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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

英霊〜The Reluctant Heroes〜

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  1. 1 : : 2016/02/27(土) 00:29:37
    こちらは恐らく最後の作品になると思われます。

    以下の成分含みます。

    ・原作準拠ですが、捏造あり。

    ・アニが話の中心。水晶から出てきたらこんな話になった、といった妄想ストーリーとなります。

    ・筆者はアニが好きですが、今回は切ないというか誰とも結ばれません。エレンへの少しばかりの片思いで終わり、エレンは格闘術の師匠といった尊敬の念はありますが、甘いお話にはならないので悪しからず。

    ・きっとアニはアルミンが言ったみたいに優しい子なんです。お前なんぞ嫌いじゃ!って方はご覧にならないでください。

    ・"進撃"という世界観を守りつつ、キャラも今回は原作に忠実にしていきますが、皆様とのズレがあるかもしれません。そうなりましたらお許し下さい。

    ・アニメ派の方はネタバレ注意!!

    長々と書きましたが、やっぱり原作だとアニ達を待つのは残酷な運命なんだろうな・・と思い、少しでも救いのある方へ導いてあげたいという私の自己満ssです。それでも大丈夫!って方は読んでやってください。
  2. 2 : : 2016/02/27(土) 00:34:01
    一、兵士たる者、血の一滴でも振り絞って闘わなければならない。

