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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

カラバコ

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  1. 1 : : 2016/09/11(日) 02:02:24
    秋のコトダ祭挑戦者として投稿させていただきます!

    テーマ「人間関係」

    ジャンル「青春」

    キーワード「殺人」

    で投稿していきます。

    参加者は自分の他に
    ・たけのこまんじゅうさん
    ・風邪は不治の病 さん
    ・あげぴよさん
    ・ゆーたまろさん
    ・スカイさん
    ・作者咲紗さん
    が参加なされています!

    正直、この期に及んでもキーワードとか上手く回収できてるか分かりませんが、やるからには最後まで全力で挑みたいと思います!

    次レスから本編開始です!
  2. 2 : : 2016/09/11(日) 02:13:22
    季節の移りめにさしかかり、冬服もそろそろ収納行きかという頃。

    俺はといえば、まさに「いつも通り」といった感じだ。



    いや、「怠惰」といったところだろう。


    日向「いっつつ……」

    ……あの警備員に熨されたときの傷口が痛む。


    こんな時、もしかすると「アイツ」だったら憎まれ口の1つでも叩いて来るかも知れないが……

    彼女の席には花瓶が置かれている。

    タチの悪いイジメではない事がなおさら質が悪い。



    永久とも1分ともつかない50分がただ無為に過ぎて行く。


    希望ヶ峰学園。その予備学科の1日というのも存外、平々凡々である。


    友達でもいればある程度変わったんだろうけど…


    生憎俺は「ボッチ」と言われる奴だった。


    日向(くっそ……)

    無意味に頭をかきむしった。

    このところ、俺の心の中はうららかで、澄みきった夏の入り口の空とは対照的なものであった。
  3. 3 : : 2016/09/11(日) 02:31:26
    怠惰……いや、ほぼ「眠っていないだけ」で過ごす時間は思いの他あっという間に過ぎる。

    終業のチャイムが鳴ると、肩を落として帰路に着く。



    ふと、書類に目を落とす。


    「極秘プロジェクト同意書」


    誰がどう見ても違法な人体実験の同意書。


    同意書に判を押せと急かされるのは今に始まった事ではない。

    昨日返した答はこれまでと同じ。

    「もう少し待ってくれ。」


    だが、無論「ホスト」だっていつまで待ってくれるわけではない。

    「あっ! 日向くん!」


    悶々と錆び付いた頭を無理やり回転させているところに、不意に声をかけられた。

    日向「あっ!あぁ… どうした?七海…」

    慌てて書類を鞄の中に突っ込んだ。


    七海「どうしたの? そんなに慌てて…」

    日向「あぁ…小テストだよ… ちょっと…出来が悪くってさ……」

    見せたくない。と言うより間違っても見られてしまったら俺にも七海にも良い結果が訪れないことは明白だ。


    七海「ねぇねぇ! 今日「鋼拳」がアップデートされる日だよ! はやくゲーセンよってこ!」

    日向「本当か? なら行くか!」


    槍を投げつけられるが如き視線を背中に感じながら、俺は七海に手を引かれていった。
  4. 4 : : 2016/09/11(日) 02:46:47
    予備学科1「…………………。」

    予備学科2「チッ……」


    背中から確かに白い目線を感じられる。



    「違う。」


    「お前は『そっち側』じゃない。」



    視線は確かにそう物語る。

    正直、七海と付き合い出した頃から薄々と、自分ですらそうなんじゃないかと感じていた。

    が、最近はいっそう「それ」が強い。

    「上」からは文字通り蹴落とされ…

    「下」からは泥沼の住人から脚を掴まれる。


    俺はといえば「どっち」にもなりきれない。

    いや、「下」ではないと上ばっか見て足掻いていた。



    結局は俺も泥沼の住人。


    暗く、淀んだ息苦しい沼の底。

    そこから空を見上げてるだけの亡者。




    七海「日向くん?」

    日向「え? あぁ…」

    出口も無い自問の螺旋から抜け出された。


    警備員(またあの予備学科……)

    板挟み、四面楚歌。

    上からも下からも矛先を向けられる。


    日向「行くか…! 七海」

    七海「えぇ?うん。」

    俺は逃げるようにその場を後にした。



    七海「日向くん!どれからやる?」

    日向「えっ? あぁ… 「鋼拳」やるんじゃなかったっけ?」

    七海「うん…だけど、その前に何かやってくのもいいかなって。」

    日向「うん… じゃあ… そこのシューティングでも……」



    ……俺は専門家でもなけりゃ「超高校級」でもない。

    まして七海ほどゲームの「才能」があるわけでもない。

    が、七海のゲームの「才能」は決してコントローラーさばきだけに留まらない。

    日向「げっ……」

    なんて事を考えていたら自キャラのHPがまた0になった。


    もう5クレジット分は無駄金となった。



    日向「ははっ…悪い。七海…」

    七海「……………………………。」

    それまでノーダメージでコンボを積み重ねていた七海がわざと被弾し、GameOverにしてしまった。

    乱雑にコントローラーを置き、くるりと背中を向けた。

    七海「帰ろう。」

    日向「ちょっ… おい! 待ってくれよ!」
  5. 5 : : 2016/09/11(日) 03:02:38

    すたすたとゲーセンを後にしていく。

    日向「七海ってさ… スゴいよな。普通のゲーム機だけじゃなくて… 体使う筐体でも余裕でクリアできてさ…」

    七海は急にピタリと立ち止まった。

    七海「……けど、面白くなかったよ。」

    七海「日向くん……全然集中してなかったもん…」


    踵を返して七海は俺の目をまっすぐに見つめた。

    七海「ねぇ… 何かあったの?」


    真剣に、俺を心から心配してくれている。

    そんな事は分かっちゃいる。

    七海「やっぱり… あのケガと何か関係が……」

    日向「関係ない……平気だから…」


    七海「日向くん!」

    日向「悪い。七海……俺…ちょっと……」


    情けなくって、いたたまれなくて

    ただただ、その場から逃げ出した。

    走り出した。

    背中に投げつけられる槍ではなく、俺を心から気遣ってくれた声を無視して。
  6. 6 : : 2016/09/11(日) 03:30:16

    七海「日向くん!!」


    七海「日向くん……」

    七海(「何でもない」なんて事… あるわけない…)

    七海(思い過ごし?……いや、そんなハズない…)



    七海(なんで……話してくれないのかな……?)


    七海(日向くんも……「そんな風に」考えてるの?)

    七海「そんな……っ! そんな…はず……ない……のに…っ」






    走った。 ただひたすらに。


    日向「………っは! 」

    日向「……っ はははははははッ!」

    なんだよ、最初っから分かってた事じゃないか。


    こんな意気地無しで何の才能も無い俺が最初っから釣り合うはず無かったって。

    最初っから分かってたはずだ。


    元より俺は「こっち」側。


    「あっち」側とは釣り合わない。


    当然。必然。大前提。


    分かりきっていた事のはずなのに……


    日向「どうして……ッ! どうして止まらないんだ…………」


    溢れ出し、頬を伝うものを止める術はなかった。
  7. 7 : : 2016/09/11(日) 05:04:01






    江ノ島「ねぇ? あれが本当にカムクラプロジェクトの被験者なわけ?」

    戦刃「うん…… 間違いないよ。盾子ちゃん…」

    戦刃「もっとも……厳密にはまだ「被験者」じゃないけど……」

    江ノ島「ふぅん…」

    江ノ島(想定してたより意気地無しだなぁ…)


    江ノ島「いや…イケる……コレはイケる……!」

  8. 8 : : 2016/09/11(日) 12:52:20



    日向「俺じゃああいつに……釣り合わない…」


    とっくの昔に自覚のあった事を今さら復唱した。




    自宅に戻っても味けない事この上ない。



    俺の両親は医者だった。


    それなりに地位もある医者で、父親は脳科学の権威と言われていた。

    そしてやはり、「それなり」に財力もある。

    父親「まだ決心がつかんのか…お前は……」

    父親「まったく。誰のおかげで学校にも通えてると思っているんだ……頼むからこれ以上「恥をかかせないで」くれ。」


    父親「いいか?お前はクズだ!ゴミだ!!

    私のような医学の才能もなければ学力も何もかも平凡そのもの!!」

    父親「日向家の恥なんだよお前は!!!」

    父親「そんなお前にこの俺がわざわざ慈悲をかけ、金をかけてお前に「ブランド」という付加価値を与えてやろうとしているんだ!!」

    父親「少しは有難いと思え!!!」

    父親「クズ! ゴミ! 寄生虫! 恥さらし!!」


    父親「お前にはブランドさえあればそれでいいんだよ!!」



    父親「…………もはや次男に希望を託す事もできぬ……妻さえ生きていれば………っ!」

    日向「……………。」


    半ば聞き流して自室に逃げ帰った。


    日向(俺は……)


    日向(俺には何があるんだ……)

    日向(やっぱ何も無いのか…?)
  9. 9 : : 2016/09/11(日) 15:03:47
    翌朝。気の重くなる通学路。

    日向(やっぱ… 七海に謝った方がいいよな……)

    思えば、七海に会う前はさして話す相手もいなかった。

    七海がいたから、あいつがいたからこそ。


    俺に人体実験を踏みとどまらせる微かなかがり火となっていたのではないか?

    だったら俺は………


    そのかがり火を自ら揉み消したのではないか?



