変えた別の社員が走ってきた。

    大吉と音弥にとって叔父にあたる社長がクマに襲われたという報に接して、さすがの音弥も動揺した。





    音弥「僕もすぐに病院に行く!」




    すぐに走り出す音弥。

    これらの出来事は、これから起きる惨劇の・・・・・・ほんの序章に過ぎない。





    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






  7. 7 : : 2017/06/05(月) 18:07:09
    いいコンビだと思います

    期待!
  8. 8 : : 2017/06/05(月) 18:11:00
    期待してます
  9. 9 : : 2017/06/06(火) 02:14:07
    >>7
    >>8
    期待ありがとうございます(≧▽≦)
  10. 10 : : 2017/06/06(火) 02:15:17






    ___________数日後






    堀部家の大きな屋敷には、黒と白の布が張られ、喪服に身を包んだ男女が静かに集まっていた。

    亡くなった堀部パンの社長の葬式が、しめやかに営まれていたのである。



    弔問客には親戚や会社の重役はもちろん、社長を慕っていた村人たちや、地元の小中学校の先生。

    そして、郷土資料館の職員といった面々も集まっている。




    喪主を務める珠代が毅然とした姿で座る中、先代の社長を弔うための読経が静かに行われた。






  11. 11 : : 2017/06/06(火) 02:16:13






    やがて読経も終わり、法宴もそこそこに、兄の大吉は弟の音弥を一階の居間に呼び出した。

    もちろん、堀部パンの今後を考えてのことである。


    いかにも興味なさそうに窓の外を見つめ、あくびをする音弥に対し、大吉は後ろから話しかけた。



    大吉「明日、役員会を開いて正式に社長に就任する。今の会社の状態を考えれば、一日でも空白を作るわけにはいかないことくらいお前にもわかるだろう?」

    音弥「死に顔見ました? あれ化粧してましたね?」


    大吉「化粧?」



    ひどく無邪気に言う音弥の後姿に、大吉は苛立ったかのように答える。


    いつもの悪い癖だ。

    推理小説とかから聞きかじったに過ぎない知識をさも前から知っていたかのように披露する。


    しかも、こんな時にまで。





    音弥「死んでからこれだけ時間たったら肌の色とか変わってるはずでしょう。頬っぺたとか生きてる頃より赤かった。」

    大吉「葬儀屋さんがやってくれたんだろ。」


    音弥「前に死体の写真見たことあるけどこんな色じゃなかった。」





    推理小説からかと思ったが、なんだ写真かと改めてあきれながら、大吉は言葉をつづけた。






  12. 12 : : 2017/06/06(火) 02:17:24






    大吉「そんなわけだから、お前には副社長になってもらう。」

    音弥「僕は別にいいですよぅ。」


    大吉「私だってそうしたいわけじゃない。でも、お前が専務のままだと下の人間がつかえて上に上がれないんだよ。」




    ため息をつきながら、大吉はタバコを取り出し、ソファーに座って一服し始めた。

    そんな大吉の様子に、音弥もまたうんざりした様子で答える。





    音弥「じゃあ好きにしてくださいよ。」


    大吉「肩書が変わるだけだ。会社の運営はこれまで通り俺が引き受ける。お前は、好きなことをしてればいい。これまでと一緒だ。」

    音弥「助かります。」





    最後は嘲笑するかのような言い草に対し、音弥もまた笑って答える。

    が、次の言葉を聞いた瞬間に、音弥の表情が変わった。





    大吉「週明け、裏山の件で先方と会うことにした。来週の重役会議で、レジャーランドの建設について正式にゴーサインを出すつもりだ。」





  13. 13 : : 2017/06/06(火) 18:30:02







    音弥「早速やりたい放題ってわけだ。」

    大吉「好きなように言え。」

    音弥「おじさんは反対していた。」


    大吉「私だって辛い! あの山を売るのは・・・・・・。

    しかし、会社を続けていくには他に手はない。」




    音弥に背を向けて座る大吉の顔には、苦悶のさまがありありと現れていたが、音弥の視界には入っていなかった。

    ソファーに座る大吉に向かって、音弥は口を出さずにはいられなかった。




    音弥「兄さんは良かったですねぇ。良い時におじさんが死んでくれて。」

    大吉「・・・・・・・・・・・・いい加減にしないか?」




    さすがの大吉もこの暴言には立ち上がった。

    先ほどまでの苦悩の表情は消え、激しい怒りが眉間のしわとなって刻まれている。


    音弥は、しかし、そんなことお構いなしといった様子で話をつづけた。





    音弥「兄さんが殺したんじゃないの? みんな言ってますよ?」

    大吉「・・・・・・。」






    二人の兄弟はしばらくにらみ合い、それから音弥は居間を去って法宴へと戻っていった。






  14. 14 : : 2017/06/06(火) 19:05:53






    法宴では親戚や会社の重役、地元の人間たちが、亡くなった社長の昔話をして故人を偲んでいた。




    その中にあって、音弥の目に、見慣れた男性の姿が入った。

    音弥や大吉の小学生の時の担任で、今は郷土資料館の館長を務めている天馬恭介。


    天馬は未亡人となった珠代と二人で話をしていたが、音弥の姿を認めると、少しばかり寂しそうな笑みを浮かべた。






    法宴も終わり、音弥は天馬と二人きりになると、天馬を一階の縁側へと案内した。

    広い庭の縁側に音弥と並んで座り、綺麗に出ている月を眺めて、天馬は寂しそうに呟いた。





    天馬「人の命などは分からんもんだなぁ。」

    音弥「本当ですね。」


    天馬「この季節に出るクマは穴持たずといって非常に危険なんだよ。腹を空かせてるからね。五平さんだって、知らないはずがないんだが・・・・・・。」





  15. 15 : : 2017/06/06(火) 19:07:49





    ぼんやりと遠くを眺めているような天馬に対し、音弥は例の皮肉めいた口調で話しかける。





    音弥「例の一件、先生のにらんだとおりになりましたよ?」

    天馬「・・・・・・。」


    音弥「兄はおじが死んだのをいいことに裏山の売買を進めるつもりです。来週重役会議で決定するって。」






    すると天馬は深いため息をついた。

    音弥は天馬の、郷土の自然や歴史を深く愛する一面をよく知っていた。





    天馬「いやぁ、私の、恐れていたことが、現実に、なったか・・・・・・。」

    音弥「でも先生。心配しない。僕が必ず止めてみせますから。兄の思い通りにはさせない。」





    意気込むように言う音弥に対し、元々担任であり、校長も歴任した天馬は忠告する。




    天馬「音弥君。そりゃもちろん私だってあの話は反対だ。

    しかし、私が一番心配しているのはこのことで君たち兄弟が不仲になることなんだ。」


    音弥「心配ないですよ、元々仲は良くないですから。」





    自嘲気味に笑う音弥。

    天馬はますます心配気味に話しかける。




    天馬「五平さんが亡くなった今が、堀部家に取って最も大切な時期だ。兄弟がいがみ合っている場合じゃないことぐらい忘れないでほしいな!」

    音弥「だったら先生はいいんですか!? あの山がなくなっても?」


    天馬「・・・・・・。」