    一、殉職を畏れず、誇るべし。

    一、敵前逃亡は死罪に値する。




    人類の繁栄の為に、心臓を捧げた者は皆、英霊である。




    ー訓練兵座学基礎より抜粋。
  3. 3 : : 2016/02/27(土) 00:35:18
    ジャキンッと抜剣する甲高い金属音が響いた。

    訓練兵時代から幾度となく聞いてきた音。

    しかし、巨人に対する憎しみは誰よりも強い筈のエレン・イェーガーは、その剣を振るのを躊躇している。

    「今お前の目の前にいるのは何だ!」

    恫喝にビクッと反応するも、その腕は震えたままだ。

    「思い出せ!お前はそいつに何をされた!」

    わなわなと震えながらも、その剣を掲げる。

    「殺れ!エレン・イェーガー!!」

  4. 4 : : 2016/02/27(土) 01:21:14
    ー845年

    訓練兵団を卒団した俺たち104期元訓練兵は、宿舎にて少しばかりの宴を催していた。

    上位10位に入った者達を祝福し、これから各々別の兵団へ入る仲間との別れを惜しむ会である。

    この場にいるのは、命がけの訓練を乗り越えてきた猛者ばかりだ。

    その中でも5位という順位で卒団できたのは上出来だろう。

    エレン「(結局ミカサには勝てず仕舞いだったけどな・・・)」

    彼女は歴代類を見ない逸材との評価を受ける、いわば天才だ。

    その強さは誰よりもエレンが知っている。

    エレン「(・・・)」

    アルミン「エレン、おめでとう」

    悔しく思っているところに、幼馴染で親友であるアルミンが飲み物を渡してくれた。

    エレン「ん、ありがとな」

    アルミン「凄いじゃないか、この人数で5位なんて」

    エレン「ミカサには勝てなかったけどな」

    アルミン「はは・・・昔からミカサは凄かったからね」

    才能の違いもあるだろうが、彼女は巨人のシガンシナ侵攻以前にも地獄を経験してきたのだ。

    肝の座り方一つとっても、誰も並べない。

    エレン「何にせよ、調査兵団に入団するんだ
    訓練兵時代の成績なんざ幾らでもひっくり返してやる」

    今一度そう決意した時後ろを通った影に気づいた。

    エレン「お、アニ」

    アニ「・・・アンタかい」

    じゃあね、とアルミンはマルコの方へ向かっていった。

    周りとは別次元の格闘訓練を繰り広げてきた2人だ。

    点数にならないにも関わらず、そんなことはどうでもいいとばかりに全力でぶつかっていたエレンとアニにしか分からないこともある。

    師弟関係にも似た自分たちに気を使ってくれたのだろう。

    エレン「お前にも結局勝てねえままだったな」

    アニ「当然だね」

    相変わらず冷たい印象だが、初めて会話した(手合わせした)ときに比べれば口数は増えてはいる。

    エレン「アニは憲兵団志望だよな?頑張れよ」

    アニ「アンタはまだ調査兵団に?」

    エレン「ああ、そのために兵士になったんだ」

    一体でも多く巨人を殺す。

    それが兵士の務めだ。

    アニ「・・・まあせいぜい死なないようにね」

    エレン「言われなくても、早くに死んでたまるか」

    いつも俺をぶっ飛ばしてきたアニが自分の身を案じるなど、珍しいこともあるな。

    そう思って、あぁ、やはりもう手合わせ出来ないのかと残念に思ったところで、向こうから提案があった。

    アニ「アンタ、この後空いてる?」

    エレン「え?ああ、まあ・・・」

    もう訓練兵ではない以上、消灯時間を守る義務も一時的に取り消される。

    宿舎の貸与はされているため、いつ戻っても、はたまた外泊してもいいという事だ。

    つかの間の自由である。

    アニ「最後の手合わせ、付き合いなよ」

    エレン「そういうことか」

    最後という寂しさと、それでも楽しみだと対極の感情。

    宴がひと段落ついた後、ミカサ達に言って俺たちはいつもの場所に向かった。
  5. 5 : : 2016/02/27(土) 01:40:02
    ーーー

    ーー



    充実した時間はあっという間に過ぎてしまう。

    今こうして地に伏すまでの時間だって、最初に比べればずっと長くなっていった。

    アニ「手応えあったよ」

    最初なんて赤子の手どころかアリの手を捻るようにコテンパンにされていたが、今ではアニも肩で息する程度にはなった。

    それでも、まだ勝てなかった。

    エレン「くっそ・・・」

    アニ「ほら」

    伸ばされた手を躊躇なく掴むようになったのはいつからだっただろう。

    そんなこと、今まで考えたことなかったのに。

    アニ「"さいご"の手合わせ、相手してくれてありがとう」

    エレン「ああ、こちらこそありがとな」

    らしくなく挨拶なんて交わしたのは、やはり最後だからか。

    この時はまさか後に今の自分たちの何倍もある巨人として、生き死にを賭けた格闘戦を繰り広げること。

    そして、初めてアニに勝った時には、アニが全人類の敵となっていることだって、この時には思いもよらなかったのだ。

    ーーー

    ーー



    調査兵団が管理する地下深くに巨大な水晶ごと拘束されているアニ、もとい女型の巨人。

    拘束してからふた月ほど経っても、動きは全くない。

    そこに入ることは基本厳禁で、常に兵が見張っていた。

    エレンが巨人の力を持っていることから、接触によって何らかの動きがあるのではと期待されたが、残念なことに何も起こりはしなかった。

    エレン「・・・」

    その時だってまだ信じたくはなかった。

    まさか共に訓練していた仲間が、敵だったなんて。

    それも一人に飽き足らず、ライナー、ベルトルト、そしてユミル。

    同期にこんなにもこの世界を動かす者達がいたなんて。

    やはり彼女達は、自分たちの敵である。そう信じ込み始めたのはまだ最近のこと。

    ミカサ「エレン、チ・・・リヴァイ兵長が呼んでいる」

    エレン「ん、分かった」


  6. 6 : : 2016/02/28(日) 23:04:57
    エレン「リヴァイ兵長、失礼します」

    リヴァイ「ちゃんと靴の土落としてきただろうな」

    チッと舌打ちされるのももう慣れた。

    エレン「しっかり落としてきました」

    リヴァイ「ならいい」

    座れと促され、失礼しますと言いつつソファーに腰掛けた。

    上司との一対一はかなり緊張する。相手が兵長であれば尚更。

    エレン「(前は一人じゃなかったけどな・・)」

    そう、こうなったのも最近だ。

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    「兵長!靴を磨きましょうか?」

    「いや、今朝方磨いたばかりだ」

    「もう!兵長は毎朝磨いてるの知ってるでしょ!」

    「まあまあ・・・」

    「おいコラ新入り!なに偉そうに宥めてんだ!」

    「へ!?俺は別に・・・」

    「エレンに当たるな」

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    エレン「(・・・)」

    リヴァイ「おいクソガキ 何を呆けてやがる」

    エレン「す、すみません!」

    また一つ舌打ちをされ、少しばかり落ち込む。

    リヴァイ「今回呼び出したのは次の作戦についてだ」

    エレン「次の・・・?もうですか?」

    前回の壁外調査は10日前に帰還したばかりだ。

    作戦=壁外調査の図式がほとんどである調査兵団としては、このスパンは異様だ。

    月一の頻度で行われる壁外調査。

    ただでさえ喪う兵が毎回大量にでる調査が見逃されているのは、税金の無駄となる兵の口減らしに他ならない。

    リヴァイ「壁外調査じゃねえ もうそんなもんなくなるんだよ」

    エレン「はい・・・?いったいどういう・・」

    リヴァイ「それを"人類の希望"であるお前に話す為に呼んだ」

    リヴァイ「クソみてえなことに、今"ホンモノの調査兵"であることを証明できるのはお前だけだからな」

    エレン「言ってる意味が

    言い終わらないうちに突如拳が飛んでくる。

    対人格闘において優秀な成績を残したエレンでも反応できない速度だ。

    あっけなく拳は自分の頬にめりこんで、ぎっしり詰まった本棚へと吹っ飛ばされる。

    口の中は切れたが、早くも蒸気を出して治癒し始めてこそいるが、痛いものは痛い。

    エレン「急に何を!」

    リヴァイ「憲兵団の諜報部隊対策だ」

    リヴァイ「名前と顔を覚えていても、全員の出自を一瞬で確認する術がねえ以上、諜報兵の可能性は否めねえ」

    リヴァイ「だがお前は殴ればわかる」

    エレン「だからって・・・」

    リヴァイ「その必要がある以上、察しやがれ」

    エレン「・・・極秘作戦、ですか」
  7. 7 : : 2016/03/02(水) 22:11:32
    リヴァイ「そのためには新しい特別作戦班を組織することになる」