    二度と戻って来るかも分からない。か細い光、温もりを…




    真っ暗闇。

    文字通りの暗黒。

    日向「やっぱ… 俺は…」

    1日中そんな事を考えていた。


    無論。授業なぞ頭に入る筈もない。

    ただ、「死んでいないだけ」。


    そんな毎日。




    心臓が動いているだけ。

    脳が止まっていないだけ。

    ただ、手足が動くだけ。


    死んでいないだけ。




    日向「……だったら…いっそ…………」

    日向(このまま… 死んだみたいな毎日を送るぐらいだったら…)


    日向(本当にリセットした方が………)





    それは「金メッキ」。本物の金じゃない。

    中身は安い鉛で出来た偽りの金色。



    無論。本物の「純金」に敵う筈もない。


    頭じゃそんな事分かってる。




    だけど…


    薄暗い灰色剥き出しの鉛なぞ誰が見向きするだろうか?

    それこそ、「純金」に並ぶ事なぞあまりに恥ずべき行為だろう。


    例え、付け焼き刃の薄っぺらの、偽りの金色だったとしても。


    最低限。隣に並ぶには……


    足りるんじゃ……ないか?



    「金メッキ」だろうが関係無い。


    とにかく、錆びた鉛のまま、「純金」に並ぶ事なぞ出来やしない。



    「鉛」はもう懲り懲りなんだ。



    日向「やっぱり………」
  10. 10 : : 2016/09/11(日) 15:54:34


    七海「日向くん!」


    日向「七海……?」




    ふと、気がつくといつもの噴水。

    あの場所に俺は立っていた。

    日向「あ……」

    七海「その… ごめんね。昨日は…」

    日向「いや… 俺の方こそ…」

  11. 11 : : 2016/09/11(日) 18:20:07
    …………………。


    お互い向かい合ったまま話が続かない。

    話したい事は山ほどあるはずなのに。



    七海「……日向くん。」

    沈黙を破ったのは七海の方だった。


    七海「まだ… あの事悩んでるの?」


    七海「『自分には才能が無い』……『自分は普通だ』って……」

    日向「…………」


    日向「……歯車は…」

    七海「…え?」

    日向「鉛は…… 金の代わりにはなれないさ…」

    七海「日向くん……?」


    日向「どんなに粋がっても…鉛が金の代わりは勤まらないし…」

    日向「『鉛』なんてどこにでも転がってるんだからさ…」


    日向「……俺は… 『純金』の方になりたかったよ…」


    日向「けど… 俺もその金になれそうなチャンスが巡ってきたんだよ……」


    日向「これさえありゃ………俺も…!」



    日向「俺も…七海に…………」
  12. 12 : : 2016/09/11(日) 18:46:06
    七海「日向くんはさ……」

    七海「………………っ」


    七海は口をつぐんだ。



    七海「ねぇ…日向くんは前に…わたしにはゲームの才能があるって……」

    七海「『俺とは違う』って言ってたけど…」


    七海「もし…わたしにゲームの『才能』が無かったら… 」

    七海「わたしのこと…嫌い?」

    七海「どうでもいい…のかな…?」


    七海「それに… 日向くんは鉛に金の代わりは勤まらないって言ったけど……」

    七海「金にだって… 鉛の代わりは勤まらないんだよ……」


    七海「わたしは……」

    七海「わたしは…… 日向くんの『代わり』なんていないと思ってるから……!」



    七海「日向くんは…どうなのかな…?」

    七海「『才能』さえあったら…… 他の子でも………」
  13. 13 : : 2016/09/12(月) 10:57:38


    日向「……ッ! ちが…っ!」

    日向「俺はそんなつもりじゃ……!」


    七海「……そう。」


    七海「よかった………」


    七海「わたし… もしかしたら「そう」なのかな?って…ずっと考えてたんだ…」


    七海「日向くんが遊んでくれたのも……」

    七海「その…自分で言うのもなんなんだけど……」


    七海「ゲームの『才能』だけだったのかなって…」

    日向「いや…俺は……」

    七海「うぅん。いいの… 」


    七海「もう。そうじゃないって… 分かったから。」
  14. 14 : : 2016/09/12(月) 12:26:39
    日向「七海………」

    日向「ごめん!! ……俺、七海の気持ちも考えずに……」


    日向「俺は……」

    日向「俺は…… その… ゲームの才能とか…そんなの無くても……」

    日向「えと……その…………っ」


    日向(クソッ… 言え…!言えよ…!)



    日向「あ…… ごめ…」

    七海「大丈夫……」


    七海「たぶん… 言いたい事は同じだから……」


    日向「七海……」
  15. 15 : : 2016/09/12(月) 15:26:33




    江ノ島「……………」

    江ノ島「ァああああああああーーーーッ!!!じんましんが出るゥーーーーッ!!」



    戦刃「盾子ちゃん……」

    江ノ島(声マネ)「たぶん、考えてる事は同じだから…」


    江ノ島「じゃねぇよ! 今どきいねぇっつのそんなヤツーーッ!!」

    戦刃(目の前にいたけど…)

    江ノ島「(リア充)・即・斬・殺!!」


    戦刃「だ…大丈夫?盾子ちゃん…」

    江ノ島「はぁーー ツマラナイ事この上ないわ…」

    江ノ島「あんな「希望」に満ち溢れたカップルさぁ……」

    江ノ島「…………。」


    戦刃(今回の盾子ちゃんの計画はおおかた聞かされてるけど…)

    戦刃(なんか… 盾子ちゃんの計画にしては「まどろっこしい」というか…)



    江ノ島「じゃ、さっさと「2号」探すとしますか。」

    戦刃「え? もう?」


    江ノ島「いいーーから。さっさとしてよ。」

    戦刃「わ…分かったよ…!」

    戦刃(相変わらず盾子ちゃんの考える事だけは把握しきれないなぁ……)
  16. 16 : : 2016/09/12(月) 18:08:48
    2号…だと…?
    後オモシロイです
  17. 17 : : 2016/09/12(月) 18:09:22
    翌日。

    俺は、本来なら近づく事すら許されない場所に来ていた。

    「学園長室」その厳かな雰囲気漂う扉の前。

    七海「大丈夫? 日向くん… 一緒に行こうか?」

    日向「大丈夫だよ。1人で行ける。」

    日向「鉛なら鉛らしく……鉛にしか出来ない事を… 胸を張ってな。」


    七海「……うん! 頑張ってね!」

    日向「あぁ!」





    重苦しくその扉が開く。

    ゲームで言うなら魔王の城って感じだ。




    俺は、部屋の奥に鎮座する「魔王」と相対した。


    仁「……どうぞ。掛けてくれ。」

    日向「失礼します。」


    手下を統べて、その男は真っ向から対面する。

    対して、俺も視線を逸らさず対峙する。
  18. 18 : : 2016/09/13(火) 10:00:06
    仁「貴重な時間を割いてここに来てくれてありがとう。日向くん。」

    日向「ありがとうございます。」

    仁「さて… 君にはもう言う必要は無いと思うが念のため確認をしておこう。」


    仁「この『カムクライズル プロジェクト』は学園が創立された意味……学園その物と言っていい一大プロジェクトだ。」

    仁「君がこの試みに同意すれば… ありとあらゆる才能を獲得し、『超高校級の希望』として晴れて本科に編入となる。」


    仁「手術、その他の施術は勿論、最善を尽くす。」

    仁「が、前例のない手術のために君の人格や記憶に影響が出る『可能性』がある。」

    仁「だが… これで君は新しい君になるわけだ…」


    仁「日向くん!これはチャンスなんだ。」

    仁「君も… これを機に「羽化」してはどうかね?」


    日向「羽化……ですか。」

    仁「そうさ。」


    仁「古い自分を脱ぎ捨て、君は新しい自分として… 世界の希望として羽ばたくわけだ。」

    仁「君の周りの人間…いや、世界中の人間が君を希望として崇めるだろう…」


    仁「誰に対しても最早引けを取る事など無い。」


    仁「……それに、君には…心から胸を張りたい人物がいたんじゃないのかね?」

    日向「はい… います。」


    仁「なら…! 決着をつけよう…」


    仁「言葉は悪いが…… 虫ケラのように地を這いずり回り… 空を見上げるだけの自分ではなく…」

    仁「むしろ上から見下ろす人間……いや、その頂点として…… 生まれ変わるチャンスなんだ……」


    仁「……さぁ。どうかね? 合意さえ頂けたら君も今すぐに……」


    仁「『変身』させてあげよう…」
  19. 19 : : 2016/09/13(火) 11:48:18
    日向「私などには勿体ないお話。ありがとうございます。」

    日向「ですが……」

    日向「折角のお話ですが…… 私は辞退させていただきます。」


    学者たち「…………ッ!?」


    仁「………………………。」

    室内にどよめきが走る。


    日向「確かに… その施術を受ければ… 俺…いや、私は… 今までからは考えられないような自分になれると思います。」

    日向「ありとあらゆる才能を持つ人間なら…それこそ想像も出来ないような人生になると思います…」

    日向「ですが… その才能と言うのは… 「頂き物」に過ぎません。」

    日向「俺は…… 人から授けられた才能や… 能力じゃなくて……」


    日向「自分で育て、自分で見つけた「何か」で… 胸を張れる人間になりたいんです。」


    日向「勿論… その「何か」が何なのかなんて今は分からないし… もしかしたら一生見つけられないのかも知れないけど…」

    日向「それでも俺は…… 自分で探したい。自分で見つけたい。 自分の足で…歩んでいきたい。」



    日向「それが…… 誰かに対して…「胸を張れる」事だって…… 俺は考えています。」


    日向「なので…… 今回のお話。合意はしません。」


    日向「自分にすら胸を張れなかったら…… それこそお仕舞いだから…」
  20. 20 : : 2016/09/14(水) 08:57:18
    学者1「君…! 分かっているのかね!この実験を蹴る事の意味が!!」

    仁「…………」

    学者2「世界中からこの日本に注目が集まっているんだ… それを君は……っ!」


    学者3「それに… これは脳科学界、あらゆる医療から見ても革新的な一歩となる…!」



    学者1「何を恐れる…? 恐がる必要など何もない。ここに集められているのは正真正銘のプロフェッショナルだ。」

    学者3「勿論、協力の「感謝の印」として… いくらか融通しようではないか。 カネに糸目はつけんぞぉ…」


    仁「…………。」

    仁(チッ…… このバカ学者共は………)

    仁(自分のやりたい事ばかり実験台に押し付ける事しか考えていない…)

    仁(しかも「実験」だなどと口を滑らせやがって……!)


