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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

―Welcome to the Black Parade―

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  1. 1 : : 2014/08/03(日) 19:57:09
    はい、お久しぶりです。前回惰性で
    書き連ねていた、入れ替わりのお話、


    アニ「ぱるぷんて~♪」


    の、
    話から紆余曲折を経て原作ストーリーを
    はげしく逸脱することになった
    バッドエンドルートのはじまりとなります
    ・・前回の一括りでどうしてこうなったと
    言いながらも・・よくよく考えたら実は
    教官にその影響が及んだ時点でこういった
    話しにもっていく頭も自分の中にはあった
    のだとやっと気づいた今日この頃。

    奇しくもタイトルに名を冠する呪文と
    同じく、どう転ぶか分からない
    その顛末を描く様な結果となりました。

    今回のタイトルも特に深い意味は
    有りません。なんという雰囲気重視。

    横文字のタイトルとか私如きが
    命名するには小洒落すぎてて
    鼻に付きますのでそのうちこっそり
    変えちゃうかもしれません。

    入替わりネタってこうしてみてみると
    もう、何番煎じか分からないくらい
    存在していて・・できるだけ通常の人が
    やろうとしないような話にもっていこうと
    考えた自分なりの結果がこうでした。
    まあ・・色々と考えるのも難し過ぎて、
    本末転倒な展開になってしまっていますが
    僅かでもお目通ししていただける感謝を
    胸に、楽しんでやらせて頂きたいと
    存じます。

    追記

    エログロ描写の有無ですが・・エロスに
    与する描写はほぼない予定です。が、
    シリアス進行メインであり、多少の
    血は流れる予定ですので
    一応チェックは入っています。しかし
    人によってはこれでは必要ないと
    判断するかもしれません。

    更なる追記

    本作中でグンタさんのストーリー的な
    物を書いていますが、全くマーク
    していなかった反撃の翼にてまさかの
    後付けストーリーの大追加。
    色々と信じ難い事実が明るみに出たため,
    あちらのシナリオが作者さん監修の
    物であるとすれば、なんだか
    こちらでは矛盾放題なことを書いて
    しまったことになります。

    っていうかあの4人同期だったのか
    ・・・(汗
  2. 2 : : 2014/08/03(日) 19:58:10
    以下簡易注意事項

    ・話が明るくありません。
     ハッピー&呑気なお話がお好きな方は
     折角で申し訳ないのですがご覧に
     ならない方が宜しいかと存じます。

    ・原作及びアニメと異なる生存、
     死亡描写が成される可能性があります。

    ・当ssもどきのネタバレ警戒範囲は、
     原作全巻・アニメ全話・
     悔いなき選択 1・2(スピンオフ)
     Before the fall 1・2・3(スピンオフ)

     以上となります。これらの出典に
     該当する内容以外のもので、
     もしも登場人物が何らかの固有名詞や
     情報供述を行った場合、それらは
     書いてる人間の創作となります。

    ただ、人物名などに関しては
    原作未発覚でも準拠して使用する
    場合があります。※例として
    第四分隊の方々など。


    ・出来うる限り数字に関わる事は
     正確に準拠して書くよう心掛けて
     いますが、時に情報ソースがあるにも
     関わらずそれらに相違が見つかりまくる
     かもしれません。

    ・原作設定無視。キャラクター崩壊。
     これは全作定番です。また、前回からの
     続編という都合上、キース教官は
     何故か全盛期に退行しています。

    ・SSNOTE方針に則り、もしも
     万が一スレ内で何らかの有難い
     レスを貰えることがあった
     としたらですが、返信後一定の
     時間をおいてメッセージを非表示に
     切り替えさせていただくと思います。
     何かご意見、ご感想ありましたら
     グループ掲示板(申請許可要らず?)
     の方もよろしくです。


    ・メタなネタもそれなりに入るかもです


    ・とても永くなると思います
  3. 3 : : 2014/08/03(日) 19:59:27







    ―訓練兵団・食堂―



    食事終了を告げる鐘が鳴った後であるにも
    かかわらず、事態の異常さに気圧され
    その場を動けずにいる訓練兵一同。

    アルミンが既に食堂を飛び出したので
    間もなくその呼びかけに応えた教官が
    この場に駆けつけ、何らかの制裁を
    加えるのでは・・と誰もが先行きを
    案じて食事の片付けに移行しようかと
    動き出したその最中。



    ライナー「さて・・時間がない。
         単刀直入に言おう。ミカサ、
         アニを離せ。」



    ミカサ「何をするつもり?」キッ・・



    ライナー「何もしない。元通りに中身を
         入れ替えて・・そのまま俺達は
         お前らと二度と会う事も無い
         だろう。」



    ミカサ「ベルトルトも言っていたが・・
        頭は正常なの?ライナー。
        聞き違いでなければ貴方はさっき
        壁を・・ウォール・ローゼが
        どうとか言っていた気がする」

  4. 4 : : 2014/08/03(日) 20:06:37


    ライナー「お前達には関わりの無い事だ。
         そこをどいてもらおう。
         何も問題は・・無い筈だぞ。
         エレンをどうこうするつもり
         も無い。アニを連れていく・・
         俺達がしたいのはただそれだけ
         の事だ。故郷に帰る・・
         それが俺達に残された全てだ」



    ミカサ「・・?言っている意味が
        いまいち理解できないし・・
        それを聞いたら尚更見過ごせない
        ・・先程のアニの剣幕は普通じゃ
        無かった。仲間が無理に連れて
        行かれるのを黙って指をくわえて
        見ているわけないでしょ」
        カツ・・カツ・・



    ライナー「やれやれ・・やはりこうなるか
         ・・ベルトルト!俺がミカサを
         抑える・・その隙にお前は
         アニとエレンを元に戻せ。」
         ゴトッ・・




    ベルトルト「・・ど、どうすればいい!?」




    ライナー「確証は無いが2人の額を密着
        させるだけで何とかなるはずだ。
        アニは大人しくしてないだろうが
        ・・エレンの方は記憶の逆流でか
        ショックを起こして都合よく
        ダウンしてやがる。なんとか
        頼む・・・!」ググッ・・


    ミカサ「訓練での結果から何も学習
        していないの・・?ライナー
        ・・・貴方が私を投げられた
        事が一度でもあった?」
        パキパキ
  5. 5 : : 2014/08/03(日) 20:09:55

    ライナー「訓練は訓練だろう」
         (もう本気の出し方すら
          忘れる程平和ボケして
          しまったのは事実だが)    



    ミカサ「・・・っ」ドッ・・・


    グインッ


    ライナー「っっ!!!???」


    ズドァン!!!!!

    一瞬だった。

    ライナーが応戦の構えをとる前に
    懐に一歩で踏み込んだミカサは
    片腕でライナーの胸元を殴り上げるように
    掴みあげ、そのまま力の流れも何も
    考慮されていない、純粋な暴力100%による

    背負い投げと呼べばいいのか、
    叩き付けと呼べばいいのか分からない
    技をライナーに見舞う。

    その動きはまるで、洗い終えたシーツの
    水気を切るかの様な、しなやかにして
    荒々しいものだった。



    ライナー「グァッ!!!?」




    腰から背中にかけて、一切の受け身が
    間に合わず、板の間に文字通り
    叩きつけられたライナーはその場に
    うずくまる。そして間髪入れず・・



    ミカサ「っ・・・!」ザザッ・・!



    バシッ・・!!

    ドズッ!!


    ベルトルト「うっ・・うわぁああ!!
          グ゙ボッ・・・!!」
  6. 6 : : 2014/08/03(日) 20:10:48

    半ば棒立ち状態であったベルトルトに
    足払いをかけ、あおむけになった腹部に
    体重の乗った肘打ちを見舞うミカサ。
    その目は訓練時に見せるような物静かな
    目などではなく、何時でも獲物を狩りに
    行ける獣の目と化していた




    ライナー「クソッ・・やはりダメか・・!
         本気を出せばあるいは何とか
         ・・と思ったがこいつも
         あれでまさか全力じゃなかった
         とは・・!」ガチャッ・・


    テーブル上のフォークを掴み取るライナー




    マルコ「おっ・・!おい!!!ライナー!
        止せ!!!洒落になってないぞ!」
        ガタタッ!!
        



    コニー「皆!!ボケっとしてねえで
        止めろ!ホラっ!ジャンも!!」
        ダダッ



    ジャン「ライナー!!いつものお前に
        戻れって!!そんなの
        お前のキャラじゃねえだろ!?」
        ドタドタ

  7. 7 : : 2014/08/03(日) 20:12:41





    ライナー「寄るな!!!死にたくなかったら
         ・・いいか、そこから一歩も
         動くんじゃあない・・・!!
         一歩もだ!!!!」チャッ・・





    コニー「・・・・・は?」



    マルコ「お・・おいライ・・」



    ジャン「なんっ・・・お前・・え?」





    嫌な汗がその場に固まる全員の頬を伝う。
    そして、その状況の意味する事と


    これから巻き起こる
    惨劇の一切を予見できて
    いないであろう一同の前で


    自らの手首にその手に握った
    フォークをあてがったライナーは、
    一方的な別れを告げた。



    ライナー「言いたい事は山ほどあるんだが
         ・・何せ時間がない。
         今まで・・仲良くやってくれて
         ありがとうな。俺達は・・本当に
         悪い事をした・・。だがこれで
         ・・・さよならだ」


    ザシュッ・・



    鮮血と同時に切り裂かれた
    手首を起点にして、



    漏れだす光がライナーを包み込み・・
  8. 8 : : 2014/08/03(日) 20:13:49


    ライナー「ベルトルト!直後に解除する!!
         火傷に注意しろ!その隙に
         アニとエレンを頼む!!!」


    ガカッ



    ズドォオオンッ!!!!


    ミカサ「っっ・・・・・!??!」


    ――閃光。


    マルコ「!!!???」

    ―――轟音。


    ジャン「ぐはっ!!」

    ――――熱風。




    ランプの灯りなど比べものにならない
    極光に包まれた部屋が衝撃と共に
    爆風の渦に包まれ、


    机や椅子の破片を伴う塵芥を
    巻き上げながら屋外の闇夜を
    切り開く。


  9. 9 : : 2014/08/03(日) 20:15:26


    ミカサ「あっ・・・・!!
        ああ・・・・!!!!」


    ミカサは・・・そしてその場で
    意識のかろうじて残るものは・・その
    次の瞬間には奪われる視界の中に・・



    巨大な、脚をみた。見てしまった。



    ベルトルト「っ・・・・!!!!」

    ババッ・・


    ミカサ「っ!!?」ササッ
    瞬時に、先程のライナーが発した言葉を
    脳裏に過らせたミカサは首に巻いた
    マフラーを顔にかぶせるように
    片手で持ち上げる


    ボシュゥゥウウウウウウ!!!!

    ジュァアアァァァァ

    ミカサ「あぐっ・・・!!っ熱ぅ・・・!」


    マルコ「がっ・・・・!!!」


    ジャン「ぐぅぅっ!!?・・」
  10. 10 : : 2014/08/03(日) 20:16:42

    放たれた凄まじい蒸気は周囲にいた
    全員の肌を容赦なく蒸しつける。



    ミカサ「くっ・・逃げら・・ぐぅっ!!」

    ジュゥウウウウウ

    焼き付ける強烈な蒸気の中で
    顔を上に向けるミカサ。

    破壊された天井の向うに見える
    夜空を背に今しがた突如目の前に
    現れたモノの中から這い出る、
    見知った顔を睨みつける。


    目の前に突如現れたのは間違いなく
    巨人であり・・その頸部から抜け出す
    姿は間違いなくライナー本人であった。

    ライナーの離脱を皮切りに、巨人の
    亡骸は支えを失い、その場に膝をつき、
    一層強い蒸気を霧散させる。


    「う・・・!ぐぅ・・・!!」


    「何も見えねえ・・・!」



    「おいっ・・!誰か・・!手を」



    「下敷きになってる奴がいる!!」

  11. 11 : : 2014/08/03(日) 20:18:47

    蒸気が食堂中を埋め尽くし、方々から
    火傷の激痛に呻く訓練兵の嗚咽が
    響き渡るなか、駆けつけた教官が戸口を
    開け放つ。

    バンッ

    ブシュォオオオ・・


    キース「っな・・・!何の音だ!!
        一体何が・・っぐう・・・!!
        蒸気・・・?!?!」


    キース「状況を説明できる者はいるか!!
        おい!!!しっかりしろ!!!!」


    ミカサ「教官っ・・」ズズ・・



    キース「アッカーマン!!!意識はあるか!!!
        この有様はどういう事だ!!
        先程の音は一体っ・・
        ・・・・!!?」

    ミカサ「教官っ・・!そんなことより
        ・・エレンは・・
        エレン・イエーガーは
        この場にいますか・・!」
        ッグ・・


    キース「そいつなら先程外に居た者が
        ここへ来る途中に見つけた。
        ・・意識は無かったようだがな
        ・・それよりこの状況は
        ・・・!先程の音は・・?!」



    凄まじいまでの蒸気の向うに
    微かに見えた残骸を見遣り
    絶句する教官。



    その光景はかつて自分が何度も壁外で
    目にしてきたものであり・・


    今期自らが担当する訓練兵中に於いて


    随一の成績を誇る、主席筆頭候補でも
    ある教え子の言い放った事実は・・



    とても信じられない一言であった






    ミカサ「ライナーが・・
        ライナー・ブラウンが
        巨人と化した音です・・・」
  12. 12 : : 2014/08/03(日) 20:20:47


    ―数分前・訓練兵宿舎周辺―





    ユミル「ホッ・・ホッ・・」


    ダダダダダ


    クリスタ「ちょっ・・!離してってば
         ユミル!!」


    サシャ「・・・;!」

    ダダダ


    ユミルはクリスタを小脇に抱える様にして
    、サシャはその後を追うようにして
    いつになく神妙な面持ちで走っている。
    ・・が、口に咥えたパンがすべての
    緊張感を台無しにしていた。



    クリスタ「ユッ・・ミルってば!」ジタジタ


    ユミル「こんだけ離れりゃいいか・・
        ってかお前、軽すぎ&持ち運び
        に適しすぎw」
        ヨイショ


    クリスタ「そんな事よりユミル!
         もう食事終了の鐘鳴っちゃった
         じゃない!何でこんな・・!
         早く戻って片付けなきゃ・・」


    サシャ「(何かとてつもなく嫌な感じが
         してつい抜け出してきて
         しまいましたが・・・)」モグモグ



    ユミル「まあ、もう少し待っとけって。
        それどころじゃなくなるぞ多分。
        ・・場合によっちゃこのまま
        納屋まで・・・・お」
  13. 13 : : 2014/08/03(日) 20:32:41
    夜であるためその身振りは意味がない
    ものであるが、わざとらしく片手で
    作った庇を額に当てて、今しがた自分達が
    出てきた食堂の辺りを眺める。



    クリスタ&サシャ「!!?!」


    轟音とともに眩い閃光が屋内より
    漏れ出し、屋根の一部が内側から
    “何か”によって吹き飛ばされる食堂


    ユミル「あーあー・・こりゃ流石に
        芋女の屁ですって言い訳は
        使えねーなwああ・・でも
        コイツが15メートル級の
        巨人になれば、あれくらいの
        屁は出るか・・?(含笑)」


    クリスタ「・・・!・・!?」パクパク



    明らかに冗談など言っている状況では無く
    、現状を理解しようと必死に頭を
    動かした末にクリスタは、通常冗談で
    流す部分に本能的な違和感を抱き、
    自然とユミルにこう問いかけていた



    クリスタ「・・・ねえ・・ユミル、
         今、巨人に“なる”って
         言わなかった・・?あなた」



    サシャ「・・・・・っ!」



    ユミル「・・・・(溜息)
        ・・ぁあ、言ったかもな」



    クリスタ「かも、じゃなくて!私は今
         真面目にっ・・」
  14. 14 : : 2014/08/03(日) 20:35:02

    ダダダダ


    キース「・・おい!貴様ら・・・
        こんな所で何をしている!!
        今しがた何か聞こえたが・・!」

    アルミン「あっ・・!ユミルにクリスタ
         ・・それにサシャも!
         (こんなところに・・)」


    クリスタ「あ、アルミン!!それに
         ・・教官も!」



    キース「・・・!話は後だ!とにかく
        貴様らも来い!!何が起きている
        ・・・クソッ!!砲撃か!?」



    ユミル「・・・・」


    クリスタ「・・・・!;」


    アルミン「・・・・・」

  15. 15 : : 2014/08/03(日) 20:36:18

    ―その一時間後・訓練兵宿舎教官部屋―


    キース「生憎だが・・あの負傷者数だ。
        無事だった者含め衛生兵総出で
        救護にあたっているが医務室も
        宿舎も満杯だ・・今はとにかく
        情報が必要とされているし、
        時間も惜しい。そして・・・」


    ミカサ「・・・」


    キース「貴様の先程の報告がこの案件の
        重要度を最重要事項にまで
        引き上げた。・・いいか
        アッカーマン・・もう一度
        確認するぞ」


    ミカサ「私の意識は至って正常であり、
        冗談を言うつもりもありません」


    キース「・・・その上で・・
        訓練兵が・・お前の仲間が
        目の前で巨人へと変貌するのを
        見たと、貴様はそう言うのだな?」


    ミカサ「あの場でかろうじて
        意識を保っていたのは私だけでは
        ありません。信じられない教官の
        気持ちは理解に苦しむものでは
        ないので・・必要とあれば他の
        者にも確認して貰えれば・・。
        ・・・ただ・・・」
        チラ


    マルコ「・・・」


    ジャン「・・ウソだろおい・・
        ・・・何なんだよ一体・・!
        こんな・・!こんな・・!」
        ガタガタガタ


    ミカサ「今は彼らに質問をしてそれで
        まともな答えが得られるか
        どうか」
  16. 16 : : 2014/08/03(日) 20:40:21

    キース「(溜息)おい・・・!」
        ガッ・・


    ジャン「っ・・・!!?」グイッ



    ゴッッ!!!


    ジャン「ぐぁっ・・!」


    失意のあまり、胸倉を掴まれた事に
    反応する速度すら鈍っているジャンに
    教官のいつになく強烈な脳天突きが
    容赦なくお見舞いされる


    キース「仲間が死ぬのはこれが初めてか
        貴様・・・!!違うな・・?!
        訓練中だけで気を抜いた為に
        何人の馬鹿共が貴様の目の前で
        死んでいった!!」


    ジャン「うぐぁ・・・!」ギリギリ


    キース「訓練兵科は・・技術や体力
        を身に着けるだけの場所では
        無い・・!仲間の死を士気に
        変えるだけの精神力を身に着ける
        場所でもある・・!この程度で
        兵士の務めを放棄するなど」
        

    マルコ「じっ、自分もこの目で確かに
        見ました!!!」
        ドン

    キース「・・・」パッ・・


    ジャン「っ・・ゲホッ・・ゴホッ」



    キース「疑う訳ではないがあくまでも
        人間が巨人になったと、そう
        貴様らは言うのだな。そして
        あの爆発音はそれに伴って
        引き起こされたものだと。」



    マルコ「はっ・・・!」
        ドン

    ミカサ「っ・・・・!」
        ドン

    ジャン「・・・」
        ドン
  17. 17 : : 2014/08/03(日) 20:41:27


    キース「それだけ先に確認したならまず
        この場で話すのはそこまでだ。
        お前らと・・あの場に居て
        意識があったものは全員俺に
        ついてこい!!馬を出し、
        これよりすぐに現状を報告しに
        行く」


    ミカサ「・・報告・・ですか?」



    キース「当然だ。貴様らの言う事が事実
        ならこんな場所で呆けている
        時間など一刻たりとも
        有りはしない。この暗さでは
        伝書鳩もまだ飛ばせぬし、
        早馬での報告より実際に見た
        貴様らの意見が重要になって
        来る・・それに・・」



    キース「実物を確保したわけでもないのに
        人間が巨人になったなどという
        突拍子もない報告をいきなり
        鵜呑みにして対応するような
        奴らがいると思うか・・?」


    ミカサ「・・・・」


    キース「俺が知る限りではそんな
        奴らは一握りしかいない」


    ミカサ「(調査・・兵団・・!)」


  18. 18 : : 2014/08/03(日) 20:41:53


    キース「とにかく急を要する。準備が
        出来ているなら今すぐ
        このままついてこい」ザッ


    アルミン「あのっ!」


    キース「なんだ・・・?」


    アルミン「今は意識を失っているのですが
         ・・エレンを一緒に連れて
         行ってもよろしいですか」



    キース「イェーガーを・・?何故だ」



    アルミン「詳しい事情は彼の意識が
         戻るまで自分が説明しても
         理解していただけないと
         思います。しかし必ず彼の
         得ている情報は状況を動かす
         物であると自分は断言します
         ・・!」

    アルミン「(そもそも・・意識が戻らない
         事には今、エレンの中にいる
         のがアニなのかどうかすら
         わからない・・!けどもしも
         中身がアニのままなのだと
         しても・・あのアニの反応は
         明らかに・・居なくなった
         ライナーとベルトルトの秘密
         について知っている・・!)」

    キース「確かなのか・・?」


    アルミン「命に代えても断言できます!」
         ドン

    キース「貴様の命など何の確証にも
        値しないが・・まあいい。
        そこまで言うなら精々
        証明して見せろ」ザッ



    キース「ではすぐに出発するぞ!!」
        
         

  19. 19 : : 2014/08/03(日) 21:08:43

    ―同時刻・平野―



    トロスト区を目指し馬を走らせる
    ライナー、ベルトルトの二人。
    腰には持ち出した立体機動装置、
    そしてライナーの背中にはアニが
    ベルトで固定されて負ぶさっていた


    ドドッドドッ



    ライナー「しかし連れてきたはいいが
         気を失ってるんじゃ・・
         まだ元に戻ってるかどうか
         わからんな・・アニは」


    ベルトルト「だが一応言われた通りには
          した・・そうである事を
          祈るしかない」


    ライナー「大体前倒しに行うと言っても
         ・・アニがいなくてはまず
         作戦の成功は見込めないんだが
         ・・それはあの時と同じだな
         ・・行動を起こしてしまった
         以上・・悩んでも仕方がない」



    ベルトルト「しかしライナー・・責める
          訳じゃないが・・あの時
          本当にあんな事を宣言する
          必要なんてあったのか・・?」



    ライナー「宣言・・・?何をだ?」



    ベルトルト「何をって・・!君が大声で
          言ったじゃないか!
          “今夜壁をこわす!!”
          みたいな事を!あんなこと
          別に言わなくたって・・!」




    ライナー「・・・?そんな事俺は
         一言も言ってないぞ」

  20. 20 : : 2014/08/03(日) 21:09:34





    ドドドッ・・ドドドッ・・・





    ベルトルト「・・・・・;」



    ライナー「・・・・・・」







    ベルトルト「ラ・・ライナー君はっ・・!!」




    ライナー「落ち着け。俺は・・
         “今宵、ウォールローゼを、
         「突破する」”と言ったんだ」




    ライナー「そしてミカサには俺達の
         目的が故郷への帰還で
         あるとも伝えた。・・
         まあ巨人化の瞬間まで見せる
         事になっちまうとは多少
         想定外ではあったものの、だ
         ・・あの距離では精々足位
         しか見えていない筈だし、
         そもそも奴らには人間が
         巨人になる、という発想すら
         今のところなかった訳だ。」


    ベルトルト「・・・・!」



    ライナー「つまり俺の正体が巨人と
         知れてはいてもお前の正体が
         バレているわけでもなし、
         俺の正体が“鎧”の巨人、と
         知られているわけでも
         無いのだから、普通に考えて
         壁を突破=壁の破壊とは
         いかないだろ。精々脱出
         くらいにしか考えは
         至らないはずだ」
  21. 21 : : 2014/08/03(日) 21:10:49

    ベルトルト「でもそれは・・」



    ライナー「ああ・・アニとエレンの
         状況次第だがな。それから・・
         アルミンか・・あいつは頭の
         回転が俺達の数倍早いからな」


    ベルトルト「・・・」


    ズドッ・・ズドドッ・・

    ライナー「今宵って言ったのにも理由は
         あるぞ。説明するまでも無く
         俺達はどうあっても陽が出る
         前に事を起こせない訳だが・・
         ああして言って置けば奴らは
         恐らく今晩の内に躍起になって
         何が何でも俺達を捉えようと
         するだろう」



    ベルトルト「・・それはつまりこうして
          移動している今も危険は
          常に付きまとうってことでも
          あるだろ・・」




    ライナー「ああ・・、だから念のため
         アニが用意しておいた調査
         兵団用のケープと駐屯兵団用
         の隊服をうまく使い分けて
         監視を掻い潜る必要がある。」




    ライナー「とにかくアニの意識の回復と
         ・・日の出までに開閉扉直上に
         辿り着ければ問題ない・・
         そこまでの辛抱だ・・・!」
  22. 22 : : 2014/08/03(日) 21:12:50

    ベルトルト「もう一つ忘れてるだろ・・
          ライナー・・大事な事を」


    ライナー「言われなくても分かってる。
         俺達の本来の作戦では解散式
         翌日以降・・つまり人類最大の
         壁ともいえる“奴ら”が不在
         であるその日を狙ってこそ
         その成功が見込めたが、
         運の悪い事に目的の場所は
         そいつらの巣窟のすぐ目と
         鼻の先ときてる・・・」


    ベルトルト「(調査兵団・・!)」



    ライナー「一筋縄じゃいかないのは
         百も千も承知の上。
         お前にも無理をさせるが・・
         ここで引き下がる訳にも
         いかない・・そうだろ」

    ドドッ・・ドドッ・・


    ベルトルト「君の言う通りだライナー・・
          もう僕達は・・なってしまった
          ・・。人類の敵に・・・
          大量虐殺者に。」


    ライナー「・・そうだ。そして
         なってしまった以上・・
         最初の犠牲者を無駄に
         するような真似は決して
         出来ない。果たして地獄と
         呼ばれる場所に俺達が揃って
         辿り着けるかどうか・・
         定かじゃないが」


    ライナー「役目を果たしたその先でどんな
         形でもいいからせめて・・
         アイツらにだけはもう一度
         きちんと会って頭を下げたい
         な・・」
  23. 23 : : 2014/08/03(日) 21:14:22

    ベルトルト「ライナーよりそれは僕の方が
          気にする事だろう・・エレン
          に至っては僕こそが親の仇
          その物なんだぞ・・・
          殺されたって許されるとは
          思えない」


    ライナー「それを言ったら俺達全員人数の
         問題じゃないけどな・・
         ・・・しかし」


    ドドドッドドッ・・


    ライナー「今日改めて思った事なんだが
         ・・エレンがそうであると
         怪しまれるのと同様に・・
         まさかミカサまで巨人でした
         ・・・なんてオチは・・
         ないだろうな・・?」



    ベルトルト「・・それは僕に聞かれても
          ・・・」



    ライナー「もしアイツが15メートル級に
         化けたりでもしたら・・
         全身を固めても勝てる気が
         全くしないぞ・・・
         東洋人ってのはみんなああいう
         魑魅魍魎の類なのか?」


    ベルトルト「僕だってそんなに詳しくない
          ・・なんでも座学や書籍で
          学んだ限りでは壁の外でも
          絶海の孤島に立てこもって
          異界の文化を尽く絶ちながら
          その狭い領土の中ですら
          好戦的な本能が影響して
          内乱が絶えない民族だった
          らしいよ」

    ライナー「そこまで血に狂った印象は
         無かったが・・まあ頷けなくも
         無いな・・」


    ベルトルト「7歳を過ぎるころには皆
          刀で武装してるとか、
          戦争の最中、頭目を生き延び
          させる為だけに300対80000
          の合戦で一歩も退かずに
          敵に突撃していった挙句
          300人の方は決死の覚悟に
          関わらず80人生き残ったとか
          出会い頭の挨拶が
          “首を置いてけ”だとか、
          昔は色々聞かされたけど、
          それは流石に作り話だろう」


    ライナー「・・もう最早巨人でなかった
         としても怖くて戦いたいとは
         思えん・・・」モウヤダ、コワイ

  24. 24 : : 2014/08/03(日) 21:17:52


    ベルトルト「そろそろ見えてきたぞ
          ライナー・・!」


    ライナー「あぁ・・見つからずに上手く
         一休みできる場所を探そう。
         この馬はもう使う事も無い。
         足が付くのも面倒だから適当な
         所で放すぞ。アニは・・
         どうする?これで意見が
         割れれば最期になるかもしれん
         ・・お前、負ぶるか?」


    ベルトルト「・・っ!!///
          じょ、冗談は止してくれ
          ライナー!!!」



    ライナ― 「冗談とか言える余裕が
         あるかよ・・割と真面目に
         言ってるんだぞ・・。まあ、
         そう言われるのは分かってた
         が・・」

    ガシッ


    馬から降りる前に背負う
    アニの体勢を取り直し、


    ライナー「当たり前の事だがこいつ・・
         前より大分育っててその・・
         背中とかに凄い当たって
         くるぞ・・いいのか?
         俺だけ得してるみたいで
         お前に悪い気が・・」


    ベルトルト「らっ・・!ライナーー!!
          それ以上言うと本気で
          怒るぞ!」////


    ライナー「(素直じゃないな・・)
         分かった。悪かった。
         大声だすなって」

  25. 25 : : 2014/08/03(日) 21:27:57



    ― 一時間後・調査兵団本部・医務室 ―


    キース「いいか・・、事はお前らの
        報告における信憑性に全て
        かかっている。知っている事、
        それから危惧されるリスクの
        全てを洗いざらい報告しろ。
        俺は別件で先によらねばならぬ
        場所がある・・報告は任せたぞ」
        カッ・・カッ・・


    ミカサ
    アルミン「はっ!!」
    ジャン

    ドン!


    ジャン「チキショウ・・一体全体
        どうしてこんな事になっちまう
        んだよ・・!昨日まで普通に
        訓練してたってのによ・・!」


    アルミン「それは今考えても・・仕方が
         無いよ・・何を考えているのか
         ・・それどころか目的すら
         定かじゃないけどあのライナー
         がここまでの事を起こしたんだ
         ・・何か理由があるに
         決まってる・・」



    ジャン「その理由って奴がどれだけ大層な
        ものか知らねえがなぁ・・・!
        でっかくなったアイツのケツに
        敷かれてコニーは死んだんだぞ!
        それだけの事をする理由が何か
        あったってのかよ!!?
        それで訳も話さず時間がないから
        さよなライナーってか!!??
        冗談にしても笑えねえよ!!!」
  26. 26 : : 2014/08/03(日) 21:29:08
    ミカサ「ちょっと、やめなさい」


    アルミン「ああ・・本当に・・
         笑えないよ・・・」
         グス・・


    ジャン「わ・・悪ぃ・・お前に当たっても
        仕方ねえ・・済まなかった・・」


    ミカサ「(溜息)」


    アルミン「い、いいんだ・・皆頭が
         追いつかないのも無理は無い
         って・・」


    アルミン「(しかしいきなり本部に
         通されて報告に向かう先が
         分隊長の元・・それも第4
         分隊長・・名は確か・・)」



    ガチャ・・


    ハンジ「おや・・前団長も一緒に来てたと
        聞いてたけど・・君らだけ?」
        ン・・?


    ハンジ「あ、こりゃゴメンよ。私は
        調査兵団第4分隊長を任されてる
        ハンジ・ゾエ。宜しくね!
        本当は君らの方から来るって
        聞いてたけど、待ちきれなく
        なってしまってね、こうして
        出向いた訳だ。そっちの
        子は大丈夫かい?・・意識が
        戻らないようだけど」
  27. 27 : : 2014/08/03(日) 21:49:36

    アルミン「あ、だ、第104期訓練兵、
         アルミン・アルレルトです!」
         ドン

    ミカサ「同じく、訓練兵
        ミカサ・アッカーマンです」

        ドン


    ジャン「ジャン・キルシュタインです!」
        ドン




    ハンジ「あー、いいっていいって、
        緊張しないで。まあ、こんな
        時間にいきなりの報告って事だし
        しかも私の元に寄越されるくらい
        だから・・大分普通の事とは
        かけ離れてるんでしょ・・?
        例えばそう・・・」チラリ

    アルミン「(ゾクッ)」


    ハンジ「巨人絡み・・―とか。」

  28. 28 : : 2014/08/03(日) 21:50:19

    場の空気が一気に冷え込むのが
    肌の感覚で感じられた。

    その場の三人が本能的に感じた
    危機感だけでなく、

    後に控えていた数人と
    副分隊長から発せられた
    明らかな忌避感がその場の空気を
    変えたのだ。いつ止めに入られても
    おかしくない程の張りつめた空気が

    目の前の人物の危うさを改めて
    アルミンの肌に認識させる・・




    ハンジ「いや、ここに君達が通される
        際に・・大体聞いては居る
        んだけどね、話の内容が
        内容だけに通達にきた奴も
        君達の頭を疑おうとしかしない。
        ・・だから、改めて直接君達の
        口から聞かせてもらって
        良いかい?君達は一体・・
        何を見たのかな・・?」


    ミカサ「・・・・」スッ・・


    アルミン「・・・!」
  29. 29 : : 2014/08/03(日) 21:51:32


    ミカサ「人間が・・巨人へと姿を
        変える瞬間をこの目で見ました。
        しかもその人間というのは・・
        我々の同期の・・仲間でした」


    ハンジ「!!!!」



    モブリット「!!!!?」



    ハンジ「おい聞いたかモブリット!
        とうとう来たぞ!こりゃ
        居てもたってもいられない
        情報だ・・・!ああ、
        どうしよう・・!何から
        聞けばいいやら・・!
        おい、!何から聞いたら
        良いと思う!!?」ババッ!!


    モブリット「とりあえず分隊長の挙動に
          本気で身構えている彼らの
          緊張を解いて差し上げては
          如何かと・・!」


    ハンジ「そ・・そうだな!もっともだ。
        さて・・じゃあまずは・・
        うん・・・その時の詳しい
        状況を知りたいのが一番なんだが
        その前に・・その巨人に姿を
        変えたお仲間とやらの話を
        聞いておこうか。」



    アルミン「その者の名は―」


    そこから先はアルミンが主軸となり、
    ライナーの人格、普段の行い、
    それから兵団における成績や品行方正など
    人格面における説明を行った。
  30. 30 : : 2014/08/03(日) 21:52:32


    ハンジ「成程ね・・で、そのライナー
        って子の目的ははっきり
        していないけど、とにかく
        そこにいる、ミカサといざこざを
        起こし、仲間と称する
        同期2名を引き連れて逃走・・
        って訳ね。」



    ハンジ「・・つまりアレかな・・?
        ひょっとして、その一緒に
        消えた二人ってのももしかして」



    アルミン「・・そこまでは流石に
         憶測の域を出てないので・・」




    ジャン「はっきりとは分かっていませんが
        奴は、故郷がどうとか言って
        ました。奴が本当に生まれながら
        の巨人だったとしたら・・そりゃ
        壁の外に出たいだけだって話
        かもしれませんが・・」


    ハンジ「里帰り願望があったって事かい?
        でもそれなら・・そんな派手な
        里帰りを態々慣行してまで
        仲間と一緒に行方を眩ませる
        必要なんてあるかなぁ・・・」


    アルミン「(そこなんだ・・ライナー達の
         目的が果たして本当に壁の外に
         出るだけの事であるなら・・
         何も一斉に出ていかなくたって
         一人ずつでも立体機動装置を
         奪って逃走するだけでいい
         ・・ああするしかなかった
         という事は何か他に・・)」

  31. 31 : : 2014/08/04(月) 22:11:10


    ハンジ「・・よし。じゃあ それはまず
        そこまでとして・・今度はその
        巨人化したという時の詳しい
        状況だ。これについては・・」


    ミカサ「一番近くで見ていたのは
        私です。」


    ハンジ「じゃ、じゃあ一番気になるその
        巨人になるときの状況だけど・・
        どうやってそのライナーは
        巨人に変わったんだ?何かそれの
        引き金になるような行動は
        見られたかい?例えば、大声を
        上げたとか、何か決めポーズを
        とったとか・・」

    ミカサ「それが直接的な原因かは
        分かりませんが・・その場に
        ・・テーブルの上にあった
        フォークで自分の腕を斬り
        つけた途端に眩しく光って・・
        食堂を半壊させるくらいの
        爆発を起こしたとおもったら
        そこにはもう巨人が立っていた
        ・・としか・・」



    ジャン「俺の目にもそういう風にしか
        見えませんでした・・てっきり
        フォークを手に取った時は
        素手じゃ敵わないと判断して
        武器として握ったのかと
        思ったら・・・」



    ミカサ「目の前にいた私には足しか
        見えない程だったので、
        7~8メートル級は楽に
        超えているものと思われますが
        ・・私達は未だ訓練兵です」




    ジャン「あんな形で初めて巨人を
        目の当りにするなんて・・」
        ガタガタ
  32. 32 : : 2014/08/04(月) 22:12:17


    ハンジ「・・・で、それからライナーは
        巨人の姿から元の大きさに
        戻って・・その場を去ったと?
        アレ・・?でも待てよ、
        という事はライナーは全裸で
        その場から逃走してるのか?」



    ミカサ「・・・は?」


    ハンジ「いや、だって、巨人の姿になった
        その時点で当然身に着けていた
        物は全て吹き飛んでておかしく
        無いわけだろう?それから
        元に戻ったっていうなら・・」



    ミカサ「それは・・あの、なんと説明
        したらいいのか・・・・っ、!」



    ハンジ「・・?」



    ミカサ「ライナーは、巨人の姿から元の
        姿に戻る際、巨人の首の後ろ・・
        つまりうなじのあたりから
        這い出してきたのを見た・・
        記憶があります・・蒸気が凄くて
        あまりに視界がわるかったので
        他の者には恐らく見えてもいない
        くらいだったと思いますが・・」

    ハンジ「蒸気・・・!?それじゃまるで
        ・・・・」
  33. 33 : : 2014/08/04(月) 22:13:10

    ミカサ「そのすぐ後です。目の前に現れた
        巨人が自らの身体を支えきれずに
        膝をつくようにその場に
        崩れ落ちたのは。まるでライナー
        の手を離れた途端に力尽きた
        かのように・・」


    ハンジ「つまり・・ライナー自身の
        身体が肥大化、ないし膨張
        を起こすというのではなく、
        あくまで、巨人という“服”を
        身にまとう・・そんな感じが
        しっくりくるのかな・・?」

    ミカサ「・・それは・・わかりません。
        ただ、巨人から抜け出した
        ライナーは、確かに衣服を
        身に着けてはいました。」



    ハンジ「そして蒸気を上げ始めたその
        巨人の抜け殻は・・時間をかけて
        消滅してしまったから、物的
        証拠も残らなかったと。」フム


    アルミン「も・・、申し訳ありません!!」



    ハンジ「き、君達が謝っても仕方ないよ!
        それに寸断した巨人の一部が
        蒸発せずに残るなら・・
        とっくに我々調査兵団が巨人の
        全身を切り分けて集めた試験体を
        完成させて巨人の構造を
        調べつくしているさ!」
        ハァハァ・・//


    アルミン「は、はぁ・・」ギョッ

  34. 36 : : 2014/08/04(月) 23:06:05




    ハンジ「しかし・・うなじから脱出・・
        そして消滅・・・それじゃあ
        まるで・・・まさか他の巨人も
        すべてうなじの部分には・・」


    ・・― 丁度その時


    エレン「ん・・・ぐぅ・・!!
        はっ・・は・・・!?」


    ミカサ「エレン!!!!」ガバァ




    アルミン「目が覚めたのか!
         エレンでいいのか!?今の
         君は・・??!」


    エレン「こ・・こは・・・?
        いつもの医務室と違・・」
        キョロキョロ



    アルミン「答えてくれ!君はエレンか!?
         それとも・・!」


    ハンジ「???」



    エレン「大声出すなって・・!オレだよ
        ・・やっと・・自分の身体に
        戻れた・・!!しかし畜生・・・
        ・・・!最悪の気分だ・・!」
  35. 37 : : 2014/08/04(月) 23:07:30
    ミカサ「良かったエレン・・・!!
        あなたになにかあったら
        ・・私は・・!!」ボロボロ



    ハンジ「ええと・・・?うん、
        何か色々と大変だった・・
        のかな?この子も今回の事に
        何か関係が有るのかな??」



    アルミン「色々と説明は難しい上に
         今この場でその話までして
         しまうと状況は更に混乱
         してしまうと思うので・・」

         

    エレン「(・・・?誰だこの人・・)」



    ハンジ「?」
    首を傾げ、覗き込む


    それと同時に胸元のワッペンが
    エレンの目に留まる・・





    エレン「(じっ・・自由の翼っ・・!
        調査兵団!!?しかも
        ・・第4・・分・隊・・
        分隊長!?)」


    ガバッ




    エレン「しっ!!失礼しました!
        見苦しいところを!!!
        自分は104期訓練兵団
        所属の、エレン・イェーガー
        訓練兵です!!」
        ドンッ
  36. 38 : : 2014/08/04(月) 23:09:26


    ハンジ「ええっ、あの・・君、
        病み上がりなんだろ!?
        無理しないで寝てなってホラ!」
        アタフタ
        



    エレン「い、いえっ・・それよりも
        この状況は一体・・?!?
        ここは何処なのですか!?」



    ハンジ「ここはトロスト区の調査兵団
        本部さ。場所で行ったらまあ・・
        開閉扉が近くにあるかな。
        遠征に行く用がある我々には
        立地上も好条件だしね」


    エレン「なっ・・・!?本部!?
        それに・・」ババッ

    後ろを振り向き



    エレン「な・・なにかあったんですか!?
        オレが気を失ってる間に一体
        ・・?!」


    アルミン「エレン・・・これから言うのは
         冗談でも何でもない。だから
         落ち着いて聞いてほしい。」



    エレン「・・・・・?」




    アルミン「まず・・ライナーとベルトルト
         ・・・そしてその二人に
         連れられてアニが訓練兵団を
         去った。」



    エレン「去っ・・・・た・・?
        おい、なんだそれ・・意味が」







    アルミン「そしてライナーの正体は
         ・・・・・・・・・
         巨人だった・・・!」

  37. 39 : : 2014/08/04(月) 23:11:25




    ドクン






    エレン「ぐっ・・・!!!?」
        (頭痛・・・?!)


    アルミン「エレン!?大丈夫か?!!!」



    ミカサ「しっかりして!ほら、横に!!」


    エレン「う・・ぐう・・!
      (起きた直後には・・・思い
       出せなかった・・まるで
       夢の続きを思い出したような
       ・・!!嫌な感じだ・・・!
       頭が割れる・・しかしこの
       情景・・!ここで・・
       気を失う訳にはいかない・・!)」


    エレン「おい・・!皆・・よく聞いて
        くれ・・オレは・・気を失う
        前、アニの記憶を少しばかり
        垣間見た・・!」


    アルミン「・・・!?アニの・??!!」


    エレン「アルミン・・今のお前の言葉を
        聞いて全てが合致して・・
        その光景の意味が理解できた・・
        ・・・!細かい事は説明できない
        ・・・!ただ・・!!陽が昇る
        までに・・・その、逃げたって
        ライナー達を見つけ出せ・・!」


    ミカサ「見つけ出せって言っても・・」


    ジャン「あいつは壁の外に行くって
        言い放ってもうとっくに
        俺達より先に出ていっちまった
        んだぞ!?今頃装置を使って
        はるか遠くの故郷とやらに
        向かってるんだろうから
        見つけようがねえよ!!」
        (壁の外だと??!冗談じゃ
         ねえ!!!!)
  38. 40 : : 2014/08/05(火) 01:01:48


    エレン「違うっ・・・!本当に・・
        ライナーかベルトルトは・・
        故郷に戻りたいとかしか
        言ってなかったのか・・?!」



    アルミン「ミカサの話ではそうだって
         ・・なんでも夜のうちに
         ウォールローゼを突破
         するとか・・・そんな事を」



    エレン「・・・・・!!!
        いいかお前ら・・。
        お前らが言う事が冗談じゃ
        ないってことはよく分かった。
        その上で今からオレがいう事も
        冗談じゃないから
        ・・・覚悟して聞け・・・!」


    ハンジ「何なに?一体彼は
        何の話を・・・」    
     




    エレン「ライナーが鎧で・・・!!
        ベルトルトが・・超大型巨人だ
        ・・・!!!このまま放っといて
        みろ・・・!明日にでも奴ら
        壁を壊しに来るぞ・・・!!!」





    全「!!!???」





    ハンジ「ちょっ・・え?!何を
        言ってるんだこの子は!?
  39. 41 : : 2014/08/05(火) 01:03:02


    アルミン「ちょっ・・・と
         待ってくれエレン!!?
         それはまさか、アニの記憶から
         知った情報か・・?!もし
         そうだっていうのなら・・
         まさか・・・!!」



    エレン「ああ・・・とても高い景色
        からライナーを手に乗せた
        記憶や、超大型巨人が出現する
        瞬間を真後ろから見ている
        記憶があった・・・!間違いない
        ・・・アニも・・あいつらも
        全員・・・巨人だったんだ・・
        ・・・!!!」



    ハンジ「??!・・・・!?」
        オロオロ




    ジャン「・・・ウソだろおい・・!
        どうして・・・!!
        悪い冗談だ・・・・!!!」
        ガクッ・・




    ミカサ「私は・・エレンの言葉を疑わない
        ・・全て信じる。その情報が
        確かだとすれば・・一刻の
        猶予も無い。もっとも優先すべき
        目標をベルトルトに絞って
        ・・彼らを止めるべき」

  40. 42 : : 2014/08/05(火) 01:05:34
    ジャン「おい・・・一ついいか・・?
        止めるってったって、
        一体どうすればいいんだ
        ・・・?」




    ミカサ「それは見つけてから幾らでも
        考えればいい。簀巻きにして
        地下に幽閉してもいいし、
        それが無理なら・・」


    ジャン「そうじゃあねーよ!そこに
        もってくまでにもし、食堂で
        ライナーがやった“アレ”を
        やられたらどうするんだ?って
        聞いてるんだよ!!!」




    ミカサ「っ・・・・」




    ジャン「ライナーやアニはまだいい
        ・・・!!だがもしそこの
        死に急ぎ野郎が予言した事が
        デマでないなら・・・
        ベルトルトは最大身長
        50メートル超の大きな
        お友達なんだぞ・・・?!」



        

    ジャン「そんなのがすっぽり収まる
        夢のような匠の空間が
        トロスト区にあるってのかよ・・」




    ミカサ「捕まえておけないなら・・」
    ハンジ「はいはいはいはい、!
        ちょおっといいかな!!ストップ!
        ストップだ!!」
        パンパンパン


    エレン「・・・!」
  41. 43 : : 2014/08/05(火) 01:07:58



    ハンジ「ダメダメ、熱くなっちゃあ。
        ね?それにいくら脱走兵とはいえ
        君らの元お友達だろう?そんな
        辛辣な事を君自身が言っちゃあ
        いけないよ・・・それに・・」



    ミカサ「・・・・」




    ハンジ「そっちの彼の言う通りだ。
        もしその彼らが現在この界隈に
        潜伏しているのだとしても。
        捕り物を行うなんて事になれば
        それなりの大立ち回りに
        なるはずだ。そうなれば流石に
        君達だけでどうこうできる問題
        ではなくなる・・・」

    アルミン「(それは十分わかってる・・
          それに・・・)」



    ハンジ「そっちの子もそんなに難しい
        顔をしなくていい。きっと
        アレだろ?“部隊を動員するに
        はそれなりの根拠が必要な筈”
        ・・みたいな感じの事で
        悩んでるんだろう?」



    アルミン「え・・まあ・・・流石に
         調査兵団の実働部隊と言ったら
         壁外での実戦という本物の
         修羅場を潜り抜けている、
         事実上人類最強の部隊とも
         いえる貴重な戦力ですから・・
         こんなにいきなり、しかも
         確証も持てぬままもたらされた
         情報だけを鵜呑みにそんな
         人々が果たして動いて
         くれるのかどうかという点では
         確かに動揺を隠せないと
         言いますか・・しかし自(ry
    エレン「おい、おい、アルミン!
        そういうのは今いいから!!;」
        グイグイ



    ハンジ「^^;」

  42. 44 : : 2014/08/05(火) 01:20:45

    エレン「少し・・いいですか?
        ええと・・ハンジ分隊長・・?」


    ハンジ「ああ。ハンジさん、って
        気軽に呼んでくれ。呼び辛い
        だろ?ブンタイチョーなんて」
        ハハ



    ハンジ「こいつなんて堅物だから
        たまにしか名前で呼んで
        くれなくてね。皆の前じゃ
        いつもブンタイチョーさ。
        鳥の名前かってのw」



    モブリット「ま、間違った事じゃ
          ないですよね!?」


    ハンジ「肩肘張った感じは・・
        なんかなぁw」


    エレン「・・・;で、すみません。
        話を戻しますが・・」




    ハンジ「ああ、何だい!?面白い話?!
        巨人についてなら嬉しいなァ!
        愉しいなぁ!!」ワクワク




    エレン「(そっちの話しか要らないって
        顔だコレ・・・でもどうせ
        そっちの話なんだが・・;)」
  43. 47 : : 2014/08/06(水) 00:38:01


    エレン「5年前の壁が壊された時の
        状況・・覚えてますか?
        超大型巨人が現れて、マリアの
        開閉扉を破壊した後
        続く鎧の巨人が内門を破壊した
        あのときです」


    ハンジ「ああ勿論だとも!!忘れろって
        方が無理だよ!超大型かぁ・・!
        是非とも会ってこの目で
        見たかったなぁ・・・!!」
        ゾクゾク//・・


    エレン「つまり・・・“見たかった”
        って事は、その時調査兵団
        は壁の内側に居なかった・・
        って事ですよね」


    ハンジ「タイミングの悪い事にね!!
        でも状況の報告では・・
        超大型巨人も・・鎧の巨人も、
        壊すものだけ壊したら
        さっさと消えてしまったって
        事だったから・・もし私達が
        いたとしても・・・
        ・・・・・・・、・っ!」



    エレン「そう、討伐されてないのに
        消えたんです。それも超大型
        は・・・壁の内側からでは
        ただ見えなくなっただけ
        かもしれませんが・・そこに
        辿り着くまでの足跡も・・
        離れていく足跡も見つからな
        かった・・・そうですよね?」




    ハンジ「・・・なるほど・・・状況は
        今回君達がみたライナーの
        巨人化とほぼ同じ・・・
        って訳か・・!」



    アルミン「それについては僕も色々
         考えましたけど・・
         そこにもう一つあまり
         考えたくない仮説が・・」




    ハンジ「・・なんだい・・?」
        ワクワク
  44. 48 : : 2014/08/06(水) 00:40:54


    アルミン「まずそれを説明する前に
         なんですが・・実際の巨人を
         まだ間近で見たことがない
         上に、座学でしかそれらの
         習性について知らない
         立場から・・2,3確認しても
         宜しいですか?」


    ハンジ「いいよ、なーんでも聞いて?」
        フフン



    アルミン「奇行種を含める、通常の巨人
         というのは・・知能はお世辞
         にもいいとはいえない、
         というより考える脳がほぼない
         くらい合理性に欠いた
         動きをしているんですよね?」



    ハンジ「・・まあ簡単に言ってしまえば
        そうなるね。人間見つけた時の
        まっしぐら感は俊敏そのもの
        ってかんじだけどね?♪」
        ミミミミミミ!!ッテカンジ!



