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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

窓掛けの向こう側

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  1. 1 : : 2017/03/20(月) 16:22:58


    ご無沙汰しております、進撃のMGSです(*´▽`*)


    今作は調味料杯の企画として執筆します。
    全力を尽くす所存ですのでよろしくお願いしますm(__)m



  2. 2 : : 2017/03/20(月) 16:26:45








    コンクリートの壁には、鉄格子のはめられた、カーテンのない小さな窓があった。




    そこから差し込む光には温もりが感じられず、部屋の中もテーブルと椅子が二つ、電気スタンドと灰皿が一つだけとひどく殺風景なもの。

    そしてもう一つ、巨大な窓と扉とが、この部屋のすべて。




    そう、ここは取調室である。






    椅子には一人の男が座っていた。



    ひどくやつれた感じの、やせ型の男だ。

    勾留が長かったせいか、髪はぼさぼさでもっさりとした無精ひげもはやしている。




    小さな鉄格子から降り注ぐ光に照らされたやせ型の男は、これからやってくる時間に怯え、そわそわと落ち着きがなかった。






  3. 3 : : 2017/03/20(月) 16:30:02







    ややあって、やせ型の男の背後にある扉から、もう一人の男がこの部屋の中に入って来た。




    猫背のその男は、国家秘密警察の制服を着こんでおり、その制服の着こなしは、どちらかというと少しだらしないように見える。

    少し長い黒髪を後ろへと流し、にやにやと笑みを浮かべている。


    その男が部屋に現れると、振り向いたやせ型の男はぎくりとしたように姿勢を直した。






    「いやいや、楽にしてくれ給え。勾留がここまで長引いてしまって本当に申し訳ない。さぞかし疲れていることだろう。ん?」

    「私は、もう知っていることについてはすべて話しました! お願いです! こ、殺さないで・・・・・・。」





    いきなり大声を上げ、最後は声を詰まらせたやせ型の男を、秘密警察の男は制する。





    「もちろんもちろん、助けるとも、同志よ。タバコを吸っても構わないかな?」

    「えっ? は、はい・・・・・・。」


    「君が嫌煙家でなくて助かるよ。うちの課長は嫌煙家でね。私が働いているオフィスでは、煙の一つでも立てようものなら、たちまち警報器みたいに注意が飛んでくるからねぇ。いやぁ、参った参った。」





    秘密警察の男はやせ型の男と向かいになるように、暗がりの中に座ると、電気スタンドの電源を入れ、ライターでタバコに火をつけた。

    吐いた煙が降り注ぐ光に揺らめくのを見つめながら、秘密警察の男はまるで張り付いたような笑みを浮かべたまま、本題を切り出した。





  4. 4 : : 2017/03/20(月) 16:31:17







    「さて、形式的なことで恐縮だが、君の供述をもう一度教えてくれないかな?」

    「そんな、私は何度も・・・・・・。」


    「ああ、分かっている分かっている。だがねぇ、私はこれでも公務員だ。お役所仕事は面倒が多くてね。仕事の重複はね、これは仕方のないことなのだよ。どうしてこう非効率的なことを繰り返すのか、理解に苦しむがね。」





    そういって秘密警察はメモ用紙を取り出し、男の供述をメモし始める。

    もちろん、男の供述のことは、秘密警察の頭の中にばっちり入っている。



    それだけではない。

    男の素性を執拗に調べ上げたうえで、秘密警察の男はわざとこう切り出しているのだ。





    (嘘をついているものの供述は、内容が一字一句同じなのだ。ほら、また同じことを・・・・・・・・・・・・。話を作り上げた証拠だ。)