    仁(クソッ! これだから老害は……)

    仁「まぁ、皆さん。そう彼をまくし立てずに……」


    仁「本人にとっても…世界にとっても前例のない「施術」…… 術式の前に協力者に不安があるのは当然のことでしょう……」

    仁「まだ彼は「心の準備」というものができていないのでしょう。」


    仁「ここはひとつ……協力者の心に決心がつくまでしばらくの時間を…」

  21. 21 : : 2016/09/14(水) 16:52:11
    日向「俺はプロジェクトに合意はしません!!」


    思わず席から立ち上がった。


    日向「俺は…… 自分の生きる意味くらい自分で見つけたい……!!」


    日向「あいつと胸を張って付き合えるようになりたい!!」


    日向「ですから…… 俺は今回のプロジェクトはお断りいたします。」


    日向「失礼します!!」

    扉を思い切り開き、スタスタとその場を後にした。
  22. 22 : : 2016/09/14(水) 17:17:13
    扉のすぐ横には七海が待ってくれていた。

    七海「どう……だった?」

    日向「……あぁ。 大丈夫。バッチリだよ…」

    日向「七海……」

    七海「うん?」

    日向「俺… がんばるから…七海と胸を張って付き合えるようにさ…」

    七海「うん…! それなら… わたしも日向くんに負けないように…がんばらなくちゃね」

    日向「ははっ… うかうかしてらんないな…」


    日向「なぁ、七海。帰りにゲーセン寄ってかないか?」

    七海「え?」

    日向「その…こないだのアレで… 「鋼拳」やらずに終わっちゃったからさ……」


    七海「……っ!」

    七海「うん! 行こ!! 手加減しないからね!日向くん!」

    日向「おいおい…少しは加減してくれよ…」
  23. 23 : : 2016/09/14(水) 19:34:59
    ところ変わって学園長室。

    そこにいる者全員に白けきった空気が流れている。

    学者3「何なんだあの失礼な若僧は!!」

    学者4「侮辱に等しい…ッ! 我々世界最高の権威を誇る医師団に対して……!!」

    学者1「今すぐ連れ戻して来い!!何ならウチの「警備員」を使って拐って来ても構わん!!」

    学者2「落ち着いてください… この計画はいずれ世界中の権威に公表するべき事実…

    下手に手荒な真似をすればここにいる全員の首が絞まる…」

    学者2「ここはひとまず… 実験の「延期」という事にしまして… 状況が好転するのを待ちましょう。」

    学者1「まったく…… 『必ず説得できる』だなどと自身満々に語っていたのはどこの誰だったかな……」

    仁「……申し訳ございません。」

    仁「プロジェクトは…… この場は延期といたしますが… 」

    仁「必ず… このプロジェクトは必ずや成功に……!」

    学者3「まったく… 興が殺がれましたな。」

    学者1「ここの後ろ楯があるなら「あらゆる」実験が可能であっただろうに……」

    学者たちは口々に不平を溢しながら学園長室を後にした。
  24. 24 : : 2016/09/15(木) 01:35:57


    学園長室に霧切仁は1人残された。

    仁「……」

    仁「…………」


    仁「…ッ!!!」

    突然、机の上にあったノートPCを床に叩きつけた。

    烈火の如く怒り狂い、固定電話を壁に投げつけた!!


    仁「クソォーーーーーーッ!!!」



    仁(あの金ヅルのウジ虫野郎が……ッ! こっちが下手に出てれば調子に乗りやがって……!!)

    仁(お前のようなクズに与えられる物も見つけられる物も何も無い!!)

    仁(その権利すら無い……ッ!!)

    仁(なぜブランドにすがって金を入れているだけで満足できないんだ………!)


    仁(ウジ虫の分際で………ッ!!)



    仁「チクショーーーーーーッ!!!!」

    噴火の如く怒りをぶちまけたと思ったらうずくまってしまった。

    仁(響子……………っ!)
  25. 25 : : 2016/09/15(木) 11:39:53
    江ノ島「こーんにちはー!」

    学園長室の扉を開け、呑気な声と共に二人の女が入り込んできた。

    江ノ島「ちょっ… なにコレ… モノに八つ当たりはよくないよ~?せーんせ!」

    仁「貴様……ッ!」


    江ノ島「そんなに焦んなくたってさぁ… 1人目がダメなんだったら「2号」でも用意しちゃえばいいじゃん!」

    江ノ島「誰も『制限時間がある』なんて言ってないんだからさぁ…」

    仁「簡単に言うな…ッ! あの実験の適合者はそう巨万(ごまん)といるものではないんだ……!」


    江ノ島「変な気さえ起こさないければ「タイマー」は動いたりしないんだからさぁ……」

    江ノ島「ねぇ?「パパ」?」

    仁「………………ッ!!」


    江ノ島「ま、2号の方は私様のほうで都合つけとくから後はよろしく~」

    江ノ島「いくよ。」

    戦刃「うん………」
  26. 26 : : 2016/09/16(金) 21:13:05
    事の発端は一学期の始めに遡る。

    激務に追わるその束の間の休息。


    仁「コーヒーでも淹れるか…」


    しばし、羽根をのばし安息のひととき。


    かぐわしいコーヒーの香りが鼻腔をくすぐる頃。


    突如として携帯が鳴った。

    仁「響子から……?」


    娘の霧切響子とはこの学園の学園長に就任して以来、ほぼ音信不通となっていた。

    仁(メールか……)

    仁(いつか…… 響子としっかり話をしなければな……)


    何気なく着信欄からその内容を開くと……


    仁「…………ッ!?」

    画面に写し出されたのは柱に拘束され、目隠しまでされた愛娘の姿。

    首からは仰々しい「デジタル時計」も吊り下げられている。

    仁「なんだ……ッ! 何がどうなっている………!」

    仁(あれは……あの爆弾は本物か……?)

    仁(いや… そもそもなぜ響子が………っ!)


    様々な憶測が頭の中を行ったり来たりする中……

    再び携帯が鳴り響く。


    画面に写し出されるのは「響子」の文字。

  27. 27 : : 2016/09/16(金) 21:36:26
    仁「もしもし………」

    「もしかしたら悪質なドッキリかも知れない。」

    そんな切なる願いを込めながら呼び出しに応える。


    「やっほーー!せんせー! メール見てくれたぁ?」

    肩透かしを食うような呑気な声が電話口から聞こえる。

    仁「お前は………ッ!」

    仁(クソッ…! 何故… 何故こんな事に……ッ!)


    仁(いや、待て…… この声…微かだが聞き覚えが……)

    仁「貴様……! どういうつもりだ……!」

    江ノ島「あれ? その口ぶりだと知ってるみたいだね……私様の事…」

    江ノ島「ねぇねぇせんせ? あたし… せんせーたちがヒミツにしてる「とっておきのけーかく」について知りたいんだけどぉ…」

    仁「なんだ……? その計画とは… 目的はなんだ? 身代金か……?」

    江ノ島「ハッ! とぼけてんじゃねェーよオッサンよぉ!!」

    江ノ島「この学園の存在意義でもある「カムクライズル プロジェクト」について聞かせろつってんだよォ!!!」

    仁「な……ッ!!」

    仁「貴様…… どこでその計画の事を…!」


    江ノ島「わたしがそれをどこで見ようが聞こうがそんな事はどうだっていいじゃないですか……」

    仁「あの計画は……ダメだ。 実行寸前だったが頓挫した……」

    江ノ島「せんせー あたし知ってるよぉ?」

    江ノ島「『とんざした』じゃなくてぇ… せんせーがとんざさせたんだよね?」
  28. 28 : : 2016/09/16(金) 21:54:49
    仁「グッ………!」

    江ノ島「余りにも非人道的。かつ、『学園』のありかたとしてこのような実験を行うことは正しくない……」

    江ノ島「えぇ。もっともらしい理由といえますね。」

    江ノ島「そもそも貴方が「霧切家」を捨て、この学園に入ったのもその計画を阻止するためですからね…」

    江ノ島「世界を破滅に追い込みかねない「カムクライズル プロジェクト」を潰すために……ッ!!」


    仁「…………………」

    仁(この女… 一体どこまで掴んでいる……?)

    江ノ島「まぁ… 昔話はこれくらいにしてそろそろ本題に入りましょう。」
  29. 29 : : 2016/09/16(金) 22:07:20
    江ノ島「貴方にはこのまま「カムクライズル プロジェクト」を推進させていただきます。」

    仁「何……ッ!?」

    江ノ島「プロジェクトが無事に成功し、「カムクライズル」が誕生した暁には娘さんはすぐに解放いたしましょう。」

    江ノ島「勿論。私も悪魔ではありませんので成功すれば彼女に危害を加える事はありません。お約束しましょう…」

    仁「なぜだ…… カムクライズルを誕生させて何の得がある!」

    仁「超高校級のギャル………いや…」

    仁「『超高校級の絶望』………!!江ノ島 盾子!!」

  30. 30 : : 2016/09/17(土) 17:45:54


    江ノ島「うっざ………」

    仁「は……?」

    江ノ島「得だとか損だとかそんな事はどうでもいいんだって~!」


    江ノ島「私様が求めるのは「絶望」………」

    江ノ島「どす黒くてグッチャグチャでドロッドロッの絶望………」

    江ノ島「それだけが私様の望みなのじゃ!!」


    仁(目的を隠しもしないとは……)

    仁(こいつ…… 絶望の為なら自身の危機すら厭わないというのか……!)