    アルミン「(ミミミミ・・?;)
         そ・・、それではもしロクに
         考える脳がないなら・・

         門にある程度近づいた巨人を
         砲撃で追い散らす砲兵の
         威嚇砲撃が普段からあるにも
         関わらず超大型巨人が
         扉を破壊した際に

         
         ・・・・・何故一斉に
         都合よく破壊された門まで
         彼らは殺到してきたので
         しょうか・・?」
  45. 49 : : 2014/08/06(水) 00:43:52

    ハンジ「それなんだけどね・・
        その時私たちは丁度遠征の
        真っ最中だったんだが・・
        周囲一帯に見当たる巨人が
        一斉に壁の方角に向けて・・
        ・・“進撃”を始めたんだ。
        私達には目もくれずにね。」



    アルミン「・・・!」



    ハンジ「数が数だったから、流石に
        全部が、近くの人間を無視する
        奇行種だったんじゃないか・・
        なんて考えはどうしても
        できなくて・・結果暫定的に
        立てられた仮説は・・
        “巨人には何らかの人間を
         探し当てる器官が備わってる”
         
         ・・・・か、

        “それと似たようなもので
         壁の異常を察知できる力を
         持っている”
         ―――と、この二通りだった」



    ハンジ「三つ目に“とんでもない地獄耳”
        っていうのもあったけど、
        彼ら、砲声にもビビらないし
        信煙弾の発砲にもなんら反応を
        見せないからその線はボツに
        なったんだよ。そーだったら
        面白かったのにねぇ」ニヤニヤ




    アルミン
    エレン
    ミカサ「(それは今割とどうでもいい)」
    ジャン
    モブリット

  46. 50 : : 2014/08/06(水) 00:49:21


    ハンジ「君の雰囲気から察するに・・
        それを覆せそうな可能性でも
        見つかった・・?って事かな?」



    アルミン「巨人は・・開閉扉を
         壊した後で誘導された
         んじゃないかと・・
         そう思いつきました。
         憶測の域を出ないし、何の
         根拠も無いので“誰”が
         それを仕向けたか、とか
         まではとても考えられ
         ませんが・・」



    エレン「(まさか・・・・!)」



    ハンジ「・・・・・!」



    アルミン「いえ・・あの、あくまで
         今の分隊長の話を聞いた限り
         での思い付きですが・・」


    ハンジ「いや・・思い付きでもなんでも
        いい・・。とにかくだ・・、
        “巨人になれる人間”が現れた
        ・・・これだけで我々調査兵団
        が今までに行ってきた壁外調査
        の成果と比べても余りある
        大発見だ・・・。」

    アルミン「・・・・」


    ハンジ「彼らの目的とやらが
        どうであれ・・・例えそれが
        人類の掃滅だったとしても・・
        彼ら自身が人類に害成す
        怨敵であったとしても。いや、
        そうであればこそ、殺してしまう
        訳にはいかなくなったな・・・」
  47. 51 : : 2014/08/06(水) 00:51:57

    ミカサ「・・しかしジャンの意見も
        的外れでは無い・・
        もし超大型巨人が壁の内側に
        現れでもしたら・・」




    アルミン「それも実は・・まだ仮想の
         段階を出ていないけど一つ
         対策が思いついたんだ・・
         ・・・・」




    全「!!??」





    エレン「本当かよアルミン!!?お前
        一体どういう頭してるんだ
        ・・・?!」   



    ジャン「いや、思いついたってお前!!
        超大型だぞ!?ライナーの
        巨人になる瞬間をお前は
        見てないから簡単に言えるの
        かもしれないけどな!
        一瞬だ!!一瞬で何もない
        とこから巨人が湧いたんだぞ!?
        俺達やミカサも何もできずに
        爆風に耐えるのがやっとだった
        ・・・!それを一体・・」



    アルミン「何もない所から・・・
         ・・ちょっと、いいですか
         分隊長・・?」


    ハンジ「・・ハンジさん、な!」
        ポン



    アルミン「あ・・じゃあ、その、
         ハンジ・・さん。」
         ビクビク




    ハンジ「うむ!」ヨロシイ!

  48. 52 : : 2014/08/06(水) 00:53:57


    アルミン「その前に・・超大型と、鎧の
         巨人の行動を思い出して。
         超大型巨人・・つまり
         それに化けたベルトルトと
         しよう。彼にかかれば
         いとも簡単に蹴破れてしまう
         開閉扉だが・・じゃあ、
         どうしてもう一つ内側にある
         内門は彼が蹴破らなかった
         んだと思う・・?」


    ジャン「どうしてってお前・・
        超大型は壁の外に居たんだろ
        ・・じゃああのサイズで
        たかが蹴破った穴から
        入って来れる訳・・・・・
        ・・・・・・・、っ!」


    ミカサ「・・・?」




    ハンジ「まさか・・・」



    エレン「・・そうか・・!!
        代りに砲撃に身を晒す
        危険を冒してまで鎧・・
        つまりライナーが内門突破を
        引き受けざるを得なかった
        のは・・・・!!!」
  49. 53 : : 2014/08/06(水) 00:55:49

    アルミン「単純に考えれば、ベルトルトが
         巨人化を解き、直後に
         普通の姿で内門まで移動するか
         ・・あるいは壁の内側に
         お邪魔してから再び巨人化し、
         悠々と歩いて内門まで行けば
         いいはず・・でもそれが
         出来なかった。もう皆薄々
         気付いてると思うけど・・」

    ミカサ「・・?・・?」


    アルミン「そもそも何のリスクも
         コストも消費せずにあれだけの
         巨体を生み出せるはずがない
         んだ・・・!ましてベルトルト
         に関しては事実なら50メートル
         を超す巨体を、ジャンが言った
         通り、“何もない所から”
         出現させるんだからね・・」



    ハンジ「なるほど・・・・!!
        それはつまり体力的なモノで
        有るかもしれないし、時間
        経過でしか補えない物かも
        しれないって訳だな・・・?!
        それも恐らく有限的なもの
        ・・・!」



    アルミン「そうとわかれば狙うチャンスは
         一瞬しかありません・・
         つまり、ベルトルトが壁を
         壊そうと、壁の外で巨人化
         した、その直後・・奇襲を
         かけて、一気に引き摺りだす
         ・・これしか思いつきません
         ・・・」



    ハンジ「充分だ!!いやあ凄いよ君!
        少し考えれば普通の事だが、
        言われるまでは、どうやって
        壁の内側に被害を出さない
        ようにするか考えるだけで
        手一杯だった!」

  50. 54 : : 2014/08/06(水) 00:58:08


    アルミン「しかしそれには何もない
         城壁の上でベルトルトに
         見つからないように隠れて
         待ち受ける必要があります・・
         どう考えても難しい話です
         けど・・」



    ハンジ「いや・・何とかしよう。
        とりあえずベルトルトの
        対策はそれで纏まったな・・
        場所は・・前回を鑑みれば
        トロスト区開閉扉の直上か・・
        あそこには当然だけど固定砲台
        が多数設置されてる・・おまけに
        明日の空模様は・・」ブツブツ



    アルミン「あ、あの!!しかし」



    ハンジ「・・・ん?何だい?」



    アルミン「ここまで話しましたが、
         エレンも言う通り、自分が
         言った事は全て仮定に
         過ぎませんよ・・?!
         もし今まで言った事が、それも
         エレンのいう事まで本当で
         無かったら・・!」



    エレン「お、おいアルミン!いきなり何
        ・・・!」


  51. 55 : : 2014/08/06(水) 01:00:14

    ハンジ「おいおいおいwだから
        言っただろう?そんな細かい事
        は気にしなくてイイって。
        何せ君らが来た時点で・・・
        こっちは君達が巨人と接触した
        後でここに来たんだって確信は
        あった訳だし。」


    エレン

    ミカサ
        「は・・・?!」
    ジャン

    アルミン



    ハンジ「ホラ、こいつ。」


    ミケ「・・・」
       ヌッ


    全「っ!!!」ビクッ




    ハンジ「ああ、隊服を着た2メートル級
        巨人とかじゃないからな。
        ミケ・ザカリアスっていうんだ。
        無口が過ぎるから私が勝手に
        自己紹介するけど。」



    エレン「(デけぇ・・・!!)」



    ジャン「(デカすぎんだろおい・・!)」



    アルミン「(すごく・・大きいです・・)」



    ミカサ「(・・・・)」
  52. 56 : : 2014/08/06(水) 01:02:09

    ミケ「・・・」スンスン



    アルミン「!!!?;」ババッ


    ハンジ「こうやって初対面の
        他人の匂いを嗅いでは・・」




    ミケ「(お前、ちょっとやりすぎだぞ
       ・・水浴びしてから寝た方が・・)」
       ※超小声
        


        
    ハンジ「!!!?!???!」
    (初めて見るリアクション!!?)




    アルミン「!!!///////////」
         ボッ/////
        



    エレン「・・なに言われたんだよ
        アルミン・・・」シラーッ・・


    ミカサ「・・・そんな子に
        ・・育てた覚え・・・」
        シラー・・

    ジャン「・・・・ドンマイな。
        アルミン」フイッ




    アルミン「な・・!なんでも
         いいだろ!?別に!!
         っていうかその反応、
         絶対何言われたか聞こえて
         るよね!!?/////」
         


    ハンジ「ま、まあ、いつもだったら
        これが鼻で笑うんだwア、アハハ
        ・・滑っちゃったぜくそぅ・・
        
        ・・で、本題に戻るけど
        コイツね。巨人に対しての
        嗅覚がハンパじゃないんだ。
        どれくらいかっていうと、
        壁外で陣形を組むとき、
        先頭に立って、まだ視界にすら
        入ってない巨人の接近に
        気付けるくらい。」


    ジャン「んなっ・・マジかよ・・!」



    ミケ「(フフン)」
  53. 57 : : 2014/08/06(水) 01:06:50

    ハンジ「そのこいつが、君らがここに
        付く前に既に巨人の匂いを
        嗅ぎつけてた。だからこんな
        時間に私達がすぐ出向いて
        来られたって訳さ。もう現時点で
        特別作戦班、及び私の第四分隊
        含む実働部隊の大半は、
        いつでも討って出られる。」



    アルミン「ま・・まさか報告する前に
         気付いてたなんて・・」




    ハンジ「でもそれはあくまで我々の
        内だけでの話だ。憲兵団は
        言うまでも無いとして、
        この件に関しては駐屯兵団
        にすらまだ報告していない。
        ・・何故か。報告しても
        何もメリットが無いからさ。
        君くらい頭が良いなら
        言わなくったって分かるよね♪」



    アルミン「・・・・!」コクリ
        (言った所で・・!頭の中身を
         心配されて終りだ・・)
  54. 58 : : 2014/08/06(水) 01:10:23


    ハンジ「さて話を戻そうか・・彼の、
        エレンのいう事には日の出まで、
        って事だったから、ベルトルトの
        方はそれでいいとして・・」



    ジャン「ちょっと待ってください。
        その・・何で日の出までは
        安心だって言えるんですか?」



    ハンジ「うん・・・?ああ。座学で
        習わなかったかな?
        夜間は巨人の行動力が著しく
        低下するんだよ。きっと
        アルミンがさっき言った方式
        同様に何らかの恩恵を、
        太陽光から受けているんじゃあ
        ないかと・・考えられている。」


    アルミン「それも超大型となればきっと
         並大抵な動力じゃない筈さ」



    エレン「なんだジャン、ビビッて
        んのか・・?」




    ジャン「俺の神経質も認めるが・・
        おい・・お前、ちょっと
        軽薄すぎやしねえか?
        お前にはまだ言ってなかった
        かもしれねえけどな・・
       
        コニーは・・死んだんだぞ。
        巨人化したライナーに
        うっかり座布団にされてな。
        頸部圧迫の・・即死だ」



    エレン「っ・・!・・・・そうかよ」
        グッ・・・・



    ジャン「・・・っんめえ!!
        見損なったぞこの自殺
        志願兵が!!お前が死に急ぐのは
        お前の勝手だ!けどお前にとって
        コニーはその程度の仲間だった
        ってのかよ!!俺は・・っ!!
        俺は・・・・!!」ググ・・・


    エレン「泣くんじゃねえ・・オレだって
        我慢してんだ・・必ず生きたまま
        ライナーに会って・・・
        ぶん殴ってでも問いただす・・
        ・・そうだろ・・おい・・!」




    ジャン「お前に言われるまでもねえ
        ・・・!」



    ミカサ「(溜息)」




    アルミン「(この二人はいつまでたっても
          変わらないかもね・・)」

  55. 63 : : 2014/08/06(水) 23:31:45


    ハンジ「割って入りづらいから黙ってた
        けど^^;それじゃあ、
        いいかな。まずそれぞれの
        役割分担を決めたい。」



    アルミン「ですが、その前にあの・・!
         ライナーや・・その、アニの
         方は一体・・・」



    ハンジ「それがねえ・・その二人に
        ついては正直対策の立てようが
        無い気がしてね・・君には
        何か名案が思い付いたかい?」


    アルミン「そう・・ですよね。開閉扉
         という唯一分かり易い目標が
         有るから超大型巨人という
         存在を警戒する上ではまだ
         その対策を立てるのは比較的
         容易ですけど・・」


    ハンジ「ああ。それにその二人だって、
        巨人化しなければただの人間
        なんだろう?もっとも人間の姿
        でいても巨人に襲われないと
        いうのなら壁外に居ても
        へっちゃらなんだろうけど・・
        エレンが言っていた記憶の
        話しとやらを信用するにその
        線は薄い。」
  56. 64 : : 2014/08/06(水) 23:32:32

    アルミン「・・どういうことですか?」





    ハンジ「彼が見た景色っていうのは・・
        その、巨人であると予想される
        君らの同期の記憶の一部だって
        話だったろ?・・説明はされて
        いないけどさw」




    アルミン「ええ・・、まあ・・」



    ハンジ「その中の一部でエレン、君は
        “手の平にライナーをのせて”
        ・・・って言わなかったか?」




    エレン「・・・言いました!」




    ハンジ「その景色・・周りに巨人が
        ・・ある程度いる景色じゃ
        なかったか?ひょっとして」




    エレン「いました・・・確かに!
        それから壁の中の景色じゃ
        ないです・・
        恐らく・・・!」




    ハンジ「つまり、彼らからしても、
        巨人の姿をとるまでは、自分も
        他の巨人に喰われる危険性が
        有るって事だと思うよ。
        要するに・・まず彼らが壁の外に
        自ら出向いてくれる可能性は・・
        見込めない事になる・・」
  57. 65 : : 2014/08/06(水) 23:37:12

    アルミン「(町が戦場になる危険性はもう
          排除できなくなったって
          事か・・・すると非常に
          厄介な事になったな・・)」


    ハンジ「君の頭の中が読めるようだよ。
        ・・報告はできない。しかし
        彼らがひとたび壁の内側で
        巨人にでもなってみろ。
        そこに地獄の一丁目が簡単に
        出来上がる事になる。
        これを私たちは最小限の
        被害に抑えながら制圧しなければ
        ならないのさ・・」イヤーマイッタネ!


    アルミン「(この人は・・どこまで本気で
         喋っているのか分からない所も
         あるけど、あくまで現実を
         見据えている気がする・・
         この人になら・・・・!)」

  58. 66 : : 2014/08/06(水) 23:37:46

    エレン「しかし・・未だ普通の巨人とも
        遭遇したことのないオレ達で
        ・・足手まといにならないか
        ・・?」


    ジャン「バカ野郎!当たり前だ!!
        きっと俺達が同伴するとしても
        交渉や対話くらいしか役目は
        ねえよ!だいたいな、アニや
        ライナーが7~8メートルの
        身体で襲ってきたら
        お前は逃げ切れる自信が
        あるのかよ・・」



    エレン「それは・・正直無いな・・」



    ジャン「お前にしちゃ珍しく利口な
        判断ができたな。アニの
        身体から知能を分けて
        貰ったのか?」


    エレン「減らず口がきける位には
        元気が戻ったみてえだな。
        ブッフヴァルト(笑)」


    ジャン「ってめ・・・!どこで
        その名をっ・・・・!!//」


    エレン「お前、独り言の音量が
        デカいんだよ。納屋で
        ブツブツ何言ってるのかと
        思えば気色悪ぃ・・」

    ジャン「べっ・・ベつに俺の勝手だろ!!
        馬に名前つけるくらい・・!!」



    ミカサ「・・・私もつけている。
        気にする事は無い。」


    ジャン「っ・・!?」ドキッ



    エレン「マ、マジかよミカサ!!
        あの馬鹿デカいお前にしか
        懐かない暴れ馬だろ?
        なんて名前なんだ・・?」

    ―――

    ――





    アルミン「・・・!」チョンチョン



    ハンジ「(・・・ん?何だい?(小声))」
  59. 67 : : 2014/08/06(水) 23:39:18
    アルミン「(役割分担の事なんですが
         ・・!(小声))」


    ハンジ「(・・うん?(小声))」


    アルミン「(エレンは・・間違いなく
         超大型巨人の・・つまり
         ベルトルトの捕獲に志願する
         と思います・・その時は
         ・・・・・!!(小声))」
    ――
    ―――
    ――――

    ハンジ「(分かった。君の頼みは確かに 
         引き受けた。どこまでうまく
         やれるか自信は無いけれど、
         善処しよう(小声))」



    ハンジ「さてそれじゃあここで大体の
        流れを説明しとこうか!」
        パン


    全員「っ!」ババッ



    ハンジ「あ、敬礼とかホントいいから。
        疲れるでしょ。あ~・・・
        えっとだね・・本当ならここで
        一旦広い場所にでも今回の捕物に
        参加する人員を一挙に集めて
        作戦会議でもしたかったんだけど
        ・・何せ今回の相手は人間でも 
        あるから・・情報漏えいは極力
        避けたい。そこで・・だ」


    モブリット「これを」バサッ
  60. 68 : : 2014/08/06(水) 23:40:39
    ハンジ「この地図で見て・・・今、ここに
        居るのが我々。んで、ここ、
        すぐ近くにあるのが開閉扉。
        超大型巨人・・つまりその
        ベルトルト君の捕獲に参じる
        メンバーは・・我々第4分隊の
        面々・・それから・・」


    ハンジ「エレン、君を連れていく事に
        しよう。よろしくね」ニコ


    エレン「おっ・・オレですか・?!」
        パチクリ


    ハンジ「あれ?嫌だったかい??」
        ン?


    エレン「そんな!嫌だなんて飛んでも
        ありません!!自分から志願
        するつもりでしたし、
        例え不本意でも命令に私意は
        持ち込みません!兵士として!」
        ドン!


    ハンジ「ん。いい心がけだ。
        本番もその意気で頼むよ」



    エレン「はっ!!」
        ドン!



    アルミン「・・・・・」


    ハンジ「そしてもう一方・・アニと
        ライナーの捜索には、
        特別作戦班を中心に実働部隊
        大半で支援を行って実行する
        ものとする。これは、行動範囲が
        あまりにも広範囲かつ、特定が
        難しいので、その為の大人数でも
        ある。実を言うと現在既に
        立体機動の腕に覚えのある者
        数名によって隠密に捜索は
        進められてる。高所を中心にね」

  61. 69 : : 2014/08/06(水) 23:42:02
    アルミン「・・も、もうですか?!」


    ハンジ「うん・・まあ、当然この辺りの
        判断は私じゃなくて、我らが団長
        エルヴィンによって下された
        ものだけど。駐屯兵団や憲兵団に
        は話を通していないと言っても、
        団長は何故かもっと根の深い所
        には結構顔が利く人材でね。
        ザックレー総統、って知ってる?
        御髭の偉そうな人!」


    アルミン「知ってるも何も・・・実質上
         全兵団の上に立つ人物じゃない
         ですか・・知らない訳ない
         ですよ・・・」



    ハンジ「それもそうか。で、
        今回の作戦においても当然後後
        面倒がないように、その方の
        許可はとってあるって事なのさ。
        さっき言ったように、夜間の
        立体機動等でできるだけ隠密の
        内に相手の居場所を見つけ出す
        ・・って建前でね。」


    アルミン「まあ・・それくらいは
         しておかないと大変ですよね
         後になってから。」


    ハンジ「ねー。単純に言っちゃえば
        捕まえるのミスった上に
        巨大化した君のお友達が
        もしも町を滅茶苦茶にしよう
        ものなら・・調査兵団は
        責任を問われて消し飛んじゃう
        かもしれないからね!」ケラケラ


    エレン「(とんでもない事を軽く
         言った・・・^^;)」
  62. 70 : : 2014/08/06(水) 23:44:40

    アルミン「演習でも非常時でも何かの
         式典でもないのに白昼堂々
         立体機動で町中を闊歩する
         訳にいかないですから・・
         それは分かるのですが・・
         でも、居場所が分かれば、
         作戦中は使用許可が下りる
         んですよね?昼間でも」


    ハンジ「何言ってるんだい!
        当たり前だろw使わなきゃ
        全員あっという間に叩き潰されて
        終わりじゃないか!」
        ヘンナコトイウナキミハ!


    エレン「アルミン、お前って時々すごい
        ズレたこというよな」


    アルミン「エレンに言われるのだけは
         申し訳ないけど納得できない
         かな・・・」


    ハンジ「・・で、話が逸れたけど、
        こっちの人員として、この場に
        居る、ミカサ、アルミン、ジャン
        、君達は特別作戦班、通称
        リヴァイ班と合流するように。」

    ジャン「特別・・・」

    ミカサ「作戦班・・・」


    アルミン「リヴァイ兵士長・・つまり
         人類最強と目される兵士長が
         率いる班・・・」


    ハンジ「はっきり言うけど彼らは強い。
        まあ、何も知らないで知性を
        持っている巨人と知らずに
        それと当たってしまったら
        かなりの痛手を食らうのは
        誰でも当たり前だと思うけど
        ・・彼らだけはそれくらいじゃ
        簡単にやられはしないと思うね」



    アルミン「勿論戦わずに済むならそれが
         一番なのですが・・」


    ハンジ「それは諦めた方がいい・・
        逃げる時にその・・ライナーが
        巨人化というカードを切ったのは
        威嚇の意味も込められている
        筈さ。俺達にこれ以上ちょっかい
        をだすなら容赦はしないぞ、
        って意味のね・・」



    アルミン「そう・・ですよね・・
         やっぱり・・」シュン・・
  63. 71 : : 2014/08/08(金) 02:12:33

    ハンジ「まあ、そう気負いするなって!
        私達も精一杯うまくやって
        みせるから!」


    アルミン「しかし・・ベルトルトの
         方はともかく・・後の二人は
         どうやって取り押さえる
         手筈なんですか・・?」



    ハンジ「・・ん?というと?」



    アルミン「だって・・、まず間違いなく
         彼らの抵抗を鑑みれば
         巨人化した彼らとの交戦は
         避けては通れない訳・・
         ですよね・・?そうなった
         場合・・」



    ハンジ「ああ・・!彼らをいかにして
        止めるかって事ね!!それに
        ついては説明が足りなかったね!
        実は・・それに関して二つの
        案が今のところ上がっている。」


    アルミン「・・二つ?」


    ハンジ「ああ。一つ目は・・これは君達は
        知らない用語だとも思うけど
        “ガス欠”狙いといってね。
        壁外調査を重ねる内で分かった
        事だが・・どんな傷を負っても
        即時回復し、また何を普段から
        食べて力を得ているかすら
        分かっていない巨人の
        生態だが・・」


    アルミン「・・・・」


    ハンジ「そのスタミナが無尽に
        発揮される物ではないという
        事がこれまでの経験から明らかに
        なっている。つまり・・・」


    ハンジ「何度も体の一部を欠損すれば
        そのうち回復の速度も落ちてくる
        し・・全速力で馬を追い続ければ
        疲れとはまた違った感じで
        動きが鈍る習性が彼らには
        あるんだよ」


    アルミン「そ・・・そんな習性が・・!」



    ハンジ「彼ら相手にもこれを狙ってみる
        ・・というのが今のところ
        一番の有力な手段だ・・
        ただ難点もあるけどね。」

  64. 72 : : 2014/08/08(金) 02:20:21


    アルミン「交戦時間・・ですか」



    ハンジ「ご明察。いやあ、君ホント
        怖いくらい頭いいね・・
        ぜひうちに欲しいくらいだよ・・
        ニファが二人に増えるみたいで
        それはそれで面白そうだしw」

    ニファ「っ・・;」ササッ



    ケイジ「(似てる)」


    モブリット「(絶対似てる)」




    アルミン「^^;・・で、それで
         その問題もありますけど
         それはまず置いておいて・・
         二つ目というのは・・??」


    ハンジ「二つ目は・・・あんまり口に
        出して言いたくない、緊急措置
        というか・・まあ、奥の手だね」


    アルミン「奥の手・・・」ゴクリ



    ハンジ「ミカサの供述から分かった事
        だけれども、巨人化した
        彼らの本体はどうやら通常の
        巨人同様うなじの部分に
        潜んでいるらしい。つまり
        その部分を・・・外から見えない
        からどうなるか分からないけど
        ・・・・・分かるよね?^^;」



    アルミン「・・・・・;」コクン



    ハンジ「まあ、それは最終最後の
        方法さ。リヴァイ達には・・
        極力四肢への集中攻撃で
        動きを封じ続けるようにって
        作戦で了解を得ている。
        しかし何せ相手は・・・
        巨人の姿をした“兵士”だ。
        そう簡単にいけば・・苦労は
        しないだろう・・ね」
  65. 73 : : 2014/08/08(金) 02:21:49


    アルミン「(分かっている・・・いくら
         実戦経験のない僕等でも
         それくらい容易に想像がつく
         ・・・どれだけ立体機動装置を
         自在に操れても・・巨人を
         動かしているのがその、
         立体機動装置の動きを
         熟知した者であるなら・・
         生半可な攻めは逆効果に
         なる・・!ワイヤーを
         掴まれればその時点で終わり
         ・・・!方向転換の効かない
         空中ではたき落されても
         それと同様・・・!
         あまりにも分が悪すぎる)」


    アルミン「(それを理解していながら
         この人は全く特別作戦班の
         人達を疑おうとはしていない
         ・・・つまり当たり前だけれど
         それだけの実力者って事に
         なる・・・その人達と共に
         僕達はこれから・・・!)」


    ケイジ「分隊長、どうやら・・偵察班が
        目標の止まり木を突き止めた
        模様です。距離はここから
        それほど離れていません」


    ハンジ「そうか・・でかした!!!」



    アルミン「(アニ・・ライナー・・
          ベルトルト・・君達は・・
          一体・・・・!!)」
  66. 74 : : 2014/08/08(金) 02:31:53


    ―数時間後・とある時計塔―




    アニ「・・・っ・・・」
       ぐぐっ・・



    ベルトルト「あっ・・!」



    ライナー「よう・・夜明け前の起床とは
         お前にしちゃ早起きだな・・
         気分はどうだ・・」



    アニ「・・・・」ゴシゴシ



    ベルトルト「そっ・・そんなことより
          まだ・・エレンなのか
          アニなのかが・・!」




    ライナー「落ち着け。どう考えても
         こいつはアニだ。これが
         エレンならこんなに落ち着き
         払っていられるものか」
         



    ベルトルト「アニっ・・!?
          アニ・・なんだな・・?
          君は今アニで間違い・・」




    アニ「・・・・」ムスゥ
  67. 75 : : 2014/08/08(金) 02:33:03


    ライナー「だんまりか・・・
         おい、ベルトルト。こりゃあ
         お前の期待は外れたと見ていい
         ・・アニ抜きで進める準備を
         しておけ。」


    ベルトルト「ら、ライナー、
          しかし・・・!」


    ライナー「・・・・・」



    ベルトルト「・・・分かった。」






    ライナー「・・・」



    ベルトルト「・・・」



    アニ「・・・」






    ベルトルト「二人とも・・ちょっと・・
          いいか・・?」


    ライナー「なんだ改まって。お前から
         何か言い出すなんて珍しい」



    ベルトルト「三人でこうして集まるのも
          本当に久しぶりだし・・
          何よりこれでもう最期に
          なる可能性だって・・・
          ある訳じゃないか・・だから
          僕は今のうちに言えることを
          言っておきたい」

  68. 76 : : 2014/08/08(金) 02:33:54


    ライナー「おいよせ。その心境は
         理解できなくもないが・・
         結局俺達は今日までの間に
         目当てのものを“見つけ出せ
         なかった”んだ。その上で
         故郷への道をまだ諦めずに
         いるには・・まだ壁が二つも
         残っている・・・・
         そういう話は・・・・」



    ベルトルト「・・・頼む。ライナー・・
          どうしても聞いてほしい。
          そんなにかしこまった事じゃ
          無いんだ」




    ライナー「・・・なんだ。」




    ベルトルト「・・いままで有難う。」


    アニ「・・・」


    ライナー「・・・・」


    ライナ―「・・・・・・;あ、おい、
         それだけか・・・?」



    ベルトルト「・・・・あ、ごめんその」


    ライナー「ほ・・本当にかしこまって
         無いな・・流石にその
         一言で終わりはないだろう
         お前・・・!」ガクッ・・・



    アニ「ぷっ・・」



    ライナー「・・・!」



    ベルトルト「!」

  69. 77 : : 2014/08/08(金) 02:39:25

    アニ「ふふっ・・っハハ・・」
       クスクス


    ベルトルト「あ・・アニ・・・」



    アニ「もう・・何が何だか・・
       昨日まで・・エレンや
       ユミルと入替わりながらも
       普通に訓練してたってのにさ
       ・・なんで・・私達今頃
       こんなことに・・・なってる
       のか・・ね・・(泣笑)」
       ポロポロ




    ライナー「・・悪いな・・
         こうなっちまったのも全部俺の
         責任としか言えない・・」



    ベルトルト「止せ!そういう所が君の
          ・・・!悪い癖だっ・・!
          そうして全てを背負い込もう
          とし続けて・・挙句の果てに
          君は・・・!!」


    アニ「やめなよ。そいつのソレは
       今に始まった事じゃないでしょ。
       それに・・・私達三人が
       してきたこと・・これから
       しようとしている事は・・
       こんな若い美空で重ねるには
       あまりに重すぎるよ・・
       分かってはいたけど・・・
       本気で心が折れる・・・」


    ベルトルト「っ・・!」



    アニ「そいつみたいにどうにかなって
       しまっても無理は無い・・よ。」
       ブルブル・・



  70. 78 : : 2014/08/08(金) 02:41:36




    ベルトルト「ライナーはっ・・!
          こんなになりながらも
          僕らを支え続けてくれたん
          だぞ・・?!それをそんな
          ・・!壊れてしまったような
          言い方なんて・・・!」


    アニ「知ってるよ・・!知ってるっ
       ・・・!そいつがどれだけ
       私達の分頑張ってきたのか
       くらい・・・!分かってるんだよ
       ・・・!けど・・けどさ」


       

    アニ「私達だって頑張った・・・!
       もう十分頑張ったじゃないか
       ・・?!だからせめて
       その分くらいは・・・・
       私も普通に生きてみたかった
       ・・・!!普通に笑ってさ・・
       普通に恋して・・!普通に
       ・・普通に死にたかったよ・・!」


    止めようとしても止まらない涙が
    アニの頬を伝い落ちる。



    時刻が日の出に差し掛かろうとして
    はいるものの、曇天のせいでいつ
    降り出してもおかしくない空模様の中
    ・・一足早く降り出した雨の様に


    その涙はこぼれ続けて止むことは
    無かった。



    アニ「っ・・ひぐっ・・うっ・・・
       グスッ・・ぅう・・」






    ベルトルト「っ・・!」




    ガバッ




    ライナー「・・お・・?!」



    突然の出来事に
    ライナーは己の目を疑って暫く
    思考を停止せざるを得なかった。




  71. 79 : : 2014/08/08(金) 02:42:41






    ライナー「おい・・ベルっ・・おま・・」





    アニ「・・・?!」グズ・・・


    ベルトルト「・・!」

    ギュウゥ





    ベルトルトは考える間も置かずに
    泣きじゃくるアニを抱きしめていた。



    肩をきつく抱き寄せられる
    アニ自身ですらもあまりに唐突の
    出来事に言葉を失い、状況を理解できずに
    いる。


    普段のベルトルトなら
    遠慮が過ぎて声すら掛けられなくなる
    この状況で、まさかこのような行動に
    出るとは・・・アニ、ライナーは勿論

    ベルトルト本人ですら自分を信じられずに
    いた。






    ベルトルト「ご・・ごめんっ・・・!
          でも・・今どうしても
          あの・・!こうしなきゃ
          いけない気がして・・・!」





    蹴られる。絶対に蹴り殺される。

    もう後悔しても遅い。



    ベルトルトの心に、一瞬にして
    拭いきれない程の悔恨と
    死の足音が響き渡ろうとした
    その時





    アニ「あんたってこんなにあったかい
       んだね・・今まで・・割と
       本当に冷たい血が通ってる
       んじゃないかってくらい・・
       自分の事・・何も言わない
       奴だったから・・」




    ベルトルト「・・・・」ブルブル





  72. 80 : : 2014/08/08(金) 02:44:29






    アニ「私、アンタのことはどうしても
       好きになれなかったよ。
       嫌いだった。気持ち悪いって
       くらいでも言い過ぎじゃ
       ないね。・・・
       今も・・・・変わらない。」




    ライナー「っ」(開いた口が塞がらない)



    ベルトルト「っ」




    ―死刑宣告。

    もしも自分がそんなものを受ける時が
    来るとするなら、まさに今この瞬間が
    それと同等の絶望感を与えられている
    真っ最中であると・・ベルトルトは
    悟った。


    抱きしめていたその腕にも流石に力が
    入らなくなり、その束縛から
    解き放たれたアニがとった行動は―――



    アニ「っ・・・」

    ベルトルト「っ!!???」





    ライナー「(モノクロ化)」




    その場の三人の時間を止めた。



  73. 84 : : 2014/08/08(金) 18:25:52




    今しがた受けた死の宣告に等しい
    言葉による精神的ショックにより


    完全に魂の抜け殻と化していた
    ベルトルトの後頭部に両腕をまわし――


    余りある身長差を補うために強引に
    顔を引き寄せた形でアニが行ったのは・・
    まるで心肺蘇生の為に息を吹き込むかの
    ような、唐突な口付けだった。


    直前まで流れ続けていた涙の味が
    互いの口に広がる・・・



    それによって完全に思考を停止していた
    ベルトルトの意識は再び強引に
    現実世界へと引き戻された。





    アニ「ぷはっ・・・」



    ベルトルト「っ・・・!!!!」




    アニ「なんでだろうね・・
       今・・私も何故かこうしなきゃ
       いけない気がした・・・
       ねえ、なんでだと思う///?」




    ベルトルト「ぼ・・・っぼぼ・・!!
          僕にそんな事きかれてもも
          っ・・・そんな・・!!!」



    アニ「・・どもり過ぎ(笑)
       ゴメン・・急にこんな事
       して。でも一応言っとくけど
       エレンが言ってたクリスタの
       分を除けばコレ・・初めてだから
       ・・・それだけは覚えといて」
       ///



    ベルトルト「そ、そんな!寧ろ
          僕が謝るべきだ!!!
          いきなり抱きしめたりして
          そのっ・・・!悪かった!!」



    ライナー「お前ら・・(溜息)
         ま・・まあいいか・・
         これはこれで・・・」

  74. 85 : : 2014/08/09(土) 02:30:48




    アニ「じゃあ・・聞くまでもないけど
       ・・もう決めたんだね・・?
       本当に今日・・・」




    ライナー「ああ・・もうこうして啖呵を
         切って出てきちまったんだし
         今更何を言っても昨日の
         状態に戻る事も無い・・
         俺の都合につき合わせる
         ようで・・悪いな・・」




    アニ「気にする事ない。・・私もどの道
       あんたと一緒で・・もう限界
       だったから。もし“期限”一杯
       まで粘ってたら・・完全に情が
       移ってしまっていたかもしれない」





    ライナー「せめてそいつだけでも
         見つかったなら・・・!」





    ベルトルト「しかしライナー・・君が
          言っていた事を考えると
          エレンやユミルが非常に
          怪しいって・・」




    アニ「あいつの記憶には巨人化に
       関する記憶なんて欠片もなかったよ
       ・・しかもその上危険を承知で
       試したけど・・私じゃ無理だった」

  75. 86 : : 2014/08/09(土) 02:33:28

    ライナー「おい!本当か!!?もし
         それで当たりだったらどうする
         つもりだったんだ!!
         全く・・結果論で外れてたから
         良いようなものを・・!
         無茶しやがって・・!!」



    アニ「私だって・・・!私だって
       あんな事はもう二度としたく
       無かったんだ・・!その為なら
       それくらいの危ない橋は
       喜んで渡ってやる・・!そう
       思ったからやっただけだよ・・」



    ベルトルト「もし“当たり”だったら・・
          ・・?」



    アニ「そんなの一々言わなくったっ・・
       ・・・・」



    アニ「・・・!」


    ライナー「・・っ!?」


    ベルトルト「・・・・!!」


    アニが身長の高いベルトルトの顔を
    直視して反論しようとした際、
    時計塔内部のその視線の先で何かが
    動いたのを捉える。


    リヴァイ「ッ・・・・バレたか・・!
         おいどうすんだ・・何時に
         なったら散るのかと真面目に
         待ちぼうけてたらこの有様だ
         ・・・!3人同時になんて
         なったら・・・!」


    アルミン「いえ・・!きっと散開する
         と思います・・!あの三人は
         まだこちらがどこまで掴んで
         いるか知らない筈です!もし
         そうだとすればベルトルト
         だけでも逃がそうとするはず
         ・・!そうなれば・・
         勝算はあります・・・!」




    リヴァイ「無くてもやらない訳にゃ
         行かねえんだがな・・立場上
         ・・」
  76. 87 : : 2014/08/09(土) 02:36:08





    アニ「・・・!囲まれてるよ!!!
       あんただけでもいい!!今すぐ
       表出な!!!」




    窓際。逆光で今まで全く気が付かな
    かったアニだったが、自身が置かれている
    状況を瞬時に判断し、ベルトルトに
    大声でけしかける




    ベルトルト「なっ・・・!あ、アニ
          君もっ・・!」




    ライナー「・・・・!!いや・・!
         ベルトルト!お前は先に
         一人で行け!!!俺達もあとから
         必ず“追いつく!!”アニは・・
         装置を付けていない!俺が必ず
         連れていく・・!!
         ・・わかったら行け!!!」



    アニ「・・・そういうこと・・!
       ほら・・、アンタにしかできない
       仕事があるはずだ・・早く行きな
       ・・・!」グッ



    ライナー「(一応こちらの目的が悟られ
         ないよう“追いつく”と
         言ってみたが・・エレンを
         通してどこまで気づかれてる
         ・・・・!?クソっ・・!!)」



    アニ「(難しい事考えてるみたいだけど・・
       もうこの際全部バレてると
       思ったほうがいい・・!!
       それを承知の上で・・アイツを
       信じてやれるならさ・・!
       あんたにも“やるべき事”が
       あるだろ・・?!(小声))」

  77. 88 : : 2014/08/09(土) 02:39:04


    ライナー「(アニお前っ・・!まさか一人で
         この人数相手取るつもりか!?
         正気になれ!!しかもあの
         ケープを見ろ!調査兵団だ!
         お前の事はどうか知らんが、
         俺はもう正体を知られちまって
         るんだ・・!それを知った上で
         付けられた人員っ・・!
         間違いなく実働部隊でも
         高位の奴が来てるはずだぞ・・
         ・・!力を合わせずにどうこう
         出来るレベルじゃ・・(小声))」




    アニ「(なら尚更だ。大丈夫・・
       本当に危ないとなれば捕まった
       フリでもする・・!(小声))」チャッ・・





    胸ポケットから取り出し、アニが
    後ろ手で目立たないように着けたのは
    武骨な銀の仕込み指輪だった





    ライナー「(万端だな・・恐れ入った・・!
         なら・・任せていいんだな
         ・・?!決して無理は・・!
         (小声))」



    リヴァイ「本当に奴一人だけ出てったな
         ・・まあいい・・これで
         当初の予定通り・・しかし」


    ダンッ・・


    アルミン「ライナー・・・!!」


    スタッ・・



    ジャン「・・・っ・・!!」



    作戦班全員、天井から着地



    リヴァイ「あんな茶番を見せられた後で
         交戦命令とは・・心底最悪な
         気分だ・・吐き気がする。」
         チッ・・



    オルオ「最近の若いのなんて皆
        あんなモンですよ・・!」



    ペトラ「いや・・あんたも19だから
        ・・充分最近のだから。」



    エルド「お前らも戦意喪失なんか
        して無いだろうな・・?
        見た目は普通の訓練兵だが・・
        情報が間違っていなければ
        あのガタイの良い方は間違いなく
        巨人だぞ」



    グンタ「まあ、いくら頭でわかってても
        ・・実物を見るまで俺は
        やっぱり信じられん・・」




  78. 89 : : 2014/08/09(土) 02:43:45


    アニ「・・わざと窓を塞がずに包囲して
       るって事は・・表に出てから
       やれって事・・・。って事は
       どうせこっちの事はもうとっくに
       バレてる・・そうなんでしょ?
       アルミン・・・・」



    アルミン「・・アニ・・・!君は・・!
         いや・・君もライナ―と
         同じ・・・なのか・・?!」



    アニ「・・・・・」



    アルミン「・・・何とか言ってくれ・・!
         まだ今なら・・・!」


    アニ「今なら・・・!?はっ・・
       あは・・!あはは・・・!!!
       今ならどうにかできるって?!
       あんた最高に面白い事言うね!!
       やっぱり・・私が好きになった
       だけの事はあった・・・!!」
       ニィィ


    アルミン「っ・・・!!こんな時に
         そんな冗談言ってる場合!!?
         君がもしそうでないなら
         今すぐに潔白をっ・・・!」




    アニ「冗談じゃないよ・・・!私は巨人
       だし、あんたが今でも好きだ!!
       好きで好きで好き過ぎて・・・!
       もし今あんたらと戦う事になったと
       しても・・・!あんたの事だけは
       ・・!踏みつぶせないと思う・・!
       配給の日に一目惚れしてから
       ずっと・・!」




    ミカサ「アルミン・・・話しても無駄
        ・・・!アニはもう・・私達の
        知っているアニではなくなって
        しまっている・・・!」チャキ




    アニ「でも、その大好きなあんたの前で
       アイツに・・あのでくのぼうに
       あれだけの事をしたんだ・・!
       今の私にできるのは・・アイツを
       信じて、ライナーとアイツの
       為に・・あんたらを叩き落とす
       ・・・それだけだ・・・!!」





    アルミン「やっぱり・・・ダメなんだね
         ・・・どうしても・・!」
     
  79. 90 : : 2014/08/09(土) 02:46:42


    ジャン「おいライナーよ・・・!さっき
        からだんまりとはつれねえじゃ
        ねえか・・!こっちはどうしても
        お前の釈明を聞きたくて・・!
        
        こんな壁のお外に征く事を
        生き甲斐にしてる方々に
        同伴までする覚悟を
        決めたんだ・・・!

        いつ死んでもおかしくない
        地獄の一等地に・・!
        この俺が自らだぞ・・?!?」
        ガタガタガタ


    グンタ「アレはどれだけ危険かという
        認識を改めさせたくて言ってる
        のか・・・・?それとも
        ひょっとして俺達馬鹿にされてる
        のか・・?」ポカーン



    アルミン「あっ・・・!アレは
         悪気とかそういうの本当に
         無いんです・・!ただ考える事
         何でも口にしちゃう癖があって
         ・・・!;;」





    ジャン「おい何とか言ったらどうだよ!!
        お前は・・!いや、お前達は
        ・・・!今迄俺達をどんな
        気分で騙してやがったんだ・・
        ・・・?!」





    ライナー「それは・・言えん・・。」



         
    ジャン「・・・ぁ・・??!」ピキピキ




    ライナー「どう詫びても許して貰えない
         のは分かりきっている上に
         弁解なんて意味の無い事を
         してお前たちを怒らせること
         すら申し訳ないと思っている。
         ・・ぐうの音も出ないとは
         こういうことだな」



    ジャン「(苛立ち)っ・・・!
        つまり何も否定しないって事だな
        ・・?」

  80. 91 : : 2014/08/09(土) 02:49:28



    ライナー「そうなるな・・」





    ジャン「ははっ・・おかしいと・・
        思ってたんだよ・・!入団式の
        時から・・・!!」



    アルミン「・・・・;」



    ジャン「幾ら二つ上でもよ・・!
        こんなむくつけき14歳が
        いるわけねえって・・・!!
        しかもその隣には190㎝の14歳
        だぞ・・・!おまけにあんなの
        14歳がぶら下げてたら・・
        犯罪だろ・・・・!!!」





    ミカサ「アルミン・・・だまらせていい?」
        チャキ




    アルミン「あれでジャンなりに本気で
         ショックを受けてるんだ・・・
         今だけはそっとしてあげて・・」




    ライナー「そうか・・やはり無理が
         あったな。」ハハ





    ジャン「笑ってんじゃねえよ。この
        仲間殺しが・・・!
        お前が昨日誰を敷物に
        したか教えてやろうか・・?
        きっといいサプライズに
        なるだろうぜ・・・!!」
        ギリギリギリ




    アルミン「ジ・・ジャン・・」





    ライナー「仲間殺し・・か・・・
         ・・・今更何を言うかと思えば
         ・・三年程言うのが遅い・・。
         俺が一体・・・」ブルブルブル
  81. 92 : : 2014/08/09(土) 02:52:35


    ジャン「済みません・・・!こんな
        どうでもいい事に時間喰わせて
        しまって・・・!態々・・
        待っててくれたんですよ
        ね・・・・」


    リヴァイ「・・・・・・」



    ペトラ「考え過ぎよ。偶々きっかけを
        探ってただけ。」




    ジャン「でももう腹ァ決まりました・・!
        コイツは・・!コイツだけは
        絶対に野放しにしちゃならねえ
        ・・・!俺にも手伝わせて
        下さい・・・!!」



    リヴァイ「却下だ。それから命令する。
         決してお前らは抜剣するな。
         足手纏いだからな。」チャッ・・



    エルド「気持ちは分かるが・・!
        ここは堪えてくれ・・!な」



    グンタ「気の毒だが・・・!」



    オルオ「そういう事だ。ヒヨっ子が・・
        訓練兵科も満足に出ていない
        奴らがおいそれと戦闘領域にでも
        迷い込んでみろ・・ワイヤーが
        一発でおまつりして全員
        無駄じ(ガリッ」
        ムグゥっ・・・!!!




    ペトラ「普通にカッコ悪・・・」

        


    ジャン「しっ・・しかし・・!」




    リヴァイ「お前・・分かり易く言って
         やるが・・戦闘兵には向いて
         無えな。成績次第じゃ憲兵
         か駐屯兵にでもなったら
         どうだ。ここは・・仲間が
         殺されたくらいで喚く奴には
         間違いなく地獄だぞ」




    ペトラ「ごめんね・・・でも
        間違った事じゃないから。
        さっきあなたがついた悪態も
        全然間違いじゃない。だから
        誰も何も言わなかった。」




    リヴァイ「・・・こっちが長話してる
         間に、どうやらそのライナー
         とやらは先に外に出たな。
         作戦通りと言えば聞こえは
         いいが・・」
  82. 93 : : 2014/08/09(土) 02:54:58


    ズドォォン・・・・・・

    ビリビリビリ




    全員「・・・・!!!!」


    リヴァイ「今の音がそうか・・・
         追尾班はちゃんと追ってる
         だろうな・・・。俺達が
         間抜けにもコイツの足止めを
         くらってるうちに鎧が
         内門にゴールインしました、
         なんて笑い話にもならねえぞ」
         ガチャ

    エルド「いえ・・ちゃんと残りの者は
        追尾に向かいました・・
        ただ・・人数を集めても・・
        相手はぶどう弾の着弾を
        ものともせず前進し続けた
        とかいうあの鎧の巨人だ・・
        早く合流したい所です・・!」



    リヴァイ「奴が窓から表へ出る・・。
         総員、立体機動に移れ・・!」



    全「はっ!!」

      ドンッ


    リヴァイ「お前ら訓練兵は塔を出たら
         安全と思える場所で
         待機してろ・・同じ区画に
         はくれぐれも入ってくるな
         ・・・!暇があったら
         避難誘導でもしていろ・・
         分かったな」


    アルミン「は、はいっ・・!!」
         ドン


    ミカサ「了解・・」
        ドン


    ジャン「くっ・・・!了解っ・・!!」
        ドン


  83. 94 : : 2014/08/09(土) 03:01:10



    アニ「さぁ・・・遊ぼうか・・!!
       どこまでやれるのか見せて
       もらうよ・・・・!!!」ダンッ・・




    塔の窓枠に乗り、背中から外に飛び込む
    ようにして身を投げると・・・



    ガリッ・・


    右手の人差し指を自ら噛ちぎり、
    空中で煌々とした光を放つ。



    アニ「・・・・!!!」


    カッ・・・!!!!!



    ズドォオン!!!!!



    15メートル級の女型の巨人が、塔の直ぐ
    そばに降り立った。



    しかし着地してアニが周囲の状況を
    把握しようとする頃には特別作戦班の
    包囲網は既に完成していた。



    各々の頭には作戦開始前にリヴァイに
    よって促された作戦中の注意要項が
    反芻されていく。
  84. 95 : : 2014/08/09(土) 03:02:43



    {リヴァイ「いいか・・今回鎧の巨人と
          それに付随する恐らく巨人
          であるとされる・・いわゆる
          長きに渡って俺達が出会った
          事のない・・知性持ちの
          巨人と交戦するにあたって
          だ・・・」}




    グンタ「っ・・・!!」
       (獲物を追う目の動きも
       通常のとは段違いだな・・!)