    頭の中ではこう考えながらも、秘密警察の男は笑みを崩さない。

    秘密警察の術中に、この男はもう落ちているのだ。



    さて、やせ型の男の話が終わったところで、秘密警察の男は一息ついた。





    「ご苦労だったね。ああ、もう下がっていいよ。後日また供述を聞くとしよう。」

    「!? 待ってくれ!? まだ何も聞いてないじゃないか!?」


    「いやぁ、もう十分に聞かせてもらったよ。こっちとしてはもう聞くことはないからねぇ。また今度。」





    秘密警察の男が笑みを浮かべながらそう言い放つと、やせ型の男は絶叫した。





    「嫌だぁあぁぁ!! もう殺してくれぇ!!」

    「それは、君の態度次第だよ、同志。君が真実を語ってくれさえすれば、直ちに君の望み通りにしよう。」












    ___________やせ型の男が真実を吐露し、その後、独房の中で首を吊って死んでいるのが発見されたのは、その数日後のことだった。








    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇







  5. 5 : : 2017/03/20(月) 16:33:27







    「いつもながらお見事な尋問だったね、フィルチ警部。」

    「いえいえ、これくらいの尋問でしたら、オムライスを作るくらいには容易いですよ、シリングス課長。」


    「私にはオムライスづくりは難しいものだと思えるのだがね。君には簡単なのか、うらやましいことだ。」


    「今度教えましょうか?」

    「ぜひ頼むとしよう。君が来てくれたとあらば、家内も喜ぶだろう。」







    秘密警察の男――――――エドヴァルド・フィルチは、秘密警察第一課長であるアルマンド・フォン・シリングスのオフィスを訪れていた。







    アルマンドのオフィスは潔癖そのものであり、彼の人となりがそのまま部屋にも表れていた。

    膨大な資料や蔵書、レコードなどが、本棚に整然と並べられている。


    今向かい合って座っている黒革のソファーも、よく手入れが行き届いているのか、鈍い光沢を湛えている。


    ちなみに、彼が嫌煙家であるというのも、お気に入りのカーテンがヤニで汚れてしまうのを心配してのことだった。

    白髪がうっすらと混じった黒い髪をビシッとセットし、黒縁の眼鏡をかけた初老の男性であるアルマンドは、眼鏡の奥に優しい眼差しを湛えていたが、ややあって、少しばかり愁いを帯びた様子で話をつづけた。






