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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

進撃のウォーキングデッド season3 ep5 孤独な王

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  1. 1 : : 2015/04/12(日) 20:13:51
    前回の続きです。
    http://www.ssnote.net/archives/32930
  2. 2 : : 2015/04/12(日) 20:48:23

    変化。

    それは突然訪れる。

    何かがきっかけで、今まで何とも思わなかったものが敏感に感じられたり
    趣向が全く別のものになったりする。

    多くの場合は劇的なきっかけや、外的な刺激によるものが多い。










    「であるからして…今回のマーケットでは、利益率よりも集客数を優先したいと…」

    高層ビルの20階、会議室でスピーチするのは30代半ばの男性。
    綺麗に七三に分けられた前髪と長身、その品性ある佇まいはできるビジネスマンを思わせる。

    彼、エルヴィン・スミスは中小のIT会社に勤めるサラリーマンである。

    特に突出したスキルはないが、どの分野でも幅広くそれなりの結果を出す
    よく言えばユーソリティ、悪く言えば器用貧乏。
    どこにでもいる一般的な男性だ。

    しかし、彼には同僚も羨むあるものを持っていた。

    円満な家庭。美しい妻と、可愛らしい娘は何よりの自慢である。




    エルヴィン(今回のプランは我ながら爪が甘かったな…痛いところをお偉方に指摘されてしまった。)

    退社時間が迫る中、議事録をまとめるためデスクに取り掛かる。

    「エルヴィンさん、後は我々に任せてください。奥さんと娘さんが待っているでしょ?」

    エルヴィン「いや、ここまでは自分で仕上げたいんだ。君達は先に帰りたまえ。」

    「参ったな。先輩が全部片付けてしまうと、我々の仕事がないですよ。」

    部下は苦笑いをし、先に退社していった。
    彼は下の者からも信頼が厚く、きさくな性格なため良く慕われていた。



    Truuuu…

    エルヴィン「やあ、どうしたんだい。」

    「まあ、やあだなんて。もし相手が違ったらどうするつもり?」

    エルヴィン「間違えないさ、君からの電話は感じでわかる。」

    「甘い台詞はその辺にして頂戴。今日のお帰りは’いつ?」

    エルヴィンはそうだな…と呟くと、左手の腕時計を見た。
    ロレックス、そのブランドの中では高額の類ではないが、妻からの昇進祝いであり何よりも大事にしている。


    エルヴィン「8時前には帰れると思うよ。」

    「そう、今晩はローストビーフを拵えたから寄り道は厳禁よ。」

    エルヴィン「それは楽しみだ、ところで私達の天使は?」


    「ガサガサ…パパー、今日はママとお使いに行ったよ。」

    エルヴィン「おお、偉いじゃないか。君は本当に聡明だね。」

    思わず笑みが零れる。この声を聞けば、1日の疲れも吹っ飛ぶと言うものだ。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    エルヴィン(思ったよりも捗ったな…7時には着きそうだ。)

    自宅がある駅に着き、時計を眺める。

    エルヴィン(そうだ、娘に何か買ってやろう。その位の時間はあるだろう。)

    方角を自宅から一変し、繁華街へと向かう。


    ワァァァ…

    エルヴィン(何やら騒がしいな…まぁこの時間はいつもの事か。)

    どうせ若者同士の喧嘩だろうと、気にすることはなかった。


    エルヴィン(ぬいぐるみか、テディベアがいいかな。)

    ドサッ

    不意に目の前に血まみれの女性が倒れこんだ。
    何事かと思い、すぐに駆け寄る。

    エルヴィン「大丈夫ですか?!一体何が…」

    女性の状態を起こして気づいた。
    その”異常”に。


    ゲアッ、ガァァァ!

    エルヴィン「ひっ…」

    思わず後ずさりをする。
    体のあちこちが警鐘を鳴らしている、しかし恐怖心から立ち上がる事ができない。


    ガァァァァァ!!

    エルヴィン「う、うわぁぁぁ!」

    タンッ!

    あわや飛びつかれる寸前、目の前に鮮血が舞った。


    「大丈夫か、アンタ?」

    エルヴィン「あ、あなたは警官ですか?これは一体…」

    我を取り戻して気付いた。
    街のあちこちで怒声と悲鳴が上がっているではないか。
  3. 3 : : 2015/04/12(日) 21:23:20
    「俺は警官ではない…詳しくは聞くな。それよりこの街はもうお終いだ。”狂人”が蔓延ってやがる。」

    年は自分と同じくらいか、やけに鋭い顔つきをしている男が言った。

    エルヴィン「狂人…?」

    「ああ、奴ら手当たり次第に人間を襲ってやがる。噛みつかれたら一巻の終わりだぞ。」

    そう言いながら、マガジンを取り出し新しいものに装填した。

    「アンタ、家族はいるのか?いるなら早くここから連れ出せ、できるだけ遠くに行くんだ。」


    (今日のお帰りはいつ?)

    (パパー)


    エルヴィン「ッ!」

    二人の顔が脳裏によぎる。
    立ち上がると、一目散にかけて行った。



    「おい、落としたぞ!…まぁこんな状況で落としモンもクソもないか…」

    彼はエルヴィンのIDを拾い上げ、そう呟いた。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    エルヴィン「ハァ…ハァ…!」

    全速力で街中を駆ける。途中襲われる人間を何度も見たが、全て目を瞑った。

    エルヴィン(頼む…無事でいてくれ!)