    {リヴァイ「まずはやってはならない
          事から確認しとくか・・
          まあ・・一々説明するまでも
          無い事だが・・俺達は
          知性の無い奴との戦闘に
          慣れ過ぎている。確認を
          怠るとそれは凡ミスから
          犬死にへと直結する片道
          切符に成りかねない」}


    エルド「(余裕しゃくしゃくって感じだな
         舐めやがって・・!)」




    {リヴァイ「第一に・・条件を満たすまで
         ・・対象に直接アンカーを
         打ち込むな。五体満足、さらに
         視界も健在な状態でそれを
         した場合・・何人で同時攻撃
         をしたとしても、その場で
         小躍りされただけで全員
         体勢を崩されることになる」}


    ペトラ「(なんか無駄にスタイルよく
         ない・・・?)」



    {リヴァイ「自分が巨人になったらと
         想像してみろ。自分の周りに
         はブンブンと煩いハエにも
         よく似た・・ケツから糸を
         伸ばしながら、スキあらば
         毒針で一突きしてやろうと
         狙ってくる鬱陶しい虫が
         飛びまわってる状況だ。」}


    オルオ「(コイツ・・妙に余裕かまして
         やがるが・・そんな見え見えの
         罠に俺達がかかるとでも本気で
         思ってやがるのか?)」


    {リヴァイ「お前らだったらまずどうする
         ・・?俺ならまず先にその糸を
         掴んで手繰り寄せようとする
         だろうな・・」}


    女型「っ・・・・!」グアッ


    オルオ「っ・・!」


    ペトラ「早いっ」


    アニが二人のワイヤーを絡め取ろうと
    手を伸ばすが、それを警戒していた
    為、瞬時にアンカーを収納し、別地点へと
    跳躍を済ませ、事なきを得る。


    オルオ「そう簡単に捕まらせてやると
        思うか・・?このアマが」
        フン


    ペトラ「はいはい・・誰の真似か
        なんて聞きたくもないけど
        キャラづくりはいいから」
  85. 96 : : 2014/08/10(日) 03:56:54


    {リヴァイ「それと・・・
          まずコイツをお前ら全員
          仕舞っとけ。」}


    {グンタ「信煙弾の発射筒・・ですか?
         ・・おっ・・重い」}


    {エルド「これは・・?まさか
         中身は・・・・」}


    {リヴァイ「誤射に気を付けろ・・
          撃鉄は頃合いを見て
          寸前に起こせ。無論最初に
          撃つ奴は相手に感づかれ
          無いようにな。」}


    {リヴァイ「大体察しがつくと思うが
          中身はばらけた鉛玉が
          詰まった実包だ。さしずめ
          超小型のぶどう弾発射筒
          ってところだな。」}


    {ペトラ「つまりこれで・・!目標の
         目を狙う訳ですね」}



    {リヴァイ「その通りだ。しかし散弾
          である以上同士討ちが最も
          危ぶまれる。射線に仲間が
          いない、尚且つ顔面に接近
          出来た時だけ発砲しろ
          ・・あとは・・」}


    女型「・・・・っ」



    ズオッ・・・ドガン!!!




    エルド「っ!!」


    グンタ「!」


    ババッ
  86. 97 : : 2014/08/10(日) 03:58:56
    広範囲の下段回し蹴りで
    屋根上に居る二人を狙うが大振りな為
    余裕をもって避けられる



    エルド「・・・なんだ・・?やけに
        動きが大雑把だな・・
        コイツ、余裕があるんじゃ
        無くて単に鈍いだけじゃ
        ないのか・・?」



    グンタ「おい、よせ・・!油断するな」
        (・・・乗って来るか)




    女型「っ!!!」ヒュッ!!!!!



    ズガガガがっ!!!




    エルド「!!!!!」


    グンタ「ビンゴだ!!」


    エルドの挑発にグンタが余所見を
    する形で叱責する素振りをみせた途端、
    アニは本来動ける速度で素早く腕を
    振りかぶり、屋根瓦を薙ぎ払って

    2人がいる方向へ飛散させる。


    バラバラ・・   ズドドッ




    グンタ「くっ・・!!危ねえな!!!
        今だ!!!どっちでもいい!
        やれ!!!」

  87. 98 : : 2014/08/10(日) 04:01:25

    オルオ「―ぬうっ!!!」ヒュンッ・・
        ガチッ



    女型「・・・!!!!」クルッ



    うなじを狙われると思い、瞬時に反応を
    みせたアニは弱所を晒すまいと
    襲撃者の方向へ首を廻す。そこで
    アニが見たものは・・・




    オルオ「よく反応したな!!
        ご褒美の飴玉をくれてやる!!
        お口を開けな!!」
        チャキッ


    ペトラ「どうせ舌噛むから
        キメ台詞とかいいって!!」
        ガチャ



    片手にブレード、もう片方の手に
    信煙弾発射筒を握った二人の姿だった


    バスッッッ!!!!

    ボズンッッ!!!



    ドシュドシュッ・・バババ



    女型「っ・・・!!っ!!」

    ササッ



    くぐもった二つの発砲音と共に
    大粒の鉛玉の雨がアニの顔面へと
    降り注ぎ、嫌な音を立てながら、
    肉を貫き、双眸を潰していく。
  88. 99 : : 2014/08/10(日) 04:04:06


    視界を潰されたのを察知したアニは
    即座に巨人唯一の弱点である
    うなじを両手で抑えた



    リヴァイ「“待ち”に入ったぞ!!!」


    全員「っ!!!」ババッ



    ドヒュ!!


    エルド「危ないもん飛ばしやがって!!
        お返しだ!!!」
        ザシュッ!!!!


    いち早く踝にアンカーを打ち付けた
    エルドが左足の腱を削ぎ取る。
    女型が片膝を付いたのを皮切りに・・



    オルオ「どうしたどうした!!!
        こんな物か!!?」
        
    ドシュッ!!!



    ペトラ「ふっ!!!」

    ドシュッ!!!


    リヴァイ「っっ!!!!!!」

    ドシュンッ!!!



    一斉にアンカーを打ち込み、

    残る、右足、そして両腕の脇の
    腱を削ぎ落す。両手に塞がれた
    弱点はあえなく晒されることになり、
    その場に膝をつくアニ

  89. 100 : : 2014/08/10(日) 04:06:11


    リヴァイ「(さて・・・これで試す準備が
         整った訳だが・・念には
         念をだ。)」スッ・・



    オルオ「!」

    ペトラ「!」

    グンタ「!」


    リヴァイのハンドサインに反応した
    三人はその場でアニに感づかれない様
    無音で立ち退く。その直後に、


    エルド「・・・・・!」チャッ・・


    ボスッ!!!



    リヴァイ「っ・・・!」チャキッ・・



    リヴァイ同様にアニの後方に居た
    エルドがそのうなじに向けて
    鉛玉を浴びせ、それに遅れた
    形でリヴァイがブレードを振りかぶり
    、うなじを狙って切り掛かろうとする。



    女型「!!」ビクッ!!


    バキバキバキ



    リヴァイ「っっ!?」ブンッ!!



    その瞬間、鉛の着弾によって弱点へと
    攻撃が加えられたのを察知したアニは
    うなじを瞬時に変質させる。



    ッキィィン!!!!




    リヴァイ「・・・そういう事か・・!
         余裕かましてるフリして
         厄介な落とし穴だったな
         ・・・」ガチン

  90. 101 : : 2014/08/10(日) 04:08:08

    アニの異変に気付いたリヴァイは
    うなじを削ぎに行くのを寸前で
    押し止め、柄からブレードのみを
    振りかぶって投擲した。


    しかし、猛烈な勢いで飛来した
    ブレードを、鋭い金属音を立てて
    弾き返すアニの頸部は・・その硬度が
    先程鉛玉を通したときのそれでは
    無い事をその場にいた全員に見せつけた。



    ―硬化能力。



    リヴァイ「面倒な事になったな。」



    グンタ「・・先の攻撃が通った
        って事は・・最初からあそこが
        硬かったわけじゃないって
        事か・・」


    オルオ「しかしリヴァイ兵長の斬撃を
        モロに当てに行けばあるいは
        ・・・!!」


    ペトラ「リスクが大きすぎるよ!
        弾かれたスキに握り
        潰されてたかもしれない
        ・・・!見て・・・!!」



    アニ「・・・・!」ググ・・


    右腕を動かし、右目を開き、
    状況を見定めるアニの姿が
    そこにはあった。



    エルド「何だと・・?まだ損害を
        与えた時間から考えて
        そんな筈は・・・!」
      


    グンタ「修復の速度が段違い
        なのか・・?それとも・・」


    リヴァイ「他の部位より優先して
         修繕したりなんて器用な
         事が出来るのかもな。
         いずれにしてもこれで
         俺達が把握する、四肢
         封じの安全時間が全く
         信用に置けないものになった」


    女型「・・・・」ググ・・
       両足修復完了



    リヴァイ「・・どうしたものかな」


  91. 102 : : 2014/08/10(日) 14:38:38



    ―それより数時間前・訓練兵団宿舎―



    ミーナ「う・・ぐぅ・・」


    サシャ「ミーナっ・・!気が付いた
        んですね・・!良かった・・!」
        ガバッ・・


    ミーナ「うわっ・・あ・・サシャ?」


    ユミル「・・・・」

    クリスタ「・・・・」



    ミーナ「アレ・・どうして私・・?
        って・・この人数
        ・・皆怪我をしてるの・・?!」
        ガバッ


    サシャ「・・・そ、それは・・」



    クリスタ「お、覚えてないの・・・?
         ミーナ・・!」


    ミーナ「え、ええ・・なんか
        ミカサとライナーが珍しく
        口論してたなって・・思ってたら
        いきなり・・食堂が爆発
        ・・・」


    ミーナ「・・・え・・?一体・・
        あの時何があったの・・?!
        ねえ・・!ベッドの数と・・
        他の人の数が合わないけど
        ・・もう皆寝てる時間よね
        ・・・?消灯時間は・・?
        こんな時間にどこに・・」
        オロオロ



    サシャ「・・・・;」グッ

  92. 103 : : 2014/08/10(日) 14:40:41
    クリスタ「思い出せないなら・・
         あの・・!今は・・!!」
         ソワソワ



    ユミル「そいつらはそこには帰って
        来ねーよ。運が悪かった奴は
        ・・全部で10人強ってとこか
        ・・そいつら皆、明日の荷馬車
        待ちで別棟に安置されてるよ。」




    ミーナ「・・・は?・・安置・・?
        ねえちょっと・・」



    ユミル「いや・・だから、別に
        壁外で奴らに喰われた訳でもなく
        モノが残ってるんだからな。
        訓練中逝った奴と一緒さ。
        せめて故郷に返してやるんだろ」

        


    クリスタ「ユミルっ!!もう・・・!
         もういいでしょ・・・!?」
         ボロボロ



    ユミル「なっ・・なんだよ・・
        本当の事言ってやっただけ
        だろ・・?隠し立てして
        どうするんだよ・・。
        隠せばアイツがキズ付かずに
        済むってのかよ・・?」
        


    ミーナ「え・・と・・ゴメン、
        隠し事とかじゃなくて・・
        え・?本当に何がなんだか」



    ユミル「だから・・そこに居ない奴らは
        皆死んだんだよ。男連中じゃ
        コニーと数名か・・・
        その、ミカサと口論してた
        ライナーが」


    クリスタ「ユミルッ!!」

    パッシィン!!!


    ユミル「っ・・・」




    ユミルの頬が乾いた音と共に
    弾かれる。
    泣きじゃくるクリスタは
    自らが叱咤したユミルに抱き付き
    ながらも訴えた。
  93. 104 : : 2014/08/10(日) 14:42:28

    クリスタ「今はっ・・・今はいいでしょ
         ・・?!ねえ・・」ボロボロ




    ユミル「っ・・つつ・・お前、
        手ぇ小さい割に腕力あるから
        力が集中して痛ぇんだよ・・
        サシャがよくケツ叩かれて
        モミジできたって泣き叫んで
        たけどこりゃまじで殺人的
        だぜ・・・」ヒリヒリ




    クリスタ「うぐっ・ごっ・・
         ごめん・・で・・でもっ・
         でもっ・・・!」グググ



    ユミル「あー・・もう・・泣くのか
        怒るのかどっちかに
        しろって・・・(溜息)
        悪かったよ!私が悪かった!」
        ドウドウ・・


    ミーナ「・・・・」



    ユミル「でもよ、今はって言っても
        いずれそいつを全部話さなきゃ
        いけない時が来るんだぞ?
        流石にこれだけ全員見事に
        熱にやられてたら訓練だって
        まともに・・・」


    サシャ「・・・・・!」ピクッ



    ―・・

    ・・

    ユミル「っ」
  94. 105 : : 2014/08/10(日) 14:45:45

    サシャ「皆さん・・あの・・」



    ユミル「・・・!!(ビリビリ)」


    クリスタ「・・・何?サシャ」グスッ



    サシャ「何か・・聞こえないですか」
        ガクガクガク


    どう見てもただ事ではない何かを
    察知したサシャの震えと、
    それとは違う形で状況の異常に
    気が付いたユミルがその場で
    固まっているのにクリスタと
    ミーナは只ならないものを
    感じ取る。


    サシャが感じ取ったのはその場の
    全員がまだ気づかない程の振動・・
    そして、

    ユミル「おい・・・!おい・・・!!!
        なんだよこりゃあ・・・
        なんでだ・・・・!!?」


    ユミルが気付いたのは、その場の誰にも
    感じ取れない距離で闇夜に響いた、
    遠吠えに近い不気味な慟哭であった。


    ユミル「何で・・・・!!!
        っちっ・・!!おい!!!
        芋!ミーナとクリスタだ!!
        そいつら連れて早く納屋から馬
        に乗って逃げろ!!」バッ



    ミーナ「ユミル・・・?!」




    クリスタ「何?!いきなり何を
         言い出すのユミル!!?
         意味がわかんない!」



    サシャ「いえ・・・!!!これは
        限りなくヤバい気がします!!!
        全員で早くここから離れる
        ・・・べきです・・・!!
        勿論ユミル・・!
        あなたもですよ!!」




    その直後


    ヒュルルルルルル・・・




    バガッ・・ズドン!!!



    ユミル「!!」

    クリスタ「!!!?」

    ミーナ「キャッ!!?」




    サシャ「えっ・・?!?
        何ですか今のは!?!!
        砲撃ですか!!?」
        ガタガタ





    何か巨大な飛来物が宙を舞う音、
    そしてどこか直近の宿舎に破壊が
    もたらされた轟音が4人を
    この上ない不安に駆らせる

  95. 106 : : 2014/08/10(日) 14:49:18


    ユミル「早くっッ!!!死んじまう!!
        クリスタを連れてけってのが
        聞こえねーのか芋女!!!」
        ガチャガチャ・・チャキっ



    戸棚から何かを取り出すユミル。
    しかしその身振りは完全に普段の
    ユミルではなく、まるっきり恐怖に囚われ
    自暴自棄となっている。


    ・・しかし、そんな状態になって尚、
    己の身の心配よりクリスタを第一に
    優先しようとするユミルにクリスタは・・・



    クリスタ「ねえ・・!ユミル・・!
         今の音もそうだけど・・・!
         もういい加減隠さないで
         話してっ・・!あなたは・・!
         あなた一体何を知っているの
         ・・?!」


    ユミル「っ・・・!!」



    クリスタ「あなたはサシャと違って
         ああなる事を分かってて私を
         あの場から遠ざけようとした
         ・・・!その上でミカサの
         した証言とあなたのあの言葉
         ・・・・!」


    ユミル「今そんな事はどうでもいい
        つってんだろーがよ!!
        早く行けよもう!!!
        奴らがここに辿りついたら
        全員死ぬぞ!!!いや、
        死ぬだけならまだいい!!
        最悪は・・・!!」




    クリスタ「奴らって何よ!!説明して
         くんなきゃ何もわかんない
         でしょ?!質問に答えてよ!!
         あなた一体何を隠してるの!?
         話してよ!!お願いだから
         ・・・!!」グッ・・



    今にも再び泣き出しそうなクリスタを
    前にそれでも落ち着けないでいた
    ユミルは、観念してクリスタに
    問いかける。



    ユミル「っ・・・!!・・っ」
        アタフタ・・



    ユミル「・・・・!・・・」
        (溜息)
  96. 107 : : 2014/08/10(日) 14:51:44




    ユミル「どうせ・・最期になるんだしな
        ・・・おい・・約束しろよ?
        全部話したらすぐにここから
        馬に乗って逃げるって・・・!
        クリスタ・・いや・・その名前は
        今ここで聞く。そのお願いは
        “誰”が私に対してする
        お願いだ・・?お前の本当の名を
        今ここで聞かせてくれ・・・!」




    クリスタ「っ・・・・・・・・・!
         私の名前は・・・・!本当の
         名前は・・」



    サシャ「??;」



    ミーナ「ちょっと・・それどころじゃ
        無いんじゃないの!この
        状況は・・・!(本当の名前??)」




    クリスタ「ヒストリア・・!
         ヒストリア・レイス・・・!
         それが・・・!私の名前・・」



    ミーナ「えっ・・レイス??!
        レイスって・・!」



    ユミル「・・はは・・そうか・・
        お前がな・・いや、まあ
        そっちはしってたけど。
        ヒストリア・・うん。ヒストリア
        か・・・良い名前だ」ニッ



    クリスタ「・・!」



    状況は一刻を争うほどのものである
    と先程のユミルの慌て様から一目瞭然で
    あったが、その最中において、それでも
    はじめてその名を知ったユミルは静かに
    微笑んだ。

  97. 108 : : 2014/08/10(日) 14:54:54

    ユミル「じゃあ約束だ。全て言ってやる。
        私は・・巨人だよ。ライナーの
        奴と一緒・・いや、アニも、
        そしておそらく・・・
        ベルトルさんもな。」




    サシャ
    ミーナ  「!!????」
    クリスタ





    ゴガッ・・・バキャバキャバキャ





    驚愕に固まる全員を他所に
    突然宿舎の屋根が音を立ててはがされて
    いく。未だうっすらと星が見える
    薄暗い夜明け前の空と同時に
    その顔を覗かせたのは





    ???「・・・あれ」






    サシャ「っ・・・!!っ・・・!!!!」
        ガタガタガタ
        ジワァア・・



    ミーナ「あ・・・はっ・・!!??
        ああ・・・??!」



    クリスタ「・・・・!!!!」
         ブルブルブル





    ―毛深い顔面。始めて遭遇する形では
    あるが、ソレは・・間違いなく
    巨人のものだった。かなり大きい。


    屋根のサイズから見ても全身はきっと
    15メートルは超えていそうな
    大きさだと予測できる。



    しかしその風貌は
    “3人”が知っている座学で学んだ
    巨人のそれではなかった。そして
    何よりもその場の全員の理性を混乱
    させたのは・・・・




    ???「適当にこわしても
        でてこないから・・だれも
        いないのかと思ったら・・
        ・・いたわ・・・」
  98. 109 : : 2014/08/10(日) 14:57:38

    ミーナ「しゃ・・喋ッ・・喋った・・?!」




    ユミル「おい芋!!漏らして突っ立ってる
        場合か!!お前が一番この場で
        動けんだろ!!なあ!!」



    サシャ「はっ・・!はあ・・・・!!!
        ああ・・・!!!」ガタガタガタ





    ユミル「サシャぁ!!!
        一生のお願いだ!!頼む!!
        クリスタを!!クリスタを
        頼んだ!!!トロスト区まで
        逃げてくれ!!!」



    サシャ「はっ・・!!はひっ・・?!?
        く、クリスタ!!ミーナ!!
        早く納屋へっ!!!」ググッ




    クリスタ「何であなたはこないのよっ!!
         あんたも早く来いよ!!!!
         あんた一人でアレをどうしよう
         ってのよ!!!」



    ???「“アレ”って・・・」ポリポリ





    ばがっ!!!バギャバギ



    サシャ「!!?」



    三人がとびだそうとした戸口を破り
    何かが宿舎内部になだれ込む。
    それは、


    巨人「ハフッ・・バフッ・・・」




    3メートル級の巨人だった。



  99. 110 : : 2014/08/10(日) 14:58:54



    ???「あっ・・・おい」



    サシャ「ひっ・・!ひっ・・!!
        ひぃいいいい!!」
        ジャァアアアアア


    ???「うぁぁ・・盛大にもらしたな・・」
        


    巨人「バフッ・・ガフッ!!」ドドッ・・




    目の前に崩れ落ちたサシャに
    飛びかかろうとする3メートル級巨人。




    ???「おい、だからまてって」ガっ




    巨人「グバッ・・」ジタバタ




    ???「じゃま」


    グイッ・・ブンッ




    そういうと、掴んだ3メートル級を
    自身が顔を覗かせる屋根から引き出し、
    どこか遠くへと投げ放つ。




    ヒュルルルル・・・ズズン




    ユミル「(やっぱりさっきのはコイツが
        何か投げつけてきた
        音か・・!!)」
  100. 111 : : 2014/08/10(日) 15:03:50


    ???「・・で、あのさあ。」ポリポリ


    再び屋内へと顔を向け、一切の
    緊張感もなく語りかけてくる
    毛深い巨人。



    サシャ「っ・・!っ・・・!」
        ガタガタガタ




    ???「あ・・そのまえにこれ、
        ちゃんと・・わかる?同じ
        言葉のはずだけど・・」



    クリスタ「・・・・?!?この巨人・・
         知性があるの・・??!
         っていうか喋って・・!」




    ???「大丈夫そうだな。・・でさ、
        あの、そんなに身がまえなく
        てもいいって・・」




    ユミル「・・?!・・!!」ガタガタ



    ???「え・・それ・・刃物・・?
        いや・・だって・・そんな
        んで・・・」



    ミーナ「ユミル!!はやくッ・・
        またいつ入って来るか・・!!」




    ???「ああ・・なんだ・・頭が
        まわらないだけか・・」ポリポリ


  101. 112 : : 2014/08/10(日) 15:05:32


    ???「ききたいことだけきくけど・・
        ちょっと前くらいかな・・
        ここで・・暴れたやつ・・
        もうここにはいないの?」



    サシャ「!!!?」


    ミーナ「!???」





    クリスタ「・・??!(暴れた・・奴?
         ・・?!それって・・)」



    ユミル「(ライナーか・・?!コイツ
        ライナーの事をそう言ってる
        ってのか・・?!だがなんでも
        いい・・!ここで何も喋らない
        のはマズイ・・!)」



    ユミル「あ・・ああ・・もうここには
        いないみてえだな。・・・
        で・・こっちからも質問、
        いいか・・?おたくは・・
        何方さまで?」


        
    ???「・・・・」ポリポリ




    ユミル「・・?なあ、おい」ガタガタ




    ???「いや・・いいや・・多分
        いってもわかんないよ。
        そうか・・いないかぁ・・」


    ズズッ・・


    ズシン・・



    それだけ言うと覗き込んでいた屋根から
    顔を離し、あっさりとどこかへ
    歩き去って行く毛深い巨人。


  102. 113 : : 2014/08/10(日) 15:07:51


    クリスタ「え・・・!?あ・・・?」
         ヘナヘナ



    サシャ「助かっ・・たん・・
        でしょうか・・?」
        ビショビショ



    ミーナ「いや・・・!そんな事言ってる
        場合じゃないでしょ?!
        ここは・・!壁の中よ?!
        どうして巨人が・・・!!」
        ガタガタ




    ユミル「ミーナの言う通りだ・・・
        おい芋っ・・・!!」ギリ




    サシャ「な、何ですかもー・・ユミル
        ・・さ、ささっきは名前で
        呼んでくれたくせにヒ・・」
        ガチガチガチ



    ユミル「部屋にいる内にさっさと着替え
        やがれ!!その馬並に
        キレの悪ぃ小便でズブ濡れに
        なったズボンで馬に乗る気じゃ
        ねえだろうな!ちょっとは
        乗られる馬の気持ちも考えろ
        ってんだよ!!」ギリッ



    サシャ「しっ・・!!しし、しかた
        無いじゃないですか!!?
        初めて見る巨人があんな・・!
        あんなヒバゴンみたいな
        おっかない奴で・・!!しかも
        15メートルなんてメじゃない
        くらい大きかったですよ!?」
        カァァァァ//////;


    ユミル「それ自体は別に責めねえよ!!
        ただ着替えるくらいしろって
        言ってんだ!!まだ今なら・・・」


    ミーナ「・・・(両手拝み)」

    クリスタ「・・・(頷き)」

    ソソクサ・・





    ユミル「・・・」



    ユミル「・・・おい・・まさか
        ・・・お前らも・・・?」


  103. 114 : : 2014/08/10(日) 15:09:02

    ミーナ「・・・」


    クリスタ「・・・・」





    ユミル「・・・・クリスタ、私も
        実は少し・・・・・
        で、よかったらミーナに倣って
        私も着替・・」




    クリスタ「私達の部屋なんだからユミルは
         自分のがあるでしょ!!?」


    ユミル「なぁ、ヒス・・」




    クリスタ「本名で言ってもダメな物は
         ダメ!!!」カァァア//




    ユミル「(´・ω・`)」ショボーン




    サシャ「ぁぅう・・気持ち悪い・・」
        ズル・・ ビチャ
  104. 115 : : 2014/08/10(日) 15:15:19


    ―納屋―


    ユミル「おい、装置は付けたか!
        早く乗ってずらかるぞ!!」
        ガチャガチャ



    サシャ「そ、そんなに慌てなくたって
        ・・!もう辺りに巨人は
        いませんでしたよ・・!?」



    ユミル「バカが・・・!宿舎の周りに
        べたべた残されてた足跡が
        目に入らなかったのか!?
        あの“猿”が連れてったみてえ
        だが・・・!もう壁の中に
        それなりの巨人が居るっていう
        良い証拠だ!!!」


    サシャ「でも・・喋る巨人なんて
        聞いたことも・・きっと
        私達を食べようとはしない
        巨人なんじゃ・・」


    ユミル「食べようとはしてなかった
        けどな・・・!その前の音聞いた
        だろ・・!アイツが投げつけて
        来た石の塊で・・負傷してた
        奴らの宿舎幾つかが潰された
        んだぞ・・・!どっちにしろ
        こっちの事は虫けら位にしか
        思ってねえよっ・・・!」
        ギリッ


    ミーナ「・・・?何・・?さる?
        ユミルあなた・・あの巨人の
        名前を知ってたの?!」




    ユミル「・・・違っ・・・!
        いや・・なんでもねえ・・。」




    3人順次に乗馬




    クリスタ「・・ユミル・・・」



    ユミル「・・・何だ・・・」



    クリスタ「最後だと思って言った
         さっきの言葉・・・
         絶対続きを話して・・、
         約束だからね・・・絶対に
         ・・・!」

  105. 116 : : 2014/08/10(日) 15:17:06
    ユミル「・・・・(溜息)・・
        分かったよ・・抜け目ないな
        全く・・・」



    クリスタ「約束は絶対だから」ムス




    ユミル「分かった分かった・・
        約束だ・・ヒストリア・・」ニッ


    クリスタ「・・・っ」ニコッ



    ユミル「(結婚しよ。)」ドキ




    サシャ「はっ・・・・!?」ビクッ




    何かを遠目に発見するサシャ




    ユミル「ただまあ・・そりゃ
        私達揃って向うに着くまで
        生きてたらの話だけどな
        ・・・・;」タラ・・



    クリスタ「・・・?」



    サシャ「きっ・・きき、巨人ですっ!!!
        さっきのヒバゴンが投げた
        奴がッ!!!もうあんなとこ
        までっ・・・!!」



    距離にして300メートルといったところ、
    まだ薄暗い、しかし煌めく陽光の欠片を
    覗かせて日の出の気配を
    見せ始めた平野の中。


    感動的な情景を背負い、
    背景音楽でも流れていればその
    動きはスローモーションでそれぞれの
    目に映っていただろうか・・


    だが当然、実際にはそうはいかず、
    操作法を覚えたての人形使いが
    滅茶苦茶に操作する、操り人形の様な
    動きで全力疾走してくるその
    3メートル級巨人は
    ・・・・・


    サシャ「おっ・・・!!おっ・・!!!」
        ガタガタガタ


    4人の顔面を蒼白に塗り替えた。




    サシャ「おぎょおおおおお!!!!」パシン!!
        ハイヨォォォ!!!



    ユミル「おいっ・・・!!!後ろにも
        もっといやがる!!全速力だ!
        とっととずらかるぞ!!!」パシン
        ヤベェ!


    ミーナ「もおおお!!!!
        イヤだぁぁああ!!!」パシン!!
        ヒィィィ!


    クリスタ「っ・・!!!!」パシン!!
     


    追い立てられるように訓練場を後にする
    4人。目標地点はトロスト区・・・



    彼女らにとって始めての対巨人戦となる・・



    地獄の鬼ごっこの幕が切って落とされた

    ―――――――――――――――――――
  106. 117 : : 2014/08/10(日) 15:22:15


    ―時は戻り、トロスト区市街地―






    調査兵「鎧の巨人!!出現!!!」




    調査兵「クソッ・・・!本当に人間が
        巨人に化けやがった・・!!」




    調査兵「とにかく動きを止めねばっ・・」




    ドシュッ・・・ドシュ




    ガンッ!!   ギンッ!!!



    調査兵「なっ・・・!!アンカーが!!」



    調査兵「ダメだ!!報告通り、アイツの
        体はアンカーすら刃が
        立たないぞ!!!」



    調査兵「なら周囲を最大限活かして
        接近するしかなかろう!?」



    ギャッ!!



    調査兵「不幸中の幸いだがここは市街地
        ・・・!アンカーの中継地点は
        幾らでもある!」



    ギュッ・・!!



    ライナーの行く先にある塔へアンカーを
    打ち付け、追い付きざまにうなじに
    一撃入れようとする調査兵。


    ――しかし



    鎧「・・・・!」グンッ・・・

    バゴッ・・

    走りながらも自身の頭の横に
    張られたワイヤーを左手で掴み、
    そのまま塔から引き抜いて手放すライナー



    調査兵「おっ・・!!おわっ!!!」


    ドシャッ・・・!!ズドッ・・・
  107. 118 : : 2014/08/10(日) 15:26:02
    調査兵「だっ・・ダメだ!!考える
        頭があってあのサイズでは
        打つ手がっ・・・・!!!」




    調査兵「諦めてんじゃねえ!!こんな
        時の為に俺達揃いもそろって
        何の役にも立たないタダ飯喰らい
        なんて罵られながらも・・!」

    バシュッ   ドンッ・・


    調査兵「壁外へ足を運ぶ度に
        死に物狂いで壁の中まで
        帰ってきた・・そうだろう!」



    調査兵「だがあの硬さだぞっ・・?!」



    調査兵「関節だ・・!足首、膝の裏!!
        どこでもいい!とにかく動きを
        制限できる身体の継ぎ目を
        狙うしかない!!普通に攻撃が
        届かないなら・・」



    調査兵「捨て身になってでも貼りついて
        やればいいっ!!!」



    ドシュッ!!


    ライナーの踵にアンカーが食い込む。
    そこは丁度足首の関節であり、
    硬質化していない部位の一部でもあった


    調査兵「っおぁあああああ!!!」


    ――――――――――――――――
  108. 119 : : 2014/08/10(日) 15:31:44



    ―トロスト区内門前―


    キッツ「ええい・・・!一体何が起きて
        いるのだ・・・?!壁が破られた
        のか!?いや・・開閉扉に異常が
        認められた際の警鐘は未だ
        確認されていない・・・!
        なのに・・・壁内に巨人が
        現れただと・・・?!!!」
        ビクビクビク


    リコ「早馬の情報ではトロスト区に
       女型の巨人一体が出現!幸い
       本部が直近にある調査兵団実働部隊
       ・・及び特別作戦班が交戦中
       とのことです・・・!」



    キッツ「いっ・・・一体ッ・・!
        (ホッ・・・)
        いや!油断は出来ん!!数は
        ともかく“何故巨人が壁の内側に
        存在しているのか”それが
        一番の問題だ・・・!
        (しかし特別作戦班が相手では
        ・・・我々の仕事などないな)」


    リコ「あっ・・報告は以上では
       有りません!その女型の15メートル
       級ですが・・・!恐ろしい俊敏性
       と同時に相当頭が回るらしく、
       特別作戦班総掛かりですら
       止めを刺せずに喰いとめるのが
       やっとの事らしく・・・・・・!」



    キッツ「・・・??!」






    リコ「直後、こちらも“どこから
       現れたか全く分からない”形で
       『鎧の巨人』が交戦地点より
       こちらの方角に対し距離50程
       寄った地点で出現!!!!
       間もなく」



    ・・・ン・・ズン・・・・ズン・・・ズン









    キッツ「・・・・・!!!・・・?!」
        ガクガクブルブル
  109. 120 : : 2014/08/10(日) 15:35:24



    キッツ「馬鹿者があああ!!
        それを・・・!それを
        真っ先に言わんかァアア!!!」
        ババッ




    キッツ「全砲兵部隊に告ぐ!!!
        ぶどう弾だ!!!!
        片っ端からぶどう弾を装填し、
        装填が済んだ砲台から直ちに
        斉射せよ!!!面で徹底的に
        動きを封じるのだ!!!!!
        とっととせんかァァ!!!!!」



    砲兵A「いえ・・あの、それがもう
        既に全砲塔榴弾を装填済み
        で・・!」


    砲兵B「再装填をしている時間など
        ありませんが・・!」


    キッツ「何だと!!!!!
        誰がそんな事を命じた!!!
        私はまだそんな命令は下しっ・・
        ・・・・!」



    ???「貴様は相変わらずその調子か・・
        外見ばかり老けおって、何も
        変わっておらんな・・・!」



    調査兵団用ケープとフードに
    身を包み、一見して立体機動装置は
    装着していない代わりにケープの
    裾からは形の違ったシースが
    装着されているように見える、
    一人の兵士がそこには立っていた。
    背中には何か獲物を背負っている




    キッツ「(調査兵・・!?)貴様、
        この場の責任者たる私に向かって
        なんだその口の利き方は
        ・・・!?調査兵か・・!?
        所属と名を名乗れ!!!」



    ???「所属などとうに失った身だ。
        団長職も次の者に譲った。
        今の俺は最早兵士でも
        何でもない。今の貴様と
        たいして変わらん身の上だ。
        隊長でありながらその責務を
        全うできていない・・
        今の貴様とな」
  110. 121 : : 2014/08/10(日) 15:40:28
    キッツ「団長職・・?だ・・?
        ふざけおって・・・!貴様
        頭でも・・」ギリギリ・・




    リコ「隊長!!!もう時間が有りません!」




    迫りくる足跡。徐々に近づくにつれて
    音の間隔から、足音の主が走っているのが
    わかる。




    キッツ「・・世迷言に付き合っている
        時間など無い!!おい!!
        何をしている!!!接近して
        来る目標に榴弾など命中する
        ものか!!!早くぶどう弾を
        ・・・!!!」



    ???「貴様は本当に実戦の重圧に
        弱いな・・!!無能ではないのに
        臆病が過ぎる・・・!司令塔が
        部下に恐怖を伝播してどうする
        というのだ・・・!!」


    パサッ・・


    キッツ「あ・・・?!きさっ・・・
        ・・・!?!」


    キッツの顔が驚愕と共に固まった。
    フードを取り払った男の顔を
    見た途端にその場で動けなくなる・・

    そこに居たのは自分の記憶にも

    残っている、よく見知った顔だった




    キッツ「ど・・ういう事だ
        これは!!?いや、貴方は!!
        ・・・そんな馬鹿な!!」
        ワナワナ



    キース「榴弾を詰めるよう指示したのは
        俺だ。そして・・・
        俺がこれから奴を狙える“的”
        にしてやる。」ジャキ・・
  111. 122 : : 2014/08/10(日) 15:42:55


    キッツ「・・・・?!?」
        


    キース「一番砲手!!俺が緑の信煙弾を
        打ち上げるまで砲撃は待て!
        打ち上げを確認次第、一番から
        順に試射!!続く砲台は射角を
        落ち着いて調整して効力射の
        照準調整を行い・・、一発ずつ!
        ゆっくりとで構わん!命中の
        容易な胴体に当て続けろ!!」



    キース「繰り返す!!!急所を狙う
        必要は無い!!確実に!20秒に
        一回程の間隔でも構わん!
        とにかく胴体を榴弾で狙え!!
        奴の表皮はぶどう弾の着弾
        程度は無力化する硬度が
        認められている!!ぶどう弾は
        無駄撃ちだ!!」ガチン



    リコ「(何だ・・??!今の音は!?)」



    キース「さて・・初の実戦だな。
        ・・アンヘルの工房の
        技術の粋・・存分に見せつけて
        貰おうか・・・」
        ジャキッ・・チキッ
      






    キース「ゆくぞ・・・!!!
        仕置きを受ける覚悟は・・
        度胸は充分か・・・?!
        ブラウン訓練兵・・・!!!!」
        ギリギリギリ






    ズドンッッ!!!

    バヒュッ!!×2



    強烈な射出音と共にキースの
    後方にアンカー射出の際の排気が
    吹き荒れる・・が、その勢いたるや
    通常のそれの比ではなかった。

    放たれる突風に堪らず視界を
    奪われるリコ。


    リコ「ぐっ・・・?!」


    次にリコがその眼を開けた時、
    そこに既にキースの姿は無かった。
  112. 123 : : 2014/08/10(日) 15:45:58
    見やる先に微かに確認できるのは・・
    眼鏡によって補強されたリコの視力で
    やっと見える距離に、一つの緑の
    砲弾と化して滑空しているキースの姿。



    そして風と一つになりながらも
    過ぎた道筋に土煙を巻き上げながら
    はためく・・自由の翼の紋。


    榴弾の有効射程をはるかに超える距離を、
    走って此方に向かってくるライナーの
    股下を潜り抜けるコースで一気に
    距離を詰めたキースは、




    キース「ふんぬァッ!!!!」





    背中に背負ったそれを抜き去り、
    すれ違い様に振り抜く。





         ズ 
           ドッ!!!!




    ドガッ・・ズドン!!ドドドド・・・!!!




    直後内門めがけてタックルを決めようと
    していたライナーは全体重を前方に
    向ける形でつんのめる様に転倒する。





    リコ「そんなバカな・・・!!
       あの一瞬で・・!?腱を
       削いだのかっ・・・?!?
       不可能だ・・!真正面から
       突っ込んでいったのに・・!」


    パァン・・・!!


    遠方にて上がる緑の煙弾。





    キッツ「違うっ・・・!よく見ろ
        ・・・・!脚だ・・・!!
        団長は・・!!いや、前団長
        は・・・!鎧の足をっ・・!
        切り落としたのだっ・・・・!」
  113. 124 : : 2014/08/10(日) 15:49:53
    左足首から先が斜め一刀両断された
    事により立ち上がる事もままならぬ
    ライナーの元へ、すかさず



    砲兵A「斉射ーーッ!!」



    ズドッッ!!!



    極大の砲弾が送り込まれた。
    その弾道は2射、3射と、重ねる内に
    ライナーの身体の芯を捉えるように
    狙いを絞っていく。ぶどう弾とは
    比較にならないその重砲撃が、
    ブレードすらものともしないライナーの
    重厚な外皮に容赦なく亀裂を
    刻み込む。



    バガンッ・・  ズドッ!!!!


       ゴガッ!!!!!




    キース「・・・・
        (試運転は終えたものの、
        吹かしてみればこれはまた・・
        予想以上の出力だな・・
        老いが帳消しになって
        居なければ今頃こっちがあの世
        行きだったかもしれん。)」
        ズキン・・・



    キース「さて・・色々と言いたいことは
        あるがブラウン・・貴様は
        一先ず後回しだ・・・。
        向うが片付いた暁には・・・」
        


    ズドッ・・ン・・・ッドドン・・  ドガッ




    キース「高所訓練中の闇討ちが
        お遊戯にしか思えない程の・・!
        キツイ仕置きをくれてやる
        ・・・!覚悟して
        待つことだな・・・!」




    度重なる榴弾の砲声と
    間に置かれている距離のせいで
    まずライナーには聞こえるはずのない
    宣告を一方的に告げ、足元に散る

    追尾班の亡骸が纏うケープの
    フードを被せながら

    キースはその場を後にした

    ――――――――――――――――
  114. 125 : : 2014/08/11(月) 03:32:51
     ―トロスト区市街地―


    ―リヴァイ班作戦エリア―






    リヴァイ「あの女型・・・最初から全力を
         出さずに此方の消耗を狙って
         たのには気づいてたが・・
         ここへきて回復の速度まで
         早くなってきてるな・・」
         チッ


    エルド「回復速度まで加減してた
        とは・・・恐れ入りますね。
        しかもその上で局所回復に
        切り替えて部分的に高速で
        復帰するからタイミングも
        まるでつかめないばかりか
        ・・・」



    グンタ「どこが修復されてるかすぐに
        分からない以上迂闊にも
        近寄れない・・か」



    オルオ「全く以てイラつくやり方だ・・!
        せめてあの固まる奴さえなきゃ
        今頃うなじを一撃なんだが」
        イライラ


    ペトラ「作戦じゃ消耗狙いって言ってた
        じゃない!兵長が最初に狙った
        のは相手の出方見る為だから
        ね?!間違っても仕留めたり
        しないでよね」




    オルオ「ヤツが余程間抜けじゃ無けりゃ
        それは有りえねえな。」



    リヴァイ「こっちも向うも狙いは同じ・・
         しかし向うは目に見えない底
         をどこまで隠してるか
         分からないところへ来て
         此方はブレードの数や、
         おおよその稼働距離を知られ
         てるときた」

  115. 126 : : 2014/08/11(月) 03:34:59



    リヴァイ「さて・・・・」



    ・・・そこへ


    バシュッ・・  ギュイイッ

    ッドン




    キース「どうした・・揃いも揃って渋い
        顔をしているな・・
        まさか貴様の班がこれで
        詰みという事はなかろう・・?」




    オルオ「!!?」


    ペトラ「!!!」



    グンタ「!!」


    エルド「お・・・!?」



     
    リヴァイ「こいつは驚きだな・・
         エルヴィンの奴、あの歳で
         まさかボケでも来たのかと
         思っていたが・・話は本当
         だったのか・・何年ぶりだ
         ・・・?」


    オルオ「きょっ・・教官っ!!?」



    キース「お前はついこの間訓練兵を
        卒業したばかりのような
        気もするが・・随分と・・
        ・・・いや、なんでもない」



    オルオ「な、何ですかもう!!
        気になるじゃないですか!!」
        ハッ


    ペトラ「(口調戻ってら)」シラ~



    リヴァイ「いや・・俺が初めてあんたを
         見た時より明らかに逆行して
         るぞ・・・いったい何を
         どうしたらそうなる
         ・・・・・・?」


    キース「俺自身とうとう自分の顔まで
        違って見えるようになったのかと
        当日の朝は自分の頭を疑った。
        だがお前がそんな目をしている
        という事は間違いないのだろう
        な・・」

  116. 127 : : 2014/08/11(月) 03:36:39
    リヴァイ「これだけ久しく会うってのに
         前のままどころかそれ以上に
         若返ってる姿だってのは・・
         若干気味が悪ィな・・・
         団長・・。いや、前団長か。」




    キース「そういうお前も、あの頃と・・
        三人で兵団に来た頃と全く
        何も変わらんな。不死の酒でも
        飲んでいるんじゃないのか?」
        ハハハ



    リヴァイ「まさかこの歳であんたの冗談が
         聞けるとはな。だが俺は
         酒浸りじゃねえ。それと・・・」



    キース「ああ・・久々の再開を懐かしむ
        暇など無さそうだな。お前が
        率いる班を前にして、未だ
        この地に伏していないという事は
        ・・奴が・・」



    リヴァイ「そうだ。奇行種の
         比じゃない。中身が
         元訓練兵じゃあ、立体機動
         での接近も大幅に制限されるし
         当然むこうもブラフを
         張ってくる」
         

    キース「・・それだけでお前がそこまで
        攻めあぐねるとは考え辛いな・・
        予備の刃から見てお前が既に
        2本消費している上に・・
        今装着している分のその折れ方
        ・・・」



    リヴァイ「どういう構造か見当も
         つかねえが・・体の一部を
         硬化できるオマケ付きだ。
         ぶどう弾を弾いたっていう
         鎧の奴と同じ類の物かもな。
         それが無けりゃ俺の班員が
         とっくに片付けてる。」
  117. 128 : : 2014/08/11(月) 03:48:18
    キース「・・・大体分かった。ここまで
        長話をしているのに向うも
        動かないのを見るに・・奴も
        何か考え事をしているのだろう。
        お前らは距離をとって下がれ。」



    リヴァイ「・・・おい、今何て言った」




    キース「そう睨むな。退役したことで
        俺にお前らを従える権利も
        何もないのは分かっている。
        だがリヴァイ・・例えお前の
        “装備”だったにしても
        その話が本当ならば今のお前
        では手に余る。お前の斬撃の
        凄まじさは俺が良く知っている
        からな・・」


    リヴァイ「ならせめて集団でかかろうって
         頭は働かねえのか。それとも
         若返ったのは面だけで頭は
         そのままなのか?」



    キース「良く見ろ、地毛が生えている。
        頭の中身までやけに晴れ晴れと
        した何とも不思議な気分だ。
        昨日までの記憶もありながら
        身体が一新されるというのは
        実に奇妙な事だが・・ああ。
        こんな時に何なんだが・・」



    リヴァイ「・・・なんだ」



    キース「一つどうしても聞きたい
        事がある・・・・。エルヴィン
        の頭・・私がこの歳だったころ
        から今日に至るまで全く毛髪の
        活動領域が後退していないんだが
        ・・・お前はこれをどう睨む?」


    リヴァイ「・・・そいつは調査兵団
         七不思議の一つだ・・・
         しかもそれ一つに言及した
         だけで中央憲兵に消された奴
         がいるって噂もある。二度と
         首を突っ込まない事だな」


    キース「そうか・・・・・。
        そりゃあおっかないな・・」




    リヴァイ「・・・・・・」




    キース「まあ、冗談は置いといて、だ。
        老いぼれがこうして役に立てる
        というのなら是非もない。
        どうせ本来役に立つ筈の無かった
        命だ・・この姿もいきなり戻った
        以上いつまた本来の姿に戻るとも
        知れたことではない。」




    リヴァイ「・・・任せていいんだな?
         まさかとは思うが・・・」
  118. 129 : : 2014/08/11(月) 03:51:53


    キース「当たり前だ。刺し違えるつもりも
        喰われるつもりも無い。奴らは
        俺の豚小屋を荒らし、そして
        俺の大事な教え子を殺した。
        何をおいても野放しにして
        おけるものか」


    キース「丁度技巧の古い仲に試作させた
        物もこうして仕上がったばかりだ
        ・・試運転と試し斬りには
        もってこいだろう・・」ガチリ・・




    オルオ「・・・?!」


    ペトラ「・・・・!」


    グンタ「・・・な・・」



    一同はその武装を見て固まった。


    リヴァイ「あんたがその姿に戻ったのは
         全てこの時の為だったんじゃ
         ねえのか・・?話が出来過ぎて
         やはり気持ち悪ィ」



    キース「俺も我ながらそう思うな。
        だが・・無駄にならなかった
        のならそれだけで意義はあった
        という事だ。過去散って行った
        英霊の意思も・・私が今ここで
        奴を駆逐することで報われる」

  119. 130 : : 2014/08/11(月) 03:53:48



    ペトラ「・・・・」






    ペトラの脳裏に思い出されるのは
    特別作戦班、通称リヴァイ班に
    自身が抜擢され、同僚のオルオとも
    それなりに連携や信頼を築けるように
    なってきたある日のやり取りだった。



    ――――
    ―――
    ――



    ―朝・特別作戦班宿舎―



    オルオ「なあ・・お前も、リヴァイ
        兵長に見初められてこの
        班に入った身として・・
        おかしいと思ったことは
        ないか・?」



    ペトラ「その前にさ・・ナニ?その頭。
        あとなんか若干喋り方も
        前と違う気がするんだけど。
        気安く話しかけないでもらえる?
        それと・・“も”って何」



    オルオ「おいおい・・、班の中で
        ツーマンセルとしてこの先も
        永くやってく事になるってのに
        そんな言い方無いだろ・・」
        (本気で少し凹むわ)
        



    ペトラ「・・・(面倒くさい奴・・・。
         基本傲慢な癖に変なとこだけ
         繊細だし・・)」



    ペトラ「・・で?何の話?いきなり。
        おかしいとおもった事?
        あんたがこの班に選ばれた
        人選とか?」



    オルオ「・・・」ズゥゥン↓↓


    ペトラ「じ、冗談だって!;私もあんたも
        一応あのリヴァイ兵長の
        指名なんだから!うん、!」



    オルオ「・・ふ、フン、お前に
        言われるまでもねえ」




    ペトラ「(本当なんなのよこいつ・・!
        ガラスの10代か!?)」
        イライラ

  120. 131 : : 2014/08/11(月) 03:54:53

    ペトラ「・・・で?」




    オルオ「そのリヴァイ兵長だが・・
        いや・・何もリヴァイ兵長
        だけの話じゃない。難しく
        いっても分かり辛いだろうから
        率直に言うが・・いくらなんでも
        兵長のあの機動力・・尋常じゃ
        ないと思ったことはないか?」




    ペトラ「何よ・・そんな話?そんなの
        兵長が凄い人だからに決まって
        るでしょ。何?まさかあんた・・」
        ジロリ


    オルオ「っち、違う違う!!!そういう事
        じゃない!俺だってあの人が
        とてつもない超人だという
        事くらい一目見た時から理解
        している!それを踏まえた上での
        話だ!」



    ペトラ「・・で、何なのよ。
        もったいぶらないで早く
        言ってくれないかな」



    オルオ「・・・俺の同期に・・戦術や
        模擬戦闘はてんでダメだが
        座学がピカイチっていう典型的な
        インテリがいてな・・そいつは
        当然の如く技巧に進んだんだ。
        ・・そいつとは今でもたまに
        任務で居場所が近くなれば
        時間を見つけて飲んでる。
        そんな酒の席で気になる事を
        聞いたことがあるんだ」



    ペトラ「・・技巧・・?ちょっとそれって
        あんた・・・」



    オルオ「ああ。・・なんでも聞くところ
        によるとな、立体機動装置・・
        コイツは・・外見こそ全て同様に
        作られてはいるものの、内部構造
        に至っては・・段階的な規格差が
        存在する・・って話だ。そして」
        コンコン
  121. 132 : : 2014/08/11(月) 03:55:57


    ペトラ「・・・」ゴクリ



    オルオ「場合によってはそれらどの
        規格にも属さない特注品の
        存在もな。」



    ペトラ「兵長の装置が・・そうだって
        言うの?」


    オルオ「思い当たるフシが無いわけでも
        無いだろう?確かに体捌きや
        持ち手の相違で相当の機動力
        向上には繋がっているが・・
        それだけで説明が付く動きでも
        ない・・それに・・」

    ペトラ「・・・」


    オルオ「前回の実戦で兵長の戦いを
        見ただろ、あの人は15メートル級
        を相手にしても可能であれば
        極力装置に頼ろうとしない。」


    ペトラ「意味が分かんないよ。装置を
        使ってないならそれが普通と
        違うかどうかなんて・・・」


    オルオ「(溜息)・・言葉が足らなかった
        な・・じゃあまずそこから
        説明しておくか。まず最初に
        言った機動装置の・・・
        いわゆるレギュレーションの
        話だ・・これがなぜ笑い話で
        終わらない信憑性を持つか
        お前には分かるか?」



    ペトラ「さあ・・・。」



    オルオ「真面目に聞けって・・
        一応技巧の特秘事項なんだぞ」



    ペトラ「あんたが酒飲みから吹聴された
        与太話を自慢したいだけ
        でしょ・・・・」
  122. 133 : : 2014/08/11(月) 03:58:01

    オルオ「与太かどうかは聞いてから
        判断しろって。まずその規格の
        違いだ。どうも聞く話では・・
        兵科の違いで出力と心臓部の
        構造が大幅に違うらしい。」




    ペトラ「何でそんなことする必要が
        あるのよ?それじゃ整備
        する側が面倒臭いだけじゃない。
        簡易整備なら私たちのメンテ
        で済むけど、本格的な故障を
        起こしたらもう全部技巧に・・
        ・・・、!」ハッ



    オルオ「やっと理解しかけたか・・そうだ
        内部構造がブラックボックスと
        して一切の分解を禁じられてる
        事もその良い証拠だ。
        考えてもみろ・・?訓練兵含め
        ・・兵士全員分がその腰に着ける
        為に製造されているこの装置を
        だぞ・・?態々全て同じ精度で
        造ると思うか・・?いや・・
        “造れる”と思うか?」



    ペトラ「いや・・でも・・」




    オルオ「それに当たり前の話だが
        使っている金属部品を加工する
        コストの問題が第一にあがる。
        それを、下手したら退役するまで
        巨人の面を拝むことのない出不精
        共の分まで拵えるとあったら
        出来うる限りそういった分は
        分解整備の容易な造りにするのが
        当然の考え方だ」



    ペトラ「・・だとすると、私達の
        装置って・・」



    オルオ「安心しろ。解散式を機に
        俺も訓練兵団で使用していた
        装置を返却し、新たに調査兵
        用として支給され、今まで命を
        預けてきたコイツだが・・・」



    オルオ「使い始めから、新品である
        せいかと思い込んでいたこの
        出力の違いは・・・本当に
        勘違いではなく、どうやら
        そいつに言わせると、
        調査兵団用に製造されている分は
        例え上官職用の物でないにしても
        、精度が段違いなんだそうだ」



    ペトラ「い・・一番精度が低いのは?」



    オルオ「聞いた限りでは・・意外な事に
        駐屯兵団・・の精鋭除く、
        砲整備班用・・それから衛生兵用
        だって話だ。先遣隊用は
        それよりいくらかマシ程度でな。
        巨人との直接交戦が想定され
        うる優先順位で決められている
        らしい・・」
  123. 134 : : 2014/08/11(月) 04:01:10

    ペトラ「でもそれじゃ、憲兵団はどうなの
        ・・?!もっとも壁の内側にいる
        連中なんて・・下手したら月に
        一度も装置を使わない兵士だって
        いるはずじゃ・・!」



    オルオ「そこは上の事情だろ・・
        しかしそれでもやはり調査兵
        用の装置の方が最も出力、精度、
        持続力に長けているのは間違い
        無いらしい。知ってるか?
        径は同じなのにボンベの
        許容圧力まで違うんだぞ」



    ペトラ「・・じゃあ普通に考えたら
        ・・早く動けるって事はその
        分ガスも・・・」



    オルオ「だからこんな説明をしたんだろ。
        いいか・・?もしも兵長の
        立体機動装置がそれらどれより
        も特殊な内部構造のものである
        なら・・当然整備も頻繁に
        行う必要があるし、ガスの
        放出弁の径も出力の増大に
        伴って大きく削られているから
        ガスの消費も大きい。」


    ペトラ「・・そんなに短い間しか
        使えないって印象も無いけど・・」



    オルオ「それは兵長の技量の成せる業だ。
        瞬間的にふかすそのタイミングと
        体重移動があまりに秀逸なんだ。
        ・・なんでもあの人、装置の
        使い方は誰にも教わらず、独学で
        身に着けたらしい」



    ペトラ「・・!ほ、本当なのそれ・・!?」



    オルオ「ああ・・俺も聞いたときは
        驚いた。エルヴィン団長が
        そう言っていたが・・
        まあ当然詳しい事は聞けず
        仕舞いだ」




    ペトラ「でも確かに・・兵長以外
        抜剣から逆手に持ち手を変える
        人って見た事ない・・。」




    オルオ「(俺も頑張って真似しようと
         したが無理だったので諦めた
         とは言えない・・)」
  124. 135 : : 2014/08/11(月) 04:03:23

    オルオ「だがまあ・・考えてもみれば、
        兵長だからこその装備、
        として考えれば何の不平等も
        無いわけだ。何せ他の人間が
        兵長と同じ装備で同じ事を
        しようとすれば・・」



    ペトラ「間違いなく着地をミスって
        大怪我か・・悪ければ死ぬ
        ・・だろうね」


    オルオ「技巧ではこの装置が考案
        され、この形に行きつくまで
        様々な試行錯誤があり・・
        その度に人類の英知はその
        技術の歩を進めてきた・・
        知ってるか?一番最初の・・
        結成当初の調査兵団の帯刀
        してた剣は・・こんな長さの
        武骨な大剣だったって話だ」


    ペトラ「あんたの同期の話がどこまで
        本当か知らないけど・・迂闊に
        言いふらせる内容じゃないよね
        それ・・」


    オルオ「ま・・まあな。」


    ペトラ「オルオ・・本当にその口の
        軽さは何とかした方が
        良いと思う・・」ゲンナリ

    オルオ「こ、この話は誰にもしてねえよ!
        せめて誰かに聞かせたかった
        からこうして話しただけで
        ・・・」ハッ

    ペトラ「だからそういうのが問題
        なんだって!」

    オルオ「あっ、ちょっ、もう一個
        あった!これは更にきな臭い話
        なんだがな!立体機動装置には
        他にも対」

    ペトラ「もういいって!(呆)」
        ノリノリダナ!!



