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八幡「おはよう小町」小町「……えっ?」

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  1. 1 : : 2015/08/01(土) 15:30:16
    大分日が経ってしまいましたが、今回で三作目になります。
    過去作との話の繋がりは全くありません。

    原作10巻を過ぎた辺りから特に進展もなく2年生を終え、春休みに突入した辺りからの茶番です。
    なんかごちゃごちゃしたものが書きたかった。反省はしていますん。

    ※一人?くらいオリキャラが登場します。重要でもないですが、苦手な方はご注意ください。
  2. 2 : : 2015/08/01(土) 15:37:56
    ほどよく濁った目をこすると春の日差しが突き刺さる。溶けそう。
    俺こと比企谷八幡はうららかな春とは無縁の男である。裏らかではあるかもしれない。

    ともあれ、休日の朝と平日の朝のテンションの違いというのは差が大きい。
    寝坊したと思って焦って起きたら休日だった時の安心感といったらないが、やっぱり平日だったりすると本当にサボりたくなる……。

    五月病なんて甘い、俺なんか通年病、不治の病だ……中二病は卒業したよ?

    幸いなことに、今回は慌てて起きたら休日だったパターンなのでのそのそと起き支度をする。
    冷静に考えたら春休みなんだから毎日がホリデーだったという事実。
    このままずっと春休みでいいのにな。
  3. 3 : : 2015/08/01(土) 15:40:12
    しかし……なんか体が重い。
    いつもより早く起きてしまったから体が、働きたくないでござる!とか力いっぱい宣言してるのだろう。
    とりあえず顔洗って買い置きのMAXコーヒーを飲んで優雅な休日を過ごそうじゃないか……。



    廊下で寝ぼけ眼の我が妹、小町とエンカウントした。

    八幡「おはよう、小町」

    小町「おは……え?」

    なんだ、まだ寝ぼけてるのか?そんなに見つめるなよ、照れるだろうが。

    八幡「洗面所、使うぞ」

    ん?なんか喉の調子がおかしい気がする……。

    小町「あ……え?」

    ダメだ、まだ妹システムは起動完了してないらしい。どうせ休みだし二度寝でもなんでもすればいいさ。

    とりあえず催してきたので先にお花を摘みにお手洗いへ。



    男のスタンディングスタイルで用を足そうとしたが、何かがおかしい。

    ……足元が見えない。うそ、私太った?
  4. 4 : : 2015/08/01(土) 15:42:18
    と、いうよりも……。



    八幡「……ない」



    本来あるべき場所からこんにちはしている筈の「俺」が見当たらない。
    一旦お花摘みを中断して洗面所に向かう。



    鏡を覗き込む。

    八幡「……誰?」

    これが……私?……じゃないから!どういうこと!?
    普段は覇気がないながらもそれなりに整った顔立ちをしている八幡フェイスはそこにはなかった。
    なんというか形容しがたいが、まぁ美人なんでない?可愛くなくもないし、まぁ、かっこいいというか。
    あれだ、小町と雪の下と川……川なんとかさんを足して10で割った感じ。劣化してるのかよ……。
    辛うじて目だけは腐ってないまでもほんのり濁っている気がする。やっぱり俺なのか?
    髪も肩にかかる程度に伸びている。



    ……なんだ、夢か。
  5. 5 : : 2015/08/01(土) 15:44:10
    どうせ夢なら色々試してみるか……。

    まず、顔以外だ。さっき、足元が見えなかった件は太ったわけでなく出るとこ出ちゃったからか……。
    男でいうチェストの部分が膨らんでいる。触ってみると柔らかい。

    八幡「……夢にしては感覚が生々しいな……」
    さっきも確認したが、もう一人の「俺」はいなかった。



    さて……経験上、死ぬような思いをしたり、改めて眠ったりすると夢は覚めるものだが……。
    MAXコーヒーを啜りながら対して深刻に考えずに物思いに耽る……。

    小町「……」

    リビングのドアからちょこんと顔を出している小動物的少女。
    比企谷小町は様子をみている。どこぞの家政婦かお前は。

    八幡「どうした?こっちに座れよ」
    反応を見る限り、小町目線では俺はお姉ちゃんになっているという設定ではないらしい。

    小町「……」

    八幡「安心してくれ、怪しいものじゃない」

    小町「……まさかとは思いますけど……」

    お、やはり妹、姿は違えど感じるものがあったか?

    小町「お、お兄ちゃんの彼女さんですか!?」

    ああ、そうきたか。

    八幡「……」

    小町「い、いえ、その、えーっと」

    八幡「……小町、よーく落ち着いて聞いて欲しい」

    小町「は、はい」

    八幡「お兄ちゃん、お姉ちゃんになっちゃった♪」(。・ ω<)ゞてへぺろ

    小町「( ゚д゚)ポカーン」

    八幡「うん、どうすれば信じてもらえるかな、妹よ」

    小町「いや、そんなこと言われましても……」

    うーん……よくある兄妹しか知らない話とかあったかな?

    八幡「とりあえず総武高校合格おめでとう」

    小町「あ、はい、ありがとうございます」

    八幡「生徒会長はちょっとアレだけど、悪い奴じゃないからまぁ楽しくなると思うぞ」

    小町「はぁ、そうですか」

    八幡「あと、暇だったら奉仕部にでも入ってくれるといい感じに俺がフェードアウトできて助かる」

    小町「……」

    八幡「あと、大志だか粗大ゴミだかとは金輪際会話をしなくてよろしい」

    小町「……あれ?もしかして本当に?」

    八幡「あと、テニス部の戸塚はかわいい。とつ可愛い」

    小町「お兄ちゃん!?」

    ようやく信じてくれた。戸塚まじ天使。救いはあった。
  6. 6 : : 2015/08/01(土) 15:47:45
    小町「うーん、濁り具合は減ってるけど、たしかにお兄ちゃんの目だ……」

    八幡「ようやく信じてくれてお兄ちゃん嬉しいよ」

    確認方法がアレだが、面影もほとんどないし、やむを得ない。

    しかし、夢にしてはなんというか現実感がすごいな……明晰夢ってやつなのか?

    まじまじとこちらを見ていた小町の手が俺にのびる。

    八幡「……おい、ナチュラルに胸揉むのやめろ」

    小町「うむうむ、これは本物ですな」

    どこの鑑定士だお前は……。

    自分で触るより何かむず痒い。変な感じ。

    八幡「俺、姉に生まれなくて良かったかもしれない」

    小町「うーん、姉には姉の良さがある……と思うよ」

    しかし……

    八幡「覚めないなぁ、夢……」

    小町「うーん、こんなに臨場感のある夢は小町見たことないなぁ」

    手をワキワキしながら言うな、お姉ちゃん悲しいぞ。
    というわけで、小町のほっぺたを引っ張ってむにむにしてみる。

    小町「お、おにいひゃん、いひゃい、いひゃい」

    うむ、この小町には痛覚があるらしい。
    自分の頬もつねってみた。

    八幡「……普通に痛い」

    とりあえず、仮に現実だったとして、俺はどうすればいいのか……。

    八幡「なぁ小町、俺どうしよう?」

    小町「とりあえず、高校生になって俺っ娘は痛いと思うよ」

    八幡「ピンポイントな指摘ありがとうよ……」

    そういうところじゃなくて根本的な身の置き方とかをだな……。

    八幡「とりあえず、親父とお袋が帰ってきたら事情を話さないとな……」

    小町「そうだね。あと、八幡って名前も可愛くなくて小町的にはポイント低いかな」

    八幡「だからそこじゃねぇよ」

    小町「あとは……」

    八幡「ん……だから揉むのやめろ」

    小町「触った感じ、なかなかのものをお持ちのようなので、小町の服や下着はちょっと貸せないかなーって」

    八幡「あー、服とかも考えないといけないのか……」

    高いところから落ちるとかすると目が覚めたりするよね。もう考えるの面倒過ぎる……。

    小町「基本ものぐさなお兄ちゃんだと女性らしくってのは大変そうだなぁ……」

    八幡「全くだ……とりあえず、夜まで寝てていいか?」

    小町「いやー、良くないんじゃないかなぁ……」

    八幡「だってこの状態で出歩く訳にもいかんだろ。そもそもジャージだし、あと……」

    小町「?」

    八幡「なんか動くと胸が擦れて気持ち悪い……」

    小町「あー、とりあえず小町が適当に見繕ってきてあげるよ」

    八幡「……なんだその手は」

    小町「いや、だって小町そんなにお金持ってないし……」

    八幡「……俺もそんなに持ってないんですけど」

    なけなしの小遣いを小町に渡してとりあえず無難な衣服を調達してもらうことにした。

    採寸を理由に生まれたばかりの清らかな体を存分に弄ばれた。
    もうお婿……じゃない、お嫁に行けない。
  7. 7 : : 2015/08/01(土) 15:49:56
    さて……お願いしたのはいいものの、本格的にどうしたものか……。

    まず、学校には行けないよな、まぁ、もう教科書は手元にあるわけだから自学はできる。

    ん?まてよ……もしやこれは……専業主婦になるチャンスなのか!?
    いや、心は男のままだから、まず男とくっつくってのが有り得ん。うまくいかないもんだ……。

    ……違うぞ八幡!逆に考えるんだ!つまり戸塚と……いや、戸塚は戸塚だ、男でも女でも関係ないな……。



    ピンポーン

    ……誰だよこんな時に……。
    出来れば出たくないが、amazonからのお届け物だったら困る。

    八幡「はーい」
    思えばもう少し警戒するべきだった。なんの気なくいきなりドアを開けてしまった。


    由比ヶ浜「あ、こんにちは……えーと」

    バタン!

    由比ヶ浜「え、ちょ……」

    勢いよく戸を閉めて考えを巡らせる。
    まずいことになった……どうする俺……。

    いや、とりあえずこのまま放置するのが一番マズイ。扉を開けてコンタクトを試みる。

    八幡「ど、どーも……えーと」

    由比ヶ浜「あ、急にすみません、えーとヒッキ-……じゃなくて、は、八幡くんいますかっ!」

    八幡「あー、今ちょっと出かけてて……」

    由比ヶ浜「そうですか……その、迷惑でなければちょっと待たせてもらってもいいですか?」

    八幡「えーっと……」



    つい家に上げてしまった……。

    八幡「……どうぞ」

    とりあえずお茶を出してみたはいいが、マジでどうしよう、この状況……。

    由比ヶ浜「……」

    めっちゃ見られてるな……。

    由比ヶ浜「あ、あのっ!」

    八幡「ひゃい!」

    思わず可愛い声が出てしまった。

    由比ヶ浜「その、まだ名前聞いてなかったなーと思いまして……」

    八幡「あー、えーと……」

    トンヌラ、というのはどうだろうか?いや、えーと…。

    由比ヶ浜「……」

    八幡「ひ、比企谷……八子(やこ)です……」

    もっと捻れなかったのか俺!

    由比ヶ浜「八子さんかぁ……」

    とりあえず従姉妹ってことでどうにかごまかせるだろうか……。

    八子「俺……じゃなくて私は八幡とは従姉妹にあたる関係で……」

    くそ、とりあえず真似したことあるから雪ノ下をベースに柔らかくした感じで話せばいいか?

    八子「小町に用事があってお邪魔してたんだけど、小町ちょっと買い物に出ちゃって、留守番してて」

    由比ヶ浜「そ、そうなんだ……良かった、彼女とかじゃなかったんだ……」

    由比ヶ浜「八子さんは今何歳?」

    八子「あ、今年で18」

    由比ヶ浜「おー、同い年だ!普段はどこに通ってるの?」

    八子「えーと……」

    由比ヶ浜「趣味は?好きな食べ物何?」

    押しが強い。由比ヶ浜のリア充力を改めて実感した瞬間であった。
  8. 8 : : 2015/08/01(土) 15:53:02
    ようやく質問攻めから開放される。設定でっちあげるのも限界だ。マジしんどい。

    由比ヶ浜「いやー、あたし姉妹とかいないし、従姉妹とかも歳の近い子いないから、いいな~って」

    八子「そ、そう…」

    改めてリア充の行動力に驚かされるな、同性だと尚更なんだろう。

    ……傍から見てるとそこそこに微笑ましい光景ではあったが、雪ノ下もこんな感じだったんだろうな。

    まぁ、悪い気はしないかな?……ちょっとうっとおしいけど。

    由比ヶ浜「そうだ!今度一緒に遊びに行こうよ!」

    近い!顔近いから!