    江ノ島「えぇー話を元に戻しましょう。」

    江ノ島「貴方には現在二つの選択肢があります。」

    江ノ島「1つはこのまま娘さんを爆死させる……もう1つは凍結された「カムクライズル プロジェクト」を再び発足させる事です。」

    江ノ島「カムクライズルが無事に完成すれば娘さんは無事に解放いたしましょう。 さぁ?如何なさいますか?」


    仁「……………………」

    仁(どうする……?どうすればいい……っ!?)

    仁(もしカムクライズルが奴の手に渡るような事があれば…… )


    仁(世界か…… 娘か………)



    仁(そんなもの……選べるわけないだろ…………ッ!!)

    仁(いや、待て…… )

    仁(相手は恐らく江ノ島盾子とその姉… 戦刃むくろという事になる。)

    仁(なら奴らは… 組織的には動かずほぼ単独か二人組だけでの行動となる…)

    仁(これまでの情報が正しければの話だが…)

    仁(それに… この計画を実行中… 奴と接触する機会もあるかも知れん……)

    仁(チャンスを見計らい…… 娘を取り戻し、二人を確保する……)

    仁(あとはプロジェクトさえ今度こそ完全に潰してしまえば……ッ!)


    仁「………分かった。カムクライズルプロジェクトを再開させよう。」

    江ノ島「やったーー! さっすが先生!話がわかるぅ!」

    仁「ただし… この計画は非常に時間と金がかかる… より綿密な計画にするにも電話だけでなく、直接交渉の機会も後々設けたいのだが…」

    江ノ島「おや?急に協力的になったねェ…」

    仁「この計画が明るみに出てしまえばお互いに破滅。ここは互いにより完璧な計画がとれるよう、「Win Win」といこうじゃないか…」

    江ノ島「ふぅーん。なるほど。じゃ、そういう事でいいよ。」

    仁「娘に危害を加えれば計画も施設も「破棄」させてもらうぞ。そのところは…」

    江ノ島「はいはい。分かってるって。」
  31. 31 : : 2016/09/17(土) 18:38:35
    そして、その「チャンス」を掴めぬまま、現在に至る。


    仁「諦めてたまるか………ッ!!」


    仁(例えあんなクズ何人犠牲にしようが………)


    仁(娘だけは………ッ!!)

  32. 32 : : 2016/09/17(土) 19:40:02
    翌日。

    日向「七海!」

    七海「あ!日向くん!アレ持ってきた?」

    日向「もちろん!。早く対戦しようぜ!」

    七海「うんっ!」



    予備学科1「…………ちくしょお……」

    予備学科1「なぜあんなヤツが……」


    予備学科1「抜け駆けしやがって……!」

    予備学科1(アイツだって…… つい最近までは俺らと同様… 死んだ魚みてぇな目付きしてやがったクセに………ッ!!)


    予備学科1(当て付けか…? 俺への当て付けか………ッ!!)
  33. 33 : : 2016/09/19(月) 00:12:04
    数週間前。


    予備学科1(さて… 確か今回の小テストの範囲は……)

    古文の小テストの範囲を確認しつつ、校舎へ向かう。

    すると…


    「きゃっ!」


    予備学科1「いって………」

    視界の外から何かにぶつかった。

    予備学科1「おい!!どこ見て歩いてんだ!!」

    予備学科1「クソックソックソックソックソッ………!!」

    七海「ごめん! 大丈夫……?」

    予備学科1「……うるさい!! 俺に……俺に構うな!!」

    イラついて手を振り払い、顔を上げた彼はハッとした。


    そして、その姿を一目見た彼に、電流が走る。


    七海「ごめん………」


    少女は小走りに彼とは全く別方向の校舎へ向かう。


    その背中をただ見つめていた。


    予備学科1「嘘…だろ……? こんな…」


    予備学科1(バカバカしいかも知れないけどこれは確かに……!)


    予備学科1「これが…… 「一目惚れ」って奴なのか………っ!?」
  34. 34 : : 2016/09/19(月) 00:43:38


    しかし、以来進展は無い。

    予備学科1(よりにもよってあんなヤツに先を越されるとは………ッ!!)

    予備学科1(どうする……? どうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうする……!?)

    予備学科1(……………………ダメか…)


    予備学科1(それこそ「本科」入りするぐらいでなければ……)


    予備学科1(いつもそうだ……)

    予備学科1(どんなに足掻こうと自分の目指すところには届かない……)
  35. 35 : : 2016/09/19(月) 00:44:39
    江ノ島「こーんにちは~!」

    予備学科1「……なんだ? 俺に何の用だ?」


    江ノ島「………ねぇ。キミさぁ… そんなに本科に入りたい……?」

    予備学科1「なんだよ…… お前確か本科の奴だろうが……」

    予備学科1「冷やかしなら勘弁してくれ。」

    江ノ島「自分の持つ才能しか取り柄がない……」


    予備学科1「は……?」

    江ノ島「人格がイカれてようが……それ以外何もかも壊滅的だろーが… 裏の顔は殺人鬼だろーが反社会的集団だろーが……才能さえあれば周りにもてはやされて崇められる………」

    江ノ島「そんな中身スッカラカンの「金メッキ野郎」にお前はなりてぇのかって聞いてんだよォおおおおおお!!」


    予備学科1「そんな…… そんなもん……無いよりある方がいいだろ……」
  36. 36 : : 2016/09/20(火) 11:21:10
    予備学科1「一体何が言いたいんだよお前は!」

    江ノ島「フッフッフ…… 気になるか?気になるか?人間よ………」

    予備学科1「え…?」

    江ノ島「もし…… お主が後天的に与えらた「才能」によって…… 本科に入れるとしたら……?」

    江ノ島「もし、古い自分を捨てて… 新しい自分を手に入れる事ができるとしたら………!?」



    江ノ島「さぁ?どうする?人間よ……」

    予備学科1「な…… なんでお前にそんなことが…!」

    江ノ島「『Yes』か『No』か……… 我は聞いておるのじゃ!」

    予備学科1「っていうか…! あんのかよ…! そんな都合のいい話が…」

    江ノ島「ある!!」



    予備学科1(なんなんだ…? こいつの妙な目力というか…自信というか…)

    予備学科1(なんか…… 嘘を言ってるような感じでもないし………)

    予備学科1(いや… 待て。 もし、これで本当に本科入りできるなら……!)

    予備学科1(それなら…… 俺にもチャンスはある。)

    予備学科1(いや、奴の上に立てる………ッ!!)



    予備学科1「ほ… 本当に………俺を本科入りさせてくれんのか?」

    江ノ島「もちろん!」

    江ノ島「ボクは約束は守るのがモットーだからね!」

    予備学科1「なら………!」




    江ノ島「うぷぷ……っ」

    奇妙な笑いが聞こえたかと思うと江ノ島はその男の腕を掴んだ。

    予備学科1「な………ッ!?」

    江ノ島「そうと決まったら早くいこーよ!!」

    予備学科1「行くって! どこに………っ!」

    江ノ島「ね? 予備学科クン?」


    予備学科1「なっ……!お前……っ!」
  37. 37 : : 2016/09/21(水) 01:21:32



    所変わって学園長室。

    仁「何……?」

    江ノ島「そうそう! 見つかったんだよ!2号が…」


    仁「見つかった…? なぜだ?あの実験の適合者は……」


    江ノ島「ハイハイハイ! 細かい事は置いといて……さっさと再開しちゃおーよ!」

    江ノ島「カムクライズル プロジェクトをさァ!!」


    仁「……分かった。」


    仁「プロジェクトを本格的に再開する……!」
  38. 38 : : 2016/09/21(水) 13:32:10
    それからのプロジェクトの進捗というものは実に見違えるようなものとなった。


    仁「コレなら… 確かに……」

    学者5「イケる……!イケますよこれは!!」

    仁「すでに被験者との同意得ておりますし…「裏」も取れています。」

    仁「これで好きなだけ実験を行えますよ……!」


    学者3「以前の被験体候補とは身体的な適正率は若干劣るが…… それ以上に精神面においてカムクライズルとの親和性が高い……!」

    学者2「素晴らしい! これで私を追放した学会の鼻をあかせるというもの……!」


    学者1「さぁ…… 本当に忙しくなるのはこれからだ……」

    学者1「このプロジェクトは…… あらゆる医学界の観点から見ても非常に画期的…」

    学者1「そして… このカムクライズルのもたらす副次的効果はまさに計り知れない……ッ!!」

    学者1「これこそ……まさに『希望』だァーーーーーーッ!!」


    学者1「これより……我々は大きな1歩を踏み出す……………っ!」

    学者1「我々にとってはただ1回の実験に過ぎないが……」

    学者1「これは人類にとって大きな1歩だァーーーーーーァアアアアッ!!!」
  39. 39 : : 2016/09/22(木) 04:06:49




    そこは虚無。

    上も下も、前も後ろも、右も左も……

    光も闇も、希望も絶望も何もない。


    その虚無にその男は突っ立っていた。


    予備学科1「ここ……は?」

    一体自分はいつからそこにいたのか。どうしてそこにいるのか。

    今となっては何も思い出せない。

    予備学科1「俺……どうしてこんな事に…?」


    すると、目の前から「何か」が歩んで来る。

    女のような長い髪を揺らし、生気のない瞳でこちらを見据える。

    予備学科1「な……なんだよ…お前は……!」



    カムクラ「『僕が誰か?』ですか……」

    カムクラ「僕が何者かを答えるなら……僕は貴方でもあるし、そうでないとも言えますね。」

    予備学科1「な……何をワケの分からない事を…!」


    カムクラ「僕は造られた存在に過ぎませんが……僕が生み出され、ここへ招き入れられるきっかけを作ったのは………」

    カムクラ「他でもない。貴方自身です…」

    予備学科1「う……うるさい!! こっちへ来るな!! 向こうへ行け!!!」

    カムクラ「何故そこまで拒絶するのかは理解しかねますが……」

    カムクラ「「この結果」を望んだのは貴方自身ですよ?」
  40. 40 : : 2016/09/23(金) 02:08:42
    予備学科1「ふざけるな!! こんな……」