    ――
    ―――
    ――――
  125. 136 : : 2014/08/11(月) 04:08:39
    キース「・・・・フム・・やはり
        重いな・・」
        ガチッ・・ッキン...




    リヴァイ班一同が、まず目を奪われたのは
    その、キースの背中から引き抜かれた
    通常の硬質ブレードとは明らかに違う
    刀身だった。鍔付の、長剣というより
    最早大剣。


    グンタ「っ・・でけぇ・・!」


    オルオ「あ・・ありゃあ・・まさか
        初期の・・・!」


    キース「ほう。その歳でまさかコイツ
        を見たことがあるのか
        オルオ・ボサド。博学だな。
        本来は硬質ブレード同様
        コイツと同じ黑金竹製で、
        質量重視、更に剛性のみに
        特化させたブレード二本を
        装備させる予定だったのだが・・
        何せ装置の持ち手と無理にでも
        合わせる必要があったから
        今日この日に使用する予定も
        なかったので間に合わなかった
        ・・・」


    女型「・・・・・」


    アニは目の前に現れた教官の
    未だ目にしたことのない武装に
    明らかな警戒の色を示し、容易に
    近づいてこようとはしない。


    キース「そこでオリジナルを
        代りに担いで来たという訳だ。
        通常、刀剣一本ではうなじを
        削ぎ取れぬので持ってくる
        意味もないかと思えるが・・
        英雄ホルヘはこの一振りで
        実際に巨人を殺している。
        “うなじごと首を刈り取れば”
        十分に可能だ。今回は
        首を狙う必要も無いが。」


    オルオ「首ごとって・・」ゴクリ


    エルド「・・それにしたって・・・
        デカい・・・」
  126. 137 : : 2014/08/11(月) 04:10:55

    リヴァイ「そんなふざけた丈の剣で
         しかも練習も無しにやれる
         のか・・?いくら硬化に
         対抗しようと言っても
         その前に潰されれば無意味
         だ・・」



    キース「そいつを活かすためのこれでも
        ある。」ガチャ・・




    キースの腰に装着されていたのは内部構造
    どころか、外見まで通常の型の立体機動
    装置とは異なるものであった。


    まず大きく違うのは、替刃収納用の
    ボックスがそれぞれ一太刀の刃を
    収納されるのみの簡素なものに
    なっている事。



    そして通常左右一本ずつの筈のボンベが
    二本ずつ装着されている事。

    射出アンカーは堅牢性を上げる為、
    少々大振りに。最大射出距離が
    向上されているのか本体リール収納部分
    も若干大きめに。排気放出弁も二発分に
    拡大され、如何にこの装置が出力重視の
    代物であるか、見ている者に
    その形状で以て教えている。
  127. 138 : : 2014/08/11(月) 04:15:56

    キース「局地戦用立体機動装置・・、
        とでも仮称するか。コイツは
        その試作だ。最初の試しという
        事もあるので、出力の方は
        やり過ぎかというくらいでも
        構わんので目一杯上げろと
        注文したが・・このままでは
        使う者を選ぶな。この歳でも
        腰にクる。」トントン



    リヴァイ「・・・・」




    キース「元々コイツは拠点防衛等の
        補給環境が充実している場合
        のみを想定した短期決戦型だ
        ・・出力も二重だが、消費も
        それに差し迫る物がある。
        その限界を知る意味でも
        あの女型には役に立って貰わんと
        な・・」



    リヴァイ「海のものとも
         山のものとも知れねえ試作を
         こんな大一番でいきなり
         使うんじゃねえよ・・」
         (溜息)




    キース「折角巨額を投じて製作を
        進めていた規格だぞ。成果も
        出せぬままではそれこそ
        泣き寝入りだ。・・
        それよりお前の口から海という
        単語を聞けるとは驚いたな・・
        お前・・海を知っているのか?」



    リヴァイ「・・・昔・・いつも口癖
         みてーにそこにいつか行って
         やるんだと息巻いてた
         馴染みが居たんだよ。
         ・・・で?試作品は成果を
         出せそうか?この土壇場で」




    キース「既にここに来るまでに慣らしは
        終えている。成果もまあ
        申し分はない。鎧の巨人討伐の
        補佐が務まれば文句は無かろう」

  128. 141 : : 2014/08/15(金) 03:42:13


    オルオ「鎧をっ・・?!」



    グンタ「・・・!」



    リヴァイ「さっきの緑の煙弾はやはり
         あんただったか。
         今も遠方で砲声が止んでいない
         所を見るに・・鎧も相当
         粘ってるみたいだな」


    キース「ああ・・だが榴弾による
        足止め狙いの集中砲撃を
        砲兵部隊に任せている。
        ああして砲声が止まないと
        いう事は鎧が回復を続けながら
        粘っているという事でもあるが、
        反面まだ内門が無事でもある
        という事を意味している。」




    女型「・・・・っ!!!」ドンッ・・

    ズン・・ズン・・・ズン!



    ついにその場を駆け出す形で対峙する
    教官に蹴りを見舞おうと回し蹴りに
    移行するアニ。


    キース「流石にしびれを切らしたか・・
        だがもう既に試し斬りは
        済ませた」ジャカッ


    ドシュッ!!!


    キースの放ったアンカーが
    アニの首元にヒット。



    リヴァイ「おい!奴は今っ・・・!!」


    リヴァイが珍しく声を荒げて
    警告を促すのも束の間


    ドンッ!!!!!ギャギギギギッッ!!!

    通常の装置によるワイヤー巻き上げ
    とはあまりに違い過ぎる回転数故、
    リール部分より火花が漏れ出ている。


    オルオ「はっ・・迅ええっ!!!?」


    グンタ「なんだアレは!!!」


    女型「!!?っ」
  129. 142 : : 2014/08/15(金) 03:42:46

    首筋に打ち込まれたアンカーをアニが
    掴もうとした時、既にそのアンカーの
    張力でアニの肩を踏み台に
    舞い踊るように背面へ跳梁したキースは
    返す刀で二発目のアンカーをアニの
    臀部へ打ち込んでいた。


    キース「(相手が知性持ちとなれば
        尚更・・振動を伝達しやすい
        骨格付近にアンカーを打ち込む
        というのは好ましくない。
        これでどれ程反応が遅れるか
        ・・・)」


    キースの装置はトリガー部分への
    換装式の刃の製造が間に合っていない。

    その為、機動装置の操作自体は全て
    トリガーのみで行っており、攻撃の
    際には先程ライナーに行ったように、
    すれ違いざまに一太刀浴びせる体勢を
    整えてから背負った獲物を抜き放つ
    必要がある。


    更にそれは調査兵団最初期の装備品である
    黑金竹鉄鋼製の長剣。片手で振り抜くのは
    キースの剛腕を以てしても実用的ではない


    背後にまわっていたため、狙おうと
    思えば弱点であるうなじすら充分視野に
    入っていたが、作戦のこともある上、
    間違いなくそこに切り込めば
    カウンターを用意していると踏み、
    敢えて臀部にアンカーを打ち付けて
    からの・・


    キース「ムンッッ!!!」ザガッ!!


    踵への抉りこむような兜割りが炸裂。


    ガヅッ!!!

    足首から踵の部分が足の裏までに
    かけて一部欠損し、腱を削がれた
    のもあって瞬時にもつれる左足に
    バランスを取られるアニ。
  130. 143 : : 2014/08/15(金) 03:43:59


    女型「っっ・・!!」

    グラッ


    キース「ヌグァア!!」ブオン!!


    ザグッ!!!


    もう一方の足首にも垂直方向に
    斬撃を入れるが、流石に刃が
    中程で侵入を阻んでしまう


    キース「ムグゥ・・流石に装置の移動か
        馬力でも利用しなければ
        寸断は不可能か・・!」
        グイグイ


    女型「・・・!」  グアッ


    キース「フン」ゴロゴロ

    ドズ゙っ




    キースを掴み取ろうとアニが伸ばした
    腕をサイドロールで機敏に躱して
    見せた後、足に食い込んだ長剣を
    反対側から前蹴りを叩き込み、引き抜く。


    ギュッ・・ギャギャ

    キース「とりあえず両足は封じた。
        数十秒稼げるだろう・・」
  131. 144 : : 2014/08/15(金) 03:44:43

    リヴァイ「そう上手く行きゃ
         いいんだがな。奴は複数個所
         損傷を受けると、他を後回しに
         して一か所の復帰に努める事が
         可能なようだ。完全に
         安心できるのは十数秒か
         そこらだ・・・だから」


    ペトラ「ァアっ!!」ズカッ!!



    エルド「オオぁっ!!」ドズッ!!



    リヴァイ「ガス欠狙いである以上
         ああしてできたチャンスには
         復帰に警戒しつつ、矢継ぎ早に
         手数を重ねていく必要がある。
         折角の退避命令だったが・・
         悪いな。俺達も正式な
         命令が下されていない以上
         手を引くわけには行かん」



    キース「理解した。そもそもあの
        俊敏性では私一人では
        骨が折れそうだ。こちらは
        こちらで若人に混ざって
        いやらしく削りにいく事に
        努めよう」チャキ


    リヴァイ「そんな装備で大丈夫か・・?
         俺の替刃をくれてやろうか?」


    キース「大丈夫だ。問題ない。
        第一ジョイントの径が違うので
        通常の硬質ブレードでは
        嵌らんのだ」
  132. 145 : : 2014/08/15(金) 03:46:05

    リヴァイ「そうか。まあ、うまく
         やってくれ。俺は左側を
         行く。」



    キース「応。では・・私は・・
        折角対硬皮用に引っさげてきた
        得物だ。一突きスキを見て
        うなじに入れてみるとしよう。
        少しくらい刺しても死には
        すまい?」


    リヴァイ「念の為中心部は避けろよ。
         死ねば俺達の苦労が
         全てオジャンになる」


    エルド「兵長!!奴の片足が上がりました
        !そっちに蹴りがっ・・!」


    リヴァイ「・・・・」ドシュッ・・


    キース「っ・・」ドンっ


    女型「っ!!・・っ!」


    ドガン!!ドドドド!!


    体勢を崩して転倒するのもお構いなしに
    無理のある足払いのような回し蹴りを
    2人に向かって放ち、そのまま転がる
    アニ。


    キース「全く・・貴様は・・
        訓練ではそのような熱心さを
        欠片も見せんかった癖に
        本性を現した途端に仕事熱心な
        な事だな・・」


    女型「・・・」


    キース「面倒事を嫌い、横着を好む貴様が
        ・・一体何をしたくて
        俺のしごきに3年間も耐え続けて
        までそうして成りをひそめて
        いたのか・・・それは個人的に
        非常に気になる事だが」

    ジャキッ


    キース「そうした詰問は生憎
        私の仕事ではないのでな・・!
        今はともかく成績優秀な
        教え子の損失が悔やまれる
        ばかりだ・・!」



    苛烈を極めるリヴァイ班&キースの
    猛攻が再びアニに牙を剥いた



  133. 146 : : 2014/08/17(日) 14:07:38


    ―ウォールローゼ・開閉扉直上―



    星が見える程の晴天であった
    夜空から一変して天候は曇天。
    朝方から降りそうな雨を危惧して
    城壁に設置された固定砲台には
    それぞれ防雨も兼ねた防錆布が
    掛けられていた。


    通常時は常に迎撃に備える為
    野風にさらされている砲台も、前以て
    雨天が危ぶまれている場合は可動部分の
    錆びつきを防ぐため、土壇場での
    不発を少しでも減らすために
    こうしてカバーする事になっている。

    奇しくもこれが、今回第四分隊
    総員、そしてハンジ分隊長主導で
    行われる超大型巨人捕獲作戦に
    役立つ事となった。

    それぞれの砲身に2~3人で身を隠し、
    ベルトルトの接近を待ち伏せる形だ



  134. 147 : : 2014/08/17(日) 14:10:09


    ―2番砲台―


    ハンジ「なあ・・モブリット・・」
        モゾ・・



    モブリット「・・何ですか分隊長」



    ハンジ「下着までぐしょ濡れで気持ち
        悪くないか。あとゴーグル曇って
        きちゃった」モジモジ



    モブリット「分隊長!あなたに
          恥じらいというものは
          ありますか!?」


    ミカサの証言を元に、その操縦者が
    巨人の身体から抜け出す際には、
    残骸から多量にして高温の蒸気が
    発散される為、その直撃に備え、
    全員衣服を水に濡れた状態で
    身に纏っている。


    エレン「・・・・・・」
       (奴は・・まだ現れない・・
        本当にここに現れるのか
        ・・?そして本当に奴が・・
        ・・5年前に・・!)


    ハンジ「・・・・」




    エレン「(この5年間・・一分一秒だって
        忘れはしなかった・・その
        仇が・・!よりにもよって
        3年・・!毎日オレと同じ部屋で
        スヤスヤ寝息を立ててたっての
        かよ・・・!)」ギリギリ


    ハンジ「・・・エレン?」 



    エレン「(殺してやる・・・!駆逐なんて
        生易しい言葉じゃ足りねえ・・!
        産まれて来たことを充分に
        後悔させてから・・苦しみながら
        息の根を・・!)」


    ハンジ「エレぇン?(抱きっ)」がばっ


    ギュっ


    エレン「っは?!?あ、はい!!!?
        すみません!ちょっと考え
        事を・・!」
  135. 148 : : 2014/08/17(日) 14:11:15


    ムニュッ・・・


    エレン「えっ・・・」



    エレン「・・・?!?」ビクッ
       (この人・・・・・
        お、女だったのか!!?)



    ハンジ「おっ・・何だ何だ・・?
        今凄い身体が強張ったけど・・
        ・・まさか」ニヤニヤ



    モブリット「分隊長はそういった所
          前面に押し出さないのが
          いけないんですよ。私も
          初対面では気づきません
          でしたし・・・今も正直
          兵団であなたの性別を
          把握してない人は結構
          いると思います・・」


    ハンジ「なっ・・!何だよ何だよ!
        まだエレンは何も言ってない
        だろ!?ちっ・・違うよな?!
        エレンは・・!!な、なあ?!」
    アワワワ



    エレン「す・・すいません・・
        実は今まで分かりませんでした
        ・・っていうか正直に言うと
        男性なんじゃないかって・・」



    ハンジ「(グサリ)」



    エレン「あ、ああ!!
        す・・すみません!!」


    ハンジ「いや・・いいんだ・・私が
        悪いんだ・・普段から・・
        うん・・・そうだね・・」ハハ↓



    モブリット「ええ。抜いた鼻毛が
          新記録だってはしゃいで
          見せに来る人を普通は
          女性だと気づきません」
          キッパリ


    ハンジ「容赦ねーな!!?」
        ブワッ(;ω;)
  136. 149 : : 2014/08/17(日) 14:13:13

    エレン「・・・・」マジマジ



    ハンジ「そ、そんな目で見るな!
        いや・・!頼む!見ないで!?」



    モブリット「(溜息)」





    ハンジ「そ・・それはもう置いといて
        だね・・;エレン・・
        大丈夫かい?さっき君、
        物凄い顔してたぞ。どこか
        痛むのかな・・?それとも」


    エレン「へ・・平気です!体に
        不調などは何も・・!」


    ハンジ「それならいいけど・・
        何だろうね・・どこか昔の
        私と同じような雰囲気を
        感じたものだから・・
        一応言っておくけれど・・
        早まったことはしないで
        おくれよ?」


    エレン「・・?はい・・?」




    ハンジ「私も・・大分巨人に仲間を
        殺されててね。その怒りに
        我を忘れてからは・・
        それはそれは殺したものさ。
        全て申告すれば調査兵団中
        歴代3位に入るんじゃないか
        ってくらい・・殺したかな・・」



    エレン「(この人が・・?)」




    ハンジ「けど駄目だったんだ・・。いや、
        何も復讐が愚かだなんて
        綺麗事は言わない。寧ろ気を
        晴らす為ならきっちりやっといた
        方がいい位だ。けどね・・
        じゃあ何がダメだったかと
        いうと・・」



    エレン「・・・」



    ハンジ「殺しても何も得られるものが
        無いんだ。巨人を殺せばその
        亡骸は蒸気と化して消えて
        なくなってしまう。そして彼らは
        恐らく感情らしきものもほとんど
        持たずに、ただ、“喰う”事
        だけを目的にしている・・」


    モブリット「・・・」
  137. 150 : : 2014/08/17(日) 14:16:15

    ハンジ「しかし今回君達から報告された
        この情報は・・そうした観点から
        見てもまさに状況を一転させる
        ・・素晴らしい情報だ。何せ
        “人が巨人に化ける”というんだ
        ・・!人として行動しているなら
        当然考える頭も心もある訳なんだ
        から・・!今まで行っても何の
        意味も無かった“対話”ができる
        って事なんだからね・・!」ワクワク


    エレン「その考え方は・・どうなのか
        と思います。アイツらは一緒に
        訓練している間は普通に人間だと
        思ってましたが・・結局は
        オレ達を裏切っていただけの
        存在でした。奴らが巨人に
        姿を変える力を持ってるってだけ
        で・・ベつに他の巨人の気持ち
        まで理解してたりなんてことは
        ・・無いんじゃないかと」


    ハンジ「それでもさ・・!今迄は
        捕まえてもせいぜい実験
        位しかできることが無かった
        けれど・・!今度のこれが上手く
        いけば、“話の通じる巨人”に
        会えることになる。

        それも君の言葉を信じる限り・・
        今からここに現れるのは、
        全人類の仇敵。5年前にこの
        世界を狭めた・・超大型巨人
        その人だ」


    ハンジ「・・とくればこれはもう
        捕まえない訳にはいかないんだ。
        何故か・・?答えは簡単だ。
        50メートルを超す巨体・・
        それだけの大きさを例え短時間
        でも自在に動かせるというなら、
        もしこれをうまく利用できれば
        ・・!充分マリアに空いた穴を
        塞ぐ算段がつくからさ・・・」
  138. 151 : : 2014/08/17(日) 14:20:10



    エレン「・・・ウォール・マリアを
        ・・・!?」



    ハンジ「そりゃ当然、壁に穴をあけた
        張本人が何をどうしたところで
        はいじゃあ、塞ぎますよって
        言ってくれるとは思わないさ。
        だが・・私達には情報が無い。
        彼らが私達を根絶やしにしようと
        している理由すら分かって
        いないんだ」



    エレン「・・そんなの・・!」



    ハンジ「母親を・・5年前に亡くして
        るんだって・・?辛い事を
        思い出させてしまうようなら
        ・・ごめんね。あの子にさっき
        聞いたんだ・・それからだって。
        君が・・巨人を殺すことしか
        考えられなくなっていった
        のは・・・」

        

    エレン「・・・・!」



    ハンジ「そりゃ憎くて当然だ・・!直接の
        仇でなかったとしてもあの日壁を
        壊されなかったら・・君の
        人生はもっと全然違うモノに
        なっていた筈だ・・」



    エレン「だ・・だったら・・!」

    ハンジ「そう、だったら、理由を
        聞かなきゃダメだろ!!?」



    エレン「!!」

    ハンジ「アレだけの事をしなきゃいけない
        理由が・・彼らには何かあった
        筈なんだ・・!それを聞かなきゃ
        ・・!そうだろ?!君の母さんが
        どうして死ななきゃいけなかった
        か・・!君にはその彼から
        聞き出す義務がある・・!」


    エレン「・・・母さんが・・」





    ハンジ「だから・・、もしそのベルトルト
        がここへやってきても・・感情に
        任せて斬り掛かるなんて事だけは
        止してくれよ・・!彼の弁解を
        聞かなきゃいけない人間は数え
        切れない程居るんだ」



    エレン「・・・」



    ハンジ「それを約束した上で・・、
        予定通り作戦の要を担う
        交渉役を・・君に頼みたい。
        ・・できるかな?」


    エレン「・・・」ググ・・




    エレン「・・やります・・!
        やって見せます・・!
        調査兵団の精鋭の人達に交じって
        オレが役に立てることなんて
        数えるほど無いのは自分でも
        分かってますから・・!やれる事
        なら何でもやります・・!」
        グッ・・!


    ハンジ「ようし、そのイキだ!
        普通・・これだけ大きな作戦
        ともなれば少しは誰だって
        怖気づくものだけど・・君は
        中々度胸があるみたいだ」
        ギュゥッ
  139. 152 : : 2014/08/17(日) 14:22:05

    エレン「//////お・・大きな作戦って
        ・・ベルトルトの奴を縛り上げる
        だけの事じゃないですか・・
        そんな大袈裟な・・」
        (意識しだすと余計に感触が・・)
        ///カァァァ



    ハンジ「おや・・エレン、
        耳が真っ赤だぞ」
        ウォッ、カオモアツイ


    ハンジ「まあ・・交渉役とはいっても
        ・・向うはまず間違いなく
        こっちの要求は聞いてくれない
        筈だ。・・つまり超大型巨人の
        出現自体は・・もう避けようが
        無いって訳だ。しかしその上で
        重要なのが・・・出現の位置だ」



    エレン「位置・・・奴は開閉扉を
        狙うんですよね・・?だったら」



    ハンジ「そこまではいいんだけどね。
        当然開閉扉は外敵からの
        襲来に備えてより外からの
        衝撃に強く設計されている訳だ。
        もしその事実を踏まえて・・
        既に身を隠す必要の無くなった
        ベルトルトが・・」


    エレン「壁の・・内側に・・・!?」



    ハンジ「―その通り。いくら雨天用の
        防錆布がすぐさま取り払える
        仕様になっていても、壁の内側に
        いきなり現れられた場合、
        固定砲での照準合わせが大幅に
        遅れる。まあ、そもそも今回の
        作戦では大砲には殆ど用が
        無いから・・そんな事は別に
        二の次でもいいんだけど」


    ハンジ「問題はそうなった場合の目撃者と
        犠牲者の増加だ。それだけは
        なんとしても避けたい。だから
        ・・君にはベルトルトが常に壁の
        外側に立つように仕向けて
        もらいたい。」

  140. 153 : : 2014/08/17(日) 14:24:20
    エレン「・・分かりました・・!」
            


       
    ハンジ「頼んだよ・・後は・・
        アルミンから聞いた、彼の
        性格を逆手に取った誘導が
        どこまで上手くいくかだ・・
        話を聞く以上では・・」


    モブリット「(分隊長!!来ました!
          壁の内側より・・やはり
          立体機動装置を身に着けて
          います・・!(小声))」
        

    ハンジ「(さぁ・・!君の出番だ・・!
        何を出来なくとも、とにかく
        不意を打たれるのだけは
        避けたい!以降は君の挙動に
        のみ我々は全神経を集中して
        備える!君の抜剣を合図に
        してここから一斉に飛び出し
        ・・!予定通りに動く!
        いいね・・?くれぐれも
        超大型を目の前にして我を
        忘れたりしないでね・・!(小声))」



    モブリット「(それは分隊長自身に
          言い聞かせて下さい!!
          (小声))」


    ハンジ「(わ・・分かってるって・・
        全く・・モブリットは心配性
        だなぁ・・これだけ重要な作戦
        で我を失ったりなんてしないさ
        ・・・・・・・多分。(小声))」
        ハァハァ



    モブリット「(聞こえましたよ!!最後の!?
          本当堪えて下さいよ!!
          失敗すればそれはそのまま
          ウォール・ローゼ陥落を
          意味するんですからね!!
          その辺本当にお願いします
          よ分隊長!!(小声))」
          ガミガミ


    エレン「・・・・;」バサ・・



    ベルトルトから見て死角になる位置より
    砲台から離れて期を見計らうエレン。

    ベルトルトも警戒はしているものの、
    雨天用の布張りがされている砲台を
    目にして殆ど迎撃態勢が敷かれていない
    のを確認してか、そこまで緊迫した
    雰囲気を持ってはいない。



    ベルトルトの視線が壁の内側から
    外へ向いたその瞬間・・

    エレンは一気に歩を進めて
    ベルトルトに歩み寄った
  141. 154 : : 2014/08/18(月) 01:55:47
          

    エレン「よう・・・!1日ぶりだな
        ・・・いや・・5年ぶり
        か・・!」
        ザワ・・



    ベルトルト「っ・・!!!!やっぱり
          尾行けられてたか・・
          それにその口ぶり・・
          アニの記憶を・・・!」


    エレン「誤魔化す気が無いんなら話は
        早ぇ・・今この場でお前に
        聞かなきゃいけない事は一つだ」



    ベルトルト「・・・・」




    エレン「何故壁を壊そうとする・・?!
        5年前も・・そして今も・・!
        お前らの目的は一体何なんだ?!
        理由も分からず攻め込まれて
        たらよ・・こっちは訳も
        分からず仕舞いなんだよ・・!
        理由を言えよせめて・・!!」
        

    ベルトルト「君達は・・自分の住む世界
          と・・その外の世界を
          見比べたら・・その面積に
          どれ程の違いがあるか
          考えた事はあるか」


    エレン「あ・・・?」



    ベルトルト「この壁の外の世界という物を
          ・・どれだけ知っているかと
          聞いているんだ・・・」


    エレン「お前もオレ達と同じ座学を受けた
        なら知ってるだろ・・!壁の外
        の世界についてなんて・・誰も
        触れようとなんざしねえ。
        それどころじゃねえからな・・!
        誰かさんが狭めてくれた活動領域
        の中だけで手一杯だってのに
        その更に外をどれだけ知ってるか
        だって・・・?」ギリ・・


    ベルトルト「そうだな・・そうである
          以上・・君達にそれを
          説明した所で意味が無い。
          寧ろエレン・・・僕は君の
          身を案じればこそその理由を
          話してどうこうなるものでは
          無いと思う。」
  142. 155 : : 2014/08/18(月) 01:56:41

    エレン「・・・・お前よ・・オレの
        頭が座学向きの造りじゃないって
        事くらい知ってるよな・・?
        喧嘩売ってんのか・・・?」
        ザワッ・・


    ベルトルト「君達には現状壁の中しか
          逃げ場がない・・そうだろ。
          だったら態々その壁の中で
          命を狙われる事をする必要も
          ないだろ・・・と僕は
          言いたいんだ。君達の心配を
          してやってるんだ。この期に
          及んでではあるが・・」


    エレン「久々に饒舌になったと思ったら
        訳の分かんねー事をべらべらと
        ・・・怒りを通り越して
        頭痛くなってきたぜ・・」ボリボリ



    ベルトルト「どの道僕達の目標は当初と
          変わらない・・君達がそれを
          阻止できないとなればもう
          そんな事は気にしないで済む
          事になると思うが・・・
          万一そうならなかった場合の
          事を先に忠告しておいて
          あげよう・・」


    エレン「忠告・・だと?」



    ベルトルト「ああ。君達は・・壁の外から
          来る敵をどうするか考える
          事だけに手一杯で“真ん中”
          に気が行ってない。本気で
          状況を打開しようとするなら
          ・・君達の敵は僕達じゃない
          ・・“君達の本当の敵”は
          ・・・壁の内側にしかいない。」


    エレン「散々ご高説たれまくってくれた
        ところ悪いが・・言いたい事は
        それだけか・・?」


    ベルトルト「ああ・・・僕には自分を
          信じてくれる二人が居る。
          二人も僕を信じて各々自らの
          使命を全うしようと命を
          賭けてくれている。僕一人
          だけ1抜けた・・とは最早
          いかないからな・・」
          ジャキッ


    エレン「・・・」
  143. 156 : : 2014/08/18(月) 01:59:13



    今にも壁からその身を投げるか否かと
    いう緊迫した空気の中で抜剣の
    タイミングを見計らっていた
    エレンだったが・・・




    ベルトルト「っ!!!」ダダッ


    エレン「っな・・?!」ババッ




    突然エレンに飛びかかるベルトルト。

    対応に遅れが出たエレンは、咄嗟に
    抜剣して誤った合図を送らぬように
    する事が手一杯で壁の淵ギリギリに
    ブレードを抜いたベルトルトに
    押し倒されてしまう。首筋に添えられた
    硬質ブレードから冷たい刃の感触が
    伝わってくる。


    ベルトルト「隠れてるのは分かってる!!
          こっちの正体を知られてる
          なら・・訓練兵一人で寄越す
          筈もない・・!大人しく
          全員出てきてもらおうか
          ・・・!!」チキッ
    エレン「ッ・・・!!!(コイツっ・・)」




    ―第一砲台―



    ニファ「(ど。。ど、どうする
        んですか?!(小声))」
        チャキッ

    ケイジ「(マニュアルといわれようと
        何だろうと・・予定では
        彼の抜剣=立体機動に移行だ。
        分隊長がだんまりでいる
        以上俺達は今は此処に“居ない”
        人員でしかない(小声))」

    ニファ「(ぶ・・分隊長・・(小声))」



    ―第二砲台―



    モブリット「(想定はしてましたが・・
          やはり少しは頭が使える
          相手だったみたいですね。
          どうしますか、ハンジさん
          (小声))」



    ハンジ「(モブリット・・もっかい
        名前で呼んでくれないか・・
        (小声))」ドキドキ



    モブリット「(一応コレ緊急事態ですよね!?
          彼今、一応人質ですよ!?
          形式上・・!!どうお考えなん
          ですかそこの所!(小声))」

          

    ハンジ「((溜息)どうもこうもないよ。
        セオリーから言っても今は
        下手に手出しを出来る状況
        じゃあ無いし、彼もこのくらいの
        事は覚悟の上さ・・それに
        ・・見ててご覧よ。私の
        見込みが違ってなければ
        彼は間違いなく・・・(小声))」


    モブリット「(・・・?)」
  144. 157 : : 2014/08/18(月) 02:03:54


    ベルトルト「早くしてくれないだろうか!
          黙っているのは結構だが
          そうした場合には別に
          こいつ一人が犠牲にな・・」
          ギチリ・・
    ベルトルト「・・・??!」


    ベルトルトの頬から首にかけて
    自身の体内から染み出たとは思えない
    冷ややかな滴が伝い落ちる。


    ブレードを伝ってトリガー越しに
    ベルトルトの掌が感じ取った感触は・・
    訓練中に何度も点数稼ぎの過程で
    切り裂いてきた布皮の感触ではなかった。

    もっと柔らかな・・未だ息をしている
    モノに切っ先が食い込む感触・・・

    ブレードを伝い、滴る赤は・・・
    まさしく今自らが見えざる潜伏者に
    突きつけている人質のものであり・・

    紛う事なく、エレン・イエーガー
    本人の物であった。


    ベルトルト「何っ・・?!何をしてる
          エレン・・?!おい動くな」
          チャキ・・カチカチ・・


    エレン「人質なんだろ・・・!?
        もっとしっかり抑えつけたら
        どうだ・??え・・?
        まるで拘束になってねえぞ?
        こんなだったら今すぐにでも
        抜け出して・・・」グググ・・!


    ベルトルト「こいつが見えないのか!?
          抜け出すのはいいが
          その瞬間簡単にお前の
          首は・・・!!」ギラ・・





    エレン「ニワトリってよ・・・」


    ベルトルト「っ・・・!?」
          ゾクッ・・




    余りに突拍子もない切り出しに
    ベルトルトはそれが不意を打つための
    ブラフであると警戒し、ブレードに
    込める力、それから周囲の砲台と
    目の届く城壁の淵全てに視線を
    巡らせる。しかし、次の瞬間、


    目の前の、こちらが命を握っている
    筈の人質であるエレンの目に宿る
    火を見た瞬間に、自身の認識の甘さを
    心の底から嘆くことになる
  145. 158 : : 2014/08/18(月) 02:07:28

    エレン「首を撥ねた後も数秒間くれえなら
        自走できるんだってよ・・!
        あのサシャが言ってたんだ・・
        間違いねえぜ・・?」キチキチ・・




    ベルトルト「・・・・!・・・!」ガクガク




    エレン「オレはよ・・!今ここで母さんを
        あんな目に合わせた奴を地獄に
        叩き落とす為なら・・ニワトリ
        以上の働きくらいできる自信
        がある・・・!」ガッ・・


    ベルトルト「・・ッ・!!」ガタガタ




    首筋に食い込むブレードなどお構いもなく
    その掌でベルトルトの首を掴むエレン。



    エレン「どうした・・!?このまま首を
        撥ねなきゃお前の首の
        骨がどうにかなるぞ・・? 
        ・・人質なんだろ・・?!
        やれよ!やってみろ!!!
        
        オレ一人縊り殺せない奴が
        扉を蹴飛ばしてそれで
        数千人の命を奪おうってのかよ
        ・・・笑わせんじゃねえ・・!」
        ガチガチギチ・・



    ベルトルト「うわっ・・・うわあああ
          ああああ!!!!」ババッ!!


    エレン「っ・・!ッチィッ!!・」ハァ・・ハァ・・



    予想以上のプレッシャーに気圧され、
    堪らずブレードを引き、飛び退る
    ベルトルト。



    エレン「こんなことで怖気づく中途半端
        野郎に・・一つ目の壁はやられた
        ってのかよ・・!本当に・・
        本当に呆れて声も出ねえッ・・」



    エレンの首筋に刻まれた、どんなに
    控えめに形容してもかすり傷とは
    言えないレベルの切創から血潮が
    滴り落ち・・その行先にある
    カットシャツの襟を真っ赤に
    染め上げていた。
  146. 159 : : 2014/08/18(月) 02:11:36
    ―第二砲台―




    モブリット「(・・・・!;)」



    ハンジ「(・・な。やっぱりこういう
        事になった。一応独断先行
        が無いように釘を刺した
        時にも感じていたことでは
        あったが・・こういう形で
        発揮されて本当に良かった。
        見上げた度胸だよホント(小声))」



    モブリット「(彼がここまで肝の据わった
          人間だと・・初見で見抜いて
          たんですか・・?!(小声))」



    ハンジ「(んな大層なモンじゃないよ・・
        ただ何て言うかな・・頭の良さ
        とかじゃないんだけど・・
        彼からは・・・エルヴィンに
        よく似た何かを感じたんだ。
        簡単に言っちゃうと自分が
         信じられるもの以外の一切に
        屈しない意思の力・・・
        っていうのかな(小声))」



    ハンジ「(それは状況次第では全ての
        仲間を死地に引きずり込む
        大博打への一手にしか成り得ない
        けれど・・彼は今、ここで
        自分に向けられた刃に自ら
        身を晒すことで自身にかけられた
        人質としての価値を殺しに
        行ったんだ。(小声))」


    モブリット「・・・・」



    ハンジ「(普通、ついさっき知り合った
        仲とはいえ、共に作戦行動を
        取るものが人質にでも取られれば
        誰だって及び腰になる。作戦の
        手筈が決まっているなら尚更だ。

        しかし・・、だからこそ
        最悪自分が死んだって計画は
        続行できるという現状を理解
        した上で・・向うが我々に
        投げかけようとした要求を
        殺されかねない立場でありながら
        彼は突っぱねたんだ(小声))」


    モブリット「(彼は・・本当に訓練兵なの
          ですか・・?それ程の
          気概をもって任務に臨める
          者は・・そうそう居ませんよ
          ・・・(小声))」


    ハンジ「(気持ちの強さだけで言っちゃえば
        もうありゃ化け物の類だねw
        だけど私は気に入った。

        作戦が無事上手くいった暁には
        エルヴィンなんかにもさり気なく
        テコ入れしておいて・・いつか
        調査兵団に・・いや、私の班に
        欲しいね・・!勿論あの秀才の
        金髪ニファ(♂)も捨てがたいな!
        (小声))」ウフフフフ


    モブリット「(深い溜息)」
  147. 160 : : 2014/08/18(月) 02:14:49


    ベルトルト「・・ハァ・・ハァ・・」


    エレン「おい・・・どうした?
        人質作戦が失敗したらもう
        やる気ゼロか・・?
        壁をぶち壊すくらいの事が
        出来るのに何だってお前は」


    ベルトルト「よく分かった・・・!
          エレン・・、君とはいくら
          話をしても無駄だって事が
          ・・・!」ジャッ


    エレン「(自刃の体勢に入った・・!
        ミカサの言う通りなら・・
        やる気だ・・・・!)」カチ・・




    ベルトルト「っっ!!!」ババッ



    踵を返し、壁の外側へと装置も使わず
    飛び込むベルトルト



    エレン「(よし!!まずは外側に飛んだ!!)」
        ジャカッ!!




    ―エレン抜剣。




    バサッ!! バサ・・バサ!!






    ハンジ「ひゃっほぅ!!よくやったな
        エレン!!!大したモンだ!!
        第4分隊総員!立体機動に
        移れっ!!」
        チャキっ


    モブリット「っ・・・!!」
          チャキ



    2人が落下していくベルトルトの方角に
    向けて構えたのは信煙弾発射筒。


    そして次の瞬間―


    ズ ド ッ !!!!!!!


    ガ カァァンン!!!!



    極大の雷鳴と共に曇天に姿を現したのは
    ・・その場の誰もが邂逅を待ちわびた
    全人類にとっての最大の害悪。

    人類にとって巨人を退ける唯一にして
    絶対の防壁を破壊できる存在・・


    超大型巨人―――その頭部であった。


    大きい。あまりのでかさに
    壁上に居る全員からは頭と首元くらい
    しか視界に収まりきらない。
  148. 161 : : 2014/08/18(月) 02:18:19
    しかしてその場で最も異な感情をもって
    誰よりも目の前の存在との邂逅を心待ちに
    していた者は―・・・・





    ハンジ「ぅぉおおおお!!見ろ!見ろ!!
        モブリットぉぉォ!!!!
        超大型だぞ!!すっげえ!!
        顔しか見えねーー!!!」
        ゥオオオ!!!!\(゚∀゚)/コロンビァーー!!!!






    モブリット「分隊長!!あなたの脳味噌は
          ニワトリ以下ですか!!!!?」
          チキッ


    ―この上ない感動に両腕を天へと掲げ
     その身を震わせた。







    ハンジ「わぁかってるって!そこまで
        いう事ないじゃんかもう!」
        ハァハァ//
        カチャ



    超大型「・・・・・」

    ゴゴゴゴ・・・



    元から増援の潜伏は覚悟していた
    ベルトルトだったが、自身を目の当りに
    した際のあまりの予想外の反応に
    一瞬動作が遅れた。その隙を突く形で




    ハンジ「んじゃ、ちょーっとゴメンよ!
        沁みるかもしれないけど!」
        ボスン!!



    モブリット「っ!!」
          ボスンッ!!!



    放たれた2発の緑の煙弾は、少ししか
    離れていないベルトルトの両目付近に
    着弾。弾着と同時に広がる煙幕が
    ベルトルトの顔全体を覆う。




        タッタッタッ・・・!



    ハンジ「い、く、ぞっ!!!」バシュッ!
        ギュキッ・・!!



    事前に組まれた作戦はほぼ全てアルミン
    の提案によるもの。その手順通りに
    動きながらその場の全員がアルミンの
    言葉を準えながら立体機動装置を駆る
  149. 162 : : 2014/08/20(水) 01:16:58


    {アルミン「ベルトルト・・つまり超大型
         巨人の身長は・・目撃した
         事のあるエレンの証言では・・
         ほぼ城壁の上に顔を覗かせる程
         のものであるという事です。
         先手を打つには絶好の位置取り
         と言えます・・以上を踏まえて
         打たなければならない布石は
         ・・・対象の視界を奪う事
         だと進言します」}


    {ハンジ「それは信煙弾でなんとかできる。
        しかし引き摺り出すとは
        言ってもね・・どうする?
        うなじに飛び乗ってノックでも
        したらパカッと開いて出てきて
        くれるかな?そのベルトルトは」}


    {アルミン「発想はそれとほぼ変わりません
         ・・ベルトルトの辛抱強さ、
         じゃなく辛抱弱さを利用させて
         貰います。」}



    {ハンジ「その彼と言うのは本当にそんな
        ビビりなのかい?だって超大型
        なんだろ・・?それだけの
        大きさに化けられるのに・・」}




    ケイジ「(俺達は作戦通り・・!)」


    ニファ「・・・!」コクッ


    ドシュッ×2


    ギュッ



    {アルミン「はい・・かなり内向的な性格で
         一言でいってしまえばその
         通りで・・いわゆるビビりです」}


    {エレン「調理場にゴキブリが出た時なんか
        動転してフライパンで殴殺
        するくらいだしな」}


    {ハンジ「へえ・・そりゃあ相当だな・・
        かく言う私もゴキブリは
        ・・・大ッ嫌いでね。
        見つけ次第手加減なしに
        滅殺するってしきたりを
        自ら課してるんだ。」キガアウカモ}


    {アルミン「・・・(;'∀')で、
         ゴキブリの話はそれくらいに
         して・・肝心の作戦なんです
         けど・・」}


    {ハンジ「ふむ」}


  150. 163 : : 2014/08/20(水) 01:25:02

    エレン「(オレは分隊長と共に手筈通りに
        ・・・・!!)」バシュッ!!
        ギュイイッ!!





    {アルミン「ミカサの報告から分かった事、
         その中で最も注意すべき
         なのは・・巨人化解除に伴う
         蒸気の拡散です。座学にもある
         通り、巨人の体温は高熱。
         大きなモノを動かすには大きな
         力が必要で・・大きな力には
         必ず高熱がつきまといます」}



    {ハンジ「それが厄介だね・・屋内の
        密閉空間とはいえ・・ライナー君?
        だっけ?その彼の巨人化解除で
        発生した蒸気ですら数十名が
         意識を喪失する程の高熱
        だったんだろ?それじゃあ
        超大型ともなったら」}



    {アルミン「ええ、軽い火傷じゃ済まないと
         思います。なので作戦に臨む
         人達には全員一度服ごと水を
         被って貰い・・、ゴーグルを
         いつでも装着できるようにして
         薄手革のグローブで手を保護
         した上で・・これを顔に塗って
         おいてもらいたいんです」}


    {ハンジ「・・・ナニコレ・・って
        このケースは・・まさか」}


    {アルミン「はい。立体機動装置の簡易
         整備にも使用する耐熱グリス
         です。用途は違うので火傷に
         どこまで予防効果が見込めるか
         定かではないんですけど・・
         何もしない訳にも行かない
         ですし、顔だけは布で
         覆う訳にもいかないので」}


    {ハンジ「オウフ・・↓↓」ネッチョリ}





    ハンジ「ブッ・・・!ハハハ!!モブリット!!
        お前顔テッカテカだな!!!
        元気百倍かッ!!!?
        ギャハハハハは!!!!!!!」バタバタ

    ギュオゥッ



    モブリット「何でこの状況で爆笑できる
          んですか!!!?!?
          後、立体機動中に器用に
          足をばたつかせないで
          下さい!!流石に気味が
          悪いです!!!」(超冷汗)

    ギュアッ






    {アルミン「蒸気の対策さえ済めば・・
         後は単純な作戦になって
         しまいますが」}



    {エレン「そうであってもらった方が
        オレとしちゃ助かる;」}



    {アルミン「安心して、エレンでも
         分かる単純な作業だ。」}



    {エレン「(オレ・・ひょっとして
         今馬鹿にされたのかな)」}




    {アルミン「役割分担は2つ。ベルトルトの
         巨人化解除を待って壁に
         貼りついて待つ待ち伏せ組
         と・・ベルトルトを頸部から
         引っ張り出す、脅し組です。
         脅し組の方には悪あがきの
         ブレードによる抵抗力を
         排除してもらう役割も
         含まれてます。」}
  151. 164 : : 2014/08/20(水) 01:40:31

    {ハンジ「ま、無難に考えて私らは
        エレンのお手伝いだよね。
        目的が脅しなら・・
        既知の仲であるエレンの方が
        効果的だし」}



    {モブリット「分隊長共々、抵抗の
          無力化、及び拘束に
          助力します。」}




    {ニファ「待ち伏せは・・私達で担当
        します・・・」ノシ}


    {ケイジ「(並べてみると本当に
         姉弟にしか見えないな)」ノシ}
     

    {髭ゴ「・・・」ノシ}


    {アルミン「で・・、では、待ち伏せの
         方は・・超大型が出現次第、
         顔より少し下付近の城壁に
         貼りつきつつ、牽制に警戒
         して解除を待ってください。
         位置の根拠は・・うなじより
         抜け出したベルトルトが
         直後に立体機動でそれくらいの
         位置にアンカーを放つことが
         予想できるからです。」}



    {エレン「じゃあ、オレと分隊長、
         そして副長は・・!」}



    ギャッ・・・!!


    ドッ!!!ダダダダ・・・






    エレン「(鈍い!!肩まで来れればもう
        締めにしか立体機動は
        必用ねえ!!!)」



       ゴォアッ・・・




    ハンジ「ほっ・・!こりゃあいい眺めだ!
        見ろ!町がゴミの様だ!!」




    ブオン・・・!!!!!