    商店街を抜け、見覚えのある道に出る。


    エルヴィン「!」

    数100m先に、最愛の二人の姿が見える。
    状況に気付き、荷物をまとめていたのだろう、必死に夫の姿を探している。


    エルヴィン「こっちだ、マ…!」

    言いかけた瞬間、二人を人の波が襲った。
    逃げ惑う人々の大波に、あっという間に呑まれて姿が見えなくなった。

    エルヴィン「待ってくれ!俺はここだ!!」


    「逃げろ、奴らが来たぞ!!」

    「や、やめて!あ、あぁ!!ぎゃあぁぁぁぁ!!!」

    すぐさま狂人の集団が追いつき、あっという間に近くの人々を喰らっていく。


    ラァ、ギィアアアアア!

    エルヴィンもその対象になり、こちらに数体が向かってくる。

    エルヴィン「…どけよ。そこを、どけえぇぇ!」

    足元に転がっていた鉄パイプを拾い上げ、狂人達に振り被った。











    エルヴィン「…」

    それからの数十分は記憶にない。
    返り血を身体中に浴び、足元には滅多打ちになった狂人が何体も転がっていた。

    エルヴィン(どこだ…二人はどこだ…?)

    満身創痍の状態で足を引きずり、必死に集団が駆けていった後を追う。

    エルヴィン(今、今行くよ。早くここから逃げ出そう、そして…)






    グチュ…ブチュリ…ズチュ、ズチュ…
    うう…う、あ…
    ギィア、ガガガガ!!


    彼の目の前に広がったのは残酷な光景だった。
    幹線道路のおよそ1km以上にわたり、地面が真っ赤に染まっている。
    あちらこちらで悲鳴がし、止み、聞こえてくるのは咀嚼の音だけ。

    そう、その場に立ち上がっているのは狂人のみ。

    エルヴィン「…ハハ…ハハハハハハ!!」

    皮肉にも美しすぎる夕焼けを仰ぎ、笑い声をあげる。
    何も面白くない、ただそうせずにはいられなかった。

    この瞬間、エルヴィン・スミスは死んだ。

    ーーーーーーーーーーーーーーーー

    ハンジ「その後はご存知の通り。私と出会って、あなたが合流して。」

    ゲルガー「…そいつは知らなかった。なんとも酷い話じゃねぇか。…くそっ、嫌な事思い出しちまったぜ。」

    ハンジ「その状況じゃ、◯◯と◯◯もバイターの餌食になっただろう。直接確認したわけじゃないけど、彼はそう言ってた。」

    理想郷、研究棟の一室。
    幹部の二人は、テーブルに向かい合っていた。

    ハンジ「私にその話をしたって事は、その時はまだ二人の事を覚えていたって事だ。」

    ゲルガー「ああ、少なくともこの間の襲撃の前あたりまでは。感慨に耽って写真を眺めている事もあったからよ、間違いねぇ。」

    ハンジ「 ”存在”そのものが抜け落ちているね。記憶という不鮮明なものならまだしも。」

    ゲルガー「…で、お前の見立てはあのサシャって子が、ガバナーに◯◯を思い起こさせてるって訳か。」

    ハンジ「モヤがかかってる状態だけどね。何かが起きてるよ、ガバナーの心の中で。」



    ハンジ(さて。サシャはガバナーにとって光になり得るか?それとも…)
  4. 4 : : 2015/04/16(木) 08:47:15
    期待です!!!
    すごく楽しみです!
  5. 5 : : 2015/04/16(木) 23:31:31
    FOXさん

    ありがとうございます!
  6. 6 : : 2015/04/17(金) 00:00:36
    刑務所に再び不穏な空気が走った。
    ガバナーがまた時間と場所を指定し、会合を申し込んできたのだ。
    自ら出向いたガバナーに皆疑惑の目を向けたが、その話し合いが始まっていた。

    エルド「話くらい聞いてやるべきだ。現に彼は、今回も丸腰で現れたろ?」

    ライナー「いや…どうもキナ臭いぞ。あいつの顔を見たか?裏がなさすぎて寒気がした。」

    ハンネス「しかし、今回の条件が何よりのネックじゃないか。」

    エルド「まぁ…確かにそれは俺も思うところがある。」


    ミカサ「会合にはエレンの他に、サシャも同行させる。これは意味がわからない。」

    ガバナーは帰り際にはっきり言った。
    サシャにまた会いたい、と。

    コニー「ガバナーはロリコンの気があるのか?」

    ナナバ「いいや、イカれた男だけどそう言った趣向はないはずだよ。今回は私のことも、眼中にないといった感じだったね。」

    ライナー「どうする、エレン?」

    エレン「言うまでもない、また何かの企みに決まってる。」

    エルド「そうやって、最初から決めつけるのが俺は嫌なんだ!」

    ライナー「お前は実の妹を危険に晒せるのか?正気の沙汰とは思えん。」

    二人はまたもや一瞬即発の状態になる。

    ハンネス「いい加減にしないか、お前達!」



    サシャ「あのっ!」

    サシャ「私、行きますよ。あの人は大丈夫な気がするんです。」

    思いも寄らない発言に誰もが注目する。

    ユミル「サシャ、本気か?」

    サシャ「はい、お話くらいなら全然…」

    ユミル「気を使っているつもりならやめとけ。お前を大人のゴタゴタに巻き込みたくねぇ。」

    サシャ「…この世界ではもう、大人や子供なんて関係ないですよ。私も15です、自分の事は自分で考えたい。」


    エルド「ここは本人の意思を尊重してくれないか。話し合いで済むなら、それが一番だと俺は思う。」

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    その後、反対派の意見も半ばエルドに押し切られるようにして意見がまとまった。