    エレン「なるほど」

    リヴァイ「俺は104期の調査兵を抜き取るつもりだ」

    エレン「104期・・・」

    自分の同期だ。普通に考えれば成績上位10名だった者達が筆頭だろう。

    殉職したマルコ、巨人であることが判明したライナー、ベルトルト、アニを除けばその者達は皆調査兵団なのだ。

    リヴァイ「そいつらが本物であることが確認でき次第、組織して作戦開始だ」

    表向きは、王家との血縁があるであることが判明したヒストリア保護を目的とした作戦班だ。

    一癖も二癖もある奴らだ。人数も少ない。本人確認などすぐ終わるだろう。

    エレン「質問してもいいですか?」

    リヴァイ「なんだ」

    エレン「駐屯兵団からの精鋭も編入出来るはずなのになぜ104期なんですか?」

    リヴァイ「その精鋭が殺されてるからだろうが」

    エレン「は・・・?」

    調査兵団団員はエレン奪還作戦で多数の死者が出ている。

    そのことはエレン自身が痛いほどわかっている。

    しかし何故駐屯兵団まで・・・。

    リヴァイ「黒金竹の大規模な盗伐が工業地域で起こっている」

    リヴァイ「それが駐屯兵団によるものだとふっかけられたわけだ」

    つまり、自分たちに力を貸す駐屯兵団を快く思っていない連中が民意を固めさせるためにいちゃもんをつけてきたということである。

    エレン「相変わらずそれらしい理由をつけるのだけは上手ですね・・・」

    黒金竹と少量のレアメタルを混ぜたものが超硬質スチール。自分たちの武器の要の素材だ。

    それをもっとも消費するのは調査兵団。素材欲しさによる盗伐としたいらしい。

    実際のところ配合の割合だったり、素材の詳細は調査兵団は知らない。

    内部事情を知らない市民にはその説明で十分だということか。

    エレン「つまり駐屯兵団の精鋭兵の方々はその罪を着せられて!?」

    リヴァイ「それ以外何がある」

    エレン「そんな・・・」

    リヴァイ「・・・まあ、全てでっち上げってわけじゃない」

    エレン「まさか本当に盗伐を!?」

    リヴァイ「そこじゃねえ 黒金竹の枯渇だ」

    エレン「!」
  8. 8 : : 2016/03/02(水) 22:33:06
    ーー1週間前

    ハンジ「そんなバカな・・・」

    モブリット「この情報は確かです 精製物量に対して、刈られた黒金竹の割合が高すぎます」

    リヴァイ「盗伐か?」

    モブリット「それだけではありません」

    手帳をまた1つペラリとめくる。

    モブリット「刈り取られたとみられる黒金竹は見つかったのですが・・」

    ハンジ「?」

    モブリット「すべてひどく劣化していて使い物にならなくなっていたそうです」

    リヴァイ「・・・」

    黒金竹は発見こそ数十年も前だが、確実な取り扱いが確立されたのはここ10年ほどの話だ。

    硬さとしなやかさ、加えて軽さも持つ、武器の素材としては最高の品だが、その保存は容易ではない。

    一度保存過程を済ませれば半永久的に劣化はしないのだが、

    リヴァイ「倉庫かどこかにまとめてほったらかしにされていたと」

    モブリット「ええ・・・」

    壁の中央の特殊な土壌からの栄養分の供給がなくなっては、黒金竹は特性を維持できない。

    その固定作業が保存することになるのだが、伐採されて3日もすれば急速な酸化が始まってしまうのである。

    リヴァイ「おそらくお上がまた因縁ふっかけてくるだろうな」

    ハンジ「あいつらぁぁ・・・」

    モブリット「憲兵団は捜査をしているとしていますが、おそらく・・・」

    リヴァイ「奴らの駒が動いてるんだろう 捕まりゃしねえ」

    モブリット「このふた月で2回同じような事件も起きてます」

    ハンジ「黒金竹の盗伐及び闇ルート流しでの金目当てってわけでもないだろうね・・・」

    リヴァイ「俺たちにとって状況は悪くなる一方だなクソが」

    ーーー

    ーー



    エレン「そんなことが・・・」

    リヴァイ「人員不足のこちらと引き換えに、憲兵団は相変わらず人数が飽和してる もうこれ以上人員補給はねえだろう」

    つまり105期以降は憲兵団の特別編入は、親のコネや身売りでもしない限り不可能になるということか。

    リヴァイ「それ以前に、どの兵団にも兵が入ることはなくなるかもしれねえが・・・」

    エレン「え?」

    その言葉の意味は、結局わからなかった。
  9. 9 : : 2016/03/02(水) 23:50:21
    その後、王家と繋がりのあるヒストリア・レイス保護を目的として、新リヴァイ班が組織された。