    音弥「僕は先生がどれだけこの村の自然を愛しているか、よく知っています。」





  16. 16 : : 2017/06/06(火) 19:08:25






    すると、天馬は立ち上がり、庭に向かって歩きながらこうつぶやき始めた。




    天馬「大体、バブル全盛期に作られ始めたアミューズメントパークが、次々と経営難で閉鎖されているというのに、大吉君は、なぜあんな話に乗ってしまうんだ・・・・・・。」

    音弥「工場の運営、かなりヤバいみたいですね。」


    天馬「だからと言って、山を売った金で急場をしのいだからとしても、根本的な問題は何一つ解決してないじゃないか! そこが分からんのだよ!」




    天馬の嘆きに、音弥は立ち上がった。

    自信たっぷりに笑みを浮かべて、音弥はこう言い放った。




    音弥「だから、ここは僕に任せてください!」

    天馬「・・・・・・音弥君。くれぐれも、大人の解決をね。」





    天馬も笑ったが、一抹の不安は隠せない、といった様子であった。






    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






  17. 17 : : 2017/06/06(火) 20:04:53






    ___________翌日の朝





    音弥は天馬に呼び出され、鬼切村郷土資料館に来ていた。

    旧石器時代の石器やら土器やらがショーケースに飾られている館内には、他に何やら段ボールがいくつか並べられている。


    建物の中にあがりこみ、音弥は声を張り上げた。




    音弥「先生!」




    すると、急な階段の奥から足音が聞こえ、音弥が見上げると、ちょうど天馬が下りてくるところであった。




    天馬「わざわざすまなかったね。」

    音弥「大掃除ですか?」




    すると天馬は床に無造作に置いてある段ボールを指さした。





    天馬「これなんだけどね。」

    音弥「何ですか?」


    天馬「学校から送り付けてきたんだよ。校長室にいつまで私物を置いておくつもりだと理事長に叱られてしまったよ。」






  18. 18 : : 2017/06/06(火) 20:05:27





    自嘲気味に笑いながらも、天馬は楽し気に語り続けた。





    天馬「生徒たちの夏休みの自由研究だよ。はは、本来は春の終業式に返すんだが、まぁ持って帰らない不届き者もいてね。

    処分しても構わんのだが、せっかくの労作だ。捨てる気にはなれなかったんだよ。


    まぁいずれは本人に返してやるつもりだ。ああ、それね、こっちへ頼むよ。」





    少し弾むような声で天馬は二回を指さす。

    それから天馬は、急な階段をゆっくりと昇って二階へと上がっていった。


    段ボールをいくつか積み重ねて持ち上げ、音弥も天馬の後に続く。





    天馬「最近腰にきてね。あんまり口にしたくはないんだが、私も歳を取ったよ。」

    音弥「充分お歳ですから、無理をしないほうがいいですよ。」


    天馬「ひょっとしたら君のもあるんじゃないか。」

    音弥「自由研究、懐かしいですね!」


    天馬「何やったんだっけね?」

    音弥「覚えてないですねぇ。」


    天馬「ふふ、あったら持って帰ってくれないか。」





  19. 19 : : 2017/06/06(火) 20:07:07






    楽しげに語りながら二人は、3万年前の槍が飾られたショーケースのわきを通り過ぎ、天馬の部屋へと入った。

    天馬の部屋は資料やらなにやらで片付いていない様子であった。





    音弥「先生、これはどこに置けば?」

    天馬「ああ、それはこの机の上に置いておいてくれないか。」





    天馬はそういうと、椅子にかかっていたコートを手に取り、少し表情をこわばらせた。






    天馬「これからお兄さんに会ってくるよ。なんとか、説得しようと思ってね。」

    音弥「・・・・・・先生が出ていったところで何も変わりませんよ。」


    天馬「ん~そうかもしれないがな。慣れ親しんだ鬼切の景色が消え去るのを、黙って手をこまねいているわけにもいかんのだよ。」


    音弥「あの人が先生の話を聞くとは思えないんだよなぁ。」

    天馬「大吉君だって私の教え子だからね、ちょっとは耳を貸してくれるんじゃないかな?」






    無駄だと半ばあきらめた表情を浮かべる音弥に対して、天馬はまだあきらめていないようだった。

    出かけに天馬は、音弥に再び声をかけた。




    天馬「あ、帰るときはね、電気を消していくのを忘れないように。今日は休館日で職員はだれもおらんのだ。」

    音弥「!? 鍵は!?」


    天馬「この村には空き巣に入るような奴はだれもおらんよ。」





    笑いながら去っていく天馬を、音弥も笑顔で見送った。






  20. 20 : : 2017/06/06(火) 21:58:15





    さて、天馬が去った後、音弥は段ボールの中を探り始めた。




    もしかしたら自分の自由研究も入っているかもしれない。

    果たして、自由研究 6年1組、堀部音弥と書かれた一冊の大学ノートが見つかった。




    音弥(懐かしいなぁ・・・・・・。)



    少し胸を高鳴らせながらソファーに座り、ノートを開くと、最初の一ページ目に、大きな文字でタイトルが書かれていた。











    ___________ぼくの考えた完全犯罪のすべて





    次のページをめくると、様々な推理小説から集めた殺人のためのトリックが書かれていた。




    よろい殺人

    雪の密室殺人


    鬼切村わらべ歌殺人




    読みながら、自然と笑みがこぼれる。

    そういえば昔、細かく実験をしながら様々なトリックを考えたっけ。


    ページをめくりながら、音弥はいつまでも無邪気に笑い続けていた。






    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






  21. 21 : : 2017/06/06(火) 22:14:04





    大吉「はい、はい、来週の会議では正式なゴーサインが出ますので。」





    一方の大吉は電話の対応中で、裏山売却の話を先方と協議をしているところであった。




    と、ここでコンコンとノックの音が聞こえてきた。

    秘書の案内で入って来たのは、先ほど音弥を郷土資料館に残して出かけた天馬である。




    電話を切ったあと、大吉は丁寧に頭を下げて、天馬に話しかけた。




    大吉「先生、どうされました。」

    天馬「あ、いや・・・・・・。大吉君に少し話したいことがあってね。」




    天馬はそういうと、案内されるままにソファーに座り、意を決したように話し始めた。




    天馬「実は、裏山売買の件についてなんだがね―――――――・・・・・・・・・・・・」






    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






  22. 22 : : 2017/06/06(火) 22:35:26







    堀部音弥の部屋は、大量のラジコンカーやギターなどが几帳面に飾られた、いかにも趣味に没頭する人間の部屋であった。





    音弥はベットに寝そべり、スナック菓子を頬張りながら、さっき持ち帰ってきたノートを眺めていた。

    見れば見るほどイメージがどんどんと湧いてきて、笑みがこぼれるのを抑えきれない。





    (「ちょっと困りますよ~! こんなところに置いちゃ!!」)