    八子「ま、まぁ機会があればね」

    俺は知っている、前向きの検討=善処する=機会があれば=無理、有り得ない、という方程式を。

    由比ヶ浜「あ、なんだったら小町ちゃんとか、あとヒッキー……じゃなくて八幡も一緒に///」

    取って付けたように呼んでくれなくてもいいぞ。
    というか名前で呼ばれるのがすごいむず痒いんですけど……。

    小町「ただいまー、お兄ちゃん、買ってきたよー、って結衣さん!?」

    由比ヶ浜「あ、小町ちゃんやっはろー……ん?お兄ちゃん?」

    八子「あー……」

    さすがに誤魔化し通せないか……。
  9. 9 : : 2015/08/01(土) 15:54:15
    八子「と、いう訳なんだ」

    由比ヶ浜「ん-……二人してあたしをからかってるってワケじゃないよね」

    八子「そうだな……俺は八幡じゃないからお前が去年の花火のとき、りんご飴ボロボロこぼしてたことも知らないぞ」

    由比ヶ浜「わー!信じる!信じるからやめてよぉ!」

    小町「いやー、小町もびっくりしましたけど、言動とか、さりげなく濁った瞳とか、やっぱりお兄ちゃんなんですよねぇ」

    由比ヶ浜「……ホントだ、いくらかマシになってるけど、これはヒッキーの目だ!」

    八子「濁ってて悪かったな、というかいきなり女になってそれを演じろってのは無茶だろ」

    小町「うーむ、素材は良くても中身がアレだと残念って感じでしょうか?」

    由比ヶ浜「たしかにキレイめでありながら可愛くもあり、いい感じ!」

    八子「褒められても嬉しくないんだけど……ていうか小町のは褒めてないな?」

    小町「いやいや~、それらしく着飾って猫被ればいい感じなんじゃないかな~って」

    八子「そういえば服とか買ってきてくれたんだっけ?とりあえず着てみるわ」

    小町から買ってきたものを受け取って自分の部屋へ行こうとしたが……。

    八子「なんで2人ともついてくんの?」

    小町「え?だって下着の付け方とか色々教えてあげないとかな~って」

    由比ヶ浜「興味があります!……じゃなくて、そう、お手伝い!」

    こいつら絶対面白がってるだろ……。

    八子「……着付けに困ったら呼ぶから、とりあえず小町の部屋にでもいてくれ」



    うーん……ブラジャーってけっこう着けづらいもんなんだな……。

    トランクスとかボクサータイプと違って下着もなんか変な感じだ。

    というか、ジーンズとかパンツをリクエストしたはずなんだが、これどうみてもスカートだよな……。

    ……なんだろうレギンスっていうのかこれは?取り敢えず一式着てみるしかないか。

    なんだろう、自分で着るってなると全然ドキドキしないなこれ。まぁ、小町の下着見ても大して気にならんしそんなもんか……。

    そして思いっきり視線を感じるんですよね。

    小町「……」

    由比ヶ浜「……」

    八子「……おい」

    小町「うんうん、小町の見立ては正しかった♪」

    由比ヶ浜「そうだね、いい感じかも!」

    八子「……なんか足がスースーする」

    ハーフパンツとかとは違った開放感というか、なんというか……。

    小町「結衣さん、どう思います?例えばメイクとか」

    由比ヶ浜「うーん、そのままでも全然いいと思うんだけど、ちょっと整えたらもっと良くなるかなぁ」

    八子「わかった、そのままでいい」

    元に戻らない限り引きこもるつもりだから、化粧とかいらんでしょ。

    小町「まぁまぁ、せっかくだし試してみようよ、お姉~ちゃん♪」

    くそ、中身は変わらないせいで妹の頼みを拒否することが出来ない……。
  10. 10 : : 2015/08/01(土) 15:56:02
    由比ヶ浜「そうそう……動かないでね~」

    勝手をしらない八子ちゃん、なすがままである。

    小町もそれなりのメイク道具くらいは持っているのでそこから由比ヶ浜がチョイスして化粧を施される。

    八子ちゃんメイクアップ!……女子って大変だな。

    由比ヶ浜「よーし!こんな感じでどうかな!?」

    小町「おー、これはなかなか……」

    八子「へー、面白いもんだな」

    劇的ビフォーアフターとまではいかないが、確かに様になっているというか、いい感じなんでない?
    自分で言うのもなんだがな。

    由比ヶ浜「うん、これなら男子も黙ってないね!」

    八子「やっぱ化粧はやめておいたほうがいいな」

    まかり間違って面食い男子が釣れてしまったら大変だ。まぁ、他人と会うことはそうなくなるとは思うが……。

    由比ヶ浜「あ、そ、そうだね、もったいないけど、ヒッキーが男子と……っていうのはちょっと……」

    うっ!なんか悪寒が……このケースだとBLではないだろ、ノーカンだ!



    由比ヶ浜「あ、そーだ、すっかり忘れてた!」

    八子「ん?」

    由比ヶ浜「いやー、ヒッキーに用事があってきたんだけど……これじゃあねぇ……」

    ああ、そういえばそうだったな、こんなびっくり仰天シチュエーションに遭遇したら、忘れてしまうのも無理はない。

    由比ヶ浜「ほら、小町ちゃんの合格祝い、この春休みにって話したじゃん?」

    由比ヶ浜が顔を寄せて囁く。近い。耳がくすぐったい。

    八子「ああ……そうだったな」

    小町「?」

    八子「悪いけど、とりあえず落ち着いたら考えよう」

    由比ヶ浜「ん、わかった」



    由比ヶ浜「じゃ、ヒッキー、小町ちゃん、またね~」

    小町「はいは~い、なんのお構いもできませんで」

    八子「おー、またな」



    そしてその夜……

    八子「と、いう訳なんだ」

    父「うーむ……」

    母「にわかには信じ難いわねぇ……」

    小町「小町も最初は疑ったけど、やっぱりお兄ちゃんなんだよ」

    父「まぁ、小町がそういうんだから信じるしかないな」

    母「そうねぇ」

    ……納得いかねぇ。
  11. 11 : : 2015/08/01(土) 15:56:53
    とりあえず小町のおかげ?で両親もこの不可思議現象を信じてくれたようだ。

    医者に行って詳しく調べたほうがいいと提案されたが、まずは様子を見たいという事で納得してもらった。
    こういう時はことなかれ主義の両親に感謝だな。



    翌朝、起きたら元通りになっているんじゃないかと思ったが、そんな事はなかった。
    さて、いよいよもってどうしたもんかなぁ……。

    そんなこんなでいろいろ考えを巡らせていると、スマホが振動した。目覚まし止め忘れたかな?

    八子「平塚先生からか……」

    どうしよう、事情を説明した方がいいような気もするが……

    八子「……まぁいいか」

    つーか先生諦め悪いなぁ、もう20コール分くらい振動してるんですけど……あ、やっと切れた。

    先生なら真面目に話せば信じてくれそうな気もするが、とりあえず体調不良で堂々と欠席できるなら、余計なことは言わなくてもいいよな。

    小町「おにいちゃーん、平塚先生から電話だよー」

    ほほーう、そうきましたか。

    八子「まてまて小町、こんな状態なんだから電話に出れるワケが……」

    小町「なんかお父さんから話は聞いてるから今後について話したいんだってー」

    マジかよ……既に話が通っていたのは予想外だ。

    八子「もしもし」

    平塚「こんにちは、ご両親の話を疑った訳ではなかったが、本当に比企谷なのか」

    八子「ええ、残念ながら」

    平塚「事実は小説より奇なりとはよく言ったものだが、おかしなこともあるものだ」

    八子「ええ、全くもって」

    平塚「電話をしたのは他でもない、君の今後について相談をしようと思ってな」

    八子「そうですね、とりあえず急病ってことにして休学の許可を頂きたいんですが」

    平塚「ふむ……電話ではアレだ、午後は予定はあるかね?」

    八子「いえ、というかこんな状況じゃオチオチ出歩けませんし……」

    平塚「では続きは直接出向かせてもらってから話すとしよう、構わないな?」

    八子「はぁ……」

    断る訳にもいかないのでとりあえず了承はしたが、あんまりこの姿で人と会いたくない。
    いや、元の姿であっても極力人とは会いたくないけどな。
  12. 12 : : 2015/08/01(土) 15:59:55
    平塚「邪魔するぞ」

    八子「わざわざすみません」

    平塚「いやいや、可愛い生徒の一大事だ、気にするな」

    八子「いやー、ははは、本当にびっくりですよね」

    平塚「うむ、なかなかどうして、正しい意味で可愛い生徒になってしまっているな」

    思うところは各々あれど、とりあえず笑うしかない、苦笑いだ。

    八子「それで先生、今後の話なんですけど」

    平塚「まぁ待て、作戦会議をするにはまだメンバーが足りん」

    なんだかすごく嫌な予感がする……。
    とか思っていると玄関からチャイムが聞こえた。

    「ヤッハロー」

    誰が来るかと思ったがわっかりやすいなオイ。


    小町「おにいちゃん、皆来たよー」

    八子「先生だけじゃなくて由比ヶ浜まで……ん?皆?」

    由比ヶ浜「やっはろー」

    雪ノ下「お邪魔します」

    大志「お邪魔するっす」

    八子「……」



    平塚「さて、という事で比企谷八幡の今後について奉仕部作戦会議を始める」

    小町ヶ浜「「おー」」

    大志「お、おー、っす」

    雪ノ下「……」

    八子「……どうしてこうなった」

    平塚「先ほど電話で話した通りだが、我が奉仕部の部員である比企谷(兄)がなんの所以か、比企谷(姉)になってしまった。」

    雪ノ下「平塚先生のことですから、またよからぬ企みで私を謀っているのかと思いましたが……本当におかしな事もあるものだわ」

    八子「冷静に受け入れられてもそれはそれで困るな」

    雪ノ下「そうね、姿形は変えられても心の性根は変わりはしないわ。それに、その濁った瞳を見せられたら信じない訳にはいかないでしょう」

    目はともかくなんで出会って間もない人の心根まで読み取ってるの?サイコメトラーなの?
    なんかシャクだからちょっとからかってやろうか。

    無言で平塚先生にアイコンタクトを送る。向こうも読み取ってくれたようで悪戯な笑みを浮かべて頷いた。

    よし、相模インストール、いける!

    八子「ひどい……初対面なのにそんな……目の事だって気にしてるのに……私……」
    普段の雪の下から受けている叱咤を思い出して嘘泣きをしてみる、あれ?それだとマジ泣きじゃね?

    雪ノ下「え?……あの?」

    怪訝な顔で雪ノ下が首をかしげた。

    平塚「雪ノ下……彼女は比企谷八幡ではない、今回の件で事実を知っているから意見を聞こうと思って読んだ従姉妹の八子君だ」

    雪ノ下「え?……その……」

    平塚「外見のことでとやかく言うのはあまり褒められたことではないな」

    机に伏せて泣き真似を続ける俺、堪えろ、まだ笑っちゃダメだ。

    雪ノ下「あ……」

    チラ見したらむしろ雪ノ下がやばい、逆に泣きそうになっている?
    炎の女王すら泣かせる氷の女王の目にも涙。ドッキリ大成功?