    兵長の言葉通り、元104期訓練兵団であるミカサ、アルミン、ジャン、コニー、サシャ、そしてヒストリアからなる。

    しかし、エレンとヒストリアの拉致。

    密かに取り込んだリーブス商会会長の殺害。

    それの原因とされた調査兵団の解体及び容疑のかかった兵の粛清。

    さらにはクーデターと壁内は大きく揺れ動いた。

    資源の枯渇は急速に進み、物価は何倍にも跳ね上がった。

    当然食料だけにはとどまらず、流出や横流しによる鉱山資源や燃料資源も、である。

    その結果、口減らしのために新たな作戦が実行されることとなる。


  10. 10 : : 2016/03/08(火) 22:44:21
    ーー

    「もっと黒金竹が無ければ戦えない?何を馬鹿げたことを」

    「戦いとは実力が互角の者同士の抗争のことを言うのだぞ?」

    「君たち調査兵団は戦っていたわけではない」









    「ただ虐殺されていたに過ぎないのだよ」







    ハンジ「ぁぁああっ!!この老害ども!!」

    リヴァイ「うるせえクソメガネ 」

    ハンジ「はぁ・・・あ、ごめんリヴァイ」

    リヴァイ「・・・寝言ならもう少し抑えろ」

    嫌な夢だ。昔のことだ。

    調査兵団は税金の無駄だとして何度も排団の話が出た。

    名ばかりの評議会は憲兵が過半数を占めている為、役割なんて為さない。

    こうした場面では中立的な駐屯兵団だけが頼りだが、買収されてしまえばどうしようもないのだ。

    ハンジ「あの時の議事録か・・・」

    ブレードに使われる黒金竹の含有量が現在のものとなったのはつい最近。

    それまでは質の悪い鉱石が使われており、今よりも刃の消耗が激しかった。

    それについて抗議したときの議事の記録を使って黒金竹の盗伐による調査兵団の信用失墜を計画したのだろう。

    ハンジ「あーもー!!」

    ガシガシと頭を掻き毟る。

    リヴァイがオイ、と眉根を寄せて咎めるが止める気配はない。

    それも諦めて部屋を出て行った。

    ハンジ「氷瀑石がいくらあったところで・・」

    氷瀑石は立体機動装置の燃料であるガスの大部分を占める素材だ。

    固体から気体に昇華し、体積が爆発的に膨れ上がることで知られている。

    とはいえ常温で気体に昇華することから、少量でも大きな爆弾と化すため、市民の生活にはなかなか応用できない。

    強い力を持つ反面、なかなか扱いは難しいのだ。

    ハンジ「火炎放射器にでもできればいいんだけどなぁ〜」

    もともと高温である巨人に熱が効くのか、そもそも一気に焼きつくせる火力になるのか。

    そもそも常温で昇華するのに炎で一気に温度を上げたら機器が保たないのではないか。それを装備した者もただでは済まないだろう。

    非現実的だ。

    ハンジ「となれば・・・手榴弾くらいのもんだよなぁ・・・」

    あはは、お先真っ暗だねー、と言葉とは裏腹に高らかに笑う声で元104期訓練兵団出身調査兵、またの名を新リヴァイ班の朝は始まった。
  11. 11 : : 2016/03/16(水) 20:16:16
    ハンジ「えぇ!?ホントに榴弾にしたのぉ?」