    会談にはエレン・サシャの他に、護衛としてライナー・エルドも同行する事となった。





    ユミル「気に食わねぇ。」

    コニー「何がだよ?」

    二人は監視棟に住を構え、話し合いの後も愛しあっていた。
    事を終え、服を着始めたコニーにぼやく。

    ユミル「さっきのあいつの発言だよ、”自分の事は自分で決めたい”だと。ガキが調子に乗りやがって。」

    コニー「言ってやるなよ、お前にもそういう時期があったろ?」

    ユミル「…私はな、こんな世界だからこそ年相応にあるべきだと思う。サシャとはよく当番も一緒になるし、妹分みたいなモンなんだ。」

    コニー「…」

    ユミル「何だよ?」

    コニー「いや、なるほど。その考えはすごいと思うぞ、純粋に。」

    コニーは何かを考え込むように、宙に視線を泳がせた。

    コニー「うん、うん…そうか、そうだよな。」

    ユミル「だから何だってんだよ?」

    コニー「ちょっとミカサん所行ってくるわ。…当番代わってもらって…」

    そう言うなり、彼はそそくさと階段を降りていった。



    ユミル「相変わらずロマンのねぇ奴だ、少しは余韻ってもんがあるだろうよ。」
  7. 7 : : 2015/04/17(金) 01:00:55


    ガバナーが待ち合わせに指定した場所は、周りを森林に囲まれた小屋であった。

    ライナー「奴らは先にご到着か。気を付けろよ、何があるかわからん。」

    車を降りると、ゲルガーがバットを弄ぶようしして待ち構えていた。思わずライナーの眉が釣り上がる。

    ゲルガー「いらっしゃい、歓迎するぜ。だがこの先はそっちの二人だけだ。」

    エルド「待ってくれ、俺はこの子の兄だ。俺も同席させてもらう。」

    ゲルガー「そいつは認められねぇな。3対1とあっちゃ、何かあったら事だからよ。」



    「構わないよ、彼にも来てもらおう。」

    扉の奥からガバナーが現れた。

    ガバナー「ようこそ、このような薄汚い場所で申し訳ない。」

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    ミカサ「しかし自分から当番を代わるとは感心した。最近のあなたは、不摂政な生活が続いてるようなので。」

    調達の当番を代わってもらったコニーは、運転中落ち着きなく辺りを見回していた。

    ミカサ「キョロキョロしない。前を見て運転しなさい。」

    コニー「あ、あぁ。悪い。」

    今回の調達地は、田舎町にしては栄えていた。
    酒屋、ドラッグストア、スーパー。廃れてはいるものの、一列に様々な店が並んでいる。
    が、それだけに危険は伴う。




    ミカサ「では物資が集まったらここに。遠くには行かないで。」

    コニー「おう。」



    調達を先に済ませると、お目当ての物を探し始めた。
    何件も角を曲がり、それらしき店を探す。

    コニー(こんな世界だ、店があれば商品は無事なはず…そんな酔狂な奴はいない。)

    コニー(あった…!)

    立ち止まった先の看板には、かすかにJewelryの文字が。
    そう、宝石店だ。


    しかしコニーは、心の焦りからか、安全も確認せずに中に入った。



    コニー「…」

    コニー「おい…おいおいおい!!」

    ショーケースは無惨に割れ、中の物は根刮ぎ持ち去られた後だった。

    コニー「ねぇちょっと。マジ?なんかないのかよ。」

    カウンターの中まで潜り込み、手探りで棚の下を探る。


    コニー「おっ。」

    出てきたのは都合よくペアリングの箱だった。
    装飾もなく、サイズも選べない。実に味気ないが、この状況では文句は言えまい。

    コニー「…すみません。頂いていきます。」

    盗みという行為が後ろめたくなったのか、事務所のドアに向かって頭を下げた。


    ガタッ

    コニー「え。」

    ガアァァァ!

    頭を上げた瞬間、不意にドアが開きウォーカーが飛び出してきた。

    コニー「ちょっ、ちょっと待って…」

    銃やナイフを取り出す間もなく、組みつかれ押し合いになる。
    とっさの事に反応できず、みるみるウォーカーの顔が迫っていく。


    コニー「や、やめろ!!これ、マジで洒落になんねぇって!」

    コニー「い、嫌だ!あ、あぁぁー!」








    パンッ!