    由比ヶ浜「ど、どういうこと?」

    あいつは素でわかってないな。
  13. 13 : : 2015/08/01(土) 16:02:24
    塚「と、冗談はこれくらいにしておいて、比企谷、お前はこれからどうする?」

    八子「そ、そうですね、とりあえず先の電話で話したとおり、休学を……」

    雪ノ下「……」

    どうやら自分が謀られていたことがわかったようだ。悪かった、頼むから睨まないでくださいお願いします。
    ちょっとだけ涙目のジト目もいいかななんて思ってますん。

    でも、冷静に考えると比企谷八幡に対してはそんだけ好き放題言っても気にしなくていいと認識されてるんだよな。
    涙が出ちゃう、だって女の子だもん(暫定)

    平塚「たしかにそれが無難かもしれないが、高校3年生という受験を控えた大切な時期に授業を受けられないというのはなかなかに厳しいだろう?君は進学組だしな」

    八子「幸い教科書も既に受け取ってますし、塾もあるので……」

    平塚「まぁそういうな、塾だって戸籍上面倒になることに変わりはあるまい」

    八子「むぅ、確かにその通りですけど、それだったら学校の方が尚更問題があるんじゃないですか?」

    平塚「そこに関しては私がどうにかする、塾に関しては私の力ではどうにもならないからな」

    八子「いやいや、いくら存在感の薄い俺でもいきなり女になって出席はさすがに無理があると思いますよ」

    仮に髪を切って男装っぽくしてもベースが変わりすぎてて無理があるだろう。

    平塚「何を言っている、何時から比企谷八幡が学校に行くと錯覚していた?」

    八子「は?」

    平塚「君には転校生の比企谷八子として学校に通ってもらう、形式上、比企谷八幡は君の望み通り休学という形にさせてもらうがな」

    八子「いやいや、それは……」

    平塚「安心したまえ、諸手続きに関しては私がうまくやる」

    八子「そうではなくてですね、そんな手間をかけなくても……」

    平塚「無論、慣れない生活についても奉仕部が全面的にフォローしよう、そのための作戦会議だ」

    なんかもう拒否権ない感じなんすね。

    由比ヶ浜「クラスでのフォローはまかせてよ!」

    雪ノ下「不本意ではあるけれど、平塚先生直々の依頼では断る訳にはいかないわね」

    小町「これは面白いことに……じゃなくて私も従姉妹としてサポートするよ!」

    大志「及ばずながら自分も協力するっす」

    八子「……おう、ありがとうな、由比ヶ浜、雪ノ下、小町」

    大志「お兄さん、俺、俺もいるっす!」

    八子「いや、誰?」

    大志「大志っす!後輩になる川崎大志っす!」

    八子「初対面なのに馴れ馴れしくしないでくれるかしら?」

    大志「ひどいっすお兄・・・お姉さんって読んだ方がいいっすか?」

    八子「今からお前が入学取り止めたらお姉さんと呼ぶ事を許可してやらない」

    大志「それは無理……って結局許してくれないんすか!?」

    八子「うるせーな、つーかお前どうしてここにいるんだよ?」

    小町「私と大志くんは晴れある奉仕部第二期生なのであります!」

    大志「っす!」

    マジかよ、進んでこの部に入ろうなんて奇特な奴もいたもんだな。

    大志「姉ちゃんの件は今でも感謝してるし、俺もお兄さんみたいに困ってる人を助けてあげたいんす!」

    八子「そうか、わかった、歓迎するぞ小町」

    大志「俺も歓迎して欲しいっす!」

    八子「うるせーな、少し黙ってないとお前高校デビュー初日に先輩にセクハラかました一年生のレッテル貼るぞコラ」

    大志「それは勘弁して欲しいっす!」

    話がすすまねーじゃねぇか全く。
  14. 14 : : 2015/08/01(土) 16:04:14
    八子「しかし、そうはいってもですね」

    平塚「ウダウダ言うな、男なら覚悟を決めたまえ」

    八子「いや、男だからこそ現状に問題があると思うんですけど」

    いや、だって体は女でも中身は男なワケですよ、着替えとかお手洗いとかいろいろ……ねぇ?

    雪ノ下「気のせいかしら、恐ろしく下卑た考えが透けて見えたような気がするのだけれど」

    由比ヶ浜「?」

    由比ヶ浜が止めてくれることを期待したが、全然察してねぇなこれは。

    八子「はぁ、まあほどほどにお願いします」

    やっぱり非現実的な事には変わりない。
    色々と考えるのが面倒くさくなった。もうどうにでもなーれ!



    なんか本当に制服用意されてるし……。
    着替えてみて、改めて自分の慣れない姿に困惑する。


    由比ヶ浜「うん、似合ってる似合ってる」

    雪ノ下「まぁ、こちらの姿だと目を瞑ればそれなりに見れるのではないかしら」

    小町「名前で呼ぶのは慣れてないし、外ではお姉ちゃんって呼ぶことにするね」

    大志「お姉さん素敵っす 八子「黙れ小僧」ひどいっす!」

    八子「はぁ……」
  15. 15 : : 2015/08/01(土) 16:06:24
    その後も元に戻る事を期待しながら淡々と春休みを過ごしていたが結局元に戻らないまま開校日を迎えてしまった。
    その間にも奉仕部女子の(主に由比ヶ浜と小町による)八子ちゃんプロデュースは続けられ、
    俺の貴重な休日はよくわからん女子力向上計画によって潰されていったのだった。

    この体験を比企谷八子の憂鬱ってタイトルでラノベにしたらどうだろう?現実マジファンタジー。



    由比ヶ浜「あ、ヒッキ……じゃなくて八子ちゃんやっはろー!」

    八子「おいおい気をつけてくれよ、まぁこんな新学期デビューじゃ、正体ばれるとかそういう問題じゃねぇけどな」

    由比ヶ浜「あはは、まぁクラスではばっちりフォローするからまっかせて!」

    八子「不安だ……」

    形式上転校生という形になるので、いきなり教室にいっちゃダメなんだったか。
    まぁ、教室に入って目立つのは嫌だしな。
    とはいっても、質問攻めという拷問タイムが先延ばしになるだけではあるのだが……。

    由比ヶ浜と別れて職員室へ向かう。
    平塚先生がしっかり根回ししてくれたらしく、特に問題もなく転校届けは受理されたらしい。
    俺の状態についてどこまで周知されているのかは知らないが、まぁ考えててもしょうがないよな。

    平塚「どうした、緊張しているのか」

    八子「いや、そもそも一級ボッチが人前であいさつって時点でハードル高いんですって」

    平塚「そういうな、『新しい私デビュー』なんて貴重な体験なかなか味わえないんだぞ」

    八子「絶対面白がってますよね」

    平塚「大丈夫だ、今日までの部活で重ねた練習は君を裏切らないさ」

    かっこよい青春部活モノみたいに語るのやめてくれませんかね?



    先生が教室に入ると騒がしかった声も収まり、いよいよ緊張がピークになる、帰りてぇ……。

    平塚「では今日からこのクラスに編入する生徒を紹介する、入りたまえ」

    覚悟を決めて扉を引く。

    視線が一身に注がれる。ああ、本当に慣れないなこの感覚は。

    八子「ひ、比企谷八子です。よろしくお願いしまひゅ!」

    思いっきり噛んだ。現実は非情である。

    教室に笑いが起こる。でもなんか笑いの質がマイルドだ。なにこれ怖い。

    「頑張れー」

    「可愛いじゃん」

    「八子ちゃーん、結婚してくれー!」

    おい、誰だ!?さり気なく求婚しやがった奴は!?

    平塚「春休み中に学校については一通り教えてあるが、皆、なにか困っていたら助けてやってくれ」

    先生のフォローに合わせて軽く会釈をして用意された席に着く。
    座って教室を見渡すと空席がひとつ。
    あの空いている席が本来俺が座るはずだった席か。
    あれ?というか戸塚いなくね?同じクラスじゃなかったっけ?なに夢?妄想だった?鬱だ死のう。

    平塚「尚、比企谷八幡は怪我のためしばらく休学だ。何か伝えることがあれば私が話を通すので遠慮せず言ってくれ」

    誰?とか、ああそういえばいないなアイツ、みたいな反応が想像通りで安心して心が傷ついた。
  16. 16 : : 2015/08/01(土) 16:07:40
    「比企谷さんはどこから転校してきたの?」

    「趣味は?」

    「好きなタイプは?」

    「罵ってください!」

    由比ヶ浜のおかげでこういうシチュエーションには多少の免疫が出来ていたがそれでも辛い。

    葉山「まぁまぁ、あんまり質問攻めにすると比企谷さんも困るだろ?」

    3年になってカリスマ性は尚輝けり。葉山隼人のおかげで一旦その場は落ち着いた。

    葉山「平塚先生が比企谷さんを呼んでるみたいだよ」

    促されて廊下に出ると葉山が後に続いて出てくる。なんだよ、別に惚れたりなんかしないんだからね!?

    八子「ありがとう、他に何か?」

    できる限り淡白に、性別が変わっても性格はそうそう変えられるものではないのだからあまり干渉されないように振舞おう。

    葉山「いやぁ、はは、クラスの皆も興味があるだけで悪気はないと思うんだ、悪く思わないでくれると嬉しいな」

    八子「別に、気にしてないから」

    葉山「そう、ならよかった。」

    相変わらずだなお前は。その眩しい笑顔にはニフラムの効果でもあるんじゃないか?
    光の彼方に消え去りたくないからあまり関わらないで欲しいんですけど。

    職員室へ向かうが葉山は離れない。

    八子「他に何か?」

    葉山「ああ、うん、比企谷って珍しい苗字だと思ってさ、もしかして比企谷……比企谷八幡くんとは?」

    八子「従姉妹の関係になるわね」

    葉山「やっぱりそうか、どことなく雰囲気が似てるというかなんというか」

    姿は変わってもわかるやつにはわかるのか?ぼっち力のなせる技か、厄介なものだ。

    八子「……」

    葉山「あ、勿論悪い意味じゃないよ」

    いや、取って付けたようにフォローしなくてもいいから。

    葉山「その、彼の怪我ってそんなに重大なのか?」

    八子「え?ああ、命に別状はないから。療養とリハビリでしばらくは休む事になるそうだけど」

    平塚先生曰く、骨の一本や二本折れたくらいの怪我ということにされているらしい。
    なんか入学当初を思い出す設定だ。

    葉山「そうか、何にしても新学期早々災難だな、比企谷くんも」

    全くだ、まさかの性転換。想定の範囲外甚だしい。

    八子「じゃあ私はこれで」

    葉山「ああ、引き止めてすまない、比企谷くんに今度お見舞いに行くと伝えてくれ」

    来ないでくださいお願いします。適当にあしらうのも面倒だよ全く……。
    葉山と別れて、安堵のため息をついていると後ろから声をかけられた。

    三浦「ねぇ、比企谷さん?だっけ?」

    女王様が一体何の用だよ、全く次から次に……。

    三浦「なんか隼人と仲良くしてたみたいだけどぉ、何話してたん?」

    ああ、そういうことか。余計な誤解はされたくないな。

    八子「あ、俺、じゃなくて八幡の怪我の具合について聞かれただけ。従姉妹だから」

    三浦「あー、ヒキオの?ふーん……あんま似てないね」

    ほっとけ、つーか仮に従姉妹だったとして、そんなに似るもんでもないだろ。

    三浦「で、どーなん?」

    八子「え?」

    三浦「いや、ヒキオ。もしかしてけっこうヤバいん?」

    何だコイツ、心配してくれてるのか?