    すると外から、使用人の女性の大きな声が響いてきた。

    何事かと思って外に出てみると、社員が二人、重そうな黒い箱を持ってきていた。


    使用人の女性に叱られて、社員たちは困り果てていた。





    音弥「一体どうしたんです?」


    社員A「大吉さんが社長室に入られたので、部屋の模様替えを始めたんです。」

    社員B「先代の社長のものを他に移すようにと。」



    音弥「ふぅん、さすがやることが早いなぁ。」





    人の行動を皮肉らずにはおれないのが音弥の性分である。






  23. 23 : : 2017/06/06(火) 22:35:57







    音弥「で、モノは何なの?」

    社員A「鎧です。」


    音弥「!! 鎧ッ!?」





    驚いた音弥が黒い箱を開けると、果たしてそこにはフルセットの鎧が納められていた。

    かなり重量のあるこの鎧は、確かに先代の社長が社長室に飾っていたものであった。




    その時である。


    音弥の脳裏に、よろい殺人のことがチラリとよぎったのは・・・・・・・・・・・・。





    社員B「大吉さんの部屋に運んでおきますか。」

    音弥「ああ、ちょっと待って! 勝手に入るのはまずいかもしれないな。とりあえず二回の納戸に入れちゃってくれるかな。兄には僕から話しとくから。」


    社員A「かしこまりました。」

    社員B「せ~のッ!」





    屋敷の中に入っていく鎧を、音弥は目を凝らして見つめ、それから部屋に戻っていった。






  24. 24 : : 2017/06/07(水) 17:22:09






    部屋に戻るなり、音弥はすぐに例の大学ノートを開いた。

    もちろん、よろい殺人のページである。




    この計画に必要不可欠な鎧が期せずして手に入った。

    あとは、どうやってアリバイを作るかだ。




    音弥は自室の窓から外を眺める。




    するとどうしたことだろう。



    既に天気は崩れ、厚い雲に覆われていた。

    音弥が縁側に出て空を眺めると、チラチラと雪が降り始めたではないか。






    ___________これは、僕の使命だ。

    兄さんを殺して、僕が会社を引き継ぐ。





    そのビジョンがあまりにもはっきりと浮かんだために、音弥はついに、意を決した。





    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






  25. 25 : : 2017/06/07(水) 17:23:25






    日もすっかり暮れて、雪も降り積もった夜。

    音弥は自分の部屋で支度をはじめていた。




    バケツに水の入ったペットボトル。角砂糖に長さの違うつっかえ棒二本。

    軍手に竹馬、そして、伸縮型の警棒。



    リュックの中に入れられるものは入れ、それから音弥は今一度ノートを見た。




    よろい殺人。

    雪の密室殺人。


    そして、鬼切村わらべ歌殺人。





    ・・・・・・・・・・・・いよいよ、ゲーム(・・・)の始まりである。





  26. 26 : : 2017/06/07(水) 17:24:37






    堀部家の屋敷は大きく二つの建物から成っている。





    居間や縁側、音弥の部屋がある母屋。

    そして、離れの小屋である。


    大吉の部屋は離れの二階にあり、そこに行くには母屋のリビングにある階段を上り、渡り廊下を渡らなければならない。




    つまり、リビングを通らずして、大吉の部屋に入ることは不可能なのだ。




    リビングには葬儀を終えて疲れた様子の珠代と、それを何とか励まそうとする天馬が向かい合ってソファーに座っていた。

    それと、窓の外を眺め続ける音弥の姿も、そこにはあった。




    珠代「何だか、実感がないんです。主人がもうこの世にいないなんて・・・・・・。」

    天馬「珠代さん、葬儀の時はご立派でしたよ。取り乱した所もなく、毅然とされていた。」


    音弥「・・・・・・雪は止んだみたいですね。」


    天馬「そういえば大吉君は?」

    珠代「さっきお帰りになって、今お部屋でお仕事を。」





    すると音弥は、二人の間に入るようにソファーに座り、天馬に昼間のことを尋ね始めた。






    音弥「昼間は新社長とお話になったんですか?」


    天馬「・・・・・・・・・・・・彼の気持ちは固いようだ。」

    音弥「だから言ったじゃないですか。」


    珠代「例の、裏山のこと?」

    天馬「・・・・・・・・・・・・ええ。」


    珠代「いよいよあの話、本当になるんですか?」

    音弥「新社長はそのつもりのようですよ。」





  27. 27 : : 2017/06/07(水) 17:25:37






    天馬は一瞬、深く意気消沈ように肩を落としたが、すぐに身を乗り出すように珠代に話しかけた。





    天馬「珠代さん。あなたの口から大吉君を説得してくれませんかね?」


    珠代「・・・・・・それは無理です。元々私と主人は、この人たちのお父さんから、土地と工場を預かったようなものですから。

    大吉さんがそうと決めたんだったら、それに従うしかありません。」




    そう答える珠代の表情も、釈然としないといった雰囲気が漂っていた。

    それを見た天馬は、畳みかけるように珠代に言い募る。




    天馬「彼にはあの山の大切さが分かってないんだ。どれだけ多くの樹木が倒されて、野生生物が行き場を失うか!」

    音弥「しょうがないですよ、社長がお決めになられたことだから。」


    天馬「・・・・・・・・・・・・。」




    ここで突然、音弥がソファーから立ち上がり、声を張り上げた。




    音弥「先生まだいらっしゃるでしょう!? 見せたいものがあるんです!

    こないだね、道ですっごいもの見つけちゃったんですよ!」




    そういうなり音弥は、自分の部屋へと走り出した。





  28. 28 : : 2017/06/07(水) 17:53:26






    再び自分の部屋へと戻った音弥はリュックを背負い、竹馬を手に取って部屋の窓を開けた。




    先ほど、リビングを通らなければ大吉の部屋には入れないと書いたが、若干の訂正をここで入れさせて頂きたい。

    大吉の部屋へと続く渡り廊下には窓があり、その窓は、母屋の一階にある音弥の部屋からも見ることができた。



    そう、窓から侵入すれば、リビングを通らずとも大吉の部屋へと入れるというわけである。





    雪の密室殺人――――――――――雪の上を竹馬で移動して、足跡を残さず窓に入り込み、音弥はリビングを通ることなく大吉の部屋の前へと来ることができた。






    音弥「兄さん・・・・・・。」



    部屋に入るなり、音弥は机で仕事をしている大吉に話しかけた。

    大吉は少し驚いた顔をして音弥の顔を見た。




    大吉「お前にそう呼ばれるのは何年ぶりだ?」

    音弥「兄さん、会社は悪いけど僕が引き継ぐことにしたから。」




    言っていることがよく呑み込めず、かけていた眼鏡をはずす大吉。

    対して音弥は、まるで子供のような、無邪気な笑みを浮かべていた。





  29. 29 : : 2017/06/07(水) 17:54:47






    音弥「まるで僕じゃ無理だと言いたそうだけど?」

    大吉「そんなことは言ってない。もし本当にやる気があるなら、私だってそりゃ嬉しいよ。力になってくれ。」



    音弥「兄さんは僕のこと何も知らないんだよ。

    僕にはビジネスの才覚もあるし、リーダーとしての素養もある。」





    その言葉を聞いた大吉は、いかにも失望した、といった様子で眼鏡をかけ直し、音弥の話を遮った。





    大吉「すまん。今夜はやらなければならない仕事が山ほどあるんだ。明日話そう。」




    そういって大吉は音弥に背を向け、再び仕事に取り掛かる。

    それを見た音弥は、大吉にゆっくりと近づいていく。





    音弥「兄さんは何も見ていない。

    ずっと一緒に暮らしてきたのに・・・・・・。」





    懐から警棒を取り出し、それを伸ばす音弥。






    音弥「教えてあげるよ。僕はね、ただの出来損ないの次男坊じゃない。


    一流の経営者で・・・・・・・・・・・・。









    そして一流の犯罪者だ。」





    次の瞬間、音弥は大吉の後頭部めがけ、勢いよく警棒を振り下ろした。







    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇







  30. 30 : : 2017/06/07(水) 19:24:10






    音弥が大吉の死体を部屋から渡り廊下へと引きずり出したのは、それから数分のちのことである。





    渡り廊下は立て付けが非常に悪く、床が斜めに傾いていた。

    そして、鎧が収納されている納戸もここにあった。




    音弥は死体を納戸の真下に運んできた。

    死体に軍手をはめさせ、仰向けに寝そべらせる。



    それから、死体の近くの床に角砂糖を二個積み重ねて置くと、納戸の一番上の段にしまってあった鎧の入った箱を手前に少し引き出し、長さの違う二本のつっかえ棒でそれを支えた。