    噛みつかれる寸前、鮮血が舞った。

    コニー「ミ、ミカサ…」

    ミカサ「呆れた。全くあなたは…移動中よそよそしいから、おかしいと思ったの。」

    ミカサ「コニー、私達は友達でしょ?隠し事はやめて。」

    6つ上のミカサにたしなめられ、シュンとするコニー。
    しかし彼女の追求は終わらず、更に詰め寄ってきた。

    ミカサ「そうまでして手に入れたい宝石って何。見せなさい。」

    コニー「その…これです。」

    ペアリングの箱を差し出す。

    ミカサ「これ…もしかしてユミルに?」

    コニー「あぁ。こんな世界だからこそ、筋を通したいと思って。」


    コニー「でもなぁ、結婚指輪にしては安っぽいよ。サイズだって合うかどうか。」

    ミカサは面食らった顔から一転、微笑んだ。

    ミカサ「問題ない。好きな人からなら、どんな物をもらっても嬉しい。私もそうだった。」

    コニー「エレンか?」

    ミカサ「ええ。指のサイズを、さり気なく測ろうとする辺りバレバレで…でもプロポーズの時は感動した。」

    コニー「…そういうもんかな。」

    ミカサは「そうよ、しかしあなたには驚かされる。無断行動は褒められたことじゃないけど、男としても成長したわね。」

    コニー「やめてくれよ、照れるじゃんか。まるで姉貴みたいだ。」

    ミカサは「実際私はお姉ちゃん。何でも聞きなさい。」


    コニー「じゃあさ、一つ教えて欲しんだけど…」
  8. 8 : : 2015/04/23(木) 19:59:30
    早く書いてください
  9. 9 : : 2015/04/23(木) 21:19:29
    ーーーーーーーーーーーーーー

    小屋の中にはテーブルが一つだけ。
    ガバナーの向かいに二人は腰掛け、エルドは側に立った。

    ガバナー「先に言っておくが、私は丸腰だ。外の連中にも手出しはさせない。」

    エレン「お前の言うことは信じられない。」

    ガバナー「やれやれ、随分と嫌われたものだ。」

    余裕たっぷりの含み笑いが、逆に不気味さを増す。

    エレン「話の内容は?」

    ガバナー「そうだね。…サシャ、君と話がしてみたかったんだ。」


    エレン「はぁ?」

    サシャ「私、ですか?」







    小屋の前の開けた道で、ゲルガーとライナーは見張りをしていた。
    他の理想郷組は、周辺を警戒している。

    ゲルガー「…」クチャクチャ

    ライナー「…」

    このゲルガーには因縁があった。
    理想郷に連行された際、手荒く殴られボウガンを奪われたのだ。



    ゲルガー「お宅のリーダーはお人好しだな。わざわざ呼び出しに答えるたぁ。」

    ライナー「ガバナーに比べたらマシだ。裸の王様よりかはな。」

    ゲルガー「ま、そいつは言えてる。」

    ライナー「何だ、自分達の頭だろ?」

    ゲルガー「そりゃ…ん?」


    前方からヨロヨロと二体のウォーカーがやってきた。

    ゲルガー「はっは!獲物だ、お前はすっこんでな!」

    ライナー「馬鹿言うな、お前こそ指でもしゃぶってろ。」

    お互い一歩も譲らず、前に出る。

    ゲルガー「そぉーら!!」

    バットをヌンチャクのように振り回すと、その勢いで頭部を破壊した。

    ゲルガー「お次ィ!」

    ヒュン、ガッ!

    ライナー「…」

    ゲルガー「へぇ…中々やるじゃねぇか。」

    ライナー「お前もな。あの体捌きは軍人だろ?」

    ゲルガー「元な。そっちも似たようなもんだろ?一度染み付いた匂いってやつは、そう簡単には消えない。」

    彼は近くのタンクに腰掛けると、タバコを取り出した。

    ゲルガー「吸うか?」

    黙って火を受け取る。
    お互い因縁はあっても、同類にしかわからない何かがあるのだろうか。


    ゲルガー「さっきの話だが、うちの頭はどっかイカれてる。ネジがぶっ飛んじまってるんだろうな。」

    ライナー「では何故付き従う?」

    ゲルガー「聞くなよ、わかってんだろ?」

    すると、煙を長めに吐き出しながら続けた。

    ゲルガー「人同士争うなんて、馬鹿げてるのにな。」


    ライナー「あぁ…そうだな。」
  10. 10 : : 2015/04/23(木) 21:46:26


    ガバナー「そうか、私はねどっちかというと猫の方が好きかな。」

    サシャ「私もです、あのツンデレ感がたまりません!!」

    小屋の中ではとても穏やかな会話が続いていた。
    それを見守る男が二人。一人はやはり、と優しい目で見守り、もう一人は訳がわからない、といった目で見ていた。

    奴は一体何を企んでいるのか。
    この間までは殺し合いだなどと揉めていた狂人が、今はどこにでもいる男に思えた。

    サシャ「あなたには、家庭がありますか?」

    ガバナー「いや、生憎独り身でね。君にはお兄さんがいて羨ましいよ。」

    エルドに会釈をしてみせる。

    エルド「この子の身内は俺だけじゃない。エレン達もその一員だ。」

    ガバナー「そうか…」

    それを聞くと、彼はどこか遠い目をした。


    サシャ(まただ…この人はまた悲しげな目を…)