    モブリット「分隊長!!お願いですから
          余所見しないで下さい!!(涙)」



    妨害者を払いのけるようにして
    振るわれた極大の腕は、視界が
    封じられている為に大雑把な動きとはいえ
    調査兵団屈指のベテランでもある
    二人には余所見しながら躱され、

    訓練兵であるエレンですらも
    落ち着いて対処できる程の鈍速であった。


    両肩から各々が目指すのは
    操縦者たるベルトルトの居所・・・
    巨人の唯一にして絶対の弱点





    {アルミン「ああ・・!エレン、君が
         全身全霊でベルトルトに脅しを
         掛けて、それでも駄目なら
         少しうなじに刃を突き立てる
         くらいしてもいい。できれば
         中心の首とかがありそうな
         位置は避けて、大腿部とか
         太い血管が通ってそうな、
         かつ命中が容易そうで・・
         より苦痛を与えやすい
         左右下方向とか・・・」
         ブツブツ} 




    {ハンジ「おっかねえ・・!(;'∀')」
        ゼッタイテキニマワシタクナイ }



    {モブリット「(怒った時のあなたは
          その更に上をいってます
          ・・・・)」}


    {エレン「アルミンに陰惨で卑劣で
        えげつない作戦を練らせたら
        並ぶ奴なんてまず居ませんよ」}



    {アルミン「・・傷付くなあ・・」ニタリ;}

  152. 165 : : 2014/08/20(水) 01:45:29



    {エレン「しかし脅すってったって・・
        具体的にどうやれば・・・」}



    {アルミン「難しい事は何も考えなくて
         良いんだ。そうだな・・
         でも欲を言えば交戦状態に
         入る前に・・ベルトルトの
         恐怖心に火を燻らせる
         くらいの何かが欲しいかな。
         それさえうまくいけば
         ベルトルトの人格強度から
         考えてもまず間違いなく
         怖気づいてくれる筈だ」イキイキ}



    {ハンジ「(すっごいイキイキしてるなあ)」}







    ハンジ「(予想外の出来事とはいえ、
        偶然にもそのお膳立てはもう
        揃ったもんな!後はエレン!
        君が・・・!!!)」




    エレン「ぉおおおおおお!!!!」


    ダダダダダダ   ドシュッ!!






    {アルミン「後は何も考えなくていい・・
         ベルトルトの居場所まで
         辿り着けたなら、君が・・、
         この5年間、扉を破壊した
         彼に最も言ってやりたかった
         言葉を、思う様叫ぶんだ」}








    エレン「ぶっっ殺 し て や る!!!!!」
        
        ジャキッ




    ハンジ「うひゃっ」ビリビリ


    モブリット「っ・・・!」



    反応を見る間も置かず、




    ザズッ!!!



    中心部を避けたとはいえ一応は
    巨人の弱点となる頸部に深々と
    突き刺さるエレンのブレード。



    その殺意の全てがのせられた怒号と
    命無き冷たい刃の侵入する感触は・・


    超大型巨人の操縦者として頸部に
    埋まっていたベルトルトの・・・


    危機意識という名の火薬庫に
    盛大な火を放った。

  153. 166 : : 2014/08/20(水) 02:04:54



    ―その少し前








     ―トロスト区市街地―




    ―リヴァイ班作戦エリア―




    リヴァイ「!!」


    キース「・・!」




    女型「っ!!」



    壁の向う側からの轟音を聞きつけ、
    その場で巨人化しているアニですら
    壁の方角を見やり、その動きを止める


    オルオ「超・・・大型・・・・!!」


    ペトラ「あれが・・・!!」



    リヴァイ「余所見をするな。顔の
         位置からしてこっちの
         読み通り、開閉扉ど真ん中だ。
         あっちはメガネ共が
         上手くやる・・・」チャキ・・



    女型「・・・・!!」ググ・・



    僅かとはいえ壁の方角にその場の全員が
    気を取られたのにも関わらず、
    アニはその機に乗じた奇襲などは
    行わず、ただ、壁の向うで覚悟を決めた
    仲間の姿に・・


    ―哂った


    そしてすぐさま緊張感を呼び覚ますと共に
    受けたダメージを悟られぬよう修復
    していた部位の動作を確認し・・
    自身を取り囲む仇敵を・・


    ―嗤った。




    女型「っ!!!」ギシッ


    ズンッ




    グンタ「こいつ、ほぼ健常だ!!
        距離を取れッ!!」グンッ


    ギュァッ!!



    リヴァイ「ッチ・・・・さっきから
         二重三重にも丁寧に腱を
         削ぎ続けてやってるってのに
         ・・性懲りもなく片っ端から
         完治させやがって・・
         手間賃がかさむ一方じゃ
         ねえか・・コイツは
         本当に・・・天井が
         あるのか・・?」



    オルオ「兵長!!もう第二案で行きま
        しょう!!?兵長がその気に
        なればあんなクソ女型・・!!」




    ペトラ「わ・・私も同感です!!
        このままではこちらの機動力が
        失われるのを待つだけです!
        それにそちらの案でも
        上手くすれば目標を生捕れる
        んですよね!??」
  154. 167 : : 2014/08/20(水) 02:09:57




    リヴァイ「・・・と、言っているが
         ・・あんたはどう見る・・
         ベテランの意見も聞いて
         おきたい」





    キース「どうした・・やけに弱腰だな・・
        お前らしくもない。・・・まあ
        ・・そうだな・・確かに、
        そう思わせるための土壇場で
        見せる胆力・・と受け取れなくも
        無いが・・アイツの底がどうで
        あれ・・こちらのガスの残量は
        気合いでどうこうなる物では
        ない・・若人の意見に一つ
        肩入れする形になるな」



    女型「―――」ドズン



    ドカン!!ドドドド



    バシュッ!!!


       ギュアッ!!


    エルド「ッチィッ!!」



    オルオ「はしゃぐんじゃねえ!!!!
        後で誰が建て直すと
        思ってんだ!!!!」クワッ!!!



    ペトラ「・・・・」



    リヴァイ「・・・オルオの言う通りだ。
         これ以上町を散らかされる
         訳にゃいかねえ・・
         そうとなれば早い所中身を
         踏ん縛って・・」ジャキッ



         
    リヴァイ「瓦礫の撤去は全て奴に
         やらせる・・・・!でけえ箒と
         塵取りが要るな」ギラ・・・



    エルド「そりゃあいい。ついでに
        城壁の拭き掃除もやって
        貰いましょう。」



    リヴァイ「オルオ、ペトラ、刃を
         一枚ずつ貸せ。ここからは
         巻きで行く。―しくじるなよ」





    ペトラ「は、はいっ!!」パァァ
        チャキッ


    オルオ「兵長の勝利を疑いなど
        しません!!!」ドンッ
        チャッ・・



    リヴァイ「エルド・・!周りに散ってる
         訓練兵一人に言伝を頼む。
         ここはもういい。開閉扉の
         方へ2人、鎧が足止め喰ってる
         方へ1人向かえとな。特に
         鎧の方は力尽きたところへ
         榴弾をぶち込まれたら
         全てオジャンだ。
         急げと伝えろ」


    エルド「はっ!」ドン



  155. 168 : : 2014/08/20(水) 21:28:26


    リヴァイ「あんたはそのままうなじを
         頼む。さっきは幾つか
         いいのが入ったが手応えの方は
         どうだった」



    キース「切っ先が食い込む所まではいった
        ・・つまり上々だ。やはり現行
        型のブレードでは薄さと曲げ抵抗
        を緩和する役割の節目が仇と
        なるため、衝撃に耐えきれずに
        自壊してしまうが・・この
        厚みと剛性をもってすれば・・
        じっとしていてもらえれば
        突き通す事は可能だろう」




    リヴァイ「良い報告だ。なら固まったな
         ・・俺が補佐で・・あんたが
         討伐だ。本体に刃が通れば・・
         流石に奴も涼しい顔をしては
         いられねえだろ。」




    女型「っ!!!」ドガッ!!!!


    バラバラ  バラ・・・!!!
      バラ
         バラ

    右腕で家屋を突き崩し、瓦礫を飛散
    させながら尚も執拗にもう一方の
    手で牽制を続けるアニ。



    リヴァイ「あんたの一撃が入り次第、
         奴にスキができたなら全員で
         穿り出しにかかる・・」





    順手持ちから逆手持ちへ移行。






    人類最強の刃、応戦体勢から攻戦体勢へ。





    リヴァイ「―以降は各自の判断で動け」




    グンタ

    オルオ
       「はっ!!」ドンッ
    ペトラ

    エルド



  156. 169 : : 2014/08/20(水) 21:30:11
    ―作戦区域外―


    キュイイッ

        ・・・ドシャ

    エルド「伝言だ!君は・・・アルレルト
        ・・でいいな?」


    アルミン「は、はいッ!!」ドン



    エルド「2人と1人で二手に分かれて
        それぞれ1人が鎧の方へ、
        2人は超大型巨人、つまり
        開閉扉へ向かってくれ・・!
        鎧の方は、砲撃で息の根を
        止められてしまわないように
        何とか制止を頼みたいので
        急いでくれ・・・!以上だ!
        あと・・これは個人的な事だが」


    ミカサ「っ・・・?」



    ジャン「・・?」



    アルミン「・・」



    エルド「そっちの黒髪の子には想い人
        が居るんだろ?早く行ってやれ
        ・・。俺にも故郷に許嫁が
        居るから・・分かるんだ。
        同じ目をしてるからな。」




    ドシュッ・・   ギュァッ・・




    ミカサ「っ・・・!!//」
        

    ジャン「・・・俺がライナーの方に
    アルミン「僕が行くよ・・そっちは・・!」




    ジャン「(・・おい!俺の傷口にお前は
        平然と塩を塗る気か!?少しは
        察しろよ!!(小声))」ワナワナ


    アルミン「そうじゃない・・!ライナーの
         方は・・聞いた限りだと作戦の
         内容までは砲兵の人達には
         伝わって無さそうだ・・!

         そうなると簡単には説得
         できるとは思えない・・!
         最悪矢面に立っても砲撃を
         中止なんて・・・
         してくれないかも」
  157. 170 : : 2014/08/20(水) 21:32:00


    ジャン「そいつは困るな・・!アイツには
        ぶん殴ってでも聞かなきゃ
        いけねえことが山のように
        あるんだ・・・。そういう事なら
        口先と講釈でお前に勝るとは
        思えない俺は・・お前にそっちを
        譲るしかねえ・・・」ググ・・



    アルミン「地味に酷いな・・」



    ジャン「馬鹿、褒め言葉だ。
        ・・・頼んだぞ・・
        アルミン・・・!」



    アルミン「・・!ああ、ジャンもね・・!
         乙女モードのミカサに
         見蕩れてベルトルトに
         踏みつぶされないでね」



    ジャン「キッチリお返ししてくれる
        じゃねえか・・」ヒクヒク



    ミカサ「早く行こう。状況が気がかりだ」
        (主にエレンの。)キラキラ


    ジャン「(すっげぇキラッキラしてる・・)」



  158. 171 : : 2014/08/20(水) 21:39:32


    ―リヴァイ班作戦エリア―






    ―轟音   ―礫 
       
     
     ―崩落 
            ―瓦解


         ―土埃
    ―粉塵




    女型「ッーー!!」


    ゴガッ!!


    アニの戦法は、本格的な牙を
    剥いたリヴァイの斬撃に警戒する
    あまり、ほぼ瓦礫を薙ぎ払って
    広範囲を牽制する保守的な
    ものとなりつつあった。




    一同が舞い散る凶器と化した煉瓦や
    屋根瓦を警戒して踏みとどまる最中・・




    リヴァイ「・・・・」ジャキッ






     
    ただ一人、その男だけは違った





    ドシュッ!!!


    女型「ッ!!!」


    一発目のアンカーがアニの鎖骨付近に
    喰い込む。すかさずそのアンカーを
    引き抜きにかかろうとするアニだが・・



    ドシュッ!!  ズカッ・


    女型「!?」

    グンッ



    2発目に放たれたアンカーが引き抜きに
    かかろうとしたアニの右手の甲にヒット。


    アンカーををすぐさま収納したリヴァイは
    目にもとまらぬ速さで2段階の軌道を
    描き、



    リヴァイ「――ッ!!!!!」ズギャギャギャ!!




    回転斬撃をそのまま推力へと転じた、

    見る者の目を疑わせる奇技を以て
    アニの腕を引き裂きつつ頭部へと
    その刃を詰め寄らせる。





    ―化け物。





    10倍近くの身長差で優位を握りながら
    その張本人であるアニが、今まさに
    心の底から叫びたい言葉がそれであった。


    リヴァイ「っぁ!!!」ザギャッ!!!


    バギンッ!!!!!




    掴めば簡単に殺せるとか



    叩けば容易く潰せるとか



    落とせば楽に踏みつぶせるとか





    ―最早そういう次元じゃない。






    アニ「(硬化ッ・・・・!
           速くっ・・・早く
    はやく!!!
         しなきゃっ・・

     殺られっ・・・   首!!

        怖い!!殺される!!)」 




    喉元へ唸りを上げて迫りくる刃。




    それはまさしく殺意を持った
    ギロチンカッターが更に意思をもって
    襲いくるのと変わらないほどの
    威圧感を振り撒いていた。


    余りの焦りに思考すら定まらない
    中、アニは急所を硬化させる事のみに
    全神経を集中させた。




    オルオ「援護っ・・危なくてする
        暇もねえ・・・!!」スゲェ・・


    ペトラ「(絶句)」



    エルド「久々に見たな・・兵長の
        本気を・・」ゾクッ



    グンタ「おい・・見とれる気持ちは
        分かるが用心を怠るな」



    キース「はっは・・!無敵リヴァイとは
        よく言われていたものだが・・
        相変わらずよくあの高回転
        で慣性酔いしないものだと
        感心するばかりだ」
  159. 172 : : 2014/08/21(木) 00:39:00



    女型「ッ!!・・!!」ドズン!!

    ゴロ・・ゴロゴロ・・!



    その場に立っていては一方的に刻まれる
    と確信したアニは、自ら転倒し、
    転げまわるようにしてリヴァイの追撃を
    撒こうとする。


    リヴァイ「ちょこまかと・・!」ギリ・・!



    女型「・・・!」ガシャ・・


    転がりながら何かに気付いたように
    一瞬動きを止めたアニは、
    地面から何かをその手で掬い上げる




    リヴァイ「ッ・・・!!?」バッ・・


    直感で危険を察知したリヴァイは
    いち早く瓦礫の塹壕に身を投じる



    アニは両腕を後方に振りかぶっている。
    明らかに何かを投擲する体勢だ




    リヴァイ「伏せろ!!!!」



    ボボッ!!!   ドッッッ



    アニがサイドスローのフォームで
    投げつけてきたのは家屋の建材に
    使用されていた煉瓦片だった。


    突き崩し飛散させる攻撃法より
    数倍早い、目にも留まらない程の
    凶悪な石礫がそれぞれリヴァイ単体と、
    班員の方向めがけて飛来する




    オルオ「うぉあっ!!!!!」


    ペトラ「きゃっ!!!!!」


    キース「クッ!!!・・」



    ッドゴァン!!




    リヴァイ「チッ・・!」

  160. 173 : : 2014/08/21(木) 00:41:40



    初撃は全員事なきを得たものの・・



    女型「っ・・・」グッ

    ガララ・・



    エルド「もう一投来るぞ!!!!」



    オルオ「くそがッー!!!!!」



    キース「散れ!!!的にされるぞ!!」




    ゴアッ!!!




    ドバッ・・ドドドッ!・・





    ガゴンッ・・!!!ドグッ

    エルド「グがッ・・・・!!!?」





    ペトラ「エルドっ!!!!!!」


    煉瓦の散弾がエルドの立体機動装置
    と頭部に直撃し―・・金属部分の
    陥没する音色と共に・・


    事切れた亡骸が地に伏す
    残響だけが・・・空しく曇天に響いた




    オルオ「エルッ・・!!!!」ザワッ






    グンタ「止せっ!!!即死だ!!!
        またアレを喰らう前に
        物陰に身を隠せっっ!!!!」





    オルオ「ッっ・・!!」ギリギリギリ



    リヴァイ「・・・・・・」ガチャ・・

    ッキンッ・・


    物陰に身を隠し、消耗した刃を
    換装するリヴァイ。

    声こそ発してはいないが、その面持ちは
    更に暗い影を湛え、たった今
    失った仲間へ抱く強い意思の炎を
    燃え滾らせていた

  161. 174 : : 2014/08/21(木) 00:49:38



    女型「・・・・」ズン・・ズン・・



    一方アニは、咄嗟の投擲攻撃が
    予想以上に抑止力として功を奏した事に
    平常心を取り戻したのか、ゆっくりと
    歩を進め、エルドの亡骸の前まで来ると

    暫くそれを見下ろし・・




    女型「――」ググ・・



    ペトラ「――ッッ!!!!」
        ジャキッ





    これ見よがしに口まで運び―



    バグン・・



    パキ・・・
    コリッ・・チャムチャム・・・・



    オルオ「っ・・・!!ぉぉぉあああアア!!」

    ジャキッ


    ドンッ!!!


    口に含んだ時点で見かねたオルオが
    怒髪天を突く勢いで切り掛かる・・が


    グンタ「ッ・・・!!」ドシュッ!!!


    ギュアッッ!!




    キース「止せっ!!!シュルツ!!!!」




    グンタ「っっ!!!!」ドガッ


    ガシャッ!ゴロゴロ


    オルオ「ぐっ・・・!?!?」



    横から割って入る形でグンタがそれを阻止
    した。しかしかなり無茶な体制で
    止めに入った為、グンタも派手に転倒
    してしまう。


    オルオ「何をする!!奴が丁度隙だらけ
        だったから切り掛かった所を!」
        
        ガラッ・・
        



    グンタ「馬鹿がっ・・!それでも
        特別作戦班の一員か!?
        相手は知性持ちだぞ・・!
        情に流されるなとお前が
        さっき訓練兵に・・・!」


    ドグシャッ!!!



    グンタ「ぬぐっ・・・!?!!!!!」



    ガシッ・・
  162. 175 : : 2014/08/21(木) 00:54:18


    ペトラ「っ・・・!っ・・!!」
        ガクガク・・ギリッ・・




    転倒したその場で背後から手づかみに
    されるグンタ。



    アニの口には未だ咥えられたままの
    エルドの亡骸が挟まっている



    グンタ「この・・・・!っ・・!?」
        (コイツ・・・!?まさか)

    口に挟まるエルドを注視し、
    何かに気付く


    グンタ「フンッ!!!」ズバッ!!!


    腕に掴まれつつも、ブレードを握る
    両腕が奇跡的に自由だったグンタは、
    アニの指を瞬時に切断して命辛々
    その掌から抜け出す。



    グンタ「っ・・・!」ビキッ
    (脚とアバラ数か所に悲鳴が
    上がっている・・!しかし・・
    直ぐに力を籠めれば
    こんなものでは済まさず、
    死に至らしめる事も女型に
    とって可能な筈だったが。)



    相手は知性を持っているというのに
    このようなミスを犯すのは
    妙だと感じたグンタだったが・・


    その答えに考えが辿り着いた
    頃には、無傷な方の左手で再び
    捉えられてしまった後だった。





    両腕も封じられてしまっている。
    しかしやはり一思いに握りつぶそうとは
    せず、ゆっくりと顔の近くに
    掴んだグンタを持っていく。



    既に息の無かったエルドは
    完全に飲み込まれてしまった後だった




    ペトラ「っ・・!!」ジャキッ

    ガッ


    リヴァイ「・・・」



    ペトラ「へっ・・へいちょっ・・!!
        何故です!!?緩慢な動きで
        捕食しようとしてるんですよ!?
        しかもまだ今なら
        グンタは・・・!!」





    リヴァイ「・・まだ・・分かんねえのか
         お前らは・・!何でさっきから
         あんなに素早くちょこまか
         動き回ってた奴が・・転じて
         あんなにのんびりお食事して
         見せてるのか・・
         その意味が・・・!」
  163. 176 : : 2014/08/21(木) 00:56:16

    オルオ「っ・・・!!見捨てろ
        って言うんですか・・!
        死んでるなら分かります!
        ですが今だったらまだ・・!」


    リヴァイ「落ち着け。」





    オルオ「これが落ち着いていられますか
        ・・!?!もう次の瞬間には
        奴の口に収まっちまうかも
        しれないんですよ!!!??」


    ペトラ「兵長っ!!!」


    リヴァイ「落ち着けと言っている。
         アイツは知性持ちだ・・・
         只の巨人じゃねえ。お前らは
         どうも冷静さを失って現状を
         理解する力を失っている
         様だから説明してやるが・・」


    オルオ「っ・・!っ!」


    リヴァイ「アイツがのんびりと
         よく噛んでエルドを喰った
         のは・・お前らの怒りを誘う
         為で」

    ペトラ「・・・!!!!!!」


    リヴァイ「今グンタを同じように
         見せびらかすようにして
         踊り食いするそぶりを見せてる
         のは・・お前らが飛びかかって
         来たところを叩き潰す為だ。
         そして・・・皮肉な事だが」



    グンタ「・・・・!!」



    リヴァイ「今、殺されそうな仲間を
         救おうと血眼になってるお前ら
         よりも・・当の本人である
         死に損なっちまったグンタ
         の方が余程冷静に物事を
         認識できてるぞ」


    リヴァイ「“エルドの死に様”を・・
         無駄にするな・・・!!」



    オルオ「(エルド・・・!?)」




    グンタ「・・しくじったな・・!
        だが・・俺はッ・・まだ・・
        運がいい方なのかもしれない
        ・・・!」ググッ・・
        ゴフッ



    オルオ「喋るな!!今っ・・!
        今そいつの指をッっ!!!」
        ジャカッ


    キース「っ・・・止さんか」グッ



    オルオ「どうして・・・!!
        まだっ・・!まだ間に合う
        筈です・・!いくら奴が
        知性を持っているからって
        ・・俺達なら・・!」



    リヴァイ「俺達なら・・?
         俺達なら何だ。知性持ち
         でない普通の巨人に
         仲間が握りつぶされる
         ところを今まで何回見てきた
         ・・?10や20ではきかない
         筈だが・・それと同じことが
         今ここで起こらないと
         お前は断言できるのか。
         それも奴は普通の巨人ですら
         ないのに」

  164. 177 : : 2014/08/21(木) 01:01:16


    グンタ「オルオ!!!兵長の
        仰る通りだ!!俺もドジを
        踏んだザマでこの通りだが・・!
        こうしてッ・・挑発に
        利用されているとはいえ
        遺言が残せるんだ・・
        悪い最期じゃない・・!」
        ググ・・



    リヴァイ「いや・・お前はドジなんざ
         踏んじゃいない。
         俺は・・お前ほど補佐の
         何たるかを理解した
         兵士を・・これまで見たことが
         無かった・・今迄・・
         世話になったな」



    ペトラ「ちょっ・・!!兵長!!!
        冗談ですよね!!?グンタは
        ・・グンタはまだ!!!」



    グンタ「縁起でもない・・とは
        言いませんがッ・・・
        せめてっ・・礼は俺が
        “上手くやれてから”
         ・・ッて下さい・・!」




    リヴァイ「それじゃ・・聞こえねえ
         だろ・・・。だが・・
         後は任せろ・・・・・
         必ずそいつは・・・!!」






    グンタ「ハイっ・・信ッ



        ガバッ・・バグン!!!!!






    女型「っ・・・」モゴ・・




    それも激情を誘うための一手か、
    敢えて言葉の途中を断ち切るように
    処断を下したアニ。




  165. 178 : : 2014/08/21(木) 01:03:32


    オルオ「あっ・・!あああ!!
        うゎあアアア!!!!!!」




    ペトラ「っ・・!!!!!;;;」






    リヴァイ「おい・・目を・・背ける
         んじゃねえ・・!女型の
         あの喰い方を見てまだ
         お前達はグンタが何に
         気付いてたか理解しようと
         しねえのか・・!」



    ペトラ「普通に口に入れてそれだけ
        じゃないですか!!
        何も違いません!!!
        普通の巨人と!!何も!!」




    オルオ「ズタズタに・・
        ・・してやる・・・!!」




    キース「・・・」チャキッ・・





    未だ救えると信じた仲間の最期を前に
    絶望に嘆く二人だったが・・




    リヴァイ「(溜息)落ち着くには数を
         数えるといいってどこかの
         学者が言ってたな。おい、
         オルオ・・」

    ギリッ・・・




    落ち着き払っている風に見せる
    リヴァイの掌には・・蒸気と
    化すことなく滴る血痕が、
    滲み出ていた。


    それは自ら握りこんだ爪の食い込み
    によって流された・・リヴァイ自身の
    憤怒の証でもあった。



    オルオ「何・・ですか・・」



    リヴァイ「お前は討伐戦績には
         逐一目を通す癖があったな。
         アイツの・・グンタの
         戦果を言ってみろ」





    オルオ「討伐・・7体・・
        討伐補佐・・40体です・・っ」




    リヴァイ「そいつを・・41体にできるか
         どうかはたった今、
         俺達の働きにかかってる
         ・・一気にかかるぞ・・
         奴が作るスキを・・
         たとえ1秒でも無駄にするな」
         ジャカッ




    ペトラ「っ・・?!」





    オルオ「は・・?」


  166. 179 : : 2014/08/21(木) 01:06:16

    双刃を構え、物陰からいつでも
    飛び出せる姿勢となった
    リヴァイに合図を送るかのように



    ドムッッッ!!ドズッ・・ン!!!



    女型の巨人の方から全員に
    聞いて取れる程の異音が届いた。




    ―その直後であった





    女型「ッ・・!!ガッ・・
       カハッ・・・!!!ヒュッ・・・!!!」


    ズズッ!!ガラガラ・!!ドズン・・


    立っていられない程足を縺れさせ、
    突如転倒すると、続いて
    何かを喉に詰まらせたか、
    呼吸ができないような挙動を見せ、
    悶絶するアニ。




    リヴァイ「グンタの最後の仕事だ・・!
         確実にこの期を逃さず
         中身を引き摺り出すぞ・・・!
         全員でかかれ・・・!!」


    ダダッ



    オルオ「あっ・・?!は、はいっ!!!」

    ダダッ




    キース「最後っ屁を嗅がせたか
        ・・見事だ・・シュルツ・・!!」
    ダダッ




    ペトラ「っ・・!!!!」ジャキ

    ダダッ
          


    地べたを転がり、悶絶する
    アニの元へ走りながら・・


    オルオの記憶の中には


    グンタ・シュルツという男と
    自らの・・特別作戦班においての
    出会いが思い起こされていた。


  167. 182 : : 2014/08/22(金) 00:05:31




    ―――
    ――――


    ― 一年以上前 ―


    ―調査兵団宿舎―


    エルド「だから何度言えば分かる!
        討伐数は確かに重要だ!
        しかし補佐なくして討伐は無く、
        逆もまた然りだ!!どっちが
        優れてるかなど・・・!」




    オルオ「あーあー・・!もう、分かった!
        分かりましたから!俺の討伐数
        がそんなに気に入らねーんなら
        ・・・!」



    ガミガミ
         ガミガミ



    ペトラ「またやってる・・・」



    グンタ「お前ら初対面からずっとそんな
        だな・・・オルオ・・だっけか。
        お前も兵長に今回抜擢されて
        嬉しいのは理解するが・・
        あまりはしゃぎすぎるのは
    オルオ「討伐一桁は黙っててくれますか」
        シレッ



    グンタ「(溜息)・・」フゥッ・・↓↓



    ペトラ「(怒らない・・大人だ・・・!)」



    グンタ「オルオ・・俺の戦果も
        頭に入れてくれたのか
        (少し意外)」



    オルオ「・・・討伐7体・・
        補佐27体・・補佐数は
        認めるが・・あんた一体
        何年壁外に出向いてるんだ
        ・・?俺なら・・もっと・・」


    エルド「だからっ・・お前は・・!!
    グンタ「・・・かまうなエルド。」グッ



    グンタ「こいつと・・個人的に話を
        したい。少し外してくれるか」



    ススッ
    エルド「まあ・・そういうなら
        別に構わないが・・」シブシブ



    スス
    ペトラ「(アイツとお喋りしてみたい
        なんて、変わったところも
        あるのね)」

  168. 183 : : 2014/08/22(金) 00:08:53


    グンタ「まあ・・そんなに大層な
        話でもなし・・外してもらう
        必要も無いんだが・・
        普段あまり長話をしないからな」



    オルオ「・~~?」(訝しげな眼差し)




    グンタ「そう構えるな。説教垂れよう
        ってんじゃない。昔話を
        聞かせてやりたいだけだ。
        ・・・ある男のな」



    オルオ「そりゃあんたの事か?
        そうなんだろ?べタな言い回し
        しやがって」ケッ



    グンタ「荒んだ18だな・・まあ聞け。
        できるだけ長くならない
        ようにしてやるから」



    オルオ「極めて手短に願いたいですね」
        サラリ





    グンタ「・・・お前・・兵長に大分
        憧れを抱いてるそうだな。」
        ペトラモイッテタナ




    オルオ「・・・はっ・・?!いや・・
        そりゃリヴァイ兵長が凄まじい
        までの凄腕兵士だってのは
        認めるが別に憧れとかそういう
        ・・・」ブツブツ



    グンタ「隠すことも無いだろ。
        俺もそうだったんだ。特別
        作戦班・・つまりここへ抜擢
        される前からずっと兵長に
        憧れててな・・あの斬撃の
        深さに心底心酔したものだ。
        また、深く抉りながらも
        雷の如き迅さが当時の俺
        には眩しすぎた」



    オルオ「お・・おう・・」ソワソワ
        (共感意識)




    グンタ「まあ、だった、と過去形なのは
        別に今は違うとか、そういう
        事ではない。今でも兵長の事は
        尊敬しているがな。ただ知っての
        通り・・俺の討伐数はもう特別
        作戦班に入る前からそれ止まりだ
        ・・そして恐らく、ツーマンセル
        でも俺がしくじらない限り・・
        死ぬまでこの数が変わる事も
        無いと思う。」



    オルオ「・・・死ぬまでって」





    グンタ「実を言うとな・・俺も憧れが
        お前と同じ様にリヴァイ兵長
        に向いていただけあって・・
        兵団への入団当初はお前と
        同じような戦法が十八番だった」
  169. 184 : : 2014/08/22(金) 00:12:12

    オルオ「・・・」


    グンタ「いや・・斬撃はお前の方が筋が
        いいな。その歳でここに
        抜擢されるくらいだ。舞い上がる
        気持ち以前に薄々感づいている
        とは思うが、お前は・・間違い
        なく、剛の者だ。補佐には
        とことん向いていない。」



    オルオ「褒められてるのか
        貶されてるのか・・ちょっと
        分かり辛いんだが、もし前者だと
        しても、何も出ませんよ」


    グンタ「その受け取り方はお前が
        判断してくれればそれでいい。
        ・・・時にオルオ・・当たり前の
        様な事を聞いて悪いんだが」


    オルオ「?」



    グンタ「お前は・・“討伐補佐”って役割
        を・・どう認識している?」



    オルオ「・・・・」
    (少し間を置いて)




    オルオ「模範解答で悪いが・・そのまま
        の意味だと思ってますけどね。
        それは、動きを封じる補助でも
        あり、時に気を引く囮であり、
        また、体勢を整え損ねた仲間の
        盾でもある・・兵法座学で
        教わったそのままの意味で
        認識してますよ」





    グンタ「上出来だ。なんだ。随分と
        まともな考え方をしてるじゃ
        ないか。それで何でエルドの
        奴と・・」






    オルオ「だがそりゃ机上で語る上での
        建前だ・・!だって
        そうでしょう?何故なら、
        補佐数がカウントとして
        成り立つのは討伐が成功した
        その時なんですから・・!」



    グンタ「・・・・」




    オルオ「何も補佐が居なくたって
        俺一人で十分だ・・等と傲慢な
        事は考えてません。そんな
        同期を少なくとも5人はもう
        亡くしてますからね。・・だが」



    オルオ「討伐数は間違いなく個人の
        度量と技量の象徴として
        胸を張っていいものの筈なのに
        アイツはどうもそれを補佐ありき
        の事だと毎度毎度突っかかって
        くるので・・何となく。」



    グンタ「っ・・ハハ・・!」


  170. 185 : : 2014/08/22(金) 00:16:09


    オルオ「何も笑う事ないだろ」



    グンタ「いや・・スマン。ただなァ・・
        戦い方は昔の俺を
        見ている様なのに考え方の
        方はこうまで違ったか・・」



    オルオ「・・・・・」



    グンタ「そこで話が最初に戻る訳だが。
        ・・実を言うとな、その、さっき
        お前が口にした俺の討伐数は
        ・・誤りなんだ」




    オルオ「間違ってたか・・?!いや、
        確実に暗記してる筈っ・・!」ババッ
        メモメモ・・メモハドコダ!?


    グンタ「違う、そうじゃない。記録上は
        それでいいんだが・・誤申告
        なんだよ・・最後の7体目はな。」



    オルオ「・・・そりゃァ立派な
        隊規違反じゃないですか・・
        俺にそんな事を言って・・!」




    グンタ「報告しても構わんが・・・
        恐らく訂正は却下されるぞ」




    オルオ「・・は?」






    グンタ「何故ならその申告は
        あのリヴァイ兵長が
        出したものだからな」






    オルオ「ど・・どういう事ですか
        そりゃ・・・?!兵長が・・
        戦績の捏造・・・?!そんな」
        ショッキング・・!



    グンタ「そんな大それた事じゃない。
        難しく考えるな。(溜息)」 




    オルオ「捏造は捏造でしょう!!
        状況がどうであったかは
        知りませんがね!」




    グンタ「その7体目だが・・
        うなじへの止めがほぼ同一
        箇所に2回あってな。こう・・
        まるでシイタケの傘の模様の
        様な具合にだ。

        切り込んだ感触と順序から
        言えば俺からすれば当然
        上より重ねられている兵長の
        分の方が奥まで抉れているのが
        明確に分かってたんだが、」




    オルオ「・・・・」





    グンタ「兵長が梃子でも自分が先んじて
        浅い方を抉ったと言って
        聞かなくてな。」


    グンタ「まあ・・理由は明白なんだが
        ・・俺はその当時、
        止めを刺しに来た兵長とは違う
        兵士と組んでいたんだ。
        俺が討伐で・・そいつが補佐。
        その筈だった。

        そいつは・・思えば訓練兵の
        時からの親友で、相当腕の立つ
        奴だったし・・俺なんかより余程
        技術もあった。
        
        もし生きてれば間違いなく今も
        俺の隣に居ただろうし・・
        俺のこの補佐順守の考えは
        産まれなかっただろうな。
        ・・つまり今の俺は此処に
        居なかった事になる。
        ごく当たり前の事だが」




    オルオ「って事は・・・」
  171. 186 : : 2014/08/22(金) 00:21:34


    グンタ「ああ。説明するまでもないが
        そいつが直前に喰われちまって
        ・・・な・・。」
           




    オルオ「きつい言い方はしたくないが
        ・・割り切るしかないでしょう。
        一瞬のしくじりが死に方を
        分ける世界ですから・・ここは」



    グンタ「いいや・・?」




    オルオ「・・・?」





    グンタ「俺は勿論・・そいつには
        何の落ち度も無かった。・・
        あくまで戦術上はな・・・」



    オルオ「じゃあなんで・・・」




    グンタ「装置の動作不良さ・・
        実にあっけないもんだった。
        うんともすんとも言わない
        アンカー射出機構を親の仇の
        ように殴る姿は今でも覚えてる」



    オルオ「っ・・・・!!」



    グンタ「後で上半身が巨人の胃袋と
        隔てて泣き別れとなった
        そいつの装置を・・・兵舎に
        持ち帰って分かった事だが・・
        
        トリガーからの動作伝達用
        ワイヤー。・・こんな1本の、
        ちっぽけなワイヤーの
        ジョイントが内部で・・
        
        “たまたま”外れた為にあいつは
        4メートル級の最後の昼飯に
        されちまったのさ」 



    オルオ「そりゃあ・・・いたたまれねえ
        ・・心底悔やまれる最期だ」
        


    グンタ「まあ、その以前からも言われて
        いた事だが・・それからだ・・
        更に立体機動装置の分解清掃に
        兵長がうるさくなったのは。」



    オルオ「そのしきたりはしっかり
        順守してますよ。俺も。お蔭で
        訓練兵の時よりフィーリングが
        容易で・・正直これが以前の
        装置と同じものとは思えない」



    グンタ「その時ちらっと聞いただけ
        だがな・・、あの人は最も古い
        戦友の一人を全く同じ動作不良で
        亡くしてるらしいんだ。」



    オルオ「・・・そんな事が」


    グンタ「後は簡単な話だ。あまりに
        唐突にしてあっけない
        戦友の最期に動揺して、つい
        手元が狂った俺に・・兵長は
        花を持たせようとしてくれた
        のさ・・
        
        何もできずに只喰われた
        アイツに・・俺から手向ける
        討伐一頭という名の花をな」
        


    オルオ「・・・・・」
  172. 187 : : 2014/08/22(金) 00:43:59

    グンタ「少し気障に言い過ぎたか。
        聞かなかったことにしてくれ。
        しかしそこからだ・・俺が
        真の意味で今のこの戦い方に
        意味を見出す事ができるように
        なったのは・・」



    グンタ「そこから俺の心臓に課せられた
        覚悟は・・どうあっても、
        “無意味な死”を迎えない事。
        それだけだった。」 



    グンタ「それまでの俺はとかく
        補佐が残した10ある
        アドバンテージの内
        きっちり10ずつ、全て活かした
        討伐を心がけて・・6体余りの
        巨人を狩ってきた。それも
        大体が10メートル級越えだった
        からな・・周囲の期待も
        それなりだったが・・
        
        仲間の死は兵士の生き様を
        ここまで大きく変える。
        実際に兵士をやってみて
        身を以て勉強させられる
        事になったよ」




    オルオ「・・・・」




    グンタ「討伐補佐を推進するあまり
        その役割を美化したい訳
        じゃないが・・正直な話、
        俺なんかだけじゃなく、
        補佐の人柱のお蔭で今
        やっと息をしてるって奴は
        少なくない。俺の願いは・・
        せめてそういう最期を
        迎えられる事だな」




    オルオ「兵士が末期の願いなんて
        縁起でもないでしょう・・
        それはマズイお願いですから
        誰にも言わないで下さいよ。
        聞かなかったことにして
        置きますから」




    グンタ「・・・はは・・違いない
        ・・悪かったな、極めて
        長話になっちまった」




    オルオ「・・・いや・・それなりに
        為になる話だった。
        こっちこそ邪険にして
        悪かった。」




    グンタ「・・・しかしさっきから
        思ってたんだが・・」




    オルオ「・・はい?」



    グンタ「別に年功序列とかうるさく
        言うつもりは無いが、
        口調を絞ったらどうだ?お前
        ・・敬語だったりそうじゃ
        なかったりと・・
        大分会話口が不安定だな。
        舌をよく噛むのは喋るのが
        苦手だからか?」




    オルオ「俺もあんたがそこまで
        お喋りだったとは
        今日初めて知った事だ」



    グンタ「そうだな・・
        長話をし過ぎたな。
        つまり俺が言いたかった事は、
        だ。」





    オルオ「まだ何かあるのかよ!?」
        ギョッ






    グンタ「俺にはなれなかった・・
        兵長の様な立派な兵士に
        なれ。お前ならそれが叶う」






    オルオ「・・・・・
        言われなくてもそのつもりだ」






    グンタ「・・その為にまずは
        作戦中の私語を慎め。
        此間もペトラと言い合いをした
        直後に・・(ry




    オルオ「結局説教じゃねえか!!!」




    ―――――
    ―――
    ――
    ― 
  173. 188 : : 2014/08/22(金) 02:06:53




    時は戻り、



    ―トロスト区市街地―





    オルオ「(俺はっ・・あんたの言うような
        大層なものにはなれなかった。
        それどころかあんな軽薄なミスで
        あんたの最期を招いてしまった)」


    オルオ「(だがそれだけに・・)」 



    ペトラ「兵長っ!!!念押しに
        脚の腱を私が!!!」
        ジャガッ





    オルオ「(この補佐数を・・!
        あんたの死を決して無意味な
        物には・・させない!!!)」



    オルオ「自分は急所を行きます!!」
        キンッ




    リヴァイ「それはいいんだがな・・
         奴にはあの厄介な厚化粧が
         ある。ここは切り込み隊長に
         先を譲る。・・いいな?
         巨人殺しのシャーディス
         さんよ」


    キース「恥ずかしいからその呼び方は
        止せ。・・・だが一番槍は
        任せて貰おう・・・!!」
        ガチン・・



    ペトラ「(二つ名とかあったんだ・・)」





    キース「ガスも残り僅かだ。俺がうなじに
        とりついたら・・
        アレを引っぺがすまで離れず
        粘る。もう大分感触は掴めたが
        ・・あれはカサブタと同じように
        やろうと思えば除去できる。」



    リヴァイ「グンタの置き土産が相当
         効いてるようだが・・いつ
         感覚を取り戻しても
         おかしくはない・・!
         急いでくれ」


    キース「心得た!!!!」


    ドンッ!!!!
  174. 189 : : 2014/08/22(金) 02:13:32




    ズガッ!!




    女型「ゼッ・・・ゼヒュッ・・」バダッン・・・!!

    ドガン・・!!



    アニの意識は・・襲いくる平衡感覚の
    混乱と呼吸器系への深刻な
    ダメージに乱されて今尚
    定まる事が無く、このままの体勢では
    転がり続けていなければいずれ
    止めを刺されてしまうと・・


    頭で分かっていてもそうできない程の
    状態に置かれていた。



    ・・しかしそれでもかろうじて急所の
    硬化状態だけは解かず、状況の
    打開を、蹲り、時に苦しみながらも
    待ち続けている状態でもあった




    悶絶の理由は主に二つ。




    リヴァイ「グンタには・・お前ら全員に
         渡した散弾入りの発射筒
         だけでなく音響弾も
         渡してある。そいつを
         奴の口の中、丁度本体の
         埋まってるうなじに
         差し掛かる部分に到達する
         まで待って・・そこで
         炸裂させたんだ。」


    オルオ「・・・あの極限状態で・・!」


    リヴァイ「離れた隊列への指示にまで
         使用できるほどの大音響。
         当然振動を伝達しやすい
         頭蓋の中身で炸裂させりゃ
         ・・・傍に居る本体の
         三半規管が無事に済む筈が
         無い。・・だがそれだけじゃ
         ねえ」 


    ペトラ「息苦しそうにも見えますけど
        ・・・!まさか詰まらせた
        んですか・・?喉を」


    リヴァイ「・・巨人は呼吸を必要と
         しない。此間捕まえた2体から
         メガネが嬉々として行った
         悪趣味な実験の果てに・・
          
         得られた貴重な情報にも
         そうあったろう。つまり
         アレは本体にダメージを
         与えたって事だ。炸裂音は
         2発分だった・・そっちが
         おそらくは散弾だな・・」




    オルオ「しかし兵長っ・・!
        のんびり話などしてる
        場合では・・・!!」
        ソワソワ


  175. 190 : : 2014/08/22(金) 02:17:27

    リヴァイ「焦るな・・確かに1秒たりとも
         無駄にするなとは言った。
         しかし今は元団長の剣が
         全ての突破口だ。あの刀身で
         なければ奴のけったいな
         甲羅をひっぺがすことすら
         ままならねえ・・。今は
         とにかく合図を待て。」




    オルオ&ペトラ「ぅ・・了解・・!!」
            キョドキョド




    オルオ「しかしっ・・・
        兵長は・・・どこでグンタが
        そこまで考えてると
        お気付きに・・?」



    リヴァイ「エルドが喰われた時から
         女型の狙いは分かってた。
         奴は・・よく咀嚼して
         みせながらも立体機動装置
         のある腰部分に差し掛かった
         時点でエルドを飲み込んだ。」



    ペトラ「・・・!!」




    リヴァイ「端的に言って、奴は俺達全員を
         どうにかしたらその場から
         離脱する為に立体機動装置を
         手に入れる必要があった訳だ。
         
         しかしエルドの装置は・・
         自分が投げた石ころでオシャカ
         になっているのが明白だ。
         ならばボンベだけでも後で
         回収する目的にとって置き
         ・・・」


    オルオ「・・・グンタの装置を・・・!」





    リヴァイ「そうだ。グンタが、決死攻撃
         の成功を信じたのはこれに
         依るところがデカいだろう。
      
         握り殺されなかったのは
         装置をキズ付けない為で・・
         飲み込まれてもまず噛み砕かれ
         ることはないと、自身の
         死を目前にして気が付いた
         わけだ。」



    オルオ「俺達はそんな所まで
        頭が回る事も無く・・・!
        みっともなく喚いてたってのか
        ・・・・!クソッ・・!!」



    リヴァイ「嘆くのは後にしろ・・・!
         どうやら良い位置に貼りついた
         様子だ・・じきに出番が来る」


  176. 191 : : 2014/08/22(金) 02:18:44

    キース「ムンッッ!!!!」ザギンッ!!!!



    キース「突き通った!!!今だッッ!!!
        
        来ぉいッ!!!!!!!!」


    ギギギギギギギギ


    ペトラ「両足、行きます!!!」ドドッ!!

    ズバッ!!!




    リヴァイ「オルオ!お前の全力を一刀に
         載せて俺の反対から剥け!!
         相当深く刃を入れる必要が
         ある!!」ジャギッ!!



    オルオ「了解ィっ!!!」ジャキッ


    ゾグッ・・・!!!



    キース「ンぬぁあぁあああ・・・!!!」



    硬化部分の際ともいえる絶妙な部分に
    差し込まれた刃を、梃子の原理で
    引き剥がしにかかるキース。



    メキ・・・!メキメキ・・!!バギ・・!!!



    ガギン!!! 


    とうとうその硬化武装は取り払われ、
    一切の防御を失ったうなじ部分が
    露わになる。



    通常の討伐では一人、両の腕で行う
    行程を二人で、縦向きに行う感覚。

    事前の打ち合わせなど皆無であったが、


    2人の刃は見事に同一のタイミングで
    シンメトリを描き・・・・



    オルオ&リヴァイ「っ!!!!!!!」



    ズズズ・・・ッ!! ズパッ!!!





    その中身を抉り出す事に成功した。


  177. 192 : : 2014/08/23(土) 02:31:05


    ベリベリベリ・・!!

    ブチィッ!!



    ジュアッ・・

    オルオ「クソっ・・・熱チぃ・・・!!」


    キース「そいつが・・中身か・・・!!」


    リヴァイ「情報通りじゃあんたの
         教え子なんだろ?俺達は
         さっきこうなる前に姿を
         確認してるが・・」


    キース「・・・・・」



    頸部から引きずり出され、未だ
    此方に意識の戻る様子のない
    その横顔を一瞥すると




    キース「・・・間違いないな」





    一言だけそう告げた



    ペトラ「へいちょっ・・!!ど、どう
        しますか!?まだ
        両手がなんか
        中身と繋がって・・!」


    ブチブチ・・!




    リヴァイ「ッチ・・・・汚ぇ見た目だな・・
         ・・だが要はコイツがくたばり
         さえしなきゃそれでいい。
         ・・・見ろ」




    オルオ「・・?!」




    リヴァイが示唆するアニの腹部を
    見る一同



    シュゥゥゥウ・・



    ペトラ「これ・・は・・?蒸気・・?」





    オルオ「何ヶ所かから吹き出て・・」



    リヴァイ「丁度肺の位置だ・・・恐らく
         グンタの放った散弾は
         そこに命中したと見るのが
         妥当だ。しかし傷口はほぼ
         塞がり、蒸気が上がってやがる
         ・・・おい、ペトラ」



    ペトラ「・・っはい!」




    リヴァイ「そいつの脈はどうだ」



    ペトラ「・・・・・」




    ペトラ「あります・・・。安定して
        いる様子です」



    リヴァイ「・・・なら話は早い。」
         ジャキン・・・
  178. 193 : : 2014/08/23(土) 02:34:13




    オルオ「ちょっ・・兵長!?」



    リヴァイ「言わんとする事は分かるが
         ・・・グズグズしていて
         意識まで回復されては
         正直面倒だ。オマケに
         巨人化の引き金までそれが
         現状何なのかはっきりとは
         分かっていない・・・なら」




    ペトラ「・・・・!」




    リヴァイ「両手を切り落としちまえば
         手っ取り早い。巨人並の
         再生能力でもあるなら・・
         まず死なねえだろ・・・
         どうせまた生えてくるんだ」
         チラ・・




    オルオ「ッ・・・!」ゾクッ・・




    オルオは自らの背筋を何か冷たいものが
    這い降りていく悪寒にその身を震わせた



    怒りが・・殺意が無かったわけではない。


    寧ろ逆だ。



    しかし・・・




    この年頃の少女が自らの戦友の命を奪い、
    そして戦術の出汁に使ったのだという
    現実は・・確かにその湧き出る殺意を

    ほんの極僅かとはいえども緩和させて
    いたのかもしれない。



    目の前の人間にも何か理由があって
    その為に自らの同胞は命を絶たれた。

    そんな考えも確かにオルオの中には・・
    本当に自分で意識できる程では
    無いにしろ生まれ始めていた。


    今まさに、両腕の寸断という荒業で
    もってこの状況を打破しようとした
    リヴァイに、僅かでも制止を進言しようと
    思った事がその証拠でもある。



    殺してやりたいほど憎い・・しかし
    死んでしまっては今までの苦労、
    そして人柱となってまでこの状況を・・


    正に身命を賭して創ってくれた
    仲間の命が浮かばれない。そんな
    気持ちも要因となって生まれたその
    感情だったが・・・



    オルオ「・・・・・!」



    自分よりも更に冷静に落ち着いて
    物事を認識している筈だと
    確信していた兵の長は・・・


    そんなオルオとは正反対に
    今この場に於いてもっとも冷え込んだ
    殺意を胸中に燻らせているのだと


    ・・無言で理解した。

  179. 194 : : 2014/08/23(土) 02:38:32



    オルオ「了解です・・やりましょう
        ・・!確かにここで
        踏みとどまって、もしもう一度
        あの大きさになんてなられたら
        冗談では済まされません」
        ジャキ・・




    リヴァイ「まあそれについては
         考えてあるから安心しろ。
         もうこれ以上でっかくなろうが
         何をしようがコイツを
         野放しにしてやる気は
         さらさらない。」




    ペトラ「・・・・?」





    2人で手分けする事数分、一応とはいえ
    乱雑に切断して万が一の事が起こっても
    困るため、未だ傷の無い鋭利な替刃で
    アニの両腕は落とされた。




    リヴァイ「これでまず直ぐに暴れようと
         してもさして苦労はしねえ。
         止血の必要が無いのは手間が
         省けたな」




    アニの両腕は肘上、肩よりの位置で
    無くなっており、断面の傷口は
    完全に塞がり、今も蒸気を
    放ち続けている。



    オルオ「その条件ってのが自傷なのか
        自刃なのか知りませんが・・
        一応猿ぐつわは噛ませて
        おきます。・・しかし兵長、」




    リヴァイ「・・・・何だ」





    オルオ「さっき言ってた考えってのは
        ・・・一体・・・」




    リヴァイ「・・そうだったな」
         ザッ・・




    オルオ「・・・?」



    そう言って踵を返すと歩を進めた先は

    未だ蒸気をもくもくと上げて
    その体積を失いゆくアニの残した残骸
    の前だった・・・

    そしてその中程には



    リヴァイ「・・・・・」




    飲み下して時間も経過していない為
    状態はそれほど酷くはないものの・・


    上半身が原型を留めていないエルドの
    亡骸と、発射筒を両手に握ったまま



    絶命しているグンタの亡骸があった。
  180. 195 : : 2014/08/23(土) 02:41:30

    それを暫く無言で見つめ続け、
    その場に膝を付くと、手に纏わりつく
    吐瀉物も気にせず、エルドの辛うじて
    残っていた手首を拾いあげ、そして
    首元から引き抜いたスカーフを
    グンタの顔に被せた。


    リヴァイ「少し・・借りるぞ。」




    2人の変わり果てた仲間にそれだけ
    告げると、エルドの立体機動装置の
    リール部分を解体し、取り外す。



    本体部分はアニの石礫の直撃で大きく
    陥没しており、湾曲した継ぎ目からは
    内蔵されているワイヤー束が見えていた。



    リヴァイ「っ・・・」



    ザギッ・・ガギン・・



    それを既に消耗したブレードで
    器用にこじ開けると、中から取り出した
    ワイヤーで輪を作り始めるリヴァイ。




    リヴァイ「・・コイツで首輪を掛ける。
         ある程度の長さを持たせて
         おいて、常に見張りがその端を
         握っていれば・・もし急に
         それをされてもこっちの機転
         次第で縊り殺す事が可能だ。
         加減をすれば呼吸困難に
         陥らせて意識だけ奪う事も
         できるだろうが・・」




    リヴァイ「見張りは俺がやるつもりだ。
         どの道そうなった場合
         手加減などできる自信がない」
         キリキリ・・ギチッ・・




    ペトラ「・・・!」ゴクリ



    オルオ「・・・っ」
  181. 196 : : 2014/09/01(月) 23:29:54



    ―・・時と場所は戻り





    ―ウォールローゼ・開閉扉前―






    うなじに突き立てられたエレンの
    ブレード。その侵入を皮切りに
    一瞬地鳴りのように揺れた超大型巨人
    ・・もといベルトルトは・・・・




    ヴオオオオオオオオオォォォォ・・・・!