    その違いはちょうど角砂糖二個分に当たり、角砂糖の上に短いつっかえ棒を乗せれば高さは同じになった。



    最後に音弥は廊下の端に移動し、バケツにペットボトルの水を入れると、それを横に倒した。





    水はゆっくりと傾いた廊下を流れ、鎧を支えている角砂糖めがけて流れていく。





    上手くいけばこれで死亡時刻をごまかせるし、事故に見せかけることも可能。

    しかも、珠代や天馬と一緒に過ごしていればアリバイも手に入れられる。







    ___________そう、これこそがよろい殺人であった。





    音弥はまるで難易度の高いゲームをクリアしたかのような笑みを浮かべ、再び竹馬を手にして廊下の窓から庭へと出ていった。






  31. 31 : : 2017/06/07(水) 22:48:19






    音弥「これなんですよ、先生!」



    ややあって音弥は自分の部屋から、山道で見つけた土器のかけらを持ってリビングに戻ってきた。




    天馬「拝見。」


    音弥「模様からいって縄文土器だと思うんですけど。」

    珠代「まぁ、これがあの裏山から?」




    珠代が感心したような声を上げている中、天馬はかけらをじぃっと見つめていた。

    やがて天馬は、縄文土器に関する知識を披露し始めた。




    天馬「縄文土器は古いもので1万6千年前も昔のものがあるからね。これは・・・・・・比較的新しいようだ。ほら、これを見たまえ。この釣り針のような模様だ。」

    音弥「これは・・・・・・何ですか?」


    天馬「アルファベットのJだ。JISマークだよ。」





    これを聞いて珠代が思わず吹き出して小さく笑い、音弥は肩を落とした。





  32. 32 : : 2017/06/07(水) 22:49:10






    天馬「残念だったね、音弥君。」




    天馬も少し笑いを堪えている様子で、音弥に優しく声をかける。


    とここで、珠代が不意に立ち上がった。

    お盆にマグカップを乗せ、疲れた様子で珠代は二人に声をかけた。





    珠代「では私はこれでもう寝ますね。音弥さん、先生のお相手をしてあげて。」

    音弥「せ、せっかくだからもう少し話しましょう。まだ先生もいらっしゃるし。」





    予定の時間になっても物音が聞こえてこない。

    ここで二階に上がられてはまずい。


    音弥は内心動揺していた。



    何とか珠代をここにつなぎとめて置きたくて天馬を見たが、天馬も立ち上がって「もう寝かせてあげなさい。」とたしなめるばかりであった。





    珠代「では、おやすみなさい。」

    音弥「・・・・・・。」


    天馬「・・・・・・・・・・・・珠代さん。」




    と、ここで天馬が不意に珠代を呼び止めた。




    天馬「いや、縄文時代の土器の話なのですがね。裏山を掘ればまだまだたくさん出てくるんですよ。

    尖底土器と言ってね。これは縄文土器の中でも最初期に当たるものでして、ちょうど氷柱のような形をしているんですよ。」





    天馬が再び土器について詳しく話し出したので、再びソファーに座って話に耳を傾ける珠代。

    そして、天馬が土器の話をしているのを、音弥は今にも口から心臓が飛び出しそうな思いをしながら聞いていた。






  33. 33 : : 2017/06/07(水) 22:49:34






    (ガタンッ!!)





    突如、二階から響いてくる大きな物音。

    音弥が待ちに待った瞬間がやってきたのだ。




    珠代「何!?」



    いきなり大きな音が聞こえたのに驚いた珠代に天馬が「ここにいて下さい。」と声をかける。

    一方の音弥は一目散に階段を駆け上がり、天馬がその後を追う。






    音弥「!! 兄さん!!」

    天馬「!! うあぁ、大吉くんッ!!」





    二人の目に飛び込んできたのは、重い鎧と黒い箱の下敷きになった大吉の姿であった。





    天馬「す、すぐに救急車を!!」

    音弥「は、はい!」





    天馬が一目散に大吉の元へと駆け寄る中、音弥は階段を降りていく。


    おおよそ音弥の目論見通り、事は運んだ。

    階段を下りる途中、大吉を介抱する天馬を見て、音弥は密かに笑みを浮かべた。







    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇







  34. 34 : : 2017/06/07(水) 23:27:45






    鬼切村の深い闇夜の中を走る、一台の黄色いビートル。

    その車内には、一人の老人と女子高生、そして、小学生くらいの子供が座っていた。






    蘭「まだ着かないんですか? 博士?」

    阿笠「そ、それがのう。道に迷ってしまったようでの。」


    コナン「蘭姉ちゃん、僕もうお腹減ったよ。」




    コナンと蘭は、今日はスノボーをしに阿笠の車に乗せてもらっていたのであるが、帰りになんとカーナビが故障し、しかも道に迷ってしまった。


    ちなみに本来は小五郎も一緒のはずだったのだが、元妻の英理と会うことになったため、阿笠に頼んで二人だけで出かけることにしたのである。

    もっとも、今回はその気遣いが最悪の形で裏目に出てしまった訳であるが。




    阿笠「はっはっは、参ったのう。」

    コナン(笑ってる場合じゃねぇだろ。)




    街灯もまばらな夜道を走っていると、しかし、先の方にパトカーが何台も止まっているのが見えてきた。

    どうやら、大きな屋敷の前に停まっているらしかった。


    無論、読者の皆様にはご推察のことと思うが、堀部家の屋敷である。






    蘭「何かあったのかしら?」

    コナン「事件か何かかな?」


    阿笠「車を停めたほうがいいかの? コナン君?」



    コナン「・・・・・・。」





    こんなところでまた事件に出くわすとは。

    どうしていつもこうなんだろうと思わずにはいられないコナンであった。






  35. 35 : : 2017/06/07(水) 23:29:43






    目暮「それにしても、君たちはどうして事件のある所にいるのかね?」


    コナン「あはは、いやぁ。」(こっちだって好きでこうしてるわけじゃねぇよ。)

    蘭「ほんといつもすみません。ほら、コナン君も。」





    目暮警部にこう皮肉られてはコナンも蘭も、そして阿笠も形無しである。


    しかしながら、今日は眠りの小五郎がいないので、まったくいつも通りというわけでもない。

    それに、今回の事件は目暮警部が応援を呼んでいた。





    目暮「さて、もうすぐ着くはずなんだが。」


    高木「警部! 到着しました!」

    目暮「うむ。あとはうまくやる気になってくれればな・・・・・・。」





    外に並んだパトカーの中に、一台のタクシーが入ってきた。



    そこから降りてきた男は、到底刑事とは思えない出で立ちで、セットされた髪型に黒のコート、黒のシャツに黒いズボン、黒い靴と全身黒ずくめであった。

    銃も持ってなければ警察手帳さえも持っていない風変わりな刑事。


    巡査の一人がその初老の男性を見つけるや、明るく声をかけた。






    向島「古畑さん! お疲れ様です!」

    古畑「あれ、君向島君? 向かうに島って書いて向島君だよね?」


    向島「はい! 実は、今月いっぱいで警察を辞めることになりました。」

    古畑「えっ? 辞めちゃうの? 君長いよね?」


    向島「知り合いの警備会社に再就職する予定です。」

    古畑「そう、お達者でね。」






    目暮の呼んだ助っ人。風変わりなその男―――――――――古畑任三郎は現場に入ると、まず遺体のある所へと向かい始めた。







  36. 36 : : 2017/06/07(水) 23:32:05






    目暮「遠いところまでご苦労、古畑君。」


    古畑「目暮さん、ここさ、東京都?」

    目暮「来て早々何を言ってるのかね?」


    古畑「東京都? この界隈?」

    高木「東京都です、古畑警部補。」




    古畑「ほんとに東京都?


    窓の外をご覧? 真っ暗だよ?!
     
    え? 街灯だってまばらだしさ、来る途中コンビニ、一軒もなかったよ?!



    だめだよこんなの都にしちゃ・・・・・・。」





    現場に現れた古畑はいかにもやる気がなさそうで、目暮は内心頭を抱えた。

    この男のマイペースさにはほとほと手を焼かされてきたし、今もまたこんな調子だ。


    ふと目暮が高木を見ると、高木も困ったような表情を浮かべていた。





    コナン「ねえ高木刑事、あのおじさん誰?」

    高木「古畑任三郎警部補のことかい? 捜査一課いちの切れ者なんだけど、マイペースなのが玉に瑕なんだよね。」


    古畑「ねぇ高木君?」

    高木「!? えっ!? あっ! すいません!!」


    古畑「何でここに子供がいるの?」


    高木「えっと、実は・・・・・・この少年はあの毛利小五郎さんの元で育てられてる少年なんです。」

    古畑「え? あの眠りの小五郎の?」





    コナン(変なオッサンだなぁ、この人。先が思いやられる・・・・・・。)





  37. 37 : : 2017/06/07(水) 23:33:12






    コナンは内心毒づいたが、古畑は心なしか少し機嫌を直したようで。





    古畑「えっと、君名前は?」

    コナン「僕、江戸川コナンです。」


    古畑「変わった名前ですねぇ、ふふふふふ。江戸川乱歩にコナン・ドイル。私好きなんですよ~?」


    コナン(うわぁ、やりづれぇ・・・・・・。)





    コナンは笑顔を浮かべたが、その笑顔は若干引きつっていた。





    高木「えっと、ここまで来てもらって申し訳ないんですが、古畑警部補、この件に関しては事件性はなさそうに思われます。」

    古畑「ねぇ高木君? 座るとこないの?」

    高木「え?」


    古畑「これどう見ても事故だよ。」




    コナン(マジやる気ねぇな、このオッサン。)