    予備学科1「こんなの違う!!」


    予備学科1「こんなの俺の望んだ結果じゃない!!」


    カムクラ「…………貴方がどうなる事を望んでいたかは分かりませんが…」

    カムクラ「最早貴方に時間は残されていないようです。」

    予備学科1「なんだよ……」

    予備学科1「時間が残されてないってなんだよ……!!」

    カムクラ「言葉通り。貴方は「終わる」んです。」

    予備学科1「黙れ!!黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!!」

    予備学科1「黙れッ!!!」

    男は長髪の男に殴りかかった。


    明らかに人を殴るのではない感覚。

    自らの拳を見ると……

    文字通り。「突き刺さって」いた。


    予備学科1「な………あ……」

    とっさに自らの拳を引き抜いたが……

    腕の先に「拳」と言われるものは無かった。



    予備学科1「な……な…んで………」

    かと思えば、拳を突き出した右手以外にも変化が起こる。


    まるで、完成されたパズルのピースが1つ、また1つと落ちていくように……


    「崩れて」いた。


    予備学科1「お…おい!! なんだよ……!!」

    予備学科1「なんでこんな事になってんだよォおおお!!!」

    叫びは虚しく虚無に響き渡る。

    予備学科1「し……にたく……!」


    予備学科1「あぁ………そうか。」

    予備学科1「当然だよな…… 「才能」なんて元々……何の努力も無しに手に入らない……」

    予備学科1「俺は……自分じゃなくて… 他人の力で…その「才能」を得ようとした……」

    予備学科1「そういう事だろ……?」


    カムクラ「…………」

    予備学科1「あんたが……何者なのかは………俺は…知らないけど………」

    予備学科1「これも……「因果応報」ってヤツなのかな……?」


    1人の男が虚空に吸い込まれるように消えていった。



    カムクラ「因果応報でも…… 何でもありませんよ。」

    カムクラ「…………ツマラナイですね。」
  41. 41 : : 2016/09/24(土) 01:26:42
    数ヶ月後。



    希望ヶ峰学園は「試験」の時期を迎える。

    それは本科に限った話ではなく、予備学科でも同じ事。

    日向「実質金づるみたいな事言っておいてテストはムダに難しいな…」

    七海「日向くん。そういうのは良くないよ」

    日向「あぁ… 悪い。七海…」


    何気ない会話をしていると、本科の校門の方から怒号が聴こえてきた。

    「教育格差を許すなーーーッ!!」

    「不当な学費の釣り上げをやめろーーーッ!!」


    日向「……行こう。七海」

    七海を庇うようにその場を後にした。

    七海「何か……殺気立ってるね…」

    日向「そうだな…」

    日向(んな事やってる暇があったらテスト勉してろよ……)

    日向「そういえば… 七海たちのクラスのテストってどんな事やるんだ?」

    七海「えっとね… なんだか実技試験みたいなんだよね…」

    七海「どんな事をやるかはまだ分からないけど……」

    日向「やっぱそんな感じか…」

    七海「偉い人とかがたくさん来て実技試験をやるみたいだけど…まぁ、どんなジャンルが来てもわたしは大丈夫かな。」

    七海「恋愛ゲー以外は…」

    日向「あ、そうか… それは苦手だったな…」

    日向「でも、七海だったら… すぐにコツとか攻略法とか分かるんじゃないか?」


    七海「………そういうことじゃないもん…」

    日向(俺もクサってたって始まらないよな…)

    日向(七海に負けないぐらい胸張れるようにって誓ったもんな……)
  42. 42 : : 2016/09/25(日) 15:50:01


    江ノ島「…………………」

    江ノ島「あいっかわらず飽きもせずイチャイチャしとるわあのリア充は…」

    江ノ島「……で? 例の実験の進捗はどーなってんの?」

    戦刃「それが… 「大きな問題」はないらしいんだけど……」

    江ノ島「ふ~~ん……」

    江ノ島(ま、予想通りだね…)

    江ノ島(後々の事も考えて本科の方にも1人ぐらい駒が欲しいんだよね…)

    江ノ島(まぁ、「あのクラス」からだったらまずはアイツあたり…)


    江ノ島(ちょっとシラケてる気もするけどこの辺が妥協点かな…)

    戦刃「それで…」

    江ノ島「いちいち言われなくても分かってるっつーの!!」



    江ノ島「大詰めといきますかねェ…」
  43. 43 : : 2016/09/26(月) 09:39:28


    数日後の予備学科の教室。

    校舎の外は各界の要人、マスコミ、見物人で大騒ぎとなっている。

    日向(今日は確か七海の番だったな…)

    日向(テスト終わってからでも少し時間はありそうだな…)


    日向(七海………俺も負けないからな。)

    教員「それでは筆記用具以外は全てしまって」


    それぞれ、各々の「戦い」が始まろうとしていた。
  44. 44 : : 2016/09/26(月) 11:54:25


    「金づる」と言ってもやはり名門校。「希望ヶ峰学園」のブランドを背負うだけの事はある。


    定期テストの難易度は付け焼き刃では全く刃が立たない。

    それどころかおおよその大学入試も突破できるレベルだ。

    日向(やっぱり難しいよな……)


    日向(けど、絶望的ってほどじゃない。)

    日向(俺は乗り越えてみせる…!)

    いつもであればテキトーにやり過ごすテスト。

    けど、今は諦められない理由がある。


    もう二度と、自分で自分を決めつけたりしない。
  45. 45 : : 2016/09/27(火) 07:40:15





    数時間のテストの後、ようやく定期テストから解放された。

    日向「は……っ! 終わった~…」

    日向(案外手応えあったな…これは)


    日向「…ってあんまりのんびりしてらんないな…」

    日向「早く見物にいかないと……」


    手早く荷物を片付け、

    「本校舎」の前はすでに人でごった返している。
  46. 46 : : 2016/09/27(火) 10:15:57
    「七海さーん!今回の実技試験への意気込みを!」

    「今回行われる「テスト」は世界でもクリアした者がいないとお聞きしましたが?」

    七海「えっと… まぁ、だいたい何が来ても大丈夫…と思います。」

    日向「うっわ…… 想像以上だなこれは…」

    七海「…っ! ちょっとどいて!」


    七海「日向くん…」

    七海「もうテストはいいの?」

    日向「あぁ。バッチリだよ… 七海は…まだ出番じゃないのか?」

    七海「うん、けどもうじき出番かな。」

    日向「七海…」

    七海「うん?」

    日向「……頑張れよ。」


    七海「………うんっ! わたしも…日向くんに負けてらんないもんね!」

    日向「あぁ…」


    「七海さーん! どこですかー?」

    「そろそろ準備お願いしまーす!」

    日向「……呼ばれてるぞ。」

    七海「うん。じゃあ…そろそろ行ってくるね。」

    日向「あぁ…じゃあ。また後でな。」

    七海はスタッフと共に本校舎の奥へ向かう。


    七海「日向く~ん!」

    七海「帰りにまたゲームしようね~!」

    日向「おーう! 待ってるぞ!」

    日向(これから超難関のゲームに挑戦するだろうに…本当にゲームが好きなんだな……)
  47. 47 : : 2016/09/27(火) 11:59:13


    体育館は異様な緊張感に包まれていた。

    七海「あれ?罪木さん?」

    罪木「な…七海さぁん! こんにちはぁ…」

    罪木「七海さん…もう準備なんですか…?次のテストは確か…」

    七海「わたし…だったと思うけど…」

    罪木「ふぇ?」

    罪木は書類に目を通した。

    罪木「ご…ごめんなさぁい! わたし…勘違いしてましたぁ……」

    七海「大丈夫だよ。罪木さんは確か…」

    罪木「七海さんの次ですぅ…」

    罪木「「超高校級の保健委員」の試験なんて一体何をやるのか…」

    七海「うん…確かに想像つかないね…」

    罪木「基本的な医療知識は一応、身に付いてはいますが…わたしは医者ではないので……」

    七海「そう…だよね。」

    七海「けど…罪木さんならきっと大丈夫じゃないかな?」

    七海「ほら、やればなんとかなるって!」

    罪木「そ…そうでしょうか…?」

    七海「うん。きっとそうじゃないかな?」

    罪木「七海さぁん…」

    罪木「ありがとうございますぅ! あの…わたし…頑張りますね!」

    罪木「あ、あの… 七海さんも…頑張ってくださいね?」

    七海「うん!」


    「七海千秋さん! 入場お願いしまーす!」

    七海「はい!」

    罪木の心配そうな瞳を背にステージへ上がる。


    七海(見ててね。日向くん。)

    七海(わたしも負けないからね!)
  48. 48 : : 2016/09/27(火) 12:20:36


    「テスト」の様子はテレビ局の中継が入るほどだ。

    七海がステージに上がると共に会場に歓声が沸く。

    日向「始まったか…」

    俺はいつもの噴水に腰掛け、携帯でその様子を見ていた。


  49. 49 : : 2016/09/27(火) 12:43:35


    司会「お集まりの皆様…ようこそお越しください ました……………!」

    司会「ただ今より… 超高校級のゲーマー七海千秋さんのテストを開始します…………………っ!!」

    司会「さて、早速ですがテスト内容のご紹介です………………っ!!」

    係の者に運ばれて来たのは一昔どころじゃないほど昔のレトロゲームの筐体。


    七海(てっきり最新機でやるのかと思ってたけど…)