    低く、唸るように吠えた



    全「!!?」




    ゴゴゴゴゴゴゴ




    エレン「っ! ??!」グラッ







    ハンジ「おい・・おいオイオイ!!
        マズい!!マズいぞエレン!!」



    ジャカッ!!ババッ




    ハンジ「モブリット!!お前も
        手伝え!!樽にブッ刺しまくって
        当たりを狙うぞ!ベル君が
        飛び出すまで刺しまくれ!!!」



    っ!!!ブシュァアァァアアアア!!!!



    ハンジ「ぶわはッッ・・・・!!」



    突如肩周辺から噴き出す高熱の蒸気。



    エレン「クッソッ・・・・!!!!
        出てくんじゃねえのかよ?!??!」




    ハンジ「この蒸気の出方から見て
        きっと踏ん張ってると見たね!
        ・・・けどそんなのは後だ!!
        今は火傷とか気にしてる
        場合じゃない!!体が・・!
        コイツの全身が傾いてる!!! 
        このままほっとけば間違いなく
        足で開閉扉をノックされるぞ!!!」


    その場の全員の背筋が震え上がる。


    もしそうなれば・・・
    どうなるか考えるまでも無い。



    一同は今一度自分達が居合わせたこの場で
    起こっている事が何なのかを再確認し、


    今まさに人類に大いなる災厄を
    もたらさんと鉄槌を振りかぶる
    最大の仇敵を



    ・・・睨む。




    ハンジ「優先順位を誤る訳にはいかない!
        もし肩が水平に戻り始めるまでに
        当たりを引けなければ・・・!
        ・・・削ぐしかない!!」
        ジャギッ・・・!


    ザンッ!!   
           ザキッ!!



    エレン「クソッ・・・!!こんな時にだけ
        っ・・!!やる気出してんじゃ
        ねえよッっ!!!!
        畜生ォぉおおおお!!!!」



    ズンッ!!   ドズッ!!



    モブリット「っ!!くっ・・?!!」



    ブファァアアアアアアアア





    焼けつくような蒸気の霧の中、
    必死に何かを掘り当てようとする炭鉱夫
    の様に巨大なうなじに刃を突き立てる3人







    その矛先では・・・・



    既に2、3回の刺突を腕に受けている
    ベルトルトが激痛に耐えながらも
    その巨体の制御に全霊を注いでいた





    ベルトルト「二人が・・・・!!!
          待っているんだ・・・!!


          僕を・・・・!!!


          こんな僕を信じて・・・!!
          命を預けてくれた・・!!」





    例え弱点もろともこの身が削がれようと
    ・・・・!!!





    ベルトルト「この門だけは・・・・!!
          こじ開けてやる!!!!!」 






    皮肉にもその決意は・・・



    つい先程自身が人質にし損ねたエレンに、
    心から恐怖することで達した・・
    その末の境地でもあった。



    勢いさえつけば・・・!




    脚を振りかぶるところまで
    行ってしまえば・・・!!





    例え全身の支えを失っても





    惰性で扉くらいは蹴破れる・・・・!!!

  182. 197 : : 2014/09/01(月) 23:36:22


    そう決意したベルトルトの視界が・・・



    一瞬の間を置いて体内の暗闇から
    転じて一気に光に包まれた・・・・・




    そして未だ超大型巨人の神経中枢に
    その身を置きながらも、こう確信した。




    ・・・これが・・・・死に際の景色って奴か・・・




    ベルトルトは直感的に初めて見るその光に
    恐らく扉の破壊を恐れた誰かが、
    自らの捕縛を放棄して止めを刺した
    ものだと思い、

    それでもなお体に残る操縦感覚に
    安堵を覚え、そのまま自らの
    使命をその右足にのせて振り抜こうとした



    ベルトルト「っ・・・うぉをおおおお
          おおおおおおおおおお

    エレン   おおおおおおおおおお
          おおおおおおおお!!!」





    !!!!?






    自らの叫びを塗りつぶす怒号を聞き、
    ベルトルトは自身の状況を思い出す
    前に反射的にその目を開いた




    驚愕に見開かれたその目が捉えたのは・・・・







    エレン「よう・・・・!!!
        叩き起こしに来てやったぜ
        ・・・・・・・・!!!!」
        ガバッ・・・・!





    鬼の様な形相で今まさに満身の力を込めて
    ベルトルトを殴りつけんとする
    エレンの姿であった。



    バガッッッッ!!!!!





    ベルトルト「!!!!??????」





    何が・・・・起こった・・・?!




    理解が追いつく暇もなく・・・




    横っ面に全体重の乗った
    拳が叩き込まれた。



    ベルトルトの身体は右へと殴り抜かれ




    それに呼応するかの様に





    ハンジ「ぬわっ・・・!!!」


    モブリット「ハンジさん!!!!
          捕まって下さい!!!」
          ババッ!!





    超大型巨人の上半身も、
    同一の方向へと押し傾けられた。





    もつれ、バランスを崩す片脚、
    身を支える為壁を掴んでいた腕は
    離され、全身が大きく右方向へ傾く


  183. 198 : : 2014/09/01(月) 23:40:43


    このまま全身の支配を瞬時に奪っても
    予備動作次第では扉の破壊は免れない。


    そう判断したハンジは・・その場で
    ある提案を出していた。



    {ハンジ「こうなりゃもう一か八かだ!!
        エレン!!私達でこれを
        なんとかこじ開ける!!
        君はベルトルトを・・・!」}






    エレン「もう!、いっ  
               ちょう!!!」



    ゴガッ!!!!!!








    {ハンジ「ぶん殴りに行って来い!!
         それも思いっきりだ!!」}







    感覚が共有されていて、それが
    巨人の操作に密接に絡んでいると
    すれば・・、下手に挙動の最中で
    そのリンクを絶つよりも、


    司令塔であるベルトルトはそのままに、
    その命令を上回る強い衝撃を
    本体に与えれば無理矢理身体を
    傾けられるのでは・・・


    と考えた末の無茶振りであったが・・・




    ハンジ「どうやら・・上手く行った・・・
        みたいだなッ・・!!!」

    ジュゥウゥウウ・



    モブリット「ぐっ・・・!!!!!
          熱っっっ・・・!!!!!」

    ジュァアアア・・・



    うなじを真上から切り開く様な形で、


    その切り口を二人がかりで精一杯
    引き剥がそうとする体勢の二人。


    その隙間からエレンはうなじの内部に
    滑り込み、ベルトルトに直接拳を
    叩き込んだのだ。




    その体内、そして切り口は当然の如く
    灼熱の地獄でもあり、直接触れる皮膚は
    勿論の事、断面から漏れ出る蒸気は

    3人の肌を、服の上からであろうと
    容赦なく焼き付ける。既にこれだけ
    内部の高熱に肉薄していれば、
    事前に講じた耐熱策はどれも
    無いのと変わらないような物であった。




    しかし、薄れゆく意識の中で3人は・・・・





    自分達を取り巻くこの大きな傾きから・・・





    間違いなく超大型巨人の打倒を確信した。




    バシュッ!!!   ドシュンッ!!


       ドスッ!!!


    髭ゴ「っっ!!!!!」




    ケイジ「ニファ――ッ!!!
        うなじだ!!引き摺り出すぞ!」



    ニファ「掴みました!!!!」





    いち早く壁面から右に崩れゆく
    超大型巨人の体躯にへばり付き、

    うなじにまで到達した三人は、
    その切り口から既に意識を失いかけている
    3人を引き摺り出すことに成功する。


    ・・が、そこからそれぞれを抱えて
    壁面に飛び移るのは不可能と判断した
    ケイジは




    ケイジ「落下に備えて分隊長達を
        抱えろ!!!!大丈夫だ!!!
        落ち着いて衝撃に備えれば
        なんとかなる!!」

    ガバッ



    髭ゴ「倒れた先で頭に
       潰されるなよ!!!!!!」

    グッ


    ニファ「ゥっ・・了解!!!」

    グイッ



    声を限りに叫んだ。  
  184. 199 : : 2014/09/24(水) 00:49:12




    ―トロスト区内門前―





    間隔をあけてではあるものの、
    しかし断続的に、腹に響くような砲声を
    市街に放ち続ける砲兵部隊の砲台。



    その照準に捉えられる標的は
    言うまでも無くただ一つ。



    突破目標たる内門を目前にして
    榴弾の集中砲火を受け、文字通り
    手も足も出ない鎧の巨人・・・


    即ちライナー・ブラウンの姿であった。




    断続的な榴弾による巨人体への被弾が
    もたらす破壊は最早説明するまでも無く

    それは強力な硬化能力を有することで
    ぶどう弾すら弾いてしまう程の
    外皮を持つライナーにあっても
    尋常ならざるものであった。



    攻撃を受けるたびに全回復に
    踏み切ろうとすれば直ぐにガス欠を
    向かえると判断したライナーは・・


    アニがそうした特性を持っているのと
    同じ様に、最低限防御に必要な
    右腕のみを残し、残りの左腕と
    腰から下は再生を断念することで
    普段の活動限界を倍近く伸ばして
    防御に徹していた。



    本当の意味で比喩表現ではない、
    “手も足も出ない状況”そのものである


    防御一辺倒、持久戦の構え・・・

    そう言えば聞こえはいいが、
    要は手詰まりである。
    それは防御に徹しているライナー自身が
    最も歯痒く思いつつも自覚していた
  185. 200 : : 2014/09/24(水) 00:51:14


    ズドン!!!!!!



    鎧「…」



    ドゴォォオオオン!!!!



    クソッ・・・!認識が甘かった・・!

    例え飛んでくるのが榴弾だったとしても
    そこは意地で何とかするつもりだった

    2,3発貰う事は覚悟の上だった・・!



    それが・・・・



    それがあんな・・・・・!!




    助けに行かなければ。


    ―俺が…!!


    奴はアニの戦っている区画へ向かった。



    人類最強の兵士長率いる特別作戦班。
    そいつらの相手を任せるだけで
    気が気じゃ無かったって言うのにその上
    あんな化け物を合流させちまったら…


    いくら・・いくらアイツでも・・・!!





    しかし   どうやって




    ゴガッ!!!!!!!


           ビリビリ...!!!!!




    この絶え間ない集中砲火を
    一体どう切り抜ける・・・?!


    さっき砲声に紛れながらも
    微かに聞こえたのはまさか・・
    ベルトルトの咆哮か・・・・?
    あっちはどうなってる・・・・!?





    まさか・・・



    まさか俺達はここまでなのか!?!?



    半ば俺の独断のようなもので
    2人を前倒しにこんな博打に
    巻き込んでおきながら・・・!?



    そんな事・・・許される訳がない・・・!



    耐えろ・・・・!!何時間でも耐えて・・・!!!!
    這ってでもここは突破しなければ・・・!!!



    俺には未だ・・・
    地獄行きすら許されていない…!!!
    あの世であいつらにはおろか
    二人に詫びる事すら出来ない・・・!


    ゴゴ・・・・・!!!ギギギギ......!!!!


    ・・――既に程近い己が限界を
    心の何処かで感じ取りながらも…

    ライナーは今一度不屈の精神で
    自身を叱咤激励する。


  186. 201 : : 2014/09/24(水) 00:56:07


    そして場所を同じくして同様に
    この事態の収拾に頭を抱える者がいた





    アルミン「(ここに来るまで…
         ありとあらゆる手段を
         頭の中で練ってみた・・!
         しかしどう考えても…!)」


    この砲撃を自分のみの力で中断させる
    事は不可能だ。当然の事である。

    今砲撃の対象として射線に
    晒されているのは、よりにもよって
    5年前に人類活動領域を狭めた張本“人”


    それが今再び大手を振って次なる門に
    迫っているというのにおいそれと
    攻撃の手を緩める訳がない。

    もしも自分が駐屯兵団の指揮官を
    任されていても今この状況なら
    絶対に砲撃の中断等に耳は貸さない。


    5年前の恐怖を知っているこの場の
    全砲兵がそもそもそれを簡単に
    聞き入れる筈が無いのだ。

    それも一訓練兵の介入如きで。





    アルミン「(一体・・・!一体僕は
         どうすれば・・・!!)」








    ???「こんなところにいて武装まで
      している訓練兵となると・・・
      君が話に聞いている“彼ら”の
      同期・・・という事で間違いないな?」


    ミケ「」コクッ



    背後から唐突に掛けられる声。



    アルミン「っ・・は!?はい!!?」
         バッ


    アルミン「あ・・・貴方は...!!!」




    エルヴィン「遅くなって済まなかった。
          これだけの事態に収拾を
          付けるにはどうしても
          かかる時間と手間が大きい。
          だが用意は揃った・・!
          後は我々に任せろ。」




    アルミン「(調査兵団の・・
         エルヴィン団長!?)」





    エルヴィン「ミケ。お前は壁上で
          発砲待機命令を受けている
          砲兵に先回りして
          令状の写しを見せて来い。
          誤射でもされれば全て
          うやむやにされかねない」




    ミケ「...了解」

    パシュッ!!

           ギュァッ

  187. 202 : : 2014/09/24(水) 01:03:07


    アルミン「れ・・令状・・?!」




    エルヴィン「・・そうだ・・これ程
         緊迫的な緊急事態に於いて
         調査兵団の長などという
         私の発言権は無いに等しい。
         
         だから全兵団を統括する
         総統の令状をとり付けるのに
         今の今まで時間を要した。
         じき残りの人員も活動拠点の
         方から此方へ向かう手はずだ」



    アルミン「(総統に話を通した・・・?!
         簡単に言うけれどそれは・・!
         その意味を知っていればこそ
         聞いて捨て置けるような
         話じゃない・・!それで
         本当にこの状況を止められる
         のか・・・?!)」


    ザッ・・


    エルヴィン「緊急事態につき気が動転する
         のも承知の上で申し上げる!!
         砲撃を一時中断して頂きたい!
         キッツ・ヴェールマン隊長!」



    キッツ「調査兵の団長が・・何用だ?
        今、聞き間違えで無ければ砲撃の
        中止がどうとかのたまったか
        ・・・貴様」




    エルヴィン「ああ。そう述べた積もりだ」




    キッツ「失せろ。ここは駐屯兵の
        持ち場だ。正式な上からの
        命令も無くそのような
        訳も根拠も理解できない
        申し出に耳を貸す道理はない。
        ・・話に成らん」

    リコ「・・・・;」



    エルヴィン「・・・失礼した。その
          訳と根拠と道理とやらは・・
          今は時間が無いので後々
          聞いて頂くにしても、
          正式な命令ならこうして
          ここに受けて参じている。
          総統から取り付けた令状だ」

    カコッ・・・



    リコ「ッ・・・??!!」ザワ・・・



    キッツ「・・・・・何だと・・・?」





    エルヴィン「受け取って虚偽でないか
          どうか確認して頂きたい
          のだが。そして理解して
          頂けるなら即刻――
    キッツ「待て・・・・!令状の真偽など
        今この場において問題ではない
        ・・・!!貴様それは一体
        どういう事だ・・!」




    キッツ隊長の目にそれまで宿っていた
    警戒の火、それに新たに別の火が加わり、
    その火力は激しさを増していく。



    ――懐疑心…。今、キッツ隊長の意思は、
    その全身で以て目の前の調査兵団団長に

    得体の知れない何かに向ける畏怖の炎を
    冷たく燃え上がらせていた。
  188. 203 : : 2014/09/24(水) 01:04:55

    エルヴィン「どうもこうも無い。
         私は令状通りに貴殿に
         砲撃の中断をお願いしたく
         この場に参じたに過ぎません。
         理解したなら早々に御命令を
         下して頂きたい。手遅れと
         なる前に。一刻も早く」



    キッツ「~~~~!!!!
        黙って聞いて居れば貴様!!
        私が聞きたいのはそんな事では
        無い!手遅れだと・・・?
        貴様は一体この状況の
        何を知っているというのだ
        ・・・?!?」ガクガクガク




    アルミン「(そうだ・・!当たり前だけど
         そんなの馬鹿にでも分かる!!
         駐屯兵団からすれば
         何の知らせも受けず急に
         壁内に出現されたとされる
         鎧の巨人の急襲..!
         
         そんな・・・
         寝耳に水ともいえる状況に
         やっとの思いで迎撃態勢を
         敷いたかと思えば、今度は
         その迎撃中断を命ずる書状を
         持ってエルヴィン団長が
         こうして現れた・・・・!)」



    キッツ「貴様は・・・!いや、
        貴様だけではない・・・!!
        総統は・・何を知っている!!?」




    アルミン「(それも事が起こってからの
         進言では決して間に合わない
         タイミングでこれだけの
         影響力を持つ正式な書簡を。
         その説明は・・一体どう着ける
         つもりなんだ団長は?!)」

       
  189. 204 : : 2014/09/25(木) 00:23:33







    依然として砲撃中止命令は下されぬ為
    今尚砲撃の合間を縫って交わされて
    いたその会話に・・・その場の全員が、





    否、壁の内側にいる全ての人間が
    言葉を失う形で・・





    今まさに人智を超越した最悪の横槍が
    入れられようとしていた。





  190. 205 : : 2014/09/25(木) 00:24:41


    ~更に十数分前~

    ―ウォールローゼ区画内・平野―



    ドドッ  ドドッ   ドドッ



    トロスト区を目指して
    訓練兵舎から命辛々の脱出を果たし、

    何故か壁内に突如湧き出た巨人の群れから
    出来うる限りの巡航速度で遁走を
    続けてきたユミル・サシャ・クリスタ
    ・ミーナの四人だったが・・・目的地の
    トロスト区も、もう間もなく、
    と言った所で暫く前から感じていた
    違和感にサシャが声を上げる。




    サシャ「あのぅー・・・先程から
        でしょうか・・!あんなにいた
        筈の巨人が・・全然後ろに
        見当たらないんですけど」



    ユミル「・・・結構な事じゃねえか。
        お前は奴らにケツ追い回される
        のがそんなに楽しかったのか?
        今からでも兵舎に引き返すか?」



    サシャ「そんな訳無いじゃないですか!
        気になったから聞いただけ
        ですってば!!」



    ユミル「なら私に聞かれてもそりゃ
        どうしようもねえよ。
        一緒に前向いて必死こいて
        逃げてたってのに何で私が
        そんな」



    ドドッ   ドドドッ



    クリスタ「・・・・・」ジィ・・・



    ユミル「なんだよその目は。」



    クリスタ「ユミルは私達に隠し事
         してた。まだ絶対何か
         隠してる。」キリキリ..
    (歯軋り)


    ユミル「お前・・本名ぶっちゃけて
        から一段と可愛くなったな。」
        オコル カオモ カワイイゼ


    ドドッ   ドドッ  ズドッ


    クリスタ「誤魔化したって
         騙されないから!ちゃんと
         着いたら話して貰うんだから」
         ////


    ユミル「へいへい・・」
  191. 206 : : 2014/09/25(木) 00:27:04

    ズドッ・・・ドドッ



    平静を装っているユミルだったが…
    その時彼女は既にこの壁の内側の世界に
    明確な破滅の予兆を感じていた。


    巨人の事について座学で教わる以上の
    知識を有しているユミルからすれば、
    “発生した巨人”が消えることなど
    有りえないというのが嫌でも
    理解できていたからだ。


    壁内に現れた巨人の大群。


    先程まであれ程の数が居たのにも
    関わらず・・・既に自分達の
    後方にその影は見当たらない。


    見える位置に居たものが
    居なくなったという事は。


    それは何処かに移動しただけだ。
    それも間違いなくこの囲われた壁の中、
    その内側という狭い世界の中に。

    ―人類は既に侵入を許してしまった。



    ユミル「・・・・・」


    あの考える脳味噌を持たない奴等の
    挙動に干渉できるモノは二つだけ・・
    餌の気配と・・“座標”のみ。

    私等という一度見つけた餌を放棄して
    どっか行ったって事はだ・・・
    当然“奴”が・・・あの猿が連れてった
    ってだけの話になる。

    何処に・・・?


    何処だって一緒だ。

    壁の内側にあんなのが
    お邪魔してきてる時点で
    もうこいつ等詰んでるんだ・・


    ――なら私はどうすればいい・・・?


    取りあえず城壁都市の内側ならまだ
    此処よりマシかと思ってこうして馬を
    走らせちゃいるが・・考えて見りゃ
    当の目的地はベルトルさんやライナー
    なんかが今まさに気張って
    壁を叩きにいってる最中じゃねえか。


    ・・考えれば考えるだけ最悪の状況だ。




    どうしろって言うんだ一体・・・


    ドドッ  ドドド


    ユミル「・・・・;」



    クリスタ「・・・・・」



    普段飄々とした雰囲気を決して崩さない
    ユミルの…本気で参ったという表情を
    隣からクリスタの大きな瞳が
    じっと見つめていた。
  192. 207 : : 2014/09/25(木) 00:29:11


    ―壁外・森林地帯―



    ―――そして壁外



    ???「どうすっかな・・・まあ・・まず
      適当にいくつかいれてみようかな」



    誰の意思に介する事も無く。


    誰の懸念にもかからぬ形で・・


    その奇襲は人知れず始まった。



    ???「小さいのもっともってくれば
      よかったなぁ・・でもこれだけ
      いれば充分か・・」ポリポリ


    ググ・・・
           ガシィ



    ???「上にもいるなァ・・・あっちも
      回収しときたい。....
    まずは的あてからだな」



    ???「せぇー―のっ。」


    この上なく気の抜けた掛け声と共に。
    焼け火鉢と化した壁内に・・・
    一切の遠慮も何も無い一石が投じられた。



  193. 208 : : 2014/09/25(木) 00:30:52




    ―トロスト区・調査兵団活動拠点―







    ナナバ「ほら、早く行くぞ!!
        事態は急を要するって話だ」


    ゲルガー「いや・・あのよ、昨晩から
        そんな重要な作戦があるなんて
        聞かされてねえもんだから
        普通に酒入ってるんだけどな…
        …俺。こんな朝っぱらから
        しかも市街地における
        立体機動使用許可が下りてる
        任務って・・何事だよ」
        アタマイテェ・・

    ナナバ「腑抜けた事言ってる場合か!
        それに酒なら飲むなと言っても
        遠征前に必ず飲むだろお前。
        さあとっとと・・」ピタ

    ゲルガー「・・・・」



    ナナバ「・・そんなに酔いが酷いのか
        ・・・?だったら立体機動中に
        転落でもされるよりはマシだから
        いっそ休んで・・・
    ゲルガー「おい・・・・」




    ナナバ「いきなり何だ、人が話してる
        最中に・・・!」イラッ


    ゲルガー「あの・・アレ・・・
         俺そこまで悪酔いするほど
         飲んでねえんだが・・
         俺にしか見えてない
         幻覚だよな・・?
         ナナバ・・てめえには・・
         何も見えねえよな・・?!?」
         ガタガタガタガタ


    ナナバ「・・・・・・!!!!!」






    拠点出入り口から外へ飛び出した2人。


    その二人が見上げる先にあった光景…


    それは
  194. 209 : : 2014/09/25(木) 02:04:04

    ―その5分前・開閉扉直上―




    ハンジの機転とエレンの
    捨て身の殴り込みによってなんとか
    開閉扉の突破は阻まれた。操縦者である
    ベルトルトの気絶に伴い、超大型巨人の
    身体は壁際に転倒し、そのまま徐々に
    蒸気を拡散し続け、蒸散していく


    壁上には、作戦の役割上
    待ち伏せ係として待機していた
    第四分隊の面々の手によって
    救い出されたエレンが横たえられていた


    エレン「―――」


    超大型巨人が転倒した
    際に熱気で気を失っていた
    ハンジ、モブリットの両名は、
    熱傷予防の措置もあったお蔭か、
    救出直後に目を覚ました。



    しかしエレンの場合は切り口から
    最も内部に侵入したので
    特に熱による外傷が酷く、今尚
    意識が戻らず、ニファの介抱を
    受けている状態。



    ハンジ「・・・・・」


    モブリット「・・・・」


    そしてエレンが居る方向とは反対の
    方角に・・ハンジ、モブリットの
    両名は渋い視線を送っていた。

    その視線の先には・・・切り口から
    その後切除されたベルトルトが
    胴体ごと肘の部分で雁字搦めに縛られ、
    猿ぐつわを噛まされながらも気を失って
    横たわっていた。

    引き剥がす際に両腕の接合が強かった為
    手首より少々肘よりの部分での切断を
    余儀なくされたが、止血の必要も無く
    現在もその切り口からは蒸気が
    上がり続けている。





    髭ゴ「今になっても信じられんが
       ・・・これを見る限りでは
       分かり易いな」



    ケイジ「ああ・・こいつは間違いなく
        巨人同様の回復能力だ。
        もっともこの姿のままでは
        そこまで早くはないようだが」



    ハンジ「正直これは両手離しで喜びたい程
        大きな発見と収穫、そして
        成果だが・・モノがものだけに
        何かあっては洒落では
        済まされないなぁ。」


    モブリット「何せ、超大型巨人の
         “捕獲”に成功してしまった
          訳ですからね・・我々は。
          ひょっとすると大金星では
          ないですか」



    ハンジ「そうだな。2階級特進なんて
        ちっぽけなもんじゃ済まない
        かも知れない・・けど。」
  195. 210 : : 2014/09/25(木) 02:04:55



    モブリット「・・・?」



    ハンジ「それは、あくまでこの場に
        居合わせた我々にしか
        事実と断定できない事だよ。
        
        まず彼が超大型巨人であると
        立証して見せる事が
        言うまでも無く不可能だ。
       
        今このままの姿で中央まで
        ベルトルトを連れて行けば・・
        再生能力の経過観察という
        立証方法でいくらか信憑性は
        産まれるだろう・・・
        しかしそんな事をすれば」




    モブリット「・・・何に利用されるか
          見当も付きませんね。」
          ハァ・・・



    ケイジ「それだけじゃないぞ。結局
        巨人化の引き金となる物が
        未だ断定はできてないんだ。
        もしもそれが自傷行為に
        よるものだけでなかったら」




    髭ゴ「考え出せばキリがない」




    モブリット「それを考えると・・
          そもそも壁の内側に留置
          して置く事こそ不可能では
          ありませんか・・?;」



    ハンジ「けどだからと言って放って
        置くわけにも行かないしねぇ」



    モブリット「それはご尤もですが・・」




    ニファ「目標の確保という大きな目的を
        果たせたのはいいですけど
        ・・イェーガー訓練兵の容体は
        正直芳しくありません・・
        一刻も早く医務室に連れて
        行くべきです」
        ソワソワ
  196. 211 : : 2014/09/25(木) 02:07:52


    ハンジ「・・・・」ビチャビチャ・・




    飲用水貯蔵用の水袋から手拭に水分を
    滴下し、絶え間なくその手拭で
    エレンの顔を冷やすハンジとニファ。




    エレン「ぅ・・・」




    ハンジ「・・・仕方が無い。エレンが
        直ぐに目を覚まさない程重篤な
        状態だというなら今ここで
        こうしていても時間の無駄だ。
        それにできればこんな堅い壁の
        上などではなく・・ちゃんと
        ベッドで休ませてやりたいしね

        何と言っても5年越しの壁の
        危機を救った英雄だ。」
        ソワソワ



    モブリット「それから・・この上ない
          研究材料の入手に貢献
          してくれた功労者…と
          言った所ですか」ツラツラ



    ・・・・・・・・ ・  ・   ・




    ハンジ「(ギクッ)い・・いやぁ・・そりゃ
        私だって時間と状況に余裕が
        あるなら少しばかりそこの
        ベルトル君から腕の一部を
        削ぎ取ってその経過観察なんか
        をしてみたいとかそんな事を
        思ったりしなくは・・

     


    ゥ ゥ ゥ ル ル ル ル ルルルルルル





    ハンジ「         」






    ――モブリットの方向へハンジが首を
      向けたその瞬間、目と目が合った。





    そこに立っていた、
    モブリット・バーナー副分隊長、
    その本人以外の目と・・
    ハンジの目が合ったのだ。




    眼鏡で視力を補強しているハンジの
    視力が、その物体を一瞬目にしただけで
    それが何であるか理解できたのは・・・


    目の前で起こった事が余りに突拍子も無く
    理解を超えた現象であった為に、
    脳が普段回っている時の数倍の速度で
    駆動していたから・・・



    というのもあったが、



    それよりもっと単純な理由があった。


    壁の上などには何をどうしようと
    現れるはずの無いその巨体は・・・



    彼女が壁の外に出る度にその目を輝かせて
    追いかけまわしている、よく見知った
    ものであったからだ。
  197. 212 : : 2014/09/25(木) 02:09:30


    ――しかしその刹那。



    否、放物線運動の経過中、
    その一瞬であるため厳密には
    刹那より長めの一瞬であったかも
    知れない。



    ともかくその一瞬のうちに彼女の双眸に
    宿ったのは・・・普段それを
    目にした際の輝きなどではなかった。




    モブリットがハンジのその目に
    見出したのは・・・




    長く彼女の傍に居ても
    滅多に見ることが適わない、





    ――明らかな恐怖の色だった









    ハンジ「総員!!!!!!!!エレンと
        ベルトルトの保護を最優先だ!!
        
        二人を抱えて・・・!!!!」





    ヒュルルルルル・・ ・ ・ !!!! ! ! !




    ハンジ「今すぐ立体機動に移れッッ!!!!!」
        ジャキッ





    ッズガッッ!!!!!!..ン!!!ビリビリビリ






    全員「っぁ!!!???!」







    グラグラグラ....!!


  198. 213 : : 2014/09/25(木) 02:12:05


    ケイジ「なっ・・・なんだアレは!!」


    髭ゴ「何でもいい!!壁をとっとと
       下りるぞ!!!コイツを運ぶ!
       手伝え!!!」



    ガシュ!!  ドシュン!!


    ベルトルトは両腕が出ていない為
    負ぶさって運ぶ事が出来ない。更に
    腕が切除されているとはいえ
    それなりの長身で重さもあるため、

    前方で抱えるようにして単独の
    立体機動にて運ぶのには限界がある。

    故にケイジ共々、ベルトルトを
    運ぶ二人はその場から速やかに
    距離を取った位置で壁の縁にアンカーを
    打ち付け、ベルトルトを二人で
    担ぎ、垂直降下を始める。


    髭ゴ「分隊長!!副長!!無事を祈る!!!」


    キュゥゥゥ.......!!!!






    モブリット「分隊長ッ!!!ニファが
          今の衝撃で!!」




    ハンジ「っ・・・・!!!!!;」



    あまりに急な襲撃であったため
    その場の全員に今そこで起こっている
    事を理解する暇は無かったが・・

    起こった事は非常に簡単な事だった。



    巨人が2体、壁の外から飛んできた。



    一体目は
    壁を飛び越え、その内側へ。



    そしてもう一体は壁の縁に上手く飛びつく
    ような姿勢で・・今まさにその頂上に
    よじ登ろうとしていた。


    3メートル級。

    巨人の等級で見れば
    最も小ぶりな部類であるが、
    最大の問題は彼らが今居る
    その場所である。


    壁の上という限定された開放空間


    更に相手は体躯の小さな巨人。
    平地以上に立体機動装置が役に立たない
    まさに最悪の状況である。
  199. 214 : : 2014/09/25(木) 02:50:02

    万全を期するならば残された選択は
    撤退のみといった状況で・・


    壁にへばり付いた3メートル級を
    挟み込む形で倒れ込むエレン、そして
    ニファの二人の姿が。エレンは
    巨人より手前に・・・ニファは
    その向こうに倒れている。巨人の足は
    未だ壁上に着いては居なかった。




    迷う余地もなくニファに向かい
    飛び出したモブリットに・・・


    壁の外を見ていたハンジが檄を飛ばした





    ハンジ「止せ!!!モブリット!!!!!!
        もう一体だ!!!!!!」




    ・・・・ルルルル




    モブリット「・・・は?」




    ッッガガァァン!!!!!!

           ビリビリ....!!




    ―壁外・森林地帯―




    ???「おっ・・・ナイスピッチ。
       肩もあたたまってきたしあとは
       ぜんぶ中でいいか・・」





    ―壁上―





    更にニファより向うに一体の巨人が
    直撃する。


    衝撃でその場に転倒するモブリット
    だったが・・非常にタイミングの
    悪い事にその衝撃でもって壁の上に
    這いあがる事に成功した一体目の
    巨人の両腕が、エレンではなく
    転倒したモブリットに迫っていた。

  200. 215 : : 2014/09/25(木) 02:51:30


    モブリット「ッッ!!!!」ビクッ!!


    ハンジ「馬鹿何ビビってんだッッ!!!!」


    ババッ!!!!


    ドンッ!!!!



    モブリット「!!!???分っ・・!!」






    ドガッ・・・!!
            ガズッッ・・・・!!!!





    ハンジ「ッっぁあ"!!!!!!」ギリギリ


    嫌な音と共に、自らを突き飛ばして
    救ってくれた分隊長の表情が
    苦悶に歪むのを…停止しかけた頭で
    認識するモブリット。


    ハンジの左足が…


    膝下の部分で
    巨人の顎に捉われてしまったのだ


    メキメキメキメキ...ガギ・・



    ハンジ「いィ・・・っ!!!
          ぐぁ・・・!!!」


    ザンッ!!ザシュッ!!!



    必死に斬撃を浴びせようとするものの、
    背後から左足に噛みつかれてしまった
    その体勢からでは思うように届かない




    モブリット「分隊長ッっ!!動かないで
          下さい!!!!」

    ダダッ!!!




    ハンジ「馬鹿そりゃあんただ!!!
        エレンを連れてとっとと
        壁をっっ・・・!!!」

    メキ・・ガギ・・ギチッ・・・!!




    ハンジ「痛っってぇえええよ!!!!
        噛むの下手クソだなお前は!!!
        もっとサクッといけよもう!!
        !!!!こなクソがッッ!!!」




    ガスッ!!ザンッ!!!
  201. 216 : : 2014/09/25(木) 02:59:26



    モブリット「聞けません!!ニファも
          助けなければならない!!」
          ジャキッ

    ダダッ




    ハンジ「このバカ野郎がっ!!!!
        よく見ろ!!2体だ!!!
        私が足齧られてる間に
        コイツをどうにかする気か!?
        向うはもう登りきる!!!
        
        これ以上何か言わせるなら
        命令違反とみなすぞ!!とっとと
        エレンを連れて降りろ!!このッ
        馬グソ野郎!!!!」




    モブリット「貴女が居なくなってしまう
         位ならまだ自分は命令違反
         で処断される方を選びます!!」




    ハンジ「こんっ・・・のォ・・・!!!」
        ギリギリギリギリ



    ハンジ「それが本音か貴様!!!
        もしこのまま4人仲良く
        おっ死ぬような顛末を
        迎えてみろ!!!お前とは死んで
        あの世に行っても口聞いて
        やんねぇからな!!!!!!」
          

    この世の中において、
    今目の前に居る上官の激怒した姿以上に
    恐ろしい物を知らないモブリットで
    あったが・・・

    死の際に晒されながらも
    修羅の如き怒気を放ち、凄まじい
    怒声を浴びせてくるその声すらも


    ・・・彼の耳には最早届いて
    居なかった。彼の中にあった恐怖は・・



    彼女を失ってしまいたくない・・・



    その恐怖のみであった
  202. 217 : : 2014/09/26(金) 02:49:16

    ハンジ「ぐっ・・・・!!!!!」

    自分がいつ死ぬ事に成ろうとも当然
    覚悟は出来ている。これまで何度も
    壁の外から何事も無く生還を
    遂げてきたが何時装備の不具合や
    悪天候のトラブルに見舞われて
    今の様な事態に陥ってもおかしくは
    無かった。


    ――ただ・・・



    ―――――ただ目の前で大事な仲間が
    食い殺されるのだけはもう勘弁だった。


    ・・・分かっている。あいつも
    まったく同じ気持ちなんだ。


    でなかったら普段のあいつならこんな
    明らかに見誤る筈のないミスを犯したり
    しない。どころか命令違反なんて
    事もする筈が無い。


    そりゃそうか・・・
    いままで立場を笠に着てあいつに・・
    こんな風に命令したことなんて
    無かったもんな・・・


    いきなり慣れない命令口調で
    言われたって、そりゃあ
    聞いてくれないよなぁ・・


    ならなんてお願いすれば私の
    云う事を聞いてくれる・・・?



    もう目の前で大事な仲間が食い殺される
    なんて・・・まっぴらなんだ・・!
    それも自分が死ぬかもしれないその
    間際にそれを見なきゃいけないなんて
    ・・・・・・・!




    ハンジ「ぉ願いだよ・・・・!!!
        モブリッ・・・ト・・!エレンを連れて
        ・・ぇレンを連れて・・・!」

    ガクガクッ・・


    モブリット「ッ・・・・;!!」



    3メートル級巨人の頭部はやや
    前傾姿勢とはいえ二足で立っている為
    それなりの高所にあり、どの道
    うなじに一撃入れなければ
    いけない以上、立体機動装置を使って
    そこへ接近する必要があるが・・


    今も口には左足を喰い付かれている
    ハンジがぶら下がっており、
    アンカーが同士討ちに成らない様
    その照準を付けるのは容易ではない。





    しかしここでまごつけば後方のニファは
    もう助からない。


  203. 218 : : 2014/09/26(金) 02:52:33


    モブリット「ッ・・・!!」




    焦る心、定まらない狙い。




    此方を後にし、先に後方を
    片付けるべきか?いや、それまで
    分隊長が無事でいられる保証は無い・・


    やるしか  ・・ない



    モブリット「ッぉおおおああ!!!!」


    ジャキ!!


    ハンジ「エレンを連れて・・・
        逃げてくれぇえ!!!」






    ギュッキュイイイイ!!!!!バシュ!!







    ハンジ「!!!?」


    直後、モブリットの居る方向ではなく
    後方より聞こえる駆動音。

    そこに現れたのは・・・




    ミカサ「エレン!!!!?」



    ジャン「ッんだよ、これぁ!!!??」




    ハンジ「あっ・・あんたらは!!」
        ガタガタガタ


    リヴァイより開閉扉に向かうよう
    指示を受けていたジャンとミカサだった。




    ミカサ「ッっ!!!!!」ギリィッ
        ダダッ・・・ッ!!

     

        ドドッ!!



    ギュァッ!!!  
          ズシャッッ!!!!



    ズンッ・・・・


    ハンジ「ぬぐっ・・・?!!!」


    モブリット「っっ」ガシッ!!!



    丁度巨人の背後を取る形で壁の上に
    降り立つことが出来たため、

    アンカーすら使わず、助走をつけて
    一歩二歩と巨人の背を駆け上がると、
    腰の捻りを目一杯利かせた
    深い斬撃を見舞うミカサ。

    その一撃でもって
    見事に3メートル級を屠る
  204. 219 : : 2014/09/26(金) 02:58:46


    足を齧られたままであったハンジは
    当然頭から落ちそうになるが、
    瞬時に反応した前方にいる
    モブリットがそれを受け止める。


    先程のやり取りもあった為、
    緊迫状態とはいえ咄嗟に目を
    合わせられない二人。


    しかしまだその後方にはもう一体の
    3メートル級と、その直ぐ近くに気を失い、
    倒れ伏しているニファが。


    ミカサ「・・・・!;」


    先程は背後を取れたから一撃で
    仕留められた。・・しかし
    今度は正対状態。どう攻めるか
    思考を巡らすミカサの肩を
    咄嗟にジャンが叩く。



    ジャン「俺が奴の注意を何とかして
        引く!!その隙に頼む!!!」
        ジャカッ・・・




    ミカサ「・・分かった。ジャン・・
        貴方の腕を信じよう。」
        ジャキッ




    ジャン「・・・・・!」
        ジャリ・・・



    正対した巨人との距離は既に
    7~8メートル程。向うが駆け出せば
    あっという間に此方に手が届く・・
    そんな状況下において、ジャンは
    回避や飛びかかりの予備動作などを
    見せず、腰を斜めに据えて、己の
    距離感と射角調整を頼りに目前の
    3メートル級を睨むと・・・



    ジャン「っ!!」
        パシュッ!!!
        

    汗ばむその手に握りこむ
    トリガーの操作でアンカーを
    射出する。




    ガスッ!!!!



    巨「!!!」


    アンカーは見事一発で
    巨人の左目に命中。


    ミカサ「 ――上出来だ。ジャン」ダダッ


    そしてまたもやアンカーを使わず
    駆け出すミカサ。片方の刃を納刀
    したかと思うとトリガーも収め、
    その手に一太刀のみを携え、


    目潰しのアンカーの死角となる
    巨人の左斜め前方に潜り込み・・・



    ミカサ「フン!!!!!」

        ズ...
          ドッ!!!


    ブレードを強く握りこんだ
    左腕の手首を更に右手で抑え込む
    様にして、すれ違いざまに
    刃でカチ上げるように巨人の
    脛を切断する。



    片足を失い、バランスを崩しかけた所で



    ジャン「ッ!!!」クイッ

    ギュィィッ!!!!




    顔面に打ち付けたアンカーに
    巻き取りを掛け、巨人を前方に
    引っ張り倒すジャン。そのまま
    眼前に晒された弱点のうなじに・・



    ジャン「食らいやがれってんだよ
        おァアぁあ!!」



    ズバッ!!!!!


    ジャン・キルシュタイン訓練兵の
    記念すべき一体目討伐を飾るに
    相応しい一撃が炸裂した。



    ジャン「はぁ・・はぁ・・!
        やった・・・・!初めて・・!」



    ミカサ「・・・見事だった。あれ程
        精密に狙いを付けられるのは
        誇っていい。・・とおもう」
        ジャカッ・・チキ



    ジャン「(ほ・・褒められた・・・!!
        あの・・ミカサに・・!!)」


    ジャン「おっ・・おう・・あり
    ミカサ「だがそんな事より
        今はエレンだ・・・・・!!!」

    ババッ・・・



    ジャン「・・・・・」
        (´・ω・)
  205. 220 : : 2014/10/03(金) 01:35:38



    ハンジ「ハァ・・!!  ゥッ・・・
          ・・・た、助かった・・・!
        サンキュー・・な・・・・・!!!」
        ズル・・・



    ミカサ「っ!!・・ハンジ分隊長っ・・!
        え、エレンの容体は!!?」
        ガバァ!



    エレン「―――」





    ハンジ「ああ・・!彼なら大丈夫だ・・
        ・・や・・、大丈夫ってのは
        間違いか・・彼がああしている
        原因は・・巨人の襲来で
        頭を打ったとかじゃなくて、
        ・・・ゥッ・・!!!!・・・その前に
        超大型を追い詰めた時に
        浴びた蒸気の熱で気を失ってる
        だけだ・・!」ゼェ・・ゼェ・・・



    モブリット「ぶっ・・分隊長!!!
          しっかりして下さい!!
          意識をしっかり!!!」ガッ!!



    ハンジ「っ・・・・ぐぁ・・・!!
        耳元で怒鳴んなくたって
        聞こえてる・・!意識も
        今は何とか保ってるっつの」
        ハァ・・ハァ・・



    モブリット「で・・ですが分隊長ッ・・!
          足が・・!!」
       

    巨人に噛みつかれたまま振り回されて
    いた為、ハンジの左足は辛うじて
    膝の位置で繋がっている状態であり、
    切断状態ではないが出血も著しい。

    その損傷の度合いから言って
    元通りに回復を望むには絶望的である



    ハンジ「ああ・・こりゃどっちにしろ
        大腿部切除だろッ・・・ッぐく・・・;
        だがこんな代償で済むなんて
        寧ろ幸運だ。おまけに右手を
        持ってかれたってまだ
        お釣りが来るほどだ・・
      


    ミカサ「ジャン・・・!あなたは
        エレンとニファさんを・・!」
        ダダッ・・



    ジャン「え!?、あ・・、ああ・・
     (ミカサがエレンを…置いて…?!)



    ミカサ「傷を見せてください!」
        ババッ



    ハンジ「ァア・・ッ!!うぐっ・・
        コイツはもう早めに
        切っちゃった方がよさそう
        なんだが・・大腿部だとうっかり
        出血多量で死んじゃうかも
        だな・・・!オマケに丁度
        日取り的にもアレ終わって
        なくてさ・・!
        
        そもそも今血が足りて無い
        んだよね・・!こりゃあやっぱ
        死んじゃうかもしれないな
        流石に!(苦笑)」(;ノ≧ڡ≦)
        テヘペロ!!



    モブリット「こんな時に何てこと
          言ってるんですか貴女は!!
          無駄口叩く暇があったら
          上着を脱いでください!
          袖を切って止血用の
          結束帯を結びます!!」ババッ



    ハンジ「おいおいモブリット・・!
        こんなとこで脱がせるなんて
        大胆だなお前・・!でも言ったろ
        私今日は・・・」ハァ・・ハァ・・;




    モブリット「黙っててくださいってば!!」
          (大泣)

  206. 221 : : 2014/10/03(金) 01:38:12


    ミカサ「待って下さい・・!そのまま
        縛れるものならあります・・!」
        シュル・・・



    ハンジ「マフ・・ラ―・・・?;」ハァハァ




    ジャン「おっ・・、おいミカサ!お前
        そりゃたしか・・!!」



    ミカサ「いい・・。この人は自分が
        死に瀕した状態ですらエレンを
        連れて逃げるようにと叫んで
        居た。命を懸けてエレンを
        救おうとしてくれた。
        
        ・・私はその恩に報いなければ
        ならない。エレンが私に
        マフラーを巻いてくれた
        時の様に・・」


    ギュッ・・・



    ハンジ「あ・・有難うね。大事な物
        なんだろ。ゥグッ・・後で洗って必ず
        返すからさ。」ハァ・・



    ミカサ「気にしないで下さい。
        幸いシミが目立たない
        色合いですので」


    ジャン「しかしどうする・・!
        俺の見間違いで無きゃ
        さっき・・壁の向うから
        ・・・!壁の向うから
        こいつら飛んできたように
        見えたぞ・・・・・???!」
        ガタガタガタ・・・・



    ハンジ「ああ・・!そこで煙上げてる
        亡骸の様子を見ても…ぐぅ…!
        動き回ってる時に背中を見ても

        可愛い羽根が生えている様な
        様子は無かった・・!
        つまりそいつらに飛翔能力が
        あるって訳じゃないんだ・・!
        それよりも・・!アグッ・・」
        ズキン・・!



    モブリット「ですから!!無理をして
          喋るのは止して下さいと…!」




    ギュッ・・・・





    モブリット「……!?」






    不意に強く握りこまれるモブリットの手。
    その手を握る手は・・異常に汗ばみ、
    そして力いっぱい握りながらも、力なく
    震えていた・・





    ハンジ「ごめ…んな…!でも…喋って
        …ないと・・意識っ・・
        飛ンじゃいそうっ・・なんだ…!;
        ゴメン・・ホント・・ゴメン・・!;」
        ブルブル・・
  207. 222 : : 2014/10/03(金) 01:41:10

    モブリット「・・・ッ!;;は、早く
          ここを下りましょう!!!
          一刻も早く鎮痛剤投与と
          処置が必要です!!」グッ



    ハンジ「いやっ・・・医務室に向かう前に
        伝えなければならないっ・・
        事があるんだ・・!!
        私が行けないなら・・
        代りにモブリットでも・・
        そっちの君でもいい・・・!!」
        ハァハァ


    ジャン「・・・・は、はい!?」




    モブリット「・・・??!」





    ハンジ「壁の外の森だ・・・・!
        そこに何かデカくて変な奴が
        居た・・・!!そいつが・・・!
        そいつが“全部投げて寄越した”
        んだ・・・!!!」ブルブル・・


    ミカサ「!!??」


    ジャン「はっ・・・?!!?」



    ヒュルルルルル・・・・・・




    そして新たに空を切り裂く音と共に・・
    壁内へと投じられる小型の巨人が
    壁を飛び越えてゆく様が三人の目に
    映った・・・・


    ミカサ「・・・・・!」


    ジャン「!!っ」



    ババッ


    その様子を絶句しながらも目だけで
    追い、そして直後に思い出したように
    壁の外に身を乗り出し、言われた通り
    森の方角を凝視する2人



    ジャン「っなん・・なんだよ
        ・・・アレ・・・!!!」
        ガタガタブルブル



    ミカサ「・・大きい・・・!
        15メートルは超えている・・・!
        それに腕が・・長い・・・?」


    見渡す先に居たのは、森林地帯から
    胴体を覗かせる程の巨体を有する・・
    全身毛むくじゃらの・・まるで
    “獣の巨人”とでも形容するべき
    外見の巨人であった。



    今も足元から何かを拾い上げるような
    動作を見せている事から、その足元には
    木々に隠れる大きさの巨人が
    居るであろうことが推測できる。
  208. 227 : : 2014/12/11(木) 23:01:01









    ハンジ「み、見えた・・・?;」
       
    ハァハァ・・・




    ジャン「見えるにゃ見えましたが・・
        何ですか・・・!?あのヒバゴン
        みてえなのは・・・・?!
        
        座学で教わったフツーの
        奴等とは明らかに違う格好
        してるんですが・・・!
        壁外にはあんな格好の奴まで
        居るんですか・・?!」
        ッツカデケェ・・・!


    ミカサ「・・ヒバゴンとは何」




    ハンジ「見えたなら話は早い・・!
        君らにはアレの存在を
        一刻も早く調査兵団(ウチ)の団長に
        知らせて欲しい・・・!」
        ブルブル...