    内通する技巧班から連絡が来たのはそれからスグだった。

    氷瀑石を利用した爆弾。

    ハンジ「威力は足りるの!?モブリット!!」

    モブリット「ぶ、分隊長、苦しいです」

    ハンジ「さぞ素晴らしい性能なんだろうねぇ!」

    アルミン「榴弾・・・」

    モブリット「いえ、特殊な機能が搭載されているワケでは・・・」

    ハンジ「・・・はあ?」

    リヴァイ「くだらねえ」

    そもそも巨人相手に榴弾など正確に当てる技術があれば斬ったほうが速い。

    遠距離になればなるほど命中率も低くなるだろう。

    リヴァイ「クーデターの時ならまだ使い道があったかもな」

    不穏なことをサラリと言ってのけて、カップを持って部屋を出て行く。

    アルミン「あの、射出器はあるんですか?」

    モブリット「いや、本当に榴弾だけらしい」

    実際今更作る意味がわからない、とつけ加える。

    それにはアルミンも同意だ。

    アルミン「(兵団は何を・・・)」

    「緊急事態です!」

    そのとき突如飛び込んできたのは伝達係。

    数日前に出て行ったばかりだったから、帰ってくるのは1週間以上後のはず。

    誰かが内容を聞く前に、兵士は叫んだ。

    「襲撃です!!」

    アルミン「え・・・?」

    リヴァイ「敵の数は」

    聞きつけて戻ってきたリヴァイが冷静に聞く。

    「い、一体です!!」

    ハンジ「特殊な個体か!?」

    「例の獣の巨人が突如出現し・・・」

    ガタガタとエレンたちも降りてくる。

    それまでの経緯は聞いていないが、彼らを突き動かす動機は次の一言で充分だった。

    「女型の中身が奪取されました!!」
  12. 12 : : 2016/03/16(水) 20:32:24
    リヴァイ「エレン、お前は前線に出るな」

    エレン「はぁ!?何でですか!!」

    そして支度をするエレンに対して言い放つ。

    リヴァイ「水晶のあった場所の確認だ ミカサはエレンにつけ」

    ジャン「そ、それでは戦力が・・・」

    リヴァイ「過去の奴の行動を見る限り相当頭の回る中身だ」

    リヴァイ「取り返すのは絶望的だ」

    作戦を前にネガティヴなコトを言うなどらしくない。

    失敗確定と言ってるようなものだ。

    エレン「いくら兵長でも」

    リヴァイ「それに奴の狙いはお前というコトも考えられる」

    リヴァイ「女型の中身は巨大な釣り針だ」

    エレン「ッ・・・」

    アルミン「僕も・・・そうすべきだと思うエレン」

    エレン「・・・了解です」

    ミカサ「エレン・・・」

    立体機動装置を身につけた皆んなとは対照的に軽装である自分。

    馬に跨り、腹を蹴る。

    ハンジ「必ず彼女を取り戻すぞ!!」

    奮い立たせるような恫喝を合図に進軍を開始した。

    ーーー

    ーー



    エレン「・・・」

    ミカサ「・・・」

    現場に到着すれば、そこは無残な姿だった。

    入り口はこじ開けられ、通路は瓦礫の山。

    肝心のアニの入る水晶があった場所はもぬけの殻だ。

    綺麗に取り除かれている。

    エレン「クソ・・・」

    ミカサ「不自然に折れたブレードの破片が散らばってる」

    攻撃を試みて失敗したのだろう。

    兵士は無謀だとわかっていても立ち向かわなくてはならない。

    ミカサ「・・検証は終わった 遺体処理をしよう」

    エレン「・・・」

    ミカサ「エレン」

    エレン「・・・ああ」

    以前のエレンであれば今のミカサの言葉にも突っかかっていただろう。

    それをしなかったのは、したところで何も生まれないコトが分かっているから。

    エレン「・・・みんな戦ったのに、誰なのかも分からねえ」

  13. 13 : : 2016/03/16(水) 20:47:40
    パチパチと殉職者の遺体を燃やす炎は夜まで輝き続けた。

    彼らもまさか此処で巨人に襲撃されるなど夢にも思わなかっただろう。

    最期を看取るコトもできない。

    どんな最期だったのかも分からない。

    兵士はいつ死んでもおかしくない。

    覚悟はあれど、こんな死は不本意だったに違いないのだ。

    ミカサ「・・・彼らが死んでも、きっと政府は何とも思わない」

    エレン「・・・」

    ミカサ「彼らが気にするのは結果だけ」

    エレン「・・・今回の件で気にするのも"獣の巨人を殺せなかったコト"だけか」

    ミカサ「死んで当然と思ってる限り、人類は負け続けるのと同じだ」

    そう言う彼女の横顔を見る。

    目にはいつも以上に光を見出せなかった。

    エレン「何を思い出してるんだ・・?」

    溢れた言葉には何も返ってこなかった。

    ーーー

    ーー



    リヴァイ「チッ」

    壁についた新しい傷を辿って、ウォール・マリアを登る。

    壁外を見渡せば悠々と歩く獣の姿があった。

    リヴァイ「付近に巨人はいねえ 駐屯兵にカーゴを動かすように伝えろ」

    コニー「はっ!」

    作戦の誤認が多かったコニーだが、最近は改善しつつある。

    現に3分としないうちに、最小限の馬を向こうに運べるだけは確保した。

    ハンジ「移動急げ!!」

    壁について5分後。壁外へ出ることに成功する。

    その頃には敵影は遥か遠くだ。

    サシャ「この距離なら間に合います!」

    ハンジ「行くぞ!!」













    「俺忙しいから、お前ら喰っといてよ」








  14. 14 : : 2016/03/16(水) 21:08:45
    サシャ「ぜ、前方突然敵影多数出現!」


    コニー「は!?まだ全然進んでねえのに!」

    リヴァイ「まだ大砲の射程圏内だ 此処で迎撃する!」

    ハンジ「爆発に巻き込まれるかもよ?」

    リヴァイ「避けろ 無理なら祈れ」

    ハンジ「ハイハーイ」

    ズドンと、1発目の砲声が聞こえた。

    自分たちより少し前方に着弾する。

    リヴァイ「射程の限界は彼処だ 覚えとけ」

    抜剣しながら馬を降り、周囲の建造物や雑木を確認する。

    リヴァイ「当ててくれるなよ」

    それに伴って全員が迎撃態勢に入った。

    土煙が巨影とともに迫る。

    先頭の一体が、先ほどの砲弾の着弾地点を踏み抜いた。

    リヴァイ「かかれ!!」

    ーーー

    ーー

  15. 15 : : 2016/03/21(月) 22:30:30
    コニー「援護があるからなんとかなってるけどよ・・・」