    古畑は再びやる気のなさを取り戻したようで、高木の話を聞くことすらめんどくさいようで。

    そしてコナンの笑顔はますます引きつるばかりであった。





  38. 38 : : 2017/06/07(水) 23:34:00






    高木「死亡したのは堀部大吉さん。この村のはずれにあるパン工場の経営者です。」

    古畑「ちょっと待って。」


    目暮「何かわかったのかね? 古畑君?」




    すると古畑、耳をそばだてるので周りの人間も耳を傾けると、ホーッ、ホーッ、という鳴き声が聞こえてきた。




    高木「梟、ですね?」

    古畑「帰ろう! これもう事故だよ。」


    目暮「古畑君!」

    高木「あの、一応話聞いてもらえますか?」


    古畑「どっこいしょ。ふぅ、来るだけで疲れちゃったよ・・・・・・。」







    コナン(今回は事件以上に、このオッサンのほうが厄介だな・・・・・・。)






  39. 39 : : 2017/06/08(木) 13:56:18







    それから古畑は、近くの散らかった部屋に入り、ソファーにどっかりと腰を下ろした。






    高木「では改めて報告を。亡くなったのは堀部大吉さん。

    死因は後頭部の打撲です。


    現状から考えて、納戸に会った大きな箱を手前に引き出そうとしたときにバランスを崩したのではないでしょうか?」



    目暮「箱の中には鎧の一式が入っていた。かなり重たいものだ。」

    高木「死亡推定時刻は午後9時10分。下にいた家族が倒れる音を聞いているので間違いないと思われます。」



    古畑「事故だね間違いないね、早くタクシー呼んでよ。」





    古畑はもう帰りたいオーラ全開で目暮をほとほとあきれさせていた。


    ここに今日呼んだのは間違いだったかもしれない。

    その気持ちを押し殺し、目暮は古畑に話しかけた。




    目暮「だが、気になることがあってだ、古畑君。亡くなった大吉さんのおじさんが二日前、クマに襲われて亡くなったのだ。」


    古畑「クマ、クマでるの?」

    目暮「そ、それはそうだが・・・・・・。」


    古畑「都内でクマが? 信じられない・・・・・・。」





    さらにやる気をなくした古畑はついにソファーに横になった。





    目暮「言いたいことはそのことじゃない、古畑君。堀部五平さんは堀部パンの先代の社長だった。

    大吉さんはその方の後を継いでから、わずか二日後に亡くなったのだ。


    何かあるとは思わんかね?」



    古畑「無いよそんなものは・・・・・・。」

    目暮「・・・・・・。」




    この男はもう帰そう。

    そう決心した目暮は高木に車の手配を頼み、自らは現場に戻っていった。





  40. 40 : : 2017/06/08(木) 13:57:09







    高木「携帯、圏外ですね・・・・・・。」

    古畑「はっ・・・・・・。」


    高木「廊下ならかかりますかね・・・・・・。」





    携帯をかけるために廊下へと出る高木。

    古畑は改めてため息をついてソファーから起き上がった。





    古畑「はぁ、梟が鳴いてクマが出て携帯が圏外?

    ここホント東京・・・・・・―――――――」






    とここで、古畑の顔色が変わった。






    古畑「高木君!?」


    高木「はい! なんでしょうか?」

    古畑「さっきなんて言った? 箱の中に何が入ってたって?」


    高木「鎧兜です。」

    古畑「鎧兜?」


    高木「鎧兜です。上から下までフルセットです。」

    古畑「何のために?」


    高木「飾るためでしょう。元々は社長室にありましたが、ここに持ってきたみたいです。」

    古畑「飾るってどこに?」


    高木「自分の部屋。つまり、ここです。」

    古畑「ここに・・・・・・?」




    高木「な、なにか、分かったんですか?」





    古畑は姿勢を直すと、改めて大吉の部屋を見渡した。

    それから立ち上がって白い手袋をはめ、大吉の遺体の元へと歩き出した。






  41. 41 : : 2017/06/08(木) 14:31:16






    コナン「あれれ~、おかしいな~。」



    さて、大吉の遺体のある廊下では、目暮警部やほかの警察と一緒に、コナンが現場を見渡していた。

    普段はここで小五郎が小うるさい説教を垂れるところであるが、今日はその小舅が不在なので、のびのびと実況検分ができたのである。




    蘭「どうしたの、コナン君?」

    コナン「何で廊下がびしょびしょなのかなぁって。」


    目暮「あのバケツがひっくり返ったようだが、うむ、確かに不自然だな。ちょっと君。」

    警官A「ハイ!」


    目暮「何で廊下が濡れているのか、家族に確認を取ってくれ。」





    とここで、コナンは水の一部が妙にねばねばしているのを見て取った。

    人差し指でそのねばねばを掬い取り、それをコナンはためらいなく口へと運んだ。





    コナン(ペロ・・・・・・。これは、砂糖?)


    蘭「あ~! コナン君、汚いでしょ!」

    コナン「ご、ごめん、蘭姉ちゃん。なんか気になっちゃって。」


    目暮「・・・・・・。」





    内心、目暮はやれやれと少しあきれていた。


    確かに視点は鋭いが、コナンはまだ小学生だ。

    それを黙認していたのは、眠りの小五郎の手助けをしてきたためでもあった。





  42. 42 : : 2017/06/08(木) 14:32:07






    とここで、阿笠がこっそりコナンに近づいた。

    皆に聞こえないように小声で、阿笠はコナンに話しかけた。





    阿笠「何をやっとるんじゃ、新一。」


    コナン「さっきの水、甘かった。」

    阿笠「甘い? それはまたなぜじゃ?」


    コナン「分からない。けど・・・・・・これは単なる事故じゃない。」


    阿笠「!? なんと・・・・・・?」

    コナン「・・・・・・。」





    周りの状況を見て、コナンはそう判断していた。


    事故として片づけるには、少しばかり不自然。

    その小さな違和感を、この小さな名探偵は嗅ぎ取っていた。






  43. 43 : : 2017/06/08(木) 14:33:18







    高木「これは事故じゃないんですか? 古畑さん?」





    とそこへ、古畑が白い手袋をはめて戻ってきた。


    さっきとは打って変わってやる気スイッチの入った古畑に、コナンが声をかけた。

    ねばねばになっている水を指さしながら。





    コナン「おじさん。ここの水、甘かったよ?」

    古畑「甘い? ふふふふふ、随分変わったことをされたようで。高木君、ペン無いの?」


    高木「あ、はい、ここに!」




    高木が自分のペンを差し出すと、古畑はバケツ近くの水をペンで軽くかき回した。





    古畑「高木君、あ~ん・・・・・・。」

    高木「ブッ!! 何するんすか! 古畑さん!!」





    ペンですくった水を口の中に入れられて咳き込む高木。




    古畑「高木君、味は?」

    高木「するわけないじゃないですか、水ですよ!?」


    コナン「じゃあ、甘い水は大吉さんの近くの水だけってことになるね。」





    古畑は眉間に手を当てて考えると同時に、チラリとコナンを見た。

    それから少しだけ、笑みを浮かべた。






  44. 44 : : 2017/06/08(木) 15:24:54






    目暮「水が甘い? どういうわけかね、古畑君?」

    古畑「まだ分かりません。しかし、この子のいうことが正しければ、どうも事故としておくのは不自然です。」





    目暮もこれには同意した。


    それに、古畑がやる気になってくれて、内心少しほっとしていた。

    本気を出した古畑ほど頼りになる人間はいない。







    古畑「高木君、え~、この白い棒は?」

    高木「つっかえ棒ですね。納戸から一緒に落ちてきたんでしょう。」


    古畑「ふぅん・・・・・・。そうか。」



    高木「あ、あの、亡くなった大吉さんの弟さんです。」





    ここで、捜査をしている警察の姿と見ようと、音弥が階段を上って姿を現した。





    音弥「堀部音弥といいます。」

    古畑「あ、どうも~、古畑です~。このたびは突然の不幸、お悔やみ申し上げます。」


    音弥「見学していってもいいですか? 警察の捜査って見るの初めてなんで。」

    古畑「ああ、どうぞどうぞ。」


    音弥「邪魔だったら言ってください。」



    古畑「ああそうだ。お兄さんひょっとすると検死のほうに回させていただくかもしれません。」





  45. 45 : : 2017/06/08(木) 15:25:51






    若干申し訳なさそうに言う古畑に対して、音弥はひどく淡々とこう答えた。





    音弥「ああいいですよ。遠慮なくやっちゃってください。」


    コナン「・・・・・・。」

    古畑「・・・・・・。」


    音弥「? 何か?」


    古畑「いやいや、普通遺族の方は一刻も早くご遺体を引き取りたいと、そうおっしゃるものですから。」

    音弥「僕はそういうのにはこだわらない人間だから。」


    古畑「助かりますぅ。」






    コナン(この人、何かが引っ掛かる・・・・・・。)