    八子「いや、完治には時間がかかるかもだけど、大事はないみたい」

    三浦「ふーん、ま、どうでもいいけど」

    なら聞くなし。上げて落とすとは流石女王様、パネェっす。

    三浦「比企谷さん、結衣と友達らしいじゃん?」

    八子「え、ああ、まぁ……」

    三浦「んじゃあーしらも友達ってことで、ま、よろしく」

    八子「え、あ……」

    三浦「んじゃーね」

    そう言って三浦は教室の方に戻って行った。なんなんだアイツ?
    あ、もしかして由比ヶ浜がなんか根回ししてくれたとか?余計なことを……。
  17. 17 : : 2015/08/01(土) 16:10:17
    ~そして放課後~

    部室にて本日の反省会である。

    平塚「で、どうだね、新しい生活は?」

    八子「はい、超疲れます」

    間違えて男子トイレ入りそうになって由比ヶ浜に全力でホールドされたり、
    なぜか三浦のおめがねに叶って上位カースト組に無理矢理組み込まれたり、
    控えめになったとはいえ相変わらず質問攻めされたり……etc

    由比ヶ浜「クラスの皆とも打ち解けてたし、前のヒッキーよりクラスの一員って感じだよね!」

    おいやめろ、別に気にしてないけど泣くぞ私。

    雪ノ下「よかったじゃない、ボッチ脱却おめでとう、比企谷さん」

    八子「全くもって良くねえよ」

    そんなことを話しているとノックもなしに扉が開いた。

    由比ヶ浜「あ、彩ちゃんやっはろー」

    戸塚「や、やっはろー、じゃなくて!」

    八子「?」

    息も切れ切れって感じで駆け込んできたので心配になる。でも可愛い。

    戸塚「八幡!八幡は大丈夫なの!?」

    雪ノ下「落ち着きなさい戸塚くん、彼は殺しても死ぬような人間ではないわ……人間?」

    八子「おい、そこは疑問符つけるポイントじゃないだろ」

    ついいつも通りの突っ込みを入れてしまった。
    ちなみに戸塚がクラスにいなかったのは俺の妄想だったからではなく、用事でHRに参加できなかったかららしい。
    良かった、危うく学校に来る意義の大半を失うところだった。

    戸塚「あ、比企谷さんもいたんだ、挨拶が遅れてごめんね」

    八子「あ、うん、とにかく八幡は心配するようなことにはなってないから」

    本日何度目かの説明タイム。お見舞いしたいという戸塚に対して、
    先生がお茶を濁してくれたが、なんかもったいなかったなぁ、戸塚の看病……。



    戸塚「へぇ、小町ちゃんも奉仕部に入ったんだね」

    小町「はい、不甲斐ない兄の分まで頑張る所存であります!」

    由比ヶ浜「彩ちゃんも部長大変だね~、がんばって!応援してるし!」

    戸塚「うん、ありがとう」

    大志「お姉さん、なんか俺すごく場違いな気がしてきたっす」

    八子「やっと気づいたか、さっさと消えろ」

    大志「ちょっとぐらい優しくして欲しいっす!」

    傍から見たら川崎大志ハーレム状態である。お前だけ爆発しろ。

    八子「まぁ、女子グループに男子が一人放り込まれた状態っていうのは現実には拷問に近いな」

    発言権を奪われ、ただのカカシになるのがデフォである。俺の場合、普段と変わらないけどな。

    大志「あれ?戸塚さんって男子テニスの……あれ?」

    八子「なに軽々しく戸塚語ってるんだお前、戸塚は戸塚だよ、ぶっころすぞ」

    大志「なんか理不尽にキレられたっす!?」

    戸塚「賑やかでいいね、じゃあ僕も部活頑張ってくるよ」

    さよならマイエンジェル。癒しが去った。
  18. 18 : : 2015/08/01(土) 16:13:10
    平塚「さて、話が逸れてしまったが、いい加減、根本的な解決策を考えよう」

    雪ノ下「確認するけど、そうなってしまう前に特別おかしなことはなかったのね?」

    八子「ああ、寝て起きたらこの姿になっていた」

    小町「いやー、あの時はお兄ちゃんが彼女でも連れ込んだのかと思ってホントびっくりしましたよ~」

    由比ヶ浜「か、彼女……」

    雪ノ下「そのケースも今と同じくらい非現実的だけれど」

    せやな……なんだよ、別に悲しくなんてないぞ。

    雪の下「小町さんとしても特に気になることはなかったのね?」

    小町「ですね~」

    雪ノ下「……」

    原因を考えつつ雪ノ下の方を見ると何やら考え事をするように俺の体をじっと見つめている。

    八子「どうした、リボンのつけ方とか変か?」

    悪かったな、女子の制服とか着慣れてないんだよ。あと、どことは言わないが体型が変わったから未だに違和感がすごい。

    雪ノ下「何でもないわ……」

    思わず舌打ちでもしそうな表情で一部位を睨みつける雪ノ下、現実は非情である。

    平塚「ちなみに、体育等の着替えには職員用の更衣室を使うといい、許可は取ってある」

    八子「そんな例外よく通りましたね」

    平塚「なに、背中に7つの星型の傷があって人に見せたくないという事にしたらすんなり許可が下りたぞ」

    八子「転校生はなんとか真拳伝承者とか、属性盛り過ぎじゃないですかね?」

    総武高の教師陣は大丈夫なんだろうか?

    雪ノ下「残念だったわね、エロ谷くん?」

    八子「ば、ばっかお前、むしろ助かるっつーの!」

    そんなシチュエーションにあこがれなくもないが、リスクの方が大きすぎてヤバイ。

    由比ヶ浜「……はっ!」

    ようやく事態が飲み込めたようで由比ヶ浜の顔が真っ赤に燃えた。
    ノーガード過ぎて時々心配になるよねこの子。



    八子「しかし……普通に考えてこんな状況、科学的にも技術的にも実現できるとは思えないよなぁ」

    大志「まるでマンガみたいっす!」

    小町「本当だよね~、小町的にはお姉ちゃんも捨てがたいんだけど、やっぱりお兄ちゃんには元に戻って欲しいなぁ」

    由比ヶ浜「うんうん、八子ちゃんも可愛いけど、やっぱりヒッキーがいいよ」

    もちろん、できるなら俺だって元に戻りたい。

    雪ノ下「……まさかね」

    平塚「どうした雪ノ下、なにか心当たりでもあるのか?」

    雪ノ下「い、いえ、別に」

    思い当たる節……あー、なんか一人、不可能を可能にする人物が思い浮かんでしまったなぁ……。

    八子「……まさかなぁ」

    陽乃「ひゃっはろー、遊びに来たよー」

    平塚「陽乃……またお前は勝手に」

    雪ノ下「噂をすれば……ね」

    陽乃「?」
  19. 19 : : 2015/08/01(土) 16:18:22
    陽乃「またまた~、皆して私をからかってるんでしょ?」

    雪ノ下「残念ながら事実なのよ」

    陽乃「雪乃ちゃんも冗談が上手くなったわねぇ、お姉さん嬉しいよ」

    軽口を叩きつつ、雪ノ下さんがこちらに歩み寄ってくる。

    陽乃「えーと、比企谷ちゃん?ここでクイズです、集団をもっとも団結させる存在はなんでしょ~?」

    周りのメンバーが困惑する中、当事者には伝わるように識別信号を送ってくるパーフェクト超人。
    ……なるほど、そういうことか。

    八子「冷酷な指導者ですか」

    意図を汲み取り、あの時と同じように答えを返してみせる。

    陽乃「ふーん、まさかとは思ったけど本当なんだ~」

    あっさり納得したらしい陽乃さんにくっつかれる。

    陽乃「ん~、これは作り物なんかじゃない本物の女の子だねぇ」

    八子「ちょ、やめてください、どこ触ってるんですか!」

    中の人のライフは0よ!勘弁してつかあさい!

    大志「お姉さん、なんかエロいっす」

    小町「小町も混ざる~」

    雪ノ下「姉さん、いい加減になさい、比企谷君も鼻の下を伸ばしていないで」

    いや、この体マジで全然力入らないんだよ、不可抗力だよ。



    陽乃「あっはっはっは……私がこの状況を仕込んだって?それこそ冗談がキツいんじゃないかなぁ」

    一同「……」

    陽乃「いやぁ、否定してくれないとお姉さん流石に傷つくなぁ」

    よよよと涙を流す演技をする雪ノ下さん、そんなだから黒幕説否定できないんですけどね。

    雪ノ下「姉さんもシロとなると、いよいよお手上げね」

    陽乃「にしても朝起きたら性別が変わってました、なんて新聞にでも乗りそうな大事件だよねぇ」

    八子「ははは……」

    陽乃「まぁ、私も比企谷ちゃんよりは比企谷くんの方が好みだから、何かあれば力になるよ」

    悪戯な笑みをこぼしながら肩を組まれる。頼もしいけどやっぱ怖いよこの人。

    ほら、また雪ノ下がすっごい睨んでるし、だから俺は悪くねぇ!

    陽乃さんを追い出してからも作戦会議は続いたが、これといって進展はなかった、気が重い。
  20. 20 : : 2015/08/01(土) 16:20:38
    その夜、如何にして休学してひきこもりになるかを思案していると着信があった。
    普段なら無視するところだが、状況が状況なので出ることにした。

    「ひゃっはろー、比企谷ちゃーん、元気してる?」

    八子「元気ではないです、なので寝ます。おやすみなさい」
    やっぱり出なければ良かったかもしれない。

    陽乃「あら、いいの?ちょっと耳寄りなお話かもしれないのに」

    八子「はぁ、やっぱり犯人は私だとかそういうオチは勘弁してくださいよ」

    陽乃「それなら面白かったんだけどねぇ……」

    心なしか、声のトーンが真面目になった気がしたのでこちらも構えて聞くことにする。

    陽乃「比企谷くんはオカルトの類って信じるほう?」

    八子「ちょっと前までは信じてなかったんですけどね」
    こんな状況になってしまっては信じざるを得ないというか……。

    陽乃「比企谷くんは雪乃ちゃんのマンションに行ったことってあったよね?」

    八子「はぁ、まぁ……それが何か関係があるんですか?」

    陽乃「学校から雪乃ちゃんのところに行く途中にちょっとした祠みたいなものがあるのって知ってる?」

    八子「ほこら……ですか?んー……ちょっと覚えがないですね」

    この間、諸用で訪ねたがそれらしいところは……。

    陽乃「んーとね、大層なものじゃなくてお地蔵様がちょこんと鎮座してるお堂みたいなんだけど」

    ……そういえば……。

    陽乃「そこのお地蔵様がね、とある筋ではどうにも本物なんじゃないかって話でね」

    あの時……。

    陽乃「何でも、そのお地蔵様に気に入られると願い事が叶うとかなんとかね」

    八子「……」

    陽乃「調べてみたら、どうも男女のいざこざをどうにかしたっていう起源があるとかないとか」

    八子「なるほど……」

    陽乃「……心当たりがあるって感じかな?」

    八子「なきにしもあらず、って感じです」

    陽乃「そう、役にたったならよかったよ」

    八子「わざわざ調べてもらってありがとうございます」

    陽乃「いやいや~、やっぱり比企谷ちゃんじゃ駄目だと思うしねぇ、まぁ、何かあったらお姉さんに相談しなさいな」

    八子「ええ、本当にありがとうございます」

    陽乃「どういたしまして~、じゃあまたね~、比企谷ちゃん♪」

    陽乃さんとの電話を終えて、当時の状況を思い出してみる。
    春休みに入ったばかりの時分、雪ノ下のマンションを訪ねたことがあった。

    なんでも、雪ノ下がパソコンを新調するということで、まだまだ現役な旧ノーパソを小町に譲ってくれることになった。
    入学の前祝いということなのか、小町もすごく喜んでいた。
    ノートパソコンとはいえ、そこそこに重たいので、佐川急便のごとく駆り出されたのが俺だったという訳である。

    データの移行と旧パソコンのクリーンアップを待つ間、紅茶をご馳走になりつつ、(おそらくは)大量に保存されている猫動画やら画像やらを移行しようとしてついつい中身を見直してしまう雪ノ下を眺めた後にパソコンを受け取って家に買える道中のことだ。

    八幡「こんなところにお地蔵さんなんてあったのか」
    道端に簡素な屋根作りを施された小屋のようなものの下に小さな地蔵が鎮座していた。

    ふと見ると、恐らくはお地蔵さんがかぶっていたであろう三度笠のようなものが道に野ざらしになっていた。
    天候は曇り空、雨でも降って笠が汚れては気の毒かと思い、拾い上げて埃を払い、地蔵の頭に乗せた。

    この程度でご利益があるとは、まるで考えていなかったが、昔話の笠地蔵を思い出してふと考えた。

    八幡「食べ物とかは不自由してないからなぁ、まぁ、将来素敵な専業主夫ライフが送れればそれで満足だ」

    そんなことを考えながら、自分が雨に濡れながら急いで家に帰ったというのが全てである。

    八幡「いや、別におかしなことしてなくないか?」
    改めて考えてみたが、この状況に陥る要因にはならない気がする。
    情報をくれた陽乃さんには悪いが、どうやらハズレのようだ。
  21. 21 : : 2015/08/01(土) 16:22:11
    翌日、今日も今日とて部室にて八子プロデュースもとい、作戦会議が行われていた。

    雪ノ下「やっぱり病院なりで検査をしてもらったほうがいいのかしら」

    八子「んー、そうだなぁ……でも多分、前例なんてない症状だよな?」
    世間一般に知れてないってことは少なくとも公にはなっている症例ではないと。

    小町「映画とかだと、そういう人っていわゆるサンプルって感じの扱いに……」

    モルモット的なやつか、某電気ねずみとはいかないまでも、同じげっ歯類ならハムスターぐらい可愛がられるやつになりたい。

    大志「世知辛いっすねぇ」

    由比ヶ浜「よいしょっと、こんな感じかな?」

    話そっちのけで俺の髪の毛を弄っていた由比ヶ浜が満足げにふんすと鼻を鳴らした。

    小町「わー、似合う似合う!」

    スマホを鏡替わりに覗き込むと、頭の両脇に髪が結われていた。
    俺、ツインテールになりました!