    モブリット「・・・・!」
          グッ・・・




    ジャン「い・・、いや・・!
        それは勿論伝えに行くべき
        ですが・・何処に向かえば
        良いんですか・・?平時なら
        拠点に出向けば会えるかも
        知れないんでしょうが、
        この異常事態で・・それに俺達
        まだ訓練兵ですよ・・;

        おいそれといきなり兵団の
        トップに・・分隊長のような
        身分の人間の同伴も無しで
        
        ・・・それもこんな
        ふざけてるとしか思えない
        報告を聞いて鵜呑みにして
        くれるとはとても・・・!」
        ブルブル・・・





    ミカサ「・・・・(´・ω・)」
    (ヒバゴンって...)




    ハンジ「場所なら・・大丈夫・・!
        きっと手筈通りなら上との
        折り合いをつけた時点で・・
        駐屯兵団の・・砲手達を止めに
        行くはずだ・・
        
        まあ・・まだ砲声が
        止んでいないのは嫌な予感が
        するけど、間違いない・・
        内門付近だ・・・。

        君等の元お仲間のライナー君
        が穴あきチーズにされるのを
        防ぐ為に・・エルヴィンは
        そこに居るはずだ・・」グッ・・



    モブリット「後は私が説明しますから・・!
          これ以上無茶をしないで
          下さい分隊長・・・!!」




    ハンジ「顔は知ってるね・・・?

        隣には・・前紹介したミケが
        随伴してる筈だ。だから
        君の顔を見せて、私の言伝だと
        伝えればすぐに話は通る・・!
        大急ぎだ・・!マジで頼むよ」


    ジャン「しかし直ぐにでもこの事実を
        伝える必要性は理解してますが
        ・・あと一人どうやってここから
        下しますか・・?普通に考えたら
        俺も一緒になってまず
        ニファさんを・・・」



    ハンジ「それなら大丈夫だ・・・。
        先程・・ベルトル君もとい、
        超大型巨人移送の任を終えた
        煙弾が・・地下道入り口で
        上がってる・・・。
        じきにうちのケイジがこっちに
        戻って来るから・・だから
        急いで・・頼むよ・・・・」
        





    モブリット「私も分隊長を医務室まで
          運んだら大急ぎでそちらに
          合流する・・!頼む・・!」

  209. 228 : : 2014/12/11(木) 23:05:22




    ジャン「了解です・・・!(ババッ)
        ミカサは死に急ぎ野郎(エレン)を頼む。
        ライナーの方と言えばそっちに
        向かうよう指示された
        アルミンの奴が心配だが・・・」
        




    ミカサ「分かった・・巨人も
        数体壁内に入っている・・
        道中気を付けて」
        (ヒバゴン・・・)



    ギュゥァアアッ・・・



    駆動音×2



    ケイジ「分隊長ッッご無事ですか!!」


    髭ゴ「あ・・脚を・・・・!!」




    ハンジ「やあ・・!お早いお着きだ・・
        つくづく、持つべきものは
        優秀な部下だね・・・!」





    モブリット「あっちのニファを頼みます!
          軽い脳震盪で済んでいる
          とは思うが気を失って
          いる・・・・!」
       

    ケイジ「それはそうと・・一体先程
        から何が起こっているんですか
        ・・・!まるで巨人が・・
        巨人が・・・・!!」



    ハンジ「気持ちは私らも同じだよ・・・
        ぐっ・・せ、説明するより、
        壁の外を見た方が早い・・
        森の方を見てご覧よ」


    ケイジ「・・・・!」

    髭ゴ「・・・・?」



    バッ・・



    大急ぎで言われた方角を覗き込む
    二人であったが・・




    ケイジ「いえ・・森に・・何か
        ・・・・?」


    髭ゴ「・・・・!・・?」


    その目を凝らす先には既に何か
    目につくものは見当たらなかった。




    しかし代わりに直後上がる悲鳴




    髭ゴ「おっ・・・おいアレ!!!!」



    ケイジ「・・・!?」


    それまで続いていた常軌を逸した
    投擲がすっかり鳴りを潜め、
    あまりに静かであった為、
    その場の全員が気付かずに居た事だが
    ・・・・・


    壁が・・微かに揺れていた。

    その揺れは先程まで本当に微かな物で
    重症に項垂れるハンジは勿論の事、

    感覚の鋭いミカサにとっては
    遠方で鳴り響く砲声の影響で
    起こっている振動であると錯覚して
    しまう程度の物であった・・・が




    ズズ・・・   




    その揺れは徐々にではあるが確実に、
    此方に歩み寄ってくる“奴ら”の
    歩調と同様にその場に居た全員の
    腹のそこから湧き出でてくる物を
    ことさらに大きくしていった・・・




    そう・・、奴等への“恐怖”を―――




  210. 229 : : 2014/12/11(木) 23:08:05






    ケイジ「の、登ってくるぞ―――!!!」




    ケイジの、信じられない物を
    目の当りにした末に放たれた血の叫びが
    表した通り・・・その場の全員が
    目にしたのは・・壁の向うを眺めて
    いれば先ず気づかない位置でもある、

    少し離れた継ぎ目の位置を、
    器用にその長い両の腕で上り伝う
    “獣の巨人”その姿であった。




    更におまけとばかりにその背には
    一回りサイズの小さな巨人を背負い、
    (しかしそれでも大型。)
    両腕と両足には、先程まで壁内に
    放り込んでいたものと同じサイズの
    個体をしがみつかせていた。


    その多数の個体を身体に
    しがみつかせる様子はまるで、

    彼らの世界、そして時代背景には
    存在しえない、二昔は前に流行り
    そして廃れていった

    祭りや縁日で良く見かけた、
    “抱き付く形状のビニール風船”
    のようでもある。

    また、見た目が見た目なら、
    大型のオランウータンに、小型の
    コアラが多数しがみついている様
    でもあり、そのように想像できたなら
    まだ笑えよう情景であったが・・


    そう、見た目が見た目である。
    多数の個体を引きつれている
    その毛むくじゃらの個体は
    今迄その姿を認めた事すらない
    調査兵の面々には言い知れぬ恐怖と
    警戒心を植えつけ、そして直接
    巨人を目の当りにするのも本日が
    初というミカサ、ジャンにおいても・・


    彼らの恐怖と警戒心にその身を震わせる
    様相を見るに、対象がいかに異質な
    存在であるか、理解を得るには
    十分過ぎる情景であった。


    そしてその四肢にしがみつかせて
    いるのは人類を一方的に捕食する
    目的のみにその身を揺らす・・
    化け物である。



    髭ゴ「デカいぞ・・!!いやそんな
       ことよりもだ・・何だ!
       なんなんだあのヒバゴン
       みたいな外見は・・・!?
       あんなの壁外じゃ一度も
       見た事が・・・!」





    ミカサ「・・・・」





    ビリ・・・・
            ズズ・・・




    ケイジ「それよりどうするんだ!?
        気持ち悪いくらい手際良く
        クライミングしてくるぞ!!!

        おまけにデカイのを一体
        背負って小さいのまで
        くっついてやがる!!!
        
        ・・じき登頂だ!!そうなったら
        その後どうなるかなんて
        考えなくても分るぞ!!!!!」
        ジャガッ・・・!!




    そう叫びつつ居てもたってもいられず
    抜剣するケイジ




    ハンジ「クッ・・・・!!!」ギリギリギリ・・・!!





    モブリット「っ・・!!!い、
          一時撤退だ・・・・!
          この場、この状況では
          それしか・・・・!」




    ケイジ「冗談だろ副長!!!あんた状況
        分かってるのか・・・?!!」



    ハンジ「残念だが・・モブの言う通りだ
        ・・・!やっと普段のこいつ
        らしい判断が出来る様になった
        みたいで安心・・・した・・・!」
        ハァ・・ハァ・・
  211. 230 : : 2014/12/11(木) 23:12:13



    ケイジ「分隊長まで!!!何故です!!??
        今ここでアレを放っておけば
        どうなるかなんて・・・!」




    ジャン「・・・・!!」



    ミカサ「・・・・!」






    ハンジ「ケイジ・・・!あんたの気持ちは
        ・・痛いほど分る!!・・けどそんな
        直前でおあづけをくらった
        犬みたいにオロオロするな・・・!
        あんたらしくない・・・・」



    ケイジ「理由を説明してください!!
      
        それが撤退を余儀なくされる
        充分な理由でないと判断が
        出来次第、私は単独で奴を
        削ぎに行きます!!!」ジャキ....




    ハンジ「そういきり立つんじゃない・・!
        こんな時だからこそ・・あんたは
        頭を冷やすべきなのさ。

        見ろ私を。足が千切れかけて
        血も一杯出てったから
        殆ど頭に上る血なんか残っちゃ
        いない。・・・それでもだ。
        それでもこんな死に損ないの
        私の方が今この場ではあんた
        より冷静に物を考えられる。
        良いから聞きなさい」



    ケイジ「・・・・!・・!」



    焦り、度々振り返りつつもその
    その視線の向うでは着実に壁上へと
    向け、視線の主であるケイジとは
    反対に焦らず壁を上り詰める
    “獣の巨人”




    ハンジ「私からは見えないが・・・何で
        そんな・・デカいサイズの奴が
        壁を登れる?壁には・・等間隔に
        縦の区切りはあっても横の
        継ぎ目は無い筈だ・・・つまり
        手の引っかけ所が無い。なら
        “どうしてよじのぼれる?”」



    ケイジ「そ・・それは・・・!!」



    言われた事は確かに
    その光景を目にした時点で
    ケイジ本人も気にはしていたこと。

    しかしそんな細かいことは実際どうでも
    良い筈なのだ。奴らは“巨人”であり、
    それが今この時も壁の内側へと・・

    人類唯一の防護手段である
    “壁”を乗り越えんとしているのだ。


    遠目にその様子を凝視し、ありのままを
    ハンジに説明するケイジ。 


    ケイジ「奴の指先が・・平面である筈の
        壁に食い込んでます・・・!
        恐らくは指が壁以上の硬度を
        持っているかもしくは・・・!」


    徐々に迫りくる驚異に居てもたっても
    いられずその身を震わせるケイジ。




    ハンジ「そう・・若しくは報告に
        あった通り、鎧の巨人、
        つまりライナー君同様に
        身体の強度を・・部分的に
        ぶどう弾を弾く程に
        強靭なものへと・・作り変える
        事が出来る特性を持ってる
        固体かもしれないって事だ・・!
        オマケに全身毛むくじゃらだ。
       
        弱点にブレードが通るかどうか
        それすら怪しい上に・・・!」
        ギリギリ・・


    モブリット「・・・・」



    ハンジ「アレには、壁を登ろう、
        巨人を壁の内側に投げよう、
        そして巨人を引きつれよう、
        という明らかな意思に基づいた
        行動が見て取れる・・・・!

        もし・・・あれが今まで
        私達が這う這うの体でやっとの
        事追い詰めた知性持ちの巨人、

        ・・つまり・・・」



    ハンジ「ライナー君やアニちゃん。
        そして大きなお友達ベルトル君
        ・・この三人のもう一人の
        お仲間だったとしたらどうする」



    ケイジ「・・・そ・・それは・・!」

  212. 231 : : 2014/12/11(木) 23:15:35





    ハンジ「リヴァイ達特別作戦班ですら
        事前報告で対策を練る際に
        ・・・相手が知性持ちで、しかも
        元兵士の巨人となれば渋い顔を
        するほど面倒な相手だ・・!!

        立体機動装置の弱点もこっちの
        定石も知ってる。
        
        それをこの狭い壁の上で・・!
        この負傷者数で満足に応戦
        できると思えるか・・・??;」
       


    ケイジ「・・・・・!!」
        ガクガクガク・・



    ハンジ「もういい加減本当に無駄話は
        終わりだ・・・!!総員!!!
        直ちに・・・!!直ちに降下!!!
        ジャン、君とケイジで急ぎ、
        エルヴィンの元にアレがここに
        居る事を伝えて・・・
        集められるだけの人員を全て
        集めて此処に寄越すよう
        伝えて・・・!!!」



    そこまでハンジが言った所で・・
    その場に居た全員の張りつめた意識は、
    瞬時爆発寸前まで張り裂けそうになる。






    ???「あれ・・・まだ・・いたの。
      
      とっくに降りてると・・
      おもったんだけどなぁ・・」



    見渡す先で、壁面登頂部にひょっこり
    覗き込ませた顔が・・大声では
    無いにしても、充分こちらにも聞こえる
    声で・・・・


      ―――“喋った”からである




    ハンジ「あ・・・・・・?!??!?」




    ジャン「お・・・わ・・・・!!!」




    モブリット「!!?・・・!?!??」





    コレには当然、大分落ち着きを
    取り戻しつつあったハンジですらも・・
    その平常心を揺さぶられた。




    ハンジ「・・・・・喋った・・・・・」


    モブリット「・・・・・!!」
          ビクッ・・



    モブリットは即座に別の物に向ける
    警戒心を増幅させ、その身を強張らせる。



    “別の物”とは即ち・・・目前で
    調査兵団のみならず人類における史上
    最大の発見級にとんでもない事をして
    みせた巨人に対してではなく・・・


    “只の奇行種”を見ただけで我を忘れ、
    己が命すら顧みずに死地へと飛び込む、
    彼の悩みの種ともいえる上官の事である。




    ハンジ「巨人が喋ったぞォぉおおおお!!!!
        モブリィィッット!!!!」
        ゥォワァアアアア\(;゚Д゚)(コロンビアー!!)/ァァアアアア





    モブリット「死にかけの容体で
          なんでそこまで元気がある
          んですか!!あなたは
          正真正銘の“いかれ”です
          分隊長!!!!!!」
          ガッ

  213. 232 : : 2014/12/11(木) 23:50:22

    直後、先程までの冷静な物腰も
    何処へやら、すっかり知的好奇心の
    操り人形と化した我が上官を抱え上げ、

    その場の全員に大声で促すモブリット



    モブリット「君達もそういう事だ!!
          アレの目的が何であれ・・
          今は“壁の中”へ情報を
          届けるのが一番の優先
          事項でもある・・!
       
          我々がここで力尽きれば
          壁内の全人類は訳も
          分からずあの個体に蹂躙
          されることになる・・・!
          そうなる事だけは
          何としても避けたい!!」




    ハンジ「喋った!!喋ったんだよ!???
        ねえねえ!!モブリット!!!!
        チョットだ!!あとちょっとで
        いいからあそこに近づいて・・!」
        アタフタ・・・!




    モブリット「分隊長は黙ってて下さい!!!」
         カカッ!!



    ジャン「了解ですっ・・・!!
        先導お願いします・・・!!」


    ケイジ「ああ・・市街の立体機動は
        合同訓練以降今日が初めて
        だな・・?しっかり
        ついて来いよ・・・!」


    ドシュッ  ドンッ




    ミカサ「・・・・・・!!!」


    バシュッ!!!



    髭ゴ「よっ・・・・!」ググッ



    見渡す先に壁を登り切った
    得体の知れない巨人を認めつつも、
    その場を離脱せんとして、各々の
    任をその身に背負い、抱え、
    壁上を後にする面々。



    髭ゴ「ああ、それとここに
       来るまでに伝達を通じて
       入ってきた報告ですが・・
       “ライナー・ブラウン”を
       確保したとの情報です!
       この惨状が全てをぶち壊しに
       してくれないことを
       祈って後で合流しましょう・・!」

    バシュッ!!

    モブリット「・・・・!」

    ハンジ「・・・・・!!!!」


  214. 233 : : 2014/12/11(木) 23:50:35
    その知らせに無言で頷き、そして
    その場の人員の中では最後に壁上を
    離脱するハンジを抱えた格好の
    モブリット。



    ハンジ「・・・・・モブリット。
        今更なんだけど・・・
        ちょっといいか」

    ヒョオォォォ・・・・



    モブリット「舌を噛みます。只でさえ
          危険極まりないとされる
          高所よりの立体機動を・・

          現在緊急措置として一人
          抱えてやってる私の手を
          これ以上煩わせないで
          貰いたいんですが」


    述べ上げる口上とは裏腹に、実に
    冷静かつ正確な判断力で高所にそびえる
    建物に的確にアンカーを打ち付けていく
    モブリット。



    ハンジ「あのさ・・流石に髭ゴーグルじゃ
        名前も呼べなくて困るよね・・
        もう名前リークにも期待
        持てないし第2期放送の
        エンドロールまで待つしか
        ないのかな・・ねえモブ」
    モブリット「この流れでよりにもよって
          メタなネタですか!!!?
          少しは空気を読んで下さい
          分隊長!!」クワッ




    ハンジ「そう怒鳴るなよ・・・!
        ほら、前々・・・」


    モブリット「こ・・このっ・・!!#」
          (#´・ω・)プルプル




    ハンジ「そういやその彼の今しがたした
        報告で今・・すっごく懐かしい
        事を思い出したんだけどさ」



    モブリット「・・・もうメタなネタは
          やめてくださいよ・・・!?
          これは一応シリアス方面
          なんですから・・」
          (この人本当に死にかけか)





    ハンジ「ライナー君の家名って
        そういや・・・“ブラウン”
        なんだな・・・エルヴィンが
        聞いたらどう思う事だろうかね」



    モブリット「は・・・・?」



    ハンジ「いや・・そうか。モブリットは
        まだ・・・。いいや、
        何でもない。ゴメンね
        集中を乱してしまって。
        先を急いでくれ・・それと」



    モブリット「言われずとも
          そのつもりです・・・・
          ・・・って、何ですか今度は」




    ハンジ「さっきは・・・あんな酷い事
        言って悪かった・・助けて
        くれて・・最後まで

        見捨てないで居てくれて
        ・・有難うモブリット。」
        ギュッ・・・




    モブリット「命令違反者に陳謝して
         どうするんですか・・」



    そう言って大きなため息を漏らしつつ
    騒乱に塗れる市街地上空を駆け抜ける
    モブリットだったが・・・



    モブリット「・・・・・」




    その顔には未だ湛えるには早い
    安堵の色が溢れていた。
  215. 234 : : 2014/12/17(水) 02:53:16

    ―その十分程前・内門直前―







    砲撃中止の呼びかけに即応じようと
    しないキッツ隊長と、

    それに対峙しているエルヴィンへと、
    壁上砲台まで砲撃中止の命を伝えに
    上ったミケの、渾身の叫びが響き渡る。




    その悲鳴と上空から迫り来る驚異が
    空を切る風鳴りの音が重なるのは・・
    ・・ほぼ同時だった。







    ミケ「エルヴィィィンッ!!!!!

       上から来るぞ!!!!気を付けろォォ!!」






    ――・・・・ルルルルルルルル






    上から・・・?






    その場に居る全員が、頭に浮かぶ疑問符
    と共に虚空を仰ぐのと、その音が
    意味するものを理解するのは同時だった
    が・・・壁外という極限地獄を駆け、
    先陣にて指揮を取り続けてここまで
    生き延びて来たエルヴィンは、

    ミケの鬼気迫る表情とその叫びを
    聞いた瞬間、上空を確認する事も無く、

    周囲の調査兵全てに散開の指示を下す。





    エルヴィン「総員!!直ちに散れ!!!
         一か所に固まるな!!!!
         巨人の姿を確認し次第、
         各自の判断で即時制圧せよ!!」

          



    ッズドガァァァアアアアアン!!!!







    全「うおおおあああ!!!?」






    砲列前に轟音と土煙を伴う形で
    墜落したのは、3m級の極めて
    小型の巨人であった。が、

    着地の方向がちょうど背面から
    であった為、後頭部を大きく損傷
    した事で、その個体は立ち上る蒸気と
    共にその場で自然消滅する。






    エルヴィン「・・・・・・・!」





    アルミン「こっ・・コレ・・は・・・?!?
         巨人・・!?何で上から・・!!」





    エルヴィン「次が来るぞ!!!上空から
          目を逸らすな!!!
          
          今のうちに“鎧の中身”を
          引き摺り出す!!!
          手筈通りの4名で事に
          当たれ!!

          ・・アルミン・・、だったな、
          君にもこれに同伴して貰い
          たい・・・構わないか」



    アルミン「そ・・それは願っても
         ありませんが・・しかし
         自分は一体どういった助力に
         なりますか・・??:」



    エルヴィン「難しい事など頼みはしない。
          ただ、共に移送に同伴して
          貰えるだけでいい。“彼”の
          事を知っているのは君だけ
          だからな。

          意識を取り戻した際に
          まともに対話できるような
          人間が一人は欲しい。
          我々には・・まだ、“アレ”
          の仕組みすら分かっては
          いないのだ。分ったら
          迅速に頼む」




    アルミン「っハ・・・・ハイッ・・・!」


  216. 235 : : 2014/12/17(水) 02:58:03



    ズドガッッ!!!ゴシャッ!!!! 




        ガラガラガラ・・





    調査兵「建物に一体突っ込んだぞ!!!!
        おそらくうなじは無事だ!!
        しかし直ぐには立てん!!
        煙が晴れ次第一気に削ぎに
        かかれ!!!」



    調査兵「ぉおおおおお!!!!!」






    アルミン「(めっ・・滅茶苦茶だ・・!!
         何だって空から巨人が降って
         ・・いや、待てよ・・・!?)」
         ババッ





    ヒュルルルル・・・・・・!




    アルミン「や・・やっぱりそうだ・・・・!
         あの軌道・・・さっきから飛んで
         来てるこの複数の巨人・・!!
     
         一定の感覚で一匹ずつ
         来ることと言い、この放物線
         を描いた果てに建物に斜め、
         又は横方向に突っ込む事から
         考えて・・外から、“放り
         込まれている”・・・・!

         しかしそんな事できるのは
         ・・まさかベルトルトが
         まだ抵抗を続けているのか!?」

       


    調査兵「開いたぞ!!引っ張り出せ!!」




    所々から蒸気を上げ、最早失った手足の
    再生は勿論の事、弱点であるうなじの
    分部硬化に割く余力も無いといった程に
    衰弱したライナーが、深々と切り開かれた
    その部分から引きずり出される。


    本人の両腕は無事だが、
    左脚は癒着が強かった為、
    足首より若干根元寄りの部分で
    ブレードによって切断されている。

    しかし、やはりというかアニの場合同様、
    その断面からは垂れ流される筈の血液の
    代わりに絶えず蒸気が立ち上っていた。
    傷の断面は断続的に皮膚が再生を
    続けている様子で、目を凝らすと、
    極めて遅くではあるがその断面積が
    現在進行形で狭まっているのが分かる。





    エルヴィン「・・成る程・・・・この青年が・・
          ブラウン“元”訓練兵か…。
          言われてみれば目元等は
          似ていないという訳でも
          無い・・・が・・・


          今のところは何とも
          言えんな・・・」






    アルミン「は・・はい・・?」







    エルヴィン「こちらの話だ・・兵団の
          盟友に・・同一性の者が
          居たのでな。既に過去の
          遠征で命を落としている
          が・・・」




    アルミン「それは・・・」






    エルヴィン「だが単なる偶然だろう。
          そこに私情などは何も無い。
          何よりモーゼスは・・・」





    キッツ「お、おい貴様!!!!コレはッ・・!
        これは一体どういう事だ!!?」



    半狂乱になったキッツ隊長がこれ以上
    無いと言うくらいに強めた警戒心を常に
    上空に向けつつもライナーの
    拘束を進めるエルヴィンに対し、
    怒声を浴びせる・・が、




    エルヴィン「私に聞かれた所で返答の
          しようが有りません。
          率直に言って此方が
          聞きたい。気象観測搭の
          観測結果ではまず

          曇り時々巨人、という
          予報が出されていないのは
          確かですが」


    これに対し、周囲の極限状態も
    なんのその、あろうことか冗句で
    切り返す余裕を見せるエルヴィン団長。



    しかし、決して軽く振る舞う訳でもなく、
    ライナーの拘束作業と並行し、残りの
    人員には適切に市民の避難誘導指示を
    出している。


  217. 236 : : 2014/12/17(水) 03:01:00





    確かに今、この場で起こっている事は
    理解不能かつ地獄の具現のような
    状況ではあるものの、混乱が上手く
    作用し、砲兵部隊の矛先はうまいこと
    ライナーではなく、周囲の建物に墜落し、
    辛うじて再生しながら蠢く巨人へと
    向いている。生きた心地こそしないが、



    “そんな事”は彼にとってもはや窮地と
    呼べるものでも何でもない。




    気を抜けば“死ぬかもしれない”


         しかし、


    “所詮はその程度の事”。



    そう、この程度の災乱では壁外の地獄を
    見続けて来たエルヴィンの肝は
    微塵も恐怖に震えはしなかった。


    こと此処に至るまでの道中


    数えきれない部下と、

    数えきれない仲間と、

    数えきれない友の屍を今迄乗り越えて
    やっと。やっとここまで戦い抜いて来た。
    調査兵団という群を、生き永らえ
    させてきた。


    その数々の贄と礎に支えられる
    兵団の長という、まさに英雄と
    大量虐殺者は紙一重という言葉の
    体現者たるエルヴィン団長。



    彼が座する“調査兵団団長”たる
    銘を刻み込まれたその台座は・・
    正しく無数の戦友の屍という
    土台の上に成っている。

    そんな座を守り抜き、残された
    仲間を率いていくという確固たる
    意思を持つ彼の信念。


    その内に灯された焔を
    揺るがす事は・・誰にも出来はしない。




    キッツ「貴様ぁ・・・・・!!!
        非常時だからと図に乗りおって
        ・・・・!事態が収束した
        その暁には・・自分が
        どうなるか分かっておる
        だろうな・・・・?!」ギリギリ

  218. 237 : : 2014/12/17(水) 03:03:08




    エルヴィン「非常である、無しに
          関わらずザックレー総統の
          書状を取り付けられた時点
          で、この場の管轄は我々に
          一任されています。
          意見があるならば駐屯兵団
          から、総統へ直にお願い
          して貰いたい。」




    更に大義名分も用意できた以上、
    この場で彼に臆する理由も、
    尻込みする理由も無い。




    エルヴィン「尤も・・・・」




    キッツ「・・・・??!」ビクッ




    しかしその目に宿る焔は・・・



    エルヴィン「もしも書状の用意が
         間に合わなかったとして、
         です。

         当然その場合貴殿らの砲撃も
         止まないであろう状況が
         最も想像に難くない
         訳でしたが・・・



         例えその様な場合に於いても
         ・・・我々は砲撃の次弾
         装填の合間を縫って、
         命懸けでこれを回収していた
         でしょう・・。これには
         それだけの重要性がある」


    同時に常人にとっては底知れない狂気を
    感じさせる、歪な焔でもあった。





    キッツ「(いっ・・・イかれている・・!
        普通では無い・・・この男・・・!!

        ・・・それにこの男の指示に
        即時応対できるこいつ等も・・!)」






    エルヴィン「最初の壁を突破した当の本人

         ・・つまり人類の仇と言っても
         過言では無い鎧の巨人だが。

         “だからこそ”怒りに任せて
         鉄槌を下そうというその
         結論が・・既に私にとって理解
         不能だ。巨人とは何なのか。

         その答えを導く為の、現在
         3つしか見つかっていない
         カギが目の前に居る。
         
         ・・・・・
         にも拘らず貴殿らはそのカギ
         を忌まわしいものとして
         世から根絶してしまおうと
         躍起になっている。
         個人的にも気になる事では
         あるが、何故自ら重要な
         手がかりを抹消したがって
         いるのか。そこが我々には
         どうしても理解に苦しむ
         部分だ」




    キッツ「理解に苦しむ??何を
        寝ぼけた事を・・・!
        危険だから消す・・・・!
        
        それ以上にどんな理由が
        要ると云うのだ・・・!
        この世の理から外れた
        思想を持ち合わせているのは
        寧ろ貴様らの方だ・・・!

        なぜそいつらを捕まえられれば
        何とかなるかもしれない、等と
        考え付く?捕縛に失敗し、
        虚を突かれた際に付きまとう
        リスクは!?それに対する
        対策なども全て熟慮した上で
        この様な無謀な賭けに
        打って出ているというのか
        貴様らは・・・・!!?」



    エルヴィン「・・・・・・」




    キッツ「例えしくじっても、
        貴様ら自身はまだ何とかして
        再び暴れ出したそいつを
        抑える事くらいやってのける
        のだろう・・・!しかし
        此処が何処だか考え直して
        見ろ!!ここは貴様らの大好きな
        壁のお外ではない・・・!!

        人類の活動領域・・、限られた
        壁の内側だ・・・!貴様らが
        巨人退治に夢中になっている
        最中にその足元で一体どれ程の
        民草が蹴散らされる事になる
        のか・・よく考えて行動する
        事だな・・・・!!!」    



    リコ「っ・・・;
       隊長っ・・、付近一帯の避難誘導
       ・・概ね完了です。空からの
       巨人の飛来も一時止んでいます」
       ババッ
  219. 238 : : 2014/12/23(火) 00:40:33










    ミケ「・・言われたな。こっ酷く」





    エルヴィン「・・ああ。だが彼らの言い分は
         至極尤もだ。今この状況を
         考えてもそうだが・・我々が
         いくら命を賭して巨人に
         掛かろうと、それに巻き
         込まれて死ぬ者が居れば

         その者の遺族にとっては
         我々の所為で命を落としたと
         思うほうが早い。それを
         覚悟した上でも・・
      
         この作戦に失敗の二文字は
         許されない。傷口はしっかり
         隠したか。」



    ミケ「ああ・・・蒸気が凄かったお陰で
       向こうもまだ“それ”には
       気づいていない。早くにこの場を
       離脱したほうが良いだろうな」




    エルヴィン「無論だ。・・・応援部隊への
         引継ぎと避難誘導の続行に
         一個小隊この場に残れ!!

         後の者は“負傷兵”の護送
         に随伴せよ!急げ!
         今は止んでいるがまた何時
         空から巨人が降ってくるか
         想像も出来ん!!」





    アルミン「(嫌な・・予感がする。
         今から何をしても最善の策が
         無いんじゃないかという位の
         ・・途轍もなく不吉な音を
         立てて廻る歯車が・・今正に
         咬み合ってしまったような
         ・・・そんな気が・・)」




    何かが理解できて居た訳でも、
    危惧していた予感があった訳でも
    無かった。・・ただ漠然と・・・
    ―――しかし唐突に。




    空一面に広がっていた曇天の鼠色の
    一部から射し込む陽光と同時に・・・
    アルミンの心に一抹の不安が射し込んだ。



    通常の者の感性ならば、一筋の光明なる
    情景といえば見るものに何らかの
    感慨深さと希望を与えそうなもので
    あるが・・・今のアルミンにとって、
    その一筋の光はまるで・・・




    天から投げ下された厄災の一矢
    の様にすら感じられた。



  220. 239 : : 2014/12/23(火) 00:41:55








    リコ「しかし隊長・・・おかしくは
       無いですか・・・?」




    キッツ「羽が生えている訳でもない
        巨人が空から降ってくる等という
        正しく沙汰の外としか言い様が
        無いこの状況で・・・

       これ以上どんな可笑しい
        事があるというのだ?リコよ。」



    リコ「いいえ・・・そうではありません。
       これは・・この状況は仰る通り、

       我々には・・そして、明らかに
       我々の知らない“何か”を
       知っているであろう“彼ら”にも
       予想外の事であったのでしょう。
       これが何か分かっているならば、
       この場に身を晒すなどという
       危険は冒さないはず。

       私が御注進申し上げたいのは・・
       あの健常者の訓練兵一名と・・
       先程巨人体内から救助されたと
       思しき片足を失った兵士に
       ついてです・・・!;」





    キッツ「・・・・・」





    唐突であるが・・・この男。




    キッツ・ヴェールマン




    彼の頭の回転は、かなり速い。


    つまるところ・・その人間性を
    一言で表すならばこの地位に
    上り詰めるだけの頭脳を持ち合わせた、


    所謂キレ者である。


    ・・ただ、その頭脳を真に活かすべき
    窮地にいざ人類が立たされてしまうと、
    その余りある警戒心と猜疑心が起爆剤と
    なり、自身の中の不安要素が次々と
    連鎖爆発を起こしてしまう。


    ・・故に有事に際しては悉く慌て、
    怯え、慄き、そして疑わしきは端から
    滅する戦法を徹底する。



    己の恐怖を、不安を払拭する為に。
    人類に害成す存在を滅ぼし尽くす、
    ただそれだけの為に。




    ・・そうして付いた二つ名が、
    しかし二つ名でも何でも無く・・・



    その名が意味する通りの・・




    ――kittz(小鹿)である。



    しかしそれは彼にとっての唯一無二の
    武器でもあり・・人類が今尚生き永らえ
    ている一つの要因でもあった。


    疑えることは立派な盾であり・・・
    疑わしきを即座に断ずる勇気は・・
    その盾を使わずして己が身を護れる
    ・・・唯一の矛でもある。




       臆する心。それは・・




    ―――人類最大の武器である。





    そしてその最大の武器に今――




    キッツ「貴様がそう云うという事は
        相応の違和感を感じ取っての
        事だろう・・?私に分かるよう、
        今この場で簡潔に述べよ。

        努めて迅速且つ、簡潔にだ。
        事態は一刻の猶予も許される
        状態ではない。

        貴様の進言は・・一考に
        値するだけの説得力がある。
        状況の説明を求める。
        リコ・ブレツェンスカ班長。」




    燻り、消え行く途中にあったその
    猜疑心に再び炎が灯った。
  221. 240 : : 2014/12/23(火) 00:48:45





    消える寸前の“火”に風を立て、、
    “炎”として鼓舞させたその切っ掛けは
    ・・・・・非常に小さな物であった。






    ――とても、とても、
    小さな違和感であった







    リコ「装備が妙なのです。彼らと
       行動を共にしている以上
       既に調査兵団との間で何らかの
       打ち合わせと段取りがあって・・
       もしくは突然の雨天に備え、

       あのように調査兵用のケープに
       身を包んでいたのでしょうが・・

       何故あちらの金髪の訓練兵は
       替え刃まで全数装填済みで・・
       対して救助されたと思しき
       兵士は抜剣してすらいない状態
       だったのでしょうか。

       それも・・隊服を纏っては
       居ませんでした。まるで普段着に
       急いで立体機動装置のみを
       装着したかのような・・・」




    そこまでリコが冷や汗混じりに
    説明するのと・・・





    キッツ「・・・・・・!!!!」




    彼の中の恐怖の炎がその姿を爆炎へと
    昇華させるのは、ほぼ同時の事であった。



    キッツ「そういう・・・・・
        そう言うことか・・・・・!!」
        ギリッ・・・!!!




    そう歯軋りして忌々しげに
    鼻先をエルヴィン達調査兵の
    運ぶ、“負傷者”へ向けると・・・





    キッツ「待て!!!!!貴様等・・・・!!!!」





    一喝し、一行を呼び止める。






    エルヴィン「時は一刻を争います・・
         ヴェールマン隊長。一体何用が
         あって我々を呼び止める」




    流石のエルヴィンもここ一番に
    語気を強めて諭しにかかるが・・・





    キッツ「その者は・・・調査兵では
        無いだろう・・・・?
        先程蒸気に紛れて貴様らが
        鎧のうなじを削ぎに掛かる際・・
        
        それのみに掛かる時間にしては
        妙にまごついていたのには
        気が付いていた。・・・しかし
        その者・・・いや・・・そいつは
        ・・・・・!!!」ガタガタガタ・・・!





    その身を震わすのは・・・
    混じりっ気無しの・・・・純粋なる恐怖。






    エルヴィン「ミケ!!!急げ!!お前なら
          一人でそれを抱えて
          装置を使えるな!!?
          
          他の者も全速でこの場から
          離脱しろ!!!固定砲台の
          射程から外れるまで
          決して足を止めるな!!!」
          ババッ!!



         怒声。





    キッツ「全砲兵部隊に告ぐ!!!!!
        非常事態宣言に伴う
        特別権限である!!!!
        
        砲撃取り止めの書状は
        其奴等の捏造だ!!!!!

        よって、当命令における
        全責任を第一師団精鋭隊長の
        名の下にこの私が負う!!!

        “奴ら”を一人もこの場から
        逃がすな!!都市区画ごとで
        構わん!!ぶどう弾の一斉掃射で
        全員鏖殺せよ!!!!!其奴らが

        匿っているのは鎧の巨人だ!」
       
       



        重なる、怒声。



    アルミン「アッ!!!???ぇえっ!!!?」
         バ、ババッ


    ミケ「ッチィッ!!!!!」
       ガバッ



    調査兵「おい!!訓練兵!!!
        アタフタしてないでお前も
        立体機動に移れッ!!!
        ここでもたつけば次の瞬間には
        壁外まで吹っ飛ぶぞ!!!!」
        ガチャチャッ!!



    調査兵「区画ごとっつったか今!!!
        奴等加減を知らねーのか!!!!?
        おい!!出来るだけ建物の上を
        行け!!!飛散物がやべぇぞ!!」
        バシュッ!!  ドシュ!!
  222. 241 : : 2014/12/23(火) 00:53:47






    リコ「た、隊長ッ!!!御気は確かでッッ・・・!」

    ガバッ!!!!





    リコ「っ!!???」





    瞬時、その双肩を凄まじい力で
    抑え付けられ、言葉を失うリコで
    あったが・・自身の眼前にせまる
    隊長の顔は・・・意外にも全く
    平静さを失っていない、有事に際しては
    非常に珍しい彼の顔であった。




    キッツ「感謝するぞ・・・!リコ・・!
        貴様の進言に耳を貸さねば私は
        ・・・・私はここで、事態の異常に
        感づく事もなく“奴ら”を・・!

        人類に仇成す害虫を更なる壁の
        内側へとみすみす招き入れて
        しまうところであった・・・・!」




    リコ「・・!?・・?!隊長・・!
       一体貴方は何を・・・!!」





    キッツ「あの負傷兵の足をよく見ろ…!!」




    リコ「・・・??;」




    視力があまりよくないリコであるが、
    そのメガネを傾け、更に目を凝らし・・

    遠方にてミケに背負われるその
    “負傷兵”の失われた片足の断面に
    視力の焦点を集中させる。



    リコ「あ・・・アレは・・・・!!!」




    ―――蒸気。




    包帯で幾重にも巻かれ、それがたとえ
    片足を欠損したから故の処置とはいえ
    少々大袈裟ではないかと思える程に
    過度な包帯処置が施されたその患部から


    ・・・今も尚、防ぎきれぬ蒸気が
    内より漏れ出でているではないか。




    キッツ「説明する必用はこれ以上
        ないな・・・?兎に角時間が無い。

        貴様には・・私が今この場で
        下した命令の内容を上に
        正確に伝える任を背負って
        もらいたい。どの道奴等が
        持ち出した書状は紛れも無く
        本物だ。私は・・・
        結果がどうであれ、

        反逆罪、及び
        市街防衛の任の放棄、
        並びに区民大量虐殺扇動罪に
        処され・・ここまでの命だ。
       
        これ以上生き永らえたとて・・
        兵士としての余生は残されて
        いないも同然・・・」ジャキッ・・・




    己の死期を逃げずに見据える強さを
    湛え、尚、猜疑心という炎を灯したまま
    燃え続けるその双眸。
        


    キッツ「急ぎ、この場から立体機動に
        移って離脱しろ・・・!既に
        ぶどう弾の装填は終わる・・

        後は任せたぞ・・リコ。
        貴様はいつか更なる人の上に
        立つ事になる逸材だ・・・

        常に全てを疑って掛かれる
        その心を・・決して忘れるな・・・!」
        ドシュッ!!!!





    リコ「たっ・・・隊長ッ!!待ッッ・・・!!!」




    しかし、踵を返し、壁上を眺めれば
    その目に届いたのは、照門を外し、
    発射体制の整った合図と発砲を
    知らせる挙手を振り下ろす寸前の
    砲兵の姿が。





    リコ「クッ。・・・・!!!!!
       隊長ッ・・・・!どうかご無事で・・・!」



    バシュッ×2



    調査兵一行を町の一角ごと
    その射程に収めた・・砲弾の
    一斉掃射が開始された。




  223. 242 : : 2014/12/23(火) 00:56:34






    キッツ「逃げぬのか・・・?
        このいかれ(▪▪▪)めが・・!」
        ジャカッッ・・・
            




    エルヴィン「それをさせない為に態々
         抜剣までしてこの死地に
         足を踏み入れたのでは
         無かったのか・・?どの道
         この場で背を向ければ砲撃
         より先にその剣に身を
         裂かれることは想像に
         難くない。

         ・・・・・
         部下には私の命よりも重い
         荷物を預けてあるのでな。

         悪いが決死の追撃もここで
         往き止まりとさせて貰う」     




    キッツ「やはり貴様・・普通ではない・・!
        生かしておくのは危険すぎるし
        この場でせめて私の命とでも

        引き換えに止めをさせるのなら
        人類にとって儲けものだな・・!」





    エルヴィン「普通ではない・・か・・。
         それはこちらの台詞だ。

         歓迎の祝砲にしては
         これはあまりにも冗談に
         なっていない。

         貴殿らの気持ち、理解は
         出来ても賛同は全く
         出来ない(溜息)」




    砲声。








    轟音。







    破砕。






    衝撃。




    辺りに響き、轟く音が・・
    二人のそれ以降の会話の一切を、
    彼ら自身にも聞こえぬほどに
    その場の大気ごと震わせる。






    エルヴィン「もう少し利口で頭脳的な
          やり方ができる者だと
          認識していたが・・・

          とんだ過小評価だったな
          ・・・こいつはとんだ・・・
          とんだ独裁者だ・・・!」

          ジャカッ・・!!



    エルヴィン・スミス 抜剣体勢へ移行。




    キッツ「さぁ・・・何をせずとも
        互いに何時の瞬間まで息が
        あるのか知れぬが・・・

        それまでこの剣を
        受けきれるか・・・・?
        
        得体の知れぬ反逆者よ・・・!!!
        何時でも死ねる覚悟が
        貴様らだけの物だと思ったら
        大間違いだぞ・・・!」
        チャキッ・・・・!!!   



    二つの剣戟が・・・
    轟音と弾着に伴う噴煙によって
    灰色に塗り潰された。
  224. 243 : : 2014/12/23(火) 01:17:32


    ―その地点より開閉扉寄りの市街地―




    ケイジ「待て・・・!キルシュタイン!
        何か様子がおかしい・・・!
        此処で止まれ!!!」ギュギュッ!!
        ドシャッ・・・!





    ジャン「っす!!了解!!!」
        ジャガッ!!ドシャッ・・・!!






    一際高い煙突へその身を移し、
    内門の方角で上がる土煙を
    凝視するケイジ。






    ケイジ「一体何だ・・・?どうなって
        やがる・・・?!!鎧の中身の
        確保は・・・もう済んだって
        報告じゃあなかったのかオイ!!!」




    ジャン「それにしちゃアレは・・・
        只事じゃ無い範囲の一斉
        砲撃ですよ・・・!!!
        
        家屋の倒壊すらお構いなく
        広範囲に渡っての制圧砲撃
        じゃないすか・・・!!
        取り決めでは通りに集中
        させてからでないと発砲の
        許可は下りない筈だってのに
        ・・・!(い、行きたくねぇ・・・!!)」


        まさかさっき壁の内側に
        飛んできた奴らがまだ
        暴れて・・・・!!?」
        ゾクッ・・・・



    ケイジ「いや・・有り得ない。

        現場には団長率いる
        腕利きが二個小隊分向かって
        いる上に・・その中には
        “あの”ミケさんが居る・・・!
        場数なら兵長を上回る“あの”
        ミケさんがな。

        あれ位の体高の巨人共が
        お空から不意打ちしに
        来たくらいでどうにか
        されちまう錬度じゃない。
        つまり駐屯兵団(連中)が景気よく
        燥いでるのには何か別の理由が
        ある・・・。しかもそれは
        おおよそ俺達の作戦にとって
        かなり宜しくない理由だ」




    ジャン「・・・・!」





    ケイジ「俺達にはあの気味の悪い
        喋る毛むくじゃらの報告を
        一秒でも早く団長の耳へ届ける
        任が課せられている訳だが・・」




    ジャン「は・・はい・・・:」
        ダラダラダラ・・・




    ケイジ「先を急ぐあまりあの砲火の中に
        ただ馬鹿面を二つ引っさげて
        突っ込んで行った所で
        自殺しに行くような物だ。

        ここは堪えて団長の
        煙弾を待つ。この作戦自体
        既に有事以外の何物でもないが
        ・・・・・・
        
        その最中に於いても更に
        憂慮されるべき緊急事態と
        なった場合には・・・
        赤、紫、黒、何れかの
        狼煙が上げられるはず・・・
        黒以外であるならばその時は
        ・・・・!」



    ジャン「(頼む・・・!黒・・!黒だ・・・!
        神なんてあてにできねえが
        兎に角祈るしかねえ・・・!!)」
        ググ・・・・!;




    そう拝みつつ、急遽作戦中断を促す
    その色を心の中で何度も唱えるジャン。
    しかしその祈りも虚しく・・・








    ――――ボンッ・・・・・







    ケイジ「紫..!当初と大きく状況が
        変わってしまった、若しくは
        兵団の機能に関わる重大な
        アクシデントの発生を
        知らせる色だが・・作戦は
        そのまま続行・・・か・・・;
        
        壁外じゃいつもの事だが
        これが壁の内側となると・・
        もう嫌な予感しかしねえ・・・
        (深い溜息、そして深呼吸)

        ・・・覚悟はいいか。もう少し
        先へ踏み込むぞキルシュタイン。
        もしかすると向こうも此方へ
        向かっているかもしれない」



    ジャン「は・・はい・・・:」
        ゲンナリ・・





    彼の苦難もまた・・
    まだまだこれからである。


  225. 244 : : 2015/03/09(月) 04:00:10



    ―トロスト区内門付近―




    キッツ隊長の独断による
    発砲命令が下った事により戦火の火蓋が
    切って落とされる市街一角。


    その矛先は調査兵により相当数頭数を
    減らされた残存する巨人達等では無く
    ・・・調査兵団“そのもの”であった。



    混乱する指揮系統に命令を全うしようと
    する者、たじろいで手元を止めて
    しまう者。

    その数は半々と言った所だが・・




    リコ「(私は・・この状況で市民の
       避難誘導以外に何をするべきだ
       ・・・・?!)」



    当初上から下されていた防衛体制を
    完全に放棄し・・・自身における
    特別権限を完全に笠に着た形で
    独断先行に踏み切ったキッツより
    その後の指揮権を託されたリコは、

    半ばその場の臨時指揮官的な
    立ち位置になっていた。 




    しかし、突然に下された突拍子の無い
    内輪揉め同然の粛清という、
    正に何をどうしたらいいか
    分からなくなる・・・そんな命令にも
    心を必要以上に乱すことなく
    非常の事態に臨むリコ。



    “調査兵の潔白を疑い、これが
     確実性のない者であればこの場から
     一人として逃がさず処断せよ”




    ――あまりにも唐突すぎる指令である。




    リコ「・・・・・・;!」




    当然、キッツ隊長の懐疑心から導かれた
    鎧の確保に至るまでの不審点、
    その指摘にはリコ本人も意見を
    同じくする考えではあったが・・・



    リコ「・・しかしだからと言え
       即処断などとは・・・・;;」
       ググ・・・


    余りにも早急に過ぎる判断。


    しかし、それについても
    反感は多少なりともあろうと、
    理解もできない訳では無い。



    “巨人が壁内に突如現れた”



    この事実が意味するところは既に
    今が一切の予断も猶予も残されていない
    非常事態であり・・・・既に今、
    この城壁都市の内部が一つの
    “戦場”へと姿を変えてしまった事を
    意味しているからだ。



    ――戦場では・・・一つの判断の遅れが
    取り返しのつかない欠損の連鎖を
    引き起こす。




    信じ難い事ではあるが・・聞けば
    “人間が巨人へと変貌”する所を
    はっきりと目撃したという者までいる。



    そうしたことも鑑みればこそ・・
    今正に爆炎と弾着の煙幕の中で
    調査兵の指揮官と相まみえる自身の
    上官を差し止めにかかるべきではないと
    ・・・そう信じてその場の避難誘導に
    かかっていたリコの耳に、

    内門付近の砲手を担当する兵の一人から
    耳を疑う一報が届けられる。
  226. 245 : : 2015/03/09(月) 04:09:37




    砲兵「リコ班長!!!お忙しい所誠に
       申し訳ありませんが良いですか!!」



    リコ「ッ・・どうした!此方も
       手が離せる状況では無い・・!

       手短に願いたい」




    砲兵「・・・そ・・・それが・・・

       内門の向う側に乗馬した者が
       4名・・・!何れも女性兵の
       様子で正装では無く・・・

       恐らく訓練兵と思われるのですが
       リフトで壁の内側への牽引を
       して欲しいと要求しています・・!」




    リコ「・・・・?!?・・・
       なんだ・・・?!どういう事だ」



    余りに突拍子もない報告に己の耳をも
    疑い、問い質すリコ。



    砲兵「自分にも状況が全く読めません!
       脱走兵かと思ったのですが
       その者等は一様に私服の上に
       立体機動装置を纏っており・・!

       普通に考えれば幾ら複数名
       結託しての犯行であっても
       あの恰好での脱走は不可能と思い
       こうして判断を仰ぎに・・・!」




    リコ「それはそうだろう・・・!

       装置があるなら態々内門から
       入ろうとせずとも何処からでも
       壁を越えられるはず・・しかし
       ・・・・・...(ハッ・・)」





    言いかけたその口を開きっぱなしにして
    砲兵の報告の一文を反芻し、固まるリコ



    砲兵「・・・・班長・・・?!」




    リコ「今・・私服と言ったか・・?!」





    砲兵「は・・・はい!4名何れも
       隊服ではありません・・・」




    リコ「その者等をリフトで引き揚げて
       私の所へ連れて来い・・!

       確認しなければならない事がある。
       この非常事態に関係が有るかも
       しれない重要な責務だ・・・、
       急げ!!!」


  227. 246 : : 2015/03/09(月) 04:13:16




    ――ウォールローゼ区画内・内門付近――





    サシャ「ユ・・ユミル・・・!もう
        引き返しましょう・・!?

        向うから明らかに聞こえる
        この砲声・・・!
        きっとあのヒバゴンが私達を
        先回りして城壁都市を
        攻めに来たんですよ・・・?!
        このまま壁を越えたって・・!」
        ガタガタガタ・・・






    ユミル「そうしたいならお前だけでも
        勝手に戻ればいいだろ。
        
        ・・・だが戻るのはいいが
        どこに引き返す??