    古畑が笑みを浮かべて応対する中、コナンは音弥をじっと見つめていた。






    音弥「あの、事故じゃないんですか?」

    高木「そういえば古畑さん。さっき何が分かったんですか? そろそろ教えてほしいんですけど?」



    古畑「いやいや、こちらさん今夜一人で鎧を組み立てようとしていたんだよね?」

    高木「そうです。」


    古畑「組み立てて部屋に飾るつもりだった。おかしいと思いません?」

    高木「何がですか?」






  46. 46 : : 2017/06/08(木) 15:26:48






    コナン(おかしい・・・・・・? 言われてみればそうだけど、一体どこが・・・・・・。)





    この問いかけには高木ばかりでなく、蘭も目暮も、そしてコナンも首をかしげていた。

    そこへ、音弥が一人、口をはさんだ。




    音弥「あの、それってこういうことですか?

    なぜこの時間に一人で組み立てようとしたのか?


    なら答えは簡単です。

    兄はそういう人だったから。」



    古畑「あの、そういう人とは?」



    音弥「自分以外はだれも信じなかった。まあいわゆるワンマンです。」

    古畑「なるほどぉ。」



    音弥「兄が鎧を一人で組み立てても、僕は不思議には思わないなぁ。」





    音弥の答えは自信に満ちていた。

    だが、古畑はこれを簡単にあしらった。





    古畑「なるほどぉ、ありがとうございました。ただ、私が気になっているのはそのことではないんですよ?」

    音弥「・・・・・・。」


    古畑「あの、この鎧兜、かなり大きいですよねぇ?」

    音弥「台座を入れると結構な大きさになりますね。」


    古畑「ご覧になったことは?」

    音弥「社長室にあったから。」




    古畑「お兄さんね、これを、ご自分の部屋の、どこに飾るつもりだったんでしょうか?」






  47. 47 : : 2017/06/08(木) 15:27:53






    コナン(!! そうか、そういうことか!)



    古畑の話を聞いて、コナンはいち早く古畑の意図しているところを察した。

    対して、聞かれている音弥にはまだ質問の意図が呑み込めていないようだった。





    音弥「さあ、そこまでは。」


    古畑「じゃあ君。」

    高木「自分にもよくわかりません。」



    古畑「私が引っ掛かっているのはそこなんですぅ。」

    音弥「分からないなぁ。」




    すると、コナンが例のごとく見た目相応の口調で口を出した。






    コナン「普通だったら片づけてから部屋に飾るよね?」


    古畑「そう、そこなんです! しかしあの部屋は片付いてなかった。え~、あの~、一人暮らしされたことありました?」

    音弥「ありますよ。大学時代はアパート暮らしだったんで。」



    古畑「そうですか~。普通ですね、部屋に何かを置くときはまず部屋を片付けるのが先です。


    ですから、テレビを運ぶときはまずテレビを置くスペースを作る。

    鎧を飾るときはまず鎧を置くスペースを作る。



    しかし~、この部屋にはそんなスペースはなかった。」



    蘭「確かにそうですね。」

    音弥「とりあえず出して大きさを確かめたんじゃない?」



    古畑「大きさ? その前は社長室にあったんですよ?

    あなたがご存じだったように~、お兄さんだって大きさくらいは知っていたはずです~、ふっふっふっふっふっ・・・・・・。」


    音弥「そりゃそうだ。」





    古畑の笑いに、音弥もケラケラと笑って応じる。

    一方、目暮や高木は考え込むようなそぶりを見せていた。




    コナン「じゃあ古畑のおじさん、大吉さんは今日の夜は鎧を組み立てる気はなかったってことになるね?」

    古畑「少なくとも今夜は。では大吉さんは今夜、何をしていたのか・・・・・・。」





    コナン(この刑事さん、鋭いな・・・・・・。)