  6. 6 : : 2017/03/20(月) 16:35:17







    「エド・・・・・・・・・・・・モゼス長官が君をお呼びだ。」


    「ほう? また何か悪巧みを働かせているのですかな?」

    「君は少し言葉を選んだほうがいい。仮にもモゼス長官は上官なのだ。私と君くらいの間柄なら問題にはならないが、私はたまに心配になるよ。」


    「匙加減については私も心得ているつもりだ、アルマンド。」

    「そうやって君はいつも抜け抜けと真相を掴むのだね。まったく、君の偏屈さには一周回って頭が下がる。」






    アルマンドはそういうと、困ったような笑みを浮かべた。






    「いいかね? 君は尋問について成果を上げた。それ故に長官は君を高く買っている。」

    「君の口利きもあったんだろう? エド?」





    皮肉を利かせるフィルチに対し、アルマンドもまた皮肉な笑みを浮かべる。

    友人同士の気安さで、二人は話を続けた。






    「もちろんそうだ。君は優秀な人間だ。少々・・・・・・・・・・・・まぁ、偏屈なんだが、私情を交えずに仕事をこなすことにかけては図抜けている。」

    「親切なご評価をどうもありがとうございます、シリングス課長。」


    「どうやら相当重要な件らしい。私に恥をかかせないでくれよ? でなければ、君を推した甲斐がない。」






  7. 7 : : 2017/03/20(月) 16:37:05








    話が終わると、フィルチは立ち上がって、友人に向かって緩い敬礼をした。

    アルマンドもまた、敬礼を返す。


    やはりアルマンドの敬礼は、彼の性格通り、ピシッとしたものだ。





    「では、行ってくるとしましょうか。」



    ゆったりとした足取りでオフィスを後にしようとすると、座ったままのアルマンドが「もう一言。」と声をかけてきた。






    「何ですかな?」


    「君の制服はいささかヤニくさい。消臭スプレーをかけてから長官の部屋には行き給え。」

    「知りませんでしたな。長官も嫌煙家で?」


    「ふふふ、私ほどではないが、好んでいないのは君にとっては不幸だったな。分かったらそうしてくれ。」






    アルマンドが悪戯っぽい笑みを浮かべると、フィルチもまた同じような笑みを浮かべてから、オフィスを退出した。







    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇







  8. 8 : : 2017/03/21(火) 02:51:01







    「警部? どんなお話だったんです?」

    「何でもかんでも首を突っ込むなと、いつも注意してるはずなのだがね? ジョゼフ?」





    さて、アルマンドのオフィスを退出し、長官のデスクのある廊下を静かに歩いていると、部下である警部補――――ジョゼフ・バーナード・ショウと出くわした。





    短く切りそろえた金髪と冴え冴えとした碧い瞳を持つ、20代後半のこの若者は、心の中に燃え立つような好奇心をのぞかせている。

    自分にも昔このような時期があったと少しばかり苦い思いを隠しながら、フィルチは微笑ましい、といった感じで笑みを浮かべた。



    それに、この男は情報収集にも長けている。



    先日の取り調べの際に、やせ型の男のありとあらゆる情報を集めたのがジョゼフだったのだ。

    こればかりはフィルチにはない資質であり、フィルチはそんなジョゼフを高く買っていた。




    するとジョゼフはフッと微笑んだ後、いささかまじめな顔つきをした。

    まだ若さの残る精悍な顔つきに、フィルチも気を引き締める。





    「どうやら、好奇心だけここにいる訳ではないようだね? ん?」

    「ええ、自分もさっき、長官に呼ばれましたので。」


    「ほう? これはこれは奇遇・・・・・・・・・・・・というわけでもなさそうですな。」




    フィルチは言葉を切ると、向きを変えて敬礼をした。

    はっとしたジョゼフもまた、敬礼を送る。







  9. 9 : : 2017/03/21(火) 02:51:54






    「君たち二人のご到着を待っていたよ、フィルチ君、ショウ君。」





    二人の敬礼に応えるように敬礼を返してきたのは、国家秘密警察長官―――――――ヘルムート・モゼス。

    肥満気味のでっぷりとしたおなかに白髪、蓄えた白い口髭は好々爺のそれであった。


    もちろん、好々爺であるだけでは秘密警察の長官が務まるはずもない。


    あちらこちらで聞いたこの食わせ者の黒い噂をあれこれと心の中で浮かべながら、フィルチは長官とにこやかに話を始めた。





    「ジョゼフ警部補とこの私とを一緒にお呼びになるとは、一体どのようなご用件でしょうか?」


    「ふむ。君が先日尋問した男のことだ。」

    「ああ、囚人服で首を吊って死んだ、あの男のことですか。」


    「その通り。あの男は死ぬ前に、われらが総統を脅かす不届きな反逆者の詳細を語ってくれた。君のおかげだよ、フィルチ君。」






    得意そうな様子の長官に、フィルチもまた笑顔で相槌を打つ。

    そんな二人に付いていこうと、必死に聞き耳を立てているジョゼフ。


    やがて、オフィスに通された二人は、着席を促され、長官と向かい合うようにしてソファーに座った。






    「では、本題に入るとしよう。フィルチ君。ショウ君。」





    それまでにこやかだった長官は、本題に入ると抜け目のない、鋭い目つきへと変わった。

    それは、警察というよりはむしろ政治家のそれであり、この老獪さでもってモゼスは独裁者からも一目置かれる存在としてならしていた。


    独裁者と直接対面することの許されている男の一人・・・・・・・・・・・・――――――それが、ヘルムート・モゼスという男だった。






  10. 10 : : 2017/03/21(火) 02:53:13







    「君たちの働きによって、革命勢力の首謀者―――――通称“革命家”の存在が明らかとなった。」




    モゼスの声は、鋭かった。




    国内にある革命勢力・・・・・・――――――およそ二年ほどのことだ。この国の大臣の一人が誘拐され、殺害された。

    それからというもの、ことあるごとに大物の政治家たちが誘拐されては殺されていた。


    軌を同じくして、国内のあちこちで暴動が発生し、役所や警察署が襲撃される事態も相次いでいた。




    これまでのところ、秘密警察は後手後手に回っていたのであるが、先日捕らえたやせ型の男から、ようやく首謀者と思しき男を割り出した。




    が、その男の情報は、実に奇妙なものであった。

    フィルチは先日尋問した男から聞いた話を、ここでも切り出した。





    「最初はふざけているのかと思いましたがねぇ。黒い頭巾に仮面を被った革命家。素性も素顔も一切が不明。唯一分かっていることと言えば、カーテンで仕切られた奇妙な個室のことくらい。」