    雪ノ下「由比ヶ浜さん、もう少し真面目に……」

    雪ノ下が呆れ顔でため息をつく。

    小町「どうせならこれも、ホイっと」

    さらに猫耳オプションを追加された、なんでそんなもの持ってるの?
    というか、盛ればいいってもんじゃないだろ。

    雪ノ下「くっ!」

    こうか は ばつぐん だ !

    対猫能力に定評のない雪ノ下さん。この一点に関しては本当ちょろい。

    見事に進展がない中、ノックの音が部室に響いた。

    「入るよ」

    答えを待たずに入ってきたのはクラスメイトの……えーっと?

    大志「姉ちゃん?」

    由比ヶ浜「サキサキやっはろー」

    「サキサキいうな」

    海老名さんみたいなことを言う由比ヶ浜にテンプレいただきました。
    ああ、川崎サキサキか……なんか早口言葉作れそうだな、赤サキサキ、青サキサキ、川崎サキサキ。

    雪ノ下「川崎さん、なにか相談かしら」

    川崎「あぁ、うん、相談っていうかなんていうか……」

    こちらを見ながら川崎がいいごもる。

    八子「?」

    川崎「その、さ、比企谷が入院したって言ってたじゃん、部員のあんたらや従姉妹の比企谷さん?なら事情知ってるかなって」

    小町「ほうほう」

    川崎「別に気になってる訳じゃないんだけど、一応、世話にはなったし……」

    大志「なるほど、見舞いに行きたいと」

    川崎「ばっ!?別に、そういうわけじゃ!」

    小町と大志に茶化されるながらツンデレみたいなことを言っている川崎。
    別に恩を感じるようなことでもないのに義理堅い奴だ。

    どうにか入院の件を誤魔化してもらえるよう雪ノ下&由比ヶ浜にアイコンタクトを送ってみたが、
    二人共無言で見つめ合い顔をしかめている。にらめっこなら後で楽しんでくれ。

    雪ノ下「残念だけど、本人に大事はないそうよ」

    あのさぁ、お世辞でもいいから残念とかいうのやめません?

    川崎「……そう」
    少し安心したように川崎が息を吐く。

    雪ノ下「ただ、本人が望んでいないから面会は難しいわね」

    川崎「なんで?」

    雪ノ下「大方、怪我した姿を見られたくないとか、そういうことではないかしら?」

    川崎「ああ、なるほど、なんかそういうタイプだよね、あいつは」

    呆れたような顔なのにどこか優しげに笑う二人。
    なんだよ、俺にもゴミのようなプライドくらいあるんだなってそういうこと?余計なお世話だ。

    とりあえず納得してくれた川崎だが、なんか大志がやらかして正体バレそうで怖いな。
    川崎も言いふらすような奴ではないだろうが、この事実を知っている人は少ないに越したことはないと思う。
  22. 22 : : 2015/08/01(土) 16:23:45
    雪ノ下「そろそろ時間ね」

    川崎を送り出した後に、雪ノ下が口を開いた。

    八子「ああ、そういえば生徒会の手伝いがどうとか言ってたな」

    雪ノ下「ええ、毎度のことながら、体良く使われているような気がしなくもないのだけれど」

    そういって呆れたようにこちらを見る雪ノ下。

    八子「ま、まぁ奉仕部の理念に沿ってはいる訳で」
    一色を生徒会長に用立てした責任もある以上、事あるごとにヘルプを頼まれている訳だ。

    由比ヶ浜「まぁまぁ、楽しいからいいじゃん!それにさ、今年は期待の新人も手伝ってくれる訳だし!」

    由比ヶ浜が小町とその他一名を見ながらにっこり微笑む。

    小町「はい、頑張っちゃいますよ!」

    大志「頑張るっす!」

    頼もしい後輩のおかげで、比企谷八幡@頑張らないが実現できそうだ。いいね!



    一色「奉仕部の皆さんこんにちはー、助かりますー」

    由比ヶ浜「いろはちゃんやっはろー」

    雪ノ下「こんにちは一色さん」

    小町「初めまして会長さん」

    大志「よ、よろしくお願いしまっす!」

    八子「……よろしく」

    成り行きでついてきてしまったんですが、比企谷八子は奉仕部員に入りますか?
    多分、平塚先生のことだからそのへんも整えてる気はするけどな。

    一色「新入部員も入って賑やかになりましたねー、よろしくお願いしますー」

    小町と大志に視線を送ったあとキョロキョロと辺りを見回す一色。

    一色「あ、そっか、先輩……」

    心なしかがっかりしたような声音で何かを呟く一色と目があった。

    一色「あ、えーと、そちらの方が?」

    雪ノ下「ええ、今年から編入した比企谷八子さん、小町さんの従姉妹でもあるわね」

    一色「よろしくお願いしますー、サポートしてくれる人が増えて頼もしいですー」

    胸の前でガッツポーズを作ってはにかむ一色に軽く会釈をする。
    なんだかんだで人を使うのがうまいので生徒会もどうして、割とうまく廻っているらしい。

    今回のお手伝いは書類整理とパソコンへの打ち込みということらしい……他の生徒会メンバーは何してるんだ?

    一色「いやー、部活動関連の予算配分?のための査察とかで人手が足りなかったんですよー」

    由比ヶ浜「へー、奉仕部にも来るのかな?」

    雪ノ下「どうかしら?特に必要な設備や備品があるわけでもないし、あまり関係はないような気がするのだけれど」

    そういえばいつも雪ノ下が準備してくれてる紅茶とかって自前なんだよな、まぁ、ありがたいことだ。

    作業分担して黙々とこなしていく面々。

    一色「そういえばー、先輩ってどこの病院に入院してるんですかー?」

    作業中、一色がそんなことを聞いてきた。何度目だろうなこの質問。

    雪ノ下「本人の意向で場所は伏せられているそうよ、……用事があるなら伝えるけれど」

    一色「いえ、用事ってほどでもないんですけどー」

    雪ノ下「?」

    もったいぶる一色に雪ノ下が首をかしげてみせる。

    一色「ほら、先輩って私のこと割と?いや、かなり?好きじゃないですかー」

    一同「えっ?」

    は?この子いきなり何言っちゃってんの?

    先ほどの談笑ムードから一変、なんとも言えない沈黙が場を支配する。

    雪ノ下「言っている意味がよくわからないのだけれど」

    雪ノ下が静かな笑いを携えて口を開く……目が笑ってないんですけど。

    一色「それでー、一応私も先輩にはお世話になってるわけですし、お見舞いにいったら喜ぶかなーなんて」

    なるほど、そうやって恩を売っておこうという算段か、あざといな、さすがいろはすあざとい。

    一色「でもわからないんじゃしょうがないですねー」

    小町「またお姉ちゃん候補が一人……」

    いや、一色は妹フォルダに分類されてるぞ、小町に比べればその妹力言うに及ばずといったところだが。



    一色「いやー、助かりましたー、今後とも宜しくお願いしますねー」

    まだまだ頼る気満々かよ、いや、まぁいいけどさ。

    作業を終えて生徒会室を後にする。

    八子「……」

    部室に帰るまで、主に二人からの視線が痛かった。
  23. 23 : : 2015/08/01(土) 16:26:45





    それから18年の月日が……流れてたまるか。
    何の解決策も見い出せないまま、18日の月日が流れた。
    桜もとうに散り、新入生も学校に馴染み、健やかな学園生活を送っている今日この頃。

    八子「いや、私は馴染んじゃ駄目だろう」
    一人称が板についてきた。死にたい。

    由比ヶ浜「ほんと困ったよねぇ」

    そうですね、そのポッキー春の新作ですか?

    小町「小町、女らしくなっていく元兄の姿をみて、もう姉でいっかって気分になってきたよ」

    そうですね、いなくなった人のこと、時々でいいから思い出して下さい。

    雪ノ下「いいんじゃないかしら、今更戻ったところで教室にあなたの居場所はないでしょうし」

    そうですね、ひきこもるのであれば学校よりも自宅がいいですね。

    一色「でもそろそろ退院する感じの流れなんですよね、やばくないですか?」

    川崎「あたしは未だに信じきれてないけどね」

    そうですね、人口密度上がりましたねこの部室。

    一色には由比ヶ浜経由でバレた。
    いやまぁ、毎日のように部室に来る一色に対して警戒が緩んでいたと言わざるを得ない。

    川……大志の姉ちゃんについては案の定あいつがやらかした。

    大志「すみません、なんか知らせないのはフェアじゃない気がしたっす」

    うるせーよ、何がフェアだよ。スリーアウトチェンジだよ、性別が。

    一色「てゆーか、黙ってるってひどくないですか?一応心配してたんですよ私」

    八子「いや、別にいいだろ、新年度でお前も忙し…忙しい?」

    毎日部室に来てる一色は影武者か何かだったのだろうか、あるいは生徒会の方が…。

    一色「いや、まぁ忙しいですけど……それでも教えてくれたっていいじゃないですか」

    頬を膨らませつつポッキーを拝借しながら紅茶に手を伸ばす一色、なるほど忙しそうだ。

    川崎「あたしは別にあんたの事はどうでもいいけど、大志がちゃんと部活やってるか心配だったから」

    はいはい、ブラコン乙であります。

    大志「よく言うよ、全く」

    川崎「う、うるさいよ!とにかく、何かあてはないの?」

    八子「八方塞がりなんだよなぁ、実際」

    女の子を男の子(娘でない)に戻して欲しい。
    こんな依頼来たら高校生探偵とか呼ぶレベル、今なら体が縮んじゃってる奴とは友だちになれそうな気がする。
    ともあれ、何度考えても女の子になった理由がさっぱりわからない。

    小町「こうなったらもう神頼みだよ、お姉…お兄ちゃん」

    もう小町の中で姉になりつつある俺を、せめて自分では兄であると強く心に刻まねばならない。

    八子「そうだなぁ」
    なんかそういうのに効きそうな神様とか……あ、そうだ。
  24. 24 : : 2015/08/01(土) 16:31:13
    という訳で、雪ノ下の住まいに近い、例の祠にやってきたわけだ。
    陽乃さん曰く、一応男女の何やらを司ってるとかなんとか言ってたし。

    八子「いや、別に皆で来なくても良かったんじゃないか?」

    由比ヶ浜「いいじゃん、皆でお願いした方が神様も叶えてくれるんじゃないかな」

    雪ノ下「非科学的ではあるけれど、実例を見てしまっている訳だから否定ができないわね」

    とりあえずお供えものを持参して神頼みに来てみたわけである。

    一色「まーまー、やるだけやってみましょうよ先輩」

    川崎「なんであたしまで……」

    まぁ、神様も男(の娘)にお願いされるより、たくさんの女の子にお願いしてもらった方が
    気合入れて頑張ってくれるかも知れないしな。



    お饅頭やら里芋の煮っころがし(?)やらをお供えしていると

    「これまた随分と可愛いお客さんの多いこと」

    そんな声が聞こえた。

    八子「ん、何か言ったか?」

    小町「うん、この煮物、お願いが終わったら頂いていいかなーって」

    やったね、小町ちゃん、夕御飯のおかずが増えるよ。

    川崎「いや、まぁ別にいいけど……」

    わぁい。なんだ、空耳か。

    「なかなかいい味だったからお礼も弾んじゃうよ」

    八子「!?」

    空耳じゃないぞ!なんだ!?