    七海(って言うよりこれ………)

    司会「ゲームに精通している者なら知らぬ者はいない………! 知る人ぞ知る弾幕シューティングの金字塔!「ギャラオメガ」!!そのアーケード版です……………っ!!」

    日向(なんだ… 七海の得意分野じゃないか…)

    司会「全国的にも一時的に流行ったこのギャラオメガですが……「この筐体」は一味違う…………っ!!」

    ざわ…… ざわ………

    司会「この筐体。本来はある「バグ」によって廃棄されるはずのところを今回特別に用意いたしました……!」

    司会「勿論。プレイする上では(・・・・・・・)問題はありません!」

    司会「ですが……… 本来なら「バグ」扱いでリコールされる代物………………っ!」

    司会「七海さんにはこの私のポケットマネー……」

    司会「3クレジットでクリアしていただきます…………………ッ!!!」

    ざわ…… ざわ………


    「3クレジット…?」

    「一体どんなバグなんだ…?」

    司会「七海さん?いかがいたしますか? ギブアップも不可能ではありませんが……」

    七海「やります。」


    「ォォオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

    司会「即答……っ!さすが超高校級のゲーマー…………ッ!! 七海千秋さん!!

    それでは…早速挑戦していただきましょう…………っ!!!」



    七海は司会から300円を受け取り、筐体の前に立つ。

    七海「いつも通りに…集中して……」


    司会「テスト開始…………………ッ!!!」
  50. 50 : : 2016/09/28(水) 16:08:32
    七海は黙って筐体に目を下ろす。

    そして、目に捉える事すら不可能に近いコントローラーさばきで難なくステージを進めていく。


    七海(なるほど……)

    七海(敵の動きに「パターン」がない……)



    司会「そろそろ七海さんは気づかれた頃でしょうか………?」

    司会「そう! この筐体! バグによって敵の動きにパターンが無く、全くのデタラメ………ッ! ランダムで動いているのです………………っ!!」


    七海「……………っ!!」

    敵の「デタラメ」な動きを捉え切れず。被弾した。


    司会「七海千秋さん! 4thステージで被弾……………ッ!! まだテストは6thステージまで残っている…………っ!」

    司会「ですが…… 世界中のゲーマーは言うでしょう……………『ここまでいけるだけスゴい』と……!」

    七海「……………………。」

    七海は黙って筐体にクレジットを入れる。

    司会「七海千秋さん続行…………っ!あくまで続行……………っ!倍プッシュだーーーーッ!!」

    七海(負けない……)

    七海(日向くんだって……色んな事に負けずに立ち向かって来たんだ……)

    七海(スクールカーストからも…親の偏見からも……何もかも逃げずに…)

    七海(だから…… わたしも逃げない!!!)


    文字どおり「神」の如し動きに会場はいつの間にか無言となり…

    ただ、ゲームの様子が写し出されるスクリーンに釘付けとなっていた。
  51. 51 : : 2016/09/28(水) 17:23:22
    別室。

    仁「…………指示通りにしたぞ。」

    仁「さぁ……早く響子を解放してもらおうか……!」


    江ノ島「うっぷぷぷぷ……」

    仁「なんだ……? 何がおかしい!?」


    江ノ島「いやぁ……つくづくパパっていうのは大変だなぁ…って思ってさ。」

    江ノ島「まぁ、どっちしろせんせーにはもう少し付き合ってもらうんだけど……」


    江ノ島「せんせーも人が悪いよねぇ……」

    心底人をバカにしたような目を仁に向ける。

    仁「黙れ!!売女が!!」

    仁「娘は……! 私の全てだ……! 貴様のような穢らわしいクズに娘は好きにさせん!!」

    仁(もう少しだ……もう少しの辛抱だ…)


    江ノ島「さぁて……」

    江ノ島はステージに目をやる。

    江ノ島「こんな予定調和の下らない茶番終わらせて……」

    江ノ島「ドロッドロでぐっちゃぐっちゃで……絶望的な……」

    江ノ島「ショーの始まりよぉおおおおっ!!」
  52. 52 : : 2016/09/28(水) 17:43:43
    ステージには一切の歓声も沸かず、ただ、ゲームが攻略されていく様を見守るだけであった。


    七海(スゴい……ぜんぜん『ムリだ』って感じない……!)

    七海(離れてても日向くんが見てくれてるって分かる…)

    七海(こんな気持ちでゲームするなんて初めて………!)



    そして、全ての視線がステージへ集まった。



    『Congratulations!!』


    歓声が沸き立つその時。



    閃光と爆音が弾け飛んだ。
  53. 53 : : 2016/09/28(水) 17:56:19
    七海「え…………?」


    あまりに咄嗟の出来事に体が動かない。


    気がつけば瓦礫が自分のすぐ上まで迫っていた。





    「なんだ!?何が起きたんだ!!」

    「爆発したぞ!!」

    「テロか!?」


    一瞬にして会場内はパニックに陥った。

    罪木「な………ぁ……」

    罪木「七海さぁん!!!」



    「おい! 人が巻き込まれたぞ!!」

    「119番だ早くしろ!!」

    「誰か手伝え!瓦礫をどかすんだ!!」


    仁「………そこで何をしているんだい?罪木さん…」

    罪木「が…学園長………さん?」


    仁「君は……『超高校級の保険委員』だろう?」

    罪木「そ…それはそうですが……」


    「いた!いたぞ!!」

    「生きてるのか!?」

    「救急車はまだか!?」

    仁「だったら……「するべき事」があるんじゃないかな?」

    罪木「そ… そんな……それって…まさか……!」
  54. 54 : : 2016/09/28(水) 18:02:51
    日向「なんだ…?どうなったんだよ……!」

    先ほどまで「テスト」の中継が写されていた画面には「しばらくお待ちください。」と写されるだけであった。


    日向「七海は……!七海は一体……!」

    日向(七海……!!)


    考えるより先に、混乱の只中にある本校舎へ俺の足は向いていた。
  55. 55 : : 2016/09/28(水) 18:13:45


    仁「皆さん!お静かに!!」

    ある種異様な光景に、仁に視線が集まる。


    仁「想定外のトラブルが起こりましたが……我々希望ヶ峰学園はこの程度では動じません!!」


    仁「我が校は…全世界の希望であり、この程度のトラブルで希望が潰える事はありません!」

    「何を言っているんだ…?」


    仁「我々は……テストを続行いたします……!!」

    異様な光景に続く「異様」。

    ギャラリーは混乱の一途を極める。

    仁「さぁ、罪木さん。」

    罪木「そ…そんな…! は…早く救急車を呼ばなきゃ…七海さんが……」

    仁「「普通の」保険委員はそうするだろうね。」

    仁「だが…ここは希望ヶ峰学園だ。」


    仁「私は君の技術……君の技量を…君の中の希望を信じているよ。」

    罪木(まともに言いあって話を聞いてくれる空気じゃない……)

    罪木(でも……ぐずぐずしてたら七海さんが…!)



    「生徒を運び出したぞ!!」

    「おい!何やってんだ!!」

    罪木「分かりました……。」


    罪木は静かに、しかし、力強くステージの上に立つ。


    そして、「患者」の前で膝を突き、簡単な検査をする。


    罪木「呼吸はほとんどしてないし…脈拍もかろうじて感じられる程度……だけど…まだ可能性は……!」


    罪木は静かに一つ、息を吸う。


    罪木「術式を開始します……!」
  56. 56 : : 2016/09/28(水) 18:23:20




    「想定外」の事態に関わらず、罪木は的確に術式を進めていく。

    罪木(こんな簡単な手術道具じゃやることは限られてる……できれば応急処置だけしてあとは緊急病院に運ぶのがベストだけど……)

    罪木(恐らく、この先生は呼ばない……)


    罪木の手さばきをギャラリーが、学園長が、そして…

    「彼女」も見つめていた。


    罪木(外出血が多いように見えるけど…恐らく脳内の毛細血管も破れて血が溜まってる……とにかくこの内出血をどうにかしないと…!)

    罪木「どなたか汚れていない清潔な布はありませんか!それと…血液型がO型の方は協力してください!輸血が必要です!」



    その手つきは普段、おどおどしている彼女の物とは思えないほど的確で、てきぱきとしていた。

    罪木(奇跡的に脳へのダメージはそこまでない…これなら……!)

