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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

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希望の花は枯れゆく

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  1. 1 : : 2015/08/10(月) 00:05:08
    この度、Deさん主催『夏のコトダ祭り』に参加させていただくことになりました。


    ジャンル:ホラー

    テーマ:家族

    主要キャラ:苗木、江ノ島、霧切




    ※キャラ崩壊注意
  2. 2 : : 2015/08/10(月) 00:13:42

    カチッ








    キーボードを人差し指で押す。


















    『大好きだよ、響子さん』













    カチッ











    また同じキーを押す。

















    『大好きだよ、響子さん』














    カチッ
















    『大好きだよ、響子さん』




















    カチッ




    カチッ






    カチッ








    カチッ






    カチッ








    カチッ









    カチッ









































    『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』『大好きだよ、響子さん』






























    「私も大好きよ………誠君」














    写真で埋め尽くされた壁と床。








    座り込んだ少女は画面を見つめていた。
  3. 3 : : 2015/08/10(月) 00:48:04

    ひどいほどに快晴で、夏の陽射しが肌に焼き付く。

    8月に入り、そんな日々が続いていた。












    微笑ましいなぁ。










    朝日奈葵はいつもそう感じていた。



















    霧切「……ちょっと、何よこれ」


    苗木「え、いや、その……た、卵焼き」


    霧切「……ただの『黄色い何か』じゃない」


    苗木「ご、ごめん」













    目の前の2人は、まるで夫婦。




    少々鈍臭い苗木誠は、いつも霧切響子に叱られている。





    なにかと忙しい霧切の助手のようにぴったりくっついて荷物を運んだり書類を書く苗木。







    苗木がミスをすると母親のように霧切が叱る。


    霧切がミスをした日には、調子に乗っていじりすぎた苗木が霧切の拳を喰らってまた元の2人の立ち位置に戻る。





    先輩と後輩、もしくは姉と弟のようにも見えるが、彼らに一番ぴったりな言葉はやはり『夫婦』だった。







    大神「ふっ……今日も微笑ましいことだ」


    朝日奈「えへへ、見てるこっちまで嬉しくなっちゃうよね」





    そんな2人の日々を見ているのが楽しかった。

    なんだかそれだけで、2人の未来を応援してるかのようで。











































    それから何人が死んだんだっけ?
  4. 4 : : 2015/08/10(月) 01:07:02

    『初めまして』ではなかったのかもしれない。



    いや、まぁ名前も知らなかったのだけど、口をついて出てしまったのだ。













    苗木「……響子さん」













    目の前にいる綺麗な顔立ちの少女。


    紫のかかった銀髪は、それだけでもかなり目立ってしまうだろう。




    苗木誠は、彼女の名前を知らない。

    彼女の生い立ちも何もかも知らない。




    だが、『初めまして』ではないような気がして咄嗟にその記憶にある名前を呼んでしまったのだ。



















    霧切「あなた、どうして私の名前を……」


    苗木「え、あ……きょ、響子さんって名前なんだね」


    苗木「えー、その、知り合いに似ててさ、まさか名前も同じだったなんて、あはは」






    そんな知り合いなんていないが、適当に誤魔化す。









    いや、









    本当にいないのか?










    前の学校じゃない。



    幼少期でもない。





    どこかで僕は『その名前』を呼んだ気がする。

































    懐かしい響きだった。



    自分の名前なんて生きてる中で何度も呼ばれるが、その響きだけはどこか特別だった。










    『響子さん』。









    初めて聞くのに、名前も教えていないのに、聞いた瞬間心が動いた。



    それに、この少年の不安そうな顔。



    なんだか、とても叱ってやりたいような感じがした。









































    それから、私たちが自己紹介を交わした人間は半数以上が死んでしまった。
  5. 5 : : 2015/08/10(月) 17:28:44

    ある者は信頼を裏切り、


    ある者は信頼に裏切られ、


    ある者は虚無に押し潰され、


    ある者は強さを求め、


    ある者は弱さを悔い、


    ある者は永遠に迷ったまま、


    ある者は心を闇に染め、


    ある者は自分のために、


    ある者は使命を背負って。






    それぞれが命を散らした。










    そんな中、六人は生きている。






    『乗り越えない』


    『引き摺って生きていく』





    茨の道を選んだ少年は、霧切の心を大きく揺さぶった。









    同時に、霧切も少年の心を揺さぶっていた。











    苗木は次第に霧切に惹かれていく。










    それが『二回目』とは知らずに、ただ懐かしい感覚だけを持って。












    他の者はどう思っていただろう?