        兵舎はあのザマだ。壁内に
        あんなのがうろついてるって
        事は・・今更壁の内側の
        何処にも安全地帯なんてありゃ
        しねえ。」




    ――元より壁その物が安全では
     無いという認識を既に持っていた
     ユミルは・・冷めた目つきで
     恐れ慄くサシャにそう告げる。




    ユミル「ひょっとしたらもう・・・
        内地にすら安全と言える場所
        なんてのは・・・・」




    サシャ「ひっ・・・ひっ・・・!;;;」
        ブルブルブル・・・




    クリスタ「ちょっと!!ユミル!!
         只でさえ非常事態なんだから
         いたずらに怖がらせるような
         事言わないであげて!!」




    ユミル「悪戯とかじゃなくてよ・・
       事実そのまんまじゃねえか。

       知性を持ってて言葉も喋る。

       その上芋女の盛大なお漏らしに
       失笑を零すようなユーモラスに
       溢れた新種の奇行種がついに
       現れちまったんだ。

       状況は絶望的だと思うぞ」




    ミーナ「私も・・あの毛むくじゃらの
        奇行種は・・何か・・凄く
        マズい気がする・・・私達に
        止めを刺して行かなかった
        時は助かったって・・・
        
        心底ほっとしたけど。
        巨人を引き連れて来たのが
        あの毛むくじゃらのだったと
        したら・・逆に何で見逃された
        のか・・どうしても分からない」



    クリスタ「それよりもっと砲手の人に
         呼びかけようよ!早く
         上に引き揚げて貰って
         訓練場で起きた事を
         伝えなきゃ・・・・!」
         ソワソワ・・・




    ユミル「さっきから大声で
        そう呼びかけてるけどよ・・
        普通に考えてみろよ。

        向うは向うで何だか慌ただしい
        事になってるみたいだし、
        こっちは御覧の御召し物だ。

        真っ先に辿り着かれる
        憶測としちゃ・・今の私等は
        確実に脱走兵か何かという事に
        なる筈だ」



    クリスタ「でもそれじゃ・・・」




    ユミル「あんまり聞く耳持ってくれない
        様なら・・・他に回るぞ。
        折角全員装置をつけてるんだ。

        都市内に入れたとして向うが
        更なる非常事態だっていうなら
        随伴者が付くよりよっぽど
        安心だ」



    と、その時・・・・



    ミーナ「あ・・?!見て!誰か
        こっちに降りてくるよ!!」



    一名の砲兵が壁上に打ち付けた
    アンカーを伸ばし、此方へと
    降下してくる様子が4人の目に入る



    ユミル「まっさきにリフトを
        降ろして来ねえ・・・・。
        (舌打ち)面倒だな・・・

        疑いの目を向けられるのは
        当然と言や当然だが・・・

        おい、変な挙動見せるなよ。
        特に芋・・お前が一番アブねえ。

        こりゃ・・門の向う側は相当
        忙しいと見える」    

  228. 247 : : 2016/01/10(日) 06:33:43





    ―トロスト区内門前―






    未だ砲撃の怒号がそこかしこから
    飛び交う地獄絵図の様な有様の内門付近。




    最初こそはキッツ隊長の命令通りに
    その矛先は全調査兵のみに向けられて
    いたが・・・既に一番抑えておかなければ
    ならない不審者・・・つまり虫の息である
    ライナーを取り逃がしてしまった上に、


    理由も原因も判らないが、何故(▪▪)か数多の
    巨人が空から降り注いでくるこの状況に、
    各砲手も戦々恐々としていた。





    エルヴィン「驚いたな・・・・これだけの砲撃に
       晒されて・・・まだ互いに二本の足で
       こうして地を踏みしめて居られる
       とは…貴方も私も…相当な悪運(モノ)
       お持ちの様だ」
      
       チャキッ・・




    キッツ「~~・・・っ・・・、、、;」ゼェ・・ゼェ・・・
     (こっ・・・この男・・・・!!!!)





    キッツ隊長の心の内外に滴る冷や汗は
    留まる気配を見せなかった。





     本当に・・・本当にこの男では無いのか
     ・・・?!“人類最強の兵士”の肩書きを
     持つ男は・・・・・・?!




    現・調査兵団に於いて人類最強を謳われる
    存在といえば識らぬ者など居ない、
    誰あろうあのリヴァイ兵士長であるが・・・


    対巨人戦戦績で見ればそれに次ぐ
    実力者すら、目の前の男では
    なかったハズ・・・・。



    ・・・否、勿論、身分や肩書きのみが安直に
    兵士の実力に反映する訳では無いと
    言う事くらい・・・キッツ自身が
    よく理解していた。



    ・・・しかし、、それにしても。




     目の前のこの男が・・・・



     調査兵団内では2番手ですらない・・・・

     ・・・・だと・・・・?!




    自らの全霊をのせた文字通り命賭けの
    剣戟ですら・・・目の前の男には全て
    受け捌かされた。




    疑いようが無い。


    目の前のその男は・・・彼にとって――


    キッツ・ヴェールマン隊長にとって、

    対人剣技(▪▪▪▪)に於いてだけなら、
    紛う事なき、最強の相手だった。






    エルヴィン「・・・・さて。

       隊長殿。申し訳ない事では
       あるが私は貴殿の目論見に
       立ち塞がる形で・・・こうして殿(しんがり)
       護りきった訳だが・・・・

       そろそろ無為な突撃を諦めて
       刃を御納めになっては
       貰えまいか。・・・この真剣勝負には
       どちらが討ち勝ったとしても
       何ら人類に益する物が無い。


       ・・・・文字通り不毛な殺し合いです」





    キッツ「ほざけ・・・・!!!貴様に問われる事など
      何も・・・、、何も無い!!!

      あのような得体の知れぬ不審者・・・!

      否!!!害悪の芽を組織包みで
      秘匿しようなどという輩にはな・・・!

      大人しく(みなごろし)されろ(▪▪▪)・・・・!
      このッ・・・・この反逆者共が・・・・!!!!」

      ジャカッ・・・




    エルヴィン「(溜息)....」




    既に退き下がる場所など無いという
    闘志が・・・その眼から陰りすら見せない
    のを確認すると、これ以上は
    応じきれないとばかりに

    深い溜息を心底やるせなく
    吐き出してみせるエルヴィン。



  229. 248 : : 2016/01/10(日) 06:37:08




    エルヴィン「・・・・私は・・・・袂を同じくする
       人類を斬り捨てる為に剣技を
       磨いてきたのではない。

       しかし不本意ながらこれ以上
       貴殿に…いや、貴様(▪▪)に付き合う訳にも
       行かない。・・・・理解しろ。。」
       チャカッ    ギュリッ....





    キッツ「ッ・・・・・!!!」





    これ以上の語り合いも、斬り紡ぐ時間も
    不毛であるという強い意志・・・そして、


    自らにも既に無駄な行いに割く時間など
    無いという事実を、感情に込めて目の前の
    独裁者に訴えかけるエルヴィン。


    相手が多少凄んだ位で萎縮する様な
    人間では無く、・・・また、すでに今は
    その様な状況では無いという事実を
    正確に把握しながらも。エルヴィンは、
    その怒気をあえて剝き出しにして、
    独裁の尖兵へと訴えかける。




    エルヴィン「  一太刀   」







    キッツ「・・・・・??!」
      ギリギリ・・・



    エルヴィン「次の一太刀で貴様の指が
       一本飛ぶ。――それで構わないと
       言い張るなら・・・剣を収めず、
       そうしていろ。斬りかかって
       来るのも構わないが・・・

       その時は欠損箇所が利き腕一本に
       変わる。5つ数える前にどうするか
       決め―――――」




    キッツ「 舐 め る なッッ!!!!!!」
      ズォッンッッ!!!





    エルヴィンの言を最後まで聞かず、
    即座に怒髪天を突かん勢いで斬りかかる
    キッツ。―――対して、その動きすら全て
    型の通りとでも言いそうな静けさで、
    既にエルヴィンは脇構えからの返しに
    移っていた。


    ....・・・・・ィィィイイイイ!!!



    エルヴィン「許せ―――――!!!!!、、、、!?」
        スゥッッ・・・・・  ピタッ


    キッツ「!!???」
        ビクッ!!






    リヴァイ「  オイ   」






    ズドガッ!!!!!





    今正にぶつかり合わんとしていた
    二人の間に割って入ったのは・・・・


    立体機動による高所からの着地と、
    寸前で返す刀を留めたエルヴィンを背に、
    キッツの全力による袈裟斬りを
    文字通り“打ち払った”リヴァイだった。




    リヴァイ「オイオイオイオイオイ・・・・・

       なぁなぁなぁなぁ・・・・・・
       お前ら一体コイツは・・・・どういう
       催し物だ?」






    キッツ「クッ・・・・・!!(糞ッ・・・・!最悪だ・・・・!
      最悪の局面だ・・・・!こんなところで
      まさか・・・!!まさかこの男を・・・・!!)」





    調査兵団3番以下の男ですら・・・自身が
    捨て身になっても足止めするのが
    やっとというこの局面で・・・まさかの
    増援に人類最強の兵士長。


    自身の命すら厭わない独断先行に
    散る事になろうと未練など無いとは
    言い張ったみた所で・・・今のこの状況が

    自身にとってどう転んでも好転する事は
    無いと悟るキッツ。


    ・・・そう、今しがたまで命懸けで仕留める
    腹積もりだった相手の訴える通り・・・


    大人しく納刀して退き下がる以外の
    道は無いと。





    エルヴィン「・・・こんな事を言っている
       場合では無いが・・・助かった。

       良く来てくれたな・・・リヴァイ」
       チャキッ・・・ジャコン・・・





    リヴァイ「こんな七面倒臭い事に
       なってなけりゃ・・・一刻も早く
       あの“中身”を移送しちまいたい
       所だったんだ。

       納得の行く説明をしろ・・・・
       何だってお前ら・・・

       “よりにもよってこんな時に”
       兵士同士でチャンバラごっこなんか
       楽しんでやがったんだ??」

       ギャギッ・・・・ギギギギ!!!!





    キッツ「ぐヌッ・・・・・!!!!!!」
      ズザッ・・・・ ザリッ・・・





    常識外れの膂力で、後退の気配を見せず
    前進してくる目の前の子男。


    身の丈で圧倒的に高位にいる筈の
    自分が・・・まるで見えない壁に
    押しのけられるかのように、後退を
    余儀なくされるその圧力に――

    目前で今、何が起きているのか
    その理解すら追いつかないキッツ。



  230. 249 : : 2016/01/10(日) 06:41:24





    リヴァイ「おい・・・・お前に聞いてるんだ。
       この髭男爵が・・・・!

       今がどういう状況か理解する
       脳すら無いのか・・・・?

       どういう訳か原因は不明だが・・
       お空から降ってきてるあれら(▪▪▪)が・・・

       お前には手足の生えた馬鹿デカい
       鳥のクソにでも見えるのか?」
       ギャギンッ!!!! 

               バヅンッ!!

       


    キッツ「グホァッ!!!!!」
      ドサッ!!!!





    鍔迫り合いに押し切ったその勢いで、
    事も無げにキッツのブレードを
    弾き飛ばしたリヴァイは・・・・そのまま
    彼のグリップから伸びる伝達ワイヤーを
    一太刀で断線させる。



    これでもう、装置を着け替えない限り
    立体機動には移れない。







    エルヴィン「・・・・リヴァイ・・・詳細は後で話す。

       今は取り合えずその辺にして..
    リヴァイ「おい...立場上の問題もあるし
       こんな状況で説教も無いだろうが
       ・・・・お前もお前だ。

       お前は今…こいつに殺す気満々の
       殺意をもって抜き身の物を
       向けられてたんだよな。

       ・・・それもこんな
       ワケの分からない極限状態でだ。

       ――そんな状況でどうして
       手心なんぞ加える必要がある」







    キッツ「ぬグッ・・・・!!!」




     今しがたまで殺す気が無かったのは
     理解していた・・・。。しかしあれで・・・

     ・・・アレで本気ですらなかったのか・・!?






    屈辱極まる驚愕の事実に尻餅を
    ついたまま立ち上がることすら
    出来そうもないキッツ。





    リヴァイ「“鎧の方”も確保できたって
       通達が来てるし、俺の班員を
       2人も喰ってくれやがったアイツ(▪▪▪)
       あの通りだ。

       ――ここまで駒を進めておいて
       肝心のお前が巨人相手でもなく
       駐屯兵相手の剣術指導中に
       命を落とすなんざ・・・
       笑いたくても笑えねぇ。
       
       例え壁の中がどんな地獄に
       変ろうと・・・作戦続行の指揮権は
       お前が握ってんだろうが。
       
       そのお前の身に何かあったら一体
       その落とし前を誰が着けると(ry
    エルヴィン「・・・・・リヴァイ。。」




    リヴァイ「 チッ・・・・・!!!!」



    ここまで言い咎めてもまだ言いたい事が
    残っているとでも言いたそうに・・・
    忌々しげに舌打ちを鳴らすリヴァイ。


    彼の苛立ちの表情、その片隅にチラつく
    違和感と・・・丁度今しがた彼の述べた
    現状の報告となり得る言伝を
    反芻しながらエルヴィンは彼に
    問いかける。



    エルヴィン「・・・・あそこで二人が抑えている

       ・・・あの・・少女が・・・・?」




    リヴァイ「・・・・見れば分かるだろうが。

       “引き金”が明確に分かってない
       以上・・・念の為手足の丈を詰めて
       土偶みてぇな体格になって
       もらってるが・・見た目に
       気を緩めるんじゃねぇぞ

       ・・・今言った通りだが、
       
       アイツは・・既に2人殺ってる」


  231. 250 : : 2016/01/10(日) 06:44:02





    エルヴィン「・・・・エルドと・・・グンタか・・・・

       遠征で毎度同胞を失っていても尚
       ・・・お前の班から欠員が出るのは
       いつ以来だろうな・・・・・・。

       今更ではあるが・・・
       ・・・・大きすぎる犠牲だ。」




    リヴァイ「・・・・だが犬死にじゃぁねぇ。

       俺達() 人は・・・二人の残した
       手掛かりと、決死の置き土産の
       お陰で・・・こいつを召し取った
       訳だ。何が何でもこいつには
       洗い浚い吐かせる。

       そう、例え――――




    エルヴィン「―――――・・・・・、、」ザワッ・・・





    リヴァイ「人質を作らせて(▪▪▪▪)でもな....!


       …生憎半生を屑の巣窟で
       過ごした身の上だ。

       人の道を外れた尋問なら
       呆れ返る程知ってる。
       
       後の二人は野郎(▪▪)なんだ・・・
       一人でも生け捕りに出来りゃ
       幾らでもやりようはある」





    エルヴィン「・・・・・・」




     リヴァイの瞳に燃え上がる激情に
     思わず肺を萎縮させ、その身を
     強張らせるエルヴィン。

     しかし辛うじて無表情を崩していない。



    エルヴィン「・・・・そう言った事は
       お前が気にする事ではない…

       お前は・・・・・」

    リヴァイ「言っとくが・・・
       もう今は(▪▪▪▪)そんな段階じゃねぇ。」





    エルヴィン「・・・・・・・」





    リヴァイ「いいか・・・団長(▪▪)
       既に戦争(ドンパチ)は始まっていて・・・・

       あいつ等はその尖兵でしかない。
       言わば使いっ走りの足軽みてぇな
       役所しか与えられてない末端だと、
       俺は見ている。こいつ等が
       事を起こした直後から始まって・・・

       未だ完全に沈静していない
       この最悪の空模様がその証拠だ。

       今迄それなりの年数生きて来た
       つもりだが…俺が地上の様子を
       預かり知れない地下で過ごした
       半生の内で・・・

       一度でも空からこんなモンが
       降ってくる事があったか?」





    エルヴィン「・・・・・・・・・・・・・・」




    リヴァイの訴えは・・・・少なからず
    自身が心中で抱いていた懸念と
    同様の観点から生まれているものであり、
    その意見には返す言葉も無いといった
    様子で…彼の言葉を無言にて聞き受ける
    エルヴィン。



    しかしここで、先程から現状で
    一つ気になっていた事に気を向けると、
    それについてリヴァイに言及する。



    エルヴィン「待て、それは一先ず置いて
       おくとして・・・・、、
       一つ聞き逃していた事がある。

       お前は先程確かに「4人」と
       口にした気がするのだが。」



    ・・・そう、4人では・・この場の、
    リヴァイ、ペトラ、オルオの頭数と言質が合わない。



  232. 251 : : 2016/01/10(日) 06:50:07





    取り押さえられた一人を含めての
    発言とは考え辛かった為、この場で
    うまく話を逸らす意味でも別の話題へと
    矛先を変えるエルヴィン。





    リヴァイ「・・・ぁあ、お前は・・・まだ顔を
       合わせてねぇのか。」






    エルヴィン「・・・・?」




    リヴァイ「...だが口頭で誰かしらから
       聞いてはいるだろ。

       どういう訳か知らないが10年以上
       若返った姿で現役復帰してる奴が
       俺達と同伴で行動を取ってる。

       今は丁度特に騒がしい
       あっちの壁の様子を見に行って
       貰ってるがな。」




    リヴァイが顎で指し示す後方・・・・

    非常に穏やかではない事に未だ砲声が
    止む気配を見せないばかりか、

    硝煙による狼煙も途絶える気配がない
    激戦区と化した城壁都市の壁際から、
    噂をすれば丁度それを聞きつけたかと
    思えるようなタイミングで・・・


    その声は高らかにその場に響いた。




    キース「――ッリヴァイ!!!向こうは此方より
      更に戦局が厳しい!!!直ぐにでも
      ソイツを一所に拘留して応援に
      向うべきだ!!!!妙な奴(▪▪▪)が一体、!!!

      それも明らかに“そいつ達”と同じ
      知性を有するとしか思えない奴が
      暴れている!!!」










    エルヴィン「本当に・・・冗談でもなく・・

       ・・・キース・・・殿なのか・・・・・?!」




    恐らく伝令を通して彼の事も多少は
    耳に入っていたのであろうが、それでも
    やはり己の見ているものが未だに
    信じられない、といった様子のエルヴィン。


    どうやら、状況も錯綜していたため
    口頭伝達自体、実際その目で確認して
    いなかった為、あまり真に受けて
    いなかったのだろう。

    見上げる先、家屋の屋上にて声を
    張り上げる旧知の上官に珍しく
    驚嘆してみせるエルヴィンに
    気が付いたのか、離れた位置にいながら

    キースも此方に向けて再会の挨拶を
    手短に飛ばしてくる。





    キース「久しいな!!エルヴィン!!!!

      やはり俺より世渡りの上手い
      お前の方が兵団の指揮を任せるには
      誂え向きだった様だ!

      知らない顔が殆どだが…皆、
      壁外(地獄)を見て帰ってきた者達とは
      思えない程に良い眼をしている!!!

      ・・・・やはり陣形に関しては
      早い段階でお前に一任するべき
      だったのかもしれないな・・・!」
       





    リヴァイ「・・・・・だとよ。」





    エルヴィン「お久しぶりです!!!キース殿!!

       積もる話もありますが・・・・、、

       今は正直なところ、そちらの
       “戦局”とやらが非常に
       気がかりでならない!!

       状況を・・・可能な限り簡潔に
       お伝え願いたい!!!我々の有する
       情報では既に・・・・!!!!」





    リヴァイ「・・・・・・・」





    そう、既に・・・・彼らが現在
    把握しきれている、“知性を持つ”
    巨人として今迄訓練兵団にその身を
    潜めていた者達に関しては・・・・

    前回のマリア侵攻の際と同じ外見の
    巨人体という物的証拠も抑えた上で

    既に鎧の巨人、そして超大型巨人、
    双方共に制圧が確認され、
    その“二人”に伴するとされる

    もう一人の“巨人化能力者”にしても
    リヴァイ達、特別作戦班の貴重な人員2名
    という尊い犠牲の末に辛くも拘束できて
    いる。しかしこの期に及んで未だ
    鳴り止まぬ砲声と・・・

    先程まで上空から“降ってきていた”
    それらを見るに、どう考えても
    状況は収束の気配を見せてはいない。




  233. 252 : : 2016/01/11(月) 00:43:26





    キース「我々の情報に無いその1体(▪▪▪▪)だが…!

      奴は・・・!奴だけは決して
      野放しには出来ん!!殺す事は勿論、
      逃がす事など以ての外だ!!!!

      奴は…!今正に交戦に移ろうという
      我々を前に“巨人の姿のまま”で・・・

     
      話しかけて来た(▪▪▪▪▪▪▪)のだ!!!」





    エルヴィン「・・・・・・!!!!」




    リヴァイ「・・・・・・決まりだな。

       ..と言う事はコイツ等にも
       まだ増援は居たって事だ。

       ―――と来れば当然ながら・・・
       やる事は一つだ。そいつが
       部分的に硬くなる術を持って
       いようがいなかろうが、
       こいつと同じようにして
       うなじから引き摺り出,,,,
    ペトラ「へいっ、、兵長・・・・!」




    リヴァイ「・・・・どうしたペトラ。
       言わなくとも分ると思うが
       今俺らは割と大事な話を」



    オルオ「そっ・・・それが・・・ですね、、!
       コイツがいきなり・・・」
       オタオタ・・・・

    ペトラ「何か・・・喋り出そうとして・・!;

       ど・・・どうしましょう・・・・」




    アニ「・・・・ ~~~・・・・」





    リヴァイ「・・・・・・・・・!」




    2人に指示を仰がれたリヴァイの目に
    留まったのは・・未だ立ち昇る蒸気を
    欠損した手足の断面より燻らせる、
    拘束されたままのアニの姿だった。




    リヴァイ「今・・・そいつのお喋りに
       付き合ってやれる程俺らには
       余裕も時間も、…ついでに人手も
       足りてない訳だが」
       フイッ・・・



    エルヴィン「・・・・どの様な意思疎通を試みて
       そうしているのか・・・・確認がてら、
       私からも、“それ”に聞きたい事は
       勿論ある。・・・・危険を承知の上で
       ・・・一つ頼めるか」




    リヴァイ「・・・・・・(溜息)...だ、そうだ。

       俺は一先ず反対票を入れたからな。

       何かあればコイツの首を迷う事無く
       すっ飛ばす事になる。

       貴重な捕虜が減りでもしたら・・・」




    キッツ「お、おいっ・・・・貴さっ・・・・

       貴様ら・・・・・!?

       まさかとは思うがそこの・・・・!
       その重負傷者も・・・・・!!」 
       ワナワナワナ・・・・・



    リヴァイ「 お前は少し黙ってろ 」
       ギロッ・・・・




    キッツ「っ・・・・・!!」
        ビクッ・・・




    リヴァイ「大体、負傷者と言ったがお前・・・・

       両手足バッサリ()かれて生きてる
       奴が・・・普通の人間で通る訳
       無えだろうが。

       それに傷口である筈の断面は
       不自然な程表皮の治癒自体は
       完全に済んでいる上に・・・

       湯気まで出てやがる。
       隠し立てするまでも無く・・・
       今目の前にいるこのガキは
       お前が想像する通りの化け物で
       間違い無えんだ。

       そこまで分かったなら一々喚くな。
       お前の喚き声は・・・癇に障る。。」


  234. 253 : : 2016/01/11(月) 00:45:52






    キッツ「これが・・・・!!これが黙って
      居られる物か!!!
        
      そいつが人間で無いと
      分かっているなら・・・!
      次の瞬間にも巨人の姿(ほんしょう)を現して
      襲い掛かってくるかもしれないと
      理解していながら何故即刻首を
      落とさない!!?貴様ら何を考えて・・・
    ザギンッ!!!!!!!


    キッツ「ッ・・・・・!!!!!」



    リヴァイ「黙れ・・・・・。黙って居られないなら
       今尚そこらで続いてる、この
       無差別砲撃で不慮の戦死者が
       一人増えるだけだ。

       ・・・どうせこの乱痴気騒ぎの原因も
       師団長の手前(テメェ)が下した
       命令が原因なんだろ。

       ・・そうなっても所詮は
       身から出た錆だよな・・・・・」
       ジャギッ・・・・チキッ・・



    リヴァイが突き降ろした交換寸前まで
    酷使されたブレードは、キッツが跪く
    足元、その石畳の隙間に深々と
    突き刺さり、そのままゆっくりとそれを
    引き抜いたリヴァイは・・・・

    剥きだしにした殺意と憤りを刃に乗せて、
    言葉を綴る。

        


    リヴァイ「いいか・・・・今目の前にいる
       "コイツ"も・・所詮は庭に生えてくる
       タチの悪ぃ雑草と何ら違いは無い・・


       お前が言うように上っ面の部分を
       幾ら鎌や熊手で掻っ攫った所で…

       その下(▪▪▪)に伸びてる()の方を
       どうにかしねぇ事には、
       何の解決にも繋がらねぇ。

       ・・・それくらい庭掃除の基本を
       叩き込まれてればガキでも
       分る事だろうが・・・、、なぁ?」



    エルヴィン「・・・・もう止せ。リヴァイ・・。。

       お前の言い分が間違っている
       などとは勿論口にする由も無いが、

       このような様子を目にした者が
       増えれば増える程・・・後の処理が
       面倒になる。

       例え結果的に、本当に砲撃に(▪▪▪▪▪▪)
       巻き込まれて(▪▪▪▪▪▪)、そこの師団長1人の
       命が侵略者撃退の尊い犠牲と
       散ったにしてもだ・・・・・。


       先ずはこちらを頼む・・・・」




    溜息交じりにそう諭しながら・・・

    未だ拘束を解かれず、舌を噛むという
    自傷行為の警戒からも猿轡(さるぐつわ)
    噛まされたままの格好で何かを
    強い目つきにて訴えるアニの方へと
    向き直るエルヴィン。




    リヴァイ「・・・・本当に良いんだな。

       おい・・ペトラ。リードを
       俺に寄越せ。俺がそいつの汚ぇ
       涎まみれになった轡を外す。

       お前ら二人は万一に備えて
       こいつの"巨人化"に
       巻き込まれない位置まで
       後退しつつ・・・俺がこいつの首を
       どうにかしても制圧できなかった
       場合を警戒してろ。・・・いいな」



    オルオ「へっ・・・兵長!!!それならば
        実力的にも兵長ではなく俺が
        そのワイヤーを持つべきでは
        ・・・・・・!!!」





    リヴァイ「悪いがそいつは・・・

       出来ない相談だ。コイツには
       二人も直属の部下を持って
       かれてる。せめてこの手で
       ケリをつけてやらねえと
       気が収まらねぇ・・・」ギリッ・・・





  235. 254 : : 2016/01/11(月) 00:48:42



    オルオ「っ・・・・りょ、了解です・・・・・・!」
       タジッ・・・・



    ペトラ「ホラ、、、、;兵長の言う通りに・・!
       大丈夫だって、心配なんて
       要らない・・・・!

       そもそも不意を突くなら今迄で
       幾らでも気絶したフリして
       機会が狙えた筈だし・・・、

       "本体"へのダメージが確実に
       有効であることは・・・グンタが
       命懸けで私達に示してくれた!

       兵長がこのワイヤーを全力で
       引いたりすればこいつの首は
       一瞬で・・・!」






    リヴァイ「・・・・・・そう云う事だ。

       お前(▪▪)には・・・まだこれから
       訊かなきゃならねえ事が山程ある。

       お仲間が受ける拷問を少しでも
       減らしたいなら妙な真似を
       しない事だな・・・

       尤も俺はそれでも構わねえが」
       グッ・・・




    アニ「――-・・・・ ――-・・・・」
       フ――・・・・フ――・・・・・






    キース「・・・・・・・・・」






    その場で一定の距離を置き、
    アニの轡を外すリヴァイを注視しつつ・・

    その警戒心を最大限に張り詰める
    オルオ、ペトラ、キースの三人。





    アニ「っ・・・・ぷはぁ・・ ハァ・・・ハァ...」






    エルヴィン「・・・・初めまして、だな。

        君の事は・・・報告の上でだけは
        耳にしている。どの様な力を
        有した存在で、今迄どのような
        立場を隠れ蓑にして身を潜めて
        いたか・・・・。  そして、」
        グッ・・・





    アニ「・・・・はぁ・・・・・  ハァ・・・・!、!?」
       



    エルヴィン「どうやら、"君達3人"は・・・
        動機や目的こそ全く不明だが
        我々人類に対する敵対者である
        ・・・らしいという事だけは。

        我々の認識が間違って
        いなければ正しい事なのだろう」



    現在両手足が無い状態のアニは、
    身体が小柄なため、両肩、股下にかけて
    縛りつけたロープで背負う形で
    此処まではリヴァイが運び、現地点に
    到着した時点で、その監視はオルオに
    一先ず任されていたが・・・・


    今はエルヴィンの要望もあり、
    そのままの状態で壁にもたれ掛からせる
    ような格好で置かれている。


    四肢の欠損による消耗故か、
    荒げた吐息が邪魔をして、直ぐには会話
    出来ない様子を見せながら、俯くアニの
    目前へとしゃがみ込むと、その顎先を
    持ち上げるエルヴィン。





    エルヴィン「単刀直入に訊こう・・・・


       君達の目的は・・・一体何だ??
       “巨人”とは・・・何なのだ・・・?」




  236. 255 : : 2016/01/11(月) 00:50:46




    アニ「ふっ・・・・フフクっ・・・クハハ・・・!//;
      
      ゼェ・・・目的って・・・そんなの..

      決まりきってるじゃないか・・・!
      私達が・・“何者”か聞いて来ない
      って・・・事は・・・・それ位
      あんたにだって分ってるって
      事・・・・・・」




    エルヴィン「違う。君が言いたいのはつまり
       壁の内側に居る“我々”の
       根絶などといった・・・・解り易い
       方の目的だろう・・・?

       私が訊いているのは・・・・
       “君等三人”が、今日までそうして
       身を潜めながらでなければ
       行う事の出来なかった・・・・
       君達の“役割”・・若しくは
       “使命”についてだ。

       全ての壁の破壊のみが君等の
       仕事だというなら・・・マリア陥落の
       混乱に乗じて残りの壁を
       突破しない理由が判然としない」





    アニ「・・・今更聞いても何もならないよ」





    リヴァイ「手前(テメー)の意見は聞いてねぇ。」





    キース「・・・・・・」




    アニ「・・・・・(溜息)...、まぁ・・・・
      仕方が・・・ないか・・どの道私達(▪▪)はもう・・・
      失敗した。・・・戦士にすら
      成りきれなかった。そこで
      おっかない顔して睨んでる人の
      言ってた事が本当なら・・・・もう
      あんた達にも“後は無い”んだしね。

      私がせめて死ぬ前にあんたらに
      言い残して置いてやりたかったのは
      そっちについてなんだけど・・・・」




    リヴァイ「・・・・・・・・」




    質問に対する簡潔な返答が無い事に
    僅かながらの苛立ちを見せ、
    その不快指数を眉間で表す
    リヴァイを他所に・・・


    アニは諦観の念を隠さず、遠回しな
    言葉を綴った。
      



    エルヴィン「後が・・・・・無い・・・・?それは
       どういった意味で口にした言葉...




    アニ「――私達の目的は。

       “ある探し物”を、この壁の内側で
       決められた期間内に見つけ出す
       ことで・・・・・

       その“探し物”の『使い道』こそ
       ・・・・あんた達が知りたがってる
       巨人の正体であり、その本質だよ。

       巨人という“力”を行使する為の
       ・・・・“鍵”みたいなもの。」


  237. 256 : : 2016/01/12(火) 00:31:56






    リヴァイ「・・・ダメだな。

       質問に真面目に答えようって
       意思が感じられねえ。

       ・・・これで分かったかエルヴィン。
       こいつは・・・言葉で普通に聞いて
       会話になる相手じゃねえ。

       ・・・これ以上ここでうだうだ
       やったところで時間の無駄だ・・・」





    アニ「ぁあ・・・・。確かに・・・
      時間の無駄だと思うよ・・・・!

      私なんかに構う時間があるなら・・
      すぐに開閉扉の方に向った方が
      いい・・・・!その巨人っていうのは・・
      喋ったんだろ・・・・?

      それも・・・・今迄あんた達が
      見た事もないような“姿”・・・

      そう、たとえば・・・動物のような
      ・・・全身毛に覆われたような
      ・・・そんな外見の奴だったんじゃ
      ・・・・ないの?」






    キース「・・・・・・!!!」




    アニの言葉に目を見開いて固まるキース。




    キース「・・・エルヴィン。・・・暫し良いか。」





    エルヴィン「ええ、構いませんが・・・しかし」




    キース「急いで向いたいのは山々だが。

      ・・・・今は圧倒的に情報が不足して
      いる。・・それを少しでもこいつから
      引き出せるというなら・・・
      其方の方が今は優先だ」




    アニ「・・・・・・」




    キース「・・・・レオンハート・・・・。

      貴様の本性に気づけなかったのは
      完全に私の落ち度だったが・・・

      まさか“あの二人”まで貴様と
      結託した人類の外敵であっただけで
      なく・・・夫々が“鎧”と“超大型”
      ・・・・とはな。初めてそのような
      知らせを受けた時は我が耳を
      疑ったぞ・・・・・」 






    アニ「まあ・・・普通はそう思うだろうね」





    キース「さて、エルヴィンも言っていた
      通りだが・・・何せ時間が無い。

      貴様が今口にしていた、あの・・・

      “獣の様な外見の巨人”、
      これについて、知っている限りの
      情報を寄越せ。特徴から
      攻撃性の有無、・・・それからもし
      そのようなものがあるなら性格
      等もな・・・・」








    アニ「・・・・・一つ言っておくけど・・・・」







    キース「・・・・・・・・・・」






    アニ「ソイツ(▪▪▪)が私の知ってる巨人なら・・・

       この壁の中の、誰であっても
       勝ち目は無いよ。・・・さっき私を
       容赦なく切り刻みに来た、
       そこのあんたが・・・“人類最強”
       なんでしょ・・・?」






    リヴァイ「・・・・・・あ?」






    アニ「・・・・例えあんたでも無理だ。

       ・・・・同じくらいのが4人居れば
       どうなるか分からないけど・・・・」


  238. 257 : : 2016/01/12(火) 00:34:01



    ペトラ「(兵長が・・・4人って・・・・!!)」




    リヴァイ「・・・・なら問題ねぇな。

       俺が一人で4000人分の仕事を
       する働き者だなどと・・・最初に
       抜かしたのが何処のどいつだかは
       知らないが。

       そんなモンは所詮自分勝手な
       奴らの単なる誇大妄想だ。

       遠征に出てる訳でもない今現在…
       俺の4倍働ける兵力なんざ
       掻き集めりゃどうとでもなる。

       ・・・何よりここは壁外じゃねぇ。
       “壁の外に持ち出せない”モノも
       ある事を考えれば・・・単純な兵力
       なんてのは・・・・」







    アニ「・・・・単純な力じゃ無いんだ・・・
       分っかんないかな・・・・・??!


       ・・・アイツの目には“大砲”すら
       失笑を誘う骨董品(アンティーク)の類にしか
       映らないよ・・・・・!そんなモノを
       向けるのはいいけど・・・・

       それだけは絶対におススメしない
       ・・・・・・」






     ッ・・・・ドドウン・・・・!!   ドドンドンッ・・・

     


      ズドガンッ・・・・・!  ゴゴガ゙ッ・・・・
     





    アニの言葉を暗に裏付けるかの様に、
    遠く離れた開閉扉方向から、次々に砲門が
    火を吹く音が聞こえてくる・・・が、


    その音が・・・一向に止まない事から、
    砲頭を向けられている標的が、
    未だ撃沈させるに至らない事実を
    その場の全員に教えている。





    ・・・しかしそれだけではない。






    リヴァイ「・・・・おい、この砲声・・・・・」






    キース「・・・・ああ、マズいな・・・・場所も
      良くない上に・・・・音が全て
      分かりやすい位に“反響”して
      届いている所を見るに・・・」





    エルヴィン「壁に・・・壁を背にして砲火に
       晒されているという事か・・・・・!」






    アニ「・・・・もう分かったでしょ・・・

       喋りかけてくるくらいの
       知能がありながら・・・
       大砲ってのがどんなモノか
       知っていながら態々そいつを
       “撃たせて”るんだ・・・・!
     
       何を狙ってるかなんて・・・」




    リヴァイ「っ・・・(舌打ち)
     
       とんだ時間を食っちまった・・・

       駐屯兵団の腰抜け砲手共が
       果たして頭の働く奴だと
       いいが・・・、、オイ!!!

       俺はこのお喋り人形を早い所
       地下牢にぶち込んで来るが・・・

       お前達だけでも先に砲撃を
       止めに行け・・・・!!

       どうせビビッてぶどう弾を
       ばら撒いてるだけだろうが・・・
       何かを間違って榴弾でも
       装填されれば流石に笑えねぇ・・・」





    アニ「・・・・あんたら・・・本当に・・・・・


       本当に“あの壁”が何なのか(▪▪▪▪)
       知らないの・・・・・??これは・・・

       ケッサクだ...。。。!

       いや、知ってる訳..無いか・・・・
       知ってたら皆・・・毎日が
       生きた心地なんてしないはず
       だしね・・・・!?」






    オルオ「ッ・・・・さっきからコイツ・・・・!
        自分の立場が本当に
        分かってやがるのか・・・・?!
        
        仲間を手に掛けられた怒りを
        抑えて下手に出てやってりゃ
        調子付きやがって・・・・!!!」
        ギリッ・・・・!!




    キース「・・・こうしては居れん。
      俺は一足先に向こうへ行くぞッ・・!

      エルヴィン!!!こちらの砲撃を
      取り止める為に用意した書簡の
      写しを寄越せ!!!・・・最早その様な
      段階ではないが・・・少しでも
      抑止力足り得る材料は必要だ・・・!」



  239. 258 : : 2016/01/12(火) 00:37:22




    アニ「(・・・・もう・・・無駄だって。

       “ぶどう弾で充分”・・・。充分
       薄皮一枚剥がれる・・・・!もう・・・

       もうあんた達が何しようが
       そうなれば最後・・・・・)」








    アニ「(今日が…"人類"最期の日になる…

      
       それを悟った時あんた達の顔が
       どんな表情になるのか・・・・

       それが私の最期の楽しみにも
       なってしまうけどね・・・・)」








    アニ「結局私は・・・・・

      何の為に・・・こんな世界に
      産まれて来たんだろな・・・・・・」












          ~数分後~



     ―トロスト区開閉扉寄りの市街地―






    ミカサ「(エレン・・・・!

       さっきから私が何度呼びかけても
       ・・・これだけ立体機動を使って
       運ぶ際に負荷が掛かっても
       目を醒まさない・・・・!

       早く・・・一刻も早くちゃんとした
       手当てをしなければ・・・・!!)」




    ギュィイイイイイイ!!!    バシュッ 




    未だ全身に受けた熱傷による
    意識の喪失から復帰できていない
    エレンの身体を、自身の心臓より
    大事そうに抱えたまま市街を跳ぶ
    ミカサの姿が―――そこはあった。




    ドガンッ!!!!   ドドドド!!!






    ミカサ「エレン・・・!エレン・・・・!!
       エレンエレンエレンエレン・・・・!!・・エレン!!!

       少しでも聞こえていたなら・・・
       お願い・・・・指一本でも
       動かせるなら私の声に応えて・・!

       心肺は停止していない・・・あなたは
       まだ無事なはず・・・・・!

       お願いだから・・・・・・!」





    ――自らの胸の内にて物言わぬ
    負傷者となっている想い人が
    気掛かりなあまり、

    未だ周囲一帯の戦火が収束の気配すら
    見せていないという、自身が身を置く
    身辺状況の危うさに全く気が
    向けられていないほど。




    しかし、あえて移動に格段の危険を
    伴う立体機動を用いてエレンの移送を
    行う辺り、流石に地上を行くには
    巨人との遭遇を鑑みても危険すぎると
    頭で判断できているのか・・・・




    ミカサ「何処・・・・!このような有事の際は
       ・・・何処へエレンを連れて行けば
       真っ先に・・・・・!!?」オロオロオロ




    それとも、単に一刻も早くエレンを
    安全地帯に運びたいが故の・・・
    考え無しの急ぎ足か。





    ―――何れにせよとても運の悪い事に。





    冷静な状態の彼女一人ならば全く
    勝手も違っただろうその状況で・・・・



    高所より二人を凝視する――・・・・・
    ――――巨大な目があった。





    巨「ゴファッ!!!!!」ドガンッ!!!





    ミカサ「ッッ!!!????」
       (――奇行種ッ・・・・!!!!?)





    その一体は、どういう訳か市街地に
    聳える塔の頂上付近にしがみ付いていた
    様で・・・・二人の姿を見つけるなり、
    大口を開けてカエルのように
    飛び掛って来る。







  240. 259 : : 2016/01/12(火) 00:40:02






    激突必至のコースで、

    しかし平静を失って尚、常人のそれを
    遥かに凌駕する反射神経でもって
    軌道を修正するミカサ。


    無論、その軌道修正のコース取りに・・・
    何があってもエレンを放さない、
    という意思以外は介在する
    余地などなかった。




    ゴガッ!!!



    ミカサ「っつ゛ぅッ・・・・・・!!」 ヨロッ



    最大限エレンに掛かる負荷を抑える為、
    彼を庇う形で身体を捻り、右肩を
    急襲者に掠めるコースですれ違う事に
    成功するミカサ。 


    ・・・・しかし当然、その結果は、果たして
    “成功”といっていいのかどうか、
    それすら怪しいものであった。




    ザザッ・・・・・  ズシャッ!!!!




    ミカサ「(かっ・・・・肩が・・・・ッ)」ガクッ




    掠めた、というよりほぼ激突したと
    形容するに等しい衝撃を受けた影響で、
    当然その正しい噛み合わせを
    維持できずに脱臼を起こす、
    ミカサの右肩甲上腕関節。


    通常ならば既に人一人を抱えていられる
    状態でないのは言うまでも無く、
    激痛に悶え苦しむところであるが・・・・





    ミカサ「フッ・・・・   んグッ・・・・!!!!」

          ゴ゛グ ンッ!!!!



    片腕でエレンを放さず抱きとめながら・・
    もたれ掛かった家屋の壁に強引に
    体当たりをかけ、自身の腕を非常に
    荒々しく繋ぎ直すミカサ。



    ミカサ「・・・・・~~・・・、、」フゥッ・・・
        グッ・・・グイッ・・・・・





    腕の自由は辛うじて戻った様だが・・・



    ソレそのものに伴う痛みや
    靭帯、腱への損傷を考えれば、
    まず普通の兵士には真似もできなければ
    推奨もできない荒療治である。



    しかし、彼女がここまで危険極まりない
    応急処置を行わなければならない理由は、
    当然ながら未だに目前から
    過ぎ去っては居なかった。





    ミカサ「(・・・・・ガスはまだ・・・ある。

        しかし・・・肩はなんとか
        戻したとはいえ・・・このまま
        エレンを抱えていては、
        逃げ切るのは勿論、

        応戦してやりきる事すらもはや
        現実的では無い・・・)」コンコン・・




    ザッ・・・・





    ミカサ「(済まない・・・エレン・・・・!

        本当なら片時たりともあなたを
        離したりなんてしたくなかった


        ・・・・しかし・・・・)」クルッ・・・





    巨「フゥッ・・・・  バフッ・・・・・」
      ズンッ・・・・ ズドン・・・・







    ミカサ「(あなたを無事運びきるには・・・

        コイツがどうしても邪魔だ・・!
        待ってて・・・・直ぐに・・・

        直ぐにコイツを・・・・)」







    巨「ゴァッッ!!!!!」ドドンッ!!









    ミカサ「10メートルの肉片にしてから
        あなたをゆっくり運んで
        あげるから・・・・・・!」
        ジャギンッ・・・・・







  241. 260 : : 2016/01/12(火) 00:42:18








    ――と、丁度その時。









    ドガンッ!!バガガガッ!!!!!


     


    ジャン「ぅおおおおおぁぁああああ!!!!」




    ケイジ「ッッッ!!!!!!!」



    ドガッ・・・!!  ガラガラガラ・・・・




    別の8m級の追撃を逃れる形で
    ミカサ達と同区画へと逃げ果せた
    ジャン、そしてケイジ、その二人の姿が。


    どうやら激戦区と化した市街を
    突っ切って得体の知れない巨人に関する
    情報を伝える、という目論見は見事に
    残存していた巨人との遭遇により
    ぶち壊しにされてしまったらしい。





    ケイジ「畜生ッッ・・・・!!何故こうも
       最悪のタイミングでガス切れなど
       ・・・・!!!・・・おい!キルシュタイン!!
       生きてるか!!!?>」




    ジャン「ぁ、ぁあ・・・何とか生きてる
       ・・・みたいですが、、!

       俺の方もコレ・・・残りのガスが
       もう直ぐ尽きて機動力は死ぬ
       寸前・・・・・....って、、

       オイ!!み、ミカサ!!!!??

       何だっておまっ・・・・」




    巨「ガバァァぁ!!!!!」





    ケイジ「馬鹿が!!!余所見をするな!!!!

       二体だ!!!俺達を追ってきたのと
       別にもう一体居るぞ!!!」
       ドガッ





    ジャン「ぅおっ」






    ミカサ「ッ!!!!ぁっ」





    ケイジ「っぐぁッ!!!!??」





    ジャンを押しのけると同時に15m級の
    腕に掴まれてしまうケイジ。






    ジャン「ッ!!!オイオイオイ!!!そんな!!!!」




    ケイジ「何をしてる!!!コイツは今、
        俺を喰う事しか考えてない!!
        そっちの奇行種を何とかしろ!!

        そうすりゃお前達だけでも・・・・」



    この状況で、僅かな逡巡すら見せずに
    残された仲間の棒立ちに喝を入れる事が
    出来る度胸は、流石壁外調査ベテラン組の
    胆力の賜物と言った所・・・・



    しかし、一刻の猶予も許されない
    その場に更なる騒々しさをもって
    現れたのは・・・・






    ハンジ「ぉォォオオ!!おいモブリット!!
        見てみて!!奇行種だ!!奇行種と
        8m級の2ショット!!こんな
        光景をまさかの市街地で
        お目に掛かれるなんて!!!
        
        いやぁ~~!生きてて良かった!!
        壁外で野垂れ死にしなくって
        本当に良かったよ!!!」グルグルグル
        イヒヒヒ((( ᐛ )))ヒヒヒヒ⋆





    モブリット「痛みで錯乱寸前だというのなら
       こういうのも非常に酷かも
       知れませんが!!!!
     
       どうか大人しくしてて下さい!!!
       それ以上その傷で騒ぎ立てれば
       あんた本当に死にますよ!!!!?」
       ゥワァアアアアアァァァア!!!






    同じく負傷中のハンジと、それを
    調査兵団本部の医務室を目指し、
    運ぶ途中のモブリットであった・・・




  242. 261 : : 2016/01/12(火) 00:47:34





    ハンジ「って・・・・あれれ!!?☆
        痛みで頭がどうかしちゃった
        かな私!!!あそこで8m級の
        彼が握ってるの・・・何か
        ケイジっぽいんだけど!!!

        あっははは!!!とうとう私
        見えちゃいけないモノが
        見え始めたかな!!ねえねえ
        モブ!!!!!」バシバシバシ!!!





    モブリット「ッッ!!!!!?」





    既に過度の痛みから意識を逸らそうと
    意地になりすぎた挙句、半狂乱となった
    ハンジが己の背中を何度も平手打ちして
    くるのにも構うことなく、その名を
    力の限り叫ぶモブリット。







    モブリット「ケっ・・・・ケイジ!!!!?

        一体何故未だこのような区画に
        ・・・・?!!!」





                   (ギィィィィィイイイイイイイイイイイ)





    ケイジ「馬鹿が・・・!あんたまで・・・何度も
       言わすな・・!!!ガス切れだ!!!
       遺言を言い切る前に恐らく
       俺の半身はコイツに
       喰われるだろうが・・・・!!!
      
       最期に分隊長に・・・お前に逢ぇ”ッ
    巨「バフッ!!!!!!!」




    (ケイジ)の最期の言葉が、
    その場の皆に聞き届けられる事は・・・・
    無かった――――――



    ハンジ「ケッ・・・・・・・!!!!!!」





    ―――理由は、至極単純。





    キース「  ぬ゛ぅ ン ッ!!!!!!」





    ギャゥ ッ !!!!!!!!






          ズ
            ドガ
               ッ!!!!!






    ――直後、目にも留まらぬ速さで
    飛来した濃緑と鈍色の旋風が・・・・・


    8メートル級の『首』を、胸鎖乳突筋
    もろとも一瞬で両断したからである。



    巨人の口内に半身を埋め、後は
    顎の一噛みで彼の体が半分になろうか、
    という瀬戸際のタイミングで・・・・



    見事地獄に踏み込んだ片足をこちら側の
    世界へと跳び退る事に成功するケイジ…



    ズズッ・・・・  ン・・・!!!!




    ケイジ「ブハッ!!! ごホッ  げフッ!!!」






    キース「・・・・無事か。若いの・・・。」
      ジャギン・・・・ ガコッ・・・





    全「・・・・・・・・・!!!!!!!・・・・・・・・・」




    未だ息のある奇行種が目前に居るという
    状況で、事も無げに言い放つ歴戦の兵士。


  243. 262 : : 2016/01/12(火) 00:50:10





    モブリット「ぁ・・・・ぁ・・・・なん・・・・!!??

       一体何ッが・・・・・!?」パクパク・・・







    ハンジ「へ・・・変態でしょ・・・・・!!!」
       フワァァア・・・・・・(;゚Д゚)






    キース「・・・・随分だな・・・・ハンジ・ゾエ。
       
      お前の分隊の一員だろう・・・
      皮一枚のところで助けてやったと
      いうのに全く・・・・」...ヤレヤレ





    ハンジ「イエ!!?賞賛の言葉に御座いますが 
        何か!!?・・・っていうか何ですか

        その・・・!莫迦と冗談が
        総動員ってカンジの大剣は!!??

        ドラゴンでも狩りに行く
        つもりですか!!!!!」





    キース「・・・その『どらごん』とはなんだ。」
      ・・・・ン??;





    ハンジ「壁外でもさらに伝承でしか
        伝えられてない、空飛ぶ
        馬鹿デカいトカゲです!!!
        おまけに火を吹くそうです!!!」
        バッ!!!(ゥオオオ!!)




    モブリット「ちョッ・・・分隊長!!!大人しく
       してて下さい本当に!!!!!」




    キース「何かと思えば与太話か・・・(溜息)

      お前のような者が珍しいな、
      そんな信憑性の欠片もない情報を
      鵜呑みにするなど・・・」




    ミカサ「・・・・・!状況は非常に複雑だが・・・
        ・・!!しかしともかく・・・・・」




      ――助かった・・・・・!!




    この上なく頼れる増援に、ミカサの全身は
    疲れを忘れ、本来持ち得る底力の
    真髄を発揮する。



    ミカサ「ジャン・・・・!ここは教官に
       任せておいて間違いない・・・!

       ガスが残り少ないなら・・・・

       自分の足でガスの充填場まで
       向うしかない・・・・!さぁ、立って!」
       ググッ・・・




    ジャン「おお、おう・・・・??!」
    (こ、こいつ…死に急ぎ野郎(エレン)の身体を片手で!?)





    ケイジ「畜生ッ・・・・臭ぇっ・・・!最悪だ・・!
        返り血は時間を置いて蒸散する
        ってのに・・・何で唾液の方は
        こんな・・・・・・!!」ゥァァ・・・・↓↓;






    キース「四の五の言う暇があったら走れ!!
      未だ息のある奴はそこらに居るぞ!

      何とかガスを補給するまでは
      自らの足で逃げ切れ!!!いいな!!!」
      ドンッ!!!  ドシュッ!!!





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ne5716

夢馬

@ne5716

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