    古畑もまた、コナンとは違った観点から、これが事故だとは考えにくいと思っていた。

    そして、自分とは違うやり方ながら、見事な推理を披露する古畑に、コナンは素直に感心していた。


    コナンの推理はどちらかと言えばトリックの解明がその支柱にあったが、古畑の推理法は物事の矛盾を徹底的に解明する、その論理性にあったのだ。






    音弥「さすがですね~。目の付け所が違うね~。」




    それでもなお、音弥は自信たっぷりに笑みを浮かべてこう切り返した。






  48. 48 : : 2017/06/09(金) 02:43:34






    コナン「古畑のおじさん! これ見て!」




    それから間をおかず、今度はコナンが大吉の死体を指さした。

    もっと詳しく言うと、大吉の右手にはめられた軍手を指さした。




    高木「何がおかしいんだい? コナン君?」

    古畑「おや・・・・・・高木君、何か変だと思わない?」


    目暮「!! なるほど、これは普通なら考えられんな。」


    蘭「博士? 分かりました?」

    阿笠「一体どういうことなんじゃ? コナン君?」





    分かる人間と分からない人間とに分かれたが、コナンが軍手の薬指と小指の部分をめくると、全員がおかしいと納得した。


    大吉の右手の薬指と小指は、軍手の中で折れ曲がっていた。

    つまり、二本の指が軍手の中に上手く入っていなかったのである。





    音弥「!? まさか・・・・・・。」



    音弥の表情に一瞬、驚愕の色が浮かぶ。

    その瞬間を、コナンと古畑は見逃さなかった。





    音弥「だって普通指がはまってなかったらはめ直しますよ!」

    コナン「大吉さんが死んだ後に、誰かがはめたことになるね。」


    音弥「それは間違いないね。」


    古畑「・・・・・・お兄さんは誰かに殺された可能性があります。」






    これで完全に事故の線は消え、殺人の可能性が濃厚になった。







  49. 49 : : 2017/06/09(金) 02:45:09







    だが、殺人ともなれば、新たな問題が浮上してきた。





    目暮「だがな、古畑君。殺人となればおかしなことも多い。



    まず、二階に上がるにはリビングからこの階段を上がらねばならん。

    リビングには堀部家の家族がいた。


    彼らに気づかれずに二階に上がることは出来ん。」



    音弥「それは僕が保証します。ずっと下の部屋にいたけど、この階段を上っていった人間はいなかった。」



    蘭「じゃあ、犯人はどこからきてどこから逃げたっていうの?」

    コナン「僕にもそれが分からないんだよな~・・・・・・。」




    そう、犯人はどうやって一階にいた人間に気付かれずに大吉を殺したのか。






    音弥「・・・・・・・・・・・・考えられるとしたら・・・・・・そこかな?」





    と、ここでもまた音弥が口をはさみ、指をさした。


    その先には窓があった。

    この窓を使えばリビングにいる人間に気付かれずに二階に上がり込めるというわけである。





    音弥は窓を開け、外を見渡しながら説明した。





    音弥「この向こうは庭になっています。ここなら下の人間に気付かれずに忍び込むことができる。」


    高木「上がれないことはないですね。」

    古畑「あの雪はいつから積もってるの?」


    目暮「正確な時間は分からんが、夕方には降り始め、夜には止んだそうだ。」






  50. 50 : : 2017/06/09(金) 02:46:30






    ここでまた、大きな問題点が浮上した。

    そしてこの問題点を指摘したのは、他ならぬ音弥だった。





    音弥「足跡・・・・・・。」


    コナン「困ったな~。足跡が見つからないや・・・・・・。」

    阿笠「こりゃ一体どうしたわけかの?」




    足跡が見つからない以上、この廊下に侵入してきたという線は考えられない。





    音弥「足跡がないということは、夕方以降庭を通ったものはいないということになるな。」

    高木「じゃあ、二階には大吉さん以外いなかったということでしょうか?」


    蘭「じゃあコナン君? これって・・・・・・・・・・・・完全な“密室殺人”ってこと?」

    コナン「うん。犯人がどうやって殺したのか、僕にも分からないや。」



    音弥「ということはふりだしかぁ・・・・・・。」






    音弥の仕組んだトリックは、いくつかの綻びは見られたものの、そう簡単には見破れないものであったのは間違いない。

    外を見渡して笑みを浮かべる音弥。


    その顔を斜め後方から、古畑はまるで狙いを定めたかのように、じぃっと見つめていた。






    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






  51. 51 : : 2017/06/09(金) 12:05:14






    捜査の関係者はそれから、音弥と一緒に一階のリビングへと移動し、ソファーへと座った。



    テーブルの上には、珠代が簡単な食事を一品出してくれていた。

    珠代の浮かべる表情は、暗いというよりは無表情といったほうがより正確であった。





    音弥「叔母は父の妹で前社長の奥さん。叔父が二日前にクマに殺られたのはご存知ですよね?」

    目暮「このたびは度重なる不幸、お察し申し上げます。」


    珠代「何だかこうも続くと、現実のこととは思えないです・・・・・・。」



    コナン「あの、この料理は何ですか?」

    蘭「こら、コナン君!」


    コナン「ごめんなさい、僕お腹すいちゃって。」



    珠代「良いんですよ。これはこのあたりでとれた山菜です。」

    音弥「美味いですよ?」



    古畑「じゃあいただきましょうか?」


    目暮「お気遣いいただきありがとうございます。」

    高木「いただきます。」




    そういって箸をつける捜査関係者であったが、一口食べると、そろって箸と食器をおいた。




    コナン(うわこれまずっ!!)



    目の前のお茶を急いで飲むコナン。

    周りも同様に、コナンほど急いではいないものの、みんなお茶を飲んでいた。





  52. 52 : : 2017/06/09(金) 12:05:29






    全員がお茶を飲み終わり、一息ついたところで、今度は音弥が話し始めた。






    音弥「僕から話したかったのは、父のことなんです。」

    目暮「お父さんの?」


    音弥「僕の父の堀部幾三は、うちの会社を作ったいわゆる創設者なんですが、今から15年前に遺跡を掘りに行くって言ったっきり行方不明になっているんです。」



    高木「行方不明?」


    音弥「崖から落ちたんじゃないかって僕は踏んでるんですけど。」



    古畑「んっん、ん、あ、あの、捜索はされたんですか?」

    音弥「警察にも言って探してもらいましたけど、遺体は出てきませんでした。クマにでも食べられたのかも知れない。」



    珠代「音弥さん。」




    面白おかしく語る音弥をたしなめる珠代。

    しかしそれは、実に奇怪な死であった。




    コナン(最初の社長が行方不明で次の社長がクマに襲われ、今の社長は・・・・・・。

    何かが引っ掛かる・・・・・・。)





  53. 53 : : 2017/06/09(金) 12:06:15





    コナンが一人考え込む中、話は進んだ。




    高木「では、幾三さんが亡くなった後は、妹さんのご主人である五平さんが跡を継いだと?」



    珠代「夫は兄さんに、自分に万一のことがあったら、会社を預かってほしいと頼まれていたんです。

    それから15年、なんとか会社を守ってきました。


    来年あたり、大吉さんに社長の座を譲るつもりだったらしいです。」




    音弥「つまり、もうお分かりだとは思うんですが、うちの会社の経営者はすでに三人が謎の死を遂げているんです。あまりにも続きすぎるとは思いませんか?」


    阿笠「まるで祟りじゃな・・・・・・。」

    蘭「祟り・・・・・・。」





    沈黙が、リビングを包む。


    博士の言う通り、絵に描いたような祟りだ。

    そういう見方もあるいは成立するかもしれない。



    ただの迷信だと切り捨てるには、あまりに不気味な話であった。





  54. 54 : : 2017/06/09(金) 17:43:45






    音弥「しかもそれだけじゃないんだ。おばさん、古畑さんにあの話をしようと思うんだ。例のわらべ歌。」



    コナン「わらべ歌?」

    音弥「この地方に伝わる一風変わったわらべ歌なんですが、どうも僕にはこの一連の出来事にはそのわらべ歌が絡んでいるように思えてならないんです。」




    コナン(わらべ歌が絡んでいる?)


    音弥の言葉を聞いて、ますます疑念は深まるばかりであった。

    古畑も腑に落ちない、といった様子で口をはさんだ。




    古畑「あの、どういうことでしょうか?」

    音弥「その歌の通りにこの家の当主が死んでるんですよ。」



    阿笠「なんじゃと?」

    蘭「それってホントに祟りなんじゃ・・・・・・。」


    コナン「いやぁ、まさか・・・・・・。」


    音弥「ちょっとびっくりでしょ?」

    高木「まるで小説のような話ですね。」





    こういった怖い話に弱い蘭は少し涙目になっていたが、こういった迷信を信じないコナンは、先ほどからの疑念も相まって首をかしげた。

    迷信を信じないというのは古畑も同じで、古畑は音弥の隣に座る珠代を見たが、彼女の表情は真剣だった。





  55. 55 : : 2017/06/09(金) 17:44:37






    ややあって、今度は珠代がわらべ歌のことについて話し始めた。





    珠代「私も音弥さんから聞いた時には信じられませんでした。


    でも確かにその通りなんです!

    兄さんも、うちの人も、そして大吉さんも、みんなあのわらべ歌の通りに・・・・・・。」



    音弥「・・・・・・まぁ僕も祟りみたいなものを信じたくはないんだけれど。

    実は父も15年前、行方不明になる直前に、裏山を売却しようとしていたんです。」




    コナン「じゃあ、裏山を売ろうとすると、祟られるってこと?」


    音弥「・・・・・・そうかもしれない。」





    再び沈黙がリビングを包む。





    古畑「・・・・・・あの、その歌は、この地方では有名なんですか?」

    珠代「今は歌われていませんが、私が小さい頃は、子供たちがよく、お手玉をしながら歌ってました。」


    音弥「“あの世節”って言うんです。」




    蘭「やだ! コナン君!」

    コナン「!?」




    怖い話にめっぽう弱い蘭はたまらずコナンを抱きしめた。

    蘭に抱きしめられ、ちょっとうれしいコナン君であった。





    古畑「あの、その歌私たちにも教えていただけますか?」


    音弥「おばあちゃんまだ起きてるかな?」

    珠代「さっきはお部屋でお経をあげてらしたけど。」





    音弥「僕の父方の祖母が今年で98になるんですが、あの人なら正確に歌えるはずです。」






  56. 56 : : 2017/06/10(土) 02:28:21







    というわけで、捜査関係者のご一行は、リビングから仏壇のある和室へと移動した。





    蘭「ねぇコナン君・・・・・・。」

    コナン「もう、蘭姉ちゃん怖がりなんだから。」



    コナン(何だよこの部屋、こけしだらけじゃねえか。しかもあのこけし、顔が怒ってやがる。)





    その和室は仏壇に大量のこけしと、薄気味悪いを絵に描いたような部屋であった。

    音弥が座布団を出してくれたので、順々に座っていく。


    すると、古畑が例の怒ったようなこけしに釘付けになっていた。




    音弥「それ変わってるでしょ?」

    古畑「ええ、怒った顔のこけしなんて初めて見ました。」


    音弥「この地方の魔除けです。」

    古畑「ええ、随分古いもののようですねぇ。」


    音弥「江戸時代のものじゃないかな?」





    音弥はそういうと、祖母を呼びに和室から出ていった。

    それを見計らってこけしを手に取る古畑。




    キュポン!