    いや、別に何も思っていないか。











    『それ』を知るのはたった2人。








    なんとも今更で、なんとも場違いなその言葉ひとつ。


























    苗木「僕と…………家族になってください」
























    本当にわけがわからないほど唐突で、場違い。










    『家族』って、何だっけ?




    先代に従い、血を継ぐ者?


    それが理解できずに家を飛び出した者?



    ……それを理解せず軽蔑した私も?









    ─────この手袋の下を見せるのは、将来家族になる者くらいよ。




    ─────立候補する?








    こんなこと、言った覚えはない。


    だが、そのやりとりが頭の中で細かく再生される。










    あの時は、冗談で言ったような気がする。


    いや、そもそもそんなこと言った覚えはないとさっきから……。








    苗木「…………霧切さん?」










    私は迷った。


    なんと言えば良いかわからなかった。



    そして私は『記憶通り』に口を開く。







    霧切「……立候補、するの?」













    苗木「うん」








    苗木「僕を……信じて」















    2人はぎゅっと手を繋いだ。

















































    お前がオマエあの時おま邪魔をお前がジャしなマけれヲばオマ、2人は邪魔をずっとお前が、


    あの時邪魔おまえじゃま2人しなけ邪魔をればずっとジャマおまアノトキ永遠に、


    お前永遠にさえ存在邪魔しなソンザイ永遠しなければ邪魔ずっと二人で、
  6. 6 : : 2015/08/15(土) 20:25:34

    霧切は希望に満ち溢れていた。


    大切な人がいる。守りたいと思える存在がある。


    彼は霧切の心をそれほどにまで動かしたのだ。









    『何を犠牲にしても守りたい』









    霧切はそれを深く決意した。





    もう、大切な人を失いたくない─────。






















    ────人の願いとは、儚いものだ。



    簡単には叶わぬ、それどころか願えば願うほど人を絶望の底へと堕とすのだ。



























    外の世界は地獄だった。





    血で血を洗う民衆の姿がそこにあった。


    十神財閥も、朝日奈の家族も、霧切と苗木の築く将来も、もう何も無い。


    6人は現実を突きつけられたのだ。










    江ノ島「さあ……外に出たいのか?この絶望の世界に」













    皆が絶望している。

    目指すものも無い、進むべき道も見えない…………









    苗木「諦めちゃダメだ!!」




    それでも彼は諦めなかった。
    希望を持って絶望へ立ち向かった。






















    その希望さえ、無力のまま崩れ去る。

















































    ─────苗木を犠牲にするなら、すべての絶望を終わらせてやる。



    彼女はそう言った。
  7. 7 : : 2015/08/16(日) 16:01:45

    すべての絶望を終わらせる。



    すべての悲しみが終わる?

    元通りの日常に戻れる?






    その代償に、苗木誠が犠牲になる。






    葉隠「な、苗木っち………」
































    葉隠「頼む苗木っち!犠牲になってくれ!!!」



    霧切「……っ!?」




    十神「苗木…俺たちの為だけではない……………世界の為だ」


    腐川「アンタの命で……世界が助かるのよ、苗木」


    朝日奈「え、ちょ、皆……?」











    苗木「僕は……」


    霧切「ダメよ!苗木君!!」




    霧切「約束……したじゃない!!」





    霧切「『家族に』って……『信じて』って……」



    苗木「霧切……さん………」


























    僕は……………










    僕は……………犠牲に……………







































    ▷[ならない]
     [なる]







































    ▷[ならない]
     [なる]






































    ▷[ならない]
     [なる]






















    『誰か一人の命を引き換えに、世界を救える』として、




    僕は絶対に名乗り出ない。






    誰かが立候補するのを、テレビの前で待っているような男だ。






    大切な人たちとの別れが惜しいからではない。






    ………単純に、自分の命が惜しいだけ。































    ▷[ならない]
     [なる]




































    けど、気付いた。



    守りたい大切な人ができて気付けた。



    家族になって、子供ができて、みんなを養ってなんて考えもしなかった自分。





    その立場になって、ようやく気付けた。


























    ▷[ならない]
     [なる]

































    『命をかけてでも大切な人を守りたい』





































     [ならない]
    ▷[なる]



