  57. 57 : : 2016/09/28(水) 20:14:00



    保険委員の専門外もいいところの術式を狼狽える事なく、進めていく。


    日向「通せ……!通してくれって……!!」

    日向「七海!!大丈夫か!?」


    罪木「えっと……あなたは…もしかして……日向さん?」

    日向「え?なんでそれを……?」

    罪木「七海さんから…色々お話はうかがってますぅ…とっても優しい方だって……」

    日向「もう…平気なのか?」

    罪木「もう大丈夫ですよぉ…傷口も縫合しましたし……あとは入院して様子を見れば……」

    日向「ほ……本当か…?」


    罪木「えぇ。ですが念のために脈と呼吸を……」

    罪木「…………ッ!?」


    今まで落ち着いて施術を行っていた彼女が明らかに動揺した。

    日向「なんだよ……! どうしたって言うんだよ……」


    罪木「な……七海さん…? 七海さん!!」

    罪木「七海さん!!しっかりしてください!!」

    罪木「七海さん! 日向さんが来てくれたんですよ!! 七海さん!!」




    日向(な……なんだよ… 何なんだよ…コレ………)
  58. 58 : : 2016/09/29(木) 17:31:48
    罪木は七海に胸骨圧迫を開始した。

    罪木「七海さん!! 目を開けてください!!」

    罪木「こんな……こんなのって…ないです…!」


    罪木「七海さぁん!!!」

    日向「……ッ!」


    白昼夢のような現実味を帯びない光景にしばし自分を忘れていた。

    日向「俺に…何かできる事はないのか!?」

    罪木「呼びかけてあげてください!!もしかしたら…」


    血の気が引いていく七海の手を握って語りかける。

    日向「七海……! 死ぬな! 戻ってこい…!!」

    日向「また帰りにゲームやろうって言ったじゃんかよ!!!」






    「………」


    「…………」


    「暗い……」

    「寒い………」


    「わたし……どうなったんだっけ……?」


    「日向……くん?」


    七海「ケホッ…!」

    日向「七海…!」

    罪木「七海さん!!」

    日向「七海! 俺だ!!しっかりしろ!!」

    七海「日向……くん…」

    「あぁ……来てくれたんだね……」

    「罪木さんも……必死に……助けようとしてくれたんだね…」


    日向「なぁ… また、一緒にゲームやろう。俺で良ければいつだって……」


    「ああぁ…… ごめんね… 本当にごめんね…」


    七海「………………。」

    日向「え……? 」


    七海「ありがとう……」



    握っていた手が、だらんと力が抜けた。
  59. 59 : : 2016/09/29(木) 17:45:04







    これはまだ白昼夢なのだろうか?



    いや、白昼夢であってくれ。



    こんな…無茶苦茶で…荒唐無稽で……



    理不尽な結末があってたまるか。


    あっていい筈がない……!




    罪木「そ……んな…! なんで……どうして……?」

    罪木「こんな……の… 」


    罪木「絶対ありえない!! 失血も脳の損傷もさしたるダメージじゃなかったのに………!!
    なんで……っ!」

    罪木「どうしてぇええええええっ!!」



    あらゆる叫びが、嘆きが、狼狽が、耳をすり抜けていく。


    ……何も感じない。


    涙すら出ない。




    仁「では……これにてテストは終了とさせて頂きます。」



    仁「警備係!!何をボサッとしている!!」

    仁「その「予備学科」をさっさと連れだせ!!」


    仁「連れ出したあとは学園長室に運んでおけ。」


    「はっ…! 了解いたしました!」

    「おい!立て!!」

    何者かに腕を引っ付かまれた。


    罪木「七海さぁん……日向さん……」



    罪木「ごめんなさぁああい……っ!!」
  60. 60 : : 2016/09/29(木) 18:13:03




    ここで、話は数分前にさかのぼる。


    仁「指示通りにしたぞ!!さぁ…早く娘を…!」


    仁「ステージの照明に爆薬を仕掛け……罪木蜜柑の手術道具に毒を仕込んだ……!!」


    仁「ここまで散々お前に協力してきたんだ!!娘を返せ!!!」

    江ノ島「うぷ…」

    江ノ島「うぷぷぷぷぷぷぷぷぷ……」


    仁「な…何がおかしい……!」

    江ノ島「いやぁ……せんせぇもお人が悪いなぁ…って思っちゃってさ…」

    江ノ島「ね~ぇ?ぱーぱ!」

    仁「やかましい!!さっさと娘を返せ!!!」

    江ノ島「あのさぁ。私様は別にそんな爆薬だの毒薬だの何だのはどうだっていいんだよ…」

    江ノ島「あんた… 契約を反故にしたでしょ?」


    仁「なっ……!」

    仁「一体なんの話をしているんだ!!私は契約違反など………!!」

    江ノ島「ねぇ…「失敗作」でしょ…?あの2号くん……」

    仁「ち…違う! 一体何を根拠に!」

    江ノ島「トボけてんじゃねぇよオッサンよぉ!!」

    江ノ島「あんな感情も何も「無いだけ」の廃人がカムクライズル??ざっけんじゃねーよダボがぁ!!」

    そう叫ぶと奴は「2号」の試験データを記した書類をバラまいた。

    仁「き……さま… どこで…それを……!」

    江ノ島「ていうかぁ…この失敗作の件といい…私様に向けられた「お客様」といい……先生やっぱりやましいところがあったんでしょ?」


    仁「く……ッ! グ………ッ!!」



    江ノ島「ま、ここまで協力してくれたんだし
    ちゃんとそれには報いないとねぇ~」

    江ノ島「あとは「1号」くんさえ届けてくれれば「私は」もうあんたの前に顔を出さないから…」

    江ノ島はこちらへ携帯を投げつけた。


    江ノ島「バイビー せんせぇ…」




    仁「そんな……まさか…!」

    胸騒ぎがしてその携帯を立ち上げると…

    動画が再生された。

    仁「き………響子!!」




    娘は縛られたままだ。


    「解放する」の意味をほぼ察したが杞憂であることを祈り、動画を見続ける。




    自慢の娘が。


    私の娘が。


    可愛い娘が。


    愛する娘が。


    跡形も無くなった。



    冷静な娘が…恐怖に顔を歪ませながら。
  61. 61 : : 2016/09/29(木) 18:24:42



    事件後、学園長室。


    仁「……やぁ?気分はどうかね……?」


    仁「愛する人を失ったにも関わらず……君は涙も流さないのかな?」


    日向「……………………………」

    仁「何とか言ったらどうなんだ!? えェ!!」

    何も感じない。

    いや、感じたくない。


    認めたくない。


    仁「口をきく気にもならんか……」

    仁「いいだろう……貴様には特別に見せてやる……!!」


    学園長が本棚の本を順番に押していくと…

    部屋の仕掛けであろう隠し通路が開いた。

    仁「さっさと来い!!」

    無理矢理連れてこられた部屋の奥には…


    何者かが座っていた。
  62. 62 : : 2016/09/30(金) 22:57:06
    2号「……………」

    日向「……?」


    地面に届きそうなほどの長い髪の毛をした男が座っていた。


    仁「君には紹介しておこうか……こちらはカムクライズル(仮)…名前はまだない。まぁ、ここでは2号君とでも呼ぼうか。」

    仁「おい、君のことについて紹介してあげなさい。」


    男は答えずに座り込んでいる。暗がりで見落としていたが奥に点滴なども見える。

    が、その瞳はどこも見ていなかった。


    仁「おい。自己紹介をしろと言ったんだ。」

    学園町がその「2号」の頭を小突いた。


    すると、2号は糸が切れた人形のように四肢を投げ出した。

    仁「どうかね?哀れなものだろう?」


    仁「彼は適正が無いにも関わらず君の代わりに被験者に立候補し……」

    仁「文字通り「無」になってしまったのさ…」

    仁「君が実験を蹴ったばっかりにね……」
  63. 63 : : 2016/09/30(金) 23:30:54


    仁「君が実験を蹴ったばかりに……!」

    ………は?


    知るかよそんなの。

    そんな事言うんだったら俺だって………!


    仁「守るべき生徒を陥れ……」

    仁「生徒に犠牲を出し………」


    仁「娘も奪われた……!!」



    何を言っているんだ?

    生徒を犠牲にした…?



    呆然とする日向の顔に拳が飛んできた。


    日向の視界に星が飛ぶ。


    吹っ飛んだ日向の身体に容赦なく蹴りを入れる。


    仁「お前の…ッ!お前のせいで!!」

    仁「娘は…ッ!響子は死んだんだっ!!」


    仁「お前のせいで生徒にも犠牲が出て……!」

    仁「私も全てを失ったんだ!!!」


    仁「なぜ金払ってブランドに縋り付いているだけで満足できなかったんだ……ッ!!」


    仁「貴様らなんぞ「歯車」で満足してるのがお似合いなんだよッ!!」

    仁「金ヅルの分際でッ!!」

    仁「ウジ虫の分際でッ!!!」



    仁「予備学科の分際でェェエエエエッッ!!!」
  64. 64 : : 2016/10/01(土) 21:08:00
    日向「ゲホッ!!ガハッ……!」

    仁「ハァー… ハァー… ハァー………」

    仁「貴様なぞに分かってたまるか……!」

    仁「従わざるを得なかったんだ………!」

    仁「響子……響子ぉ…」


    あの時と同じ感覚。

    腸が内側から裂けるような鈍い痛み。


    ドロドロと、ドス黒い怒りが業火となって身を包む。

    日向「なん……だよ……!」

    仁「…………なんだ?その目は……」


    日向「要はお前…… そのカムクラプロジェクトに踊らされてただけじゃないか……!」

    日向「いや… もっと上の人間か………」


    日向「お前のせいで………!いや…」


    日向「よくも七海を殺しやがったな………ッ!!」

    仁「黙れッ!! 貴様がさっさとプロジェクトに同意していればこんな事にはならなかったんだ!!」

    仁「貴様こそ私の娘を……ッ!!」

    仁「私の総てを……ッ!!」


    日向「ふざけるなッ!! お前の娘の為なら七海が死んでも良かったのか!!」

    仁「私にとって娘は総てだ!!そもそもあの選択を取らせたのはお前だ!」


    仁「全部お前が招いた結果なんだよォ!!