    「自分もできる限り情報を集めようとしましたが、何分証言がこんな塩梅でしたので・・・・・・。」





    フィルチの言葉を継いだジョゼフもまた、難しい顔を浮かべる。

    するとモゼスは、厳しい表情を幾分か緩め、こんな提案を二人に切り出してきた。





    「そこでだ。この革命家の調査を君たち二人に担当してもらいたい。もちろん、必要とあらばもっと人員もつけよう。」





    この申し出には驚いたのであるが、フィルチはここで立ち止まるような男ではなかった。

    それに、そもそも清廉潔白であるならば、秘密警察に身を置くはずもなかった。





    「ありがたいお言葉です、長官。後々人員が必要になるかとは考えますが、今は情報の漏洩を最小限に抑えるため、私とジョゼフ警部補の二人で調査を担当します。よろしいですかな?」

    「もちろんだとも、警部。君の申し出とあらば、必要なものはすべて取りそろえよう。」


    「お気遣い、感謝いたします。」





    ___________ここで革命家を捕らえれば、次期長官も夢ではない。

    自分がこの手で革命を終わらせ、この国にさらなる繁栄をもたらすのだ。




    ジョゼフと共に見事な敬礼をした後、フィルチは長官のオフィスを、ゆったりとした足取りで退出していった。







    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇







  11. 11 : : 2017/03/22(水) 02:30:41







    ___________この国の首都には、灰色の帳が下りている。





    そう形容したくなるくらいに、街並みは殺風景であり、憂鬱に沈んでいた。

    行きかう人々の顔に活気もなく、何かに怯えているように神経質で、よそよそしかった。



    伝統的な石造りの建物の中に混じって建てられた、画一的で無機質な建築群。


    生身の肉体に鉄が直に取り付けられたような歪な都市・・・・・・・・・・・・――――――それがこの国の首都の、ありふれた肖像であった。






    フィルチの自宅もまた、この砂漠のように味気ない首都の、マンションの一室にあった。





    部屋の中はここの街並みと同じようにひどく殺風景であり、机と椅子とテーブルとキッチン。

    そして、寝室にはベットが並べられているだけの簡素な部屋であった。



    少しばかり潤いのあるものと言えば、壁に掛けられた絵画くらいだろうか。



    とはいえ、フィルチにはアルマンドのように芸術を解する趣味はなく、彼から贈られた絵画を何とはなしに飾っていたのである。






  12. 12 : : 2017/03/22(水) 12:31:30






    ___________今、時刻は夕刻に差し掛かったころである。






    フィルチの寝室からは、この時刻になると、時折女性の艶っぽい喘ぎ声が漏れ出してくる。

    高い金で雇った高級娼婦と、肌を合わせるのがこの時間なのだ。



    女の四肢にしがみつき、フィルチはおのが性欲を炸裂させていた。







    ひとしきり楽しんだ後、快楽の余韻に浸っていると、不意に時計のベルが鳴った。



    娼婦が持ち込んできた時計である。


    ベルが鳴ると同時に、娼婦はベットからすっと立ち上がり、床に落ちた下着を身に纏い始めた。






    「ふふ、君は相変わらず時間にはお厳しい。」

    「お仕事ですもの、時間をきっちりと守らないと気が済まないのよ。」





    金糸のような髪を後ろに束ね、色白の高級娼婦はどこか影のある、しかし、柔らかな笑みを浮かべる。

    服を纏う娼婦の様子を見ながらタバコの煙を吹かすフィルチは、何か満たされないような、そんな虚脱感に襲われていた。






  13. 13 : : 2017/03/22(水) 12:32:37







    (一時の快楽とは、なんと儚いものだろうか・・・・・・・・・・・・。)