    サシャ「血の繋がりは無くても、あなたにも仲間がいますよね?」

    ガバナー「どうかな…私は、彼らを縛り付けているのかもしれない。むしろ恨まれているかもね。」

    サシャ「では、何故あなたの所に人が集まるのでしょうか?」

    ガバナー「え?」


    サシャ「どんな理由があれ…あなたの何かに惹きつけられて、みんな集まるのではないでしょうか?」

    サシャ「じゃなきゃ、今頃あなたは一人ぼっちのはずです。」

    反感を持っているエレンですら、サシャの意見には引き込まれた。


    ガバナー「…ありがとう。」


    ガバナー「さぁ、そろそろ陽も落ちる。帰ろうか。」

    エレン「待て、お前は今後どうするつもりだ?ナナバの件もある、不可解で仕方がない。」

    ガバナー「今日はそういった気分ではない。少なくとも、誰かと争うようなね。」

    エルド「その話は今はいいだろう。何もなかった、それでいいじゃないか。」

    するとガバナーは、エルドとサシャを交互に見やり言った。


    ガバナー「…君達さえ良ければ、私の所で暮らさないか?」

    サシャ「え…?」

    エレン「何だと?」

    ガバナー「これは強制ではない、提案だ。考えてみたまえ、サシャのような少女には環境が必要だ。安全に育てる環境がね。」

    エレン「理想郷が安全だって?冗談も休み休み言えよ。」

    このまま言い合いになるかと思われたが、ここでのガバナーの対応は違った。

    ガバナー「もちろん、今までのエレン達との付き合いもある。答えはすぐでなくとも構わない。」

    ガバナー「そうだね…また三日後、同じ時間にここで。」


    エルド「…わかった熟考しよう。提案に感謝する。」

    エレン「エルド?!何を…」

    ガバナー「ではまた。いい返事を待っているよ、サシャ。」

    サシャ「はい…」

    狼狽するエレンと対照的に、涼しげにガバナーは去っていった。
  11. 11 : : 2015/04/27(月) 22:10:35

    〜〜

    刑務所に戻ってきたものの、エレンの心中は決して穏やかではなかった。
    サシャとエルドの勧誘、トゲのない落ち着いた態度、ガバナーのそれらがエレンを一層苛立たせた。

    尤も、ガバナー本人にその気はない。

    エルド「俺はあんたらに感謝している。あの時拾われなかったら、今頃ウォーカーの仲間入りを果たしていただろう。」

    エルド「しかし思うんだ。妹にはより良い環境で育って欲しいと。」

    ライナー「奴の人格をひとまず置いといても、理想郷が良い環境なのかはわからんぞ。」

    エルド「聞いたところによると、壁に囲まれ生活も以前とほぼ変わらないという。ここと比べる訳ではないが…」

    言い分もわかる。義理堅い彼のことだ、恩に対して掌を返すような真似をしたくないのだろう。

    ミカサ「どちらにしても決めるのは貴方達。私達に決定権はないわ。そうでしょ?」

    エレン「…」

    ユミル「サシャ、お前自身はどうしたいんだ?」

    サシャ「私達が行く事でわだかまりがなくなるなら、それで…」


    ガッ!

    ユミル「馬鹿野郎、そんな建前を聞いてるんじゃねぇ!お前の本音はどうなんだよ?!」

    コニー「お、おい!」

    激情し、サシャの胸倉を掴みあげるユミルをコニーが止める。


    サシャ「…たくないですよ。」

    ユミル「あ?」



    サシャ「行きたかぁないですよ!でも他に方法がありますか?!どっちも傷つかず、何も起きないなんて…そんな都合の良い選択が!」

    わんわん泣き始めるサシャを筆頭に、皆の表情が曇っていく。


    エレン「…行かせない。お前らは俺が守る。」

    エルド「エレン?」

    エレン「あの男はやはり信用できない。むざむざ行かせられるか。」

    エルド「待ってくれ、俺たちもまだ腹を決めたわけじゃ…」

    エレン「選択肢はないんだよ、ここに留まれ。」

    半ば脅しに近い形でエルドに歩み寄る。

    エルド「…それが本心か?」

    エレン「…」

    エルド「薄々感じてたんだ。おかしいよ、お前。」


    エルド「行くぞサシャ、荷物をまとめろ。」

    サシャ「え?」

    エレン「聞こえなかったのか?留まれ。」

    エルドの腕を強く握る。

    エルド「…どうやろ実力行使しかないようだな。」

    ガシッ

    エレン「!」

    エルド「おらあぁぁぁ!!」

    エレンを腰から抱え上げると、そのままタックルの要領でフェンスに押し付けた。

    エレン「がっ…」

    元NFL選手のチャージだ、流石のエレンもモロに喰らっては動けない。

    エルド「…」

    背を向けて歩き始めたエルドを、今度はエレンが背後から強襲した。

    エレン「おおお!」

    首元にまとわりつき、押し倒すとそのままマウントに入る。

    ガッ、ドガッ!

    エレン「おおおお!」

    エルド「ぐっ…がっ…」


    タンッ!