    一色「お願い事って一つじゃないとダメですかねー?」

    私的な願い事する気満々じゃないですかやだー。

    「欲の強い子は嫌いじゃないけどなー」

    八子「誰だ!」

    大志「どうしたんすか、お姉さん」

    八子「お姉さんって呼ぶんじゃねぇ!じゃなくて!」

    「あら、この間の!願いが叶ってよかったね!感謝しなさいよ」

    見上げると祠の屋根の上でお饅頭を食べてる女性と目が合った。
    いつの間にそんなところに…いや、それよりも…。
    なんだろう、なにか、普通じゃない。

    八子「えーと……どなた様でしょうか?」

    「私?」

    八子「はい」

    「あ、そうか!願い事を叶えた人には私の姿が見えるんだった」

    由比ヶ浜「ヒッキー?」

    由比ヶ浜が怪訝な顔で訪ねて来るが、それどころではない、この人は今なんと?

    雪ノ下「幻覚でも見え始めたのかしら?あるいは被害妄想……とか?」

    おい、医者を呼びましょうか?みたいな雰囲気でこっち見んな。
    むしろ医者も匙を全力投擲するレベルだよ。

    「あー、つまりね、今は君にしか私が見えていない、今はね」

    八子「……それで願いを叶えたとは?どういうことです?」

    「まぁまぁ、まずは皆でお願い事を済ませなさいな」

    彼女はお饅頭を食べ終えて手を払うと何かに聞き入るように目を閉じた。

    川崎「変なこと言ってないであんたもちゃんと願いなよ、あたし帰って夕飯作らないといけないんだから」

    八子「…」

    やっぱり皆には見えていないのか、もう訳がわからないがとにかく願い事をしよう。

    「……君は随分と思われているなぁ」

    お願いを終えた頃、そんなつぶやきが聞こえた。

    由比ヶ浜「へ?」

    小町「あれ?」

    雪ノ下「……」

    一色「ん、なんですかね?今の声」

    川崎「!?」

    大志「屋根のところに誰かいるっす!」

    これで皆、彼女が見えるようになったってことか?

    「うーん、でもうち、クーリングオフは受け付けてないんだよねぇ」

    由比ヶ浜「えーと…どゆこと?」

    俺が聞きたい。はっきりしていることは……

    八子「あなたは神様、ってことでいいんでしょうか?」

    神様「そんなところだね」

    一同「……」
  25. 25 : : 2015/08/01(土) 16:35:11
    八子「まさか本当に神様がいるとは」
    戸塚!俺神様信じる!というか会ってる!神様なう。

    雪ノ下「疑うわけではないけれど、その……」

    まぁ、俺もこんな身体になってなければ絶対疑ってかかるけどなぁ。

    神様「本当は願いを叶えた人にしか姿を見せないんだけど、今回は特別」

    由比ヶ浜「なんか、とにかくすごい!」

    一色「試しに写メとか……まずいですかね?」

    まずいでしょ、やめてよね、機嫌損ねちゃったらどうするの!

    神様「構わないよ、写らないけどね」

    ピロリーン

    うわ、こいつホントに写メりやがった。

    撮った写真を覗き込んだ一色と小町が青ざめる……。

    一色「……写ってないです」

    覗き込んだ写真には祠の屋根しか写ってなかった。

    大志「ほ、本物の神様っす!」

    川崎「いや、洒落になってないってこれは」

    川崎(姉)は大志の後ろで震えている……いや、お化けじゃないんだから。

    雪ノ下「失礼しました。ご無礼な発言をお許し下さい」

    神様「お気になさらずー」

    八子「軽いっすね」

    八百万の神とはよく言ったものだが、この神様、フレンドリーである。
    流石に手品師や詐欺師って類ではないとは思うけど、なんか不安になってきた。



    神様「さて、状況も飲み込めたみたいだから本題に入ろうか」

    八子「それです。確かに一度ここを通りかかったことはありますけど」
    あの時は何も願い事なんてしていない筈だ。

    神様「あの時はありがとうねー、この笠、お気に入りだったんだー」

    八子「あ、いえ、こちらこそ」

    神様「お礼にってことで、願いを叶えて上げたんだけど、心変わりが早いねぇ、君」

    八子「いや、だからお願いなんてしてなかったですよ」

    神様「またまたー、神様に嘘は通用しないよー」

    とはいえ、本当に思い当たる節がない。


    神様「君は確かに願ったじゃない、『専業主婦になりたい!』ってね」

    あっ……。

    雪ノ下「比企谷くんあなた……」

    一同の呆れた表情が見て取れて視線が痛い。

    八子「ちょ、ちょっと待っていただけないでしょうか?」
    いや、確かに常日頃、口にもしているし、あの場でもそんなこと考えたような気がしなくもないけど…。

    神様「でもさ、結婚なんて相手も必要で急には無理だし、とりあえず可能性を与えてあげようと思ってね」

    えらい人間感覚で願い事を考えてくれている神様である。

    八子「いえ、そうではなくてですね」

    神様「性転換手術ってすごいお金かかるらしいじゃない?そこはどうにかしてあげようかなって」

    問題はそこじゃないです。なんということをしてくれたのでしょう。

    雪ノ下「つまり、主婦になりたい=女になりたい……と?」

    神様「うん、目は死んでたけど、心根は見るべきものがあったしね」

    お褒めにあずかり光栄です……光栄?

    神様「あとは君の頑張り次第、って思ってたんだけどなぁ」
    口をとんがらせて不満げに話す神様。いや、そんなん頑張らないですって。

    八子「ごめんなさい神様、そうではなくてですね」
    今はジェンダーフリーが叫ばれている世の中なのでして。



    専業主婦× 専業主夫○

    神様「なんだぁ、そういうことは先に言ってよー」

    説明を受けた神様があっけらかんと宣った。いや、どうしろと…。

    八子「という訳で、どうにか元に戻していただけないでしょうか」

    神様「うーん、事情が事情だしなぁ、でもなぁ…」

    小町「神様、私、やっぱりお兄ちゃんがいいです、辛うじて!」

    もうちょっと来るのが遅かったらやばかったかもしれない。お兄ちゃん悲しい。

    一色「先輩に元に戻ってもらわないと力仕事が任せづらいんですー」

    それは別に俺の仕事じゃない、戸部を呼べ戸部を。

    大志「お願いします!姉のためにも!」

    川崎「ばっ!?いや、まぁ、一応そいつには恩もあるし、戻ったらいいとは思うけど」

    おう、今度またけーちゃんの遊び相手くらいにはなってやるよ、ありがとうな。

    由比ヶ浜「お願いします!神様!」

    まるで自分のことのように真剣にお願いする由比ヶ浜の姿を見て少し胸が熱くなる。
  26. 26 : : 2015/08/01(土) 16:37:32
    そして最後まで一人無言だった雪の下も決心した顔で言葉を紡ぐ。

    雪ノ下「私には……私たちには解決しなければいけない依頼があります」

    雪ノ下「その依頼を解決するには『彼女』では駄目で、『彼』でなければならない」

    雪ノ下「『彼』が必要です」

    そうか…そうだったな。

    八子「神様、俺の願いは叶えてくれなくて構いません、ただ、皆の願いは、叶えてやってくれませんか?」

    神様「同じことじゃないか全く……」

    何故か嬉しそうに神様が呟いた。

    結果は変わらなくても、きっとそれには意味があるのだろう。



    神様「さて、元に戻る方法だけど」

    八子「あの、神様の御力でポンって訳にはいかないんでしょうか?」

    神様「いやぁ、神とは言ってもそこまで万能じゃないからさ」

    なんでニヤニヤしてるんだろうこの神様。

    神様「大丈夫、今の君にならさして難しい方法じゃないはずだよ」

    神々しさに邪悪さが混じって最強に見える。嫌な予感しかしない。



    神様「それはね……



    『願いを共にする異性との口づけ』



                    」
  27. 27 : : 2015/08/01(土) 16:40:30



    時が止まった。勘弁してくれ神様DIO様仏様……マジで。



    八子「すまん、私、女として生きるわ」
    しばし硬直した後、俺は悟ったように宣言した。
    だって詰みじゃん、これ。

    一同「ええっ!?」

    呆けていた皆の時も動き出した。

    由比ヶ浜「そ、それでいいのヒッキー!」

    八子「そんなこと言ったってしょうがないじゃないか」
    えなり君の気持ちが今ならわかる気がする。

    小町「むぅ……小町、おでこまでならいけるけど、でもそれじゃもったいない」

    あ、そっか小町がいたじゃん。マジ太陽の小町。エンジェル。

    神様「口づけ、ね。お互いの」

    神様が念を押した。

    小町「残念!無理♪」

    うん、知ってた。いい笑顔だなチクショウ。

    雪ノ下「改めてよろしくお願いするわ、比企谷さん」

    八子「おう」
    神様なんて信じない、いや、いたけど。
    社畜に神はいない……何か違うな、そもそも俺社畜じゃないし。
    だいたいまず社会に出て働かないし、もう俺何言ってるのかわからない。

    由比ヶ浜「ちょ、ゆきのんはそれでいいの!?」

    雪ノ下「冗談よ、全く…でも、質が悪いわね」

    雪ノ下は由比ヶ浜にガクガク揺さぶられつつため息をつきながら呟いた。

    八子「あんまり揺らすと酔うぞ、乗り物苦手なんだから」

    雪ノ下「そんなことはないけれど、いえ、確かに揺さぶるのはやめてほしいわね」
  28. 28 : : 2015/08/01(土) 16:44:07
    何か本気でグロッキーな感じになってきた雪ノ下を見ていたら不意に袖を引っ張られた。

    一色「あのー、蚊帳の外っぽい雰囲気出さないでもらっていいですか?」

    八子「そもそも蚊帳なんてない、夢も希望もない、ほら、撤収だ撤収」

    顔換装式の甘い食用英雄と違って俺には愛と勇気という友達もいない。即ちぼっちである。

    それでも安心してくれ。皆の願いは俺…いや、私が墓の下まで持っていく。

    一色「わ、私は別にいいですよ」

    八子「良くない、暗くなる前におうちに帰るんだ」

    一色「ちがくてですね!」

    いつもとは何かが違う。よくわからないけど、違う。
    そんな結果を求めていないのなら、だからこそ、その先を言わせてはいけないはずだった。



    一色「キス、してもいいです」



    再び時が止まる。
    スタンド使いは惹かれあう、神様のせいで世界に入門しちゃった系女子がここに誕生した。



    一色「か、勘違いしないでくださいよ!別にキスがしたいとかそういう意味でなくて!ここで貸しを作っておけば今後のサポートも残り一年だけじゃなくて卒業後も保証されるっていうか、キスもしてないのに付き合うとかそういうの無理ですからほんと!」

    八子「い、一色、落ち着け、な?」
    もう何言ってるかわかんねぇよ。
  29. 29 : : 2015/08/01(土) 16:45:18
    大志「ね、姉ちゃん!ほら!」

    川崎「はぁっ!?いや!え、何が!?」

    そういえばいたわ、川崎姉弟。

    八子「大志、お前を男と見込んで頼む、姉ちゃん連れて今すぐ帰ってくれ」

    家に帰るんだな。お前にも家族がいるだろう。
    頼む、なんかすごい面倒なことに巻き込んでしまいそうだ。

    大志「お兄さんの頼みでもそれは聞けないっす!」

    八子「なんでだよ!」

    川崎「う…あ…」

    よくみたらサキサキが赤サキサキになってる。ヤバいってこれ、まじ激怒でしょ。

    八子「頼むよ、俺まだ死にたくな…」

    川崎「が、外国!」

    待って、いくら許せないからって国外追放はやめて、私パスポートも持っていませんの!

    川崎「外国では、キスなんてあ、挨拶みたいなもんでしょ!」

    ……なにいってだこいつ。



    川崎「だから!別にあたしは…借りも返せるし、してもいい…けど」



    そんな川崎を直視できず横に目を逸らしたら、大志が笑顔でサムズアップしてた。その上げた親指へし折るぞこの野郎。
  30. 30 : : 2015/08/01(土) 16:47:08
    由比ヶ浜「ヒッキー……」

    知っていた、空気を読むなんて段階はとうに超えてしまってる。

    由比ヶ浜「私は、ヒッキーに元に戻って欲しい」

    由比ヶ浜「だから、頼ってくれていいの」

    俺の問題が絶対に一人で解決出来ないなら、仕方がない……と?