    勝手な理想に囚われた貴様がなァ!!」


    日向「勝手なのはお前の方だろ!! お前こそ戦うのが怖かっただけじゃないか!!」

    日向「どういう事情かは詳しく知らないけど…」

    日向「娘を奪おうとする人間と戦うのが怖くて従ってただけじゃないか!!!」


    日向「自分が戦うのが怖くて他人に犠牲を強いてただけじゃないか!!!」

    日向「こんなゴミ野郎のために……っ!
    七海は………ッ!!」



    仁「言わせておけばウジ虫が調子に乗りやが……」


    言い終わる前に、憎しみを込めた拳が学園長の顔面に突き刺さった。

    仁「グハッ!」


    日向「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!」

    日向「七海を返せ…! 七海を返せ!! 七海を返せ!!!」



    日向「返しやがれぇええええええええッ!!!」
  65. 65 : : 2016/10/01(土) 22:09:24

    仁「ガァ…ッ!!」

    怨みを込めた拳は仁を部屋の奥まで吹き飛ばした。


    仁「こ…の……」

    仁「ク……クククク……!」


    仁「……ッハハハハハハハハハ!!」

    日向「な…なんだ?何がおかしい!!」

    仁「なんだ……お前知らなかったのか……」

    仁「フフフ……それはそうだ…あんな事を知っていれば……『あいつと胸を張って付き合えるようになりたい!!』なんて戯れ言抜かせる筈がない……!」

    仁「ハハハハハハハハハ…!!」


    日向「なんだ…!一体何の話をしているんだ!!」

    仁「分からないなら教えてやる……!」

    学園長は懐から書類を取り出した。

    仁「この同意書をよく見ろ……!」

    日向「なんだ…!それは……!」

    日向(親父のサイン……?)


    日向「……………………ッ!!!」


    以下引用。


    「以上をもって、契約に同意するものとし、契約者の新生児の実験(カムクライズル プロジェクト)への提供を認める。」


    下には両親のサインがあった。



    日向「なんだよ…! なんでこんな物があるんだよ!!」


    仁「なんでも何もそれが事実だからだ……!」

    仁「お前は歯車でも石くれですらない!!」

    仁「お前は生まれた時から……いや、生まれる前から『ブランド』というレッテルを貼られ、『才能の入れ物』としてこの世に産み出された……」




    仁「空箱(からばこ)なんだよッ!!!」
  66. 66 : : 2016/10/01(土) 22:34:07
    日向「う……ソだろ……!」

    日向「ウソだ!! こんなモノ認めない!!」

    仁「君が認めるか認めないかは問題ではない。これは事実だ……」


    日向「黙れッ!!」

    日向「例え親が勝手にそんな契約結んでたとしても俺は俺だ!!」


    日向「俺はお前の下劣さを忘れたりしない…!」

    日向「お前に殺された七海の事も……ッ!!」


    日向「全部忘れずに俺は俺として生きる!!
    お前への怨みも一生忘れない………ッ!!」

    日向「必ずお前を破滅させてやる………っ!!!」



    仁「ふっ………」

    仁「破滅……? 俺は俺として……?」


    仁「自分の置かれた状況も分からないのか……
    やはり予備学科は予備学科だな……」



    仁「お前に娘を奪われた時点で私はもう破滅だよ。」



    仁「それに……君をこのままむざむざ帰すと思っているのかね…?」

    日向「な……っ!」


    どこから駆けつけたのか。既に警備員がごった返していた。

    日向「クソッ!!離せ!! 離せよ!!」

    仁「クックックック…………っ!」


    仁「なぁ、君は確か『七海千秋に胸を張れる自分』になりたかったのだよな?」


    日向「……そうだ! これからだってそれは……っ!!」

    仁「フフフフフフフフフフフフフフフフ……」

    日向「な……なんだよ!!」



    仁「ならばその『自分』とやらを完全に破壊してやる…………ッ!!」


    仁「私が味わった以上の苦しみをお前も味わえ………!!」



    仁「………そう楽に死ねると思うなよウジ虫。」


    仁「連れて行け!!」


    警備員達は俺を引き摺り込む。


    どことも分からぬ奈落へと。


    日向「やめろ!! 離せ!! 離してくれ!!やめろ!やめろ!!やめろ……ッ!!!」


    日向「いや……だ…………!」

    日向「やめろォ!!離せ!! 俺は……! 俺は……ッ!」



    仁「フハハハハハハ………っ!」

    学園長は嘲笑う。


    仁「機会があればまた会おうじゃないか。」

    仁「『日向創』くん……?」
  67. 67 : : 2016/10/02(日) 01:57:49









    一体どれ程の時間が過ぎただろうか……?

    暗黒の底のような、独房のようなこの部屋に放り込まれてから…


    毎日、毎日。

    いや、既に「日」という概念も消え去りつつある。



    日向(七海……)


    繰り替えされる「手術」の中で自我は徐々に崩壊していき…


    代わりにまた違う「自我」が自らの中で生まれつつある。




    日向「……………」

    日向「お前が……カムクライズルって奴なのか?」

    カムクラ「私に名付けられた名前を名乗るならそうなりますね。」

    日向「そうか…」


    日向「なぁ。俺がカムクライズルになったら俺の人格はやっぱ乗っ取られるのか……?」

    カムクラ「乗っ取られる…というよりは貴方の人格は完全に消去された後、上書きといった感じになりますね。」


    日向「なるほどな…」


    カムクラ「……貴方も確か「予備学科」でしたね。」


    日向「……あぁ。そうだよ。」

    カムクラ「貴方はプロジェクトに同意は最後までしなかったようですね。」


    日向「………当たり前だ…。」

  68. 68 : : 2016/10/02(日) 17:38:08
    日向「毎日毎日無理やり手術台に乗せられて頭弄られて……」


    日向「オマケに頭の中にはお前が巣食ってる始末だ……」

    カムクラ「『巣食っている』ですか……」


    カムクラ「本来であればこうして貴方と会話している事自体……本来有り得ない筈なのですが…」


    日向「うるさい……」

    日向「もうこんな茶番は終わらせてくれ……」



    カムクラ「…………何をするつもりなんですか?」

    日向「自分で考えろよ……超高校級の希望なんだろ?」

    カムクラ「それが………貴方の希望ですか。」

    カムクラ「ツマラナイですね……。」

    日向「黙れ。」

    日向「お前に乗っ取られるくらいだったら……」



    日向「死んだ方がマシだ。」


    歩き出す。


    絶望ともつかぬ希望。


    暗黒の光。


    光明なき希望へと。

  69. 69 : : 2016/10/02(日) 18:13:38
    日向(………俺は俺だ。)

    日向(例え両親が俺を才能の器としてこの世に産み落としたとしても……)



    日向(俺は俺…… 日向創だ…!)

    日向(鉛だろうと歯車だろうとそれは変わらない……!!)


    日向(もうじき……俺は俺でなくなる……)

    日向(自分を無くして……才能の器として…あんなクソみたいな連中の玩具にされて生き永らえるぐらいだったら……!)

    日向(俺は俺のまま…俺の手で……)

    日向(俺を終わらせる………ッ!!)


    どこかで七海が、涙を溢した気がした。

    日向(あぁ……七海…そんな顔をしないでくれ…)


    日向(俺は…… お前のいない世界で…空箱として生きていくなんて…耐えられないんだ……!)


    日向(ごめん……七海…)


    日向(………向こうに着いたら…また叱ってくれるかな……?)
  70. 70 : : 2016/10/02(日) 18:49:36







    数日後。


    戦刃「………まさか…あんな事になるなんて…」

    江ノ島「…………」

    戦刃「あの……ここに…報告書…おいておくから…」


    ※以下は戦刃の報告書より。

    「・学園の創立の「意味」ともなった「カムクライズル プロジェクト」は半永久的に凍結。事実上の廃止となり、学会は研究を独占しようとする者と証拠隠滅を図る者とで分派している模様。

    ・カムクライズルの「人格」は学園に封印される模様。

    ・被験者1号→個室にて死亡が確認される。何者かが侵入した形跡もなく、自殺と考えられる。
    2号→行方不明。学会が処分した可能性アリ。

    ・霧切仁→行方不明。学園の暗部に始末されたのか心神喪失からくるものか定かではない。

    ・爆破事件について→警察はテロ組織か、予備学科生の犯行と見て捜査を開始する模様。」


    江ノ島「なるほどねぇ……お姉ちゃんにしてはちゃんと仕事できたじゃん。」

    戦刃「けど……どうするの?これから…」

    江ノ島「別に変わらないよ?計画にアクシデントは付き物でしょ?」


    江ノ島「み~んなのたうち回りながら死んじゃってさぁ……! 計画もぶっちゃけ丸潰れ…これもなかなか悪くない絶望だわぁ……っ!」


    江ノ島「けど……こんなモノじゃあ足りないよねぇ……」


    江ノ島「世界中巻き込むレベルでぇ…もっともっ~~と ぐっちゃぐっちゃのカオスでないと………!!」


    江ノ島「それに… カムクライズルのデータは消されたわけじゃないし………」



    江ノ島「私様こそが…全く新しい「カムクライズル」というのも面白かろう?人間……!」

    戦刃「え………っ?」

    江ノ島「いちいち本気にするなっつーーの!!」


    戦刃「ごめん……」


    江ノ島は「校舎」を一瞥する。


    江ノ島「それじゃ……まぁ、行きますか。」


    江ノ島(なかなか面白かったよ? 日向センパイ…)








    End
  71. 71 : : 2016/10/02(日) 18:58:55


    ~ご挨拶~

    期限を過ぎてしまい、遅刻となりましたが私の秋のコトダ祭投稿作品。「カラバコ」を完結させることができました!

    毎度のこと一筋縄ではいかない「コトダ祭」でありますが、今回は「青春」という事で、自分がまだ未踏の領域への挑戦となり、制作に手間取ってしまいました。

    今回、この「カラバコ」の構成には、ベータさんの助力によるところが非常に大きく、私一人の力では到底、書き上げる事は叶いませんでした。

    ここに感謝を示すと共に、完結のご挨拶とさせていただきます。

    最後までお付き合いありがとうございました!

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著者情報
jun

シャガルT督

@jun

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