    苗木「僕が犠牲になろう。みんなと世界と……」








    苗木「大切な人のために」
  8. 8 : : 2015/08/16(日) 16:30:42

    霧切「苗木君!!!ダメよ!!!」



    苗木「霧切さん……そんな顔しないで」



    江ノ島「………」








    苗木「僕は………霧切さんに伝えたいこと……恥ずかしかったけど伝えられたから」



    霧切「だったら何よ!?」



    苗木「幸せだった」














    苗木「返事をくれるなんて……思ってなかったんだよ。だから……とても嬉しかった」




    苗木「本当に幸せで……んん、何て言ったらいいのかな、幸せだったとしか言えないや」




    苗木「僕の………本当の気持ちだったからさ…………恋人や彼女じゃない。『家族』になりたいって」









    朝日奈「な、苗木……それって」









    苗木「みんなもさ……こんな僕について来てくれて、本当に感謝してる」



    苗木「希望は……決して失くならないからさ」





    なんだろう。

    また何か、懐かしい言葉を口にした気がする。













    ─────希望は前に進むんだ!!











    きっとこの懐かしさは、幻なんかじゃない。


    僕が……誰かに向けて確かに放った言葉なのだろう。











    江ノ島「……フ、フン。遺言はそれだけかい」


    苗木「お前と話してる時間なんてない……………さっさとやれ」


    江ノ島「……っ」








    霧切「苗木君!!嫌っ!嫌よ!!!」







    ああ、泣かないでよ。


    僕は……君を残していなくなること以外は、思い残すことはないんだ。

















































    苗木「大好きだよ、響子さん」








































    その日、苗木誠は死んだ。




    『絶望』を失った江ノ島盾子とともにプレス機で潰され、屍を残すことさえできなかった。





    絶望していた民衆達は皆元通りになり、しかも『絶望していた』その記憶さえ失っている。







    『絶望』は誰の記憶にも残っていない。
    まるで何もなかったかのように、残骸だらけの街の明かりは綺麗だった。





    復興はどんどん進められ、街は人々が生活できる状態になろうとしている。

























    しかし、5人の絶望はまだ終わってはいなかった。












    誰も外には出なかった。

    自由に外に出られるこの状況の中、葉隠でさえも出なかったのだ。




    元に戻っていく世界とは裏腹に、苗木誠を失った絶望は5人を苦しめた。

  9. 9 : : 2015/08/16(日) 23:33:05

    特に霧切の心は深い傷を負った。


    彼女は部屋から出てこない。






    朝日奈「……………」



    両手で持っていたトレイを片手に移し、なるべく誰にも聞こえないよう静かに溜め息をついてドアをノックする。




    朝日奈「霧切ちゃん?開けるよ?」





    ドアを開くと、灯りのつく廊下とは異なり鉄板の無い窓だけが明かりを作る薄暗い部屋に一瞬目が効かなくなる。






    朝日奈「…………………」







    壁一面に貼られた苗木誠の写真。



    不二咲千尋が遺したノートパソコンの明かりが、霧切の生気のない顔を照らす。






    朝日奈「……霧切ちゃん、ご飯置いとくね」



    霧切「ええ……私もよ………誠君」






    ヘッドホンを付けた霧切は最早朝日奈の声など聞こえていない。







    朝日奈「………………」








    5日目。
    これで5日目だ。


    十神も葉隠も夢に苗木が現れて眠れないと言う始末。



    朝日奈は思い切って行動に出た。
    かなり危険な行為だが。








    朝日奈「霧切ちゃん、話を聞い……」
    霧切「何するのよ!!!!」




    なんと彼女は、霧切がつけているヘッドホンを取り上げたのだ。



    さっきまでの生気の無い顔とは全く別人の霧切がそこにいた。

    目を見開き、ヒステリックな声でヘッドホンを持つ朝日奈の手を力強く握る。







    霧切「返して!!!私の……私の『家族』を!!!」






    再びヘッドホンをその手に取り戻すと、朝日奈など気にも留めずまた縋り付くようにディスプレイを見つめる。




    そしてまた不気味にも近い薄ら笑いを浮かべながら画面に語りかけるのだ。













    朝日奈「………………」
















    『家族』って、何だっけ?






    血が繋がってること?

    結婚してること?また、その子供?

    お互いを認め合うこと?