    ナナバ「…」

    監視塔からナナバが威嚇射撃をした。
    エレンの動きが止まると同時に、男性陣が抑えにかかる。

    ライナー「それまでだ、殺す気か?!」


    エレン「…!」

    見下ろすと、顔が真っ赤に腫れ上がったエルド。
    ミカサらに肩を貸してもらい、運ばれていく。


    サシャ「…」

    エレン「あ…サシャ、俺は…」

    サシャ「うう…」

    完全に怯えきった表情で、エレンと視線が合うなり逃げ出した。




    ハンネス「これは逆効果だぞ。二人は確実に出ていくだろう。」

    エレン「…いや、俺はただ…」

    ライナー「わかってるのか、お前はエルドを殴り殺すところだったんだぞ?!」

    エレン「…」



    ライナー達が何かを怒鳴っているのはわかる。
    ただ聞こえない。視界は揺れ、一時的な感覚障害になっていた。

    エレン(何だよ…みんな俺に何が言いたいんだよ?)

    訳もわからず、涙を流すことしかエレンにはできなかった。



  12. 12 : : 2015/04/27(月) 22:33:55
    ーーーーーーーーー

    ガバナー「やあ、おはよう。今日も良い朝だね。」

    住民達に愛想を振りまく行為は、最早日常の光景になりつつあった。
    その異変に気付いたのは2名のみ。

    ハンジ「顔に険がない。」

    ゲルガー「ああ、なんか気持ち悪ぃな。」

    彼がこちらに近づいてくるのを見て、たちまち緊張が走る。

    ガバナー「ゲルガー、周囲に異常はないか?」

    ゲルガー「あ、あぁ。問題ねぇよ、調達もうまくいってる。」

    ガバナー「それは何よりだ、君にはいつも面倒をかける。」


    ポン

    ゲルガー「は…?」

    自らを労う行為に拍子抜けする。

    ガバナー「これからもよろしく頼むよ。」

    その後も彼は上機嫌で歩いて行った。



    ゲルガー「…イマイチ腑に落ちねぇけどよ、このまま穏やかな方向に変わっていくのが一番かな。」

    ハンジ「少なくとも、私は研究の方向性を変えなければいけないけどね。」

    ゲルガー「”約束”の根本さえ変わらなければ、どんな形でも俺は受け入れようと思う。」

    ーーーーーーーーーーーーーーーーー

    ダダダダダ!!

    ゲルガー「死ねぇ、死ねよ!!手前らが全てを奪ったんだ!殺してやる、皆殺しだぁぁー!!」

    彼の足元に転がるのは4体の死体。
    どれも無惨に体を千切られ、頭は撃ち抜かれていた。

    ダダダダダ!!

    自分が偵察に、と少し目を離した隙に皆襲われた。
    近親者を失った悲しみ、自らがとどめを刺さねばならなかったやるせなさ。

    それらを全て周囲のウォーカーに、「弾丸」という形でぶつける。

    カチ、カチッ

    ゲルガー「チッ…うぉぉぉぉ!」

    弾丸を撃ちつくすと、ナイフを構え走り出した。
    滅多撃ちのせいで、かなりの数のウォーカーが集まっていたが、御構い無しに突っ込んだ。


    ゲルガー「ああああ!!」

    全てがどうでも良かった。
    何より愛する者たちを失ったこの世界で、最早生きていける気がしない。

    ぶつけるものをぶつけたら、自分もこの世を去るだろう。





    しかし彼の想像は裏切られた。
    けたましい銃撃の音、立ち昇る砂煙りの中から

    その男は姿を現した。

    「大丈夫かい?」

    ゲルガー「ッ!余計な事をすんじゃねぇ、こいつは俺の問題だ!!」

    「おーおー。まるで狂犬だ。」

    傍らの女性が呟いた。

    「そうやって感情のままに全てを吐き出せば、事態は良くなるのか?」

    ゲルガー「…あ?」

    「この世界を壊さないか?そして一から創造を始めよう。」

    言葉も出ない、体も少しも動かなかった。

    全て目の前の男に呑まれてしまっている。その異様さに。



    ゲルガー「お前は…」

    ゲルガー「お前は、誰なんだ?」


    「私かい?私は…」

    ーーーーーーーーーーー

    あの頃からの生き残りは、もう俺とハンジだけ。
    故に「エルヴィン」を知る奴もな、そういうこった。

    だから俺はあいつの言葉を信じてここまでやってきた。

    闇も光も知ったこっちゃない。とことんどこまでも行ってやるよ。

    それが俺を生かしたお前への義理だ。






    「私かい?私の名は、エルヴィン・スミス。」



  13. 13 : : 2015/05/04(月) 01:20:55
    刑務所の広場では、コニーが皆を呼び出していた。
    変に咳払いをし、かしこまるハンネス。ガチガチに緊張しているコニーが切り出した。

    コニー「…あー、本日はお集まり頂きありがとうございます。」

    ナナバ「何緊張してるの?」

    ミカサ(…)