    サシャ「この数は・・・」

    リヴァイ「口動かしてるヒマあったら奴らを殺せ」

    それでも次から次へと出現する巨人。

    さらにスパンは長いにしろ、一斉に大挙して襲いかかってくるのだ。

    リヴァイ「(お上よりよっぽど上等な頭してやがる)」

    頬についた返り血を一瞥して舌打ちし、刃を交換する。

    交換したものを含めて残り3。

    リヴァイ「(・・・引き時か)」


    隙を見てガスの交換を行なうよう促し、撤退の指示を出す。

    ジャン「やっぱり・・・」

    ハンジ「リヴァイ!まだ彼女は!」

    リヴァイ「これ以上資源を無駄にするわけにはいかない」

    ハンジ「竹なんぞよりも彼女の持つ情報のほうがウェイトが大きいだろ!」

    リヴァイ「分かってるだろ この数を相手にしてたら間に合わねえ かと言って無視も出来ない」

    つまり奪還は不可能だ。

    リヴァイ「ただ、今この波は捌かなきゃ撤退も無理だ」

    馬は狙われないとはいえ、壁外に放置はできない。

    リフトを動かしての移動が必須である為、一斉に迅速な撤退も不可能。

    リヴァイ「1人と一頭ずつ壁上に上がれ その間他の奴はそれを護る」

    残るのは巨人討伐の技術の高い者たち。

    最後に上がる者は当然最も危険だ。

    リヴァイ「俺が最後だ いいな?」


  16. 16 : : 2016/03/21(月) 22:51:13
    ーーー

    ーー



    ミカサ「ー遺体はエレンと私で火葬しました」

    リヴァイ「・・・」

    ミカサ「報告は以上です」

    ハンジ「クソッ・・・目の前だったのに・・」

    ジャン「ハンジさん・・・」

    エレン「・・・すみません、先休ませてもらいます」

    リヴァイ「・・・許可する 他の奴らもすぐに休め」

    ハッと返事をして、各々部屋に戻り残ったのはハンジとリヴァイ、そしてミカサだった。

    ミカサ「あの・・・女型は・・・」

    リヴァイ「・・・」

    ハンジ「・・・統率されたような大量の巨人が邪魔をして追跡できなかったんだ」

    ハンジ「奪還は・・・失敗した」

    ミカサ「・・・そうですか」

    リヴァイ「奴の目的は分からんが、当面はエレンの守護に重点を置く」

    リヴァイ「その為に力を尽くせ」

    ミカサ「分かっています」


    礼儀正しく頭を下げ、階段を上がっていくのを見送る。

    新たに淹れたコーヒーを一口飲み、今度はリヴァイが口を開いた。

    リヴァイ「なぜ今になって奴が女型を回収したか、お前の意見を聞かせろ」

    ハンジ「少なくとも救出なんて生易しい目的じゃないのは確かだね」

    立場的に明らかに他の巨人の上に立つ存在だ。

    あの道具のように巨人を自分たちに襲わせたのが彼の指示だとすれば、一体の巨人の為に動くとは考えにくい。

    口封じならもっと早く来るはずであることも理由の一つだ。

    ハンジ「私も、彼の狙いはエレンだと思う」

    リヴァイ「だろうな」

    そこで会話は途切れた。

    向こう側の狙いなど、自分たちが頭をどんなに捻ったところで分かるはずもない。

    普通の巨人と巨人の身体を纏った人間。

    何処で分岐するのか。

    巨人の調査が進んできたとはいえ、わからないことは未だに山ほどあるのだ。

    ハンジ「・・・とりあえず私は彼女の水晶の欠片を詳しく調べるよ」

    リヴァイ「ああ」

    ハンジ「それじゃ」

  17. 17 : : 2016/03/21(月) 23:06:22
    翌日。

    ハンジ「大変だぁぁぁあああ!!」

    モブリット「ぶ、分隊長!?」

    リヴァイ「何だクソメガネ」

    ハンジ「水晶の欠片が・・・!昨日顕微鏡で観察してたら・・・!!」

    アルミン「?」

    ハンジ「突然蒸発したんだ!削り取っても消えなかったのに!!」

    貴重なサンプルなのに!と半狂乱で走り出したハンジさん。

    リヴァイ「あいつがいるとやかましくてかなわん」

    アルミン「でも水晶が消えたってことは・・」

    ジャン「水晶から出てきたってことか?」

    アルミン「多分」

    リヴァイ「だろうな」

    自分たちがどんなことを試しても決して出すことが叶わなかったアニ。

    それを連れ去って、ものの数時間で出すとは・・・。

    リヴァイ「奴が見失った後も移動速度を変えてなきゃ方向と速度から大体の位置は割り出せるハズだ」

    時間もおそらくハンジが記録しているハズ。

    アルミン「ええ、ですが・・・」

    ジャン「きっと巨人共の本拠地みたいになってんだろうな」

    ガスも刃も消耗している。

    今行くのは自殺行為だろう。

    ハンジ「リヴァァアアアアイ!!今すぐ追うんだぁぁぁああ!!」

    リヴァイ「ムリなのはわかってるだろクソメガネ」

    戻ってきたハンジさんを拳の寸止めでストップさせてから続けた。

    リヴァイ「女型の追跡は諦める」

    一同の動きが一斉に止まった。

  18. 18 : : 2016/03/31(木) 22:02:26
    ハンジ「冗談じゃない!!」

    リヴァイ「奴をこの手で奪還するのは壁内の人類を総動員しても不可能だ」

    ハンジ「彼女が持つ情報にはそれだけの価値がある!」

    リヴァイ「俺たちが死ねば価値もクソもないだろうが」

    ハンジ「ぐっ・・・」

    エレン「・・・」

    リヴァイ「人類が生きるためにはどの道殺すんだ」

    リヴァイ「女型も、超大型巨人も、鎧もな」

    ハンジ「・・・クソッ!」

    ーーー

    ーー



    アルミン「ハンジさん・・・?」

    ハンジ「うほぉおっ!?・・・なんだアルミンか」

    アルミン「こんな時間に何してるんですか?」

    ハンジ「ああ、彼らの皮膚の硬化の考察ってとこかな」

    アルミン「皮膚・・・鎧の巨人のですか」

    ハンジ「そうだね それを削り取れる武器も考えなきゃ」

    アルミン「・・ハンジさんはまだア・・女型の巨人や鎧の巨人の中身の人間を?」

    ハンジ「諦めないさ 内容は違えど君たちと同じく、彼らとゆっくりお話したいからね」

    ハンジ「ただ・・・やっぱり黒金竹が無いと厳しいよなぁ・・・」

    アルミン「ダメになった黒金竹は廃棄したんですか?」

    ハンジ「いや、まだ全て残ってるよ」

    アルミン「確か黒金竹の劣化は酸化によるものなんですよね?」

    ハンジ「その通りだね」

    アルミン「それを還元することはできないんですか?」