    家族ってもっと、平和で笑い合って、幸せであるものなんじゃないの?

    薄暗い部屋でご飯を食べるのは幸せなの?ずっと失った人を追い続けるのが幸せ?










    霧切ちゃん………目の前のプログラムの繰り返しを、あなたは家族と言うの?


















    夕食を運ぶため、朝日奈は午後6時にまた霧切の部屋を訪れた。





    朝日奈「…………」






    昼食にはまったく手がつけられていない。

    ずっとあの位置から動いていないのだろう。





    それでも肌は白く綺麗で、髪は普段のように艶があってサラサラしている。

    いつもと変わらぬ端麗な容姿だった。
    それだけに朝日奈は哀しかった。






    ─────人は生きていても死ぬ、と誰かは言った。






    朝日奈はそれを詳しく知らない。

    けれど……今の霧切を見ていると、その言葉通りに思える。



    朝日奈にとって霧切は、死んでいるように見えるのだ。

    現実から一切目を背けて失ったものを取り戻そうとするその姿は、まるで生命と存在を取り戻そうと人間の前に姿を現わす幽霊(ゴースト)だ。





    朝日奈「………哀しい」




    手付かずの昼食を持ってそそくさと部屋を出た。
  10. 10 : : 2015/08/17(月) 07:11:13

    その日の夜、朝日奈は悪夢にうなされて起きた。
    彼女もまた、失ったものに惑わされていたのだ。




    落ち着きを取り戻そうと食堂に足を運ぶ。









    朝日奈「…………?」








    朝日奈「霧切………ちゃん?」



    腐川「た、助けて!!!」




    食堂の真ん中に立つ霧切と、彼女に睨まれて隅で震える腐川。





    霧切の傍らに倒れる血を帯びた2つの死体は………。








    朝日奈「き、霧切ちゃん…?お、落ち着いて……」



    霧切「何故?」










    霧切「……何故、私の家族を見殺しにした人間がのうのうと生きてるのよ?」









    唖然である。
    あまりの衝撃に朝日奈は硬直してしまった。











    霧切「私の大切な家族が死んだ………いや、殺された」


    霧切「なのに………何故『彼』を殺したあなたたちが生きているのよ?」



    霧切「そんなのは……理屈に合わないわ」






    血塗れの包丁を腐川にギラつかせる。





    霧切「見殺しにしたあなたたちが同じ目に遭ってこそ平等………辻褄が合うと思わない?」




    腐川「ひっ……こ、来ないで!!」




    霧切「あなたにとって、苗木君はただの駒だった」


    霧切「けれど……私にとっては………」




    霧切「私にとってはかけがえのない家族だったのよ!!!!」






    包丁が腐川の肩に入った。






    腐川「いやああああ!!!」





    霧切「私にとっては……………とても大切な人。守りたい存在……………それを………それをあなた達は踏みにじったのよ……………私の希望を……!!!」







    腐川「痛い……や、やめてよ……アンタ……何でゔっ」








    霧切は思いっきり腐川の腹部に包丁を突き刺した。









    霧切「あの人はもう……戻ってこないのよ。戻ってこれなくなってしまったのよ」



    霧切「あなたの………あなた達のせいで………!!!!」






    包丁を抜くと腐川は力無く倒れた。









    霧切「これで……辻褄が合うわ。私の家族を殺した人間は死んだ………これでいい」


























































    朝日奈は外へ出た。



    何も持たずに、ただ霧切から逃げるように朝焼けの街を走った。



    彼女は生存していた家族と再会し、また元通りの生活をしているらしい。



    自分の見たすべてを……無かったことにして。














































    カチッ

















    霧切「これで……もう誰もいない」








    カチッ









    霧切「私たち2人……永遠にここで過ごしましょう」








    『大好きだよ、響子さん』










    霧切「私たちは………『家族』だから」










    『大好きだよ、響子さん』






































    霧切「そうでしょう?………誠君」












    『大好きだよ、響子さん』




































    希望の花は咲き誇るはずだった。


    愛情を注ぎすぎ枯らす、守りすぎて陽射しを閉す。



    …………バランスが崩れだしたとき、花はすべてが駄目になってしまうのだ。



    END
  11. 11 : : 2015/08/17(月) 13:00:22

    終わりです。
    難しいジャンルとテーマの中で書くのはキツかったですが、いい経験だったと思います。

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aimerpiyo

あげぴよ

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