    コニー「えっと、その…」

    ユミル「おい、用が無いんなら私は戻るぞ。洗濯終わってねぇんだよ。

    我先にと背を向け歩き出す。

    コニー「だぁぁぁ!待て、ちょっと待てユミル!」

    ユミル「あんだよ?」

    コニーは一度深呼吸すると、ユミルの目の前で跪き指輪を差し出した。


    コニー「俺と結婚してくれ!」

    ユミル「…あ?」

    何かを言おうとしたが、その前に周りの声に遮られた。

    ライナー「よくぞ言った!お前は男の中の男だ!!」

    ミカサ「ムードもへたっくれもない所が、むしろコニーらしい。」


    ユミル「お、おい。何勝手に祝福ムードに入ってんだよ?!私は…」

    ハンネス「素直になりなさい。」

    ユミル「…」

    照れ隠しで何かをブツブツ言っていたが、コニーの手からぶっきらぼうに指輪を奪い取ると、左手の薬指にはめた。

    ユミル「わかったよ、これでいいんだろこれで!」

    ハンネス「いや、誓いのキスと誓約の言葉がまだだ。」

    ユミル「な、なんだと…」

    ハンネス「今の俺は父ではない。神父だ、従えよ?」

    ライナー「いよっ!キース、キース!!」

    ミカサらも笑顔で祝福の言葉を送る。





    エレン「…」

    椅子に腰掛け、遠目からその様子を眺める。
    今の自分が行ってもムードに水を差すだけだろう。

    あんな事にならなければ、エルド達と祝えたのだろうか?


    そんな事を考えていたら、2人がキスする姿が見えた。

    ーーーーーーーーーーーーーーーー

    サシャ(ユミル…)

    独房の外から式の様子を眺める。
    本当は自分も祝福したかった、しかしユミルに会わせる顔がない。

    何より兄がこんな状態では、一人外には行けなかった。


    エルド「約束の期日は明日だ。すぐに出られるようにしておけ。」

    サシャ「うん…」

    エルド「他の奴はともかく、エレンにはついていけん。俺から言わせれば、あのガバナーより奴の方がよっぽど狂っている。」

    顔の腫れが引かないエルドは怒りを抑えられずにいた。

    エルド「お前の為でもある、俺はなサシャ。ふさわしい環境でふさわしい仲間と生きて欲しいんだ。」

    サシャ「…」

    エルド「まだ15のお前に、銃を持つような生き方はさせたくない。…サシャ?」

    サシャ「…エルドはいつもそうです。私の意見など聞かず、何でも勝手に決めてしまう。」

    エルド「それは違うぞ、俺は…」

    サシャ「私にだって、権利があるはずです!自分の事は自分で決める権利が!!」

    エルドは驚いた。自分に反抗するなど、初めての事であったからだ。

    エルド「サシャ…」

    サシャ「…っ!」

    そこにいられなくなり、思わず独房を飛び出した。
  14. 14 : : 2015/05/04(月) 01:35:29



    ユミル「…」

    (俺と結婚してくれ!)

    嬉しかった。まさかハンネスとグルだとは思わなかったが、しっかり形にしてくれた事が何よりも嬉しかった。

    ライナーやミカサにもみくちゃにされるコニーを尻目に、一旦離れて指輪に触れる。


    ユミル(こんなモン、どっから見つけてきた?刻印もねぇ、飾り気もねぇ。でも私にとっては…)

    ユミル「ん?」

    水道タンクの近くでサシャがうずくまっていた。
    彼女はこちらに気づくと、気まずそうに顔を伏せたが、御構い無しにユミルは近寄った。

    ユミル「エルドは大丈夫か?」

    サシャ「…知りません。」

    ユミル「冷てぇな、唯一の肉親だろ?」

    サシャ「…」

    ふて腐れるサシャの隣にどかっと腰掛けた。

    ユミル「お前の気持ちもわかる。大方、兄貴と口喧嘩でもしたんだろ?私も身内がやけにうっとおしく感じる時期があったからな。」

    サシャ「ユミルにも?」

    ユミル「ああ、ある日素行を母さんに注意されて、うっかり言っちまったんだ。”うるせぇクソババア、死ね!”って。」

    サシャ「でもちゃんと謝ったんですよね?ユミルは優しいから。」


    ユミル「…いや、謝れなかった。」

    サシャ「え?」

    彼女は指輪は握りしめると、空を仰いだ。

    ユミル「次に家に帰った時、母さんは殺されてた。一週間ぶりに会ったのは、血まみれの母さんだった。」

    サシャ「そんな…」

    ユミル「笑っちまうだろ?最後の会話がそれだ、死ぬほど後悔したよ。」

    ユミル「私が言いたいのはだ。身内ってのは何があっても、最後まで自分の味方でいてくれる。うっとおしく思っても、いつも第一に考えてくれる。それが”家族”だ。」

    不意にエルドの顔が浮かぶ。


    ユミル「…ところでそんな私にさ、もう一人家族ができたんだよ。馬鹿で坊主で、どうしようもないけど…大好きなんだ。」

    ユミルの目から大粒の涙が溢れる。


    ユミル「サシャ、お前も祝福してくれるか?私の幸せを。」

    サシャ「…うん。うん…!」

    自らも目頭が熱くなるのをこらえ、必死にユミルを抱きしめた。
  15. 15 : : 2015/05/04(月) 01:47:59
    ーーーーーーーーーーーーー


    本人の自覚はない。二重人格障害という訳でもない。
    ただただ、本来の自我が消えかかっていくのを、”ガバナー”は感じていた。

    ガバナー(私は孤独になることで、”狂気”という力を手に入れた。)

    ガバナー(そう、何かを捨てることで強くなれると。)

    エルヴィン「やあ、おはよう。調子はどうだい?」

    ガバナー(だが今の私は何だ?自らの闇を取り払う事で、必死に保身をしようとしている。)