    由比ヶ浜「ごめん、やっぱりずるいや、あたし」

    様子を伺うでもなく、俺の反応を待つでもなく、まっすぐにこちらをみつめて、由比ヶ浜が続ける。



    由比ヶ浜「でも、譲れないんだ、この願いはあたしの願いなんだから」



    強くなったな、由比ヶ浜、もう俺に教えることは何もない。
    違うな、教わってばっかりだ。
  31. 31 : : 2015/08/01(土) 16:48:57
    雪ノ下「比企谷君」

    八子「……」

    雪ノ下「あなたは元に戻りたい?」

    八子「……」

    雪ノ下「戻りたいのね?」

    八子「……」

    雪ノ下「なら、その依頼を受けるわ」

    八子「違う、これは依頼じゃ」

    雪ノ下「あなたは、いつもあなたらしい方法で依頼を解決してきた」

    雪ノ下「そして、その度思い知らされた」

    雪ノ下「だから、たまにはあなたも思い知るべきよ」



    雪ノ下「望んでいない解決方法でね」



    なぜ、彼女は笑っているのだろう?

    陽乃さんとは似ても似つかぬ、でもこんな雪ノ下の笑顔は見たことなかった。

    八子「俺は……」

    だいたい、なんで望んでないと決め付けるんだ。
    望んでも手に入らないようなものがこんな形で手に入ってしまうとしたら、俺達は納得出来ないはずではないのだろうか。



    本物かどうかさえ関係ない。


    今じゃない。


  32. 32 : : 2015/08/01(土) 16:51:07
    ぐちゃぐちゃな頭を必死に振り、現実から逃避……してちゃだめだろ。
    気が付けば四方から異なる視線が注がれていた。なにこれ、元気玉打てそう。

    神様「さて、言うまでもないとは思うけど、皆条件はクリアしているよ」

    何時の間にか屋根から降りていた神様が俺に語りかけてきた。

    神様「まぁ、無理やり妹の唇を奪うという選択肢も残されているけれどね」

    八子「サラッとヤバイこと言わないでくださいますか」

    その妹を含む期待の新人たちは完全に静観を決め込んでいるようだ。

    小町「これはなんという……お兄ちゃん」

    大志「こ、これが修羅場ってやつっすか」

    楽しそうだなお前ら。

    神様「ふふっ、素直な子も、そうでない子も可愛いものだね」
    小町を後ろから抱えて、その頭に顎を乗せて笑う神様。なにあれ可愛い。
  33. 33 : : 2015/08/01(土) 16:52:50
    四者四様の思いが絡みついて離れない。


    一色「先輩……」


    川崎「あ、挨拶程度のことで大袈裟なんだよ」


    由比ヶ浜「ヒッキー」


    雪ノ下「……」


    そんなもの、受け止め切れる器なんて、どこにも持ち合わせていないのに。

    四面楚歌って言葉があった。でも歌は聴こえない。
    聴こえるのはわけがわからないくらい速い自分の心臓の鼓動と荒すぎる息遣い。

    一体全体、この四面デモンズウォール状態をどうすれば乗り越えられるというのか?

    雪ノ下「男に二言はないという言葉もあるけれど」

    雪ノ下「あなたは私を嘘つきにしたいのかしら?」

    八子「……どういう意味だよ?」

    仮に願いが成就されないとしても願ったことで嘘つきになる訳ではないはずだ。

    雪ノ下「私の願い事には、自ら制約をつけたのよ」

    雪ノ下「きっとあなたの依頼を解決するから、あなたを元に戻して下さい、と」

    八子「……そうか」

    確かに、この姿では根本的に解決できないかもしれないな。

    神様「大丈夫、絵面は女の子同士の可愛いまぐわいだよ」

    社畜に神はいなくとも、鬼畜な神はここにいた。いっそ殺して!
    そうだ、大志を殺して俺も死のう。
  34. 34 : : 2015/08/01(土) 16:55:13
    考えろ俺、何か、何か方法が……。

    八子「!」

    そうか!もしかしたらいけるかも知れない。

    八子「神様、願いを叶える時ってどうしてます?」

    神様「どういう意味?」

    八子「ほら、なんか呪文を唱えるとか、天に腕を掲げるとか、踊るとか、そういう事です」

    神様「ああ、特に特別なことはしないよ、人が願うように私も願うだけ」

    神様「ちなみにもう済んでるよ。あとは君の選択待ちだね」

    良かった。あとは俺の覚悟だけか。

    八子「皆、もしかするとこれでおしまいかも知れないから言っておく」

    八子「願ってくれてありがとう」

    柄でもないのに何を言ってるんだろうな、俺は。
    困惑する5人と一匹と……神様って人って数えていいのか?
    とにかく困惑する皆に頭を下げ、一世一代の賭けに出る。
  35. 35 : : 2015/08/01(土) 16:57:36
    神様「?」



    小町ときゃっきゃうふふ出来るって事は触れるってことだ。



    神様「あっ!君はまさか!?」



    気づいても時既に遅し。



    あとは、神様が見た目通りの性別であることを祈るだけ。










    この日俺はとんでもない禁忌を犯した。










    『神の唇を奪った男』の誕生である。




  36. 36 : : 2015/08/01(土) 17:00:05
    八幡「う……ん?」
    気を失ってしまったのか、それとも天に召されたのか、とにかく意識は戻ったようだ。

    八幡「どうなった?」

    見渡すと場所は変わらず祠の前だ。
    でも、皆目が虚ろだ、失敗したのか?
    どうやら賭けに負けたようだ。神様ごめんなさい。



    心の中で遅すぎる懺悔を続けていると、小町が無言でスマホの自撮りモードカメラを向けてきた。



    八幡「も、戻ってるじゃねぇか!」
    なんとなく整った顔立ち、そしてこの目、まごうことなき俺である。
    おかえり俺!ただいま俺!

    しかし解せない事がある。

    八幡「小町、お兄ちゃんだぞ!久方ぶりのお兄ちゃんだ!」

    小町「ああ、うん、良かったね、おね、お兄ちゃん」

    なんか全然喜んでくれない。まじで泣くよ俺、いや、もう泣いてるけど。

    他の皆も目を合わせてくれない。いや、確かにやらかした自覚はあるよ?
    でもさ、とりあえず願いの成就を喜んでくれたりしてもいいんじゃないかな?かな?

    雪ノ下「比企谷くん」

    八幡「お、おう?」

    恐る恐るといった感じで雪ノ下が声をかけてくる。

    雪ノ下「姿が戻って良かったわね」

    八幡「お、おう、ありがとう」

    真っ先に、先の行動について糾弾してくると思っていた雪ノ下からの意外な言葉。
    まずい、また視界がぼやけてしまいそうだ。

    でも、やっぱり目を合わせてくれない。再び濁ったこのまなこ。見るに耐えないということだろうか?

    由比ヶ浜「ヒッキー、よ、良かったね!」

    ありがとうガハマちゃん、でもね、僕そんな引きつった笑顔じゃなくていつもの笑顔が見たいなぁ。

    一色「先輩……キモいです」

    みなまで言うな。キモい方の俺が戻ってきてしまったんだからよ。

    川崎「あんた……まずよーく自分の姿を見てみなよ」

    そうだな、部分的に別物とか、指が6本あるとか、キメラちっくなことになってたら怖いもんね。

    改めて確認すると顔にも体にも問題はないように思える。おかえり、もう一人の僕!

    ただし、冷静になってみたらある違和感に気づいてしまった。

    比企谷八幡は現在、総武高校の制服を着ている。





    『女性用』の。




    八幡「……」

    変態だこれ!?あれだよ!略して変これ!みたいな!?

    神様「その程度の辱めで済んだこと、感謝するんだね」

    あ、どうも神様、その節は御馳走様でした。でも、オプションサービスとか付けて欲しかったです。
    具体的には服とか服とか服。

    八幡「お、おい大志、頼む、一生のお願いだ!服を貸してくれ!」

    大志「嫌っすよ!上はともかく下はヤバイっす!」

    バカ野郎お前、まさに今俺の下半身の見た目がヤバイだろうが!
  37. 37 : : 2015/08/01(土) 17:02:31

    ~一方その頃~

    海老名「!新たな可能性の開花!」

    三浦「?あー、とりあえずチーンしろし」

  38. 38 : : 2015/08/01(土) 17:03:38
    悪寒を感じつつも大志の服をはぎ取ろうとしていると最悪のタイミングで悪魔が降臨した。

    陽乃「あら、静ちゃんに聞いてきてみたら、思ったより数倍面白いことになっちゃってるねぇ」

    この人なんでこう絶妙なタイミングで現れるんだろう。やっぱりもう黒幕でいいんじゃないかな?

    陽乃「お、おめでとう比企谷ちゃん、も、元の姿に戻れたんだね、あは、駄目、お腹痛い!」

    姉さん、笑いすぎです。いや、まぁ思いっきり事案発生って感じの格好ではあるわけですが。

    ピロリーン

    待って、今誰か俺の新しい黒歴史を保存しなかった?

    陽乃「おー、かわいいかわいい、雪乃ちゃんも撮ったら?」

    雪ノ下「絶対に嫌よ」

    由比ヶ浜「だ、だよね~、あはは」

    だったらなんでスマホこっちに向けてるんですかね?

    一色「これはいいネタになるかもしれません、キモいですけど」

    脅迫する気だよこいつ、くっ!いっそ殺せ!

    川崎「けーちゃんに見せたら喜ぶかな」

    妹絡むとほんと頭のネジ外れますねサキサキさん。

    制服少女俺、見るに見かねた雪ノ下に許可をもらい、同宅へ避難。衣服の到着を待つこととなったのであった。
  39. 39 : : 2015/08/01(土) 17:05:42





    翌日から、さも当然のように平穏な日常が戻ってきた。

    いつものように登校し机に突っ伏して周りの様子を伺う。

    ちなみに、神様、本当にアフターケアは一切してくれなかったようで、
    皆の記憶から比企谷八子の存在が忘れ去られているということはなかった。

    三浦「八子もさぁ、何も言わないで転校とかちょっとなくない?」

    戸部「それなー、寂しさMAXっしょ」

    大岡「……」

    大和「元気出せよ、な?」

    何だよそのリアクション。鳥肌止まらないんですけど。

    由比ヶ浜「いやー、なんかもう急だったって聞いたよ、皆によろしくだって」

    由比ヶ浜がやんわりフォローを入れてくれていた。
    ちなみに、八子ちゃんは携帯持ってない系女子という設定を貫いたため余計な面倒は起こらずに済みそうである。

    戸塚「八幡!退院おめでとう!新学期早々大変だったね」

    八幡「お、おう。心配かけたな」

    元に戻れて良かった、本当に……良かった。

    戸塚「お見舞いも出来ないっていうから本当に心配したんだよ!」

    拗ねてる戸塚超可愛いとかいちゃついていると背後にイケメンオーラをかんじた。

    葉山「退院おめでとう、もう大丈夫なのか?」

    八幡「ああ、まあな」

    短い間だったとはいえ、リア充の片鱗を見せつけられた身としてはキラキラオーラが一層うっとおしい。

    葉山「もし差し支えなかったら、八子さんに伝えてくれないか、由美子達が寂しがってたってさ」

    女王様、なんだかんだで優しいですよね、優良物件だと思いますよ、あなたにとって。

    八幡「そういうことは由比ヶ浜に言え由比ヶ浜に、あいつ仲いいぞ」

    葉山「従兄妹の君よりもか?」

    八幡「当たり前だろ」

    苦笑いする葉山をあしらっているとHRのチャイムがなった。

    平塚「比企谷八子の事は残念だ、変わりといっては難だが、比企谷八幡がクラスに復帰する。」

    ほんのちょっとだけ教室がざわついた。変わりといっては難ですね、本当に。

    平塚「二年から同じクラスの者も、そうでない者もよろしくしてやってくれ」

    「誰?」

    「あー、あれ?」

    「気付かなかった」

    懐かしい反応だ、感動のあまり涙が出そう。
  40. 40 : : 2015/08/01(土) 17:08:14
    少し賑やかになった部室も元の姿だとなんだか新鮮な気がした。

    小町「いやー、一時はどうなることかと思ったねー、ちょっと残念だけど」

    大志「ほんと、良かったっすね、お兄さん、元に戻って」

    八幡「おう、ありがとうな、お前はもう帰っていいぞ」

    大志「部員、俺も奉仕部部員っす!」

    川崎「あんた、また大志にそういう……」

    八幡「じょ、冗談だって」

    お前は冗談じゃないトーンの物言いだな、怖いって。

    一色「これでまた色々とお手伝い、お願い出来ますね」

    もう当然のように部室にいるなお前。

    八幡「いや、女になってた時も普通に手伝ってたじゃねぇか」

    一色「まぁ、そうですけどー、戻ったからにはもっと高度なお願いも」

    スマホ片手に悪戯な笑みを浮かべる後輩。人質とかまじひどくない?