    古畑「!?」

    コナン「!?」




    その瞬間、なんとこけしの頭が外れてしまった。

    すると古畑、慌ててこけしを高木に押し付け、自分はそっぽを向いた。





    音弥「何やってるんですか!?」

    高木「え!? いや、自分は違・・・・・・」


    音弥「あんた、罰が当たるよ?」



    高木「そ、そんなぁ!! 自分何もしてないですって!

    酷いですよ! 古畑さん!!」



    古畑「えっ? 何が?」

    目暮「まったく、高木君は何をしているのかね。」





    コナン(古畑さん大人げねぇ。)






  57. 57 : : 2017/06/10(土) 02:41:10






    目暮「おや、お見えになったようですぞ。」





    さて、高木が何とかこけしの頭を戻そうとあくせくしている間に、音弥の祖母が障子を開けて部屋の中へと入ってきた。


    ぼさぼさの白髪頭、皺の寄った顔、曲がった腰に地味な和服と、どこまでもホラーな見た目で雰囲気満点。

    そんなもんだからコナンは隣に座っていた阿笠に小声で毒づいた。





    コナン「おいおい、これじゃまるで金田一耕助の世界じゃねぇかよ。」

    阿笠「仕方ないじゃろう。事件に関係あるんだからのう。」


    コナン「はぁ・・・・・・。」





    音弥「おばあちゃんわざわざすみませんでした! おばあちゃんにね、あの世節を歌ってほしいんだって!」

    目暮「こんな時間にわざわざ申し訳ありません。」




    目暮が頭を下げたので一同が頭を下げる中、高木はこけしを直すのに必死で周りに気が付いていなかった。

    そんな高木を、おばあちゃんはじぃっと見つめた。





    高木「!?」



    漸く気が付いた高木を見るおばあちゃんの顔には、祟りがあるとはっきり書かれているかのようだった。

    古畑にはめられてますます肩身の狭い高木であった。






  58. 58 : : 2017/06/10(土) 03:00:05





    音弥「おばあちゃん! 歌を!」




    孫にせかされて、おばあちゃんは薄く笑みを浮かべて、鬼切村に伝わるわらべ歌、あの世節を歌い始めた。







    おばあちゃん「・・・・・・あへあへあへあ~・・・・・・。あへあへあ~・・・・・・。

    ・・・・・・あへあへあへあ~・・・・・・。あへあへあ~・・・・・・。



    ・・・・・・あへあへあへあ~・・・・・・。あへあへあ~・・・・・・。

    ・・・・・・あへあへあへあ~・・・・・・。あへあへあ~・・・・・・。」





    コナン(・・・・・・なんだこれ。)



    コナンはとりあえず笑ったが、目が引きつっていた。

    困ったのは古畑も同じで、たまらずに口をはさんだ。





    古畑「あの、あへあへあの、どのぐらいつづくんでしょうか?」

    音弥「おばあちゃん! 途中飛ばしてもらっていいですか! あのほら、山で迷ったあたりを!」




    さて、これは、行方不明になった音弥の父、幾三のことについての歌である。





    おばあちゃん「・・・・・・あの子はあの子で、やぁまのなかでまよぉって、風に吹かれて、おっちんだ~・・・・・・。」





    蘭「何だか不気味な歌詞ね、コナン君?」

    コナン「・・・・・・。」




    コナンの顔から、引きつった笑みが消えた。

    この歌に何か手掛かりはないか、コナンをはじめとする捜査関係者は、じっとその歌を聞いていた。






  59. 59 : : 2017/06/10(土) 03:01:11






    さて、おばあちゃんはまたあへあへ歌い始めたので、音弥が途中で歌を遮るように口を出した。





    音弥「おばあちゃん! クマのくだりを!」



    これは、先日亡くなった先代の社長、五平にまつわる歌である。






    おばあちゃん「・・・・・・あの子はあの子で、森でクマにでおうて、おつむかじられ、おっちんだ~・・・・・・。」






    そして、最後のくだりは、今日亡くなった大吉にまつわる歌である。






    音弥「あと鎧兜!」

    おばあちゃん「あの子はあの子で、鎧兜がおも~すぎ~て、おつむうって、おっちんだ~・・・・・・。」







    それは、あまりに不気味な、堀部家の当主の不可解な死を予言したかのような歌であった。








    ___________もちろんこれは、後付けである。




    音弥の用意した殺人計画の最後の一つ・・・・・・・・・・・・鬼切村わらべ歌殺人。

    この謎が解けない限り、彼らは真相にたどり着けない。





    音弥は部屋に戻ると、ベットに寝そべって自由研究のノートを拡げ、フフフと笑みをこぼした。






    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇







  60. 60 : : 2017/06/10(土) 03:17:23






    コナンたち一行はこれから帰ろうにもあまりに遅くなるということで、珠代の好意もあって、堀部家に泊まっていくこととなった。

    さて、コナンはあてがわれた部屋の中で、蘭が風呂に入っている間に電話をかけていた。


    なんとかこの部屋なら、微弱ながら電波を拾うことができたのである。





    哀『そう、そんなことがあったの。随分大変だったわね。』


    コナン「ったく、まるで祟りみたいだぜ。」

    哀『随分と柄にもないこと言うのね、疫病神の名探偵さん?』


    コナン「!? お前なぁ!?」


    哀『あなたのいくところに事件があって、私にはそっちのほうが祟りだと思えただけよ。』





    さしもの名探偵もこれにはたじたじであった。





    哀『それで、帰りは遅くなりそうなの?』


    コナン「ああ、それと、鎧のトリックの件なんだけどよ?」

    哀『砂糖のことね。考えておくわ。あとお土産もよろしく。』



    コナン「バーロー。観光じゃねぇんだぞ。」





    とここで、蘭の足音が聞こえてきたので、コナンは通話の電源を切った。







    コナン(さっきの歌・・・・・・あまりにも出来すぎてる。


    くそ、一体何が隠されてるんだ。)







    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






  61. 61 : : 2017/06/10(土) 04:59:14






    一方、古畑をはじめとする刑事たちは都内へと戻り、深夜でも営業しているバーの中へと入っていた。

    入ってくる女性客に目線がくぎ付けになりながら、高木はこうつぶやいた。




    高木「同じ東京とは思えないっすね。」

    古畑「私はやっぱりこっちのほうがいいな。なんだよあの山菜! 不味かったねぇ、ふふふふふ・・・・・・。」





    都会の空気を吸って上機嫌な古畑と高木、そしていつもと変わらない様子の目暮は今日得られた情報を整理し、事件のことについて一緒に話し始めた。






    目暮「わしも祟りは信じないのだが、こうも不審死が連続すると気になるものじゃな。」

    古畑「ん~・・・・・・偶然でしょ。」


    高木「古畑さんあの薄気味悪い歌を聞いても信じないんですか?」

    古畑「たまたまでしょう。」



    目暮「15年前に亡くなった堀部幾三は鬼切村の開発を計画していた。

    そして、今回亡くなった堀部大吉も、裏山にレジャーランドを建設する話を進めていたからのう。」



    古畑「だからたまたまでしょう。じゃあクマに殺られた彼はどうなるの、目暮さん?」

    目暮「うむ。五平さんはレジャーランドの建設に、むしろ反対じゃった。」


    高木「一貫性はないですね。」

    古畑「でしょ? だからはっきりしてるのは、この世に祟りなんてないってこと。」






    ガシャン!


    高木「うわっ!!」



    古畑「何やってるの! まったく!」

    高木「グラスが勝手に動いて! た、祟りですよ、目暮さん! 古畑さん!」



    古畑「祟りだよ! これ絶対祟りだよ!」




    濡れたグラスが滑って床に落ちたのを祟りだと大騒ぎする高木と、便乗して部下をいびる古畑を見て、目暮はやれやれとため息をついた。







  62. 62 : : 2017/06/10(土) 06:30:39



    思ったよりも長くなりそうですので、いったんここで区切って前編としたいと思いますw


    完全な自己満足作品なんですが、お付き合い頂けたら幸いであります。




    では、後編もよろしくお願いいたしますm(__)m





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