    羨望、妬み。ガバナーがエルヴィンに対して抱えているものは、そのどれでもない。

    ガバナー(周囲に笑顔を振りまき、”信頼”と”情”で人々を従わせる。提督が聞いて呆れるよ、これは最早統治でも支配でもない。)

    幼児らに混じってキャッチボールに興じるエルヴィンに問う。

    ガバナー(わかっているぞ。サシャを見た瞬間◯◯と重なったのだろう?悲惨な記憶に耐え切れず、崩れ落ちそうになる所を、闇を取り払う事で耐えたんだ。)

    エルヴィン「ははは、待て待て。よく狙えよ。」

    ガバナー(あわよくばサシャを娘として認識する事で、全てを忘れようとしている。)

    彼が投げたボールが高く宙に舞う。

    ガバナー(いいか、ガバナーだろうがエルヴィンだろうが、私はどちらでもいい。しかし覚えておけ、我々は決して闇からは逃れられない。)

    放物線を描き、ボールが落ちていく。

    ガバナー(我々に安息なんて言葉は似合わない。そう、明日を求めても意味はないんだ。)

    ガバナー(大事なのは…)

    ポテンッ

    子供がボールを取り損ね、地面に跳ねる。


    エルヴィン「しっかり上を向くことだ。足元ばかり見ていては、捕れるものも獲得できないからね。」

    エルヴィン「…おや、一雨きそうだ。」

    空には暗雲が立ち込めていた。
  16. 16 : : 2015/05/04(月) 02:02:12
    ーーーーーーーーーーーーーー

    そして朝が来た。
    結局二人の説得は叶わず、ガバナーが指定した小屋に向かう。

    エレン「…」

    ライナーがハンドルを握る隣、エレンは一切口を聞かなかった。
    エルドは頬杖をつき窓の外を眺め、サシャは終始下を向いていた。

    今更何を言ったところで、二人が戻るわけでもない。
    刑務所での別れ際、涙ぐむユミルらを尻目に、エレンはただ立ち尽くしていた。



    守るとは何だろうか?
    一方的な想いで伝わる感情だろうか?


    何にせよ、また自分の元を仲間が去っていく。
    エレンの頭の中で様々な何が行ったり来たりしていた。

    ライナー「着いたぞ。」

    そこには既にガバナーが満面の笑みで立っていた。
    結果はわかりきっていた、君にはやはり無理だったね。そんな表情で。

    もちろんガバナーに悪気はないのだが、それがまたエレンを苛立たせた。

    ガバナー「待っていたよ、今日は何を話そうか?」

    エルドがそれを遮り何かを伝える。
    それをガバナーが笑顔で受け取り、二人の手を取る。

    話の内容は言うまでもない。
    しかしエレンには何も聞こえてこなかった。


    ガバナー「では二人は丁重にお預かりする。…この際、ナナバと君達との因縁は忘れることにした。」

    そんな言葉が聞こえてきたが、もうどうでも良かった。

    サシャ「…」

    こちらを見向きもせずに、車に乗り込むエルドに対し、サシャは一瞬こちらを見やった。
    しかしすぐに目を伏せ、彼女らを乗せた車は発進した。



    エレン「…俺はまた仲間を失ったんだな。」

    ライナー「そう思うならやり直そう。きっと方法があるはずだ、誰も失わなくていい方法がな。」

    ライナーの慰めと肩に置かれた手が、エレンの目頭を熱くさせた。




    やがて車は見えなくなった。
    溢れ出る熱さによって。


    season3 ep5 end
  17. 17 : : 2015/05/04(月) 02:05:30

    次回予告

    「許されたい命が惹かれあった。」

    「ならば今から俺はただのクソ親父だ。先に行け!」

    「気付いてしまったんだ。君は自分が可愛いだけだって。」


    season3 ep6 狂気に代えて
  18. 18 : : 2015/05/04(月) 02:08:59
    終了です。
    さて、早いもので次回でシーズン3ファイナルとなります。

    今回はこの章の代名詞とも言える、エルヴィン(ガバナー)にスポットを当てました。
    ドロドロの心理描写にはかなり苦戦しました。
    また、コニーとユミルの一件はこの世界での嬉しいニュースですね。

    感想などよろしくお願いします。
  19. 19 : : 2015/05/05(火) 15:45:28
    コニーとユミルおめでとうヾ(@⌒ー⌒@)ノ
    それと期待です
    面白すぎるので頑張ってください!!!
  20. 20 : : 2015/05/06(水) 14:50:27
    かなりオリジナル入ってて面白かったです!
    予告がライオンみたいですね…
  21. 21 : : 2015/05/07(木) 01:49:16
    名無しさん

    ありがとうございます。嬉しいです!
  22. 22 : : 2015/05/07(木) 01:52:25
    名無しさん

    コメントありがとうございます。
    シーズン4からは、ほとんどオリジナルを考えてます。

    その通りです、実は今までもちょいちょいよくアニメの歌詞や台詞を少しずつ変えて引用しています。
    ライオンのサビの歌詞は、ウォーキングデッドの世界観にピッタリだと思って、いつか使いたいと思ってました。
    二番煎じにならない程度に使っていこうと思います笑
  23. 23 : : 2015/05/12(火) 11:03:38
    次作です。
    http://www.ssnote.net/archives/35099

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kazumax

ジョン@四聖剣とは虚名にあらず

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