    仕事も交友関係も順調そのもの。


    傍から見れば何も不足しているようには見えないはずだ。

    しかし、実際は乾いて乾いてしょうがなかった。



    ちょうど、砂漠に水を撒いても意味がないように、心の中はひたすらに乾いていた。


    一体心の中の何がそう乾いているのか、それはフィルチ自身、よく分かっていなかった。





    「随分と憂鬱な顔をするのね、フィルチ?」

    「君がいい女だからいけないのだよ、マルタ。」


    「社交辞令ね?」


    「とんでもない。もっと時間をかけて抱きたいくらいだよ。」





    フィルチはいつもの笑みを浮かべるが、その笑みがもう仮面に過ぎないことを彼女には悟られていることに気が付いていた。

    それでも、高級娼婦はこちらには踏み込んでこない。


    それが彼女の仕事だからだ。皮肉なことながら。





    「残念ね。もう次の予定が埋まっているの。」




    嫌味にならない程度に残念そうな笑みを浮かべ、その碧い瞳に幾分か憂鬱を滲ませながら、娼婦はコートを羽織った。






    「君ならいつでも歓迎さ。」

    「そういってくださるとうれしいわ。またお会いしましょう、フィルチ。」





    そういうと彼女は、フィルチの頬にそっと口づけをして、寝室を出ていった。








    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇







  14. 14 : : 2017/04/07(金) 14:42:21







    ___________世間を揺るがすあの放送があったのは、フィルチが調査を始めてから数日後のことだ。






    「くそ、一体どこから放送している!? 今すぐ放送を止めさせろッ!!」




    モゼス長官が顔を真っ赤にして、オフィスにあるテレビに向かって怒鳴り散らすのが、部屋の外にいても聞こえてくる。

    チャンネルというチャンネルはすべてジャックされ、街中のモニターというモニターが、あの男を映し出していた。





    ―――――・・・・・・・・・・・・市民たちに蜂起を促す、謎の仮面の男。





    その男の言葉は瞬く間に国の隅々へと広がっていき、小さな波紋がたちまちのうちに広がっていく。

    フィルチの務めている秘密警察も、その渦中にあって、てんやわんやの対応に忙殺されていた。





    フィルチ「発信源は特定できたのか!?」

    ジョゼフ「今はまだ・・・・・・。これほど複雑な暗号を見たことがない。」


    アルマンド「調査の進展はどうなっていたのかね!?」


    フィルチ「あまりに手掛かりが少なすぎる!」

    アルマンド「そんなことは分かっている! だが、誰かが責任を負わされる事態だぞ!?」





    秘密警察に務める職員たちは、まさに穴ぐらに追い詰められた獲物のごとくに戦々恐々とした心境だった。

    皆が上層部の粛清を恐れ、水面下における責任の擦り付け合いとなっていた。



    ここで一つ訂正を入れなくてはならないだろう。



    てんやわんやの対応と先ほど書いた自分ではあるが、その大半はこういった責任の所在の追及に充てられており、肝心の革命家に対する捜査はほとんど進んでいなかったのである。







  15. 15 : : 2017/04/07(金) 14:43:15





    (こんなことを、している場合では、ないだろうが・・・・・・。)




    遅々として捜査の進まないこの状況に、内心、フィルチは苛立っていた。

    その間にも放送は流れ続け、革命家は自分の所信を、信条を力強く宣言していく。



    気が付けば放送は終了し、足取りをつかめぬまま通信ジャックは終わってしまっていた。



    長官のモゼス以下、足取りをつかめなかったことは、言ってみれば秘密警察にとって取り返しのつかない大失態であったのだ。










    「分かっております、大臣。」

    『いいか!? 必ず首謀者が誰であるのかを突き止めろ! さもなくば、貴様の命はないと思え。』


    「・・・・・・私が、必ず。」





    大臣からの叱責を受けて、長官は、震える手で受話器を置いた。

    死神の鎌を首に突き付けられ、モゼスは冷や汗をびっしょりとかく羽目になった。






  16. 16 : : 2017/04/07(金) 14:44:12






    さて、しばらくして、アルマンドのオフィスではフィルチがソファーに腰かけて、今までの調査の報告を行っていた。




    大臣が長官に叱責を飛ばしたことで、責任の所在をめぐる争いに決着がついた。

    もちろん責任は長官にあるのが道理であったのだが、それを回避しようとしたモゼスが、部下に責任を擦り付けようとしていたのである。


    その策謀は大臣の介入によって失敗し、まあフィルチとしてはようやく腰を据えて調査ができる環境が整ったわけだ。




    策謀をかわすことができたのは、アルマンドの手腕によるところも大きかった。

    フィルチはようやく安堵したような笑みを浮かべ、卓越した政治手腕を持つ親友に声を掛けた。




    「君は本当に食えない友人だね、アルマンド。まさか大臣と直接パイプを持っていたとは。」

    「私はただできることをやったまでだよ、エド。そうでなければ君の首が飛んでいたところだ。もちろん、大臣にはモゼス長官の助命も頼んである。あとは長官の手腕次第だろう。」