    ハンジ「黒金竹の酸化速度や特性に対応できるような強力な還元剤は見つかってないんだ」


    アルミン「そうですか・・・」

    ハンジ「・・・正直、もう黒金竹は使えない状況になったわけだ」
    ーーー

    ーー



    1週間後

    ハンジ「そうだ!どうして思いつかなかったんだ!!」

    エレン「い、いきなりどうしたんですか」

    その日の鍛錬を終えてくつろいでいる時、ガタンと大きい音を立ててハンジさんは立ち上がった。

    驚いたジャンも隣でゲホゲホと噎せている。

    ハンジ「リヴァイ!エレンをちょっと借りるよ!」

    リヴァイ「あ?理由はなんだ」

    ハンジ「検証!巨人の硬化した皮膚のサンプル採取!」

    そう、エレンは自身の硬化によって壁の穴を塞ぐことに成功している。

    そのことに思い当たり、提案したということだ。

    リヴァイ「今日はもう遅いだろうが」

    ハンジ「ダメだ!今じゃないと!!」

    ミカサ「ハンジさん、エレンは鍛錬で疲労して・・・」

    エレン「いや、大丈夫ですよ」

    リヴァイ「・・・」

    ミカサの言うことに未だに少しばかりの反抗を見せてしまうのだが、コレばかりは仕方ない。

    アルミンもやれやれと少し呆れた表情を見せた・・・気がした。

    リヴァイ「・・・巨人化は1度だけだ それで失敗しても今日はそれで終われ」

    ハンジ「やったぁぁぁあ!!」
  19. 19 : : 2016/03/31(木) 22:28:29
    場所は変わって、屋外。

    水の枯れた井戸の中だ。

    エレン「(ずいぶん前の巨人化の実験もこんな所だったっけな・・・)」

    井戸の周りは火を焚いて明るいが、中に入ってしまえば関係無い。

    エレン「(あの時はまだ・・・)」

    そこまで考えてやめた。

    もう誰も帰ってくることはないのだから。

    ハンジ「エレーン!この井戸を塞ぐことを目的にしてみて!」

    エレン「了解です!」

    自分の手を見る。

    今までに何度も噛みちぎってきたが、その跡は何も残ってはいない。

    傷一つ残らず元どおり。

    エレン「(ホントに俺は・・・人間なのかな)」

    一瞬浮かんだ疑問を振り払い、いつものようにその右手に噛み付いた。

    ーーー

    ーー



    ハンジ「くぅぅぅうう!!巨人化の瞬間は毎回興奮するよ!!」

    エレン「はぁ・・・はぁ・・・」

    ハンジ「あ、ご、ゴメンねエレン!大丈夫かい?」

    エレン「えぇ・・・一応」

    ハンジ「疲れてるところ本当ありがとう!帰り道は分かるよね?」

    エレン「はい、ありがとうございました」

    ハンジ「こちらこそ!それじゃ、また明日!」

    その場で別れて、ふと振り返れば嬉々としてつい先ほどまで入っていた身体に近づくハンジさんが見えた。

    鼻歌でも歌いそうな勢いである。

    苦笑してから宿舎へとまた戻った。


    ーーー

    ーー



    ジャン「・・・なあ、エレン」

    エレン「あ?俺疲れてんだけど」

    ジャン「あぁ・・・悪い」

    エレン「・・・なんだよ、謝るなんてらしくねえぞ」

    ジャン「相変わらずムカつく野郎だなお前は」

    エレン「早めに済ませろってことだよ
    で、なんだよ?」

    ジャン「・・・お前、ライナーとベルトルトに会ったとしたらどうすんだ?」

    エレン「超大型巨人と鎧の巨人、だろ すぐにでも殺してやりてえよ」

    ジャン「お前にとっちゃ仇そのものなのは聞いたけどよ、実際そうするわけにはいかねえだろ」

    エレン「・・・まあ、目的とか気になることはある 、けど殺意しかねえよ」

    ジャン「じゃあアニは?」

    エレン「・・・」

    ジャン「お前、アニだけは女型とか、巨人だとかハッキリと言ったことねえよな」

    エレン「・・・関係ねえよ」

    ジャン「本当はお前だって、まだ信じたくないって思ってるだろ」

    エレン「・・・」

    ジャン「俺はアニとは関わりはほとんどなかったけど、同じ釜の飯を食って、同じ場所で訓練を積んでたんだ」

    エレン「・・・そうだな」

    ジャン「本当に・・・殺すしかねえのかな」

    エレン「迷ってたら死ぬぞ」

    ジャン「やっぱりムカつく位・・・強い奴だよな、お前」

    エレン「まだ奴らを信じられるお前ほどじゃねえよ」

    アルミン「・・・」

    コニー「・・・」
  20. 20 : : 2017/03/08(水) 21:28:17
    ーーー

    ーー



    リヴァイ「クソッ…」

    自分とて、退くのは不本意だった。

    もともと女型を本気で取り戻すつもりだった。

    しかし、一つの小規模の巨人の軍勢を送り、我々が消耗したところを叩こうとする。

    まるで人間の兵法だ。

    リヴァイ「(相手が人間だとは分かっていたが…ここまで戦術に長けてやがるとは…)」

    今一度、女型の奪還に向けた作戦を立てようとするも、やはり早々に問題にぶつかる。

    リヴァイ「クソが…まるで物資が足りねぇ…」

    そこでドアが突然開いた。

    ハンジ「リヴァイ!」

    リヴァイ「テメエ…ノックぐらいしたらどうだ」

    ハンジ「ごめん!いや、そんなこと言ってる場合じゃないんだ!」

    リヴァイ「なんだ、検証とやらの結果でも出たか?」

    ハンジ「そうなんだよ!いいからこっちに来て!」

    そう言って腕を引っ張る。

    本当にこいつは女なのかと疑う力だ。

    ーーー

    ーー



    目の前に広がる15メートル級の巨人の抜け殻。

    硬質化したそれの硬度は鎧の巨人のものと同等と見ていいだろう。

    ハンジ「はいこちらに注目」

    リヴァイ「見てんだろうが」

    ハンジ「ココにあるのが技巧班の作った例の榴弾です」

    リヴァイ「見りゃわかる」

    ハンジ「見ててね」

    そう言って巨人の抜け殻によじ登るとうなじの部分に榴弾を固定。

    飛び降りて来たと思うと、持ち出していた散弾銃でそれを撃ち抜いた。

    轟音とともに爆炎が上がる。しかし目視できる傷は無い。

    リヴァイ「まさか、効果がありませんでしたってだけじゃねえだろうな」

    ギロリと睨むが、ハンジは全く怯むことなく興奮気味に続けた。

    ハンジ「まだまだ、これからだよ!」

    そうすると今度は巨人の前方へ引っ張られ、今度はランチャーで口内に榴弾を発射した。

    再び周囲に響く爆音。蔓延する黒煙。

    そして、破片が飛び散ってきた。

    リヴァイ「鎧が…」