    雪ノ下「それで、クラスでは問題なく過ごせそうなのね」

    由比ヶ浜「うん、二年生の時と同じ感じ。良かったね!」

    八幡「ああ、戸塚がいてくれる日常の素晴らしさ、改めて実感したな」

    由比ヶ浜「ああ、まぁ、うん、良かったね」

    材木座「ふむ、重畳重畳」

    八幡「お前いたのか」

    材木座「然り、通い詰めて幾星霜、ようやく貴殿と再び邂逅出来たのだ、さ、寂しかった訳ではないぞ!」

    いらねぇよそんなツンデレ。というか八子ちゃんモードの時に全く見かけなかったぞお前。

    材木座「ここに来ても八幡はいないわ、知らない女子は増えているわで毎日部室を覗いては去り覗いては去り……」

    ああ、勇気がなくて入れなかったのな。傍から見たらストーカーみたいで怖いよマジで。
  41. 41 : : 2015/08/01(土) 17:10:39
    八幡「……悪いんだけど、今日はこれで上がっていいか?」

    もうちょっとしたお茶会みたいになっちゃってるし、特に依頼もないようだしな。

    と、席を立とうとすると皆の視線が一身に注がれる。あ、あれ?なんか空気変わった?

    雪ノ下「あら、てっきり昨日の事について説明してくれるのかと思ったのだけれど」

    八幡「な、何か問題がありましたでしょうか?」

    個人的にはけっこうファインプレーだったと思うんですけども?幸い罰も当たってないし。

    小町「夕御飯の買い物なら小町が行くけど?」

    嬉しそうな顔だなぁ。そうな、買い物って楽しいよね。

    川崎「……」

    そっぽを向く赤サキサキ。

    一色「責任、とってくれるって言ったじゃないですか」

    待って、そんな約束してないから。

    由比ヶ浜「けっこう頑張ったんだけどなー、あたし」

    なんかリスみたいに頬を膨らませる由比ヶ浜。そんなに膨らまなくても十分豊満じゃないですかあなた。
  42. 42 : : 2015/08/01(土) 17:11:56
    雪ノ下「……」

    八幡「……」

    何を言っても言い訳くさくなってしまうなら、男には二言どころか一言もいらないと思う。
    決して怖くて何も言えない訳ではない。

    雪ノ下「まぁいいわ。用事、あるのでしょう?」

    八幡「ああ、悪いな」

    由比ヶ浜「ゆきのん!」

    雪ノ下「いいのよ、別に急ぐようなことではないのだし」

    雪ノ下はそういうと椅子に腰を落とし、髪を整えた後に手にした本に視線を落とす。

    流れるような動作に目を奪われ、彼女の目が文字ではない何かを追っている事にはきっと気がつかなかった。
    救われるためには救わなければならないなんて善の押し付け合いはいらない。きっと救われるのは足元だけだ。

    まるっと全部救われるにはどうすればいいのか、せっかくだし聞いてみてもいいのかもしれない。
  43. 43 : : 2015/08/01(土) 17:15:52

    例の祠に俺のとっておきをお供えすると、どこからともなく女の子の姿をした神様がご登場である。

    神様「よくものこのこと顔を出せたものだね」

    言葉とは裏腹に無邪気な笑顔で俺を迎える神様。

    八幡「この度はもう一人の俺が大変ご迷惑をおかけしました」

    あれは俺ではなく私である。故に俺は悪くない。

    神様「全くだよ。神を手篭めにしようだなんて人にあるまじき行為だね」

    八幡「何をまた……掌で踊る奴が軽く甘噛みしたみたいなものでしょう」

    せいぜい不思議な踊りくらいしか踊れないがMPが削れるなら十分ですよね。

    神様「ふふ、でも良かったのかな?初めてが私で」

    八幡「人でない方とのキスはうちの猫で済ませてますので」

    超嫌がられた上に、思いっきり引っかかれて以来、かまくらとは冷たい関係が続いている。

    神様「猫ちゃんと同格かぁ、なんとも光栄だね」

    くすくすと笑いながらも、改まった俺を見て神様は続ける。

    神様「さて、別に美味しいお供え物と追加の願い事って用事でもないんでしょう」

    八幡「ええ、まぁ、そうですね」

    お供えしたMAXコーヒーとは別にもう一本持ってきた自分用のものを飲みながら軽い様を装って口を開く。



    八幡「願い事、叶えてくれてありがとうございます」

    神様「まぁ、なんか色々とごめんね、ドジッちゃってさ」

    八幡「神様、願い事って口にしなくても強く願えば届くものなんですよね?」

    神様「まぁ、少なくとも私にはね。叶えるかどうかは気分次第かな」

    八幡「それなら、最初の俺の願い事、間違えることはなかったんじゃないですか?」

    主夫だろうが主婦だろうが、思いが本物なら性別も含めて正しく願いは叶えられた筈だ。
    神様が前に言うように第三者が関わる願いはちょっと……って話ならそもそも俺の最初の願いはノーカンで良かったのだ。
  44. 44 : : 2015/08/01(土) 17:21:05
    神様「……」

    八幡「最終的に戻してくれるって前提の、いわゆる神の気まぐれってやつだったんでしょうか?」

    神様「あら、バレちゃった?」

    わざとらしく頬をかきながらおどける神様はなるほど人間くさい。

    八幡「……」

    神様「冗談はさておき、本当の願い事なら勿論届いただろうね、叶えるかどうかは気まぐれだけど」

    俺を真っ直ぐに見据えて神様が続ける。

    神様「人ってものは本当に奥ゆかしいものでさ、口に出さない願いにもいくつも段階があったりするよね」

    神様「本当はこうなりたいけど、無理だからせめてこのくらいはいいかなーみたいな、ね」

    神様「『このくらい』の願い事を叶えてあげるってのは、なんか微笑ましいんだなぁ」

    神様「一番のとっておきの願い事なんて叶えてあげちゃうと色々とつまらないんだよきっと。違うかな?」

    八幡「そうかもしれませんね」

    神様「だからね、その本当の願い事が叶ったときは神様なんかに感謝せずに自分を誇ったらいいんだよ」

    神様「きっと、人のおかげであれ、偶然であれ、全てひっくるめて君のおかげなんだよ」

    八幡「……そうですかね?」

    神様「だってさ、そもそも君がいなければ、君の願いそのものが生まれないわけだしね」

    八幡「よくわかんないです」

    神様「それでいいんだよきっと」

    なんか平塚先生にも似たような事を言われた気がする。言わんとするところは全然別だろうけれど。

  45. 45 : : 2015/08/01(土) 17:23:15
    神様「さ、どうせ人もそう通りはしないけど、お地蔵さんの前で独り言、あんまりいい図ではないよね」

    八幡「そうですね」

    よくよく考えると地蔵と神様、結びつきがよくわからないな。

    神様「まぁ、子供たちの夢を叶える神って感覚でいいんじゃない?」

    なんか本人なのにアバウトですね、どこまで本当なのかわからないけど。

    神様「だからね、大人の階段上っちゃうと頑張っても会うことは叶わなくなっちゃうの」

    なるほど、リア充には神様なんて必要ないってことですね、わかります。

    神様「だから近いうちに、君ともお別れってことだよ」

    八幡「それは専業主夫内定が近いってことですか?」

    神様のお墨付きとか頼もし過ぎる。

    神様「素直じゃないねぇ、君は」

    おかしいなぁ、目の濁り以外はピュアピュアでキュアキュアなはずなんですけどね。



    神様「本物、手に入るといいね」



    飲み切ろうとして口に含んだMAXコーヒーがキラキラと宙を舞った。
    いや、まぁ、神様に隠し事なんて通じないんだろうけど、恥ずかしいから口にするのはやめて欲しかった。

    神様「罰だよ、罰」

    そう言ったっきり、もう神様は見えなくなっていた。

    もう会うこともない気がするけれど、改めてお願い事をすることにした。



    今度会うときは、例の紐、着用してきてください。



    俺の青春ラブコメの行方は神のみぞ知る~Fin~
  46. 46 : : 2015/08/01(土) 17:26:14
    以上です。

    書いてて楽しくはありましたが、蛇足が多い気もしましたね。
    長文にお付き合いくださりありがとうございました。

    原作の続き、楽しみですね!
  47. 47 : : 2015/08/02(日) 08:36:11
  48. 48 : : 2015/08/02(日) 17:07:42
    おお。>>1の作品好きです。お疲れ様でした。良かったです。
  49. 49 : : 2015/08/03(月) 21:17:55
    乙カレー
    見てて楽しかった
  50. 50 : : 2015/09/07(月) 01:23:01
    神のみぞ知る?
  51. 51 : : 2016/06/12(日) 10:24:49
    なんか後半、神と八幡のラブコメを期待した俺がいる...
  52. 52 : : 2016/06/12(日) 10:25:18
    なんか後半、神と八幡のラブコメを期待した俺ガイル...
  53. 53 : : 2016/06/16(木) 00:48:28
    お疲れ
    楽しかったが
    八幡が女のままで戸塚と結婚ルートはなかったのかww
  54. 54 : : 2016/06/22(水) 21:10:27
    戻る前の八幡って女だから異性とのキスはつまり男とキスってことじゃないんですかぁ?()
  55. 59 : : 2016/12/26(月) 00:47:33
    >>54
    ?「ハヤ×ハチ?!キターーーーー!」ブシャァァ
  56. 60 : : 2017/11/30(木) 16:54:30
    >>59
    ?「擬態しろし」
  57. 61 : : 2018/03/04(日) 12:17:39
    面白かった(^^)
  58. 62 : : 2018/08/21(火) 23:40:46
    よかった
  59. 63 : : 2018/08/21(火) 23:41:02
    本当に
  60. 64 : : 2018/08/21(火) 23:41:35
    ナイス
  61. 65 : : 2018/08/21(火) 23:41:54
    あー
  62. 66 : : 2020/09/28(月) 11:19:42
    高身長イケメン偏差値70代の生まれた時からnote民とは格が違って、黒帯で力も強くて身体能力も高いが、noteに個人情報を公開して引退まで追い込まれたラーメンマンの冒険
    http://www.ssnote.net/archives/80410

    恋中騒動 提督 みかぱん 絶賛恋仲 神威団
    http://www.ssnote.net/archives/86931

    害悪ユーザーカグラ
    http://www.ssnote.net/archives/78041

    害悪ユーザースルメ わたあめ
    http://www.ssnote.net/archives/78042

    害悪ユーザーエルドカエサル (カエサル)
    http://www.ssnote.net/archives/80906

    害悪ユーザー提督、にゃる、墓場
    http://www.ssnote.net/archives/81672

    害悪ユーザー墓場、提督の別アカ
    http://www.ssnote.net/archives/81774

    害悪ユーザー筋力
    http://www.ssnote.net/archives/84057

    害悪ユーザースルメ、カグラ、提督謝罪
    http://www.ssnote.net/archives/85091

    害悪ユーザー空山
    http://www.ssnote.net/archives/81038

    【キャロル様教団】
    http://www.ssnote.net/archives/86972

    何故、登録ユーザーは自演をするのだろうか??
    コソコソ隠れて見てるのも知ってるぞ?
    http://www.ssnote.net/archives/86986

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