    アルマンドは何事もなかったかのように、目の前に出されていた紅茶を啜った。






  17. 17 : : 2017/04/07(金) 14:46:17






    多分に貴族趣味のあるアルマンドのことだ。

    この紅茶もきっと高級品に違いあるまい。




    そんなことを考えていたフィルチだが、雑念を脇へと押しやり、尋問してきた反政府組織の人間たちの証言を確認していく。





    「パズルみたいなものだ、アルマンド。どうやら、革命家はずいぶんとパーソナルスペースに気を配っておいでのようですな。」

    「ふむ。」


    「極力革命家は自分の部屋に人間を入れたくないらしい。だが、気を許した数名の人間だけならば、案内することもあるそうだ。

    うぅむ・・・・・・。もちろん、革命家というだけあって隠れるのは当然かもしれんが、私には何か、必要以上に何かを隠そうとしているように思えるのだよ。」






    フィルチが考え込むそぶりを見せ、懐から葉巻を取り出すと、途端にアルマンドがしかめっ面になる。

    はっとしたフィルチは言い訳に苦慮する羽目になった。





    「アルマンド、これは葉巻だ! タバコとは違いますぞ?」

    「匂いは同じだ、エド。この機会にぜひ禁煙をしてみては如何かね?」


    「それは困る! 私から葉巻を取ったら、もう骨しか残りませんぞ!?」





    やれやれ、アルマンドのタバコ嫌いは筋金入りだとうんざりしつつ、フィルチは懐に葉巻をしまう。

    漸く平素の顔に戻ったアルマンドに気を遣いつつ、フィルチは葉巻を吸うためにアルマンドのオフィスを退出した。







    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇







  18. 18 : : 2017/04/27(木) 15:01:03







    追い詰められたモゼス長官が辣腕を振るったのは、その翌日のことであった。






    モゼスは自分のオフィスにアルマンドを呼び寄せ、自分の思うところを述べていた。

    長官は革命家の潜んでいる場所について、その所在をある程度絞り込み始めていた。





    「いいかねアルマンド? あの仮面野郎はこの一帯に潜伏している可能性が高い。高度に暗号化された信号ではあったが、それをこの国全土に発進するとなれば帝都からやらざるを得まい。」

    「一理ありますが、もともと撮っておいた画像を帝都へと持ち込んでから流した可能性も捨てきれませんぞ?」


    「そうだな。だが、たとえ一時的にせよ、この電波塔の近くに拠点を構えていなくては昨日のような真似は出来ん!」






    吐き捨てるように言うモゼスの表情は苦虫を噛み潰したように不機嫌であったが、その指摘は要領を得ていた。

    ハンカチで汗をぬぐいながら、モゼスは唸るように言葉をつづけた。






    「そこでだ。近くの建物の図面をくまなくチェックし、拠点となりえるだろう物件を探した。今フィルチがここに向かっている。


    さて、アルマンド。君はここへと向かってくれ。

    私はここを、がさ入れするとしよう。



    今度こそ奴の息の根を止める。昨日のような真似をする奴がどんな報いを受けるのか、見せつけてやる!」






  19. 19 : : 2017/04/27(木) 15:02:08








    気炎をあげるモゼスに敬礼し、アルマンドはオフィスを後にする。

    それから一般の職員たちが働くオフィスへと入ると、職員の一人が近づいてきた。





    「アルマンドさん、準備は出来ています。」

    「宜しい。我々はこれからこの地区にある建物の中を徹底的に捜索する。戦闘になることも予想されるだろう。」






    アルマンドの言葉に凛として職員が敬礼。

    他の職員たちも次々と立ち上がって、手早く身支度を済ませ、銃を身に着けた。


    アルマンドは臨時に編成された部隊に向かって、淡々として言葉を続けた。






    「ここまで早くに革命家の足取りを掴めたのは僥倖だった。革命家を捕らえ、我が国を正しい方向に導けるかどうかは我々の手腕にかかっている。

    君たちの働きには大いに期待している。気を引き締めるのだ。」







    間もなくアルマンドは職員を率い、革命家が潜伏していると思われる地区へと出動した。







    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇







  20. 20 : : 2017/05/08(月) 16:22:29
    期待です!
    いつかMGSさんみたいな執筆者になりたい…

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hymki8il

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