    ハンジ「そう、対外的な効果は極めて高いけど、内部からの衝撃には弱いんだ」

    これはすごい発見だよ!と再びエキサイトして、騒ぎ立てる。

    リヴァイ「しかしどうやって撃ち込むってんだ」

    巨人は普段は口を開けていない。白刃では隙をついた奇襲も出来るが、こちらはそれが不可能だということになる。

    リヴァイ「普通の巨人なら外部からの砲撃で殺しきれるのか?」

    ハンジ「んー…検証しないとわからないけど…
    多分効くとは思う」

    リヴァイ「…次回に検証だな」

    ハンジ「ひゃっほおおおおおおい!!」
  21. 21 : : 2017/03/08(水) 21:47:02
    ーーー

    ーー



    エレン「おはようございます…」

    リヴァイ「起きたか」

    エレン「他の奴らは?」

    リヴァイ「各々惰眠をむさぼるなり、鍛錬するなりしてる」

    エレン「そうですか…あれ、ハンジさんは?」

    リヴァイ「技巧班に榴弾の追加発注だそうだ」

    エレン「榴弾?使い道が見つかったんですか?」

    リヴァイ「ああ…不確定要素が多いから実用的では無いがな」

    次に外に出ることができれば検証だ、と説明する。

    ついでに詳細も話してやると、アルミンも入ってきた。

    アルミン「しかしそれだとやはり確実性が足りませんよね…」

    エレン「口を開けさせた上で撃ち込むんだからな…対人立体機動装置みたいに一体化出来んのか?」

    アルミン「予備の弾を身体に括り付けるのも危ないし…」

    リヴァイ「考えれば考えるほど非現実的だな」

    エレン「奴らが口を開けるとしたら人間を食う時くらいのもんだろうし…」

    そこでリヴァイの言葉が止まった。そしてアルミンの動きも止まる。

    エレンはただ戸惑うだけだ。

    エレン「え?2人ともどうし…」

    リヴァイ「ハンジがこの計画を説明すると思うか!?」

    いつになく焦った声色だ。ただならぬ気配がダダ漏れである。

    エレン「榴弾の増産要求ですから、きっとその根拠として説明するかと…」

    リヴァイ「チッ!」

    そう言って外へ駆け出していってしまう。

    エレン「お、おい、アルミン、一体」

    アルミン「エレンの言った通りさ 奴らが口を開けるのは人間を食べる時だ」

    焦りを見せながらも落ち着こうとしているのがわかる。

    言葉にしようとしてくれているため、とにかく続きを待った。

    アルミン「となれば、その確実な方法は、榴弾を括り付けて人間ごと巨人の口内に入れること…」

    エレン「まさか…」

    アルミン「コレなら教育次第で徹底できるし、なにより的確な位置に榴弾を固定できる」

    エレン「そ、そんなこと言っても技巧班はこっち側なんだろ?その情報を広めるとは…」

    ここでエレンも察した。

    リヴァイの言っていた"王政の諜報部隊"の可能性。

    班内にいる可能性を見出していたが、そこじゃなかった。

    エレン「内通者…」

    アルミン「もし内通者が技巧班にいたら!」

    巨人を減らしつつ、増えた人類の数も減らすことができる。

    その標的となるのは恐らく…

    エレン「105期以降の訓練兵たちが…」
  22. 22 : : 2017/03/28(火) 19:38:49
    その日は急遽、全員非番とならざるを得なかった。

    なにせ分隊長も兵士長もいないのだから無理はない。

    結局リヴァイ兵長と青ざめた顔をしたハンジ分隊長が帰ってきたのは夜に差し掛かった夕暮れ時であった。

    アルミン「ハンジさん・・・やっぱり」

    ハンジ「いや、榴弾のことはまだ話してないよ!!」

    エレン「じゃあ、なんでそんな・・・」

    リヴァイ「こいつが話す前に中央憲兵の残党が行動に移してやがった」

    流れる沈黙。

    クーデターにより王政府内の権力は調査兵団及び駐屯兵団が大まかには掌握する形になっているはずだ。

    しかし、話を聞く限りそれだけの力がまだ中央憲兵が保持しているとのこと。

    リヴァイ「大方、弱みを握られたか買収されたかのどちらかだろうな」

    ハンジ「くそっ!!」

    ミカサ「何とか止めなくては・・・」

    リヴァイ「遣いを送ったが、もうどうにもならないだろうな」

    アルミン「どうしてそう・・・」

    リヴァイ「来期の訓練兵の兵法本が流れてきたからだ」

  23. 23 : : 2017/03/28(火) 20:01:41
    アルミン「その中に例の作戦が・・?」

    サシャ「例の作戦・・・?」

    リヴァイ「ああ、大っぴらには書いてねえがな」

    持って帰っていたその本を見てみると、榴弾の固定法や咥内にぶち込む戦法などが書いてあり、その次のページには兵士の心構えがつらつらと書かれていた。

    ジャン「でもそれっておかしくないですか・・?」

    サシャ「?何がですか?」

    コニー「??」

    ジャン「兵法本なんて新兵器が実用化でもされない限り大きく変える必要はないだろ?」

    ミカサ「確かに・・・それにこんなにも速やかに榴弾のことを載せられるとは・・・」

    リヴァイ「いくら議会が形骸化してるとはいえ、この情報の多さは妙だ」

    ハンジ「志願者分発刊されてるみたいだし、割と前にこの戦術が発案されたことになるね・・」

    コニー「なあ、この話が理解できないのは俺がバカだからか?」

    突然例のごとく頭の悪さを自供するコニー。

    もはや定型文である。

    ジャン「ああ、そうだよ」

    コニー「そ、そうか・・・みんな読めんのかよこの本・・」

    そういって兵法本を投げ出すコニー。

    本に当たっちゃだめだよと窘めつつアルミンがそれを拾い上げた。

    アルミン「いくら君でも・・・」

    そこで発言が止まる。

    エレン「どうしたんだアルミン」

    アルミン「いや・・・なんか・・・」

    リヴァイ「どうした」

    アルミン「誤字脱字が確かに多いな…と思いまして」

    しっかりと読み込むと、確かに誤字が多い。

    相当慌てて印刷をしたのだろうか。

    流し読みでは全く気づけなかったが、コニーのゆっくり読みが気づかせる結果となった。

    ハンジ「相当な突貫工事だったんだね・・・」

    ミカサ「となるとなおさらおかしい・・・」

    リヴァイ「中央憲兵の奴らはいつこれを・・・」

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monhanhityan

エレアニジャスティス

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